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▶ ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】水性アルカリ性研磨洗浄組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/62 20060101AFI20231106BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20231106BHJP
   C11D 3/33 20060101ALI20231106BHJP
   C11D 3/08 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
C11D1/62
C11D1/68
C11D3/33
C11D3/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527343
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 EP2021079349
(87)【国際公開番号】W WO2022100982
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】20206582.7
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】バギ,パオラ
(72)【発明者】
【氏名】クロウリー,ジャイルズ・ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミーソン,アンドリュー・スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】レッチェ,テレサ
(72)【発明者】
【氏名】ルピ,ローラ
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC08
4H003AE05
4H003DA04
4H003DA05
4H003DA08
4H003DA17
4H003DB01
4H003DC04
4H003EA21
4H003EA25
4H003EB07
4H003EB13
4H003EB19
4H003EB41
4H003ED02
4H003FA05
4H003FA19
4H003FA28
(57)【要約】
本発明は、経時的に安定な第四級アンモニウム化合物を含む水性アルカリ性研磨洗浄組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.1~60重量%の研磨粒子、
b.0.05~0.5重量%のデュータンガム、
c.0.01~3重量%のアミノカルボキシレート捕捉剤、
d.0.05~3重量%の第四級アンモニウム化合物
を含む水性アルカリ性研磨洗浄組成物であって、
前記組成物が、10~14のpHを有し、
前記研磨粒子が懸濁している、水性アルカリ性研磨洗浄組成物。
【請求項2】
前記研磨粒子が、1~5のモース硬度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記研磨粒子が、2~500ミクロンの平均粒径を有する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記研磨粒子が、カーボネートおよび/またはシリケート系鉱物に由来する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記第四級アンモニウム化合物が、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジイソブチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムサッカリネート、オクチルデシルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロリド、メチルドデシルベンジルアンモニウムクロリド、メチルドデシルキシレン-ビス-トリメチルアンモニウムクロリド、メチルベンゼトニウムクロリド、セチルピリニジニウムクロリド、臭化セトリモニウムおよびそれらの組合せから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第四級アンモニウム化合物が塩化ベンザルコニウムである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記捕捉剤が、GLDA、MGDAおよびそれらの組合せから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記捕捉剤が、MGDAを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記pHが、11~13、好ましくは11~12である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
25℃にて20s-1で10~2000mPa.sの粘度を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
10~15のHLBを有する、最大5重量%の非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
