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特表2023-547565化学反応を制御可能に行うための機器および方法
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  • 特表-化学反応を制御可能に行うための機器および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】化学反応を制御可能に行うための機器および方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20231102BHJP
   B01J 19/24 20060101ALI20231102BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B01J19/00 301A
B01J19/24 Z
H05B3/00 310C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543268
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2021076543
(87)【国際公開番号】W WO2022064051
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】20198794.8
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521329305
【氏名又は名称】リンデ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】523112002
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ラング,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ホフシュテッター,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ツェルフーバー,マティウ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレンホーファー,アントン
(72)【発明者】
【氏名】シュテーゲマン,ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】ライザー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】フライシュマン,ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】ツィーグラー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ポッセルト,ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】デルホム-ノイデッカー,クララ
(72)【発明者】
【氏名】シュストフ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】イェンネ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】キューン,ハインツ-ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】コッヘンデルファー,キアラ・エンネ
(72)【発明者】
【氏名】ライプ,ハインリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ,ライナー
【テーマコード(参考)】
3K058
4G075
【Fターム(参考)】
3K058CA04
3K058CB09
4G075AA03
4G075AA63
4G075AA65
4G075BA05
4G075BA10
4G075CA02
4G075CA13
4G075DA01
4G075DA02
4G075DA03
4G075EA06
4G075EB21
4G075EB23
4G075FB02
4G075FC13
(57)【要約】
いくつかの電気的に加熱可能な管区域を有するいくつかの反応管を有する反応器内で化学反応を調整して行うための方法を提供し、電流入力領域内に管区域の少なくとも1つにそれぞれ接続された電力接続を提供し、電流出力領域内に少なくとも1つの接続要素を提供し、管区域の各々は接続要素に接続され、化学反応は水蒸気分解、水蒸気改質、乾燥改質、プロパン脱水素、500℃を超えて少なくとも部分的に行われる炭化水素を用いる反応のうちの1つである。方法は、1つまたは複数の反応管を通して処理流体を運び、少なくとも1つの接続要素が中性点を形成するように、多相AC電圧の相として提供される可変のいくつかの電圧をいくつかの電力接続に提供し、1つまたは複数の電圧を設定するステップと、1つまたは複数の測定変数に対応する1つまたは複数の測定値を検出するステップと、検出した特定値が測定変数の所定の値または値範囲に対応するように、設定されたいくつかの電圧を変更するステップとを備える。その上、反応器、1つまたは複数の測定機器、および制御装置を備える装置が提供され、制御装置は方法を行うように構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
いくつかの電気的に加熱可能な管区域(24、24a、24b、24c)を有するいくつかの反応管(20、20a、20b、20c)を有する反応器で処理流体内の化学反応を調整可能に行うための方法であって、電流入力領域(11)内に前記管区域の少なくとも1つにそれぞれ接続されたいくつかの電力接続(40)を提供し、電流出力領域(12)内に少なくとも1つの接続要素(42)を提供し、前記管区域の各々は、前記接続要素に導電接続され、前記化学反応は水蒸気分解、水蒸気改質、乾燥改質、プロパン脱水素、500℃を超えて少なくとも部分的に行われる炭化水素を用いる反応のうちの1つであり、
前記いくつかの反応管を通して前記処理流体を運ぶステップ(502)と、
前記少なくとも1つの接続要素(42)が中性点を形成するように、多相AC電圧の相として提供される可変のいくつかの電圧を前記いくつかの電力接続に提供するステップ(504)と、
前記いくつかの前記電圧を設定するステップ(506)と、
1つまたは複数の測定変数に対応する1つまたは複数の測定値を検出するステップ(508)と、
検出された前記測定値が前記測定変数の所定の値または値範囲に対応するように、設定された前記いくつかの電圧を変更するステップと
を備える方法。
【請求項2】
前記測定変数は、
-少なくとも1つの温度、
-少なくとも1つの電流強度、
