(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】内燃エンジンにおける注水を制御する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/06 20060101AFI20231106BHJP
【FI】
G01N27/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526399
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2021080127
(87)【国際公開番号】W WO2022090467
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515269659
【氏名又は名称】プラスチック・オムニウム・アドヴァンスド・イノベーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・デューズ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・レオナール
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA05
2G060AC01
2G060AE17
2G060AF08
2G060HC02
2G060HC15
2G060KA05
(57)【要約】
凍り付くような寒い天気の場合に、自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する方法。本方法は、水質を制御する第1のステップを含み、第1のステップは、水の温度Tが0℃以下である場合、水の導電率σがゼロでもゼロ近くでもない場合、水質を承認しない第1のサブステップと、水の温度Tが-4℃よりも高く、好ましくは-2℃よりも高いとき、水の導電率σがゼロであるか又はゼロに近い場合、水質を承認する第2のサブステップとを含む。本方法は、水質が承認されない場合、注水を防止する第2のステップと、水質が承認された場合、注水を許可する第3のステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する方法であって、
(a)導電率センサの周囲の、注水タンク内に含まれている水の温度Tを判定するステップと、
(b)水質を制御するステップであり、
(b10)前記水の導電率σがゼロでもゼロ近くでもない場合、前記水質を承認しないステップ
を含む、制御するステップと、
(c)前記水質が承認されない場合、注水を防止するステップと
を含み、
前記水の前記判定された温度Tが0℃よりも低い場合、ステップ(b)は実施される、
方法。
【請求項2】
前記方法は、
(b20)ステップ(b)において、前記水の前記判定された温度Tが所定の閾値T
minよりも高いとき、前記水の前記導電率σがゼロであるか又はゼロに近い場合、前記水質を承認するステップと、
(d)前記水質が承認された場合、注水を許可するステップと
をさらに含み、
前記所定の閾値T
minの値が-4℃よりも高く、好ましくは-2℃よりも高い、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記判定された温度Tが前記所定の閾値T
minよりも低いとき、前記水は、前記判定された温度Tが少なくとも前記所定の閾値T
minに達するまで加熱される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水の前記導電率の値σが所定の閾値の導電率σ
max以下である場合、前記水の前記導電率σがゼロに近く、前記所定の閾値の導電率σ
maxの前記値は30μS/cm、より好ましくは20μS/cm、最も好ましくは10μS/cmである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項による、自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する前記方法を実施するように構成されている注水システム(10)であって、
前記水を貯留するための注水タンク(1)と、
前記注水タンク(1)内の前記水の前記導電率σを感知するための導電率センサ(3)と、
前記導電率センサ(3)の周囲の、前記注水タンク(1)内の前記水の前記温度Tを判定するための温度判定手段(2)と、
前記感知された導電率σを所定の閾値の導電率σ
maxと比較するためのコンパレータ(4)と、
前記注水タンク(1)から、前記内燃エンジンに接続されるように構成されている注入ライン(6)へ給水するための注水ポンプ(5)と、
前記水質を承認するか又は承認しないための第1の電子制御ユニット(7)と