水性組成物中にデュータンガムおよびアミノカルボキシレート捕捉剤を含めることによって、水性アルカリ性洗浄組成物を構成する研磨粒子および第四級アンモニウム化合物を安定化させる方法。
【請求項13】
前記捕捉剤が、GLDA、MGDAおよびそれらの組合せから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、請求項1~11のいずれか一項に記載のものである、請求項12または請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性アルカリ性研磨洗浄組成物に関する。さらに具体的には、本発明は、経時的に安定な水性アルカリ性研磨洗浄組成物を含む消毒剤、およびそれを達成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄製品は、よく知られており、日常生活に重要な役割を果たす。そのような製品は、通常、洗浄剤を含有し、消毒が望まれる場合、例えば、第四級アンモニウム化合物のような消毒剤も含有する。一般的な洗浄剤には、界面活性剤が含まれるが、カルサイト粒子などの研磨剤も包含され得る。研磨粒子を含む洗浄製品は、「クリーム」または「磨きクリーム」としても知られている。そのようなクリームは、家庭内およびその周囲の家庭用ケア硬質表面、例えば、床、キッチントップおよび浴室タイルを洗浄するために使用される。これらのクリームはまた、皿などの食器を洗浄するのに有用であり得、多くの場合、茶渋のような厄介な汚れを除去するために使用される。クリームは、通常、洗浄性能を補助するためにアルカリ性pHを有する。
【0003】
クリームでは、製品が経時的に均一な外観を維持することが望ましい。例えば、カルサイト粒子などの研磨粒子は、それらが均一に分布するように懸濁状態に保たれる必要がある。消費者は、経時的に、例えば、保存時に、粒子が沈降し、容器の底部に沈殿物を形成することを嫌う。これは、使用前に製品を振盪することを必要とし、場合によっては、振盪しても粒子の適切な分布が回復せず、洗浄が最適以下になるため、好ましくないユーザ体験をもたらす。
【0004】
洗浄に加えて、消費者は消毒を好むこともある。この要件を提供するために、消毒剤が加えられ得る。この目的および製品形式のための公知の消毒剤は、次亜塩素酸塩である。ただし、次亜塩素酸塩は強力な酸化剤であることから繊細な表面に損傷を与えるリスクを有するため、消費者の中にはさらに穏やかな消毒剤を好む者もいる。第四級アンモニウム化合物は、さらに穏やかな消毒剤の一例である。しかし、第四級アンモニウム化合物のカチオン性のために、それらはクリームに組み込むことが容易ではない。
【0005】
今日、ますます多くの消費者が、良好な環境プロファイルを有する洗浄製品を好んでいる。すなわち、消費者は、「環境に優しく」、製品を使用した際に環境への影響が少ないかまたは全くない製品を好む。したがって、主に天然および/もしくは生分解性成分を含有するか、またはそれらのみを含有する洗浄製品に対する必要性が高まっている。
【0006】
欧州特許第1448756号は、苛性物質と粘度安定化量のデュータンガムとを少なくとも含むアルカリ水溶液を開示している。
【0007】
しかし、すべての粘度安定化系が、第四級アンモニウム化合物を含む水性アルカリ性研磨洗浄組成物の適切な安定化を可能にするわけではないようである。
【0008】
したがって、これまでの取組みにもかかわらず、良好な環境プロファイルを有し、性能および/または保存安定性に関して消費者の満足を損なうことのない洗浄組成物の必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第1448756号
【発明の概要】
【0010】
我々は、デュータンガムとアミノカルボキシレート捕捉剤との組合せが、安定な水性アルカリ性研磨洗浄組成物をもたらすことを見出した。
【0011】
したがって、第1の態様では、本発明は、
a.1~60重量%の研磨粒子、
b.0.05~0.5重量%のデュータンガム、
c.0.01~3重量%のアミノカルボキシレート捕捉剤、
d.0.05~3重量%の第四級アンモニウム化合物を含む水性アルカリ性研磨洗浄組成物であって、
組成物が、10~14のpHを有し、
研磨粒子が懸濁している水性アルカリ性研磨洗浄組成物に関する。
【0012】
本発明は、水性組成物中にデュータンガムおよびアミノカルボキシレート捕捉剤を含めることによって、水性アルカリ性洗浄組成物を構成する研磨粒子および第四級アンモニウム化合物を安定化させる方法にさらに関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一態様の任意の特徴は、本発明の他の任意の態様において利用されてもよい。用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」を意味することを意図しているが、必ずしも「からなる(consisting of)」または「から構成される(composed of)」を意味するものではない。言い換えれば、列挙された工程または選択肢は網羅的である必要はない。操作および比較実施例、または他に明示されている場合を除いて、材料の量または反応条件、材料および/もしくは使用の物理的特性を示す本明細書中のすべての数字が、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。「xからy」の形式で表される数値範囲は、xおよびyを含むと理解される。特定の特徴について複数の好ましい範囲が「xからy」の形式で記載されている場合、異なる端点を組み合わせるすべての範囲も企図されることが理解される。特に指定されない限り、本明細書で使用される量は、組成物の総重量に基づく重量パーセントで表され、「重量%」と略される。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的な言語、例えば、「など」の使用は、単に本発明をさらによく明らかにすることを意図するものであり、特許請求される本発明の範囲を決して限定するものではない。室温は、摂氏約20度の温度として定義される。
