(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】抗TIGIT抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20231102BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20231102BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231102BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231102BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231102BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231102BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20231102BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231102BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20231102BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231102BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231102BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231102BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20231102BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231102BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231102BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20231102BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20231102BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20231102BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20231102BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20231102BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
C12N5/0783
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61P31/00
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/10
A61P33/00
A61P31/18
G01N33/53 D
C12P21/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526967
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 CN2021129562
(87)【国際公開番号】W WO2022100573
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/127710
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521543336
【氏名又は名称】レプ バイオファーマ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ゴン, ウェンツ
(72)【発明者】
【氏名】トウ, イーウェイ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA05
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4B065AA90X
4B065AB01
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4C085AA13
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4C085BB36
4C085BB41
4C085BB42
4C085EE01
4C085EE03
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB64
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA51
(57)【要約】
抗TIGIT抗体およびその断片を提供する。前述の抗体およびその断片は、TIGITタンパク質に特異的に結合する。がんおよびウイルス感染などの疾患を処置および診断するための抗体または断片の使用方法も提供する。前記抗体またはその断片は、IgドメインおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)タンパク質に対して特異性を有し、重鎖可変領域(VH)であって、配列番号1のアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH CDR2、および配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含むVH、ならびに軽鎖可変領域(VL)であって、配列番号4のアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含むVLを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体またはその断片であって、前記抗体またはその断片が、IgドメインおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)タンパク質に対して特異性を有し、重鎖可変領域(VH)であって、配列番号1のアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH CDR2、および配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含むVH、ならびに軽鎖可変領域(VL)であって、配列番号4のアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含むVLを含む、抗体またはその断片。
【請求項2】
Fc断片をさらに含む、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項3】
前記Fc断片がヒトIgG1 Fc断片である、請求項2に記載の抗体またはその断片。
【請求項4】
ヒト化された、先行する請求項のいずれかに記載の抗体またはその断片。
【請求項5】
前記VHが、配列番号9~14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号15~18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、先行する請求項のいずれかに記載の抗体またはその断片。
【請求項6】
前記VHが配列番号11のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号15のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の抗体またはその断片。
【請求項7】
前記VHが配列番号10のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号16のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の抗体またはその断片。
【請求項8】
抗体依存性細胞傷害性(ADCC)成分である、先行する請求項のいずれかに記載の抗体またはその断片。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の断片および第2の特異性を有する第2の抗原結合断片を含む、二重特異性抗体。
【請求項10】
前記第2の特異性が、免疫細胞上の分子または腫瘍抗原に対する特異性である、請求項9に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
前記第2の特異性が、CD33、CD47、CD73、Her2、EGFR、CEA VEGF、CD155、CD112、CD113、PVRL3、PVRIG、CD3、CTLA-4、GITR、4-1BB、PD-L1、PD-1、LAG-3、CD28、CD122、TIM3、OX-40、OX40L、CD40、CD40L、LIGHT、ICOS、ICOSL、GITR、GITRL、CD27、VISTA、B7H3、B7H4、HEVM、BTLA、KIR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される分子に対する特異性である、請求項9に記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
前記断片および前記第2の抗原結合断片の各々が、Fab断片、単鎖可変断片(scFv)、または単一ドメイン抗体から独立して選択される、請求項9~11のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片および薬学的に許容され得る担体を含む組成物。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片をコードする1またはそれを超えるポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片をコードする1またはそれを超えるポリヌクレオチドを含む単離された細胞。
【請求項16】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、前記患者に請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片を投与する工程を含む、方法。
【請求項17】
がんを処置するための医薬品を製造するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片の使用。
【請求項18】
前記がんが、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、腎臓がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、および甲状腺がんからなる群から選択される、請求項16に記載の方法または請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記患者が、第2の薬剤、好ましくは免疫チェックポイント阻害剤でさらに処置される、請求項16もしくは18に記載の方法、または請求項17もしくは18に記載の使用。
【請求項20】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、CD28、CD122、4-1BB、またはBTLAに特異的な抗体または抗原結合断片である、請求項19に記載の方法または使用。
【請求項21】
感染の処置または阻害を必要とする患者において感染を処置または阻害する方法であって、前記患者に請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片を投与する工程を含む、方法。
【請求項22】
感染を処置または阻害するための医薬品を製造するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片の使用。
【請求項23】
前記感染が、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、または寄生虫感染である、請求項21に記載の方法または請求項22の使用。
【請求項24】
前記感染がHIV感染である、請求項21もしくは23に記載の方法または請求項22もしくは23に記載の使用。
【請求項25】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、(a)T細胞またはNK細胞を、インビトロで、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片で処置する工程;および(b)前記処置されたT細胞またはNK細胞を前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項26】
工程(a)の前に、個体からT細胞またはNK細胞を単離する工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記T細胞が、腫瘍浸潤Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはこれらの組み合わせである、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
NK細胞を処置する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項29】
試料中のTIGITの発現を検出する方法であって、前記試料を、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片と、前記抗体またはその断片が前記TIGITに結合する条件下で接触させる工程、および前記試料中のTIGITの発現を示す前記結合を検出する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
IgドメインおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)タンパク質は、免疫グロブリン(immunoglobin)タンパク質のPVR(ポリオウイルス受容体)ファミリーのメンバーである。これは、いくつかのT細胞クラス(濾胞BヘルパーT細胞(TFH)が挙げられる)上に発現される。TIGITは、高親和性でPVRに結合することが示されており、この結合は、T細胞依存性B細胞応答を制御するためのTFH細胞と樹状細胞との間の相互作用を補助すると考えられている。
【背景技術】
【0002】
TIGITは、細胞質側末端に免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を有する免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、活性化されたT細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞のサブセット上に発現される。TIGITは、CD155(PVRおよびnecl-5とも称される)、CD112(PVRL2およびネクチン-2とも称される)、と相互作用し、おそらくCD113(PVRL3およびネクチン-3とも称される)とも相互作用することが知られている。抗原提示細胞上に発現される高親和性リガンドCD155とTIGITが結合すると、T細胞およびNK細胞の機能を抑制することが報告されている。また、TIGITは、樹状細胞によるサイトカイン産生を調整することによってT細胞を間接的に阻害することが報告されている。
【0003】
腫瘍は、免疫応答を回避するために、PD-1およびTIGITなどのチェックポイント分子によって浸潤T細胞を疲労させ、NK細胞をサイレンシングする高抑制性の微小環境を構成する。CD8+T細胞上のTIGITの高レベル発現は、AML対象の臨床転帰不良と相関することが報告されている。AML対象由来の疲弊したTIGIT+CD8+T細胞の機能的欠陥は、TIGIT発現のsiRNA媒介性ノックダウンによって逆転されることが報告された。HIV感染中の血中およびSIV感染中のリンパ系組織中のエフェクターCD8+T細胞がより高レベルのTIGITを示すことも報告されている。
【0004】
