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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】治療支援
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20231102BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526910
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 GB2021052858
(87)【国際公開番号】W WO2022096883
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】63/109,668
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521478430
【氏名又は名称】クローズド ループ メディスン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CLOSED LOOP MEDICINE LTD
【住所又は居所原語表記】Babraham Research Campus,Babraham,Cambridge,CB22 3AT,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドスミス ポール
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】オレガン デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】コックス デイヴィッド
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】
メラトニンを用いた不眠症の治療を支援するためのコンピュータ実施方法であって、患者に関する睡眠データを受信することと、睡眠データに基づいて、患者が一用量のメラトニンを服用するための投薬時間を決定することと、投薬時間を示すことと、を含む、コンピュータ実施方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラトニンを用いた不眠症の治療を支援するためのコンピュータ実施方法であって、
患者に関する睡眠データを受信することと、
前記睡眠データに基づいて、前記患者が前記メラトニンを服用するための投薬時間を決定することと、
前記投薬時間を示すことと、を含む、コンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記睡眠データは起床時間データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記起床時間データは、
実際の起床時間、及び/又は
目標起床時間を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記投薬時間を決定することは、
前記実際の起床時間が前記目標起床時間よりも遅い場合は前記実際の起床時間に基づいて、
前記実際の起床時間が前記目標起床時間よりも早いか又は等しい場合は前記目標起床時間に基づいて、前記投薬時間を決定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記睡眠データに基づいて目標睡眠飢餓を決定することと、
前記目標睡眠飢餓に基づいて前記投薬時間を決定することと、を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記目標睡眠飢餓を決定することは、目標睡眠持続時間に基づいて前記目標睡眠飢餓を決定することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記不眠症のタイプが早朝覚醒不眠症又は睡眠維持障害不眠症であり、前記投薬時間を決定することは、前記実際の起床時間又は前記目標起床時間の11~19時間後として前記投薬時間を決定することを含む、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記不眠症のタイプが睡眠相後退不眠症であり、前記投薬時間を決定することは、前記実際の起床時間又は前記目標起床時間の8~12時間後として前記投薬時間を決定することを含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項9】
前記睡眠データは、起床時間データ、睡眠持続時間、入眠時間、睡眠の質、覚醒エピソードの数、覚醒エピソードの持続時間、及び日中睡眠データのうちの1つ以上を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記睡眠データに基づいて実際の睡眠飢餓を決定することと、
前記実際の睡眠飢餓に基づいて前記投薬時間を決定することと、を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記実際の睡眠飢餓を決定することは、入眠時間及び合計睡眠持続時間に基づいており、任意選択的に、前記合計睡眠持続時間は、夜間睡眠持続時間及び日中睡眠持続時間を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記睡眠データは不眠症重症度評価を含み、前記方法は、前記不眠症重症度評価に基づいて前記投薬時間に重症度オフセットを適用することを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記投薬時間を決定することは、目標入眠時間に基づいて前記投薬時間を決定することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記睡眠データは、前記目標入眠時間を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記睡眠データに基づいて、好ましくは起床時間データに基づいて、前記目標入眠時間を決定することと、
前記目標入眠時間を示すことと、を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
患者記録データ、患者個人データ、患者生理学的データ、患者ゴールデータ、環境データ、患者薬物データ、及び患者活動データのうちの1つ以上を含む更なる患者データを受信することを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記投薬時間を決定することは、前記更なる患者データに基づいて前記投薬時間を決定することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記更なる患者データは、摂取データを含む患者活動データを含み、前記投薬時間を決定することは、前記摂取データに基づいて前記投薬時間を決定することを含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記睡眠データは目標起床時間を含み、前記方法は、前記更なる患者データに基づいて前記目標起床時間を設定することを含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記睡眠データは目標起床時間を含み、前記方法は、前記睡眠データのうちの他のデータに基づいて前記目標起床時間を設定することを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記目標起床時間を設定することは、患者ゴールデータ及び/又は前記睡眠データに基づいて、好ましくは、
前記患者ゴールデータのうちの所望の起床時間、
前記患者ゴールデータのうちの所望の睡眠持続時間、及び
前記患者ゴールデータのうちの所望の入眠時間のうちの1つ以上に基づいて、前記目標起床時間を設定することを含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記睡眠データは目標起床時間を含み、前記方法は、前記睡眠データのうちの他のデータに基づいて前記目標起床時間を更新することを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記目標起床時間を更新することは、
前記睡眠データのうちの実際の起床時間、
前記睡眠データのうちの実際の睡眠持続時間、及び
前記睡眠データのうちの実際の入眠時間のうちの1つ以上に基づいて、前記目標起床時間を更新することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記投薬時間を決定することは、前記更新された目標起床時間に基づいて前記投薬時間を決定することを含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記睡眠データに基づいて前記メラトニンの投薬量を更新することを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記投薬量を更新することは、前記睡眠データのうちの目標起床時間と実際の起床時間との間の差に基づいて前記投薬量を更新することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記差が閾値日数にわたって第1の差閾値よりも大きい場合、前記投薬量を増加させることを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記差が閾値日数にわたって第2の差閾値よりも小さい場合、前記投薬量を減少させることを更に含む、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記更なる患者データに基づいて投薬量を更新することを含む、請求項16~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
1つ以上の治療的行動推奨を提供することを含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記1つ以上の治療的推奨を提供することは、前記睡眠データに基づく、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記1つ以上の治療的行動推奨は、
運動の推奨、
摂取の推奨、
リラクゼーションの推奨、
日光曝露の推奨、及び
