(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】ボアホール内における定着手段の化学的留付のためのデュアルキュア系
(51)【国際特許分類】
C08G 61/08 20060101AFI20231106BHJP
C08F 283/00 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
C08G61/08
C08F283/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527653
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2021079999
(87)【国際公開番号】W WO2022101025
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Hilti Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100,9494 Schaan,Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】アーミン プファイル
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン スルゴフチュ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ ワップル
【テーマコード(参考)】
4J026
4J032
【Fターム(参考)】
4J026AB46
4J026BA27
4J026BA28
4J026DB05
4J026DB07
4J026DB13
4J026GA06
4J026GA07
4J032CA34
4J032CA43
4J032CA45
4J032CB05
4J032CC03
4J032CD02
(57)【要約】
本発明は、デュアルキュア硬化によってボアホール内に定着手段を化学的に留付けるための二成分系に関する。使用されるデュアルキュア硬化は、ラジカル重合と開環オレフィンメタセシス重合(ROMP)との組合せである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーを生成するための二成分系であって、
-歪みシクロオレフィン(strained cycloolefin)を構造要素として含有するモノマー(ROMPモノマー)、及び
-ラジカル開始剤
を含む、成分Aと、
-メタクリレート、
-開環メタセシス重合のための触媒(ROMP開始剤)、及び
-ラジカル促進剤
を含む、成分Bと、
を含む、二成分系。
【請求項2】
前記歪みシクロオレフィンが、1つ又は2つの二重結合を有する単環式又は二環式C
3~C
16シクロオレフィンである、請求項1に記載の二成分系。
【請求項3】
前記歪みシクロオレフィンが、ノルボルネン、ノルボルナジエン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ-3,8-ジエン(ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[6.2.1.1.0]-ドデセン、及び前記歪みシクロオレフィン構造要素中のC原子がOで置き換えられたそれらのオキサ誘導体からなる群から選択される、請求項2に記載の二成分系。
【請求項4】
前記歪みシクロオレフィンが、ノルボルネンである、請求項3に記載の二成分系。
【請求項5】
前記ROMP開始剤が、Grubbs触媒である、請求項1~4のいずれか一項に記載の二成分系。
【請求項6】
前記ROMP開始剤が、
【化1】
及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択される、請求項5に記載の二成分系。
【請求項7】
前記ラジカル開始剤が、過酸化物、好ましくは過酸化ベンゾイルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の二成分系。
【請求項8】
前記成分B中のメタクリレートが、メチルメタクリレート、HEMA、及びBDDMAから選択され、かつ好ましくはBDDMAである、請求項1~7のいずれか一項に記載の二成分系。
【請求項9】
前記ラジカル促進剤が、芳香族アミン、好ましくはN,N-ジ-イソ-プロパノール-p-トルイジン(DiPpT)、N,N-ジメチル-p-トルイジン(DMpT)、及びN,N-ジエチル-p-トルイジン(DEpT)からなる群から選択される芳香族アミンである、請求項1~8のいずれか一項に記載の二成分系。
【請求項10】
成分Bが、抑制剤、好ましくはTempolを追加的に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の二成分系。
【請求項11】
成分A又は成分Bの少なくとも一方が、少なくとも1種の充填剤を含有し、前記充填剤が、好ましくは、石英、ガラス、コランダム、磁器、陶器、軽質スパー(light spar)、重晶石、石膏、タルク、チョーク、又はこれらの混合物からなる群から選択され、かつ前記充填剤が、砂、粉末、又は成形体の形態であり得る、請求項1~10のいずれか一項に記載の二成分系。
【請求項12】
充填剤が、無極性様式で後処理されたフュームドシリカである、請求項11に記載の二成分系。
【請求項13】
ボアホール中に定着手段を留付けるための、請求項1~12のいずれか一項に記載の二成分系の使用。
【請求項14】
前記定着手段が、鋼又は鉄で作られ、前記ボアホールが、鉱物又は金属基材、好ましくはコンクリート、気泡コンクリート、レンガ、石灰石、砂岩、天然石、ガラス、及び鋼からなる群から選択される基材内のボアホールであり、かつ前記定着手段が好ましくは鋼で作られ、前記ボアホールがコンクリートのボアホールである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の二成分組成物を、留付に使用することを特徴とする、ボアホール内に定着手段を化学的に留付ける方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルキュア硬化によってボアホール内に定着手段(アンカーロッドなどの定着部材)を化学的に留付けるための二成分系に関する。使用されるデュアルキュア硬化は、ラジカル重合と開環メタセシス重合(ring-opening metathesis polymerization:ROMP)との組合せである。
【背景技術】
【0002】
ラジカル硬化性ポリマーに基づく化学的留付剤の使用は、長く知られている。留付技術の分野では、化学的留付技術の有機バインダーとして、例えば固着塊(「接着系アンカー」)の構成要素としてのポリマーの使用が受け入れられてきた。この種の固着塊は、多成分系、通常は二成分系(「2C系」)として包装された複合塊であり、一方の成分はラジカル硬化性モノマーを含有し、他方の成分は開始剤(ラジカル形成用)を含有する。添加剤、充填剤、促進剤、抑制剤、溶媒、および反応性希釈剤などの他の一般的な構成要素は、一方および/または他方の成分に含まれ得る。2つの成分を混合することにより、ラジカル形成によって硬化反応、すなわち重合が開始され、混合物が硬化して、デュロマーが得られる。
【0003】
エポキシ-アミン系又はメタクリレートベース系(methacrylate-based system)のいずれかが、通常、接着系アンカーとして使用される。前者は低い重合収縮率を有するが、例えば建設現場で見られるような低い周囲温度などでは非常にゆっくりと硬化し、しばしば不充分な硬化度で硬化する。加えて、低温での粘度が高く、建設現場での使用が困難である。更に、これらは腐食性ポリアミン硬化剤を含有し、かつエポキシ樹脂は増感し得、水に有害であり得るので、ユーザの安全性及び環境に関して重要である。これが、メタクリレートベース系が建設現場で通常使用される理由である。過酸化ジアセチル、ヒドロペルオキシド、又はペルオキシエステルなどの過酸化物は、典型的には、メタクリレートベース接着系アンカーのラジカル硬化のための開始剤として使用される。
【0004】
メタクリレートベース接着系アンカーの弱点は重合中の著しい収縮であり、これは、せん断応力及び接着系アンカーの脆弱化をもたらし得る。モノマーと比較してポリマー中の原子がより高密度に充填されることに起因する重合収縮は、収縮の結果としてポリマーがボアホール壁から分離するため、及び/又は収縮にもかかわらずポリマーがボアホール壁及び留付けられるアンカーロッドの両方に付着したままであるためのいずれかのために、接着系アンカーの結合強度を弱め、したがって収縮による応力を発生させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低収縮を有する系を提供する、ボアホール内の定着手段(アンカーロッドなどの定着部材)の化学的留付に使用されるメタクリレートベース二成分系である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は独立請求項の主題によって達成される。
【0007】
本発明は、歪みシクロオレフィン(strained cycloolefin)基、好ましくはノルボルネン基を有する化合物の開環メタセシス重合(ROMP)と、(メタ)アクリレート基(好ましくは、メタクリレート基)、例えばメチルメタクリレート又はブタン-1,4-ジオール-ジメチルアクリレート(butane-1,4-diol-dimethylacrylate:BDDMA)を有する化合物のラジカル重合と、を組み合わせた接着系アンカー系に関する。
【0008】
この新規の手法は、ラジカル開始(メタ)アクリレートベース系の低い硬化温度であっても、迅速な硬化及び優れた反応性の利点と、ROMPによって重合された系の低収縮の利点とが合わさっている。これは、ラジカル重合とROMPとの組合せが、唯一のモノマーとしての(メタ)アクリレート含有モノマー、例えばメチルメタクリレートのラジカル重合と比較して低減された重合収縮による、共有結合架橋熱硬化性材料をもたらすからである。
【0009】
したがって、本発明にかかる系はデュアルキュア系である。本発明にかかるデュアルキュア系は、系の成分:ラジカル開始重合(RadP)及び開環メタセシス重合(ROMP)を混合することによって引き起こされる、2つの異なる重合反応の開始に基づく。したがって、本発明にかかるデュアルキュア系は、以下ではRadP-ROMPデュアルキュア系とも称される。
【0010】
ROMP重合は、ROMPモノマー、すなわち歪みシクロオレフィンを構造要素として含むモノマーと、ROMP開始剤とを必要とする。当該RadP重合は、ラジカル重合ができる(メタ)アクリレート含有モノマー(好ましくは、メタクリレート含有モノマー)と、典型的にはラジカル促進剤と組み合わされるラジカル開始剤とを必要とする。
【0011】
したがって、本発明にかかるRadP-ROMPデュアルキュア系は、2つの異なるモノマーの使用を必要とする:
(a)構造要素として歪みシクロオレフィン、例えばノルボルネンを含むモノマー;及び
(b)(メタ)アクリレート含有モノマー(好ましくは、メタクリレート含有モノマー)、例えばメチルメタクリレート。
【0012】
原則として、モノマー(a)及びモノマー(b)は、互いに分離した分子である。しかしながら、一実施形態では、歪みシクロオレフィン基及び(メタ)アクリレート基は、単一分子内の構造要素として存在し得る。
【0013】
本発明にかかるRadP-ROMPデュアルキュア系はまた、2つの異なる開始剤の使用を必要とする:
(a)Grubbs触媒などのROMP開始剤;及び
(b)典型的には促進剤と組み合わせたラジカル開始剤、例えば、N,N-ジメチル-パラ-トルイジン(DMpT)と組み合わせた過酸化ジベンゾイル(BPO)。
【0014】
RadP-ROMPデュアルキュア系では、これらの2つの開始剤は、系成分が混合された場合にのみ重合が開始するように、適合するモノマーとは別個に存在すべきである。更に、ラジカル開始剤は、系成分が混合された場合にのみ重合が開始するように、ラジカル促進剤とは別に存在すべきである。
【0015】
本発明の第1の目的は、二成分系であって、以下:
歪みシクロオレフィンを構造要素として含有するモノマー(ROMPモノマー)、及びラジカル開始剤(例えば、BPO)とを含む、成分Aと、
(メタ)アクリレート、好ましくはメタクリレート(例えば、メチルメタクリレート又はBDDMA)、開環メタセシス重合のための開始剤(ROMP開始剤)、及びラジカル促進剤(例えば、DMpT)を含む、成分Bと、
を含む、二成分系である。
【0016】
任意選択的には、成分A及び成分Bを有する本発明にかかる二成分系は、更なる成分もまた含む多成分系の一部であり得る。この場合、成分A及び成分Bの構成要素はまた、1つ以上の更なる成分に分散させることもできる。
【0017】
本発明にかかる二成分系は、二成分A及び二成分Bが混合される場合、ポリマーを形成する。これは、好ましくはボアホール内の定着手段(アンカーロッドなどの定着部材)の化学的留付に使用され、したがって好ましい実施形態では接着系アンカーである。
【0018】
本発明の第2の目的は、本発明にかかる二成分系を、留付に使用することを特徴とする、ボアホール内に定着手段を化学的に留付ける方法である。
【0019】
本発明の第3の目的は、ボアホール内の定着手段の化学的留付のための、すなわち接着系アンカー又は接着系アンカーの一部としての、本発明にかかる二成分系の使用である。
【0020】
本発明をよりよく理解するために、本明細書で使用される用語の以下の説明が有用であると考えられる。
【0021】
使用される略語は以下を意味する(更なる略語を本文で直接説明し得る):
BDDMA:ブタン-1,4-ジオールジメチルアクリレート;BHT:2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(ブチル化ヒドロキシトルエン);BPO:過酸化ジベンゾイル;Cp:シクロペンタジエン;Cy:シクロヘキサン又はシクロヘキシル;DCM:ジクロロメタン;DiPpT:N,N-ジイソプロピル-パラ-トルイジン;DMpT:N,N-ジメチル-パラ-トルイジン;eq:当量;EtOAc:酢酸エチル;HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート;M:I:モノマー-開始剤比;MES:メシチル、すなわち2,4,6-トリメチルフェニル;MMA:メチルメタクリレート;SIMes:1,3-ビス(2,4,6トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン;Tempol:4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシル;THF:テトラヒドロフラン;TLC:薄層クロマトグラフィ;体積%:体積パーセント;v/v:体積分率;wt.%:重量パーセント;w/w:重量比。
【0022】
本発明においては、
- 「開環メタセシス重合」又は「ROMP」又は「ROMP重合」又は「開環オレフィンメタセシス重合」は、歪みシクロオレフィン構造から出発するオレフィンメタセシスに基づく重合反応を意味する。ROMP開始剤、典型的には金属カルベン錯体が、重合の開始剤として使用される。歪みシクロオレフィンは環内に少なくとも1つの二重結合を含有する。環内の二重結合はメタラシクロブタン中間体の助けを借りて再分配され、次いで、開環及び重合が起こる。重合の背後にある駆動力は、環歪みの溶解である。以下の図を参照されたい:
【0023】
【化1】
- 「RadP」又は「RadP重合」とは、ラジカル開始重合を意味する。ラジカル開始重合は重合を開始するためにラジカルの形成を必要とする。典型的なRadP重合は、ラジカル促進剤としてのDMpTなどの三級アミンの存在下において、ラジカル開始剤としてのBPOからラジカル形成によって開始される重合である。
- 「開始剤」とは、重合を開始する試薬を意味する。
- 「ラジカル開始剤」又は「RadP開始剤」は、(通常、ラジカル促進剤と組み合わせて)、ラジカル重合を開始するラジカルを形成する試薬を意味する。
- 「ROMP開始剤」とは、開環メタセシス重合(ROMP)を開始及び触媒する試薬、すなわち、開環オレフィンメタセシス重合のための触媒を意味する。「ROMP触媒」という用語は、本明細書では、同義語として使用される。
- 「促進剤」又は「ラジカル促進剤」とは、ラジカル開始剤と反応することで、低温であってもラジカル開始剤によって大量のフリーラジカルが産生される試薬、又はラジカル開始剤の分解反応を触媒する試薬を意味する。
- 「抑制剤」は、モノマー含有組成物の合成又は貯蔵中に不要なラジカル重合を抑制する物質(これらの物質はまた、当技術分野では「安定剤」とも呼ばれる)、又は通常はラジカル促進剤と組み合わせて、ラジカル開始剤の添加後のラジカル重合を遅らせる物質(これらの物質は、当技術分野では「抑制剤」とも呼ばれる-この用語の関連する意味は文脈から明らかである)を意味する。
- 「反応性希釈剤」とは、モノマーを希釈し、それによって、その適用のために必要な粘度を付与し、反応し得る官能基を含有し、重合(硬化)中に大部分が硬化組成物(例えば、モルタル)の構成要素となる、液体又は低粘度のモノマー及びオリゴマーを意味する。反応性希釈剤はまた、共重合性モノマーとも称される。
- 「二成分系」又は「2C系」とは、含有されるモノマーは2つの成分が混合された後にのみ硬化するように、2つの別々に貯蔵された成分、成分A及び成分Bを含むポリマーを生成するための系を意味する。
- 「多成分系」とは、成分に含有されるモノマーが全ての成分が混合された後にのみ硬化するように、互いに別々に貯蔵された複数の成分を含むポリマーを生成するための系を意味する。
- 「メタクリレート」とは、メタクリル酸エステル基(例えば、メチルメタクリレート、すなわちメタクリル酸メチルエステル)を含有する有機化合物を意味する。
- 「(メタ)アクリル.../...(メタ)アクリル...」とは、「メタクリル.../...メタクリル...」及び「アクリル.../...アクリル...」化合物の両方を意味する。本発明においては、「メタクリル.../...メタクリル...」化合物が好ましい。
- 「アルキル」とは、分枝状又は非分枝状であり得る飽和炭化水素基を意味し、好ましくはC
1~C
20アルキル、より好ましくはC
1~C
9アルキルを意味する。C
1~C
20アルキルの基としては、とりわけ、メチル、エチル、n-エチル、iso-エチル、n-ブチル、2-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルエチル、1-エチルエチル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルエチル、1,2-ジメチルエチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルエチル、1,2,2-トリメチルエチル、1-エチル-1-メチルエチル、1-エチル-2-メチルエチル、2-エチルヘキシル、n-オクチル、iso-デシル、2-エチル-ヘプチル、シクロヘキシル、iso-ノニル、iso-トリデシル、3,5,5-トリメチル-1-ヘキシル、及び2-イソプロピル-5-メチルヘキシルが挙げられる。C
1~C
4アルキル、すなわち、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、及びtert-ブチルからなる群から選択されるアルキルが特に好ましく、メチル、エチル、及びtert-ブチルが特に好ましく、メチルが極めて特に好ましい。
- 「置換基」とは、特に明記しない限り、炭化水素基ではない置換基、特にハロゲニル、--OH、=O、-CF
3、-CF
2-CF
3、-SiAlkyl
3からなる群から選択される置換基、好ましくは-F、-Cl、-OH、=O、及び-CF
