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特表2023-547732遺伝子改変を検出するための標的化シークエンシング方法およびそのキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(54)【発明の名称】遺伝子改変を検出するための標的化シークエンシング方法およびそのキット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6886 20180101AFI20231106BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20231106BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20231106BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231106BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20231106BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231106BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231106BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20231106BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z
C12Q1/686 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
A61P35/00
A61K31/713
A61K45/00
A61K48/00
G01N33/50 P
G01N33/48 R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527994
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 IB2021060130
(87)【国際公開番号】W WO2022097021
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】63/108,932
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/153,956
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523165835
【氏名又は名称】エイシーティ・ジェノミックス(アイピー)リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ACT Genomics (IP) Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ライ,イー-シュアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ユー-リン
(72)【発明者】
【氏名】シュー,アン
(72)【発明者】
【氏名】リン,ペイ-イー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ホア-チエン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シュー-ジェン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CB02
2G045DA14
4B063QA01
4B063QA17
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR56
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX01
4C084AA13
4C084AA17
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
(57)【要約】
本願は、遺伝子改変、例えば遺伝子融合を決定するための方法を提供する。本願はまたは遺伝子改変を決定するためのキットを提供する。本願は、対象が特定のがん種または遺伝子型についてリスクがあるかを決定し、および適切な処置を投与する事による対象を処置するための方法をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料中の遺伝子改変を検出するための方法であって、
(a)該生物学的試料から得た標的RNA、鋳型切り替えオリゴ、逆転写酵素、および逆転写(RT)プライマーを混合物中に混合する工程であって、ここで該鋳型切り替えオリゴは第1のユニバーサルプライマー配列を含む、および該RTプライマーは第2のユニバーサルプライマー配列を含む、工程;
(b)逆転写が起こり該標的RNAに相補的な標的DNAがもたらされる条件下に該混合物を供する工程;
(c)プライマーの第1の対を用いて標的DNAを増幅し、第1のPCR産物を得る工程であって、ここでプライマーの第1の対は遺伝子特異的プライマーおよびユニバーサルプライマーを含み、ここで遺伝子特異的プライマーは5’末端の第1または第2のアダプター配列および厳しい条件下で標的遺伝子にハイブリダイズする3’末端配列を含み、ここでユニバーサルプライマーは5’末端の第1または第2のアダプター配列および第1または第2のユニバーサルプライマー配列を含む3’末端配列を含む、およびここで第1および第2のアダプター配列は互いに異なる、工程;
(d)プライマーの第2の対を用いて第1のPCR産物を増幅し、第2のPCR産物を得る工程であって、ここでプライマーの第2の対の各々は5’末端の第3または第4のアダプター配列、およびそれぞれ第1または第2のアダプター配列にハイブリダイズする3’末端配列を含み、およびここで第3および第4のアダプター配列は互いに異なる、工程;ならびに
(e)第2のPCR産物を解析し、遺伝子改変の存在を検出する工程であって、好ましくは第2のPCR産物は、少なくとも1つのアダプター配列を利用したシークエンシング解析によって解析される、工程、
を含む、方法。
【請求項2】
RTプライマーが少なくとも5つのランダムヌクレオチドを有する直鎖構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
RTプライマーが、ステムループ構造および少なくとも5つのランダムヌクレオチドを有するオーバーハング構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステムループ構造がヘアピンステムループ構造またはY字型ステムループ構造である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステムループ構造がバーコード配列を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
ステムループ構造が少なくとも第2のユニバーサルプライマー配列の配列長である、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第2のユニバーサルプライマーが30bp未満の長さである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステムループ構造のステムが8bpの長さである、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1のアダプター配列または第2のアダプター配列の内の少なくとも1つがバーコード配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
標的DNAが少なくとも100bpの長さである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
標的DNAが100bpから4000bpの長さである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
標的DNAが100bpから500bpの長さである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)において、標的DNAが少なくとも2つの遺伝子特異的プライマーを用いるマルチプレックスPCRによって増幅される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
第1のPCR産物が、遺伝子特異的プライマーの3’または5’の方向に生成され、および分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
遺伝子特異的プライマーが、融合ジャンクション境界から少なくとも25bpの距離内で標的DNAにハイブリダイズする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
1つ以上の遺伝子特異的プライマーが、配列番号11、12、14~35、および任意のその相補配列からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ユニバーサルプライマーが、配列番号1~10、および任意のその相補配列からなる群より選択される、請求項1に記載の方法
【請求項18】
