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特表2023-547761持続可能な顔料を含むコーティング組成物、及びそれを使用した基材のコーティング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】持続可能な顔料を含むコーティング組成物、及びそれを使用した基材のコーティング方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20231107BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20231107BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231107BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20231107BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D133/00
C09D7/61
C09D7/41
B05D7/24 303B
B05D7/24 303A
B05D7/24 302R
B05D7/24 302T
B05D7/24 302V
B05D7/24 302P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515346
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2023-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2022074931
(87)【国際公開番号】W WO2023036854
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/118022
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】21197739.2
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】リュムペル,イェンス-ヘンニンク
(72)【発明者】
【氏名】チュー,モン ユン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンツェン,ジモン
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァインス,シュテファニー
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075BB16X
4D075BB26Z
4D075BB33Z
4D075CA02
4D075CA03
4D075CA32
4D075CA43
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB07
4D075DA04
4D075DA19
4D075DA29
4D075DB50
4D075EA27
4D075EB22
4D075EB35
4D075EB37
4D075EB38
4D075EB45
4D075EB56
4D075EC01
4D075EC11
4D075EC30
4D075EC33
4D075EC51
4D075EC53
4D075EC54
4J038BA222
4J038CG001
4J038DG001
4J038HA026
4J038KA03
4J038KA08
4J038MA14
4J038MA15
4J038NA01
4J038NA03
4J038NA11
4J038NA12
4J038NA24
4J038NA27
4J038PB02
4J038PC08
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのバインダーと、再生カーボンブラック又はコーヒー挽粉又は茶から選択される少なくとも1つの持続可能な顔料と、少なくとも1つの溶媒と、任意に少なくとも1つの架橋剤及び/又は少なくとも1つの添加剤とを含む水性コーティング組成物に関する。水性コーティングへの持続可能な顔料の使用は、高い光学的品質と優れた機械的特性を有する、柔軟なフォーム基材などの基材上のカラーコーティングをもたらす。本発明はさらに、本発明の水性コーティング組成物を製造するための方法、及び本発明の水性コーティング組成物を使用して基材をコーティングする方法に関する。最後に、本発明は、本発明の方法によって製造されたコーティングを有する基材に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物であって、
a) 少なくとも1つのバインダーと、
b) 再生カーボンブラック又はコーヒー挽粉又は茶から選択される少なくとも1つの顔料と、
c) 少なくとも1つの溶媒と、
d) 任意に少なくとも1つの架橋剤と、
e) 任意に少なくとも1つの添加剤と、
を含むコーティング組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのバインダーは、(i)ポリ(メタ)アクリレート、より具体的にはヒドロキシ官能性及び/又はカルボキシレート官能性及び/又はアミン官能性のポリ(メタ)アクリレート、(ii)ポリウレタン、より具体的にはヒドロキシ官能性及び/又はカルボキシレート官能性及び/又はアミン官能性のポリウレタン、(iii)ポリエステル、より具体的にはポリエステルポリオール、(iv)ポリエーテル、より具体的にはポリエーテルポリオール、(v)ポリマーにおけるコポリマー、(vi)これらの混合物、からなる群から、好ましくは、ポリウレタンと、ポリウレタン樹脂を含有するポリウレタン樹脂画分を含有する分散液、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリオール及びこれらの混合物からなる群から、選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのバインダーは、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、5~50質量%の固形分、好ましくは10~40質量%の固形分、非常に好ましくは20~35質量%の固形分の総量で存在する、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記再生カーボンブラック顔料は、1~150μm、好ましくは5~35μm、より好ましくは10~30μm、非常に好ましくは15~25μmのD50の粒径を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記再生カーボンブラック顔料は、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、0.1~10質量%、好ましくは0.3~8質量%、より好ましくは0.5~6質量%、非常に好ましくは1~4質量%の総量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記コーヒー挽粉顔料は、乾燥されたコーヒー挽粉顔料であり、又は、茶顔料は乾燥された茶顔料である、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記乾燥されたコーヒー挽粉顔料又は前記乾燥された茶顔料が、コーヒー挽粉又は茶、特に緑茶、紅茶又はルイボスティーを、40~180℃、好ましくは60~120℃、非常に好ましくは120℃の温度で、1~3時間の間、乾燥し、前記乾燥されたコーヒー挽粉又は前記乾燥された茶を粉砕することによって得られる、請求項6に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記乾燥されたコーヒー挽粉又は前記乾燥された茶は、50~450μm、好ましくは100~400μm、より好ましくは120~350μm、非常に好ましくは150~300μmのD50粒径を有する、請求項6又は7に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記コーヒー挽粉顔料又は茶顔料、好ましくは前記乾燥されたコーヒー挽粉顔料又は茶顔料が、それぞれ、コーティング組成物の総量に基づいて、それぞれの場合に、0.1~25質量%、好ましくは1~20質量%、より好ましくは5~15質量%、非常に好ましくは8~12質量%の総質量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
コーティング組成物は、-再生カーボンブラック顔料又はコーヒー挽粉顔料又は茶顔料の他には-、コーティング組成物の総質量に基づいて、0質量%のさらなる顔料及び/又はフィラー及び/又は染料を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
