(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】チタン酸塩結晶粒子分散体
(51)【国際特許分類】
A61K 8/29 20060101AFI20231106BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20231106BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
A61K8/29
A61Q1/12
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523575
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 US2021056295
(87)【国際公開番号】W WO2022087446
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507331209
【氏名又は名称】ミヨシ アメリカ,インク.
【氏名又は名称原語表記】Miyoshi America,Inc.
(71)【出願人】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391024700
【氏名又は名称】三好化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹川 昇志
(72)【発明者】
【氏名】大原 亮
(72)【発明者】
【氏名】糸井 伸樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 靖仁
(72)【発明者】
【氏名】森 宏仁
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB241
4C083AB242
4C083AC011
4C083AC241
4C083AC421
4C083AC581
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC911
4C083AC912
4C083AD091
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD191
4C083AD411
4C083AD491
4C083AD571
4C083AD572
4C083BB25
4C083CC01
4C083CC11
4C083CC12
4C083CC19
4C083DD39
4C083EE17
4C083FF01
(57)【要約】
本実施形態は、チタン酸塩結晶粒子の分散体、前述の分散体および組成物を作製する方法、ならびにその使用に関する。分散体および分散体を含む組成物は、皮膚に対するカバー力が高く、かつ近赤外線/赤外線(NIR/IR)反射率が高い。分散体は、化粧料用粉体として使用した任意に表面処理したチタン酸塩結晶および化粧的に許容され得る分散媒を含む。分散体は、皮膚の色むらを補正するためのファンデーションおよび/または組成物として化粧料用組成物において有用であり得、日光の曝露から皮膚を保護するために使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸塩結晶粒子の分散体であって、(a)K
0.5~0.8Li
0.27Ti
1.73O
3.85~4、K
0.2~0.8Mg
0.4Ti
1.6O
3.7~4、およびK
0.5~0.8Fe
0.8Ti
1.6O
3.85~4からなる群から選択され、約5μm未満の平均粒径を有するチタン酸塩結晶粒子;および(b)化粧料として許容され得る分散媒を含む、チタン酸塩結晶粒子の分散体。
【請求項2】
前記チタン酸塩結晶粒子が、式K
0.57~0.8Li
0.27Ti
1.73O
3.85~4で表されるチタン酸リチウムカリウムである、請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
前記チタン酸塩結晶粒子が、式K
0.53~0.8Mg
0.4Ti
1.6O
3.7~4で表されるチタン酸マグネシウムカリウムである、請求項1に記載の分散体。
【請求項4】
カリウム量は、前記チタン酸塩結晶粒子中のもとのカリウム量から約25%~75%の範囲内の量が減少している、請求項1に記載の分散体。
【請求項5】
前記チタン酸塩結晶粒子の平均粒径D50が約8μm未満である、請求項1に記載の分散体。
【請求項6】
前記チタン酸塩結晶粒子が、その表面に化学結合した表面処理剤を含む表面処理チタン酸塩結晶粒子である、請求項1に記載の分散体。
【請求項7】
前記表面処理剤が、シリコーン、脂肪酸、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、N-アシルアミノ酸、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、鉱油、リン脂質、ステロール、炭化水素、ポリアクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の分散体。
【請求項8】
前記表面処理剤が、ジメチコン、シクロメチコン、ジメチコノール、ジメチコンコポリオール、ジメチコンコポリオールアセテート、ジメチコンコポリオールブチルエーテル、ジメチコンコポリオールメチルエーテル、およびこれらの混合物からなる群から選択される1つまたは複数のシリコーンである、請求項6に記載の分散体。
【請求項9】
前記表面処理剤が、ジメチコン、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム、水添レシチン、トリエトキシカプリリルシラン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の分散体。
【請求項10】
前記表面処理剤が、チタン酸塩粒子の重量に対して約1重量%~約20重量%の範囲内の量で含まれる、請求項1に記載の分散体。
【請求項11】
請求項1に記載の分散体を含む化粧料。
【請求項12】
チタン酸塩結晶粒子の分散体を作製する方法であって、前記チタン酸塩結晶粒子が少なくとも1つの表面処理剤で修飾されており、
a)K
0.5~0.8Li
0.27Ti
1.73O
3.85~4、K
0.2~0.8Mg
0.4Ti
1.6O
3.7~4、およびK
0.5~0.8Fe
0.8Ti
1.6O
3.85~4からなる群から選択される少なくとも1つのチタン酸塩結晶粒子、ならびに少なくとも1つの溶媒を、前記少なくとも1つの溶媒中に前記チタン酸塩結晶粒子を分散させるのに十分な期間にわたって混合することによってスラリーを調製する工程;
b)少なくとも1つの表面処理剤を前記スラリーに添加し、前記少なくとも1つの表面処理剤および前記スラリーを混合させるのに十分な期間にわたって混合して、スラリーを形成する工程;
c)a)またはb)の前記スラリーを、前記少なくとも1つの溶媒を除去するのに十分な温度および期間で加熱して、乾燥混合物を形成する工程;
d)乾燥混合物を粉砕して、約10μm未満の平均粒径を有する表面処理したチタン酸塩結晶粒子を形成する工程;および
e)化粧料として許容され得る分散媒中に前記表面処理したチタン酸塩結晶粒子を分散させる工程を含む、方法。
【請求項13】
前記スラリーを、約80~約120℃の範囲内の温度で約10時間~約20時間の期間にわたって加熱する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記チタン酸塩結晶粒子が、式K
0.57~0.8Li
0.27Ti
1.73O
3.85~4で表されるチタン酸リチウムカリウムである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記チタン酸塩結晶粒子が、式K
0.53~0.8Mg
0.4Ti
1.6O
3.7~4で表されるチタン酸リチウムカリウムである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの表面処理剤をa)の前記スラリーに添加し、前記表面処理剤が、ジメチコン、トリエトキシカプリリルシラン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
チタン酸塩結晶粒子の分散体を作製する方法であって、前記チタン酸塩結晶粒子が少なくとも1つの表面処理剤で修飾されており、
a)少なくとも1つの溶媒を含む溶液またはスラリーを調製する工程であって、少なくとも1つの表面処理剤を前記溶媒中に混合し、前記溶液またはスラリーを、前記少なくとも1つの溶媒中に前記チタン酸塩結晶粒子を分散または溶解させるのに十分な温度および期間で加熱して溶液またはスラリーを形成させることにより、溶液またはスラリーを調製する工程;
b)a)の前記溶液またはスラリーに、K
0.5~0.8Li
0.27Ti
1.73O
3.85~4、K
0.2~0.8Mg
0.4Ti
1.6O
3.7~4、およびK
0.5~0.8Fe
0.8Ti
1.6O
3.85~4からなる群から選択される少なくとも1つのチタン酸塩結晶粒子を添加し、十分な期間にわたって混合してチタン酸塩粒子混合物を形成させる工程;
c)金属含有塩を前記チタン酸塩粒子混合物に添加し、前記少なくとも1つのチタン酸塩結晶粒子上の表面処理剤の化学的固定を促進させ、混合物を形成させるのに十分な期間にわたって混合する工程;
c)前記混合物を、前記少なくとも1つの溶媒を除去するのに十分な温度および期間で加熱して、乾燥混合物を形成させる工程;
d)前記乾燥混合物を粉砕して、約10μm未満の平均粒径を有する表面処理したチタン酸塩結晶粒子を形成させる工程;および
e)前記表面処理したチタン酸塩結晶粒子を化粧料として許容され得る分散媒中に分散させる工程を含む、方法。
【請求項18】
前記混合物を、c)において約80℃~約120℃までの範囲内の温度で約10時間~約20時間までの期間にわたって加熱する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの表面処理剤を、a)の前記溶液またはスラリーに添加し、前記表面処理剤が、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム、水添レシチン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記チタン酸塩結晶粒子の平均粒径D50が、2μm~約4.5μmの範囲内にある、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
請求項2に記載の分散体を含む化粧料。
【請求項22】
請求項3に記載の分散体を含む化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、チタン酸塩結晶粒子の分散体、前述の分散体および組成物を作製する方法、ならびにその使用に関する。本実施形態は、皮膚に対するカバー力が高く、かつ近赤外線/赤外線(NIR/IR)反射率が高く、前述の組成物は、化粧的に許容され得る分散媒に分散されている化粧料用粉体として使用されるチタン酸塩結晶を含む。分散体は、化粧料用組成物において皮膚の色むらを補正するためのファンデーションおよび/または組成物として有用であり得、いくらかの日光の曝露(NIR/IR)から皮膚を保護するために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
以下に提供した情報は、本発明の先行技術であることを認めておらず、本実施形態のより完全な理解を補助することのみを目的として提供されている。
【0003】
メーキャップ、スキンケア製品、洗面用化粧品、およびパーソナルケア業界によって販売および流通される他の製品を製造するために、相当量の種々の粉体が慣習的に使用されている。水性溶液、ウォータージェル、w/oおよびo/w製剤などの種々の製品中で分散された粉体は、分散性および製品安定性が低くなる場合があり、それにより集合物、凝集物、および綿状沈殿を形成し得る。これらの結果は、粉体の物理的性質(例えば、粒径、界面活性、電荷、極性、および比重が含まれる)に起因し得る。
【0004】
未処理の粉体は、いくつかの表面の性質(表面電荷、表面極性などが含まれる)によって容易に凝集する。この問題を解決し、それによって粉体の分散性および安定性を改善するために、種々の処理剤での表面処理が提案されている。粉体を表面処理するための薬剤および方法は、処理の目的に応じて変動する。処理剤は、処理すべき表面の性質およびその分散媒との相互作用を考慮して選択され得る。公知の方法には、例えば、油または金属セッケンでの親油化、表面活性剤またはシリカでの親水化処理、およびシリコーン油での疎水化が含まれる。
【0005】
