(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】拡張された干渉場補償機能を備える磁気弾性トルクセンサ
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20231106BHJP
【FI】
G01L3/10 301J
G01L3/10 301M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526002
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2021079461
(87)【国際公開番号】W WO2022090117
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】102020213669.6
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】ブライトフェルト,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】オスマン,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シャッツ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ツェゴビッツ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シックル,スベン
(57)【要約】
本発明は、解析ユニット(6)および少なくとも3つの磁場センサを備える磁気弾性トルクセンサ(10)に関する。解析ユニット(6)は、磁気弾性トルクセンサ(10)の第1の磁場センサ(1)の少なくとも1つの測定信号、第2の磁場センサ(2)の少なくとも1つの測定信号、および第3の磁場センサ(3)の少なくとも1つの第3の測定信号を検出し、シャフト(5)に加えられているトルクを、第1の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、第2の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、第4の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、および軸方向(111)における第2の磁場センサ(2)と第3の磁場センサ(3)との間の距離(23)と軸方向(111)における第1の磁場センサ(1)と第2の磁場センサ(2)との間の距離(12)との比によって測定するように設計されている。さらに、本発明は、そのような磁気弾性トルクセンサ(10)を使用してトルクを測定するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気弾性トルクセンサ(10)であって、
少なくとも1つの磁化領域を有するシャフト(5)であって、軸方向(111)および径方向(112)を有するシャフト(5)と、
それぞれが少なくとも1つの測定軸を有し、前記少なくとも1つの測定軸の方向における磁場の磁束密度の成分を検出するように設計されている少なくとも3つの磁場センサと、
解析ユニット(6)と
を備え、
前記少なくとも3つの磁場センサは、第1の磁場センサ(1)、第2の磁場センサ(2)、および第3の磁場センサ(3)を含み、前記第2の磁場センサ(2)が、前記軸方向(111)で前記第1の磁場センサ(1)と前記第3の磁場センサ(3)との間に配置されており、
前記少なくとも3つの磁場センサのうちの少なくとも1つは、前記少なくとも1つの磁化領域(51;52)に対して、前記磁場センサが前記それぞれの少なくとも1つの測定軸の方向で磁場の磁束密度の成分を検出するように設計されているように配置されており、前記磁場が、前記シャフト(5)へのトルク印加時に、前記少なくとも1つの磁化領域(51;52)によって発生可能であり、
前記解析ユニット(6)は、前記第1の磁場センサ(1)の少なくとも1つの測定信号、前記第2の磁場センサ(2)の少なくとも1つの測定信号、および前記第3の磁場センサ(3)の少なくとも1つの測定信号を検出し、前記シャフト(5)に加えられているトルクを、前記第1の磁場センサ(1)の前記少なくとも1つの測定信号、前記第2の磁場センサ(2)の前記少なくとも1つの測定信号、前記第3の磁場センサ(3)の前記少なくとも1つの測定信号、および軸方向(111)における前記第2の磁場センサ(2)と前記第3の磁場センサ(3)との間の距離(23)と前記軸方向(111)における前記第1の磁場センサ(1)と前記第2の磁場センサ(2)との間の距離(12)との比に基づいて測定するように設計されている、
磁気弾性トルクセンサ(10)。
【請求項2】
前記第1の磁場センサ(1)の前記少なくとも1つの測定軸および/もしくは前記第2の磁場センサ(2)の前記少なくとも1つの測定軸および/もしくは前記第3の磁場センサ(3)の前記少なくとも1つの測定軸は、それぞれ、前記シャフト(5)の前記軸方向(111)または前記径方向(112)に平行な測定軸を含み、前記第1の磁場センサ(1)の前記少なくとも1つの測定信号が、前記第1の磁場センサ(1)の位置での前記シャフト(5)の前記軸方向(111)または前記径方向(112)における前記磁場の前記磁束密度の成分に対応する第1の測定信号を含み、および/または、前記第2の磁場センサ(2)の前記少なくとも1つの測定信号が、前記第2の磁場センサ(2)の位置での前記シャフト(5)の前記軸方向(111)または前記径方向(112)における前記磁場の前記磁束密度の成分に対応する第2の測定信号を含み、および/または、前記第3の磁場センサ(3)の前記少なくとも1つの測定信号が、前記第3の磁場センサ(3)の位置での前記シャフト(5)の前記軸方向(111)または前記径方向(112)における前記磁場の前記磁束密度の成分に対応する第3の測定信号を含み、あるいは、
前記第1の磁場センサ(1)の前記少なくとも1つの測定軸および/もしくは前記第2の磁場センサ(2)の前記少なくとも1つの測定軸および/もしくは前記第3の磁場センサの前記少なくとも1つの測定軸(3)は、それぞれ、互いに直交するように向けられた2つまたは3つの測定軸を含み、前記第1の磁場センサ(1)の前記少なくとも1つの測定信号が2つまたは3つの測定信号を含み、および/または、前記第2の磁場センサ(2)の前記少なくとも1つの測定信号が2つまたは3つの測定信号を含み、および/または、前記第3の磁場センサ(3)の前記少なくとも1つの測定信号が2つまたは3つの測定信号を含み、それぞれの磁場センサの前記2つまたは3つの測定信号から、前記磁場センサのそれぞれの位置での前記シャフト(5)の前記軸方向(111)または前記径方向(112)における前記磁場の前記磁束密度の成分を測定可能である、
請求項1に記載の磁気弾性トルクセンサ(10)。
【請求項3】
前記解析ユニット(6)は、前記シャフト(5)に加えられている前記トルクを測定するために、前記磁気弾性トルクセンサ(10)の感度をさらに使用するように設計されている、請求項1に記載の磁気弾性トルクセンサ(10)。
【請求項4】
前記解析ユニットは、前記シャフト(5)に加えられている前記トルクを
【数1】
との式によって測定するように設計されており、
Mは、単位「Nm」を有する測定対象のトルクであり、
B
SE1は、単位「μT」を有する、前記第1の磁場センサの位置での前記軸方向または前記径方向前記磁場の前記磁束密度の成分であり、
B
SE2は、単位「μT」を有する、前記第2の磁場センサの位置での前記軸方向または前記径方向における前記磁場の前記磁束密度の成分であり、
B
SE3は、単位「μT」を有する、前記第3の磁場センサの位置での前記軸方向または前記径方向における前記磁場の前記磁束密度の成分であり、
d
12は、単位「mm」を有する、前記第1の磁場センサ(1)と前記第2の磁場センサ(2)との間の距離(12)であり、
d
23は、単位「mm」を有する、前記第2の磁場センサ(2)と前記第3の磁場センサ(3)との間の距離(23)であり、
S
13は、単位「Nm/μT」を有する、前記磁気弾性トルクセンサ(10)の感度である、
請求項3に記載の磁気弾性トルクセンサ(10)。
【請求項5】
前記解析ユニット(6)は、前記シャフト(5)に加えられている前記トルクを
【数2】
との式によって測定するように設計されており、
Mは、単位「Nm」を有する測定対象のトルクであり、
B
SE1は、単位「μT」を有する、前記第1の磁場センサの位置での前記軸方向または前記径方向における前記磁場の前記磁束密度の成分であり、
B
SE2は、単位「μT」を有する、前記第2の磁場センサの位置での前記軸方向または前記径方向における前記磁場の前記磁束密度の成分であり、
B
SE3は、単位「μT」を有する、前記第3の磁場センサの位置での前記軸方向または前記径方向における前記磁場の前記磁束密度の成分であり、
d
12は、単位「mm」を有する、前記第1の磁場センサ(1)と前記第2の磁場センサ(2)との間の距離(12)であり、
d
23は、単位「mm」を有する、前記第2の磁場センサ(2)と前記第3の磁場センサ(3)との間の距離(23)であり、
S
13は、単位「Nm/μT」を有する、前記磁気弾性トルクセンサ(10)の感度であり、
kは、重み係数である、
請求項3に記載の磁気弾性トルクセンサ(10)。
【請求項6】
前記第1の磁場センサ(1)、前記第2の磁場センサ(2)、および前記第3の磁場センサ(3)は、互いに対して、および前記少なくとも1つの磁化領域(51;52)に対して、
【数3】
との2つの条件のうちの1つが満たされるように配置されており、
前記第1の磁場センサ(1)、前記第2の磁場センサ(2)、および前記第3の磁場センサ(3)が、互いに対して、および前記少なくとも1つの磁化領域(51;52)に対して、
【数4】
との2つの条件のうちの1つが満たされるように特に配置されており、
N
SE1は、前記磁気弾性トルクセンサ(10)によって測定可能な最大トルクを前記シャフト(5)に印加することにより前記第1の磁場センサ(1)の位置で前記少なくとも1つの磁化領域(51;52)によって発生する磁場の、単位「μT」を有する前記磁束密度の所定の成分であり、
N
SE2は、前記磁気弾性トルクセンサ(10)によって測定可能な最大トルクを前記シャフト(5)に印加することにより前記第2の磁場センサ(2)の位置で前記少なくとも1つの磁化領域(51;52)によって発生する磁場の、単位「μT」を有する前記磁束密度の所定の成分であり、
N
SE3は、前記磁気弾性トルクセンサ(10)によって測定可能な最大トルクを前記シャフト(5)に印加することにより前記第3の磁場センサ(3)の位置で前記少なくとも1つの磁化領域(51;52)によって発生する磁場の、単位「μT」を有する前記磁束密度の所定の成分である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の磁気弾性トルクセンサ(10)。
【請求項7】
前記軸方向(111)における前記第1の磁場センサ(1)と前記第2の磁場センサ(2)との間の前記距離(12)と、前記軸方向(111)における前記第2の磁場センサ(2)と前記第3の磁場センサ(3)との間の前記距離(23)との和が、4mm以上、20mm未満である、請求項1から6のいずれか一項に記載の磁気弾性トルクセンサ(10)。
【請求項8】
