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特表2023-547627重なり領域において2つの薄肉のワークピースをレーザ溶接するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】重なり領域において2つの薄肉のワークピースをレーザ溶接するための方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/244 20140101AFI20231106BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20231106BHJP
【FI】
B23K26/244
H01M8/0206
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525065
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(85)【翻訳文提出日】2023-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2021077776
(87)【国際公開番号】W WO2022089912
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】102020128464.0
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506065105
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー- ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser- und Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Strasse 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オリバー ボックスロッカー
(72)【発明者】
【氏名】ティム ヘッセ
【テーマコード(参考)】
4E168
5H126
【Fターム(参考)】
4E168BA02
4E168BA13
4E168BA74
4E168BA81
4E168BA83
4E168CA06
4E168CB03
4E168CB04
4E168CB22
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA32
4E168EA15
4E168KA07
5H126AA12
5H126DD05
5H126FF04
5H126HH01
5H126JJ03
5H126JJ06
(57)【要約】
本発明は、2つのワークピース(W1、W2)を溶接シーム(4)に沿ってレーザ溶接するための方法であって、
厚さD1を有する第1のワークピース(W1)と厚さD2を有する第2のワークピース(W2)とが、少なくとも重なり領域(UeB)において重なるように積み重なって構成され、
2つのワークピース(W1、W2)の厚さD1、D2がそれぞれ400μm以下であり、
溶接シーム(4)に沿って案内されるレーザビーム(2)によって、第1のワークピース(W1)の側から、重なり領域(UeB)において、第1のワークピース(W1)の材料が厚さD1全体にわたって溶融され、第2のワークピース(W2)の材料が厚さD2全体のうち部分厚TDのみにわたって溶融され、
レーザ溶接が、第1のワークピース(W1)内に、又は第1及び第2のワークピース(W1、W2)内にキャピラリ深さKTまで延びる蒸気キャピラリ(1)をレーザビーム(2)が発生させるように行われ、0.33*EST≦KT≦0.67*ESTであり、溶接深さEST=D1+TDである、方法に関する。本発明によって、薄肉ワークピースの溶接の際に高速な送り速度で高いシーム品質を実現することが可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのワークピース(W1、W2)を溶接シーム(4)に沿ってレーザ溶接するための方法であって、
厚さD1を有する第1のワークピース(W1)と厚さD2を有する第2のワークピース(W2)とが、少なくとも重なり領域(UeB)において重なるように積み重なって構成され、
前記2つのワークピース(W1、W2)の前記厚さD1、D2がそれぞれ400μm以下であり、
前記溶接シーム(4)に沿って案内されるレーザビーム(2)によって、前記第1のワークピース(W1)の側から、前記重なり領域(UeB)において、前記第1のワークピース(W1)の材料が前記厚さD1全体にわたって溶融され、前記第2のワークピース(W2)の材料が前記厚さD2全体のうち部分厚TDのみにわたって溶融され、
前記レーザ溶接が、前記第1のワークピース(W1)内に、又は前記第1及び第2のワークピース(W1、W2)内にキャピラリ深さKTまで延びる蒸気キャピラリ(1)を前記レーザビーム(2)が発生させるように行われ、0.33*EST≦KT≦0.67*ESTであり、溶接深さEST=D1+TDである、方法。
