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特表2023-547710水を含む混合物を凍結又は解凍する方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】水を含む混合物を凍結又は解凍する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 5/06 20060101AFI20231106BHJP
   F26B 25/00 20060101ALI20231106BHJP
   A61K 9/19 20060101ALN20231106BHJP
   A61K 9/10 20060101ALN20231106BHJP
【FI】
F26B5/06
F26B25/00 A
A61K9/19
A61K9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527698
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2021080545
(87)【国際公開番号】W WO2022096524
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】2026826
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523163761
【氏名又は名称】レアビータ・べー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コルバー,ヨーゼフ・アントーニウス・ビレム・マリア
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ボクスタル,ピーテル-ヤン・ピエール
【テーマコード(参考)】
3L113
4C076
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AC24
3L113AC67
3L113BA36
3L113CA04
3L113CB16
3L113DA24
3L113DA30
4C076AA16
4C076AA30
4C076BB11
4C076GG01
4C076GG06
(57)【要約】
本発明は、注射用組成物、特に医薬組成物を凍結するための方法に関する。この方法は、水性分散媒体中の注射用組成物のある量の分散液をバイアル中に保存するステップと、冷却ガスをバイアルに適用することによってバイアルを冷却するステップであって、冷却するステップが、(A)、(B)、及び(C)のうちの少なくとも1つを実行することによって特徴付けられ、(A)が、分散層において核生成が生じる前の初期冷却制御スキームであり、(B)が、分散層の結晶化中の結晶化制御スキームであり、(C)が、分散層が結晶化した後の最終冷却制御スキームである、冷却するステップと、凍結が完了した後に分散液を得るステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物、特に医薬組成物の相を変化させるための方法であって、
ある量の前記組成物をバイアルに保存するステップと、
前記バイアルに熱ガスを適用することによって、前記バイアル内の前記組成物の前記相を変化させるステップであって、
前記組成物の前記相を変化させるステップが、前記組成物を凍結又は解凍するステップを含み、前記熱ガスが、それぞれ冷却ガス又は加熱ガスであり、
前記組成物の前記相を変化させるステップが、(A)、(B)、(C)のうちの少なくとも1つを実行することによって特徴付けられ、ここで(A)が、前記組成物の結晶化量が変化する相に入る前に実行される初期温度変化制御スキームであり、(B)が、前記組成物の結晶化量が変化する相の過程での結晶化変化制御スキームであり、(C)が、前記組成物がその最終温度に達するまで実行される最終温度変化制御スキームである、ステップと、
相の変化が完了した後に、前記組成物を得るステップと、を含み、
前記初期温度変化制御スキーム(A)が、
(I)前記バイアル及び/又は前記組成物に対して初期測定を実行して、前記組成物の結晶化量が変化する相が開始したか否かを判定するステップと、
(II)前記バイアル及び/又は前記組成物の温度が、既定の初期温度の経時的変化に従うように、前記熱ガスの温度及び/又は流量を制御するステップと、
前記初期測定が、前記組成物の前記結晶化量が変化する前記相が開始したと判定するまで、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップと、を含み、前記結晶化変化制御スキーム(B)が、
(I)前記バイアル及び/又は前記組成物に対して結晶化変化測定を実行して、前記組成物中の前記結晶化量にもはや変化がないか否かを判定するステップと、
(II)前記バイアル及び/又は前記組成物の温度が、既定の結晶化変化温度の経時的変化に従うように、前記熱ガスの温度及び/又は流量を制御するステップと、
前記組成物中の前記結晶化量の変化がもはや存在しなくなるまで、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップと、を含み、
前記最終温度変化制御スキーム(C)が、
(I)前記バイアル及び/又は前記組成物の温度が既定の最終温度の経時的変化に従うように、前記熱ガスの温度及び/流量を制御するステップと、
(II)前記バイアル及び/又は前記組成物に対して最終温度測定を実行して、前記バイアル及び/又は前記組成物がその既定の最終温度に到達したか否かを判定するステップと、
前記最終温度測定が、前記バイアル及び/又は前記組成物がその既定の最終温度に到達したと判定するまで、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
(A)、(B)及び(C)のうちの少なくとも1つにおいて、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップの前に、前記制御スキームが既定の時間を待機することができる、請求項1に記載の組成物の相を変化させるための方法。
【請求項3】
前記初期測定、前記結晶化変化測定、及び/又は前記最終温度測定が、熱情報を捕捉するための熱センサ及び/又は分光情報を捕捉するためのセンサを使用して実行され、
好ましくは、前記バイアルの前記分光情報が、画像処理モジュールを使用して前記組成物の構造情報に変換され、
好ましくは、前記熱情報及び/又は前記構造情報が、前記組成物の特性をリアルタイムで判定するために数学的モデルとともに使用される、請求項1又は2に記載の注射用組成物を凍結するための方法。
【請求項4】
前記組成物の相を変化させるステップが、前記組成物を凍結させることである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法であって、
前記組成物が注射可能であり、水性分散媒体中の前記注射用組成物のある量の分散液として前記バイアル中に保存され、
前記初期温度変化制御スキームが、分散層に核生成が発生する前の初期冷却制御スキーム(X)であり、前記結晶化変化制御スキームが、前記分散層の結晶化中の結晶化制御スキーム(Y)であり、前記最終温度変化制御スキームが、前記分散層が結晶化した後の最終冷却制御スキーム(Z)であり、
前記初期冷却制御スキーム(X)において、前記初期測定が、前記分散液において核形成が生じたか否かを判定するための核形成測定であり、前記初期温度の経時的変化が、初期冷却温度の経時的変化であり、前記核形成測定が前記分散液において核形成が生じたと判定するまで、ステップ(I)及び(II)が繰り返され、
前記結晶化制御スキーム(Y)において、前記結晶化変化測定が、前記分散液において結晶化が終了したか否かを判定し、前記結晶化変化温度の経時的変化が、結晶化温度の経時的変化であり、前記結晶化測定が前記分散液において結晶化が終了したと判定するまで、ステップ(I)及び(II)が繰り返され、
前記最終冷却制御スキーム(Z)において、前記最終温度の経時的変化が、最終冷却温度の経時的変化である、方法。
【請求項5】
(X)及び(Y)、(Y)及び(Z)、(X)及び(Z)、又は(X)、(Y)及び(Z)が実施される、請求項4に記載の注射用組成物を凍結するための方法。
【請求項6】
前記初期冷却制御スキーム(X)が、分布に凝結核を誘発するステップ、及び/又は音波若しくは圧力波によって前記組成物に人工的な密度勾配を誘発するステップ、及び/又は前記分布に熱衝撃を誘発するステップと、を更に含み、好ましくは前記音波若しくは前記圧力波が回転変動を誘発することによって生成され、好ましくは前記熱衝撃が前記冷却ガスの温度若しくは流量の変動によって誘発される、請求項4又は5に記載の注射用組成物を凍結するための方法。
【請求項7】
前記方法が、
前記バイアルを少なくとも一定時間回転させて、前記バイアルの周壁の内面に分散層を形成するステップと、
前記回転するバイアルに冷却ガスを適用することによって、前記バイアルを冷却するステップと、を更に含む、請求項4~6に記載の注射用組成物を凍結するための方法。
【請求項8】
前記方法が、真空を適用し、熱を供給しながら乾燥するステップを追加的に実行することにより、注射用組成物を凍結乾燥する方法である、請求項4~7に記載の注射用組成物を凍結するための方法。
【請求項9】
前記組成物の前記相を変化させるステップが、前記組成物を解凍することであり、
前記組成物が凍結されており、好ましくは、凍結組成物が水性分散媒体中の注射用組成物の分散液であり、より好ましくは、前記凍結組成物が前記バイアルの周壁の内面における凍結分散層であり、より好ましくは、前記凍結組成物が請求項4~8のいずれか一項に記載の方法によって得られ、
前記初期温度変化制御スキームが、前記組成物において共融点に達する前の加熱段階中の初期加熱制御スキーム(V)であり、及び/又は前記組成物において水の融点に達する前の加熱段階中の二次加熱制御スキーム(X)であり、前記結晶化変化制御スキームが、賦形剤脱結晶化段階中の脱結晶化制御スキーム(W)であり、及び/又は氷相の融解中の融解制御スキーム(Y)であり、前記最終温度変化制御スキームが、前記組成物の使用温度に達するための最終加熱制御スキーム(Z)であり、
前記初期加熱制御スキーム(V)において、前記初期測定が、前記組成物が共融点に到達したか否かを判定するための共融点測定であり、前記初期温度の経時的変化が、初期加熱温度の経時的変化であり、前記共融点測定によって前記組成物が前記共融点に到達したと判定されるまで、ステップ(I)及び(II)が繰り返され、
前記脱結晶化制御スキーム(W)において、前記結晶化変化測定が、前記組成物において脱結晶化が終了したか否かを判定するための脱結晶化測定であり、前記結晶化変化温度の経時的変化が、脱結晶化温度の経時的変化であり、前記脱結晶化測定が前記組成物において脱結晶化が終了したと判定するまで、ステップ(I)及び(II)が繰り返され、
前記二次加熱制御スキーム(X)において、前記初期測定が、前記組成物が前記組成物中に含まれる氷の融点に達したか否かを判定する融点測定であり、前記初期温度の経時的変化が、二次的加熱温度の経時的変化であり、前記融点測定によって前記組成物が前記融点に到達したと判定されるまで、ステップ(I)及び(II)が繰り返され、
前記融解制御スキーム(Y)において、前記結晶化変化測定が、前記組成物において氷の融解が終了したか否かを判定する融解測定であり、前記結晶化変化温度の経時的変化が、融解温度の経時的変化であり、前記融解測定が前記組成物において融解が終了したと判定するまで、ステップ(I)及び(II)が繰り返され、
前記最終加熱制御スキーム(Z)において、前記最終温度の経時的変化が、最終加熱温度の経時的変化である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(V)及び(W);(V)及び(X);(V)及び(Y);(V)及び(Z);(W)及び(X);(W)及び(Y);(W)及び(Z);(X)及び(Y);(X)及び(Z);(Y)及び(Z);(V)、(W)及び(X);(V)、(W)及び(Y);(V)、(W)及び(Z);(V)、(X)及び(Y);(V)、(X)及び(Z);(V)、(Y)及び(Z);(W)、(X)及び(Y);(W)、(X)及び(Z);(W)、(Y)及び(Z);(X)、(Y)及び(Z);(V)、(W)、(X)及び(Y);(V)、(W)、(X)及び(Z);(V)、(W)、(Y)及び(Z);(V)、(X)、(Y)及び(Z);(W)、(X)、(Y)及び(Z);又は(V)、(W)、(X)、(Y)、及び(Z)を実行する、請求項9に記載の凍結組成物を解凍する方法。
【請求項11】
前記方法が、前記バイアルを少なくとも一定時間回転させるステップと、前記回転するバイアルに加熱ガスを適用することによって前記バイアルを加熱するステップと、を更に含む、請求項9又は10に記載の凍結組成物を解凍するための方法。
【請求項12】
凍結組成物、特に医薬組成物を解凍するための方法であって、
ある量の凍結組成物をバイアル中に貯蔵するステップであって、好ましくは、前記凍結組成物が水性分散媒体中の注射用組成物の分散液であり、より好ましくは、前記凍結組成物が前記バイアルの周壁の内面における凍結分散層であり、より好ましくは、前記凍結組成物が請求項4~8のいずれか一項に記載の方法によって得られる、貯蔵するステップと、
少なくとも一定時間、前記バイアルを回転させるステップと、
前記バイアルの回転中に回転中のバイアルに加熱ガスを適用することによって前記バイアルを加熱するステップと、
解凍が完了した後に前記組成物を得るステップと、を含む、方法。
【請求項13】
注射用組成物、特に医薬組成物を凍結させるための凍結装置であって、
1つ以上のバイアルをその中で冷却するための凍結チャンバであって、前記1つ以上のバイアルが、水性分散媒中の注射用組成物のある量の分散液を含み、前記バイアルが冷却されるように前記バイアルに冷却ガスを適用するための冷却ガスシステムを備えた、凍結チャンバを備え、
前記凍結装置が、
請求項4~8のいずれか一項に記載の凍結プロセスを制御するための制御手段と、
前記凍結プロセスの少なくともある時間中に前記バイアルの温度を測定するための手段と、
前記冷却ガスの流量及び/又は温度に影響を与え、前記凍結プロセスの少なくとも一部の間に前記冷却速度を調整するための制御機構と、を更に備える、装置。
【請求項14】
注射用組成物、特に医薬組成物を凍結させるための凍結装置であって、
1つ以上のバイアルをその中で冷却するための凍結チャンバであって、前記1つ以上のバイアルが、水性分散媒中の注射用組成物のある量の分散液を含み、前記バイアルが冷却されるように前記バイアルに冷却ガスを適用するための冷却ガスシステムを備えた、凍結チャンバを備え、
前記凍結装置が、前記凍結チャンバを少なくとも部分的に取り囲む熱交換要素を備え、
前記熱交換要素が、前記凍結チャンバと熱的に接触しており、
前記熱交換要素が、前記凍結チャンバからの使用済み冷却ガスを使用することによって、又は他の低温の流体若しくはガスを使用することによって、前記凍結チャンバを冷却し、
好ましくは、前記使用済み冷却ガスが、前記凍結チャンバを冷却するように前記熱交換要素を通って流れることが可能であり、
好ましくは、前記熱交換要素が、前記凍結チャンバを取り囲む螺旋状に巻かれたチャネル及び/又は蛇行したチャネルによって形成され、前記使用済み冷却ガスが前記チャネルを通って流れることが可能であり、
好ましくは、前記熱交換要素が、前記凍結チャンバを取り囲む二重壁構造内に位置付けられる、装置。
【請求項15】
注射用組成物、特に医薬組成物を凍結させるための凍結装置であって、
1つ以上のバイアルをその中で冷却するための凍結チャンバであって、前記1つ以上のバイアルが、水性分散媒中の注射用組成物のある量の分散液を含み、前記バイアルが冷却されるように前記バイアルに冷却ガスを適用するための冷却ガスシステムを備えた、凍結チャンバを備え、
前記冷却システムが、冷却される前記ガスと熱的に接触している熱交換要素を備え、
前記熱交換要素が、前記凍結チャンバからの使用済み冷却ガスを使用して前記ガスを冷却し、
好ましくは、前記熱交換要素が、冷却される前記ガスが流れる第1の配管システムと、前記使用済み冷却ガスが流れる第2の配管システムとによって形成され、前記第1の配管システム及び前記第2の配管システムが互いに熱的に接触している、装置。
【請求項16】
注射用組成物、特に医薬組成物を凍結させるための凍結装置であって、
1つ以上のバイアルをその中で冷却するための凍結チャンバであって、前記1つ以上のバイアルが、水性分散媒中の注射用組成物のある量の分散液を含み、前記バイアルが冷却されるように前記バイアルに冷却ガスを適用するための冷却ガスシステムを備えた、凍結チャンバを備え、
前記冷却ガスシステムが、前記ガスが前記冷却温度まで冷却される冷却システムを備え、
前記冷却システムが、圧縮機と、冷却される前記ガスと熱的に接触している熱交換要素と、を備え、
前記熱交換要素が、前記凍結チャンバからの使用済み冷却ガスを使用して前記ガスを冷却する、装置。
【請求項17】
前記装置は、前記凍結プロセスの少なくともある時間中に前記バイアルの温度を測定する手段を備え、
前記冷却ガスの流量及び/又は温度に影響を与え、前記凍結プロセスの少なくとも一部の間に前記冷却速度を調整するための制御機構と、を備える、請求項14~16のいずれか一項に記載の凍結装置。
【請求項18】
前記凍結装置が、
前記1つ以上バイアルのための回転手段を更に備え、前記1つ以上のバイアルが、前記バイアルの周壁の内面に分散層を形成するために、少なくとも一定時間にわたって回転することができ、前記バイアルが冷却されるように、前記冷却ガスシステムが前記回転するバイアルに冷却ガスを適用する、請求項13~17のいずれか一項に記載の凍結装置。
【請求項19】
注射用組成物、特に医薬組成物を凍結乾燥するための凍結乾燥システムであって、
請求項13~18のいずれか一項に記載の凍結装置と、
アニーリング装置及び/又は昇華装置と、を備え、
前記アニーリング装置及び/又は前記昇華装置が、それぞれアニーリングチャンバ及び昇華チャンバを備え、
前記アニーリング装置及び/又は前記昇華装置が、前記アニーリングチャンバ及び前記昇華チャンバとそれぞれ熱的に接触する、各々のアニーリングチャンバ熱交換要素及び昇華チャンバ熱交換要素を備え、
前記アニーリング/昇華チャンバ熱交換要素が、前記凍結チャンバからの前記使用済み冷却ガスを使用して、又は他の低温の液体又はガスを使用して、前記アニーリングチャンバ及び/又は前記昇華チャンバを冷却する、システム。
