(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】レーザー彫刻可能なラベル
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20231106BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20231106BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231106BHJP
【FI】
B32B27/30 A
C08L33/00
C08K3/013
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525072
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2021079197
(87)【国際公開番号】W WO2022090048
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319013746
【氏名又は名称】レーム・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Deutsche-Telekom-Allee 9, 64295 Darmstadt, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】キム シュトルーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス パルーゼル
(72)【発明者】
【氏名】ジルメイ セイオム
(72)【発明者】
【氏名】クロード グエナンタン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ヘーリング
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
4F100AA01B
4F100AA07A
4F100AA07B
4F100AA08A
4F100AA08B
4F100AA17A
4F100AA17B
4F100AA19A
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4F100AA20A
4F100AA20B
4F100AA21A
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4F100AA25A
4F100AA25B
4F100AA27A
4F100AA27B
4F100AA28A
4F100AA28B
4F100AA37A
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4F100AC03A
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4F100AC05A
4F100AC05B
4F100AK04E
4F100AK07E
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4F100AK49E
4F100AT00E
4F100BA02
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
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4F100BA10E
4F100CA05A
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4F100CB00C
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4F100EJ91E
4F100JA05A
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4F100JK02
4F100JK08
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4F100JL14D
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
4F100YY00E
4J002BG001
4J002DA037
4J002DE096
4J002DE097
4J002DE106
4J002DE117
4J002DE136
4J002DE236
4J002DG026
4J002DJ036
4J002DJ056
4J002FD016
4J002FD097
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、耐衝撃性改良ポリアルキル(メタ)アクリレートから製造された共押出アクリルホイルおよびこれらのホイルを含むレーザー彫刻可能なラベルに関する。共押出アクリルホイルは、レーザーによる標識のために設計されており、少なくとも1種の無機充填剤を有するコントラスト層と、コントラスト層上に配置されかつ少なくとも1種の着色剤を有する彫刻層とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層Aおよび層Bを含む共押出アクリルホイルであって、前記層Aは、前記層Aの重量を基準として、
30.0重量%~98.5重量%の1種または複数種のアクリルポリマーA、
1.0重量%~40.0重量%の1種または複数種の耐衝撃性改良剤、
0.5重量%~20.0重量%の1種または複数種の着色剤、
0.0重量%~10.0重量%の1種または複数種の無機充填剤、
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV吸収剤、および
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV安定剤
を含み、
前記層A中の前記アクリルポリマーAおよび前記耐衝撃性改良剤の累計含量は、前記層Aの重量を基準として、60.0重量%~99.5重量%であり、
前記層Bは、前記層Bの重量を基準として、
30.0重量%~92.5重量%の1種または複数種のアクリルポリマーB、
2.5重量%~35.0重量%の1種または複数種の耐衝撃性改良剤、
5.0重量%~35.0重量%の1種または複数種の無機充填剤、
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV吸収剤、および
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV安定剤
を含み、
前記層B中の前記アクリルポリマーBおよび前記耐衝撃性改良剤の累計含量は、前記層Bの重量を基準として、60.0重量%~95.0重量%である、共押出アクリルホイル。
【請求項2】
前記層A中の1種または複数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)n
imAが、以下の関係:
(n
fA+n
pA)≦n
imA≦7
*(n
fA+n
pA)
[n
fAは、前記層A中の前記無機充填剤の含量(重量%)であり、
n
pAは、前記層A中の前記着色剤の含量(重量%)である]により記載され、かつ
前記層B中の前記耐衝撃性改良剤の含量(重量%)n
imBが、以下の関係:
0.25
*n
fB≦n
imB≦2
*n
fB
[n
fBは、前記層B中の前記無機充填剤の含量(重量%)である]により記載される、請求項1記載の共押出アクリルホイル。
【請求項3】
前記アクリルポリマーAの少なくとも1種および/または前記アクリルポリマーBの少なくとも1種のガラス転移温度が、少なくとも110℃、好ましくは少なくとも120℃である、請求項1または2記載の共押出アクリルホイル。
【請求項4】
前記アクリルポリマーAおよび/または前記アクリルポリマーBが、独立して、ポリ(メタ)アクリルイミドの重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%の式(I)
【化1】
[式中、R
1およびR
2は、独立して、水素およびメチル基から選択され、R
1およびR
2は、好ましくはメチル基によって表され、
R
3は、水素またはC
1~C
4-アルキル基、好ましくはメチル基である]の繰り返し単位を含むポリ(メタ)アクリルイミドである、請求項1から3までのいずれか1項記載の共押出アクリルホイル。
【請求項5】
前記アクリルポリマーAおよび/または前記アクリルポリマーBが、独立して、PMMA校正標準および溶離液としてのTHFに対するGPCによって決定される、50000g/モル~300000g/モルの平均モル質量Mwを有し、かつ重合性成分が重合性組成物の重量を基準として、
(a)50.0重量%~99.9重量%のメチルメタクリレート、
(b)0.1重量%~50.0重量%のC1~C4アルコールのアクリル酸エステル、
(c)0.0重量%~10.0重量%の、前記モノマー(a)および(b)と共重合可能な少なくとも1種のさらなるモノマー
を含む組成物の重合によって得られる、請求項1から4までのいずれか1項記載の共押出アクリルホイル。
【請求項6】
前記層AおよびB中の無機充填剤が、独立して、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、好ましくはルチル型二酸化チタン、シリカ、好ましくは溶融シリカ、硫酸バリウム、三水酸化アルミニウム、マイカ、酸化亜鉛、硫化亜鉛、クレー、マスコバイトおよび炭酸カルシウムから選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の共押出アクリルホイル。
【請求項7】
前記着色剤が、好ましくはカーボンブラック、酸化鉄、酸化コバルト、アニリンブラックおよびペリレンブラック、ピグメントレッド48:2、ピグメントレッド48:3、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド101、ピグメントレッド112、ピグメントレッド122、ピグメントレッド144、ピグメントレッド166、ピグメントレッド168、ピグメントレッド178、ピグメントレッド179、ピグメントレッド202、ピグメントレッド214、ピグメントレッド254、ピグメントレッド255、ピグメントレッド264、ピグメントレッド272、ピグメントレッド276、ピグメントレッド277およびピグメントバイオレット19から選択される顔料であるか、または好ましくはアントラキノン染料から選択される、好ましくはソルベントレッド111、ソルベントレッド143、ソルベントレッド145、ソルベントレッド146、ソルベントレッド150、ソルベントレッド151、ソルベントレッド155、ソルベントレッド168、ソルベントレッド169、ソルベントレッド172、ソルベントレッド175、ソルベントレッド181、ソルベントレッド207、ソルベントレッド222、ソルベントレッド227、ソルベントレッド230、ソルベントレッド245、ソルベントレッド247から選択される染料;ペリノン染料、好ましくは、ソルベントレッド135、ソルベントレッド162、ソルベントレッド179から選択されるペリノン染料;ならびにモノアゾ染料、好ましくはソルベントレッド195である、請求項1から6までのいずれか1項記載の共押出アクリルホイル。
【請求項8】
前記ホイルが、10μm~200μmの厚さを有し、
前記層Aが、5μm~100μmの厚さd
Aを有し、かつ
前記層Bが、5μm~100μmの厚さd
Bを有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の共押出アクリルホイル。
【請求項9】
前記ホイルが、DIN EN ISO 527-3(2019)に従って測定された、0.5%~15%の破断点伸び、および/または
ASTM D1004(2013)に従って測定された、0.1N~30.0Nの初期引裂抵抗、および/または
ASTM D1938(2019)に従って測定された、0.01N~1.00Nの引裂伝播抵抗
を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の共押出アクリルホイル。
【請求項10】
少なくとも以下の層を、
a)好ましくは10μm~200μmの厚さを有する、請求項1から9までのいずれか1項に規定された共押出アクリルホイルからなる層、
b)好ましくは20μm~30μmの厚さを有する、接着剤層、
c)好ましくは0.6μm~0.8μmの厚さを有する、剥離剤コーティング層、および
d)好ましくは30μm~50μmの厚さを有する、支持層
の記載された順番で含み、かつ/または80μm~300μmの厚さを有することを特徴とする、レーザー彫刻可能なラベル。
【請求項11】
請求項10記載のレーザー彫刻可能なラベルを製造するためのラミネートであって、少なくとも以下の層:
a)ASTM D1004-13に従って測定された、50N~500Nの初期引裂抵抗を好ましくは有するライナー層、
b)請求項1から9までのいずれか1項に記載された共押出アクリルホイルからなる層
を含む、ラミネート。
【請求項12】
前記ライナー層が、実質的に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートからなる群から選択されるポリマー材料、好ましくは二軸配向ポリプロピレンまたは二軸配向ポリエチレンテレフタレートからなる、請求項11記載のラミネート。
【請求項13】
少なくとも以下の工程:
i)押出機を用いて、請求項1から9までのいずれか1項記載の共押出アクリルホイルを製造する工程、
ii)工程i)で得られた共押出アクリルホイルを、複数のロール間に通す工程であって、少なくとも1つのロールが、冷却ロールである工程、および
iii)工程ii)からの前記共押出アクリルホイルにライナー層を結合する工程
を含む、請求項11または12記載のラミネートの製造方法。
【請求項14】
少なくとも以下の工程:
i)押出機を用いて、請求項1から9までのいずれか1項記載の共押出アクリルホイルを製造する工程、
ii)任意選択的に、ライナー層を、前記押出機の下流で工程i)からの前記共押出アクリルホイルに結合する工程であって、ラミネートが得られる工程、
iii)接着剤層、任意選択的に、剥離剤コーティング層および支持層を、工程ii)からの前記ラミネートまたは工程i)からの前記共押出アクリルホイル上に結合する工程であって、ラベル基材が得られる工程、および
iv)工程iii)で得られたラベル基材をキスカットし、生じた廃棄物マトリックスを除去する工程であって、支持層上の複数の個々の自己粘着性のレーザー彫刻可能なラベルが得られる工程
を含む、請求項1から9までのいずれか1項記載の自己粘着性のレーザー彫刻可能なラベルの製造方法。
【請求項15】
