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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】硬質金属を加工するための方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20231102BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20231102BHJP
   C22B 19/04 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C22B7/00 F
C22B1/00 601
C22B19/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526504
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2021077895
(87)【国際公開番号】W WO2022096223
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】102020129059.4
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512103321
【氏名又は名称】ベテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Betek GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Sulgener Str. 21-23, D-78733 Aichhalden, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】マティアス フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ハラー
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ヒルガート
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル モッホ
(72)【発明者】
【氏名】ダーフィト フーバー
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA30
4K001BA22
4K001DA05
4K001DA07
(57)【要約】
本発明は、硬質金属、より詳細には硬質金属スクラップを加工するための方法であって:-硬質金属は、熱が加えられながら、反応器(10)の反応室内で低融点合金化金属と合金され;-その後、合金化金属は、不活性ガスの存在下で気相に変換され;-続いて、合金化金属は、凝縮ステップにおいて少なくとも部分的に凝縮され;及び-反応室内は、少なくとも凝縮相の間中、周囲圧力に対して陽圧である、方法に関する。より詳細には、本発明によれば、不活性ガスは、凝縮相の間中、少なくとも一時的に、反応室外の不活性ガス源(60)から不活性ガス供給ライン(61)を経由して、反応室に連続的に供給され、及び凝縮相中の少なくとも複数の相で、不活性ガスは凝縮器(30)から環境へ放出される。このようにして、従来技術で公知の硬質金属分解方法と比べてプラントの複雑さがかなり軽減され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質金属、特に硬質金属スクラップを加工するためのプロセスであって、ここで、前記硬質金属は、熱の供給下で、反応器(10)の反応空間内で低融点合金と合金され、その後、前記合金は、不活性ガスの存在下で気相に変換され、及び前記合金は、続いて、凝縮ステップにおいて少なくとも部分的に凝縮され、及び少なくとも前記凝縮相の間中、周囲圧力に対する超過圧力が前記反応空間内に存在する、プロセスにおいて、
前記不活性ガスは、少なくとも一時的に前記凝縮相の最中、前記反応空間の外部に配置された不活性ガス源(60)から不活性ガス供給ライン(61)を経由して、前記反応空間に永続的に供給されること、及び前記不活性ガスは、前記凝縮相の最中、少なくともある一定間隔で前記凝縮器(30)から前記環境へ放出されることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