コーティング組成物を製造するための方法であって、前記方法は、
(i) 再生カーボンブラック又はコーヒー挽粉から選択される少なくとも1つの顔料を提供すること、又は再生カーボンブラック顔料を含む顔料ペーストを提供することと、
(ii) ステップ(i)で提供された顔料又は顔料ペーストを、少なくとも1つのバインダー、及び少なくとも1つの溶媒、ならびに任意に少なくとも1つの架橋剤及び/又は少なくとも1つの添加剤に添加することと、
を含む、方法。
【請求項12】
基材(S)上にコーティング(B)を製造する方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載のコーティング組成物(C1)又は請求項11に記載の方法によって製造されたコーティング組成物(C1)を基材(S)に直接塗布し、任意に塗布されたコーティング組成物(C1)を乾燥させてコーティング膜を形成し、塗布されたコーティング組成物(C1)又は形成されたコーティング膜を硬化させることによって基材(S)上に直接カラーコーティング(BC)を製造するステップを含む方法。
【請求項13】
基材(S)上にコーティング(B)を製造する方法であって、
- 請求項1~10のいずれか一項に記載のコーティング組成物(C1)又は請求項11に記載の方法に従って調製されたコーティング組成物(C1)を型の少なくとも1つの内面に塗布し、任意に塗布されたコーティング組成物(C1)を乾燥させることによって基材(S)上に直接カラーコーティング(BC)を製造するステップと、
- 基材(S)を形成する組成物を前記型に塗布することと、
- 前記コーティング組成物(C1)を同時に硬化させながら、基材(S)を形成することと、
- コーティングされた前記基材を前記型から取り出すことと、
を含む方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の方法によって製造されたコーティング。
【請求項15】
請求項14に記載のコーティングを有する基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのバインダーと、再生カーボンブラック又はコーヒー挽粉又は茶から選択される少なくとも1つの持続可能な顔料と、少なくとも1つの溶媒と、任意に少なくとも1つの架橋剤及び/又は少なくとも1つの添加剤を含むコーティング組成物に関する。組成物への持続可能な顔料の使用は、高い光学的品質と優れた機械的特性を有する、柔軟なフォーム基材などの基材上にカラーコーティングをもたらす。本発明はさらに、本発明のコーティング組成物を製造するための方法、及び本発明のコーティング組成物を使用して基材をコーティングする方法に関する。最後に、本発明は、本発明の方法によって製造されたコーティングを有する基材に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の層厚を有する多種多様な異なる基材が、最近では、基材の視覚的向上を提供するため、及び/又は、土、砕石、風化などの環境影響から基材を保護するために、基材の製造後の下流プロセスで、コーティング組成物によってコーティングされている。
【0003】
このような水性又は溶媒ベースのコーティング組成物は、通常、硬化時にカラーコーティング層を形成するバインダーマトリックス中に顔料及び/又は染料を含有する。現在、このようなコーティング組成物に使用されている顔料及び/又は染料の大部分は、石油芳香族化学又は高温を必要とするプロセスから製造されており、したがってその製造は地球温暖化に大きく関与している。さらに、製品化及び使用のために、中間体又は最終製品を精製するのに必要な化学的操作は、多くのエネルギー資源を必要とし、また、望ましくない副産物も生成する。
【0004】
このような顔料及び/又は染料を使用する環境への悪影響は、業界に、実際の染料植物又は天然由来源など、より持続可能な供給源からの顔料及び/又は染料を使用することを要求する。しかし、これらのアプローチは、顔料及び/又は染料の要求が、染料植物の栽培中に環境を損ない、天然由来の顔料源が量の面で制約されることなしには満足されないため、いくつかの欠点がある。
【0005】
より有望なアプローチは、植物性廃棄物又は産業廃棄物などの廃棄物を使用して顔料及び/又は染料を製造することであると思われる。これは、顔料及び/又は染料の製造に使用される石油芳香族化学に関連するCOの発生を大幅に削減し、大規模な栽培地又は天然資源の搾取を必要としないため、このようなコーティング組成物の持続可能性を改善することができる。
【0006】
しかし、植物又は産業廃棄物から製造される顔料及び/又は染料の性能は、得られるコーティング層の光学的品質がこの点で業界及び顧客の高い要求を達成することを保証するために一般的に使用される顔料及び/又は染料と少なくとも同等でなければならない。さらに、これらの使用は、既存の業界基準を満たすために、得られるコーティング層の接着性、耐候性、柔軟性などの機械的特性に悪影響を及ぼしてはならない。最後に、これらの顔料及び/又は染料は、顧客が望むさまざまな色のニュアンスを確実に生成できるように、得られるコーティング層の光学的外観を適合可能にする必要がある。したがって、廃棄物から製造された顔料を使用する場合、コーティングされた基材の光学的及び/又は審美的特性を適合させることが可能でなければならない。
【0007】
したがって、持続可能な顔料、すなわち植物又は産業廃棄物から調製された顔料を含有するコーティング組成物が必要とされており、該コーティング組成物は、例えば自動車内装部門、履物産業及び家具産業で使用される合成及び天然基材などのさまざまな基材をコーティングするために使用されることができ、結果として、高品質の光学外観、特に、持続不可能な顔料(つまり、廃棄物から調製されていない顔料)で達成される光学外観に匹敵する光学外観、ならびに、優れた機械的特性、例えば接着性、柔軟性、耐候性及び耐摩耗性などを有するカラーコーティング層をもたらすことが必要とされている。これらのコーティング組成物から得られるコーティング層の光学特性は、所望の光学的外観を有する着色基材を生成することに適応可能であるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、持続可能な顔料、すなわち植物及び/又は産業廃棄物から製造された顔料を含む、高い光学的品質と良好な機械的特性を有するコーティング層をもたらすコーティング組成物を提供することである。特に、コーティング組成物は、多種多様な合成及び天然基材に適し、基材への高い接着性を有する一方で、基材を曲げたときにコーティング層が壊れないように十分に柔軟であるコーティング層をもたらす必要がある。さらに、前記組成物から得られるコーティング層の光学的外観は、それぞれの顧客の特定ニーズに適応可能でなければならない。さらに、本発明の目的は、高い光学的外観と良好な機械的特性を有するコーティングされた基材の製造を可能にするために、前記コーティング組成物で基材をコーティングするための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的は、特許請求の範囲に記載された主題によって、また、以下の説明に記載されるその主題の好ましい実施形態によっても達成される。
【0010】
したがって、本発明の第1の主題は:、
a) 少なくとも1つのバインダーと、
b) 再生カーボンブラック又はコーヒー挽粉又は茶から選択される少なくとも1つの顔料と、
c) 少なくとも1つの溶媒と、
d) 任意に少なくとも1つの架橋剤と、
e) 任意に少なくとも1つの添加剤と、
を含むコーティング組成物である。
【0011】
上記の特定のコーティング組成物は、以下、本発明のコーティング組成物とも呼ばれ、したがって、本発明の主題である。本発明のコーティング組成物の好ましい実施形態は、以下の説明及び従属請求項から明らかである。
【0012】
先行技術に照らすと、本発明の基礎となる目的が、コーティング組成物に持続可能な顔料として再生カーボンブラック又はコーヒー挽粉又は茶を使用することによって達成され得ることは、当業者にとって、驚くべきことであり、予測不可能であった。再生カーボンブラック顔料の使用は、再生カーボンブラック顔料を含む顔料ペーストの使用と比較して、再生カーボンブラック顔料を粉末の形態で使用する場合はより明るい黒色のコーティング層が得られるため、得られるコーティング層の外観を調整することができる。さらに、再生カーボンブラック顔料の量を調整することにより、得られる色を調整することができる。本発明のコーティング組成物は、基材に関係なく、良好な外観、特に高い隠蔽力及び視覚的欠陥を含まない均一な外観、ならびに良好な機械的特性を有するコーティング層をもたらし、したがって、必要な機械的特性を有する審美的に魅力的なコーティング基材を提供することが可能である。さらに、持続可能な顔料は、水性及び溶媒ベースのコーティング組成物に組み込むことができ、したがって、コーティング組成物をそれぞれの顧客のニーズ及びコーティングプロセス(すなわち、ポストモールドコーティング、インモールドコーティング又は転写コーティングプロセス)に合わせることができる。