近年、より滑らかな粘度を有する化粧持ち効果のある化粧料を得るための粉体が開発されている。これらの望ましい特性を得るために、粉体および顔料上の表面処理の疎水性、ならびに表面処理された粉体の油相への分散性の改良が大いに注目されている。しかしながら、粉体を化粧品(ファンデーション、口紅、ローション、日焼け止め、オイル、保湿液、またはクリームなど)に使用する場合、ほとんどの化粧料用粉体が親水性であるために、粉体は、典型的には、水相に分散されなければならない。非疎水性粉体を水相に分散させるために、複数の乳化剤が使用されることが多い。これらの乳化剤を使用しない場合、水系への分散は問題を起こすことになることが多い。しかしながら、乳化剤を使用すると、組成物が粘り気のある重たい感触になるので、不利であり得る。
【0006】
粉体の親和性は、粉体表面の特徴(粒径、特に、ナノサイズの粉体およびマイクロサイズの粉体、ならびに粉体のアスペクト比など)に依存する。皮膚および毛髪用の消費者製品で一般的に使用される基材上の親和性の高い残存粉体は、これらの粉体を完全に除去するためのさらなる洗浄工程または特殊な洗浄製品を必要とすることが多い。さらに、着色顔料および種々の無機基材(タルク、マイカなど)などの粉体を含むパーソナルケア製品は浴室表面を汚すことが多いため、洗浄が必要である。
【0007】
無機および有機の化粧料用粉体が皮膚に直接接触すると皮膚表面上の水分を吸収し、それにより天然の親水性と親油性のバランスが変化して局所的に脱水する場合があり、その結果としてこれらの製品を使用した消費者が不快になり得ることも知られている。さらに、使用した粉体の物理的特徴が相互に異なって均一性を欠くと、最終的に明確に知覚可能な欠点となり得る。したがって、化粧料用粉体は、典型的には、分散性、均一性、および安定性が改善され、皮膚との直接接触に起因する悪影響が軽減されるように粉体表面を改変するために処理される。
【0008】
一般的に利用され得る表面処理方法には様々なものがある。1つの方法では、シリコーン油(例えば、メチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、またはアルキル部分の炭素原子数が10以下であるアルキルシラン)を表面処理剤として溶媒に溶解し、次いで、粉体に添加して混合し、乾燥プロセス後に加熱することによって表面処理剤を粉体上に焼成する。別の方法では、粉体およびオクチルトリエトキシシランをメディアグラインダーを使用することによって有機溶媒に分散させる一方で、粉体表面をオクチルトリエトキシシランなどの有機ケイ素化合物で処理する(特許文献1)。別の方法は、ヘンシェルミキサーを使用してアルキルシラン化合物としてN-オクチルトリメトキシシランまたはN-オクチルトリエトキシシランを撹拌および混合する工程を含み、加熱下で粉末を用いて反応を完了させ、得られた処理済み粉体をハンマーミルによって粉砕する(特許文献2)。別の方法では、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどのシリコーン化合物を水中で分酸させることによって乳化し、粉体に乳剤を混合することによって粉体粒子表面をコーティングする(特許文献3)。
【0009】
特許文献4は、ジェット法を開示しており、この方法は、金属セッケン(水素基などの反応基がケイ素原子に結合した有機ケイ素化合物)および粉末を混合した後に、混合物を表面処理剤と同時に噴流を使用したミラーによって粉砕する。特許文献5は、粉体の分散度を改善するために、ジェット法によってA層およびB層のための表面処理剤でコーティングする方法を開示している。別の方法は、シリカ化合物を水、エタノール、およびアンモニア水と混合し、混合物中にチタニア粉体を分散させてプレミックス1を調製する工程を含む。別々に、テトラエトキシシラン、水、およびエタノールを混合してプレミックス2を調製した。プレミックス2を電磁撹拌機にて定速で2時間にわたって撹拌しながらプレミックス1に添加した。得られた混合物を、12時間熟成させた。コーティングの形成および熟成を、25℃で行った。その後に、溶液を吸引濾過し、濾液を、50℃の熱風で12時間乾燥させてシリカコーティングされた粉体を得た。このプロセスは、特許文献6(その開示全体が本明細書中で参考として援用される)に開示されている。
【0010】
特許文献7(その開示全体が本明細書中で参考として援用される)は、少なくとも1つのシリコーン油、少なくとも1つのシリコーンワックス、少なくとも1つのシリコーン樹脂、および任意の少なくとも1つのシリコーンゴム、および任意の少なくとも1つのフェニルジメチコンを含むシリコーン混合物を含む脂肪系結合剤と混合した固相の粉体を含む無水粉体からなる皮膚化粧料用組成物を開示している。
しかしながら、特許文献7では、無水粉体は、脂肪系結合剤によって物理的に処理される。したがって、特許文献7の化粧料用組成物では、粉末相と脂肪系結合剤との間に共有結合を持たないことが、粉末相から後者が容易に抽出されるという欠点をもたらす。また、特許文献7の化粧料用組成物では、粉末相コーティングは、シリコーンの複雑な混合物からなり、皮膚自体に異なる種類の感覚的な影響を及ぼす。
【0011】
特許文献8は、シリコーン化合物で表面コーティングした粉体を含む反応性シリコーンで処理した粉体を記載しており、ここで、シリコーン処理した粉体の表面上に残存したSi-H基由来の水素生成量が1gの処理済み粉体あたり0.2ml以下であり、水と処理した粉体との間の接触角が少なくとも100°である。しかしながら、反応性Si-H結合を含むメチルハイドロジェンポリシロキサンと特許文献8に記載の粉体表面との間の直接反応では完了に至ることができず、経時的にいくらかのH2が放出されるという不利益を有し、この不利益が得られた化粧料用粉体のいくつかの欠点の原因である。実際に、一方ではH2生成が粉体を運搬する容器を膨張および変質させ、他方では粉体自体が硬化および破壊し得る。
【0012】
レピドクロサイト型チタン酸カリウムマグネシウムなどのチタン酸塩結晶は、ブレーキパッドなどで使用される有用な摩擦材として記載されている。例えば、特許文献9および特許文献10(その開示全体が、本明細書中で参考として援用される)は、ブレーキパッド、クラッチフェーシング、およびディスクパッドなどにおける摩擦制御材として有用な式K0.5~0.7Li0.27Ti1.73O3.85~3.95、およびK0.2~0.7Mg0.4Ti1.6O3.7~4を有するレピドクロサイト粉末結晶を開示している。特許文献11は、光沢のある顔料および増量剤として使用することができ、かつ日焼け止め効果を付与する平均粒径が10~100μmのレピドクロサイト型の平らなチタン酸塩結晶粒子(K3xLixTi2-xO4、K2xMgxTi2-xO4、またはKxFexTi2-xO4(あらゆる場合において0.05≦x≦0.5))を開示している。この公報は、開示の範囲外の粒径を有するレピドクロサイト粉末結晶が皮膚刺激、紫外線遮蔽の低下、分散性の低下、ならびに光沢度および透明性の喪失を引き起こし得ることを開示している。
【0013】
特許文献12および特許文献13は、粉体表面に吸着するが化学的に結合していない非イオン性表面活性剤を用いた表面処理チタン酸塩粉体、および粉体の凍結乾燥を開示している。処理された粉体は、分散性が改善されたと言われる。
良好な分散性を示し、皮膚、爪、および毛髪を良好に被覆し、太陽光線の曝露に由来する有害な放射線からの保護が改善されたチタン酸塩結晶の粉体分散体が当該分野で必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平08-104606(JP,A)
【特許文献2】特開2001-181136(JP,A)
【特許文献3】特開平09-268271(JP,A)
【特許文献4】特公平06-59397(JP,B)
【特許文献5】特開2002-80748(JP,A)
【特許文献6】米国特許第6,534,044号
【特許文献7】米国特許第5,496,544号
【特許文献8】欧州特許第1116753号
【特許文献9】米国特許第7,078,009号
【特許文献10】米国特許第7,307,047号
【特許文献11】特開2008-162971
【特許文献12】日本特許第4680757号
【特許文献13】日本特許第4687588号
【発明の概要】
【0015】
第1の態様によれば、1つの実施形態は任意に表面処理されたチタン酸塩結晶粒子粉体分散体に関し、ここで、前述のチタン酸塩結晶粒子は、約10μm未満の平均粒径を有し、任意に、その表面に表面処理剤が化学結合している。1つの実施形態では、チタン酸塩結晶粒子は、K0.5~0.8Li0.27Ti1.73O3.85~4、K0.2~0.8Mg0.4Ti1.6O3.7~4、およびK0.5~0.8Fe0.8Ti1.6O3.85~4から選択される。別の実施形態では、チタン酸塩結晶粒子の表面に化学結合された表面処理剤は、チタン酸塩結晶粒子の表面を処理を行わなかった場合よりも疎水性にする(親水性を低くする)疎水性表面処理剤である。実施形態で有用な種々の疎水性表面処理剤には、例えば、シリコーン、脂肪酸、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、N-アシルアミノ酸、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、鉱油、リン脂質、ステロール、炭化水素、ポリアクリレート、およびこれらの混合物が含まれる。チタン酸塩結晶粒子粉体は、化粧的に許容され得る分散媒に分散されている。
【0016】
実施形態の別の特徴によれば、チタン酸塩結晶粒子の分散体を作製する方法であって、(a)疎水性表面処理剤を任意に含む水溶液を調製する工程;(b)水溶液に、約5μm未満の平均粒径を有する少なくとも1つのチタン酸塩結晶粒子を撹拌しながら添加して、水性混合物中の粒子を均一に分散させる工程;(c)任意に金属含有塩を添加して水性混合物を中和し、疎水性表面処理剤を少なくとも1つのチタン酸塩結晶粒子の表面上に化学的に固定する工程;(d)水性混合物からチタン酸塩結晶粒子を分離する工程;および(e)チタン酸塩結晶粒子を化粧的に許容され得る分散媒中に分散させる工程を含む、方法を提供する。また、この方法は、分離後および分散前に乾燥させる工程を含み得る。
【0017】
他の実施形態によれば、(a)少なくとも1つの任意に表面処理したチタン酸塩結晶粒子;および(b)化粧的に許容され得る分散媒を含む化粧料用分散体を提供する。他の実施形態によれば、高濃度の表面処理したチタン酸塩結晶粒子を有する表面処理したチタン酸塩結晶粒子の分散体を含む化粧料用分散体を提供する。
【0018】
本明細書中に記載の実施形態は、カバー力、均一性、および皮膚に塗布したときの化粧のりが改善された化粧料用粉体分散体を提供する。実施形態のさらに他の態様および利点は、以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかとなるであろう。ここで、特に好ましい実施形態を、単に例示を目的として示し、説明する。理解されるように、好ましい実施形態は、他の異なる実施形態を含み、そのいくつかの詳細は、種々の明白な点において修正することができる。したがって、説明は事実上例示と見なされ、限定的とは見なされないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施例5由来の赤外反射(IR)強度データを示す。
【0020】
【
図2】
図2は、実施例7由来の赤外反射(IR)強度データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の定義および非限定的なガイドラインを、本明細書の詳細な説明のより深い理解を補助するために提供する。本明細書中で使用される見出し(「背景」および「概要」など)および小見出しは、実施形態の開示内の題目を一般的に整理することのみを意図し、本発明を制限することを意図しない。例えば、「背景」に開示の発明の対象は、実施形態の範囲内のテクノロジーの態様を含む場合があり、先行技術の引用を構成しないこともある。「概要」に開示の発明の対象は、実施形態の全範囲の網羅的または完全な開示ではない。特定の有用性を有する(例えば、「活性材料」または「担体」の成分である)という本明細書の節内の材料の分類または考察は便宜上行われており、前述の材料が任意の所与の組成で使用された場合に本明細書中の分類に従って必ずまたは専ら機能しなければならないと推断すべきではない。
【0022】
本明細書中の参考文献の引用は、前述の参考文献が先行技術であるか、本明細書中に開示の実施形態の特許性に任意に関連することを容認しない。背景で引用された参考文献の内容の任意の考察は、参考文献の著者による主張の一般的概要を提供することのみを意図し、かかる参考文献の内容が正確であると容認するものではない。
【0023】
説明および具体例は、実施形態を示しているが、例示のみを目的とし、本発明の制限を意図しない。さらに、記載の特徴を有する複数の実施形態の記載事項は、さらなる特徴を有する他の実施形態、または記載の特徴の異なる組み合わせを組み込んだ他の実施形態を排除することを意図しない。実施例は、他の意味を明確に示さない限り、本明細書中に記載の分散体および方法をどのように作製および使用するのかを例示するために提供し、所与の実施形態の作製または試験が行われたか、行われなかったかを示すことを意図しない。
【0024】