遺伝子改変が、ABL1、AKT3、ALK、ARV7、BCR、BRAF、CD74、EGFR、ERBB2、ERBB4、ERG、ESR1、ETV1、ETV4、ETV5、ETV6、EZR、FGFR1、FGFR2、FGFR3、KIT、KMT2A、MET、NRG1、NRG2、NTRK1、NTRK2、NTRK3、NUTM1、PDGFRA、PDGFRB、PIK3CA、RAF1、RARA、RET、ROS1、RSPO2、SDC4、SLC34A2およびTMPRSS2からなる群より選択される、既知の遺伝子の配列を含む遺伝子融合である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
生物学的試料が固形腫瘍に由来する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
生物学的試料が、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
第2のPCR産物が次世代シークエンシングによって解析される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
生物学的試料中の遺伝子改変を検出するためのキットであって、
(a)第1のユニバーサルプライマーを含む鋳型切り替えオリゴ;
(b)ステムループ構造および少なくとも5つのランダムテールヌクレオチドであるオーバーハング構造を含む逆転写(RT)プライマーであって、第2のユニバーサルプライマーを含む、RTプライマー;
(c)第1または第2のアダプター配列をそれぞれ含む1つ以上の遺伝子特異的プライマー、および第1または第2のアダプター配列をそれぞれ含むユニバーサルプライマーであって、ここで遺伝子特異的プライマーの第1のアダプター配列はユニバーサルプライマーの第2のアダプター配列とは異なる、または遺伝子特異的プライマーの第2のアダプター配列はユニバーサルプライマーの第1のアダプター配列とは異なる、遺伝子特異的プライマーおよびユニバーサルプライマー;
(d)第1および第2のアダプターにそれぞれ相補的なプライマー対であって、ここで該プライマー対の各プライマーは、第3または第4のアダプター配列をそれぞれ含み、ここで第3および第4のアダプター配列は互いに異なる、プライマー対;
(e)逆転写酵素;
(f)DNAポリメラーゼ;ならびに
(g)デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)、
を含む、キット。
【請求項23】
生物学的試料中の遺伝子改変を検出するためのキットであって、
(a)第1のユニバーサルプライマーを含む鋳型切り替えオリゴ;
(b)少なくとも5つのランダムテールヌクレオチドである直鎖構造を含む逆転写(RT)プライマーであって、第2のユニバーサルプライマーを含む、RTプライマー;
(c)第1または第2のアダプター配列をそれぞれ含む1つ以上の遺伝子特異的プライマー、および第1または第2のアダプター配列をそれぞれ含むユニバーサルプライマーであって、ここで遺伝子特異的プライマーの第1のアダプター配列はユニバーサルプライマーの第2のアダプター配列とは異なる、または遺伝子特異的プライマーの第2のアダプター配列はユニバーサルプライマーの第1のアダプター配列とは異なる、遺伝子特異的プライマーおよびユニバーサルプライマー;
(d)第1および第2のアダプターにそれぞれ相補的なプライマー対であって、ここで該プライマー対の各プライマーは、第3または第4のアダプター配列をそれぞれ含み、ここで第3および第4のアダプター配列は互いに異なる、プライマー対;
(e)逆転写酵素;
(f)DNAポリメラーゼ;ならびに
(g)デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)、
を含む、キット。
【請求項24】
第2のユニバーサルプライマーが30bp未満の長さである、請求項22または23に記載のキット。
【請求項25】
ステムループプライマーのステムが8bpの長さである、請求項22に記載のキット。
【請求項26】
オーバーハング構造が5~10ヌクレオチドの長さを持つランダムヘキサマーである、請求項22に記載のキット。
【請求項27】
キットがさらに少なくとも1つの標識dNTPを含み、ここで該dNTPがビオチン群、ジゴキシゲニン(DIG)、またはその他の分子で標識される、請求項22または23に記載のキット。
【請求項28】
対象を処置するための方法であって、
(a)請求項1~18のいずれか一項に記載の方法を使用して、対象から得た生物学的試料から遺伝子改変を検出する事により、対象が特定のがん種のリスクが増加しているか、または特定の遺伝子型に伴う特定のがん種のリスクを有するかを決定する工程;
(b)(i)特定の遺伝子改変型を標的とする治療有効量のsiRNA;
(ii)特定の遺伝子改変型によってコードされる融合タンパク質の治療有効量の阻害剤;
(iii)特定の遺伝子改変型によってコードされる融合タンパク質を阻害する、治療有効量の剤:
(iv)遺伝子改変型に従って、サイトカイン、アポトーシス誘導剤、抗血管新生剤、化学療法剤、放射線療法剤および抗がん免疫毒素からなる群より選択される治療有効量の抗がん剤;または
(v)対象の細胞内における標的化ゲノム編集手順の提供;
を対象に投与する事などにより、対象における特定のがん種を処置する工程、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年11月3日に出願された米国仮出願第63/108,932号および2021年2月26日に出願された米国仮出願第63/153,956号の優先権を主張するものである。各開示について、ここに本明細書の一部として参照によりその全体を援用する。
【0002】
分野
本願は、分子診断学、がん遺伝学および分子生物学の分野に関する。より具体的には、本願は遺伝子融合イベントを検出するための方法およびキットに関する。本願はまた、特定のがん種(cancer type)または遺伝子型のリスクを決定する工程および適切な処置を投与する工程によって、適切な処置を投与するための方法に関する。
【0003】
電子的に提出された配列表の参照
本願は、ファイル名が「066997-1WO1Sequence Listing」であり、2021年10月12日に作成され、サイズが7.1kbである、ASCII形式の配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出された配列表を含む。EFS-Webを介して提出された当該配列表は本願明細書の一部であり、ここに本明細書の一部として参照によりその全体を援用する。
【背景技術】
【0004】
背景
遺伝子改変(Genetic alteration)は正常なDNA配列における改変、例えば遺伝子融合、点変異、挿入、欠損、増幅および再構成(rearrangement)などを総称する。DNA配列が改変されると、機能不全または異常活性化したタンパク質が産生され、がんなどの疾患をもたらし得る。よって、遺伝子改変の検出は、疾患の監視を改善し、および続く処置を提供するために重要な工程である。
【0005】
遺伝子融合は、腫瘍形成において重要な役割を果たす遺伝子改変の1つである。転座、間質性欠失または染色体逆位などの結果、本来は別々で機能的に異なる2つの遺伝子が融合し、様々な種類の遺伝子融合が生成され得る。遺伝子融合の主流な例の1つには、キナーゼ遺伝子が高発現のパートナー遺伝子と融合したものがあり、この融合遺伝子は潜在的に異常な活性を有する過剰量のタンパク質をもたらし得るため、腫瘍形成につながる。多くの遺伝子融合ががんにつながるため、融合遺伝子は薬剤開発の標的として使用され得る。したがって、これらの標的化療法が有益となり得る患者を特定するために、可能性のある全ての遺伝子融合を特定する事は重要である。
【0006】
現在、遺伝子融合を検出するための多くのプラットフォームは遺伝子融合の既知の配列に基づくものである。例えば、伝統的なPCRでは、増幅過程のための標的特異的なフォワードプライマーおよびリバースプライマーを適切に設計するには既知の配列が必要とされる。しかし、可能性のある全ての遺伝子融合の多くは事前に特定されておらず、未知の配列を有するため、そのようなPCR技術を使用して可能性のある全ての遺伝子融合を検出する事は困難である。5’/3’cDNA末端の迅速増幅(rapid amplification of cDNA ends)(RACE)などの方法がこの困難の克服のために使用され得るが、融合遺伝子の低品質および少量の臨床試料では、依然としてこれらの方法に制限が生じる。
【0007】
標的化次世代シークエンシング(NGS)ベースのプラットフォームが臨床的実施において理想的であり、標的濃縮のためのハイブリッドキャプチャー(例えば、FoundationOne94,97)法およびアンプリコンベースのアプローチ(例えば、Archer FusionPlex Solid Tumor Panel120,121)とは区別され得る。アンプリコンベースのアプローチでは、ライブラリー構築時に、標的配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のために遺伝子特異的プライマーを使用することによって、ゲノムまたはトランスクリプトーム配列を標的とする。マルチプレックスPCRでは、片方の末端における遺伝子特異的プライマーおよびもう一方の末端におけるユニバーサルプライマーを用いたPCR増幅によりユニバーサル配列が標的配列に付加される。RNAベースのNGS技術では、マルチプレックスアッセイにおいてユニバーサルプライマーおよび遺伝子特異的プライマーを使用する事によって、3’融合パートナーを検出する事ができるか(例えば、OmniFusion RNA Lung Cancer Panel)、または、例えばArcher FusionPlex NGS assayなど、アダプター連結技術によって任意の既知のまたは未知の5’または3’融合パートナーを検出することができる。しかし、新規の融合、または新規の切断点(breakpoint)を持つ既知の融合の検出性能は、ライブラリー調製技術、エキソンカバレッジおよび検出効率に影響される。
