(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】DNAペイロードをアクネ菌集団へとin situ送達するためのファージ由来粒子
(51)【国際特許分類】
C12N 15/63 20060101AFI20231106BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231106BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231106BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231106BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231106BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20231106BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20231106BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231106BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231106BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231106BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20231106BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231106BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20231106BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231106BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20231106BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20231106BHJP
C12N 15/33 20060101ALN20231106BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/09 110
C12N7/01
A61P35/00
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/10
A61P37/02
A61P37/08
A61P37/06
A61K35/74 A
A61K39/00 A
C12N15/33
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527079
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2021080667
(87)【国際公開番号】W WO2022096590
(87)【国際公開日】2022-05-12
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519283484
【氏名又は名称】エリゴ・バイオサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アイメリク・ルヴォー
(72)【発明者】
【氏名】イネス・カナダス・ブラスコ
(72)【発明者】
【氏名】オレリー・マチュー
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ・ドゥクリュル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C085AA02
4C085BA01
4C085BB01
4C085CC07
4C085DD62
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA10
4C087BC55
4C087CA09
4C087MA63
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZB08
4C087ZB13
4C087ZB26
4C087ZB33
4C087ZB35
(57)【要約】
本発明は、アクネ菌ファージパッケージングシグナル及び目的の遺伝子を有するDNAベクターを運ぶアクネ菌に関する。本発明は、アクネ菌レシーバ細胞にロバストに形質導入し得て導入遺伝子発現を可能にするファージ由来粒子を産生するための、アクネ菌ファージパッケージングシグナル及び目的の遺伝子を有するDNAベクターを運ぶアクネ菌産生細胞を含む。本発明は、それらのベクターを運ぶアクネ菌ファージ由来粒子、それらのベクターを含有するか、又はそれらのファージ由来粒子の形質導入により改変されたアクネ菌、並びにそれらのファージ由来粒子を使用する方法を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- キューティバクテリウム・アクネスファージカプシド中でのDNAベクターのパッケージングを可能にするファージパッケージングシグナル、及び
- 目的の遺伝子
を含む組換えDNAベクター。
【請求項2】
- キューティバクテリウム・アクネスファージカプシド中でのDNAベクターのパッケージングを可能にするファージパッケージングシグナル
- 目的の遺伝子
- 産生細胞内での複製を可能にする複製起点、及び
- アクネ菌用の選択マーカー
を含む組換えDNAベクターを運ぶアクネ菌産生細胞。
【請求項3】
更にアクネ菌用の複製起点及びアクネ菌用の選択マーカーを含む、請求項1に記載のDNAベクター。
【請求項4】
前記ファージパッケージングシグナルが、配列番号66と少なくとも90%、93%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一である、請求項1から3のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項5】
前記ファージパッケージングシグナルが、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81からなる群から選択されるファージパッケージングシグナルと少なくとも90%、93%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一である、請求項1から3のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項6】
更にCRISPR-Casシステムを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項7】
前記アクネ菌産生細胞株中に存在しないアクネ菌染色体座を標的とするCRISPR-Casシステムを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項8】
前記標的遺伝子座が、尋常性ざ瘡に関連する炎症誘発性配列である、請求項7に記載のDNAベクター。
【請求項9】
アクネ菌ファージ内での相同組換えに適した鋳型を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項10】
アクネ菌プラスミド内での相同組換えに適した鋳型を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項11】
相同組換えに適した鋳型を含み、前記CRISPR-Casシステムが、前記DNAベクターそれ自体を標的とする、請求項6に記載のDNAベクター。
【請求項12】
第1の選択マーカー及び第2の選択マーカーが同じである、請求項1から11のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項13】
前記第1の選択マーカーも第2の選択マーカーもermEでない、請求項1から11のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項14】
第1の選択マーカー及び第2の選択マーカーがcatAである、請求項1から11のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項15】
第1の選択マーカー又は第2の選択マーカーがcatAである、請求項1から11のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項16】
抗原をコードするDNAを含む、請求項1に記載のDNAベクター。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載のDNAベクターのいずれかを含む操作型アクネ菌。
【請求項18】
抗原をコードするDNAを含む、請求項1に記載のDNAベクターを含む、請求項17に記載の操作型アクネ菌。
【請求項19】
請求項1から16のいずれか一項に記載のベクターのいずれかによる改変により製造された操作型アクネ菌。
【請求項20】
請求項1から16のいずれか一項に記載のベクターのいずれかとアクネ菌を接触させ、前記ベクターが運ぶ目的の遺伝子により前記アクネ菌を改変し、前記改変を選択し、前記アクネ菌から前記プラスミドをキュアリングすることにより製造された操作型アクネ菌。
【請求項21】
前記ベクターが運ぶCRISPR-Casシステムにより改変された、請求項17から20のいずれか一項に記載の操作型アクネ菌。
【請求項22】
前記アクネ菌染色体への外来遺伝子の挿入により改変された、請求項17から21のいずれか一項に記載の操作型アクネ菌。
【請求項23】
アクネ菌を操作する方法であって、請求項1から16のいずれか一項に記載のDNAベクターをアクネ菌内に導入する工程を含む方法。
【請求項24】
改変アクネ菌を選択する工程を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アクネ菌染色体への、外来遺伝子の挿入を有する改変アクネ菌を選択する工程を更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項2に記載の産生細胞への、アクネ菌ファージゲノムの形質転換又は形質導入を含む、ファージ由来粒子の産生方法。
【請求項27】
請求項2に記載の産生細胞への、ヘルパーファージの導入を含む、ファージ由来粒子の産生方法。
【請求項28】
請求項26又は27に記載の方法により産生されたファージ由来粒子。
【請求項29】
抗原をコードする核酸を含むDNAベクターを含む、請求項17に記載の操作型アクネ菌を含む、ワクチン及び/又は免疫原性組成物。
【請求項30】
がんの防止及び/又は処置を必要とする対象において、がんを防止及び/又は処置する方法であって、腫瘍抗原をコードする核酸を含むDNAベクターを含む、請求項17に記載の操作型アクネ菌の治療上又は予防上効率良い量を、前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項31】
ウイルス感染の防止及び/又は処置を必要とする対象において、ウイルス感染を防止及び/又は処置する方法であって、ウイルス抗原をコードする核酸を含むDNAベクターを含む、請求項17に記載の操作型アクネ菌の治療上又は予防上効率良い量を、前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項32】
細菌感染の防止及び/又は処置を必要とする対象において、細菌感染を防止及び/又は処置する方法であって、細菌抗原をコードする核酸を含むDNAベクターを含む、請求項17に記載の操作型アクネ菌の治療上又は予防上効率良い量を、前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項33】
真菌感染の防止及び/又は処置を必要とする対象において、真菌感染を防止及び/又は処置する方法であって、真菌抗原をコードする核酸を含むDNAベクターを含む、請求項17に記載の操作型アクネ菌の治療上又は予防上効率良い量を、前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項34】
自己免疫疾患の防止及び/又は処置を必要とする対象において、自己免疫疾患を防止及び/又は処置する方法であって、自己抗原をコードする核酸を含むDNAベクターを含む、請求項17に記載の操作型アクネ菌の治療上又は予防上効率良い量を、前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項35】
アレルギーの防止及び/又は処置を必要とする対象において、アレルギーを防止及び/又は処置する方法であって、アレルゲンをコードする核酸を含むDNAベクターを含む、請求項17に記載の操作型アクネ菌の治療上又は予防上効率良い量を、前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項36】
移植片拒絶の防止及び/又は処置を必要とする対象において、移植片拒絶を防止及び/又は処置する方法であって、グラフト特異的抗原をコードする核酸を含むDNAベクターを含む、請求項17に記載の操作型アクネ菌の治療上又は予防上効率良い量を、前記対象に投与する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes)ファージミド及びその製造(production)方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、人体の最大の器官であり、我々の身体と環境との間の最大の境界面である。そのため、皮膚は更に、物理的脅威(例えば、UV、外傷)、化学的脅威(例えば、酸、塩基)、及び微生物脅威(ウイルス、細菌、真菌)から我々を守るバリアとして作用する。この防御は、脂質マトリクスによって囲まれる、高密度且つ相互接続された死細胞(角質層)の連続層からなる、皮膚の受動的な物理的隔離性の結果であるだけではない。それは更に、抗菌ペプチド(AMP)を分泌する、リンパ球免疫細胞をリクルートするためにサイトカイン及びケモカインを産生する、皮膚損傷を感知する、並びに他のプロセスの間で創傷治癒機構を誘発する、多様な種類の皮膚細胞及び免疫細胞によって統合される能動的機構のおかげでもある1。
【0003】
皮膚は、我々の出生後に微生物と接触する最初の器官であり、皮膚には膨大な量の免疫細胞が、非常に多様な微生物と緊密に接触する中で存在するため、皮膚免疫系は、不断の免疫応答及び炎症を回避するためには、有益な微生物を病原微生物から見分ける能力を発展させる必要がある。この教育の一部は、人生の初期に特定の細菌種が皮膚に定着する時に起こり、それらの細菌種が忍容され得るように免疫応答を調節する2。その場合、この特定細菌種は、皮膚に安定に定着でき、群集を確立して共生株になる。
【0004】
皮膚は、身体全体にわたって生理学的且つ空間的に均質ではない。つまり、身体部位に応じて、脂性皮膚(例えば、頬、背)、湿潤性皮膚(例えば、鼠経皮線(inguinal crease)、指間みずかき(interdigital web space)、肘前皮線(antecubital crease))、及び乾燥性皮膚(例えば、掌側前腕、掌小指球(hypothenar palm))が存在する3。これらの異なる身体部位は、異なる生理的条件を伴い、且つ独特なマイクロバイオームを有し、脂性部位には主にキューティバクテリウム・アクネス(以前はプロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)として知られた)が定着し、湿潤性部位には、スタフィロコッカス(Staphylococcus)種及びコリネバクテリウム(Corynebacterium)種の量がより多い4。これらの生理特性に加えて、皮膚は更に、異なる付属器、つまり、汗腺、毛包、皮脂腺を伴う空間において異質である。これらの付属器での定着は、ごく最近になって研究されているが、皮膚表面(角質層)と比べて相違を示す4~6。
【0005】
これらの皮膚付属器は、角質層を有さないことから、特異的な解剖学的場所である。結果として、これらの付属器内部の微生物は、生きたケラチノサイトと接触し、且つ真皮への近接ゆえ、より多様な免疫細胞に接近できる。毛包は、特異的な免疫学的特性を有する。毛包は、特異的免疫細胞、例えば、単球由来ランゲルハンス細胞前駆体をリクルートでき7、且つ常在型メモリT細胞(TRM)を能動的に維持でき8、このため、抗原提示にとって毛包は潜在的な本質的な場所である。毛包は更に、エフェクタT細胞に乏しく、且つ強度に免疫抑制の環境を有し、このため、毛包は免疫特権領域である9。
【0006】
公開された文献中での例は、皮膚常在細菌が、無傷の皮膚バリアを介する宿主免疫性に能動的に関与し、種及び株依存性に特異的免疫細胞を活性化することを示す(Chen等、Nature 2018;555(7697):543(非特許文献1))。例えば、全部ではないが一部の表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)は、皮膚感染から守る表皮ブドウ球菌特異的IL-17+CD8+T細胞の活性化を誘導する(Naik等、Nature 2015、520(7545):104~108頁(非特許文献2))。
【0007】
角質層の不在ゆえ、皮膚付属器は更に、化学物質に対してより透過性である。なぜなら、化学物質は、通常は水分交換を防止する角質層ではなく、タイトジャンクションバリアを横切るだけでよく、その結果、すべての水溶性物質が拡散できるからである。
【0008】
毛包(fair follicle)及び皮脂腺を含む毛包脂腺副単位(pilosebaceous subunit)には主に、その皮脂に富む嫌気性環境で繁殖するアクネ菌が定着している。キューティバクテリウム・アクネス(以前はプロピオニバクテリウム・アクネス)は、1897年に初めて、皮膚から単離されたグラム陽性耐気性桿菌である。放線菌(アクチノミセターレス(Actinomycetales))目に属し、プロピオニバクテリア(Propionibacteriaceae)科の一部であり、キューティバクテリウム属に属す。この属は、他のヒト皮膚種、例えば、キューティバクテリウム・アビダム(Cutibacterium avidum)、キューティバクテリウム・グラニュローサム(Cutibacterium granulosum)、及びキューティバクテリウム・フメルシ(Cutibacterium humerusii)10を含む。アクネ菌は、ヒト皮膚上で最も一般的且つ量の多い細菌の1つであり、皮膚表面(角質層)及び毛包中の両方ともに見出され得る。アクネ菌は、毛包内部では、相当に多様な生細胞、例えば、ケラチノサイト、幹細胞、脂腺細胞、及び免疫細胞と直接接触しており、死んだ角層細胞と主に接触している角質層上とは異なる。アクネ菌は、共生細菌であるが、更に、いくつかの皮膚疾患、例えば、尋常性ざ瘡11又は進行性斑状メラニン減少症12~14と関連付けられている。
【0009】
特に、アクネ菌に関する新たな発見が、特定のファイロタイプがざ瘡の発生において決定的な役割を果たし得ることを明らかにする11。正確には、アクネ菌ファイロタイプIA1の役割が、幅広く強調されている。Fitz-Gibbonと共同研究者は、リボタイプRT4及びRT5(ファイロタイプIA1内に分類される)の特徴である、染色体領域の遺伝子座1、2及び3が、ざ瘡と強く関連することを実証した15。この染色体領域は、健康な皮膚(即ち、RT6)を伴うリボタイプには不在であるため、その染色体領域は、ざ瘡関連アクネ菌株を除去するための潜在的な標的であり得る。
【0010】
疾患、例えば、尋常性ざ瘡を防止若しくは治療するために、特定の炎症誘発性(proinflammatory)株の除去により、キューティバクテリウム・アクネス集団を編集できること、又は宿主免疫応答を調節若しくは創傷治癒を改善するための、毛包脂腺副単位へのその特権位置の活用は、興味をそそる治療手法である。そのような手法を実施するために、アクネ菌株をin situで遺伝子組換えするか(genetically modify)、又はin vitroで遺伝子組換えしたアクネ菌を提供するかのいずれかが可能である。同一個体内及び個体間でのマイクロバイオーム多様性が、種レベル及び株レベルの両方ともで大きいため、大半の患者の皮膚に定着できる単一の操作型(engineered)アクネ菌株又はそのカクテルを提供することは困難であるように思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第04/92360号
【特許文献2】国際公開第2007/120362号
【特許文献3】国際公開第98/18931号
【特許文献4】国際公開第98/18930号
【特許文献5】米国特許第6,699,703号明細書
【特許文献6】米国特許第6,800,744号明細書
【特許文献7】国際公開第97/43303号
【特許文献8】国際公開第97/37026号
【特許文献9】国際公開第02/079241号
【特許文献10】国際公開第02/34773号
【特許文献11】国際公開第00/06737号
【特許文献12】国際公開第00/06738号
【特許文献13】国際公開第00/58475号
【特許文献14】国際公開第2003/082183号
【特許文献15】国際公開第00/37105号
【特許文献16】国際公開第02/22167号
【特許文献17】国際公開第02/22168号
【特許文献18】国際公開第2003/104272号
【特許文献19】国際公開第02/08426号
【特許文献20】国際公開第01/12219号
【特許文献21】国際公開第99/53940号
【特許文献22】国際公開第01/81380号
【特許文献23】国際公開第2004/092209号
【特許文献24】国際公開第00/76540号
【特許文献25】国際公開第2007/116322号
【特許文献26】国際公開第02/34771号
【特許文献27】国際公開第2005/032582号
【特許文献28】国際公開第02/094851号
【特許文献29】国際公開第02/18595号
【特許文献30】国際公開第99/58562号
【特許文献31】国際公開第02/094868号
【特許文献32】国際公開第2008/019162号
【特許文献33】国際公開第02/059148号
【特許文献34】国際公開第02/102829号
【特許文献35】国際公開第03/011899号
【特許文献36】国際公開第2005/079315号
【特許文献37】国際公開第02/077183号
【特許文献38】国際公開第99/27109号
【特許文献39】国際公開第01/70955号
【特許文献40】国際公開第00/12689号
【特許文献41】国際公開第00/12131号
【特許文献42】国際公開第2006/032475号
【特許文献43】国際公開第2006/032472号
【特許文献44】国際公開第2006/032500号
【特許文献45】国際公開第2007/113222号
【特許文献46】国際公開第2007/113223号
【特許文献47】国際公開第2007/113224号
【特許文献48】国際公開第03/093306号
【特許文献49】国際公開第04/041157号
【特許文献50】国際公開第2005/002619号
【特許文献51】国際公開第99/24578号
【特許文献52】国際公開第99/36544号
【特許文献53】国際公開第99/57280号
【特許文献54】国際公開第02/079243号
【特許文献55】国際公開第00/37494号
【特許文献56】国際公開第03/049762号
【特許文献57】国際公開第03/068811号
【特許文献58】国際公開第05/002619号
【特許文献59】国際公開第02/02606号
【特許文献60】米国特許出願公開第2016/0022788号明細書
【特許文献61】国際公開第2020181180号
【特許文献62】国際公開第2020181193号
【特許文献63】国際公開第2020181178号
【特許文献64】国際公開第2020181195号
【特許文献65】国際公開第2020181202号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Chen等、Nature 2018;555(7697):543
【非特許文献2】Naik等、Nature 2015、520(7545):104~108頁
【非特許文献3】Fitz-Gibbon, S.等(2013)J Invest Dermatol 133、2152~2160頁
【非特許文献4】Dreno, B.等(2018). Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology 32、5~14頁
【非特許文献5】Barnard, E.等(2016)Scientific Reports 6、srep39491
【非特許文献6】Yu等(2016)Journal of Investigative Dermatology 136:2221~2228頁
【非特許文献7】Chen等(2019)「Decoding commensal-host communication through genetic engineering of Staphylococcus epidermidis」bioRxiv https://doi.org/10.1101/664656
【非特許文献8】Girolamo, S. D.等、Biochem J 476、665~682頁(2019)
【非特許文献9】Webb, Edwin C. Enzyme nomenclature 1992:recommendations of the Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology on the nomenclature and classification of enzymes. San Diego:Academic Pressが国際生化学分子生物学連合のために公開。ISBN 0-12-227164-5(1992)
【非特許文献10】Reap等、Vaccine(2007)25:7441~7449頁
【非特許文献11】LeMieux等、Infect. Imm.(2006)74:2453~2456頁
【非特許文献12】Hoskins等、J. Bacteriol.(2001)183:5709~5717頁
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
アクネ菌集団へのin situでのDNAの送達は、予備樹立株の活用を可能にすることにより、潜在的に局所マイクロバイオームを妨げずに、そのような困難を回避するやり方を提供する。しかしながら、アクネ菌への遺伝物質のin situ送達は、いくつかの理由から困難な課題である。まず、これまでのところ、アクネ菌内部でロバスト且つ自律的に複製できる遺伝エレメント、例えば、プラスミドが存在しない。記載された数少ない遺伝子組換え(genetic modification)は、相同組換えによる合成DNAのゲノム挿入で構成される16~18。このin vitroプロセスは、非常に低効率であり、且つそのような事象を選択するために抗生物質選択マーカーの使用に依拠することが示された。更に、この遺伝子組換えは、少数の特定株(KPA17202、RT6のアクネ菌)に限られており、すべてのアクネ菌株には一般化できない可能性がある。第2に、アクネ菌のin situ遺伝子組換えを行うためには、アクネ菌内へとDNAを送達する必要がある。DNAをアクネ菌内に導入する唯一の記載された方法は、エレクトロポレーションの使用であり19、20、in vitroでのみ行える方法である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、複製的且つ安定なDNAベクターの欠如、及びアクネ菌内へのその送達の両方ともを、ファージ由来粒子を使用して解決する。
【0015】
本発明は、キューティバクテリウム・アクネスファージミド、該ファージミドを含む細菌細胞、該ファージミドを含むファージ由来粒子を作製する方法、該ファージミドを含むファージ由来粒子、並びに特にキューティバクテリウム・アクネス関連の障害及び/又は疾患の処置において該ファージミド、粒子、及び細胞を使用する方法を含む。
【0016】
本発明は、組換えDNAファージミドベクター、該ベクターを含むファージ由来粒子、及び該ベクターを運ぶキューティバクテリウム・アクネスを含み、但し、該ベクターは、
- キューティバクテリウム・アクネスファージカプシド中でのDNAベクターのパッケージングを可能にするファージパッケージングシグナル;及び
- 目的の遺伝子
を含む。
【0017】
一実施形態では、DNAベクターが、
- キューティバクテリウム・アクネスファージカプシド中でのDNAベクターのパッケージングを可能にする、配列番号66の配列と少なくとも80%、83%、85%、87%、90%、93%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一であるファージパッケージングシグナル;及び
- 目的の遺伝子
を含む。
【0018】
一実施形態では、DNAベクターが、
- キューティバクテリウム・アクネスファージカプシド中でのDNAベクターのパッケージングを可能にするファージパッケージングシグナル;
- 目的の遺伝子;及び
- キューティバクテリウム・アクネス中でのDNAベクターの選択を可能にする選択マーカー
を含む。
【0019】
一実施形態では、DNAベクターが、
- キューティバクテリウム・アクネスファージカプシド中でのDNAベクターのパッケージングを可能にする、配列番号66の配列と少なくとも80%、83%、85%、87%、90%、93%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一であるファージパッケージングシグナル;
- 目的の遺伝子;及び
- キューティバクテリウム・アクネス中でのDNAベクターの選択を可能にする選択マーカー
を含む。
【0020】
一実施形態では、DNAベクターが、
- キューティバクテリウム・アクネスファージカプシド中でのDNAベクターのパッケージングを可能にするファージパッケージングシグナル;
- 目的の遺伝子;
- キューティバクテリウム・アクネス内での複製を可能にする複製起点;及び
- 場合により、キューティバクテリウム・アクネス中でのDNAベクターの選択を可能にする選択マーカー
を含む。
【0021】
一実施形態では、DNAベクターが、
- キューティバクテリウム・アクネスファージカプシド中でのDNAベクターのパッケージングを可能にする、配列番号66の配列と少なくとも80%、83%、85%、87%、90%、93%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一であるファージパッケージングシグナル;
- 目的の遺伝子;
- キューティバクテリウム・アクネス内での複製を可能にする複製起点;及び
- 場合により、キューティバクテリウム・アクネス中でのDNAベクターの選択を可能にする選択マーカー
を含む。
【0022】
一実施形態では、ファージパッケージングシグナル配列が、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、及び配列番号81の配列からなる群から選択されるファージパッケージングシグナル配列と少なくとも80%、83%、85%、87%、90%、93%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一である。
【0023】
一実施形態では、DNAベクターが更に、アクネ菌ファージの複製起点を含む。
【0024】
一実施形態では、DNAベクターが更に、その配列が、配列番号67の配列と少なくとも75%、77%、80%、83%、85%、87%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアクネ菌ファージの複製起点を含む。
【0025】
一実施形態では、目的の遺伝子が、抗原をコードするDNAである。
【0026】
本発明は、組換えDNAベクターを含有するキューティバクテリウム・アクネスファージ由来粒子の産生用の組換えDNAベクターを運ぶキューティバクテリウム・アクネス産生細胞を含む。
【0027】
DNAベクターは典型的に、キューティバクテリウム・アクネスファージゲノム又はヘルパーファージから産生されたタンパク質内にパッケージングされる。アクネ菌ファージゲノムは、例えば、アクネ菌ファージを用いた形質転換又は形質導入により、アクネ菌産生細胞内に導入可能であり、ヘルパーファージは、例えば、アクネ菌産生細胞内へのDNAベクターの導入前又は導入後、形質転換又は接合により、アクネ菌産生細胞内に導入され得る(
図1)。
【0028】
組換えDNAベクターを運ぶキューティバクテリウム・アクネス産生細胞は典型的に、キューティバクテリウム・アクネスファージゲノムを含み、DNAベクターを運ぶファージ由来粒子の産生をもたらす。
【0029】
一実施形態では、キューティバクテリウム・アクネスファージゲノムが、非操作型/野生型ゲノムである。
【0030】
他の実施形態では、キューティバクテリウム・アクネスファージゲノムが、操作されている。
【0031】
一実施形態では、DNAベクターが、キューティバクテリウム・アクネス産生細胞内でのみ複製でき、キューティバクテリウム・アクネスレシーバ細胞(receiver cell)内では複製できない複製起点を含む。
【0032】
一実施形態では、DNAベクターが、
- キューティバクテリウム・アクネスファージカプシド中でのDNAベクターのパッケージングを可能にするファージパッケージングシグナル;
- 少なくとも1つの目的の遺伝子;
- キューティバクテリウム・アクネス産生細胞内でのみ複製を可能にする複製起点;及び
- 場合により、キューティバクテリウム・アクネス中でのDNAベクターの選択を可能にする選択マーカー
を含む。
【0033】
一実施形態では、選択マーカーが栄養要求性マーカーであり、キューティバクテリウム・アクネス産生細胞の増殖が、その栄養要求性マーカーに依存する。
【0034】
一実施形態では、選択マーカーが、抗生物質耐性マーカーである。
【0035】
一実施形態では、DNAベクターが更に、CRISPR-Casシステムを含む。
【0036】
一実施形態では、CRISPR-Casシステムが、アクネ菌染色体座を標的とする。好ましくは、標的遺伝子座が、アクネ菌産生細胞中に存在しない。好ましくは、CRISPRアレイが、染色体座を標的とする、1つ又は複数のcrRNAを発現する。
【0037】
一実施形態では、CRISPR-Casシステムが、複数のアクネ菌染色体座を標的とする。好ましくは、標的遺伝子座が、アクネ菌産生細胞中に存在しない。好ましくは、CRISPR-Casシステムに由来するCRISPRアレイが、染色体座を標的とする、1つ又は複数のcrRNAを発現する。
【0038】
一実施形態では、CRISPR-Casシステムが、アクネ菌プラスミド遺伝子座を標的とする。好ましくは、標的遺伝子座が、アクネ菌産生細胞中に存在しない。好ましくは、CRISPR-Casシステムに由来するCRISPRアレイが、プラスミド遺伝子座を標的とする、1つ又は複数のcrRNAを発現する。
【0039】
一実施形態では、CRISPR-Casシステムが、複数のアクネ菌プラスミド遺伝子座を標的とする。好ましくは、標的遺伝子座が、アクネ菌産生細胞中に存在しない。好ましくは、CRISPR-Casシステムに由来するCRISPRアレイが、プラスミド遺伝子座を標的とする、1つ又は複数のcrRNAを発現する。
【0040】
一実施形態では、CRISPR-Casシステムが、アクネ菌産生細胞中で発現されない。好ましくは、CRISPR-Casシステムが、アクネ菌産生細胞中で抑制されている。
【0041】
一実施形態では、CRISPR-Casシステムが、宿主疾患に関連する炎症誘発性配列を標的とする。
【0042】
一実施形態では、CRISPR-Casシステムが、尋常性ざ瘡に関連する炎症誘発性配列を標的とする。
【0043】
一実施形態では、DNAベクターが、DNAベクターそれ自体を標的とするCRISPR-Casシステムを含む。
【0044】
一実施形態では、DNAベクターが、アクネ菌ファージ内での相同組換えに適した鋳型を含む。
【0045】
一実施形態では、DNAベクターが、アクネ菌染色体内での相同組換えに適した鋳型を含む。
【0046】
一実施形態では、DNAベクターが、アクネ菌内在性プラスミド内での相同組換えに適した鋳型を含む。
【0047】
一実施形態では、DNAベクターが、相同組換えに適した鋳型、及び該鋳型領域の外部でDNAベクターそれ自体を標的とするCRISPR-Casシステムを含む。
【0048】
一実施形態では、DNAベクターが、相同組換えに適した鋳型、及び該鋳型領域の外部でDNAベクターそれ自体を標的とするCRISPR-Casシステムを含み、但し、該CRISPR-Casシステムに由来するRNAガイド(crRNA又はsgRNA)は、DNA標的と完全には一致しない。
【0049】
一実施形態では、DNAベクターが、インテグラーゼ遺伝子発現カセット及び部位特異的組換え部位を含み、染色体内部でのDNAベクターの組込みを可能にする。
【0050】
一実施形態では、DNAベクターが、プライムエディタ遺伝子発現カセット、及び1つ又は複数のpegRNAを含む。
【0051】
一実施形態では、DNAベクターが、塩基エディタ遺伝子発現カセット、及び1つ又は複数のcrRNA又はsgRNAを含む。
【0052】
一実施形態では、選択マーカーがcatAである。
【0053】
一実施形態では、選択マーカーがermEである。
【0054】
一実施形態では、選択マーカーがhygBである。
【0055】
本発明は、本発明のDNAベクターのいずれかを含むアクネ菌ファージ由来粒子を含む。
【0056】
本発明は、本発明のDNAベクターのいずれかを含む、アクネ菌、特に、操作型アクネ菌を含む。
【0057】
特定の一実施形態では、操作型アクネ菌が、少なくとも1つ、2つ、3つ以上のDNAベクター、特に本発明のDNAベクターを含む。
【0058】
特定の一実施形態では、操作型アクネ菌が、抗原をコードするDNAを含む本発明のDNAベクターを含む。
【0059】
本発明は、ファージ由来粒子による、本発明のベクターのいずれかの形質導入に従って操作されたアクネ菌を含む。
【0060】
本発明は、そのゲノムが、本発明のベクターのいずれかを含有するファージ由来粒子による形質導入に従って変更されている操作型アクネ菌を含む。
【0061】
本発明は、本発明のベクターのいずれかによるアクネ菌の形質導入、該ベクターが運ぶ目的の遺伝子によるアクネ菌の改変(modifying)、該改変(modification)の選択、により製造された操作型アクネ菌を含む。
【0062】
本発明は、本発明のベクターのいずれかによるアクネ菌の形質導入、該ベクターが運ぶ目的の遺伝子によるアクネ菌の改変、該改変の選択、及び操作型アクネ菌からの該ベクターのキュアリング、により製造された操作型アクネ菌を含む。
【0063】
一実施形態では、操作型アクネ菌が、ベクターが運ぶCRISPR-Casシステムにより改変されており、本発明の任意のベクターを含有するファージ由来粒子により形質導入されている。
【0064】
一実施形態では、操作型アクネ菌が、アクネ菌染色体への外来(exogenous)遺伝子の挿入により改変されている。
【0065】
一実施形態では、操作型アクネ菌が、アクネ菌プラスミドへの外来遺伝子の挿入により改変されている。
【0066】
一実施形態では、操作型アクネ菌が、アクネ菌染色体中の内在性遺伝子配列の欠失又は変異により改変されている。
【0067】
一実施形態では、操作型アクネ菌が、アクネ菌染色体への、1つ又は複数のヌクレオチドの欠失、挿入、又は置換により改変されている。
【0068】
一実施形態では、操作型アクネ菌が、アクネ菌プラスミドへの、1つ又は複数のヌクレオチドの欠失、挿入、又は置換により改変されている。
【0069】
本発明は、本発明の任意のベクターを含有するアクネ菌ファージ由来粒子を産生する方法であって、アクネ菌産生細胞内への、本発明のDNAベクターのいずれかの導入、及び該産生細胞を、アクネ菌ファージゲノムと接触させる工程を含む方法を含む。
【0070】
本発明は、アクネ菌内への、本発明のDNAベクターのいずれかの導入を含む、アクネ菌を操作する方法を含む。本方法は更に、改変アクネ菌を選択する工程を含み得る。本方法は更に、アクネ菌染色体又は内在性プラスミドへの、外来遺伝子の挿入を有する改変アクネ菌を選択する工程を含み得る。本方法は更に、アクネ菌染色体内又は内在性プラスミド内への、1つ又は複数のヌクレオチドの、1つ又は複数の欠失、挿入、又は置換を有する改変アクネ菌を選択する工程を含み得る。
【0071】
本発明は、本発明の方法のいずれかにより産生されたファージ由来粒子を含む。
【0072】
本発明は、アクネ菌関連の障害又は疾患を処置する方法を含む。一実施形態では、本方法が、本発明のファージ由来粒子、又はそのようなファージ由来粒子を産生する細菌、を対象に投与する工程を含む。本発明は更に、アクネ菌関連の障害又は疾患を処置する方法に用いる、本発明のファージ由来粒子又はそのようなファージ由来粒子を産生する細菌に関する。
【0073】
本発明は、障害若しくは疾患若しくは皮膚状態を処置するため、又は化粧用途で、アクネ菌を改変する方法を含む。一実施形態では、本方法が、本発明のファージ由来粒子、又はそのようなファージ由来粒子を産生する細菌、を対象に投与する工程を含む。本発明は更に、障害又は疾患又は皮膚状態を処置する方法に用いる、本発明のファージ由来粒子又はそのようなファージ由来粒子を産生する細菌に関する。
【0074】
一実施形態では、本方法をex-situで行う。
【0075】
一実施形態では、本方法を、in-situで行う。
【0076】
一実施形態では、本方法を、対象から単離されたアクネ菌株を用いてex-situで行う。
【0077】
本明細書に開示される主題の理解を深めるため、且つ実際に行い得る方法を例示するために、実施形態を、非限定的な例として、添付図面と関連して記載する。特に図面に関連して、図示される詳細は、例示的なものであり、本発明の実施形態の説明のためのものであることを強調する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】パッケージングシグナル及び導入遺伝子を有するDNAベクターを運ぶ、アクネ菌ファージを感染させたアクネ菌産生細胞を示し、次いで、DNAベクターを運ぶファージ由来粒子が産生され、アクネ菌レシーバ細胞に結合すると、DNAベクターを形質導入し、導入遺伝子を複製しその発現をもたらす。その代わりに、アクネ菌産生細胞は、ファージによる感染を受けず、更に、ファージ由来粒子の産生を誘発するために誘導されるヘルパーファージを運ぶ。
【
図2】単離されたアクネ菌バクテリオファージの宿主域決定を示す。1は、全スポット(full spot)溶解による株感染を示す;0.5は、全スポット溶解の代わりに単一プラークが認められた、株感染におけるより低い効率を示す。
【
図3】ゲルを示す。ファージ由来粒子の滴定からの個々のコロニーをストリークし、プライマー、IC208(配列番号82)/IC310(配列番号83)を用いて、個々のコロニー上でPCRを行い、ファージミドの存在を確認した。1及び2は、同じファージミドを運ぶファージ由来粒子の独立した産生及び滴定に由来する形質導入体に関する。B及びWは、それぞれ、ファージミド抽出物(陽性対照)、及びATCC11828株(陰性対照)上でのPCRである。再ストリーク後のプラスミドの存在は、形質導入体が複製ファージミドを運ぶことを確証する。
【
図4】組換え用鋳型(recombination template)を運ぶ非複製ベクターを使用したアクネ菌ゲノム操作法を示す。(
図4A)アクネ菌染色体に対する単一ホモロジーアーム(HA)を含有する、アクネ菌内へと接合されるベクター(pEB_HR01)を示す。該ベクターは、アクネ菌中で複製的でないため、単一組換えイベントを起こすアクネ菌細胞のみが、抗生物質マーカーを安定に維持して抗生物質プレート上で増殖できる。第1の組換えイベントを起こさない細胞、又は第1及び第2の組換えイベントを起こす細胞は、抗生物質プレート(エリスロマイシン)上で増殖できない。(
図4B)アクネ菌染色体に対する2つのホモロジーアームを含有する、アクネ菌内へと接合されるベクター(pEB_HR02)を示す。最終組換え体の選択は、抗生物質選択(ErmE)、及び対抗選択(SacB)を使用して行う。
【
