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特表2023-547592再生可能な燃料を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】再生可能な燃料を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 3/00 20060101AFI20231106BHJP
   B01J 27/051 20060101ALI20231106BHJP
   B01J 29/85 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
C10G3/00 Z
B01J27/051 M
B01J29/85 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023518316
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 EP2021076885
(87)【国際公開番号】W WO2022069601
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】20205953
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(31)【優先権主張番号】20205954
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スンチオ、ビッレ
(72)【発明者】
【氏名】ビスリ、オッリ
(72)【発明者】
【氏名】リンドクビスト、ペトリ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA10A
4G169BB01A
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB09B
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC60A
4G169BC65A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC69A
4G169BC70A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BD02A
4G169BD03A
4G169CB02
4G169CB35
4G169CB41
4G169DA06
4G169ZA41B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4H129AA01
4H129BA03
4H129BB05
4H129BC09
4H129BC15
4H129BC37
4H129KA06
4H129KA08
4H129KA11
4H129KB03
4H129KC03X
4H129KC04X
4H129KC05X
4H129KC06X
4H129KC07X
4H129KC13X
4H129KC28X
4H129KD15X
4H129KD16X
4H129KD20X
4H129KD21X
4H129KD22X
4H129KD24X
4H129KD25X
4H129KD26X
4H129KD44X
4H129NA02
4H129NA04
4H129NA25
4H129NA32
4H129NA43
(57)【要約】
多くの窒素不純物を有する例えば動物性脂肪などの酸素化炭化水素フィードストックから炭化水素を調製するためのプロセスが記載される。プロセスは、ポリシング床の下流に配置されている第1の水素化処理床中での酸素化フィードストックの水素化処理を含む。第1の水素化処理床の後、ガス相が除去され、および、液体の水素化処理相が第1の水素化処理床の上流に配置されているポリシング床に、新鮮な水素と共に供給され、これは、ポリシングされた炭化水素生成物に含まれる窒素不純物をさらに減少させる。特定のプロセスセットアップは、結果として生じる炭化水素生成物から窒素不純物を効果的に除去し、異性化後の改良された曇点をもたらし、および同時に、特定の配置は、ポリシングのための新鮮な水素の使用を効率のよいもとし、溶存水素に富んだポリシングされた炭化水素化合物を提供し、ここで、このような生成物の一部は、水素化処理床の下流に中の炭化水素基悪剤としてこのような生成物の一部が使用され得、およびまたは、ポリシングおよび水素化処理床のあいだから取り出され、異性化反応器中で異性化され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素元素として測定されて10wppmまたはそれ以上の窒素不純物を有する、酸素化炭化水素フィードストックから炭化水素を調製するためのプロセスであって、
第2の触媒ゾーン(105)の上方に配置された第1の触媒ゾーン(102)を備える水素化処理反応器(101)であって、ここで、酸素化炭化水素フィードストック(104)、水素富化ガス(120)、および任意には生成物リサイクル希釈剤(108、126)を含む水素化処理入り口流が、前記第1の触媒ゾーン(102)と前記第2の触媒ゾーン(105)とのあいだの入口で前記第2の触媒ゾーン(105)へ導入され、それは前記第1の触媒ゾーンからの第1の水素化処理流出物の一部と混合され、前記第1の第1の水素化処理流出物の一部は、溶存水素を含む液体炭化水素を含み、前記第2の触媒ゾーンは、前記水素化処理反応器の第2の触媒ゾーン(105)からの第2の水素化処理流出物(106)が主に炭化水素を含む程度まで少なくとも水素脱酸素および水素脱窒を引き起こす温度および圧力で操作され、およびここで、前記酸素化炭化水素フィードストックが≧95%の炭化水素に変換される水素化処理反応器(101):
前記水素化処理反応器の前記第2の触媒ゾーンからの第2の水素化処理流出物が、前記第2の水素化処理流出物(106)の少なくとも一部がガス状留分(121)と水素化処理液(108)とに分離され、前記水素化処理液が≧95wt%の炭化水素と>1wppmの窒素とを含む分離段階(107)に付され;
前記水素化処理液(108)の少なくとも一部および水素富化ガス(120)が、前記水素化処理反応器の前記第2の触媒ゾーンにおける入口の温度よりも高い入口の温度で、および、水素化脱酸素および水素化脱窒素を引き起こす圧力で、前記水素化処理反応器(101)内の第1の触媒ゾーン(102)に導入され;
前記第1の触媒ゾーン(102)からの前記第1の水素化処理流出物の一部を含む生成物副流(112)が、前記第1の触媒ゾーンと前記第2の触媒ゾーンのあいだで取り出され、前記生成物副流(112)は液体成分およびガス状成分を含み、および前記副流の液体成分は、≧99wt%の炭化水素、および、窒素元素として測定されて、≦1wppmの窒素、好ましくは≦0.4wppmの窒素を含み;
任意には、少なくとも1つの触媒ゾーンを含む異性化反応器(103)内で前記副流を異性化することを含み、ここで前記生成物副流(112)と窒素元素として測定されて≦1ppm(mol/mol)の窒素を含む水素富化ガス(120)とが、異性化流出物(116)を生成するための少なくとも水素異性化を引き起こす入口の温度および圧力で触媒ゾーンに導入され;
前記異性化反応器からの異性化流出物が、分離段階(117)に付され、ここで、異性化流出物(116)はガス状留分(118)および異性化液(119)に分離され、ここで前記異性化液は、≧30wt%の分岐の炭化水素、および/または、第2の水素化処理液と比較して≧30wt%の分岐の炭化水素の増加を含み;
ここで、第1の触媒ゾーン(102)からの第1の水素化処理流出物の一部が水素化処理入り口流を加熱する
ことを含むプロセス。
【請求項2】
前記副流は、ストリッピング段階(114)に付され、ここで、前記副流(112)は、ストリッピングされた副流(115)が、窒素元素として測定されて≦0.4wppmの窒素、例えば≦0.3wppmの窒素を有するように、および、前記副流(116)と比較して低い窒素量を有するように、ストリッピングガス(H2)を用いてストリッピングされ;
前記ストリッピングされた副流(115)を、少なくとも1つの触媒ゾーンを含む第1の異性化反応器(103)において異性化する工程であって、ここで、前記ストリッピングされた副流(115)および窒素元素として測定されて≦1ppm(mol/mol)の窒素を有する水素富化ガス(120)が、第1の異性化流出物(116)を生成するために、少なくとも水素化脱窒素を引き起こす温度および圧力で触媒ゾーンに導入され;
前記第1の異性化反応器(103)からの異性化流出物が、分離段階(117)に供され、ここで、異性化流出物は、ガス状留分および異性化液体に分離され、ここで前記第1の異性化液体は、≧30wt%の分岐の炭化水素を含む
請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
前記異性化液が、-40℃以下、例えば-47℃以下の凝固点を有する少なくとも航空燃料に分離される請求項1または2記載のプロセス。
【請求項4】
冷却が、前記第2の水素化処理液(106)の前記分離段階のあいだに、前記第2の水素化処理液(108)が前記第1の水素化処理反応器の第1の触媒ゾーンの入口の温度よりも低い温度を有する程度に適用される請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
炭化水素希釈剤および新鮮な酸素化炭化水素フィードストックが、前記水素化処理反応器(102)の前記第1の触媒ゾーンに導入されない請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第2の触媒ゾーン(105)における水素化脱酸素および水素化脱窒素の程度が、前記第1の触媒ゾーン(102)において、反応器入口と反応器出口との間の温度上昇が10℃を超えないような様式で制御される請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記水素化処理反応器(101)内の前記第2の触媒ゾーン(105)が、前記水素化処理反応器(101)内の前記第1の触媒ゾーン(102)よりも低い水素化脱酸素活性を有する請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第1の触媒ゾーン(102)内で使用される水素富化ガス(120)が、窒素元素として測定されて、≦5wppmの窒素不純物を含む請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第2の触媒ゾーン(105)の入口の温度および圧力が、200~400℃および10~150bar、例えば250~380℃および20~120bar、例えば280~360℃および30~100barである請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記水素化処理反応器の第2の触媒ゾーンが、例えば、Pd、Pt、Ni、Co、Mo、Ru、Rh、Wまたはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される触媒などの、担体に担持された水素化金属から選択される1つまたは複数の触媒を含み、好ましくは、前記触媒ゾーンは、例えばアルミナ担体などの担体に担持されたCoMo、NiMo、NiW、CoNiMoから選択される1つまたは複数の触媒を含む請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記水素化処理反応器(101)が、0.5~3h-1の範囲のWHSVで、および、350~900 Nl H2/lフィードのH2フローで操作される請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第1の水素化処理反応器(102)の入口の温度および圧力が、250~450℃および10~150bar、例えば300~430℃および20~120bar、例えば330~410℃および30~100barである請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記水素化処理反応器の第1の触媒ゾーンが、例えば、Pd、Pt、Ni、Co、Mo、Ru、Rh、Wまたはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される触媒などの、担体に担持された水素化金属から選択される1つまたは複数の触媒を含み、好ましくは、前記触媒ゾーンが、例えばアルミナ担体などの担体に担持されたCoMo、NiMo、NiW、CoNiMoから選択される1つまたは複数の触媒を含む請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記異性化反応器(103)の入口の温度および圧力が、280~370℃および0~50barである請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記異性化反応器の前記触媒ゾーンが、担体に担持されたVIII族金属を含む1つまたは複数の触媒を含み、ここで担体は、シリカ、アルミナ、クレー、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニアから選択され、これらは単独でまたは混合物として使用され得、好ましくは、シリカおよび/またはアルミナである請求項1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記1つまたは複数の触媒が、例えばゼオライトなどのモレキュラーシーブをさらに含む請求項15記載のプロセス。
【請求項17】
