(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 1/825 20060101AFI20231102BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20231102BHJP
C11D 1/722 20060101ALI20231102BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20231102BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20231102BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20231102BHJP
A01N 61/00 20060101ALI20231102BHJP
A01N 31/04 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C11D1/825
C11D1/72
C11D1/722
C11D3/20
C11D3/48
A01P3/00
A01N61/00 D
A01N31/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549790
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 KR2021014900
(87)【国際公開番号】W WO2022086265
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0137611
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】305026873
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】523151676
【氏名又は名称】株式会社 ユイケミカル
【氏名又は名称原語表記】UE CHEMICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】104-A, 365, Sinseon-ro Nam-gu Busan 48548 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】パク, ジョン モク
(72)【発明者】
【氏名】コン, ホ ヨル
(72)【発明者】
【氏名】リム, ボ ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン, ソ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン, ユ ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ソン チョル
【テーマコード(参考)】
4H003
4H011
【Fターム(参考)】
4H003AC08
4H003AC23
4H003BA12
4H003DA01
4H003DA05
4H003DA14
4H003DA17
4H003DB01
4H003DB02
4H003EB04
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA34
4H011AA04
4H011BA06
4H011BB03
4H011BB19
4H011DA13
4H011DH03
4H011DH19
(57)【要約】
本発明は、全100重量%を基準として、C
13H
27(OCH
2CH
2)
nOH(ここで、n=2~15)10~30重量%と、2-エチルヘキシルアルコールエトキシレート0.1~5重量%と、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイドのブロック共重合体0.1~5重量%と、残量の精製水とを含む洗浄剤組成物に関する。本発明による洗浄剤組成物は、コロナウイルスを30秒で99.99%以上除去する優れたウイルス除去効果を有する。それと同時に、様々な細菌は殺さない選択的特性を有し、皮膚低刺激の特性を満足する安全な洗浄剤組成物を提供する。また、このような洗浄剤組成物は、コロナウイルスの除去はもちろん、油汚れの除去、キッチンの頑固な汚れの除去、浴室の掃除、機械装置及び部品の洗浄、衣類の油汚れの除去などの様々な用途に用いられ、優れた洗浄力を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全100重量%を基準として、C
13H
27(OCH
2CH
2)
nOH(ここで、n=2~15)10~30重量%と、
2-エチルヘキシルアルコールエトキシレート0.1~5重量%と、
エチレンオキサイド-プロピレンオキサイドのブロック共重合体0.1~5重量%と、
