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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】バネ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/36 20060101AFI20231102BHJP
   F16F 1/368 20060101ALI20231102BHJP
   B60G 9/04 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
F16F1/36 M
F16F1/368 D
B60G9/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549007
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2021079406
(87)【国際公開番号】W WO2022084536
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】102020127866.7
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523152374
【氏名又は名称】ラインメタル インヴェント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】ゴーティエ インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイサート マルティン
(72)【発明者】
【氏名】フェルスター ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ブランク デニス
【テーマコード(参考)】
3D301
3J059
【Fターム(参考)】
3D301DA02
3D301DA08
3J059AA09
3J059BA14
3J059BC04
3J059BC11
3J059CA01
3J059CB02
(57)【要約】
自動車(2)用のバネ装置(1A,1B)であって、バネユニット(3)と、バネユニット(3)を硬化して、バネ装置(1A,1B)のバネ定数(k,k’)を動的に変更するように構成された剛性調節ユニット(15)とを備える、バネ装置(1A,1B)が提供される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(2)用のバネ装置(1A,1B)であって、
バネユニット(3)と、
前記バネユニット(3)を硬化して、前記バネ装置(1A,1B)のバネ定数(k,k’)を動的に変更するように構成された剛性調節ユニット(15)と、を備えるバネ装置(1A,1B)。
【請求項2】
前記バネユニット(3)は、繊維強化プラスチックから成ることを特徴とする、請求項1に記載のバネ装置。
【請求項3】
前記バネユニット(3)はリーフバネユニットであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバネ装置。
【請求項4】
前記バネユニット(3)は、複数のリーフバネ部(4)及び複数の方向転換部(5)を備え、いずれの場合でも、1つの方向転換部(5)は、隣接する2つのリーフバネ部(4)を互いに接続していることを特徴とする、請求項3に記載のバネ装置。
【請求項5】
前記リーフバネ部(4)は、S字型の形状を有することを特徴とする、請求項4に記載のバネ装置。
【請求項6】
前記剛性調節ユニット(15)は、前記バネユニット(3)を硬化させるための硬化要素(11)を備え、前記硬化要素(11)は、前記バネユニット(3)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のバネ装置。
【請求項7】
前記硬化要素(11)は、円筒状であることを特徴とする、請求項6に記載のバネ装置。
【請求項8】
前記硬化要素(11)は、前記バネユニット(3)を少なくとも部分的に包囲していることを特徴とする、請求項6に記載のバネ装置。
【請求項9】
前記バネユニット(3)は、第1のバネ定数(k1)を有する柔軟バネ部(16)と、第2のバネ定数(k2)を有する剛体バネ部(17)とを備え、前記第2のバネ定数(k2)は、前記第1のバネ定数(k1)よりも大きく、前記硬化要素(11)は、前記柔軟バネ部(16)にのみ取り付けられていることを特徴とする、請求項6~8のいずれか1項に記載のバネ装置。
【請求項10】
前記硬化要素(11)は、前記柔軟バネ部(16)を非活性化するように構成されていることを特徴とする、請求項9に記載のバネ装置。
【請求項11】
前記剛性調節ユニット(15)は、前記硬化要素(11)を駆動させるための制御装置(12)を備え、前記硬化要素(11)は、前記制御装置(12)によって非活性状態(Z1)から活性状態(Z2)に移行されること、及びその逆が可能であり、前記バネ装置(1A,1B)のバネ定数(k,k’)は、前記非活性状態(Z1)よりも前記活性状態(Z2)において大きいことを特徴とする、請求項6~10のいずれか1項に記載のバネ装置。
【請求項12】
前記非活性状態(Z1)と前記活性状態(Z2)との間に、任意の数の中間状態が設けられており、前記バネ装置(1A,1B)のバネ定数(k,k’)は、連続的に変更可能であることを特徴とする、請求項11に記載のバネ装置。
【請求項13】
前記硬化要素(11)は、印加された電流によって、電界(E)によって、及び/又は、磁界(M)によって、前記非活性状態(Z1)から前記活性状態(Z2)に移行されることが可能であることを特徴とする、請求項11又は12に記載のバネ装置。
【請求項14】