前記異性化反応器(103)が、0.5~1h-1の範囲のWHSVで、および、300~500 Nl H2/lフィードのH2フローで操作される請求項1~16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記異性化液が、1より大きい、例えば5~30または15~30であるn-パラフィンに対するイソパラフィンの比を有する請求項1~17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記酸素化炭化水素フィードストックが、窒素元素として測定されて、300wppmまたはそれ以上、好ましくは500wppmまたはそれ以上の窒素不純物を含む請求項1~18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記水素化処理入り口流が、100~500wppmの窒素不純物を含む請求項1~19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記第2の触媒ゾーンからの前記第2の水素化処理流出物(106)が100~500wppmまたはそれ以上の窒素不純物を含む請求項1~20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記第1の触媒ゾーンと前記第2の触媒ゾーンのあいだで取り出される前記第1の触媒ゾーン(102)からの前記第1の水素化処理流出物の一部を含む生成物副流(112)が、液体成分およびガス状成分を含み、および前記副流の前記液体成分は、≧99wt%の炭化水素、および、窒素元素として測定されて、≦0.3wppmの窒素を含む請求項1~21のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素不純物を有する酸素化炭化水素フィードストックから炭化水素を製造するためのプロセスに関し、および特には、そのようなプロセスにおける水素の効果的な利用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば原油などの石油、および例えば植物オイルまたは動物性脂肪などの再生可能なオイルを、例えばガソリン、航空燃料およびディーゼルなどの輸送用燃料などの高価値な生成物へと変換することは、水素を消費する水素化処理工程を含む。
【0003】
重質原油、ならびに、例えば廃棄動物性脂肪などの低質な植物オイルおよび動物性脂肪の精製は、水素化処理プロセスにおける水素需要を増加させる。このため、オイルの水素化処理のための水素を生成すること、回収することおよび購入することは、製油所の操業コストに大きな影響を与える。
【0004】
石油および再生可能なオイルの水素化処理は、理論的な消費量に比べ過剰な水素を用いて行われる。水素化処理工程後に残った水素は、精製され、および水素化処理工程において消費された水素を補うための新鮮な水素、いわゆる補給水素(make-up hydrogen)と共にリサイクルされ得る。
【0005】
水素化処理のあいだ、多くの反応がフィードストックの組成に依存して様々な程度で起こる。水素化処理反応としては、二重結合の水素化、水素化脱酸素(HDO)、水素化脱硫(HDS)、水素化脱窒素(HDN)、水素化脱芳香族化(HDAr)、水素化分解(HC)および水素異性化などが含まれる。
【0006】
水素異性化は、典型的には、例えばSAPO-11などのモレキュラーシーブを担持している白金またはパラジウム触媒などの金属脱水素化官能基および酸性官能基の両方を有する二官能性触媒上で行われる。触媒の異性化選択性が重要であり、すなわち、水素化処理のあいだにフィードの平均分子量を低下させることが望まれない場合には、典型的には水素化異性化のあいだにもある程度起こる水素化分解が抑制される。これは、金属脱水素化官能基および酸性官能基のあいだのバランスを含み、これは、このバランスをシフトさせ得る要素に感受性である。アミン類は強酸性部位を中和し、触媒の低い酸性度および活性を導くと推測される。硫黄は、貴金属触媒の金属脱水素官能基を害することが知られている。
【0007】
フィードの一般的な不純物のひとつに窒素があり、これは化石起源および再生可能起源のオイルならびに動物性脂肪の良く知られた成分である。原油中、940w-ppmという平均の窒素不純物含有量、および7500w-ppmまでの高い含有量が報告されている(非特許文献1)。また、動物性廃棄物脂肪が1000ppmまたはそれ以上の窒素を含み得ることも珍しくない。例えば窒素不純物などのフィードストック中の望ましくない不純物を処理する典型的な方法は、水素化処理に先立ってフィードストックを精製することである。水溶性の窒素化合物を脱ガムで除去することは典型的である。しかし、動物性脂肪の場合、窒素化合物の大部分は油溶性であり、および水溶性窒素化合物よりもはるかに除去が困難である。
【0008】
特許文献1(IFP Energies Nouvelles)は、モリブデン触媒を使用して2つの触媒ゾーンにおいて再生可能資源からのフィードを水素化処理する方法を記載しており、ここで水素化処理反応の発熱性により入口においてよりも出口においてより高い温度を有する床からのガス状および液体状の流出物が、リサイクルとして直接的に、触媒ゾーンへの新鮮なフィードを加熱するために使用されている。特許文献1は、それぞれ15および23ppmの少量の窒素不純物を有する良質のパーム油および大豆油を用いる発明を例示しおり、および、再生可能な供給源からのフィードが、一般的に、例えば1~100ppm、およびさらには1wt%までの窒素不純物などの様々な不純物を含むことに言及している。
【0009】
特許文献1は、実施例において窒素量を元の量の約2%に減らし、1~100ppmである一般的な範囲から外れた窒素含有量を有する不純物フィードを水素化処理しない。比較例1は、特許文献1に記載されたプロセス条件で、約1wt%の窒素含有量を有する動物性脂肪を水素化処理および異性化しており、1~100ppmである一般的な範囲から外れた窒素含有量を有する不純物フィードを水素化処理することが可能であることを示している。しかしながら、水素化脱酸素段階後の窒素含有量は約2~5ppmであり、および、異性化後、航空燃料のための要件と比較して-10℃という高い流動点を有する航空燃料カットの収率はわずか5%であった。
【0010】
従って、1~100ppmである一般的な範囲から外れている窒素不純物を有する酸素化炭化水素を効果的に水素化処理し、および、水素化処理生成物中の低い窒素量を確実なものとすることができるさらなる水素化処理プロセスに対する必要性がある。さらに、1~100ppmである一般的な範囲から外れている窒素不純物を有する酸素化炭化水素から、良好なコールドフロー特性を有する高品質な航空燃料カットを製造することができるプロセスに対する必要性が存在する。
【0011】
可能な限り多くの窒素を除去するために、水素化前にフィードをさらに精製するという可能性もある。しかし、水溶性の窒素を除去するための精製方法は簡単に実施できるが、動物性脂肪中の窒素含有量の多くは油溶性であり、および除去することは非常に困難である。
【0012】
加えて、過剰に添加され、および通常リサイクルされる水素のより効率的な使用に対する需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0094149号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Manrique et al. (1997) Basic Nitrogen Compounds in Crude Oils:Effect on Mineral Dissolution During Acid Stimulation Processes, SPE-37224-MS; https://www.onepetro.org/conference-paper/SPE-37224-MS
【発明の概要】
【0015】
本発明は、上述した先行技術に鑑みてなされたものであり、および、本発明の目的は、窒素不純物を含む酸素化炭化水素フィードから得られる水素化処理生成物の品質を改善し得るプロセスであって、一方では同時に水素の使用をより効率的なものとするプロセスを提供することである。特には、改善された品質は、生成物中の低量の窒素不純物、および、異性化された生成物の改良された低温流動性特性を含む。
【0016】
本課題を解決するために、本発明は、窒素元素として測定されて、10wppmまたはそれ以上の窒素不純物を有する、酸素化炭化水素フィードストックから炭化水素を調製するプロセスを提供し、ここで、該プロセスは、第2の触媒ゾーン/水素化処理ゾーン(105)の上流に配置された第1の触媒ゾーン/ポリシングゾーン(102)を含む反応器(101)を含む。酸素化炭化水素フィードストックは水素化処理ゾーンに供給され、ここで第1の水素化処理ゾーンからの流出物は精製され、およびここで、第1の水素化処理ゾーンからの精製された流出物が、第2の水素化処理ゾーン(102)においてより高い温度で水素化処理され、および、第2の水素化処理ゾーン(102)へのフィードは、酸素化されたフィードストックと混合されず、すなわち新鮮なフィードと混合されない。
【0017】
具体的には、本発明は、窒素元素として測定されて10wppmまたはそれ以上の窒素不純物を有する、酸素化炭化水素フィードストックから炭化水素を調製するためのプロセスであって、
第2の触媒ゾーン(105)の上方に配置された第1の触媒ゾーン(102)を備える水素化処理反応器(101)であって、ここで、酸素化炭化水素フィードストック(104)、水素富化ガス(120)、および任意には生成物リサイクル希釈剤(108、126)を含む水素化処理入り口流が、第1の触媒ゾーン(102)と第2の触媒ゾーン(105)とのあいだの入口で第2の触媒ゾーン(105)へ導入され、それは第1の触媒ゾーンからの第1の水素化処理流出物の一部と混合され、第2の触媒ゾーンは、水素化処理反応器の第2の触媒ゾーン(105)からの第2の水素化処理流出物(106)が主に炭化水素を含む程度まで少なくとも水素脱酸素および水素脱窒を引き起こす温度および圧力で操作され、およびここで、酸素化炭化水素フィードストックが≧95%の炭化水素に変換される水素化処理反応器(101)を含み、
水素化処理反応器の第2の触媒ゾーンからの第2の水素化処理流出物が、第2の水素化処理流出物(106)の少なくとも一部がガス状留分(121)と水素化処理液(108)とに分離され、該水素化処理液が≧95wt%の炭化水素と>1wppmの窒素とを含む分離段階(107)に付され、
水素化処理液(108)の少なくとも一部および水素富化ガス(120)が、水素化処理反応器の第2の触媒ゾーンにおける入口の温度よりも高い入口の温度で、および、水素化脱酸素および水素化脱窒素を引き起こす圧力で、水素化処理反応器(101)内の第1の触媒ゾーン(102)に導入され、
第1の触媒ゾーン(102)からの第1の水素化処理さ流出物の一部を含む生成物副流(112)が、第1の触媒ゾーンと第2の触媒ゾーンのあいだで取り出され、生成物副流(112)は液体成分およびガス状成分を含み、および副流の液体成分は、≧99wt%の炭化水素、および、窒素元素として測定されて、≦1wppmの窒素、好ましくは≦0.4wppmの窒素、例えば≦0.3wppmの窒素(ASTM D4629検出)などを含む
プロセスに関する。
【0018】
すなわち、本発明の発明者らは、本発明の第1の態様において、アンモニアおよび他の低沸点アミンが、気相および液相への分離によって第2の触媒ゾーン(105)(水素化処理ゾーン)からの流出物から除去され、その後、そこからの液相を第1の触媒ゾーン(102)(ポリシングゾーン)中で水素化処理し、ここで、この液相が他の酸素化炭化水素フィードと組み合わされず、また、第1の水素化処理液より高い窒素含有量を有する他のフィードと組み合わされない場合、窒素不純物を含む酸素化炭化水素が、1つの反応器内の2つの触媒ゾーンにおいて効率的に水素化処理され得ることを見いだした。第1の水素化処理流出物の少なくとも一部は、副流として取り出され、および、ガス状ストリームおよび第2の水素化処理液流に分離され、ここで分離は、ストリッピング工程であるかまたはストリッピング工程(114)の前であってもよく、ここで、第1の水素化処理液流は、ストリッピングされた副流(115)の窒素含有量を0.3wppmまたはそれ以下に低下させるために、ストリッピングガスを用いてストリッピングされてもよい。
【0019】
具体的には、本発明者らは、水素化処理のあいだにフィードの窒素不純物から生成された水素富化流出物ガス中に存在するアンモニアが、このようなアンモニア不純物を含む水素富化ガスを、アンモニア不純物を事前に除去せずにポリシング工程に使用した場合、より進んだ水素化脱窒素/水素化脱窒素条件のあいだに生成物中に再取込みされ得ることを発見した。
【0020】
水素化処理ゾーン(第2の触媒ゾーン)の上流のポリシングゾーン(第1の触媒ゾーン)を使用することにより、水素化処理ゾーンの下流にポリシングゾーンを有する反応器と比較して、新鮮な水素がより良好に利用され得る。これは、第1の触媒ゾーン(102)(ポリシングゾーン)へのフィードが、第2の触媒ゾーン(105)(水素化処理ゾーン)への酸素化炭化水素フィードと比較して、既に低量の窒素を含んでいるからであり、ポリシングゾーンに添加される新鮮な水素は、第2の触媒ゾーンからの流出物中に存在する窒素不純物を含まず、および同時に、第1の触媒ゾーン(102)(ポリシングゾーン)からの流出物に存在する過剰な水素は、第2の触媒ゾーン(105)(水素化処理ゾーン)中での使用に適した品質のままである。
【0021】
本発明の反応器セットアップおよびプロセスは、より効率的な水素の使用を引き起こすと同時に、生成物副流(112)の低量の窒素不純物を確実なものとする。
【0022】
生成物副流(112)は、それ自体の生成物として使用されるか、またはそれは、少なくとも1つの触媒ゾーンを含む第1の異性化反応器(103)において異性化され得、ここで、生成物副流(112)、および窒素元素として測定されて、≦1ppm(mol/mol)窒素を有する水素富化ガス(120)は、異性化流出物(116)を生成するための少なくとも水素異性化を引き起こす入口の温度および圧力で触媒ゾーンに導入され、異性化反応器からの異性化流出物は、分離段階(117)に付され、ここで第1の異性化流出物(116)は、ガス状留分(118)および異性化液(119)に分離され、ここで第1の異性化液は、≧30wt%の分岐の炭化水素、および/または、生成物副流(112)と比較して≧30wt%の分岐の炭化水素の増加を含む。
【0023】
例えば、副流は、ストリッピング段階(114)に付され、ここで、副流(116)は、ストリッピングされた副流(115)が、窒素元素として測定されて≦0.4wppmの窒素、例えば≦0.3wppmの窒素(ASTM D4629検出)を有するように、および、副流(116)と比較して低い窒素量を有するように、ストリッピングガス(H2)を用いてストリッピングされる;このストリッピングされた副流(115)を、少なくとも1つの触媒ゾーンを含む第1の異性化反応器(103)において異性化する工程に付され得、ここで、ストリッピングされた副流(115)および窒素元素として測定されて≦1ppm(mol/mol)の窒素を有する水素富化ガス(120)が、第1の異性化流出物(116)を生成するために、少なくとも水素化脱窒素を引き起こす温度および圧力で触媒ゾーンに導入され;