を含む、注水システム(10)。
【請求項6】
前記注水システム(10)は、前記判定された温度Tが所定の閾値T
minよりも高いとき、前記注水タンク(1)内の前記水の前記導電率σを感知するように構成されており、前記所定の閾値T
minは-4℃よりも高く、好ましくは-2℃よりも高い、請求項5に記載の注水システム(10)。
【請求項7】
前記注水システム(10)は、前記判定された温度Tが前記所定の閾値T
minよりも低い場合、前記注水タンク(1)内に貯留されている前記水を、前記判定された温度Tが少なくとも前記所定の閾値T
minに達するまで加熱するためのヒータ(8)をさらに含む、請求項6に記載の注水システム(10)。
【請求項8】
前記温度判定手段(2)は温度センサ(2)を含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の注水システム(10)。
【請求項9】
前記温度センサ(2)及び前記導電率センサ(3)は各々、感知面を含み、前記温度センサ(2)の前記感知面と前記導電率センサ(3)の前記感知面との間の距離は30mm以下である、請求項8に記載の注水システム(10)。
【請求項10】
前記温度センサ(2)及び前記導電率センサ(3)は質センサデバイス(9)の一部である、請求項8又は9に記載の注水システム(10)。
【請求項11】
前記注水タンク(1)は水送達モジュール(11)を含む、請求項5から10のいずれか一項に記載の注水システム(10)。
【請求項12】
前記水送達モジュール(11)は、前記注水ポンプ(5)と、前記温度判定手段(2)と、前記導電率センサ(3)と、ヒータ(8)とを含む、請求項11に記載の注水システム(10)。
【請求項13】
請求項1から4のいずれか一項に記載の、自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する前記方法を実施するように構成されている内燃エンジンシステム(20)であって、内燃エンジン(21)と、請求項5から12のいずれか一項に記載の注水システム(10)と、注水ポンプ(5)を制御することにより、注入を許可するか又は防止するための第2の電子制御ユニット(22)とを含む、内燃エンジンシステム(20)。
【請求項14】
請求項1から4のいずれか一項に記載の、自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する前記方法を実施するように構成されている自動車であって、請求項13に記載の内燃エンジンシステム(20)を含む、自動車。
【請求項15】
自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する命令を含む持続性コンピュータ可読媒体であって、プロセッサにより実行された場合、前記プロセッサに、請求項1から4のいずれか一項に記載のステップを実施させる、持続性コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍り付くような寒い天気の場合に、自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する方法に関する。
【0002】
本発明は、本発明による方法を実施するように構成されている注水システムにも関する。本発明はさらに、本発明による方法を実施するように構成されている内燃エンジンシステム及び自動車に関する。本発明はさらに、本発明による方法のステップをプロセッサにより実行するための持続性コンピュータ可読媒体にも関する。
【背景技術】
【0003】
自動車の内燃エンジン内へ注水するための注水システムにおいて、その注入の前に水質が制御される。典型的な質制御動作は、その注入の前に水質を表す特性を測定する質センサデバイスに依存している。水質を表す典型的な特性は、注入される水の導電率である。実際、殆どの注入システムが脱塩水(demineralized water)で動作する。脱塩水は、室温で150μS/cm以下の導電率を有する水と定義される。したがって、非脱塩水は、室温で150μS/cmよりも高い導電率を有する水と定義される。通常、室温は約20℃から約25℃までに及ぶ。
【0004】
脱塩水で動作する注水システムにおいて、注水システムは、脱塩水と非脱塩水とを区別することができる導電率センサと、導電率測定情報に基づいて、水質を承認するか又は承認しないことができる電子制御ユニットとを含む。
【0005】
流体の固有の特性を識別するためのデバイス及び流体の通過を可能にするか又は閉鎖するデバイスを使用する、自動車内での流体の通過の選択的防止ためのシステム及び方法が、特許文献1から既知である。
【0006】