3からなる群から選択される置換基を意味する。「置換された」とは、特に明記しない限り、1の置換基又は複数の置換基が存在すること、好ましくは1つの置換基のみが存在することを意味する。
- 「ヒドロキシアルキル」とは、置換基として、好ましくは更なる置換基を伴わない炭素原子上に、少なくとも1つ、好ましくは1つ又は2つのヒドロキシル基、より好ましくは1つのヒドロキシル基のみを保有するアルキルを意味する。
- 「アルケニル」とは、これは分枝又は非分枝であり得る(環状ではない)、少なくとも1つ、好ましくは1つのみの二重結合を有する不飽和炭化水素基を意味し;C
2~C
20アルケニルが好ましく、C
2~C
6アルケニルが特に好ましく、すなわち、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、及びヘキセニルからなる群から選択されるアルケニル;エテニル、プロペニル、及びブテニルが特に好ましく、エテニルが極めて特に好ましい。
- 「ヒドロキシアルケニル」とは、好ましくは更なる置換基を有さず、別の炭素への二重結合を有しない炭素原子上に、置換基として少なくとも1つ、好ましくは1つ又は2つのヒドロキシル基を保有するアルケニルを意味する。
- 「アルキニル」は、分枝又は非分枝であり得る、少なくとも1つ、好ましくは1つのみの三重結合を有する不飽和炭化水素基を意味し、C
2~C
20アルキニルが好ましく、C
2~C
6アルキニル、すなわち、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、及びヘキシニルからなる群から選択されるアルキニルが特に好ましく;エチニル、プロピニル、及びブチニルが特に好ましく、エテニルが極めて特に好ましい。
- 「ヒドロキシアルキニル」とは、好ましくは更なる置換基を有さず、別の炭素への三重結合を有しない炭素原子上に、置換基として少なくとも1つ、好ましくは1つ又は2つのヒドロキシル基を保有するアルキニルを意味する。
- 「アリール」又は「Ar」とは、好ましくは6~10個の炭素原子を有する単環式又は二環式の芳香族基を意味する。例示的なC
6~C
10アリール基としては、フェニル及びナフチルが挙げられる。アリールは、好ましくはフェニルである。アリール基は、任意選択的に、-F、-Cl、-OH、及び-CF
3、-C
1~C
6アルキル又は-O-C
1~C
6アルキルからなる群から互いに独立して選択される1つ以上の置換基で置換され得る。
- 「ヘテロアリール」とは、O、N、及び好ましくはNから選択される、少なくとも1個、好ましくは1個又は2個のみ、特に好ましくは1個のみのヘテロ原子を含有する、好ましくは5~10個の環原子、より好ましくは5個又は6個の環原子を有する単環式又は二環式芳香族基を意味する。例示的なヘテロアリール基としては、ピロール、ピリジニル、及びピリミジニルが挙げられる。ヘテロアリール基は、任意選択的に、-F、-Cl、-OH、及び-CF
3、-C
1~C
6アルキル又は-O-C
1~C
6アルキルからなる群から互いに独立して選択される1つ以上の置換基で置換され得る。
- 「アリールアルキル」は、単結合によって一緒に連結された、本明細書で上に定義される少なくとも1つのアルキルを伴う、本明細書で上に定義される少なくとも1つのアリールの基を意味する。アリールアルキルは、好ましくはn=0又は1である-(アルキル)
n-アリール-(アルキル)
nであり、特に好ましくはn=0又は1である-(CH
2)
n-フェニル-(CH
2)
nである。
- 例えば「メタクリレート」という単語の前など、あるクラスの化合物の前の項目としての「a」又は「an」は、このクラスの化学化合物に含まれる1つ以上の化学化合物、例えば様々なメタクリレートが意図され得る。好ましい実施形態では、この冠詞は、単一の化合物のみを意味し、
- 「少なくとも1つ」とは、数値的に「1つ以上」を意味する。好ましい実施形態では、この用語は数値的に「1つ」を意味する。
- 「含有する(contain)」、「含む(comprise)」、及び「含む(include)」は、言及されたものに加えて、更なる構成要素が存在する可能性があることを意味する。これらの用語は包括的であることを意図しており、したがって、「からなる」もまた包含する。「からなる」は排他的であることを意図しており、更なる構成要素が存在し得ないことを意味する。好ましい実施形態では、「含有する(contain)」、「含む(comprise)」、及び「含む(include)」という用語は、「からなる」という用語を意味する。
- 数値の前の「およそ(approximately)」又は「およそ(approx.)」は、この値の±10%、好ましくはこの値の±5%、より好ましくはこの値の±2%、より好ましくはこの値の±1%、特に好ましくはこの値の±0%(すなわち、正確にこの値)の範囲を意味する。
- 数値で制限された範囲、例えば、「10%~20%」は、2つの極値とこの範囲内の任意の値が個別に開示されることを意味する。
【0024】
本明細書に記載の化合物が、互変異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、E/Z異性体の形態の2つ以上の立体異性体を、例えば不斉中心に起因して、又はエンド若しくはエキソ配置の可能性に起因して有する場合、全ての可能な立体異性体及びまた混合物が、特に明記しない限り意味される。例えば、二置換ノルボルネンは、エンド/エンド、エンド/エキソ、又はエキソ/エキソ配置で存在し得る。エンド/エンド、エンド/エキソ、又はエキソ/エキソ配置が可能な化合物の場合、エンド/エキソ配置が好ましい。E配置又はZ配置が可能な化合物の場合、特にディールズ・アルダー反応による(特に、シクロアルキル-1,3-ジエンを用いる)歪みシクロオレフィンの生成のための出発物質の1つとして使用される非環状オレフィンの場合、E配置が好ましい。
【0025】
規格(例えば、DIN規格)が本明細書で言及されている場合、これは、本出願の出願日における関連規格の現在の版を指す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明にかかる2C系の成分A及び成分Bの構成要素を以下でより詳細に説明する。
【0027】
成分A
成分Aは、構造要素として歪みシクロオレフィンを含有する少なくとも1つのモノマー(ROMPモノマー)と、少なくとも1つのラジカル開始剤(例えば、BPO)と、を含む。
【0028】
ROMPモノマー
成分Aは少なくとも1つのROMPモノマーを含む。
【0029】
ROMPに適切なモノマーは、例えば、Leitgeb A.;Wappel J.;Slugovc C.、「The ROMP toolbox upgraded」、Polymer(2010年)第51巻第2927~2946頁;Slugovc C.著、「The Ring Opening Metathesis Polymerisation Toolbox」、Macromol.Rapid Commun.(2004年)第25巻第1283~1297頁;欧州特許出願公開第0771830号(A2)明細書及び米国特許第7,691,919号(B2)明細書より、第11~13欄から当業者に一般的に知られている。これらの文献に記載されているROMPモノマーの説明は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
ROMPモノマーは、原則として、環内に少なくとも1つの二重結合、好ましくは環内に1つの二重結合のみを有する少なくとも1つの歪みシクロオレフィンを構造要素として含有する(「歪みシクロオレフィン構造要素」)、又は歪みシクロオレフィンである、任意の化合物であり得る。この少なくとも1つの二重結合に加えて、歪みシクロオレフィンの環内に更なる多重結合が存在しない(すなわち、特に三重結合がない)ことが好ましい。
【0031】
本発明の文脈において、「歪みシクロオレフィン」とは、シクロヘキセンを除く全てのシクロオレフィンを指す。シクロヘキセンは開環メタセシスで重合することができない。本発明に適切な歪みシクロオレフィンは、例えば、欧州特許出願公開第0771830号(A2)明細書及び米国特許第7,691,919号(B2)明細書の第11~13欄に開示されている。
【0032】
歪みシクロオレフィン(構造要素)は、環内に少なくとも1つの二重結合、好ましくは1つ又は2つの二重結合、より好ましくは1つの二重結合のみを有する。歪みシクロオレフィン(構造要素)が2つの二重結合を含む場合、これらは共通の炭素原子を有さず、好ましくはコンジュゲートしておらず、より好ましくは異なる環の一部であり、又は架橋系の場合、歪みシクロオレフィン(構造要素)内の異なる架橋の一部である。
【0033】
歪みシクロオレフィン(構造要素)は、環原子として、N、O、Si、P、及びSから、好ましくはN、O、及びSから、より好ましくはOから選択される、少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくは1つのヘテロ原子のみを含有し得る。しかしながら、好ましくは、全ての環原子が炭素原子であるか、又は環原子の1つのみがO(オキサ誘導体)で置き換えられており、更により好ましくは、全ての環原子が炭素原子である。オキサ誘導体の場合、-O-が-CH2-と置き換えられ、スルファ誘導体の場合、-S-が-CH2-と置き換えられる。N、Si、及びPは、2つ以上の炭素環原子に連結することができ、次いで、残りの原子価は、H原子又は置換基(例えば、-NH-又は-N(CH3)-)に連結される。
【0034】
歪みシクロオレフィン(構造要素)は、2つ以上、好ましくは2~4つの縮合環(condensed ring)、縮合環(fused ring)、及び/又は架橋環を有する単環式又は多環式のいずれかである。好ましくは3~16個の環原子、より好ましくは3~14個の環原子、更により好ましくは5~12個、更により好ましくは5、7、又は8個の環原子、更により好ましくは5個又は7個の環原子を含む。歪みシクロオレフィン(構造要素)が単環式である場合、これは、好ましくは3~8個の環原子、より好ましくは5又は7個の環原子を含む。これが多環式、特に二環式である場合、好ましくは7~14個の環原子、より好ましくは7~12個の環原子、更により好ましくは7~9個の環原子を含む。多環式歪みシクロオレフィン(構造要素)の場合、ビシクロ[x,y,z]オレフィン、トリシクロ[w.x.y.z]オレフィン、及びテトラシクロ[v.w.x.y.z]オレフィンが好ましく、ここで、v、w、x、y、及びzは、互いに独立して、0~6の整数、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1~2の整数である。これらの中で、ビシクロ[x、y、z]オレフィンが、特にx=2、y=2、z=1又は2について特に好ましい。
【0035】
歪みシクロオレフィン(構造要素)は、好ましくは単環式又は二環式、好ましくは単環式(例えば、シクロペンテン)又は架橋二環式歪みシクロオレフィン(例えば、ノルボルネン)である。二環式歪みシクロオレフィンは、好ましくは、単環式1,3-ジエンとオレフィンとのディールズ・アルダー反応によって形成される二環式歪みシクロオレフィンである。このオレフィンが二置換されている場合、これは好ましくはE配置を有し、得られた歪みシクロオレフィンは、以下の例示的な反応に示すように、エンド/エキソ配置を有する:
【0036】
【0037】
環内に2つの二重結合を有するシクロオレフィン(例えば、シクロペンタジエン)と、シクロオレフィン(例えば、シクロペンタジエン及びノルボルネンから形成されるテトラシクロドデセン、又はジシクロペンタジエン)との、ディールズ・アルダー反応によって形成される更なる歪みシクロオレフィンもまた、好ましい歪みシクロオレフィン構造要素の群に入る。これには、特に以下が含まれる:
【0038】
【0039】
一実施形態では、歪みシクロオレフィン(構造要素)は、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3,8-ジエン(ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[6.2.1.1.0]-ドデセン、ビシクロ[3.3.2]-デセン、ビシクロ[3.2.2]-ノネン、ビシクロ[2.2.2]-オクテン、ビシクロ[2.2.1]-ヘプタジエン(ノルボルナジエン)、ビシクロ[2.2.1]-ヘプテン(ノルボルネン)、及びビシクロ[2.2.0]-ヘキセン、並びにこれらのオキサ誘導体からなる群から選択される。
【0040】
歪みシクロオレフィン構造要素は、シクロペンテン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、シクロオクテン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3,8-ジエン(ジシクロペンタジエン)、若しくはテトラシクロ[6.2.1.1.0]-ドデセンが好ましく、又はこれらのオキサ誘導体、ノルボルネン、ノルボルナジエン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3,8-ジエン(ジシクロペンタジエン)、若しくはテトラシクロ[6.2.1.1.0]-ドデセン、又はこれらのオキサ誘導体がより好ましく、ノルボルネン若しくはノルボルナジエン、又はこれらのオキサ誘導体がより好ましく、ノルボルネンが更により好ましい。
【0041】
ROMPモノマーが、非置換の歪みシクロオレフィン構造要素、すなわち歪みシクロオレフィンからなるか、又は歪みシクロオレフィン構造要素が、1つ以上、好ましくは1つ又は2つの置換基を有し得るかのいずれかである。加えて、少なくとも1つのアリール環、好ましくはベンゼン環を、歪みシクロオレフィン構造要素へと縮合させることができる。
【0042】
好ましい実施形態では、ROMPモノマーは、非置換の歪みシクロオレフィン構造要素、すなわち、縮合アリールを含まない非置換の単環式又は多環式の歪みシクロオレフィンである。したがって、ROMPモノマーは、例えばシクロペンテン又はノルボルネンである。
【0043】
更に好ましい実施形態では、ROMPモノマーは、置換歪みシクロオレフィン構造要素、すなわち置換歪みシクロオレフィンである。「置換歪みシクロオレフィン」とは、ハロゲン、擬ハロゲン、C1~C20アルキル、ヒドロキシ-C1~C20-アルキル、C2~C20アルケニル、ヒドロキシ-C2~C20-アルケニル、C2~C20アルキニル、ヒドロキシ-C2~C20-アルキニル、-O-C1~C20-アルキル、-O-C2~C20-アルケニル、-O-C2~C20-アルキニル、-O-C(=O)-C1~C20-アルキル、-O-C(=O)-C2~C20-アルケニル、-O-C(=O)-C2~C20-アルキニル、-C(=O)-O-C1~C20-アルキル、-C(=O)-O-C2~C20-アルケニル、-C(=O)-O-C2~C20-アルキニル、-C(=O)-O-C1~C20-ヒドロキシアルキル、-C(=O)-O-C2~C20-ヒドロキシアルケニル、-C(=O)-O-C2~C20-ヒドロキシアルキニル、-O-C1~C20-アルカンジイル-C(=O)-O-C1~C20-ヒドロキシアルキル、-O-C1~C20-アルカンジイル-C(=O)-O-C2~C20-ヒドロキシアルケニル、-O-C1~C20-アルカンジイル-C(=O)-O-C2~C20-ヒドロキシアルキニル、-O-C1~C20-アルケニルジイル-C(=O)-O-C1~C20-ヒドロキシアルキル、-O-C1~C20-アルケニルジイル-C(=O)-O-C2~C20-ヒドロキシアルケニル、-O-C1~C20-アルケニルジイル-C(=O)-O-C2~C20-ヒドロキシアルキニル、-O-C1~C20-アルカンジイル-O-C(=O)-C1~C20-アルキル、-O-C1~C20-アルカンジイル-O-C(=O)-C2~C20-アルケニル、-O-C1~C20-アルカンジイル-O-C(=O)-C2~C20-アルキニル、ヘテロアリール、-O-ヘテロアリール、-O-C1~C20-アルカンジイル-ヘテロアリール、-O-C(=O)-ヘテロアリール、-O-C1~C20-アルカンジイル-O-C(=O)-ヘテロアリール、アリール、-O-アリール、-O-C1~C20-アルカンジイル-アリール、-O-C(=O)-アリール、-O-C1~C20-アルカンジイル-O-C(=O)-アリール、又はこれらの組合せからなる群から選択される、1つ以上、好ましくは1つの置換基で置換された、歪みシクロオレフィン構造要素を意味する。
【0044】
置換基は、好ましくは、ハロゲン、C1~C20アルキル、ヒドロキシ-C1~C20-アルキル、C2~C20アルケニル、ヒドロキシ-C2~C20-アルケニル、-O-C1~C20-アルキル、-O-C2~C20-アルケニル、-O-C2~C20-アルキニル、-O-C(=O)-C1~C20-アルキル、-O-C(=O)-C2~C20-アルケニル、-O-C(=O)-C2~C20-アルキニル、-O-C1~C20-アルカンジイル-O-C(=O)-C1~C20-アルキル、及び-O-C1~C20-アルカンジイル-O-C(=O)-C2~C20-アルケニルからなる群から選択される。置換基は、-O-C(=O)-C2~C20-アルケニル又はO-C1~C20-アルカンジイル-O-C(=O)-C2~C20-アルケニルが特に好ましい。
【0045】
置換基は、好ましくは、環内のC=C二重結合の一部ではない歪みシクロオレフィン構造要素のC原子に結合しており、また、(二環式状況の場合)橋頭炭素原子ではない。更に好ましい実施形態では、多環式歪みシクロオレフィンの場合の置換基は、環内に二重結合のない環上に位置するか、又は二重結合が位置する架橋以外の架橋系の場合に位置する。
【0046】
好ましい実施形態では、置換基は、カルボン酸、好ましくはα,β-不飽和カルボン酸のエステルである構造要素である(得られたモノマーは、以下で「RadP-ROMPモノマー」として別々に記載される)。好ましい実施形態では、エステル化された基は、アルキル若しくはアルケニル、又はヒドロキシアルキル若しくはヒドロキシアルケニル、すなわち、エステル基中の-O-に加えて、1つ以上、好ましくは1つの遊離OH基もまた保有する基である。更に好ましい実施形態では、カルボン酸基は、歪みシクロオレフィン要素により直接的又は間接的のいずれかでエステル化される。間接的には、エステル基と歪みシクロオレフィン要素との間に、更なる原子、例えば分枝又は非分枝-C1~C20アルカンジイル基、-C1~C20-アルカンジイル-O基、-C(=O)-O-アルカンジイル基、-アルカンジイル-C(=O)-O-アルカンジイル基、-アルカンジイル-O-C(=O)-アルカンジイル基、-O-C(=O)-アルカンジイル基、又は-C2~C20アルケニルジイル基が存在することを意味する。
【0047】
好ましい実施形態では、ROMPモノマーは、式(I)の化合物である
【0048】
【化4】
式中:
- 歪みシクロオレフィンとは、上記で定義した歪みシクロオレフィン構造要素を意味する;
- mは、0~2の整数、好ましくは0又は1である;mが2である場合、2つのR
1は、好ましくは同じである;
- R
1は、互いに独立して、-C(=O)-OH、-C(=O)-O-C
1~C
20-アルキル、-O-C(=O)-C
1~C
20-アルキル、-C(=O)-O-アリール、-O-C(=O)-アリール、-C
1~C
20-アルキル、-アリール、-C
1~C
20-ヒドロキシアルキル、-C
1~C
20-アルカンジイル-O-C
1~C
20-アルキル、ハロゲンyl、-CF
3、-CF
2-CF
3、及び-Siアルキル
3からなる群から選択される。R
1は、好ましくは、-C(=O)-OH、-C(=O)-O-C
1~C
8-アルキル、-O-C(=O)-C
1~C
8-アルキル、-C
1~C
8アルキル、-C
1~C
8ヒドロキシアルキル、又は-C
1~C
8-アルカンジイル-O-C
1~C
8-アルキル、より好ましくは-C(=O)-OH、-C(=O)-O-C
1~C
4-アルキル、-O-C(=O)-C
