(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】プラズマによるガス除害
(51)【国際特許分類】
H05H 1/26 20060101AFI20231106BHJP
B01D 53/68 20060101ALI20231106BHJP
B01D 53/70 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
H05H1/26
B01D53/68 200
B01D53/70 ZAB
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527001
(86)(22)【出願日】2021-11-01
(85)【翻訳文提出日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 GB2021052820
(87)【国際公開番号】W WO2022090737
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】マグニ シモーヌ
(72)【発明者】
【氏名】コンドン ニール
(72)【発明者】
【氏名】ワゲナーズ エリク
【テーマコード(参考)】
2G084
4D002
【Fターム(参考)】
2G084AA18
2G084BB36
2G084CC02
2G084CC13
2G084CC14
2G084DD03
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2G084GG22
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4D002BA07
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4D002DA05
4D002DA06
4D002DA07
4D002DA16
4D002DA51
4D002DA54
4D002DA56
4D002DA70
4D002EA02
4D002GA01
4D002GA03
4D002GB03
4D002GB06
(57)【要約】
半導体処理ツールからの排出流を処理するための装置及び方法が開示される。プラズマ除害装置は、半導体処理ツールからの排出流を処理するためのものであり、プラズマ除害装置は、プラズマガスからプラズマ流を生成するように構成されたプラズマ装置と、プラズマ流による処理のために排出流をプラズマ流の中に運ぶように構成された排出流開口と、プラズマ流の第1の領域に還元反応物を送給するように位置付けられた第1の開口と、プラズマ流の第2の領域に酸化反応物を送給するように位置付けられた第2の開口と、を備え、第2の領域は、第1の領域より低温のプラズマ流の位置に配置される。このように、還元反応物はプラズマ流の高温領域に導入され、酸化反応物はプラズマ流の低温領域に導入される。これにより、還元反応物が高温領域に存在し、この高温領域に酸化反応物が存在しないため、熱的に生成された望ましくない酸化物の存在を低減するので、還元反応をより効果的に行うことができる。同様に、酸化反応物の導入は、還元反応によって生成される副生成物を除去するのを助け、酸化反応物がプラズマ流の低温領域に導入されるため、熱的に生成される望ましくない酸化物の量は減少する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体処理ツールからの排出流を処理するためのプラズマ除害装置であって、
プラズマガスからプラズマ流を生成するように構成されたプラズマ装置と、
前記プラズマ流による処理のために、前記排出流を前記プラズマ流の中に運ぶように構成された排出流開口と、
還元反応物を前記プラズマ流の第1の領域に送給するように位置付けられた第1の開口と、
前記プラズマ流の第2の領域に酸化反応物を送給するように位置付けられた第2の開口と、
を備え、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも低温の前記プラズマ流の位置に配置されている、装置。
【請求項2】
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも高温の前記プラズマ流の位置に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の領域は、少なくとも1000℃の温度を達成する前記プラズマ流の位置に配置される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2の領域は、1000℃未満の温度を達成する前記プラズマ流の位置に配置される、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の領域は、少なくとも500℃の温度を達成する前記プラズマ流の位置に配置される、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の領域は、前記第1の領域の下流に位置する、請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の領域は、前記第2の領域の上流に位置する、