前記硬化要素(11)を前記非活性状態(Z1)から前記活性状態(Z2)に移行させる時には、前記バネ装置(1A,1B)のバネ定数(k,k’)が増大するように、前記硬化要素(11)の特性、具体的には材料特性及び/又は形状特性が、変化することを特徴とする、請求項11~13のいずれか1項に記載のバネ装置。
【請求項15】
前記硬化要素(11)は、磁気粘性材料及び/又は電気粘性材料を含む、請求項6~14のいずれか1項に記載のバネ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のバネ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、車体に、自動車を弾性的に搭載するためのバネが設けられる場合がある。運転の快適さに関して言えば、できるだけ柔らかいサスペンションが望ましい。他方で、運転の動力学的に言えば、硬いサスペンションが有利である。したがって、互いに矛盾する要件があるが、その利点及び欠点は、運転状況又は車両状態、具体的には自動車の積載量に依存する。したがって、自動車にとって永続的に最適なサスペンション設定は存在しない。つまり、パッシブなバネの場合、バネの設計とは、常に、状況に応じて異なるバネ特性の要件間で妥協をすることである。
【0003】
柔らかいサスペンションは、通常、快適さの目的にかなうが、例えばコーナリング中に径方向外側に強い負荷が掛かることになり、これによって、運転手の快適さの知覚とは正反対である、自動車の転動が起こり得る。空気バネは、部分的にアクティブであり、つまり、そのバネ定数を変更することが可能であるが、バネ定数が動的に変化した場合には反応が鈍すぎる。したがって、状況に動的に適合させることが可能なバネ定数の設定が望ましい。
【0004】
本出願人は、これを部分的にプログレッシブサスペンションによって実現可能な、自社の従来技術を承知している。このようなサスペンション、例えば空気バネは、たわみが増大するにつれて、又は、サスペンションにかかる負荷が増大するにつれて、バネ作用が増大する。換言すると、このサスペンションは、路面の不均一性がわずかである場合には柔らかくなり、路面の不均一性が高い場合には硬くなることが可能である。しかしながら、運転状況や状況に応じた要件に対してアクティブに適合することはできない。
【0005】
さらに、この自社の技術によれば、アクティブなサスペンションを使用することが可能である。この場合、圧縮に対抗するアクティブな運動が、通常はアクティブな緩衝運動により、生成される。しかしながら、これは複雑なシステムであり、高価で、重量があり、エネルギー集約型であり、かつ、反応性が限られている。
【0006】
緩衝器を備えるいわゆる準アクティブなサスペンションでは、緩衝器を、つまり減衰係数をその場で調節することができる。したがって、緩衝器は、収縮又は伸張プロセスを制動又は速度を落とすために、硬化するか、又は、収縮又は伸張プロセスを迅速に行うために軟化することが可能である。しかしながら、準アクティブなサスペンションは、動的にのみ効果的であり、静的には効果的ではない。これは、収縮は回避不可能であり、回避されてはならないが、単に遅延されることを意味している。
【0007】
いわゆるロールスタビライザを使用すると、これらは、コーナリング時にねじりバネをねじることによって自動車をまっすぐに押し、そのねじり力がこのねじれに反作用する。ここで、本出願人には、押すことを増大させる、自社のアクティブな変形例も公知である。しかしながら、これらは、車軸の車輪が均一に偏向する場合には、効果的でない。
【発明の概要】
【0008】
この背景技術に対して、本発明の一課題は、改善されたバネ装置を提供することにある。
【0009】
したがって、自動車用のバネ装置が提案される。このバネ装置は、バネユニットと、バネユニットを硬化して、バネ装置のバネ定数を動的に変更するように構成された剛性調節ユニットと、を備える。
【0010】
剛性調節ユニットを設けることによって、バネ装置の動作中に、バネ装置のバネ定数を自動車の各運転状況又はその負荷状態にアクティブに適合させることが可能である。これは、状況に応じて、つまり極めて動的に、かつ、リアルタイムで行われる。したがって、バネ定数をリアルタイムで変更することが可能である。
【0011】
自動車は、このようなバネ装置を任意の数だけ有していてもよい。バネユニットは、例えば、コイルバネ又はリーフバネであり得る。バネユニットは、例えば、金属材料、具体的にはバネ鋼から構成されていてもよいし、又は、複合材料、例えば繊維複合体プラスチックから構成されていてもよい。好ましくは、バネユニットは圧縮バネである。しかしながら、バネユニットは引張バネであってもよい。
【0012】
好ましくは、バネユニットは、たわみバネ又はたわみバネユニットである、又は、そのように呼ばれ得る。すなわち、「バネユニット」及び「たわみバネユニット」という用語は、所望のように置き換えて使用できる。この文脈では、「たわみバネ」又は「たわみバネユニット」とは、1つの部品、すなわち、最も単純な場合において、負荷がかかるとバネ弾性的、つまり可逆的に変形する棒状のたわみビームを意味している。使用される材料の材料特性及びバネユニットの形状は、その変形挙動に影響を与える。たわみバネの一例は、リーフバネである。
【0013】
バネユニットは、ねじりバネ又はねじりバネユニットであってもよいし、又は、そのように呼ばれてもよい。つまり、「バネユニット」及び「ねじりバネユニット」という用語は、所望のように置き換えて使用してもよい。ねじりバネの一例は、バネワイヤが螺旋状に巻かれたコイルバネ又は円筒バネである。ねじりバネの場合、使用される材料の材料特性及びバネユニットの形状も、それらの変形挙動に影響を与える。バネユニットは、たわみ又はねじりバネユニットと呼ばれてもよいし、そのように記載されてもよい。たわみバネ又はねじりバネとは反対に、空気バネ又はガスバネは、空気又はガスの圧縮性を利用するものである。したがって、バネユニットは、空気バネ又はガスバネではない。