【請求項20】
凍結組成物、特に医薬組成物を解凍するための解凍装置であって、
少なくとも一定時間、1つ以上のバイアルを回転させるための回転手段を備える解凍チャンバであって、前記1つ以上のバイアルが、バイアル内にある量の凍結組成物を含むためのものであり、好ましくは、前記凍結組成物が、水性分散媒体中の注射用組成物の分散液であり、より好ましくは、前記凍結組成物が、前記バイアルの周壁の内面における凍結分散層であり、より好ましくは、前記凍結組成物が、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法によって得られる、解凍チャンバを備え、
かつ、前記バイアルが加熱されるように、前記バイアルの回転中に回転するバイアルに加熱ガスを適用するための加熱ガスシステムを備える、装置。
【請求項21】
凍結組成物、特に医薬組成物を解凍するための解凍装置であって、
1つ以上のバイアルをその中で加熱するための解凍チャンバであって、前記1つ以上のバイアルが、バイアル中にある量の凍結組成物を含むためのものであり、好ましくは、前記凍結組成物が、水性分散媒体中の注射用組成物の分散液であり、より好ましくは、前記凍結組成物が、前記バイアルの周壁の内面における凍結分散層であり、より好ましくは、前記凍結組成物が、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法によって得られる、解凍チャンバを備え、
かつ、前記バイアルが加熱されるように、前記バイアルに加熱ガスを適用するための加熱ガスシステムを備え、
前記解凍装置が、請求項9~11のいずれか一項に記載の解凍プロセスを制御するための制御手段を更に備える、装置。
【請求項22】
凍結組成物、特に医薬組成物を解凍するための解凍装置であって、
1つ以上のバイアルをその中で加熱するための解凍チャンバであって、前記1つ以上のバイアルが、バイアル中にある量の凍結組成物を含むためのものであり、好ましくは、前記凍結組成物が、水性分散媒体中の注射用組成物の分散液であり、より好ましくは、前記凍結組成物が、前記バイアルの周壁の内面における凍結分散層であり、より好ましくは、前記凍結組成物が、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法によって得られる、解凍チャンバを備え、
かつ、前記バイアルが加熱されるように、前記バイアルに加熱ガスを適用するための加熱ガスシステムを備え、
前記解凍装置が、前記解凍チャンバを少なくとも部分的に取り囲む熱交換要素を備え、
前記熱交換要素が、前記解凍チャンバと熱的に接触しており、
前記熱交換要素が、前記解凍チャンバからの使用済み加熱ガスを使用して前記解凍チャンバを加熱し、
好ましくは、前記使用済み加熱ガスが、前記解凍チャンバを加熱するように、前記熱交換要素を通って流れることが可能であり、
好ましくは、前記熱交換要素が、前記解凍チャンバを取り囲む螺旋状に巻かれたチャネル及び/又は蛇行チャネルによって形成され、前記使用済み加熱ガスが前記チャネルを通って流れることが可能であり、
好ましくは、前記熱交換要素が、前記解凍チャンバを取り囲む二重壁構造内に位置付けられる、装置。
【請求項23】
凍結組成物、特に医薬組成物を解凍するための解凍装置であって、
1つ以上のバイアルをその中で加熱するための解凍チャンバであって、前記1つ以上のバイアルが、バイアル中にある量の凍結組成物を含むためのものであり、好ましくは、前記凍結組成物が、水性分散媒体中の注射用組成物の分散液であり、より好ましくは、前記凍結組成物が、前記バイアルの周壁の内面における凍結分散層であり、より好ましくは、前記凍結組成物が、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法によって得られる、解凍チャンバを備え、
かつ、前記バイアルが加熱されるように、前記バイアルに加熱ガスを適用するための加熱ガスシステムを備え、
前記加熱ガスシステムが、前記加熱ガスを加熱するための加熱システムを備え、
前記加熱システムが、加熱されるべき前記ガスと熱的に接触する熱交換要素を備え、
前記熱交換要素が、前記解凍チャンバからの使用済み加熱ガスを使用して前記ガスを加熱し、
好ましくは、前記熱交換要素が、加熱されるべき前記ガスが流れる第1の配管システムと、前記使用済み加熱ガスが流れる第2の配管システムとによって形成され、前記第1の配管システムと、前記第2の配管システムとは、互いに熱的に接触している、装置。
【請求項24】
前記解凍チャンバが、前記1つ以上のバイアルを少なくとも一定時間回転させるための回転手段を備え、前記解凍装置が、前記バイアルが加熱されるように回転するバイアルに加熱ガスを適用するための加熱ガスシステムを備える、請求項21~23のいずれか一項に記載の解凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、注射用組成物、特に医薬組成物、生物学的組成物、化粧品組成物又は医療用栄養製品を含むがこれらに限定されない生成物の例えば凍結乾燥に好適な凍結及び解凍混合物の分野に関する。特に、本開示は、水を含む混合物を凍結するための方法及び装置に関する。より一般的には、この方法及び装置は、容器上に低温ガスを噴射することにより熱を除去することによって流体物質を凝固させるためのものである。追加的に、熱的に制御されたガスを噴射する方法及び類似の装置は、最初に凍結した混合物の制御された解凍のために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
凍結乾燥(lyophilisation)としても既知であるフリーズドライ(freeze drying)は、組成物が凍結されて真空下に置かれた後に、氷が昇華によって除去され得るように、組成物から水を除去する技術である。昇華は、液体状態を通過することなく、固体状態から気体状態への直接的な物質の遷移である。フリーズドライは数十年前から既知であり、典型的には腐敗しやすい材料(例えば医薬品又は食品)に対して、例えば材料の貯蔵、流通及び/又は輸送により便利にするために使用されている。
【0003】
この凍結乾燥プロセスを実行するための従来の方法は、容器のバッチを配置することであり、各容器は、密封されたチャンバ内の中空棚上に、組成物の分散液が提供される。熱流体が中空棚を通って流れると、棚が冷却され、それによって容器及び内部の組成物の温度が低下する。この凍結サイクルの終わりに、水性組成物を容器の底の栓として凍結させ、その後、チャンバ内の圧力を低下させ、同時に棚を徐々に加熱して、凍結組成物中に形成された氷晶を昇華させる。昇華プロセスの間、水蒸気が生成され、容器の底部に位置する栓の表面を離れる。昇華フロントとも呼ばれる氷-蒸気界面は、昇華プロセスが進行するにつれてゆっくりと下方に移動する。氷晶の実質的な部分が除去されると、組成物の多孔質構造が残る。一般に、凍結乾燥サイクルを完了するために、二次乾燥ステップが続き、ここで、残留水分は、上昇した温度及び/又は適合した圧力での脱着によって、処方物間隙マトリックスから除去される。
【0004】
凍結ステップに着目すると、このステップは、結果として生じる乾燥生成物の構造及び形態がこのステップで確立されるので、最終乾燥生成物の品質にとって重要であると考えられるステップのうちの1つである。凍結ステップは、一般に4つの別々の段階からなると考えられている。(I)最初に、生成物の温度が結晶化点を下回るまで液体を冷却する。結晶化が起こらない間に結晶化点を下回って冷却することは、一般に過冷却(supercooling)と呼ばれ、過冷(undercooling)としても既知であり、液体が固体になることなく、液体の温度をその氷点を下回って下げるプロセスである。過冷却は、結晶構造がそのような核の周りに形成することができない限り、種結晶又は核の存在下で起こり得る。(II)次に、過冷却液体からの結晶相の起源である核生成が起こる。核形成は、結晶化の開始を示す。結晶化の間に、熱は生成物によって放出される必要があるため、氷晶化のこの発熱性故に、相対的な温度上昇がある。(III)次に、結晶成長段階としても既知である結晶化段階の間に、結晶状態に達する。ここでもこのプロセスは、熱が生成物から除去される発熱プロセスである。(IV)最後に、固体を更に冷却する。この段階において、氷晶の最終的な形状及びサイズは、オストワルド熟成と呼ばれる現象によって判定される。
【0005】
凍結乾燥における凍結ステップは特に重要であると考えられるが、上記の凍結(I)~(IV)の間の全ての相の実際の制御は、伝統的な棚式凍結乾燥機においては限定されている。上述したように、棚は、透熱流体(熱エネルギーを伝達する手段として使用される)を介して間接的に冷却され、透熱流体は、生成物を含有するバイアルを冷却する。このプロセスは本質的に遅く、棚の冷却は通常1~2℃/分に制限され、これは制御能力を大きく制限する。更に、冷却方法に起因して、制御は透熱流体の制御に限定され、製品への非常に明確な連携を有する。
【0006】
制御された核形成に関して、生成物の変動性を低減するために核形成を誘導するためのいくつかの改善が提案されている:(A)吸引真空及び曝気の迅速なシーケンスを誘導して密度ショックを誘導する、(B)小さな氷の結晶の曇りを誘発する、(C)液体窒素の小滴の霧化を誘発する。
【0007】
上記の方法(A)~(C)の全ては、最初に通常の結晶化点(過冷却)をちょうど下回る低温を適用し、十分な耐熱性付与を確実にする。次いで、そのような誘導方法を適用することによって、結晶化の変動性は、その後の結晶化が起こるときに大幅に低減される。それにもかかわらず、依然として、更なる改善が目標とされる。
【0008】
国際公開第2013/036107号パンフレットは、注射用組成物を凍結乾燥する方法を開示しており、この方法は、A)水性分散液又は溶液媒体中の注射用組成物のある量の分散液又は溶液を少なくとも1つのすぐ使用できるバイアル中に貯蔵することと、B)バイアルを少なくとも一定時間回転させて、バイアルの周壁の内面に分散液又は溶液層を形成することと、C)ステップBによるバイアルの回転中に、バイアルを冷却して、凝固させ、特にバイアルの周壁の内面に氷晶を形成することと、D)冷却された組成物を乾燥させて、バイアルの周壁を実質的に均一に加熱することによって分散液又は溶液中に形成された氷晶の少なくとも一部を昇華させることと、を含む。バイアル中の生成物の冷却及び凍結は、回転するバイアルに低温ガス噴射を適用することによって達成される。
【0009】
この方法では、製品の冷却は、毎分0.5~100℃で任意に設定することができる。液体及び氷の冷却相の熱軌道は、非接触温度測定を使用して制御され、冷却ガスの温度及び/又は特定の設定点の時間の制御が維持される。この解決策は、液相及び結晶水の温度軌跡を制御するが、更なる改善が求められている。
【0010】
「In-Situ X-ray Imaging Of Sublimating Spin-Frozen Solutions」,Materials 2020,13,2953(Goethals,W.、Vanbillemont,B.、Lammens,J.、De Beer,T.、Vervaet,C.、Boone,M.N.著)は、スピン凍結乾燥技術によって処理された凍結物質の構造を記載している。得られた生成物構造は、マイクロCTスキャン技術を使用して可視化される。データ処理後の結果のいくつかは、水蒸気の脱出を容易にする「柱」様構造と一致するプロファイルを示す。
【0011】
「Mechanistic modelling of infrared mediated energy transfer during the primary drying step of a continuous freeze-drying process」,European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 114(2017)11-2(Pieter-Jan Van Bockstal et al.著)においては、最適な動的IRヒータ温度を一次乾燥進行の関数として計算することを可能にし、したがって、適用された動的IRヒータ温度に基づいて一次乾燥終点を予測することも可能にする機構モデルが開発された。このモデルを実験検証と比較する。機構モデルは、先に引用した刊行物に示されているような幾何学的構造を考慮しなかった。この結果、昇華時間はモデル化されたものよりも短くなる。
【0012】
(新しい)療法の開発のために、活性医薬成分(active pharmaceutical ingredient、API)及び/又は薬物製品製剤の一連の処理ステップが必要である。これらのステップは、凍結及び結晶形成に加えて、解凍も含む。この解凍プロセスは、APIの収率及び有効性に影響を及ぼす。これは、APIを含む容器の熱制御された層への浸漬を使用して行われる。このような浴では最終温度は好適に保証されるが、そこに到達するための軌道は存在せず、複数の物理的条件に依存する。例えば、ある場合には、急速な初期温度上昇が必須であり、その後にゆっくりとした最終解凍が続くか、又はその逆であり、これは浸漬では実現することができない。
【0013】
例えば、方法は、APIを含有するアンプルを、もしあれば1つ又は2つの小さい氷晶のみが残るまで(1~2分)、37℃の水浴に迅速に移すことであり得る。例えば、細胞膜への損傷を最小限にするためなど、急速に解凍することが重要であると考えられている。この方法は、例えば、アンプルが熱浴に完全に浸漬された場合、又はアンプルが誤って閉じられた場合に、熱浴の使用による汚染のリスクを大幅に増加させる。
【0014】
「The Impact of Varying Cooling and Thawing Rates on the Quality of Cryopreserved Human Peripheral Blood T Cells」,Sci Rep 9,3417(2019),Baboo,J.,Kilbride,P.,Delahaye,M.et al.において、異なる凍結シナリオと解凍プロセスとの間の相互作用は、血中T細胞の生存について判定されている。異なる凍結及び解凍経路に従う異なる氷構造の図が示されている。様々な状況を細胞の生存と比較すると、最初の凍結状況に応じて、解凍が細胞の生存率に大きな影響を及ぼし得ることが開示されている。この刊行物は、例えば細胞型、冷却速度及び加温速度の効果を比較して、異なる生物についての生存成功の要約を提供する。
【0015】
「Thermostability of Biological Systems:Fundamentals,Challenges,and Quantification」;The Open Biomedical Engineering Journal,2011,5,47-73(Xiaoming He著)においては、熱力学的エネルギー伝達に関連する凍結及び解凍の基本的な態様が記載されており、実際の画像と比較されている。細胞構造に対する凍結シナリオの影響を視覚化するために、1つの例証がなされている。冷却速度が非常に遅い場合、細胞の脱水が優勢である。冷却速度が速い場合、細胞内氷形成が優勢である。冷却速度が中程度である場合、細胞内氷形成及び細胞脱水の両方が起こり得る。この刊行物では、冷却速度が研究のためのパラメータとして採用されているが、物理学の観点からは、決定要因は熱の除去であることに留意しなければならない。
【0016】
「Cell Size and Water Permeability as Determining Factors for Cell Viability after Freezing at Different Cooling Rates」;Applied and Environmental Microbiology,Jan.2004,p.268-272;DOI:10.1128/AEM.70.1.268-272.2004(F.Dumont et al.著)は、冷却速度に関して異なる結果、特に異なる生物についての冷却速度に対する細胞生存率の関係を示している。彼らが研究すべきパラメータとして冷却速度を採用するという事実は、彼らの装置の制限によって引き起こされ、冷却浴温度のみが監視及び制御され得る。
【0017】
最後に、生成物の温度を変化させるために凍結乾燥プロセスにおいて使用される低温ガスの生成のために、例えば液体窒素及び熱交換器を使用してそのようなガスを冷却することが必要である。これは、清浄な低温ガスの損傷につながる可能性がある。環境的観点及びコスト的観点の両方から、これは望ましくない。
【0018】
したがって、本発明の目的は、凍結、凍結乾燥及び解凍に関する上述の問題を解決し、これに伴い、凍結、凍結乾燥及び解凍の方法を更に改善することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第2013/036107号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Goethals,W.、Vanbillemont,B.、Lammens,J.、De Beer,T.、Vervaet,C.、Boone,M.N.,“In-Situ X-ray Imaging Of Sublimating Spin-Frozen Solutions”,Materials,2020,13,2953
【非特許文献2】Pieter-Jan Van Bockstal et al.,“Mechanistic modelling of infrared mediated energy transfer during the primary drying step of a continuous freeze-drying process”,European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics,2017,114,p.11-2
【非特許文献3】Baboo,J.,Kilbride,P.,Delahaye,M.et al.,“The Impact of Varying Cooling and Thawing Rates on the Quality of Cryopreserved Human Peripheral Blood T Cells”,Scientific Reports,2019,9,3417
【非特許文献4】Xiaoming He,“Thermostability of Biological Systems:Fundamentals,Challenges,and Quantification”,The Open Biomedical Engineering Journal,2011,5,47-73