本明細書中で使用される場合、用語「好ましい」および「好ましくは」は、ある特定の環境下である特定の利点を付与する実施形態を指す。しかしながら、同一または他の環境下で他の実施形態も好ましい場合がある。さらに、1つまたは複数の好ましい実施形態の記載事項は、他の実施形態が有用でないことを意味せず、その範囲から他の実施形態を排除することを意図しない。さらに、組成物および方法は、本明細書中に記載の要素を含み得るか、から本質的になり得るか、からなり得る。
【0025】
本明細書を通して使用される場合、範囲は、範囲内のありとあらゆる値を説明するための省略法として使用される。範囲内の任意の値を、範囲の終点として選択することができる。さらに、本明細書中で引用した全ての参考文献は、その全体が本明細書中で参考として援用される。本開示中の定義と引例の定義との間に矛盾がある場合、本開示を優先する。
【0026】
この説明を通して、用語「約」または「およそ」の使用は、前述の用語で修飾された数値、および前述の用語由来の妥当な偏差(測定値の標準誤差が含まれる)を含む数の近似値を示すことを意図する。別段の指定がない限り、本明細書中および本明細書中の他所に示した全ての百分率および量は、重量を基準にした百分率を指すと理解すべきである。提供した量は、材料の活性重量に基づく。本明細書中の特定値の記載は、測定のエラーを考慮するために値から変動率を加算するか差し引くことを意図する。例えば、10%または約10%の量は、当業者が認識し、理解すると考えられる測定のエラーを考慮して、9.5%または10.5%を含み得る。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「化粧料用組成物」は、皮膚のコンディションの制御ならびに/または皮膚、毛髪、および爪の外観の改善のために、消費者の皮膚上、特に、顔の皮膚上または身体の皮膚領域上または毛髪および爪上に塗布されることを意図する組成物を意味する。数値の修飾語を用いない用語「粉体」は、化粧料のために使用される約0.01マイクロメートルから100マイクロメートルまでの範囲内の粒径を有する任意の材料を示す。粉体の「一次粒子の平均粒径」という用語は、処理した単体粉体の等価体積平均一次粒子粒径を示す。一次粒子の平均粒径を、処理前の粉体に対して測定する。
【0028】
この説明を通して、用語「ファンデーション」は、カバー力を提供し、そして/または皮膚の不規則性ならびに/または皮膚、毛髪、および爪の不完全性ならびに/または皮膚および爪の色調の変動をマスクするために、消費者の皮膚上、特に、顔の皮膚、身体の皮膚、毛髪、または爪上に塗布されることを意図する化粧料用組成物を意味する。用語「白浮き」は、皮膚、特により暗い皮膚に塗布した後に皮膚上に認められる白い色合いを意味する。用語「厚塗り」は、皮膚、特により明るい皮膚に塗布した後に皮膚上に認められ得る白い色合いを意味する。
【0029】
別段の指定がない限り、本明細書中の全ての百分率、比、および割合は重量を基準にしている。別段の指定がない限り、列挙した成分に関連する全てのかかる重量は、活性レベルに基づく。
【0030】
本明細書中に記載の特徴のうちの1つは、チタン酸塩結晶粒子が約10μm未満、好ましくは5μm未満の平均粒径を有し、任意に、その表面に化学結合された表面処理剤を有する化粧料用組成物に有用な任意に表面処理したチタン酸塩結晶粒子粉体分散体である。1つの実施形態では、チタン酸塩結晶粒子は、K0.5~0.8Li0.27Ti1.73O3.85~4、K0.2~0.8Mg0.4Ti1.6O3.7~4、およびK0.5~0.8Fe0.8Ti1.6O3.85~4から選択される。チタン酸塩結晶粒子の表面に化学結合され得る任意の表面処理剤は、チタン酸塩結晶粒子の表面を処理を行わなかった場合よりも疎水性にする(親水性を低くする)疎水性表面処理剤であり得る。本明細書中に記載の実施形態は、未処理および表面処理したチタン酸塩結晶粒子の分散体の両方を含み、表面処理したチタン酸塩結晶粒子の分散体が特に好ましい。
【0031】
本明細書中に記載のさらなる特徴は、表面処理したチタン酸塩結晶粒子の分散体を作製する方法であって、(a)少なくとも1つの疎水性表面処理剤を任意に含む水溶液を調製する工程;(b)水溶液に、約10μm未満の平均粒径を有する少なくとも1つのチタン酸塩結晶粒子を撹拌しながら添加して、水性混合物中の粒子を均一に分散させる工程;(c)任意に金属含有塩を添加して水性混合物を中和し、疎水性表面処理剤を少なくとも1つのチタン酸塩結晶粒子の表面上に化学的に固定する工程;(d)水性混合物から任意に表面処理したチタン酸塩結晶粒子を分離する工程;および(e)チタン酸塩結晶粒子を化粧的に許容され得る分散媒中に分散させる工程を含む、方法である。また、この方法は、分離後および分散前に乾燥させる工程を含み得る。
【0032】
実施形態の別の特徴によれば、表面処理したチタン酸塩結晶粒子の分散体を作製する方法であって、(a)約10μm未満の平均粒径を有するチタン酸塩結晶粒子の水溶液を調製する工程;(b)水溶液に、少なくとも1つの疎水性表面処理剤を撹拌しながら添加して、水性混合物中にチタン酸塩結晶粒子および疎水性表面処理剤を均一に分散させる工程;(c)任意に金属含有塩を添加して水性混合物を中和する工程;(d)疎水性表面処理剤を少なくとも1つのチタン酸塩結晶粒子の表面上に化学的に固定する工程;(e)水性混合物から表面処理したチタン酸塩結晶粒子を分離する工程;および(f)チタン酸塩結晶粒子を化粧的に許容され得る分散媒に分散させる工程を含む、方法を提供する。また、この方法は、分離後および分散前に乾燥させる工程を含み得る。
【0033】
本明細書中に記載の別の特徴は、(a)少なくとも1つの任意に表面処理したチタン酸塩結晶粒子;および(b)化粧的に許容され得る分散媒を含む化粧料用分散体に関する。他の実施形態によれば、高濃度の表面処理したチタン酸塩結晶粒子を有する表面処理したチタン酸塩結晶粒子の分散体を含む化粧料用分散体を提供する。
【0034】
チタン酸塩結晶粒子を、当該分野で公知の技術にしたがって調製することができる。例えば、かかる粒子の作製方法は、米国特許第7,078,009号および同第7,307,047号(その開示全体が、本明細書中で参考として援用される)に記載されている。粒子を、カリウム、リチウム、マグネシウム、チタン、および鉄の供給源を適切なモル量で混合し、次いで、融剤を添加し、その後に高温で加熱することによって調製することができる。次いで、生成された粒子を粉にし、水または他の好適な液体に分散させて、水性スラリーを形成し得る。次いで、水性スラリーに酸を添加し、スラリーから固体を分離し、高温で加熱してチタン酸塩結晶粒子を生成し得る。次いで、これらの粒子を、必要応じて適切なサイズに粉砕し得る。
【0035】
カリウム供給源を、熱に曝露された場合に酸化カリウムを生成する化合物から選択することができ、その具体例には、酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、および硝酸カリウムなどが挙げられる。かかるカリウム供給源は、単独または任意の組み合わせで使用してよく、カリウム供給源は、少量の他のアルカリ金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物、および硝酸塩のうちの1つまたは複数と組み合わせて使用してよい。マグネシウム供給源には、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、およびフッ化マグネシウムなどが含まれる。かかるマグネシウム供給源を、単独または任意の組み合わせで使用してよい。リチウム供給源の例には、水酸化リチウム、炭酸リチウム、およびフッ化リチウムなどが含まれる。かかるリチウム供給源を、単独または任意の組み合わせで使用してよい。鉄供給源には、同様に、酸化鉄、炭酸鉄、水酸化鉄、および硝酸鉄などが含まれる。チタン供給源を、任意のチタン供給源(酸化チタン含有化合物が含まれる)から選択することができ、その具体例には、酸化チタン、ルチル鉱石、水酸化チタン湿性ケーク、および含水チタニアなどが含まれる。かかるチタン供給源を、単独または任意の組み合わせで使用してよい。
【0036】
チタン酸リチウム結晶を調製する場合、カリウム、リチウム、およびチタンの供給源を、これらの適切なモル比で(各々、±10%まで逸脱可能)好適な混合装置中にて混合することができる。特に好ましいチタン酸リチウム結晶は、以下の式を有する:K0.5~0.8Li0.27Ti1.73O3.85~4。
【0037】
チタン酸マグネシウム結晶を調製する場合、カリウム、マグネシウム、およびチタンの供給源を、これらの適切なモル比で(各々、±10%まで逸脱可能)好適な混合装置中にて混合することができる。特に好ましいチタン酸マグネシウム結晶は以下の式を有する:K0.2~0.8Mg0.4Ti1.6O3.7~4。
【0038】
K0.5~0.8Fe0.8Ti1.6O3.85~4を調製する場合、カリウム、鉄、およびチタンの供給源を、これらの適切なモル比で(各々、±10%まで逸脱可能)好適な混合装置中にて混合することができる。
【0039】
それぞれの構成要素を共に混合した後、好適な融剤を混合物に添加することができる。融剤の例には、塩化カリウム、フッ化カリウム、モリブデン酸カリウム、およびタングステン酸カリウムなどが含まれる。これらの融剤のうちで、塩化カリウムが特に好ましい。融剤を、原料に約3:0.5から約3:20まで、または約3:1から約3:15まで、または約3:3.5~3:10のモル比(原料:融剤)で添加し得る。
【0040】
次いで、原料および融剤を、混合物の加熱に好適な任意の装置を使用して、高温で加熱するか、焼成する。混合物を、約800~約1,500℃の間、または約900から約1,200℃まで、または約1,000から約1,100℃までの温度に加熱し得る。約30分間から約2日間まで、または約1時間から約24時間までの期間にわたって加熱し得る。加熱温度を、任意の速度で上下させ得るが、一般に、約3~約7℃/分の速度で調整する。加熱後、生成物を湿式で粉末化し得る。具体的には、生成物を、ジョークラッシャおよびビンミルなどを使用して破砕および磨鉱し、水中に分散させ、5~10重量%(約1から約30重量%まで、または約2から約25重量%までの濃度)の水性スラリーの形態で撹拌し得る。
【0041】
次いで、酸を水性スラリーに添加し得る。無機酸(硫酸、塩酸、および硝酸など);および有機酸(酢酸など)などから選択される酸が含まれる、任意の好適な酸を使用し得る。かかる酸を、必要に応じて組み合わせて使用し得る。酸を、水性スラリーのpHをpH6~8、またはpH6.5~7.5に維持するのに十分な量で水性スラリーに添加し得る。水性スラリーのpHを、一般に、酸の添加後および撹拌約1~約5時間後に測定することができる。酸を、一般に、水溶液の形態で使用する。酸水溶液の濃度は、特に指定されず、広い範囲から好適に選択され得る。濃度を、一般に、およそ1~80重量%の範囲で維持し得る。
【0042】
好適なpHに到達した時点で、次いで、スラリー中に存在する固体を、当該分野で公知の任意の分離技術(例えば、濾過および遠心分離などが含まれる)を使用して分離することができる。次いで、チタン酸塩結晶粒子を含む分離した固体を、洗浄し、乾燥させ、次いで、さらなる加熱および焼成プロセスに供することができ、約300~約1,000℃の間、または約350から約900℃まで、または約400から約700℃までの温度に加熱し得る。約30分間から約1日間まで、または約1時間から約12時間までの期間にわたって加熱し得る。加熱後、次いで、得られたチタン酸塩結晶粒子を、細分化に供するか、粉砕するか、約10μm未満の平均粒径を有するチタン酸塩結晶粒子を得るのに好適な篩を通過させることができる。
【0043】
次いで、このようにして生成されたチタン酸塩結晶粒子を、表面処理剤が粒子の表面上に化学的に固定されるように、表面処理剤で任意に表面処理することができる。1つの実施形態では、表面処理剤は疎水性表面処理剤であり、化学的固定は、典型的には金属を介してチタン酸塩結晶粒子の表面と表面処理剤との間に形成された結合に起因する。疎水性表面処理剤のチタン酸塩結晶への化学的連結または固定は、表面処理された材料がより均一に化学結合した反応生成物を有するという点で吸着と異なる。化学的連結または固定は、修飾されたチタン酸塩結晶粒子の表面上に連結または付着した任意の材料の移動および/または再配列を軽減する傾向がある。例えば、チタン酸塩結晶粒子の表面に連結または付着した疎水性表面処理剤は、吸着によってチタン酸塩結晶粒子の表面に連結または付着した処理剤よりも移動度が低いであろう。
【0044】
チタン酸塩結晶粒子への表面処理剤の固定を促進または増強するために、親油性部分または疎水性部分を有する水溶性化合物をチタン酸塩結晶粒子の表面上に吸収させることによって反応させ得る。この部分は、個別に添加した構成要素(金属含有塩など)に由来し得るか、表面処理剤の表面上に存在し得る。非限定的な例として、多価金属の水溶性塩(マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、チタン、亜鉛、またはジルコニウムの塩(例えば、硫酸ジルコニウムまたは塩化ジルコニウム)など)、またはアルカリ塩(ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、またはアミンの塩など)を添加することによって化学的連結を得ることができる。これらの金属は、典型的には、塩(硫酸塩(例えば、硫酸アルミニウムなど)など)の形態で存在する。多価金属の水溶性塩を添加した場合、例えば、表面処理剤とチタン酸塩結晶粒子の表面との間に化学結合が得られる場合がある。この反応により、チタン酸塩結晶粒子の表面上に化学的に固定された表面処理剤が得られる。対照的に、表面処理剤での基材、顔料、または他の粒子の従来のコーティングは、基材、顔料、または他の粒子の表面上に表面処理剤を吸収させる工程を含む。