脱塩水で動作する現在の注水システムにおいて、導電率センサは、水が液状である時に水の導電率を測定する。例えば、特許文献2が、水タンク内の水質及び水タンクの注入レベルを検出するための水質及び注水レベル検出デバイスを含む、内燃エンジンの注水デバイスを開示している。水質を検出するために、水の導電率が、コンデンサの充電及び放電に基づいて判定され得る。さらに、注水デバイスは、注入レベルを判定する時と考えられる、水の温度を記録するための温度センサを含む。
【0007】
先行技術において既知の方法は、もっぱら、液状の水で実施されることが意図されている。しかし、冬の凍り付くような状況では、自動車の注水タンク内に含まれている水は、凍結する可能性がある。注水タンク内に含まれている水が凍結した場合、水は、自動車の内燃エンジン内へ注入されることが可能であるように液状でなくてはならないため、それを溶かすためにヒータが使用される。しかし、注水は、水の導電率が電子制御ユニットにより承認されるまで開始されない。
【0008】
殆どの場合には、注水タンク内に存在する加熱システムに因り、溶かされた水が注水タンクのポンプ取水で利用可能であり、一方、導電率センサの周囲の水は依然として凍結している。したがって、脱塩水で動作する現在の注水システムでは、水が注水に利用可能であるが、タンク内の液体水の導電率が測定され得ないため、それは注入されることが不可能である。氷の導電率が液体水の導電率と比較され得ないので、既知の注水システムでは、この情報は溶けた水に関して代表的と見なされないため、タンクの凍結部の導電率は測定されないか又は考慮されない。その結果として、コールドスタートの注入時間は、導電率センサの周囲の、「氷」としても既知の凍結水の温度が、氷が溶けるように十分に高くなるまで引き延ばされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第19154934号
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0338731号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の観点から、注水タンク内の水が少なくとも部分的に凍結している凍り付くような寒い天気の場合に、先行技術の方法の欠点を克服する、自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、凍り付くような寒い天気の場合に、自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する方法を提供する。本方法は、
(a)導電率センサの周囲の、注水タンク内に含まれている水の温度Tを判定するステップと、
(b)水質を制御するステップであり、
(b10)水の導電率σがゼロでもゼロ近くでもない場合、水質を承認しないステップ
を含む、制御するステップと、
(c)水質が承認されない場合、注水を防止するステップと
を含み、
水の判定された温度Tが0℃よりも低い場合、ステップ(b)は実施される、
方法。
【0012】
「水の判定された温度Tが0℃よりも低い」により、「水の判定された温度Tが0℃以下である」ことが理解されるべきである。水の温度Tは大気圧で制御されることに留意すべきである。さらに、水の判定された温度Tが大気圧で0℃以下である場合、水が凍結していると考えられる。したがって、水が導電率センサの周囲で凍結していると考えられる場合、ステップbが実施されることが理解されるべきである。
【0013】
「導電率センサの周囲の、注水タンク内に含まれている水の温度Tを判定する」ことにより、温度Tは導電率センサの近傍で判定されることが理解されるべきである。温度は、導電率センサに関して100mmよりも短い、より好ましくは50mmよりも短い、最も好ましくは30mmよりも短いある距離の所で判定されることが好ましい。
【0014】
好適な実施形態では、「水の温度Tを判定する」ステップは、導電率センサの周囲に置かれている温度センサにより、温度Tを測定するステップである。さらに、そのような場合には、「温度が100mmよりも短い距離の所で判定される」により、温度センサ及び導電率センサは各々、感知面を含み、かつ温度センサの感知面と導電率センサの感知面との間の距離は100mm以下であることが理解されるべきである。
【0015】
さらに、上記ステップaとステップbとは、必ずしも、連続的ステップでも独立したステップでもなく、それらは同時に実施され得るか、又は温度を判定する他のステップがステップb内へ入り、例えばステップb10の直前に、実施され得ることが理解されるべきである。
【0016】