また、TIGITはウイルス感染に関与する。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染中に、TIGIT発現CD8+T細胞は、多様なHIV感染個体群において拡大増殖し、HIV疾患進行の臨床マーカーに関連することが示されている。ウイルス量が検出不可能である個体でさえTIGITが高レベルで維持され、HIV特異性CD8+T細胞の大部分は、TIGITおよび別の負のチェックポイント受容体であるプログラム死タンパク質1(PD-1)の両方を同時発現し、疲弊T細胞のいくつかの特徴を保持していた。標的化モノクローナル抗体でこれらの経路をブロックすると、HIV特異性CD8+T細胞応答を回復させることができる。この経路を、「ショック・アンド・キル」HIV治癒アプローチ中のHIV感染細胞の死滅を強化するための標的にできる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本開示は、種々のがんおよび他の疾患(ウイルス感染など)の処置に使用することができるヒトTIGITタンパク質に特異的な抗体および抗原結合断片を提供する。
【0006】
本開示の一実施形態は、抗体またはその断片であって、抗体またはその断片は、IgドメインおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)タンパク質に対して特異性を有し、重鎖可変領域(VH)であって、配列番号1のアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH CDR2、および配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含むVH、ならびに軽鎖可変領域(VL)であって、配列番号4のアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含むVLを含む、抗体またはその断片を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号9~14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号15~18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHが配列番号11のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号15のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHが配列番号10のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号16のアミノ酸配列を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)成分である。
【0009】
方法も提供される。一実施形態では、がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、患者に本開示の抗体またはその断片を投与する工程を含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、がんは、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、腎臓がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、および甲状腺がんからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、処置方法または使用は、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、CD28、CD122、4-1BB、またはBTLAに特異的な抗体または抗原結合断片)などの第2の薬剤をさらに含む。
【0010】
別の実施形態では、感染の処置または阻害を必要とする患者において感染を処置または阻害する方法であって、患者に本開示の抗体またはその断片を投与する工程を含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、感染は、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、または寄生虫感染である。いくつかの実施形態では、感染がHIV感染である。
【0011】
なおさらに、一実施形態は、がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、(a)T細胞を、インビトロで、本開示の抗体またはその断片で処置する工程;および(b)処置されたT細胞を患者に投与する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、工程(a)の前に、個体からT細胞を単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、T細胞は、腫瘍浸潤Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはこれらの組み合わせである。
【0012】
また、一実施形態は、試料中のTIGITの発現を検出する方法であって、試料を、本開示の抗体またはその断片と、抗体またはその断片がTIGITに結合する条件下で接触させる工程、および試料中のTIGITの発現を示す結合を検出する工程を含む、方法が提供される。
【0013】
一実施形態では、がん患者から細胞を単離する工程および本開示の抗体またはその断片を使用してTIGITタンパク質の存在を検出する工程を含む、抗TIGIT治療を用いた処置に好適な患者を同定する方法をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、抗体76D12B10のヒトTIGITタンパク質への結合についてのElisa EC
50を示す。
【0015】
【
図2】
図2は、76D12B10抗体がカニクイザルTIGITに高親和性で結合することができ、ラットTIGITまたはマウスTIGITに結合することができないことを示す。
【0016】
【
図3】
図3は、組換えTIGITに対する76D12B10の結合動態を示す。
【0017】
【
図4】
図4は、キメラ抗体と対比してすべての試験したヒト化抗体がヒトTIGITに匹敵する結合有効性を有していたことを示す。
【0018】
【
図5】
図5は、キメラ抗体と対比してHu02抗体およびHu06抗体がヒトTIGITに匹敵する結合有効性を有していたことを示す。
【0019】
【
図6】
図6は、組換えTIGITに対するHu02抗体およびHu06抗体の結合動態を示す。
【0020】
【
図7】
図7は、Hu02抗体およびHu06抗体がTIGITとCD155の相互作用を用量依存性にブロックすることができることを示す。
【0021】
【
図8】
図8は、細胞ベースの機能アッセイによるとHu02抗体およびHu06抗体がCD155のその受容体TIGITへの結合を用量依存性に阻害することを示す。
【0022】
【
図9】
図9は、インビボでのMC38同系マウスモデルにおいてHu02抗体がチラゴルマブより高い有効性を有していたことを示す。
【0023】
【
図10】
図10は、チラゴルマブと対比してLP010-02がヒトTIGITタンパク質に匹敵する結合有効性を有していたことを示す。
【0024】
【
図11】
図11は、LP010-02抗体およびチラゴルマブ抗体がヒトTIGITタンパク質のヒトCD155への結合を効率的に阻害することができることを示す。
【0025】
【
図12】
図12は、チラゴルマブと対比してLP010-02がヒトTIGITタンパク質を過剰発現した細胞に対して良好な結合有効性を有していたことを示す。
【0026】
【
図13】
図13は、LP010-02抗体がチラゴルマブおよび22G2よりも高い活性でTIGITとCD155の相互作用をブロックしたことを示す。
【0027】
【
図14】
図14は、インビボでのCT26同系マウスモデルにおいて、LP010-02とHX008の組み合わせが各抗体のみと比較して有効性が増大したことを示す。
【0028】
【
図15】
図15は、インビトロでLP010-02がチラゴルマブより高いADCC活性を有していたことを示す。
【0029】
【
図16】
図16は、インビトロでLP010-02がチラゴルマブより高いCDC活性を有していたことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
定義
「a(1つの、ある)」または「an(1つの、ある)」実体という用語は、1またはそれを超えるその実体を指すことに留意されたい。例えば、「1つの抗体(an antibody)」は、1またはそれを超える抗体を表すと理解される。したがって、「a」(または「an」)、「1またはそれを超える」、および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書では互換的に使用することができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「抗体」または「抗原結合ポリペプチド」は、抗原を特異的に認識して結合するポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。抗体は、全抗体および任意の抗原結合断片またはその単鎖であり得る。したがって、「抗体」という用語は、抗原に結合する生物学的活性を有する免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む任意のタンパク質またはペプチド含有分子を含む。そのようなものの例としては、重鎖もしくは軽鎖の相補性決定領域(CDR)もしくはそのリガンド結合部分、重鎖もしくは軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖定常領域、フレームワーク(FR)領域もしくはその任意の部分、または結合タンパク質の少なくとも1つの部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書で使用される「抗体断片」または「抗原結合断片」という用語は、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどの抗体の一部である。構造にかかわらず、抗体断片は、インタクトな抗体によって認識される同じ抗原と結合する。「抗体断片」という用語は、アプタマー、シュピーゲルマー(spiegelmer)、およびダイアボディを含む。「抗体断片」という用語はまた、特定の抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように作用する任意の合成または遺伝子操作されたタンパク質を含む。
【0033】
本明細書で使用される場合、抗体という用語は、生化学的に区別することができる様々な広範なクラスのポリペプチドを包含する。当業者は、重鎖がガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ、μ、α、δ、またはε)として分類され、その中にいくつかのサブクラスがあることを十分に理解する(例えば、γ1~γ4)。抗体の「クラス」をそれぞれIgG、IgM、IgA、IgG、またはIgEとして決定するのは、この鎖の性質である。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5などは、十分に特徴付けられており、機能的特殊化を付与することが知られている。これらのクラスおよびアイソタイプのそれぞれの修飾バージョンは、本開示を考慮して当業者に容易に識別可能であり、したがって、本開示の範囲内である。すべての免疫グロブリンクラスが明らかに本開示の範囲内であり、以下の議論は一般に、免疫グロブリン分子のIgGクラスを対象とする。IgGに関して、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量約23,000ダルトンの2つの同一の軽鎖ポリペプチドと、分子量約53,000~70,000ダルトンの2つの同一の重鎖ポリペプチドとを含む。4つの鎖は、典型的には、「Y」配置でジスルフィド結合によって結合され、ここで、軽鎖が「Y」の口から始まり可変領域を通って続く重鎖を支える。
【0034】
本開示の抗体、その抗原結合ポリペプチド、バリアント、または誘導体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、またはキメラ抗体、単鎖抗体、エピトープ結合断片(例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VKドメインもしくはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーによって産生される断片、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書中に開示のLIGHT抗体に対する抗Id抗体が挙げられる))が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の免疫グロブリンまたは抗体分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl、およびIgA2)、またはサブクラスのものであり得る。
【0035】
軽鎖は、カッパまたはラムダ(Κ、λ)のいずれかに分類される。各重鎖クラスは、カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖のいずれかと結合され得る。一般に、軽鎖および重鎖は互いに共有結合し、2つの重鎖の「テール」部分は、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞、または遺伝子操作宿主細胞のいずれかによって生成された場合、共有結合性ジスルフィド結合および非共有結合性の連結によって互いに結合している。重鎖では、アミノ酸配列は、Y配置のフォーク形の末端のN末端から各鎖の下部のC末端まで伸びている。
【0036】
軽鎖および重鎖の両方は、構造的および機能的な相同性領域に分割されている。用語「定常」および「可変」を機能について使用する。これに関して、軽鎖部分(VK)および重鎖部分(VH)の両方の可変ドメインが抗原に対する認識および特異性を決定することが認識されるであろう。逆に、軽鎖(CK)および重鎖(CH1、CH2、またはCH3)の定常ドメインは、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合、および補体結合などの重要な生物学的性質を付与する。慣例により、定常領域ドメインのナンバリングは、抗体の抗原結合部位またはアミノ末端から遠くなるほど増加する。N末端部分は可変領域であり、C末端部分は定常領域であり;CH3およびCKドメインは、実際は、それぞれ重鎖および軽鎖のカルボキシ末端を含む。
【0037】
上記のように、可変領域により、抗体は抗原上のエピトープを選択的に認識して特異的に結合することが可能である。すなわち、抗体のVKドメインとVHドメイン、すなわち相補性決定領域(CDR)のサブセットを組み合わせて三次元抗原結合部位を定義する可変領域を形成する。この四要素抗体構造は、Yの各アームの末端に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位は、各VH鎖およびVK鎖上の3つのCDR(すなわち、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3)によって定義される。いくつかの例(例えば、ラクダ科の種に由来するか、ラクダ科動物免疫グロブリンに基づいて操作されたある特定の免疫グロブリン分子)において、完全な免疫グロブリン分子は、重鎖のみからなることが可能であり、軽鎖を持たない。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-448(1993)を参照のこと。
【0038】
天然に存在する抗体では、各抗原結合ドメイン中に存在する6つの「相補性決定領域」または「CDR」は、前述の抗体が水性環境でその三次元配置を取るので、抗原結合ドメインを形成するように特異的に配置されたアミノ酸の短い不連続な配列である。「フレームワーク」領域と称される抗原結合ドメイン中のアミノ酸の残部は、分子間の変動性が低い。フレームワーク領域は主にβ-シート立体配座を取り、CDRはループを形成して、前述のβシート構造をつなぎ、場合によっては、前述のβシート構造の一部を形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖間の非共有結合性相互作用によってCDRを正確な方向に配置させる足場を形成するように作用する。配置されたCDRによって形成された抗原結合ドメインは、免疫反応性抗原上のエピトープに相補的な表面を規定する。この相補性表面は、抗体のその同族エピトープへの非共有結合を促進する。当業者は、任意の所与の重鎖可変領域または軽鎖可変領域のCDRおよびフレームワーク領域を含むアミノ酸をそれぞれ容易に同定することができ、これは、前述のアミノ酸が正確に定義されているからである(”Sequences of Proteins of Immunological Interest,”Kabat,E.,et al.,U.S.Department of Health and Human Services,(1983);およびChothia and Lesk,J.MoI.Biol.,196:901-917(1987)を参照のこと)。
