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特表2023-547750接着剤化合物、導電接着剤およびそれを含む二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】接着剤化合物、導電接着剤およびそれを含む二次電池
(51)【国際特許分類】
   C09J 127/16 20060101AFI20231107BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20231107BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20231107BHJP
   C08F 114/22 20060101ALI20231107BHJP
   C08F 8/04 20060101ALI20231107BHJP
   C08F 8/32 20060101ALI20231107BHJP
   C08F 8/14 20060101ALI20231107BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20231107BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20231107BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
C09J127/16
H01M4/62 Z
H01M4/13
C08F114/22
C08F8/04
C08F8/32
C08F8/14
C08F8/00
C09J9/02
C09J11/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555732
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 CN2021120319
(87)【国際公開番号】W WO2023044754
(87)【国際公開日】2023-03-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】章 夢琴
(72)【発明者】
【氏名】趙 延杰
(72)【発明者】
【氏名】林 江輝
(72)【発明者】
【氏名】李 星
(72)【発明者】
【氏名】金 海族
【テーマコード(参考)】
4J040
4J100
5H050
【Fターム(参考)】
4J040DC091
4J040DC101
4J040GA23
4J040HA126
4J040HA136
4J040JB10
4J040LA01
4J040LA09
4J040NA19
4J100AC24P
4J100CA01
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA44
4J100DA55
4J100EA05
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA19
4J100FA28
4J100GC25
4J100GC35
4J100HA03
4J100HA11
4J100HA61
4J100HB06
4J100HB21
4J100HB28
4J100HB39
4J100HB43
4J100HC05
4J100HC09
4J100HC13
4J100HC59
4J100HD04
4J100HD19
4J100HE05
4J100HE08
4J100HE32
4J100HE41
4J100JA03
4J100JA43
4J100JA45
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA02
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA10
5H050EA23
5H050FA05
5H050FA16
5H050FA17
5H050GA15
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA07
5H050HA11
5H050HA14
(57)【要約】
本出願は、接着剤化合物、導電接着剤およびそれを含む二次電池を提供する。本出願に係る接着剤化合物は、式(I)の構造を有し、ただし、R、Rがそれぞれ独立して直鎖または分岐のC1-12アルキル基であり、Rがハロゲンまたはシアノ基であり、Rがヒドロキシメチル基またはアミノ基であり、Zが直鎖または分岐のC1-12アルキレン基であり、mが7600~47000の整数である。本出願に係る接着剤化合物および導電接着剤は、二次電池の保存性能およびサイクル性能を改善することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造を有する接着剤化合物であって、
ただし、R、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC1-12アルキル基であり、Rはハロゲンまたはシアノ基であり、Rはヒドロキシメチル基またはアミノ基であり、Zは直鎖または分岐のC1-12アルキレン基であり、mは7600~47000から選択される整数であり、任意で7600~23100から選択される整数であり、さらに任意で19000~21000から選択される整数であり、さらに任意で19600~20500から選択される整数である、
接着剤化合物。
【請求項2】
、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC2-8アルキル基であり、任意で直鎖または分岐のC2-6アルキル基であり、および/または、Rはシアノ基であり、および/または、Zは直鎖または分岐のC2-8アルキレン基であり、任意で直鎖または分岐のC2-6アルキレン基である、
請求項1に記載の接着剤化合物。
【請求項3】
式(I-1)または式(I-2)の構造を有する、請求項1または2に記載の接着剤化合物。
【請求項4】
以下のステップを含む接着剤化合物の調製方法であって、
ステップ(i):開始剤の存在下で、溶剤の中で式(II)の連鎖移動剤とフッ化ビニリデンモノマーとを重合させ、
ただし、R、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC1-12アルキル基であり、Rはハロゲンまたはシアノ基であり、Zは直鎖または分岐のC1-12アルキレン基であり、
ステップ(ii):ステップ(i)により得た反応生成物を、溶剤の中で還元剤と反応させて式(I)の化合物を得る、または
ステップ(iii):ステップ(i)により得た反応生成物を、溶剤の中でアミノ化剤と反応させ、
ステップ(iv):ステップ(iii)により得た反応生成物を、アルカリ性条件下で酸化剤と反応させて、式(I)の接着剤化合物を得る、
ただし、R~RおよびZは上記のように定義され、Rはヒドロキシメチル基またはアミノ基であり、mは7600~47000から選択される整数であり、任意で7600~23100から選択される整数であり、さらに任意で19000~21000から選択される整数であり、さらに任意で19600~20500から選択される整数である、
接着剤化合物の調製方法。
【請求項5】
ステップ(i)は、60~80℃、任意で65~75℃、さらに任意で70℃の温度環境で実施される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(i)における前記連鎖移動剤とフッ化ビニリデンモノマーとの質量比は、1:1783~11029であり、任意で1:1783~5421であり、さらに任意で1:4400~5000であり、より好ましくは1:4600~4800である、
請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(i)における前記連鎖移動剤は、式(II-1)の4-シアノ-4-(プロピルチオカルボニル)チオ吉草酸である、
請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(ii)は、-10~10℃、任意で-5~5℃、さらに任意で-5~0℃、さらに任意で0℃の温度環境で実施される、
請求項4~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(iii)は、35~60℃、任意で40~45℃、さらに任意で45℃の温度環境で実施される、
請求項4~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(iv)は、15~50℃、任意で20~45℃、さらに任意で25~35℃、さらに任意で25℃の温度環境で実施される、
請求項4~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
炭素系導電剤部分と、前記炭素系導電剤部分と共有結合する接着剤部分とを含み、前記接着剤部分が式(III)の構造を有し、
ただし、R、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC1-12アルキル基であり、Rはハロゲンまたはシアノ基であり、Rはヒドロキシメチル基またはアミノ基であり、Zは直鎖または分岐のC1-12アルキレン基であり、mは7600~47000から選択される整数であり、任意で7600~23100から選択される整数であり、さらに任意で19000~21000から選択される整数であり、さらに任意で19600~20500から選択される整数であり、Rは#-CHOC(O)-*または#-NHC(O)-*であり、#はZとの結合位置を表すものであり、*は炭素系導電剤部分との共有結合の位置を表すものである、
導電接着剤。
【請求項12】
前記接着剤部分は式(III-1)または式(III-2)の構造を有し、
ただし、*は炭素系導電剤部分との共有結合の位置を表すものである、
請求項11に記載の導電接着剤。
【請求項13】
接着剤部分と炭素系導電剤部分との質量比は、0.1~5:1であり、任意で0.3~1:1である、
請求項11または12に記載の導電接着剤。
【請求項14】
前記炭素系導電剤部分の比表面積は、1~3000m/gであり、任意で10~1200m/gであり、さらに任意で20~800m/gである、
請求項11~13のいずれか1項に記載の導電接着剤。
【請求項15】
前記炭素系導電剤部分は、超伝導カーボン、カーボンブラックSP、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノファイバーから選択される1種または複数種であり、任意でカーボンブラックSPである、
請求項11~14のいずれか1項に記載の導電接着剤。
【請求項16】
以下のステップを含む導電接着剤の調製方法であって、
溶剤の中で式(I)の接着剤化合物、炭素系導電剤および触媒を反応させて、導電接着剤を得るステップを含み、
