(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】化学反応を実施するための反応器
(51)【国際特許分類】
B01J 19/24 20060101AFI20231102BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B01J19/24 Z
B01J19/00 301A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526350
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2021074856
(87)【国際公開番号】W WO2022096180
(87)【国際公開日】2022-05-12
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521329305
【氏名又は名称】リンデ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】523112002
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ホフシュテッター,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】デルホム-ノイデッカー,クララ
(72)【発明者】
【氏名】ポッセルト,ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ツェルフーバー,マティウ
【テーマコード(参考)】
4G075
【Fターム(参考)】
4G075AA02
4G075AA03
4G075AA63
4G075BA05
4G075BA10
4G075CA02
4G075DA02
4G075DA18
4G075EA06
4G075EB01
4G075EB23
4G075EC13
4G075FB02
4G075FC06
4G075FC11
4G075FC15
(57)【要約】
本発明はプロセス流体を加熱するためのM相交流電流を使用して、プロセス流体内で化学反応を実施する反応器に関する。反応器は、反応器壁と、M個の反応管を有する少なくとも1つの群であって、各反応管は、第1および第2除去領域間で、それぞれの加熱長だけ延在する電気加熱可能な加熱部を有し、各当該加熱部は、当該加熱部の加熱長の20%から80%に亘って延在する領域に、それぞれの供給領域を有する群と、導電性給電素子であって、各群Mが当該群の供給領域に導電可能に接続された給電素子と組み合わされ、交流電流の異なる位相が、郡と組み合わされた異なる複数の給電素子に供給され得る給電素子と、導電性第1および第2除去要素であって、各群が、当該群の第1除去領域または第2除去領域に導電可能に接続されたM個の第1除去要素およびM個の第2除去要素と組み合わされる、除去要素と、少なくとも1つの導電性第1スターブリッジおよび少なくとも1つの導電性第2スターブリッジであって、各群が、第1および第2スターブリッジと組み合わされ、各群について、当該群と組み合わされた第1除去要素が当該群と組み合わされた第1スターブリッジに接続され、当該群に組み合わされた第2除去要素が当該群と組み合わされた第2スターブリッジに接続されるスターブリッジとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス流体を加熱するための多相交流電流を使用して、プロセス流体内で化学反応を実施し、前記交流電流は、位相数がMであり、Mは2以上の整数である反応器(2;52;62)であって、
断熱性の反応器壁(4;54;64)で形成される反応器容器と、
複数の反応管(6u、6v、6w;56;66)を有する少なくとも1つの群であって、各群がM個の反応管を含み、各反応管は、各反応管の第1および第2除去領域(22、23)間で、それぞれの加熱長だけ延在する電気加熱可能な加熱部(20)を有し、前記加熱部は、前記反応器容器内で、それぞれの加熱長の少なくとも95%に亘って配置され、それぞれ当該加熱部の前記加熱長の20%から80%に亘って延在する領域に、供給領域(24)を有する群と、
導電性給電素子(32)であって、各群Mは当該群の供給領域に導電可能に接続された給電素子と組み合わされ、前記交流電流の異なる位相は、郡と組み合わされた異なる複数の給電素子に供給されるまたは供給され得る給電素子と、
導電性第1および第2除去要素(34、35)であって、各群は当該群の第1除去領域または第2除去領域に導電可能に接続されたM個の第1除去要素およびM個の第2除去要素と組み合わされる除去要素と、
少なくとも1つの導電性第1スターブリッジ(36)および少なくとも1つの導電性第2スターブリッジ(37)であって、各群は、第1および第2スターブリッジと組み合わされ、各群について、当該群と組み合わされた前記第1除去要素は当該群と組み合わされた前記第1スターブリッジに導電可能に接続され、当該群に組み合わされた前記第2除去要素は当該群と組み合わされた前記第2スターブリッジに導電可能に接続されるスターブリッジとを備える、反応器。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1スターブリッジおよび前記少なくとも1つの第2スターブリッジ(36、37)が前記反応器容器の外に配置された、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
前記第1および第2ブリッジ除去領域(22、23)が前記反応器容器内に配置され、前記第1および第2ブリッジ除去要素(34、35)は細長形状を有し、かつ前記反応器壁を通じて延在しており、前記加熱部(20)は完全に前記反応器容器内に配置されることが好ましい、請求項2に記載の反応器。