【0013】
本発明のさらなる主題は、コーティング組成物を製造するための方法であり、前記方法は、
(i) 再生カーボンブラック又はコーヒー挽粉又は茶から選択される少なくとも1つの顔料を提供すること、又は再生カーボンブラック顔料を含む顔料ペーストを提供することと、
(ii) ステップ(i)で提供された顔料又は顔料ペーストを、少なくとも1つのバインダー、少なくとも1つの溶媒、及び任意に少なくとも1つの架橋剤及び/又は少なくとも1つの添加剤に加えることと、
を含む。
【0014】
再生カーボンブラック顔料を使用してコーティング組成物を調製する場合、再生カーボンブラックを含む顔料ペーストの使用は、バージンカーボンブラック(すなわち廃棄物から製造されていないカーボンブラック)を含む現在使用されている黒色顔料ペーストに匹敵するより黒いコーティング層を得るが、「使用済み」の外観、すなわち、より明るい暗い色のコーティング層が基材上で得られる。さらに、コーティング層の色は、再生カーボンブラック顔料の量を変えることによって調整することができる。これにより、コーティングされた基材の最終的な外観を容易に適合させることができ、コーティングされた基材の外観を顧客のそれぞれのニーズに合わせることができる。
【0015】
本発明のさらなる主題は、基材(S)上にコーティング(B)を製造するための方法である。本発明の方法の第1の代替案によれば、基材(S)上にコーティング(B)を製造することは、本発明のコーティング組成物(C1)又は本発明の方法によって製造されたコーティング組成物(C1)を基材(S)に直接適用し、任意に塗布されたコーティング組成物(C1)を、コーティング膜を形成するために乾燥させ、塗布されたコーティング組成物(C1)又は形成されたコーティング膜を硬化させることによって、基材(S)上に直接カラーコーティング(BC)を製造するステップを含む。基材(S)が型を使用して製造された場合、このプロセスはポストモールドコーティングプロセスとも呼ばれる。
【0016】
本発明の方法の第2の代替案によれば、コーティング(B)が、本発明のコーティング組成物(C1)又は本発明の方法によって製造されたコーティング組成物(C1)を金型の少なくとも1つの内面に塗布し、塗布したコーティング組成物(C1)を任意に乾燥させるステップと、基材(S)を形成する組成物を型内に適用するステップと、コーティング組成物(C1)を同時に硬化させながら基材(S)を形成するステップと、を含むインモールドコーティングプロセスを介して、基材(S)上に製造される。
【0017】
本発明の方法の第3の代替案によれば、コーティング(B)が、本発明のコーティング組成物(C1)又は本発明の方法によって製造されたコーティング組成物(C1)を構造化マトリックス又は型に塗布し、塗布したコーティング組成物(C1)を硬化するステップと、硬化したコーティング組成物(C1)上に結合層を形成するステップと、結合層上に基材を適用するステップと、を含む転写コーティングプロセスを介して、基材(S)上に製造される。
【0018】
本発明の方法は、例えば自動車内装産業、履物産業及び家具産業で使用される多種多様な合成及び天然基材に適用可能である。
【0019】
本発明のさらなる主題は、本発明の方法によって製造されたコーティング、及び本発明のコーティングを有する基材である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細説明
定義
最初に、本発明の文脈で使用される多くの用語について説明する。
【0021】
本明細書で使用される文法上の冠詞「a」、「an」及び「the」は、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」が特定の場合に明示的に使用されている場合でも、別途示されない限り、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を含むことが意図されている。したがって、これらの冠詞は、文法上の冠詞の対象物の1つ以上(すなわち、「少なくとも1つ」)を指すために本明細書において使用される。例として、限定するものではないが、「1つの構成成分(a component)」とは、1つ以上の構成成分を意味し、したがって、可能性として、1つより多い構成成分が、企図され、記載されている実施形態の実施において利用又は使用されてよい。さらに、使用法の文脈上他に要求されない限り、単数名詞の使用は複数を含み、複数名詞の使用は単数を含む。
【0022】
明細書で使用される「水性コーティング組成物」という用語は、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、少なくとも20質量%、好ましくは少なくとも25質量%、非常に好ましくは少なくとも50質量%の水画分を含むコーティング組成物を指す。水画分は、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、好ましくは40~60質量%、より具体的には45~70質量%、非常に好ましくは50~80質量%である。対照的に、「溶媒ベースのコーティング組成物」という用語は、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、少なくとも20質量%、好ましくは少なくとも25質量%、非常に好ましくは少なくとも45質量%の有機溶媒の画分を含むコーティング組成物を指す。有機溶媒の画分は、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、好ましくは40~70質量%、より具体的には45~65質量%、非常に好ましくは50~60質量%である。
【0023】
本明細書で使用される「再生カーボンブラック顔料」という用語は、再生材料に由来するカーボンブラック顔料を指す。そのような再生材料は、回収された又は再生された加硫ゴムを含むことができ、加硫ゴムは、典型的には、空気タイヤ、産業コンベヤベルト、動力伝達ベルト、及びゴムホースなどの製造物品から回収される。再生カーボンブラックは、熱分解プロセス又は再生カーボンブラックを得るために知られている他の方法によって得られることができる。一態様では、再生カーボンブラックは、再生ゴム原料又はゴム物品の不完全燃焼から形成されることができる。再生カーボンブラック顔料は、好ましくは、粉末形態でコーティング組成物に利用される。対照的に、本明細書で使用される「バージンカーボンブラック又はバージンカーボンブラック顔料」という用語は、伝統的には炭化水素原料の不完全燃焼から形成されるカーボンブラック又はカーボンブラック顔料を指す。
【0024】
本明細書で使用される「コーヒー挽粉」という用語は、挽いたコーヒー豆を使用してコーヒーを淹れた後に得られる使用済みのコーヒー挽粉又は挽いたコーヒー豆、特に廃棄物として処分することを意図した挽いたコーヒー豆を指す。特に好ましくは、「コーヒー挽粉」という用語は、挽いたコーヒー豆を使用してコーヒーを淹れた後に得られるコーヒー挽粉を指す。
【0025】
本明細書で使用される「茶」という用語は、乾燥した茶葉、特に廃棄物として処分することを意図した乾燥茶葉、又は茶葉を淹れた後に得られる茶の残渣を指す。
【0026】
本明細書で使用される「顔料」という用語は、染料とは対照的に、周囲の媒体に不溶で、特定の視覚的印象を達成するためにコーティング組成物に使用される粉末状又は小板状顔料を指す(DIN 55943:1993-11,DIN EN 971-1:1996-09)。このような顔料は、a)その起源によって、天然由来顔料又は合成顔料に;b)その化学的性質によって、無機顔料及び有機顔料に;c)色彩効果によって、白色顔料、有色顔料、黒色顔料、及び光沢顔料に、分けられることができる。ただし、顔料という用語は、防錆顔料及び磁性顔料のような機能性顔料は含まない。対照的に、本明細書で使用される「フィラー」という用語は、周囲の媒体に不溶であって、特定の物理的特性を達成又は影響を与えるためにコーティング材料に使用される粒状又は粉末状の物質を指す(DIN 55943: 1993-11,DIN EN 971-1: 1996-09を参照)。
【0027】
本明細書で使用される「顔料ペースト」という用語は、担体材料(媒体)中の顔料調製物又は顔料混合物を指し、担持材料中では、顔料は後で使用するのに適切な濃度よりも高い濃度で存在する。適切な担体材料には、水性又は溶媒ベースのバインダー又はバインダー混合物が含まれ、バインダー又はバインダー混合物には、湿潤剤及び時には他の添加剤が加えられる。担体材料は、顔料ペーストが組み込まれる媒体と同一であるか、少なくともそれと適合している必要がある。
