(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】グリコリドの精製方法およびそれから得られるグリコリド
(51)【国際特許分類】
C07D 319/12 20060101AFI20231106BHJP
【FI】
C07D319/12 CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525052
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 CN2021126351
(87)【国際公開番号】W WO2022089413
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】202011155982.3
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509128052
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RESEARCH INSTITUTE OF PETROCHEMICAL TECHNOLOGY SINOPEC
【住所又は居所原語表記】NO.1658 PUDONG BEI ROAD,PUDONG NEW AREA,SHANGHAI 201208,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】熊文韜
(72)【発明者】
【氏名】王叡
(72)【発明者】
【氏名】週芬
(72)【発明者】
【氏名】熊金根
(57)【要約】
本発明は、グリコリドを精製するための方法およびそれから得られるグリコリドを提供する。この方法は、粗グリコリドから溶媒Aでを用いて不純物を抽出する工程と、次いで溶媒Bを用いて再結晶する工程とを含み、溶媒Aは少なくとも2つの溶媒を含み、溶媒は互いに混和性である。本発明の方法では、2種の極性溶媒を粗グリコリドの精製に使用する。この方法は、グリコール酸オリゴマーなどの酸性不純物に対して良好な抽出効果を有する。溶媒は、固液分離および乾燥工程中に容易に完全に除去される。精製品中の溶媒残留物の問題は解決される。生成物中の遊離酸含量が低いという技術的効果が得られる。本発明の技術的解決策は、溶媒が回収し易くおよび生成物中の遊離酸含量が低いという技術的利点を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)溶媒Aを用いて粗グリコリドから不純物を抽出し、グリコリド含有相及び不純物含有相を得る工程と、
(2)溶媒Bを用いて前記グリコリド含有相を再結晶する工程と、を含み、
前記溶媒Aは少なくとも2つの溶媒を含み、前記溶媒が互いに混和性である、グリコリドの精製方法。
【請求項2】
前記溶媒Aが溶媒Iおよび溶媒IIを含み、溶媒Iが大気圧下で180℃以上の沸点を有するポリアルコールエーテルから選択され、溶媒IIが大気圧下で120℃以下の沸点を有する飽和アルコールから選択されることを特徴とする、請求項1に記載のグリコリドの精製方法。
【請求項3】
工程(1)において、溶媒Iおよび溶媒IIを同時にまたは連続的に添加することを特徴とする、請求項2に記載のグリコリドの精製方法。
【請求項4】
工程(2)を工程(1)の直後に行うこと、又は工程(1)の後に、前記グリコリド含有相を前記グリコリド含有相の組成を変えることなく処理した後、工程(2)を行うことを特徴とする請求項3に記載のグリコリドの精製方法。
【請求項5】
前溶媒Aが溶媒Iと溶媒IIとの混合溶媒であり、溶媒Iが大気圧下で沸点が180℃以上のポリアルコールエーテルから選択され、溶媒IIが大気圧下で沸点が120℃以下の飽和アルコールから選択されることを特徴とする、請求項4に記載のグリコリドの精製方法。
【請求項6】
前記溶媒Bが大気圧下で120℃以下の沸点を有する飽和アルコールを含み、前記溶媒Bが、溶媒IIと同一であるか又は異なることを特徴とする、請求項4に記載のグリコリドの精製方法。
【請求項7】
前記溶媒Bが大気圧下で120℃以下の沸点を有する飽和アルコールであり、前記溶媒Bが、溶媒IIと同一であるか又は異なることを特徴とする、請求項4に記載のグリコリドの精製方法。
【請求項8】
前記溶媒Aが溶媒Iと溶媒IIとの混合溶媒であり、溶媒Iが大気圧下で180℃以上の沸点を有するポリアルキレングリコールエーテル類の少なくとも1種であり、溶媒IIが大気圧下で120℃以下の沸点を有する飽和一価アルコール類の少なくとも1種であり、前記溶媒Bが大気圧下で120℃以下の沸点を有する飽和一価アルコール類の少なくとも1種であり、前記溶媒Bが溶媒IIと同一であるか又は異なっていることを特徴とする、請求項4に記載のグリコリドの精製方法。
【請求項9】
(1)粗グリコリドと溶媒Aとを混合攪拌し、得られた固液混合物を濾過し、得られた濾過ケーキを回収する工程と、
(2)工程(1)で得られた前記濾過ケーキを溶媒Bと混合し、得られた混合物を加熱した後、得られた溶液を冷却してグリコリド結晶を分離し、得られた濾過ケーキを濾過により回収する工程と、を含み、
好ましくは、前記工程(2)を少なくとも1回繰り返した後、得られた濾過ケーキを真空乾燥する工程と、を含むことを特徴とする、請求項4に記載のグリコリドの精製方法。
【請求項10】
工程(1)において、溶媒Aに対する前記粗グリコリドの質量比率は(0.5-5)対1、たとえば(0.5-2)対1であり、および/または、
工程(2)において、溶媒Bに対する工程(1)で得られた濾過ケーキの質量比率は(0.05-5)対1、たとえば(0.1-1)対1である、ことを特徴とする、請求項4に記載のグリコリドの精製方法。
【請求項11】
前記溶媒A中の溶媒IIの質量分率は50%以上であるが、100%に等しくはなく、例えば、溶媒IIの前記質量分率は50~99%、または50~80%である、請求項4に記載のグリコリドの精製方法。
【請求項12】
前記溶媒Iはポリアルキレングリコールモノエーテルまたはポリアルキレングリコールジエーテル、例えばポリエチレングリコールエーテル、例えばポリエチレングリコールジエーテルの少なくとも1つから選択され、および/または、
前記溶媒IIはエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブチルアルコール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノールのうちの少なくとも1つから選択され、および/または、
溶媒Bはエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブチルアルコール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノールのうちの少なくとも1つから選択される、請求項4に記載のグリコリドの精製方法。
【請求項13】
前記ポリエチレングリコールジエーテル中のエチレングリコールの重合度は、20以下、例えば10以下である、請求項12に記載のグリコリドの精製方法。
【請求項14】
工程(1)において、混合のための温度は0~40℃、例えば0~20℃であり、および/または、
工程(2)において、得られた混合物が加熱される温度は70~80℃、例えば75~80℃であり、得られる溶液が冷却される温度は0~25℃、例えば15~25℃である、請求項9に記載のグリコリドの精製方法。