-少なくとも1つの物質組成
のうちの1つまたは複数を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記いくつかの電圧を同じ方法で変更する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記いくつかの電圧を互いに独立に変更する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数の測定変数は、
-前記いくつかの反応管の管流出口で測定した前記処理流体の管流出口温度、および
-前記いくつかの反応管の前記管流出口で測定した前記処理流体の物質組成
のうちの一方または両方を備え、
前記いくつかの電圧は、好ましくは、測定した前記管流出口温度および/または測定した前記物資組成が所定の管流出口温度および/または所定の物質組成に等しい、またはできるだけ近いように変更される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の測定変数は、
-前記さまざまな電力接続に接続された前記管区域で測定した2つ以上の管区域温度、
-前記さまざまな電力接続で測定した2つ以上の電力接続電流強度
のうちの一方または両方を備え、
前記さまざまな電力接続での前記いくつかの電圧は、好ましくは、前記測定した管区域温度が所定の管区域温度に対応する、および/または前記さまざまな電力接続に接続された前記管区域で前記電流強度から算出した電力出力が所定の電力出力に対応するように制御される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数の測定変数は、
-中性線上で測定した中性線電流強度、
-前記さまざまな電力接続で測定した前記2つ以上の電力接続電流強度
のうちの一方または両方を備え、
前記いくつかの電圧は、好ましくは、前記中性線電流強度が最小になるように、および/または相対位相を考慮して算出した前記電力接続電流強度の合計が最小になるように変更される、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
処理流体内の化学反応を調節して行うための装置であって、
いくつかの電気的に加熱可能な管区域(24、24a、24b、24c)を有するいくつかの反応管(20、20a、20b、20c)を有する反応器(100、200)であって、電流入力領域(11)内に前記管区域のうちの少なくとも1つにそれぞれ接続されたいくつかの電力接続(40)を提供し、電流出力領域(12)内に少なくとも1つの接続要素(42)を提供し、前記管区域の各々は、前記接続要素が中性点を形成するように前記接続要素に接続される反応器(100、200)
を備える装置において、
前記いくつかの電力接続で可変のいくつかの電圧を提供するように構成された、多相AC電圧の相として前記いくつかの電圧を提供する制御可能な電源(50)、
1つまたは複数の測定変数を検出するように構成された1つまたは複数の測定機器(62、62a、62b、62c、63、63a、63b、63c、64、64a、64b、64c、66、67、67a、67b、67c)、
通信用に前記電源および前記1つまたは複数の測定機器に接続され、前記1つまたは複数の測定変数の関数として前記電源を制御するように構成された制御装置(60)
により特徴づけられ、
前記制御装置は、請求項1~7に記載の方法を行うように構成される装置。
【請求項9】
前記反応器は反応容器(10)を備え、前記電流入力領域(11)は前記反応容器内部に配列される、および/または前記電流出力領域(12)は前記反応容器内部に配列される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記1つまたは複数の測定機器は、
-1つまたは複数の温度センサ、
-構成される1つまたは複数の電流センサ、
-1つまたは複数の物質組成センサ
のうちの1つまたは複数を備える、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記電源(50)は、前記いくつかの電圧を同じ方法で変更するように構成され、好ましくは、前記電圧を制御できる電力制御装置(306u、306v、306w)、および詳細にはサイリスタ電力制御装置を備える、請求項8または10に記載の装置。
【請求項12】
前記電源(50)は、前記いくつかの電圧を互いに独立に変更するように構成され、好ましくは、前記電圧ごとに可変変圧器(406u、406v、406w)、または前記可変変圧器の機能を実装する電力電子機器を備える、請求項8または10に記載の装置。
【請求項13】
前記1つまたは複数の測定機器は、
-前記処理流体の温度を測定するために、前記いくつかの反応管の管流出口(23、23a、23b、23c)に配列された少なくとも1つの温度センサ(62、62a、62b、62c)、
-前記処理流体の物質組成を測定するために、前記いくつかの反応管の前記管流出口に配列された少なくとも1つの物質組成センサ(64、64a、64b、64c)
のうちの一方または両方を備え、
前記制御装置は、好ましくは、請求項5に記載の方法を行うように構成された、
請求項8~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記1つまたは複数の測定機器は、
-前記さまざまな電力接続に接続された前記管区域上に配列された2つ以上の管区域温度センサ(63、63a、63b、63c)、
-前記さまざまな電力接続に配列された2つ以上の電力接続電流センサ(67、67a、67b、67c)
のうちの一方または両方を備え、
前記制御装置は、好ましくは、請求項6に記載の方法を行うように構成された、
請求項8~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記反応器は前記いくつかの電力接続を備え、前記1つまたは複数の測定機器は、
-前記接続要素に接続された中性線(44)上に配列された中性線電流センサ(66)、
-前記さまざまな電力接続に配列されたいくつかの電力接続電流センサ(67、67a、67b、67c)
のうちの一方または両方を備え、
前記制御装置は、好ましくは、請求項7に記載の方法を行うように構成された、
請求項8~14のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの加熱可能な反応管を用いて反応器内で化学反応を調整可能に行うための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学工業での一連の処理では反応器を使用し、反応器内で1つまたは複数の反応物は、加熱された反応管を通して運ばれ、反応器内で触媒作用または非触媒作用で変換される。加熱は、詳細には化学反応を行うために必要とされる活性化エネルギーに打ち勝つように働く。反応は、全体が吸熱的に、または活性化エネルギーに打ち勝った後に放熱的に進行する可能性がある。本発明は、詳細には強い吸熱反応に関する。
