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特表2023-547666左心耳(LAA)の経中隔アクセスポイント最適化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】左心耳(LAA)の経中隔アクセスポイント最適化
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/10 20160101AFI20231106BHJP
【FI】
A61B34/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526982
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 IB2021059824
(87)【国際公開番号】W WO2022096980
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】17/088,082
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ウルマン・ロイ
(72)【発明者】
【氏名】ミズラヒ・リロン・シュムエル
(72)【発明者】
【氏名】アガーワル・アミット
(57)【要約】
開示される方法は、プロセッサを使用して、心臓の少なくとも一部の解剖学的マップにおいて、患者の心臓の中隔及び左心耳(LAA)を識別することを含む。中隔を貫通するシースを介して送達されることになる医療機器がLAAと係合することになる入口表面を、解剖学的マップ上に画定する。入口表面に対する法線が計算される。複数の曲線が計算され、各曲線は、(i)法線に接する1つの端部を有し、(ii)中隔に接触する第2の端部を有し、かつ(iii)シースの指定された機械的特性に合致するものである。シースによる経中隔穿刺のための中隔上の複数の候補となる位置が、曲線から導出される。複数の候補となる位置が、ユーザに提示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
患者の心臓の少なくとも一部の解剖学的マップを記憶するように構成されているメモリと、
プロセッサであって、
前記解剖学的マップにおいて前記心臓の中隔及び左心耳(LAA)を識別することと、
前記中隔を貫通するシースを介して送達されることになる医療機器が前記LAAと係合することになる入口表面を、前記解剖学的マップ上に画定することと、
前記入口表面に対する法線を計算することと、
各々が、(i)前記法線に接する1つの端部を有し、(ii)前記中隔に接触する第2の端部を有し、かつ(iii)前記シースの指定された機械的特性に合致する、複数の曲線を計算することと、
前記曲線から、前記シースによる経中隔穿刺のための、前記中隔上の複数の候補となる位置を導出することと、
前記複数の候補となる位置をユーザに提示することと、を行うように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
【請求項2】
前記シースの前記指定された機械的特性が、前記シースの外部操作によって前記心臓内で得られ得る、前記シースの最小曲率半径を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサが、
前記解剖学的マップ上に、前記LAAの小孔の輪郭を描くことと、
前記輪郭が描かれた小孔に、平面を最も良好にフィットさせることと、
によって、前記入口表面を画定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記心臓の右心房(RA)への前記シースのアクセス位置が下大静脈からであるか上大静脈からであるかに応じて前記曲線を計算するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記医療機器が、LAA閉鎖装置である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記医療機器が、バルーンカテーテル及びバスケットカテーテルのうちの1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサが、侵襲性超音波プローブを使用して、前記解剖学的マップを取得するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、3Dマッピングシステムを使用して、前記シース、前記入口表面、前記法線、及び前記中隔上の前記候補となる位置を提示することによって、前記複数の候補となる位置を提示するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
方法であって、
プロセッサを使用して、患者の心臓の少なくとも一部の解剖学的マップにおいて、前記心臓の中隔及び左心耳(LAA)を識別することと、
前記中隔を貫通するシースを介して送達されることになる医療機器が前記LAAと係合することになる入口表面を、前記解剖学的マップ上に画定することと、
前記入口表面に対する法線を計算することと、