【0045】
表面修飾後、次いで、表面処理したチタン酸塩結晶粒子を、別の(例えば、第2の)粉末材料(異なる顔料、または基材もしくは増量剤、チタン酸塩結晶粒子など)、または別の化粧的に許容され得る成分(油、乳化剤、結合剤など)と混合するかブレンドすることができる。第2の材料は、表面処理剤で処理されていても、処理されていなくてもよい。あるいは、2つまたはそれを超える表面を修飾されたか処理された材料を同時に生成するために、2つまたはそれを超える材料(例えば、異なる有色顔料)を、例えば水性スラリー中で表面処理剤との接触前に組み合わせるか混合し、次いで、疎水性表面処理剤と接触させることができる。
【0046】
表面が少なくとも1つの疎水性表面処理剤またはその塩で修飾されているチタン酸塩結晶粒子は、通常、化粧料用組成物中のチタン酸塩結晶の分散度を改善し、そして皮膚上の拡散能を改善して化粧品のカバー力を改善するために、チタン酸塩結晶粒子の表面をより疎水性にするのに十分な平均処理比を有するであろう。本発明の水系スラリー組成物中で使用するための表面処理剤の量および生産方法は、生産すべき化粧料製品、メーキャップ製品、パーソナルケア製品、もしくは他の製品、または製造方法に応じて変動するであろう。例えば、表面処理剤を、チタン酸塩結晶材料の重量に基づいて少なくとも0.1重量%(wt%)の量で使用し得る。表面処理剤は、典型的には、約0.1重量%から約200重量%まで;または約1.0重量%から約60重量%まで;または約1.0重量%から約30重量%まで;または約1.0重量%から約20重量%まで、または約1.0重量%から約5重量%までの範囲の量で存在する。また、比較的少量の表面処理剤を使用することができる(例えば、0.5、1.5、2.0、および3.0%など)。
【0047】
好適な疎水性表面処理剤は、チタン酸塩結晶粒子の表面を処理を行わなかった場合よりも疎水性にする(親水性を低くする)疎水性表面処理剤である。前述の実施形態で有用な種々の疎水性表面処理剤には、例えば、シリコーン、脂肪酸、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、N-アシルアミノ酸、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、鉱油、リン脂質、ステロール、炭化水素、ポリアクリレート、およびこれらの混合物が含まれる。
【0048】
疎水性を示す部分を有する例示的な表面処理剤には、式I~VIIIの構造および塩が含まれる:
【化1】
式中、
R
3は、アルキル基、アルキルアミド基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、シクロアルキル基、アリールアルキル基であり、これらの全ては、1つまたは複数のヒドロキシ基に置換されてよく、1つまたは複数のアルコキシル基、カルボキシル基、またはオキソ基にさらに置換されてよく;
R
1は、8~24個の炭素(C
8~C
24)であり;
Mは、水素、または金属もしくはその等価物(トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、リジンなどの有機塩基)である。
【化2】
式中、
R
4およびR
5は、各々独立して、アルキル基、アルキルアミド基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、アミノ酸基であり、これらの全ては、1つまたは複数のヒドロキシ基に置換されてよく、1つまたは複数のアルコキシル基、カルボキシル基、またはオキソ基にさらに置換されてよく;
R
4は、8~24個の炭素(C
8~C
24)であり;
R
10は、水素またはメチルであり;
Mは、水素、または金属もしくはその等価物(トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、リジンなどの有機塩基)である。
【化3】
式中、
R
3は、アルキル基、アルキルアミド基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、シクロアルキル基、アリールアルキル基であり、これらの全ては、1つまたは複数のヒドロキシ基に置換されてよく、1つまたは複数のアルコキシル基、カルボキシル基、またはオキソ基にさらに置換されてよく;
あるいは、R
3は、8~24個の炭素(C
8~C
24)であり;
Mは、水素、または金属もしくはその等価物(トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、リジンなどの有機塩基)である。
【化4】
式中、
R
1およびR
2は、アルキル基、アルキルアミド基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、シクロアルキル基、アリールアルキル基であり、これらの全ては、1つまたは複数のヒドロキシ基に置換されてよく、1つまたは複数のアルコキシル基、カルボキシル基、またはオキソ基にさらに置換されてよく;
R
1およびR
2は、各々独立して、8~24個の炭素(C
8~C
24)であり;
R
3およびR
4は、アミノ酸残基部分であり;
R
5およびR
6は、アルキル基、アルキルアミド基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、シクロアルキル基、アリールアルキル基であり、これらの全ては、1つまたは複数のヒドロキシ基に置換されてよく、1つまたは複数のアルコキシル基、カルボキシル基、またはオキソ基にさらに置換されてよく;
R
3、R
4、およびR
6のうちの少なくとも1つは、カルボキシル基を有し、その構造は、金属(ナトリウム、カリウムなど)またはその等価物;有機塩基(トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、リジンなど)である酸形態または塩形態のいずれかである。
【化5】
式中、
R
1およびR
2は、各々独立して、アルキル基、アルキルアミド基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、シクロアルキル基、アリールアルキル基であり、これらの全ては、1つまたは複数のヒドロキシ基に置換されてよく、1つまたは複数のアルコキシル基、カルボキシル基、またはオキソ基にさらに置換されてよく;
あるいは、R
1およびR
2は、各々独立して、8~24個の炭素(C
8~C
24)であり;
Mは、水素、または金属もしくはその等価物(トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、リジンなどの有機塩基)である。
【化6】
式中、
R
1およびR
2は、各々独立して、アルキル基、アルキルアミド基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、シクロアルキル基、アリールアルキル基であり、これらの全ては、1つまたは複数のヒドロキシ基に置換されてよく、1つまたは複数のアルコキシル基、カルボキシル基、またはオキソ基にさらに置換されてよく;
あるいは、R
1およびR
2は、各々独立して、8~24個の炭素(C
8~C
24)であり;
Mは、水素、または金属もしくはその等価物(トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、リジンなどの有機塩基)である。
【化7】
式中、
R
1は、アルキル基、アルキルアミド基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、シクロアルキル基、アリールアルキル基であり、これらの全ては、1つまたは複数のヒドロキシ基に置換されてよく、1つまたは複数のアルコキシル基、カルボキシル基、またはオキソ基にさらに置換されてよく;
あるいは、R
1は、8~24個の炭素(C
8~C
24)であり;
Xは、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、イソブトキシなど)またはハロゲン(Cl、Brなど)である。
【化8】
式中、
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、およびR
9は、各々独立して、アルキル基、アルキルアミド基、アルケニル基、アルキルニル基、アルコキシ基、アリール基、シクロアルキル基、またはアリールアルキル基であり、これらの全ては、1つまたは複数のヒドロキシル基、アルキオキシル基、カルボキシル基、またはオキソ基に置換されてよく;
nは、1から60までの整数である。
【0049】
上記化合物のうちのいずれかの置換基Mは、水素または金属もしくはその等価物のいずれかを表すことができる。Mが水素である場合、カルボキシル基を形成し、したがって化合物上に存在する;金属またはその等価物を示す場合、カルボキシル基の塩を形成し、したがって化合物中に存在する。任意の塩と同様に、金属または等価物は全体として正電荷を保持し、酸素は全体として負電荷を保持する。例示的な金属には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、および亜鉛が含まれ;金属等価物には、アミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、およびアンモニウムなど)、および有機塩基(リジンおよびアルギニンなど)が含まれる。
【0050】
本明細書中に記載の置換基としてのアルキル基、アルキルアミド基、アルケニル基、アルキルニル基、およびアルコキシ基は、例えば、1~24個の炭素原子を有するアルキル基に基づくことができる。かかる置換基は、より少ない(例えば、1~20、1~16、1~12、1~6個の)炭素原子(6~24個またはそれ未満の炭素原子(例えば、6~10個の炭素原子)を含むアリール基、シクロアルキル基、およびアリールアルキル基など)であり得る。
【0051】
2またはそれを超える表面処理剤(その各々がチタン酸塩結晶粒子の表面上に任意に化学的に固定されている)が存在する特定の実施形態では、第1および第2の表面処理剤を、前述の表面処理剤のうちのいずれかから選択することができる。したがって、例えば、第1および第2の表面処理剤は、式I~VIIIのいずれかの任意の組み合わせであり得る。
【0052】
表面処理材として有用なシリコーンの例には、ジメチコン、シクロメチコン、ジメチコノール、ジメチコンコポリオール、ジメチコンコポリオールアセテート、ジメチコンコポリオールブチルエーテル、ジメチコンコポリオールメチルエーテル、およびこれらの混合物が含まれる。これらのシリコーンのフッ化物、フェニル置換物、および置換誘導体も有用である。表面処理材として有用な脂肪酸の例には、1つまたは複数の不飽和部位を含むことができるC10~50直鎖または分枝鎖脂肪酸が含まれる。脂肪酸の具体例には、カプリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、およびこれらの混合物が含まれる。脂肪酸の金属塩(すなわち、セッケン)も本明細書中で有用である。有用な脂肪酸の金属塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウム、チタン、およびこれらの混合物が含まれる。表面処理材として有用なタンパク質の例には、コラーゲン、キチン、カゼイン、エラスチン、シルク、およびこれらの混合物が含まれる。ペプチドの例には、タンパク質が各々が1つまたは複数のアミノ酸を含む断片の混合物に分解されている前述のタンパク質の部分的に加水分解された形態が含まれる。
【0053】
表面処理材として有用なアミノ酸の例には、天然に存在するアミノ酸、そのN-メチル誘導体、およびこれらの混合物のうちのいずれかが含まれる。これらの材料の塩も有用である。好ましい塩は、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、チタン、およびこれらの混合物からなる群から選択される塩であり、アルミニウムが最も好ましい。表面処理材として有用なN-アシルアミノ酸の例には、アミノ基がC10~50直鎖または分枝鎖脂肪酸に由来する部分でアシル化されている前述のアミノ酸、そのN-メチル誘導体、またはその塩のうちのいずれかが含まれる。特に好ましいN-アシルアミノ酸は、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウムである。
【0054】