【0039】
当該分野で使用されており、そして/または許容されている用語に2またはそれを超える定義が存在する場合、本明細書中で使用される用語の定義は、逆の意味が明確に述べられていない限り、全てのかかる意味を含むことが意図される。具体例としては、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見出された不連続の抗原の組み合わせ部位を説明するために、用語「相補性決定領域」(「CDR」)を使用する。この特定の領域は、Kabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,”Sequences of Proteins of Immunological Interest”(1983)およびChothia et al.,J.MoI.Biol.196:901-917(1987)(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。KabatおよびChothiaに従ったCDRの定義は、相互に比較した場合のアミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。それにもかかわらず、抗体またはそのバリアントのCDRについて言及するためのいずれかの定義の適用は、本明細書中で定義し、使用される用語の範囲内にあることが意図される。上記の各引用文献によって定義されたCDRを含む適切なアミノ酸残基を、比較のために以下の表に記載する。特定のCDRを含む正確な残基数は、CDRの配列およびサイズに応じて変動するであろう。当業者は、抗体の可変領域のアミノ酸配列を考慮した場合にどの残基が特定のCDRを含むかを日常的に決定することができる。
【表8】
【0040】
また、Kabat et al.は、任意の抗体に適用可能な可変ドメイン配列についてのナンバリングシステムを定義した。当業者は、配列自体を超えるいかなる実験データに頼ることなく、この「Kabatナンバリング」システムを任意の可変ドメイン配列に一義的に割り当てることができる。本明細書中で使用される場合、「Kabatナンバリング」は、Kabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,”Sequence of Proteins of Immunological Interest”(1983)に記載のナンバリングシステムを指す。
【0041】
上記の表に加えて、Kabatナンバーシステムは、以下のCDR領域を記載している:CDR-H1は、およそアミノ酸31(すなわち、最初のシステイン残基のおよそ9残基後ろ)から始まり、およそ5~7アミノ酸を含み、次のトリプトファン残基で終了する。CDR-H2は、CDR-H1の末端から15残基後ろから始まり、およそ16~19アミノ酸を含み、次のアルギニン残基またはリジン残基で終了する。CDR-H3は、CDR-H2の末端からおよそ33アミノ酸残基後ろから始まり;3~25アミノ酸を含み;配列W-G-X-G(式中、Xは任意のアミノ酸である)で終了する。CDR-L1は、およそ残基24(すなわち、システイン残基の後ろ)から始まり;およそ10~17残基を含み;次のトリプトファン残基で終了する。CDR-L2は、CDR-L1の末端からおよそ16残基後ろから始まり、およそ7残基を含む。CDR-L3は、CDR-L2の末端からおよそ33残基後ろ(すなわち、システイン残基の後ろ)から始まり;およそ7~11残基を含み、配列FまたはW-G-X-G(式中、Xは任意のアミノ酸である)で終了する。
【0042】
本明細書中に開示の抗体は、任意の動物供給源(トリおよび哺乳動物が挙げられる)に由来し得る。好ましくは、抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマ、またはトリの抗体である。いくつかの実施形態では、可変領域は、起源が、コンドリクトイドであり得る(例えば、サメ由来)であり得る。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「重鎖定常領域」は、免疫グロブリン重鎖由来のアミノ酸配列を含む。重鎖定常領域を含むポリペプチドは、少なくとも1つの以下を含む:CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中央、および/または下部のヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはそのバリアントもしくは断片。例えば、本開示で用いる抗原結合ポリペプチドは、CH1ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、およびCH2ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、およびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖、またはCH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含み得る。別の実施形態では、本開示のポリペプチドは、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。さらに、本開示で用いる抗体は、CH2ドメインの少なくとも一部(例えば、CH2ドメインの全部または一部)を欠き得る。上記のように、当業者は、重鎖定常領域のアミノ酸配列が天然に存在する免疫グロブリン分子由来のアミノ酸配列と異なるように重鎖定常領域が修飾され得ることを理解するであろう。
【0044】
本明細書中に開示の抗体の重鎖定常領域は、異なる免疫グロブリン分子に由来し得る。例えば、ポリペプチドの重鎖定常領域は、IgG1分子由来のCH1ドメインおよびIgG3分子由来のヒンジ領域を含み得る。別の例では、重鎖定常領域は、IgG1分子に一部由来し、かつIgG3分子に一部由来するヒンジ領域を含むことができる。別の例では、重鎖部分は、IgG1分子に一部由来し、かつIgG4分子に一部由来するキメラヒンジを含むことができる。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「軽鎖定常領域」は、抗体軽鎖由来のアミノ酸配列を含む。好ましくは、軽鎖定常領域は、定常カッパドメインまたは定常ラムダドメインのうちの少なくとも1つを含む。
【0046】
「軽鎖-重鎖対」は、軽鎖のCLドメインと重鎖のCH1ドメインとの間のジスルフィド結合を介して二量体を形成することができる軽鎖および重鎖の集合物を指す。
【0047】
前述したように、種々の免疫グロブリンクラスの定常領域のサブユニット構造および三次元配置は周知である。本明細書中で使用される場合、用語「VHドメイン」は、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端可変ドメインを含み、用語「CH1ドメイン」は、免疫グロブリン重鎖の第1の(最もアミノ末端の)定常領域ドメインを含む。CH1ドメインは、VHドメインに隣接し、免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域のアミノ末端にある。
【0048】
本明細書中で使用される場合、用語「CH2ドメイン」は、例えば、従来のナンバリングスキームを使用して抗体の約残基244から残基360まで達する重鎖分子の一部を含む(残基244~360、Kabatナンバリングシステム;および残基231~340、EUナンバリングシステム;Kabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,”Sequences of Proteins of Immunological Interest”(1983)を参照のこと)。CH2ドメインは、別のドメインと緊密に対合しないという点で固有である。むしろ、2つのN結合分枝炭水化物鎖は、インタクトなナイーブIgG分子の2つのCH2ドメインの間に挿入されている。CH3ドメインは、CH2ドメインからIgG分子のC末端まで達し、およそ108残基を含むことも十分に報告されている。
【0049】
本明細書中で使用される場合、用語「ヒンジ領域」は、CH1ドメインをCH2ドメインに連結させる重鎖分子部分を含む。このヒンジ領域は、およそ25残基を含み、柔軟性があり、したがって、2つのN末端抗原結合領域が独立して移動可能である。ヒンジ領域を、以下の3つの個別のドメインにさらに分割することができる:上部、中央、および下部のヒンジドメイン(Roux et al.,J.Immunol 161:4083(1998))。
【0050】
本明細書中で使用される場合、用語「ジスルフィド結合」は、2つの硫黄原子の間に形成された共有結合を含む。アミノ酸システインは、ジスルフィド結合を形成するか、第2のチオール基と架橋することができるチオール基を含む。ほとんどの天然に存在するIgG分子では、CH1領域およびCK領域は、ジスルフィド結合によって連結されており、2つの重鎖は、Kabatナンバリングシステムを使用して239および242に対応する位置(226位または229位、EUナンバリングシステム)で2つのジスルフィド結合によって連結されている。
【0051】
本明細書中で使用される場合、用語「キメラ抗体」は、免疫反応性を示す領域または部位が第1の種から得られるか由来し、定常領域(本開示によれば、インタクトであり得るか、一部であり得るか、修飾され得る)が第2の種から得られる任意の抗体を意味すると考えられるであろう。一定の実施形態では、標的結合領域または標的結合部位は、非ヒト起源(例えば、マウスまたは霊長類)に由来し、定常領域はヒトである。
【0052】
本明細書中で使用される場合、「ヒト化率」は、ヒト化ドメインと生殖系列ドメインとの間のフレームワークのアミノ酸の相違数(すなわち、非CDRのアミノ酸の相違数)を決定し、アミノ酸の総数から前述の数を差し引き、次いで、これをアミノ酸の総数で除し、100を掛けることによって計算される。
【0053】
「特異的に結合する」または「特異性を有する」とは、一般に、抗体がその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、および結合が抗原結合ドメインとエピトープとの間の何らかの相補性を伴うことを意味する。この定義によれば、抗体は、その抗原結合ドメインを介して、ランダムな無関係のエピトープに結合するよりも容易に、そのエピトープに結合する場合、そのエピトープに「特異的に結合する」と言われる。「特異性」という用語は、本明細書では、特定の抗体が特定のエピトープに結合する相対親和性を限定するために使用される。例えば、抗体「A」は、抗体「B」よりも所与のエピトープに対して高い特異性を有すると見なされ得るか、または抗体「A」は、関連するエピトープ「D」に対してそれが有するよりも高い特異性でエピトープ「C」に結合すると言われ得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、「処置する」または「処置」という用語は、治療的処置および予防的または予防的手段の両方を指し、目的は、がんの進行などの望ましくない生理学的変化または障害を予防または減速(軽減)することである。有益なまたは所望の臨床結果には、検出可能であろうと検出不能であろうと、症状の緩和、疾患の程度の減少、疾患の安定化(すなわち、悪化しない)状況、疾患進行の遅延または遅延、病状の改善または緩和、および寛解(部分的であろうと全体的であろうと)が含まれるが、これらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けていない場合に予想される生存と比較して生存を延長することを意味し得る。処置を必要とする者には、既に状態もしくは障害を有する者、ならびに状態もしくは障害を有する傾向がある者、または状態もしくは障害を予防すべき者が含まれる。
【0055】
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」とは、診断、予後または治療が望まれる任意の対象、特に哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象には、ヒト、飼育動物、農場動物および動物園動物、スポーツ動物またはペット動物、例えばイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、乳牛などが含まれる。
【0056】
本明細書で使用される場合、「処置を必要とする患者に」または「処置を必要とする対象」などの語句は、例えば検出のため、診断手順および/または処置のために使用される本開示の抗体または組成物の投与から利益を得るであろう対象、例えば哺乳動物対象(ヒト対象を含む)を含む。
抗TIGIT抗体
【0057】
PD-1およびPD-L1と同様に、IgドメインおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)は、がん患者の免疫細胞上で頻繁に過剰発現される。TIGITは免疫チェックポイントと見なされており、その遮断により、細胞増殖、サイトカイン産生、ならびにTA特異的CD8+T細胞およびTIL CD8+T細胞の脱顆粒を増大することができる。また、TIGITの標的化は、HIV感染細胞の死滅を増強すると考えられている。
【0058】
TIGITを標的化する抗体が開発中であり、ある特定の臨床上の成果が得られている。Bristol-Myers Squibb Companyは、例えば、実験例における対照として使用した抗TIGIT抗体22G2を開示した(例えば、米国特許出願公開第20160176963号を参照のこと)。比較のために使用された別の参照抗体は、チラゴルマブ(RG6058)であり、これはRocheによって開発された非小細胞肺がん処置のための完全ヒトモノクローナル抗体である。しかしながら、TIGITを標的化するいかなる分子も依然として承認されていない。
【0059】
本開示は、ヒトTIGITタンパク質に対して高い親和性および阻害活性を有する抗TIGIT抗体を提供する。重要には、実施例7~8で実証するように、新規に開示された抗TIGIT抗体は、対照抗体チラゴルマブを凌いでいた。チラゴルマブと同様に、本発明の抗体は、強力な結合親和性を有する。しかしながら、予想外に、本発明の抗体は、22G2およびチラゴルマブの両方よりもTIGITとCD155との間の相互作用の阻害活性が有意に高かった(実施例8、
図13を参照のこと)。さらに、本発明の抗体は、チラゴルマブよりも高い抗体依存性の細胞傷害性(ADCC)および補体依存性細胞傷害性(CDC)を示した(実施例10~11、
図15~16を参照のこと)。したがって、本発明の抗体は、開発済みの抗体よりも優れた性質を有する。
【0060】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、ヒトTIGITタンパク質に対する結合特異性を有する抗TIGIT抗体またはその断片を提供する。いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、(a)配列番号1を含むVH CDR1;(b)配列番号2を含むVH CDR2;(c)配列番号3を含むVH CDR3;(d)配列番号4を含むVL CDR1;(e)配列番号5を含むVL CDR2;および(f)配列番号6を含むVL CDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体またはその断片は、(a)配列番号1のVH CDR1、または配列番号1と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する配列番号1のバリアント;(b)配列番号2のVH CDR2、または配列番号2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する配列番号2のバリアント;(c)配列番号3のVH CDR3、または配列番号3と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する配列番号3のバリアント;(d)配列番号4のVL CDR1、または配列番号4と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する配列番号4のバリアント;(e)配列番号5のVL CDR2;および(f)配列番号6のVL CDR3、または配列番号6と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する配列番号6のバリアントを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体またはその断片は、(a)配列番号1のVH CDR1、または配列番号1と比較して単一の置換、欠失、もしくは挿入を有する配列番号1のバリアント;(b)配列番号2のVH CDR2、または配列番号2と比較して単一の置換、欠失、もしくは挿入を有する配列番号2のバリアント;(c)配列番号3のVH CDR3、または配列番号3と比較して単一の置換、欠失、もしくは挿入を有する配列番号3のバリアント;(d)配列番号4のVL CDR1、または配列番号4と比較して単一の置換、欠失、もしくは挿入を有する配列番号4のバリアント;(e)配列番号5のVL CDR2、または配列番号5と比較して単一の置換、欠失、もしくは挿入を有する配列番号5のバリアント;および(f)配列番号6のVL CDR3、または配列番号6と比較して単一の置換、欠失、もしくは挿入を有する配列番号6のバリアントを含む。
