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特表2023-547718TON骨格型のゼオライトの有機テンプレートフリー合成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】TON骨格型のゼオライトの有機テンプレートフリー合成
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/46 20060101AFI20231106BHJP
【FI】
C01B39/46
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527780
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 IB2021055642
(87)【国際公開番号】W WO2022101692
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】63/111,828
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ジョエル エドワード
(72)【発明者】
【氏名】オジョ、アデオラ フローレンス
(72)【発明者】
【氏名】チェン、コン - ヤン
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA05
4G073BA57
4G073BA63
4G073BA75
4G073BB04
4G073BD21
4G073CZ48
4G073FB11
4G073FB21
4G073FB30
4G073FC12
4G073FC25
4G073FD01
4G073FD23
4G073GA01
4G073UA01
(57)【要約】
TON骨格型構造のゼオライトの製造のための有機テンプレートフリー合成プロセスが提供される。プロセスは、(1)(a)アルミナ被覆シリカ、(b)アルカリ金属の供給源、(c)アルコール、(d)水酸化物イオンの供給源、(e)TON骨格型構造を有するゼオライト質材料を含むシード結晶、及び(f)水を含む混合物を調製する工程、ならびに(2)工程(1)で得られた混合物を結晶化させる工程を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TON骨格型構造のゼオライトの製造のための有機テンプレートフリー合成プロセスであって、
(1)
(a)アルミナ被覆シリカ、
(b)アルカリ金属(M)の供給源、
(c)アルコール(Q)、
(d)水酸化物イオンの供給源、
(e)TON骨格型構造を有するゼオライト質材料を含むシード結晶、及び
(f)水
を含む混合物を調製する工程、ならびに
(2)工程(1)で得られた前記混合物を結晶化させる工程
を含む、前記プロセス。
【請求項2】
前記混合物が、モル比率表示で、以下の組成:
【表1A】

を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記混合物が、モル比率表示で、以下の組成:
【表1B】

を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記アルコールが、一価アルコール、多価アルコール及びその混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記アルコールが1~6個の炭素原子を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びその混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記アルコールがエタノールを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記アルカリ金属(M)が、ナトリウム、カリウムまたはその混合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記シード結晶がシリカの重量の0.1~10%の量で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記シード結晶が、ISI-1、KZ-2、NU-10、シータ1、ZSM-22及びその混合物からなる群から選択される1つ以上のゼオライトを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
工程(2)において前記結晶化させることが、前記混合物を自己圧下で1日間~14日間の時間にわたって100℃~200℃の温度で加熱することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
工程(2)で形成されるTON骨格型の前記ゼオライトが、ISI-1、KZ-2、NU-10、シータ1、ZSM-22及びその混合物からなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
以下の工程:
(3)(2)で得られたTON骨格型構造の前記ゼオライトを単離する工程;
(4)(2)または(3)で得られたTON骨格型構造の前記ゼオライトを洗浄する工程;
(5)(2)、(3)または(4)で得られたTON骨格型構造の前記ゼオライトを乾燥させる工程;