残量の水とを含む、洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記洗浄剤組成物は、さらにラウリルアルコールエトキシレートを全洗浄剤組成物に対して0.1~5重量%の量で含む、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記洗浄剤組成物を0.1重量%以内で含む希釈液におけるコロナウイルス除去率は、30秒で99.99%である、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記洗浄剤組成物は、コロナウイルスの除去時に菌は除去されない、請求項3に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記洗浄剤組成物は皮膚毒性を有しない、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記洗浄剤組成物は、コロナウイルスの除去、油汚れの除去、キッチンの頑固な汚れの除去、浴室の掃除、機械装置及び部品の洗浄、衣類の油汚れの除去に使用される、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項7】
前記洗浄剤組成物はpH6.5~7の中性を維持する、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項8】
前記洗浄剤組成物を水に5重量%以内の含有量で希釈して使用する、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項9】
さらに、前記残量の水は、エタノールを20重量%以内で含むことができる、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月22日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2020-0137611号の出願日の利益を主張し、その内容が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、洗浄剤組成物に関し、詳細には、コロナウイルスを効果的に除去できる洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
コロナウイルス(Coronavirus;CoV)とは、ヒトを含む動物に広範な呼吸器系および消化器系の感染を引き起こすRNAウイルスであり、顕微鏡で見ると表面に王冠状の特徴的な突起があることから「コロナ(王冠)」と名付けられた。
【0004】
コロナ19は、2019年12月に中国湖北省武漢市で発症した流行性疾患で、「新型コロナウイルス感染症」とも呼ばれ、コロナウイルスの変種によるウイルス性疾患として知られている。
【0005】
初期には原因不明の呼吸器伝染病としてのみ知られていたが、2003年に流行したサーズ(SARS、重症急性呼吸器症候群)および2012年に流行したマーズ(MERS、中東呼吸器症候群)のようなコロナウイルスの新型であることが判明した。
【0006】
ウイルスは生物と非生物の両方の特徴を備えた個体であり、基本的にはタンパク質で構成される外皮の中に遺伝物質である核酸(DNAまたはRNA)が入った単純な構造になっている。ウイルスは単独で生命活動を行うことはできないが、宿主となる細胞に侵入すると宿主細胞の生命活動に寄生し、遺伝物質とタンパク質の外皮を複製することによって個体数を増加させる。
【0007】
コロナウイルスはRNA系のウイルスであり、DNA系のウイルスに比べて遺伝的安定性が低くて突然変異が頻繁に起こり、その過程で動物とヒトの間のような種の壁を越えて伝播するほど強い伝染力と高い致死率を持った変種が生じることもある。このようなコロナウイルスは、RNA系の宿主に由来するリン脂質二重膜を持っている。
【0008】
また、コロナウイルスの構造を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると、二重のリン脂質膜からなっている。前記リン脂質膜は、C10~C18の長い炭素鎖を有する構造となっている。
【0009】
一方、コロナ19ウイルスの洗浄剤として現在広く使用されているアルコール系洗浄剤は、ウイルスの外皮(リン脂質)を溶かすことで消毒効果を発揮するエタノールを主成分として含むものであり、現在韓国で広く使用されている。
【0010】
コロナ19ウイルスは脂質二分子膜構造を有している。エタノールはこのリン脂質層とタンパク質で構成される外皮を持つウイルスの外皮を溶かすことにより、外皮を持たないウイルスが外部で死滅するようにするか、または運良く宿主に入ったとしても細胞に侵入して増殖することがないようにする。
【0011】