【0062】
本明細書中に開示の置換は、いくつかの実施形態では、保存的置換である。
【0063】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基と置換される置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当該分野で定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β位に側鎖を有するもの(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。したがって、免疫グロブリンポリペプチド中の非必須アミノ酸残基は、同一の側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基と置換されることが好ましい。別の実施形態では、一連のアミノ酸を、構造的に類似するが側鎖ファミリーメンバーの順序および/または組成が異なる鎖と置換することができる。
【0064】
保存的アミノ酸置換の非限定的な例を、表A~Bに提供し、表中、0またはそれを超える類似性スコア(表Aを参照のこと)は、2つのアミノ酸の間の保存的置換を示す。
【表A】
【表B】
【0065】
抗体および断片の例としては、列挙したCDRを保持しながら、配列番号7および9~14からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号7および9~14からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するペプチドを含む重鎖可変領域を有するものが挙げられる。かかる抗体および断片の例としては、列挙したCDRを保持しながら、配列番号8および15~18からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号8および15~18からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するペプチドを含む軽鎖可変領域を有するものが挙げられる。
【0066】
抗体および断片の例としては、列挙したCDRを保持しながら、配列番号9~14からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号9~14からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するペプチドを含む重鎖可変領域を有するものが挙げられる。かかる抗体および断片の例としては、列挙したCDRを保持しながら、配列番号15~18からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号15~18からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するペプチドを含む軽鎖可変領域を有するものが挙げられる。
【0067】
抗体および断片の例としては、列挙したCDRを保持しながら、配列番号11のアミノ酸配列、または配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するペプチドを含む重鎖可変領域を有するものが挙げられる。かかる抗体および断片の例としては、列挙したCDRを保持しながら、配列番号15のアミノ酸配列、または配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するペプチドを含む軽鎖可変領域を有するものが挙げられる。例示的な抗体は、Hu02である。
【0068】
抗体および断片の例としては、列挙したCDRを保持しながら、配列番号10のアミノ酸配列、または配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するペプチドを含む重鎖可変領域を有するものが挙げられる。かかる抗体および断片の例としては、列挙したCDRを保持しながら、配列番号16のアミノ酸配列、または配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するペプチドを含む軽鎖可変領域を有するものが挙げられる。例示的な抗体は、Hu06である。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の抗TIGIT抗体または断片のうちのいずれか1つと競合してTIGITに特異的に結合する抗TIGIT抗体または断片も提供する。いくつかの実施形態では、競合的結合は、ELISAアッセイを使用して決定され得る。いくつかの実施形態では、競合する抗TIGIT抗体または断片とTIGITとの間の結合のKdは、約10-5M~約10-12M(約10-7M~約10-12M、または約10-8M~約10-12Mなど)である。いくつかの実施形態では、競合する抗TIGIT抗体または断片は、キメラであるか、ヒトであるか、部分ヒト化されているか、または完全ヒト化されている。
【0070】
本明細書に開示される抗体は、それらが由来する天然に存在する結合ポリペプチドとアミノ酸配列が異なるように修飾され得ることも当業者によって理解される。例えば、指定されたタンパク質に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、類似していてもよく、例えば、出発配列と一定のパーセント同一性を有していてもよく、例えば、出発配列と60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%またはこれらの値の任意の2つの間の範囲の同一であってもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体と通常関連しないアミノ酸配列または1もしくはそれを超える部分を含む。例示的な変形形態を本明細書により詳細に記載する。例えば、本明細書に開示される抗体は、柔軟性リンカー配列を含み得るか、または機能性部分(例えば、PEG、薬物、毒素、または標識)を付加するように修飾され得る。
【0072】
本開示の抗体、またはそのバリアント、または誘導体としては、修飾された(すなわち、共有結合性の付着が抗体のエピトープへの結合を妨害しないような任意のタイプの分子の抗体への共有結合性の付着による)誘導体が挙げられる。例えば、制限されないが、抗体を、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などによって修飾することができる。多数の化学修飾のうちのいずれかを、公知の技術(特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などが挙げられるが、これらに限定されない)によって行ってよい。さらに、抗体は、1またはそれを超える非古典的アミノ酸を含み得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗体は、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物学的応答調節物質、医薬、またはPEGにコンジュゲートされ得る。
【0074】
抗体は、検出可能な標識(放射性標識など)、免疫調節薬、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性を示す治療剤または診断剤、薬物または毒素であり得る細胞毒性剤、超音波増強剤、非放射性標識、これらの組み合わせ、および当該分野で公知の他のかかる薬剤が挙げられ得る治療剤にコンジュゲートされ得るか、融合され得る。
【0075】
抗体を、化学発光化合物にカップリングすることによって検出可能に標識することができる。次いで、化学発光性にタグ化した抗原結合ポリペプチドの存在を、一連の化学反応中に生じる発光の存在を検出することによって決定する。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、サロマティックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、およびシュウ酸エステルである。
【0076】
また、抗体を、蛍光発光金属(152Euまたはランタニド系の他の金属など)を使用して検出可能に標識することができる。これらの金属を、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの金属キレート基を使用して抗体に付着させることができる。種々の部分を抗体にコンジュゲートする技術は周知である(例えば、Arnon et al.,”Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243-56(Alan R.Liss,Inc.(1985);Hellstrom et al.,”Antibodies For Drug Delivery”,in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.,(eds.),Marcel Dekker,Inc.,pp.623-53(1987);Thorpe,”Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review”,in Monoclonal Antibodies’84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),pp.475-506(1985);”Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwin et al.(eds.),Academic Press pp.303-16(1985)、およびThorpe et al.,”The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates”,Immunol.Rev.(52:119-58(1982))を参照のこと)。
二機能性分子および併用療法
【0077】
TIGITは免疫チェックポイントである。免疫チェックポイント阻害剤として、TIGITに特異的な抗体または抗原結合断片を、腫瘍細胞または免疫細胞に特異的な第2の抗原結合断片と組み合わせて、二重特異性抗体を生成することができる。いくつかの実施形態では、本明細書中に開示の抗体または抗原結合断片を、第2の薬剤(腫瘍細胞または免疫細胞に特異的な第2の抗体または抗原結合断片など)と組み合わせて使用することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、食細胞、ナチュラルキラー細胞、好酸球、好塩基球、および肥満細胞からなる群から選択される。標的化することができる免疫細胞上の分子としては、例えば、CD33、CD47、CD73、Her2、EGFR、CEA VEGF、CD3、CD16、CD19、CD28、CD47、CD64、CD155、CD112、CD113、PVRL3、およびPVRIGが挙げられる。他の例としては、PD-1、CTLA-4、LAG-3(CD223としても公知)、CD28、CD122、4-1BB(CD137としても公知)、TIM3、OX-40またはOX40L、CD40またはCD40L、LIGHT、ICOS/ICOSL、GITR/GITRL、CD27、VISTA、B7H3、B7H4、HEVMまたはBTLA(CD272としても公知)、およびキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)が挙げられる。
【0079】
「腫瘍抗原」は、腫瘍細胞中で産生される抗原性物質を指す(すなわち、この物質は、宿主における免疫応答を惹起する)。腫瘍抗原は、腫瘍細胞の同定で有用であり、がん治療で用いるための潜在的な候補である。体内の正常なタンパク質は、抗原性を示さない。しかしながら、ある特定のタンパク質は、腫瘍発生中に産生されるか過剰発現されるため、身体には「外来物」に見える。このタンパク質としては、免疫系から十分に隔離された正常なタンパク質、極めて少量で正常に産生されるタンパク質、ある特定の発生段階のみで正常に産生されるタンパク質、または変異によって構造が改変されたタンパク質が挙げられ得る。
【0080】
多数の腫瘍抗原が当該分野で公知であり、新規の腫瘍抗原を、スクリーニングによって容易に同定することができる。腫瘍抗原の非限定的な例としては、EGFR、Her2、EpCAM、CD20、CD30、CD33、CD47、CD52、CD133、CD73、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、CIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、GM2、VEGF、VEGFR、インテグリン、αVβ3、α5β1、ERBB2、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、およびテネイシンが挙げられる。
【0081】
二重特異性の具体例としては、TIGIT/LAG3、TIGIT/CD47、TIGIT/PD-1、TIGIT/PD-L1、TIGIT/CD155、TIGIT/CD112、TIGIT/CD113、TIGIT/PVRL3、TIGIT/PVRIG、およびTIGIT/CD3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
異なる形式の二重特異性抗体も提供する。いくつかの実施形態では、抗TIGIT断片および第2の断片の各々は、Fab断片、単鎖可変断片(scFv)、または単一ドメイン抗体から独立して選択される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、Fc断片をさらに含む。
【0083】
単純に抗体または抗原結合断片のみを含むわけではない二機能性分子も提供する。腫瘍抗原標的化分子として、TIGITに特異的な抗体または抗原結合断片(本明細書中に記載のものなど)を、必要に応じてペプチドリンカーを介して、免疫サイトカインまたはリガンドと組み合わせることができる。連結される免疫サイトカインまたはリガンドとしては、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、GM-CSF、TNF-α、CD40L、OX40L、CD27L、CD30L、4-1BBL、LIGHT、およびGITRLが挙げられるが、これらに限定されない。かかる二機能性分子は、免疫チェックポイントブロッキング効果を腫瘍部位局所免疫調節と組み合わせることができる。
抗体をコードするポリヌクレオチドおよび抗体の調製方法
【0084】
本開示はまた、本開示の抗体、そのバリアントまたは誘導体をコードする単離されたポリヌクレオチドまたは核酸分子を提供する。本開示のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチド分子上または別個のポリヌクレオチド分子上の抗原結合ポリペプチド、そのバリアントまたは誘導体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域全体をコードし得る。さらに、本開示のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチド分子上または別個のポリヌクレオチド分子上の抗原結合ポリペプチド、そのバリアントまたは誘導体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の一部をコードし得る。