出願人は、様々な温度で、脱塩水と非脱塩水の両方の導電率を測定する一連の実験を実施した。水が凍結したと考えられる場合、すなわち判定された温度Tが0℃よりも低い場合でも、導電率が興味深い情報をもたらすため、導電率は、測定されるべき関連特性であることが発見された。出願人の実験データに基づいて、水の温度Tが-4℃(摂氏マイナス4度)よりも低い場合、脱塩水と非脱塩水の両方の導電率はゼロ又はゼロに近いことが観察されており、水の温度Tが-4℃~0℃、好ましくは-2℃~0℃である場合、非脱塩水の導電率はゼロでもゼロ近くでもなく、一方、脱塩水の導電率はゼロ又はゼロに近い。したがって、本発明による方法により、全ての水が液状で利用可能になる前にばかりでなく、任意の水が導電率センサの周囲で液状で利用可能になる前にも、脱塩水と非脱塩水とを区別することが可能になる。
【0017】
本方法の他の随意の特徴によれば、単独で又は組合せて、
- 好適な実施形態では、本方法は、
(b20)ステップ(b)において、水の判定された温度Tが所定の閾値Tminよりも高いとき、水の導電率σがゼロ又はゼロに近い場合、水質を承認するステップと、
(d)水質が承認された場合、注入を許可するステップと
をさらに含み、
所定の閾値Tminの値は-4℃よりも高く、好ましくは-2℃よりも高い。
【0018】
出願人の実験データに基づいて、水の温度Tが-4℃~0℃である場合、脱塩水の導電率はゼロ又はゼロに近いことが観察された。したがって、好適な実施形態による本方法により、導電率センサの周囲の氷が溶かされるための不要な待機を回避することにより、水が所望の水質を有する場合、コールドスタートの注入時間を短縮することが可能になる。実際に、-2℃~0℃の温度範囲は、それにより脱塩水のよりよい区別が可能になるため、好適である。
【0019】
- 好適な実施形態では、判定された温度Tが所定の閾値Tminよりも低いとき、水は、所定の温度Tが少なくとも所定の閾値Tminに達するまで加熱される。これにより、水を、脱塩水が非脱塩水と区別され得る温度範囲内にすることが可能になる。当然のことながら、水は、判定された温度Tが所定の閾値Tminに達した後、加熱され続けることが可能である。
【0020】
- 好適な実施形態では、水の導電率σの値が所定の閾値の導電率σmax以下である場合、水の導電率σはゼロに近く、所定の閾値の導電率σmaxの値は30μS/cm、より好ましくは20μS/cm、及び最も好ましくは10μS/cmである。これにより、水の感知された導電率値を所定の閾値の導電率値と比較することが可能になる。所定の閾値の導電率値は、水の実際の導電率がゼロに近い場合、様々な感度を有する様々な導電率センサに適応するように設定される。
【0021】
また、本発明の目的が、本発明による、自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する方法を実施するように構成されている注水システムに関する。注水システムは、
- 水を貯留するための注水タンクと、
- 注水タンク内の水の導電率σを感知するための導電率センサと、
- 導電率センサの周囲の、注水タンク内の水の温度Tを判定するための温度判定手段と、
- 感知された導電率σを所定の閾値の導電率σmaxと比較するためのコンパレータと、
- 注水タンクから、内燃エンジンに接続されるように構成されている注入ラインへ給水するための注水ポンプと、
- 水質を承認するか又は承認しないための第1の電子制御ユニットと
を含む。
【0022】
したがって、当然のことながら、注水システムは、判定された温度が0℃よりも低い場合でも、注水タンク内の水の導電率σを感知するように構成されている。本発明の好適な実施形態では、注水システムは、判定された温度Tが所定の閾値Tminよりも高いとき、注水タンク内の水の導電率σを感知するように構成されており、所定の閾値Tminは-4℃よりも高く、好ましくは-2℃よりも高い。
【0023】
注水システムの他の随意の特徴によれば、単独で又は組合せて:
- 好適な実施形態では、コンパレータは第1の電子制御ユニットの一部である。これにより、第1の電子制御ユニットが、本発明による方法において実施される全計算に責任を負うことが可能になる。
- 好適な実施形態では、第1の電子制御ユニットは、水質に基づいて、注水ポンプを制御することにより、注水を許可すること又は防止することにも責任を負う。
- 好適な実施形態では、注水システムは、判定された温度Tが所定の閾値Tminよりも低い場合、注水タンク内に貯留されている水を、判定された温度Tが少なくとも所定の閾値Tminに達するまで加熱するためのヒータをさらに含む。これにより、水を、脱塩水が非脱塩水と区別され得る温度範囲内にすることが可能になる。
- 好適な実施形態では、温度判定手段は温度センサを含む。これにより、導電率センサの周囲の、注水タンク内の水の温度Tの直接判定が可能になる。