【0003】
そのような処理の例は水蒸気分解、異なる改質処理、詳細には水蒸気改質、乾燥改質(二酸化炭素改質)、混合改質処理、アルカンを脱水素するための処理などである。水蒸気分解では、反応管は、反応器内に少なくとも1つのUベンドを有する管コイルの形をとる反応器を通って導かれるのに対して、水蒸気改質では、典型的にはUベンドなしの反応器を通って伸展する管を使用する。
【0004】
本発明は、そのような処理、および反応管の実施形態すべてに適している。単なる例示としてウルマン(Ullmann)の産業化学事典(Encyclopedia of Industrial Chemistry)の「エチレン」、「ガス生産」、および「プロペン」の項目、たとえば2009年4月5日の刊行物のDOI:10.1002/14356007.a10_045.pub2、2006年12月15日の刊行物のDOI:10.1002/14356007.a12_169.pub2、および2000年6月15日の刊行物のDOI:10.1002/14356007.a22_211を参照する。
【0005】
対応する反応器の反応管は従来、バーナを使用することにより加熱される。反応管は、さらにまたバーナが配列される燃焼室を通して導かれる。
【0006】
しかしながら、たとえば独国特許出願公開第102015004121(A1)号明細書(同様に、欧州特許出願公開第3075704(A1)号明細書)に記述されるように、二酸化炭素排出をローカルに低減することなく、または低減して生産される合成ガスおよび水素の需要が現在高まっている。しかしながら、点火された反応器を使用する処理は、典型的には化石エネルギー担体を燃焼させることが原因でこの需要を満たすことができない。他の処理は、たとえば費用が高いために排除される。同じことはまた水蒸気分解、もしくはアルカンを脱水素することによるオレフィンおよび/または他の炭化水素の供給にも当てはまる。そのような場合も、少なくともその現場でより少ない量の二酸化炭素を排出する処理が望ましい。
【0007】
この背景に対して、引用した独国特許出願公開第102015004121(A1)号明細書は、点火に加えて、水蒸気分解のために反応器を電気的に加熱することを提案している。この場合、3つの外部導体に三相交流電圧を提供する1つまたは複数の電圧源を使用する。各外部導体は反応管に接続される。管路が開き反応管が伝導的に接続されるコレクタにより中性点が実現されるスター接続が形成される。この方法では、コレクタは、理想的には電位がないままである。垂直線に対して、コレクタは、燃焼室の下方かつ外側に配列され、好ましくは反応管に垂直に、または水平線に沿って伸展する。国際公開第2015/197181(A1)号は、同様に反応管が中性点に接続されて配列された反応器を開示している。国際公開第2020/035575(A1)号は、少なくとも1つの直流を用いて流体を電気的に加熱するための機器に関する。独国特許出願公開第102011077970(A1)号明細書は、腐食性ガスを温度処置するために処置室内に配列された導電性加熱要素を伴う装置に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102015004121(A1)号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3075704(A1)号明細書
【特許文献3】国際公開第2015/197181(A1)号
【特許文献4】国際公開第2020/035575(A1)号
【特許文献5】独国特許出願公開第102011077970(A1)号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ウルマン、「産業化学事典」、2009年4月5日の刊行物のDOI:10.1002/14356007.a10_045.pub2、2006年12月15日の刊行物のDOI:10.1002/14356007.a12_169.pub2、および2000年6月15日の刊行物のDOI:10.1002/14356007.a22_211
【非特許文献2】DIN EN 10027、Part 1、「Materials」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
電気的に加熱された反応管を用いるそのような反応器の動作中、一方では反応管の電気的性質(抵抗)の変化が発生する可能性があり、他方では反応生成物の量および/または組成の変化が望ましい可能性がある。したがって、目的は、動作中のそのような変化に反応器の動作条件を、または反応器の動作条件に伴い行われる化学反応の反応パラメータを適合させることができることである。その上、詳細には外部導体で多相AC電圧を使用するときにそのような変化に電気工学動作条件を適合させるという目的もまた存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、独立請求項の特徴を有する、化学反応を調整可能に行うための方法および装置により達成される。
【0012】
化学反応は、処理流体が、すなわち、反応物(典型的にはガスまたはガス混合物)を伴う流体が運ばれるいくつかの反応管内で進行する。反応管の管区域は電気的に加熱可能であり、管区域は、電気加熱のための電流または電圧が提供される1つ(またはいくつかの)制御可能な電源または電圧源に電源接続を用いて接続される。電圧は多相AC電圧の相として提供される。本発明によれば、電源接続に印加される電圧は、詳細には個々に変更できる。これにより一方では、電気的性質が変わる場合に管区域で加熱電力を一定に保つことが可能になる。電気的性質の変化は、たとえば、電流伝導構成要素が受ける電磁場に起因する誘導効果、反応器内部で変化する温度、動作中に形成されたコークス層、反応の吸熱性/放熱性が変化する結果として変化する熱需要、またはさらにまた製作許容差もしくは材料の変動により引き起こされる可能性がある。他方では、加熱電力は、詳細には処理温度に依存する反応生成物の組成を適応可能にするために、的を絞った手法で変えることが可能である。その上、加熱電力はまた、組成を制御する場合、反応生成物の品質調節を行うことを可能にするために、的を絞った手法で変えてよい。
【0013】