【0028】
本明細書で使用される「コーティング組成物を基材に直接塗布する」という用語は、コーティング組成物を基材に直接適塗布すること、すなわち、コーティング組成物から製造されたコーティング層が、製造されたコーティング層と基材との間に他の層が存在しないように、基材に直接接触していることを指す。
【0029】
本明細書で使用される塗布されたコーティング組成物(C1)の「乾燥」という用語は、塗布されたコーティング組成物(C1)からの溶媒の蒸発を指す。乾燥は、周囲温度で、又は高温の使用によって行われ得る。しかし、乾燥後のコーティング膜はまだ軟らかいか粘着性があるため、乾燥は、すぐに使用できるコーティング膜、すなわち後述の硬化されたコーティング膜をもたらすものではない。したがって、塗布されたコーティング組成物(C1)又は塗布されたコーティング組成物(C1)の乾燥によって得られるコーティング膜の「硬化」は、このような組成物又は膜をすぐに使用できる状態へ変換すること、すなわち、それぞれのコーティング層を与えられた基材を輸送、保管し、意図したように使用できる状態へ変換することを指す。より具体的には、硬化したコーティング層は、もはや軟らかくなく、粘着性がないが、硬化条件にさらに曝されても、硬度又は基材への接着性などの特性がさらに大幅に変化を受けない固体コーティング層として調整されたものである。硬化は、コーティング組成物(C1)の乾燥に使用されるものよりも高い温度及び/又は長い時間で実施されることができる。
【0030】
本発明の文脈において、また、DIN EN ISO 4618:2007-03に従って、「バインダー」は、顔料及びフィラーを含まない、コーティング組成物の不揮発性成分である。しかし、以下では、この表現は、主として特定の物理的及び/又は化学的に硬化可能なポリマーに関連して使用され、例として、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレア、ポリアクリレート、ポリシロキサン及び/又は述べられたポリマーのコポリマーである。不揮発性画分は、1.0gの開始質量を使用して130℃で60分間、DIN EN ISO 3251:2018-07に従って決定されることができる。
【0031】
「ポリ(メタ)アクリレート」という用語は、ポリアクリレートとポリメタクリレートの両方を指す。したがって、ポリ(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートから構成され、例えば、スチレン又はアクリル酸などのさらなるエチレン性不飽和モノマーを含んでよい。
【0032】
特定の特性変数を決定するための、本発明の文脈で使用される測定方法は、「実施例」のセクションに見出すことができる。
【0033】
特に明記しない限り、これらの測定方法は、それぞれの特性変数を決定するために使用される。本発明の文脈で、公式の有効期間を示すことなく公式の規格を参照する場合、参照は、出願日に有効な規格のバージョン、又はその時点で有効なバージョンがない場合は、最後に有効なバージョンを暗黙のうちに示す。
【0034】
本発明の文脈で報告されるすべての膜厚は、乾燥膜厚として理解されるべきである。したがって、それはそれぞれの場合において硬化膜の厚さである。したがって、コーティング材料が特定の膜厚で塗布されると報告されている場合、これは、コーティング材料が硬化後に示された膜厚になるように塗布されることを意味する。
【0035】
本発明の文脈で説明されたすべての温度は、基材又はコーティングされた基材が配置されている部屋の温度として理解されるべきである。したがって、基材自体が当該温度を有することが必要であることを意味するものではない。
【0036】
本発明のコーティング組成物:
本発明のコーティング組成物は、必須成分として、少なくとも1つのバインダーと、再生カーボンブラック又はコーヒー挽粉から選択される少なくとも1つの顔料と、少なくとも1つの溶媒とを含む。コーティング組成物は、基材上でのコーティング組成物のレベリング、コーティング組成物中の顔料の分散を容易にし、及び、コーティング組成物のカビを防止するために、後述する少なくとも1つの添加剤をさらに含むことができる。さらに、コーティング組成物は、バインダーの架橋を促進にするために、少なくとも1つの架橋剤を含むことができる。
【0037】
バインダー:
本発明のコーティング組成物の第1の必須成分は、少なくとも1つのバインダーである。特に好ましくは、少なくとも1つのバインダーは、「物理的に」又は「化学的に」硬化される。「物理的に硬化する」という用語は、水性コーティング組成物からの溶媒の放出による硬化したコーティング膜の形成を指し、硬化はポリマー鎖の相互ループによって達成される。したがって、このようなバインダーの使用には、架橋剤の存在を不要にする。対照的に、「化学的に硬化する」という用語は、互いに反応可能な官能基を含む化学的架橋反応によって硬化したコーティング膜を形成することを指す。これは、ヒドロキシル基などの官能基を有するバインダーと、イソシアネート基などのバインダーの官能基と反応可能な相補的官能基を有する架橋剤を使用することによって達成され得る。しかしながら、架橋を促進するために別の架橋剤を使用する必要がないように、官能基及び相補的官能基を含むバインダーを使用することも可能である。架橋剤又はバインダーの相補的官能基は、貯蔵安定な一成分コーティング組成物を得ることができるように、キャップされることができる。エンドキャッピングの時に、架橋剤又はバインダーの相補的官能基が、架橋を促進するために解放される。
【0038】
適切なバインダーは、(i)ポリ(メタ)アクリレート、より具体的にはヒドロキシ官能性及び/又はカルボキシレート官能性及び/又はアミン官能性のポリ(メタ)アクリレート、(ii)ポリウレタン、より具体的にはヒドロキシ官能性及び/又はカルボキシレート官能性及び/又はアミン官能性のポリウレタン、(iii)ポリエステル、より具体的にはポリエステルポリオール、(iv)ポリエーテル、より具体的にはポリエーテルポリオール、(v)述べられたポリマーのコポリマー、(vi)これらの混合物が挙げられる。特に好ましくは、少なくとも1つのバインダーは、ポリウレタンと、ポリウレタン樹脂を含有するポリウレタン樹脂画分を含有する分散液、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリオール及びこれらの混合物から選択される。これらのバインダーを使用すると、履物産業で使用されるフォーム基材などの柔軟な基材に特に適した柔軟なコーティング層が得られる。
【0039】
ポリウレタン(PU)は一般的な知識であり、市販されており、比較的高分子量のポリヒドロキシ化合物、例えばポリカーボネート、ポリエステル又はポリエーテルのセグメントの軟質相と、低分子量の鎖延長剤及びジ-又はポリイソシアネートから形成されるウレタン硬質相とからなる。ポリウレタン(PU)を調製するためのプロセスは、一般的な知識である。一般に、ポリウレタン(PU)は、
(a) イソシアネート、好ましくはジイソシアネートと、
(b) イソシアネート反応性化合物であって、典型的には、500~10000g/molの範囲、好ましくは500~5000g/molの範囲、より好ましくは800~3000g/molの範囲の分子量(Mw)を有するイソシアネート反応性化合物と、
(c)50~499g/モルの範囲の分子量を有する鎖延長剤との反応を、適切な場合は、
(d) 触媒
(e) 及び/又は慣例の添加剤材料
の存在下で行うことによって、調製される。
【0040】
以下では、好ましいポリウレタン(PU)を調製するための出発成分及びプロセスを、例として説明する。ポリウレタン(PU)の調製に慣用的に使用される成分(a)、(b)、(c)、及び適切な場合には(d)及び/又は(e)を、例として説明する。
【0041】