コロナ19を引き起こす新型コロナウイルスの場合は、ヒトの肺細胞に感染するが、そのためには肺細胞内に入らなければならない。そのために、コロナウイルスは肺細胞の受容体に付着して侵入しようとするが、この受容体に結合する部位が、コロナウイルスの外皮に存在するスパイクタンパク質である。エタノールが外皮を溶かして取り除くと、スパイクタンパク質も消失し、その状態で体内に入っても細胞内への侵入力がなくなる原理である。
【0012】
しかし、エタノールなどのアルコールを主成分とする洗浄剤には、皮膚の保湿や殺菌漂白などを目的とした様々な化学成分がさらに含まれているため、それによる刺激が持続するか、または使用中に発疹、かゆみなどが継続すると、安定性を確保することが困難である。また、前記アルコールがコロナウイルスの外皮を溶かしてウイルスを死滅させるのは事実であるが、外皮を失ったウイルスが死滅するにはある程度の時間がかかる。そのため、どんなに手消毒剤を均一に塗布しても、外皮が破壊されていないウイルスが残っている可能性がある。したがって、この危険要素を完全に遮断するには、やはり手を洗うしかない。
【0013】
例えば、アルコールを含む従来技術である特許文献1(日本特許6688929 B2)には、ウイルス不活性化の効果を十分に発揮しながら高い殺菌効果を発揮するために、プロタミン及び/又はその塩とエタノールを含む消毒剤組成物が開示されている。前記消毒剤組成物は、pHが8.0~14.0であり、前記消毒剤組成物中のエタノールの割合は30質量%以上である。
【0014】
一方、特許文献2(韓国特許10-2109376)には、都市廃水等の処理の結果として生じる下水汚泥を処理して揮発性固形物および他の汚染物質を除去し、バイオガスを生成するために活性酵素を含有しない酵母培養液から得られる発酵上澄み液の5重量%~35重量%と、1種以上の非イオン性界面活性剤の1.0重量%~15重量%とを含む生体触媒組成物が開示されている。前記生体触媒組成物は活性酵素を欠いており、3.5~4.0のpHを有することを特徴とする。前記生体触媒組成物及びそれを用いた下水汚泥の処理方法が開示されている。
【0015】
前記特許で使用される非イオン性界面活性剤は、機械的に発生される気泡よりもはるかに小さいサイズの微小気泡を発生させ、廃水システム内の有機汚染物質を生物学的に分解または浄化するとき、最も重要な生物学的プロセスまたは精製化学物質の酸化反応を助ける給水管に酸素を素早く大量供給する作用をする。
【0016】
そのため、コロナウイルスを効果的に死滅させるためには、コロナウイルスに含まれている前記リン脂質膜を効果的に除去できるとともに、人体への使用時に刺激を与えない新規な洗浄剤が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】日本特許6688929 B2
【特許文献2】韓国特許10-2109376
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、コロナウイルスに含まれるリン脂質膜を除去することでコロナウイルスを効果的に除去しながらも様々な菌(バクテリア)を維持できる皮膚低刺激の洗浄剤組成物を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一実施形態による洗浄剤組成物は、全100重量%を基準として、C13H27(OCH2CH2)nOH(ここで、n=2~15)10~30重量%と、2-エチルヘキシルアルコールエトキシレート0.1~5重量%と、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイドのブロック共重合体0.1~5重量%と、残量の水とを含むことができる。
【0020】
前記洗浄剤組成物は、さらにラウリルアルコールエトキシレートを全洗浄剤組成物に対して0.1~5重量%の量で含むことができる。
【0021】
本発明による前記洗浄剤組成物を0.1重量%以内で含む希釈液におけるコロナウイルス除去率は、30秒で99.99%である。
【0022】
また、本発明による洗浄剤組成物は、コロナウイルスを除去しても菌は除去されないことを特徴とする。
【0023】
本発明の一実施形態による洗浄剤組成物は、皮膚毒性を有しないことを特徴とする。
【0024】
本発明による洗浄剤組成物は、コロナウイルスの除去、油汚れの除去、キッチンの頑固な汚れの除去、浴室の掃除、機械装置及び部品の洗浄、衣類の油汚れの除去に使用することができる。
【0025】
本発明の一実施形態による洗浄剤組成物は、pH6.5~7の中性を維持することが好ましい。
【0026】
また、本発明による前記洗浄剤組成物は、水に5重量%以内の含有量で希釈して使用することができる。
【0027】