化学反応は水蒸気分解、水蒸気改質、乾燥改質(二酸化炭素改質)、プロパン脱水素、500℃を超えて少なくとも部分的に行われる炭化水素を用いる反応のうちの1つである。より一般的な言い方では、化学反応は200℃~1,700℃の、詳細には300℃~1,400℃、または400℃~1,100℃の範囲の温度で少なくとも部分的に進行する化学反応であってよい。化学反応は、好ましくは少なくとも500℃、より好ましくは少なくとも700℃の温度で少なくとも部分的に、および詳細には500℃または700℃~1,100℃の温度範囲で少なくとも部分的に進行する化学反応である。それに応じて提供される電圧/電流は、対応する加熱電力を提供するのに適している。反応器および電源は同様に、これらの温度で化学反応を行って対応する加熱電力を提供するように構成される。
【0014】
より具体的には、いくつかの電気的に加熱可能な管区域を有するいくつかの反応管を反応器に提供し、電流入力領域内に管区域の少なくとも1つにそれぞれ接続された電力接続を提供し、電流出力領域内に少なくとも1つの接続要素を提供し、管区域の各々は接続要素に接続される。具体的には、反応器内で化学反応を調整可能に行うための本発明による方法は、いくつかの反応管を通して処理流体を運ぶステップと、少なくとも1つの接続要素(接続要素中性点)が中性点を形成するように、多相AC電圧の相として提供される可変のいくつかの電圧をいくつかの電力接続に提供するステップと、いくつかの電圧を設定するステップと、1つまたは複数の測定変数を検出するステップと、いくつかの設定電圧を変更するステップであって、その結果、検出された測定変数の測定値は、測定変数の所定の値または値範囲に対応するステップとを備える。
【0015】
この場合、提供されるいくつかの電圧は、電気的に加熱される管区域に与える加熱電力に対応し、かつ管区域内で化学反応を可能にする、すなわち管区域を適切な温度に加熱する、1つまたは複数の所定の電圧範囲にある。
【0016】
これらの測定変数を検出する測定機器および測定機器の配列について、本発明による装置の実施形態に関連して記述する。電源接続での電圧の変更または制御は、測定機器が検出した測定変数の測定値の関数として行われる。この変更は、測定値が測定変数の指定された値または値範囲に対応するように行われる。「対応する」という表現はこの場合、測定値が、指定された値に等しい、もしくはできるだけ近い、または指定された値範囲内にあることを意味すると理解されたい。詳細には、その結果、制御ループが実現され、電圧は操作変数とみなすことができ、測定変数は制御変数とみなすことができる。
【0017】
電圧または対応する電流は、交流電圧または交流電流として提供される。電流入力は、電力接続に割り当てられたMの別個に接続された相(その結果、各電力接続は相の1つに接続される)を介して直接加熱された反応管または反応管の管区域の中に入る多相交流電流の形で行われる。電源接続を介してMの相に接続された導電反応管または管区域は、有利には同様に(電流出力領域内で)接続要素により中性点で導電接続される。相数Mは詳細には3であり、従来の三相交流電流源または三相交流電流供給送電網の相数に対応する。しかしながら、詳細には本発明は、三相の使用に限定されるのではなく、さらにまた異なる、詳細にはより多くの相数、たとえば相数2、4、5、6、7、または8で使用できる。位相オフセットは、詳細には360°/Mであり、三相交流電流の場合、120°である。多相交流電流の有利な点は、負荷が実質的に対称であるとき、相電流が中性点で互いに相殺することであり、その結果、電圧供給源または電源へのリターン電流がまったく発生しない、またはわずかしか発生しない。その結果、電圧は多相AC電圧の相として提供される。それに応じてこの目的のために使用する電源は、好ましくは多相交流電流源である。
【0018】
好ましくは、測定変数は、少なくとも1つの温度、少なくとも1つの電流強度、および/または少なくとも1つの物質組成のうちの1つまたは複数を備える。その結果、化学反応の制御は、少なくとも1つの処理温度、少なくとも1つの加熱電力(電流強度に依存する)、または反応生成物もしくは最初の反応物の少なくとも1つ組成(すなわち、管注入口または管流出口での処理流体の物質組成)の関数として行うことができる。その結果、対応する所望の値/範囲を達成できる。
【0019】
いくつかの電圧は同じ方法で変更できる、すなわち、一緒に変更され、互いに独立に変更されない。好ましくは、いくつかの電圧は互いに独立に変更される、すなわち、電圧の各々は、その他の電圧と独立に、個々に設定できる。
【0020】
好ましくは、1つまたは複数の測定変数は、いくつかの反応管の管流出口で測定した処理流体の管流出口温度、および/またはいくつかの反応管の管流出口で測定した処理流体の物質組成のうちの一方または両方を備える。より好ましくは、いくつかの電圧は、測定した管流出口温度および/または測定した物質組成が、所定の管流出口温度および/または所定の物質組成に等しい、もしくはできるだけ近い、または所定の値範囲内にあるように変更される。反応生成物の組成は、詳細には化学反応が進行する(管流出口温度が尺度である)処理温度に依存し、したがって、制御技術の観点から前記処理温度を介して直接に影響を受ける可能性がある。電圧を、その結果、加熱電力を変更することにより、その結果、特定の所望の反応生成物組成を達成できる。いくつかの反応管が存在する場合、それに応じて測定変数は、管流出口でいくつかの管流出口温度および/またはいくつかの物質組成を備えることができる。さらにまた追加もしくは代わりに、測定変数として1つまたは複数の管注入口で測定した対応する温度または物質組成を使用可能であり、すなわち、測定変数は、1つもしくは複数の管注入口温度および/または1つもしくは複数の管注入口物質組成を備えることができる。その上、追加もしくは代わりに、測定変数として1つまたは複数の反応管上の1つまたは複数の中間位置で測定した対応する温度を使用可能であり、すなわち、測定変数は、1つまたは複数の反応管上の1つまたは複数の中間位置温度を備えることができる。
【0021】
好ましくは、1つまたは複数の測定変数は、さまざまな電力接続に接続された管区域で測定した2つ以上の管区域温度、またはさまざまな接続で測定した2つ以上の電力接続電流強度のうちの一方または両方を備える。さらに好ましくは、さまざまな電力接続でのいくつかの電圧は、測定した管区域温度が所定の管区域温度に対応するように、および/またはさまざまな電力接続に接続された管区域で電流強度から算出した電力出力が所定の電力出力に対応するように制御される。これにより、異なる電力接続に接続された管区域に異なる強度の加熱電力を供給可能になり、その結果、詳細にはさらにまたこれらの異なる管区域で異なる温度を設定可能である。この場合、中性線を介して、増大したリターン電流が発生することがある。
【0022】
単一反応管(管コイル)の異なる管区域が異なる電力接続に接続される場合、反応管に沿って所望の加熱電力プロファイルまたは温度プロファイルを生成できる。したがって、好ましくは、本方法は、これらの管区域に異なる加熱電力を供給するために、異なる電力接続に接続された、反応管の異なる管区域で異なる電圧を設定するステップを備える。
