(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20231106BHJP
B66B 1/08 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B1/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527694
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2021081136
(87)【国際公開番号】W WO2022101212
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040729
【氏名又は名称】インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビッラ,バレリオ
【テーマコード(参考)】
3F304
3F502
【Fターム(参考)】
3F304BA22
3F304BA24
3F304EB02
3F304EB15
3F304EB22
3F304EB26
3F502HB15
3F502JA51
3F502MA07
(57)【要約】
メンテナンスのためにエレベータ(1)を動作させるための方法であって、エレベータ(1)は、キャビン(2)及びエレベータシャフト(4)であって、キャビンがエレベータシャフト(4)に沿って移動可能である、キャビン及びエレベータシャフトと、キャビン(2)を移動させるための駆動部(6)と、複数のシャフトドア(8)であって、シャフトドア(8)のうちの少なくとも1つが、少なくとも最下フロア(10’)と最上フロア(10’’)とを含む複数のフロア(10)のそれぞれに配置される、複数のシャフトドアと、エレベータ制御ユニット(12)とを備える、方法。エレベータ制御ユニット(12)は、とりわけ:エレベータ制御ユニット(12)が、事前定義された危険区域(18)内に人がいるかどうかをチェックするステップであって、事前定義された危険区域(18)が好ましくはエレベータシャフト(4)であるステップと、事前定義された危険区域(18)内に人がいない場合にエレベータ制御ユニット(12)がメンテナンスモードから切り替わり通常動作モードに戻るステップとを行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メンテナンスのためにエレベータ(1)を動作させるための方法であって、
エレベータ(1)が、
-キャビン(2)及びエレベータシャフト(4)であって、キャビンがエレベータシャフト(4)に沿って移動可能である、キャビン及びエレベータシャフト、
-キャビン(2)を移動させるための駆動部(6)、
-複数のシャフトドア(8)であって、シャフトドア(8)のうちの少なくとも1つが、少なくとも最下フロア(10’)と最上フロア(10’’)とを含む複数のフロア(10)のそれぞれに配置される、複数のシャフトドア(8)、
-エレベータ制御ユニット(12)
を備え、
エレベータ制御ユニット(12)が以下のステップ、
-エレベータ制御ユニット(12)が技術者(14)によって送られたメンテナンス開始要求を受信するステップであって、メンテナンス開始要求が好ましくはモバイル電子デバイス(16)を介して送られる、ステップ、
-エレベータ制御ユニット(12)が通常動作モードからメンテナンスモードに切り替わるステップ、
-エレベータ制御ユニット(12)が技術者(14)によって送られたメンテナンス停止要求を受信するステップであって、メンテナンス停止要求が好ましくはモバイル電子デバイス(16)を介して送られる、ステップ、
-エレベータ制御ユニット(12)が、事前定義された危険区域(18)内に人がいるかどうかをチェックするステップであって、事前定義された危険区域(18)が好ましくはエレベータシャフト(4)である、ステップ、
-事前定義された危険区域(18)内に人がいない場合、エレベータ制御ユニット(12)がメンテナンスモードから切り替わり通常動作モードに戻るステップ
を行う、方法。
【請求項2】
事前定義された危険区域(18)内に人がいないことをチェックするステップが、
-メンテナンス開始要求がエレベータ制御ユニット(12)によって受信された後で、エレベータ制御ユニット(12)が通常動作モードからメンテナンスモードに切り替わる前に、エレベータ(1)の好ましくは危険区域(18)の、メンテナンス前ステータスを取り込むステップ、及び/又は
-メンテナンス停止要求がエレベータ制御ユニット(12)によって受信された後で、エレベータ制御ユニット(12)がメンテナンスモードから切り替わり通常動作モードに戻る前に、エレベータ(1)のメンテナンス後ステータスを取り込むステップと、
-エレベータ(1)のメンテナンス前ステータス、エレベータ(1)のメンテナンス後ステータス、及びメンテナンス前ステータスの事前定義された値、及びメンテナンス後ステータスの事前定義された値のグループのうちの、少なくとも2つの間の相違を評価するステップと、
-評価された1つ及び/又は複数の相違が事前定義された閾値未満、好ましくは互いの±5%以内、特に好ましくは互いの±2%以内である場合、事前定義された危険区域(18)には誰もいないと結論付けるステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エレベータ(1)のメンテナンス前ステータスとメンテナンス後ステータスとを取り込むステップが、
-キャビン(2)のメンテナンス前荷重及び/又はメンテナンス後荷重を測定し、それをエレベータ制御ユニット(12)に記憶すること
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
エレベータ(1)のメンテナンス前ステータス及び/又はメンテナンス後ステータスを取り込むステップが、
-カメラ、TOFカメラ、サーモグラフィカメラ、及び/又はライダーシステムを用いてエレベータシャフト(4)のスナップショットを取り込むこと
を含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
事前定義された危険区域(18)内に人がいないことを検証するステップが、
-エレベータ制御ユニット(12)が技術者(14)のメンテナンス開始要求を受信した後で、エレベータ制御ユニット(12)が通常動作モードからメンテナンスモードに切り替わる前に、キャビン(2)内及び/又はフロア(10)上の技術者(14)の存在を検証するステップ、及び/又は
-エレベータ制御ユニット(12)が技術者(14)のメンテナンス停止要求を受信した後で、エレベータ制御ユニット(12)がメンテナンスモードから切り替わり通常動作モードに戻る前に、キャビン(2)内及び/又はフロア(10)上の技術者(14)の存在を検証するステップ
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
キャビン(2)内及び/又はフロア(10)上の技術者(14)の存在を検証するステップが、
-技術者(14)がモバイル電子デバイス(16)によりスキャンしなければならないコードを、キャビン(2)内及び/又はフロア(10)上のスクリーン(20)に表示すること、及び/又は
-キャビン内及び/又はフロア(10)上の別のカメラ(24)及び/又は近距離無線通信デバイス(24)を使用して、技術者(14)を識別すること
により技術者(14)を識別することによって検証される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
技術者(14)のメンテナンス開始要求が、特定のシャフトドア(8)でエレベータシャフト(4)に入るための要求であり、方法が、
-特定のシャフトドア(8)の近傍の事前定義された位置にキャビン(2)を移動させるステップ
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
メンテナンス停止要求がエレベータ制御ユニット(12)によって受信された後、キャビン(2)の移動を、
-メンテナンスモードが最下フロアで要求された場合は上方向、及び/又は
-メンテナンスモードが最上フロアで要求された場合は下方向
のみに制限するステップをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
シャフトドア(8)のうちの少なくとも1つ、好ましくはすべてが、シャフトドア(8)を開く及び閉じるための関連する能動ドア駆動部(28)及び/又はシャフトドアをロック及びロック解除するための能動ドアロック(30)を有し、方法が、
-メンテナンスモードに入った後に技術者(14)がエレベータシャフト(4)にアクセスすることができるように、特定のシャフトドア(8)を能動ドアロック(30)及び能動ドア駆動部(28)によってそれぞれロック解除し及び/又は開くステップ、及び/又は
-メンテナンスモードから出る前に技術者(14)がもはやエレベータシャフトにアクセスすることができないように、特定のシャフトドア(8)を能動ドア駆動部(28)及び/又は能動ドアロック(30)によってそれぞれ閉じる及び/又はロックするステップ
をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
エレベータ制御ユニット(12)が技術者(14)によって送られたメンテナンス開始要求を受信した後で、エレベータ制御ユニット(12)が通常動作モードからメンテナンスモードに切り替わる前に、キャビン(2)が空であることを確実にするステップを、方法がさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
メンテナンスモードにおいて、エレベータ制御ユニット(12)が、駆動部(6)がキャビン(2)を移動させるのを防止し、及び/又は、
技術者(14)がシャフト(4)へのアクセスを許可される前に、エレベータブレーキ(28)、好ましくはキャビンブレーキ(28)が係合される、
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
-静的ブレーキ試験を行うことによって、メンテナンスモードから出た後で、及び/又はモードに入る前に制動能力の検証を開始するステップ
をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
エレベータ(1)であって、
-エレベータシャフト(4)に沿って移動可能なキャビン(2)、
-キャビン(2)を移動させるための駆動部(6)、
-エレベータ制御ユニット(12)、
-複数のシャフトドア(8)であって、少なくとも1つのシャフトドア(8)が複数のフロア(10)のそれぞれに配置され、好ましくは、シャフトドア(8)のそれぞれが、エレベータ制御ユニット(12)によって有効/無効にできる、シャフトドア(8)を開く及び閉じるための関連する能動ドア駆動部(28)、及び/又は能動ドアロック(30)を有する、複数のシャフトドア(8)
を備え、
エレベータ(1)が請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された、エレベータ(1)。
【請求項14】
エレベータ制御ユニット(12)又はエレベータ制御ユニット(12)の少なくとも一部がSIL3要件を満たすように構成された、
請求項13に記載のエレベータ。
【請求項15】
コンピュータプログラム製品であって、
-請求項13または14に記載のエレベータ(1)内のプロセッサによって行われると、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を実行すること、及び請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を制御することのうちの一方を行うようにエレベータ(1)に命令するコンピュータ可読命令と、
-データ通信デバイス(32)内のプロセッサによって行われると、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法を実行するために、請求項13または14に記載のエレベータ(1)をトリガするためのメンテナンス要求を送信するようにデータ通信デバイス(32)に命令するコンピュータ可読命令と
のうちの一方を備える、コンピュータプログラム製品。
【請求項16】
コンピュータ可読媒体であって、その上に記憶された、請求項15に記載のコンピュータプログラム製品を備える、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法に関する。さらに、本発明は、そのような方法を実行するように構成されたエレベータ、コンピュータプログラム製品、及びコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、駆動エンジンを使用して建物内の複数のフロア間でエレベータシャフトに沿って移動され得る少なくとも1つのキャビンを備える。キャビンは、キャビンへのアクセスを、提供するために開かれ、および阻止するために閉じられ得る少なくとも1つのキャビンドアを備える。フロアのそれぞれには、エレベータシャフトへのアクセスを選択的に提供又は阻止するために開かれ及び閉じられ得る少なくとも1つのシャフトドアが設けられる。シャフトドアは乗場ドアと呼ばれることもある。キャビンドアがシャフトドアに結合されていない限り、シャフトドアは一般に閉状態でロックされる。
【0003】
エレベータのメンテナンス中、技術者は、例えばエレベータシャフト内に備えられたエレベータの構成要素の完全性を検査できるようにエレベータシャフトへのアクセスを必要とする。そのため、従来のエレベータでは、技術者は、フロアのうちの1つに近づくようにキャビンを呼び出し、乗場動作パネルやキャビン動作パネルからの呼び出しが無視される状態にエレベータを設定しなければならなかった。次いで、技術者はシャフトドアのロックを解除しなければならなかった。そのようなロック解除のために、技術者は、例えば三角キーなどの特定のツールを使用しなければならなかった。次いで、技術者はシャフトドアを手動で開き、例えば待機しているキャビンの屋根の上に乗らなければならなかった。屋根の上には、典型的には制御ユニットが設けられていた。制御ユニットを使用して、技術者は、キャビンを所望の場所に移動させるために、メンテナンスモード中に駆動エンジンを制御することができた。そのような移動行為中に技術者が怪我をしないことを保証するために、セキュリティ対策が講じられなければならなかった。例えば、メンテナンス中、キャビンの屋根の上又はシャフトのピット内にいる技術者が危険にさらされる場所にキャビンが駆動されないことが保証されなければならなかった。最後に、メンテナンスが完了すると、技術者はエレベータシャフトを出て関連するシャフトドアを手動で再ロックしなければならなかった。
【0004】
エレベータの乗場ドアのロックを開くためのアプローチは、国際公開第2017/212105号及び国際公開第2017/212106号において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/212105号
【特許文献2】国際公開第2017/212106号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メンテナンスのためにエレベータを動作させるための代替方法が必要とされる場合がある。特に、技術者にとっての安全レベルを増大させることができるメンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法が必要とされる場合がある。さらに、そのような方法を実施するように構成されたエレベータ、コンピュータプログラム製品、及び/又はコンピュータ可読媒体が必要とされる場合がある。
【0007】
これらの必要性は、独立請求項のうちの1つの主題で満たされ得る。有利な実施形態は、以下の明細書の従属請求項に定義される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法が提案される。その中で、エレベータはキャビンとエレベータシャフトとを備える。キャビンは、エレベータシャフトに沿って移動可能である。エレベータは、キャビンを移動させるための駆動部をさらに備える。エレベータは複数のシャフトドアを備え、シャフトドアのうちの少なくとも1つは、少なくとも最下フロアと最上フロアとを含む複数のフロアのそれぞれに配置される。エレベータはエレベータ制御ユニットを備え、エレベータ制御ユニットは以下のステップを行う:
【0009】
-エレベータ制御ユニットが技術者によって送られたメンテナンス開始要求を受信し、メンテナンス開始要求が好ましくはモバイル電子デバイスを介して送られるステップ。
【0010】
-エレベータ制御ユニットが通常動作モードからメンテナンスモードに切り替わるステップ。
【0011】
-エレベータ制御ユニットが技術者によって送られたメンテナンス停止要求を受信し、メンテナンス停止要求が好ましくはモバイル電子デバイスを介して送られるステップ。
【0012】
-エレベータ制御ユニットが、事前定義された危険区域内に人がいるかどうかをチェックし、事前定義された危険区域が好ましくはエレベータシャフトであるステップ。
【0013】
-事前定義された危険区域内に人がいない場合、エレベータ制御ユニットがメンテナンスモードから切り替わり通常動作モードに戻るステップ。
【0014】
方法ステップは、好ましくは示された順序で実行される。
【0015】
この方法により、制御ユニットがメンテナンスモードから通常動作モードに切り替わり戻るときに、技術者がまだ危険区域内にいることを防止できる。人が危険区域内におらず、したがって、通常動作におけるエレベータによって怪我を被るリスクがない場合にのみエレベータが通常動作を再開することが保証される。そのため、他の人がまだシャフト内にいてもシャフトの外側の人によってシステムが通常動作モードに切り替わり戻され得る最新の手順と比較して、技術者と他の人の両方にとってメンテナンス手順全体をよりセキュアにすることができる。