活動の推奨のうちのいずれかを含む、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記投薬時間を決定することは、前記1つ以上の治療的行動推奨についての患者のコンプライアンスに基づいて前記投薬時間を決定することを含む、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記更なる患者データに基づいて1つ以上の治療的行動推奨を提供することを含む、請求項16~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記睡眠データを受信することは、患者入力及びセンサ入力のうちの1つ以上によって前記睡眠データを受信することを含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
メラトニンを用いた不眠症の治療を支援するためのシステムであって、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されたプロセッサを備える、システム。
【請求項37】
請求項1~35のいずれか一項に記載の方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を記憶するコンピュータプログラム製品。
【請求項38】
不眠症の治療に使用するためのメラトニンであって、メラトニン投薬計画が、
患者に関する睡眠データを受信することと、
前記睡眠データに基づいて、前記患者が前記メラトニンを服用するための投薬時間を決定することと、
前記投薬時間を示すことと、を含むステップによって決定される、メラトニン。
【請求項39】
不眠症を治療する方法であって、それを必要とする患者にメラトニンを投与することを含み、メラトニン投薬計画が、
患者に関する睡眠データを受信することと、
前記睡眠データに基づいて、前記患者が前記メラトニンを服用するための投薬時間を決定することと、
前記投薬時間を示すことと、を含むステップによって決定される、方法。
【請求項40】
不眠症の治療のための製造医薬品におけるメラトニンの使用であって、メラトニン投薬計画が、
患者に関する睡眠データを受信することと、
前記睡眠データに基づいて、前記患者が前記メラトニンを服用するための投薬時間を決定することと、
前記投薬時間を示すことと、を含むステップによって決定される、使用。
【請求項41】
前記メラトニン投薬計画を決定するステップは、少なくとも部分的にコンピュータによって実施される、請求項38~40のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項42】
前記睡眠データは起床時間データを含む、請求項38~41のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項43】
前記起床時間データは、
実際の起床時間、及び/又は
目標起床時間を含む、請求項42に記載の方法又は使用。
【請求項44】
前記投薬時間を決定することは、
前記実際の起床時間が前記目標起床時間よりも遅い場合には前記実際の起床時間に基づいて、
前記実際の起床時間が前記目標起床時間よりも早いか又は等しい場合には前記目標起床時間に基づいて、前記投薬時間を決定することを含む、請求項42又は43に記載の方法又は使用。
【請求項45】
前記睡眠データに基づいて目標睡眠飢餓を決定することと、
前記目標睡眠飢餓に基づいて前記投薬時間を決定することと、を更に含む、請求項38~44のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項46】
前記目標睡眠飢餓を決定することは、目標睡眠持続時間に基づいて前記目標睡眠飢餓を決定することを含む、請求項38~45のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項47】
前記不眠症のタイプが早朝覚醒不眠症又は睡眠維持障害不眠症であり、前記投薬時間を決定することは、前記実際の起床時間又は前記目標起床時間の11~19時間後として前記投薬時間を決定することを含む、請求項38~46のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項48】
前記不眠症のタイプが睡眠相後退不眠症であり、前記投薬時間を決定することは、前記実際の起床時間又は前記目標起床時間の8~12時間後として前記投薬時間を決定することを含む、請求項38~46のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項49】
前記睡眠データは、起床時間データ、睡眠持続時間、入眠時間、睡眠の質、覚醒エピソードの数、覚醒エピソードの持続時間、及び日中睡眠データのうちの1つ以上を含む、請求項38~48のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項50】
前記睡眠データに基づいて実際の睡眠飢餓を決定することと、
前記実際の睡眠飢餓に基づいて前記投薬時間を決定することと、を更に含む、請求項38~49のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項51】
前記実際の睡眠飢餓を決定することは、入眠時間及び合計睡眠持続時間に基づいており、任意選択的に、前記合計睡眠持続時間は、夜間睡眠持続時間及び日中睡眠持続時間を含む、請求項50に記載の方法又は使用。
【請求項52】
前記睡眠データは不眠症重症度評価を含み、前記方法は、前記不眠症重症度評価に基づいて前記投薬時間に重症度オフセットを適用することを含む、請求項38~51のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項53】
前記投薬時間を決定することは、前記目標入眠時間に基づいて前記投薬時間を決定することを含む、請求項38~52のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項54】
前記睡眠データは前記目標入眠時間を含む、請求項53に記載の方法又は使用。
【請求項55】
前記睡眠データに基づいて、好ましくは起床時間データに基づいて、目標入眠時間を決定することと、
前記目標入眠時間を示すことと、を更に含む、請求項53に記載の方法又は使用。
【請求項56】
患者記録データ、患者個人データ、患者生理学的データ、患者ゴールデータ、環境データ、患者薬物データ、及び患者活動データのうちの1つ以上を含む更なる患者データを受信することを含む、請求項38~55のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項57】
前記投薬時間を決定することは、前記更なる患者データに基づいて前記投薬時間を決定することを含む、請求項56に記載の方法又は使用。
【請求項58】
前記更なる患者データは、摂取データを含む患者活動データを含み、前記投薬時間を決定することは、前記摂取データに基づいて前記投薬時間を決定することを含む、請求項56又は57に記載の方法又は使用。
【請求項59】
前記睡眠データは目標起床時間を含み、前記方法は、前記更なる患者データに基づいて前記目標起床時間を設定することを含む、請求項56~58のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項60】
前記睡眠データは目標起床時間を含み、前記方法は、前記睡眠データのうちの他のデータに基づいて前記目標起床時間を設定することを含む、請求項38~59のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項61】
前記目標起床時間を設定することは、患者ゴールデータ及び/又は前記睡眠データに基づいて、好ましくは、
前記患者ゴールデータのうちの所望の起床時間、
前記患者ゴールデータのうちの所望の睡眠持続時間、及び
前記患者ゴールデータのうちの所望の入眠時間のうちの1つ以上に基づいて、前記目標起床データを設定することを含む、請求項59又は60に記載の方法又は使用。
【請求項62】
前記睡眠データは目標起床時間を含み、前記方法は、前記睡眠データのうちの他のデータに基づいて前記目標起床時間を更新することを含む、請求項38~61のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項63】
前記目標起床時間を更新することは、
前記睡眠データのうちの実際の起床時間、
前記睡眠データのうちの実際の睡眠持続時間、及び
前記睡眠データのうちの実際の入眠時間のうちの1つ以上に基づいて、前記目標起床時間を更新することを含む、請求項38~62のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項64】
前記投薬時間を決定することは、前記更新された目標起床時間に基づいて前記投薬時間を決定することを含む、請求項62又は63に記載の方法又は使用。
【請求項65】
前記睡眠データに基づいて前記メラトニンの投薬量を更新することを含む、請求項38~64のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項66】
前記投薬量を更新することは、前記睡眠データうちの目標起床時間と実際の起床時間との差に基づいて前記投薬量を更新することを含む、請求項65に記載の方法又は使用。
【請求項67】
前記差が閾値日数にわたって第1の差閾値よりも大きい場合、前記投薬量を増加させることを更に含む、請求項66に記載の方法又は使用。
【請求項68】
前記差が閾値日数にわたって第2の差閾値よりも小さい場合、前記投薬量を減少させることを更に含む、請求項38~67のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項69】
前記更なる患者データに基づいて前記投薬量を更新することを含む、請求項38~68のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項70】
1つ以上の治療的行動推奨を提供することを含む、請求項38~69のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項71】
前記1つ以上の治療的推奨を提供することは、前記睡眠データに基づく、請求項70に記載の方法又は使用。
【請求項72】
前記1つ以上の治療的行動推奨は、
運動の推奨、
摂取の推奨、
リラクゼーションの推奨、
日光曝露の推奨、及び
活動の推奨のうちのいずれかを含む、請求項70又は71に記載の方法又は使用。
【請求項73】
