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特表2023-547639組織サンプルにおけるジストロフィンを測定するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】組織サンプルにおけるジストロフィンを測定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20231106BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20231106BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20231106BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20231106BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20231106BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALN20231106BHJP
   C07K 14/78 20060101ALN20231106BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20231106BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N27/62 V
G01N30/06 E ZNA
G01N30/88 J
G01N30/72 C
C12Q1/37
C07K14/78
C07K16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525471
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 IB2021060037
(87)【国際公開番号】W WO2022091025
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/107,762
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】ヴァヒド ファラキー
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリク ヌバート
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ パランドラ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン マイケル ウォルシュ
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA05
2G041EA04
2G041EA12
2G041FA12
2G041FA13
2G041GA09
2G041HA01
2G041JA02
2G041JA05
2G041LA08
2G045AA25
2G045CB01
2G045DA36
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ36
4B063QS17
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045EA50
4H045FA16
4H045GA26
(57)【要約】
本明細書に記載される実施形態は、細胞または組織において発現した様々なジストロフィンの測定に対する解決策を提供する。この問題に対する解決策は、骨格筋組織における内因性および/または外因性ジストロフィン(例えば、操作されたジストロフィン)発現を測定するための特異的でかつ高感度の定量法であり、それは、薬物開発および治療のモニタリングにとっての実質的な有益性を提供する。
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)タンパク質サンプルと第1のプロテアーゼとを接触させ、ジストロフィンペプチドを含むタンパク質消化物を形成する工程;
(ii)タンパク質消化物をジストロフィンペプチドアフィニティー試薬に適用する工程であって、タンパク質消化物におけるジストロフィンペプチドは、ジストロフィンペプチドアフィニティー試薬に結合している、工程、ならびに結合しているジストロフィンペプチドを溶出し、内因性ジストロフィンペプチド、操作されたジストロフィンペプチド、または内因性ジストロフィンペプチドおよび操作されたジストロフィンペプチドを含有するジストロフィンペプチド富化サンプルを形成する工程;および
(iii)ジストロフィンペプチド富化サンプルに対して液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を実施する工程、
を含む、生物学的サンプルから単離されたタンパク質サンプルにおけるジストロフィンタンパク質の量を測定するための方法。
【請求項2】
生物学的サンプルは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を有するヒト患者由来のものであり、DMDを有するヒト患者は、操作されたジストロフィンタンパク質をコードする遺伝子療法を用いて治療されたことがある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
内因性ジストロフィンタンパク質は、配列番号242のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
測定されるジストロフィンタンパク質は、操作されたジストロフィンタンパク質である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号243、配列番号244、または配列番号245からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号243のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号243のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
タンパク質サンプルは、タンパク質サンプルに添加された代謝的に標識された外因性ジストロフィン参照タンパク質をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
外因性ジストロフィン参照タンパク質は、操作されたジストロフィンタンパク質と少なくとも95%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1のプロテアーゼによる内因性ジストロフィンタンパク質および操作されたジストロフィンタンパク質の両方の消化は、内因性ジストロフィンタンパク質および操作されたジストロフィンタンパク質の両方に存在する共通のジストロフィンペプチドを産出する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
共通のジストロフィンペプチドは、SLEGSDDAVLLQR(配列番号179)またはLLQVAVEDR(配列番号200)のアミノ酸配列を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
操作されたジストロフィンペプチドは、操作されたジストロフィンタンパク質に存在するが内因性ジストロフィンタンパク質には存在しない連続アミノ酸配列を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
操作されたジストロフィン特異的ペプチドは、配列番号235、配列番号236、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、または配列番号241のアミノ酸配列を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
操作されたジストロフィン特異的ペプチドは、LEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)のアミノ酸配列を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
生物学的サンプルは溶解バッファー中でホモジナイズされる、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
溶解バッファーは界面活性剤を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
界面活性剤はSDSである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
溶解バッファーはRIPAバッファーであり、RIPAバッファーは、10~50mM Tris-HCl、100~200mM NaCl、0.5~1.%NP40、1~2%デオキシコール酸ナトリウム、および0.1%SDSを含有する、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
生物学的サンプルのタンパク質構成要素を単離する工程は、ホモジナイズされた生物学的サンプルと有機溶媒とを接触させ、タンパク質沈降物を形成する工程を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
有機溶媒は、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、エタノール、イソプロパノール、メタノール、1-プロパノール、もしくはテトラヒドロフラン、またはその組み合わせからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第1のプロテアーゼはプロテアーゼバッファー中に提供され、プロテアーゼバッファーは、少なくともカオトロピック剤、有機溶媒、および緩衝塩を含み、好ましくはリン酸緩衝溶液中に約0.8M尿素および約10%アセトニトリルを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ジストロフィンペプチドアフィニティー試薬は、ペプチドサンプルにおける少なくとも1種のジストロフィンペプチドに結合する、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
結合しているジストロフィンペプチドは、内因性ジストロフィンタンパク質、操作されたジストロフィンタンパク質、および/または外因性ジストロフィン参照タンパク質由来のものである、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ジストロフィンペプチドアフィニティーカラムは、内因性ジストロフィンタンパク質および操作されたジストロフィンタンパク質の両方に存在する共通のジストロフィンペプチドに結合する、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ジストロフィンペプチドアフィニティー試薬は抗ジストロフィンペプチド抗体を含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号235、配列番号236、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、または配列番号241からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号236のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
抗ジストロフィンペプチド抗体は、LLQVAVEDR(配列番号200)のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
抗ジストロフィンペプチド抗体はポリクローナル抗体である、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
配列番号235、配列番号236、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、または配列番号241からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られた抗ジストロフィンペプチド抗体。
【請求項31】
配列番号235、配列番号236、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、または配列番号241からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、細胞生物学、分子生物学、および遺伝子療法に関する。特定の態様において、本発明は、発現したタンパク質のレベルを査定するための手順、ならびに関連組成物、方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、DMD遺伝子における変異によって引き起こされる致死性の筋肉を消耗する障害であり、タンパク質ジストロフィンの非存在または低下をもたらす(Hoffman EPら(1987)、Cell 51(6):919~928)。ジストロフィンは、79個のエクソンから構成される14kbのmRNAを有する大きな427kDaのタンパク質である(Koenig Mら(1987)Cell 50(3):509~517)。組織特異的プロモーターおよびポリ-A付加部位は、数多くのジストロフィンアイソフォームを産生する。Dp427mは、骨格筋および心筋において発現される支配的なアイソフォームであり、筋線維の構造的安定性に必須である(Doorenweerd Nら(2017)、Sci Rep 7(1):12575)。確認されたDMD変異の60%を上回る割合が、1つまたは複数のエクソンの欠失である(Flanigan KMら(2009)、Hum Mutat 30(12):1657~1666)。
【0003】
ジストロフィンリーディングフレームを維持する変異は、より軽度の形態であるベッカー型筋ジストロフィー(BMD)を引き起こす、トランケートされるが部分的に機能するジストロフィンタンパク質を産生する傾向がある。BMDは、100,000人の男性あたり1.53人の推定有病率を有し、DMDよりも稀でかつより臨床的に不均一である(Mah JKら(2014)、Neuromuscul Disord 24(6):482~491)。BMDを有する患者は、より遅発性の骨格筋衰弱を有し、より緩徐な疾患進行を示す。BMDを有する患者において、>10%のジストロフィンレベルは、より重度の疾患経過を回避するのに十分であるように見える(van den Bergen JCら(2014)、J Neurol Neurosurg Psychiatry 85(7):747~753)。ジストロフィンが心臓組織に存在せずかつ骨格筋において低下しているX連鎖性心筋症を有する患者からの観察結果は、骨格筋における30%の全長ジストロフィンレベルが、筋ジストロフィーを阻止するのに十分であり得ることを示唆する(Neri Mら(2007)、Neuromuscul Disord 17(11~12):913~918)。動物モデルからの証拠は、筋肉機能を回復させるための閾値がより高い(>40%)可能性があることを示唆するが(Le Guiner Cら(2014)、Mol Ther 22(11):1923~1935)、骨格筋におけるジストロフィンの回復が、実用的な治療的手法である。
【0004】
エクソンスキッピング、CRISPR、および遺伝子療法を含めた、筋肉におけるジストロフィンを回復させることを目指した数多くのストラテジーが探索されているところである。1つの有望なストラテジーは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使用することであり(Duan D(2018)、Mol Ther 26(10):2337~2356)、それは、病原性の明らかな欠如を伴って、筋肉細胞における高レベルの永続的な全身性の発現を示している(Yue Yら(2008)、Mol Ther 16(12):1944~1952)。AAVベクターの使用に対する障害は、パッケージング能(約5kb)がジストロフィン遺伝子(2100kb)のものよりもはるかに小さいことである。BMDを有する患者における観察結果に端を発して、数多くの操作されたジストロフィンが開発されている。これらの高度にトランケート型のジストロフィンは、前臨床マウスおよびイヌ科モデルにおいてある特定のレベルの機能を回復させる(Shin JHら(2013)、Mol Ther 21(4):750~757;Wang Bら(2000)Proc Natl Acad Sci U S A 97(25):13714~13719;Harper SQら(2002)、Nat Med 8(3):253~261;およびLe Guiner Cら(2017)Nat Commun 8:16105)。筋特異的プロモーターの制御下における、ヒトの操作されたジストロフィン遺伝子を含有する組み換えAAV9カプシドであるAAV9.hCK.Hopti-Dys3978.spAは、DMDを有する5~12歳の少年における多施設非盲検非無作為化漸増用量調査において研究中の1つのそのような療法である(ClincialTrials.gov、NCT03362502、2019.URL//clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03362502(2020年6月18日にアクセスされた))。
【0005】
機能転帰に対する候補療法の効果が臨床試験において実証可能であることは必須である。しかしながら、これらの転帰は、試験間の変動に起因して、および変化が明らかになるのに1年超かかり得るために困難である。ジストロフィン発現と機能転帰との相関関係の証拠は、新しい治療の迅速承認のための、定量されたジストロフィンタンパク質の使用を支持するであろう。実際、アンチセンスオリゴヌクレオチドであるExondys 51は、ウェスタンブロットによって査定される骨格筋におけるジストロフィンの増加についての代用評価項目に基づいて、2016年にアメリカ食品医薬品局から迅速承認を受けた。
【0006】
伝統的に、ウェスタンブロットおよび免疫蛍光染色は、ジストロフィン発現を評価するために使用されている。これらの技法は相補的であり;免疫蛍光は、ジストロフィンの細胞局在に関する情報を提供し、ウェスタンブロットは、発現の半定量的推定を提供する。しかしながら、これらの技法を使用して取得された結果の再現性は最善というわけではない。ウェスタンブロットは、とりわけ定量下限(LLOQ)付近のサンプルに関して、高レベルの実験室間変動を生じさせ得る(Anthony Kら(2014)、Neurology 83(22):2062~2069)。これは、すべての実験室にわたって使用され得る参照標準物質がないことに部分的に起因し得、このことは、現在利用可能なジストロフィン測定技法に影響を及ぼしている(Schnell FJら(2019)、US Neurol 15(1):40~46)。定量のためのウェスタンブロットの再現性に影響を及ぼす他の変数は、ゲルオーバーロード、膜転写効率、検出抗体の非特異的結合、およびシグナル現像を含む。実験室間での異なる検出抗体の使用は、調査および実験室の間でのウェスタンブロット結果の比較可能性をさらに限定する。免疫蛍光は、ウェスタンブロットよりも少ない変動を示すが;しかしながら、リバータントファイバー(revertant fiber)および微量のジストロフィン発現は、免疫蛍光画像の解釈を複雑にし得る(Arechavala-Gomeza Vら(2010)、Neuromuscul Disord 20(5):295~301;およびNicholson LVら(1990)、Acta Neuropathol 80(3):239~250)。リガンド結合アッセイは、ジストロフィンタンパク質の内因型および治療型の両方を捕捉することにおいて等しく効率的である高品質試薬の欠如に悩まされ得(Rup B&O’Hara D(2007)、AAPS J 9(2):E148~155)、それは偏った測定結果をもたらし得る。ジストロフィン(横紋筋の0.002%)等の低存在量タンパク質は、ルーチン的生物分析技法を使用して正確に測定することがとりわけ難しいことがある(Hoffmanら(1987)、Cell 51(6):919~928)。それゆえ、骨格筋組織における内因性および操作されたジストロフィン発現を測定するための特異的でかつ高感度の定量法の開発は、薬物開発および治療のモニタリングにとって実質的に有益であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ヒトジストロフィン定量のための方法として、液体クロマトグラフィータンデム質量分析計(LC-MS/MS)が確立されている。しかしながら、初期の方法は、健常個体における正常発現と比べてほんの5%下がったジストロフィンレベルしか検出しない。ゆえに、臨床試験におけるジストロフィン定量のためのLC-MS/MSの標準的かつ幅広い使用を可能にするために、さらなる技術進歩が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載される実施形態は、細胞または組織において発現した様々なジストロフィンの測定または定量に対する解決策を提供する。上で記載される問題に対する解決策は、生物学的サンプルに存在する内因性ジストロフィンタンパク質および/または操作されたジストロフィンタンパク質を測定するための特異的でかつ高感度の定量法ならびに関連組成物であり、それは、筋ジストロフィー患者の薬物開発および治療のモニタリングにとっての実質的な有益性を提供する。
【0009】
ある特定の実施形態は、ジストロフィンタンパク質のタンパク質分解フラグメントに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびにその使用および関連方法を提供する。当業者であれば、ルーチン的実験を使用するだけで、本明細書に記載される具体的な実施形態の多くの均等物を認識するまたは突き止めるであろう。そのような均等物は、以下の実施形態(E)によって包含されることを意図される。
【0010】
E1.(i)タンパク質サンプルと第1のプロテアーゼとを接触させ、ジストロフィンペプチドを含むタンパク質消化物を形成する工程;
(ii)タンパク質消化物をジストロフィンペプチドアフィニティー試薬に適用する工程であって、タンパク質消化物におけるジストロフィンペプチドは、ジストロフィンペプチドアフィニティー試薬に結合している、工程、ならびに結合しているジストロフィンペプチドを溶出し、内因性ジストロフィンペプチド、操作されたジストロフィンペプチド、または内因性ジストロフィンペプチドおよび操作されたジストロフィンペプチドを含有するジストロフィンペプチド富化サンプルを形成する工程;ならびに
(iii)ジストロフィンペプチド富化サンプルに対して液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を実施する工程、
を含む、生物学的サンプルから単離されたタンパク質サンプルにおけるジストロフィンタンパク質の量を測定するための方法。
E2.生物学的サンプルは、ヒト、マウス、ラット、サル、またはイヌ由来のものである、E1に記載の方法。
E3.生物学的サンプルはヒト由来のものである、E1からE2のいずれか一つに記載の方法。
E4.生物学的サンプルは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を有するヒト患者由来のものである、E3に記載の方法。
E5.DMDを有するヒト患者は、操作されたジストロフィンタンパク質をコードする遺伝子療法を用いて治療されたことがある、E4に記載の方法。
E6.測定されるジストロフィンタンパク質は、操作されたジストロフィンタンパク質である、E1からE5のいずれか一つに記載の方法。
E7.デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を有するヒト患者から採取された生物学的サンプルから単離されたタンパク質サンプルにおける操作されたジストロフィンタンパク質の量を測定するための方法であって、前記ヒト患者は、操作されたジストロフィンタンパク質をコードする遺伝子療法を用いて以前に治療されたことがあり、方法は、
(i)タンパク質サンプルと第1のプロテアーゼとを接触させ、タンパク質消化物を形成する工程であって、前記タンパク質消化物はジストロフィンペプチドを含む、工程;
(ii)タンパク質消化物をジストロフィンペプチドアフィニティー試薬に適用する工程であって、タンパク質消化物におけるジストロフィンペプチドは、ジストロフィンペプチドアフィニティー試薬に結合している、工程、および結合しているジストロフィンペプチドを溶出し、操作されたジストロフィンペプチドを含有するジストロフィンペプチド富化サンプルを形成する工程;ならびに
(iii)ジストロフィンペプチド富化サンプルに対して液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を実施する工程、
を含む方法。
E8.生物学的サンプルは組織サンプルである、E1からE7のいずれか一つに記載の方法。
E9.生物学的サンプルは筋組織サンプルである、E1からE8のいずれか一つに記載の方法。
E10.筋組織サンプルは四頭筋または二頭筋サンプルである、E9に記載の方法。
E11.生物学的サンプルは生検サンプルである、E1からE10のいずれか一つに記載の方法。
E12.生検サンプルは針生検サンプルである、E11に記載の方法。
E13.生物学的サンプルは血液サンプルまたは血液画分であり得る、E1またはE7に記載の方法。
E14.生物学的サンプルは約10μg~約50mgの重量がある、E1からE13のいずれか一つに記載の方法。
E15.生物学的サンプルは約100μg~約3mgの重量がある、E1からE14のいずれか一つに記載の方法。
E16.生物学的サンプルは約200μg~約2mgの重量がある、E1からE15のいずれか一つに記載の方法。
E17.測定されるジストロフィンタンパク質は内因性ジストロフィンタンパク質である、E1からE16のいずれか一つに記載の方法。
E18.内因性ジストロフィンタンパク質は、配列番号242のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E1からE17のいずれか一つに記載の方法。
E19.内因性ジストロフィンタンパク質は、配列番号242のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する、E1からE18のいずれか一つに記載の方法。
E20.操作されたジストロフィンタンパク質を測定する工程を含む、E1からE19のいずれか一つに記載の方法。
E21.操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号243、配列番号244、または配列番号245からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E1からE20のいずれか一つに記載の方法。
E22.操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号243、配列番号244、または配列番号245からなる群から選択されるアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する、E1からE21のいずれか一つに記載の方法。
E23.操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号243のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E1からE22のいずれか一つに記載の方法。
E24.操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号243のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する、E1からE23のいずれか一つに記載の方法。
E25.操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号244のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E1からE22のいずれか一つに記載の方法。