【0085】
抗体を作製する方法は当技術分野で周知であり、本明細書に記載されている。一定の実施形態では、本開示の抗原結合ポリペプチドの可変領域と定常領域の両方が完全にヒトである。完全ヒト抗体は、当分野で記載され、本明細書に記載される技術を使用して作製することができる。例えば、特定の抗原に対する完全ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してそのような抗体を産生するように修飾されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物に抗原を投与することによって調製することができる。
【0086】
一定の実施形態では、調製された抗体は、処置される動物(例えば、ヒト)において有害な免疫応答を誘発しないであろう。一実施形態では、本開示の抗原結合ポリペプチド、そのバリアント、または誘導体を、当該分野で認識された技術を使用して、その免疫原性を低下するように修飾する。例えば、抗体を、ヒト化抗体、霊長類化抗体、脱免疫化抗体、またはキメラ抗体にすることができる。これらの抗体型は、非ヒト抗体、典型的にはマウス抗体または霊長類抗体に由来し、親抗体の抗原結合特性を保持しているか、実質的に保持しているが、ヒトにおける免疫原性は低い。種々の方法((a)非ヒト可変ドメイン全体をヒト定常領域上にグラフティングしてキメラ抗体を生成すること;(b)非ヒト相補性決定領域(CDR)うちの少なくとも1つまたは複数の少なくとも一部を、ヒトのフレームワーク領域および重要なフレームワーク残基が保持されているか保持されていない定常領域にグラフティングすること;または(c)非ヒト可変ドメイン全体であるが、表面残基の置換によってヒト様区域で「覆われた」非ヒト可変ドメイン全体の移植が挙げられる)によってこの免疫原性低下が行われる。
【0087】
また、脱免疫化を使用して、抗体の免疫原性を減少させることができる。本明細書中で使用される場合、用語「脱免疫化」としては、T細胞エピトープが改変されるような抗体の変化(例えば、国際出願公開番号WO/9852976A1およびWO/0034317A2を参照のこと)が挙げられる。例えば、出発抗体由来の可変重鎖配列および可変軽鎖配列を分析し、配列内の相補性決定領域(CDR)および他の重要残基と比較したエピトープの位置を示す各V領域由来のヒトT細胞エピトープ「マップ」を作出する。最終抗体の活性の変動リスクの低い代替アミノ酸置換を同定するために、T細胞エピトープマップ由来の個別のT細胞エピトープを分析する。アミノ酸置換の組み合わせを含むある範囲の代替の可変重鎖配列および可変軽鎖配列をデザインし、これらの配列を、その後にある範囲の結合ポリペプチドに組み込む。典型的には、12個と24個の間のバリアント抗体を生成し、結合および/または機能について試験する。次いで、修飾された可変領域およびヒト定常領域を含む完全な重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子を発現ベクターにクローニングし、その後にプラスミドを全抗体の産生のために細胞株に移入する。次いで、抗体を、適切な生化学的アッセイおよび生物学的で比較し、最適なバリアントを同定する。
【0088】
本開示の抗原結合ポリペプチドの結合特異性を、インビトロアッセイ(免疫沈降、放射免疫アッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme-linked immunoabsorbent assay)(ELISA)など)によって決定することができる。
【0089】
単鎖Fv(scFv)および抗体を産生するために使用することができる技術の例としては、米国特許第4,946,778号および同第5,258,498号;Huston et al.,Methods in Enzymology 203:46-88(1991);Shu et al.,Proc.Natl.Sci.USA 90:1995-1999(1993);およびSkerra et al.,Science 240:1038-1040(1988)に記載の技術が挙げられる。いくつかの使用(ヒトにおける抗体のインビボ使用およびインビトロ検出アッセイが挙げられる)のために、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体を使用することが好ましい場合がある。キメラ抗体は、抗体の異なる部分が異なる動物種に由来する分子(マウスモノクローナル抗体に由来する可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体など)である。キメラ抗体の産生方法は、当該分野で公知である。
【0090】
ヒト化抗体は、1またはそれを超える非ヒト種由来の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する、所望の抗原に結合する非ヒト種抗体に由来する抗体分子である。しばしば、ヒトフレームワーク領域中のフレームワーク残基は、抗原結合を変化させる、好ましくは改善させるために、CDRドナー抗体由来の対応する残基と置換されるであろう。これらのフレームワークの置換を、当該分野で周知の方法によって(例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するためのCDRとフレームワーク残基の相互作用のモデリングおよび特定の位置の固有のフレームワーク残基を同定するための配列比較によって)同定する。
【0091】
所望のモノクローナル抗体をコードするDNAを、従来の手技を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブの使用によって)、容易に単離および配列決定することができる。単離およびサブクローニングされたハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの好ましい供給源としての機能を果たす。単離された時点で、DNAを、発現ベクターに配置することが可能であり、次いで、原核生物または真核生物の宿主細胞(本来は免疫グロブリンを産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞など)にトランスフェクトする。
【0092】
さらに、日常的な組換えDNA技術を使用して、本開示の抗原結合ポリペプチドのCDRのうちの1つまたは複数をフレームワーク領域内に(例えば、ヒトフレームワーク領域中に)挿入して、非ヒト抗体をヒト化し得る。フレームワーク領域は、天然に存在するフレームワーク領域またはコンセンサスフレームワーク領域、好ましくは、ヒトフレームワーク領域であり得る(例えば、ヒトフレームワーク領域のリストについてはChothia et al.,J.Mol.Biol.278:457-479(1998)を参照のこと)。好ましくは、フレームワーク領域とCDRの組み合わせによって生成されたポリヌクレオチドは、所望のポリペプチド(例えば、LIGHT)の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する抗体をコードする。好ましくは、1またはそれを超えるアミノ酸置換をフレームワーク領域内に作製してよく、好ましくは、アミノ酸置換は、抗体のその抗原への結合を改良する。さらに、かかる方法を使用して、鎖内ジスルフィド結合に関与する1またはそれを超える可変領域のシステイン残基のアミノ酸を置換または欠失して、1またはそれを超える鎖内ジスルフィド結合を欠く抗体分子を生成し得る。ポリヌクレオチドに対する他の変更は、本開示および当業者の範囲内に含まれる。
処置
【0093】
本明細書に記載されるように、本開示の抗体、バリアントまたは誘導体は、特定の処置および診断方法において使用され得る。
【0094】
本開示はさらに、本明細書中に記載される1またはそれを超える障害または症状を処置するために本開示の抗体を患者(例えば、動物、哺乳動物およびヒト)に投与することを伴う抗体に基づく治療を対象とする。本開示の治療用化合物には、本開示の抗体(本明細書に記載のそのバリアントおよび誘導体を含む)および本開示の抗体をコードする核酸またはポリヌクレオチド(本明細書に記載のそのバリアントおよび誘導体を含む)が含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
いくつかの実施形態では、それを必要とする患者のがんを処置する方法が提供される。この方法は、一実施形態では、有効量の本開示の抗体を患者に投与することを伴う。いくつかの実施形態では、患者の少なくとも1つのがん細胞(例えば、間質細胞)は、TIGITを過剰発現するか、またはTIGITを発現するように誘導される。
【0096】
がんの非例示的な例として、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、腎臓がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、および甲状腺が挙げられる。
【0097】
細胞治療、より具体的にはキメラ抗原受容体(CAR)T細胞(CAR-T)およびNK細胞(CAR-NK)治療も本開示で提供される。本開示の抗TIGIT抗体と接触させる(または本開示の抗TIGIT抗体を発現するように代替的に操作する)適切なT細胞およびNK細胞を使用することができる。そのような接触または操作を行うと、次いで、T細胞およびNK細胞を、処置を必要とするがん患者に導入することができる。がん患者は、本明細書に開示される種類のいずれかのがんを有し得る。T細胞は、例えば、腫瘍浸潤Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはそれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。
【0098】
いくつかの実施形態では、T細胞およびNK細胞は、がん患者自身から単離されている。いくつかの実施形態では、T細胞およびNK細胞は、ドナーによって、または細胞バンクから提供されている。T細胞およびNK細胞ががん患者から単離されると、望ましくない免疫反応を最小限に抑えることができる。
【0099】
本開示の抗体もしくはバリアント、またはそれらの誘導体を用いて処置、予防、診断および/または予後判定され得る、細胞生存の増加に関連するさらなる疾患または状態には、白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病(骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病を含む)および慢性白血病(例えば、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病)を含む))、真性多血症、リンパ腫(例:ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖疾患、および、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫などの肉腫および癌を含むがこれらに限定されない固形腫瘍などの悪性腫瘍および関連障害の進行および/または転移が含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
任意の特定の患者についての具体的な投薬レジメンおよび処置レジメンは、種々の要因(使用される特定の抗体、そのバリアントまたは誘導体、患者の年齢、体重、健康全般、性別、および食事、および投与時期、排泄率、薬物の組み合わせ、ならびに処置される特定の疾患の重症度が含まれる)に依存するであろう。医療奉仕者によるかかる要因の判断は、当業者の範囲内にある。また、量は、処置される個別の患者、投与経路、製剤のタイプ、使用される化合物の特徴、疾患の重症度、および所望の効果に依存するであろう。使用量を、当該分野で周知の薬理学的原理および薬物動態学的原理によって決定することができる。
【0101】
抗体、バリアントの投与方法としては、皮内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、鼻腔内投与、硬膜外投与、および経口投与が挙げられるが、これらに限定されない。抗原結合ポリペプチドまたは組成物は、任意の都合の良い経路によって(例えば、注入またはボーラス注射、上皮または皮膚粘膜の内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を介した吸収によって)投与され得、他の生物学的に活性な薬剤と共に投与され得る。したがって、本開示の抗原結合ポリペプチドを含む医薬組成物は、経口、直腸、非経口、槽内(intracistemally)、膣内、腹腔内、局所(散剤、軟膏、点滴剤、または経皮貼布による)、頬側、または口内噴霧もしくは鼻内噴霧として投与され得る。
【0102】
本明細書中で使用される用語「非経口」は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下、および関節内への注射および注入が挙げられる投与様式を指す。
【0103】
投与は、全身または局所であり得る。さらに、任意の好適な経路(脳室内注射および髄腔内注射が挙げられる)によって中枢神経系中に本開示の抗体を導入することが好ましい場合がある;脳室内注射は、例えば、オマヤレザバーなどのリザーバに取り付けられた脳室内カテーテルによって容易にされ得る。例えば、吸入器またはネブライザーの使用、およびエアロゾル化剤を用いた製剤によって肺投与を使用することもできる。
【0104】
処置を必要とする領域に局所的に本開示の抗原結合ポリペプチドまたは組成物を投与することが望ましい場合があり;例えば、決して制限されないが、手術中の局所注入、局所適用(例えば、術後の創傷包帯との併用)、注射、カテーテル、坐剤、または埋没物(前述の埋没物は、多孔質、無孔の、またはゼラチン質の材料(sialasticメンブレンなどのメンブレンが挙げられる)、または繊維から構成される)によってこの投与が行われ得る。好ましくは、本開示のタンパク質(抗体が挙げられる)を投与する場合、タンパク質を吸収しない材料を使用することに注意すべきである。
【0105】
さらなる実施形態では、本開示の組成物を、抗新生物剤、抗ウイルス剤、抗菌剤もしくは抗生物質製剤、または抗真菌剤と組み合わせて投与する。当該分野で公知のこれらの薬剤のうちのいずれかは、本開示の組成物中に含めて投与され得る。
【0106】
別の実施形態では、本開示の組成物を、化学療法剤と組み合わせて投与する。本開示の組成物と共に投与され得る化学療法剤としては、抗生物質誘導体(例えば、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、およびダクチノマイシン);抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン);代謝拮抗物質(例えば、フルオロウラシル、5-FU、メトトレキサート、フロクスウリジン、インターフェロンアルファ-2b、グルタミン酸、プリカマイシン、メルカプトプリン、および6-チオグアニン);細胞毒性剤(例えば、カルムスチン、BCNU、ロムスチン、CCNU、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、エストラムスチン、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シスプラチン、および硫酸ビンクリスチン);ホルモン(例えば、メドロキシプロゲステロン、リン酸エストラムスチンナトリウム、エチニルエストラジオール、エストラジオール、酢酸メゲストロール、メチルテストステロン、ジエチルスチルベストロールジホスファート、クロロトリアニセン、およびテストラクトン);ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、メファレン、クロラムブシル(chorambucil)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、およびチオテパ);ステロイドおよび組み合わせ(例えば、リン酸ベタメタゾンナトリウム(bethamethasone sodium phosphate));およびその他(例えば、ダカルバジン(dicarbazine)、アスパラギナーゼ、ミトタン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンブラスチン、およびエトポシド)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
さらなる実施形態では、本開示の組成物を、サイトカインと組み合わせて投与する。本開示の組成物と共に投与され得るサイトカインとしては、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、抗CD40、CD40L、およびTNF-αが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