【請求項15】
前記粗グリコリドはポリグリコール酸および/またはポリグリコールエステルの解重合によって得られ、例えば、75wt%以上95wt%未満のグリコリド純度を有する、請求項4に記載のグリコリドの精製方法。
【請求項16】
前記粗グリコリドは固体または溶融状態であり、好ましくは、前記粗グリコリドは10μmol/g超、好ましくは100μmol/g超、より好ましくは500μmol/g超の末端カルボキシル含有量を有する、請求項4に記載のグリコリドの精製方法。
【請求項17】
グリコリド、および、
(a)大気圧下で180℃以上の沸点を有するポリアルコールエーテル、例えば、大気圧下で180℃以上の沸点を有するポリアルキレングリコールエーテル、および、
(b)大気圧下で120℃以下の沸点を有する飽和アルコール、例えば、大気圧下で120℃以下の沸点を有する飽和一価アルコール、を含むグリコリド含有組成物であって、
前記グリコリド含有組成物の総重量に基づいて、構成要素(a)および構成要素(b)の含有量がゼロ以上、好ましくは両方ともゼロを超え、構成要素(a)および構成要素(b)の総含有量が800ppm以下、好ましくは500ppm以下であり、
好ましくは、構成要素(a)の含有量がゼロを超えかつ300ppm未満であり、構成要素(b)の含有量がゼロを超えかつ600ppm未満であり、
より好ましくは、構成要素(a)の含有量が5ppmを超え200ppm未満であり、構成要素(b)の含有量が100ppmを超え600ppm未満であり、
さらに特に好ましくは、構成要素(a)の含有量が5ppmを超え30ppm未満であり、構成要素(b)の含有量が125ppmを超え350ppm未満であり;および/または、
前記グリコリド含有組成物において、末端カルボキシル含量は、1~10μmol/g、好ましくは2~5μmol/gである、グリコリド含有組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明はグリコリドの分野に関し、特に、グリコリドを精製するための方法およびそれから得られるグリコリドに関する。
【0002】
〔背景技術〕
ポリグリコール酸(PGA)は、良好な生分解性および生体適合性を有する合成ポリマー材料である。安定した機能を有するプラスチックやゴムなどの従来の高分子材料とは異なり、PGAを一定時間使用すると徐々に劣化し、最終的には、人体、動物、植物、自然環境に無害な水や二酸化炭素に変化する。ポリグリコール酸の応用は、主に、生物医学および生態学の2つの態様において明らかにされる。
【0003】
グリコリドはグリコール酸の環状二量体、すなわち、2分子のグリコール酸の脱水および縮合によって形成される環状物質である。グリコリドの開環重合は、より高い相対分子量を有するポリグリコール酸生成物を得ることができるポリグリコール酸を調製するための比較的成熟した方法である。現在、国内外で最も成熟し広く使用されているグリコリドの合成プロセスは主に、グリコール酸を原料とする重縮合-解重合プロセスである。
【0004】
CN105272958Aはグリコリドを調製するためのプロセスを開示しており、これは、粗グリコリドを調製するために重縮合-解重合プロセスを使用する例である。まず、大気圧下でグリコール酸を徐々に最高温度200℃に加熱して重縮合反応を行い、反応で発生した水分を除去する。水の発生量が一定のレベルに達した後、減圧下で水をさらに除去して、より高い分子量を有する重縮合生成物を得る。次いで、0.1~1kPaの真空度を有する超高真空下で、グリコール酸プレポリマーおよびオクタン酸第一スズ(予備重合の前に添加されるエステル交換触媒)を230℃~290℃の温度に加熱する。反応で生成したグリコリド蒸気を回収し、冷却して、粗生成物を黄色固体として生成させる。
【0005】
上記の解重合反応から得られる粗グリコリドは、通常、水、グリコール酸、グリコール酸オリゴマー(500g/mol未満の分子量を有する)、ポリグリコール酸(500g/mol超の分子量を有する)などの様々な不純物を含有する。ラクチドの開環重合における非常に少量の活性水素の存在は、得られるポリマーの分子量に大きな影響を及ぼす。外科用縫合糸などの要件を満たす必要があるポリグリコール酸は、1以上の固有粘度、および100,000を超える重量平均分子量を満たす必要がある。したがって、高純度のグリコリド製品を得るためには、不純物をできるだけ除去するために粗グリコリドを精製する必要がある。
【0006】
加えて、粗グリコリドから精製グリコリドを調製するプロセスにおける溶媒の使用により、微量の溶媒分子がグリコリド製品に必然的に導入され、溶媒分子が活性水素を含有する可能性が高く、これがグリコリドの重合反応に悪影響を及ぼすことに留意する価値がある。グリコリドの重合プロセス中、微量の溶媒分子の一部がPGA中に残存し、これは人体におけるPGAの生物医学的適用に影響を及ぼす。従って、精製品中の溶媒残渣の問題を解決するために適切な方法を使用することが非常に重要である。
【0007】
既存のグリコリド精製技術は主に、再結晶処理(冷却再結晶および蒸発再結晶)、アルコール洗浄処理等を含む。中でも、再結晶処理が最も多く用いられており、酢酸エチルを代表的な有機溶媒として用いて、粗グリコリドを繰り返し再結晶することがより一般的である。これらの有機溶媒は、適切な溶媒との分子レベルで高い親和性を有するグリコリドに適切な溶媒であるため、乾燥後に精製グリコリド中の溶媒を完全に除去することは困難である。例えば、十分な乾燥後の残留酢酸エチル含有量は500ppm以上に達することがあり、これは、重合反応後に酢酸エチルを依然としてポリマーPGA中に残存させる。
【0008】
グリコリドを精製するための酢酸エチルによる複数回再結晶化の技術的解決策に加えて、先行技術は、再結晶化とアルコール洗浄とのカップリングがグリコリドを精製するそのような技術的解決策も含む。例えば、特許CN107868075Aはグリコリドを精製するためのプロセスを開示しており、ここで、粗グリコリドは、冷却再結晶、貧溶媒との混合、洗浄、濾過、および乾燥を含む技術的解決策で精製される。最終乾燥時にグリコリドの残留溶媒がアルコールとなり、グリコリドの貧溶媒とみなされるため、この技術的解決策は溶媒残渣を十分に低減することもできるが、貧溶媒との混合洗浄の過程ではグリコリド結晶粒子の表面に吸着した不純物は主に除去されるが、結晶中に埋め込まれた不純物結晶核はほとんど除去できず、不純物の精製に対する混合洗浄の影響は再結晶の場合ほど良好ではなく、最終的に得られる精製グリコリド生成物中の末端カルボキシル含有量を1.0×10-5mol/g以下に低減することは困難である。また、粗グリコリドの品質が良くない場合、例えば、粗グリコリド純度が85%未満、又は末端カルボキシル含有量が5.2×10-4mol/gを超える場合、アルコール化合物のみを用いて粗グリコリドを精製することは、良好な効果をもたらさない。
【0009】
〔本発明の概要〕
本発明が解決しようとする技術的課題は、既存の粗グリコリド精製プロセスによって得られる精製グリコリド中の溶媒の残留量が比較的高いという問題点であり、本発明は再結晶と洗浄とのカップリングの技術的解決策とは異なる精製技術的解決策を提供し、これは、溶媒が回収しやすい、生成物中の遊離酸含量が低いなどの技術的利点を有する。
【0010】