(6)Hに対して前記ゼオライト中に含有される骨格外カチオンがイオン交換されるイオン交換手順に、(2)、(3)、(4)または(5)で得られたTON骨格型構造の前記ゼオライトを供する工程;
(7)アルカリ土類金属、遷移金属及びその混合物からなる群から選択される金属カチオンに対して前記ゼオライト中に含有される骨格外カチオンがイオン交換されるイオン交換手順に、(2)、(3)、(4)、(5)または(6)で得られたTON骨格型構造の前記ゼオライトを供する工程;
(8)(7)で得られたTON骨格型の前記ゼオライトを乾燥させる工程
の1つ以上をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記有機テンプレートフリー合成プロセスが焼成工程を含まない、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月10日に出願された米国仮出願第63/111,828号に基づく優先権及びその利益を主張する。
【0002】
分野
本開示は、TON骨格型構造の合成有機テンプレートフリーゼオライト、その合成、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ゼオライトは、繰り返すSiO4及びAlO4の四面体単位で構築された多孔質結晶性材料である。これらの単位は繋がり合って、分子寸法の規則的な結晶内空洞及びチャネルを有する骨格を形成している。多数の型の合成ゼオライトが合成されており、各々はその四面体単位の特異な並び方に基づく独特の骨格を有する。慣例的に、各骨格型には国際ゼオライト協会(IZA)によって独特の3文字コードが割り当てられる。
【0004】
TON骨格型のゼオライト質材料は、一次元の楕円形10員環(10-MR)チャネルを特徴とする。TON骨格型のゼオライト質材料の例としては、ISI-1、KZ-2、NU-10、シータ1、及びZSM-22が挙げられる。TON骨格型ゼオライトは、様々なプロセス、例えば炭化水素供給原料の脱蝋のための触媒として使用され得る。
【0005】
一般に、TON骨格型ゼオライトの合成は窒素含有有機テンプレートの存在下で行われるが、当該有機テンプレートは、結晶化規定及び微孔充填に関与するものである。ある用途に効果的に採用され得るためには、得られたゼオライトから微孔内の有機テンプレートを後に除去する必要がある。有機テンプレートは、通例、焼成プロセスまたはそれに類似するものによってのみ除去され得、そのため、有機テンプレートの再利用ができない。さらには、高温、標準的には450℃~930℃、またはよりいっそう高い温度での焼成による有機テンプレートの除去は、有機テンプレートの破壊ゆえに不都合であるだけでなく、余分なエネルギー消費も招き、有害ガス及び他の望ましくない廃棄物も生成する。
【0006】
したがって、TON骨格型構造を有するゼオライトをもたらし得る有機テンプレートフリー合成プロセスも、必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
要約
第1の態様では、TON骨格型のゼオライトの製造のための有機テンプレートフリー合成プロセスであって、(1)(a)アルミナ被覆シリカ、(b)アルカリ金属(M)の供給源、(c)アルコール(Q)、(d)水酸化物イオンの供給源、(e)TON骨格型構造を有するゼオライト質材料を含むシード結晶、及び(f)水を含む混合物を調製する工程、ならびに(2)工程(1)で得られた混合物を結晶化させる工程を含む、当該プロセスが提供される。
【0008】
第2の態様では、TON骨格型構造の合成有機テンプレートフリーゼオライトであって、1つ以上のアルカリ金属(M)を場合により含み、ゼオライトが焼成されていない、当該ゼオライトが提供される。
【0009】
第3の態様では、パラフィン系炭化水素供給流を水素異性化するためのプロセスであって、水素、及びTON骨格型のゼオライトを含む触媒に炭化水素供給流を水素異性化条件で接触させることを含み、ゼオライトが焼成されていない、当該プロセスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面の簡単な記述
図1図1は、例6のゼオライト生成物の粉末X線回折(XRD)パターンを示す。
【0011】
図2図2は、例7のゼオライト生成物の粉末XRDパターンを示す。
【0012】
図3図3は、例8のゼオライト生成物の粉末XRDパターンを示す。
【0013】
図4図4は、例10のゼオライト生成物の粉末XRDパターンを示す。
【0014】
図5図5(A)及び図5(B)は、例10のゼオライト生成物の様々な倍率での走査電子顕微鏡写真(SEM)画像を示す。
【0015】
図6図6は、Pd/TON触媒によるn-デカンの水素化変換の時の温度の関数として転化率または収率を示すグラフである。
【0016】
図7図7は、Pd/TON触媒によるn-デカンの水素化変換の時の転化率の関数として生成物収率を示すグラフである。
【0017】
図8図8は、Pd/TON触媒によるn-デカンの水素化変換の時の転化率の関数としてメチルノナン異性体の分布を示すグラフである。
【0018】
図9A-B】図9(A)~図9(B)は、Pd/TON触媒によるn-デカンの水素化変換の時のクラッキング生成物分布を示すグラフである。