E26.操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号244のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する、E1からE22またはE25のいずれか一つに記載の方法。
E27.操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号245のアミノ酸と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E1からE22のいずれか一つに記載の方法。
E28.操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号245のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する、E1からE22または27のいずれか一つに記載の方法。
E29.タンパク質サンプルは外因性ジストロフィン参照タンパク質をさらに含む、E1からE28のいずれか一つに記載の方法。
E30.外因性ジストロフィン参照タンパク質はタンパク質サンプルに添加される、E1からE29のいずれか一つに記載の方法。
E31.外因性ジストロフィン参照タンパク質は、代謝的に標識された外因性ジストロフィン参照タンパク質である、E29からE30のいずれか一つに記載の方法。
E32.代謝的に標識された外因性ジストロフィン参照タンパク質は13C(6)-ロイシンで標識されている、E29からE31のいずれか一つに記載の方法。
E33.外因性ジストロフィン参照タンパク質は、操作されたジストロフィンタンパク質と少なくとも95%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する、E29からE32のいずれか一つに記載の方法。
E34.外因性ジストロフィン参照タンパク質は、配列番号243、配列番号244、または配列番号245と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E29からE33のいずれか一つに記載の方法。
E35.外因性ジストロフィン参照タンパク質は、配列番号243、配列番号244、または配列番号245からなる群から選択されるアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する、E29からE34のいずれか一つに記載の方法。
E36.外因性ジストロフィン参照タンパク質は、配列番号243のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E29からE35のいずれか一つに記載の方法。
E37.外因性ジストロフィン参照タンパク質は、配列番号243のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する、E29からE36のいずれか一つに記載の方法。
E38.外因性ジストロフィン参照タンパク質は、配列番号244のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E29からE35のいずれか一つに記載の方法。
E39.外因性ジストロフィン参照タンパク質は、配列番号244のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する、E29からE35またはE38のいずれか一つに記載の方法。
E40.外因性ジストロフィン参照タンパク質は、配列番号245のアミノ酸と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E29からE35のいずれか一つに記載の方法。
E41.外因性ジストロフィン参照タンパク質は、配列番号245のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する、E29からE35またはE40のいずれか一つに記載の方法。
E42.ジストロフィンペプチド富化サンプルは内因性ジストロフィンペプチドを含む、E1からE41のいずれか一つに記載の方法。
E43.ジストロフィンペプチド富化サンプルは、操作されたジストロフィンペプチドを含む、E1からE42のいずれか一つに記載の方法。
E44.ジストロフィンペプチド富化サンプルは外因性ジストロフィン参照ペプチドを含む、E1からE43のいずれか一つに記載の方法。
E45.第1のプロテアーゼによる内因性ジストロフィンタンパク質および操作されたジストロフィンタンパク質の両方の消化は、内因性ジストロフィンタンパク質および操作されたジストロフィンタンパク質の両方に存在する共通のジストロフィンペプチドを産出する、E1からE44のいずれか一つに記載の方法。
E46.共通のジストロフィンペプチドは、SLEGSDDAVLLQR(配列番号179)またはLLQVAVEDR(配列番号200)のアミノ酸配列を有する、E45に記載の方法。
E47.共通のジストロフィンペプチドは、SLEGSDDAVLLQR(配列番号179)のアミノ酸配列を有する、E45に記載の方法。
E48.共通のジストロフィンペプチドは、LLQVAVEDR(配列番号200)のアミノ酸配列を有する、E45に記載の方法。
E49.操作されたジストロフィンは、操作されたジストロフィンタンパク質に存在するが内因性ジストロフィンタンパク質には存在しない連続アミノ酸配列を含む、E1から48に記載の方法。
E50.操作されたジストロフィン特異的ペプチドは、配列番号235、配列番号236、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、または配列番号241のアミノ酸配列を有する、E1からE49のいずれか一つに記載の方法。
E51.操作されたジストロフィン特異的ペプチドは、WVLLQDQPDLAPGLTTIGASPTQTVTLVTQPVVTK(配列番号235)のアミノ酸配列を有する、E1からE50のいずれか一つに記載の方法。
E52.操作されたジストロフィン特異的ペプチドは、LEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)のアミノ酸配列を有する、E1からE50のいずれか一つに記載の方法。
E53.操作されたジストロフィン特異的ペプチドは、MGYLPVQTVLEGDNMET(配列番号237)のアミノ酸配列を有する、E1からE50のいずれか一つに記載の方法。
E54.操作されたジストロフィン特異的ペプチドは、QSNLHSYVPSTYLTEITHVSQALLEVEQLLNAPDLCAK(配列番号238)のアミノ酸配列を有する、E1からE50のいずれか一つに記載の方法。
E55.操作されたジストロフィン特異的ペプチドは、LEEQSDQWK(配列番号239)のアミノ酸配列を有する、E1からE50のいずれか一つに記載の方法。
E56.操作されたジストロフィン特異的ペプチドは、MGYLPVQTVLEGDNMETDTM(配列番号240)のアミノ酸配列を有する、E1からE50のいずれか一つに記載の方法。
E57.操作されたジストロフィン特異的ペプチドは、LQELTLER(配列番号241)のアミノ酸配列を有する、E1からE50のいずれか一つに記載の方法。
E58.外因性ジストロフィン参照ペプチドは、アミノ酸配列LEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)と95%同一である、E1からE57に記載の方法。
E59.外因性ジストロフィン参照ペプチドは、LEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)のアミノ酸配列を有する、E1からE58に記載の方法。
E60.外因性参照ペプチドは代謝的に標識される、E1からE59のいずれか一つに記載の方法。
E61.代謝的に標識された外因性ジストロフィン参照ペプチドは13C(6)-ロイシンで標識されている、E60に記載の方法。
E62.内因性ジストロフィンペプチドは、LLQVAVEDR(配列番号200)のアミノ酸配列を有し、操作されたジストロフィンペプチドは、LEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)のアミノ酸配列を有する、E1からE61のいずれか一つに記載の方法。
E63.生物学的サンプルのタンパク質構成要素を単離する工程は、ホモジナイズされた生物学的サンプルと有機溶媒とを接触させ、タンパク質沈降物を形成する工程を含む、E1からE62のいずれか一つに記載の方法。
E64.有機溶媒は、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、エタノール、イソプロパノール、メタノール、1-プロパノール、もしくはテトラヒドロフラン、またはその組み合わせである、E63に記載の方法。
E65.有機溶媒はアセトンまたはアセトニトリルである、E63からE64のいずれか一つに記載の方法。
E66.ホモジナイズされた生物学的サンプルと有機溶媒とを接触させる工程は、約-10~約30℃の温度で実施される、E63からE65のいずれか一つに記載の方法。
E67.ホモジナイズされた生物学的サンプルと有機溶媒とを接触させる工程は、約15℃~約25℃の温度で実施される、E63からE66のいずれか一つに記載の方法。
E68.ホモジナイズされた生物学的サンプルと有機溶媒とを接触させる工程は、20℃または約20℃で実施される、E63からE67のいずれか一つに記載の方法。
E69.ホモジナイズされた生物学的サンプルと有機溶媒とを接触させる工程は、約18℃~約22℃の温度で実施される、E63からE68のいずれか一つに記載の方法。
E70.ホモジナイズされた生物学的サンプルと有機溶媒とを接触させる工程は、約20℃の温度で実施される、E63からE69のいずれか一つに記載の方法。
E71.生物学的サンプルは溶解バッファー中でホモジナイズされる、E1からE70のいずれか一つに記載の方法。
E72.溶解バッファーは、放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)、TER I、TER II、NP40、T-PER、またはN-PER溶解バッファーである、E71に記載の方法。
E73.溶解バッファーは界面活性剤を含む、E71から72のいずれか一つに記載の方法。
E74.界面活性剤は約0.1~約15wt%の濃度にある、E73に記載の方法。
E75.界面活性剤は約2~約8wt%の濃度にある、E73からE74のいずれか一つに記載の方法。
E76.界面活性剤はSDSである、E73からE75のいずれか一つに記載の方法。
E77.溶解バッファーは約1~約10%のSDSを含む、E76に記載の方法。
E78.溶解バッファーは約3~約8wt%のSDSを含む、E76からE77のいずれか一つに記載の方法。
E79.溶解バッファーは約5wt%のSDSを含む、E76からE78のいずれか一つに記載の方法。
E80.溶解バッファーはRIPAバッファーである、E76からE79のいずれか一つに記載の方法。
E81.RIPAバッファーは、約10~約50mM Tris-HCl、約100~約200mM NaCl、約0.5~約1.%NP40、約1~約2%デオキシコール酸ナトリウム、および約0.1%SDSを含有する、E80に記載の方法。
E82.RIPAバッファーは、約25mM Tris-HCl、約150mM NaCl、約1wt%NP40、約0.1~約1wt%デオキシコール酸ナトリウム、および約5wt%SDSを含有する、E80からE81のいずれか一つに記載の方法。
E83.溶解バッファーは少なくとも1種のプロテアーゼ阻害剤を含有する、E71からE82のいずれか一つに記載の方法。
E84.溶解バッファーは複数のプロテアーゼ阻害剤を含有する、E71からE83のいずれか一つに記載の方法。
E85.プロテアーゼ阻害剤は、個々にかつ独立して約0.5~約2wt%の濃度にある、E71からE84のいずれか一つに記載の方法。
E86.プロテアーゼ阻害剤は、アプロチニン、ベスタチン、E-64、ロイペプチン、および/またはペプスタチンAのうちの1種または複数である、E83からE85のいずれか一つに記載の方法。
E87.第1のプロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、またはメタロプロテアーゼである、E1からE86のいずれか一つに記載の方法。
E88.第1のプロテアーゼはセリンプロテアーゼである、E1からE87のいずれか一つに記載の方法。
E89.第1のプロテアーゼはトリプシンである、E1からE88のいずれか一つに記載の方法。
E90.第1のプロテアーゼは、トシルフェニルクロロメチルケトン(TPCK)処理されたトリプシンである、E1からE89に記載の方法。
E91.第1のプロテアーゼは約10ng/μL~約1μg/μLの濃度にある、E1からE90のいずれか一つに記載の方法。
E92.第1のプロテアーゼは約10ng/μL~約100ng/μLの濃度にある、E1からE91のいずれか一つに記載の方法。
E93.第1のプロテアーゼは約50ng/μLの濃度にある、E1からE92のいずれか一つに記載の方法。
E94.第1のプロテアーゼは約50ng/μLの濃度にある、E1からE93のいずれか一つに記載の方法。
E95.第1または第2のプロテアーゼはプロテアーゼバッファー中に提供され、プロテアーゼバッファーは、少なくともカオトロピック剤、有機溶媒、および緩衝塩を含む、E1からE94のいずれか一つに記載の方法。
E96.プロテアーゼバッファーは、尿素、アセトニトリル、およびリン酸緩衝溶液を含む、E95に記載の方法。
E97.プロテアーゼバッファーは、約0.05M~約4Mの濃度の尿素を含む、E95からE96のいずれか一つに記載の方法。
E98.プロテアーゼバッファーは、約1%~約25%の濃度のアセトニトリルを含む、E95からE97のいずれか一つに記載の方法。
E99.プロテアーゼバッファーは、リン酸緩衝溶液中に約0.8M尿素および約10%アセトニトリルを含む、E95からE98のいずれか一つに記載の方法。
E100.ペプチドサンプルは還元剤で処理される、E1からE99のいずれか一つに記載の方法。
E101.還元剤は、ジチオトレイトール(DTT)、2-メルカプトエタノール(2-ME)、およびTris(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)からなる群から選択される、E1からE100のいずれか一つに記載の方法。
E102.還元剤はDTTである、E1からE101のいずれか一つに記載の方法。
E103.還元剤濃度は、ペプチドサンプルにおいて約50mM~約250mMである、E1からE102のいずれか一つに記載の方法。
E104.ペプチドサンプルは約150mMのDTT濃度を有する、E1からE103のいずれか一つに記載の方法。
E105.還元剤濃度は、ペプチドサンプルにおいて約135mM~約165mMである、E1からE105のいずれか一つに記載の方法。
E106.還元剤濃度は、ペプチドサンプルにおいて約150mMである、E1からE105のいずれか一つに記載の方法。
E107.ペプチドサンプルはアルキル化剤で処理される、E1からE106のいずれか一つに記載の方法。
E108.アルキル化剤は、ヨードアセトアミド(IAA)、メタンチオスルホン酸メチル、またはN-エチルマレイミドである、E1からE107のいずれか一つに記載の方法。
E109.アルキル化剤はIAAである、E1からE108のいずれか一つに記載の方法。
E110.アルキル化剤は、ペプチドサンプルにおいて約20mM~約500mMの濃度にある、E1からE109のいずれか一つに記載の方法。
E111.アルキル化剤は、ペプチドサンプルにおいて約200mM~約400mMの濃度にある、E1からE110のいずれか一つに記載の方法。
E112.アルキル化剤は、ペプチドサンプルにおいて約300mMの濃度にある、E1からE111のいずれか一つに記載の方法。
E113.アルキル化剤は、ペプチドサンプルにおいて約270mM~約330mMの濃度にある、E1からE112のいずれか一つに記載の方法。
E114.アルキル化剤は、ペプチドサンプルにおいて約300mMの濃度にある、E1からE113のいずれか一つに記載の方法。
E115.ペプチドサンプルは第2のプロテアーゼで処理される、E1からE114のいずれか一つに記載の方法。
E116.第2のプロテアーゼは第1のプロテアーゼと同じである、E1からE115のいずれか一つに記載の方法。
E117.第2のプロテアーゼは約10~約1000ng/μLの濃度にある、E1からE116のいずれか一つに記載の方法。
E118.第2のプロテアーゼは約10~約100ng/μLの濃度にある、E1からE117のいずれか一つに記載の方法。
E119.第2のプロテアーゼは約50ng/μLの濃度にある、E1からE118のいずれか一つに記載の方法。
E120.第2のプロテアーゼは約45~約55ng/μLの濃度にある、E1からE119のいずれか一つに記載の方法。
E121.第2のプロテアーゼは約50ng/μLの濃度にある、E1からE120のいずれか一つに記載の方法。
E122.第2のプロテアーゼはTPCKトリプシンである、E1からE121のいずれか一つに記載の方法。
E123.ジストロフィンペプチドアフィニティー試薬は、ペプチドサンプルにおける少なくとも1種のジストロフィンペプチドに結合する、E1からE122のいずれか一つに記載の方法。
E124.2種以上の異なるジストロフィンペプチドがペプチドサンプルから捕捉され得るように、1種を上回るジストロフィンペプチドアフィニティー試薬を含む、E1からE123のいずれか一つに記載の方法。
E125.結合しているジストロフィンペプチドは、内因性ジストロフィンタンパク質、操作されたジストロフィンタンパク質、および/または外因性ジストロフィン参照タンパク質由来のものである、E1からE124のいずれか一つに記載の方法。
E126.ジストロフィンペプチドアフィニティー試薬は、カラムマトリックスに共役され、ジストロフィンペプチドアフィニティーカラムを形成する、E1からE125のいずれか一つに記載の方法。
E127.ジストロフィンペプチドアフィニティーカラムは、1、2種、またはそれを上回る種類の別々のジストロフィンペプチドに特異的に結合し得る、E126に記載の方法。
E128.ジストロフィンペプチドアフィニティーカラムは、内因性ジストロフィンタンパク質および操作されたジストロフィンタンパク質の両方に存在する共通のジストロフィンペプチドに結合する、E1からE127のいずれか一つに記載の方法。
E129.ジストロフィンペプチドアフィニティーカラムは、操作されたジストロフィンタンパク質に存在するが内因性ジストロフィンタンパク質には存在しない、操作されたジストロフィン特異的ペプチドに結合する、E1からE128のいずれか一つに記載の方法。
E130.ジストロフィンペプチドアフィニティー試薬は抗ジストロフィンペプチド抗体を含む、E1からE129のいずれか一つに記載の方法。
E131.抗ジストロフィンペプチド抗体は、内因性ジストロフィンペプチドに対して作られる、E1からE130のいずれか一つに記載の方法。
E132.抗ジストロフィンペプチド抗体は、操作されたジストロフィンペプチドに対して作られる、E1からE130のいずれか一つに記載の方法。
E133.抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号235、配列番号236、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、または配列番号241からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、E1からE132のいずれか一つに記載の方法。
E134.抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号235のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、E1からE133のいずれか一つに記載の方法。
E135.抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号236のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、E1からE133のいずれか一つに記載の方法。
E136.抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号237のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、E1からE133のいずれか一つに記載の方法。
E137.抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号238のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、E1からE133のいずれか一つに記載の方法。
E138.抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号239のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、E1からE133のいずれか一つに記載の方法。
E139.抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号240のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、E1からE133のいずれか一つに記載の方法。
E140.抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号241のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、E1からE133のいずれか一つに記載の方法。
E141.抗ジストロフィンペプチド抗体は、共通のジストロフィンペプチドに対して作られる、E1からE133のいずれか一つに記載の方法。
E142.抗ジストロフィンペプチド抗体は、LLQVAVEDR(配列番号200)のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、E1からE130または141のいずれか一つに記載の方法。
E143.抗ジストロフィンペプチド抗体はポリクローナル抗体である、E1からE142のいずれか一つに記載の方法。
E144.抗ジストロフィンペプチド抗体はモノクローナル抗体である、E1からE143のいずれか一つに記載の方法。
E145.LC/MSは逆相ナノ液体クロマトグラフィーを含む、E1からE144のいずれか一つに記載の方法。
E146.質量分析計は、多重反応モニタリング(MRM)のために構成されたトリプル四重極質量分析計である、E1からE145のいずれか一つに記載の方法。
E147.生物学的サンプルのタンパク質構成要素を単離する前に、生物学的サンプルをホモジナイズする工程をさらに含む、E1からE146のいずれか一つに記載の方法。
E148.逆相ナノフロークロマトグラフィーカラムは、3μmの粒子サイズ、100Åの細孔サイズ、および75μm×15cmの寸法を有するC18カラムである、E145からE147のいずれか一つに記載の方法。
E149.質量分析は、ジストロフィンペプチドのエレクトロスプレーイオン化、およびイオン化されたペプチドフラグメントの検出を含む、E1からE148のいずれか一つに記載の方法。
E150.イオン化されたペプチドフラグメントは、多重反応モニタリング(MRM)モードでトリプル四重極質量分析計を使用して検出される、E1からE149のいずれか一つに記載の方法。
E151.ジストロフィンペプチドを分析する工程は、ペプチド校正曲線を使用してジストロフィンペプチドを定量化する工程をさらに含む、E1からE150のいずれか一つに記載の方法。
E152.配列番号235、配列番号236、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、または配列番号241からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られた抗ジストロフィンペプチド抗体。
E153.配列番号235のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、E152に記載の抗ジストロフィンペプチド抗体。
E154.配列番号236のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、E152に記載の抗ジストロフィンペプチド抗体。
E155.配列番号237のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、E152に記載の抗ジストロフィンペプチド抗体。
E156.配列番号238のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、E152に記載の抗ジストロフィンペプチド抗体。
E157.配列番号239のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、E152に記載の抗ジストロフィンペプチド抗体。
E158.配列番号240のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、E152に記載の抗ジストロフィンペプチド抗体。
E159.配列番号241のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、E152に記載の抗ジストロフィンペプチド抗体。
E160.共通のジストロフィンペプチドに対して作られる、E152からE159のいずれか一つに記載の抗ジストロフィンペプチド抗体。
E161.LLQVAVEDR(配列番号200)のアミノ酸配列を含むペプチドに対して作られる、E152からE160のいずれか一つに記載の抗ジストロフィンペプチド抗体。
E162.ポリクローナル抗体である、E152からE161のいずれか一つに記載の抗ジストロフィンペプチド抗体。
E163.モノクローナル抗体である、E152からE161のいずれか一つに記載の抗ジストロフィンペプチド抗体。
E164.E1からE151のいずれか一つに記載の方法における、抗体の使用。
E165.配列番号235、配列番号236、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、および配列番号241からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド。
E166.操作されたジストロフィンタンパク質に対する抗体を作出する方法における、E165に記載のペプチドの使用。
E167.E1からE166のいずれか一つに記載の方法における使用のための、組成物、ペプチド、抗体、試薬、装置を含むキット。
【0011】
本発明の他の実施形態は、本出願を通して論じられる。本発明の1つの態様に関して論じられる任意の実施形態は、本発明の他の態様にも適用され、逆もまた同様である。本明細書に記載される各実施形態は、本発明のすべての態様に適用可能である本発明の実施形態であると理解される。本明細書において論じられる任意の実施形態は、本発明の任意の方法または組成物に関して実行され得、逆もまた同様であることが企図される。さらに、本発明の組成物およびキットを使用して、本発明の方法を達成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1-1】(図1A)免疫アフィニティーLC-MS/MSワークフローの図である。
図1-2】(図1B)ジストロフィンの操作されたジストロフィンペプチド配列の図である。
図2】(図2A)正常ヒト組織からのジストロフィンタンパク質抽出パーセンテージに対するSDSの効果を示す図である。RIPA(0.1%SDS)対TER-I(SDSなし)。(図2B)正常ヒト組織からのジストロフィンタンパク質抽出パーセンテージに対するSDSの効果を示す図である。ジストロフィンタンパク質抽出パーセンテージに対するSDSの割合の効果。(図2C)正常ヒト組織からのジストロフィンタンパク質抽出パーセンテージに対するSDSの効果を示す図である。5%SDSと比べた、残屑からのジストロフィンタンパク質再抽出のパーセンテージ。