【非特許文献5】F.Dumont et al.,“Cell Size and Water Permeability as Determining Factors for Cell Viability after Freezing at Different Cooling Rates”,Applied and Environmental Microbiology,2004年1月,p.268-272
【発明を実施するための形態】
【0021】
先行技術の上で考察される欠点のうちの1つ以上に対処するために、本発明は、組成物、特に医薬組成物の相を変化させるための方法であって、
ある量の組成物をバイアルに保存するステップと、
バイアルに熱ガスを適用することによって、バイアル内の組成物の相を変化させるステップであって、
組成物の相を変化させるステップが、組成物を凍結又は解凍するステップを含み、熱ガスは、それぞれ冷却ガス又は加熱ガスであり、
組成物の相を変化させるステップが、(A)、(B)、(C)のうちの少なくとも1つを実行することによって特徴付けられ、(A)が、組成物の結晶化量が変化する相に入る前に実行される初期温度変化制御スキームであり、(B)が、組成物の結晶化量が変化する相の過程での結晶化変化制御スキームであり、(C)が、組成物がその最終温度に達するまで実行される最終温度変化制御スキームである、ステップと、
相の変化が完了した後に、組成物を得るステップと、を含み、
初期温度変化制御スキーム(A)が、
(I)バイアル及び/又は組成物に対して初期測定を実行して、組成物の結晶化量が変化する相が開始したか否かを判定するステップと、
(II)バイアル及び/又は組成物の温度が経時的な既定の初期温度変化に従うように、熱ガスの温度及び/又は流量を制御するステップと、
初期測定が、組成物の結晶化量が変化する相が開始したと判定するまで、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップと、を含み、
結晶化変化制御スキーム(B)が、
(I)バイアル及び/又は組成物に対して結晶化変化測定を実行して、組成物中の結晶化量にもはや変化がないか否かを判定するステップと、
(II)バイアル及び/又は組成物の温度が既定の結晶化変化温度経時変化に従うように、熱ガスの温度及び/又は流量を制御するステップと、
組成物中の結晶化量の変化がもはや存在しなくなるまで、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップと、を含み、
最終温度変化制御スキーム(C)が、
(I)バイアル及び/又は組成物の温度が既定の最終温度の経時的変化に従うように、熱ガスの温度及び/流量を制御するステップと、
(II)バイアル及び/又は組成物に対して最終温度測定を実行して、バイアル及び/又は組成物がその既定の最終温度に到達したか否かを判定するステップと、
最終温度測定が、バイアル及び/又は組成物がその既定の最終温度に到達したことを判定するまで、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップと、を含む、方法を提供する。
【0022】
本発明による方法は、重要な凍結プロセスを制御するための好適な手段を提供する。本発明は更に、そのような方法に好適な装置を提供する。
【0023】
本発明は更に、凍結後の細胞生存を改善する方法を提供する。
【0024】
本発明は、注射用組成物、特に医薬組成物を凍結するための方法であって、水性分散媒体中の注射用組成物のある量の分散液をバイアル中に保存するステップと、バイアルを少なくとも一定時間回転させて、バイアルの周壁の内面に分散層を形成するステップと、冷却ガスをバイアルの回転中に回転するバイアルに適用することによって、バイアルを冷却するステップであって、冷却が、(A)、(B)、及び(C)のうちの少なくとも1つを実行することによって特徴付けられ、(A)が、分散層において核生成が生じる前の初期冷却制御スキームであり、(B)が、分散層の結晶化中の結晶化制御スキームであり、(C)が、分散層が結晶化した後の最終冷却制御スキームである、冷却するステップと、を含み、初期冷却制御スキーム(A)が、(I)バイアル及び/又は分散層に対して核形成測定を実行して、分散層中で核形成が生じたか否かを判定するステップと、(II)バイアル及び/又は分散液の温度が既定の初期温度の経時的変化に従うように、冷却ガスの温度及び/又は流量を制御するステップと、核形成測定が、分散層中で核形成が生じたと判定するまで、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップと、を含み、結晶化制御スキーム(B)が、(I)バイアル及び/又は分散層に対して結晶化測定を実行して、分散層中で結晶化が終了したか否かを判定するステップと、(II)バイアル及び/又は分散液の温度が既定の初期冷却温度の経時的変化に従うように、冷却ガスの温度及び/又は流量を制御するステップと、(III)既定の時間を待機するステップと、結晶化測定が、分散層において結晶化が終了したと判定するまで、ステップ(I)~(III)を繰り返すステップと、を含み、最終冷却制御スキーム(C)が、(I)バイアル及び/又は分散層の温度が既定の最終冷却温度の経時的変化に従うように、冷却ガスの温度及び/又は流量を制御するステップと、(II)バイアル及び/又は分散層に対して最終温度測定を実行して、バイアル及び/又分散層がその既定の最終温度に達したか否かを判定するステップと、最終温度測定が、バイアル及び/又は分散層がその既定の最終温度に到達したと判定するまで、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップと、を含む、方法を提供する。
【0025】
制御スキームのそれぞれにおいて、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップの前に、既定の時間を待機することができる。これは、特定の温度及び流量設定についてガスとバイアルとの間で交換された熱の量を示す制御パラメータであり得る。
【0026】
「水性分散媒体中の注射用組成物の分散液」という語句は、水性媒体と混合される注射用組成物の任意の混合物を含むことを意味する。注射用組成物は、水性媒体中に溶解(分子レベルで混合されるという意味で)、分散(流体中の固体という意味で)又は乳化(別の液体中の液体粒子という意味で)され得る。多くの注射用組成物が当該技術分野において既知であり、混合物をエマルジョン、分散液(厳密な意味で)、又は溶液として記載することは困難であり得る。本発明は、注射用組成物と水性媒体との混合物の特定の形態に依存しない。(一般に凍結乾燥前に)凍結される必要がある混合物は、特に、抗体、受容体アンタゴニスト、受容体アゴニストなどのタンパク質を含む。別の実施形態において、混合物は全細胞を含む。タンパク質、細胞などの隣には、凍結乾燥プロセス中に除去されない賦形剤が存在することが多い。したがって、注射用組成物は、凍結乾燥組成物中に残存する任意の成分を含むことを意味する。
【0027】
凍結された組成物が解凍のために使用される場合、成分は全く又はほとんど除去されない。最も一般的には、これは、凍結及び解凍される全細胞に適用可能である。例えばCAR-T細胞の現在の生存率は、凍結及び解凍サイクル後に約10%である。したがって、より高い生存率を可能にするプロセスが非常に望まれている。本発明は、実質的により高い生存率を可能にする。
【0028】
分散液は、活性医薬成分(API、物質とも呼ばれる)と、塩、緩衝剤、凍結保護剤又は溶解保護剤のような可能な賦形剤、及び水などの可能な溶媒との混合物である。場合によっては、APIの溶解を促進するように、エタノールなどの共溶媒が適用され得る。
【0029】
全細胞を凍結するプロセスにおいて、有用な賦形剤は、細胞内に拡散してガラス化を引き起こし、それによって細胞内の氷晶を防止する添加剤である。他の保護剤は浸透圧に影響を及ぼす。好適な凍結保護剤としては、DMSO、グリセロール、プロパンジオール、ジメチルヒドラジン、スクロース、トレハロース、マンニトール、ラクトース、ポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0030】
注射用組成物を凍結させる方法において、好ましくは、分散層において結晶化が終了した後、冷却ガスの流量を既定の値に変更する。
【0031】
好ましくは、注射用組成物を凍結するための方法において、初期冷却制御スキームが、凝結核を誘発するステップか、音波若しくは圧力波によって組成物に人工的な密度勾配を誘発するステップか、又は熱衝撃を誘発するステップ、を更に含む。
【0032】
好ましくは、注射用組成物を凍結するための方法において、音波若しくは圧力波が回転変動を誘発することによって生成され、それにより凝結核を誘発する。
【0033】
好ましい実施形態において、熱衝撃が冷却ガスの温度若しくは流量の変動によって誘発される。
【0034】
好ましい実施形態において、核形成測定、結晶化測定、最終温度測定及び/又は温度測定は、バイアルのIR放射を検出する熱赤外線カメラを使用して実行され、バイアルのIR放射は、画像処理モジュールを使用して分散層の温度情報に変換される。
【0035】
好ましくは、温度情報は、分散層の特性をリアルタイムで判定するために数学的モデルとともに使用される。
【0036】
好ましい実施形態において、A及びB、又はA及びC、又はB及びCを適用するプロセスなど、(A)、(B)、及び(C)のうちの少なくとも2つのステップを組み合わせるプロセスが適用される。3つのステップA、B、及びCの全てが適用されるプロセスを適用することが、更により好ましい。
【0037】
凍結ステップは、先行技術における凍結混合物よりも明確な凍結混合物をもたらす。改善され、かつ定義されたパラメータは、結晶サイズ、結晶境界、全細胞生存などを含む。これは、多くの理由で有用である。改良の有用性は、用途に応じて変わり得る。例えば、抗体が凍結乾燥のために凍結される場合、明確に定義されている凍結混合物は、結晶サイズが凍結層における亀裂を可能にし、水の迅速な昇華を可能にし得るので、(凍結)乾燥に必要な時間を実質的に短縮することができる。全細胞の場合、主要な改善は、生存の改善であり得る。例えばT細胞を凍結し、それを解凍する現在の標準は、約10%の細胞生存しか可能にしない。本発明の方法では、実質的により高い生存率が可能である。
【0038】
したがって、分散液を凍結するための本発明は、改善された凍結乾燥プロセス、及び改善された凍結/解凍プロセスを可能にする。
【0039】
したがって、本発明は、注射用組成物、特に医薬組成物を凍結乾燥するための方法であって、凍結が上記のように行われ、その後、真空を適用しながら乾燥が行われる、方法に特に好ましい。凍結乾燥における乾燥ステップは、従来の真空チャンバであり得るが、好ましくは、国際公開第2013/036107号に記載されているような制御された乾燥プロセスである。
【0040】
本発明は更に、注射用組成物、特に医薬組成物を凍結するための凍結装置であって、凍結装置が、1つ以上バイアルのための回転手段を含む凍結チャンバであって、水性分散媒体中の注射用組成物のある量の分散液を含有する1つ以上のバイアルが、バイアルの周壁の内面に分散層を形成するために少なくともある期間にわたって回転することができ、バイアルが冷却されるようにバイアルの回転中に回転するバイアルに冷却ガスを適用するための冷却ガスシステムを含む、凍結チャンバと、使用済み冷却ガスが凍結チャンバから出る凍結チャンバからの排気と、凍結チャンバを少なくとも部分的に取り囲み、凍結チャンバと熱的に接触し、使用済み冷却ガスを使用することによって凍結チャンバを冷却する熱交換要素と、を含む、凍結装置に関する。
【0041】
本発明の別の好ましい実施形態において、注射用組成物、特に医薬組成物を凍結するための凍結装置であって、凍結装置が、1つ以上バイアルのための回転手段を含む凍結チャンバであって、水性分散媒体中の注射用組成物のある量の分散液を含有する1つ以上のバイアルが、バイアルの周壁の内面に分散層を形成するために少なくともある期間にわたって回転することができ、バイアルが冷却されるようにバイアルの回転中に回転するバイアルに冷却ガスを適用するための冷却ガスシステムを含む、凍結チャンバと、使用済み冷却ガスが凍結チャンバから出る凍結チャンバからの排気と、を備え、上述のように凍結プロセスを制御するための制御手段を更に含む、凍結装置に関する。本発明は、特に、上記のいずれかのための制御手段、及び上記の組み合わされた制御手段を含む、凍結装置に関する。
【0042】
好ましくは、凍結装置において、使用済み冷却ガスは、例えば凍結チャンバを冷却するために、熱交換要素を通って流れることが可能である。
【0043】
好ましくは、凍結装置において、熱交換要素は、使用済み冷却ガスが流れることが可能である、凍結チャンバを取り囲む螺旋状に巻かれたチャネル及び/又は蛇行チャネルによって形成される。
【0044】
好ましくは、凍結装置において、熱交換要素は、凍結室を取り囲む二重壁構造内に位置付けられている。
【0045】
好ましくは、凍結装置は、上述のように凍結プロセスを制御するための制御手段を備える。
【0046】
更に好ましい実施形態において、本発明は、注射用組成物、特に医薬組成物を凍結乾燥するための凍結乾燥システムであって、上記の凍結装置と、アニーリング装置及び/又は昇華装置と、を備え、アニール装置及び/又は昇華装置が、それぞれアニーリングチャンバ及び昇華チャンバを備え、アニーリング装置及び/又は昇華装置が、アニーリングチャンバ及び昇華チャンバとそれぞれ熱的に接触する、各々の熱交換要素を備え、各々の熱交換要素が、使用済み冷却ガスを使用して、アニーリングチャンバ及び/又は昇華チャンバを冷却する、システムに関する。
【0047】
更に好ましい実施形態本発明は、注射用組成物、特に医薬組成物を凍結するための凍結装置であって、凍結乾燥プロセスで使用するための凍結装置が、凍結チャンバであって、水性分散媒体中の注射用組成物のある量の分散液を含有する1つ以上のバイアルが、バイアルの周壁の内面に分散層を形成するために少なくともある期間にわたって回転され、バイアルが冷却されるようにバイアルの回転中に、回転するバイアルに冷却温度の冷却ガスを適用するための冷却ガスシステムを備える、凍結チャンバと、使用済み冷却ガスが凍結チャンバから出る凍結チャンバからの排気と、を備え、冷却ガスシステムが、冷却温度へのガスの冷却が実施される前にガスが予冷される予冷システムを備え、予冷システムが、予冷されるべきガスと熱接触する熱交換要素を備え、熱交換要素は、使用済み冷却ガスを使用することによって予冷されるべきガスを冷却する、装置を提供する。
【0048】
好ましくは、熱交換要素は、予冷されるべきガスが流れる第1の配管システムと、使用済み冷却ガスが流れる第2の配管システムとによって形成され、第1の配管システム及び第2の配管システムは互いに熱的に接触している。
【0049】
更に好ましい実施形態において、本発明は、注射用組成物、特に医薬組成物を凍結するための凍結装置であって、凍結装置が、回転手段を備える凍結チャンバであって、水性分散媒体中の注射用組成物のある量の分散液を含有する1つ以上のバイアルが、バイアルの周壁の内面に分散層を形成するために少なくともある期間にわたって回転され、バイアルが冷却されるようにバイアルの回転中に、回転するバイアルに冷却温度の冷却ガスを適用するための冷却ガスシステムを備える、凍結チャンバと、使用済み冷却ガスが凍結チャンバから出る凍結チャンバからの排気と、を備え、冷却ガスシステムが、ガスが冷却温度まで冷却される冷却システムを備え、冷却システムが、圧縮機と、圧縮機と熱的に接触する熱交換要素と、を備え、熱交換要素が、凍結プロセスの少なくともある時間中にバイアルの温度を測定するための使用済み冷却ガス手段と、凍結プロセスの少なくとも特定の時間の間、冷却速度を調整するために、冷却ガスの流量及び/又は温度に影響を及ぼすための制御機構とを使用することによって圧縮機を冷却する、凍結装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
ここで、対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照して、単なる例としてのみ実施形態を説明する。
図1】例示的な凍結サイクルを示す図である。
図2】A及びBは、当該技術分野において既知である容器又はバイアル内で物質を凍結する2つの方法を示す。
図3】A及びBは、当該技術分野から既知であるように、低温ガスの流れを使用する凍結プロセスの2つの実施形態を示す。
図4】熱IRカメラを使用して容器壁の外面の温度を「測定」するのに使用できることを示す。
図5図4の配設の変形であり、熱IRカメラ61が、バイアルの位置とは一般的に独立した異なる方法で装着することもできることを示す。
図6】例示的な解凍サイクルの、例えば熱IRカメラを使用した可能な非接触測定を示す。
図7A】(サブ)冷却、核形成及び/又は結晶化中に低温ガスの温度及びガス流量を適応的に制御するために、制御システムによって使用される制御スキームを示す。
図7B】(サブ)冷却、核形成及び/又は結晶化中に低温ガスの温度及びガス流量を適応的に制御するために、制御システムによって使用される制御スキームを示す。
図7C】(サブ)冷却、核形成及び/又は結晶化中に低温ガスの温度及びガス流量を適応的に制御するために、制御システムによって使用される制御スキームを示す。
図8】ガス冷却システムの第1、第2、及び第3の代替例を各々概略的に示す。
図9】ガス冷却システムの第1、第2、及び第3の代替例を各々概略的に示す。
図10】ガス冷却システムの第1、第2、及び第3の代替例を各々概略的に示す。
図11】スピン凍結乾燥システムを概略的に示し、ここで、凍結ステップからの排気ガスは、二重壁チャンバを調整するために再使用される。
図12A】二重壁構造の断面を概略的に示す。
図12B】二重壁構造の断面を概略的に示す。
図13】スピン凍結乾燥機において冷却ガスとして使用されるべきガスを予冷するために使用することができる第1の熱交換器を概略的に示す。
図14】スピン凍結乾燥機において冷却ガスとして使用されるべきガスを予冷するために使用することができる第2の熱交換器を概略的に示す。
図15】例示的な解凍サイクルを示す。
図16A】冷凍製品の解凍中に低温ガスの温度及びガス流量を適応的に制御するために制御システムによって使用されるべき制御スキームを示す。