図9C-D】図9(C)~図9(D)は、Pd/TON触媒によるn-デカンの水素化変換の時のクラッキング生成物分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本明細書において、以下の単語及び表現は、使用されている場合、以下に示される意味を有する。
【0020】
「骨格型」という用語は、"Atlas of Zeolite Framework Types" by Ch. Baerlocher, L.B. McCusker and D.H. Olson (Elsevier, Sixth Revised Edition, 2007)に記載されている意味を有する。
【0021】
「有機テンプレート」という用語は、ゼオライト材料、特にTON骨格型構造のゼオライト材料の鋳型媒介合成に適した、考え得る任意の窒素含有有機材料を表す。
【0022】
「有機テンプレートフリー」合成プロセスは、その中で使用される材料が窒素含有有機テンプレート材料を実質的に含まない合成プロセスに関するものであり、ここで、本開示において合成プロセスに使用される1つ以上の材料の中に含有される1つ以上の有機テンプレートの量に関して採用される「実質的に」は、1つ以上の有機テンプレートの量が0.1重量%以下(例えば、0.05重量%以下、0.001重量%以下、0.0005重量%以下または0.0001重量%以下)であることを示している。1つ以上の有機テンプレートの量は、たとえ合成プロセスに使用される材料のいずれか1つの中に存在していたとしても、本開示の趣意範囲内で「不純物」または「微量」と表されることもある。さらには、本開示では「有機テンプレート」及び「有機構造規定剤」という用語が同義的に使用されていることに留意されたい。
【0023】
「アルコール」という用語は、少なくとも1つのヒドロキシ置換基で置換されたアルキルを指す。
【0024】
「アルキル」という用語は、分岐状、直鎖状または環状の飽和炭化水素基を指す。
【0025】
「骨格外」という用語は、ゼオライトのイオン交換可能部位(例えば、ゼオライトの表面上、及び/またはケージ及び/または細孔の中)に位置し、それゆえにゼオライト骨格の負電荷を相殺する役割を果たす、カチオンを表す。
【0026】
ゼオライトの合成
本開示は、TON骨格型のゼオライトの製造のための有機テンプレートフリー合成プロセスであって、(1)(a)アルミナ被覆シリカ、(b)アルカリ金属(M)の供給源、(c)アルコール(Q)、(d)水酸化物イオンの供給源、(e)TON骨格型構造を有するゼオライト質材料を含むシード結晶、及び(f)水を含む混合物を調製する工程、ならびに(2)工程(1)で得られた混合物を結晶化させる工程を含む、当該プロセスを提供する。
【0027】
混合物は、モル比率表示で、表1:
【表1】

に示される範囲に入る組成を有し得、表中、Mはアルカリ金属であり、Qはアルコールである。
【0028】
アルミナ被覆シリカについては、複数の異なるSiO/Alモル比率(例えば、35、80、100、127)を有するものを商標名DVSZN007でNalco (Naperville, Illinois)から入手できる。アルミナ被覆シリカは、2つ以上のアルミナ被覆シリカを含んでいてもよい。典型的には、2つ以上のアルミナ被覆シリカは、異なるSiO/Alモル比率を有する材料である。アルミナ被覆シリカはまた、TON骨格型ゼオライトを形成するために使用される唯一のケイ素及びアルミニウム供給源でもあり得る。
【0029】
通常、アルカリ金属(M)は、1つ以上のアルカリ金属を含む任意の好適な化合物または複数の化合物から提供され得る。アルカリ金属は、アルカリ金属塩として提供され得る。アルカリ金属は、ナトリウム及び/またはカリウムを含み得る。アルカリ金属は、金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム及び/またはカリウム)として水酸化物イオンの供給源と一緒に混合物中に導入され得る。
【0030】
アルコールは、一価アルコール、多価アルコール、またはそのうちの2つ以上の混合物であり得る。一価アルコールは、1~6個の炭素原子(例えば、2、3、4、5または6個の炭素原子)を含有し得る。代表的な一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、及びプロパノール、例えば、1-プロパノール、及び2-プロパノールが挙げられる。多価アルコールは、2~6個の炭素原子(例えば、3、4、5または6個の炭素原子)、及び2~6個のヒドロキシル基(例えば、2、3または4個のヒドロキシル基)を含有し得る。代表的な多価アルコールとしては、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールが挙げられる。いくつかの態様では、アルコールはエタノールを含む。
【0031】
いかなる理論にも拘泥しないが、ゼオライトの合成中にアルコールは細孔充填剤として作用するものと考えられる。アルコールは、それ自体が有機構造規定剤になるのではないが、TON骨格型ゼオライトの合成に使用される既知の窒素含有有機テンプレートの細孔充填機能及び電荷中和機能を補強する及び/またはそれに取って代わるものである。
【0032】
