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特表2023-547673高い寸法安定性を有するポリイミドフィルム及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】高い寸法安定性を有するポリイミドフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20231106BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20231106BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20231106BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G73/10
B32B15/08 Q
H05K1/03 610N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527073
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(85)【翻訳文提出日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 KR2021015673
(87)【国際公開番号】W WO2022098042
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0145822
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0135635
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520160738
【氏名又は名称】ピーアイ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,デ ゴン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ドン ヨン
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AA86
4F071AA88
4F071AF10Y
4F071AF20Y
4F071AF62Y
4F071AG01
4F071AG28
4F071AH13
4F071BA02
4F071BB02
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4F100AB01B
4F100AB33B
4F100AK49A
4F100GB41
4F100GB43
4F100JA02
4F100JA05
4F100JD15
4F100JG04
4F100JG05
4J043PA06
4J043PA08
4J043QB15
4J043QB26
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA47
4J043SB03
4J043SB04
4J043TA22
4J043TA71
4J043TB03
4J043TB04
4J043UA121
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UB121
4J043UB122
4J043UB401
4J043UB402
4J043VA021
4J043VA022
4J043VA041
4J043VA062
4J043ZA32
4J043ZA35
4J043ZB50
(57)【要約】
本発明は、熱膨張係数が1ppm/℃以上5ppm/℃以下であり、弾性率が9GPa以上11.5GPa以下であり、ガラス転移温度が340℃以上400℃以下である、寸法安定性に優れたポリイミドフィルム及びその製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨張係数が1ppm/℃以上5ppm/℃以下であり、
弾性率が9GPa以上11.5GPa以下であり、
ガラス転移温度が340℃以上400℃以下である、ポリイミドフィルム。
【請求項2】
吸湿膨張係数が4ppm/RH%以上6ppm/RH%以下である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、オキシジフタル酸無水物(ODPA)及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)よりなる群から選択された2種以上を含む二無水物酸成分と、パラフェニレンジアミン(PPD)、m-トリジン(m-tolidine)、オキシジアニリン(ODA)及び1,3-ビスアミノフェノキシベンゼン(TPE-R)よりなる群から選択された2種以上を含むジアミン成分と、を含むポリアミック酸溶液をイミド化反応させて得られ、
前記ジアミン成分の総含有量100モル%に対して、前記パラフェニレンジアミンの含有量が10モル%以上70モル%以下であり、前記m-トリジンの含有量が25モル%以上80モル%以下である、ポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記二無水物酸成分の総含有量100モル%に対して、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有量が30モル%以上60モル%以下であり、前記ピロメリト酸二無水物の含有量が40モル%以上60モル%以下である、請求項3に記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記二無水物酸成分の総含有量100モル%に対して、前記オキシジフタル酸無水物の含有量が20モル%以下であり、前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の含有量が30モル%以下であり、