イソシアネート(a)としては、一般に知られている脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族イソシアネート、例えばトリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2-エチルブチレン1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、ブチレン1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-及び/又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,4-及び/又は-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート及び/又は4,4'-、2,4'-及び2,2'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2'-、2,4'及び/又は4.4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、2,4-及び/又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'-ジメチルビフェニルジイソシアネート、1,2-ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネートが使用され得る。4,4'-MDIを使用することが好ましい。脂肪族ジイソシアネート、特にヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)も好ましい、芳香族ジイソシアネート、例えば2,2'-、2,4'及び/又は4.4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及び前述の異性体の混合物が特に望ましい。
【0042】
イソシアネート反応性化合物(b)として、一般に知られているイソシアネート反応性化合物、例えば、ポリエステロール、ポリエーテルオール及び/又はポリカーボネートジオールが使用され得、これらは通常、「ポリオール」という用語の分類に属され、500~8000g/molの範囲、好ましくは600~6000g/molの範囲、特に800~3000g/mの範囲の分子量(Mw)を有し、及びイソシアネートに対して好ましくは1.8~2.3、好ましくは1.9~2.2、特に2の平均官能価を有する。好ましくは、ポリエーテルポリオール、例えば、一般に知られている出発物質と、通常のアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド及び/又は1,2-ブチレンオキシド、好ましくは、ポリオキシテトラメチレン(ポリTHF)、1,2-プロピレンオキシド及びエチレンオキシドとをベースとするポリエーテルオールが使用される。ポリエーテルオールは、ポリエステルオールよりも高い加水分解安定性を有する利点を有し、特に軟質ポリウレタンであるポリウレタン(PU1)を調製するための成分(b)として好ましく使用される。
【0043】
ポリカーボネートジオールとして、特に脂肪族ポリカーボネートジオール、例えば1,4-ブタンジオールポリカーボネート及び1,6-ヘキサンジオールポリカーボネートが挙げられる。
【0044】
ポリエステルジオールとして、少なくとも1つの第一級ジオール、好ましくは少なくとも1つの第一級脂肪族ジオール、例えばエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール又はより好ましくは1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサン(異性体混合物として)又は前述のジオールの少なくとも2つの混合物と、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つのジカルボン酸又はその無水物との重縮合によって得られ得るものが挙げられる。好ましいジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、グルタル酸、コハク酸、及び芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、特にイソフタル酸などである。
【0045】
ポリエーテルオールは、好ましくは、アルキレンオキシド、特にエチレンオキシド、プロピレンオキシド及びそれらの混合物を、高活性触媒の存在下で、ジオール、例えばエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオールなどに、又はトリオール、例えばグリセリンなどに、付加することによって調製される。このような高活性触媒は、例えば、水酸化セシウム及び二重金属シアン化物触媒(DMC触媒とも知られる)である。ヘキサシアノコバルト酸亜鉛は、しばしば使用されるDMC触媒である。DMC触媒は、反応後にポリエーテルオール中に残すことができるが、有利には、例えば沈降又は濾過によって除去される。
【0046】
1つのポリオールの代わりに、種々のポリオールの混合物を使用することができる。
【0047】
分散性を改善するために、イソシアネート反応性化合物(b)はまた、カルボン酸基又はスルホン酸基(b’)を有する1つ以上のジオール又はジアミン、特に1,1-ジメチロールブタン酸、1,1-ジメチロールプロピオン酸又は
【化1】
のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の割合を含むことができる。
【0048】
有用な鎖延長剤(c)には、50~499g/molの範囲の分子量と、少なくとも2個の官能基とを有する一般に知られている脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び/又は脂環式化合物、好ましくは1分子当たり正確に2個の官能基を有する化合物が挙げられ、例えば、ジアミン及び/又はアルキレン基中に2~10個の炭素原子を有するアルカンジオール、特に1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及び/又は1分子当たり3~8個の炭素原子を有するジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-、オクタ-、ノナ-及び/もしくはデカアルキレングリコール、好ましくは、対応するオリゴ-及び/又はポリプロピレングリコールであり、鎖延長剤(c)の混合物も使用されることができる。
【0049】
成分(a)~(c)が、二官能性化合物、すなわちジイソシアネート(a)、二官能性ポリオール、好ましくはポリエーテルオール(b)、二官能性鎖延長剤、好ましくはジオールを含むのが特に好ましい。
【0050】
特にジイソシアネート(a)のNCO基と、ビルディングブロック成分(b)及び(c)のヒドロキシル基との間の反応を促進する有用な触媒(d)は、通常の第三級アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、2-(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(「DABCO」)及び類似の第三級アミンなど、ならびに特に有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物、例えば鉄(III)アセチルアセトネートなど、スズ化合物、例えばスズジアセテート、スズジオクトエート、スズジラウレート又は脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩、例えばジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートなど等である。触媒は、典型的に、成分(b)100質量部当たり、0.0001~0.1質量部の量で使用される。
【0051】
触媒(d)と同様に、助剤及び/又は添加剤(e)を成分(a)~(c)に添加することもできる。例えば発泡剤、ブロッキング防止剤、表面活性物質、フィラー、例えばナノ粒子をベースとするフィラー、特にCaCOをベースとするフィラー、核形成剤、スリップ剤、染料及び顔料、酸化防止剤(例えば加水分解、光、熱もしくは変色に対する)、無機及び/もしくは有機フィラー、補強剤ならびに可塑剤、金属不活性化剤を挙げることができる。好ましい実施形態においては、成分(e)には、加水分解安定剤、例えばポリマー及び低分子量のカルボジイミドなどが含まれる。軟質ポリウレタンは、好ましくは、当該軟質ポリウレタンの総質量に基づいて0.1%~5質量%の量のトリアゾール及び/又はトリアゾール誘導体ならびに酸化防止剤を含む。有用な酸化防止剤は、一般に、保護されるべきプラスチック材料での望ましくない酸化プロセスを抑制又は防止する物質である。一般に、酸化防止剤は市販されている。酸化防止剤の例は、立体障害フェノール、芳香族アミン、チオ相乗剤、三価のリンの有機リン化合物及びヒンダードアミン光安定剤である。フェノール系酸化防止剤が、酸化防止剤混合物中での使用に好ましい。好ましい実施形態において、酸化防止剤、特にフェノール系酸化防止剤は、350g/molを上回り、より好ましくは700g/molを上回るモル質量と、10000g/mol以下、好ましくは3000g/mol以下までの最大モル質量(Mw)を有する。それらはさらに好ましくは、180℃以下の融点を有する。非晶質又は液体である酸化防止剤を使用することがさらに好ましい。2つ以上の酸化防止剤の混合物も同様に成分(e)として使用されることができる。