【0016】
メンテナンス開始要求は、メンテナンスが要求されるという情報のみであってもよい。好ましい実施形態では、メンテナンス開始要求は、メンテナンスがどこで行われることを意図されているか、及びどの種類のメンテナンスが計画されているかに関する情報を好ましくは含み、これにより、エレベータ制御ユニットは、メンテナンス開始要求の性質に応じて、キャビンをどこに移動させるか、及び技術者がシャフトのどこに入ると予想されるかを知る。
【0017】
危険区域とは、上記及び以下において、エレベータの通常動作中に人が危険にさらされる可能性がある区域を意味する。危険区域は、全体としてエレベータシャフトであってもよい。危険区域はまた、エレベータシャフトの特定の部分、キャビンの上部、ヘッドとも呼ばれるエレベータシャフトの上部、又はピットとも呼ばれるエレベータシャフトの底部などの部分であってもよい。
【0018】
エレベータ制御ユニット内において事前定義された危険区域内に人がいるかどうかをチェックする方法ステップを実施することには、すべての機能、特にキャビンの移動が行われるデバイスと同じデバイス内でチェックが行われるという利点がある。制御ユニットがシャフト内の人の存在を認識しない方法で、セキュリティシステムの遠隔部をバイパスすることによって、手動でエレベータを安全でない状態に操作することが最小限に抑えられる。言い換えると、安全な状態が与えられているかどうかを判断するユニットと、通常動作に切り替わり戻るユニットとが同じユニット、すなわちエレベータ制御ユニット内に実現される。
【0019】
モバイル電子デバイスは、スマートフォン又は任意の同様のデバイスであってもよい。そのようなデバイスを使用してメンテナンス開始要求及び/又はメンテナンス停止要求を送ることにより、そのようなデバイスを所有し、指紋リーダ又は任意の他のロック解除機能を介してパスワードでデバイスをロック解除することができる、権限を有する技術者のみがそれらの要求を送ることができることを確かにし得る。
【0020】
上記及び以下のメンテナンスモードとは、少なくとも乗場動作パネル及び/又はキャビン動作パネルで乗客によって入力される呼び出しが無視される点で通常動作モードとは異なるモードを指す。したがって、メンテナンスモード中、エレベータは乗客に輸送サービスを提供しない場合がある。そのため、メンテナンスモード中、乗客の呼び出しに反応してキャビンが移動されるリスクはない。
【0021】
通常動作中、シャフトドアは、エレベータキャビンがシャフトドアに隣接して駐まっているときにのみもっぱら開かれる。このような状況では、キャビンドアとそれぞれのシャフトドアとが整列される。しかしながら、メンテナンスを可能にするために、メンテナンスモード内ではこのルールからの例外が実施されなければならない。特に、技術者は、キャビンがシャフトに直接隣接して駐まっていなくても、シャフトドアを通してシャフトにアクセスできなければならない。
【0022】
安全上の理由から、上記及び以下に説明される方法は、エレベータがメンテナンスモードから通常動作モードに切り替わり戻されるとき、メンテナンスモード中に人がアクセスした可能性がある危険区域内に人がいないことを確実にする。
【0023】
メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法の好ましい実施形態では、事前定義された危険区域内に人がいないことをチェックするステップは:
-メンテナンス開始要求がエレベータ制御ユニット(12)によって受信された後で、エレベータ制御ユニット(12)が通常動作モードからメンテナンスモードに切り替わる前のエレベータ(1)、好ましくは危険区域(18)のメンテナンス前ステータスを取り込むステップ;及び/又は
-メンテナンス停止要求がエレベータ制御ユニット(12)によって受信された後で、エレベータ制御ユニット(12)がメンテナンスモードから切り替わり通常動作モードに戻る前のエレベータ(1)のメンテナンス後ステータスを取り込むステップ;
-エレベータ(1)のメンテナンス前ステータス、エレベータ(1)のメンテナンス後ステータス、並びにメンテナンス前ステータスの事前定義された値及びメンテナンス後ステータスの事前定義された値のグループのうちの、少なくとも2つの間の相違を評価するステップ、及び
-評価された1つ及び/又は複数の相違が事前定義された閾値未満、好ましくは互いの±5%以内、特に好ましくは互いの±2%以内である場合、事前定義された危険区域(18)には誰もいないと結論付けるステップ
を含む。
【0024】
メンテナンス前ステータスを取り込むことは、上記及び以下において、メンテナンスモードに入る前にエレベータのステータスを取り込むために1つ又はいくつかのタイプのセンサ又はセンサのセットを使用することを指す。同様に、エレベータのメンテナンス後ステータスを取り込むことは、上記及び以下において、エレベータのステータスを評価するためにエレベータの1つ又はいくつかのタイプのセンサ又はセンサのセットを使用することを指す。この文脈における取り込みとは、上述のセンサのステータスを記録することを意味する。したがって、メンテナンス前モードを取り込むことは、制御ユニットが通常動作モードからメンテナンスモードに切り替わる前に1つ又はいくつかのセンサの値を記録することを意味する。メンテナンス後ステータスを取り込むことは、制御ユニットが通常動作モードからメンテナンスモードに切り替わる前に1つ又はいくつかのセンサの値を記録することを意味する。
【0025】
一実施形態において、事前定義された危険区域内に人がいないと結論付けるために、エレベータのメンテナンス前ステータスとエレベータのメンテナンス後ステータスとが評価され、すなわち比較され、すなわち2つのステータスの間の相違が評価される。別の実施形態では、メンテナンス前ステータスはメンテナンス前ステータスの事前定義された値と比較される。別の実施形態では、メンテナンス後ステータスは事前定義されたメンテナンス後ステータスと比較される。他の実施形態では、上述の実施形態の任意の組み合わせが実施される。
【0026】
評価された1つ及び/又は複数の相違が事前定義された閾値未満、好ましくは互いの±5%以内、特に好ましくは互いの±2%以内である場合、事前定義された危険区域には誰もいないと結論付ける。相違は、例えば、重量が測定された場合のキログラムの相違、又は撮像されたスナップショット若しくはその任意の代表的な部分の画素の状態の相違、又はスナップショット内で識別されたオブジェクトの相違量であってもよい。
【0027】
そうすることによって、比較されたステータスが、エレベータの安全な動作がもはや不可能となる程度まで、危険区域内で何も変化していないと仮定するのに十分に互いに類似していると結論付けることができる。特に、相違が事前定義された閾値を下回る場合、人は危険区域内にいないと結論付けられる。
【0028】
メンテナンス前ステータスとメンテナンス後ステータスとが取り込まれて比較される実施形態は、エレベータが通常動作モードからメンテナンスモードに切り替わる前に安全な状態であるという仮定に基づく。その安全な通常動作モードの関連要素を取り込み、次いで、モードが通常動作に切り替わり戻される前にエレベータの同じ部分の取り込まれたステータスとそれを比較することによって、制御ユニットは、安全な通常動作の可能性が低くなるような変化がメンテナンス中に発生したかどうかを評価することが可能になる。事前定義された危険区域のメンテナンス前ステータスとメンテナンス後ステータスとの比較は、空間的および時間的な関連する変化のみをチェックする試みであり、したがって、エレベータが再び通常動作するときに人が危険にさらされないことを確かにする効率的な方法である。例えば、センサの経年劣化及び汚れの蓄積、ひいては経験されたセンサ出力値のドリフトなどのエレベータ内の変化は、人が危険区域内にいるかどうかを評価する際に無関係になる。2つのステータスは、エレベータの寿命と比較して非常に短い期間内に取り込まれる。この期間中、損耗による変化は発生しないはずである。したがって、危険区域内の人を検出するための労力が減少するだけでなく、検出の精度も増大する。キャビン内又はキャビン上であるが危険区域外における更新などのエレベータ内の小さな変化は、適応を必要としない。したがって、この実施形態は、メンテナンスのためにエレベータを動作させるためのより効率的でよりセキュアな方法を可能にする。
【0029】
メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法の好ましい実施形態では、エレベータのメンテナンス前ステータス及びメンテナンス後ステータスを取り込むことは:
-キャビン内又はキャビンのメンテナンス前荷重及び/又はメンテナンス後荷重を測定し、それをエレベータ制御ユニットに記憶すること
を含む。
【0030】