図3】ジストロフィンの相対濃度が左のy軸に、ジストロフィンの絶対濃度(fmol/mg)が右のy軸に呈示されている図である。箱ひげ図の下部および上部ヒンジは、第1および第3四分位(25および75パーセンタイル)に相当し;上部ヒゲは、ヒンジから、ヒンジから1.5*IQR(四分位範囲)よりも離れない最大値まで伸び、逆のことが下部ヒゲに当てはまる。ヒゲの末端を超えるデータは外れ値であり、個々にプロットされる。バーは、ブートストラップ法に基づく、各群における平均(菱形)に対する95%信頼区間である。
図4-1】(図4A)年齢を合致させた正常、BMD、およびDMD筋生検からの代表的な共通のジストロフィンペプチド(LLQVAVEDR(配列番号200))抽出イオンクロマトグラムの図である。正常サンプル9、平均正常の102.9%。(図4B)年齢を合致させた正常、BMD、およびDMD筋生検からの代表的な共通のジストロフィンペプチド(LLQVAVEDR(配列番号200))抽出イオンクロマトグラムの図である。BMDサンプル34、平均正常の31.2%。
図4-2】(図4C)年齢を合致させた正常、BMD、およびDMD筋生検からの代表的な共通のジストロフィンペプチド(LLQVAVEDR(配列番号200))抽出イオンクロマトグラムの図である。DMDサンプル50、平均正常の5.1%。(図4D)年齢を合致させた正常、BMD、およびDMD筋生検からの代表的な共通のジストロフィンペプチド(LLQVAVEDR(配列番号200))抽出イオンクロマトグラムの図である。正常サンプル16、平均正常の103.3%。
図4-3】(図4E)年齢を合致させた正常、BMD、およびDMD筋生検からの代表的な共通のジストロフィンペプチド(LLQVAVEDR(配列番号200))抽出イオンクロマトグラムの図である。BMDサンプル40、平均正常の32.6%。(図4F)年齢を合致させた正常、BMD、およびDMD筋生検からの代表的な共通のジストロフィンペプチド(LLQVAVEDR(配列番号200))抽出イオンクロマトグラムの図である。DMDサンプル59、平均正常の7.3%。
図5-1】(図5A)LLOQ、定量下限;QCH、高濃度品質管理サンプル;QCL、低濃度品質管理サンプル;RT、保持時間;SIL、安定同位体標識された(ペプチド);ULOQ、定量上限。(図5B)LLOQ、定量下限;QCH、高濃度品質管理サンプル;QCL、低濃度品質管理サンプル;RT、保持時間;SIL、安定同位体標識された(ペプチド);ULOQ、定量上限。
図5-2】(図5C)LLOQ、定量下限;QCH、高濃度品質管理サンプル;QCL、低濃度品質管理サンプル;RT、保持時間;SIL、安定同位体標識された(ペプチド);ULOQ、定量上限。(図5D)LLOQ、定量下限;QCH、高濃度品質管理サンプル;QCL、低濃度品質管理サンプル;RT、保持時間;SIL、安定同位体標識された(ペプチド);ULOQ、定量上限。
図5-3】(図5E)LLOQ、定量下限;QCH、高濃度品質管理サンプル;QCL、低濃度品質管理サンプル;RT、保持時間;SIL、安定同位体標識された(ペプチド);ULOQ、定量上限。(図5F)LLOQ、定量下限;QCH、高濃度品質管理サンプル;QCL、低濃度品質管理サンプル;RT、保持時間;SIL、安定同位体標識された(ペプチド);ULOQ、定量上限。
図5-4】(図5G)LLOQ、定量下限;QCH、高濃度品質管理サンプル;QCL、低濃度品質管理サンプル;RT、保持時間;SIL、安定同位体標識された(ペプチド);ULOQ、定量上限。(図5H)LLOQ、定量下限;QCH、高濃度品質管理サンプル;QCL、低濃度品質管理サンプル;RT、保持時間;SIL、安定同位体標識された(ペプチド);ULOQ、定量上限。
図5-5】(図5I)LLOQ、定量下限;QCH、高濃度品質管理サンプル;QCL、低濃度品質管理サンプル;RT、保持時間;SIL、安定同位体標識された(ペプチド);ULOQ、定量上限。(図5J)LLOQ、定量下限;QCH、高濃度品質管理サンプル;QCL、低濃度品質管理サンプル;RT、保持時間;SIL、安定同位体標識された(ペプチド);ULOQ、定量上限。
図5-6】(図5K)LLOQ、定量下限;QCH、高濃度品質管理サンプル;QCL、低濃度品質管理サンプル;RT、保持時間;SIL、安定同位体標識された(ペプチド);ULOQ、定量上限。(図5L)LLOQ、定量下限;QCH、高濃度品質管理サンプル;QCL、低濃度品質管理サンプル;RT、保持時間;SIL、安定同位体標識された(ペプチド);ULOQ、定量上限。
図6】(図6A)投薬の6ヶ月後の時点における、増加する用量のAAV9.hCK.Hopti-Dys3978.spAで処理されたジストロフィン欠損(DMDmdx)ラット由来の大腿二頭筋組織サンプルのIA-LC-MS/MS分析は、LLQVAVEDR(配列番号200)によって測定される、操作されたジストロフィンタンパク質発現の用量依存的増加を示したことを示す図である。最大の操作されたジストロフィン発現が、1×1014vg/kg用量群において観察された。SLEG(操作されたジストロフィン)およびLLQV(共通のジストロフィンペプチド)の発現は同程度であり、またも1×1014vg/kg用量群において最大総ジストロフィンタンパク質が観察された。(図6B)投薬の6ヶ月後の時点における、増加する用量のAAV9.hCK.Hopti-Dys3978.spAで処理されたジストロフィン欠損(DMDmdx)ラット由来の大腿二頭筋組織サンプルのIA-LC-MS/MS分析は、SLEGSDDAVLLQR(配列番号179)によって測定される、操作されたジストロフィンタンパク質発現の用量依存的増加を示したことを示す図である。最大の操作されたジストロフィン発現が、1×1014vg/kg用量群において観察された。SLEG(操作されたジストロフィン)およびLLQV(共通のジストロフィンペプチド)の発現は同程度であり、またも1×1014vg/kg用量群において最大総ジストロフィンタンパク質が観察された。
図7】正常ヒト組織において査定されるアッセイ性能に対するOCTの影響を示す図である。
図8】(図8A)男性および女性の正常集団におけるジストロフィンの発現を示す図である。(図8B)年齢を合致させた正常、BMD、およびDMD筋生検における総タンパク質含有量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
ジストロフィン等の低存在量タンパク質の正確な定量は困難であるが、細胞ジストロフィンを回復させることを目指した遺伝子療法の開発および検証に必須である。前臨床調査、ヒト臨床試験における、およびジストロフィンの定量のための患者における治療法の発現レベルを定量する治療用ツールとしての適用を有する、高い正確性、精度、および感度の免疫アフィニティー液体クロマトグラフィータンデム質量分析(IA LC-MS/MS)法が本明細書に記載される。この方法は、伝統的方法と比していくつかの利点を有する。伝統的方法は、高レベルの変動に供され得、限定された感度であり得る。
【0014】
本発明の方法は、生物学的サンプルにおけるジストロフィンの発現を分析することにおいて有用であり得る。本発明の方法は、生物学的サンプルにおけるジストロフィンの発現を定量することにおいて有用であり得る。本発明の方法は、生物学的サンプルにおける操作されたジストロフィンの発現を分析することにおいて有用であり得る。本発明の方法は、生物学的サンプルにおける操作されたジストロフィンの発現を定量することにおいて有用であり得る。本発明の方法は、生物学的または組織サンプルにおけるジストロフィン発現の分析のためのペプチドサンプルを調製するのに有用であり得る。
【0015】
ある特定の態様において、DMD、BMD、および健常(正常)骨格筋組織における内因性ジストロフィンまたは操作されたジストロフィンの発現レベルは、サンプルにおけるジストロフィンタンパク質のペプチドフラグメントを測定する、定量化する、または査定することによって調べられ得る。ある特定の態様において、抗ペプチド抗体を採用して、分析のためのジストロフィンペプチドを単離する。抗ペプチド抗体の使用は、捕捉効率の欠如および抽出中のタンパク質変性を含めた、抗タンパク質抗体に伴う課題の多くを取り除く(Neubertら、Bioanalysis.8、1551~1555(2016))。本明細書に記載される方法の実施形態は、校正物および品質管理(QC)標準物質を含めた多数のサンプルが一度にランされるのを可能にし、複数のアッセイの必要性を取り除く。免疫蛍光等の種々の分析アッセイのためのサンプルは、同じ組織ブロックから採取され得、変動の可能性をさらに低下させる。内部標準物質の使用は、フェムトモルレベルでのジストロフィンの定量を可能にし、健常ヒト筋肉と比べて0.4%もの低さのDMD筋肉サンプルにおけるジストロフィンを検出することができる。
【0016】
一部の態様において、本発明は、細胞もしくは組織においてまたは細胞もしくは組織によって発現したジストロフィンタンパク質の測定、定量、および/または査定のための方法を提供する。一部の態様において、生物学的サンプルは、ヒト、マウス、ラット、サル、またはイヌ由来のものである。一部の態様において、生物学的サンプルはヒト由来のものである。ヒトは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を有するヒト患者であり得る。DMDを有するヒト患者は、操作されたジストロフィンタンパク質をコードする遺伝子療法または他のDMD療法を受けたことがあり得る。ジストロフィンタンパク質は、内因性ジストロフィンタンパク質または操作されたジストロフィンタンパク質であり得る。特に、操作されたジストロフィンタンパク質は、DMD、BMD、またはジストロフィン欠損症に対する遺伝子療法治療を提供するように操作され得る。
【0017】
本発明は、(i)タンパク質サンプルと第1のプロテアーゼとを接触させ、ジストロフィンペプチドを含むタンパク質消化物を形成する工程;(ii)タンパク質消化物をジストロフィンペプチドアフィニティー試薬に適用する工程であって、タンパク質消化物におけるジストロフィンペプチドは、ジストロフィンペプチドアフィニティー試薬に結合している、工程、ならびに結合しているジストロフィンペプチドを溶出し、内因性ジストロフィンペプチド、操作されたジストロフィンペプチド、または内因性ジストロフィンペプチドおよび操作されたジストロフィンペプチドを含有するジストロフィンペプチド富化サンプルを形成する工程;ならびに(iii)ジストロフィンペプチド富化サンプルに対して液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を実施する工程を含む、生物学的サンプルから単離されたタンパク質サンプルにおけるジストロフィンタンパク質の量を測定するための方法を提供する。ジストロフィンペプチドは、操作されたジストロフィンペプチド(導入遺伝子によって発現した操作されたジストロフィンタンパク質のタンパク質分解的崩壊によって作出される)、内因性ジストロフィンペプチド(内因性ジストロフィンのタンパク質分解的崩壊によって作出される)、および/または共通のジストロフィンペプチド(内因性ジストロフィンタンパク質および操作されたジストロフィンタンパク質の両方の消化物に共通のまたは存在するペプチド)を含み得る。
【0018】
ある特定の実施形態において、ジストロフィンペプチドは、配列番号242、配列番号243、配列番号244、または配列番号245のうちの1つまたは複数の、その間にあるすべての値および域を含めて、少なくとも、多くとも、または約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50個の連続アミノ酸を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。ある特定の態様において、これらのジストロフィンペプチドは、ペプチドの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50位における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個、またはそれを上回る数のアミノ酸置換を有し得る。一部の実施形態において、ジストロフィンペプチドは、以下のアミノ酸:アラニン(ala、A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、スレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)、またはバリン(val、V)のうちのいずれかによる、配列番号1~241のうちのいずれかの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50位のうちの1つまたは複数における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個、またはそれを上回る数のアミノ酸置換を有し得る。
【0019】
ジストロフィンタンパク質発現の測定、定量、または査定は、内因性ジストロフィンタンパク質に特異的なまたは操作されたジストロフィンタンパク質に特異的な、内因性および操作されたジストロフィンタンパク質に共通のジストロフィンタンパク質(ジストロフィンペプチド)(すなわち、内因性ジストロフィンタンパク質および操作されたジストロフィンタンパク質の両方に存在する共通のジストロフィンペプチド)の2種以上のタンパク質分解フラグメントの量を測定する、定量する、または査定することによるものである。本発明は、内因性ジストロフィンタンパク質の測定、定量、または査定の方法を提供する。本発明は、操作されたジストロフィンタンパク質の測定、定量、または査定の方法を提供する。
【0020】
一部の態様において、本発明は、測定の方法を提供する。一部の態様において、測定は定量である。特に、本発明は、操作されたジストロフィンタンパク質をコードする遺伝子療法を用いて治療されたDMD患者由来の生物学的サンプルにおける操作されたジストロフィンタンパク質の定量の方法を提供する。
【0021】
本発明は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を有するヒト患者から採取された生物学的サンプルから単離されたタンパク質サンプルにおける操作されたジストロフィンタンパク質の量を測定する、定量する、または査定するための方法であって、前記ヒト患者は、操作されたジストロフィンタンパク質をコードする遺伝子療法を用いて以前に治療されたことがあり、方法は、(i)タンパク質サンプルと第1のプロテアーゼとを接触させ、タンパク質消化物を形成する工程であって、前記タンパク質消化物はジストロフィンペプチドを含む、工程;(ii)タンパク質消化物をジストロフィンペプチドアフィニティー試薬に適用する工程であって、タンパク質消化物におけるジストロフィンペプチドは、ジストロフィンペプチドアフィニティー試薬に結合している、工程、および結合しているジストロフィンペプチドを溶出し、操作されたジストロフィンペプチドを含有するジストロフィンペプチド富化サンプルを形成する工程;ならびに(iii)ジストロフィンペプチド富化サンプルに対して液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を実施する工程を含む方法を提供する。
【0022】
内因性ジストロフィンタンパク質は、配列番号242のアミノ酸配列またはジストロフィン遺伝子もしくはタンパク質の任意の天然バリアントと、その間にあるすべての(al)値および域を含めて、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を有し得る。ある特定の態様において、内因性ジストロフィンタンパク質は、配列番号242のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する。ある特定の態様において、内因性ジストロフィンペプチドは、配列番号242のアミノ酸配列を有する内因性ジストロフィンに存在する、配列番号1~配列番号234のアミノ酸配列を有するペプチドを含み得る。同様のペプチドプロファイルが、配列番号242のバリアントである他の内因性ジストロフィンタンパク質について決定され得る。
【0023】
一部の態様において、本発明は、生物学的サンプルから単離されたタンパク質サンプルにおける操作されたジストロフィンタンパク質の量を測定するための方法であって、生物学的サンプルは、配列番号242を含む操作されたジストロフィンタンパク質をコードする遺伝子療法を用いて治療されたことがあるDMDを有するヒト患者由来のものであり、前記方法は、
(i)タンパク質サンプルと第1のプロテアーゼとを接触させ、ジストロフィンペプチドを含むタンパク質消化物を形成する工程;
(ii)タンパク質消化物をジストロフィンペプチドアフィニティー試薬に適用する工程であって、タンパク質消化物におけるジストロフィンペプチドは、ジストロフィンペプチドアフィニティー試薬に結合している、工程、ならびに結合しているジストロフィンペプチドを溶出し、内因性ジストロフィンペプチド、操作されたジストロフィンペプチド、または内因性ジストロフィンペプチドおよび操作されたジストロフィンペプチドを含有するジストロフィンペプチド富化サンプルを形成する工程;ならびに
(iii)ジストロフィンペプチド富化サンプルに対して液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を実施する工程、
を含み;ジストロフィンペプチドアフィニティー試薬は、配列番号236を含む操作されたジストロフィンペプチドに対して作られた抗体を含む、方法を提供する。
【0024】
一部の態様において、操作されたジストロフィンタンパク質は、組み換えの治療用ジストロフィンタンパク質のアミノ酸配列を有する。操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号243、配列番号244、および配列番号245からなる群から選択される操作されたジストロフィンタンパク質と、その間にあるすべての値および域を含めて、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を有し得る。ある特定の態様において、操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号243、配列番号244、または配列番号245のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する。
【0025】
操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号243のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有し得る。ある特定の態様において、操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号243のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有し得る。ある特定の態様において、配列番号243の操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号235、配列番号236、および配列番号237のアミノ酸配列を有するペプチドを含むまたはそれにタンパク質分解され得る。配列番号235、配列番号236、および配列番号237のアミノ酸配列を有するペプチドを使用して、配列番号243の操作されたジストロフィンタンパク質の検出、測定、または定量のための抗体を作出し得る。配列番号179または配列番号200のアミノ酸配列を有するペプチドを使用して、配列番号243をコードするベクターを用いて治療された患者由来の生物学的サンプルにおける共通のジストロフィンペプチドを検出する抗体を作出し得る。
【0026】
操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号244のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有し得る。ある特定の態様において、操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号244のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する。ある特定の態様において、配列番号244の操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号238、配列番号239、および配列番号240のアミノ酸配列を有するペプチドを含むまたはそれにタンパク質分解され得る。配列番号238、配列番号239、および配列番号240のアミノ酸配列を有するペプチドを使用して、配列番号244の操作されたジストロフィンタンパク質の検出、測定、または定量のための抗体を作出し得る。配列番号200のアミノ酸配列を有するペプチドを使用して、配列番号244をコードするベクターを用いて治療された患者由来の生物学的サンプルにおける共通のジストロフィンペプチドを検出する抗体を作出し得る。
【0027】
操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号245のアミノ酸と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有し得る。ある特定の態様において、操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号245のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する。ある特定の態様において、配列番号245の操作されたジストロフィンタンパク質は、配列番号240および配列番号241のアミノ酸配列を有するペプチドを含むまたはそれにタンパク質分解され得る。配列番号240および/または配列番号241のアミノ酸配列を有するペプチドを使用して、配列番号245の操作されたジストロフィンタンパク質の検出、測定、または定量のための抗体を作出し得る。配列番号200のアミノ酸配列を有するペプチドを使用して、配列番号245をコードするベクターを用いて治療された患者由来の生物学的サンプルにおける共通のジストロフィンペプチドを検出する抗体を作出し得る。
【0028】
ペプチド選択
ペプチド配列LLQVAVEDR(配列番号200)は、内因性ジストロフィン、および操作されたジストロフィンの一部の種(例えば、配列番号243)に存在する。それは、ヒト、カニクイザル、クマネズミ(rattus)、およびハツカネズミ(mus)において発現されるが、イヌ属の種においては発現されない。消化されると、このペプチドは、内因性ジストロフィンおよび操作されたジストロフィンの両方によって等モルの様式で産生される、すなわち、1モルの内因性ジストロフィンまたは操作されたジストロフィンは、1モルのペプチドLLQVAVEDR(配列番号200)を産生する。それゆえ、それは、内因性ジストロフィンおよび操作されたジストロフィンの組み合わせモル測定として臨床および前臨床研究における使用にとって実用的であり、ウェスタンブロットに基づくパーセント通常計算(percent normal calculation)に伴う課題を克服する。アミノ酸配列LEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)を有する操作されたジストロフィンペプチドは、配列番号243の操作されたジストロフィンタンパク質のみに存在し、ヒトまたは任意の前臨床種のプロテオームには生じない。同様に、アミノ酸配列の配列番号238、配列番号239、および配列番号240を有する操作されたジストロフィンペプチドは、配列番号244の操作されたジストロフィンタンパク質のみに存在し、ヒトまたは任意の前臨床種のプロテオームには生じない。同様に、アミノ酸配列の配列番号240および配列番号241を有する操作されたジストロフィンペプチドは、配列番号245の操作されたジストロフィンタンパク質のみに存在し、ヒトまたは任意の前臨床種のプロテオームには生じない。一部の態様において、操作されたジストロフィンペプチドは、中心的ロッドおよびヒンジの大部分の欠失によって創出される、ジストロフィンヒンジ領域とロッドドメインとの間の接合部にまたがる。一部の態様において、操作されたジストロフィンペプチドは、少なくとも2.0の抗原性スコアを有する。一部の態様において、操作されたジストロフィンペプチドは、導入遺伝子タンパク質発現の臨床および前臨床査定の両方において使用され得る。SLEGSDDAVLLQR(配列番号179)は、ヒト内因性ジストロフィンおよび操作されたジストロフィンに存在し、操作されたジストロフィンの組み合わせ測定としての前臨床研究における、または必要に応じて、総ジストロフィン(内因性ジストロフィン+操作されたジストロフィン)の測定としての臨床アッセイにおける使用に適切である。それゆえ、本明細書において下で提示されるAAV9.hCK.Hopti-Dys3978.spAのラット調査において、配列番号179は、操作されたジストロフィンペプチドとして使用され得る。
【0029】
一部の態様において、本発明は、内因性の、操作された、または内因性のおよび操作されたジストロフィンペプチドを測定する、定量する、または査定する方法を提供する。一部の態様において、本発明は、少なくとも2種のペプチドを測定する、定量する、または査定する方法を提供する。内因性ジストロフィンおよび操作されたジストロフィンの両方に特異的であるペプチドLLQVAVEDR(配列番号200)、ならびに操作されたジストロフィンのみに特異的であるペプチドLEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)。一部の態様において、本発明は、内因性ジストロフィンおよび操作されたジストロフィンの両方に特異的であるペプチドSLEGSDDAVLLQR(配列番号179)、ならびに操作されたジストロフィンのみに特異的であるペプチドLEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)という少なくとも2種のペプチドを測定する、定量する、または査定する方法を提供する。筋溶解物における定量化の域は、3種すべてのペプチドで20.0fmol/mL~3333fmol/mLである。
【0030】
一部の態様において、第1のプロテアーゼによる内因性ジストロフィンタンパク質および操作されたジストロフィンタンパク質の両方の消化は、内因性ジストロフィンタンパク質および操作されたジストロフィンタンパク質の両方に存在する共通のジストロフィンペプチドを産出する。共通のジストロフィンペプチドは、LLQVAVEDR(配列番号200)のアミノ酸配列を含み得るまたはそれからなり得る。ある特定の態様において、共通のジストロフィンペプチドは、SLEGSDDAVLLQR(配列番号179)のアミノ酸配列を含み得るまたはそれからなり得る。
【0031】
操作されたジストロフィンペプチドは、操作されたジストロフィンタンパク質に存在するが内因性ジストロフィンタンパク質には連続して存在しない連続アミノ酸配列を含み得る。操作されたジストロフィンペプチドは、配列番号235、配列番号236、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、および配列番号241からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得るまたはそれからなり得る。
【0032】
一部の態様において、操作されたジストロフィンペプチドは、WVLLQDQPDLAPGLTTIGASPTQTVTLVTQPVVTK(配列番号235)のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。一部の態様において、操作されたジストロフィンペプチドは、LEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。一部の態様において、操作されたジストロフィンペプチドは、MGYLPVQTVLEGDNMET(配列番号237)のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。一部の態様において、操作されたジストロフィンペプチドは、QSNLHSYVPSTYLTEITHVSQALLEVEQLLNAPDLCAK(配列番号238)のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。一部の態様において、操作されたジストロフィンペプチドは、LEEQSDQWK(配列番号239)のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。一部の態様において、操作されたジストロフィンペプチドは、MGYLPVQTVLEGDNMETDTM(配列番号240)のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。一部の態様において、操作されたジストロフィンペプチドは、LQELTLER(配列番号241)のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0033】
