(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】二色性のセキュリティー機能を作製するためのUV-VIS放射線硬化性のセキュリティーインク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/037 20140101AFI20231106BHJP
【FI】
C09D11/037
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527354
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-03
(86)【国際出願番号】 EP2021081155
(87)【国際公開番号】W WO2022101224
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ピットット, エルヴェ
(72)【発明者】
【氏名】デマルタン メーダー, マルリース
(72)【発明者】
【氏名】ヴェヤ, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】グリゴレンコ, ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】オズワルド, アンドレ
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039BA06
4J039CA07
4J039EA29
(57)【要約】
本発明は有価文書を保証するセキュリティー機能を作製するためのUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクを提供し、前記セキュリティー機能は透過光で見ると青色を、入射光で見るとメタリックイエロー色を示す。UV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクはカチオン硬化性又はハイブリッド硬化性のインクビヒクル、及び一般式(I)
[式中、
残基R
Aはヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基であり;残基R
BはC
1-C
4アルキル基、及びヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基から選択され;Cat
+はNa
+、K
+、Cs
+及びRb
+からなる群から選択されるカチオンである]の表面安定剤を有する銀ナノプレートレットを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過光で見ると青色を、入射光で見るとメタリックイエロー色を示すセキュリティー機能を作製するためのUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクであって、前記インクは:
a)約7.5wt-%~約20wt-%の、標準偏差60%未満で50~150nmの範囲の平均直径、標準偏差50%未満で5~30nmの範囲の平均厚さ、及び2.0より大きい平均アスペクト比を有する銀ナノプレートレット、ここで平均直径は透過電子顕微鏡法により決定され、平均厚さは透過電子顕微鏡法により決定され、
前記銀ナノプレートレットは一般式(I)の表面安定剤を有する
【化1】
[式中、
残基R
Aはヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基であり;
残基R
BはC
1-C
4アルキル基、及びヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基から選択され;
Cat
+はNa
+、K
+、Cs
+及びRb
+からなる群から選択されるカチオンである];
b)少なくともヒドロキシ基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤;
c)約3wt-%~約12wt-%の、少なくとも69wt-%の塩化ビニルを含有するポリ塩化ビニルコポリマー;
d)d1)約25wt-%~約55wt-%の脂環式エポキシド、及び約1wt-%~約10wt-%のカチオン光開始剤;又は
d2)約30wt-%~約65wt-%の脂環式エポキシド及びラジカル硬化性化合物の混合物、約1wt-%~約6wt-%のカチオン光開始剤、及び約1wt-%~約6wt-%のフリーラジカル光開始剤;並びに任意選択で
e)e1)d)の脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)の50%より少ない量の2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;
e2)約5wt-%より少ない量の1個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;
e3)約10wt-%より少ない量の脂環式エポキシド以外のエポキシド;
e4)約20wt-%より少ない量の2個のオキセタニル残基を有するオキセタン;
e5)約3.5wt-%より少ない量の1個のオキセタニル残基を有するオキセタン;及び
e6)e1)及び/又はe2)及び/又はe3)及び/又はe4)及び/又はe5)の混合物
からなる群から選択されるカチオン硬化性化合物
を含み、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく、UV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインク。
【請求項2】
前記セキュリティーインクがスクリーン印刷セキュリティーインク、輪転グラビア印刷セキュリティーインク、及びフレキソ印刷セキュリティーインクから選択される、請求項1に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインク。
【請求項3】
前記銀ナノプレートレットの前記平均直径が標準偏差50%未満で70~120nmの範囲であり、前記銀ナノプレートレットの前記平均厚さが標準偏差30%未満で8~25nm範囲であり、前記銀ナノプレートレットの前記平均アスペクト比が2.5より大きい、請求項1又は2に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインク。
【請求項4】
一般式(I)の前記表面安定剤がa)の前記銀ナノプレートレットの重量パーセント(wt-%)の約0.4%~約5%の量で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインク。
【請求項5】
前記残基R
A及びR
Bが互いに独立してヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基である、請求項1~4のいずれか一項に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインク。
【請求項6】
前記銀ナノプレートレットが一般式(II)の更なる表面安定剤を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインク
【化2】
[式中、
【化3】
は銀との結合を示し;
R
1はH、C
1-C
18アルキル、フェニル、C
1-C
8アルキルフェニル、又はCH
2COOHであり;
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7は互いに独立してH、C
1-C
8アルキル、又はフェニルであり;
YはO、又はNR
8であり;
R
8はH、又はC
1-C
8アルキルであり;
k1は1~500の範囲の整数であり;
k2及びk3は互いに独立して0、又は1~250の範囲の整数であり;
k4は0、又は1であり;
k5は1~5の範囲の整数である]。
【請求項7】
前記銀ナノプレートレットが一般式(III)の更なる表面安定剤を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインク
【化4】
[式中、
R
17a、R
17b及びR
17cは互いに独立してH、又はメチルであり;
R
18a及びR
18bはH、又はメチルであり;
R
19aは1~22個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の、線状又は分岐した鎖のアルキルであり;
R
19bはR
c-[O-CH
2-CH
2-]
c-O-であり;
R
19cは
【化5】
、-C(=O)-NH-(CH
2)
yNR
15R
16、又は-C(=O)-NH-(CH
2)
yN
+HR
15R
16An
-であり;
ここで
An
-は一価の有機、又は無機の酸のアニオンであり;
yは2~10の整数であり;
R
15は1~22個の炭素原子を有する、飽和又は不飽和の、線状又は分岐した鎖のアルキルであり、
R
16は1~22個の炭素原子を有する、飽和又は不飽和の、線状又は分岐した鎖のアルキルであり、
R
cは1~22個の炭素原子を有する、飽和若しくは不飽和の、線状若しくは分岐した鎖のアルキル、又は24個までの炭素原子を有するアルキルアリール若しくはジアルキルアリールであり、
cは1~150であり、
y1、y2及びy3は互いに独立して1~200の整数である]。
【請求項8】
前記銀ナノプレートレットが一般式(IV)の更なる表面安定剤を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインク
【化6】
[式中
R
9は水素原子、又は式-CHR
11-N(R
12)(R
13)の基であり;
R
10は水素原子、ハロゲン原子、C
1-C
8アルコキシ基、又はC
1-C
8アルキル基であり;
R
11はH、又はC
1-C
8アルキルであり;
R
12及びR
13は互いに独立してC
1-C
8アルキル、ヒドロキシC
1-C
8アルキル基、又は式-[(CH
2CH
2)-O]
n1-CH
2CH
2-OHの基であり、n1は1~5である]。
【請求項9】
前記UV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクが約0.025wt-%~約5wt-%の量のペルフルオロポリエーテル界面活性剤を含み、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく、請求項1~8のいずれか一項に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインク。
【請求項10】
前記セキュリティーインクがd1)約25wt-%~約55wt-%の脂環式エポキシド、及び約1wt-%~約10wt-%のカチオン光開始剤を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインク。
【請求項11】
前記セキュリティーインクがd2)約30wt-%~約65wt-%の脂環式エポキシド及びラジカル硬化性化合物の混合物、約1wt-%~約6wt-%のカチオン光開始剤、及び約1wt-%~約6wt-%のフリーラジカル光開始剤を含み;前記ラジカル硬化性化合物がラジカル硬化性のモノマー、ラジカル硬化性のオリゴマー、及びこれらの混合物から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインク。
【請求項12】
前記カチオン硬化性のモノマーがe1)d)の脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)の50%より少ない量の2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテルである、請求項1~11のいずれか一項に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインク。
【請求項13】
g)約25wt-%以下の有機溶剤を更に含み、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく、請求項1~12のいずれか一項に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインク。
【請求項14】
有価文書を保証するセキュリティー機能を作製する方法であって、前記セキュリティー機能が透過光で見ると青色を、入射光で見るとメタリックイエロー色を示し、前記方法が以下のステップ:
A)好ましくはスクリーン印刷、輪転グラビア印刷、又はフレキソ印刷により、請求項1~13のいずれか一項に記載の前記UV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクを有価文書の基材の透明又は部分的に透明な領域に印刷してインク層を設けるステップ;及び
B)ステップA)で得られた前記インク層をUV-Vis硬化して前記セキュリティー機能を形成するステップ
を含む、方法。
【請求項15】
前記有価文書が銀行券、証書、チケット、小切手、領収書、収入印紙、契約書、身分証明書、例えばパスポート、身分証明カード、ビザ、運転免許証、バンクカード、クレジットカード、トランザクションカード、アクセス文書、及びカード、入場券、公共交通券、学位記、及び学位から選択される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は有価文書(value document)を保証するための二色性のセキュリティー機能(security feature)を作製するためのセキュリティーインクの技術分野に関し、ここで前記二色性のセキュリティー機能は透過光で見ると第1の色を、入射光で見ると第1の色と異なる第2の色を示す。
【0002】
[発明の背景]
カラーコピー及び印刷の常に向上する質と共に、偽造(counterfeiting)、変造(falsifying)又は違法複製に対して再現性のある結果をもたない銀行券、有価文書又はカード、輸送券又はカード、タックスバンデロール、及び製品ラベルのようなセキュリティー文書(security document)を保護しようとして、各種のセキュリティー手段機能を組み込むことが従来の慣例であった。
【0003】
例えばセキュリティー文書のためのセキュリティー機能は一般に「秘密の」セキュリティー機能及び「公然の」セキュリティー機能に分類することができる。秘密のセキュリティー機能により提供される保護はかかる機能が検出するのが困難であり、通例検出のための特化した設備及び知識を必要とするという概念に依拠しているのに対して、「公然の」セキュリティー機能は助けのない人の感覚で容易に検出可能であり、例えばかかる機能が触覚によって目に見えるか及び/又は検出できるがそれでも作製する及び/又はコピーするのが困難であるという概念に依拠している。しかしながら、公然のセキュリティー機能の有効性はセキュリティー機能としての容易な認識に大いに依存している。その理由は、殆どのユーザー、特にある文書又はそれにより保証されるアイテムのセキュリティー機能の知識を予め持っていないユーザーは、その存在及び性質を実際に知得して初めて、前記セキュリティー機能に基づくセキュリティーチェックを実際に行うからである。
【0004】
有価文書を保証する際における特別な役割は透過光で見ると第1の色を、入射光で見ると第1の色と異なる第2の色を示す二色性のセキュリティー機能により果たされる。目立った効果を提供し、一般人の注意をひくために、第1の色及び第2の色は青、メタリックイエロー、マゼンタ、及び緑のような人を引き付ける視覚的外観、及び著しい色のコントラスト(青/メタリックイエロー、緑/メタリックイエロー、バイオレット/メタリックイエロー)をもたなければならない。
【0005】
透過光で見ると青色を、入射光で見るとメタリックイエロー色を示す二色性のセキュリティー機能は銀プレートレット(platelet)を含有するインクから得られる。
【0006】
国際公開第2011064162号は反射で金/銅色を、透過で青色を示す二色性のセキュリティー又は装飾要素を作製するための銀プレートレットを含む溶剤型インク及びUVラジカル硬化性インクを記載している。前記インクは3:1.1という銀プレートレットとバインダーの重量比を特徴とする高濃度の銀プレートレットを含有する。国際公開第2011064162号により記載されたセキュリティー又は装飾要素を得るために使用されるインク中の銀プレートレットの高い濃度は生成するセキュリティー又は装飾要素の機械的抵抗に有害であり、加えて、前記要素の生産プロセスを高価にする。さらに、国際公開第2011064162号により記載されたセキュリティー又は装飾要素の機械的抵抗は、当業者によく知られているように限られた機械的抵抗の硬化したコーティングを提供するUVラジカル硬化性のインク又は溶剤型インクの使用により損なわれる。機械的抵抗はセキュリティー要素にとって本質的な特性であり、国際公開第2011064162号により記載された製造プロセスは冗長でかなり高価であるので、そこに記載されているインク及び製造プロセスは有価文書上における許容できる機械的抵抗をもつ二色性のセキュリティー機能の工業生産に適していない。
【0007】
国際公開第2013186167号はホログラフィック構造の表面を被覆するための銀プレートレット、ラジカル硬化性バインダー及び重要な量の有機溶剤を含有するUV硬化性インクの使用を記載している。この被覆されたホログラフィック構造はエンボス加工表面上に透過光で強彩度の青色を、反射光で低彩度値の黄色を示す。国際公開第2013186167号により記載されたUV硬化性インクは国際公開第2011064162号により記載されたUV放射線ラジカル硬化性のインクと比較してより低い濃度の銀プレートレットを含有するが、それでも前記インクは有価文書上の二色性機能の工業生産に適していない。その理由は、一面で増大した量の有機溶剤が環境に優しくなく、UV硬化ステップの前に追加の空気乾燥ステップを必要とし、他の面では前記インクで得られるコーティングが限られた機械的抵抗並びに反射光での低彩度を有するからである。
【0008】
通例、有価文書の産業印刷は約8’000シート/時の速い印刷速度を必要とし、各々のシートから重大な数の有価文書が生成する。例示すると、銀行券印刷の分野においては、各々が1つ又は複数のセキュリティー機能を含有する55までの有価文書が1枚のシートから作製され得る。生産ラインでの実施に適するには、有価文書上に存在する各々の印刷可能なセキュリティー機能の生産プロセスが有価文書の産業印刷の高速要件に適合することが必須である。
【0009】
従って、向上した機械的抵抗を有し、透過光で見ると青色を、入射光で見るとメタリックイエロー色を示す二色性のセキュリティー機能を有価文書上に高速(即ち工業的速度)で作製するための安定なセキュリティーインクに対するニーズが残されている。
【0010】
[発明の概要]
従って、本発明の目的は、向上した機械的抵抗を有し、透過光で見ると青色を、入射光で見るとメタリックイエロー色を示す二色性のセキュリティー機能を有価文書上に高速(即ち工業的速度)で作製するためのUV-Vis放射線カチオン硬化性のセキュリティーインク及びUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性のセキュリティーインクを提供することである。これは特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクによって達成され、前記インクは:
a)約7.5wt-%~約20wt-%の、60%未満の標準偏差で50~150nmの範囲の平均直径、50%未満の標準偏差で5~30nmの範囲の平均厚さ、及び2.0より大きい平均アスペクト比を有する銀ナノプレートレット、ここで平均直径は透過電子顕微鏡法により決定され、平均厚さは透過電子顕微鏡法により決定され、銀ナノプレートレットは一般式(I)
【化1】
[式中、
残基R
Aはヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基であり;
残基R
BはC
1-C
4アルキル基、及びヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基から選択され;
Cat
+はNa
+、K
+、Cs
+及びRb
+からなる群から選択されるカチオンである]の表面安定剤を有する;
b)少なくともヒドロキシ基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤;
c)少なくとも69wt-%の塩化ビニルを含有する約3wt-%~約12wt-%のポリ塩化ビニルコポリマー;
d)d1)約25wt-%~約55wt-%の脂環式エポキシド、及び約1wt-%~約10wt-%のカチオン光開始剤;又は
d2)約30wt-%~約65wt-%の脂環式エポキシド及びラジカル硬化性化合物の混合物、約1wt-%~約6wt-%のカチオン光開始剤、並びに約1wt-%~約6wt-%のフリーラジカル光開始剤;並びに任意選択で
e)e1)d)の脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)の50%より少ない量の2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;
e2)約5wt-%より少ない量の1個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;
e3)約10wt-%より少ない量の脂環式エポキシド以外のエポキシド;
e4)約20wt-%より少ない量の2個のオキセタニル残基を有するオキセタン;
e5)約3.5wt-%より少ない量の1個のオキセタニル残基を有するオキセタン;及び
e6)e1)及び/又はe2)及び/又はe3)及び/又はe4)及び/又はe5)の混合物
からなる群から選択されるカチオン硬化性化合物
を含み、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく。
【0011】
本発明に従う更なる局面は有価文書を保証するためのセキュリティー機能を作製する方法にであって、前記セキュリティー機能は透過光で見ると青色を、入射光で見るとメタリックイエロー色を示し、前記方法が以下のステップ:
A)好ましくはスクリーン印刷、輪転グラビア印刷、又はフレキソ印刷により、本明細書に記載されている特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクを有価文書の基材の透明又は部分的に透明な領域に印刷してインク層を設けるステップ;及び
B)ステップA)で得られたインク層をUV-Vis硬化してセキュリティー機能を形成するステップ
を含む、方法に関する。
【0012】
[詳細な説明]
(定義)
以下の定義が明細書で論じられ、特許請求の範囲で記載される用語の意味を解釈するために使用される。
【0013】
本明細書で使用されるとき、冠詞「a/an」は1つ並びに1つより多いことを示し、必ずしも指示対象の名詞を単数に限定するものではない。
【0014】
