(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】バクテリオファージを含む少なくとも1つの腸及び/又は胃腸の細菌種の集団を減少させる方法、ならびにバクテリオファージ及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20231102BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20231102BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231102BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20231102BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231102BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231102BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20231102BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231102BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20231102BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20231102BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20231102BHJP
A61P 25/32 20060101ALI20231102BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231102BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20231102BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231102BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20231102BHJP
【FI】
C12N1/20 Z
C12N7/01
A61P25/00
A61P3/00
A61P35/00
A61P31/04
A61K35/76
A61P1/04
A61P25/08
A61P25/16
A61P25/24
A61P25/32
A61P25/28
A61P9/14
A61K48/00
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527006
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 EP2021078868
(87)【国際公開番号】W WO2022096254
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】102020128879.4
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522298392
【氏名又は名称】オクサナ カルプ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】オクサナ カルプ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA98X
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4C087ZA18
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4C087ZB26
4C087ZB35
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種の集団を減少させる方法に関し、本方法は、a)少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種、宿主生物の心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害に直接又は間接的に影響する細菌の腸及び/又は消化管の細菌種を含む生物学的試料を提供し;ならびにb)腸及び/又は消化管の細菌種に特異的であり、プロモーター及び/又は調節エレメントと機能的に関連する少なくとも1つの核酸を含む、少なくとも1つのバクテリオファージ種のバクテリオファージを提供し;ならびにc)生物学的試料をバクテリオファージと接触させ、インキュベーションし、腸及び/又は消化管の細菌種の集団が少なくとも70%減少するまでインキュベーションを継続することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種の集団を減少させるための方法であって、
a)少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種、宿主生物の心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害に直接又は間接的に影響する腸及び/又は消化管の細菌種を含む生物学的試料を提供する工程;
b)腸及び/又は消化管の細菌種に特異的であり、プロモーター及び/又は調節エレメントと機能的に関連する少なくとも1つの核酸を含む、少なくとも1つのバクテリオファージ種のバクテリオファージを提供し、核酸が、
i)少なくとも1つの抗菌核酸分子をコードする核酸配列;及び
ii)i)からの核酸配列によりコードされる核酸分子と少なくとも50%同一である核酸分子をコードする核酸配列;
iii)少なくとも1の抗菌性ポリペプチドをコードする核酸配列;及び
iv)iii)からの核酸配列によりコードされるポリペプチドと少なくとも50%同一であるポリペプチドをコードする核酸配列;
v)核酸分子又はポリペプチドをコードする、i)、ii)、iii)又はiv)からの核酸の断片のための核酸配列
を含む群から選択される工程;
c)生物学的試料をバクテリオファージと接触及びインキュベーションする工程であって、腸及び/又は消化管の細菌種の集団が少なくとも70%減少するまでインキュベーションを継続する工程
を含む、上記方法。
【請求項2】
工程c)の後に、腸及び/又は消化管の細菌種の集団の減少の評価が続く、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
核酸が2以上のプロモーター及び/又は調節エレメントを有し、ならびに/又は核酸が2以上の核酸分子、ポリペプチド及び/又はその断片のための核酸配列をコードする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
腸及び/又は消化管の細菌種は、嫌気性及び/又は好気性であり、細菌種が、Acidaminococcaceae, Actinobacteria, Actinomycineae, Alistipes, Bacteroides, Bacteroidetes, Bifidobacterium, Clostridium, Coprococcus, Coriobacterium, Desulfovibrio, Enterobacterium, Enterococcus, Escherichia, Erysipelotrichia, Firmicutes, Fusobacterium, Lactobacillus, Lachnospiracea, Paraprevotella, Porphyromonadaceae, Prevotella, Propionibacterium, Proteobacteria, Rikenellacea, Ruminococcus, Streptococcus, Thermoanaerobacteria又はVeillonellaに属する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害が、感情障害、人格障害、幻覚、健忘症、行動障害、薬物乱用、蕁麻疹、発達障害、社会障害、感情障害、ストレス障害、解離性障害、身体表現性障害、神経症性障害、身体醜形障害、恐怖症、恐怖症、不安障害、パニック障害、強迫性障害、統合失調症、統合失調型障害、統合失調感情障害、妄想性障害、精神病、精神病性障害、摂食障害、睡眠障害、性機能障害、性同一性障害、性的嗜好障害、産後うつ病、チック障害、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害、アルコール依存症、自閉症、パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、運動ニューロン疾患、変性小脳障害、てんかん、多発性硬化症、過敏性腸症候群、疼痛、神経損傷、腫瘍、血管疾患、脳卒中、及び/又はそれらの組み合わせである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に定義される方法を実施するためのキットであって、キットは、