前記ジアミン成分の総含有量100モル%に対して、前記オキシジアニリン(ODA)の含有量が20モル%以下であり、前記1,3-ビスアミノフェノキシベンゼンの含有量が20モル%以下である、請求項4に記載のポリイミドフィルム。
【請求項6】
前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に対する前記パラフェニレンジアミンのモル比が0.3以上2.5以下である、請求項3に記載のポリイミドフィルム。
【請求項7】
前記ピロメリト酸二無水物に対する前記m-トリジンのモル比が0.6以上1.5以下である、請求項3に記載のポリイミドフィルム。
【請求項8】
前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に対する前記パラフェニレンジアミンの反応モル比が1.05以上1.2以下である、請求項3に記載のポリイミドフィルム。
【請求項9】
前記ピロメリト酸二無水物に対する前記パラフェニレンジアミン及び前記m-トリジンの反応モル比が0.9以上0.99以下である、請求項3に記載のポリイミドフィルム。
【請求項10】
(a)ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、オキシジフタル酸無水物(ODPA)及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)よりなる群から選択された2種以上を含む二無水物酸成分と、パラフェニレンジアミン(PPD)、m-トリジン(m-tolidine)、オキシジアニリン(ODA)及び1,3-ビスアミノフェノキシベンゼン(TPE-R)よりなる群から選択された2種以上を含むジアミン成分と、を有機溶媒中で重合してポリアミック酸を製
造するステップと、
(b)前記ポリアミック酸をイミド化するステップと、を含み、
前記二無水物酸成分の総含有量100モル%に対して、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有量が30モル%以上60モル%以下であり、前記ピロメリト酸二無水物の含有量が40モル%以上60モル%以下であり、
前記ジアミン成分の総含有量100モル%に対して、前記パラフェニレンジアミンの含有量が10モル%以上70モル%以下であり、前記m-トリジンの含有量が25モル%以上80モル%以下である、ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記二無水物酸成分の総含有量100モル%に対して、前記オキシジフタル酸無水物の含有量が20モル%以下であり、前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の含有量が30モル%以下であり、
前記ジアミン成分の総含有量100モル%に対して、前記オキシジアニリン(ODA)の含有量が20モル%以下であり、前記1,3-ビスアミノフェノキシベンゼンの含有量が20モル%以下である、請求項10に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に対する前記パラフェニレンジアミンの反応モル比が1.05以上1.2以下であり、
前記ピロメリト酸二無水物に対する前記パラフェニレンジアミン及び前記m-トリジンの反応モル比が0.9以上0.99以下である、請求項10に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記ポリイミドフィルムの熱膨張係数が1ppm/℃以上5ppm/℃以下であり、
弾性率が9GPa以上11.5GPa以下であり、
ガラス転移温度が340℃以上400℃以下であり、
吸湿膨張係数が4ppm/RH%以上6ppm/RH%以下である、請求項10に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムと電気伝導性の金属箔とを含む、フレキシブル金属箔積層板。
【請求項15】
請求項14に記載のフレキシブル金属箔積層板を含む、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い寸法安定性を有するポリイミドフィルムに係り、より詳細には、熱的寸法安定性と水分に対する寸法安定性の両方が高いポリイミドフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド(polyimide、PI)は、強直な芳香族主鎖と共に化学的安定性に非常に優れたイミド環を基に、有機材料の中でも最高レベルの耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐化学性、耐候性を有する高分子材料である。
ポリイミドフィルムは、上述した特性が要求される様々な電子デバイスの素材として脚光を浴びている。
ポリイミドフィルムが適用される微小電子部品の例としては、電子製品の軽量化と小型化に対応できるように回路集積度の高いフレキシブルな薄型回路基板が挙げられ、ポリイミドフィルムは、特に薄型回路基板の絶縁フィルムとして広く用いられている。
【0003】
前記薄型回路基板は、絶縁フィルム上に金属箔を含む回路が形成されている構造が一般的である。このような薄型回路基板を、広い意味でフレキシブル金属箔積層板(Flexible Metal Foil Clad Laminate)と称し、金属箔として薄い銅板を用いるときにはより狭い意味でフレキシブル銅張積層板(Flexible Copper Clad Laminate、FCCL)と称することもある。