本明細書で使用されるとき、用語「約」は、問題になっている量又は値が指定されている具体的な値又はその近くの他の値であり得ることを意味する。一般に、ある値を表示する用語「約」はその値の±5%以内の範囲を示すことが意図されている。1つの例として、句「約100」は100±5の範囲、即ち95~105の範囲を示す。好ましくは、用語「約」により示される範囲はその値の±3%、より好ましくは±1%以内の範囲を示す。一般に、用語「約」が使用されるとき、本発明に従う類似の結果又は効果は示された値の±5%の範囲内で得ることができると期待することができる。
【0015】
本明細書で使用されるとき、用語「及び/又は」は述べられた群の要素のうちの全て又は1つのみが存在し得ることを意味する。例えば、「A及び/又はB」は「Aのみ、又はBのみ、又はA及びBの両方」を意味する。「Aのみ」の場合、この用語はBが存在しない、即ち「Aのみであって、Bでない」可能性も包含する。
【0016】
本明細書で使用される用語「含む(comprising)」は非排他的でありオープンエンドであることが意図されている。従って、例えば化合物Aを含む溶液はAに加えて他の化合物を含んでいてもよい。しかし、用語「含む(comprising)」は、その特定の態様として、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」のより限定的な意味も包含し、結果として、例えば「A、B、及び任意選択でCを含む溶液」は(本質的に)A、及びBからなってもよいし、又は(本質的に)A、B、及びCからなってもよい。
【0017】
本明細書で「好ましい」実施形態/特徴に言及する場合、「好ましい」実施形態/特徴の特定の組合せが技術的に意味がある限りにおいてこれらの「好ましい」実施形態/特徴の組合せも開示されているものとする。
【0018】
本明細書で使用されるとき、用語「1つ又は複数」は1つ、2つ、3つ、4つ、等を意味する。
【0019】
用語「UV-Vis硬化性」及び「UV-Vis硬化」は電磁スペクトルのUV又はUV及び可視部の波長成分(通例100nm~800nm、好ましくは150~600nm、より好ましくは200~400nm)を有する照射の影響下での光重合による放射線硬化を意味する。
【0020】
驚くべきことに、
a)約7.5wt-%~約20wt-%の、標準偏差60%未満で50~150nmの範囲の平均直径、標準偏差50%未満で5~30nmの範囲の平均厚さ、及び2.0より大きい平均アスペクト比を有する銀ナノプレートレット、ここで平均直径は透過電子顕微鏡法により決定され、平均厚さは透過電子顕微鏡法により決定され、銀ナノプレートレットは一般式(I)
【化2】
[式中、
残基R
Aはヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基であり;
残基R
BはC
1-C
4アルキル基、及びヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基から選択され;
Cat
+はNa
+、K
+、Cs
+及びRb
+からなる群から選択されるカチオンである]
の表面安定剤を有する;
b)少なくともヒドロキシ基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤;
c)約3wt-%~約12wt-%の、少なくとも69wt-%の塩化ビニルを含有するポリ塩化ビニルコポリマー;
d)d1)約25wt-%~約55wt-%の脂環式エポキシド、及び約1wt-%~約10wt-%のカチオン光開始剤;又は
d2)約30wt-%~約65wt-%の脂環式エポキシド及びラジカル硬化性化合物の混合物、約1wt-%~約6wt-%のカチオン光開始剤、並びに約1wt-%~約6wt-%のフリーラジカル光開始剤;並びに任意選択で
e)e1)d)の脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)の50%より少ない量の2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;
e2)約5wt-%より少ない量の1個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;
e3)約10wt-%より少ない量の脂環式エポキシド以外のエポキシド;
e4)約20wt-%より少ない量の2個のオキセタニル残基を有するオキセタン;
e5)約3.5wt-%より少ない量の1個のオキセタニル残基を有するオキセタン;及び
e6)e1)及び/又はe2)及び/又はe3)及び/又はe4)及び/又はe5)の混合物
からなる群から選択されるカチオン硬化性化合物
を含み、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく、UV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクが、向上した機械的抵抗を有し、透過光で青色を、入射光でメタリックイエロー色を示すセキュリティー機能の好都合で費用効率の高い製造を可能にすることが見出された。本明細書に記載されている一般式(I)の表面安定剤を有する特定の銀ナノプレートレットと本明細書に記載されている特定のインクビヒクルとの組合せは、本発明に従うセキュリティーインクを印刷することにより得られるインク層に含まれる銀ナノプレートレットの、インク層と空気との界面及びインク層と基材との界面におけるインク層の塊からの好都合な移動及び前記界面における整列を可能にして薄い反射層を形成することにより、印刷されたインク層の厚さとは無関係に反射光でのメタリックイエロー色及び透過光での青色を生成する。反射光でのメタリックイエロー色及び透過光での青色の好都合な生成は従来技術に記載されたインクでは達成することができない。特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクにより含有されるカチオン硬化性のバインダー又はハイブリッド硬化性バインダーは前記インクから得られる二色性のセキュリティー機能に高い機械的抵抗を提供する。人を引き付ける視覚的外観並びに透過光で示される青色と入射光で示されるメタリックイエロー色とのコントラストは本発明に従うインクで作製されるセキュリティー機能を目立たせることにより、一般人の注意をセキュリティー機能に引き付け、有価文書上の前記セキュリティー機能を見出し認識し、及びそのセキュリティー機能を含有する有価文書を認証する助けになる。本発明に従うUV-Vis放射線硬化性のインクは傑出した貯蔵安定性を有する。それ故、本発明に従うUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクは有価文書の産業印刷の高速要件に適合し、人を引き付ける視覚的外観、高い価値認識及び高い機械的抵抗をもつ二色性のセキュリティー機能を提供する。
【0021】
特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクで作製されるセキュリティー機能は透過光(transmitted light)即ち透過(transmission)で見ると青色を示す。本発明の目的から、透過光で見るとは、そのセキュリティー機能を、例えば前記セキュリティー機能を日光に向けて、又は光源の前に保持することにより一方の面から照らし、反対側から見ることを意味する。セキュリティー機能を透過光で見る面とは関係なく青色が観察される。この発明の目的から、青色を示すセキュリティー機能とは、20より大きい彩度値(chroma value)C
*(色強度(color intensity)又は彩度(色飽和度(color saturation))の測定値に対応する)により特徴付けられる青色を示すセキュリティー機能を指す。強烈~非常に強烈な青色は30より大きい彩度値C
*により特徴付けられる。彩度値C
*はCIELAB(1976)色空間に従ってa
*及びb
*値から計算され、ここで
【数1】
である。
【0022】
透過光における前記a*及びb*値はDatacolor 650分光光度計(パラメーター:積分球、拡散照明(パルスキセノンD65)及び8°視野、アナライザーSP2000、デュアル256ダイオードアレイ、波長範囲360~700nm、透過光サンプリング開口サイズ22mm)を用いて測定される。
【0023】
特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクで作製されるセキュリティー機能は入射光即ち反射光で見るとメタリックイエロー色又は金色を示す。本特許出願において、用語「メタリックイエロー色」及び「金色」は同義で使用されている。本発明の目的から、「入射光で見る」とは、セキュリティー機能を特許請求の範囲に記載のセキュリティーインクで印刷された面から照らし、同じ側から見ることを意味する。本発明の目的から、メタリックイエロー色又は金色を示すセキュリティー機能は、CIELAB(1976)色空間に従ってa
*及びb
*値から計算して20より大きい彩度値C
*(色強度又は彩度(色飽和度)の測定値に対応する)により特徴付けられる黄色を示すセキュリティー機能を指し、ここで
【数2】
であり、セキュリティー機能の前記a
*及びb
*値はゴニオメーター(Goniospektrometer Codec WI-10 5&5、Phyma GmbH Austria)を用いて22.5°の照明角で、垂線に対して0°で測定された。
【0024】
特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクは好ましくはスクリーン印刷セキュリティーインク、輪転グラビア印刷セキュリティーインク、及びフレキソ印刷セキュリティーインクから選択される。好ましくは、特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクは、500~2000mPasの粘度を測定するために100rpmのスピンドルS27を、又は50rpmのスピンドルS21を、500mPas以下の粘度を測定するために100rpmのスピンドルS21を備えたBrookfield粘度計(モデル“DV-I Prime)を用いて25℃で測定して約50mPas~約2000mPasの粘度により特徴付けられる。特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のスクリーン印刷セキュリティーインクは25℃で約50mPas~約1000mPas、好ましくは25℃で約100mPas~約1000mPasの粘度により特徴付けられる。
【0025】
当業者には知られているように、用語輪転グラビア印刷は例えばHandbook of Print Media, Helmut Kipphan, Springer Edition, page 48に記載されている印刷プロセスを意味する。輪転グラビア印刷は、画像要素がシリンダーの表面に刻印される印刷プロセスである。非画像領域は一定の元のレベルである。印刷の前に、印刷板全体(非印刷及び印刷要素)にインクを付け、インクであふれさせる。インクは印刷の前に非画像からワイパー又はブレードで除去されて、結果としてインクはセルのみに残る。画像は通例2~4バールの範囲の圧力及び基材とインクとの接着力によりセルから基材に移される。用語輪転グラビア印刷は、例えば異なる種類のインクに依拠する沈み彫り印刷プロセス(当技術分野では刻印スチールダイ又は銅板印刷プロセスともいわれる)を含まない。
【0026】
フレキソ印刷プロセスは好ましくはチャンバードクターブレード、アニロックスローラー及びプレートシリンダーを備えた装置を使用する。アニロックスローラーは小さいセルを有するのが有利であり、その容積及び/又は密度はインク又はワニス塗布速度を決定する。チャンバードクターブレードはアニロックスローラーに対向しており、セルを満たし、同時に余分なインク又はワニスを掻き落とす。アニロックスローラーはインクをプレートシリンダーに移し、このプレートシリンダーが最終的にインクを基材に移す。プレートシリンダーはポリマー又はエラストマー材料から作製することができる。ポリマーは主として板状のフォトポリマーとして、時にはスリーブ上のシームレスコーティングとして使用される。フォトポリマープレートは紫外(UV)光により硬化する感光性ポリマーから作製される。フォトポリマープレートは所要の大きさに切断され、UV光曝露装置に入れられる。プレートの一方の面は、プレートの土台を硬化する(harden)か又は硬化する(cure)ために完全にUV光に曝露される。次いでプレートを反転させ、ジョブのネガを未硬化の面の上に載せ、プレートを更にUV光に曝露する。これにより、プレートの画像領域が硬化する。次いでプレートを加工処理して未硬化のフォトポリマーを非画像領域から除くと、これらの非画像領域のプレート表面が下がる。加工処理後、プレートを乾燥し、後露光線量のUV光で全プレートを硬化させる。フレキソ印刷のためのプレートシリンダーの調製はPrinting Technology, J. M. Adams and P.A. Dolin, Delmar Thomson Learning, 5th Edition, pages 359-360に記載されている。
【0027】
当業者には周知のように、スクリーン印刷(当技術分野でシルクスクリーン印刷ともいわれる)は、通例インクブロッキングステンシルを支えるために織ったメッシュ製のスクリーンを使用する印刷技術である。付属のステンシルがメッシュのオープンな領域を形成し、これらの領域はインクを鋭い縁の画像として基材上に移す。スキージーがインクブロッキングステンシルと共にスクリーンを横切って移動し、オープンな領域の織ったメッシュの糸を越してインクを通させる。スクリーン印刷の重要な特徴は他の印刷技術より大きい厚さのインクを基材に塗布することができるということである。従ってスクリーン印刷は、他の印刷技術では(容易に)達成することができない約10~50μm又はそれ以上の値を有する厚さのインク付着量が必要とされるときにも好ましい。一般に、スクリーンは、例えばアルミニウム又は木材の枠を覆って広げられたメッシュと呼ばれる1枚の多孔性で目の細かい織物から作られる。現在殆どのメッシュは合成又はスチール糸のような人工の材料で作製される。好ましい合成材料はナイロン又はポリエステル糸である。
【0028】
合成又は金属糸に基づく織物メッシュに基づいて作製されたスクリーンに加えて、穴の格子を有する固体の金属シートからスクリーンが開発された。かかるスクリーンは第1の電解槽で分離剤を含む母材上にスクリーン骨格を形成し、形成されたスクリーン骨格を母材から剥ぎ取り、スクリーン骨格を第2の電解槽で電気分解に付して前記骨格に金属を付着させることにより金属スクリーンを電解で形成することを含むプロセスにより調製される。
【0029】
3つの種類のスクリーン印刷機、即ち平床式、シリンダー及びロータリースクリーン印刷機がある。平床式及びシリンダースクリーン印刷機は、双方とも平坦なスクリーン及び3ステップの回帰プロセスを使用して印刷作業を行う点で類似である。スクリーンは最初に基材の上方の所定位置に移動され、次いでスキージーがメッシュに押し付けられ、画像領域を越えて引き出され、次にスクリーンが基材から持ち上げられてプロセスが完了する。平床式のプレス機では印刷される基材は通例スクリーンと平行である水平なプリントベッド上に配置される。シリンダープレス機の場合基材はシリンダーに載せられる。平床式及びシリンダースクリーン印刷プロセスは不連続なプロセスであり、その結果として一般にウェブにおいて最大で45m/min又はシート供給プロセスにおいて3’000枚/時に限定される。
【0030】
逆に、ロータリースクリーンプレス機は連続した高速印刷用に設計されている。ロータリースクリーンプレス機に使用されるスクリーンは例えば通常上に記載した電鋳法を用いて得られるか又は織ったスチール糸で作製される薄い金属シリンダーである。開口シリンダーは両端がキャッピングされ、プレス機の側でブロックに嵌め込まれる。印刷中、インクはシリンダーの一端にポンプで送り込まれ、従って新鮮な供給が絶えず維持される。スキージーは回転するスクリーンの内側に固定され、スキージー圧力は良好で一定の印刷品質を可能にするように維持され調節される。ロータリースクリーンプレス機の利点はウェブにおいて150m/min又はシート供給プロセスにおいてシート供給プロセスにおいて10’000枚/時を容易に達成することができる速度である。
【0031】
スクリーン印刷は更に例えばThe Printing Ink Manual, R.H. Leach and R.J. Pierce, Springer Edition, 5th Edition, pages 58-62、Printing Technology, J. M. Adams and P.A. Dolin, Delmar Thomson Learning, 5th Edition, pages 293-328及びHandbook of Print Media, H. Kipphan, Springer, pages 409-422 and pages 498-499に記載されている。
【0032】
より好ましくは特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクはスクリーン印刷セキュリティーインクである。かかるUV-Vis放射線硬化性のスクリーン印刷セキュリティーインクは、少なくとも約4μmという大きな厚さを有する二色性のセキュリティー機能の非常に高速での印刷を可能にするので、有価文書上の二色性のセキュリティー機能の工業的製造に特に有用である。
【0033】
特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性のインクは、a)約7.5wt-%~約20wt-%、好ましくは約7.5wt-%~約15wt-%、より好ましくは約10wt-%~約12.5wt-%の、標準偏差60%未満で50~150nmの範囲の平均直径、標準偏差50%未満で5~30nmの範囲の平均厚さ、及び2.0より大きい平均アスペクト比を有する銀ナノプレートレットを含有し、ここで平均直径は透過電子顕微鏡法により決定され、平均厚さは透過電子顕微鏡法により決定され、銀ナノプレートレットは一般式(I)の表面安定剤を有する
【化3】
[式中、残基R
Aはヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基であり;残基R
BはC
1-C
4アルキル基、及びヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基から選択され;Cat
+はNa
+、K
+、Cs
+及びRb
+からなる群から選択されるカチオンである]。
【0034】
一般式(I)の表面安定剤を有する本明細書に記載されている銀ナノプレートレットは特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクのビヒクルに容易に分散可能である。印刷する際、本明細書に記載されている銀ナノプレートレットは特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクで得られたインク層の塊からインク層と空気の界面及びインク層と基材の界面に移動し、自身で整列して前記界面に銀ナノプレートレットの薄い層を形成し、これにより入射光で観察されるメタリックイエロー色の好都合な発現を導く。この特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの特性は、一面でメタリックイエロー色の発現に必要とされる時間が有価文書の産業印刷の高速要件と相性が良く、他の面で7.5wt-%程度の少ない量の銀ナノプレートレットを含有するインクを用いた二色性のセキュリティー機能の生産を可能にし、これが殊に少なくとも約4μmという大きな厚さを有する二色性のセキュリティー機能に対して生産コストを劇的に低減するので特に有利である。作製される二色性のセキュリティー機能の厚さ及びインクビヒクルの組成に応じて、UV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインク中の銀ナノプレートレットの量は、透過光での青色の色相及び彩度に影響を及ぼすことなく反射光でのメタリックイエロー色が迅速に発現するように調節することができる。
【0035】
UV-Visに含有される銀ナノプレートレットは円盤、正六角形、三角形、殊に正三角形、及び切頭三角形、殊に切頭正三角形、又はこれらの混合物の形態であり得る。好ましくは円盤、切頭三角形、六角形、又はこれらの混合物の形態である。
【0036】
銀ナノプレートレットの平均直径は50~150nm、好ましくは60~140nm、より好ましくは70~120nmの範囲で、標準偏差は60%未満、好ましくは50%未満である。銀ナノプレートレットの直径は前記銀ナノプレートレットの最長の寸法であり、透過電子顕微鏡法(TEM)画像の平面に対して平行に配向されたときの前記銀ナノプレートレットの最大の寸法に対応する。本明細書で使用されるとき、用語「銀ナノプレートレットの平均直径」は、透過電子顕微鏡法画像(TEM)の平面に対して平行に配向された少なくとも300のランダムに選択された銀ナノプレートレットの測定値に基づいてFiji画像解析ソフトウエアを用いて透過電子顕微鏡法(TEM)により決定された平均直径を指し、ここで銀ナノプレートレットの直径は透過電子顕微鏡法画像(TEM)の平面に対して平行に配向された前記銀ナノプレートレットの最大の寸法である。TEM分析はZEISSのEM910機器を明視野モードで100kVのe-ビーム加速電圧で用いて行った。TEM分析を実施するのに、好ましくは24.1wt-%より低い適切な濃度の銀ナノプレートレットのイソプロパノール中分散液を使用した。
【0037】
銀ナノプレートレットの平均厚さは標準偏差50%未満、好ましくは30%未満で5~30nm、好ましくは7~25nm、より好ましくは8~25nmの範囲である。銀ナノプレートレットの厚さは前記ナノプレートレットの最も短い寸法であり、前記銀ナノプレートレットの最大の厚さに対応する。本明細書で使用されるとき、用語「銀ナノプレートレットの平均厚さ」はTEM画像の平面に対して垂直に配向された少なくとも50のランダムに選択された銀ナノプレートレットの手動の測定値に基づいて透過電子顕微鏡法(TEM)により決定された平均厚さを指し、ここで銀ナノプレートレットの厚さは前記銀ナノプレートレットの最大の厚さである。TEM分析はZEISSのEM910機器を明視野モードで100kVのe-ビーム加速電圧で用いて行った。TEM分析を実施するのに、好ましくは24.1wt-%より低い適切な濃度の銀ナノプレートレットのイソプロパノール中分散液を使用した。
【0038】
銀ナノプレートレットの平均アスペクト比(平均直径と平均厚さの比と定義される)は2.0より大きく、好ましくは2.2より大きく、より好ましくは2.5より大きい。
【0039】
好ましくは、銀ナノプレートレットの平均直径は70~120nmの範囲で標準偏差50%未満であり、前記銀ナノプレートレットの平均厚さは8~25nmの範囲で標準偏差30%未満であり、前記銀ナノプレートレットの平均アスペクト比は2.5より大きい。
【0040】