a)少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種、宿主生物の心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害に直接又は間接的に影響する腸及び/又は消化管の細菌種に特異的であり、プロモーター及び/又は調節エレメントと機能的に関連する少なくとも1つの核酸を含む、少なくとも1つのバクテリオファージ種のバクテリオファージを含む容器;
b)該方法の実施に関する使用説明書
を含む、上記キット。
【請求項7】
プロモーター及び/又は調節エレメントに機能的に関連する少なくとも1つの核酸を含み、バクテリオファージは少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種に特異的であり、腸及び/又は消化管の細菌種は、宿主生物の心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害に直接的又は間接的に影響し、核酸は、
a)少なくとも1つの抗菌性核酸分子をコードする核酸配列;及び
b)a)からの核酸配列によりコードされる核酸分子と少なくとも50%同一である核酸分子をコードする核酸配列;及び
c)少なくとも1つの抗菌ポリペプチドをコードする核酸配列;及び
d)c)からの核酸配列によりコードされるポリペプチドと少なくとも50%同一であるポリペプチドをコードする核酸配列;及び
e)核酸分子又はポリペプチドをコードする、a)、b)、c)又はd)からの核酸の断片のための核酸配列
を含む群から選択される、上記バクテリオファージ。
【請求項8】
核酸が、2つ以上のプロモーター及び/又は調節エレメントを有し、ならびに/又は核酸が、2つ以上の核酸分子、ポリペプチド及び/又はその断片のための核酸配列をコードする、請求項7に記載のバクテリオファージ。
【請求項9】
腸及び/又は消化管の細菌種が、嫌気性及び/又は好気性であり、細菌種が、Acidaminococcaceae, Actinobacteria, Actinomycineae, Alistipes, Bacteroides, Bacteroidetes, Bifidobacterium, Clostridium, Coprococcus, Coriobacterium, Desulfovibrio, Enterobacterium, Enterococcus, Escherichia, Erysipelotrichia, Firmicutes, Fusobacterium, Lactobacillus, Lachnospiracea, Paraprevotella, Porphyromonadaceae, Prevotella, Propionibacterium, Proteobacteria, Rikenellacea, Ruminococcus, Streptococcus, Thermoanaerobacteria又はVeillonellaに属する、請求項7又は8に記載のバクテリオファージ。
【請求項10】
心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害が、感情障害、人格障害、幻覚、健忘症、行動障害、薬物乱用、蕁麻疹、発達障害、社会障害、感情障害、ストレス障害、解離性障害、身体表現性障害、神経症性障害、身体醜形障害、恐怖症、恐怖症、不安障害、パニック障害、強迫性障害、統合失調症、統合失調型障害、統合失調感情障害、妄想性障害、精神病、精神病性障害、摂食障害、睡眠障害、性機能障害、性同一性障害、性的嗜好障害、産後うつ病、チック障害、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害、アルコール依存症、自閉症、パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、運動ニューロン疾患、変性小脳障害、てんかん、多発性硬化症、過敏性腸症候群、疼痛、神経損傷、腫瘍、血管疾患、脳卒中、及び/又はそれらの組み合わせである、請求項7~9のいずれか1項に記載のバクテリオファージ。
【請求項11】
腸内微生物叢の組成を変化させる薬物として、心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害の進行を予防及び/又は減速する薬物として、ならびに心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害、細菌感染、代謝性疾患、メタボリックシンドローム及び/又はがんを治療するための薬物として使用するための、請求項7~10のいずれか1項に記載のバクテリオファージ、及び/又は請求項7~10のいずれか1項に記載のバクテリオファージと少なくとも1つの他の成分とを含む医薬組成物。
【請求項12】
心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害、細菌感染、代謝疾患、メタボリックシンドローム及び/又はがんの治療に使用するための、請求項7~10のいずれか1項に記載のバクテリオファージ、及び/又は請求項7~10のいずれか1項に記載のバクテリオファージと少なくとも1つの他の成分を含む医薬組成物。
【請求項13】
腸内微生物叢の組成を変化させるための治療方法又は非治療方法における使用、心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害の発生を予防し及び/又は進行を減速するための治療方法又は非治療方法における使用、ならびに/又は心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害、細菌感染、代謝性疾患、メタボリックシンドローム及び/又はがんを治療するための治療方法又は非治療方法における使用のための、請求項7~10のいずれか1項に記載のバクテリオファージ、及び/又は請求項7~10のいずれか1項に記載のバクテリオファージと少なくとも1つの他の成分を含む医薬組成物。
【請求項14】
心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害が、感情障害、人格障害、幻覚、健忘症、行動障害、薬物乱用、蕁麻疹、発達障害、社会障害、感情障害、ストレス障害、解離性障害、身体表現性障害、神経症性障害、身体醜形障害、恐怖症、恐怖症、不安障害、パニック障害、強迫性障害、統合失調症、統合失調型障害、統合失調感情障害、妄想性障害、精神病、精神病性障害、摂食障害、睡眠障害、性機能障害、性同一性障害、性的嗜好障害、産後うつ病、チック障害、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害、アルコール依存症、自閉症、パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、運動ニューロン疾患、変性小脳障害、てんかん、多発性硬化症、過敏性腸症候群、疼痛、神経損傷、腫瘍、血管疾患、脳卒中、及び/又はそれらの組み合わせである、請求項11~13のいずれか1項に記載のバクテリオファージ及び/又は医薬組成物。
【請求項15】
細菌感染が、気道、歯、口、顎、眼、筋骨格系、血液、消化管、皮膚、心血管系、ホルモンバランス、心臓、免疫系、神経系、代謝、創傷、及び/又は泌尿生殖器の細菌感染である、請求項11~13のいずれか1項に記載のバクテリオファージ及び/又は医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前文に従った少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種の集団を減少させる方法、ならびにバクテリオファージ、及びそれらの使用に関する。
【0002】
微生物叢、即ち、消化管に存在する全ての微生物の全体が、消化及び免疫系の形成においてだけでなく、種々の他の代謝過程においても役割を果たすことが十分に知られている。その理由の1つは、ヒト及び/又は動物の血液中の代謝産物の約3分の1が体内の微生物に由来するからである。したがって、微生物叢が腸及び/又は消化管のトラブルから遠く離れた異なる疾患に影響を及ぼし得ることを証明する研究が増えていることは驚くにあたらない。例えば、腸内微生物叢が生物の思考、感情、気分及び/又は精神に影響を与えることを示すことができたが、このいわゆる消化管-脳軸の正確な相関はまだ知られていない。したがって、最新の研究では、消化管-脳軸を介した情報伝達は両方向に進むことが示唆されている。すなわち、ある生物の精神状態は腸機能にも影響を及ぼすが、逆に腸粘膜の状態や消化管の微生物叢の組成は精神の健康に影響を与えることが示唆されている。
【0003】