ほとんどのメンテナンス作業(ピット内で行われないすべてのメンテナンス作業)では、キャビンは、そのキャビンドアがシャフトドアと整列されていないが、その屋根がシャフトドアからアクセス可能である位置に駆動される。例えば、キャビンは、その屋根がシャフトドアの下端部に隣り合うように移動され、停止されてもよい。したがって、技術者がエレベータシャフトに入った際、技術者は駐まっているキャビンの屋根の上に乗ってもよい。メンテナンス中、技術者はキャビンの屋根から作業する。この状態では、エレベータの荷重測定ユニットは、通常のシステム重量に加えて技術者の重量も測定する。したがって、メンテナンスモードの前と通常動作モードに切り替わり戻る要求が受信された後とのキャビンの荷重を測定することは、かごに追加の重量が追加されたかどうかを確かめるために使われ、人がまだキャビン屋根にいる可能性があることを示すことができる。さらに、技術者がキャビンの屋根の上に持ってきてそこに残した可能性のあるツールもキャビン重量の変化をもたらすために検出され得る。
【0031】
代替として、メンテナンス後荷重及び/又はメンテナンス前荷重は事前定義された値と比較されてもよい。そのような事前定義された値は、キャビンの設置直後に測定された荷重又はキャビンの公称値であり得る。
【0032】
キャビンの荷重を測定することは、例えばプレトルク値を決定するためのエレベータ動作中の必要な測定であるため、この方法は追加のセンサを必要とせずに安全性を増大させる。したがって、荷重測定センサは、いずれにせよエレベータ内で利用可能になる。事前定義された危険区域内に技術者がいないことを確かにするために既に利用可能なセンサを活用することは、メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法中のセキュリティを増大させる簡単で効率的な方法である。
【0033】
メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法の好ましい実施形態によれば、エレベータのメンテナンス前ステータス及び/又はメンテナンス後ステータスを取り込むステップは:
-古典的なカメラ、ToFカメラ、サーモグラフィカメラ、及び/又はライダーシステムを用いてエレベータシャフトのスナップショットを取り込むこと
を含む。
【0034】
スナップショットとは、上記及び以下において、特定の時点における上述のカメラ/ライダの1つ又はいくつかの記録を意味する。
【0035】
飛行時間型カメラ(ToFカメラ)は、距離画像化カメラシステムであり、レーザ又はLEDによって提供される人工光信号の往復時間を測定することによって画像の各点についてカメラと被写体との間の距離を解明するための飛行時間技術を用いる。サーモグラフィカメラ(赤外線カメラ又は熱画像カメラとしても知られる)は、可視光を使用して画像を形成する一般的なカメラと同様に、赤外線を使用して画像を作成するデバイスである。ライダは、レーザ光をターゲットに照射してその反射をセンサで測定することにより、距離を測定(測距)する方法である。次いで、レーザ戻り時間及び波長の相違を使用してターゲットのデジタル3D表示を作り出すことができる。これらの手段はすべて当業者に周知である。
【0036】
メンテナンス前スナップショットとメンテナンス後スナップショットとを比較することは、上記及び以下において、スナップショットが全体として比較されること、あるいは、例えば特定のサイズの、又は特定の色若しくは反射パターンを有する特定のオブジェクトが識別されて、次いで他のスナップショットで識別されたオブジェクトと比較されることを意味する。
【0037】
メンテナンスの前及び後にスナップショットを使用することは、メンテナンス中に発生する事前定義された危険区域内の変化を識別するのに役立つ。したがって、そのようなスナップショットの使用は、単独で、又は荷重測定センサなどの他のセンサの測定値と組み合わせて、通常動作に切り替わり戻ることが安全であるかどうかを評価するために用いることができる。
【0038】
カメラ/ライダは、人が危険にさらされる可能性があるエリアが監視され得るように、シャフトの一部、例えばピット及び/又はシャフトのヘッドに置かれてもよく、又はキャビン、例えばキャビンの底部及び/又は上部に取り付けられてもよい。
【0039】
古典的なカメラの代わりに、及び/又は古典的なカメラと組み合わせてToFカメラ、サーモグラフィカメラ及び/又はライダーシステムを使用する利点は、これらのカメラが汚染の影響をはるかに受けにくいことである。エレベータシャフト内のほこり及び汚れは、経時的に古典的なカメラの視覚に影響を与え得る。これらのカメラのいずれも、そのような汚染をはるかに受けにくい。したがって、そのようなカメラは、システムのセキュリティを増大させ、また、システムの安全な動作を保つために必要なメンテナンス/クリーニング作業を低減する。
【0040】
メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法の好ましい実施形態では、事前定義された危険区域内に人がいないことを検証するステップ:
-エレベータ制御ユニットが技術者のメンテナンス開始要求を受信した後で、エレベータ制御ユニットが通常動作モードからメンテナンスモードに切り替わる前に、キャビン内及び/又はフロア上の技術者の存在を検証するステップ、及び/又は
-エレベータ制御ユニットが技術者のメンテナンス停止要求を受信した後で、エレベータ制御ユニットがメンテナンスモードから切り替わり通常動作モードに切り替わり戻る前に、キャビン内及び/又はフロア上の技術者の存在を検証するステップ
を含む。
【0041】
存在を検証することとは、上記及び以下において、技術者がエレベータシャフトの外側にいると結論付けることが可能な程度に技術者が特定の部品の近傍、すなわちキャビン内又はフロア上にいると結論付けることを意味する。例えばカメラ(例えば、上述のように)によって、又は人間がカメラの内側にいると結論付けることを可能にする近距離通信センサなどの任意の他のセンサによって技術者がキャビン内にいることが検出された場合、技術者が危険区域内、すなわちエレベータシャフト内に存在することはあり得ないと仮定して間違いない。同様に、フロア上の技術者の存在を識別することが可能な場合にもこれは当てはまる。これは、カメラ又は近距離通信センサなどの任意の他のセンサによって行われてもよい。そのようなセンサは、フロア面上の乗場動作パネル又はエレベータに属する任意の他の部分の一部であってもよい。
【0042】
キャビン内又はフロア上の技術者の存在を検出することは、技術者がもはやシャフト内にいないことを確実にする比較的容易で安全で信頼できる方法である。多くのエレベータにおいて、キャビン内又はフロア上の人の存在はエレベータ制御の他の部分で使用される情報であるため、そのようなセンサはキャビン内及び/又はフロア上に設けられる。
【0043】
キャビン内又はフロア上の技術者の存在を検証した後にのみ通常動作モードとメンテナンスモードとの間を切り替わることは、メンテナンスが人を危険にさらさないことを確実にするための追加の安全要素であり得る。メンテナンスモードに入る前にキャビン内又はフロア上に技術者が存在することを確実にすることは、権限を有する人がエレベータに近づかなければエレベータがメンテナンスモードに切り替わらないことを確実にする方法である。動作モードがメンテナンスモードから通常モードに切り替わり戻る前にキャビン内又はフロア上の技術者の存在を評価することは、メンテナンスモードを開始した技術者が、通常動作が再開される前に、シャフトから出て言及された2つのエリアのうちの1つの中に戻っていることを確実にする安全な方法である。
【0044】
メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法の好ましい実施形態では、キャビン内及び/又はフロア上の技術者の存在の検証は:
-技術者がモバイル電子デバイスによりスキャンしなければならない、キャビン内及び/又はフロア上のスクリーン上にコードを表示すること、及び/又は
-キャビン内及び/又はフロア上のカメラ及び/又は近距離無線通信デバイスを使用して技術者を識別すること
により技術者を識別することによって行われる。
【0045】
上記及び以下において、技術者によって次いでスキャンされるコードを表示することは、変化するコードを表示することとして実施されてもよく、変化するコードのパターンは、技術者がコードをスキャンするために使用することになっているアプリケーションに知られている。アプリケーションは、スキャンされたコードが本来あるべきパターン内にあるかどうかを評価することができる。動的コードを使用することには、静的コードの映像が記憶された他の場所、例えばシャフトの内側において他の電話から、コードをコピーしてスキャンすることができないという利点がある。動的コードにより、アプリケーションは、コードをスキャンした人がスキャニングの瞬間に表示されたコードの近くに存在すると結論付けることができる。
【0046】
虹彩検出及び/又は特定の所定の他のデバイスに結合するだけの近距離無線通信デバイスなどの、顔認識又は任意の他の種類の識別と組み合わせたカメラを使用することは、代替的に又はさらに、権限を有する人がそのカメラ及び/又は近距離無線通信デバイスのごく近傍にいると結論付けるのに役立つ。