ただし、R、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC1-12アルキル基であり、Rはハロゲンまたはシアノ基であり、Rはヒドロキシメチル基またはアミノ基であり、Zは直鎖または分岐のC1-12アルキレン基であり、mは7600~47000から選択される整数であり、任意で7600~23100から選択される整数であり、さらに任意で19000~21000から選択される整数であり、さらに任意で19600~20500から選択される整数である、
導電接着剤の調製方法。
【請求項17】
、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC2-8アルキル基であり、任意で直鎖または分岐のC2-6アルキル基であり、および/または、Rはシアノ基であり、および/または、Zは直鎖または分岐のC2-8アルキレン基であり、任意で直鎖または分岐のC2-6アルキレン基である、
請求項16に記載の調製方法。
【請求項18】
前記式(I)の接着剤化合物は式(I-1)または式(I-2)の構造を有する、請求項16または17に記載の調製方法。
【請求項19】
前記反応は、-5~5℃、任意で-5~0℃、さらに任意で0℃の温度環境で実施される、
請求項16~18のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項20】
前記接着剤化合物と炭素系導電剤との質量比は、0.1~5:1であり、任意で0.3~1:1である、
請求項16~19のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項21】
前記炭素系導電剤は、超伝導カーボン、カーボンブラックSP、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノファイバーから選択される1種または複数種であり、任意でカーボンブラックSPである、
請求項16~20のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項22】
前記炭素系導電剤の比表面積は、1~3000m/gであり、任意で10~1200m/gであり、さらに任意で20~800m/gである、
請求項16~21のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項23】
請求項11~15のいずれか1項に記載の導電接着剤、または請求項16~22のいずれか1項に記載の調製方法により調製された導電接着剤の二次電池における使用。
【請求項24】
正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極材料層とを含み、前記正極材料層が、請求項11~15のいずれか1項に記載の導電接着剤、または請求項16~22のいずれか1項に記載の調製方法により調製された導電接着剤を含む、
正極板。
【請求項25】
前記正極材料層は、前記正極材料層の総重量に対して、1~10重量%、任意で、3~6重量%の前記導電接着剤を含む、
請求項24に記載の正極板。
【請求項26】
請求項24または25に記載の正極板を含む二次電池。
【請求項27】
請求項26に記載の二次電池を含む電池モジュール。
【請求項28】
請求項27に記載の電池モジュールを含む電池パック。
【請求項29】
請求項26に記載の二次電池、請求項27に記載の電池モジュールまたは請求項28に記載の電池パックから選択された少なくとも1種を備える、電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は二次電池の技術分野に属し、殊に、接着剤化合物、導電接着剤およびその調製方法に関し、さらに、該導電接着剤を含む二次電池、電池モジュール、電池パックおよび電気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池の広い応用に伴って、電池の性能に対する要求もますます高まっている。
【0003】
二次電池の内部抵抗、保存性能およびサイクル性能が多くの要因によって影響を受け、極板材料における導電剤の分散状態もまた、その要因に含まれる。導電剤(例えばカーボンブラック)は、電池極板の調製過程で凝集が発生しやすく、均一に分散させることが難しい。
【0004】
現在、当業界では主に分散材を加えることにより導電剤(例えばカーボンブラック)の凝集を緩和できる。しかしながら、分散剤を添加することは、電池に一部のマイナスの影響をもたらしてしまう。
【0005】
このため、当分野では、導電剤の凝集を解決しかつ電池の性能を改善することのできる技術案が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、導電剤の攪拌過程における凝集を解決し、凝集に起因する電池の性能の悪化を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本出願の第1局面は、接着剤化合物を提供する。該接着剤化合物は、式(I)の構造を有し、
ただし、R、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC1-12アルキル基であり、Rはハロゲンまたはシアノ基であり、Rはヒドロキシメチル基またはアミノ基であり、Zは直鎖または分岐のC1-12アルキレン基であり、mは7600~47000から選択される整数であり、任意で7600~23100から選択される整数であり、さらに任意で19000~21000から選択される整数であり、さらに任意で19600~20500から選択される整数である。本出願に係る接着剤化合物は、炭素系導電剤粒子に対して表面グラフト改質を行うことに用いられ、これによって炭素系導電剤がペースト攪拌時に凝集しやすい問題を改善し、二次電池の総合性能を損なわずに保存、サイクルなどの性能の少なくとも1つを改善する。
【0008】
任意の実施形態において、R、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC2-8アルキル基であり、任意で直鎖または分岐のC2-6アルキル基であり、および/または、Rはシアノ基であり、および/または、Zは直鎖または分岐のC2-8アルキレン基であり、任意で直鎖または分岐のC2-6アルキレン基である。
【0009】
任意の実施形態において、本出願に係る接着剤化合物は式(I-1)または式(I-2)の構造を有する。
【0010】
接着剤化合物の構造に対する選択により、集電体および極板材料に対する接着能力および炭素系導電剤に対する化学的に改質した能力をさらに向上させ、導電剤の凝集を改善する能力をさらに向上させることができる。
【0011】
本出願の第2局面は、接着剤化合物の調製方法をさらに提供する。該接着剤化合物の調製方法は、以下のステップを含み、
ステップ(i):開始剤の存在下で、溶剤の中で式(II)の連鎖移動剤とフッ化ビニリデンモノマーとを重合させ、
ただし、R、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC1-12アルキル基であり、Rはハロゲンまたはシアノ基であり、Zは直鎖または分岐のC1-12アルキレン基であり、
ステップ(ii):ステップ(i)により得た反応生成物を、溶剤の中で還元剤と反応させて式(I)の化合物を得る、または
ステップ(iii):ステップ(i)により得た反応生成物を、溶剤の中でアミノ化剤と反応させ、
ステップ(iv):ステップ(iii)により得た反応生成物を、アルカリ性条件下で酸化剤と反応させて、式(I)の接着剤化合物を得る、
ただし、R~RおよびZは上記のように定義され、Rはヒドロキシメチル基またはアミノ基であり、mは7600~47000から選択される整数であり、任意で7600~23100から選択される整数であり、さらに任意で18000~21000から選択される整数であり、さらに任意で19600~20500の整数である。
【0012】
これによって、本出願は、本出願の第1局面による接着剤化合物を調製する方法を提供する。
【0013】
任意の実施形態において、ステップ(i)は、60~80℃、任意で65~75℃、さらに任意で70℃の温度環境で実施される。温度に対する選択により、上記ステップを理想的な反応速度で進行させて、ポリマーの分子量が低過ぎることまたはポリマーの爆発的重合を防ぐことができる。
【0014】
任意の実施形態において、ステップ(i)における前記連鎖移動剤とフッ化ビニリデンモノマーとの質量比は、1:1783~11029であり、任意で1:1783~5421であり、さらに任意で1:4400~5000であり、より好ましくは1:4600~4800である。連鎖移動剤とフッ化ビニリデンモノマーとの質量比に対する選択により、得られる接着剤化合物の重合度(または分子量)に対する制御を実現できる。
【0015】
任意の実施形態において、ステップ(i)における前記連鎖移動剤は、式(II-1)の4-シアノ-4-(プロピルチオカルボニル)チオ吉草酸である。
【0016】
該連鎖移動剤に対する選択により、フッ化ビニリデンモノマーを所望どおりに重合させて接着剤化合物を得ることができ、そして、このように得た接着剤化合物は導電剤を効果的にグラフト改質することができる。
【0017】
任意の実施形態において、ステップ(ii)は、-10~10℃、任意で-5~5℃、さらに任意で-5~0℃、さらに任意で0℃の温度環境で実施される。
【0018】
任意の実施形態において、ステップ(iii)は、35~60℃、任意で40~45℃、さらに任意で45℃の温度環境で実施される。
【0019】
任意の実施形態において、ステップ(iv)は、15~50℃、任意で20~45℃、さらに任意で25~35℃、さらに任意で25℃の温度環境で実施される。
【0020】
上記の各ステップを上記の温度範囲内に収めることにより、反応を制御して副産物の生成を防ぐことに寄与することができる。
【0021】
本出願の第3局面は、導電接着剤を提供する。該導電接着剤は、炭素系導電剤部分と、前記炭素系導電剤部分と共有結合する接着剤部分とを含み、前記接着剤部分が式(III)の構造を有し、
ただし、R、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC1-12アルキル基であり、Rはハロゲンまたはシアノ基であり、Rはヒドロキシメチル基またはアミノ基であり、Zは直鎖または分岐のC1-12アルキレン基であり、mは7600~47000から選択される整数であり、任意で7600~23100から選択される整数であり、さらに任意で19000~21000から選択される整数であり、さらに任意で19600~20500から選択される整数であり、Rは#-CHOC(O)-*または#-NHC(O)-*であり、#はZとの結合位置を表すものであり、*は炭素系導電剤部分との共有結合の位置を表すものである。本出願に係る導電接着剤は、接着性および導電性をともに備えるものであり、そして一般的な炭素系導電剤の分散性を改善して凝集を防ぐことができる。
【0022】
任意の実施形態において、前記接着剤部分は式(III-1)または式(III-2)の構造を有し、