ここで、第1の異性化反応器(103)からの異性化流出物は、分離段階(117)に供され、ここで、異性化流出物は、ガス状留分および異性化液体(に分離され、第1の異性化液体は、≧30wt%の分岐の炭化水素、および/または、ストリッピングされ副流(115)と比較して≧30wt%増加した分岐の炭化水素を含む。
【0024】
異性化液体は、-40℃以下、例えば-47℃以下などの凝固点を有する少なくとも航空燃料に分離され得る。
【0025】
冷却は、第2の水素化処理液(106)の分離段階のあいだに、第2の水素化処理液(108)が第1の水素化処理反応器(101)の第1の触媒ゾーン(102)の入口の温度よりも低い温度を有する程度に適用され得る。
【0026】
炭化水素希釈剤と同様に新鮮な酸素化炭化水素フィードストックも、水素化処理反応器(102)の第1の触媒ゾーンに導入されることを意図していない。
【0027】
第2の触媒ゾーン(105)における水素化脱酸素および水素化脱窒素の程度は、第1の触媒ゾーン(102)において、第1の触媒ゾーンの入口と第1の触媒ゾーンの出口との間の温度上昇が10℃を超えないような様式で制御され得る。
【0028】
水素化処理反応器(101)内の第2の触媒ゾーン(105)は、水素化処理反応器(101)内の第1の触媒ゾーン(102)よりも低い水素化脱酸素活性を有し得る。
【0029】
第1の触媒ゾーン(102)内で使用される水素富化ガス(120)は、窒素元素として測定されて、≦5wppmの窒素不純物を含み得る。
【0030】
第2の触媒ゾーン(105)の入口の温度および圧力は、200~400℃および10~150bar、例えば250~380℃および20~120bar、例えば280~360℃および30~100barなどであり得る。
【0031】
水素化処理反応器の第2の触媒ゾーンは、例えば、Pd、Pt、Ni、Co、Mo、Ru、Rh、Wまたはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される触媒などの、担体に担持された水素化金属から選択される1つまたは複数の触媒を含み、好ましくは、第2の触媒ゾーンは、例えばアルミナ担体などの担体に担持されたCoMo、NiMo、NiW、CoNiMoから選択される1つまたは複数の触媒を含み得る。
【0032】
水素化処理反応器(101)は、0.5~3h-1の範囲のWHSVで、および、350~900 Nl H2/lフィードのH2フローで操作され得る。
【0033】
第1の触媒ゾーン(102)の入口の温度および圧力は、250~450℃および10~150bar、例えば300~430℃および20~120bar、例えば330~410℃および30~100barであり得る。
【0034】
水素化処理反応器の第1の触媒ゾーンは、1つまたは複数の触媒を含み得、これらは例えば、Pd、Pt、Ni、Co、Mo、Ru、Rh、Wまたはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される触媒などの、担体に担持された水素化金属化合物から選択され得、好ましくは、第1の触媒ゾーンは、例えばアルミナ担体などの担体に担持されたCoMo、NiMo、NiW、CoNiMoから選択される1つまたは複数の触媒を含む。
【0035】
異性化反応器(103)の入口の温度および圧力は、280~370℃および0~50barであり得る。
【0036】
異性化反応器の触媒ゾーンは、1つまたは複数の触媒を含み、これは担体に担持されたVIII族金属を含み得、ここで担体は、シリカ、アルミナ、クレー、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニアから選択され、これらは単独でまたは混合物として使用され得、好ましくは、シリカおよび/またはアルミナである。
【0037】
異性化反応器の触媒ゾーンは、例えばゼオライトなどのモレキュラーシーブをさらに含んでいてもよい。
【0038】
異性化反応器(103)は、0.5~1h-1の範囲のWHSVで、および、300~500 Nl H2/lフィードのH2フローで操作され得る。
【0039】
第1の異性化液は、1より大きいn-パラフィンに対するi-パラフィンの比、例えば5~30または15~30などの比を有し得る。
【0040】
第1の触媒ゾーン(102)からの第1の水素化処理流出物の一部は、例えば混合などによって、水素化処理入り口流を加熱するために使用され得る。
【0041】
酸素化炭化水素フィードストックは、窒素元素として測定されて、300wppmまたはそれ以上、好ましくは500wppmまたはそれ以上の窒素不純を有し得る。
【0042】
水素化処理入り口流は、100~500wppmの窒素不純物を含み得る。
【0043】
第2の触媒ゾーンからの第2の水素化処理流出物(106)は、100~500wppm以上の窒素不純物を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、第2の触媒ゾーン(105)(水素化処理床)の上方に配置された第1の触媒ゾーン(102)(ポリシング床)を含む水素化処理反応器(101)と、第1の異性化反応器(103)とを備えるプロセススキームを示す図である。
図2図2は、第1の水素化処理反応器(201)および第1の異性化反応器(203)を備える本発明によるものではない比較のプロセススキームを示す図である。
図3図3は、第1の水素化処理反応器(301)、第2の水素化処理反応器(302)および第1の異性化反応器(303)を備える本発明によるものではない比較のプロセススキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の実施形態を説明する際に、明確化のために特定の用語が使用されるであろう。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図しておらず、および、各特定の用語は、同様の目的を達成するために同様の様式で作動するすべての技術的等価物を含むと理解される。
【0046】
本発明は、窒素元素として測定されて10wppmまたはそれ以上の窒素不純物を有する、酸素化炭化水素フィードストックから炭化水素を調製するためのプロセスであって、
第2の触媒ゾーン(105)の上方に配置された第1の触媒ゾーン(102)を備える水素化処理反応器(101)であって、ここで、酸素化炭化水素フィードストック(104)、水素富化ガス(120)、および任意には生成物リサイクル希釈剤(108、126)を含む水素化処理入り口流が、第1の触媒ゾーン(102)と第2の触媒ゾーン(105)とのあいだの入口で第2の触媒ゾーン(105)へ導入され、それは第1の触媒ゾーンからの第1の水素化処理流出物の一部と混合され、第2の触媒ゾーンは、水素化処理反応器の第2の触媒ゾーン(105)からの第2の水素化処理流出物(106)が主に炭化水素を含む程度まで少なくとも水素脱酸素および水素脱窒を引き起こす温度および圧力で操作され、およびここで、酸素化炭化水素フィードストックが≧95%の炭化水素に変換される水素化処理反応器(101)を含み、
水素化処理反応器の第2の触媒ゾーンからの第2の水素化処理流出物が、第2の水素化処理流出物(106)の少なくとも一部がガス状留分(121)と水素化処理液(108)とに分離され、該水素化処理液が≧95wt%の炭化水素と>1wppmの窒素とを含む分離段階(107)に付され、
水素化処理液(108)の少なくとも一部および水素富化ガス(120)が、水素化処理反応器の第2の触媒ゾーンにおける入口の温度よりも高い入口の温度で、および、水素化脱酸素および水素化脱窒素を引き起こす圧力で、水素化処理反応器(101)内の第1の触媒ゾーン(102)に導入され、
第1の触媒ゾーン(102)からの第1の水素化処理さ流出物の一部を含む生成物副流(112)が、第1の触媒ゾーンと第2の触媒ゾーンのあいだで取り出され、生成物副流(112)は液体成分およびガス状成分を含み、および副流の液体成分は、≧99wt%の炭化水素、および、窒素元素として測定されて、≦1wppmの窒素、好ましくは≦0.4wppmの窒素、例えば≦0.3wppmの窒素(ASTM D4629検出)などを含む
プロセスに関する。
【0047】
すなわち、本発明の発明者らは、本発明の第1の態様において、アンモニアおよび他の低沸点アミンが、気相および液相への分離によって第2の触媒ゾーン(105)(水素化処理ゾーン)からの流出物から除去され、その後、そこからの液相を第1の触媒ゾーン(102)(ポリシングゾーン)中で水素化処理し、ここで、この液相が他の酸素化炭化水素フィードと組み合わされず、また、第1の水素化処理液より高い窒素含有量を有する他のフィードと組み合わされない場合、窒素不純物を含む酸素化炭化水素が、1つの反応器内の2つの触媒ゾーンにおいて効率的に水素化処理され得ることを見いだした。第1の水素化処理流出物の少なくとも一部は、副流として取り出され、および、ガス状ストリームおよび第2の水素化処理液流に分離され、ここで分離は、ストリッピング工程であるかまたはストリッピング工程(114)の前であってもよく、ここで、第1の水素化処理液流は、ストリッピングされた副流(115)の窒素含有量を。0.4wppmまたはそれ以下、例えば0.3wppmまたはそれ以下の窒素(ASTM D4629検出)に低下させるために、ストリッピングガスを用いてストリッピングされてもよい。
【0048】
具体的には、本発明者らは、水素化処理のあいだにフィードの窒素不純物から形成された水素富化流出物ガス中に存在するガス状アンモニアは、このようなアンモニア不純物を含む水素富化ガスを、アンモニア不純物を事前に除去せずにポリシング工程に使用した場合、より進んだ水素化脱酸素/水素化脱窒条件のあいだに生成物中に再取込みされ得ることを発見した。
【0049】
水素化処理ゾーン(第2の触媒ゾーン)の上流にポリシングゾーン(第1の触媒ゾーン)を使用することにより、水素化処理ゾーンの下流にポリシングゾーンを有する反応器と比較して、新鮮な水素がより良好に利用され得る。これは、第1の触媒ゾーン(102)(ポリシングゾーン)へのフィードが、第2の触媒ゾーン(105)(水素化処理ゾーン)への酸素化炭化水素フィードと比較して、既に低量の窒素を含んでいるからであり、ポリシングゾーンに添加される新鮮な水素は、第2の触媒ゾーンからの流出物中に存在する窒素不純物を含まず、および同時に、第1の触媒ゾーン(102)(ポリシングゾーン)からの流出物に存在する過剰な水素は、第2の触媒ゾーン(105)(水素化処理ゾーン)中での使用に適した品質のままである。
【0050】
本発明の反応器セットアップおよびプロセスは、より効率的な水素の使用を引き起こすと同時に、生成物副流(112)の低量の窒素不純物を確実なものとする。
【0051】
本プロセスは、酸素化炭化水素フィードストックから炭化水素を調製するためのものである。酸素化炭化水素フィードストックの例としては、植物オイルおよび動物性脂肪中に大量に存在する脂肪酸およびトリグリセリドが挙げられる。例えば植物オイルおよび動物性脂肪などの再生可能な起源の酸素化炭化水素フィードストックは、このプロセスによく適している。これらの植物オイルおよび動物性脂肪の大部分は、遊離脂肪酸として、または遊離脂肪酸のエステルとして、25wt%または40wt%またはそれ以上から構成される。遊離脂肪酸のエステルの例は、脂肪酸グリセリドエステル(モノ-、ジ-および/またはトリ-グリセリド)または例えば脂肪酸メチルエステル(FAME)または脂肪酸エチルエステル(FAEE)などである。従って、再生可能な起源の酸素化炭化水素フィードストックは、40wt%またはそれ以上の脂肪酸または脂肪酸エステルを含み得る。
【0052】
例えばフィードストックおよび生成物などの炭素含有組成物の再生可能な性質は、フィードストックの14C同位体含有量を1950年の大気中の14C同位体含有量と比較することによって決定され得る。14C同位体含有量は、フィードストックまたは生成物の再生可能な起源の証明として使用され得る。再生可能な物質の炭素原子は、化石起源の炭素原子と比較して、不安定な放射性炭素(14C)原子を多く含んでいる。したがって、12Cおよび14Cの同位体の比を分析することにより、生物的供給源由来の炭素化合物と化石供給源由来の炭素化合物とを区別することが可能である。したがって、該同位体の特定の比率が、再生可能な炭素化合物を特定し、非再生可能なすなわち化石炭素化合物からそれらを区別するために使用され得る。同位体比は、化学反応の過程で変化しない。生物学的供給源由来の炭素の含有量を分析するための適切な方法の例として、ASTM D6866 (2020)がある。燃料中の再生可能な含有量を決定するためにいかにASTM D6866を適用するかという例は、Dijsらの論文、Radiocarbon、48(3)、2006、pp 315-323に示されている。本発明の目的のために、例えばフィードストックまたは生成物などの炭素含有材料が、ASTM D6866を使用して測定されて、90%またはそれ以上の現在の標準の炭素、例えば100%などの現在の標準の炭素などを含む場合、再生可能起源であるとみなされる。
【0053】
多くの植物オイルおよび動物性脂肪は、典型的な量の窒素不純物、例えば1~100ppmの間など量の窒素不純物を含み得、これらもまた、本発明のプロセスを使用して水素化処理され得る。しかしながら、本発明のプロセスは、水素化処理プロセスが、高い窒素不純物を含む、例えば10wppmまたはそれ以上の窒素不純物を含む酸素化炭化水素フィードストックを変換できるという観点から有利である。例えば300wppm~2500wppm、またはそれ以上、例えば500wppmまたはそれ以上、例えば800wppmまたはそれ以上など。酸素化炭化水素フィードストックは、例えば、1500wppmまで、例えば2500wppmまでの窒素不純物を有し得る。高い窒素不純度をもつ酸素化炭化水素フィードストックの例は、いくつかの動物性脂肪であり、これらは、約1000wppm、例えば600~1400wppmの範囲内の窒素不純物を含み得る。酸素化炭化水素フィードストックは、それが好ましい場合、種々の供給源からの酸素化炭化水素の混合物で構成されていてもよい。例えば、23ppmの窒素不純物を含むパーム油50%が、512ppmの窒素不純物を含む酸素化炭化水素フィードストックを製造するために、1000ppmの窒素不純物を含む動物性脂肪50%と混合されてもよい。したがって、酸素化炭化水素フィードストックは、植物オイル、動物性脂肪、またはそれらの混合物から選択され得る。