本発明の目的の1つは、グリコリドを精製する方法であって、粗グリコリドから溶媒Aを用いて不純物を抽出する工程と、次いで溶媒Bで再結晶する工程とを含み、溶媒Aが少なくとも2つの溶媒を含み、溶媒が互いに混和性である方法を提供することである。従来技術における再結晶-洗浄の結合順序を調整することによって、再結晶によって包まれた不純物が著しく低減され、より良好な全体的な精製効果が達成される。
【0011】
好ましくは、グリコリドを精製するための方法は以下の工程を含む:
(1)粗グリコリドと溶媒Aとを混合攪拌し、得られた固液混合物を濾過し、得られた濾過ケーキを回収する;
(2)工程(1)で得られた濾過ケーキを溶媒Bと混合し、得られた混合物を加熱した後、得られた溶液を冷却してグリコリド結晶を分離し、得られた濾過ケーキを濾過により回収する;
好ましくは、精製グリコリドを製造するために、工程(2)を少なくとも1回繰り返した後、得られた濾過ケーキを真空乾燥する。
【0012】
工程(1)において、混合温度は0~40℃、好ましくは0~20℃である。
【0013】
工程(2)において、得られる混合物が加熱される温度は70~80℃、好ましくは75~80℃であり、得られる溶液が冷却される温度は、0~25℃、好ましくは15~25℃である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、粗グリコリドを精製する方法は(1)粗グリコリドと溶媒Aとを混合撹拌し、次いで、得られた固液混合物を濾過し、得られた濾過ケーキを回収する工程と、(2)工程(1)で得られた濾過ケーキを溶媒Bに70~80℃の一定温度で溶解し、得られた溶液を0~25℃に冷却してグリコリド結晶を分離し、得られた濾過ケーキを濾過により回収する工程と、(3)工程(2)を少なくとも1回繰り返した後、得られた濾過ケーキを真空乾燥して、精製グリコリド製品を生成する工程とを含む。
【0015】
上記の技術的解決策のいずれかにおいて、前記溶媒Aは溶媒Iと溶媒IIとの混合溶媒であり、溶媒Iは大気圧下で180℃以上の沸点を有するポリアルコールエーテルから選択され、溶媒IIは大気圧下で120℃以下の沸点を有する飽和アルコールから選択され、溶媒Iは好ましくはポリアルキレングリコールエーテルの少なくとも1つから選択され、溶媒IIは好ましくは飽和一価アルコールの少なくとも1つから選択される。
【0016】
前記溶媒Bは大気圧下で120℃以下の沸点を有する飽和アルコールから選択され、好ましくは飽和一価アルコールの少なくとも1つから選択され、前記溶媒Bおよび溶媒IIは同一または困難であり得る。
【0017】
上記の技術的解決策のいずれにおいても、前記溶媒I、溶媒IIおよび溶媒Bは全て極性溶媒であり、含水量が40ppm未満となるように、粗グリコリドを接触させる前に、共沸脱水またはモレキュラーシーブ吸着脱水などの技術に供される。
【0018】
上記の技術的解決策のいずれにおいても、前記溶媒Aは常温で均一な液体であり、その中の成分は混和性であり、溶媒A中の溶媒IIの質量分率は50%以上であり、100%に等しくない;好ましくは50~80%であり、すなわち、溶媒A中より高い沸点を有する溶媒Iの割合は限定される。これは、溶媒Iが全て、いくつかの固液分離工程を介して液相に入り、グリコリド中に残存しないことを確実にするだけでなく、溶媒Iの使用量が増加するにつれて、グリコリドが溶媒中に溶解し、精製収率の許容できない損失値をもたらすのを防ぐ。
【0019】
上記の技術的解決策のいずれにおいても、前記溶媒Iはポリアルキレングリコールモノエーテルまたはポリアルキレングリコールジエーテルの少なくとも1つから選択され、原料へのアクセスが容易であり、合成が容易であるという観点から、ポリエチレングリコールエーテルが好ましく、溶媒Iの飽和一価アルコールへの溶解性およびその流動性を考慮すると、ポリエチレングリコールエーテルとしてはポリエチレングリコールジエーテルが好ましく、ポリエチレングリコールジエーテル中のエチレングリコールの重合度は好ましくは20以下、より好ましくは10以下であり、ポリエチレングリコールジエーテルの両末端のエーテル基は好ましくは両方ともメチル基または2~7個の炭素原子を有するアルキル基であり、より好ましくは両方ともメチル基である。
【0020】
上記の技術的解決策のいずれにおいても、前記ポリエチレングリコールジエーテルは例えば、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル、ヘプタエチレングリコールジメチルエーテル、オクタエチレングリコールジメチルエーテル、ノナエチレングリコールジメチルエーテルなどのうちの少なくとも1つことが好ましい。
【0021】
上記の技術的解決策のいずれかにおいて、前記溶媒IIは、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、およびイソブチルアルコールのうちの少なくとも1つから選択される。
【0022】
上記の技術的解決策のいずれにおいても、溶媒IIは水およびグリコール酸などの小分子不純物の一部に対してより高い溶解能力を有するが、不純物グリコール酸オリゴマー(500g/mol未満の分子量を有する)、ポリグリコール酸(500g/mol超の分子量を有する)の他の一部に対して限定された溶解能力を有する。後者の2つの酸性不純物をより良好に除去するために、溶媒Iは後者の2つの不純物に対して良好な溶解能力を有するので、溶媒Iは溶媒Aに添加される。精製工程(2)では、グリコリドの大部分が固体形態で固液混合物中に存在し、グリコリドの少量が溶媒中に溶解され、濾過中に溶媒中に溶解された様々な不純物と共に濾液に入る。濾過ケーキは、工程(1)で精製されたグリコリドであり、様々な不純物が著しく低減されており、工程(2)における冷却結晶化の負担を軽減する。
【0023】
上記の技術的解決策のいずれかにおいて、前記溶媒Bは、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、イソブチルアルコールのうちの少なくとも1つから選択される。
【0024】
上記の技術的解決策のいずれにおいても、粗グリコリドはポリグリコール酸および/またはポリグリコールエステルの解重合によって得られ、例えば、粗グリコリドはグリコール酸(エステル)の重縮合-解重合によって得ることができ、またはポリグリコール酸(PGA)の老廃物の解重合によって得ることができ、好ましくは、その中のグリコリドの純度が75wt%以上95wt%未満である。
【0025】
上記のいずれの技術的解決策においても、粗グリコリドの純度はガスクロマトグラフィー(GC)によって測定され、粗グリコリド中の不純物は主に水、グリコリド酸、グリコリド酸オリゴマー(分子量500g/mol未満)、ポリグリコリド酸(分子量500g/molより高い)であり、これらの不純物中のグリコリド酸オリゴマーおよびポリグリコリド酸が溶媒Iに容易に可溶であり、これらの不純物は工程(1)の固液混合物の濾過プロセス中にグリコリドから分離され;水およびグリコリド酸などの小分子は溶媒IIと極性が類似しており、したがって溶媒Aに溶解し、冷却および結晶化中に固体を分離せず、工程(1)および(2)の濾過操作によってグリコリドから分離することができる。
【0026】