微生物叢の腸内微生物叢、特に腸及び/又は消化管細菌に影響を与えるための種々の選択肢は、現在の技術水準から知られており、例えば、プロバイオティック療法が、生物中の細菌のタイプ及び/又は組成を変化及び/又は影響するために適用されることが知られている。さらに、抗生物質は化学物質として使用されることが知られており、現在ヒト及び動物に対する従来の治療法と考えられている。この種の物質は、種々の細菌に存在する細菌の分子構造又は分子を標的とするので、広い作用スペクトルを特徴とする。したがって、抗生物質の使用は、広範囲の細菌を自然に減少及び/又は排除する。これは、利益をもたらす細菌、すなわち、ヒト又は動物と共生する細菌にも影響を及ぼし、その結果、ヒト、動物及び/又は環境に結果的なダメージを与える可能性があるという欠点を有する。これは、病原微生物(例えば、細菌及び/又は真菌)の利点へのミクロビオームのバランスのシフトにつながる可能性があり、その結果、数ヶ月又は数年間続き、時にはラインの下方に重大な結果をもたらす可能性がある。例えば、抗生物質として使用される化学物質は、生理学的代謝過程と相互作用することができ、化学物質に対するアレルギーの発生、結果として生じるアレルギー反応及びアレルギー性ショック症候群の結果、及び/又は、例えば、種々の不耐性の発現を引き起こすことができることが知られている。さらに、抗生物質治療が失敗した場合には、同じ薬剤を再度使用することはできない。このことは、治療が、より広い作用スペクトルを有する別の抗生物質群に典型的に切り替えられることを意味し、したがって、多剤耐性細菌の発生を含む、微生物叢のバランスのより顕著な障害をもたらすことができる。したがって、推奨されるのは、抗生物質治療の間に一定の潜伏期を守ることである。さらに、便移植が行われることが知られており、それによって健康なヒト又は動物の糞便中の細菌混合物を別の生物に移す。糞便移植は、治療された微生物の大部分のトラブルの実際の改善を提供し、さらに、抗生物質治療に対してほとんど懐疑的でない危険な多剤耐性病原体の治療に適している。
【0004】
しかしながら、上述の治療選択肢は、重大な不利益を伴うか、又は典型的には長く続かない状況の改善をもたらすにすぎないという点で不利である。さらに、技術水準から公知の治療法は、1つ以上の細菌種を具体的に取り扱うことを許容しない。
【0005】
したがって、簡単で、効果的で、忍容性が良く、健康に有害でなく、低コストで、効率的で、標的化され、特定された方法で、腸内及び/又は消化管内の細菌種に対処し、戦い、減少させ、及び/又は部分的に、完全に排除することに対する大きな、かつ継続的な需要がある。同時に、長期的な治療の成功が必要である。したがって、本発明の目的は、上述した最新技術の欠点を回避するために、バクテリオファージ及び少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種の集団を減少させる方法を提供することであり、この方法は、高い有効性、特異性、忍容性及び/又は信頼性、ならびに単純で、エラーが少なく、時間対費用効果の良い適用を特徴とする。
【0006】
この目的は、独立クレームの教示による方法及びバクテリオファージによって、驚くほど単純であるが効果的な方法で達成される。
【0007】
本発明によれば、少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種の集団を減少させる方法が提案され、この方法は
a)少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種、宿主生物の心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害に直接又は間接的に影響する腸及び/又は消化管の細菌種を含む生物学的試料を提供し;ならびに
b)腸及び/又は消化管の細菌種に特異的であり、プロモーター及び/又は調節エレメントと機能的に関連する少なくとも1つの核酸を含む、少なくとも1つのバクテリオファージ種のバクテリオファージを提供し、核酸が、
i)少なくとも1つの抗菌核酸分子をコードする核酸配列;及び
ii)i)からの核酸配列によりコードされる核酸分子と少なくとも50%同一である核酸分子をコードする核酸配列;
iii)少なくとも1の抗菌性ポリペプチドをコードする核酸配列;及び
iv)iii)からの核酸配列によりコードされるポリペプチドと少なくとも50%同一であるポリペプチドをコードする核酸配列;
v)核酸分子又はポリペプチドをコードする、i)、ii)、iii)又はiv)からの核酸の断片のための核酸配列
を含む群から選択される工程;
c)生物学的試料をバクテリオファージと接触及びインキュベーションする工程であって、腸及び/又は消化管の細菌種の集団が少なくとも70%減少するまでインキュベーションを継続する工程を含む。
【0008】
本発明による方法は、少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種に特異的なバクテリオファージの使用により、この少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種の集団が、信頼できる、迅速な、簡単な、特異的な、及び永続的な方法で減少されることを可能にするという考えに基づく。同時宿主依存性は、他の生物、例えば真菌、細菌、ウイルス等、及び/又は多細胞組織及び/又は生物の細胞が有利には無傷のままであることを意味し、これは、それらが損傷され、損なわれ及び/又は障害されないことを意味する。バクテリオファージの宿主依存性は、本発明の方法を、いかなる抵抗性も生じることなく、いつでも繰り返すことを可能にする。当業者が知っているように、生物学的試料中に存在し、バクテリオファージが特異的でない他の種の細菌が、生物学的試料からの問題の腸及び/又は消化管の細菌種の非存在下で減少しない場合、同時宿主依存性が生じる。これは、宿主生物、すなわち、ヒト及び/又は動物生物の臓器及び/又は組織にも適用される。
【0009】
本発明の範囲において、少なくとも1つの細菌種の集団を減少させるためには、少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種を含む生物学的試料を提供し、該少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種に特異的な少なくとも1つのバクテリオファージ種の投与されるバクテリオファージとともにインキュベートすることが十分であることが分かった。
【0010】
用語「集団」は、当業者に公知であり、一般に、環境のある領域に存在する同一種の全ての個体の全体を指す。本発明の範囲において、集団は、少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種の細菌の全体を指す。用語「細菌(bacterium)」及び「細菌(bacteria)」は、置換可能な同義語として当業者に公知であり、1つ以上のバクテリア種の代表的なものを指す。
【0011】
用語「腸及び/又は消化管の細菌種」は、当業者に公知であり、ヒト及び/又は動物生物の消化管、例えば、胃及び/又は腸に存在し得る細菌、好ましくは2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20又はそれ以上の種の細菌を指す。腸及び/又は消化管の細菌種は、心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害が開始され、促進され、発現され、及び/又は悪化するように、その分子代謝及び/又は他の細菌種、真菌及び/又は細胞との相互作用のような、その生物学のために、直接的又は間接的に宿主生物に影響する。当業者は、宿主生物に対する直接的又は間接的な影響を知っている。例えば、それらは宿主生物の組織を破壊するか、又は少なくとも伝達物質を放出することによって、宿主生物に直接影響を与えることができる。さらに、それらは、例えば、宿主生物の代謝、他の微生物又は他のプロセスに影響を与えることによって、及び/又は腸内微生物叢の組成を変化させることによって、間接的に宿主生物に影響を与えることができる。さらに、当業者は、前記細菌種は、この文脈において、生物自体に直接的な効果を有する必要はないが、反対に作用する細菌種の増殖、生物学及び/又は生存と矛盾する可能性があり、したがって、宿主生物に間接的な効果を有することを理解する。
【0012】