内部標準物質SILAC操作されたジストロフィン
ある特定の態様において、外因性ジストロフィン参照タンパク質が、サンプル加工の間に導入され得る。外因性ジストロフィン参照タンパク質は、例えば細胞培養下でのアミノ酸を使用した安定同位体標識化(stable isotope labeling using amino acids in cell culture(SILAC))を使用して、同位体標識され得る。SILAC外因性ジストロフィン参照タンパク質は、細胞培養物に添加された安定同位体13C(6)-ロイシンで代謝的に標識されている組み換えの標識された操作されたジストロフィンである。SILAC外因性ジストロフィン参照タンパク質は、ロイシン残基上の13C安定同位体の点においてのみ、操作されたジストロフィンと異なるが、その他の点では、操作されたジストロフィンと同じ化学的特性を有し、2者はサンプル調製手順の間に全く同じように挙動する。標識されたロイシンを含有するSILAC外因性ジストロフィン参照タンパク質のタンパク質分解的消化により生成されたトリプシンペプチドは、軽ペプチド対応物由来の6Da(標識されたロイシンあたり)の質量シフトを有する。SILAC外因性ジストロフィン参照タンパク質は、分析バッチにおける未知のもの、標準物質、および品質管理を含めたすべてのサンプル溶解物に等量でスパイクされる。そのような内部標準物質は、実験ワークフローに根差したサンプル変動に対してサンプルを正規化する。
【0034】
タンパク質サンプルは、外因性ジストロフィン参照タンパク質をさらに含み得る。ある特定の態様において、外因性ジストロフィン参照タンパク質は、タンパク質単離の前のサンプル調製の間に添加される。特定の実施形態において、外因性ジストロフィン参照タンパク質は、サンプルにおけるタンパク質の沈降の前にサンプルホモジネートに添加される。本発明の一部の態様において、外因性ジストロフィン参照タンパク質は、生物学的サンプルのホモジナイゼーションおよび溶解の後でかつ生物学的サンプルのタンパク質構成要素を単離する前に、タンパク質サンプルに添加される。
【0035】
ある特定の態様において、外因性ジストロフィン参照タンパク質は代謝的に標識される。代謝的に標識された外因性ジストロフィン参照タンパク質は、13C(6)-ロイシンで標識され得る。外因性ジストロフィン参照タンパク質は、操作されたまたは内因性ジストロフィンタンパク質と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を共有し得る。外因性ジストロフィン参照タンパク質は、操作されたジストロフィンタンパク質と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を共有し得る。外因性ジストロフィン参照タンパク質のアミノ酸配列は、操作されたジストロフィンタンパク質のアミノ酸配列と同一であり得る。外因性ジストロフィン参照タンパク質は、配列番号242、配列番号243、配列番号244、または配列番号245のうちの1つまたは複数と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有し得る。外因性ジストロフィン参照タンパク質は、配列番号243、配列番号244、または配列番号245のうちの1つまたは複数と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有し得る。外因性ジストロフィン参照タンパク質は、配列番号242、配列番号243、配列番号244、または配列番号245のうちの1つまたは複数と同一であるアミノ酸配列を有し得る。外因性ジストロフィン参照タンパク質は、配列番号243、配列番号244、または配列番号245のうちの1つまたは複数と同一であるアミノ酸配列を有し得る。ある特定の態様において、外因性ジストロフィン参照タンパク質は、配列番号243のアミノ酸配列を有する。
【0036】
一部の態様において、外因性参照ペプチドは代謝的に標識される。外因性ジストロフィン参照ペプチドは、13C(6)-ロイシンで標識され得る。
【0037】
一部の態様において、外因性ジストロフィン参照タンパク質はタンパク質分解されて、外因性ジストロフィン参照ペプチドを生成し得るまたは形成し得る。ある特定の態様において、外因性ジストロフィン参照ペプチドは、アミノ酸配列LEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)と95%同一である。一部の態様において、外因性ジストロフィン参照ペプチドは、LEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)のアミノ酸配列を有する。一部の態様において、外因性ジストロフィン参照ペプチドは、LLQVAVEDR(配列番号200)の配列を有する。一部の態様において、外因性ジストロフィン参照ペプチドは、SLEGSDDAVLLQR(配列番号179)の配列を有する。
【0038】
一部の態様において、外因性ジストロフィン参照ペプチドは、外因性ジストロフィンタンパク質および操作されたジストロフィンタンパク質に存在する連続アミノ酸配列を含み得る。一部の態様において、外因性ジストロフィン参照ペプチドは、外因性ジストロフィン参照タンパク質に存在するが内因性ジストロフィンタンパク質には連続して存在しない連続アミノ酸配列を含み得る。外因性ジストロフィン参照ペプチドは、配列番号235、配列番号236、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、および配列番号241からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得る。
【0039】
一部の態様において、外因性ジストロフィン参照ペプチドは、WVLLQDQPDLAPGLTTIGASPTQTVTLVTQPVVTK(配列番号235)のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。一部の態様において、外因性ジストロフィン参照ペプチドは、LEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。一部の態様において、外因性ジストロフィン参照ペプチドは、MGYLPVQTVLEGDNMET(配列番号237)のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。一部の態様において、外因性ジストロフィン参照ペプチドは、QSNLHSYVPSTYLTEITHVSQALLEVEQLLNAPDLCAK(配列番号238)のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。一部の態様において、外因性ジストロフィン参照ペプチドは、LEEQSDQWK(配列番号239)のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。一部の態様において、外因性ジストロフィン参照ペプチドは、MGYLPVQTVLEGDNMETDTM(配列番号240)のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。一部の態様において、外因性ジストロフィン参照ペプチドは、LQELTLER(配列番号241)のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0040】
本明細書に記載される方法は、(i)対象由来の生物学的サンプルのタンパク質構成要素を単離し、タンパク質サンプルを形成する工程;(ii)タンパク質サンプルと第1のプロテアーゼとを接触させ、タンパク質消化物を形成する工程;(iii)タンパク質消化物をジストロフィンペプチドアフィニティー試薬に適用し、アフィニティー選択されたまたは試薬に結合しているジストロフィンペプチドを溶出し、ジストロフィンペプチド富化サンプルを形成する工程;および(iv)ジストロフィンペプチド富化サンプルに対して液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を実施する工程を含み得る。方法は、サンプルを取得しかつ加工してタンパク質サンプルを形成する工程も含み得る。ある特定の態様において、生物学的サンプルはホモジナイズされ得る。ある特定の態様において、生物学的サンプルは、溶解バッファー中でホモジナイズされ得る。
【0041】
したがって、一部の態様において、本発明は、(i)タンパク質サンプルと第1のプロテアーゼとを接触させ、タンパク質消化物を形成する工程;(ii)タンパク質消化物をジストロフィンペプチドアフィニティー試薬に適用し、アフィニティー試薬に結合しているジストロフィンペプチドを溶出し、内因性ジストロフィンペプチド、操作されたジストロフィンペプチド、またはその両方を含有するジストロフィンペプチド富化サンプルを形成する工程;および(iii)ジストロフィンペプチド富化サンプルに対して液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を実施する工程を含む、生物学的サンプルから単離されたタンパク質サンプルにおけるジストロフィンの量を測定するための方法を提供する。
【0042】
免疫アフィニティー(IA)連結LC-MS/MS
免疫アフィニティー(IA)連結LC-MS/MSは、特異的タンパク質バイオマーカーに対する感度、特異性、正確性、および精度を増強するために容易に適応され得る定量ツールである。ヒト血漿タンパク質の定量について初めに報告され、いくつかの組織タンパク質に対してペプチドIA LC-MS/MS手法が開発されている。本明細書に記載される実施形態は、骨格筋生検における内因性ジストロフィンタンパク質および操作されたジストロフィンタンパク質(例えば、ミニ-ジストロフィン(配列番号243))を正確に定量し得、改変または新しい試薬を必要とせずに、前臨床種および臨床サンプルにおけるトランスレーショナル調査において利用され得るIA-LC-MS/MS法を対象とする。
【0043】
IA LC-MS/MSは、十分な感度で、ヒトおよび前臨床種の両方において、内因性ジストロフィンタンパク質および/または操作されたジストロフィンタンパク質を正確に定量した。前臨床的および臨床的遺伝子療法調査の両方におけるこのアッセイの適用は、有効性結果を検証しかつ規制当局承認を加速させるのに役立ち得る。
【0044】
組織サンプルにおいてジストロフィンを査定する
対象が治療され、適切な対照である対象または組織が特定されると、治療された対象または対照由来の組織サンプルが取得され得、様々な分析がこれらのサンプルに対して実施され得る。ある特定の場合には、指定された筋肉由来の組織片が取り出される必要がある。わずかな組織サンプルを取り出すための最も一般的な方法は、針生検と呼ばれる。この手順に関して、医療専門家は、皮膚を通じて細い針を挿入して筋組織を取り出すであろう。状況に応じて、医療専門家は、コア針生検等のある特定のタイプの生検を使用するであろう。典型的に、対象は、針生検のために局所麻酔を受け、いかなる痛みまたは不快感も感じないはずである。
【0045】
深層筋に当てはまり得るように、筋肉サンプルが到達するのに難しい場合、直視下生検が実施され得る。この場合、医療専門家は、皮膚に小さな切り込みを入れ、切り込みを通して筋組織を取り出すであろう。直視下生検は、一般的な麻酔下にある対象を用いて実施され得る。
【0046】
ある特定の態様において、生物学的サンプルは、組織サンプルまたは生物学的流体サンプルである。ある特定の態様において、生物学的サンプルは筋組織サンプルである。筋組織サンプルは、四頭筋または二頭筋サンプルであり得る。生物学的サンプルは、生検サンプル、特に針生検サンプルであり得る。他の態様において、生物学的流体は、血液または血液画分であり得る。組織サンプルは、新鮮な、凍結された、固定された、または固定されていない組織であり得る。当技術分野において記載されかつ公知であるように、組織サンプルを固定するまたは包埋するために、任意の所望の好都合な手順が使用され得る。ゆえに、任意の公知の固定剤または包埋材料が使用され得る。タンパク質サンプルの供給源として使用される組織の量は、その間にあるすべての値および域を含めて、約、少なくとも、または多くとも1、10、100、500μg~1、2、3、4、5、10、20、50mgの重量があり得る。ある特定の態様において、生物学的サンプルは約100μg~約3mgである。さらなる態様において、生物学的サンプルは約200μg~約2mgである。さらなる態様において、生物学的サンプルは約500μg~約2mgである。生物学的サンプルは、前臨床モデル種サンプルまたはヒト臨床サンプルであり得る。ある特定の態様において、生物学的サンプルは、ヒト、マウス、ラット、サル、またはイヌ由来のものである。特定の実施形態において、生物学的サンプルはヒト由来のものである。サンプルのヒト供給源は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を有すると診断されたまたは疑われる患者であり得る。ある特定の態様において、DMDを有するヒト患者または対象は、操作されたジストロフィンタンパク質をコードする遺伝子療法を用いて治療されたことがある。
【0047】
サンプル加工。組織が取得されると、それは分析のために加工され得る。加工は、サンプルの物理的および/または化学的操縦を含む1つまたは複数の工程を伴い得る。一部の実施形態において、サンプルは、化学的作用物質または酵素の作用を促進する条件下で稼働する1種または複数の化学的作用物質または酵素とインキュベートされるまたはそれに曝露される。そのような条件は、適当な温度、濃度、pH、イオン濃度、または金属濃度を含むが、それらに限定されるわけではなく;そのような条件は当業者に周知である。別様に記されない限り、サンプルは、化学的作用物質または酵素が作用するのを可能にする条件下で加工される。いくつかの例が下で提供される。下で記載される1つまたは複数の例は、一実施形態において除外され得ることが具体的に企図される。
【0048】
組織または細胞からのタンパク質の単離は、それぞれの出発材料のホモジナイゼーションを要する。溶液中での組織のホモジナイゼーションは、細胞溶解と同時に実施されることが多い。組織ホモジナイゼーションは、タンパク質構成要素等の関心対象の細胞内含有物を放出するための細胞の溶解を伴う。4種の典型的な組織ホモジナイゼーション技法:化学的ホモジナイゼーション、凍結-融解、機械的ホモジナイゼーション、および超音波ホモジナイゼーション、がある。
【0049】
機械的ホモジナイゼーション。ローターステーターおよび高圧ホモジナイザーのような設備を包含して、機械的ホモジナイゼーションは、熱の代わりに圧力および/または力を使用することによって働いて、細胞を機械的に分断する。この技法は容易に拡大縮小される能力を有し、それは、均一な/一貫した結果を提供する素早い過程である。
【0050】
化学的ホモジナイゼーション。ほとんどの分断法は、特異的生体分子を単離する場合に、ある形態の溶解バッファーまたは化学物質を使用して安定性を提供する。しかし、一部の化学物質は、組織を有効にホモジナイズするために単独で使用され得る。例えば、表面活性剤および界面活性剤は、疎水性/親水性の界面を分断することによって生物学的膜を標的にする。化学的ホモジナイゼーションは、材料のコストが産業サイズの産物に関して莫大になり得ることから、少ないサンプルに対して好ましい。
【0051】
凍結-融解。この技法は、細菌および哺乳類細胞を分断するために頻繁に採用される。組織懸濁液はまず凍結され、次いで室温で融解される。凍結過程の間に形成された氷晶は、サンプルが融解するにつれて縮小し、それは細胞の膜を破裂させる。それは組み換え細胞質タンパク質を有効に放出するものの、凍結-融解過程は、複数回のサイクルを要し、相当量の時間を要する。
【0052】
超音波ホモジナイゼーション。ソニケーターとしても知られる超音波ホモジナイザーは、キャビテーションおよび超音波の組み合わせにより組織を破裂させる。この技法は、懸濁された細胞/細胞内構造に、ならびにDNAを剪断するのに理想的に適合される。しかしながら、それは相当量の熱を生み出すため、超音波ホモジナイゼーションは、温度増加によって影響を受けないであろう組織および分子に対してのみ適当である。
【0053】
ある特定の態様において、サンプルは、溶解バッファー中でホモジナイズされる。溶解バッファーは、1種または複数のプロテアーゼ阻害剤をさらに含有し得る。プロテアーゼ阻害剤は、アプロチニン、ベスタチン、E-64、ロイペプチン、および/またはペプスタチンAのうちの1種または複数を含み得るが、それらに限定されるわけではない。2種以上のプロテアーゼ阻害剤は、カクテルまたはプロテアーゼ混合物として提供され得る。ある特定の態様において、プロテアーゼ阻害剤は、DMSOまたは他の溶媒に溶かされ得、次いでサンプル調製溶液に導入され得る。
【0054】
最適なジストロフィン抽出は、RIPA溶解バッファー中5%SDSを用いて達成された。SDSはウェスタンブロット法において一般的に使用されるが、タンパク質-抗体結合またはLC-MSアッセイにおける他の下流の工程への干渉を阻止するために、その後除去されなければならない。タンパク質沈降、アセトニトリルを用いたペレットの洗浄、およびLC-MS/MSとオンラインでつながれた抗体カラムにおけるペプチド富化は、SDSならびに最適切断温度化合物(OCT)の有効な除去を可能にし、サンプルを濃縮する働きもした(図1A)(Neubertら、Bioanalysis.8、1551~1555(2016))。筋組織サンプルにおけるOCTの使用は、アッセイ性能に影響を有しなかった。それゆえ、LC-MSジストロフィン定量、およびジストロフィン局在に関する免疫蛍光による組織染色のための切片は、同じ組織ブロックから採取され得る。これら2種の方法を用いて、同じ組織ブロックからの近接切片を分析することができることは、データ解釈の信頼性を向上させ得る。
【0055】
ウェスタンブロット法とは対照的に、信頼できる定量のための校正物および品質管理(QC)サンプルを含む十分な収容能力を有する、このアッセイにおける溶解物加工のための96ウェルプレートの使用は、複数のアッセイをランすることを必要とせずに、より多くの数の未知のサンプル(最高60個)が同時に調製されるのを可能にした。これは、下で論じられるように、検証調査が進むことも可能にした。
【0056】
1つの態様において、組織サンプルまたは骨格筋組織は、溶解バッファー中でホモジナイズされる。ある特定の態様において、組織は、ステンレス鋼ビーズを使用してホモジナイズされる。ある特定の態様において、溶解バッファーは、放射性免疫沈降アッセイバッファー(RIPA)、組織抽出試薬I(TER I)、組織抽出試薬II(TER II)、NP40溶解バッファー、組織タンパク質抽出試薬(T-PER)、核タンパク質抽出試薬(N-PER)、または他の適当な溶解バッファーであり得る。溶解バッファーは界面活性剤を含み得る。ある特定の態様において、溶解バッファーにおける界面活性剤濃度は、その間にあるすべての値および域を含めて、0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15wt%である、少なくとも0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15wt%、多くとも0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15wt%、約0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15wt%である、または約0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15wt%の間である。ある特定の態様において、界面活性剤は、その間にあるすべての値および域を含めて、2、3、4、5、6、7、もしくは8wt%の濃度、約、少なくとも、または多くとも2、3、4、5、6、7、もしくは8wt%の濃度にある。界面活性剤は、SDSもしくはNP40、または他の適当な界面活性剤であり得る。ある特定の態様において、溶解バッファーは、その間にあるすべての値および域を含めて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10%のSDSを含む。さらなる態様において、溶解バッファーは3~8wt%のSDSを含む。一部の態様において、溶解バッファーは約5wt%のSDSを含む。
【0057】
ある特定の態様において、溶解バッファーは放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)バッファーである。RIPAバッファーは、約10~50mM Tris-HCl、100~200mM NaCl、0.5~1.%NP40、1~2%デオキシコール酸ナトリウム、および0.1%SDSを含有し得る。ある特定の態様において、RIPAバッファーは、25mM Tris-HCl、150mM NaCl、1%NP40、0.1~1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDSを含有する。一部の態様において、溶解バッファーは、約25mM Tris-HCl、約150mM NaCl、約1%NP40、約0.1~約1%デオキシコール酸ナトリウム、および約5%SDSを含有する。一部の態様において、RIPAバッファーは、25±0.25mM Tris-HCl、150±15mM NaCl、1±0.01%NP40、約0.1~約1%デオキシコール酸ナトリウム、および5±0.5 SDSを含有する。一部の態様において、溶解バッファーは、25mM Tris-HCl、150mM NaCl、1%NP40、0.1~1%デオキシコール酸ナトリウム、および5%SDSを含有する。
【0058】
溶解バッファーは、少なくとも1種のプロテアーゼ阻害剤またはプロテアーゼ阻害剤カクテルを含有し得る。ある特定の態様において、溶解バッファーは、複数のプロテアーゼ阻害剤、すなわちプロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する。プロテアーゼ阻害剤は、個々にかつ独立して、その間にあるすべての値および域を含めて、約0.5、1~2wt%の濃度で、少なくともまたは多くとも約0.5、1~2wt%の濃度で存在し得る。ある特定の態様において、プロテアーゼ阻害剤は、アプロチニン、ベスタチン、E-64、ロイペプチン、またはペプスタチンAのうちの1種または複数から選択され得る。
【0059】
ある特定の態様において、組織サンプルは、適当な溶解バッファー中で機械的ホモジナイゼーションを使用してホモジナイズされる。ある特定の態様において、溶解バッファーは界面活性剤を含む。溶解バッファーは、SDSまたはオクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Nonidet(商標)P40、NP40)等の界面活性剤を含み得る。特定の態様において、界面活性剤はSDSである。ある特定の態様において、溶解バッファーは、組織抽出試薬I(TER I)(Thermo Fisherカタログ番号FNN0071-50mM Tris、pH7.4、250mM NaCl、5mM EDTA、2mM NaVO、1mM NaF、20mM Na、0.02%NaN、および所有権のある界面活性剤)、組織抽出試薬II(TER II)(Thermo Fisherカタログ番号FNN0081-25mMビシン、pH7.5、150mM NaCl、2mM NaVO、1mM NaF、20mM Na、0.02%NaN、および所有権のある界面活性剤)、NP40溶解バッファー(Thermo Fisherカタログ番号FNN0021-50mM Tris、pH7.4、250mM NaCl、5mM EDTA、50mM NaF、1mM NaVO、1%Nonidet(商標)P40(NP40)、0.02%NaN)、組織-タンパク質抽出試薬(T-PER)(Thermo Fisherカタログ番号78510-25mMビシン、150mM塩化ナトリウム中所有権のある界面活性剤;pH7.6)、神経-タンパク質抽出試薬(N-PER)(Thermo Fisherカタログ番号87792)であり得る。
【0060】
1種または複数の界面活性剤は、約、少なくとも約、または多くとも約0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、および15wt%(またはその中に導き出せる任意の域)の濃度にあり得る。ある特定の態様において、界面活性剤濃度は約1~10wt%である。ある特定の態様において、5wt%の濃度にある1種の界面活性剤がある。
【0061】
ある特定の態様において、ホモジナイゼーションおよび溶解の後、溶解物の2つのアリコート(分画)を調製する。1つのアリコートはBCA(総タンパク質)分析のために保管され得る。第2のアリコートは、ジストロフィンタンパク質を測定するために使用され得る。ある特定の態様において、SILAC外因性参照ジストロフィンタンパク質(配列番号243)または他の適当な外因性ジストロフィンタンパク質参照が、サンプル調製の間に、LC-MS/MSアッセイに対する内部標準物質として添加される。サンプル溶解物におけるタンパク質は、他の細胞構成要素から分離される。ある特定の態様において、タンパク質を、アセトニトリルを使用してフィルタープレート上に沈降させる。単離されたタンパク質サンプルを消化する。ある特定の態様において、タンパク質サンプルを、トシルフェニルアラニルクロロメチルケトン(TPCK)処理されたトリプシンで消化する。さらなる態様において、サンプル消化物を、フィルタープレートに通して引き抜き、その後還元し、アルキル化し、付加的な消化工程である第2のプロテアーゼ消化に供する。消化されかつ処理されたサンプルを、次いで免疫アフィニティー選択する。ある特定の態様において、消化されかつ処理されたサンプルを、抗ジストロフィンペプチド抗体カラムを含有するHPLCプラットフォームにインジェクトして、逆相ナノフロークロマトグラフィーの前に関心対象のトリプシンペプチドを富化する。溶出液は、免疫アフィニティー工程由来のものであり、次いで質量分析によって分析される。ある特定の態様において、逆相ナノフロークロマトグラフィーの溶出液を、ナノフローソースインターフェースを通じてトリプル四重極質量分析計に導入し、多重反応モニタリング(MRM)モードで稼働する。結果として生じるクロマトグラフのピーク面積は、TraceFinder General Quan 4.1または同様のソフトウェアによって作成され得る。次いで、結果は、TraceFinderデジタルゲートウェイインターフェースを使用して、例えばワトソンラボラトリー情報管理システム(Watson Laboratory Information Management System)(LIMS)にエクスポートされ得る。
【0062】
ある特定の実施形態において、組織サンプルは対象から取得される。組織サンプルの少なくとも一部分がホモジナイズされ、細胞タンパク質が単離される。細胞タンパク質単離物は、ペプチドフラグメントに消化される。免疫アフィニティーを使用するために、ジストロフィンペプチドが選択される。選択されたジストロフィンペプチドは、次いで液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を使用して分析されかつ定量化される。
【0063】
