IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲーの特許一覧

特表2023-5475191つのフリーホイールおよび2つのラジアル軸受を有する変速機構成部品を備える変速装置
<>
  • 特表-1つのフリーホイールおよび2つのラジアル軸受を有する変速機構成部品を備える変速装置 図1
  • 特表-1つのフリーホイールおよび2つのラジアル軸受を有する変速機構成部品を備える変速装置 図2
  • 特表-1つのフリーホイールおよび2つのラジアル軸受を有する変速機構成部品を備える変速装置 図3
  • 特表-1つのフリーホイールおよび2つのラジアル軸受を有する変速機構成部品を備える変速装置 図4
  • 特表-1つのフリーホイールおよび2つのラジアル軸受を有する変速機構成部品を備える変速装置 図5
  • 特表-1つのフリーホイールおよび2つのラジアル軸受を有する変速機構成部品を備える変速装置 図6
  • 特表-1つのフリーホイールおよび2つのラジアル軸受を有する変速機構成部品を備える変速装置 図7
  • 特表-1つのフリーホイールおよび2つのラジアル軸受を有する変速機構成部品を備える変速装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】1つのフリーホイールおよび2つのラジアル軸受を有する変速機構成部品を備える変速装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/06 20060101AFI20231102BHJP
   F16C 19/26 20060101ALI20231102BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20231102BHJP
   F16C 33/46 20060101ALI20231102BHJP
   F16H 55/17 20060101ALI20231102BHJP
   F16D 41/067 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
F16D41/06 F
F16C19/26
F16C33/58
F16C33/46
F16H55/17 A
F16D41/067
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526925
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 DE2021100694
(87)【国際公開番号】W WO2022096052
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】102020128985.5
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ライムヒェン
【テーマコード(参考)】
3J030
3J701
【Fターム(参考)】
3J030AC03
3J030BB02
3J030BB06
3J701AA13
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701AA72
3J701BA34
3J701BA45
3J701BA53
3J701BA54
3J701BA55
3J701BA63
3J701GA11
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの変速機構成部品(2)と、少なくとも1つのフリーホイール(3)と、を有する変速装置(1)であって、第1のラジアル軸受(4)は、フリーホイールに形成され、第2のラジアル軸受(5)は、変速機構成部品(2)に形成されている、変速装置(1)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速装置(1)であって、少なくとも、
-変速機構成部品(2)と、
-少なくとも1つのフリーホイール(3)と、
-第1のラジアル軸受(4)および第2のラジアル軸受(5)と、
-軸線方向に位置合わせされた中心軸線(8)と、を有し、
前記フリーホイール(3)は、
-少なくとも1つのクランプ面(15)を有するフリーホイールリング(6)と、
-クランプ体(7)と、が設けられており、
-前記第1のラジアル軸受(4)を有し、
この場合、前記第1のラジアル軸受(4)は、前記変速機構成部品(2)内に収まっている前記フリーホイールリング(6)と一体/単一材料で形成されており、前記中心軸線(8)と同じ向きの第1の軸線方向において軸線方向で前記クランプ体(7)に接続し、