工程(1)において提供されるシード結晶は、TON骨格構造を有するゼオライト質材料を含む。概して、シード結晶は、TON骨格型のゼオライトが工程(2)で結晶化する限り、TON骨格型を有する任意のゼオライト質材料を含み得る。シード結晶に含まれる、TON骨格構造を有するゼオライト質材料は、本開示のプロセスに従って得られたゼオライト質材料であり得る。シード結晶は、ISI-1、KZ-2、NU-10、シータ1、及びZSM-22からなる群から選択される1つ以上のゼオライトを含み得る。いくつかの態様では、シード結晶はZSM-22を含む。シードは、反応混合物に使用されるシリカの重量の0.1~10%(例えば、0.5~5%)の量で添加され得る。
【0033】
本開示に係る工程(1)において、混合物は、考え得る任意の手段によって調製され得、好ましくは、混合が、かき混ぜること、例えば撹拌することによって行われる。
【0034】
概して、本プロセスの工程(1)の混合物を提供するための成分は、工程(2)の混合物からTON骨格型構造のゼオライトが結晶化する限り、任意の順序で添加され得る。混合物は、回分的に、あるいは連続的に調製され得る。
【0035】
概して、本プロセスによる工程(2)は、工程(1)による混合物からTON骨格型構造のゼオライトが結晶化する限り、考え得る任意の様式で行われ得る。混合物からのゼオライトの結晶化は、好適な反応容器、例えば、ポリプロピレン製瓶、またはテフロン(登録商標)被覆もしくはステンレス鋼製オートクレーブにおいて、静的、動乱または撹拌条件下、100℃~200℃(例えば120℃~160℃)で、用いられる温度で結晶化が起こるのに十分な時間(例えば1日間~14日間)にわたって行われ得る。通常、結晶化は、反応混合物が自己圧に供されるように、オートクレーブ内で行われる。
【0036】
概して、本開示のプロセスは、場合により、工程(1)で提供された混合物から工程(2)で結晶化したTON骨格型構造のゼオライトの後処理及び/またはさらなる物理的及び/または化学変換のための、さらなる工程を含み得る。結晶化材料は、例えば、任意の順序での単離及び/または洗浄手順に供され得、好ましくは、工程(2)で結晶化から得られたゼオライトが、少なくとも1つの単離及び少なくとも1つの洗浄手順に供される。
【0037】
結晶化生成物の単離は、考え得る任意の手段によって成し遂げられ得る。好ましくは、結晶化生成物の単離は、濾過、限外濾過、透析濾過、遠心分離及び/またはデカンテーション法によって成し遂げられ得、濾過法には、吸引及び/または加圧濾過工程が伴い得る。
【0038】
1つ以上の場合による洗浄手順に関しては、考え得る任意の溶媒が使用され得る。使用され得る洗浄剤は、例えば、水、アルコール、例えば、メタノール、エタノールもしくはプロパノール、またはそのうちの2つ以上の混合物である。混合物の例は、2つ以上のアルコール、例えば、メタノール及びエタノール、もしくはメタノール及びプロパノール、もしくはエタノール及びプロパノール、もしくはメタノール、エタノール、及びプロパノールの混合物、または水及び少なくとも1つのアルコール、例えば、水及びメタノール、もしくは水及びエタノール、もしくは水及びプロパノール、もしくは水、メタノール、及びエタノール、もしくは水、メタノール、及びプロパノール、もしくは水、エタノール、及びプロパノール、もしくは水、メタノール、エタノール、及びプロパノールの混合物である。好まれるのは、水、または水と少なくとも1つのアルコール、好ましくは水とエタノールの混合物であり、とりわけ非常に好まれるのは、唯一の洗浄剤としての蒸留水である。
【0039】
分離されたゼオライトは、洗浄剤(例えば洗浄水)の導電率が50μS/cm未満になるまで洗浄され得る。
【0040】
さらには、本プロセスは、場合により、1つ以上の乾燥工程を含み得る。概して、考え得る任意の乾燥手段が用いられ得る。乾燥手順は、ゼオライトを加熱すること及び/またはそれに真空を印加することを含み得る。
【0041】
本プロセスによると、工程(2)で結晶化したゼオライト質材料は場合により、イオン交換手順の少なくとも1つの工程に供され得、ここで、「イオン交換」という用語は、通常、ゼオライト中に含有される骨格外カチオン性元素及び/または分子に関するものである。好ましくは、非骨格カチオン性元素は、TON骨格型構造のゼオライトの中に含まれている1つ以上のアルカリ金属(M)の1つ以上を含む。
【0042】
概して、TON骨格型構造のゼオライトの合成に特化して使用される有機構造規定剤を除いて、あり得るすべてのカチオン性元素及び/または分子に関して考え得る任意のイオン交換手順が、ゼオライトに対して行われ得る。好適な置換カチオンとしては、水素、アンモニウム、アルカリ土類金属及び遷移金属が挙げられる。代表的なアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムが挙げられる。代表的な遷移金属としては、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅及び亜鉛が挙げられる。ゼオライトは、最初にH及び/またはNH でイオン交換され得、その後、さらなるイオン交換手順に供され得、例えば、アルカリ土類金属及び遷移金属からなる群から選択される少なくとも1つのカチオン及び/またはカチオン性元素によるイオン交換に供され得る。
【0043】