タンパク質単離。サンプル調製は、細胞または組織の起源に依存する。一部の態様において、最初の工程は、通常ではホモジナイゼーションまたは超音波処理であり、その後にタンパク質沈降および適切なバッファーにおける可溶化が続く。本発明の一部の態様において、ホモジナイズされた生物学的サンプルを有機溶媒で処理して、タンパク質を沈降させ、タンパク質沈降物を形成する。タンパク質沈降物は、フィルター保持物(retentate)として単離され得、それによってタンパク質サンプルを形成する。クロロホルム、メタノール、アセトン、アセトニトリル、およびTCA等の有機溶媒が、タンパク質沈降試薬として一般的に使用される。一部の態様において、有機溶媒は、酢酸、アセトン、アセトニトリル、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、エタノール、イソプロパノール、メタノール、1-プロパノール、TCA、およびテトラヒドロフラン、またはその組み合わせからなる群から選択される。ある特定の態様において、有機溶媒は、アセトンまたはアセトニトリルである。タンパク質は、1容量のホモジネートへの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10容量の溶媒の添加によって沈降し得る。140サンプルに対して800。(5.7溶媒に対して1サンプル)。タンパク質は、その間にあるすべての値および域を含めて、-10、-5、0、1、5、10、15、20、25~30℃または約-10、-5、0、1、5、10、15、20、25~30℃の温度で沈降し得る。ある特定の態様において、タンパク質は約15℃~約25℃の温度で沈降する。ある特定の態様において、タンパク質は約18℃~約22℃の温度で沈降する。特定の態様において、タンパク質は約20℃で沈降する。十分な時間の後、タンパク質沈降混合物を遠心分離してまたは濾過して、タンパク質沈降物を単離し得る。単離されかつ洗浄されると、タンパク質沈降物は、適当な溶液に可溶化され得る。
【0064】
タンパク質消化。タンパク質が単離されると、タンパク質サンプルをタンパク質分解に曝露してまたは1種もしくは複数のプロテアーゼ(またはプロテイナーゼ)を使用することによってタンパク質分解して、サンプルにおけるタンパク質をペプチドに遊離させ得またはフラグメント化し得、ペプチド溶液またはペプチドサンプルをもたらす。プロテアーゼは、アミノ酸残基を連結するペプチド結合を引き裂くことによって、長いタンパク質/ポリペプチド鎖をより短いフラグメントに消化することに関与する。本発明の一部の態様において、第1または第2のプロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、およびメタロプロテアーゼからなる群から選択される。プロテアーゼ消化は、質量分析による分析を容易にするために、タンパク質/ポリペプチドからペプチドフラグメントを産生する働きをする。
【0065】
第1または第2のプロテアーゼは、約10ng/μL~約1μg/μLの濃度にあり得る。第1または第2のプロテアーゼは、約10ng/μL~約100ng/μLの濃度にあり得る。第1または第2のプロテアーゼは、約50±5ng/μLの濃度にあり得る。第1または第2のプロテアーゼは、約50ng/μLの濃度にあり得る。
【0066】
本発明の一部の態様において、第1または第2のプロテアーゼは、トリプシン特異的またはリジン特異的プロテイナーゼである。これらの酵素は、信頼性が高く特異的であるという利点を有し、適切な数のペプチドを産生する。他の適切なプロテアーゼは、アスパラギン酸またはグルタミン酸残基における消化を誘導し、エンドプロテイナーゼGlu-CまたはエンドプロテイナーゼAsp-Nを含む。キモトリプシンも使用され得る。幅広い特異性のプロテイナーゼは多くのペプチドを生成し得、ペプチドは非常に短い可能性がある。
【0067】
ある特定の態様において、第1または第2のプロテアーゼはトリプシンであり、特定の態様において、それは、トシルフェニルアラニルクロロメチルケトン(TPCK)処理されたトリプシンである。トリプシンはセリンプロテアーゼである。それは、700~1500ダルトンの平均サイズを有するペプチドにタンパク質を切断する。トリプシンは高度に特異的であり、アルギニンおよびリジン残基のカルボキシル側で切る。C末端アルギニンおよびリジンペプチドは帯電しており、それらをMSによって検出可能にする。トリプシンは高活性であり、多くの添加物に耐性がある。代替的に、第1または第2のプロテアーゼは、キモトリプシン、ペプシン、LysC、LysN、AspN、GluC、およびArgCからなる群から選択され得、質量分析の前のタンパク質消化に使用され得る。
【0068】
ある特定の態様において、第1の消化は第1のプロテアーゼを用いて実施され得、その後に、同じまたは異なるプロテアーゼであり得る第2のプロテアーゼを用いた第2の消化が続く。本発明の一部の態様において、第1のプロテアーゼは第2のプロテアーゼと同じである。
【0069】
本発明の一部の態様において、第2のプロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、およびメタロプロテアーゼからなる群から選択される。ある特定の態様において、第2のプロテアーゼはトリプシンであり、特定の態様において、それは、トシルフェニルアラニルクロロメチルケトン(TPCK)処理されたトリプシンである。代替的に、第2のプロテアーゼは、キモトリプシン、ペプシン、LysC、LysN、AspN、GluC、およびArgCからなる群から選択され得、質量分析の前のタンパク質消化に使用され得る。
【0070】
第2のプロテアーゼは、約10ng/μL~約1μg/μLの濃度にあり得る。第2のプロテアーゼは、約10ng/μL~約100ng/μLの濃度にあり得る。第2のプロテアーゼは、約50ng/μLの濃度にあり得る。第2のプロテアーゼは、約50ng/μLの濃度にあり得る。
【0071】
本発明の一部の態様において、第1または第2のプロテアーゼはプロテアーゼバッファー中に提供され得、プロテアーゼバッファーは、少なくともカオトロピック剤、有機溶媒、および緩衝塩を含み得る。プロテアーゼバッファーは、尿素、アセトニトリル、およびリン酸緩衝溶液を含み得る。プロテアーゼバッファーは、約0.05M~約4Mの濃度の尿素を含み得る。プロテアーゼバッファーは、約1%~約25%の濃度のアセトニトリルを含み得る。プロテアーゼバッファーは、リン酸緩衝溶液中に約0.8M尿素および約10%アセトニトリルを含み得る。プロテアーゼバッファーは、リン酸緩衝溶液中に0.8M尿素および10%アセトニトリルを含み得る。
【0072】
一部の実施形態において、タンパク質混合物は、消化混合物の形成の間に加熱される。加熱は、消化が生じる速度を増加させ、それによって、タンパク質混合物が消化混合物を形成するために過ごす十分な時間に必要な時間の量を減少させる。タンパク質混合物は、室温より上の温度に加熱され得る。例えば、一部の実施形態において、タンパク質混合物は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、~約12時間の期間、約35、40、45、50、55、~約60℃の温度に加熱される。加熱は、プロテアーゼまたはポリペプチドを破壊することなく、消化を加速させるのに十分であるべきである。多様なやり方を使用して、消化混合物を加熱し得る。例えば、タンパク質混合物をもつ組織をオーブンまたはウォーターバスに入れることによって、消化混合物を加熱し得る。タンパク質混合物を、加熱の間に気密容器内に保って、乾燥を阻止し得る。消化は、2、3、4回、またはそれを上回る回数繰り返され得る。典型的に、タンパク質分解酵素は、約、少なくとも約、または多くとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900ng/μL~1μg/μL(またはその中に導き出せる任意の域)の濃度にある。ある特定の態様において、タンパク質分解酵素は約50ng/μLの濃度にある。
【0073】
ペプチド溶液は、ペプチドの完全性を安定させるまたは維持する作用物質で処理され得る。ある特定の態様において、ペプチドを還元剤で処理して、ジスルフィド結合を変性させ得る。還元剤は、ジチオトレイトール(DTT)、2-メルカプトエタノール(2-ME)、またはTris(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)からなる群から選択され得る。ある特定の態様において、還元剤はDTTである。還元剤は、約、少なくとも約、または多くとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、もしくは500mM、またはその中に導き出せる任意の域の濃度で使用され得る。ある特定の態様において、還元剤は、ペプチドサンプルにおいて約50mM~約250mMの濃度にある。ある特定の態様において、還元剤は約150±15mMの濃度にある。ある特定の態様において、還元剤は、ペプチドサンプルにおいて約135mM~165mMの濃度にある。ある特定の態様において、還元剤は約150mMの濃度にある。
【0074】
ペプチド溶液は、ジスルフィド結合の再形成を最小限に抑えるためにアルキル化剤でも処理され得る。アルキル化剤は、ヨードアセトアミド(IAA)、メタンチオスルホン酸メチル、およびN-エチルマレイミドからなる群から選択され得る。ある特定の態様において、アルキル化剤はIAAである。アルキル化剤は、約、少なくとも約、または多くとも約20、50、100、150、200、250、300、350、400、450、または500mM(またはその中に導き出せる任意の域)の濃度にあり得る。ある特定の態様において、アルキル化剤は、ペプチドサンプルにおいて約20mM~約500mMの濃度にある。ある特定の態様において、アルキル化剤は、ペプチドサンプルにおいて約200mM~約400mMの濃度にある。ある特定の態様において、アルキル化剤は、ペプチドサンプルにおいて約300±30mMの濃度にある。ある特定の態様において、アルキル化剤は、ペプチドサンプルにおいて約270mM~約330mMの濃度にある。ある特定の態様において、アルキル化剤は約300mMの濃度にある。
【0075】
ペプチド富化。ペプチドサンプルが取得されると、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、免疫アフィニティークロマトグラフィー)を使用して、タンパク質消化に存在するジストロフィンペプチドを単離し得る。本発明の一部の態様において、方法は、2種以上の異なるジストロフィンペプチドがペプチドサンプルから捕捉され得るように、1種を上回るジストロフィンペプチドアフィニティー試薬を含む。
【0076】
本発明の一部の態様において、結合しているジストロフィンペプチドは、内因性ジストロフィンタンパク質、操作されたジストロフィンタンパク質、および/または外因性ジストロフィン参照タンパク質由来のものである。ジストロフィンペプチドアフィニティー試薬は、カラムマトリックスに共役され得、ジストロフィンペプチドアフィニティーカラムを形成する。ジストロフィンペプチドアフィニティーカラムは、1、2種、またはそれを上回る種類のジストロフィンペプチドに特異的に結合し得、ジストロフィンペプチドアフィニティーカラムは、内因性ジストロフィンタンパク質および操作されたジストロフィンタンパク質の両方に存在する共通のジストロフィンペプチドに結合する。ジストロフィンペプチドアフィニティーカラムは、操作されたジストロフィンタンパク質に存在するが内因性ジストロフィンタンパク質には存在しない、操作されたジストロフィン特異的ペプチドに結合し得る。ジストロフィンペプチドアフィニティー試薬は、抗ジストロフィンペプチド抗体を含み得る。抗ジストロフィンペプチド抗体は、内因性ジストロフィンペプチドに対して作られ得る。抗ジストロフィンペプチド抗体は、操作されたジストロフィンペプチドに対して作られ得る。
【0077】
この技法は、高特異性ポリクローナル抗体を利用する。「ポリクローナル抗体」という用語は、特定の抗原、例えばジストロフィンペプチドと相互作用し得る抗原結合部位の複数の種を含有する抗体ポリペプチドの集団を指す。ポリクローナル抗体は、動物にタンパク質またはペプチド抗原を注射し、その後二次免疫応答が刺激され、全血清から抗体を単離することによって作製される抗体である。ゆえに、ポリクローナル抗体は、動物に注射された抗原のいくつかのエピトープを認識する抗体の異種ミックスである。ある特定の態様において、ポリクローナル抗体はウサギポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体は、典型的に、免疫された動物の血液から取得された抗体の精製画分である。通常、抗原は、抗体の形成を誘発するアジュバントと好ましくは一緒に、動物に静脈内に、皮内に、筋肉内に、または皮下に適用される。しばしば、抗原の適用は3~4回生じ、抗原の各適用(ブースター)間の時間差は2~6週間である。抗体力価が所望のレベルに到達した時点で、大量の血液を動物から採取する。血清を血液から取得し、その後抗体を血清から分離する。これは、抗体の富化を可能にする適切な分離手段(例えば、適切なカラム)を用いて行われ得る。
【0078】
そのような高特異性分子は、抗原またはペプチドの迅速で選択的な精製のための極めて貴重なツールである。原則として、抗体はカラム支持体に共役され(固定化され)、これを使用して、多くの他の抗原を含有する混合物から抗原を選択的に吸着させる。抗体がアフィニティーを有しない抗原は洗い流され得、精製された抗原は、次いで溶出バッファーを用いて、結合している抗体から溶出され得る。
【0079】
一部の態様において、抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号179、配列番号200、配列番号235、配列番号236、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、または配列番号241からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなるペプチドに対して作られる。抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号235のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるペプチドに対して作られ得る。抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号236のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるペプチドに対して作られ得る。抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号237のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるペプチドに対して作られ得る。抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号238のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるペプチドに対して作られ得る。抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号239のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるペプチドに対して作られ得る。抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号240のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるペプチドに対して作られ得る。抗ジストロフィンペプチド抗体は、配列番号241のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるペプチドに対して作られ得る。
【0080】
抗ジストロフィンペプチド抗体は、共通のジストロフィンペプチドに対して作られ得る。抗ジストロフィンペプチド抗体は、LLQVAVEDR(配列番号200)のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるペプチドに対して作られ得る。抗ジストロフィンペプチド抗体は、SLEGSDDAVLLQR(配列番号179)のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるペプチドに対して作られ得る。
【0081】
抗ジストロフィンペプチド抗体はポリクローナル抗体であり得る。抗ジストロフィンペプチド抗体はモノクローナル抗体であり得る。
【0082】
一部の態様において、本発明は、抗ジストロフィンペプチド抗体に関する。一部の態様において、本発明は、抗ジストロフィン抗体を作出する方法に関する。一部の態様において、本発明は、抗ジストロフィン抗体を使用して、生物学的サンプルにおけるジストロフィンを測定する、定量する、または査定する方法に関する。
【0083】
一部の態様において、本発明は、配列番号235、配列番号236、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、または配列番号241からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなるペプチドに関する。一部の態様において、本発明は、本発明のペプチドを作出する方法に関する。一部の態様において、本発明は、本発明のペプチドを使用して、生物学的サンプルにおけるジストロフィンを測定する、定量する、または査定する方法に関する。
【0084】
1回または複数のタンパク質消化により生じたペプチド溶液は、ジストロフィンタンパク質のタンパク質分解フラグメントまたはペプチド、すなわちジストロフィンペプチドの単離のための供給源として使用され得る。ある特定の実施形態において、ジストロフィンペプチドは、ペプチド溶液と、ジストロフィンペプチド特異的抗体を含むアフィニティーカラム等のジストロフィンペプチドアフィニティー試薬とを接触させることによって選択され得る。ジストロフィン特異的アフィニティー剤は、ジストロフィンの1種または複数のペプチドに特異的に結合し得る。ジストロフィンペプチドは、内因性ジストロフィンペプチド、操作されたジストロフィンペプチド、または内因性ジストロフィンペプチドおよび操作されたジストロフィンペプチドの両方であり得る。アフィニティーカラムは、配列番号1~241のうちのいずれかにおいて特定される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種、またはそれを上回る種類のペプチドに結合する能力を有し得る。ジストロフィンペプチド富化サンプルは、内因性ジストロフィンペプチドを含み得る。ジストロフィンペプチド富化サンプルは、操作されたジストロフィンペプチドを含み得る。ジストロフィンペプチド富化サンプルは、外因性ジストロフィン参照ペプチドを含み得、前記外因性ジストロフィン参照ペプチドは、生物学的サンプルに添加されたまたはタンパク質サンプルに添加された外因性ジストロフィン参照タンパク質の第1および/または第2のプロテアーゼによるタンパク質分解的消化によって産生される。
【0085】
「エピトープ」とは、抗体が特異的に結合する抗原のエリアまたは領域、例えば抗体と相互作用する残基を含むエリアまたは領域を指す。エピトープは線状または立体構造的であり得る。
【0086】
エピトープに「優先的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書において互換可能に使用される)抗体(an antibody or antibodies)は、当技術分野において充分に理解された用語であり、そのような特異的または優先的結合を判定する方法も、当技術分野において周知である。分子は、代替抗原とよりも、特定の抗原と、より高頻度に、より迅速に、より長い継続期間、かつ/またはより大きなアフィニティーを伴って反応するまたは結び付く場合、「特異的結合」または「優先的結合」を呈すると言われる。抗体は、他の物質に結合するよりも、より大きなアフィニティー、アビディティーを伴って、より容易に、かつ/またはより長い継続期間、結合する場合、標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。この定義を読むことによって、例えば、第1の標的に特異的にまたは優先的に結合する抗体(または部分もしくはエピトープ)は、第2の標的に特異的にまたは優先的に結合してもしなくてもよいことも理解される。そのため、「特異的結合」または「優先的結合」は、必ずしも排他的結合を要するわけでない(それを含み得るが)。
【0087】
ペプチド分析
ジストロフィンペプチドがペプチドサンプルから選択されると、ペプチドは、分画および質量分析を使用してさらに分析されるであろう。ある特定の態様において、サンプルにおける細胞によって発現されたジストロフィンタンパク質の分量を決定する過程は、特定のペプチドの質量比を校正曲線と比較する工程を含み、校正曲線とは、既知の量のペプチドと既知の量のペプチドおよび一定量の標準物質ペプチドの商との間の数学的関係性である。
【0088】
サンプル分画。選択されたペプチドは、イオン化を受ける前にさらに物理的に分離され得るまたは単離され得る。ペプチドサンプルは、質量分析計のイオン化構成要素の上流にある液体クロマトグラフィーを使用して分画され得る。ある特定の態様において、クロマトグラフィー工程は逆相ナノフロークロマトグラフィーである。一部の態様において、方法は、逆相ナノ液体クロマトグラフィー工程をさらに含む。液体クロマトグラフィー工程は、結果として生じる画分の質量分析と連動される。一部の態様において、逆相ナノフロークロマトグラフィーカラムは、3μmの粒子サイズ、100Åの細孔サイズ、および75μm×15cmの寸法を有するC18カラムである。
【0089】
質量分析。「質量分析計」とは、タンパク質および核酸等の様々な物質の分子量を決定するために使用され得る分析機器である。それは、一部の適用において、例えばタンパク質分子の配列および事実上任意の材料の化学的組成を決定するためにも使用され得る。典型的に、質量分析計は、4つの部分:サンプル注入口、イオン化源、質量分析器、および検出器を含む。サンプルは、気相、液相、または固相で、様々なタイプの注入口、例えば固体プローブ、GC、またはLCを介して導入されていてもよい。次いで、サンプルは、典型的にイオン化源においてイオン化されて、1種または複数のイオンを形成する。結果として生じるイオンは、質量分析器に導入され、それによって操縦される。残存イオンは、質量対電荷比に基づいて検出される。1つの実施形態において、質量分析計は、研究中の物質に電子ビームを浴びせ、結果を正および負イオンフラグメントのスペクトルとして定量的に記録する。イオンフラグメントの分離は、イオンの質量対電荷比に基づく。すべてのイオンが単一に帯電している場合、この分離は本質的に質量に基づく。伝統的な定量的MSは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、それに続くタンデムMS(MS/MS)を使用しており、一方でより新しい定量法は、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)、それに続く飛行時間型(TOF)MSを使用して開発されているところである。一部の態様において、質量分析計は、多重反応モニタリング(MRM)のために構成されたトリプル四重極質量分析計である。一部の態様において、方法は、LCMSを使用する工程をさらに含み、質量分析は、ジストロフィンペプチド画分のエレクトロスプレーイオン化、およびイオン化されたペプチドフラグメントの検出を含む。一部の態様において、方法は、多重反応モニタリング(MRM)モードでトリプル四重極質量分析計を使用して、操作されたジストロフィンペプチド、外因性ジストロフィン参照ペプチド、および内因性ジストロフィンペプチドからなる群から選択される1種または複数についてのイオン化形態を検出する工程をさらに含む。一部の態様において、ジストロフィンペプチド画分を分析する工程は、ペプチド校正曲線を使用してジストロフィンペプチドを定量化する工程をさらに含む。
【0090】
エレクトロスプレーイオン化(ESI)
ESIは、脂質を含めた、高極性でほぼ不揮発性の生体分子から気体イオンを産生するために使用されるFennおよび同僚ら(Fennら、Science、246(4926):64~71、1989)によって開発された好都合なイオン化技法である。サンプルは、キャピラリーチューブを通じて低い流速(1~10μL/分)で液体としてインジェクトされ、それに強い電場が加えられる。場は、キャピラリーの末端で液体に対する付加的な電荷を生み出し、質量分析計注入口に静電的に引き付けられる高帯電液滴の微細スプレーを産生する。液滴の表面からの溶媒の蒸発は、それが脱溶媒和チャンバーを通過するにつれて、その電荷密度を実質的に増加させる。この増加がレイリー安定限界を超えた場合、イオンが吐出され、MS分析に備える。
【0091】
典型的な従来のESI源は、その中央部にサンプリングオリフィスを有する電気的に接地された円形インターフェースからおよそ0.5~5cm(しかし、より通常では1~3cm)離れるようにチップが保たれている、直径が典型的に0.1~0.3mmの金属キャピラリーからなる。Kabarleら、Anal.Chem.65(20):972A~986A(1993)。1~5kV(しかし、より典型的には2~3kV)の電位差が、パワーサプライによってキャピラリーに加えられて、キャピラリーチップにおいて高い静電場(106~107V/m)を生み出す。質量分析計によって分析される対象となる分析物を運ぶサンプル液体は、適切な供給源から(クロマトグラフから、または液体流量制御器を介して直接的にサンプル溶液から等)、内部通路を通じてチップに送達される。キャピラリーにおけるサンプルに圧力を加えることによって、液体は、小さな高帯電した液滴としてキャピラリーチップを離れ、脱溶媒和およびブレークダウンをさらに受けて、イオンビームの形態の単一または多帯電した気相イオンを形成する。次いで、イオンは、接地された(または負に帯電した)インターフェースプレートによって収集され、質量分析計の分析器にオリフィスを通じて導かれる。この稼働の間、キャピラリーに加えられる電圧は、一定に保たれる。ESI源の構築の態様は、例えば米国特許第5,838,002号;第5,788,166号;第5,757,994号;RE35,413;第6,756,586号、第5,572,023号、および第5,986,258号に記載される。
【0092】
ESI/MS/MS
ESIタンデム質量分光法(ESI/MS/MS)では、前駆体イオンおよび産物イオンの両方を同時に分析することができ、それによって単一の前駆体産物反応をモニターし、所望の前駆体イオンが存在する場合にのみ(選択的反応モニタリング(SRM)を通じて)シグナルを産生する。内部標準物質が安定同位体標識型の分析物である場合、これは、安定同位体希釈法による定量として公知である。この手法は、医薬品(Zweigenbaumら、Anal.Chem.、74:2446、2000)および生物活性ペプチド(Desiderioら、Biopolymers、40:257、1996)を正確に測定するために使用されている。より新しい方法は、広く利用可能なMALDI-TOF機器で実施され、それはより広い質量域を分解し得、代謝産物、ペプチド、およびタンパク質を定量するために使用されている。ペプチド等のより大きな分子は、それらの化学的性質が分析物ペプチドと同様である限りにおいて、非標識相同ペプチドを使用して定量され得る。Bucknallら、J.Am.Soc.Mass Spectrometry、13(9):1015~27(2002)。タンパク質定量は、トリプシンペプチドを定量することによって達成されている。Mirgorodskayaら、Rapid Commun.Mass Spectrom.、14:1226、2000。粗抽出物等の複合混合物は分析され得るが、一部の場合にはサンプル清浄化が必要とされる。Gobomら、Anal.Chem.72:3320、2000。脱離エレクトロスプレーは、サンプル表面分析のための新しい関連技法である。
【0093】
SIMS
二次イオン質量分光法、すなわちSIMSは、10億分の数個の検出の感度で、質量分光法のために、表面から放たれたイオン化粒子を使用する分析法である。サンプル表面に、スパッタリングと呼ばれる過程である、電子、イオン(例えば、O、Cs)、中性物質、または偶数光子等の一次エネルギー粒子を浴びせ、原子および分子粒子を表面から吐出させる。これらのスパッタされた粒子の一部は電荷を帯びていることから、質量分析計を使用してそれらの質量および電荷を測定し得る。連続的スパッタリングは、材料が除去されるにつれて、曝露された元素の測定を可能にし、これは今度は、元素の深さプロファイルを構築することを可能にする。二次イオン化粒子の大多数は電子であるものの、この方法において質量分析計によって検出されかつ分析されるのは、二次イオンである。