本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性のインクに使用される銀ナノプレートレットは560~800nm、好ましくは580~800nm、最も好ましくは600~800nmの最高波長吸収極大(highest wavelength absorption maximum)により特徴付けられる。最高波長吸収極大は水中、銀の約5*10-5M(mol/l)濃度でVarian Cary 50UV-可視分光光度計を用いて測定した。吸収極大は50~500nm、好ましくは70~450nm、より好ましくは80~450nmの範囲の半値全幅(FWHM)値を有する。最高波長吸収極大で測定される銀ナノプレートレットのモル吸光係数は4000L/(cm*molAg)より大きく、殊に5000L/(cm*molAg)より大きく、特に6000L/(cm*molAg)より大きい。
【0041】
特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のインクにより含有される銀ナノプレートレットは一般式(I)の表面安定剤を有する
【化4】
[式中、残基R
Aはヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基であり;残基R
BはC
1-C
4アルキル基、及びヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基から選択され;Cat
+はNa
+、K
+、Cs
+及びRb
+からなる群から選択されるカチオンである]。理論に縛られることはないが、一般式(I)の表面安定剤は、特許請求の範囲に記載のセキュリティーインク内の銀ナノプレートレットの凝集及び沈殿を防ぐことに加えて、銀ナノプレートレットの、特許請求の範囲に記載のセキュリティーインクで得られたインク層の塊からインク層と空気の界面及びインク層と基材の界面への移動を促進するのに役立つと信じられる。
【0042】
一般式(I)中のカチオンCat+は好ましくはNa+、K+及びCs+からなる群から選択される。
【0043】
一般式(I)の表面安定剤は銀ナノプレートレットの重量パーセント(wt-%)の約0.4%~約5%、好ましくは約0.5%~約3%、より好ましくは約0.5%~約1.5%、殊に好ましくは約0.5%~約1%の量で存在し得る。
【0044】
用語「C1-C4アルキル基」は本明細書で使用されるとき1~4個の炭素原子(C1-C4)の飽和した線状又は分岐鎖で一価の炭化水素基を意味する。C1-C4アルキル基の例にはメチル(Me、-CH3)、エチル(Et、-CH2CH3)、1-プロピル(n-Pr、n-プロピル、-CH2CH2CH3)、2-プロピル(i-Pr、iso-プロピル、-CH(CH3)2)、1-ブチル(n-Bu、n-ブチル、-CH2CH2CH2CH3)、2-メチル-1-プロピル(i-Bu、i-ブチル、-CH2CH(CH3)2)、2-ブチル(s-Bu、s-ブチル、-CH(CH3)CH2CH3)及び2-メチル-2-プロピル(t-Bu、t-ブチル、-C(CH3)3)がある。
【0045】
用語「ヒドロキシ基で置換されたC2-C4アルキル基」は、ヒドロキシ基(-OH)により置換されている、2~4個の炭素原子を有する線状又は分岐したアルキル基を意味する。C2-C4アルキル基は1又は2個のヒドロキシ基により置換され得る。
【0046】
一般式(I)において、残基RAは2個のヒドロキシ基で置換されたC2-C4アルキル基でよく、残基RBはC1-C4アルキル基でよい。
【0047】
本発明に従う好ましい実施形態において、残基RA及びRBは互いに独立して、ヒドロキシ基、好ましくは1個のヒドロキシ基で置換されたC2-C4アルキル基である。従って、本発明に従うある実施形態において残基RA及びRBは互いに独立して、-CH2CH2OH、-CH2CH(OH)CH3、-CH2CH2CH2OH、-CH(CH3)(CH2OH)、-CH2CH(OH)CH2CH3、-CH2CH2CH(OH)CH3、-CH2CH2CH2CH2OH、-CH(CH3)CH(OH)CH3、-CH(CH2OH)CH2CH3、-CH(CH3)CH2CH2OH、-CH2CH(CH2OH)CH3、-CH2C(CH3)(OH)CH3、-CH2CH(CH3)CH2(OH)、-CH2C(OH)(CH3)2、-CH2C(CH3)(CH2OH)からなる群から選択され、より好ましくは-CH2CH2OH、-CH2CH(OH)CH3、及び-CH2CH2CH2OHからなる群から選択される。残基RA及びRBは同じであってもよく、又は異なってもよい。
【0048】
一般式(I)のジチオカルバミン酸塩の例には、限定されることはないが、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジチオカルバミン酸ナトリウム、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジチオカルバミン酸カリウム、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジチオカルバミン酸セシウム、ビス(3-ヒドロキシプロピル)ジチオカルバミン酸ナトリウム、ビス(3-ヒドロキシプロピル)ジチオカルバミン酸カリウム、ビス(3-ヒドロキシプロピル)ジチオカルバミン酸セシウム、ビス(4-ヒドロキシブチル)ジチオカルバミン酸ナトリウム、ビス(4-ヒドロキシブチル)ジチオカルバミン酸カリウム、及びビス(4-ヒドロキシブチル)ジチオカルバミン酸セシウムがある。
【0049】
保存の際の銀ナノプレートレットの凝集及び沈殿を防ぐために、銀ナノプレートレットはその表面に更なる表面安定剤を有してもよい。
【0050】
好ましい実施形態において、銀ナノプレートレットはその表面に一般式(II)の更なる表面安定剤を有する
【化5】
[式中、
R
1はH、C
1-C
18アルキル、フェニル、C
1-C
8アルキルフェニル、又はCH
2COOHであり;
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7は互いに独立してH、C
1-C
8アルキル、又はフェニルであり;
YはO、又はNR
8であり;
R
8はH、又はC
1-C
8アルキルであり;
k1は1~500の範囲の整数であり;
k2及びk3は互いに独立して0、又は1~250の範囲の整数であり;
k4は0、又は1であり;
k5は1~5の範囲の整数である]。好ましくは、一般式(II)においてYはOを表す。また好ましくは、一般式(II)においてk4は0である。
【0051】
一般式(II)の表面安定剤は好ましくは1000~20000[g/mol]、より好ましくは1000~10000[g/mol]、最も好ましくは1000~6000[g/mol]の平均分子量(Mn)を有する。
【0052】
式(I)の表面安定剤が、例えばエチレンオキシド単位(EO)及びプロピレンオキシド単位(PO)を含むのであれば、(EO)及び(PO)の順序は固定されていてもよいし(ブロックコポリマー)、又は固定されていなくてもよい(ランダムコポリマー)。
【0053】
好ましくは、一般式(II)において、R1はH、又はC1-C18アルキルであり、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は互いに独立してH、CH3、又はC2H5であり、k1は22~450の範囲の整数であり、k2及びk3は互いに独立して0、又は1~250の範囲の整数であり、k4は0、又は1であり、k5は1~5の範囲の整数である。より好ましくは、一般式(II)においてR1はH、又はC1-C4アルキルであり、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は互いに独立してH、又はCH3であり、k1は22~450の範囲の整数であり、k2及びk3は互いに独立して0、又は1~100の範囲の整数であり、k4は0であり、k5は1~4の範囲の整数である。
【0054】
一般式(II)の最も好ましい表面安定剤は一般式(IIa)を有する
【化6】
[式中、
R
1はH、又はC
1-C
8アルキル基、殊にH、又はCH
3であり、
k1は22~450、殊に22~150の範囲の整数である]。
【0055】
一般式(II)の好ましい表面安定剤は2000~6000の平均分子量(Mn)を有するMPEGチオール(ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルチオール)、2000~6000の平均Mnを有するPEGチオール(O-(2-メルカプトエチル)-ポリ(エチレングリコール))から誘導され、例えば、MPEG2000チオール、MPEG3000チオール、MPEG4000チオール、MPEG5000チオール、MPEG6000チオール、PEG2000チオール、PEG3000チオール、PEG4000チオール、PEG5000チオール、PEG6000チオールである。
【0056】
セキュリティーインクに含有される銀ナノプレートレットは更に国際公開第200674969号に記載されたポリマー、又はコポリマーである表面安定剤を有していてもよく、これは以下のステップを含むプロセスにより得ることができる:
i-1)第1のステップにおいて次の構造要素を有する少なくとも1種のニトロキシルエーテルの存在下で1種又は複数のエチレン性不飽和モノマーを重合する
【化7】
ここで、Xは少なくとも1個の炭素原子を有する基を表し、Xに由来するフリーラジカルX・が重合を開始することができるようになっている;又は
i-2)第1のステップにおいて少なくとも1種の安定な遊離ニトロキシルラジカル
【化8】
及びフリーラジカル開始剤の存在下で1種又は複数のエチレン性不飽和モノマーを重合する;
ここで、ステップi-1)又はi-2)で使用される少なくとも1種のモノマーはアクリル又はメタクリル酸のC
1-C
6アルキル又はヒドロキシC
1-C
6アルキルエステルである;及び任意選択で
ii)i-1)又はi-2)で調製されたポリマー又はコポリマーのエステル交換反応、アミド化、加水分解若しくは無水物修飾又はこれらの組合せによる修飾を含む第2のステップ。
【0057】
ステップi-1)又はi-2)のモノマーは好ましくは4-ビニル-ピリジン若しくはピリジニウム-イオン、2-ビニル-ピリジン若しくはピリジニウム-イオン、1-ビニル-イミダゾール若しくはイミダゾリニウム-イオン、又は式CH2=C(Ra)-(C=Z)-Rbの化合物から選択され、ここで
Raは水素又はメチルであり;
RbはNH2、O-(Me+)、非置換のC1-C18アルコキシ、少なくとも1個のN及び/又はO原子により中断されたC2-C100アルコキシ、又はヒドロキシ置換されたC1-C18アルコキシ、非置換のC1-C18アルキルアミノ、非置換のジ(C1-C18アルキル)アミノ、ヒドロキシ置換されたC1-C18アルキルアミノ又はヒドロキシ置換されたジ(C1-C18アルキル)アミノ、-O(CH2)yNR15R16、又は-O(CH2)yN+HR15R16An-、-N(CH2)yNR15R16、又は-N(CH2)yN+HR15R16An-であり、
ここで
An-は一価の有機、又は無機酸のアニオンであり;
yは2~10の整数であり;
R15は飽和又は不飽和の、線状又は分岐した鎖の1~22個の炭素原子のアルキルであり;
R16は飽和又は不飽和の、線状又は分岐した鎖の1~22個の炭素原子のアルキルであり;
Me+は一価の金属原子又はアンモニウムイオンであり;
Zは酸素又はイオウである。
【0058】
第2のステップii)は好ましくはエステル交換反応である。ステップii)においてアルコールは好ましくは式Rc-[O-CH2-CH2-]c-OHのエトキシレートである[式中、Rcは飽和又は不飽和の、線状又は分岐した鎖の1~22個の炭素原子のアルキル、又は24個以下の炭素原子のアルキルアリール若しくはジアルキルアリールであり、cは1~150である]。
【0059】
好ましくは、ステップi-1)又はi-2)は二回行われ、ブロックコポリマーが得られ、その際第1又は第2のラジカル重合ステップにおいてモノマー又はモノマー混合物は全モノマーに対して50~100重量%のアクリル又はメタクリル酸のC1-C6アルキルエステルを含有し、第2又は第1のラジカル重合ステップにおいてそれぞれ、エチレン性不飽和モノマー又はモノマー混合物は第一又は第二のエステル結合のない少なくとも1つのモノマーを含有する。
【0060】
第1の重合ステップにおいて、モノマー又はモノマー混合物は全モノマーに対して50~100重量%のアクリル又はメタクリル酸のC1-C6アルキルエステル(第1のモノマー)を含有し、第2の重合ステップにおいてエチレン性不飽和モノマー又はモノマー混合物は4-ビニル-ピリジン又はピリジニウム-イオン、2-ビニル-ピリジン又はピリジニウム-イオン、ビニル-イミダゾール又はイミダゾリニウム-イオン、3-ジメチルアミノエチルアクリルアミド、3-ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、又は対応するアンモニウムイオン、3-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、又は対応するアンモニウムイオン、又は3-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、又は対応するアンモニウムイオン(第2のモノマー)を含む。
【0061】
好ましくは、ニトロキシルエーテルは次の構造
【化9】
を有する。
【0062】
表面安定化剤は好ましくは、以下のステップを含むプロセスにより得ることができるコポリマーである:
i-2)第1のステップにおいて次の構造要素
【化10】
を有する少なくとも1種のニトロキシルエーテルの存在下で、アクリル又はメタクリル酸のC
1-C
6アルキル又はヒドロキシC
1-C
6アルキルエステルである第1のモノマー、及び4-ビニル-ピリジン又はピリジニウム-イオン、2-ビニル-ピリジン又はピリジニウム-イオン、1-ビニル-イミダゾール又はイミダゾリニウム-イオン、3-ジメチルアミノエチルアクリルアミド、3-ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、3-ジメチルアミノ-プロピルアクリルアミド、及び3-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドから選択される第2のモノマーを重合する;及び
ii)i-1)で調製されたポリマー又はコポリマーのエステル交換反応による修飾を含む第2のステップ、ここでステップii)のアルコールは式R
c-[O-CH
2-CH
2-]
c-OHのエトキシレートである[式中、R
cは飽和又は不飽和の、線状又は分岐した鎖の1~22個の炭素原子のアルキル、又は24個以下の炭素原子のアルキルアリール若しくはジアルキルアリールであり、cは1~150である]。
【0063】
好ましくは本明細書に記載されているプロセスによって得られる表面安定剤は次式(III)のコポリマーである
【化11】
[式中、
R
17a、R
17b及びR
17cは互いに独立してH、又はメチルであり;
R
18a及びR
18bはH、又はメチルであり;
R
19aは飽和又は不飽和の、線状又は分岐した鎖の1~22個の炭素原子のアルキルであり;
R
19bはR
c-[O-CH
2-CH
2-]
c-O-であり;
R
19cは
【化12】
、-C(=O)-NH-(CH
2)
yNR
15R
16、又は-C(=O)-NH-(CH
2)
yN
+HR
15R
16An
-であり;
ここで
An
-は一価の有機、又は無機酸のアニオンであり;
yは2~10の整数であり;
R
15は飽和又は不飽和の、線状又は分岐した鎖の1~22個の炭素原子のアルキルであり、
R
16は飽和又は不飽和の、線状又は分岐した鎖の1~22個の炭素原子のアルキルであり、
R
cは飽和若しくは不飽和の、線状又は分岐した鎖の1~22個の炭素原子のアルキル、又は24個以下の炭素原子のアルキルアリール若しくはジアルキルアリールであり、cは1~150であり、
y1、y2及びy3は互いに独立して1~200の整数である]。
【0064】
より好ましくは、表面安定剤は式(III-a)により表されるコポリマーである
【化13】
[式中、
R
18a及びR
18bはH、又はメチルであり;
y1、y2及びy3は互いに独立して1~200の整数であり;
cは1~150の整数である]。添え字y1及びy2のモノマーの順序は固定されていてもよいし(ブロックコポリマー)又は固定されなくてもよい(ランダムコポリマー)。
【0065】
表面安定剤として使用される好ましいコポリマーの例は国際公開第200674969号の実施例A3及び実施例A6に記載されているコポリマーである。
【0066】
保存又は熱への曝露の際の銀ナノプレートレットの光学的性質の安定性を改良するために、前記銀ナノプレートレットは一般式(IV)の更なる表面安定剤を有し得る
【化14】
[式中、
R
9は水素原子、又は式-CHR
11-N(R
12)(R
13)の基であり;
R
10は水素原子、ハロゲン原子、C
1-C
8アルコキシ基、又はC
1-C
8アルキル基であり;
R
11はH、又はC
1-C
8アルキルであり;
R
12及びR
13は互いに独立してC
1-C
8アルキル、ヒドロキシC
1-C
8アルキル基、又は式-[(CH
2CH
2)-O]
n1-CH
2CH
2-OHの基であり、n1は1~5である]。
【0067】
式(IV)の化合物の例には、限定されることはないが:
【化15】
がある。
【0068】
特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクを調製するのに使用される銀ナノプレートレットの分散液は以下のステップを含む方法を用いることにより得ることができる:
1)銀前駆体、式(II)の化合物
【化16】
[式中、
R
1はH、C
1-C
18アルキル、フェニル、C
1-C
8アルキルフェニル、又はCH
2COOHであり;
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7は互いに独立してH、C
1-C
8アルキル、又はフェニルであり;
YはO、又はNR
8であり;
R
8はH、又はC
1-C
8アルキルであり;
k1は1~500の範囲の整数であり;
k2及びk3は互いに独立して0、又は1~250の範囲の整数であり;
k4は0、又は1であり;
k5は1~5の範囲の整数である]、
次のステップを含むプロセスにより得ることができるポリマー、又はコポリマー:
[i-1)第1のステップにおいて構造要素
【化17】
(ここでXは少なくとも1個の炭素原子を有する基を表し、Xから誘導されるフリーラジカルX・が重合を開始することができるようになっている)
を有する少なくとも1種のニトロキシルエーテルの存在下で1種又は複数のエチレン性不飽和モノマーを重合するか;又は
i-2)第1のステップにおいて少なくとも1個の安定な遊離のニトロキシルラジカル
【化18】
及びフリーラジカル開始剤の存在下で1種又は複数のエチレン性不飽和モノマーを重合する;ここでステップi-1)又はi-2)で使用される少なくとも1種のモノマーはアクリル又はメタクリル酸のC
1-C
6アルキル又はヒドロキシC
1-C
6アルキルエステルである;及び任意選択で
ii)i-1)又はi-2)で調製されたポリマー又はコポリマーのエステル交換反応、アミド化、加水分解若しくは無水物修飾又はこれらの組合せによる修飾を含む第2のステップ]、
水、及び任意選択で消泡剤を含む溶液を調製する;
2)分子内に少なくとも1個のホウ素原子を含む還元剤、及び水を含む溶液を調製する;
3)ステップ1)で得られた溶液をステップ2)で得られた溶液に加え、1種又は複数の錯化剤を加える;
4)水中の過酸化水素溶液を加える;及び
5)ステップ4)で得られた混合物に1種又は複数の表面安定剤を加える。
【0069】
銀前駆体はAgNO3;AgClO4;Ag2SO4;AgCl;AgF;AgOH;Ag2O;AgBF4;AgIO3;AgPF6;R200CO2Ag、R200SO3Ag(ここでR200は非置換又は置換されたC1-C18アルキル、非置換又は置換されたC5-C8シクロアルキル、非置換又は置換されたC7-C18アラルキル、非置換又は置換されたC6-C18アリール又は非置換又は置換されたC2-C18ヘテロアリールである);ジカルボン酸、トリカルボン酸、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、P含有酸のAg塩及びこれらの混合物からなる群から、好ましくは硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀、メタンスルホン酸銀、ベンゼンスルホン酸銀、トルエンスルホン酸銀 トリフルオロメタンスルホン酸銀、硫酸銀、フッ化銀及びこれらの混合物からなる群から選択される銀(I)化合物であり、より好ましくは硝酸銀である。
【0070】
還元剤はアルカリ、又はアルカリ土類金属水素化ホウ素、例えば水素化ホウ素ナトリウム、アルカリ、又はアルカリ土類金属アシルオキシ水素化ホウ素、例えばトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、アルカリ、又はアルカリ土類金属アルコキシ又はアリールオキシ水素化ホウ素、例えばトリメトキシ水素化ホウ素ナトリウム、アリールオキシボラン、例えばカテコールボラン、及びアミン-ボラン錯体、例えばジエチルアニリンボラン、tert-ブチルアミンボラン、モルホリンボラン、ジメチルアミンボラン、トリエチルアミンボラン、ピリジンボラン、アンモニアボラン及びこれらの混合物からなる群から選択される。水素化ホウ素ナトリウムが最も好ましい。
【0071】
1種又は複数の錯化剤は反応条件下で塩素イオンを遊離させることができるクロル含有化合物、例えば金属塩化物、アルキル又はアリールアンモニウム塩化物、ホスホニウム塩化物;第一又は第二アミン及び対応するアンモニウム塩、例えばメチルアミン又はジメチルアミン;アンモニア及び対応するアンモニウム塩;並びにアミノカルボン酸及びその塩、例えばエチレンジアミン四酢酸の群から選択される。
【0072】
錯化剤の非限定例にはアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エチレン-ジアミン-四酢酸(EDTA);エチレンジアミンN,N′-二コハク酸(EDDS);メチルグリシン二酢酸(MGDA);ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA);プロピレンジアミン四酢酸(PDTA);グルタミン酸N,N-二酢酸(N,N-ジカルボキシメチルグルタミン酸四ナトリウム塩(GLDA);ニトリロ三酢酸(NTA)、及びそれらのあらゆる塩;N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、N-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HEIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、エチレンジアミン四プロピオン酸(EDTP)及びそれらの誘導体、例えば、メチルグリシン二酢酸の三ナトリウム塩(Na3MGDA)及びEDTAの四ナトリウム塩がある。
【0073】
消泡剤は、例えば、市販のTEGO(登録商標)Foamex 1488、1495、3062、7447、800、8030、805、8050、810、815N、822、825、830、835、840、842、843、845、855、860、883、K 3、K 7、K 8、N、SigmaのAntifoam SE-15、Struktol SB-2080などのような、反応混合物中で泡の形成を抑えることができる化合物又は組成物である。消泡剤の量は過酸化水素添加前の反応混合物の総重量に対して0.00001%~5重量%、好ましくは0.0001%~3%、より好ましくは0.001%~2重量%の範囲である。