前記少なくとも3つの磁場センサは、前記第1の磁場センサ(1)、前記第2の磁場センサ(2)、前記第3の磁場センサ(3)、および第4の磁場センサ(4)を含み、前記第3の磁場センサ(3)が、前記軸方向(111)で前記第2の磁場センサ(2)と前記第4の磁場センサ(4)との間に配置されており、前記解析ユニット(6)が、前記第4の磁場センサ(4)の少なくとも1つの測定信号を検出し、前記シャフト(5)に加えられているトルクを測定するために、さらに、前記第4の磁場センサ(4)の前記少なくとも1つの測定信号、および前記軸方向(111)における前記第2の磁場センサ(2)と前記第3の磁場センサ(3)との間の距離(23)と前記軸方向(111)における前記第3の磁場センサ(3)と前記第4の磁場センサ(4)との間の距離(34)との比をさらに使用するように設計されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の磁気弾性トルクセンサ(10)。
【請求項9】
前記第4の磁場センサ(4)の前記少なくとも1つの測定軸が、前記シャフトの前記軸方向(111)または前記径方向(112)に平行な測定軸を含み、前記第4の磁場センサ(4)の前記少なくとも1つの測定信号が、前記第4の磁場センサ(4)の位置での前記シャフト(5)の前記軸方向(111)または前記径方向(112)における前記磁場の前記磁束密度の成分に対応する第4の測定信号を含み、または
前記第4の磁場センサ(4)の前記少なくとも1つの測定軸が、互いに直交するように向けられた2つまたは3つの測定軸を含み、前記第4の磁場センサ(4)の前記少なくとも1つの測定信号が2つまたは3つの測定信号を含み、前記2つまたは3つの測定信号から、前記第4の磁場センサ(4)の位置での前記シャフト(5)の前記軸方向(111)または前記径方向(112)における前記磁場の前記磁束密度の成分を測定可能である、
請求項8に記載の磁気弾性トルクセンサ(10)。
【請求項10】
前記解析ユニット(6)が、前記シャフト(5)に加えられている前記トルクを
【数5】
との式によって測定するように設計されており、
Mは、単位「Nm」を有する測定対象のトルクであり、
B
SE1は、単位「μT」を有する、前記第1の磁場センサの位置での前記軸方向または前記径方向における前記磁場の前記磁束密度の成分であり、
B
SE2は、単位「μT」を有する、前記第2の磁場センサの位置での前記軸方向または前記径方向における前記磁場の前記磁束密度の成分であり、
B
SE3は、単位「μT」を有する、前記第3の磁場センサの位置での前記軸方向または前記径方向における前記磁場の前記磁束密度の成分であり、
B
SE4は、単位「μT」を有する、前記第4の磁場センサの位置での前記軸方向または前記径方向における前記磁場の前記磁束密度の成分であり、
d
12は、単位「mm」を有する、前記第1の磁場センサ(1)と前記第2の磁場センサ(2)との間の距離(12)であり、
d
23は、単位「mm」を有する、前記第2の磁場センサ(2)と前記第3の磁場センサ(3)との間の距離(23)であり、
d
34は、単位「mm」を有する、前記第3の磁場センサ(3)と前記第4の磁場センサ(4)との間の距離(34)であり、
S
14は、単位「Nm/μT」を有する、前記磁気弾性トルクセンサ(10)の感度であり、
kは、重み係数である、
請求項8または9に記載の磁気弾性トルクセンサ(10)。
【請求項11】
前記第1の磁場センサ(1)、前記第2の磁場センサ(2)、前記第3の磁場センサ(3)、および前記第4の磁場センサ(4)が、互いに対して、および前記少なくとも1つの磁化領域(51;52)に対して、
【数6】
との2つの条件のうちの1つが満たされるように配置されており、
前記第1の磁場センサ(1)、前記第2の磁場センサ(2)、前記第3の磁場センサ(3)、および前記第4の磁場センサ(4)が、互いに対して、および前記少なくとも1つの磁化領域(51;52)に対して、
【数7】
との2つの条件のうちの1つが満たされるように特に配置されており、
N
SE1は、前記磁気弾性トルクセンサによって測定可能な最大トルクを前記シャフト(5)に印加することにより前記第1の磁場センサ(1)の位置で前記少なくとも1つの磁化領域(51;52)によって発生する磁場の、単位「μT」を有する前記磁束密度の所定の成分であり、
N
SE2は、前記磁気弾性トルクセンサによって測定可能な最大トルクを前記シャフト(5)に印加することにより前記第2の磁場センサ(2)の位置で前記少なくとも1つの磁化領域(51;52)によって発生する磁場の、単位「μT」を有する前記磁束密度の所定の成分であり、
N
SE3は、前記磁気弾性トルクセンサによって測定可能な最大トルクを前記シャフト(5)に印加することにより前記第3の磁場センサ(3)の位置で前記少なくとも1つの磁化領域(51;52)によって発生する磁場の、単位「μT」を有する前記磁束密度の所定の成分であり、
N
SE4は、前記磁気弾性トルクセンサ(10)によって測定可能な最大トルクを前記シャフト(5)に印加することにより前記第4の磁場センサ(4)の位置で前記少なくとも1つの磁化領域(51;52)によって発生する磁場の、単位「μT」を有する前記磁束密度の所定の成分である、
請求項8から10のいずれか一項に記載の磁気弾性トルクセンサ(10)。
【請求項12】
前記軸方向(111)における前記第1の磁場センサ(1)と前記第2の磁場センサ(2)との間の前記距離(12)と、前記軸方向(111)における前記第2の磁場センサ(2)と前記第3の磁場センサ(3)との間の前記距離(23)と、第3の磁場センサ(3)と第4の磁場センサ(4)との間の距離(34)の和が、6mm以上、20mm未満である、請求項10または11に記載の磁気弾性トルクセンサ(10)。
【請求項13】
前記シャフト(5)がただ1つの磁化領域(51)を有し、前記少なくとも3つの磁場センサが前記磁化領域(51)に割り当てられている、請求項1から12のいずれか一項に記載の磁気弾性トルクセンサ(10)。
【請求項14】
前記シャフト(5)が、第1の磁化領域(51)および第2の磁化領域(52)のみを有し、前記第1の磁化領域(51)と第2の磁化領域(52)とが反対の磁化を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の磁気弾性トルクセンサ(10)。
【請求項15】
前記第1の磁場センサ(1)および前記第2の磁場センサ(2)が前記第1の磁化領域(51)に、前記第3の磁場センサ(3)が前記第2の磁化領域(52)に割り当てられている、または
前記第1の磁場センサ(1)および前記第2の磁場センサ(2)が前記第1の磁化領域(51)に、前記第3の磁場センサ(3)および前記第4の磁場センサ(4)が前記第2の磁化領域(52)に割り当てられている、
請求項14に記載の磁気弾性トルクセンサ(10)。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の磁気弾性トルクセンサ(10)を含む車両(100)であって、特に電気的におよび/または力の作用で駆動可能であり、クランク駆動装置(102)を有し、前記磁気弾性トルクセンサ(10)が前記クランク駆動装置(102)に配置されている、車両(100)。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか一項に記載の磁気弾性トルクセンサ(10)を使用してトルクを測定するための方法であって、
前記第1の磁場センサ(1)の少なくとも1つの測定信号を検出するステップと、
前記第2の磁場センサ(2)の少なくとも1つの測定信号を検出するステップと、
前記第3の磁場センサ(3)の少なくとも1つの測定信号を検出するステップと、
前記第1の測定信号、前記第2の測定信号、前記第3の測定信号、および、前記軸方向(111)における前記第2の磁場センサ(2)と前記第3の磁場センサ(3)との間の距離(23)と前記軸方向(111)における前記第1の磁場センサ(1)と前記第2の磁場センサ(2)との間の距離(12)との比に基づいて、前記シャフト(5)に加えられているトルクを測定するステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気弾性トルクセンサ、および磁気弾性トルクセンサを有する車両、特に電気的におよび/または力の作用によって駆動可能な車両に関する。さらに、本発明は、磁気弾性トルクセンサを使用してトルクを測定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部分的に磁化されたシャフトを備える磁気弾性トルクセンサは、従来より知られている。シャフトへのトルク負荷時に、シャフトの外側の領域に磁場が発生し、この磁場は、各点でシャフトに加えられているトルクに比例し、トルクセンサの磁場センサによって測定することができる。したがって、磁場の測定により、トルクの測定が可能になる。しかし、理想的なトルク測定は、トルクによって発生したものでない別の磁場が存在しないときにのみ可能である。これに関しては、従来技術では、それぞれ均一な干渉磁場を補償するための2つの磁化領域を有するシャフト、または線形の干渉磁場を補償するための3つの磁化領域を有するシャフトを備えた磁気弾性トルクセンサが公知である。
【発明の概要】
【0003】
本発明による磁気弾性トルクセンサは、干渉場を補償する磁束またはトルクの測定を省スペースで可能にするという利点を有する。これは、少なくとも3つの磁場センサを有する磁気弾性トルクセンサにおいて、距離、特に磁場センサの距離比が磁束またはトルク測定に導入されることによって達成される。磁場センサどうしの距離と、磁場センサの測定信号の対応する重み付けまたはスケーリングとを考慮することにより、トルクの計算時に均一な干渉場および線形の干渉場勾配が除去されるように測定信号を互いに組み合わせることができる。このために、磁気弾性トルクセンサは、少なくとも1つの磁化領域を有するシャフトであって、軸方向および径方向を有するシャフトと、それぞれが少なくとも1つの測定軸を有し、少なくとも1つの測定軸の方向における磁場の磁束密度の成分を検出するように設計されている、少なくとも3つの磁場センサと、解析ユニットとを含む。少なくとも3つの磁場センサは、第1の磁場センサ、第2の磁場センサ、および第3の磁場センサを含む。ここで、第2の磁場センサは、軸方向で第1の磁場センサと第3の磁場センサとの間に配置されている。少なくとも3つの磁場センサのうちの少なくとも1つの磁場センサは、少なくとも1つの磁化領域に対して、磁場センサがそれぞれの少なくとも1つの測定軸の方向で磁場の磁束密度の成分を検出するように設計されているように配置されており、磁場は、シャフトへのトルク印加時に、少なくとも1つの磁化領域によって発生可能である。解析ユニットは、第1の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、第2の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、および第3の磁場センサの少なくとも1つの測定信号を検出し、シャフトに加えられているトルクを、第1の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、第2の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、少なくとも1つの第3の測定信号、および軸方向における第2の磁場センサと第3の磁場センサとの間の距離と軸方向における第1の磁場センサと第2の磁場センサとの間の距離との比に基づいて測定するように設計されている。本願で提案される磁気弾性トルクセンサによって、特にトルクの測定時の上述した距離比の考慮によって、少なくとも3つの磁場センサの測定信号を、特に均一な干渉場および線形の干渉場勾配を軸方向で補償することができるように計算され得る。したがって、軸方向で均一な干渉場成分がなく線形の干渉場勾配もない、ほぼ干渉場を補正されたトルクの計算が達成される。さらに有利には、本発明では、均一な干渉場および線形の干渉場勾配を除去/補償するために、トルクの計算時に近似を行う必要がない。近似が必要ないので、トルクの正確な測定が実現され得る。本発明の本質的な利点は、1つのみ磁化領域または2つのみの磁化領域を有するシャフトを備える磁気弾性トルクセンサによって、干渉場の除去/補償をすでに実現可能であることである。磁化領域は、安定して再現可能に磁化することができるように最小幅を有さなければならず、ある磁化領域から別の磁化領域への移行が突然起こることは決してないので、1つの追加の磁化領域または2つの追加の磁化領域をなくすことで、軸方向における磁気弾性トルクセンサの設置サイズの大幅な縮小がもたらされる。本願で提案される磁気弾性トルクセンサのさらなる利点は、均一な干渉場と線形の干渉場勾配を軸方向で計算して監視することができることである。さらに、少なくとも4つのセンサの使用は、軸方向の特定の非線形の干渉場勾配を除去する、またはそれらによって引き起こされる誤差を低減するさらなる利点を提供する。