図5】組換え用鋳型を運ぶ複製CRISPR-Casシステム選択ベクターを使用したアクネ菌ゲノム操作法を示す。染色体との相同DNA組換えに適した鋳型を含有する複製CRISPR-Casシステム選択ベクターが、アクネ菌内へと接合される。鋳型は、2つのホモロジーアーム(LHA及びRHA)を含有し、アクネ菌染色体内での相同組換え及びCRISPR-Casシステムの標的配列の除去をもたらす。したがって、CRISPR-Casシステムを発現するベクターの存在を選択した場合、組換え体アクネ菌のみが、エリスロマイシンの存在下に増殖できる。
【
図6】CRISPR-Casシステム及び組換え用鋳型を運ぶ自己標的複製ベクターを使用したアクネ菌ゲノム操作法を示す。(
図6A)2つのホモロジーアームが隣接する抗生物質選択マーカー及び該ホモロジー領域の外部でベクターを標的とするCRISPR-Casシステムを含有する、アクネ菌内へと接合されるベクターを示す。該CRISPR-Casシステムは、ベクターを切断し、鋳型の線状化及びプラスミド損失をもたらす。したがって、組換え細胞のみが抗生物質の存在下で増殖できる。(
図6B)2つのホモロジーアームが隣接する変異対立遺伝子、及び該ホモロジー領域の外部のベクターとアクネ菌染色体の非変異対立遺伝子とを標的とするCRISPR-Casシステムを含有する、アクネ菌内へと接合されるベクターを示す。該CRISPR-Casシステムは、ベクターを切断し、鋳型の線状化及びプラスミド損失をもたらし、同じくアクネ菌染色体も切断する。したがって、組換え細胞のみがエリスロマイシンの存在下で増殖できる。
【
図7】ファージ由来粒子を使用した、配列特異的殺滅又はプラスミドキュアリングの方法を示す。アクネ菌ファージ由来粒子が、アクネ菌細胞に結合し(1)、CRISPR-CasシステムをコードするDNAベクターの注入を可能にする(2)。該CRISPR-Casシステムが発現し(3)、染色体(4)、及び/又はプラスミド(5及び6)を、配列特異的に切断する。染色体の切断は、細胞死をもたらし(4)、プラスミドの切断は、プラスミド損失(6)、又はプラスミドが毒素・抗毒素システムをコードする場合は細胞死(5)をもたらす。
【
図8】異なるサイズのファージパッケージングシグナル(cos)を含むDNAベクターを運ぶファージ由来粒子のアクネ菌形質導入体を示す。更にファージも含有する、ファージ由来粒子の各懸濁液を、アクネ菌ATCC11828偽溶原菌(pseudolysogen)と混合し、混合物を1時間、室温でインキュベートし、希釈して、各希釈液の4μLをブルセラプレート(Brucella plate)上にエリスロマイシン(5μg/mL)の存在下、プレーティングした。同じDNAベクターを含有する各ファージ由来粒子に対して、独立した産生に由来する2つの懸濁液を使用した(例えば、pIC400.1及びpIC400.2)。
【
図9】1/10希釈した異なるアクネ菌培養上清中のニワトリオボアルブミン(OVA)タンパク質の存在に関するELISAからの吸光度値を示す。(
図9A及び
図9B)2つの独立したレプリカ(replica)を表す。棒グラフは、同じ上清培養の3つの技術的反復の平均を表す。アクネ菌株ATCC11828(WT)を、陰性対照として使用した。
【
図10】オボアルブミンを分泌するように操作された異なるアクネ菌株からの培養上清を用いたオボアルブミン特異的ウエスタンブロットを示す。左から右へ:(1)Pagerulerラダー、(2)Ca0s22120株からの上清、(3)Ca0s22122株からの上清、(4)Ca0s22126株からの上清、(5)Ca0s22128株からの上清、(6)Ca0s22130株からの上清、(7)Ca0s22132株からの上清、(8)Ca0s16973株からの上清、(9)オボアルブミン。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本発明者らは、ファージ由来粒子の形質導入による、アクネ菌での組換え複製DNAの導入を初めて実証した。
【0080】
本発明者らは更に、組換え自己複製DNAベクターを運ぶ、アクネ菌株からのアクネ菌ファージ由来粒子の産生を初めて実証した。
【0081】
本発明は、ファージパッケージングシグナル及び目的の遺伝子を含むDNAベクターを運ぶアクネ菌株、該DNAベクターを含有するファージ由来粒子の産生、並びにアクネ菌にin vitro又はin situで形質導入するための該ファージ由来粒子の使用、並びに該形質導入アクネ菌細胞における該目的の遺伝子の発現に関する。本発明は更に、ファージ由来粒子によるDNAベクターの形質導入により得られる、DNAベクターを含有する又は含有しない改変アクネ菌に関する。
【0082】
アクネ菌ファージは、ヒト皮膚に天然に存在し、1964年の最初の単離以来、何度も単離されている。ごく最近になって、アクネ菌ファージのシーケンシングが、約85%の同一性を伴う、並外れて高レベルのヌクレオチド保存を明らかにした。これまでのところ記載されたすべてのアクネ菌ファージは、およそ30kbのゲノムサイズ制約及び類似のゲノム構造を有する、シホウイルス科(siphoviridae)である。そのわずかな遺伝的多様性にもかかわらず、たいていのアクネ菌ファージは、複数のアクネ菌ファイロタイプに感染する能力を有するため、広宿主域と見なされる。そのin-situ感染性及びその広宿主域により、アクネ菌ファージは、アクネ菌集団への導入遺伝子送達用に操作するための適切なプラットフォームである。
【0083】
本発明者らは、アクネ菌細胞(「産生細胞」)中で、野生型又は操作型のアクネ菌ファージゲノムとパッケージングシグナルを有する組換えDNAベクターとが同時に存在することにより、ファージ由来粒子が産生され得ることを初めて示す。該ファージ由来粒子は、「レシーバ」アクネ菌細胞内へと該DNAベクターを形質導入して、導入遺伝子、例えば、抗生物質耐性遺伝子を発現させることができ、形質導入体の選択を可能にする。それは、アクネ菌集団を皮膚上で直接に操作する可能性を大きく広げ、多くの適用(産業用、治療用、化粧用、環境)を容易にする。本発明は、DNAベクター、特にファージミドを運ぶアクネ菌「産生」細胞、及びファージ由来粒子を生成する方法、及びアクネ菌を改変又は殺滅するためのファージ由来粒子の使用を含む。
【0084】
DNAベクター
本発明は、キューティバクテリウム・アクネスで用いる組換えDNAベクターを含む。好ましくは、DNAベクターが、アクネ菌染色体に組み込まれない組換えDNAベクターである。ベクターは、子孫細胞への伝達を可能にする。ベクターは、好ましくはファージミドである。DNAベクターは、好ましくは、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点、及びファージパッケージングシグナルを含む。
【0085】
様々な実施形態では、DNAベクターが、ファージパッケージングシグナル、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点、アクネ菌中でのDNAベクターの選択を可能にする選択マーカー、目的の遺伝子、及びアクネ菌産生細胞内での複製を可能にするがアクネ菌レシーバ細胞内での複製は可能にしない複製起点の任意の組合せを含む。
【0086】
一実施形態では、DNAベクターが、ファージパッケージングシグナル、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点、アクネ菌中でのDNAベクターの選択を可能にする第1の選択マーカー、及び目的の遺伝子を含む。
【0087】
一実施形態では、DNAベクターが、ファージパッケージングシグナル、アクネ菌内での複製を可能にするがアクネ菌レシーバ細胞内での複製は可能にしない複製起点、アクネ菌中でのDNAベクターの選択を可能にする第1の選択マーカー、及び目的の遺伝子を含む。
【0088】
好ましくは、目的の遺伝子が、アクネ菌に対して外来である、即ちアクネ菌中で天然には見られない遺伝子である。
【0089】
一実施形態では、DNAベクターが、配列番号66の配列と少なくとも80%、83%、85%、87%、90%、93%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一であるファージパッケージングシグナル;アクネ菌内での複製を可能にする複製起点;アクネ菌中でのDNAベクターの選択を可能にする選択マーカー;及び目的の遺伝子を含む。
【0090】
一実施形態では、DNAベクターが、配列番号66の配列と少なくとも80%、83%、85%、87%、90%、93%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一であるファージパッケージングシグナル;アクネ菌内での複製を可能にする複製起点;アクネ菌中でのDNAベクターの選択を可能にする選択マーカー;及び目的の遺伝子を含む。
【0091】
一実施形態では、DNAベクターが、配列番号66の配列と少なくとも80%、83%、85%、87%、90%、93%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一であるファージパッケージングシグナル;アクネ菌内での複製を可能にする複製起点;アクネ菌中でのDNAベクターの選択を可能にする選択マーカー;大腸菌(E. coli)である第1の細菌中での選択を可能にする選択マーカー;大腸菌である第1の細菌内での複製を可能にする複製起点;及び目的の遺伝子を含む。
【0092】
一実施形態では、エレクトロポレーション、プロトプラストのエレクトロポレーション、化学的形質転換、接合、自然形質転換能(natural competency)、又は形質導入を使用して、DNAベクターを、効率良くアクネ菌産生細胞内に導入して安定に複製できる。
【0093】
一実施形態では、物理的方法、例えば、アクネ菌細胞のエレクトロポレーション、又はアクネ菌プロトプラストのエレクトロポレーションを使用して、DNAベクターを、効率良くアクネ菌産生細胞内に形質転換して安定に複製できる。
【0094】
一実施形態では、ムタノリジン処理若しくはリゾチーム処理、ムタノリジン・リゾチーム処理、又はムタノリジン・リゾチーム・ビーズ破砕処理、に続く低張性媒体(hypotonique media)への再懸濁を使用して、アクネ菌プロトプラストを生成する。
【0095】
一実施形態では、アクネ菌プロトプラスト混合物を、DNAベクターと共に、又はDNAベクター+ガラスビーズと共に使用して、DNAベクターを、効率良くアクネ菌産生細胞内に形質転換して安定に複製できる。
【0096】
一実施形態では、アクネ菌内へのDNAベクターの送達が、形質導入による。一実施形態では、DNAベクターが、PAC7(典型的には配列番号68の配列);PAC1(典型的には配列番号69の配列);PAC9(典型的には配列番号70の配列);PAC2(典型的には配列番号71の配列);PAC10(典型的には配列番号72の配列);PAC22(典型的には配列番号73の配列);PAC13(典型的には配列番号74の配列);及びPAC263(典型的には配列番号75の配列)からなる群から選択される、アクネ菌ファージのパッケージングシグナルを含み、ファージ:PAC7(典型的には配列番号68の配列);PAC1(典型的には配列番号69の配列);PAC9(典型的には配列番号70の配列);PAC2(典型的には配列番号71の配列);PAC10(典型的には配列番号72の配列);PAC22(典型的には配列番号73の配列);PAC13(典型的には配列番号74の配列);及びPAC263(典型的には配列番号75の配列)からなる群から選択されるアクネ菌ファージのゲノムから発現するタンパク質内にパッケージングされ、アクネ菌内への、DNAベクターの形質導入を可能にする。
【0097】
一実施形態では、DNAベクターが、その配列が、前記のパッケージングシグナルのいずれかの配列と少なくとも80%、83%、85%、87%、90%、93%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一であるパッケージングシグナルを含む。
【0098】
一実施形態では、ファージパッケージングシグナルが、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、及び配列番号81からなる群から選択されるファージパッケージングシグナル配列と少なくとも80%、83%、85%、87%、90%、93%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一である配列を有する。
【0099】
一実施形態では、アクネ菌内へのDNAベクターの送達が、接合による。
【0100】
一実施形態では、DNAベクターが、oriT_pMRC01(典型的には配列番号1の配列);oriT_RSF1010(典型的には配列番号2の配列);oriT_pRS01(典型的には配列番号3の配列);oriT_pMV158(典型的には配列番号4の配列);oriT_pTF1(典型的には配列番号5の配列);oriT_pSC101(典型的には配列番号6の配列);oriT_pBTK445(典型的には配列番号7の配列);oriT_pBBR1(典型的には配列番号8の配列);oriT_R721(典型的には配列番号9の配列);oriT_pRmeGR4a(典型的には配列番号10の配列);oriT_ColE1(典型的には配列番号11の配列);oriT_pTiC58(典型的には配列番号12の配列);oriT_pMdT1(典型的には配列番号13の配列);oriT_R1(典型的には配列番号14の配列);oriT_Tn5520(典型的には配列番号15の配列);oriT_QKH54(典型的には配列番号16の配列);oriT_R64(典型的には配列番号17の配列);oriT_R751(典型的には配列番号18の配列);oriT_RP4(典型的には配列番号19の配列);oriT_pKL1(典型的には配列番号20の配列);oriT_RK2(典型的には配列番号21の配列);oriT_R1162(典型的には配列番号22の配列);oriT_Tn4555(典型的には配列番号23の配列);oriT_pHT(典型的には配列番号24の配列);oriT_Tn4399(典型的には配列番号25の配列);oriT_Tn916(典型的には配列番号26の配列);oriT_pST12(典型的には配列番号27の配列);oriT_pCU1(典型的には配列番号28の配列);oriT_pSU233(典型的には配列番号29の配列);oriT_F(典型的には配列番号30の配列);oriT_pMAB01(典型的には配列番号31の配列);oriT_R388(典型的には配列番号32の配列);oriT_pS7a(典型的には配列番号33の配列);oriT_pS7b(典型的には配列番号34の配列);oriT_R702(典型的には配列番号35の配列);oriT_pMUR274(典型的には配列番号36の配列);oriT_R100(典型的には配列番号37の配列);oriT_pVCR94deltaX(典型的には配列番号38の配列);oriT_R46(典型的には配列番号39の配列);oriT_pGO1(典型的には配列番号40の配列);及びoriT_pIP501(典型的には配列番号41の配列)からなる群から選択される伝達起点(origin of transfer)を含む。
【0101】
一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pMRC01(典型的には配列番号1の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_RSF1010(典型的には配列番号2の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pRS01(典型的には配列番号3の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pMV158(典型的には配列番号4の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pTF1(典型的には配列番号5の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pSC101(典型的には配列番号6の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pBTK445(典型的には配列番号7の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pBBR1(典型的には配列番号8の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R721(典型的には配列番号9の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pRmeGR4a(典型的には配列番号10の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_ColE1(典型的には配列番号11の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pTiC58(典型的には配列番号12の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pMdT1(典型的には配列番号13の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R1(典型的には配列番号14の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_Tn5520(典型的には配列番号15の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_QKH54(典型的には配列番号16の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R64(典型的には配列番号17の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R751(典型的には配列番号18の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_RP4(典型的には配列番号19の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pKL1(典型的には配列番号20の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_RK2(典型的には配列番号21の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R1162(典型的には配列番号22の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_Tn4555(典型的には配列番号23の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pHT(典型的には配列番号24の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_Tn4399(典型的には配列番号25の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_Tn916(典型的には配列番号26の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pST12(典型的には配列番号27の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pCU1(典型的には配列番号28の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pSU233(典型的には配列番号29の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_F(典型的には配列番号30の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pMAB01(典型的には配列番号31の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R388(典型的には配列番号32の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pS7a(典型的には配列番号33の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pS7b(典型的には配列番号34の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R702(典型的には配列番号35の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pMUR274(典型的には配列番号36の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R100(典型的には配列番号37の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pVCR94deltaX(典型的には配列番号38の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R46(典型的には配列番号39の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pGO1(典型的には配列番号40の配列)を含む。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pIP501(典型的には配列番号41の配列)を含む。
【0102】
一実施形態では、DNAベクターが、その配列が、前記の伝達起点(oriT)のいずれかの配列と少なくとも80%、83%、85%、87%、90%、93%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一であるoriTを含む。
【0103】
一実施形態では、供与菌、例えば、大腸菌が、pMRC01、RSF1010、pRS01、pMV158、pTF1、pSC101、pBTK445、pBBR1、R721、pRmeGR4a、ColE1、pTiC58、pMdT1、R1、Tn5520、QKH54、R64、R751、RP4、pKL1、RK2、R1162、Tn4555、pHT、Tn4399、Tn916、pST12、pCU1、pSU233、F、pMAB01、R388、pS7a、pS7b、R702、pMUR274、R100、pVCR94deltaX、R46、pGO1、及びpIP501からなる群から選択される、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又は組込み及び接合エレメント(integrative and conjugative element)(ICE)を運び、DNAベクターをアクネ菌レシピエント細胞内へと効率良く伝達するために使用される。一実施形態では、DNAベクターが、pMRC01;RSF1010;pRS01;pMV158;pTF1;pSC101;pBTK445;pBBR1;R721;pRmeGR4a;ColE1;pTiC58;pMdT1;R1;Tn5520;QKH54;R64;R751;RP4;pKL1;RK2;R1162;Tn4555;pHT;Tn4399;Tn916;pST12;pCU1;pSU233;F;pMAB01;R388;pS7a;pS7b;R702;pMUR274;R100;pVCR94deltaX;R46;pGO1、及びpIP501からなる群から選択される、接合プラスミド、接合トランスポゾン、並びに組込み及び接合エレメント(ICE)の伝達起点及び関連リラクサーゼ(associated relaxase)を含有する。
【0104】
好ましい一実施形態では、DNAベクターが、以下の、pMRC01;RSF1010;pRS01;pMV158;pTF1;pSC101;pBTK445;pBBR1;R721;pRmeGR4a;ColE1;pTiC58;pMdT1;R1;Tn5520;QKH54;R64;R751;RP4;pKL1;RK2;R1162;Tn4555;pHT;Tn4399;Tn916;pST12;pCU1;pSU233;F;pMAB01;R388;pS7a;pS7b;R702;pMUR274;R100;pVCR94deltaX;R46;pGO1、及びpIP501からなる群から選択される、接合プラスミド、接合トランスポゾン、並びに組込み及び接合エレメント(ICE)の伝達起点及びリラクサーゼを含む。
【0105】
好ましい一実施形態では、DNAベクターが、oriT_pMRC01(配列番号1);oriT_RSF1010(配列番号2);oriT_pRS01(配列番号3);oriT_pMV158(配列番号4);oriT_pTF1(配列番号5);oriT_pSC101(配列番号6);oriT_pBTK445(配列番号7);oriT_pBBR1(配列番号8);oriT_R721(配列番号9);oriT_pRmeGR4a(配列番号10);oriT_ColE1(配列番号11);oriT_pTiC58(配列番号12);oriT_pMdT1(配列番号13);oriT_R1(配列番号14);oriT_Tn5520(配列番号15);oriT_QKH54(配列番号16);oriT_R64(配列番号17);oriT_R751(配列番号18);oriT_RP4(配列番号19);oriT_pKL1(配列番号20);oriT_RK2(配列番号21);oriT_R1162(配列番号22);oriT_Tn4555(配列番号23);oriT_pHT(配列番号24);oriT_Tn4399(配列番号25);oriT_Tn916(配列番号26);oriT_pST12(配列番号27);oriT_pCU1(配列番号28);oriT_pSU233(配列番号29);oriT_F(配列番号30);oriT_pMAB01(配列番号31);oriT_R388(配列番号32);oriT_pS7a(配列番号33);oriT_pS7b(配列番号34);oriT_R702(配列番号35);oriT_pMUR274(配列番号36);oriT_R100(配列番号37);oriT_pVCR94deltaX(配列番号38);oriT_R46(配列番号39);oriT_pGO1(配列番号40)、及びoriT_pIP501(配列番号41)からなる群から選択される伝達起点を含む。
【0106】
一実施形態では、DNAベクターが、それらのICEのいずれかと少なくとも80%、83%、85%、87%、90%、93%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一である伝達起点(oriT)を含む。
【0107】
一実施形態では、本発明が、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点、アクネ菌内への接合を可能にするoriT、接合完了体(transconjugant)アクネ菌中での選択を可能にする選択マーカー、及び供与菌中での選択を可能にする選択マーカー、を含むDNAベクターを含む。他の実施形態では、本発明が、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点、及び前記で定義した、アクネ菌内への接合を可能にするoriT、を含むDNAベクターを含む。
【0108】
一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、R6K(典型的には配列番号42の配列);RK2(典型的には配列番号43の配列);pBBR1(典型的には配列番号44の配列);pRO1600(典型的には配列番号45の配列);RSF1010(典型的には配列番号46の配列);pAMβ1(典型的には配列番号47の配列);pLME106(典型的には配列番号48の配列);pTZC1(典型的には配列番号49の配列);pBC1(典型的には配列番号50の配列);pEP2(典型的には配列番号51の配列);pWVO1(典型的には配列番号52の配列);pAP1(典型的には配列番号53の配列);pWKS1(典型的には配列番号54の配列);pLME108(典型的には配列番号55の配列);pLS1(典型的には配列番号56の配列);pUB6060(典型的には配列番号57の配列);p545(典型的には配列番号58の配列);pJD4(典型的には配列番号59の配列);pIJ101(典型的には配列番号60の配列);pSN22(典型的には配列番号61の配列);pGP01(典型的には配列番号62の配列);pIP501(典型的には配列番号63の配列);pCU1(典型的には配列番号64の配列);及びpBAV1K-T5(典型的には配列番号65の配列)からなる群から選択される。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、R6K(典型的には配列番号42の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、RK2(典型的には配列番号43の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pBBR1(典型的には配列番号44の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pRO1600(典型的には配列番号45の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、RSF1010(典型的には配列番号46の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pAMβ1(典型的には配列番号47の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pLME106(典型的には配列番号48の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pTZC1(典型的には配列番号49の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pBC1(典型的には配列番号50の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pEP2(典型的には配列番号51の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pWVO1(典型的には配列番号52の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pAP1(典型的には配列番号53の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pWKS1(典型的には配列番号54の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pLME108(典型的には配列番号55の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pLS1(典型的には配列番号56の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pUB6060(典型的には配列番号57の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、p545(典型的には配列番号58の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pJD4(典型的には配列番号59の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pIJ101(典型的には配列番号60の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pSN22(典型的には配列番号61の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pGP01(典型的には配列番号62の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pIP501(典型的には配列番号63の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pCU1(典型的には配列番号64の配列)である。一実施形態では、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pBAV1K-T5(典型的には配列番号65の配列)である。
【0109】
一実施形態では、DNAベクターが、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点を含む。一実施形態では、DNAベクターが、R6K(配列番号42);RK2(配列番号43);pBBR1(配列番号44);pRO1600(配列番号45);RSF1010(配列番号46);pAMβ1(配列番号47);pLME106(配列番号48);pTZC1(配列番号49);pBC1(配列番号50);pEP2(配列番号51);pWVO1(配列番号52);pAP1(配列番号53);pWKS1(配列番号54);pLME108(配列番号55);pLS1(配列番号56);pUB6060(配列番号57);p545(配列番号58);pJD4(配列番号59);pIJ101(配列番号60);pSN22(配列番号61);pGP01(配列番号62);pIP501(配列番号63);pCU1(配列番号64);及びpBAV1K-T5(配列番号65)からなる群から選択される複製起点を含む。
【0110】
好ましくは、複製起点が、前記の複製起点のいずれかの配列と少なくとも80%、83%、85%、87%、90%、93%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一の配列を有する。
【0111】
様々な実施形態では、選択マーカーが、ermE、catA、hygB、ermX、tetW、erm(50)、及び他の高GC抗生物質耐性遺伝子から選択される。一実施形態では、選択マーカーがermEでない。一実施形態では、選択マーカーがcatAである。一実施形態では、選択マーカーがhygBである。
【0112】
一実施形態では、DNAベクターが更に、CRISPR-Casシステムを含む。典型的に、CRISPR-CasシステムはCRISPRアレイを含む。典型的に、CRISPR-CasシステムはRNAガイド(crRNA又はsgRNA)を含む。
【0113】
一実施形態では、CRISPR-Casシステムが、アクネ菌染色体座を標的とする。好ましくは、標的遺伝子座が、アクネ菌産生細胞中に存在しない。好ましくは、CRISPR-Casシステムに由来するCRISPRアレイが、染色体座を標的とする、1つ又は複数のcrRNAを発現する。
【0114】
一実施形態では、CRISPR-Casシステムが、複数のアクネ菌染色体座を標的とする。好ましくは、標的遺伝子座が、アクネ菌産生細胞中に存在しない。好ましくは、CRISPR-Casシステムに由来するCRISPRアレイが、染色体座を標的とする、1つ又は複数のcrRNAを発現する。
【0115】
一実施形態では、CRISPR-Casシステムが、アクネ菌プラスミド遺伝子座を標的とする。好ましくは、標的遺伝子座が、アクネ菌産生細胞中に存在しない。好ましくは、CRISPR-Casシステムに由来するCRISPRアレイが、プラスミド遺伝子座を標的とする、1つ又は複数のcrRNAを発現する。
【0116】
一実施形態では、CRISPR-Casシステムが、複数のアクネ菌プラスミド遺伝子座を標的とする。好ましくは、標的遺伝子座が、アクネ菌産生細胞中に存在しない。好ましくは、CRISPR-Casシステムに由来するCRISPRアレイが、プラスミド遺伝子座を標的とする、1つ又は複数のcrRNAを発現する。
【0117】
一実施形態では、CRISPR-Casシステムが、アクネ菌産生細胞中で発現されない。好ましくは、CRISPR-Casシステムが、アクネ菌産生細胞中で抑制されている。
【0118】
一実施形態では、CRISPR-Casシステムが、宿主疾患に関連する炎症誘発性配列を標的とする。
【0119】
一実施形態では、CRISPR-Casシステムが、尋常性ざ瘡に関連する炎症誘発性配列を標的とする。
【0120】
一実施形態では、DNAベクターが、相同組換えに適した鋳型を含み、CRISPR-Casシステムが、DNAベクターそれ自体を標的とする。
【0121】
一実施形態では、DNAベクターが、アクネ菌ファージ内での相同組換えに適した鋳型を含む。
【0122】
一実施形態では、DNAベクターが、アクネ菌染色体内での相同組換えに適した鋳型を含む。
【0123】
一実施形態では、DNAベクターが、アクネ菌内在性プラスミド内での相同組換えに適した鋳型を含む。
【0124】
一実施形態では、DNAベクターが、相同組換えに適した鋳型、及び該鋳型領域の外部でDNAベクターそれ自体を標的とするCRISPR-Casシステムを含む。
【0125】
一実施形態では、DNAベクターが、相同組換えに適した鋳型、及び該鋳型領域の外部でDNAベクターそれ自体を標的とするCRISPR-Casシステムを含み、但し、該CRISPR-Casシステムに由来するRNAガイド(crRNA又はsgRNA)は、DNA標的と完全には一致しない。
【0126】
一実施形態では、DNAベクターが、インテグラーゼ遺伝子発現カセット及び部位特異的組換え部位を含み、染色体内部でのDNAベクターの組込みを可能にする。
【0127】
一実施形態では、DNAベクターが、塩基エディタ遺伝子発現カセット、及び1つ又は複数のcrRNA又はsgRNAを含む。
【0128】
一実施形態では、遺伝子の転写又は翻訳に関与する1つ又は複数のヌクレオチドの編集により、前記遺伝子の発現を不活性化するために、塩基エディタを使用する。特に、塩基エディタは、プロモーター、RBS、又は開始コドンの1つ又は複数のヌクレオチドを標的とする。
【0129】
一実施形態では、未熟終止コドンを導入するために塩基エディタを使用する。
【0130】
一実施形態では、1つ又は複数の希少コドンを導入するために塩基エディタを使用する。
【0131】
他の実施形態では、遺伝子の転写又は翻訳に関与する1つ又は複数のヌクレオチドの編集により、前記遺伝子の発現を調節するために、塩基エディタを使用する。特に、塩基エディタは、プロモーター、RBS、又は開始コドンの1つ又は複数のヌクレオチドを標的とし、遺伝子発現の上昇又は低下をもたらす。
【0132】
他の実施形態では、遺伝子又は経路の、不活性化、活性の低下又は上昇をもたらす変異を元に戻すために、塩基エディタを使用する。
【0133】
他の実施形態では、病原性の上昇をもたらす変異を元に戻すために、塩基エディタを使用する。
【0134】
一実施形態では、遺伝子の制御に関与する1つ又は複数のヌクレオチド、例えば、オペレータ配列、転写因子結合部位、リボスイッチ、RNAse認識部位、プロテアーゼ切断部位、メチル化部位、又は翻訳後修飾部位(リン酸化、グリコシル化、アセチル化、プピル化(pupylation)...)のヌクレオチドの編集により、その遺伝子の制御を改変するために、塩基エディタを使用する。
【0135】
一実施形態では、DNAベクターが、プライムエディタ遺伝子発現カセット、及び1つ又は複数のpegRNAを含む。
【0136】
一実施形態では、1つ又は複数の未熟終止コドンを導入するためにプライムエディタを使用する。
【0137】
一実施形態では、1つ又は複数の希少コドンを導入するためにプライムエディタを使用する。
【0138】
一実施形態では、ヌクレオチドを導入する又は欠失させるためにプライムエディタを使用して、リーディングフレーム中でフレームシフトを誘導する。
【0139】
他の実施形態では、遺伝子の転写又は翻訳に関与する1つ又は複数のヌクレオチドの置換(replacing)、欠失、又は挿入により、前記遺伝子の発現を調節するために、プライムエディタを使用する。特に、プライムエディタは、プロモーター、RBS、又は開始コドン中の1つ又は複数のヌクレオチドを置換、欠失又は挿入し、遺伝子発現の上昇又は低下をもたらす。
【0140】
他の実施形態では、遺伝子又は経路の、不活性化又は活性の低下をもたらす変異を元に戻すために、プライムエディタを使用する。
【0141】
他の実施形態では、病原性の上昇をもたらす変異を元に戻すために、プライムエディタを使用する。
【0142】
一実施形態では、ベクターが、大腸菌レプリコン及び大腸菌耐性マーカーを含むプラスミドであり、アクネ菌からの該プラスミドの抽出、並びに大腸菌での形質転換及び複製を可能にする。
【0143】
一実施形態では、ベクターが、大腸菌レプリコン及び大腸菌耐性マーカーを含むプラスミドであり、大腸菌からの該プラスミドの抽出、並びにアクネ菌での形質転換及び複製を可能にする。
【0144】
一実施形態では、ベクターが、2つの複製起点を含み、1つはアクネ菌又はアクネ菌産生細胞内でのみ複製を可能にし、第2の複製起点は、他の細菌内での複製を可能にする。
【0145】
一実施形態では、相同組換えに適した鋳型DNAを含むベクターが、組換え率を高める遺伝子の発現を可能にする。
【0146】
一実施形態では、相同組換えに適した鋳型が、組換え点の上流及び下流にホモロジーアームを含有する。そのホモロジーアームは、サイズが少なくとも50bp、100bp、500bp、又は少なくとも1000bpであり得る。
【0147】
一実施形態では、DNAベクターが含む目的の遺伝子が、アクネ菌に対して外来である導入遺伝子であり得る。導入遺伝子は、
- ひとたび特異的基質を添加すると蛍光アクネ菌細胞をもたらす蛍光タンパク質(例えばUnaG)をコードするDNA;
- アクネ菌コロニーによる、発色性化合物の産生をもたらす酵素レポーター(例えばLacZ)をコードするDNA;
- ヒトタンパク質(例えばインターロイキン)をコードするDNA;
- 抗原(例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、自己抗原、アレルゲン若しくはグラフト特異的抗原)をコードするDNA;
- CRISPR-Casシステム;
- プライム編集システム;又は
- 塩基エディタシステム
を含むがそれらに限定されない。
【0148】
特定の一実施形態では、DNAベクターによりコードされる目的の遺伝子が、抗原をコードするDNA、特に、以下に定義する、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、自己抗原、アレルゲン及びグラフト特異的抗原からなる群から選択される抗原をコードするDNAである。
【0149】
DNAベクターを含むアクネ菌及び操作型アクネ菌株
本発明は、本発明のDNAベクターのいずれかを含むアクネ菌を含む。本発明は更に、本発明の方法のいずれかにより製造されるアクネ菌を含む。したがって、本発明は、ファージ由来粒子による、本発明のDNAベクターのいずれかの形質導入に従って改変されたアクネ菌を含み、DNAベクターを維持するか、後にDNAベクターがアクネ菌から除去(即ち、キュアリング)されるかは問わない。
【0150】
したがって、本発明は、本発明のDNAベクターを含有するアクネ菌産生細胞からファージ由来粒子を産生する工程;該ファージ由来粒子をアクネ菌レシーバ細胞と接触させ、アクネ菌レシーバ細胞へのDNAベクターの形質導入、並びにベクターが運ぶ目的の遺伝子(例えば、CRISPR-Casシステム)及び/又はアクネ菌染色体に挿入された外来遺伝子による、アクネ菌レシーバ細胞の改変をもたらす工程;該改変を選択する工程;並びにベクターをアクネ菌からキュアリングする工程を含む方法によって製造されたアクネ菌を含む。
【0151】
本発明は、本発明のベクターを運ぶファージ又はファージ由来粒子により形質導入されるCRISPR-Casシステムにより改変された操作型アクネ菌を含む。
【0152】
本発明は、DNAベクターの形質導入、及び続く、アクネ菌染色体への外来遺伝子の挿入により改変された操作型アクネ菌を含む。
【0153】
本発明は、DNAベクターの形質導入、及び続く、アクネ菌染色体又はアクネ菌内在性プラスミドへの、内在性遺伝子の欠失又は変異により改変された操作型アクネ菌を含む。
【0154】
本発明は、本発明のDNAベクターの形質導入により製造されたアクネ菌を含む。
【0155】