フレキシブル金属箔積層板の製造方法としては、例えば、(i)金属箔上にポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を流延(casting)又は塗布した後、イミド化するキャスティング法、(ii)スパッタリング(Sputtering)によってポリイミドフィルム上に直接金属層を設けるメタライジング法、及び(iii)熱可塑性ポリイミドを介してポリイミドフィルムと金属箔を熱と圧力で接合させるラミネート法が挙げられる。
特に、メタライジング法は、例えば、厚さ20~38μmのポリイミドフィルム上に銅などの金属をスパッタリングし、タイ(Tie)層、シード(Seed)層を順次蒸着することにより、フレキシブル金属箔積層板を生産する方法であり、回路パターンのピッチ(pitch)が35μm以下の超微細回路を形成させるのに有利な点があり、COF(chip on film)用フレキシブル金属箔積層板を製造するのに広く用いられている。
【0004】
メタライジング法によるフレキシブル金属箔積層板に用いられるポリイミドフィルムは、高い寸法安定性を有しなければならない。通常、熱膨張係数で表す熱的寸法安定性から寸法安定性が測定されているが、熱的寸法安定性と同様に、吸湿膨張係数で表す水分に対する寸法安定性もその重要性が次第に大きくなっている。
すなわち、熱的寸法安定性と水分に対する寸法安定性の両方に優れたポリイミドフィルムに対する要求が高まっているが、実際に熱膨張係数が低い熱的寸法安定性の高い構造のポリイミドフィルムを設計する場合、水分に対する寸法安定性が低くなるという問題点が台頭している。
したがって、高い熱的寸法安定性と水分に対する高い寸法安定性との両立が可能なポリイミドフィルムが切実に求められている。
以上の背景技術に記載された事項は、発明の背景に対する理解を助けるためのものであって、当該技術の属する分野における通常の知識を有する者に既に知られている従来技術ではない事項を含むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許第10-1375276号公報
【特許文献2】韓国公開特許第2016-0002402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、高い熱的寸法安定性と水分に対する高い寸法安定性を同時に有するポリイミドフィルムを提供することを目的とする。
しかし、本発明が解決しようとする課題は、上述した課題に限定されず、上述していない別の課題は、以降の記載から当業者には明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の一態様は、熱膨張係数が1ppm/℃以上5ppm/℃以下であり、
弾性率が9GPa以上11.5GPa以下であり、
ガラス転移温度が340℃以上400℃以下である、ポリイミドフィルムを提供する。
前記ポリイミドフィルムは、吸湿膨張係数が4ppm/RH%以上6ppm/RH%以下であってもよい。
【0008】
本発明の他の態様は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、オキシジフタル酸無水物(ODPA)及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)よりなる群から選択された2種以上を含む二無水物酸成分と、パラフェニレンジアミン(PPD)、m-トリジン(m-tolidine)、オキシジアニリン(ODA)及び1,3-ビスアミノフェノキシベンゼン(TPE-R)よりなる群から選択された2種以上を含むジアミン成分と、を含むポリアミック酸溶液をイミド化反応させて得られ、
前記ジアミン成分の総含有量100モル%に対して、前記パラフェニレンジアミンの含有量が10モル%以上70モル%以下であり、前記m-トリジンの含有量が25モル%以上80モル%以下である、ポリイミドフィルムを提供する。
【0009】
前記二無水物酸成分の総含有量100モル%に対して、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有量が30モル%以上60モル%以下であり、前記ピロメリト酸二無水物の含有量が40モル%以上60モル%以下であってもよい。
また、前記二無水物酸成分の総含有量100モル%に対して、前記オキシジフタル酸無水物の含有量が20モル%以下であり、前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の含有量が30モル%以下であり、前記ジアミン成分の総含有量100モル%に対して、前記オキシジアニリン(ODA)の含有量が20モル%以下であり、前記1,3-ビスアミノフェノキシベンゼンの含有量が20モル%以下であってもよい。
【0010】
前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に対する前記パラフェニレンジアミンのモル比が0.3以上2.5以下であり、前記ピロメリト酸二無水物に対する前記m-トリジンのモル比が0.6以上1.5以下であってもよい。
また、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に対する、前記パラフェニレンジアミンの反応モル比が1.05以上1.2以下であり、前記ピロメリト酸二無水物に対する前記パラフェニレンジアミン及び前記m-トリジンの反応モル比が0.9以上0.99以下であってもよい。
【0011】
本発明の別の態様は、(a)ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、オキシジフタル酸無水物(ODPA)及びベンゾフェノ
ンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)よりなる群から選択された2種以上を含む二無水物酸成分と、パラフェニレンジアミン(PPD)、m-トリジン(m-tolidine)、オキシジアニリン(ODA)及び1,3-ビスアミノフェノキシベンゼン(TPE-R)よりなる群から選択された2種以上を含むジアミン成分と、を有機溶媒中で重合してポリアミック酸を製造するステップと、