【0014】
水性洗浄組成物
本発明の洗浄組成物は、水性洗浄組成物であり、すなわち、組成物は水を含む。水の量は、他の成分の所望の濃度に依存するが、少なくとも約25重量%、例えば、少なくとも40重量%または少なくとも60重量%、典型的には98重量%以下である。水の量は、好ましくは25~98重量%、さらに好ましくは35~90重量%、さらになお好ましくは45~80重量%、さらに一層好ましくは55~75重量%である。
【0015】
組成物は液体であり、すなわち、注ぐことができ、好ましくは25℃にて20s-1で10~2000mPa.sの粘度を有する。粘度は、ステンレス鋼スピンドルMVIIを使用してHAAKE VT 550粘度計を使用して測定される。必要な使用特性に応じて、組成物は、多かれ少なかれ粘性であり得る。例えば、組成物をトリガースプレーボトルで使用する場合、水によって薄められた粘度が望ましい。スクイズボトルから分配される場合、さらに粘性の高い稠度が所望され得る。好ましくは、組成物は、25℃にて20s-1で120~1500mPa.s、さらに好ましくは25℃にて20s-1で300~1000mPa.sの粘度を有する。所望の粘度は、例えば、粘度調整剤の使用のような公知の方法によって好適に得ることができる。あるいは、デュータンガムの量、および/または研磨粒子の量を調整することができる。
【0016】
研磨材
本発明の洗浄組成物は、1~60重量%の研磨粒子を含む。研磨粒子は、組成物のアルカリ性pHと組み合わせて洗浄を提供するための洗浄剤として作用する。好ましくは、組成物は、10~50重量%、さらに好ましくは15~40重量%の研磨粒子を含む。
【0017】
鉱物硬度のモース硬度は、比較的硬い材料が比較的柔らかい材料を引っ掻く能力によって様々な鉱物の耐擦傷性を特性評価する定性的な順序尺度である。比較的低い値は比較的柔らかい材料を示し、比較的高い値は比較的硬い材料を示す。研磨粒子は、洗浄剤として作用するのに十分な研磨作用を提供すべきであるが、同時に、過度の引っ掻きによって、洗浄される表面に損傷を与えるべきではない。好ましくは、研磨粒子は、1~5、さらに好ましくは1~4、さらになお好ましくは2~4のモース硬度を有する。
【0018】
研磨粒子は、好ましくは2~500ミクロン、さらに好ましくは5~250ミクロン、さらになお好ましくは5~100ミクロンの平均粒径を有する。
【0019】
好適な研磨粒子は周知であり、合成粒子、植物系粒子および鉱物系粒子を含む。好適な合成材料には、プラスチック粒子が含まれる。好適な植物系材料には、所望の粒径を得るために粉砕され得る種、穀粒および核が含まれる。植物系研磨粒子の好適な例には、サクランボの種、アンズの穀粒、およびオリーブの核に基づくものが挙げられる。好ましくは、研磨粒子は鉱物系であり、さらに好ましくは、研磨粒子はカーボネートおよび/またはシリケート系鉱物に由来する。カーボネート系鉱物の例には、カルサイトおよびドロマイトが挙げられる。カルサイトは、カーボネート鉱物であり、3のモース硬度値を有する炭酸カルシウム(CaCO)の最も安定な多形である。ドロマイトは、炭酸カルシウムマグネシウム、理想的にはCaMg(COから構成される無水カーボネート鉱物である。ドロマイトは、約3.5~4のモース硬度値を有する。好ましくは、研磨粒子は、カルサイトに由来する。
【0020】
デュータンガム
本発明の洗浄組成物は、0.05~0.5重量%のデュータンガムを含む。デュータンガムは、スフィンゴモナス(Sphingomonas)種ATCC 53159の菌株の発酵によって調製されるバイオポリマー、さらに具体的にはヘテロ多糖S-657である。ヘテロ多糖S-657は、炭水化物と、約12%のタンパク質と、約7%(O-アセチルとして計算)のアシル基とから主に構成され、炭水化物部分は、約19%のグルクロン酸、ならびに約3:2のモル比の中性糖ラムノースおよびグルコースを含有する。デュータンガム構造の詳細は、Diltz et al.による論文、“Location of O-acetyl groups in S-657 using reductive-cleavage method”Carbohydrate Research 331(2001)265-270に見出され得る。デュータンガムの調製の詳細は、米国特許第5,175,278号に見出され得る。好ましくは、組成物は、0.1~0.35重量%、さらに好ましくは0.15~0.3重量%のデュータンガムを含む。
【0021】
デュータンガムは、アルカリ水溶液用の粘度安定化ガムとして欧州特許第1448756号に記載されている。本発明の洗浄組成物では、デュータンガム単独では、保存時に研磨粒子を懸濁状態に保つことができないため、安定な懸濁液を提供することができないことが分かった。保存時に安定な懸濁液を提供するために、捕捉剤が必要である。