1~C
4-アルキル、-C
1~C
4-アルキル、-C
1~C
4-ヒドロキシアルキル、又は-C
1~C
4-アルカンジイル-O-C
1~C
4-アルキル、より好ましくは-C(=O)-OH、-C(=O)-O-C
1~C
4-アルキル、-O-C(=O)-C
1~C
4-アルキル、-C
1~C
4アルキル、-CH
2-OH、又は-CH
2-O-C
1~C
4-アルキルである。更により好ましくは、R
1は、-C(=O)-OH、-C(=O)-O-メチル、-O-C(=O)-メチル、メチル、エチル、n-エチル、iso-エチル、n-ブチル、iso-ブチル、及びtert-ブチル、-CH
2-OH、-CH
2-O-メチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシ-n-エチル、2-ヒドロキシ-イソプロピル、4-ヒドロキシ-n-ブチル、3-ヒドロキシ-isoブチル、並びに2-ヒドロキシ-tert-ブチルからなる群から選択される。メチル、エチル、-C(=O)-O-メチル、-O-C(=O)-メチル、-CH
2-OH、及び2-ヒドロキシエチルが特に好ましく、メチル又は-CH
2-OHが極めて特に好ましい。
【0049】
隣接する炭素原子に結合した2つのR1もまた一緒に連結することができ、したがって、それらが結合した炭素原子と環を、好ましくは5~7個の環原子を有する環を形成することができる。これは、例えば、シクロペンタン環又はラクトン環をもたらすことができる。
【0050】
あるいは、2つのR1は一緒になって、2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH2)z-の架橋(式中、zは、1~4、好ましくは1~3、より好ましくは1~2、特に好ましくは1である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH2)q-Ar-(CH2)q-の架橋(式中、Arは芳香族、好ましくはフェニルであり、qは、互いに独立して、0~2の整数、好ましくは0~1の整数、より好ましくは両方が0の整数である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH2)q-C=C-(CH2)q-の架橋(式中、qは、互いに独立して、0~2の整数、好ましくは0~1の整数、より好ましくは両方が0の整数である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH2)q-O-(CH2)q-の架橋(式中、qは、互いに独立して、0~2の整数、好ましくは0~1の整数、更により好ましくは両方が0の整数である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH2)q-NR4-(CH2)q-の架橋(式中、qは、互いに独立して、0~2の整数、好ましくは0~1の整数、より好ましくは両方が0の整数であり、かつR4は、H又は置換若しくは非置換C1~C20アルキル、より好ましくはH若しくは非置換C1~C20アルキル、更により好ましくはHである)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-C(=O)-O-(CH2)z-O-(O=)-C-の架橋(式中、zは、1~4の整数、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1~2の整数、特に好ましくは2の整数である)、又は式-C(=O)-O-の架橋、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-C(=O)-O-Ar-O-(O=)-C-の架橋(式中、Arは芳香族、好ましくはフェニルであり、zは、1~4の整数、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1~2の整数、特に好ましくは1の整数である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH2)q-Si(R4)2-(CH2)q-の架橋(式中、qは、互いに独立して、0~2の整数、好ましくは0~1の整数、より好ましくは少なくとも1回の1の整数であり、R4は、H又は置換若しくは非置換C1~C20アルキル、より好ましくはH又は非置換C1~C20アルキル、より好ましくは非置換C1~C4アルキルである)を形成する。
【0051】
好ましい実施形態(変形例)では、ROMPモノマーは、式(I)を有する:
【0052】
【化5】
式中:
- 歪みシクロオレフィンは、シクロペンテン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、シクロオクテン、テトラシクロ[6.2.1.1.0]-ドデセン、及びそれらのオキサ誘導体からなる群から選択され、式中、歪みシクロオレフィン構造要素中のC原子は、Oで置き換えられている。これは、ノルボルネン、ノルボルナジエン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ-3,8-ジエン(ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[6.2.1.1.0]-ドデセン、及びこれらのオキサ誘導体からなる群から選択されることが好ましく、式中、歪みシクロオレフィン構造要素中のC原子は、Oで置き換えられている;
- mは、0又は1である;
- R
1は、-C(=O)-OH、-C(=O)-O-C
1~C
4-アルキル、-O-C(=O)-C
1~C
4-アルキル、-C
1~C
4アルキル、-CH
2-OH、or-CH
2-O-C
1~C
4-アルキルからなる群から選択され、好ましくは、-C(=O)-OH、-C(=O)-O-メチル、-O-C(=O)-メチル、メチル、エチル、n-エチル、iso-エチル、n-ブチル、iso-ブチル、及びtert-ブチル、-CH
2-OH、-CH
2-O-メチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシ-n-エチル、2-ヒドロキシ-イソプロピル、4-ヒドロキシ-n-ブチル、3-ヒドロキシ-isoブチル、並びに2-ヒドロキシ-tert-ブチルからなる群から選択される。メチル、エチル、-CH
2-OH、及び2-ヒドロキシエチルが特に好ましく、メチルが極めて特に好ましい。あるいは、2つのR
1は、一緒になって、2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH
2)
z-の架橋(式中、zは、1~2の整数、好ましくは1の整数である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH
2)
q-C=C-(CH
2)
q-の架橋(式中、qは、互いに独立して、0~1の整数、より好ましくは両方が0の整数である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH
2)
q-O-(CH
2)
q-の架橋(式中、qは、互いに独立して、0~2の整数、好ましくは0~1の整数、更により好ましくは両方が0の整数である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-C(=O)-O-(CH
2)
z-O-(O=)-C-の架橋(式中、zは、1~4の整数、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1~2の整数、特に好ましくは1の整数である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-C(=O)-O-フェニル-O-(O=)-C-の架橋、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH
2)
q-Si(R
4)
2-(CH
2)
q-の架橋(式中、qは、互いに独立して、0~1の整数、より好ましくは少なくとも1回の1であり、かつR
4は、H又は置換若しくは非置換C
1~C
4アルキル、より好ましくはH又は非置換C
1~C
4アルキル、より好ましくは非置換C
1~C
4アルキルである)を形成する。
【0053】
より好ましい実施形態では、ROMPモノマーは、以下の式(IIA)又は式(IIB)を有する:
【0054】
【0055】
【化7】
は、単結合又は二重結合、好ましくは単結合である;
- R
1は、式(I)について上で定義した通りであり、好ましくは上で定義した式(I)の好ましい変形例について定義した通りであり、ここで、(IIA)のR1は同じであっても異なっていてもよいが、好ましくは同じであり得る;
- Xは、-CH
2又は-O-であり、好ましくは-CH
2-である;
- qは、1、2、3、5、及び6からなる群から選択される整数、好ましくは1、3、及び5から選択される整数、特に好ましくは3の整数である。
【0056】
極めて特に好ましいROMPモノマーは、
【0057】
【化8】
ビシクロ[3.3.2]-デセン、ビシクロ[3.2.2]-ノネン、ビシクロ[2.2.2]-オクテン、ビシクロ[2.2.1]-ヘプテン(ノルボルネン)、ビシクロ[2.2.0]-ヘキセン、シクロペンテン、シクロオクテン、テトラシクロ[6.2.1.1.0]-ドデセン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ-3,8-ジエン(ジシクロペンタジエン)、及びビシクロ[2.2.1]-ヘプタジエン(ノルボルナジエン)、並びにこれらのオキサ誘導体からなる群から選択され、式中、歪みシクロオレフィン構造要素中のC原子は、Oで置き換えられている。更に好ましくは、この基は、
【0058】
【化9】
シクロペンテン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、シクロオクテン、テトラシクロ[6.2.1.1.0]-ドデセン、及びそれらのオキサ誘導体からなる群から選択され、式中、歪みシクロオレフィン構造要素中のC原子は、Oで置き換えられている。歪みシクロオレフィン構造要素中のC原子がOで置き換えられている、ノルボルネン、ノルボルナジエン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ-3,8-ジエン(ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[6.2.1.1.0]-ドデセン、及びこれらのオキサ誘導体からなる群が、更により好ましい。ノルボルネン若しくはノルボルネン構造要素を含むROMPモノマー、又はそれらのオキサ誘導体の1つが最も好ましく、式中、歪みシクロオレフィン構造要素中のC原子は、Oで置き換えられている。ノルボルネン又はノルボルネン構造要素を含むROMPモノマーが最も特に好ましい。
【0059】
一実施形態では、この極めて特に好ましい基からのROMPモノマーは、上で定義した置換基の1つで置換される。別の実施形態では、これらは更に置換されない。
【0060】
特定の実施形態では、ROMPモノマーは、RadP-ROMPモノマーである。RadP-ROMPモノマーは上記で定義したROMPモノマーであり、歪みシクロオレフィン構造単位に加えて、α,β-不飽和カルボン酸のエステルである構造要素もまた含有する。
【0061】
RadP-ROMPモノマー中でエステル化されるα,β-不飽和カルボン酸は、好ましくは分枝及び非分枝C3~C20-α,β-不飽和カルボン酸からなる群、より好ましくは分枝及び非分枝C4~C10-α,β-不飽和カルボン酸からなる群、より好ましくは分枝及び非分枝C4~C6-α,β-不飽和カルボン酸からなる群から選択される。特に好ましくは、チグリン酸((E)-2,3-ジメチルアクリル酸)、ソルビン酸(ヘキサジエン酸)、クロトン酸(トランスブテン酸)、及びメタクリル酸からなる群から選択される。より好ましくは、これはメタクリル酸である。
【0062】
この好ましい実施形態では、ROMPモノマーが、歪みシクロオレフィン構造要素に加えて、α,β-不飽和カルボン酸のエステルである構造要素を含有し、デュアルキュア系に必要な2つのモノマー要素、すなわち歪みシクロオレフィンモノマー及び(メタ)アクリレートモノマーは、単一のモノマー(本明細書以下、RadP-ROMPモノマー)において既に互いに結合している。したがって、この(二官能性)RadP-ROMPモノマーを用いる場合、更なる別個のモノマー(例えば、成分B)の存在は絶対に必要ではない。しかしながら、好ましい実施形態では、RadP-ROMPモノマーに加えて、(メタ)アクリレートもまた、本発明にかかる2C系において、典型的には成分Bにおいて別個のモノマーとしても存在する。
【0063】
RadP-ROMPモノマーの使用により、同じモノマー分子を用いた2つの異なるタイプの重合、すなわち開環メタセシス重合(ROMP)及びラジカル重合(RadP)が可能となる。化合物「Mon13」の例として、RadP-ROMPモノマーの生成及び反応可能性を以下の図に示す。2-(メタクリロイルオキシ)エチル-エンド、エキソ-5-ノルボルネンカルボキシレート(「Mon13」)は、工程Bにおいて、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)及びシクロペンタジエン(Cp)のDiels-Alder生成物のエステル化によって生成される2-ヒドロキシエチル-エンド、エキソ-5-ノルボルネンカルボキシレート(「Mon9」)から生成される(工程A)。次いで、ROMP(工程C、例えばGrubbs触媒を使用)及びラジカル重合(RadP)(工程D、例えば過酸化ベンゾイルを使用)を同時に開始する。
【0064】
【0065】
架橋は、実施例に記載される2つのRadP-ROMPモノマー、すなわちMon13及びMon14について本明細書に示されるように、分子中に存在する2つの異なる官能基によって達成される。
【0066】
【0067】
α,β-不飽和カルボン酸は、好ましくは分枝及び非分枝C3~C20-α,β-不飽和カルボン酸からなる群、より好ましくは分枝及び非分枝C4~C10-α,β-不飽和カルボン酸からなる群、より好ましくは分枝及び非分枝C4~C6-α,β-不飽和カルボン酸からなる群から選択される。特に好ましくは、α,β-不飽和カルボン酸は、アクリル酸、チグリン酸((E)-2,3-ジメチルアクリル酸)、ソルビン酸(ヘキサジエン酸)、クロトン酸(トランスブテン酸)、及びメタクリル酸からなる群から選択される。α,β-不飽和カルボン酸は、更により好ましくはメタクリル酸である。
【0068】
好ましい実施形態では、RadP-ROMPモノマーは、以下の式(III)を有する:
【0069】
【化12】
式中:
- 歪みシクロオレフィンとは、上記で定義した歪みシクロオレフィン構造要素を意味する;
- Yは、単結合、-C
1~C
20-アルカンジイル-、-O-C
1~C
20-アルカンジイル-、-C
1~C
20-アルカンジイル-O-、-O-C
1~C
20-アルカンジイル-O-、-O-、-Si(アルキル)
2-、-C
1~C
20-アルカンジイル-Si(アルキル)
2-、-C
1~C
20-アルカンジイル-Si(アルキル)
2~~C
1~C
20-アルカンジイル-、-C
1~C
20-アルカンジイル-O-C
1~C
20-アルカンジイル-、-C(=O)-O-、-C
1~C
20-アルカンジイル--C(=O)-O-、-C(=O)-O-C
1~C
20-アルカンジイル-、-C(=O)-O-C
1~C
20-アルカンジイル-O-C(=O)-、-C
1~C
20-アルカンジイル-C(=O)-O-C
1~C
20-アルカンジイル-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C
1~C
20-アルカンジイル-O-C(=O)-、--O-C(=O)-C
1~C
20-アルカンジイル-、-O-C(=O)-C
1~C
20-アルカンジイル-C(=O)-O-、-アリールジイル-、-O-アリールジイル-、-O-アリールジイル-O-、-アリールジイル-O-アリールジイル-、-C(=O)-O-アリールジイル-、-C(=O)-O-アリールジイル-O-C(=O)-、-アリールジイル-C(=O)-O-アリールジイル-、-O-C(=O)-アリールジイル-、-O-C(=O)-アリールジイル-C(=O)-O-、-C
6~C
20-アリールアルカンジイル-O-C
6~C
20-アリールアルカンジイル-、-O-C
6~C
20-アリールアルカンジイル-O-、-C
6~C
20-アリールアルカンジイル-O-C
6~C
20-アリールアルカンジイル-、-C(=O)-O-C
6~C
20-アリールアルカンジイル-、-C(=O)-O-C
6~C
20-アリールアルカンジイル-O-C(=O)-、-C
6~C
20-アリールアルカンジイル-C(=O)-O-C
6~C
20-アリールアルカンジイル-、-O-C(=O)-C
6-~C
20-アリールアルカンジイル-、-O-C(=O)-C
6~C
20-アリールアルカンジイル-C(=O)-O-、-(CH
2)
q-C=C-(CH
2)
q-(式中、qは、互いに独立して、1~20の整数、好ましくは1~10の整数、更により好ましくは1~2の整数である)、-(CH
2)
q-O-(CH
2)
q-(式中、qは、互いに独立して、1~20の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは1~の整数である)、-(CH
2)
q-NR
4-(CH
2)
q-(式中、qは、互いに独立して、1~20の整数、好ましくは1~10の整数、更により好ましくは1~の整数であり、かつR
4は、H又は置換若しくは非置換C
1~C
20アルキル、より好ましくはH又はC
1~C
20アルキル、更により好ましくはHである)からなる群から選択される。
【0070】
Yは、好ましくは、単結合、-C1~C8-アルカンジイル-、-O-C1~C8-アルカンジイル-、-C1~C8-アルカンジイル-O-、-O-C1~C8-アルカンジイル-O-、-O-、-SiMe2-、-C1~C8-アルカンジイル-SiMe2-、-C1~C8-アルカンジイル-SiMe2~~C1~C8-アルカンジイル-、-C1~C8-アルカンジイル-O-C1~C8-アルカンジイル-、-C(=O)-O-、-C1~C8-アルカンジイル--C(=O)-O-、-C(=O)-O-C1~C8-アルカンジイル-、-C(=O)-O-C1~C8-アルカンジイル-O-C(=O)-、-C1~C8-アルカンジイル-C(=O)-O-C1~C8-アルカンジイル-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C1~C8-アルカンジイル-O-C(=O)-、-O-C(=O)-C1~C8-アルカンジイル-、-O-C(=O)-C1~C8-アルカンジイル-C(=O)-O-、-C6~C10-アリールジイル-、-O-C6~C10-アリールジイル-、-O-C6~C10-アリールジイル-O-、-C6~C10-アリールジイル-O-C6~C10-アリールジイル-、-C(=O)-O-C6~C10-アリールジイル-、-C(=O)-O-C6~C10-アリールジイル-O-C(=O)-、-C6~C10-アリールジイル-C(=O)-O-C6~C10-アリールジイル-、-O-C(=O)-C6~C10-アリールジイル-、-O-C(=O)-C6~C10-アリールジイル-C(=O)-O-、-C7~C12-アリールアルカンジイル-O-C7~C12-アリールアルカンジイル-、-O-C7~C12-アリールアルカンジイル-O-、-C7~C12-アリールアルカンジイル-O-C7~C12-アリールアルカンジイル-、-C(=O)-O-C7~C12-アリールアルカンジイル-、-C(=O)-O-C7~C12-アリールアルカンジイル-O-C(=O)-、-C7~C12-アリールアルカンジイル-C(=O)-O-C7~C12-アリールアルカンジイル-、-O-C(=O)-C7~C12-アリールアルカンジイル-、-O-C(=O)-C7~C12-アリールアルカンジイル-C(=O)-O-、-(CH2)q-C=C-(CH2)q-、(式中、qは、互いに独立して、1~20の整数、好ましくは1~10の整数、更により好ましくは1~2の整数である)、-(CH2)q-O-(CH2)q-(式中、qは、互いに独立して、1~20の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは1~の整数である)、-(CH2)q-NR4-(CH2)q-(式中、qは、互いに独立して、1~20の整数、好ましくは1~10の整数、更により好ましくは1~の整数であり、かつR4は、H又は置換若しくは非置換C1~C20アルキル、より好ましくはH又は非置換C1~C20アルキル、更により好ましくはHである)からなる群から選択される。