さらに、前記洗浄剤組成物に含まれる残量の水は、エタノールを20重量%以内で含むことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、洗浄剤組成物に含まれる主成分として、線状構造ではなく、芳香族と分岐構造が混合された複雑な構造を有する物質を用いることにより、コロナウイルスに含まれるリン脂質膜を効果的に溶かすことができる。これにより、0.01重量%の少量の洗浄剤組成物を水に希釈しても30秒で99.99%以上のコロナウイルスを除去する優れたウイルス除去効果を有する。同時に、多様な細菌は死滅させない選択的特性を有し、皮膚低刺激の特性を満足する安全な洗浄剤組成物を提供する。
【0029】
この洗浄剤組成物は、コロナウイルスの除去はもちろん、油汚れの除去、キッチンの頑固な汚れの除去、浴室の掃除、機械装置及び部品の洗浄、衣類の油汚れの除去等の様々な用途に用いられ、優れた洗浄力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明の実施例2による洗浄剤組成物を0.1重量%の濃度で含む希釈液におけるコロナウイルス除去率の測定結果である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例2による洗浄剤組成物の基礎細胞毒性の評価結果である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例2による洗浄剤組成物の殺菌性の測定結果である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例2による洗浄剤組成物の皮膚刺激実験の結果である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例2及び比較例1、2、4による洗浄剤組成物の洗浄力実験の結果である。
【
図6】
図6は、本発明の実施例2及び比較例1、2、4による洗浄剤組成物の濁度実験の結果である。
【
図7】
図7は、実施例2による洗浄剤組成物の有機物および重金属検出実験の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0032】
本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明するためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
【0033】
本明細書で使用されるように、単数の表現は、文脈上、明らかに異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。さらに、本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」及び/又は「含む(comprising)」は、記載された形状、数字、段階、動作、部材、要素及び/又はこれらを組み合わせたものが存在することを示すものであって、一つ以上の他の形状、数字、段階、動作、部材、要素及び/又はこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を排除するものではない。
【0034】
本発明は、ウイルス、特にコロナウイルスの除去に有効な洗浄剤組成物に関するものである。
【0035】
本発明による洗浄剤組成物は、全100重量%を基準として、C13H27(OCH2CH2)nOH(ここで、n=2~15)10~30重量%と、側鎖に炭化水素が置換された構造を有する2-エチルヘキシルアルコールエトキシレート0.1~5重量%と、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイドのブロック共重合体0.1~5重量%と、残量の精製水とを含む組成からなる。
【0036】
前記C13H27(OCH2CH2)nOH(ここで、n=2~15)は、本発明の洗浄剤組成物の主成分として含まれ、コロナウイルスを除去および抑制する役割を果たす。
【0037】
本発明の前記C13H27(OCH2CH2)nOHにおける13個の炭素鎖は線状構造ではなく分岐構造を有するため、コロナウイルスのリン脂質二重膜に含まれる長い炭素鎖からなる疎水性部分とよく結合することができる。また、分岐した複雑な構造により疎水性が増加し、これにより会合数(aggergation number)が増加し、前記コロナウイルスのリン脂質膜の可溶化度を増加させることが期待される。
【0038】
また、線状構造に比べて分岐構造を有する場合には、前記複雑なリン脂質二重膜構造とミセル形成時の疎水性炭化水素との反発力により、ミセルにおけるパッキング密度(packing density)を低くすることができるため、リン脂質二重膜を溶かすのにはるかに有利な構造を形成することができる。
【0039】
また、前記式中、エチレンオキサイド部分は、前記長い炭素鎖の疎水性に親水性を付与する役割を果たす。したがって、前記エチレンオキサイドの数を表すnは2~15、好ましくは5~10であればよく、前記nの数が異なる2種以上の物質を混合して所定の親水性となるように調節して使用することが好ましい。
【0040】