【0014】
バネ装置は、バネ装置がバネユニット及び剛性調節ユニットの両方を備えている点において、バネユニットとは異なっている。つまり、バネユニット及び剛性調節ユニットは、バネ装置の一部である。他方で、剛性調節ユニットは、バネユニットの一部ではない。しかしながら、これは、剛性調節ユニットが、バネユニットに取り付けられる又は固定されることを排除するものではない。バネ装置は、複数のバネユニットを備えていてもよい。
【0015】
バネ定数、バネ剛性、バネ硬度、又は、バネ比は、バネ装置に作用する力とそれによって生じるバネ装置のたわみとの比率を示すものである。この文脈では、「剛性」とは、バネユニットの弾性変形に対する抵抗を意味する。換言すると、剛性調節ユニットは、弾性変形に対するバネユニットの抵抗が変化するように、具体的には増大するように、バネユニットに影響を与えることに適している。これによって、バネユニットの硬化が、局所的又は全体的に起こり得る。この場合、「局所」とは、バネユニットの特定の部分だけを意味する。反対に、「全体」とは、バネユニット全体が硬化されることを意味する。
【0016】
この場合、「変化する」とは、具体的には、剛性調節ユニットによってバネ定数が連続的に調節されること、具体的には増大されることが可能であることを意味している。しかしながら、バネ定数は、低減されることも可能である。このバネ定数を変更又は調節することは、可逆である。剛性調節ユニットは、バネ剛性調節ユニット又はバネ定数調節ユニットと呼ばれることも可能である。
【0017】
ここで、バネ定数が「動的に」変更される、又は、変更可能であるということは、具体的には、この変更がリアルタイムで、つまり時間遅延無く生じること、並びに、具体的にはバネ装置の動作中、例えばバネユニットがたわむ間に、及び、具体的にはバネ装置に負荷又は応力がかかった時に生じることを意味している。したがって、変更は、ほぼ瞬間的に又は遅延なく生じる。
【0018】
一実施形態によれば、バネユニットは、繊維強化プラスチックから成る。
【0019】
繊維強化プラスチック(FRP)は、繊維強化プラスチック材料と呼ぶこともできる。繊維強化プラスチックは、プラスチック材料を含み、具体的には繊維、例えば天然繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維等が埋め込まれたプラスチックマトリクスを含む。プラスチック材料は、エポキシ樹脂といった熱硬化性であり得る。しかしながら、プラスチック材料は熱可塑性物質であってもよい。繊維は、連続繊維であり得る。しかしながら、繊維は、数ミリメートルから数センチメートルの繊維長さを有し得る、短繊維又は中程度の長さの繊維であってもよい。繊維は、プラスチック材料内で方向性を有して配置されていてもよいし、又は、方向性を有さずに配置されていてもよい。バネユニットは、ラミネート又は層状構造を有していてもよい。このために、繊維布又は繊維スクリムの層を、例えば、プラスチック材料で含浸させる。しかしながら代替的に、いわゆるプリプレグ、つまり事前含浸繊維、繊維布、又は、繊維スクリムを使用して、バネユニットを製造することも可能である。しかしながら代替的に、バネユニットは、ステンレス鋼といった金属材料から構成されていてもよい。
【0020】
さらなる一実施形態によれば、バネユニットはリーフバネユニットである。
【0021】
すなわち、「バネユニット」及び「リーフバネユニット」という用語は、所望のように置き換えて使用できる。しかしながら代替的に、バネユニットは、コイルバネであってもよい。リーフバネユニットと異なり、円筒バネ又はコイルバネは、コイルバネが円筒形の形状を有するように螺旋状に形成された連続したワイヤを有している。バネユニットがリーフバネユニットである場合、バネユニットは、ジグザグ又は蛇行した形状の構造を有していてもよい。バネユニットがリーフバネユニットである場合、バネ装置は、リーフバネ装置とも呼ばれる、又は、呼ぶことが可能である。つまり、「バネ装置」及び「リーフバネ装置」という用語は、所望のように置き換えて使用できる。
【0022】
さらなる一実施形態によれば、バネユニットは、複数のリーフバネ部及び複数の方向転換部を備え、いずれの場合でも、1つの方向転換部は、隣接する2つのリーフバネ部を互いに接続している。
【0023】
すなわち、リーフバネ部及び方向転換部は、交互に配置されている。これによって、バネユニットは、ジグザグ又は蛇行した構造となる。個別のリーフバネ部は、木の葉(リーフ)状又は板状の形状を有し得る。しかしながら、「木の葉状」又は「板状」とは、リーフバネ部が3次元的に湾曲すること、又は、3次元の形状を有することを排除しない。リーフバネ部は、方向転換部によって互いに一体に接続されていること、具体的には1つの材料から一体に形成されていることが可能である。「一体に」又は「1つの部品から」とは、ここでは、リーフバネ部及び方向転換部が共通の部品を形成し、別の部品からできていないことを意味する。ここで、「1つの材料から一体に」とは、具体的には、リーフバネ部及び方向転換部が、完全に、同一の材料から製造されていることを意味する。好ましくは、方向転換部は、リーフバネ部よりも大きな断面を有している。このため、方向転換部の剛性の方が、リーフバネ部と比べて大きくなる。これによって、バネユニットが圧縮された時にバネ弾性的に変形するのは、実質的にはリーフバネ部であって、方向転換部ではないことが確保される。したがって、方向転換部は、バネユニットの非活性ゾーンを形成する、又は、そのようなものとして指定され得る。あるいは、リーフバネ部は、スリーブ形又はクランプ形の方向転換部によって、相互接続されていてもよい。この場合、バネユニットは、一体に形成されていないし、1つの材料から一体に形成されてもいない。