表面処理材として有用なモノ-、ジ-、およびトリグリセリドの例には、分子の脂肪酸部分がC10~50直鎖または分枝鎖脂肪酸に由来するものが含まれる。表面処理材として有用な鉱油の例には、鉱油、ペトロラタム、およびこれらの混合物が含まれる。表面処理材として有用なリン脂質の例には、レシチン(ホスファチジルコリンとしても公知)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジル-セリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジル酸、およびこれらの混合物が含まれる。例示的なレシチンは水添レシチンである。表面処理材として有用なステロールの例には、コレステロールおよびエステルの酸部分がC1~30直鎖または分枝鎖脂肪酸に由来するコレステロールエステルが含まれる。
【0055】
表面処理材として有用な炭化水素の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、スクアラン、スクアレン、およびこれらの混合物が含まれる。ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリイソブチレンのフッ化誘導体も有用である。
表面処理材として有用なポリアクリレートの例には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエタクリル酸、およびこれらの混合物が含まれる。
【0056】
特に好ましい表面処理剤には、セッケン(脂肪酸/アルキルカルボン酸塩)、ヒドロキシ脂肪酸、アルキルスルファート、アルキルエーテルホスファート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルファート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボキシラート、アルキルエーテルホスファート、アシルN-メチルタウラート、N-アシルアミノ酸塩(グルタマート、サルコシナート、ララニナート、グリシナート、B-アラニナート)、アシルペプチド(アシルコラーゲン、アシルシルクタンパク質)、ヤシ脂肪酸ナトリウム、ステアリン酸、イソ-ステアリン酸、パルミチン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、12-ヒドロキシステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチルリン酸ナトリウム、ミリストイルサルコシン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチルカルボン酸ポリオキシエチレン、ミリスチン酸カリウム、グルコン酸亜鉛、イソステアリルセバシン酸、ミリストイルタウリン酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム、ココイルグルタミン酸二ナトリウム、ラウリルグリシン酸アルギニン、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウムが含まれる。実施形態での使用に特に好ましい疎水性表面処理剤はシリコーンである。
【0057】
他の好適な表面処理剤には、例えば、米国特許第6,887,494号、米国特許出願公開第2008/0299158号、同第2011/0318286号(その開示全体が、本明細書中で参考として援用される)に開示の表面処理剤のうちの1つまたは複数が含まれ得る。
【0058】
表面修飾したチタン酸塩結晶粒子を、少なくとも水およびチタン酸塩結晶粒子を混合して混合物を形成させることによって水溶液を調製することにより調製することができる。油(軟化剤)などの結合剤を、スラリーに添加し(例えば、100部のチタン酸塩結晶粒子あたり1~180部の油)、分散させ得る。1つまたは複数の表面処理剤またはその塩を、均一に分散された均質化された粉体混合物に混合物を均質化するために高速で分散させてスラリーまたは溶液にする(例えば、100部のチタン酸塩結晶粒子あたり約0.5~約400部の表面処理剤)。次いで、均質化された粉体混合物を、チタン酸塩結晶粒子の表面への表面処理剤の官能基の連結を補助するための1つまたは2つの多価金属の水溶性塩(アルカリ土類金属、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、亜鉛、またはジルコニウムの硫酸塩または塩化物など)の化学的等価物と接触させ、それにより、少なくとも1つの表面処理剤をチタン酸塩結晶粒子の表面に化学的に固定させることができる。表面処理後、必要に応じて、表面修飾されたチタン酸塩結晶粒子を、任意に脱水およびリンスして任意の二次塩および副生成物を除去する。それにより、濾過ケークが生成され、これを任意にさらに脱水して、乾燥減量(LOD)約10%未満(例えば、5%LOD、または3%LOD)の「粉体」にし得る。
【0059】
チタン酸塩結晶粒子の表面処理で有用な他の技術には、チタン酸塩結晶粒子および表面処理剤、(例えば、トリエトキシカプリリルシランなど)を分散させ、次いで、約75℃から約200℃までの範囲内、または100℃超の高温で分散体を加熱して、表面処理剤とチタン酸塩結晶粒子の表面との間に化学結合を形成させる工程を含む。本明細書中に記載の表面修飾されたチタン酸塩結晶粒子を調製するために使用することができる顔料および他の化粧料用粉体を表面処理するさらなる方法は、例えば、米国特許第4,606,914号;同第4,622,074号;および同第5,368,639号(その開示全体が、本明細書中で参考として援用される)に開示されている。前述の文献中に開示の具体的な方法を、以下に簡潔に記載する。
【0060】
N-アシルアミノ処理剤での処理は、米国特許第4,606,914号に開示されており、次の通りである。第1に、水中にチタン酸塩結晶粒子を分散させて、約5重量%から30重量%までの懸濁液を形成させる。この懸濁液に、N-アシルアミノ酸水溶性塩(ステアロイルグルタミン酸二ナトリウムなど)を、チタン酸塩結晶粒子に対して約0.5~10重量%、好ましくは1~4重量%の量で添加し、撹拌して、均一な懸濁液を形成させる。そのような処理により、チタン酸塩結晶粒子(すなわち、チタン酸塩結晶粒子の一次粒子の前処理を促進する。この懸濁液を撹拌しながら、約1~30重量%、好ましくは約5~約10重量%の上述のAl、Mg、Ca、Zn、Zr、および/またはTiの水溶性塩を、水溶性金属塩がN-アシルアミノ酸水溶性塩に対して約0.65~約2モル当量、好ましくは約1~約1.2モル当量であるような量で、徐々に滴下する。それにより、N-アシルアミノ酸水溶性塩は、Al、Mg、Ca、Zn、Zr、および/またはTiの水溶性金属塩と反応して、N-アシルアミノ酸金属塩がチタン酸塩結晶粒子の表面上に首尾よく配向して吸着する。Al、Mg、Ca、Zn、Zr、および/またはTiの水溶性塩の添加後に、撹拌を約10分間継続し、その後に熟成させる。次いで、遠心分離機によって濃縮し、80℃~120℃で乾燥させ、それにより、表面修飾されたチタン酸塩結晶粒子が生成される。
【0061】
米国特許第4,622,074号に開示の水添レシチンでのチタン酸塩結晶粒子表面の処理方法の例を以下に示す。処理すべきチタン酸塩結晶粒子を、水に分散させる。次いで、水添レシチンを、0.3~10重量%の水添レシチンの割合で添加し、混合物を完全に溶解するか乳化するまで加熱しながら強く撹拌する。この時点で、水添レシチンの一部がチタン酸塩結晶粒子の表面上に吸着される。水添レシチンの吸着を完全にするために、1~30重量%のAl、Mg、Ca、Zn、Zr、およびTiの水溶性塩の水溶液を、水添レシチンに対して0.1~2当量の塩の割合を得るのに十分な量で滴下し得る。かかる金属塩の例には、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウムカリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ硫酸チタン、および塩化チタンが含まれる。添加した金属塩が水添レシチンと反応して水不溶性反応生成物を形成し、この生成物がチタン酸塩結晶粒子の表面上に吸着する。この実施形態では、中性脂肪(卵黄油および他の油など)は、チタン酸塩結晶粒子の表面上の水添レシチンの金属塩と同時に吸着する。次いで、所望の表面修飾されたチタン酸塩結晶粒子を、遠心分離機中で反応混合物から水を除去し、約5時間から約25時間まで、または約10時間から約20時間までの範囲の期間にわたって80℃~120℃で乾燥させた後に得ることができる。水添レシチンの吸着量は、チタン酸塩結晶粒子のサイズに依存する。通常、粒子のサイズが小さいほどより厚いコーティングが得られる。
【0062】
米国特許第5,368,639号に開示のジメチコンでチタン酸塩結晶粒子の表面を処理する例示的な方法を以下に示す。この実施形態によれば、ジメチコン処理したチタン酸塩結晶粒子を、ジメチコン、ジメチコンを溶解する有機溶媒、およびチタン酸塩結晶粒子を混合し、混合物を加熱によって乾燥させることによって生成することができる。ジメチコンを、処置すべきチタン酸塩結晶粒子の約0.1重量%から約30重量%まで、または2~5重量%の量で使用することができる。有機溶媒(例えば、エーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、脂肪族炭化水素、アルコール、およびこれらの混合物)を、チタン酸塩結晶粒子の約1~50重量%の量で使用することができる。構成要素をミキサーに入れるか、チタン酸塩結晶粒子および溶媒の混合物上にジメチコンを噴霧することによって混合し得る。次いで、チタン酸塩結晶粒子の耐熱性および使用した溶媒のタイプを考慮して、混合物を、好適な温度に加熱して溶媒を除去することができる。
【0063】
次いで、このようにして調製した表面修飾したチタン酸塩結晶粒子または表面修飾されていないチタン酸塩結晶粒子から分散体を形成し、従来の化粧料用添加物を含む化粧料用組成物で使用し得る。チタン酸塩結晶粒子を含む分散体の形成において任意の技術(チタン酸塩結晶粒子を乾燥および取り出すことなく、粒子調製後に分散体を使用することが含まれる)を使用し得る。例えば、調製後にチタン酸塩結晶粒子を分離および乾燥させる場合、乾燥させた粒子を任意の化粧的に許容され得る分散媒に添加し得る。好適な化粧的に許容され得る分散媒には、水性または非水性単体(水性ビヒクル、(揮発性または不揮発性の)油系ビヒクル、炭化水素系ビヒクル、もしくはシリコーン系ビヒクル、またはこれらの組み合わせ(水中(油またはシリコーン)型、(油またはシリコーン)中水型の配合物など)であり得る)が含まれる。油系液体は、真性の油(植物油、もしくは鉱油、エステル、ヒマワリ油、これらの組み合わせ、または当業者に公知の他の類似の液体など)であり得る。化粧的に許容され得る分散媒は、水、溶媒、アルコール、油、ポリマー、表面活性剤、セッケン、およびこれらの混合物のうちの1つまたは複数から選択され得る。
【0064】
実施形態の分散体の調製で好適な揮発性溶媒には、揮発性低粘度シリコーン溶液(水、エタノール、2-プロパノール、および環状シリコーンなど)が含まれる。揮発性直鎖ポリジメチルシロキサンも好適であり、一般に、約2個から9個までのケイ素原子を有する。環状シリコーンは、種々の供給元(Dow Corning CorporationおよびGeneral Electricが含まれる)から入手可能である。Dow Corningのシリコーンは、商品名Dow Corning244、245、344、345、および200流体で販売されている。これらの流体は、シクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、またはその混合物を含む。8~20個の炭素原子、より好ましくは10~16個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素も、揮発性溶媒成分として好適である。好適な炭化水素の非限定的な例には、デカン、ドデカン、テトラデカン、トリデカン、およびCs~C20イソパラフィンが含まれる。かかるパラフィン系炭化水素は、EXXON(ISOPARS(商標))、Chevron-Phillips、およびPermethyl Corporationから入手可能である。
【0065】
好適な不揮発性油には、例えば、式RCO-OR’(式中、RおよびR’は、各々独立して、C1~C25、好ましくはC4~C20の直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、またはアルコキシである)のエステルが含まれ得る。かかるエステルの非限定的な例には、イソノナン酸イソトリデシル、PEG-4ジヘプタノエート、ネオペンタン酸イソステアリル、ネオペンタン酸トリデシル、オクタン酸セチル、パルミチン酸セチル、リシノレイン酸セチル、ステアリン酸セチル、ミリスチン酸セチル、(カプリル/カプリン酸)ヤシアルキル、イソステアリン酸デシル、オレイン酸イソデシル、ネオペンタン酸イソデシル、ネオペンタン酸イソヘキシル、パルミチン酸オクチル、リンゴ酸ジオクチル、オクタン酸トリデシル、ミリスチン酸ミリスチル、オクトドデカノール、イソノナン酸イソノニルが含まれる。