【請求項4】
複数の群が前記少なくとも1つの第1スターブリッジの1つと組み合わされた場合、当該複数の群は同じ前記第2スターブリッジと組み合わされる、請求項1から3のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項5】
前記少なくとも1つの群の内の1つの群について、当該群が組み合わされた前記第1および第2スターブリッジ(36、37)は、ブリッジ接続(38)により互いに導電可能に接続される、請求項1から4のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項6】
それぞれM個の位相線(U、V、W)上でM個の位相の交流電流を提供する1つまたは複数の交流電流源(10)を備え、各群は前記1つまたは複数の交流電流源と組み合わされ、それぞれの群について、当該群と組み合わされた前記給電素子は、当該群が組み合わされた前記交流電流源の前記位相線に接続される、請求項1から5のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項7】
前記1つまたは複数の交流電流源の内の少なくとも1つに、少なくとも1つのスターポイント(14)が形成され、前記少なくとも1つの群の内の1群について、当該群が組み合わせれた前記第1スターブリッジおよび/または前記第2スターブリッジは、当該群が組み合わされた前記交流電流源の前記スターポイントに、1つまたは複数の中性導電体(N)を介して接続される、請求項6に記載の反応器。
【請求項8】
前記1つまたは複数の交流電流源の内の1つは複数の群に組み合わされ、これら複数の群は、同じ前記第1スターブリッジと、同じ前記第2スターブリッジとに組み合わされる、請求項6または7に記載の反応器。
【請求項9】
前記加熱部それぞれは、1つまたは複数のU字湾曲(44、45)により相互接続された複数の直線チューブ部位(42)を有しており、前記チューブ部位の数が偶数であることが好ましい、請求項1から8のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項10】
前記供給領域(22、23)はそれぞれ、前記U字湾曲(44)の1つに配置される、請求項9に記載の反応器。
【請求項11】
前記除去要素(34、35)は、支持構造に対して接続するための、電気的に絶縁された保持装置(40)に接続され、前記保持装置は、それぞれの前記除去要素に電気的に絶縁状態で接続される、および/またはそれ自体が電気絶縁性である、請求項1から10のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項12】
それぞれの反応管について、前記支持構造への接続のための少なくとも1つの担持装置が設けられ、当該担持装置は当該反応管に接続され、前記少なくとも1つの担持装置は、前記反応管に電気的に絶縁状態で接続される、および/またそれ自体が電気絶縁性であり、請求項9に従属する場合は、前記U字湾曲内に配置されることが好ましい、請求項1から11のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項13】
前記交流電流の異なる2つの位相間の位相ずれはラジアンで表すと2πk/Mとなり、いずれの場合においても、kは1からM-1の範囲内の整数である、請求項1から12のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項14】
前記化学反応は、最低500℃の温度で少なくとも部分的に生じる化学反応であって、前記化学反応は、500℃超で少なくとも部分的に実施される、水蒸気分解、水蒸気改質、乾式改質、プロパン脱水素、炭化水素による反応のうちの少なくとも1つであることが好ましい、請求項1から13のいずれか一項に記載の反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス流体において、当該プロセス流体の加熱に多相交流電流を利用して、化学反応を実施するための反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
化学工業における一連の処理において、反応器が使用される。反応器では、加熱された反応管を通じて、1つまたは複数の反応物が導入され、そこで触媒作用を介して、または介さずに変換される。加熱は特に、生じる化学反応に対する、活性化エネルギー要件を満たすために施される。反応は、全体を通じて吸熱的に、または、活性化エネルギー要件が満たされた後に吸熱的に進行し得る。本発明は特に、強吸熱反応に関する。
【0003】
当該処理の例としては、水蒸気分解や、各種改質プロセス、特に水蒸気改質、乾式改質(二酸化炭素改質)、混合改質プロセスや、アルカン脱水素プロセスなどが挙げられる。水蒸気分解の場合、反応管は、反応器を通じて、チューブコイル状にガイドされる。このチューブコイルは、反応器内にU字湾曲を少なくとも1つ持つ。一方、概してU字湾曲なしで反応器を通じて延在するチューブは、水蒸気改質に使用される。
【0004】
本発明は、反応管のそのような処理および実施形態の全てに適する。ウルマン工業化学百科事典の「エチレン」、「ガス生成」、および「プロペン」の章、例えば2009年4月15日公開、DOI:10.1002/14356007.a10_045.pub2、2006年12月15日公開、DOI:10.1002/14356007.a12_169.pub2、2000年6月15日公開、DOI:10.1002/14356007.a22_211という記事があくまで例示として参照される。
【0005】