【0024】
他の一実施形態によれば、リーフバネ部は、S字型の形状を有している。
【0025】
具体的には、リーフバネ部は、S字型の形状又はS字型の断面を有している。バネユニットが圧縮された後、リーフバネ部は、平坦な形状を有することが好ましい。
【0026】
さらなる一実施形態によれば、剛性調節ユニットは、バネユニットを硬化させるための硬化要素を備え、硬化要素は、バネユニットに取り付けられている。
【0027】
硬化要素は、インサートと呼んでもよいし、又は、インサートであり得る。例えば、硬化要素は、バネユニットの中に挿入され得る。硬化要素は、バネユニットに固定して接続されていてもよい。例えば、硬化要素は、バネユニットに材料的に接合されている。材料的に接合された接続の場合、接続している部品同士は、原子間力又は分子間力によって結合される。材料的に接合された接続は、取外し不可能な接続であり、接続手段及び/又は接続部品を破壊することによってのみ分離可能な接続である。材料接合部は、例えば、接着又は加硫によって接合可能である。
【0028】
さらなる一実施形態によれば、硬化要素は、円筒状である。
【0029】
例えば、硬化要素は、方向転換部のうちの1つに接着又は挿入されることが可能である。しかしながら、硬化要素は、コイルバネのコイルに挿入されてもよい。剛性調節装置は、任意の数の硬化要素を有していてもよい。これに関して、各方向転換部又はある方向転換部が、その独自の硬化要素と関連付けられることが可能である。硬化要素の形状は、任意である。例えば、硬化要素の断面は、円筒形である。しかしながら、硬化要素の断面は、多角形、具体的には四角形、楕円形、又は、星形であることも可能である。
【0030】
さらなる一実施形態によれば、硬化要素は、バネユニットを少なくとも部分的に包囲している。
【0031】
すなわち、バネユニットは、少なくとも部分的に硬化要素の内部に配置されている。具体的には、バネユニットは、少なくとも部分的に硬化要素の材料で包囲又は取り囲まれている。例えば、硬化要素は、バネユニットの上で成形される。硬化要素がバネユニットを包囲することによって、硬化要素は、バネユニットを、水、氷、埃、又は、UV放射といった環境の影響からさらに保護する。これによって、バネ装置の耐用年数が長くなる。
【0032】
他の一実施形態によれば、バネユニットは、第1のバネ定数を有する柔軟バネ部と、第2のバネ定数を有する剛体バネ部とを備え、第2のバネ定数は、第1のバネ定数よりも大きく、硬化要素は、柔軟バネ部にのみ取り付けられている。
【0033】
この場合、バネユニットは、プログレッシブバネユニットである。これは、バネユニットのバネ定数が、漸進的であり直線状ではない曲線を有していることを意味している。硬化要素が柔軟バネ部にだけ設けられていることにより、柔軟バネ部だけに特別に影響を与えることが可能である。しかしながら代替的に、硬化要素が、剛体バネ部上にも追加的に設けられていてもよい。柔軟バネ部は、第1のバネ部と呼んでもよい。剛体バネ部は、第2のバネ部と読んでもよい。
【0034】
さらなる一実施形態によれば、硬化要素は、柔軟バネ部を非活性化するように構成されている。
【0035】
この場合、「非活性化する」とは、硬化要素が、柔軟バネ部の収縮を阻止することを意味している。したがって、柔軟バネ部は、遮断又は機能停止される。すなわち、バネ装置のバネ作用は、実質的に剛体バネ部だけによって実現される。
【0036】
さらなる一実施形態によれば、剛性調節ユニットは、硬化要素を駆動させるための制御装置を備え、硬化要素は、制御装置によって非活性状態から活性状態に移行されること、及びその逆が可能であり、バネ装置のバネ定数は、非活性状態よりも活性状態において大きい。
【0037】
これは、例えば、硬化要素が、非活性状態よりも活性状態においてより高い剛性又は弾性係数を有していることを意味している。制御装置は、例えば、電圧源及び/又は電気コイルを含む電気回路を備えていてもよい。硬化要素を「駆動させる」ことは、例えば、これを電圧源及び電気回路によって活性化することを含む。しかしながら、「駆動させる」ことは、電界又は磁界を硬化要素に印加することを含んでいてもよい。
【0038】
さらなる一実施形態によれば、非活性状態と活性状態との間に、任意の数の中間状態が設けられており、バネ装置のバネ定数は、連続的に変更可能である。
【0039】
硬化要素を非活性状態から活性状態に移行させることは、可逆である。例えば、硬化要素は、活性状態から、上述の電圧源がオフに切り替えられた非活性状態に戻してもよい。例えば、硬化要素に印加される電圧が高いほど、バネ装置のバネ定数は大きくなる。
【0040】
さらなる一実施形態によれば、硬化要素は、電流を通電することによって、電界によって、及び/又は、磁界によって、非活性状態から活性状態に移行させることが可能である。
【0041】
反対に、硬化要素は、常に、初期状態として活性状態にあってもよい。この場合、硬化要素は、制御装置によって、活性状態から非活性状態に移行される。この文脈では、「通電する」とは、具体的には、電気回路及び電圧源によって硬化要素に電圧を印加することを意味している。好ましくは、電界又は磁界は、剛性調節ユニットの電気コイルによって生成される。後者の場合には、硬化要素を、具体的には接触せずに制御可能である。これによって硬化要素に配線が必要なくなるため、構造が単純になる。
【0042】
さらなる一実施形態によれば、硬化要素を非活性状態から活性状態に移行させる時には、バネ装置のバネ定数が増大するように、硬化要素の特性、具体的には材料特性及び/又は形状特性が、変化する。
【0043】
具体的には、硬化要素の特性は、バネユニットの変形を阻止するように、したがってその剛性を局所的又は全体的に増大させるように変化する。これによって、バネ装置のバネ定数が増大する。材料特性は、例えば、硬度、弾性係数、等を含んでいてよい。形状特性は、例えば、硬化要素の寸法、例えばその直径、幅、厚み、等を含んでいてよい。また、形状特性は、硬化要素の形状を含んでいてよく、例えば、硬化要素は、非活性状態では円形の断面を、活性状態では楕円の断面を有している。