図16B】冷凍製品の解凍中に低温ガスの温度及びガス流量を適応的に制御するために制御システムによって使用されるべき制御スキームを示す。
図16C】冷凍製品の解凍中に低温ガスの温度及びガス流量を適応的に制御するために制御システムによって使用されるべき制御スキームを示す。
図16D】冷凍製品の解凍中に低温ガスの温度及びガス流量を適応的に制御するために制御システムによって使用されるべき制御スキームを示す。
図16E】冷凍製品の解凍中に低温ガスの温度及びガス流量を適応的に制御するために制御システムによって使用されるべき制御スキームを示す。
図17図8に示すガス冷却システムを改造したガス冷却/加熱システムを概略的に示す。
図18】ガス加熱システムを概略的に示す。
図19】解凍サイクルからの排気ガスが、解凍チャンバの二重壁チャンバを調整するために再利用される解凍システムを概略的に示す。
図20】本発明において使用され得る例示的なバイアルを示す。
図21】特定のR値(Rohr値)を有するバイアルの寸法を含む、図20に示されるバイアルに対応する表を示す。
図22A】10℃/分の冷却速度及び3.815Wの結晶化速度で本発明を使用した凍結サイクルの非接触測定の実験結果を示す。
図22B】10℃/分の冷却速度及び7.630Wの結晶化速度で本発明を使用した凍結サイクルの非接触測定の実験結果を示す。
【0051】
図面は、例示のみを目的としたものであり、特許請求の範囲によって規定される範囲又は保護を限定するものではない。
発明を実施するための最良の形態
【0052】
以下、本発明の実施形態について更に詳細に説明する。しかしながら、これらの実施形態は、本開示の保護の範囲を限定するものとして解釈されない場合があることを理解されたい。
【0053】
図1は、例示的な凍結サイクル1を示す。横軸2は、時間を示し、縦軸3は、バイアル中の分散液温度に関する。純水の場合、氷点は、0℃である。溶液の場合、氷点又は凝固点は、この温度を下回る。十分な結晶化シードが存在しない場合(浮遊粒子の数が少ない医薬環境の場合が多い)、更なるサブ冷却が生じる。したがって、組成物は、物理的凍結温度よりも下では、液体のままであり得る。
【0054】
参照番号4は、液体組成物の冷却を示す。ある点5において、氷晶の発生が起こり、氷形成が開始する。これは発熱プロセスであるので、生成物の温度は上昇する。氷晶化時間10にわたる氷晶化6の間、生成物はほぼ熱的に一定のままである。実際には、一定のエネルギー減少において、より少ない水が氷に変換される。したがって、実際には、生成物は正確に熱的に一定のままではなく、緩やかな減少を示す。
【0055】
別の核形成点7は、賦形剤が結晶化し始めるときに生じる。この場合も同様に、温度は、このプロセスの発熱性により上昇する。この後、結晶化段階8が賦形剤結晶化時間11にわたって起こる。このような賦形剤の核形成及び結晶化が特定の生成物において起こらないこと、又は2つ以上のこのような賦形剤の核形成及び結晶化が起こることが起こり得る。これは、凍結乾燥されるべき生成物の化学的及び物理的組成に依存する。
【0056】
賦形剤結晶化時間11としての氷晶化時間10の両方の長さは、以下で更に説明するように、制御することができる。これらの結晶化段階の時間の長さを制御することによって、結晶構造の構造形成をより高度に制御することができる。
【0057】
更に冷却した後、アニーリング9を行って、氷晶のサイズを拡大するか、又は賦形剤の結晶化形状を最適化することができる。氷晶のサイズの拡大は、続く昇華プロセスを最適化するために重要であり得る。賦形剤の結晶化形状を最適化することは、賦形剤の望ましくない多形体、例えばマンニトールを使用する場合の半水和物を回避するために重要であり得る。
【0058】
図2は、当該技術分野において既知である、容器又はバイアル内で物質を凍結する2つの方法を示す。
【0059】
図2Aは、凍結される物質21を含む容器20の例を示し、容器は直立位置に静止して保持され、この場合、凍結生成物は容器の底側に位置する。
【0060】
図2Bは、容器がその長手方向軸の周りに回転されている間に凍結される物質21を含む容器20の例を示し、その結果、物質は、遠心力によって容器の周壁の内面に層、例えば、相対的に薄い層又は拡散層を形成する。先行技術において、典型的には、少なくとも約4000RPMの回転速度が、一定の厚さを有する層を得るために使用される。
【0061】
スピン凍結乾燥に注目すると、バイアル21は、軸23に対して矢印24で示す方向に回転する。バイアル21は高速回転、例えば4000回転/分で回転するので、液体はバイアル21の側壁に押し付けられ、実質的に均一な厚さを有する液体分散物を形成する。続いて、液体分散物は、この均一な厚さで凍結する。
【0062】
この例において、回転軸は垂直に配向されているが、例えば、水平など、回転軸の任意の他の配向を使用することができる。
【0063】
図3には、低温ガス37の流れ用いた冷凍プロセスの2つの実施形態が示されている。図3Aにおいて、ガス37の流れは、半径方向であり、図3Bにおいて、これは、軸方向に生じる。低温ガス37の流れは、システム36によって供給される。赤外線又は遠赤外線範囲38の電磁放射を検出する光学系39を介して、凍結シェルの状態が測定される。
【0064】
図4は、熱IRカメラ41を使用して容器壁の外面の温度を「測定」することができることを示す。カメラは、温度自体を検出するのではなく、画像処理モジュールを使用して温度情報に変換することができるIR放射を検出する。可視光を捕捉する通常のカメラとは異なり、熱IRカメラは、容器がガラス製である場合であっても、実際には容器40の「内側を見る」ことはなく、したがって、例えば結晶化フロントが移動するときにその位置を「容易に見る」ことができないことを理解することが重要である。この点において、例えばホウケイ酸ガラスを通るIR透過率は正確に0ではないが、有効透過率は典型的には10%未満であることに留意されたい。本発明において、熱IRカメラ41は、容器40の外面の温度を測定するものとする。
【0065】
実際、これは、特にカメラが容器自体の内側の生成物に向けられるのではなく、容器周壁44の外面の熱IR画像を捕捉するように配設されているので、容器の内側の生成物の温度を判定するために熱IRカメラを使用することが簡単ではない理由の1つである。これは、熱IRカメラも温度情報を得るために使用されるが、カメラが容器の外壁44ではなく製品自体の方に配向されるいくつかの先行技術の方法との重要な違いである。換言すれば、本発明の実施形態において、容器内の生成物がカメラの視野42内にある必要はない。
【0066】
熱IRカメラによって捕捉された熱画像、又はむしろ当該熱画像から抽出された熱情報は、凍結乾燥の進行をリアルタイムで「監視」するために数学モデルとともに使用することができる。
【0067】
組成物中の結晶化フロントに関する組成物情報を含むバイアルのガラス温度から導出される機構モデルは、入力パラメータとして、例えば、氷の熱特性、使用される特定のガラスの熱特性、使用される冷却ガスの熱特性、及び水の熱特性を使用する。
【0068】
測定は、ガラスの温度、冷却ガスの流動条件、及び冷却ガスの温度に対して行われ、これらは、計算するための機構モデルに対する入力として使用される。
【0069】
流動ガスの熱伝達特性は、流体力学から既知の方程式及び関係を使用して判定される。次に、冷却ガスとバイアルのガラスとの温度差と、ガスの流動条件との関係を求める。この点から、特定の時間にどれだけの水が氷に変換されたかを判定することができるように、時間当たりに伝達されるエネルギーの量(冷却ガスによって伝達される電力の量)。したがって、回転シリンダによって引き起こされる組成物の同心性のために、特定の時間における結晶化フロントの位置が何であるかを判定することができる。最後に、これから、結晶化フロントの温度が何であるかを判定することができる。
【0070】
結晶化フロントの位置が変化すると、バイアルから冷却ガスへの熱伝達も変化するので、冷却ガスのパワーは、変化する熱伝達に対応する方法で動的に変更されるべきである。
【0071】
バイアルにガラス以外の他の材料が使用される場合、数学的モデルはそれに応じて変更される必要がある。
【0072】
更に、何が起こっているかを単に観察するのではなく、数学的モデルを使用して、凍結プロセスをより効率的に動的に制御するのにも使用できるが、重要なことに、更に明らかになるように、任意の時点で生成物の品質を損なうことはない。
【0073】
凍結の場合の冷却から、又は解凍の場合の加熱から、それぞれ物理的相転移、結晶化又は融解への転移は、例えば、IRカメラを使用する熱測定からの情報を使用して判定することができる。
【0074】
温度対時間を表す曲線の勾配は、急速な変化を示す。したがって、温度変化を時間変化(勾配)で割った値を連続的に判定することによって、この時間微分の変化はプロセスの変化を示す。凍結(核形成)の開始については、2つの瞬間がある。負の勾配が正の値に変化するとき、これは核形成の開始を示す。この正の勾配が再び小さな負の勾配に更に変化するとき、これは結晶化の更なる開始を示す。結晶化の終わりに、この小さな負の勾配は、より大きな負の勾配に変化し、結晶化の完了及び結晶化された物質の更なる冷却を示す。同様の説明は、賦形剤の結晶化などのその後の相転移についても有効である。
【0075】
解凍については、同様のアプローチを適用することができる。正の勾配が突然減少すると、脱結晶化が起こっている。この相が完了すると、次の相転移(例えば、氷の融解)が起こるまで、勾配が増加する。この相遷移は、勾配がより高い値に到達したときに終了する。
【0076】
指示された変化の瞬間に対応する値を指定することによって、システムは、これを使用して、次の相のための制御パラメータを適応的に設定する。
【0077】
サーマルカメラから得られた画像データを正確な温度情報にどのように変換することができるかは、当該技術分野において既知であり、したがって、本明細書でより詳細に説明する必要はない。これは、例えば適切な較正によって、及び/又は熱画像データを既知の温度情報、例えばPtlOOプローブ及び/又は熱電対などの他の手段、又は他の温度感知手段を使用して得られた温度情報と相関させることによって達成することができると言えば十分であろう。計算は典型的には、材料及びそれらの表面の反射係数及び/又は放出係数などの熱係数を考慮することを含む。
【0078】
代替的な実施形態において、冷却及び凍結中の組成物中の氷晶の形成に関する構造情報は、近赤外線範囲(0.75~1.4mm)の光を放出するように構成された光源を含む光学センサを使用して監視することができるが、好ましくは、(サブ)テラヘルツ範囲(300GHz~10THz)の電磁放射線が適用される。テラヘルツ放射線は、結晶構造の異なる多形体間の識別を容易にする。各個々のバイアルに適用され得るこのモニタリング機器を使用して、凍結ステップの完了及び結晶の形態学的構造が判定され得、それによって、このステップの持続時間が最適化される。光学センサは、好ましくは、分散層を測定することができるようにバイアルに対して位置付けられる。別の好ましい実施形態において、ラマン分光法を使用して、組成物中に含まれる分子の振動モードを判定する。測定技術に応じて、可視、近赤外線、又は近紫外線範囲のレーザを光源として使用することができるが、X線を使用することもできる。レーザ光は、システム内の分子振動、フォノン又は他の励起と相互作用することができ、その結果、レーザ光子のエネルギーが上下にシフトされる。エネルギーのシフトは、システムにおける振動モードについての情報、したがってシステムの状態についての情報を与える。これらの振動モードは、主成分分析などの多変量解析技法を使用することによって特徴付けることができるスペクトルを取得することによって検出することができる。
【0079】
好ましい実施形態において、ガスの温度及び流量は、温度測定、特に、例えば熱IRカメラを使用するIR測定に基づいて制御される。好ましい実施形態において、バイアル中の組成物の構造に関する測定(例えば、核形成、結晶化、脱結晶化、融解)は、上記のような分光技術を使用して行われる。これらの測定方法は、組成物の構造情報を判定することとともに、制御されるべきガス流量及び温度に対して組み合わせることができる。以下で更に説明されるように、組成物の構造情報は、ある制御点に到達したこと、及び特定の制御スキームが終了できること、又は別の制御スキームが開始できることを示すことができる。このようにして、本発明に記載されている凍結(及び解凍プロセス)を制御することができる。
【0080】
図5は、図4の配設の変形例であり、熱IRカメラ51を傾斜した位置に装着することもでき、容器50に対してより高い位置又はより低い位置に装着することもできることを示すが、当然ながら、これは一例にすぎず、これ以外の位置が明示的である。本方法は、例えば、容器の内壁に対して実質的に薄層の形態で(部分的に)凍結された生成物を収容する円筒状容器に適用することができ、この場合、少なくとも1つの熱IRカメラは、好ましくは、容器の円筒状壁の大部分を捕捉するように配設される。
【0081】
例えば、カメラは、実用上の理由(例えば、装置内の空間制限)のために、熱画像が容器の上部の一部又は底部の一部を含むように装着され得るが、上部及び底部に関するデータは典型的には破棄される。そのような装着は、例えば、ヒータがカメラの視野52内に位置することを回避するために、又は望ましくない反射を回避するために、又は任意の他の理由のために、例えば、1つ以上のIR放射器(図5には図示せず)によって熱が容器に供給される配設において使用することができる。
【0082】
カメラ51は、固定して装着することができるか、又は移動可能に装着することができる。後者の場合、装置又はシステムは、カメラ51を移動させるための手段(図示せず)を更に備え、この手段は、容器50の長手方向軸に実質的に平行な方向に、若しくは回転軸に実質的に垂直な平面内でカメラを上下に移動させるように適合され得るか、又は容器の長手方向軸に平行な軸の周りにカメラを回転させるように適合され得るか、又はこれらの任意の組み合せであり得る。このような装着手段は、当該技術分野で既知であり、したがって詳細に説明する必要はない。
【0083】
カメラを移動させることは、単一のカメラによって、複数の少なくとも2つ又は少なくとも3つの容器、又は更に多くの容器を監視するために使用することができる。可能な場合、カメラはまた、少なくとも2つの容器又は少なくとも3つの容器の熱IR画像を同時に捕捉することを可能にするために、十分に大きな距離で装着することもできる。このような装着は、例えば、カメラ51を装着するための空間が限られているチャンバ内で使用することができる。
【0084】
熱IRカメラを使用する利点は、熱IRカメラが製品に物理的に接触することなく温度を判定することを可能にし、多数の温度を一度に(カメラの解像度に応じて単一の画像で)捕捉することを可能にし、測定がほとんど瞬間的であり、例えば生成物に挿入されたプローブの使用とは対照的に汚染のリスクを低減するためである。
【0085】
図6は、例示的な凍結サイクルの、例えば熱IRカメラを使用する、可能な非接触測定60を示す。横軸61は時間を示し、縦軸62は温度を示す。
【0086】
第1のステップにおいて、結晶化(核形成)64の開始まで(サブ)冷却63が実行される。水の結晶化段階65は、この例において、時間とともにゆっくりと低下する温度を示す。これは、図が、凍結乾燥されるべき生成物を収容する容器の壁の寸法を例示することを意図しているからである。氷層が厚くなるにつれて、結晶化が発熱プロセスであっても、既に形成された氷に対してより多くの寒冷が利用可能になるので、容器全体の温度は依然として低下する。結晶化段階が終了した後、更なる冷却66が実行される。
【0087】
アニーリング又は第2の結晶化段階は実施例に示されていないが、本発明は、記載された凍結サイクルに明確に限定されない。上述した凍結サイクルにおける全てのパラメータを効果的に制御するための制御スキームについて、ここで説明する。
【0088】
図7A図7Cは、(サブ)冷却、核形成及び/又は結晶化中に低温ガスの温度及びガス流量を適応的に制御するために、制御システムによって使用されるべき制御スキームを示す。
【0089】
図7Aは、制御スキームの第1の部分を示す。ステップ701において、スピン凍結が開始される。凍結乾燥されるべき生成物を含有する1つ以上のバイアルは、凍結乾燥機に、より具体的には、サブ冷却が行われるシステムの区画に入れられる。次に、当業者に既知の適切な機構を使用してバイアルを回転させる。例えば、バイアルをホルダに真空吸引した後、回転させる。最初に、円筒形バイアルは、2000~4000rpmの速度で回転する。バイアルは、純粋な円筒形以外の形状を有することができる。例えば、回転軸に垂直な回転軸に沿って取ったバイアルの異なる断面は、回転対称であり得る。
【0090】
好ましい実施形態において、組成物を含むバイアルは、均一に冷却される。これは、多くの方法で達成することができる。例えば、バイアルは回転することができ、冷却ガスが回転するバイアルに適用されるか、又はバイアルが静止したままで冷却ガス供給システムが回転することができる。別の例は、例えば、バイアルを(少なくとも部分的に)取り囲む多数のガスジェット、又はリング形状のガスジェットによって、バイアルを均一に冷却するような形状の冷却ガス供給システムであり得る。別の方法は、バイアルを経時的に均一に冷却することであり得、すなわち、特定の瞬間にバイアルが均一に冷却されない可能性はあるが、ある時間にわたってバイアルが均一に冷却される。例えば、多数のガスジェットを製造ラインに沿って位置付けることができ、バイアルは、その後、バイアルに対して異なる場所に位置付けられた各ガスジェットから冷却ガスを適用することによって冷却される。
【0091】
組成物を含むバイアルは、均一に冷却される必要はなく、不均一に冷却することもできる。
【0092】
好ましくは、組成物は、相対的に薄い分散層が、バイアルの壁に沿って形成されるように回転され、これを、その後凍結することができる。しかしながら、バイアルの壁に沿って相対的に薄い分散層を形成することは、必須ではない。分散液は、冷却ガスを使用してバイアル内で任意の形態で凍結させることができる。
【0093】
ステップ702において、ガス流量が特定の値に設定される。この値は、較正凍結サイクルが同様のタイプの製品に対して実行された後などに、既定の値であり得る。例示的なガス流量は、1l/分~500l/分であり、より好ましくは、容器のサイズ及び収容される物質の量に調整される。
【0094】