腸及び/又は消化管の細菌種は、非排他的に、Acinetobacter、Actinobacterium、Actinomyces、Actinomycineae、Alistipes、Acidaminococcaceae、Bacillus、Bacteroides、Bacteroidetes、Bartonella、Bifidobacterium、Blautia、Bordetella、Borrelii、Brucella、Bulleidia、Citrobacter、Campylobacter、Chlamydia、Christensenellaceae、Clostridium、Coprococcus、Corynebacteria、Coriobacterium、Deltaproteobacteria、Desulfovibrio、Dialister、Ehrlichia、Enterobacter、Enterobacterium、Enterococcus、Erysipelotrichia、Erwinia、Escherichia、Eubacterium、Faecalibacterium、Firmicutes、Flavonifractor、Francisella、Fusobacterium、Helicobacter、Hemophilus、Klebsiella、Lactobacillus、Lactococcus、Lachnospiraceae、Legionella、Leptospira、Listeria、Methanobrevibacter、Moraxella、Mycobacterium、Mycoplasmi、Neisseria、Noecardia、Oribacterium、Oscillobacter、Oscillospira、Paeruginosa、Paraprevotella、Phascolarctobacterium、Porphyromonadaceae、Prevotella、Propionibacterium、Proteus、Proteobacterium、Pseudomonas、Rickettsia、Rikenellacea、Roseburia、Ruminococcus、Salmonella、Shigella、Spirrillum、Spirochetes、Staphylococcus、Stenotrophomonas、Streptobacillus、Streptomyces、Streptococcus、Succinivibrio、Sutterellaceae、Thermoanaerobacteria、Treponema、Veillonella、Vibrio及び/又はYerseniaから選択される。
【0013】
さらに、腸及び/又は消化管の細菌種は、非排他的に、Acinetobacter baumannii、Bacillus cereus、Bacillus anthracis、Bacillus subtilis、Bacteroides faecichinchillae、Bacteroides fragilis、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteriodes vulgatus、Bartonella henselae、Bifidobacterium animalis、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Blautia hydrogenotorophica、Blautia wexlerae、Bordetella pertussis、Borrelia recurrentis、Borrelia hermsii、Borrelia turicatue、Borrelia burgdorferi、Campylobacter jejuni、Citrobacter fruendii、Citrobacter rodentium、Chlamydia psittaci、Chlamydia trachomatis、Chlamydia pneumoniae、Clostridium bolteae、Clostridium botulinum、Clostridium difficile、Clostridium leptum、Clostridium novyi、Clostridium perfringens、Clostridium ramosum、Clostridium septicum、Clostridium tetani、Coprococcus catus、Corynebacteria diptheriae、Desulfovibrio desulfuricans、Desulfovibrio fairfielddensis、Desulfovibrio piger、Ehrlichia chaffeensis、Enterococcus faecalis、Escherichia coli (e.g.、EHEC、EIEC、ETEC)、Eubacterium ventriosum、Erysipelothrix rhusiopathiae、Faecalibacterium prausnitzii、Firmicutes phyla、Flavonifractor plautii、Francisella tularensis、Helicobacter pylori、Hemophilus influenzae、Hemophilus parainfluenzae、Hemophilus aegyptus、Klebsiella pneumoniae、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus brevis、Lactobacillus casei、Lactobacillus farciminis、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus salivarius、Lactococcus lactis、Legionella pneumophila、Leptospirex hemoragia、Leptospira icterohemorrhagiae、Listeria monocytogenes、Methanobrevibacter smithii、Moraxella catarrhalis、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium leprae、Mycobacterium asiaticum、Mycobacterium intracellulare、Mycobacterium avium-intracellulars、Myobacterium johnei、Mycobacterium avium、Mycobacterium smegmatis、Mycoplasma pneumoniae、Mycoplasma hominis、Neisseria meningitidis、Neisseria gonorrhea、Pasteurella multocida、Propionibacterium acnes、Propionibacterium freudenreichii、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas syringae、Rickettsia prowozekii、Rickettsia rickettsii、Rickettsia akari、Ruminococcus bromii、Ruminococcus obeum、Salmonella typhimurium、Salmonella typhi、Salmonella paratyphi、Salmonella schottmulleri、Salmonella hirshieldii、Shigella dysenteriae、Spirrillum minus、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Stenotrophomonas maltophilia、Streptobacillus moniliformis、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus mutans、Streptococcus oralis、Streptococcus parasanguis、Streptococcus pyogenes、Streptococcus viridans、Streptococcus coelicolor、Streptococcus agalactiae、Streptococcus bovis、Streptococcus thermophilus、Treponema pallidum、Treponema pertainue、Treponema carateum、Vibrio cholera、Vibrio parahaemolyticus、Yersenia pestis及び/又はYersinia enterocoliticaから選択される。
【0014】
本発明の方法の第1工程において、少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種を含む生物学的試料を提供する必要がある。用語「生物学的試料」とは、ヒト及び/又は動物生物の材料、及び/又はヒト及び/又は動物生物と少なくとも短時間接触した材料を指す。生物学的試料は、少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上の細菌種を含むことが必須であることが見出されている。この種の試料、例えば、細胞及び核(DNA及び/又はRNA)を含有する試料、例えば唾液、尿、血液、糞便、汗、細胞組織、臓器穿刺、臓器、臓器の一部、全生物(同様に死んだ)、土壌試料、水試料又は類似の試料は、当業者に公知である。
【0015】