【0066】
分散媒には、油が含まれ得る。好適な油には、例えば、以下などの天然のまたは天然由来のまたは修飾された液体または液体ワックスが含まれ得る:ラノリン、ラノリン誘導体、クエン酸トリイソセチル、Cio-トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/トリグリセリド、ココナッツ油、トウモロコシ油、綿実油、果実油、亜麻仁油、オリーブ油、パーム油、イリッペバター、ナタネ油、ダイズ油、ヒマワリ種子油、クルミ油、コムギ麦芽油、ヌカ油、グリセリルエステルおよびその誘導体(アセチル化ヒマシ油、ステアリン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、グリセリルトリオクタノアート、ジステアリン酸グリセリル、リノール酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、PEGヒマシ油、PEGオレイン酸グリセリル、PEGステアリン酸グリセリル、PEG牛脂脂肪酸グリセリルなど)、クエン酸トリオクチルドデシル、C12~15アルキルベンゾエート。不揮発性炭化水素(イソパラフィン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、鉱油、スクアレン、およびペトロラタムなど)も不揮発性油として好適である。
【0067】
シリコーンを1つまたは複数の分散媒として使用してよく、シリコーンには、例えば、アモジメチコン、ビスフェニルヘキサメチコン、カプリリルメチコン、ジメチコン、ジメチコンコポリオール、ジメチコノール、ヘキサデシルメチコン、ヘキサメチルジシロキサン、メチコン、メチルトリメチコン、フェニルトリメチコン、シメチコン、ジメチル水素シロキサン、ステアロキシジメチコン、ステアロキシトリメチルシラン、ビニルジメチコン、シクロメチコンおよびこれらの混合物が含まれる。ジメチコン、カプリリルメチコン、およびメチルトリメチコン(TMF1.5流体)は、Shin-Etsu Chemical Co.から市販されている。
【0068】
種々のフッ素化油(フッ素化シリコーンまたはペルフルオロポリエーテルなど)も不揮発性油として好適である。フルオロシリコーン(トリメチルシリルエンドキャップフルオロシリコーン油、およびポリトリフルオロ-プロピル-メチル-シロキサンなど)が特に好適である。不揮発性構成要素は、フルオロシリコーンとジメチルポリシロキサンとの混合物を含み得る。また、不揮発性構成要素は、ペルフルオロポリエーテルを含み得る。
【0069】
分散媒は、組成物の約0.5%~約80重量%の量で存在し得る。分散媒は、組成物の安定化に有利であり得る増粘剤、および/または有機分散剤を含み得る。増粘剤は、有機ポリマー系ゲル化剤または無機増粘剤であり得る。
【0070】
例えば、好適な増粘剤には、ヒュームドシリカ、ケイ酸アルミニウム、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム、ベントナイト、ケイ酸カルシウム、セルロース、トウモロコシデンプン、珪藻土、フラー土、グリセリルデンプン、ヘクトライト、含水シリカ、カオリン、マグネシウムケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、モンモリロナイト、微結晶性セルロース、コメデンプン、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ロジン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレン、アルミナ、アタパルガイト、カオリン、シリル化シリカ、トリメチル化シリカ、およびその組み合わせが含まれる。
【0071】
他の例には、シリコーンゲル、セルロース誘導体、ゲル化炭化水素、蝋(天然および/または合成)、またはその組み合わせが含まれる。市販の微結晶性セルロースであるAvicelは、FMC Corporationから入手可能である。
ヒドロキシエチルセルロース(セルロース誘導体)は、Hercules、Inc.から商品名NatrosolOで市販されている。好適な非クレイゲル化剤には、オレフィン/スチレンコポリマー、Versagelシリーズの増粘剤(Versagel M、Versagel MC1600、およびVersagel MC(Penrecoから入手可能)など)、およびGel Base(Brooks Industriesから入手可能)、および炭酸プロピレンが含まれる。例えば、イソヘキサデカン(ゲル化炭化水素)は、Penrecoから商品名Versagelで市販されている。無機または修飾された無機の増粘剤は、スメクタイトまたは他の粘土であってよく、天然または合成由来のいずれか(ベントナイト、ケイ酸リチウムマグネシウムナトリウム、カオリン、またはVeegum(マグネシウムケイ酸アルミニウム)など)であり得る。別の好適な増粘剤は、有機修飾した粘土(Bentone27および38シリーズ、ならびにLucentiteまたは類似の修飾粘土など)である。天然ゴム(キサンタンガムまたはグアーガムなど)も、本明細書中で有用な増粘剤、ならびに天然および/または合成ワックスである。
【0072】
また、好適なシリコーン増粘剤は、シリコーンエラストマーとしても公知の架橋オルガノシロキサン化合物が含まれ得る。また、かかるエラストマーは、親水性基(エチレンオキシド、またはグリセリル基、またはプロピレンオキシドなど)を有し得る。好適なシリコーンエラストマーの例には、Dow Corningから販売されているDow Corning9040、および商品名KSGでShin-Etsuから販売されている種々のエラストマー系シリコーン(KSG15、KSG16、KSG19、KSG21、およびKSG710などが含まれる)が含まれる。
【0073】
また、有機分散剤を、分散媒中の酸化亜鉛粒子の分散の保持を補助するため分散媒に添加し得る。有機分散剤は、ポリヒドロキシステアリン酸(PHSA)、リン酸ヒマシ油、ポリグリセロールエステル、エチレン、ブチレン、ポリエチレン、もしくはポリブチレングリコール、シリコーン、シロキサン、ポリアクリル酸およびその塩(ポリアクリル酸ナトリウムおよびポリアクリル酸アンモニウムなど)、またはその組み合わせ、または当業者に公知の他のものであり得る。分散剤は、分散媒に応じて組成物の約0.1重量%~約10重量%またはそれを超える量で存在し得る。
【0074】
また、水性分散体(50重量%超の水を含む分散体が含まれる)を、実施形態で使用し得る。分散剤を使用して、チタン酸塩結晶粒子の分散を補助することができる(水溶性ポリマーまたは表面活性剤が含まれる)。水溶性ポリマーの具体例は以下である:スチレン/アクリル酸コポリマー、スチレン/メタクリル酸コポリマー、スチレン/-メチルスチレン/アクリル酸コポリマー、アクリル酸/アルキルコポリマー、アクリル酸エステル/メタクリル酸コポリマー、スチレン/マレイン酸コポリマー、メトキシエチレン/無水マレイン酸コポリマーおよびその半エステル、ポリアクリル酸、ポリアスパラ酸、ポリグルタミン酸などを使用し得る。また、その塩(アルキル塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩;アンモニウム塩;およびアルカノール塩(モノ-、ジ-、トリ-エタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなど)など)を使用し得る。好適な水溶性ポリマーの他の例には、以下が含まれる:ポリビニルピロリドン/ビニルアセタートコポリマー、ポリビニルピロリドンを使用し得る。
【0075】
好適な陰イオン性表面活性剤の例には、以下が含まれる:セッケン基剤、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、セチル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(12-16)エーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムなど。
【0076】
好適な非イオン性表面活性剤の例には、以下が含まれる:モノステアリン酸グリセリド、モノオレイン酸グリセリド、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、スクロース脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン。
【0077】
これらの分散剤のうちの1つまたは複数を、生成物の意図する使用に従って組み合わせて使用し得る。分散剤の比は、好ましくは、チタン酸塩結晶粒子100重量部に対して0.1重量部から40重量部まで、より好ましくは10重量部から35重量部までである。種々のタイプの水溶性溶媒(ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコールなど)も含めてよい。さらなる添加物(湿潤剤、防腐剤、およびpH調整剤など)を、分散体に含めてよい。湿潤剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、ソルビトールシロップ、マルチトールがある。pH調整剤としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、濃アンモニア水がある。
【0078】
このようにして配合されたチタン酸塩結晶粒子の分散体を、従来の化粧料用添加物を含む化粧料用組成物中で使用してよい。例えば、組成物は、さらなる着色剤(顔料など)および基材を含み得る。また、組成物は、約25重量%までの不揮発性油を含み得る。不揮発性油は、UV防御剤(「日焼け止め」)として機能する有機UV活性材料から構成され得る。好ましくは、2つまたはそれを超える有機UV活性材料を使用して、UV領域を広範に防御する。例えば、少なくとも1つの主にUVA光を防御するUV防御剤と、少なくとも1つの主にUVB光を防御するUV防御剤との組み合わせを使用し得る。
【0079】
実施形態で有用な顔料には、任意の公知の顔料(例えば、無機白色顔料(二酸化チタンおよび酸化亜鉛など)、無機赤色系顔料(酸化鉄(赤色酸化鉄)およびチタン酸鉄など)、無機茶色系顔料(γ型酸化鉄など)、無機黄色系顔料(黄色土および黄色酸化鉄など)、無機黒色系顔料(四三酸化鉄、カーボンブラックなど)、無機紫色系顔料(マンゴーバイオレット、コバルトバイオレットなど)、無機緑色系顔料(三価クロム、水酸化クロム、およびチタン酸コバルトなど)、無機青色系顔料(群青およびプルシアンブルーなど)、パール顔料(二酸化チタン被覆マイカ、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、二酸化チタン被覆タルク、フィッシュスケールホイル、有色二酸化チタン被覆マイカなど)、金属粉顔料(アルミニウム粉末、銅粉末など)、有色複合顔料(鉄ドープ酸化亜鉛および鉄ドープ二酸化チタンなど)が含まれる)が含まれる。
【0080】
他の顔料(赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、AP2199酸化鉄HP(Elementis,Hightstown,New Jerseyから市販)、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、および青色404号、有機クロロフィル顔料(FD&C赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、FD&C黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、橙色3号、および青色1号のジルコニウムレーキ、バリウムレーキ、またはアルミニウムレーキなど)を使用してよく、天然着色剤(β-カロテン、炭化水素油(スクアラン、鉱油、ワセリン、微晶蝋、オゾケライト、セレシン、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソ-ステアリン酸、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミタート、2-オクチルドデシルミリスタート、ネオ-ペンチルグリコールジ-2-エチルヘキサノエート、グリセリルトリ-2-エチルヘキサノエート、2-オクチルドシルオレアート、ミリスチン酸イソプロピル、トリイソステアリン酸グリセリル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、オリーブ油、アボカド油、黄蝋、ミリスチン酸ミリスチル、ミンク油、ラノリン油、シリコーン油、高級脂肪酸油、脂肪酸エステル油、高級アルコール、ワックス群の油成分、シクロペンタシロキサン、ジメチコン、トリメチルシロキシシリカートなど)、および有機溶媒(アセトン、トルエン、酢酸ブチル、および酢酸エステルなど)など)を種々の量で使用することができる。
【0081】