さらなる実施形態では、本開示の組成物を、他の治療レジメンまたは予防レジメン(例えば、放射線療法など)と組み合わせて投与する。
【0109】
本開示の抗TIGIT抗体を、いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤と共に使用することができる。免疫チェックポイントは、シグナルを上昇させる(共刺激分子)かシグナルを低下させる免疫系の分子である。多数のがんは、T細胞シグナルを阻害することによって免疫系から自己防衛する。免疫チェックポイント阻害剤は、細胞によるかかる防御機序の停止を補助することができる。免疫チェックポイント阻害剤は、以下のチェックポイント分子のうちの任意の1つまたは複数を標的化し得る:PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3(CD223としても公知)、CD28、CD122、4-1BB(CD137としても公知)、またはBTLA(CD272としても公知)。
【0110】
プログラムT細胞死1(PD-1)は、T細胞表面上に見出される膜貫通タンパク質であり、腫瘍細胞上のプログラムT細胞死リガンド1(PD-L1)に結合した場合に、T細胞活性を抑制し、T細胞媒介性細胞傷害を低下させる。したがって、PD-1およびPD-L1は、免疫下方制御物質または免疫チェックポイントの「オフスイッチ」である。PD-1阻害剤の例としては、ニボルマブ、(Opdivo)(BMS-936558)、ペムブロリズマブ(Keytruda)、ピディリズマブ、AMP-224、MEDI0680(AMP-514)、PDR001、MPDL3280A、MEDI4736、BMS-936559、およびMSB0010718Cが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
表面抗原分類274(CD274)またはB7ホモログ1(B7-H1)としても公知のプログラム死リガンド1(PD-L1)は、ヒトにおいてCD274遺伝子によってコードされるタンパク質である。PD-L1阻害剤の非限定的な例としては、アテゾリズマブ(Tecentriq)、デュルバルマブ(MEDI4736)、アベルマブ(MSB0010718C)、MPDL3280A、BMS935559(MDX-1105)、およびAMP-224が挙げられる。
【0112】
CTLA-4は、免疫系を下方制御するタンパク質受容体である。CTLA-4阻害剤の非限定的な例としては、イピリムマブ(Yervoy)(BMS-734016、MDX-010、MDX-101としても公知)、およびトレメリムマブ(以前はチシリムマブ、CP-675,206)が挙げられる。
【0113】
リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)は、Tregに対する作用およびCD8+T細胞に対する直接の影響によって免疫応答を抑制するように作用する細胞表面上の免疫チェックポイント受容体である。LAG-3阻害剤としては、LAG525およびBMS-986016が挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
CD28は、ほとんど全てのヒトCD4+T細胞上および全CD8 T細胞のうちのおよそ半分に構成性に発現され、T細胞の拡大増殖を促進する。CD28阻害剤の非限定的な例としては、TGN1412が挙げられる。
【0115】
CD122は、CD8+エフェクターT細胞の増殖を増加させる。非限定的な例としては、NKTR-214が挙げられる。
【0116】
4-1BB(CD137としても公知)は、T細胞増殖に関与する。CD137媒介シグナル伝達は、T細胞、特に、CD8+T細胞を、活性化誘導細胞死から防御することも公知である。PF-05082566、ウレルマブ(BMS-663513)、およびリポカリンは、CD137阻害剤の例である。
【0117】
上記併用処置のうちのいずれかのために、抗TIGIT抗体を、他の抗癌剤と同時にまたは個別に投与することができる。個別に投与する場合、抗TIGIT抗体を、他の抗癌剤の前または後に投与することができる。
【0118】
一実施形態では、感染の処置または阻害を必要とする患者において感染を処置または阻害する方法であって、有効量の本開示の抗体またはその断片を患者に投与する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、感染は、ウイルス感染(HIV感染など)、細菌感染、真菌感染、または寄生虫による感染である。
【0119】
感染は、病原体による生物のへ体組織の侵入、その増幅、およびこれらの生物およびこれらの生物が産生する毒素に対する宿主組織の反応である。感染は、感染性因子(ウイルス、ウイロイド、プリオン、細菌など)、線虫(寄生虫性の回虫および蟯虫など)、節足動物(ダニ、マダニ、ノミ、およびシラミなど)、真菌(白癬など)、および他の大寄生虫(条虫および他の蠕虫など)が原因であり得る。一態様では、感染性因子は、細菌(グラム陰性菌など)である。一態様では、感染性因子は、ウイルス(DNAウイルス、RNAウイルス、および逆転写ウイルスなど)である。ウイルスの非限定的な例としては、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、エプスタイン・バーウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス8型、HIV、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ヒトパピローマウイルス、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルスが挙げられる。
【0120】
また、本開示の抗体を使用して、微生物および微生物を排除するための免疫細胞を標的化することによって微生物が原因の感染症を処置するか、微生物を死滅させることができる。一態様では、微生物は、ウイルス(RNAウイルスおよびDNAウイルスが挙げられる)、グラム陽性菌、グラム陰性菌、原生動物、または真菌である。
診断方法
【0121】
TIGITの過剰発現は、ある特定の腫瘍試料で認められ、TIGITを過剰発現する細胞を有する患者は、本開示の抗TIGIT抗体での処置に反応する可能性が高い。したがって、本開示の抗体を、診断および予後の目的のために使用することもできる。
【0122】
細胞を含むことが好ましい試料を、がん患者または診断を望む患者であり得る患者から得ることができる。細胞は、腫瘍組織または腫瘍塊、血液試料、尿試料、または患者由来の任意の試料の細胞であり得る。必要に応じた試料の前処理の際に、本開示の抗体が試料中に存在する可能性があるTIGITタンパク質と相互作用可能な条件下で、試料を本開示の抗体とインキュベートすることができる。抗TIGIT抗体を活用してELISAなどの方法を使用して、試料中のTIGITタンパク質の存在を検出することができる。
【0123】
試料中のTIGITタンパク質の存在(必要に応じて、量または濃度を使用する)を、患者が抗体での処置に好適であることの指標、または患者ががん処置に応答したこと(応答しなかったこと)の指標として、がん診断のために使用することができる。予後法のために、処置の進行を示すために1回、2回、またはそれを超える回数、ある特定の病期、がん処置の開始の際に検出することができる。
組成物
【0124】
本開示はまた、医薬組成物を提供する。そのような組成物は、本明細書に開示される有効量の抗TIGIT抗体またはその断片および薬学的に許容され得る担体を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、第2の抗がん剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)をさらに含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、「薬学的に許容され得る」という用語は、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されていること、または動物、より具体的にはヒトでの使用のために米国薬局方もしくは他の一般に認識されている薬局方に記載されていることを意味する。「薬学的に許容され得る担体」は、一般に、任意の種類の非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、封入材料または製剤補助剤である。
【0126】
「担体」という用語は、治療薬と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は、滅菌液体、例えば水および油、例えば石油、動物、植物または合成起源のもの、例えば落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などであり得る。医薬組成物を静脈内投与する場合、水が好ましい担体である。食塩水ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液も、特に注射液剤用の液体担体として使用することができる。適切な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。組成物は、所望であれば、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、または酢酸塩、クエン酸塩もしくはリン酸塩などのpH緩衝剤も含有することができる。ベンジルアルコール、メチルパラベン等の抗菌剤、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤、および、塩化ナトリウムまたはデキストロース等の張度を調整するための剤も想定される。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤・散剤(powder)、持続放出製剤などの形態をとることができる。組成物は、従来の結合剤およびトリグリセリドなどの担体と共に坐剤として製剤化することができる。経口製剤は、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含むことができる。適切な医薬担体の例は、参照により本明細書に組み込まれる、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。そのような組成物は、患者への適切な投与のための形態を提供するために、治療有効量の抗原結合ポリペプチド、好ましくは精製形態の抗原結合ポリペプチドを適切な量の担体と共に含有する。製剤は投与様式に適するべきである。親製剤(parentalpreparation
)は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回投与バイアルに封入することができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物として日常的な手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、組成物はまた、注射部位の痛みを和らげるために可溶化剤およびリグノカインなどの局所麻酔剤を含んでもよい。一般に、成分は、例えば、活性剤の量を示すアンプルまたはサシェなどの密閉容器内の乾燥凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、別々に、または一緒に混合されて単位剤形で供給される。組成物が輸注によって投与される場合、組成物は、無菌医薬品グレードの水または食塩水を含有する輸液ボトルで投薬することができる。組成物が注射によって投与される場合、成分が投与前に混合され得るように、注射用滅菌水または食塩水のアンプルを提供することができる。
【0128】
本開示の化合物を、中性または塩の形態として製剤化することができる。薬学的に許容され得る塩としては、陰イオン(塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来する陰イオンなど)を用いて形成された塩、および陽イオン(ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来する陽イオンなど)を用いて形成された塩が挙げられる。
【実施例】
【0129】
実施例1:ヒトTIGITに対するマウスモノクローナル抗体の作製
この実施例は、ハイブリドーマ技術を用いた抗ヒトTIGITマウスモノクローナル抗体の調製を記載する。
【0130】
抗原:ヒトTIGIT-Fcタンパク質およびヒトTIGIT過剰発現CHOK1細胞株(TIGIT-CHOK1細胞株)。
【0131】
免疫:ヒトTIGITへのマウスモノクローナル抗体を作製するために、Balb/cマウス、SJLマウスおよびWistarラットをTIGIT-Fcタンパク質で初回免疫した。免疫したマウスおよびラットを、それぞれTIGIT-Fc融合タンパク質、CHO-K1/TIGIT安定細胞およびTIGIT-Fcタンパク質でブーストした。TIGITタンパク質に結合する抗体を産生するマウスまたはラットを選択するために、免疫したマウスの血清をELISAによる抗体価評価に供した。簡潔には、マイクロタイタープレートを、ELISA被覆緩衝液中0.5μg/mlのヒトTIGITタンパク質、100μl/ウェルで4℃にて一晩被覆し、次いで、150μl/ウェルの1% BSAでブロックした。免疫マウス由来の血清の希釈物を各ウェルに添加し、37℃で1~2時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートした抗マウスIgG抗体またはHRPとコンジュゲートした抗ラットIgG抗体とインキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、OD 450nmで分光光度計によって分析した。3回の免疫の後、rhTIGITタンパク質に対する血清ELISAおよびCHO-K1親細胞株を陰性対照として用いたCHO-K1/TIGIT安定細胞株に対するFACSによっても免疫応答を試験した。十分な力価の抗TIGIT IgGのマウスを、3回の免疫後に25μgのヒトTIGIT-Fcタンパク質で追加免疫した。得られたマウスを融合に使用した。ハイブリドーマ上清をELISAによって抗TIGIT IgGについて試験した。
【0132】
細胞融合およびハイブリドーマスクリーニング:電気融合によって融合を行った。融合した細胞を、各融合について50個のプレートにプレーティングした。次いで、陽性クローンの上清を、細胞ベースの受容体ブロッキングアッセイによってTIGITのそのリガンドhCD155のブロッキングにおける機能をスクリーニングした。
【0133】
サブクローニングおよびスクリーニング:確実にサブクローンが単一の親細胞に由来するように、各融合由来の陽性一次クローンを限界希釈によってサブクローニングした。サブクローンの上清を、細胞ベースの受容体ブロッキングアッセイおよび親和性ランキングによってスクリーニングした。
【0134】
ハイブリドーマクローン76D12B10を、さらなる分析のために選択した。76D12B10の可変領域のアミノ酸配列を、以下の表1に提供する。
【表1】
【表1A】
実施例2:抗TIGITマウスモノクローナル抗体の抗原結合特性
【0135】
この実施例は、TIGITタンパク質に対する抗TIGITマウス抗体の結合特性を試験した。
【0136】
76D12B10の結合活性を評価するために、これらのクローン由来のキメラmAbをELISA試験に供した。簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中0.5μg/mlのヒトTIGIT-Hisタンパク質、100μl/ウェルで4℃、一晩、コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1% BSAでブロッキングした。10μg/mlから開始する76D12B10抗体の3倍希釈物を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG抗体と37℃で30分間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、OD 450nmで分光光度計によって分析した。
図1に示すように、76D12B10は、ヒトTIGITに高親和性で結合した(EC
50=8.566ng/ml)。
種間活性
【0137】