【0052】
特定の成分(a)、(b)及び(c)、ならびに場合により(d)及び(e)と同様に、通常、31~3000g/molの分子量を有する連鎖調節剤(連鎖停止剤)も使用されることができる。このような連鎖調節剤は、イソシアネート反応性官能基を1つだけ有する化合物、例えば、単官能アルコール、単官能アミン及び/又は単官能ポリオールなどが挙げられる。このような連鎖調節剤により、特に軟質ポリウレタンの場合、流動挙動を特定の値に調整することができる。連鎖調節剤は、一般に、成分(b)100質量部に基づいて、0~5質量部、好ましくは0.1~1質量部の量、及び成分(c)内の定義により、使用されることができる。
【0053】
特定の成分(a)、(b)及び(c)、ならびに場合により(d)及び(e)と同様に、ポリウレタン形成反応の終了に向かう2つ以上のイソシアネート反応性基を有する架橋剤、例えばヒドラジン水和物を使用することも可能である。
【0054】
ポリウレタン(PU)の硬度を調整するために、成分(b)及び(c)は、比較的広いモル比の範囲で選択されることができる。成分(b)と全鎖延長剤(c)のモル比は、10:1~1:10の範囲、特に1:1~1:4の範囲が有用であり、軟質ポリウレタンの硬度は(c)の含量が増大するにつれて上昇する。ポリウレタン(PU)を製造するための反応は、0.8~1.4:1の範囲の指数、好ましくは0.9~1.2:1の範囲の指数、より好ましくは1.05~1.2:1の範囲の指数で行われることができる。指数は、反応に使用される成分(a)の全イソシアネート基と、イソシアネート反応性基、すなわち、成分(b)及び場合により(c)、及び場合により例えば連鎖停止剤として単官能性イソシアネート反応性成分、例えばモノアルコールなどの活性水素との比率によって定義される。
【0055】
ポリウレタン(PU)は、従来のプロセスによって、例えばワンショット法もしくはプレポリマー法によって連続的に、又は従来のプレポリマー操作によってバッチ式に、調製されることができる。これらの方法においては、反応成分(a)、(b)、(c)、ならびに場合により(d)及び/又は(e)を連続的に又は同時に混合することができ、反応は直ちに起こる。
【0056】
一実施形態では、2つの異なるポリウレタン(すなわち、ポリウレタン(PU1)及びポリウレタン(PU2))がバインダーとして使用され、ポリウレタン(PU1)は60未満のショア硬度を有する軟質ポリウレタンであり、ポリウレタン(PU2)は60~100のショア硬度を有する硬質ポリウレタンである。ショア硬度は、DIN 53505:2000-08に従って、3秒後に決定されることができる。
【0057】
軟質ポリウレタン(PU1)は、ポリウレタン(PU)との関連で前述したように調製されることができる。硬質ポリウレタン(PU2)は、原理的には軟質ポリウレタン(PU1)と同様に調製され得るが、他のイソシアネート反応性化合物(b)、イソシアネート反応性化合物(b)の他の混合物、又はポリイソシアネートの他の比率が使用される。そのような化合物(b)の例は、特に1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及びネオペンチルグリコールであり、互いに混合されているか、又はポリエチレングリコールと混合されている。一例では、(PU1)及び(PU2)はそれぞれ、ジイソシアネートの混合物、例えばHDIとIPDIの混合物を使用して調製されるが、軟質ポリウレタン(PU1)の調製よりもIPDIのより大きな割合が硬質ポリウレタン(PU2)の調製のために選択される。
【0058】
少なくとも1つのポリウレタン樹脂を含有するポリウレタン樹脂画分を含む適切な分散液(以下、分散液(1)と表記する)は、少なくとも50質量%のポリウレタン樹脂画分のゲル画分、20℃未満のガラス転移温度、100℃未満の温度での融解転移を有するポリウレタン樹脂画分を含有する水性分散液を含む。
【0059】
好ましくは、ポリウレタン樹脂画分のゲル画分は少なくとも55質量%、特に100質量%まで、例えば98質量%又は99質量%(測定方法については実施例のセクションを参照)であり、すなわちポリウレタン樹脂画分を構成するポリマー粒子は少なくとも部分的に分子内架橋されている。後者は、粒子内に存在するポリマー構造が、3次元ネットワーク構造を有する典型的な巨視的ネットワークと少なくとも部分的に等しいことを意味する。粒子は、部分的に互いに架橋ブリッジを形成することができるが(実際には、調製プロセスから単純に除外することはできない)、システムは、いずれにしても、測定可能な粒子径を有する離散粒子が存在する分散体である。
【0060】
好ましくは、ポリウレタン樹脂画分は、-100℃~-20℃未満、非常に好ましくは-90~-40℃の温度でそのガラス転移を有し、-20℃~90℃未満、非常に好ましくは-15℃~80℃未満(測定方法については実施例のセクションを参照)の温度でその溶融転移を有し、したがって半晶質性を有する(すなわち、ガラス転移温度を有する非晶質ドメインと溶融転移を示す結晶性ドメインを有する)。したがって、ポリウレタン樹脂画分は、半結晶性であるポリウレタン樹脂を含むことができ、及び/又は、高結晶性ポリウレタン樹脂と非晶性ポリウレタン樹脂の両方を含む。
【0061】
分散媒体は、好ましくは水であり、すなわち、分散液(1)は水性分散液である。ポリウレタン樹脂粒子の粒径は、好ましくは1~100μmである。粒径は、分散液中に存在する粒度分布(分布曲線、体積密度)を指し、平均粒径を指すものではない。分布曲線(体積密度)は、レーザー回折によって決定されることができ、対応する範囲内のサイズ分布を最適に捉えることができる。本発明の目的のために、Mastersizer 3000粒径測定器(Malvern Instruments社製)を用いて測定が行われた。測定に適した濃度範囲を設定するために、サンプルは、粒子を含まない脱イオン水を分散媒として希釈され(屈折率:1.33)、オブスキュレーションを各サンプルに応じて3%~15%に設定し、Hydro 2000G分散ユニット(Malvern Instruments社製)で測定を行った。測定は、30001/分の撹拌速度で行われ、測定前にこの速度で5分間平衡化した。体積加重サイズ分布は、Malvern Instrumentsのソフトウェア(バージョン5.60)を用いて、フラウンホーファー近似によって算出した。
【0062】
好ましくは、分散液(1)は、ポリウレタン樹脂画分の総質量に基づいて、1マイクロメートルを超える、好ましくは1~100マイクロメートルの粒径を有するポリウレタン樹脂粒子を少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも20質量%、より好ましくは少なくとも30質量%、及び非常に好ましくは少なくとも50質量%含む。分散粒子の形態で存在する少なくとも1つのポリウレタン樹脂からなるポリウレタン樹脂画分は、したがって、このようなサイズを有する粒子を少なくとも10質量%(又は少なくとも20質量%、30質量%、50質量%)含む。
【0063】
分散液(1)のポリウレタン樹脂画分は、好ましくは、例えばポリイソシアネートなどのイソシアネート基を含む成分によってわずかな効率でのみ熱化学的に硬化する。これは、分散液の対応するポリウレタン樹脂と、イソシアネート基を含有する成分を組み合わせることによって、典型的な熱化学的に硬化したコーティングを形成することが不可能であることを意味する。したがって、ポリウレタン樹脂画分中の少なくとも1つのポリウレタン樹脂は、好ましくは、先に上述したような架橋条件下でイソシアネート基との架橋反応を開始できる官能基を少量だけ有する。
【0064】
ポリウレタン樹脂画分を構成するポリウレタン樹脂の調製において、調製のための出発生成物の量は、好ましくは、イソシアネート基と架橋反応を開始できる官能基、より具体的にはヒドロキシル基及びアミノ基の合計モル量に対するイソシアネート基の合計モル量の比率が、0.9よりも大きいように、選択される。より好ましくは、記載された比率は0.95より大きく、特に少なくとも1.0、非常に好ましくは正確に1.0である。
【0065】