レーザー彫刻可能なラベルを製造するための請求項1から9までのいずれか1項記載の共押出アクリルホイルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、耐衝撃性改良ポリアルキル(メタ)アクリレートから製造された共押出アクリルホイルおよびこれらのホイルを含むレーザー彫刻可能なラベルに関する。共押出アクリルホイルは、レーザーによる標識のために設計されており、少なくとも1種の無機充填剤を有するコントラスト層と、コントラスト層上に配置されかつ少なくとも1種の着色剤を有する彫刻層とを含む。コントラスト層および彫刻層は、1種または複数種の耐衝撃性改良剤を含む。好ましい実施形態では、レーザー彫刻可能なラベルはかなり脆く、したがって、ラベルを基材から不正に剥がそうとすると、ラベルが破壊される。通常、レーザー彫刻可能なラベルは、スリット、ミシン目等の意図的な破断箇所を有していない。
【0002】
他の一般的に使用されている材料とは対照的に、本発明のレーザー彫刻可能なラベルは、高い軟化温度および優れた耐候安定性、特に、顕著なUV安定性を有する。幾つかの実施形態では、ラベルはまた、自動車分野で一般的に使用される様々な化学物質の存在下で優れた耐薬品性を示すように設計され得る。このようなラベルは、いかなる次元においても収縮の兆候を示すことなく、100℃を上回る温度での適用において使用され得る。このような用途としては、とりわけ電子製品識別ラベル、電子モジュール用のラベル、例えば上昇した温度で動作するチップ、電気エンジンおよび発光装置、様々な自動車のフード下ラベル、道路通行税バッジ、文書シール、製品盗難防止用ラベル等が挙げられる。
【0003】
従来技術
レーザー彫刻可能なラベルは、完全に自動化された製造プロセスにおいて対象の基材に迅速に彫刻して貼り付けることができるため、例えばタイププレートとして、プロセスシーケンスの制御ラベルとして、ならびに保証ラベルおよび試験ラベルとして、電子機器や自動車の分野で重要性が高まっている。多くの場合、これらの用途は、本質的に、偽造に対して多かれ少なかれはっきりとした保護の程度を必要とする。典型的には、ラベル付けされる基材へのラベルの結合強度は、ラベル自体の強度(曲げ強度または引裂強度)と比較して高い。したがって、理想的には、そのようなラベルを破壊せずにラベル付けされる物品から剥がすことは不可能である。
【0004】
レーザー彫刻可能なラベルを利用して、推奨されるタイヤ圧または燃料の種類などの技術情報および指示が、自動車の様々な構成要素に配置されている。加えて、レーザー彫刻可能なラベルは、シャーシや車両の識別番号、登録番号等の安全情報も含み得る。対応するラベルにより、盗難、不法投棄または事故が発生した場合に、車両およびその製造業における生産段階について結論を出すことができる。
【0005】
筆記された文字の高いコントラストを可能にする、レーザー彫刻可能なラベルは、従来技術から公知である。例えば、独国実用新案第8130861号明細書、独国特許出願公開第10048665号明細書および独国特許出願公開第10142638号明細書には、薄いアクリレート系ラッカー層および厚いアクリレート系ラッカー層を含む多層ラベルが記載されている。これらのラベルの製造中に、少なくとも2つの異なるように着色されたアクリレート系層が、互いの上にコーティングされる。各後続のコーティング工程の前に、前にコーティングされた層が、硬化され、したがって後続のコーティングのための固体基材として機能する。対応する製造プロセスには、コーティングおよび硬化の複数の後続の工程が含まれるため、手順全体で複雑な機器が必要になり、効率が制限される。
【0006】
特開2017-111344号公報には、様々な熱可塑性材料で作ることができる白色層およびバック層を有するレーザー彫刻可能なホイルが記載されている。上記ホイルの両方の層を製造する方法は、特に限定されず、例えば押出コーティングまたは溶媒コーティングを含み得る。しかしながら、特開2017-111344号公報には、共押出によるアクリルレーザー彫刻可能なホイルの製造は教示されていない。
【0007】
国際公開第2019/057645号には、チルロール法を用いた共押出によって製造され得るレーザー彫刻可能なホイルが記載されている。このホイルは、アクリル系コントラスト層と、該コントラスト層上に配置されたアクリル系彫刻層とを含み、広範囲の温度で低い収縮率しかないことが報告されている。国際公開第2019/057645号の教示によれば、十分な程度の脆性を確保するために、コントラスト層または彫刻層のいずれかが、必然的に耐衝撃性改良剤を含まない必要がある。国際公開第2019/057645号には、実験室規模の機器を用いて4m/分の押出速度でホイルをうまく共押出できたことが報告されている。
【0008】
一般に偽造防止用ラベル、特にレーザー彫刻可能なラベルは、非常に脆いので、工業的規模での製造および取扱いは、一般的な自己粘着性ラベルの製造および取扱いよりもかなり難しい。例えば、アクリルレーザー彫刻可能なホイルが共押出しによって製造される場合、そのようなホイルの取扱いおよび使用は、製造中にすでに容易に壊れるか破れる可能性があるので問題となる。
【0009】
さらに、レーザー彫刻可能なラベルは、典型的には、表面層(表面基材)、表面層に接着された接着剤、例えば、感圧接着剤(PSA)層、任意選択的に、剥離剤コーティング層、および接着剤層または剥離剤コーティング層に取外し可能に貼り付いた支持層を含むラベル基材から製造される。ラベル基材は、一般に、ロールの形で提供されている。個々のレーザー彫刻可能なラベルは、通常、表面層およびPSA層をダイカット(キスカット)し、次いで周囲の廃棄物マトリックスを除去し、個々のラベルを支持層に貼り付いたままにして製造される。表面層の材料は非常に脆いため、廃棄物マトリックスは容易に破断するか引き裂かれ得るので、その除去が非常に問題となる。ラベルの典型的な製造プロセスは、少なくとも25m/分またはそれ以上の速度で運転されている。速度が増すにつれて、プロセスの安定性が低下し、廃棄物マトリックスが除去時に破断するか引き裂かれるリスクが高くなる。しかしながら、プロセスを遅くするか、廃棄物マトリックスをより良く除去できるように廃棄物マトリックスのウェブ幅を増やすと、コスト的にかなり不利になり、効率が失われ、しばしば効果がないことがある。
【0010】
原則的に、廃棄物マトリックスの破断または引裂きに関連する問題は、個々のラベル間の距離、すなわち廃棄物マトリックスのウェブ幅を広げることにより、少なくとも部分的に軽減され得る。しかしながら、それにより必然的にラベル製造中に発生する廃棄物の量が増え、プロセス効率が低下するだろう。したがって、このようなアプローチは、経済的および環境的な観点から実現可能ではないだろう。
【0011】
本発明者らの住宅研究では、国際公開第2019/057645号に記載されたホイルが、その高い脆性のために、高い押出速度で大規模に製造するのに適していないことが示された。特に、国際公開第2019/057645号のホイルは、すでに押出中に容易に引き裂かれる。調査により、衝撃改質剤を含まない、より脆性の高い層に容易に形成される初期の亀裂が、その後、衝撃改質剤を含む層に伝播し、それによってホイルの完全な破断に至ることが示された。この結果は驚くべきことである。なぜならば、アクリル材料中の衝撃改質剤は、典型的には、このような亀裂の形成および伝播を阻害するからである。
【0012】
技術的課題
従来技術に照らして、本発明によって対処される課題は、偽造防止用途に対して十分な脆性を有するレーザー彫刻可能なラベルに使用するためのレーザー彫刻可能なホイルを提供することであった。特に、このようなホイルは、高い押出速度で共押出により製造することができ、また、表面層およびPSA層をキスカットすることにより個々のラベルを製造し、その後、周囲の廃棄物マトリックスを除去して、個々のラベルを支持層に貼り付いたままにする、費用効果の高い製造プロセスにおいて使用可能であることが望ましかった。さらに、所望のホイルは、理想的には、上昇した温度で収縮の兆候を実質的に示さないものでなければならない。
【0013】
加えて、レーザー彫刻可能なラベルが、初期の引裂強度が十分に低く、引裂伝播抵抗が低く、かつ引裂経路が短く、ホイルを不正に除去しようとする際に完全に破断しやすくなるが、それにもかかわらず、引裂かずに製造および加工できることが重要であった。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、高効率で製造することができ、印刷可能であり、長期の屋外使用に適した自己粘着性のレーザー彫刻可能な偽造防止用ラベルを提供するという課題に対処した。
【0015】
最後に、本発明は、上記のレーザー彫刻可能なホイルおよび該ホイルを含む自己粘着性ラベルを製造するための安全でかつ費用効率の高いプロセスを開発するという課題に対処した。
【0016】
解決策
本発明は、ホイルの少なくともコントラスト層および彫刻層が、確実に少なくとも1種の衝撃改質剤を含むようにすることにより、共押出アクリルホイルの機械的安定性が、顕著に改善され得るという驚くべき発見に基づいている。耐衝撃性改良剤を含まないアクリル層が存在しないため、ホイル全体に伝播する望ましくない亀裂の形成はもはや起こらない。したがって、高い押出速度で工業的規模でのホイルの共押出が可能になる。同時に、貼り付けられたラベルが基材から不正に除去されるのを防ぐために、レーザー彫刻可能なホイルの脆性を微調整することができる。加えて、本発明者らは、驚くべきことに、これらのホイルが、ダイカット(キスカット)プロセス中、その後の廃棄物マトリックスのストリッピングにおいて、優れた挙動を示すことを見出した。したがって、本発明のホイルを含むレーザー彫刻可能なラベルは、個々のラベルをキスカットによって製造し、その後、周囲の廃棄物マトリックスを除去し、個々のラベルを支持層に貼り付いたままにする工程を利用する際に有利に製造され得る。少なくとも25m/分またはそれ以上の運転速度でも、廃棄物マトリックスの望ましくない破断は起こらない。
【0017】
したがって、本発明の一態様は、層Aおよび層Bを含む共押出アクリルホイルに関する。層Aは、層Aの重量を基準として、
30.0重量%~98.5重量%の1種または複数種のアクリルポリマーA、
1.0重量%~40.0重量%の1種または複数種の耐衝撃性改良剤、
0.5重量%~20.0重量%の1種または複数種の着色剤、
0.0重量%~10.0重量%の1種または複数種の無機充填剤、
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV吸収剤、および
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV安定剤
を含み、
層A中のアクリルポリマーAおよび耐衝撃性改良剤の累計含量は、層Aの重量を基準として、60.0重量%~99.5重量%である。
【0018】
層Bは、層Bの重量を基準として、
10.0重量%~92.5重量%の1種または複数種のアクリルポリマーB、
2.5重量%~35.0重量%の1種または複数種の耐衝撃性改良剤、
5.0重量%~35.0重量%の1種または複数種の無機充填剤、
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV吸収剤、および
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV安定剤
を含み、
層B中のアクリルポリマーBおよび耐衝撃性改良剤の累計含量は、層Bの重量を基準として、60.0重量%~95.0重量%である。
【0019】
当業者によって容易に理解されるように、本明細書で使用される「ホイル」という用語は、5mm未満、より好ましくは1mm未満の厚さを有するシートを指す。本発明のホイルは、保護コーティングとして有利に使用され得るが、本出願において使用される「ホイル」という用語は、一般に、「コーティング」という用語と区別されるべきである。コーティングは、典型的には、多層基材の上層であり、上記基材と別々に取り扱うことができない。コーティングとは対照的に、本発明のホイルは、必ずしも多層物品の層ではない、すなわち、必ずしもいずれかの基材に貼り付いているのではなく、したがって別々に取り扱うことができ、様々な異なる目的のために使用することができる。
【0020】
本発明のさらなる態様は、少なくとも以下の層を、
a)好ましくは10μm~200μmの厚さを有する、アクリルホイルからなる層、
b)好ましくは20μm~30μmの厚さを有する、接着剤層、
c)好ましくは0.6μm~0.8μmの厚さを有する、剥離剤コーティング層、および
d)好ましくは30μm~50μmの厚さを有する、支持層
の記載された順番で含み、かつ/または80μm~300μmの厚さを有する、彫刻可能なラベルに関する。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、上記レーザー彫刻ラベルを製造するためのラミネートであって、少なくとも以下の層:
a)50.0μmの厚さを有するホイルを用いてASTM D1004(2013)に従って測定された50N~500Nの初期引裂抵抗を好ましくは有するライナー層、および
b)アクリルホイルからなる層
を含む、ラミネートに関する。
【0022】
本発明のさらに別の態様は、複数の個々の自己粘着性のレーザー彫刻可能なラベルの製造方法であって、少なくとも以下の工程:
i)押出機を使用して、上記で定義されたアクリルホイルを製造する工程、および
ii)任意選択的に、ライナー層を、押出機の下流で工程i)のアクリルホイルに結合する工程であって、ラミネートが得られる工程、
iii)接着剤層、任意選択的に、剥離剤コーティング層および支持層を工程ii)からのラミネート上に結合する工程であって、ラベル基材が得られる工程
iv)任意選択的に、ライナー層を除去する工程、
v)工程iii)で得られたラベル基材をキスカットし、生じた廃棄物マトリックスを除去する工程であって、支持層上の複数の個々の自己粘着性のレーザー彫刻可能なラベルが得られる工程
を含む方法に関する。
【0023】
最後に、本発明は、レーザー彫刻可能なラベルを製造するための共押出アクリルホイルの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】キスカットプロセス後の無端ラベル基材1の概略図である。後続のプロセス工程では、廃棄物マトリックス3が支持層から除去され、それによって、複数の個々のレーザー彫刻可能なラベル2を支持層に貼り付いたままにする。
【
図2】少なくとも以下の層: a)共押出アクリルホイル4、 b)接着剤層7、 c)任意選択的に、剥離剤コーティング層8、および d)支持層9を含む、レーザー彫刻可能なラベル2の側面図を示す図である。共押出アクリルホイル4は、層A5および層B6を含む。
【
図3】少なくとも以下の層: a)任意選択的に、ライナー層10、 b)層A5および層B6を含む共押出アクリルホイル4、 c)接着剤層7、 d)任意選択的に、剥離剤コーティング層8、および e)支持層9を含む、キスカットプロセス前の無端ラベル基材12の側面図である。ラミネート11は、典型的には以下の2つの層: ・ 共押出アクリルホイル4によって形成された層、および ・ ライナー層10からなる。