ELISA試験を行って、ヒト、マウス、ラットおよびカニクイザルPD-L1に対するキメラ抗体の結合をそれぞれ評価した。簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中0.5μg/mlのヒトTIGIT-Hisタンパク質、100μl/ウェルで4℃、一晩、コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1% BSAでブロッキングした。10μg/mlから開始する76D12B10抗体の3倍希釈物を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG抗体と37℃で30分間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、OD 450nmで分光光度計によって分析した。76D12B10抗体は、カニクイザルTIGITに高親和性で結合し(EC50=8.298ng/ml)、ラットまたはマウスのTIGITに結合しなかった(
図2および表2)。
【表2】
TIGIT抗体のBiacore分析
【0138】
76D12B10抗体の組換えTIGITタンパク質(ヒトTIGIT-hisタグ)への結合を、捕捉法を使用したBIACORE(商標)を用いて試験した。76D12B10 mAbを、CM5チップを使用して捕捉した。ヒトTIGIT-hisタグタンパク質の段階希釈物を、捕捉抗体上に30μl/分の流速で1分間注入した。抗原を300秒間解離させた。全ての実験はBiacore T200で行った。データ分析は、Biacore T200評価ソフトウェアを使用して行った。結果を
図3および下記表3に示す。
【表3】
実施例3マウス抗体のヒト化
【0139】
76D12B10可変領域遺伝子を使用して、ヒト化mAb(IgG1 N297A Fc断片を有する)を作出した。このプロセスの第1の工程では、76D12B10のVHおよびVLまたはVKのアミノ酸配列をヒトIg遺伝子配列の利用可能なデータベースと比較して、全体として最も適合するヒト生殖細胞系Ig遺伝子配列を見出した。76D12B10の軽鎖の場合、最も近いヒトマッチはA20/JK2遺伝子であり、重鎖の場合、最も近いヒトマッチはVH4-B/JH6遺伝子であった。
【0140】
次いで、76D12B10のヒト化可変ドメイン配列を設計し、CDRL1、L2、およびL3をA20/JK2遺伝子のフレームワーク配列にグラフティングし、CDRH1、H2、およびH3をVH4-B/JH6遺伝子のフレームワーク配列にグラフティングした。次いで、3Dモデルを生成して、マウスアミノ酸をヒトアミノ酸で置き換えることが結合および/またはCDR立体配座に影響を及ぼし得る任意のフレームワーク位置があるかどうかを決定した。重鎖の場合、フレームワーク中のV24A、S30T、G45K、I49M、V68I、V72H、およびY95Fは、復帰変異に関与していた。軽鎖の場合、フレームワーク中のV43S、I48V、およびY49Hは、復帰変異に関与していた(表4および5)。
【表4】
【表5】
実施例4:ヒト化抗体の抗原結合特性
組換えヒトTIGITへの結合
【0141】
抗原結合活性を評価するために、ヒト化抗体をELISA試験に供した。簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中0.5μg/mlのヒトTIGIT-hisタンパク質にて、100μl/ウェルで、4℃、一晩コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1%BSAでブロッキングした。3μg/mlから始まるヒト化抗体の3倍希釈物を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG抗体と37℃で30分間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、分光光度計によってOD450nmで分析した。
図4に示すように、全てのヒト化抗体は、キメラ抗体と同等のヒトTIGITへの結合有効性を示した。
Biacoreによるヒト化抗体の親和性ランキング
【0142】
ヒト化抗体の結合動態を調べるために、この実施例では、Biacoreを用いて親和性ランキングを行った。表6に示されるように、Hu02からHu20までの全てのヒト化抗体は、キメラ抗体と同等の優れた親和性を示した。
【表6】
組換えヒトTIGITへの結合
【0143】
抗原結合活性を評価するために、Hu02およびHu06をELISA試験に供した。簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中0.5μg/mlのヒトTIGIT-hisタンパク質にて、100μl/ウェルで、4℃、一晩コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1%BSAでブロッキングした。3μg/mlから始まるヒト化抗体の3倍希釈物を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG抗体と37℃で0.5時間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、分光光度計によってOD450nmで分析した。
図5に示すように、Hu02およびHu06は、キメラ抗体と同等のヒトTIGITへの結合有効性を示した。
Biacoreによるヒト化抗体の完全速度論的親和性
【0144】
ヒト化抗体の組換えTIGITタンパク質(ヒトTIGIT-hisタグ)への結合を、捕捉法を使用したBIACORE(商標)によって試験した。Hu02 mAbおよびHu06 mAbを、プロテインAチップを使用して捕捉した。ヒトTIGIT-hisタグタンパク質の段階希釈物を、捕捉抗体上に30μl/分の流速で2分間注入した。抗原を1800秒間解離させた。全ての実験はBiacore T200で行った。データ分析は、Biacore T200評価ソフトウェアを使用して行い、
図6および表7に示す。
【表7】
実施例5:抗TIGITヒト化抗体の機能特性
CD155へのヒトTIGITタンパク質結合の遮断
【0145】
組換えヒトTIGITのその受容体CD155への結合に対するHu02およびHu06のブロッキング効果を評価するために、ELISAベースの受容体ブロッキングアッセイを使用した。
【0146】
簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中5μg/mlのヒトCD155-hFcタンパク質にて、100μl/ウェルで、4℃、一晩コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1%BSAでブロッキングした。50μlのビオチン標識ヒトTIGIT-Fcタンパク質、ならびに10μg/mlから出発して50μlで3倍希釈したHu02およびHu06抗体を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いでストレプトアビジン-HRPと共に37℃で10分間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、OD 450nmで分光光度計によって分析した。
図7に示すように、Hu02およびHu06は、76D12B10キメラ(IC
50=1112ng/ml)と同様に、ヒトTIGITタンパク質のヒトCD155への結合を効率的に阻害した(Hu02 IC
50=1129ng/ml、Hu06 IC
50=866.0ng/ml)。
インビトロでの細胞ベースの機能アッセイにおける抗TIGIT抗体の効果
【0147】
T細胞活性化に対するTIGITシグナル伝達のブロッキングにおける抗TIGIT抗体の機能活性を評価するために、インビトロでの細胞ベースの機能アッセイを使用した。
【0148】
Jurkat T NFAT細胞を、TCR活性化およびCD226共刺激の両方に応答することができるヒトTIGITおよびCD226を発現するように操作する。Raji細胞を、ヒトCD155を発現するように操作する。スーパー抗原(ブドウ球菌エンテロトキシン)を、抗原依存性様式でT細胞受容体(TCR)複合体を活性化するように設計する。2つの細胞型を共培養する場合、TIGITは、CD226活性化およびNFATルシフェラーゼ産生を阻害する。抗TIGIT抗体を添加するとTIGITのCD155との相互作用がブロッキングされるか、TIGITがCD226ホモ二量体化を妨害する能力が阻害され、その結果ルシフェラーゼが産生される。
図8に示すように、Hu02およびHu06は、76D12B10キメラ(EC50=1.237nM)と比較して、TIGITとCD155の相互作用を効率的に遮断た(Hu02 EC50=1.757nM、Hu06 EC50=1.671nM)。
実施例6:MC38腫瘍マウスモデルにおける有効性
【0149】
この実施例は、機能性分子のインビボ有効性を試験するために腫瘍マウスモデルを使用した。
【0150】
PBSに再懸濁したMC38細胞を、B-hTIGITヒト化マウスの右皮膚に、5×105細胞の濃度にて0.1mLの容量で皮下投与した。平均腫瘍体積がおよそ100mm3に達したとき、動物を、腫瘍体積に従って、各群に6匹の動物を有する実験群に無作為に割り当てた。総ヒトIgG、Hu02-mIgG2a(Hu02-マウスIgG2a Fc)およびチラゴルマブ(Triagolumab)-mIgG2a(チラゴルマブ(Triagolumab)-マウスIgG2a Fc)を腹腔内注射によって2週間毎に2回投与した。用量を、実験動物の体重に基づいて3mg/kgで計算した。マウスの体重および腫瘍サイズを週に2回試験した。
【0151】
結果を
図9に示す。チラゴルマブ-mIgG2a群と比較して、Hu02-mIgG2aは、処置11日目に3mg/kgの用量レベルで腫瘍成長を有意により高く阻害した(p<0.05)。
実施例7:TIGIT抗体の比較
組換えヒトTIGITへの結合
【0152】
抗原結合活性を評価するために、LP010-02(Hu02-ヒトIgG1 Fc)および対照抗体チラゴルマブ(RG6058、Roche)(同一のIgG1 Fcを含む)を、ELISA試験に供した。簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中0.5μg/mlのヒトTIGIT-hisタンパク質、100μl/ウェルで、4℃、一晩コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1% BSAでブロッキングした。3μg/mlから始まるヒト化抗体の3倍希釈物を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG抗体と37℃で0.5時間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、分光光度計によってOD450nmで分析した。
図10に示すように、LP010-02およびチラゴルマブは、同等のヒトTIGITへの結合有効性を示した。
CD155へのヒトTIGITタンパク質結合の遮断
【0153】
組換えヒトTIGITのその受容体CD155への結合に対するLP010-02およびチラゴルマブのブロッキング効果を評価するために、ELISAベースの受容体ブロッキングアッセイを使用した。
【0154】
簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中5μg/mlのヒトCD155-hFcタンパク質にて、100μl/ウェルで、4℃、一晩コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1%BSAでブロッキングした。50μlのビオチン標識ヒトTIGITタンパク質およびLP010-02抗体およびチラゴルマブ抗体の10μg/mlから始まる3倍希釈物50μlを各ウェルに添加した。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、ストレプトアビジン-HRPと37℃で10分間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、分光光度計によってOD450nmで分析した。
図11に示すように、LP010-02およびチラゴルマブは、ヒトTIGITタンパク質のヒトCD155への結合を効率的に阻害した(LP010-02 IC
50=531.2ng/ml、チラゴルマブIC
50=531.3ng/ml)。
哺乳動物細胞上に過剰発現されたヒトTIGITへの結合
【0155】
抗原結合特性を評価するために、ヒト化抗体を、FACSによって哺乳動物細胞上に過剰発現されたヒトTIGITへのそれらの結合について分析した。手短に言えば、ヒトTIGIT細胞を、最初に、5μg/mlで開始する3倍段階希釈ヒト化抗体と共に4℃で40分間インキュベートした。PBSで洗浄した後、Alexa Fluor(登録商標)647 AffiniPureヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体を各ウェルに添加し、4℃で30分間インキュベートした。Alexa Fluor(登録商標)647のMFIをFACSCantoで評価した。
図12に示すように、LP010-02は、チラゴルマブよりも哺乳動物細胞上に発現したヒトTIGITに対する結合有効性が高かった(LP010-02 EC
50=32.81ng/ml、チラゴルマブEC
50=36.82ng/ml)。
実施例8:TIGIT/CD155遮断のための機能アッセイ
【0156】
TIGIT/CD155相互作用のブロッキングにおける機能性分子の活性を、この実施例では生物発光細胞ベースのアッセイを用いて測定した。
【0157】
このアッセイでは、TIGIT-CD226-NFATエフェクター細胞およびRaji-CD155標的細胞を共培養すると、TIGITは、スーパー抗原の存在下で、CD155に高親和性で結合することができるか、CD226ホモ二量体化を破壊し、CD226シグナル伝達を阻害することができ、それにより、スーパー抗原によって活性化されたNFATレポーター遺伝子を阻害することができる。TIGIT/CD155相互作用をブロッキングする抗TIGIT抗体(同一のヒトIgG1 Fcを含むLP010-02、チラゴルマブ、および22G2)を添加すると、NFAT媒介シグナルが修復される。22G2は、The Bristol-Myers Squibb Companyによって開発された抗TIGIT抗体である(例えば、米国特許出願公開第20160176963号を参照のこと)。
【0158】
図13に示すように、LP010-02は、チラゴルマブおよび22G2より高い活性で、TIGITおよびCD155の相互作用を遮断した。
実施例9:PD-1抗体を用いた併用療法の有効性
【0159】
この実施例は、HX008(抗PD-1抗体)と組み合わせたLP010-02(Hu02-WTヒトIgG1 Fc)のインビボ有効性を試験するために腫瘍マウスモデルを使用した。
【0160】
CT26細胞を、BALB/c-hPD1-hTIGITヒト化マウスの右皮膚に、5×105細胞の濃度にて0.1mLの容量で皮下投与した。平均腫瘍体積がおよそ85mm3に達したとき、動物を、腫瘍体積に従って、各群に8匹の動物を有する実験群に無作為に割り当てた。HX008と組み合わせたHX008、LP010-02、およびLP010-02を腹腔内注射によって1週間毎に1回投与した。HX008およびLP010-02の用量を、実験動物の体重に基づいて1mg/kgおよび2mg/kgでそれぞれ計算した。マウスの体重および腫瘍サイズを週に2回または3回試験した。
【0161】
結果を
図14に示す。CT26マウスモデルにおいて、HX008とLP010-02の組み合わせは、HX008のみまたはLP010-02のみよりも高い有効性で、腫瘍成長を有意に阻害した。
実施例10:LP010-02の抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性
【0162】
この実施例は、インビトロでLP010-02のADCCをチラゴルマブと比較した。
【0163】
この実験では、TIGIT過剰発現Jurkat細胞を標的細胞として使用し、PBMCをエフェクター細胞として使用し、チラゴルマブを対照として使用し、試験生成物はLP010-02であった。インビトロでのLP010-02のADCCを評価するために、効果/標的比50:1の条件下で用量応答実験を行った。
【0164】
図15に示すように、LP010-02は、チラゴルマブよりもADCC活性が高かった。
実施例11:LP010-02の補体依存性細胞傷害性(CDC)活性
【0165】
この実施例は、インビトロでLP010-02とチラゴルマブのCDCを比較した。
【0166】
この実験では、TIGIT過剰発現Jurkat細胞を標的細胞として使用し、補体タンパク質NHSCをエフェクター分子として使用し(NHSC濃度を5%に設定した)、チラゴルマブを対照として使用した。試験生成物LP010-02のインビトロCDC活性を評価するために、用量応答実験を行った。