前記C13H27(OCH2CH2)nOHにおけるnが2未満であると、コロナウイルスのリン脂質膜を溶かすほどの親水性が得られず、コロナウイルスのリン脂質膜の長い炭素鎖の間に前記成分が閉じ込められてしまう問題があり、製剤の製造が困難であるため好ましくない。nが15を超えると、エチレンオキサイドの含有量が多すぎるために親水性が過度になり、コロナウイルスのリン脂質膜を溶かすことができなくなるため好ましくない。
【0041】
このC13H27(OCH2CH2)nOHは、全洗浄剤組成物に対して10~30重量%の量で含まれる。その含有量が10重量%未満であると、コロナウイルスの除去及び抑制効果が不十分である。その含有量が30重量%を超えると、さらなる効果が発揮しないため好ましくない。
【0042】
また、本発明による洗浄剤組成物は、2-エチルヘキシルアルコールエトキシレートを含むことにより、コロナウイルスのリン脂質二重膜の間に入るときの侵入力を高めることが好ましい。前記2-エチルヘキシルアルコールエトキシレートもまた、側鎖に炭化水素が置換された、あまり規則的ではない構造を有するため、前記リン脂質二重膜の間に入るときに間隔をあけて侵入力を高める効果が期待できる。前記側鎖に炭化水素が置換された2-エチルヘキシルアルコールエトキシレートは、全洗浄剤組成物に対して0.1~5重量%の量で含まれる。0.1重量%未満であると、所望の効果が得られず、5重量%を超えると、さらなる侵入力向上効果が得られなくなるため好ましくない。
【0043】
本発明の前記エチレンオキサイド-プロピレンオキサイドのブロック共重合体は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを共重合して製造され、洗浄剤組成物の製造時の気泡発生を抑制するために添加することができる。前記ブロック共重合体は、全洗浄剤組成物に対して0.1~5重量%の量で含まれることが気泡の除去に効果的である。
【0044】
また、本発明の洗浄剤組成物は、前記構成以外に残量の水を含んでなる。前記水は、特に限定されず、一般水道水や、一般の水に含有されている溶解イオン、固体粒子、微生物、有機物などの全ての不純物を除去した精製水などが挙げられる。
【0045】
また、必要に応じて、前記精製水はエタノールを20重量%以内で含むことにより、最終的に製造される洗浄剤組成物の粘度を下げたり、洗浄剤組成物の製造時に発生する気泡を除去したり、冬場のような低温での洗浄剤組成物の保存特性を向上させることができる。
【0046】
また、本発明による前記洗浄剤組成物は、さらにラウリルアルコールエトキシレートを全洗浄剤組成物に対して0.1~5重量%の量で含むことにより、前記C13H27(OCH2CH2)nOHの助剤として使用してリン脂質膜を効果的に溶かすことができる。
【0047】
本発明による洗浄剤組成物は、前記各構成成分を室温(r.t.)でよく混合することによって容易に調製することができる。前記調製された洗浄剤組成物は、疎水性と親水性のバランス(HLB)の値が12~15の範囲にあることにより、様々な用途の洗浄剤として使用される場合、水中で適切なミセルを形成して洗浄効果を高めることができる。
【0048】
本発明による洗浄剤組成物は、コロナウイルスの除去、油汚れの除去、キッチンの頑固な汚れの除去、浴室の掃除、機械装置及び部品の洗浄、衣類の油汚れの除去など、水性、油性に関係なくあらゆる汚染物の洗浄に使用することができる。
【0049】
この中でも、特に本発明による洗浄剤組成物は、0.1重量%以内の濃度となるように少量のみを水で希釈しても、サーズ(SARS、重症急性呼吸器症候群)、マーズ(MERS、中東呼吸器症候群)、新型コロナ-19ウイルス等のコロナウイルスを30秒で99.99%除去する効果を発揮する。
【0050】
また、本発明による洗浄剤組成物は、コロナウイルスを除去する一方で菌(バクテリア)は除去しない特徴を有する。つまり、除去したいウイルスだけを除去し、様々に存在し得るバクテリアは、その有害・無害性に関わらず殺さない選択性を持つということである。
【0051】
ウイルスは人体にとってはるかに致命的で常に病気を引き起こすのに対し、バクテリアは独立した微生物であり、固有の複雑さと生殖機能を持つ。また、バクテリアは人間の臓器で利用されることもあり、その例として、消化器官のpH値を管理及び維持する腸内細菌叢がある。勿論、バクテリアが体内に多すぎるか、または病原性バクテリアに感染したりすると、病気につながることもあり、バクテリオファージ(いわゆる、殺菌バクテリア)は病気の治療に使われることもある。
【0052】
このような観点から、本発明による洗浄剤組成物を用いると、ターゲットとなるコロナウイルスを効果的に除去及び抑制するとともに、微生物系に存在する様々なバクテリアを除去しない効果があるといえる。
【0053】
また、本発明による洗浄剤組成物は皮膚毒性がない特徴を有するので、コロナウイルスの予防及び除去のために人体に噴霧するか、または手を消毒するなどの用途で使用する際に、他の副作用なしに安全に使用することができる。