- 好適な実施形態では、温度センサ及び導電率センサは各々、感知面を含み、温度センサの感知面と導電率センサの感知面との間の距離は30mm以下である。これにより、導電率センサの所で水の温度を正確に測定し、感知された導電率値を、対応する感知された温度値に適正に関連付けることが可能になる。さらに、これにより、導電率センサの周囲の温度を判定するステップが、温度センサにより温度を測定するステップであることが可能になる。
- 好適な実施形態では、温度センサ及び導電率センサは質センサデバイスの一部である。これにより、導電率センサを温度センサと同一パッケージングで提供することが可能になる。
- 好適な実施形態では、注水タンクは水送達モジュールを含む。水送達モジュールが、注水タンクの壁に作製されている開口部を通して配置されるように構成されているベースプレートと、水を注水タンクからポンプで送りかつそれを水消費デバイスの供給ライン、例えば内燃エンジンに接続されている注入ライン、へ送達するように構成されているポンプユニットとを含むモジュールである。
- 好適な実施形態では、水送達モジュールは、注水ポンプと、温度判定手段と、導電率センサと、ヒータとを含む。これにより、本発明による注水システムの様々な構成要素が注水タンクの体積よりも小さい体積内に共に集められることが可能になり、したがって相手先商標商品の製造会社(OEM)にとって改善されたパッケージング工程及び組立て工程をもたらす。
【0024】
本発明の別の目的が、凍り付くような寒い天気の場合に、自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する本方法を実施するように構成されている内燃エンジンシステムを提供することである。内燃エンジンシステムは、内燃エンジンと、本発明の前の目的による注水システムとを含む。
【0025】
実施形態では、内燃エンジンシステムは、例えば注水ポンプを制御することにより注水を許可するか又は防止するために、第1の電子制御ユニットに命令し制御する第2の電子制御ユニットを含む。
【0026】
代替的実施形態では、コンパレータが第2の電子制御ユニットの一部であり、第2の電子制御ユニットは、水質に基づいて、注水を許可するか又は防止するために、注入ポンプを制御する。この装置により、第1の電子制御ユニットを第2の電子制御ユニットと交換しかつ第1の電子制御ユニットを除去することが可能になる。
【0027】
本発明の別の目的が、自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する本方法を実施するように構成されている自動車を提供することである。自動車は、本発明の前の目的による内燃エンジンシステムを含む。
【0028】
本発明の別の目的が、自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する命令を含む持続性コンピュータ可読媒体を提供することであり、持続性コンピュータ可読媒体はプロセッサにより実行された場合、プロセッサに本発明による方法のステップを実施させる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】脱塩水の導電率が温度でどのように変化するかを示すグラフである。
【
図2】非脱塩水の導電率が温度でどのように変化するかを示すグラフである。
【
図3】本発明による、凍り付くような寒い天気の場合に、自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する方法の流れ図である。
【
図4】本発明による注水システム及び内燃エンジンシステムの線図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を、特定の実施形態に関して、ある図面を参照して説明するが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。描写されている図面は概略的なものに過ぎず、非制限的である。図面において、要素の何かの大きさは、例示目的のために、誇張されておりかつ縮尺通りに描写されていない可能性がある。寸法及び関連する寸法は本発明の実践に対する実際の縮小に相当しない。
【0031】
特許請求の範囲に用いられている「comprising(含む)」という用語は、その後に列挙されている手段に限定されると見なされるべきでないことに留意すべきであり、用語は他の要素又は他のステップを除外しない。したがって、明言された特徴、整数、ステップ、又は構成要素の存在を言及されているように特定していると解釈されるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、もしくは構成要素、又はそれらの群の存在又は追加を除外しない。したがって、「手段A及びBを含むデバイス」という表現の範囲は、構成要素A及びBのみで構成されているデバイスに限定されるべきでない。本発明に関しては、デバイスの関連構成要素がA及びBのみであることを意味する。