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記還元反応物は、前記プラズマ装置への供給前に前記プラズマガスと予混合される、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の領域は、前記プラズマデバイスに近接して配置される、請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記第2の領域は、前記プラズマデバイスの遠位に配置される、請求項1から9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記プラズマ流を受け入れるように位置付けられた反応室を備え、前記第2の領域は、前記反応室の中に配置される、請求項1から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記還元反応物は、
H
2、
NH
3、
プロパン、メタンなどの炭化水素、
ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムのようなアルカリ土類金属、
アルカリ土類金属塩、
リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムなどのアルカリ金属、
アルカリ塩、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
電気分解によって前記H
2をその場で生成するように構成された水素生成器を備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記プラズマ流を生成するために使用される電力発生器、
前記水素生成器に電力を供給するように構成された二次電源、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1の開口は、前記第1の領域の中の熱分解によって前記NH
3を生成するために、炭酸アンモニウム(NH
4)2CO
3などのアンモニア塩を送給するように構成される、請求項12から14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
炭酸アンモニウム(NH
4)2CO
3などアンモニア塩の熱分解によって前記NH
3を生成するように構成された加熱器を備える、請求項12から14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記酸化反応物は、O
2及びO
3のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
半導体処理ツールからの排出流を処理する方法であって、
プラズマガスからプラズマ流を生成するステップと、
前記プラズマ流による処理のために、前記排出流を前記プラズマ流の中に運ぶステップと、
前記プラズマ流の第1の領域に還元反応物を送給するステップと、
前記プラズマ流の第2の領域に酸化反応物を送給するステップであって、前記第2の領域は、前記プラズマ流の前記第1の領域よりも低温の位置に配置される、ステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、プラズマ除害に関する。実施形態は、半導体処理ツールからの排出流を処理するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にプラズマ除害装置は公知であり、特に、例えば、半導体又はフラットパネルディスプレイ製造産業で使用される製造処理ツールからの排出ガス流を処理するために使用されている。このような製造の間、残留フッ素化合物又は過フッ素化合物(PFC)及び他の化合物が、処理ツールから送り出された排出ガス流の中に存在する。これらの化合物は、排出ガス流から除去することが困難であり、さらに、比較的高い温室効果を有することが知られているため、環境中に放出されることは好ましくない。
【0003】
排出ガス流からPFC及び他の化合物を除去する1つの手法は、例えば欧州公開第1773474号に記載されているような放射バーナーを使用することである。しかしながら、燃焼による除害に通常使用される燃料ガスが望ましくない場合又は容易に入手できない場合、プラズマ除害装置を使用することも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの装置は、排出ガス流を処理するために存在するが、それぞれ独自の欠点を有している。従って、流出ガス流を処理するための改良された技術を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、半導体処理ツールからの排出流を処理するためのプラズマ除害装置が提供され、プラズマ除害装置は、プラズマガスからプラズマ流を生成するように構成されたプラズマ装置と、プラズマ流による処理のために排出流をプラズマ流の中に運ぶように構成された排出流開口と、プラズマ流の第1の領域に還元反応物を送給するように位置付けられた第1の開口と、プラズマ流の第2の領域に酸化反応物を送給するように位置付けられた第2の開口と、を備え、第2の領域は、第1の領域より低温のプラズマ流の位置に配置される。
【0007】