【0023】
好ましくは、1つまたは複数の測定変数は、中性線で測定した中性線電流強度、またはさまざまな電力接続で測定した2つ以上の電流強度のうちの一方または両方を備える。さらに好ましくは、電圧は、中性線電流強度が最小になるように、および/または相対位相を考慮して算出した電力接続電流強度の合計が最小になるように変更される。換言すれば、中性線電流強度または電力接続電流強度は、ゼロの電流強度値にできるだけ対応すべきである。第2の可能性は、詳細には、中性線がまったく提供されないときに有利である。明らかに、この電圧変更は、化学反応が進行するのに適した、または化学反応が進行するために必要な、加熱電力に対応する一定の電圧範囲内だけで行うことができる(その結果、詳細には電圧はゼロに設定されない)。電気的に加熱された管区域を通して非対称負荷が発生する場合(たとえば、さまざまな管区域がさまざまな電気抵抗を有するとき)、これは、本実施形態により少なくとも部分的に補償できる。
【0024】
処理流体内で化学反応を調整可能に行うための、本発明による装置は、いくつかの電気的に加熱可能な管区域を有するいくつかの反応管を有する反応器であって、電流入力領域内に管区域のうち少なくとも1つにそれぞれ接続されたいくつかの電力接続を提供し、電流出力領域内に少なくとも1つの接続要素を提供し、管区域の各々は、接続要素が中性点(接続要素中性点)を形成するように接続要素に接続された反応器と、いくつかの電力接続でいくつかの可変電圧を提供するように構成された少なくとも1つの制御可能電源(交流電流源)であって、多相交流電圧の相としていくつかの電圧を提供する少なくとも1つの制御可能電源と、1つまたは複数の測定変数を検出するように構成された1つまたは複数の測定機器と、通信するために少なくとも1つの電源および1つまたは複数の測定機器に接続され、1つまたは複数の測定変数の関数として少なくとも1つの電源を制御するように構成された制御装置とを備える。この場合、同じ電源のさまざまな相に接続された管区域は、同じ接続要素に接続されるべきである。電圧変化は(この場合、およびさらにまた上記で記述する方法では)(たとえば、可変変圧器を用いた)(電圧)振幅自体の変化、および/またはたとえば位相角制御もしくは波束制御(詳細には、全波制御)を用いて時間にわたり平均した(詳細には、二乗平均平方根)振幅変化から構成される可能性がある。
【0025】
制御装置は、上記に記述する、または後の記述で述べる方法のうちの1つを行うように構成される。詳細には、化学反応は水蒸気分解、水蒸気改質、乾燥改質、プロパン脱水素、500℃を超えて少なくとも部分的に行われる炭化水素を用いる反応のうちの1つである(すなわち、反応器は、これらの化学反応の1つを行うように構成される)。
【0026】
好ましくは、1つまたは複数の測定機器は、さらに好ましくは、少なくとも1つの管注入口および/もしくは少なくとも1つの管流出口で、ならびに/または少なくとも1つの管区域内で、管区域のうちの少なくとも1つの温度および/または処理流体の温度を測定するようにさらに構成された1つもしくは複数の温度センサ、さらに好ましくは、少なくとも1つの電力接続および/もしくは(電源の中性点に接続要素を接続する)中性線で電流強度を測定するように構成された1つもしくは複数の電流センサ、またはさらに好ましくは、少なくとも1つの管注入口および/もしくは少なくとも1つの管流出口で処理流体の物質構成を測定するように構成された1つもしくは複数の物質組成センサのうちの1つまたは複数を備える。
【0027】
電圧は同じ方法で一緒に可変にできて(すなわち、それに応じて電源は構成される)、少なくとも1つの電源は、好ましくは電力制御装置、および詳細には電圧を変更できるサイリスタ電力制御装置を備える。代わりに、より好ましくは、電圧は互いに独立に可変にできて、少なくとも1つの電源は、好ましくは電圧ごとに電圧を互いに独立に変更できる可変変圧器を備える。その上、電力制御装置および/または可変変圧器の代わりに、またはそれに加えて、さらにまた同じ機能を実装する電力電子機器を、たとえばいわゆるフレキシブル交流送電システム(flexible alternating current transmission system、FACTS)を提供してよい。
【0028】
1つまたは複数の測定機器は、好ましくは、処理流体の1つもしくは複数の温度(管流出口温度)を測定するためにいくつかの反応管の管流出口に配列された1つもしくは複数の温度センサ、または1つもしくは処理流体の複数の物質組成を測定するためにいくつかの反応管の管流出口に配列された1つもしくは複数の物質組成センサのうちの一方または両方を備える。代わりにまたは追加で、同様に、管注入口温度または管注入口物質組成を測定するためにいくつかの反応管の管注入口に1つもしくは複数の温度センサおよび/または1つもしくは複数の物質組成センサを配列できる。
【0029】
好ましくは、1つまたは複数の測定機器は、さまざまな電力接続に接続された管区域に配列された2つ以上の管区域温度センサ、またはさまざまな電力接続に配列された2つ以上の電力接続電流センサのうちの一方または両方を備える。これらの測定機器を用いて、詳細に、上記で記述するように本発明による方法で使用してよい管区域温度および/または電力接続電流強度を測定可能である。それに応じて制御装置は、管区域の温度および/または管区域に与えられる加熱電力を調整するように構成される。少なくとも1つの電源が互いに独立にさまざまな電力接続で電圧を提供できる場合、異なる管区域の温度および/または異なる管区域に与えられる加熱電力は、互いに独立に調整できる、すなわち、異なる値/値範囲に設定できる。
【0030】
好ましくは、少なくとも1つの電源は互いに独立に電圧を提供するように構成され、1つまたは複数の測定機器は、接続要素に接続された中性線上に配列された中性線電流センサ、またはさまざまな電源接続に配列されたいくつかの電力接続電流センサのうちの一方または両方を備える。これらのセンサを用いて、詳細には中性線電流強度および/または電力接続電流強度を測定できる。さらに好ましくは(本方法に関連してすでに述べたように)制御機器は、中性線電流強度および/または相を考慮して算出した電力接続電流強度の合計が最小になる電圧が電力接続に提供されるように少なくとも1つの電源を制御するように構成される。原理上は、これにより、中性線により接続された要素間に、すなわち、接続要素と少なくとも1つの電源の中性点の間に等電位が確立される。詳細には、それによりさらにまた、本発明による装置がセットアップされ、管注入口および管流出口で反応管を介して導電接続されて電気的妨害または関連する危険性を引き起こす生産システムの中に外向き電流が流れる危険性の可能性がある。
【0031】
本出願の範囲内で、「接続された」、「接続」などの用語は、特に指定のない限り導電接続の意味で理解されたい。