該当する反応器の反応管は、従来、バーナを使用して加熱されている。反応管は、バーナも設置された燃焼室を通じてガイドされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、局所的な二酸化炭素排出がない、あるいは低減された状態で生産される合成ガスおよび水素の需要が高まっている。しかし、燃焼式反応器を使用する処理では、一般的に、化石エネルギー媒体の燃焼を伴うため、この需要に応じることができない。他の処理は、例えばコスト高などの理由により却下される。水蒸気分解またはアルカン脱水素により、オレフィンおよび/またはその他炭化水素を提供する場合も同様である。そのような場合にも、少なくとも現場での二酸化炭素排出量が低減された処理が求められている。
【0008】
特許文献1は、パイプラインを通じて流れる流体が加熱される反応器を開示する。ここで導電性パイプラインは、スターポイント回路が形成されるように交流電源の複数の位相に接続され、パイプラインの電気抵抗に応じて熱が発生する。
【0009】
設計面では、加熱されるチューブの長さは限定され、したがってオーム抵抗も限定される。結果、高電流強度および低電圧での電力供給でなければ、パイプラインに必要な加熱電力を導入できない。したがって、構造および材料面で複雑な高電流供給部が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、独立請求項の特徴を有する、化学反応を実施するための反応器により達成される。
【0011】
本発明は、各反応管を1つの位相のみに接続し、複数の反応管を介して、位相平衡を実現するという手段を利用する。これにより反応管における各位相の加熱長、即ち抵抗が、反応管が複数の位相に接続される構成を上回る。これにより、電圧を上げることで実現され得る、より大きな電力入力が定電流強度下で可能となる(Pが電力、Rが抵抗、iが電流強度としてP=RI2が成立するため)。それぞれの給電素子を介した、各反応管に対する電流供給部が1つのみであるため、技術的に複雑な高電流供給部の数およびその内部で生じる電力損失が低減可能となる。
【0012】
プロセス流体を加熱するための多相交流電流を使用して、プロセス流体内に化学反応を実施し、交流電流は、位相数がMであり、Mは2以上の整数である反応器が、断熱性の反応器壁で形成される反応器容器と、複数の反応管を有する少なくとも1つの群であって、各群がM個の反応管を含み、各反応管は、各反応管の第1および第2除去領域間で、それぞれの加熱長だけ延在する電気加熱可能な加熱部を有し、加熱部は、反応器容器内で、それぞれの加熱長の少なくとも95%にわたって配置され、それぞれ当該加熱部の加熱長の20%から80%にわたって延在する領域に、供給領域を有する群とを備える。本明細書における「20%から80%」というパーセンテージは、加熱長内での位置を示す。具体的には、0%は第1(または第2)除去領域の位置を示し、50%は加熱部の中点を示し、100%は、第2(または第1)除去領域を示す(即ち、割合を示してはいない)。
【0013】
給電素子を介して、電源に接続される供給領域では、いずれの場合でも、交流電流の1位相は加熱部に提供、または供給される。即ち、それぞれの位相に対応する交流電圧が印加される。除去要素を介してスターブリッジに接続される除去領域において、交流電流の各位相は、加熱部から除去または排出される。スターブリッジは、交流電流の異なる複数の位相の平衡に利用される。
【0014】
反応管が電気加熱可能である、または電気加熱可能な加熱部を有するということは、反応管、特に加熱部に使用される材料は、電気加熱に適した導電性を有する材料であることを意味する。例としては、耐熱鋼合金、特に、耐熱クロムニッケル鋼合金が挙げられる。当該鋼合金は、電力接続(これを介して電流が反応器容器内へと流れる)、即ち給電素子および除去要素にも使用され得る。例えば、DIN EN 10027パート1「材料」に記載の標準規格であるGX40CrNiSi25-20、GX40NiCrSiNb35-25、GX45NiCrSiNbTi35-25、GX35CrNiSiNb24-24、GX45NiCrSi35-25、GX43NiCrWSi35-25-4、GX10NiCrNb32-20、GX50CrNiSi30-30、G-NiCr28W、G-NiCrCoW、GX45NiCrSiNb45-35、GX13NiCrNb45-35、GX13NiCrNb37-25、またはGX55NiCrWZr33-30-04の材料が使用され得る
【0015】
反応器壁は、少なくとも1つの反応器壁により全空間方向に囲まれる領域を囲繞する。一般的に、反応器壁は、領域を囲繞するように互いに接合された複数の個別の壁により形成される。しがたって、反応器壁群とも称され得るが、簡潔性の観点から「反応器壁」という用語を使用する。囲繞された領域、延いては反応器壁は、体積を持つ任意の形状を有し得るが、好ましくは四角柱状となる。反応器壁は、封止構造要素(フィードスルーまたはのぞき窓など)を有し得るが、工場の別部位への接続として、常に開放した、および/または閉鎖可能な開口も有し得る。これは好ましくは反応器壁内の大気を調整するためで、例えば不活性ガス用の入口ノズル、または煙突への出口開口である。
【0016】
反応器壁は、反応器容器(反応器ボックスとも称され得る)を形成する。即ち、反応器壁は、反応器容器の1つまたは複数の壁を成す。したがって、「反応器壁」という用語は、プロセス流体用のタンクを意味するものと理解されるべきではない。反応器壁で囲繞された領域は、反応器容器の内部である。以下の説明では、反応器容器内の領域(即ち、反応器容器の内部)は、簡潔性のため、「反応器壁内」とも称する。したがって、「反応器壁内」という表現は、反応器壁により囲繞された領域内を意味する。同様に、反応器容器の外の領域は、「反応器壁外」とも称する。