第1の態様は、既存のプラズマ除害装置の構成に関する問題が、その除害効果が要求より低く、望ましくない副生成物が望ましくない量で生成される可能性があることを認識する。従って、装置が提供される。装置は、プラズマ除害装置とすることができる。装置は、半導体処理ツールからの流出流を処理又は除害することができる。装置は、プラズマガスからプラズマ流を生成するプラズマ装置又は生成器を含むことができる。装置は、プラズマ流の中に排出流を運ぶ排出流開口又は開口部を備えることができる。排出流は、その後、プラズマ流によって処理することができる。装置は、プラズマ流の第1の場所、領域又はゾーンに還元反応物を送給する第1の開口又は開口部を備えることができる。この第1の開口は、プラズマガスをプラズマ装置に送給し、そこからプラズマが生成されるのと同じ開口とすることができる。装置は、プラズマ流の第2の場所、領域又はゾーンに酸化反応物を送給するように位置付けられた第2の開口又は開口部を含むことができる。第2の領域は、酸化反応物を、還元反応物が供給される位置よりも低温のプラズマ流の位置に送給するように配置することができる。このように、還元反応物はプラズマ流の高温又はより活性な領域に導入され、酸化反応物はプラズマ流の低温又はより活性でない領域に導入される。これにより、還元反応物が高温領域に存在し、この高温領域に酸化反応物が存在しないため、熱的に生成された望ましくない酸化物の存在を低減するので、還元反応をより効果的に行うことができる。同様に、酸化反応物の導入は、還元反応によって生成される副生成物を除去するのを助け、酸化反応物がプラズマ流の低温領域に導入されるため、熱的に生成される望ましくない酸化物の量が減少する。
【0008】
第1の領域は、第2の領域よりも高温のプラズマ流の中の位置に配置することができる。
【0009】
第1の領域は、1000℃以上の温度を達成するプラズマ流の中の位置に配置することができる。
【0010】
第2の領域は、1000℃未満の温度を達成するプラズマ流の中の位置に配置することができる。
【0011】
第2の領域は、500℃以上の温度を達成するプラズマ流の中の位置に配置することができる。
【0012】
第2の領域は、第1の領域の下流に配置することができる。
【0013】
第1の領域は、第2の領域の上流に配置することができる。
【0014】
還元反応物は、結合された反応物及びプラズマガスがプラズマ装置に送給される前にプラズマガスと予混合することができる。
【0015】
第1の領域は、プラズマ装置に近接して又はその近くに配置することができる。
【0016】
第2の領域は、プラズマ装置から遠位に又はそこから離れて配置することができる。
【0017】
装置は、プラズマ流を受け入れるように位置付けられた反応室を備えることができ、第2の領域は、反応室の中に配置することができる。
【0018】
還元反応物は、H2を含むことができる。
【0019】
装置は、電気分解によってH2をその場で(in situ、現場で)生成するように構成された水素生成器を備えることができる。
【0020】
装置は、プラズマ流を生成するために使用される電力生成器、又は水素生成器に電力を供給するように構成された二次電源を備えることができる。
【0021】
還元反応物は、NH3を含むことができる。
【0022】
第1の開口は、第1の領域の中の熱分解によってNH3を生成するために、炭酸アンモニウム(NH4)2CO3などのアンモニア塩を送給するように構成することができる。
【0023】
装置は、炭酸アンモニウム(NH4)2CO3などのアンモニア塩の熱分解によりNH3を生成するように構成された加熱器を備えることができる。
【0024】
還元反応物は、プロパン、メタンなどの炭化水素(CxHy)を含むことができる。
【0025】
還元反応物は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及び/又はバリウムなどのアルカリ土類金属を含むことができる。
【0026】
還元反応物は、アルカリ土類金属塩を含むことができる。
【0027】
還元反応物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムなどのアルカリ金属を含むことができる。
【0028】
還元反応物は、アルカリ塩を含むことができる。
【0029】
酸化反応物は、O2を含むことができる。
【0030】
酸化反応物は、O3を含むことができる。
【0031】
第2の態様によれば、半導体処理ツールからの排出流を処理する方法が提供され、本方法は、プラズマガスからプラズマ流を生成するステップと、プラズマ流による処理のために排出流をプラズマ流の中に運ぶステップと、プラズマ流の第1の領域に還元反応物を送給するステップと、プラズマ流の第2の領域に酸化反応物を送給するステップと、を含み、第2の領域は、第1の領域より低温のプラズマ流の位置に配置される。
【0032】
本方法は、第1の領域を第2の領域よりも高温のプラズマ流の位置に配置することを含むことができる。
【0033】
本方法は、第1の領域を少なくとも1000℃の温度を達成するプラズマ流の位置に配置することを含むことができる。
【0034】
本方法は、第2の領域を1000℃未満の温度を達成するプラズマ流の位置に配置することを含むことができる。
【0035】
本方法は、第2の領域を少なくとも500℃の温度を達成するプラズマ流の位置に配置することを含むことができる。