【0071】
より好ましくは、Yは、単結合、-C1~C8-アルカンジイル-、-O-C1~C8-アルカンジイル-、-C1~C8-アルカンジイル-O-、-O-C1~C8-アルカンジイル-O-、-C1~C8-アルカンジイル-O-C1~C8-アルカンジイル-、-C(=O)-O-、-C1~C8-アルカンジイル--C(=O)-O-、-C(=O)-O-C1~C8-アルカンジイル-、-C(=O)-O-C1~C8-アルカンジイル-O-C(=O)-、-C1~C8-アルカンジイル-C(=O)-O-C1~C8-アルカンジイル-、-O-C(=O)-、-C1~C8-アルカンジイル-O-C(=O)-、-O-C(=O)-C1~C8-アルカンジイル-、-O-C(=O)-C1~C8-アルカンジイル-C(=O)-O-、-C6~C10-アリールジイル-、-O-C6~C10-アリールジイル-からなる群から選択される。
【0072】
Yは、より好ましくは、-C1~C8-アルカンジイル-、-C1~C8-アルカンジイル-O-、-C(=O)-O-、-C1~C8-アルカンジイル--C(=O)-O-、-C(=O)-O-C1~C8-アルカンジイル-、-O-C(=O)-、-C1~C8-アルカンジイル-O-C(=O)-からなる群から選択される。
【0073】
Yは、より好ましくは、-C(=O)-O-、-C1~C2-アルカンジイル-、-C1~C2-アルカンジイル-O-、-C(=O)-O-C1~C2-アルカンジイル-、-C1~C2-アルカンジイル-C(=O)-O-、-C1~C2-アルカンジイル-O-C(=O)-からなる群から選択される。Yは、特に好ましくは、-CH2-、-CH2-O-、-C(=O)-O-、-CH2-C(=O)-O-、-CH2-O-C(=O)-、又は-C(=O)-O-CH2-である。Yは、極めて特に好ましくは、-CH2-O-、-C(=O)-O-、-CH2-C(=O)-O-、又は-CH2-O-C(=O)である;
- mは、0~2の整数、好ましくは0又は1である;mが2である場合、2つのR1は、好ましくは同じである;
- nは、1~10、好ましくは2~6、より好ましくは2の整数である;
- pは、1~2の整数、好ましくは1である;
- R1は、互いに独立して、-C(=O)-OH、-C(=O)-O-C1~C20-アルキル、-O-C(=O)-C1~C20-アルキル、-C(=O)-O-アリール、-O-C(=O)-アリール、-C1~C20-アルキル、-アリール、-C1~C20-ヒドロキシアルキル、-C1~C20-アルカンジイル-O-C1~C20-アルキル、ハロゲンyl、-CF3、-CF2-CF3、及び-Siアルキル3からなる群から選択される。R1は、好ましくは、-C(=O)-OH、-C(=O)-O-C1~C8-アルキル、-O-C(=O)-C1~C8-アルキル、-C1~C8アルキル、-C1~C8ヒドロキシアルキル、又は-C1~C8-アルカンジイル-O-C1~C8-アルキル、より好ましくは-C(=O)-OH、-C(=O)-O-C1~C4-アルキル、-O-C(=O)-C1~C4-アルキル、-C1~C4-アルキル、-C1~C4-ヒドロキシアルキル、又は-C1~C4-アルカンジイル-O-C1~C4-アルキル、より好ましくは-C(=O)-OH、-C(=O)-O-C1~C4-アルキル、-O-C(=O)-C1~C4-アルキル、-C1~C4アルキル、-CH2-OH、又は-CH2-O-C1~C4-アルキルである。更により好ましくは、R1は、-C(=O)-OH、-C(=O)-O-メチル、-O-C(=O)-メチル、メチル、エチル、n-エチル、iso-エチル、n-ブチル、iso-ブチル、及びtert-ブチル、-CH2-OH、-CH2-O-メチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシ-n-エチル、2-ヒドロキシ-イソプロピル、4-ヒドロキシ-n-ブチル、3-ヒドロキシ-isoブチル、及び2-ヒドロキシ-tert-ブチルからなる群から選択される。メチル、エチル、-C(=O)-O-メチル、-O-C(=O)-メチル、-CH2-OH、及び2-ヒドロキシエチルが特に好ましく、メチル又は-CH2-OHが極めて特に好ましい。
【0074】
隣接する炭素原子に結合した2つのR1もまた一緒に連結することができ、したがって、それらが結合した炭素原子と環を、好ましくは5~7個の環原子を有する環を形成することができる。これは、例えば、シクロペンタン環又はラクトン環をもたらすことができる。
【0075】
あるいは、2つのR1は一緒になって、2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH2)z-の架橋(式中、zは、1~4、好ましくは1~3、より好ましくは1~2、特に好ましくは1である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH2)q-Ar-(CH2)q-の架橋(式中、Arは芳香族、好ましくはフェニルであり、qは、互いに独立して、0~2の整数、好ましくは0~1の整数、より好ましくは両方が0の整数である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH2)q-C=C-(CH2)q-の架橋(式中、qは、互いに独立して、0~2の整数、好ましくは0~1の整数、より好ましくは両方が0の整数である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH2)q-O-(CH2)q-の架橋(式中、qは、互いに独立して、0~2の整数、好ましくは0~1の整数、更により好ましくは両方が0の整数である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH2)q-NR4-(CH2)q-の架橋(式中、qは、互いに独立して、0~2の整数、好ましくは0~1の整数、より好ましくは両方が0の整数であり、かつR4は、H又は置換若しくは非置換C1~C20アルキル、より好ましくはH若しくは非置換C1~C20アルキル、更により好ましくはHである)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-C(=O)-O-(CH2)z-O-(O=)-C-の架橋(式中、zは、1~4の整数、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1~2の整数、特に好ましくは2の整数である)、又は式-C(=O)-O-の架橋、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-C(=O)-O-Ar-O-(O=)-C-の架橋(式中、Arは芳香族、好ましくはフェニルであり、zは、1~4の整数、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1~2の整数、特に好ましくは1の整数である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH2)q-Si(R4)2-(CH2)q-の架橋(式中、qは、互いに独立して、0~2の整数、好ましくは0~1の整数、より好ましくは少なくとも1回の1の整数であり、R4は、H又は置換若しくは非置換C1~C20アルキル、より好ましくはH又は非置換C1~C20アルキル、より好ましくは非置換C1~C4アルキルである)を形成する;
- R2は、C1~C17アルキル又はC1~C17ヒドロキシアルキルである。R2は、好ましくはC1~C8アルキル又はC2~C8ヒドロキシアルキル、更により好ましくはC1~C4アルキル又はC2~C4ヒドロキシアルキルである。更により好ましくは、R2は、メチル、エチル、n-エチル、iso-エチル、n-ブチル、iso-ブチル、及びtert-ブチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシ-n-エチル、2-ヒドロキシ-イソプロピル、4-ヒドロキシ-n-ブチル、3-ヒドロキシ-isoブチル、及び2-ヒドロキシ-tert-ブチルからなる群から選択される;メチル、エチル、及び2-ヒドロキシエチルが特に好ましく、メチルが極めて特に好ましい。
【0076】
好ましい実施形態(変形例)では、RadP-ROMPモノマーは、式(III)を有する:
【0077】
【化13】
式中:
- 歪みシクロオレフィンは、シクロペンテン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、シクロオクテン、テトラシクロ[6.2.1.1.0]-ドデセン、及びそれらのオキサ誘導体からなる群から選択され、式中、歪みシクロオレフィン構造要素中のC原子は、Oで置き換えられている。これは、ノルボルネン、ノルボルナジエン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ-3,8-ジエン(ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[6.2.1.1.0]-ドデセン、及びこれらのオキサ誘導体からなる群から選択されることが好ましく、式中、歪みシクロオレフィン構造要素中のC原子は、Oで置き換えられている;
- Yは、単結合、-C
1~C
8-アルカンジイル-、-O-C
1~C
8-アルカンジイル-、-C
1~C
8-アルカンジイル-O-、-O-C
1~C
8-アルカンジイル-O-、-C
1~C
8-アルカンジイル-O-C
1~C
8-アルカンジイル-、-C(=O)-O-、-C
1~C
8-アルカンジイル--C(=O)-O-、-C(=O)-O-C
1~C
8-アルカンジイル-、-C(=O)-O-C
1~C
8-アルカンジイル-O-C(=O)-、-C
1~C
8-アルカンジイル-C(=O)-O-C
1~C
8-アルカンジイル-、-O-C(=O)-、-C
1~C
8-アルカンジイル-O-C(=O)-、-O-C(=O)-C
1~C
8-アルカンジイル-、-O-C(=O)-C
1~C
8-アルカンジイル-C(=O)-O-、-C
6~C
10-アリールジイル-、-O-C
6~C
10-アリールジイル-からなる群から選択される。
【0078】
Yは、より好ましくは、-C1~C8-アルカンジイル-、-C1~C8-アルカンジイル-O-、-C(=O)-O-、-C1~C8-アルカンジイル--C(=O)-O-、-C(=O)-O-C1~C8-アルカンジイル-、-O-C(=O)-、-C1~C8-アルカンジイル-O-C(=O)-からなる群から選択される。
【0079】
Yは、より好ましくは、-C(=O)-O-、-C1~C2-アルカンジイル-、-C1~C2-アルカンジイル-O-、-C(=O)-O-C1~C2-アルカンジイル-、-C1~C2-アルカンジイル-C(=O)-O-、-C1~C2-アルカンジイル-O-C(=O)-からなる群から選択される。Yは、特に好ましくは、-CH2-、-CH2-O-、-C(=O)-O-、-CH2-C(=O)-O-、-CH2-O-C(=O)-、又は-C(=O)-O-CH2-である。Yは、極めて特に好ましくは、-CH2-O-、-C(=O)-O-、-CH2-C(=O)-O-、又は-CH2-O-C(=O)である;
- mは、0又は1である;
- nは、2~6の整数、より好ましくは2である;
- pは、1~2の整数、好ましくは1である;
- R1は、-C(=O)-OH、-C(=O)-O-C1~C4-アルキル、-O-C(=O)-C1~C4-アルキル、-C1~C4アルキル、-CH2-OH、or-CH2-O-C1~C4-アルキルからなる群から選択され、好ましくは、-C(=O)-OH、-C(=O)-O-メチル、-O-C(=O)-メチル、メチル、エチル、n-エチル、iso-エチル、n-ブチル、iso-ブチル、及びtert-ブチル、-CH2-OH、-CH2-O-メチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシ-n-エチル、2-ヒドロキシ-イソプロピル、4-ヒドロキシ-n-ブチル、3-ヒドロキシ-isoブチル、並びに2-ヒドロキシ-tert-ブチルからなる群から選択される。メチル、エチル、-CH2-OH、及び2-ヒドロキシエチルが特に好ましく、メチルが極めて特に好ましい。あるいは、2つのR1は、一緒になって、2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH2)z-の架橋(式中、zは、1~2の整数、好ましくは1の整数である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH2)q-C=C-(CH2)q-の架橋(式中、qは、互いに独立して、0~1の整数、より好ましくは両方が0の整数である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH2)q-O-(CH2)q-の架橋(式中、qは、互いに独立して、0~2の整数、好ましくは0~1の整数、更により好ましくは両方が0の整数である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-C(=O)-O-(CH2)z-O-(O=)-C-の架橋(式中、zは、1~4の整数、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1~2の整数、特に好ましくは1の整数である)、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-C(=O)-O-フェニル-O-(O=)-C-の架橋、又は2つのシクロオレフィン構造要素を相互接続する式-(CH2)q-Si(R4)2-(CH2)q-の架橋(式中、qは、互いに独立して、0~1の整数、より好ましくは少なくとも1回の1であり、かつR4は、H又は置換若しくは非置換C1~C4アルキル、より好ましくはH又は非置換C1~C4アルキル、より好ましくは非置換C1~C4アルキルである)を形成する;
- R2は、メチル、エチル、n-エチル、iso-エチル、n-ブチル、iso-ブチル、及びtert-ブチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシ-n-エチル、2-ヒドロキシ-イソプロピル、4-ヒドロキシ-n-ブチル、3-ヒドロキシ-isoブチル、及び2-ヒドロキシ-tert-ブチルからなる群から選択される;メチル、エチル、及び2-ヒドロキシエチルが特に好ましく、メチルが極めて特に好ましい。
【0080】
より好ましい実施形態では、RadP-ROMPモノマーは、以下の式(IV)、(V)、又は(VI)を有する:
【0081】
【0082】
【化15】
は、単結合又は二重結合、好ましくは単結合である;
- Y、n、R
1、及びpは、式(III)について上記で定義される通りであり、好ましくは上記で定義される式(III)の好ましい変形例について定義される通りである;
- Xは、-CH
2又は-O-であり、好ましくは-CH
2-である;
- qは、1、2、3、5、及び6からなる群から選択される整数、好ましくは1、3、及び5から選択される整数、特に好ましくは3の整数であり、式中、pはq以下である。
【0083】
更により好ましい実施形態では、RadP-ROMPモノマーは、以下の式(VII)~式(IX)からなる群から選択される:
【0084】
【化16】
式中:
Y、n、及びR
2は、式(III)について上記で定義される通りであり、好ましくは上記で定義される式(III)の好ましい変形例について定義される通りである。
【0085】
特に好ましい実施形態では、RadP-ROMPモノマーは、ノルボルネン基とメタクリレート基の両方を含む分子、すなわち、R2がメチルである式(VII)の分子である。したがって、この実施形態におけるRadP-ROMPモノマーは、以下の式(X)を有する:
【0086】
【化17】
式中:
Y及びnは、式(III)について上記で定義される通りであり、好ましくは上記で定義される式(III)の好ましい変形例について定義される通りである。
【0087】
最も好ましくは、RadP-ROMPモノマーは、式Mon13又は式Mon14を有する分子、最も好ましくは式Mon13を有する分子である:
【0088】
【0089】
成分A中のROMPモノマーの百分率(重量%)は、成分Aの総重量に基づいて、有利にはおよそ5%超、好ましくはおよそ15%超、特に好ましくはおよそ20%超である。成分A中のROMPモノマーの百分率(重量%)は、成分Aの総重量に基づいて、有利にはおよそ5%~およそ90%、好ましくはおよそ8%~およそ80%、より好ましくはおよそ10%~およそ60%、より好ましくはおよそ20%~およそ55%、更により好ましくはおよそ25%~およそ55%、特に好ましくはおよそ25%~およそ50%、非常に特に好ましくはおよそ28%~およそ45%である。
【0090】
好ましくは、量、及び/又は成分Aの総量に対する比、及び/又は実施例に示される2C系全体の総量に対する比における、実施例で使用されるROMPモノマー又はRadP-ROMPモノマーが最も好ましい。
【0091】
ラジカル開始剤
成分Aは少なくとも1つのラジカル開始剤を含む。原則として、メタクリレートの重合のための当業者に公知の任意のラジカル開始剤を使用することができる。
【0092】
ラジカル開始剤としては、過酸化物を用いることが好ましい。メタクリレートを硬化させるために使用される当業者に知られている過酸化物のいずれかを使用することができる。このような過酸化物は、液体又は固体のいずれかの有機及び無機過酸化物を含み、また、過酸化水素を使用することも可能である。適切な過酸化物の例は、ペルオキシカーボネート(式-OC(O)OO-の)、ペルオキシエステル(式-C(O)OO-の)、ジアシル過酸化物(式-C(O)OOC(O)-の)、ジアルキル過酸化物(式-OO-の)、ヒドロペルオキシド(式-OOHの)などである。これらはオリゴマー又はポリマーとして存在し得る。適切な過酸化物の総合的な例の組は、例えば、米国特許出願公開第2002/0091214号(A1)明細書の段落[0018]に記載されている。
【0093】
過酸化物は、好ましくは、有機過酸化物の群から選択される。適切な有機過酸化物は、tert-ブチルヒドロペルオキシドなどの三級アルキルヒドロペルオキシド、並びにクメンヒドロペルオキシドなどの他のヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルエステル(例えば、tert-ブチルペルオキシベンゾエート)などのペルオキシエステル又は過酸、過酸化ベンゾイル(BPO)、ペルアセテート及びペルベンゾエート、(ジ)ペルオキシエステルを含むラウロイルペルオキシド、ペルオキシジエチルエーテルなどのペルエーテル、メチルエチルケトンペルオキシドなどのペルケトンである。ラジカル開始剤として使用される有機過酸化物は、多くの場合、三級ペルエステル又は三級ヒドロペルオキシド、すなわち、-O-O-アシル又は-OOH基に直接結合している三級炭素原子を有する過酸化物化合物である。しかしながら、これらの過酸化物と他の過酸化物との混合物もまた、本発明により使用することができる。過酸化物はまた、混合過酸化物、すなわち、1つの分子内に2つの異なる過酸化物運搬単位を有する過酸化物であり得る。好ましい実施形態では、過酸化ベンゾイル(BPO)又はペルオキシ安息香酸tert-ブチルが使用され、BPOが非常に特に好ましくは使用される。