(b)前記ポリアミック酸をイミド化するステップと、を含み、
前記二無水物酸成分の総含有量100モル%に対して、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有量が30モル%以上60モル%以下であり、前記ピロメリト酸二無水物の含有量が40モル%以上60モル%以下であり、
前記ジアミン成分の総含有量100モル%に対して、前記パラフェニレンジアミンの含有量が10モル%以上70モル%以下であり、前記m-トリジンの含有量が25モル%以上80モル%以下である、ポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【0012】
本発明の別の態様は、前記ポリイミドフィルムと電気伝導性の金属箔とを含む、フレキシブル金属箔積層板を提供する。
本発明の別の態様は、前記フレキシブル金属箔積層板を含む、電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、二無水物酸及びジアミン成分の組成比や反応比などが調節されたポリイミドフィルムを提供することにより、熱的寸法安定性と水分に対する寸法安定性の両方に優れたポリイミドフィルムを提供する。
このようなポリイミドフィルムは、優れた寸法安定性特性のポリイミドフィルムが要求される様々な分野、例えば、メタライジング法によって製造されるフレキシブル金属箔積層板またはこのようなフレキシブル金属箔積層板を含む電子部品に適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書及び請求の範囲に使用された用語または単語は、通常的且つ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者はその自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈されるべきである。
したがって、本明細書に記載されている実施形態の構成は、本発明の最も好適な一つの実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替することができる様々な均等物と変形例が存在し得ることを理解すべきである。
本明細書における単数の表現は、文脈上明らかに別段の意味を持たない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素、またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素またはこれらの組み合わせの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0015】
本明細書において、「二無水物酸」は、その前駆体または誘導体を含むことが意図されるが、これらは、技術的には二無水物酸ではなくてもよいが、それにも拘らず、ジアミンと反応してポリアミック酸を形成し、このポリアミック酸は再びポリイミドに変換できる。
本明細書において、「ジアミン」は、その前駆体または誘導体を含むものと意図されるが、これらは、技術的にはジアミンではなくてもよいが、それにも拘らず、二無水物と反応してポリアミック酸を形成し、このポリアミック酸は再びポリイミドに変換できる。
【0016】
本明細書において、量、濃度、または他の値またはパラメータが範囲、好適な範囲、ま
たは好適な上限値及び好適な下限値の列挙として与えられる場合、範囲が別途開示されるかに関係なく、任意の一対の上限範囲限界値または好適な値及び任意の下限範囲値または好適な値で形成されたすべての範囲を具体的に開示するものと理解されるべきである。
数値の範囲が本明細書で言及される場合、別段の記載がない限り、その範囲はその終点及びその範囲内のすべての整数及び分数を含むものと意図される。本発明の範疇は、範囲を定義するときに言及される特定の値に限定されないものと意図される。
【0017】
本発明の一実施形態によるポリイミドフィルムは、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、オキシジフタル酸無水物(ODPA)及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)よりなる群から選択された2種以上を含む二無水物酸成分と、パラフェニレンジアミン(PPD)、m-トリジン(m-tolidine)、オキシジアニリン(ODA)及び1,3-ビスアミノフェノキシベンゼン(TPE-R)よりなる群から選択された2種以上を含むジアミン成分と、を含むポリアミック酸溶液をイミド化反応させて得られ、前記二無水物酸成分の総含有量100モル%に対して、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有量が30モル%以上60モル%以下であり、前記ピロメリト酸二無水物の含有量が40モル%以上60モル%以下であり、前記ジアミン成分の総含有量100モル%に対して、前記パラフェニレンジアミンの含有量が10モル%以上70モル%以下であり、前記m-トリジンの含有量が25モル%以上80モル%以下であり得る。
好ましくは、前記二無水物酸成分の総含有量100モル%に対して、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有量が30モル%以上55モル%以下であり、前記ピロメリト酸二無水物の含有量が45モル%以上55モル%以下であり得る。
また、好ましくは、前記ジアミン成分の総含有量100モル%に対して、前記パラフェニレンジアミンの含有量が15モル%以上70モル%以下であり得る。
本発明のパラフェニレンジアミンは、剛直なモノマーであって、パラフェニレンジアミンの含有量が増加するにつれて、合成されるポリイミドはさらに線形の構造を有し、ポリイミドの機械的特性の向上に寄与する。