【0074】
消泡剤はステップ1)で調製された溶液及び/又はステップ2)で調製された溶液に加えることができる。
【0075】
銀ナノプレートレット生成反応は銀前駆体溶液を還元剤溶液に徐々に加えることにより行われ、一方両方の溶液の温度は-3℃~40℃の範囲であり、徐々の添加は15分~24hの時間以内に完了する。
【0076】
ステップ4)及び/又は5)で得られた銀ナノプレートレットはデカンテーション、(限外)ろ過、(超)遠心分離、可逆又は不可逆凝集、有機溶媒による相間移動、及びこれらの組合せのような更なる精製及び/又は単離方法に供することができる。銀ナノプレートレットの分散液は約99wt-%以下の銀ナノプレートレット、好ましくは5wt-%~99wt-%の銀ナノプレートレット、より好ましくは5wt-%~90wt-%の銀ナノプレートレットを含有し得、wt-%は分散液の総重量に基づく。
【0077】
精製及び/又は単離により得られた銀ナノプレートレットから出発して、一般式(I)の表面安定剤を有する銀ナノプレートレットは:
i)銀ナノプレートレットの存在下でCS2を式RARBNHのアミンと反応させ、その後塩基での処理、
ii)銀ナノプレートレット及び塩基の存在下でCS2を式RARBNHのアミンと反応させる、
又は
iii)CS2を式RARBNHのアミンと反応させ、その後の塩基での処理により一般式(I)のジチオカルバミン酸塩を得、次いでこれを銀ナノプレートレットと反応させる
ことにより調製することができる。
【0078】
塩基はアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、及びこれらの混合物から選択され、ここでアルカリ金属はナトリウム、カリウム及びセシウムから選択される。調製プロセスに使用される塩基の好ましい例には、限定されることはないが、NaOH、KOH、CsOH、RbOH、NaOCH2CH3、KOCH2CH3、CsOCH2CH3、及びこれらの混合物がある。
【0079】
本明細書に記載されている銀ナノプレートレットは、BASF SEにより2020年11月10日に出願された「銀ナノプレートレットを含む組成物」と題する欧州特許出願第20206698.1号により開示されている。
【0080】
特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクはb)少なくともヒドロキシ基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤を含有する。驚くべきことに、少なくともヒドロキシ基で官能化されたペルフルオロポリエーテルの本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性のインクの界面活性剤としての使用は、入射光で見るとメタリックイエロー色を示すセキュリティー機能を作製するのに必須であることが判明した。例えば表4c及び表5cにより裏付けられるように、少なくともヒドロキシ基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤を含有するUV-Vis放射線硬化性のインクのみが、入射光で見るとメタリックイエロー色を示すセキュリティー機能を提供する。界面活性剤を欠く(例えば:インクC16の場合)か、又はヒドロキシ官能基を欠くペルフルオロポリエーテル界面活性剤(例えばインクC7~C9の場合)、若しくはヒドロキシ官能基に加えてペルフルオロポリエーテル主鎖を欠く界面活性剤(例えばインクC10~C15の場合)を含むUV-Vis放射線硬化性のインクで作製されたセキュリティー機能は反射光で褐色~暗褐色の色を示すが、これは一般人にとって目立たない、従って有価文書を保証するための二色性のセキュリティー機能に適さない。
【0081】
少なくともヒドロキシ基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤はペルフルオロポリエーテル主鎖及び1個又は複数、好ましくは2個又はそれ以上の末端ヒドロキシ官能基を含み、約2000[g/mol]未満の平均分子量(Mn)により特徴付けられる。本明細書で使用されるとき、ペルフルオロポリエーテル主鎖はペルフルオロメチレンオキシ(-CF2O-)及びペルフルオロエチレンオキシ(-CF2-CF2O-)から選択されるランダムに分布した繰返し単位を含むペルフルオロポリエーテルポリマーの残基を示す。ペルフルオロポリエーテル残基は直接、又はメチレン(オキシエチレン)、1,1-ジフルオロエチレン-(オキシエチレン)、メチレン-ジ(オキシエチレン)、1,1-ジフルオロエチレン-ジ(オキシエチレン)、メチレン-トリ(オキシエチレン)、1,1-ジフルオロエチレン-トリ(オキシエチレン)、メチレン-テトラ(オキシエチレン)、1,1-ジフルオロエチレン-テトラ(オキシエチレン)、メチレン-ペンタ(オキシエチレン)、及び1,1-ジフルオロエチレン-ペンタ(オキシエチレン)から選択されるスペーサーを介して末端官能基に連結される。
【0082】
好ましくは、少なくともヒドロキシ基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤は約800[g/mol]~約2000[g/mol]の平均分子量を有する一般式(V)の化合物である
【化19】
[式中、e1及びe4は互いに独立して0~6、好ましくは0~4の整数であり;e2及びe3は平均分子量が約800[g/mol]~約2000[g/mol]となるように選ばれる]。好ましい実施形態において、整数e1及びe4の総和は3~9である。
【0083】
好ましくは、本明細書に記載されているペルフルオロポリエーテル界面活性剤はUV-Vis放射線硬化性のインク(UV-Vis radiation curable)内に約0.025wt-%~約5wt-%、好ましくは約0.05wt-%~約2.5wt-%、より好ましくは約0.05wt-%~約1.0wt-%の量で存在し、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のインクの総重量に基づく。
【0084】
特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクはc)少なくとも69wt-%の塩化ビニル、好ましくは少なくとも75wt-%の塩化ビニルを含有する約3wt-%~約12wt-%のポリ塩化ビニルコポリマーを含有する。ポリ塩化ビニルコポリマーを含有しないUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクは入射光で見る際に褐色又は暗褐色のような人を引き付けない色、及び低彩度値C*のセキュリティー機能を提供し、その結果として、入射光でメタリックイエロー色を示すセキュリティー機能の作製に使用するのに適さない。
【0085】
ポリ塩化ビニルコポリマーは最大で90wt-%の塩化ビニルを含有するのが好ましい。
【0086】
好ましくは、少なくとも69wt-%の塩化ビニルを含有するポリ塩化ビニルコポリマーは特許請求の範囲に記載のセキュリティーインク内に約4.9wt-%~約11.6wt-%、最も好ましくは約6wt-%~約8.6wt-%の量で存在し、重量パーセントはUV-VIS放射線硬化性のインクの総重量に基づく。
【0087】
好ましくは、ポリ塩化ビニルコポリマーは塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー、及び塩化ビニル-ヒドロキシアクリレートコポリマー、例えば塩化ビニル-ヒドロキシアルキルアクリレート-Z-アルキレン二酸、ジアルキルエステルコポリマー、例えば塩化ビニル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート-2-ブテン二酸(Z)-、ジブチルエステルコポリマーからなる群から選択される。ポリ塩化ビニルコポリマーは好ましくは、ポリスチレンを標準として、テトラヒドロフランを溶媒として用いるサイズ排除クロマトグラフィーにより決定して3*104g/mol~約8*104g/molの平均分子量を有する。本発明のためのポリ塩化ビニルコポリマーの特に適切な例はWackerからVinnol(登録商標)H14/36、及びVinnol(登録商標)E22/48Aという名称で市販されている。
【0088】
本発明に従う実施形態において、特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクはカチオン硬化性のインク(即ち専らカチオン硬化性のモノマーを含有し、ラジカル硬化性のモノマーを含有しないインク)であり、d1)約25wt-%~約55wt-%の脂環式エポキシド、及び約1wt-%~約10wt-%のカチオン光開始剤;並びに任意選択でe)
e1)d)の脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)の50%より少ない量の2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;
e2)約5wt-%より少ない、好ましくは約4.1wt-%以下の量の1個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;
e3)約10wt-%より少ない量の脂環式エポキシド以外のエポキシド;
e4)約20wt-%より少ない量の2個のオキセタニル残基を有するオキセタン;
e5)約3.5wt-%より少ない、好ましくは約3.3wt-%以下の量の1個のオキセタニル残基を有するオキセタン;及び
e6)e1)及び/又はe2)及び/又はe3)及び/又はe4)及び/又はe5)の混合物からなる群から選択されるカチオン硬化性化合物
を含み、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく。このように、本発明に従う実施形態は透過光で見ると青色を、入射光で見るとメタリックイエロー色を示すセキュリティー機能を作製するためのUV-Vis放射線カチオン硬化性のセキュリティーインクに関し、前記インクは:
a)約7.5wt-%~約20wt-%の、標準偏差60%未満で50~150nmの範囲の平均直径、標準偏差50%未満で5~30nmの範囲の平均厚さ、及び2.0より大きい平均アスペクト比を有する銀ナノプレートレット、ここで平均直径は透過電子顕微鏡法により決定され、平均厚さは透過電子顕微鏡法により決定され、
銀ナノプレートレットは一般式(I)の表面安定剤を有する
【化20】
[式中
残基R
Aはヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基であり;
残基R
BはC
1-C
4アルキル基、及びヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基から選択され;
Cat
+はNa
+、K
+、Cs
+及びRb
+からなる群から選択されるカチオンである];
b)少なくともヒドロキシ基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤;
c)少なくとも69wt-%の塩化ビニルを含有する約3wt-%~約12wt-%のポリ塩化ビニルコポリマー;
d1)約25wt-%~約55wt-%の脂環式エポキシド、及び約1wt-%~約10wt-%のカチオン光開始剤;並びに任意選択で
e)e1)d)の脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)の50%より少ない量の2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;
e2)約5wt-%より少ない、好ましくは約4.1wt-%以下の量の1個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;
e3)約10wt-%より少ない量の脂環式エポキシド以外のエポキシド;
e4)約20wt-%より少ない量の2個のオキセタニル残基を有するオキセタン;
e5)約3.5wt-%より少ない、好ましくは約3.3wt-%以下の量の1個のオキセタニル残基を有するオキセタン;及び
e6)e1)及び/又はe2)及び/又はe3)及び/又はe4)及び/又はe5)の混合物からなる群から選択されるカチオン硬化性化合物
を含み、
重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく。
【0089】
本発明に従う代わりの実施形態において、特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクはハイブリッド硬化性のインク(即ちカチオン硬化性のモノマー及びラジカル硬化性のモノマーの両方を含むインク)であり、d2)約30wt-%~約65wt-%の脂環式エポキシド及びラジカル硬化性化合物の混合物、約1wt-%~約6wt-%のカチオン光開始剤、及び約1wt-%~約6wt-%のフリーラジカル光開始剤;並びに任意選択で
e):
e1)d)の脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)の50%より少ない量の2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;
e2)約5wt-%より少ない、好ましくは約4.1wt-%以下の量の1個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;
e3)約10wt-%より少ない量の脂環式エポキシド以外のエポキシド;
e4)約20wt-%より少ない量の2個のオキセタニル残基を有するオキセタン;
e5)約3.5wt-%より少ない、好ましくは約3.3wt-%以下の量の1個のオキセタニル残基を有するオキセタン;及び
e6)e1)及び/又はe2)及び/又はe3)及び/又はe4)及び/又はe5)の混合物からなる群から選択されるカチオン硬化性化合物
を含み、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく。それ故に、本発明に従う実施形態は透過光で見ると青色を、入射光で見るとメタリックイエロー色を示すセキュリティー機能を作製するためのUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性のセキュリティーインクに関し、前記インクは:
a)約7.5wt-%~約20wt-%の、標準偏差60%未満で50~150nmの範囲の平均直径、標準偏差50%未満で5~30nmの範囲の平均厚さ、及び2.0より大きい平均アスペクト比を有する銀ナノプレートレット、ここで平均直径は透過電子顕微鏡法により決定され、平均厚さは透過電子顕微鏡法により決定され、
銀ナノプレートレットは一般式(I)の表面安定剤を有する
【化21】
[式中
残基R
Aはヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基であり;
残基R
BはC
1-C
4アルキル基、及びヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基から選択され;
Cat
+はNa
+、K
+、Cs
+及びRb
+からなる群から選択されるカチオンである];
b)少なくともヒドロキシ基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤;
c)約3wt-%~約12wt-%の、少なくとも69wt-%の塩化ビニルを含有するポリ塩化ビニルコポリマー;
d2)約30wt-%~約65wt-%の脂環式エポキシド及びラジカル硬化性化合物の混合物、約1wt-%~約6wt-%のカチオン光開始剤、及び約1wt-%~約6wt-%のフリーラジカル光開始剤;並びに任意選択で
e):
e1)d)の脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)の50%より少ない量の2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;
e2)約5wt-%より少ない、好ましくは約4.1wt-%以下の量の1個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;
e3)約10wt-%より少ない量の脂環式エポキシド以外のエポキシド;
e4)約20wt-%より少ない量の2個のオキセタニル残基を有するオキセタン;
e5)約3.5wt-%より少ない、好ましくは約3.3wt-%以下の量の1個のオキセタニル残基を有するオキセタン;及び
e6)e1)及び/又はe2)及び/又はe3)及び/又はe4)及び/又はe5)の混合物からなる群から選択されるカチオン硬化性化合物
を含み、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく。特許請求の範囲に記載のハイブリッドインクがカチオン硬化性のモノマーとして本明細書に記載されている脂環式エポキシドのみを含有するのであれば、ラジカル硬化性化合物の重量パーセント(wt-%)と脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)との比は好ましくは1.6:1より小さく、より好ましくは1:1より小さく、更により好ましくは0.5:1より小さい。特許請求の範囲に記載のハイブリッドインクが本明細書に記載されている脂環式エポキシド及び本明細書に記載されているカチオン硬化性化合物をカチオン硬化性モノマーとして含有するのであれば、ラジカル硬化性化合物の重量パーセント(wt-%)と、脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)及びカチオン硬化性化合物の重量パーセント(wt-%)の総和との比は好ましくは1.6:1より小さく、より好ましくは1:1より小さく、更により好ましくは0.5:1より小さい。
【0090】
有利なことに、特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線カチオン硬化性のセキュリティーインク及び特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性のセキュリティーインクは、UVラジカル硬化性のインク又は溶剤型インクから、特に高濃度の銀ナノプレートレットを含有するUVラジカル硬化性のインク又は溶剤型インクから得られる当技術分野で公知のセキュリティー機能と比較して向上した機械的抵抗特性をもつセキュリティー機能を提供する。
【0091】
特許請求の範囲に記載のセキュリティーインクはd1)約25wt-%~約55wt-%の脂環式エポキシド、及び約1wt-%~約10wt-%のカチオン光開始剤;又はd2)約30wt-%~約65wt-%の脂環式エポキシドとラジカル硬化性化合物の混合物、約1wt-%~約6wt-%のカチオン光開始剤、及び約1wt-%~約6wt-%のフリーラジカル光開始剤を含有し、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく。
【0092】
当業者には知られているように、カチオン硬化性のモノマーは、1種又は複数の光開始剤のUV-Vis光による活性化からなるカチオン機構により硬化するが、この光開始剤は酸のようなカチオン種を遊離させ、このカチオン種が次にモノマーの重合を開始して、硬化したバインダーを形成する。
【0093】
当業者に周知のように、脂環式エポキシドは少なくとも置換又は非置換のエポキシシクロヘキシル残基:
【化22】
を含有するカチオン硬化性のモノマーである。
【0094】
好ましくは、本明細書に記載されている脂環式エポキシドは少なくとも1個のシクロヘキサン環、及び少なくとも2個のエポキシド基を含む。より好ましくは、脂環式エポキシドは一般式(VI):
【化23】
の化合物である[式中、-L-は単結合又は1個又は複数の原子を含む二価の基を表す]。一般式(VI)の脂環式エポキシドは任意選択で1~10個の炭素原子を含有する1個又は複数の線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有するアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル)により置換されてもよい。
【0095】
一般式(VI)で、二価の基-L-は1~18個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり得る。前記直鎖又は分岐鎖のアルキレン基の例には制限なしにメチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びトリメチレン基がある。
【0096】
一般式(VI)で、二価の基-L-は二価の脂環式炭化水素基又はシクロアルキリデン(cycloalkydene)基、例えば1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、及びシクロヘキシリデン基であり得る。
【0097】
一般式(VI)で、-L-は1個又は複数の酸素含有結合基を含む二価の基であり得、前記酸素含有結合基は-C(-O)-、-OC(=O)O-、-C(=O)O-、及び-O-からなる群から選択される。好ましくは、脂環式エポキシドは一般式(VI)の脂環式エポキシドであり[式中、-L-は1個又は複数の酸素含有結合基を含む二価の基であり、前記酸素含有結合基は-C(=O)-、-OC(=O)O-、-C(=O)O-、及び-O-からなる群から選択される]、より好ましくは以下に定義される一般式(VI-a)、(VI-b)、又は(VI-c)の脂環式エポキシドである
【化24】
[式中、
L
1はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)であり、好ましくは1~3個の炭素原子を含有し(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル);
L
2はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)であり、好ましくは1~3個の炭素原子を含有し(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル);
l1及びl2は互いに独立して0~9、好ましくは0~3の整数である];
【化25】
[式中、
L
1はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有し(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル);
L
2はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有し(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル);
l1及びl2は互いに独立して0~9、好ましくは0~3の整数であり;
-L