ただし、*は炭素系導電剤部分との共有結合の位置を表すものである。上記構造の接着剤部分を有する導電接着剤は、導電剤の凝集を改善する効果をより良く奏することができる。
【0023】
任意の実施形態において、接着剤部分と炭素系導電剤部分との質量比は、0.1~5:1であり、任意で0.3~1:1である。接着剤部分と炭素系導電剤部分との質量比に対する選択により、得られる導電接着剤は、接着性能と導電性能と凝集改善性能との良好なバランスを実現できる。
【0024】
任意の実施形態において、前記炭素系導電剤部分の比表面積は、1~3000m/gであり、任意で10~1200m/gであり、さらに任意で20~800m/gである。炭素系導電剤部分の比表面積が上記範囲内にある場合、接着性と導電性との間の良好なバランスを実現でき、電池の性能の改善にさらに寄与することができる。
【0025】
任意の実施形態において、前記炭素系導電剤部分は、超伝導カーボン、カーボンブラックSP、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノファイバーから選択される1種または複数種であり、任意でカーボンブラックSPである。さらに炭素系導電剤部分に対する選択により、電池の性能をさらに向上させることができる。
【0026】
本出願の第4局面は、導電接着剤の調製方法を提供する。該導電接着剤の調製方法は、
溶剤の中で式(I)の接着剤化合物、炭素系導電剤および触媒を反応させて、導電接着剤を得るステップを含み、
ただし、R、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC1-12アルキル基であり、Rはハロゲンまたはシアノ基であり、Rはヒドロキシメチル基またはアミノ基であり、Zは直鎖または分岐のC1-12アルキレン基であり、mは7600~47000から選択される整数であり、任意で7600~23100から選択される整数であり、さらに任意で19000~21000から選択される整数であり、さらに任意で19600~20500から選択される整数である。
【0027】
任意の実施形態において、R、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC2-8アルキル基であり、任意で直鎖または分岐のC2-6アルキル基であり、および/または、Rはシアノ基であり、および/または、Zは直鎖または分岐のC2-8アルキレン基であり、任意で直鎖または分岐のC2-6アルキレン基である。
【0028】
任意の実施形態において、前記式(I)の接着剤化合物は式(I-1)または式(I-2)の構造を有する。
【0029】
任意の実施形態において、前記反応は、-5~5℃、任意で-5~0℃、さらに任意で0℃の温度環境で実施される。反応温度を上記の範囲内に収めることにより、反応速度の制御が容易になる。
【0030】
任意の実施形態において、前記接着剤化合物と炭素系導電剤との質量比は、0.1~5:1であり、任意で0.3~1:1である。反応中の接着剤化合物と炭素系導電剤との質量比に対する制御により、得られる導電接着剤は、接着性、導電性および凝集改善などの面でバランスがよく、電池の性能をさらに改善することができる。
【0031】
任意の実施形態において、前記炭素系導電剤は、超伝導カーボン、カーボンブラックSP、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノファイバーから選択される1種または複数種であり、任意でカーボンブラックSPである。適切な炭素系導電剤の選択により、電池の性能をさらに向上させることができる。
【0032】
任意の実施形態において、前記炭素系導電剤の比表面積は、1~3000m/gであり、任意で10~1200m/gであり、さらに任意で20~800m/gである。炭素系導電剤の比表面積を上記の範囲内に収めることにより、得られる導電接着剤が導電性と凝集改善との間のバランスをとることができ、電池の性能の改善に寄与できる。
【0033】
本出願の第5局面は、本出願の第3局面に係る導電接着剤または本出願の第4局面の調製方法により調製された導電接着剤の二次電池における使用を提供する。
【0034】
本出願の第6局面は、正極板を提供する。該正極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極材料層とを含み、前記正極材料層が、本出願の第3局面に係る導電接着剤または本出願の第4局面の調製方法により調製された導電接着剤を含む。本出願に係る正極板は、正極材料層における導電剤が凝集せずに均一に分布することができ、したがって、電池の性能を改善することができる。
【0035】
任意の実施形態において、前記正極材料層は、前記正極材料層の総重量に対して、1~10重量%、任意で3~6重量%の前記導電接着剤を含む。正極材料層における導電接着剤の含有量を上記の範囲内に収めることにより、電池のサイクル性能、保存性能の少なくとも一方を改善することができる。
【0036】
本出願の第7局面は、本出願の第6局面に係る正極板を含む二次電池を提供する。
【0037】
本出願の第8局面は、本出願の第7局面に係る二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0038】
本出願の第9局面は、本出願の第8局面に係る電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0039】
本出願の第10局面は、本出願の第7局面に係る二次電池、本出願の第8局面に係る電池モジュールまたは本出願の第9局面に係る電池パックから選択される少なくとも1種を備える電気装置を提供する。
【0040】
従来技術に対して、本出願は少なくとも以下の有益効果を有する。本出願に係る接着剤化合物は、炭素系導電剤と化学的結合してその表面にグラフトし、これによって極板の調製過程における導電剤の凝集を防ぐことができる。したがって、二次電池の総合性能を損なわずに保存性能およびサイクル性能の少なくとも一方を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】実施例1による導電接着剤の赤外線スペクトルを示す図面である。
図2】実施例1および比較例C1の正極板の断面形態を示す走査型電子顕微鏡写真である。
図3】本出願の一実施形態による二次電池の模式図である。
図4図3に示す本出願の一実施形態による二次電池の分解図である。
図5】本出願の一実施形態による電池モジュールの模式図である。
図6】本出願の一実施形態による電池パックの模式図である。
図7図6に示す本出願の一実施形態による電池パックの分解図である。
図8】本出願の一実施形態による二次電池を電源とした電気装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本出願に係る接着剤化合物、導電接着剤、その調製方法およびその使用を説明する前に、下記のことを理解すべきである。説明される特定の物質、方法および実験条件は変更できるものであるため、本出願はこれらに限定されない。また、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、限定するものではなく、本出願の範囲は特許請求の範囲に準ずる。
【0043】
別途の定義がない限り、本明細書に使用されるすべての技術用語および化学用語は、当業者が通常理解する意味を有する。本出願における実験またはテストには、本明細書に説明されるものと似ているまたは均等の任意の方法および材料を使用でき、これらの変更および変化も本開示の精神および範囲に該当する。
【0044】
簡単、明瞭に説明するため、本出願にいくつかの数値範囲が具体的に開示された。ただし、任意の下限値と任意の上限値とを組み合わせることにより明記されていない範囲を形成することができ、任意の下限値と他の下限値とを組み合わせることにより明記されていない範囲を形成することができ、任意の上限値と任意の他の上限値とを組み合わせることにより明記されていない範囲を形成することができる。また、単独に開示される各値または1つの数値自身が下限値または上限値として任意の他の値または1つの数値と組み合わせまたは他の下限値または上限値と組み合わせることにより明記されていない範囲を形成することができる。
【0045】
本出願に開示された「範囲」は、下限値および上限値により定義される。所定範囲は、下限値および上限値を選択することにより定義される。選択された下限値および上限値により、特定の範囲の限界が定義される。このように定義された範囲は、限界値を含む場合があるし、限界値を含まない場合があり、任意に組み合わせることができ、すなわち、任意の下限値と任意の上限値との組み合わせで範囲を定義することが可能である。例えば、特定のパラメータについて、60~120および80~110の範囲が挙げられた場合、60~110および80~120の範囲も予測可能なものであると理解されるべきである。また、下限値として1および2が挙げられ、上限値として3、4および5が挙げられた場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5のいずれかの範囲も予測可能なものである。本出願では、別途の説明がない限り、数値範囲「a~b」は、実数aと実数bの間の実数の任意の組み合わせの省略表現である。例えば数値範囲「0~5」は、明細書に記載の「0~5」の間のすべての実数を含み、「0~5」がこれらの数値の組み合わせの省略表現にすぎない。また、パラメータは、2以上の整数で表された場合、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などの整数が開示されたことに相当する。
【0046】
別途の説明がない限り、本出願のすべての実施形態および選択可能な実施形態を組み合わせて新たな技術案とすることが可能である。
【0047】
別途の説明がない限り、本出願のすべての技術的特徴および選択可能な技術的特徴を組み合わせて新たな技術案とすることが可能である。
【0048】
別途の説明がない限り、本出願のすべてのステップは、順に実行されてもよいし、ランダムに実行されてもよい。順に実施されることが好ましい。例えば、前記方法がステップ(a)とステップ(b)とを含む場合、前記方法は、順に実行するステップ(a)とステップ(b)とを含んでもよく、順に実行するステップ(b)とステップ(a)とを含んでもよい。例えば、前記方法はステップ(c)をさらに含む場合、ステップ(c)が任意の順番で前記方法に組み込まれることができ、例えば、前記方法は、ステップ(a)、ステップ(b)およびステップ(c)の順のものを含んでもよく、ステップ(a)、ステップ(c)および(b)の順のものを含んでもよく、ステップ(c)、ステップ(a)およびステップ(b)などの順のものを含んでもよい。
【0049】
別途の説明がない限り、本出願に記載の「含む」および「包含」で指し示されるものは、開放形式の記載であってもよく、閉鎖形式の記載であってもよい。例えば、前記「含む」および「包含」で記載した場合、リストしていない要素を含みまたは包含してもよく、リストした要素だけを含みまたは包含してもよい。