【0054】
窒素不純物は、窒素元素として測定される。このような窒素元素の測定方法としては、ASTM D4629があり、0.3~100wppmの範囲で使用され、および、別の方法としてはASTM D572があり、これは100wppmを超える範囲でより適切であり得る。本発明においては、窒素不純物を窒素元素として測定するために、両方の方法が必要に応じて使用され得る。
【0055】
第2の触媒ゾーン(105)の上方に配置された第1の触媒ゾーン(102)を含む水素化処理反応器(101)がプロセスに使用され、該プロセスは、第1の触媒ゾーン(102)と第2の触媒ゾーン(105)との間の入口で、第2の触媒ゾーン(105)に水素化処理入り口流を流すことを含む。水素化処理入り口流は、酸素化炭化水素フィードストック(104)を含み、これは、上述のように選択され得、例えば、10wppmまたはそれ以上の窒素、例えば300wppmまたはそれ以上の窒素、例えば500~1500wppmの窒素を含む植物油、動物性脂肪またはそれらの混合物である。
【0056】
酸素化炭化水素フィードストックは、第1の触媒ゾーンからの第1の水素化処理流出物の一部、および任意には生成物リサイクル希釈剤(108、126)と混合される。炭化水素希釈剤として第1の触媒ゾーンからの第1の水素化処理流出物の一部を使用することは、それが溶存水素と共に炭化水素を含むという観点から有利であり、その結果、第2の触媒ゾーンにおいてより効果的な水素化脱酸素(HDO)および水素化脱窒素(HDN)がもたらされる。炭化水素希釈剤として生成物リサイクル(108、126)を使用することは、炭化水素希釈剤として第1の水素化処理流出物を使用することと比較して、より大量の第1の水素化処理流出物生成物が生成物副流(112)として引き抜かれ得るという点で有利である。
【0057】
炭化水素希釈剤は、当該技術分野でよく知られており、水素化処理反応(例えば、HDOおよびHDN反応)の発熱特性を制御するために使用される。さらに、炭化水素希釈剤は溶存水素を含み得、これは効率的な水素化処理に必要とされるものであり、水素化処理反応を進行させるためには、触媒は酸素化炭化水素フィードストックに接触されていると同時に水素にも接触されていなければならないからである。
【0058】
炭化水素希釈剤として第1の触媒ゾーン(図1、I)からの第1の水素化処理流出物の一部を使用することは、そればすでに溶存水素を含んであろうこと、および第2の触媒ゾーン(105)の入口を加熱するために使用され得る高い温度を有しているため有利である。
【0059】
炭化水素希釈剤として、第1の触媒ゾーン(図1、I)からの第1の水素化処理流出物および第2の触媒ゾーン(108、126)からの生成物リサイクルの両方の混合物、例えば少なくとも両方の10%などを使用することは、溶存水素を含む留分がより早い段階からの生成物リサイクルと混合され、これにより、生成物副流(112)の取出し量を増加させ、これによって炭化水素希釈剤として第1の水素化分解流出物(図1、I)のみを使用する場合と比較して、反応器の処理量を増加させるという観点から優位である。
【0060】
第1の触媒ゾーン(102)からの第1の水素化処理流出物の一部はまた、例えば混合などによって、水素化処理入り口流を加熱するためにも使用され得る。
【0061】
上述されるように、炭化水素希釈剤は、生成物リサイクル(108、126)または化石起源もしくは再生可能起源の炭化水素であり得る。それは通常、生成物リサイクルおよび/または第1の触媒ゾーンからの第1の水素化流出物であろう。炭化水素希釈剤は、典型的には、1:1~4:1(総計の炭化水素希釈剤:総計の酸素化フィードストック)の範囲の量で添加されるであろう。上述のように、炭化水素希釈剤は、化石起源または再生可能起源であり得る。化石起源の炭化水素フィードのいくつかは、多量の窒素不純物を含み得る。化石起源のこれらの炭化水素フィードはまた、単独でまたは他の炭化水素希釈剤と混合されて、例えば生成物リサイクルおよび/または第1の触媒ゾーンからの第1の水素化流出物などの炭化水素希釈剤の一部であり得る。例えば、炭化水素希釈剤は、生成物リサイクルおよび化石炭化水素の混合物であり得る。
【0062】
生成物リサイクルおよび第1の触媒ゾーンからの第1の水素化流出物は、それらが典型的には、液相に溶存している水素に依存する水素化処理反応に関連する溶存水素を含むであろうことから、使用に有利である。
【0063】
水素化処理入り口流は、100wppmまたはそれ以上、例えば100~500wppmなどの窒素不純物を有し、および/または、第2の触媒ゾーンからの第2の水素化処理流出物(106)は、100wppmまたはそれ以上、例えば100~500wppmまたはそれ以上などの窒素不純物を有し得る。本発明のプロセスは、水素化処理プロセスが、水素化処理入り口流の総計の窒素不純物を低減するための過度の希釈を必要とせずに多くの窒素不純物を有する酸素化炭化水素フィードストックを変換できるという点で、有利である。これは、過度の希釈が水素化処理プロセスの酸素化炭化水素フィードストックの処理される量を低下させるであろうことから有利である。代替的に、または追加で、窒素含有量はまた、100wppmまたはそれ以上、例えば100~500wppmまたはそれ以上なおの窒素不純物を有し得る第2の触媒ゾーンからの第2の水素化処理流出物(106)においても測定され得る。
【0064】
存在しうる窒素不純物の最大量に関して。不純物として存在するどのくらい多くの窒素不純物、またはどのくらい高い不純物量が現実的に除去され得るのかについては、制限があり得る。したがって、水素化処理入り口流および/または第2の触媒ゾーンからの第2の水素化処理流出物(106)は、500wppm以下までの窒素不純物を有し得、すなわち水素化処理入り口流および/または第1の水素化処理反応器からの第2の水素化処理流出物(106)は、100~500wppmの間の窒素不純物を有し得る。
【0065】
水素化処理入り口流は、第2の触媒ゾーン(105)の上方に備えられた第1の触媒ゾーン(102)を備える第1の水素化処理反応器(101)に、水素富化ガス(120)と共に導入される。
【0066】
水素富化ガス(120)は、第1の水素化処理反応器(101)の第1および第2の触媒ゾーン(102、105)中で水素化脱酸素(HDO)および水素化脱窒素(HDN)反応を行うために必要である。水素富化ガスは、例えば、水素、水、アンモニア、および、アミンスクラビングおよび/またはメンブレン分離が続いて行われる他の軽質成分を含むガス状留分(123)への分離(122)などの、1つまたは複数の精製工程(122)によって精製された、プロセス(123、118)からの過剰水素などであり得る。第2の触媒ゾーン中で使用される水素富化ガスの純度は、好適には例えばアンモニアなどのいかなる反応性窒素も含まない、例えば窒素元素として測定されて、0.3wppm未満の窒素しか含まない第1の触媒ゾーン(102)に使用される水素富化ガス、異性化反応器(114)の前のストリッピングに使用される水素富化ガスまたは異性化反応器(103)に使用される水素富化ガスの純度ほど重要ではない。典型的には、第2の触媒ゾーンのために使用される水素富化ガスは、95mol%以上の純度を有することが許容されるが、95mol%より低い水素純度を有することもまた可能である。補給水素もまた、水素富化ガスを形成するために混合され得、または、水素富化ガスが、すべて補給ガスから構成されてもよい。
【0067】
水素化処理反応器(101)は、少なくとも2つの触媒ゾーン(102、105)を収容することができる容器である。本発明において、トリクルベッド反応器が好適である。トリクルベッド反応器は、水素化処理入り口流の下方への移動を含み、一方で、同流または向流様式で水素と接触される。トリクルベッド反応器の一例は、断熱トリクルベッド反応器である。
【0068】
水素化処理反応器(101)は、第2の触媒ゾーン(105)の上方に配置される第1の触媒ゾーン(102)を含んでいる。触媒ゾーンは、最も単純な形態では、触媒粒子の固定床であり得る。触媒ゾーンは単一の固定床を含んでいてもよく、また、同じまたは異なる触媒粒子を有する複数の固定床を含んでいてもよく、または、異なる活性および/または組成の触媒粒子の多数の層であってもよい。
【0069】
第1の触媒ゾーン(102)は、単一の固定床であってもよく、および/または、第2の触媒ゾーン(105)は、少なくとも3つの固定床を備え得る。
【0070】
水素化処理入り口流は、水素富化ガス(120)と共に、第1の触媒ゾーン(102)および第2の触媒ゾーン(105)のあいだの入口で第2の触媒ゾーン(105)に導入される。
【0071】
水素化処理入り口流は、水素富化ガス(120)と共に、水素化反応器の第2の触媒ゾーン(105)からの第2の水素化処理流出物(106)が主に炭化水素を含む程度まで少なくとも水素化脱酸素および水素化脱窒素を引き起こす入口の温度および圧力で、第2の触媒ゾーンに導入される。
【0072】
酸素が酸素化炭化水素から除去され、それによって副産物として水を生成する、および窒素不純物が酸素化炭化水素から除去され、それによって副産物としてアンモニアを生成し、それによって主に炭化水素を含む生成物を得る程度までHDOとHDNを引き起こすであろう、多くの種々の入口の温度および圧力の組み合わせが存在する。
【0073】
例えば、第2の触媒ゾーン(105)の入口の温度および圧力は、200~400℃および10~150bar、例えば250~380℃および20~120bar、例えば280~360℃および30~100barであり得る。
【0074】
第2の触媒ゾーンからの第2の水素化処理流出物(106)が主に炭化水素を含み、酸素化炭化水素フィードストックが≧95%の炭化水素、好適には≧98%の炭化水素に変換されており、酸素化炭化水素フィードストックの≦2%が存在する程度まで少なくとも水素化脱酸素および水素化脱窒素を引き起こす温度および圧力の種々の組み合わせを選択することは、当業者の通常の作業の事項である。
【0075】
当業者が温度および圧力の様々な組み合わせを選択できるのと同様に、当業者であればまた、第2の触媒ゾーン(105)の触媒ゾーンに適切な1つまたは複数の触媒を選択することも可能であろう。
【0076】
例えば、水素化処理反応器の第2の触媒ゾーンは、例えば、Pd、Pt、Ni、Co、Mo、Ru、Rh、Wまたはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される触媒などの、担体に担持された水素化金属から選択される1つまたは複数の触媒を含み得、好ましくは、第2の触媒ゾーンは、例えばアルミナ担体などの担体に担持されたCoMo、NiMo、NiW、CoNiMoから選択される1つまたは複数の触媒を含む。
【0077】
水素化処理反応器(101)は、0.5~3h-1の範囲のWHSVで、および、350~900 Nl H2/lフィードのH2フローで操作され得る。
【0078】
第2の触媒ゾーン(105)のためのより一般的な反応条件は、水素化処理反応器としてトリクルベッド反応器を備え得、第2の触媒ゾーンを含み、触媒ゾーンはモリブデンを含む担持された水素化触媒を含み、ここで、水素化処理は、200~400℃の温度で、10~150barのあいだの圧力で、水素の存在下行われ、ここでWHSVは0.5~3h-1の範囲であり、および、300~2100 Nl H2/lフィードのH2フローである。
【0079】
第2の触媒ゾーンは、第2の水素化処理流出物(106)を生成し、これは、過剰な水素、HDOから生成された水蒸気、酸素化炭化水素フィード中のカルボン酸の脱炭酸/脱カルボニル反応から生成されたCOおよびCO2、およびH2Sの形状であるガス状成分を含むであろう。最後に、HDN反応からNH3が生成されるであろう。例えば1~100ppmである典型的な量の窒素を含む通常のフィード、例えば23ppmの窒素を含み得るパーム油などの水素化処理のあいだよりも、酸素化炭化水素フィードストックが300wppmまたはそれ以上の窒素を含むプロセスにおいて、はるかに多くのアンモニア(NH3)が生成されるであろう。本発明者らは、驚くべきことに、水素化処理流出物が、添加されたメークアップ水素と共にさらなる水素化処理工程に付された場合に、水素化処理流出物中のアンモニアの増加された量が特に、窒素の再取込みを引き起こすことを発見した。つまり、発明者らは、追加の水素化処理工程からのさらなる水素化処理流出物が、水素ガスを用いたストリッピング後でも2~5ppmの窒素を含んでいたことを確認したのであって、すなわち、異性化触媒と接触させる前に窒素をできるだけ完全に除去したいという要望があったとしても、窒素量を2~5ppm未満にすることは、ストリッピング後でさえも単に不可能であった。これは、追加の水素化処理工程が、より進んだHDOおよびHDN水素化処理を行い、それによって、第2の水素化処理流出物からより多くの酸素および窒素を除去するという特定の期待から、より高温で実施されたため、非常に予想外であった。さらに、仮にアンモニアが追加の水素化処理工程の条件下でアミンまたはアミドを生成するように反応したとしても、そのような窒素化合物が生成する理論的可能性があったとしても、これらの生成化合物がそれらからアンモニアを除去するように再び水素化脱窒素(HDN)を受けたとしても、すでに生成した炭化水素はアンモニアとのいかなる反応にも不活性であるべきであることが予期されていた。ところが、驚くべきことに、追加の水素化処理工程の水素化処理条件下で消失しない窒素化合物が再び生成されることが判明した。それら化合物は、第2級アミドおよび3級アミドであった。
【0080】
当技術分野で知られているように、窒素は異性化触媒を不活性化する可能性があり、そのため、異性化反応器に向かう流出物に含まれるアンモニアは、通常、ストリッピングガスでストリッピングされ、溶存アンモニアはストリッピングガスによって置換/ストリッピングされ、それによって任意の残存する窒素量は除去される。比較例1および2において本発明者らによって見出されたように、酸素化炭化水素フィードストックを水素化処理する際に、第1および第2の水素化処理工程(それぞれ、第2の触媒ゾーンおよび第1の触媒ゾーンに該当する)のあいだに分離工程が存在しないことは、異性化反応器に供給されて存在する窒素含有量をより高くさせ、その結果、-40℃またはそれ以下の曇点を有する航空燃料カットの収率の低下を引き起こす。