概して、本プロセスに含まれる場合による洗浄及び/または単離及び/またはイオン交換手順は、考え得る任意の順序で行われ得、しばしば所望により繰り返され得る。したがって、本開示に係るプロセスは、以下の工程の1つ以上を場合により含む:(3)(2)で得られたTON骨格型構造のゼオライトを単離する工程;(4)(2)または(3)で得られたTON骨格型構造のゼオライトを洗浄する工程;(5)(2)、(3)または(4)で得られたTON骨格型構造のゼオライトを乾燥させる工程;(6)Hに対してゼオライト中に含有される骨格外カチオンがイオン交換されるイオン交換手順に、(2)、(3)、(4)または(5)で得られたTON骨格型構造のゼオライトを供する工程;(7)アルカリ土類金属、遷移金属及びその混合物からなる群から選択される金属カチオンに対してゼオライト中に含有される骨格外カチオンがイオン交換されるイオン交換手順に、(2)、(3)、(4)、(5)または(6)で得られたTON骨格型構造のゼオライトを供する工程;(8)(7)で得られたTON骨格型のゼオライトを乾燥させる工程。
【0044】
本開示のプロセスでは、焼成工程が採用されないことが好ましい。概して、焼成工程は、工程(2)に従って結晶化したゼオライトを500℃の温度よりも高く加熱することを必要とする。より好ましくは、焼成工程を含まない、TON骨格型のゼオライトの製造のための本開示に係るプロセスは、工程(2)に従って結晶化したゼオライトが後の工程において450℃、より好ましくは350℃、より好ましくは300℃、より好ましくは250℃、より好ましくは200℃、よりいっそう好ましくは150℃を越える温度に供されないプロセスを指す。本開示によると、特に好ましいのは、結晶化ゼオライトが周囲温度になっている本プロセスの工程(2)の完了後に材料が、後に、TON骨格型のゼオライトから有機テンプレートを除去するために標準的または好適に行われるいかなる加熱プロセスにも供されないことである。本開示の趣意範囲内で、「焼成されていない」ゼオライトは、上記焼成手順のどの1つにも供されていないものである。
【0045】
概して、本プロセスに従って得られるTON骨格型のゼオライトは、TON骨格型の、考え得る任意のゼオライトであり得る。いくつかの態様では、工程(2)で形成されたTON骨格型のゼオライトは、ISI-1、KZ-2、NU-10、シータ1、及びZSM-22からなる群から選択される1つ以上のゼオライトを含み、好ましくはゼオライトはZSM-22を含む。
【0046】
ゼオライトの特徴記載
本明細書に記載されるとおりに調製された、TON骨格型構造の有機テンプレートフリーゼオライトは、少なくとも35(例えば、35~160、または60~100)のSiO/Alのモル比率を有し得る。
【0047】
TON骨格型構造の有機テンプレートフリーゼオライトが骨格外カチオンとしてアルカリ金属(M)を含むいくつかの態様では、M/Alのモル比率は、0.005~10(例えば、0.05~7、0.5~6、または1~5)の範囲であり得る。
【0048】
TON骨格型ゼオライトを代表する粉末XRDパターンについては、the "Collection of Simulated XRD Powder Patterns for Zeolites" by M.M.J. Treacy and J.B. Higgins (Fifth Revised Edition, Elsevier, 2007)が参照され得る。
【0049】
本明細書に提示されている粉末XRDパターンは、標準的技術によって収集されたものである。放射線は銅のKアルファ二重線であった。回折パターンにおけるわずかな変動は、格子定数の変化に起因する特定試料の骨格種のモル比率の変動に起因するものであり得る。加えて、十分に小さい結晶は、ピークの形状及び強度に影響を及ぼして著しいピークブロード化を招くものである。これらのわずかな摂動にもかかわらず、基本結晶格子構造は変化しないままとなる。
【0050】
産業的応用性
総じて、本プロセスによって製造されたTON骨格型ゼオライトは、分子ふるい、吸着剤、触媒、触媒支持体またはその結合剤として使用され得る。例えば、ゼオライトは、選択的分子分離のために気体もしくは液体を乾燥させるための分子ふるいとして;イオン交換剤として;化学物質担体として;吸着剤として;または触媒として使用され得る。
【0051】
いくつかの態様では、本プロセスによって製造されたTON骨格型ゼオライトは、触媒プロセスに(例えば、触媒及び/または触媒支持体として)使用される。総じて、ゼオライトは、考え得る任意の触媒プロセス、好ましくは、少なくとも1つの有機化合物の変換を伴うプロセスにおいて触媒及び/または触媒支持体として使用され得る。
【0052】
本プロセスによって製造されたTON骨格型ゼオライトを含有する触媒は、パラフィン系炭化水素供給原料を、水素異性化条件で触媒によって水素と接触した際に水素異性化して、分岐状炭化水素が炭化水素供給原料に比べて増加した生成物を生成することにおいて、特に有用である。
【0053】
水素異性化条件は、200℃~450℃(例えば、250℃~400℃)の温度、0.5~20MPa(例えば、1~15MPa)の圧力、0.1~10h-1(例えば、0.5~5h-1)の液体毎時空間速度、及び35.6~1781Nm/m(例えば、890~1424Nm/m)の水素循環速度を含む。
【0054】