周囲圧力に対する前記超過圧力は、1mbarから90mbarに及ぶことを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
フラッシング相において、不活性ガスが前記不活性ガス源から前記反応空間内へ導入され、ここで、前記不活性ガスは、前記反応空間内に存在する空気と置き換わり、及びこの空気は、閉鎖可能な開口を通して前記環境へ吐き出されること、並びにそれに続いて前記開口は再び閉鎖されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記不活性ガス及び前記亜鉛蒸気を含む前記蒸気混合物は、前記反応空間から蒸気配管(11)を経由して放出され、且つヒーターが割り当てられる加熱配管を経由して前記凝縮器(30)へ経路に従って送られることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記凝縮器(30)から放出された前記不活性ガスは、周囲圧力まで膨張されること、又は前記凝縮器(30)から放出された前記不活性ガスは、圧縮器によって圧縮され、及び前記反応空間へ再循環されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記不活性ガスは、前記凝縮器(30)から分離器(40)へ経路に従って送られること、及び前記分離器(40)内の前記不活性ガスは、前記凝縮器(30)の凝縮面を流れ過ぎて、前記不活性ガスから、とどまっている残留亜鉛を分離することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
1つ以上の収容体(20)が前記反応空間内に配置され、そのそれぞれが、前記硬質金属を収容するための受け入れ空間を含むこと、前記収容体(20)は少なくとも1つのフローチャネル(23)を含むこと、又は少なくとも1つのフローチャネル(23)が前記収容体(20)に割り当てられること、前記フローチャネル(23)は、前記受け入れ空間と、前記受け入れ空間の外部に設置された前記反応器(10)のガス搬送領域(13.1)との間に空間的な接続を形成すること、及び前記受け入れ空間から出るように経路に従って送られる放出チャネル(25)が設けられて、不活性ガスが前記少なくとも1つのフローチャネル(23)を経由して供給され、且つ前記気相中に存在する前記合金と一緒に前記不活性ガスが前記受け入れ空間から放出されるようにすることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記収容体(20)は、底部(21)と、そこから立ち上がる周辺壁(22)とを含むこと、及び前記壁(22)は、前記底部(21)から見て外方に向くそのリム(22.1)に切り欠き部を含み、その切り欠き部は前記フローチャネル(23)を形成することを特徴とする、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記フローチャネル(23)の断面は、1mm~30mmに及ぶことを特徴とする、請求項7又は8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記収容体(20)の前記放出チャネル(25)が互いに位置合わせされるように、いくつかの収容体(20)が重ねられること、及び前記蒸気配管(11)のラインセクション(11.2)は、前記位置合わせされた放出チャネル(25)を通って経路に従って送られ、ここで、前記ラインセクション(11.2)の外壁と、前記収容体(20)の前記受け入れ空間から前記合金の前記気相を放出するための前記放出チャネルとの間に、チャネル(12)が残されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記不活性ガス供給ライン(61)のラインセクション(62)は、前記反応空間の上方領域に開口すること、及び前記蒸気配管(11)のライン入口(11.1)は、前記反応空間内で、前記不活性ガス供給ライン(61)の前記開口の下方の測地的高度に配置されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記凝縮器(30)は、カップ形状の収集容器(31)を含むこと、前記蒸気配管(11)の末端部(11.4)は、前記反応空間に開口すること、及び前記蒸気配管のライン入口(11.1)は、前記反応空間内で、前記蒸気配管(11)の前記開口の下方の測地的高度に配置されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