【0081】
図2および3の第1の水素化処理流出物中のアンモニアが第2の水素化処理反応器中に窒素の再取込みを引き起こし、および、これらの窒素化合物がまた、HDN条件に予想外に耐性があり、異性化前のストリッピング工程における残存アンモニアの通常除去を引き起こす条件が無効であることは予想外の発見であった。このことは、本発明者らにとって驚くべきことであり、本発明者らは、第1の水素化処理反応器の後に分離段階を含ませることによって水素化処理工程を変更し、このようにすることで、水素化処理反応器の第2の触媒ゾーンからの第2の水素化処理流出物が分離段階(107)に付され、そこで第2の水素化処理流出物(106)の少なくとも一部がガス状留分(121)と水素化処理液(108)とに分離される。
【0082】
分離段階(107)は、例えば、第2の水素化処理流出物(106)がガス状留分(121)と第2の水素化処理液(108)とに分離され得ることが当該技術分野において知られている1つまたは複数の高圧または低圧の分離器であり得る。分離のために水素ストリッピングを用いてもよい(図面には示さず)。分離段階は、全体的に高温分離段階であってもよく、ここで、流出物は積極的に冷却されることはない。第1の水素化処理流出物を冷却しないことは、第1の触媒ゾーンでより少ない加熱が必要とされるという観点から有益である。また、分離された第2の水素化処理液が、酸素化炭化水素フィードストックを希釈するための生成物リサイクルとして使用される場合にもまた、有益であり得る。
【0083】
分離段階はまた、できるだけ多くのアンモニアが第1の水素化処理液から分離されるという観点から有益であるため、水素化処理流出物が例えば熱交換器などによって積極的に冷却される低温分離を含んでいてもよい。従って、冷却は、第2の水素化処理液(108)が水素化処理反応器(101)の第1の触媒ゾーン(102)の入口温度より低い温度、例えば第1の水素化処理の入口の温度よりも少なくとも100℃低い温度を有する程度に、第2の水素化処理流出物(106)の分離段階のあいだ適用され得る。第1の水素化処理流出物の低温分離は、例えば、120~200℃の間の温度で実施され得る。
【0084】
第2の水素化処理流出物(106)の全量、または、第2の水素化処理流出物(106)の少なくとも一部分が分離され得る。例えば、第2の水素化処理流出物は、2つのストリームに分割され得、ここで、1つのストリームは、上記のように第2の水素化処理液(108)とガス状留分(121)とに分離され、および、もう一つのストリームは、分離されずに炭化水素希釈剤として使用される。もう一つのストリームは、炭化水素に加えて、過剰な水素と、アンモニアを含むすべてのガス状不純物を含み、これらは第2の触媒ゾーンに再導入されるであろう。
【0085】
さらなる窒素化合物を形成するために酸素化炭化水素と反応し得、したがって第2の水素化処理流出物中に存在し得ることとなる、第2の触媒ゾーンにおけるアンモニアの蓄積を回避するため、または第2の触媒ゾーンへのさらなる量のアンモニアの添加(第2の水素化処理流出物が生成物リサイクルとして使用される場合)を回避するために、第2の水素化処理流出物(106)の全量が分離され得る。
【0086】
分離段階(107)において、第2の水素化処理流出物(106)は、ガス状留分(121)と第2の水素化処理液(108)とに分離される。ガス状留分(121)は、過剰な水素、HDOから生成される水蒸気、酸素化炭化水素フィード中のカルボン酸の脱炭酸/脱カルボニル化から生成されるCOおよびCO2ならびにH2Sを含むであろう。最後に、NH3がHDN反応から生成されるであろう。第2の水素化処理液(108)は、≧90wt%の炭化水素を含み、残りは例えば未反応の酸素化炭化水素などのヘテロ原子含有炭化水素であろう。水素化処理が可能な限り完全であること、すなわち、第2の水素化処理液体(108)が≧95wt%の炭化水素、例えば≧98wt%の炭化水素を含むことが望まれる。しかしながら、触媒のコーキング、および他の望ましくない副作用を引き起こす可能性のある反応条件の厳しさを増加させることなく、水素化処理入り口流を完全に水素化処理することは、常に実現可能または可能ではない。したがって、変換は、第2の水素化処理液(108)が≦99wt%の炭化水素も含むように、すなわち、第2の水素化処理液(108)が95~99wt%の炭化水素を含む程度まで水素化処理入り口流が水素化処理されるようにすることもできる。
【0087】
第1の水素化処理液の残りの成分は、例えば酸素化炭化水素または窒素含有炭化水素などのヘテロ原子含有炭化水素であろう。初期の窒素不純物が非常に高い場合、窒素は依然として、第1の水素化処理液中にある程度残存すると考えられ、窒素元素として測定されて、>1wppmの窒素、例えば>5wppm、および100wppmまでの窒素を含み得る。
【0088】
例えば5~100wppmの窒素不純物を含む第2の水素化処理液(108)、または第2の水素化処理液(108)の少なくとも一部は、水素富化ガス(120)と共に第1の触媒ゾーン(102)内に導入される。
【0089】
水素富化ガス(120)は、上述されるように、第2の触媒ゾーン(105)中だけでなく、第1の触媒ゾーン(102)においても、つまり水素化脱酸素(HDO)および水素化脱窒素(HDN)反応を行うために必要である。水素富化ガスは、例えば、水、アンモニア、および、アミンスクラビングおよび/またはメンブレン分離が続いて行われる他の軽質成分を含むガス状留分(123)への分離(122)などの、1つまたは複数の精製工程(122)によって精製された、プロセス(123、118)からの過剰水素などであり得る。第2の触媒ゾーン中で使用される水素富化ガスの純度は、第1の触媒ゾーン(102)中で使用される水素富化ガス、異性化反応器(114)の前のストリッピングに使用される水素富化ガスまたは異性化反応器(103)に使用される水素富化ガスの純度ほど重要ではない。第1の触媒ゾーンのために使用される水素富化ガスは、典型的には90mol%、しばしば95mol%またはそれより高い純度を有し、および、ガス状炭化水素を含み得る。第1の水素化処理流出物中に窒素が再取込みされて生成物副流(112)として取り出されるリスクをできるだけ低減することを目的としているため、第1の触媒ゾーン(102)に用いられる水素富化ガス(120)は、理想的には、例えばアンモニアなどの反応性窒素をほとんど含まないまたは全く含まない。具体的には、第1の触媒ゾーン(102)に用いられる水素富化ガス(120)中の窒素含有量は、理想的には、第1の触媒ゾーン(102)にフィード(127+102)を形成するために第1の水素化処理液(108)と混合される際に、第1の触媒ゾーン(102)のためのフィード(127+102)の液相の窒素含有量における増加を引き起こさないべきである。
【0090】
したがって、第1の触媒ゾーン(102)中で使用される水素富化ガス(120)は、窒素元素として測定されて、≦10wppmまたはそれより低い窒素不純物、例えば≦5wppmなどの窒素不純物、例えば≦1wppmなどの窒素不純物を含み得る。
【0091】
水素富化ガスは、十分な品質を有するものであれば、精製された過剰の水素ガス、いわゆる水素リサイクルでもよい。また、水素富化ガスはまた、プロセスでまだ使用されていない新鮮な水素であってもよく、および、水素リサイクルと新鮮な水素との混合物であってもよい。
【0092】
当業者には理解されるように、窒素不純物に言及する場合、水素化処理または水素異性化条件下で、新しい結合を形成するために反応すると考えられ得る窒素不純物すなわち非不活性または反応性の窒素を含むことが意図される。例えば、第2の水素化処理流出物(106)、第1の異性化流出物などの本発明の生成物および中間体中に取り込まれる、生成物副流(112)または異性化流出物(116)として取り出され得ることが可能である窒素が、本発明による窒素不純物であると考えられる。窒素ガス(N2)が、本発明で使用される場合に、窒素不純物という用語に該当するべきであることは意図されていない。窒素不純物は、元素分析を用いて測定され得、有機窒素、アンモニアおよびアンモニウムを含む。
【0093】
上記で参照されるように、水素化処理反応器(101)は、第2の触媒ゾーン(105)の上方に配置される第1の触媒ゾーン(102)を備える。第1の触媒ゾーン(102)は、単一の固定床であり得る。
【0094】
第2の水素化処理液(108、127)の少なくとも一部は、水素富化ガス(120)と共に、副流の液体成分が≧99wt%の炭化水素、および、窒素元素として測定されて≦1wppmの窒素、好ましくは≦0.4wppmの窒素、例えば≦0.3wppmの窒素など(ASTM D4629検出)を含む程度まで少なくとも水素化脱酸素および水素化脱窒素を引き起こす入口の温度および圧力で、第1の触媒ゾーン(102)に導入される。
【0095】
具体的には、副流(112)の液体成分の窒素含有量は、第2の水素化処理液(108)の窒素含有量より低い。
【0096】
第2の水素化処理液が、第1の触媒ゾーン(102)内での水素化処理の前またはそのあいだに、例えば炭化水素などの任意の希釈剤で希釈されなければならない必要はなく、また意図もされていない。むしろ、第2の水素化処理液(108、127)は、第2の水素化処理反応器へのフィードとして使用される。しかしながら、第2の水素化処理液(108、127)が第2の水素化処理液(108、127)の酸素含有量よりも高い酸素含有量を有するフィードと混合されない限り、および、第1の水素化処理液が≧5wppmの窒素含有量を有するフィードと混合されない限り、第2の水素化処理液(108、127)を他の炭化水素フィードと混合することは可能である。
【0097】
炭化水素希釈剤は、第1の触媒ゾーン中での水素化処理反応の発熱特性を制御するためには必要ではない。したがって、例えば炭化水素希釈剤のような希釈剤は、それ故、第2の水素化処理反応器中に存在していなくてもよく、すなわち、炭化水素希釈剤は、場合によっては、水素化処理反応器(102)の第1の触媒ゾーンに導入されない。
【0098】
残存する酸素化炭化水素から酸素が除去され、それによって副産物として水を生成する、および窒素不純物が第2の水素化処理液(108)と比較してさらに低下され、それによって副産物としてのアンモニア、および、第2の水素化処理液(108)よりも低い量の窒素不純物を含む生成物副流(112)の液体成分を生成する程度までHDOとHDNを引き起こすであろう、多くの種々の入口の温度および圧力の組み合わせが存在する。
【0099】
特には、第1の触媒ゾーン(102)における入口の温度は、水素化処理反応器(101)の第2の触媒ゾーン(105)における入口の温度よりも高い。
【0100】
例えば、第1の触媒ゾーン(102)における入口の温度および圧力は、250~450℃および10~150bar、例えば300~430℃および20~120bar、例えば330~410℃および30~100barであり得る。
【0101】
より進んだHDOおよびHDN反応を引き起こすために、第1の触媒ゾーン(102)の入口の温度は、第2の触媒ゾーン(105)の入口の温度と比較して高い。例えば、第1の触媒ゾーン(102)の入口の温度は、第2の触媒ゾーン(105)の入口の温度よりも10~15℃高くてもよく、さらに高くてもよい。
【0102】
酸素化炭化水素の量が、第2の触媒ゾーン(105)への水素化処理入り口流に比べ、第2の水素化処理液(108、127)中において著しく少ないため、発熱反応が起こりにくいという事実に起因して、これは、第1の触媒ゾーン(102)における温度上昇が第2の触媒ゾーン(105)におけるほど高くならないことを意味する。
【0103】
例えば、第2の水素化処理反応器の反応器入口と反応器出口との間の温度上昇は、小さく、例えば35℃より高くなく、または、第1の水素化処理反応器における温度上昇の50%以下であり得る。
【0104】
したがって、第2の触媒ゾーン(105)における水素化脱酸素および水素化脱窒素の程度は、第1の触媒ゾーン(102)において、第1の触媒ゾーンの入口と第1の触媒ゾーンの出口との間の温度上昇が10℃を超えないような様式で制御され得る。これは、第1の水素化処理反応器における酸素化炭化水素フィードの十分な転化を確実なものとし、第1の水素化処理液中に例えば酸素および窒素などのヘテロ原子を有する炭化水素を少量のみ残すことによって(これは、発熱性の水素化処理反応をする物質の残存量に起因するより小さな温度上昇をもたらすであろう)制御され得る。
【0105】
水素化処理反応器(101)中の第2の触媒ゾーン(105)は、水素化処理反応器(101)中の第1の触媒ゾーン(102)よりも低い水素化脱酸素活性を有し得る。
【0106】
第1の触媒ゾーンにおける水素化処理活性を高めるために、上述のように、より進んだHDOおよびHDN反応を得るために温度を上昇させることが可能である。第1の触媒ゾーン(102)が、第2の触媒ゾーン(105)よりも高い水素化脱酸素活性を有することを確実にすることによって、水素化処理活性を高めることもまた可能である。
【0107】
触媒活性はまた、例えば両方の反応器に同じ活性を有する触媒を使用することなどによって、第1および第2の触媒ゾーン両方において同じであるように開始することもできる。時間の経過とともに第2の触媒ゾーン(105)は、第1の触媒ゾーン(102)よりも速く不活性化することになるが、これは、より不純なフィード、水素化処理入り口流が第2の触媒ゾーンに提供されるのに対し、より純粋なフィード、第2の水素化処理液(108、127)が第1の触媒ゾーン(102)に提供されることによる。従って、第2の触媒ゾーン(105)は、第1の触媒ゾーン(102)よりも低い水素化脱酸素活性を有し得る。触媒活性は、新鮮な触媒と比較して測定され得る。
【0108】
当業者がより進んだHDOおよびHDN反応を引き起こすための温度および圧力の様々な組み合わせを選択できるのと同様に、当業者であれば、第1の触媒ゾーンにおいてより進んだHDOおよびHDN反応を引き起こすために適切な1つまたは複数の触媒および条件を選択することも可能であろう。