【0047】
好ましい実施形態では、メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法において、技術者のメンテナンス開始要求は特定のシャフトドアでエレベータシャフトに入るための要求である。この実施形態の方法は、キャビンを特定のシャフトドアの近傍の事前定義された位置に移動させるステップを含む。
【0048】
メンテナンスを特定のフロアで行うように要求することにより、キャビンはそのフロアの近傍の事前定義された位置に移動され得る。これにより、メンテナンス中に事前定義された数の場所のみが使用される、メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法が可能になる。そのような方法は、例えば、フロアのそれぞれにおけるメンテナンスのためのキャビンの事前定義された位置を含む。これには、メンテナンス中にキャビンがまったく移動されなくてもよいという利点がある。技術者が特定のフロアでメンテナンスを終了した後に別のフロアでさらにメンテナンスを行う必要がある場合、技術者はシャフトを出て、メンテナンス停止要求を送ることによって現在のメンテナンスモードをチェックアウトし、次いで、例えば別のフロアでの次のメンテナンス作業のための新しいメンテナンス開始要求を入力する。キャビンが別のフロアに駆動される前にメンテナンスモードから出て、したがって人が危険区域にいないかチェックされる。これによって技術者がメンテナンスを要求した他のフロアに、次にキャビンを移動させることができる。このようにして、メンテナンスモード中にシャフト内でのキャビンの手動による移動が必要ない、メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法が実施される。したがって、メンテナンスモード中のキャビンの移動によってシャフト内の人を危険にさらすことが回避されるため、メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法のセキュリティが増大される。
【0049】
特定のシャフトドアの近傍の事前定義された位置は、キャビンがその特定のフロアでのメンテナンスを容易にする任意の位置とすることができる。これは、例えば、キャビンの屋根がフロアと同じ高さにある位置としてもよく、これにより技術者はキャビンの屋根の上を便利に歩くことができる。最下フロアの場合、特定のシャフトドアの近傍のそのような事前定義された位置は、キャビンがピットへの入口を塞がない位置であってもよい。別の同様のメンテナンス要求では、例えばキャビンの底部のメンテナンス作業を行うために、キャビンは最下フロアの入口を部分的にしか塞がない位置に移動されてもよく、したがって、技術者はピットに入ることができるがキャビンの最下部にも快適に到達できる。別の例示的なメンテナンス開始要求では、技術者は、エレベータシャフトのヘッドで行われるメンテナンスを要求できる。この場合、キャビンは、キャビンの屋根が最上フロアの入口の特定の高さにある位置に移動されてもよく、これにより技術者はキャビンの屋根の上に乗り、エレベータシャフトのヘッドの構成要素に到達できる。
【0050】
メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法の好ましい実施形態では、本方法は、メンテナンス停止要求がエレベータ制御ユニットによって受信された後に、キャビンの移動を、
-最下フロアでメンテナンスモードが要求された場合の上方向、及び/又は
-最上フロアでメンテナンスモードが要求された場合の下方向
のみに制限するステップをさらに含む。
【0051】
この実施形態では、メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法のセキュリティがさらに増大される。最下フロアでメンテナンスが要求された場合、技術者はピット内でメンテナンス作業を行うことになる。エレベータキャビンを動かすことで生じる技術者を押し潰す危険性は、最初に上方向にしか動けないようにすることによって回避される。次のステップとして、技術者は、次の上のフロア、すなわち1階のキャビン内で彼自身を識別する必要があり得る。そのような場合、メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法は以下のようになり得る:
【0052】
-メンテナンス開始要求が、技術者がピット内でメンテナンスを行いたいという情報と共に送られる。
【0053】
-エレベータ制御ユニットが、技術者が快適にピットに入れるように、最下フロアの入口が少なくとも部分的に空いた位置にキャビンを移動させる。
【0054】
-技術者がピットに入り、必要なメンテナンス作業を行う。
【0055】
-メンテナンス作業が行われた後、技術者がピットに入ったのと同じ方法でピットを出る。
【0056】
-エレベータシャフトの外側において、技術者がメンテナンスの停止を要求し、メンテナンス停止要求がエレベータ制御ユニットに送られる。
【0057】
-上記又は以下の手段のいずれかによって、事前定義された危険区域内に人がいるかどうかがチェックされる。及び/又は、
-技術者が1階でキャビンに入れるように、エレベータキャビンを1階まで上方向に移動させることによって
-技術者がキャビンに入り、エレベータ制御ユニットが上述の手段のいずれかによって、キャビン内の技術者の存在を検出する。
【0058】
-最初にメンテナンスを要求した技術者が、今やピットの1つ上のフロアのキャビン内にいることを知ると、エレベータ制御ユニットは、技術者が危険区域、すなわちピットにもはやいないと結論付ける。
【0059】
-エレベータ制御ユニットが通常動作モードから切り替わりメンテナンスモードに戻る。
【0060】
最上フロアでメンテナンスが要求された場合、メンテナンスモードをエグジットする同様の方法が行われ得る。この場合、キャビンはメンテナンス位置から下方向にしか動けないように制限される。次いで、キャビンは最上フロアの下のフロアで停止され得る。このようにして、メンテナンスモードを要求し、ヘッドを離れてメンテナンス停止要求を送った技術者は、キャビン内で彼自身を識別することができる。エレベータ制御ユニットがエレベータキャビン内の技術者の存在を識別した後、制御ユニットは、技術者がもはやエレベータシャフトのヘッドにいないと結論付けることができ、したがって、安全な通常動作モードが再開され得る。
【0061】
本方法の別の実施形態では、キャビンの移動は、ピット内でメンテナンスを行う要求を除く任意のメンテナンス開始要求に対して下方移動に制限される。
【0062】
ピット内でのメンテナンス作業を除くエレベータシャフト内の他の任意のメンテナンス作業の場合、これらのメンテナンス要求のすべてについて技術者がキャビン屋根の上で作業を行うことになるため、キャビンを下方向に移動させることが最も安全であると仮定できる。
【0063】
上記及び以下に説明されるメンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法の好ましい実施形態では、少なくとも1つ、好ましくはすべてのシャフトドアは、シャフトドアを開く及び閉じるための関連する能動ドア駆動部、及び/又はシャフトドアをロック及びロック解除するための能動ドアロックを有する。本方法は:
-メンテナンスモードに入った後に技術者がエレベータシャフトにアクセスできるように、能動ドアロック及び/又は能動ドア駆動部によって、特定のシャフトドアをそれぞれロック解除及び/又は開くステップ、及び/又は
-メンテナンスモードから出る前に技術者がもはやエレベータシャフトにアクセスすることができないように、能動ドア駆動部及び/又は能動ドアロックによって特定のシャフトドアをそれぞれ閉じる及び/又はロックするステップ
をさらに含む。
【0064】
能動ドア駆動部/能動ドアロックの使用により、エレベータシャフトドアを追加のセキュリティ要素として使用することが可能になる。キャビンが事前定義された位置に到着し、したがって特定のフロアでエレベータシャフトに入るのが安全であることをエレベータ制御ユニットが知ると、次いでエレベータ制御ユニットは、能動ドアロック/能動ドア駆動部を介してシャフトドアをロック解除/開き、シャフトドアがエレベータ制御ユニットによって開かれ得る。同時に又は追加的に、能動ドア駆動部/能動ドアロックはまた、メンテナンスを停止する要求がエレベータ制御ユニットによって受信されると、特定のエレベータシャフトドアを閉じることを可能にする。これにより、エレベータシステムは、この時点でエレベータシャフト内に存在するいかなる状態も、エレベータシャフトの外側からもはや変化させることができないようにすることを、確実にできる。次いで、エレベータ制御ユニットは安全チェックを行い、事前定義された危険区域内に人がいないことを検証できる。事前定義された危険区域内に人がいない場合、エレベータ制御ユニットは通常動作モードに切り替わり戻る。
【0065】
好ましい実施形態では、キャビンドアにも能動ドア駆動部及び/又はロックが装備される。