【0017】
反応器壁は、熱損失を低減し、反応器容器または反応器の周囲を熱から保護する。したがって、加熱長は、本発明によると、少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、さらに好ましくは100%(即ち加熱部が反応器壁内に完全に含まれる)が反応器壁により囲繞された領域、即ち反応器容器内に実質的に含まれるべきである。この構成は、好ましくは対称となる。即ち、加熱部の反応器容器外の部分がある(加熱部の100%が反応器壁により囲繞された領域内にあるわけではない)場合、それらは加熱長に対して対称に配置される。具体的には、除去領域は反応器壁の外に存在し得る。
【0018】
いずれの場合でも、供給領域は、加熱部のその加熱長の30%から70%まで延在する領域に配置されることが好ましい。より好ましくは、加熱部のその加熱長の40%から60%まで延在する領域に配置される。最も好ましくは、加熱部のその加熱長の45%から55%まで延在する領域に配置される。これは、供給領域から第1および第2除去領域への、電流の対称的な分割に対応する。
【0019】
反応器はさらに、導電性給電素子であって、各群が当該群の供給領域に導電可能に接続されたM個の給電素子と組み合わされ、交流電流の異なる位相が、郡と組み合わされた異なる複数の給電素子に供給されるまたは供給され得る給電素子を備える。給電素子は、反応器壁を通じて延在し、原則的に電力供給部または電力接続を成す。反応器はさらに、導電性第1および第2除去要素であって、各群が、当該群の第1除去領域または第2除去領域に導電可能に接続されたM個の第1除去要素およびM個の第2除去要素と組み合わされる、除去要素を備える。除去要素は、給電素子および供給領域を介して供給される電流を消散する。給電素子は、高電流供給部となる。
【0020】
給電素子と、供給領域との間、または除去要素と、除去領域との間の導電性接続は、形状を利用した嵌めこみ接続、または圧力を利用した嵌めこみ接続(例えばスリーブ)、または一体的接続(例えば溶接)により実現され得る。これらの組み合せも考えられる。
【0021】
反応器はさらに、少なくとも1つの導電性第1スターブリッジおよび少なくとも1つの導電性第2スターブリッジであって、各群が、第1および第2スターブリッジと組み合わされ、各群について、当該群と組み合わされた第1除去要素が当該群と組み合わされた第1スターブリッジに導電可能に接続され、当該群に組み合わされた第2除去要素が当該群と組み合わされた第2スターブリッジに導電可能に接続されるスターブリッジを備える。スターブリッジを介して、位相間の電位平衡は実現される。
【0022】
少なくとも1つの第1スターブリッジおよび少なくとも1つの第2スターブリッジは、反応器容器の外に配置されることが好ましい。スターブリッジを反応器容器外(即ち、反応器壁外)に配置する利点の1つとして、反応器容器内に配置するために必要となるものよりも低い熱抵抗の材料が使用できる可能となることが挙げられる。しがたって、例えば銅のような高導電性材料が選択できる。
【0023】
したがって、位相間、即ち異なる反応管間で、スターブリッジに亘る電気抵抗は、反応管に接続された流体供給チューブおよび流体供給マニホールド、または反応管に接続された流体排出チューブおよび流体排出マニホールドにより形成された接続に亘る電気抵抗よりもかなり小さくなる。流体供給チューブは、プロセス流体が流れて、各反応管に供給されるチューブを意味するものである。これに対し、流体排出チューブは、プロセス流体が流れて、各反応管から排出されるチューブを意味するものである。流体供給マニホールドは、工場の別部位から来るプロセス流体を複数の反応管に分配するための、複数の供給チューブに接続されるチューブである。流体排出マニホールドは、化学反応後に、複数の反応管から来るものを集めさらに工場の別部位に送るための、複数の排出チューブに接続されるチューブである。流体供給チューブは、流体供給マニホールドとともに、流体供給チューブアセンブリまたは供給ヘッダと称される。流体排出チューブは、流体排出マニホールドとともに、流体排出チューブアセンブリまたは排出ヘッダと称される。流体供給チューブアセンブリおよび流体排出チューブアセンブリは、それぞれ第1および第2ブリッジスターブリッジに平行な、反応管間の電気接続を形成する。
【0024】
好ましくは、第1および/または第2スターブリッジに亘る群における2つの反応管間の電気抵抗は、流体供給チューブアセンブリおよび/または流体排出チューブアセンブリに亘る回路に関して、それに平行な電気抵抗に対し、最大50%、より好ましくは最大25%、最も好ましくは最大10%となる。
【0025】
これはこの場合には、特に、反応器外の、工場の別部位を介した電流につながり得る、流体供給チューブアセンブリと流体排出チューブアセンブリとの間の電位差発生を低減するための電位平衡が実質的にスターブリッジを介して実現されるため、有利である。
【0026】
好ましくは、第1および第2ブリッジ除去領域が反応器容器内に配置され、第1および第2ブリッジ除去要素は細長形状を有し、かつ反応器壁を通じて延在しており、加熱部は完全に反応器容器内に配置されることがさらに好ましい。これにより熱損失が低減できる。
【0027】
好ましくは、複数の群が少なくとも1つの第1スターブリッジの1つと組み合わされた場合、当該複数の群は同じ第2スターブリッジと組み合わされる。
【0028】
さらに、少なくとも1つの群の内の1つの群について、当該群が組み合わされた第1および第2スターブリッジは、ブリッジ接続により互いに導電可能に接続される。これにより、スターブリッジ間に生じ得る電位差に対し、平衡化が可能となる。少なくとも1つの群が複数の群を含む場合、複数の群でこの構成となり得る。