【0054】
また、本発明による前記洗浄剤組成物は、pH6.5~7程度の中性であることを特徴とする。そのため、被洗浄物質の損傷や変質を最小限に抑えることができる利点を有するとともに、洗浄効果に優れた特徴を持つ。
【0055】
また、本発明により調製された前記洗浄剤組成物は、水に5重量%以内の含有量で希釈して噴霧用、消毒用、洗浄用などの所定の所望の用途で多様に用いることができる。
【0056】
以下、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。なお、以下の実施例では特定の化合物を用いて例示しているが、これらの均等物を用いた場合においても同等・類似の程度の効果を発揮できることは当業者にとって自明である。
【0057】
実施例および比較例:洗浄剤組成物の調製
下記表1の組成に従って、各組成を水(精製水)に投入して室温(r.t.)で混合し、十分に撹拌して各洗浄剤組成物を調製した。下記表1において、比較例1及び2は、本発明の洗浄剤組成物の主成分であるC13H27(OCH2CH2)nOHにおけるnの範囲が本発明の範囲から外れた例である。比較例3は、洗浄剤組成物の主成分であるC13H27(OCH2CH2)nOHにおけるnが本発明の範囲内であるが、その含有量比が本発明の範囲から外れた例である。比較例4は、本発明のような分岐構造ではなく線状構造を有する成分を含む例である。
【0058】
【0059】
実験例1:コロナウイルス除去率の測定
前記で調製された実施例2による洗浄剤組成物(ニュートラベスト)のコロナウイルス除去率(コロナウイルス不活性効果)を評価するために、以下のような実験を行った。
【0060】
96ウェル細胞プレートに、Vero細胞(サル腎臓上皮細胞)をウェルあたり1×104個培養した。次に、1×103~5×103個の感染性ウイルスをEPチューブに分注した後、洗浄剤組成物が0.1重量%の濃度となるようにウイルス細胞培養液(Gibco DMEM-0% FBS)と混合し、30秒、1分、5分、10分の反応時間で反応させた。
【0061】
反応が終わった細胞培養液は、ドライアイスを用いて急速冷凍した後、-80℃のディープフリーザー(Deep freezer)でサンプルを保存した。用意したサンプルを、96ウェルU底プレートで細胞培養液を用いて10倍段階希釈を行った。96ウェル細胞プレートで培養した細胞を、1xリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate-buffered saline、PBS)を用いて1回洗浄し、前記段階希釈したサンプルを洗浄済み細胞に移し、1時間30分間反応させた。反応終了後、従前に入っていた細胞培養液を除去し、滴定濃度のTPCKトリプシンを含む細胞培養液に交換した。
【0062】
2~3日間、細胞の変形状態およびSARS-CoV-2ウイルスの増殖状態を顕微鏡を用いて目視観察し、感染後3日目に10%クリスタルバイオレット染色剤を用いて生存細胞を染色した。その結果を
図1に示す。
【0063】
図1の結果を参照すると、ウイルスによって死滅した細胞や洗浄剤の毒性によって死滅した細胞は染色されず透明に観察され、生存している細胞はクリスタルバイオレットにより染色され、濃い紫色で観察された。
【0064】
0.1重量%の濃度で洗浄剤組成物を含む細胞培養液中で30秒間、約1,000個のSARS-CoV-2ウイルスを殺菌処理したところ、肉眼で見たとき、同量のウイルス感染群に比べて約10倍の抑制効果が示された。殺菌処理時間が増加するにつれて、1分、5分、10分のそれぞれにおいて、肉眼で見たとき、同量のウイルス感染群に比べて約10倍から最大100倍の抑制効果が示された。長い殺菌処理時間の5分と10分で最も高い抑制効果が示されたが、30秒と10分の結果において大きな有意差が見えないほどの効果を示した。
【0065】
下記実験例2で行った洗浄剤組成物による細胞毒性を除いて、約1,000~5,000個のSARS-CoV-2ウイルスが成長できる高濃度を含む全ての希釈条件下でウイルスが不活性化されることが示された。したがって、本発明による洗浄剤組成物のコロナウイルス不活性効果は99%以上と確認された。つまり、本発明の実施例2により調製された洗浄剤組成物(試料名:ニュートラベスト)は、0.1重量%の濃度に希釈して使用しても、対照群に比べてコロナウイルス(COVID-19)除去率が30秒~10分に渡って99.99%であることが確認された。すなわち、非常に短い時間である30秒だけで99.99%の効果的なコロナウイルス除去率を有することが確認された。
【0066】
実験例2:洗浄剤組成物の細胞毒性の評価
前記実施例2による洗浄剤組成物(ニュートラベスト)の細胞毒性を評価するために、以下のような実験を行った。
【0067】
96ウェル細胞プレートに、Vero細胞(サル腎臓上皮細胞)をウェルあたり1×10