【0094】
過酸化物は、純粋な形で、担体材料上で、又は混合物の一部として使用することができる。これは、典型的には、混合物の一部として、又は担体材料上、例えばPerkadox 20Sなどの担体材料上で使用される。実施例で使用される過酸化物BPO及びその担体結合変異体Perkadox 20Sが特に好ましい。Perkadox 20S又は同等の担体結合BPOが最も好ましい。
【0095】
ラジカル開始剤はその反応性に合わせた量で使用される。典型的には、例えばBPOの場合、これは、メタクリレート基を有する全モノマーに基づいておよそ1.0重量%~およそ25重量%、より好ましくはおよそ2.5重量%~およそ12.5重量%、更により好ましくはおよそ3.5重量%~およそ7.5重量%、更により好ましくはおよそ5.0重量%~およそ6.0重量%、例えば、メタクリレート基を有する全モノマーに基づいておよそ5.0重量%の量である。担体結合BPOの場合、使用される量は、対応する純粋なBPOの量に従って調整される。典型的には、例えばPerkadox 20Sの場合におけるラジカル開始剤の量は、したがって、メタクリレート基を有する全モノマーに基づいておよそ5重量%~およそ60重量%、より好ましくはおよそ10重量%~およそ50重量%、更により好ましくはおよそ20重量%~およそ40重量%、更により好ましくはおよそ25重量%~およそ30重量%、例えば、メタクリレート基を有する全モノマーに基づいておよそ30重量%の量である。
【0096】
最も好ましいラジカル開始剤は、好ましくは実施例に示される対応するメタクリレートモノマーに対する量及び/又は比での、実施例で使用されるラジカル開始剤である。
【0097】
任意選択:充填剤
好ましい実施形態では、成分Aはまた、1つ以上の充填剤を含む。加えて、成分Bはまた、任意選択的に充填剤を含むこともできる。好ましい実施形態では、両方の成分は、充填剤、特に同じ充填剤を、好ましくは関連する成分の総量に基づく同じ重量%で含む。
【0098】
いくつかの物質は、充填剤、および任意選択的に修飾された形で添加剤の両方として使用することができることに留意されたい。例えば、フュームドシリカは、好ましくは、その極性の後処理形態の充填剤として使用され、好ましくは、その無極性の後処理形態の添加剤として使用される。充填剤又は添加剤として全く同じ物質を使用できる場合、有利に、その総量(任意選択的に、他の充填剤との合計)は本明細書で定められた充填剤の上限を超えてはならない。
【0099】
建設用途、特に化学的留付のための二成分系を生成するために、そのような用途で一般的に使用される充填剤を添加することができる。これらの充填剤は、例えば以下に記載されるように、典型的には無機充填剤である。
【0100】
充填剤の割合の計算には以下が適用される:関連成分の総量中の総充填剤(及び、場合によっては添加剤)の割合は、0重量%~およそ90重量%、好ましくはおよそ20~およそ80重量%、より好ましくはおよそ30~およそ70重量%、更により好ましくはおよそ50~およそ65重量%である。これらの重量%範囲はまた、2C系の総量中における全充填剤の割合に対する好ましい範囲である。
【0101】
使用される充填剤は、従来の充填剤、好ましくは、石英、ガラス、砂、石英砂、石英粉末、磁器、コランダム、セラミック、タルク、ケイ酸(例えば、フュームドシリカ、特に無極性様式で非後処理のフュームドシリカ)、ケイ酸塩、酸化アルミニウム(例えば、アルミナ)、粘土、二酸化チタン、チョーク、重晶石、長石、玄武岩、水酸化アルミニウム、花崗岩若しくは砂岩、サーモセットなどの高分子充填剤、石膏、クイックライム、セメント(例えば、アルミン酸塩セメント(しばしばアルミナセメントと呼ばれる)若しくはポルトランドセメント)などの水硬性充填剤、アルミニウムなどの金属、カーボンブラック、及び更なる木材、鉱物若しくは有機繊維など、又はそれらの2つ以上の混合物などの鉱物若しくは鉱物様充填剤である。
【0102】
充填剤は、任意の所望の形態、例えば粉末若しくは粉として、又は成形体として、例えば円筒形、環状、球形、プレートレット、棒、サドル若しくは結晶形態、又は繊維形態(繊維状充填剤)で存在し得、対応するベース粒子は、好ましくは、最大直径がおよそ10mmであり、最小直径がおよそ1nmである。これは、直径がおよそ10mmである、又はおよそ1nmを超えるがおよそ10mm未満である任意の値であることを意味する。最大直径は、好ましくは直径でおよそ5mmの直径、より好ましくはおよそ3mm、更により好ましくはおよそ0.7mmである。およそ0.5mmの最大直径が極めて特に好ましい。より好ましい最小直径は、およそ10nm、更により好ましくはおよそ50nm、極めて特に好ましくはおよそ100nmである。この最大直径と最小直径との組合せから生じる直径範囲が特に好ましい。ただし、球状の不活性物質(球形)は、好ましい、より顕著な強化効果を有する。好ましくは球形のコアシェル粒子もまた、充填剤として使用することができる。
【0103】
好ましい充填剤は、セメント、ケイ酸、石英、石英砂、石英粉末、アルミナ、コランダム、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される。フュームドシリカ、特に無極性様式で後処理されたフュームドシリカ、石英砂、石英粉末、コランダム、及びこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される充填剤が特に好ましい。無極性様式で後処理されたフュームドシリカ、石英砂及び石英粉末、並びにこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される充填剤が、極めて特に好ましい。無極性様式で後処理されたフュームドシリカ、例えばポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane:PDMS)(例えば、Cab-O-SilTS-720)で後処理されたフュームドシリカと、石英砂及び/又は石英粉末との混合物が特に好ましい。
【0104】
無極性様式で後処理されたフュームドシリカ、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)で後処理されたフュームドシリカと、石英砂及び/又は石英粉末との混合物が使用される場合、無極性様式で後処理されたフュームドシリカと石英砂及び石英粉末の総量との混合比は、およそ1:30(w/w)~およそ1:10(w/w)、好ましくはおよそ1:25(w/w)~およそ1:15(w/w)、より好ましくはおよそ1:20である。無極性様式で後処理されたフュームドシリカと、各成分及び2C系全体のモノマーの総量との混合比は、有利には、およそ1:20(w/w)~およそ1:5(w/w)、好ましくはおよそ1:15(w/w)~およそ1:7.5(w/w)、より好ましくはおよそ1:13(w/w)~1:9(w/w)、更により好ましくはおよそ1:12(w/w)~およそ1:10(w/w)である。
【0105】
これに関して、国際公開第02/079341号明細書及び国際公開第02/079293号明細書並びに国際公開第2011/128061号(A1)明細書が参照され、これらの関連する内容は、本出願に組み込まれる。
【0106】
実施例で使用される充填剤の混合物は、特に実施例に記載される比で、互いに、並びに/又は2C系のモノマーの総量及び/若しくは成分Aのモノマーの量に対して、極めて特に好ましい。
【0107】
成分B
成分Bは、メタクリレート(例えば、メチルメタクリレート又はBDDMA)、開環メタセシス重合のための触媒(ROMP開始剤)、及びラジカル促進剤(例えば、DMpT)を含む。好ましい実施形態では、成分Bはまた抑制剤(例えば、Tempol)も含む。
【0108】
(メタ)アクリレート
成分Bは、少なくとも1つの(メタ)アクリレートを含み、これは好ましくはメタクリレートである。
【0109】
本発明の文脈において、メタクリレートは、MMA及びBDDMAなどのエステル化メタクリル酸基を含有する化合物である。
【0110】
本発明の文脈において、成分Bに含有されるメタクリレートは、好ましくは上記で定義したようなRadP-ROMPモノマーではない。メタクリレートが歪みシクロオレフィン構造要素を含有し、したがってRadP-ROMPモノマーである場合、これは成分Aに含有されるのが好ましい。これは、例えば、メタクリレートであるジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、トリシクロペンタジエニルジメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルクロトネート、及び3-メチルシクロペンタジエニルメタクリレートに当てはまる。
【0111】
適切なメタクリレートは、脂肪族(直鎖状、分枝鎖状、若しくは環状)又は芳香族C5~C15メタクリレート、例えば、メチルメタクリレート(MMA)、tert-ブチルメタクリレート及びノルボルニルメタクリレート、並びに2-又は3-ヒドロキシエチルメタクリレート(HPMA)、1,2-エタンジオールジイメタクリレート、1,3-プロパンジオールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート(BDDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、フェネチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、エチルトリグリコールメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノメチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ビスフェノールAメタクリレート、ノボラックエポキシジメタクリレート、ジ-[メタクリロイル-マレオイル]-トリシクロ-5.2.1.0.2.6-デカン、3-メタクリロイル-オキシメチル-トリシクロ-5.2.1.0.2.6-デカン、デカリル-2-メタクリレートなど、PEG-ジメタクリレート、例えば、PEG200-ジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ソルケタールメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシエチルジメタクリレート、及びメトキシエチルメタクリレートなどである。
【0112】
好ましくは、メタクリレートは、脂肪族(直鎖状、分枝状、又は環状)C5~C15メタクリレート(メチルメタクリレート(MMA)など、tert-ブチルメタクリレート及びノルボルニルメタクリレート)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-及び3-ヒドロキシエチルメタクリレート(HPMA)、1,2-エタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート(BDDMA)、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ビスフェノールAメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、並びにPEG200ジメタクリレートからなる群から選択される。メチルメタクリレート(MMA)、tert-ブチルメタクリレート並びにノルボルニルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-及び3-ヒドロキシエチルメタクリレート(HPMA)、1,2-エタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート(BDDMA)、並びに1,3-ブタンジオールジメタクリレートが特に好ましい。メチルメタクリレート(MMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、及び1,4-ブタンジオールジメタクリレート(BDDMA)が極めて特に好ましい。MMA及びBDDMAが最も好ましい。
【0113】
本明細書に列挙した2つ以上のメタクリレートの混合物もまた使用することができる。
【0114】
加えて、メタクリレートは、メタクリル酸エステル基に加えて、過酸化物などのラジカル開始剤で重合できる他の反応性基、例えば、国際公開第2010/108939号(A1)明細書などに記載されているように、イタコン酸、シトラコン酸、及びアリル基などに由来する反応性基を含有し得る(イタコン酸エステル)。
【0115】
メタクリル酸エステル基に加えて、メタクリレートはまた、ROMP開始剤と重合することができる他の反応性基を含有することができる。好ましい実施形態では、メタクリレートはしたがって、メタクリレート基(メタクリル酸エステル基)としての上記したRadP-ROMPモノマーの一部であり得る。この場合、ROMPモノマーに加えて、更なるメタクリレートモノマーを使用する必要はない。しかしながら、好ましい実施形態では、RadP-ROMPモノマーに加えて、上記のメタクリレートの群から選択されるモノマー又はこれらのモノマーの2つ以上の混合物もまた、本発明にかかる2C系中に存在する。
【0116】
実施例で使用されるメタクリレート、好ましくは、実施例に示されるROMPモノマー(任意選択的にはRadP-ROMPモノマーを含む)及び/又はラジカル開始剤に対する量及び/又は比が最も好ましい。
【0117】
メタクリレート又はメタクリレートは、好ましくは、本発明にかかる2C系中において、ROMPモノマーの量に基づいて、0~およそ40重量%、特に好ましくはおよそ1~およそ30重量%、更により好ましくはおよそ2~およそ25重量%、更により好ましくはおよそ5~およそ20重量%、更により好ましくはおよそ7~およそ15重量%、例えば、およそ12重量%の量で存在する(本明細書のROMPモノマーは、任意選択的にはRadP-ROMPモノマーを含む)。
【0118】
(メタ)アクリレートとしてメタクリレートの代わりにアクリレートを使用する場合、メタクリレートについて先の段落に記載したようなアクリレートについても同様であるが、化合物が、エステル化されたメタクリル酸基の代わりにエステル化されたアクリル酸基を含有する点が異なる。
【0119】
ROMP開始剤
成分Bは少なくとも1つのROMP開始剤を含む。原則として、使用される環系における開環及び続く重合をもたらす任意のROMP触媒を、本発明にかかるデュアルキュアプロセスのためのROMP開始剤;言い換えれば、開環オレフィンメタセシス重合のための任意の触媒(ROMP開始剤)として使用することができる。典型的には、これらは金属カルベン錯体、例えばルテニウムカルベン錯体である。
【0120】
好ましい実施形態では、使用されるROMP開始剤は、Grubbs触媒である。Grubbs触媒はルテニウムカルベン錯体であり、文献で公知であり、例えば、Grubbs,R.H.、「Handbook of Metathesis」、Wiley-VCH、Germany(2003年);Grubbs,R.H.、Trnka,T.M.、「Ruthenium-catalyzed Olefin Metathesis」、「Ruthenium in Organic Synthesis」中(S.-I.Murahashi編)、Wiley-VCH、Germany(2004年);並びにLeitgeb,A.ら、「Polymer」第51巻(第14号):第2927~2946頁、及びChoi,T.l.及びGrubbs,R.H.、「Angewandte Chemie International Edition」第42巻(第15号):第1743~1746頁に記載されている。例えば、Walsh,D.J:ら、「Journal of the American Chemical Society」第139巻(第39号):第13644~13647頁、及び特にSlugovc,C.ら、「Macromol.Rapid Commun.」、2004年(第25巻):第475頁、及び「J.Mole.Catal.A-Chem.」、2004年(第213巻):第107頁に記載された、リガンドとして1つ以上のブロモピリジン(複数可)を有するグラブス触媒が特に好ましい。
【0121】
好ましい実施形態では、Grubbs触媒は以下の式を有する:
【0122】
【化19】
式中、
Zは、Cl、Br、F、I、トシレート、又はL
1、L
2、L
3として定義されるリガンドであり;
L
1、L
2、L
3は、互いに独立して、P(R
15)
3(式中、R
15=フェニル、イソプロピル、シクロヘキシル、
【0123】
【化20】
(式中、R
16=メシチル(2,4,6-トリメチルフェニル;MES)、非置換ピリジン、2位若しくは2位及び4位で置換されたピリジンからなる群から非存在であるか又は選択され(置換基は、-Br、-Cl、-F、-I、-OCH
3からなる群から選択される);
R
13、R
14は、互いに独立して、H、芳香族又は脂肪族、多環式又は縮合C
6~C
20環又はC
6~C
20環系からなる群から選択され、環中に1~5個のヘテロ原子を有し、N、O、及びPから独立して選択され、当該環又は環系は、非置換であるか、又は1~5個の置換基によって追加的に置換され、これらの置換基は、互いに独立して、-Cl、-Br、-I、-F、-OR
17、-CH=N-R
17、-C(=O)R
17、-C(=O)OR
17、-OC(=O)R
17からなる群から選択され、式中、R
17は、直鎖又は分枝鎖の非環式C
1~C
14アルキル又は環式C
3~C
14アルキル又はC
6~C
14アリールであり、式中、R
17は、互いに独立して、N、O、Si、及びSから選択された1~5個のヘテロ原子を含有することができ;
T
1、T
2は、互いに独立して、-O-、-S-、飽和C
1~C
4アルキレン、及び不飽和C
2~C
4アルキレンからなる群から非存在であるか又は選択され、式中、アルキレンは、N、O、及びSiからなる群から互いに独立して選択される0~2個のヘテロ原子を含有することができる。
【0124】
ROMP開始剤として使用されるGrubbs触媒は、好ましくは、
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
[1,3-ビス[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]-ジクロロ-(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ルテニウム(II)、ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ-(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、及び[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]-ジクロロ-(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)(ピリジル)ルテニウム(II)からなる群から選択される。
【0129】
本発明の一実施形態では、Grubbs触媒は、錯体G3、錯体M20、すなわち[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]-ジクロロ-(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)であり、錯体M31、すなわち[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]-ジクロロ-(3-フェニル-1H-インデンe-1-イリデン)(ピリジル)ルテニウム(II)、又はHoveyda Grubbs触媒M722であり、これらは全て、例えば、UMICORE AG&Co.KGから入手可能である。Grubbs触媒M20、M31、又はM722が好ましく、最も好ましいROMP開始剤はM20である。