【0109】
水素化処理反応器の第1の触媒ゾーンは、例えば、Pd、Pt、Ni、Co、Mo、Ru、Rh、Wまたはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される触媒などの、担体に担持された水素化金属から選択される1つまたは複数の触媒を含み得る。例えば、触媒ゾーンは、例えばアルミナ担体などの担体に担持されたCoMo、NiMo、NiW、CoNiMoから選択される1つまたは複数の触媒を含み得る。触媒がNi、Co、Mo、Ru、Rh、Wまたはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される場合、典型的には、触媒は硫化され、および、硫黄源は、水素化処理入り口流中および/または水素富化ガス中に添加されるかまたは存在している。
【0110】
水素化処理反応器の第1の触媒ゾーンは、0.5~3h-1、例えば0.5~1.5h-1の範囲のWHSVで、および、350~2100 Nl H2/lフィード、例えば500~1500 Nl H2/lフィードのH2フローで操作され得る。
【0111】
第1の触媒ゾーンのためのより一般的な反応条件は、第1および第2の触媒ゾーンを含むトリクルベッド反応器を備え得、触媒ゾーンはモリブデンを含む担持された水素化触媒を含み、ここで、水素化処理は、250~400℃の温度で、10~150barのあいだの圧力で、水素の存在下行われ、ここでWHSVは0.5~3h-1の範囲であり、および、500~2100 Nl H2/lフィードのH2フローである。
【0112】
第1の触媒ゾーン(102)からの第1の水素化処理流出物の一部を含む生成物副流(112)は、第1の触媒ゾーンと第2の触媒ゾーンの間で取り出される。第1の水素化処理抽出物は、例えば、流出ガス(図1、g)を第2の触媒ゾーン(105)へ、下流方向に通過させることが可能となるための、および、第1の水素化処理抽出物のオーバーフロー(図1、I)を第2の触媒ゾーンへ、下流方向に通過させることが可能となるための1または複数のオーバーフロー堰またはチムニーを備えるトレイに集められ得る。
【0113】
液体成分および任意には気体成分を含む生成物副流(112)は、第1の触媒ゾーンと第2の触媒ゾーンの間で取り出され得る。副流の液体成分は、≧99wt%の炭化水素、および、窒素元素として測定されて、≦1wppmの窒素、好ましくは≦0.4wppmの窒素、例えば≦0.3wppmの窒素(ASTM D4629検出)を含む。
【0114】
生成物副流(112)は、例えば、生成物副流(112)を液体留分と気体留分とに分離することができるように当技術分野において知られている1つまたは複数の高圧または低圧分離器に付され得る。分離段階は、生成物副流(112)が積極的に冷却されない、完全な高温分離段階であってもよい。生成物副流(112)を冷却しないことは、異性化工程などの任意の後続の工程で必要とされる加熱がより少ないという観点から有益である。
【0115】
分離段階(114)はストリッパーであってもよく、生成物副流(112)または生成物副流の液体成分中の不純物を除去するために、ガス、通常は水素を使用する。水素が通常、ストリッピングガスとして使用されるが、これは、ストリッピング段階が、不純物を除去すること、および、ある量の水素が生成物副流の液体成分(112)および/またはストリッピングされた液体副流(115)中に溶解することを確実とする(これは、これらの液が例えば第1の異性化反応器(103)などの例えば水素異性化段階へ運ばれた場合に有益である)ことの両方を目的として機能するためである。生成物副流の液体成分(112)およびストリッピングが使用される場合のストリッピングされた液体副流(115)の窒素含有量は、第2の水素化処理液(108)の窒素含有量より低い。
【0116】
したがって、第1の触媒ゾーン(102)からの生成物副流(112)は、ストリッピング段階(114)に供されるストリッピングガス(例えば水素など)を用いてストリッピングされ、これにより、ストリッピングされた液体副流(115)は、窒素元素として測定されて、≦0.4wppmの窒素、例えば≦0.3wppmの窒素(ASTM D4629検出限界)を有する。
【0117】
水素を使用するストリッピング段階は、上述されるように、不純物を除去すること、および、ある量の水素が液相中に溶解することを確実とするために使用することが有益である。ストリッピング段階は、液体が例えば異性化反応器(103)などの、例えば水素異性化段階に運ばれる場合特に有用である。
【0118】
生成物副流(112)は、それ自体の生成物として使用されてもよく、または、異性化によってさらに精製されてもよい。
【0119】
生成物副流(112)は、少なくとも1つの触媒ゾーンを備える異性化反応器(103)内で異性化され得、ここで、生成物副流(112)および水素富化ガス(120)(ここで水素富化ガスは窒素元素として測定されて≦1ppm(mol/mol)窒素を含み得る)は、異性化流出物(116)を生成するための少なくとも水素異性化を引き起こす入口の温度および圧力で触媒ゾーンに導入される。
【0120】
水素富化ガス(120)はまた、上述されるように、第1および第2の触媒ゾーン(102、105)において水素化脱酸素(HDO)および水素化脱窒素(HDN)を行うために必要であるが、異性化反応器(103)においても同様である。
【0121】
水素富化ガスは、例えば、水、アンモニア、および、アミンスクラビングおよび/またはメンブレン分離が続いて行われる他の軽質成分を含むガス状留分(123)への分離(122)などの、1つまたは複数の精製工程(122)によって精製された、プロセス(123、118)からの過剰水素などであり得る。第1の異性化反応器中で使用される水素富化ガスの純度は、重要である。
【0122】
異性化反応器のために使用される水素富化ガスは、95%またはそれ以上の純度を有する。これは、異性化反応器の触媒ゾーンを被毒するリスクを可能な限り低減することを意図しているためである。したがって、第2の水素化処理反応器のために使用される水素富化ガスは、理想的には、例えばアンモニアなど反応性窒素をほとんど含まないか、または全く含まない。
【0123】
したがって、異性化反応器(103)で使用される水素富化ガス(120)は、窒素元素として測定されて、≦1ppm(mol/mol)の窒素不純物を含み得る。水素富化ガスは、十分な品質を有するものであれば、精製された過剰の水素ガス、いわゆる水素リサイクルでもよい。また、水素富化ガスはまた、プロセスでまだ使用されていない新鮮な水素であってもよく、および、水素リサイクルと新鮮な水素との混合物であってもよい。
【0124】
当業者には理解されるように、窒素不純物に言及する場合、水素化処理またはヒドロ異性化条件下で、新しい結合を形成するために反応すると考えられる窒素不純物すなわち非不活性または反応性の窒素を含むことが意図される。例えば、第1もしくは第2の水素化処理流出物、または第1の異性化流出物などの本発明の生成物および中間体中に取り込まれることが可能である窒素が、本発明による窒素不純物であると考えられる。窒素ガス(N2)が、本発明で使用される場合に、窒素不純物という用語に該当するべきであることは意図されていない。異性化触媒が貴金属触媒、例えばPdまたはPtを含む触媒などを含む場合、硫黄不純物は存在するとしても、少ないべきである。
【0125】
異性化反応器(103)は、少なくとも1つの触媒ゾーンを収容することができる容器である。本発明では、トリクルベッド反応器が好適である。トリクルベッド反応器は、フィードの下方への移動を含み、一方で、同流または向流様式で水素と接触される。トリクルベッド反応器の例としては、断熱トリクルベッド反応器が挙げられる。
【0126】
異性化反応器(103)は、少なくとも1つの触媒ゾーンを含んでいる。そのような触媒ゾーンは、最も単純な形態では、触媒粒子の固定床であり得る。また、同じまたは異なる触媒粒子を有する複数の固定床であってもよく、または異なる活性および/または組成の触媒粒子の多数の層であってもよい。第1の異性化反応器(103)は、単一の触媒ゾーンを備え得る。
【0127】
副流の液体成分(112)またはストリッピングされた副流(115)は、水素富化ガス(120)と共に、異性化反応器(103)に導入され、そこで、異性化流出物(116)の液体部分(119)が≧30wt%の分岐の炭化水素、および/または、第2の水素化処理液と比較して分岐の炭化水素の≧30wt%の増加を含む程度まで、異性化流出物(116)を生成するための少なくとも水素化脱窒素を引き起こす入口の温度および圧力で、少なくとも1つの触媒ゾーンと接触される。
【0128】
異性化された流出物(116)が≧30wt%の分岐の炭化水素、および/または、第2の水素化処理液と比較して分岐の炭化水素の≧30wt%の増加を含む程度まで水素化脱窒素を引き起こすであろう、多くの種々の入口の温度および圧力の組み合わせが存在する。
【0129】
例えば、異性化反応器(103)の入口の温度および圧力は、250~40℃および20~50bar、例えば280~370℃および20~50bar、または295~370℃および25~50barであり得る。
【0130】
第1の異性化反応器の触媒ゾーンは、担体に担持されたVIII族金属を含む1つまたは複数の触媒を含み得、ここで担体は、シリカ、アルミナ、クレー、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニアから選択され得、これらは単独でまたは混合物として使用され得る。例えば、担体は、シリカおよび/またはアルミナであり得る。さらに、1つまたは複数の触媒は、例えばゼオライトなどのモレキュラーシーブをさらに含んでいてもよい。
【0131】
異性化反応器(103)は、0.5~3h-1の範囲のWHSVで、および、150~800 Nl H2/lフィードのH2フローで、例えば、0.5~1h-1のWHSV、300~500 Nl H2/lフィードのH2フローで操作され得る。
【0132】
当業者には、第1の異性化流出物(116)の液体部分(119)が、生成物副流の液体成分(112)と比較してより多くの分岐の炭化水素を含む水素化異性化の程度を得るために、上記の条件を操作する方法は周知である。例えば、第1の異性化流出物(116)の液体部分(119)が、≧30wt%の分岐の炭化水素、および/または、第2の水素化処理液と比較して分岐の炭化水素の≧30wt%の増加を含む程度までである。
【0133】
第1の異性化液はまた、n-パラフィンに対するイソパラフィンの比が1より大きい、例えば5~30など、または15~30となる程度に異性化され得る。
【0134】
異性化の程度は、フィードおよび生成物のあいだ、ここでは生成物副流の液体成分(112)と異性化処理流出物の液体部分(119)とのあいだの曇点の差としてしばしば測定され、ここで、曇点における低下の大きさは、いかに広範囲の水素異性化が行われたかを決定する。従って、第1の異性化液は、第2の水素化処理液から第1の異性化流出物の液体部分(119)までの曇点の低下が10℃またはそれ以上となる程度にまで異性化され得る。
【0135】
通常、曇点は低いほど良いと考えられており、これは、このことが良好なコールドフロー特性をもたらすであろうためである。しかしながら、水素異性化条件下では、ある程度の水素化分解も発生する。当該技術分野では、通常、水素化分解が進みすぎ、液体生成物の損失が曇点低下の可能性を上回ることになる点がある。触媒およびそれに含まれる任意の不純物、ならびに水素異性化の条件は、水素異性化および水素化分解の程度に影響を与え得るパラメータのうちの1つである。比較例1および実施例1を参照すると、異性化反応器に入る前の窒素不純物は、実施例1(≦0.3wppm)と比較して、比較例1(0.6~2.9wppm)ではるかに高いことがわかる。異性化反応器への窒素含有量のこのような差は、特定燃料カットの収率に影響を与えるだけでなく、そのコールドフロー特性にも顕著な影響を与える。
【0136】
例えば、副流は、ストリッピング段階(114)に供され、ここで、副流(116)は、窒素元素として測定されて、ストリッピングされた副流(115)が≦0.4wppm窒素、例えば≦0.3wppmなどの窒素(ASTM D4629検出)、および、副流(116)と比較して低い窒素量を有するようにストリッピングガス(H2)でストリッピングされ;副流(115)および窒素元素として測定されて、例えば≦0.3wppmの窒素(ASTM D4629検出)を有するストリッピングされた水素富化ガス(120)が、第1の異性化流出物(116)を生成するために少なくとも水素異性化を引き起こす温度および圧力で触媒ゾーンに導入される、少なくとも一つの触媒ゾーンを備える異性化反応器(103)中でストリッピングされた副流(115)を異性化するステップに供され;異性化反応器(103)からの異性化流出物が分離段階に供され、そこで異性化流出物がガス状留分と異性化液体とに分離され、第1の異性化液体が≧30wt%の分岐の炭化水素、および/または、ストリッピングされた副流(115)と比較して分岐の炭化水素の≧30wt%の増加を含む。
【0137】
異性化ステップのためのより一般的な反応条件は、異性化反応器として触媒ゾーンを含むトリクルベッド反応器を備え得、触媒ゾーンは、WまたはPtまたはPd、およびゼオライトを含む担持された水素化触媒を含み、ここで、水素異性化は、第1の異性化流出物の第2の水素化処理液から液体部分(119)までの曇点における低下が10℃またはそれ以上に低下される程度となるように、水素の存在下で、295~370℃の温度で、20~50barのあいだの圧力で行われ、ここでWHSVは0.5~1.5h-1の範囲であり、および、150~800 Nl H2/lフィードのH2フローである。
【0138】
異性化反応器(103)からの異性化流出物(116)は、分離段階(117)に供され、ここで異性化流出物(116)は、ガス状留分(118)との異性化液(119)とに分離される。分離段階(117)は、例えば、異性化流出物(116)をガス状留分(118)と第1の異性化液(119)とに分離できることが当業者に知られている、1または複数の高圧または低圧の分離器であってよい。分離段階(117)はまた、蒸留であり得るが、通常、蒸留の前にガス状留分を液体留分から分離することが有益である。
【0139】