【0050】
別途の説明がない限り、本出願では、用語「または」は、広義な表現である。例えば、フレーズ「AまたはB」は、「A、B、またはAとB」を意味する。より具体的に、Aが成立(または存在)、Bが不成立(または非存在)である場合、Aが不成立(または非存在)、Bが成立(または存在)である場合、または、AとBがいずれも成立(または存在)である場合は、いずれも「AまたはB」という条件を満たす。
【0051】
近年、新エネルギー自動車の急速な発展に伴って、二次電池の性能に対する要求がますます高まっている。このため、二次電池の性能を如何にさらに改善するかは常に二次電池の研究開発の重点となっている。
【0052】
二次電池の内部抵抗、保存性能およびサイクル性能がそれぞれ多種の要素に影響され、例えば、集電体の材料、厚さ、極板の材料、タップ密度、水分含有量、塗布の厚さ、セパレータ、導電剤、電解液および調製プロセスなどが挙げられる。それ以外に、二次電池の内部抵抗、保存性能およびサイクル性能は、さらに極板における導電剤の分散状態に影響される。一般的に、極板材料において導電剤の分布がより均一であるほど、二次電池の性能はより優れたものとなる。しかし、極板の調製過程において導電剤(一般的にカーボンブラックである)が凝集しやすいため、実際の生産において均一な分布を実現することが困難である。
【0053】
現在、当業界で主に極板材料ペーストに分散剤を加えており、これにより凝集問題をある程度緩和することができるが、分散剤の添加は一部のマイナスの影響をもたらしてしまう。他方、分散剤は、電池の性能に積極的に貢献するものではなく、逆に、極板材料に大量に残留することで極板材料における活性材料の比率が低下し、これによって、電池のエネルギー密度が低下してしまう。他方、分散剤の添加により、極板の調製プロセスが複雑になるとともに、コストも増加してしまう。
【0054】
上記の問題を解決するため、本出願は、炭素系導電剤(例えばカーボンブラック)粒子の表面に存在する基(例えばカルボキシル基)と化学反応して炭素系導電剤の表面をグラフト化することができる接着剤化合物を提供する。また、本出願は、本出願に係る接着剤化合物と炭素系導電剤との反応により形成された導電接着剤をさらに提供し、該導電接着剤は炭素系導電剤部分と接着剤部分とを含むため、接着機能および導電機能をともに備えており、そして該導電接着剤は他の材料と混合して極板ペーストを調製するときに凝集しにくいため、極板材料層において均一に分布して電池の性能を改善することができる。
【0055】
接着剤化合物
【0056】
本出願の第1局面による接着剤化合物は、式(I)の構造を有し、
ただし、R、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC1-12アルキル基であり、Rはハロゲンまたはシアノ基であり、Rはヒドロキシメチル基またはアミノ基であり、Zは直鎖または分岐のC1-12アルキレン基であり、mは7600~47000から選択される整数であり、任意で7600~23100から選択される整数であり、さらに任意で19000~21000から選択される整数であり、さらに任意で19600~20500から選択される整数である。
【0057】
本出願に係る接着剤化合物は、末端に反応性基(例えば、水酸基またはアミノ基)を有し、好ましい接着性能を有するとともに、共有結合により炭素系導電剤粒子の表面をグラフト改質して、導電接着剤を形成することができ、これによって炭素系導電剤の凝集問題を改善する。
【0058】
mの値が上記範囲内にあるとき、接着剤化合物の接着能力が強く、炭素系導電剤との反応能力および反応速度が適当で、炭素系導電剤をグラフト化した後の凝集防止能力が強く、溶解度が優れ、正極ペーストを調製するとき、ペーストの安定性に優れ、極板材料の分布が均一であり、これによって作製された二次電池はサイクル性能および保存性能に優れる。
【0059】
いくつかの実施形態において、上記の式(I)において、R、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC2-8アルキル基であり、任意で直鎖または分岐のC2-6アルキル基であり、および/または、Rはシアノ基であり、および/または、Zは直鎖または分岐のC2-8アルキレン基であり、任意で直鎖または分岐のC2-6アルキレン基である。
【0060】
いくつかの実施形態において、本出願に係る接着剤化合物は式(I-1)または式(I-2)の構造を有する。
【0061】
接着剤化合物の構造に対する選択により、接着剤による集電体および極板材料に対する接着能力および導電剤に対する化学的改質能力をさらに向上させ、導電剤の凝集を改善する能力をさらに向上させることができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、本出願に係る接着剤化合物の数平均分子量(Mn)は、500000~3000000であり、任意で、500000~1500000である。接着剤化合物の分子量を上記の適切な範囲内に収めることにより、適切な溶解度および接着力を有し、即ち、分子量を上記の範囲に収めることにより、溶解度と接着力とのバランスをよりよくとることができる。
【0063】
本出願の第2局面による接着剤化合物の調製方法は、以下のステップを含み、
ステップ(i):開始剤の存在下で、溶剤の中で式(II)の連鎖移動剤とフッ化ビニリデンモノマーとを重合させ、
ただし、R、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC1-12アルキル基であり、Rはハロゲンまたはシアノ基であり、Zは直鎖または分岐のC1-12アルキレン基であり、
ステップ(ii):ステップ(i)により得た反応生成物を、溶剤の中で還元剤と反応させて式(I)の化合物を得る、または
ステップ(iii):ステップ(i)により得た反応生成物を、溶剤の中でアミノ化剤と反応させ、
ステップ(iv):ステップ(iii)により得た反応生成物を、アルカリ性条件下で酸化剤と反応させて、式(I)の接着剤化合物を得る、
ただし、R~RおよびZは上記のように定義され、Rはヒドロキシメチル基またはアミノ基であり、mは7600~47000から選択された整数であり、任意で7600~23100から選択された整数であり、さらに任意で19000~21000から選択された整数であり、さらに任意で19600~20500から選択された整数である。
【0064】
上記方法によれば、所望の接着剤化合物を調製することができる。
【0065】
いくつかの実施形態において、上記方法において、ステップ(i)は、60~80℃、任意で65~75℃、さらに任意で70℃の温度環境で実施される。温度を該範囲内に収めると、適切な反応速度を得て分子量が低過ぎることまたは爆発的重合を防ぐことができる。
【0066】
いくつかの実施形態において、ステップ(i)の反応は嫌気条件下で実施される。いくつかの実施形態において、任意で、ステップ(i)の反応は不活性ガス雰囲気下で実施される。いくつかの実施形態において、任意でステップ(i)の反応はN雰囲気下で実施される。これによりラジカルの酸化を防ぎ、反応を思い通りに進行させ、副反応を抑えることができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、ステップ(i)における開始剤は当分野で既知の該反応に使用できる開始剤である。いくつかの実施形態において、開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)または過酸化ベンゾイル(BPO)である。任意で、いくつかの実施形態において、開始剤はアゾビスイソブチロニトリルである。
【0068】
いくつかの実施形態において、ステップ(i)における溶剤は、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルスルホキシド(DMSO)であり、任意でステップ(i)における溶剤はテトラヒドロフランである。
【0069】
いくつかの実施形態において、ステップ(i)における前記連鎖移動剤とフッ化ビニリデンモノマーとの質量比は、1:1783~11029であり、任意で1:1783~5421であり、さらに任意で1:4400~5000であり、より好ましくは1:4600~4800である。方法に使用される連鎖移動剤とフッ化ビニリデンモノマーとの質量比に対する選択により、得られる接着剤化合物の重合度(または分子量)に対する制御を実現できる。
【0070】
いくつかの実施形態において、ステップ(i)における連鎖移動剤は、式(II-1)の4-シアノ-4-(プロピルチオカルボニル)チオ吉草酸(CPP)である。
【0071】
式(II)の連鎖移動剤、任意で式(II-1)の連鎖移動剤を使用することにより、本出願の方法は、フッ化ビニリデンモノマーを、重合速度が速く、重合分子量の制御性が高く、分子量の均一性が良好な(即ち、多分散性指数(PDI)が小さい)方式で重合して本出願に係る接着剤化合物を得ることができ、そしてこのように得た接着剤化合物は、導電剤に対して効果的にグラフト改質することができることを、本発明者は解明した。
【0072】
いくつかの実施形態において、ステップ(ii)における溶剤は、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドであり、任意でステップ(ii)における溶剤はテトラヒドロフランである。いくつかの実施形態において、ステップ(ii)における還元剤はLiAlHである。いくつかの実施形態において、ステップ(ii)は-10~10℃、任意で-5~5℃、さらに任意で-5~0℃、さらに任意で0℃の温度環境で実施される。
【0073】
いくつかの実施形態において、ステップ(iii)において、前記溶剤はメタノールである。いくつかの実施形態において、ステップ(iii)において、アミノ化剤は、アンモニアである。いくつかの実施形態において、ステップ(iii)は、35~60℃、任意で、40~45℃、さらに任意で45℃の温度環境で実施される。
【0074】
いくつかの実施形態において、ステップ(iv)において、酸化剤は次亜塩素酸ナトリウムである。いくつかの実施形態において、ステップ(iv)は、NaOHが存在する条件下で実施される。いくつかの実施形態において、ステップ(iv)は、15~50℃、任意で20~45℃、さらに任意で25~35℃、さらに任意で25℃の温度環境で実施される。上記の反応条件を利用すれば、反応を容易に制御でき、副産物の生成を防ぐことができる。
【0075】
いくつかの実施形態において、本出願に係る方法は、任意で、後処理の工程を含んでもよい。当業者であればわかるように、後処理の工程は、生成物の性質に基づいて選択する常用の後処理方法を含み得て、例えば、ろ過、洗浄、乾燥などが挙げられる。
【0076】
導電接着剤
【0077】
本出願の第3局面による導電接着剤は、炭素系導電剤部分と、炭素系導電剤部分と共有結合する接着剤部分とを含み、該接着剤部分が式(III)の構造を有し、