【0008】
したがって、低品質および少量の臨床試料において、未知の配列の遺伝子融合を特定することができる正確かつ高感度な遺伝子融合検出法がアンメット・メディカル・ニーズとなっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の概要
本願は、遺伝子改変を検出するための方法であって、
(a)生物学的試料から得た標的RNA、鋳型切り替えオリゴ、逆転写酵素、および逆転写(RT)プライマーを混合物中に混合する工程であって、ここで該鋳型切り替えオリゴは第1のユニバーサルプライマー配列を含む、および該RTプライマーは第2のユニバーサルプライマー配列を含む、工程;
(b)逆転写が起こり該標的RNAに相補的な標的DNAがもたらされる条件下に該混合物を供する工程;
(c)プライマーの第1の対を用いて標的DNAを増幅し、第1のPCR産物を得る工程であって、ここでプライマーの第1の対は遺伝子特異的プライマーおよびユニバーサルプライマーを含み、ここで遺伝子特異的プライマーは5’末端の第1または第2のアダプター配列および厳しい条件下で標的遺伝子にハイブリダイズする3’末端配列を含み、ここでユニバーサルプライマーは5’末端の第1または第2のアダプター配列および第1または第2のユニバーサルプライマー配列を含む3’末端配列を含む、およびここで第1および第2のアダプター配列は互いに異なる、工程;
(d)プライマーの第2の対を用いて第1のPCR産物を増幅し、第2のPCR産物を得る工程であって、ここでプライマーの第2の対の各々は5’末端の第3または第4のアダプター配列、およびそれぞれ第1または第2のアダプター配列にハイブリダイズする3’末端配列を含み、およびここで第3および第4のアダプター配列は互いに異なる、工程;ならびに
(e)第2のPCR産物を解析し、遺伝子改変の存在を検出する工程であって、好ましくは第2のPCR産物は、少なくとも1つのアダプター配列を利用したシークエンシング解析によって解析される、工程、
を含む、方法を提供する。
【0010】
上記によるところ、RTプライマーが少なくとも5つのランダムヌクレオチドを有する直鎖構造を含む。
【0011】
上記によるところ、RTプライマーが、ステムループ構造および少なくとも5つのランダムヌクレオチドを有するオーバーハング構造を含む。
【0012】
上記によるところ、ステムループ構造がヘアピンステムループ構造またはY字型ステムループ構造である。
【0013】
上記によるところ、ステムループ構造がバーコード配列を含む。
【0014】
上記によるところ、ステムループ構造が少なくとも第2のユニバーサルプライマー配列の配列長である。
【0015】
上記によるところ、第2のユニバーサルプライマーが30bp未満の長さである。
【0016】
上記によるところ、ステムループ構造のステムが8bpの長さである。
【0017】
上記によるところ、第1のアダプター配列または第2のアダプター配列の内の少なくとも1つがバーコード配列を含む
【0018】
上記によるところ、標的DNAが少なくとも100bpの長さである。
【0019】
上記によるところ、標的DNAが100bpから4000bpの長さである。
【0020】
上記によるところ、標的DNAが100bpから500bpの長さである。
【0021】
上記によるところ、工程(c)において、標的DNAが少なくとも2つの遺伝子特異的プライマーを用いるマルチプレックスPCRによって増幅される
【0022】
上記によるところ、第1のPCR産物が、遺伝子特異的プライマーの3’または5’の方向に生成され、および分離される。
【0023】
上記によるところ、遺伝子特異的プライマーが、融合ジャンクション境界から少なくとも25bpの距離内で標的DNAにハイブリダイズする。
【0024】
上記によるところ、1つ以上の遺伝子特異的プライマーが、配列番号11、12、14~35、および任意のその相補配列からなる群より選択される。
【0025】
上記によるところ、ユニバーサルプライマーが、配列番号1~10、および任意のその相補配列からなる群より選択される。
【0026】
上記によるところ、遺伝子改変が、ABL1、AKT3、ALK、ARV7、BCR、BRAF、CD74、EGFR、ERBB2、ERBB4、ERG、ESR1、ETV1、ETV4、ETV5、ETV6、EZR、FGFR1、FGFR2、FGFR3、KIT、KMT2A、MET、NRG1、NRG2、NTRK1、NTRK2、NTRK3、NUTM1、PDGFRA、PDGFRB、PIK3CA、RAF1、RARA、RET、ROS1、RSPO2、SDC4、SLC34A2およびTMPRSS2からなる群より選択される、既知の遺伝子の配列を含む遺伝子融合である。
【0027】
上記によるところ、生物学的試料が固形腫瘍に由来する。
【0028】
上記によるところ、生物学的試料が、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料である。
【0029】
上記によるところ、第2のPCR産物が次世代シークエンシングによって解析される。
【0030】
1つの態様では、本願はまた、生物学的試料中の遺伝子改変を検出するためのキットであって、
(a)第1のユニバーサルプライマーを含む鋳型切り替えオリゴ;
(b)ステムループ構造および少なくとも5つのランダムテールヌクレオチドであるオーバーハング構造を含む逆転写(RT)プライマーであって、第2のユニバーサルプライマーを含む、RTプライマー;
(c)第1または第2のアダプター配列をそれぞれ含む1つ以上の遺伝子特異的プライマー、および第1または第2のアダプター配列をそれぞれ含むユニバーサルプライマーであって、ここで遺伝子特異的プライマーの第1のアダプター配列はユニバーサルプライマーの第2のアダプター配列とは異なる、または遺伝子特異的プライマーの第2のアダプター配列はユニバーサルプライマーの第1のアダプター配列とは異なる、遺伝子特異的プライマーおよびユニバーサルプライマー;
(d)第1および第2のアダプターにそれぞれ相補的なプライマー対であって、ここで該プライマー対の各プライマーは、第3または第4のアダプター配列をそれぞれ含み、ここで第3および第4のアダプター配列は互いに異なる、プライマー対;
(e)逆転写酵素;
(f)DNAポリメラーゼ;ならびに
(g)デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)、
を含む、キットを提供する。
【0031】
また、生物学的試料中の遺伝子改変を検出するためのキットであって、
(a)第1のユニバーサルプライマーを含む鋳型切り替えオリゴ;
(b)少なくとも5つのランダムテールヌクレオチドである直鎖構造を含む逆転写(RT)プライマーであって、第2のユニバーサルプライマーを含む、RTプライマー;
(c)第1または第2のアダプター配列をそれぞれ含む1つ以上の遺伝子特異的プライマー、および第1または第2のアダプター配列をそれぞれ含むユニバーサルプライマーであって、ここで遺伝子特異的プライマーの第1のアダプター配列はユニバーサルプライマーの第2のアダプター配列とは異なる、または遺伝子特異的プライマーの第2のアダプター配列はユニバーサルプライマーの第1のアダプター配列とは異なる、遺伝子特異的プライマーおよびユニバーサルプライマー;
(d)第1および第2のアダプターにそれぞれ相補的なプライマー対であって、ここで該プライマー対の各プライマーは、第3または第4のアダプター配列をそれぞれ含み、ここで第3および第4のアダプター配列は互いに異なる、プライマー対;
(e)逆転写酵素;
(f)DNAポリメラーゼ;ならびに
(g)デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)、
を含む、キットも提供される。
【0032】
上記によるところ、第2のユニバーサルプライマーが30bp未満の長さである。
【0033】
上記によるところ、ステムループプライマーのステムが8bpの長さである。
【0034】
上記によるところ、オーバーハング構造が5~10ヌクレオチドの長さを持つランダムヘキサマーである。
【0035】
上記によるところ、キットがさらに少なくとも1つの標識dNTPを含み、ここでdNTPがビオチン群、ジゴキシゲニン(Digoxigenin (DIG))、またはその他の分子で標識される。
【0036】
別の態様では、本願はまた、対象を処置するための方法であって、
(a)対象から得た生物学的試料から本願の方法を使用して遺伝子改変を検出する事により、対象が特定のがん種のリスクが増加しているか、または特定の遺伝子型に伴う特定のがん種のリスクを有するかを決定する工程;
(b)(i)特定の遺伝子改変型(gene alteration type)を標的とする治療有効量のsiRNA;
(ii)特定の遺伝子改変型によってコードされる融合タンパク質の治療有効量の阻害剤;
(iii)特定の遺伝子改変型によってコードされる融合タンパク質を阻害する、治療有効量の剤:
(iv)遺伝子改変型に従って、サイトカイン、アポトーシス誘導剤、抗血管新生剤、化学療法剤、放射線療法剤および抗がん免疫毒素からなる群より選択される治療有効量の抗がん剤;または