【0130】
【0131】
2つ以上のROMP開始剤の組合せもまた使用することができる。
【0132】
本発明にかかる二成分系において、ROMP開始剤は、有利にはラジカル開始剤から分離されている。これは、ラジカル開始剤がROMP開始剤の貯蔵安定性を低下させることができるからである。更に、本発明にかかる二成分系におけるROMP開始剤は、特にラジカル促進剤がラジカル促進剤として本明細書で言及される(好ましい)アミンの1つである場合、ラジカル促進剤と同じ成分中に有利に存在する。これにより、ROMP開始剤の貯蔵安定性を高めることができる。好ましい実施形態では、この組合せは、本発明にかかる成分Bによって実現される。
【0133】
本発明にかかる2C系におけるROMP開始剤は、典型的には、ROMPモノマーの総量に基づいて、およそ10ppm~およそ500ppm、好ましくはおよそ20ppm~およそ300ppm、より好ましくはおよそ30ppm~およそ100ppm、更により好ましくはおよそ40ppm~およそ70ppm、例えばおよそ50ppmの量である。
【0134】
最も好ましいROMP開始剤は、好ましくは実施例に示される対応するROMPモノマーに対する量及び/又は比での、実施例で使用されるROMP開始剤である。
【0135】
ラジカル促進剤
成分Bは少なくとも1つのラジカル促進剤を更に含む。ラジカル開始剤と組み合わせて使用するのに適した促進剤は当業者に公知である。本出願の文脈における適切なラジカル促進剤は、便宜上、有機アミンである。
【0136】
ラジカル促進剤として適切な有機アミンは、例えば米国特許出願公開第2011/071234号(A1)明細書に記載されている、以下の化合物の中から選択される:ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-エチルアミン、ジ-n-エチルアミン、トリ-n-エチルアミン、iso-エチルアミン、ジ-iso-エチルアミン、トリ-iso-エチルアミン、n-ブチルアミン、iso-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-iso-ブチルアミン、トリ-iso-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、iso-ペンチルアミン、ジ-iso-ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、アミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノヘキサノール、エトキシアミノエタン、ジメチル(2-クロロエチル)アミン、2-エチルヘキシルアミン、ビス(2-クロロエチル)アミン、2-エチルヘキシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、N-メチルステアリルアミン、ジアルキルアミン、エチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、パーメチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2-ジアミノプロパン、ジ-エチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、4-アミノ-1-ジエチルアミノペンタン、2,5-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N,N-ジメチルアミノエタノール、2-(2-ジエチルアミノエトキシ)エタノール、ビス(2-ヒドロキシエチル)オレイルアミン、トリス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]アミン、3-アミノ-1-プロパノール、メチル(3-アミノエチル)エーテル、エチル-(3-アミノエチル)エーテル、1,4-ブタンジオール-ビス(3-アミノエチルエーテル)、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、1-ジエチルアミノ-2-プロパノール、ジ-iso-プロパノールアミン、メチル-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミン、トリス(2-ヒドロキシエチル)アミン、4-アミノ-2-ブタノール、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノ-2-メチルプロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチルプロパンジオール、5-ジエチルアミノ-2-ペンタノン、3-メチルアミノプロピノニトリル、6-アミノヘキサン酸、11-アミノウンデカン酸、6-アミノヘキサン酸エチルエステル、11-アミノヘキサノエート-イソプロピルエステル、シクロヘキシルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキシルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキシルアミン、N-(3-アミノエチル)シクロヘキシルアミン、アミノメチルシクロヘキサン、ヘキサヒドロトルイジン、ヘキサヒドロベンジルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジ-エチルアニリン、iso-ブチルアニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ヒドロキシエチルアニリン、ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、クロロアニリン、アミノフェノール、アミノ安息香酸及びそのエステル、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、トリベンジルアミン、メチルジベンジルアミン、β-フェニルエチルアミン、キシリジン、ジ-iso-エチルアニリン、ドデシルアニリン、アミノナフタレン、N-メチルアミノナフタレン、N,N-ジメチルアミノ-ナフタレン、N,N-ジベンジルナフタレン、ジアミノシクロヘキサン、4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシル-メタン、ジアミノ-ジメチル-ジシクロヘキシルメタン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノビフェニル、ナフタレンジアミン、トルイジン、ベンジジン、2,2-ビス(アミノフェニル)プロパン、アミノアニソール、アミノチオフェノール、アミノジフェニルエーテル、アミノクレゾール、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-フェニルモルホリン、ヒドロキシエチル-モルホリン、N-メチルピロリジン、ピロリジン、ピペリジン、ヒドロキシエチルピペリジン、ピロール、N,N-ビスアルキルアリールアミン、ピリジン、キノリン、インドール、インドレニン、カルバゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、ピリミジン、キノキサリン、アミノモルホリン、ジモルホリンエタン、並びに[2,2,2]-ジアザビシクロオクタン。
【0137】
本発明においては芳香族アミンが特に好ましく、アニリン、トルイジン、及びN,N-ビスアルキルアリールアミン、例えば、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジ-iso-プロパノール-p-トルイジン(DiPpT)、N,N-ジ-ヒドロキシエチル-m-トルイジン(DHEmT)、N,N-ジメチル-p-トルイジン(DMpT)、N,N-ジエチル-p-トルイジン(DEpT)、N,N-ビス(ヒドロキシアルキル)アリールアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-トルイジン、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)アニリン、N,N-ビス(3-メタクリロイル-2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ジブトキシヒドロキシエチル-p-トルイジン、及び4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルメタンなどが最も好ましい。特に、N,N-ジ-iso-プロパノール-p-トルイジン(DiPpT)、N,N-ジ-ヒドロキシエチル-m-トルイジン(DHEmT)、N,N-ジメチル-p-トルイジン(DMpT)、及びN,N-ジエチル-p-トルイジン(DEpT)が好ましい。DiPpT及びDMpTが極めて特に好ましく、DMpTが最も好ましい。
【0138】
単一のラジカル促進剤又は複数のラジカル促進剤の混合物を使用することができる。単一のラジカル促進剤の使用が好ましい。
【0139】
ラジカル促進剤は、典型的には、ROMPモノマー(ROMPモノマーは任意選択的にはRadP-ROMPモノマーを含む)に基づいて、およそ0.01~およそ10重量%、好ましくはおよそ0.1~およそ5重量%、より好ましくはおよそ0.2~およそ3重量%、更により好ましくはおよそ0.4~およそ2.0重量%、更により好ましくはおよそ0.5~およそ1.5重量%、更により好ましくはおよそ0.5~およそ1.3重量%、更により好ましくはおよそ0.8~1.2重量%の量で使用される。
【0140】
ラジカル促進剤は使用されるラジカル開始剤と一致しなければならない。これらがどのようなペアリングであるか、及びそれらが互いにどのような割合で使用され得るかは、当業者に知られている。ラジカル開始剤とラジカル促進剤との量比は、接着系アンカーにとって有利な時間でラジカル重合が完了するようなものであることが好ましい。
【0141】
好ましい実施形態では、ラジカル開始剤は、過酸化物、好ましくはBPOである。典型的には、ラジカル促進剤(これは、好ましくはDMpTである)と過酸化物との重量比は、1:1~1:10、好ましくは1:3~1:8、より好ましくは1:5~1:7であり、例えばDMpT:BPOは1:6である。担体結合BPOの場合、使用される量は、対応する純粋なBPOの量に従って調整される。典型的には、ラジカル促進剤(これは、好ましくはDMpTである)とPerkadox 20Sとの重量比は、したがって、1:5~1:50、好ましくは1:15~1:40、より好ましくは1:25~1:35であり、例えばDMpT:Perkadox 20Sは1:30である。
【0142】
最も好ましいラジカル促進剤は、実施例で使用されるラジカル促進剤であり、好ましくは、実施例に示される対応するラジカル開始剤とほぼ同じ量及び/又は比である。
【0143】
任意選択:抑制剤
安定化及び反応性の調整の両方のために、1つ以上の抑制剤が本発明にかかる二成分系中に存在することが好ましい。1つ又は複数の抑制剤が成分A又は成分Bに含有されてもよく、これは、成分Bのみに含有されることが好ましい。
【0144】
当業者に知られているように、ラジカル重合性化合物に通常使用されている抑制剤は、この目的に適している。これらの抑制剤は、好ましくは、フェノール抑制剤および非フェノール抑制剤、特にフェノチアジンから選択される。
【0145】
2-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、4,4’-チオ-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-イソプロピリデンジフェノール、6,6’-ジ-tert-ブチル-4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’-メチレン-ジ-p-クレゾールなどのフェノール、ピロカテコールなどのカテコール、並びに4-tert-ブチルピロカテコール及び4,6-ジ-tert-ブチルピロカテコールなどのカテコール誘導体、ヒドロキノン、2-メチルヒドロキノン、2-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,6-ジメチルヒドロキノン、2,3,5-トリメチルヒドロキノン、ベンゾキノン、2,3,5,6-テトラクロロ-1,4-ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、ナフトキノン、などのヒドロキノン類、又はそれらの2つ以上の混合物は、フェノール抑制剤として適切である。これらの抑制剤は市販の二成分ラジカル硬化系の一部であることが多い。
【0146】
フェノチアジン及び/若しくはそれらの誘導体若しくは組合せなどのフェノチアジン、又はガルビノキシル及びN-オキシルラジカルなどの安定な有機ラジカル、特にピペリジニル-N-オキシル若しくはテトラヒドロピロール-N-オキシルタイプは、好ましくは、アルミニウム-N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、アセトアルドキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトキシム、サリチルオキシム、ベンゾオキシム、グリオキシム、ジメチルグリオキシム、アセトン-O-(ベンジルオキシカルボニル)オキシム、TEMPOL、TEMPOなどのオキシムなどの非フェノール抑制剤とみなされる。
【0147】
さらに、独国特許第102011077248号明細書に記載のように、ヒドロキシル基に対してパラ位で置換したピリミジノールまたはピリジノール化合物が、抑制剤として使用され得る。
【0148】
使用できる安定したN-オキシルラジカルは、例えば、独国特許出願公開第19956509号明細書及び独国特許出願公開第19531649号明細書に記載されているものである。この種の安定したN-オキシルラジカルは、ピペリジニル-N-オキシル若しくはテトラヒドロピロール-N-オキシル型であるか、又はそれらの混合物である。
【0149】
好ましい安定したN-オキシルラジカルは、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オール(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシル又はTEMPOLとも呼ばれる)、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オン(TEMPONとも呼ばれる)、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチル-4-カルボキシル-ピペリジン(4-カルボキシ-TEMPOとも呼ばれる)、1-オキシル-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン、1-オキシル-2,2,5,5-テトラメチル-3-カルボキシルピロリジン(3-カルボキシ-PROXYLとも呼ばれる)及びこれらの化合物のうちの2つ以上の混合物からなる群から選択され、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オール(同義語:4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシル又はTEMPOL)が特に好ましい。
【0150】
1つ以上の抑制剤は、好ましくは、安定したN-オキシルラジカル、カテコール、カテコール誘導体及びフェノチアジン、並びにそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される。Tempol、カテコール、及びフェノチアジンからなる群から選択される1つ以上の抑制剤が特に好ましい。抑制剤TEMPOLが更により好ましい;抑制剤の混合物の場合、それらの1つは好ましくはTEMPOLである。
【0151】
実施例で使用される抑制剤が極めて特に好ましく、好ましくは実施例に示されるROMPモノマー及び/又はラジカル開始剤に対する量及び比である。
【0152】
抑制剤は、二成分系の所望の特性に応じて、単独で、又はそれらの2つ以上の組合せとしてのいずれかで使用され得る。抑制剤の組み合わせを使用する場合、フェノール抑制剤及び非フェノール抑制剤の組合せが好ましい。
【0153】
抑制剤又は抑制剤混合物は、当技術分野で公知の通常の量で、好ましくは、ROMPモノマーの総量に基づいて(ROMPモノマーは、任意選択的にRadP-ROMPモノマーを含む)、およそ0.01~およそ2重量%、より好ましくはおよそ0.05~およそ1%重量%、より好ましくはおよそ0.1~およそ1%重量%、より好ましくはおよそ0.15~およそ0.5%重量%、例えば0.23%重量%又は0.35重量%の量で加えられる。
【0154】
2C系の更なる任意選択的な原料
本発明にかかる二成分系はまた、任意選択的に、既に述べた原料に加えて更なる原料も含むことができる。2C系で一般的に使用される全ての任意選択的な原料としては、例えば染料、添加剤(例えば、増粘剤又は酸化防止剤)、及び反応性希釈剤などが可能である。
【0155】
反応性希釈剤
二成分系の一方又は両方の成分は、成分A及び成分B中の上記の必須モノマーに加えて、少なくとも1つの反応性希釈剤を含有することができる。
【0156】
反応性希釈剤は、好ましくは成分Bのみに含有される。しかしながら、成分Aはまた、反応性希釈剤を含有することもできるが、但し、これは成分A中のラジカル開始剤と同時に存在してもラジカル反応を開始しない反応性希釈剤であるものとする。これは、例えば、メタクリレート含有成分Bと混合した後にのみ混合することによって開始される共重合にモノマーとして関与する、アリルエーテル及びビニルエーテルの場合である。
【0157】
適切な反応性希釈剤は、低粘度でラジカル共重合可能な化合物、好ましくは標識のない化合物である。このような化合物は当技術分野で公知である。
【0158】
特に適切な反応性希釈剤は、既に上述したメタクリル酸エステルである。これらはいずれの場合も成分Bにおいて既に必須である。
【0159】
原則として、他の従来のラジカル重合性化合物は、単独で、又はメタクリル酸エステルとの混合物で、反応性希釈剤、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、アルキル化スチレン、例えばtert-ブチルスチレンなど、ジビニルベンゼン並びにビニル及びアリル化合物としてもまた使用でき、これらの代表物は標識の対象ではないことが好ましい。この種のビニル又はアリル化合物の例は、ビニルエーテル又はエステル及びアリルエーテル又はエステル、例えば、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-及びポリアルキレングリコールビニルエーテル、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-及びポリアルキレングリコールアリルエーテル、アジピン酸ジビニルエステル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、並びにトリメチロールプロパントリアリルエーテルである。
【0160】
反応性希釈剤(複数可)は、好ましくは、ROMPモノマーに基づいて、0~およそ30重量%、特に好ましくはおよそ0~およそ20重量%、更により好ましくはおよそ5~およそ15重量%の量で2C系中に存在する。最も好ましくは、本発明にかかる成分Bに含有されるメタクリレートに加えて、反応性希釈剤は存在しない。
【0161】