図20は、本発明において使用され得る例示的なバイアルを示す。図21は、特定のR値(Rohr値)を有するバイアルの寸法を含む、図20に示されるバイアルに対応する表を示す。
【0095】
2R(Rohr値)バイアルの場合、例示的な流量範囲は、約1~100l/分であり得る。15Rバイアルについて、例示的な流量範囲は、約5~250l/分であり得る。30Rバイアルの場合、流量範囲は約10~500l/分であり得る。好ましくは、10~15RのR値を有するバイアルが使用される。
【0096】
好ましい実施形態において、本発明において使用される容器は、製薬プロセスにおいて使用されるバイアル、例えば、凍結乾燥プロセスにおいて一般的に使用されるバイアルである。好ましい実施形態において、バイアルは、2~40mlの容量、好ましくは30ml未満、より好ましくは20ml未満、より好ましくは10ml未満、より好ましくは5ml未満、より好ましくは3ml未満の容量である。
【0097】
本方法はまた、他の用途、例えばヒト及び動物に有益な用途を有する生成物、例えば血漿にも適用可能である。これらの用途で使用される容器のサイズ及び形状は、容器の容積によって、例えば、1リットルまで、より好ましくは3リットルまで、より好ましくは5リットルまで、より好ましくは10リットルまで変化することができる。
【0098】
流量範囲は、特定の状況において冷却速度を制限したいという要望に関連するが、バイアル及びその内容物の熱容量にも関連する。結晶化軌道の設定についても同様である。その段階において、徐々に結晶化が起こるように冷却を制御する場合(通常、より長い期間にわたって)、異なる結晶サイズ及び配設が達成される。全てのガスパラメータを本質的に制御することができるので、例えば、急速に冷却し、次いで結晶化段階中に冷却を減速し、次いで結晶化が終了した後に最終温度に達するまで再び急速に冷却する可能性が生じる。
【0099】
一般に、流量が高いほど、より多くのガス分子が1つ以上のバイアルに接触するので、ガスが組成物から熱をより良好に抽出する。
【0100】
ステップ703において、ガス温度が特定の値に設定される。この値は、同様のタイプの生成物に対して較正凍結サイクルが実行された後に判定されるように、既定することもできる。使用されるガスが低温であればあるほど、同じ流量でより多くの熱が組成物から抽出される。
【0101】
このようにして、低温ガスが回転するバイアル上に噴射される。結果として生じる熱伝達は、バイアルを冷却し、続いて内部の生成物を冷却する。
【0102】
ガスの流量及び温度の両方を制御することによって、組成物に及ぼされるガスのパワー、すなわち単位時間当たりに組成物から移動又は変換されるエネルギーの量を制御することができるので、より良好な制御が得られる。これは、単に冷却ガスの温度を制御することとは異なる。冷却ガスの温度は、一般に、制御変化に対する応答性が低く、したがって、制御がより困難である。
【0103】
更に、組成物の熱の変化に対するガスの温度の影響をモデル化することは、これが組成物及び/又はバイアルから冷却ガスによって抽出されるエネルギーの量に直接依存するので、より困難である。例えば、冷却ガスの流量が低い場合、冷却ガスの温度は、流量が高い場合よりも凍結乾燥される組成物の冷却に及ぼす影響が小さい。
【0104】
このようにして、液体の冷却速度を変化させることができ、したがって、液体の冷却速度は核形成を誘導するためのパラメータである。これは、冷却速度が過冷却温度に影響を及ぼし、生成物温度が結晶化点を下回るまで生成物を冷却するためである。
【0105】
ステップ704において、バイアルが測定される。バイアルの壁は、赤外線温度計を使用して測定することができ、これは、制御フィードバックループに含まれる。このようにして、組成物の状態及び冷却段階の進行を測定することができる。
【0106】
ステップ705において、組成物が冷却中に依然として液相であるか否かがチェックされる。この場合、ステップ706を継続する。そうでない場合、制御点Aで継続する。
【0107】
氷形成(核形成)の開始は、温度の相対的に急な上昇によって特徴付けられる。これは、プロセス中のバイアルの温度の連続測定によって検出される。代替的な実施形態において、これはまた、NIR、ラマン、又はテラヘルツなどの分光技法を使用して、直接判定され得る。分光技術は、結晶の構造情報も必要とされる場合に有利である。
【0108】
組成物が冷却中に依然として液相である場合、制御システムは、ステップ706において、組成物の温度が冷却サイクルに従っているか否かをチェックする。これは、既定の値であり得、例えば、組成物が冷却されるのに費やした時間に依存し得る。しかしながら、この値は、冷却に対する組成物の応答性に基づいて判定することができるので、既定される必要はない。温度がサイクルに従っているとみなされる場合、制御システムはステップ704に戻る。温度が冷却サイクルに従っていない場合、制御システムはステップ707に進む。
【0109】
ステップ707において、ガスの温度及び/又は流量が調整される。例えば、ステップ706における組成物の温度がサイクルに従っておらず、高すぎると考えられる場合、冷却ガス温度を低下させ、及び/又は流量を増加させる。一方、ステップ706における組成物の温度が低すぎると判断された場合、冷却ガス温度を上昇させ、及び/又は流量を減少させる。冷却ガスの温度の上昇又は低下は、一定の増分ステップで行うことができ、又は変化率を変えることができる。例えば、組成物の温度が凍結サイクルに従って非常に高すぎる、又は非常に低すぎると考えられる場合、温度は、より大幅に低下又は上昇する。流量はまた、ガスとバイアルとの間で交換される熱の量を制御することができる。
【0110】
ステップ704~707は、制御システムが制御点Aに到達するまで繰り返される。制御点Aにおいて、組成物は液体冷却相にない、すなわち核形成が起こったとみなされ、これは組成物の結晶化の開始を意味する。
【0111】
この開始は、凝結核を誘発することによって、又は音波若しくは圧力波によって液体中に人工的な密度勾配を誘発することによって、能動的に影響され得る。これは、多くの方法で行うことができ、例えば、高周波数回転変動を誘発することが可能であり、これは、核形成促進剤を誘発する流体中の圧力波につながる。例えば、回転速度は、流体内に圧力波を誘発するように減速及び/又は加速され得る。機械的な誘導因子に加えて、熱衝撃は、低温ガスジェットの急速な変化、例えば、冷却ガスの温度又は流量の変化によって引き起こされ得る。
【0112】
このようにして、核形成が開始し得る温度に影響を与え、したがって制御することができ、これはまた、核形成が起こった後に結晶化を開始する詳細な氷構造の制御につながる。
【0113】
したがって、本発明の好ましい実施形態において、プロセスは、液体中に人工的な密度勾配を誘導することによって核形成に影響を及ぼすステップを含む。
【0114】
図7Bを参照すると、結晶化の開始後、ステップ711において、バイアルは、例えばステップ704と同じ方法で測定される。したがって、バイアル及び組成物の温度、並びに結晶化段階における組成物の状態に関する情報を得ることができる。
【0115】
ステップ712において、制御システムは、組成物が結晶化段階にあるか否かをチェックする。このチェックは、ステップ711における測定に少なくとも部分的に基づいて行うことができる。組成物がもはや結晶化段階にない場合、制御システムは制御点Bに進む。
【0116】
ステップ712において結晶化段階がまだ進行中であると判断された場合、制御システムはステップ713に進む。
【0117】
ステップ713において、冷却ガス流量が設定される。これは、ステップ702と同様に行うことができる。ガス流量は、較正凍結サイクルが同様のタイプの生成物に対して実行された後など、結晶化段階のための既定の値であり得る特定の値に設定される。例示的なガス流量は、1l/分~500l/分であり、より好ましくは、例えば上述のように容器のサイズ及び収容される物質の量に調整される。
【0118】
ステップ714において、冷却ガス温度及び/又は流量が設定される。これは、ステップ703と同様に行うことができる。この値は、同様のタイプの生成物に対して較正凍結サイクルが実行された後に判定されるように、結晶化段階に対して既定することもできる。
【0119】
ステップ715において、制御システムは、冷却ガスが組成物に作用することができ、結晶化が継続することができるように、既定の時間を待機する。既定の時間が経過した後、制御ステップはステップ711に進み、バイアルを再び測定する。ステップ711~715は、制御点Bに達するまで繰り返される。
【0120】
結晶化は発熱プロセスであるので、必要な熱の除去を制御してバイアル間の変動を低減することができる。更に、結晶化プロセスの速度を制御して、この段階における不安定な成分に対する応力を低減することができる。したがって、バイアルから低温ガス流へのエネルギー移動は、これらの問題を克服するために、この段階で制御することができる。これは、冷却ガスの温度及び/又は冷却ガスの流量を制御することによって行うことができる。流量は、冷却ガスへの熱伝達の効率を制御する。プロセスパラメータである冷却ガス温度及び(プロセス)時間とともに、結晶化によるエネルギー散逸をこのようにして制御することができる。したがって、結晶化中の熱除去速度を変えることができる。最初は、これは、単なる氷であり得るが、後の結晶化段階中には、組成物中の賦形剤の結晶化であり得る。
【0121】
制御点Bにおいて、結晶化段階は終了したとみなされる。次に、制御システムはステップ721に進む。
【0122】
図7Cを参照すると、ステップ721以降、固体組成物は更に冷却される。この段階において、氷晶の最終形状及びサイズは、オストワルド熟成と呼ばれるプロセスによって判定される。この既に固相において、製剤中の他の賦形剤が結晶化を誘導する可能性があり、結晶化制御の別のサイクルをもたらす可能性がある。これも、制御ループ内のバイアル温度を含む、低温ガスの温度制御又は低温ガスの流量制御に関連付けることができる。
【0123】
本実施形態において、単一の結晶化段階のみが生じることに留意されたい。組成に応じて、複数の結晶化段階が起こり得る。2つ以上の結晶化段階が生じた場合、制御システムは再び制御点Aを継続することができ、制御点Bに再び到達するまでステップ711~715が繰り返される。ガス流量及び/又はガス温度、並びにプロセス規定時間は、異なる結晶化段階に対して異なり得る。
【0124】
ステップ721において、ガス流量が調整される。ガス流量は、特定の値に設定することができ、この値は、更なる冷却段階のための既定の値とすることができ、同様のタイプの生成物に対して実行された較正凍結サイクルに基づくことができる。例示的なガス流量は、1l/分~500l/分であり、より好ましくは、例えば上述したように、容器のサイズ及び収容される物質の量に調整される。
【0125】
ステップ722において、バイアルは、例えば、ステップ704及び/又はステップ711と同じ方法で測定される。したがって、バイアル及び組成物の温度、並びに結晶化段階における組成物の状態に関する情報を得ることができる。
【0126】
次に、ステップ723において、制御システムは、温度が更なる冷却サイクルに従っているか否かをチェックする。これは、ステップ706と同じ方法で行うことができる。組成物及び/又はバイアルが有するべき温度値は、既定の値であり得、例えば、組成物が冷却されるのに費やした時間に依存し得る。しかしながら、この値は、更なる冷却に対する組成物の応答性に基づいて判定することができるので、既定される必要はない。温度がサイクルに従っている場合、制御システムはステップ725に進む。
【0127】
温度がサイクルに従っていない場合、制御システムは最初に、ステップ724に進む。ステップ724において、冷却ガス温度及び/又は流量が調整される。これは、ステップ707と同じ方法で行うことができる。例えば、ステップ723における組成物の温度がサイクルに従っておらず、高すぎると考えられる場合、冷却ガス温度は下げられる。一方、ステップ723で組成物の温度が低すぎると判断された場合、冷却ガス温度を上昇させる。冷却ガスの温度の上昇又は低下は、一定の増分ステップで行うことができ、又は変化率を変えることができる。例えば、組成物の温度が凍結サイクルに従って非常に高すぎる、又は非常に低すぎると考えられる場合、温度は、より大幅に低下又は上昇する。同様に、流量を調整することができ、冷却ガスの流量の増加は冷却速度を増加させ、流量の減少は冷却を減少させる。次に、制御システムはステップ725に進む。
【0128】
ステップ725において、制御システムは、例えば、ステップ722、ステップ704、及び/又はステップ711と同じ方法でバイアルを測定する。したがって、バイアル及び組成物の温度、並びに結晶化段階における組成物の状態に関する情報を得ることができる。
【0129】
ステップ726において、制御システムは、更なる冷却後に最終温度に到達したか否かをチェックする。これが、凍結サイクル全体の最終温度である。最終温度に達していない場合、制御システムはステップ723に進み、最終温度に達するまで723~726を繰り返す。
【0130】
最終温度に達した場合、ステップ727において、組成物は準備ができているとみなされ、凍結サイクルが完了する。ステップ721~727を実行することによって、最終的な氷構造の形成を変更することができる。例えば、氷構造の比表面積、氷晶の形状、及び/又は氷晶が架橋される方法は、ステップ721~727を実行することによって変化させることができる。
【0131】
図7A図7Cに示す制御スキームは、全体を制御システムによって実行することができるか、又は部分的にのみ実行することができる。図7Aは、核形成が起こるまでの初期冷却段階を説明する。図7Bは、1つ以上の結晶化段階の間の制御を説明する。図7Cは、更なる冷却段階を説明する。制御スキームのより多くの部分が実行されるほど、凍結プロセスにわたってより多くの制御が得られる。制御スキームを少なくとも部分的に実行することによって、以下の利点のうちの1つ以上が生じる。(I)液体の冷却速度を変化させて、誘導核形成の1つのパラメータとして使用することができる、(II)核形成が開始し得る温度を変化させることができ、これはまた、詳細な氷構造の制御をもたらすことができる、(III)結晶化中の熱除去速度を変化させることができる(最初は氷だけであるが、後に賦形剤の結晶化のためにも)、(IV)最終氷構造の形成を変化させることができる。
【0132】
図8図10は、ガス冷却システムの3つの代替例を概略的に示す。ガス冷却システムは、一般に、冷却されるべき入力ガスとして、及び凍結乾燥システムにおいて組成物を冷却するために使用され得る出力冷却ガスとして有する。更に、ガス冷却システムは、本明細書に記載の凍結乾燥システムにおける凍結のための制御システム及び制御スキームとともに使用することができる。しかしながら、ガス冷却システムは、凍結乾燥されるべき組成物を冷却するために冷却ガスを使用する任意の凍結乾燥システムとともに使用することができる。
【0133】
図8は、ガス冷却システム800の第1の代替例を概略的に示す。
【0134】
ガス流入配管804Aには、冷却ガスとして使用されるガス801が挿入されている。ガス801は、好ましくは、不活性ガス、例えば、窒素である。ガスは、バイアルの内容物の汚染を防止するために、(塵)粒子(生存及び非生存)を完全に含まないことが必要である。ガス801の流入速度は、バルブ802によって制御することができる。これは、例えば、空気圧膜アクチュエータを有するゲートバルブとすることができるが、当業者に既知の任意のバルブを使用することができる。温度センサ803は、流入ガス801の温度を判定するために使用される。当業者は、任意の好適な温度センサ803、例えばPt100温度センサ又は抵抗温度検出器を使用することができる。ガス801は一般に、凍結乾燥プロセスで使用するのに十分に低温ではなく、使用前に冷却する必要がある。
【0135】
流入配管804Aは、一次配管804Bと二次配管804Cとに分岐している。一次配管804Bを流れるガスは、熱交換器806を流れる。この熱交換器は液体窒素浴809に浸漬されている。
【0136】
液体窒素浴809は、液体窒素807が浴内に流入する流入配管808を有する。液体窒素は、熱交換器806を介してガス801から熱を抽出する。液体窒素は、抽出された熱によって蒸発し、蒸発窒素811として流出配管810から抽出される。
【0137】
熱交換器806は、例えば、巻き構造、螺旋構造、又は液体窒素とガス801との間で熱を交換することを可能にする任意の他の構造とすることができる。重要な考慮事項は、熱交換器806において交換される熱の量を最大化するように、一次配管804Bと液体窒素浴809との間の接触面が可能な限り大きいことである。
【0138】
熱交換器806の後、一次配管804Bは、二次配管804Cと接合される。二次配管は、熱交換器806を通過する必要はなく、実際に、いかなる実質的な冷却も受ける必要はない。
【0139】
二次配管804Cを通って流れるガス801の流量は、バルブ805を介して制御することができ、このバルブは、バルブ802と同じ種類のバルブ又は異なるバルブとすることができる。
【0140】
一次配管804Bと二次配管804Cは、ガス801の流出配管804Dで合流する。温度センサ803と同様又は異なる温度センサ812は、流出配管804Dを通って流れるガスを測定する。流出配管804Dを出る冷却ガス813の温度が高すぎる場合、二次配管804Cのバルブ805を(更に)閉じて、より多くのガス801を、熱交換器806を通して百分率で強制し、したがってより低温の冷却ガス813を得る。同様に、流出配管804Dを出る冷却ガス813の温度が低すぎる場合、二次配管804Cのバルブ805が(更に)開かれて、より少ないガス801を、熱交換器806を通して百分率で強制し、したがって、より温かい冷却ガス813を得る。
【0141】
言及されるように、バルブ802は、ガス冷却システムに流入するガス801の流量を制御する。したがって、バルブ802は、冷却ガスから流出する冷却ガス813の流量も制御する。
【0142】
したがって、ガス冷却システム800は、オペレータ及び/又は制御システムが、必要に応じて連続的に冷却ガスの流量及び温度の両方を制御することを可能にする。
【0143】
図9は、ガス冷却システム900の第2の代替例を概略的に示す。第2のガス冷却システム900は、以下で更に詳述されるいくつかの例外を除いて、第1のガス冷却システム800と同じ原理に従って動作する。
【0144】