(v)対象の細胞内における標的化ゲノム編集手順の提供;
を対象に投与する事などにより、対象における特定のがん種を処置する工程、
を含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図面の簡単な説明
1つ以上の実施形態が、限定ではなく一例として、添付の図面の図において例示され、ここで同じ参照番号の指定を有する要素は図面を通して同様の要素を表す。特に開示されない限り、図面は縮尺通りではない。
【0038】
図1A図1(a)-(c)は、本願の1つの実施形態に従う遺伝子改変を検出するための方法を模式図である。
図1B】同上。
図1C】同上。
【0039】
図2図2は本願の異なるRTプライマー設計の模式図である。
【0040】
図3図3は、本発明のために有用な他の異なるRTプライマー設計の模式図である。
【0041】
図4A図4(a)-(b)は、異なるRTプライマーを使用して得られた異なるサイズのPCR産物の相対蛍光単位(RFU)の値を示す。
図4B】同上。
【0042】
図5図5(a)-(b)は、異なるランダムテールヌクレオチドの長さを持つ異なるRTプライマーを使用して得られた異なるサイズのPCR産物の相対蛍光単位(RFU)の値を示す。
【0043】
図面は単に模式的なものであり、非限定的なものである。図面において、いくつかの要素の大きさは、例示の目的で誇張され、縮尺通りに描かれていない場合がある。寸法および相対的な寸法は、必ずしも本開示の実施に対する実際の縮小に対応しない。
【発明を実施するための形態】
【0044】
詳細な説明
本開示の実施形態の作成および使用は以下で詳細に議論される。しかし、実施形態は、多種多様な特定の文脈において具体化され得る多くの適用可能な発明概念を提供するものである事を理解されたい。議論される特定の実施形態は、当該実施形態を作成および使用する特定の方法の単なる例示であり、本開示の範囲を限定するものではない。
【0045】
様々な出版物、論文、特許および特許出願が、背景において、および本明細書を通して引用または記載され、これらの参考文献の各々についてここに本明細書の一部として参照によりその全体を援用する。本明細書に含まれる文書、行為、材料、装置、物品などの議論は、本願の文脈を提供する事を目的として本明細書中に含まれる。このような議論は、これらの事項のいずれかまたは全てが、開示または請求されるいずれかの発明に関する先行技術の一部を形成する事を認めるものではない。
【0046】
別段の規定が無い限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は本開示が属する技術分野における当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は文脈によって明らかに指示されない限り、複数の参照を含む。
【0047】
本開示において、遺伝子改変は遺伝子融合、点変異、挿入、欠失、増幅および再構成を含む。
【0048】
用語「遺伝子融合」または「融合遺伝子」とは、以前は独立していた2つの遺伝子またはその一部から形成されるハイブリッド遺伝子、またはその少なくとも2つの独立したエキソンから形成される特定の遺伝子を含む遺伝子改変を指す。本開示では、METエキソン14スキッピングは1つの融合型(fusion type)とみなされる。例えば、MET遺伝子融合は、MET遺伝子のすくなくとも一部と高発現パートナー遺伝子との間の融合である。MET遺伝子融合はまた、MET遺伝子のエキソン13とエキソン15との間の融合(METエキソン14スキッピング)をもたらす異常なスプライシングによって引き起こされる。融合遺伝子は、転座、間質性欠失または染色体逆位などの遺伝子改変の結果、染色体上の第1の遺伝子または第1の遺伝子の一部が、同じか異なる染色体上の第2の遺伝子または第2の遺伝子の一部と融合することで形成される。「遺伝子融合」は「遺伝子転座」または「遺伝子再構成」とも称される。例えば、NTRK遺伝子またはその一部が遺伝子融合の一部である場合、そのような遺伝子融合は「NTRK遺伝子融合」または「NTRK融合」と呼ばれる。
【0049】
融合遺伝子の5’末端の遺伝子を融合遺伝子の「5’遺伝子」、および融合遺伝子の3’末端の遺伝子を融合遺伝子の「3’遺伝子」と呼ぶ。融合遺伝子は、遺伝子が融合する部位である「融合遺伝子切断点」を有する。本明細書で使用する場合、「融合遺伝子切断点」は「切断点」と互換的に使用される。融合遺伝子切断点は、5’遺伝子由来の配列および3’遺伝子由来の配列を包含する融合ジャンクション配列によって規定される融合遺伝子のある領域に位置する。異なる融合遺伝子切断点は異なる「融合型」をもたらし得る。融合切断点は融合遺伝子内の任意の位置に生じ得るため、2つの特定の遺伝子間の融合は複数の異なる融合遺伝子をもたらし得る。例えば第1の遺伝子の第1エキソンと第2の遺伝子の第2エキソンとの間の融合は1つの融合型であり、一方で該第1の遺伝子の第3エキソンと該第2の遺伝子の第1エキソンとの間の融合は別の融合型である。
【0050】
遺伝子融合は、DNA中、または当該DNAのRNA転写物中の融合ジャンクションを同定する事によって検出され得る。本明細書で使用される場合、「融合型」とは融合遺伝子のRNA転写物中に存在する固有の融合ジャンクション配列を指す。言い換えると、2つの特定の遺伝子からの複数の融合遺伝子は、複数の融合遺伝子がそのDNA配列中に異なる融合ジャンクション配列を有する場合であっても、そのRNA転写物中に同じ融合ジャンクションを含む場合には、それらは同じ融合型とみなされる。複数の融合遺伝子は、2つの特定の遺伝子間の融合が同じイントロン領域の異なる部位で生じる場合には、同じ融合型であり得る。例えば、遺伝子Aのエキソン3と遺伝子Bのエキソン5との間の融合は、遺伝子Aのエキソン3およびエキソン4の間のエキソン3から延長したイントロンの小さい部分および遺伝子Bのエキソン4およびエキソン5の間のエキソン5から延長した大きい部分を含むDNA融合領域を有し得る。あるいは、このような融合は、遺伝子Aのエキソン3およびエキソン4の間のエキソン3から延長したイントロンの大きい部分および遺伝子Bのエキソン4およびエキソン5の間のエキソン5から延長した小さい部分を含むDNA融合領域を有し得る。これら2つの融合遺伝子から生成されるRNA転写物は同じ融合ジャンクション配列を有するため、これら2つの融合は、異なるDNA融合ジャンクションを有するにも関わらず同じ「融合型」とみなされる。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「逆転写プライマー」または「RTプライマー」とはユニバーサルプライマー配列および少なくとも5つのランダムテールヌクレオチドの直鎖、または少なくとも5つのランダムテールヌクレオチドのオーバーハング構造を持つステムループを含むDNAプライマーを指す。RTプライマーはRNA配列の3’末端に結合し、逆転写を用いて第1鎖cDNAを作成する。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「鋳型切り替えオリゴ」または「TSオリゴ」または「TSO」とは、5’末端から3’末端向かって、ユニバーサルプライマー配列および合成DNAの3’末端の非鋳型ヌクレオチド(non-templated nucleotides)に対して相補的な配列を含むオリゴヌクレオチド配列を指す。RNA鋳型を使用して逆転写酵素によりcDNAを合成する際に、RNA鋳型の5’末端に到達すると、逆転写酵素の末端転移酵素活性によって、新しく合成されたcDNAの3’末端に数個の追加的な非鋳型ヌクレオチド(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)逆転写酵素を用いた場合はほとんどがデオキシシチジン)が追加される。これらの非鋳型ヌクレオチドはTSオリゴのアンカー部位として機能する。TSオリゴと非鋳型ヌクレオチドとの塩基対形成によって逆転写酵素は鋳型鎖をRNAからTSオリゴへと「切り替え」、TSオリゴの5’末端まで複製を続ける。そうすることにより、得られたcDNAは、転写物の完全な5’末端を含み、および選択したユニバーサルプライマー配列が逆転写産物に付加される。TSオリゴは、米国特許出願公開第2021/0180051号(「METHODS AND SYSTEMS TO AMPLIFY SHORT RNA TARGETS」)に記載されるように合成されてよく、ここに本明細書の一部として参照によりその全体を援用する。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子特異的プライマー」とは、目的の遺伝子の標的DNA配列に特異的に結合するように設計されたDNAプライマーを指す。本願のいくつかの実施形態では、遺伝子特異的プライマーは融合遺伝子のDNA断片に特異的に結合する。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「ユニバーサルプライマー」とは、ユニバーサルプライマーのヌクレオチド配列を含む任意のDNAを増幅するように設計されたDNAプライマーを指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「アダプター」、「第1のアダプター」、「第2のアダプター」、「第3のアダプター」および「第4のアダプター」とは、配列ライブラリーを作成するための品種タグ(varietal tag)、バーコードをcDNAに付加するように設計されたDNAアダプター、またはシークエンサーによる認識のためのプラットフォーム特異的配列を含むDNAアダプターを指す。