また、m-トリジンは、特に疎水性を帯びるメチル基を持っており、ポリイミドフィルムの水分に対する寸法安定性に関連した低吸湿特性に寄与する。
【0018】
本発明のビフェニルテトラカルボン酸二無水物に由来するポリイミド鎖は、電荷移動錯体(CTC:Carge transfer complex)と命名された構造、すなわち、電子供与体(electron donnor)と電子受容体(electron
acceptor)が互いに近接して位置する規則的な直線構造を有し、分子間相互作用(intermolecular interaction)が強化される。
このような構造は、水分との水素結合を防止する効果があるので、吸湿率の低減に影響を与えて水分に対する寸法安定性に影響を及ぼすポリイミドフィルムの吸湿性を下げる効果を極大化することができる。
【0019】
また、ピロメリト酸二無水物は、相対的に剛直な構造を有する二無水物酸成分であって、ポリイミドフィルムに適切な弾性を付与することができるという点で好ましい。
ポリイミドフィルムが寸法安定性に優れるためには、二無水物酸の含有量比が重要である。例えば、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有量比が減少するほど、前記CTC構造による低い吸湿率を期待することが難しくなり、水分に対する寸法安定性も低下する。
【0020】
また、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は、芳香族部分に該当するベンゼン環を2つ含むのに対し、ピロメリト酸二無水物は、芳香族部分に該当するベンゼン環を1つ含む。
二無水物酸成分におけるピロメリト酸二無水物の含有量の増加は、同じ分子量を基準と
したとき、分子内のイミド基が増加するものと理解することができ、これは、ポリイミド高分子鎖内の前記ピロメリト酸二無水物に由来するイミド基の割合が、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に由来するイミド基に比べて相対的に増加するものと理解することができる。
【0021】
すなわち、ピロメリト酸二無水物の含有量の増加は、ポリイミドフィルム全体に対しても、イミド基の相対的増加とみなすことができ、これにより、低い吸湿率による水分に対する高い寸法安定性は期待し難くなる。
逆に、ピロメリト酸二無水物の含有量比が減少すると、相対的に剛直な構造の成分が減少して、ポリイミドフィルムの弾性が所望のレベル以下に低下することがある。
このような理由で、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有量が上記の範囲を上回るか、或いはピロメリト酸二無水物の含有量が上記の範囲を下回る場合、ポリイミドフィルムの寸法安定性が低下することがある。
【0022】
逆に、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有量が上記の範囲を下回るか、或いはピロメリト酸二無水物の含有量が上記の範囲を上回る場合にも、ポリイミドフィルムの寸法安定性に悪影響を及ぼすおそれがある。
一方、前記二無水物酸成分の総含有量100モル%に対して、前記オキシジフタル酸無水物の含有量が20モル%以下であり、前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の含有量が30モル%以下であり、前記ジアミン成分の総含有量100モル%に対して、前記オキシジアニリン(ODA)の含有量が20モル%以下であり、前記1,3-ビスアミノフェノキシベンゼンの含有量が20モル%以下であり得る。
【0023】
前記ポリイミドフィルムの組成において、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に対する前記パラフェニレンジアミンのモル比(=パラフェニレンジアミンのモル%/ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のモル%)が0.3以上2.5以下であり、前記ピロメリト酸二無水物に対する前記m-トリジンのモル比(=m-トリジンのモル%/ピロメリト酸二無水物のモル%)が0.6以上1.5以下であり得る。
また、前記ポリイミドフィルムの二無水物酸成分とジアミン成分との反応モル比において、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に対する前記パラフェニレンジアミンの反応モル比が1.05以上1.2以下であり、前記ピロメリト酸二無水物に対する前記パラフェニレンジアミンと前記m-トリジンの反応モル比が0.9以上0.99以下であり得る。
【0024】
すなわち、二無水物酸成分とジアミン成分との反応過程で、1モルのビフェニルテトラカルボン酸二無水物は、1.05モル以上1.2モル以下のパラフェニレンジアミンと反応し、1モルのピロメリト酸二無水物は、0.9モル以上0.99モル以下のパラフェニレンジアミン及びm-トリジンと反応することができる。
好ましくは、前記ピロメリト酸二無水物に対する前記パラフェニレンジアミン及び前記m-トリジンの反応モル比が0.9以上0.95以下であり得る。
一方、前記ポリイミドフィルムの熱膨張係数が1ppm/℃以上5ppm/℃以下であり、弾性率が9GPa以上11.5GPa以下であり、吸湿膨張係数が4ppm/RH%以上6ppm/RH%以下であり得る。
また、前記ポリイミドフィルムのガラス転移温度は、340℃以上400℃以下、好ましくは390℃未満であり得る。
【0025】
本発明におけるポリアミック酸の製造は、例えば、
(1)ジアミン成分全量を溶媒中に入れ、その後、二無水物酸成分をジアミン成分と実質的に同モルとなるように添加して重合する方法、
(2)二無水物酸成分全量を溶媒中に入れ、その後、ジアミン成分を二無水物酸成分と