【0004】
従属クレームは、本発明の好ましい発展形態を示す。
【0005】
好ましくは、少なくとも3つの磁場センサのうちの少なくとも2つの磁場センサ、特に少なくとも3つの磁場センサは、少なくとも1つの磁化領域に対して、少なくとも2つの磁場センサ、特に少なくとも3つの磁場センサがそれぞれ、それぞれの少なくとも1つの測定軸の方向で磁場の磁束密度の成分を検出するように設計されているように配置されており、磁場は、シャフトへのトルク印加時に、少なくとも1つの磁化領域によって発生可能である。
【0006】
シャフトは、特に中空シャフトとして構成されていてもよい。
【0007】
シャフトのトルク負荷時にシャフトの少なくとも1つの磁化領域によって発生可能な磁場の磁束密度は、各点で、シャフトに加わるトルクに比例する。本発明において、この磁場は有効磁場とも呼ばれ得る。
【0008】
シャフトまたは磁気弾性磁場センサの周囲に干渉磁場がある場合、その磁束密度が少なくとも3つの磁場センサによって検出可能である磁場は、シャフトのトルク負荷時に少なくとも1つの磁化領域によって発生する磁場(有効磁場)と、干渉磁場とを含む。ここで、それぞれの磁場センサからの測定信号は、シャフトに加えられているトルクに比例する有効磁場の磁束密度と、それぞれの磁場センサの位置での重畳された干渉磁場の磁束密度とを含む。シャフトまたは磁気弾性磁場センサの周囲に干渉磁場がない場合、シャフトへのトルク印加時のそれぞれの磁場センサの測定信号は、それぞれの磁場センサの位置で発生した有効磁場の磁束密度のみを含み、これはトルクに比例する。
【0009】
特に、第1の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、第2の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、および第3の磁場センサの少なくとも1つの測定信号は、オフセット補正された測定信号である。オフセット補正は、有利には、トルクがなく干渉場もない状態で行われる。
【0010】
上述した(トルク計算の)干渉場補償特性は、シャフトに対する少なくとも3つの磁場センサの全体/アセンブリの初期位置決め公差の影響を受けず、したがって、シャフトの少なくとも1つの磁化領域の初期磁化公差の影響も全く受けない。この理由は本発明に依拠する。これにより、すべてのセンサが任意の(したがって異なる)(しかしトルクに比例する)有効磁場を見ることができ、目的を達成するために2つのセンサが同じ有効磁場を見る必要はない。
【0011】
本発明において、磁気弾性トルクセンサは、磁気弾性トルクセンサ構成とも呼ばれ得ることに留意されたい。それに対応して、本発明において、磁場センサは、磁場センサ要素とも呼ばれ得る。
【0012】
本発明において、シャフトは、特に磁気弾性シャフトとも呼ばれ得る。「磁気弾性」とは、シャフトへの機械的負荷によるシャフトの機械的応力の発生が、その磁化の変化をもたらすことを意味する。言い換えると、磁気弾性トルクセンサは、逆磁歪効果に基づく。
【0013】
シャフトが軸方向を有するという表現は、特に、シャフトが軸方向に延びていることを意味する。
【0014】
磁気弾性トルクセンサは、好ましくはユニットとして構成または製造されていてもよく、トルクセンサのすべての構成要素、すなわち磁場センサ、シャフト、および解析ユニットが単一のハウジングに配置されている。代替として、少なくとも3つの磁場センサ、少なくとも1つの磁化領域を有するシャフト(磁気弾性シャフト)、および上述した解析ユニットが、これらの構成要素は単一のハウジングに導入されることなく、本発明による磁気弾性トルクセンサとして機能するように互いに組み合わせられ得る。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1の磁場センサの少なくとも1つの測定軸および/もしくは第2の磁場センサの少なくとも1つの測定軸および/もしくは第3の磁場センサの少なくとも1つの測定軸はそれぞれ、シャフトの軸方向または径方向に平行な測定軸を含み得る。ここで、第1の磁場センサの少なくとも1つの測定信号は、第1の磁場センサの位置でのシャフトの軸方向または径方向における磁場の磁束密度の成分に対応する第1の測定信号を含み、および/または、第2の磁場センサの少なくとも1つの測定信号は、第2の磁場センサの位置でのシャフトの軸方向または径方向における磁場の磁束密度の成分に対応する第2の測定信号を含み、および/または、第3の磁場センサの少なくとも1つの測定信号は、第3の磁場センサの位置でのシャフトの軸方向または径方向における磁場の磁束密度の成分に対応する第3の測定信号を含み得る。
【0016】
本発明の代替形態によれば、第1の磁場センサの少なくとも1つの測定軸および/もしくは第2の磁場センサの少なくとも1つの測定軸および/もしくは第3の磁場センサの少なくとも1つの測定軸がそれぞれ、互いに直交するように向けられた2つまたは3つの測定軸を含み得る。ここで、第1の磁場センサの少なくとも1つの測定信号が2つまたは3つの測定信号を、および/または第2の磁場センサの少なくとも1つの測定信号が2つまたは3つの測定信号を、および/または第3の磁場センサの少なくとも1つの測定信号が2つまたは3つの測定信号を含み得、それぞれの磁場センサの2つまたは3つの測定信号から、磁場センサのそれぞれの位置でのシャフトの軸方向または径方向における磁場の磁束密度の成分を測定可能であり得る。磁場センサのそれぞれの位置でのシャフトの軸方向または径方向における磁場の磁束密度の成分の測定は、好ましくは、解析ユニットによって行うことができる。
【0017】
特に、少なくとも3つの磁場センサは、好ましくはそれぞれ単軸または多軸、特に3軸でよく、少なくとも3つの磁場センサは、有利には軸方向に平行な直線上に位置づけられており、それぞれの磁場センサの少なくとも1つの測定軸が軸方向と揃えられている。代替として、それぞれの磁場センサの少なくとも1つの測定軸が径方向と揃えられている。代替として、それぞれの磁場センサの2つの測定軸が互いに直交し、および径方向に直交するように揃えられており、したがって、それらの測定軸からそれぞれ、軸方向における磁場の磁束密度の成分を測定可能である。代替として、それぞれの磁場センサの3つの測定軸が互いに直交するように揃えられており、したがって、それらの測定軸からそれぞれ、軸方向および/または径方向における磁場の磁束密度の成分を測定可能であり、それぞれの磁場センサの向きは自由に選択可能である。均一な干渉場と線形の干渉場勾配の除去には、単軸の磁場センサで十分であることに留意されたい。単軸の磁場センサの使用を可能にすることにより、磁気弾性トルクセンサをより低い全体コストで実現可能である。例えば、磁場センサは、非常に安価なフラックスゲートコイルとして構成されていてもよい。より多くの情報の送達という利点を有する多軸磁場センサの使用により、磁気弾性トルクセンサの補完的な監視機能が可能になる。好ましくは、解析ユニットは、シャフトに加えられているトルクを測定するために、磁気弾性トルクセンサの感度をさらに使用するように設計されている。言い換えると、解析ユニットは、シャフトに加えられているトルクを、第1の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、第2の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、第3の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、軸方向における第2の磁場センサと第3の磁場センサとの間の距離と軸方向における第1の磁場センサと第2の磁場センサとの間の距離との比、および磁気弾性トルクセンサの感度に基づいて測定するように設計されている。磁気弾性トルクセンサの感度または感受性は、入力変数、すなわち磁束密度の値の変化に対する、それにより引き起こされる出力変数、すなわちトルクの値の変化を意味する。本発明において、磁気弾性トルクセンサの感度は、特に全感度とも呼ばれ得る。
【0018】
好ましくは、解析ユニットは、シャフトに加えられているトルクを次の式によって測定するように設計されている。
【0019】
【0020】
この式において、
・Mは、単位「Nm」を有する測定対象のトルクであり、
・BSE1は、単位「μT」を有する、第1の磁場センサの位置での軸方向または径方向における磁場の磁束密度の成分であり、
・BSE2は、単位「μT」を有する、第2の磁場センサの位置での軸方向または径方向における磁場の磁束密度の成分であり、
・BSE3は、単位「μT」を有する、第3の磁場センサの位置での軸方向または径方向における磁場の磁束密度の成分であり、
・d12は、単位「mm」を有する、第1の磁場センサと第2の磁場センサとの間の距離であり、
・d23は、単位「mm」を有する、第2の磁場センサと第3の磁場センサとの間の距離であり、
・S13は、単位「Nm/μT」を有する、磁気弾性トルクセンサの感度である。
【0021】
提案された式(1)と、特にそこに含まれる差分計算とにより、均一な干渉場と線形の干渉場勾配が除され得、それにより、第1の磁場センサ、第2の磁場センサ、および第3の磁場センサの測定信号に基づいて、トルクの正確な測定が可能となる。
【0022】
本発明のさらなる好ましい形態によれば、解析ユニットは、シャフトに加えられているトルクを次の式によって測定するように設定されている。
【0023】
【0024】
この式において、
・Mは、単位「Nm」を有する測定対象のトルクであり、
・BSE1は、単位「μT」を有する、第1の磁場センサの位置での軸方向または径方向における磁場の磁束密度の成分であり、
・BSE2は、単位「μT」を有する、第2の磁場センサの位置での軸方向または径方向における磁場の磁束密度の成分であり、
・BSE3は、単位「μT」を有する、第3の磁場センサの位置での軸方向または径方向における磁場の磁束密度の成分であり、
・d12は、単位「mm」を有する、第1の磁場センサと第2の磁場センサとの間の距離であり、
・d23は、単位「mm」を有する、第2の磁場センサと第3の磁場センサとの間の距離であり、