【0056】
本明細書に記載される各遺伝子はNCBI遺伝子データベース(www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/)に掲載される「遺伝子名(gene name)(またはsymbol)」に対応する。したがって、遺伝子の配列または遺伝子名の同義語を特定するためにNCBI遺伝子データベースを使用し得る。
【0057】
本明細書で使用される場合、本願の方法に関する用語「投与」とは、本明細書に記載される症候群、障害または疾患(例えば、がん)を治療的または予防的に予防、処置または改善するための方法を意味する。このような方法は、有効量の治療剤を治療過程の異なる時点で、または組み合わせの形態で同時に投与する事を含む。本願の方法は、すべての既知の治療的処置レジメンを包含するものとして理解されるものである。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」とは、研究者、獣医、医学博士またはその他の臨床医が求める、組織系、動物またはヒトにおける生物学的または薬学的な応答を誘導する活性化合物または治療剤の量を意味し、それには処置されるべき症候群、障害もしくは疾患、または処置されるべき症候群、障害もしくは疾患の症状の予防、処置または改善も含む。
【0059】
本開示では、遺伝子改変を検出するための方法が提供される。方法は、以下の工程を含む:
(a)生物学的試料から得た標的RNA、鋳型切り替えオリゴ、逆転写酵素、および逆転写(RT)プライマーを混合物中に混合する工程であって、ここで該鋳型切り替えオリゴは第1のユニバーサルプライマー配列を含む、および該RTプライマーは第2のユニバーサルプライマー配列を含む、工程;
(b)逆転写が起こり該標的RNAに相補的な標的DNAがもたらされる条件下に該混合物を供する工程;
(c)プライマーの第1の対を用いて標的DNAを増幅し、第1のPCR産物を得る工程であって、ここでプライマーの第1の対は遺伝子特異的プライマーおよびユニバーサルプライマーを含み、ここで遺伝子特異的プライマーは5’末端の第1または第2のアダプター配列および厳しい条件下で標的遺伝子にハイブリダイズする3’末端配列を含み、ここでユニバーサルプライマーは5’末端の第1または第2のアダプター配列および第1または第2のユニバーサルプライマー配列を含む3’末端配列を含む、およびここで第1および第2のアダプター配列は互いに異なる、工程;
(d)プライマーの第2の対を用いて第1のPCR産物を増幅し、第2のPCR産物を得る工程であって、ここでプライマーの第2の対の各々は5’末端の第3または第4のアダプター配列、およびそれぞれ第1または第2のアダプター配列にハイブリダイズする3’末端配列を含み、およびここで第3および第4のアダプター配列は互いに異なる、工程;ならびに
(e)第2のPCR産物を解析し、遺伝子改変の存在を検出する工程であって、好ましくは第2のPCR産物は、少なくとも1つのアダプター配列を利用したシークエンシング解析によって解析される、工程。
【0060】
いくつかの実施形態では、RNAは生物学的試料から調製される。生物学的試料は、動物またはヒト対象から得られる任意の試料であり得る。生物学的試料の例は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片、血液、血漿または細胞を含む。いくつかの実施形態では、生物学的試料はがん患者に由来する。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、癌腫、肉腫、リンパ腫、白血病、または骨髄腫に由来する。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、脳腫瘍、乳がん、結腸がん、内分泌腺がん、食道がん、女性生殖器がん、頭頸部がん、肝胆道系がん、腎臓がん、肺がん、間葉系細胞新生物、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、外分泌膵臓腫瘍および尿路系がんの患者に由来する。
【0061】
生物学試料からの全RNAの調製は、当分野において知られる様々な方法によって行われ得る。1つの典型的な手順は、フェノール/クロロホルムなどの有機溶媒を用いたRNA抽出および遠心分離による沈殿である。RNA単離または精製のためのキットも市販されている。RNAが得られたら、4種のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dTTP、およびdGTPを含むdNTP)と共に逆転写酵素を用い、鋳型RNAからcDNAを生成する。この過程は逆転写と呼ばれる。逆転写はSuperScript cDNA synthesis kit (Cat No:11754050、Invitrogen)を使用して実行され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、本方法は、その配列が既知である遺伝的な遺伝子改変を検出し得る。いくつかの実施形態では、本方法は、その配列の少なくとも一方の末端が既知である遺伝子改変を検出し得る。いくつかの実施形態では、本方法は既知の融合遺伝子を検出し得る。いくつかの実施形態では、本方法は既知の遺伝子が未知の遺伝子と融合した遺伝子融合を検出し得る。いくつかの実施形態では、本方法は、5’パートナーが既知であり、3’パートナーが未知である遺伝子融合を検出する。いくつかの実施形態では、本方法は、同じ既知のパートナーが複数の異なる未知のパートナーと融合した一連の遺伝子融合を検出する。いくつかの実施形態では、本方法は、複数の異なる既知のパートナーが複数の異なる未知のパートナーと融合した複数の遺伝子融合を検出し得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、本方法の工程(d)において第2のPCR産物は、陰イオン交換体精製または磁気ビーズベース核酸精製などの固相核酸抽出によって単離され得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、第1のアダプター配列または第2のアダプター配列の少なくとも1つはバーコード配列を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、標的DNAは少なくとも100bpの長さである。
【0066】
いくつかの実施形態では、標的DNAは100bp~4000bpの長さである。
【0067】
いくつかの実施形態では、標的DNAは100bp~500bpの長さである。
【0068】
いくつかの実施形態では、開示される方法は、工程(c)において、少なくとも2つの遺伝子特異的プライマーを用いたマルチプレックスPCRによって標的DNAを増幅する工程をさらに含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、第1のPCR産物は、遺伝子特異的プライマーの3’または5’の方向に生成され、および分離される。
【0070】
いくつかの実施形態では、遺伝子特異的プライマーは、融合ジャンクション境界から少なくとも25bpの距離内で標的DNAにハイブリダイズする。
【0071】
いくつかの実施形態では、遺伝子特異的プライマーは、配列番号11、12、14~35、および任意のその相補配列からなる群より選択される。
【0072】
いくつかの実施形態では、ユニバーサルプライマーは、配列番号1~10、および任意のその相補配列からなる群より選択される。
【0073】
他の実施形態では、遺伝子改変は、ABL1、AKT3、ALK、ARV7、BCR、BRAF、CD74、EGFR、ERBB2、ERBB4、ERG、ESR1、ETV1、ETV4、ETV5、ETV6、EZR、FGFR1、FGFR2、FGFR3、KIT、KMT2A、MET、NRG1、NRG2、NTRK1、NTRK2、NTRK3、NUTM1、PDGFRA、PDGFRB、PIK3CA、RAF1、RARA、RET、ROS1、RSPO2、SDC4、SLC34A2およびTMPRSS2からなる群より選択される既知の遺伝子の配列を含む遺伝子融合である
【0074】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変の存在は第2のPCR産物のシークエンシングから特定される。いくつかの実施形態では、第2のPCR産物のシークエンシングは、サンガーシークエンシング、次世代シークエンシング、またはパイロシークエンシングによって実行され得る。いくつかの実施形態では、第2のPCR産物からのシークエンシング結果は、遺伝子改変を同定するための配列アライメントによってさらに実行される。いくつかの実施形態では、配列アライメントは第1または第2のアライメントを必要とし得る。第1または第2のアライメントは、例えばBlastn、BLAT、BWN、BreakDancer、Burrows-Wheeler Aligner (BWA)、BWA-MEM、BWA-SW、Bowtie、Stampy、Torrent Mapping Alignment Program (TMAP)、またはTopHatなどのいくつかのアライメントアルゴリズムまたはソフトウェアのうちの1つを使用して行われ得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、本方法は、標的DNAのユニバーサルプライマー伸長を行うためにRTプライマーおよび鋳型切り替えオリゴを使用する。いくつかの実施形態では、鋳型切り替えオリゴは任意の遺伝子改変配列の5’末端に結合し、およびRTプライマーはその3’末端に結合する。いくつかの実施形態では、RTプライマーはステムループ構造および少なくとも5つのランダムヌクレオチドを有するオーバーハング構造を含む。いくつかの実施形態では、RTプライマーは第2のユニバーサルプライマー配列の少なくとも5つのランダムテールヌクレオチドへの連結(concatenation)を含む。いくつかの実施形態では、ステムループ構造はヘアピンステムループ構造またはY字型ステムループ構造である。いくつかの実施形態では、オーバーハング配列はランダムヘキサマーであり、5~10個の連続した核酸のランダムな配列である。いくつかの実施形態では、ステムループ構造はバーコード配列を含む。いくつかの実施形態では、ステムループ構造は少なくとも第2のユニバーサルプライマー配列の配列長である。いくつかの実施形態では、RTプライマーは30bp未満の長さである第2のユニバーサルプライマーを含む。いくつかの実施形態では、ステムループプライマーのステムは8bpの長さである。いくつかの実施形態では、ステムループ構造は、ユニバーサルプライマー配列、「GPS」バーコード配列、およびサンプルバーコード配列を含む(図2)。