【0094】
LD-MSおよびLDLPMS
レーザー脱離質量分光法(LD-MS)は、サンプル部位からのサンプル材料の脱離を有効に誘導するパルスレーザーの使用を伴い、これは、サンプル基板からのサンプルの気化を意味する。この方法は、通常、質量分析計と併せてのみ使用され、ちょうどよいレーザー放射波長を使用した場合に、イオン化と同時に実施され得る。
【0095】
飛行時間型(TOF)測定と連動した場合、LD-MSはLDLPMS(レーザー脱離レーザー光イオン化質量分光法)と称される。分析のLDLPMS法は、サンプルの即時の揮発を与え、この形態のサンプルフラグメント化は、いかなる湿式抽出化学反応も伴わずに、迅速な分析を可能にする。LDLPMS機器類は、存在する種のプロファイルを提供し、一方で保持時間は少なく、サンプルサイズは小さい。LDLPMSでは、衝突体片が真空チャンバーに搭載される。パルスレーザーがサンプル部位のある特定のスポットに発射され、存在する種は、レーザー放射によって脱離しかつイオン化される。このイオン化は、分子がより小さなフラグメント-イオンに砕けることも引き起こす。作り出された正または負イオンは、次いで、フライトチューブ内に加速され、マイクロチャネルプレート検出器によって末端で検出される。シグナル強度、すなわちピーク高は、移動時間の関数として測定される。加えられた電圧および特定のイオンの電荷が運動エネルギーを決定し、フラグメントの分離は、種々の速さを引き起こす種々のサイズに起因する。ゆえに、各イオン質量は、検出器までの種々の飛行時間を有するであろう。
【0096】
分析のために正イオンまたは負イオンのいずれかを形成し得る。正イオンは、標準的な直接光イオン化から作り出されるが、負イオン形成は、より高出力のレーザー、および電子を得る二次的過程を要する。サンプル部位から外れる分子のほとんどは中性物質であり、ゆえに、それらの電子アフィニティーに基づいて電子を引き付け得る。負イオン形成過程は、単に正イオンを形成するよりも効率が低い。サンプル構成成分は、負イオンスペクトルの見通しにも影響を及ぼすであろう。
【0097】
MALDI-TOF-MS
その始まりおよび商業的利用可能性から、MALDI-TOF-MSの汎用性は、定性的分析のためのその広範な使用によって説得力をもって実証されている。例えば、MALDI-TOF-MSは、合成ポリマー、ペプチド、およびタンパク質分析の特徴付け(Zaluzecら、Protein Expr.Purif.、6:109、1995;Roepstorffら、EXS、88:81、2000)、DNAおよびオリゴヌクレオチドシーケンシング、ならびに組み換えタンパク質の特徴付けに採用されている。近年では、MALDI-TOF-MSの適用は、内因性ペプチドおよびタンパク質構成成分を特徴付けることを目指して、生物学的組織および単細胞生物の直接分析を含むまでに広がっている。Liら、Trends Biotechnol.、18:151(2000);Caprioliら、Anal.Chem.、69:4751(1997)。
【0098】
MALDI-TOF-MSを人気の定性ツールにする特性である、広範な質量域にわたる分子を分析するその能力、高感度、最小限のサンプル調製、および迅速な分析時間は、それを潜在的に有用な定量ツールにもする。MALDI-TOF-MSは、不揮発性でかつ熱不安定性の分子が比較的容易に分析されることも可能にする。それゆえ、臨床設定における定量的分析に対する、毒物学的スクリーニングに対する、ならびに環境分析に対する、MALDI-TOF-MSの可能性を探ることは賢明である。加えて、ポリペプチド(すなわち、ペプチドおよびタンパク質)の定量へのMALDI-TOF-MSの適用は特に関連がある。生物学的組織および流体における無傷タンパク質を定量する能力は、プロテオミクスの拡大するエリアにおいて特定の課題を提示し、研究者は、タンパク質の絶対分量を正確に測定する方法を緊急に要する。定量的MALDI-TOF-MS適用の報告があるものの、その幅広い使用を制限しているMALDIイオン化過程に固有の多くの問題がある。Wangら、J.Agric.Food.Chem.、48:3330(2000);Desiderioら、Biopolymers、40:257(1996)。これらの限定は、主に、分析物に対する観察されたシグナル強度の大きな変動の一因となると思われるサンプル/マトリックス不均質性、検出器飽和に起因した限定されたダイナミックレンジ、および液体クロマトグラフィー等のオンライン分離技法にMALDI-TOF-MSを連動することに伴う難しさ等の因子から生じる。合わせると、これらの因子は、それを用いて定量的決定が行われ得る正確性、精度、および実用性を損なうと考えられる。
【0099】
質量分析器は、それらの質量対電荷比に従ってイオンを分離する。セクター型機器、飛行時間型、四重極質量フィルター、三次元四重極イオントラップ、円筒型イオントラップ等を含めた、使用され得る多様な分析器がある。
【0100】
セクター型機器。セクター場質量分析器は、静電場および/または磁場を使用して、何らかのやり方で帯電粒子の経路および/または速さに影響を及ぼす。
【0101】
飛行時間型。飛行時間型(TOF)分析器は、電場を使用して、同じ電位によりイオンを加速し、次いでそれらが検出器に到達するのにかかる時間を測定する。粒子がすべて同じ電荷を有する場合、それらの運動エネルギーは同一であり、それらの速さはそれらの質量のみに依存するであろう。より小さな質量を有するイオンが、検出器に最初に到達するであろう。
【0102】
四重極質量フィルター。四重極質量分析器は、振動する電場を使用して、4本の平行棒の間に創出される無線周波数(RF)四重極場を通過するイオンの経路を選択的に安定させるまたは不安定にする。ある特定の域の質量/電荷比におけるイオンのみはいつでもシステムを通過するが、棒上の電位への変化は、連続的にまたは一連の個別の跳躍で、広域のm/z値を迅速に一掃させる。
【0103】
イオントラップ。四重極イオントラップは、四重極質量分析器と同じ物理的原理で働くが、イオンはトラップされかつ逐次的に吐出される。円筒型イオントラップ質量分析計(CIT)は、電極が双曲線型の電極よりもむしろ平坦なリングから形成される、四重極イオントラップの派生物である。
【0104】
キット
一部の実施形態は、生物学的サンプルにおけるジストロフィンタンパク質を測定する、定量する、または査定するための免疫アッセイキットに関する。キットは、特定のジストロフィンペプチドに特異的に結合する1種または複数の抗体組成物を含み得る。ある特定の態様において、抗体組成物は、カラムマトリックスまたはプレパックアフィニティーカラムの形態で提供される。キットは、ホモジナイゼーション試薬およびバッファー、タンパク質分解試薬およびバッファー、アフィニティークロマトグラフィーバッファー、参照タンパク質および/またはペプチド等をさらに含み得る。例として、そのようなキットは、組織サンプルにおけるジストロフィンのレベルを検出するまたは定量化するのに有用であり得る。
【0105】
定義
「ジストロフィンタンパク質」という用語は、天然のまたは組み換えのジストロフィン遺伝子または核酸から転写されかつ翻訳されたすべてのバリアントおよび誘導体を指す。
【0106】
「ジストロフィンペプチド」という用語は、ジストロフィンタンパク質に存在するまたはそれのタンパク質分解により生じるペプチドまたはタンパク質フラグメントを指す。
【0107】
本明細書において使用される「内因性」遺伝子またはタンパク質という用語は、生物、組織、または細胞の改変されていないゲノムを起源とする遺伝子の転写および翻訳によって産生されたタンパク質、すなわち生物、組織、または細胞の天然に存在する、操縦されていない遺伝子/タンパク質を指す。
【0108】
本明細書において使用するとき、「操作された」という用語は、生物、組織、または細胞の改変されていないゲノムによってコードされないまたは発現されない任意の遺伝材料および/または結果として生じるタンパク質を指す。ゆえに、そのような「操作された」タンパク質は、操縦されていない細胞内に通常見い出される遺伝材料から発現した任意のタンパク質を除外し得る。操作されたタンパク質は、一部の実施形態において、細胞に導入された組み換え遺伝材料から発現したまたは発現を引き起こされた任意のタンパク質を含む。加えて、「操作された」は、細胞ゲノムとはっきり分かれているが、非天然の位置でゲノムに組み込まれた材料、または欠陥のあるゲノム配列を置き換える操作された核酸を含む、発現ベクター/カセットまたは他の発現ビヒクルを介して作出されたタンパク質を含む。一部の実施形態において、組み換え遺伝材料は染色体外性であり、一方で他において、それのすべてのまたは一部は、細胞の染色体に組み込まれる(染色体内またはトランスジェニック)。
【0109】
本明細書において使用される「内因性ジストロフィンタンパク質」という用語は、生物、組織、または細胞の改変されていないゲノムにおけるジストロフィン遺伝子の転写および翻訳によって産生されたジストロフィンタンパク質、すなわち生物、組織、または細胞の天然に存在する、操縦されていないジストロフィン遺伝子/タンパク質を指す。
【0110】
「操作されたジストロフィンタンパク質」という用語は、生物、組織、または細胞の改変されていないゲノムによってコードされないまたは発現されない任意のジストロフィンコード遺伝材料および/または結果として生じるジストロフィンタンパク質を指す。ゆえに、そのような「操作された」ジストロフィンタンパク質は、操縦されていない細胞内に通常見い出される遺伝材料から発現した任意のタンパク質を除外し得る。操作されたジストロフィンタンパク質は、細胞に導入された組み換え遺伝材料から発現したまたは発現を引き起こされた任意のジストロフィンタンパク質を含む。
【0111】
「共通のジストロフィンペプチド」という用語は、内因性ジストロフィンタンパク質および操作されたジストロフィンタンパク質の両方に存在するペプチドを指す。
【0112】
「内因性ジストロフィンペプチド」という用語は、内因性ジストロフィンタンパク質に存在するアミノセグメントまたはフラグメントを指す。
【0113】
「操作されたジストロフィン特異的ペプチド」という用語は、操作されたジストロフィンタンパク質のみに存在するアミノセグメントまたはフラグメントを指す。
【0114】
「外因性ジストロフィン参照タンパク質」という用語は、生物学的サンプルから独立して合成されるジストロフィンタンパク質を指す。
【0115】
「外因性ジストロフィン参照ペプチド」という用語は、外因性ジストロフィン参照タンパク質に存在するアミノセグメントまたはフラグメントを指す。
【0116】
「バリアント」という用語は、本明細書に記載されるジストロフィンタンパク質およびペプチド等、参照分子の1つまたは複数のアミノ酸残基において異なるペプチドまたはポリペプチドを指す。
【0117】
抗体「可変ドメイン」とは、単独でのまたは組み合わせでの、抗体軽鎖(VL)の可変領域または抗体重鎖(VH)の可変領域を指す。当技術分野において公知のように、重鎖および軽鎖の可変領域はそれぞれ、3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FR)からなり、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。
【0118】
「フレームワーク」(FR)残基とは、CDR残基以外の抗体可変ドメイン残基である。VHまたはVLドメインフレームワークは、以下の構造:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4で、CDRが散在した4つのフレームワーク小領域FR1、FR2、FR3、およびFR4を含む。
【0119】
「エピトープ」とは、抗体が特異的に結合する抗原のエリアまたは領域、例えば抗体と相互作用する残基を含むエリアまたは領域を指す。エピトープは線状または立体構造的であり得る。
【0120】
エピトープに「優先的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書において互換可能に使用される)抗体は、当技術分野において充分に理解された用語であり、そのような特異的または優先的結合を判定する方法も、当技術分野において周知である。分子は、代替細胞または物質とよりも、特定の細胞または物質と、より高頻度に、より迅速に、より長い継続期間、かつ/またはより大きなアフィニティーを伴って反応するまたは結び付く場合、「特異的結合」または「優先的結合」を呈すると言われる。抗体は、他の物質に結合するよりも、より大きなアフィニティー、アビディティーを伴って、より容易に、かつ/またはより長い継続期間、結合する場合、標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。この定義を読むことによって、例えば、第1の標的に特異的にまたは優先的に結合する抗体(または部分もしくはエピトープ)は、第2の標的に特異的にまたは優先的に結合してもしなくてもよいことも理解される。そのため、「特異的結合」または「優先的結合」は、必ずしも排他的結合を要するわけでない(それを含み得るが)。一般的に、しかし必然的にではなく、結合への言及は優先的結合を意味する。
【0121】
本明細書において使用するとき、「生物学的サンプル」という用語は、生きた生物由来のサンプル材料を意味する。「生物学的サンプル」という用語は、対象から単離された組織、細胞、および生物学的流体、ならびに対象の中に存在する組織、細胞、および流体を含むことを意図される。本技術の生物学的サンプルは、例えば全血、血漿、および筋肉を含むが、それらに限定されるわけではない。生物学的サンプルは、内臓の生検からまたは組織から取得され得る。
【0122】
「約」または「およそ」とは、測定可能な数値と接続して使用される場合、変数の表示された値、および、いずれかより大きい、表示された値の実験誤差内(例えば、平均に対する95%信頼区間内)にあるまたは表示された値の10パーセント以内にある変数のすべての値を指す。数域は、域を規定する数を含んでいる。
【0123】
本明細書において使用するとき、「ベクター」とは、宿主細胞において、関心対象の1種または複数の遺伝子または配列を送達し得、好ましくは発現し得る核酸構築物を意味する。ベクターの例は、ウイルスベクター、ネイキッドDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド、またはファージベクター、カチオン性凝縮剤と結び付いたDNAまたはRNA発現ベクター、リポソーム内にカプセル化されたDNAまたはRNA発現ベクター、およびプロデューサー細胞等のある特定の真核細胞を含むが、それらに限定されるわけではない。
【0124】
当技術分野において公知の「同一性」という用語は、配列を比較することによって決定される、2種以上のポリペプチド分子または2種以上の核酸分子の配列間の関係性を指す。当技術分野において、「同一性」とは、場合により、一続きのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の合致によって決定される、ポリペプチドまたは核酸分子配列間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」は、コンピュータープログラムの特定の数学的モデル(すなわち「アルゴリズム」)によって取り組まれるギャップアライメントを用いて、2種以上の配列間の完全な合致のパーセントを測定する。
【0125】
「類似性」という用語は、関連する概念であるが、「同一性」とは対照的に、完全な合致および保存的置換による合致の両方を含む類似性の測定基準を指す。保存的置換は、ポリペプチドに適用されるが核酸分子には適用されないことから、類似性は、ペプチド配列比較のみを対処する。2種のポリペプチド配列が、例えば20個のうち10個の同一のアミノ酸を有しかつ残りがすべて非保存的置換である場合には、同一性および類似性パーセントは両方とも50%であろう。同じ例において、保存的置換がある5つを上回る箇所がある場合には、同一性パーセントは50%のままであるが、類似性パーセントは75%であろう(20個のうち15個)。それゆえ、保存的置換がある場合、2種のポリペプチド配列間の類似性の程度は、それら2種の配列間の同一性パーセントよりも高いであろう。
【実施例
【0126】
方法および材料の代表的な例が本明細書に記載されるが、とはいえ、本明細書に記載されるものと同様のまたは均等の方法および材料も、本発明の実践または試験において使用され得る。材料、方法、および例は、単なる例示であり、限定的であることを意図されるわけではない。
【0127】
(実施例1)
ペプチド選択
ペプチド選択およびランク付けは、以下の基準に基づいた。Uniprotからのヒト全長内因性ジストロフィンアミノ酸配列FASTAファイル(アクセッション番号P11532)(配列番号242)を使用して、EMBOSSからのPepdigestを使用したインシリコ消化を用いて、最小6個および最大30個の残基を有する理論的トリプシン内因性ペプチドを作出した。NCBIからのBLAST+2.9.0ツールを使用して、それぞれ個々の内因性ジストロフィンペプチドを、カニクイザル(カニクイザル(macaca fascicularis))、ラット(ドブネズミ(rattus norvegicus))、イヌ(イエイヌ(canis familiaris))、およびヒト特異的データベースからの参照プロテオームに対するBLASTP検索において使用して、ヒト内因性ジストロフィン特異的ペプチド、およびヒトと他の種のジストロフィンの間の保存された内因性ジストロフィンペプチドを同定した。ある特定の態様において、前臨床および臨床種にわたって保存されたそれらのペプチドに対して、単一のアフィニティー試薬が使用され得る。BLASTPパラメーターを以下のように設定した:-e値(evalue)200000、ギャップ開始(gapopen)15、ギャップ伸長(gapextend)3、ワードサイズ2、行列PAM30、対象ベストヒット(subject besthit)、最大hsps 1、最大標的seqs 1、comp based stats 0。操作されたジストロフィンタンパク質配列を、操作されたジストロフィンタンパク質配列とヒト全長内因性ジストロフィンとの配列アライメントに使用した。操作されたジストロフィン特異的ペプチドを同定した(表11を参照されたい)。
【0128】
Technische Universitat Munchenによって開発された公的に利用可能なプロテオミクスデータベース(proteomicsdb.com)において報告されたペプチドスペクトル合致(PSM)スコアに基づいて、ペプチドをランク付けした。Thermo Fisher Scientificによって開発されたオンラインバイオインフォマティクスツール(thermofisher.comから利用可能)を使用して、0~5に及ぶ予測抗原性スコアに基づいて、ペプチドをランク付けした。
【0129】
(実施例2)
サンプル調製および査定
この調査では、最適切断温度(OCT)媒体への耐性を評価し、mg組織あたり最高15μL OCTがアッセイによって許容され、サンプル調製の前にOCTを洗浄する必要がないことが示された(図7)。過剰量のOCTは、サンプル調製の前に冷却70%エタノールで洗い流される必要がある。
【0130】
方法ワークフローが図1Aに要約されている。それぞれ健常、BMD、およびDMD筋肉由来の20人の患者サンプルを、適度な量の最適切断温度(OCT)媒体中の凍結切片(10μmの10枚の薄片)として受け取った。瞬間凍結サンプルまたは過剰なOCTを有するサンプルは、1mLの氷冷70%エタノールを添加され、5×5秒間(中速)でボルテックスされた。過剰なOCTを有するサンプルを、その後、4℃で14,000rpmにて10分間遠心分離し、上清を捨て、周囲温度で5分間空気乾燥させた。すべてのサンプルを、組織溶解前に計量した。
【0131】
(実施例3)
SDS滴定
ジストロフィンタンパク質抽出パーセンテージに対する、溶解バッファー中のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の効果を、一実験において放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)バッファー(0.1%SDS)とTER-I(SDSなし)とを比較することによって、ならびに別の実験においてSDSの添加なし、5%SDS、および10%SDS含有量を有するRIPAバッファーを比較することによって評価した。データは、RIPAバッファーにおけるSDSの存在が、ヒト骨格筋組織からのジストロフィンタンパク質の抽出の有意な増加につながることを示した。また、SDSのさらなる滴定は、5%SDSを有する改変RIPAが、ヒト骨格筋組織からのジストロフィンタンパク質の最大抽出につながることを示した(図2A~2C)。
【0132】
(実施例4)
組織溶解および抽出
ステンレス鋼ビーズの0.9~2.0mm混和物のおよそ10ビーズ(NextAdvance(商標)、Averill Park、NY)を、5%SDSを有するRIPAバッファー(Fisher Scientific International、Hampton、NH)および1×HALT Protease Inhibitor Cocktail(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)からなる500μL溶解バッファーに、10mL溶解バッファーあたり100μLで添加した。Bullet Blender(登録商標)(Next Advance)を使用して、組織を室温で約10分間ホモジナイズした。溶解物を、室温かつ14,000rpmで20分間の遠心分離によって清澄化し、各サンプルの20μLアリコートを、ビシンコニン酸(bicinchoninic)アッセイ(BCA)タンパク質決定アッセイのために保持した。
【0133】
健常およびDMD筋溶解物を、1000μL溶解バッファーに対して1.5mg組織質量の比で希釈し、溶解バッファーの容量をサンプル切断物の質量に調整した。各サンプルの20μLアリコートを、総タンパク質アッセイが実施され得るまで、きれいなエッペンドルフチューブ(Hauppauge、NY)に室温で保管した。フィルタープレート上の適当なウェルに120μLアリコートを添加することによって、校正曲線および品質管理サンプルを調製した。
【0134】
20,000fmol/mLストックの200μLを1800μLの代用マトリックスで希釈することによって、細胞培養下でのアミノ酸による安定同位体標識化(SILAC)操作されたジストロフィン(外因性ジストロフィン参照タンパク質)を調製した。溶解バッファーに血清を0.7%の最終濃度で添加することによって、代用マトリックスを調製した。SILAC外因性の操作されたジストロフィン参照タンパク質を各サンプルに添加し(2,000fmol/mLの20μL)、室温で4~6分間インキュベートした。
【0135】
(実施例5)
タンパク質沈降
各サンプルの120μLアリコートを、ThermoMixer(登録商標)(Eppendorf)において300rpmで穏やかに混合しながら、室温で800μLアセトン中に50~70分間沈降させた。窒素ガスに接続された加圧マニホールドを使用して上清を取り出し、素通りを捨てた。タンパク質ペレットを、室温にてサンプルあたり1mLのアセトン中で洗浄し、洗浄液を加圧マニホールドによって濾過して取り除いた。この工程を繰り返し、フィルターを乾燥させた。タンパク質ペレットを、サンプルあたり120μLの50ng/μlトシルフェニルアラニルクロロメチルケトン(TPCK)処理されたトリプシンに可溶化し、フィルタープレートを密封し、ThermoMixerにおいて37℃で900rpmにて12~18時間インキュベートした。
【0136】
方法検証の間の方法のさらなる最適化において、タンパク質沈降にアセトニトリル(ACN)を使用することが、アセトンと比較して、骨格筋組織溶解物からのジストロフィンのより効率的でかつ再現性のある回収をもたらすことが示された。この比較は、アセトン対ACNを用いて沈降した溶解物から回収されたスパイクインSILACペプチドを用いて行われた。この代替方法では、各サンプルの120μLアリコートを、Fisher Isotemp Shake Touchにおいて300rpmで穏やかに混合しながら、室温で800μLアセトニトリル中に25~30分間沈降させた。窒素ガスに接続された加圧マニホールドを使用して上清を取り出し、素通りを捨てた(圧力約20psi)。タンパク質ペレットを、室温にてサンプルあたり1mLのアセトニトリル中で洗浄し、洗浄液を加圧マニホールドによって濾過して取り除いた。この工程を繰り返し、フィルターを空気乾燥させた。タンパク質ペレットを、80%PBS、10%8M尿素、10%アセトニトリル、および50μg/mLのトシルフェニルアラニルクロロメチルケトン(TPCK)処理されたトリプシン(ウェルあたり6.0μg)から構成される120μLのバッファーに可溶化した。フィルタープレートを密封し、Fisher Isotemp Shake Touchにおいて37℃で900rpmにて12~18時間インキュベートした。
【0137】
(実施例6)
オンフィルタータンパク質消化および加圧濾過
組織溶解物の取り扱いのためのエッペンドルフチューブの使用と比較して、サンプル処理能力向上およびワークフロー能力を高めるためにフィルタープレートを使用した。エッペンドルフチューブおよびフィルタープレートにおけるタンパク質沈降およびペレット消化の間の比較は、骨格筋溶解物からのジストロフィン回収の同様の効率を示し、アッセイにおけるフィルタープレート使用の有益性を示した。同じ実験において、室温におけるタンパク質沈降のフィルタープレート取り扱いが、4℃で行われたフィルタープレートタンパク質沈降とジストロフィンペプチドの同様の回収をもたらすことも示された。
【0138】
プレートを短時間スピンダウンし(≦400rpm、15秒間)、各サンプルにPBS中30μLの50ng/μL TPCK-トリプシン(ウェルあたり1.5μg)を添加することによって、ペレットをさらに可溶化し、ThermoMixerにおいて900rpmで振とうしながら37℃で2.5~3.5時間インキュベートした。プレートを短時間スピンダウンし、加圧マニホールドを使用し、消化混合物を、フィルタープレートの下に置かれた1.5mL 96ディープウェル収集プレートに直接濾過した。20psiの初回圧力を使用し、状況に応じて調整した。100μL(50μLも使用され得る)のPBSおよび加圧濾過を使用して、フィルタープレートを洗浄した。各サンプルに10μLの新たに調製された150mMジチオトレイトールを添加することによって、ジスルフィド還元を60℃で50~70分間行い、その後に、10μLの300mMヨードアセトアミドを用いた、室温にて暗所での50~70分間のアルキル化が続いた。その後、10μLの100ng/μL LysC-トリプシンを添加することによって、サンプルを37℃で≧3時間消化した。サンプルを、高速LC-MS(Dionex UltiMate(商標)3000;ThermoFisher)にインジェクトした。
【0139】
(実施例7)
IA LC-MSアッセイ
IA LC-MSの詳細な説明は、Palandraら(2013)Anal Chem 85(11):5522~5529に記載されている。オンライン免疫アフィニティー(IA)、液体クロマトグラフィー(LC)法の構成を、より高い堅牢性および再現性のために、前方溶出および後方洗浄にトラップカラムに対して最適化した。IA-LC-MS/MS構成は、図1Aに要約されている(表1も参照されたい)。抗体カラムを室温で維持する。簡潔には、サンプルをロードし、抗体カラムを通る流れをバルブAによって制御する。関心対象のペプチドは捕捉され、不要なペプチドおよび夾雑物は廃棄物に除去される(バルブB)。抗体カラムを25mMギ酸アンモニウム、それに続いて水中0.5%トリフルオロ酢酸で洗浄して、標的ペプチドをC18トラップに溶出する。クロマトグラフィー分離を、その後、アセトニトリル/ギ酸/水バッファーを用いて、0.6μl/分の流速でThermo Easy Spray PepMap C18において達成する。このアッセイに関して、温度制御されたオートサンプラーを5℃および80μLのインジェクション容量に設定した。ヒトサンプルの分析は、LLQVAVEDR(配列番号200)およびLEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)ペプチドに対する2種の抗ペプチド抗体を持する単一の抗ペプチドAbカラムを使用した。DMDmdxラットサンプルの分析は、ペプチドLLQVAVEDR(配列番号200)およびSLEGSDDAVLLQR(配列番号179)に対する抗ペプチド抗体を利用した。