・S13は、単位「Nm/μT」を有する、磁気弾性トルクセンサの感度であり、
・kは、所定の重み係数であり、これにより、非線形の干渉場成分が存在するとき、シャフトまたは磁気弾性トルクセンサの周囲で非線形の干渉場勾配が常に同じように生成されることにより、トルクの測定時に非線形の干渉場成分によって引き起こされる誤差が低減され得る。
【0025】
言い換えると、提案された式(2)によるトルク測定に、距離比d23/d12の重み係数「k」を導入することによって、干渉場がシャフトまたは磁気弾性トルクセンサの周囲に非線形成分を有する場合に、非線形の干渉場成分によって引き起こされる誤差が低減され得る。これは、磁気弾性トルクセンサの領域で非線形の干渉場勾配が常に同じように生成される目的用途において特に当てはまる。それに対し、干渉場勾配の生成に変化が生じ得るので非線形の干渉場勾配が常に同じように生成されるという仮定が当てはまらない場所および環境変化用途では、トルク計算時に引き起こされる誤差は式(1)に対してより大きくなり得、したがって、そのような用途では式(2)により最大可能誤差をさらに減少させることができる。重み係数kは、用途に応じた選択または事前に定めることがなされてもよい。
【0026】
ここで、平均二乗誤差(MSE)の(重み付き)最小化のための数学的な最適化アプローチであるdMSE(k)/dk=0により、重み係数kの微調整が実現可能である。したがって、例えば、「0Nm」ポイントは、様々な干渉の影響を伴うシナリオの特定の選択に関して、最小誤差が最適化され得、または1つの干渉場シナリオのみが最適化され得る。
【0027】
磁気弾性トルクセンサの領域に、均一な干渉場および/または線形成分を有する干渉場および/または無視できる非線形の干渉場成分のみが存在するとき、またはそのような干渉場のみが使用時に予想されているとき、磁気弾性トルクセンサのシャフトに作用するトルクの測定のために、非線形の干渉場勾配が常に同じように生成されることが保証され得ない場所および環境変化用途での使用の場合と同様に、式(1)と(2)の間で式(1)を優先すべきである。
【0028】
しかし、式(1)において、非線形成分を有する干渉場がシャフトの周囲に存在する場合でも、シャフトに作用するトルクが十分な精度で測定され得ることに留意されたい。式(1)での利点は、適用用途や動作環境に関係なく、線形の干渉場成分が完全に補償されることである。一般に、非線形成分は均一な成分や線形成分に比べて小さいので、非線形成分によって式(1)で生じる誤差は、すでにトルクが十分な/高い精度で測定され得るほど小さい。
【0029】
特に式(2)は、式(1)とは異なり、ある干渉場シナリオをできるだけ完全に補償すること(均一で線形な成分)を目的としておらず、1つまたはいくつかの同様の干渉場シナリオに対する最適化を可能にし、非線形成分も一部補償されるので式(1)よりも良好に補償することができる。ここで、最適化されたシナリオ以外の干渉場シナリオは、式(1)の場合よりも大きな誤差をもたらす。また、非線形成分を「含まない」すべての干渉場シナリオは、式(1)によって誤差なしで有利に補償され得る。
【0030】
車両、特に電気的におよび/または力の作用で駆動可能な車両、特に電動自転車での磁気弾性トルクセンサの使用時、駆動中に、走行中の場所の変化のみによって様々な明らかに異なる干渉場シナリオが発生し(同じ動作環境ではない)、したがって、この多様性に対する最適化がk=1をもたらし(式(1)と同様)、または個々の干渉場シナリオの重み付き最適化ではk≠1となり、このとき、式(2)を用いると最大可能誤差がより大きくなる。この理由から、式(1)は、すでに述べた用途に関してより有利である。同じ干渉場シナリオまたはあまり大きくは異ならないシナリオを有する他の用途では、式(2)のほうが有利であり得る。
【0031】
有利には、磁気弾性トルクセンサの感度は、干渉場のないオフセット補正後の2点較正によって算出される。特に、式(1)に関する感度は、次の式に従って算出される。
【0032】
【0033】
特に、式(2)に関する感度は、次の式に従って算出される。
【0034】
【0035】
この式において、
・M1は、2点較正の第1の点における単位「Nm」を有するトルクであり、
・M2は、2点較正の第1の点における単位「Nm」を有するトルクであり、
・BSEa(Mb)は、2点較正の点「b」における、磁場センサ「a」の単位「μT」で測定された測定信号であり(ここで、第1の磁場センサに関してa=1、第2の磁場センサに関してa=2、第3の磁場センサに関してa=3であり、2点較正の第1の点に関してb=1、第2の点に関してb=2である。)、
・d12は、単位「mm」を有する、第1の磁場センサと第2の磁場センサとの間の距離であり、
・d23は、単位「mm」を有する、第2の磁場センサと第3の磁場センサとの間の距離であり、
・kは、所定の重み係数であり、これにより、非線形の干渉場成分が存在するとき、シャフトまたは磁気弾性トルクセンサの周囲で非線形の干渉場勾配が常に同じように生成されることにより、トルクの測定時に非線形の干渉場成分によって引き起こされる誤差が低減され得る。
【0036】
上記の式の表記「…」は、式が次の行に続くことを意味することに留意されたい。本発明において、これは、表記「…」を含むすべての式に当てはまる。ここで、算術演算に関して、演算子の標準的な優先順位が適用される。
【0037】
次の式(1b)および(1c)は、式(1)と等価であり、式(1)から変形により得られる。
【0038】
【0039】
好ましくは、第1の磁場センサ、第2の磁場センサ、および第3の磁場センサが、互いに対して、および少なくとも1つの磁化領域に対して、以下の2つの条件のうちの1つが満たされるように配置されている。
【0040】
【0041】
特に、第1の磁場センサ、第2の磁場センサ、および第3の磁場センサが、互いに対して、および少なくとも1つの磁化領域に対して、以下の2つの条件のうちの1つが満たされるように配置されている。
【0042】
【0043】
この式において、
・NSE1は、磁気弾性トルクセンサによって測定可能な最大トルクをシャフトに印加することにより第1の磁場センサの位置で少なくとも1つの磁化領域によって発生する磁場の、単位「μT」を有する磁束密度の所定の成分であり、
・NSE2は、磁気弾性トルクセンサによって測定可能な最大トルクをシャフトに印加することにより第2の磁場センサの位置で少なくとも1つの磁化領域によって発生する磁場の、単位「μT」を有する磁束密度の所定の成分であり、
・NSE3は、磁気弾性トルクセンサによって測定可能な最大トルクをシャフトに印加することにより第3の磁場センサの位置で磁化領域によって発生する磁場の、単位「μT」を有する磁束密度の所定の成分である。
【0044】
(d23/d12)≦1と(d12/d23)<1との場合の区別により、作為的なアップスケーリングなしで、有効な全感度が観察されることが保証される。
【0045】
有利には、上記の所定の磁束密度は、干渉場なしでオフセット補正された磁束密度である。
【0046】
好ましくは、軸方向における第1の磁場センサと第2の磁場センサとの間の距離と、軸方向における第2の磁場センサと第3の磁場センサとの間の距離との和は、4mm以上、20mm未満である。言い換えると、軸方向における第1の磁場センサと第3の磁場センサとの間の距離は、好ましくは4mm以上、20mm未満である。これにより、磁気弾性トルクセンサが軸方向でコンパクトに構成され得る。ここで、少なくとも3つの磁場センサは、特に、第1の磁場センサ、第2の磁場センサ、および第3の磁場センサを正確に含み得る。
【0047】
特に好ましくは、少なくとも3つの磁場センサは、第1の磁場センサ、第2の磁場センサ、第3の磁場センサ、および第4の磁場センサを含む。ここで、第3の磁場センサは、軸方向111で第2の磁場センサと第4の磁場センサとの間に配置されている。解析ユニットは、第4の磁場センサの少なくとも1つの測定信号を検出し、シャフトに加えられているトルクを測定するために、第4の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、および軸方向における第2の磁場センサと第3の磁場センサとの間の距離と軸方向における第3の磁場センサと第4の磁場センサとの間の距離との比をさらに使用するように設計されている。言い換えると、解析ユニットは、第4の磁場センサの少なくとも1つの測定信号を検出し、シャフトに加えられているトルクを、第1の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、第2の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、第3の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、第4の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、軸方向における第2の磁場センサと第3の磁場センサとの間の距離と軸方向における第1の磁場センサと第2の磁場センサとの間の距離との比、および軸方向における第2の磁場センサと第3の磁場センサとの間の距離と軸方向における第3の磁場センサと第4の磁場センサとの間の距離との比によって測定するように設計されている。磁場センサどうしの距離の考慮と、磁場センサの測定信号の対応する重み付けまたはスケーリングとにより、測定信号は互いに組み合わされてもよく、シャフトまたは磁場弾性トルクセンサの周囲で非線形の干渉場勾配が常に同じように生成されることが保証され得ない場所および環境変化用途での使用においても、トルクの計算時に均一な干渉場および線形の干渉場勾配が除去され、非線形の干渉場勾配が除去または最小化される。
【0048】
特に、第4の磁場センサの測定信号は、オフセット補正された測定信号である。オフセット補正は、有利には、トルクがなく干渉場もない状態で行われる。
【0049】
好ましくは、第4の磁場センサの少なくとも1つの測定軸が、シャフトの軸方向または径方向に平行な測定軸を含み、第4の磁場センサの少なくとも1つの測定信号が、第4の磁場センサの位置でのシャフトの軸方向または径方向における磁場の磁束密度の成分に対応する第4の測定信号を含む。
【0050】
本発明の代替形態によれば、第4の磁場センサの少なくとも1つの測定軸が、互いに直交するように向けられた2つまたは3つの測定軸を含み、第4の磁場センサの少なくとも1つの測定信号が2つまたは3つの測定信号を含み、2つまたは3つの測定信号から、第4の磁場センサの位置でのシャフトの軸方向または径方向における磁場の磁束密度の成分を測定可能である。第4の磁場センサの位置でのシャフトの軸方向または径方向における磁場の磁束密度の成分は、好ましくは、解析ユニットによって測定され得る。
【0051】
好ましくは、解析ユニットは、シャフトに加えられているトルクを次の式によって測定するように設計されている。
【0052】
【0053】
この式において、
・Mは、単位「Nm」を有する測定対象のトルクであり、
・BSE1は、単位「μT」を有する、第1の磁場センサの位置での軸方向または径方向における磁場の磁束密度の成分であり、
・BSE2は、単位「μT」を有する、第2の磁場センサの位置での軸方向または径方向における磁場の磁束密度の成分であり、
・BSE3は、単位「μT」を有する、第3の磁場センサの位置での軸方向または径方向における磁場の磁束密度の成分であり、
・BSE4は、単位「μT」を有する第4の測定信号であり、