【0076】
いくつかの実施形態では、標的DNAは少なくとも1つの標識dNTPを含むdNTPを用いて合成される。いくつかの実施形態では、標的DNAの合成のための非標識dNTPと標識dNTPの比率は、4:1から7:1の範囲である。いくつかの実施形態では、dNTPはビオチンまたは他の官能基で標識される。いくつかの実施形態では、dNTPはリンカーを介してビオチンまたは他の官能基で標識される。いくつかの実施形態では、リンカーはdNTPのDNA水素結合を形成できない部位に位置する。いくつかの実施形態では、リンカーは炭素鎖である。いくつかの実施形態では、リンカーは16炭素鎖(16C)である。いくつかの実施形態では、標識dNTPはビオチン-16C-dCTPを含む。いくつかの実施形態では、ビオチンまたは他の官能基で標識したdNTPは、ストレプトアビジン結合磁気ビーズ(streptavidin conjugated magnetic bead)または他のビーズに結合する事ができる。いくつかの実施形態では、ビオチンまたは他の官能基で標識した標的DNAは、ストレプトアビジン結合磁気ビーズまたは他のビーズに結合する事ができる。いくつかの実施形態では、ストレプトアビジン結合磁気ビーズまたは他のビーズは磁場により引き付けられ得る。いくつかの実施形態では、dNTPはジゴキシゲニン(DIG)で標識され得る。いくつかの実施形態では、DIGで標識されたdNTPは、一般に西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)または蛍光色素とコンジュゲートした抗DIG抗体に結合し得る。いくつかの実施形態では、DIGで標識した標的DNAは、一般にHRP、APまたは蛍光色素とコンジュゲートした抗DIG抗体に結合し得る。
【0077】
本明細書で使用される場合、「分子」とは、ビオチン、他の官能基またはDIGなどのdNTPまたは標的DNAに標識できる物質を指す。「ベイト(bait)」とは、ストレプトアビジン結合磁気ビーズ、他のビーズまたは抗DIG抗体などの、標的DNAを補足するために分子と結合することができる別の物質を指す。
【0078】
いくつかの実施形態では、標的DNAは分子的に特異的な結合によって単離され得る。いくつかの実施形態では、標的DNAは以下の工程により単離され得る:(1)分子で標識した標的DNAをベイトに結合する工程;(2)標的DNAに結合したベイトを補足する工程;(3)標的DNA以外のいずれの試薬も洗い流す工程。いくつかの実施形態では、標的DNAは以下の工程により単離され得る:(1)ビオチンまたは他の官能基で標識された標的DNAをストレプトアビジン結合磁気ビーズまたは他のビーズに結合する工程;(2)標的DNAに結合したストレプトアビジン結合磁気ビーズまたは他のビーズを補足するために磁場を供する工程;(3)第1鎖DNA以外の全ての試薬を洗い流す工程。いくつかの実施形態では、標的DNAは以下の工程により単離され得る:(1)抗DIG抗体を固相上に修飾する工程;DIGで標識した標的DNAを固相上の抗DIG抗体に結合する工程;(3)第1鎖DNA以外の全ての試薬を洗い流す工程。
【0079】
本開示では、遺伝子改変を検出するためのキットが提供される。ある実施形態では、キットは、以下を含む:
(a)第1のユニバーサルプライマーを持つ鋳型切り替えオリゴ;
(b)ステムループ構造および少なくとも5つのランダムテールヌクレオチドであるオーバーハング構造を含む逆転写(RT)プライマーであって、第2のユニバーサルプライマーを含む、RTプライマー;
(c)第1または第2のアダプター配列をそれぞれ含む1つ以上の遺伝子特異的プライマー、および第1または第2のアダプター配列をそれぞれ含むユニバーサルプライマーであって、ここで遺伝子特異的プライマーの第1のアダプター配列はユニバーサルプライマーの第2のアダプター配列とは異なる、または遺伝子特異的プライマーの第2のアダプター配列はユニバーサルプライマーの第1のアダプター配列とは異なる、遺伝子特異的プライマーおよびユニバーサルプライマー;
(d)第1のアダプターにそれぞれ相補的なプライマー対であって、ここで該プライマー対の各プライマーは、第2のアダプター配列をそれぞれ含み、ここで第2のアダプター配列は互いに異なる、プライマー対;
(e)逆転写酵素;
(f)DNAポリメラーゼ;ならびに
(g)デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)。
【0080】
他の実施形態では、キットは以下を含む:
(a)第1のユニバーサルプライマーを含む鋳型切り替えオリゴ;
(b)少なくとも5つのランダムテールヌクレオチドである直鎖構造を含む逆転写(RT)プライマーであって、第2のユニバーサルプライマーを含む、RTプライマー;
(c)第1または第2のアダプター配列をそれぞれ含む1つ以上の遺伝子特異的プライマー、および第1または第2のアダプター配列をそれぞれ含むユニバーサルプライマーであって、ここで遺伝子特異的プライマーの第1のアダプター配列はユニバーサルプライマーの第2のアダプター配列とは異なる、または遺伝子特異的プライマーの第2のアダプター配列はユニバーサルプライマーの第1のアダプター配列とは異なる、遺伝子特異的プライマーおよびユニバーサルプライマー;
(d)第1および第2のアダプターにそれぞれ相補的なプライマー対であって、ここで該プライマー対の各プライマーは、第3または第4のアダプター配列をそれぞれ含み、ここで第3および第4のアダプター配列は互いに異なる、プライマー対;
(e)逆転写酵素;
(f)DNAポリメラーゼ;ならびに
(g)デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)。
【0081】
対象が特定のがん種のリスクを有するか、または特定の遺伝子型に伴う特定のがん種のリスクを有するかを決定する方法もまた提供され、方法は、以下の工程によって遺伝子改変を検出する工程を含む:
(a)生物学的試料から得た標的RNA、鋳型切り替えオリゴ、逆転写酵素、および逆転写(RT)プライマーを混合物中に混合する工程であって、ここで該鋳型切り替えオリゴは第1のユニバーサルプライマー配列を含む、および該RTプライマーは第2のユニバーサルプライマー配列を含む、工程;
(b)逆転写が起こり該標的RNAに相補的な標的DNAがもたらされる条件下に該混合物を供する工程;
(c)プライマーの第1の対を用いて標的DNAを増幅し、第1のPCR産物を得る工程であって、ここでプライマーの第1の対は遺伝子特異的プライマーおよびユニバーサルプライマーを含み、ここで遺伝子特異的プライマーは5’末端の第1のアダプター配列および厳しい条件下で標的遺伝子にハイブリダイズする3’末端配列を含み、ここでユニバーサルプライマーは5’末端の第2のアダプター配列および第1または第2のユニバーサルプライマー配列を含む3’末端配列を含む、およびここで第1および第2のアダプター配列は互いに異なる、工程;
(d)プライマーの第2の対を用いて第1のPCR産物を増幅し、第2のPCR産物を得る工程であって、ここでプライマーの第2の対の各々は5’末端の第3または第4のアダプター配列、およびそれぞれ第1または第2のアダプター配列にハイブリダイズする3’末端配列を含み、およびここで第3および第4のアダプター配列は互いに異なる、工程;ならびに
(e)第2のPCR産物を解析し、遺伝子改変の存在を検出する工程であって、好ましくは第2のPCR産物は、少なくとも1つのアダプター配列を利用したシークエンシング解析によって解析される、工程。
【0082】
本開示では、対象を処置するための方法であって、以下の工程を含む方法もまた提供される:
(a)対象から得た生物学的試料から本明細書に記載の方法を使用して遺伝子改変を検出する事により、対象が特定のがん種のリスクが増加しているか、または特定の遺伝子型に伴う特定のがん種のリスクを有するかを決定する工程;および
(b)(i)特定の遺伝子改変型を標的とする治療有効量のsiRNA;
(ii)特定の遺伝子改変型によってコードされる融合タンパク質の治療有効量の阻害剤;
(iii)特定の遺伝子改変型によってコードされる融合タンパク質を阻害する、治療有効量の剤:
(iv)遺伝子改変型に従って、サイトカイン、アポトーシス誘導剤、抗血管新生剤、化学療法剤、放射線療法剤および抗がん免疫毒素からなる群より選択される治療有効量の抗がん剤;または