【0025】
詳細な説明
本発明の共押出アクリルホイルは、少なくとも層Aおよび層Bを含み、ここで層Aは、層Aの重量を基準として、
30.0重量%~98.5重量%、好ましくは40.0重量%~95.0重量%、より好ましくは50.0重量%~93.0重量%のアクリルポリマーA、
1.0重量%~40.0重量%、好ましくは4.0重量%~35.0重量%、より好ましくは6.0重量%~30.0重量%の1種または複数種の耐衝撃性改良剤、
0.5重量%~20.0重量%、好ましくは1.0重量%~18.0重量%、より好ましくは1.0重量%~15.0重量%の1種または複数種の着色剤、
0.0重量%~10.0重量%、好ましくは0.0重量%~7.0重量%、より好ましくは0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種の無機充填剤、
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV吸収剤、および
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV安定剤
を含み、
層A中のアクリルポリマーAおよび耐衝撃性改良剤の累計含量は、層Aの重量を基準として、60.0重量%~99.5重量%、好ましくは60.0重量%~99.0重量%、より好ましくは65.0重量%~99.0重量%である。
【0026】
層Bは、層Bの重量を基準として、
30.0重量%~92.5重量%、好ましくは34.0重量%~90.0重量%、より好ましくは40.0重量%~85.0重量%のアクリルポリマーB、
2.5重量%~35.0重量%、好ましくは4.0重量%~33.0重量%、より好ましくは6.0重量%~30.0重量%の1種または複数種の耐衝撃性改良剤、
5.0重量%~35.0重量%、好ましくは6.0重量%~33.0重量%、より好ましくは9.0重量%~33.0重量%の1種または複数種の無機充填剤、
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV吸収剤、および
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV安定剤
を含み、
層B中のアクリルポリマーBおよび耐衝撃性改良剤の累計含量は、層Bの重量を基準として、60.0重量%~95.0重量%、好ましくは60.0重量%~94.0重量%、より好ましくは60.0重量%~91.0重量%である。
【0027】
上記の利点に加えて、本発明者は、驚くべきことに、共押出アクリルホイルの挙動が、工業規模での押出中およびダイカット(キスカット)プロセス中、その後の廃棄物マトリックスのストリッピングにおいて、耐衝撃性改良剤の量と、共押出ホイルの層AおよびB中の無機充填剤および着色剤の量との比に大きく依存することを見出した。
【0028】
特に、共押出アクリルホイルの機械的特性に関して、層A中の1種または複数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nimAが、以下の関係:
(nfA+npA)≦nimA≦7*(nfA+npA)
好ましくは1.2*(nfA+npA)≦nimA≦6.5*(nfA+npA)
より好ましくは1.3*(nfA+npA)≦nimA≦6*(nfA+npA)
[nfAは、1種または複数種の無機充填剤の含量(重量%)であり、
npAは、層A中の1種または複数種の着色剤の含量(重量%)である]により記載されることが有利であることが判明した。
【0029】
同様に、共押出アクリルホイルの挙動に関して、工業的規模での押出中およびダイカット(キスカット)プロセス中に、層B中の1種または複数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nimBを、以下の関係:
0.25*nfB≦nimB≦2*nfB
好ましくは0.3*nfB≦nimB≦1.8*nfB
より好ましくは0.4*nfB≦nimB≦1.5*nfB
[nfBは、層B中の1種または複数種の無機充填剤の含量(重量%)である]により記載されるように選択することは非常に有益であることが示された。
【0030】
これらの実施形態では、本発明のホイルを含むレーザー彫刻可能なラベルは、個々のラベルをキスカットによって製造し、その後、周囲の廃棄物マトリックスを除去し、個々のラベルを支持層に貼り付いたままにする工程を利用する際に製造され得る。少なくとも25m/分またはそれ以上の運転速度でも、廃棄物マトリックスの望ましくない破断は起こらない。
【0031】
本出願では、1種または複数種の耐衝撃性改良剤の含量nimは、正味の耐衝撃性改良剤の含量である。したがって、対応する耐衝撃性改良剤がゴム状粒子である場合、nimは、ゴム状粒子の含量である。対応する耐衝撃性改良剤がコア-シェルまたはコア-シェル-シェル粒子である場合、nimは、粒子全体の含量である。
【0032】
したがって、本発明の一実施形態は、少なくとも層Aおよび層Bを含む共押出アクリルホイルであって、層Aが、層Aの重量を基準として、
30.0重量%~98.5重量%のアクリルポリマーA、
1.0重量%~40.0重量%の1種または複数種の耐衝撃性改良剤、
0.5重量%~20.0重量%の1種または複数種の着色剤、
0.0重量%~10.0重量%の1種または複数種の無機充填剤、
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV吸収剤、および
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV安定剤
を含み、
層A中のアクリルポリマーAおよび耐衝撃性改良剤の累計含量が、層Aの重量を基準として、60.0重量%~99.5重量%であり、
層A中の1種または複数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nimAが、以下の関係:
(nfA+npA)≦nimA≦7*(nfA+npA)
[nfAは、1種または複数種の無機充填剤の含量(重量%)であり、npAは、層A中の1種または複数種の着色剤の含量(重量%)である]により記載され、
層Bが、層Bの重量を基準として、
30.0重量%~92.5重量%のアクリルポリマーB、
2.5重量%~35.0重量%の1種または複数種の耐衝撃性改良剤、
5.0重量%~35.0重量%の1種または複数種の無機充填剤、
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV吸収剤、および
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV安定剤
を含み、
層B中のアクリルポリマーBおよび耐衝撃性改良剤の累計含量が、層Bの重量を基準として、60.0重量%~95.0重量%であり、
層B中の1種または複数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nimBが、以下の関係:
0.25*nfB≦nimB≦2*nfB
[nfBは、層B中の1種または複数種の無機充填剤の含量(重量%)である]により記載される、共押出アクリルホイルに関する。
【0033】
さらに、一方では、キスカット工程を利用し、その後に廃棄物マトリックスを除去する製造プロセスへの適合性と、他方では、レーザー彫刻可能なラベルを目的の基材から不正に剥がそうとすることに抵抗する能力とのバランスは、少なくとも層Aおよび層Bを含む共押出アクリルホイルが特に有利であり、
層Aは、層Aの重量を基準として、
40.0重量%~95.0重量%のアクリルポリマーA、
4.0重量%~35.0重量%の1種または複数種の耐衝撃性改良剤、
1.0重量%~18.0重量%の1種または複数種の着色剤、
0.0重量%~7.0重量%の1種または複数種の無機充填剤、
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV吸収剤、および
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV安定剤
を含み、
層A中のアクリルポリマーAおよび耐衝撃性改良剤の累計含量は、層Aの重量を基準として、60.0重量%~99.0重量%であり、
層A中の1種または複数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nimAは、以下の関係:
1.2*(nfA+npA)≦nimA≦6.5*(nfA+npA)
[nfAは、1種または複数種の無機充填剤の含量(重量%)であり、npAは、層A中の1種または複数種の着色剤の含量(重量%)である]により記載され、
層Bは、層Bの重量を基準として、
34.0重量%~90.0重量%のアクリルポリマーB、
4.0重量%~33.0重量%の1種または複数種の耐衝撃性改良剤、
6.0重量%~33.0重量%の1種または複数種の無機充填剤、
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV吸収剤、および
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV安定剤
を含み、
層B中のアクリルポリマーBおよび耐衝撃性改良剤の累計含量は、層Bの重量を基準として、60.0重量%~94.0重量%であり、
層B中の1種または複数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nimBは、以下の関係:
0.3*nfB≦nimB≦1.8*nfB
[nfBは、層B中の1種または複数種の無機充填剤の含量(重量%)である]により記載される。
【0034】
さらに、共押出アクリルホイルの全体的な特性は、共押出アクリルホイルが少なくとも1つの層Aおよび層Bを含む場合にさらに改善することができ、層Aは、層Aの重量を基準として、
50.0重量%~93.0重量%のアクリルポリマーA、
6.0重量%~30.0重量%の1種または複数種の耐衝撃性改良剤、
1.0重量%~15.0重量%の1種または複数種の着色剤、
0.0重量%~10.0重量%、好ましくは0.0重量%~7.0重量%、より好ましくは0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種の無機充填剤、
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV吸収剤、および
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV安定剤
を含み、
層A中のアクリルポリマーAおよび耐衝撃性改良剤の累計含量は、層Aの重量を基準として、65.0重量%~99.0重量%であり、
層A中の1種または複数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nimAは、以下の関係:
1.3*(nfA+npA)≦nimA≦6*(nfA+npA)
[nfAは、1種または複数種の無機充填剤の含量(重量%)であり、npAは、層A中の1種または複数種の着色剤の含量(重量%)である]により記載され、
層Bは、層Bの重量を基準として、
40.0重量%~85.0重量%のアクリルポリマーB、
6.0重量%~30.0重量%の1種または複数種の耐衝撃性改良剤、
9.0重量%~33.0重量%の1種または複数種の無機充填剤、
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV吸収剤、および
0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV安定剤
を含み、
層B中のアクリルポリマーBおよび耐衝撃性改良剤の累計含量は、層Bの重量を基準として、60.0重量%~91.0重量%であり、
層B中の1種または複数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nimBは、以下の関係:
0.4*nfB≦nimB≦1.5*nfB
[nfBは、層B中の1種または複数種の無機充填剤の含量(重量%)である]により記載される。
【0035】
アクリルポリマーAの少なくとも1種および/またはアクリルポリマーBの少なくとも1種のガラス転移温度が少なくとも110℃、好ましくは少なくとも120℃である場合、上昇した温度で特に低い収縮率を有する共押出アクリルホイルを得ることができる。これに関連して、驚くべきことに、両層AまたはBの一方のみが少なくとも110℃、好ましくは少なくとも120℃のガラス転移温度を有する場合であっても、アクリルホイル全体が、上昇した温度で低い収縮率を有することが見出された。換言すれば、上昇した温度で、より高いガラス転移温度を有する層は、より低いガラス温度を有する層に十分な機械的支持を与え、それによりホイルの望ましくない収縮を回避する。
【0036】
アクリルポリマーのガラス転移温度Tgは、公知の方法で、示差走査熱量測定(DSC)によって決定することができる。DSC測定は、例えば、規格DIN EN ISO 11357に準拠した、Mettler-Toledo AGから得られる機器DSC822eにより行うことができる。この目的のために、-80℃~150℃の間隔内で2サイクルが実施される。加熱/冷却速度は、好ましくは10℃/分である。ガラス転移温度Tgは、典型的には、遷移領域においてハーフハイト(half-height)技術を用いて算出され得る。
【0037】
代替的に、例えばDSC測定が不可能な場合、ガラス転移温度Tgは、Foxの式によって事前におおよそ算出することもできる。Fox T. G., Bull. Am. Physics Soc. 1, 3, 第123頁(1956年)によれば、
1/Tg=x1/Tg1+x2/Tg2+・・・+xn/Tgn
式中、xnは、モノマーnの質量分率(重量%/100)であり、Tgnは、モノマーnのホモポリマーのガラス転移温度(ケルビン)である。当業者であれば、最も一般的なホモポリマーのTg値を示すPolymer Handbook 2nd Edition, J. Wiley & Sons, New York (1975)に、さらなる有用なヒントを見出すことができる。
【0038】
ポリ(メタ)アクリルイミド
本発明の一実施形態では、アクリルポリマーAおよび/またはアクリルポリマーBは、独立して、PMMIの重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%の式(I)
【化1】
[式中、R
1およびR
2は、独立して、水素およびメチル基から選択され、R
1およびR
2は、好ましくはメチル基によって表され、
R
3は、水素またはC
1~C
4-アルキル基、好ましくはメチル基である]の繰り返し単位を含むポリ(メタ)アクリルイミド(PMMI)である。
【0039】