3-は単結合、又は1~10個の炭素原子を含有し、好ましくは3~8個の炭素原子を含有する線状又は分岐した二価の炭化水素基、例えばアルキレン基、例えばトリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、及び2-エチルヘキシレン、及びシクロアルキレン基、例えば1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、及び1,4-シクロヘキシレン基、及びシクロヘキシリデン基である];
【化26】
[式中、
L
1はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~3個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピルであり;
L
2はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~3個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピルであり;
l1及びl2は互いに独立して0~9、好ましくは0~3の整数である]。
【0098】
一般式(VI-a)の好ましい脂環式エポキシドには、限定されることはないが:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチル-シクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-2-メチル-シクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-2-メチル-シクロヘキサンカルボキシレート、及び3,4-エポキシ-4-メチル-シクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-4-メチルシクロヘキサンカルボキシレートがある。
【0099】
一般式(VI-b)の好ましい脂環式エポキシドには、限定されることはないが:ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ピメレート、及びビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)セバケートがある。
【0100】
一般式(VI-c)の好ましい脂環式エポキシドは2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサンである。
【0101】
更なる脂環式エポキシドには一般式(VII-a)の脂環式エポキシド及び一般式(VII-b)の脂環式エポキシドがあり、これらは任意選択で1~10個の炭素原子を含有する1個又は複数の線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有する前記アルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル)により置換されてもよい。
【化27】
【0102】
本明細書に記載されている脂環式エポキシドはヒドロキシで変性され得るか又は(メタ)アクリレートで変性され得る。例はDaicel Corp.によりCyclomer A400(CAS:64630-63-3)及びCyclomer M100(CAS番号:82428-30-6)という名称で、又はTetraChem/JiangsuによりTTA 15及びTTA16 46という名称で市販されている。
【0103】
特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のインクに使用されるカチオン光開始剤(当技術分野では光酸発生剤ともいわれる)はオニウム塩であり、好ましくはアゾニウム塩、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはオキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、及びこれらの混合物からなる群から選択され、更により好ましくはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0104】
本明細書に記載されているヨードニウム塩はカチオン部分及びアニオン部分を有し、ここでアニオン部分は好ましくはBF4
-、B(C6F5)4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-又はCF3SO3
-、より好ましくはSbF6
-であり、カチオン部分は好ましくは芳香族ヨードニウムイオン、より好ましくは2個のアリール基を含むヨードニウムイオンであり、2個のアリール基は独立して1個又は複数のアルキル基(例えば、メチル、エチル、イソブチル、tertブチル、等)、1個又は複数のアルコキシ基、1個又は複数のニトロ基、1個又は複数のハロゲン含有基、1個又は複数のヒドロキシ基又はこれらの組合せにより、好ましくは1個又は複数のアルキル基により置換されてもよい。本発明に特に適したヨードニウム塩はDEUTERON UV 1240、DEUTERON UV 1242、DEUTERON UV 2257、DEUTERON UV 1250、及びDEUTERON UV 3100(全てDEUTERONから入手可能)、OMNICAT 250、OMNICAT 440、及びOMNICAT 445(全てIGM Resinsから入手可能)、SpeedCure 937、SpeedCure 938及びSpeedCure 939(全てLambsonから入手可能)という名称で市販され公知である。
【0105】
本明細書に記載されているスルホニウム塩はカチオン部分及びアニオン部分を有し、ここでアニオン部分は好ましくはBF4
-、B(C6F5)4
-、PF6
-、(PF6-h(CjF2j-1)h)-(ここでhは1~5の整数であり、jは1~4の整数である)、AsF6
-、SbF6
-、CF3SO3
-、ペルフルオロアルキルスルホネート又はペンタフルオロ-ヒドロキシアンチモネート、より好ましくはSbF6
-であり、カチオン部分は好ましくは芳香族スルホニウムイオン、より好ましくは2個又はそれ以上のアリール基を含むスルホニウムイオンであり、2個又はそれ以上のアリール基は独立して、1個又は複数のアルキル基(例えば、メチル、エチル、イソブチル、tertブチル、等) 1個又は複数のアルコキシ基、1個又は複数のアリールオキシ基、1個又は複数のハロゲン含有基、1個又は複数のヒドロキシ基又はこれらの組合せにより置換されてもよい。2個又はそれ以上のアリール基を含むスルホニウムイオンの適切な例には、制限なしにトリアリールスルホニウムイオン、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムイオン、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオン、及びトリス[4-(4-アセチルフェニル)スルファニルフェニル]スルホニウムイオンがある。本発明に特に適切なスルホニウム塩の例はSpeedCure 976、SpeedCure 976D、及びSpeedCure 992(全てLambsonから入手可能)、ESACURE 1187、OMNICAT 270、OMNICAT 320、OMNICAT 432及びOMNICAT 550(全てIGM Resinsから入手可能)という名称で市販されている。
【0106】
本明細書に記載されているオキソニウム塩はカチオン部分及びアニオン部分を有し、ここでアニオン部分は好ましくはBF4
-、B(C6F5)4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-又はCF3SO3
-、より好ましくはBF4
-であり、カチオン部分は好ましくは芳香族オキソニウムイオン、より好ましくはピリリウムイオンであり、好ましくは1個又は複数のアリール基により置換され、1個又は複数のアリール基は互いに独立して、1個又は複数のアルキル基(例えば、メチル、エチル、イソブチル、tertブチル、等)、1個又は複数のアルコキシ基、1個又は複数のニトロ基、1個又は複数のハロゲン基、1個又は複数のヒドロキシ基又はこれらの組合せにより置換されてもよい。本発明に特に適切なオキソニウム塩は2,4,6-トリフェニルピリリウムテトラフルオロボレートである。
【0107】
有用なカチオン光開始剤の他の例は標準的な教科書、例えば”Chemistry & Technology of UV & EB Formulation for Coatings, Inks & Paints”, Volume III, ”Photoinitiators for Free Radical Cationic and Anionic Polymerization”, 2nd edition, by J. V. Crivello & K. Dietliker, edited by G. Bradley and published in 1998 by John Wiley & Sons in association with SITA Technology Limitedに見ることができる。
【0108】
本明細書に記載されているラジカル硬化性化合物はラジカル硬化性のモノマー、ラジカル硬化性のオリゴマー、及びこれらの混合物から選択される。
【0109】
本明細書に記載されているラジカル硬化性のモノマーはモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート及びこれらの混合物からなる群から、好ましくはトリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物からなる群から選択される。本発明との関連で用語「(メタ)アクリレート」はアクリレート並びに対応するメタクリレートを意味する。
【0110】
モノ(メタ)アクリレートの好ましい例には、2(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、C12/C14アルキル(メタ)アクリレート、C16/C18アルキル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、オクチルデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ジ(メタ)アクリレート、エステルジオールジ(メタ)アクリレート並びにこれらの混合物がある。
【0111】
ジ(メタ)アクリレートの好ましい例には、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、並びにこれらの混合物がある。
【0112】
トリ(メタ)アクリレートの好ましい例には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化)グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、並びにこれらの混合物がある。
【0113】
テトラ(メタ)アクリレートの好ましい例はジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びこれらの混合物を包含し、好ましくはジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0114】
本明細書で使用されるとき、用語「ラジカル硬化性のオリゴマー」は、分岐しても又は本質的に線状でもよく、末端及び/又はペンダント(メタ)アクリレート官能基(複数可)を有していてもよいラジカル硬化性の(メタ)アクリレートオリゴマーを意味する。好ましくは、ラジカル硬化性のオリゴマーは(メタ)アクリルオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテルベースの(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0115】
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの適切な例としては、制限なしに、脂肪族のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、特にモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート及びトリ(メタ)アクリレート、並びに芳香族のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーがある。芳香族のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの適切な例にはビスフェノール-A(メタ)アクリレートオリゴマー、例えばビスフェノール-Aモノ(メタ)アクリレート、ビスフェノール-Aジ(メタ)アクリレート及びビスフェノール-Aトリ(メタ)アクリレート並びにアルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化)ビスフェノール-A(メタ)アクリレートオリゴマー、例えばアルコキシル化ビスフェノール-Aモノ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ビスフェノール-Aジ(メタ)アクリレート及びアルコキシル化ビスフェノール-Aトリ(メタ)アクリレート、好ましくはアルコキシル化ビスフェノール-Aジ(メタ)アクリレートがある。
【0116】
本発明で使用されるフリーラジカル光開始剤は好ましくはヒドロキシケトン(例えばアルファ-ヒドロキシケトン)、アルコキシケトン(例えばアルファ-アルコキシケトン)、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ケトスルホン、ベンジルケタール、ベンゾインエーテル、ホスフィンオキシド、フェニルグリオキシレート、チオキサントン、及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはホスフィンオキシド、ヒドロキシケトン、チオキサントン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0117】
適切なアルファ-ヒドロキシケトンには、制限なしに、(1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-tert-ブチル)フェニルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-[4-[[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェニル]メチル]フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェノキシ]フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、及びオリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]がある。
【0118】
適切なアセトフェノンには制限なしに2,2-ジエトキシアセトフェノン、及び2-メトキシ-2-フェニルアセトフェノンがある。
【0119】
適切なベンゾフェノンには制限なしにベンゾフェノン、ポリマー性のベンゾフェノン誘導体、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、3,3′-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、メチル-2-ベンゾイルベンゾエート、4-(4-メチルフェニルチオ)ベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノンラウレート、及び50%のベンゾフェノンと50%の1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの混合物がある。
【0120】
適切なケトスルホンには制限なしに1-[4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オンがある。
【0121】
適切なベンジルケタールには制限なしに2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンがある。
【0122】
適切なベンゾインエーテルには制限なしに2-エトキシ-1,2-ジフェニルエタノン、2-イソプロポキシ-1,2-ジフェニルエタノン、2-イソブトキシ-1,2-ジフェニルエタノン、2-ブトキシ-1,2-ジフェニルエタノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノン、及び2,2-ジエトキシアセトフェノンがある。
【0123】
適切なホスフィンオキシドには制限なしに2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、エチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、置換されたアシル-ホスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチプロピオフェノンの混合物、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンの混合物、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンの混合物、並びにフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド及びエチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートの混合物がある。
【0124】
適切なチオキサントンには制限なしに2-メチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、及びポリマー性チオキサントン誘導体がある。
【0125】
適切なフェニルグリオキシレートには制限なしにメチルベンゾイルホルメート、2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]エチル2-オキソ-2-フェニルアセテート、並びに2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]エチル2-オキソ-2-フェニルアセテート及びオキシ-フェニル-酢酸2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルの混合物がある。
【0126】
好ましくは、フリーラジカル光開始剤は本明細書に記載されているホスフィンオキシドの混合物、より好ましくはフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド及びエチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートの混合物である。
【0127】
特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクは
e1)d)の脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)の50%より少ない量の2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;
e2)約5wt-%より少ない、好ましくは約4.1wt-%以下の量の1個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;
e3)約10wt-%より少ない量の脂環式エポキシド以外のエポキシド;
e4)約20wt-%より少ない量の2個のオキセタニル残基を有するオキセタン;
e5)約3.5wt-%より少ない、好ましくは約3.3wt-%以下の量の1個のオキセタニル残基を有するオキセタン;及び
e6)e1)及び/又はe2)及び/又はe3)及び/又はe4)及び/又はe5)の混合物;
からなる群から選択されるカチオン硬化性化合物を含有し得、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく。好ましくは、カチオン硬化性化合物は
e1)d)の脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)の50%より少ない量の2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;
e3)約10wt-%より少ない量の脂環式エポキシド以外のエポキシド;
e4)約20wt-%より少ない量の2個のオキセタニル残基を有するオキセタン;又は
e6)e1)及び/又はe3)及び/又はe4)の混合物
からなり、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく。
【0128】
本発明に従う特定の実施形態において、カチオン硬化性化合物はe1)d)の脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)の50%より少ない量の2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;又はe6)e1)及びe2)の混合物;e1)及びe3)の混合物;e1)及びe4)の混合物;e1)及びe5)の混合物;e1)、e2)及びe3)の混合物;e1)、e2)及びe4)の混合物;e1)、e2)及びe5)の混合物;e1)、e3)及びe4)の混合物;e1)、e3)及びe5)の混合物;又はe1)、e4)及びe5)の混合物からなり、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく。本発明のより特定的な実施形態において、カチオン硬化性化合物はe1)d)の脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)の50%より少ない量の2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;並びにe6)e1)及びe3)の混合物;e1)及びe4)の混合物;及びe1)、e3)及びe4)の混合物からなる群から選択され、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく。例えば表2cにより裏付けられるように、カチオン硬化性のモノマーとして脂環式エポキシド及び2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテルの混合物を含有し、約0.5より小さいビニルエーテルのwt-%と脂環式エポキシドのwt-%との比率を有する本発明によるセキュリティーインクは入射光で見るとメタリックイエロー色を、透過光で見ると青色を示す二色性のセキュリティー機能を提供する。入射光で見た際のメタリックイエロー色は、例えば表2cにより示されるように、脂環式エポキシド及び2個のビニルオキシを有するビニルエーテルの混合物をカチオン硬化性のモノマーとして含有し、0.5以上のビニルエーテルのwt-%と脂環式エポキシドのwt-%との比率を有するインクで達成することはできない。かかるインクは反射光で暗褐色~褐色及び低彩度の機能を提供し、これらは一般人にとって目立たなく、従って有価文書を保証するための二色性のセキュリティー機能に適さない。好ましくは、2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテルは脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)の49%、48%、47%、46%、45%以下の量で存在し;重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく。