ガス搬送領域と前記環境又は回路ラインとの間の接続を確立する圧力弁が設けられること、前記ガス搬送領域内で圧力閾値に到達すると、前記圧力弁が開放し、及び不活性ガスが前記環境又は前記回路ラインに放出され、ここで、前記圧力弁は、好ましくは、前記分離器(40)の下流に配置されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセスを実施するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質金属、特に硬質金属スクラップを加工するためのプロセスに関し、ここで、硬質金属は、熱の供給下で反応器の反応空間内で低融点合金と合金され、その後、合金は、不活性ガスの存在下で気相に変換され、及び続いて、合金は、凝縮ステップにおいて凝縮される。
【背景技術】
【0002】
そのようなプロセスは、独国特許発明第31 44 284 C2号明細書から知られている。この目的に向けて、いくつかのるつぼが受け入れ空間内で重ねられる。るつぼは、加工されるべき硬質金属スクラップ及び亜鉛材料を保持する。受け入れ空間は、環境から密封され、及び真空ポンプにつながる真空ラインに接続される。硬質金属材料を加工するために、受け入れ空間は、最初に、内部の酸素を取り除くために排出される。続いて、不活性ガス、例えばアルゴンが受け入れ空間に注入され、その後、受け入れ空間が加熱されて亜鉛材料を溶融させ、及び液相に入らせる。亜鉛材料は、硬質金属マトリックスに拡散し、及び硬質金属材料のコバルトと反応する。このようにして、硬質金属は合金される。コバルト材料が亜鉛材料と反応すると、反応生成物が形成され、容積が著しく増加する。容積の増加は、カーバイド硬質材料相と金属結合材との間の結合を壊す。続いて、亜鉛は、凝縮相で蒸留され、及び凝縮器内で分離され得る。このために、受け入れ空間内の温度は、亜鉛が蒸発するまで上昇される。蒸気状の亜鉛材料は、不活性ガスと一緒に凝縮器に流入する。凝縮器では、亜鉛材料は凝縮され、及び不活性ガスは、硬質金属へ戻るように流れる。そのため、ここで再度亜鉛蒸気を吸収でき、閉回路を生じる。この回路の流れを維持することができるようにするために、真空ポンプを使用して、硬質金属が収容される受け入れ空間と凝縮器との間に繊細な圧力勾配を設定する。これは、かなりの量の機器を必要とする。特に、受け入れ空間の密封、並びに真空ポンプの使用及び制御は、コストにかなり影響を与える。さらに、複雑なシステム制御が必要である。
【0003】
凝縮相が完了した後、すりつぶされて微粉になって再使用され得る多孔性硬質金属構造が、受け入れ空間にとどまる。同様に、凝縮される亜鉛材料が、新たなリサイクリングプロセスに使用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、必要な機器のコスト及び手間を著しく削減するために使用され得る、最初に述べたタイプのプロセスを生み出す問題に取り組んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この問題は、不活性ガスが、凝縮相の最中、少なくとも一時的に、反応空間外に配置された不活性ガス源から不活性ガス供給ラインを経由して、反応空間に永続的に供給されること、及び不活性ガスが、凝縮相の最中、少なくともある一定間隔で、凝縮器から環境へ放出されることによって、解決される。
【0006】