各々が、(i)前記法線に接する1つの端部を有し、(ii)前記中隔に接触する第2の端部を有し、かつ(iii)前記シースの指定された機械的特性に合致する、複数の曲線を計算することと、
前記曲線から、前記シースによる経中隔穿刺のための、前記中隔上の複数の候補となる位置を導出することと、
前記複数の候補となる位置を、ユーザに提示することと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記シースの前記指定された機械的特性は、前記シースの外部操作によって前記心臓内で得られ得る、前記シースの最小曲率半径を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記入口表面を画定することが、
前記解剖学的マップ上に、前記LAAの小孔の輪郭を描くことと、
前記輪郭が描かれた小孔に、平面を最も良好にフィットさせることと、
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記曲線を計算することが、前記心臓の右心房(RA)への前記シースのアクセス位置が下大静脈からであるか上大静脈からであるかに左右される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記医療機器が、LAA閉鎖装置である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記医療機器が、バルーンカテーテル及びバスケットカテーテルのうちの1つである、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記解剖学的マップをアップロードすることが、侵襲性超音波プローブを使用して前記解剖学的マップを取得することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の候補となる位置を提示することが、3Dマッピングシステムを使用して、前記シース、前記入口表面、前記法線、及び前記中隔上の前記候補となる位置を提示することを含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して医療用プローブのための治療計画に関し、特に侵襲性医療機器のための経中隔アクセスを使用した左心耳(left atrium appendage、LAA)の閉鎖の計画に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルを使用しての左心耳(LAA)治療を計画するための様々な方法は特許文献で提案された。例えば、米国特許出願公開第2019/0090951号は、LAA閉鎖の誘導のために提供される超音波撮像装置を記載している。超音波撮像を使用することで、経時的な(例えば、心周期全体にわたる)解剖学的モデリングが可能になる。経時的なLAAの解剖学的モデルは、患者に個別化した生体力学的モデルを作成するために使用される。個別化されたモデル及び1つ以上の閉鎖装置のモデルは、心周期全体にとって適切である患者のための閉鎖装置を選択するために、及び移植中に選択された閉鎖装置の配置を誘導するために使用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
以下に説明される本発明の一実施形態は、プロセッサを使用して、心臓の少なくとも一部の解剖学的マップにおいて患者の心臓の中隔及び左心耳(LAA)を識別することを含む方法を提供する。中隔を貫通するシースを介して送達されることになる医療機器は、LAAと係合することになる入口表面を解剖学的マップ上に画定する。入口表面に対する法線が計算される。複数の曲線が計算され、各曲線は、(i)法線に接する1つの端部を有し、(ii)中隔に接触する第2の端部を有し、かつ(iii)シースの指定された機械的特性に合致するものである。シースによる経中隔穿刺のための中隔上の複数の候補となる位置は、曲線から導出される。複数の候補となる位置は、ユーザに提示される。
【0004】
いくつかの実施形態では、シースの指定された機械的特性としては、シースの外部操作によって心臓内で得られ得るシースの最小曲率半径が挙げられる。
【0005】
いくつかの実施形態では、入口表面を画定することは、(a)解剖学的マップ上にLAAの小孔の輪郭を描くことと、(b)輪郭を描かれた小孔に、平面を最良に適合させることと、を含む。
【0006】
一実施形態では、曲線を計算することは、心臓の右心房(RA)へのシースのアクセス位置が下大静脈からであるか、又は上大静脈からであるかに左右される。
【0007】
一実施形態では、医療機器は、LAA閉鎖装置である。別の一実施形態では、医療機器は、バルーンカテーテル及びバスケットカテーテルのうちの1つである。
【0008】
いくつかの実施形態では、解剖学的マップをアップロードすることは、侵襲性超音波プローブを使用して解剖学的マップを取得することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、複数の候補となる位置を提示することは、3Dマッピングシステムを使用して、シース、入口表面、法線、及び中隔上の候補となる位置を提示することを含む。
【0010】