前記変速機構成部品(2)は、前記第2のラジアル軸受(5)と一体/単一材料で形成されており、前記第2のラジアル軸受(5)は、前記中心軸線(8)と同じ向きの第2の軸線方向において軸線方向で前記クランプ体(7)に接続する、変速装置(1)。
【請求項2】
-前記フリーホイールリング(6)は、中空円筒形に形成され、前記中心軸線(8)に対して同心に配置された第1の部分(10)を有し、
-前記第1のラジアル軸受(4)は、少なくとも、円盤状に形成された第2の部分(11)によって構成されており、
前記第2の部分(11)は、前記中心軸線(8)の方向において半径方向に前記第1の部分(10)から曲がり、前記第2の部分(11)は、前記第1のラジアル軸受(4)の、前記中心軸線(8)に向き、かつ前記中心軸線(8)の周りを取り囲む少なくとも1つの円筒形の第1の内面(12)が設けられている、請求項1に記載の変速装置(1)。
【請求項3】
前記フリーホイールリング(6)は、前記中心軸線(8)の方向に向いた第2の内面(14)を有し、前記第2の内面(14)は、前記第1の部分(10)に形成されており、前記第2の内面(14)に、前記クランプ体(7)のために少なくとも1つの第1のクランプ面(15)が形成されている、請求項2に記載の変速装置(1)。
【請求項4】
前記フリーホイールリング(6)は、前記中心軸線(8)の方向において半径方向に隆起するクランプ傾斜部(9)が円周方向内側に設けられており、前記クランプ傾斜部(9)のそれぞれに前記クランプ面(15)のうちの1つが形成されている、請求項3に記載の変速装置(1)。
【請求項5】
少なくとも1つの前記ラジアル軸受(4、5)は、前記クランプ体(7)および/または前記クランプ体(7)の保持器(20)のためにアキシャルストップ(18、19)を形成する、請求項1に記載の変速装置(1)。
【請求項6】
前記第1のラジアル軸受(4)は、第1のアキシャルストップ(18)を形成し、前記第2のラジアル軸受(5)は、第2のアキシャルストップ(19)を構成しており、前記クランプ体(7)は、前記アキシャルストップ(18)と前記アキシャルストップ(19)との間で軸線方向に配置されている、請求項5に記載の変速装置。
【請求項7】
前記フリーホイール(3)は、前記変速機構成部品(2)の孔(21)内に収まっており、前記孔(21)は、前記第2のラジアル軸受(5)の一部によって軸線方向に少なくとも部分的に側方で画定されている、請求項1に記載の変速装置。
【請求項8】
前記変速機構成部品(2)は、本体(35)と、前記中心軸線(8)の方向において半径方向に前記本体(35)から曲がる半径方向の突起(36)と、を有し、前記突起(36)は、前記孔(21)に軸線方向に側方で接続し、前記本体(35)と単一材料/一体で形成されている、請求項7に記載の変速装置。
【請求項9】
前記突起(36)は、前記第2のラジアル軸受(5)を有する、請求項8に記載の変速装置。
【請求項10】
フリーホイールハブ(13)を有し、前記フリーホイールハブ(13)は、前記中心軸線(8)に対して同心に配置され、少なくとも1つの第2のクランプ面(16)が設けられており、前記第2のクランプ面(16)は、半径方向に前記少なくとも1つの第1のクランプ面(15)に対向しており、前記フリーホイールハブ(13)は、更に円筒外面(17)が設けられており、前記円筒外面(17)は、前記突起(36)に形成された、前記第2のラジアル軸受(5)の第3の内面(38)に、同心に位置合わせされており、前記第3の内面(38)に半径方向に対向している、請求項2に記載の変速装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速装置であって、その変速装置は、少なくとも1つの第1の変速機構成部品と、少なくとも1つのフリーホイールと、1つの第1のラジアル軸受と、1つの第2のラジアル軸受を有し、フリーホイールは、少なくとも1つのクランプ傾斜部を有するフリーホイールリングと、クランプ体と、が設けられている、変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フリーホイール自体には、支承がない。すなわち、そのフリーホイールは、トルクのみを伝達し、そのためにまた、半径方向の力を吸収することができない。このフリーホイールの場合、シャフト軸との同心度は、別体の軸受によって確保されていなければならない。
【0003】