前記投薬時間を決定することは、前記1つ以上の治療的行動推奨についての患者のコンプライアンスに基づいて前記投薬時間を決定することを含む、請求項70~72のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項74】
前記更なる患者データに基づいて1つ以上の治療的行動推奨を提供することを含む、請求項38~73のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項75】
前記睡眠データを受信することは、患者入力及びセンサ入力のうちの1つ以上によって前記睡眠データを受信することを含む、請求項38~74のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項76】
メラトニン及び使用説明書を含むキットであって、前記使用説明書は、請求項1~35のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法の使用を示すことを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、治療支援に関する。
【背景技術】
【0002】
不眠症は睡眠の量又は質についての不満である。1年の何らかの時点で、人口の3分の1は、眠りにつくこと、眠ったままでいること、又は早く目覚めることにおいて、何らかの困難を有する。不眠症には、典型的には、日中の眠気、低エネルギー、いらつき、及び抑うつ気分が続く。人口のその3分の1の生理学的状態は、他の3分の2とは可測的に異なり、アドレナリン及びコルチゾールのレベルが統計的に上昇し、「過覚醒の」生理学的状態を作り出す。その3分の1の3分の1(したがって、10人に1人)では、それが学習された行動パターンになり、それに対して、治療はその行動を忘れることを中心に展開するので、問題は継続する。
【0003】
不眠症に結び付く多くの要因及び原因が存在する:睡眠時呼吸障害、不良睡眠衛生、むずむず脚症候群、ホルモンシフト、恐怖、ストレス、不安、感情的又は精神的緊張、仕事上の問題、経済的ストレス、子供の誕生、死別などの生活上の出来事、シフトワーク及び時差ぼけなどの概日リズムの障害、電話又はコンピュータなどの人工的な光源からの青色光への曝露の増加、胸焼け又は便秘などの胃腸の問題、諸々。
【0004】
不眠症のタイプに応じて、様々な治療の選択肢が現在、利用可能である。典型的には、最も一般的な精神生理学的不眠症の場合、治療の選択肢は、薬物療法の有無にかかわらず、行動修正を中心とする。行動修正には、カフェインを制限すること、深夜の光への曝露を制限すること、適切な時間に運動すること、及び規則正しい時間に起きることなど、人の「睡眠衛生」を改善することが含まれる。
【0005】
メラトニンは、睡眠-覚醒サイクルを調節する松果体によって放出される天然ホルモンである。従前の研究では、メラトニンの補給は、睡眠不足又は睡眠スケジュールの変化に苦しむ個人の合計睡眠時間を延ばす助けとなり得ることが示唆されているが、これを支持する証拠は強くない。これは、少なくとも部分的には、現在利用可能な「万能型の」一般的治療法が不眠症に苦しむ様々な対象者に有効ではないことを意味する多くの異なるタイプの不眠症の影響因子及び原因に起因し得る。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、不眠症に苦しむ対象者に影響を及ぼす様々な影響因子を考慮した個人別治療アプローチを提供することによって、現在の不眠症治療について記載の問題に対処する。これは、現存するものよりも効果的な治療法をもたらす。
【0007】
本開示の第1の態様によれば、メラトニンを用いた不眠症の治療を支援するためのコンピュータ実施方法であって、
患者に関する睡眠データを受信することと、
睡眠データに基づいて、患者がメラトニンを服用するための投薬時間を決定することと、
投薬時間を示すことと、を含む、方法が提供される。
【0008】
第2の態様によれば、メラトニンを用いた不眠症の治療を支援するためのシステムであって、先行請求項のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されたプロセッサを備える、システムが提供される。
【0009】
第3の態様によれば、第1の態様で定義された方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を記憶するコンピュータプログラム製品が提供される。
【0010】
第4の態様によれば、メラトニンが不眠症の治療に有用であり、メラトニン投薬計画が、
患者に関する睡眠データを受信することと、
睡眠データに基づいて、患者がメラトニンを服用するための投薬時間を決定することと、
投薬時間を示すことと、を含むステップによって決定される。
【0011】
第5の態様によれば、不眠症を治療する方法であって、それを必要とする患者にメラトニンを投与することを含み、メラトニン投薬計画が、
患者に関する睡眠データを受信することと、
睡眠データに基づいて、患者がメラトニンを服用するための投薬時間を決定することと、
投薬時間を示すことと、を含むステップによって決定される、方法が提供される。
【0012】
第6の態様によれば、メラトニンが不眠症の治療のための製造医薬品に使用され、メラトニン投薬計画が、
患者に関する睡眠データを受信することと、
睡眠データに基づいて、患者がメラトニンを服用するための投薬時間を決定することと、
投薬時間を示すことと、を含むステップによって決定される。
【0013】
第7の態様によれば、キットは、メラトニン及び使用説明書を含み、使用説明書は、請求項1~35のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法の使用を示すことを含む。
【0014】
本開示は、様々な改変及び代替形態に従うことが可能であるが、それらの詳細は、例として図面に示されており、詳細に説明される。しかしながら、記載された特定の実施形態を超える他の実施形態も同様に可能であることを理解されたい。添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に入る全ての改変、等価物、及び代替実施形態も同様にカバーされる。
【0015】
上記考察は、現在又は将来の特許請求の範囲セットの範囲内のあらゆる例示的な実施形態又はあらゆる実装態様を表すことを意図したものではない。以下の図及び発明を実施するための形態はまた、様々な例示的な実施形態を例示する。様々な例示的な実施形態は、添付の図面に関連して、以下の発明を実施するための形態を考慮して、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
添付の図面を参照して、1つ以上の実施形態を例としてのみ説明する。
図1】本発明の一実施形態によるコンピュータ実施方法を示す。
図2】本明細書に開示のコンピュータ実施方法のうちのいずれかを実行するためのシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の第1の態様は、メラトニンを用いた不眠症の治療を支援するためのコンピュータ実施方法を提供する。方法は、患者に関する睡眠データを受信することと、睡眠データに基づいて、患者が一用量のメラトニンを服用するための投薬時間を決定することと、投薬時間を示すことと、を含む。
【0018】
「治療」という用語は、疾患若しくは症状、又はその病状(単数)若しくは病状(複数)の改善を含む。治療はまた、薬理学的療法などの別の療法の副作用の改善を含む。治療はまた、患者の別の薬剤への依存又は行動の減少を含む。「改善」は、患者の状態の改善、若しくは知覚された改善、又はそれをますます許容できるようにする患者の状態の変化、若しくは副作用である。
【0019】
コンピュータ実施方法は、1つ以上の処理デバイスを備えるシステム上で実施され得る。例示的なシステムは、コンピュータなどの単一デバイス、又は患者モバイルデバイスなどのモバイルデバイスを含み得る。例示的なシステムはまた、セルラーネットワーク又はインターネットなどのネットワークを介して接続された複数の物理的に分散されたデバイスを含み得る。例えば、複数の分散デバイスは、患者デバイス、サーバー、及び任意選択的に臨床医デバイスを含み得る。
【0020】
「支援」という用語は、メラトニンを用いた不眠症の既存の治療の補助的援助に関する。例えば、方法は、推奨される投薬時間を示すことによって、メラトニンを用いた不眠症の治療をどのように最適化するかについて、臨床医に通知し得る。他の実施例では、方法は、患者に投薬時間を処方することによって治療を最適化するように、最適な投薬時間を臨床医に示して臨床医に具体的に指示し得る。他の実施例では、患者が既存のメラトニン処方を有する場合、方法は、メラトニンの投薬時間を患者に直接示すことによって治療を支援し得る。
【0021】
不眠症の治療は、異なるタイプの不眠症に関連し得る。例えば、不眠症は、睡眠相後退不眠症(本明細書ではグループAと称する)、早朝覚醒不眠症(本明細書ではグループBと称する)、及び睡眠維持障害不眠症(本明細書ではグループCと称する)のうちのいずれかに関連し得る。患者は1つを超えるタイプの不眠症に苦しむ場合がある。特定の実施形態では、グループAの不眠症に加えてB又はCを有する患者の場合、グループAのための治療アプローチが優先する。グループAの不眠症(睡眠相後退)は、目標入眠時間と実際の入眠時間との間に1時間、より顕著には2時間よりも長い遅れがある不眠症に対して、睡眠相後退成分を有する患者として定義することができる。目標入眠時間は、長期折衝後の最適な入眠時間に関し得る。したがって、グループAは、目標の又は最適な「妥当な」入眠時間から、入眠時間に2時間よりも長い遅れを有する患者に関する。グループAは、長時間の睡眠を得ようとする必死の試みにおいて、最適な入眠時間(例えば、午後11時)よりもずっと早く(例えば、午後9時に)就寝する患者を含まない。
【0022】
「患者」及び「対象者」は互換的に使用され、メラトニンを受け取る対象者を指す。好ましくは、対象は、ヒトである。
【0023】
方法は、患者に関する睡眠データを受信することを含む。睡眠データは、患者の睡眠に関する任意のデータを含み得る。睡眠データは、起床時間データ、睡眠持続時間、入眠時間、睡眠の質、覚醒エピソードの数、覚醒エピソードの持続時間、及び日中睡眠データのうちの1つ以上を含み得る。
【0024】
睡眠データは、患者の実際の睡眠パラメータの記録されたデータを含む実際の睡眠データを含み得る。実際の睡眠データは、実際の起床時間、実際の睡眠持続時間、実際の入眠時間、実際の睡眠の質、実際の覚醒エピソードの数、実際の覚醒エピソードの持続時間、及び実際の日中睡眠持続時間のうちの1つ以上を含み得る。