本発明によれば、それゆえ、凝縮相の最中、反応空間は、外部から供給される不活性ガスによって永続的にフラッシングされる。本発明に関して、フラッシングは、凝縮相全体を通して連続的に実施され得る。しかしながら、フラッシングは、間隔を置いて実施されることも考えられる。凝縮相の間中、外部から供給される不活性ガスが、処理されるべき硬質金属を通り過ぎることが重要であり、ここで、不活性ガスは、蒸気状の亜鉛材料を吸収する。その後、亜鉛材料は、蒸気の形態で凝縮器へ経路に従って送られ(routed)、且つそこで分離され得る。それゆえ、高温端と低温端との間の温度勾配によって生み出されたマスフローは、不活性ガス流によって支持される。その後、亜鉛材料のない不活性ガスは、凝縮器を離れる。不活性ガスは、反応器外及び凝縮器外の周囲圧力まで膨張されて、環境へ放出され得る。不活性ガスは反応空間へ戻され、そのため、圧力が上昇されることも考えられる。これは、例えば、好適なポンプを使用して行われ得る。本発明によれば、連続的なフラッシングが実施され、これは、反応空間内の周囲圧力と比べて超過圧力で実施される。このようにして、真空ポンプを必要としなくなる。本発明によれば、真空での動作条件、すなわち環境に対して陰圧である動作条件が必要とされないため、反応空間を環境に対して密封するための厳しい要件を満たす必要もない。特に、本発明は、反応空間から酸素を除去するために従来技術では必要とされた初期の真空の形成をなくす。むしろ、本発明によれば、不活性ガスは、反応空間から空気をフラッシングし、及び第1の相において周囲圧力へ圧力が低下するおかげで除去されるようにするために、使用される。これは、例えば、空気センサー、特に酸素センサーによって監視され得る。反応空間から十分に酸素がなくされる場合、反応空間は加熱され、及び硬質金属は、合金材料と合金され得る。
【0007】
本発明によれば、1mbar~90mbarの範囲の、周囲圧力に対する超過圧力が提供され得る。プラントは、この圧力で安全に動作され得る。
【0008】
上述の通り、本発明によれば、フラッシング相において、不活性ガス源から反応空間に導入される不活性ガスであって、ここで、不活性ガスは、反応空間内に存在する空気と置き換わり、及びこれは、閉鎖可能な開口を通って環境へ吐き出される、不活性ガス、並びに続いて再度閉鎖される開口が提供され得る。圧力弁が、閉鎖可能な開口を構成するために使用され得る。特に、それは、制御装置に接続される、調整される圧力弁とし得る。これに関連して、制御装置に接続される空気センサー、例えば酸素センサーが提供され得、ここで、空気センサーの信号ピックアップは、好ましくは反応空間内又は凝縮器内又はプラントの別のガス搬送領域内に配置される。
【0009】
本発明の特に好ましい変形例によれば、反応空間から蒸気配管を経由して放出され、且つヒーターが割り当てられている加熱配管を経由して凝縮器へ経路に従って送られる、不活性ガス及び亜鉛蒸気を含む蒸気混合物が提供され得る。加熱配管に割り当てられるこのヒーターは、好ましくは、反応空間を加熱する加熱装置とは別々に提供され、且つ動作され得る。このようにして、加熱配管内の加熱レベルは、加熱配管内で亜鉛の凝縮を確実に防止するか又は明確にもたらすように、直接影響され得る。
【0010】
本発明によるプロセスは、主要な亜鉛量が凝結されて凝縮器内に集まるように、設計され得る。分離器が、不活性ガス流中のいずれの残留亜鉛も分離するために使用され得る。分離器は、蒸気の形態にあるいずれの亜鉛材料も、確実に、凝縮器から取り出されて下流のプラント構成要素内で凝縮することがないようにする。特に、分離器は、本発明によれば、凝縮相の間中、凝縮器から環境への不活性ガス流の少なくとも段階的な(phased)放出を実施するために使用され得る。分離された亜鉛材料は、別々に収集されるか、又は好ましくは凝縮器に戻されて、そこで以前に収集された、凝縮された亜鉛材料に供給されるかのいずれかとし得る。
【0011】
本発明のさらなる変形例によれば、反応空間内に配置される1つ以上の収容体(receptacles)であって、そのそれぞれが、硬質金属を収容するための受け入れ空間を含む、収容体、少なくとも1つのフローチャネルを含む収容体、又は収容体に割り当てられる少なくとも1つのフローチャネル、受け入れ空間と、受け入れ空間の外部に設置された反応器のガス搬送領域との間に空間的な接続を形成するフローチャネル、及び設けられる受け入れ空間から延びる放出チャネルが提供され得、不活性ガスが少なくとも1つのフローチャネルを経由して供給され、及び気相の合金と一緒に、不活性ガスが、受け入れ空間から放出されるようにする。これは、独国特許発明第31 44 284 C2号明細書による従来技術から公知の解決法に対してかなりの優位性を構成する。