・d12は、単位「mm」を有する、第1の磁場センサと第2の磁場センサとの間の距離であり、
・d23は、単位「mm」を有する、第2の磁場センサと第3の磁場センサとの間の距離であり、
・d34は、単位「mm」を有する、第3の磁場センサと第4の磁場センサとの間の距離であり、
・S14は、単位「Nm/μT」を有する、磁気弾性トルクセンサの感度であり、
・kは、用途に応じて非線形の干渉場成分に関する補償特性が最適化(完全な除去)され得る、または一般に、非線形の干渉場成分によるワーストケース誤差が最小化され得る重み係数である。
【0054】
式(6)により、およびそこに含まれる差分計算により、0≦k≦1である限り、重み係数kに関する選択された値に関係なく、トルクの計算時に、均一な干渉場と重畳された線形の干渉場勾配とによる干渉場成分が除去され得る。非線形の干渉場勾配による誤差は、選択されたkに応じて除去または最小化され得る。したがって、第1の磁場センサ、第2の磁場センサ、第3の磁場センサ、および第4の磁場センサの測定信号に基づいて、磁気弾性トルクセンサの周囲に非線形の干渉場勾配がある場合にも、トルクのさらに正確な測定を可能となり得る。
【0055】
有利には、磁気弾性トルクセンサの感度は、干渉場のないオフセット補正後の2点較正によって算出される。特に、感度は、次の式に従って算出される。
【0056】
【0057】
この式において、
・M1は、2点較正の第1の点における単位「Nm」を有するトルクであり、
・M2は、2点較正の第1の点における単位「Nm」を有するトルクであり、
・BSEa(Mb)は、2点較正の点「b」における、磁場センサ「a」の単位「μT」で測定された測定信号であり(ここで、第1の磁場センサに関してa=1、第2の磁場センサに関してa=2、第3の磁場センサに関してa=3、第4の磁場センサに関してa=4であり、2点較正の第1の点に関してb=1、第2の点に関してb=2である。)、
・d12は、単位「mm」を有する、第1の磁場センサと第2の磁場センサとの間の距離であり、
・d23は、単位「mm」を有する、第2の磁場センサと第3の磁場センサとの間の距離であり、
・d34は、単位「mm」を有する、第3の磁場センサと第4の磁場センサとの間の距離であり、
・kは、式(6)を参照して前述した重み係数である。
【0058】
好ましくは、第1の磁場センサ、第2の磁場センサ、および第3の磁場センサ、および第4の磁場センサが、互いに対して、および少なくとも1つの磁化領域に対して、以下の条件が満たされるように配置されている。
【0059】
【0060】
特に、第1の磁場センサ、第2の磁場センサ、および第3の磁場センサ、および第4の磁場センサが、互いに対して、および少なくとも1つの磁化領域に対して、以下の条件が満たされるように配置されている。
【0061】
【0062】
この式において、
・NSE1は、磁気弾性トルクセンサによって測定可能な最大トルクをシャフトに印加することにより第1の磁場センサの位置で少なくとも1つの磁化領域によって発生する磁場の、単位「μT」を有する磁束密度の所定の成分であり、
・NSE2は、磁気弾性トルクセンサによって測定可能な最大トルクをシャフトに印加することにより第2の磁場センサの位置で少なくとも1つの磁化領域によって発生する磁場の、単位「μT」を有する磁束密度の所定の成分であり、
・NSE3は、磁気弾性トルクセンサによって測定可能な最大トルクをシャフトに印加することにより第3の磁場センサの位置で磁化領域によって発生する磁場の、単位「μT」を有する磁束密度の所定の成分であり、
・NSE4は、磁気弾性トルクセンサによって測定可能な最大トルクをシャフトに印加することにより第4の磁場センサの位置で少なくとも1つの磁化領域によって発生する磁場の、単位「μT」を有する磁束密度の所定の成分であり、
・d12は、単位「mm」を有する、第1の磁場センサと第2の磁場センサとの間の距離であり、
・d23は、単位「mm」を有する、第2の磁場センサと第3の磁場センサとの間の距離であり、
・d34は、単位「mm」を有する、第3の磁場センサと第4の磁場センサとの間の距離であり、
・kは、式(6)を参照して前述した重み係数である。
【0063】
特に、上記の所定の磁束密度は、干渉場なしでオフセット補正された磁束密度である。
【0064】
好ましくは、軸方向における第1の磁場センサと第2の磁場センサとの間の距離と、軸方向における第2の磁場センサと第3の磁場センサとの間の距離と、第3の磁場センサと第4の磁場センサとの間の距離の和は、6mm以上、20mm未満である。言い換えると、軸方向における第1の磁場センサと第4の磁場センサとの間の距離は、好ましくは6mm以上、20mm未満である。これにより、磁気弾性トルクセンサは軸方向でコンパクトに構成されている。ここで、少なくとも3つの磁場センサは、特に、第1の磁場センサ、第2の磁場センサ、第3の磁場センサ、および第4の磁場センサを正確に含み得る。
【0065】
本発明の有利な形態によれば、シャフトは、少なくとも3つの磁場センサが割り当てられているただ1つの磁化領域を有する。特に、第1の磁場センサ、第2の磁場センサ、および第3の磁場センサ、または第1の磁場センサ、第2の磁場センサ、第3の磁場センサ、および第4の磁場センサが、1つの磁化領域に割り当てられている。
【0066】
本発明の有利な代替形態によれば、シャフトは、第1の磁化領域および第2の磁化領域のみを有し、第1の磁化領域と第2の磁化領域とが反対の磁化を有する。言い換えると、シャフトには、好ましくは、反対の磁化を有する2つの磁化領域のみが設けられている。第1の磁化領域と第2の磁化領域とは、絶対値が等しい磁化を有してもよい。しかし、第1の磁化領域と第2の磁化領域との磁化の絶対値が異なっていてもよい。
【0067】
好ましくは、第1の磁場センサおよび第2の磁場センサが第1の磁化領域に、第3の磁場センサが第2の磁化領域に割り当てられている。代替として、好ましくは、第1の磁場センサおよび第2の磁場センサが第1の磁化領域に、第3の磁場センサおよび第4の磁場センサが第2の磁化領域に割り当てられていてもよい。
【0068】
磁場センサが磁化領域に割り当てられているという表現は、特に、磁場センサが、シャフトへのトルク印加時にこの磁化領域によって発生可能な磁場の磁束密度の1つまたは複数の成分を検出するように設計されていることを意味する。
【0069】
第1の磁場センサおよび/または第2の磁場センサおよび/または第3の磁場センサおよび/または第4の磁場センサはそれぞれ、例えばホールセンサ、AMRセンサ(AMR効果に基づくセンサ;異方性磁気抵抗効果)、GMRセンサ(GMR効果に基づくセンサ;巨大磁気抵抗センサ)、フラックスゲート磁力計、またはTMRセンサ(トンネル磁気抵抗センサ)として構成されていてもよい。
【0070】
本発明において、ある磁場センサと別の磁場センサとの間の距離は、有利には、ある磁場センサの1点、特にセンサ中心と、別の磁場センサの対応する1点、特にセンサ中心との間の距離として定義されていることに留意されたい。
【0071】
本発明において、「磁化領域」という用語は、「磁化経路」または「磁化路」とも呼ばれ得る。
【0072】
本発明はさらに、上述した磁気弾性トルクセンサを備える車両に関する。
【0073】
車両は、特に電気的におよび/または力の作用で駆動可能であり、クランク駆動装置を有してもよい。ここで、磁気弾性トルクセンサは、有利にはクランク駆動装置に配置されており、特に、運転者が力の作用によってクランク駆動装置に加えるトルクを検出するように設計されている。
【0074】
さらに、本発明は、上述した磁気弾性トルクセンサを使用してトルクを測定するための方法に関する。この方法は、第1の磁場センサの少なくとも1つの測定信号を検出するステップと、第2の磁場センサの少なくとも1つの測定信号を検出するステップと、第3の磁場センサの少なくとも1つの測定信号を検出するステップと、第1の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、第2の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、第3の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、および、軸方向における第2の磁場センサと第3の磁場センサとの間の距離と軸方向における第1の磁場センサと第2の磁場センサとの間の距離との比によって、シャフトに加えられているトルクを測定するステップと、を含む。ここで、上述した磁気弾性トルクセンサに関して述べた利点がここでも与えられている。
【0075】
言い換えると、本発明は、トルクを測定するための方法であって、第1の磁場センサの少なくとも1つの測定信号を検出するステップと、第2の磁場センサの少なくとも1つの測定信号を検出するステップと、第3の磁場センサの少なくとも1つの測定信号を検出するステップとを含み、第2の磁場センサが、軸方向で第1の磁場センサと第3の磁場センサとの間に配置されており、磁場センサがそれぞれ少なくとも1つの測定軸を有し、少なくとも1つの測定軸の方向で磁場の磁束密度の成分を検出するように設計されている方法を含む。磁場センサのうちの少なくとも1つは、シャフトの少なくとも1つの磁化領域に対して、磁場センサがそれぞれの少なくとも1つの測定軸の方向で磁場の磁束密度の成分を検出するように設計されているように配置されており、磁場が、シャフトへのトルク印加時に、少なくとも1つの磁化領域によって発生可能である。さらに、この方法は、第1の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、第2の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、第3の磁場センサの少なくとも1つの測定信号、および、軸方向における第2の磁場センサと第3の磁場センサとの間の距離と軸方向における第1の磁場センサと第2の磁場センサとの間の距離との比によって、シャフトに加えられているトルクを測定するステップを含む。
【0076】
上で説明した磁気弾性トルクセンサの特徴は、方法の特徴としても表され得ることに留意されたい。
【0077】
有利には、解析ユニットと磁場センサとは、磁場センサのタイプに応じて、情報技術の観点から/デジタルまたはアナログで相互接続されていてもよい。言い換えると、解析ユニットと磁場センサとの間のインターフェースは、磁場センサのタイプに応じて、デジタルまたはアナログに実装されていてもよい。
【0078】
以下、添付図面を参照して、本発明の例示的実施形態を詳細に述べる。図面において、同一または機能的に同一の構成部分には、それぞれ同一の参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】本発明の第1の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサの簡略概略図である。
【
図2】シャフトへのトルク負荷がない場合の、
図1の磁気弾性トルクセンサのシャフトの簡略概略図である。
【
図3】シャフトへのトルク負荷がある場合の、
図2の磁気弾性トルクセンサのシャフトの簡略概略図である。
【
図4】磁気弾性トルクセンサの周囲における干渉磁場の例を表すためのグラフである。
【
図5】シャフトへのトルク負荷時に発生可能であり、トルクセンサの磁場センサによって検出可能である、第1の例示的実施形態による例示的な磁気弾性トルクセンサのシャフトに沿った磁場の軸方向成分の分布のグラフである。
【