ガス流入配管904には、冷却ガスとして使用されるべきガス901が挿入されている。ガス901の流入速度は、バルブ902によって制御することができる。温度センサ903は、流入ガス901の温度を判定するために使用される。ガス901は一般に、凍結乾燥プロセスで使用するのに十分に低温ではなく、使用前に冷却する必要がある。
【0145】
配管904を流れるガスは、熱交換器906を流れる。この熱交換器は液体窒素浴909に浸漬されている。
【0146】
液体窒素浴909は、液体窒素907が浴内に流入する流入配管908を有する。液体窒素は、熱交換器906を介してガス901から熱を抽出する。液体窒素は、抽出された熱によって蒸発し、蒸発窒素911として流出配管910から抽出される。
【0147】
次に、ガスは、熱交換器906から出てくるガスを加熱する場合、又はしない場合がある、加熱要素905を通って流れる。温度センサ903と同様又は異なる温度センサ912は、加熱要素905の後の配管を通って流れるガスを測定する。配管804を出る冷却ガス913の温度が高すぎる場合、加熱要素905はガスをあまり加熱しない。同様に、配管904を出る冷却ガス913の温度が低すぎる場合、加熱要素905はガスをより加熱する。このようにして、ガス冷却システム900から流出する冷却ガス913の温度を制御することができる。
【0148】
言及されるように、バルブ902は、ガス冷却システム900に流入するガス901の流量を制御する。したがって、バルブ902は、冷却ガスから流出する冷却ガス913の流量も制御する。
【0149】
したがって、ガス冷却システム900はまた、オペレータ及び/又は制御システムがガス冷却システム900の流量及び温度の両方を制御することを可能にする。
【0150】
浴を液体窒素で置き換えるために、他の極低温冷却剤を考慮することができる。そのような代替例は、-79℃に達するようにエタノール中に浮遊するドライアイス(固体二酸化炭素)の適用である。このようなより高い極低温の使用は、小さな冷却速度又は遅い結晶化プロセスを得る必要がある場合に有利であり得る。
【0151】
図10は、ガス冷却システム1000の第3の代替例を概略的に示す。
【0152】
凍結乾燥プロセスにおいて冷却ガスとして使用されるガス1001は、ガス流入配管1003を通ってガス冷却システム1000に入る。ガス1001の流入速度は、バルブ1002によって制御することができる。この場合も、ガス1001は一般に、凍結乾燥プロセスで使用するのに十分に低温ではなく、使用前に冷却する必要がある。
【0153】
ガス1001は、冷却チャンバ1009に入る。ガス1001は、流入配管1006及びエジェクタ1007を介して冷却チャンバ1009内に液体窒素1004を噴出することにより、冷却チャンバ1009内で冷却される。液体窒素1004の流量は、バルブ1005を介して制御することができる。
【0154】
エジェクタ1007は、液体窒素1004を高速ジェットに同伴することができる。このようにして、液体窒素1004の小さな液滴が冷却チャンバ1009に入り、冷却されるべきガス1001と熱交換する。すなわち、ガス1001が液体窒素1004を加熱し、その結果、ガス1001が冷却される。これにより、液体窒素1004は窒素ガスとなる。
【0155】
インジェクタ1007は、液体窒素1004を微小な液滴とすることができるので、接触面が増大し、熱交換が促進される。しかしながら、これは必須ではない。液体窒素1004は、冷却ガス1001と直接接触するだけであり得、熱交換も起こり得る。
【0156】
得られたガスは、流出配管1010を介して冷却チャンバから出る。次に、ガスは、冷却チャンバ1009から出てくるガスを加熱する場合、又はしない場合がある、加熱要素1011を通って流れる。温度センサ1012は、加熱要素1011の後の流出配管1010を通って流れるガス1013を測定する。ガス冷却システム900の第2の代替例と同様に、温度センサ1012は流出ガス1013を測定し、加熱要素1011がガス1013を加熱する必要があるか否かを判定する。このようにして、ガス冷却システム1000から流出する冷却ガス1013の温度を制御することができる。
【0157】
言及されるように、バルブ1002は、ガス冷却システム1000に流入するガス1001の流量を制御する。また、バルブ1005は、ガス冷却システム1000に流入する液体窒素1004の流量を制御する。したがって、両方のバルブは、冷却システム1000から流出する冷却ガスの流量を制御する。
【0158】
冷却ガスとしては、冷却チャンバ1009内に注入される液体窒素と反応しないように、不活性ガスを使用することが最良である。好ましくは、冷却ガスは、窒素ガスである。
【0159】
任意の数のガス冷却システム800、900、及び/又は1000を組み合わせて、低温冷却ガスを必要な流量で凍結乾燥システムの任意の部分に送達することができる。また、上記実施形態において、冷却されるべきガスのための冷却ガスとして、液体窒素を使用したが、これに限らず、他の好適な冷却液を使用することができる。
【0160】
図11は、スピン凍結乾燥システム1100を概略的に示し、ここで、凍結ステップからの排気ガスは、二重壁チャンバを調整するために再使用される。
【0161】
スピン凍結乾燥システム1100は、スピン凍結チャンバ1103と、アニーリングチャンバ1104と、昇華チャンバ1105と、を備える。スピン凍結に使用された排気ガス1101は、二重壁構造1102に入る。二重壁構造1102は、例えば、スピン凍結チャンバ1103の周りに巻かれた配管システムとすることができる。このようにして、凍結チャンバ1103の壁は、排気ガス1101を使用して冷却される。
【0162】
スピン凍結からの排気ガスの典型的な温度は、約-90℃である。スピン凍結チャンバから来る清浄な低温ガスを再利用することによって、このガスは無駄にならない。これは、スピン凍結に十分な低温のガスを得るためにエネルギーが消費されたので、有益である。更に、スピン凍結チャンバの壁を冷却することによって、組成物を冷却するために費やされるエネルギーが少なくなる。
【0163】
第1の接続配管1106は、スピン凍結チャンバ1103の二重壁構造1102と、アニーリングチャンバ1104の二重壁構造と、を接続する。したがって、アニーリングチャンバ1104の二重壁構造は、スピン凍結チャンバ1103の二重壁構造1102で使用された低温ガスの残りを使用して、アニーリングチャンバ1104の壁を冷却する。第1の接続配管1106内の排気ガスの典型的な温度は、約-60度であり、排気ガスは、スピン凍結チャンバ1103の壁を冷却することによって加温されている。
【0164】
第2の接続配管1107は、アニーリングチャンバ1104の二重壁構造と、昇華チャンバ1105の二重壁構造と、を接続する。したがって、アニーリングチャンバ1105の二重壁構造は、スピン凍結チャンバ1103の二重壁構造1102及びアニーリングチャンバ1104の二重壁構造で使用された低温ガスの残りを使用して、昇華チャンバ1105の壁を冷却する。第2の接続配管1107内の排気ガスの典型的な温度は約-40度であり、排気ガスは、スピン凍結チャンバ1103及びアニーリングチャンバ1104の壁を冷却することによって、加温されている。
【0165】
スピン凍結乾燥システム1100は、スピン凍結チャンバ、アニーリングチャンバ、及び昇華チャンバのための二重壁構造を有するが、これらのチャンバの任意の組み合わせが、二重壁構造を有することができる。更に、二重壁構造は、連続して接続される必要はなく、スピン凍結チャンバの排気部に並列に接続され得る。スピン凍結チャンバからの排気ガスを使用することができるだけでなく、凍結乾燥において使用される任意の他の冷却液を使用することができる。例えば、ガス冷却システム800、900の第1及び第2の代替例で使用される蒸発液体窒素811、911は、スピン凍結乾燥システム1100のチャンバの壁を冷却するために使用することができる。
【0166】
スピン凍結システムからの冷却液からの過剰な冷気を使用することによって、凍結乾燥中に使用される異なるチャンバの壁を冷却することができる。このようにして、エネルギーが保存される。
【0167】
チャンバは二重壁構造を有することができるので、他の透熱性ガス及び流体もチャンバ壁の温度を制御するために使用することができる。これは、121℃を上回る温度の飽和蒸気による滅菌プロセス後にチャンバ壁の急速冷却が必要とされる場合に有利であり得る。
【0168】
図12A及び図12Bは、二重壁構造1202の断面を概略的に示す。
【0169】
図12Aにおいて、二重壁構造は、螺旋状に巻かれたチャネル1203Aを有する配管システムを備える。冷却液1201は、螺旋状に巻かれたチャネル1203Aを通って移動する。このようにして、二重壁構造1202は、それが取り囲むチャンバの壁を冷却する。図11に示されているように、この冷却液はまた、再利用可能な排気冷却ガスであり得る。
【0170】
図12Bにおいて、二重壁構造は、蛇行チャネル1203Aを有する配管システムを備える。冷却液1201は、螺旋状に巻かれたチャネル1203Aを通って移動する。
【0171】
螺旋状に巻かれたチャネル及び蛇行チャネルは、二重壁構造における配管のレイアウトの例である。他のレイアウトを使用することもできる。好ましくは、冷却液1201とチャンバの内壁との間の熱交換が最大になるように、凍結乾燥システムのチャンバの内壁との接触面を最大にすることができる。図11に示されているように、この冷却液はまた、再利用可能な排気冷却ガスであり得る。
【0172】
図13は、スピン凍結乾燥機において冷却ガスとして使用されるべきガスを予冷するために使用することができる第1の熱交換器1300を概略的に示す。
【0173】
第1の配管システム1302と第2の配管システム1305とを熱的に接触させる。第1の配管システム1302は、第2の配管システム1305の周りに巻き付けることができる。第1の配管システム1302は、熱交換器1300によって予冷されるべきガス1301を輸送することができる。第2の配管システム1305は、スピン凍結乾燥システムのスピン凍結チャンバの排気から来るガス1304を輸送することができる。例えば、ガス1304は、凍結乾燥されるべき組成物を凍結するために以前に使用されていた。ガス1304は、凍結乾燥機システムの他の部分でも同様に使用され得る。予冷されるべきガス1301は、例えば、無菌窒素ガスであり得る。
【0174】
第1の配管システム1302と第2の配管システム1305との間の熱接触のために、熱は、予冷されるべきより温かいガス1301とスピン凍結乾燥機システムに来るより低温のガス1304との間で交換される。その結果、より温かいガス1301は冷却されて予冷されたガス1303になり、より冷却されたガス1304は加温されてガス1306として熱交換器1300を出て、スピン凍結乾燥機システムの他の部分を冷却するために、又はスピン凍結乾燥機内で冷却ガスとして使用されるべきガスを予冷するために更に使用することができる。
【0175】
予冷されたガス1303は、ガス冷却システム800、900、1000の第1、第2、及び第3の代替例などのガス冷却システムによって更に冷却することができる。凍結乾燥されるべき組成物を凍結するためにガスを使用することができるように、ガスを好適な温度に更に冷却する他の方法を使用することができる。
【0176】
図14は、スピン凍結乾燥機において冷却ガスとして使用されるガスを予冷するために使用することができる第2の熱交換器1400を概略的に示す。
【0177】
予冷されるガス1401は、第1の配管システム1402に沿って輸送される。第2の配管システム1405は、第1の配管システム1402を少なくとも部分的に取り囲むように形成されている。例えばスピン凍結乾燥システムのスピン凍結チャンバ排気からの冷却ガス1404は、第2の配管システム1405に沿って輸送される。第1の配管システム1402と第2の配管システム1405との間の熱接触により、冷却ガス1404と予冷されるガス1401との間で熱が交換される。
【0178】
第1の配管システム1402を出るガス1403は予冷され、例えば、ガス冷却システム800、900、1000の第1、第2、及び第3の代替例などのガス冷却システムによって更に冷却することができる。凍結乾燥されるべき組成物を凍結するためにガスを使用することができるように、ガスを好適な温度に更に冷却する他の方法を使用することができる。
【0179】
第2の配管システムを出るガス1406は、一般に、第2の配管システムに入る冷却ガス1404よりも温かい。第2の配管システムを出るガス1406が、スピン凍結乾燥システム内の他の用途に対して依然として十分に低温である場合、ガス1406は、構成要素又は冷却液を冷却するために更に使用することができる。
【0180】
別の実施形態において、圧縮機駆動冷却回路を熱交換器とともに使用して、凍結乾燥されるべき組成物用の冷却ガスとして使用されるべきガスを冷却することができる。その場合、スピン凍結乾燥機の特定の部分からの排気ガスを使用して、圧縮機駆動冷却回路で使用される圧縮機システムに冷却を提供することができる。
【0181】
圧縮機は、カルノーサイクルに従って作動する。ガスは、液体状態に圧縮される(このステップにおいて、ガスの温度も上昇する)。次に、熱交換器及び冷却液を使用して、圧縮された液体が冷却される。次に、液体を蒸発させて膨張させ、冷却する必要がある物体から熱を抽出する。次に、膨張したガスは、繰り返しサイクルで再び圧縮される。冷却される必要がある物体は、凍結チャンバ、昇華チャンバ、アニーリングチャンバ、冷却流体のいずれかであり得る。したがって、凍結チャンバからの排気ガスは、このサイクルにおいて圧縮された液体を冷却するために使用することができる。
【0182】
ガスなどの外部手段による誘導核形成の適用は、一般に、適正製造基準(Good Manufacturing Practice、GMP)要件に関して更なる課題をもたらすことに留意されたい。例えば、使用される全てのダクト及び配管をシステムの滅菌プロセスに含めることができる。局所的な密度変化を引き起こすために機械的手段を使用することは、粒子の生成の増加につながる可能性がある。したがって、これらの粒子がバイアルの開口部の近傍に入ることなく排気部に運ばれるように、冷却ガスの(厳密な)方向性の流れを保証することが重要であり得る。このようにして、汚染を回避することができる。
【0183】
凍結材料を含むバイアルは、凍結乾燥プロセスの次のステップで使用することができる。この凍結乾燥プロセスは、真空チャンバの温度を上昇させながら真空を適用するだけの従来のプロセスであり得る。凍結材料を有するバイアルが凍結乾燥プロセスにおいて使用される場合、そのような凍結乾燥プロセスは、好ましくは、国際公開第2018/033468(A1)号に記載されているような制御された凍結乾燥プロセスである。
【0184】
別の用途において、凍結材料を含むバイアルを、材料が解凍されるまでそのまま使用することができる。凍結材料を含むバイアルは、1日以上、1週間以上、又は1ヶ月若しくは数ヶ月などのより長い期間保存することができる。凍結した材料は、その間に、例えば液体窒素又は固体二酸化炭素で冷却することによって、凍結状態に維持しながら他の場所に輸送することができる。
【0185】
凍結乾燥は、タンパク質に対して行われることが多いが、凍結乾燥及び/又は凍結解凍は、好ましくは、水性媒体中の生細胞の混合物に対して行われる。
【0186】
解凍は、通常は結晶化賦形剤及び氷を含有する凍結組成物に対して行われる。例えば、解凍される凍結組成物は、上記で説明したような凍結サイクルの結果であり得る。
【0187】
解凍サイクルは、解凍チャンバ内で実行することができる。解凍チャンバの構成は、図3A又は図3Bに概略的に示される構成と同様であり得る。しかしながら、冷却ガスを使用する代わりに、一般に、組成物及び/又は凍結組成物を含有するバイアルよりも相対的により温かいガスが、組成物を加熱するために使用される。このようにして、加熱ガスが凍結組成物を含むバイアルに到達すると、熱が加熱ガスから抽出され、バイアルに、続いて組成物に供給される。ガスは、窒素などの不活性ガスとすることができるが、アルゴン又はヘリウムなどの他の不活性ガスを適用することもできる。また、バイアル中の内容物の組成に応じて、二酸化炭素ガスが適用され得る。
【0188】
組成物を含むバイアルを回転させることによって、熱が組成物に均一に加えられる。したがって、好ましい実施形態において、組成物を回転させ、加熱ガス流によって加熱することができる。
【0189】
言及されるように、好ましい実施形態において、組成物を含むバイアルは、均一に加熱される。これは、多くの方法で達成することができる。例えば、バイアルは回転することができ、加熱ガスが回転するバイアルに適用されるか、又はバイアルが静止したままで加熱ガス供給システムが回転することができる。別の例は、例えば、バイアルを(少なくとも部分的に)取り囲む多数のガスジェット、又はリング形状のガスジェットによって、バイアルを均一に加熱するように成形された加熱ガス供給システムであり得る。別の方法は、バイアルを経時的に均一に加熱することであり、すなわち、特定の瞬間にバイアルが均一に加熱されない可能性があるが、一定時間バイアルが均一に加熱される。例えば、多数のガスジェットを製造ラインに沿って位置付けることができ、バイアルは、続いて、バイアルに対して異なる場所に位置付けられた各ガスジェットから加熱ガスを適用することによって加熱される。
【0190】
組成物を含むバイアルは、均一に加熱される必要はなく、不均一に加熱することもできる。
【0191】
図15は、例示的な解凍サイクルを示す。横軸1501は、時間を示し、縦軸1502は、温度を示す。
【0192】
第1のステップにおいて、組成物は、第1の共融点まで急速に加熱される(1503)。関与する成分種の可能な最低融解温度であるこの時点で、賦形剤のうちの1つが脱結晶化を開始する。
【0193】
賦形剤の脱結晶化時間1508の間に、賦形剤はその後脱結晶化1504する。脱結晶化時間1508の長さは、以下で更に説明するように制御することができる。
【0194】
次に、組成物の温度が氷の融点に達するように、組成物を急速に加熱する(1505)。融解時間1509の間、組成物中の氷は融解する1506。また、融解時間1509の長さは、以下で更に説明するように制御することができる。
【0195】
組成物が完全に液体形態である場合、組成物を更に急速に加熱して(1507)最終温度に到達させることができる。
【0196】
図16A図16Eは、冷凍生成物の解凍中に低温ガスの温度及びガス流量を適応的に制御するために制御システムによって使用される制御スキーム1600A~Eを示す。