【0036】
本方法は、第2の領域を第1の領域の下流に配置することを含むことができる。
【0037】
本方法は、第1の領域を第2の領域の上流に配置することを含むことができる。
【0038】
本方法は、プラズマ装置に送給する前に、還元反応物をプラズマガスと予混合することを含むことができる。
【0039】
本方法は、第1の領域をプラズマ装置に近接して配置することを含むことができる。
【0040】
本方法は、第2の領域をプラズマ装置の遠位に配置することを含むことができる。
【0041】
本方法は、プラズマ流を反応室に受け入れ、第2の領域を反応室の中に配置することを含むことができる。
【0042】
還元反応物は、H2を含むことができる。
【0043】
本方法は、電気分解によってH2をその場で生成することを含むことができる。
【0044】
本方法は、プラズマ流を生成するために使用される電力発生器によって又は二次電源によって動力が供給される水素生成器を用いてH2を生成することを含むことができる。
【0045】
還元反応物は、NH3を含むことができる。
【0046】
本方法は、炭酸アンモニウム(NH4)2CO3などのアンモニア塩の熱分解によってNH3を生成することを含むことができる。
【0047】
還元反応物は、プロパン、メタンなどの炭化水素(CxHy)を含むことができる。
【0048】
還元反応物は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及び/又はバリウムなどのアルカリ土類金属を含むことができる。
【0049】
還元反応物は、アルカリ土類金属塩を含むことができる。
【0050】
還元反応物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムなどのアルカリ金属を含むことができる。
【0051】
還元反応物は、アルカリ塩を含むことができる。
【0052】
酸化反応物は、O2を含むことができる。
【0053】
酸化反応物は、O3を含むことができる。
【0054】
第3の態様によれば、半導体処理ツールからの流出流を処理するためのプラズマ除害装置が提供され、プラズマ除害装置は、プラズマ流の第1の領域に還元剤を有するプラズマ流を生成するように構成されたプラズマ装置にプラズマガスと予混合された還元反応物を送給するように位置付けられた第1の開口と、プラズマ流による処理のために排出流をプラズマ流の中に運ぶように構成された排出流開口と、プラズマ流の第2の領域に酸化反応物を送給するように位置付けられた第2の開口とを備え、第2の領域は、第1の領域より低温のプラズマ流の位置に配置される。
【0055】
第3の態様の装置は、上記に記載の第1の態様の随意的な特徴を有することができる。
【0056】
第4の態様によれば、半導体処理ツールからの流出流を処理する方法であって、この方法は、プラズマガスと予混合された還元反応物をプラズマ装置に送給するステップと、プラズマ流の第1の領域に還元反応物を有するプラズマ流を生成するステップと、プラズマ流による処理のために流出流をプラズマ流に運ぶステップと、前記プラズマ流の第2の領域に酸化反応物を送給するステップとを含み、第2の領域は第1の領域よりも低温のプラズマ流の位置に配置される。
【0057】
第4の態様の方法は、上記に記載の第2の態様の随意的な特徴を有することができる。
【0058】
さらに別の特定の及び好ましい態様は、添付の独立及び従属請求項に示されている。従属請求項の特徴は、適切である場合に及び特許請求の範囲に明示的に示されるもの以外の組み合わせで独立請求項の特徴と組み合わせることができる。
【0059】
装置特徴が機能を提供するように作動可能であると説明される場合に、これは、その機能を提供するか又はその機能を提供するように適応又は構成される装置特徴を含むことを理解されたい。
【0060】
ここで添付図面を参照して本発明の実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】1つの実施形態によるDCプラズマトーチを示す
【
図2】
図1と同様の構成を示すが、誘導結合プラズマトーチを利用するものである。
【
図3】
図1に示すものと類似しているが、還元反応物がカソードの内部又は近傍に導入されている。
【
図4】
図2に示すものと類似しているが、還元剤がプラズマトーチの絶縁管のガス放電の内部又は近傍に注入される構成を示す。
【
図5A-5B】異なる構成の下での除害性能を示す。
【
図5C-5D】異なる構成の下での除害性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
実施形態を詳細に説明する前に、最初に概要が提示される。いくつかの実施形態は、プラズマ除害装置の除害効率を向上させる構成を提供する。これは、プラズマ流への反応物の導入を分割することによって達成される。詳細には、還元反応物がプラズマ流に第1の位置で送給され、酸化反応物がプラズマ流の第2の位置で導入される。還元反応物はプラズマガスと予混合することができるので、第1の位置はプラズマガスが最初に導入される位置とすること又はこの位置よりも下流であるが第2の位置よりも上流とすることができる。これにより、還元反応物をプラズマ流の高温又は高活性領域で導入し、酸化反応物をプラズマ流の低温又は低活性領域で導入することができる。プラズマ流の低温領域に酸化反応物を導入することで、望ましくない酸化物の発生を抑える一方、高温領域において何らかの化合物の還元が依然として起こり得ることを保証することができる。還元反応物及び酸化反応物を一緒に導入する場合に比べて、低レベルの望ましくない副生成物と共に、改善された除害性能を実現することができる。