独国実用新案第29 904 524(U1)号は、この種の変速装置を示す。変速機構成部品は、歯車である。更に、変速装置は、フリーホイールハブを有し、そのフリーホイールハブは、この場合、フリーホイール内側リングとして形成されている。歯車と内側リングとは、変速装置の中心軸線の周りで、相互に相対回転可能である。歯車とフリーホイールハブとの間では、半径方向にクランプ体がフリーホイール保持器内に配置されている。変速装置の2つのラジアル軸受は、縦断面において変速装置の中心軸線に沿って見てそれぞれ側面にあるU字型プロファイルとして形成されているシートメタル製環状構成部品によって形成されている。各U字型プロファイルは、U字型プロファイルの半径方向に延在する円盤状の部分によって相互に接続されている、軸線方向に延出する2つの脚部を有する。軸線方向に延出した一方の脚部によって、各U字型プロファイルは、歯車内に収まっている。半径方向に対向する他方の脚部は、その都度半径方向に、内側リングとのわずかな軸線方向の隙間によって離間されている。2つのラジアル軸受は、半径方向の負荷が印加されているとき、歯車と内側リングとを半径方向に、ほとんど偏向することなく、中心軸線に対して同心に位置している。更に、2つのラジアル軸受は、フリーホイール保持器のアキシャスストップまたはガイドである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、簡単かつ高信頼に機能するフリーホイールを備える変速装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本課題は、請求項1の対象に従って解決される。
【0006】
本発明によれば、フリーホイールは、クランプ傾斜部を有する少なくとも1つのフリーホイールリングと、クランプ体と、からだけでなく、少なくとも1つのラジアル軸受からも構成される。この場合、第1のラジアル軸受は、変速機構成部品内に収まっているフリーホイールリングと一体/単一材料で形成されている。第1のラジアル軸受は、中心軸線と同じ向きの第1の軸線方向で軸線方向においてクランプ体に接続している。それに加えて、変速機構成部品は、第2のラジアル軸受と一体/単一材料で形成されている、またはその逆である。少なくとも1つの第2のラジアル軸受は、中心軸線と同じ向きの第2の軸線方向で軸線方向においてクランプ体に接続している。
【0007】
本発明による変速装置は、有利には、組み込まれた滑り軸受または転がり軸受によって、トルクのほかに、半径方向の力も吸収するので、別体のラジアル軸受を省略することができる。ラジアル軸受には、実質的に心合わせ機能が付随しており、その心合わせ機能によって、フリーホイール自体は、シャフトまたはフリーホイールハブに対して均一に同心に位置合わせされ、ひいては、浮動状態での不均一な負荷を防いでいる。そのような浮動状態は、変速装置の動作状態であり、その動作状態では、クランプ体は、ばねの作用によりクランプ面に対してプリテンションが印加されるが、トルクを伝達しないように、クランプ面の間に挟み込まれている。これは、例えば、重力または別に作用する力が変速機構成部品またはシャフトもしくはフリーホイールハブを同心の位置合わせによって強制される場合の、変速装置の静止時に当てはまる。非同心状態からのフリーホイールの回転開始またはフリーホイールの非同心の位置への動作は、損傷および故障につながる。その場合、ラジアル軸受は、フリーホイールリングがその同心度から外れて移動することを相互に防止する滑り軸受機能を備えたラジアルサポートである。
【0008】
後者は、本発明によれば、一方のラジアル軸受を一方の側のフリーホイールリング内に組み込み、他方のラジアル軸受を他方の側の変速機構成部品に組み込むことによって具現化されている。
【0009】
そこから、有利には、従来公知の変速装置を、ラジアル軸受用取付けスペースを増やす必要なく、より高い負荷容量を備えた本発明の変速装置と交換できることがもたらされる。追加の2つのラジアル軸受のために必要な取付けスペースは、ここで、より高い負荷容量を備えたフリーホイールを取り付けるために、すなわち、高トルクを伝達するために、使用することができる。代替的に、負荷容量を維持する場合、追加の軸受がないためにフリーホイールが幅狭になるので、本発明による変速装置のために必要な取付けスペースが減る。