【0029】
好ましくは、反応器はそれぞれM個の位相線上でM位相の交流電流を提供する1つまたは複数の交流電流源を備え、各群は1つまたは複数の交流電流源の1つと組み合わされ、それぞれの群について、当該群と組み合わされた給電素子は、当該群が組み合わされた交流電流源の位相線に接続される。
【0030】
好ましくは、1つまたは複数の交流電流源の内の少なくとも1つに、少なくとも1つのスターポイントが形成され、少なくとも1つの群の内の1群について、当該群が組み合わせれた第1スターブリッジおよび/または第2スターブリッジは、当該群が組み合わされた交流電流源のスターポイントに、1つまたは複数の中性導電体を介して接続される。これにより、位相間の電流強度差がある程度許容される。
【0031】
好ましくは、1つまたは複数の交流電流源の内の1つが複数の群に組み合わされ、これら複数の群が、同じ第1スターブリッジと、同じ第2スターブリッジとに組み合わされる。
【0032】
好ましくは、加熱チューブ部はそれぞれ、1つまたは複数のU字湾曲により相互接続された複数の直線チューブ部位を有し、チューブ部位の数が偶数であることがさらに好ましい。これにより、反応器のコンパクトな設計を可能とするチューブコイルが形成される。
【0033】
供給領域はそれぞれ、U字湾曲の1つに配置されることが好ましい。U字湾曲が、反応器壁の外部および近傍に配置されるため、給電素子により形成される高電流供給部が比較的短く保たれ得る。
【0034】
好ましくは、除去要素は、支持構造に対する接続のための、電気的に絶縁された保持装置に接続され、保持装置は、それぞれの除去要素に電気的に絶縁状態で接続される、および/またはそれ自体が電気絶縁性である。特に、除去要素が反応器壁を通じて延在する場合、それらは担持機能も呈し得る。支持構造は、例えば、生産工場における反応器が設置される部位である。
【0035】
さらに、好ましくは、それぞれの反応管について、支持構造への接続のための少なくとも1つの担持装置が設けられ、当該担持装置は当該反応管に接続され、少なくとも1つの担持装置は、反応管に電気的に絶縁状態で接続される、および/またそれ自体が電気絶縁性であり、U字湾曲の1つ内に配置されることがさらに好ましい。
【0036】
好ましくは、除去要素、並びに流体排出チューブおよび流体供給チューブに対する、反応器壁を通じた全てのフィードスルーは、シールベローズなどの、適切な装置により、気密となる。気密用の当該装置は、電気絶縁されるように設計される。即ち、反応器壁と、送り込まれる要素との間に電気接点がない。特に小さい熱平衡運動のみが起きる場合、例えば、電流供給部が
図2に示すように上に配置されている場合、当該装置は、電力供給実施用にも(即ち給電素子用)にも設けられ得る。
【0037】
交流電流の異なる2つの位相間の位相ずれはラジアンで表すと2πk/Mとなり、いずれの場合においても、kは1からM-1の範囲内の整数である。したがって、対称負荷の場合、スターポイントまたはスターブリッジにおいて位相同士が打ち消し合う。
【0038】
化学反応は、200℃から1700℃、特に300℃から1400℃または400℃から1100℃の範囲の温度で少なくとも部分的に進行する化学反応であり得る。化学反応は好ましくは、最低500℃、より好ましくは最低700℃で部分的に生じる、特に500℃または700℃から1100℃の温度範囲内で少なくとも部分的に生じる化学反応である。したがって提供される電圧/電流は、適切な加熱電力を提供するのに適する。同様に、反応器および電源は、これらの温度で化学反応を実施し、対応する加熱電力を提供するように構成される。好ましくは、化学反応は、500℃超で少なくとも部分的に実施される、水蒸気分解、水蒸気改質、乾式改質(二酸化炭素改質)、プロパン脱水素、一般的に炭化水素による反応のうちの少なくとも1つである
【0039】
本発明を第一に水蒸気分解または水蒸気改質に使用される反応管および反応器について、以下に説明する。しかし、本発明は、別の種類の反応器にも使用され得る。概して、上述のように、本発明が提案する反応器は、あらゆる吸熱化学反応を実施するのに使用され得る。
【0040】
本発明の実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る、交流電流源に接続された反応器の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明のさらなる好ましい実施形態に係る反応器の正面図である。
【
図3】
図3は、本発明のさらなる好ましい実施形態に係る反応器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図面において、互いに構造的または機能的に対応する要素は、同一または同様の参照符号によって示され、明確さのため、説明を繰り返さない。
【0043】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る、交流電流源10に接続された反応器2の(大まかに)斜視図を示す。反応器2は、図において輪郭が一点鎖線で示される断熱性反応器壁4と、加熱され、化学反応が生じるプロセス流体が流れる複数の反応管6u、6v、6wとを有する。反応器壁は、上述のように反応器容器を形成する。反応管は群を成す。(群内の)反応管の数は、位相の数に対応する。ここでは例えば3位相だが、その他2以上の数も可能である。一般的に、反応管群は複数設けられ得る。各群における反応管の数は、位相の数に対応する。この一般的な場合において、1つまたは複数の交流電流源が設けられ得、交流電流源の位相端末を反応管の異なる複数の群に接続することもできる。即ち、交流電流源は、1つまたは複数の反応管群に交流電流を供給可能であり、これら1つまたは複数の群は、それに交流電流を供給する交流電流源と組み合わされる。