ポリウレタン樹脂画分は、好ましくは、潜在的にイオン性の基、例えば潜在的にアニオン性の基、好ましくはカルボン酸基又はスルホン酸基、特にカルボン酸基を含む。このような基は、水性分散液の形成に有利であることが知られている。したがって、ポリウレタン樹脂画分を構成するポリウレタン樹脂の調製においては、ウレタン結合の調製における反応のための基、好ましくはヒドロキシル基及び/又はアミノ基と同様に、カルボン酸基又はスルホン酸基も含むモノマーを使用することが好ましい。このようにして、対象の基がプレポリマーに導入される。この文脈で好ましい化合物の例は、2つのヒドロキシル基又は2つのアミノ基を含有するモノカルボン酸、例えばジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシコハク酸、及びジヒドロキシ安息香酸など、ならびにN-(2-アミノエチル)-2-アミノエタンカルボン酸及びN-(2-アミノエチル)-2-アミノエタンスルホン酸を含む。特に好ましいのは、α,α-ジメチロールアルカン酸、例えば2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロール酪酸、及び2,2-ジメチロールペンタン酸、特に2,2-ジメチロールプロピオン酸、ならびにN-(2-アミノエチル)-2-アミノエタンカルボン酸である。既に上で特定された中和剤を使用した、記載された基の制御された少なくとも比例的な中和は、当然ながら同様に可能である。
【0066】
分散液(1)中のポリウレタン樹脂画分の画分は、分散液の総量に基づいて、それぞれの場合に、好ましくは15~60質量%、好ましくは20~50質量%であり、分散液中の水の画分は、分散液の総量に基づいて、それぞれの場合に、好ましくは40~85質量%、好ましくは50~80質量%である。分散液中のポリウレタン樹脂画分と水画分との画分の合計は、好ましくは少なくとも75質量%、好ましくは少なくとも85質量%である。
【0067】
分散液(1)は、当業者に公知の方法、例えば、ポリウレタン樹脂の調製のための有機溶媒中の対応する出発成分の反応と、その後の水相中への分散と、有機溶媒の除去とによって調製されることができる。対応する分散液(1)は、例えば、商品名Novomatt GG(Stahl B.V.社製)で市販されている。
【0068】
少なくとも1つのポリウレタン樹脂、特に正確に1つのポリウレタン樹脂を含有するポリウレタン樹脂画分を含有するさらに適切な分散液(以下、分散液(2)と表記し、先に述べた分散液(1)とは異なる)は、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも60質量%、特に好ましくは少なくとも75質量%のゲル画分を有するポリウレタン樹脂画分を含有する水性分散液である。
【0069】
分散液(2)のポリウレタン樹脂画分の平均粒径(体積平均)は、好ましくは20~500ナノメートル、より好ましくは40~300ナノメートルである。これは、DIN EN ISO 11357-1に従って、Malvern Nano S90装置(Malvern Instruments社製)を25±1℃で使用した光子相関分光法(PCS)により測定され得、デジタル相関器を使用して、Zetasizer分析ソフトウェアバージョン6.32の支援により評価され得、測定値は50~3000nmの認証粒径を有するポリスチレン標準を使用して検証され得る。
【0070】
分散液(2)のポリウレタン樹脂画分は、好ましくは、0℃未満の温度でガラス転移を示す。ガラス転移は、好ましくは-100℃~-20℃の範囲、より好ましくは-80℃~-30℃の範囲である。
【0071】
さらにより好ましくは、分散液(2)のポリウレタン樹脂画分は、100℃未満の範囲に融解転移を示さず、したがって、純粋に非晶質の特徴を有する。
【0072】
分散液(2)のポリウレタン樹脂画分は、好ましくは、ポリイソシアネートなどのイソシアネート基含有成分で効果的に熱化学的に硬化されない。したがって、分散液(2)のポリウレタン樹脂画分のヒドロキシル基価及びアミン価が、20未満である場合が好ましい。
【0073】
ポリウレタン樹脂画分を構成する分散液(2)のポリウレタン樹脂の調製において、調製のための出発生成物の量は、好ましくは、イソシアネート基と架橋反応を開始できる官能基、より具体的にはヒドロキシル価及びアミノ価の総モル量に対するイソシアネート基の総モル量の比率が0.9以上を超えるように、選択される。より好ましくは、前述の比率は、0.95を超え、より具体的には少なくとも1.0、非常に好ましくは正確に1.0である。
【0074】
分散液(2)のポリウレタン樹脂画分は、好ましくは、潜在的にイオン性の基、例えば潜在的にアニオン性の基、好ましくはカルボン酸基又はスルホン酸基を含む。
【0075】
親ポリウレタン樹脂は、好ましくは以下のように調製される。有機溶液中で、(i)イソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマーを調製し、(ii)このプレポリマーを、プレポリマーが水相に分散される前、分散される間、又は分散された後に、2つのアミノ基を含有するモノカルボン酸と反応させる。このようにして、潜在的にアニオン性の基もまたポリマーに組み込まれる。分散の前、間、又は後に、任意に、鎖延長のためにさらなる典型的なジアミンとの反応が行われてよい。2つのアミノ基を含有し、また好ましく使用されるモノカルボン酸は、N-(2-アミノエチル)-2-アミノ-エタンカルボン酸及びN-(2-アミノエチル)-2-アミノ-エタンスルホン酸である。実施例において使用される分散液(3)もまた、このように調製された。
【0076】
分散液(2)中のポリウレタン樹脂画分の画分は、分散液(3)の総量に基づいて、それぞれの場合に、好ましくは25~55質量%、好ましくは30~50質量%であり、分散液(2)中の水の画分は、分散液の総量に基づいて、それぞれの場合に、好ましくは45~75質量%、好ましくは50~70質量%である。分散液(2)中のポリウレタン樹脂画分と水画分との画分の合計は、好ましくは少なくとも75質量%、好ましくは少なくとも85質量%である。
【0077】
この種の分散液(2)も、例えば、Bayhydrol UH(Bayer社製)の商品名で市販されている。
【0078】
適切なポリ(メタ)アクリレートには、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが含まれる。これらのヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、好ましくは65~100mgKOH/g、より好ましくは70~95mgKOH/g、より具体的には75~90mgKOH/g又は80~85mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。本発明の文脈におけるヒドロキシル価は、EN ISO 46292:2016に従って決定されることができ、各場合において固形分に基づく。
【0079】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、好ましくは25mgKOH/g未満の酸価、より好ましくは1~20mgKOH/gの酸価、非常に好ましくは4~16mgKOH/gの酸価、より具体的には6~14mgKOH/g又は8~12mgKOH/gの酸価を有する。本発明の目的のための酸価は、DIN EN ISO 2114:200206(方法A)に従って決定されることができ、各場合において固形分に基づく。
【0080】
数平均分子量Mn及び質量平均分子量Mwは、ポリメチルメタクリレート標準(PMMA標準)(DIN 556721:201603)を用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用することによって決定されてよい。ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの数平均分子量Mnは、好ましくは4000~10000g/mol、より好ましくは5000~9000g/mol、非常に好ましくは5500~8000g/mol、より具体的には6000~7500g/molの範囲である。ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの質量平均分子量Mwは、好ましくは8000~30000g/mol、より好ましくは10000~25000g/mol、非常に好ましくは12000~22000g/mol、より具体的には14000~20000g/molの範囲である。
【0081】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの多分散性PD(=Mw/Mn)は、好ましくは2~3、より具体的には2.2~2.8の範囲にある。
【0082】
ヒドロキシル基官能性ポリ(メタ)アクリレートは、好ましくは5~15、より好ましくは6~14、より具体的には8~12のヒドロキシル官能価を有する。
【0083】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、当業者にとって一般的でよく知られている、エチレン性不飽和モノマー、好ましくはモノエチレン性不飽和モノマーからの重合反応により、得ることができる。使用され得る開始剤は、例えばジ-tert-ブチルペルオキシドなどの過酸化物を含む。したがって、好ましくは、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、