本発明による方法の次の工程では、少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種に特異的な少なくとも1つのバクテリオファージ種のバクテリオファージを提供する必要がある。用語「バクテリオファージ」又は「バクテリオファージ種」は、当業者に公知であり、細胞の外側に広がり、細胞内で増殖可能な感染性有機構造を指す。細胞は宿主として働き、バクテリオファージの場合は本質的に細菌である。バクテリオファージは、顕著な宿主特異性を有する;すなわち、それらは、細菌の少なくとも1つの種に特異的であり、それらが増殖及び繁殖に特異的である細菌のみを使用する。
【0016】
本質的な態様は、本発明の方法に使用されるバクテリオファージは、プロモーター及び/又は調節エレメントと機能的に会合した少なくとも1つの核酸を含むか、又は核酸と組み合わせたプロモーター及び/又は調節エレメントを有し、核酸は、抗菌核酸分子、細菌ポリペプチド及び/又はその断片のいずれかをコードすることである。好ましくは、バクテリオファージは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上のプロモーター及び/又は調節エレメントを有する核酸を含む。プロモーター又は調節配列をコードする核酸配列は、当業者に十分知られている。
【0017】
当業者は、用語「核酸」、「遺伝子」、「DNA」、「RNA」、「mRNA」、「cRNA」、「miRNA」、ならびに化合物「核酸配列」及び「核酸分子」は、互いの交換可能な同義語として使用され、一本鎖又は二本鎖のいずれかのデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びそのポリマーを記載することを理解する。
【0018】
用語「プロモーター」及び調節配列、又は「調節エレメント」はまた当業者に公知であり、遺伝子のmRNAへの発現、すなわち転写を可能にし、及び/又は増強するDNAの核酸配列を指す。この場合、調節エレメントは、エンハンサーエレメント、例えば、増殖因子、ホルモン、オンコジーンなどの結合部位であり得る。
【0019】
当業者は、用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、「アミノ酸」及び「タンパク質」が、アミノ酸残基のポリマーを記載するために互いに可能な同義語として使用されることをさらに理解する。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされ、後に修飾され得るアミノ酸である。ポリペプチドは、貯蔵物質として、輸送及び/又はシグナル分子として、構造分子として、保護及び/又は防御分子として、及び/又は代謝的に活性な分子として存在することができ、細胞内及び/若しくは細胞外、又は生物内で異なる機能を果たすことができる。例えば、ポリペプチドは、抗菌作用を有することができ、したがって、その特性又は機能のために、細菌の生物学に対抗することができる。
【0020】
本発明による方法の範囲において、少なくとも1つの抗菌核酸分子、抗菌ポリペプチド及び/又はその断片が提供され;好ましくは、バクテリオファージはまた、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上の抗菌核酸分子、抗菌ポリペプチド及び/又はその断片をコードすることもできる。抗菌性核酸分子は、RNA種の分野に由来し得、例えば、機能性mRNA又はmiRNAであり得る。ポリペプチドは、単純な直鎖状ポリペプチドとして、又は折りたたまれた構造タンパク質として存在することができる。毒素、増殖阻害物質、有糸分裂を阻害する酵素又は分子として作用する分子は、タンパク質の可能性がある。代謝過程を阻害し、有糸分裂を妨げ、又は細菌内の生物学的プロセスの機能不全を促進するRNA分子などの核酸分子は、核酸分子であり得る。
【0021】
本発明の方法の範囲において、前記抗菌性核酸配列又は抗菌性ポリペプチドと少なくとも50%同一の核酸分子、ポリペプチド及び/又はその断片をコードする核酸配列が考えられる。好ましくは、前記抗菌核酸配列又は抗菌ポリペプチドと少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99%、又は100%同一の核酸配列も考えられる。核酸配列は、天然に存在する核酸配列、又はバクテリオファージに既に存在するか、又は分子生物学的プロセスによって問題のバクテリオファージに導入された、天然に存在しない核酸配列である。例えば、これらの分子生物学的プロセスは、インビボ及び/又はインビトロ組換え、遺伝子導入、CRISPR/Cas、TALENなどを含むことができる。
【0022】
バクテリオファージは、Caudovirales、Ligamenvirales目などに属することができる。好ましくは、バクテリオファージは、Ackermanviridae、Ampullaviridae、Bicaudaviridae、Clavaviridae、Corticoviridae、Fuselloviridae、Globuloviridae、Guttaviridae、Lipothrixviridae、Myoviridae、Plasmaviridae、Podoviridae、Portogloboviridae、Rudiviridae、Salterprovirus、Sphaerolipoviridae、Siphoviridae、Tectiviridae、Tristomaviridae、Turriviridae、Inoviridae、Microviridae、Spiraviridae、Pleolipoviridae、Cystoviridae又はLeviviridae科に属する。本発明の範囲において、少なくとも1種のバクテリオファージ種のバクテリオファージ、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上のバクテリオファージのバクテリオファージを提供することが考えられる。さらに、あるバクテリオファージ種のバクテリオファージが、細菌の少なくとも1つ、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上の腸及び/又は消化管の細菌種に特異的であることが考えられる。当業者には、細菌の対応する種に対する適切なバクテリオファージの特定の選択が知られており、例えば、データベースから容易に選択することができる。
【0023】
本発明による方法の次の工程では、生物学的試料をバクテリオファージと接触させ、インキュベートする必要がある。接触は、バクテリオファージを当業者に公知の生物学的試料と接触させるための滴下、注射、配置及び/又は別の方法によって行うことができる。
【0024】
本発明の方法に関連する用語「インキュベートする」は、生物学的試料をバクテリオファージと共に一定期間インキュベートする方法工程であって、その間、バクテリオファージに特異的な少なくとも1つの細菌種の細菌を含む生物学的試料内のバクテリオファージの繁殖サイクルが、好ましくは適切な条件下で起こる方法工程を指す。この方法は、バクテリオファージを用いて生物学的試料をインキュベートするだけでなく、少なくとも1つの細菌種の集団が少なくとも70%減少するまでインキュベーションをモニターすることも含む。モニタリングの手順は、当業者に十分に知られており、一組の長さの時間に基づいて、又は当業者の経験に基づいて、例えば、試料を観察することによって、行うことができる。あるいは、少なくとも70%の細菌種の集団の減少が達成されたことを示す色表示又は他の光学的に可視的な表示を提供することができる。これは、意図された細菌密度に到達することによって、又は化学的及び/又は生化学的インジケーター、例えば、染色、染色の色変化、又は色の消失によって起こり得る。インキュベート及びモニタリングの工程は、細菌種が少なくとも70%減少するまで交互に行うことができる。
【0025】
本発明の範囲では、細菌種の個体数を少なくとも70%減少させるのに有利であることが証明されている。好ましくは、集団の減少はまた、70%を超えることができ、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%、少なくとも99.95%、少なくとも99.99%又は100%大きいものであり、細菌種の個体数の少なくとも70%の減少が顕著であるとみなされ、細菌種の個体数の少なくとも95%の減少が顕著であるとみなされる。当業者は、減少が100%であることはめったにないことを知っているが、適切なバクテリオファージが適切な生物学的試料中で使用されれば、100%を非常に良好に達成することができる。
【0026】
さらに、当業者は、70%から100%の細菌種の個体数の減少における本方法の成功を認識し、それは、十分な抗菌効果を確立し、したがって、生物学的試料内の腸及び/又は消化管の細菌種の十分な減少を確立する。この場合、細菌種の集団の減少は、問題のバクテリオファージの使用に基づく治療の有効性又は成功の尺度として用いることができる。あるいは、治療に有益な所望の細菌種の生命又は生物学に反する細菌種の減少を目的とすることができる。このように、この細菌種の生存又は増殖は、それに対抗するが、バクテリオファージに特異的な細菌種を減少させることによって達成できる。これは、治療に有益な所望の細菌種の集団の増殖が、最終的には、バクテリオファージに特異的な細菌種の集団の減少と同じ効果を生物に及ぼすことができるという仮定に基づいている。