好ましくは、アクリル層Aおよび/またはアクリル層Bは、対応する層Aまたは層Bの重量を基準として、30.0重量%~98.0重量%、好ましくは30.0重量%~92.5重量%、より好ましくは40.0重量%~80.0重量%、さらにより好ましくは45.0重量%~75.0重量%のPMMIを含む。
【0040】
PMMIの製造方法は、例として、欧州特許出願公開第216505号明細書、欧州特許出願公開第666161号明細書、または欧州特許出願公開第776910号明細書に開示されており、その開示内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。PMMIの製造に使用される出発材料は、メタクリル酸のアルキルエステルに由来するポリマーを含み、一般に、50.0重量%を上回る、好ましくは80.0重量%を上回る、特に好ましくは95.0重量%~100.0重量%のアルキル基中に1~4個の炭素原子を有するメタクリル酸のアルキルエステル単位で構成されている。メチルメタクリレートが好ましい。好ましいポリマーは、少なくとも80.0重量%、好ましくは90.0重量%を上回る、特に好ましくは95.0重量%を上回るメチルメタクリレートで構成されている。使用され得るコモノマーは、メチルメタクリレートと共重合可能なモノマーのいずれか、特にアルキル基中に1~4個の炭素原子を有するアクリル酸のアルキルエステル、アクリロニトリルもしくはメタクリロニトリル、アクリルアミドもしくはメタクリルアミド、スチレン、または無水マレイン酸を含む。還元粘度が20ml/g~92ml/g、好ましくは50ml/g~80ml/g(ISO 8257(2006)、パート2に準拠して測定)の範囲にある、この種の熱可塑的に処理可能なポリマーが好ましい。それらは、その中央粒径が約0.03mm~3mmである粉末またはペレットの形で使用される。
【0041】
該方法の工程において、アンモニアが、まずイミド化剤として使用され、該方法の後続の工程において、C1~4-アルキルアミン、典型的にはメチルアミンが使用され、使用されるアンモニアと使用されるメチルアミンとのモル比が1:0.5~1:3、好ましくは1:0.8~1:2.7、特に好ましくは1:0.9~1:1.1であることが重要である。この範囲を下回ると、得られるポリメタクリルイミドにおいて、ヘイズがその程度を増して発生し得る。使用されるアンモニアに対してモル過剰のメチルアミンが存在する場合、次にポリマー中のカルボン酸基の割合が不必要に上昇する。
【0042】
イミド化剤との反応は、好ましくは、ポリマーが完全にイミド化される前に終了する。この目的のために、イミド化剤の合計使用量は、例えば、エステル単位の基礎モル当たり、0.2~2.5モル、好ましくは0.5~1.5モル、特に好ましくは0.8~1.2モルであり得る。しかしながら、アンモニアとメチルアミンとの規定される定量比は、常に維持されるべきである。これにより、次に約20基礎モル%~80基礎モル%の環状メタクリルイミド単位で構成され、5.0重量%未満の少量のメタクリル酸単位のみを有するポリマーが得られる。
【0043】
イミド化プロセスは、それ自体公知の方法で、例えば欧州特許第441148号明細書に記載されているように実質的に実施され得る。イミド化は、出発ポリマーについてISO 306(2014)に準拠して融点を上回る温度またはビカットB軟化点を少なくとも20℃上回る温度で最もよく進む。得られるイミド化ポリマーの軟化点を少なくとも20℃上回る反応温度を選択することがより好ましい。イミド化ポリマーのビカット軟化点は、一般にプロセスの目標変数であり、達成すべきイミド化度は、それに従って定義されるので、同様に必要な最低温度を決定することも容易に可能である。140℃~300℃の温度範囲、特に150℃~260℃、特に好ましくは180℃~220℃の温度範囲が好ましい。反応温度が過度に高いと、場合により、ある程度のポリマーの連鎖停止によって引き起こされる粘度の低下につながる。ポリマーの不必要な熱応力を防ぐために、反応温度は、例えば、出発ポリマーの融点よりわずかに高い温度から出発して、徐々にまたは段階的に上げることができ、最後の分岐点でのみ、イミド化した最終生成物の軟化点を少なくとも20℃超えることができる。反応の段階内で、50bar~500barであり得る、自生圧力で動作することが好ましい。減圧は、プロセスの段階の間に、例えば脱揮のために行われ得る。反応混合物の温度は、ここで低下し、次いで必要な値まで上昇させなければならない。イミド化剤が反応条件下で導入される場合、当然ながら、この目的のために、適切な高圧が使用されなければならない。
【0044】
イミド化剤、例えば第一級アミンとの反応によるメタクリル酸のアルキルエステルのポリマーの部分的または完全なイミド化は、例として米国特許第2,146,209号明細書に開示されている。ポリマーは、イミド化剤とともに溶媒の存在下または非存在下で、適切な場合、圧力下で、140℃~250℃の温度に加熱される。
【0045】
典型的には、本発明において使用するためのPMMIは、PMMAを標準として使用するGPCによって決定される、80000g/モル~200000g/モル、好ましくは90000g/モル~150000g/モルの質量平均分子量Mwを有する。そのような材料は、Roehm GmbH(ダルムシュタット、独国)より商標PLEXIMID(登録商標)で市販されている。適切な製品としては、PLEXIMID(登録商標)TT50、PLEXIMID(登録商標)TT70、PLEXIMID(登録商標)8805、PLEXIMID(登録商標)8813、PLEXIMID(登録商標)8817が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
ポリアルキル(メタ)アクリレート
本発明のさらなる一実施形態では、アクリルポリマーAおよび/またはアクリルポリマーBは、独立して、ポリアルキル(メタ)アクリレートである。
【0047】
ポリアルキル(メタ)アクリレートは、通常、典型的にはアルキル(メタ)アクリレート、典型的にはメチルメタクリレート(a)と、少なくとも1種のさらなる(メタ)アクリレート(b)とを含む混合物のフリーラジカル重合によって得られる。これらの混合物は、一般に、モノマーの重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%のメチルメタクリレート(a)を含む。一般に使用されるメチルメタクリレート(a)の量は、モノマーの重量を基準として、50.0重量%~99.9重量%、好ましくは80.0重量%~99.0重量%、特に好ましくは90.0重量%~99.0重量%である。
【0048】
ポリアルキル(メタ)アクリレートを製造するためのこれらの混合物は、メチルメタクリレート(a)と共重合可能な他の(メタ)アクリレート(b)も含み得る。本明細書で使用される「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレート、アクリレートおよびそれらの混合物を包含することを意味する。(メタ)アクリレートは、飽和アルコール、例えばメチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレートおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートに由来し得るか;不飽和アルコール、例えば、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレートに由来し得;さらにはアリール(メタ)アクリレート、例えばベンジル(メタ)アクリレートまたはフェニル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば3-ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4-ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;グリコールジ(メタ)アクリレート、例えば1,4-ブタンジオール(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸のアミドおよびニトリル、例えば、N-(3-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(ジエチルホスホノ)-(メタ)アクリルアミド、1-メタクリロイルアミド-2-メチル-2-プロパノール;多官能性(メタ)アクリレート、例えばトリメチロイルプロパントリ(メタ)アクリレートにも由来し得る。
【0049】
一般に使用される(メタ)アクリルコモノマー(b)の量は、モノマーの重量を基準として、0.1重量%~50.0重量%、好ましくは1.0重量%~20.0重量%、特に好ましくは1.0重量%~10.0重量%であり、本明細書の化合物は、単独でまたは混合物の形で使用され得る。
【0050】
重合反応は、一般に、公知のフリーラジカル開始剤により開始される。好ましい開始剤の中では、とりわけアゾ開始剤、例えば、AIBNおよび1,1-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、およびペルオキシ化合物、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、tert-ブチル2-エチルペルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、tert-ブチル2-エチルペルオキシヘキサノエート、tert-ブチル3,5,5-トリメチルペルオキシヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、2種以上の上述の化合物同士の混合物、および上述の化合物と記載されていないが同様にフリーラジカルを形成し得る化合物との混合物が当業者によく知られている。
【0051】
重合させるべき組成物は、上記のメチルメタクリレート(a)および(メタ)アクリレート(b)だけでなく、メチルメタクリレートおよび上述の(メタ)アクリレートと共重合可能な他の不飽和モノマーも含み得る。これらの中では、とりわけ1-アルケン、例えば、1-ヘキセン、1-ヘプテン;分岐鎖アルケン、例えばビニルシクロヘキサン、3,3-ジメチル-1-プロペン、3-メチル-1-ジイソブチレン、4-メチル-1-ペンテン、ノルボルネン;アクリロニトリル;ビニルエステル、例えば酢酸ビニル;スチレン、側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えば、α-メチルスチレンおよびα-エチルスチレン、アルキル置換基を環上に有する置換スチレン、例えば、ビニルトルエンおよびp-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えば、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレンおよびテトラブロモスチレン;ビニルエーテルおよびイソプレニルエーテル;マレイン酸誘導体、例えば、無水マレイン酸、無水メチルマレイン酸、マレイミド、メチルマレイミド;およびジエン、例えばジビニルベンゼンである。
【0052】
一般に使用されるこれらのコモノマー(c)の量は、モノマーの重量を基準として、0.0重量%~20.0重量%、好ましくは0.0重量%~15.0重量%、特に好ましくは0.0重量%~10.0重量%であり、これらの化合物は、本明細書では単独でまたは混合物の形で使用され得る。
【0053】
重合性成分として、
(a)50.0重量%~99.9重量%のメチルメタクリレート、
(b)0.1重量%~50.0重量%のC1~4アルコールのアクリル酸エステル、
(c)0.0重量%~10.0重量%のモノマー(a)および(b)と共重合可能なモノマー
を有する組成物の重合によって得られるポリアルキル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0054】
さらに別の実施形態では、85.0重量%~99.5重量%のメチルメタクリレートおよび0.5重量%~15.0重量%のメチルアクリレートで構成されるポリアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、本明細書での量は、100重量%の重合性成分を基準としている。特に有利なコポリマーは、90.0重量%~99.5重量%のメチルメタクリレートと0.5重量%~10.0重量%のメチルアクリレートとの共重合によって得られるものであり、量は100重量%の重合性成分を基準とする。例えば、ポリアルキル(メタ)アクリレートは、91.0重量%のメチルメタクリレートおよび9.0重量%のメチルアクリレート、96.0重量%のメチルメタクリレートおよび4.0重量%のメチルアクリレートまたは99.0重量%のメチルメタクリレートおよび1.0重量%のメチルアクリレートを含み得る。上記ポリアルキル(メタ)アクリレートのビカット軟化点VSP(ISO 306(2013)、方法B50)は、典型的には少なくとも90℃、好ましくは95℃~112℃である。
【0055】
ポリアルキル(メタ)アクリレートの重量平均モル質量Mwは、一般に、80000g/モル~300000g/モルの範囲にある。特に有利な機械的特性は、80000g/モル~200000g/モルの範囲、好ましくは100000g/モル~180000g/モルの範囲、より好ましくは120000g/モル~180000g/モルの範囲の平均モル質量Mw(それぞれの場合にPMMA校正標準および溶離液としてのTHFに対するGPCによって決定される)を有するポリアルキル(メタ)アクリレートを用いるホイルから得られる。
【0056】
本発明のホイルに使用するのに適したポリアルキル(メタ)アクリレートは、Roehm GmbH(ダルムシュタット、独国)より商標PLEXIGLAS(登録商標)で市販されている。そのような製品には、PLEXIGLAS(登録商標)7N、PLEXIGLAS(登録商標)7H、PLEXIGLAS(登録商標)8N、PLEXIGLAS(登録商標)8HおよびPLEXIGLAS(登録商標)Heatresist FT15が含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
本発明のホイルは、典型的には、共押出アクリルホイルの重量を基準として、0.0重量%~30.0重量%、好ましくは0.0重量%~25.0重量%、より好ましくは0.0重量%~20.0重量%のポリアルキル(メタ)アクリレートを含む。
【0058】
耐衝撃性改良剤