ただし、R、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC1-12アルキル基であり、Rはハロゲンまたはシアノ基であり、Rはヒドロキシメチル基またはアミノ基であり、Zは直鎖または分岐のC1-12アルキレン基であり、mは7600~47000から選択される整数であり、任意で7600~23100から選択される整数であり、さらに任意で19000~21000から選択される整数であり、さらに任意で19600~20500から選択される整数であり、Rは#-CHOC(O)-*または#-NHC(O)-*であり、#はZとの結合位置を表すものであり、*は炭素系導電剤部分との共有結合の位置を表すものである。
【0078】
本出願に係る導電接着剤は、接着性および導電性をともに備えるものであり、そして、一般的な炭素系導電剤の分散性を改善して凝集を防ぐことができる。このため、正極ペーストの調製過程において、従来技術において接着剤および導電剤を別々で加えることの代わりに本出願に係る導電接着剤を使用すれば、攪拌過程において導電剤が凝集しやすくて電池の性能が悪化してしまう問題を根本から解決することができる。
【0079】
また、当業者であればわかるように、接着剤および導電剤を別々の工程で加えることの代わりに本出願に係る導電接着剤を使用すれば、作業効率を向上させることができる。
【0080】
本明細書において、用語の「共有接続」または「共有結合」または「共有結合で接続」、および類似の表現は、交換して使用することができ、原子同士、分子同士または分子の各部分が共有結合により接続されることを意味する。
【0081】
いくつかの実施形態において、本出願に係る導電接着剤において、接着剤部分は以下の構造を有し、
、または

ただし、*は炭素系導電剤部分との共有結合の位置を表すものである。
【0082】
いくつかの実施形態において、導電接着剤における接着剤部分と炭素系導電剤部分との質量比は、0.1~5:1であり、任意で0.3~1:1である。
【0083】
本出願に係る導電接着剤において、接着剤部分と炭素系導電剤部分との質量比は、接着性および導電性に影響し、したがって電池の性能に影響する。接着剤部分と炭素系導電剤部分との質量比が0.1~5:1、任意で0.3~1:1の範囲内にあるとき、導電接着剤が良好な接着力および導電性を有し、したがって、極板が良好な導電能力を有し、また、このとき、導電剤粒子の表面に接着剤部分が適量にグラフトされるため、凝集改善効果が顕著であり、したがって、本出願に係る導電接着剤または極板を含む二次電池のサイクル性能および保存性能が改善される。
【0084】
いくつかの実施形態において、炭素系導電剤部分の比表面積は、1~3000m/gであり、任意で10~1200m/gであり、さらに任意で20~800m/gである。
【0085】
炭素系導電剤の比表面積は極板の導電性に直接影響する。導電接着剤における炭素系導電剤部分が上記の範囲内の比表面積を有するとき、導電接着剤が所望どおりに凝集を緩和または防止することができ、そして良好な接着性および導電性を兼ねることができ、したがって、極板材料層は、接着が強固であり、導電性が良好であり、電池の性能の改善に寄与できる。
【0086】
本出願に係る炭素系導電剤部分は、当分野で常用の各種の炭素系導電剤から選択することができる。いくつかの実施形態において、炭素系導電剤部分は、超伝導カーボン、カーボンブラック(例えば、カーボンブラックSP、アセチレンブラック、ケッチェンブラック)、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノファイバーから選択された1種または複数種であり、ただし、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、任意で、炭素系導電剤はカーボンブラックである。カーボンブラックとして、市販の各種のカーボンブラックを使用でき、例えばファーネス法カーボンブラックを使用できる。いくつかの実施形態において、さらに任意で、炭素系導電剤部分はカーボンブラックSPである。さらに炭素系導電剤部分に対する選択により、電池の性能をさらに向上させることができる。
【0087】
本出願の第4局面は、導電接着剤の調製方法を提供する。該導電接着剤の調製方法は、
溶剤の中で式(I)の接着剤化合物、炭素系導電剤および触媒を反応させて、導電接着剤を得るステップを含み、
ただし、R、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC1-12アルキル基であり、Rはハロゲンまたはシアノ基であり、Rはヒドロキシメチル基またはアミノ基であり、Zは直鎖または分岐のC1-12アルキレン基であり、mは7600~47000から選択される整数であり、任意で7600~23100から選択される整数であり、さらに任意で19000~21000から選択される整数であり、さらに任意で19600~20500から選択される整数である。
【0088】
いくつかの実施形態において、式(I)において、R、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐のC2-8アルキル基であり、任意で直鎖または分岐のC2-6アルキル基であり、および/または、Rはシアノ基であり、および/または、Zは直鎖または分岐のC2-8アルキレン基であり、任意で直鎖または分岐のC2-6アルキレン基である。
【0089】
いくつかの実施形態において、式(I)の接着剤化合物は式(I-1)または式(I-2)の構造を有する。
【0090】
いくつかの実施形態において、上記の方法において、溶剤は、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはピリジンであり、任意で、溶剤はテトラヒドロフランまたはピリジンである。さらに任意で、上記の方法において、式(I-1)の接着剤化合物を使用する場合、溶剤はテトラヒドロフランである。さらに任意で、上記の方法において、式(I-2)の接着剤化合物を使用する場合、溶剤はピリジンである。
【0091】
いくつかの実施形態において、上記の方法は、低温条件下で実施される。いくつかの実施形態において、反応は、-5~5℃、任意で-5~0℃、さらに任意で0℃の温度環境で実施される。反応温度を該範囲内に収めると、反応速度の制御が容易になり、他の副反応を防ぐことができる。
【0092】
いくつかの実施形態において、該ステップは触媒の存在下で実施される。前記接着剤化合物の末端基が水酸基である場合、前記触媒は例えば1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、N-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)などであり、前記接着剤化合物の末端基がアミノ基である場合、前記触媒は例えば塩化チオニル(SOCl)などである。
【0093】
前記接着剤化合物の末端基がアミノ基である場合、いくつかの実施形態において、アルカリ性雰囲気下で前記方法のステップを実施する。前記アルカリ性雰囲気は、溶剤の中にアルカリ性物質を加えることにより実現することができ、例えば、トリエチルアミンを加える。
【0094】
いくつかの実施形態において、上記の方法において、反応は、攪拌しながら実施される。
【0095】
いくつかの実施形態において、接着剤化合物と炭素系導電剤との質量比は、0.1~5:1であり、任意で0.3~1:1である。反応中の接着剤化合物と炭素系導電剤との質量比に対する制御により、得られる導電接着剤は、接着性、導電性および凝集改善などの面でバランスをとることができ、電池の性能をさらに改善することができる。
【0096】
いくつかの実施形態において、炭素系導電剤は、超伝導カーボン、カーボンブラック(例えば、カーボンブラックSP、アセチレンブラック、ケッチェンブラック)、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノファイバーから選択された1種または複数種である。いくつかの実施形態において、任意で炭素系導電剤はカーボンブラックである。いくつかの実施形態において、さらに任意で炭素系導電剤はカーボンブラックSPである。適切な炭素系導電剤の選択により、電池の性能をさらに向上させることができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、炭素系導電剤の比表面積は、1~3000m/gであり、任意で10~1200m/gであり、さらに任意で20~800m/gである。炭素系導電剤の比表面積を上記の範囲内に収めると、得られる導電接着剤が導電性と凝集改善との間のバランスをとることができ、電池の性能の改善に寄与できる。
【0098】
本出願に係る導電接着剤は二次電池の正極板の調製に使用することができる。
【0099】
正極板
【0100】
本出願の第6局面による正極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極材料層とを含み、前記正極材料層が、本出願の第3局面に係る導電接着剤または本出願の第4局面の調製方法により調製された導電接着剤を含む。本出願に係る正極板の正極材料層における導電剤は凝集せずに均一に分布することができ、したがって、電池の性能を改善することができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、前記正極材料層は、前記正極材料層の総重量に対して、1~10重量%、好ましくは3~6重量%の前記導電接着剤を含む。正極材料層における本出願に係る導電接着剤の含有量を上記の範囲内に収めることにより、極板の導電性が良好であり、抵抗が小さく、電池セル全体の分極が比較的に小さく、二次電池のサイクル性能および保存性能が顕著に改善される。正極材料層における導電接着剤の含有量が6重量%以上になると、電池のサイクル性能および保存性能の、含有量の増加に従う改善の度合が大きくなくなる。導電接着剤の含有量が10重量%よりも多くなると、電池の保存性能およびサイクル性能が、10重量%以下の場合と比較して、顕著な向上がなくなり、そして、この場合、極板における正極活性材料の担持量を犠牲にするため、電池の容量が低下する。したがって、極板の正極材料層に1~10重量%、任意で3~6重量%の導電接着剤を含むとき、このような極板を用いた二次電池は、最適な総合性能を有し、即ち、改善された保存性能およびサイクル性能、良好な容量をともに備える。
【0102】
例示的に、正極集電体は、その厚み方向において対向する2つの表面を有し、正極材料層は正極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方または両方に設けられる。
【0103】