【0025】
睡眠データは、(以下で更に考察される)1つ以上の患者ゴールに進むために患者が固守すべき目標データを含む目標睡眠データを含み得る。目標睡眠データは、定着起床時間とも称される目標起床時間、目標睡眠持続時間、目標睡眠飢餓、及び目標入眠時間を含み得る。
【0026】
睡眠データは、患者の所望の睡眠データを含む患者ゴールデータを含み得る。患者ゴールデータは、所望の起床時間、所望の睡眠持続時間、所望の入眠時間、所望の睡眠の質、所望の覚醒エピソードの数、所望の覚醒エピソードの持続時間、及び所望の日中睡眠持続時間のうちの1つ以上を含み得る。他の実施例では、患者ゴールデータは、更なる患者データとして受信され得る。
【0027】
睡眠データは1つ以上の他の睡眠関連パラメータを含み得ることが理解されよう。例えば、睡眠データは、実際の睡眠持続時間を寝床で過ごした実際の時間で割ったものに等しい、睡眠効率など、上記列挙されたパラメータから導出可能な1つ以上のパラメータを含み得る。
【0028】
睡眠データを受信することは、患者又は臨床医の入力によって睡眠データを受信することを含み得る。例えば、患者は、朝、起床した後、実際の睡眠データを入力又は記録し得る。患者は、治療支援の開始時に患者ゴールデータを入力し得るか、又は治療支援が進むにつれて患者ゴールデータを更新し得る。臨床医は、治療支援を開始するときに初期睡眠データを入力し得る。コンピュータ実施方法を実施するシステムは、キーボード、タッチスクリーンデバイス、又は当技術分野で知られている他の装置などのユーザ入力モジュールを提供し得る。例えば、患者は、モバイルデバイスのタッチスクリーンを介して実際の患者データ又は患者ゴールデータを入力し得る。
【0029】
睡眠データを受信することはまた、1つ以上のセンサから睡眠データを受信することも含み得る。1つ以上のセンサは、患者の睡眠経験を監視、記録、及び/又は評価することができるセンサを含み得る。1つ以上のセンサは、モーションセンサ、ビデオカメラ、マイクロホン、脳波図(EEG)、心拍数モニタ、パルス酸素濃度計、又は睡眠ポリグラフデータを収集することができる任意の他のセンサを含み得る。1つ以上のセンサは、睡眠データが関連する患者によって装着され得る。
【0030】
睡眠データを受信することは、方法を実施するシステムの一部を形成する1つ以上のセンサ、例えばスマートウォッチ上の加速度計から、睡眠データを受信することを含み得る。睡眠データを受信することは、システムの外部にあり得る1つ以上のセンサ、例えば別個の医療デバイスから、睡眠データを受信することを含み得る。方法は、睡眠データを受信するために1つ以上のセンサと通信することを含み得る。方法は、睡眠データを生成するために生のセンサデータを処理することを含み得る。
【0031】
方法はまた、ローカル又はネットワーク化された記憶ソースからの検索によって睡眠データを受信することを含み得る。例えば、方法は、ネットワーク記憶ソースから医療記録データを受信することを含み得る。
【0032】
方法はまた、睡眠データをローカル又はネットワーク化された記憶ソースに記憶することを含み得る。方法は、方法の実行によって必要とされるか又は方法の実行中に生成される任意のデータを記憶することを更に含み得る。例えば、方法は、更なる患者データ、決定された投薬時間、実際の投薬時間、処理エラー、又は任意の他の関連データを記憶し得る。
【0033】
方法は、睡眠データに基づいて、患者が一用量のメラトニンを服用するための投薬時間を決定することを更に含む。
【0034】
投薬時間は、時刻、例えば午後9時に関してもよいし、又は睡眠データのうちのあるパラメータに相対的な時間、例えば実際の起床時間の16時間後であってもよい。投薬時間は、単一の日用量に関してもよいし、又は1日を通して異なる時間に関する複数の投薬タイミングを含んでもよい。
【0035】
投薬時間を決定するステップは、以下で更に考察される。
【0036】
方法は、投薬時間を示すことを更に含む。いくつかの実施例では、投薬時間を示すことは、投薬時間を患者に直接示すことを含み得る。投薬時間を決定することと、投薬時間を患者に示すこととは、日ごとに、投薬時間を決定することと、投薬時間を示すこととを含み得る。日ごとに投薬時間を決定することは、前夜の睡眠からの、又は(例えば、移動平均に基づいて)先行するいくつかの夜の睡眠からの実際の睡眠データに基づいて、投薬時間を決定することを含み得る。
【0037】
いくつかの実施例では、方法は、投薬時間を臨床医に示すことを含む。投薬時間を臨床医に示すことは、推奨される投薬時間を臨床医に通知するため、又は投薬時間(及び任意選択的に、以下で更に考察されるように就寝時間/目標入眠時間)を処方するように臨床医に指示するためであり得る。投薬時間を臨床医に示すことは、臨時的に、又は毎週、隔週、若しくは毎月などのように定期的に行われ得る。そのような実施例では、投薬時間を決定することは、介在期間にわたって平均された実際の睡眠データに基づき得る。あるいは、又は加えて、投薬時間を決定することは、日ごとに投薬時間を決定することと、平均の日ごと投薬時間を臨床医に示すこととを含み得る。
【0038】
したがって、続く考察では、睡眠データ、特に実際の睡眠データと任意の更なる患者データとを含む全てのタイプのデータは、特定の日のデータ(例えば、特定の日の具体的な実際の起床時間)に対応する、日ごとの実際の睡眠データなどの日ごとデータ、又は複数の日に対応する、平均の実際の睡眠データ(例えば、複数の日の平均の実際の起床時間)などの平均データを含み得る。方法は、(睡眠データ、実際の睡眠データ、投薬時間、又は任意の更なる患者データなどの)方法によって測定、受信、決定、又は示されるデータタイプのうちのいずれかについて、日ごとデータの移動平均(3日間移動平均又は7日間移動平均など)を決定することを含み得る。データは日ごととして説明されているが、特定のデータタイプのタイミングの精度は、分又は秒又はそれ以上の精度のタイミング分解能を含み得ることを理解されたい。
【0039】
投薬時間を決定するステップに戻ると、投薬時間を決定することは、睡眠データのうちの1つ以上のパラメータに基づき得る。1つの実施例では、投薬時間を決定することは、起床時間データに基づき得る。起床時間データは、実際の起床時間及び/又は目標起床時間を含み得る。目標起床時間は、定着起床時間と称され得る。方法は、複数日にわたって患者の睡眠パターンを定着させようとする試みにおいて、この目標起床時間を定着する方法で、目標起床時間に基づいて投薬時間を決定し得る。このようにして、方法は、患者の長期睡眠パターンを、目標起床時間に向かう傾向にある実際の起床時間と同期させるようとする試みにおいて、特定の日の患者の睡眠に関係なく、目標起床時間を定着又は固定することができる。
【0040】
起床時間定着コンセプトを更に理解するために、入眠の2つの主要な動因を紹介する。
1.「睡眠動因」、「睡眠飢餓」、又は「睡眠負債」とも称される、睡眠ホメオスタット。この睡眠飢餓は、患者が覚醒している時間の長さとして近似することができる。
2.概日動因。特に、天然メラトニンレベルの上昇は、睡眠の機会の窓を開く。
【0041】
睡眠開始又は入眠は、1及び2が同期しているときに最も起こり得る。
【0042】
天然メラトニンの夜間分泌の残りの部分は、夜間発生を促進すると考えられており、ヒトでは、これは正常な(非不眠症の)睡眠である。
【0043】
第1の態様による方法は、それに続くメラトニンレベルの(低い基準値からの)上昇が、睡眠を開始するのに十分な睡眠飢餓の時間と一致するように、外因性メラトニンの投薬時間、すなわちメラトニンを用いた治療を決定することを含む。必要な睡眠飢餓レベルは、そもそも不眠症に寄与する可能性のある不眠症関連不安の喚起要因を克服するために、「正常」よりも高くてよい。言い換えれば、患者は、より高度の睡眠飢餓を必要とし、したがって、不眠症が不在であるか又は「治癒した」状態にあるときよりも遅く就寝する必要があり得る。
【0044】
したがって、方法は、睡眠飢餓を制御することによって不眠症の治療を支援することができる。方法は、覚醒時間を定着させることによって睡眠飢餓を制御することができる。方法は、目標起床時間及び実際の起床時間を受信し、目標起床時間及び実際の起床時間に基づいて投薬時間を決定することによって、起床時間を定着させることができる。1つ以上の実施例において、方法は、どちらの時間が最初に発生するかに応じて、実際の起床時間又は目標起床時間に続く固定時間として、投薬時間を決定することを含み得る。
【0045】
方法は、目標入眠時間に基づいて投薬時間を決定することを含み得る。いくつかの実施例では、睡眠データは、(例えば、患者及び/又は臨床医の入力から受信されるような)目標入眠時間を含み得る。いくつかの実施例では、方法は、目標起床時間及び/又は実際の起床時間に基づいて目標入眠時間を決定することを含み得る。例えば、方法は、どちらの時間が最初に発生するかに応じて、実際の起床時間又は目標起床時間に続く固定時間に対応するための目標入眠時間を決定し得る。固定時間は、十分な睡眠飢餓に対応し得る。方法は、目標入眠時間の前の更なる固定時間として、投薬時間を決定し得る。
【0046】
一実施例を示すために、方法は、グループA不眠症のためのメラトニンを用いた不眠症の治療を支持し得る。方法は、目標起床時間及び実際の起床時間を受信することを含み得る。方法は、実際の起床時間又は目標起床時間の8~12時間、好ましくは10時間後として、投薬時間を決定することを含み得る。いくつかの実施例では、投薬時間を決定することは、実際の起床時間又は目標起床時間のいずれか遅い方の8~12時間、好ましくは10時間後として、投薬時間を決定することを含む。安定した定着起床時間(実際の起床時間~目標起床時間)のためには、実際の起床時間の10時間後が、メラトニンを服用するための投薬時間に対応し、それは、実際の起床時間の2時間前である患者の夜間体温の最低点の12時間前である。したがって、安定した定着起床時間のためには、投薬時間は、目標起床時間の14時間前に対応する。
【0047】
更なる実施例を示すために、方法は、グループB又はCタイプの不眠症のためのメラトニンを用いた不眠症の治療を支援し得る。方法は、目標起床時間及び実際の起床時間を受信することを含み得る。方法は、実際の起床時間又は目標起床時間の11~19時間、好ましくは15時間後として、投薬時間を決定することを含み得る。いくつかの実施例では、投薬時間を決定することは、実際の起床時間又は目標起床時間のいずれか遅い方の11~19時間、好ましくは15時間後として、投薬時間を決定することを含む。目標起床時間の15時間後の投薬時間は、24時間から、その患者について計算された1日の平均睡眠時間(この実施例では8時間)を差し引き、入眠時間の1時間前にメラトニンを服用することに関連して更に1時間(以下で更に説明する投薬オフセット時間)を差し引いたものに対応する。