添加剤
従来の添加剤は、添加剤として使用され、すなわち、チキソトロピー剤、例えば任意選択的に有機的又は無機的に後処理されたフュームドシリカ(充填剤としてまだ使用されていない場合)、特に無極性様式で後処理されたフュームドシリカ(本発明の文脈では、充填剤に関連して上記でより詳細に既に記載されている)、ベントナイト、アルキル及びメチルセルロース、ヒマシ油誘導体など、可塑剤、例えばフタル酸又はセバシン酸エステルなど、帯電防止剤、増粘剤、酸化防止剤、柔軟剤、レオロジー助剤、湿潤剤、着色添加剤、例えばそれらの混合の改善された制御のための成分の異なる染色のための染料若しくは特定の顔料など、又はそれらの2つ以上の混合物として使用される。非反応性希釈剤(溶媒)もまた、低アルキルケトン、例えば、アセトン、ジメチルアセトアミドなどのジ低級アルキル低級アルカノイルアミド、キシレン又はトルエンなどの低級アルキルベンゼン、フタル酸エステル又はパラフィン、水又はグリコールなどの成分の総量に対して、好ましくは最大30重量%の量で含まれ得る。更に、表面改質フュームドシリカの形態の金属スカベンジャに含むことができる。好ましくは、少なくとも1つのチキソトロピー剤が添加剤として存在し、特に好ましくは有機的又は無機的に後処理されたフュームドシリカ、極めて特に好ましくは無極性様式で後処理されたフュームドシリカ、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)で後処理されたフュームドシリカが存在する。これに関して、国際公開第02/079341号明細書及び国際公開第02/079293号明細書並びに国際公開第2011/128061号(A1)明細書が参照され、これらの関連する内容は、本出願に組み込まれる。
【0162】
接着促進剤
一実施形態では、二成分系は、接着促進剤を追加的に含有し得る。接着促進剤を用いることにより、ボアホール壁と固着塊との架橋が改善され、硬化状態での接着が増加する。これは、例えばダイヤモンドドリルを使用して掘削されたボアホールで二成分固着塊を使用する場合に重要であり、破壊結合応強度を増加させる。適切な接着促進剤は、さらなる反応性有機基で官能化され、ポリマーネットワークに組み込むことができるシランの群から選択される。この群は、例えば、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、官能化テトラエトキシシラン、官能化テトラメトキシシラン、官能化テトラプロポキシシラン、官能化エチルまたはプロピルポリシリケート、およびそれらの2つ以上の混合物を含む。これに関して、独国特許出願公開第102009059210号明細書が参照され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0163】
接着促進剤は、関連成分の総重量に基づいて、およそ1~およそ10重量%の量で好都合に含有される。
【0164】
二成分系
本発明にかかる系は、典型的には、二成分系である。しかしながら、原料を分割することによって、3つ以上の成分、例えば3つの成分を有する多成分系として包装することもまたできる。次いで、これら3つ以上の成分を同時に又は順次混合して重合を開始する。しかしながら、本明細書に記載の二成分系が好ましい。
【0165】
多成分系が使用される場合、ラジカル開始剤は、本明細書で既に説明したように、有利にはROMP開始剤とは異なる成分中にあるべきである。更に、ラジカル開始剤はメタクリレートとは異なる成分でなければならず、ROMP開始剤はROMPモノマーとは異なる成分でなければならない。
【0166】
本発明にかかる2C系の一実施形態では、成分Aは、
- 上記で定義されたROMPモノマー、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのラジカル開始剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
を含有し、かつ成分Bは、
- 上記で定義されたメタクリレート、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのROMP開始剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのラジカル促進剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、を含有する。
【0167】
本発明にかかる2C系の好ましい実施形態では、成分Aは、
- 上記で定義されたROMPモノマー、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのラジカル開始剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つの充填剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
を含有し、かつ成分Bは、
- 上記で定義されたメタクリレート、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのROMP開始剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのラジカル促進剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つの抑制剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、を含有する。
【0168】
本発明にかかる2C系のより好ましい実施形態では、成分Aは、
- 上記で定義されたROMPモノマー、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのラジカル開始剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つの充填剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
を含有し、かつ成分Bは、
- 上記で定義されたメタクリレート、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのROMP開始剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのラジカル促進剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つの抑制剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つの充填剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、を含有する。
【0169】
本発明にかかる2C系の更なる実施形態では、成分Aは、
- 上記で定義されたRadP-ROMPモノマー、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのラジカル開始剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
を含有し、かつ成分Bは、
- 上記で定義された少なくとも1つのROMP開始剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのラジカル促進剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、を含有する。
【0170】
本発明にかかる2C系のより好ましい更なる実施形態では、成分Aは、
- 上記で定義されたRadP-ROMPモノマー、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのラジカル開始剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
を含有し、かつ成分Bは、
- 上記で定義されたメタクリレート、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのROMP開始剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのラジカル促進剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つの抑制剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、を含有する。
【0171】
本発明にかかる2C系のより好ましい更なる実施形態では、成分Aは、
- 上記で定義されたRadP-ROMPモノマー、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのラジカル開始剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つの充填剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
を含有し、かつ成分Bは、
- 上記で定義されたメタクリレート、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのROMP開始剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのラジカル促進剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つの抑制剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、を含有する。
【0172】
本発明にかかる2C系のより好ましい更なる実施形態では、成分Aは、
- 上記で定義されたRadP-ROMPモノマー、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのラジカル開始剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つの充填剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
を含有し、かつ成分Bは、
- 上記で定義されたメタクリレート、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのROMP開始剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つのラジカル促進剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つの抑制剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、
- 上記で定義された少なくとも1つの充填剤、好ましくは上記のその好ましい実施形態と、を含有する。
【0173】
加えて、1つ以上の更なるROMPモノマーが成分A中に存在することができ、及び/又は1つ以上の更なるメタクリレートが成分B中に存在することができる。
【0174】
これらの実施形態の各々からの成分A及び成分Bは、任意の組合せA+Bで互いに組み合わせて、2C系を形成することができる。
【0175】
特に好ましい実施形態では、2C系の構成要素は、本発明にかかる実施例に挙げられる構成要素のうちの1つ以上である。本発明にかかる個々の実施例に挙げられるものと同じ構成要素を含有するか、又は同じ構成要素からなり、好ましくはほぼ当該実施例に記載されている比率の2C系が、極めて特に好ましい。
【0176】
本発明にかかる2C系の極めて特に好ましい実施形態では、2C系は、これらの成分について実施例4又は実施例5、好ましくは実施例5に記載されているように、成分A及び/又は成分B、好ましくはA及びBの構成要素を含有する。最も好ましくは、2C系は、これらの成分について、これらの実施例に記載されるような割合で、実施例4又は実施例5、好ましくは実施例5に記載されるように、成分A及び/又は成分B、好ましくはA及びBを含有する。
【0177】
接着系アンカーとしての二成分系の使用
本発明にかかる2C系は、メタクリレートが通常使用される多くの分野で使用することができる。
【0178】
しかしながら、本発明は、特に、ボアホール内の定着手段(アンカーロッドなどの定着部材)の化学的留付、すなわち接着系アンカーとしての、本明細書に記載の二成分系の使用に関する。二成分系の好ましい実施形態では、成分Aは、モノマー及びROMP開始剤に加えて、本明細書に記載の充填剤を含有する。この充填剤はボアホール内の接着系アンカーの強度を高める。
【0179】
二成分系は、反応阻害様式で異なる容器に分離された成分A及び成分B、例えば、マルチ・チャンバ・カートリッジなどのマルチチャンバ装置を含み、そこから容器2つの成分は、機械的排出力の適用又はガス圧の適用によって排出され、混合される。別の可能性は、モルタル組成物の2つの成分を同時に混合しながら、ボアホールへと導入され、留付要素を回転様式で配置することによって破壊される二成分カプセルとして二成分系を生成することである。カートリッジシステムまたは注入システムが使用され、2つの成分が別個の容器から排出され、静的ミキサーを通過し、そこで均一に混合され、好ましくは、ノズルからボアホールに直接排出されることが好ましい。
【0180】
本発明にかかる2C系は、カートリッジシステム又はフィルムポーチシステムの形態で使用することができる。系の意図された使用において、成分は、機械的力の適用下において、又はガス圧によってのいずれかで、カートリッジ若しくはフィルムポーチから排出され、好ましくは構成要素が通過する静的ミキサーによって一緒に混合される。次いで、得られた混合物を、留付手段として、又は何らかの他の目的のために使用することができる。2C系が接着系アンカーとして使用される場合、混合物は、混合直後に例えばボアホールへと導入され、その後寸切アンカーロッドなどの留付けられるべき部材が、硬化混合物が入ったボアホールへと導入され、適宜調整される。
【0181】
本発明にかかる二成分系は、典型的には、およそ1:1~およそ20:1の重量比で成分A及び成分Bを含有する。本発明にかかる二成分系は、好ましくは、およそ3:1~およそ15:1、より好ましくはおよそ4:1~およそ12:1の重量比で成分A及び成分Bを含有する。本発明にかかる二成分系は、特に好ましくは、およそ10:1の重量比で成分A及び成分Bを含有する。ROMPモノマーとメタクリレートの比については同じ重量比範囲が好ましい。
【0182】
本発明にかかる2C系は、主に建設部門で使用され、例えば、ポリマーコンクリート、コーティング組成物、又は冷硬化道路標示としての、コンクリートの補修用である。当該系は、ボアホール、特に様々な基材、特にコンクリート、気泡コンクリート、レンガ、石灰石、砂岩、天然石、ガラスなど、及び鋼製などの金属基材に基づくものなどの鉱物基材のボアホールに、アンカー、寸切ボルト、鉄筋、ねじなどの定着手段を化学的に留付けるのに特に適切である。一実施形態では、ボアホールの基材は、コンクリートであり、定着手段は、鋼または鉄からなる。更なる実施形態では、ボアホールの基材は、鋼であり、定着手段は、鋼又は鉄からなる。
【0183】
本発明は、いくつかの実施例を参照して、次でより詳細に説明される。しかしながら、本発明は、実施例に示される特定の実施形態に限定されない。
【実施例】
【0184】
本明細書に列挙される組成物の全ての化学物質及び構成要素は、特に明記しない限り、市販されており、市販の通常の品質で使用された。
【0185】
ROMP開始剤として使用した錯体M20、すなわち[1,3-ビス(2,4,6トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]-ジクロロ-(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)は、UMICORE AG&Co.KG製であった。
【0186】
Perkadox 20Sは不活性充填剤中の20重量%のBPOからなり、オランダのAkzo Nobelから入手できる。
【0187】
特に明記しない限り、量に関連して実施例に示されている全ての%及びppmデータは、計算の基礎として、記載されている組成物の総重量に関連している。
【0188】
アルミニウム上のシリカゲル60 F254を薄層クロマトグラフィ(Merck)に使用した。
【0189】
特に明記しない限り、UV光(254nm)による可視化。
【0190】
シリカゲル60(220~440メッシュASTM)をカラムクロマトグラフィに使用した。
【0191】
1H-及び13C-NMR測定は、Bruker Avarice 300MHz(1H:300.36MHz、13C:75.53MHz)で25℃にて行った。ppm値はテトラメチルシラン(tetramethylsilane:TMS)に対するものである。
【0192】
実施例1:ノルボルネン含有モノマーの合成
実施例1.1:ディールス・アルダー反応
【0193】
【化25】
新たに蒸留したシクロペンタジエン(>1.3当量)を特定の氷冷アクリレート(1.0当量)へと滴加した。2時間後、氷冷を取り除き、混合物を室温で撹拌した。反応物は発熱性であったので、更に15分間氷で冷却した。その後、更なる発熱は観察されず、混合物を40℃で一晩撹拌した。
1H-NMR分光法によって完全な変換を確認した。過剰のシクロペンタジエン及び副生成物ジシクロペンタジエンを、溶離液としてCy/EtOAcを1:0(v/v)、次いで5:1(v/v)を用いたフラッシュ・カラム・クロマトグラフィによって除去した。エンド/エキソ比を
1H-NMR分光法によって決定した。
【0194】
Mon9(2-ヒドロキシエチル-エンド、エキソ-5-ノルボルネンカルボキシレート)の生成
【0195】
【化26】
出発物質:シクロペンタジエン((45.0mL、35.40g、0.535mol、1.3当量)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(40.0mL、44.33g、0.382mol、1.0当量)。
収量:66.78g(96%)、黄色がかった液体、エンド/エキソ:80/20
薄層クロマトグラフィ(TLC):R
f=0.62(Cy/EtOAc:、1:1、(v:v)、検出:KMnO
4)
【0196】
1H-NMR(300Hz,CDCl3):δ=6.21-6.18(m,1H,6エンド),6.16-6.08(m,2H,5エキソ,6エキソ),5.95-5.92(m,1H,5エンド),4.24-4.21(t,2H,8エキソ),4.17-4.14(t,2H,8エンド),3.84-3.77(m,2H,9エンド/エキソ),3.22(s,1H,1エンド),3.05(s,1H,1エキソ),3.02-2.96(m,1H,2エンド),2.91(s,1H,4エンド/エキソ),2.29-2.24(m,1H,2エキソ),2.08(s,b,OH),1.96-1.87(m,1H,3aエンド/エキソ),1.54-1.51(d,1H,3bエキソ),1.45-1.35(m,2H,7エンド/エキソ),1.29-1.26(d,1H,3bエンド)ppm.
【0197】
13C-NMR(75Hz,CDCl3):δ=176.7(1C,Cq,10エキソ),175.2(1C,Cq,10エンド),138.2(1C,6エキソ),137.9(1C,6エンド),135.7(1C,5bエキソ),132.2(1C,5bエンド),66.1(1C,8エキソ),65.9(1C,8エンド),61.4(2C,9エンド/エキソ),49.7(1C,7エンド),46.7(1C,7エキソ),46.4(1C,1エキソ),45.8(1C,1エンド),43.3(1C,2エンド),43.1(1C,2エキソ),42.6(1C,4エンド),41.7(1C,4エキソ),30.3(1C,3エキソ),29.3(1C,3エンド)ppm.