【0032】
図1は実験データのグラフであり、x軸が、℃(摂氏)の脱塩水の温度T1を示し、y軸がμS/cm(センチメートル当たりのマイクロジーメンス)の脱塩水の導電率σ1を示す。本グラフは、T1が-10℃から60℃まで徐々に上昇する時のσ1の実際の値で構築されている。本第1の実験設定では、水タンクが10リットルの標準脱塩水で満たされている。標準脱塩水は、室温で150μS/cm以下の導電率を有する水であり、それは内燃エンジンにおける注水に関して許容可能な水と見なされる。水タンクは、T1を感知するための温度センサと、σ1を感知するための導電率センサと、水タンク内に貯留されている脱塩水を加熱するためのヒータとを含む。ある例では、導電率センサは、ゼロ電気周波数で感知する、すなわちそれはDC測定である。あるいは、それはAC測定である可能性がある。ヒータは、通常、電気ヒータである。温度センサ及び導電率センサは各々、感知面を含む。導電率センサにおいて脱塩水の温度を正確に測定しかつ感知した導電率値を対応する感知された温度値と適正に関連付けるために、温度センサの感知面と導電率センサの感知面との間の距離は30mm以下である。水タンクは、脱塩水を凍結させるのに必要な時間の間、気候室内に配置される。脱塩水の温度が-10℃以下に達した場合、ヒータが作動されて、脱塩水を、T1が少なくとも60℃に達するまで加熱する。
【0033】
温度上昇中、出願人は、T1が-10℃から約2℃まで上昇した場合、σ1はゼロ又はゼロに近く、次いでT1が約2℃から60℃まで上昇する場合、σ1はT1と共に上昇することを見出した。
【0034】
図2は、
図1のグラフと類似した実験データのグラフであり、脱塩水が非脱塩水と交換されている。x軸は、℃の非脱塩水の温度T2を示し、y軸は、μS/cmの非脱塩水の導電率σ2を示す。グラフは、T2が-10℃から66℃まで徐々に上昇する時のσ2の実際の値で構築されている。本第2の実験設定では、水タンクは10リットルの非脱塩水で満たされている。水タンクは、T2を感知するための温度センサと、σ2を感知するための導電率センサと、水タンク内に貯留されている非脱塩水を加熱するためのヒータとを含む。ヒータは、通常、電気ヒータである。温度センサ及び導電率センサは各々、感知面を含む。導電率センサにおいて非脱塩水の温度を正確に測定しかつ感知された導電率値を、対応する感知された温度値と適正に関連付けるために、温度センサの感知面と導電率センサの感知面との間の距離は30mm以下である。水タンクは、非脱塩水を凍結させるのに必要な時間の間、気候室内に配置される。非脱塩水の温度が-10℃以下に達する場合、ヒータが作動されて、非脱塩水を、T2が少なくとも60℃に達するまで加熱する。
【0035】
温度上昇中、出願人は、T2が-10℃から約-4℃まで上昇すると、σ2がゼロであるか又はゼロに近く、次いで、T2が約-4℃から60℃まで上昇すると、σ2はT2と共に上昇することを見出した。
【0036】
第1の実験設定の出力と第2の実験設定の出力とを比較することにより、出願人は、脱塩水と非脱塩水とを区別する確実な方法を見出した。実際、大気圧で水の温度Tが0℃以下である時、例えばTが約-2℃である時、水の導電率σがゼロでもゼロ近くでもない場合、それは水が脱塩されていないことを意味する。
【0037】
図3は、本開示による、凍り付くような寒い天気の場合に、自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する例示的方法100を示す。開始ステップにおいて、方法100が開始する。ステップaにおいて、方法は、導電率センサの周囲の、注水タンク内に含まれている水の温度Tを判定する。ステップbにおいて、方法は水質を制御する。ステップcにおいて、方法は、水質が承認されない場合、注水を防止する。ステップdにおいて、方法は、水質が承認された場合、注水を許可する。方法100が終了し得る。
【0038】
ステップbが2つのサブステップ:サブステップb10とサブステップb20とを含む。サブステップb10において、方法100が、水の判定された温度Tが0℃以下である場合、水の導電率σがゼロでもゼロ近くでもない場合、水質を承認しない。サブステップb20において、方法100は、水の判定された温度Tが所定の閾値Tminよりも高いとき、水の導電率σがゼロであるかゼロに近い場合、水質を承認し、所定のTminの値は-4℃よりも高く、好ましくは-2℃よりも高い。
【0039】
T<Tminの場合、方法100は、水を、Tが少なくともTminに達するまで加熱する。
【0040】