いくつかの実施形態において、前記正極集電体として、金属箔または複合集電体が使用される。例えば、金属箔として、アルミニウム箔を使用することができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも1つの表面に形成された金属層とを含み得る。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀および銀合金など)を、高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成させて形成したものであり得る。
【0104】
前記正極材料層には正極活性材料が含まれる。いくつかの実施形態において、正極活性材料は、当分野で周知の電池用正極活性材料を使用することができる。例示的に、正極活性材料は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物およびそれらの改質化合物のうちの少なくとも1種を含み得る。本出願は、これらの材料に限定されず、電池の正極活性材料として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの正極活性材料は、単独で使用されてもよく、2つ以上組み合わせて使用されてもよい。そのうち、リチウム遷移金属酸化物の例として、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO、LiMn)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3(単にNCM333と称する場合がある)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(単にNCM523と称する場合がある)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25(単にNCM211と称する場合がある)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(単にNCM622と称する場合がある)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(単にNCM811と称する場合がある))、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05)およびそれらの改質化合物などのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例として、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO(単にLFPと称する場合がある))、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO)、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料のうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。
【0105】
いくつかの実施形態において、任意で、正極材料層には他の接着剤がさらに含まれる。例示的に、前記接着剤は、当分野常用のポリフッ化ビニリデン(PVDF)接着剤、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレンの三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン-テトラフルオロエチレンの三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロペンの共重合体およびフッ素含有アクリル樹脂のうちの少なくとも1種を含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、下記のように正極板を調製することができる。上記の正極板を調製するための成分、例えば正極活性材料、導電接着剤および任意の他の成分を溶剤(例えばN-メチルピロリドン)で分散させ、正極ペーストを形成し、正極ペーストを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経て、正極板を得る。
【0107】
二次電池
【0108】
本出願の第7局面は、本出願の第6局面に係る正極板を含む二次電池を提供する。一般的に、二次電池は、正極板、負極板、電解質およびセパレータを含む。電池の充放電過程において、活性イオンが正極板と負極板との間で挿入および脱離を繰り返す。電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する役割を果たすものである。セパレータは、正極板と負極板との間に配置され、主に正極と負極の短絡を防止するとともに、イオンを通すことができるものである。
【0109】
いくつかの実施形態において、前記二次電池はリチウムイオン二次電池である。
【0110】
[負極板]
【0111】
負極板は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた負極材料層とを含み、前記負極材料層は負極活性材料を含む。
【0112】
例示的に、負極集電体は、その厚み方向において対向する2つの表面を有し、負極材料層が負極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方または両方に設けられる。
【0113】
いくつかの実施形態において、前記負極集電体として、金属箔または複合集電体を使用する。例えば、金属箔として、銅箔を使用することができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも1つの表面に形成された金属層とを含み得る。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀および銀合金など)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成させてなしたものであり得る。
【0114】
いくつかの実施形態において、負極活性材料は、当分野周知の電池用負極活性材料を使用することができる。例示的に、負極活性材料は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料およびチタン酸リチウムなどのうちの少なくとも1種を含む。前記シリコン系材料は、単体シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体およびシリコン合金から選択された少なくとも1種である。前記スズ系材料は、単体スズ、スズ酸化物およびスズ合金から選択された少なくとも1種である。本出願は、これらの材料に限定されず、電池の負極活性材料として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活性材料は、単独で使用されてもよく、2つ以上組み合わせて使用されてもよい。
【0115】
いくつかの実施形態において、任意で、負極材料層には、接着剤がさらに含まれる。前記接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)およびカルボキシメチルキトサン(CMCS)から選択された少なくとも1種である。
【0116】
いくつかの実施形態において、任意で、負極材料層には、導電剤がさらに含まれる。導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノファイバーから選択された少なくとも1種である。
【0117】
いくつかの実施形態において、任意で、負極材料層には、例えば増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などの他の助剤を含み得る。
【0118】
いくつかの実施形態において、下記のように負極板を調製することができる。上記の負極板の調製用の成分、例えば負極活性材料、導電剤、接着剤および任意の他の成分を溶剤(例えば脱イオン水)で分散させ、負極ペーストを得て、負極ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経て、負極板を得る。
【0119】
[電解質]
【0120】
電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する役割を果たすものである。本出願では、電解質の種類を具体的に限定するものではなく、要求に応じて選択することができる。例えば、電解質は、液体、ゲル状または全固体のものであり得る。
【0121】
いくつかの実施形態において、前記電解質として、電解液を使用する。前記電解液は、電解質塩と溶剤とを含む。
【0122】
電解質塩は、当分野で周知の二次電池用電解質塩を使用することができる。いくつかの実施形態において、電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビスオキサラトボレート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェートおよびリチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェートから選択された少なくとも1種である。
【0123】
いくつかの実施形態において、溶剤は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸ジプロピル、メチルプロピルカルボネート、炭酸エチルプロピル、炭酸ブチレン、炭酸フルオロエチレン、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、γ-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホンおよびジエチルスルホンから選択された少なくとも1種である。
【0124】
いくつかの実施形態において、任意で、前記電解液には添加剤がさらに含まれる。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤、正極成膜添加剤を含むことができ、電池のある性能を改善できる添加剤を含むこともでき、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、および電池の低温性能を改善する添加剤などが挙げられる。
【0125】
[セパレータ]
【0126】
いくつかの実施形態において、二次電池は、セパレータをさらに含む。本出願では、セパレータの種類を特に限定するものではなく、任意の周知の良好な化学的安定性および機械的安定性を有する多孔質構造のセパレータを使用することができる。
【0127】
いくつかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリフッ化ビニリデンから選択された少なくとも1種である。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、特に限定されない。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料が同じであってもよく異なってもよく、特に限定されない。