【0066】
好ましい実施形態では、上記及び以下に説明される方法は、エレベータ制御ユニットが技術者によって送られたメンテナンス開始要求を受信した後で、エレベータ制御ユニットが通常動作モードからメンテナンスモードに切り替わる前に、キャビンが空であることを確実にするステップをさらに含んでもよい。
【0067】
これにより、メンテナンスモード中に乗客がエレベータキャビン内に確実に閉じ込められないようにすることが可能になる。キャビン内の人を検証する手段は、当業者に周知のものである。
【0068】
メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法の好ましい実施形態では、エレベータ制御ユニットがキャビンが移動されるのを防止し、及び/又は技術者がシャフトへのアクセスを許可される前にエレベータブレーキ、好ましくはキャビンブレーキが係合される。
【0069】
この実施形態では、制御ユニットを介して駆動部がアクティブ化するのを無効にすることによって、及び/又は技術者がシャフトに入る前にブレーキを係合することでメンテナンスモード中のキャビンのいかなる動きも阻止することによって、方法がよりセキュアにされる。上記のいずれによっても、技術者がメンテナンスのためにシャフトに入ったらエレベータキャビンはいかなる方向にも移動されないことが確実にされ得る。
【0070】
上記及び以下に説明される方法の好ましい実施形態では、本方法は:
-静的ブレーキ試験を行うことによって、メンテナンスモードから出た後、及び/又はメンテナンスモードに入る前に制動能力の検証を開始するステップ
をさらに含む。
【0071】
安全な通常動作モードと安全なメンテナンスモードの両方のために、エレベータブレーキの適切な機能が求められる。通常動作モードでは、ブレーキは任意のフロアでかごを停止させることを求められる。メンテナンスモード中、ブレーキはキャビンが事前定義された位置に安全に留まることを確かにするよう求められる場合がある。したがって、ブレーキの機能は、2つのモード間で切り替わられるたびにチェックされるべきである。
【0072】
好ましい実施形態では、最下フロア以外の任意のフロアにおけるメンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法は以下のステップを含む。
【0073】
-技術者が、最下フロア以外のメンテナンスを行いたいレベルに到達するステップ。
【0074】
-技術者が、そのフロアでの特定のメンテナンス手順のためのメンテナンス開始要求を、モバイル電子デバイスを介してエレベータ制御ユニットに送るステップ。
【0075】
-エレベータ制御ユニットが、キャビンがそのレベルに移動されるように制御するステップ。
【0076】
-エレベータ制御ユニットが、シャフトドアの能動ドア駆動部を制御し、キャビンドアの能動ドア駆動部を制御することによって、シャフトドア及びキャビンドアを開くステップ。
【0077】
-技術者がキャビンに入って、キャビンが空であることを検証するステップ。
【0078】
-技術者がキャビン内にいる間、エレベータ制御ユニットが彼の存在を確認するステップ。
【0079】
-技術者がキャビンを出て、エレベータ制御ユニットが、シャフトドアの能動ドア駆動部を介してシャフトドアを閉じ、キャビンドアの能動ドア駆動部を介してキャビンドアを閉じるステップ。
【0080】
-エレベータ制御ユニットが、そのレベルの近傍の事前定義されたメンテナンス位置にキャビンが移動されるように制御するステップ。
【0081】
-エレベータ制御ユニットが、ブレーキ、好ましくはかごブレーキをアクティブ化するステップ。
【0082】
-エレベータ制御ユニットが、メンテナンス前荷重を測定及び記憶するステップであって、好ましくはキャビン荷重測定セルによって測定されたメンテナンス前荷重を記憶する、ステップ。
【0083】
-制御ユニットが、シャフトドアの能動ドア駆動部を介して乗場ドアを開くステップ。
【0084】
-技術者がシャフトに入って、メンテナンスを行うステップ。
【0085】
-メンテナンスがなされたら、技術者がシャフトを出て、シャフトの外側に出るとモバイル電子デバイスを介してエレベータ制御ユニットにメンテナンス停止要求を送るステップ。
【0086】
-エレベータ制御ユニットが、シャフトドアの能動ドア駆動部を制御することによってシャフトドアを閉じるステップ。
【0087】
-エレベータ制御ユニットがメンテナンス後荷重を測定し、その値を記憶されたメンテナンス前荷重と比較するステップ。
【0088】
-値が事前定義された範囲内にある場合、エレベータ制御ユニットが、キャビンが次の下のフロアに移動されるように制御するステップ。
【0089】
-エレベータ制御ユニットが、シャフトドアの能動ドア駆動部を制御し、キャビンドアの能動ドア駆動部を制御することによって、それぞれシャフトドア及びキャビンドアを開くステップ。
【0090】
-技術者がキャビンに入って、キャビン内の彼の存在を確認するステップ。
【0091】
-技術者がキャビンを出て、エレベータ制御ユニットが、シャフトドアの能動ドア駆動部を介してシャフトドアを閉じ、キャビンドアの能動ドア駆動部を介してキャビンドアを閉じるステップ。
【0092】
-エレベータ制御ユニットが静的ブレーキ試験を行うステップ。
【0093】
-ブレーキ試験に合格した場合、エレベータ制御ユニットがメンテナンスモードから切り替わり通常動作モードに戻るステップ。
【0094】
好ましい実施形態では、シャフト及び/又はキャビンドアは、能動ドアロックを追加的に備え、能動ドアロックは、それぞれのドアがそれぞれの能動ドア駆動部によって開かれる前にそれぞれのドアをロック解除し、それぞれのドア駆動部によってドアが閉じられた後にそれぞれのドアをロックする。
【0095】
好ましい実施形態では、最下フロアにおける、メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法は以下のステップを含む。
【0096】
-技術者が、メンテナンスを行いたい最下フロアに到達するステップ。
【0097】
-技術者が、そのフロアでの特定のメンテナンス手順のためのメンテナンス開始要求を、モバイル電子デバイスを介してエレベータ制御ユニットに送るステップ。
【0098】
-エレベータ制御ユニットが、キャビンがそのレベルに移動されるように制御するステップ。
【0099】
-エレベータ制御ユニットが、シャフトドアの能動ドア駆動部を制御し、キャビンドアの能動ドア駆動部を制御することによってシャフトドア及びキャビンドアを開くステップ。
【0100】
-技術者がキャビンに入って、キャビンが空であることを検証するステップ。
【0101】
-技術者がキャビン内にいる間、エレベータ制御ユニットが彼の存在を確認するステップ。
【0102】
-技術者がキャビンを出て、エレベータ制御ユニットが、シャフトドアの能動ドア駆動部を介してシャフトドアを閉じ、キャビンドアの能動ドア駆動部を介してキャビンドアを閉じるステップ。
【0103】
-エレベータ制御ユニットが、そのレベルの近傍の事前定義されたメンテナンス位置にキャビンが移動されるように制御するステップ。
【0104】
-エレベータ制御ユニットが、ブレーキ、好ましくはかごブレーキをアクティブ化するステップ。
【0105】
-エレベータ制御ユニットが、メンテナンス前荷重を測定及び記憶するステップであって、好ましくはキャビン荷重測定セルによって測定されたメンテナンス前荷重を記憶する、ステップ。
【0106】
-制御ユニットが、シャフトドアの能動ドア駆動部を介して乗場ドアを開くステップ。
【0107】
-技術者がシャフトに入って、メンテナンスを行うためにステップ。
【0108】
-メンテナンスがなされたら、技術者がシャフトを出て、シャフトの外側に出るとモバイル電子デバイスを介してエレベータ制御ユニットにメンテナンス停止要求を送るステップ。
【0109】
-エレベータ制御ユニットが、シャフトドアの能動ドア駆動部を制御することによってシャフトドアを閉じるステップ。
【0110】
-好ましくは、エレベータ制御ユニットがメンテナンス後荷重を測定し、その値を、記憶されたメンテナンス前荷重と比較するステップ。
【0111】
-値が事前定義された範囲内にある場合、エレベータ制御ユニットが、キャビンが次の上のフロア、すなわち1階に移動されるように制御するステップ。
【0112】
-エレベータ制御ユニットが、シャフトドアの能動ドア駆動部を制御し、キャビンドアの能動ドア駆動部を制御することによって、それぞれシャフトドア及びキャビンドアを開くステップ。
【0113】
-技術者がキャビンに入って、キャビン内の彼の存在を確認するステップ。
【0114】
-技術者がキャビンを出て、エレベータ制御ユニットが、シャフトドアの能動ドア駆動部を介してシャフトドアを閉じ、キャビンドアの能動ドア駆動部を介してキャビンドアを閉じるステップ。
【0115】
-エレベータ制御ユニットが静的ブレーキ試験を行うステップ。
【0116】