【0022】
捕捉剤
本発明の組成物は、アミノカルボキシレート捕捉剤を含む。
【0023】
最も好ましくは、アミノカルボキシレート捕捉剤は、1Nカルボキシレート、2Nカルボキシレート、3Nカルボキシレートおよびそれらの混合物から選択される。
【0024】
好ましくは、本発明のアミノカルボキシレートは、アミノ(ポリ)カルボキシレートから選択される。
【0025】
好ましくは、捕捉剤は、-N(MOOCH3)2基および/または-N-CH2(CH2COOM)(COOM)基を含むアミノカルボキシレートから選択され、式中、Mは、水素、金属(例えば、アルカリ金属)、アンモニウムまたはそれらの混合物であり、捕捉剤は、1つ以上の-SO3Na基によって置換されていてもよい。
【0026】
好ましくは、本発明の捕捉剤は、以下の塩から選択される。
・グルタミン酸N,N-二酢酸(GLDA)、
・β-アラニン二酢酸、
・エチレンジアミン三酢酸、
・メチルグリシン二酢酸(MGDA)、
・ジエチレントリアミン五酢酸、
・エチレンジアミン-N,N-ジコハク酸、
・エチレンジアミンジ(スルホスクシネート)および
・それらの混合物
【0027】
本発明の水性洗浄組成物は、0.01~3重量%、好ましくは0.5~2.5重量%、さらに好ましくは1~2重量%のアミノカルボキシレート捕捉剤を含む。
【0028】
好ましくは、アミノカルボキシレート捕捉剤は、GLDA、MGDAおよびそれらの組合せから選択される。
【0029】
MGDAは、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩に使用される一般的な略語であり、ジカルボキシメチルアラニネート三ナトリウム(trisodium dicarboxymethyl alaninate)としても知られている。GLDAは、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム塩に使用される一般的な略語である。
【0030】
驚くべきことに、デュータンガムと組み合わせたこれらの捕捉剤は、研磨粒子および第四級アンモニウム化合物を含む組成物のための安定な懸濁液を保存時に提供することが見出された。
【0031】
好ましくは、アミノカルボキシレート捕捉剤はMGDAを含み、さらに好ましくは捕捉剤はMGDAである。
【0032】
第四級アンモニウム化合物
本発明の水性洗浄組成物は、消毒剤として0.05~3重量%の第四級アンモニウム化合物を含む。好ましくは、組成物は、0.1~2重量%、さらに好ましくは0.25~1.5重量%の該第四級アンモニウム化合物を含む。
【0033】
本明細書に記載される技術では、任意の第四級アンモニウム化合物を使用することができる。第四級アンモニウム化合物の例には、例えば、アルキルアンモニウムハライド、例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウム、アルキルアリールアンモニウムハライド、例えば、臭化オクタデシルジメチルアンモニウム、N-アルキルピリジニウムハライド、例えば、臭化N-セチルピリジニウムなどが挙げられる。1つの好適な種類の第四級アンモニウム化合物には、例えば、分子がアミン結合、エーテル結合またはエステル結合を含有するもの、例えば、オクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N-(ラウリルココアミノホルミルメチル)-ピリジニウムクロリドなどが含まれる。別の有効な種類の第四級アンモニウム化合物には、例えば、ラウリルオキシフェニルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルアミノフェニルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、ドデシルフェニルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、ドデシルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、塩素化ドデシルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドなどのように、疎水性ラジカルが置換芳香族核を特徴とするものが含まれる。好ましくは、本技術を実施する際に利用される第四級アンモニウム化合物は、殺生物性活性を示すか、または本質的に殺生物性である。
【0034】
特に有用な第四級アンモニウム化合物殺菌剤には、単一の第四級化合物、および2つ以上の異なる第四級化合物の混合物を含む組成物が含まれる。このような有用な第四級化合物は、EMPIGEN、BARDAC、BARQUAT、HYAMINE、LONZABACおよびONYXIDEの商標の下に入手可能であり、これらは、例えば、McCutcheon’s Functional Materials(Vol.2),North American Edition,1998、および以下に特定される供給業者からのそれぞれの製品文献にさらに十分に記載されている。
【0035】