上記の技術的解決策のいずれかにおいて、工程(1)における粗グリコリドおよび溶媒Aを、0~40℃の一定温度で混合、撹拌する。好ましい一定温度の範囲は0~20℃である。洗浄温度が40℃より高い場合、混合溶媒Aに溶解したグリコリドは精製収率の明らかな損失を引き起こし、洗浄温度が低すぎる場合、溶媒Aで不純物を抽出する効果は理想的ではない。
【0027】
上記の技術的解決策のいずれにおいても、工程(1)における前記粗グリコリドと溶媒Aとの質量比は(0.5~5):1、好ましくは(0.5~2):1であり、質量比がより高い場合、洗浄効果は低下し、質量比がより低い場合、溶媒Aに溶解したグリコリドは、精製収率の許容できない損失値を引き起こし得る。
【0028】
上記の技術的解決策のいずれにおいても、工程(1)において固液混合物を濾過することによって得られる濾過ケーキは、濾過ケーキ中に残存するより高い沸点を有する溶媒Iを最小限に抑えるために、できるだけ低い含水量を有するべきである。好ましい含水率は、10%以下、より好ましくは5%以下である。
【0029】
工程(1)における濾過操作は、窒素加圧濾過装置、プレートフレーム加圧濾過装置、または遠心加圧濾過装置において、好ましくはプレートフレーム加圧濾過装置、または遠心加圧濾過装置において、より好ましくはプレートフレーム加圧濾過装置において行うことができる。
【0030】
上記のいずれの技術的解決策においても、工程(1)において前記固液混合物を濾過することによって得られる前記濾液中の前記溶媒は、回収が容易である。溶媒Iと溶媒IIとの沸点の大きな差を考慮すると、溶媒Iおよび溶媒IIは分留によって効率的に分離することができ、溶媒IIは前記分留中の軽質成分であり、最初に留去され、回収され、任意の精留および必要な脱水後の精製の任意の工程において再利用することができる。好ましくは、前記工程(1)において、軽質成分を留去した後に残存する重質成分は均一であり、流動性が良好で透明であり、4℃に置くと、固体が分離せず、溶媒Iが酸性不純物に対して高い溶解能力を有することを示し、上記重質成分をシクロヘキサンなどの有機溶媒で抽出することができ、その結果、溶媒Iは前記液相に押し込まれ、前記固液分離及び前記分画後に前記工程(1)で再利用することができる。
【0031】
上記の技術的解決策のいずれにおいても、工程(2)における前記一定温度は溶媒Bの沸点を超えず、好ましくは沸点より少なくとも3℃低く、工程(1)における前記濾過ケーキ中のグリコリド構成要素の完全な溶解が保証されるべきである。前記物質を加熱する温度は、好ましくは70~80℃、より好ましくは75~80℃である。
【0032】
上記の技術的解決策のいずれにおいても、工程(2)において、前記濾過ケーキ対溶媒Bの質量比は、(0.05-5):1、好ましくは(0.1-1):1である。
【0033】
上記の技術的解決策のいずれにおいても、工程(2)における冷却結晶化の温度終点は、0~25℃、好ましくは15~25℃である。好ましい温度範囲では、溶媒B中のグリコリドの溶解度は極めて低く、グリコリドの大部分はこの温度範囲で既に結晶化し、分離している。冷却結晶化温度の終点を前記好ましい温度範囲を超えてさらに低下させることは低温水の使用負荷を増加させ、前記プロセスのエネルギー消費を増加させるが、グリコリドの結晶化収率を明らかに改善することはできない。
【0034】
上記の技術的解決策のいずれにおいても、工程(2)において冷却および結晶化後に濾過によって前記グリコリド結晶を収集する場合、フィルタスクリーンの孔径は濾過中の結晶の損失を低減するために200ミクロン以下であるべきであり、前記フィルタスクリーンの孔径は、グリコリドから前記フィルタスクリーンを通る他の顆粒状不純物の前記分離を容易にするために50ミクロン以上であるべきである。
【0035】
工程(2)で濾過して得られる前記濾過ケーキはできるだけ低い含水率を有するべきであり、好ましい含水率は10%以下、より好ましくは5%以下であり、前記濾過操作は、窒素加圧濾過装置、プレートフレーム加圧濾過装置、又は遠心加圧濾過装置、好ましくはプレートフレーム加圧濾過装置、又は遠心加圧濾過装置、より好ましくはプレートフレーム加圧濾過装置で行うことができる。
【0036】
上記のいずれの技術的解決策においても、工程(2)における冷却及び結晶化の際のグリコリド結晶核形成後の冷却速度は5~10℃/時間であり、前記結晶核形成後の撹拌モードは間欠撹拌であり、回転速度は20rpmを超えない。より低い冷却速度は結晶の完全かつ均一な成長のためのものであり、低回転速度および間欠的な撹拌の使用は、材料冷却中の均一な熱伝達を確実にするためのものである。
【0037】
上記の技術的解決策のいずれにおいても、真空下の乾燥温度は40℃を超えず、好ましい乾燥温度は20~30℃である。前記好ましい乾燥温度範囲内で、前記グリコリド結晶は、好ましくは真空乾燥中に流動状態にある。したがって、前記真空乾燥は、好ましくはダブルコーン回転真空乾燥機中で実施される。
【0038】
本発明の第2の目的は、前記プロセスによって得られる精製グリコリドを提供することである。
【0039】
本発明で得られる前記精製グリコリドの末端カルボキシル含有量は、1~10μmol/g、好ましくは2~5μmol/gである。
【0040】
本発明の技術的解決策は、飽和一価アルコール中の粗グリコリドの洗浄にポリアルキレングリコールエーテルを導入し、その結果、前記粗グリコリド中の酸性不純物(約500g/molの分子量を有する)が、洗浄溶媒によって完全に抽出され、その後の再結晶化工程の精製負荷を低減する。従来技術と比較して、得られた精製グリコリドは、より低い末端カルボキシル含有量の特性を有する。本発明の技術的解決策において使用されるポリアルキレングリコールエーテルは一定の割合で飽和一価アルコールと混和することができ、溶媒およびグリコリドの固液分離工程中にグリコリドから容易に分離することができ、最終精製品中に残存しない。本発明の技術的解決策によれば、乾燥によりグリコリドから飽和一価アルコールを分離して、精製グリコリド製品を得、前記飽和一価アルコールが完全に除去されやすく、それにより前記精製製品中の溶媒残渣の問題が解決される。
【0041】
既存の精製グリコリドは通常、粗グリコリドを酢酸エチルなどの良好な溶媒中で数回再結晶し、次いで濾過し、乾燥することによって得られる。グリコリドは分子レベルで良好な溶媒と高い親和性を有するため、乾燥後の精製グリコリド中の溶媒を完全に除去することが困難であり、開環重合反応後のポリマーPGA中に残留精製溶媒が生じ、これは人体におけるPGAの生物医学的適用に影響を及ぼす。本発明の技術的解決策では、粗グリコリドの精製のために2タイプの極性溶媒が使用される。これは、グリコール酸オリゴマーなどの酸性不純物に対する良好な抽出効果を有する。溶媒は、固液分離および乾燥プロセス中に容易に完全に除去される。前記精製品中の溶媒残留物の問題は解決される。生成物中の低い遊離酸含量の技術的効果が得られる。本発明の技術的解決策は、容易な溶媒回収および生成物中の低い遊離酸含量という技術的利点を有する。
【0042】
〔詳細な説明〕
以下、具体的な実施形態を挙げて本発明を具体的に説明する。以下の実施例/実施形態は本発明のさらなる説明のためにのみ使用されるものであり、本発明の保護範囲を限定するものとして解釈することはできないことをここで指摘する必要がある。当業者は、本発明の内容に従ってなされた本発明に対するいくつかの必須ではない改良および修正が依然として本発明の保護範囲に属することを理解することができる。
【0043】