図6】第1の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサを備える電動自転車を示す図である。
【
図7】本発明の第2の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサの簡略概略図である。
【
図8】シャフトへのトルク負荷がない場合の、
図7の磁気弾性トルクセンサのシャフトの簡略概略図である。
【
図9】シャフトへのトルク負荷時に発生可能であり、トルクセンサの磁場センサによって検出可能である、第2の例示的実施形態による第1の例示的な磁気弾性トルクセンサのシャフトに沿った磁場の軸方向成分の分布のグラフである。
【
図10】シャフトへのトルク負荷時に発生可能であり、トルクセンサの磁場センサによって検出可能である、第2の例示的実施形態による第2の例示的な磁気弾性トルクセンサのシャフトに沿った磁場の軸方向成分の分布のグラフである。
【
図11】シャフトへのトルク負荷時に発生可能であり、トルクセンサの磁場センサによって検出可能である、第2の例示的実施形態による第3の例示的な磁気弾性トルクセンサのシャフトに沿った磁場の軸方向成分の分布のグラフである。
【
図12】本発明の第3の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサの簡略概略図である。
【
図13】本発明の第4の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサの簡略概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下、
図1~
図5を参照して、本発明の第1の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサ10を詳細に述べる。
【0081】
図1から分かるように、磁気弾性トルクセンサ10は、磁気弾性シャフト5、第1の磁場センサ1、磁場センサ2、第3の磁場センサ3、および解析ユニット6を含む。
【0082】
有利には円柱形状に構成されているシャフト5に、磁化領域51が形成されている。磁化領域51は、磁化されているシャフト5の部分に対応する。しかし、磁化領域51が、シャフト5を取り囲む追加の磁化構成要素によって、特に磁化リングによって提供されることも可能である。
【0083】
この例示的実施形態では、シャフト5は磁化領域51のみを含み、磁気弾性トルクセンサ10も、第1の磁場センサ1、第2の磁場センサ2、および第3の磁場センサ3以外にさらなる磁場センサを含まないことに留意されたい。
【0084】
シャフト5によって、軸方向111、径方向112、および周方向113が定義されている。シャフト5は、軸方向111に延びる。シャフト5の軸方向111、径方向112、および周方向113は、本発明において、磁気弾性トルクセンサ10の軸方向、径方向、および周方向とも呼ばれ得る。
【0085】
それぞれ少なくとも1つの測定軸を有し、少なくとも1つの測定軸の方向で磁場の磁束密度の成分を検出するように設計されている第1の磁場センサ1、第2の磁場センサ2、および第3の磁場センサ3は、有利には、シャフト5に対して径方向112および周方向113で同じ位置に配置されていてもよい。軸方向111では、第1の磁場センサ1、第2の磁場センサ2、および第3の磁場センサ3は、シャフト5に対して異なる位置に配置されている。
【0086】
さらに
図1から分かるように、第2の磁場センサ2は、第1の磁場センサ1と第3の磁場センサ3との間に位置決めされている。
【0087】
特に、第1の磁場センサ1および第2の磁場センサ2は、軸方向111で互いに距離12だけ離して配置されている。さらに、第3の磁場センサ3は、軸方向111で第2の磁場センサ2から距離23だけ離して配置されている。
【0088】
ここで、軸方向111における第1の磁場センサ1と第2の磁場センサ2との間の距離12と、軸方向111における第2の磁場センサ2と第3の磁場センサ3との間の距離23との和は、4mm以上、20mm未満である。
【0089】
第1の磁場センサ1、第2の磁場センサ2、および第3の磁場センサ3は、互いに、およびシャフト5の磁化領域51に対して、以下の2つの条件のうちの1つが満たされるように配置されている。
【0090】
【0091】
この式において、
・NSE1は、磁気弾性トルクセンサ10によって測定可能な最大トルクをシャフト5に印加することにより第1の磁場センサ1の位置で磁化領域51によって発生する磁場の、単位「μT」でを有するの磁束密度の所定の成分であり、
・NSE2は、磁気弾性トルクセンサ10によって測定可能な最大トルクをシャフト5に印加することにより第2の磁場センサ2の位置で磁化領域51によって発生する磁場の、単位「μT」を有する磁束密度の所定の成分であり、
・NSE3は、磁気弾性トルクセンサ10によって測定可能な最大トルクをシャフト5に印加することにより第3の磁場センサ3の位置で磁化領域51によって発生する磁場の、単位「μT」を有する磁束密度の所定の成分である。
【0092】
有利には、上記の所定の磁束密度は、干渉場なしでオフセット補正された磁束密度である。
【0093】
特に、3つの磁場センサ1、2、3は、磁化領域51に割り当てられている。言い換えると、3つの磁場センサ1、2、3は、シャフト5へのトルク印加時に磁化領域51によって発生可能な磁場の磁束密度の成分を軸方向111で検出するようにそれぞれ設計されているように磁化領域51に対して配置されている。
【0094】
シャフト5へのトルク負荷時に磁場がどのように発生するかについて、
図2および3に基づいて以下に説明する。
【0095】
図2で、磁気弾性トルクセンサ10のシャフト5は、トルク負荷なしで表されている。この図から分かるように、シャフト5の磁化領域51は、シャフト51において周方向113に延びる閉じた磁力線54を有する。
【0096】
一方、
図3では、シャフト5は、トルクを負荷された状態で表されている。シャフト5または磁化領域51に加えられているトルクは、シャフト5に機械的応力をもたらす。シャフト5の磁化領域51で発生する磁気弾性相互作用により、磁力線54は応力方向に回転する。これにより、磁力線54は、シャフト5の周りで螺旋状に延びる。その結果、磁化領域51の端部512に達した磁力線54は、シャフト5から出て、磁化領域51の開始点511に戻る。これにより、シャフト5の外側の領域に磁場が発生し、この磁場は、常にシャフト5に沿って向けられている。この磁場は、有効磁場と呼ばれる。磁化領域51の正確に中央で、有効磁場はシャフト5に平行であり、一方、磁化領域51の縁部領域では、シャフト5から垂直な有効磁場の成分がより増加する。
図1および3に磁力線55によって表されている有効磁場、またはシャフト5の外側の有効磁場の磁束密度は、各点でシャフト5に加えられているトルクに比例する。
【0097】
シャフト5の外側の有効磁場の磁束密度は磁場センサ1、2、3によって検出することができ、磁場センサ1、2、3は、測定信号を出力するようにそれぞれ設計されている。シャフト5またはトルク弾性磁場センサ10の周囲に干渉磁場がある場合、シャフト5へのトルク負荷時に、各磁場センサ1、2、3の測定信号は、発生する有効磁場の対応する磁束密度を含むだけでなく、それぞれの磁場センサ1、2、3の位置での重畳された干渉磁場の磁束密度も含む。
【0098】
特に、解析ユニット6は、第1の磁場センサ1の第1の測定信号、第2の磁場センサ2の第2の測定信号、および第3の磁場センサ3の第3の測定信号を検出するように設計されている。このために、解析ユニット6は、特に情報技術の観点から、3つの磁場センサ1、2、および3と接続されている。
【0099】
特に、第1の測定信号、第2の測定信号、第3の測定信号は、オフセット補正された測定信号である。オフセット補正は、有利には、トルクがなく干渉場もない状態で行われる。
【0100】
シャフト5に加えられているトルクを測定するために、解析ユニット6は、第1の測定信号、第2の測定信号、第3の測定信号、軸方向111における第2の磁場センサ23と第3の磁場3との間の距離23と軸方向111における第1の磁場センサ1と第2の磁場センサ2との間の距離12との比、および磁気弾性トルクセンサ10の感度を使用するように設計されている。
【0101】
ここで、第1の測定信号は、第1の磁場センサの位置での軸方向における磁場の磁束密度の成分に、第2の測定信号は、第2の磁場センサの位置での軸方向における磁場の磁束密度の成分に、第3の測定信号は、第3の磁場センサの位置での軸方向における磁場の磁束密度の成分に対応する。
【0102】
特に、解析ユニット6は、シャフト5に加えられているトルクを次の式によって測定するように設計されている。
【0103】
【0104】
この式において、
・Mは、単位「Nm」を有する測定対象のトルクであり、
・BSE1は、単位「μT」を有する、第1の磁場センサの位置での軸方向における磁場の磁束密度の成分であり、
・BSE2は、単位「μT」を有する、第2の磁場センサの位置での軸方向における磁場の磁束密度の成分であり、
・BSE3は、単位「μT」を有する、第3の磁場センサの位置での軸方向における磁場の磁束密度の成分であり、
・d12は、単位「mm」を有する、第1の磁場センサ1と第2の磁場センサ2との間の距離12であり、
・d23は、単位「mm」を有する、第2の磁場センサ2と第3の磁場センサ3との間の距離23であり、
・S13は、単位「Nm/μT」を有する、磁気弾性トルクセンサ10の感度である。
【0105】
本願で提案される磁場センサ1、2、3の配置、および本願で提案される磁気弾性トルクセンサ10のシャフト5に加えられているトルクの計算により、計算時に、軸方向111における均一な干渉場および線形の干渉場勾配が直接、近似なしで除去され得る。さらに、これらの直接除去される干渉場が、近似なしで計算され、可能な監視機能に利用され得る。除去される干渉場の計算は、後で
図4を参照してより詳細に説明する。
【0106】
上記の計算式では非線形の干渉場成分がゼロであると仮定されているので、例えばさらに非線形勾配によりトルクの計算時に小さな誤差が発生する可能性があるが、通常は無視することができる。しかし、非線形成分は、絶対値に関し、磁気弾性トルクセンサ10の周囲に通常存在する均一な干渉場および線形の干渉場勾配と比較して無視することができる。
【0107】
磁気弾性トルクセンサ10のシャフト5の周囲に非線形の干渉場成分が存在する場合に、3つのみの磁場センサ、すなわち磁場センサ1、2、3からの測定信号を使用してシャフト5に加えられているトルクを計算するとき、この小さな誤差をさらに低減するために、解析ユニット6はさらに、シャフト5に加えられているトルクを次の式によって測定するように設計されていてもよい。
【0108】
【0109】
2つの式の相違点は、第2の式では所定の重み係数kを使用することにある。この重み係数をトルク計算に導入することにより、シャフト5または磁気弾性トルクセンサ10の周囲において軸方向111で非線形の干渉場成分が存在する場合に、非線形の干渉場成分によって引き起こされる誤差は、トルクの測定時に低減され得る。
【0110】
言い換えると、磁気弾性トルクセンサ10の領域内で非線形の干渉場勾配が目的用途で常に同じように生成される場合、所定の重み係数kにより、第1の式を使用して、生じる小さい誤差をさらに減少され得、一方、干渉場勾配の様々な生成が生じ得るので非線形の干渉場勾配が常に同じように生成されるという仮定が当てはまらない場所および環境変化用途では、トルク計算で引き起こされる誤差は第1の式よりも大きくなる可能性があり、したがって、そのような用途では、最大可能誤差を最小化するために、所定の重み係数kを使用しない第1の式が好ましい選択肢となる。