【請求項2】
0.40*EST≦KT≦0.60*ESTであり、
好ましくは、0.45*EST≦KT≦0.55*ESTである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
0.25*D2≦TD≦0.75*D2であり、
好ましくは、0.33*D2≦TD≦0.67*D2であり、
特に好ましくは、0.40*D2≦TD≦0.60*D2である、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶接シーム(4)の走行方向(VLR)に直交して測定される、前記第1のワークピース(W1)の前記レーザビーム(2)に面する表面(3)における前記蒸気キャピラリ(1)の幅KBについては、
0.50≦KT/KB≦2.00であり、
好ましくは、0.75≦KT/KB≦1.50であることが適用され、
特に、前記第1のワークピース(W1)の前記表面(3)の前記レーザビーム(2)に面する平面でそれぞれ測定される、前記レーザビーム(2)の送り方向(VR)に直交する前記レーザビーム(2)の焦点径FDQ及び前記送り方向(VR)に沿った前記レーザビーム(2)の焦点径FDLについては、
0.8≦FDQ/FDL≦1.2であり、
好ましくは、0.9≦FDQ/FDL≦1.1であることが適用されるように、前記レーザ溶接が実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザビーム(2)が平均波長λを有し、
λ≦1200nmであり、
好ましくは、
a)900nm≦λ≦1100nmであり、特に、λ=1030nm若しくは1064nm若しくは1070nmである、又は
b)500nm≦λ≦600nmであり、特に、λ=515nmである、又は
c)400nm≦λ≦500nmであり、特に、λ=450nmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記レーザビーム(2)が平均レーザパワーPを有し、
60W≦P≦1200Wであり、
好ましくは、100W≦P≦500Wである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記レーザビーム(2)が、前記第1のワークピース(W1)の前記レーザビーム(2)に面する表面(3)の平面において、焦点径FDを有し、
10μm≦FD≦100μmであり、
好ましくは、14μm≦FD≦60μmであり、
特に好ましくは、25μm≦FD≦39μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶接シーム(4)の走行方向(VLR)に直交して測定される、前記第1のワークピース(W1)の前記レーザビーム(2)に面する表面(3)における前記第1のワークピース(W1)の前記溶融された材料の幅Bについて、
60μm≦B≦600μmであり、
好ましくは、80μm≦B≦400μmであり、
特に好ましくは、100μm≦B≦200μmであることが適用される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
D1≦250μm且つD2≦250μmであり、
好ましくは、50μm≦D1≦200μm且つ50μm≦D2≦200μmであり、
特に好ましくは、75μm≦D1≦100μm且つ75μm≦D2≦100μmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
50μm≦EST≦600μmであり、
好ましくは、60μm≦EST≦400μmであり、
特に好ましくは、75μm≦EST≦225μmである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザビーム(2)が前記ワークピース(W1、W2)に対して送り速度vで移動され、
v≧5m/分であり、
好ましくはv≧10m/分であり、
特に前記レーザビーム(2)がレーザスキャナによって偏向される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記2つのワークピース(W1、W2)が、金属板が概ね平面が平行となるように向けられ、弾性変形により接触部(35)において押し合うように、レーザ溶接中に凸状に湾曲した外側(31、32)によって互いに押し付けられる湾曲した金属板の形態であり、前記レーザビーム(2)が、前記接触部(35)の領域において前記溶接シーム(4)に沿って2つの金属板を溶接し、
特に、2つの湾曲した金属板が鋼鉄製である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記2つのワークピース(W1、W2)が可撓性金属箔の形態である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記2つのワークピース(W1、W2)によって形成された導電体及び/又はガスシールを溶接するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項15】