(v)対象の細胞内における標的化ゲノム編集手順の提供;
を対象に投与する事などにより、対象における特定のがん種を処置する工程。
【0083】
ある実施形態では、対象における特定のがん種を処置する工程は、遺伝子改変の検出に応じて以前に投与された治療剤を継続することを含む。他の実施形態では、対象における特定のがん種を処置する工程は、以前に投与された治療剤を中止し、および遺伝子改変の検出に応じて異なる治療剤を投与する事を含む。
【0084】
本開示は、以下の実施例によりさらに説明されるが、これらの実施例は限定ではなく実証の目的で提供される。
【実施例
【0085】
実施例1
【0086】
PCRおよび鋳型切り替え技術を用いた標的化RNAシークエンシングによる遺伝子融合の検出
【0087】
任意の未知のDNAまたはRNA配列、特に標的可能な配列に接する、遺伝子融合などの遺伝子改変を含むDNAまたはRNAを、特に低品質および少量の試料から取得するための方法が開発された。RNA配列を最初の鋳型として使用して遺伝子融合を検出するための例示的な方法の全体の工程を図1に示す。未知の配列を取得するために、プライマー(例えば、Integrated Device Technology (IDT)、Inc.から入手)を使用して標的RNA断片に結合させ、および逆転写により標的DNAを作成し、続いてユニバーサルプライマーを用いたPCR増幅を行い、最終的に未知の配列を含むPCR産物を取得し、サンガー法により配列決定する。
【0088】
実験工程1では、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)由来のRNA試料を65°Cで5分間変性させ、氷上で冷却し、そして第1鎖cDNA合成のために、プライマーの5’末端にユニバーサル配列Aを含む逆転写(RT)ランダムプライマーと反応させた。Template Switching RT Enzyme Mix (from New England Biolabs,Inc.)中の逆転写酵素が、RNA鋳型の5’末端に到達した後に、合成されたDNAの3’末端に数個の非鋳型ヌクレオチドを付加した。この非鋳型ヌクレオチドは鋳型切り替え(TS)オリゴのアンカー部位として機能した。
【0089】
実験工程2では、ユニバーサルプライマーBを含む鋳型切り替えオリゴ(TSO)を調製した。TSオリゴと非鋳型ヌクレオチドの塩基対形成により、逆転写酵素は鋳型鎖をRNAからTSオリゴへと切り替え、cDNAの伸長をTSオリゴの5’末端まで続ける事で合成されたcDNAの3’末端にユニバーサル配列Bを付加した。RTクリーンアップ反応および合成されたcDNAのRT後の精製を市販のキットを使用して、製造元のプロトコルしたがって行った(OmniFusion(商標) RNA)。
【0090】
実験工程3では、2つのプライマープールを使用して標的cDNAの濃縮を行った。プライマープール1およびプール2は、未知の5’融合パートナーおよび未知の3’融合パートナーをそれぞれ検出するために使用した。未知の5’融合パートナーの検出のために、リード1配列に連結したフォワードユニバーサルプライマーBおよびリード2配列に連結したリバース3’遺伝子特異的プライマーを使用したマルチプレックスPCR(mPCR)を行った。未知の3’融合パートナーの検出のために、リード2配列に連結したリバースユニバーサルプライマーAおよびリード1配列に連結したフォワード5’遺伝子特異的プライマーを使用したマルチプレックスPCRを行った。標的の濃縮後、mPCR後精製、消化反応および消化後精製を、市販のキットを使用して、製造元のプロトコルしたがって行った(OmniFusion(商標) RNA)。
【0091】
実験工程4では、工程3からの精製DNAの両端のアダプター配列(リード1およびリード2)を、第2のPCR増幅(インデックス化目的)のために、固有のilluminaアダプター配列を持つ特異的プライマーとの塩基対形成のためのアニーリング部位として使用した。そして第2のPCR産物はサンガーシークエンシングまたは次世代シークエンシング(例えば、illuminaまたはion torrent)による融合イベントの検出のために調製された。
【0092】
図1は本方法の全体の過程を示す。2段階(two-step)PCR法により、パートナー遺伝子が未知であるかまたはパネルに含まれていない場合に、遺伝子融合イベントを検出するために、存在する潜在的な遺伝子融合の標的産物を首尾よく濃縮する事ができる。
【0093】
ユニバーサルプライマーは表1に示すプライマーのいずれでもよく、ここで各ユニバーサルプライマーはユニバーサルフォワードプライマーまたはユニバーサルリバースプライマーのいずれかとして使用され得る。
【表1】
【0094】
実施例2
【0095】
異なるRTプライマーでのPCR産物サイズの比較
【0096】
新規の融合転写物を検出するための本明細書に記載の設計に基づき、遺伝子特異的プライマーは2つの別個のプライマープール、すなわち、1つは5’融合遺伝子の検出用、もう1つは3’融合遺伝子の検出用に分けられる。図2は本願の方法において使用し得るプライマーの設計を示す。
【0097】
異なる逆転写(RT)関連プライマーによる、逆転写効率および特異性への影響を試験するために、ユニバーサルプライマー配列を含む3種類のRTプライマーを使用して、PBMC RNA混合物を鋳型として使用するin vitro逆転写によってcDNAライブラリーを構築した。評価したRTプライマーは、5’末端にユニバーサルプライマータグを持つ直鎖形態のランダムヘキサマープライマー、ループ領域にのみ位置するユニバーサルプライマータグを持つステムループ形態のランダムヘキサマーベースプライマー、およびループ領域およびステム領域の両方に位置するユニバーサルプライマータグを持つステムループ形態のランダムヘキサマーベースプライマーを含む(図3)。
【0098】
図4a、4b、5aおよび5bは、異なるRT関連プライマーを使用した際の、異なるサイズのPCR産物の相対蛍光単位(RFU)の値を示す。結果は3種類のRTプライマーの全てでさらなるPCR増幅手順のためのcDNA産物を首尾よく合成できた(図4aおよび4b)。設計した直鎖ランダムヘキサマープライマーと、設計したステムループプライマー間の特異性および性能は異なっており、必要性に基づいて、ライブラリー構築システムにおいて適当なRTプライマーをRT変換オリゴマーとして選択し得る。
【0099】
実施例3
【0100】
潜在的なMET遺伝子改変の決定
【0101】
METエキソン14スキッピング変異核酸を標的とする3’または5’遺伝子特異的プライマー(表2に示す)を、MET遺伝子のRNA転写物における既知の融合ジャンクション配列のヌクレオチド配列(表3に示す)に基づいて設計した。この3’または5’遺伝子特異的プライマーを使用して、本願の方法により、既知の融合ジャンクションおよびその他の融合型を包含する遺伝子融合イベントを検出した。表3における配列の最初の20塩基対および最後の20塩基対はそれぞれ5’パートナー(MET遺伝子のエキソン13)および3’パートナー(MET遺伝子のエキソン15)に由来する。その他の3’または5’遺伝子特異的プライマー配列が、本願の方法を使用してMET遺伝子融合イベントを検出するために使用され得る。
【表2】
【表3】
【0102】
実施例4
【0103】
潜在的なNTRK遺伝子改変の決定
【0104】
表4は、様々なNTRK融合型および本願の方法において使用し得るいくつかの3’または5’遺伝子特異的プライマーを示す。NTRKエキソン変異核酸を標的とする3’または5’遺伝子特異的プライマーを、NTRK遺伝子融合のRNA転写物における融合領域のヌクレオチド配列に基づいて設計した。プライマーは、本願の方法により遺伝子融合イベントを検出するために使用される。その他の3’または5’遺伝子特異的プライマー配列もまた、本願の方法を使用してNTRK遺伝子融合イベントを検出するために使用され得る。
【表4】
【0105】
実施例5
【0106】
潜在的なEGFRvIII遺伝子改変の決定
【0107】
EGFRエキソン変異核酸を標的とする3’または5’遺伝子特異的プライマー(表5に示す)を、EGFR-EGFR融合遺伝子のRNA転写物における融合領域のヌクレオチド配列(表6に示す)に基づいて設計した。3’または5’遺伝子特異的プライマーは、本願の方法により遺伝子融合イベントを検出するために使用される。その他の3’または5’遺伝子特異的プライマー配列もまた、本願の方法を使用してEGFR遺伝子融合イベントを検出するために使用され得る。
【表5】
【表6】
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図5
【配列表】
2023547732000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-06-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料中の遺伝子改変を検出するための方法であって、
(a)該生物学的試料から得た標的RNA、鋳型切り替えオリゴ、逆転写酵素、および逆転写(RT)プライマーを混合物中に混合する工程であって、ここで該鋳型切り替えオリゴは第1のユニバーサルプライマー配列を含む、および該RTプライマーは第2のユニバーサルプライマー配列を含む、工程;
(b)逆転写が起こり該標的RNAに相補的な標的DNAがもたらされる条件下に該混合物を供する工程;
