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特表2023-547602後工程を通じた高機能性高分子の結晶化方法およびこれによって製造された結晶性高分子
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  • 特表-後工程を通じた高機能性高分子の結晶化方法およびこれによって製造された結晶性高分子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】後工程を通じた高機能性高分子の結晶化方法およびこれによって製造された結晶性高分子
(51)【国際特許分類】
   B29B 13/02 20060101AFI20231106BHJP
   C08J 99/00 20060101ALI20231106BHJP
   B29K 71/00 20060101ALN20231106BHJP
【FI】
B29B13/02
C08J99/00
B29K71:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523163
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 KR2021012495
(87)【国際公開番号】W WO2022080679
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0133339
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミュン・チュル・パク
(72)【発明者】
【氏名】シン・ジェ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ハ・ナ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ボン・ソン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ミン・イ
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
【Fターム(参考)】
4F070AA52
4F070BA02
4F070BA04
4F070BB06
4F070DA55
4F070DC07
4F201AA32
4F201AH05
4F201AH33
4F201AM27
4F201AR06
4F201AR11
4F201AR12
4F201BA04
4F201BC01
4F201BC02
4F201BC03
4F201BC13
4F201BC15
4F201BD02
4F201BD04
4F201BD05
4F201BD07
4F201BD10
4F201BN03
4F201BN37
(57)【要約】
後工程を通じた高機能性高分子の結晶化方法および前記方法を通じて製造された結晶性高分子に関するものであって、より具体的に、ペレットまたは粉末形態に提供されるポリアリールエーテルケトン(PAEK)をガラス転移温度(Tg)乃至融点(Tm)の温度で熱処理させることによって結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を製造することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無定形または5%以下の結晶化度を有するペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)を準備する段階;および
前記準備されたポリアリールエーテルケトン(PAEK)を不活性気体雰囲気でガラス転移温度(Tg)乃至融点(Tm)の温度で熱処理させる段階;
を含むポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法。
【請求項2】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)、ポリエーテルジフェニルエーテルケトン(PEDEK)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される高分子である、請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法。
【請求項3】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)はT:I異性体比率が50:50~90:10である、請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法。
【請求項4】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)はT:I異性体比率が70:30である、請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法。
【請求項5】
前記ペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、
1mm~10mmの直径および1mm~10mmの長さを有する、請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法。
【請求項6】
前記無定形または5%以下の結晶化度を有するポリアリールエーテルケトン(PAEK)は160℃~300℃の温度で熱処理して製造される、請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法。
【請求項7】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱処理は150℃~340℃の温度で行われる、請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法。
【請求項8】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱処理は160℃~280℃の温度で行われる、請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法。
【請求項9】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱処理は160℃~250℃の温度で行われる、請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法。
【請求項10】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱処理は10分以上行われる、請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法。
【請求項11】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱処理は10分~60分間行われる、請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法。