本発明でそれ自体使用するための耐衝撃性改良剤は、よく知られており、異なる化学組成および異なるポリマー構造を有し得る。耐衝撃性改良剤は、架橋または熱可塑性であり得る。加えて、耐衝撃性改良剤は、コア-シェルとして、コア-シェル-シェルまたはコア-シェル-シェル-シェル粒子として、粒子の形であり得る。典型的には、粒子状耐衝撃性改良剤は、20nm~500nm、好ましくは50nm~450nm、より好ましくは100nm~400nm、最も好ましくは150nm~350nmの平均粒径を有する。この文脈では、「粒子状」とは、一般にコア-シェル、コア-シェル-シェルまたはコア-シェル-シェル-シェル構造を有する、架橋された耐衝撃性改良剤を意味する。平均粒径は、当業者に公知の方法、例えば規格DIN ISO 13321(2004)に準拠した光子相関分光法により決定され得る。
【0059】
最も単純な場合、粒子状耐衝撃性改良剤は、エマルション重合によって得られる、平均粒径が10nm~150nm、好ましくは20nm~100nm、特に30nm~90nmの範囲の架橋粒子である。これらは一般に、少なくとも20.0重量%、好ましくは20.0重量%~99.0重量%、特に好ましくは30.0重量%~98.0重量%の範囲のブチルアクリレート、および0.1重量%~2.0重量%、好ましくは0.5重量%~1.0重量%の架橋モノマー、例えば多官能性(メタ)アクリレート、例えばアリルメタクリレート、および適切な場合、他のモノマー、例えば0.0重量%~10.0重量%、好ましくは0.5重量%~5.0重量%の、C1~C4-アルキルメタクリレート、例えば、エチルアクリレートまたはブチルメタクリレート、好ましくはメチルアクリレート、または他のビニル重合性モノマー、例えば、スチレンで構成されている。
【0060】
好ましい耐衝撃性改良剤は、2層または3層のコア-シェル構造を有し得るポリマー粒子であり、エマルション重合によって得られる(例えば、欧州特許出願公開第0113924号明細書、欧州特許出願公開第0522351号明細書、欧州特許出願公開第0465049号明細書および欧州特許出願公開第0683028号明細書を参照のこと)。本発明のホイルは、典型的には、これらのエマルションポリマーの20nm~500nm、好ましくは50nm~450nm、より好ましくは100nm~400nm、最も好ましくは150nm~350nmの範囲の適切な平均粒径を必要とする。
【0061】
1つのコアおよび2つのシェルを有する3層または3相構造は、以下のようにして製造され得る。最も内側の(硬質)シェルは、例えば、本質的に、メチルメタクリレート、少ない割合のコモノマー、例えばエチルアクリレート、およびいくらかの割合の架橋剤、例えばアリルメタクリレートで構成され得る。真ん中の(軟質)シェルは、例えば、ブチルアクリレートおよび適切な場合、スチレンを含むコポリマーで構成され得るが、最も外側の(硬質)シェルは、本質的にマトリックスポリマーと同じであり、したがって相溶性およびマトリックスとの良好な結合がもたらされる。
【0062】
2層または3層のコア-シェル構造の耐衝撃性改良剤のコアまたはシェル中のポリブチルアクリレートの割合は、耐衝撃性改良剤の作用にとって重要であり、耐衝撃性改良剤の総重量を基準として、好ましくは20.0重量%~99.0重量%の範囲、特に好ましくは30.0重量%~98.0重量%の範囲、さらにより好ましくは40.0重量%~97.0重量%の範囲である。
【0063】
ブチルアクリレートのコポリマーを含む粒子状耐衝撃性改良剤に加えて、シロキサンを含む耐衝撃性改良剤の使用も可能である。しかしながら、そのような改良剤の使用は、あまり有利ではない。なぜなら、それらが共押出アクリルホイル中に存在すると、ホイルの印刷適性に不利になる傾向があるためである。
【0064】
メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)コアシェル耐衝撃性改良剤も、PMMIとの優れた相容性のために、本発明のホイルにおける使用に非常に適している。対応する耐衝撃性改良剤は、Arkema Franceなどの複数の製造業者から商標Clearstrength(登録商標)で市販されており、Clearstrength(登録商標)XT100、Clearstrength(登録商標)140、Clearstrength(登録商標)223、Clearstrength(登録商標)303H、Clearstrength(登録商標)320、Clearstrength(登録商標)350、Clearstrength(登録商標)859などの製品が含まれる。同様に、PARALOID(商標)の商標でDow Chemical Companyにより製造されたMBSコア-シェル耐衝撃性改良剤、例えば、製品PARALOID(商標)EXL-2620、PARALOID(商標)EXL(商標)2650J、PARALOID(商標)EXL-2690、PARALOID(商標)EXL-2691、PARALOID(商標)EXL-2668およびPARALOID(商標)EXL-3361も適している。これらの耐衝撃性改良剤を使用することにより、特に低いヘイズ値および優れた光学的透明性を有するPMMIホイルを製造することが可能となる。
【0065】
いくつかの実施形態では、コア-シェル-シェル-シェル型の耐衝撃性改良剤の使用は、本発明のホイルの機械的特性に関して有利である。対応する耐衝撃性改良剤は、特許出願の国際公開第2014/035608号に詳細に記載されており、その開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
熱可塑性耐衝撃性改良剤は、粒子状耐衝撃性改良剤とは異なる作用機構を有する。それらは一般にマトリックス材料と混合される。例えばブロックコポリマーを使用した場合のようにドメインが形成される場合、これらのドメインの好ましいサイズ(例えば電子顕微鏡法でサイズを決定することができる)は、コア-シェル粒子の好ましいサイズに対応している。
【0067】
様々なクラスの熱可塑性耐衝撃性改良剤がある。その一例は、脂肪族TPU(熱可塑性ポリウレタン)、例えば、Covestro AGから市販されているDesmopan(登録商標)製品である。例えば、TPU Desmopan(登録商標)WDP85784A、WDP85092A、WDP89085AおよびWDP89051Dは、いずれも1.490~1.500の屈折率を有し、耐衝撃性改良剤として特に適している。
【0068】
本発明のホイルにおいて耐衝撃性改良剤として使用するのに適したさらなるクラスの熱可塑性ポリマーは、メタクリレート-アクリレートブロックコポリマー、特にPMMA-ポリ-n-ブチルアクリレート-PMMAトリブロックコポリマーを含むアクリルTPEであり、これらはKurarity(登録商標)の製品名でKurarayにより市販されている。ポリ-n-ブチルアクリレートブロックは、ポリマーマトリックスにおいて10nm~20nmのサイズを有するナノドメインを形成する。
【0069】
上記の熱可塑性耐衝撃性改良剤に加えて、PVDFを含む熱可塑性耐衝撃性改良剤の使用も可能である。しかしながら、そのような改良剤の使用はあまり有利ではない。なぜなら、それらが共押出アクリルホイル中に存在すると、ホイルの印刷適性が悪化する傾向があるためである。
【0070】
層A中のポリ(メタ)アクリルイミド、ポリアルキル(メタ)アクリレートおよび耐衝撃性改良剤(以下、「耐衝撃性改良アクリルポリマーA」と呼ぶ)の累計含量は、通常、層Aの重量を基準として、60重量%~99.5重量%、より好ましくは70.0重量%~98.0重量%、より好ましくは80.0重量%~96.0重量%に調整される。層B中のポリ(メタ)アクリルイミド、ポリアルキル(メタ)アクリレートおよび耐衝撃性改良剤(以下、「耐衝撃性改良アクリルポリマーB」と呼ぶ)の累計含量は、通常、層Bの重量を基準として、60重量%~95.0重量%、より好ましくは65.0重量%~95.0重量%、より好ましくは70.0重量%~90.0重量%に調整される。
【0071】
無機充填剤
本発明の共押出アクリルホイル中の無機充填剤の存在は、複数の目的に役立つ。無機充填剤が存在すると、共押出アクリルホイルに所望の色および透明度を与えることができる。例えば、共押出アクリルホイル中に二酸化チタンが存在すると、ホイルは白色かつ実質的に不透明になる。加えて、驚くべきことに、無機充填剤の量は、その取扱い中のホイルの挙動、特に、工業規模での共押出中のホイルの挙動およびレーザー彫刻可能なラベルの製造中のキスカット工程後の廃棄物マトリックスの挙動に強い影響を与えることが見出された。
【0072】
層AおよびB中の無機充填剤は、特に限定されず、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、好ましくはルチル型二酸化チタン、シリカ、好ましくは溶融シリカ、硫酸バリウム、三水酸化アルミニウム、マイカ、酸化亜鉛、硫化亜鉛、クレー、ムスコバイトおよび炭酸カルシウムから独立して選択され得る。
【0073】
理想的には、無機充填剤は、0.1重量%以下の45μmのスクリーン残渣を示し、すなわち、45μmより大きい粒径の凝集物が実質的に存在せず、このことは本発明による使用にとって非常に有利である。これにより、無機充填剤は、大きな充填剤凝集物が存在することなく、ポリ(メタ)アクリレートホイルのマトリックス中に特に均質に分布することが可能になり、したがって、得られるホイルは、実質的に均一な外観を示し、かつ適切な機械的特性を有する。一般に、ホイル中に大きな充填剤凝集物が大量に存在すると、そのような凝集物は、ホイルに亀裂を発生させやすく、それによってホイルのランダムな位置での初期引裂強度が低下するので不利である。
【0074】
好ましい実施形態では、無機充填剤は、0.05μm~10.0μm、より好ましくは0.1μm~5.0μm、特に好ましくは0.1μm~1.0μm、さらにより好ましくは0.1μm~0.5μmの範囲の重量平均粒径d50を有する。重量平均粒径d50は、当業者に公知の適切な方法により、例えば、市販の機器、例えば、Beckman Coulter Inc製のN5 Submicron Particle Size Analyzerを使用する際、規格DIN ISO 13321(2004)による光子相関分光法により、または1.0μmを上回るサイズを有する粒子の場合、Horiba Scientific Ltd製のSZ-10 Nanoparticle Analyzerなどの機器を使用する静的光散乱により測定することができる。
【0075】
ポリ(メタ)アクリレート系マトリックス材料中の無機充填剤粒子の特に均質な分散性を確保するためには、無機充填剤の吸油量が5g/100g充填剤以上、好ましく10g/100g充填剤以上、特に好ましくは15g/100g充填剤以上であることがさらに有利である。無機充填剤の吸油量が、100g/100g充填剤以下、好ましくは70g/100g充填剤以下、特に好ましくは50g/100g充填剤以下であることがさらに有益である。吸油量は、規格DIN EN ISO 787-5(1995)に従って決定され得る。
【0076】
例えば、層Bを白色に着色することが望ましい場合、充填剤として、二酸化チタンが有利に使用され得る。典型的には、ルチルまたはアナターゼの形の二酸化チタンが使用され得るが、ルチルの形の二酸化チタンは、光触媒活性が低いため特に好ましい。そのような材料は、塩化物プロセスによって製造することができ、様々な業者から、例えばKRONOS TITAN GmbH(レーバークーゼン、独国)から市販されている。
【0077】
適切な二酸化チタン充填剤は、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、または他の試薬の水不溶性酸化物で変性されていてもいなくてもよく;これらの試薬材料は、着色剤が使用されるそれらの特性を改善するために特別に導入されている。二酸化チタン充填剤は、硫酸バリウム、クレー、ケイ酸マグネシウム、白色化等の増量剤を含まないことが理想的である。ASTM D476(2015)の分類によるタイプII、IIIおよびIVの二酸化チタン充填剤が特に好ましい。
【0078】
層Bは、通常、層Bの重量を基準として、5.0重量%~35.0重量%、好ましくは7.5重量%~32.5重量%、より好ましくは10.0重量%~30.0重量%を含む。
【0079】
着色剤
ホイルの層Aで使用するための着色剤は、特に限定されない。好ましい一実施形態では、着色剤は、顔料である。いくつかの実施形態では、フィルムの層Aは、黒色に着色され得る。この目的に適した顔料は、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、特に酸化鉄(III)、酸化コバルト、アニリンブラックおよびペリレンブラックから選択することができ、カーボンブラックが特に適している。他の実施形態では、層Aに着色された赤色は、少なくとも1種の赤色顔料を使用することによって調製され得る。適切な赤色顔料には、(色指数C.I.)ピグメントレッド(PR)48:2、48:3、57:1、101、112、122、144、166、168、178、179、202、214、254、255、264、272、276、277およびピグメントバイオレット(PV)19が含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
層A中の顔料の濃度は、CIELAB 1976色空間における所望のL*-値に主に依存する。濃度は、一般に、層Aの重量を基準として、0.5~20.0重量%、好ましくは1.0~10.0重量%、より好ましくは1.5~7.0重量%の範囲にある。
【0081】
カーボンブラック顔料の平均一次粒径は、通常、5.0~100.0nm、より好ましくは7.0~60.0nmの範囲にある。平均粒径d50は、当業者に公知の方法、例えば、Beckman Coulter Inc.製のLS 13 320 Laser Diffraction Particle Size Analyzerなどの市販の装置を使用した際に、規格DIN ISO 13320(2004)に従って光子相関分光法により決定することができる。さらに、BET法、規格ISO 9277により測定された比表面積が50~500m2/g、例えば70~400m2/gのカーボンブラック粒子を選択することは、ホイルの特性の点で有利であることが示された。カーボンブラックは、処理されてもよいし未処理であってもよい。例えば、カーボンブラックは、特定のガスまたは有機物、例えばブチルリチウムで処理することができる。そのような処理により、表面を修飾または機能化させることができる。これにより、層Aのポリマーマトリックスとの適合性をさらに促進させることができる。
【0082】
本発明のホイルの使用に適したカーボンブラックは、導電性が低いかまたは全くないという点で、いわゆる導電性ブラックとは異なる。本明細書で使用されるカーボンブラックと比較して、導電性ブラックは、高い導電性を実現するために、特定の形態および超格子を有している。対照的に、本明細書で使用されるカーボンブラック粒子は、熱可塑性樹脂に非常に容易に分散させることができるため、カーボンブラックの凝集領域は実質的に発生せず、そこから対応する導電性が生じる可能性がある。適切なカーボンブラックは、多くの商品名で、ペレットまたは粉末などの多数の形で商業的に得られる。例えば、適切なカーボンブラックは、商品名BLACK PEARLS(登録商標)で入手可能であり、湿式処理されたペレットの形ではELFTEX(登録商標)、REGAL(登録商標)およびCSX(登録商標)の名称で入手可能であり、凝集した形ではMONARCH(登録商標)、ELFTEX(登録商標)、REGAL(登録商標)およびMOGUL(登録商標)の名称で入手可能であり、すべてCabot Corporationから入手可能である。Printex(登録商標)60およびPrintex(登録商標)90(Orion Engineered Carbons GmbH)もこの目的に適している。