例えば、BARDAC 205Mは、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド(BKC)、オクチルデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジデシルジメチルアンモニウムクロリドおよびジオクチルジメチルアンモニウムクロリドを含有する液体であると記載されている(50%活性)(80%活性(BARDAC 208M)としても入手可能);アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドとジアルキルジメチルアンモニウムクロリドとの組合せとしてMcCutcheon’sに一般に記載されている);BARDAC 2050は、オクチルデシルジメチルアンモニウムクロリドジデシルジメチルアンモニウムクロリドおよびジオクチルジメチルアンモニウムクロリドの組合せであると記載されている(50%活性)(80%活性(BARDAC 2080)としても入手可能);BARDAC 2250は、ジデシルジメチルアンモニウムクロリドであると記載されている(50%活性);ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド(BARQUAT MB-50、MX-50、OJ-50(それぞれ50%液)、およびMB-80またはMX-80(それぞれ80%液)に基づくものとして記載されているBARDAC LF(またはBARDAC LF-80)は、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドとしてそれぞれ記載されている;BARDAC 4250およびBARQUAT 4250 Z(それぞれ50%活性)、またはBARQUAT 4280およびBARQUAT 4280Z(それぞれ80%活性)は、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド/アルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロリドとしてそれぞれ記載されている。また、ジイソブチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド(50%溶液)として記載されているHYAMINE 1622;アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドとして記載されているHYAMINE 3500(50%活性)(80%活性(HYAMINE 3500-80)としても入手可能);ならびにメチルドデシルベンジルアンモニウムクロリドおよび/またはメチルドデシルキシレン-ビス-トリメチルアンモニウムクロリドに基づくものとして記載されているHYMAINE 2389。
【0036】
(BARDAC、BARQUATおよびHYAMINEは、現在、Lonza,Inc.,Fairlawn,N.J.から市販されている)。BTC 50 NF(またはBTC 65 NF)は、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドであると記載されている(50%活性);BTC 99は、ジデシルジメチルアンモニウムクロリドとして記載されている(50%活性);BTC 776は、ミリザルコニウムクロリド(myrisalkonium chloride)であると記載されている(50%活性);BTC 818は、オクチルデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジデシルジメチルアンモニウムクロリドおよびジオクチルジメチルアンモニウムクロリドとして記載されている(50%活性)(80%活性(BTC 818-80%)としても入手可能);BTC 824およびBTC 835は、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドであるとそれぞれ記載されている(それぞれ50%活性);BTC 885は、BTC 835とBTC 818との組合せとして記載されている(50%活性)(80%活性(BTC 888)としても入手可能);BTC 1010は、ジデシルジメチルアンモニウムクロリドとして記載されている(50%活性)(80%活性(BTC 1010-80)としても入手可能);BTC 2125(またはBTC 2125 M)は、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドおよびアルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロリドとして記載されている(それぞれ50%活性)(80%活性(BTC 2125 80またはBTC 2125 M)としても入手可能);BTC 2565は、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドとして記載されている(50%活性)(80%活性(BTC 2568)としても入手可能);BTC 8248(またはBTC 8358)は、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドとして記載されている(80%活性)(90%活性(BTC 8249)としても入手可能);ONYXIDE 3300は、n-アルキルジメチルベンジルアンモニウムサッカリネートとして記載されている(95%活性)。(BTCおよびONYXIDEは、現在、Stepan Company,Northfield,Illから市販されている)。