【0010】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つのラジアル軸受がまた同時に、保持器および/またはクランプ体のためのアキシャルストップでもあることが企図されている。好適には、フリーホイールの2つのアキシャルストップ(アキシャルエッジ)は、軸線方向に左側と右側とで同時に、ラジアル軸受でもある。第1のラジアル軸受は、クランプ体上を軸線方向に見て沿って移動する。この場合、クランプ体と第1のラジアル軸受との間で軸線方向に、保持器の縁部および他の要素が配置されていることもまた考えられ得る。第2のラジアル軸受は、第1のラジアル軸受と共にクランプ体の離反した他方の側で軸線方向に見て、クランプ体上を軸線方向に沿って移動する。この場合、クランプ体と第2のラジアル軸受との間で軸線方向に、保持器の縁部および他の要素が配置されていることもまた考えられ得る。
【0011】
本発明の意味において、すべての軸線方向は、中心軸線に対して軸線方向に平行で中心軸線と同一方向に延びる。同時に、軸線方向は、中心軸線上を同心に延びると定義されている。中心軸線は、その場合、それに従って、空間における実際の中心族線の位置合わせに関係なく、常時軸線方向に位置合わせされているものとして考慮される。半径方向は、それにより、軸線方向と交差して延び、したがって、中心軸線と垂直に位置合わせされている。
【0012】
先行技術と比べて、有利には、別体のラジアル軸受またはアキシャルストップのための軸線方向の取付けスペースが節約されている。いずれにせよ、アキシャルストップとして使用されるエッジは、1つはフリーホイール上に、1つは変速機構成部品上に形成されており、それぞれアキシャルストップとして、かつラジアル軸受としての二重機能を有する。本発明の変速装置の製造費用は、本質的に削減されている。これはまた、以下で説明されるように、アキシャルストップ(エッジ)および同時にラジアル軸受の製造は、フリーホイールリングの製造時および変速機構成部品の完成時に組み込むことができるからでもある。そこから、一方では、先行技術の従来の解決策と比べて、プロセス工程が少なく、必要材料が削減され、かつリードタイムの短縮がもたらされ、在庫管理および輸送のための費用が削減されている。更に、ラジアルストップ要素およびアキシャルストップ要素を一体化することにより、2つの要素が個別に形成され、それに対応して、本発明による構成の、少なくとも2倍の軸線方向の取付けスペースを占める先行技術の変形形態と比較して、スペースが節約される。
【0013】
一体/単一材料で形成されているということは、本発明では、それらの要素が1個であり、一緒に1つの材料でできていることをいう。したがって、それらの要素は、当初は個別に製造された要素として、最終形態で、形状接続的かつ/または材料接続的に相互接続されていない。フリーホイールリングは、例えば、第1のラジアル軸受と一緒に、鋼材料で、好適には、その材料を有する鋼板で形成されている。フリーホイールリングおよび変速機構成部品もまた、この場合、例えば、延伸、貫通、スタンピングおよび切断またはそれらの組み合わせといった方法によって、冷間成形されて形成されている。代替的に、フリーホイールリング、および変速機構成部品もまた、例えば、鋳造、鍛造または押出し成形もしくは切削加工により製造されている。延伸、スタンピング、鋳造、鍛造または押出し成形といった成形方法によって、フリーホイールリングと第1のラジアル軸受との間、または変速機構成部品と第2のラジアル軸受との間の移行部に、フリーホイールリングまたは変速機構成部品の材料の、それぞれ連続するが中断されない接合構造が形成されている。例えば、アキシャルストップに対してクランプ体のアキシャルストップから生じるような、切削加工により製造される構成部品の、負荷を印加することによって発生する応力のピーク値は、塑性変形材料の、均一な、かつ切断によって中断されない接合構造によって防止される。また、構成部品は、好適には、実質的に応力印加なしの成形によって製造されており、ただし、研削または研磨などといった切削加工による後加工が排除されていない。構成部品は、好適には、鋼製であり、少なくとも部分的に焼き入れされている。同じことは、本発明の実施形態により、変速装置内に設けられているフリーホイールハブにも当てはまる。
【0014】