【0032】
本発明に従って管区域を電気的に加熱することに加えて、方法または装置はまた、たとえば化石燃料により反応管の非電気的加熱を提供してよい。しかしながら、行う化学反応の調整は、本発明によれば、電力接続に印加された電圧を制御することにより達成される。
【0033】
本発明について、最初に水蒸気分解または水蒸気改質のために使用するような反応管および反応器を参照して以下に記述する。しかしながら、本発明はまた、他の反応器タイプで使用されてよい。一般に、言及するように、本発明により提案する反応器は、すべての吸熱化学反応を行うために使用できる。
【0034】
本発明について、本発明の実施形態を例示する添付図面を参照して以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の好ましい実施形態による装置を示す。
図2】本発明の別の好ましい実施形態による装置を示す。
図3】本発明による装置内で好ましい実施形態に従って使用できる電源を示す。
図4】本発明による装置内で好ましい実施形態に従って使用できる他の電源を示す。
図5】本発明による方法の一実施形態による流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図では、構造的または機能的に互いに対応する要素について同一の、または類似する参照記号により示し、明確にするために、繰り返して説明しない。装置の構成要素について以下で説明する場合、対応する説明はまた、いずれの場合も装置を用いて行われる方法に関係があり、逆もまた同様である。図の記述は、交流電流加熱について繰り返し言及する。
【0037】
図1は、本発明による一実施形態による、化学反応を行うための装置を概略的に例示する。
【0038】
装置は、化学反応を行うように構成された、ここで100により示される反応器を備える。この目的のために、装置は、詳細には断熱された反応容器10を通して管注入口22から管流出口23まで伸びる反応管20を有し、ここでは2つの実例だけを24により示す、反応管20のいくつかの管区域24は、いずれの場合も反応容器10内の電流入力領域11と電流出力領域12の間で伸びる。管区域24は、電流入力領域11内および電流出力領域12内で、反応管の湾曲した部分を介して、より詳細には電流入力領域11内の第1のUベンド26および電流出力領域12内の第2のUベンド27を介して、互いにそれぞれ流体で接続された反応管20の区域を形成し、その結果、管注入口22から管流出口23まで処理流体を運ぶことができる管コイルが形成される。この場合、反応管20は、例として適切なサスペンション手段13を伴う支持構造(さらに詳細に図示せず)に締結され、原理上は、異なる設計の反応管用保持構造もまた考えられる。ここで、および以下で、いずれの場合もいくつかの反応管が提供されてよいことが理解される。
【0039】
1つまたは複数の反応管のために使用する材料は、1つまたは複数の反応管を電気加熱するのに適した導電率を有する材料、たとえば耐熱合金鋼、および詳細には耐熱クロムニッケル合金鋼である。そのような合金鋼は、同様に(反応容器の中に電流が伝道する)電力接続のために、および(反応容器内に少なくとも部分的に配列された)接続要素のために使用できる。たとえば、DIN EN 10027、Part 1、「Materials(材料)」による標準的名称GX40CrNiSi25-20、GX40NiCrSiNb35-25、GX45NiCrSiNbTi35-25、GX35CrNiSiNb24-24、GX45NiCrSi35-25、GX43NiCrWSi35-25-4、GX10NiCrNb32-20、GX50CrNiSi30-30、G-NiCr28W、G-NiCrCoW、GX45NiCrSiNb45-35、GX13NiCrNb45-35、GX13NiCrNb37-25、またはGX55NiCrWZr33-30-04を有する材料を使用してよい。
【0040】
電力入力領域11内で管区域24を電気的に加熱するために、管区域24は、いずれの場合も多相電源50、すなわち交流電流源の相接続U、V、Wに導電接続される、または電気的に接続可能である(以下で1つの電源について説明するが、同じくいくつかの電源が提供されてよく、したがって、電源は少なくとも1つの電源の意味で理解されるべきであり、この言明はすべての電源に適用される)。スイッチなどだけではなく特有のタイプの接続についても例示しない。管区域24は、電力入力領域11内で電力接続40に接続され、電力接続40の各々は、対応する電力接続が接続される1つまたは複数の(図1では2つの)管区域にそれぞれ割り当てられる。
【0041】
電源50は制御可能であり、電力接続40で可変電圧を提供するように構成される。この目的のために、電源50の相接続U、V、Wは電力接続40に接続される。図1による実施形態では、Uベンドおよび管区域が反応管の一部分を形成するので、電力接続40は第1のUベンド26に接続され、第1のUベンド26は次に管区域24に接続される。その結果、この実施形態では、電力接続と管区域の間の電気接続は、Uベンドを介して間接的に作り出される。しかしながら、そこから逸脱して、電力接続から管区域への直接接続は同様に可能であり、たとえば図2の実施形態を参照されたい。
【0042】
ここで例示する本発明の実施形態では、管区域24は、1つまたは複数の反応管20に接続され反応容器10内部に配列された接続要素42を用いて電力出力領域12内で互いに導電接続され、反応容器10の内部に配列される。中性線44および/または接地46もまた管区域24に接続できる。中性線44は、電源50の対応する接続に、たとえば電源の中性点に接続される。電流入力領域11内で管区域24の中に供給された電流は、この場合も電流出力領域12内で管区域24から伝導する。回路の観点から、接続要素42は、電圧供給源50により位相がシフトした電流を伴う(たとえば、いわゆる交流を伴う)適切な供給源を用いる場合、および管区域24による対称負荷を用いる場合、電流または電圧が互いに相殺する中性点を形成し、その結果、中性線44を介して電源に、および/またはこの場合は接地46に電流がまったく流れない。
【0043】
その上に、たとえば制御線52(任意の有線または無線の接続が提供されてもよい)を介して通信するために電源50に接続された、電源50を制御するように構成された制御装置60が提供され、詳細には電源50が電源接続40に印加する電圧を制御できる。この目的のために、制御装置60は、本発明による方法を行うように構成される。制御装置60(または制御装置60により実装された方法)は、1つまたは複数の測定機器が検出した測定変数の関数としてこの制御を行う。
【0044】