前記2つのワークピース(W1、W2)が燃料電池のバイポーラプレートである、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのワークピースを溶接シームに沿ってレーザ溶接するための方法であって、厚さD1を有する第1のワークピースと厚さD2を有する第2のワークピースとが、少なくとも重なり領域において重なるように積み重なって構成され、2つのワークピースの厚さD1、D2がそれぞれ400μm以下である、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ溶接(レーザビーム溶接とも呼ばれる)は、溶融可能な、通常は金属製のワークピースを互いに永続的に接続するために使用される。この場合、レーザ溶接は、比較的高速、高精度(特に、幅狭の溶接シームで)、且つワークピースの熱変形が少ない状態で実現され得る。
【0003】
使用されるレーザビームのビーム強度に応じて、レーザ溶接は、熱伝導溶接として、又は深溶け込み溶接として実現され得る。
【0004】
深溶け込み溶接では、レーザビームがワークピース材料に顕著な蒸気キャピラリ(キーホール)を発生させ、上記蒸気キャピラリはワークピース材料内にビーム方向に沿って延びる。蒸気キャピラリの壁におけるレーザビームの多重反射の結果、ワークピース材料における吸収が増す。材料はまた、深さ方向に大きい体積で溶融され得る。深溶け込み溶接は、比較的高速な送り速度(溶接速度)で実現され得る。しかしながら、深溶け込み溶接中にはスパッタ及び気孔形成がしばしば発生し、溶接シーム沿いの溶接深さが不規則になることも頻繁に観測される(スパイク)。このため、薄肉のワークピースを溶接する場合、溶接シームが機械的に不安定になり得る、又は所望の気密性若しくは所望の電気接点接続品質が達成されないといった局所的な接続の問題が発生することがある。
【0005】
熱伝導溶接では、ワークピース材料は、表面に近づけたレーザビームによって、目立った蒸気キャピラリを発生させずに溶融される。溶接深さは、基本的にワークピース材料の熱伝導によって決まる。スパッタ又は気孔などの凹凸はほとんど発生せず、溶接シームは比較的平滑である。しかしながら、比較的送り速度が低速であり、溶接深さが浅く、熱変形が大きくなり得ることが欠点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、薄肉ワークピースの溶接の際に高速な送り速度で高いシーム品質を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、本発明によれば、2つのワークピースを溶接シームに沿ってレーザ溶接するための方法であって、厚さD1を有する第1のワークピースと厚さD2を有する第2のワークピースとが、少なくとも重なり領域において重なるように積み重なって構成され、2つのワークピースの厚さD1、D2がそれぞれ400μm以下であり、溶接シームに沿って案内されるレーザビームによって、第1のワークピースの側から、重なり領域において、第1のワークピースの材料が厚さD1全体にわたって溶融され、第2のワークピースの材料が厚さD2全体のうち部分厚TDのみにわたって溶融され、レーザ溶接が、第1のワークピース内に、又は第1及び第2のワークピース内にキャピラリ深さKTまで延びる蒸気キャピラリをレーザビームが発生させるように行われ、0.33*EST≦KT≦0.67*ESTであり、溶接深さEST=D1+TDである、方法によって達成される。
【0008】
本発明は、2つの薄肉のワークピースの重ね継手レーザ溶接を熱伝導溶接と深溶け込み溶接との間の移行モードで実施すること(「移行モード溶接」)を提案する。これにより、両方のプロセスの利点を大きく活用し、両方のプロセスの欠点を大幅に回避することが可能になる。特に、高い精度で十分な溶接深さを観測することができるため、特に良好な電気伝導性を呈する気密接続もまた信頼性の高い仕方で確立され得る。同時に、比較的高速な送り速度で製造を行うことができる。
【0009】
本発明による、溶接深さEST(ワークピース材料内への溶融池の広がり)に関連するキャピラリ深さKT(ワークピース材料内への蒸気キャピラリの広がり)の条件下では、溶接は、熱伝導溶接と深溶け込み溶接との間の所望の移行領域で実現され、比較的高速な送り速度で高い溶接シーム品質を達成することができる。
【0010】
本発明による方法に関連して、蒸気キャピラリが発生されるが、蒸気キャピラリは、従来の深溶け込み溶接と比較して(ワークピース材料内への方向又はレーザビーム方向において)比較的短い。溶接深さは、基本的に熱伝導と蒸気キャピラリの深さとの両方で決まり、2つの比率は概ね等しい大きさである。これにより、特に金属板などの薄肉のワークピースの溶接に適する熱伝導溶接の場合よりも大きな溶接深さを達成することが可能になる。しかしながら、同時に、特に溶融される材料の総量も比較的少ないままであるため、溶融池のダイナミクスは低いままである。レーザビームからワークピース材料内へのエネルギー吸収は、キャピラリ深さが浅いことにより蒸気キャピラリ内でのレーザビームの反射がわずかであるため、深溶け込み溶接の場合よりも顕著ではない。加えて、対照的に、送り速度と実質的に同期するワークピース材料の熱伝導による溶融は、溶融池におけるより急速なダイナミックな動きを大きく補う。