本発明は、プラスミドの送達により、特に接合により改変された操作型アクネ菌を含む。特定の一実施形態では、前記プラスミドが、CRISPR-Casシステムを含む。他の特定の実施形態では、前記プラスミドが、外来遺伝子を含む。他の特定の実施形態では、前記プラスミドが、アクネ菌染色体への外来遺伝子の挿入を可能にする。他の特定の実施形態では、前記プラスミドが、アクネ菌染色体又はアクネ菌内在性プラスミドへの、内在性遺伝子の欠失又は変異を可能にする。特定の一実施形態では、前記プラスミドが、前記で定義した、アクネ菌内での複製を可能にする複製起点、及び/又は前記で定義した伝達起点を含む。
【0156】
以前はプロピオニバクテリウム・アクネスと呼ばれたキューティバクテリウム・アクネスは、recA及びtly配列に基づいて、歴史的に3つの主要ファイロタイプ:IA、IB、II、及びIIIに分類された。それらのファイロタイプが更に、異なる多座位配列タイピング(MLST)スキームを使用して、IA1、IA2、IB、II、及びIIIに細分された。ごく最近になって、Fitz-Gibbon等(Fitz-Gibbon, S.等(2013)J Invest Dermatol 133、2152~2160頁(非特許文献3))が、16S rRNA遺伝子の配列多様性(リボタイピング)に基づく新分類、並びにファイロタイプの詳細(refinded)分類:IA-1、IA-2、IB-1、IB-2、IB-3、IC、II、IIIを導入した。本開示は、この分類に関するが、この分類と他の分類との間の一致は当業者にとって公知であり、以下の概説から得られ得る(Dreno, B.等(2018). Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology 32、5~14頁(非特許文献4))。したがって、特定の一実施形態では、アクネ菌が、ファイロタイプIA-1、IA-2、IB-1、IB-2、IB-3、IC、II、及びIIIからなる群から選択されるファイロタイプ由来であり得る。
【0157】
ざ瘡被験者及び健康被験者から単離した株の全ゲノム配列の比較により、Fitz-Gibbonと共同研究者は、先行研究と一致して、ざ瘡関連株(IA-2及びIB-1)並びに健康関連(healthy-associated)株(II)を同定できた。興味深いことに、特定座位(遺伝子座1、遺伝子座2、及び遺伝子座3)が、ざ瘡関連株中には存在するが、中立株(neutral strain)及び健康株には不在であることが見出された。同様の遺伝子座が、続くメタゲノム解析において見出され、それらの遺伝子座の存在と尋常性ざ瘡との間の関連を確証する(Barnard, E.等(2016)Scientific Reports 6、srep39491(非特許文献5))。
【0158】
免疫応答を誘導する、特定株ファイロタイプの能力が、最近調査された(Yu等(2016)Journal of Investigative Dermatology 136:2221~2228頁(非特許文献6))。Yu等は、異なるアクネ菌ファイロタイプが、末梢血単核球(PBMC)とインキュベートされると、異なるサイトカインプロファイルを誘導することを実証した。特に、Yu等は、ざ瘡関連ファイロタイプIA-2 p+(即ち、ざ瘡と関連する大型プラスミドを含む)、IB-1、及びICは、高レベルの炎症性IFN-γ及びIL-17を誘導するが、低レベルのIL-10を誘導することを示し、それらの特定ファイロタイプは、Th1応答及びTh17応答の両方ともを誘導し得ることが示唆された。更に、ファイロタイプIB-3、II、及びIIIは、より低レベルのIL-17(及びファイロタイプIIIではIFN-γ)を誘導するが、より高レベルのIL-10を誘導することを示し、Treg応答の誘導が示唆された。更に、ファイロタイプIA-1、IA-2 p-(即ち、ざ瘡と関連する大型プラスミドを含まない)、及びIB-2は、より低レベルのIFN-γ及びIL-10、並びにより高レベルのIL-17を誘導し、主にTh17応答の誘導が示唆された。
【0159】
したがって、特定適応症に対して本発明の操作型アクネ菌を使用する場合に望まれる特定の免疫応答に応じて、所定のアクネ菌ファイロタイプ又は株の使用が有利であり得る。したがって、特定の一実施形態では、アクネ菌が、ファイロタイプIA-2 p+、IB-1、及びICからなる群から選択されるファイロタイプ由来である。他の実施形態では、アクネ菌が、ファイロタイプIA-1、IA-2 p-、及びIB-2からなる群から選択されるファイロタイプ由来である。更に他の実施形態では、アクネ菌が、ファイロタイプIB-3、II、及びIIIからなる群から選択されるファイロタイプ由来である。
【0160】
更に、先行研究は、表皮ブドウ球菌において、同一種内の異なる株を用いて異なるT細胞応答を、前記株を操作することにより誘導することが可能であることを示した(Chen等(2019)「Decoding commensal-host communication through genetic engineering of Staphylococcus epidermidis」bioRxiv https://doi.org/10.1101/664656(非特許文献7))。
【0161】
したがって、特定の一実施形態では、アクネ菌が、所定のT細胞応答を誘導する株であるか、又は誘導するように操作された株である。特定の一実施形態では、特に、アクネ菌細胞をがんの防止及び/又は処置において使用することが意図される場合、前記アクネ菌が、上昇したレベルのIFN-γ及び/又はIL-17を誘導する株であるか、又は誘導するように操作された株である。特定の一実施形態では、特に、アクネ菌細胞を感染の防止及び/又は処置において使用することが意図される場合、前記アクネ菌が、上昇したレベルのIFN-γ及び/又はIL-17を誘導する株であるか、又は誘導するように操作された株である。特定の一実施形態では、特に、アクネ菌細胞を自己免疫疾患の防止及び/又は処置において使用することが意図される場合、前記アクネ菌が、上昇したレベルのIL-10を誘導する株であるか、又は誘導するように操作された株である。特定の一実施形態では、特に、アクネ菌細胞を、アレルギー、例えば喘息の防止及び/又は処置において使用することが意図される場合、前記アクネ菌が、上昇したレベルのIFN-g及び/又はIL-10を誘導する株であるか、又は誘導するように操作された株である。特定の一実施形態では、特に、アクネ菌細胞を移植片拒絶の防止及び/又は処置において使用することが意図される場合、前記アクネ菌が、上昇したレベルのIL-10を誘導する株であるか、又は誘導するように操作された株である。
【0162】
目的の分子の発現及びアクネ菌宿主相互作用の調節に向けて、本発明の組換え自己複製DNAベクターを含む(又はプラスミド、特に、前記で定義した接合プラスミドを含む)アクネ菌を生成できる。目的の分子は、アクネ菌中の自己複製DNAベクター(若しくはプラスミド、特に接合プラスミド)上で運ばれ得るか、又は自己複製DNAベクター(若しくはプラスミド、特に、前記で定義した接合プラスミド)の作用を介して、アクネ菌の染色体に挿入され得る。
【0163】
一実施形態では、DNAベクターを、アクネ菌染色体操作に使用する。
【0164】
一実施形態では、DNAベクターを、アクネ菌プラスミド操作に使用する。
【0165】
一実施形態では、DNAベクターを、アクネ菌ファージ操作に使用する。
【0166】
一実施形態では、DNAベクター(又はプラスミド、特に、前記で定義した接合プラスミド)を、目的の分子の発現及びアクネ菌宿主相互作用の調節に使用する。一実施形態では、DNAベクター(又はプラスミド、特に、前記で定義した接合プラスミド)を、アクネ菌中での導入遺伝子の発現に使用する。導入遺伝子は、組換え自律複製DNAベクター(又はプラスミド、特に接合プラスミド)内へと、所定のターミネータが続く所定のプロモーター(構成的又は誘導性)の制御下にクローニングされ得る。このベクターの、アクネ菌内への伝達は、導入遺伝子の発現を可能にする。導入遺伝子は、例えば、CRISPR/Casシステムであり得るか、又はヒトタンパク質、例えばインターロイキンをコードし得る。一実施形態では、DNAベクター(又はプラスミド、特に接合プラスミド)が、シングルプロモーターの制御下、又は異なるプロモーターの制御下に複数の導入遺伝子をコードする。該プロモーターは、内在性又は外来、誘導性又は構成的であり得る。
【0167】
一実施形態では、DNAベクター(又はプラスミド、特に接合プラスミド)を、アクネ菌ゲノムの改変に使用する。一実施形態では、アクネ菌内へのベクター(又はプラスミド、特に接合プラスミド)の伝達が、アクネ菌ゲノム(プラスミド又は染色体)を特異的部位で切断するCRISPR/Casシステムの発現を可能にし、アクネ菌ゲノムの改変をもたらす。一実施形態では、ベクター(又はプラスミド、特に接合プラスミド)が更に、目的の遺伝子、及び切断部位とのホモロジーを含み、アクネ菌ゲノム内への、該目的の遺伝子の組込みを容易にする。
【0168】
アクネ菌株へのDNAベクターの送達
一実施形態では、本発明の任意のDNAベクターの、アクネ菌産生細胞内への送達を、本発明の任意のDNAベクターとアクネ菌を接触させることにより行う。
【0169】
一実施形態では、本発明の任意のDNAベクターの、アクネ菌産生細胞内への送達を、アクネ菌細胞内へのトランスフェクション(例えばエレクトロポレーション)により行い、アクネ菌細胞内でDNAベクターは安定に複製される。一実施形態では、トランスフェクトされたDNAベクターを、dam(-)大腸菌細胞、例えばET12567から精製し、24℃でコンピテント状態にしたアクネ菌細胞内へと電気穿孔する。
【0170】
一実施形態では、本発明の任意のDNAベクターの、アクネ菌産生細胞内への送達を、アクネ菌プロトプラスト内へのトランスフェクション(例えばエレクトロポレーション)により行う。一実施形態では、ムタノリジン処理若しくはリゾチーム処理、ムタノリジン・リゾチーム処理、又はムタノリジン・リゾチーム・ビーズ破砕処理、に続く低張性媒体への再懸濁を使用して、アクネ菌プロトプラストを生成する。
【0171】
一実施形態では、本発明の任意のDNAベクターの、アクネ菌産生細胞内への送達を、DNAベクターとアクネ菌プロトプラストを混合することにより行う。一実施形態では、DNAベクターと一緒にガラスビーズを添加し、アクネ菌プロトプラスト内にDNAを導入するために、ビーズ破砕を行う。
【0172】
一実施形態では、本発明のDNAベクターの、アクネ菌内への送達が、形質導入による。一実施形態では、DNAベクターが、ファージ:PAC7(典型的には配列番号68の配列);PAC1(典型的には配列番号69の配列);PAC9(典型的には配列番号70の配列);PAC2(典型的には配列番号71の配列);PAC10(典型的には配列番号72の配列);PAC22(典型的には配列番号73の配列);PAC13(典型的には配列番号74の配列)、及びPAC263(典型的には配列番号75の配列)からなる群から選択されるアクネ菌ファージのパッケージングシグナルを含み、ファージPAC7(典型的には配列番号68の配列);PAC1(典型的には配列番号69の配列);PAC9(典型的には配列番号70の配列);PAC2(典型的には配列番号71の配列);PAC10(典型的には配列番号72の配列);PAC22(典型的には配列番号73の配列);PAC13(典型的には配列番号74の配列)、及びPAC263(典型的には配列番号75の配列)からなる群から選択されるアクネ菌ファージのゲノムから発現するタンパク質内にパッケージングされ、アクネ菌内への、DNAベクターの形質導入を可能にする。
【0173】
一実施形態では、本発明の任意のDNAベクターの、アクネ菌産生細胞内への送達が、接合による。一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点を含む。一実施形態では、DNAベクターを安定に複製するアクネ菌レシピエント細胞内へと、DNAベクターを効率良く伝達するために、供与菌、例えば大腸菌を使用する。一実施形態では、DNAベクターが、oriT_pMRC01(典型的には配列番号1の配列);oriT_RSF1010(典型的には配列番号2の配列);oriT_pRS01(典型的には配列番号3の配列);oriT_pMV158(典型的には配列番号4の配列);oriT_pTF1(典型的には配列番号5の配列);oriT_pSC101(典型的には配列番号6の配列);oriT_pBTK445(典型的には配列番号7の配列);oriT_pBBR1(典型的には配列番号8の配列);oriT_R721(典型的には配列番号9の配列);oriT_pRmeGR4a(典型的には配列番号10の配列);oriT_ColE1(典型的には配列番号11の配列);oriT_pTiC58(典型的には配列番号12の配列);oriT_pMdT1(典型的には配列番号13の配列);oriT_R1(的には配列番号14の配列);oriT_Tn5520(典型的には配列番号15の配列);oriT_QKH54(典型的には配列番号16の配列);oriT_R64(典型的には配列番号17の配列);oriT_R751(典型的には配列番号18の配列);oriT_RP4(典型的には配列番号19の配列);oriT_pKL1(典型的には配列番号20の配列);oriT_RK2(典型的には配列番号21の配列);oriT_R1162(典型的には配列番号22の配列);oriT_Tn4555(典型的には配列番号23の配列);oriT_pHT(典型的には配列番号24の配列);oriT_Tn4399(典型的には配列番号25の配列);oriT_Tn916(典型的には配列番号26の配列);oriT_pST12(典型的には配列番号27の配列);oriT_pCU1(典型的には配列番号28の配列);oriT_pSU233(典型的には配列番号29の配列);oriT_F(典型的には配列番号30の配列);oriT_pMAB01(典型的には配列番号31の配列);oriT_R388(典型的には配列番号32の配列);oriT_pS7a(典型的には配列番号33の配列);oriT_pS7b(典型的には配列番号34の配列);oriT_R702(典型的には配列番号35の配列);oriT_pMUR274(典型的には配列番号36の配列);oriT_R100(典型的には配列番号37の配列);oriT_pVCR94deltaX(典型的には配列番号38の配列);oriT_R46(典型的には配列番号39の配列);oriT_pGO1(典型的には配列番号40の配列)、及びoriT_pIP501(典型的には配列番号41の配列)からなる群から選択される伝達起点を含む。一実施形態では、供与菌、例えば、大腸菌が、pMRC01;RSF1010;pRS01;pMV158;pTF1;pSC101;pBTK445;pBBR1;R721;pRmeGR4a;ColE1;pTiC58;pMdT1;R1;Tn5520;QKH54;R64;R751;RP4;pKL1;RK2;R1162;Tn4555;pHT;Tn4399;Tn916;pST12;pCU1;pSU233;F;pMAB01;R388;pS7a;pS7b;R702;pMUR274;R100;pVCR94deltaX;R46;pGO1、及びpIP501からなる群から選択される、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又は組込み及び接合エレメント(ICE)を有し、DNAベクターをアクネ菌レシピエント細胞内に効率良く伝達するために使用される。一実施形態では、DNAベクターが、pMRC01;RSF1010;pRS01;pMV158;pTF1;pSC101;pBTK445;pBBR1;R721;pRmeGR4a;ColE1;pTiC58;pMdT1;R1;Tn5520;QKH54;R64;R751;RP4;pKL1;RK2;R1162;Tn4555;pHT;Tn4399;Tn916;pST12;pCU1;pSU233;F;pMAB01;R388;pS7a;pS7b;R702;pMUR274;R100;pVCR94deltaX;R46;pGO1、及びpIP501からなる群から選択される、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又は組込み及び接合エレメント(ICE)の伝達起点及び関連リラクサーゼを含有する。
【0174】
好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pMRC01(典型的には配列番号1の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_RSF1010(典型的には配列番号2の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pRS01(典型的には配列番号3の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pMV158(典型的には配列番号4の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pTF1(典型的には配列番号5の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pSC101(典型的には配列番号6の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pBTK445(典型的には配列番号7の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pBBR1(典型的には配列番号8の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R721(典型的には配列番号9の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pRmeGR4a(典型的には配列番号10の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_ColE1(典型的には配列番号11の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pTiC58(典型的には配列番号12の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pMdT1(典型的には配列番号13の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R1(典型的には配列番号14の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_Tn5520(典型的には配列番号15の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_QKH54(典型的には配列番号16の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R64(典型的には配列番号17の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R751(典型的には配列番号18の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_RP4(典型的には配列番号19の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pKL1(典型的には配列番号20の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_RK2(典型的には配列番号21の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R1162(典型的には配列番号22の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_Tn4555(典型的には配列番号23の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pHT(典型的には配列番号24の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_Tn4399(典型的には配列番号25の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_Tn916(典型的には配列番号26の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pST12(典型的には配列番号27の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pCU1(典型的には配列番号28の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pSU233(典型的には配列番号29の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_F(典型的には配列番号30の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pMAB01(典型的には配列番号31の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R388(典型的には配列番号32の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pS7a(典型的には配列番号33の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pS7b(典型的には配列番号34の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R702(典型的には配列番号35の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pMUR274(典型的には配列番号36の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R100(典型的には配列番号37の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pVCR94deltaX(典型的には配列番号38の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_R46(典型的には配列番号39の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pGO1(典型的には配列番号40の配列)を含む。好ましい一実施形態では、DNAベクターが、伝達起点oriT_pIP501(典型的には配列番号41の配列)を含む。
【0175】
一実施形態では、供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又は組込み及び接合エレメント(ICE)を運ぶ、大腸菌(エシェリキア・コリ(Escherichia coli))、緑膿菌(シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa))、乳酸菌(ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis))、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、乳酸桿菌(ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum))、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、プロピオン酸菌(プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii))、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、表皮ブドウ球菌(スタフィロコッカス・エピデルミディス(staphylococcus epidermidis))、黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス・アウレウス(staphylococcus aureus))、キューティバクテリウム・グラニュローサム、キューティバクテリウム・フメルシ、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)及び枯草菌(バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis))からなる群から選択される。
【0176】
一実施形態では、可動性DNAベクター及び接合機構(ICE、プラスミド、接合トランスポゾン)を含有する供与菌、例えば、大腸菌を高密度で増殖させて、接合を行う。遠心分離によりドナー細胞をペレットにし、洗浄して、可動性DNAベクター及び接合DNAベクターを維持するために増殖中に添加した抗生物質を除去する。次いでドナー細胞を、アクネ菌細胞の存在下に混合する。ドナー細胞-アクネ菌混合物を、ブルセラ寒天プレート上にスポットして、37℃の嫌気性条件下で接合させる。接合後、接合プレートから細胞を収穫し、BHIブロスに再懸濁し、
- ドナー細胞を殺滅するがアクネ菌は殺滅しない化合物、又は
- 可動性DNAベクターを選択する抗生物質
を補足したブルセラ寒天培地上にプレーティングする。
【0177】
数日のインキュベーション後、適切なセレクションを補足したブルセラ寒天プレート上にアクネ菌コロニーをストリークし、特異的PCRにより、接合したプラスミドの存在を確認する。アクネ菌の性質(identity)、並びにドナー細胞の不在を、同じくPCR解析により確認する。
【0178】
一実施形態では、以下のプロトコルに従って接合を行う。可動性DNAベクター及び接合機構(ICE、プラスミド、接合トランスポゾン)を含有する大腸菌ドナー細胞の一晩培養2mLを、LBブロス中で増殖させて、6,000×gで1分間、ペレットにする。上清を捨て、ペレットを滅菌済み(pre-sterilized)LB培地500μLで洗浄し、同じ条件で再度、遠心分離する。次いで、ペレットを、指数増殖中(OD600=0.5)の、10×濃縮したアクネ受容菌(C. acnes receptor)BHI培養200μLに再懸濁する。大腸菌-アクネ菌混合物を、ブルセラ寒天プレート上にスポットして(50μL/スポット)、37℃の嫌気性条件下で24時間接合させる。その後、接合プレートから細胞を収穫し、BHIブロス300μL中に再懸濁し、可動性DNAベクター中に存在する選択マーカーに依存して50μg/mLのポリミキシンB及び5μg/mLのエリスロマイシン又は3.5μg/mLのクロラムフェニコールを補足したブルセラ寒天培地上にプレーティングする。7日後、セレクションの存在下に増殖したアクネ菌細胞を、適切なセレクションを補足したブルセラ寒天プレート上にストリークし、特異的PCRにより、接合したプラスミドの存在を確認する。アクネ菌の性質、並びに大腸菌ドナー株の不在を、同じくPCR解析により確認する。
【0179】
内在性アクネ菌プラスミドを改変する方法
天然に存在するアクネ菌プラスミドが記載されており21、22、その一部は、接合により、一方のアクネ菌から他方のアクネ菌へと伝達され得る20。そのようなプラスミドを改変できることは、尋常性ざ瘡におけるその効果、特に、炎症誘発性の役割を研究するため、又はアクネ菌の更なる遺伝子操作にそれらのプラスミドを使用するために興味深い。本発明者らは、アクネ菌プラスミドを改変する方法を開発した。
【0180】
一実施形態では、本方法が、第1の工程で、
- 前記で定義した、アクネ菌用の選択マーカー、
- 前記で定義した、アクネ菌用の複製起点、
- 前記で定義したファージパッケージングシグナル、及び
- アクネ菌内在性プラスミド内での相同組換えに適した鋳型
を含む複製ベクターを、アクネ菌内に導入する工程を含む。
【0181】
一実施形態では、本方法が、第1の工程で、
- 前記で定義した、アクネ菌用の選択マーカー、
- 前記で定義した、アクネ菌用の複製起点、
- 前記で定義したファージパッケージングシグナル、及び
- CRISPR-Casシステム
- アクネ菌内在性プラスミドとの相同組換えに適した鋳型
を含む複製ベクターを、アクネ菌内に導入する工程を含む。
【0182】
導入は、エレクトロポレーション、プロトプラストのエレクトロポレーション、接合、化学的形質転換、又は形質導入により達成され得る。次いで、アクネ菌組換え体を、好ましくは、抗生物質の存在下に増殖させる。
【0183】
次いで、DNAベクターを運ぶファージ由来粒子を産生するために、組換え体に、典型的にはアクネ菌ファージを感染させる。
【0184】
次いで、ファージ由来粒子を、典型的には、内在性プラスミド、例えばpIMPLE-HL096PA1を含有するアクネ菌レシーバ細胞と混合する。次いで、アクネ菌形質導入体を、典型的には、適切な抗生物質上で選択する。
【0185】
第2の工程において、相同組換えイベントが起こる可能性を高めるために、アクネ菌形質導入体を、抗生物質Aの存在下に高密度へと増殖させる。相同組換えは、典型的に、選択マーカーの導入をもたらし、抗生物質Bに対する耐性を与える。高密度培養(dense culture)では、典型的に、野生型内在性プラスミドと耐性マーカーを運ぶ組換え内在性プラスミドとを運ぶアクネ菌株が存在する。次いで、高密度培養を、好ましくは洗浄し、典型的には、第3の抗生物質Cに対して耐性であるレシーバアクネ菌株の存在下に置く。抗生物質C及びBによる、接合完了体の選択は、典型的に、組換えプラスミドを有するレシーバ細胞の選択をもたらす。
【0186】
本発明の方法が可能にする他の改変は、プラスミド上での大腸菌レプリコン及び大腸菌耐性マーカーの挿入を含み、アクネ菌からのプラスミドの抽出、並びに大腸菌での形質転換及び複製を可能にする。
【0187】
更に、相同組換えに適した鋳型DNAを運ぶプラスミドが、好ましくは、組換え率を高める遺伝子の発現を可能にする。
【0188】
相同組換えに適した鋳型は、典型的に、組換え点上流及び下流にホモロジーアームを含有する。それらのホモロジーアームは、好ましくは、50bp長、100bp長、500bp長、1000bp長以上である。
【0189】
アクネ菌ゲノム操作、及び操作型アクネ菌株
本発明は、アクネ菌ゲノム操作の方法、及び本発明の方法のいずれかにより操作された操作型アクネ菌株を含む。「操作型株」は、本発明の方法のいずれかにより得られた、天然に見出されるか、又は見出されないかのいずれかの変化を含有する株である。例えば、操作型アクネ菌株は、本発明のベクター又はDNAのいずれかを含み得る。
【0190】
本発明は、接合により、アクネ菌株内へと目的のDNAを送達する方法を含む。本発明は更に、ファージ由来粒子を介して、アクネ菌株内へと目的のDNAを送達する方法を含む。本発明は、複製ベクター法及び非複製ベクター法を用いて、アクネ菌染色体を操作する方法を含む。
【0191】
一実施形態では、アクネ菌内へのDNAベクターの送達が、形質導入による。一実施形態では、DNAベクターが、アクネ菌ファージに由来するファージパッケージングシグナル(cos)を含む。一実施形態では、DNAベクターを含有するファージ由来粒子が、生成され得、アクネ菌細胞内へとDNAベクターが形質導入されることを可能にする。
【0192】
一実施形態では、本発明が、1つ又は2つのホモロジーアームを有する少なくとも1つの組換え用鋳型を含むベクターを使用した、複製ベクター法及び非複製ベクター法を含む。
【0193】
アクネ菌ゲノムを操作するために、本発明者らは、複製ベクター及び非複製ベクターを使用する方法を開発した。
【0194】
非複製ベクター法
一実施形態では、非複製ベクター法が、少なくとも
- 前記で定義したファージパッケージングシグナル;
- 前記で定義した、アクネ菌用の選択マーカー;
- 1つ又は2つのホモロジーアームを有する組換え用鋳型;
- キューティバクテリウム・アクネス産生細胞内でのみ複製を可能にする複製起点;及び
- 場合により、対抗選択マーカー、例えばSacB
を含むベクターを使用する。
【0195】
非複製ベクター法は、アクネ菌産生細胞内でのみ複製するが、他のアクネ菌細胞内では複製しないアクネ菌レプリコンを運ぶベクターを使用する。したがって、そのようなベクターは、アクネ菌産生細胞内で複製可能であり、ファージゲノムと接触するとファージカプシド内にパッケージングされ得、ファージ由来粒子をもたらし、且つ該ファージ由来粒子により、アクネ菌レシーバ細胞内へと形質導入され得、そこでは複製しない。
【0196】
本方法は、ゲノム内部での相同DNA組換えに適した鋳型を含有するプラスミドを、アクネ菌産生細胞内に導入する工程を含む。該鋳型は、相同組換えをもたらす1つ(
図4A)又は2つの相同領域(
図4B)を含有し得る。
【0197】
一実施形態では、本方法が、アクネ菌産生細胞中の染色体内部にはその相同DNAが存在しない、染色体内部での相同DNA組換えに適した鋳型、アクネ菌ファージに由来するファージパッケージングシグナル(cos)、前記で定義した、アクネ菌用の選択マーカー、及びアクネ菌レシーバ細胞内では複製しない、アクネ菌産生細胞用の複製起点、を含有するプラスミドを運ぶアクネ菌産生細胞を含む。該鋳型は、相同組換えをもたらす1つ(
図4A)又は2つの相同領域(
図4B)を含有し得る。該産生細胞は、典型的に、アクネ菌ファージによる感染を受け、ホモロジーアームを有するDNAベクターを含有するファージ由来粒子の産生をもたらす。ファージ由来粒子を、好ましくは、アクネ菌レシーバ細胞(例えばATCC11828)と混合する。形質導入体は、抗生物質プレート上で選択し、抗生物質プレート上にストリークし、プラスミド組込みをPCRによりスクリーニングすることができる。該プラスミドは、アクネ菌中で複製的でないため、抗生物質マーカーを安定に維持する組換え細胞のみが、抗生物質プレート上で増殖できる。
【0198】
鋳型DNA上に2つのホモロジーアームが存在する場合、第1の組換えイベント(クロスオーバーとも呼ばれる)が、典型的に、プラスミドの完全組込みをもたらす。典型的にはそれに第2の組換えイベントが続き、プラスミド骨格が除去され、染色体の改変又は野生型wt遺伝子座の再構築がもたらされる。
【0199】
一実施形態では、アクネ菌産生細胞が、アクネ菌選択マーカー、例えば、ermE(pEB_HR02)に隣接する左ホモロジーアーム(LHA)及び右ホモロジーアーム(RHA)を含有するベクターを運ぶ。2つのホモロジーアームは、典型的には、アクネ菌産生細胞染色体に一致しない。一実施形態では、該ベクターが更に、アクネ菌ファージに由来するファージパッケージングシグナル(cos)、アクネ菌用の選択マーカー、及びアクネ菌レシーバ細胞内では複製しない、アクネ菌産生細胞用の複製起点を含有する。一実施形態では、該DNAベクターが更に、プラスミド骨格上にアクネ菌対抗選択マーカー、例えばsacBを含有し、第2の組換えイベントの選択を可能にする。pEB_HR02を運ぶアクネ菌産生細胞は、典型的に、ファージによる感染を受け、pEB_HR02を含むファージ由来粒子の産生をもたらす。該ファージ由来粒子は、典型的に、アクネ菌レシーバ細胞(例えば、ATCC11828)の存在下に置かれる。形質導入体は、典型的に、抗生物質(例えばエリスロマイシン)を補足したプレート上で選択され、抗生物質(例えばエリスロマイシン)を補足したプレート上にストリークされ、プラスミドの組込みがPCRにより確認される。プラスミドは、アクネ菌レシーバ細胞内で複製的でないため、抗生物質(例えばエリスロマイシン)の存在下に増殖できるアクネ菌クローンは、完全プラスミドの組込みをもたらす単一相同組換えイベントを経た。最終的な組換え遺伝子座の選択には、典型的に、対抗選択(例えばスクロース)及び抗生物質(例えばエリスロマイシン)に細胞を曝露し、それが、sacB活性に起因して細胞死をもたらす(完全プラスミドが染色体中に組み込まれたままである)。生存菌を、典型的には、PCRにより、成功した最終的な組換え遺伝子座の存在に関してスクリーニングする。一実施形態では、DNAベクターが、単に1つのホモロジーアーム(pEB_HR01)を含有する。一実施形態では、pEB_HR01及びpEB_HR02のファージ由来粒子の両方ともを皮膚に適用し、抗生物質選択は適用しない。
【0200】
一実施形態では、アクネ菌産生細胞が、アクネ菌選択マーカーErmE(pEB_HR02)に隣接する左ホモロジーアーム(LHA)及び右ホモロジーアーム(RHA)を含有するプラスミド(ベクター)を運ぶ。該ベクターは更に、好ましくは、大腸菌複製起点、大腸菌選択マーカー、接合プラスミドに由来するoriT及びリラクサーゼ、並びにアクネ菌対抗選択マーカー、例えばsacBを含有する。pEB_HR02は、大腸菌供与菌(例えばEc0s2862)内に形質転換され得る。典型的には、形質転換体を選択し、増殖させて、アクネ菌レシーバ細胞(例えばATCC11828)と混合する。接合完了体は、典型的に、抗生物質(例えばエリスロマイシン)を補足したプレート上で選択され、抗生物質(例えばエリスロマイシン)を補足したプレート上にストリークされ、プラスミドの組込みがPCRにより確認される。プラスミドは、アクネ菌レシーバ細胞内で複製的でないため、抗生物質(例えばエリスロマイシン)の存在下に増殖できるアクネ菌クローンは、完全プラスミドの組込みをもたらす単一相同組換えイベントを経た。最終的な組換え遺伝子座の選択には、典型的に、対抗選択(例えばスクロース)及び抗生物質(例えばエリスロマイシン)に細胞を曝露し、それが、sacB活性に起因して細胞死をもたらす(完全プラスミドが染色体中に組み込まれたままである)。生存菌を、典型的には、PCRにより、成功した最終的な組換え遺伝子座の存在に関してスクリーニングする。
【0201】
複製CRISPR-Casシステム選択ベクター法
本発明は、アクネ菌用の複製起点を含む複製ベクターを含む。
【0202】
一実施形態では、複製CRISPR-Cas選択ベクター法が、少なくとも
- 前記で定義した、アクネ菌ファージに由来するファージパッケージングシグナル(cos);
- 前記で定義した、アクネ菌用の選択マーカー;
- アクネ菌用の複製起点;
- 2つのホモロジーアームを有する組換え用鋳型;及び
- アクネ菌内での発現用のCRISPR-Casシステム
を有するベクターを使用する。
【0203】
一実施形態では、複製CRISPR-Cas選択ベクター法が、少なくとも
- 前記で定義した、大腸菌用の選択マーカー;
- 大腸菌用の複製起点;
- 前記で定義した、アクネ菌用の選択マーカー;
- 2つのホモロジーアームを有する組換え用鋳型;
- アクネ菌用の複製起点;及び
- アクネ菌内で発現するCRISPR-Casシステム
を有するベクターを使用する。
【0204】
したがって、そのようなベクターは、大腸菌内で複製可能であり、且つアクネ菌内で複製可能である。該ベクターは更に、そこで組換えが望まれる野生型遺伝子座において二本鎖切断を誘導し得るCRISPR-Casシステムを運び、アクネ菌レシーバ細胞の死をもたらす。
【0205】
一実施形態では、本方法が、染色体内部での相同DNA組換えに適した鋳型、及びアクネ菌ファージに由来するファージパッケージングシグナル(cos)、を含有する複製CRISPR-Casシステム選択ベクターを運ぶアクネ菌産生細胞、例えば、ATCC6919株の使用を含む。一実施形態では、該鋳型が、2つの相同領域を含有し(
図5)、相同組換えをもたらす。産生細胞は、好ましくは、CRISPR-Casシステムが標的とする野生型遺伝子座を含有しない。アクネ菌産生細胞は、典型的に、アクネ菌ファージによる感染を受け、DNAベクターを運ぶファージ由来粒子の産生をもたらす。ファージ由来粒子を、典型的に、アクネ菌レシーバ細胞と接触させる。アクネ菌レシーバ細胞内への形質導入後、DNA鋳型ベクターと組換えした細胞は、例えば、関連PAM配列をもはや有さないため、CRISPR-Casシステムに標的とされない。抗生物質含有培地、例えば、エリスロマイシンプレート上へのプレーティングは典型的に、生存する細胞が、形質導入されており、且つCRISPR-Casシステムを発現するDNAベクター(例えばプラスミド)を依然として運ぶことを確保する。単一コロニーは典型的に、抗生物質含有培地、例えば、エリスロマイシンプレート上にストリークされ、組換え遺伝子座は典型的に、PCR及びシーケンシングにより確認される。
【0206】
一実施形態では、プラスミドを除去するために、プラスミドキュアリングの工程を行う。
【0207】
一実施形態では、アクネ菌産生細胞が、CRISPR-CasシステムのDNA標的を含有するものの、CRISPR-Casシステムは、アクネ菌産生細胞中では発現せず、アクネ菌レシーバ細胞中で発現する。より好ましくは、CRISPR-Casシステムが、アクネ菌産生細胞中では抑制されているが、アクネ菌レシーバ細胞中では抑制されていない。
【0208】
そのような方法は、スカーレス編集(scarless editing)、例えば、置換、欠失、又は挿入に使用し得る。なぜなら、組換え体を選択するための選択マーカーを導入する必要がなく、CRISPR-Cas殺滅により選択されるからである。
【0209】
自己標的複製ベクター法
一実施形態では、本発明が、自己標的複製ベクター法を含む。一実施形態では、本発明が、組換え効率を高めると示された、組換え用鋳型の線状化をもたらす9、1つ又は複数の標的配列における、DNAベクター(例えばプラスミド)の切断を計画するCRISPR-Casシステムの使用を含む。自己標的化ベクターをクローニング可能にするためには、例えば、Casヌクレアーゼをコードする遺伝子の上流にある誘導性プロモーターを使用して、誘導性CRISPR-Casシステムが使用可能である。この誘導性プロモーターをリボスイッチと組み合わせることにより、CRISPR-Casシステム発現のより強い阻害(tighter inhibition)さえも確保され得る。自己標的CRISPR-Casシステムを生成するための他の戦略は、アクネ菌産生細胞中では抑制されているが、アクネ菌レシーバ細胞中では抑制されていないプロモーターに依拠する。このやり方で、CRISPR-Casシステムは、ひとたびアクネ菌レシーバ細胞内に導入された場合に限り活性になる。
【0210】
例えば、そのような戦略を使用して、ホモロジーアームが隣接する抗生物質マーカーを使用するか(
図6A)、又はアクネ菌染色体を標的とした場合は細菌の殺滅能を有するCRISPR-Casシステムを使用するスカーレス組換えを行うことにより(
図6B)、遺伝子置換を行い得る。
【0211】
DNAベクター(例えばプラスミド)を導入及び選択後、相同イベントが典型的に起こり、PAM配列の除去をもたらす。
【0212】
更に、相同組換えに適した鋳型DNAを運ぶDNAベクター(例えばプラスミド)が、典型的に、組換え率を高める遺伝子の発現を可能にする。
【0213】
一実施形態では、DNAベクターが、相同組換えに適した鋳型、及び該鋳型領域の外部でDNAベクターそれ自体を標的とするCRISPR-Casシステムを含み、但し、該CRISPR-Casシステムに由来するRNAガイド(crRNA又はsgRNA)は、DNA標的と完全には一致しない。
【0214】
一実施形態では、本発明が、少なくとも
- 前記で定義した、アクネ菌ファージに由来するファージパッケージングシグナル(cos);
- 前記で定義した、アクネ菌用の選択マーカー;
- 前記で定義した、アクネ菌用の複製起点;及び
- アクネ菌内での発現用のCRISPR-Casシステム
を有するベクターを使用する複製ベクター法を含む。
【0215】
一実施形態では、ベクターが、自然変異又は組換えにより、もはやCRISPR-Casシステム標的配列を運ばないアクネ菌レシーバ細胞を除く、たいていのアクネ菌レシーバ細胞の死をもたらす二本鎖切断を誘導し得るCRISPR-Casシステムを運ぶ。
【0216】
操作型アクネ菌株によるタンパク質の発現
本発明は、操作型アクネ菌株によるタンパク質の発現を含む。DNAベクターへの発現カセットの組込みにより、タンパク質が、形質導入されたアクネ菌により発現され得る。発現カセット内のプロモーターは、誘導性又は構成的であり得、操作型アクネ菌株による、タンパク質の、誘導性又は構成的な発現を可能にする。複数のタンパク質の発現は、単一転写ユニット(オペロン)として、又は別々の転写ユニットとして行われ得る。特定の一実施形態では、前記タンパク質が、以下に定義する抗原、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、自己抗原、アレルゲン又はグラフト特異的抗原である。
【0217】
アクネ菌ファージ
本発明は、アクネ菌ファージ及び関連操作型ファージ、それらのファージを産生する方法、並びにアクネ菌を形質導入するためにそれらのファージを使用する方法を含む。
【0218】
アクネ菌中のファージ由来粒子
本発明は、本発明の任意のDNAベクターを含むファージ由来粒子、及びそれらのファージ由来粒子の産生方法を含む。
【0219】