【0044】
反応管6u、6v、6wはそれぞれ、第1除去領域22と、第2除去領域23との間に延在する加熱部20を有する。図面を明確にするため、参照符号はここでのみ使用され、以降ではいくつかの同様の要素の1つを示すものとする。第1および第2除去領域22、23の間の反応管、即ち加熱部20の長さを加熱長と称する。ここでこれは、各反応管により形成されるチューブコイルのいくつかの折り返しにわたって延在する。各反応器チューブの加熱部20は、反応器壁4内に配置される。
【0045】
より一般的には、
図1と異なり、除去領域22、23は、反応器壁外にも配置され得る。
図2に示すこの場合、反応器壁通じて加熱部が延在する(反応器壁外に配置された加熱部の部分は、熱損失を避けるため、最小限であるべきである)。加熱部は、その加熱長の少なくとも95%が、反応器壁内に配置されるべきである。
【0046】
反応器壁4は、プロセス流体が加熱される加熱部が延在する反応器2の領域の少なくとも大部分に対して、(プロセスガスの供給または排出、電流供給または除去等を行うフィードスルーを除くと)実質的に閉じた筐体を形成する。プロセス流体の供給および除去は、反応管に接続され、それぞれが流体供給マニホールド28または流体排出マニホールド29に接続される流体供給チューブ26または流体排出チューブ27により実施される。マニホールドを介して、プロセス流体が生産工場の別部位の1つから反応器に導入され、化学反応後、再度当該生産工場の部位に反応器から排出される。流体供給チューブ26は、流体供給マニホールド28と共に、所謂供給ヘッダ(流体供給アセンブリ)を形成する。流体排出チューブ27は、流体排出マニホールド29と共に、所謂排出ヘッダ(流体排出アセンブリ)を形成する。
【0047】
第1および第2除去領域22、23間の加熱長の略中間、より一般的にはその20%から80%の間に、各反応管6u、6v、6w、またはそれぞれの加熱部20は、供給領域24を有する。各供給領域24は、導電性給電素子32に対して、導電可能に接続される。当該素子は、交流電流源10の位相または位相線U、V、Wに導電可能に接続される。所謂電流端末を示す給電素子32は、反応器壁4を通じて延在し、例えば、細長形状を有し、その一端が、それぞれの供給領域24に接続され、他端が位相線U、V、Wの1つに接続される。供給領域群に接続された給電素子は、それぞれの組と組み合わされる。
【0048】
交流電流源10は、好ましくは、交流電圧により、多相交流電流、ここでは3位相交流電流を提供する。より一般的には、別の位相の数Mも考えられる。位相間の位相ずれは、電圧または電流がスターポイントにて互いに打つ消し合うように選択されることが好ましい。即ち、任意の2つの位相間の位相ずれは、2πk/Mとしてラジアンで、または360°k/Mとして度数で表され得る。ここで、kは1からM-1の範囲の整数である。したがって3位相の場合、120°または240°に対応する2π/3または4π/3となる。この場合、連続した2つの位相間の位相差は、k=1として、即ち2π/Mで求めれられる。
【0049】
交流電流源10は、交流トランス、特に高電流トランスとして設計され得る。ここでは、一次側、即ち公共送電網または発電設備からの電源10への交流電流供給は、単に一次側トランスコイル12を示す網掛けの四角形で図示されている。一次側給電線は不図示である。一次側交流電圧は、典型的には、数百から数千ボルト、例えば、400V、690Vまたは1.2kVがあり得る。電源10の一次側と、恐らくは公共送電網または発電設備との間には、さらなるトランス(二次側AC電圧を制御し、所定の電圧範囲内に調整することを可能とする、少なくとも1つの不図示の調整用トランスであり得る)が介在し得る。これにより、高電流トランスに対して、適切な入力電圧が得られる。この介在された少なくとも1つのトランスに加えてまたは代えて、入力電圧を、1つまたは複数のサイリスタ式電源コントローラにより設定してもよい。
【0050】
二次側には、交流電流の位相が提供される、位相線または位相端末U、V、Wが設けられる。位相線U、V、Wには、詳細に図示しない二次側トランスコイル(一次側トランスコイル12を通じて位相線が延在することのみが示されており、これによりそれらが電磁的に相互座用することが示される)を介して、電気エネルギーが供給される。二次側交流電圧は、便宜上、300Vまでの範囲とされ、例えば150Vまたは100V未満、さらには50V以下であり得る。二次側は、一次側から電気的に分離している。
【0051】
位相線U、V、Wは、交流電流源10において相互接続される。これにより、交流電流源10のスターポイント14が形成される。このスターポイント14の接地は省略されることが好ましい。スターポイント14は任意で、中性線Nに接続される。
【0052】
第1除去領域22は、導電性第1スターブリッジ36により導電可能に相互接続された導電性第1除去要素34に、導電可能に接続される。第2除去領域23は、導電性第2スターブリッジ37を介して導電可能に相互接続された導電性第2除去要素35に、導電可能に接続される。除去領域群に接続された除去要素は、それぞれの群に組み合わされる。
【0053】
好ましくは、第1および第2ブリッジ除去要素34、35は反応器壁4を通じて延在し、より好ましくは、(
図1に示すように)第1および第2スターブリッジ36、37は反応器壁外に配置される。除去領域が反応器壁外にあれば、除去要素は反応器壁を通じて延在しない。
【0054】