変速機構成部品とフリーホイールハブとは、相互に同心に配置されている。フリーホイールリングは、変速機構成部品内に収まっている。クランプ体は、フリーホイールリングとフリーホイールハブとの間で半径方向に配置されている。フリーホイールリングおよび/または半径方向内側に位置するフリーホイールハブは、少なくとも1つのクランプ面またはクランプ体用クランプ面を有する。クランプ面は、例えば、クランプ傾斜部に形成されている。変速装置の動作時、変速機構成部品は、フリーホイールハブに対して相対回転し、フリーホイールハブは、静止しているか、または、フリーホイールハブは、静止している変速機構成部品に対して相対回転する、のうちのいずれかである。代替的に、2つの構成部品は、相互に相対回転するか、または相互に異なる回転数で回転する。フリーホイールが切替位置のとき、クランプ体は、変速機構成部品のクランプ面とフリーホイールハブとの間で半径方向に挟み込まれているので、フリーホイールハブと変速機構成部品との間で、中心軸線周りに作用するトルクを逆方向に伝達することになる。
【0015】
変速機構成部品は、好適には、歯車である。フリーホイールハブは、例えば、フリーホイール内側リングまたはシャフト、例えば、少なくとも1つのクランプ面が形成されている変速機シャフトまたは類似の構成部品である。歯車の代わりに、ベルトプーリまたは支持構造(ハウジング、マウント)、トルクコンバータのハブまたは他の任意の変速機構成部品もまた設けられてもよい。
【0016】
クランプ体は、好適には、円筒形のクランプローラ、または、例えば、公知の骨形状に形成されたクランプ体といった、任意に別様に実施されたクランプ体である。
【0017】
包絡円は、仮想の、かつフリーホイール回転軸または中心軸線に対して同心の境界円であり、その境界円は、円周側に重なり合って連なるすべてのクランプ体、好適には、一連のクランプローラを内側または外側で取り囲み、かつ個々に点で接触する。傾斜部またはクランプ面内側が半径方向外側および円周外側にある傾斜部キャリアに形成されている、本発明の変速装置の好適な変形形態に関しては、以下が適用される。最大包絡円は、クランプ体が遊びなく取り付けられているとき、クランプ体を中心軸線から最も離れて取り付けることができる外摺動面(傾斜部、クランプ面)の箇所で、クランプ体の内側に隣接して測定されている。最小包絡円は、クランプ体のフリーホイールリングまたはシャフトの外摺動面(クランプ面)との接触部を通って延び、その結果、この箇所でフリーホイールリングまたはシャフトの外径と一致する。
【0018】
本発明の一実施形態は、内部にフリーホイールリングが中空円筒形に形成され、かつ中心軸線に対して同心に配置された第1の部分および円盤状に形成された第2の部分を有する変速装置を企図している。第1の部分で、内面側に少なくとも1つのクランプ面または複数のクランプ面が形成されており、好適には、クランプ傾斜部がクランプ面と共に形成されている。クランプ面は、半径方向で中心軸線の方向に合わせられている。第1のラジアル軸受は、第2の部分によってまたは隣接して、形作られているまたは形成されている。第2の部分は、半径方向で中心軸線の方向に第1の部分から曲がる。第2の部分は、中心軸線に向いた、かつ中心軸線周りに取り囲む、少なくとも1つの円筒形の内面が設けられており、その内面を介して、変速機構成部品またはフリーホイールを半径方向に支持することができる。
【0019】
本発明の更なる実施形態は、高い仕上げ品質および安価な製造のために、フリーホイールリングに合わせられており、そのフリーホイールリングは、例えば、延伸部品として薄壁の中空円筒形スリーブの形に形成されている。このスリーブの製造時、最初に、平坦なシートメタルストリップのプレートから、軸線方向の端部で底部が付き、かつ対向する軸線方向の端部で延伸段が付いたカップが延伸される。底部は、半径方向内側に向いた縁部が残るように穿孔される。この縁部は、後でラジアル軸受、かつ同時にエッジ、ひいてはクランプ体フリーホイールのクランプ体用アキシャルストップを形成する。
【0020】
前述の延伸段によって、エッジに軸線方向に対向しているスリーブの端部で、スリーブの壁厚が適切に低減される。壁厚が低減されたことによって、スリーブの縁部に規定曲げ箇所が準備されるので、縁部は、半径方向に内側へ折り返されやすくなり、面取り部が形成される。面取り部によって、フリーホイールリングを変速機構成部品の孔に挿入することが容易になる。
【0021】
スリーブは、用途に応じて、スリーブの延伸、スタンピング、圧延または押出し成形時に仕上げ工程に組み込まれている、半径方向内側にポケットおよびクランプ傾斜部の主要な構造要素を有する。傾斜部キャリア内での傾斜部またはポケットの成形を統合することによって、有利には、傾斜部およびポケットの形状を極めて高精度に変換することができる。更に、冷間成形による締結接触または転がり接触に関するクランプ傾斜部の接触面の表面品質は、必要に応じて製造工程に組み込まれるキャリブレーションによって極めて良好であり、切削加工による後加工の必要がない。