独国特許発明第31 44 284 C2号明細書では、フローチャネルは設けられておらず、むしろ、キャピラリーの形の接続経路のみが設けられている。これらのキャピラリーの目的は、亜鉛蒸気が受け入れ空間からガス搬送領域に入るのを防止することである。発明人らは、本発明による不活性ガスの流れの案内に起因して、キャピラリーの代わりに、ここではフローチャネルが設けられ得、そこを通って、大量の流れが受け入れ空間に入り得ることを認識した。これは、遥かにより効果的な受け入れ空間内への流れを作る。フローチャネルは、好ましくは、流れに対する流れ抵抗を低くするために、受け入れ空間からフローチャネルを通ってガス搬送領域の領域への見通し線が可能であるように、設計される。
【0012】
本発明の範囲内で、特に、少なくとも1mm~30mmとなるフローチャネルの断面が提供され得る。
【0013】
収容体、るつぼ、蒸気配管、及び/又は収集容器は、好ましくは、亜鉛蒸気に対して不活性な材料、例えばグラファイト又はセラミックで作製される。
【0014】
そのため、底部と、そこから立ち上がる周辺壁とを含む収容体、及び底部から見て外方に向くそのリムに切り欠き部を含む壁であって、その切り欠き部がフローチャネルを形成する、壁が提供される場合、収容体は簡単に製造され得る。
【0015】
本発明によれば、収容体の放出チャネルが互いに位置合わせされるように重ねられるいくつかの収容体、及び位置合わせされた放出チャネルを通して経路に従って送られる蒸気配管の1つのラインセクションが提供され得、ここで、ラインセクションの外壁と、収容体の受け入れ空間から合金の気相を放出するための放出チャネルとの間に、チャネルが残されている。蒸気配管は、個々の収容体の互いに対する構造的な割り当てを容易にする。さらに、チャネル内で搬送される、不活性ガスと蒸気状の亜鉛との混合物は、凝縮相の間中、蒸気配管を加熱し、蒸気配管内での凝縮を確実に防止する。さらに、選択した配置構成は、コンパクトな設計を達成する。
【0016】
反応空間の上方領域に開口する不活性ガス供給ラインのラインセクション、及び反応空間内に、不活性ガス供給ラインの開口の下方の測地的高度(geodetic height)で配置される蒸気配管のライン入口が提供される場合、機械加工プロセスの初めに、反応空間内に存在する空気が、反応空間から、目標とするガスの経路送りによって、効果的に移動させられ得る。
【0017】
カップ形状の収集容器を含み、その上部が、取り外し自在なカバーによって気密式に閉鎖される、凝縮器、及びカバーの貫通口に挿入される蒸気配管の末端部が提供される場合、凝縮器は単純な構造を有する。
【0018】
本発明は、図面に示す例示的な実施形態に基づいて、下記でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】硬質金属を加工するためのプラントの側面から見た断面図を示す。
図2】収容体の斜視図を示す。
図3図2の収容体の側面から見た断面図を示す。
図4図3から取った、IVによって示す部分の詳細を示す。
図5図3のVによって示す部分の詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、硬質金属、特に硬質金属スクラップを加工するために使用され得る、本発明による加工プラントを示す。加工プラントは、るつぼ14を有する反応器ハウジング10を含む。るつぼ14は、カップのような形状にされ得る。るつぼは下方底部を含み、そこから壁が立ち上がる。その上方端部において、るつぼ14は開口を形成し、それは、カバー17によって閉鎖され得る。カバー17が除去されると、後で詳述するように、るつぼ14は、収容体20が積み込まれ得る。
【0021】
るつぼ14は、少なくともいくつかの領域において、加熱素子15.1を有する加熱装置15によって取り囲まれる。加熱素子15.1は、公知の抵抗ヒーターによって形成され得る。
【0022】
カバー17は、貫通口17.1を含み、それを通して、蒸気配管11が、るつぼ14によって囲まれる反応空間に導入される。さらに、カバー17は、第2の貫通口17.2を有する。不活性ガス供給ライン61が、この第2の貫通口17.2の領域に開口している。断熱材16が加熱装置15の横方向に設けられ、その断熱材は耐火レンガからなり得る。さらなる加熱素子15.2がカバー17の上方に配置される。例えば耐火レンガからなる断熱材16は、これらのさらなる加熱素子15.2の上方に配置される。