【0011】
溶接深さESTは、例えば、液体ワークピース材料と固体ワークピース材料との界面において反射する超音波によって、溶接プロセス中に測定され得る。蒸気キャピラリのキャピラリ深さKTは、溶接プロセス中に、例えばキャピラリ底部における測定レーザビームの反射によって測定され得る。他のパラメータは、通常既知である(例えば、レーザビームの焦点径)、又は溶接プロセス中に他のセンサによって容易に確認される。例として、いくつかのパラメータ、特に溶接シーム/溶融領域の幅B、又は送り方向に直交する焦点径FDQに概ね対応する、送り方向に直交するワークピース表面におけるキャピラリ幅KBが、溶接プロセス中にカメラによって光学的に測定され得る。したがって、本発明による条件の遵守を溶接プロセス中に所望により確認することができ、適切な場合には再調整することができる。
【0012】
溶融幅SBの溶融領域が蒸気キャピラリの周囲に(送り方向に直交する面内で)全方向に概ね一様に生成される。レーザビームの溶接方向に直交する、第1のワークピースW1のレーザビームに面する(前側)表面における焦点径FDQが分かっており、上記焦点径が蒸気キャピラリKBの局所的な幅に概ね対応する場合、ワークピース前側表面の溶接シームの幅Bを用いて、溶融幅SBを容易に求めることができ、SB=(B-FDQ)/2を得ることができる。断面(横断面)において容易に確認され得る溶接深さESTと、このようにして求めた溶融幅SBとの間の差分に基づいて、断面におけるキャピラリ深さKTを近似的に求めて、KT=EST-SBを得ることも可能である。したがって、本発明による条件の遵守はまた、溶接されたワークピースで後で容易に確認され得、適切な場合には、将来のワークピースで本発明による条件を遵守するためにプロセスパラメータを繰り返し使用することができる。
【0013】
本発明に関連する溶融幅SBは、通常、好ましくは0.67*SB≦KT≦1.33*SBであり、特に好ましくは0.80*SB≦KT≦1.20*SBであるキャピラリ深さKTに概ね対応することに留意されたい。
【0014】
厚さ及び深さ(特に、KT、EST、D1、D2)は、第1のワークピースのレーザビームに面する表面に対して垂直にそれぞれ求められる。好ましくは、本発明に関連して、楕円状に拡がっていない(unstretched)レーザビーム(アスペクト比FDQ/FDLが約1であり、通常0.8≦FDQ/FDL≦1.2であり、好ましくは0.9≦FDQ/FDL≦1.1である)がレーザ溶接に使用される。ワークピース表面におけるレーザビームの焦点は、一般に円形(等方性レーザビーム)である。
【0015】
発明の好ましい変形形態
本発明による方法の好ましい変形形態では、0.40*EST≦KT≦0.60*ESTであり、好ましくは、0.45*EST≦KT≦0.55*ESTである。このパラメータ範囲は、実際に特に良好であることが判明している。これにより、溶接深さにおける熱伝導とキャピラリ深さとの比率は、特に良好にバランスが取れる。
【0016】
また、好ましい変形形態では、0.25*D2≦TD≦0.75*D2であり、好ましくは、0.33*D2≦TD≦0.67*D2であり、特に好ましくは、0.40*D2≦TD≦0.60*D2である。これにより、第1のワークピースへの第2のワークピースの特に信頼できる接続を達成することが可能になる。一方で、第2のワークピースの十分な部分厚が、機械的に最小限の接続を確保するために溶融される。同時に、過度に大きな部分厚が溶融されることもなく、これにより貫通溶接のリスクが低減する。貫通溶接では、材料が失われることに起因して接続が機械的に弱まり得る。加えて、部分厚が大きい場合、特にTD>0.5*D2である場合、機械的接続は通常それ以上改善されないが、溶接プロセスのエネルギー要件と、同時に、溶融池のダイナミクスが望ましくないほど高くなるリスクとが増加する。
【0017】
特に好ましい変形形態では、溶接シームの走行方向に直交して測定される、第1のワークピースのレーザビームに面する表面における蒸気キャピラリの幅KBについては、0.50≦KT/KB≦2.00であり、好ましくは、0.75≦KT/KB≦1.50であることが適用され、特に、第1のワークピースの表面のレーザビームに面する平面でそれぞれ測定される、レーザビームの送り方向に直交するレーザビームの焦点径FDQ及び送り方向に沿ったレーザビームの焦点径FDLについては、0.8≦FDQ/FDL≦1.2であり、好ましくは、0.9≦FDQ/FDL≦1.1であることが適用されるように、レーザ溶接が実施される。所望の移行溶接及びそれに伴う利点、特に、一様な溶接深さEST及び可能な限り高速な送り速度は、KT/KBの指定されたアスペクト比で最も良好に達成される。KT/KBのこれらのアスペクト比は、FDL≧FDQのときに特に適する。加えて、アスペクト比FDQ/FDLが約1である、例えば近似点焦点などの楕円状に拡がっていない焦点プロファイルを有するレーザの使用は、特に溶融池のダイナミクスを低く保つために、良好であることが判明している。また、しばしば、0.50≦EST/B≦1.50であり、好ましくは、0.75≦EST/B≦1.25であることも適用される。