4個培養した。前記実験例1と同様の条件で洗浄剤組成物と細胞培養液を混合した。用意したサンプルを、96ウェルU底プレートで細胞培養液を用いて2倍段階希釈を行った。96ウェル細胞プレートで培養した細胞を、1xリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate-buffered saline、PBS)を用いて1回洗浄し、段階希釈したサンプルを洗浄済み細胞に移して1時間30分間反応させた。反応時間が終了した後、従前に入っていた細胞培養液を除去し、適正濃度のTPCKトリプシンを含む細胞培養液に交換し、2~3日間細胞の変形状態を顕微鏡を用いて目視観察した。処理後3日目に10%クリスタルバイオレット染色剤を用いて生存細胞を染色した。その結果を
図2に示す。
【0068】
図2を参照すると、0.1~0.006重量%の洗浄剤組成物濃度の混合細胞培養液を非感染細胞に投与したところ、最大0.013重量%の濃度まで細胞毒性が観察された。
【0069】
実験例3:殺菌力の測定
前記実施例2による洗浄剤組成物の殺菌力を測定するために、韓国医療試験研究院に大腸菌(Escherichia coli)ATCC 25922に対する殺菌力(%)をASTM E 2315:2016に従って測定するように依頼した。その結果を
図3に示す。
【0070】
図3を参照すると、大腸菌(Escherichia coli)ATCC 25922に対する殺菌力(%)は0(ゼロ)として測定された。したがって、本発明による洗浄剤組成物は、目的としたコロナウイルスの99.99%以上を効果的に除去するのに対し、大腸菌をはじめとする様々なバクテリアは除去しない選択的除去性を有することを確認した。
【0071】
実験例4:皮膚刺激実験
本発明により調製された洗浄剤組成物を人体に適用した際の皮膚刺激の有無を確認するために、前記実施例2による組成物を希釈し、標準綿布(KS K ISO 105-F02)に浸漬して試験片を製造した。それを20人の健康な成人を対象として腕の前膊部に24時間付着した。それを除去した後、肉眼で観察してパッチ部位の皮膚レプリカを作製した。それを顕微鏡で観察し、
図4の判定基準に従って判定した。その結果を
図4に示す。
【0072】
図4の結果から、20人の参加者全員から陰性(-)の判定が得られたことを確認することができた。この結果から、本発明により調製された洗浄剤組成物は人体への適用時に皮膚刺激なく安全に使用できることを確認した。
【0073】
実験例5:洗浄力試験
本発明による実施例2の洗浄剤組成物と前記比較例1、2、4による洗浄剤組成物との洗浄力を比較する実験を行った。一定のサイズの汚染物試験片に対して、前記各洗浄剤組成物を0.6重量%の濃度に合わせた700mlを60℃の条件で第1回、第2回洗浄過程を行った後、各試験片の状態を肉眼で観察した。その結果を
図5に示す。また、各試験片の濁度をハイドロカーボン試験によりASTM D1722法に従って測定し、その結果を
図6に示す。
【0074】
図5の結果を参照すると、本発明の実施例2による洗浄剤組成物を用いて洗浄した場合は、汚染物質がきれいに洗浄されているのに対して、本発明の洗浄剤組成物の主成分であるC
13H
27(OCH
2CH
2)
nOHにおけるnの範囲であるエチレンオキサイドの数が1である比較例1の場合は、親水性が弱すぎて円滑な洗浄効果を発揮することができなかった。また、エチレンオキサイドの数が16である比較例2の場合は、過度の親水性のため洗浄効果がむしろ低下した。線状構造の第1級アルコールを用いた比較例4の場合も、微細残留物が存在するか、または微細汚れが残っていることが確認された。
【0075】
また、濁度を比較した
図6の結果から、実施例2、比較例1、比較例2、比較例4の順に濁度を示すことが確認された。前記の濁度の結果からも、比較例1、2、4による洗浄剤組成物の場合は、汚染物を洗浄する洗浄力が本発明に比べて非常に低下していることが分かった。
【0076】
これらの結果から、洗浄剤組成物で使用される成分の構造的特徴によって洗浄力が大きく異なることが確認でき、線状構造を有するよりも本発明のように分岐構造を同時に有する場合に洗浄力がより優れていることが分かった。
【0077】
実験例6:有機物質及び重金属の検出有無の確認
本発明による洗浄剤組成物が、安全性確認対象となる生活化学製品の試験・検査等の基準及び方法に適合するかどうかを確認するために、前記実施例2による洗浄剤組成物を韓国建設生活環境試験研究院に依頼した。その結果を
図7に示す。
【0078】
図7の結果から、本発明による洗浄剤組成物では、5-クロロメチルイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノンのような物質や、6価クロム、鉛、カドミウム、水銀などの重金属が検出されないことが確認された。この結果から、本発明による洗浄剤組成物は安全性を確保していることが確認された。
【国際調査報告】