また、本発明の別の一実施形態によれば、メモリとプロセッサとを含むシステムが更に提供される。メモリは、患者の心臓の少なくとも一部の解剖学的マップを記憶するように構成される。プロセッサは、(a)解剖学的マップ内で、心臓の中隔及び左心耳(LAA)を識別すること、(b)解剖学的マップ上に、中隔を貫通するシースを介してその上方に送達される医療機器がLAAと係合する入口表面を画定すること、(c)入口表面に対する法線を計算すること、(d)各々が(i)法線に接する1つの端部を有すること、(ii)中隔に接触する第2の端を有すること、(iii)シースの指定された機械的特性に従う、複数の曲線を計算すること、(e)シースによる経中隔穿刺のための中隔上の複数の候補となる位置を、曲線から導出すること、並びに(f)複数の候補となる位置をユーザに提示すること、を行うように構成される。
【0011】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による、左心耳(LAA)閉鎖装置を運搬するカテーテルを備える、カテーテル法システムの概略描写図である。
図2】本発明の一実施形態による、図1のカテーテルのシースが中隔を貫通するための1つ以上の候補となる場所を見出す方法の概略描写図である。
図3】本発明の実施形態による、図1のカテーテルのシースが中隔を貫通するための1つ以上の候補となる場所を見出す方法を概略的に説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概説
カテーテル法は、左心房(left atrium、LA)の心房細動(atrial fibrillation、AF)を制御するための確立された療法である。カテーテルを用いてLAにアクセスするために、医師は、典型的には、最初に身体脈管構造を介してカテーテルを右心房(right atrium、RA)に導入し、カテーテルのシースを用いて左心房と右心房とを分割する中隔を穿刺する。次いで、医師は、穿刺された場所を通してシースをLAの中に通し、シースを介して医療機器(例えば、カテーテル)を送達し、LA組織と係合させる。
【0014】
経中隔穿孔位置の適切な選択は重要であるが、それは、そうした位置が中隔組織との安定した接触を得ることと、シースを特定のLA標的位置内に前進させることと、侵襲的処置中にカテーテル位置を標的LA位置に維持することと、に実質的に影響を及ぼすためである。
【0015】
事態を複雑にするのは、経中隔穿孔位置は、侵襲的装置(例えば、カテーテル)をRAに導入することができる方法を制限する可能性があるので、医師は、経中隔穿孔位置を更に注意深く考慮しなければならないということである。具体的には、カテーテルは、下大静脈又は上大静脈のいずれかを介してRA内に導入することができるが、これらの2つの選択肢からの選択は、選択された穿孔位置に左右され得る。更に、その後にLA内でカテーテルを制御する能力は、どの遠隔静脈がシースを身体へ進入させるために選択されるかに左右され、選択された遠隔静脈を通してシースがRAの下大静脈又は上大静脈のいずれかに誘導される。したがって、上記の考慮事項の組み合わせは、患者の所与の医療プロファイルとともに、LAにおいて成功裏にカテーテル処置プロセスを実行するための医師の選択肢を制限し得る。
【0016】
経中隔穿孔位置を特に注意深く考慮する必要がある侵襲的処置として、左心耳(LAA)の閉鎖が挙げられる。このような処置は、AFに罹患している特定の患者において起こりがちである心耳での血餅形成の可能性を減少させるために使用される。LAAは、LAA閉鎖装置を展開するカテーテルによって閉鎖される。閉鎖処置は、良好な処置結果を得るために、LAAの小孔に対するカテーテルの角度位置を慎重に位置合わせする必要がある。しかしながら、シース及びカテーテルの可撓性及び操作性に対する制限があることから、最適ではない中隔穿孔位置からカテーテルをLAAまで首尾よくナビゲートすることは容易ではない。
【0017】
以下に説明される本発明の実施形態は、LAA等の所与のLA標的に正確に係合させるために、LAA閉鎖装置を運搬するカテーテル等の侵襲的装置が中隔を貫通させるための複数の候補となる中隔の場所及び方向を見出す技法を提供する。開示された技術を使用することで、医師は、中隔を貫通させるための複数の潜在的な場所を考慮する能力を有することとなり、医師に利用可能な臨床的に有効なRAアクセスアプローチ及び好適な侵襲性医療機器(例えば、LAA装置)の両方について選択が増加することにつながる。そのようなより大きな選択の余地があることは、例えば、最初に医師のカテーテル法の選択肢を制限し得る所与の患者の病状(例えば、RA拡大)を考慮した場合重要である。
【0018】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、以下のステップ:
■該当する領域(例えば、中隔及びLAAを含む領域)の3D解剖学的モデル(例えば解剖学的マップ)を生成するステップ、
■閉鎖装置のタイプ及びLAA形状を考慮して、LAA装置のランディング部位、すなわち、カテーテルがLAAに挿入されるLAAの開口を画定するステップ(なお、そのようなランディング部位は、例えば、3D解剖学的モデル上に閉曲線の形態でLAAの小孔の輪郭を描くことによって画定される)、