【0044】
さらなる一実施形態によれば、硬化要素は、磁気粘性材料及び/又は電気粘性材料を含む。
【0045】
好ましくは、硬化要素は、磁気粘性エラストマー及び/又は電気粘性エラストマーを含む。硬化要素は、個別の材料から構成されていてもよいし、又は、例えば電界又は磁界内でその特性を部分的にのみ変化させる異なる材料の組み合わせから構成されていてもよい。磁気粘性エラストマーは、エラストマーマトリクスとその中に分散された磁気的にアクティブな粒子とを含む。このような磁気粘性エラストマーでは、外部磁界を印加することによって、粘弾性又は動的機械特性が、迅速かつ可逆的に変更され得る。硬化要素は、電気粘性流体、エラストマー、等を含んでいてもよい。
【0046】
ここで使用されるように、「1つ」とは、必ずしも、正確に1つの要素に限定されるものと理解されるものではない。むしろ、複数の要素、例えば2つ、3つ、又はそれ以上の要素が設けられていてもよい。また、ここで使用される数を数える他の単語は、要素の数を正確にその数に限定するものと理解されるものではない。むしろ、他に記載の無い限り、それよりも多い又は少ない様々な数を使用してもよい。
【0047】
リーフバネ装置のさらに可能な実施例は、実施形態に関して上記した又は後述する特徴又は実施形態の、正確には言及していない組み合わせも含む。これに関して、当業者であれば、個別の態様を、リーフバネ装置の各基本形状に対する改善策又は追加策として加えるであろう。
【0048】
リーフバネ装置の有効なさらなる実施形態及び態様は、従属請求項、及び、以下に記載するリーフバネ装置の実施形態の対象である。また、リーフバネ装置を、好ましい実施形態に基づき、添付の図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】バネ装置の一実施形態を示す概略図である。
図2図1のバネ装置を示すさらなる概略図である。
図3図1のIIIを示す詳細図である。
図4図1のバネ装置の力たわみ曲線を概略的に示す図である。
図5図1のIIIを再び示す詳細図である。
図6図1のバネ装置のさらなる力たわみ曲線を概略的に示す図である。
図7】バネ装置のさらなる一実施形態を示す概略図である。
図8図7のバネ装置の力たわみ曲線を概略的に示す図である。
図9図7のバネ装置を示すさらなる概略図である。
図10図7のバネ装置のさらなる力たわみ曲線を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図面において、同一又は機能的に同一の要素は、他に記載の無い場合、同じ参照符号を付けた。
【0051】
図1は、バネ装置1Aの概略図である。バネ装置1Aは、リーフバネ装置であり、又は、リーフバネ装置として記載され得る。しかしながら、バネ装置1Aは、バネの任意の実施形態、例えばコイルバネ等であってもよい。しかしながら、以下では、バネ装置1Aはリーフバネ装置であると理解されたい。バネ装置1Aは、自動車2内又は上での使用、具体的には車輪付き車両上での使用に適している。バネ装置1Aは、自動車2の車輪サスペンションの領域において適用され得る。自動車2は、任意の数のバネ装置1Aを備えていてもよい。
【0052】
バネ装置1Aは、バネユニット3を含む。バネユニット3は、リーフバネユニットであるか、又は、リーフバネユニットとして記載され得る。しかしながら、バネユニット3は、例えば、コイルバネであってもよい。バネユニット3は、繊維強化プラスチック材料又は繊維強化プラスチック(FRP)から成る。しかしながら代替的に、バネユニット3は、少なくとも部分的に金属材料、例えばバネ鋼から形成されていてもよい。しかしながら以下では、バネユニット3は繊維強化プラスチック材料から成ることとする。
【0053】
この繊維複合体プラスチックは、プラスチック材料を含み、具体的には繊維、例えば天然繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維等が埋め込まれたプラスチックマトリクスを含む。プラスチック材料は、エポキシ樹脂といった熱硬化性物質であり得る。しかしながら、プラスチック材料は熱可塑性物質であってもよい。繊維は、連続繊維であり得る。しかしながら、繊維は、数ミリメートルから数センチメートルの繊維長さを有し得る、短繊維又は中程度の長さの繊維であってもよい。バネユニット3は、ラミネート又は層状構造を有していてもよい。このために、繊維布又は繊維スクリムの層を、例えば、プラスチックマトリクスで含浸させる。しかしながら代替的に、いわゆるプリプレグ、つまり事前含浸繊維、繊維布、又は、繊維ウェブを使用して、バネユニット3を製造することも可能である。
【0054】
バネユニット3は、蛇行した形状を有している。バネユニット3は、方向転換部5において互いに接続された複数のリーフバネ部4を有している。リーフバネ部4の数は、任意である。図1では、リーフバネ部4及び方向転換部5はそれぞれ、参照符号を有している。個々のリーフバネ部4は、それぞれ、側面図において、S字型の形状又はS字型の曲線を有している。
【0055】
リーフバネ部4は、方向転換部5によって互いに一体に、具体的には1つの材料から一体に接続されていることが可能である。「一体に」又は「1つの部品から」とは、この場合、リーフバネ部4及び方向転換部5が、共通の部品を形成し、異なる部品からできていないことを意味している。「1つの材料から一体に」とは、具体的には、リーフバネ部4及び方向転換部5が、完全に同一の材料から形成されていることを意味している。
【0056】