【0027】
したがって、本発明の方法による方法により、バクテリオファージが特異性を有さない同じ生物学的試料内の細菌又は他の細胞及び/又は生物に損傷及び/又は影響を与えることなく、生物学的試料内で、健康に対する有害性なしに、永久的かつ長期的に、少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種の集団を、良好に耐容される方法で、具体的に、効果的に低減することが可能である。このようにして、他の種の細菌、ヒト及び/又は動物の生体内の菌類、組織及び/又は臓器に対する損傷が、技術水準から既知の手段の使用に完全に反して回避される。したがって、本発明に係る方法は、信頼性及びコスト効率のみならず、迅速かつ簡単に実施することができる。なぜなら、いくつかの方法工程が標準化された方法で実行され、高い成功率が細菌種の顕著な(70%以上の減少)又は有意な(95%以上の減少)減少によって達成されるからである。さらに、この方法は簡単な手段によって実行することができ、当業者は、生物学的試料及びバクテリオファージを提供し、これと接触させ、インキュベートし、集団内で問題の細菌種の減少を評価するための既知の装置を必要とするに過ぎない。
【0028】
本発明の有利な実施形態は、個別に又は組み合わせて実現することができ、従属請求項に示されている。
【0029】
本発明の実施形態において、工程c)に続いて、腸及び/又は消化管の細菌種の集団の減少の評価を行うことができる。「評価」という用語は、当業者によって理解され、工程c)の分析、解釈及び/又は評価を指す。細菌種の個体数を少なくとも70%減少させることが事前に監視されているため、この方法工程は、特に、達成された減少を検証し、任意選択的に、文書、写真及びフィルム記録を作成し、カウント、密度測定、増殖決定又は同様の方法に関するデータを収集し、記録することによって結果を記録するのに役立ち、本発明による方法の反復実行に関する統計について言及することができる。また、殺菌されていない、又はバクテリオファージによって十分に殺されていない、生物学的試料中に残存する細菌の活力又は生存率を、この段階で決定することができる。さらに、問題のバクテリオファージが特異性をもたない細菌の活力を決定することができる。この目的のための一般的な方法は、当業者に公知である。
【0030】
さらに、工程b)において、核酸は、2つ以上のプロモーター及び/又は調節エレメントを有することができ、及び/又は核酸は、2つ以上の核酸分子、ポリペプチド及び/又はその断片のための核酸配列をコードすることができる。好ましくは、核酸は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上のプロモーター及び/又は調節エレメントを有する。さらに好ましくは、核酸は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の核酸分子、ポリペプチド及び/又はその断片をコードする。これらの核酸分子、ポリペプチド及び/又はその断片は、1つ以上の細菌種に対して抗菌効果を有することができる;この文脈において、このような核酸を有するバクテリオファージは、複数種の細菌に感染することができることが好ましい。さらに、核酸配列は、1つの細菌種の殺傷に特異的であり得る。本質的な態様は、核酸の発現の特に強い活性化、したがって、抗菌核酸、抗菌核酸分子、抗菌ポリペプチド及び/又はその断片の特に増加した効率的な産生が達成され得ることである。このような核酸を有するバクテリオファージは、細菌種の集団の減少に特に効率的に寄与することができ、例えば、本発明に係る方法の工程c)(インキュベーション)を有意に加速又は有意に短縮することができる。これは、方法の効率の増加、及び方法を実施する期間及び/又はコストの減少につながる。
【0031】
本方法の実施形態において、腸及び/又は消化管の細菌種は、嫌気性及び/又は好気性であり得、細菌種は、Acidaminococcaceae、Actinobacteria、Actinomycineae、Alistipes、Bacteroides、Bacteroidetes、Bifidobacterium、Clostridium、Coprococcus、Coriobacterium、Desulfovibrio、Enterobacterium、Enterococcus、Escherichia、Erysipelotrichia、Firmicutes、Fusobacterium、Lactobacillus、Lachnospiracea、Paraprevotella、Porphyromonadaceae、Prevotella、Propionibacterium、Proteobacteria、Rikenellacea、Ruminococcus、Streptococcus、Thermoanaerobacteria又はVeillonellaに属し得る。
【0032】
「好気性」及び「嫌気性」という用語は、当業者に十分に知られており、問題の生物の好ましい生物学を記載している。「好気的」生物学とは、その生物が大気中の酸素を必要とするか、又は生きるために空気中の酸素に依存することを意味する。一方、「嫌気性」とは、酸素を必要としない生物学を意味する。すなわち、問題の生物は、酸素なしでその分子代謝を維持することができる。「偏性」と「耐性」と「通性」の好気性又は嫌気性生物との間には違いがある。当業者は、「偏性」とは、他の酸素状態を除いて、専ら好気性又は嫌気性の生物学を意味することを理解する。一方、「耐性」とは、生物が好気的又は嫌気的に生息するが、少なくともしばらくは逆の酸素条件に耐性であることを意味する。最後に、「通性」という用語は、例えば、嫌気性生物は、原則的にはそれに応じて代謝するが、酸素の存在下では好気性代謝に切り替えることができ、逆も同様であることを意味する。したがって、細菌の種は、専ら好気性、又は専ら嫌気性生物学、又はそれらの組合せを有することができる。
【0033】
本方法の実施形態において、心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害は、感情障害、例えば、躁状態、軽躁状態、うつ病、例えば、疲労症候群、慢性疲労症候群、自尊心の低下及び/又は環境からの評価が低いという認識、うつ病性障害、例えば、再発性うつ病障害、双極性障害、及び/又は持続性感情障害、例えば、気分循環性障害及び/又は気分変調症、パーソナリティ障害、例えば、多重人格障害、偏執症、統合失調症、非社交性、情緒不安定、演技性、アナンカスティック(強迫性)、不安性(回避性)、依存性(無力性)、及び/又はその他の人格障害、例えば、風変わり、不安、ナルシスト、受動的攻撃性、精神神経症及び/又は未熟、幻覚、健忘症、行動障害、薬物乱用、例えば、虐待、中毒、依存症、離脱症候群及び/又は離脱症状、蕁麻疹、発達障害、例えば、失語症、言語障害(表現力及び/又は受容力)、失読症、単独の綴り障害、算数障害、運動障害及び/又は混合型学力障害、社会障害、例えば、分離不安、対人恐怖症、兄弟間の対立、愛着障害、緘黙症(選択的、選択的、完全及び/又は無動)、非器質性夜尿症、非器質性遺尿症、摂食障害、異食症、常同性運動障害、吃音、雑音 及び/又は小児期及び青年期に特有の発症を伴うその他の行動障害及び/又は感情障害、例えば、鼻ほじり、爪噛みや指しゃぶり、感情障害、ストレス障害、例えば、心的外傷後ストレス障害、解離性障害、例えば、遁走、ポリオマニア、ドロマニア、転向ヒステリー、ガンザー症候群、仮性衰弱、強迫観念及び/又は転向、身体表現性障害、例えば、身体表現性疼痛障害、練炭障害及び/又は心因性障害、例えば、嚥下障害、そう痒症、歯ぎしり及び/又は過呼吸、神経症性障害、例えば、神経衰弱、離人症、現実感喪失、書痙、ダート症候群、精神無力症及び/又は心因性失神、身体醜形障害、恐怖症、例えば、対人恐怖症、恐怖症、不安障害、例えば、全般性不安障害、広場恐怖症、対人恐怖症、高所恐怖症及び/又はその他の特定の恐怖症、パニック障害、強迫性障害、例えば、強迫行為及び/又は強迫観念、統合失調症、統合失調型障害、統合失調感情障害、妄想性障害、精神病、精神病性障害、例えば、一過性又は非器質性精神病性障害、摂食障害、例えば、神経性食欲不振、過食症、過食症及び/又は異食症、睡眠障害、例えば、睡眠時随伴症、原発性不眠症、夢遊病及び/又は性的機能不全であるパーボ夜間行動症、例えば、性的欲求の欠如又は喪失、性的過剰、ニンフォマニア、サチリアシス及び/又は心因性の性機能障害、例えば、膣けいれん、無オルガズム症、オルガズム低下症、インポテンス及び/又は性交困難症、性同一性障害、例えば、性的嗜好の障害である性転換症及び/又は二重役割女装主義、例えば、フェティシズム、フェティッシュな女装主義、露出症、盗撮、小児性愛、サドマゾヒズム、複数の性的嗜好障害及び/又はその他の性的嗜好の障害、例えば、フロッターリズム及び/又は壊死性愛症、産後うつ病、チック障害、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害、アルコール依存症、自閉症、例えば、小児自閉症又は非定型自閉症、パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、運動ニューロン疾患、例えば、筋萎縮性側索硬化症、原発性側索硬化症、痙性対麻痺、進行性筋萎縮症、脊髄性筋萎縮症、進行性球麻痺及び/又は仮性球麻痺、(神経)変性性小脳障害、例えば、遺伝性運動失調、てんかん、多発性硬化症、過敏性腸症候群、局所的な痛みや全身の痛み、例えば、頭痛及び/又は手足の痛み及び/又は片頭痛、神経損傷、腫瘍、局在性、転移性又は全身、好ましくは脳、脊髄及び/又は末梢神経、血管障害、例えば、虚血性脳梗塞、脳内出血、心筋梗塞、高血圧、血管疾患、例えば、レイノー症候群及び/又は局所的な機能性血管障害、炎症性器質性血管疾患、例えば、閉塞性血管炎及び/又は結節性周囲炎、及び/又は変性血管疾患、例えば、動脈硬化性血管疾患、動脈瘤、血栓症、塞栓症及び/又は静脈炎、脳卒中及び/又はそれらの混合物であり得る。