-ブレーキ試験に合格した場合、エレベータ制御ユニットがメンテナンスモードから切り替わり通常動作モードに戻るステップ。
【0117】
好ましい実施形態では、シャフト及び/又はキャビンドアは、能動ドアロックを追加的に備え、能動ドアロックは、それぞれのドアがそれぞれの能動ドア駆動部によって開かれる前にそれぞれのドアをロック解除し、それぞれのドア駆動部によってドアが閉じられた後にそれぞれのドアをロックする。
【0118】
本発明の第2の態様によれば、エレベータが提案され、エレベータは、本発明の第1の態様の一実施形態による方法を実行すること、及び本発明の第1の態様の一実施形態による方法を制御することのうちの一方を行うように構成される。
【0119】
好ましい実施形態では、エレベータは、エレベータシャフトに沿って移動可能なキャビン、キャビンを移動させるための駆動部、エレベータ制御ユニット、複数のシャフトドアを備え、少なくとも1つのシャフトドアが複数のフロアのそれぞれに配置され、好ましくは、シャフトドアのそれぞれは、エレベータ制御ユニットによって有効/無効にできる、シャフトドアを開く及び閉じるための関連する能動ドア駆動部、及び/又は能動ドアロックを有する。エレベータは、上記及び以下に説明される方法を実行するように構成される。
【0120】
能動ドアロックは、好ましくは、ロッドと、ロッドをロッキング位置からロック解除位置に動かすアクチュエータ、好ましくは電磁アクチュエータとを有するドアロックである。好ましい実施形態における能動ドアロックは、ロックされる位置及びロック解除される位置を検出するためのセンサを含む。
【0121】
好ましい実施形態では、上記及び以下に説明される、エレベータのエレベータ制御ユニットは、又は少なくともその一部として、SIL3要件を満たすように構成される。
【0122】
エレベータでは、キャビンの移動を制御すること及び/又はシャフトドアを開くことに関与するすべての構成要素は、SIL3(安全度水準3)規格で定義されている高い安全要件を満たさなければならない場合がある。したがって、構成要素のうちの1つのいかなる故障も、技術者がエレベータシャフト内にいる間にキャビンを移動させること、又はいかなるキャビンもシャフトドアに近い事前定義された位置に駆動されていない間にシャフトドアを開くことなどの、潜在的に危険な状況を作り出すという結果にならないことが、保証され得る。
【0123】
エレベータ制御ユニット又はその任意の部分は、プログラム可能であってもよい。それらは、例えば、コンピュータ可読命令を実行し、及び/又はデータを処理するためのプロセッサと、命令及び/又はデータを記憶するためのメモリとを有してもよい。任意選択的に、ドアコントローラは、エレベータ制御ユニット内に設けられるか、エレベータ制御ユニットから分離されてもよい。後者の場合、2つの制御ユニットはデータ通信リンクで接続される。
【0124】
本発明の第3の態様によれば、コンピュータプログラム製品は、本発明の第2の態様の一実施形態によるエレベータ内のプロセッサによって行われると、本発明の第1の態様の一実施形態による方法を実行すること、及び本発明の第1の態様の一実施形態による方法を制御することのうちの一方を行うようにエレベータに命令するコンピュータ可読命令を備える。あるいは、コンピュータプログラム製品は、モバイルデータ通信デバイス内のプロセッサによって行われると、本発明の第1の態様の一実施形態による方法を実行すること、及び本発明の第1の態様の一実施形態による方法を制御することのうちの一方を行うために、本発明の第2の態様の一実施形態によるエレベータをトリガするための要求信号及びファイナライジング信号のうちの一方を送信するようにモバイルデータ通信デバイスに命令するコンピュータ可読命令を備える。
【0125】
好ましい実施形態では、コンピュータプログラム製品は、上記及び以下に説明されるエレベータ内のプロセッサによって行われると、上記及び以下に説明される方法を実行すること、及び上記及び以下に説明される方法を制御することのうちの一方を行うようにエレベータに命令するコンピュータ可読命令を備える。またあるいは、コンピュータプログラム製品は、データ通信デバイス内のプロセッサによって行われると、上記及び以下に説明される方法を実行するために、上記及び以下に説明されるエレベータをトリガするためのメンテナンス要求を送信するようにデータ通信デバイスに命令するコンピュータ可読命令を備える。
【0126】
コンピュータプログラム製品は、アプリケーション(「App」)の形態であってもよく、エレベータが本明細書で提案される方法を実行又は制御するように、エレベータをトリガするための要求信号及びファイナライジング信号のうちの一方を送信するようにスマートフォンなどのモバイルデータ通信デバイスに命令するために使用されてもよい。
【0127】
コンピュータ可読命令を備えるコンピュータプログラム製品は、任意のコンピュータ可読言語によるものであってもよい。コンピュータ可読命令を実行すると、エレベータ制御ユニットは、本明細書で提案される方法のステップを行う又は制御する。
【0128】
本発明の第4の態様によれば、コンピュータ可読媒体が提案される。コンピュータ可読媒体は、本発明の第3の態様の一実施形態によるコンピュータプログラム製品をその上に記憶している。
【0129】
コンピュータ可読媒体であって、その上に記憶された上記のコンピュータプログラム製品を備えるコンピュータ可読媒体は、一時的又は非一時的なデータ記憶のためのCD、CVD、フラッシュメモリなどの任意のポータブルコンピュータ可読媒体であってもよい。あるいは、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ又はクラウド若しくはインターネットなどのコンピュータネットワークの一部であってもよく、コンピュータプログラム製品はそこからダウンロードされてもよい。
【0130】
本発明の実施形態の可能な特徴及び利点は、本明細書では、メンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法に関して一部説明され、そのような方法を実施するように構成されたエレベータに関して一部説明されることに留意されたい。当業者は、本発明のさらなる実施形態に到達するために、特徴を1つの実施形態から別の実施形態に適切に移行することができ、特徴を修正、適合、組み合わせ、及び/又は交換できることを認識するであろう。
【0131】
以下、添付の図面を参照して、本発明の有利な実施形態を説明する。しかしながら、図面も説明も、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【
図1】本発明の一実施形態によるメンテナンスのためにエレベータを動作させるための方法を実行するように構成されたエレベータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0133】
図は概略図にすぎず、縮尺通りではない。同じ参照符号は、同じ又は類似の特徴を指す。
【0134】
図1は、エレベータ1を示す。エレベータ1は側面図で示されている。さらに、エレベータ1の一部は、破線枠線の内側の部分図に視覚化されるように正面図で示されている。
【0135】
エレベータ1は、エレベータシャフト4に沿って移動可能なキャビン2を備える。エレベータキャビン2は、ロープ又はベルトなどの懸架牽引手段によって保持され、移動される。その反対側の端部において、懸架牽引手段は釣り合い重りに結合されている。懸架牽引手段は駆動部6によって駆動される。駆動部6はエレベータ制御ユニット12によって制御される。
【0136】
エレベータキャビン2は、エレベータキャビン2へのアクセスを開く及び閉じるためのキャビンドア9を備える。キャビンドア9は、キャビンドア駆動部29によって能動的に開かれ及び閉じられてもよい。キャビンドア駆動部29はエレベータ制御ユニット12によって制御される。
【0137】
複数のフロア10’、10’’、10’’’のそれぞれには、少なくとも1つのシャフトドア8が設けられる。シャフトドア8は、エレベータシャフト4へのアクセスを許可又は阻止するために開かれ及び閉じられてもよい。本明細書に提示されるエレベータ1は、シャフトドアブレードを横方向に移動させることによってシャフトドア8のそれぞれを能動的に開く及び閉じるために、シャフトドア8のそれぞれに能動ドア駆動部28を備える。ドア駆動部28のそれぞれはエレベータ制御ユニット12によって制御される。なお、形成を単純化する理由から、ドア駆動部28という用語は、本明細書では(キャビンドア駆動部29を装備する)キャビンドア9ではなく、シャフトドア8のみを指すものとすることに留意されたい。
【0138】
さらに、複数のフロア10のそれぞれには、乗場動作パネルがシャフトドア8の近傍に設けられる。例えば、そのような乗場動作パネルは、乗客によって、彼らのフロア10に来るようキャビン2を呼び出すために作動され得る1つ以上のプッシュボタンを備えてもよい。
【0139】