【0022】
変速装置は、好適には、フリーホイールハブの有無に関係なく、組立済みユニットとして形成されている。本発明の更なる利点は、フリーホイールリングが、クランプ体、ばね、およびフリーホイール内に組み込まれた他の要素、ならびにアキシャルストップおよびラジアル軸受と一緒に、組立が容易なユニットとして組立済みであり、かつ変速機構成部品内に設置され得ることにある。変速機構成部品、または変速機構成部品に形成されたアキシャルストップ付きラジアル軸受によって、フリーホイールのユニットおよび個々の要素が固定される。
【0023】
正しい縮尺では図示されていない実施例を参照しながら、本発明について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1のラジアル軸受4に関する、変速装置1の全体図である。
図2】中心軸線8に沿って軸線方向に延在する、図1に記載の変速装置1の任意の縦断面図である。
図3】中心軸線8に沿って軸線方向に延在する、図1に記載の変速装置1のアセンブリ23の可能な任意の縦断面図である。
図4】それ自体が変速装置1内に取り付けられているが、組立済みアセンブリ30として更に組立済みフリーホイール3から個別部品として切り離された変速機構成部品2と、フリーホイール3と、の中心軸線8の縦方向の断面展開図である。
図5図1で示された変速装置1の保持器20の全体図である。
図6】中心軸線8に沿って軸線方向に延在するシャフト22が追加された変速装置1の任意の縦断面図である。
図7図6からの詳細Zの拡大図である。
図8】任意の、かつ中心軸線22が垂直に貫通する半径方向面の、フリーホイール3のセグメントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1および図2-変速装置1は、変速機構成部品2およびフリーホイール3から構成されている。変速機構成部品2は、歯車であり、その歯車の噛合部24は、中心軸線8を取り囲むように形成されている。変速装置1には、2つのラジアル軸受4および5が装備されている。フリーホイール3は、フリーホイールリング6およびクランプ体7を有する。クランプ体7は、実質的に円筒状に形成されている。クランプ体7は、保持器20内に案内されており、そのために保持器ポケット26内に収まっている。保持器ポケット26は、側方で側縁27によって軸線方向に、かつ保持器20のセンタウェブ28によって円周方向に画定されている。センタウェブ28は、同時に、圧縮ばね29用ホルダである。一方のラジアル軸受5は、変速機構成部品2の構成部品である。他方のラジアル軸受4は、フリーホイール3の構成部品である。ラジアル軸受4は、フリーホイールリング6の環状円盤状部分11に形成されており、同時に、その一方の側には保持器20のためのアキシャルストップ18が形成されている。ラジアル軸受5は、変速機構成部品2の半径方向の突起36に接するように形成されており、同時に、その他方の側には保持器20のためのアキシャルストップ19が形成されている。
【0026】
図3-一般には、図4で示された組立済みアセンブリ30が好ましいことを前提とすることができる。図3で示されたアセンブリ23は、実質的にフリーホイールリング6のデザインを説明するために使用されるが、保持器が相応に取り付けやすい形である場合、または保持器なしのフリーホイールに対しては、組立済みアセンブリとしても使用することができる。
【0027】
アセンブリ23は、変速機構成部品2およびフリーホイールリング6からなる。フリーホイールリング6は、その開口端部34が先に変速機構成部品2の孔21に挿入または圧入されている。フリーホイールリング6と変速機構成部品2との間の接続は、好ましくは、プレス嵌めに取って代わられる。開口端部34は、この場合、前面側が突起36に隣接している。
【0028】
フリーホイールリング6は、好ましくは、鋼板から冷間形成されており、中空円筒形の第1の部分10および円盤状の第2の部分11からスリーブ形状に形成されており、その結果、第1の部分10および第2の部分11は、相互に一体/単一材料で形成されている。第1の部分10は、周辺部の内面側が連続しているクランプ傾斜部9を有する。クランプ傾斜部9のそれぞれにクランプ面15が形成されている。第2の部分11は、中心軸線8の方向において中心軸線8の周りで円周側が半径方向に延在しており、第1の内面12によって貫通孔31を画定している。第2の部分11は、(第1の)ラジアル軸受4を形成している。フリーホイールリング6は、好適には、底部付きカップとしてプレートから引き出された延伸部品である。カップ本体は、完成したフリーホイールリング6で、中空円筒形の第1の部分10を形成している。底部は、貫通孔31および環状円盤状に形成された第2の部分11が生じるように穿孔されている。この場合、フリーホイールリング6およびラジアル軸受4は、相互に一体/単一材料で延伸部品に形成されている。