【0048】
したがって、より一般的には、方法は、実際の起床時間、目標起床時間、目標睡眠持続時間、及び投薬オフセット時間に基づいて投薬時間を決定することを含み得る。例えば、投薬時間を決定することは、実際の起床時間tAW、又は目標起床tTW時間(のうちの遅い方)に24時間を加えて、目標睡眠持続時間tTSDを差し引き、投薬オフセット時間tDOを差し引いたものとして、投薬時間tdoseを決定することを含み得る。
dose=(tAW,tTW)のうちの遅い方+24-tTSD-tDO
【0049】
目標睡眠持続時間は、患者の平均睡眠持続時間、又は患者の「正常な」睡眠持続時間(例えば、8時間)に基づき得る。しかしながら、正常又は平均睡眠持続時間は、一般的に集団の正規分布に従い、正常睡眠持続時間は患者にとって個人的なものであり得る。方法は、睡眠データ又は更なる患者データに基づいて、目標睡眠持続時間を決定し得る。目標睡眠持続時間は、所望の睡眠持続時間に基づくか、又はそれに等しくあり得る。
【0050】
投薬オフセット時間は、投薬時間と目標入眠時間又は目標就寝時間との間の時間を規定する。投薬オフセット時間は、0~3時間であり得、好ましくは1時間であり得る。目標入眠の1時間前にメラトニンを服用することにより、患者のメラトニンレベルの上昇は目標入眠時間と一致することができる。
【0051】
「24時間から目標睡眠持続時間を差し引いた」という用語は、同等の目標睡眠飢餓に対応し得る。例えば、8時間の目標睡眠持続時間は、16時間の目標睡眠飢餓に対応する。目標睡眠飢餓は、実際の又は目標の起床時間と目標入眠時間/就寝時間との間の目標時間と見なされ得る。目標睡眠飢餓は、入眠を達成するのに最適な睡眠飢餓を含み得る。したがって、投薬時間を決定することは、目標起床時間、実際の起床時間、目標睡眠飢餓tSH、及び投薬オフセット時間に基づいて投薬時間を決定することを含み得る。
dose=(tAW,tTW)のうちの遅い方+tTSH-tDO
【0052】
更なる実施例では、方法は、目標起床時間又は実際の起床時間に基づいて目標入眠時間を決定する中間ステップを含み得る。目標入眠時間を決定することは、投薬時間tdoseとして、実際の起床時間tAW又は目標起床tTW時間(のうちの遅い方)に24時間を足して、目標睡眠持続時間を差し引いたものとして、目標入眠時間を決定することを含み得る。
dose=(tAW,tTW)のうちの遅い方+24-tTSD
【0053】
又は同等に、目標入眠時間を決定することは、投薬時間tdoseとして、実際の起床時間tAW又は目標起床tTW時間(のうちの遅い方)に目標飢餓を加えたものとして、目標入眠時間を決定することを含み得る。
dose=(tAW,tTW)のうちの遅い方+tTSH
【0054】
目標入眠時間を決定することは、実際の起床時間又は目標起床時間の12~20時間、好ましくは16時間後として、目標入眠時間を決定することを含み得る。方法は、目標入眠時間、例えば、目標入眠時間から投薬オフセット時間を差し引いたものに基づいて投薬時間を決定することを含み得る。目標入眠前の投薬オフセット時間にメラトニンを服用することにより、患者のメラトニンレベルの上昇は、目標入眠時間/目標睡眠飢餓と一致することができる。このようにして、方法は、最適な睡眠飢餓と同期してメラトニンレベルの上昇を制御することができる。
【0055】
いくつかの実施例では、方法は、不眠症重症度評価を含む睡眠データを受信することと、不眠症重症度評価に基づいて投薬時間に重症度オフセットを適用することと、を含み得る。方法は、追加的又は代替的に、重症度オフセットを目標入眠時間に適用することを含み得る。例えば、中度の重症度評価を有する患者は、1時間の重症度オフセットに対応する軽度不眠症関連覚醒因子を示し得る。高重症度評価を有する患者は、2時間の重症度オフセットに対応する重度不眠症関連覚醒因子を示し得る。
【0056】
いくつかの実施例では、方法は、起床データ以外の睡眠データに基づいて投薬時間を決定することを含み得る。例えば、上記で考察されたように、方法は、目標入眠時間に基づいて投薬時間を決定することを含み得る。いくつかの実施例では、投薬時間を決定することは、目標睡眠飢餓に基づき得る。あるいは、又は加えて、投薬時間を決定することは、睡眠データに基づいて実際の睡眠飢餓を決定することを含み得る。実際の睡眠飢餓を決定することは、実際の入眠時間及び合計睡眠持続時間に基づき得る。合計睡眠持続時間は、夜間睡眠持続時間及び日中睡眠持続時間を含み得る。そのような実施例による方法は、患者が規則正しい投薬ルーチンに落ち着くにつれ、実際の起床時間及び投薬時間を定着させるという同じ効果を依然として達成し得る。
【0057】
方法は、更なる患者データを受信することを更に含み得る。更なる患者データは、患者個人データ、患者記録データ、患者生理学的データ、患者ゴールデータ、環境データ、患者薬物データ、及び患者活動データのうちの1つ以上を含み得る。
【0058】
更なる患者データを受信することは、ユーザ入力(例えば、患者が入力したデータ)、センサ入力(例えば、心拍数モニタなどの患者センサからのデータ、若しくは温度センサなどのシステムセンサからのデータ)、又はネットワーク入力(例えば、患者記録データ若しくは環境/気象データがネットワーク接続を介して通信され得る)のうちの1つ以上によって更なる患者データを受信することを含み得る。
【0059】
個人データは、年齢、性別、体重、BMIなどに関する基本的患者情報を含み得る。
【0060】
患者記録データは、病歴、併存疾患、処方データなどに関する情報を含む医療記録を含み得る。患者記録データは、患者個人データを含み得る。
【0061】
患者生理学的データは、1つ以上の生理学的測定値に関するデータを含み得る。このような測定値は、患者、医療提供者によって、又は電子デバイスなど、スマートフォン又は他の手持ちデバイスなどのデバイスによって取られ得る。例示的な生理学的測定値は、心拍数、血圧、酸素飽和度、呼吸数などを含む。
【0062】
患者ゴールデータは、睡眠データに関連して上述されたような所望の睡眠データを含み得る。患者ゴールデータは、メラトニンを用いた投薬治療を停止することであり得る所望の投薬治療ゴールを更に含み得る。
【0063】
環境データは、患者の局所環境など、患者の環境に関し得る。環境データは、1つ以上の環境測定値を含み得る。好適な環境測定値は、日ごとの露光量、電子光露光量、日ごとの平均温度、日ごとの最高/最低温度、及び日ごとの降雨量など、温度、湿度、及び/又は光強度を含み得る。
【0064】
患者薬物データは、投薬量、頻度、及び持続時間を含む、患者のメラトニン処方に関する投薬治療情報を含み得る。薬物データは、実際の服用データの記録を含み得る。実際の服用データは、患者の服用時間、服用量、逃した服用などを含み得る。実際の服用データは、患者入力によって入力され得るか、又はスマート薬物包装との通信を介して受信され得る。薬物データは、他の薬物について患者に関する更なる処方データを含み得る。
【0065】
患者活動データは、患者の睡眠能力に影響を与える可能性のある任意の活動を含み得る。例示的な患者活動データは、運動データ、食物摂取データ、カフェイン摂取データ、及びアルコール摂取データを含む摂取データ、電子デバイス使用データ、性的活動及びリラクゼーション活動データを含む。
【0066】
方法は、更なる患者データに基づいて投薬時間を決定することを含み得る。具体的な非限定的な実施例として、投薬時間を決定することは、以下のうちのいずれかに基づき得る:
・食品、アルコール、及び/又はカフェイン摂取データを含む摂取データ、
・運動データ及び関連する生理学的データであって、運動データは運動の時間、運動の継続時間、及び/又は運動の強度を含む、
・使用の時間及び/又は使用の継続時間を含む電子デバイス使用データ、
・自然光曝露及び電子光曝露の時間及び持続時間を含む光曝露データ、並びに
・逃された服用、及び早く又は遅く服用された服用を含む服用タイミングなどの実際の投薬データ。
【0067】
1日の終わり頃の食物の摂取は、外因性投与後のメラトニンレベルの上昇を遅延又は減速させる可能性がある。したがって、投薬時間を決定することは、投薬オフセット時間を調整することを含み得る。
【0068】
実施例では、方法が目標起床時間を含む睡眠データを受信することを含む場合、方法は、目標起床時間を設定することを含み得る。目標起床時間は、好ましくは、午前5時30分~午前8時30分の間である。これは、それが、概日リズム、特に自然の日光発生及び光強度を同期させる助けとなる外部ツァイトゲーバーと理想的に一致するからである。方法は、睡眠データ及び/又は更なる患者データに基づいて目標起床時間を設定することを含み得る。いくつかの実施例では、方法は、患者ゴールデータのうちの所望の起床時間、所望の睡眠持続時間、及び所望の入眠時間のうちの1つ以上に基づいて、目標起床時間を設定することを含み得る。いくつかの実施例では、方法は、睡眠データ及び患者ゴールデータに基づいて目標起床時間を設定することを含み得る。例えば、所望の起床時間は午前7時であり得るが、平均の実際の起床時間は午前4時であり得る。方法は、所望の起床時間と実際の起床時間、例えば午前5時30分との間の中間値として、目標起床時間を設定することを含み得る。治療が進み、患者の実際の起床時間が目標起床時間に向かって進むように支援するにつれて、方法は、実際の起床時間及び目標起床時間に基づいて目標起床時間を更新することを含み得る。
【0069】
より一般的には、方法は、睡眠データに基づいて目標起床時間を更新することを含み得る。目標起床時間を更新することは、睡眠データ、患者ゴールデータ、及び/又は目標起床時間に基づき得る。目標起床時間を更新することは、実際の起床時間、実際の睡眠持続時間、及び実際の入眠時間のうちの1つ以上に基づき得る。
【0070】
1つ以上の実施例において、方法は、目標起床時間を患者及び/又は臨床医に示すことを含み得る。
【0071】
いくつかの実施例では、目標起床時間は、方法を実施するシステムに対して外部的に決定され得る。例えば、患者及び/又は臨床医が、目標起床時間を決定し、目標起床時間をシステムに入力し得る。
【0072】