【0197】
図16Aは、例えば解凍サイクルの急速加熱段階1503の間に適用可能な制御スキーム1600Aの一部を示す。
【0198】
ステップ1601において、ガスの流量が特定の値に設定される。この値は、較正解凍サイクルが同様のタイプの生成物に対して実行された後など、既定の値であり得る。例示的なガス流量は、1l/分~500l/分であり、より好ましくは、容器のサイズ及び収容される物質の量に調整される。流速が速いほど、より多くのガス分子が1つ以上のバイアルに接触するので、ガスは組成物をより良好に加熱する。
【0199】
ステップ1602において、ガス温度が特定の値に設定される。この値は、同様のタイプの生成物に対して較正解凍サイクルが実行された後に判定されるように、既定することもできる。使用されるガスが温かいほど、同じ流量に対してより多くの熱が組成物に加えられる。
【0200】
したがって、相対的に温かいガスが、組成物を含むバイアル上に噴射される。結果として生じる熱伝達は、バイアルを加温し、続いて内部の生成物を加温する。好ましくは、バイアル全体にわたって最適な熱分布を得るように、バイアルは回転する。
【0201】
ステップ1603において、バイアルが測定される。バイアルの壁は、(図4及び図5で上述したように)赤外線温度計を使用して測定することができ、これは、制御フィードバックループに含まれる。このようにして、組成物の状態及び加熱段階の進行を測定することができる。
【0202】
ステップ1604において、組成物が共融点に達したか否かがチェックされ、共融点において賦形剤のうちの1つが脱結晶化を開始する。この場合、制御点Aで継続する。そうでない場合、ステップ1605に進む。
【0203】
組成物が加熱中に共融点にまだ達していない場合、制御システムは、ステップ1605において、組成物の温度が解凍サイクルに従っているか否かをチェックする。これは、既定の値であり得、例えば、組成物が加熱されるのに費やされた時間に依存し得る。しかしながら、この値は、加熱に対する組成物の応答性に基づいて判定することができるので、既定される必要はない。温度がサイクルに従っているとみなされる場合、制御システムは、ステップ1603に戻る。温度が解凍サイクルに従っていない場合、制御システムは、ステップ1606に進む。
【0204】
ステップ1606において、ガスの温度及び/又は流量が調整される。例えば、ステップ1605における組成物の温度がサイクルに従っておらず、低すぎると考えられる場合、加熱ガス温度を上昇させる。加熱ガスの温度の上昇又は低下は、一定の増分ステップで行うことができ、又は変化率を変えることができる。
【0205】
ステップ1603~1606は、制御システムが制御点Aに到達するまで繰り返される。制御点Aにおいて、組成物は、共融点に到達したとみなされ、その点において、賦形剤のうちの1つが脱結晶化を開始する。ステップ1606とステップ1603との間に既定の時間が経過している場合がある。
【0206】
図16Bは、例えば、解凍サイクルの賦形剤脱結晶化段階1504中に適用可能な制御スキーム1600Bの一部を示す。
【0207】
ステップ1611において、ガスの流量が特定の値に設定される。この値は、較正解凍サイクルが同様のタイプの生成物に対して実行された後など、既定の値であり得る。
【0208】
ステップ1612において、ガス温度が特定の値に設定される。この値は、同様のタイプの生成物に対して較正解凍サイクルが実行された後に判定されるように、既定することもできる。
【0209】
ステップ1613において、バイアルが測定される。バイアルの壁は、赤外線温度計を使用して測定することができ、これは、制御フィードバックループに含まれる。このようにして、組成物の状態及び加熱段階の進行を測定することができる。
【0210】
ステップ1614において、組成物がその時点で結晶化賦形剤を含むか否かがチェックされる。組成物がもはや結晶化賦形剤を含有しない場合、制御スキームは制御点Bで継続する。そうでない場合、制御スキームは、ステップ1615に進む。
【0211】
組成物が依然として結晶化賦形剤を含有する場合、制御システムは、ステップ1615において、加熱ガスの流量を制御する。この制御は、組成物の温度が脱結晶化段階に従っているか否かをチェックするための組成物の温度測定に基づくか、又は既定の制御関数に基づくことができる。
【0212】
ステップ1616において、加熱ガスの温度が制御される。これは、例えば、ステップ1615で実行されるような温度測定に基づいて、別個の温度測定に基づいて、又は既定の制御関数に基づいて行うことができる。
【0213】
ステップ1613~1616は、制御点Bに到達し、賦形剤が脱結晶化するまで繰り返される。ステップ1616とステップ1613との間に既定の時間が経過している場合がある。
【0214】
図16Cは、例えば、解凍サイクルの氷の融解前の加熱段階1505の間に適用可能な制御スキーム1600Cの一部を示す。
【0215】
ステップ1621において、ガスの流量が特定の値に設定される。この値は、較正解凍サイクルが同様のタイプの生成物に対して実行された後など、既定の値であり得る。
【0216】
ステップ1622において、ガス温度が特定の値に設定される。この値は、同様のタイプの生成物に対して較正解凍サイクルが実行された後に判定されるように、既定することもできる。
【0217】
ステップ1623において、バイアルが測定される。バイアルの壁は赤外線温度計を使用して測定することができ、これは制御フィードバックループに含まれる。このようにして、組成物の状態及び加熱段階の進行を測定することができる。
【0218】
ステップ1624において、組成物に含まれる氷が融解し始めたか否かがチェックされる。組成物に含まれる氷が融解し始めた場合、制御スキームは制御点Cで継続する。そうでない場合、制御スキームはステップ1625に進む。
【0219】
組成物に含まれる氷が融解し始めなかった場合、制御システムは、ステップ1625において、加熱ガスの流量を制御する。この制御は、組成物の温度が加熱段階に従っているか否かをチェックするために、組成物の温度測定に基づくか、又は既定の制御関数に基づくことができる。
【0220】
ステップ1626において、加熱ガスの温度が制御される。これは、例えば、ステップ1625で実行されるような温度測定に基づいて、別個の温度測定に基づいて、又は既定の制御関数に基づいて行うことができる。
【0221】
ステップ1627において、バイアルの温度が測定され、温度が加熱段階に従っているか否かがチェックされる。温度が適切である場合、制御スキームはステップ1623で継続し、そうでない場合、ガスの温度及び/又はガスの流量がステップ1628で調整される。ステップ1628とステップ1623との間に既定の時間が経過している場合がある。
【0222】
ステップ1623~1628は、制御点Cに到達し、組成物に含まれる氷が融解し始めるまで繰り返される。
【0223】
図16Dは、例えば、解凍サイクルの氷融解段階1506中に適用可能な制御スキーム1600Dの一部を示す。
【0224】
ステップ1631において、ガスの流量が特定の値に設定される。この値は、較正解凍サイクルが同様のタイプの生成物に対して実行された後など、既定の値であり得る。
【0225】
ステップ1632において、ガス温度が特定の値に設定される。この値は、同様のタイプの製品に対して較正解凍サイクルが実行された後に判定されるように、既定することもできる。
【0226】
ステップ1633において、バイアルが測定される。バイアルの壁は赤外線温度計を使用して測定することができ、これは制御フィードバックループに含まれる。このようにして、組成物の状態、及び氷融解段階の進行を測定することができる。
【0227】
ステップ1634において、組成物がその辞典で氷を含むか否かがチェックされる。組成物がもはや氷を含まない場合、制御スキームは制御点Dで継続する。そうでない場合、制御スキームはステップ1635に進む。
【0228】
組成物が依然として結晶化賦形剤を含有する場合、制御システムは、ステップ1635において、加熱ガスの流量を制御する。この制御は、組成物の温度が脱結晶化段階に従っているか否かをチェックするための組成物の温度測定に基づくか、又は既定の制御関数に基づくことができる。
【0229】
ステップ1636において、加熱ガスの温度が制御される。これは、例えば、ステップ1635で実行されるような温度測定に基づいて、別個の温度測定に基づいて、又は既定の制御関数に基づいて行うことができる。
【0230】
ステップ1633~1636は、制御点Dに到達し、組成物に含まれる氷が融解するまで繰り返される。ステップ1636とステップ1633との間に既定の時間が経過している場合がある。
【0231】
図16Eは、例えば、解凍サイクル中に組成物に含まれる氷が融解した後の最終加熱段階1507中に適用可能な制御スキーム1600Eの一部を示す。
【0232】
ステップ1641において、ガスの流量が特定の値に設定される。この値は、較正解凍サイクルが同様のタイプの生成物に対して実行された後など、既定の値であり得る。
【0233】
ステップ1642において、ガス温度が特定の値に設定される。この値は、同様のタイプの生成物に対して較正解凍サイクルが実行された後に判定されるように、既定することもできる。
【0234】
ステップ1643において、バイアルが測定される。バイアルの壁は、例えば、赤外線温度計を使用して測定することができ、これは、制御フィードバックループに含まれる。このようにして、組成物の状態及び加熱段階の進行を測定することができる。
【0235】
ステップ1644において、組成物の使用温度に到達したか否かがチェックされる。これは、この特定の組成物の解凍サイクルの温度目標である。使用温度に達した場合、制御スキームは、制御点Cで継続し、生成物は、使用準備ができている。例えば、生成物を解凍チャンバから抽出し、更に処理することができる。そうでない場合、制御スキームは、ステップ1645に進む。
【0236】
使用温度にまだ達していない場合、制御システムは、ステップ1645において、加熱ガスの流量を制御する。この制御は、組成物の温度が加熱段階に従っているか否かをチェックするために、組成物の温度測定に基づくか、又は既定の制御関数に基づくことができる。
【0237】
ステップ1646において、加熱ガスの温度が制御される。これは、例えば、ステップ1645で実行されるような温度測定に基づいて、別個の温度測定に基づいて、又は既定の制御関数に基づいて行うことができる。
【0238】
ステップ1647において、バイアルの温度が測定され、温度が加熱段階に従っているか否かがチェックされる。温度が適切である場合、制御スキームはステップ1643で継続し、そうでない場合、ガスの温度及びガスの流量はステップ1648で調整される。
【0239】
ステップ1643~1648は、制御点Eに達するまで繰り返され、組成物は使用の準備が整う。ステップ1648とステップ1643との間に既定の時間が経過している場合がある。解凍サイクルは、制御点Eに到達すると完了する。
【0240】
制御スキーム1600A~1600Eは、完全な解凍サイクルを制御するために組み合わされ得るか、又は特定の組成物の解凍サイクルの部分を制御するために部分的にのみ適用され得る。特定の組成物について2つ以上の賦形剤が脱結晶化することが起こり得、その場合、制御スキーム1600A~1600Bは、必要な回数繰り返すことができる。
【0241】
図17は、図8に示すガス冷却システムを応用したガス冷却/加熱システムを概略的に示す。一次配管804Bは、熱交換要素806に流入するガスの流量を調節するための別個のバルブを有することができる。例えば、熱交換要素806に流入するガス流量を0に設定することができる。このようにして、ガス801のみが二次配管804Cを通って流れる。
【0242】
流出配管804D内の加熱要素は、ガス冷却/加熱システムから流出するガス813の温度が解凍サイクルでの使用に好適な値になるように、ガス冷却/加熱システムから流出するガス813の温度を上昇させることができる。温度センサ812により、解凍サイクルにおいて加熱ガスとして使用されるべきガス813の温度を制御することができる。
【0243】
加熱要素は、加熱要素によって行われる加熱の量が制御可能であるように、流出ガスに及ぼされる電力量を調節することができる。
【0244】
同様に、図10は、バルブ1005を閉じることによって頂部で液体窒素の流入を停止し、加熱要素1011によって配管1003を介してシステムに流入するガスを加熱することによって、ガス加熱システムとして使用することができる。
【0245】
図18は、ガス加熱システム1800を概略的に示す。
【0246】
配管1803には、加熱されるべきガスが流入する。バルブ1802は、配管1803を流れるガス1801の流量を制御する。温度センサ1804Aは、ガスが加熱要素1805によって加熱される前に、ガス1801の温度を測定することができる。加熱要素1805の後に、温度センサ1804Bを配置して、加熱要素1805によって加熱された後のガスの温度を測定し、加熱要素1805を制御することができる。2つの温度センサ1804A、1804Bの温度測定値を比較して、加熱要素1805をより効果的に制御することができる。1つ以上の加熱要素を、ガスの流路に沿ってその後に配置することができる。ガス1806は、加熱ガスが、ガス1806の特定の温度設定及びガス1806の特定の流量のための解凍サイクルにおいて使用され得るように、特定の温度まで加熱される。
【0247】
ガスは、解凍チャンバ内で加熱ガスとして使用された後に、再利用することができる熱の形態のエネルギーを依然として含有することに留意されたい。
【0248】
図19は、解凍システムを概略的に示し、ここで、解凍サイクルからの排気ガスは、解凍チャンバの二重壁チャンバを調整するために再利用される。
【0249】
解凍チャンバ1901からの排気ガスは、解凍チャンバ1903を少なくとも部分的に取り囲む二重壁構造1902に流入する。このようにして、加熱ガスに含まれる残りのエネルギーが解凍チャンバを加熱し、その結果、解凍チャンバを特定の動作温度まで加熱し、その温度に維持することができる。使用済み排気ガス1904は、二重壁構造から流出する。
【0250】
二重壁構造は、図12A図12Bに示した二重壁構造の断面と同様に、配管を使用して形成することができる。
【0251】
更に、図13及び図14と同様の熱交換構造において、解凍チャンバからの排気ガスを再利用して、加熱ガスとして使用されるべきガスを予熱することができる。このように熱交換構造を使用することにより、解凍チャンバからの排気ガスは、加熱ガスとして使用されるガスを予熱する。
【0252】
原則として、解凍チャンバ及び凍結チャンバは、同一であり得ることに留意されたい。換言すれば、本発明による解凍チャンバは、本発明による凍結チャンバとしても使用することができ、逆もまた同様である。原則として、制御スキーム、及びプロセスで使用される冷却/加熱ガスは、凍結又は解凍が実行されているか否かを判定する。特定のプロセスにおいて、生成物は、同じチャンバ内で、本発明に従って凍結され、本発明に従って解凍され得る。
【0253】
これは、本明細書に記載される凍結方法と解凍方法との間の対称性を強調する。冷却/加熱ガスの温度及び流量を制御し、本明細書に記載の制御スキームを使用することによって、同様に、凍結及び解凍のプロセスが改善される。
【0254】
上記の実施形態のうちの2つ以上は、任意の適切な方法で組み合わされ得る。
【0255】
実験結果
図22A及び図22Bには、本発明の2つの実験結果が示されている。
【0256】
すなわち、特定のバイアルiの温度設定点及び生成物温度は、分単位の時間tでT℃として与えられる。実験において、熱IRカメラを使用して、例示的な凍結サイクルの非接触測定が行われた。したがって、測定は、凍結乾燥されるべき生成物を収容する容器の壁について行われる。生成物は、両方の実験において、溶解保護剤を有する細胞の水性分散液である。
【0257】
実験は、第1のステップにおいて、結晶化(核形成)の開始まで(サブ)冷却が実行されたという意味で類似している。水の結晶化段階は、時間とともにゆっくりと低下する温度を示す。氷層が厚くなるにつれて、結晶化が発熱プロセスであっても、既に形成された氷に対してより多くの寒冷が利用可能になるので、容器全体の温度は依然として低下する。結晶化段階が終了した後、更なる冷却が実行される。
【0258】
両方の実験は、結晶化段階後の(サブ)冷却/初期冷却段階及び更なる冷却/最終冷却段階において見られるように、10℃/分の冷却速度で実行される。実際に、温度設定点曲線は厳密に追従され、冷却ガスの温度及び/又は流量は、バイアル及び/又は分散液の温度が既定の初期及び最終冷却温度の経時的変化に従うように制御される。
【0259】
結晶化段階中、それぞれ3.815W及び7.630Wの結晶化速度を使用した。また、この場合、冷却ガスの温度及び/又は流量は、バイアル及び/又は分散液の温度が、温度設定点によって示される既定の結晶化温度の経時的変化に従うように制御される。
【0260】
結晶化速度を変えることができるので、総結晶化時間を効果的に制御することができることが分かる。すなわち、冷却ガスのパワーが大きいほど結晶化時間は短くなる。
【0261】
両方の実験において、生成物温度が温度設定点に密接に従うことが分かる。したがって、請求項に記載の方法を使用して、凍結サイクル(のパラメータ)を厳密に制御することができる。
【0262】
条項
1.注射用組成物、特に医薬組成物を凍結するための方法であって、
水性分散媒体中の注射用組成物のある量の分散液をバイアル中に保存するステップと、
冷却ガスをバイアルに適用することによってバイアルを冷却するステップであって、冷却が、(A)、(B)、(C)のうちの少なくとも1つを実行することによって特徴付けられ、(A)が、分散層において核生成が生じる前の初期冷却制御スキームであり、(B)が、分散層の結晶化中の結晶化制御スキームであり、(C)が、分散層が結晶化した後の最終冷却制御スキームである、冷却するステップと、
凍結が完了した後に分散液を得るステップと、を含み、
初期冷却制御スキーム(A)が、
(I)バイアル及び/又は分散液に対して核形成測定を実行して、分散液中で核形成が生じたか否かを判定するステップと、
(II)バイアル及び/又は分散液の温度が既定の初期冷却温度の経時的変化に従うように、冷却ガスの温度及び/又は流量を制御するステップと、