当業者は、前記心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害が、それ自体で、又は上述の既知又は未知の心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害と直接的又は間接的に相関して起こり得ることを認識している。
【0034】
上述の用語の定義及び/又は説明は、特に断らない限り、本明細書において以下に記載されるすべての側面に適用されると仮定する。本発明によれば、本発明の方法を実施するためのキットがさらに提案され、このキットは、
a)少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種、宿主生物の心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害に直接又は間接的に影響する腸及び/又は消化管の細菌種に特異的であり、プロモーター及び/又は調節エレメントと機能的に関連する少なくとも1つの核酸を含む、少なくとも1つのバクテリオファージ種のバクテリオファージを含む容器;
b)該方法の実施に関する使用説明書
を含む。
【0035】
本明細書で使用される用語「キット」は、好ましくは別個に又は単一の容器内に提供される、上述の成分の集合体(キット部品)を指す。
【0036】
「方法の実施に関する使用説明書」という表現は、本発明による方法の目的の実施を容易にする手段によって、明細書の数値的、書面的、及び/又は図形的表現を指す。それらは、好ましくは、ハンドブックの形態であってもよく、あるいは、アプリケーションのようなコンピュータプログラムによって提供されてもよい。さらに、コンピュータプログラムは、本発明の方法において参照される決定、比較及び/又はその結果を実行することができる実装されたアルゴリズムを有することができる。コンピュータプログラムは、光記憶媒体(例えば、コンパクトディスク)のようなデータ記憶媒体又はデバイス上に、又はコンピュータ又はデータ処理デバイス上に直接提供することができる。さらに、この使用説明書は、当業者に知られている量の基準を含むことが好ましく、さらに、容器及び生物学的試料の保管及び処分のための要件を含む。また、本方法を実施するための使用説明書は、バクテリオファージ種及び当業者に公知のバクテリオファージ種に関する表、登録簿、データベース又はその抜粋を含み、バクテリオファージ種の特異性及び/又は効率を示すことができる。
【0037】
さらに、本発明は、プロモーター及び/又は調節エレメントと機能的に関連する少なくとも1つの核酸を含むバクテリオファージを提案し、バクテリオファージは、少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種、宿主生物の心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害に直接的又は間接的に影響する腸及び/又は消化管の細菌種に特異的であり、核酸は、
a)少なくとも1つの抗菌性核酸分子をコードする核酸配列;及び
b)a)からの核酸配列によりコードされる核酸分子と少なくとも50%同一である核酸分子をコードする核酸配列;及び
c)少なくとも1つの抗菌ポリペプチドをコードする核酸配列;及び
d)c)からの核酸配列によりコードされるポリペプチドと少なくとも50%同一であるポリペプチドをコードする核酸配列;及び
e)核酸分子又はポリペプチドをコードする、a)、b)、c)又はd)からの核酸の断片のための核酸配列
を含む群から選択される
【0038】
本発明によるバクテリオファージは、上記で詳細に記載されている。核酸配列は、天然に存在する核酸配列、又はバクテリオファージ中に既に存在するか、又は、例えば、分子生物学的プロセスによってバクテリオファージ中に導入された、天然に存在しない核酸配列である。例えば、これらの分子生物学的プロセスは、当業者に知られているように、インビボ及び/又はインビトロ組換え、遺伝子導入、CRISPR/Cas、TALENなどを指すことができる。
【0039】
一実施形態では、核酸が2つ以上のプロモーター及び/又は調節エレメントを有すること、及び/又は核酸が2つ以上の核酸分子、ポリペプチド及び/又はその断片の核酸配列をコードすることが考えられる。本質的な態様は、核酸の発現の特に強い活性化、したがって、抗菌核酸、抗菌核酸分子、抗菌ポリペプチド及び/又はその断片の特に増加した効率的な産生が達成されることである。このような核酸を有するバクテリオファージは、腸及び/又は消化管の細菌種の集団の減少、又はこの種の細菌の生物学に反する細菌種の減少に特に効率的に寄与することができる。さらに、そのような核酸を有するバクテリオファージが、複数の種の細菌に感染することが可能であると考えられる。
【0040】
さらに別の実施形態では、腸及び/又は消化管の細菌種が嫌気性及び/又は好気性であることが考えられる。細菌種の分類については、上記で詳細に説明した。
【0041】
本発明による心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害は、上記に詳細に記載されている。
【0042】
さらに、本発明は、バクテリオファージ及び/又は腸内微生物叢の組成を変化させるための薬物としてバクテリオファージ及び/又は少なくとも1つの他の成分を含む医薬組成物を、心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害の発生及び/又は進行を減速するための薬物として、及び/又は心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害、細菌感染、代謝性疾患、メタボリックシンドローム及び/又はがんを治療するための薬物として提案する。
【0043】
本明細書で使用される「医薬組成物」という用語は、上記で詳細に定義されたバクテリオファージの混合物、及び少なくとも1つの他の成分を指す。好ましくは、この種の他の成分は、安定剤、湿潤剤、薬学的担体、薬学的に許容される担体、希釈剤、薬学的に許容される希釈剤、追加の薬学的剤、分離剤などであり得る。好ましい希釈剤は、水、アルコール、生理食塩水溶液、リン酸緩衝生理食塩水のような緩衝液、シロップ、油、水、エマルジョン、種々のタイプの湿潤剤等を含む。担体は、組成物の他の成分と適合性があり、宿主生物に有害でないという意味で許容されなければならない。使用される薬学的担体は、固体、ゲル又は液体を含むことができる。固体担体の例は、ラクトース、テラアルバ、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などである。同様に、担体又は希釈剤は、当技術分野で周知の時間遅延物質、例えば、モノステアリン酸グリセロール又はジステアリン酸グリセロール単独又はワックスと共に含有することができる。これらの適当な担体は、上述の担体、及びレミントンの医薬科学、マック出版社、ペンシルバニア州イーストン、欧州薬局方、米国のホメオパシー薬局方又はHABのような、専門分野で公知の他の担体を含む。薬学的に許容される希釈剤は、組み合わせの生物学的活性が損なわれないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液及びハンクス液である。さらに、医薬組成物は、他の担体、アジュバント又は非毒性、非治療的、非免疫原性安定剤などを含有することもできる。
【0044】
バクテリオファージ及び/又は医薬組成物は、問題の使用に適合させなければならない。