【0029】
軸線方向に第2の部分11から離れた中空円筒形の部分10の端部34には、最初に、フリーホイールリング6の壁厚が低減されている延伸段が形成されている。この延伸段は、端部側で少し中心軸線8の方向に折り返されて、面取り部32を形成しており、この面取り部32によって、フリーホイールリング6またはアセンブリ30(図4を参照)のフリーホイールシート33内への組立が容易になっている。
【0030】
フリーホイールシート33は、図示した場合では、変速機構成部品2内の円筒形の孔21である。ただし、孔21は、例えば、形状接続式接合部または回転止め用に、代替的に別の形状で構成されていてもよい。孔21には、軸線方向に突起36が接続している。ただし、突起36は、孔を部分的に覆っているだけなので、中心軸線8に対して同心の孔37であり続ける。孔37は、円周側が第2のラジアル軸受5の一方の(第3の)内面38によって中心軸線8周りに画定されている。変速機構成部品2は、押出し成形または鍛造といった塑性成形によって変速機構成部品2の本体35および突起36を備えて製造されているので、本体35および突起36、ひいてはラジアル軸受5は、その半径方向で中心軸線8に内側に向いた円筒内面の内面38に相互に一体/単一材料で接続されている。
【0031】
図4-フリーホイール3は、既に前述のとおり、組立済みアセンブリ30として形成されており、フリーホイールリング6、保持器20、クランプ体7、および圧縮ばね29を有する。フリーホイール3は、変速機構成部品2の孔21内に設置または圧入されるように、準備されている。この場合、面取り部32によって、変速機構成部品2に対する同心の心合わせと、フリーホイール3を孔21内に「通すこと」と、が容易になる。変速機構成部品2は成形部品として準備されており、変速機構成部品2の本体35に、噛合部24、突起36およびラジアル軸受5が一体/単一材料で形成されている。
【0032】
図5-保持器20は、クランプローラの数に対応する数の保持器ポケット26を有する。保持器ポケット26は、円周側で、センタウェブ28によって相互に分離されている。保持器ポケット26のそれぞれ左とそれぞれ右とは、すべての保持器ポケットに対して共通の1つの側縁27に接続している。2つの側縁27は、センタウェブ28を介して相互に接続されている。各センタウェブ28には、保持器ポケット26内にある、それぞれ1つの圧縮ばね29が固定されている。
【0033】
図6-この図示では、変速装置1にフリーホイールハブ13が追加されている。フリーホイールハブ13は、フリーホイールリング6および中心軸線8に対して同心に心合わせされたシャフト22である。中心軸線8は、フリーホイールリング6、保持器20、変速機構成部品2、およびフリーホイールハブ13といった、実質的に回転対称のすべての構成部品に対する対称軸線である。フリーホイールハブ13の表面は、少なくともクランプ体7との接触範囲内では、クランプ体7用の円筒形の(第2の)外側クランプ面16として形成されている。第2のクランプ面16は、フリーホイールリング6のクランプ面15と半径方向に対向している。フリーホイールリング6の第2の部分11には、中心軸線8に対して半径方向内側に向いた内面12が形成されている。フリーホイールハブ13は、第1の内面12が第1のラジアルギャップ40と半径方向に対向しており、かつ第1のラジアル軸受4の構成部品である、第1の円筒外面部分39を有する。更に、フリーホイールハブ13には、突起36に形成された(第3の)内面38がラジアルギャップ42と半径方向に対向しており、かつ第2のラジアル軸受5の部品である、第2の円筒外面部分41が設けられている。
【0034】
図7-略語SA、SBおよびSCは、以下の条件下での隙間を示す。
【0035】
a.SAは、第1の内面12とフリーホイールハブ13とが相互に同心に位置合わせされている場合、第1の内面12と、半径方向の支持軸受として、かつ一時的に必要に応じて滑り軸受として実施されるラジアル軸受4の第1の面部分39との間のラジアルギャップ40の最大隙間である。SAおよびSBは、好適には、同じ大きさである。
【0036】