【0018】
更に、好ましい変形形態では、レーザビームが平均波長λを有し、λ≦1200nmであり、好ましくは、
a)900nm≦λ≦1100nmであり、特に、λ=1030nm若しくは1064nm若しくは1070nmである、又は
b)500nm≦λ≦600nmであり、特に、λ=515nmである、又は
c)400nm≦λ≦500nmであり、特に、λ=450nmである。これらの平均レーザ波長は、金属板などの薄肉のワークピースの溶接によく適する。
【0019】
更に、一変形形態では、レーザビームが平均レーザパワーPを有し、60W≦P≦1200Wであり、好ましくは、100W≦P≦500Wであると有利である。これらのレーザパワーにより、本発明による移行モードレーザ溶接は、実際には、多くのタイプのワークピースに対して容易に実施され得る。
【0020】
更に、好ましい変形形態では、レーザビームが、第1のワークピースのレーザビームに面する表面の平面において、焦点径FDを有し、10μm≦FD≦100μmであり、好ましくは、14μm≦FD≦60μmであり、特に好ましくは、25μm≦FD≦39μmである。これらの直径は、本発明に関連して移行モードにおいて薄肉のワークピースを溶接するために実際に容易に使用され得る。ここで、焦点径FDは最大焦点径と仮定され、一般に0.8≦FDQ/FDL≦1.2であり、好ましくは0.9≦FDQ/FDL≦1.1である。
【0021】
更に、好ましい変形形態では、溶接シームの走行方向に直交して測定される、第1のワークピースのレーザビームに面する表面における第1のワークピースの溶融された材料の幅Bについて、60μm≦B≦600μmであり、好ましくは、80μm≦B≦400μmであり、特に好ましくは、100μm≦B≦200μmであることが適用される。この範囲では、薄肉のワークピースで良好な機械的接続が達成され得る。
【0022】
特に好ましい変形形態では、D1≦250μm且つD2≦250μmであり、好ましくは、50μm≦D1≦200μm且つ50μm≦D2≦200μmであり、特に好ましくは、75μm≦D1≦100μm且つ75μm≦D2≦100μmである。これらのワークピース厚さで、実際に高速な溶接速度で極めて良好な溶接シーム品質が達成されている。多くのアプリケーションにおいて、少なくとも溶接シームの領域では、D1=D2又は0.8*D1≦D2≦1.2*D1である。
【0023】
好ましい変形形態では、50μm≦EST≦600μmであり、好ましくは、60μm≦EST≦400μmであり、特に好ましくは、75μm≦EST≦225μmである。本発明に関連して、これらの溶接深さは、極めて容易に実現可能であり、また特に、溶接シームの長さにわたって極めて一定である。本発明による溶接部の場合、溶接深さESTは、その平均値から一般に20%未満、通常10%未満、しばしば5%未満変動する。
【0024】
一変形形態では、レーザビームがワークピースに対して送り速度vで移動され、v≧5m/分であり、好ましくはv≧10m/分であることが有利であり、特にレーザビームがレーザスキャナによって偏向される。本発明に関連して、指定された高速な送り速度(溶接速度)は、一般に、問題なく良好な溶接シーム品質を伴って確立され、高い製造効率を可能にし得る。
【0025】
また、好ましい変形形態では、2つのワークピースは、金属板が概ね平面が平行となるように向けられ、弾性変形により接触部において押し合うように、レーザ溶接中に凸状に湾曲した外側によって互いに押し付けられる湾曲した金属板の形態であり、レーザビームは、この接触部の領域において溶接シームに沿って2つの金属板を溶接し、特に、2つの湾曲した金属板は鋼鉄製である。この手順により、ワークピースの特に堅牢な接続が可能になる。弾性変形によって、溶接プロセス中のワークピース間のギャップ(空き空間)が回避又は最小化され、ワークピースが緩和状態で湾曲していても、平面ワークピースの場合と同じ幅にわたって溶接部が得られる。
【0026】
2つのワークピースが可撓性金属箔の形態である変形形態も有利である。可撓性金属箔を溶接する場合、本発明によって、極めて信頼性の高い、堅牢な機械的接続を形成することが可能になる。一般に、箔は、溶接中にラムによって互いに押し付けられる。
【0027】
本発明の範囲はまた、2つのワークピースによって形成される導電体及び/又はガスシールを溶接するための上記の方法の使用を含む。本発明により、気密性(又は液密性)に関する高度な要求を満たす2つのワークピースの極めて信頼性の高い溶接接続が可能になり、ワークピース間の低い電気(又は熱)接触抵抗を確保し得る。したがって、導電体及びガスシールにおける使用が特に有利である。
【0028】
本発明による使用の好ましい変形形態では、2つのワークピースは燃料電池のバイポーラプレートである。燃料電池のバイポーラプレートは、一般に気密(通常は酸素に関して気密)で接続されなければならず、且つ燃料電池が発生した電流を損失なく輸送できるように、良好な電気的接続を有さなければならない。加えて、バイポーラプレートは、本発明による方法で容易に接続され得る厚さを有する。
【0029】