【請求項12】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱処理はペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)を攪拌させて行われる、請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法。
【請求項13】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱処理はペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)を振動させる振動移送機(spiral elevator)を用いて行われる、請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法。
【請求項14】
前記不活性気体は連続的に前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)に供給され、
前記不活性気体の供給流量は10mL/min以上である、請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法。
【請求項15】
前記不活性気体の供給流量は20mL/min~80mL/minである、請求項14に記載のポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法。
【請求項16】
前記準備されたポリアリールエーテルケトン(PAEK)および熱処理させたポリアリールエーテルケトン(PAEK)の色差(△)は1.8未満である、請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法。
【請求項17】
請求項1の結晶化方法を通じて製造された結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)。
【請求項18】
前記製造された結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化度は20%以上である、請求項17に記載の結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)。
【請求項19】
前記製造された結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化度は30%~35%である、請求項17に記載の結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)。
【請求項20】
請求項1の結晶化方法を通じて製造された結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用して、レーザー焼結、溶融積層モデリング(fused deposition modeling)、成形、射出成形、押出、熱成形、回転成形、圧縮成形、コンパウンディングまたは含浸から選択される技法によって製造された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は後工程を通じた高機能性高分子の結晶化方法および前記方法を通じて製造された結晶性高分子に関するものであって、より具体的に、ペレットまたは粉末形態に提供されるポリアリールエーテルケトン(PAEK)をガラス転移温度(Tg)乃至融点(Tm)の温度で熱処理させることによって結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を製造することを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は既に公知された産業用樹脂の総称類を意味し、種類としてはポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、およびポリエーテルケトンとポリエーテルケトンケトンの一部が混合された共重合体などがある。
【0003】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は高い耐熱性を有しながら機械的強度も優れていて自動車、宇宙航空、エネルギー、電機電子分野で多様に使用されている超高性能プラスチックである。
【0004】
また、多様なポリアリールエーテルケトン(PAEK)系高分子の中でも下記化学式で表されるポリエーテルケトンケトン(PolyEtherKetoneKetone、PEKK)は特に、耐熱性が高く、強度が優れているためエンジニアリングプラスチックとして多く用いられている。エンジニアリングプラスチックは自動車、航空機、電気電子器具、機械などの分野で使用されており、その適用領域は次第にさらに拡大されているのが実情である。
【化1】
【0005】
エンジニアリングプラスチックの適用領域が拡大されるにつれてその使用環境はますます苛酷になり、より改善された物性を示すポリエーテルケトンケトン(PEEK)化合物に対する必要性が存在する。しかし、ポリエーテルケトンケトン(PEEK)の場合、Isophthaloyl moietyの影響によって無定形または低い結晶化度を示す傾向がある。したがって、製品の色が一定でなく、熱的特性が低下する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-224274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、本発明者らはこのような問題を解決するために研究していたところ、前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)系高分子に後工程として、ガラス転移温度(Tg)乃至融点(Tm)の温度で熱処理させる場合、前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化度を高めることができるのを発見して、本発明を完成するようになった。
【0008】
これに関連して、特開2014-224274号公報はポリエーテルエーテルケトン樹脂の製造方法について開示している。
【0009】
本発明は前記従来技術の問題点を解決するために案出されたものであって、無定形または5%以下の結晶化度を有するペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法を提供することにその目的がある。
【0010】
また、結晶化方法を通じて製造された結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の技術的課題を達成するための技術的手段として、本発明の一側面は、無定形または5%以下の結晶化度を有する、ペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)を準備する段階;および前記準備されたポリアリールエーテルケトン(PAEK)を不活性気体雰囲気でガラス転移温度(Tg)乃至融点(Tm)の温度で熱処理させる段階;を含むポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