一実施形態では、本発明の任意のDNAベクターを運ぶアクネ菌株を、アクネ菌ファージと接触させ、アクネ菌株内へのファージゲノムの導入、及びファージカプシドのアセンブリに必要なファージタンパク質の発現、及びファージカプシド内部へのDNAベクターのパッケージングをもたらす。
【0220】
一実施形態では、前記で定義した、アクネ菌用の選択マーカー、前記で定義したアクネ菌ファージパッケージングシグナル(cos部位)、及び前記で定義した、アクネ菌用の複製起点、を含む任意のDNAベクターを運ぶアクネ菌株を、アクネ菌ファージと接触させ、アクネ菌株内へのファージゲノムの導入、及びファージカプシドのアセンブリに必要なファージタンパク質の発現、及びファージカプシド内部へのDNAベクターのパッケージングをもたらす。
【0221】
一実施形態では、ファージゲノムが野生型ファージゲノムである。
【0222】
一実施形態では、アクネ菌ファージが、PAC7(典型的には配列番号68の配列)である。
【0223】
一実施形態では、ファージゲノムが、操作型ファージゲノムである。
【0224】
ファージ由来粒子は、当該分野で公知の方法により精製され得る。本発明は、本発明のDNAベクターを含む精製ファージ由来粒子を含む。一実施形態では、該精製ファージ由来粒子が、単離された組成物又は医薬組成物中にある。該組成物は、少なくとも104個、105個、106個、107個、108個、109個、1010個、1011個、1012個、1013個、1014個以上の精製ファージ由来粒子を含み得る。
【0225】
ファージ由来粒子による、アクネ菌の配列特異的殺滅
一実施形態では、本発明が、CRISPR-Casシステムを運ぶファージ由来粒子による、アクネ菌の特異的殺滅を含む。
【0226】
CRISPR-Casシステムをコードするベクター(例えばプラスミド)を運ぶファージ由来粒子は、in situでの、細菌の配列特異的殺滅を行うために最近使用された10、11。本発明者らは、アクネ菌を標的とするそのようなファージ由来粒子の産生方法を開発し、その方法は本発明に含まれる。
【0227】
前記方法では、高力価ファージ懸濁液を製造するために、本発明のDNAベクターを含むアクネ菌産生株を、アクネ菌ファージ、例えばPAC7(典型的には配列番号68の配列)と接触させる。
【0228】
一実施形態では、アクネ菌が、
- 前記で定義した、アクネ菌用の選択マーカー、
- 前記で定義したアクネ菌ファージパッケージングシグナル(cos部位)、
- 前記で定義した、アクネ菌用の複製起点;及び
- 特定アクネ菌レシーバ細胞の染色体遺伝子座を標的とするCRISPR-Casシステム(p標的)
を含むDNAベクターを含む。
【0229】
高力価アクネ菌ファージ懸濁液を、典型的に、アクネ菌に添加する。該懸濁液は、典型的に、野生型ファージと、プラスミドを運ぶファージ由来粒子との混合物を含有する。p標的CRISPR-Casシステムが標的とする遺伝子座を運ぶアクネ菌細胞を、典型的に、p標的を含有するファージ由来粒子と接触させる。それはin vivo又はin vitroで行われ得る。配列特異的殺滅は、典型的に、p標的を含むファージ由来粒子を含有するライセートで認められる。
【0230】
一実施形態では、p標的化ベクター(例えばプラスミド)を含むファージ由来粒子をファージと混合せず、CRISPR-Casシステムが標的とするDNAを運ぶ細胞の配列特異的殺滅を可能にする。
【0231】
アクネ菌プラスミドキュアリング
天然に存在するアクネ菌プラスミドが記載され、その一部は、炎症誘発性表現型15、23及び尋常性ざ瘡16~18と関連した。そのようなプラスミドをキュアリングできることは、尋常性ざ瘡におけるその効果、特に、炎症誘発性の役割を研究するために興味深い。本発明者らは、アクネ菌プラスミドをキュアリングする方法を開発した。
【0232】
第1の工程では、
- 前記で定義したアクネ菌ファージパッケージングシグナル、
- 場合により、前記で定義した、アクネ菌用の選択マーカー、
- 前記で定義した、アクネ菌産生細胞内でのみ複製を可能にする複製起点;及び
- 導入遺伝子、例えば、標的アクネ菌レシーバ細胞中でキュアリングされるべき、内在性プラスミドの、好ましくは保存領域、例えば、複製起点又は尋常性ざ瘡と関連する遺伝子座内にある遺伝子配列を標的とするCRISPR-Casシステム
を含むDNAベクターを運ぶアクネ菌産生細胞を、アクネ菌ファージによる感染を受け、DNAベクターを運ぶファージ由来粒子の産生をもたらす。
【0233】
アクネ菌ファージ由来粒子を、キュアリングされるべき内在性プラスミド、例えばpIMPLE-HL096PA1を運ぶアクネ菌レシーバ細胞と接触させる。それはin vivo又はin vitroで行われ得る。
【0234】
いくつかの実施形態では、アクネ菌形質導入体が、適切な抗生物質上で選択され得る。単一コロニーは典型的に、抗生物質を含有する培地上にストリークされ、プラスミドの存在は典型的に、PCRによりスクリーニングされる。プラスミドpIMPLE-HL096PA1の陽性PCRのない単一コロニーを得、次いでCRISPR-Casシステムを含むベクター(例えばプラスミド)をキュアリングして、典型的には冷凍保存ストック(cryostock)する。
【0235】
処置方法
本発明は、アクネ菌関連の障害又は疾患を処置する方法を含む。
【0236】
本発明は、広範囲の皮膚疾患及び皮膚障害の処置及び/又は防止を対象とした、操作型アクネ菌株の使用を含む。
【0237】
本発明は、前記で定義した操作型アクネ菌を使用して、皮脂生成の低下、毛孔性過角化(follicular hyperkeratinization)、皮膚細菌の定着、及び炎症を処置する方法を含む。
【0238】
本発明は、化粧品及び他の組成物における、前記で定義した操作型アクネ菌の使用を含む。
【0239】
一実施形態では、本発明が、操作型アクネ菌による治療用分子の発現を含む。
【0240】
一実施形態では、本発明が、操作型アクネ菌による非治療用分子の発現を含む。
【0241】
キューティバクテリウム・アクネスは、ヒト皮膚上で最も一般的且つ量の多い細菌の1つであり、皮膚表面(角質層)及び毛包中の両方ともに見出され得る12。アクネ菌は、毛包内部では、相当に多様な生細胞、例えば、ケラチノサイト、幹細胞、脂腺細胞、及び免疫細胞と直接接触している。死んだ角層細胞と主に接触している角質層上ではそうではない13。したがって、毛包の内部及び外部のin situでの治療用分子の産生及び送達のための細菌シャーシとしてアクネ菌を使用することが興味深いように思われる。
【0242】
ファージ由来粒子、及び/又はファージ由来粒子を産生する細菌は、対象に対する、経皮投与又は他の適切な投与方法により皮膚に送達され得る。
【0243】
本発明による対象は、動物、好ましくは哺乳類、更に好ましくはヒトである。しかしながら、用語「対象」は更に、処置を必要とする非ヒト動物、特に、中でも哺乳類、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ロバ、ウサギ、フェレット、アレチネズミ、ハムスター、チンチラ、ラット、マウス、モルモット、及び非ヒト霊長類、又は非哺乳類、例えば、家禽を指し得る。
【0244】
本発明によるヒト対象は、胎児段階のヒト、新生児、子供、幼児、青年、又は任意の年齢の成人であり得る。
【0245】
好ましくは、定期的に処置を施す、好ましくは毎日から毎月の間、更に好ましくは毎日から2週間ごとの間、更に好ましくは毎日から毎週の間、更に好ましくは毎日、処置を施す。特定の一実施形態では、1日に複数回、好ましくは1日に2回又は3回、更に好ましくは1日3回、処置を施す。
【0246】
本発明による操作型アクネ菌による処置期間は、好ましくは1日から20週の間、更に好ましくは1日から10週の間、更に好ましくは1日から4週の間、更に好ましくは1日から2週の間に含まれる。特定の一実施形態では、処置期間が、約1週である。その代わりに、処置は、感染、障害、及び/又は疾患が存続する限り継続され得る。
【0247】
本発明による操作型アクネ菌の、医薬組成物又は獣医用組成物の形、投与経路、及び投与用量は、疾患、障害、及び/又は感染の種類及び重症度に従って(例えば、疾患、障害、及び/若しくは感染に関与する細菌種、並びに患者又は対象の身体内での細菌種の局在に応じて)、並びに患者又は対象、特にその年齢、体重、性別、及び全身健康状態に従って、当業者により調整可能である。
【0248】
特に、本発明による操作型アクネ菌の投与量は、当業者に周知の標準的手順により決定する必要がある。治療上有効量が患者又は対象に投与されるように、適切な用量を決定するためには、患者又は対象の生理学的データ(例えば、年齢、大きさ、及び体重)、並びに投与経路を考慮に入れる必要がある。
【0249】
好ましくは、本発明による操作型アクネ菌の、各投与に関する総量は、104個から1015個の間に含まれる。
【0250】
本発明は、毒素、例えばヌクレアーゼの、更に好ましくは、形質導入されたアクネ菌集団を殺滅するCRISPR-Casシステムの発現用プラスミドを含む。
【0251】
本発明は、CRISPR-Casシステムの発現用プラスミドを含み、該CRISPR-Casシステムは、特定株中にのみ存在し他の株中には存在しない配列を標的とし、アクネ菌集団間での株特異的殺滅を可能にする。
【0252】
本発明は、アクネ菌染色体又はアクネ菌内在性プラスミドの改変を含む。例えば、アクネ菌-宿主関係における変化をもたらす改変、例えば、欠失、置換、及び/又は挿入が考えられる。
【0253】
本発明は、治療用分子の産生に関与する1つ又は複数の遺伝子を含有する、治療用分子の発現用のベクター、例えば、プラスミドを含む。
【0254】
治療用分子が、アクネ菌細胞から自由に拡散しない場合、例えば、治療用タンパク質の場合、アクネ菌細胞の細胞膜若しくは細胞壁上への分泌又は輸送を可能にするシグナルペプチドとの融合物が、好ましくは、ベクター、例えばプラスミド上にコードされる。分泌系又はシグナルペプチドの例は、TAT、SEC、及びVII型/WXG100分泌系を含む。特に、シグナルペプチドは、タンパク質PPA0532(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6AAD1として参照);PPA0533(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6AAD0として参照);PPA0534(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6AAC9として参照);PPA0598(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6AA63として参照);PPA0644(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6AA16として参照);PPA0687(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6A9X2として参照);PPA0721(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6A9T8として参照);PPA0816(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6A9J4として参照);PPA1310(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6A856として参照);PPA1498(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6A7M0として参照);PPA1662(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6A771として参照);PPA1715(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6A720として参照);PPA1939(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6A6F6として参照);PPA2097(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6A608として参照);PPA2105(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6A601として参照);PPA2106(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6A600として参照);PPA2142(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6A5W4として参照);PPA2164(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6A5U3として参照);PPA2175(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6A5T2として参照)、PPA2152(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6A5V4として参照);PPA1340(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6A826として参照)、及びPPA2239(典型的には2020年11月4日現在のUniprotKBデータベース中のQ6A5M0として参照)からなる群から選択されるタンパク質から抽出され得る。
【0255】
分泌が望ましくないか、又は機能的でない場合、細胞を溶解して治療用分子を放出するために、ベクター、例えばプラスミドに溶解モジュールを添加してもよい。
【0256】
特定の一実施形態では、前記治療用分子が、アクネ菌細胞の細胞膜又は細胞壁上にディスプレイされてもよい。ディスプレイされるためには、目的のタンパク質は、典型的に、例えば前記のようなN末端分泌シグナルペプチド、並びにアクネ菌由来のクラスFソルターゼ(Girolamo, S. D.等、Biochem J 476、665~682頁(2019)(非特許文献8))が、目的のタンパク質を細胞壁に共有結合させることを可能にするC末端LPXTGモチーフを必要とする。更に、PTリッチ領域が、LPXTGモチーフの上流に組み込まれている場合もある。その代わりに、LPxTGモチーフを、それに続く疎水性アミノ酸及び正帯電C末端と組み合わせる、より古典的な細胞壁選別配列(cell wall sorting sequence)(CWSS)が使用され得る。
【0257】
治療用分子の発現を制御するために、遺伝子の1つ又は複数が、オペロンとして又は単一単離遺伝子として、誘導性システム、例えば、誘導性プロモーター、リボスイッチ、RNAベースの誘導法、又はそれらの組合せの制御下に置かれ得る。治療用分子のin situ産生を最適化するために、複数の転写強度の複数のプロモーターを試験して、異なるRBS強度と組み合わせてもよい。in vitro又はin situ発現用の最善RBSバリアントを選択するために、RBSライブラリアプローチを使用してもよい。
【0258】
治療用分子の例は、抗体、抗体ベース薬物、Fc融合タンパク質、抗凝血剤、血液因子、骨形成タンパク質、操作型タンパク質足場、酵素、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、及び血栓溶解薬を含むがそれらに限定されない。他の例は、標的に非共有結合するもの(例えばモノクローナル抗体)、共有結合に影響を及ぼすもの(例えば酵素)、及び特異的相互作用なしに活性を発揮するもの(例えば血清アルブミン)を含む。
【0259】
例えば、がん、免疫障害、感染、及び/又は他の疾患を処置するために使用する治療用分子(例えば、治療用組換えタンパク質)も本明細書で意図される。二重特異性mAb、及び多重特異性融合タンパク質、及び最適化された薬物動態を有するタンパク質、を含む操作型タンパク質も本開示により意図される。
【0260】
いくつかの実施形態では、治療用タンパク質が、エタネルセプト、ベバシズマブ、リツキシマブ、アダリムマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブ、インスリングラルギン、エポエチンアルファ、ペグフィルグラスチム、ラニビズマブ、ダルベポエチンアルファ、インターフェロンベータ-la、インターフェロンベータ-la、インスリンアスパルト、Rhuインスリン、オクトコグアルファ、インスリンリスプロ、セツキシマブ、ペグインターフェロンアルファ-2a、インターフェロンベータ-lb、エプタコグアルファ、インスリンアスパルト、オナボツリヌム毒素A、エポエチンベータ、Rec抗血友病因子、フィルグラスチム(Filgrastim)、インスリンデテミル、ナタリズマブ、インスリン(ヒューマリン)、又はパリビズマブである。
【0261】
本開示の関連で発現され得る抗体、抗体断片、及び/又はFc融合タンパク質の例は、限定されないが、アバゴボマブ(Abagovomab)、アブシキシマブ、アクトクスマブ(Actoxumab)、アダリムマブ、アデカツムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブ・ペゴル(Alacizumab pegol)、ALD、アレムツズマブ、アリロクマブ、ペンテト酸アルツモマブ(Altumomab pentetate)、アマツキシマブ、アナツモマブ・マフェナトクス(Anatumomab mafenatox)、アニフロルマブ、アンルキンズマブ(Anrukinzumab)、アポリズマブ、アルシツモマブ、アセリズマブ(Aselizumab)、アチヌマブ(Atinumab)、アトリズマブ(又はトシリズマブ)、アトロリムマブ(Atorolimumab)、バピネウズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ(Bavituximab)、ベクツモマブ(bectumomab)、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ(Bezlotoxumab)、ビシロマブ(Biciromab)、ビマグルマブ(Bimagrumab)、ビバツズマブ・メルタンシン(Bivatuzumab mertansine)、ブリナツモマブ(Blinatumomab)、ブロソズマブ、ブレンツキシマブ・ベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、カナキヌマブ、カンツズマブ・メルタンシン、カンズマブ・ラブタンシン(Cantuzumab ravtansine)、カプラシズマブ、カプロマブペンデチド、カルルマブ(Carlumab)、カツマキソマブ、セデリズマブ(Cedelizumab)、セルトリズマブペゴル(Certolizumab pegol)、セツキシマブ、シタツズマブ・ボガトックス(Citatuzumab bogatox)、シクスツムマブ(Cixutumumab)、クラザキズマブ(Clazakizumab)、クレノリキシマブ、クリバツズマブ テトラキセタン(Clivatuzumab tetraxetan)、コナツムマブ(Conatumumab)、コンシズマブ、クレネズマブ、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ(Dalotuzumab)、ダラツムマブ、デムシズマブ(Demcizumab)、デノスマブ、デツモマブ(Detumomab)、ドルリモマブアリトクス(Dorlimomab aritox)、ドロジツマブ(Drozitumab)、ドゥリゴツマブ(Duligotumab)、デュピルマブ、デュシギツマブ(Dusigitumab)、エクロメキシマブ(Ecromeximab)、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ(Efungumab)、エルデルマブ(Eldelumab)、エロツズマブ(Elotuzumab)、エルシリモマブ(Elsilimomab)、エナバツズマブ(Enavatuzumab)、エンリモマブペゴル(Enlimomab pegol)、エノキズマブ(Enokizumab)、エノチクマブ(Enoticumab)、エンシツキシマブ(Ensituximab)、エピツモマブシツキセタン(Epitumomab cituxetan)、エプラツズマブ、エルリズマブ(Erlizumab)、エルツマキソマブ(Ertumaxomab)、エタラシズマブ、エトロリズマブ(Etrolizumab)、エボロクマブ、エキスビビルマブ(Exbivirumab)、ファノレソマブ(Fanolesomab)、ファラリモマブ(Faralimomab)、ファルレツズマブ、ファシヌマブ(Fasinumab)、FBTA、フェルビズマブ(Felvizumab)、フェザキヌマブ(Fezakinumab)、フィクラツズマブ(Ficlatuzumab)、フィギツムマブ、フランボツマブ(Flanvotumab)、フォントリズマブ、フォラルマブ(Foralumab)、フォラビルマブ(Foravirumab)、フレソリムマブ(Fresolimumab)、フルラヌマブ、フツキシマブ(Futuximab)、ガリキシマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ(Gavilimomab)、ゲムツズマブ・オゾガマイシン、ゲボキズマブ、ギレンツキシマブ(Girentuximab)、グレンバツムマブべドチン(Glembatumumab vedotin)、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ(Gomiliximab)、グセルクマブ、イバリズマブ(Ibalizumab)、イブリツモマブ・チウキセタン、イクルクマブ(Icrucumab)、イゴボマブ(Igovomab)、イムシロマブ(Imciromab)、イムガツズマブ(Imgatuzumab)、インクラクマブ(Inclacumab)、インダツキシマブ・ラブタンシン(Indatuximab ravtansine)、インフリキシマブ、インテツムマブ(Intetumumab)、イノリモマブ(Inolimomab)、イノツズマブ・オゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ(Iratumumab)、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、ランブロリズマブ、ランパリズマブ(Lampalizumab)、レブリキズマブ(Lebrikizumab)、レマレソマブ(Lemalesomab)、レルデリムマブ(Lerdelimumab)、レクサツムマブ、リビビルマブ(Libivirumab)、リゲリズマブ(Ligelizumab)、リンツズマブ、リリルマブ(Lirilumab)、ロデルシズマブ(Lodelcizumab)、ロルボツズマブメルタンシン(Lorvotuzumab mertansine)、ルカツムマブ(Lucatumumab)、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マルゲツキシマブ、マスリモマブ(Maslimomab)、マブリリムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ(Metelimumab)、ミラツズマブ(Milatuzumab)、ミンレツモマブ(Minretumomab)、ミツモマブ(Mitumomab)、モガムリズマブ、モロリムマブ(Morolimumab)、モタビズマブ、モキセツモマブ・パスドトックス(Moxetumomab pasudotox)、ムロモナブ-CD3、ナコロマブタフェナトクス(Nacolomab tafenatox)、ナミルマブ(Namilumab)、ナプツモマブ・エスタフェナトクス、ナルナツマブ(Narnatumab)、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネレリモマブ(Nerelimomab)、ネスバクマブ(Nesvacumab)、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブ・メルペンタン(Nofetumomab merpentan)、オカラツズマブ(Ocaratuzumab)、オクレリズマブ、オデュリモマブ(Odulimomab)、オファツムマブ、オララツマブ(Olaratumab)、オロキズマブ(Olokizumab)、オマリズマブ、オナルツズマブ(Onartuzumab)、オポルツズマブ・モナトクス(Oportuzumab monatox)、オレゴボマブ、オルチクマブ(Orticumab)、オテリキシズマブ、オキセルマブ(Oxelumab)、オザネズマブ(Ozanezumab)、オゾラリズマブ(Ozoralizumab)、パギバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パノバクマブ(Panobacumab)、パルサツズマブ(Parsatuzumab)、パソコリズマブ(Pascolizumab)、パテクリズマブ(Pateclizumab)、パトリツマブ(Patritumab)、ペムツモマブ(Pemtumomab)、ペラキズマブ(Perakizumab)、ペルツズマブ、ペキセリズマブ(Pexelizumab)、ピディリズマブ、ピナツズマブ・ベドチン(Pinatuzumab vedotin)、ピンツモマブ(Pintumomab)、プラクルマブ(Placulumab)、ポラツズマブ・ベドチン(Polatuzumab vedotin)、ポネズマブ、プリリキシマブ(Priliximab)、プリトキサキシマブ(Pritoxaximab)、プリツムマブ(Pritumumab)、PRO、クイリズマブ(Quilizumab)、ラコツモマブ(Racotumomab)、ラドレツマブ(Radretumab)、ラフィビルマブ(Rafivirumab)、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ(Robatumumab)、ロレデュマブ(Roledumab)、ロモソズマブ、ロンタリズマブ(Rontalizumab)、ロベリズマブ(Rovelizumab)、ルプリズマブ(Ruplizumab)、サマリズマブ(Samalizumab)、サリルマブ、サツモマブ・ペンデチド(Satumomab pendetide)、セクキヌマブ、セリバンツマブ、セトキサキシマブ(Setoxaximab)、セビルマブ(Sevirumab)、シブロツズマブ(Sibrotuzumab)、シファリムマブ(Sifalimumab)、シルツキシマブ(Siltuximab)、シムツズマブ(Simtuzumab)、シプリズマブ、シルクマブ、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ(Sonepcizumab)、ソンツズマブ(Sontuzumab)、スタムルマブ(Stamulumab)、スレソマブ(Sulesomab)、スビズマブ(Suvizumab)、タバルマブ、タカツズマブテトラキセタン(Tacatuzumab tetraxetan)、タドシズマブ(Tadocizumab)、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス(Taplitumomab paptox)、テフィバズマブ(Tefibazumab)、テリモマブアリトクス(Telimomab aritox)、テナツモマブ(Tenatumomab)、テネリキシマブ(Teneliximab)、テプリズマブ(Teplizumab)、テプロツムマブ(Teprotumumab)、TGN、チシリムマブ(又はトレメリムマブ)、チルドラキズマブ(Tildrakizumab)、ティガツズマブ、TNX-、トシリズマブ(又はアトリズマブ)、トラリズマブ(Toralizumab)、トシツモマブ、トベツマブ(Tovetumab)、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、TRBS、トレガリズマブ(Tregalizumab)、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン(Tucotuzumab celmoleukin)、ツビルマブ(Tuvirumab)、ウブリツキシマブ(Ublituximab)、ウレルマブ(Urelumab)、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バンチクツマブ(Vantictumab)、バパリキシマブ(Vapaliximab)、バテリズマブ(Vatelizumab)、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ(Vepalimomab)、ベセンクマブ(Vesencumab)、ビジリズマブ、ボロシキシマブ、ボルセツズマブマフォドチン(Vorsetuzumab mafodotin)、ボツムマブ(Votumumab)、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ(Zatuximab)、ジラリムマブ(Ziralimumab)、及びゾリモマブアリトクス(Zolimomab aritox)を含む。
【0262】
本開示の関連で発現され得るFc融合タンパク質の他の例は、限定されないが、エタネルセプト、アレファセプト、アバタセプト、リロナセプト、ロミプロスチム、ベラタセプト、及びアフリベルセプトを含む。
【0263】
本開示の関連で発現され得る抗凝血剤及び/又は血液因子の例は、限定されないが、プロテインC、プロテインS、及び抗トロンビン、第I因子~第VIII因子、プロトロンビナーゼ、プロトロンビン、トロンビン、フォン・ヴィレブランド因子(vWF)、フィブリノーゲン、フィブリン、及びフィブリノペプチドを含む。
【0264】
本開示の関連で発現され得る骨形成タンパク質(BMP)の例は、限定されないが、BMP1~BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP10、及びBMP15を含む。
【0265】
本開示の関連で発現され得る酵素の例は、限定されないが、国際生化学分子生物学連合(IUBMB)による酵素番号(EC番号)(例えば、EC1~EC6)が割り当てられた酵素のいずれかを含む(参照により本明細書に組み込まれている、Webb, Edwin C. Enzyme nomenclature 1992:recommendations of the Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology on the nomenclature and classification of enzymes. San Diego:Academic Pressが国際生化学分子生物学連合のために公開。ISBN 0-12-227164-5(1992)(非特許文献9))。他の例は、スチレンモノオキシゲナーゼ(StyAB)、トルエンジオキシゲナーゼ(TODC1C2AB)、ルシフェラーゼ、及びラクターゼを含む。いくつかの実施形態では、該酵素が、トルエンジオキシゲナーゼである。いくつかの実施形態では、該酵素が、スチレンモノオキシゲナーゼである。
【0266】
本開示の関連で発現され得る成長因子の例は、限定されないが、アドレノメジュリン(AM)、アンジオポエチン(Ang)、自己分泌型運動因子、骨形成タンパク質(BMP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、上皮成長因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖分化因子9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、ヘパトーマ由来増殖因子(HDGF)、インスリン様成長因子(IGF)、遊走刺激因子、ミオスタチン(GDF-8)、神経成長因子(NGF)、及び他のニューロトロフィン、血小板由来成長因子(PDGF)、トロンボポエチン(TPO)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-a)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-P)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、胎盤増殖因子(P1GF)、胎児ウシソマトトロピン(FBS)、及びIL-1~IL7を含む。
【0267】
本開示の関連で発現され得るペプチドホルモンの例は、限定されないが、アミリン(又は膵島アミロイドポリペプチド)、抗ミュラー管ホルモン(又はミュラー管阻害因子若しくはホルモン)、アディポネクチン、副腎皮質刺激ホルモン(又はコルチコトロピン)、アンジオテンシノーゲン及びアンジオテンシン、抗利尿ホルモン(又はバソプレシン、アルギニンバソプレシン)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(又はアトリオペプチン)、脳性ナトリウム利尿ペプチド、カルシトニン、コレシストキニン、コルチコトロピンホルモン放出ホルモン、エンケファリン、エンドセリン、エリスロポエチン、卵胞刺激ホルモン、ガラニン、ガストリン、グレリン、グルカゴン、ゴナドトロピン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎盤性ラクトゲン、成長ホルモン、インヒビン、インスリン、インスリン様成長因子(又はソマトメジン)、レプチン、リポトロピン、黄体形成ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、モチリン、オレキシン、オキシトシン、膵ポリペプチド、副甲状腺ホルモン、プロラクチン、プロラクチン放出ホルモン、レラキシン、レニン、セクレチン、ソマトスタチン、トロンボポエチン、甲状腺刺激ホルモン(又はチロトロピン)、及びチロトロピン放出ホルモンを含む。
【0268】
本開示の関連で発現され得るインターフェロン(IFN)の例は、限定されないが、IFN-a、IFN-β、IFN-ω、及びIFN-γを含む。
【0269】
本開示の関連で発現され得るインターロイキンの例は、限定されないが、インターロイキン1~17を含む。いくつかの実施形態では、該インターロイキンが、インターロイキン-4、インターロイキン-6、インターロイキン-10、インターロイキン-11、又はインターロイキン-13である。
【0270】
本開示の関連で発現され得る治療用タンパク質の他の例は、限定されないが、インスリン(血糖制御因子)、酢酸プラムリンチド(グルコース管理)、成長ホルモンGH(成長阻害)、ペグビソマント(Pegvisomant)(成長ホルモン受容体アンタゴニスト)、メカセルミン(IGFl、成長阻害)、第VIII因子(凝固因子)、第IX因子(凝固因子、プロテインC濃縮物(抗凝固))、al-プロテイナーゼ阻害剤(アンチトリプシン阻害剤)、エリスロポエチン(赤血球生成を刺激)、フィルグラスチム(顆粒球コロニー刺激因子、G-CSF;好中球増殖を刺激)、サルグラモスチム36、37(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、GM-CSF)、オプレルベキン(インターロイキンll、IL11)、ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、ルトロピン-a(ヒト黄体形成ホルモン)、インターロイキン2(IL2)、インターロイキン-1受容体アゴニスト、デニロイキンジフチトクス(IL2とジフテリア毒素との融合物)、インターフェロンアルファコン1(コンセンサスインターフェロン)、インターフェロン-2a(IFNa2a)、インターフェロン-2b(IFNa2b)、インターフェロン-n3(IFNan3)、インターフェロン-pia(rIFN-β)、インターフェロン-β lb(rIFN-β)、インターフェロン-ylb(IFNy、サケカルシトニン(32アミノ酸の直鎖状ポリペプチドホルモン))、テリパラチド(ヒト副甲状腺ホルモンの一部、1~34残基)、エキセナチド(グルカゴン様ペプチド1に類似の作用を有するインクレチンミメティック)、オクトレオチド(天然ソマトスタチンを模倣するオクタペプチド)、ジボテルミン-a(組換えヒト骨形成タンパク質2)、組換えヒト骨形成タンパク質7、酢酸ヒストレリン(ゴナドトロピン放出ホルモン、GnRH)、パリフェルミン(ケラチノサイト成長因子、KGF)、ベカプレルミン(血小板由来成長因子、PDGF)、ネシリチド(組換えヒトB型ナトリウム利尿ペプチド)、レピルジン(ヒルジンの組換えバリアント、他のバリアントはビバリルジン)、アナキンラ(インターロイキン1(IL1)受容体アンタゴニスト)、エンフビルチド(HIV-1 gp41由来ペプチド)、β-グルコセレブロシダーゼ(グルコースとセラミドに加水分解)、アルグルコシダーゼ-a(グリコーゲンを分解)、ラロニダーゼ(リソソーム内でグリコサミノグリカンを消化)、イデュルスルファーゼ(O-硫酸塩を切断し、GAGの蓄積を防止)、ガルスルファーゼ(GAGから末端硫酸塩を切断)、アガルシダーゼ-β(ヒトa-ガラクトシダーゼA、スフィンゴ糖脂質を加水分解)、ラクターゼ(ラクトースを消化)、膵酵素(リパーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ;食物を消化)、アデノシンデアミナーゼ(アデノシンを代謝)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA、血餅の分解に関与するセリンプロテアーゼ)、第Vila因子(セリンプロテアーゼ、血液の凝固を引き起こす)、ドロトレコギン-a(セリンプロテアーゼ、ヒト活性化プロテインC)、トリプシン(セリンプロテアーゼ、タンパク質を加水分解)、A型ボツリヌス毒素(プロテアーゼ、シナプス小胞融合に関与するSNAP-25を不活性化)、B型ボツリヌス毒素(シナプス小胞融合に関与するSNAP-25を不活性化するプロテアーゼ)、コラゲナーゼ(エンドペプチダーゼ、天然コラーゲンを消化)、ヒトデオキシリボヌクレアーゼI(エンドヌクレアーゼ、DNase I、DNAを切断)、ヒアルロニダーゼ(ヒアルロナンを加水分解)、パパイン(システインプロテアーゼ、タンパク質を加水分解)、L-アスパラギナーゼ(L-アスパラギンの、アスパラギン酸及びアンモニアへの変換を触媒)、ラスブリカーゼ(尿酸オキシダーゼ、尿酸のアラントインへの変換を触媒)、ストレプトキナーゼ(アニストレプラーゼは、アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化因子複合体(APS AC))、及び抗トロンビンIII(セリンプロテアーゼ阻害剤)を含む。
【0271】
本開示の関連で発現され得る治療用タンパク質の他の例は、以下に定義する抗原を含む。
【0272】
本発明は更に、抗原、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、自己抗原、アレルゲン、又はグラフト特異的抗原の発現用のベクター(例えばプラスミド)を含む操作型アクネ菌を含む。
【0273】
本明細書で使用する「抗原」は、免疫学的応答を誘発する、1つ又は複数のエピトープ(例えば、線状、構造的又は両方とも)を含有する分子を指す。該抗原は、任意のタイプであり得る。特に、抗原は、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチド、炭水化物、脂質、核酸、例えば、DNA若しくはRNAであり得る。特定の一実施形態では、抗原は、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドである。本明細書で意図される「タンパク質」は、タンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを含むと理解される。更に、本発明の目的で「抗原」は、タンパク質が免疫学的応答を誘発する能力を維持する限り、天然配列に対する改変、例えば、欠失、付加、及び置換(一般に、本来は保存的)を含むタンパク質を含む。それらの改変は、部位特異的変異導入により計画的であり得るか、又は例えば、抗原を産生する宿主の変異により、偶然であり得る。
【0274】
特定の一実施形態では、前記抗原が、免疫応答、特に、前記抗原に対して特異的な免疫応答の活性化又は上昇を誘導する。代替の一実施形態では、前記抗原が、免疫応答、特に、前記抗原に対する免疫応答の寛容化又は抑制をもたらす。
【0275】
特定の一実施形態では、前記抗原が、対象の炎症反応を低下させる。
【0276】
特定の一実施形態では、前記抗原が腫瘍抗原である。
【0277】
本明細書で「腫瘍抗原」は、腫瘍細胞中で産生される抗原性物質を意味する。腫瘍抗原は、例えば、ペプチド含有腫瘍抗原、例えば、ポリペプチド腫瘍抗原又は糖タンパク質腫瘍抗原であり得る。腫瘍抗原は更に、例えば、糖含有腫瘍抗原、例えば、糖脂質腫瘍抗原又はガングリオシド腫瘍抗原であり得る。
【0278】
腫瘍抗原は、(a)ポリペプチド(例えば、約8個~約20個のアミノ酸長に及び得るが、この範囲外の長さもよくある)、リポポリペプチド(lipopolypeptide)、及び糖タンパク質を含むポリペプチド含有腫瘍抗原、並びに(b)多糖、ムチン、ガングリオシド、糖脂質、及び糖タンパク質を含む糖含有腫瘍抗原、を含むがそれらに限定されない。更に、腫瘍抗原は、(a)がん細胞と関連する全長分子、(b)同一分子のホモログ及び改変型(一部が欠失、付加及び/又は置換された分子を含む)、並びに(c)同一分子の断片であり得る。腫瘍抗原は、例えば、CD8+リンパ球によって認識されるクラスI限定抗原、又はCD4+リンパ球によって認識されるクラスII限定抗原を含む。
【0279】
多数の腫瘍抗原が、当該分野で公知であり、(a)がん精巣抗原、例えば、NY-ESO-1、SSX2、SCP1、並びにRAGE、BAGE、GAGE、MAGEファミリーのポリペプチド、例えば、GAGE-1、GAGE-2、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、及びMAGE-12(例えば、黒色腫、肺腫瘍、頭頸部腫瘍、NSCLC、乳腺腫瘍、胃腸腫瘍、及び膀胱腫瘍に取り組むために使用可能である)、(b)変異抗原、例えば、p53(様々な固形腫瘍、例えば、結腸直腸がん、肺がん、頭頸部がんと関連)、p21/Ras(例えば、黒色腫、膵がん、及び結腸直腸がんと関連)、CD4(例えば、黒色腫と関連)、MUM1(例えば、黒色腫と関連)、カスパーゼ-8(例えば、頭頸部がんと関連)、CIA0205(例えば、膀胱がんと関連)、HLA-A2-R1701、ベータカテニン(例えば、黒色腫と関連)、TCR(例えば、T細胞非ホジキンリンパ腫と関連)、BCR-abl(例えば、慢性骨髄性白血病と関連)、トリオースリン酸イソメラーゼ、IA 0205、CDC-27、及びLDLR-FUT、(c)過剰発現抗原、例えば、ガレクチン4(例えば、結腸直腸がんと関連)、ガレクチン9(例えば、ホジキン病と関連)、プロテイナーゼ3(例えば、慢性骨髄性白血病と関連)、WT1(例えば、様々な白血病と関連)、炭酸脱水酵素(例えば、腎がんと関連)、アルドラーゼA(例えば、肺がんと関連)、PRAME(例えば、黒色腫と関連)、HER-2/neu(例えば、乳がん、結腸がん、肺がん、及び卵巣がんと関連)、アルファ-フェトプロテイン(例えば、ヘパトーマと関連)、SA(例えば、結腸直腸がんと関連)、ガストリン(例えば、膵がん及び胃がん)、テロメラーゼ触媒タンパク質、MUC-1(例えば、乳がん及び卵巣がんと関連)、G-250(例えば、腎細胞癌と関連)、及び癌胎児抗原(例えば、乳がん、肺がん、及び消化管のがん、例えば結腸直腸がんと関連)、(d)共有抗原(shared antigen)、例えば、黒色腫-メラニン細胞分化抗原、例えば、MART-l/Melan A、gplOO、MC1R、メラニン細胞刺激ホルモン受容体、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質-1/TRPl、及びチロシナーゼ関連タンパク質-2/TRP2(例えば、黒色腫と関連)、(e)前立腺関連抗原、例えば、PAP、PSA、PSMA、PSH-P1、PSM-P1、PSM-P2(例えば、前立腺がんと関連)、(f)免疫グロブリンイディオタイプ(例えば、骨髄腫及びB細胞リンパ腫と関連)、並びに(g)他の腫瘍抗原、例えば、(i)糖タンパク質、例えば、シアリルTn及びシアリルLex(例えば乳がん及び結腸直腸がんと関連)、並びに様々なムチン;糖タンパク質はキャリアタンパク質に結合され得る(例えば、MUC-1は、LHに結合され得る);(ii)リポポリペプチド(例えば、脂質部分に結合したMUC-1);(iii)キャリアタンパク質(例えば、KLH)に結合され得る多糖(例えば、グロボH合成六糖)、(iv)同じくキャリアタンパク質(例えばKLH)に結合され得るガングリオシド、例えば、GM2、GM12、GD2、GD3(例えば、脳がん、肺がん、黒色腫と関連)を含むポリペプチド含有抗原及び多糖含有抗原、を含む。