b.SBは、第3の内面38とフリーホイールハブ13とが相互に同心に位置合わせされている場合、第3の内面38と、半径方向の支持軸受として、かつ一時的に必要に応じて滑り軸受として実施されるラジアル軸受5の第2の面部分41との間のラジアルギャップ42の最大隙間である。SAおよびSBは、好適には、同じ大きさである。
【0037】
c.SCは、それぞれ個々のクランプ体7と第2のクランプ面16との間の最大隙間である。最大隙間SCは、好適には、等しく、ひいては、包絡円の半径RAと外円筒形の第2のクランプ面16の半径DAとの間の半径方向の差異としてもまた認識され得て、それらは、相互に区別することができる。半径RAおよびRDは、図7によれば詳細には図示されていないが、図6から明らかになる中心軸線8を垂直に貫通する(図では図示を内外に垂直に延びる)任意の半径方向面で測定されている。
【0038】
d.最大包絡円半径RAは、クランプ体7がこの図示では見えないフリーホイールリングのクランプ面の半径方向外側で、第2のクランプ面16の半径方向に、最大限離れて隣接する場合、保持器20内に案内されたクランプ体7の共通の包絡円で、中心軸線8から半径方向に測定される。そのような動作状態は、例えば、クランプ体7が第2のクランプ面16の遠心力によって外れ、かつフリーホイールがクランプ面16に対して自由回転するときに起こる。この場合、SC>SAおよび/またはSBである。一般には、SAおよびSBは、この動作状態ではまた0であってもよく、これにより、面または面部分12および39または38および41は、半径方向に接触し、かつラジアル軸受4および5を支持する。この場合、SCは、依然として0よりも大きい。
【0039】
e.それぞれ個々のクランプ体7とクランプ面16との間の最小隙間は、0に等しい。最小包絡円は、クランプ体7と第2のクランプ面16との接触部を貫通し、その結果、クランプ面16の外径DAと一致する。この動作状態の間(図8を参照)、クランプ体7は、クランプ面15とクランプ面16との間に挟み込まれており、フリーホイールによって中心軸線周りのトルクが伝達され得る。この場合、ラジアル軸受4および5の機能は、クランプ体7が衝撃をきっかけにして挟み込まれた位置から「急に動かされ(poppen)」、かつラジアル軸受が前述のd.に記載の条件に従って補整するように作用するまで、解除される。
【0040】
したがって、隙間SCまたはSBによって、クランプ面15および16の同心度からの最小限可能な半径方向の傾斜またはチルトが相互に、フリーホイールの損傷のない回転のために規定される。隙間SAおよびSB内のストッパまでの半径方向の最大傾斜、すなわち、隙間=0、は、そのため、クランプローラ7の半径方向の可能な傾斜SCより小さくなければならない。
【0041】
図8-フリーホイール3のセグメントは、ポケット43を有する。ポケット43は、半径方向において外側へクランプ傾斜部9とそのクランプ面15とによって画定されている。各ポケット43内には、クランプローラ7および圧縮ばね29が収納されている。圧縮ばね29は、他の点については詳しく図示されていない保持器20のセンタウェブ28に固定されている。クランプローラ7が図示された位置にあるとき、クランプローラ7は、フリーホイールリング6に形成された第1のクランプ面15と、フリーホイールハブ13に形成されたクランプ面16との間に、包絡円RAが最小のときに挟み込まれており、フリーホイール3は、トルクを伝達することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 変速装置
2 変速機構成部品
3 フリーホイール
4 フリーホイールの第1のラジアル軸受
5 変速機構成部品の第2のラジアル軸受
6 フリーホイールリング
7 クランプ体
8 中心軸線
9 クランプ傾斜部
10 第1の部分
11 第2の部分
12 第1の内面
13 フリーホイールハブ
14 第2の内面
15 第1のクランプ面
16 第2のクランプ面
17 円筒外面
18 第1のアキシャルストップ
19 第2のアキシャルストップ
20 保持器
21 孔
22 シャフト
23 アセンブリ
24 噛合部
25 クランプ面
26 保持器ポケット
27 側縁
28 センタウェブ
29 圧縮ばね
30 組立済みアセンブリ
31 貫通孔
32 面取り部
33 フリーホイールシート
34 開口端部
35 本体
36 突起
37 孔
38 第3の内面
39 第1の面部分
40 第1のラジアルギャップ
41 第2の面部分
42 第2のラジアルギャップ
43 ポケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】