リーフバネ部4及び方向転換部5は、バネユニット3に負荷がかけられた時に、方向転換部5に、変形が生じない又は少なくとも感知できる程度の変形が生じないように構成されている。他方で、各リーフバネ部4は、中心領域6において変形し、外側から作用する負荷に反作用するバネ力を生成する。
【0057】
バネユニット3の第1の端部7は、第1の軸受ユニット8において支持されている。これに応じて、バネユニット3の第2の端部9は、第2の軸受ユニット10において支持されている。第1の軸受ユニット8は、例えば、自動車2のフレームの一部であり得る。第2の軸受ユニット10は、自動車2の車軸ガイドの一部であり得る。軸受ユニット8、10は、バネ装置1Aの一部である。重力方向gに関して言えば、第1の軸受ユニット8は、第2の軸受ユニット10の上方に配置されている。第1の軸受ユニット8は、バネ台であるか、又は、バネ台として記載され得る。第2の軸受ユニット10も、バネ台であるか、又は、そのようなものとして記載され得る。
【0058】
図1は、負荷が掛かっていない又は復元された状態にあるバネ装置1Aを示している。反対に、図2は、負荷が掛かった又は圧縮された状態にあるバネ装置1Aを示している。負荷が掛かっていない状態においてS字型であるリーフバネ部4は、圧縮された状態では平面的な形状を有している。
【0059】
図3は、図1のIIIの詳細図を示している。上記したように、バネユニット3は、リーフバネ部4を備えており、そのうちの、方向転換部5によって互いに接続された2つのリーフバネ部4が図3に示されている。しかしながら、例えばバネユニット3がリーフバネユニットでない場合には、図3は、螺旋バネのコイルの一部を示すことも可能である。より一般的に言えば、図3は、少なくとも1つのコイルを備えるバネ部又はバネ列を示している。
【0060】
バネ装置1Aは、硬化要素11を備える。硬化要素11は、自動車2又はバネ装置1Aの動作中にバネ装置1Aのバネ剛性又はバネ定数k(図4)に影響を与えること、換言すると、バネ剛性又はバネ定数kを必要に応じて上昇又は低下させることを可能にする。「バネ定数」又は「バネ剛性」は、バネ装置1Aに作用する力F(図4)とこれによって起こるバネ装置1Aのたわみa(図4)に対する比率を示すものである。
【0061】
硬化要素11は、任意の形状を有していてよい。例えば、硬化要素11は、円筒形状又はローラ形状であり得る。硬化要素11は、例えば、方向転換部5の上に設けられ得る。複数の硬化要素11が設けられていてもよく、このような硬化要素11は、各方向転換部5と、又は、選択された方向転換部5だけと関連付けられていてよい。
【0062】
1つ又は複数の硬化要素11は、いずれも、バネユニット3の1つの部分又は各部分に、具体的には方向転換部5に、局所的に取り付けられていることが可能であるか、又は、バネユニット3全体を包囲していることが可能である。硬化要素11は、方向転換部5の中に挿入されていてもよいし、又は、接着されていてもよい。バネユニット3がコイルバネである場合、硬化要素11は、バネユニット3のコイルの間に配置されていてもよい。
【0063】
制御装置12によって、硬化要素11は、特にその特性を変化させて、バネ装置1Aのバネ定数k、バネ経路、伸張、等が影響を受けるように制御されることが可能である。換言すると、バネ装置1Aの特性は、選択的に影響される。これは、例えば方向転換部5のうちの1つだけにおいて局所的に、又は、バネユニット3全体において行うことが可能である。
【0064】
バネ装置1Aの特性に影響を与えるために、例えば、信号、具体的には電気信号が硬化要素11に与えられる。幾つかの硬化要素11が設けられている場合、これらは、個別に又は一緒に制御されることが可能である。この文脈では、硬化要素11の「特性」とは、例えば、形状的な広がり、例えば直径、長さ、厚み、幅等、又は、その形状、例えば円形、楕円形、又は、多角形として理解され得る。
【0065】
しかしながら、硬化要素11の「特性」とは、材料特性、例えば硬度、粘度、剛性、弾性係数、等を意味するものとしても理解され得る。制御装置12は、硬化要素11の上述の特性の任意の組み合わせに影響を与えるために使用されてもよい。例えば、硬化要素11は、硬化要素11が、少なくとも局所的に硬化及び/又は変形するように、制御装置12によって制御されることが可能である。
【0066】
具体的には、硬化要素11は、電気粘性又は磁気粘性特性を示す。換言すると、バネ装置1Aのバネ定数kを変更する硬化要素11の上述の特性は、それぞれ、電界又は磁界の印加によって、又は、硬化要素11を直接通電することによって影響され得る。
【0067】
硬化要素11は、個別の材料、又は、例えば電界又は磁界内でその特性を部分的にのみ変更する異なる材料の組み合わせから構成されていることが可能である。硬化要素11は、エラストマーから成るか、又は、エラストマーを含む複合材料から成る。例えば、硬化要素11は、エラストマーから構成されていてもよいし、又は、磁気粘性エラストマーを含んでいてもよい。
【0068】
磁気粘性エラストマーは、エラストマーマトリクスとその中に分散された磁気的にアクティブな粒子とを含む。このような磁気粘性エラストマーでは、外部磁界を印加することによって、粘弾性又は動的機械特性を迅速かつ可逆的に変更可能である。硬化要素11は、電気粘性流体、エラストマー、等を含んでいてもよい。
【0069】
最も単純には、制御装置12は、電圧源14を備える電気回路13である。制御装置12及び硬化要素11が一緒に、バネ装置1Aの剛性調節ユニット15を形成する。硬化要素11は、電気回路13の一部である。例えば、図3の図では、電圧源14は、いかなる電圧も供給しておらず、硬化要素11は非活性状態Z1にある。
【0070】
非活性状態Z1では、硬化要素11の剛性は、例えば、バネユニット3よりも何倍も低いので、バネユニット3の変形が、硬化要素11によって妨げられることはない。結果的に、図4に示されるバネ装置1Aのバネ定数kの曲線が得られる。この図4のバネ定数kの曲線は、このような剛性調節ユニット15を備えていないバネ装置(図示せず)の曲線にほぼ対応している。