1つ以上の実施例において、方法は、患者が進展し、起床時間を定着させ、概日リズムと同期されたより規則正しい睡眠パターンを開発し始めると、メラトニンの投薬量を更新することを含み得る。方法は、睡眠データ及び/又は更なる患者データに基づいてメラトニンの投薬量を更新することを含み得る。投薬量を更新することは、実際の起床時間と目標起床時間との間の差に基づき得る。方法は、差が、閾値日数、例えば14日又は30日にわたって第1の閾値差、例えば2時間よりも大きい場合、投薬量を増加させることを含み得る。投薬量を更新することは、実際の起床時間、目標起床時間、及び所望の起床時間にも基づき得る。例えば、方法は、実際の起床時間と所望の起床時間との間の差が、閾値日数にわたって第2の閾値差よりも小さい場合、又は実際の起床時間と目標起床時間との間の差が、閾値日数にわたって第2の閾値差よりも小さい場合に、投薬量を減少させることを含み得る。
【0073】
方法は、1つ以上の治療的行動推奨を提供することを更に含み得る。1つ以上の治療的行動推奨を提供することは、患者及び/又は臨床医に対してであり得る。1つ以上の治療的行動推奨を提供することは、睡眠データ及び/又は更なる患者データに基づき得る。1つ以上の治療的行動推奨は、運動の推奨(例えば、運動のタイミング、タイプ、継続時間及び強度)、摂取の推奨(例えば、食事のタイミング、摂取期限、カフェインの上限及び期限)、リラクゼーションの推奨(例えば、入浴のタイミング、瞑想などの推奨されるリラクゼーション技術)、日光曝露の推奨(例えば、日光曝露の強度、波長、及び継続時間)、並びに活動の推奨(例えば、電子デバイス使用期限)のうちのいずれかを含む。
【0074】
投薬時間を決定することは、1つ以上の治療的行動推奨についての患者のコンプライアンスに基づき得る。
【0075】
「投与される」という用語は、当技術の1つであり、療法が患者に提供又は与えられることを意味する。本発明に関して、療法が患者にどのように投与されるかは重要ではないかもしれない。例えば、療法は、医療提供者又は別の第三者によって患者に投与され得る。療法は、スマートフォン又は他の手持ちデバイスなどの電子デバイスによって、自動的に、又は患者、医療提供者、若しくは別の第三者からのユーザ入力に直接応答して投与され得る。代替的に、患者は、錠剤を服用し、又は瞑想することによるなど、彼自身若しくは彼女自身で療法を投与し得る。電子デバイスは、クラウドベースのサーバーなどの電子デバイスから遠隔して配置された第2の電子デバイスによって提供される命令で動作し得、そのような命令は、ネットワーク、例えば、インターネット又はセルラーネットワークをわたって電子デバイスに伝送される。
【0076】
療法が、メラトニンの投与などの薬理学的療法である場合、任意の好適な経路が、当該療法を施すために使用され得る。好ましくは、投与経路は、経口、直腸、鼻、局所(頬側及び舌下を含む)、経皮、髄腔内、経粘膜又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)投与による。好ましくは、投与経路は、経口投与による。
【0077】
薬理学的療法に有用なメラトニンを含む医薬組成物は、単位投薬形態、例えば錠剤及び徐放性カプセル、並びにリポソームに製剤され得る。代替的に、医薬組成物は、投与前に(患者、第三者、又は自動投与デバイスによって)投与される未投与のゲル、液体、及びシロップとして提供され得る。本発明に関連して有用な投薬形式は、薬局の分野で周知の任意の方法によって調製され得る。
【0078】
治療が進むにつれて、上述された発明の様々な態様による方法及び使用のためのメラトニンは、投薬量を示すことを追加的に含むようにメラトニン投薬計画を決定するステップを含み得る。
【0079】
好適には、医薬組成物及び剤形は、0.05~10mg、好ましくは0.1~5mg、より好ましくは1~3mg、例えば2mgのメラトニンを含む。他の好適な用量は、0.1、0.15であり、次いで、0.25mgの段階的な増分で1mgまで増加させる。具体的な実施例では、医薬組成物及び剤形は、例えば、0.2、0.5、0.7、0.9、1.0、1.2、1.4、1.5、1.7、1.9、又は2.0mgのメラトニンを含む。
【0080】
治療が進むにつれて、上述された発明の様々な態様による方法及び使用のためのメラトニンは、初期療法が患者に施され、次いで、患者に関する追加のデータが処理されて、修正された療法を提供するという反復処理の形式であり得る。これは、動的な患者環境において不眠症の最適な治療を維持するのを助ける。
【0081】
1つの具体的な態様では、メラトニンの投薬量を増加させ得る。これは、例えば、治療が患者に期待される又は所望の効果を有さない場合、すなわち、患者が、上述されたような治療計画に従って、依然として眠りにつくこと又は睡眠を維持することができない場合に起こり得る。あるいは、別の態様では、メラトニンの投薬量を減少させ得る。これは、例えば、治療が患者に期待される又は所望の効果を有する場合、すなわち、患者は、治療計画に従って眠りにつくこと又は睡眠を維持し、上述されたように目標とされた起床時間及び合計睡眠時間を達成することができる場合に起こり得る。患者がこの規則正しい睡眠パターンを達成すると、彼らはメラトニンから離脱し得る。例えば、1日の投薬量が0mgになるまで、すなわち、患者は、不眠症を治療するためにメラトニンを服用する必要がもはやなくなるまで、メラトニンの1日の投薬量を毎週(例えば、上述された服用量増分ずつ)減少させ得る。
【0082】
上述された発明の様々な態様による方法及び使用のためのメラトニンは、発明の他の態様についての説明において先に記載された好ましい特徴のうちのいずれかを有し得る。
【0083】
図1は、第1の態様によるメラトニンを用いた不眠症の治療を支援するためのコンピュータ実施方法100を示す。方法は、患者に関する睡眠データを受信することによって、ステップ100で開始する。ステップ104は、睡眠データに基づいて、患者が一用量のメラトニンを服用するための投薬時間を決定することを含む。ステップ106は、投薬時間を示すことを含む。投薬時間は、患者及び/又は臨床医に示され得る。
【0084】
本明細書に開示のコンピュータ実施方法のうちのいずれかを実行するのに好適なシステム110を図2に示す。システム110は、患者デバイス115を含む。患者デバイス115は、不眠症に苦しむ患者に関する睡眠データを受信し、睡眠データに基づいて患者が一用量のメラトニンを服用するための投薬時間を決定し、投薬時間を示すように構成された1つ以上のプロセッサを備え得る。
【0085】
図示の実施形態では、患者デバイス115は、スマートフォンであり、任意選択的にセンサ120を備える。しかしながら、発明は、この点で限定されず、患者デバイス115は、携帯電話、タブレットコンピュータ、デスクトップコンピュータ、音声起動コンピューティングシステム、ラップトップ、ゲームシステム、車両コンピューティングシステム、ウェアラブルデバイス、スマートウォッチ、スマートテレビ、モノのインターネットデバイス、及び薬剤調剤デバイスを含むがこれらに限定されない、多くの他の形態をとることができる。
【0086】
患者デバイス115は、患者及び/又は直近環境に関する睡眠データを含むデータを収集するように構成され得る。患者デバイス115は、カメラなどの光センサ、温度センサ、マイクロホンなどの音響センサ、加速度計、空気圧センサ、空中微粒子センサ、全地球測位センサ、湿度センサ、電界センサ、磁界センサ、水分センサ、空気質センサ及びガイガーカウンタ、脳波図(EEG)、心拍数モニタ、パルス酸素濃度計、あるいは睡眠ポリグラフ関連データ並びに/又は患者及び/若しくは患者の直近環境の任意の他の特性を収集することができる任意の他のセンサの任意の組み合わせであることができる、センサ120を使用して、睡眠データ及び更なる患者データを収集し得る。センサ120は、患者デバイス115の一部を形成するように示されているが、いくつかの実施形態では、センサ120は、患者デバイス115と分離され、患者デバイス115と遠隔通信し得る。他の実施例では、センサ120は、患者デバイス115から省略されることができる。
【0087】
あるいは、又は加えて、患者及び/又は患者の直近環境についての情報は、患者デバイス115のヒューマンインターフェースデバイスを使用する手動データエントリを含む他のメカニズムを介して取得することができる。
【0088】
患者デバイス115は、睡眠データ及び/又は更なる患者データを記憶するためのメモリ(図示せず)を含み得る。そのようなデータはまた、ネットワーク化された又はクラウドベースのデータ記憶装置としてのデータベース135に記憶され得る。
【0089】
患者デバイス115は、患者デバイス(図示せず)に関連付けられた記憶媒体上にインストールされた1つ以上のアプリケーション(又はアプリ)を有し得る。1つ以上のアプリは、本明細書に開示のコンピュータ実施方法のうちのいずれかを実行するように構成され得る。1つ以上のアプリケーションは、センサ120を介したデータ取得を制御するように、かつ/又は患者が現在の症状及び/又は直近環境に関するデータを提供するのを支援するように構成され得る。1つ以上のアプリケーションは、ネットワークから、例えばウェブサイト又はオンラインアプリケーションストアから、ダウンロードされ得る。
【0090】
この実施例では、システム110は、ネットワーク125を介して患者デバイス115に通信可能に結合されたデータ処理デバイス130を更に備える。図示の実施形態では、ネットワーク125は、インターネットであるが、本発明は、この点で限定されず、ネットワーク125は、セルラーネットワーク、又はインターネットとセルラーネットワークとの組み合わせなど、患者デバイス115とデータ処理デバイス105との間の通信を可能にする任意のネットワークであることができる。
【0091】
データ処理デバイス130は、患者デバイス115を補完し、本明細書に開示のコンピュータ実施方法のうちのいずれかの1つ以上のステップを実行し得る。例えば、いくつかの実施形態では、患者デバイスは、睡眠データを受信し、睡眠データをデータ処理デバイス130に提供し得る。次いで、データ処理デバイス130は、睡眠データに基づいて、患者がメラトニンを服用するための投薬時間を決定し得る。次いで、データ処理デバイス130は、いずれか又は両方が投薬時間を示すことができる患者デバイス115又は臨床医デバイス140に、投薬時間を提供し得る。このようにして、データ処理デバイスは、ネットワーク化された、サーバーベースの、又はクラウドベースの処理能力を、コンピュータ実施方法を実行するためのシステムに提供する。
【0092】
データ処理デバイスは、この明細書で先に説明された睡眠データ又は更なる患者データを記憶することができるデータベース135に結合され得る。
【0093】