本発明の特定の具体例/実施形態で使用される原料は市販されている。
【0044】
本発明の粗グリコリド又はグリコリドの遊離酸濃度の測定方法は、以下の通りである:
粗グリコリド中の遊離酸の濃度は、酸-塩基滴定によって決定される。具体的には、乾燥ジメチルスルホキシド約30mLに粗グリコリドサンプルを加え、これを溶解した後、ブロモフェノールブルー指示薬液を数滴加えて溶液を黄色にする。ベンジルアルコールの水酸化ナトリウム希釈液を既知の濃度で滴定し、前記溶液の色が黄色から緑色に変わったときの終点で判定する。グリコリド中の末端カルボキシル量(単位μmol)は滴定終点に達したときに使用される前記水酸化ナトリウム溶液の体積を計算し、次いで、粗グリコリド試料の質量で割って、粗グリコリドの遊離酸の濃度(単位μmol/g)を得ることによって計算される。
【0045】
本発明の粗グリコリドの純度の測定方法は以下の通りである:
粗グリコリドの純度は、ガスクロマトグラフィー(GC)によって決定される。被験グリコリドサンプル200mg、内標準物質p-クロロベンゾフェノン40mgをアセトン10mLに溶かし、得られた溶液2μLをガスクロマトグラフに注入してグリコリドの量を測定する。グリコリド標準サンプル(160~200mgの間の少なくとも5点)と内標準物質、例えば、p-クロロベンゾフェノン(40mg)によって、あらかじめ作成された標準検量線を用いて、グリコリドの前記純度を測定する。測定装置はAgilent 7890B、クロマトグラフィーカラムはキャピラリーカラムHP-5(30m×0.32mm、0.25μm)、クロマトグラフィーカラム温度は280℃、注入口温度は150℃、検出器はFIDである。
【0046】
本発明の精製グリコリドの純度の測定方法は以下の通りである:
前記精製グリコリド結晶の純度を示差走査熱量測定(DSC)で分析する。使用する機器モデルはTA Discoveryで、加熱速度を0.5℃/分に制御した状態でグリコリドの温度を65℃から95℃に上昇させる。グリコリドの純度を分析するために、装置に付属のソフトウェアが使用される。
【0047】
本発明の前記精製グリコリド中の残留溶媒含量は、高速液体クロマトグラフィーによって測定される。
【0048】
本発明は、以下の実施例を用いてさらに詳述される。
【0049】
〔実施例1〕
粗グリコリドの重縮合解重合調製:グリコール酸結晶600gとオクタン酸第一スズ触媒6gとを反応器に加え、室温から90℃に昇温した。固体が完全に溶解した後、温度を120℃に上昇させて、大気圧下で予備重合を開始した。2時間の予備重合の後、温度を210℃に上げた。水が蒸留されなくなるまで、システム温度は維持され、その後、システムは真空化され始めた。この過程の真空度は、水が留去されなくなるまで3kPaに制御され、最後に482gのグリコール酸オリゴマーが得られた。
【0050】
解重合反応器にオリゴマーを供給し、反応温度290℃、真空度3kPa、攪拌速度100rpmで反応させて粗グリコリドを調製し、2時間反応させた後、反応を停止させて、酸含量452μmol/g、グリコリド純度89.60%の粗グリコリド(397g)の第1バッチを得た。
【0051】
〔実施例2〕
実施例1で得られた粗グリコリド50gに、n-ブタノール(含水量30ppm以下)40g及びペンタエチレングリコールジメチルエーテル10gを混合し、固液混合物を室温で1時間撹拌した。撹拌を停止し、混合物を吸引濾過して、46gの濾過ケーキを得た。濾過ケーキを92gのn-ブタノールと混合し、混合物を80℃に加熱して均一な溶液を形成した。100rpmの回転速度の状態で、溶液を10℃/hの速度で室温に冷却し、グリコリドをシステムから分離した。得られた混合物を吸引濾過し、濾過ケーキを上記の冷却、再結晶および濾過プロセスに1回供した。濾過により得られた固体を30℃で8時間真空乾燥し、37.4gの白色結晶を全収量74.8%で得た。DSCによって測定された精製グリコリドの純度は99.73%であった。酸―塩基滴定により測定した精製グリコリド中の末端カルボキシル含有量は3.2μmol/gであった。液体クロマトグラフィーにより測定したグリコリド中のn-ブタノール及びペンタエチレングリコールジメチルエーテルの残存量は0.025%であり、n-ブタノールの残存量は225ppmであった。
【0052】
〔実施例3〕
実施例1で得られた粗グリコリド50gに、n-ブタノール(含水量30ppm以下)40g及びノナエチレングリコールジメチルエーテル10gを混合し、固液混合物を室温で1時間撹拌した。撹拌を停止し、前記混合物を吸引濾過して、濾過ケーキ45gを得た。前記濾過ケーキを90gのn-ブタノールと混合し、前記混合物を80℃に加熱して均一な溶液を形成した。100rpmの回転速度の状態で、前記溶液を10℃/hの速度で室温に冷却し、グリコリドを系から分離した。得られた混合物を吸引濾過し、濾過ケーキを上記の冷却、再結晶および濾過のプロセスに1回供した。濾過により得られた固体を30℃で8時間真空乾燥し、36.9gの白色結晶を全収量73.8%で得た。DSCによって測定された前記精製グリコリドの純度は99.82%であった。酸―塩基滴定により測定した前記精製グリコリド中の末端カルボキシル含有量は、1.8μmol/gであった。液体クロマトグラフィーにより測定した前記グリコリド中のn-ブタノール及びノナエチレングリコールジメチルエーテルの残存量は0.015%であり、n-ブタノールの残存量は134ppmであった。
【0053】
〔実施例4〕
実施例1で得られた粗グリコリド50gにイソプロパノール(含水量30ppm以下)40g及びペンタエチレングリコールジメチルエーテル10gを混合し、固液混合物を室温で1時間撹拌した。撹拌を停止し、混合物を吸引濾過して、44gの濾過ケーキを得た。濾過ケーキを88gのイソプロパノールと混合し、混合物を78℃に加熱して均一な溶液を形成した。100rpmの回転速度の状態で、前記溶液を10℃/hの速度で室温に冷却し、グリコリドを系から分離した。得られた混合物を吸引濾過し、濾過ケーキを、上記の冷却、再結晶および濾過のプロセスに1回供した。濾過により得られた固体を30℃で8時間真空乾燥し、35.8gの白色結晶を全収量71.6%で得た。DSCによって測定された前記精製グリコリドの純度は99.83%であった。酸―塩基滴定により測定した前記精製グリコリド中の末端カルボキシル含有量は2.6μmol/gであった。液体クロマトグラフィーにより測定した前記グリコリド中のイソプロパノールおよびペンタエチレングリコールジメチルエーテルの残存量は0.030%であり、イソプロパノールの残存量は290ppmであった。
【0054】
〔実施例5〕
実施例1で得られた粗グリコリド50gにイソプロパノール(含水量30ppm以下)40gとノナエチレングリコールジメチルエーテル10gを混合し、固液混合物を室温で1時間撹拌した。撹拌を停止し、混合物を吸引濾過して、44gの濾過ケーキを得た。濾過ケーキを88gのイソプロパノールと混合し、混合物を78℃に加熱して均一な溶液を形成した。100rpmの回転速度の条件下で、前記溶液を10℃/hの速度で室温に冷却し、グリコリドを系から分離した。得られた混合物を吸引濾過し、濾過ケーキを、上記の冷却、再結晶および濾過のプロセスに1回供した。濾過により得られた固体を30℃で8時間真空乾燥し、35.2gの白色結晶を全収量70.4%で得た。DSCによって測定された前記精製グリコリドの純度は99.74%であった。酸―塩基滴定により測定した精製グリコリド中の末端カルボキシル含有量は2.8μmol/gであった。液体クロマトグラフィーにより測定したグリコリド中のイソプロパノールおよびノナエチレングリコールジメチルエーテルの残存量は0.035%であり、イソプロパノールの残存量は336ppmであった。