本発明の更なる利点は、本明細書及び図面から明らかになる。同様に、本発明によれば、上述の特徴及びこれから詳述する特徴は、それぞれの場合に個別に使用され得る、又は任意の所望の組み合わせで一緒に使用され得る。図示及び説明される実施形態は、網羅的な列挙として理解されるべきではなく、むしろ本発明を概説するための例示的な正確の列挙である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1a】レーザビームの送り方向に対して垂直に、蒸気キャピラリの高さにおいて、本発明による方法で溶接される2つのワークピースを通る概略断面図を示す。
図1b図1aのワークピースの概略斜視図を示す。
図2a】本発明から逸脱した仕方で熱伝導溶接により溶接される2つのワークピースを通る概略断面図を示す。
図2b】熱伝導溶接と深溶け込み溶接との移行モードにおいて、本発明にしたがって溶接される2つのワークピースを通る概略断面図を示す。
図2c】本発明から逸脱した仕方で深溶け込み溶接により溶接される2つのワークピースを通る概略断面図を示す。
図3a】本発明にしたがって溶接されるように意図されている2つの凸状に湾曲したワークピースを通る概略断面図を示す。
図3b】押し合わされ弾性変形した状態で本発明により溶接される図3aのワークピースを通る概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明による、2つの薄肉のワークピースW1、W2をレーザ溶接するための方法の例示的な変形形態が、図1aに(送り方向VRに対して垂直に、且つ蒸気キャピラリ1の中央において)概略断面図で示され、図1bに概略斜視図で示されている。簡単のため、ワークピースW1、W2は部分領域でのみ示されている。ワークピースW1、W2は、例えば、可撓性の箔の形態であってもよい。
【0032】
第1のワークピースW1と第2のワークピースW2とは、重なり領域UeBで重なるように積み重なって構成され、この目的のために、適切な保持ツールが使用されてもよい(例えば、これ以上詳細に図示しないが、ロボットアーム又はラム)。ワークピースW1及びW2はそれぞれ重なり領域UeBにおいて厚さD1及びD2を有し、ここでは、厚さはD1=D2=100μmとなるように選択される。ワークピースW1、W2は、通常、金属材料から製造される。厚さD1、D2は、第1のワークピースW1の表面3に対して垂直に測定される。
【0033】
レーザビーム2が、ワークピースW1、W2を互いに重ね継手溶接するために、第1のワークピースW1の表面3に向けられる。この場合、レーザビーム2は、一般に、例えばピエゾ駆動により動かすことができるミラーを備えて構成されるレーザスキャナ(図示せず)によって、送り方向VRに沿ってワークピースW1、W2に対して移動される。レーザビーム2は、例えば、1030nmの波長を有するIRレーザによって発生される。結果として、レーザビーム2によって、送り方向VRに対応する走行方向VLRを有する溶接シーム4が生成される。
【0034】
ここで、レーザビーム2は、第1のワークピースW1の材料において蒸気キャピラリ1を発生させる(図示しないが、第2のワークピースが第1のワークピースよりかなり厚い他の変形形態では、蒸気キャピラリは第2のワークピースにも到達し得ることに留意されたい)。蒸気キャピラリ1は、第1のワークピースW1の表面3において、レーザビーム2の(最大)焦点径FDQに極めて正確に対応する(最大)キャピラリ幅KBを有し、上記焦点径は横断方向QRに測定される。横断方向QRは、送り方向VRに垂直に、且つ第1のワークピースW1のレーザビーム2に面する表面3の面内で走行する。
【0035】
ここで、レーザビーム2は、送り方向VRに沿った(最大)焦点径FDL(長手方向焦点径とも呼ばれる)が横断方向QRにおける焦点径FDQ(横断方向焦点径とも呼ばれる)に等しいような円形の点焦点の形態である。ここで、レーザビーム2は方向に依存しない均一な焦点径FDを有し、このことは好ましい変形形態に相当する。
【0036】
この場合の蒸気キャピラリ1は、第1のワークピースW1の材料内のキャピラリ深さKTに到達する。図示の変形形態では、KTは厚さD1の約3/4、つまり約75μmである。
【0037】
ワークピースW1、W2の材料は、蒸気キャピラリ1の周囲で溶融され、これにより溶融池5が形成される。蒸気キャピラリ1から始まって、材料は、(図1aに示す送り方向VRに垂直な断面平面において)概ね均一な溶融幅SBにわたって全方向に一様に溶融される。この場合、溶融幅SBは約65μmである。したがって、この場合、第2のワークピースW2の材料は約40μmの部分厚TDにわたって溶融される。この場合、ワークピースW1、W2の材料が表面3から始まって全体的に溶融される溶接深さEST=D1+TDは約140μmである。したがって、ここで、KT=0.54*ESTが近似的に適用される。
【0038】