【0071】
図5に示されるように、硬化要素11に電圧が印加されると、硬化要素11が非活性状態Z1から活性状態Z2に移行する。状態Z1、Z2は、図3及び図5において異なる網掛けで示されている。例えば、硬化要素11は、活性状態Z2において、非活性状態Z1とは異なる形状を有している。また、硬化要素11の弾性係数は、硬化要素11が非活性状態Z1から活性状態Z2に移行する時に変化する。
【0072】
先の例をそのまま引用すると、活性状態Z2では、硬化要素11は、バネユニット3の何倍も強い剛性を有することが可能であり、そのため硬化要素11は、活性状態Z2において、バネユニット3の変形を阻止し、図6に示されるように、バネ装置1Aのバネ定数k’の曲線の勾配は、非活性状態Z1と比較してより大きくなる。すなわち、同じ力Fで、バネ装置1Aのより小さいたわみaを得ることができる。したがって、バネ装置1Aは、非活性状態Z1よりも活性状態Z2において、より硬い。
【0073】
この場合、剛性調節ユニット15は、硬化要素11に印加される張力が高い程、バネ定数k’の曲線がより高勾配になるように構成されていることが可能である。つまり、バネ定数kは、連続的に変動し得る。非活性状態Z1と活性状態Z2との間には、無限数の中間状態が設けられていることが可能である。
【0074】
しかしながら、制御装置12は、硬化要素11を駆動するために電界E又は磁界Mを生成するように構成されていてもよい。活性状態Z2では、硬化要素11は、少なくとも部分的に、電界E又は磁界Mの内部に配置される。したがって、硬化要素11を、非接触又は無接触で制御することが可能である。電界E、磁界Mを生成するために、制御装置12は、励磁可能なコイルを備えていてもよい。コイルは、硬化要素11を少なくとも部分的に包囲し得る。しかしながら、このことは必須ではない。
【0075】
図7は、さらなる一実施形態のバネ装置1Bを示す概略図である。バネ装置1Bも自動車2に適している。以下では、バネ装置1Aとバネ装置1Bとの間の違いだけを説明する。バネ装置1Bは、バネユニット3を備える。バネユニット3は、上記したような、リーフバネ部4とリーフバネ部4の間に配置された方向転換部5とを備えるリーフバネユニットである。実質的に領域6において、リーフバネ部4の変形が生じる。バネユニット3は、繊維複合体プラスチックから成る。
【0076】
バネ装置1Aとは対照的に、バネ装置1Bは、漸進的な特性曲線を有するバネユニット3を含む。このために、バネユニット3は、第1のバネ定数k1を有する第1又は柔軟バネ部16、及び、第2のバネ定数k2を有する第2又は剛体バネ部17を備える。第2のバネ定数k2は、第1のバネ定数k1よりも大きい。このバネ定数k1、k2における違いは、例えば、剛体バネ部17が柔軟バネ部16よりも大きな断面及び/又は柔軟バネ部16とは異なる形状を有することによって実現され得る。重力方向gに関して言えば、柔軟バネ部16は、剛体バネ部17の上方に配置されている。バネ部16、17は互いに、一体に、具体的には1つの材料から一体に構成されている。
【0077】
バネ装置1Bに負荷をかけると、柔軟バネ部16がまず圧縮される。剛体バネ部17は、柔軟バネ部16がほとんど又はほぼ完全に圧縮された場合にのみ、圧縮される。したがって、図8に示されるように、バネ装置1Bのバネ定数kは漸進的な曲線となる。
【0078】
バネ装置1Bは、上述のような、制御装置12と硬化要素11とを含む剛性調節ユニット15を備える。硬化要素11は、柔軟バネ部16に設けられていることが好ましい。したがって、図3及び図5を参照しながら説明したように、硬化要素11は、1つの方向転換部5だけに設けられていてもよいし、又は、複数の方向転換部5に設けられていてもよい。しかしながら、図7及び図9に示されるように、硬化要素11は、柔軟バネ部16全体を包囲するか、又は、覆っていてもよい。
【0079】
例えば、硬化要素11は、柔軟バネ部16と材料的に接合されている。材料的に接合された接続の場合、接続している部品同士は、原子間力又は分子間力によって結合される。材料的に接合された接続は、取外し不可能な接続であり、接続手段及び/又は接続部品を破壊することによってのみ分離可能な接続である。材料接合部は、例えば、接着又は加硫によって接合可能である。例えば、硬化要素11は、柔軟バネ部16上で成形される。
【0080】
硬化要素11は、上述のように、電気粘性又は磁気粘性特性を有している。制御装置12によって、硬化要素11を、非活性状態Z1(図7)から活性状態Z2(図9)に移行すること、又はその逆が可能である。これは、例えば、硬化要素11に電圧を印加すること、又は、これに電界E(図9)又は磁界Mを印加することによって、行うことが可能である。これらの異なる状態Z1、Z2は、図7及び図9において、異なる方向の網掛けにより示されている。
【0081】
活性状態Z2では、硬化要素11は、柔軟バネ部16を非活性化して、バネ装置1Bに負荷が加えられた時に実質的に剛体バネ部17だけが圧縮されるようにする。柔軟バネ部16は、機能を停止し、理想的には、バネ装置1Bのバネ作用に何の寄与もしない。したがって、図10に示されるように、バネ定数k’は直線状に変動することになる。そして、バネ定数k’は、実質的に第2のバネ定数k2に相当する。また硬化要素11は、剛体バネ部17に設けられていてもよい。
【0082】
例えば、バネ装置1A、1Bのバネたわみ及びバネ定数kをリアルタイムでアクティブに調節又は制御するために、剛性調節ユニット15によって、バネ定数kを迅速に変更することが可能である。例えば負荷が変化した場合に高さを補償することや、バネ装置1A、1Bの固有周波数を非臨界範囲に移行させることが可能である。例えばコーナリング中に、ロール安定化のために、加速中に、制動中に、及び/又は、電子補償システム又はいわゆるボディ制御システムの範囲内で、バネ定数kに対する、車輪、側面、及び/又は、車軸に特有の変更を行うことが可能である。