実質的に同モルとなるように添加して重合する方法、
(3)ジアミン成分中の一部成分を溶媒中に入れ、反応成分に対して二無水物酸成分中の一部成分を約95~105モル%の割合で混合した後、残りのジアミン成分を添加し、これに連続して残りの二無水物酸成分を添加することにより、ジアミン成分と二無水物酸成分とが実質的に同モルとなるようにして重合する方法、
(4)二無水物酸成分を溶媒中に入れ、反応成分に対してジアミン化合物中の一部成分を95~105モル%の割合で混合した後、他の二無水物酸成分を添加し、残りのジアミン成分を添加することにより、ジアミン成分と二無水物酸成分とが実質的に同モルとなるように重合する方法、
(5)溶媒中で一部のジアミン成分と一部の二無水物酸成分をいずれか一つが過量となるように反応させ、第1組成物を形成し、別の溶媒中で一部のジアミン成分と一部の二無水物酸成分をいずれか一つが過量となるように反応させて第2組成物を形成した後、第1組成物と第2組成物とを混合し、重合を完結する方法であって、このとき、第1組成物を形成するときにジアミン成分が過剰である場合、第2組成物では二無水物酸成分を過量とし、第1組成物における二無水物酸成分が過剰である場合、第2組成物ではジアミン成分を過量として、第1組成物と第2組成物とを混合して、これらの反応に用いられる全体ジアミン成分と二無水物酸成分とが実質的に同モルとなるようにして重合する方法などが挙げられる。
【0026】
一つの具体的な例において、本発明によるポリイミドフィルムの製造方法は、
(a)ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、オキシジフタル酸無水物(ODPA)及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)よりなる群から選択された2種以上を含む二無水物酸成分と、パラフェニレンジアミン(PPD)、m-トリジン(m-tolidine)、オキシジアニリン(ODA)及び1,3-ビスアミノフェノキシベンゼン(TPE-R)よりなる群から選択された2種以上を含むジアミン成分と、を有機溶媒中で重合してポリアミック酸を製造するステップと、
(b)前記ポリアミック酸をイミド化するステップと、を含み、
前記二無水物酸成分の総含有量100モル%に対して、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有量が30モル%以上60モル%以下であり、前記ピロメリト酸二無水物の含有量が40モル%以上60モル%以下であり、
前記ジアミン成分の総含有量100モル%に対して、前記パラフェニレンジアミンの含有量が10モル%以上70モル%以下であり、前記m-トリジンの含有量が25モル%以上80モル%以下である、ポリイミドフィルムの製造方法であり得る。
【0027】
本発明では、上述したポリアミック酸の重合方法を任意(random)の重合方式として定義することができ、上述した過程で製造された本発明のポリアミック酸から製造されたポリイミドフィルムは、寸法安定性を高める本発明の効果を最大化させる観点から好ましく適用できる。
ただし、前記重合方法は、上述した高分子鎖内の繰り返し単位の長さが相対的に短く製造されるので、二無水物酸成分に由来するポリイミド鎖が有するそれぞれの優れた特性を発揮するには限界があり得る。したがって、本発明において特に好ましく用いられるポリアミック酸の重合方法は、ブロック重合方式であり得る。
一方、ポリアミック酸を合成するための溶媒は、特に限定されるものではなく、ポリアミック酸を溶解させる溶媒であれば、いずれの溶媒も用いることができるが、アミド系溶媒であることが好ましい。
【0028】
具体的には、前記有機溶媒は、有機極性溶媒であってもよく、具体的には、非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)であってもよく、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル
-ピロリドン(NMP)、ガンマブチロラクトン(GBL)、ジグリム(Diglyme)よりなる群から選択された1種以上であってもよいが、これらに限定されるものではなく、必要に応じて単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
一つの例において、前記有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド及びN,N-ジメチルアセトアミドが特に好ましく使用できる。
また、ポリアミック酸製造工程では、摺動性、熱伝導性、COVID-19耐性、ヌープ硬さなどのフィルムの様々な特性を改善する目的で充填材を添加することもできる。添加される充填材は、特に限定されないが、好ましい例としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、マイカなどが挙げられる。
【0029】
充填材の粒径は、特に限定されるものではなく、改質すべきフィルム特性と添加する充填材の種類によって決定すればよい。一般に、平均粒径は、0.05~100μm、好ましくは0.1~75μm、さらに好ましくは0.1~50μm、特に好ましくは0.1~25μmである。
粒径がこの範囲を下回ると、改質効果が現れ難くなり、この範囲を上回ると、表面性が大きく損なわれるか或いは機械的特性が大きく低下する場合がある。
【0030】
また、充填材の添加量に対しても特に限定されるものではなく、改質すべきフィルム特性や充填材の粒径などによって決定すればよい。一般に、充填材の添加量は、ポリイミド100重量部に対して0.01~100重量部、好ましくは0.01~90重量部、さらに好ましくは0.02~80重量部である。