【0083】
さらに好ましい実施形態では、層A中の着色剤は、染料である。適切な染料には、特に赤色染料、すなわち、着色指数(C.I.)によるソルベントレッド、アシッドレッドまたはモダンレッドとして指定されるものが含まれる。その例には、アントラキノン染料、例えばソルベントレッド111、143、145、146、150、151、155、168、169、172、175、181、207、222、227、230、245、247;ペリノン染料、例えばソルベントレッド135、162、179;ならびにモノアゾ染料、例えばソルベントレッド195が含まれる。
【0084】
UV吸収剤およびUV安定剤
本発明のホイルに使用するためのUV吸収剤およびUV安定剤は、よく知られており、例として、Hans Zweifel, Plastics Additives Handbook, Hanser Verlag, 5th Edition, 2001, p. 141 ffに詳細に記載されている。UV安定剤は、UV安定剤およびフリーラジカルスカベンジャーを含むと理解されている。
【0085】
UV吸収剤は、例として、置換ベンゾフェノン、サリチル酸エステル、ケイ皮酸エステル、オキサニリド、ベンゾオキサジノン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、トリアジンまたはベンジリデンマロネートの群に由来し得る。最もよく知られている代表的なUV安定剤/フリーラジカルスカベンジャーは、立体障害アミン(ヒンダードアミン光安定剤、HALS)の群により提供されている。
【0086】
有利には、共押出アクリルホイル中で使用されるUV吸収剤とUV安定剤との組み合わせは、以下の構成要素:
・ 構成要素A:ベンゾトリアゾール型のUV吸収剤、
・ 構成要素B:トリアジン型のUV吸収剤、
・ 構成要素C:UV安定剤(HALS化合物)
で構成されている。
【0087】
個々の構成要素は、個々の物質または混合物の形で使用され得る。
【0088】
ベンゾトリアゾール型のUV吸収剤は、従来技術で知られており、典型的には2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールである。対応する化合物には、特に、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-(3’-sec-ブチル-5’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-tert-アミル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ビス-(α,α-ジメチルベンジル)-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-5’-[2-(2-エチルヘキシルオキシ)-カルボニルエチル]-2’-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-メトキシカルボニルエチル)フェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-メタ-オキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-オクチルオキシカルボニル-エチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-5’-[2-(2-エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]-2’-ヒドロキシ-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-ドデシル-2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-イソオクチルオキシ-カルボニルエチル)フェニルベンゾトリアゾール、2,2’-メチレン-ビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-ベンゾトリアゾール-2-イルフェノール];2-[3’-tert-ブチル-5’-(2-メトキシカルボニルエチル)-2’-ヒドロキシフェニル]-2H-ベンゾトリアゾールとポリエチレングリコール300とのトランスエステル化生成物;[R-CH2CH2-COO-CH2CH2-、式中、R=3’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシ-5’-2H-ベンゾトリアゾール-2-イルフェニル、2-[2’-ヒドロキシ-3’-(α,α-ジメチルベンジル)-5’-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニル]-ベンゾトリアゾール;2-[2’-ヒドロキシ-3’-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-5’-(α,α-ジメチルベンジル)-フェニル]ベンゾトリアゾールが含まれる。使用され得るベンゾトリアゾール型のUV吸収剤のさらなる例は、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ジ(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-sec-ブチル-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールおよび2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、フェノール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)]である。
【0089】
これらの化合物は、例えばTinuvin(登録商標)360およびTinuvin(登録商標)234として、BASF SE(ルートヴィヒスハーフェン、独国)から市販されている。
【0090】
ベンゾトリアゾール型のUV吸収剤の使用量は、共押出アクリルホイルの重量を基準として、0.1重量%~5.0重量%、好ましくは0.2重量%~3.0重量%、非常に特に好ましくは0.5重量%~2.0重量%である。ベンゾトリアゾール型の異なるUV吸収剤の混合物を使用することも可能である。
【0091】
トリアジン型のUV吸収剤は、典型的には2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジンである。好ましく使用される2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジンには、とりわけ、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-プロピル-オキシフェニル)-6-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-4,6-ビス(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-トリデシルオキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-ブチルオキシプロポキシ)フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-オクチルオキシプロピルオキシ)フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-(ドデシルオキシ/トリデシルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロポキシ)フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ)フェニル-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス[2-ヒドロキシ-4-(3-ブトキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、2-{2-ヒドロキシ-4-[3-(2-エチルヘキシル-1-オキシ)-2-ヒドロキシプロピルオキシ]フェニル}-4,6-ビス(2,4-ジ-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(4-[2-エチルヘキシルオキシ]-2-ヒドロキシフェニル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジンが含まれる。また、トリアジン型のUV吸収剤、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノールも使用され得る。
【0092】
これらの化合物は、例えば、Tinuvin(登録商標)1600、Tinuvin(登録商標)1577またはTinuvin(登録商標)1545の商標でBASF SE(ルートヴィヒスハーフェン、独国)から市販されている。
【0093】
トリアジン型のUV吸収剤の量は、ホイルの重量を基準として、0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~3.0重量%、非常に特に好ましくは0.5~2.0重量%である。異なるトリアジン型のUV吸収剤の混合物を使用することも可能である。
【0094】
本発明のホイルは、典型的には酸化防止剤、ラジカルスカベンジャー等として作用する1種以上のUV安定剤をさらに含有し得る。特に好ましいUV安定剤は、立体障害フェノールおよびHALS型の添加剤である。
【0095】
立体障害アミン、HALS(ヒンダードアミン光安定剤)UV安定剤は、それ自体公知である。それらは、塗料およびプラスチック、特にポリオレフィンプラスチックにおける老化現象を抑制するために使用され得る(Kunststoffe, 74 (1984) 10, pp. 620-623; Farbe + Lack, Volume 96, 9/1990, pp. 689-693)。HALS化合物に存在するテトラメチルピペリジン基が、安定化効果を担っている。このクラスの化合物は、ピペリジン窒素上で置換することができないか、またはピペリジン窒素上でアルキル基またはアシル基により置換することができる。立体障害アミンは、UV領域で吸収しない。それらは、形成されたフリーラジカルを捕捉するが、UV吸収剤はこれを行うことができない。安定化効果を有し、かつ混合物の形でも使用され得るHALS化合物の例は、以下の通りである:ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ(4,5)-デカン-2,5-ジオン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)スクシネート、ポリ(N-β-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジンスクシネート)またはビス(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート。
【0096】
これらの化合物は、例えば、Tinuvin(登録商標)123、Tinuvin(登録商標)144またはTinuvin(登録商標)292の商標でBASF SE(ルートヴィヒスハーフェン、独国)から市販されている。
【0097】
ホイル中のHALS化合物の使用量は、典型的には、ホイルの重量を基準として、0.0~5.0重量%、好ましくは0.1~3.0重量%、非常に特に好ましくは0.2~2.0重量%である。異なるHALS化合物の混合物を使用することも可能である。
【0098】
立体障害フェノールも、本発明のホイルにおける使用に適している。好ましい立体障害フェノールには、とりわけ、6-tert-ブチル-3-メチルフェニル誘導体、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレンビス-(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、アルキル化ビスフェノール、スチレン化フェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ステアリル-β(3,5-ジ-4-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3-5-ジ-tert-ブチル-4ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが含まれる。市販の立体障害フェノールには、Sumilizer(商標)BHT BP-76、WXR、GA-80およびBP-101(Sumitomo Chemical、大阪、日本)、Irganox(登録商標)1076、565、1035、1425WL、3114、1330および1010(BASF SE、ルートヴィヒスハーフェン、独国)、MARK AO-50、-80、-30、-20、-330および-60(ADEKA Polymer Addtives、ミュルーズ、仏国)、およびTominox(登録商標)SS,TT(Mitsubishi Chemical Corporation、吉富、日本)が含まれる。
【0099】
一般に、本発明のホイルは、通常、共押出アクリルホイルの重量を基準として、0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV吸収剤、および0.0重量%~5.0重量%の1種または複数種のUV安定剤を含む。
【0100】
共押出アクリルホイル
所望の目的を最適に果たすために、本発明の共押出アクリルホイルは、好ましくは、50.0μmの厚さを有するホイルを用いてDIN EN ISO 527-3/2/100(2003)に従って測定された20.0MPa~70.0MPaの引張強度を有する。20.0MPa未満の引張強度を有するホイルは、本発明による使用に依然として適しているであろうが、ホイルは容易に裂け得るので、その製造および取扱いの間、大きな注意を払う必要があるだろう。
【0101】
他方で、70.0MPaを上回る引張強度を有する本発明の共押出アクリルホイルは、レーザー彫刻可能なラベルの製造プロセスに非常に適しているが、そのようなラベルの使用は、最初にラベル付けされる基材から薄い鋭利な刃(例えば、カミソリ刃)を使用してかかるラベルを除去した後、別の基材上に再び貼り付き得るリスクが高まる。