また、粉末材料を、実施形態にしたがって利用してよく、粉末材料には、化粧料用組成物で有用な任意の粉体(1つまたは複数の以下の効果を提供する粉体が挙げられる:光沢効果、油の吸収、感触の改善、およびカバー効果など)が含まれる。使用される粉体を特定することは重要ではなく、粉体が種々の実施形態で使用される必要はない。適切な粉体には、例えば、粘土鉱物族に属する粉体(イライト族(セリサイト(シルキーマイカ)、白雲母、黒雲母、リチア雲母、および合成雲母など)を含む粉体;カオリン族(カオリナイト、ナクライト、デッカイト、ハロイサイトなど)を含む粉体;シリマナイト族(シリマナイトおよびカイヤナイトなど)を含む粉体;ケイ酸マグネシウム系(タルク、および蛇紋石族など);ならびに二酸化チタンおよび二酸化亜鉛など)が含まれる。
【0082】
化粧料で通常使用される油性溶液の屈折率は、典型的には、約1.39から約1.51までの範囲内にあり、一方、マイカの屈折率は1.59であり、タルクは1.53であり、角質層の屈折率は1.55である。上記の数値から認められるように、通常の顔料を化粧料で使用する場合、屈折率は相互に非常に類似しており、顔料がその油吸収量またはこの量を越えた量の皮膚から分泌された皮脂で湿らされた場合に、皮膚上に化粧料の薄膜を作り上げる材料のいくつかは透明になる。過剰量の皮脂が分泌された場合、皮脂薄膜表面からの反射ならびに皮脂内に分散された材料の表面からの反射は、望ましくない光沢を引き起こして強調し、異なる角度からみた場合に皺を目立たせ、時折、この化粧料の使用者を非常に疲れた見た目にする。
【0083】
化粧料用組成物の配合物のタイプ(例えば、液体配合物、粉体配合物、スキンローション、ボディソープなど)に応じて、チタン酸塩結晶粒子の量は、広範に変動させることができる。例えば、液体配合物については、チタン酸塩結晶粒子の量を、約0.5重量%から約5重量%まで、または約0.75重量%から約3.5重量%まで、または約1重量%から約2.5重量%まで、または約1重量%の量で使用することができる。メーキャップファンデーションなどの粉体配合物については、チタン酸塩結晶粒子を、約5重量%から約65重量%まで、または約10重量%から約40重量%まで、または約15重量%から約35重量%まで、または約20重量%の量で使用することができる。スキンローション配合物については、チタン酸塩結晶粒子を、約0重量%から約30重量%まで、どの色を望むかに応じて、または約0.5重量%から約20重量%まで、または約1重量%から約10重量%の量で使用することができる。ボディソープ配合物については、チタン酸塩結晶粒子を、約0重量%から約30重量%まで、どの色を望むかに応じて、または約0.5重量%から約20重量%まで、または約1重量%から約10重量%までの量で使用することができる。
【0084】
多種多様の従来のUV防御剤が本明細書中の使用に好適である。非限定的な例示的有機UV活性材料には、以下が含まれる:2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナマート(PARSOL MCXとして市販)、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾ-フェノン、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸、オクチルジメチル-p-アミノ安息香酸、オクトクリレン、2-エチルヘキシルN,N-ジメチル-p-アミノベンゾエート、p-アミノ安息香酸、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸、オクトクリレン(Parsol340、DSM)、オキシベンゾン、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸オクチル、4,4’-メトキシ-t-ブチルジベンゾイルメタン、4-イソプロピルジベンゾイルメタン、3-ベンジリデンカンフル、3-(4-メチルベンジリデン)カンフル、Eusolex(商標)6300、アボベンゾン(Parsol1789、DSM)、アボベンゾン、PABA、オクチルジメチル-PABA、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、シノキサート、ジオキシベンゾン(ベンゾフェノン-8)、オキシベンゾン(ベンゾフェノン-3)、ホモサラート、アントラニル酸メンチル、オクチサラート、スリソベンゾン、サリチル酸トロラミン、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、4-メチルベンジリデンカンフル、メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェノールトリアジン、ビスイミダジラート、ドロメトリゾールトリシロキサン、オクチルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾアート、イスコトリジノール、ポリシリコーン-15、アミロキサート、エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオナート、およびこれらの混合物。
【0085】
UV活性材料に加えて、不揮発性油は、1つまたは複数のUV活性油のための溶媒であり得る補助油を含み得る。補助油は、エモリエント性および良好な「皮膚感覚」などの望ましい化粧料特性を提供し得る。好ましいが制限されない補助油は、ミリスチン酸イソプロピルである。比較的沸点が高く、皮膚感覚の調整剤として機能する不揮発性の化粧料用エモリエントオイルには、炭化水素、脂肪アルコール、脂肪酸、不揮発性シリコーン油、およびエステル(グリセリドおよびグリコールエステルなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
好適な補助油には、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソデシル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、グリセリルトリ-2-エチルヘキサノエート、ネオペンチルグリコールジ(2-エチルヘキサノエート)、ダイマー酸ジイソプロピル、トコフェロール、酢酸トコフェロール、アボカド油、ツバキ油、カメ油、マカダミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、杏桃油、コムギ麦芽油、パサンカ油、ヒマシ油、亜麻仁油、ベニバナ油、綿実油、ペリリック油、ダイズ油、ピーナッツ油、茶油、かや油、ヌカ油、泡桐油、日本産桐油、ホホバ油、イネ胚芽油、グリセロールトリオクタナート、グリセロールトリイソパルミタート、トリメチロールプロパントリイソステアラート、グリセロールトリ-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールテトラ-2-エチルヘキサノエート、ラノリン、液体ラノリン、流動パラフィン、スクアラン、ワセリン、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。市販の油には、例えば、Crodaから入手可能な商品名Crodamol TNを有するイソノナン酸トリデシル、Nisshin Seiyuから入手可能なHexalan、Eisaiから入手可能な酢酸トコフェロールが含まれる。
【0087】
不揮発性の化粧料用軟化剤には、パラフィン蝋、微結晶蝋、地蝋、セレシン蝋、カルナウバ蝋、カンデリラ蝋、およびベヘニン酸エイコサニルなどの蝋が含まれ得るが、これらに限定されない。不揮発性のシリコーン油(ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン(ジメチコン)が含まれるが、これらに限定されない)を使用し得る。本開示の目的のために、不揮発性のシリコーン油は、10センチストークス(cSt)を超える動粘度を有するものと定義される。好適な補助油には、米国特許第6,936,241号(その開示全体が本明細書中で参考として援用される)に開示のポリアルキルシロキサンまたはポリアリールシロキサンが含まれる。
【0088】
本明細書中で有用な好適な補助油には、種々のグレードの鉱油が含まれる。鉱油は、石油から得た炭化水素の液体混合物である。好適な炭化水素の具体例には、パラフィン油、鉱油、ドデカン、イソドデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン、エイコセン、イソエイコセン、トリデカン、テトラデカン、ポリブテン、ポリイソブテン、およびこれらの混合物が含まれる。
【0089】
また、本明細書中に記載の実施形態で有用な化粧料用組成物は、種々の化粧料用組成物で有用な他の従来の構成要素を含み得る。任意の化粧的に許容され得るビヒクルを、顔料粉体でコーティングした水酸化アルミニウムと共に使用し得る。かかるビヒクルには、例えば、水、グリセリン、ジメチコン、蜜蝋、およびステアリン酸グリセリルなどが含まれ得る。また、化粧料で通常使用される他の成分は、必要に応じて存在し得る。例えば、無機粉体(タルク、カオリン、セリサイト、白雲母、金雲母、赤色雲母、黒雲母、合成雲母、リチア雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪藻岩、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、硫酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、ウォルフラム酸金属塩、またはシリカ、ヒドロキシアパタイト、ゼオライト、窒化ホウ素、セラミック粉末など)、有機粉体(ナイロン粉体、ポリエチレン粉体、ポリスチレン粉体、ベンゾグアナミン粉体、ポリフッ素化エチレン粉体、ジ-スチレンベンゼンポリマー粉体、エポキシ粉体、アクリル酸粉体、シリコーン粉体、微結晶性セルロースなど)。
【0090】
樹脂(アルキド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、ナイロン-12など)、可塑剤(カンフル、アセチルトリブチルクエン酸など)、紫外線吸収剤、抗酸化剤、防腐剤、表面活性剤、保湿剤、香料、水、アルコール、および増粘薬も使用することができる。
【0091】
1つまたは複数の実施形態によれば、チタン酸塩結晶粒子の分散体を含む化粧料用組成物は、以下の試験プロトコールに従って試験した場合に、560nmでの透過率が減少したことによって示されるように、カバー力が改善された。試験すべき粉体(約10重量%)を、アクリレート/ジメチコンコポリマー(約90重量%)と混合し、例えば粘着(TAC)紙などの好適な紙上に薄膜を形成させる。薄膜を乾燥させた後、560nmの透過率を、分光ヘーズメーター(例えば、Nippon Denshoku Industries,Ltd.,Japanから市販されているSH7000ヘーズメーターなど)を使用して測定する。1つの実施形態では、任意に表面処理したチタン酸塩結晶を含む組成物は、約500nmから約650nmまでの波長の光については約65%から約85%まで、または約70%から約80%までの透過率を有し、あるいは約560nmの波長の光については約75%から約83%までの透過率を有することから、透過率の低下がカバー力の改善と相関すると理解される。本明細書中に開示のチタン酸塩結晶粒子は、好ましくは、10μm未満の粒径、または約9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは約1μmまでから選択されるサイズ未満の粒径を有する。分散体中に存在するチタン酸塩結晶粒子の平均粒径が減少すると透過が改善され、粒径が約5μm未満であると約560nmの波長の光の透過率が80%未満となることが予想外に見出された。1つの実施形態では、チタン酸塩結晶粒子の粒径は、約1μmから約5μmまで、または約2μmから約4.5μmまで、または約2.5μmから約4.0μmまでの範囲であるか、またはこれらの間の任意の値である。
【0092】
別の実施形態では、チタン酸塩結晶粒子中のカリウム量が減少するとカバー力が改善されることが見出された。例えば、カリウム量を、最初のカリウム量の約50%、または最初のカリウム量の約25%に減少させることができる。リチウム含有チタン酸塩(K0.5~0.8Li0.27Ti1.73O3.85~4)について、カリウム含有量を50%低下させた場合の約560nmの波長の光の透過率は約6%から約15%まで、または約8%から約12%まで、または約10.5%低下し、カリウム含有量が最初の量の25%まで低下した場合は約10%から約25%まで、または約12%から約18%まで、または約15.2%低下した。マグネシウム含有チタン酸塩(K0.2~0.8Mg0.4Ti1.6O3.7~4)について、カリウム含有量を50%低下させた場合の約560nmの波長の光の透過率は約3%から約19%まで、または約4%から約7%まで、または約5.6%低下し、カリウム含有量が最初の量の25%まで低下した場合は約5%から約15%まで、または約7%から約10%まで、または約8.1%低下した。