以上のような本発明によるポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法は、ペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)を不活性気体雰囲気でガラス転移温度(Tg)乃至融点(Tm)の温度で熱処理させる簡単な方法を通じて前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化度を高めることができる効果を有することができる。
【0013】
また、前記熱処理の温度、時間、供給される不活性気体の流量を調節することによって、製造されるポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化度が調節できる。
【0014】
これと共に、前記熱処理過程中にポリアリールエーテルケトン(PAEK)を持続的に攪拌または振動させることによって、ペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)がケーキング(caking)される現象が防止できる。
【0015】
最後に、前記熱処理を不活性気体雰囲気で行うことによって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)が酸化されて変色する現象を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態によるポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法を概略的に示したフローチャートである。
図2】本発明の一実施例によるポリエーテルケトンケトン(PEKK)ペレットのケーキング(caking)現象を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)、ポリエーテルジフェニルエーテルケトン(PEDEK)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される高分子であってもよい。
【0018】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、T:I異性体比率が50:50~90:10であってもよい。
【0019】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、T:I異性体比率が60:40~85:15であってもよい。
【0020】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、T:I異性体比率が70:30であってもよい。
【0021】
前記ペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、1mm~10mmの直径および1mm~10mmの長さを有することができる。
【0022】
前記無定形または5%以下の結晶化度を有するポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、2mm~4mmの直径および3mm~5mmの長さを有することができる。
【0023】
前記無定形または5%以下の結晶化度を有するポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、160℃~300℃の温度で熱処理して製造できる。
【0024】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱処理は、150℃~340℃の温度で行うことができる。
【0025】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱処理は、160℃~280℃の温度で行うことができる。
【0026】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱処理は、160℃~250℃の温度で行うことができる。
【0027】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱処理は、10分以上行うことができる。
【0028】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱処理は、10分~60分間行うことができる。
【0029】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱処理は、ペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)を攪拌させながら行うことができる。
【0030】
前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱処理は、ペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)を振動させる振動移送機(spiral elevator)を用いて行うことができる。
【0031】
前記不活性気体は連続的に前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)に供給され、前記不活性気体の供給流量は10mL/min以上であってもよい。
【0032】
前記不活性気体の供給流量は、20mL/min~80mL/minであってもよい。
【0033】
前記準備されたポリアリールエーテルケトン(PAEK)および熱処理させたポリアリールエーテルケトン(PAEK)の色差(△)は1.8未満であってもよい。
【0034】
また、本発明の他の一側面は、前記結晶化方法を通じて製造された結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を提供する。
【0035】
前記製造された結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化度は20%以上であってもよい。
【0036】
前記製造された結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化度は30%~35%であってもよい。
【0037】
また、本発明のまた他の一側面は、前記結晶化方法を通じて製造された結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用して、レーザー焼結、溶融積層モデリング(fused deposition modeling)、成形、射出成形、押出、熱成形、回転成形、圧縮成形、コンパウンディングまたは含浸から選択される技法によって製造された物品を提供する。