炭化水素供給原料は、炭化水素供給原料がn-C8+炭化水素(例えば、n-C10+炭化水素、またはn-C15+炭化水素)を含むのであれば特定の種類に限定されない。より具体的には、そのような炭化水素供給原料の例として、比較的軽質の蒸留画分、例えば石油及びジェット燃料;ならびに高沸点原料、例えば、任意の種類の原油に由来する燃料画分またはワックス画分、常圧蒸留残油(常圧残油)、真空塔残油、真空蒸留残油(真空残油)、循環油、合成原油(例えば、シェール油、タール油など)、ガス油、真空ガス油、ろう下油及びフィッシャー・トロプシュ合成油;ならびに他の重油が挙げられる。使用され得る、特に、上に列挙される供給原料と組み合わせて共供給成分として使用され得る、他の供給原料成分としては、植物または動物に由来する再生可能供給原料が挙げられる。
【0055】
多くの触媒と同様に、本発明のゼオライトには、有機変換プロセスに採用される温度及び他の条件に耐える別の材料を組み込むことが望ましい場合がある。そのような材料としては、活性及び不活性材料、ならびに合成または天然に存在するゼオライトが挙げられ、加えて、無機材料、例えば、粘土、シリカ及び/または金属酸化物、例えばアルミナが挙げられる。後者は、天然に存在するものであり得るか、あるいはゼラチン質沈澱物またはゲルの形態にあり得、これには、シリカと金属酸化物との混合物が含まれる。材料を、活性を有する本発明のゼオライトと一緒に(つまり、それと組み合わせて、または新しい材料を合成する間それを存在させて)使用することは、ある特定の有機変換プロセスにおける触媒の転化率及び/または選択性を変化させるのに役立つ。不活性材料は、反応の速度を制御するための他の手段を採用することなく経済的でなおかつ整然とした様式で生成物が得られ得るように所与のプロセスにおける変換の量を制御するための希釈剤としての役割を好適に果たす。これらの材料は、商業的操作条件下での触媒の破砕強度を改善するために天然に存在する粘土(例えばベントナイト及びカオリン)の中に組み込まれ得る。これらの材料(すなわち、粘土、酸化物など)は、触媒のための結合剤として機能する。商業的使用においては触媒が粉末状材料に破壊されるのを防止することが望ましいので、良好な破砕強度を有する触媒を提供することが望ましい。これらの粘土及び/または酸化物結合剤は、触媒の破砕強度を改善する目的だけのために標準的に採用されてきた。
【0056】
本発明のゼオライトと複合され得る天然に存在する粘土としては、モンモリロナイト及びカオリンファミリーが挙げられ、これらのファミリーには、サブベントナイト、ならびにDixie, McNamee, Georgia 及び Florida粘土として一般的に知られるカオリン、または主要鉱物構成要素がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライトもしくはアナウキサイトである他のものが含まれる。そのような粘土は、元の採掘されたままの原石状態で使用され得るか、または最初に焼成に、酸処理もしくは化学修飾に供され得る。本発明のゼオライトと複合するのに有用な結合剤には、無機酸化物、例えば、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナ及びその混合物も含まれる。
【0057】
上記材料の他にも、本発明のゼオライトは、多孔質母材料、例えば、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニア、ならびに三元組成物、例えば、シリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア、及びシリカ-マグネシア-ジルコニアと複合され得る。
【0058】
TON骨格型ゼオライト及び無機酸化物母材の相対的割合は実に様々であり得、TON骨格型ゼオライトの含有率は複合材の1~90重量%(例えば、2~80重量%)の範囲であり得る。
【0059】

以下の例示的な例(実施例)は非限定的なものであることを意図している。
【0060】
例1(比較例)
全シリカTON骨格型ゼオライトを、Q. Wu et al. (Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58, 12138-12142)によって記載された手順に従って調製した。
【0061】
テフロン(登録商標)オートクレーブにおいて、0.51gのNaSiO・9HOを、1.56gのシリカゲル、及び0.12gの全シリカTON骨格型ゼオライトのシードと合わせた。スパチュラで混合した後、1.9gのメタノールを添加し、素早く混合した後、オートクレーブを閉じた。オートクレーブを、43rpmで回転させながら135℃で3日間加熱した。生成物を濾過によって回収し、多量の水で洗浄し、その後、85℃の空気中で乾燥させた。
【0062】
粉末XRD(図示せず)は、生成物がTON骨格型ゼオライトであることを示していた。
【0063】
例2(比較例)
アルミノケイ酸塩TON骨格型ゼオライトを、Y. Wang et al. (Catal. Today 2014, 226, 103-108)によって記載された手順に従って調製した。
【0064】
テフロン(登録商標)オートクレーブにおいて、3.2gの1NのKOH水溶液を、8.8gの脱イオン水及び0.096gのAl(SO・18HO aと合わせ、アルミナが溶解するまで撹拌した。その後、3gのオルトケイ酸テトラエチルを添加し、混合物を数時間にわたって覆いを掛けた状態で撹拌した。最後に、0.1gのTON骨格型ゼオライトのシードを添加し、オートクレーブを閉じ、43rpmで回転させながら135℃で2日間にわたって加熱した。生成物を濾過によって回収し、多量の水で洗浄し、その後、85℃の空気中で乾燥させた。