エレベータ1の通常動作中、エレベータ制御ユニット12は、乗場動作パネルのうちの1つをアクティブ化することにより提供される乗客の呼び出しに応答して、キャビン2をフロア10のうちの1つに移動させるための駆動部6を制御する。その際、キャビン2が乗客を受け入れるか送り出すフロア10の底部とそのキャビン底部とが実質的に同じ高さにあるような乗場位置で、キャビン2が停止されるように駆動部が制御される。
【0140】
メンテナンスの目的で、エレベータ1の通常動作は一時的に中断されなければならない。そのような目的のために、本明細書で提案される方法によれば、技術者は、例えば最上フロアなどのフロア10のうちの1つにおいてエレベータ1に接近し得る。このフロア10においてシャフトドア8に近づくと、技術者はメンテナンスの要求を送ってもよい。次いで、そのような要求がエレベータ制御ユニット12によって受信される。
【0141】
エレベータ制御ユニット12が技術者14によって送られたメンテナンス要求を受信すると、駆動部6は、メンテナンス要求で要求されたメンテナンス作業を行わなければならないフロア10(例えば、
図1に示すような最上フロア)のシャフトドア8にキャビン2の屋根が隣接するような位置への、キャビン2の移動を制御する。このメンテナンス要求では、ヘッド19は事前定義された危険区域18に等しい。続いて、エレベータ制御ユニット12は、それぞれのフロア10’’’のドア駆動部28を制御して、関連するシャフトドア8を能動的に開く。技術者14は、待機しているキャビン2の屋根の上部に乗ることによってエレベータシャフト4に入ってもよい。そのような場所で、技術者14は、例えば、キャビンガイドシュー、エレベータ制御ユニットの部品、前部ブラケット固定、懸架牽引手段、荷重測定システム、釣り合い重り側及びキャビン側のコネクタ、釣り合い重りガイドシュー、シャフト情報、デフレクションプーリー、及び/又は他の構成要素など、エレベータ1の様々な構成要素を検査、修正、修理又は交換してもよい。
【0142】
メンテナンスが完了すると、技術者14は、開いたシャフトドア8を通ってエレベータシャフト4を出てもよい。次いで、技術者14は、エレベータ制御ユニット12によって受信され得るメンテナンス停止要求を、彼のモバイル電子デバイス16で送ってもよい。メンテナンス停止要求を受信すると、エレベータ制御ユニット12は、開いたシャフトドア8のドア駆動部28を制御して、このシャフトドア8を閉じてもよい。エレベータ制御ユニット12がシャフトドア8を閉じた後、エレベータ制御ユニット12はエレベータキャビンを下方向に移動させる。次のステップとして、この時点でシャフト4の外側にいるはずである技術者14は、最上フロアのフロア10’’’の下の1つのフロア10’’に位置するキャビン内で彼自身を識別しなければならない。したがって、エレベータ制御ユニット12はそれぞれのシャフトドア及びキャビンドアを開き、これにより、技術者14がキャビン2に入り、例えばカメラ24を含み得るかご動作パネル22において彼自身を識別できるようになる。この識別の後、エレベータ制御ユニット12は、メンテナンスを要求した技術者14がもはやシャフト内におらず、したがって事前定義された危険区域内、すなわちヘッド19内にいないことを知り、通常動作モードに安全に切り替わり戻る。
【0143】
例示的な実施形態では、ケーブルブレーキ26において設けられた荷重測定セルを使用して、メンテナンス前ステータス、すなわちメンテナンスモードに入る前のメンテナンス前荷重測定値と、メンテナンス後ステータス、すなわちメンテナンスモードから出る前のメンテナンス後荷重測定値とを取り込んでもよい。キャビンを次の下のフロア10’’’(上の段落を参照)に移動させる前に、エレベータ制御ユニット12は2つの荷重測定値を比較して、それらが事前定義された範囲内、例えば互いの5%以内であると結論付ける。このように結論付けた場合にのみ、キャビン2は下のフロア10’’10’’に動かされ、そこで、上述したように、すなわちキャビン2内の技術者14の識別によって方法が継続する。
【0144】
メンテナンス要求が、最下フロア10(図示せず)でのメンテナンスが要求されるようなものであるとき、駆動部6は、エレベータ制御ユニット12の制御に基づいて、キャビン2を最下フロア10の上の位置に、すなわち、キャビン底部がエレベータシャフト4のピット17の十分上方にあるように移動させ、技術者14がそのようなピット17に入ることを可能にする。このメンテナンス要求では、ピット17は事前定義された危険区域18に等しい。続いて、エレベータ制御ユニット12は、最下フロア10のドア駆動部28を制御して関連するシャフトドア8を能動的に開く。次いで、技術者14はピット17に入ってもよい。ピット17において、技術者は、エレベータ1の様々な構成要素を検査、修正、修理、又は交換してもよい。
【0145】
メンテナンスの要求(メンテナンス開始要求)を受信すると、エレベータ制御ユニット12はメンテナンスモードに切り替わる。そのようなメンテナンスモードでは、例えば他のフロアのいずれかの乗場動作パネル又はキャビン動作パネルのうちの一方において乗客によって入力された呼び出しは無視される。さらに、エレベータ制御ユニット12がメンテナンスモードにある限り、キャビン2のいかなる移動も防止される。
【0146】
一例では、技術者14は、スマートフォンなどのモバイル電子デバイス16を使用して、メンテナンス要求を形成するデータを生成し、送信してもよい。そのような目的のために、特定のアプリケーションがプログラムされ、モバイル電子デバイス16にアップロードされてもよい。電子モバイルデバイス16は、メンテナンス要求を暗号化する電磁波を送ってもよい。電磁波は、エレベータ制御ユニット12の一部であるか、又はエレベータ制御ユニットに接続されている適切なセンサによって受信されてもよい。あるいは、モバイル電子デバイス16とエレベータ制御ユニット12との間の通信リンクがサーバ、例えばクラウドを介して確立されてもよい。
【0147】
メンテナンスが完了すると、技術者14は、開いたシャフトドア8を通ってエレベータシャフト4を出てもよい。次いで、技術者14は、エレベータ制御ユニット12によって受信され得るメンテナンス停止要求を、彼のモバイル電子デバイス16で送ってもよい。メンテナンス停止要求を受信すると、エレベータ制御ユニット12は、開いたシャフトドア8のドア駆動部28を制御して、このシャフトドア8を閉じてもよい。エレベータ制御ユニット12がシャフトドア8を閉じた後、エレベータ制御ユニット12はエレベータキャビンを上方向に移動させる。次のステップとして、この時点でシャフト4の外側にいるはずである技術者14は、1階のフロア10’’に位置するキャビン内で彼自身を識別しなければならない。したがって、エレベータ制御ユニット12はそれぞれのシャフトドア及びキャビンドアを開き、これにより、技術者14がキャビン2に入り、例えばかご動作パネル22,24において彼自身を識別できるようになる。この識別の後、エレベータ制御ユニット12は、メンテナンスを要求した技術者14がもはやシャフト内におらず、したがって事前定義された危険区域内、すなわちピット17内にいないことを知り、通常動作モードに安全に切り替わり戻る。
【0148】
例示的な実施形態では、カメラ20がキャビンの底部に設けられてもよく、カメラ20を使用して、メンテナンス前ステータス、すなわちメンテナンスモードに入る前のメンテナンス前スナップショットと、メンテナンス後ステータス、すなわちメンテナンスモードから出る前のメンテナンス後スナップショットとを取り込んでもよい。キャビンを次の下のフロア10’’’(上の段落を参照)に移動させる前に、エレベータ制御ユニット12は2つのスナップショットを比較して、ピット内の人の存在を否定できる程度にそれらが互いに類似していると結論付ける。このように結論付けた場合にのみ、キャビン2は上のフロア10’’に動かされ、そこで、上述したように、すなわちキャビン2内の技術者14の識別によって方法が継続する。
【0149】
本明細書で提案される方法及びエレベータ1により、エレベータ1のメンテナンスは実質的に簡略化され、よりセキュアにされ得る。メンテナンス開始要求を送ると、技術者14がメンテナンスを要求したフロアのシャフトドア8が能動的および自動的に開かれ得る。さらに、キャビン2は既に適切な場所に駆動されている。メンテナンスモード中はキャビン2のさらなる移動が許容されないため、技術者の負傷のリスクは最小限に抑えられる。さらに、キャビン屋根上又はピット17内に制御ユニットを必要としない。一般に、キャビン屋根41上のトーガード及び/又はキャビンシル上のエプロンも必要としない。したがって、そのようなデバイスのコストを節約することができる。
【0150】
最後に、「備える(comprising)」という用語は他の要素又はステップを除外せず、「1つ(a)」又は「1つ(an)」は複数を除外しないことに留意されたい。また、異なる実施形態に関連して説明された要素を組み合わせてもよい。特許請求の範囲における参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことにも留意されたい。
【国際調査報告】