【0140】
すべての特注抗ペプチド抗体(免疫グロブリンG)は、Cambridge Research Biochemicalsによって作出され、抗ペプチドカラムは社内で調製された。抗ペプチド抗体カラムを、IDEX Biosafe Column System(2.1mm×30mm×2.0μm)を使用して調製した。抗体溶液を、カラムあたりの抗体あたり0.30~0.40(抗LLQVに関して)および0.8~1.0(抗配列番号236に関して)mgに及ぶ抗LLQVAVEDR(配列番号200)および抗LEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)抗体を含むように調製した。抗SLEGSDDAVLLQR(配列番号179)を、抗体カラムあたり0.5mgで使用した。トラップカラムおよびナノLCを60℃の温度で維持し、抗抗体カラムからの溶出液を、5μmの粒子サイズ、100Åの細孔サイズ、300μmの直径、5mmの長さを有するPepMap(商標)100 C18(ThermoFisher)を取り付けられたμ-Precolumn Cartridgeで収集した。クロマトグラフィー分離を、Easy-Spray PepMap C18カラム(75μm×15cm)を使用して達成した。
【0141】
ナノフロークロマトグラフィーからの溶出液を、3000Vのカップリングスプレー電圧および1.5mTorrの衝突ガス圧を用いて、60℃でEasy Sprayイオン化源(ThermoFisher)に導入した。ペプチドの検出を、正イオンモードの多重反応モニタリング(MRM)によってQuantiva Triple Quadrupole MS(ThermoFisher)で実施した。遷移加算(transition summing)を使用して、校正標準物質および品質管理を含めた、各ペプチドに対するアッセイのシグナルおよび感度を増強した。主な前駆体イオンからフラグメントへの遷移を、各MRMサイクルの間に複数回スキャンした。次いで、複数の産物イオンを含めた遷移を組み合わせ、それは、加算された定量可能な曲線下面積(AUC)を生み出した。MS取得時間は約14.5分間であり、予想保持時間は、LLQVAVEDR(配列番号200)およびLEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)についてそれぞれ11.1±1.5および12.1±1.5分間であった。
【0142】
抗体カラムポンプでの高い流速および抗体カラムの大きな結合能は、分析的ナノフロークロマトグラフィー、および質量分析計でのナノスプレーイオン化によって提供される感度増大を生かしながら、比較的大容量の加工サンプルが迅速にロードされるのを可能にした。これは、ジストロフィン等の低存在量タンパク質の検出に重要である。結合しているペプチドは抗体カラムから溶出され、トラップカラムに捕捉される。LC流路を、ペプチドが次いで分析カラムにトラップを通って前方に溶出され、一方でシステム内の任意の集積が廃棄物へ後方に流される(バルブB)ように構成し、トラップがきれいなままであることを確実にした。
【0143】
質量分析パラメーター設定および多重反応モニタリング(MRM)遷移が、表2に提供される。エコー遷移加算は、ピーク面積を増加させ、ランダムノイズを平均化することによって、共通のジストロフィン(dysstophin)ペプチド(配列番号200)を向上させるように容易に適用され得る。エコー遷移加算を、操作されたジストロフィンペプチド(配列番号236)にも使用して、MS感度をさらに増強し、シグナル対ノイズを向上させた。
【0144】
【表1】
【0145】
【表2】
【0146】
このアッセイに関して、温度制御されたオートサンプラーを5℃および100μLのインジェクション容量に設定した。室温で維持された抗抗体カラムを使用し、すべての抗ペプチド抗体をそれぞれ0.5mgでパッキングした。すべての特注抗ペプチド抗体(免疫グロブリンG)は、Cambridge Research Biochemicalsによって作出され、抗ペプチドカラムは社内で調製された。LEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)およびLLQVAVEDR(配列番号200)に対する抗ペプチド抗体カラムを、Applied Biosystemsカラムボディまたは等価物(2.1mm×30mm)を使用して調製した。トラップカラムおよびナノLCを60℃の温度で維持し、抗抗体カラムからの溶出液を、5μmの粒子サイズ、100Åの細孔サイズ、300μmの直径、5mmの長さを有するPepMap(商標)100 C18(ThermoFisher)を取り付けられたμ-Precolumn Cartridgeで収集した。クロマトグラフィー分離を、Easy-Spray PepMap C18カラム(3μmの粒子サイズ、100Åの細孔サイズ、75μm×15cm)を使用して達成した。
【0147】
ナノフロークロマトグラフィーからの溶出液を、3000Vのカップリングスプレー電圧および1.5mTorrの衝突ガス圧を用いて、60℃でEasy Sprayイオン化源(ThermoFisher)に導入した。ペプチドの検出を、正イオンモードの多重反応モニタリング(MRM)によってQuantiva Triple Quadrupole MS(ThermoFisher)で実施した。遷移加算を使用して、校正標準物質および品質管理を含めた、各ペプチドに対するアッセイのシグナルおよび感度を増強した。主な前駆体イオンからフラグメントへの遷移を、各MRMサイクルの間に複数回スキャンした。次いで、複数の産物イオンを含めた遷移を組み合わせ、それは、加算された定量可能な曲線下面積(AUC)を生み出した。MS取得時間は約14.5分間であった。
【0148】
ペプチド配列番号200および配列番号236を、両ペプチドで20.0~3333fmol/mL(=pM)の濃度域に関して、ヒト骨格筋サンプル溶解物におけるジストロフィンおよびミニ-ジストロフィンの分析について検証することに成功した。アッセイ間およびアッセイ内の精度は≦20%(定量下限で≦25%、LLQVAVEDR(配列番号200))であり、ラン間およびラン内の相対誤差は±20%以内(LLOQで±25%)であった(表3)。正常溶解物プールに、BCAアッセイによって決定される、1470fmol/mLの内因性ジストロフィン濃度および0.490mg/mLの総タンパク質濃度の両方を割り当てることに成功した。
【0149】
【表3】
【0150】
LLQVおよびLEMPペプチドに対する逆算されたミニ-ジストロフィン校正標準物質が、表4に提示される。校正曲線、ならびにペプチドLLQVAVEDR(配列番号200)およびLEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)に対する代表的なイオンクロマトグラムが、図5A~5Lに示されている。
【0151】
加工サンプル安定性を-70℃で最高1週間確率し(表5)、オートサンプラー安定性を最高72時間確率した。正常溶解物は、-70℃における保管後の30週間の試験期間(表6)、ならびに最高2サイクルの凍結および融解(表7)にわたって安定であることが見い出された。アッセイ感度は維持され、校正用物質の安定性を裏付けた。これらの結果は、内因性ジストロフィンおよび操作されたジストロフィンの低レベルの検出に関してさえ、特に相対誤差および精度の点において、方法の高い性能を裏付ける。方法の再現性は、キャピラリーウェスタン免疫アッセイ(PLoS One 13(4):e0195850)およびハイスループット免疫蛍光(PLoS One 13(3):e0194540)を含めた、ジストロフィンの定量のための他の公開された技法のものと比べて遜色がなく、伝統的ウェスタンブロットに関して報告されたもの(Neurology 83(22):2062~2069)に勝る。
【0152】
【表4】
【0153】
【表5】
【0154】
【表6】
【0155】
保管されたQCサンプルの平均濃度が、CV≦20%を有するそれらの名目濃度と比較して±20%以内である場合、安定性が実証される。
【0156】
【表7】
【0157】
(実施例8)
定量ストラテジー
ジストロフィン発現を、健常サンプルプールにおけるジストロフィン発現についてのパーセンテージとして計算した。操作されたジストロフィンタンパク質(fmol/mL)を、総タンパク質(mg)についてのパーセンテージとして計算し、操作されたジストロフィンタンパク質標準曲線に対して逆算した。校正標準物質を、溶解バッファー中0.7%ヒト血清中に新たに調製した。操作されたジストロフィンタンパク質を、タンパク質抽出および消化の前に、正常またはDMD溶解物にスパイクした。操作されたジストロフィンタンパク質校正物濃度は、3333、2500、1667、833、407、208、104、52.1、26.0、20.0、および0fmol/mLであった。二つ組の校正標準物質を各96ウェルプレートに含めた。
【0158】
総タンパク質品質管理(QC)サンプルを、4つの複製物で新たに調製しかつ測定した。健常組織QCサンプルは、溶解バッファーに3×希釈された正常組織溶解物、内因性正常組織溶解物、および1500μg/mL BSAをスパイクされた内因性正常組織溶解物(1500μg/mL)であった。等価のDMD組織QCサンプルを、内因性正常組織溶解物とDMD組織溶解物とを1:1比で混合することによって調製される第4のQCサンプルとともに調製した。健常、BMD、およびDMD溶解物サンプルからのペプチド濃度を、光度測定BCAアッセイ(Pierce(商標)BCAタンパク質分析キット、ThermoFisher)によって決定される、総タンパク質含有量に対して正規化した。
【0159】
すべてのLC-MS/MSデータを、TraceFinder(商標)General Quan v.4.2(ThermoFisher)によって作成した。校正曲線サンプルからの関連付けされた生データを使用して、ピークを保持時間によって同定した(ICIS検出アルゴリズムを使用した単一ピーク検出、初期設定)。すべての関連付けされた遷移加算からのピーク面積をコンパイルし、AUCをワトソンLIMSにインポートした。次いで、AUCデータを、校正曲線から逆算されたデータに基づき、濃度について分析した。校正曲線を、線形回帰モデルおよび1/x重み付けを用いてフィットさせた。
【0160】
対照組織ジストロフィン発現は、LLQVペプチドに基づき、対照平均発現の発現域65~149%(100%、中央値93%;3440fmol/mg)を有した(図3)。BMD筋肉において、発現域は、正常平均の4~85%(平均32%、中央値26%;1089fmol/mg)であり、DMD筋肉において、発現域は、正常平均の0.4~24.1%(平均5%、中央値2%;186fmol/mg)であり、20個のうち7個のDMDサンプルにおいてジストロフィンは定量不能であった。組織溶解物におけるジストロフィンに対するLC-MSアッセイのLLOQは20.0fmol/mLであったが;しかしながら、総タンパク質のfmol/mg単位でのジストロフィンの正規化された組織LLOQは、使用された組織または総タンパク質の量に依存し、溶解物ジストロフィンLLOQ(20.0fmol/mL)を溶解物における総タンパク質濃度(mg/mL)で割ることによって導き出される。すべての定量化下限未満(BLQ)の結果に関して、ジストロフィン溶解物濃度を、要約統計量およびグラフ提示のために0.5*LLOQとしてインピュート(impute)した。DMDを有すると診断された1人の患者は、24.1%の発現レベルを有し、BMDに一般的に特徴的なインフレーム変異(ex 3~30 del)を有した。重要なことに、DMDと非ジストロフィー筋肉との間に平均(95%信頼区間)ジストロフィン発現の重複はなかった(図3)。DMDを有する患者におけるジストロフィンの平均レベルは5%として測定され、本発明は、健常組織におけるものの>10%のレベルの内因性ジストロフィンの発現が、より重度の疾患表現型から守るのに十分であり得るという以前の報告と一致している。同様に、BMDを有する患者における32%というジストロフィン発現の平均は、天然ジストロフィンの約30%が、筋衰弱を低下させるのに十分であり得ることを示唆する以前の報告と一致した。
【0161】
所与の治療に対する応答を評価するために、治療前のジストロフィンレベルが正確に定量される必要がある。DMDを有するほとんどの患者は、微量のジストロフィンを産生するまたはリバータントファイバーを有することから、ジストロフィンを定量する方法は、低レベルの発現を区別するのに充分高感度でなければならない。本発明の方法は、ジストロフィン発現のごくわずかな差を検出することができ、DMDリバータントファイバーを検出するのに充分高感度である。本発明の方法は、BMDまたはDMDを有する患者に見られるジストロフィン発現の不均一性を反映し、キャピラリーウェスタン免疫アッセイを使用して報告されたものと相対的に同様であった(BMD、10~90%;DMD、0.7~7%)(PLoS One 13(4):e0195850)。同じ調査において、健常ヒト組織におけるジストロフィン発現は、使用された抗体に応じて49~149%または32~173%に及び、ウェスタンブロット法における抗体選択の重要性、およびその結果として高い変動性の可能性を強調した。
【0162】
年齢を合致させた健常、BMD、およびDMD筋肉サンプルからの代表的なLLQVAVEDR(配列番号200)ペプチド抽出イオンクロマトグラムが、図4A~4Fに示されている。予想どおり、ペプチドLEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)は、サンプルのいずれにおいても検出されなかった。
【0163】
健常な男性と女性との間に、ジストロフィン発現の明らかな差はなかった(図8A)。平均総タンパク質濃度は、健常、BMD、およびDMD筋肉サンプルにわたって一貫しているように見え、一方、観察された変動性は、10um切片が切り出された組織ブロックの様々なサイズの結果である(図8B)。
【0164】
(実施例9)
方法検証
正常ヒト組織溶解物に対する検証サンプルは、内因性、10×希釈された内因性、および833fmol/mLの操作されたジストロフィンタンパク質をスパイクされた内因性であった。ヒトDMD検証サンプルは、内因性、ならびに41.6および833fmol/mLの操作されたジストロフィンタンパク質をスパイクされた内因性であった。アッセイ内およびアッセイ間の精度を、許容基準:QCサンプル(低い、中間、高い)に対する≦25.0%(LLOQでは≦30%)の全体的精度(変動係数[CV]%)および正確性(相対誤差%)、について評価した。安定性調査は、溶解物卓上安定性、72時間オートインジェクター安定性、7日間加工サンプル安定性、および-70℃における2サイクルの凍結-融解を査定した。その一方で、検証の正確性および精度部分の間に、正常溶解物プールに濃度を割り当てた。
【0165】
(実施例10)
AAV9-操作されたジストロフィン候補遺伝子療法で処理されたDMDmdxラット由来の骨格筋における操作されたジストロフィンタンパク質の定量
内因性全長ジストロフィン、および操作されたジストロフィンのAAV媒介性発現を、用量探索有効性調査におけるAAV9.hCK.Hopti-Dys3978.spAの単回静脈内投与の後に、DMDmdxラットから取得された大腿二頭筋(bicep femoris)筋肉サンプルにおいて定量した。結果は、ビヒクル対照ラット群、ならびにAAV9.hCK.Hopti-Dys3978.spAの1×1013、3×1013、1×1014、および3×1014ベクターゲノム/kgの4匹のDMDmdxラット用量群に対する投与の6ヶ月(mo)後に収集された筋肉サンプルに関して提示される(図6Aおよび図6B)。未処理の野生型(WT)ラットからも筋肉サンプルを収集した。ヒトおよびラットにわたって保存されており、総ジストロフィン(内因性ジストロフィン(配列番号242))および配列番号243の操作されたジストロフィンを検出する、共通のジストロフィンペプチドLLQVAVEDR(配列番号200);ならびに操作されたジストロフィンのみを検出する、ヒトジストロフィン特異的配列であるSLEGSDDAVLLQR(配列番号179)を、IA LC-MS/MSを使用して定量した。
【0166】
操作されたジストロフィンをコードするAAV9ベクター(AAV9.hCK.Hopti-Dys3978.spA)の種々の用量(1×1013、3×1013、1×1014、および3×1014vg/kg)で処理されたDMDmdxラット由来の大腿二頭筋組織サンプルのIA LC-MS/MS分析は、操作されたジストロフィン発現の用量依存的増加を示した。投与の6ヶ月後に、最大の操作されたジストロフィン発現が、1×1014ベクターゲノム/kg(vg/kg)用量群において観察された(図6Aおよび6B)。SLEGSDDAVLLQR(配列番号179)(操作されたジストロフィン)およびLLQVAVEDR(配列番号200)(共通のジストロフィンペプチド)の発現は同程度であり、またも1×1014vg/kg用量群において最大総ジストロフィン観察された(配列番号179は、ラットに見い出される内因性ジストロフィンに存在しないことから、操作されたジストロフィンペプチドとして機能し得る)(表11を参照されたい)。WTラットと比較して、1×1014vg/kg用量群における操作されたジストロフィンのモルレベルは、ジストロフィンの正常レベルを最高150%上回った。DMDmdxラットにおけるリバータントファイバージストロフィンの濃度は、WTラットにおけるジストロフィン発現の7.4%~10.4%であった。これは、ミリリットルレベルあたり低いフェムトモルのジストロフィンの定量を可能にし、健常ヒト筋肉と比べておよそ1%もの低さのDMD筋肉サンプルにおけるジストロフィンを検出することができた。これらの結果は、種にわたる方法の妥当性、ならびに前臨床調査におけるおよび最終的には臨床調査におけるその潜在的使用を実証する。これは、AAV9.hCK.Hopti-Dys3978.spAの投与の6ヶ月後にミニ-ジストロフィンタンパク質の用量依存的発現を示すことによって、方法論的変化を必要とせずに、前臨床的DMDmdxラット調査における本発明の方法の適用可能性を実証する。臨床試験におけるこのアッセイの適用は、ミニ-ジストロフィン導入遺伝子発現と機能との間の関連性を立証することにおいて、ならびに投薬および投与の方法に関する手引きを提供することにおいて非常に貴重であり得る。
【0167】
(実施例11)
ペプチド選択および組織加工
標的ジストロフィンおよび操作されたジストロフィンペプチド配列が、図1Bに要約されている。内因性ジストロフィンおよび操作されたジストロフィンに存在するペプチドLLQVAVEDR(配列番号200)は、ヒト、クマネズミ(rattus)、およびイヌ族(canis)種において発現される。多様な種における発現は、この標的ペプチドおよびアッセイを、臨床および前臨床研究における使用にとって実用的にする。クマネズミ(rattus)およびイヌ族(canis)種において異なるが、ヒト内因性ジストロフィンおよび操作されたジストロフィン配列の一部であるペプチドSLEGSDDAVLLQR(配列番号179)は、前臨床調査における主要なペプチドであり、導入遺伝子を発現する操作されたジストロフィンを報告する。ペプチドLEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)は、配列番号243の操作されたジストロフィンのみに存在し、導入遺伝子タンパク質発現の臨床的査定において使用される。
【0168】
効率的なタンパク質抽出は、大きな膜結合ジストロフィンタンパク質にとって必須である。SDSを用いた組織溶解はジストロフィン抽出に重大であり、最適な抽出は、RIPA溶解バッファー中5%SDSを用いて達成された。SDSは、効率的なタンパク質抽出および分離を可能にするためにウェスタンブロット法において一般的に使用されるが、タンパク質-抗体結合またはLC-MSアッセイにおける他の下流の工程への干渉を阻止するために、その後除去されなければならない。この目的のために、有機溶媒を用いた沈降は、SDSだけでなく、OCT化合物および潜在的夾雑物も除去した。それはサンプルを濃縮する働きもした。筋組織サンプルにおけるOCTの使用は、アッセイ性能に影響を有しなかった。それゆえ、LC-MSおよび組織染色のための切片は、同じ組織ブロックから採取され得る。ジストロフィン発現は、疾患重症度および変異のタイプによって患者間で、ならびに種々の筋肉タイプ内で実質的に変動することが公知である。それゆえ、同じ組織ブロックからの近接切片を分析することができることは、データ解釈の信頼性を向上させ得る。溶解バッファーにおける5%SDSの存在は、ジストロフィンの効率的な抽出に使用されるものの、いかなる残余のSDSも、LC-MS分析の前に除去されるべきである。タンパク質沈降、アセトンを用いたペレットの洗浄、およびLC-MS/MSとオンラインでつながれた抗ジストロフィンペプチド抗体カラムは、LC-MSにおいてシグナルを抑制し得る残余のSDSおよびOCTの有効な除去を可能にした。
【0169】
ウェスタンブロット法とは対照的に、信頼できる定量のための校正物およびQCサンプルを含む十分な収容能力を有する、このアッセイにおける溶解物加工のための96ウェルプレートの使用は、複数のアッセイをランすることを必要とせずに、比較的多くの数のサンプルが同時に調製されるのを可能にした。
【0170】
(実施例12)
IA LC-MS/MSアッセイ
SILAC操作されたジストロフィン(KempBio、Frederick、MD)を、内部標準物質、すなわち外因性ジストロフィン参照タンパク質として使用した。抗体カラムポンプでの高い流速および抗ジストロフィンペプチド抗体カラムの大きな結合能は、分析的ナノフロークロマトグラフィー、および質量分析計でのナノスプレーイオン化によって提供される感度増大を生かしながら、大容量の加工サンプルがロードされるのを可能にした。これは、ジストロフィン等の低存在量タンパク質の検出に重要である。同様の手法は、トランスジェニックマウスおよびヒト組織におけるヒト新生児Fc受容体の定量において上手く採用された(Fanら、Biomolecules.2019;9:373)。
【0171】
質量分析感度をさらに増強しかつシグナル対ノイズを向上させるために、遷移加算をすべてのペプチドに対して使用した。遷移加算は、ピーク面積を増加させ、ランダムノイズを平均化することによって、LLOQを向上させるように容易に適用され得る。
【0172】
(実施例13)
IA LC-MS/MSアッセイ検証
アッセイ間およびアッセイ内の正確性および精度が、表8に要約されている。ペプチドLEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)およびLLQVAVEDR(配列番号200)は、許容基準を満たし、それぞれ6.67~3333fmol/mLおよび1.67~3333fmol/mLの濃度域に関して、ヒト骨格筋サンプル溶解物における内因性ジストロフィンおよび操作されたジストロフィンの分析について検証することに成功した。これらの結果は、内因性ジストロフィンおよび操作されたジストロフィンの非常に低いレベルの検出に関してさえ、方法の高い再現性を裏付ける。方法の再現性は、キャピラリーウェスタン免疫アッセイ(Beekmanら、PLoS One.13、e0195850(2018))およびハイスループット免疫蛍光(Sardoneら、PLoS One.13、e0194540(2018))を含めた、ジストロフィンの定量のため開発されつつある他の技法のものと比べて遜色がなく、伝統的ウェスタンブロットに関して報告されたもの(Schnellら、US Neurol.15、40~46(2019))に勝る。
【0173】
LLQVAVEDR(配列番号200)に関するアッセイ間の正確性および精度は、内因性ジストロフィンが検出不能であるスパイクされたDMDサンプルにおいてのみ査定され得た。それぞれの新たに調製された組織サンプルにおけるジストロフィン濃度は、組織形態学の潜在的な差に起因して異なると推測された。
【0174】
溶解物サンプルは、室温で5時間、および-70℃における4週間の凍結-融解後に安定であった。内因性ジストロフィンが検出され、レベルは、-80℃における保管後の5ヶ月間の試験期間にわたって安定であった。アッセイ感度は維持され、校正用物質の安定性を裏付けた。
【0175】
【表8】
【0176】
(実施例14)
正常、BMD、およびDMD筋肉におけるジストロフィン発現
健常対象、およびBMDまたはDMDを有する患者由来の20個の骨格筋生検サンプルを、ジストロフィン発現分析のために取得した。サンプルのおよそ90%は、四頭筋から生検された。1人の患者生検は腓腹筋から収集され、4個のサンプルの筋供給源は不明であった。健常対象サンプルを、男性(n=12)および女性(n=8)から収集した。生検の時点における平均年齢(域)は、健常対象、BMDを有する患者、およびDMDを有する人に関して、それぞれ9.7(4~16)、8.3(3~19)、および6.0(3~10)歳であった。溶解物におけるジストロフィンおよび総タンパク質分析からの個々の結果は表9において入手可能であり、要約統計量は表10に提示される。
【0177】
正常組織ジストロフィン発現は、LLQVAVEDR(配列番号200)ペプチドに基づき、正常平均発現の発現域61~148%(100%)とともに23%CVを有した(図3)。BMD筋肉において、発現域は、正常平均の3~81%(平均32%、n=20)であり、DMD筋肉において、発現域は、正常平均の0.4~11.4%(平均5%、n=16)であり、20個のうち3個のDMDサンプルにおいてジストロフィンは検出されなかった。DMDを有する1人の患者は、28.1%の発現レベルを伴い、BMDに一般的に特徴的なインフレーム変異を有した。重要なことに、DMDと健常筋肉との間にジストロフィン発現の重複はなかった(図3)。これらの結果は、DMDを有する患者におけるジストロフィンの最も高いレベルが11.4%として測定され、健常組織におけるものの>10%の天然ジストロフィンの発現が、より重度の疾患表現型から守るのに十分であり得るという以前の報告(van den Bergenら、J.Neurol.Neurosurg.Psychiatry.85、747~753(2014))と概して一致している。同様に、BMDを有する患者における32%というジストロフィン発現の平均は、天然のジストロフィンの約30%が、筋衰弱を低下させるのに十分であり得ることを示唆する以前の報告(Neriら、Neuromuscul.Disord.17、913~918(2007))と一致した。
【0178】
所与の治療に対する応答を評価するために、治療前のジストロフィンレベルが正確に定量される必要がある。DMDを有するほとんどの患者は、微量のジストロフィンを産生するまたはリバータントファイバーを有することから、ジストロフィンを定量する方法は、低レベルの発現を区別するのに充分高感度でなければならない。以前に報告されたLC-MS法は、<5%のジストロフィン発現の差を分解することができていない。本アッセイは、ジストロフィン発現のごくわずかな差を検出することができ、DMDリバータントファイバーを検出するのに充分高感度である。本発明者らの結果は、BMDまたはDMDを有する患者に見られるジストロフィン発現の不均一性を反映し、キャピラリーウェスタン免疫アッセイを使用して報告されたものと相対的に同様であった(BMD、10~90%;DMD、0.7~7%)(Beekmanら、PLoS One.13、e0195850(2018))。同じ調査において、健常ヒト組織におけるジストロフィン発現は、使用された抗体に応じて49~149%または32~173%に及び、ウェスタンブロット法における抗体選択の重要性、およびその結果として高い変動性の可能性を強調した。
【0179】
健常、BMD、およびDMD筋肉サンプルにおけるLLQVAVEDR(配列番号200)とSLEGSDDAVLLQR(配列番号179)との間に強い相関関係があった。予想どおり、ペプチドLEMPSSLMLEVPTHR(配列番号236)は、サンプルのいずれにおいても検出されなかった。
【0180】
健常な男性と女性との間に、ジストロフィン発現の明らかな差はなかった。総タンパク質発現は、健常、BMD、およびDMD筋肉サンプルにわたって一貫しているように見えた。
【0181】