【0038】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。しかし、本発明は様々の異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態によって本発明が限定されず、本発明は後述の請求範囲によってのみ定義されるだけである。
【0039】
加えて、本発明で使用した用語はただ特定の実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を有しない限り、複数の表現を含む。本発明の明細書全体である構成要素を‘含む’ということは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0040】
本願の第1側面は、無定形または5%以下の結晶化度を有するペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)を準備する段階;および前記準備されたポリアリールエーテルケトン(PAEK)を不活性気体雰囲気でガラス転移温度(Tg)乃至融点(Tm)の温度で熱処理させる段階;を含むポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法を提供する。
【0041】
以下、本願の第1側面によるポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法を、図1を参照して段階別に詳しく説明する。この時、図1は前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法を概略的に示したフローチャートである。
【0042】
まず、本願の一実施形態において、前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法は、無定形または5%以下の結晶化度を有するペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)を準備する段階;(S100)を含むことができる。
【0043】
本願の一実施形態において、前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)、ポリエーテルジフェニルエーテルケトン(PEDEK)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される高分子であってもよく、好ましくポリエーテルケトンケトン(PEKK)であってもよい。この時、前記ポリエーテルケトンケトン(PEKK)は下記化学式1で表されるテレフタロイル(Terephthaloyl)形態と下記化学式2で表されるイソフタロイル(Isophthaloyl)形態が連鎖的に重合されて生成される高分子であって、その比率によって特性が決定できる。前記テレフタロイル(Terephthaloyl)moietyは直線型で固い硬性を帯び、ここにイソフタロイル(Isophthaloyl)moietyがその曲がった構造によって構造的多様性を付与し、イソフタロイル(Isophthaloyl)は高分子鎖の柔軟性、流動性、および結晶化特性に影響を与えることができる。特に、イソフタロイル(Isophthaloyl)moietyの場合は柔軟性または流動性を増加させる反面、低い結晶化速度を示し、これによって重合されたポリエーテルケトンケトン(PEKK)が無定形または低い結晶化度を示すことができる。この時、前記ポリエーテルケトンケトン(PEKK)が結晶化度を有する場合、前記結晶化度は5%以下であり得る。
【化2】
【化3】
【0044】
本願の一実施形態において、前記無定形または5%以下の結晶化度を有するポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、ペレットまたは粉末の形態として提供することができる。この時、前記無定形または5%以下の結晶化度を有するポリアリールエーテルケトン(PAEK)は160℃~300℃の温度で熱処理して製造することができ、好ましくは160℃~250℃の温度で熱処理して製造することができる。一方、前記無定形または5%以下の結晶化度を有するポリアリールエーテルケトン(PAEK)は好ましくペレットの形態として提供することができ、この場合、前記ペレットは前記温度範囲で押出加工させて製造することができる。
【0045】
本願の一実施形態において、前記無定形または5%以下の結晶化度を有するポリアリールエーテルケトン(PAEK)はT:I異性体比率が50:50~90:10であってもよく、好ましく60:40~85:15であってもよく、本願の一実施形態によれば70:30であってもよい。この時、前記T:I異性体比率は前記化学式1および2で表される異性体の比率を意味するものであり得る。即ち、前記無定形または5%以下の結晶化度を有するポリアリールエーテルケトン(PAEK)は繰り返し単位としてケトン-ケトンの2つの互いに異なる異性体形態を含むことができる。即ち、前記化学式1で表される繰り返し単位の含量が化学式2で表される繰り返し単位の含量と同一であるかさらに多く含まれてもよく、前記化学式1で表される繰り返し単位の含量が増加するほどこれを含むポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化度がさらに高いものであり得る。
【0046】
本願の一実施形態において、前記無定形または5%以下の結晶化度を有するポリアリールエーテルケトン(PAEK)は1mm~10mmの直径および1mm~10mmの長さを有することができ、好ましく2mm~4mmの直径および3mm~5mmの長さを有することができる。前記直径および長さ範囲は実際販売される製品の適した大きさとして提供されるものであり得る。
【0047】
その次に、本願の一実施形態において、前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法は、前記準備されたポリアリールエーテルケトン(PAEK)を不活性気体雰囲気でガラス転移温度(Tg)乃至融点(Tm)の温度で熱処理させる段階;(S200)を含むことができる。
【0048】