■ランディング部位において輪郭が描かれたLAA小孔に実質的に平行な入口表面(例えば、平面)をフィットさせ、この平面に対する法線を計算するステップ、
■装置を送達するために使用されるシースの予め定義された機械的特性を使用して、各々が、(i)法線に接する1つの端部を有し、(ii)中隔に接触する第2の端を有し、(iii)シースの指定された機械的特性に合致する複数の曲線を計算する、ステップ、
■シースによる経中隔穿刺のために、中隔上の複数の候補となる位置を曲線から導出し、それにより曲線と中隔との1つ以上の交点それぞれにおいて、経中隔穿刺のための1つ以上の潜在的なアクセスポイントのそれぞれを作成するステップ、
■複数の候補となる場所を、ユーザに提示するステップ、を実行することで、LAAにアクセスするための1つ以上の候補となる中隔穿孔位置を見つけるために開示された技法を実行する。
【0019】
機械的特性の例としては、シースで達成可能な、最小曲率半径及び最大偏向角と、シースの遠位端が(LAAにアクセスするために)曲げられ得るシース上の位置と、が挙げられる。
【0020】
一実施形態では、LAA閉鎖処置を行う医師が、例えば、所与のLAA閉鎖装置を用いてのLAAに対する最も好適なRAアプローチ(例えば、下大静脈又は上大静脈)を選択することができるように、プロセッサは特定された中隔位置を解剖学的マップ上にオーバーレイする。シース、ランディング部位(例えば、入口表面)、法線、及び経中隔穿刺点(「アクセス」とも呼ばれる)は全て、3Dマッピングシステム(例えば、CARTO(登録商標))において可視化される。
【0021】
典型的には、プロセッサは、プロセッサが上で概略されるプロセッサ関連ステップ及び機能の各々を実施することを可能にする特定のアルゴリズムを含むソフトウェアにプログラム化されている。
【0022】
LAAに到達するために穿刺するのに最適であり得る、1つ以上の候補となる中隔位置を特定することによって、開示された技術は、様々な心臓病患者に対して、LAAの侵襲的処置を成功裏に完了させる機会を増加させ得る。
【0023】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、左心耳(LAA)閉鎖装置40を運搬するカテーテル21を備える、カテーテル法システム20の概略描写図である。カテーテルのシャフト22の遠位端は、医師30によって挿入図25に見られるテーブル29上に横たわる患者28の心臓26の左心耳45内にシース23を通して挿入される。シャフト22の挿入中、LAA閉鎖装置40はシース23によって畳み込まれた構成で維持されている。LAA閉鎖装置40を折り畳まれた構成で収容することにより、シース23は標的位置への途中での血管の外傷を最小限にするのにも役立つ。
【0024】
挿入図65に見られる左心房(LA)45内の左心耳(LAA)55に到達させるために、医師30は、最初にシース23を右心房47の下大静脈アクセスアプローチに誘導する。次いで、医師は、シース23を用いて心房を分割する中隔50に穴52を穿孔するが、そのために、例えばカテーテルの近位端付近のマニピュレータ32を操作し、かつ/又はシース23からの偏向を操作する。シャフト22の遠位端がLAA55内にある時には、医師は、その遠位端をシース23を介して前進させ、シャフトの遠位縁部に連結されたLAA閉鎖装置40をLAA55内で展開させる。
【0025】
次いで、医師30は、LAA55にアクセスして接触させるために、カテーテルハンドル31を使用してLA45内でカテーテル21のシース23を操作する。挿入図65に更に見られるように、LAA55に首尾よくアクセスするために、医師は、LAA55の小孔57に向いている特定の方向66にシース23を位置合わせする。
【0026】
カテーテル21の近位端は、制御コンソール24に接続されている。本明細書に記載されている実施形態では、カテーテル21は、そのようなカテーテルの他の可能な医療用途の中でもとりわけ、心臓26内での電気的感知又は前述のLAA閉鎖術などの任意の好適な治療目的及び/又は診断目的に使用されてもよい。
【0027】
制御コンソール24は、カテーテル21からの信号を受信するための、並びに心臓26内でカテーテル21を介して処置を施し、かつシステム20の他の構成要素を制御するための好適なフロントエンド及びインタフェース回路38を備える、プロセッサ41、典型的には汎用コンピュータを備える。典型的には、プロセッサ41は汎用コンピュータで構成され、コンピュータには、本明細書に記載する機能を実行するソフトウェアがプログラムされている。このソフトウェアは、例えばネットワーク上でコンピュータのメモリ35に電子形態でダウンロードされてもよく、その代わりに、又は更に、磁気メモリ、光メモリ、若しくは電子メモリなどの非一時的有形媒体に、提供しかつ/又は格納してもよい。特に、プロセッサ41は、図3に含まれている、本明細書に開示される専用のアルゴリズムを実行し、このアルゴリズムは、プロセッサ41が以下で更に説明するような本開示のステップを行うことを可能にするものである。
【0028】