【0065】
材料を、焼成用皿に入れて薄く広げることによって空気中で焼成し、マッフル炉内で室温から120℃まで1℃/分の速度で加熱し、2時間にわたって120℃に保った。その後、温度を1℃/分の速度で540℃まで定速上昇させ、5時間にわたって540℃に保った。温度を再び1℃/分で595℃まで定速上昇させ、5時間にわたって595℃に保った。その後、材料を室温まで放冷した。
【0066】
材料を、硝酸アンモニウムの溶液の中で(例えば、1gのNHNO/1gのゼオライトを含む10mLのHOを少なくとも3時間にわたって85℃で)加熱することによってアンモニウム形態に変換した。その後、材料を濾過した。合計3回の交換のためにこれを2回繰り返した。材料を、10μS/cm未満の水の導電率が得られるまで脱イオン水で洗浄した。
【0067】
粉末XRD(図示せず)は、生成物がTON骨格型ゼオライトであることを示していた。
【0068】
生成物の酸部位密度は、n-プロピルアミン昇温脱着(TPD)を用いて特性評価され、31.4μmol H/gであることが分かった。
【0069】
例3(比較例)
テフロン(登録商標)オートクレーブにおいて、3.17gの1NのKOHを、7.2gの脱イオン水、及び0.096gのAl(SO・18HOと合わせ、アルミナが溶解するまで撹拌した。その後、3gのオルトケイ酸テトラエチルを添加し、混合物を数時間にわたって覆いを掛けた状態で撹拌した。最後に、0.05gのTON骨格型ゼオライトのシードを添加した。オートクレーブを閉じ、43rpmで回転させながら140℃で4日間にわたって加熱した。生成物を濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、その後、85℃の空気中で乾燥させた。
【0070】
材料を、焼成することなく直接、硝酸アンモニウムの溶液の中で(例えば、1gのNHNO/1gのゼオライトを含む10mLのHOを少なくとも3時間にわたって85℃で)加熱することによってアンモニウム形態に変換した。合計3回の交換のためにこれを2回繰り返した。その後、材料を脱イオン水で洗浄した。
【0071】
粉末XRD(図示せず)は、生成物がTON骨格型ゼオライトであることを示していた。
【0072】
例4(比較例)
3.60gの1NのKOHを使用して例3を繰り返した。
【0073】
粉末XRD(図示せず)は、生成物がTON骨格型ゼオライトであることを示していた。
【0074】
例5(比較例)
2.74gの1NのKOHを使用して例3を繰り返した。
【0075】
粉末XRD(図示せず)は、生成物がTON骨格型ゼオライトであることを示していた。
【0076】
生成物の酸部位密度は、n-プロピルアミンTPDを用いて特性評価され、207μmol H/gであることが分かった。
【0077】
例6
テフロン(登録商標)オートクレーブにおいて、2.45gの1NのKOHを、4.23gの脱イオン水、及び3.00gのNalco アルミナ被覆シリカ DVSZN007(SAR=80、固形分26.9%)と合わせた。その後、0.05gのTON骨格型ゼオライトのシードを添加した。最後に、2.25gの変性エタノールを添加し、十分に混合した。オートクレーブを閉じ、43rpmで回転させながら140℃で4日間にわたって加熱した。生成物を濾過によって回収し、水で洗浄し、85℃で乾燥させた。
【0078】
粉末XRDは、生成物がTON骨格型ゼオライトであることを示していた。図1は生成物の粉末XRDを示す。
【0079】
例7
テフロン(登録商標)オートクレーブにおいて、2.20gの1NのKOHを、4.47gの脱イオン水、及び3.00gのNalco アルミナ被覆シリカ DVSZN007(SAR=80、固形分26.9%)と合わせた。その後、0.05gのTON骨格型ゼオライトのシードを添加した。最後に、2.25gの変性エタノールを添加し、十分に混合した。オートクレーブを閉じ、43rpmで回転させながら140℃で2日間にわたって加熱した。生成物を濾過によって回収し、水で洗浄し、85℃で乾燥させた。
【0080】
粉末XRDは、生成物がTON骨格型ゼオライトであることを示していた。図2は生成物の粉末XRDを示す。
【0081】
例8
テフロン(登録商標)オートクレーブにおいて、2.45gの1NのKOHを、4.24gの脱イオン水、及び3.00gのNalco アルミナ被覆シリカ DVSZN007(SAR=80、固形分26.9%)と合わせた。その後、0.05gのTON骨格型ゼオライトのシードを添加した。最後に、1.13gの変性エタノールを添加し、十分に混合した。オートクレーブを閉じ、43rpmで回転させながら140℃で2日間にわたって加熱した。生成物を濾過によって回収し、水で洗浄し、85℃で乾燥させた。
【0082】
粉末XRDは、生成物がTON骨格型ゼオライトであることを示していた。図3は生成物の粉末XRDを示す。
【0083】
例9(比較例)
変性エタノールを添加しなかったこと及び反応時間を4日間としたこと以外は例8の繰り返しであった。
【0084】
結晶質の生成物は何ら回収されなかった。
【0085】
例10