【0167】
結果を
図16に示す。示すように、LP010-02は、インビトロでチラゴルマブよりCDC活性が高かった。
* * *
【0168】
本開示は、本開示の個々の態様の単一の例示として意図される記載された特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではなく、機能的に等価な任意の組成物または方法が本開示の範囲内にある。本開示の精神または範囲から逸脱することなく、本開示の方法および組成物に様々な修正および変形を加えることができることは当業者には明らかである。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に入る限り、本開示の修正および変形を包含することが意図されている。
【0169】
本明細書で言及されるすべての刊行物および特許出願は、あたかも各個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-07-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体またはその断片であって、前記抗体またはその断片が、IgドメインおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)タンパク質に対して特異性を有し、重鎖可変領域(VH)であって、配列番号1のアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH CDR2、および配列番号3のアミノ酸配列を含むVH
CDR3を含むVH、ならびに軽鎖可変領域(VL)であって、配列番号4のアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含むVLを含む、抗体またはその断片。
【請求項2】
Fc断片をさらに含む、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項3】
前記Fc断片がヒトIgG1 Fc断片である、請求項2に記載の抗体またはその断片。
【請求項4】
ヒト化された、先行する請求項のいずれかに記載の抗体またはその断片。
【請求項5】
前記VHが、配列番号9~14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号15~18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、先行する請求項のいずれかに記載の抗体またはその断片。
【請求項6】
前記VHが配列番号11のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号15のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の抗体またはその断片。
【請求項7】
前記VHが配列番号10のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号16のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の抗体またはその断片。
【請求項8】
抗体依存性細胞傷害性(ADCC)成分である、先行する請求項のいずれかに記載の抗体またはその断片。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の断片および第2の特異性を有する第2の抗原結合断片を含む、二重特異性抗体。
【請求項10】
前記第2の特異性が、免疫細胞上の分子または腫瘍抗原に対する特異性である、請求項9に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
前記第2の特異性が、CD33、CD47、CD73、Her2、EGFR、CEA VEGF、CD155、CD112、CD113、PVRL3、PVRIG、CD3、CTLA-4、GITR、4-1BB、PD-L1、PD-1、LAG-3、CD28、CD122、TIM3、OX-40、OX40L、CD40、CD40L、LIGHT、ICOS、ICOSL、GITR、GITRL、CD27、VISTA、B7H3、B7H4、HEVM、BTLA、KIR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される分子に対する特異性である、請求項9に記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
前記断片および前記第2の抗原結合断片の各々が、Fab断片、単鎖可変断片(scFv)、または単一ドメイン抗体から独立して選択される、請求項9~11のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片および薬学的に許容され得る担体を含む組成物。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片をコードする1またはそれを超えるポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片をコードする1またはそれを超えるポリヌクレオチドを含む単離された細胞。
【請求項16】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する
ための組成物であって
、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片
を含む、
組成物。
【請求項17】
がんを処置するための医薬品を製造するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片の使用。
【請求項18】
前記がんが、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、腎臓がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、および甲状腺がんからなる群から選択される、請求項16に記載の
組成物または請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記患者が、第2の薬剤、好ましくは免疫チェックポイント阻害剤でさらに処置される、請求項16もしくは18に記載の
組成物、または請求項17もしくは18に記載の使用。
【請求項20】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、CD28、CD122、4-1BB、またはBTLAに特異的な抗体または抗原結合断片である、請求項19に記載の
組成物または使用。
【請求項21】
感染の処置または阻害を必要とする患者において感染を処置または阻害する
ための組成物であって
、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片
を含む、
組成物。
【請求項22】
感染を処置または阻害するための医薬品を製造するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片の使用。
【請求項23】
前記感染が、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、または寄生虫感染である、請求項21に記載の
組成物または請求項22の使用。
【請求項24】
前記感染がHIV感染である、請求項21もしくは23に記載の
組成物または請求項22もしくは23に記載の使用。
【請求項25】
処置されたT細胞またはNK細胞を含む、がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する
ための組成物であって、
前記処置されたT細胞またはNK細胞は、インビトロで、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片で処置
されたT細胞またはNK細胞である、組成物。
【請求項26】
前記T細胞またはNK細胞
が個体から単離
されたものである、請求項25に記載の
組成物。
【請求項27】
前記T細胞が、腫瘍浸潤Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはこれらの組み合わせである、請求項25または26に記載の
組成物。
【請求項28】
NK細胞
が処置
されている、請求項25または26に記載の
組成物。
【請求項29】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片を含む、試料中のTIGITの発現を検出する方法
における使用のための組成物であって、
前記方法は、前記試料を、
前記抗体またはその断片と、前記抗体またはその断片が前記TIGITに結合する条件下で接触させる工程、および前記試料中のTIGITの発現を示す前記結合を検出する工程を含む、
組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
一実施形態では、がん患者から細胞を単離する工程および本開示の抗体またはその断片を使用してTIGITタンパク質の存在を検出する工程を含む、抗TIGIT治療を用いた処置に好適な患者を同定する方法をさらに提供する。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
抗体またはその断片であって、前記抗体またはその断片が、IgドメインおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)タンパク質に対して特異性を有し、重鎖可変領域(VH)であって、配列番号1のアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH CDR2、および配列番号3のアミノ酸配列を含むVH
CDR3を含むVH、ならびに軽鎖可変領域(VL)であって、配列番号4のアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含むVLを含む、抗体またはその断片。
(項目2)
Fc断片をさらに含む、項目1に記載の抗体またはその断片。
(項目3)
前記Fc断片がヒトIgG1 Fc断片である、項目2に記載の抗体またはその断片。
(項目4)
ヒト化された、先行する項目のいずれかに記載の抗体またはその断片。
(項目5)
前記VHが、配列番号9~14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号15~18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、先行する項目のいずれかに記載の抗体またはその断片。
(項目6)
前記VHが配列番号11のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号15のアミノ酸配列を含む、項目5に記載の抗体またはその断片。
(項目7)
前記VHが配列番号10のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号16のアミノ酸配列を含む、項目5に記載の抗体またはその断片。
(項目8)
抗体依存性細胞傷害性(ADCC)成分である、先行する項目のいずれかに記載の抗体またはその断片。
(項目9)
項目1~8のいずれか一項に記載の断片および第2の特異性を有する第2の抗原結合断片を含む、二重特異性抗体。
(項目10)
前記第2の特異性が、免疫細胞上の分子または腫瘍抗原に対する特異性である、項目9に記載の二重特異性抗体。
(項目11)
前記第2の特異性が、CD33、CD47、CD73、Her2、EGFR、CEA VEGF、CD155、CD112、CD113、PVRL3、PVRIG、CD3、CTLA-4、GITR、4-1BB、PD-L1、PD-1、LAG-3、CD28、CD122、TIM3、OX-40、OX40L、CD40、CD40L、LIGHT、ICOS、ICOSL、GITR、GITRL、CD27、VISTA、B7H3、B7H4、HEVM、BTLA、KIR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される分子に対する特異性である、項目9に記載の二重特異性抗体。
(項目12)
前記断片および前記第2の抗原結合断片の各々が、Fab断片、単鎖可変断片(scFv)、または単一ドメイン抗体から独立して選択される、項目9~11のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
(項目13)
項目1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片および薬学的に許容され得る担体を含む組成物。
(項目14)
項目1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片をコードする1またはそれを超えるポリヌクレオチド。
(項目15)
項目1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片をコードする1またはそれを超えるポリヌクレオチドを含む単離された細胞。
(項目16)
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、前記患者に項目1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片を投与する工程を含む、方法。
(項目17)
がんを処置するための医薬品を製造するための、項目1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片の使用。
(項目18)
前記がんが、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、腎臓がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、および甲状腺がんからなる群から選択される、項目16に記載の方法または項目17に記載の使用。
(項目19)
前記患者が、第2の薬剤、好ましくは免疫チェックポイント阻害剤でさらに処置される、項目16もしくは18に記載の方法、または項目17もしくは18に記載の使用。
(項目20)
前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、CD28、CD122、4-1BB、またはBTLAに特異的な抗体または抗原結合断片である、項目19に記載の方法または使用。
(項目21)
感染の処置または阻害を必要とする患者において感染を処置または阻害する方法であって、前記患者に項目1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片を投与する工程を含む、方法。
(項目22)
感染を処置または阻害するための医薬品を製造するための、項目1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片の使用。
(項目23)
前記感染が、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、または寄生虫感染である、項目21に記載の方法または項目22の使用。
(項目24)
前記感染がHIV感染である、項目21もしくは23に記載の方法または項目22もしくは23に記載の使用。
(項目25)
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、(a)T細胞またはNK細胞を、インビトロで、項目1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片で処置する工程;および(b)前記処置されたT細胞またはNK細胞を前記患者に投与する工程を含む、方法。
(項目26)
工程(a)の前に、個体からT細胞またはNK細胞を単離する工程をさらに含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記T細胞が、腫瘍浸潤Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはこれらの組み合わせである、項目25または26に記載の方法。
(項目28)
NK細胞を処置する、項目25または26に記載の方法。
(項目29)
試料中のTIGITの発現を検出する方法であって、前記試料を、項目1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその断片と、前記抗体またはその断片が前記TIGITに結合する条件下で接触させる工程、および前記試料中のTIGITの発現を示す前記結合を検出する工程を含む、方法。
【国際調査報告】