【0023】
不活性ガス供給ライン61は、不活性ガス源60へ経路に従って送られてそれに接続される。不活性ガス源60は、例えば、高圧不活性ガスリザーバとし得、ここで、不活性ガスは好ましくはアルゴンである。
【0024】
図1には示さない制御装置が、不活性ガス供給ライン61において、不活性ガス源60によって送給される不活性ガスの流れを制御するために使用され得る。特に、この制御装置は、減圧器及び容積流量制御器を含む。
【0025】
不活性ガスライン61の1つのラインセクション62が、るつぼ14によって囲まれる反応空間に至る。好ましくは、図1に示すように、ラインセクション62の端部セクション63は、カバー17の貫通口17.2を通って経路に従って送られる。
【0026】
蒸気配管11は、るつぼ14の底部の領域に位置するライン入口11.1を有する。このライン入口11.1から、ラインセクション11.2が、反応空間からカバー17を通って垂直方向に上向きに、経路に従って送られる。ラインセクション11.2は加熱配管11.3へ移行する。加熱配管11.3は蒸気配管11の末端部11.4へ経路に従って送られる。末端部11.4は出口ポート11.5を有する。この出口ポート11.5は凝縮器30に開口する。
【0027】
凝縮器30は、好ましくは、収集容器31の形でカップ形状にされている。収集容器31は底部を有し、そこから壁が立ち上がる。その上方領域には、収集容器31を閉鎖するカバー32がある。蒸気配管11の末端部11.4は、このカバー32を通して経路に従って送られる。
【0028】
図1から分かるように、1つ以上の加熱素子33.1を有する加熱装置33が、収集容器30に割り当てられる。加熱素子33.1は抵抗ヒーターとして設計される。加熱素子33.1は、横方向に、例えば耐火レンガからなる断熱材によって覆われる。
【0029】
加熱配管11.3はヒーター50に割り当てられる。このヒーター50は、少なくともいくつかの領域において加熱配管11.3を取り囲み、及び加熱配管11.3の長さ部分の少なくとも一部に沿って配置される。ヒーター50は、熱を発生させて加熱配管11.3へ伝えるために使用され得る。
【0030】
図1は、さらに、反応器10は分離器40を含み得ることを示す。この分離器40は、好ましくは、凝縮器30に割り当てられる。分離器40は、収集容器31によって囲まれる収集空間に空間的に接続される。分離器は凝縮面を含み、これらは図面には詳細に示されていない。これらの凝縮面は、分離器40の案内領域の一部である。さらに、分離器40は、不活性ガス放出ライン42を含む。
【0031】
上述のように、収容体20は、るつぼ14の反応空間において重ねられ得る。この目的に向けて、収容体20は、カバー17が除去されると反応空間に挿入され得るような寸法にされる。好ましくは、全ての収容体20は、必要とされる異なる部品の数を減らすために、同一の設計のものである。
【0032】
図2は、収容体20が底部21を含み、そこから周辺壁22が立ち上がることを示す。壁22は、底部21から見て外方に向くリム22.1を含む。切り欠き部がリム22.1に作られて、フローチャネル23を形成する。壁22には、フローチャネル23を形成するアパーチャがあることも考えられる。
【0033】
底部21は、壁22と同じ方向に底部21から突出するラインセクション24を含む。図3に示すように、ラインセクション24は、収容体20を通過する放出チャネル25を形成する。それゆえ、底部21から見て外方に向く放出チャネル25の上方端部は、チャネル開口25.1を形成する。底部21の領域に、放出チャネル25の別のチャネル開口25.2が設けられる。
【0034】
図4は、チャネル開口25.1がリム22.1から底部21の方向に引っ込んだところにあることを示す。図4は、さらに、ラインセクション24の上方リムには凹部27が設けられ得ることを示す。
【0035】
図5は、フローチャネル23の断面を示す。この実施形態が示すように、フローチャネル23は、好ましくは、長方形の切り欠き部又はアパーチャの形をしている。それらは幅B及び深さTを有する。
【0036】
フローチャネル23のフロー断面積は、1~30mm以下に及ぶ。
【0037】
収容体20は、好ましくはグラファイト製である。
【0038】