【0037】
ベンジル-C12~14-アルキルジメチルアンモニウムクロリドベンジルC12~C16-アルキルジメチルクロリドは、EMPIGEN BAC 50およびEMPIGEN BAC 80としても入手可能である。これは、それぞれ水中約50%または80%の塩化ベンザルコニウムの水溶液である。EMPIGEN BAC 50およびEMPIGEN 80は易生分解性であり、EMPIGENはInnospec Performance Chemicalsから市販されている
これらのモノマー構造に基づくポリマー第四級アンモニウム塩も、本発明にとって望ましいと考えられる。1つの例が、2-ブテニルジメチルアンモニウムクロリドポリマーであると記載されているPOLYQUATである。
【0038】
好ましくは、第四級アンモニウム化合物は塩化ベンザルコニウムである。
【0039】
pH
本発明の洗浄組成物は、アルカリ性であり、10~14のpHを有する。アルカリ性pHは、特に研磨粒子と組み合わせて、良好な洗浄性能を可能にする。好ましくは、組成物は、11~13、さらに好ましくは11~12のpHを有する。
【0040】
所望のpHは、当技術分野で公知の方法によって、例えば、アルカリ成分を含めることによって得ることができる。本発明では、捕捉剤は、少なくとも部分的に、所望のアルカリ性pHの達成に寄与する。
【0041】
界面活性剤
本発明の組成物中の一次洗浄剤は、研磨粒子である。組成物の洗浄性能をさらに補助するために、界面活性剤が存在してもよい。好ましくは、本発明の洗浄組成物は、10~15のHLBを有する、最大5重量%の非イオン性界面活性剤を含む。さらに好ましくは、組成物は、0.5~4重量%、さらになお好ましくは1~3重量%の非イオン性界面活性剤を含む。
【0042】
10~15のHLBを有するのであれば、任意の非イオン性界面活性剤を好適に使用することができる。好ましい非イオン性界面活性剤は、アルコールエトキシレート、アルキルポリグリコシドおよびそれらの組合せから選択される。
【0043】
好ましくは、非イオン性界面活性剤は生分解性であり、さらになお好ましくは、非イオン性界面活性剤は天然かつ生分解性である。
【0044】
アルコールエトキシレート
好適なアルコールエトキシレート界面活性剤には、約5~30モルのエチレンオキシドと縮合した高級アルコール(例えば、直鎖または分岐鎖の構成で約8~18個の炭素原子を含有するアルカノール)、例えば、約16モルのエチレンオキシド(EO)と縮合したラウリルアルコールまたはミリスチルアルコール、約6モルのEOと縮合したトリデカノール、ミリスチルアルコール1モル当たり約10モルのEOと縮合したミリスチルアルコールの縮合生成物、炭素原子の長さが10~約14個まで変動するアルキル鎖を有する脂肪アルコールの混合物を含有するココナッツ脂肪アルコールのカット(cut)とのEOの縮合生成物が含まれ、ここで、縮合物は、総アルコール1モル当たり約6モルのEO、またはアルコール1モル当たり約9モルのEOのいずれかと、アルコール1モル当たり6EO~11EOを含有する獣脂アルコールエトキシレートとを含有する。5、7および9モルのエチレンオキシド(ラウレス5、ラウレス7およびラウレス9)と縮合したラウリルアルコールが特に好ましい。好ましくは、アルコールエトキシレート界面活性剤は、ラウレス5、ラウレス7およびラウレス9またはそれらの混合物から選択される。
【0045】
10~15のHLBを有するソルビタンモノ-およびトリ-C10~C20アルカン酸エステルとの2~30モルのエチレンオキシドの縮合物を非イオン性界面活性剤として使用してもよい。これらの界面活性剤は周知であり、Tweenの商品名の下にImperial Chemical Industriesから入手可能である。好適な界面活性剤には、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエートおよびポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレートが含まれる。
【0046】
アルキルポリグリコシド界面活性剤
好ましくは、非イオン性界面活性剤はアルキルポリグリコシド界面活性剤を含み、さらに好ましくは、非イオン性界面活性剤はアルキルポリグリコシド界面活性剤である。これらの界面活性剤の種類は、天然源に由来するとともに、生分解性である。
【0047】
本明細書で使用される場合、アルキルポリグリコシドは、式I:R1O(R2O)(Z)を有する化合物であり、式中、R1は、約1~約30個の炭素原子を有するアルキルラジカルであり、R2は、2~4個の炭素原子を有するアルキレンラジカルであり、Zは、5または6個の炭素原子を有する糖残基であり、bは、0~約12の値を有する数であり、aは、1~約6(重合度)の値を有する数である。アルキルポリグリコシドは、それらが合成される方法のために、一般に、アルキルラジカル中の様々な量の炭素原子と、様々な重合度とを有するアルキルポリグリコシドの混合物として存在する。したがって、アルキルポリグリコシドに言及する場合、アルキルラジカルは、一般に、ある範囲の炭素原子を有すると称され(例えば、C4/22は、4~22個の炭素原子を有するアルキルラジカルの範囲を指す)、重合度は、一般に、混合物の平均重合度と呼ばれる。
【0048】