【0111】
磁気弾性トルクセンサ10の感度は、干渉場のないオフセット補正後の2点較正によって算出され得る。特に、感度は、全般的な説明の部分から、式3aまたは式3bに従って測定される。
【0112】
第1の磁場センサ1および/または第2の磁場センサ2および/または第3の磁場センサ3はそれぞれ、例えばホールセンサ、AMRセンサ(AMR効果に基づくセンサ;異方性磁気抵抗効果)、GMRセンサ(GMR効果に基づくセンサ;巨大磁気抵抗センサ)、フラックスゲート磁力計、またはTMRセンサ(トンネル磁気抵抗センサ)として構成されていてもよい。
【0113】
図4は、磁気弾性トルクセンサ10の周囲における干渉磁場の例を表すためのグラフを示す。
【0114】
x軸200は、軸方向111においてシャフト5に沿って原点202から測定された単位「mm」の距離を示し、y軸201は、軸方向(111)における単位「μT」の干渉場の磁束密度成分を示す。x軸200での原点202のゼロ値は、シャフト5の開始点に対応する。
【0115】
図4から、第1の磁場センサ1と第3の磁場センサ3との間で、干渉磁場が、磁場センサ1に関して定義される均一な成分203を有することが分かる。これは、軸方向111における第1の磁場センサ1、第2の磁場センサ2、および第3の磁場センサ3の位置にこの均一な成分203が存在することを意味する。
【0116】
均一な成分203の基準を第1の磁場センサ1に設定することによって、第1の磁場センサ1の位置には均一な成分203のみが存在する。第1の磁場センサ1と第3の磁場センサ3との間に線形の干渉場勾配がさらに存在し、したがって、軸方向111における第2の磁場センサ2の位置には均一な成分203および線形成分204が存在し、軸方向111における第3の磁場センサ3の位置には均一な成分203、線形成分204、およびさらなる線形成分205が存在する。
【0117】
さらに
図4から分かるように、第2の磁場センサ2と第3の磁場センサ3との間には干渉場勾配のさらなる成分206が存在し、したがって、第1の磁場センサ1と第3の磁場センサとの間で足し合わさって非線形の干渉場勾配が存在する。第1の磁場センサ1と第2の磁場センサ2との間の測定可能な勾配を純粋に線形として定義することにより、第1の磁場センサ1と第3の磁場センサ3との間の非線形の干渉勾配をマッピングするために、第3の磁場センサ3の位置で、第2の磁場センサ2と第3の磁場センサとの間の線形成分205に、成分206を加えることができる。したがって、軸方向111における第3の磁場センサ3の位置には非線形成分206も存在する。
【0118】
磁気弾性トルクセンサ10のシャフト5に加えられているトルクを計算するための上記の式は、軸方向111における干渉場の正確な経路に関係なく、シャフト5または磁気弾性トルクセンサ10の周囲での干渉場の除去または補償を可能にすることに留意されたい。
【0119】
図4からの干渉場の様々な成分は、次の式によって算出することができる。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
上式において、
・ΔSlin(d23)は、単位「μT」を有する線形成分205であり、
・ΔSlin(d12)は、単位「μT」を有する線形成分204であり、
・ΔSlin(d13)は、第3の磁場センサ3の位置での干渉磁場の全ての線形成分であり、全ての線形成分は、線形成分205と線形成分204との和に対応し、
・ΔSn.l.は、非線形成分206である。
【0124】
単位「μT」を有する有効磁場NSEa(M2)(第1の磁場センサ1に関してはa=1、第2の磁場センサ2に関してはa=2、第3の磁場センサ3に関してはa=3)は、較正(干渉場なし、オフセット補正後)時に測定することができ、ここで、トルクM2>>0Nmでなければならない。
【0125】
干渉場成分を測定するための上記の式では、非線形の干渉場勾配が存在しない、または非線形の干渉場勾配を無視してもよく、すなわちΔSx,n.l.=0と仮定することができる。実行時、定義された制限値を超えたときに計算されたトルクを無効と宣言してもよく、線形の干渉場勾配を監視してもよい。これは、測定された線形の干渉場勾配の増加と共に、計算されたトルクでの非線形の干渉勾配による最大可能誤差も増加するので、特に有利である。
【0126】
図4からの干渉場の均一成分203は、次の式によって算出することができる。
【0127】
【0128】
したがって、それぞれ磁場センサ1、2、および3の位置での
図4からの個別に計算された干渉場成分の対応する合計により、磁場センサの各位置で、観察している全干渉場成分を測定可能である。上述した干渉場の成分、およびそれぞれの全干渉場成分は、解析ユニット6によって計算することができる。
【0129】
図5は、第1の例示的実施形態による例示的な磁気弾性トルクセンサ10のシャフト5へのトルク負荷時に発生可能であり、トルクセンサ10の3つの磁場センサ1、2、3によって検出可能である、磁場の軸方向111における磁束密度のグラフを示す。
【0130】
x軸207は、軸方向111においてシャフト5に沿って原点209から測定された単位「mm」の距離を示し、y軸208は、軸方向111における単位「μT」の磁束密度の成分を示す。x軸207での原点209のゼロ値は、シャフト5の開始点に対応する。
【0131】
この例示的な磁気弾性トルクセンサ10に関して、次の式が成り立つ。
【0132】
【0133】
例示的に、これは、第1の傾き210と第2の傾き211とが互いに異なることを意味する。第1の傾き210は、第1の磁場センサ1の位置での有効磁場の磁束密度によって定義されている点と、第2の磁場センサ2の位置での有効磁場の磁束密度によって定義されている点とを結ぶ直線的な傾きである。それに対応して、第2の傾き211は、第2の磁場センサ2の位置での有効磁場の磁束密度によって定義されている点と、第3の磁場センサ3の位置での有効磁場の磁束密度によって定義されている点とを結ぶ直線的な傾きである。
【0134】
ここで、特に、第1の傾き210は正であり、第2の傾き211は負である。
【0135】
図6は、第1の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサ10を備える本発明による車両100を示す。
【0136】
車両100は、力の作用および/または電動力で駆動可能な車両であり、特に運転者のペダル踏力をアシストするために電気駆動装置101を備える電動自転車である。電気駆動装置101は、第1のクランク103および第2のクランク104を有するクランク駆動装置102に配置され、蓄電池105によって電気エネルギーが供給される。
【0137】
磁気弾性トルクセンサ10は、ユニットとして構成または製造され、それ自体、クランク駆動装置102に固定されてもよい。ここで、磁場センサ1、2、および3、シャフト5、ならびに解析ユニット6は、有利には単一のハウジングに収容される。代替として、磁場センサ1、2、および3、シャフト5、ならびに解析ユニット6は、本発明による磁気弾性トルクセンサ10として相互作用するように、車両100に個別に固定されてもよい。
【0138】
例えば上述した車両100などの車両における磁気弾性トルクセンサ10の使用は、本発明の1つの可能な用途にすぎない。
【0139】
図7~
図11は、本発明の第2の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサ10に関する。
【0140】
第2の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサ10が第1の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサと根本的に異なる点は、第2の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサ10のシャフト5には第1の磁化領域51および第2の磁化領域52が形成されている点である。
【0141】
さらに、
図8から、第1の磁化領域51と第2の磁化領域52とが逆向きの磁化を有することが分かる。第1の磁化領域51と第2の磁化領域52との磁化は、絶対値が等しくなるように選択されてもよい。しかし、磁化領域51、52の磁化の絶対値が異なっていてもよい。
【0142】
図7を再び参照すると、第1の磁場センサ1および第2の磁場センサ2が第1の磁化領域51に割り当てられており、第3の磁場センサ3が第2の磁化領域52に割り当てられている。これは、第1の磁場センサ1および第2の磁場センサ2がそれぞれ、シャフト5へのトルク印加時に、第1の磁化領域51によって発生する磁場の磁束密度(磁束線55によって表される)を検出するように設計されており、第3の磁場センサ3が、シャフト5へのトルク印加時に、第2の磁化領域52によって発生する磁場の磁束密度(磁束線56によって表される)を検出するように設計されていることを意味する。
【0143】
図9は、第2の例示的実施形態による第1の例示的な磁気弾性トルクセンサ10のシャフト5へのトルク負荷時に発生可能であり、トルクセンサ10の3つの磁場センサ1、2、3によって検出可能である、磁場の軸方向111における磁束密度のグラフを示す。
図10は、第2の例示的実施形態による第2の例示的な磁気弾性トルクセンサ10のシャフト5へのトルク負荷時に発生可能であり、トルクセンサ10の3つの磁場センサ1、2、3によって検出可能である、磁場の軸方向111における磁束密度のグラフを示す。
図11は、第2の例示的実施形態による第3の例示的な磁気弾性トルクセンサ10のシャフト5へのトルク負荷時に発生可能であり、トルクセンサ10の3つの磁場センサ1、2、3によって検出可能である、磁場の軸方向111における磁束密度のグラフを示す。
【0144】
各グラフにおいて、x軸207は、軸方向111においてシャフト5に沿って原点209から測定された単位「mm」の距離を示し、y軸208は、軸方向111における単位「μT」の磁束密度の成分を示す。x軸207での原点209のゼロ値は、シャフト5の開始点に対応する。
【0145】
図9の第1の例示的な磁気弾性トルクセンサ10に関して、次の式が成り立つ。
【0146】
【0147】
磁場センサ1、2、3は、互いに対して、ならびに第1の磁化領域51および第2の磁化領域52に対して、両方の傾き210、211が負であり、異なる大きさとなるように配置されている。
【0148】
図10の第2の例示的な磁気弾性トルクセンサ10に関して、次の式が成り立つ。
【0149】
【0150】
この式において、磁場センサ1、2、3は、互いに対して、ならびに第1の磁化領域51および第2の磁化領域52に対して、両方の傾き210、211が異なる大きさを有するように配置され、ここで、第1の傾き210はゼロであり、第2の傾きは負である。
【0151】
図9と10の例示的な磁気弾性トルクセンサ10の比較から、
図10による磁気弾性トルクセンサ10での第1の磁場センサ1と第2の磁場センサ2との間の距離12が、
図9による磁気弾性トルクセンサ10での距離12よりも大きいことが分かる。他方、2つの磁気弾性トルクセンサ10は、対応する第2の磁場センサ2と対応する第3の磁場センサ3との間の距離が同じであり、したがって、
図10による磁気弾性トルクセンサ10での距離12と距離23との比は、
図9による磁気弾性トルクセンサ10での比よりも大きい。