図1に示される例示的な構成は、単に概念を明確化する目的で選択される。本開示の技法は、他のシステム構成要素及び設定を使用して、同様に適用されることができる。例えば、バルーンカテーテル又はバスケットカテーテルなどの他の装置を使用することができる。解剖学的マップは、SOUNDSTAR(登録商標)カテーテルを有するCARTOSOUND(登録商標)モジュールなどの、侵襲的超音波(US)プローブを使用するシステム20によって、生成することができる。別の一実施例として、システム20は、心臓組織の温度感知等のための構成要素などの他の構成要素を備えてもよい。
【0029】
左心耳(LAA)経中隔アクセスポイントの最適化
図2は、本発明の一実施形態による、図1のカテーテル21のシース23が中隔50を貫通するための、1つ以上の候補となる場所を見出す方法の概略描写図である。図の右側は心臓の側断面図であり、左側は中隔の正面図である。本技法の目的は、LAA閉鎖装置40を運搬するカテーテル21によってLAA55の最良のアクセス(解剖学的マップ80に示される)を可能にすることである。これを達成するための適切な方法は、カテーテル21のシャフト22の遠位端を、小孔の画定された表面で小孔57にほぼ垂直である方向66(図1に示される)に前進させることである。
【0030】
この目的のために、プロセッサ41は、マップ80をアップロードし、LAAの小孔57にフィットさせる平面70としてLAA閉鎖装置のためのランディング部位を画定する。図に見られるように、平面70は、ランディング部位におけるLAA小孔に、実質的に平行である。次に、プロセッサ41は、平面70に対する法線72を計算する。
【0031】
LAA閉鎖装置40を送達するために使用されるシース23の予め定義された機械的特性(例えば、上記に例示される特性)を使用して、プロセッサ41は、法線72と平面70と中隔50との間の複数の曲線74を計算する。上述したように、各曲線74は、(i)法線に接する1つの端部を有し、(ii)中隔に接触する第2の端部を有し、(iii)シースの指定された機械的特性に合致する。このように、プロセッサは、曲線74と、例えば、プロセッサが中隔50にフィットさせる平面76との1つ以上のそれぞれの交点に経中隔穿刺のための1つ以上の潜在的なアクセスポイントをそれぞれ作成する。複数の潜在的なアクセスポイントの中隔50上の位置は、半円曲線56として表されており、特定の選択としては、半円56上の図1の位置52である。
【0032】
図に見られるように、プロセッサ41は、LAA閉鎖処置を行う医師に提示される解剖学的マップ80上に潜在的アクセスポイントをオーバーレイし、例えば、カテーテルを用いたLAAへの最も好適なアプローチを選択することを支援する。その意味で、どの中隔位置も十分に良好であると思われない場合、医師は、別のシースをモデル化すること、又は上大静脈アプローチをモデル化することを試み得る。
【0033】
図2に示す例示的な技法は、単に概念を明確にするために選んだものである。特に、曲線56は、表現を明確にするために簡略化されている。更に、RA47への異なるアクセスアプローチは、全く異なる複数の潜在的なアクセスポイント(例えば、曲線56とは異なる)を生成する。
【0034】
図3は、本発明の実施形態による、カテーテルのシースが中隔を貫通するための、1つ以上の候補となる場所52を見出す方法を、概略的に説明するフローチャートである。提示された実施形態によるアルゴリズムは、プロセッサ41が、解剖学的マップ生成ステップ90において、中隔50とLAA55とを含む解剖学的マップ80を生成する(例えば、メモリ35からアップロードする)ことから始まるプロセスを実行する。
【0035】
次に、プロセッサ41は、ランディング部位定義ステップ92において、LAA55の小孔57を識別することによってLAA閉鎖装置40のランディング部位を画定する。
【0036】
次に、幾何学的構成ステップ94において、プロセッサは、平面70を小孔57にフィットさせ、続いてその平面70に対する法線72を計算する。
【0037】
候補となる曲線導出ステップ96において、プロセッサ41は、LAA閉鎖装置40を送達するために使用されるシース23の予め定義された機械的特性を使用して、平面70の法線72と中隔50との間の1つ以上の候補となる曲線74を計算する。
【0038】
経中隔穿刺位置計算ステップ98において、プロセッサは、上述したように曲線74を用いて、中隔50上の複数の潜在的なアクセスポイント56を計算する。
【0039】
図3に示されている例示的なフローチャートは、純粋に概念を明確にする目的で選択されたものである。例えば、RA47への別のアクセスを考慮し、続いてステップ94~98を繰り返すといった追加のステップは、意図的に非常に簡略化されたフローチャートからは省略されている。
【0040】
本明細書に記載される実施形態は、主に左心耳に対応するものであるが、本明細書に記載される技法は、LAの電気生理学的マッピング及び肺静脈隔離などのLAの他の心臓カテーテル用途にも使用することができる。特に、開示された技法は、バルーンカテーテル、バスケットカテーテル、ラッソーカテーテル、マルチアームカテーテル、又はチップカテーテルなど、電気生理学的感知及び/又はアブレーションに使用されるカテーテルの、肺静脈(PV)の小孔にランディング部位を計画するために適用することができる。
【0041】