この実施例では、システム100は、ネットワーク125を介して患者デバイス115及びデータ処理デバイス130に通信可能に結合されている臨床医データ処理デバイス140を含む。臨床医データ処理デバイス140は、患者デバイス115と概ね同様であり得、同様の機能セットを提供する。具体的には、臨床医データ処理デバイス140は、患者及び/又は患者の直近環境に関する睡眠データを含むデータを照合することを可能にする。臨床医データ処理デバイス140は、睡眠診療所、医師の手術、薬局、又は任意の他の医療機関、例えば病院など、その使用中には臨床医の施設内に物理的に位置すると考えられる。臨床医データ処理デバイス140は、患者及び/又はそれらの局所環境についての情報を収集することができる、センサ120のような1つ以上のセンサを含み得、かつ/又はセンサ120のような1つ以上の別個のセンサを制御するように構成され得る。
【0094】
臨床医データ処理デバイス140は、典型的には、適切なデータ安全アクセス権を有する医学的に訓練された人物によって使用され、したがって、患者デバイス115を介するよりも高度な機能が利用可能であり得ることも考えられる。例えば、臨床医データ処理デバイス140は、患者の病歴にアクセスすること、患者のためにメラトニン処方を生成すること、投薬治療のために注文することなどを行うことができる場合がある。機能へのアクセスは、ローカルプロセッサ又はデータ処理デバイス105によって実施されるセキュリティ方針によって制御され得る。
【0095】
データ処理デバイス130及び/又は臨床医デバイス140は、患者デバイス115にインストールされたアプリケーションと互換性があるか又はそれと同じである、インストールされたアプリケーションであり得る。
【0096】
本明細書に開示のコンピュータ実施方法の様々なステップは、患者デバイス115、データ処理デバイス130、及び臨床医デバイス140の1つ以上のプロセッサのうちのいずれかによって、任意の組み合わせで実行され得ることが理解されよう。例えば、全てのステップは、ネットワーク125を介して患者デバイス115から睡眠データを受信する臨床医デバイス140と任意選択的にデータ処理デバイス130とによって実行され得る。更なる実施例では、全てのステップは、データ処理デバイス130上のネットワーク化されたバックエンドで実行され得、患者デバイス115及び臨床医デバイス140は、データを収集し示すためのヒューマンインターフェースとして機能する。更に別の実施例では、全てのステップは、患者デバイス115上で実行され得、臨床医デバイス140は、臨床医に通知又は指示するために、患者デバイス115から関連データを収集するだけである。
【0097】
システム100の構成要素のうちの1つ以上が、アプリケーションに応じて省略され得ることも理解されよう。例えば、睡眠診療所の設定では、開示のコンピュータ実施方法は、臨床医デバイス140上でのみ実行されるであろう。あるいは、方法は、家庭内の設定では患者デバイス上でのみ実行され得る。
【0098】
図3は、システム110が本明細書に開示のコンピュータ実施方法のうちのいずれかを実行しているときに、患者デバイス115上での表示に好適なユーザインターフェースシーケンス150を示す。
【0099】
この実施例では、ユーザインターフェースシーケンス150の表示151は、ユーザ入力を開始するための選択ボタン152、154を備える。選択ボタンは、目標起床時間選択ボタン152と、目標入眠選択ボタン154とを含む。
【0100】
目標起床時間選択ボタン152は、ユーザインターフェースシーケンス150の目標起床時間入力153を開始することによってユーザ起動に応答する。目標起床時間入力153は、ユーザが目標起床時間を入力することを可能にする。このようにして、ユーザインターフェースシーケンス150は、システムが目標起床時間の形式の睡眠データを受信することを可能にする。
【0101】
目標入眠選択ボタン154は、ユーザインターフェースシーケンス150の目標入眠時間入力155を開始することによってユーザ起動に応答する。目標入眠時間入力155は、ユーザが目標入眠時間を入力することを可能にする。このようにして、ユーザインターフェースシーケンス150は、システムが目標入眠時間の形式の睡眠データを受信することを可能にする。
【0102】
目標起床時間及び/又は目標入眠時間の受信後、システムは、目標起床時間入力153及び/又は目標入眠時間入力154で受信された入力に基づいて、患者がメラトニンを服用するための投薬時間を決定し得る。この実施例では、システムは、表示151の投薬時間インジケータ156を介して患者に投薬時間を示す。
【0103】
図3のユーザインターフェースシーケンスが単なる例示的なものであることが理解されよう。上記に広範に概説されたように、投薬時間は、患者入力及び/又はセンサ入力として受信され得、かつ/又はそれらから導出され得る、実際の起床時間、睡眠飢餓などのような他の睡眠データに基づき得る。ユーザインターフェースシーケンス150は、そのような全ての変形態様に対応するように変化し得る。
【0104】
上記の図における命令及び/又はフローチャートステップは、特定の順序が明示的に記載されていない限り、任意の順序で実行することができる。また、一組の例示的な命令/方法について考察してきたが、当業者は、本明細書の事柄が、様々な方法で組み合わされて他の実施例ももたらされ得ること、及びこの詳細な説明によって提供される文脈内で理解されることを認識するであろう。
【0105】
いくつかの例示的な実施形態では、上記に説明された命令/方法ステップのセットは、実行可能命令でプログラムされ、それらによって制御されるコンピュータ又は機械上で実施される実行可能命令のセットとして具現化される機能的及びソフトウェア命令として実装される。そのような命令は、実行のためにプロセッサ(1つ以上のCPUなど)上に読み込まれる。プロセッサという用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プロセッサモジュール若しくはサブシステム(1つ以上のマイクロプロセッサ若しくはマイクロコントローラを含む)、又は他の制御若しくはコンピューティングデバイスを含む。プロセッサは、単一の構成要素又は複数の構成要素を参照し得る。
【0106】
他の実施例では、本明細書に示された命令/方法、並びにそれらと関連付けられたデータ及び命令のセットは、1つ以上の非一時的な機械、又はコンピュータ可読若しくはコンピュータ使用可能な記憶メディア若しくは媒体として実装される、それぞれの記憶デバイスに記憶される。そのようなコンピュータ可読又はコンピュータ使用可能な記憶メディア又は媒体は、物品(又は製造品)の一部と見なされる。物品又は製造品は、任意の製造された単一の構成要素又は複数の構成要素を指し得る。本明細書で定義される非一時的な機械又はコンピュータ使用可能なメディア又は媒体は、信号を除外するが、そのようなメディア又は媒体は、信号及び/又は他の一時的な媒体から情報を受信及び処理することができ得る。
【0107】
本明細書で論じられる材料の例示的な実施形態は、ネットワーク、コンピュータ、又はデータに基づくデバイス及び/若しくはサービスを通じて、全体又は部分的に実装され得る。これらとしては、クラウド、インターネット、イントラネット、モバイル、デスクトップ、プロセッサ、ルックアップテーブル、マイクロコントローラ、消費者機器、インフラストラクチャ、又は他の有効なデバイス及びサービスが挙げられる。本明細書及び特許請求の範囲で使用され得るように、以下の非排他的な定義が提供される。
【0108】
1つの実施例では、本明細書で考察された1つ以上の命令又はステップは、自動化される。自動化された又は自動的にという用語(及びそれらの類似の変形)は、ヒトの介入、観察、努力、及び/又は決定の必要性なしにコンピュータ及び/又は機械的/電気的デバイスを使用する、装置、システム、及び/又はプロセスの制御された動作を意味する。
【0109】
結合されていると言われる任意の構成要素は、直接的又は間接的のいずれかで結合又は接続され得ることが理解されよう。間接的結合の場合、追加構成要素が、結合されていると言われる2つの構成要素の間に位置し得る。
【0110】
この明細書では、例示的な実施形態が、詳細のうちの選択されたセットの観点から提示された。しかしながら、当業者は、これらの詳細のうちの異なる選択されたセットを含む多くの他の例示的な実施形態が実践され得ることを理解するであろう。以下の特許請求の範囲は、考えられる全ての例示的な実施形態をカバーすることが意図される。
【0111】
発明の実施例
以下の例示的なケーススタディによって、発明を更に実証する。
【0112】
ケーススタディ1
簿記係として働いていた64歳の女性は、「生活の質に劇的に影響を与える」と表現された、悪化性不眠症を発症した。女性は、適度に良好な睡眠衛生を有し、唯一の関連投薬治療は、リウマチ疾患からの疼痛緩和のために服用された20mgのアミトリプチリンの夜間投与であった。アミトリプチリンが睡眠に影響を及ぼすという証拠はなく、メラトニンとの相互作用はない。
【0113】
患者は、ストレスレベルが上昇し、したがって全般的不安を経験していたことが分かった。彼女は、常に睡眠にいくぶん困難を有したが、仕事のパターンが変わった後、過去12ヶ月で悪化したと報告した。主な問題は、眠りにつくことが困難で、次いで睡眠中断があり、眠りに戻ることが困難であり、全体的に見積もって一晩に4~5時間しか寝ていないことである。
【0114】
具体的には、患者は、午後10時30分頃に就寝し(それは、眠いからではなく、その時間だったから)、すると、眠りにつくのに必ず1~2時間はかかり、その間は、寝床から出ることはないと説明した。いったん眠ると、はっきりしない理由で2、3回、目覚め、おそらく毎回15分間、目が覚めていた。
【0115】
患者は、通常、午前6時30分に目覚まし時計を必要とせずに起き、すっきりしないと感じていた。日中、彼女は過度に眠くはなく、エプワース眠気尺度は1/24のスコアであり、4/7の全般的不安尺度で、正常なスコアであった(どちらも当技術分野でよく知られている尺度)。彼女は、いびき又はむずむず脚を否定した。
【0116】
治療:効果的になるまでに通常は数日かかる、睡眠制限の初期段階の間に入眠を最適化するために、彼女は、毎晩、就寝時間の30~60分前に2mgのメラトニンを服用するように処方された。彼女は、午後11時~11時30分にメラトニンを服用するように明示的に指示され、この時間は、行動最適化の一環として推奨される就寝時間に基づいて、発明のコンピュータ実施方法を使用して計算された。メラトニン治療に加えて、彼女は行動療法を紹介され、午後2時以降のカフェイン入り飲料を避けること、及び睡眠への動因として体温を上げるためにより多くの運動を導入することをアドバイスされた。彼女には、就寝時間の1時間前の温浴を考えること、就寝時間前の2時間は過度の光曝露を避けることが奨励された。寝室では、時間の手がかりが取り除かれ、規則正しい待ち時間が強化された。そして、最初は真夜中頃の就寝時間で、後からその時間を漸進的に早めるという睡眠制限が導入された。