充填材の添加量がこの範囲を下回ると、充填材による改質効果が現れ難く、この範囲を上回ると、フィルムの機械的特性が大きく損なわれる可能性がある。充填材の添加方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法を用いてもよい。
【0031】
本発明の製造方法において、ポリイミドフィルムは、熱イミド化法及び化学的イミド化法によって製造できる。
また、熱イミド化法と化学的イミド化法とが併行される複合イミド化法によって製造されることもできる。
【0032】
前記熱イミド化法とは、化学的触媒を排除し、熱風や赤外線乾燥機などの熱源でイミド化反応を誘導する方法である。
前記熱イミド化法は、前記ゲルフィルムを100~600℃の範囲の可変的な温度で熱処理して、ゲルフィルムに存在するアミック酸基をイミド化することができ、詳細には、200~500℃、さらに詳しくは300~500℃で熱処理して、ゲルフィルムに存在するアミック酸基をイミド化することができる。
ただし、ゲルフィルムを形成する過程においても、アミック酸の一部(約0.1モル%~10モル%)がイミド化されてもよく、このために、50℃~200℃の範囲の可変的な温度でポリアミック酸組成物を乾燥させることができ、これも前記熱イミド化法の範疇に含まれることが可能である。
【0033】
化学的イミド化法の場合、当該技術分野における公知の方法に従って脱水剤及びイミド化剤を用いて、ポリイミドフィルムを製造することができる。
複合イミド化法の一例として、ポリアミック酸溶液に脱水剤及びイミド化剤を投入した後、80~200℃、好ましくは100~180℃で加熱して、部分的に硬化及び乾燥させた後、200~400℃で5~400秒間加熱することにより、ポリイミドフィルムを製造することができる。
【0034】
本発明は、上述したポリイミドフィルムと電気伝導性の金属箔とを含む、フレキシブル
金属箔積層板を提供する。
使用する金属箔としては、特に限定されるものではないが、電子機器又は電気機器用途に本発明のフレキシブル金属箔積層板を用いる場合には、例えば、銅又は銅合金、ステンレス鋼又はその合金、ニッケル又はニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む金属箔であってもよい。
一般的なフレキシブル金属箔積層板では、圧延銅箔、電解銅箔という銅箔が多く用いられ、本発明においても好ましく用いることができる。また、これらの金属箔の表面には防錆層、耐熱層または接着層が塗布されていてもよい。
本発明において前記金属箔の厚さについては特に限定されるものではなく、その用途に応じて十分な機能を発揮することが可能な厚さであればよい。
本発明によるフレキシブル金属箔積層板は、前記ポリイミドフィルムの少なくとも一面に金属箔がラミネートされた構造であってもよい。
【実施例
【0035】
以下、本発明の具体的な製造例及び実施例によって、本発明の作用及び効果をより詳細に説明する。ただし、このような製造例及び実施例は、発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって本発明の権利範囲が限定されるものではない。
【0036】
製造例:ポリイミドフィルムの製造
本発明のポリイミドフィルムは、次の当該技術分野における公知の通常の方法で製造できる。まず、有機溶媒に前述の二無水物酸とジアミン成分とを反応させてポリアミック酸溶液を得る。
この場合、溶媒は、一般にアミド系溶媒であって、非プロトン性極性溶媒(Aprotic solvent)、例えば、N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、N-メチル-ピロリドン、又はこれらの組み合わせを使用することができる。
前記二無水物酸とジアミン成分の投入形態は、粉末、塊及び溶液の形態で投入することができ、反応初期には粉末形態で投入して反応を行った後、重合粘度調節のために溶液形態で投入することが好ましい。
得られたポリアミック酸溶液は、イミド化触媒及び脱水剤と混合されて支持体に塗布され得る。
使用される触媒の例としては第三級アミン類(例えば、イソキノリン、β-ピコリン、ピリジンなど)があり、脱水剤の例としては無水酸があるが、これらに限定されない。また、上記で使用される支持体としては、ガラス板、アルミニウム箔、循環ステンレスベルト又はステンレスドラムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
前記支持体上に塗布されたフィルムは、乾燥空気及び熱処理によって支持体上でゲル化される。
前記ゲル化されたフィルムは、支持体から分離されて熱処理されることにより、乾燥及びイミド化が完了する。
前記熱処理を済ませたフィルムは、一定の張力下で熱処理され、製膜過程から発生したフィルム内部の残留応力が除去され得る。
具体的には、攪拌機及び窒素注入・排出管を備えた反応器に窒素を注入させながら、DMFを500ml投入し、反応器の温度を30℃に設定した後、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、パラフェニレンジアミン(PPD)、m-トリジン(m-tolidine)、オキシジアニリン(ODA)及び1,3-ビスアミノフェノキシベンゼン(TPE-R)を、調節された組成比及び定められた順序で投入して完全に溶解させる。その後、窒素雰囲気下で40℃に反応器の温度を上げて加熱しながら120分間攪拌し続けて一次反応粘度1,500cPのポ
リアミック酸を製造した。
このように製造したポリアミック酸を最終粘度100,000~120,000cPとなるように攪拌した。
準備された最終ポリアミック酸に触媒及び脱水剤の含有量を調節して添加した後、アプリケーターを用いてポリイミドフィルムを製造した。
【0038】
実施例及び比較例
下記表1に示すように、実施例1~8及び比較例1~7における二無水物酸成分及び前記ジアミン成分の含有量を調節することにより、製造例に従ってポリイミドフィルムを製造した。