(c)プライマーの第1の対を用いて標的DNAを増幅し、第1のPCR産物を得る工程であって、ここでプライマーの第1の対は遺伝子特異的プライマーおよびユニバーサルプライマーを含み、ここで遺伝子特異的プライマーは5’末端の第1または第2のアダプター配列および厳しい条件下で標的遺伝子にハイブリダイズする3’末端配列を含み、ここでユニバーサルプライマーは5’末端の第1または第2のアダプター配列および第1または第2のユニバーサルプライマー配列を含む3’末端配列を含む、およびここで第1および第2のアダプター配列は互いに異なる、工程;
(d)プライマーの第2の対を用いて第1のPCR産物を増幅し、第2のPCR産物を得る工程であって、ここでプライマーの第2の対の各々は5’末端の第3または第4のアダプター配列、およびそれぞれ第1または第2のアダプター配列にハイブリダイズする3’末端配列を含み、およびここで第3および第4のアダプター配列は互いに異なる、工程;ならびに
(e)第2のPCR産物を解析し、遺伝子改変の存在を検出する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
RTプライマーが少なくとも5つのランダムヌクレオチドを有する直鎖構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
RTプライマーが、ステムループ構造および少なくとも5つのランダムヌクレオチドを有するオーバーハング構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステムループ構造がヘアピンステムループ構造またはY字型ステムループ構造である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステムループ構造がバーコード配列を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
ステムループ構造が少なくとも第2のユニバーサルプライマー配列の配列長である、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第2のユニバーサルプライマーが30bp未満の長さである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステムループ構造のステムが8bpの長さである、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1のアダプター配列または第2のアダプター配列の内の少なくとも1つがバーコード配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
標的DNAが少なくとも100bpの長さである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
標的DNAが100bpから4000bpの長さである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
標的DNAが100bpから500bpの長さである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)において、標的DNAが少なくとも2つの遺伝子特異的プライマーを用いるマルチプレックスPCRによって増幅される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
第1のPCR産物が、遺伝子特異的プライマーの3’または5’の方向に生成され、および分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
遺伝子特異的プライマーが、融合ジャンクション境界から少なくとも25bpの距離内で標的DNAにハイブリダイズする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
1つ以上の遺伝子特異的プライマーが、配列番号11、12、14~35、および任意のその相補配列からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ユニバーサルプライマーが、配列番号1~10、および任意のその相補配列からなる群より選択される、請求項1に記載の方法
【請求項18】
遺伝子改変が、ABL1、AKT3、ALK、ARV7、BCR、BRAF、CD74、EGFR、ERBB2、ERBB4、ERG、ESR1、ETV1、ETV4、ETV5、ETV6、EZR、FGFR1、FGFR2、FGFR3、KIT、KMT2A、MET、NRG1、NRG2、NTRK1、NTRK2、NTRK3、NUTM1、PDGFRA、PDGFRB、PIK3CA、RAF1、RARA、RET、ROS1、RSPO2、SDC4、SLC34A2およびTMPRSS2からなる群より選択される、既知の遺伝子の配列を含む遺伝子融合である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
生物学的試料が固形腫瘍に由来する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
生物学的試料が、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
第2のPCR産物が次世代シークエンシングによって解析される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
生物学的試料中の遺伝子改変を検出するためのキットであって、
(a)第1のユニバーサルプライマーを含む鋳型切り替えオリゴ;
(b)ステムループ構造および少なくとも5つのランダムテールヌクレオチドであるオーバーハング構造を含む逆転写(RT)プライマーであって、第2のユニバーサルプライマーを含む、RTプライマー;
(c)第1または第2のアダプター配列をそれぞれ含む1つ以上の遺伝子特異的プライマー、および第1または第2のアダプター配列をそれぞれ含むユニバーサルプライマーであって、ここで遺伝子特異的プライマーの第1のアダプター配列はユニバーサルプライマーの第2のアダプター配列とは異なる、または遺伝子特異的プライマーの第2のアダプター配列はユニバーサルプライマーの第1のアダプター配列とは異なる、遺伝子特異的プライマーおよびユニバーサルプライマー;
(d)第1および第2のアダプターにそれぞれ相補的なプライマー対であって、ここで該プライマー対の各プライマーは、第3または第4のアダプター配列をそれぞれ含み、ここで第3および第4のアダプター配列は互いに異なる、プライマー対;
(e)逆転写酵素;
(f)DNAポリメラーゼ;ならびに
(g)デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)、
を含む、キット。
【請求項23】
生物学的試料中の遺伝子改変を検出するためのキットであって、
(a)第1のユニバーサルプライマーを含む鋳型切り替えオリゴ;
(b)少なくとも5つのランダムテールヌクレオチドである直鎖構造を含む逆転写(RT)プライマーであって、第2のユニバーサルプライマーを含む、RTプライマー;
(c)第1または第2のアダプター配列をそれぞれ含む1つ以上の遺伝子特異的プライマー、および第1または第2のアダプター配列をそれぞれ含むユニバーサルプライマーであって、ここで遺伝子特異的プライマーの第1のアダプター配列はユニバーサルプライマーの第2のアダプター配列とは異なる、または遺伝子特異的プライマーの第2のアダプター配列はユニバーサルプライマーの第1のアダプター配列とは異なる、遺伝子特異的プライマーおよびユニバーサルプライマー;
(d)第1および第2のアダプターにそれぞれ相補的なプライマー対であって、ここで該プライマー対の各プライマーは、第3または第4のアダプター配列をそれぞれ含み、ここで第3および第4のアダプター配列は互いに異なる、プライマー対;
(e)逆転写酵素;
(f)DNAポリメラーゼ;ならびに
(g)デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)、
を含む、キット。
【請求項24】
第2のユニバーサルプライマーが30bp未満の長さである、請求項22または23に記載のキット。
【請求項25】
ステムループプライマーのステムが8bpの長さである、請求項22に記載のキット。
【請求項26】
オーバーハング構造が5~10ヌクレオチドの長さを持つランダムヘキサマーである、請求項22に記載のキット。
【請求項27】
キットがさらに少なくとも1つの標識dNTPを含み、ここで該dNTPがビオチン群、ジゴキシゲニン(DIG)、またはその他の分子で標識される、請求項22または23に記載のキット。
【請求項28】
i)特定の遺伝子改変型を標的とする治療有効量のsiRNA;
(ii)特定の遺伝子改変型によってコードされる融合タンパク質の治療有効量の阻害剤;
(iii)特定の遺伝子改変型によってコードされる融合タンパク質を阻害する、治療有効量の剤:
(iv)遺伝子改変型に従って、サイトカイン、アポトーシス誘導剤、抗血管新生剤、化学療法剤、放射線療法剤および抗がん免疫毒素からなる群より選択される治療有効量の抗がん剤;または
(v)対象の細胞内における標的化ゲノム編集手順提供するための剤
を含む、対象におけるがんを処置するための医薬組成物であって、
ここで対象は、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法を使用して、該対象から得た生物学的試料から遺伝子改変を検出する事により、該対象が特定のがん種のリスクが増加しているか、または特定の遺伝子型に伴う特定のがん種のリスクを有するかを決定される、医薬組成物
【国際調査報告】