【0280】
他の腫瘍抗原は、pi 5、Hom/Mel-40、H-Ras、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、エプスタイン・バーウイルス抗原、EBNA、E6及びE7を含むヒトパピローマウイルス(HPV)抗原、肝炎B及びCウイルス抗原、ヒトT細胞リンパ向性ウイルス抗原、TSP-180、pl85erbB2、pl80erbB-3、c-met、mn-23H l、TAG-72-4、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、p 16、TAGE、PSCA、CT7、43-9F、5T4、791 Tgp72、beta-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3(CA 27.29\BCAA)、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\KP1、CO-029、FGF-5、Ga733(EpCAM)、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV 18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90(Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、TPS等を含む。
【0281】
他の実施形態では、前記抗原がウイルス抗原である。
【0282】
本明細書で「ウイルス抗原」は、ウイルスゲノムによりコードされるタンパク質を意味する。
【0283】
特定の実施形態では、ウイルス抗原が、好ましくは、該ウイルスの生活環の少なくとも1段階の間、その表面に曝露されるエピトープを含む。ウイルス抗原は、好ましくは、複数の血清型又は単離菌(isolate)にわたって保存されている。本開示の関連での使用に適切なウイルス抗原は、以下に記載されるウイルスの1つ又は複数に由来する抗原、並びに以下で同定される特定抗原の例を含むがそれらに限定されない。
【0284】
オルトミクソウイルス:ウイルス抗原は、オルトミクソウイルス、例えば、インフルエンザA、B、及びCに由来するものを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、オルトミクソウイルス抗原が、ヘマグルチニン(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、核タンパク質(NP)、基質タンパク質(Ml)、膜タンパク質(M2)、転写酵素成分(PB1、PB2、及びPA)の1つ又は複数を含む、ウイルスタンパク質の1つ又は複数から選択される。特定の実施形態では、該ウイルス抗原が、HA及びNAを含む。特定の実施形態では、インフルエンザ抗原が、パンデミック間期(例年)インフル株に由来し、他の実施形態では、インフルエンザ抗原が、世界的流行の発生を引き起こす潜在性を有する株に由来する(即ち、目下流行中の株と比べて新規のヘマグルチニンを有するインフルエンザ株、又はトリ対象において病原性であり、ヒト集団へと水平伝播する潜在性を有するインフルエンザ株、又はヒトに対して病原性であるインフルエンザ株)。
【0285】
パラミクソウイルス科ウイルス:ウイルス抗原は、パラミクソウイルス科ウイルス、例えば、ニューモウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIV)、メタニューモウイルス、及びモルビリウイルス(麻疹)に由来するものを含むがそれらに限定されない。
【0286】
ニューモウイルス:ウイルス抗原は、ニューモウイルス、例えば、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス、マウス肺炎ウイルス、及び七面鳥鼻気管炎ウイルスに由来するものを含むがそれらに限定されない。好ましくは、ニューモウイルスがRSVである。特定の実施形態では、ニューモウイルス抗原が、以下の、表面タンパク質、融合タンパク質(F)、糖タンパク質(G)、及び小疎水性タンパク質(SH)、基質タンパク質M及びM2、ヌクレオカプシドタンパク質N、P及びL、並びに非構造タンパク質NS1及びNS2を含む、タンパク質の1つ又は複数から選択される。他の実施形態では、ニューモウイルス抗原が、F、G、及びMを含む。
【0287】
パラミクソウイルス:ウイルス抗原は、パラミクソウイルス、例えば、パラインフルエンザ1型~4型ウイルス(PIV)、ムンプス、センダイウイルス、シミアンウイルス5、ウシパラインフルエンザウイルス、ニパウイルス、ヘニパウイルス、及びニューカッスル病ウイルスに由来するものを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、パラミクソウイルスが、PIV又はムンプスである。特定の実施形態では、パラミクソウイルス抗原が、以下のタンパク質、つまりヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)、融合タンパク質F1及びF2、核タンパク質(NP)、リンタンパク質(P)、ラージタンパク質(L)、並びに基質タンパク質(M)の1つ又は複数から選択される。他の実施形態では、パラミクソウイルスタンパク質が、HN、F1及びF2を含む。他の実施形態では、パラミクソウイルスが、ニパウイルス又はヘニパウイルスであり、抗原が、以下のタンパク質、つまり融合(F)タンパク質、糖タンパク質(G)、基質(M)タンパク質、ヌクレオカプシド(N)タンパク質、ラージ(L)タンパク質、及びリンタンパク質(P)の1つ又は複数から選択される。
【0288】
ポックスウイルス科:ウイルス抗原は、オルトポックスウイルス、例えば、大痘瘡及び小痘瘡を含むがそれらに限定されない真正痘瘡に由来するもの含むがそれらに限定されない。
【0289】
メタニューモウイルス:ウイルス抗原は、メタニューモウイルス、例えば、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)、及びトリメタニューモウイルス(aMPV)を含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、メタニューモウイルス抗原が、以下の、表面タンパク質、融合タンパク質(F)、糖タンパク質(G)、及び小疎水性タンパク質(SH)、基質タンパク質M及びM2、ヌクレオカプシドタンパク質N、P及びLを含む、タンパク質の1つ又は複数から選択される。他の実施形態では、メタニューモウイルス抗原が、F、G、及びMを含む。
【0290】
モルビリウイルス:ウイルス抗原は、モルビリウイルス、例えば麻疹に由来するものを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、モルビリウイルス抗原が、以下のタンパク質、つまり、ヘマグルチニン(H)、糖タンパク質(G)、融合因子(F)、ラージタンパク質(L)、核タンパク質(NP)、ポリメラーゼリンタンパク質(P)、及び基質(M)の1つ又は複数から選択される。
【0291】
ピコルナウイルス:ウイルス抗原は、ピコルナウイルス、例えば、エンテロウイルス、ライノウイルス、へパルナウイルス、カルジオウイルス、及びアフトウイルスに由来するものを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、抗原がエンテロウイルスに由来し、他の実施形態では、エンテロウイルスがポリオウイルスである。更に他の実施形態では、抗原がライノウイルスに由来する。
【0292】
エンテロウイルス:ウイルス抗原は、エンテロウイルス、例えば、ポリオウイルス1型、2型、又は3型、コクサッキーA群ウイルス1型~22型及び24型、コクサッキーB群ウイルス1型~6型、エコーウイルス(ECHOウイルス)1型~9型、11型~27型及び29型~34型、並びにエンテロウイルス68~71に由来するものを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、抗原がエンテロウイルスに由来し、他の実施形態では、エンテロウイルスがポリオウイルスである。特定の実施形態では、エンテロウイルス抗原が、以下のカプシドタンパク質VP0、VP1、VP2、VP3、及びVP4の1つ又は複数から選択される。
【0293】
ブニヤウイルス:ウイルス抗原は、オルトブニヤウイルス、例えばカリフォルニア脳炎ウイルス、フレボウイルス、例えばリフトバレー熱ウイルス、又はナイロウイルス、例えばクリミア・コンゴ出血熱ウイルスに由来するものを含むがそれらに限定されない。ライノウイルス:ウイルス抗原は、ライノウイルスに由来するものを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、ライノウイルス抗原が、以下のカプシドタンパク質:VP0、VP1、VP2、VP2、及びVP4の1つ又は複数から選択される。
【0294】
へパルナウイルス:ウイルス抗原は、へパルナウイルス、例えば、例に過ぎないが、A型肝炎ウイルス(HAV)に由来するものを含むがそれらに限定されない。
【0295】
トガウイルス:ウイルス抗原は、トガウイルス、例えば、ルビウイルス、アルファウイルス、又はアルテリウイルスに由来するものを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、該抗原が、ルビウイルス、例えば、例に過ぎないが、風疹ウイルスに由来する。特定の実施形態では、トガウイルス抗原が、E1、E2、E3、C、NSP-1、NSPO-2、NSP-3、又はNSP-4から選択される。特定の実施形態では、トガウイルス抗原が、E1、E2、又はE3から選択される。
【0296】
フラビウイルス:ウイルス抗原は、フラビウイルス、例えば、ダニ媒介性脳炎(TBE)ウイルス、デング(1型、2型、3型、又は4型)ウイルス、黄熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、キャサヌル森林病ウイルス、ウエストナイル脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、ポワッサン脳炎ウイルスに由来するものを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、フラビウイルス抗原が、PrM、M、C、E、NS-1、NS-2a、NS2b、NS3、NS4a、NS4b、及びNS5から選択される。特定の実施形態では、フラビウイルス抗原が、PrM、M、及びEから選択される。
【0297】
ペスチウイルス:ウイルス抗原は、ペスチウイルス、例えば、ウシウイルス性下痢(BVDV)、ブタコレラ(CSFV)、又はボーダー病(BDV)に由来するものを含むがそれらに限定されない。
【0298】
へパドナウイルス:ウイルス抗原は、へパドナウイルス、例えば、B型肝炎ウイルスに由来するものを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、へパドナウイルス抗原が、表面抗原(L、M、及びS)、コア抗原(HBc、HBe)から選択される。
【0299】
C型肝炎ウイルス:ウイルス抗原は、C型肝炎ウイルス(HCV)に由来するものを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、HCV抗原が、E1、E2、E1/E2、NS345ポリタンパク質、NS345コアポリタンパク質、コア、及び/又は非構造領域由来のペプチドの1つ又は複数から選択される。特定の実施形態では、C型肝炎ウイルス抗原が、以下、つまりHCV E1及び/又はE2タンパク質、E1/E2ヘテロ二量体複合体、コアタンパク質、及び免疫原性は保持するが酵素活性を除去するために、場合により改変され得る非構造タンパク質、又はそれらの抗原の断片の1つ又は複数を含む。
【0300】
ラブドウイルス:ウイルス抗原は、ラブドウイルス、例えば、リッサウイルス(狂犬病ウイルス)及びベシクロウイルス(VSV)に由来するものを含むがそれらに限定されない。ラブドウイルス抗原は、糖タンパク質(G)、核タンパク質(N)、ラージタンパク質(L)、非構造タンパク質(NS)から選択され得る。
【0301】
カリシウイルス科:ウイルス抗原は、カシリウイルス科、例えば、ノーウォークウイルス、並びにノーウォーク様ウイルス、例えば、ハワイウイルス及びスノーマウンテンウイルスに由来するものを含むがそれらに限定されない。
【0302】
コロナウイルス:ウイルス抗原は、コロナウイルス、SARS、ヒト呼吸器コロナウイルス、ニワトリ伝染性気管支炎(IBV)、マウス肝炎ウイルス(MHV)、及びブタ伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)に由来するものを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、コロナウイルス抗原が、スパイク(S)、エンベロープ(E)、基質(M)、ヌクレオカプシド(N)、及びヘマグルチニン-エステラーゼ糖タンパク質(HE)から選択される。特定の実施形態では、コロナウイルス抗原が、SARSウイルスに由来する。特定の実施形態では、コロナウイルスが、国際公開第04/92360号(特許文献1)に記載されるSARSウイルス抗原に由来する。
【0303】
レトロウイルス:ウイルス抗原は、レトロウイルス、例えば、オンコウイルス、レンチウイルス又はスプマウイルスに由来するものを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、オンコウイルス抗原が、HTLV-1、HTLV-2、又はHTLV-5に由来する。特定の実施形態では、レンチウイルス抗原が、HIV-1又はHIV-2に由来する。特定の実施形態では、抗原が、HIV-1亜型(又はクレード)に由来し、HIV-1亜型(又はクレード)A、B、C、D、F、G、H、J、K、Oを含むがそれらに限定されない。他の実施形態では、抗原が、HIV-1組換え型流行株(CRF)に由来し、A/B、A/E、A/G、A/G/I等を含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、レトロウイルス抗原が、gag、pol、env、tax、tat、rex、rev、nef、vif、vpu、及びvprから選択される。特定の実施形態では、HIV抗原が、gag(p24gag及びp55gag)、env(gp160及びgp41)、pol、tat、nef、rev vpu、ミニタンパク質(好ましくはp55 gag及びgp140v欠失型)から選択される。特定の実施形態では、HIVウイルス抗原が、以下の株、HIVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMN、HIV-1CM235、HIV-1US4、HIV-1 SF162、HIV-1TV1、HIV-1MJ4の1つ又は複数に由来する。特定の実施形態では、抗原が、内在性ヒトレトロウイルスに由来し、HERV-K(「old」HERV-K及び「new」HERV-K)を含むがそれらに限定されない。
【0304】
レオウイルス:ウイルス抗原は、レオウイルス、例えば、オルトレオウイルス、ロタウイルス、オルビウイルス、又はコルチウイルスに由来するものを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、レオウイルス抗原が、構造タンパク質λ1、λ2、λ3、μ1、μ2、σ1、σ2、若しくはσ3、又は非構造タンパク質σNS、μΝS、若しくはolsから選択される。特定の実施形態では、レオウイルス抗原が、ロタウイルスに由来する。特定の実施形態では、ロタウイルス抗原が、VP1、VP2、VP3、VP4(又は切断産物VP5及びVP8)、NSP1、VP6、NSP3、NSP2、VP7、NSP4、又はNSP5から選択される。特定の実施形態では、ロタウイルス抗原が、VP4(又は切断産物VP5及びVP8)及びVP7を含む。
【0305】
パルボウイルス:ウイルス抗原は、パルボウイルス、例えばパルボウイルスB19に由来するものを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、パルボウイルス抗原が、VP-1、VP-2、VP-3、NS-1、及びNS-2から選択される。特定の実施形態では、パルボウイルス抗原が、カプシドタンパク質VP1又はVP-2である。
【0306】
デルタ型肝炎ウイルス(HDV):ウイルス抗原は、HDV、特にHDVからのδ-抗原に由来するものを含むがそれらに限定されない。
【0307】
E型肝炎ウイルス(HEV):ウイルス抗原は、HEVに由来するものを含むがそれらに限定されない。
【0308】
G型肝炎ウイルス(HGV):ウイルス抗原は、HGVに由来するものを含むがそれらに限定されない。
【0309】
ヒトヘルペスウイルス:ウイルス抗原は、ヒトヘルペスウイルス、例えば、例に過ぎないが、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV7)、及びヒトヘルペスウイルス8(HHV8)に由来するものを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、ヒトヘルペスウイルス抗原が、最初期(immediate early)タンパク質(a)、初期タンパク質(β)、及び後期タンパク質(γ)から選択される。特定の実施形態では、HSV抗原が、HSV-1株又はHSV-2株に由来する。特定の実施形態では、HSV抗原が、糖タンパク質gB、gC、gD、及びgH、融合タンパク質(gB)、又は免疫逃避タンパク質(immune escape protein)(gC、gE、若しくはgl)から選択される。特定の実施形態では、VZV抗原が、コア、ヌクレオカプシド、テグメント、又はエンベロープタンパク質から選択される。生弱毒化VZVワクチンは、市販入手可能である。特定の実施形態では、EBV抗原が、初期抗原(EA)タンパク質、ウイルスカプシド抗原(VCA)、及び膜抗原(MA)の糖タンパク質から選択される。特定の実施形態では、CMV抗原が、カプシドタンパク質、エンベロープ糖タンパク質(例えば、gB及びgH)、並びにテグメントタンパク質から選択される。他の実施形態では、CMV抗原が、以下のタンパク質:pp65、IE1、gB、gD、gH、gL、gM、gN、gO、UL128、UL129、gUL130、UL150、UL131、UL33、UL78、US27、US28、RL5A、RL6、RL10、RL11、RL12、RL13、UL1、UL2、UL4、UL5、UL6、UL7、UL8、UL9、UL10、UL11、UL14、UL15A、UL16、UL17、UL18、UL22A、UL38、UL40、UL41A、UL42、UL116、UL119、UL120、UL121、UL124、UL132、UL147A、UL148、UL142、UL144、UL141、UL140、UL135、UL136、UL138、UL139、UL133、UL135、UL148A、UL148B、UL148C、UL148D、US2、US3、US6、US7、US8、US9、US10、US11、US12、US13、US14、US15、US16、US17、US18、US19、US20、US21、US29、US30、及びUS34Aの1つ又は複数から選択され得る。CMV抗原は更に、1つ又は複数のCMVタンパク質の融合物、例えば、例に過ぎないが、pp65/IE1であり得る(Reap等、Vaccine(2007)25:7441~7449頁(非特許文献10))。
【0310】
パポバウイルス:抗原は、パポバウイルス、例えば、パピローマウイルス及びポリオーマウイルスに由来するものを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、パピローマウイルスが、HPV血清型1、2、4、5、6、8、11、13、16、18、31、33、35、39、41、42、47、51、57、58、63、及び65を含む。特定の実施形態では、HPV抗原が、血清型6、11、16、又は18に由来する。特定の実施形態では、HPV抗原が、カプシドタンパク質(L1)及び(L2)、又はE1~E7、又はそれらの融合物から選択される。特定の実施形態では、HPV抗原が、ウイルス様粒子(VLP)へと調合される。特定の実施形態では、ポリオーマウイルス属ウイルスが、BKウイルス及びJKウイルスを含む。特定の実施形態では、ポリオーマウイルス抗原が、VP1、VP2、又はVP3から選択される。
【0311】
アデノウイルス:抗原は、アデノウイルスに由来するものを含む。特定の実施形態では、アデノウイルス抗原が、アデノウイルス血清型36(Ad-36)に由来する。特定の実施形態では、抗原が、Ad-36コートタンパク質をコードするタンパク質若しくはペプチド配列、又はその断片に由来する(国際公開第2007/120362号(特許文献2))。
【0312】
他の実施形態では、前記抗原が、細菌抗原である。
【0313】
本発明の関連での使用に適切な細菌抗原の例は、細菌に由来する、タンパク質、多糖、及びリポ多糖を含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、細菌抗原が、該細菌の生活環の少なくとも1段階の間、その表面に曝露されるエピトープを含む。細菌抗原は、好ましくは、複数の血清型にわたって保存されている。特定の実施形態では、細菌抗原が、以下に記載される細菌の1つ又は複数に由来する抗原、並びに以下で同定される特定抗原の例を含む。
【0314】
ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis):髄膜炎菌(N. meningitidis)抗原は、髄膜炎菌血清型、例えばA、C、W135、Y、X、又はBに由来する、タンパク質、糖(多糖又はリポオリゴ糖を含む)を含むがそれらに限定されない。髄膜炎菌タンパク質抗原の有用な組合せは、NHBA、fHbp、及び/又はNadA免疫原の1つ、2つ、又は3つを含む。
【0315】
ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae):ストレプトコッカス・ニューモニエ抗原は、ストレプトコッカス・ニューモニエからの、糖(多糖若しくはオリゴ糖を含む)及び/又はタンパク質を含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、糖抗原が、以下の肺炎球菌血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、及び/又は33Fの1つ又は複数から選択される。ワクチン又は免疫原性組成物は、複数の血清型、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23以上の血清型を含み得る。7価、9価、10価、11価、及び13価の結合型組合せ(conjugate combination)が、23価の非結合型組合せと同じく、当該分野ですでに公知である。例えば、10価の組合せは、血清型1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、及び23Fからの糖を含み得る。11価の組合せは更に、血清型3からの糖を含み得る。12価の組合せは、10価の混合物に、血清型6A及び19A;6A及び22F;19A及び22F;6A及び15B;19A及び15B;r22F及び15Bを添加し得る;13価の組合せは、11価の混合物に、血清型19A及び22F;8及び12F;8及び15B;8及び19A;8及び22F;12F及び15B;12F及び19A;12F及び22F;15B及び19A;15B及び22F等を添加し得る。特定の実施形態では、タンパク質抗原が、国際公開第98/18931号(特許文献3)、同第98/18930号(特許文献4)、米国特許第6,699,703号明細書(特許文献5)、同第6,800,744号明細書(特許文献6)、国際公開第97/43303号(特許文献7)、同第97/37026号(特許文献8)、同第02/079241号(特許文献9)、同第02/34773号(特許文献10)、同第00/06737号(特許文献11)、同第00/06738号(特許文献12)、同第00/58475号(特許文献13)、同第2003/082183号(特許文献14)、同第00/37105号(特許文献15)、同第02/22167号(特許文献16)、同第02/22168号(特許文献17)、同第2003/104272号(特許文献18)、同第02/08426号(特許文献19)、同第01/12219号(特許文献20)、同第99/53940号(特許文献21)、同第01/81380号(特許文献22)、同第2004/092209号(特許文献23)、同第00/76540号(特許文献24)、同第2007/116322号(特許文献25)、LeMieux等、Infect. Imm.(2006)74:2453~2456頁(非特許文献11)、Hoskins等、J. Bacteriol.(2001)183:5709~5717頁(非特許文献12)、Adamou等、Infect. Immun.(2001)69(2):949~958頁(非特許文献13)、Briles等、J. Infect. Dis.(2000)182:1694~1701頁(非特許文献14)、Talkington等、Microb. Pathog.(1996)21(1):17~22頁(非特許文献15)、Bethe等、FEMS Microbiol. Lett.(2001)205(1):99~104頁(非特許文献16)、Brown等、Infect. Immun.(2001)69:6702~6706頁(非特許文献17)、Whalen等、FEMS Immunol. Med. Microbiol.(2005)43:73~80頁(非特許文献18)、Jomaa等、Vaccine(2006)24(24):5133~5139頁(非特許文献19)中で同定されたタンパク質から選択され得る。他の実施形態では、ストレプトコッカス・ニューモニエタンパク質が、ポリヒスチジントライアドファミリー(PhtX)、コリン結合タンパク質ファミリー(CbpX)、CbpXトランケート、LytXファミリー、LytXトランケート、CbpXトランケート-LytXトランケートキメラタンパク質、ニューモリシン(Ply)、PspA、PsaA、Spl28、SpIOl、Spl30、Spl25、Spl33、肺炎球菌線毛サブユニットから選択され得る。
【0316】
ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌):A群連鎖球菌抗原は、国際公開第02/34771号(特許文献26)又は同第2005/032582号(特許文献27)で同定されたタンパク質(GAS40を含む)、GAS Mタンパク質の断片の融合(国際公開第02/094851号(特許文献28)、並びにDale、Vaccine(1999)17:193~200頁(非特許文献20)及びDale、Vaccine14(10):944~948頁(非特許文献21)に記載されるものを含む)、フィブロネクチン結合タンパク質(Sfbl)、連鎖球菌ヘム関連タンパク質(Shp)、並びにストレプトリジンS(SagA)を含むがそれらに限定されない。
【0317】
モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis):モラクセラ抗原は、国際公開第02/18595号(特許文献29)及び同第99/58562号(特許文献30)で同定された抗原、外膜タンパク質抗原(HMW-OMP)、C-抗原、及び/又はLPSを含むがそれらに限定されない。
【0318】
ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis):パータシス抗原は、百日咳菌(B. pertussis)からの百日咳トキソイド(PT)及び糸状ヘマグルチニン(FHA)、場合により更にパータクチン及び/又は凝集原2及び3との組合せを含むがそれらに限定されない。
【0319】
バークホルデリア(Burkholderia):バークホルデリア抗原は、鼻疽菌(バークホルデリア・マレイ(Burkholderia mallei))、類鼻疽菌(バークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei))、及びバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)を含むがそれらに限定されない。
【0320】
スタフィロコッカス・アウレウス:黄色ブドウ球菌抗原は、黄色ブドウ球菌からの多糖及び/又はタンパク質を含むがそれらに限定されない。黄色ブドウ球菌多糖は、場合により無毒性組換え緑膿菌外毒素Aに結合した5型及び8型莢膜多糖(CP5及びCP8)、例えばStaphVAX(商標)、336型多糖(336PS)、多糖細胞間接着(PIA、PNAGとしても知られる)を含むがそれらに限定されない。黄色ブドウ球菌タンパク質は、表面タンパク質、インベイシン(ロイコシジン、キナーゼ、ヒアルロニダーゼ)、食細胞貪食(phagocytic engulfment)を阻害する表面因子(莢膜、プロテインA)、カロテノイド、カタラーゼ産生、プロテインA、コアグラーゼ、凝固因子、及び/又は真核細胞膜を溶解する(場合により解毒された)膜傷害毒素(溶血素、ロイコトキシン、ロイコシジン)に由来する抗原を含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、黄色ブドウ球菌抗原が、国際公開第02/094868号(特許文献31)、同第2008/019162号(特許文献32)、同第02/059148号(特許文献33)、同第02/102829号(特許文献34)、同第03/011899号(特許文献35)、同第2005/079315号(特許文献36)、同第02/077183号(特許文献37)、同第99/27109号(特許文献38)、同第01/70955号(特許文献39)、同第00/12689号(特許文献40)、同第00/12131号(特許文献41)、同第2006/032475号(特許文献42)、同第2006/032472号(特許文献43)、同第2006/032500号(特許文献44)、同第2007/113222号(特許文献45)、同第2007/113223号(特許文献46)、同第2007/113224号(特許文献47)で同定されたタンパク質から選択され得る。他の実施形態では、黄色ブドウ球菌抗原が、IsdA、IsdB、IsdC、SdrC、SdrD、SdrE、ClfA、ClfB、SasF、SasD、SasH(AdsA)、Spa、EsaC、EsxA、EsxB、Emp、HlaH35L、CP5、CP8、PNAG、336PSから選択され得る。
【0321】
表皮ブドウ球菌:表皮ブドウ球菌抗原は、粘液結合(slime-associated)抗原(SAA)を含むがそれらに限定されない。
【0322】
クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)(破傷風):破傷風抗原は、破傷風トキソイド(TT)を含むがそれらに限定されない。
【0323】
クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens):抗原は、クロストリジウム・パーフリンジェンスからのエプシロン毒素を含むがそれらに限定されない。
【0324】
クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)(ボツリヌス中毒):ボツリヌス中毒抗原は、ボツリヌス菌(C. botulinum)由来のものを含むがそれらに限定されない。
【0325】
コリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheriae)(ジフテリア):ジフテリア抗原は、好ましくは解毒されたジフテリア毒素、例えばCRM197を含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、ジフテリアトキソイドを、キャリアタンパク質として使用する。
【0326】
ヘモフィルス・インフルエンザB型(Haemophilus influenzae B)(Hib):Hib抗原は、Hib糖抗原を含むがそれらに限定されない。Hib抗原は、結合され得る。
【0327】
緑膿菌:シュードモナス抗原は、エンドトキシンA、Wzzタンパク質、緑膿菌LPS、PAO1(O5血清型)から単離されたLPS、及び/又は外膜タンパク質F(OprF)を含む外膜タンパク質、を含むがそれらに限定されない。
【0328】
ブルセラ(Brucella):ブルセラに由来する細菌抗原は、ウシ流産菌(B. abortus)、イヌ流産菌(B. canis)、ヤギ流産菌(B. melitensis)、キネズミ流産菌(B. neotomae)、ヒツジ流産菌(B. ovis)、ブタ流産菌(B. suis)、及びブルセラ・ピンニペディア(B. pinnipediae)を含むがそれらに限定されない。
【0329】
フランシセラ(Francisella):フランシセラに由来する細菌抗原は、F.ノヴィシダ(F. novicida)、F.フィロミラジア(F. philomiragia)、及び野兎病菌(F. tularensis)を含むがそれらに限定されない。
【0330】
ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌):B群連鎖球菌抗原は、国際公開第02/34771号(特許文献26)、同第03/093306号(特許文献48)、同第04/041157号(特許文献49)、同第2005/002619号(特許文献50)で同定されたタンパク質抗原又は糖抗原を含むがそれらに限定されない(タンパク質GBS80、GBS104、GBS276、及びGBS322を含み、血清型Ia、Ib、Ia/c、II、III、IV、V、VI、VII、及びVIIIに由来する糖抗原を含む)。
【0331】
ナイセリア・ゴノロエ(Neiserria gonorrhoeae):淋菌抗原は、Por(又はポリン)タンパク質、例えばPorB(Zhu等、Vaccine(2004)22:660~669頁(非特許文献22)を参照)、トランスフェリン結合タンパク質、例えば、TbpA及びTbpB(Price等、Infection and Immunity(2004)71(1):277~283頁(非特許文献23)を参照)、混濁タンパク質(opacity protein)(例えばOpa)、還元修飾可能タンパク質(reduction-modifiable protein)(Rmp)、及び外膜小胞(OMV)調製物(Plante等、J Infectious Disease(2000)182:848~855頁(非特許文献24)を参照、更に例えば、国際公開第99/24578号(特許文献51)、同第99/36544号(特許文献52)、同第99/57280号(特許文献53)、同第02/079243号(特許文献54)も参照)を含むがそれらに限定されない。
【0332】
クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis):クラミジア・トラコマチス抗原は、血清型A、B、Ba、及びC(トラコーマの病原体(agent)、失明の原因)、血清型L1、L2、及びL3(鼠径リンパ肉芽腫症と関連)、並びに血清型D~Kに由来する抗原を含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、クラミジア・トラコマチス抗原が、国際公開第00/37494号(特許文献55)、同第03/049762号(特許文献56)、同第03/068811号(特許文献57)、又は同第05/002619号(特許文献58)で同定された抗原を含み、PepA(CT045)、LcrE(CT089)、ArtJ(CT381)、DnaK(CT396)、CT398、OmpH様(CT242)、L7/L12(CT316)、OmcA(CT444)、AtosS(CT467)、CT547、Eno(CT587)、HrtA(CT823)、及びMurG(CT761)を含むがそれらに限定されない。
【0333】
トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)(梅毒):梅毒抗原は、TmpA抗原を含むがそれに限定されない。
【0334】
ヘモフィルス・デュクレイ(Haemophilus ducreyi)(軟性下疳の原因):デュクレイ抗原は、外膜タンパク質(DsrA)を含むがそれに限定されない。
【0335】
エンテロコッカス・フェカリス又はエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium):抗原は、三糖リピート、又は腸球菌由来の他の抗原を含むがそれらに限定されない。
【0336】
ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori):ピロリ菌抗原は、CagA、VacA、NAP、HopX、HopY、及び/又はウレアーゼ抗原を含むがそれらに限定されない。
【0337】
スタフィロコッカス・サプロフィチカス(Staphylococcus saprophyticus):抗原は、腐性ブドウ球菌抗原の160kDaヘマグルチニンを含むがそれに限定されない。
【0338】
エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica):抗原は、LPSを含むがそれらに限定されない。
【0339】
大腸菌:大腸菌抗原は、腸内毒素原性大腸菌(ETEC)、腸管凝集性大腸菌(EAggEC)、分散接着性(diffusely adhering)大腸菌(DAEC)、腸管病原性大腸菌(EPEC)、腸管外病原性大腸菌(ExPEC)、及び/又は腸管出血性大腸菌(EHEC)に由来し得る。ExPEC抗原は、アクセサリ定着因子(orf3526)、orf353、細菌Ig様ドメイン(1群)タンパク質(orf405)、orfl364、NodTファミリー外膜因子リポタンパク質排出輸送体(orfl767)、gspK(orf3515)、gspJ(orf3516)、tonB依存性シデロホア受容体(orf3597)、線毛タンパク質(orf3613)、upec-948、upec-1232、1型線毛タンパク質のA鎖前駆体(upec-1875)、yap Hホモログ(upec-2820)、及び溶血素A(recp-3768)を含むがそれらに限定されない。
【0340】
バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)(炭疽):炭疽菌抗原は、A成分(致死因子(LF)及び浮腫因子(EF))を含むがそれらに限定されず、その両者とも、防御抗原(PA)として知られる共通のB成分を共有し得る。特定の実施形態では、炭疽菌(B. anthracis)抗原が、場合により解毒されている。
【0341】
エルシニア・ペスチス(Yersinia pestis)(ペスト):ペスト抗原は、F1莢膜抗原、LPS、エルシニア・ペスチスV抗原を含むがそれらに限定されない。
【0342】
マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis):結核抗原は、リポタンパク質、LPS、BCG抗原、85B抗原(Ag85B)の融合タンパク質、ESAT-6、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mtb)イソクエン酸デヒドロゲナーゼ関連抗原、及びMPT51抗原を含むがそれらに限定されない。
【0343】
リケッチア(Rickettsia):抗原は、外膜タンパク質A及び/又はB(OmpB)を含む外膜タンパク質、LPS、表面タンパク質抗原(SPA)を含むがそれらに限定されない。
【0344】
リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes):細菌抗原は、リステリア・モノサイトゲネスに由来するものを含むがそれらに限定されない。
【0345】
クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae):抗原は、国際公開第02/02606号(特許文献59)で同定されたものを含むがそれらに限定されない。
【0346】
ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae):抗原は、プロテイナーゼ抗原、LPS、特に、ビブリオ・コレラエIIのリポ多糖、O1稲葉O-特異的多糖、コレラ菌O139、IEM108ワクチンの抗原、及び閉鎖帯毒素(Zot)を含むがそれらに限定されない。
【0347】
サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)(腸チフス):抗原は、莢膜多糖、好ましくはコンジュゲート(Vi、即ちvax-TyVi)を含むがそれらに限定されない。
【0348】
ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)(ライム病):抗原は、リポタンパク質(例えば、OspA、OspB、OspC、及びOspD)、他の表面タンパク質、例えば、OspE関連タンパク質(Erp)、デコリン結合タンパク質(例えばDbpA)、並びに抗原的に可変のVIタンパク質、例えば、P39及びP13(膜内在性タンパク質)と関連する抗原、VlsE抗原変異タンパク質を含むがそれらに限定されない。
【0349】
ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis):抗原は、ジンジバリス菌外膜タンパク質(OMP)を含むがそれに限定されない。
【0350】
クレブシエラ(Klebsiella):抗原は、OMP Aを含むOMP、又は場合により破傷風トキソイドに結合した多糖、を含むがそれらに限定されない。
【0351】
本発明の関連で使用される他の細菌抗原は、前記のいずれかの莢膜抗原、多糖抗原、又はタンパク質抗原を含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、本発明の関連で使用される細菌抗原が、グラム陰性菌に由来するが、他の実施形態では、グラム陽性菌に由来する。特定の実施形態では、本発明の関連で使用される細菌抗原が、好気性菌に由来するが、他の実施形態では、嫌気性菌に由来する。
【0352】
他の実施形態では、前記抗原が、真菌抗原である。
【0353】
本発明の関連で使用される真菌抗原の例は、以下に記載される真菌の1つ又は複数に由来するものを含むがそれらに限定されない。
【0354】
真菌抗原は、皮膚糸状菌に由来し得、有毛表皮糸状菌(エピデルモフィトン・フロッコーズム(Epidermophyton floccosum))、オーズアン小胞子菌(ミクロスポルム・オーズイニイ(Microsporum audouini))、イヌ小胞子菌(ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis))、ミクロスポルム・ジストルツム(Microsporum distortum)、ミクロスポルム・エクイナム(Microsporum equinum)、ミクロスポルム・ジプサム(Microsporum gypsum)、ミクロスポルム・ナヌム(Microsporum nanum)、渦状白癬菌(トリコフィトン・コンセントリクム(Trichophyton concentricum))、トリコフィトン・エクイヌム(Trichophyton equinum)、トリコフィトン・ガリネ(Trichophyton gallinae)、トリコフィトン・ジプセウム(Trichophyton gypseum)、トリコフィトン・メグニニ(Trichophyton megnini)、毛瘡白癬菌(トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes))、トリコフィトン・クインケアナム(Trichophyton quinckeanum)、紅色白癬菌(トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum))、トリコフィトン・シェーンライニ(Trichophyton schoenleinii)、トリコフィトン・トンズランス(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン・ベルコースム(Trichophyton verrucosum)、ベルコスム・アルブム変種(T. verrucosum var. album)、ジスコイデス変種(var. discoides)、オクラセイム変種(var. ochraceum)、紫色白癬菌(トリコフィトン・ビオラセウム(Trichophyton violaceum))、及び/又はトリコフィトン・ファビホルメ(Trichophyton faviforme)を含む。