本願の一実施形態において、前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱処理は150℃~340℃の温度で行うことができ、好ましく160℃~280℃の温度で行うことができ、さらに好ましくは160℃~250℃の温度で行うことができる。即ち、前記のような温度範囲中の下限値はポリアリールエーテルケトン(PAEK)のガラス転移温度(Tg)であり、上限値は融点(Tm)であってもよい。これに関連して、前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)に含まれているT:I異性体の比率によって前記ガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)が異なるようになり、前記熱処理温度範囲は無定形または5%以下の結晶化度を有するポリアリールエーテルケトン(PAEK)のT:I異性体比率が50:50~90:10である場合、これを包括することができる温度範囲であり得る。即ち、前記無定形または5%以下の結晶化度を有するポリアリールエーテルケトン(PAEK)を前記のような温度範囲で熱処理させることによって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化度が増加できる。一方、前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)をガラス転移温度(Tg)以上に加熱する場合、結晶化されながら発熱反応によってペレットまたは粉末のケーキング(caking)現象が発生することがあり、160℃~250℃、好ましくは160℃~200℃の温度で熱処理を行うと、前記ケーキング現象が少なく発生する。反面、前記熱処理温度が増加すると、ケーキング現象が相対的に多く発生することがあるが、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化度はさらに増加できる。図2に本発明の一実施形態によるポリエーテルケトンケトン(PEKK)ペレットのケーキング(caking)現象を写真で撮って示した。
【0049】
本願の一実施形態において、前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱処理は10分以上行うことができ、好ましく10分~60分間行うことができる。この時、前記熱処理時間が増加するほど、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化度はさらに増加できる。
【0050】
本願の一実施形態において、前記熱処理のための熱源は特に制限はないが、好ましくホットエアー(hot air)または赤外線(IR)を使用することができる。この時、前記熱処理は密閉された反応器内で行うことができ、反応器内にホットエアー(hot air)を供給するか、赤外線(IR)を照射させることによって行うことができる。より具体的に、前記反応器は内部に一定の空間が設けられていてもよく、前記空間に無定形または5%以下の結晶化度を有するペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)が挿入される。一方、熱源としてホットエアー(hot air)を使用する場合、反応器内にホットエアーを供給するホットエアー供給ホッパーが別に備えられてもよく、前記ホットエアー供給ホッパーは前記反応器と管を通じて連結されて前記反応器内にホットエアーを供給することができる。この時、前記ホットエアーの供給は、前記反応器の下端部を通じて供給することができる。これと共に、前記反応器内部には振動装置を別途に設置することができる。また、熱源として赤外線(IR)を使用する場合、反応器内に赤外線放出機を設置することができ、前記赤外線放出機から放出される赤外線によって前記熱処理を行うことができる。これと共に、前記反応器内部には攪拌のためにインペラが装着された攪拌機(agitator)を設置することができ、前記攪拌機の作動のために一側には攪拌モータが連結されている。また、前記反応器はそれ自体が回転可能なように設置でき、この場合、円柱形態に設置されて、これを横方向に横にして配置させた後、中心軸を基準にして回転できる。即ち、ケーキング(caking)現象を防止するために、前記反応器は振動供給の可能な振動移送機(spiral elevator)を用いるか、内部に設置された攪拌機を用いることができる。この時、前記振動移送機を用いる場合、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の移送と結晶化が同時に行われる。
【0051】
本願の一実施形態において、前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱処理は、ペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)を攪拌させながら行うことができる。これは、前記のようにポリアリールエーテルケトン(PAEK)をガラス転移温度(Tg)以上に熱処理時、結晶化されながら発熱反応によってペレットまたは粉末のケーキング(caking)現象が発生することがあり、これを防止するために行われる工程である。
【0052】
本願の一実施形態において、前記熱処理は、前述のようにペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)を密閉された反応器内に位置させて行うことができる。この場合、前記攪拌は、一般的な攪拌機(agitator)を使用するか、前記反応器を回転させることによって行うことができる。即ち、前記攪拌機を使用する場合、ペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)に持続的にインペラが物理的衝撃を加えることができてケーキング(caking)現象が防止でき、反応器を回転させる場合、ペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)も反応器と共に持続的に回転するためケーキング(caking)現象が防止できる。この時、前記攪拌機の使用と反応器の回転が同時に使用できるのはもちろんである。
【0053】
本願の一実施形態において、前記不活性気体は連続的にポリアリールエーテルケトン(PAEK)に供給することができる。熱処理工程中、不活性気体を連続的に供給することによって前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)が酸化される現象が防止でき、これにより前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の変色が防止できる。この時、前記不活性気体は一般に知られた不活性気体を使用することができ、例えば、窒素(N)、アルゴン(Ar)またはヘリウム(He)などを使用することができる。
【0054】
本願の一実施形態において、前述のように前記熱処理はペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)を密閉された反応器内に位置させて行うことができ、この場合、前記不活性気体は反応器内に連続的に供給される。この時、前記供給される不活性気体の供給流量は10mL/min以上であってもよく、好ましく20mL/min~80mL/minであってもよい。
【0055】
本願の一実施形態例あって、前記準備されたポリアリールエーテルケトン(PAEK)および熱処理させたポリアリールエーテルケトン(PAEK)の色差(△)は1.8未満であってもよく、好ましく0.7以下であってもよく、さらに好ましく0.5以下であってもよく、最も好ましくは0.1であってもよい。前記準備されたポリアリールエーテルケトン(PAEK)および熱処理させたポリアリールエーテルケトン(PAEK)の色差は連続的に供給される前記不活性気体の流量と関係があり、供給される不活性気体の流量が増加するほど前記色差値は少なくなる。即ち、前記色差が少ないということはポリアリールエーテルケトン(PAEK)が熱処理中に酸化される比率が少ないということを意味し、それほど変色程度が少ないということを意味することができる。