核形成測定が、分散液中で核形成が生じたと判定するまで、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップと、を含み、
結晶化制御スキーム(B)が、
(I)バイアル及び/又は分散液に対して結晶化測定を実行して、分散液中で結晶化が終了したか否かを判定するステップと、
(II)バイアル及び/又は分散液の温度が既定の結晶化温度の経時的変化に従うように、冷却ガスの温度及び/又は流量を制御するステップと、
結晶化測定が、分散液において結晶化が終了したと判定するまで、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップと、を含み、
最終冷却制御スキーム(C)が、
(I)バイアル及び/又は分散液の温度が既定の最終冷却温度の経時的変化に従うように、冷却ガスの温度及び/又は流量を制御するステップと、
(II)バイアル及び/又は分散液に対して最終温度測定を実行して、バイアル及び/又分散液がその既定の最終温度に達したか否かを判定するステップと、
最終温度測定が、バイアル及び/又は分散液がその既定の最終温度に到達したと判定するまで、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップと、を含む、方法。
2.(A)、(B)及び(C)の少なくとも1つにおいて、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップの前に、制御スキームが、既定の時間を待機することができる、条項1に記載の注射用組成物を凍結するための方法。
3.(A)及び(B)、(B)及び(C)、(A)及び(C)、又は(A)、(B)及び(C)が実行される、条項1又は2に記載の注射用組成物を凍結するための方法。
4.初期冷却制御スキーム(A)が、分布に凝結核を誘発するステップと、及び/又は音波若しくは圧力波によって組成物に人工的な密度勾配を誘発するステップと、及び/又は分布に熱衝撃を誘発するステップと、を更に含み、好ましくは音波若しくは圧力波が回転変動を誘発することによって生成され、好ましくは熱衝撃が冷却ガスの温度若しくは流量の変動によって誘発される、条項1~3のいずれか一項に記載の注射用組成物を凍結するための方法。
5.前記方法が、
バイアルを少なくとも一定時間回転させて、バイアルの周壁の内面に分散層を形成するステップと、
回転するバイアルに冷却ガスを適用することによって、バイアルを冷却するステップと、を更に含む、条項1~4のいずれか一項に記載の注射用組成物を凍結するための方法。
6.核形成測定、結晶化測定、及び/又は最終温度測定が、熱情報を捕捉するための熱センサ及び/又は分光情報を捕捉するためのセンサを使用して実行される、条項1~5のいずれか一項に記載の注射用組成物を凍結するための方法であって、
好ましくは、バイアルの分光情報が、画像処理モジュールを使用して分散液の構造情報に変換され、
好ましくは、熱情報及び/又は構造情報が、分散液の特性をリアルタイムで判定するために数学的モデルとともに使用される、方法。
7.注射用組成物、特に医薬組成物を凍結乾燥するための方法であって、凍結が条項1~6のいずれか一項に従って実行され、その後、真空を適用し、熱を供給しつつ、乾燥が実行される、方法。
8.注射用組成物、特に医薬組成物を凍結させるための凍結装置であって、
1つ以上のバイアルをその中で冷却するための凍結チャンバであって、1つ以上のバイアルが、水性分散媒体中の注射用組成物のある量の分散液を含み、バイアルが冷却されるようにバイアルに冷却ガスを適用するための冷却ガスシステムを含む、凍結チャンバを備え、
凍結装置が更に、
条項1~6のいずれか一項に記載の凍結プロセスを制御するための制御手段と、
凍結プロセスの少なくともある時間中にバイアルの温度を測定するための手段と、
冷却ガスの流量及び/又は温度に影響を与え、凍結プロセスの少なくとも一部の間に冷却速度を調整するための制御機構と、を備える、装置。
9.注射用組成物、特に医薬組成物を凍結させるための凍結装置であって、
1つ以上のバイアルをその中で冷却するための凍結チャンバであって、1つ以上のバイアルが、水性分散媒中の注射用組成物のある量の分散液を含み、バイアルが冷却されるようにバイアルに冷却ガスを適用するための冷却ガスシステムを備えた、凍結チャンバを備え、
凍結装置が、凍結チャンバを少なくとも部分的に取り囲む熱交換要素を備え、
熱交換要素が、凍結チャンバと熱的に接触しており、
熱交換要素が、凍結チャンバからの使用済み冷却ガスを使用することによって、又は別の流体若しくはガスを使用することによって、低温の凍結チャンバを冷却し、
好ましくは、使用済み冷却ガスが、凍結チャンバを冷却するように熱交換要素を通って流れることが可能であり、
好ましくは、熱交換要素が、凍結チャンバを取り囲む螺旋状に巻かれたチャネル及び/又は蛇行したチャネルによって形成され、使用済み冷却ガスがチャネルを通って流れることが可能であり、
好ましくは、熱交換要素が、凍結チャンバを取り囲む二重壁構造内に位置付けられる、装置。
10.注射用組成物、特に医薬組成物を凍結させるための凍結装置であって、
1つ以上のバイアルをその中で冷却するための凍結チャンバであって、1つ以上のバイアルが、水性分散媒中の注射用組成物のある量の分散液を含み、バイアルが冷却されるようにバイアルに冷却ガスを適用するための冷却ガスシステムを備えた、凍結チャンバを備え、
冷却システムが、冷却されるべきガスと熱的に接触している熱交換要素を備え、
熱交換要素が、凍結チャンバからの使用済み冷却ガスを使用してガスを冷却し、
好ましくは、熱交換要素が、冷却されるべきガスが流れる第1の配管システムと、使用済み冷却ガスが流れる第2の配管システムとによって形成され、第1の配管システム及び第2の配管システムが互いに熱的に接触している、装置。
11.注射用組成物、特に医薬組成物を凍結させるための凍結装置であって、
1つ以上のバイアルをその中で冷却するための凍結チャンバであって、1つ以上のバイアルが、水性分散媒体中の注射用組成物のある量の分散液を含み、バイアルが冷却されるようにバイアルに冷却ガスを適用するための冷却ガスシステムを備えた、凍結チャンバを備え、
冷却ガスシステムが、ガスが冷却温度まで冷却される冷却システムを備え、
冷却システムが、圧縮機と、冷却されるべきガスと熱的に接触している熱交換要素と、を備え、
熱交換要素が、凍結チャンバからの使用済み冷却ガスを使用してガスを冷却する、装置。
12.装置が、凍結プロセスの少なくともある時間中にバイアルの温度を測定するための手段と、
冷却ガスの流量及び/又は温度に影響を与え、凍結プロセスの少なくとも一部の間に冷却速度を調整するための制御機構と、を備える、条項9~11のいずれか一項に記載の凍結装置。
13.凍結装置が、
1つ以上バイアルのための回転手段を更に備え、1つ以上のバイアルが、バイアルの周壁の内面に分散層を形成するために、少なくとも一定時間にわたって回転することができ、バイアルが冷却されるように、冷却ガスシステムが回転するバイアルに冷却ガスを適用する、条項8~12のいずれか一項に記載の凍結装置。
14.注射用組成物、特に医薬組成物を凍結乾燥するための凍結乾燥システムであって、
条項8~13のいずれか一項に記載の凍結装置と、
アニーリング装置及び/又は昇華装置と、を備え、
アニーリング装置及び/又は昇華装置が、それぞれアニーリングチャンバ及び昇華チャンバを備え、
アニーリング装置及び/又は昇華装置が、アニーリングチャンバ及び昇華チャンバとそれぞれ熱的に接触する、各々のアニーリングチャンバ熱交換要素及び昇華チャンバ熱交換要素を備え、
アニーリング/昇華チャンバ熱交換要素が、凍結チャンバからの使用済み冷却ガスを使用して、又は他の低温の液体又はガスを使用して、アニーリングチャンバ及び/又は昇華チャンバを冷却する、システム。
15.凍結組成物、特に医薬組成物を解凍するための方法であって、
ある量の凍結組成物をバイアルに貯蔵するステップであって、好ましくは、凍結組成物が水性分散媒体中の注射用組成物の分散液であり、より好ましくは、凍結組成物がバイアルの周壁の内面における凍結分散層であり、より好ましくは、凍結組成物が条項1~6のいずれか一項に記載の方法によって得られる、貯蔵するステップと、
少なくとも一定時間、バイアルを回転させるステップと、
バイアルの回転中に回転中のバイアルに加熱ガスを適用することによってバイアルを加熱するステップと、
解凍が完了した後に組成物を得るステップと、を含む、方法。
16.凍結組成物、特に医薬組成物を解凍するための方法であって、
ある量の凍結組成物をバイアルに貯蔵するステップであって、好ましくは、前記凍結組成物が水性分散媒中の注射用組成物の分散液であり、より好ましくは、凍結組成物がバイアルの周壁の内面における凍結分散層であり、より好ましくは、凍結組成物が条項1~6のいずれか一項に記載の方法によって得られる、貯蔵するステップと、
バイアルに加熱ガスを適用することによってバイアルを加熱するステップと、
解凍が完了した後に組成物を得るステップと、を含み、
バイアルを加熱するステップが、(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E)のうちの少なくとも1つを実行することによって行われ、(A)が、組成物中で共融点に達する前の加熱段階中の初期加熱制御スキームであり、(B)が、賦形剤脱結晶化段階中の脱結晶化制御スキームであり、(C)が、組成物中の水の融点に達する前の加熱段階中の二次加熱制御スキームであり、(D)が、氷相の融解中の融解制御スキームであり、(E)が、組成物の使用温度に達するための最終加熱制御スキームであり、
初期加熱制御スキーム(A)が、
(I)バイアル及び/又は組成物に対して共融点測定を実行して、組成物が共融点に到達したか否かを判定するステップと、
(II)バイアル及び/又は組成物の温度が、既定の初期加熱温度の経時的変化に従うように、加熱ガスの温度及び/又は流量を制御するステップと、
共融点測定が、組成物が共融点に達したと判定するまで、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップと、を含み、
脱結晶化制御スキーム(B)が、
(I)バイアル及び/又は組成物に対して脱結晶化測定を実行して、組成物において脱結晶化が終了したか否かを判定するステップと、
(II)バイアル及び/又は組成物の温度が既定の脱結晶化温度の経時的変化に従うように、加熱ガスの温度及び/又は流量を制御するステップと、
脱結晶化測定が、組成物において脱結晶化が終了したと判定するまで、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップと、を含み、
二次加熱制御スキーム(C)が、
(I)バイアル及び/又は組成物に対して融点測定を実行して、組成物が組成物中に含まれる氷の融点に達したか否かを判定するステップと、
(II)バイアル及び/又は組成物の温度が、既定の二次加熱温度の経時的変化に従うように、加熱ガスの温度及び/又は流量を制御するステップと、
融点測定が、組成物が融点に達したと判定するまで、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップと、を含み、
融解制御スキーム(D)が、
(I)バイアル及び/又は組成物に対して融解測定を実行して、組成物において氷の融解が終了したか否かを判定するステップと、
(II)バイアル及び/又は組成物の温度が既定の融解温度の経時的変化に従うように、加熱ガスの温度及び/又は流量を制御するステップと、
融解測定が、組成物において融解が終了したと判定するまで、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップと、を含み、
最終加熱制御スキーム(E)が、
(I)バイアル及び/又は組成物に対して最終温度測定を実行して、バイアル及び/又は組成物がその既定の最終温度に到達したか否かを判定するステップと、
(II)バイアル及び/又は組成物の温度が、既定の最終加熱温度の経時的変化に従うように、加熱ガスの温度及び/又は流量を制御するステップと、
最終温度測定が、バイアル及び/又は組成物がその既定の最終温度に到達したと判定するまで、ステップ(I)及び(II)を繰り返すステップと、を含む、方法。
17.ステップ(I)及び(II)を繰り返す前の(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)のうちの少なくとも1つにおいて、制御スキームが既定の時間を待機することができる、条項16に記載の凍結組成物を解凍するための方法。
18.(A)及び(B);(A)及び(C);(A)及び(D);(A)及び(E);(B)及び(C);(B)及び(D);(B)及び(E);(C)及び(D);(C)及び(E);(D)及び(E);(A)、(B)及び(C);(A)、(B)及び(D);(A)、(B)及び(E);(A)、(C)及び(D);(A)、(C)及び(E);(A)、(D)及び(E);(B)、(C)及び(D);(B)、(C)及び(E);(B)、(D)及び(E)、(C)、(D)及び(E);(A)、(B)、(C)及び(D);(A)、(B)、(C)及び(E);(A)、(B)、(D)及び(E);(A)、(C)、(D)及び(E);(B)、(C)、(D)及び(E);又は、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)が実行される、条項16又は17に記載の凍結組成物を解凍するための方法。
19.方法が、少なくとも一定時間バイアルを回転させるステップと、回転しているバイアルに加熱ガスを適用することによってバイアルを加熱するステップと、を更に含む、条項16~18に記載の凍結組成物を解凍するための方法。
20.共融点測定、脱結晶化測定、融点測定、融解測定及び/又は最終温度測定が、熱情報を捕捉するための熱センサ及び/又は分光情報を捕捉するためのセンサを使用して実行される、条項16~19のいずれか一項に記載の凍結組成物を解凍するための方法であって、
好ましくは、バイアルの分光情報が、画像処理モジュールを使用して組成物の構造情報に変換され、
好ましくは、熱情報及び/又は構造情報が、組成物の特性をリアルタイムで判定するために数学的モデルとともに使用される、方法。
21.凍結組成物、特に医薬組成物を解凍するための解凍装置であって、
1つ以上のバイアルを少なくとも一定時間回転させるための回転手段を含む解凍チャンバであって、1つ以上のバイアルが、バイアル中にある量の凍結組成物を含むためのものであり、好ましくは、凍結組成物が、水性分散媒体中の注射用組成物の分散液であり、より好ましくは、凍結組成物が、バイアルの周壁の内面における凍結分散層であり、より好ましくは、凍結組成物が、条項1~6のいずれか一項に記載の方法によって得られる、解凍チャンバを備え、
かつ、バイアルが加熱されるように、バイアルの回転中に回転するバイアルに加熱ガスを適用するための加熱ガスシステムを備える、装置。
22.凍結した組成物、特に医薬組成物を解凍するための解凍装置であって、
1つ以上のバイアルをその中で加熱するための解凍チャンバであって、1つ以上のバイアルが、バイアル中にある量の凍結組成物を含むためのものであり、好ましくは、凍結組成物が、水性分散媒体中の注射用組成物の分散液であり、より好ましくは、凍結組成物が、バイアルの周壁の内面における凍結分散層であり、より好ましくは、凍結組成物が、条項1~6のいずれか一項に記載の方法によって得られる、解凍チャンバを備え、
かつ、バイアルが加熱されるように、バイアルに加熱ガスを適用するための加熱ガスシステムを備え、
解凍装置が、条項16~20のいずれか一項に記載の解凍プロセスを制御するための制御手段を更に備える、装置。
23.凍結組成物、特に医薬組成物を解凍するための解凍装置であって、
1つ以上のバイアルをその中で加熱するための解凍チャンバであって、1つ以上のバイアルが、バイアル中にある量の凍結組成物を含むためのものであり、好ましくは、凍結組成物が、水性分散媒中の注射用組成物の分散液であり、より好ましくは、凍結組成物が、バイアルの周壁の内面における凍結分散層であり、より好ましくは、凍結組成物が、条項1~6のいずれか一項に記載の方法によって得られる、解凍チャンバを備え、
かつ、バイアルが加熱されるように、バイアルに加熱ガスを適用するための加熱ガスシステムを備え、
解凍装置が、解凍チャンバを少なくとも部分的に取り囲む熱交換要素を備え、
熱交換要素が、解凍チャンバと熱的に接触しており、
熱交換要素が、解凍チャンバからの使用済み加熱ガスを使用して解凍チャンバを加熱し、
好ましくは、使用済み加熱ガスが、解凍チャンバを加熱するように、熱交換要素を通って流れることが可能であり、
好ましくは、熱交換要素が、解凍チャンバを取り囲む螺旋状に巻かれたチャネル及び/又は蛇行チャネルによって形成され、使用済み加熱ガスがチャネルを通って流れることが可能であり、
好ましくは、熱交換要素が、解凍チャンバを取り囲む二重壁構造内に位置付けられる、装置。
24.凍結組成物、特に医薬組成物を解凍するための解凍装置であって、
1つ以上のバイアルをその中で加熱するための解凍チャンバであって、1つ以上のバイアルが、バイアル中にある量の凍結組成物を含むためのものであり、好ましくは、凍結組成物が、水性分散媒体中の注射用組成物の分散液であり、より好ましくは、凍結組成物が、バイアルの周壁の内面における凍結分散層であり、より好ましくは、凍結組成物が、条項1~6のいずれか一項に記載の方法によって得られる、解凍チャンバを備え、
かつ、バイアルが加熱されるように、バイアルに加熱ガスを適用するための加熱ガスシステムを備え、
加熱ガスシステムが、加熱ガスを加熱するための加熱システムを備え、
加熱システムが、加熱されるべきガスと熱的に接触する熱交換要素を備え、
熱交換要素が、解凍チャンバからの使用済み加熱ガスを使用してガスを加熱し、
好ましくは、熱交換要素が、加熱されるべきガスが流れる第1の配管システムと、使用済み加熱ガスが流れる第2の配管システムとによって形成され、第1の配管システムと、第2の配管システムとは、互いに熱的に接触している、装置。
25.解凍チャンバが、少なくとも一定時間、1つ以上のバイアルを回転させるための回転手段を備え、解凍装置が、バイアルが加熱されるように、回転するバイアルに加熱ガスを適用するための加熱ガスシステムを備える、条項22~24のいずれか一項に記載の解凍装置。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
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図22A
図22B
【国際調査報告】