【0198】
実施例1.2:エステル化反応
【0199】
【化27】
ヒドロキシ官能化ノルボルネン(1.0当量)、無水トリエチルアミン(1.5当量)、及び無水テトラヒドロフランを、氷冷しながら不活性雰囲気中で混合した。THF無水物中の予冷された無色の酸塩化物溶液(1.5当量;例えば、塩化メタクリロイル)を、45分かけて滴加し、無色の沈殿物(塩化トリエチルアンモニウム)の形成が観察された。反応を氷浴中で1時間続け、次いで、室温で一晩続けた。関連するエステルへの完全な変換をTLCで監視した。溶媒を真空中で除去し、残渣をジエチルエーテル及びHCl水溶液(5体積%)中に溶解した。相を分離し、有機相をHCl溶液で再度洗浄した。次いで、有機相を水酸化ナトリウム水溶液(0.5M)で洗浄して、処理中に過剰の酸塩化物から形成された残留遊離酸を除去した。残留酸含有量は
1H-NMR分光法によって決定した。溶液を無水硫酸ナトリウムを介して乾燥させ、溶媒を真空中で除去した。
【0200】
Mon13(2-(メタクリロイルオキシ)エチル-エンド、エキソ-5-ノルボルネンカルボキシレート)の生成
【0201】
【化28】
出発物質:Mon9(97.50g、0.535mol、1.0当量)、塩化メタクリロイル(78.4mL、83.90g、0.803mol、1.5当量)、トリエチルアミン(111.25mL、81.22g、0.803mol、1.5当量)、テトラヒドロフラン(およそ500mL)。
収量:124.56g(93%)、透明な黄色がかった液体、エンド/エキソ:80/20
薄層クロマトグラフィ(TLC):R
f=0.71/0.79(Cy/EtOAc:、3:1、(v:v)、検出:KMnO
4)
【0202】
1H-NMR(300Hz,CDCl3):δ=6.22-6.15(m,1H,6エンド),6.15-6.06(m,1H,5エキソ,6エキソ;s,1H,10トランス),5.94-5.86(m,1H,5エンド),5.59(s,1H,10シス),4.40-4.17(m,4H,8エンド/エキソ,9エンド/エキソ),3.19(s,1H,1エンド),3.03(s,1H,1エキソ),3.00-2.93(m,1H,2エンド),2.90(s,1H,4エンド/エキソ),2.28-2.21(m,1H,2エキソ),1.95(s,3H,11),1.92-1.83(m,1H,3aエンド),1.55-1.46(d,1H,3aエキソ),1.46-1.31(m,2H,7エンド/エキソ,1H,3bエキソ),1.31-1.18(d,1H,3bエンド)ppm.
【0203】
13C-NMR(75Hz,CDCl3):δ=176.1(1C,Cq,14エキソ),174.6(1C,Cq,10エンド),167.2(1C,Cq,13),138.2(1C,6エキソ),138.0(1C,6エンド),136.1(1C,Cq,12),135.8(1C,5エキソ),132.4(1C,5エンド),126.10(1C,10),62.6(1C,8エンド),62.2(1C,8エキソ),62.0(1C,9エンド、エキソ),49.7(1C,7エンド),46.8(1C,7エキソ),46.5(1C,1エキソ),45.8(1C,1エンド),43.4(1C,2エンド),43.2(1C,2エキソ),42.7(1C,4エンド),41.8(1C,4エキソ),30.4(1C,3エキソ),29.4(1C,3エンド),18.4(1C,11)ppm.
【0204】
Mon14(エンド、エキソ-5-ノルボルネン-2-メチルメタクリレート)の生成
【0205】
【化29】
出発物質:エンド、エキソ-5-ノルボルネン-2-メタノール(97.37mL、100.0g、0.805mol、1.0当量)、塩化メタクリロイル(118.0mL、126.26g、1.208mol、1.5当量)、トリエチルアミン(167.44mL、122.23g、1.208mol、1.5当量)、テトラヒドロフラン(およそ500mL)。
収量:121.42g(78%)、透明な黄色がかった液体、エンド/エキソ:76/24
薄層クロマトグラフィ(TLC):R
f=0.76(Cy/EtOAc、5:1、(v:v)、検出:KMnO
4)
【0206】
1H-NMR(300Hz,CDCl3):δ=6.22-6.13(m,1H,5エンド),6.13-6.02(m,1H,5エキソ,6エキソ;s,1H,10トランス),6.03-5.87(m,1H,5エンド),5.54(s,1H,10シス),4.23-3.99(m,2H,8エキソ),3.99-3.64(m,2H,8エンド),2.90(s,1H,1エンド),2.82(s,1H,4エンド/エキソ),2.72(s,1H,1エキソ),2.53-2.36(m,1H,2エンド),1.95(s,3H,11),1.91-1.80(m,1H,3aエンド),1.80-1.70(m,1H,2エキソ),1.51-1.41(m,1H,7aエンド),1.41-1.31(m,1H,7a,bエキソ),1.31-1.24(m,1H,7bエンド),1.24-1.11(m,1H,3a,bエキソ),0.65-0.52(m,1H,3bエンド)ppm.
【0207】
13C-NMR(75Hz,CDCl3):δ=167.7(1C,Cq,12エキソ),167.6(1C,Cq,12エンド),137.7(1C,5エンド),137.1(1C,5エキソ),136.7(1C,Cq,11エンド),136.6(1C,Cq,11エキソ),136.4(1C,6エキソ),132.3(1C,6エンド),125.4(1C,10エキソ),125.2(1C,10エンド),68.9(1C,8エキソ),68.2(1C,8エンド),49.5(1C,7エンド),45.1(1C,7エキソ),44.1(1C,1エンド),43.8(1C,1エキソ),42.3(1C,4エンド),41.7(1C,4エキソ),38.1(1C,2エキソ),38.0(1C,2エンド),29.7(1C,3エキソ),29.1(1C,3エンド),18.5(1C,9)ppm.
【0208】
実施例2:シングルキュアRadP及びデュアルキュアRadP-ROMP-収縮試験
実施例2.1:製剤の生成
収縮試験に使用した製剤を以下のように生成した:
2.1.1:シングルキュアRadP重合
超音波浴を使用し、表1に示す量のモノマー中のBPOを2.5mLのガラスジャー内に溶解して、成分Aを形成した。モノマーの残りの量を別の2.5mLのガラスジャー内のDMpTと混合して成分Bを形成した。成分Aをガラスピペットで成分Bへと添加し、手で振盪することで成分を均一に混合した。成分A及び成分Bの構成要素に使用した量を表1に要約する。
【0209】
【0210】
2.1.2:デュアルキュアRadP-ROMP重合
超音波浴を使用し、表2に示す量のモノマー中のBPOを2.5mLのガラスジャー内に溶解して、成分Aを形成した。モノマーの残りの量を別の2.5mLのガラスジャー内のDMpTと混合して成分Bを形成した。
M20ストック溶液をジクロロメタン(モノマーの総量に基づいて50ppm/100μL)中で生成した。成分AとM20ストック溶液のアリコート(成分C)とを同時に成分Bへと添加し、この成分を手で振盪することによって均一に混合した。
成分A、成分B、及び成分Cの構成要素の使用量を表2に要約する。
【0211】
【0212】
実施例2.2:収縮試験
正確に1.0mLの製剤を、シリンジを備えた3.0mLガラス管へと移した。ガラス管に1.0mL及び2.0mLの充填レベルで線をマークした。これを室温で24時間硬化させた。体積収縮率を決定するために、必要な量の水を添加して2.0mLのマークまで充填した。次いで、この水を目盛り付きシリンジで測定した。
【0213】
表3は使用したモノマー及びそれによって達成された結果を示す。デュアルキュアRadP-ROMPは、参照モノマーHEMA及びBDDMAを用いたシングルキュアRadPよりも小さい収縮をもたらした。
【0214】
【0215】
実施例3:Tempol及びROMP開始剤の量の影響を決定するためのデュアルキュアRadP-ROMP硬化試験
Mon13及びMon14を40mLガラスジャー内でPerkadox 20Sと混合し、均一な混合物である成分Aを得るために手で撹拌した。BDDMA中のTempolのストック溶液は、マグネチックスターラを備えた40mLガラスジャー内でこれらの2つの化合物を混合することによって生成した。混合物を50℃で15分間撹拌した。必要なM20の正確な量を、20mLガラスジャー中のTempol/BDDMAストック溶液のアリコート中に溶解した。DMpTをこの溶液へ体積測定的に添加し、成分Bを得た。この成分をシリンジで取り、成分Aへと素早く加えた。2つの成分を手で振盪することによって均一に混合した。重量比を表4に列挙する;ゲル化プロセスを表5に示す。粘度の変化及び温度の発達が観察された。
【0216】
【0217】
【0218】
これらの結果は、ROMP開始剤及び抑制剤(Tempol)の量を変えることによって硬化挙動を調整できることを示している。
【0219】
実施例4:デュアルキュアRadP-ROMP対シングルキュアRadP-ゲルタイマー測定
ゲルタイマー測定を行って、充填剤を含む(「充填された」)及び充填剤を含まない(「充填されていない」)、様々な製剤のゲル化時間を決定した。
【0220】
4.1:製剤の生成
未充填及び充填製剤(表6)を実施例3と同じ方法で調製した。充填剤の総量を成分Aへと添加して、充填製剤を生成した。原料をスピードミキサーで均一に混合し、成分Aを一定の25℃で貯蔵した。次いで、成分Bを添加し、再びスピードミキサーで均質化した。混合比はA:B:C、20:20:60(w/w)であった。同じ手順を使用して未充填製剤を生成したが、充填剤は省略した。
【0221】
【0222】
4.2:ゲルタイマーの測定
H.Saur Laborbedarf製のGELNORM(登録商標)-Geltimer PS-1(「ゲルタイマー」)を使用した。製剤をガラス管へと注ぎ、これを一定の25℃の恒温槽に入れた(Lauda Dr.R.Wobser GmbH&Co.KG製のEco RE2025)。温度プロファイルはPico Technology製のPT 100センサを用いて測定した。加えて、機械的センサ(MK-B-10)を備えた別のガラス管で平行して測定を行った。
この目的のために、開始剤の添加後、リムから4cmの高さまで、混合物を試験管に注ぎ、試験管を25℃の温度に保った(DIN 16945、DIN EN ISO 9396)。ガラス棒又はスピンドルを混合物中で、毎分10ストロークで上下に動かした。温度プロファイルを測定する場合、ゲル化時間は、開始剤の添加後の期間に対応し、その後、混合物中で35℃(すなわち、開始温度25℃に基づいて+10℃)又は50℃の温度を測定した。機械的測定の間、ゲル化時間は開始剤の添加後の期間として決定され、その後、センサを動かすことはできなくなった。
【0223】
結果を表7に示す(GTT:温度プロファイルからのゲル化時間;GTM:機械式センサによるゲル化時間);Hilti製の接着系アンカーHIT-HY150(成分Aは、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、及び独自のウレタンジメタクリレートを含有する;成分Bは、過酸化ジベンゾイルを含有する)を参照として使用した:
【0224】
【0225】
デュアルキュア試料のゲル化時間は、ラジカル開始基準のゲル化時間よりもほとんど少し長かった。しかしながら、接着系アンカーとしてのその計画された使用に必要な時間枠内であった。
【0226】
実施例5:デュアルキュアRadP-ROMP及びシングルキュアRadP-引き抜き試験並びに10+1カートリッジで使用した場合のゲルタイマー測定
充填されたデュアルキュアRadP-ROMP製剤(表8)を試験した。M20が欠落していたモノマーとしてMon13を用いたシングルキュア製剤は、引き抜き試験における比較として機能した。引き抜き力、せん断強度、及びゲル化時間を試験した。
【0227】
5.1:試料の生成
成分の組成を表8に示す:
【0228】
【0229】
関連モノマーをPerkadox 20Sとスピードミキサー中で30秒間混合した。充填剤を添加し、スピードミキサーを使用して成分Aを均一にした。成分Bは、ガラスジャーの代わりにSpeedMixerボックスを用いて、実施例3の手順と同様に生成した。次いで、完成した成分を、2成分(「2C」)10+1カートリッジ(10チャンバ内の成分A、1チャンバ内の成分B)の関連チャンバへと注いだ。これらは、ゲルタイマー測定を除いて室温で貯蔵し、一定の25℃で少なくとも1時間貯蔵した。製剤を混合し、静的ミキサーチップを備えたスクイーズガンを用いて適用した。
【0230】
5.2:引き抜き試験
コンクリート(C20/25)のボアホール(直径:14mm)をスクイーズガンにより充填し、次いで、金属寸切アンカーロッド(直径:12mm)を72mmの深さ(埋め込み深さ)まで挿入した。Hoko 100 Bシリンダを備えたKindsmuller製の引き抜き装置F-100-4を用いて、48時間の硬化時間後に引き抜き試験を行った。
【0231】
測定には、次の形状を有するM8ネジのアンカーロッドを使用した。
アンダーカット深さ:0.35+/-0.02mm
アンダーカット幅:2mm
【0232】
これらの測定値から決定されたせん断強度は、破損時の最大力及び使用されたアンカーロッド(およそ2765mm2)のせん断面の商として定義される。
【0233】
乾燥(「F1ref」)及び湿潤(「F1b」)コンクリートで試験した;3つのボアホールを充填し、各試験組成物について試験した。Hilti製のエポキシ-アミン系HIT-RE 500 V1及びラジカル重合メタクリレート系HIT-HY 200-Aを参照系として使用した。
【0234】
引き抜き力及びせん断強度の結果を表9に示す。
【0235】
【0236】
結果は、デュアルキュアRadP-ROMPが基準系の引き抜き力及びせん断強度を達成しないことを示す;しかしながら、これらの値はボアホール内での留付に充分である。加えて、デュアルキュア系は、F1refと比較したF1bの値の同等性(又は改善さえも)という、低収縮ROMPに関連している可能性が高い有意な利点を呈する。これは、この系が湿潤ボアホールに対して非常に堅牢であることを意味する。これは、F1bが常にF1refよりも有意に小さい他の製剤には当てはまらない。
【0237】
5.3:ゲルタイマー測定
ゲルタイマーの測定は実施例4.2に記載のように行った。Hilti製の接着系アンカーHIT-HY150も再び参照として機能した。結果を表10に示す:
【0238】
【0239】
これらの結果は、ゲル化時間値が参照の値に匹敵することを示している。
【0240】
実施例6:ROMP触媒及びROMPモノマーEsterMonを用いた安定性試験
6.1:M20を有するROMP(表11、1行目):
【0241】
【0242】
400mg(1.9mmol、1当量)のEsterMonを18mLのジクロロメタンに溶解した。ジクロロメタン中の開始剤(5.9mg/mL、50ppm)のストック溶液を生成した。重合反応は、ストック溶液が生成された直後又は15時間後のいずれかに開始した。反応混合物を室温で撹拌し、進行をTLC(Rf(EsterMon)=0.62(Cy/EtOAc、3:1、(v:v)、検出:KMnO4))によって監視した。完全に変換した後、反応物を400μLのエチルビニルエーテルでクエンチし、更に20分間撹拌した。溶液を真空中で濃縮した。残留溶液を、急速に撹拌され、冷却されたメタノールへと滴加した。沈殿した無色のポリマーを真空中で乾燥させた。24時間後に反応がまだ不完全であった場合、モノマー:ポリマー比は、クエンチ及び後処理の前に1H-NMRを用いて決定した。
【0243】
6.2:RadPラジカルスタータ系の個々の成分の存在下における化合物EsterMonのROMP(表11、2~4行目):
【0244】
【0245】
これらの重合は、上記のEsterMonのROMPと同様に行った(表47、エントリ1)。2つの手順を使用して個々の成分を添加した:
- DCM中でEsterMonを個々の試験物質と混合し、M20ストック溶液を添加して重合を開始する(「0時間」);
- 新たに調製したM20ストック溶液へと個々の試験物質を添加し、15時間貯蔵し、続いて関連するM20ストック溶液をDCM中のEster-Mon溶液へと添加する(「15時間」)。
【0246】
【0247】
M20は、BPO又はTempolと共に貯蔵した場合、不安定であることが見出された(2行目(「M20+BPO」)及び4行目(「M20+Tempol」)の15時間貯蔵時間値を参照されたい)。したがって、ROMP開始剤は、ラジカル開始剤(本明細書では、BPO)及びTempolとは別個に貯蔵しなければならず、また、2C系においてこれらの成分とは別個でなければならない。
【0248】
DMpTがM20を安定化できることもまた示された。DMpTの存在下において15時間貯蔵した後、プロセスは、DMpTの存在なしで15時間貯蔵した後よりも有意に速かった(1行目(「M20」)及び3行目(「M20+DMpT」)の15時間値を比較)。したがって、DMpT又は同等の試薬を添加することによって、M20の貯蔵安定性を高めることができる。
【国際調査報告】