詳細には、測定機器として温度センサ、物質組成センサ、および電流センサを使用できる。図1では、使用してよい複数のそのような測定機器を例として示す。測定機器は、通信またはデータ伝送のために有線または無線の接続を介して制御装置60に接続され、その結果、測定機器が検出した測定変数は制御装置に伝送できる。明確にするためにこれらの接続を図に示していない。図示する測定機器すべてを提供しなければならないわけではないこと、および図示しない、異なるまたは追加の測定機器が提供されてよいこともまた指摘すべきである。どの測定機器を提供し、場合によっては使用するかは、制御装置が行う方法にどの測定変数が必要とされるかに依存する。
【0045】
図1は、以下の測定機器を、すなわち、管流出口で処理流体の温度を測定する、管流出口23にある温度センサ62、管流出口で処理流体の組成または処理流体内の特定の物質の割合を測定する、管流出口23にある物質組成センサ64、対応する管区域の温度を測定するために管区域24上に配列された温度センサ63(1つだけに参照記号を提供する)、中性線内を流れる電流(すなわち、接続要素42と電源50の間の電流)の電流強度を測定するために中性線44上にある電流センサ66、電力接続を通って流れる電流を測定するために電力接続にある電流センサ67を示す。
【0046】
追加もしくは代わりに、さらにまた以下の測定機器(図示せず)が、たとえば、管流入口22で処理流体の温度を測定する、管流入口にある温度センサ、管流入口22で処理流体の組成または処理流体内の特定の物質の割合を測定する、管流入口にある物質組成センサ、管区域24間の反応管温度を測定するために管区域の間にある反応管20の一部分の上にある、たとえば第1のUベンド26または第2のUベンド27にある温度センサが提供されてよい。
【0047】
図2は、本発明による装置の代替実施形態を示す。この実施形態では、反応器200は、電気的に加熱可能な管区域24a、24b、24cをそれぞれ有するいくつかの反応管20a、20b、20cを有する。反応管は、断熱反応容器10を通って伸びて、処理流体を処理するためにそれぞれ管注入口22a、22b、22cおよび管流出口23a、23b、23cを有する。他の構成では、図1に関連して行った言明は、同じく適用可能な範囲まで適用され、詳細には、反応管は、この場合も断熱反応容器10を通って伸びて、管区域は反応容器内部に位置する。
【0048】
管区域24a、24b、24cは、電流入力領域11内で、たとえばスリーブ41を用いて電力接続40に接続される。電力接続40は、電力接続40で可変電圧を提供するように構成された制御可能な電源50に接続される。
【0049】
その上に、管区域24a、24b、24cは、電流出力領域12内で接続要素42に伝導接続され、その結果、管区域はこの場合、互いに伝導接続される。接続要素42は、この場合も接地46および/または中性線44に接続でき、中性線42は、電源50の対応する接続に接続される。
【0050】
同様に(たとえば、制御線52を介して)通信するために有線または無線の接続手法で電源50に接続された制御装置60が提供され、その結果、制御装置60は電源50を制御できる。測定機器、詳細には温度センサ、物質組成センサ、および電流センサが検出した測定変数は、この場合も制御のために使用される。
【0051】
例として、図2はこの場合も、対応する測定変数を検出するために使用できるいくつかの測定機器を示す。測定機器は、通信またはデータ伝送のために有線または無線の接続を介して制御装置60に接続され、その結果、測定機器が検出した測定変数は、制御装置に伝送できる。明確にするためにこれらの接続を図に示していない。図示する測定機器すべてを提供しなければならないわけではないこと、および図示しない追加測定機器がさらにまた提供されてよいことを指摘すべきである。どの測定機器を提供し、場合によっては使用するかは、制御装置が行う方法にどの測定変数が必要とされるかに依存する。
【0052】
図2は、以下の測定機器を、すなわち、管流出口23a、23b、23cで処理流体の温度を測定する、管流出口にある温度センサ62a、62b、62c、管流出口23a、23b、23cで処理流体の組成または処理流体内の特定の物質の割合を測定する、管流出口にある物質組成センサ64a、64b、64c、対応する管区域24a、24b、24cの温度を測定するために管区域に配列された温度センサ63a、63、63c、中性線44内を流れる電流(すなわち、接続要素42と電源50の間の電流)の電流強度を測定するために中性線44上にある電流センサ66、電力接続を通って流れる電流を測定するために電力接続40にある電流センサ67を示す。
【0053】
追加もしくは代わりに、さらにまた以下の測定機器(図示せず)が、たとえば、管流入口22a、22b、22cで処理流体の温度を測定する、管流入口にある温度センサ、管流入口22a、22b、22cで処理流体の組成または処理流体内の特定の物質の割合を測定する、管流入口にある物質組成センサが提供されてよい。
【0054】
図1および図2は、詳細にはいずれの場合も反応管および反応管から電源への接続の特有の実施形態を示す、本発明よる装置の特有の実施形態を示す。しかしながら、(装置の請求項と方法の請求項の両方の)特許請求の範囲内で、反応管、および1つの、またはさらにまたいくつかの電源に至る反応管の電気接続に関する他の実施形態が可能であることを強調すべきである。詳細には、反応器は(図1と同様に)いくつかの管コイルを備えることが可能であり、いくつかの管コイルは、たとえば(図1から始まり図面の平面に対して垂直に)積み重ねる手法で並列に互いに距離を置いて配列される。
【0055】
この1組の(積み重ねた)管コイルは、それぞれ電源に割り当てられたサブセットに細分でき、さらにまたサブセットが1つの管コイルだけを包含する細分、または(単一)サブセットが管コイルすべてを包含する細分が可能である。接続は、次いでそれぞれサブセットに割り当てられ、サブセットの管コイルの管区域は、サブセットに割り当てられた接続のうちの1つに接続され、各サブセットは、サブセットに割り当てられた接続に相が接続された電源に割り当てられてよい。次いで同様にサブセットごとに、サブセットの管区域を接続する接続要素が提供され、さらにまた個々の管コイルごとに1つの接続要素を提供可能である。
【0056】
同様に(詳細には、U字形管コイルの場合)接続と管コイルの間に1対1の関係が存在する可能性があり、すなわち、管コイルの管区域すべてはそれぞれ同じ接続に接続されることとなる。接続はそれぞれさまざまな相または電圧に接続されるので、この場合、管コイルの数は、さまざまな電圧または多数の電圧の数に対応する。1つまたは複数の接続要素は、この場合それぞれさまざまな管コイルの管区域を接続する。
【0057】