収容体20は、内周面21.1及び外周面26を有する。内面21.1及び外面26は、互いに離間されており、上方環状リムを生じる。
【0039】
底部21は、ラインセクション24の内面21.1及び外面と併せて、受け入れ空間の境界を定める。
【0040】
底部21の下面21.2は、リムに肩部21.3を有する。この肩部21.3は、互いに位置合わせして収容体20を積み重ねるために使用され得る。その結果、上方収容体20の肩部21.3は、真下にある収容体20のリム22.1に置かれる。それゆえ、収容体20は、形がぴったり合うように、底部21の平面の方向に互いに固定される。
【0041】
収容体20は、その上方に置かれた収容体20によって封止され、ここで、上方収容体20の底部21は、下方の収容体20のリム22.1に、封止するように載置される。このようにして、受け入れ空間が収容体20の底部に形成され、これは、フローチャネル23を経由して、外面26と隣接する領域に空間的に接続される。さらに、放出チャネル25は、この受け入れ空間を、その上部に配置された上方収容体20の放出チャネル25へ、及びその真下に配置された下方収容体20の放出チャネル25へ、空間的に接続するために使用される。これは、特に、図4に示すように、ラインセクション24の上方リムがわずかに凹んでいるため及び/又は凹部27がラインセクション24に設けられているために、可能にされる。
【0042】
図1に示すように、複数の収容体20が、上述したように、反応空間内で積み重ねられ得、ここで、個々の収容体20の排出チャネル25は相互に位置合わせされる(interaligned)。最下部の収容体20の底部21は、るつぼ14の支持面に載っている。るつぼ内の、下方収容体20の底部21の下方に収集領域が形成され、ここに、ライン入口11.1が配置される。上方収容体20を閉鎖するために蓋28が使用され得る。
【0043】
図1に示すように、蒸気配管11は、相互に位置合わせされた(mutually aligned)放出チャネル25を通して経路に従って送られる。そのため、残りの断面が、蒸気配管11の外部と、放出チャネル25を形成するラインセクション24との間のチャネル12として、形成される。
【0044】
反応器10の動作原理について下記でより詳細に説明する。第1に、個々の収容体20が、機械加工されるべき硬質金属材料、及び亜鉛材料で満たされる。その後、収容体20が、るつぼ14の反応空間内で積み重ねられる。その後、ライン入口11.1がるつぼ14の底部の領域にいくまで、蒸気配管11が、位置合わせされた放出チャネル25へ挿入される。その後、るつぼ14を閉鎖するためにカバー17が使用され得る。
【0045】
収容体20の外面26とるつぼ14の内壁との間にガス搬送領域13.1が形成される。このガス搬送領域13.1は、デッキ側供給領域13に空間的に接続され、そこに、不活性ガス供給ライン61も開口する。カバー17が適所になり、及び上端の断熱材16が適用されると、不活性ガス源60が開放される。そのため、不活性ガスが不活性ガス源60から不活性ガス供給ライン61を通って反応空間内へと流れる。
【0046】
反応空間内の空気は、上部から下方へ移動させられ、ここで、不活性ガスは、ガス搬送領域13.1及びフローチャネル23を通って収容体20の受け入れ空間へ流れる。このようにして、空気は、受け入れ空間から移動させられ、及びチャネル12を通って蒸気配管11のライン入口11.1の方へ案内される。さらに、ガス搬送領域13.1の領域内の空気は、ライン入口11.1の方向に移動させられる。その後、空気は、蒸気配管11を通って凝縮器30内へと流れる。
【0047】
分離器40は弁を有し、その弁は開放している。そのため、空気は、凝縮器30から移動させられ得る。空気は、分離器40から、不活性ガス放出ライン42又は他の放出部を経由して、環境へ流れる。
【0048】