更に、開示される技法は、他のLA治療部位(例えば、僧帽弁)とともに、かつ他のカテーテル運搬装置(例えば、人工弁)のために適用されてもよい。
【0042】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に説明される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0043】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
プロセッサを使用して、患者の心臓の少なくとも一部の解剖学的マップにおいて、前記心臓の中隔及び左心耳(LAA)を識別することと、
前記中隔を貫通するシースを介して送達されることになる医療機器が前記LAAと係合することになる入口表面を、前記解剖学的マップ上に画定することと、
前記入口表面に対する法線を計算することと、
各々が、(i)前記法線に接する1つの端部を有し、(ii)前記中隔に接触する第2の端部を有し、かつ(iii)前記シースの指定された機械的特性に合致する、複数の曲線を計算することと、
前記曲線から、前記シースによる経中隔穿刺のための、前記中隔上の複数の候補となる位置を導出することと、
前記複数の候補となる位置を、ユーザに提示することと、
を含む、方法。
(2) 前記シースの前記指定された機械的特性は、前記シースの外部操作によって前記心臓内で得られ得る、前記シースの最小曲率半径を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記入口表面を画定することが、
前記解剖学的マップ上に、前記LAAの小孔の輪郭を描くことと、
前記輪郭が描かれた小孔に、平面を最も良好にフィットさせることと、
を含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記曲線を計算することが、前記心臓の右心房(RA)への前記シースのアクセス位置が下大静脈からであるか上大静脈からであるかに左右される、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記医療機器が、LAA閉鎖装置である、実施態様1に記載の方法。
【0044】
(6) 前記医療機器が、バルーンカテーテル及びバスケットカテーテルのうちの1つである、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記解剖学的マップをアップロードすることが、侵襲性超音波プローブを使用して前記解剖学的マップを取得することを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記複数の候補となる位置を提示することが、3Dマッピングシステムを使用して、前記シース、前記入口表面、前記法線、及び前記中隔上の前記候補となる位置を提示することを含む、実施態様1に記載の方法。
(9) システムであって、
患者の心臓の少なくとも一部の解剖学的マップを記憶するように構成されているメモリと、
プロセッサであって、
前記解剖学的マップにおいて前記心臓の中隔及び左心耳(LAA)を識別することと、
前記中隔を貫通するシースを介して送達されることになる医療機器が前記LAAと係合することになる入口表面を、前記解剖学的マップ上に画定することと、
前記入口表面に対する法線を計算することと、
各々が、(i)前記法線に接する1つの端部を有し、(ii)前記中隔に接触する第2の端部を有し、かつ(iii)前記シースの指定された機械的特性に合致する、複数の曲線を計算することと、
前記曲線から、前記シースによる経中隔穿刺のための、前記中隔上の複数の候補となる位置を導出することと、
前記複数の候補となる位置をユーザに提示することと、を行うように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
(10) 前記シースの前記指定された機械的特性が、前記シースの外部操作によって前記心臓内で得られ得る、前記シースの最小曲率半径を含む、実施態様9に記載のシステム。
【0045】
(11) 前記プロセッサが、
前記解剖学的マップ上に、前記LAAの小孔の輪郭を描くことと、
前記輪郭が描かれた小孔に、平面を最も良好にフィットさせることと、
によって、前記入口表面を画定するように構成されている、実施態様9に記載のシステム。
(12) 前記プロセッサが、前記心臓の右心房(RA)への前記シースのアクセス位置が下大静脈からであるか上大静脈からであるかに応じて前記曲線を計算するように構成されている、実施態様9に記載のシステム。
(13) 前記医療機器が、LAA閉鎖装置である、実施態様9に記載のシステム。
(14) 前記医療機器が、バルーンカテーテル及びバスケットカテーテルのうちの1つである、実施態様9に記載のシステム。
(15) 前記プロセッサが、侵襲性超音波プローブを使用して、前記解剖学的マップを取得するように構成されている、実施態様9に記載のシステム。
【0046】
(16) 前記プロセッサが、3Dマッピングシステムを使用して、前記シース、前記入口表面、前記法線、及び前記中隔上の前記候補となる位置を提示することによって、前記複数の候補となる位置を提示するように構成されている、実施態様9に記載のシステム。
図1
図2
図3
【国際調査報告】