【0055】
〔実施例6〕
実施例1と同様の製造方法で得られ、酸含量661μmol/g、グリコリド純度83.70%の粗グリコリド50gに、イソプロパノール30g(含水量30ppm以下)、ヘプタエチレングリコールジメチルエーテル20gを混合し、固液混合物を室温で30分間撹拌した。撹拌を停止し、前記混合物を吸引濾過して、42gの濾過ケーキを得た。濾過ケーキを210gのイソプロパノールと混合し、前記混合物を78℃に加熱して均一な溶液を形成した。100rpmの回転速度の状態で、前記溶液を10℃/hの速度で室温に冷却し、グリコリドを系から分離した。得られた混合物を吸引濾過し、濾過ケーキを上記の冷却、再結晶および濾過のプロセスに1回供した。濾過により得られた固体を30℃で8時間真空乾燥し、34.2gの白色結晶を全収量68.4%で得た。DSCによって測定された前記精製グリコリドの純度は、99.78%であった。酸―塩基滴定により測定した前記精製グリコリド中の末端カルボキシル含有量は3.1μmol/gであった。液体クロマトグラフィーにより測定した前記グリコリド中のイソプロパノール及びヘプタエチレングリコールジメチルエーテルの残存量は0.033%であり、イソプロパノールの残存量は318ppmであった。
【0056】
〔実施例7〕
実施例1で得られた粗グリコリド50gにイソプロパノール(含水量30ppm以下)10g及びノナエチレングリコールジメチルエーテル2.5gを混合し、固液混合物を室温で1時間撹拌した。撹拌を停止し、混合物を吸引濾過して、46gの濾過ケーキを得た。濾過ケーキを92gのイソプロパノールと混合し、混合物を78℃に加熱して、均一な溶液を形成した。100rpmの回転速度の状態で、前記溶液を10℃/hの速度で室温に冷却し、グリコリドを系から分離した。得られた混合物を吸引濾過し、前記濾過ケーキを上記の冷却、再結晶および濾過のプロセスに1回供した。濾過により得られた固体を30℃で8時間真空乾燥し、35.4gの白色結晶を全収量70.8%で得た。DSCによって測定された精製グリコリドの純度は99.58%であった。酸―塩基滴定により測定した前記精製グリコリド中の末端カルボキシル含有量は5.8μmol/gであった。液体クロマトグラフィーにより測定したグリコリド中のイソプロパノールおよびノナエチレングリコールジメチルエーテルの残存量は0.015%であり、イソプロパノールの残存量は142ppmであった。
【0057】
〔比較例1〕
実施例1で得られた粗グリコリド50gを酢酸エチル(含水量30ppm以下)50mLで再結晶した。この混合物を70℃に加熱して溶液を得、次いで、得られた溶液を加熱しながら濾過し、得られた濾液を室温に冷却した。結晶を分離した固体-液体混合物を濾過し、乾燥し、再結晶プロセスを1回繰り返した。得られた固体を30℃で8時間真空乾燥し、全収量60.8%の白色結晶30.4gを得た。DSCによって測定された精製グリコリドの純度は99.20%であった。酸ー塩基滴定により測定した前記精製グリコリド中の末端カルボキシル含有量は10.1μmol/gであった。液体クロマトグラフィーにより測定した前記グリコリド中の酢酸エチルの残留量は0.090%であった。
【0058】
〔比較例2〕
比較例1で得られた前記精製グリコリド30.4gを1回繰り返し再結晶処理し、得られた固体を30℃で8時間真空乾燥し、白色結晶26.5gを得た。DSCによって測定された前記精製グリコリドの純度は99.7%であった。酸-塩基滴定により測定した前記精製グリコリド中の末端カルボキシル含有量は2.3μmol/gであった。液体クロマトグラフィーにより測定した前記グリコリド中の酢酸エチルの残留量は0.080%であった。
【0059】
〔比較例3〕
実施例1で得られた粗グリコリド50gをペンタエチレングリコールジメチルエーテル50gと混合し、固液混合物を室温で1時間撹拌した。撹拌を停止し、混合物を吸引濾過して38gの濾過ケーキを得た。濾過ケーキを76gのペンタエチレングリコールジメチルエーテルと混合し、混合物を80℃に加熱して均一な溶液を形成した。100rpmの回転速度の状態で、溶液を10℃/hの速度で室温に冷却し、グリコリドをシステムから分離した。得られた混合物を吸引濾過し、濾過ケーキに対して上記の冷却、再結晶、濾過のプロセスを1回施した。濾過により得られた固体を30℃で8時間真空乾燥し、27.2gの白色結晶を全収量54.4%で得た。DSCによって測定された精製グリコリドの純度は99.21%であった。酸-塩基滴定により測定した前記精製グリコリド中の末端カルボキシル含有量は8.5μmol/gであった。液体クロマトグラフィーにより測定した前記グリコリド中のペンタエチレングリコールジメチルエーテルの残留量は0.86%であった。
【0060】
〔比較例4〕
実施例1で得られた粗グリコリド50gをn-ブタノール(含水量30ppm以下)50gと混合し、固液混合物を室温で1時間撹拌した。撹拌を停止し、前記混合物を吸引濾過して、濾過ケーキ40gを得た。前記濾過ケーキを80gのn-ブタノールと混合し、前記混合物を80℃に加熱して均一な溶液を形成した。100rpmの回転速度の状態で、前記溶液を10℃/hの速度で室温に冷却し、グリコリドをシステムから分離した。得られた混合物を吸引濾過し、前記濾過ケーキを前記の冷却、再結晶および濾過のプロセスに1回供した。濾過により得られた固体を30℃で8時間真空乾燥し、28.3gの白色結晶を全収量56.6%で得た。DSCによって測定された精製グリコリドの純度は99.33%であった。酸-塩基滴定により測定した前記精製グリコリド中の末端カルボキシル含有量は9.6μmol/gであった。液体クロマトグラフィーにより測定した前記グリコリド中のn-ブタノールの残留量は200ppmであった。
【0061】
〔比較例5〕
実施例1で得られた粗グリコリド50gに、n-ブタノール(含水量30ppm以下)10g及びノナエチレングリコールジメチルエーテル40gを混合し、固液混合物を室温で1時間撹拌した。撹拌を停止し、混合物を吸引濾過して37gの濾過ケーキを得た。前記濾過ケーキを74gのn-ブタノールと混合し、前記混合物を80℃に加熱して均一な溶液を形成した。100rpmの回転速度の状態で、前記溶液を10℃/hの速度で室温に冷却し、グリコリドをシステムから分離した。得られた混合物を吸引濾過し、濾過ケーキを上記の冷却、再結晶および濾過のプロセスに1回供した。濾過により得られた固体を30℃で8時間真空乾燥し、27.0gの白色結晶を全収量54.0%で得た。DSCによって測定された前記精製グリコリドの純度は99.25%であった。酸-塩基滴定により測定した前記精製グリコリド中の末端カルボキシル含有量は9.1μmol/gであった。液体クロマトグラフィーにより測定した前記グリコリド中のn-ブタノール及びノナエチレングリコールジメチルエーテルの残存量は0.098%であり、n-ブタノールの残存量は603ppmであった。
【0062】
〔実施例8〕