【0083】
バネ定数kを連続的に変更することによって、乗り心地及び運転動力を改善することが可能である。このことは、バネ定数がバネたわみに依存するプログレッシブサスペンション(図示しない)を使用せずに、実現可能である。バネ定数kを調節可能とすることによって、緩衝器の機能は支援され得る。バネ装置1A、1Bは、部分的にアクティブな他の車体部品、例えばロールスタビライザ、緩衝器、空気バネ、等を少なくとも部分的に置換可能であり、又は、小型化の範囲において、この車体部品を少なくとも小型化することが可能である。極めて動的に切り替え可能なバネ装置1A、1Bを実施可能である。アクティブな空気バネと比べて、バネ装置1A、1Bは、単純かつ低コストであり、動的な有用性に関して、より高性能の解決策である。
【0084】
本発明を、実施形態を例として挙げて説明したが、本発明は、様々な方法に変形可能である。
【符号の説明】
【0085】
1A:バネ装置
1B:バネ装置
2:自動車
3:バネユニット
4:リーフバネ部
5:方向転換部
6:領域
7:端部
8:軸受ユニット
9:端部
10:軸受ユニット
11:硬化要素
12:制御装置
13:電気回路
14:電圧源
15:剛性調節ユニット
16:バネ部
17:バネ部
a:たわみ
E:電界
F:力
g:重力方向
k:バネ定数
k’:バネ定数
k1:バネ定数
k2:バネ定数
M:磁界
Z1:状態
Z2:状態
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用のバネ装置であって、
バネユニットと
前記バネユニットを硬化して、前記バネ装置のバネ定数を動的に変更するように構成された剛性調節ユニットと、を備えるバネ装置。
【請求項2】
前記バネユニットは、繊維強化プラスチックから成ることを特徴とする、請求項1に記載のバネ装置。
【請求項3】
前記バネユニットはリーフバネユニットであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバネ装置。
【請求項4】
前記バネユニットは、複数のリーフバネ部及び複数の方向転換部を備え、いずれの場合でも、1つの方向転換部は、隣接する2つのリーフバネ部を互いに接続していることを特徴とする、請求項3に記載のバネ装置。
【請求項5】
前記リーフバネ部は、S字型の形状を有することを特徴とする、請求項4に記載のバネ装置。
【請求項6】
前記剛性調節ユニットは、前記バネユニットを硬化させるための硬化要素を備え、前記硬化要素は、前記バネユニットに取り付けられていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のバネ装置。
【請求項7】
前記硬化要素は、円筒状であることを特徴とする、請求項6に記載のバネ装置。
【請求項8】
前記硬化要素は、前記バネユニットを少なくとも部分的に包囲していることを特徴とする、請求項6に記載のバネ装置。
【請求項9】
前記バネユニットは、第1のバネ定数を有する柔軟バネ部と、第2のバネ定数を有する剛体バネ部とを備え、前記第2のバネ定数は、前記第1のバネ定数よりも大きく、前記硬化要素は、前記柔軟バネ部にのみ取り付けられていることを特徴とする、請求項6~8のいずれか1項に記載のバネ装置。
【請求項10】
前記硬化要素は、前記柔軟バネ部を非活性化するように構成されていることを特徴とする、請求項9に記載のバネ装置。
【請求項11】
前記剛性調節ユニットは、前記硬化要素を駆動させるための制御装置を備え、前記硬化要素は、前記制御装置によって非活性状態から活性状態に移行されること、及びその逆が可能であり、前記バネ装置のバネ定数は、前記非活性状態よりも前記活性状態において大きいことを特徴とする、請求項6~10のいずれか1項に記載のバネ装置。
【請求項12】
前記非活性状態と前記活性状態との間に、任意の数の中間状態が設けられており、前記バネ装置のバネ定数は、連続的に変更可能であることを特徴とする、請求項11に記載のバネ装置。
【請求項13】
前記硬化要素は、印加された電流によって、電界によって、及び/又は、磁界によって、前記非活性状態から前記活性状態に移行されることが可能であることを特徴とする、請求項11又は12に記載のバネ装置。
【請求項14】
前記硬化要素を前記非活性状態から前記活性状態に移行させる時には、前記バネ装置のバネ定数が増大するように、前記硬化要素の特性、具体的には材料特性及び/又は形状特性が、変化することを特徴とする、請求項11~13のいずれか1項に記載のバネ装置。
【請求項15】
前記硬化要素は、磁気粘性材料及び/又は電気粘性材料を含む、請求項6~14のいずれか1項に記載のバネ装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
自動車では、車体に、自動車を弾性的に搭載するためのバネが設けられる場合がある。運転の快適さに関して言えば、できるだけ柔らかいサスペンションが望ましい。他方で、運転の動力学的に言えば、硬いサスペンションが有利である。したがって、互いに矛盾する要件があるが、その利点及び欠点は、運転状況又は車両状態、具体的には自動車の積載量に依存する。したがって、自動車にとって永続的に最適なサスペンション設定は存在しない。つまり、パッシブなバネの場合、バネの設計とは、常に、状況に応じて異なるバネ特性の要件間で妥協をすることである。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1)独国特許出願公開第102009054458号明細書
(特許文献2)米国特許第5390949号明細書
【国際調査報告】