【0129】
従って、本発明に従う好ましい実施形態は
a)約7.5wt-%~約20wt-%の、標準偏差60%未満で50~150nmの範囲の平均直径、標準偏差50%未満で5~30nmの範囲の平均厚さ、及び2.0より大きい平均アスペクト比を有する銀ナノプレートレット、ここで平均直径は透過電子顕微鏡法により決定され、平均厚さは透過電子顕微鏡法により決定され、
銀ナノプレートレットは一般式(I)の表面安定剤を有する
【化28】
[式中、
残基R
Aはヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基であり;
残基R
BはC
1-C
4アルキル基、及びヒドロキシ基で置換されたC
2-C
4アルキル基から選択され;
Cat
+はNa
+、K
+、Cs
+及びRb
+からなる群から選択されるカチオンである];
b)少なくともヒドロキシ基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤;
c)少なくとも69wt-%の塩化ビニルを含有する約3wt-%~約12wt-%のポリ塩化ビニルコポリマー;
d)d1)約30wt-%~約55wt-%の脂環式エポキシド、及び約1wt-%~約10wt-%のカチオン光開始剤;又は
d2)約35wt-%~約65wt-%の脂環式エポキシド及びラジカル硬化性化合物の混合物、約1wt-%~約6wt-%のカチオン光開始剤、及び約1wt-%~約6wt-%のフリーラジカル光開始剤;並びに任意選択で
e)e1)d)の脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)の50%より少ない量の2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル;及び
e6)e1)d)の脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)の50%より少ない量の2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル及びe3)約10wt-%より少ない量の脂環式エポキシド以外のエポキシドの混合物;
e1)d)の脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)の50%より少ない量の2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル及びe4)約20wt-%より少ない量の2個のオキセタニル残基を有するオキセタンの混合物;又は
e1)d)の脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)の50%より少ない量の2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル、e3)約10wt-%より少ない量の脂環式エポキシド以外のエポキシド、及びe4)約20wt-%より少ない量の2個のオキセタニル残基を有するオキセタンの混合物
からなる群から選択されるカチオン硬化性化合物
を含むセキュリティーインクに関し、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく。
【0130】
代わりの実施形態において、カチオン硬化性化合物はe3)約10wt-%より少ない量の脂環式エポキシド以外のエポキシド;又はe6)e3)及びe1)の混合物;e3)及びe2)の混合物;e3)及びe4)の混合物;e3)及びe5)の混合物;e3)、e1)及びe2)の混合物;e3)、e1)及びe4)の混合物;e3)、e1)及びe5)の混合物;e3)、e2)及びe4)の混合物;e3)、e2)及びe5)の混合物;又はe3)、e4)及びe5)の混合物からなり、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく。本発明のより特定的な実施形態において、カチオン硬化性化合物はe3)約10wt-%より少ない量の脂環式エポキシド以外のエポキシド;又はe6)e1)及びe3)の混合物;e3)及びe4)の混合物、又はe1)、e3)及びe4)の混合物からなり、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく。
【0131】
代わりの実施形態において、カチオン硬化性化合物はe4)約20wt-%より少ない量の2個のオキセタニル残基を有するオキセタン;又はe6)e4)及びe1)の混合物;e4)及びe2)の混合物;e4)及びe3)の混合物;e4)及びe5)の混合物;e4)、e1)及びe2)の混合物;e4)、e1)及びe3)の混合物;e4)、e1)及びe5)の混合物;e4)、e2)及びe3)の混合物;e4)、e2)及びe5)の混合物;又はe3)、e4)及びe5)の混合物からなり、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく。本発明のより特定的な実施形態において、カチオン硬化性化合物はe4)約20wt-%より少ない量の2個のオキセタニル残基を有するオキセタン;又はe6)e4)及びe1)の混合物;e4)及びe3)の混合物;又はe1)、e3)及びe4)の混合物からなり、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクの総重量に基づく。
【0132】
当業者には周知のように、ビニルエーテルは少なくともビニルオキシ(CH2=CH-O-)残基を含有するカチオン硬化性のモノマーである。ビニルエーテルは当技術分野で、硬化を加速し、粘着性を低減するので、印刷されたシートを印刷及び硬化直後に積み重ねたときブロッキング(blocking)及びセットオフ(set-off)のリスクを制限することが知られている。また、印刷されたセキュリティー要素の物理的及び化学的抵抗を改良し、印刷され硬化したインク層の柔軟性及びその基材への粘着を高め、これはプラスチック及びポリマー基材の印刷に特に有利である。ビニルエーテルはまたインクの粘度を低減するのに役立つ一方でインクビヒクルと共に強固に共重合する。
【0133】
本明細書で使用されるとき、「1個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル」とは1個のビニルオキシ残基を有するカチオン硬化性のモノマーを意味する。1個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテルの例には、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、iso-ブチルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、tert-アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、4-(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチルベンゾエート、フェニルビニルエーテル、メチルフェニルビニルエーテル、メトキシフェニルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジオールモノビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、4-(ビニルオキシ)ブチルベンゾエート、4-(ビニルオキシ)ブチルステアレート、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルビニルエーテル、及びポリエチレングリコール-520メチルビニルエーテルがある。1個のビニルオキシ残基を有する適切なビニルエーテルはBASFによりEVE、IBVE、DDVE、ODVE、BDDVE、CHVE、HBVEという名称で市販されている。1個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテルはヒドロキシ変性されるか又は(メタ)アクリレート変性されてもよい(例えば:Nippon ShokubaiのVEEA、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート(CAS:86273-46-3))。
【0134】
本明細書で使用される「2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテル」は1個又は複数の原子を含有する二価の基を介して連結された2個のビニルオキシ(CH2=CH-O-)残基を含有するカチオン硬化性のモノマーをいう。
【0135】
好ましくは、2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテルは2~20個の炭素原子、及び任意選択で1個又は複数の酸素原子を含有する二価の基を介して連結された2個のビニルオキシ(CH
2=CH-O-)残基を有する化合物である。より好ましくは、特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクに使用される2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテルは一般式(VIII)の化合物である
【化29】
[式中、
-F-は:-(CH
2)
f1-、-(CH
2)
f2-(O(CH
2)
f2)
f3-、
【化30】
からなる群から選択され、ここで、f1は1~10の整数であり;
f2は2~4の整数であり;
f3は1~3の整数であり;
f4及びf5は互いに独立して2~6の整数である]。
【0136】
好ましくは、-F-は:-(CH
2)
f2-(O(CH
2)
f2)
f3-、及び
【化31】
からなる群から選択され、ここでf2及びf3は本明細書で定義された意味を有する。
より好ましくは、-F-は:-(CH
2)
2-(O(CH
2)
2)
f3-、及び
【化32】
からなる群から選択され、ここでf3は1~3、好ましくは1~2の整数である。
【0137】
2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテルの好ましい例には限定されることはないがシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジオールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジオールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリ(テトラヒドロフラン)ジビニルエーテル、ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]アジペート、ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]スクシネート、ビス[4-(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチル]グルタレート、2,2-ビス(4-ビニルオキシエトキシフェニル)、ビス[4-(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]テレフタレート、及びビス[4-(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]イソフタレートがある。2個のビニルオキシ残基を有する適切なビニルエーテルはBASFによりBDDVE、DVE-2、DVE-3、及びCHDM-diという名称で市販されている。
【0138】
当業者に周知のようにエポキシドは少なくともエポキシ残基
【化33】
を含有するカチオン硬化性のモノマーである。UV-Vis放射線硬化性のインクにおけるエポキシドの使用は、硬化を加速し、粘着性を低減し、更にインクの粘度を低下させるのに役立ち、一方でインクビヒクルと共に強固に共重合する。本明細書に記載されている脂環式エポキシド以外のエポキシドの好ましい例には、限定されることはないが、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノール-Aジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、2-エチル-ヘキシルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、C
12/C
14-アルキルグリシジルエーテル、C
13/C
15-アルキルグリシジルエーテル及びこれらの混合物がある。脂環式エポキシド以外の適切なエポキシドはEMS GriltechによりGrilonit(登録商標)(例えばGrilonit(登録商標)V51-63又はRV 1806)という商標で市販されている。
【0139】
当業者に周知のようにオキセタンは少なくとも非置換又は置換されたオキセタニル残基、好ましくは非置換又は置換された3-オキセタニル残基:
【化34】
を含有するカチオン硬化性のモノマーである。本明細書で使用されるとき、「1個のオキセタニル残基を有するオキセタン」は1個の置換されたか又は非置換のオキセタニル残基を有するカチオン硬化性のモノマーをいう。好ましくは、1個のオキセタニル残基を有するオキセタンは一般式(IX)のものである
【化35】
[式中、
R
20は-H、フェニル、o-メトキシ-フェニル、m-メトキシ-フェニル及びp-メトキシ-フェニルから選択され;
R
21は-H、メチル、及びエチルから選択され;
R
22は-H、メチル、エチル、-CH
2-OR
23から選択され;
R
23は-H、C
1-C
8-アルキル、フェニル、ベンジル、
【化36】
から選択され、ここでg1は2~8の整数である]。
【0140】
1個のオキセタニル残基を有するオキセタンの好ましい例にはトリメチレンオキシド、3,3-ジメチルオキセタン、トリメチロールプロパンオキセタン、3-エチル-3-[(2-エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン、3,3-ジメチル-2(p-メトキシ-フェニル)-オキセタン、3-エチル-[(トリ-エトキシシリルプロポキシ)メチル]オキセタン、及び3,3-ジメチル-2(o-メトキシ-フェニル)オキセタンがある。
【0141】
本明細書で使用される「2個のオキセタニル残基を有するオキセタン」は1個又は複数の原子を含有する二価の基を介して連結された2個の置換されたか又は非置換のオキセタニル残基を含有するカチオン硬化性のモノマーを意味する。好ましくは、2個のオキセタニル残基を有するオキセタンは2~20個の炭素原子、及び任意選択で1個又は複数の酸素原子を含有する二価の基を介して連結された2個のオキセタニル残基を有する化合物である。更により好ましくは、2個のオキセタニル残基を有するオキセタンは一般式(X)の化合物である
【化37】
[式中、
-G-は結合、-O-(CH
2)
g2-
【化38】
を表し
g2は2~8の整数であり;
g3は1~3の整数であり;
g4は1~4の整数である]。
【0142】
2個のオキセタニル残基を有するオキセタンの好ましい例には1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、及びテトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテルがある。
【0143】
特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクは約25wt-%以下の有機溶剤を含有し得、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のインクの総重量に基づく。溶剤は100℃より高い沸点を有する。本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性のインクに使用される適切な有機溶剤には制限なしに:エチル-3-エトキシプロピオネート、2-メトキシ-1-メチルエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、n-ブタノール、シクロヘキサノール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、及びこれらの混合物がある。
【0144】
本発明に従う好ましい実施形態において、UV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクは溶剤を含まない。有価文書の産業印刷プロセスにおける溶剤を含まないインクの使用は、通例環境に負の影響を及ぼし、人の健康に有害である揮発性の有機成分の放出を防ぐので大いに興味深い。
【0145】
特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクは、効率的な硬化を達成するために、本明細書に記載されている1種又は複数の光開始剤と共に1種又は複数の光増感剤を更に含み得る。光増感剤の適切な例は当業者に公知である(例えば、Industrial Photoinitiators, W. A. Green, CRC Press, 2010, Table 8.1 p .170)。好ましい光増感剤はUV-LED光源での効率的で速い硬化を達成することができるもの、例えばチオキサントン誘導体、アントラセン誘導体及びナフタレン誘導体(例えばAnthracure UVS-1101として販売されている9,10-ジエトキシアントラセン及びAnthracure UVS-1331として販売されている9,10-ジブチルオキシアントラセン、両方共Kawasaki Kasei Chemicals Ltdにより販売されている)及びチタノセン誘導体(例えばBASFにより販売されているIrgacure 784)である。制限なしにイソプロピル-チオキサントン(ITX)、1-クロロ-2-プロポキシ-チオキサントン(CPTX)、2-クロロ-チオキサントン(CTX)及び2,4-ジエチル-チオキサントン(DETX)を始めとするチオキサントン誘導体、及びこれらの混合物が特に好ましい。或いは、チオキサントン光増感剤はオリゴマー又はポリマー形態で使用され得る(例えば、IGM Resinsにより販売されているOmnipol TX、Rahnにより販売されているGenopol* TX-2、又はLambsonにより販売されているSpeedcure 7010)。存在するとき、1種又は複数の光増感剤は好ましくは約0.1wt-%~約2wt-%、より好ましくは約0.2wt-%~約1wt-%の量で存在し、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のインクの総重量に基づく。
【0146】
特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のインクは、約2wt-%未満、好ましくは約1wt-%未満の量の1種又は複数の消泡剤を更に含み得る。
【0147】
本発明の別の局面は有価文書を保証するためのセキュリティー機能を作製する方法であって、前記セキュリティー機能が透過光で見ると青色を、入射光で見るとメタリックイエロー色を示し、前記方法が以下のステップ:
A)好ましくはスクリーン印刷、輪転グラビア印刷、又はフレキソ印刷により、特許請求の範囲に記載のUV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクを有価文書の基材の透明又は部分的に透明な領域上に印刷してインク層を設けるステップ;及び
B)ステップA)で得られたインク層をUV-Vis硬化してセキュリティー機能を形成するステップ
を含む、方法に関する。
【0148】
特許請求の範囲に記載の本発明の製造プロセスはただ一つの印刷ステップで、入射光でメタリックイエロー色を、透過光で青色、殊に強烈~極めて強烈な青色を示すセキュリティー機能へのアクセスを可能にする。本明細書で使用されるとき、用語「印刷する」とは、本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性のインクを有価文書の基材に印刷するのに適したあらゆる印刷プロセスを意味する。特に、用語「印刷する」は:スクリーン印刷、輪転グラビア印刷、フレキソ印刷、パッド印刷、インクジェット印刷、及びスプレー印刷からなる群から選択される印刷プロセスをいう。好ましくは、UV-Vis放射線硬化性のセキュリティーインクはスクリーン印刷、輪転グラビア印刷又はフレキソ印刷により、より好ましくはスクリーン印刷により有価文書の基材の透明又は部分的に透明な領域に印刷される。
【0149】
本明細書で使用されるとき「有価文書の基材の透明又は部分的に透明な領域」は有価文書の基材のある領域を指し、前記領域は少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%の可視範囲の平均透過率により特徴付けられる。基材の透明又は部分的に透明な領域及び基材の残りの領域は同一の材料又は異なる材料で作製され得る。多層構造中の1つ若しくは複数の層の削除、又はある透明若しくは部分的に透明な材料の、その透明若しくは部分的に透明な材料と異なる材料製の基材の開口への適用は、基材の透明又は部分的に透明な領域及び基材の残りの領域が異なる材料製である有価文書基材を提供する。
【0150】
有価文書基材の材料としては、制限なしに、紙又は他の繊維質材料、例えばセルロース、紙含有材料、プラスチック及びポリマー、複合材料、及びこれらの混合物又は組合せがある。典型的な紙、紙様又は他の繊維質材料は制限なしにマニラ麻、綿、リネン、木材パルプ、及びこれらのブレンドを始めとする様々な繊維から作製される。当業者には周知のように、綿及び綿/リネンブレンドは銀行券に好ましく、一方木材パルプは通常非銀行券セキュリティー文書に使用される。プラスチック及びポリマーの典型的な例にはポリスチレン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)、例えば二軸配向ポリプロピレン(BOPP)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール-変性(PETG)、例えばポリ(エチレングリコール-コ-1,4-シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、及びポリ(エチレン 2,6-ナフトエート)(PEN)、及びポリ塩化ビニル(PVC)がある。複合材料の典型的な例には制限なしに紙及び少なくとも1つのプラスチック又はポリマー材料、例えば上に記載したものの多層構造体又は積層体がある。基材の透明又は部分的に透明な領域に適切な材料としては、限定されることはないが、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)、例えば二軸配向ポリプロピレン(BOPP)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール-変性(PETG)、例えばポリ(エチレングリコール-コ-1,4-シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、及びポリ(エチレン 2,6-ナフトエート)(PEN)、及びポリ塩化ビニル(PVC)がある。有価文書の基材の透明又は部分的に透明な領域は、上にUV-Vis放射線硬化性のインクが印刷されるプライマー層をもっていてもよい。プライマー層は、本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性のインクの銀ナノプレートレットを除いた全ての成分を含有するワニスをUV-Vis硬化することにより得ることができる。