【0063】
プラズマトーチ
図1は、1つの実施形態によるDCプラズマトーチ100Aを示す。ノズル付きアノード3は、同軸のカソード2と同じ位置に配置されている。直流定電流電源1は、カソード2及びアノード3と電気的に接続されている。プラズマガスキャリア導管5Bは、プラズマガスキャリア5Aをカソード2とアノード3との間の空隙に送給するように配置されている。アノード3の下流には、反応室8が配置されている。排出流導管9Bは、排出流9Aをアノード3と反応室8との間の位置に送給するように配置されている。還元反応物導管11Bは、還元反応物11Aをアノード3と反応室8との間の位置に送給するように配置されている。酸化反応物導管12Bは、反応室8の壁に配置され、酸化反応物12Aを反応室8に送給するようになっている。コントローラ4は、電源1、プラズマガスキャリア5Aの供給源、還元反応物11Aの供給源、及び酸化反応物12Aの供給源に接続されている。
【0064】
作動時、コントローラ4は、電源1を切り替えて、カソード2とアノード3との間に電圧差を作り、プラズマを引き起こす。プラズマが生成されると、コントローラ4はカソード2とアノード3との間で一定の直流(DC)を生じさせる(電源1は定電流電源として動作する)。コントローラ4は、プラズマガスキャリア導管5Bを介してプラズマガスキャリア5Aが送給されるようにし、プラズマガスキャリア5Aは、カソード2とアノード3との間のDCアーク放電によってプラズマプルーム10を生成する。プラズマプルーム10は、反応室8の中に広がる。放電は、プラズマガスキャリア5Aの注入によって持続される。
【0065】
排出流9Aは、排出流導管9Bによってプラズマプルーム10に運ばれる。その後、除害反応は、反応室8の内部で行われ、反応室8は、典型的には円筒形であり、断熱を実現する。従って、排出流9Aは、反応室8の中でプラズマプルーム10と混合する。
【0066】
除害反応を助けるために、コントローラ4は、還元反応物導管11Bを通る還元反応物11Aの導入を制御する。従って、還元反応物11Aは、プラズマプルーム10の高温ゾーン6で排出流9Aと混合する。典型的には、高温ゾーン6は、1000℃を超える温度になる。随意的に、コントローラ4の制御下で生成装置20は、還元反応物11A(電気分解によるH2又は熱分解によるNH3など)を生成する。
【0067】
コントローラ4は、酸化反応物導管12Bを通る酸化反応剤12Aの、高温ゾーン6の下流にあるプラズマプルーム10の低温ゾーン7への導入を制御する。典型的には、低温ゾーン7は、約500℃より大きいが1000℃より低い温度になる。
【0068】
性能
図5Aから5Eは、異なる構成での除害性能を示す。熱プラズマトーチによる除害の主な課題の1つは、トーチ電力量を可能な限り小さくすることができるように除害プロセスの高い効率を達成することである。これは、低い電気エネルギー需要に起因して低い運転コストにつながる。熱プラズマトーチによる除害における別の課題は、望ましくないNOx排出量を低減することである。加えて、酸素は、その電気陰性特性(すなわち、結合電子を引き付け、プラズマ状態を抑制する可能性がある)により、プラズマ相反応の阻害物質として作用する可能性がある。
【0069】
図1に示すような構成は、これが、高温ゾーン6の中の除害反応を、C-F、S-F及びF-F結合の分解に関するものに及びF化学種をHFに変換する還元反応物に関するものに限定するので、除害プロセスの効率を向上させることができる。また、
図1に示す構成は、酸素に富んだ反応物が高温でN
2ラジカルと反応する可能性を低減するのを助ける。酸素に富んだ反応物を低温ゾーン7に導入することで、NOxの量が少なくなる。
【0070】
これを説明するために、
図5Aは、CF
4とN
2(それぞれ1%と99%の濃度)の混合物の熱平衡シミュレーションを示す。種々の反応物の注入物は、CF
4の分解及び除去効率(DRE)を最大化する化学量論量を持っている。CF
4の除害方法の1つはCOF
2への酸化である。これは、プラズマ流6の高温ゾーン6にO
2だけを注入することにより、
図5Aに示されている。次に、COF
2は、除害装置の低温湿潤部(図示せず)でHFに加水分解される。
図5Bから分かりように、O
2を高温ゾーン6に注入するのではなく、代わりにH
2Oだけを注入すると、除害効率を改善することができる。図示のように、これは、CF
4をより容易にHF及びCO
2に変換する。しかしながら、
図5Bから分かるように、CF
4を除害するのに必要な電力及び温度がより低いにもかかわらず、
図5Aに示された結果に対してNOx排出量の増加を伴う場合がある。これは、
図5Bの温度に対するNO値定数の増加で示されるように、H
2OラジカルがN
2ラジカルと共に存在する、より有利なNOx生成経路に起因すると考えられる。
図5A及び5Bの両方から分かるように、プラズマ流6にO