図3は、電力制御のためにサイリスタ電力制御装置を使用する制御可能な電源300の可能な実施形態を示す。制御可能な電源は入力側に電源への、たとえば電力供給網への接続を有し、AC電圧供給源の(この場合、たとえば3つの)相ごとに入力302u、302v、302wが提供される。比較的高い電圧を、典型的には数100~数1000ボルト、たとえば400V、690V、または1.2kVを入力に印加する。出力側では、電源は、調整可能な反応器の電力接続に、たとえば、図1または図2に示す反応器のうちの1つの電力接続40に接続された出力304U、304V、304Wを有する。その上、出力側に中性線用の接続304Nが提供される。
【0058】
入力に印加された電圧を遮断できる、または線310u、310v、310wを介して大電流変成器308に通過させることができる電力制御装置306u、306v、306wを、この場合サイリスタ電力制御装置を電源300は有する。この場合、中性線用の接続304Nが中性点に接続される、たとえばデルタ/スター構成の多相大電流変成器308は、入力間に印加された比較的高い電圧を、管区域の中に供給するのに適したより大きな電流強度を同時に有するより低い電圧に変換する。出力電圧の範囲は好ましくは300V未満、より好ましくは150V以下、さらにより好ましくは100V以下、最も好ましくは50V以下である。
【0059】
それに対応して電力制御装置306u、306v、306wを制御することにより、すなわち、入力に印加される電圧を(サイリスタを用いて)交互に遮断させ大電流変成器に通過させることにより、出力側に与えられる電力を制御できる。この目的のために、作動中にパルス幅変調(pulse width modulation、PWM)を使用できる。好ましくは、入力側に印加された交流電圧の全波だけを電力制御装置により通過させる、すなわち、完全な正弦波を切り替える、いわゆるパルス列動作または全波パルスを提供する。これは、高調波、および供給網で電圧品質を維持するための関連するフィルタ経費を低減するように働く。
【0060】
電力制御装置は、外部で、すなわち制御装置60により指定された電圧要件に基づき制御信号を加えられる制御線(図示せず)を介して作動する。
【0061】
図4は、電力制御のために可変変圧器を使用して出力で電圧を相互に独立に変更できるようにする、制御可能な電源400の別の可能な実施形態を示す。制御可能な電源400は、入力側に電源への、たとえば電力供給網への接続を有し、AC電圧供給源の(この場合、たとえば3つの)相ごとに入力402u、402v、402wが提供される。それに応じて比較的高い電圧を、典型的には数100~数1000ボルト、たとえば400V、690V、または1.2kVを入力に印加する。出力側では、電源は調整可能な反応器の電力接続に、たとえば、図1または図2に示す反応器のうちの1つの電力接続40に接続された出力404U、404V、404Wを有する。その上、出力側に中性線用の接続404Nが提供される。
【0062】
電源400は、可変変圧器406u、406v、406wを、すなわち、出力側電圧が特定の領域で、またはさらには完全に、すなわち0%から100%まで制御可能な変圧器を備える。相応に要求される加熱電力の場合、比較的高い可変変圧器の出力電圧は、線410u、410v、410wを介して可変変圧器に接続された単相大電流変成器408u、408v、408wにより、より高い電流強度を伴うより低い電圧またはより小さな電流に変換され、出力404U、404V、404Wで大電流変成器により提供される。出力電圧の範囲は、好ましくは300V未満、より好ましくは150V以下、さらにより好ましくは100V以下、最も好ましくは50V以下である。中性線用の接続404Nはこの場合、大電流変成器の各々で、対応する接続に接続される。
【0063】
この場合、出力電力は、関連する可変変圧器406u、406v、406wを相応に作動させるという点で、すなわち、対応する可変変圧器で出力電圧を相応に設定するという点で、出力404U、404V、404Wごとにその他の出力電力と独立に制御できる。電力制御装置は、この場合も外部で、すなわち制御装置60により指定された電圧要件に基づき制御信号を加えられる制御線(図示せず)を介して作動する。
【0064】
可変変圧器を伴う電源を使用することには、個々の電圧それぞれを独立に制御可能であることに加えて、他の有利な点がある。第一に、高調波に加えて(電力制御装置を有する実施形態では、スイッチングオン/オフ処理が原因で発生する可能性がある)低周波電圧振動もまた回避できる。これらの低周波振動は、電磁力が作用する反応管の共振周波数の範囲内にある可能性があるので不都合である。その上、適切な可変変圧器を使用するとき、電圧は0%から100%まで制御可能であり、これは、たとえば運転開始/運転停止の間、または反応器の負荷が変化する間に有用であり、それによりスイッチオンの電流は同様に制限できる。
【0065】
図5は、本発明による方法の基本シーケンスを表し、好ましくは、たとえば図1または図2に記述するような装置を使用し、制御装置は方法を行うように構成される。方法を行う間、加熱される1つまたはいくつかの処理流体は、反応器の1つまたは複数の反応管を通って運ばれる(ステップ502)。
【0066】
ステップ504で、最初に反応器の電力接続に電圧または電流を提供する。これは、制御可能な電源により行われる。ステップ506で、たとえば電源に接続された、電源を制御する制御装置により、電圧を特定の電圧値に設定する。
【0067】
ステップ508で、1つまたは複数の測定値を検出する、すなわち、測定変数(たとえば温度、電流強度)の測定値(たとえば温度値、電流強度値)を検出する。その結果、測定値は、対応する測定時点での測定変数の値である。この目的のために、上記(図1図2)で記述するように、測定機器を提供する。
【0068】
ステップ510で、検出された測定値を、対応する測定変数の指定された値または目標値と比較する。検出された測定値が測定変数の所定の値に対応するかどうかを判断する。この場合、「対応する」は一般的な意味で、すなわち検出された測定値が所定の値に等しい、もしくは所定の値にできるだけ近い、またはさらにまたほぼ所定の値の特定の範囲内にあると理解されたい。
【0069】
検出された測定値が測定変数の所定の値に対応する場合、測定変数を再度測定し、すなわち、測定値を再度検出し、その結果、方法はステップ508に戻る(矢印512)。この場合、電圧は変更されないままである。他方では、検出された測定値が測定変数の所定の値に対応しない場合、電圧を新たに設定し、すなわち、方法はステップ506に戻る(矢印514)。したがって、関連するさまざま管区域での電圧、およびその結果、加熱電力は変更され、その結果、測定変数の値は変化し、その後、またはいくつかの設定段階の後に、測定変数の所定の値に対応する。この目的のために、たとえば対応する制御アルゴリズムを制御装置の中に提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】