ゆえに、本発明は、上で記載される代表的な実施形態を参照して幅広く開示されかつ例示されている。当業者であれば、本発明に、その精神および範囲から逸脱することなく、様々な改変が加えられ得ることを認識するであろう。すべての刊行物、特許出願、および交付された特許は、あたかもそれぞれ個々の刊行物、特許出願、または交付された特許が、参照によりその全体として組み入れられることを具体的にかつ個々に示されるのと同じ程度に、参照により本明細書に組み入れられる。参照により組み入れられた文章に含有される定義は、それらが本開示における定義と相反する程度まで除外される。
【0182】
明瞭性のために別個の実施形態の文脈に記載される、本発明のある特定の特質は、単一の実施形態において組み合わせでも提供され得ることが解される。反対に、簡潔性のために単一の実施形態の文脈に記載される、本発明の様々な特質は、別個にまたは任意の適切な部分組み合わせでも提供され得る。
【0183】
本発明の1つの実施形態に関して論じられる任意の限定は、本発明の任意の他の実施形態に適用され得ることが具体的に企図される。さらに、本発明の任意の組成物は、本発明の任意の方法において使用され得、本発明の任意の方法を使用して、本発明の任意の組成物を産生し得るまたは利用し得る。特に、単独での、または1つもしくは複数の付加的な請求項および/もしくは説明の態様との組み合わせでの、特許請求の範囲に記載される本発明の任意の態様は、特許請求の範囲および/または説明および/または配列表および/または図面における他の箇所に示される本発明の他の態様と組み合わせ可能であると理解されるべきである。
【0184】
本明細書に見い出される具体的な例が、本発明の範囲内に入らない限りにおいて、前記具体的な例は明示的に放棄され得る。
【0185】
特許請求の範囲および/または本明細書において「含む(comprising)」という用語と併せて使用される「a」または「an」という単語の使用は、「1つ」を意味し得るが、それは、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つを上回る」という意味とも矛盾しない。
【0186】
本出願を通して、「約」という用語は、値が、該値を決定するために採用されている装置または方法に対する誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。例えば、約は、値の±10%であり得る。
【0187】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すまたは代替物が相互排他的であることを明示的に示されない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、とはいえ本開示は、代替物のみを指す定義および「および/または」を支持する。
【0188】
本明細書および特許請求の範囲において使用するとき、「含む(comprising)」(ならびに、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」等の含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(ならびに、「有する(have)」および「有する(has)」等の有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(ならびに、「含む(includes)」および「含む(include)」等の含む(including)の任意の形態)、または「含有する(containing)」(ならびに、「含有する(contains)」および「含有する(contain)」等の含有する(containing)の任意の形態)という単語は、包括的または無制限であり、付加的な挙げられていない要素または方法工程を除外しない。
【0189】
本明細書において使用するとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、「含有する(containing)」、「によって特徴付けられる」という用語、またはその任意の他の変形は、別様に明示的に示される任意の限定によっては、挙げられた構成要素の非排他的な内包を包含することを意図される。例えば、要素(例えば、構成要素または特質または工程)の列挙を「含む(comprises)」化学的組成物および/または方法は、必ずしもそれらの要素(または構成要素または特質または工程)のみに限定されるわけではないが、明確に列挙されていないまたは化学的組成物および/もしくは方法に固有の他の要素(または構成要素または特質または工程)を含み得る。
【0190】
本明細書において使用するとき、「からなる(consists of)」および「からなる(consisting of)」という移行句は、指定されないいかなる要素、工程、または構成要素も除外する。例えば、請求項において使用される「からなる(consists of)」または「からなる(consisting of)」は、請求項に具体的に挙げられた構成要素、材料、または工程に、それに通常伴う不純物(すなわち、所与の構成要素内の不純物)を除いて、請求項を限定するであろう。「からなる(consists of)」または「からなる(consisting of)」という語句が、プリアンブルの直後ではなく、請求項の本体部の条項に出現する場合、「からなる(consists of)」または「からなる(consisting of)」という語句は、その条項に記載された要素(または構成要素または工程)のみを限定し;他の要素(または構成要素)は、全体として該請求項から除外されない。
【0191】
本明細書において使用するとき、「から本質的になる(consists essentially of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句は、文字どおり開示されたものに加えて、材料、工程、特質、構成要素、または要素を、これらの付加的な材料、工程、特質、構成要素、または要素が、請求される発明の基本的でかつ新規の特徴に著しく影響を及ぼさないという条件で含む、化学的組成物および/または方法を定義するために使用される。「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、「含む(comprising)」と「からなる(consisting of)」との間の中間の立場をとる。
【0192】
本発明の他の目的、特質、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の精神および範囲の内の様々な変化および改変が、この詳細な説明から当業者に明らかになるであろうことから、詳細な説明および具体的な例は、本発明の具体的な実施形態を示すものの、単なる例示として与えられることが理解されるべきである。
【0193】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すまたは代替物が相互排他的であることを明示的に示されない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、とはいえ本開示は、代替物のみを指す定義および「および/または」を支持する。本明細書において使用するとき、「a」または「an」は、別様にはっきりと示されない限り、1つまたは複数を意味し得る。請求項において本明細書において使用するとき、「含む(comprising)」という単語と併せて使用される場合、「a」または「an」という単語は、1つまたは1つを上回るを意味し得る。本明細書において使用するとき、「別の」は、少なくとも第2またはそれ以降を意味し得る。本明細書において別様に定義されない限り、本発明に関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者によって共通に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって別様に必要とされない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。「含む/含む(comprises/comprising)」という単語および「有する/含む(having/including)」という単語は、本発明に関連して本明細書において使用される場合、明記された特質、整数、工程、または構成要素の存在を指定するために使用されるが、1つまたは複数の他の特質、整数、工程、構成要素、またはその群の存在または付加を排除するわけではない。
【0194】
開示される教示は、様々な適用、方法、および組成物に関連して記載されているものの、本明細書における教示および下で請求される発明から逸脱することなく、様々な変化および改変が加えられ得ることが解されるであろう。例は、開示される教示をよりよく例示するために提供され、本明細書に提示される教示の範囲を限定することを意図されるわけではない。本教示は、これらの例示的な実施形態の観点から記載されているものの、これらの例示的な実施形態の数多くの変形および改変が、過度の実験なしで可能である。すべてのそのような変形および改変は、本教示の範囲内にある。
【0195】
本発明の態様または実施形態が、マーカッシュ群または代替物の他のグループ化の観点から記載される場合、本発明は、列挙された群全部を全体として、しかし個々に群の各メンバーを、および主たる群のすべての考え得る部分群を包含するだけでなく、群メンバーの1つまたは複数が欠けている主たる群も包含する。本発明は、請求される発明における群メンバーのいずれかの1つまたは複数の明示的な除外も想定する。
【0196】
特許、特許出願、論文、教科書等を含めた、本明細書において引用されるすべての参考文献、ならびにその中に引用される参考文献は、それらがまだである程度まで、参照によりそれらの全体として本明細書によって組み入れられる。組み入れられた文献および同様の材料のうちの1つまたは複数が、定義された用語、用語使用法、記載された技法等を含むがそれらに限定されない本出願と異なるまたは相反する事象では、本出願が優先される。
【0197】
説明および例は、本発明のある特定の具体的な実施形態を詳述し、本発明者らによって企図される最善の様態を記載する。しかしながら、前述のものがどんなに詳細に文章に出現し得るとしても、本発明は多くのやり方で実践され得、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその任意の均等物に従って解釈されるべきであることが解されるであろう。
【0198】
【表9-1】
【0199】
【表9-2】
【0200】
【表9-3】
【0201】
【表10】
【0202】
【表11-1】
【0203】
【表11-2】
【0204】
【表11-3】
【0205】
【表11-4】
【0206】
【表11-5】
【0207】
【表11-6】
【0208】
【表11-7】
【0209】
【表11-8】
【0210】
【表11-9】
【0211】
【表11-10】
【0212】
【表12】
【0213】
全長ヒトジストロフィンの配列(Uniprot ID:P11532)(配列番号242)
MLWWEEVEDCYEREDVQKKTFTKWVNAQFSKFGKQHIENLFSDLQDGRRLLDLLEGLTGQKLPKEKGSTRVHALNNVNKALRVLQNNNVDLVNIGSTDIVDGNHKLTLGLIWNIILHWQVKNVMKNIMAGLQQTNSEKILLSWVRQSTRNYPQVNVINFTTSWSDGLALNALIHSHRPDLFDWNSVVCQQSATQRLEHAFNIARYQLGIEKLLDPEDVDTTYPDKKSILMYITSLFQVLPQQVSIEAIQEVEMLPRPPKVTKEEHFQLHHQMHYSQQITVSLAQGYERTSSPKPRFKSYAYTQAAYVTTSDPTRSPFPSQHLEAPEDKSFGSSLMESEVNLDRYQTALEEVLSWLLSAEDTLQAQGEISNDVEVVKDQFHTHEGYMMDLTAHQGRVGNILQLGSKLIGTGKLSEDEETEVQEQMNLLNSRWECLRVASMEKQSNLHRVLMDLQNQKLKELNDWLTKTEERTRKMEEEPLGPDLEDLKRQVQQHKVLQEDLEQEQVRVNSLTHMVVVVDESSGDHATAALEEQLKVLGDRWANICRWTEDRWVLLQDILLKWQRLTEEQCLFSAWLSEKEDAVNKIHTTGFKDQNEMLSSLQKLAVLKADLEKKKQSMGKLYSLKQDLLSTLKNKSVTQKTEAWLDNFARCWDNLVQKLEKSTAQISQAVTTTQPSLTQTTVMETVTTVTTREQILVKHAQEELPPPPPQKKRQITVDSEIRKRLDVDITELHSWITRSEAVLQSPEFAIFRKEGNFSDLKEKVNAIEREKAEKFRKLQDASRSAQALVEQMVNEGVNADSIKQASEQLNSRWIEFCQLLSERLNWLEYQNNIIAFYNQLQQLEQMTTTAENWLKIQPTTPSEPTAIKSQLKICKDEVNRLSDLQPQIERLKIQSIALKEKGQGPMFLDADFVAFTNHFKQVFSDVQAREKELQTIFDTLPPMRYQETMSAIRTWVQQSETKLSIPQLSVTDYEIMEQRLGELQALQSSLQEQQSGLYYLSTTVKEMSKKAPSEISRKYQSEFEEIEGRWKKLSSQLVEHCQKLEEQMNKLRKIQNHIQTLKKWMAEVDVFLKEEWPALGDSEILKKQLKQCRLLVSDIQTIQPSLNSVNEGGQKIKNEAEPEFASRLETELKELNTQWDHMCQQVYARKEALKGGLEKTVSLQKDLSEMHEWMTQAEEEYLERDFEYKTPDELQKAVEEMKRAKEEAQQKEAKVKLLTESVNSVIAQAPPVAQEALKKELETLTTNYQWLCTRLNGKCKTLEEVWACWHELLSYLEKANKWLNEVEFKLKTTENIPGGAEEISEVLDSLENLMRHSEDNPNQIRILAQTLTDGGVMDELINEELETFNSRWRELHEEAVRRQKLLEQSIQSAQETEKSLHLIQESLTFIDKQLAAYIADKVDAAQMPQEAQKIQSDLTSHEISLEEMKKHNQGKEAAQRVLSQIDVAQKKLQDVSMKFRLFQKPANFEQRLQESKMILDEVKMHLPALETKSVEQEVVQSQLNHCVNLYKSLSEVKSEVEMVIKTGRQIVQKKQTENPKELDERVTALKLHYNELGAKVTERKQQLEKCLKLSRKMRKEMNVLTEWLAATDMELTKRSAVEGMPSNLDSEVAWGKATQKEIEKQKVHLKSITEVGEALKTVLGKKETLVEDKLSLLNSNWIAVTSRAEEWLNLLLEYQKHMETFDQNVDHITKWIIQADTLLDESEKKKPQQKEDVLKRLKAELNDIRPKVDSTRDQAANLMANRGDHCRKLVEPQISELNHRFAAISHRIKTGKASIPLKELEQFNSDIQKLLEPLEAEIQQGVNLKEEDFNKDMNEDNEGTVKELLQRGDNLQQRITDERKREEIKIKQQLLQTKHNALKDLRSQRRKKALEISHQWYQYKRQADDLLKCLDDIEKKLASLPEPRDERKIKEIDRELQKKKEELNAVRRQAEGLSEDGAAMAVEPTQIQLSKRWREIESKFAQFRRLNFAQIHTVREETMMVMTEDMPLEISYVPSTYLTEITHVSQALLEVEQLLNAPDLCAKDFEDLFKQEESLKNIKDSLQQSSGRIDIIHSKKTAALQSATPVERVKLQEALSQLDFQWEKVNKMYKDRQGRFDRSVEKWRRFHYDIKIFNQWLTEAEQFLRKTQIPENWEHAKYKWYLKELQDGIGQRQTVVRTLNATGEEIIQQSSKTDASILQEKLGSLNLRWQEVCKQLSDRKKRLEEQKNILSEFQRDLNEFVLWLEEADNIASIPLEPGKEQQLKEKLEQVKLLVEELPLRQGILKQLNETGGPVLVSAPISPEEQDKLENKLKQTNLQWIKVSRALPEKQGEIEAQIKDLGQLEKKLEDLEEQLNHLLLWLSPIRNQLEIYNQPNQEGPFDVKETEIAVQAKQPDVEEILSKGQHLYKEKPATQPVKRKLEDLSSEWKAVNRLLQELRAKQPDLAPGLTTIGASPTQTVTLVTQPVVTKETAISKLEMPSSLMLEVPALADFNRAWTELTDWLSLLDQVIKSQRVMVGDLEDINEMIIKQKATMQDLEQRRPQLEELITAAQNLKNKTSNQEARTIITDRIERIQNQWDEVQEHLQNRRQQLNEMLKDSTQWLEAKEEAEQVLGQARAKLESWKEGPYTVDAIQKKITETKQLAKDLRQWQTNVDVANDLALKLLRDYSADDTRKVHMITENINASWRSIHKRVSEREAALEETHRLLQQFPLDLEKFLAWLTEAETTANVLQDATRKERLLEDSKGVKELMKQWQDLQGEIEAHTDVYHNLDENSQKILRSLEGSDDAVLLQRRLDNMNFKWSELRKKSLNIRSHLEASSDQWKRLHLSLQELLVWLQLKDDELSRQAPIGGDFPAVQKQNDVHRAFKRELKTKEPVIMSTLETVRIFLTEQPLEGLEKLYQEPRELPPEERAQNVTRLLRKQAEEVNTEWEKLNLHSADWQRKIDETLERLQELQEATDELDLKLRQAEVIKGSWQPVGDLLIDSLQDHLEKVKALRGEIAPLKENVSHVNDLARQLTTLGIQLSPYNLSTLEDLNTRWKLLQVAVEDRVRQLHEAHRDFGPASQHFLSTSVQGPWERAISPNKVPYYINHETQTTCWDHPKMTELYQSLADLNNVRFSAYRTAMKLRRLQKALCLDLLSLSAACDALDQHNLKQNDQPMDILQIINCLTTIYDRLEQEHNNLVNVPLCVDMCLNWLLNVYDTGRTGRIRVLSFKTGIISLCKAHLEDKYRYLFKQVASSTGFCDQRRLGLLLHDSIQIPRQLGEVASFGGSNIEPSVRSCFQFANNKPEIEAALFLDWMRLEPQSMVWLPVLHRVAAAETAKHQAKCNICKECPIIGFRYRSLKHFNYDICQSCFFSGRVAKGHKMHYPMVEYCTPTTSGEDVRDFAKVLKNKFRTKRYFAKHPRMGYLPVQTVLEGDNMETPVTLINFWPVDSAPASSPQLSHDDTHSRIEHYASRLAEMENSNGSYLNDSISPNESIDDEHLLIQHYCQSLNQDSPLSQPRSPAQILISLESEERGELERILADLEEENRNLQAEYDRLKQQHEHKGLSPLPSPPEMMPTSPQSPRDAELIAEAKLLRQHKGRLEARMQILEDHNKQLESQLHRLRQLLEQPQAEAKVNGTTVSSPSTSLQRSDSSQPMLLRVVGSQTSDSMGEEDLLSPPQDTSTGLEEVMEQLNNSFPSSRGRNTPGKPMREDTM
【0214】
配列番号243:例示される操作されたジストロフィンの配列
MLWWEEVEDCYEREDVQKKTFTKWVNAQFSKFGKQHIENLFSDLQDGRRLLDLLEGLTGQKLPKEKGSTRVHALNNVNKALRVLQNNNVDLVNIGSTDIVDGNHKLTLGLIWNIILHWQVKNVMKNIMAGLQQTNSEKILLSWVRQSTRNYPQVNVINFTTSWSDGLALNALIHSHRPDLFDWNSVVCQQSATQRLEHAFNIARYQLGIEKLLDPEDVDTTYPDKKSILMYITSLFQVLPQQVSIEAIQEVEMLPRPPKVTKEEHFQLHHQMHYSQQITVSLAQGYERTSSPKPRFKSYAYTQAAYVTTSDPTRSPFPSQHLEAPEDKSFGSSLMESEVNLDRYQTALEEVLSWLLSAEDTLQAQGEISNDVEVVKDQFHTHEGYMMDLTAHQGRVGNILQLGSKLIGTGKLSEDEETEVQEQMNLLNSRWECLRVASMEKQSNLHRVLMDLQNQKLKELNDWLTKTEERTRKMEEEPLGPDLEDLKRQVQQHKVLQEDLEQEQVRVNSLTHMVVVVDESSGDHATAALEEQLKVLGDRWANICRWTEDRWVLLQDQPDLAPGLTTIGASPTQTVTLVTQPVVTKETAISKLEMPSSLMLEVPTHRLLQQFPLDLEKFLAWLTEAETTANVLQDATRKERLLEDSKGVKELMKQWQDLQGEIEAHTDVYHNLDENSQKILRSLEGSDDAVLLQRRLDNMNFKWSELRKKSLNIRSHLEASSDQWKRLHLSLQELLVWLQLKDDELSRQAPIGGDFPAVQKQNDVHRAFKRELKTKEPVIMSTLETVRIFLTEQPLEGLEKLYQEPRELPPEERAQNVTRLLRKQAEEVNTEWEKLNLHSADWQRKIDETLERLQELQEATDELDLKLRQAEVIKGSWQPVGDLLIDSLQDHLEKVKALRGEIAPLKENVSHVNDLARQLTTLGIQLSPYNLSTLEDLNTRWKLLQVAVEDRVRQLHEAHRDFGPASQHFLSTSVQGPWERAISPNKVPYYINHETQTTCWDHPKMTELYQSLADLNNVRFSAYRTAMKLRRLQKALCLDLLSLSAACDALDQHNLKQNDQPMDILQIINCLTTIYDRLEQEHNNLVNVPLCVDMCLNWLLNVYDTGRTGRIRVLSFKTGIISLCKAHLEDKYRYLFKQVASSTGFCDQRRLGLLLHDSIQIPRQLGEVASFGGSNIEPSVRSCFQFANNKPEIEAALFLDWMRLEPQSMVWLPVLHRVAAAETAKHQAKCNICKECPIIGFRYRSLKHFNYDICQSCFFSGRVAKGHKMHYPMVEYCTPTTSGEDVRDFAKVLKNKFRTKRYFAKHPRMGYLPVQTVLEGDNMET
【0215】
配列番号244:操作されたジストロフィンの配列(WO2019/245973からの配列番号1の翻訳)
MLWWEEVEDCYEREDVQKKTFTKWVNAQFSKFGKQHIENLFSDLQDGRRLLDLLEGLTGQKLPKEKGSTRVHALNNVNKALRVLQNNNVDLVNIGSTDIVDGNHKLTLGLIWNIILHWQVKNVMKNIMAGLQQTNSEKILLSWVRQSTRNYPQVNVINFTTSWSDGLALNALIHSHRPDLFDWNSVVCQQSATQRLEHAFNIARYQLGIEKLLDPEDVDTTYPDKKSILMYITSLFQVLPQQVSIEAIQEVEMLPRPPKVTKEEHFQLHHQMHYSQQITVSLAQGYERTSSPKPRFKSYAYTQAAYVTTSDPTRSPFPSQHLEAPEDKSFGSSLMESEVNLDRYQTALEEVLSWLLSAEDTLQAQGEISNDVEVVKDQFHTHEGYMMDLTAHQGRVGNILQLGSKLIGTGKLSEDEETEVQEQMNLLNSRWECLRVASMEKQSNLHRVLMDLQNQKLKELNDWLTKTEERTRKMEEEPLGPDLEDLKRQVQQHKVLQEDLEQEQVRVNSLTHMVVVVDESSGDHATAALEEQLKVLGDRWANICRWTEDRWVLLQDILLKWQRLTEEQCLFSAWLSEKEDAVNKIHTTGFKDQNEMLSSLQKLAVLKADLEKKKQSMGKLYSLKQDLLSTLKNKSVTQKTEAWLDNFARCWDNLVQKLEKSTAQISQAVTTTQPSLTQTTVMETVTTVTTREQILVKHAQEELPPPPPQKKRTLERLQELQEATDELDLKLRQAEVIKGSWQPVGDLLIDSLQDHLEKVKALRGEIAPLKENVSHVNDLARQLTTLGIQLSPYNLSTLEDLNTRWKLLQVAVEDRVRQLHEAHRDFGPASQHFLSTSVQGPWERAISPNKVPYYINHETQTTCWDHPKMTELYQSLADLNNVRFSAYRTAMKLRRLQKALCLDLLSLSAACDALDQHNLKQNDQPMDILQIINCLTTIYDRLEQEHNNLVNVPLCVDMCLNWLLNVYDTGRTGRIRVLSFKTGIISLCKAHLEDKYRYLFKQVASSTGFCDQRRLGLLLHDSIQIPRQLGEVASFGGSNIEPSVRSCFQFANNKPEIEAALFLDWMRLEPQSMVWLPVLHRVAAAETAKHQAKCNICKECPIIGFRYRSLKHFNYDICQSCFFSGRVAKGHKMHYPMVEYCTPTTSGEDVRDFAKVLKNKFRTKRYFAKHPRMGYLPVQTVLEGDNMETDTM-
【0216】
配列番号245:WO2016115543-BDC7126からの操作されたジストロフィンSFT-001の配列(マイクロ-dys5;Ck8e-μDys5、配列番号4)
MLWWEEVEDCYEREDVQKKTFTKWVNAQFSKFGKQHIENLFSDLQDGRRLLDLLEGLTGQKLPKEKGSTRVHALNNVNKALRVLQNNNVDLVNIGSTDIVDGNHKLTLGLIWNIILHWQVKNVMKNIMAGLQQTNSEKILLSWVRQSTRNYPQVNVINFTTSWSDGLALNALIHSHRPDLFDWNSVVCQQSATQRLEHAFNIARYQLGIEKLLDPEDVDTTYPDKKSILMYITSLFQVLPQQVSIEAIQEVEMLPRPPKVTKEEHFQLHHQMHYSQQITVSLAQGYERTSSPKPRFKSYAYTQAAYVTTSDPTRSPFPSQHLEAPEDKSFGSSLMESEVNLDRYQTALEEVLSWLLSAEDTLQAQGEISNDVEVVKDQFHTHEGYMMDLTAHQGRVGNILQLGSKLIGTGKLSEDEETEVQEQMNLLNSRWECLRVASMEKQSNLHSYVPSTYLTEITHVSQALLEVEQLLNAPDLCAKDFEDLFKQEESLKNIKDSLQQSSGRIDIIHSKKTAALQSATPVERVKLQEALSQLDFQWEKVNKMYKDRQGRFDRSVEKWRRFHYDIKIFNQWLTEAEQFLRKTQIPENWEHAKYKWYLKELQDGIGQRQTVVRTLNATGEEIIQQSSKTDASILQEKLGSLNLRWQEVCKQLSDRKKRLEEQSDQWKRLHLSLQELLVWLQLKDDELSRQAPIGGDFPAVQKQNDVHRAFKRELKTKEPVIMSTLETVRIFLTEQPLEGLEKLYQEPRELPPEERAQNVTRLLRKQAEEVNTEWEKLNLHSADWQRKIDETLERLQELQEATDELDLKLRQAEVIKGSWQPVGDLLIDSLQDHLEKVKALRGEIAPLKENVSHVNDLARQLTTLGIQLSPYNLSTLEDLNTRWKLLQVAVEDRVRQLHEAHRDFGPASQHFLSTSVQGPWERAISPNKVPYYINHETQTTCWDHPKMTELYQSLADLNNVRFSAYRTAMKLRRLQKALCLDLLSLSAACDALDQHNLKQNDQPMDILQIINCLTTIYDRLEQEHNNLVNVPLCVDMCLNWLLNVYDTGRTGRIRVLSFKTGIISLCKAHLEDKYRYLFKQVASSTGFCDQRRLGLLLHDSIQIPRQLGEVASFGGSNIEPSVRSCFQFANNKPEIEAALFLDWMRLEPQSMVWLPVLHRVAAAETAKHQAKCNICKECPIIGFRYRSLKHFNYDICQSCFFSGRVAKGHKMHYPMVEYCTPTTSGEDVRDFAKVLKNKFRTKRYFAKHPRMGYLPVQTVLEGDNMETDTM
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図5-5】
図5-6】
図6
図7
図8
【配列表】
2023547639000001.app
【国際調査報告】