【0102】
ホイルの取扱いと脆性との間の良好なバランスを有するという観点から、初期引裂抵抗は、好ましくは1.0N~15.0Nの範囲にある。共押出アクリルホイルの引張強度は、規格DIN EN ISO 527-3/2/100(2003)に記載されている方法などの当業者に公知の一般的な方法により決定することができ、典型的には押出し方向で測定される。
【0103】
好ましくは、共押出アクリルホイルは、50.0μmの厚さを有するホイルを用いてASTM D1938(2014)に従って測定された0.01N~1.50N、好ましくは0.1N~1.00Nの引裂伝播抵抗を有する。引裂伝播抵抗は、典型的には押出し方向で測定される。
【0104】
さらに、共押出アクリルホイルの加工性と、最終的なレーザー彫刻可能なラベルを不正に除去しようとされた際に耐える能力との最適なバランスを確保するために、共押出アクリルホイルは、50.0μmの厚さを有するホイルを用いてDIN EN ISO 527-3/2/100(2003)に従って測定された0.5%~30%の間の範囲の破断点伸びを有することが好ましく、2.0%~20.0%の間の範囲の破断点伸びは、取扱いに関して特に有利である。
【0105】
破断点伸びが2.0%未満である場合、ホイルの可撓性が過度に小さいため、ホイルの取扱いが困難になり、製造中にホイルの損傷を避けるために細心の注意を払わなければならない。こうした状況では、製造プロセスを低速で運転する必要があり得る。他方で、破断点伸びが30.0%を超える場合、ホイルの脆性が低下する傾向がある。したがって、レーザー彫刻可能なラベルを薄い鋭利な刃で除去しようとする間、ホイルの小さな機械的変形は、必ずしも完全な破断につながらないことがある。これは、十分に薄くて鋭利な工具を使用することに熟練した経験者が、レーザー彫刻可能なラベルを元の基材(例えば、車両エンジンの交換可能な部品)から除去して、別の物体(非純正の交換可能な部品)に再び貼り付けることに成功するリスクを高める。共押出アクリルホイルの破断点伸びは、規格DIN EN ISO 527-3/2/100(2003)に記載されているような、当業者に公知の一般的な方法により測定され得る。
【0106】
本発明によれば、様々な影響要因もあり、それらを変更することで、当業者は、本発明のホイルの破断点伸びを所望の方向に調整することができる。
【0107】
大きな影響要因は、耐衝撃性改良剤および無機充填剤の量である。より具体的には、耐衝撃性改良剤の濃度が増加すると、破断点伸びも増加し、したがって、本発明によれば、少量の耐衝撃性改良剤が低い破断点伸びに寄与する。
【0108】
好ましい一実施形態では、共押出アクリルホイルの初期引裂抵抗は、引裂伝播抵抗の少なくとも10倍、好ましくは少なくとも50倍、さらにより好ましくは100倍である。これは特に有利であり、レーザー彫刻可能なラベルを基材から不正に除去しようとする間に発生する小さなホイルの破断でさえ、ラベル全体に急速に伝播し、ラベルを完全に破壊することを保証する。これにより、不正なラベル除去のリスクがさらに低下する。
【0109】
一実施形態では、本発明の押出ホイルの120℃(60分)における寸法安定性は、縦方向(押出方向)で0.7%以下、好ましくは0.5%以下、横方向(縦方向に垂直な方向)で0.5%以下、好ましくは0.3%以下である。
【0110】
寸法安定性は、50.0μmの厚さを有するホイルを用いて規格DIN EN ISO 11501(2004)に従って測定され得る。測定は、120℃で30分間にわたって実施され得る。
【0111】
さらに、本発明のホイルは、消毒剤、洗剤などの一般的な化学物質および作動油、エンジンオイル等の道路車両で一般的に使用される様々な流体の存在下で、優れた耐薬品性を有する。このため、ホイルは、自動車のフード下ラベルとしての使用に非常に適している。
【0112】
本発明の共押出アクリルホイルの厚さは、好ましくは10.0μm~200.0μmの範囲にある。厚さが10.0μm未満である場合、ホイルの破断を避けるため、ホイルの製造および取扱いの間、細心の注意を払わなければならない。他方で、ホイルの厚さが200.0μmを超える場合、その機械的安定性はかなり高く、同様に、ラベルを不正に除去しようとする間にホイルが破損しないリスクが高まる。さらに、高いホイル厚さは、それを含むレーザー彫刻可能なラベルの高い厚さを生じさせ、これは、美観または他の理由から不利であり得る。取扱いと平坦度との良好なバランスを有するという観点から、共押出アクリルホイルの厚さは、好ましくは、30.0μm~90.0μmの範囲にあり、40.0μm~75.0μmの範囲がさらにより好ましい。
【0113】
典型的には、層Aは、2μm~100μm、好ましくは5μm~90μm、より好ましくは10μm~80μmの厚さdAを有する。層Bは、通常、5μm~100μm、好ましくは10μm~90μm、より好ましくは20μm~80μmの厚さdBを有する。
【0114】
本発明のホイルおよびその個々の層AおよびBの厚さは、規格ISO 4593(1993)に従って機械的走査によって決定され得る。しかしながら、好ましくは、本発明のホイルの厚さは、JEOL JSM-IT300(JEOL GmbH、フライジング、独国から市販されている)などの走査型電子顕微鏡を使用して得られる顕微鏡写真を使用して決定される。この目的のために、ホイル試料を液体窒素中で凍結させ、機械的に破壊することができ、得られたばかりの表面が分析される。例えば、以下のパラメータを使用して測定を実施することができる:
電流源:タングステンフィラメント(カソード)からの電子の可変流量
真空システム:回転ポンプ/油拡散ポンプ
X-Y-Z回転-傾斜:全モータ駆動
作動距離(WD):5~70mm(共通:10mm)
試料回転:360°
試料傾斜:-5~最大90°(WDに依存)
拡大率:10×~300000×
最大解像度:約3nm
検出器:二次電子(SE)
後方散乱電子(BSE、5セグメント)
エネルギー分散型X線分析(EDS)
【0115】
本発明のホイルの製造に好ましく使用されるラインの詳細な構成
本発明に従って使用されるアクリルホイルは、好ましくは共押出プロセスによって製造される。溶液コーティングプロセスにより製造されるホイルとは対照的に、共押出アクリルホイルは、溶媒などの揮発性有機化合物を実質的に含まず、これは毒性および環境上の理由で非常に有利である。共押出アクリルホイルの層AおよびBの個々の成分は、押出工程の前に、またはさらに押出工程の間にブレンドされ得る。
【0116】
共押出アクリルホイルの押出には、少なくとも以下の構成要素を有するラインが使用され得る:
押出機、
任意選択的に、溶融物ポンプ、
任意選択の溶融物濾過設備、
任意選択の静的混合要素、
フラットホイルダイ、
艶出スタックまたはチルロール、および
巻取機。
【0117】
本発明の方法では、ホットメルトが、押出機のダイから2つの艶出ロール間のニップ上に、またはチルロール上に押し出される。最適な溶融温度は、例えば混合物の組成に依存し、したがって広い範囲内で変化し得る。ダイに入るポイントまでの成形組成物の好ましい温度は、170℃~320℃の範囲、より好ましくは200℃~290℃の範囲、非常に好ましくは220℃~280℃の範囲にある。艶出ロールの温度は、好ましくは150℃以下、より好ましくは60℃~140℃の間である。
【0118】
一実施形態では、ダイの温度は、ダイに入る前の混合物の温度よりも高い。ダイの温度は、ダイに入る前の混合物の温度よりも、好ましくは10℃高く、より好ましくは20℃高く、非常に好ましくは30℃高く設定されている。したがって、ダイの好ましい温度は、160℃~330℃、より好ましくは190℃~300℃の範囲にある。
【0119】
艶出スタックは、2つまたは3つの艶出ロールからなり得る。艶出ロールは、当該技術分野において広く知られており、強光沢を得るために使用されている。それにもかかわらず、艶出ロール以外のロール、例えばマットロールも、本発明の方法で使用され得る。最初の2つの艶出ロール間のニップでシートが形成され、これが同時冷却によりホイルになる。
【0120】
代替的に使用されるチルロールも、当業者に公知である。ここで、溶融物のシートが1本の冷却ロール上に堆積し得、これをさらに搬送する。チルロールは、好ましくは艶出スタックの上方に位置する。代替的に、押出は、米国特許出願公開第2016/0159995号明細書および米国特許出願公開第2017/0306188号明細書に記載されている機器を使用して特に有利に実施することができ、その全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。ホイルの特に良好な表面品質は、ダイおよびロールがクロム表面を有することで、特にこれらのクロム表面が0.10μm未満、好ましくは0.08μm未満の粗さRa(DIN 4768(1990)に準拠)を有することで、保証され得る。
【0121】
共押出アクリルホイルが実質的に不純物を含まないことを保証するために、溶融物がダイに入る前にフィルターが任意選択的に配置され得る。フィルターのメッシュサイズは、一般に使用される出発材料によって導かれ、したがって広い範囲内で変化し得る。メッシュサイズは、一般に、300μm~20μmの範囲にある。メッシュサイズが異なる2つ以上のスクリーンを有するフィルターが、ダイに入るポイント前に配置されてもよい。これらのフィルターは市販されている。高品質のホイルを得るためには、さらに、特に純粋な原材料を使用することが有利である。
【0122】
任意選択的に、さらに、フラットホイルダイの上流に静的混合要素が取り付けられてよい。この混合要素は、着色剤、安定剤または添加剤などの成分を、ポリマー溶融物に混合するために使用することができるか、または最大5重量%の第2のポリマーが、例えば溶融物の形で、第2の押出機から材料中に混合されてよい。
【0123】
溶融した混合物をダイに押し込む圧力は、例えばスクリューの速度により制御され得る。圧力は、典型的には40バール~300バールの範囲内であり、これによって本発明の方法が制限されることはない。したがって、本発明に従ってホイルを得ることができる速度は、一般に5m/分より速く、より具体的には10m/分より速い。
【0124】
溶融物の特に均一な搬送を保証するために、フラットホイルダイの上流に溶融物ポンプが追加的に取り付けられてよい。
【0125】
本発明の共押出アクリルホイルの取扱いをさらに改善するためには、ライナー層10が、工程i)の押出機の下流で、使用されたアクリルポリマーのガラス転移温度よりも低い温度で、共押出アクリルホイル4に結合され、それによってラミネート11が得られることが有利である。
【0126】
得られるラミネート11は、典型的には以下の2つの層(
図3を参照):
・ 共押出アクリルホイル4によって形成された層;および
・ ライナー層10
からなる。
【0127】
一実施形態では、ライナー層10は、自己粘着性である。代替的に、ライナー層10は、接着剤層を有してよく、マット表面を有する共押出アクリルホイル4にライナー層10を結合するために有利に使用され得る。さらなる実施形態では、ライナー層10は、接着剤層の代わりにポリエチレン-コポリマーの層を有してよい。そのようなライナーは、光沢のある表面を有する共押出アクリルホイル4に有利に用いられる。
【0128】
ラミネート11の良好な機械的安定性および特に高い引裂強度を保証するために、ライナー層10は、好ましくは、ASTM D1004(2013)に従って測定された50N~500Nの初期引裂抵抗を有することが有利である。ライナー層10が十分な引裂抵抗を有し、以下のうちの1つ:ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレート、好ましくは二軸配向ポリプロピレンまたは二軸配向ポリエチレンテレフタレートまたはそれらの混合物(二軸配向ポリプロピレンまたは二軸配向ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい)から選択され得る限り、ライナー層10の材料は、特に制限されない。
【0129】
後続のプロセス工程では、ラミネート11は、接着剤層7、任意選択的に、剥離剤コーティング層8および支持層9を結合してラベル基材12を供給する工程を経ることになる(
図3)。これらのプロセス工程は当業者によく知られており、例えば米国特許出願公開第2004/0091657号明細書および米国特許出願公開第2011/0132522号明細書で詳細に説明されている。
【0130】
好ましい一実施形態では、本方法は、少なくとも以下の工程:
i)押出機を用いて、請求項1から9までのいずれか1項記載の共押出アクリルホイル4を製造する工程;および
ii)押出機の下流で、工程i)からの共押出アクリルホイル4にライナー層10を結合する工程
を含む。
【0131】
その後、工程ii)で得られたラミネート11を、複数のロール間に通すことができ、その際、共押出アクリルホイル4の側に面する少なくとも1つのロールは、冷却されたロールである。
【0132】
代替的に、この方法は、少なくとも以下の工程:
i)押出機を用いて、請求項1から9までのいずれか1項記載の共押出アクリルホイルを製造する工程、
ii)工程i)で得られた共押出アクリルホイルを、複数のロール間に通す工程であって、少なくとも1つのロールが、冷却ロールである工程、および
iii)工程ii)からの共押出アクリルホイルにライナー層を結合する工程
を含み得る。
【0133】
典型的には、接着剤層7は、実質的に感圧接着剤(PSA)からなる。支持層は、典型的には、紙またはプラスチックホイル材料を含み、剥離剤コーティング層8によって被覆され得る。米国特許第6,406,787号明細書に記載されているものなどの様々な剥離剤コーティング組成物が知られている。非PSA接着剤組成物は、フォーム支持層が多孔質(例えば紙)であり、フォーム基材がラベルの非視認面上に露出している実施形態に特に使用されてもよい。
【0134】
本発明に適したPSAは、好ましくは、アルキルアクリレートポリマーおよびコポリマー;アルキルアクリレートとアクリル酸とのコポリマー;アルキルアクリレート、アクリル酸、およびビニル-ラクテートのターポリマー;アルキルビニルエーテルポリマーおよびコポリマー;ポリイソアルキレン;ポリアルキルジエン;アルキルジエン-スチレンコポリマー;スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー;ポリジアルキルシロキサン;ポリアルキルフェニルシロキサン;天然ゴム;合成ゴム;塩素化ゴム;ラテックスクレープ;ロジン;クマロン樹脂;アルキドポリマー;およびポリアクリレートエステル、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。例としては、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、またはブタジエン-スチレンコポリマー、およびそれらの混合物(かかるポリマーおよびコポリマーは、好ましくは反応性部分を有していない、すなわち空気の存在下で酸化されない);シリコーン系化合物、例えば、ポリジメチルシロキサン、ならびに他の樹脂および/または油と組み合わされたポリメチルフェニルシロキサンが挙げられる。