【0093】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図する。これらの実施例は、本発明の範囲を制限するために使用されないものとし、本発明は、特許請求の範囲によって定義される。
【0094】
以下の実施例では、FT-IRの測定を以下のように行った:フーリエ変換赤外線測光器FT-IR-5300(Jasco Corporation)を使用した。透過スペクトルについては、紫外・可視吸収分光光度計(製品名:UV-3150、Shimadzu Corporation)を使用した。透過スペクトルは約560nmであり、サンプリングレートは0.2nmであり、測定速度は低速であった。
【実施例1】
【0095】
水添レシチンで表面処理したチタン酸リチウムカリウムの調製
チタン酸リチウムカリウム(生成物A)を、以下の表1に列挙した材料を使用して水添レシチン(卵黄レチノール)で表面処理した。30.00gの水(1)を3.00gの水添レシチン(卵黄レチノール)と混合し、温度を70℃~80℃の範囲に上昇させた。次いで、約13.34gのさらなる水(2)を添加し、温度を40℃未満に調整した。次いで、CaCl
2の10%水溶液(5.06g)を混合物に添加し、表面処理混合物を約2分間撹拌した。生成物A(197g)を従来のミキサー(Kitchen Aidミキサーなど)に導入し、次いで、表面処理混合物を添加し、約5分間混合した。ミキサーから擦り落とし、さらに5分間混合し、混合物を約105℃に約16時間加熱して混合物を適切に乾燥させた。次いで、乾燥させた粒子を0.062ミクロンの篩で粉砕して、表面処理したチタン酸塩結晶を生成した。
【表1】
【実施例2】
【0096】
トリエトキシカプリリルシランで表面処理したチタン酸リチウムカリウムの調製
チタン酸リチウムカリウム(生成物A)を、以下の表2に列挙した材料を使用してトリエトキシカプリリルシラン(Dynasylan Octeo-)で表面処理した。
生成物A(197g)を従来のミキサー(Kitchen Aidミキサーなど)に導入し、次いで、3.00gの水を添加し、構成要素を約5分間混合した。ミキサーから擦り落とし、さらに5分間混合した。この混合物に4.00gのトリエトキシカプリリルシラン(Dynasylan Octeo-)を添加し、構成要素を5分間混合し、次いで、ミキサーから擦り落とし、構成要素をさらに5分間混合した。混合物を約105℃に約16時間加熱して、混合物を適切に乾燥させた。次いで、乾燥させた粒子を0.062ミクロンの篩で粉砕して、表面処理したチタン酸塩結晶を生成した。
【表2】
【実施例3】
【0097】
ステアロイルグルタミン酸二ナトリウムで表面処理したチタン酸リチウムカリウムの調製
チタン酸リチウムカリウム(生成物A)を、以下の表3に列挙した材料を使用してステアロイルグルタミン酸二ナトリウム(HS-21P)で表面処理した。生成物A(194g)を、従来のミキサー(Kitchen Aidミキサーなど)に導入した。個別のミキサー中で、6.0gのHS-21P(ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム)を110gの加熱脱イオン水(1)に完全に溶解するまで溶解させ、透明な混合物を得た。次いで、この混合物を生成物Aに添加し、5分間混合した。必要に応じてさらなる水を添加した。次いで、この混合物に、9.12gの水(2)および2.28gのCaCl
2の10%水溶液を添加し、約5分間混合した。ミキサーから擦り落とし、さらに5分間混合し、混合物を約105℃に約16時間加熱して混合物を適切に乾燥させた。次いで、乾燥させた粒子を0.062ミクロンの篩で粉砕して、表面処理したチタン酸塩結晶を生成した。
【表3】
【実施例4】
【0098】
ジメチコンで表面処理したチタン酸リチウムカリウムの調製
チタン酸リチウムカリウム(生成物A)を、以下の表4に列挙した材料を使用してジメチコン(X24-9171)で表面処理した。生成物A(198g)を従来のミキサー(Kitchen Aidミキサーなど)に導入し、次いで、40.0gの水を添加し、構成要素を約5分間混合した。ミキサーから擦り落とし、さらに5分間混合した。この混合物に、4.00gのジメチコン(X24-9171)を添加し、構成要素を5分間混合し、次いで、ミキサーから擦り落とし、構成要素をさらに5分間混合した。混合物を約105℃に約16時間加熱して、混合物を適切に乾燥させた。次いで、乾燥させた粒子を0.062ミクロンの篩で粉砕して、表面処理したチタン酸塩結晶を生成した。
【表4】
【実施例5】
【0099】
IR反射の評価
実施例4の表面処理したチタン酸塩結晶を、表面処理しなかったチタン酸塩結晶およびMP-100(粒径の大きな従来のTiO2粒子)と比較して、相対赤外反射強度を査定した。
【0100】
【0101】
図1に示すように、実施例4の表面処理したチタン酸塩結晶は、MP-100と比較した場合にIR反射強度が劇的に改善された。したがって、実施例4の表面処理したチタン酸塩結晶は、未処理粉体と比較した場合に分散性が改善され、その結果として、560nmでのカバー力の強さが改善される。
【実施例6】
【0102】
トリエトキシカプリリルシランで表面処理したチタン酸マグネシウムカリウムの調製
チタン酸マグネシウムカリウム(生成物B)を、以下の表5に列挙した材料を使用してトリエトキシカプリリルシラン(Dynasylan Octeo-)で表面処理した。
生成物B(198g)を従来のミキサー(Kitchen Aidミキサーなど)に導入し、次いで、3.00gの水を添加し、構成要素を約5分間混合した。ミキサーから擦り落とし、さらに5分間混合した。この混合物に4.00gのトリエトキシカプリリルシラン(Dynasylan Octeo-)を添加し、構成要素を5分間混合し、次いで、ミキサーから擦り落とし、構成要素をさらに5分間混合した。混合物を約105℃に約16時間加熱して、混合物を適切に乾燥させた。次いで、乾燥させた粒子を0.062ミクロンの篩で粉砕して、表面処理したチタン酸塩結晶を生成した。
【表5】
【実施例7】
【0103】
ジメチコンで表面処理したチタン酸マグネシウムカリウムの調製
チタン酸マグネシウムカリウム(生成物B)を、以下の表6に列挙した材料を使用してジメチコン(X24-9171)で表面処理した。生成物B(198g)を従来のミキサー(Kitchen Aidミキサーなど)に導入し、次いで、40.0gの水を添加し、構成要素を約5分間混合した。ミキサーから擦り落とし、さらに5分間混合した。この混合物に、4.00gのジメチコン(X24-9171)を添加し、構成要素を5分間混合し、次いで、ミキサーから擦り落とし、構成要素をさらに5分間混合した。混合物を約105℃に約16時間加熱して、混合物を適切に乾燥させた。次いで、乾燥させた粒子を0.062ミクロンの篩で粉砕して、表面処理したチタン酸塩結晶を生成した。
【表6】
【実施例8】
【0104】
カバー力の評価
この実施例は、560nmの透過率の結果を比較し、この結果は、以下の物質のカバー能力を示す(a)実施例4の化粧料用粉体(実施例4に従ってジメチコンで表面処理した式K
0.5~0.8Li
0.27Ti
1.73O
3.85~4を有する表面処理したチタン酸リチウムカリウム);(b)実施例7の化粧料用粉体(実施例7に従ってジメチコンで表面処理した式K
0.2~0.8Mg
0.4Ti
1.6O
3.7~4を有する表面処理したチタン酸マグネシウムカリウム);および(c)他の未処理の粉体。560nmの透過率を、上記の方法に従って測定した。表7は、実験結果を示す。
【表7】
【0105】
上記表に示すように、表面処理したチタン酸塩結晶は、顔料グレードのTiO2(カバー力を目的として適用される最もよく知られており普及している化粧料用のもの)と比較した場合には、カバー力が同様にわずかに改善し、セリサイト、タルク、カオリン、雲母、窒化ホウ素、シリカ、およびZnO、他のよく知られており普及している化粧料用粉体と比較した場合には、カバー力が改善された。ZnOは、典型的には、カバー力に関して2番目に最良の化粧料用粉体と見なされるが、上記の表から、表面処理したチタン酸塩結晶は、ZnOと比較してカバー力がわずかに改善されたことが明らかである。
【実施例9】
【0106】
IR反射の評価
実施例4の表面処理したチタン酸塩結晶(生成物A)および表面処理されていないチタン酸リチウムカリウム(生成物A’)を、顔料グレードのTiO
2と比較して相対赤外反射強度を査定した。IR強度を、吸光度および透過率を測定するようにデザインされた60mm積分球(ISR-603)を備えたUV-3600Plus分析器(Shimadzu,Japanから市販されている)を使用して測定した。分析器を、反射モードにおける波長範囲2600~190nm、スリット幅20、およびサンプリングインターバル2.00に設定した。結果を
図2に示す。
【0107】
図2に示すように、実施例4の表面処理したチタン酸塩結晶(生成物A)および表面処理されていないチタン酸塩結晶(生成物A’)は、近赤外(NIR)線および赤外(IR)線を反射するために一般に使用されるTiO
2と比較した場合にIR反射強度を劇的に改善した。この性質により、本明細書中に記載の表面処理したチタン酸塩結晶をUVおよびIR/N-IR防御のために使用することが可能であり、この結晶は、現在市販されている最もよく知られている防御剤のうちの1つ(TiO
2)から得られる防御よりも優れている。
【実施例10】
【0108】
カバー力に関する粒径の評価
上記の実施例4に従って作製した表面処理したチタン酸リチウムカリウム結晶を、油としてのシクロペンタシロキサン中に分散させて、約50重量%の表面処理したチタン酸リチウムカリウム結晶を含む分散体を得た。次いで、分散体を、粒径を低下させるために15、30、45、および60分間の単位での磨鉱に供し、種々の材料を実施例8の560nmの透過率試験に供して、カバー力を評価した。種々の粒径の表面処理したチタン酸リチウムカリウム結晶を、従来の白色顔料(トリエトキシカプリリルシランで表面処理されたTiO
2)と比較した。結果を以下の表8に示す。
【表8】
【0109】
上記表中のデータから、本明細書中に記載の実施形態の表面処理したチタン酸塩結晶粒子の粒径が減少するとカバー力が改善されることが明らかである。例えば、平均粒径が4μm未満に低下すると、表面処理したチタン酸塩結晶粒子は、表面処理したTiO2(化粧料用組成物で使用されるよく知られた顔料)と比較した場合に、カバー力が優れているといわないまでも類似することが見出された。
【実施例11】
【0110】
カバー力に関するカリウム含有量の評価
上記の実施例4に従って作製した表面処理したチタン酸リチウムカリウム結晶および上記の実施例7に従って作製した表面処理したチタン酸マグネシウムカリウム結晶を、そのままおよびカリウム含有量を低下させて(最初のカリウム量の50%、および最初のカリウム量の25%)評価した。種々の粒径の表面処理したチタン酸リチウムカリウム結晶を、従来の白色顔料(トリエトキシカプリリルシランで表面処理されたTiO
2)と比較した。種々の材料を実施例8の560nmの透過率試験に供してカバー力を評価し、結果を以下の表9に示す:
【表9】
【0111】
上記表中のデータから、本明細書中に記載の実施形態の表面処理したチタン酸塩結晶粒子のカリウム含有量が低下するとカバー力が予想外に改善されることが明らかである。例えば、カリウム量が減少すると、表面処理したチタン酸塩結晶粒子は、表面処理したTiO2(化粧料用組成物で使用されるよく知られた顔料)と比較した場合に、カバー力が優れているといわないまでも類似することが見出された。
【実施例12】
【0112】
カバー力に関する粒径およびカリウム減少量の評価
実施例4に従って作製した表面処理したチタン酸リチウムカリウム結晶を、上記の実施例11で調製したカリウム含有量が最初の量の25%まで低下したものと共に、油としてのシクロペンタシロキサン中に分散させて、約50重量%の表面処理したチタン酸リチウムカリウム結晶を含む分散体を得た。次いで、分散体を、粒径を低下させるために15、30、45、および60分間の単位での磨鉱に供し、種々の材料を実施例8の560nmの透過率試験に供して、カバー力を評価した。種々の粒径の表面処理したチタン酸リチウムカリウム結晶を、従来の白色顔料(トリエトキシカプリリルシランで表面処理されたTiO
2)と比較した。結果を以下の表10に示す。
【表10】
【0113】
上記表中のデータから、カリウム含有量が低下した表面処理したチタン酸塩結晶粒子の粒径が低下するとカバー力が予想外に非常に改善されたとこが明らかである。例えば、カリウム含有量が低下した表面処理したチタン酸塩粒子が、表面処理したTiO2(化粧料用組成物で使用されるよく知られた顔料)と比較した場合に、カバー力が約9.7%改善することが認められた。粒径が低下するにつれてカバー力がさらに改善されることがさらに認められた(15分間の磨鉱-11.3%改善;30分間の磨鉱-14.5%改善;45分間の磨鉱-15.3%改善;および60分間の磨鉱-18.7%改善)。
【0114】
具体的な例および特徴を参照して実施形態を記載してきたが、当業者は、意図およびその範囲を逸脱することなく、実施形態を様々に修正し得ることを認識するであろう。
【国際調査報告】