【0152】
図11の例示的な磁気弾性トルクセンサ10に関して、次の式が成り立つ。
【0153】
【0154】
図10と11の例示的な磁気弾性トルクセンサ10の比較から、
図11による磁気弾性トルクセンサ10での第1の磁場センサ1と第2の磁場センサ2との間の距離12が、
図10による磁気弾性トルクセンサ10での距離12よりも大きいことが分かる。
図11による磁気弾性トルクセンサ10における第2の磁場センサ2と第3の磁場センサ3との間の距離23も、
図10による磁気弾性トルクセンサ10における距離23より大きいが、距離12、23は、
図11による磁気弾性トルクセンサ10における距離12と距離23との比が
図10による磁気弾性トルクセンサ10における比よりも大きくなるように選択される。
【0155】
ここで、
図9~
図11の磁気弾性トルクセンサ10を互いに比較すると、
図9の磁気弾性トルクセンサ10が軸方向111で最もコンパクトであり、
図11の磁気弾性トルクセンサ10が軸方向111で最もコンパクトでないことを確認することができる。他方、
図11の磁気弾性トルクセンサ10は、加えられているトルクに関して式(5b)を用いて個々の信号を計算した後に得られる最大の有効信号を有し、
図9の磁気弾性トルクセンサ10は、加えられているトルクに関して式(5b)を用いて個々の信号を計算した後に得られる最小の有効信号を有する。
【0156】
一般に、これは、例えば所与の磁化および設定された外側センサ位置において、個々の信号の計算後に、磁気弾性トルクセンサ10の加えられているトルクに関して、距離12と23を自由に選択することによって、結果として得られる有効な有効信号の最大化が可能になることを意味する。
【0157】
図12は、本発明の第3の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサ10を示す。
【0158】
第3の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサ10が第1の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサと異なる点は、第3の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサ10が、第1の磁場センサ1、第2の磁場センサ2、および第3の磁場センサ3に加えて、第4の磁場センサ4も有する点である。
【0159】
ここで、第3の磁場センサ3は、軸方向111で第2の磁場センサ2と第4の磁場センサ4との間に配置され、軸方向111で第4の磁場センサ4から距離34を有する。
【0160】
さらに、4つの磁場センサ1、2、3、4すべてが磁化領域51に割り当てられる。これは、第4の磁場センサ4が、第1の磁場センサ1、第2の磁場センサ2、および第3の磁場センサ3と同様に、少なくとも1つの測定軸を有し、シャフト5へのトルク負荷時に磁化領域51によって発生する、少なくとも1つの測定軸の方向における磁場の磁束密度の成分を検出するように設計されていることを意味する。
【0161】
第3の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサ10において、軸方向111における第1の磁場センサ1と第2の磁場センサ2との間の距離12、軸方向111における第2の磁場センサ2と第3の磁場センサ3との間の距離23、および軸方向1111における第3の磁場センサ3と第4の磁場センサ4との間の距離34の和は、6mm以上、20mm未満である。
【0162】
ここで、解析ユニット6は、第4の磁場センサ4の第4の測定信号を検出するように設計されている。このために、第4の磁場センサ4は、特に情報技術の観点で解析ユニット6に接続されている。
【0163】
しかし、磁場センサ1、2、3、4と解析ユニット6とのインターフェースが同様に実施されることも可能である。
【0164】
シャフト5に加えられているトルクを測定するために、解析ユニット6は、第1の測定信号、第2の測定信号、第3の測定信号、および、軸方向111における第2の磁場センサ2と第3の磁場センサ3との間の距離23と軸方向111における第1の磁場センサ1と第2の磁場センサ2との間の距離12との比に加えて、第4の測定信号、および軸方向111における第2の磁場センサ2と第3の磁場センサ3との間の距離23と軸方向111における第3の磁場センサ3と第4の磁場センサ4との間の距離34との比をさらに使用するように設計されている。
【0165】
特に、第4の測定信号は、第1の測定信号、第2の測定信号、および第3の測定信号と同様に、オフセット補正された測定信号である。オフセット補正は、有利には、トルクがなく干渉場もない状態で行われる。
【0166】
ここで、第1の測定信号は、第1の磁場センサの位置での軸方向における磁場の磁束密度の成分に対応し、第2の測定信号は、第2の磁場センサの位置での軸方向における磁場の磁束密度の成分に対応し、第3の測定信号は、第3の磁場センサの位置での軸方向における磁場の磁束密度の成分に対応し、第4の測定信号は、第4の磁場センサの位置での軸方向における磁場の磁束密度の成分に対応する。
【0167】
好ましくは、解析ユニット6は、シャフト5に加えられているトルクを次の式によって測定するように設計されている。
【0168】
【0169】
この式において、
・Mは、単位「Nm」を有する測定対象のトルクであり、
・BSE1は、単位「μT」を有する、第1の磁場センサの位置での軸方向における磁場の磁束密度の成分であり、
・BSE2は、単位「μT」を有する、第2の磁場センサの位置での軸方向における磁場の磁束密度の成分であり、
・BSE3は、単位「μT」を有する、第3の磁場センサの位置での軸方向における磁場の磁束密度の成分であり、
・BSE4は、単位「μT」を有する第4の測定信号であり、
・d12は、単位「mm」を有する、第1の磁場センサ1と第2の磁場センサ2との間の距離12であり、
・d23は、単位「mm」を有する、第2の磁場センサ2と第3の磁場センサ3との間の距離23であり、
・d34は、単位「mm」を有する、第3の磁場センサ3と第4の磁場センサ4との間の距離34であり、
・S14は、単位「Nm/μT」を有する、磁気弾性トルクセンサ10の感度であり、
・kは、用途に応じて非線形の干渉場成分に関する補償特性を最適化すること(完全な除去)ができる、または一般に、非線形の干渉場成分によるワーストケース誤差が最小化され得ることができる重み係数である。
【0170】
この計算式により、0≦k≦1である限り、重み係数kに関する選択された値に関係なく、トルクの計算時に、均一な干渉場と重畳された線形の干渉場勾配とによる干渉場成分が除去され得る。さらに、重み係数によって、干渉場勾配の非線形成分をマスクおよび除去され得、またはシャフト5もしくは磁気弾性トルクセンサ10の周囲に様々な非線形の干渉場勾配が存在するときにワーストケース誤差最小化が達成され得る。これは、非線形の干渉場勾配が常に同じように生成されることが保証され得ない場所および環境変化用途での使用の場合に当てはまる。
【0171】
有利には、磁気弾性トルクセンサ10の感度は、干渉場のないオフセット補正後の2点較正によって算出される。特に、感度は、全般的な説明の部分から、式7に従って算出される。
【0172】
特に、第1の磁場センサ1、第2の磁場センサ2、第3の磁場センサ3、および第4の磁場センサ4は、互いに、および磁化領域51に対して、次の条件が満たされるように配置されている。
【0173】
【0174】
この式において、
・NSE1は、磁気弾性トルクセンサ10によって測定可能な最大トルクをシャフト5に印加することにより第1の磁場センサ1の位置で磁化領域51によって発生する磁場の、単位「μT」を有する磁束密度の所定の成分であり、
・NSE2は、磁気弾性トルクセンサ10によって測定可能な最大トルクをシャフト5に印加することにより第2の磁場センサ2の位置で磁化領域51によって発生する磁場の、単位「μT」を有する磁束密度の所定の成分であり、
・NSE3は、磁気弾性トルクセンサ10によって測定可能な最大トルクをシャフト5に印加することにより第3の磁場センサ3の位置で磁化領域51によって発生する磁場の、単位「μT」を有する磁束密度の所定の成分であり、
・NSE4は、磁気弾性トルクセンサ10によって測定可能な最大トルクをシャフト5に印加することにより第4の磁場センサ4の位置で磁化領域51によって発生する磁場の、単位「μT」を有する磁束密度の所定の成分であり、
・d12は、単位「mm」を有する、第1の磁場センサ1と第2の磁場センサ2との間の距離12であり、
・d23は、単位「mm」を有する、第2の磁場センサ2と第3の磁場センサ3との間の距離23であり、
・d34は、単位「mm」を有する、第3の磁場センサ3と第4の磁場センサ4との間の距離34であり、
・kは、上述した重み係数である。
【0175】
特に、上記の所定の磁束密度は、干渉場なしでオフセット補正された磁束密度である。
【0176】
図13は、本発明の第4の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサ10を示す。
【0177】
第4の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサ10が第3の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサと根本的に異なる点は、第4の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサ10が、第1の磁化領域51に加えて第2の磁化領域52も有する点である。
【0178】
ここで、第1の磁場センサ1および第2の磁場センサ2が第1の磁化領域51に割り当てられており、第3の磁場センサ3および第4の磁場センサ4が第2の磁化領域52に割り当てられている。
【0179】
これは、第1の磁場センサ1および第2の磁場センサ2がそれぞれ、シャフト5へのトルク負荷時に第1の磁化領域51によって発生する磁場の磁束密度の1つまたは複数(2つまたは3つ)の成分を検出するように設計されており、第3の磁場センサ3および第4の磁場センサ4がそれぞれ、シャフト5へのトルク負荷時に第2の磁化領域52によって発生する磁場の磁束密度の1つまたは複数(2つまたは3つ)の成分を検出するように設計されていることを意味する。
【0180】
特に、第1の磁化領域51と第2の磁化領域52とは反対の磁化を有し、それらの磁化は、絶対値が等しくてよい。代替として、磁化領域51、52の磁化の絶対値は異なっていてもよい。
【0181】
図6からの車両100は、第1の例示的実施形態による磁気弾性トルクセンサ10と組み合わせて述べたが、車両100において、上述した他の例示的実施形態の1つによる磁気弾性トルクセンサ100が使用され得ることに留意されたい。
【0182】
本発明の特定の利点は、磁気弾性トルクセンサ10のシャフト5が(最大で)1つの磁化領域51のみまたは(最大で)2つの磁化領域52しか有していない場合、すなわち3つ未満の磁化領域しか有していないときでも、上述した干渉場除去/補償を実施することができることである。
【0183】
しかし、本発明では、3つ以上の磁化領域を有するシャフト5でも上述した干渉場除去/補償が実現可能であることに留意されたい。
【0184】
本発明の上述した説明に加えて、その補完的な開示のために、ここでは、
図1~
図13での本発明の図的表現を明示的に参照する。
【国際調査報告】