プラントから空気が抜かれるとすぐに、弁が再び閉鎖される。その後、第1の加熱相における予熱相が開始する。加熱装置15が、反応空間を、亜鉛材料の固相線温度を上回る温度にするために、使用される。亜鉛材料が液化して、硬質金属マトリックスに拡散する。このプロセスにおいて、亜鉛材料は、硬質金属材料のコバルトと反応する。コバルト材料が亜鉛材料と反応すると、反応生成物が形成され、容積を著しく増加させる。容積の増加は、カーバイド硬質材料相と金属結合材との間の結合を壊す。この合金化プロセスは、数時間かかり得る。合金化プロセスが完了した後、好ましくは全てのコバルトが亜鉛材料と反応すると、第2の加熱相が生じる。第2の加熱相では、るつぼ14の反応空間の温度は、亜鉛材料が蒸発される温度までさらに上昇される。不活性ガスが不活性ガス源60から不活性ガス供給ライン61を経由して反応空間内へ経路に従って送られる場合、不活性ガスは、フローチャネル23を通って収容体20の受け入れ空間へ流れる。ガス搬送領域13.1は、確実に、全ての受け入れ空間が不活性ガスによって可能な限り均一に満たされるようにする。このために、フローチャネル23の断面の和は、好ましくは不活性ガス供給ライン61の断面以下である。不活性ガスは、収容体20の受け入れ空間において気相の亜鉛材料を取り込み、及びそれを放出チャネル25へ供給する。放出チャネル25では、不活性ガスと亜鉛蒸気の混合物が、チャネル12を通って、るつぼ14の底部の方へ向かって運ばれる。不活性ガス源60から不活性ガスが永続的に流入する結果、凝縮器30の収集容器31内の圧力に対して過圧が生み出される。これにより、ガス混合物を、強制的に蒸気配管11を通って反応空間から出すことを支援する。
【0049】
蒸気混合物が、加熱配管11.3を経由して収集容器31へ流入する。加熱装置15は、亜鉛蒸気からの亜鉛材料が、加熱配管11.3の領域内で凝縮するのを防止する。これにより、亜鉛材料が気相で収集容器31に入ることを確実に保証する。
【0050】
凝縮器30の加熱装置33は、亜鉛材料が凝結して収集容器31内に集まるような温度レベルを設定するために使用される。そのようにして、加熱装置33は、可能であれば、亜鉛材料が凝縮器30内で液体形態で収集されるように、温度を制御する。
【0051】
反応空間内への不活性ガスの永続的な流入はまた、凝縮器30内の圧力を高める。収集容器31内で過度の背圧が高まるのを防止するために、圧力弁が設けられる。上側閾値に到達すると、この圧力弁は開放して、収集容器31から環境へ不活性ガスを放出する。好ましくは、圧力弁は分離器40の一部である。収集容器31内の圧力が下側閾値まで再度下がると、圧力弁は再度閉鎖される。不活性ガスは、不活性ガス放出ライン42を経由して分離器40を出る。
【0052】
温度センサーが、好ましくは、蒸気配管11に割り当てられる。この温度センサーは、蒸気配管11を通して経路に従って送られるガス混合物の温度を直接又は間接的に測定する。亜鉛蒸気が、蒸気配管11を通る不活性ガス流に取り込まれる限り、加熱配管11.3内に高温が生じる。不活性ガス流に取り込まれる亜鉛量が少なくなる場合、加熱配管11.3内の温度が低下する。温度が低下する場合、ヒーター50は、加熱配管11.3に追加的に熱を導入して、亜鉛が凝縮しないようにする。温度低下は、亜鉛材料が依然として収容体20から運ばれているかどうかを決定するために使用され得る。これ以上亜鉛材料が運び去られない場合、システムは、好ましくは、不活性ガスを使用して一掃され得、その後、プロセスは、制御式に完了され得る。
【0053】
最後に、分離された(split)硬質金属が、収容体20から取り出されて、及びさらなる処理のために送られ得る。例えば、その後、硬質金属は、好適なミル内ですりつぶされ得る。その後、新しい硬質金属体を生産するために再度使用され得る。本発明によるプロセスは、残留亜鉛量が50ppm未満の硬質金属をリサイクルするために使用され得る。
【0054】
本発明によれば、プロセスは、硬質金属スクラップを加工するために提供され、ここで、硬質金属は、熱を加えることによって、反応器10の反応空間内で低融点合金、例えば亜鉛と合金される。その後、結果として生じる合金が、不活性ガスの存在下で気相に変換されるため、凝縮ステップにおいて合金が少なくとも部分的に凝縮される。プロセスは、少なくとも凝縮相の間中、周囲圧力と比べて反応空間内に超過圧力があるように実施される。凝縮相の間中、不活性ガスは、少なくとも一時的に、反応空間の外部に配置された不活性ガス源60から不活性ガス供給ライン61を経由して反応空間へ供給される。さらに、そのようにして、凝縮相中、少なくともある一定の間隔で不活性ガスが凝縮器30から環境へ放出される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】