【0117】
推奨就寝時間が、彼女の長期的な最適時間である午後11時まで徐々にシフトされるにつれ、メラトニン投与のタイミングが午後10時~午後10時30分に並行してシフトされた。
【0118】
結果:睡眠制限及びメラトニンを用いて、就寝から15分以内の入眠が達成された。加えて、睡眠の維持及び睡眠の質が大幅に改善された。数週間にわたって、就寝時間は漸進的に早められ、継続中のメラトニンは、最適化された指定時間に服用された。
【0119】
ケーススタディ2
パートタイムで働いていた54歳の弁護士は、不眠症でますます侵入的な問題を有していた。彼女の睡眠は長年にわたって劣悪であったが、6年前に父親が亡くなって以来、著しく悪化していた。
【0120】
彼女は、午後8時の温浴後、午後10時30分に就寝し、眠りにつくのはほとんど困難ではないものの、その後、一晩に2~5回目覚め、眠りに戻るのが非常に困難であり、これが主な問題であると報告した。珍しいことに、これらの時間に時計を見ているという報告はなかった。彼女は、一晩に4~5時間しか眠らず、すっきりせずに起きて、日中の集中力低下があると説明した。
【0121】
患者は、夜間の刺激物及びスクリーンタイムを避けて、睡眠衛生に関して優れた習慣を有していた。彼女は、身体的に健康で定期的な運動に参加し、催眠術及び鍼治療を試みたが、利益はなかった。
【0122】
彼女の体格指数は22.2であると報告された。ある不安が言及されたが、これは、彼女の睡眠問題の要因とは見なされなかった。ほてりが断続的な問題だったが、髄膜腫のために彼女はホルモン補充療法(HRT)に対して助言されていた。
【0123】
治療:患者は、午後9時30分~10時にメラトニンを服用するように処方された。この時間は、認知行動療法と最適に同期するための好ましい時間に基づいて、発明のコンピュータ実施方法を使用して計算された。
【0124】
結果:メラトニンとともに睡眠制限により、患者の睡眠は確固たるものになった。治療が続き、彼女の睡眠が改善されるにつれて、彼女はメラトニンから離脱した。彼女の全体的な睡眠は改善され、現在は、よく眠れないことは週に一度で、「生活は多いに改善された」。
【0125】
ケーススタディ3
生涯ではないが、眠りにつくことが困難な長い歴史を有する、38歳の整備士。これは、10代後半の学校時代の終わりに始まったが、その前は、午後10時から、目覚まし時計で容易に目覚めていた午前6時30分まで、困難なく眠ることができた。しかしながら、10代後半の間に、彼の睡眠は、下記の睡眠パターンが確立されるまで遅れた。
【0126】
典型的には、患者は午後11時頃に就寝したが、それは、眠いからではなく、その時間であったからであり、午前3時~4時の間にぼんやり眠りに落ちるまで、目が覚めたまま何かを考えながら横たわっていた。一日が始まるのに、コーヒーが必要である。アクティグラフィにより、患者は、週の間、おそらく午前3時~午前9時の間眠っており、典型的には週末は正午まで延長されることが確認された(すなわち、合計8~9時間の合計睡眠時間、これは正常である)。
【0127】
この男性は、睡眠相後退症候群の最も特徴的な慢性不眠症を有し、それは、以前の通常の睡眠を考えると、後天的である。
【0128】
治療:時間調整メラトニンを用いた認知行動療法I。2mgのメラトニンのタイミングが、コンピュータ実施方法によって、患者の習慣的な起床時間である12時正午の2時間前である体温最低点の12時間前、したがって午後10時として計算されると指示され、午前2時までに睡眠を可能にする(又は保証する)ように「時計」を早めることが促された。続いて、彼は、このメラトニンのタイミングを週に30分ずつ早め、睡眠が更に改善するにつれて、午後10時~午後10時30分の最終睡眠時間まで徐々にシフトするようにアドバイスされた。
【0129】
ケーススタディ4~6の患者は睡眠障害センターで診察された。各患者は、評価の理由として睡眠障害を報告した。
【0130】
ケーススタディ4-睡眠維持障害不眠症を伴う入眠後退
職場でストレスの多い期間の後、過去2年間にわたって常習的な睡眠不良を有する40歳の教師。彼女は、タイプAの不眠症の特徴である、眠気を感じるよりはむしろルーチンによる午後10時の規則正しい就寝時間を説明した。患者は、真夜中頃まで眠りにつくことが困難で、その後、何回か覚醒エピソードがあって、眠りに戻るのがいくぶん困難であるという主な問題を報告した。「眠りにつけないこと又はよく眠れないことへの懸念」のために、就寝時間が問題になり、時計を見る傾向があった。患者は、仕事のために朝は午前7時の規則正しい時間に(目覚まし時計で)起きる必要があり、その結果、睡眠効率66%を表す<6時間の推定睡眠時間となった。不眠症重症度指数は、17で異常であった。患者は、職場での集中力の低下を報告した。いびき又はむずむず脚の履歴はなかった。極端な日中の眠気を示唆するような日中の昼寝は、日中、行われなかった。従来の睡眠補助薬の使用はなかった。診断テストには、アクティグラフィ及びそれに付随する睡眠日記が含まれ、慢性不眠障害であるという結論につながった。
【0131】
治療:睡眠衛生アドバイスを含む、彼女の主治医による以前の治療は、所望の結果に影響を与えるには不十分であった。睡眠医師と相談した後、3つの戦略が推奨された。
1)睡眠についての教育及び運動するようにとの推奨、並びに思考及び感情に対処する認知療法から始まる、部分的にリモートで送達される認知行動療法。
2)継続的な規則正しい(仕事のための)午前7時の起床時間及び緊張緩和ルーチン後の午後11時の就寝の個人別定着ポイント。
3)コンピュータ実施方法によって午後8時(実際の起床時間の13時間後)に服用するよう指示された投薬時間によるメラトニンの導入。メラトニンを導入する根拠は、最初の行動介入が失敗したことと、メラトニンが(催眠効果のために)睡眠誘導を助け、そして体内時計の早いタイミングに直接影響を与える可能性があったことであった。
【0132】
6週間の治療後、患者の睡眠効率は>85%まで改善し、不眠症重症度指数は、確固たる睡眠の報告と一致して、7まで低下し、それは、6週間後にメラトニンが中止された後も持続した。
【0133】
ケーススタディ5-睡眠維持障害不眠症を伴う早期覚醒
66歳の患者は(10年を超える)長年の不眠症を患っており、その間、彼女はゾピクロンが習慣化していたが、最近、現在のガイドラインに従って中止され、「睡眠アドバイス」にもかかわらず極度の睡眠障害となっていた。
【0134】
典型的には、彼女は、疲れているか又は眠いので、ただ時間のためだけではなく、午後10時30分頃に就寝し、半時間以内の午後11時に眠れることがあるが、眠っていたとして、午前2~3時の間に短時間、目覚める。そして、彼女は最終的に朝5時に目覚め、午前8時まで寝床におり、睡眠効率は<60%である。身体的外乱を示唆するいびき又はむずむず脚の病歴はなく、有効アンケート(不安のためのGAD7及びうつ病のためのPHQ8)による気分の評価に目立つものはなかった。
【0135】
治療:行動変化によるこれらの問題の現在の管理を考察した。
1)睡眠についての教育及び1日のうちの適当な時間に運動するようにとの推奨、並びに思考及び感情に対処する認知療法から始まる、部分的にリモートで送達される認知行動療法。
2)規則正しい午前7時の早めの起床時間ではあるが、緊張緩和ルーチン後の午後10時30分の就寝の個人別定着ポイント。
3)コンピュータ実施方法によって午後10時(最適入眠時間の30分前で、起床時間の15時間後)に服用するよう指示された投薬時間による時間調整メラトニンの導入。メラトニンを導入する根拠は、最初の行動介入が失敗したことと、メラトニンがCBTと最適に同期する可能性であった。
【0136】
約4週間後、睡眠が確固たるものとなり、起床時間が延ばされ、睡眠効率は>85%に上昇した。更に4週間後、メラトニンは中止された。
【0137】
ケーススタディ6-睡眠維持障害不眠症
患者は、ある期間の産後うつ病の後から始まって、長年にわたって眠りを維持することが困難であるという長期病歴を示した。典型的には、彼女は、眠気のために午後10時頃に就寝し、15分以内に眠りにつくが、はっきりしない理由で午前2~3時の間に定期的に目覚め、午前5時まで眠りに戻るのが難しく、それから、午前7時頃に目覚まし時計に起こされるまで眠りに戻る。推定睡眠時間は6時間で、睡眠効率は66%だった。患者は、睡眠を助けるために抗ヒスタミン剤を断続的に使用した。患者は、他の睡眠補助薬を使用しておらず、行動療法を受けていなかった。患者は、チョコレートの形でカフェインを摂取した。患者は、通常、午前中に運動をしていた。睡眠試験で、彼女の病訴と一致する、入眠後の覚醒に起因する睡眠効率60%が確認されたが、彼女の不眠症を別様に説明できる可能性のある本質的な病理は明らかにされなかった。
【0138】
治療:
1)睡眠についての教育及び1日のうちの適当な時間に運動するようにとの推奨、並びに思考及び感情に対処する認知療法から始まる、部分的にリモートで送達される認知行動療法。
2)継続的な規則正しい午前7時の起床時間、緊張緩和ルーチン後の午後11時の就寝の個人別定着ポイント。
3)コンピュータ実施方法によって午後10時(起床時間の15時間後)に服用するよう指示された投薬時間による時間調整メラトニンの導入。メラトニンを導入する根拠は、最初の行動介入が失敗したことと、睡眠を確固たるものする可能性であった。
【0139】
6週間のリモートCBT及びメラトニンの後、患者の睡眠効率は>90%に上昇し、8時間の正常睡眠要件に近づいた。後にメラトニンは中止され、4ヶ月後の追跡調査では、睡眠は、十分であり、確固たるままであった。
【0140】
上記のケーススタディは、メラトニンの投薬時間を制御することが不眠症患者に有意な睡眠改善を提供することができることを示している。具体的には、睡眠データ(例えば、目標起床時間、目標入眠時間など)に基づいて投薬時間を決定することは、改善された睡眠の質、睡眠の効率及び維持をもたらすことができる。
【0141】
結論
本発明者らは、メラトニン投与のタイミングを患者の特定の問題及び睡眠目標に合わせることにより、効果的な治療法が開発され、不眠症をうまく治療することを可能にすることを発見した。
図1
図2
図3
【国際調査報告】