実施例1で得られた粗グリコリド50gを、n-ブタノール(含水量30ppm以下)25g及びノナエチレングリコールジメチルエーテル25gと混合し、固液混合物を室温で1時間撹拌した。撹拌を停止し、混合物を吸引濾過して、41gの濾過ケーキを得た。前記濾過ケーキを82gのn-ブタノールと混合し、前記混合物を80℃に加熱して均一な溶液を形成した。100rpmの回転速度の状態で、前記溶液を10℃/hの速度で室温に冷却し、前記グリコリドをシステムから分離した。得られた混合物を吸引濾過し、濾過ケーキを上記の冷却、再結晶および濾過のプロセスに1回供した。濾過により得られた固体を30℃で8時間真空乾燥し、32.1gの白色結晶を全収量64.2%で得た。DSCによって測定された前記精製グリコリドの純度は99.50%であった。酸-塩基滴定により測定した前記精製グリコリド中の末端カルボキシル含有量は6.2μmol/gであった。液体クロマトグラフィーにより測定した前記グリコリド中のn-ブタノール及びノナエチレングリコールジメチルエーテルの残存量は0.079%であり、n-ブタノールの残存量は596ppmであった。
【0063】
更に、本発明は、具体的には技術的解決策A1~A8を含む、以下の技術的解決策のグループも提供する:
A1.粗グリコリドから溶媒Aで不純物を抽出する工程、次いで溶媒Bで再結晶する工程を含むグリコリドの精製方法であって、溶媒Aが少なくとも2つの溶媒を含み、溶媒が互いに混和性である方法;
前記溶媒Aは好ましくは溶媒Iと溶媒IIとの混合溶媒であり、溶媒Iは大気圧下で180℃以上の沸点を有するポリアルコールエーテルから選択され、溶媒Iは好ましくはポリアルキレングリコールエーテルの少なくとも1つから選択され、溶媒IIは大気圧下で120℃以下の沸点を有する飽和アルコールから選択され、溶媒IIは好ましくは飽和一価アルコールの少なくとも1つから選択される;
前記溶媒Bは大気圧下で120℃以下の沸点を有する飽和アルコールから選択され、好ましくは飽和一価アルコールの少なくとも1つから選択され、前記溶媒Bは溶媒IIと同一であるか、または異なる。
【0064】
A2.以下の工程を含むことを特徴とする、技術的解決策A1に記載のグリコリドの精製方法:
(1)粗グリコリドと溶媒Aとを混合攪拌し、得られた固液混合物を濾過し、得られた濾過ケーキを回収する工程;
(2)工程(1)で得られた前記濾過ケーキを溶媒Bと混合し、得られた混合物を加熱した後、得られた溶液を冷却してグリコリド結晶を分離し、得られた濾過ケーキを濾過により回収する工程;
好ましくは、工程(2)を少なくとも1回繰り返した後、得られた濾過ケーキを真空乾燥する。
【0065】
A3.技術的解決策A1によるグリコリドの精製方法であって:
工程(1)において、粗グリコリド対溶媒Aの質量比は(0.5~5):1、好ましくは(0.5~2):1であり;および/または、工程(2)において、濾過ケーキ対溶媒Bの質量比は(0.05~5):1、好ましくは(0.1~1):1である。
【0066】
A4.技術的解決策A1によるグリコリドの精製方法であって:
前記溶媒A中の溶媒IIの質量分率は50%以上であるが100%ではなく、好ましくは溶媒IIの質量分率は50~80%である。
【0067】
A5.技術的解決策A1によるグリコリドの精製方法であって:
前記溶媒Iはポリアルキレングリコールモノエーテル又はポリアルキレングリコールジエーテルの内少なくとも1つから選択され、より好ましくはポリエチレングリコールエーテルから選択され、更に好ましくはポリエチレングリコールジエーテルから選択され;および/または、前記溶媒IIがエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、イソブチルアルコールの少なくとも1つから選択され;および/または、前記溶媒Bがエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、イソブチルアルコールの少なくとも1つから選択される。
【0068】
A6.以下のことを特徴とする、技術的解決策A5に記載のグリコリドの精製方法:
前記ポリエチレングリコールジエーテル中のエチレングリコールの重合度は、20以下、好ましくは10以下である。
【0069】
A7.以下のことを特徴とする、技術的解決策A2に記載のグリコリドの精製方法:
工程(1)において、混合のための温度は0~40℃、好ましくは0~20℃であり;および/または、工程(2)において、得られる混合物が加熱される温度は70~80℃、好ましくは75~80℃であり;得られる溶液が冷却される温度は0~25℃、好ましくは15~25℃である。
【0070】
A8.技術的解決策A1またはA2によるグリコリドの精製方法であって:
粗グリコリドはポリグリコール酸および/またはポリグリコールエステルの解重合によって得られ、好ましくは75wt%以上95wt%未満のグリコリド純度を有する。
【0071】
A9.技術的解決策A1~A8のいずれか1つによる処理で得られた精製グリコリド。
【0072】
更に、本発明は、具体的には技術的解決策B1~B19を含む、以下の技術的解決策群も提供する:
B1.以下の工程を含む、グリコリドを精製するための方法:
(1)粗グリコリドから溶媒Aに不純物を抽出させ、グリコリド含有相及び不純物含有相(グリコリド含有相とはグリコリドの含有量が粗グリコリド中のグリコリドの含有量よりも多い相をいい、不純物含有相とは不純物の含有量が粗グリコリド中の不純物の含有量よりも多い相をいい、不純物とは粗グリコリド中のグリコリド以外の物質の総称をいう。)を得る工程;
(2)グリコリド含有相を溶媒Bで再結晶する工程であって、溶媒Aが少なくとも2つの溶媒を含み、溶媒が互いに混和性である工程。
【0073】
B2.前記溶媒Aが溶媒Iおよび溶媒IIを含み、溶媒Iが大気圧下で180℃以上の沸点を有するポリアルコールエーテルから選択され、溶媒IIが大気圧下で120℃以下の沸点を有する飽和アルコールから選択されることを特徴とする、前述の技術的解決策のいずれかによるグリコリドの精製方法。
【0074】
B3.工程(1)において、溶媒Iおよび溶媒IIを同時にまたは連続的に添加することを特徴とする、前述の技術的解決策のいずれかによるグリコリドの精製方法。
【0075】
B4.工程(2)が工程(1)の後に直接実施されること、または工程(1)の後に、グリコリド含有相がグリコリド含有相の組成を変えることなく処理され、次いで工程(2)が実施されることを特徴とする、前述の技術的解決策のいずれかによるグリコリドを精製するための方法。
【0076】
本発明において、グリコリド含有相の組成が変化しない限り、技術的解決策B4に記載の処理は特に限定されない。例えば、前記処理には、加熱、冷却、加圧、減圧、放置保存等が含まれる。
【0077】
B5.前記溶媒Aが溶媒Iと溶媒IIとの混合溶媒であり、溶媒Iが大気圧下で180℃以上の沸点を有するポリアルコールエーテルから選択され、溶媒IIが大気圧下で120℃以下の沸点を有する飽和アルコールから選択されることを特徴とする、前記技術的解決策のいずれかに記載のグリコリドの精製方法。
【0078】
B6.前記溶媒Bが大気圧下で120℃以下の沸点を有する飽和アルコールを含み、前記溶媒Bが、溶媒IIと同一であるかまたは異なることを特徴とする、前述の技術的解決策のいずれかに記載のグリコリドを精製するための方法。
【0079】
B7.前記溶媒Bが大気圧下で120℃以下の沸点を有する飽和アルコールであり、前記溶媒Bが、溶媒IIと同一であるか、または異なることを特徴とする、前記技術的解決策のいずれかに記載のグリコリドを精製するための方法。