【0056】
本願の第2側面は、前記本願の第1側面の結晶化方法を通じて製造された結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を提供する。
【0057】
本願の第3側面は、前記本願の第1側面の結晶化方法を通じて製造された結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用して、レーザー焼結、溶融積層モデリング(fused deposition modeling)、成形、射出成形、押出、熱成形、回転成形、圧縮成形、コンパウンディングまたは含浸から選択される技法によって製造された物品を提供する。
【0058】
本願の第1側面と重複する部分については詳細な説明を省略したが、本願の第1側面について説明した内容は第2側面および第3側面でその説明が省略されても同一に適用できる。
【0059】
以下、本願の第2側面による結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)および本願の第3側面による物品を詳しく説明する。
【0060】
本願の一実施形態において、前記結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、結晶化方法を行う前に準備された無定形または5%以下の結晶化度を有するポリアリールエーテルケトン(PAEK)に比べて結晶化度が増加できる。即ち、結晶化度の高い結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を得ることによって、前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の熱的特性が向上できる。
【0061】
本願の一実施形態において、前記製造された結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化度は20%以上であってもよく、好ましく28%~35%であってもよく、最も好ましくは30%~35%であってもよい。この時、前記製造された結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化度は前記本願の第1側面による熱処理の温度および時間と関係があり得る。具体的に、前記熱処理の温度および時間が増加するほど前記結晶化度が増加できる。これに関する詳しい説明は前記本願の第1側面で詳述したので、本願の第2側面では以下具体的な説明を省略するようにする。
【0062】
本願の一実施形態において、前記製造された結晶性ポリアリールエーテルケトン(PAEK)はペレットまたは粉末形態として得ることができ、これをレーザー焼結、溶融積層モデリング(fused deposition modeling)、成形、射出成形、押出、熱成形、回転成形、圧縮成形、コンパウンディングまたは含浸から選択される技法を使用して物品が製造可能である。
【0063】
本願の一実施形態において、テープとも称される事前含浸複合ストリップを製造するための湿式含浸は、例えば、炭素またはガラス繊維上にポリアリールエーテルケトン(PAEK)ペレット(粉末)およびホスフェート塩の水分散液を沈積させることで行うことができる。より具体的に、前記分散液は、例えば、水溶液にポリエーテルケトンケトン(PEKK)ペレット(粉末)およびホスフェート塩および界面活性剤を含むことができる。これにより、水分散液で覆われた繊維はその後、水を蒸発させるオーブンを通過し、その後、これらは高温(通常、370℃超過)でダイを通過して、安定化ポリエーテルケトンケトン(PEKK)重合体を溶融させることができ、繊維を正確にコーティングすることができるようになる。冷却後、テープまたは事前含浸ストリップが得られ、これはその後、アセンブリングおよび/またはスーパーインポージング(superimposing)によって使用されてこれを再溶融させ複合品を形成することができる。
【0064】
本願の一実施形態において、前記ホスフェート塩の主要長所は、非常に高温(例えば、350℃以上)に加熱されても、揮発性有機化合物を放出せず単純に蒸気形態の水を失うという点である。したがって、ホスフェート塩は環境および/または健康に関するいかなる危険も有さず、繊維のコーティングを妨害することがあり、または最終製造された物品の欠陥を出現させて以後機械的特性の悪化をひき起こすことがある多孔性を生成しない。
【0065】
以上、図面を参照して好ましい実施形態と共に本発明について詳細に説明したが、このような図面と実施形態で本発明の技術的な思想の範囲が限定されるのではない。したがって、本発明の技術的な思想の範囲内で多様な変形例または均等な範囲の実施例が存在し得る。したがって本発明による技術的な思想の権利範囲は請求範囲によって解釈されなければならず、これと同等であるか均等な範囲内の技術思想は本発明の権利範囲に属すると解釈されなければならない。
【0066】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【実施例
【0067】
実施例1.結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)の製造
1.無定形ポリエーテルケトンケトン(PEKK)の製造
T:I異性体比率が70:30であるポリエーテルケトンケトン(PEKK)顆粒を押出機内で160℃~300℃、好ましくは160℃~250℃の温度で押出加工させ、押出物を切断してペレット形態の無定形ポリエーテルケトンケトン(PEKK)を得た。この時、得られたポリエーテルケトンケトン(PEKK)ペレットの直径は2mm~4mmであり、長さは3mm~5mmであった。また、前記得られたポリエーテルケトンケトン(PEKK)ペレットは無定形状態であり、0%~5%の結晶化度を示した。
【0068】
2.結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)の製造
前記1.で得られたポリエーテルケトンケトン(PEKK)ペレットを内部に攪拌機が装着された反応器内に挿入し、窒素を連続的にパージ(purge)させながら熱処理を行って結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)を得た。この時、前記熱処理の温度は160℃であり、熱処理は30分間行った。また、窒素パージの流量は80mL/minであった。この時、前記熱処理温度はTA Instrument社製のDSC2500モデルを使用して測定した。
【0069】
実施例2.結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)の製造
前記実施例1の2.で熱処理温度を190℃に変更したことを除いては同様な方法を通じて結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)を得た。