【0128】
いくつかの実施形態において、正極板、負極板およびセパレータは捲回プロセスまたは積層プロセスにより電極アッセンブリーとして作製される。
【0129】
いくつかの実施形態において、二次電池はパッケージを含む。該パッケージは、上記の電極アッセンブリーおよび電解質を封入することに用いられる。
【0130】
いくつかの実施形態において、二次電池のパッケージは、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼ケースなどの硬質ケースであってもよく、例えば袋状ソフトパックのようなソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質は、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートおよびポリブチレンサクシネートなどのプラスチックであり得る。
【0131】
本出願では、二次電池の形状は特に限定されなく、円柱状、四角形または他の任意の形状であってもよい。例えば、図3には、一例としての四角形構造の二次電池5が示されている。
【0132】
いくつかの実施形態において、図4に示すように、パッケージは、ハウジング51とカバープレート53とを含む。ハウジング51は、底板と底板に接続された側板とを含み、底板と側板とにより収容室を囲むように構成される。ハウジング51は、収容室と連通する開口を有し、カバープレート53は、前記開口を閉蓋するように設けられて前記収容室を密封することができる。正極板、負極板およびセパレータは、捲回プロセスまたは積層プロセスにより電極アッセンブリー52として形成される。電極アッセンブリー52が前記収容室内に密封される。電解液が電極アッセンブリー52に浸潤する。二次電池5に含まれる電極アッセンブリー52の数は、1つであってもよく複数であってもよく、当業者が実際の要求に応じて選択することができる。
【0133】
いくつかの実施形態において、二次電池は、電池モジュールとして組み立てに用いることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は1つであってもよく複数であってもよく、具体的な数は当業者が電池モジュールの応用および容量に応じて選択することができる。
【0134】
図5は、一例としての電池モジュール4を示している。図5に示すように、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長さ方向において順次に配列して設置される。無論、他の任意の方式で配置してもよい。さらに、固定部材により該複数の二次電池5を固定することができる。
【0135】
任意で、電池モジュール4は、複数の二次電池5を収容する収容空間を有する筐体をさらに備える。
【0136】
いくつかの実施形態において、上記の電池モジュールは、電池パックとして組み立てに用いることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、1つであってもよく複数であってもよく、具体的な数は当業者が電池パックの応用および容量に応じて選択することができる。
【0137】
図6および図7は、一例としての電池パック1を示している。図6および図7に示すように、電池パック1は、電池箱と、電池箱に設置される複数の電池モジュール4とを備える。電池箱は、上箱体2と下箱体3とを含み、上箱体2が下箱体3を覆うように設けられ、これにより電池モジュール4を収容する密封空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池箱において配列される。
【0138】
さらに、本出願は、本出願に係る二次電池、電池モジュール、または電池パックのうちの少なくとも1種を備える電気装置を提供する。前記二次電池、電池モジュール、または電池パックは、前記電気装置の電源として使用してもよく、前記電気装置のエネルギー保存ユニットとして使用してもよい。前記電気装置は、携帯機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、完全電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電車、船舶および衛星、エネルギー保存システムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
前記電気装置に対して、その使用要求に応じて二次電池、電池モジュールまたは電池パックを選択することができる。
【0140】
図8は、一例としての電気装置を示している。該電気装置は、完全電気自動車、ハイブリッド電気自動車またはプラグインハイブリッド電気自動車などであり得る。該電気装置の二次電池に対する高レートおよび高エネルギー密度の要求を満たすため、電池パックまたは電池モジュールを使用することができる。
【0141】
他の例として装置は携帯電話、タブレット、ノートパソコンなどであり得る。該装置は、一般的に軽量および薄いことが要求されるため、電源として二次電池を使用することができる。
【0142】
実施例
以下、本出願の実施例を説明する。以下で説明される実施例は、例示的なものであり、本出願を解釈するものに過ぎず、本出願を限定するものではない。
【0143】
実施例では明記されていない具体的な技術または条件について、当分野の文献に記載の技術または条件を使用し、或いは製品説明書に従って行う。
使用される試薬または設備にメーカーが明記されていないものは、いずれも市販で入手できる従来品である。
【0144】
テスト方法
【0145】
赤外分光分析
標準GB/T6040-2002赤外線分光分析法に従って、実施例による導電接着剤の構造組成を、米国ニコレット(nicolet)社のIS10型フーリエ変換赤外分光光度計によって測定した。測定波数範囲は600~4000cm-1であった。
【0146】
数平均分子量(Mn)測定
日本東ソー株式会社のHLC-8320GPCのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、SuperMultiporeHZシリーズのセミミクロSEC用カラムおよび標準品PSポリスチレンを利用し各実施例で得られた接着剤化合物の数平均分子量(Mn)を測定した。
測定方法:2mgの分析物を2mLのGPC固有のジメチルホルムアミド(DMF)溶剤に溶解し、サンプル2.5μLを加え、次のパラメータで測定した。
ポンプ流量:0.05mL/分
注入量:200μL
温度制御範囲:45℃
データ収集周波数:100Hz
電池容量テスト
【0147】
電池容量は、HEPUTECH CHT3568電池容量テスターを利用して25℃下で、電流0.33C、電圧2.8~4.35Vにしてテストした。
【0148】
極板接着力テスト
極板を長さ100mm、幅10mmのテストサンプルに裁断した。1枚の幅25mmのステンレス板を用意し、両面テープ(幅11mm)を貼り付け、テストサンプルの、正極材料の塗布されている面をステンレス板における両面テープに貼り付け、2000gのプレスローラーにより300mm/分の速度でその表面を往復に3回ロールプレスした。テストサンプルの一端を180度折り曲げて、手動でテストサンプルの正極材料層と集電体とを長さ方向に沿って25mm剥離し、そして該テストサンプルをINSTRON336試験機に固定し、剥離面を試験機の力線に一致させるようにした(即ち、試験機が剥離を行うときの運動方向に平行をなす)。そして、試験機により30mm/分の速度でテストサンプルを連続に剥離して、剥離力曲線を得て、曲線における10~50mmの範囲内の安定段(即ち、剥離力曲線が単調増加しなくなった区間)における平均値を剥離力F0とし、したがって、テストサンプルの正極材料層と集電体との間の接着力F=F0/テストサンプルの幅(Fの単位:N/m)となる。
【0149】
極板抵抗テスト
標準GB/T1410-2006に基づいて、HIOKI BT3563S抵抗テスターを利用し、テスト用極板を用意し、周囲温度および湿度下で、テスト用極板を抵抗テスターのテスト台に載せてテストを行った。テスト用極板サンプルの面積は1540.25mmであり、テスト電圧は0.00001Vであり、テスト圧力≧0.4トン(T)、時間間隔は10秒とした。
【0150】
電池サイクル性能テスト
25℃の温度環境で、テスト用二次電池に対して、1Cレートの定電流で充電終止電圧4.30Vまで充電し、そして定電圧で電流≦0.05Cまで充電し、10分間静置し、そして1Cレートの定電流で放電終止電圧3.3Vまで放電し、10分間静置し、これが1つの充放電サイクル(即ち、1サイクル(cls))である。この方法に従って電池に対して1000サイクル充放電してテストし、最後の1サイクルの放電容量の3サイクル目の放電容量に占める割合(パーセント)をサイクル容量維持率とした。
【0151】
電池高温保存性能テスト
25℃の温度環境で、テスト用二次電池に対して、0.33Cレートの定電流で充電終止電圧4.35Vまで充電し、そして、定電圧で電流≦0.05Cまで充電し、10分間静置し、そして0.33Cレートの定電流で放電終止電圧2.8Vまで放電し、測定した放電容量が初回放電容量C0である。そして、該電池に対して、0.33Cレートの定電流で充電終止電圧4.30Vまで充電し、そして定電圧で電流≦0.05Cまで充電した。そして、該電池を60℃の温度環境で30日(d)保存し、そして、0.33Cレートの定電流で放電終止電圧2.8Vまで放電し、10分間静置し、そして0.33Cレートの定電流で充電終止電圧4.35Vまで充電し、そして定電圧で電流≦0.05Cまで充電し、10分間静置し、そして0.33Cレートの定電流で放電終止電圧2.8Vまで放電し、このように測定した放電容量が60℃の温度環境で15日間保存した場合の可逆容量C1であり、これが1つの保存周期である。この方法で電池を180日間(即ち12周期)保存し、60℃の温度環境で180日間保存した可逆容量C12の初回放電容量C0に占める割合(パーセント)を高温保存容量維持率とした。
【0152】
実施例1
【0153】
(1)接着剤化合物の調製
三口フラスコにフッ化ビニリデンモノマー6.5gを加え、そして連鎖移動剤とフッ化ビニリデンモノマーとの質量比を1:4744にするように連鎖移動剤CPPを加え、200mLのテトラヒドロフランに溶解し、真空引きし、そしてNを導入し続ける。アゾビスイソブチロニトリル開始剤0.05gを加え、70℃まで加熱し、70℃の温度環境で12時間攪拌して反応させたあと、反応混合物を0℃の冷ジエチルエーテルに注ぎ、沈降、乾燥を経て、固体粉末を得た。
【0154】
上記のすべての固体粉末を200mLのテトラヒドロフランに溶解し、LiAlH0.5gを加え、0℃の氷水浴で4時間攪拌して反応させたあと0℃の冷ジエチルエーテルに注いで沈降させて、接着剤化合物を得た。
【0155】
(2)導電接着剤の調製