【0355】
真菌抗原は更に、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス・シドウィ(Aspergillus sydowii)、アスペルギルス・フラバルス(Aspergillus flavarus)、アスペルギルス・グラウクス(Aspergillus glaucus)、ブラストシゾミセス・カピタツス(Blastoschizomyces capitatus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・エノラーゼ(Candida enolase)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・ステラトイデア(Candida stellatoidea)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・パラクエセイ(Candida parakwsei)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・シュードトロピカリス(Candida pseudotropicalis)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondii)、クラドスポリム・カリオニイ(Cladosporium carrionii)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ゲオトリクム・クラバタム(Geotrichum clavatum)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、微胞子虫(Microsporidia)、エンセファリトゾーン属(Encephalitozoon)種、セプタタ・インテスティナリス(Septata intestinalis)、及びエンテロシトゾーン・ビエヌーシ(Enterocytozoon bieneusi)に由来し得、あまり一般的でないのは、ブラキオラ属(Brachiola)種、ミクロスポリジウム属(Microsporidium)種、ノゼマ属(Nosema)種、プレイストフォラ属(Pleistophora)種、トラキプレイストフォラ属(Trachipleistophora)種、ビタフォルマ属(Vittaforma)種、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、ピシウム・インシジオスム(Pythium insidiosum)、ピチロスポルム・オバーレ(Pityrosporum ovale)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、サッカロミセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)、スケドスポリウム・アピオスペルムム(Scedosporium apiospermum)、スポロトリクス・シェンキィ(Sporothrix schenckii)、トリコスポロン・ベイゲリ(Trichosporon beigelii)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、ペニシリウム・マルネッフェイ(Penicillium marneffei)、マラセチア属(Malassezia)種、フォンセカエア属(Fonsecaea)種、ワンギエラ属(Wangiella)種、スポロトリクス属(Sporothrix)種、バシジオボラス属(Basidiobolus)種、コニディオボラス属(Conidiobolus)種、クモノスカビ属(Rhizopus)種、ムコール属(Mucor)種、アブシディア属(Absidia)種、モルチエレラ属(Mortierella)種、クニンガメラ属(Cunninghamella)、サクセネア属(Saksenaea)種、アルテルナリア属(Alternaria)種、クルブラリア属(Curvularia)種、ヘルミントスポリウム属(Helminthosporium)種、フサリウム属(Fusarium)種、アスペルギルス属(Aspergillus)種、ペニシリウム属(Penicillium)種、モニリニア属(Monilinia)種、リゾクトニア属(Rhizoctonia)種、ペシロミセス属(Paecilomyces)種、ピトミケス属(Pithomyces)種、及びクラドスポリウム属(Cladosporium)種である。
【0356】
例えば、真菌抗原は、カンジダ菌、例えばC.アルビカンスに対する免疫応答を誘発し得る。
【0357】
他の実施形態では、前記抗原が、自己抗原である。
【0358】
本発明の関連で、用語「自己抗原」は、対象に生まれつき備わっており、且つ自己免疫疾患の発病に関与し得る、免疫原性の抗原又はエピトープを指す。
【0359】
いくつかの実施形態では、自己抗原が、中枢神経系(CNS)抗原である。いくつかの実施形態では、自己抗原が、多発性硬化症関連抗原、糖尿病関連抗原、リウマチ性関節炎関連抗原、心筋炎関連自己抗原、又は甲状腺炎関連抗原である。
【0360】
例示的な自己抗原は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2016/0022788号明細書(特許文献60)に開示される。
【0361】
いくつかの実施形態では、自己抗原が、多発性硬化症関連抗原である。いくつかの実施形態では、自己抗原が、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、アルファB-クリスタリン、S100ベータ、若しくはプロテオリピドタンパク質(PLP)の抗原ペプチドであるか、又はミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、アルファB-クリスタリン、S100ベータ、若しくはプロテオリピドタンパク質(PLP)に由来する。
【0362】
いくつかの実施形態では、自己抗原が、糖尿病関連抗原である。いくつかの実施形態では、自己抗原が、インスリン、クロモグラニンA、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD1;GAD67)、グルタミン酸脱炭酸酵素2(GAD2;GAD65)、及び膵島特異的グルコース-6-ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質、及びそれらの組合せから選択される。これらの抗原の抗原性断片及び抗原性誘導体も意図される。いくつかの実施形態では、抗原が、プロインスリンであり得る。
【0363】
いくつかの実施形態では、自己抗原が、リウマチ性関節炎関連抗原である。いくつかの実施形態では、該リウマチ性関節炎関連自己抗原が、ペプチド(Q/R)(K/R)RAAであり得る。いくつかの実施形態では、該関節炎関連自己抗原が、II型コラーゲン、又はその断片であり得る。
【0364】
いくつかの実施形態では、自己抗原が、心筋炎関連自己抗原である。いくつかの実施形態では、該心筋炎関連自己抗原が、ミオシン又は抗原性断片又は抗原性誘導体である。いくつかの実施形態では、抗原が、ヒトミオシン中に含有されるペプチドであり得る。いくつかの実施形態では、抗原が、a-ミオシン内に含有されるペプチドであり得る。
【0365】
いくつかの実施形態では、自己抗原が、甲状腺炎関連自己抗原である。いくつかの実施形態では、自己抗原が、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、チログロブリン、又はペンドリンから選択される。
【0366】
他の実施形態では、前記抗原が、アレルゲンである。
【0367】
「アレルゲン」は、素因を有する個体においてIgE抗体の産生を誘発する物質、通常はタンパク質と定義される。同様の定義が、以下の参考文献:Clin. Exp. Allergy、第26号、494~516頁(1996)(非特許文献25);Mol. Biol. of Allergy and Immunology、R. Bush編、Immunology and Allergy Clinics of North American Series(1996年8月)(非特許文献26)において提示される。特定の一実施形態では、抗原が、タンパク質アレルゲンである、即ち、アレルギー応答を誘発する可能性が高い任意のアミノ酸鎖であり、約6~20個のアミノ酸の短鎖ペプチド、ポリペプチド、又は完全タンパク質(full protein)を含む。
【0368】
アレルゲンの非限定的な例は、花粉アレルゲン(例えば、樹木、ハーブ、草及びイネ科の草の花粉アレルゲン)、昆虫アレルゲン(例えば、吸入性アレルゲン、唾液アレルゲン、及び毒液アレルゲン、例えば、ゴキブリアレルゲン及びユスリカアレルゲン、ハチ毒アレルゲン)、ダニアレルゲン、動物の毛アレルゲン及びフケアレルゲン(例えばイヌ、ネコ、ウマ、ラット、マウス等から)、並びに食物アレルゲンを含む。
【0369】
例えば、タンパク質アレルゲンは、ヒョウダニ(Dermatophagoides)属のタンパク質アレルゲン;ネコ(Felis)属のタンパク質アレルゲン;ブタクサ(Ambrosia)属のタンパク質アレルゲン;ドクムギ(Lolium)属のタンパク質アレルゲン;スギ(Cryptomeria)属のタンパク質アレルゲン;アルテルナリア(Alternaria)属のタンパク質アレルゲン;ハンノキ(Alder)属のタンパク質アレルゲン;カバノキ(Betula)属のタンパク質アレルゲン;ブロミア(Blomia)属のタンパク質アレルゲン;コナラ(Quercus)属のタンパク質アレルゲン;オリーブ(Olea)属のタンパク質アレルゲン;ヨモギ(Artemisia)属のタンパク質アレルゲン;オオバコ(Plantago)属のタンパク質アレルゲン;パリエタリア(Parietaria)属のタンパク質アレルゲン;イヌ(Canine)属のタンパク質アレルゲン;チャバネゴキブリ(Blattella)属のタンパク質アレルゲン;ミツバチ(Apis)属のタンパク質アレルゲン;イトスギ(Cupressus)属のタンパク質アレルゲン;クロベ(Thuya)属のタンパク質アレルゲン;ヒノキ(Chamaecyparis)属のタンパク質アレルゲン;ワモンゴキブリ(Periplaneta)属のタンパク質アレルゲン;カモジグサ(Agropyron)属のタンパク質アレルゲン;ライムギ(Secale)属のタンパク質アレルゲン;コムギ(Triticum)属のタンパク質アレルゲン;ローズヒップ(Cynorhodon)属のタンパク質アレルゲン;ビャクシン(Juniperus)属のタンパク質アレルゲン;カモガヤ(Dactylis)属のタンパク質アレルゲン;ウシノケグサ(Festuca)属のタンパク質アレルゲン;イチゴツナギ(Poa)属のタンパク質アレルゲン;カラスムギ(Avena)属のタンパク質アレルゲン;シラゲガヤ(Holcus)属のタンパク質アレルゲン;ハルガヤ(Anthoxanthum)属のタンパク質アレルゲン;オオカニツリ(Arrhenatherum)属のタンパク質アレルゲン;ヌカボ(Agrostis)属のタンパク質アレルゲン;アワガエリ(Phleum)属のタンパク質アレルゲン;クサヨシ(Phalaris)属のタンパク質アレルゲン;スズメノヒエ(Paspalum)属のタンパク質アレルゲン;及びモロコシ(Sorghum)属のタンパク質アレルゲンからなる群から選択され得る。
【0370】
前記の属のいくつかに由来する様々な公知のタンパク質アレルゲンの例は、ベチューラ(ヴェルコーサ)(Betula (verrucosa))Bet v I;Bet v II;ブロミアBlo t I;Blo t III;Blo t V;Blo t XII;ローズヒップCyn d I;焼けヒョウダニ(Dermatophagoides (pteronyssinus))又はコナヒョウダニ(Dermatophagoides (farinae))Der p I;Der p II;Der p III;Der p VII;Der f I;Der f II;Der f III;Der f VII;イエネコ(Felis(domesticus))Fel d I;ブタクサ(Ambrosia (artemiisfolia))Amb a I.1;Amb a I.2;Amb a I.3;Amb a I.4;Amb a II;ホソムギ(Lollium (perenne))Lol p I;Lot p II;Lol p III;Lot p IV;Lol p IX(Lol p V又はLol p Ib);スギ(クリプトメリア・ヤポニカ(Cryptomeria (japonica))Cry j I;Cry j II;イヌ(Canis (familiaris))Can f I;Can f II;ユニペルス・サビノイデス(Juniperus (sabinoides))又はエンピツビャクシン(Juniperus (virginiana))Jun s I;Jun v I;シダーウッドテキサス(Juniperus (ashei))Jun a I;Jun a II;カモガヤ(Dactylis (glomerata))Dac g I;Dac g V;ケンタッキーブルーグラス(Poa (pretensis))Poa p I;Phl p I;Phl p V;Phl p VI、及びソルガム(ハレペンシス)(Sorghum (halepensis))Sor h Iを含む。
【0371】
食物アレルゲンは、ミルク、乳製品、卵、マメ科植物(ピーナッツ及びダイズ)、ナッツ類、穀草(例えばコムギ)、アブラナ科(例えばカラシ)、甲殻類、魚、及び軟体類に由来し得る。特に、食物アレルゲンは、オボアルブミン又はグルテンであり得る。
【0372】
本発明は更に、前記で定義した抗原、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、自己抗原、アレルゲン、若しくはグラフト特異的抗原をコードする核酸、を含む前記で定義したDNAベクター、を含むワクチン及び/又は免疫原性組成物及び/又は免疫療法用組成物、又は前記DNAベクター;及び場合によりアジュバントを含む操作型アクネ菌を含む。
【0373】
ワクチン接種用の任意の従来型又は探索的、合成又は生物的なアジュバントが使用可能であり、易熱性毒素(LT)、コレラ毒素(CT)、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、重合リポソーム、変異体毒素、プロバイオティクス細菌、オリゴヌクレオチド、RNA、siRNA、DNA、脂質を含む。
【0374】
本発明は更に、がんの防止及び/又は処置を必要とする対象において、がんを防止及び/又は処置する方法であって、前記で定義した腫瘍抗原をコードする核酸を含むDNAベクターの、又は前記DNAベクターを含む操作型アクネ菌の治療上又は予防上効率良い量(efficient amount)を、前記対象に投与する工程を含む方法を含む。本発明は更に、対象においてがんを防止及び/又は処置する方法に用いる、前記で定義した腫瘍抗原をコードする核酸を含むDNAベクター、若しくは前記DNAベクターを含む操作型アクネ菌に関する。
【0375】
本明細書で使用する用語「がん」は、調節解除された又は無制御の細胞増殖を特徴とする、悪性腫瘍を含むある種の過剰増殖性疾患を意味する。実質的にあらゆる組織のがんが公知である。がんの例は、癌、リンパ腫、芽体、肉腫、及び白血病、又はリンパ球系腫瘍を含むがそれらに限定されない。そのようながんの特定の例は後述され、扁平上皮がん(例えば、上皮性扁平上皮がん(epithelial squamous cell cancer))、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、及び肺扁平上皮がんを含む)、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がんを含む胃がん、膵がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん、前立腺がん、甲状腺がん、肝癌、並びに頭頸部がんを含む。用語「がん」は、原発性の悪性細胞又は腫瘍(例えば、その細胞が、対象の身体の中で、原発の悪性腫瘍又は腫瘍の部位と異なる部位に遊走していないもの)、及び二次性の悪性細胞又は腫瘍(例えば、転移、原発腫瘍の部位と異なる二次部位への、悪性細胞又は腫瘍細胞の遊走から生じるもの)を含む。
【0376】
用語「がん」は、「過剰細胞増殖」又は「細胞増殖性疾患」とも呼ばれ得る、より幅広い用語「異常細胞増殖」の範囲内に含まれる。異常細胞増殖と関連する疾患の例は、転移性腫瘍、悪性腫瘍、良性腫瘍、がん、前がん、過形成、いぼ、及びポリープ、並びに非がん性状態、例えば、良性黒色腫、良性軟骨腫、良性前立腺肥大、ほくろ、異形成母斑、異形成、過形成、及び表皮層内で起こる他の細胞増殖を含む。前がんのクラスは、後天性の小型又は顕微鏡的前がん、核異型を有する後天性大型病変、がんへと進行する遺伝性過形成性症候群と共に起こる前駆病変、並びに後天性のびまん性過形成及びびまん性化生を含む。小型前がん又は顕微鏡的前がんの例は、HGSIL(子宮頸部の高度扁平上皮内病変)、AIN(肛門上皮内腫瘍)、声帯の異形成、(結腸の)異常腺窩、PIN(前立腺上皮内腫瘍)を含む。核異型を有する後天性大型病変の例は、管状腺腫、AILD(異タンパク症を伴う血管免疫芽球性リンパ節症)、異型性髄膜腫、胃ポリープ、大局面型類乾癬、骨髄異形成、乳頭状移行上皮癌、芽球増加を伴う不応性貧血、及びシュナイダー乳頭腫を含む。
【0377】
本発明は更に、ウイルス感染の防止及び/又は処置を必要とする対象において、がんを防止及び/又は処置する方法であって、前記で定義したウイルス抗原をコードする核酸を含むDNAベクターの、又は前記DNAベクターを含む操作型アクネ菌の治療上又は予防上効率良い量を、前記対象に投与する工程を含む方法を含む。本発明は更に、対象においてウイルス感染を防止及び/又は処置する方法に用いる、前記で定義したウイルス抗原をコードする核酸を含むDNAベクター、若しくは前記DNAベクターを含む操作型アクネ菌に関する。
【0378】
前記実施形態では、前記抗原が、好ましくは、免疫応答、特に、前記抗原に対して特異的な免疫応答の活性化又は上昇を誘導する。
【0379】
ウイルス感染の特定例は、サイトメガロウイルス(CMV)肺炎、腸炎及び網膜炎;エプスタイン・バーウイルス(EBV)リンパ増殖性疾患;水痘/帯状疱疹(水痘帯状疱疹ウイルス、VZVが原因);HSV-1及び-2粘膜炎;HSV-6脳炎、BK-ウイルス出血性膀胱炎;ウイルス性インフルエンザ;呼吸器合抱体ウイルス(RSV)による肺炎;AIDS(HIVが原因);及び肝炎A、B又はCを含むがそれらに限定されない。ウイルス感染の更なる例は、レトロウイルス科;ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カリシウイルス科((例えば、胃腸炎の原因株);トガウイルス科(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(例えば、デングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱ウイルス);コロナウイルス科(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えばエボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合抱体ウイルス);オルトミクソウイルス科(例えばインフルエンザウイルス);ブニヤウイルス科(例えば、ハンタンウイルス、ブニヤウイルス、フレボウイルス、及びナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オルビウイルス、及びロタウイルス);ビマウイルス科(Bimaviridae);ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(たいていのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)1及びHSV-2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス);ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);及びイリドウイルス科(例えばアフリカブタコレラウイルス);及び未分類ウイルス(例えば、海綿状脳症の病原因子(etiological agent)、デルタ型肝炎の因子(B型肝炎ウイルスの欠陥サテライトと思われる)、非A型肝炎、非B型肝炎の因子(クラス1=内部(intemally)伝播;クラス2=非経口伝播(即ち肝炎C));ノーウォークウイルス、及びノーウォーク関連ウイルス、及びアストロウイルスが原因の感染を含む。
【0380】
本発明は更に、細菌感染の防止及び/又は処置を必要とする対象において、細菌感染を防止及び/又は処置する方法であって、前記で定義した細菌抗原をコードする核酸を含むDNAベクターの、又は前記DNAベクターを含む操作型アクネ菌の治療上又は予防上効率良い量を、前記対象に投与する工程を含む方法を含む。本発明は更に、対象において細菌感染を防止及び/又は処置する方法に用いる、前記で定義した細菌抗原をコードする核酸を含むDNAベクター、若しくは前記DNAベクターを含む操作型アクネ菌に関する。
【0381】
前記実施形態では、前記抗原が、好ましくは、免疫応答、特に、前記抗原に対して特異的な免疫応答の活性化又は上昇を誘導する。
【0382】
細菌感染の例は、ヘリコバクター・ピロリ、ボレリア・ブルグドルフェリ、レジオネラ・ニューモフィラ、マイコバクテリア(Mycobacteria)種(例えば、結核菌(M. tuberculosis)、M.アビウム(avium)、M.イントラセルラーレ(intracellulare)、カンサシ菌(M. kansasii)、M.ゴルドナエ(gordonae))、スタフィロコッカス・アウレウス、ナイセリア・ゴノロエ、ナイセリア・メニンギティディス、リステリア・モノサイトゲネス、ストレプトコッカス・ピオゲネス(A群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・アガラクチア(B群連鎖球菌)、ストレプトコッカス(ビリダンス群)、ストレプトコッカス・フェカリス、ストレプトコッカス・ボビス、ストレプトコッカス(嫌気性種)、ストレプトコッカス・ニューモニエ、病原性カンピロバクター種、エンテロコッカス種、インフルエンザ菌(ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae))、バチルス・アントラシス、コリネバクテリウム・ジフテリア、コリネバクテリウム種、ブタ丹毒菌(エリジペロスリックス・ルジオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae))、クロストリジウム・パーフリンジェンス、クロストリジウム・テタニ、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、クレブシエラ・ニューモニエ、パスツレラ・マルトシダ、バクテロイデス(Bacteroides)種、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバチルス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、トレポネーマ・パリダム、トレポネーマ・ペルテニュ(Treponema pertenue)、レプトスピラ、及びアクチノミセス・イスラエリー(Actinomyces israelii)が原因の感染を含むがそれらに限定されない。
【0383】
本発明は更に、真菌感染の防止及び/又は処置を必要とする対象において、真菌感染を防止及び/又は処置する方法であって、前記で定義した真菌抗原をコードする核酸を含むDNAベクターの、又は前記DNAベクターを含む操作型アクネ菌の治療上又は予防上効率良い量を、前記対象に投与する工程を含む方法を含む。本発明は更に、対象において真菌感染を防止及び/又は処置する方法に用いる、前記で定義した真菌抗原をコードする核酸を含むDNAベクター、若しくは前記DNAベクターを含む操作型アクネ菌に関する。
【0384】
前記の実施形態では、前記抗原が、好ましくは、免疫応答、特に、前記抗原に対して特異的な免疫応答の活性化又は上昇を誘導する。
【0385】
真菌感染の例は、アスペルギルス症;鵞口瘡(カンジダ・アルビカンスが原因);クリプトコッカス症(クリプトコッカスが原因);及びヒストプラズマ症を含むがそれらに限定されない。したがって、真菌感染の例は、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、ヒストプラズマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、ブラストミセス・デルマチチジス、クラミジア・トラコマチス、又はカンジダ・アルビカンスが原因の感染を含むがそれらに限定されない。
【0386】
本発明は更に、自己免疫疾患の防止及び/又は処置を必要とする対象において、自己免疫疾患を防止及び/又は処置する方法であって、前記で定義した自己抗原をコードする核酸を含むDNAベクターの、又は前記DNAベクターを含む操作型アクネ菌の治療上又は予防上効率良い量を、前記対象に投与する工程を含む方法を含む。本発明は更に、対象において自己免疫疾患を防止及び/又は処置する方法に用いる、前記で定義した自己抗原をコードする核酸を含むDNAベクター、若しくは前記DNAベクターを含む操作型アクネ菌に関する。
【0387】
前記実施形態では、前記抗原が、好ましくは、免疫応答、特に、前記抗原に対する免疫応答の寛容化又は抑制をもたらす。
【0388】
自己免疫疾患は、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、重症筋無力症、乾癬、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、グレーブス病、炎症性腸疾患、自己免疫性網膜ぶどう膜炎、心筋炎、多発性筋炎、及び1型糖尿病を含むある種の糖尿病、を含むがそれらに限定されない。
【0389】
本発明は更に、アレルギー、例えば喘息の防止及び/又は処置を必要とする対象において、アレルギー、例えば喘息を防止及び/又は処置する方法であって、前記で定義したアレルゲンをコードする核酸を含むDNAベクターの、又は前記DNAベクターを含む操作型アクネ菌の治療上又は予防上効率良い量を、前記対象に投与する工程を含む方法を含む。本発明は更に、対象においてアレルギー、例えば喘息を防止及び/又は処置する方法に用いる、前記で定義したアレルゲンをコードする核酸を含むDNAベクター、若しくは前記DNAベクターを含む操作型アクネ菌に関する。
【0390】
前記実施形態では、前記抗原が、好ましくは、免疫応答、特に、前記抗原に対する免疫応答の寛容化又は抑制をもたらす。
【0391】
本開示の関連で、アレルギーは、喘息、又は前記で定義したアレルゲンに起因するアレルギーに関する。
【0392】
本発明は更に、移植片拒絶の防止及び/又は処置を必要とする対象において、移植片拒絶を防止及び/又は処置する方法であって、前記で定義したグラフト特異的抗原をコードする核酸を含むDNAベクターの、又は前記DNAベクターを含む操作型アクネ菌の治療上又は予防上効率良い量を、前記対象に投与する工程を含む方法を含む。本発明は更に、対象において移植片拒絶を防止及び/又は処置する方法に用いる、前記で定義したグラフト特異的抗原をコードする核酸を含むDNAベクター、若しくは前記DNAベクターを含む操作型アクネ菌に関する。
【0393】
前記実施形態では、前記抗原が、好ましくは、免疫応答、特に、前記抗原に対する免疫応答の寛容化又は抑制をもたらす。
【0394】
異なる定義がない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語はすべて、本発明が帰属する技術分野の当業者の1人が一般的に理解するのと同じ意味を有する。
【0395】
本明細書で言及されるすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれている。本開示は、矛盾がある範囲内で、組み込まれた刊行物のいかなる開示も取って代わると理解される。
【0396】
本明細書及び添付クレームで使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容が明らかに異なる指定をしない限り、複数の指示対象も含むと明記する。したがって、例えば、「1つの抗原(an antigen)」への言及は、2つ以上の抗原の混合物等を含む。
【0397】
定義
《送達ビヒクル》
本明細書で使用する用語《送達ビヒクル》は、細菌内へのペイロードの伝達を可能にする任意の手段を指す。
【0398】
本発明に含まれる、何種類かの送達ビヒクルが存在し、限定されないが、バクテリオファージ足場、ウイルス足場、化学ベースの送達ビヒクル(例えば、シクロデキストリン、リン酸カルシウム、カチオン性ポリマー、カチオン性リポソーム)、タンパク質ベース又はペプチドベースの送達ビヒクル、脂質ベースの送達ビヒクル、ナノ粒子ベースの送達ビヒクル、非化学ベースの送達ビヒクル(例えば、形質転換、エレクトロポレーション、ソノポレーション、光学的トランスフェクション(optical transfection))、粒子ベースの送達ビヒクル(例えば遺伝子銃、マグネトフェクション、インペールフェクション(impalefection)、粒子衝突、細胞膜透過性ペプチド)、又は供与菌(接合)である。
【0399】
送達ビヒクルの任意の組合せが更に、本発明に含まれる。
【0400】
送達ビヒクルは、バクテリオファージ由来足場に関し得、天然の、進化した、又は操作型カプシドから得られ得る。
【0401】
いくつかの実施形態では、送達ビヒクルがペイロードである。なぜなら、細菌は生来的に自力で環境からペイロードを取り込む能力があるからである。
【0402】
《接合》
接合は、供与菌が、受容菌へと能動的にDNAを伝達するプロセスである。DNA伝達は、リラクサーゼとして知られる、ニック(切れ目)を入れてoriT DNAに共有結合するタンパク質による伝達起点(oriT)の認識を含む。次いで、リラクサーゼ及び一本鎖DNAは、典型的に、IV型分泌系を介して、レシピエント細胞内に注入される。プラスミド又はICE(組込み及び接合エレメント)の接合中、リラクサーゼの伝達が、プラスミド又はICEのローリングサークル型複製と連動する。レシピエント内に入るとすぐに、リラクサーゼは、伝達された鎖を、oriTにおいて再環状化する。Smillie等、Microbiology and Molecular Biology Rev、2010、434~452頁(非特許文献27)。
【0403】
接合プラスミドの例は、F、R388、RP4、RK2、R6Kである。以下の群のプラスミド:IncA、IncB/O(Ind O)、IncC、IncD、IncE、IncFI、lncF2、IncG、IncHM、lncHI2、Inch、Incl2、IncJ、IncK、IncL/M、IncN、IncP、IncQI、lncQ2、IncR、IncS、IncT、IncU、IncV、IncW、IncXI、lncX2、IncY、IncZ、ColE1、ColE2、ColE3、p15A、pSC101、lncP-2、lncP-5、lncP-7、lncP-8、lncP-9、Ind、Inc4、Inc7、Inc8、Inc9、Inc11、Inc13、Ind4、又はInd8は、頻繁に接合性であり、IV型分泌系を運ぶ。
【0404】
IV型分泌系の一覧表は、公開データベース、例えばAtlasT4SSに見出され得る。
【0405】
接合は、プラスミドに限定されず、oriTが存在する場合は細菌の染色体からも起こり得る。それは、染色体中での接合プラスミドの組換えにより天然に起こり得るか、又は染色体中の目的の位置でのoriTの導入により人工的に起こり得る。接合エレメントの特定クラスは、組込み及び接合エレメント(ICE)として知られる。組込み及び接合エレメントは、環状プラスミド型で維持されず、宿主染色体中に組み込まれている。伝達されると、ICEが、染色体から切除され、次いで、接合プラスミドと類似するやり方で伝達される。レシピエント細胞内に入るとすぐに、ICEが、レシピエントの染色体内に組み込まれる。ICEエレメントの一覧表は、公開データベース、例えばICEbergに見出され得る。
【0406】
伝達起点遺伝子及びIV型分泌系遺伝子の両方ともを有するICE又はプラスミドは、一般的にモバイルエレメントと呼ばれるのに対して、oriTのみを有するICE又はプラスミドは、可動性プラスミドと呼ばれ得る。可動性エレメントは、IV型分泌系が、他のプラスミドによるか、若しくは宿主細胞の染色体からのいずれか一方によりtransで発現される場合に限り、ドナー細胞からレシピエント細胞へと伝達され得る。
【0407】
《ペイロード》
本明細書で使用する用語《ペイロード》は、送達ビヒクルにより細菌内へと伝達される、任意の核酸配列若しくはアミノ酸配列、又は両方ともの組合せ(例えば、限定されないが、ペプチド核酸又はペプチド-オリゴヌクレオチドコンジュゲート)を指す。
【0408】
用語《ペイロード》は更に、プラスミド、ベクター、又はカーゴを指し得る。
【0409】
ペイロードは、天然の、進化した、又は操作型バクテリオファージゲノムから得られる、ファージミド又はファスミドであり得る。ペイロードは更に、部分的にのみ、天然の、進化した、又は操作型バクテリオファージゲノムから得られる、ファージミド又はファスミドからなり得る。
いくつかの実施形態では、ペイロードが送達ビヒクルである。なぜなら、細菌は生来的に自力で環境からペイロードを取り込む能力があるからである。
【0410】
《核酸》
本明細書で使用する用語「核酸」は、共有結合された少なくとも2つのヌクレオチドの配列を指し、一本鎖若しくは二本鎖であり得るか、又は一本鎖配列及び二本鎖配列の両方ともの一部を含有する。本発明の核酸は、天然、組換え、又は合成であり得る。核酸は、環状配列又は直鎖状配列の形、又は両方の形の組合せであり得る。核酸は、DNA、ゲノムDNA若しくはcDNAの両方とも、又はRNA、又は両方の組合せであり得る。核酸は、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドの任意の組合せ、並びにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、及びイソグアニンを含む塩基の任意の組合せを含有し得る。本発明において使用され得る修飾塩基の他の例は、Chemical Reviews 2016、116(20)12655~12687頁(非特許文献28)に列挙される。用語「核酸」は更に、限定されないが、ホスホラミド、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、O-メチルホスホロアミダイト(O-methylphosphoroamidite)結合、及び/又はデオキシリボヌクレオチド核酸及びリボヌクレオチド核酸を含む、他の骨格を含有し得る核酸類似体を含む。核酸の前記の特徴の任意の組合せが更に、本発明に含まれる。
【0411】
《ベクター》
本明細書で使用する用語「ベクター」は、所定の宿主細胞においてポリペプチドを発現できる配列の任意の構築物を指す。ベクターを使用する場合、ベクターの選択は、当業者には周知のように、宿主細菌を形質転換するために使用する方法に依存する。ベクターは、限定されないが、プラスミドベクター及び組換えファージベクター、又は当該分野で公知の、本発明のポリペプチドを標的細菌に送達するために適切な他の任意のベクターを含む。当業者は、効率良く、形質転換、本発明の単離されたヌクレオチド又は核酸配列のいずれかを含む宿主細胞を選択及び増殖させるためには、ベクター上に存在する必要がある遺伝エレメントをよく知っている。
【0412】
《ファージミド》
本明細書で使用する用語「ファージミド」又は「ファスミド」は、同等であり、バクテリオファージゲノムの少なくとも1つの配列を含む組換えDNAベクターを指す。本開示のファージミドは、ファージパッケージング部位、及び場合により複製起点(ori)、特に細菌及び/又はファージの複製起点を含む。一実施形態では、本開示のファージミドが、細菌の複製起点を含まないため、細菌内に注入されると、単独では複製できない。その代わりに、ファージミドは、プラスミドの複製起点、特に細菌及び/又はファージの複製起点を含む。
【0413】
《パッケージングされたファージミド》
本明細書で使用する用語「パッケージングされたファージミド」又は「ファージ由来粒子」は、バクテリオファージ足場、細菌ウイルス粒子、又はカプシド内にカプシド化されたファージミドを指す。特に、バクテリオファージゲノムを欠いた、バクテリオファージ足場、細菌ウイルス粒子、又はカプシドを指す。パッケージングされたファージミド、又はファージ由来粒子は、当業者に周知のヘルパーファージ戦略により産生され得る。ヘルパーファージは、本発明によるファージミドをカプシド化するために不可欠である、構造タンパク質及び機能タンパク質をコードするすべての遺伝子を含む。パッケージングされたファージミド、又はファージ由来粒子は、同じく当業者に周知のサテライトウイルス戦略により産生され得る。サテライトウイルスは、サブウイルス因子であり、すべての形態形成的機能に関しては、ヘルパーウイルスによる宿主細胞の共感染に依存する核酸からなるが、そのエピソーム機能すべて(組込み及び免疫性、マルチコピープラスミド複製)に関しては、サテライトはヘルパーから完全に自律的である。一実施形態では、サテライト遺伝子は、ヘルパーファージのカプシドサイズ低下を促進するタンパク質をコードし得、その、より小型のゲノムに合わせるために、P2カプシドサイズを制御するP4 Sidタンパク質に関して記載される。
【0414】
《ペプチド》
本明細書で使用する用語「ペプチド」は、互いに結合された少なくとも2つのアミノ酸の短鎖、及びその一部、サブセット、又は断片が、タンパク質の残部から独立には発現しない、該タンパク質の一部、サブセット、又は断片の両方ともを指す。いくつかの場合、ペプチドはタンパク質である。他のいくつかの場合、ペプチドはタンパク質でなく、ペプチドは、タンパク質の一部、サブセット、又は断片のみを指す。好ましくは、ペプチドが、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個のアミノ酸から4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、20個、25個、30個、40個、50個、100個、200個のアミノ酸までの大きさである。
【0415】
「操作型」
[01]本明細書で使用する用語「操作型」は、本発明の細菌細胞、ファージ、ファージ由来粒子、ファージミド、又はベクターが、分子生物学技術により改変されていることを意味する。当業者は理解するように、細菌細胞、ファージ、ファージ由来粒子、ファージミド、又はベクターの操作は、核酸配列を導入又は改変するための意図的な作用を示唆し、細菌細胞、ファージ、ファージ由来粒子、ファージミド、又はベクターの自然進化による、核酸配列の導入又は改変は網羅しない。
【0416】
「同一性のパーセント」
[02]本明細書で使用する同一性パーセントは、それらの配列を整列させたポリマー(例えば、ポリヌクレオチド又はポリペプチド)に関して計算する。2つの配列間の同一性パーセントは、配列によって共有される同一位置の数の関数であり(即ち、%ホモロジー=同一位置の数/位置の総数×100)、2つの配列の最適なアライメントのために導入される必要のあるギャップの数、及び各キャップの長さを考慮に入れる。配列の比較、及び2つの配列間の同一性パーセントの決定は、以下の非限定的な例に記載されるように、数学的アルゴリズムを使用して実現され得る。
[03]2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれた、E. MeyersとW. Miller(Comput. Appl. Biosci.、4:11~17頁(1988)(非特許文献29))のアルゴリズムを使用して決定され得、PAM120重み付け残基表、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを使用する。更に、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム(www.gcg.comから入手可能)に組み込まれた、NeedlemanとWunsch(J. Mol. Biol. 48:444~453頁(1970)(非特許文献30))のアルゴリズムを使用して決定され得、BLOSUM62行列、BLOSUM30行列、又はPAM250行列、及び16、14、12、10、8、6、又は4のギャップ重み、及び1、2、3、4、5、又は6の長さ重みを使用する。具体的な一実施形態では、BLOSUM30行列を、12のギャップオープンペナルティ及び4のギャップ伸長ペナルティで使用する。
【0417】
CRISPR-Casシステム
CRISPR-Casシステムは、2つの別個の要素、即ち、i)エンドヌクレアーゼ、この場合はCRISPR関連ヌクレアーゼ(Cas又は「CRISPR関連タンパク質」)、及びii)ガイドRNA、をコードするDNAを指す。CRISPRシステムの種類に依存して、ガイドRNAは、CRISPR(crRNA)細菌RNAとtracrRNA(トランス活性化RNA CRISPR)との組合せからなるキメラRNAであり得る(Jinek等、Science 2012)。ガイドRNAは、Casタンパク質へのガイドとして使用される「スペーシング配列」に相当するcrRNAの標的化特異性とtracrRNAの立体配座特性とを単一転写物中で組み合わせる。ガイドRNA及びCasタンパク質が、細胞内で同時に発現すると、標的ゲノム配列は、永続的に中断され得る(そしてその位置に応じて、標的とされた、及び周辺配列の消失及び/又は細胞死を引き起こす)、又は改変され得る。改変は、修復マトリクス(repair matrix)により導かれ得る。
【0418】
CRISPR-Casシステムは、ヌクレアーゼ作用機構に応じて、2つの主要クラスを含む:
- クラス1は、マルチサブユニットエフェクタ複合体からなり、I型、III型、及びIV型を含む
- クラス2は、Cas9ヌクレアーゼのように、単一ユニットエフェクタモジュールからなり、II型(II-A、II-B、II-C、II-Cバリアント)、V型(V-A、V-B、V-C、V-D、V-E、V-U1、V-U2、V-U3、V-U4、V-U5)、及びVI型(VI-A、VI-B1、VI-B2、VI-C、VI-D)を含む。
【0419】
本発明による目的の配列は、Casタンパク質をコードする核酸配列を含む。様々なCRISPR酵素が、本発明によるプラスミド上での目的の配列としての使用に利用できる。いくつかの実施形態では、CRISPR酵素が、II型CRISPR酵素、II-A型又はII-B型のCRISPR酵素である。他の実施形態では、CRISPR酵素が、I型CRISPR酵素、又はIII型CRISPR酵素である。いくつかの実施形態では、CRISPR酵素が、DNA切断を触媒する。他のいくつかの実施形態では、CRISPR酵素が、RNA切断を触媒する。一実施形態では、CRISPR酵素が、ガイドRNA又は単一ガイドRNA(sgRNA)に結合され得る。特定の実施形態では、ガイドRNA又はsgRNAが、抗生物質耐性遺伝子、病原タンパク質又は病原因子の遺伝子、毒素タンパク質又は毒素因子の遺伝子、細菌受容体遺伝子、膜タンパク質遺伝子、構造タンパク質遺伝子、分泌タンパク質遺伝子、薬物一般に対する耐性を発現する遺伝子、及び宿主に対する有害作用を引き起こす遺伝子からなる群から選択される遺伝子を標的とする。
【0420】
目的の配列は、そのCasタンパク質を内在性に標的細菌へと導くガイドRNA又はsgRNAをコードする核酸配列を単独で、又はペイロードによりコードされるCasタンパク質及び/又はRNAガイドとの組合せで含み得る。
【0421】