上述されるように、第1の異性化液は、≧30wt%の分岐の炭化水素を含む、および/または第2の水素化処理液と比較して≧30wt%分岐の炭化水素を増加させる。
【0140】
異性化流出物(116)または異性化液(119)は、1つまたは複数の製品留分を製造するために蒸留段階に付され得る。このような分別蒸留は、当該技術分野において周知である。
【0141】
特に、本発明のプロセスは、特定の条件が高品質の航空燃料の大きな留分をもたらすことが驚くべきことに見出されたため有益である(実施例1を参照のこと)。航空燃料留分は、C8~C16の炭化水素を含み、特に、航空燃料の大部分はC9~C12の炭化水素を含む。航空燃料留分はまた、例えば150~250℃の間の蒸留範囲を有するものとしてなど、蒸留範囲によって特徴付けられ得る。
【0142】
異性化液体は、-25℃以下、例えば-30℃以下、例えば-40℃以下、例えば-47℃以下などの曇点を有する少なくとも航空燃料に分離され得る。
【0143】
図1は、水素富化ガス(120)および生成物リサイクルの形状である炭化水素希釈剤(126)と混合された酸素化炭化水素フィードストック(104)を、第2の触媒ゾーン(105)の上流に第1の触媒ゾーン(102)を備える水素化処理反応器(101)の第2の触媒ゾーン(105)へ供給することを記載している。第2の水素化処理流出物(106)は、分離器(107)においてガス状留分(121)と第2の水素化処理液(108)とに分離される。ガス状留分(121)は、分離器(122)において、ガス状留分(123)、水富化留分(125)、および炭化水素富化留分(124)に、より低い温度で再びフラッシングされ得る。第1の水素化処理液(108)は、含まれる第1の触媒ゾーン(102)のためのフィード(110)を形成するために、加熱され(109、111)および再圧縮(110)され、および水素富化ガス(120)と混合され得、ここで、水素化脱酸素および水素化脱窒素が、第1の水素化処理流出物を得るために引き起こされて、ここから生成物副流(112)が取り出され得る。生成物副流(112)は、ストリッパー(114)において、ストリッピングされた水素化処理液(115)を形成するために、水素富化ガス(120)と共にストリッピングされ、これは水素富化ガス(120)と混合され、および、少なくとも一つの触媒ゾーンを備える異性化反応器(103)へ供給され、ここで、ストリッピングされた水素化処理液(115)は、異性化流出物(116)を得るために異性化され、これは、分離器(117)において、ガス状留分(118)と異性化処理液(119)とに分離される。この特定の配置は、第1の触媒ゾーンでのポリシングのために新鮮な水素を効率的に使用して、溶存水素に富むポリシングされた炭化水素製品を提供し、ここで、このような製品の一部(図1、I(液体オーバーフロー))および過剰な水素ガス(図1、g)は、第2の触媒ゾーンでの下流の水素化処理において炭化水素希釈剤およびメークアップ水素として使用され得、および/または、ポリシング床と水素化処理床のあいだで生成物副流(112)として取り出され得、および異性化反応器内で異性化され得る。
【0144】
図2は、比較例1および表7で参照された比較例のための反応器セットアップである。図1と類似しているが、第2の水素化処理反応器が省かれている。図2は、水素富化ガス(220)および炭化水素希釈剤(226)と混合された酸素化炭化水素フィードストック(204)を、少なくとも1つの触媒ゾーン(205)を備える第1の水素化処理反応器(201)に供給することを記載している。第1の水素化処理流出物(206)は、分離器(207)において、ガス状留分(221)と第1の水素化処理液(208)とに分離される。ガス状留分(221)は、分離機(222)において、ガス状留分(223)、水富化留分(225)、および炭化水素富化留分(224)に、より低い温度で再びフラッシングされ得る。第1の水素化処理液(208)は、ストリッピングされた水素化処理液(215)を形成するために、ストリッパー(214)において、水素富化ガス(220)と共にストリッピングされ、これは水素富化ガス(220)と混合され、および、少なくとも一つの触媒ゾーンを備える第1の異性化反応器(203)へ供給され、ここで、ストリッピングされた水素化処理液(215)は、第1の異性化処理流出物(216)を得るために異性化され、これは、分離器(217)において、ガス状留分(218)と第1の異性化処理液(219)とに分離される。
【0145】
図3は、比較例2および表7で参照された比較例のための反応器セットアップである。図1と類似しているが、第1および第2の水素化処理反応器のあいだの分離ステップを含まない。図3は、水素富化ガス(320)および生成物リサイクルの形状である炭化水素希釈剤(326)と混合された酸素化炭化水素フィードストック(304)を、少なくとも1つの触媒ゾーン(305)を備える第1の水素化処理反応器(301)へ供給することを記載している。第1の水素化処理流出物(306)は、少なくとも1つの触媒ゾーンを備える第2の水素化処理反応器(302)のためのフィードを形成するために、水素富化ガス(320)と混合され、ここで、水素化脱酸素および水素化脱窒素が、第2の水素化処理流出物(330)を得るために引き起こされて、これは分離器(307)においてガス状留分(321)と第2の水素化処理液(312)とに分離される。ガス状留分(321)は、分離器(322)において、ガス状留分(323)、水富化留分(325)、および炭化水素富化留分(324)に、より低い温度で再びフラッシングされ得る。第2の水素化処理液(312)は、ストリッパー(314)において、ストリッピングされた水素化処理液(315)を形成するために、水素富化ガス(320)と共にストリップされ、これは、水素富化ガス(320)と混合されて、および、少なくとも一つの触媒ゾーンを備える第1の異性化反応器(303)に供給され、ここで、ストリッピングされた水素化処理液(315)は、第1の異性化流出物(316)を得るために異性化され、これは、分離器(317)において、ガス状留分(318)と第1の異性化処理液(319)とに分離される。
【0146】
本発明の実施形態を説明する際、すべての可能な実施形態の組み合わせおよび順列が、明示的に説明されているわけではない。しかし、ある手段が相互に異なる従属請求項に記載されているか、または異なる実施形態に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。本発明は、記載された実施形態のすべての可能な組み合わせおよび順列を想定している。
【0147】
本明細書における用語「含む(comprising)」、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」は、あらゆる例において、それぞれ用語「からなる(consisting of)」、「からなる(consist of)」および「からなる(consists of)」と任意に置換可能であることが発明者により意図されている。
【実施例
【0148】
実施例1
牛脂、豚脂、および鶏脂を含む動物性脂肪廃棄物由来の低品質の廃棄物が、再生可能燃料プロセスのためのフィードストックとして使用された。このフィードストックは、水素化処理プロセスにそれを導く前に、漂白による前処理を用いて精製された。表1は、ISO 15304Mに従ってGCにより測定された、前処理前に使用された低品質の動物性脂肪フィードストックの炭素数分布を示している。
【0149】
【表1】
【0150】
【表2】
【0151】
【表3】
【0152】
フィードストックは、水素化処理プロセスのためのフィードストックとしてそれを使用する前に漂白によって前処理され、これにより、総計の窒素元素として算出される窒素量は、1000w-ppmに減少され、これは、水素化処理プロセスにそれが入る際のフィードストリームの窒素不純物レベルとなった(表4の「HDOへのフィード中の窒素量」の項目を参照のこと)。
【0153】
水素化処理によって処理されるフィードストックは、無機および有機の窒素不純物を含み、有機不純物は主に例えばアミドおよびアミンなどの有機窒素化合物の形状であり、これらはフィードから分析された。例えばCa、Co、Fe、Mg、Mn、Ni、Znなどの金属不純物の量は、使用した特定のICP規格の分析検出精度限界である1w-ppm未満であった。同様に、AlおよびNaの不純物量は、2w-ppm未満、ならびに、Pの含有量は、1w-ppm未満であった。
【0154】
様々な窒素量を有する本発明を示すために、この前処理されたフィードストックを、18w-ppmの窒素含有量を有するパーム油と混合し、本実施例のラン1~6で使用する6種類の窒素濃度(25、75、150、300、500、1000w-ppm)を得た。
【0155】
様々な量の窒素を含む前処理されたフィードストック(新鮮なフィード)が、図第1による水素化脱窒素(HDO)固定床トリクルベッド反応器セットアップへと、6回の別々のランとして導入された。HDO反応は、アルミナ担体上に担持された45000kgの硫化NiMoを含む触媒床(150)の存在下(新鮮なHDO触媒活性と比較した相対的なHDO活性を有する新鮮な触媒)、50barの圧力下で、48000kg/hのHDO反応器への供給速度、触媒床(150)のための1.1h-1である総計の供給速度WHSV、約500 Nl H2/lフィードのH2フローで、および、HDO反応器入口で測定された約309℃の反応温度(TIN)、HDO反応器出口での約340℃の温度(TOUT)で行われた。反応器への新鮮な水素フィードは、28700m3/h(NTP)であり、および、低品質の動物性脂肪廃棄物のフィード量は、57m3/hであった。液状のHDO生成物は希釈剤(126)としてリサイクルされ、および、生成物リサイクル量の新鮮なフィードに対する比は約6:1であった。
【0156】
HDO反応器からの流出物は、HDO床の上流に位置されているポリシング床(102)に供給される前に、高温分離器内で液相と気相とへの分離に付された。ポリシング床は、HDO床と同じアルミナ担体上に担持された硫化NiMo触媒(新鮮なHDO触媒活性と比較した相対的なHDO活性を有する新鮮な触媒)を含む固定床であり、ここで、触媒材料の量は15000kgであった。ポリシング床は、50barの圧力下で、総計の液体フィードを基に算出されて約8.2h-1である供給速度WHSVを有し、および、ポリシング床入口の温度(TIN)は約340℃、すなわちHDO入口の温度より31℃高い温度であった。使用された水素量は、HDO反応器触媒床中で使用された水素量の約25vol-%であった。
【0157】
表4は、上述したように、図1に示されるセットアップを用いた試験ランの結果を示すものであり、ここで、組み合われたHDO反応器はおよびポリシング床が使用され、ここで、窒素含有化合物を含むガス状副生成物が2つの床の間で除去される。表4から明らかなように、新鮮なフィードの非常に高い窒素含有量にもかかわらず、ポリシング工程後の窒素含有量は低く保たれ得る。低い窒素量は様々な理由で製品に望ましく、特に低い窒素量は異性化反応に影響を与え、これによって異性化前に高い窒素量を有する生成物と比較して、同一の異性化条件下でより優れたコールドフロー特性を引き起こす(データは示さず)。
【0158】
窒素含有量は、プロセス条件を変更することにより、特にポリシング床の処理温度を上昇させることよって、≦0.4w-ppmまで減少させることができる。最終的な窒素不純物は、すべてのラン(1~6)において≦0.3w-ppmであった。HDO床の温度を上げることは、典型的には、最終的な異性化生成物における低温特性の劣化を引き起こす制御不能な反応を導く。水素化脱窒素およびポリシングの後、最終的な液体パラフィン流出物が異性化反応器内で水素異性化された。異性化は、固定床トリクルベッド反応器において、Pt-SAPO触媒の存在下、40barの圧力下、1.5h-1のWHSVで、および328℃の反応温度で行われた。水素/フィード比は、フィード1リットルあたり300ノルマリットルのH2であった。すべての実験における非常に低い窒素含有量は、優れた低温特性をもつ生成物を与えた。異性化および蒸留による分離後、185~205のT10(℃)カットオフ温度、270~295℃のT90(℃)カットオフ温度、および275~300℃の最終沸点(℃)を有する航空燃料カットが得られ、これは、ASTM D7566(2016)、Annex A2仕様を満たし、772kg/m3未満の密度(ASTM 4052(2018)にしたがって測定された)および-40℃未満(IP529にしたがって測定された)の凝固点(IP529にしたがって測定された)有していた。約60wt-%の優れた収率で得られた航空燃料成分は、さらに、-30℃より低い濁点(ASTM D5771(2017)にしたがって測定された)を有する。
【0159】
【表4】
【0160】
比較例1
望ましくない酸素および窒素不純物を効率的に除去するための代替として、図2による反応器セットアップが試験された。図2のセットアップでは、実施例1と同じフィード組成物が適用され、および、この反応器セットアップでは、HDO反応器の下流のポリシング床(102)がなかったということを除き、実施例1で使用された操作条件と実質的に同じ操作条件(温度、圧力、触媒など)が使用された。この例ではむしろ、新鮮な触媒の全触媒量(60000kg)は、単一のHDO反応器内にあった。HDO反応は、50barの圧力、48000kg/hのHDO反応器への供給速度、0.8h-1である総計の供給速度WHSV、約590 Nl H2/lフィードのH2フローで、および、HDO反応器入口で測定された約308℃の反応温度(TIN)、HDO反応器出口での約340℃の温度(TOUT)で行われた。反応器への新鮮な水素フィードは、33400m3/h(NTP)であり、および、低品質の動物性脂肪廃棄物のフィード量は、57m3/hであった。液状のHDO生成物は希釈剤としてリサイクルされ、および、生成物リサイクル量の新鮮なフィードに対する比は約6:1であった。
【0161】
表5は、図2に示されている単一のHDO反応器でのランの結果を示しており、ここで、窒素含有化合物を含むガス状副生成物は、HDO反応器の後、液体パラフィン流出物を異性化段階に投入する前に除去されている。
【0162】