【0080】
B8.前記溶媒Aが溶媒Iと溶媒IIとの混合溶媒であり、溶媒Iが大気圧下で180℃以上の沸点を有するポリアルキレングリコールエーテル類の少なくとも1種であり、溶媒IIが大気圧下で120℃以下の沸点を有する飽和一価アルコール類の少なくとも1種であり、溶媒Bが大気圧下で120℃以下の沸点を有する飽和一価アルコール類の少なくとも1種であり、溶媒Bが、溶媒IIと同一であるか、または溶媒IIと異なることを特徴とする、前記技術的解決策のいずれかに記載のグリコリドの精製方法。
【0081】
B9.前記方法が以下の工程を含むことを特徴とする、前述の技術的解決策のいずれかによるグリコリドを精製するための方法であって:
(1)粗グリコリドと溶媒Aとを混合攪拌し、得られた固液混合物を濾過し、得られた濾過ケーキを回収する工程;
(2)工程(1)で得られた濾過ケーキを溶媒Bと混合し、得られた混合物を加熱した後、得られた溶液を冷却してグリコリド結晶を分離し、得られた濾過ケーキを濾過により回収する工程;
工程(2)を少なくとも1回繰り返した後、得られた濾過ケーキを真空乾燥することが好ましい。
【0082】
B10.前述の技術的解決策のいずれかによるグリコリドの精製方法であって:
工程(1)において、粗グリコリド対溶媒Aの質量比率は(0.5~5):1、例えば(0.5~2):1であり;および/または、工程(2)において、濾過ケーキ対溶媒Bの質量比率は(0.05~5):1、例えば(0.1~1):1である。
【0083】
B11.前述の技術的解決策のいずれかによるグリコリドの精製方法であって:
前記溶媒A中の溶媒IIの質量分率は50%以上であるが、100%に等しくはなく、例えば、溶媒IIの質量分率は50~99%、または50~80%、例えば、50%、60%、70%、80%、または90%である。
【0084】
B12.前述の技術的解決策のいずれかによるグリコリドの精製方法であって:
前記溶媒Iはポリアルキレングリコールモノエーテルまたはポリアルキレングリコールジエーテル、例えばポリエチレングリコールエーテル、例えばポリエチレングリコールジエーテルの少なくとも1つから選択され;および/または、前記溶媒IIはエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブチルアルコール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノールの少なくとも1つから選択され;および/または、前記溶媒Bはエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブチルアルコール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノールの少なくとも1つである。
【0085】
B13.技術的解決策B12によるグリコリドの精製方法であって:
ポリエチレングリコールジエーテル中のエチレングリコールの重合度は、20以下、例えば10以下である。
【0086】
B14.技術的解決策B9に記載のグリコリドの精製方法であって:
工程(1)において、混合のための温度は0~40℃、例えば、0~20℃であり;および/または、工程(2)において、得られる混合物が加熱される温度は70~80℃、例えば、75~80℃であり;得られる溶液が冷却される温度は0~25℃、例えば、15~25℃である。
【0087】
B15.前述の技術的解決策のいずれかによるグリコリドの精製方法であって:
粗グリコリドはポリグリコール酸および/またはポリグリコールエステルの解重合によって得られ、例えば、75wt%以上95wt%未満のグリコリド純度を有する。
【0088】
B16.前述の技術的解決策のいずれかによるグリコリドを精製するためのプロセスであって、前記粗グリコリドが固体または溶融状態であり、好ましくは、前記粗グリコリドが10μmol/gを超える、好ましくは100μmol/gを超える、より好ましくは500μmol/gを超える末端カルボキシル含有量を有する、プロセスである。
【0089】
B17.技術的解決策B1~B16のいずれか1つによる方法で得られる精製グリコリドであって、好ましくは、前記精製グリコリドは、(A)大気圧下の沸点が180℃以上であるポリアルキレングリコールエーテルなどの、大気圧下の沸点が180℃以上であるポリアルコールエーテルと、(b)大気圧下の沸点が120℃以下である飽和一価アルコールなどの、大気圧下の沸点が120℃以下である飽和アルコールとを含有し、前記精製グリコリドの総重量に基づいて、構成要素(A)および構成要素(b)の含有量がゼロ以上、好ましくは両方ともゼロより大きく、構成要素(A)および構成要素(b)の総含有量が800ppm以下、好ましくは500ppm以下、好ましくは構成要素(A)の含有量がゼロより大きく300ppm未満であり、構成要素(b)の含有量は0より大きく600ppm未満であり、より好ましくは構成要素(A)の含有量は5ppmより大きく200ppm未満であり、構成要素(b)の含有量は100ppmより大きく600ppm未満であり、さらに特に好ましくは構成要素(A)の含有量は5ppmより大きく30ppm未満であり、構成要素(b)の含有量は125ppmより大きく350ppm未満であり;および/または、精製グリコリドの末端カルボキシル含有量は、1~10μmol/g、好ましくは2~5μmol/gである。
【0090】
B18.グリコリドを含有する、グリコリド含有組成物であって、
グリコリド、(a)大気圧下での沸点が180℃以上のポリアルキレングリコールエーテルなどの、大気圧下での沸点が180℃以上のポリアルコールエーテル、および(b)大気圧下での沸点が120℃以下の飽和一価アルコールなどの、大気圧下での沸点が120℃以下の飽和アルコールを含有し、前記グリコリド含有組成物の総重量に基づいて、構成要素(a)および構成要素(b)の含有量がゼロ以上、好ましくは共にゼロより大きく、構成要素(a)および構成要素(b)の総含有量が800ppm以下、好ましくは500ppm以下、好ましくは構成要素(a)の含有量がゼロより大きく300ppm未満であり、構成要素(b)の含有量がゼロより大きく600ppm未満であり、より好ましくは構成要素(a)の含有量が5ppmを超え200ppm未満であり、構成要素(b)の含有量は100ppmを超え600ppm未満であり、さらに特に好ましくは、構成要素(a)の含有量は5ppmを超え30ppm未満であり、構成要素(b)の含有量は125ppmを超え350ppm未満であり;および/または、前記グリコリド含有組成物において、末端カルボキシル含量は、1~10μmol/g、好ましくは2~5μmol/gである。
【0091】
B19.複合溶媒が:
(a)大気圧下での沸点が180℃以上であるポリアルキレングリコールエーテルのような、大気圧下での沸点が180℃以上であるポリアルコールエーテル、及び(b)大気圧下での沸点が120℃以下である飽和一価アルコールのような、大気圧下での沸点が120℃以下である飽和アルコールからなり、構成要素(a)と構成要素(b)との重量比率が50:50~1:99であることを特徴とする、複合溶媒である。
【0092】
本発明では、特に明記しない限り、室温は15~20℃を意味する。
【0093】
本開示において、別段の指示がない限り、割合は重量による。
【国際調査報告】