サブステップb10及びb20において、方法100は、水の導電率σを所定の閾値の導電率σmaxと比較する。本発明の文脈では、水の導電率σは、その値σが所定の閾値の導電率σmax以下である場合、ゼロに近く、所定の閾値の導電率σmaxの値は30μS/cmであり、より好ましくはσmaxは20μS/cmであり、最も好ましくはσmaxは10μS/cmである。
【0041】
図4は、凍り付くような寒い天気の場合に、自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する本方法を実施するように構成されている注水システム10を示す。注水システムは、
- 水30を貯留するための注水タンク1と、
- 注水タンク1内の水の導電率σを感知するための導電率センサ3と、
- 導電率センサ3の周囲の、注水タンク1内の水の温度Tを判定するための温度判定手段2と、
- 感知された導電率σを所定の閾値の導電率σ
maxと比較するためのコンパレータ4と、
- 注水タンク1から、内燃エンジンに接続されるように構成されている注入ライン6へ給水するための注水ポンプ5と、
- 水質を承認するか又は承認しないための第1の電子制御ユニット7と
を含む。
【0042】
温度判定手段は、導電率センサの周囲の、特定の区域内の水の温度を判定するための温度センサ又は任意の他の手段であることが理解されるべきである。
【0043】
注水システム10は、判定された温度Tが0℃より低い場合でも、注水タンク1内の水の導電率σを感知するように構成されている。さらに、注水システム10は、判定された温度Tが所定の閾値Tminよりも高いとき、注水タンク1内の水の導電率σを感知するように構成されていることが有利である。
【0044】
コンパレータ4が第1の電子制御ユニット7の一部であることが有利である。
【0045】
第1の電子制御ユニット7は、水質に基づいて、注水を許可するか又は防止するために、注水ポンプ5を制御することが有利である。
【0046】
注水システム10は、T<Tminである場合、注水タンク1内に貯留されている水30を、Tが少なくともTminに達するまで加熱するためのヒータ8をさらに含む。
【0047】
温度センサ2と導電率センサ3とは互いに近接しており、その結果、温度センサ2により測定された温度は、導電率センサ3の周囲の(非常に近接していることを意味する)水の温度に実質的に一致することが有利である。
【0048】
非常に興味深い実施形態では、温度センサ2及び導電率センサ3は質センサデバイス9の一部である。
【0049】
温度センサ2及び導電率センサ3は各々、感知面を含み、温度センサ2の感知面と導電率センサ3の感知面との間の距離は30mm以下である。
【0050】
注水タンク1は水送達モジュール11を含む。
【0051】
水送達モジュール11は、注水ポンプ5と、温度センサ2と、導電率センサ3と、ヒータ8とを含むことが有利である。
【0052】
図4は、凍り付くような寒い天気の場合に、自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する本方法を実施するように構成されている内燃エンジンシステム20も含む。内燃エンジンシステム20は内燃エンジン21と注水システム10とを含む。
【0053】
内燃エンジンシステム20は、例えば注水ポンプ5を制御することにより注水を許可するか又は防止するために、第1の電子制御ユニット7に命令し制御するための第2の電子制御ユニット22を含む。
【0054】
代替的装置(図示せず)では、コンパレータが第2の電子制御ユニット22の一部であり、第2の電子制御ユニット22は、水質に基づいて、注水を許可するか又は防止するために、注水ポンプ5を制御する。したがって、第1の電子制御ユニット7は第2の電子制御ユニット22と交換可能であり、第1の電子制御ユニット7は除去され得る。
【0055】
内燃エンジンシステム20は、凍り付くような寒い天気の場合に、自動車の内燃エンジンにおける注水を制御する本方法を実施するように構成されている自動車(図示せず)の一部である。
【0056】
方法100が第1の電子制御ユニット7により実施されてもよく、持続性メモリ内の実行可能な命令として、第1の電子制御ユニット7に格納されていてもよい。方法100を実施するための命令が、第1の電子制御ユニット7の持続性メモリ上に格納されている命令に基づいて、かつ温度判定手段2及び導電率センサ3から受信された測定情報と併せて、第1の電子制御ユニット7により実行され得る。
【符号の説明】
【0057】
1 注水タンク
2 温度判定手段
3 導電率センサ
4 コンパレータ
5 注水ポンプ
6 注入ライン
7 第1の電子制御ユニット
8 ヒータ
9 質センサデバイス
10 注水システム
11 水送達モジュール
20 内燃エンジンシステム
21 内燃エンジン
22 第2の電子制御ユニット
30 水
【国際調査報告】