2を注入するだけでは又はH
2Oを注入するだけでは、望ましくないレベルのNOx並びに望ましくない副生成物をもたらす。
【0071】
しかしながら、
図5C及び5Dから分かるように、
図1に示す構成を用いて反応物の添加を分割することによって、除害性能は著しく改善される。
図5C及び5Bにそれぞれ示されるように、CF
4をまず高温ゾーン6でH
2と反応させ、次に低温ゾーン7でO
2と反応させると、CO及びNOxなどの副生成物が非常に少ない状態で理想的に除害を達成できることが分かる。
図5DのO
2シミュレーションは、
図5Cに示す水素との第1の反応の副生成物とのO
2高温反応に言及することは注目に値する。このO
2ステップは、いくつかのC
XH
YN
Z副生成物をより有害でない化合物に酸化させるために必要である。
【0072】
図5Eは、H
2及びO
2を同時に注入しても、図示のようにかなりの量のNOx及び他の望ましくない副生成物が依然として発生する可能性があるので、
図5C及び
図5Dに示した2段階の除害プロセスと同じ結果が得られないことを示している。
【0073】
他の構成
図2は、
図1と同様の構成を示すが、これは誘導結合プラズマトーチ100Bを利用するものである。この構成では、プラズマプルーム10は、プラズマガスキャリア導管15を介して断熱管16に注入されるプラズマガスキャリア5Aをイオン化することによって生成される。放電を維持するための電磁エネルギーは、コイル14を介して結合された無線周波数電源13によって供給される。ガス放電18によって与えられる負荷に適合させるために整合器17が設けられている。
【0074】
図3は
図1に示すものと類似しているが、還元反応物11Aは、プラズマガスキャリア5Aと混合してそのイオン化及び反応物としての効果を最大化するように、カソード2の内部又はその近くに導入される。この構成のさらなる利点は、N
2がプラズマガスとして使用される場合にNH
3が生成される場合があり、これによりプラズマトーチ100CからのNOx放出のベースライン量を低減できることである(例えば排出流9Aがパージ化合物以外の何らかの化合物を含まない場合)。
【0075】
図4は、
図2に示すものと類似しているが、還元反応物11Aがプラズマトーチ100Dの断熱管16のガス放電18の内部又はその近くに注入され、上記の
図3を参照して説明したものと同様の利点をもたらす構成を示す。
【0076】
この例では水素が還元剤として使用されるが、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属及び/又はアルカリ土類塩などの他の還元剤を使用できることを理解されたい。加えて、NH3などの他の還元剤、及び/又は、プロパン、メタンなどの炭化水素を用いることもできる。上述のように、NH3は、炭酸アンモニウム(NH4)2CO3などアンモニア塩を第1の領域6で又は生成装置20によりその場で熱分解することにより生成することができる。同様に、水素は、生成装置20による電気分解によってその場で生成することができる。
【0077】
同様に、この例では酸化反応物として酸素が使用されるが、オゾンなどの他の酸化反応物を使用できることを理解されたい。
【0078】
また、還元性反応物はアノード3と反応室8との間に導入されるように示されているが、その必要はなく、単に、酸化性反応物が導入される場所よりもプラズマ流が高温になる場所に還元反応物が導入される必要があることを理解されたい。
【0079】
加えて、実施形態は、DCプラズマトーチ及び誘導結合プラズマトーチを参照して説明されるが、同じ手法が、例えば、マイクロ波プラズマ放電などの他のプラズマ装置及び供給源に使用できることを理解されたい。
【0080】
いくつかの実施形態は、熱NOx生成を低減して除害反応効率を高めることを目的として、熱プラズマ除害の最適化に対処する。熱平衡シミュレーションを見ると、フッ素化種、F2、CFx及びSFyのHFへの還元を伴う除害反応は、CO及びCxHyなどの他の除害副生成物の酸化反応のはるかに高い温度を必要とすることが明らかになっている。いくつかの実施形態では、2つの段階で熱プラズマによる除害を行う、すなわち、1)水素に富む反応物が、はるかに高温の反応ゾーンに注入される又はトーチプラズマガスと予備混合される段階、2)酸素に富む反応物が、さらに下流の比較的高温でないゾーンに注入される段階である。これは、熱プラズマ除害において、2種類の反応物の分割注入を提供する。
【0081】
添付図面を参照して本発明の例示的な実施形態を本明細書に詳細に開示したが、本発明は、正確な実施形態には限定されず、特許請求の範囲及びその均等物によって定められる本発明の範囲から逸脱することなく、そこに当業者によって様々な変更及び修正を達成することができることが理解される。
【符号の説明】
【0082】
1、13 電源
2 アノード
3 カソード
4 コントローラ
5A プラズマガスキャリア
5B、15 プラズマガスキャリア導管
6 高温ゾーン
7 低温ゾーン
8 反応室
9A 排出流
9B 排出流導管
10 プラズマプルーム
11A 還元反応物
11B 還元反応物導管
12A 酸化反応物
12B 酸化反応物導管
14 コイル
16 断熱管
17 整合器
20 生成装置
100A、100B、100C、100D プラズマトーチ
【国際調査報告】