【0135】
他の適切なPSAとしては、粘着性熱可塑性樹脂および粘着性熱可塑性エラストマーも挙げられ、ここで粘着付与剤は、組成物の粘着性を増加させる1種以上の化合物を含む。強力なPSAとして有用な粘着性熱可塑性樹脂の例は、商品名VYNATHENE EY 902-30(Quantum Chemicals、シンシナティ、オハイオ州から入手可能)で知られる酢酸ビニル/エチレンコポリマーと、商品名PICCOTEX LC(Hercules Incorporated、ウィルミントン、デラウェア州から入手可能な、約87℃~95℃の環および球軟化点を有するα-メチルスチレンモノマーとビニルトルエンとの共重合によって製造される水-白色熱可塑性樹脂)およびWINGTACK 10(Goodyear Chemicalから入手可能な液体脂肪族C-5石油炭化水素樹脂)で知られる実質的に等しい割合の粘着付与剤と、トルエンなどの有機溶媒との組み合わせである。強力なPSAとして有用な粘着性熱可塑性エラストマーの例は、商品名KRATON G1657(Shell Chemicalsから入手可能)で知られるスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-スチレンブロックコポリマーと、商品名REGALREZ(Hercules製)で知られる1種以上の低分子量炭化水素樹脂と、トルエンなどの有機溶媒との組み合わせである。これらの配合物はどちらも、ナイフコーターを用いて塗布され、風乾され得るか、または風乾後にオーブン乾燥され得る。当然ながら、本発明は、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、および粘着付与剤のこれらの特定の組み合わせの使用に限定されない。
【0136】
いくつかの現在好ましいPSAは、大気条件下で長期の貯蔵寿命および減粘性抵抗を示し、米国特許第24,906号明細書に開示されているようなアクリル系コポリマー接着剤を含む。そのようなアクリル系コポリマーの一例は、95.5:4.5(それぞれ重量部で測定)のイソオクチルアクリレート/アクリル酸コポリマーである。別の好ましい接着剤は、これら2種のモノマーの90:10の重量比の組み合わせのコポリマーである。さらに別の好ましい接着剤は、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、およびアクリル酸のターポリマー;イソオクチルアクリレートとアクリルアミドとのコポリマー;およびイソオクチルアクリレート、ビニル-アセテートおよびアクリル酸のターポリマーである。
【0137】
アクリル系PSAは、ヘプタン:イソプロパノール溶媒混合物などの有機溶媒を含む塗布可能な組成物で塗布され、その後、溶媒を蒸発させて、感圧接着剤コーティングを残すことができる。この層は、基材が再帰反射シート材である場合、好ましくは約0.038センチメートル(cm)~約0.11cm(5~15ミル)の厚さである。
【0138】
また、本発明において有用なPSAは、約10~約1000g/cmの範囲、より好ましくは少なくとも約50g/cmの180°の剥離接着を有することも特徴とし得る。強力なPSAの場合、180°の剥離接着は、典型的には、標準的な試験手順を用いて測定された、約200g/cm~約600g/cmの範囲にある。この手順では、PSA被覆された基材を試験基材から剥離する際にPSA被覆された基材を試験基材から除去(すなわち剥離)するのに必要な力を、「剥離接着」値と呼ぶ。標準的なガラスプレートは、溶媒(例えば、ジアセトンアルコールで1回洗ってから、n-ヘプタンで3回洗う)を用いて洗浄される。次に、PSA裏糊コーティングを施した試料が、ごく軽い張力で、PSA面を下にして標準ガラスプレートの中央に沿って適用される。次いで、試料が2.04kgハンドローラーで1回ロールされる。次いで、標準ガラスプレートが、商標名「IMASS」で知られるものなどの標準的な剥離接着テスターの水平プレートに固定される。次いで、試料の一端が、剥離接着テスターの一部であるフックに貼り付く。試料は、プラテンを228.6cm/分の速度で水平に移動させることによって180°の角度で標準ガラスプレートから剥離され(すなわち、試料の一端が他端に向かって引っ張られる)、様々な静止時間について必要な力は、g/試料幅cmで記録される。
【0139】
典型的にはシロキサンコーティングである剥離剤コーティング層8は、接着剤層7と支持層9との間の接着性を低減する目的を果たす。典型的には、剥離剤コーティング層8は、規格ASTM D1894(2014)に従って決定された、0.35未満、好ましくは0.25未満の動摩擦係数を達成することを可能にする。
【0140】
最後に、ラベル基材1は、キスカットを施されて、支持層9に結合された複数の個々の自己粘着性のレーザー彫刻可能なラベル2を形成することになる。キスカットは、米国特許出願公開第2011/0132522号明細書に記載されているような機械的なダイカットによって、またはレーザーを使用することによって行われ得る。後続の工程では、個々の自己粘着性のレーザー彫刻可能なラベル2を取り囲む廃棄物マトリックス3が、破断のリスクなしに支持層9から剥離されることになる。
【0141】
廃棄物の形成を最小限に抑えるために、個々のラベル間の距離(すなわち、廃棄物マトリックスにおけるストライプの幅)は、1.0mm~10.0mm、より好ましくは2.0mm~8.0mm、さらにより好ましくは3.0mm~5.0mmの範囲に維持される。上述したように、廃棄物マトリックスの望ましくない破断は起こらない。典型的には、この作業中の剥離力は、30g/インチ未満、好ましくは20g/インチ未満、さらにより好ましくは1g/インチ~10g/インチであり、tesa SE(ノルダーシュテット、独国)製のtesaband(登録商標)7475テープによるT-peel試験を用いて測定される。
【0142】
レーザー彫刻可能なラベル
本発明のレーザー彫刻可能なラベル2は、記載された順序で少なくとも以下の層を含む(
図2を参照):
a)上記の共押出アクリルホイル4からなる層、
b)接着剤層7、
c)剥離剤コーティング層8、および
d)支持層9。
【0143】
典型的には、本発明のレーザー彫刻可能ラベルは、50.0μm~300.0μm、より好ましくは100.0μm~200.0μmの厚さを有する。
【0144】
典型的な実施形態では、
・ 層4(共押出アクリルホイル)は、10.0μm~200.0μm、より好ましくは30μm~150μm、さらにより好ましくは40.0μm~100.0μmの厚さを有してよく;
・ 接着剤層7は、10.0μm~40.0μm、より好ましくは20.0μm~30.0μmの厚さを有してよく;
・ 剥離剤コーティング層8は、0.01μm~1.5μm、好ましくは0.5μm~1.2μm、より好ましくは0.6μm~0.8μmの厚さを有してよく;かつ
・ 支持層9は、20.0μm~70.0μm、好ましくは30.0μm~50.0μmの厚さを有してよい。
【0145】
レーザー彫刻可能なラベルのサイズは、原則的に自由に選択することができ、それらの製造のために使用される押出ダイおよび/または艶出スタックの寸法によってのみ制限される。これは、フォーマットが実質的に自由に選択可能であることを意味する。
【0146】
共押出アクリルホイルのトリミングおよびキスカットは、好ましくはダイカット、切断、レーザー切断またはレーザーダイカットによって達成される。特に、レーザー切断またはレーザーダイカットが好ましい。
【0147】
任意選択的に、必ずしも必要ではないが、本発明に従って製造された共押出アクリルホイルは、ラベルを不正に除去しようとする間にラベルの破壊をさらに容易にするために、隆起、カット、スリットまたはミシン目またはノッチを追加的に設けていてもよい。しかしながら、このような追加手段は必須ではない。
【0148】
レーザー彫刻可能なラベルは、電子製品識別ラベル、自動車のフード下ラベル、チップカード、耐熱書類およびシールを製造するのに非常に適している。例示的な使用例の1つは、例えば、自動車エンジンの様々な部分におけるバーコードラベルである。ラベルは、目立った収縮なしにエンジンの運転温度に耐えることができ、また、流体、例えばブレーキ流体、作動流体、エンジンオイル等に対しても化学的に耐性がある。ラベルは、交換可能な非純正エンジン部品に移すために、エンジン部品からラベルを不正に剥がそうとする際に破壊されることになる。
【0149】
さらなる例として、本発明のラベルは、車両識別番号を有し得、車両のフード下で有利に使用され得る。ラベルを別の車両に貼り付けるために車両からラベルを不正に剥がそうとすると、ラベルが破壊されることになる。
【0150】
実験部
実施例1~25
層AおよびBを含むホイルを、以下の条件で、Dr. Collin GmbH(Ebersberg、独国)製の直径35mmの単軸押出機および直径25mmの単軸共押出機を使用し、7.3m/分の押出速度でチルロール法を用いてアダプタ共押出によって製造した:
押出機内のスクリュー温度:240℃~270℃
ダイ温度:240℃~285℃
ダイでの溶融物の温度:240℃~285℃
ロール温度:50℃~120℃。
【0151】
代替的には、ホイルの製造は、複数マニホールド共押出プロセスによってまたはアダプタと複数マニホールド共押出との組み合わせによって達成され得る。
【0152】
層Aで使用される顔料は、Cary Company(アジソン、米国)から入手可能なカーボンブラックFW1(ピグメントブラック7)であった。
【0153】
充填剤として、KRONOS TITAN GmbH(独国)から入手可能な、4.0g/cm3の密度(DIN EN ISO 787-10)および17g/100gの二酸化チタンの吸油量(DIN EN ISO 787-5)*を有する二酸化チタン(ルチル)を使用した。
【0154】
以下の例に挙げられるアクリルポリマー1は、Roehm GmbH(ダルムシュタット、独国)から入手可能なPMMI PLEXIMID(登録商標)TT50であった。
【0155】
以下の例に挙げられるアクリルポリマー2は、99重量%のメチルメタクリレートと1重量%のメチルアクリレートとのコポリマーであり、質量平均分子量Mwは、110000g/モルであり(PMMA標準に対してGPCにより測定)、Roehm GmbH(ダルムシュタット、独国)から入手可能であった。
【0156】
以下の例に挙げられるアクリルポリマー3は、96重量%のメチルメタクリレートと4重量%のメチルアクリレートとのコポリマーであり、質量平均分子量Mwは、155000g/モルであり(PMMA標準に対してGPCにより測定)、Roehm GmbH(ダルムシュタット、独国)から入手可能であった。
【0157】
以下の例に挙げられるアクリルポリマー4は、75重量%のMMA、15重量%のスチレンおよび10重量%の無水マレイン酸のコポリマーであった。このコポリマーの重量平均モル質量Mwは、約140000g/モル(PMMA標準に対してGPCにより測定)であった。
【0158】
耐衝撃性改良剤1は、Mitsubishi Chemical Co(日本)から入手可能なACRYPET(商標)IR 441であった。
【0159】
耐衝撃性改良剤2は、Dow Chemical Co(米国)から入手可能なParaloid(商標)EXL-2688であった。
【0160】
耐衝撃性改良剤3は、ブチルアクリレート系アクリルコア-シェル-シェル耐衝撃性改良剤であった。
【0161】
このホイルは、自己粘着性のレーザー彫刻可能なラベルの製造に使用され得る。廃棄物マトリックスの望ましくない破断は起こらない。
【0162】
実施例1~25のホイルの組成および層厚さを、以下の第1表にまとめる:
【表1-1】
【表1-2】
【0163】
機械的特性の評価
ホイルの機械的特性を、4つの同一サンプルで、Zwick GmbH & Co. KG(ウルム、独国)から入手可能な試験システムZwick Roell Z005を使用して測定し、各サンプルにつき5回の試験を実施した。測定前に、すべての試料を、23℃および相対湿度50%で少なくとも16時間にわたり調節した。
【0164】
引張強度および破断点伸びを、DIN EN ISO 527-3(2019)に従って100mm/分で測定した。
【0165】
初期引裂抵抗を、ASTM D 1004/-/51(2013)に従って51mm/分(初期グリップ間隔25.4mm)で測定した。標準引裂抵抗を、初期引裂抵抗を試験片の厚さで割ることによって計算し、したがって、厚さのわずかな差が除外されて、試料はより比較可能となった。
【0166】
引裂伝播力を、ASTM D 1938(2019)に従って測定した。この場合、上記の調節は、試験前に40時間を超えていた。
【0167】
実施例5および6のホイルは、両方の層のうちの一方に耐衝撃性改良剤を含まず、したがって国際公開第2019/057645号の教示を例示している。これらのホイルは、非常に脆く、取扱いが困難であるため、工業規模での製造には適していなかった。
【0168】
実施例5および6のホイルとは対照的に、本発明のホイルは、レーザー彫刻可能なラベルを使用するための機械的特性の有利な組み合わせを有していた。
【表2-1】
【表2-2】
【0169】
【0170】
上昇した温度での収縮の評価
試料の収縮率を、押出方向および横方向で、規格DIN 53377(2015)に従って、120℃、130℃、140℃、150℃および160℃(60分)で測定した。上昇した温度で高い収縮率を有する材料は、通常、かかる温度に達し得る車両の部品を標識するのに適していない。
【0171】
実施例1および2のホイルは、層AおよびB中にアクリルポリマーとしてPMMIを含み、したがって、予想されるように、160℃の温度でも押出方向の収縮率がかなり低かった。実施例11および12のホイルは、両方の層において比較的低い耐熱性を有するポリメチルメタクリレートのブレンドを含んでいた。したがって、これらのホイルは、130℃を上回る温度または130℃で高い収縮率を有していた。実施例5、6、7および23のホイルは、MMA、スチレンおよび無水マレイン酸のコポリマーを含んでいた。この材料は、比較的高い耐熱性を有するため、ホイルは、140℃未満の温度で低い収縮率を有していた。より高い温度では、押出方向にかなりの収縮が起こった。
【0172】
実施例16~19のホイルは、両方の層のうちの一方にPMMIを含み、他方の層は、低い耐熱性を有するポリメチルメタクリレートを含んでいた。驚くべきことに、PMMIが一方の層のみに存在しても両方の層に存在しても、ホイルが高温で中程度の収縮しか有していなかったことを保証するのに十分であった。
【国際調査報告】