表5から分かるように、全てのラン(7~12)の異性化反応器前の窒素含有量は、実施例1における窒素含有量と比較して高かった。比較例1では、実施例1と比較して同じ量の触媒が使用されたが、本例では単一の反応器内部にあった。この比較は、単一の反応器は、触媒量を2つの別々の反応器に分割し、および、これら2つの反応器のあいだで気相を除去する場合と同様には、効率的な様式で窒素を除去することができないことを示している。
【0163】
フィード中の窒素含有量の増加は、必然的に、異性化に対する最終の液体パラフィン流出物ストリーム中の窒素の増加をもたらし、その結果、異性化後の分留から回収される航空燃料成分の低温特性および収率の低下をもたらした。窒素の初期含有量が1000ppmであったラン12では、約-10℃の濁点が、5wt-%の航空燃料の収率と共に得られた。
【0164】
【表5】
【0165】
比較例2
図3によって示される反応セットアップは、直列の2つのHDO反応器が使用され、および第1のHDO反応器(301)の下流の第2のHDO反応器(302)へとフィード(306)を投入する前に、第1のHDO反応器の後のガス除去がないことを除いて、他の点では実施例1と同様である。図1のポリシング床と同様の触媒床が、第2のHDO反応器(302)の内部に設置された。第1のHDO反応器からの液体パラフィン流出物(306)は、第2のHDO反応器に直接、すなわち液体パラフィン流出物を第2のHDO反応器に投入する前に第1のHDO反応器の後で窒素含有化合物を含むガス状副生成物を除去することなく、導かれた。第2のHDO反応器(302)の後で得られた最終的な液体パラフィン流出物ストリーム(312)は、ガス状不純物を除去するためにストリッパー(314)へと導かれ、およびその後、異性化反応器へと導かれた。触媒および反応条件は、実施例1と同じであった。
【0166】
この反応器設定は、特許文献1に記載されている先行技術の反応器セットアップと同様であった。
【0167】
表6からわかるように、全てのラン(13~18)の窒素含有量は、実施例1の窒素含有量と比較して、はるかに高い窒素含有量を導いた。
【0168】
図3によるセットアップは、初期フィード中のより低い量の窒素含有量、例えば約25ppmまたはそれ以下などの窒素含有量では、より低い量である窒素不純物を低減することができることが分かった。しかしながら、新鮮なフィード中の窒素量が150wppmまたはそれ以上に増加されると、HDOおよびポリシングの後に残存する窒素は、0.8ppm、またはそれ以上の値まで増加した。異性化における窒素量の増加は、異性化後の分留から回収される航空燃料成分の低下した低温特性および収率を結果としてもたらし、窒素の初期含有量が1000ppmであったラン18では、約-15℃の濁点が、10wt-%の航空燃料の収率と共に得られた。
【0169】
【表6】
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-07-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素元素として測定されて10wppmまたはそれ以上の窒素不純物を有する、酸素化炭化水素フィードストックから炭化水素を調製するためのプロセスであって、
第2の触媒ゾーン(105)の上方に配置された第1の触媒ゾーン(102)を備える水素化処理反応器(101)であって、ここで、酸素化炭化水素フィードストック(104)、水素富化ガス(120)、および任意には生成物リサイクル希釈剤(108、126)を含む水素化処理入り口流が、前記第1の触媒ゾーン(102)と前記第2の触媒ゾーン(105)とのあいだの入口で前記第2の触媒ゾーン(105)へ導入され、それは前記第1の触媒ゾーンからの第1の水素化処理流出物の一部と混合され、前記第1の第1の水素化処理流出物の一部は、溶存水素を含む液体炭化水素を含み、前記第2の触媒ゾーンは、前記水素化処理反応器の第2の触媒ゾーン(105)からの第2の水素化処理流出物(106)が主に炭化水素を含む程度まで少なくとも水素脱酸素および水素脱窒を引き起こす温度および圧力で操作され、およびここで、前記酸素化炭化水素フィードストックが≧95%の炭化水素に変換される水素化処理反応器(101):
前記水素化処理反応器の前記第2の触媒ゾーンからの第2の水素化処理流出物が、前記第2の水素化処理流出物(106)の少なくとも一部がガス状留分(121)と水素化処理液(108)とに分離され、前記水素化処理液が≧95wt%の炭化水素と>1wppmの窒素とを含む分離段階(107)に付され;
前記水素化処理液(108)の少なくとも一部および水素富化ガス(120)が、前記水素化処理反応器の前記第2の触媒ゾーンにおける入口の温度よりも高い入口の温度で、および、水素化脱酸素および水素化脱窒素を引き起こす圧力で、前記水素化処理反応器(101)内の第1の触媒ゾーン(102)に導入され;
前記第1の触媒ゾーン(102)からの前記第1の水素化処理流出物の一部を含む生成物副流(112)が、前記第1の触媒ゾーンと前記第2の触媒ゾーンのあいだで取り出され、前記生成物副流(112)は液体成分およびガス状成分を含み、および前記副流の液体成分は、≧99wt%の炭化水素、および、窒素元素として測定されて、≦1wppmの窒素、好ましくは≦0.4wppmの窒素を含み;
任意には、少なくとも1つの触媒ゾーンを含む異性化反応器(103)内で前記副流を異性化することを含み、ここで前記生成物副流(112)と窒素元素として測定されて≦1ppm(mol/mol)の窒素を含む水素富化ガス(120)とが、異性化流出物(116)を生成するための少なくとも水素異性化を引き起こす入口の温度および圧力で触媒ゾーンに導入され;
前記異性化反応器からの異性化流出物が、分離段階(117)に付され、ここで、異性化流出物(116)はガス状留分(118)および異性化液(119)に分離され、ここで前記異性化液は、≧30wt%の分岐の炭化水素、および/または、第2の水素化処理液と比較して≧30wt%の分岐の炭化水素の増加を含み;
ここで、第1の触媒ゾーン(102)からの第1の水素化処理流出物の一部が水素化処理入り口流を加熱し;および
前記第2の触媒ゾーン(105)の入口の温度および圧力が、200~400℃および10~150barであり、かつ
前記第1の触媒ゾーン(102)の入口の温度および圧力が、250~450℃および10~150barである
ことを含むプロセス。
【請求項2】
前記副流は、ストリッピング段階(114)に付され、ここで、前記副流(112)は、ストリッピングされた副流(115)が、窒素元素として測定されて≦0.4wppmの窒素、例えば≦0.3wppmの窒素を有するように、および、前記副流(116)と比較して低い窒素量を有するように、ストリッピングガス(H2)を用いてストリッピングされ;
前記ストリッピングされた副流(115)を、少なくとも1つの触媒ゾーンを含む第1の異性化反応器(103)において異性化する工程であって、ここで、前記ストリッピングされた副流(115)および窒素元素として測定されて≦1ppm(mol/mol)の窒素を有する水素富化ガス(120)が、第1の異性化流出物(116)を生成するために、少なくとも水素化脱窒素を引き起こす温度および圧力で触媒ゾーンに導入され;
前記第1の異性化反応器(103)からの異性化流出物が、分離段階(117)に供され、ここで、異性化流出物は、ガス状留分および異性化液体に分離され、ここで前記第1の異性化液体は、≧30wt%の分岐の炭化水素を含む
請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
前記異性化液が、-40℃以下、例えば-47℃以下の凝固点を有する少なくとも航空燃料に分離される請求項1または2記載のプロセス。
【請求項4】
冷却が、前記第2の水素化処理液(106)の前記分離段階のあいだに、前記第2の水素化処理液(108)が前記第1の水素化処理反応器の第1の触媒ゾーンの入口の温度よりも低い温度を有する程度に適用される請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
炭化水素希釈剤および新鮮な酸素化炭化水素フィードストックが、前記水素化処理反応器(102)の前記第1の触媒ゾーンに導入されない請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第2の触媒ゾーン(105)における水素化脱酸素および水素化脱窒素の程度が、前記第1の触媒ゾーン(102)において、反応器入口と反応器出口との間の温度上昇が10℃を超えないような様式で制御される請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記水素化処理反応器(101)内の前記第2の触媒ゾーン(105)が、前記水素化処理反応器(101)内の前記第1の触媒ゾーン(102)よりも低い水素化脱酸素活性を有する請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第1の触媒ゾーン(102)内で使用される水素富化ガス(120)が、窒素元素として測定されて、≦5wppmの窒素不純物を含む請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第2の触媒ゾーン(105)の入口の温度および圧力が、200~400℃および10~150bar、例えば250~380℃および20~120bar、例えば280~360℃および30~100barである請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記水素化処理反応器の第2の触媒ゾーンが、例えば、Pd、Pt、Ni、Co、Mo、Ru、Rh、Wまたはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される触媒などの、担体に担持された水素化金属から選択される1つまたは複数の触媒を含み、好ましくは、前記触媒ゾーンは、例えばアルミナ担体などの担体に担持されたCoMo、NiMo、NiW、CoNiMoから選択される1つまたは複数の触媒を含む請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記水素化処理反応器(101)が、0.5~3h-1の範囲のWHSVで、および、350~900 Nl H2/lフィードのH2フローで操作される請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第1の水素化処理反応器(102)の入口の温度および圧力が、250~450℃および10~150bar、例えば300~430℃および20~120bar、例えば330~410℃および30~100barである請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記水素化処理反応器の第1の触媒ゾーンが、例えば、Pd、Pt、Ni、Co、Mo、Ru、Rh、Wまたはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される触媒などの、担体に担持された水素化金属から選択される1つまたは複数の触媒を含み、好ましくは、前記触媒ゾーンが、例えばアルミナ担体などの担体に担持されたCoMo、NiMo、NiW、CoNiMoから選択される1つまたは複数の触媒を含む請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記異性化反応器(103)の入口の温度および圧力が、280~370℃および0~50barである請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記異性化反応器の前記触媒ゾーンが、担体に担持されたVIII族金属を含む1つまたは複数の触媒を含み、ここで担体は、シリカ、アルミナ、クレー、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニアから選択され、これらは単独でまたは混合物として使用され得、好ましくは、シリカおよび/またはアルミナである請求項1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記1つまたは複数の触媒が、例えばゼオライトなどのモレキュラーシーブをさらに含む請求項15記載のプロセス。
【請求項17】
前記異性化反応器(103)が、0.5~1h-1の範囲のWHSVで、および、300~500 Nl H2/lフィードのH2フローで操作される請求項1~16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記異性化液が、1より大きい、例えば5~30または15~30であるn-パラフィンに対するイソパラフィンの比を有する請求項1~17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記酸素化炭化水素フィードストックが、窒素元素として測定されて、300wppmまたはそれ以上、好ましくは500wppmまたはそれ以上の窒素不純物を含む請求項1~18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記水素化処理入り口流が、100~500wppmの窒素不純物を含む請求項1~19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記第2の触媒ゾーンからの前記第2の水素化処理流出物(106)が100~500wppmまたはそれ以上の窒素不純物を含む請求項1~20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記第1の触媒ゾーンと前記第2の触媒ゾーンのあいだで取り出される前記第1の触媒ゾーン(102)からの前記第1の水素化処理流出物の一部を含む生成物副流(112)が、液体成分およびガス状成分を含み、および前記副流の前記液体成分は、≧99wt%の炭化水素、および、窒素元素として測定されて、≦0.3wppmの窒素を含む請求項1~21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記酸素化炭化水素フィードストックが、40wt%またはそれ以上の脂肪酸または脂肪酸エステルを含み得る請求項1~22のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記酸素化炭化水素フィードストックが、植物オイルおよび動物性脂肪から選択され得る請求項1~23のいずれか1項に記載のプロセス。
【国際調査報告】