【0151】
特許請求の範囲に記載の本発明の製造プロセスのステップB)では、ステップA)で得られたインク層がUV-Vis硬化に付されてセキュリティー機能を形成する。本明細書で使用されるとき、用語「UV-Vis硬化」は、電磁スペクトルのUV又はUV及び可視部の波長成分(通例100nm~800nm、好ましくは150~600nm、より好ましくは200~400nm)を有する照射の影響の下での光重合によるインク層の放射線硬化を意味する。カチオン硬化性のモノマーは1種又は複数の光開始剤のUV-Vis光による活性化からなるカチオン機構により硬化するが、この光開始剤は酸のようなカチオン種を遊離させ、このカチオン種が今度は化合物の重合を開始して硬化したバインダーを形成する。ラジカル硬化性のモノマー及びオリゴマーは、1種又は複数の光開始剤のUV-Vis光による活性化からなるフリーラジカル機構により硬化するが、この光開始剤がフリーラジカルを遊離させ、このラジカルが次に重合プロセスを開始する。任意選択で、1種又は複数の光増感剤も存在し得る。光増感剤はUV-Vis光源により放出された波長のうちの1又は複数により活性化され、励起状態に達する。励起した光増感剤は1種又は複数の光開始剤(ラジカル重合の場合)又は電子(カチオン重合の場合)にエネルギーを移す。いずれのプロセスもその後重合プロセスを開始する。
【0152】
好ましくは、ステップB)は、ステップA)で得られたインク層の、水銀ランプ、好ましくは中圧水銀ランプ、UV-LEDランプ、及びこれらのシーケンスからなる群から選択されるUV-Vis光源により放出されたUV-Vis光への曝露を含む。典型的なシーケンスは、第1のステップでの1又は複数のUV-LEDランプの使用によるUV-Vis放射線組成物の部分的硬化及び第2のステップでの1又は複数の中圧水銀ランプを含む。水銀ランプはUV-A、UV-B及びUV-C範囲の波長の広い範囲で発光するので有利である。従って、水銀ランプの発光帯の少なくとも1つに一致する吸収スペクトルを有する光開始剤又は光開始剤/光増感剤の組合せの広範な選択肢がある。UV-LEDはより限られた波長範囲を有しているので、光開始剤又は光開始剤/光増感剤の組合せの限られた選択のみが産業印刷速度で十分効率的である。一方で、UV-LEDはコストがより低く、より少ないエネルギーを必要とし(特に、熱放散システムの必要性がずっと少ない)、オゾン形成をし易くなく、寿命がずっと長い。
【0153】
有価文書に土壌抵抗を付与するために、及び/又は環境からの物理的及び化学的攻撃に対してセキュリティー機能を保護するために、特許請求の範囲に記載の製造プロセスは好ましくはステップB)の後に実施されるステップC)及びD)を更に含む:
C)基材に、好ましくは印刷プロセスにより、硬化性の保護用ワニスを適用してワニス層を形成する;
D)ステップC)で得られたワニス層を硬化して保護コーティングを形成する。
【0154】
ステップC)で使用される適切な硬化性の保護ワニスの例及び/又は前記硬化性の保護ワニスを基材に適用し、ワニス層を硬化する方法は国際公開第2020234211号、国際公開第2013127715号及び国際公開第2014067715号に記載されている。
【0155】
好ましくは、有価文書は銀行券、証書、チケット、小切手、領収書、収入印紙、契約書、身分証明書、例えばパスポート、身分証明カード、ビザ、運転免許証、バンクカード、クレジットカード、トランザクションカード、アクセス文書(access document)、及びカード、入場券、公共交通券、学位記(academic diploma)、及び学位(academic title)から選択される。より好ましくは有価文書は銀行券である。特許請求の範囲に記載のセキュリティーインクはまた有価商品(value commercial good)上に直接セキュリティー機能を作製するのに使用することもできる。用語「有価商品」は例えば本物の薬剤のような包装の中身を保証するために偽造及び/又は違法複製に対して保護され得る包装材料、特に医薬品、化粧品、電子工学又は食品産業に関する。
【実施例】
【0156】
以下、非限定的な実施例を参照して本発明をより詳細に記載する。以下の実施例E1~E48及び比較例C1~C21は本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性のスクリーン印刷用セキュリティーインクの調製及びそれにより得られたセキュリティー機能の光学的性質に関するより多くの詳細を提供する。
【0157】
(A.分析方法)
(A-1.UV-Vis分光法)
分散液のUV-Visスペクトルを、Varian Cary 50UV-可視分光光度計で、1cmの光路で0.3~1.5の光学密度を達成するような濃度の分散液で記録した。
【0158】
(A-2.TEM分析)
分散液及びコーティングのTEM分析をZEISSのEM 910機器により明視野モード、100kVのe-ビーム加速電圧で行った。少なくとも2つの代表的な画像を異なる倍率のスケールで記録して各試料の優勢な粒子形態を特徴付けた。
【0159】
銀ナノプレートレットの平均直径は、透過電子顕微鏡法(TEM)によりFiji画像解析ソフトウエアを用いて、透過電子顕微鏡法画像(TEM)の平面と平行に配向した少なくとも300のランダムに選択した銀ナノプレートレットの測定値に基づいて決定した。ここで、銀ナノプレートレットの直径は透過電子顕微鏡法画像(TEM)の平面に対して平行に配向した前記銀ナノプレートレットの最大の寸法である。
【0160】
銀ナノプレートレットの平均厚さは、透過電子顕微鏡法(TEM)により、TEM画像の平面と垂直に配向した少なくとも50のランダムに選択した銀ナノプレートレットの手動の測定に基づいて決定した。ここで、銀ナノプレートレットの厚さは前記銀ナノプレートレットの最大の厚さである。
【0161】
(B.Agナノプレートレット分散液D1~D10の調製及び特性決定)
(B-1.原料の合成)
アンカー型スターラーを備えた1Lの二重壁ガラス反応器で、365gの脱イオン水を+2℃に冷却した。13.62gの水素化ホウ素ナトリウムを加え、混合物を250回/分(RPM、溶液A)で撹拌しながら-1℃に冷却した。
【0162】
アンカー型スターラーを備えた0.5Lの二重壁ガラス反応器で、132gの脱イオン水及び4.8gのMPEG-5000-チオールを合わせ、混合物を10分室温で撹拌した。72gの国際公開第2006074969号の実施例A3の生成物を加え、得られた混合物を均質化のため更に10分室温で撹拌した。30.6gの硝酸銀の30gの脱イオン水中の溶液を一度に加え、混合物を10分撹拌して、橙褐色の粘稠な溶液が得た。この溶液に96gの脱イオン水を加え、続いて予め36gの脱イオン水に分散させた3gのStruktol SB 2080消泡剤を加えた。得られた混合物を250RPMで撹拌しながら0℃に冷却した(溶液B)。
【0163】
その後、蠕動ポンプにより一定の速度で2hにわたり、冷却した(0℃)添加管を介して溶液Bを溶液Aの液面下に添加し、球状の銀ナノプレートレットの分散液を得た。ポンプで送り込む間、溶液Aは250RPMで撹拌した。
【0164】
添加が完了した後、反応混合物を15分以内で+5℃まで温め、862mgのKClの10gの脱イオン水中の溶液を一度に加え、続いて9.6gのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を4つの等しい部分として10分の時間間隔で添加した。
【0165】
最後のEDTA部分の添加後、反応混合物を15分+5℃で撹拌し、次いで30分かけて35℃まで温め、1hこの温度で撹拌した。この時点で、水素の発生が完了する。
【0166】
3.0mLのアンモニアの水中30%w/w溶液を加え、続いて5.76gの固体のNaOHを添加し、混合物を15min35℃で撹拌した。次いで180mLの50%w/w過酸化水素水溶液を蠕動ポンプにより一定の速度で4hかけて250RPMで撹拌しながら反応混合物中の液面下に添加し、その間温度を35℃に維持した。これにより、銀ナノプレートレットの濃い青色の分散液が得られ、これを室温に冷却した。1.23gの式
【化39】
の化合物(CAS 80584-88-9及び80584-89-0の混合物)を加え、混合物を1h室温で撹拌した。
【0167】
(B-2.Agナノプレートレットの単離及び精製)
(B-2a.第1のデカンテーション)
9.6gのドデシル硫酸ナトリウムを反応混合物に加え、次いで約25gの無水硫酸ナトリウム粉末を、分散液の透過光の色が青からピンクに変化するまで少しずつ撹拌しながら加えた。次いで混合物を撹拌することなく室温に24h保ち、凝固したナノプレートレットを反応器の底に沈殿させた。
【0168】
890gの上清を反応器から蠕動ポンプで送り込み、890gの脱イオン水を反応器に加えた。反応器中の混合物を1h室温で撹拌し、凝固した粒子を再分散させた。
【0169】
(B-2b.第2のデカンテーション)
約64gの無水硫酸ナトリウム粉末を、分散液の透過光の色が青から黄色味がかったピンクに変化するまで少しずつ撹拌しながら加えた。次いで混合物を撹拌することなく室温で12h保ち、凝固したナノプレートレットを反応器の底に沈殿させた。990gの上清を反応器から蠕動ポンプで送り込み、90gの脱イオン水を反応器に加えた。得られた混合物を30分室温で撹拌し、凝固した粒子を再分散させた。
【0170】
(B-2c.水中限外ろ過)
得られたAgナノプレートレットの分散液をMillipore Amicon 8400撹拌限外ろ過セルを用いた限外ろ過に付した。分散液を脱イオン水で希釈し、300kDaカットオフ値のポリエーテルスルホン(PES)膜を用いて約50mLの最終容積に限外ろ過した。手順を合計4回繰り返して60gのAgナノプレートレットの水中分散液を得た。限外ろ過が完了した後、0.17gの式
【化40】
の化合物(CAS 80584-88-9及び80584-89-0の混合物)を分散液に加えた。
Ag含有率28.9%w/w;合計銀量に基づく収率約89%;固形分(250℃)33.5%w/w;250℃での固形分に基づく銀の純度86%w/w。
【0171】
(B-2d.イソプロパノール中限外ろ過)
分散液をイソプロパノール中で更に限外ろ過した。水中の限外ろ過後に得られた60gのAgナノプレートレット分散液をMillipore Amicon 8400撹拌限外ろ過セルに入れ、イソプロパノールで300gの重量に希釈した。500kDaのカットオフ値のポリエーテルスルホン(PES)膜を用いて分散液を約50mLの容積に限外ろ過した。この手順を合計4回繰り返して72gのAgナノプレートレットのイソプロパノール中分散液を得た。
Ag含有率24.1%w/w;固形分(250℃)25.7%w/w;250℃での固形分に基づく銀の純度93.5%w/w。
UV-Vis-NIRスペクトルを水中、9.8*10-5MのAg濃度で記録した。λmax=700nm;最大消光係数ε=10200L/(cm*mol Ag)、FWHM=340nm。
数平均粒径93±40nm、数平均粒子厚さ16±2.5nm。
【0172】
(B-3 分散液D1の調製)
a)ジエタノールアミンジチオカルバミン酸ナトリウム塩(ビス(2-ヒドロキシエチル)ジチオカルバミン酸ナトリウム)の合成
60gエタノール、10.5gジエタノールアミン及び4.0g水酸化ナトリウム顆粒をアルゴン雰囲気下で100mL丸底フラスコに入れ、水酸化ナトリウムが溶解するまで混合物を撹拌した後+2℃に冷却した。反応混合物の温度を0~+5℃に維持して、7.6gの二硫化炭素を1hかけて撹拌しながら滴下して加えた。その後、混合物(黄色がかった懸濁液)を30min0~+5℃で撹拌した後、23℃まで温め、1h撹拌した。
【0173】
b)Agナノプレートレットの表面改質
アイテムB-2dに記載したように得られた50g(12.85g固体)のAgナノプレートレット分散液をアルゴン雰囲気下で250mLの丸底フラスコに入れた。ステップa)で得られた1.09gの懸濁液(0.27gのジエタノールアミンジチオカルバミン酸ナトリウム塩)を一度に加え、混合物を24hアルゴン下23℃で撹拌した。
【0174】
c)溶媒交換
ステップb)で得られた分散液に、15.0gの3-エトキシプロピオン酸エチル(CAS No.:763-69-9)を加えた。得られた混合物をロータリーエバポレーターにより40mbarの圧力及び40℃の浴温で、更に溶媒が留出しなくなるまで濃縮した。得られた分散液の重量を3-エトキシプロピオン酸エチルの添加により32.1gに調節した(40.9%w/wの計算された合計固形分に対応する)。
【0175】
(B-4 分散液D2の調製)
a)Agナノプレートレットの表面改質
アイテムB-2dで記載したようにして得られた50g(12.85g固体)のAgナノプレートレット分散液をアルゴン雰囲気下23℃で250mLの丸底フラスコに入れた。二硫化炭素の無水エタノール中の0.46gの5%w/w溶液を加え、混合物を5min撹拌し、続いて0.62gのジエタノールアミンの無水エタノール中5%w/w溶液を添加した。混合物を1h23℃で撹拌した後、0.49gのカリウムエトキシドの無水エタノール中5%w/w溶液を加え、撹拌を30min続けた。
【0176】
b)溶媒交換
ステップa)で得られた分散液に、15.0gの3-エトキシプロピオン酸エチル(CAS No.:763-69-9)を加えた。得られた混合物をロータリーエバポレーターにより40mbarの圧力及び40℃の浴温で、更なる溶媒が留出しなくなるまで濃縮した。得られた分散液の重量を3-エトキシプロピオン酸エチルの添加により32.1gに調節した(40.2%w/wの計算された合計固形分に対応する)。
【0177】
(B-5 分散液D3調製)
a)ジエタノールアミンジチオカルバミン酸カリウム塩の合成
16gエタノール、2.7gジエタノールアミン及び9.0gのカリウムエトキシドのエタノール中24%w/w溶液をアルゴン雰囲気下で入れ、カリウムエトキシドが溶解するまで混合物を撹拌した後、+2℃に冷却した。1.95gの二硫化炭素を1hかけて撹拌しながら滴下して加え、反応混合物の温度を0~+5℃に維持した。その後、混合物(黄色がかった懸濁液)を30min0~+5℃で撹拌した後、23℃まで温め、1h撹拌した。
【0178】
b)Agナノプレートレットの表面改質
アイテムB-2dに記載したようにして得られた50g(12.85g固体)のAgナノプレートレット分散液をアルゴン雰囲気下で250mLの丸底フラスコに入れた。ステップa)で得られた0.675gの懸濁液(0.128gのジエタノールアミンジチオカルバミン酸カリウム塩)を一度に加え、混合物を24hアルゴン下23℃で撹拌した。
【0179】
c)溶媒交換
ステップb)で得られた分散液に、15.0gの3-エトキシプロピオン酸エチル(CAS No.:763-69-9)を加えた。得られた混合物をロータリーエバポレーターにより40mbarの圧力及び40℃の浴温で、更なる溶媒が留出しなくなるまで濃縮した。得られた分散液の重量を3-エトキシプロピオン酸エチルの添加により32.1gに調節した(40.4%w/wの計算された合計固形分に対応する)。
【0180】
(B-6 分散液D4の調製)
a)Agナノプレートレットの表面改質
アイテムB-2dに記載したようにして得られた50g(12.85g固体)のAgナノプレートレット分散液をアルゴン雰囲気下23℃で250mLの丸底フラスコに入れた。1.37gの二硫化炭素の無水エタノール中5%w/w溶液を加え、混合物を5min撹拌し、続いて1.86gのジエタノールアミンの無水エタノール中5%w/w溶液を添加した。混合物を1h23℃で撹拌した後、1.48gのカリウムエトキシドの無水エタノール中5%w/w溶液を加え、30min撹拌を続けた。
【0181】
b)溶媒交換
ステップa)で得られた分散液に、15.0gの3-エトキシプロピオン酸エチル(CAS No.:763-69-9)を加えた。得られた混合物をロータリーエバポレーターにより40mbarの圧力及び40℃の浴温で、更なる溶媒が留出しなくなるまで濃縮した。得られた分散液の重量を3-エトキシプロピオン酸エチルの添加により32.1gに調節した(40.6%w/wの計算された合計固形分に対応する)。
【0182】
(B-7 分散液D5の調製)
a)Agナノプレートレットの表面改質
アイテムB-2dに記載したようにして得られた50g(12.85g固体)のAgナノプレートレット分散液をアルゴン雰囲気下23℃で250mLの丸底フラスコに入れた。0.46gの二硫化炭素の無水エタノール中5%w/w溶液を加え、混合物を5min撹拌し、続いて0.62gのジエタノールアミンの無水エタノール中5%w/w溶液を添加した。混合物を1h23℃で撹拌した後、0.99gの水酸化セシウム一水和物の無水エタノール中5%w/w溶液を加え、30min撹拌を続けた。
【0183】
b)溶媒交換
ステップa)で得られた分散液に、15.0gの3-エトキシプロピオン酸エチル(CAS No.:763-69-9)を加えた。得られた混合物をロータリーエバポレーターにより40mbarの圧力及び40℃の浴温で更なる溶媒が留出しなくなるまで濃縮した。得られた分散液の重量を3-エトキシプロピオン酸エチルの添加により32.1gに調節した(40.3%w/wの計算された合計固形分に対応する)。
【0184】
(B-8 分散液D6の調製)
a)Agナノプレートレットの表面改質
アイテムB-2dに記載したようにして得られた50g(12.85g固体)のAgナノプレートレット分散液をアルゴン雰囲気下23℃で250mLの丸底フラスコに入れた。0.91gの二硫化炭素の無水エタノール中5%w/w溶液を加え、混合物を5min撹拌し、続いて1.24gのジエタノールアミンの無水エタノール中5%w/w溶液を添加した。混合物を1h23℃で撹拌した後、1.97gの水酸化セシウム一水和物の無水エタノール中5%w/w溶液を加え、撹拌を30min続けた。
【0185】
b)溶媒交換
ステップa)で得られた分散液に、15.0gの3-エトキシプロピオン酸エチル(CAS No.:763-69-9)を加えた。得られた混合物をロータリーエバポレーターにより40mbarの圧力及び40℃の浴温で更なる溶媒が留出しなくなるまで濃縮した。得られた分散液の重量を3-エトキシプロピオン酸エチルの添加により32.1gに調節した(40.6%w/wの計算された合計固形分に対応する)。
【0186】
(B-9 分散液D7の調製)
a)ジエタノールアミンジチオカルバミン酸セシウム塩の合成
16gのエタノール、2.7gのジエタノールアミン及び4.3gの水酸化セシウム一水和物をアルゴン雰囲気下で100mLの丸底フラスコに入れ、混合物を水酸化セシウムが溶解するまで撹拌した後、+2℃に冷却した。1.95gの二硫化炭素を1hかけて撹拌しながら滴下して加え、反応混合物の温度を0~+5℃に維持した。その後、混合物(黄色がかった懸濁液)を30min0~+5℃で撹拌した後、23℃まで温め、1h撹拌した。
【0187】
b)Agナノプレートレットの表面改質
アイテムB-2dで記載したようにして得られた50g(12.85g固体)のAgナノプレートレット分散液をアルゴン雰囲気下で250mLの丸底フラスコに入れた。ステップa)で得られた0.40gの懸濁液(0.128gのジエタノールアミンジチオカルバミン酸セシウム塩)を一度に加え、混合物を24hアルゴン下23℃で撹拌した。
【0188】
c)溶媒交換
ステップb)で得られた分散液に、15.0gの3-エトキシプロピオン酸エチル(CAS No.:763-69-9)を加えた。得られた混合物をロータリーエバポレーターにより40mbarの圧力及び40℃の浴温で更なる溶媒が留出しなくなるまで濃縮した。得られた分散液の重量を3-エトキシプロピオン酸エチルの添加により32.1gに調節した(40.4%w/wの計算された合計固形分に対応する)。
【0189】
(B-10 分散液D8の調製)
a)Agナノプレートレットの表面改質
アイテムB-2dで記載したようにして得られた50g(12.85g固体)のAgナノプレートレット分散液をアルゴン雰囲気下23℃で250mLの丸底フラスコに入れた。1.37gの二硫化炭素の無水エタノール中5%w/w溶液を加え、混合物を5min撹拌し、続いて1.86gのジエタノールアミンの無水エタノール中5%w/w溶液を添加した。混合物を1h23℃で撹拌した後、2.96gの水酸化セシウム一水和物の無水エタノール中5%w/w溶液を加え、撹拌を30min続けた。
【0190】
b)溶媒交換
ステップa)で得られた分散液に、15.0gの3-エトキシプロピオン酸エチル(CAS No.:763-69-9)を加えた。得られた混合物をロータリーエバポレーターにより40mbarの圧力及び40℃の浴温で更なる溶媒が留出しなくなるまで濃縮した。得られた分散液の重量を3-エトキシプロピオン酸エチルの添加により32.1gに調節した(40.9%w/wの計算された合計固形分に対応する)。
【0191】
(B-11 分散液D9の調製)
a)Agナノプレートレットの表面改質
アイテムB-2dで記載したようにして得られた50g(12.85g固体)のAgナノプレートレット分散液をアルゴン雰囲気下23℃で250mLの丸底フラスコに入れた。0.91gの二硫化炭素の無水エタノール中5%w/w溶液を加え、混合物を5min撹拌し、続いて1.24gのジエタノールアミンの無水エタノール中5%w/w溶液を添加した。混合物を1h23℃で撹拌した後、0.986gのカリウムエトキシドの無水エタノール中5%w/w溶液を加え、撹拌を30min続けた。
【0192】
b)溶媒交換
ステップa)で得られた分散液に、15.0gの7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-イルメチル7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボキシレート(CAS番号:2386-87-0)を加えた。得られた混合物をロータリーエバポレーターにより40mbarの圧力及び40℃の浴温で更なる溶媒が留出しなくなるまで濃縮した。得られた分散液の重量を7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-イルメチル7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボキシレートの添加により32.1gに調節した(40.4%w/wの計算された合計固形分に対応する)。