図示の変形形態では、蒸気キャピラリ1はまた、ワークピース表面3の平面において横断方向QRに測定される約50μmのキャピラリ幅KBを有する。キャピラリ幅KBは、横断方向QRにおける焦点径FDQに極めて正確に対応することに留意されたい。したがって、キャピラリ深さKTは、キャピラリ幅KBの約1.5倍、つまり概ねKB/KT=1.50である。この場合、溶接シーム4は、和KB+2*SBに相当する(横断方向QRに測定される)約180μmの幅Bを有する。第2のワークピースW2内への溶接が行われる部分厚TDは、この場合、総厚D2の約40%、つまりTD=0.40*D2である。
【0039】
特に、ここに示す蒸気キャピラリ1、溶融池5、及びワークピースジオメトリの比率が、熱伝導溶接と深溶け込み溶接との間の移行モードでレーザ溶接を実施するために設定されるように、レーザビーム2のレーザパワー、ワークピース表面3におけるレーザビーム2の焦点径FD、及びレーザ溶接の送り速度(溶接速度)が選択されている。
【0040】
図2a、図2b、及び図2cは、(図1aと同様の)送り方向に垂直な断面における、異なる溶接モードでのレーザ溶接中のキャピラリ深さKT及び溶接深さESTの比率、並びにキャピラリ幅KB及びキャピラリ深さKTの比率の概要を示している。図示の例では、レーザビーム2の焦点ジオメトリは楕円状に拡がっていないものと仮定されている(FDQ=FDLであり、例えば円形の丸い点焦点/等方性レーザビームによる)。図2aは典型的な熱伝導溶接動作を示し、図2bは本発明による典型的な移行モードレーザ溶接動作を示し、図2cは典型的な深溶け込みレーザ溶接動作を示している。
【0041】
熱伝導溶接動作では、図2aに示すように、レーザビーム2は、極めて小さいものでしかなく、キャピラリ深さKTが浅い(又は、図示しないが、蒸気キャピラリが全く目立たない)浅い蒸気キャピラリ1を発生させる。生じた溶接深さESTは、溶融池5の幅すなわち溶融幅SBに実質的に基づくものであり、EST=KT+SBによれば、KTはSBよりかなり小さい。実際には、蒸気キャピラリ1の最下点における溶融幅SB*は、ワークピース表面3における溶融幅SB**に極めて正確に対応するため、以下の文章では溶融幅が一律にSBと表記されることに留意されたい。図示の例では、概ねKT=0.23*ESTである。本発明に関連して、KT<0.33*ESTの範囲は、望ましくない熱伝導モードに割り当てられる。溶接深さESTは、第2のワークピースW2内に最小限の範囲までしか到達せず、ここでは概ねTD=0.08*D2である。
【0042】
加えて、(等方性レーザビーム2が使用される)熱伝導モードでは、キャピラリ深さKTはまた追加的に、キャピラリ幅KBよりもかなり小さくなる。図2aでは、概ねKT/KB=0.30である。本発明に関連して、KT/KB<0.50の範囲は、望ましくない熱伝導モードに割り当てられる。
【0043】
図2bは、本発明による移行モードレーザ溶接を示している。レーザビーム2は中程度の大きさの蒸気キャピラリ1を発生させる。溶接深さESTは、蒸気キャピラリ1のキャピラリ深さKTと、溶融池5の溶融幅SBとに概ね同程度に基づく。図示の例では、概ねKT=0.5*ESTである。本発明に関連して、0.33≦KT/EST≦0.67の範囲は、望ましい移行モードに割り当てられる。溶接深さESTは、第2のワークピースW2内に十分に到達し、ここでは概ねTD=0.6*D2である。
【0044】
移行モードでは、キャピラリ深さKTはまた追加的に、キャピラリ幅KBと同様の大きさである、又はキャピラリ幅KBよりもわずかに大きいだけである。図2bでは、概ねKT/KB=1.0である。(等方性レーザビーム2が使用される、又は少なくともFDQ≦FDLである場合の)本発明に関連して、0.50≦KT/KB≦2.00の範囲は、望ましい移行モードレーザ溶接に割り当てられる。
【0045】
最後に、図2cは、深溶け込みレーザ溶接を示している。レーザビーム2は極めて大きく深い蒸気キャピラリ1を発生させる。溶接深さESTは、蒸気キャピラリ1のキャピラリ深さKTに実質的に基づく。図示の例では、概ねKT=0.88*ESTである。本発明に関連して、KT>0.67*ESTの範囲は、望ましくない深溶け込み溶接モードに割り当てられる。この場合の溶接深さESTは、第2のワークピースW2全体をほとんど貫通するため、ここでは概ねTD=0.96*D2である(図示しないが、多くの場合、深溶け込み溶接モードは貫通溶接、つまりTD=D2になることさえある)。
【0046】
(等方性レーザビーム2が使用される)深溶け込み溶接モードでは、キャピラリ深さKTはまた追加的に、キャピラリ幅KBよりもかなり大きくなる。図2cでは、概ねKT/KB=2.1である。本発明に関連して、KT/KB>2.0の範囲は、望ましくない深溶け込みレーザ溶接に割り当てられる。
【0047】
横断方向QRにおける焦点径FDQが既知(又はキャピラリ幅KBが既知)である場合、キャピラリ深さKTは、溶接シームの幅B及び溶接深さESTから容易に確認され得る。B及びESTは、断面(図2a~図2cのような横断面)で容易に確認することもできるし、又はカメラ及び超音波でその場で容易に観測することもできる。B及びFDQ(後者はKBに対応する)に基づいて、SBは、
SB=(B-FDQ)/2
のように求めることができ、更にKT=EST-SBである。
【0048】
図2a~図2cの例では、D2はD1よりもいくらか大きいが、D1=D2であることが多い。
【0049】