さらに、好ましくは、除去要素34、35に接続された保持装置40が設けられ、除去要素34、35に対して電気的に絶縁状態で接続される、および/またはそれら自体が電気絶縁性である。この場合、除去要素は細長形状を有し得、除去要素の除去端は除去領域に接続され、反対の保持端は保持装置に接続される。保持装置40は、反応器が設置される生産工場の支持構造(不図示)に接続可能に構成される。したがって、それらは、特に反応器チューブ(およびそれに接続された要素)を保持または担持する。さらに、またはあるいは、加熱部20に接続された担持装置(不図示)が設けられ得る。この担持装置は、電気的に絶縁状態で加熱部20に接続される、および/またはそれら自体が電気絶縁性であり、支持構造に接続されるように、反応器壁を通じて延在する。これにより、反応器チューブは担持装置により保持される。
【0055】
したがって、交流電流は加熱部20内に供給領域24を介して供給または導入され、除去領域22、23を介して加熱部20から除去される。加熱部20の供給領域24から電流は、まず第1除去領域22に、次に第2除去領域23に、それぞれの電気抵抗に応じて流れる。異なる反応管6u、6v、6wには、交流電流の異なる位相U、V、Wが供給されるため、対応する位相ずれが位相間に存在すれば、2つのスターブリッジ36、37で理想的に電位平衡が実現される(即ち、対称的な負荷による)。回路面では、スターブリッジは消費者側スターポイントを形成する。
【0056】
任意で、1本または複数本の中性線Nまたはが設けられ、それを介してスターブリッジ36、37が交流電流源10に導電可能に接続される。
【0057】
好ましくは、少なくとも1つの導電性ブリッジ接続38も設けられ、第1スターブリッジ36と、第2スターブリッジ37との両方に導電可能に接続される。
【0058】
図1に示す反応管6u、6v、6wまたはその加熱部20は、チューブコイルとして設計される。即ち、下側U字湾曲44および上側U字湾曲45を介して相互接続された直線チューブ部位42を含む。図示の実施形態では、供給領域24はそれぞれ、下側U字湾曲に設けられる。第1および第2ブリッジ除去領域22、23はここで例示的に、肘領域において、チューブ部位42の上側端に配置される。肘領域では、対応するチューブ部位42がそれぞれ流体供給チューブ22および流体排出チューブ23内へと重なる。ただし、除去領域および供給領域をチューブコイルの別領域に設けることも可能である。
【0059】
図示の例において、供給領域24と、第1または第2除去領域22、23との間の部位の長さにわたって、いずれの場合にも3つの直線チューブ部位が含まれる。したがって、(従来技術のように)3位相に接続され、より正確には各下側U字湾曲で1位相に接続され、直線チューブ部位がそれぞれの反対端で導電可能に接続されたパイプラインの場合よりもかなり長い。具体的には、1位相に接続される反応管の長さは3倍となり、それに応じて抵抗も大きくなる。したがって、これに応じて、定電流強度下では、各位相および反応管に対して生成される加熱電力も大きくなり、特に必要な高電力供給部の数も低減される。
【0060】
「上」/「下」という表現は、あくまで図内の配向を示す。即ち、対応するU字湾曲を区別するものである。チューブコイルの実際の配向(即ち、地球の磁場に対する)も異なり得る。例えば、チューブコイルは敷設され得る(チューブ部位が水平に延びる)、または図示の配置から上下反転され得る(除去要素、スターブリッジ、および供給/排出ヘッダが下で、給電素子が上)。
【0061】
図1において、反応器チューブ6u、6v、6wはそれぞれ、または加熱部20はそれぞれ、例示的に6つの直線チューブ部位42を有する。即ち、上側U字湾曲45を介して接続される、3つのU字部位に分割される形態が考えられる。ここで、この数は異なっていてもよい。例えば2つの直線チューブ部位(1つのU字部位)、4つの直線チューブ部位(2つのU字部位、
図2参照)、8つの直線チューブ部位(2つのU字部位)なども可能である。原則的には、直線チューブ部位は奇数でもあり得る。
図3を参照されたい。
【0062】
図1では、各加熱部20において、供給領域24は第1除去領域22および第2除去領域23の間の加熱長の正確に中点に配置されている。ここでも、変更があり得る。即ち、第1除去領域22と、供給領域24との間の加熱部(第1加熱部)の長さ(第1加熱長)が、供給領域24と、第2除去領域23との間の加熱部(第2加熱部)の長さ(第2加熱長)と異なり得る。この場合電流は、これら2つの部位(第1/第2加熱部)の電気抵抗に応じて分割され、したがって2つの部位で異なる加熱電力が実現可能となる。
【0063】
図1は、複数(例として3つ)の反応管を有する群を1つのみ示す。通常、反応器は当該群を複数含み得、1つまたは複数の交流電流源が設けられ得、それぞれが1つまたは複数の群のそれぞれに交流電流を提供する。即ち1つまたは複数の群は、同じ交流電流源と組み合わされる。複数の第1スターブリッジおよび複数の第2スターブリッジも設けられ得る。ここで、単一の第1/第2スターブリッジが、異なる複数の群に組み合わされた除去要素に接続され得る。即ち、異なる複数の群が、同じ第1/第2スターブリッジに組み合わされるのである。またここで、同じ第1スターブリッジに組み合わされた群が、同じ第2スターブリッジとも組み合わされることが好ましい。好ましくは、複数の群が同じ交流電流源と組み合わされた場合、これら複数の群は、同じ第1スターブリッジおよび同じ第2スターブリッジとも組み合わされるべきである。
【0064】
図2は、本発明のさらなる好ましい実施形態に係る反応器52の正面図を示す。同図は、