開示される洗浄配合物に使用するのに適した好ましいアルキルポリグリコシドには、式Iを有するものが含まれ、式中、Zはグルコース残基であり、bはゼロであり、R1は、4~22個の炭素原子を含有するアルキル基であり、aの平均値は約1~2である。好ましくは、R1は、8~16個の炭素原子を含有するアルキル基であり、aの平均値は約1~2である。このようなアルキルポリグルコシドは、例えば、Cognis CorporationからGLUCOPONブランドのアルキルポリグルコシド組成物として市販されている。
【0049】
生分解性
水および無機材料を除く総生成物に基づいて計算される、洗浄組成物の成分の少なくとも一部は生分解性である。真に生分解性であるためには、物質または材料は、二酸化炭素(植物の栄養素)および水に分解されるべきである。生態系に害を及ぼさない、天然に存在する鉱物は、既にそれらの天然の鉱物状態にあり、生分解する必要はない。
【0050】
好ましくは、成分の少なくとも70重量%、さらに好ましくは少なくとも90重量%、さらになお好ましくは少なくとも95重量%が生分解性である。好ましくは、少なくとも99重量%が生分解性であり、さらになお好ましくは、本質的に全成分が生分解性である。
【0051】
本発明の目的のために、用語「生分解性」は、OECD 302ガイドライン/試験による「本質的にかつ最終的に生分解性」を指す。好ましくは、用語「生分解性」は、OECD 301シリーズまたは310ガイドライン/試験による「容易にかつ最終的に生分解性」を指す。
【0052】
好ましくは、水を除く総生成物に基づいて計算される、洗浄組成物の有機成分の少なくとも一部は天然である。本発明の目的のために、天然とは、すなわち、天然源由来の植物材料を少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、さらに好ましくは少なくとも90重量%、さらになお好ましくは少なくとも95重量%含む成分として定義される。好ましくは、少なくとも99重量%が植物由来であり、さらになお好ましくは、天然成分の本質的に全部が植物由来である。
【0053】
好ましくは、有機成分の少なくとも70重量%、さらに好ましくは少なくとも90重量%、さらになお好ましくは少なくとも95重量%が天然である。好ましくは、少なくとも99重量%が天然であり、さらになお好ましくは、本質的に全有機成分が天然である。
【0054】
さらなる成分
本発明の水性洗浄組成物は、例えば、芳香剤のようなさらなる成分を含んでもよい。好ましくは、組成物は、生分解性芳香剤を含む。
【0055】
大型(比較的大型)の工場設定および充填ラインでの組成物の混合中の過剰な発泡を回避するために、プロセス助剤として消泡剤を加えることが望ましい場合がある。
【0056】
組成物はまた、他の界面活性剤を含んでもよいが、好ましくは、組成物は、アニオン性界面活性剤を含まず、これは、これらが第四級アンモニウム化合物の殺生物性効果を妨げ得るためである。
【0057】
安定化方法
本発明はまた、水性組成物中にデュータンガムおよびアミノカルボキシレート捕捉剤を含めることによって、水性アルカリ性洗浄組成物を構成する研磨粒子および第四級アンモニウム化合物を安定化させる方法に関する。好ましくは、アミノカルボキシレート捕捉剤は、GLDA、MGDAおよびそれらの組合せから選択される。
【0058】
安定化とは、例えば、カルサイト粒子などの研磨粒子を、それらが均一に分布するように、保存時に懸濁状態に保つこととして理解されるべきである。
【0059】
好ましくは、該方法は、本発明の組成物を安定化する。
【0060】
製品形式
組成物は、液体を保存するための任意の市販のボトルの形態で包装され得る。液体を収容するボトルは、様々な体積の液体、好ましくは0.05~2Lを収容するために様々なサイズおよび形状であり得る。ボトルは、好ましくは、消費者が液体をさらに容易に分散することを可能にするディスペンサを備える。スプレーディスペンサまたはポンプディスペンサも使用され得る。
【0061】
これより、以下の非限定的な実施例によって本発明を説明する。
【0062】
[実施例]
粘度
ステンレス鋼スピンドルMVIIを使用して、25℃および剪断速度20.88 1/sでHAAKE VT 550粘度計を使用して、液体組成物の粘度を決定した。製品をカップ内に1分間放置して、サーモスタットにより25℃に温度を管理し、3分後に粘度値を記録した。
【0063】
pH
Seven-Multi(Mettler Toledo)pHメータを使用して、25℃で液体組成物のpHを測定した。
【0064】
[実施例1]
表1による配合物を調製し、37℃で保存した。調製直後(T0)および12週間後(T12)に粘度およびpH値を測定した。結果を表2に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
[実施例2]
表3による配合物を調製した。配合物Aには捕捉剤を含有させず、配合物Bには、アルカリ化剤として水酸化ナトリウムを含有させ、捕捉剤を含有させなかった。両配合物は、懸濁粒子を有する安定な製品をもたらすことができなかった。
【0068】
【表3】
【0069】
[実施例3]
表4による配合物を調製した。調製直後(T0)および24時間後(TOVERNIGHT)に粘度およびpH値を測定した。結果を表5に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【国際調査報告】