【0070】
実施例3.結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)の製造
前記実施例1の2.で熱処理温度を220℃に変更したことを除いては同様な方法を通じて結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)を得た。
【0071】
実施例4.結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)の製造
前記実施例1の2.で熱処理温度を250℃に変更したことを除いては同様な方法を通じて結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)を得た。
【0072】
実施例5.結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)の製造
前記実施例1の2.で熱処理温度を280℃に変更したことを除いては同様な方法を通じて結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)を得た。
【0073】
実施例6.結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)の製造
前記実施例1の2.で熱処理温度を220℃に変更し、熱処理時間を10分に変更したことを除いては同様な方法を通じて結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)を得た。
【0074】
実施例7.結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)の製造
前記実施例1の2.で熱処理温度を250℃に変更し、熱処理時間を10分に変更したことを除いては同様な方法を通じて結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)を得た。
【0075】
実施例8.結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)の製造
前記実施例1の2.で熱処理温度を250℃に変更し、窒素パージの流量を20mL/minに変更したことを除いては同様な方法を通じて結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)を得た。
【0076】
実施例9.結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)の製造
前記実施例1の2.で熱処理温度を250℃に変更し、窒素パージの流量を50mL/minに変更したことを除いては同様な方法を通じて結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)を得た。
【0077】
比較例1.結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)の製造
前記実施例1の2.で熱処理温度を250℃に変更し、窒素パージを行わないことを除いては同様な方法を通じて結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)を得た。
【0078】
実験例1.熱処理温度によるポリエーテルケトンケトン(PEKK)の結晶化度測定
熱処理温度によるポリエーテルケトンケトン(PEKK)の結晶化度を比較するために、前記実施例1~5で得られたポリエーテルケトンケトン(PEKK)の結晶化度を測定して下記表1に示した。
【表1】
【0079】
上記表1に示したように、熱処理温度が増加するほど得られるポリエーテルケトンケトン(PEKK)の結晶化度が増加するのを確認することができた。但し、ケーキング現象はガラス転移温度(Tg)以上温度で次第に増加し、200℃を超えるとひどくなるのを確認することができた。
【0080】
実験例2.熱処理時間によるポリエーテルケトンケトン(PEKK)の結晶化度測定
熱処理時間によるポリエーテルケトンケトン(PEKK)の結晶化度を比較するために、前記実施例3、4、6および7で得られたポリエーテルケトンケトン(PEKK)の結晶化度を測定して下記表2に示した。
【表2】
【0081】
上記表2に示したように、熱処理時間が増加するほど得られるポリエーテルケトンケトン(PEKK)の結晶化度が多少増加するのを確認することができた。但し、熱処理時間より熱処理温度がポリエーテルケトンケトン(PEKK)の結晶化度にさらに影響を多く与えると確認された。
【0082】
実験例3.窒素パージ流量によるポリエーテルケトンケトン(PEKK)の色差測定
熱処理時、不活性気体である窒素のパージ流量によるポリエーテルケトンケトン(PEKK)の色差を比較するために、前記比較例1および実施例4、8、9によるポリエーテルケトンケトン(PEKK)の色差を比較して下記表3に示した。この時、前記色差を測定するための色差計はNippon Denshoku NE4000を使用し、熱処理の前および後によるポリエーテルケトンケトン(PEKK)の色差を測定した。
【表3】
【0083】
上記表3に示したように、窒素パージを行わない比較例の工程による場合、色差値が1.8であって外観で識別可能な水準であった。一方、パージされる窒素の流量が増加するほど前記色差値は減り、80mL/minで供給した実施例4の場合には色差値が0.1であるのを確認することができた。したがって、得られる製品の性能と品質のために熱処理時に不活性気体の供給は必須的に伴われなければならないのを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上のような本発明によるポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化方法は、ペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)を不活性気体雰囲気でガラス転移温度(Tg)乃至融点(Tm)の温度で熱処理させる簡単な方法を通じて前記ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化度を高めることができる効果を有することができる。
【0085】
また、前記熱処理の温度、時間、供給される不活性気体の流量を調節することによって、製造されるポリアリールエーテルケトン(PAEK)の結晶化度が調節できる。
【0086】
これと共に、前記熱処理過程中にポリアリールエーテルケトン(PAEK)を持続的に攪拌または振動させることによって、ペレットまたは粉末形態のポリアリールエーテルケトン(PAEK)がケーキングされる現象が防止できる。
【0087】
最後に、前記熱処理を不活性気体雰囲気で行うことによって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)が酸化されて変色する現象を防止することができる。
図1
図2
【国際調査報告】