テフロン(登録商標)オートクレーブにおいて、2.85gの1MのKOH水溶液を、4.95gの水、及び3.5gのNalco アルミナ被覆シリカ DVSZN007(SAR=80、固形分26.9%)と混合した。その後、0.05gのゼオライトTONのシードを添加し、十分に混合した。最後に、1.31gの変性エタノールを添加し、混合し、オートクレーブを閉じ、43rpmで回転させながら140℃で2日間にわたって加熱した。生成物を濾過によって回収し、多量の水で洗浄し、その後、85℃の空気中で乾燥させた。合計4回分のためにこの手順を3回繰り返し、合計3.43gの乾燥生成物が回収された。
【0086】
粉末XRDは、生成物がTON骨格型ゼオライトであることを示していた。図4は生成物の粉末XRDを示す。
【0087】
図5のA及びBは、生成物の様々な倍率での例示的SEM画像を示す。
【0088】
材料を、焼成することなく直接、硝酸アンモニウムの溶液の中で(典型的には、1gのNHNO/1gのゼオライトを含む10mLのHOを少なくとも3時間にわたって85℃で)加熱することによってアンモニウム形態に変換した。その後、材料を濾過した。合計3回の交換のためにこれを2回繰り返した。材料を、10μS/cm未満の水の導電率が得られるまで脱イオン水で洗浄した。
【0089】
アンモニウム交換生成物の酸部位密度は、n-プロピルアミンTPDを用いて特性評価され、298μmol H/gであることが分かった。
【0090】
例11
パラジウム交換
提供時のゼオライト材料を基準として0.5重量%までパラジウム交換するために、例10からの1.6gのアンモニウム形態TON材料を、15.3gの脱イオン水及び7.0gの0.156NのNHOH溶液と合わせ、続いて、0.36gの硝酸テトラアミンパラジウム(II)を含む21gの脱イオン水の溶液と3gの0.148NのNHOH溶液とを合わせることによって調製された1.6gのパラジウム溶液と合わせた。その後、pHを確認し、必要に応じて、pHが10に達するまで濃水酸化アンモニウムを滴加することによって10に調整した。室温で3日間静置した後、pHを再び確認し、必要に応じて10に再調整し、もう1日間静置した。材料を濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、85℃の空気中で一晩乾燥させた。その後、乾燥空気中でPd交換材料を、勾配1℃/分で120℃まで加熱し、180分間にわたって120℃に保ち、その後482℃まで1℃/分で加熱し、180分間にわたって482℃に保つことによって、焼成した。最後に、材料を5kpsiでペレット化し、粉砕し、20~40メッシュのふるいに掛けた。
【0091】
例12
n-デカンの水素化変換
触媒試験のために、例11からの0.5gのPd/TON触媒(600℃での熱重量分析によって決定された脱水試料の重量)を、長さ23インチ×外径1/4インチのステンレス鋼製反応管の中央に装填し、触媒の上流側には、給送物を予熱するためにアランダムを装填した(全圧1200psig;1気圧及び25℃で測定したときの水素流下速度12.5mL/分;ならびに液体給送物流下速度1mL/時)。最初に触媒を315℃で1時間にわたって水素流中で還元した。反応は230℃~310℃で行った。生成物をオンラインキャピラリーガスクロマトグラフィー(GC)によっておよそ60分ごとに1回分析した。GCからの原データを自動データ収集/処理システムによって収集し、炭化水素転化率を原データから算出した。転化率は、反応して他の生成物(iso-C10を含む)を生成したn-デカンのmol%表示での量として定義される。iso-C10の収率は、n-デカン以外の生成物のモルパーセントとして表される。(C10よりも小さい)クラッキング生成物の収率は、クラッキング生成物に変換されたn-デカンのモルパーセントとして表される。結果を図6及び図7に示す。n-デカンの水素化変換における転化率の関数としてのメチルノナン異性体の分布を図8に示す。10.2mol%、32.1mol%、51.1mol%及び90.1mol%のクラッキング収率でのクラッキング生成物分布をそれぞれ図9(A)、図9(B)、図9(C)及び図9(D)に示す。
【0092】
改変型拘束指数(CI)は、P.A. Jacobs et al. (Zeolites 1984, 4, 98-107)によって記述されたように、およそ5%の全異性体収率での5-メチルノナンに対する2-メチルノナンの比率として計算された。この例では、改変型拘束指数(CI)は4.8%の全異性体収率において5.9であることが分かった。
【0093】
例16
n-ヘキサデカンの水素異性化
例11の0.5gのパラジウム交換試料を、長さ23インチ×外径1/4インチのステンレス鋼製反応管の中央に装填し、触媒の上流側には、給送物を予熱するためにアランダムを装填した(全圧1200psig;1気圧及び25℃で測定したときの水素流下速度160mL/分);液体給送物流下速度1mL/時。最初にすべての材料を約315℃で1時間にわたって水素流中で還元した。生成物をオンラインキャピラリーGCによって30分ごとに1回分析した。GCからの原データを自動データ収集/処理システムによって収集し、炭化水素転化率を原データから算出した。
【0094】
転化率は、反応して他の生成物(iso-C16異性体を含む)を生成したn-ヘキサデカンの量として定義された。収率をn-C16以外の生成物の重量パーセントとして表し、収率の生成物としてiso-C16を含めた。転化率96%での結果を表2に報告する。
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A-B】
図9C-D】
【国際調査報告】