図3aは、所望の溶接シームに対して垂直な概略断面図において、湾曲した金属板、特に鋼板の形態である2つのワークピースW1、W2を概略的に示している。この場合、2つのワークピースのW1、W2は、燃料電池のためのバイポーラプレートの形態である。図3aは(図3bと同様に)、本発明による溶接が実現されるように意図されているワークピースW1、W2の部分領域のみを示していることに留意されたい。また、2つのワークピースW1、W2は、場合により、複数の溶接シーム(図示せず)を得てもよいことにも留意されたい。
【0050】
2つのワークピースW1、W2は、互いに向かい合う凸状に湾曲した外側31、32を有する。2つのワークピース(金属板)W1、W2が、これらの湾曲した外側によって互いに接触して配置される場合、幅狭の接触線30に沿ってのみ接触が起こり、この接触線30に垂直な図3aに示す断面では、この接触線30が点として見えている。
【0051】
この接触線30に沿ってワークピースW1、W2を溶接することは極めて難しい。なぜなら、平面が平行に当接する場合に通常溶融される領域は、ワークピース外側31、32間の1つ又は複数のV字状の空き空間33に部分的に存在するためである。その結果、ギャップ又は少なくとも弱い領域が溶接シームに容易に生じ得る。
【0052】
本発明によれば、溶接するために、ワークピースW1、W2は、その凸状の外側31、32によって互いに向かって押し付けられ(押し付け方向34参照)、その結果、外側31、32の弾性変形が生じる(図3bを参照)。この場合、凸状の外側31、32がわずかに平坦となるように押し付けられ、押し付け方向に直交するように延び、ワークピースW1、W2又は金属板が互いに概ね平面が平行となるように向けられて押し合う接触部35が元の接触線の周囲に形成される。
【0053】
ワークピースW1、W2のこの弾性変形状態において、本発明によるレーザ溶接は、第1のワークピースW1のワークピース表面3に向けられるレーザビーム2により実現される。この場合、レーザビーム2の送り方向は、図3bの紙面に対して垂直である。レーザビーム2は、第1のワークピースW1の材料をその総厚D1にわたって溶融させ、第2のワークピースW2の材料をその厚さD2の約半分にわたって溶融させる(例えば、本発明による移行モードの条件については、図2bを参照)。ワークピース材料の溶融は接触部35内で行われ、接触部35は同時にワークピースW1、W2が重なるように積み重なったワークピースW1、W2の重なり領域UeBを表す。
【0054】
ワークピースW1、W2の弾性変形又は押し付けの力は、接触部35の接触幅KOBが溶接シーム4の幅Bよりも大きい顕著な程度に選択されることに留意されたい。これにより、(図1aに示すような)平面状の2つのワークピースを積み重なった溶接部の品質に匹敵する、特に高品質の溶接シーム4を得ることが可能になる。図3bで得られる溶接シームは、特に気密に、且つワークピースW1、W2間の電気抵抗が低い状態で製造され得る。
【0055】
ワークピースW1、W2のレーザ溶接及び十分な冷却の後、押し付け力が再び解除され、ワークピースW1、W2は、図3aに示す弾性的に緩和した状態に概ね跳ね戻る。しかしながら、ワークピースW1、W2は、幅Bにわたって良好なシーム品質で、互いに溶接されたままである。
【0056】
本発明による方法の好ましい変形形態では、溶接が、特に以下のパラメータで実現され得る。
-ワークピース厚さD1=D2=75μm、
-溶接深さEST=112.5μm、
-FD=KB=31.5μm、
-KT=47.5μm、
-SB=65.25μm、
-B=162μm。
この場合、KT/KB=1.5且つKT=0.42*ESTであるため、TD=0.5*D2が適用される。
【0057】
本発明による方法の別の好ましい変形形態では、溶接が、特に以下のパラメータで実現され得る。
-ワークピース厚さD1=D2=75μm、
-溶接深さEST=112.5μm、
-FD=KB=31.5μm、
-KT=63μm、
-SB=49.5μm、
-B=130.5μm。
この場合、KT/KB=2.0且つKT=0.56*ESTであるため、TD=0.5*D2が適用される。
【符号の説明】
【0058】
1 蒸気キャピラリ
2 レーザビーム
3 ワークピース表面
4 溶接シーム
5 溶融池
30 接触線
31 外側(第1のワークピース)
32 外側(第2のワークピース)
33 空き空間
34 押し付け方向
35 接触部
B 溶接シームの幅
D1 第1のワークピースの厚さ
D2 第2のワークピースの厚さ
EST 溶接深さ
FD (最大)焦点径
FDL 送り方向における(最大)焦点径
FDQ 横断方向における(最大)焦点径
KB キャピラリ幅
KOB 接触幅
KT キャピラリ深さ
QR 横断方向
SB 溶融幅
SB* (蒸気キャピラリ下の中央で測定された)溶融幅
SB** (ワークピース表面で測定された)溶融幅
TD 部分厚
UeB 重なり領域
VLR 溶接シームの走行方向
VR 送り方向
W1 第1のワークピース
W2 第2のワークピース
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
【国際調査報告】