比表面積が80m/gである導電剤カーボンブラックSP10gを取って、100mlのテトラヒドロフランに溶解し、そして、ステップ(1)により得た接着剤化合物6.4g、触媒の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)0.002gおよびN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)0.002gを加えて均一に混合し、0℃の条件下で5時間攪拌して反応させたあとろ過した。得られた固体をビーカーに移し、適量のメチレンクロライドを加えて洗浄し、30分間攪拌したあとろ過、乾燥して、導電接着剤粉末を得た。
【0156】
反応式は以下のものである(濃い色の円は導電剤のカーボンブラックSP粒子であり、以下も同様)。
【0157】
図1は、該実施例で得た導電接着剤の赤外線スペクトルを示している。2883cm-1ではC-Hの伸縮振動ピークがあり、1405cm-1ではCHの変角振動があり、1186cm-1、879cm-1ではC-Cの骨格振動があり、615cm-1、530cm-1ではCFの振動ピークがあり、1592cm-1および1406cm-1ではCOO-の対称伸縮振動特徴ピークおよび非対称伸縮振動特徴ピークがあり、2883cm-1ではC-Hの伸縮振動ピークがあり、1405cm-1ではCHの変角振動があり、1186cm-1、879cm-1ではC-Cの骨格振動があり、615cm-1、530cm-1ではCFの振動ピークがあり、該赤外線スペクトルから本出願に係る接着剤化合物がSP表面にグラフトされていることがわかった。
【0158】
(3)正極板の調製
正極活性材料のリン酸鉄リチウム(LiFePO)および上記のステップ(2)により調製された導電接着剤を96:4の質量比で均一に混合したあと、固形分を70重量%~80重量%にするまで溶剤のNMPを加え、均一に撹拌して正極ペーストを得た。そして、20mg/cmの極板担持量で集電体のリチウム箔に塗布し、そして、乾燥、冷間プレス、切断を経て、正極板として作製した。
【0159】
(4)負極板の調製
黒鉛、導電剤およびカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)をドライブレンドしたあと、固形分を45重量%~55重量%にするまで脱イオン水を加え、そして接着剤のスチレンブタジエンゴム(SBR)を加えた。黒鉛、導電剤、CMC-NaおよびSBRの投入質量比が96.5:1:1:1.5であり、均一に撹拌して負極ペーストを得、そして11.4mg/cmの極板担持量で銅箔に塗布し、乾燥、冷間プレス、切断を経て負極板として作製した。
【0160】
(5)二次電池の調製
ステップ(3)およびステップ(4)によって得た極板およびセパレータを捲回して電池セルをなし、アルミラミネートフィルムでパッケージングして乾電池セルを形成し、液注入(電解液は、LiPFを質量比1:1の炭酸エチレン(EC)/炭酸ジメチル(DMC)に溶解して得た濃度が1mol/Lの溶液であった)、フォーメーション、エージングなどの工程を経て、二次電池を得た。
【0161】
実施例2
【0162】
(1)接着剤化合物の調製
三口フラスコにフッ化ビニリデンモノマー6.5gを加え、そして、連鎖移動剤とフッ化ビニリデンモノマーとの質量比を1:4657にするまで連鎖移動剤のCPPを加え、200mLのテトラヒドロフランに溶解し、真空引きし、そしてNを導入し続ける。アゾビスイソブチロニトリル開始剤0.05gを加え、70℃まで加熱し、70℃の温度環境で12時間攪拌して反応させたあと、反応混合物を0℃の冷ジエチルエーテルに注ぎ、沈降、乾燥を経て、固体粉末を得た。
【0163】
上記のすべての固体粉末を三口フラスコに移し、メタノール200mLを加え、45℃の反応温度下でアンモニアを導入し、10時間反応したあと0℃の冷ジエチルエーテルに注いで沈降させて、固体を得た。
【0164】
上記の固体を丸底フラスコに移し、次亜塩素酸ナトリウム2gを加え、200mLのメタノールに溶解し、そして0.05mol/Lの水酸化ナトリウム50mLを加え、25℃の条件下で6時間攪拌して反応させ、最後、得た産物を0℃の冷ジエチルエーテルに注いで沈降させて、接着剤化合物を得た。
【0165】
反応式は以下のものである。
【0166】
(2)導電接着剤の調製
導電剤のカーボンブラックSP10gを取って、100mlのピリジンに溶解し、そして、ステップ(1)により調製した接着剤化合物6.4g、触媒のSOCl(塩化チオニル)0.002g、トリエチルアミン0.1mgを加えて均一に混合し、0℃の条件下で3時間攪拌して反応させたあとろ過した。得た固体をビーカーに移し、適量のメチレンクロライドを加えて洗浄し、30分間攪拌したあとろ過、乾燥して、本出願に係る導電接着剤粉末を得た。
【0167】
該実施例で得た導電接着剤に対して赤外分光分析を行った。2883cm-1ではC-Hの伸縮振動ピークがあり、1405cm-1ではCHの変角振動があり、1186cm-1、879cm-1ではC-Cの骨格振動があり、615cm-1、530cm-1ではCFの振動ピークがあり、3650cm-1ではN-Hの伸縮振動ピークがあり、1680cm-1ではC=Oの振動ピークがあり、該赤外線スペクトルから本出願に係る接着剤化合物は導電剤カーボンブラックSPの表面がグラフト化されていることがわかった。
【0168】
実施例1のステップ(3)~(5)と同様の方式で導電接着剤を極板および電池の調製に使用した。
【0169】
実施例3~8
【0170】
実施例3~8においては、ステップ1)における連鎖移動剤とフッ化ビニリデンモノマーとの質量比、およびステップ2)における接着剤化合物と導電性のカーボンブラックSPとの質量比を除き、その他の条件はすべて実施例1と同様とした。
【0171】
ステップ2)における導電性のカーボンブラックSPの投入量は表1を参照する。
【0172】
【0173】
上記の各実施例で得た接着剤化合物、極板および電池の性能テスト結果は表5を参照する。
【0174】
実施例9~14
【0175】
実施例9~14において、ステップ1)における連鎖移動剤とフッ化ビニリデンモノマーとの質量比、およびステップ2)における導電性のカーボンブラックSPの比表面積を除き、その他の条件はすべて実施例1と同様とした。
【0176】
ステップ2)において、各実施例での導電性のカーボンブラックSPの比表面積は表2を参照する。
【0177】
【0178】
上記の各実施例で得た接着剤化合物、極板および電池の性能テスト結果は表5を参照する。
【0179】
実施例15~20
【0180】
実施例15~20において、ステップ1)における連鎖移動剤とフッ化ビニリデンモノマーとの質量比、およびステップ3)における導電接着剤の投入量を除き、その他の条件はすべて実施例1と同様とした。
【0181】
各実施例で極板の調製において、正極材料層に含まれる導電接着剤の重量パーセントは表3を参照する。
【0182】
【0183】
上記の各実施例で得た極板および電池の性能テスト結果は表5を参照する。
【0184】
比較例C1
【0185】
正極板の調製
正極活性材料(リン酸鉄リチウム(LiFePO))、比表面積が580m/gの導電性のカーボンブラックSPおよび接着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を96:2.5:1.5の質量比で均一に混合したあと、固形分を70重量%~80重量%にするまで溶剤のNMPを加え、均一に撹拌して正極ペーストを得て、そして同様に20mg/cmの正極板担持量でリチウム箔に塗布し、そして、乾燥、冷間プレス、切断を経て、正極板として得た。
【0186】
そして、実施例1のステップ(4)~(5)と同様な方式で二次電池を作製した。
【0187】
関係性能テストデータは表5を参照する。図2は、本出願の実施例1および比較例C1による正極板の断面形態の走査型電子顕微鏡写真を示している。写真から、比較例C1による正極板は、500倍拡大した場合、導電剤が明らかに凝集しかつ分布が不均一であり、実施例1による正極板は、1000倍拡大した場合、導電剤の凝集がほとんどなくかつ分布がより均一であることを確認することができた。
【0188】
上記の各実施例および比較例で調製した極板および電池に対してテストした。表5は、上記の実施例1~20および比較例C1で調製した極板および電池の性能テスト結果を示している。
【0189】
【0190】
実施例1および3~8から分かるように、導電接着剤における接着剤部分と炭素系導電剤部分との質量比が0.1~5:1であるとき、該導電接着剤が良好な接着性能および導電性能を有し、そして、これを用いて作製した二次電池の保存性能およびサイクル性能は比較例C1と比較して改善された。特に、0.3~1:1の範囲内にあるとき、導電接着剤の接着性能、導電性能、電池の保存性能およびサイクル性能は明らかに向上した。
【0191】
実施例1および9~14から分かるように、使用したカーボンブラックの比表面積が1~3000m/gの範囲内にあるとき、任意で10~1200m/gの範囲内にあるとき、より好ましくは20~800m/gの範囲内にあるとき、導電接着剤が良好な接着性および導電性を有し、電池の保存性能およびサイクル性能は比較例C1と比較して明らかに改善された。
【0192】
実施例1および16~20から分かるように、正極材料層に含まれる導電接着剤が1~10重量%の範囲内にあるとき、特に3~6重量%の範囲内にあるとき、電池のサイクル性能、保存性能は比較例C1と比較して明らかに改善された。
【0193】
正極材料層における導電接着剤の割合の増加に従って、活物質の割合が相応に低下し、よって電池の容量は低下してしまう。実施例1において、導電接着剤の含有量は4重量%であり、テストの結果、その電池の容量は2.5Ahであった。導電接着剤の含有量が12重量%まで増加した場合、実施例20の電池の容量は2.0Ahまで低下した。当業者であればわかるように、導電接着剤の含有量がこれ以上に増加すると、活性材料の含有量が相応にさらに低下し、電池の容量はさらに低下してしまう。このため、正極材料層における導電接着剤の含有量を1~10重量%に収めると、総合性能がより優れる電池を得ることができる。
【0194】
上記のように、本出願に係る導電接着剤、極板および電池は、比較例C1と比較して、二次電池に、バランスをとったかつ改善された保存性能およびサイクル性能を賦与できる。
【0195】
なお、本出願は、上記の実施形態に限定されない。上記の実施形態が例示的なものにすぎず、本出願の技術案の範囲内において、技術思想と実質的に同様な構成を有し、同様な効果を奏することができる実施形態も本出願の技術範囲に該当する。また、本出願の主旨を逸脱しない範囲内に実施形態に対して行った当業者が想到できる各種の変形や、実施形態の一部の構成要素を組み合わせてなした他の方式も本出願の範囲に該当する。
【符号の説明】
【0196】
1 電池パック
2 上箱体
3 下箱体
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ハウジング
52 電極アッセンブリー
53カバープレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】