図3と同様に、反応管またはチューブコイルの異なる設計、および対応する電力供給用接続の選択肢を示すものである。したがって、反応管およびそれに対する接続が1つのみ示されている。他の反応管(交流電流源の位相数に対応)は原則として、図示の反応管から距離を空けて(平行に離間)、図紙面に垂直に配置され、その供給領域が、異なる位相に接続されている点以外は、図示と同様に設計される。要素の詳細または特性については、
図1のものと異ならない限り、以下に繰り返さないので、
図1で示された接続の説明がここでも適用される。
【0065】
ここでも反応器52は、反応器壁54と、反応管(図紙面に垂直な方向に配置される)とを有する。正面視では、代表例として、1つの反応管56uのみが図示されている。反応管56uはそれぞれ、第1除去要素34に接続されるそれぞれの第1除去領域22と、第2除去要素35に接続されるそれぞれの第2除去領域23との間に延在する、加熱長を持つ加熱部20を有する。第1除去要素34は、図紙面に垂直に延在する第1スターブリッジ36により接続される。第2除去要素35は、同様に図紙面に垂直に延在する第2スターブリッジ37により接続される。
【0066】
各反応管56uまたは各加熱部は、下側U字湾曲44と、上側U字湾曲45とにより相互接続され、4つの直線チューブ部位(2つのU字部位)から成るチューブコイルを形成する、直線チューブ部位42から成る。チューブ部位の数を変えても、例えば、8つまたは12個の直線チューブ部位(4つまたは6つのU字部位)などでも、同様な構成が可能である。
【0067】
図1とは対照的に、ここでは供給領域24が下側U字湾曲ではなく、上側U字湾曲45に配置される。即ち、ここでも加熱部の中点に配置される。したがって、除去領域22、23と、供給領域24とが反応器の同じ側(上)に配置される。ここで図示の反応器チューブ56uの供給領域24は、交流電流源(より詳細に図示しない)の位相線Uに接続される。したがって、他の不図示の反応器チューブの供給領域は、交流電流源の別の位相線に接続される。ここでも、スターブリッジ36、37にわたって異なる位相の電位平衡が実施される。したがって、ここでも回路面で、スターブリッジが消費者側スターポイントとなる。
【0068】
図2の実施形態において、チューブコイルの形状に関わらず、第1および第2ブリッジ除去領域22、23は、反応器壁54外に配置される。当然、除去領域が反応器壁内に設けられた
図1のような構成も可能である。
【0069】
ここでも、第1スターブリッジ36と、第2スターブリッジ37との両方に導電可能に接続された導電性ブリッジ接続、および/またはスターブリッジを交流電流源のスターポイントに接続する、1つまたは複数の中性導電体が設けられ得る。同様に、保持装置40および/または担持装置が設けられ得る。これら要素は、
図2においてほぼ不図示となっている。
【0070】
図3は、本発明のさらなる好ましい実施形態に係る反応器62の正面図を示す。同図は、
図2と同様に、反応管またはチューブコイルの異なる設計、および対応する電力供給用接続の選択肢を示すものである。したがって、反応管およびそれに対する接続が1つのみ示されている。他の反応管(交流電流源の位相数に対応)は原則として、図示の反応管から距離を空けて(平行に離間)、図紙面に垂直に配置され、その供給領域が、異なる位相に接続されている点以外は、図示と同様に設計される。要素の詳細または特性については、
図1のものと異ならない限り、以下に繰り返さないので、
図1で示された接続の説明がここでも適用される。
【0071】
ここでも反応器62は、反応器壁64と、反応管(図紙面に垂直な方向に配置される)とを有する。正面視では、代表例として、1つの反応管66uのみが図示されている。反応管66uはそれぞれ、第1除去要素34に接続されるそれぞれの第1除去領域22と、第2除去要素35に接続されるそれぞれの第2除去領域23との間に延在する、加熱長を持つ加熱部20を有する。第1除去要素34は、図紙面に垂直に延在する第1スターブリッジ36により接続される。第2除去要素35は、同様に図紙面に垂直に延在する第2スターブリッジ37により接続される。
【0072】
各反応管56uまたは各加熱部は、下側U字湾曲44と、上側U字湾曲45とにより相互接続され、4つの直線チューブ部位(2つのU字部位)から成るチューブコイルを形成する、直線チューブ部位42から成る。上述の実施形態と異なり、直線チューブ部位42が奇数個設けられている(例えばここでは5個だが、別の奇数も考えられる)。これは、一方で第1除去領域22(したがって第1除去要素34)が上に配置されることとなり、他方で第2除去領域23(したがって第2除去要素35)が下に配置されることとなる。「下」/「上」という用語について、上述の説明を参考されたい。
【0073】
またこれは、ここでもU字湾曲(例示的に上側U字湾曲45内にあるが、同様に下側U字湾曲44内の配置も可能である)内に配置された供給領域23が、加熱部20の中点、即ち加熱長の50%に配置されないこととなる。むしろ、供給領域23と、第1除去領域22との間の部位の長さが、供給領域23と、第2除去領域24との間の部位の長さよりも多少短い。原理的には(全実施形態において)、供給領域を直線チューブ部位内に配置することも可能である。但し、電流を高電流強度(例えば、数kA)で導電する必要のある給電素子の長さ、すなわち抵抗が概して比較的小さく保たれ得、それに応じて高電力損失に帰結ことを意味するため、U字湾曲が好ましい。
【0074】
図3の実施形態の除去領域は、反応器壁54内に配置される。これにより、除去要素は反応器壁を通じて延在する。ただし、除去領域が反応器壁外に配置された実施形態も考えられることは明らかである。
【0075】
ここでも、スターブリッジを交流電流源のスターポイントに接続する1つまたは複数の中性導電体が設けられ得る(
図3では不図示)。同様に、保持装置40および/または担持装置(不図示)が設けられ得る。
【国際調査報告】