したがって、バクテリオファージ及び/又は医薬組成物は、意図された投与方法に依存して、全身又は局所適用のために処方されると仮定される。好ましくは、バクテリオファージ及び/又は医薬組成物は、全身又は局所適用のために処方されるべきである。好ましくは、例えば錠剤、溶液及び/又は飲用アンプルの形態での経口投与、又はゲル形態での局所投与、又は例えば能動又は受動ワクチンとしての注射による適用が意図される。しかしながら、バクテリオファージ及び/又は医薬組成物は、作用のタイプ及び様式に応じて、皮膚、筋肉内、皮下、経口、直腸、逆行性及び/又は静脈内投与を含む他の方法で投与することもできる。個々に推奨される正確な投与量は、基本的に、当業者に周知の他のパラメータに依存することができ、例えば、小児は成人とは異なる投与量を受けることができる。当業者は、種々の既知の計算ツールの助けを借りて投与量を調節しなければならないかどうかを容易に判断することができる。
【0045】
「腸内微生物叢の組成を変化させる」という表現は、当業者に周知であり、宿主生物の腸内微生物叢の一部である腸内及び/又は消化管内の細菌種の少なくとも1つの集団が、当業者に公知の方法を用いて、上述したように、他の方法で直接的又は間接的に増加、減少、除去、阻害、及び/又は影響を受けるプロセスを記載する。これは、問題となる細菌数を測定することによって測定することも、腸内微生物叢内の他の細菌種と比較して測定することもできる。この目的に適した方法は当業者に知られている。
【0046】
「心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害の発生を予防する」という表現は、当業者によって理解され、疾患及び/又は障害の発症及び/又はその予防/予防の部分的、完全、短期、永続的及び/又は長期的回避を指す。これは、好ましくは、少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種を減少させることによって達成されることが可能である。「心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害の進行を減速する」という表現は、当業者によって理解され、達成された状態の部分的、完全、短期、永続的及び/又は長期の維持、及び心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害に付随する症状の改善を指す。これは、好ましくは、少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種を減少させることによって達成されることが可能である。
【0047】
バクテリオファージ及び/又は医薬組成物は、腫瘍学、免疫学、感染症、歯科、口腔及び矯正医学、耳鼻咽喉科、眼科、神経学、婦人科、消化器科、内分泌学、精神科、整形外科、小児科、外科、泌尿器科などの医学分野における心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害及び疾患を治療するための薬物として用いることができる。心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害とは別に、バクテリオファージ及び/又は医薬組成物の使用を示すことができる診断としては、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、胆嚢疾患、消化管の慢性疾患、慢性腸炎症、高コレステロール値、高酸性度、高血圧、呼吸困難、睡眠時無呼吸、冠動脈心疾患、関節症、痛風、子宮、乳房、子宮頸部、膵臓、肝臓、胃、リンパ管、皮膚、血液、腸、前立腺及び/又は胆嚢がんなどのがん、性ホルモン障害、性欲減退、疼痛、血栓症及び塞栓症のリスクの増加、及び/又は手術及び麻酔中のリスクの増加が挙げられる。好ましくは、それぞれの場合の目的は、少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種を減少させ、したがって腸内微生物叢の組成を変化させ、心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害の発生及び/又は進行を一次的又は二次的成功として防止及び/又は減速させ、それによって問題の疾患及び/又は問題の疾患を治療するための良好、好ましくは改善された予後を得、又はそれを治癒させることである。バクテリオファージ及び/又は医薬組成物の使用は、実際の疾患にかかわらず可能である。少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種の減少、及び/又は心理的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害の発症の予防及び/又は進行の減速において成功が見られる。
【0048】
用語「治療」は、未治療のヒト及び/又は動物生物と比較して生じるヒト及び/又は動物生物のあらゆる改良を指し、この改良は、好ましくは、少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種の減少、腸内微生物叢の組成の変化、及び/又はヒト及び/又は動物生物の心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害の発生及び/又は進行の減速に基づく。治癒することも考えられる。処置は、処置されるすべてのヒト及び/又は動物の生物において成功しない可能性があると仮定される。しかしながら、この用語は、統計学的に有意な部分の対象(例えば、コホート研究におけるコホート)に対して治療が成功することを前提としている。当業者は、ある部分が、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、学生のt検定、Mann-Whitney検定などの種々の既知の統計的評価手段の助けを得て、統計的に有意であるかどうかを容易に決定することができる。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%である。p値は、好ましくは0.05、0.01、0.0005又は0.0001である。
【0049】
用語「薬物」は、上述のように、治療的に有効な用量でのバクテリオファージ及び/又は医薬組成物を指す。医薬組成物は、好ましくは、バクテリオファージ、少なくとも1つの薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤を含む。薬物は、上記で詳細に記載されている、異なる投与経路のために製剤化することができる。治療上有効な投与量とは、腸内微生物叢の組成を変化させ、少なくとも1つの腸及び/又は消化管の細菌種を減少させ、上述の疾患の発生及び/又は進行を抑制し、及び/又は治療するために必要とされる量をいう。治療上の有効性及び毒性は、例えば、ED50(50%の治療上有効な用量)及びLD50(50%の致死量)のような医薬標準手順を用いて、細胞培養物又は実験動物において決定することができる。治療効果と毒性効果との間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比として表すことができる。投与法は、治療医及び他の臨床的因子によって決定される。医学的に知られているように、適切な投与量は、当業者に知られているサイズ、体表面、年齢、投与される物質、性別、投与の時間及び経路、一般的な健康及び他の薬剤を同時に投与することを含む多くの因子に依存し、その進行は定期的な評価によってモニターすることができる。
【0050】
さらに、本発明は、バクテリオファージ、及び/又はバクテリオファージと、代謝障害、心血管障害、細菌感染、代謝疾患、メタボリックシンドローム及び/又はがんの治療に使用するための少なくとも1つの他の成分とを含む医薬組成物を提案する。
【0051】
さらに、本発明は、腸内微生物叢の組成を変化させるための治療方法又は非治療方法における使用、心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害の発生を予防し及び/又は進行を減速するための治療方法又は非治療方法における使用、ならびに/又は心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害、細菌感染、代謝性疾患、メタボリックシンドローム及び/又はがんを治療するための治療方法又は非治療方法における使用のための、バクテリオファージ、及び/又はバクテリオファージと少なくとも1つの他の成分を含む医薬組成物を提案する。
【0052】
心理学的、神経変性及び/又は神経学的疾患及び/又は障害は、上記で詳細に記載されている。本発明の実施形態において、細菌感染は、気道、歯、口、眼、筋骨格系、血液、消化管の細菌感染であり得、好ましくは、結腸、小腸、十二指腸、胃、肝臓、胆嚢及び/又は膵臓、皮膚、心血管系、ホルモンバランス、心臓、免疫系、神経系、代謝、創傷及び/又は泌尿生殖器の細菌感染であり得る。
【0053】
用語「消化管」は、当業者によって理解されており、ヒト及び/又は動物生物、特に腸内微生物叢を介してその調節に実質的に寄与する腸を消化可能にすることを目的として、摂取、分解、輸送及び/又は栄養素の加工に役立つヒト及び/又は動物生物の臓器を指す。
【0054】
本明細書に記載される特徴は、それ自体で、又は互いに任意の組み合わせで、それぞれ実現することができる。本発明は、例示的な実施例に限定されない。
【国際調査報告】