また、実施例1~7のビフェニルテトラカルボン酸二無水物に対するパラフェニレンジアミンの反応モル比が1.05以上1.2以下、ピロメリト酸二無水物に対するパラフェニレンジアミン及び前記m-トリジンの反応モル比が0.9以上0.99以下となるように反応を調節した。
【表1】
【0039】
製造されたポリイミドフィルムの弾性率、熱膨張係数(coefficient of
thermal expansion、CTE)、吸湿膨張係数(coefficient of hydroscopic expansion、CHE)及びガラス転移温度(Tg)を測定し、下記表2に示した。
【表2】
【0040】
(1)弾性率の測定
全ての実施例及び比較例で製造したポリイミドフィルムの弾性率は、インストロン装備(Stander Instron testing apparatus)を用いてASTM D 882規定に合わせて3回をテストすることにより、平均値を取った。
【0041】
(2)熱膨張係数の測定
熱膨張係数(CTE)は、TA社製の熱機械分析器(thermomechanical analyzer)Q400モデルを使用し、ポリイミドフィルムを4mmの幅、20mmの長さに切った後、窒素雰囲気下で0.05Nの張力を加えながら、10℃/minの速度で常温から400℃まで昇温した後、再び10℃/minの速度で冷却しながら50℃~200℃区間の傾きを測定した。
【0042】
(3)吸湿膨張係数の測定
吸湿膨張係数(CHE)は、ポリイミドフィルムが緩まないように最低限の重みをかけた状態(25mm×150mmのサンプルに対して、約1g)で、湿度を3%RHに調節し、完全に飽和するまで吸湿させて寸法を計測し、その後、90%RHに湿度を調整して同様に飽和吸湿させた後、寸法を計測し、両者の結果から相対湿度差87%当たり湿度90%RHで寸法変化率を測定した。
【0043】
(4)ガラス転移温度の測定
ガラス転移温度(T)は、DMAを用いて各フィルムの損失弾性率と貯蔵弾性率を求め、これらのタンジェントグラフにおける変曲点をガラス転移温度として測定した。
【0044】
測定の結果、実施例1~8のポリイミドフィルムは、熱膨張係数が1ppm/℃以上5ppm/℃以下であり、弾性率が9GPa以上11.5GPa以下であり、吸湿膨張係数が4ppm/RH%以上6ppm/RH%以下の特性を示した。
これに対して、m-トリジンを全く含まないか或いは少量(15重量%)含む比較例1
及び2の場合、熱膨張係数特性は比較的優れたが(1.5ppm/℃以下)、吸湿膨張係数が6.5ppm/RH%以上と測定され、実施例に比べて水分に対する寸法安定性が低いことが分かった。
一方、ジアミン成分としてm-トリジンを少量(15重量%)使用しながら、オキシジアニリンとパラフェニレンジアミンを一緒に使用した比較例7は、弾性率が9GPa未満に低下することを確認することができた。
この他にも、比較例2~4の場合、ガラス転移温度が実施例のガラス転移温度に比べて低いか高いことを確認することができた。
【0045】
また、m-トリジンを過剰に含む比較例3及び4の場合、吸湿膨張係数の特性は比較的優れたが(5.9ppm/RH%以下)、熱膨張係数が5.7ppm/℃以上と測定され、実施例に比べて熱的寸法安定性が低いことが分かった。
一方、m-トリジンを過剰に含むとともに、二無水物酸成分としてオキシジフタル酸無水物を含む比較例5は、実施例に比べて熱的寸法安定性が低下し、ガラス転移温度が低くなることを確認することができた(熱膨張係数:7.0ppm/℃、ガラス転移温度:300℃)。
m-トリジンを過剰に含むとともに、ジアミン成分として1,3-ビスアミノフェノキシベンゼンを含む比較例6は、実施例に比べて弾性率が過剰に大きくなりながら(弾性率:12.2GPa)、ガラス転移温度が低くなる(ガラス転移温度:310℃)ことを確認することができた。
【0046】
したがって、本願の適切な範囲内で製造された実施例1~8のポリイミドフィルムは、熱的寸法安定性及び水分に対する寸法安定性の両方に優れたが、本願の適切な範囲から外れる場合、熱的寸法安定性及び水分に対する寸法安定性を両立させることが難しいことを確認することができた。
また、本願の適切な範囲内で製造された実施例1~8のポリイミドフィルムは、弾性率及びガラス転移温度も各種分野に適用できる適切な範囲を有することを確認することができた。
【0047】
すなわち、優れた寸法安定性を有しながらも、応用分野に適用できる様々な条件を全て満たすポリイミドフィルムは、本願の適切な範囲内で製造されたポリイミドフィルムであることを確認することができた。
本発明であるポリイミドフィルム及びポリイミドフィルムの製造方法の実施例は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する当業者が本発明を容易に実施し得るようにする好適な実施例に過ぎず、上述した実施例に限定されるものではないので、本発明の権利範囲が限定されるものではない。したがって、本発明の真正な技術的保護範囲は、添付された特許請求の範囲の技術的思想によって定められるべきである。また、本発明の技術的思想から外れない範囲内で種々の置換、変形及び変更が可能であるのが当業者にとっては明らかであり、当業者によって容易に変更可能な部分も本発明の権利範囲に含まれるのは自明である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、二無水物酸及びジアミン成分の組成比や反応比などが調節されたポリイミドフィルムを提供することにより、熱的寸法安定性と水分に対する寸法安定性の両方に優れたポリイミドフィルムを提供する。
このようなポリイミドフィルムは、優れた寸法安定性特性のポリイミドフィルムが要求される様々な分野、例えば、メタライジング法によって製造されるフレキシブル金属箔積層板またはこのようなフレキシブル金属箔積層板を含む電子部品に適用可能である。
【国際調査報告】