マルチサブユニットエフェクタの一部として又は単一ユニットエフェクタとしてのCasタンパク質の非限定的な例は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1及びCsx12としても知られる)、Cas10、Cas11(SS)、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、C2c4、C2c8、C2c5、C2c10、C2c9、Cas13a(C2c2)、Cas13b(C2c6)、Cas13c(C2c7)、Cas13d、Csa5、Csc1、Csc2、Cse1、Cse2、Csy1、Csy2、Csy3、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Csm1、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csn2、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx13、Csx1、Csx15、SdCpf1、CmtCpf1、TsCpf1、CmaCpf1、PcCpf1、ErCpf1、FbCpf1、UbcCpf1、AsCpf1、LbCpf1、それらのホモログ、それらのオルソログ、それらのバリアント、又はそれらの改変型を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR酵素が、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位において、標的核酸の両鎖を切断する。
【0422】
特定の一実施形態では、CRISPR酵素が、任意のCas9タンパク質、例えば、任意の天然起源の細菌Cas9、並びにそれらの任意のバリアント、ホモログ、又はオルソログである。
【0423】
「Cas9」は、タンパク質Cas9(Csn1又はCsx12とも呼ばれる)、又はその、機能性、即ちガイドRNAと相互作用でき、標的ゲノムのDNAの二本鎖切断を行う酵素活性(ヌクレアーゼ)を発揮できる、タンパク質、ペプチド、若しくはポリペプチドの断片を意味する。したがって、「Cas9」は、改変タンパク質、例えば、そのタンパク質の定義された機能にとって必須ではない、タンパク質のドメイン、特に、gRNAとの相互作用に必要でないドメインを除去するために切断された改変タンパク質を示す。
【0424】
本発明の関連で使用するCas9(タンパク質全体又はその断片)をコードする配列は、任意の公知のCas9タンパク質から得られ得る(Fonfara等、2014;Koonin等、2017)。本発明において有用なCas9タンパク質の例は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(SpCas9)、ストレプトコッカス・サーモフィレス(Streptococcus thermophiles)(St1Cas9、St3Cas9)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、スタフィロコッカス・アウレウス(SaCas9)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)(CjCas9)、フランシセラ・ノヴィシダ(FnCas9)、及びナイセリア・メニンギティディス(NmCas9)のCas9タンパク質を含むがそれらに限定されない。
【0425】
本発明の関連で使用するCpf1(Cas12a)(タンパク質全体又はその断片)をコードする配列は、任意の公知のCpf1(Cas12a)タンパク質から得られ得る(Koonin等、2017)。本発明において有用なCpf1(Cas12a)タンパク質の例は、アシダミノコッカス(Acidaminococcus)種、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)細菌(bacteriu)及びフランシセラ・ノヴィシダのCpf1(Cas12a)タンパク質を含むがそれらに限定されない。
【0426】
本発明の関連で使用するCas13a(タンパク質全体又はその断片)をコードする配列は、任意の公知のCas13a(C2c2)タンパク質から得られ得る(Abudayyeh等、2017)。本発明において有用なCas13a(C2c2)タンパク質の例は、レプトトリキア・ウエイデイ(Leptotrichia wadei)(LwaCas13a)のCas13a(C2c2)タンパク質を含むがそれらに限定されない。
【0427】
本発明の関連で使用するCas13d(タンパク質全体又はその断片)をコードする配列は、任意の公知のCas13dタンパク質から得られ得る(Yan等、2018)。本発明において有用なCas13dタンパク質の例は、ユウバクテリウム・シラエウム(Eubacterium siraeum)及びルミノコッカス(Ruminococcus)種のCas13dタンパク質を含むがそれらに限定されない。
【0428】
特定の実施形態では、目的の核酸配列が、抗生物質耐性遺伝子、病原因子若しくは病原タンパク質の遺伝子、毒素因子若しくは毒素タンパク質の遺伝子、細菌受容体を発現する遺伝子、膜タンパク質、構造タンパク質、分泌タンパク質、薬物一般に対する耐性を発現する遺伝子、及び宿主に対する有害作用を引き起こす遺伝子からなる群から選択される遺伝子の遺伝子発現の低下又は不活性化を対象とするCRISPR/Cas9システムである。
【0429】
一実施形態では、病原因子を標的にし、且つ不活性化するために、CRISPR-Casシステムを使用する。病原因子は、宿主に与えられる損傷の程度を高めることにより、宿主-病原体相互作用を変化させる、病原体により産生される任意の物質であり得る。病原因子は、病原体により、多くのやり方で使用され、例えば、細胞接着又は宿主内のニッチの占有(colonization)において、宿主の免疫応答を逃れるため、宿主細胞への侵入及び宿主細胞からの脱出を容易にするため、宿主から栄養を得るため、又は宿主における他の生理的プロセスを阻害するため、を含む。病原因子は、酵素、エンドトキシン、接着因子、運動性因子、補体回避に関与する因子、スカベンジング因子、及び生物膜形成を促進する因子を含み得る。例えば、そのような、標的とされる病原因子遺伝子は、大腸菌病原因子遺伝子、例えば、限定されないが、EHEC-HlyA、Stx1(VT1)、Stx2(VT2)、Stx2a(VT2a)、Stx2b(VT2b)、Stx2c(VT2c)、Stx2d(VT2d)、Stx2e(VT2e)及びStx2f(VT2f)、Stx2h(VT2h)、stx2k、fimA、fimF、fimH、neuC、kpsE、sfa、foc、iroN、aer、iha、papC、papGI、papGII、papGIII、hlyC、cnf1、hra、sat、ireA、usp ompT、ibeA、malX、fyuA、irp2、traT、afaD、ipaH、eltB、estA、bfpA、eaeA、espA、aaiC、aatA、TEM、CTX、SHV、csgA、csgB、csgC、csgD、csgE、csgF、csgG、csgH、T1SS、T2SS、T3SS、T4SS、T5SS、T6SS(分泌系)であり得る。例えば、そのような、標的とされる病原因子遺伝子は、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)病原因子遺伝子、例えば、限定されないが、stx1及びstx2であり得る。例えば、そのような、標的とされる病原因子遺伝子は、エルシニア・ペスチス病原因子遺伝子、例えば、限定されないが、yscF(プラスミド媒介性(pCDl)T3SS外部ニードルサブユニット)であり得る。例えば、そのような、標的とされる病原因子遺伝子は、野兎病菌病原因子遺伝子、例えば、限定されないが、fslAであり得る。例えば、そのような、標的とされる病原因子遺伝子は、バチルス・アントラシス病原因子遺伝子、例えば、限定されないが、pag(炭疽毒素、細胞結合防御抗原)であり得る。例えば、そのような、標的とされる病原因子遺伝子は、ビブリオ・コレラ病原因子遺伝子、例えば、限定されないが、ctxA及びctxB(コレラ毒素)、tcpA(毒素共調節線毛)、並びにtoxT(マスター病原性レギュレータ)であり得る。例えば、そのような、標的とされる病原因子遺伝子は、緑膿菌病原因子遺伝子、例えば、限定されないが、ピオベルジン(例えば、シグマ因子pvdS、生合成遺伝子pvdL、pvdI、pvdJ、pvdH、pvdA、pvdF、pvdQ、pvdN、pvdM、pvdO、pvdP、トランスポータ遺伝子pvdE、pvdR、pvdT、opmQ)、シデロホアピオケリン(例えば、pchD、pchC、pchB、pchA、pchE、pchF、及びpchG)、並びに毒素(例えば、exoU、exoS、及びexoT)であり得る。例えば、そのような、標的とされる病原因子遺伝子は、クレブシエラ・ニューモニエ病原因子遺伝子、例えば、限定されないが、fimA(接着、I型線毛メジャーサブユニット)、及びcps(莢膜多糖)であり得る。例えば、そのような、標的とされる病原因子遺伝子は、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)病原因子遺伝子、例えば、限定されないが、ptk(莢膜重合(capsule polymerization))及びepsA(アセンブリ)であり得る。例えば、そのような、標的とされる病原因子遺伝子は、サルモネラ・エンテリカ・チフィ病原因子遺伝子、例えば、限定されないが、MIA(侵入、SPI-1レギュレータ)、ssrB(SPI-2レギュレータ)、並びに排出ポンプ遺伝子acrA、acrB、及びtolCを含む胆汁耐性と関連するもの、であり得る。例えば、そのような、標的とされる病原因子遺伝子は、フソバクテリウム・ヌクレアタム病原因子遺伝子、例えば、限定されないが、FadA及びTIGITであり得る。例えば、そのような、標的とされる病原因子遺伝子は、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)病原因子遺伝子、例えば、限定されないが、bftであり得る。例えば、そのような、標的とされる病原因子遺伝子は、キューティバクテリウム・アクネスのポルフィリン遺伝子、CAMP因子(CAMP1、CAMP2、CAMP3、CAMP4)、ヒアルロン酸リアーゼ(HYL-IB/II、HYL-IA)、リパーゼ(GehA、GehB)、溶血素、シアリダーゼ、エンドグリコセラミダーゼ、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ、デルマタン硫酸アドへシン(DsA1、DsA2)、プロリン-スレオニンリピート(PTR)、又はTomida等に記載される、ざ瘡関連ゲノム遺伝子座1、2、3(プラスミド)、4上に含まれる任意の病原因子、例えば、密着接着(tight adhesion)遺伝子座(tad)、ストレプトリジンS関連遺伝子(sag)、非リボソーム性ペプチド合成酵素(NRPS)であり得る。
【0430】
他の実施形態では、CRISPR/Cas9システムは、抗生物質耐性遺伝子を標的にし、且つ不活性化するために使用され、例えば、限定されないが、GyrB、ParE、ParY、AAC(1)、AAC(2')、AAC(3)、AAC(6')、ANT(2")、ANT(3")、ANT(4')、ANT(6)、ANT(9)、APH(2")、APH(3")、APH(3')、APH(4)、APH(6)、APH(7")、APH(9)、ArmA、RmtA、RmtB、RmtC、Sgm、AER、BLA1、CTX-M、KPC、SHV、TEM、BlaB、CcrA、IMP、NDM、VIM、ACT、AmpC、CMY、LAT、PDC、OXA β-ラクタマーゼ、mecA、Omp36、OmpF、PIB、bla(blaI、blaR1)、及びmec(mecI、mecR1)オペロン、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、クロラムフェニコールホスホトランスフェラーゼ、エタンブトール耐性アラビノシルトランスフェラーゼ(EmbB)、MupA、MupB、膜内在性タンパク質MprF、Cfr 23S rRNAメチルトランスフェラーゼ、リファンピンADP-リボシルトランスフェラーゼ(Arr)、リファンピングリコシルトランスフェラーゼ、リファンピンモノオキシゲナーゼ、リファンピンホスホトランスフェラーゼ、DnaA、RbpA、RNAポリメラーゼのリファンピン耐性ベータサブユニット(RpoB)、Erm 23S rRNAメチルトランスフェラーゼ、Lsa、MsrA、Vga、VgaB、ストレプトグラミンVgbリアーゼ、Vatアセチルトランスフェラーゼ、フルオロキノロンアセチルトランスフェラーゼ、フルオロキノロン耐性DNAトポイソメラーゼ、フルオロキノロン耐性GyrA、GyrB、ParC、キノロン耐性タンパク質(Qnr)、FomA、FomB、FosC、FosA、FosB、FosX、VanA、VanB、VanD、VanR、VanS、リンコサミドヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Lin)、EreA、EreB、GimA、Mgt、Ole、マクロライドホスホトランスフェラーゼ(MPH)、MefA、MefE、Mel、ストレプトスリシンアセチルトランスフェラーゼ(sat)、Sul1、Sul2、Sul3、スルホンアミド耐性FolP、テトラサイクリン不活性化酵素TetX、TetA、TetB、TetC、Tet30、Tet31、TetM、TetO、TetQ、Tet32、Tet36、MacAB-TolC、MsbA、MsrA、VgaB、EmrD、EmrAB-TolC、NorB、GepA、MepA、AdeABC、AcrD、MexAB-OprM、mtrCDE、EmrE、adeR、acrR、baeSR、mexR、phoPQ、mtrR、又は包括的抗生物質耐性データベース(CARD https://card.mcmaster.ca/)に記載される任意の抗生物質耐性遺伝子である。
【0431】
他の実施形態では、細菌毒素遺伝子を標的にし、且つ不活性化するために、CRISPR-Casシステムを使用する。細菌毒素は、外毒素又はエンドトキシンとして分類され得る。外毒素は、生成され、能動的に分泌される;エンドトキシンは、細菌の一部のままである。細菌毒素に対する応答は、重度の炎症を含み得、敗血症をもたらし得る。そのような毒素は、例えば、ボツリヌス神経毒素、破傷風毒素、ブドウ球菌毒素、ジフテリア毒素、炭疽毒素、アルファ毒素、百日咳毒素、志賀毒素、耐熱性エンテロトキシン(大腸菌ST)、コリバクチン、BFT(B.フラジリス毒素)、又はHenkel等(Toxins from Bacteria in EXS. 2010;100:1~29頁(非特許文献31))に記載される任意の毒素であり得る。
【0432】
塩基編集
塩基編集(BE)は、DNA又はRNA分子上の特定ヌクレオチド塩基対を他の塩基対で置換する能力を指す。最近まで、DNA上の特定置換をin vivoで行う唯一のやり方は、特定の塩基対変化を運ぶ鋳型DNAの、目的の遺伝子座との組換えの使用であった。塩基編集技術は、完全に異なる戦略に依拠する。DNAの交換はなく、その代わりに酵素反応が、ヌクレオチドを他のヌクレオチドに変換し、dsDNAのレベルでのミスマッチをもたらし、それが、次いで細胞機構により修正される。
【0433】
塩基編集に関わる主な課題の1つは、ヌクレオチド変換を行う酵素の活性を、いかにして標的ヌクレオチド、例えば、病原性に関与するSNPに制限するかである。この空間的制約は、別の目的でのCRISPR-Casシステムの再利用により、最近達成された。実に、触媒的に損なわれた又は不活性のCasヌクレアーゼを、一本鎖DNA上でのみ活性である塩基修飾酵素と融合すると、高い効率の塩基編集を達成することが可能である。それは、複合体が、RNA-DNA塩基対合により、そのDNA標的鎖にアニールした場合に、「Rループ」内で局所的にssDNAバブルを生成するCRISPR-Casの能力のおかげで可能である。
【0434】
これまでのところ、7種類のDNA塩基エディタが記載されている:
- C:GをT:Aへと変換するシトシン塩基エディタ(CBE)(Komor, A等、Programmable editing of a target base in genomic DNA without double-stranded DNA cleavage. Nature 533:420~4頁(2016)(非特許文献32))、
- A:TをG:Cへと変換するアデニン塩基エディタ(ABE)(Programmable base editing of A・T to G・C in genomic DNA without DNA cleavage. Nature 551(7681)464~471頁(2017)(非特許文献33))、
- C:GをG:Cへと変換するシトシングアニン塩基エディタ(CGBE)、Chen, L等、Precise and programmable C:G to G:C base editing in genomic DNA. Biorxiv(2020)(非特許文献34);Kurt, I等、CRISPR C-to-G base editors for inducing targeted DNA transversions in human cells. Nature Biotechnology(2020)(非特許文献35)、
- C:GをA:Tへと変換するシトシンアデニン塩基エディタ(CABE)、Zhao, D等、New base editors change C to A in bacteria and C to G in mammalian cells. Nature Biotechnology(2020)(非特許文献36)、
- A:TをC:Gへと変換するアデニンシトシン塩基エディタ(ACBE)(Liu, D等、A:T to C:G base editors and uses thereof.特許出願国際公開第2020181180号(2020)(特許文献61))、
- A:TをT:Aへと変換するアデニンチミン塩基エディタ(ATBE)(Liu, D等、A:T to C:G base editors and uses thereof.特許出願国際公開第2020181180号(2020)(特許文献61))、
- T:AをA:Tへと変換するチミンアデニン塩基エディタ(TABE)(Liu, D等、T:A TO A:T base editing through adenosine methylation.特許出願国際公開第2020181193号(2020)(特許文献62);Liu, D等、T:A TO A:T base editing through thymine alkylation.特許出願国際公開第2020181178号(2020)(特許文献63);Liu, D等、T:A TO A:T base editing through adenine excision.特許出願国際公開第2020181195号(2020)(特許文献64))。
【0435】
塩基エディタは、塩基修飾酵素の点で異なる。CBEは、ssDNAシチジンデアミナーゼ:APOBEC1、rAPOBEC1、APOBEC1変異体又は進化型(evoAPOBEC1)、及びAPOBECホモログ(APOBEC3A(eA3A)、Anc689)、シチジンデアミナーゼ1(CDA1)、evoCDA1、FERNY、evoFERNYに依拠する。ABEは、縦列融合TadA-TadA*のデオキシアデノシンデアミナーゼ活性に依拠し、TadA*は、大腸菌tRNAアデノシンデアミナーゼ酵素であるTadAの進化型であり、ssDNA上のアデノシンをイノシンへと変換できる。TadA*は、TadA-8a-e及びTadA-7.10を含む。
【0436】
塩基修飾酵素以外に、編集の効果、精度、及びモジュール性を高めるために、塩基エディタへの改変が更に実施された:
- 塩基エディションを元に戻す塩基除去修復機構を防止するために、1つ又は2つのウラシルDNAグリコシラーゼ阻害剤ドメイン(UGI)の付加
- 細胞における非相同末端結合機構(NHEJ)を阻害することにより挿入-欠失率を低下させるMu-GAMの付加
- 非編集鎖上にニックを生み出すことにより、その修復を促進し、その結果、編集された塩基の定着を促進するニッカーゼ活性Cas9(nCas9 D10A)の使用
- 例えば、異なる生物、異なるPAMモチーフ若しくは異なる忠実度を有する変異体、又は異なるファミリーからの種々のCasタンパク質(例えばCas12a)の使用
【0437】
DNAベースのエディタタンパク質の非限定的な例は、BE1、BE2、BE3、BE4、BE4-GAM、HF-BE3、Sniper-BE3、Target-AID、Target-AID-NG、ABE、EE-BE3、YE1-BE3、YE2-BE3、YEE-BE3、BE-PLUS、SaBE3、SaBE4、SaBE4-GAM、Sa(KKH)-BE3、VQR-BE3、VRER-BE3、EQR-BE3、xBE3、Cas12a-BE、Ea3A-BE3、A3A-BE3、TAM、CRISPR-X、ABE7.9、ABE7.10、ABE7.10*、xABE、ABESa、VQR-ABE、VRER-ABE、Sa(KKH)-ABE、ABE8e、SpRY-ABE、SpRY-CBE、SpG-CBE4、SpG-ABE、SpRY-CBE4、SpCas9-NG-ABE、SpCas9-NG-CBE4、enAsBE1.1、enAsBE1.2、enAsBE1.3、enAsBE1.4、AsBE1.1、AsBE1.4、CRISPR-Abest、CRISPR-Cbest、eA3A-BE3、AncBE4を含む。
【0438】
シトシングアニン塩基エディタ(CGBE)は、以下:
- シトシンデアミナーゼ(rAPOBEC)及び塩基除去修復タンパク質(例えばrXRCC1)(Precise and programmable C:G to G:C base editing in genomic DNA. Biorxiv(2020)(非特許文献34))、
- ラットAPOBEC1バリアント(R33A)タンパク質及び大腸菌由来ウラシルDNA N-グリコシラーゼ(eUNG)(Kurt, I等、CRISPR C-to-G base editors for inducing targeted DNA transversions in human cells. Nature Biotechnology(2020)(非特許文献35))
に融合させたニッカーゼCRISPRからなる。
- シトシンアデニン塩基エディタ(CABE)は、Cas9ニッカーゼ、シチジンデアミナーゼ(例えばAID)、及びウラシルDNAグリコシラーゼ(Ung)からなる。Zhao, D等、New base editors change C to A in bacteria and C to G in mammalian cells. Nature Biotechnology(2020)(非特許文献36)。
- ACBEは、核酸プログラム型DNA結合タンパク質及びアデニンオキシダーゼを含む。Liu, D等、A:T to C:G base editors and uses thereof.特許出願国際公開第2020181180号(2020)(特許文献61)。
- ATBEは、Cas9ニッカーゼ、及び1つ又は複数のアデノシンデアミナーゼ又はオキシダーゼドメインからなる。Liu, D等、A:T to T:A base editing through adenine deamination and oxidation.特許出願国際公開第2020181202号(2020)(特許文献65)。
- TABEは、Cas9ニッカーゼ、及びアデノシンメチルトランスフェラーゼ、チミンアルキルトランスフェラーゼ、又はアデノシンデアミナーゼドメインからなる。(Liu, D等、T:A TO A:T base editing through adenosine methylation.特許出願国際公開第2020181193号(2020)(特許文献62);Liu, D等、T:A TO A:T base editing through thymine alkylation.特許出願国際公開第2020181178号(2020)(特許文献63);Liu, D等、T:A TO A:T base editing through adenine excision.特許出願国際公開第2020181195号(2020)(特許文献64))。
【0439】
塩基エディタ分子は更に、Casタンパク質に融合させた、前記のエディタ酵素の2つ以上からなり得る(例えば、ABE及びCBEの組合せ)。それらの生体分子は、デュアル塩基エディタと呼ばれ、2つの異なる塩基の編集を可能にする(Grunewald, J等、A dual-deaminase CRISPR base editor enables concurrent adenine and cytosine editing、Nature Biotechnology(2020)(非特許文献37);Li, C等、Targeted, random mutagenesis of plant genes with dual cytosine and adenine base editors、Nature Biotechnology(2020)(非特許文献38))。
【0440】
一実施形態では、転写又は翻訳に関与する1つ又は複数のヌクレオチドの編集により、遺伝子の発現を不活性化するために、塩基エディタを使用する。特に、塩基エディタは、プロモーター、RBS、開始コドンの1つ又は複数のヌクレオチドを標的とする。
【0441】
一実施形態では、未熟終止コドンを導入するために塩基エディタを使用する。
【0442】
一実施形態では、1つ又は複数の希少コドンを導入するために塩基エディタを使用する。
【0443】
他の実施形態では、転写又は翻訳に関与する1つ又は複数のヌクレオチドの編集により、遺伝子の発現を調節するために、塩基エディタを使用する。特に、塩基エディタは、プロモーター、RBS、開始コドンの1つ又は複数のヌクレオチドを標的とし、遺伝子発現の上昇又は低下をもたらす。
【0444】
他の実施形態では、遺伝子又は経路の、不活性化、活性の低下又は上昇をもたらす変異を元に戻すために、塩基エディタを使用する。
【0445】
他の実施形態では、病原性の上昇をもたらす変異を元に戻すために、塩基エディタを使用する。
【0446】
一実施形態では、遺伝子の制御に関与する1つ又は複数のヌクレオチド、例えば、オペレータ配列、転写因子結合部位、リボスイッチ、RNAse認識部位、プロテアーゼ切断部位、メチル化部位、翻訳後修飾部位(リン酸化、グリコシル化、アセチル化、プピル化...)のヌクレオチドの編集により、その遺伝子の制御を改変するために、塩基エディタを使用する。
【0447】
RNAベースの編集
RNA塩基編集は、DNA塩基編集と同じ原理に基づく。つまり、あるRNA塩基から他の塩基への変換を触媒する酵素を、その変換を局所的に行うために、標的塩基近くにもたらす必要がある。これまでところ、RNA編集に使用される唯一の酵素は、dsRNA構造中でアデノシンをイノシンへと変換する、ADARファミリーからのアデノシンデアミナーゼである。いくつかの将来性ある研究は、dsRNAに対するこの特異性を使用して、局所的RNA塩基編集をプログラムするために、ADARデアミナーゼドメイン(ADARDD)をアンチセンスオリゴと融合した。ごく最近になって、いくつかのCRISPR-Casシステムの、RNA分子を結合する能力が、RNA編集へと再利用された。ADAR2デアミナーゼドメインの過剰活性変異体(REPAIRv1に対するADAR2DD-E488Q及びREPAIRv2に対するADAR2DD-E488Q-T375G)と融合させた、触媒活性を伴わない(catalytically dead)Cas13b酵素(dPspCas13b)を使用して、Cox等は、以前のRNA編集戦略と比べて、特異性及び効率を改善した。
【0448】
RNAベースのエディタの非限定的な例は、REPAIRv1、REPAIRv2を含む。
【0449】
一実施形態では、翻訳に関与する1つ又は複数のヌクレオチドの編集により、遺伝子の発現を不活性化するために、RNA塩基エディタを使用する。特に、塩基エディタは、5'UTR、RBS、開始コドンの1つ又は複数のヌクレオチドを標的とする。
【0450】
一実施形態では、未熟終止コドンを導入するためにRNA塩基エディタを使用する。
【0451】
一実施形態では、1つ又は複数の希少コドンを導入するためにRNA塩基エディタを使用する。
【0452】
他の実施形態では、翻訳に関与する1つ又は複数のヌクレオチドの編集により、遺伝子の発現を調節するために、RNA塩基エディタを使用する。特に、塩基エディタは、5'UTR、RBS、開始コドンの1つ又は複数のヌクレオチドを標的とし、遺伝子発現の上昇又は低下をもたらす。
【0453】
他の実施形態では、遺伝子又は経路の、不活性化又は活性の低下をもたらす変異を元に戻すために、RNA塩基エディタを使用する。
【0454】
他の実施形態では、病原性の上昇をもたらす変異を元に戻すために、塩基エディタを使用する。
【0455】
プライム編集
本明細書において参照により組み込まれているAnzalone等(Anzalone, A. V.等、Search-and-replace genome editing without double-strand breaks or donor DNA. Nature 576、149~157頁(2019)(非特許文献39))に記載されるプライムエディタ(PE)は、プライム編集RNA(pegRNA;逆転写酵素の鋳型領域を含むガイドRNA)と組み合わせて使用される、逆転写酵素と融合させたCas9からなる。
【0456】
プライム編集は、挿入、欠失(インデル)の導入、及び12種の塩基から塩基変換(12 base-to-base conversions)を可能にする。プライム編集は、Casタンパク質により生成されたニック部位において、プライム編集ガイドRNA(pegRNA)によりもたらされたRNA配列をDNAへと変換する、Casニッカーゼバリアントと融合させた逆転写酵素(RT)の能力に依拠する。このプロセスにより生成されたDNAフラップは、次いで、標的DNA配列に含まれるか、又は含まれない。
【0457】
プライム編集システムは:
- 逆転写酵素ドメイン、例えばM-MLV RT、又はその変異体型(M-MLV RT(D200N)、M-MLV RT(D200N/L603W)、M-MLV RT(D200N/L603W/T330P/T306K/W313F))と融合させた、Casニッカーゼバリアント、例えばCas9-H840A
- プライム編集ガイドRNA(pegRNA)
を含む。
【0458】
編集を促進するために、プライム編集システムは、編集鎖とアニールするが親鎖(original strand)とはアニールしないように設計することにより、理想的には、編集鎖フラップの解消後に限り、非編集DNA鎖へとCasヌクレアーゼ活性を向ける更なるsgRNAの発現を含み得る。
【0459】
プライム編集システムの非限定的な例は、PE1、PE1-M1、PE1-M2、PE1-M3、PE1-M6、PE1-M15、PE1-M3inv、PE2、PE3、PE3b、「CRISPEY」(Cas9 Retron precISe Parallel Editing via homologY)、sgRNAと融合させてCas9と共に発現させるレトロンRNA、及び少なくとも逆転写酵素を含むレトロンタンパク質(Sharon, E.等、Functional Genetic Variants Revealed by Massively Parallel Precise Genome Editing. Cell 175、544~557頁.e16 (2018)(非特許文献40))、SCRIBE戦略:一本鎖アニーリングタンパク質(SSAP)12としても知られる、一本鎖DNAの組換えを促進するリコンビナーゼと組み合わせて発現させるレトロンシステム、を含む。そのようなリコンビナーゼは、ファージリコンビナーゼ、例えば、ラムダレッド、recET、Sak、Sak4、及びWannier等(Wannier, T. M.等、Improved bacterial recombineering by parallelized protein discovery. Biorxiv 2020.01.14.906594(2020)doi:10.1101/2020.01.14.906594.(非特許文献41))に記載の最近記載されたSSAP、Karberg等(Karberg, M.等、Group II introns as controllable gene targeting vectors for genetic manipulation of bacteria. Nat Biotechnol 19、1162~7頁(2001)(非特許文献42))に記載されるグループIIイントロンに基づき、多くの細菌種に適合されたtargetronシステム、Simon等(Simon, A. J.、Ellington, A. D.&Finkelstein, I. J.、Retrons and their applications in genome engineering. Nucleic Acids Res 47、11007~11019頁(2019)(非特許文献43))に記載される、遺伝子ターゲティングアプローチに基づく他のレトロン、を含むがそれらに限定されない。
【0460】
一実施形態では、転写又は翻訳に関与する1つ又は複数のヌクレオチドの置換、欠失、挿入により、遺伝子の発現を不活性化するために、プライム編集システムを使用する。特に、プライム編集システムは、プロモーター、RBS、コード配列中の1つ又は複数のヌクレオチドを置換、欠失、挿入する。
【0461】
一実施形態では、1つ又は複数の未熟終止コドンを導入するためにプライム編集システムを使用する。
【0462】
一実施形態では、1つ又は複数の希少コドンを導入するためにプライム編集システムを使用する。
【0463】
一実施形態では、ヌクレオチドを導入する、欠失させるためにプライム編集システムを使用して、リーディングフレーム中でフレームシフトを誘導する。
【0464】
他の実施形態では、転写又は翻訳に関与する1つ又は複数のヌクレオチドの置換、欠失、挿入により、遺伝子の発現を調節するために、プライム編集システムを使用する。特に、プライム編集システムは、プロモーター、RBS、開始コドン中の1つ又は複数のヌクレオチドを置換、欠失、挿入し、遺伝子発現の上昇又は低下をもたらす。
【0465】
他の実施形態では、遺伝子又は経路の、不活性化又は活性の低下をもたらす変異を元に戻すために、プライム編集システムを使用する。
【0466】
他の実施形態では、病原性の上昇をもたらす変異を元に戻すために、プライム編集システムを使用する。
【0467】
本発明は以下の実施形態を含む。
1. - キューティバクテリウム・アクネスファージカプシド中でのDNAベクターのパッケージングを可能にするファージパッケージングシグナル、及び
- 目的の遺伝子
を含む組換えDNAベクターを運ぶアクネ菌細胞。
2. - キューティバクテリウム・アクネスファージカプシド中でのDNAベクターのパッケージングを可能にするファージパッケージングシグナル
- 目的の遺伝子
- 産生細胞内での複製を可能にする複製起点、及び
- アクネ菌用の選択マーカー
を含む組換えDNAベクターを運ぶアクネ菌産生細胞。
3. 更にアクネ菌用の複製起点及びアクネ菌用の選択マーカーを含む、実施形態1に記載のDNAベクター。
4. ファージパッケージングシグナルが、配列番号66と少なくとも90%、93%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一である、実施形態1から3のいずれか1つに記載のDNAベクター。
5. ファージパッケージングシグナルが、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81からなる群から選択されるファージパッケージングシグナルと少なくとも90%、93%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一である、実施形態1から3のいずれか1つに記載のDNAベクター。
6. 更にCRISPR-Casシステムを含む、実施形態1から5のいずれか1つに記載のDNAベクター。
7. アクネ菌産生細胞株中に存在しないアクネ菌染色体座を標的とするCRISPR-Casシステムを含む、実施形態1から6のいずれか1つに記載のDNAベクター。
8. 標的遺伝子座が、尋常性ざ瘡に関連する炎症誘発性配列である、実施形態7に記載のDNAベクター。
9. アクネ菌ファージ内での相同組換えに適した鋳型を含む、実施形態1から8のいずれか1つに記載のDNAベクター。
10. アクネ菌プラスミド内での相同組換えに適した鋳型を含む、実施形態1から9のいずれか1つに記載のDNAベクター。
11. 相同組換えに適した鋳型を含み、CRISPR-Casシステムが、DNAベクターそれ自体を標的とする、実施形態6に記載のDNAベクター。
12. 第1の選択マーカー及び第2の選択マーカーが同じである、実施形態1から11のいずれか1つに記載のDNAベクター。
13. 第1の選択マーカーも第2の選択マーカーもermEでない、実施形態1から11のいずれか1つに記載のDNAベクター。
14. 第1の選択マーカー及び第2の選択マーカーがcatAである、実施形態1から11のいずれか1つに記載のDNAベクター。
15. 第1の選択マーカー又は第2の選択マーカーがcatAである、実施形態1から11のいずれか1つに記載のDNAベクター。
16. 実施形態1から15のいずれか1つに記載のDNAベクターのいずれかを含む操作型アクネ菌。
17. 実施形態1から15のいずれか1つに記載のベクターのいずれかによる改変により製造された操作型アクネ菌。
18. 実施形態1から15のいずれか1つに記載のベクターのいずれかとアクネ菌を接触させ、該ベクターが運ぶ目的の遺伝子によりアクネ菌を改変し、該改変を選択し、操作型アクネ菌からプラスミドをキュアリングすることにより製造された操作型アクネ菌。
19. ベクターが運ぶCRISPR-Casシステムにより改変された、実施形態16から18のいずれか1つに記載の操作型アクネ菌。
20. アクネ菌染色体への外来遺伝子の挿入により改変された、実施形態16から19のいずれか1つに記載の操作型アクネ菌。
21. アクネ菌を操作する方法であって、実施形態1から15のいずれか1つに記載のDNAベクターをアクネ菌内に導入する工程を含む方法。
22. 改変アクネ菌を選択する工程を更に含む、実施形態21に記載の方法。
23. アクネ菌染色体への、外来遺伝子の挿入を有する改変アクネ菌を選択する工程を更に含む、実施形態22に記載の方法。
24. 実施形態2に記載の産生細胞への、アクネ菌ファージゲノムの形質転換又は形質導入を含む、ファージ由来粒子の産生方法。
25. 実施形態2に記載の産生細胞への、ヘルパーファージの導入を含む、ファージ由来粒子の産生方法。
26. 実施形態24又は25に記載の方法により産生されたファージ由来粒子。
27. - アクネ菌内での複製を可能にする複製起点;
- 場合により、アクネ菌中でのDNAベクターの選択を可能にする選択マーカー、及び
- 目的の遺伝子
を含む組換えDNAベクター。
28. アクネ菌内への接合を可能にするoriT;供与菌内での複製を可能にする複製起点、及び供与菌中での選択を可能にする第2の選択マーカーを更に含む、実施形態27に記載のDNAベクター。
29. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、R6K(典型的には配列番号42の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
30. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、RK2(典型的には配列番号43の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
31. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pBBR1(典型的には配列番号44の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
32. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pRO1600(典型的には配列番号45の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
33. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、RSF1010(典型的には配列番号46の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
34. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pAMβ1(典型的には配列番号47の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
35. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pLME106(典型的には配列番号48の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
36. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pTZC1(典型的には配列番号49の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
37. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pBC1(典型的には配列番号50の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
38. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pEP2(典型的には配列番号51の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
39. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pWVO1(典型的には配列番号52の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
40. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pAP1(典型的には配列番号53の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
41. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pWKS1(典型的には配列番号54の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
42. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pLME108(典型的には配列番号55の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
43. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pLS1(典型的には配列番号56の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
44. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pUB6060(典型的には配列番号57の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
45. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、p545(典型的には配列番号58の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
46. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pJD4(典型的には配列番号59の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
47. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pIJ101(典型的には配列番号60の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
48. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pSN22(典型的には配列番号61の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
49. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pGP01(典型的には配列番号62の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
50. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pIP501(典型的には配列番号63の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
51. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pCU1(典型的には配列番号64の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
52. アクネ菌内での複製を可能にする複製起点が、pBAV1K-T5(典型的には配列番号65の配列)である、実施形態27又は28に記載のDNAベクター。
53. oriTがoriT_pMRC01(典型的には配列番号1の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
54. oriTがoriT_RSF1010(典型的には配列番号2の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
55. oriTがoriT_pRS01(典型的には配列番号3の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
56. oriTがoriT_pMV158(典型的には配列番号4の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
57. oriTがoriT_pTF1(典型的には配列番号5の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
58. oriTがoriT_pSC101(典型的には配列番号6の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
59. oriTがoriT_pBTK445(典型的には配列番号7の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
60. oriTがoriT_pBBR1(典型的には配列番号8の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
61. oriTがoriT_R721(典型的には配列番号9の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
62. oriTがoriT_pRmeGR4a(典型的には配列番号10の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
63. oriTがoriT_ColE1(典型的には配列番号11の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
64. oriTがoriT_pTiC58(典型的には配列番号12の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
65. oriTがoriT_pMdT1(典型的には配列番号13の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
66. oriTがoriT_R1(典型的には配列番号14の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
67. oriTがoriT_Tn5520(典型的には配列番号15の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
68. oriTがoriT_QKH54(典型的には配列番号16の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
69. oriTがoriT_R64(典型的には配列番号17の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
70. oriTがoriT_R751(典型的には配列番号18の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
71. oriTがoriT_RP4(典型的には配列番号19の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
72. oriTがoriT_pKL1(典型的には配列番号20の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
73. oriTがoriT_RK2(典型的には配列番号21の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
74. oriTがoriT_R1162(典型的には配列番号22の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
75. oriTがoriT_Tn4555(典型的には配列番号23の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
76. oriTがoriT_pHT(典型的には配列番号24の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
77. oriTがoriT_Tn4399(典型的には配列番号25の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
78. oriTがoriT_Tn916(典型的には配列番号26の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
79. oriTがoriT_pST12(典型的には配列番号27の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
80. oriTがoriT_pCU1(典型的には配列番号28の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
81. oriTがoriT_pSU233(典型的には配列番号29の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
82. oriTがoriT_F(典型的には配列番号30の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
83. oriTがoriT_pMAB01(典型的には配列番号31の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
84. oriTがoriT_R388(典型的には配列番号32の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
85. oriTがoriT_pS7a(典型的には配列番号33の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
86. oriTがoriT_pS7b(典型的には配列番号34の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
87. oriTがoriT_R702(典型的には配列番号35の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
88. oriTがoriT_pMUR274(典型的には配列番号36の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
89. oriTがoriT_R100(典型的には配列番号37の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
90. oriTがoriT_pVCR94deltaX(典型的には配列番号38の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
91. oriTがoriT_R46(典型的には配列番号39の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
92. oriTがoriT_pGO1(典型的には配列番号40の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
93. oriTがoriT_pIP501(典型的には配列番号41の配列)である、実施形態28から52のいずれか1つに記載のDNAベクター。
94. 更に- リラクサーゼ遺伝子;
- 接合完了体アクネ菌中での選択を可能にする選択マーカー、及び
- 接合プラスミド、接合トランスポゾン、又は組込み及び接合エレメント(ICE)を運ぶ、接合機構を発現する大腸菌株である供与菌中での選択を可能にする選択マーカー
を含む、実施形態27から93のいずれか1つに記載のDNAベクター。
95. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pMRC01を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
96. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE RSF1010を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
97. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pRS01を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
98. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pMV158を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
99. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pTF1を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
100. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pSC101を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
101. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pBTK445を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
102. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pBBR1を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
103. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE R721を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
104. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pRmeGR4aを運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
105. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE ColE1を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
106. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pTiC58を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
107. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pMdT1を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
108. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE R1を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
109. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE Tn5520を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
110. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE QKH54を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
111. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE R64を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
112. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE R751を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
113. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE RP4を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
114. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pKL1を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
115. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE RK2を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
116. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE R1162を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
117. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE Tn4555を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
118. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pHTを運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
119. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE Tn4399を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
120. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE Tn916を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
121. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pST12を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
122. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pCU1を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
123. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pSU233を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
124. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE Fを運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
125. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pMAB01を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
126. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE R388を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
127. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pS7aを運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
128. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pS7bを運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
129. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE R702を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
130. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pMUR274を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
131. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE R100を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
132. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pVCR94deltaXを運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
133. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE R46を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
134. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pGO1を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
135. 供与菌が、接合プラスミド、接合トランスポゾン、又はICE pIP501を運ぶ大腸菌株である、実施形態94に記載のDNAベクター。
136. 実施形態27から135のいずれか1つに記載のDNAベクターのいずれかを含む操作型アクネ菌。
137. 実施形態27から135のいずれか1つに記載のベクターのいずれかとアクネ菌を接触させることにより製造された操作型アクネ菌。
138. アクネ菌を操作する方法であって、実施形態27から135のいずれか1つに記載のDNAベクターをアクネ菌内に導入する工程を含む方法。
【実施例】
【0468】
(実施例1)
DNAペイロードをアクネ菌内に送達するためのファージ由来粒子
合成DNAペイロードを含有し、アクネ菌内部に注入できるアクネ菌ファージ由来粒子を開発した。導入遺伝子の発現を可能にする組換えDNAベクターの安定且つ自律的な複製が、初めて実証される。そのファージ由来粒子は、アクネ菌産生細胞内部で、アクネ菌ファージゲノムとDNAペイロードとが同時に存在するとすぐに産生される。DNAペイロードは、異なる方法、例えば、アクネ菌産生細胞内へのエレクトロポレーション、プロトプラストのエレクトロポレーション、接合、化学的形質転換、形質導入により、アクネ菌産生細胞内へと導入される。そのようなファージ由来粒子は、治療用分子をコードするDNAを、すべてのアクネ菌株へとin situで、高い効率及び特異性により送達する可能性を開き、例えば、CRISPR-Cas発現による配列特異的殺滅、又は免疫調節剤の分泌による免疫系の調節を可能にする。
【0469】
疾患、例えば、尋常性ざ瘡を防止若しくは治療するために、特定の炎症誘発性株の除去により、キューティバクテリウム・アクネス集団を編集できること、又は宿主免疫応答を調節若しくは創傷治癒を改善するための、毛包脂腺副単位へのその特権位置の活用は、興味をそそる治療手法である。そのような手法を実施するために、アクネ菌株をin situで遺伝子組換えするか、又はin vitroで遺伝子組換えしたアクネ菌を提供するかのいずれかが可能である。同一個体内及び個体間でのマイクロバイオーム多様性が、種レベル及び株レベルの両方ともで大きいため、大半の患者の皮膚に定着できる単一の操作型アクネ菌株又はそのカクテルを提供することは困難であるように思われる。
【0470】
アクネ菌集団へのin situでのDNAの送達は、予備樹立株の活用を可能にすることにより、潜在的に局所マイクロバイオームを妨げずに、そのような困難を回避するやり方を提供する。しかしながら、アクネ菌への遺伝物質のin situ送達は、いくつかの理由から困難な課題である。まず、これまでのところ、アクネ菌内部でロバスト且つ自律的に複製できる遺伝エレメント、例えば、プラスミドが存在しない。記載された数少ない遺伝子組換えは、相同組換えによる合成DNAのゲノム挿入で構成される26。このin vitroプロセスは、非常に低効率であり、且つそのような事象を選択するために抗生物質選択マーカーの使用に依拠することが示された。更に、この遺伝子組換えは、少数の特定株(KPA17202)に限られており、すべてのアクネ菌株には一般化できない可能性がある。第2に、アクネ菌のin situ遺伝子組換えを行うためには、DNAを送達する必要がある。DNAをアクネ菌内に導入する唯一の記載された方法は、エレクトロポレーションの使用であり26、27、in vitroでのみ行える方法である。
【0471】
本発明は、in situでのアクネ菌集団内部における合成DNAの送達及び維持の両方ともを解決する。ファージゲノムを代償にしてファージカプシド内部にパッケージングされた合成DNAベクター/ペイロードからなるファージ由来粒子を使用した。ファージカプシドを乗っ取ることにより、細菌宿主内にDNAを形質導入するファージの能力を利用した。それらのファージ由来粒子は、ファージの自然細菌宿主の存在下に置かれると、細菌に結合して、細菌細胞質内部にDNAベクター/ペイロードを注入し、そこで複製でき、目的のタンパク質の発現をもたらし得る。
【0472】
アクネ菌ファージは、生来、皮膚上に存在し、そこでアクネ菌を宿主として使用して感染及び複製する。アクネ菌ファージは広宿主域を有し、これまでのところ単離されたアクネ菌株多様性の大半に感染できることを意味する。このため、それらのファージのカプシドは、その遺伝的多様性にかかわりなく、in situですべてのアクネ菌株内にDNAを送達するための実に効率良いビヒクルである。アクネ菌ファージからのファージ由来粒子を開発するために、まず、ビオレディープクレンジングポアストリップ(Kao Brands Company社)をメーカ説明書に従って使用して、鼻微小面皰の試料採取により、個々の被験者の皮膚から複数のファージを単離した。鼻から取り出した後、微小面皰を採取し、滅菌水中でホモジナイズして、RCM寒天プレート上に塗る。37℃の嫌気性条件下で7日間インキュベーション後、プラークが、アクネ菌増殖の菌叢上に観察され得る。次いで、プラークを単離して、ファージを、指示株上で増殖させた。Promega wizard DNA clean-upシステムを使用してファージDNAを抽出し、機械的ランダムフラグメント化によるライブラリ調製を求めて、Illumina MiSeqプラットフォームでシーケンシングした。シーケンシングリードは、Spadesを使用してアセンブルした。以前の刊行物から予想されたように、単離したファージは、シーケンシングされた他のファージと遺伝的に類似であった。
【0473】
宿主域決定は、単離した異なるファージを用いて、公知の系統学的多様性を網羅する、アクネ菌株のコレクションに対して行った。すべてのファージは、アクネ菌株の大半に感染し得、以前に報告されたように、広宿主域を示す(
図2)。PAC7ファージを、更なる実験用に選択した。
【0474】
ファージPAC7のゲノムを精製し、機械的にせん断してランダムDNAフラグメント化させ、PCRフリーライブラリ調製を行ってから、イルミナMi-seqを使用してペアエンドシーケンシングした。Spadesを使用してDNAリードをアセンブルし、単一コンティングを得、アノテーションした。アノテーション後、付着末端を同定し、低分子ターミナーゼによる認識及びファージカプシド内へのファージゲノムのパッケージングを可能にするパッケージング配列(付着末端を有するファージではcos部位と呼ばれる)を同定するために、付着末端を含有する、異なるサイズのDNA断片をクローニングした。PAC7からの潜在的なパッケージングシグナルを、pIC086ベクターに、2つの異なる向きでクローニングした。pIC086ベクターは、
- アクネ菌内への複製を可能にする複製起点、及び
- アクネ菌中で機能する選択マーカー(ここではエリスロマイシンに対する耐性を与える)
を含有する。
【0475】
Cos含有ベクター(コスミド)を、大腸菌DH10Bクローニング株にクローニングし、配列を検証した。DNAベクター(Table 1(表1))をアクネ菌株ATCC11828内に導入して、組換え体を、エリスロマイシンを含む寒天プレート上で選択した。
【0476】
ファージ由来粒子を産生するために、DNAベクターを運ぶ異なるアクネ菌株(Table 2(表2))の液体培養を増殖させて、PAC7を感染させた。cos PAC7を含まないプラスミドを含有する株(Ca0s16973)を対照として使用した。感染後、上清をろ過して採取した。ファージゲノム及びDNAベクターの両方ともパッケージングシグナルを含有するため、両者はカプシド内へのパッケージングを競合し、ファージ/ファージ由来粒子の混合物をもたらす。
【0477】
懸濁液中のファージ及びファージ由来粒子の数を定量するために、ファージ及びファージ由来粒子の滴定を行った。ファージ由来粒子の滴定は、まずアクネ菌ATCC6919を用いて行い、ファージ感染による高効率の殺滅を示したが、形質導入体は観察されなかった。その条件では、形質導入体は、ファージによる共感染を受け、形質導入細胞の死、及びファージ由来粒子力価の過小評価をもたらした。それを回避するために、アクネ菌ATCC11828偽溶原菌株を用いて滴定を行うことにした。実際、アクネ菌ファージは、実験室条件では、厳密に溶原性でも厳密に溶菌性でもない。アクネ菌ファージは、そのゲノムを細胞内に注入して、細胞内で、ゲノム内に組み込まれることなしに休止状態にあり続けることができる。これらの、偽溶原性状態にあるファージを運ぶ細胞は、ファージ殺滅に応じない。ファージ/ファージ由来粒子滴定に偽溶原性培養を使用すると、より多量の形質導入体が認められた。しかしながら、ファージによる、アクネ菌のいくらかの残留殺滅ゆえ、同じ産生細胞の感染からの異なる産生において、ファージ由来粒子力価の大きな多様性が認められ得る(
図8)。ファージの濃度が、プラークアッセイにより決定され、各懸濁液に対するおよそ10
7PFU/μLの力価により、すべてのファージ/ファージ由来粒子懸濁液に関して、ファージの高濃度を示した(Table 3(表3))。いくつかのコロニーは、PCRにより、コスミドを含有するアクネ菌であると確認された。cosを含まないpIC086プラスミドを運ぶCa0s16973の感染からのファージ懸濁液は、いかなる形質導入体も示さず、パッケージング、したがって、ファージ由来粒子の産生は、cosを運ぶプラスミドに特異的であることを確認した。
【0478】
異なるサイズのファージパッケージングシグナルを有するDNAベクターを運ぶファージ由来粒子の滴定(
図8)は、形質導入体の数の点で著しい差異を示さない。ファージ由来粒子力価は、異なるコスミド間で同様であって、それらのコスミドが、ファージ由来粒子を産生するために、いずれも機能性であり、ファージカプシド内部へのDNAベクターのパッケージングを可能にすることを示す。
【0479】
この結果は、
- 合成DNAベクターのファージ由来粒子によるアクネ菌内への形質導入
- アクネ菌内でのDNAベクターの複製
- 複製DNAベクターが運ぶ導入遺伝子(エリスロマイシン耐性遺伝子)の発現
を初めて示す。
【0480】
これが、アクネ菌内でのin situ DNA送達、遺伝子組換え、及び導入遺伝子発現を開発するための鍵となるマイルストーンである。
【0481】
材料及び方法:
コスミド構築:ファージPAC7懸濁液を用いたPCRによりCos断片を抽出し、ゲルを精製し、SapI golden gate反応及びpIC086ベクターを使用してクローニングした。
【0482】
アクネ菌でのコスミドの導入は、エレクトロポレーション、プロトプラストのエレクトロポレーション、化学的形質転換のような方法により、接合、自然形質転換能、形質導入を使用して行い得る。
【0483】
アクネ菌接合:LBブロス(Fisher Scientific社)中で増殖させた、異なる可動性シャトルプラスミドを含有する大腸菌ドナーの一晩培養2mLを、6,000×gで1分間のベンチトップ遠心分離でペレットにした。上清を捨て、ペレットを滅菌済みLB培地500μLで洗浄し、同じ条件で再度、遠心分離した。次いで、各ペレットを、指数増殖中(OD600=0.5)の、10×濃縮したアクネ受容菌BHI培養(BHI broth、Oxoid社)200μLに再懸濁した。大腸菌-アクネ菌混合物を、ブルセラ寒天プレート(Sigma-Aldrich社)上にスポットして(50μL/スポット)、37℃の嫌気性条件下で24時間接合させた。その後、接合プレートから細胞を収穫し、BHIブロス300μL中に再懸濁し、50μg/mLのポリミキシンB(Sigma-Aldrich社)及び5μg/mLのエリスロマイシン(Sigma-Aldrich社)又は5μg/mLのクロラムフェニコール(Sigma-Aldrich社)を補足したブルセラ寒天培地上にプレーティングした。7日後、セレクションの存在下に増殖したアクネ菌細胞を、適切なセレクションを補足したブルセラ寒天プレート上にストリークし、特異的PCRにより、接合したプラスミドの存在を確認した。アクネ菌の性質、並びに大腸菌ドナー株の不在を、同じくPCR解析により確認した。
【0484】
ファージ/ファージ由来粒子の産生:異なるベクターを含有するアクネ菌ATCC11828の一晩培養(構築物当たり2クローン)を、5μg/mLのエリスロマイシンを補足したBHI培養10mL中に入れた。ファージミドpIC328からの産生を、陽性対照として使用した。一晩培養後、OD600が0.8~1に達したら、各培養の15mLを取り出し、3,000×gで5分間、遠心沈殿させた。上清を捨て、ペレットをPAC7ファージ懸濁液200μL中に再懸濁し、作業台上に室温で30分間、放置して、ファージを細胞に感染させた。1時間後、各培養にBHI培地15mLを添加し、37℃の嫌気性条件下で一晩、増殖/感染させた。一晩インキュベーション後、培養は非常に澄んでおり、感染が起こったことを示した。培養を、3,000×gで5分間、遠心沈殿させ、上清を、0.45μmフィルターを通してろ過した。
【0485】
ファージ滴定:MgSO4 5mM中で、ファージ/パッケージングされたファージミド混合物の段階希釈を行い、各希釈の4μLを、4.5g/Lのアガロース表層及びATCC11828株を含有するブルセラプレート上にスポットした。37℃の嫌気性条件下で一晩培養後、溶解プラークを数えた。
【0486】
ファージ由来粒子滴定:アクネ菌ATCC11828偽溶原性細胞の一晩培養(OD
600およそ0.8~1、×10濃縮)90μLを、非希釈から10
-4希釈(MgSO
4 5mM中での希釈)までのファージ/ファージ由来粒子10μLと混合した。ファージを有さない細胞の対照をアッセイに含めた。培養を室温で1時間インキュベートした。この最初のインキュベーション時間後、培養(細菌+異なる希釈のファージ/ファージ由来粒子)を、BHI中で10
-7まで段階希釈し、37℃の嫌気性条件下で3~4時間インキュベートした。インキュベーション後、各希釈の4μLを、ブルセラプレート上に、エリスロマイシン(5μg/mL)の存在下及び非存在下にスポットした。37℃の嫌気性条件下での5日間のインキュベーション後、BHIプレート、及びBHI+5μg/mLエリスロマイシンのプレート上でのコロニーをスキャンした(
図8)。
【0487】
偽溶原菌の産生:形質導入試験に先立ち、株を新たに作製した。PAC7ファージを、アクネ菌ATCC11828細胞の懸濁液に添加して、BHI寒天プレート上にプレーティングした。3~4日のインキュベーション後、プレート上で増殖中の細胞を回収し、より多くの細胞を得るために再度プレーティングするか、又は滴定に使用した。プレート上での継続的増殖が必要であれば、株を偽溶原性状態に維持するために、培養にアクネ菌ファージを添加する。
【0488】
アクネ菌細胞内へのファージミド形質導入の確認:エリスロマイシンを補足したBHIプレート上で認められたコロニーをBHI+エリスロマイシンプレート上で再単離した。ストリーキング後に得られた個々のエリスロマイシン耐性コロニーを、次いでPCRにより試験して、ファージミドの存在を確認した(
図3)。
【0489】
形質導入体のPCR検証:ファージミドの存在を確認するために、プライマーIC208/IC310を用いてコロニーPCRを行った。アクネ菌の性質を確認するために、更に、プライマーAD1261/AD1262を用いて行ったPCRを含めた。
【0490】
【0491】
【0492】
【0493】
【0494】
(実施例2)
遺伝子組換えしたアクネ菌株の効果を、免疫細胞に対するその効果に関して、特に、特定のサイトカイン又は免疫プロファイルを誘導するその能力に関して、以前に記載されたプロトコルに従ってin vitroで試験した。
【0495】
特に、Yu等(2016)Journal of Investigative Dermatology 136:2221~2228頁(非特許文献6)に開示されたプロトコルを、必要であれば任意の改変及び/又は適合を伴いながら、前記株を用いて実施した。
【0496】
(実施例3)
操作型アクネ菌株による抗原の分泌
毛包脂腺副単位(PSU)は、多様な細胞一式、例えば、免疫細胞、脂腺細胞、及び幹細胞を含有する複雑な皮膚付属器である。PSUは更に、高度に血管新生化された領域であり、したがって、分子の全身送達の入口である。PSU微生物叢は、アクネ菌が多数を占めているため、in situで組換えタンパク質を分泌するようにアクネ菌を操作する能力は、存在する細胞の活性を調節するため、並びに血液中での分子の送達のための両方ともにとても興味深い。本実施例は、ひとたびアクネ菌内に導入されると、組換えタンパク質、ここでは、ニワトリオボアルブミン抗原タンパク質の分泌をもたらすDNAベクターの使用を明示する。本発明は、目的の特定タンパク質、例えばスキンプロバイオティクスとしての抗原を分泌する操作型アクネ菌株を使用する可能性を開く。その代わりに、PSU中にすでに存在するアクネ菌集団において、目的のタンパク質の分泌をコードするDNAベクターを送達するために、操作型ファージ又はファージ由来粒子を使用してもよい。
【0497】
アクネ菌は、ヒト皮膚の最も量が多く最も一般的である細菌共生でないとしても、そのうちの1つである。アクネ菌は、皮膚表面からも単離され得るが、主にPSU中に存在する。特定ファイロタイプに属する特定株が、尋常性ざ瘡疾患と関連付けられており、「炎症誘発性」であると見なされる。異なるアクネ菌ファイロタイプ間の相違を特徴づけるために、いくつかの研究は、炎症誘発性表現型に特異的な潜在性タンパク質を同定する目的で、セクレトームを特徴づけた。同定された分泌タンパク質の一部を使用して、本発明者らは、signalPを使用して、推定分泌シグナルペプチド(Table 5(表5))を同定できた(Armenteros, J.等、SignalP 5.0 improves signal peptide predictions using deep neural networks. Nat Biotechnol 37、420~423頁(2019)(非特許文献44))。
【0498】
それらの分泌シグナルペプチドが、アクネ菌中で組換えタンパク質を分泌させる能力を試験するために、本発明者らは、
- 組換えタンパク質の発現を駆動するプロモーター、
- アクネ菌用に最適化されたニワトリオボアルブミンCDSコドンのN末端に融合させた、タンパク質を分泌系へと向かわせるシグナルペプチド、
- アクネ菌用のエリスロマイシン選択マーカー、及び
- アクネ菌内で機能する複製起点
を含むいくつかの複製プラスミドを構築した。
【0499】
異なるDNAベクター(Table 6(表6))を、アクネ菌ATCC11828内に導入した(Table 7(表7))。アクネ菌細胞内への導入は、異なる方法、例えば、アクネ菌内へのエレクトロポレーション、プロトプラストのエレクトロポレーション、接合、化学的形質転換、形質導入により行われ得る。アクネ菌内へのDNAベクターの存在は、選択プレート上にストリークした後、コロニーPCRにより確認した。異なるアクネ菌の培養上清中でのニワトリオボアルブミンの分泌は、ELISA(
図9)及びウエスタンブロット(
図10)を使用してモニタリングした。
図9に示すように、ELISA実験の両方のレプリカとも、野生型アクネ菌(アクネ菌ATCC11828)と比べて、Ca0s22124を除き、たいていの操作型アクネ菌株では、著しく高い吸光度を示す。Ca0s22126株は、繰り返して最高シグナルをもたらし、培養上清中におけるより高いレベルの分泌オボアルブミンを示す。分泌を更に、ウエスタンブロット(
図10)により確認した。Ca0s22120株、Ca0s22122株、Ca0s22126株、Ca0s22128株、及びCa0s22132株からの培養上清に関して、40kDaのすぐ上に単一バンドが認められた。このバンドは、オボアルブミンサイズ(43kDa)、及びオボアルブミン対照ウェルからの薄いバンドに相当する。異なる分泌プラスミドのクローニングに使用した、空プラスミドを運ぶ対照株Ca0s16973ではバンドが認められなかった。Ca0s22126ではより濃いバンドが見出され、ELISAの結果を裏付ける。
【0500】
結論として、本発明者らは初めて、複製DNAプラスミドを使用した、アクネ菌による組換えタンパク質の分泌のための内在性アクネ菌分泌ペプチドの使用を記載する。
【0501】
材料及び方法:
プラスミド構築:合成DNA断片を注文し、SapI golden gateクローニングを使用して、p1047プラスミド(pIC086)中でアセンブルした。
【0502】
接合:実施例1の材料及び方法に記載のとおり。
【0503】
ELISA:抗生物質を含まないBHI上にストリークした、プラスミドを含まない対照株以外は、異なるアクネ菌株を、冷凍保存ストックから、BHI+エリスロマイシンプレートにストリークして、プレートを、37℃の嫌気性条件中で4~7日間インキュベートした。完全に増殖したら、BHI+5μg/mLエリスロマイシンの10mL培養に、対応するストリークから種菌を接種して、37℃の嫌気性条件中で一晩インキュベートした。インキュベーション後、OD600nmを測定し、増殖の差異を点検した。培養1mLを1.5mLのチューブに分注して、6000gで6分間、遠心分離した。上清10μLを、1XPBSの90μLをあらかじめ入れた高結合96ウェルプレート(Greiner社、655061)に移した。蓋をしたプレートを、37℃で2時間、インキュベーションした。インキュベーション後、プレートから試料を捨て、PBS+5%ウシ血清アルブミン(BSA)100μLを加えて、蓋をしたプレートを37℃で1時間、インキュベートした。PBS+0.05% Tween 20 100μLで、連続して3回の洗浄工程を行ってから、一次抗体溶液(PBS 1X+1% BSA+0.05% Tween 20中に1/1000希釈した抗OVA抗体、innovagen社、PA-O323-100)100μLを添加した。蓋をしたプレートをRTで1時間インキュベートした。インキュベーションに続いて、PBS+0.05% Tween 20 100μLで、連続して3回の洗浄工程を行ってから、二次抗体溶液(PBS 1X+1% BSA+0.05% Tween 20中に1/5000抗体希釈した抗ウサギ抗体、Invitrogen社、A16035)100μLを添加して、RTで1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートから試料を捨て、PBS+0.05% Tween 20 100μLで、連続して3回の最終洗浄工程を行った。TMB-ELISA基質(Thermo Scientific社、34028)100μLを各ウェルに添加して、遮光下にRTで10~12分間、インキュベーションを行った。1M 硫酸100μLを各ウェルに添加して反応を停止した。infiniteリーダー(Tecan社)を使用して、450nmで吸光度測定を行った。
【0504】
ウエスタンブロット:抗生物質を含まないBHI上にストリークした、プラスミドを含まない対照株以外は、異なるアクネ菌株を、冷凍保存ストックから、BHI+エリスロマイシンプレートにストリークして、プレートを、37℃の嫌気性条件中で4~7日間インキュベートした。完全に増殖したら、BHI+5μg/mLエリスロマイシンの10mL培養に、対応するストリークから種菌を接種して、37℃の嫌気性条件中で一晩インキュベートした。インキュベーション後、OD600を測定し、増殖の差異を点検した。培養1mLを1.5mLのチューブに分注して、6000gで6分間、遠心分離した。0.2μmフィルターを使用した上清のろ過。ろ過した上清30μLに、LDSサンプルバッファ(B0008 Invitrogen(商標))7.5μL及びBolt(商標)抗酸化剤(BT0005 Invitrogen(商標))3μLを補ってから、100℃で10分間、沸騰させた。混合物30μLを、Bolt(商標)4~12%のBis-Trisゲル(NW04120 Invitrogen(商標))にロードした。移動後、ニトロセルロース膜へと転写した。転写後、膜をまず、PBS+0.05% Tween 20中の5%スキムミルク溶液中に1時間浸してから、1:1000希釈した一次抗体(抗OVA抗体、innovagen社、PA-O323-100)を含有する、PBS+0.05% Tween 20中の5%スキムミルク溶液20mL中に、4℃で一晩浸し、PBS+Tween 0.05%で3回洗浄し、1:5000希釈した二次抗体(抗ウサギ抗体、Invitrogen社、A16035)を含有する、PBS+0.05% Tween 20中の5%スキムミルク溶液20m中に1時間浸し、PBS+Tween 0.05%で3回洗浄した。発色(revelation)の最終工程は、化学発光基質(34580 Thermofisher社)を使用して行った。イメージングは、iBright CL1000(Invitrogen(商標))を使用して行った。
【0505】
【0506】
【0507】
【配列表】
【国際調査報告】