【0193】
(B-12 分散液D10の調製)
a)Agナノプレートレットの表面改質
アイテムB-2dで記載したようにして得られた50g(12.85g固体)のAgナノプレートレット分散液をアルゴン雰囲気下23℃で250mLの丸底フラスコに入れた。0.91gの二硫化炭素の無水エタノール中5%w/w溶液を加え、混合物を5min撹拌し、続いて1.24gのジエタノールアミンの無水エタノール中5%w/w溶液を添加した。混合物を1h23℃で撹拌した後、1.97gの水酸化セシウム一水和物の無水エタノール中5%w/w溶液を加え、撹拌を30min続けた。
【0194】
b)溶媒交換
ステップa)で得られた分散液に、15.0gの7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-イルメチル7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボキシレート(CAS番号:2386-87-0)を加えた。得られた混合物をロータリーエバポレーターにより40mbarの圧力及び40℃の浴温で更なる溶媒が留出しなくなるまで濃縮した。得られた分散液の重量を7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-イルメチル7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボキシレートの添加により32.1gに調節した(40.6%w/wの計算された合計固形分に対応する)。
【0195】
(C.実施例(E1~E48)、比較例(C1~C21)及びその印刷されたセキュリティー機能の調製)
(本発明によるインク(E1~E48)及び比較の目的で調製したインク(C1~C21)の調製に使用した成分の記載)
【表1】
【0196】
(C1.本発明のセキュリティーインク(E1~E7)で得られたセキュリティー機能が示す光学的性質に及ぼす表面安定剤のカチオン(Na
+、K
+及びCs
+)の影響の研究)
(C1a.インクE1~E7の調製)
下記表1aに掲げる成分を独立して混合し、室温でDispermat CV-3を用いて10分2000rpmで分散させて50gのインクE1~E7を得た。
【表2】
【0197】
(C1b.セキュリティー機能の調製)
160糸/cmスクリーン(405メッシュ)を用いてUV-Vis放射線硬化性のスクリーン印刷インクE1-E7を透明なポリマー基材片(PET Hostaphan(登録商標)RN、厚さ50μm、Putz GmbH + Co. Folien KGにより提供)に独立して適用した。印刷されたパターンは5cm×5cmの大きさであった。印刷ステップの10秒後、印刷された基材片を100m/minの速度でIST Metz GmbHのドライヤー下UV-Vis光に二回露出する(2ランプlamps:鉄ドープ水銀ランプ200W/cm2+水銀ランプ200W/cm2)ことにより室温で独立して硬化してセキュリティー機能を作り出した。
【0198】
(C1c.セキュリティー機能の結果(光学的性質))
アイテムC1bで得られた各セキュリティー機能の光学的性質を以下の記載する3つの試験を用いて反射光、透過光、及び目視で独立して評価した。結果を表1cに要約する。
【0199】
反射光測定はゴニオメーター(Goniospektrometer Codec WI-10 5&5 by Phyma GmbH Austria)を用いて行った。印刷されたセキュリティー機能のL
*a
*b
*値を、透明なポリマー基材の印刷された面上で、垂線に対して0°、照明角22.5°で決定した。C
*値(彩度、色強度又は彩度(色飽和度)の測定値に対応する)はCIELAB(1976)色空間に従ってa
*及びb
*値から計算した:
【数3】
【0200】
C*値(反射光22.5/0°)を下記表1cに示す。
【0201】
透過光測定は、Datacolor 650分光光度計を用いて行った(パラメーター:積分球、拡散照明(パルスキセノンD65)及び8°視野、アナライザーSP2000、デュアル256ダイオードアレイ、波長範囲360~700nm、透過光サンプリング開口サイズ22mm)。C*値(透過光8°)を下記表1cに示す。
【0202】
目視による評価は、各セキュリティー機能を肉眼で透明なポリマー基材の印刷された面上の反射光で拡散源(例えば直射日光でなく窓を通して来る光、窓と反対の壁を向いた観察者)により観察することであった。以下の色が観察された:
暗褐色~褐色、艶のない外観で金属効果なし;
金色(即ちメタリックイエロー色)、光沢のある外観及び金属効果。金属効果は反射光22.5/0°で約20より大きい彩度値C*で現れる。
【0203】
目視による評価ではまた、各セキュリティー機能を肉眼により透過光でも観察した。以下の色が観察された:
鈍い青:青色は弱い(しかし目に見える);
青(透過光8°で約20以上の彩度値C*)~濃い青(透過光8°で30以上の彩度値C*):青色は強烈~極めて強烈である。
【0204】
表1cに示されているように、本発明のインク(実施例E1~E7)で得られたセキュリティー機能は金色を、透過光で青~濃い青色を示す。
【表3】
【0205】
表1cにより裏付けられているように、ジエタノールアミンジチオカルバミン酸ナトリウム塩、ジエタノールアミンジチオカルバミン酸カリウム塩、又はジエタノールアミンジチオカルバミン酸セシウム塩で安定化されたAgナノプレートレットを含有する本発明に従うセキュリティーインクE1~E7は反射光で金色、及び透過光で青色、並びに反射光及び透過光の両方で大きい彩度値C*を示すセキュリティー機能を提供する。
【0206】
(C2.2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテルのwt-%と脂環式エポキシドのwt-%との比の影響の研究(比較のインクC1~C6及び本発明のインクE1、E8~E23))
2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテルのwt-%と脂環式エポキシドのwt-%との比の、セキュリティー機能が示す光学的性質に及ぼす影響を評価するために、比較のインクC1~C6及び本発明のインクE1、E8~E23を調製した。
【0207】
(C2a.インクC1~C6及びE1、E8~E23の調製)
表2a-1、2a-2及び2a-3に掲げた成分を、室温でDispermat CV-3を用いて10分2000rpmで混合し分散させて収率yield 50gの各々のインクC1~C6及びE1、E8~E23を得た。
【表4】
【表5】
【表6】
【0208】
(C2b.セキュリティー機能の調製)
UV-Vis放射線硬化性のスクリーン印刷インクC1~C6及びE1、E8~E23を独立して、透明なポリマー基材片(PET Hostaphan(登録商標)RN、厚さ50μm、Putz GmbH + Co. Folien KGにより提供)に160糸/cmスクリーン(405メッシュ)を用いて適用した。印刷されたパターンは5cm×5cmの大きさであった。印刷ステップの10秒後、印刷された基材片を独立して室温でIST Metz GmbHのドライヤー下二回100m/minの速度でUV-Vis光に露出することにより硬化させて(2ランプ:鉄ドープ水銀ランプ200W/cm2+水銀ランプ200W/cm2)セキュリティー機能を作り出した。
【0209】
(C2c.セキュリティー機能の結果(光学的性質))
アイテムC2bで得られたセキュリティー機能の光学的性質を、アイテムC1cに記載した試験を用いて反射光、透過光、及び目視で独立して評価した。
【0210】
比較のインクC1~C6及び本発明のインクE1、E8~E23を用いて調製したセキュリティー機能が示した反射光及び透過光での色並びにC*値(反射光22.5/0°及び透過光8°)を表2c(下記)に示す。
【0211】
表2cに示されているように、0.5より小さい2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテルのwt-%と脂環式エポキシドのwt-%との比を有する本発明のインクE1、E8~E23から得られたセキュリティー機能は安定剤に使用されたカチオンとは無関係に反射光で金色及び透過光で青~濃い青色を示す。比較して、2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテルのwt-%と脂環式エポキシドのwt-%との比が0.5以上である比較のインクC1~C6から得られたセキュリティー機能は透過光で青~深い色を示すが、反射光で低彩度値の暗褐色~褐色を示す。反射光での低彩度値の暗褐色~褐色は一般人にとって目立たず、従って、有価文書を保証するための二色性のセキュリティー機能に適していない。
【表7】
【0212】
(C3.溶剤(溶剤含有対溶剤を含まないインク)及び/又はUV-Vis放射線硬化性のインク(UV-Vis放射線ハイブリッド硬化性のインク対UV-Vis放射線カチオン硬化性のインク)中に存在するラジカル硬化性のモノマー及びオリゴマーの重量パーセントがセキュリティー機能により示される得られた光学的性質に及ぼす効果の研究(実施例E24~E27))
溶剤を含有するUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性のインクを用いて得られた光学効果が溶剤を含有するUV-Vis放射線カチオン硬化性のインクで再生することができるかどうかを評価するために、インクE24を調製した。
【0213】
溶剤を含有するUV-Vis放射線カチオン又はハイブリッド硬化性のインクを用いることにより得られた光学効果が溶剤を含まないUV-Vis放射線カチオン又はハイブリッド硬化性のインクで再生することができるかどうかを評価するために、インクE25、E26及びE27を調製した。
【0214】
(C3a.インクE24~E27の調製)
表3aに掲げた成分を、室温でDispermat CV-3を用いて10分2000rpmで混合し分散させて50gの各インクE24~E27を得た。
【表8】
【0215】
(C3b.セキュリティー機能の調製)
160糸/cmスクリーン(405メッシュ)を用いてUV-Vis放射線硬化性のスクリーン印刷インクE24~E27を独立して透明なポリマー基材片(PET Hostaphan(登録商標)RN、厚さ50μm、Putz GmbH + Co. Folien KGにより提供)に適用した。印刷されたパターンは5cm×5cmの大きさであった。印刷ステップの10秒後、印刷された基材片を独立して室温で二回100m/minの速度でIST Metz GmbHのドライヤー下でUV-Vis光に露出することにより硬化して(2ランプ:鉄ドープ水銀ランプ200W/cm2+水銀ランプ200W/cm2)、セキュリティー機能を作り出した。
【0216】
(C3c.セキュリティー機能の結果(光学的性質))
アイテムC3bで得られたセキュリティー機能の光学的性質を、アイテムC1cに記載した試験を用いて反射光、透過光、及び目視で独立に評価した。
【0217】
本発明のインクE24~E27を用いて調製したセキュリティー機能が示した反射光及び透過光での色並びにC
*値(反射光22.5/0°及び透過光8°)を表3c(下記)に示す。
【表9】
【0218】
表3cに示されているように、類似の光学的性質のセキュリティー機能が溶剤を含有するカチオン硬化性のインク(E24)、溶剤を含まないハイブリッド硬化性のインク(E27)、又は溶剤を含まないカチオン硬化性のインク(E25~E26)を用いることによりアクセスすることができる。
【0219】
(C4.セキュリティー機能により示される光学的性質に及ぼす界面活性剤の影響の研究(比較のインクC7~C15及び本発明のインクE28))
セキュリティー機能により示される光学的性質に及ぼす界面活性剤の影響を評価するために、比較のインクC7~C15及び本発明のインクE28を調製した。
【0220】
(C4a.インクC7~C15及びE28の調製)
表4aに掲げた成分を、室温でDispermat CV-3を用いて10分2000rpmで混合し分散させて50gの各インクC7~C15及びE28を得た。
【表10】
【0221】
(C4b.セキュリティー機能の調製)
160糸/cmスクリーン(405メッシュ)を用いてUV-Vis放射線硬化性のスクリーン印刷インクC7~C15及びE28を透明なポリマー基材片(PET Hostaphan(登録商標)RN、厚さ50μm、Putz GmbH + Co. Folien KGにより提供)に独立して適用した。印刷されたパターンは5cm×5cmの大きさであった。印刷ステップの10秒後、印刷された基材片を、二回100m/minの速度でIST Metz GmbHのドライヤー下でUV-Vis光に露出することにより(2ランプ:鉄ドープ水銀ランプ200W/cm2+水銀ランプ200W/cm2)独立して硬化してセキュリティー機能を作り出した。
【0222】
(C4c.セキュリティー機能の結果(光学的性質))
アイテムC4bでのセキュリティー機能の光学的性質をアイテムC1cで記載した試験を用いて反射光で、透過光で、及び目視で独立して評価した。
【0223】
インクC7~C15及びE28を用いて調製したセキュリティー機能により示された反射光及び透過光での色並びにC
*値(反射光22.5/0°及び透過光8°)を下記表4cに示す。
【表11】
【0224】
表4cに示されているように、ヒドロキシ基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤(Fluorolink E10H)を含む本発明のインク(E28)から得られたセキュリティー機能は反射光で金色及び透過光で濃い青色を示す。比較して、ヒドロキシ基をペルフルオロポリエーテル界面活性剤(Fluorolink MD700/C7、Fluorolink F10/C8又はFluorolink S10/C9)、又はペルフルオロポリエーテル鎖及びヒドロキシ基の両方を欠く界面活性剤、例えばBYK 330 (C10)、BYK 371 (C11)、TEGO RAD 2300 (C12)、TEGO RAD 2700 (C13)、Dynasylan F8815 (C14)及びDynasylan F8261 (C15)を含むインクから得られたセキュリティー機能は透過光で鈍い青~濃い青色を示すが、反射光で低彩度値の暗褐色~褐色を示す。反射光での低彩度値の暗褐色~褐色の色は目立たないので、有価文書を保証するための二色性のセキュリティー機能に適さない。
【0225】
(C5.ヒドロキシ基を有するペルフルオロポリエーテル界面活性剤の濃度がセキュリティー機能により示される光学的性質に及ぼす影響の研究(比較のインクC16及び本発明のインクE29~E33))
1個又は複数のヒドロキシ基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤の濃度がセキュリティー機能により示される光学的性質に及ぼす影響を評価するために、インクC16及び本発明のE29~E33を調製した。E32はE3と同じであり、比較の目的で加えた。
【0226】
(C5a.インクC16及びE29~E33の調製)
表5aに掲げた成分を室温でDispermat CV-3を用いて10分2000rpmで混合し分散させて50gの各々のインクC16及びE29~E33を得た。
【表12】
【0227】
(C5b.セキュリティー機能の調製)
160糸/cmスクリーン(405メッシュ)を用いてUV-Vis放射線硬化性のスクリーン印刷インクC16及びE29~E33を独立して透明なポリマー基材片(PET Hostaphan(登録商標)RN、厚さ50μm、Putz GmbH + Co. Folien KGにより提供)に適用した。印刷されたパターンは5cm×5cmの大きさであった。印刷ステップの10秒後、印刷された基材片を独立して二回100m/minの速度でIST Metz GmbHのドライヤー下でUV-Vis光に露出することにより硬化して(2ランプ:鉄ドープ水銀ランプ200W/cm2+水銀ランプ200W/cm2)セキュリティー機能を作製した。
【0228】
(C5c.セキュリティー機能の結果(光学的性質))
アイテムC5bで得られたセキュリティー機能の光学的性質をアイテムC1cに記載した試験を用いて反射光、透過光、及び目視で独立して評価した。
【0229】
インクC16及びE29~E33を用いて調製したセキュリティー機能が示す反射光及び透過光での色並びにC
*値(反射光22.5/0°及び透過光8°)を下記表5cに示す。
【表13】
【0230】
表5cに示されているように、ペルフルオロポリエーテル界面活性剤Fluorolink E10Hの約0.05wt-%~約5wt-%の量の使用は、反射光で高い彩度値のメタリックイエロー色を、透過光で濃い青色を示すセキュリティー機能の作製を確実にする(インクE29~E33)。比較して、Fluorolink E10Hを含有しないインク(比較のインクC16)で得られたセキュリティー機能は反射光で低彩度値の暗褐色~褐色の色を示す。かかる色は一般人にとって目立たず、有価文書を保証するためのセキュリティー機能として使用することができない。
【0231】
(C6.ポリ塩化ビニルコポリマーの種類がセキュリティー機能により示される光学的性質に及ぼす影響の研究(比較のインクC17及び本発明のインクE34~E35))
ポリ塩化ビニルコポリマーの種類がセキュリティー機能により示される光学的性質に及ぼす影響を評価するために、比較のインクC17及び本発明のインクE34~E35を以下に記載するようにして調製した。E34はE19と同じであり、比較の目的で使用した。
【0232】
(C6a.インクC17及びE34~E35の調製)
表6aに掲げた成分を、室温でDispermat CV-3を用いて10分2000rpmで混合し分散させて50g各々のインクC17及びE34~E35を得た。
【表14】
【0233】
(C6b.セキュリティー機能の調製)
160糸/cmスクリーン(405メッシュ)を用いてUV-Vis放射線硬化性のスクリーン印刷インクC17及びE34~E35を独立して透明なポリマー基材(PET Hostaphan(登録商標)RN、厚さ50μm、Putz GmbH + Co. Folien KGにより提供)に適用した。印刷されたパターンは5cm×5cmの大きさであった。印刷ステップの10秒後、印刷された基材片を独立して、二回100m/minの速度でUV-Vis光にIST Metz GmbHのドライヤー下で露出することにより(2ランプ:鉄ドープ水銀ランプ200W/cm2+水銀ランプ200W/cm2)硬化してセキュリティー機能を作り出した。
【0234】
(C6c.セキュリティー機能の結果(光学的性質))
アイテムC6bで得られたセキュリティー機能の光学的性質をアイテムC1cに記載した試験を用いて反射光、透過光、及び目視で独立して評価した。
【0235】
インクC17及びE34~E35を用いて調製したセキュリティー機能が示した反射光及び透過光での色並びにC
*値(反射光22.5/0°及び透過光8°)を下記表6cに示す。
【表15】
【0236】
表6cに示したセキュリティー機能の光学的性質により裏付けられるように、ポリ塩化ビニルコポリマーは反射光でメタリックイエロー色)を示すセキュリティー機能を提供するために少なくとも約69wt-%、好ましくは少なくとも約75wt-%の塩化ビニルを含有しなければならない(本発明のインクE34~E35)。より低いwt-%の塩化ビニルのポリ塩化ビニルコポリマーを含有する比較のインクC17を用いて得られたセキュリティー機能は透過光で青色を示すが、反射光で褐色を示し、これは一般人にとって目立たず、有価文書を保証するためのセキュリティー機能として使用することができない。
【0237】
(C7.他のカチオン硬化性のモノマー(比較のインクC18~C21及び本発明のインクE36~E48)の影響の研究)
セキュリティー機能により示される光学的性質に対するカチオン硬化性のモノマーの影響を評価するために、インクC18~C21及びE36~E48を以下に記載するようにして調製した。
【0238】
(C7a.インクC18~C21及びE36~E48の調製)
表7a-1及び7a-2に掲げる成分を室温でDispermat CV-3を用いて10分2000rpmで混合し分散させて50gの各々のインクC18~C21及びE36~E48を得た。
【0239】
(C7b.セキュリティー機能の調製)
160糸/cmスクリーン(405メッシュ)を用いてUV-Vis放射線硬化性のスクリーン印刷インクC18~C21及びE36~E48を透明なポリマー基材片(PET Hostaphan(登録商標)RN、厚さ50μm、Putz GmbH + Co. Folien KGにより提供)に独立して適用した。印刷されたパターンは5cm×5cmの大きさであった。印刷ステップの10秒後、印刷された基材片をIST Metz GmbHのドライヤー下で二回100m/minの速度でUV-Vis光に露出することにより(2ランプ:鉄ドープ水銀ランプ200W/cm2+水銀ランプ200W/cm2)独立して硬化してセキュリティー機能を作製した。
【0240】
(C7c.セキュリティー機能の結果(光学的性質))
アイテムC7bで得られたセキュリティー機能の光学的性質をアイテムC1cに記載した試験を用いて反射光、透過光、及び目視で独立して評価した。
【0241】
インクC18~C21及びE36~E48を用いて調製したセキュリティー機能が示した反射光及び透過光での色並びにC*値(反射光22.5/0°及び透過光8°)を表7cに示す。
【0242】
インクE8、E14、E15で得られたセキュリティー機能が示した光学的性質を、インクE36~E38で得られたセキュリティー機能が示した光学的性質と比較すると、2個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテルの構造がセキュリティー機能の光学的性質になんら影響しないことを示している。
【0243】
表7cにより示されるように、HBVEのような6.1wt-%以上の量で1個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテルを含有するインク(比較のインクC18及びC19)は透過光で濃い青色であるが、反射光で褐色のセキュリティー機能を提供し、これは有価文書を保証するための二色性のセキュリティー機能として許容できない。しかし、特許請求の範囲に記載のセキュリティーインク中の1個のビニルオキシ残基を有するビニルエーテルの少ない量はインクE39で行った実験で示されるように前記インクで得られるセキュリティー機能の光学的性質に影響を及ぼさない。
【0244】
例えばインクC20、C21、E40~E44で行った実験により示されるように、UV-Vis放射線硬化性のインク中のCuralite(商標) OX TMPOのような1個の官能性オキセタニル残基を有するオキセタンの約3.5wt-%より少ない量の存在は前記インクで得られるセキュリティー機能の光学的性質に影響を及ぼさない。UV-Vis放射線硬化性のインクにおけるCuralite(商標) OXPLUSのような2個のオキセタニル残基を有するオキセタンの使用は例えば本発明のE45~E48で行った実験により示されるように前記インクで得られるセキュリティー機能の光学的性質に有害な効果をもたない。
【表16】
【表17】
【表18】
【国際調査報告】