(a1) 少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル、より具体的には式HC=CRx-COO-Ry-OH(式中、RxはH又はCHであり、Ryは2~6、好ましくは2~4、より好ましくは2又は3の炭素原子を有するアルキレンラジカルである)の(メタ)アクリル酸エステル、
(a2) 少なくとも1つのカルボキシ官能性エチレン性不飽和モノマー、より具体的には(メタ)アクリル酸、及び
(a3) 少なくとも1つの(メタ)アクリル酸のヒドロキシル不含及びカルボキシル不含エステル及び/又は少なくとも1つのヒドロキシル不含及びカルボキシル不含ビニルモノマー、より具体的にはスチレン、
の反応により調製される。
【0084】
ヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル(a1)の例としては、好ましくはヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、及びヒドロキシプロピルアクリレート、特に好ましくヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレートである。ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートを調製するのに使用されるヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル(a1)の量は、50~120mgKOH/gのヒドロキシル価の目標範囲に基づいて計算される。
【0085】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、少量のカルボキシル基を好ましくは含有する。これらの基は、例えばカルボキシ官能性モノマー(a2)、より好ましくはアクリル酸及び/又はメタクリル酸の使用を通じて、重合反応中にポリ(メタ)アクリレートに導入される。これらのモノマー(a2)、特に(メタ)アクリル酸は、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの調製に使用される全てのモノマーの総質量に基づいて、それぞれの場合に、好ましくは20~45質量%、より好ましくは25~40質量%、より具体的には30~35質量%の総量で存在する。
【0086】
ヒドロキシ官能性(a1)及びカルボキシ官能性(a2)エチレン性不飽和モノマーの他に、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートを調整する場合は、エチレン性不飽和モノマー(a3)、より詳細にはモノエチレン性不飽和モノマー(a3)も使用され、これらのモノマーはヒドロキシル及びカルボキシル基の両方を含まない。ビニルモノマー(a3)として特に好ましく使用されるのは、スチレンである。ビニルモノマー(a3)、より詳細にはスチレンは、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの調製に使用される全てのモノマーの総質量に基づいて、それぞれの場合に、好ましくは30~60質量%、より好ましくは35~55質量%、より具体的には40~50質量%の総量で存在する。
【0087】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、有機溶媒、好ましくは非プロトン性溶媒中で使用されてよい。この目的のための典型的な溶媒は、例えば酢酸n-ブチルであり、これは少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートを調製する際にも使用され得る。ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが溶媒中で使用される場合、溶媒は、溶媒Lの一部とみなされる。
【0088】
適切なポリエステルポリオールは、固形分に基づいて、それぞれの場合に、100~200mgKOH/g、より好ましくは110~180mgKOH/g、非常に好ましくは120~160mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。
【0089】
ポリエステルポリオールの酸価は、固形分に基づいて、それぞれの場合に、好ましくは0~9mgKOH/g、より具体的には0.2~2mgKOH/gである。ポリエステルポリオールのヒドロキシル価及び酸価は、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートと関連して、上記のように決定され得る。
【0090】
ポリエステルポリオールの数平均分子量は、好ましくは800~3000g/mol、より好ましくは1000~2000g/mol、より具体的には1000~1600g/molの範囲である。ここでの決定は、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの分子量の決定に関連して行われる。
【0091】
ポリエステルポリオールは、好ましくは分岐している。
【0092】
ポリエステルポリオールは、好ましくは2.2~4、より好ましくは2.5~3.5、非常に好ましくは2.7~3.3のヒドロキシル官能価を有している。
【0093】
コーティング組成物は、単一のバインダー又はバインダーの混合物を含むことができる。コーティング組成物がバインダーの混合物を含む場合、バインダーは、同じ化学タイプ(例えば少なくとも2つのポリウレタン)から選択されてよく、又は異なる化学タイプ(例えばポリ(メタ)アクリレート及びポリエステルポリオール)から選択されてもよい。コーティング組成物が、2つの異なるバインダー、好ましくは2つの異なるポリウレタンP1及びP2、又は2つの異なるポリウレタン樹脂画分、又はヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレート及びポリエステルポリオールを含む場合は、有益であり得る。この点に関して、コーティング組成物が、1:1~1:20、好ましくは1:5~1:15、非常に好ましくは1:8~1:12の軟質ポリウレタン(PU1)と硬質ポリウレタン(PU2)の質量比を有して場合は好ましくあり得る。水性分散液(1)中の樹脂画分と水性分散液(2)中の第2ポリウレタン樹脂画分との質量比が、5:1~1:5、好ましくは3:1~1:3、非常に好ましくは2:1~5:1である場合はさらに好ましくあり得る。ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートとポリエステルポリオールの質量比が2:1~1:2、好ましくは1.5:1~1:1.5、非常に好ましくは1:1.2~1:1.4である場合はさらに好ましくあり得る。
【0094】
少なくとも1つのバインダーは、好ましくは、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合において、5~50質量%の固形分、好ましくは10~40質量%の固形分、非常に好ましくは20~35質量%の固形分の総量で存在する。
顔料:
本発明のコーティング組成物の第2の必須成分は、再生カーボンブラック又はコーヒー挽粉又は茶から選択された少なくとも1つの持続可能な顔料である。これらの持続可能な顔料の使用は、使用される顔料が、炭素原料又は石油芳香族化学の使用の代わりに廃棄物から製造されるため、より生態学的にカラーコーティング層を製造することを可能にする。
【0095】
再生カーボンブラック顔料は、先に述べたように、熱分解プロセス又は再生カーボンブラックを得るために知られている他の方法によって、空気タイヤ、産業コンベヤベルト、動力伝達ベルト、ゴムホースなどの再生製品から調製されることができる。再生カーボンブラック顔料は、好ましくは、粉末の形態で使用され、粉末は、所望の粒径を達成するために、使用前に粉砕することができる。好ましくは、再生カーボンブラックは、1~150μm、より好ましくは5~35μm、さらに好ましくは10~30μm、非常に好ましくは15~25μmのD50の粒径を有する。粒径は、DIN EN ISO 21363:2022-03に従って透過型電子顕微鏡を使用して決定され得る。前述の粒径を有する再生カーボンブラック顔料の使用は、コーティング組成物中の顔料の均一な分散を可能にし、カラーコーティング層の均一な外観、ならびにコーティング組成物から得られるカラーコーティング層の高い隠蔽力を確かにする。
【0096】
再生カーボンブラック顔料は、コーティング組成物中に粉末の形態で分散させてよいし、本発明のコーティング組成物の調製方法に関連して後述するように、顔料ペーストの形態でコーティング組成物中に組み込まれてよい。再生カーボンブラック顔料が粉末の形態で分散されている場合、得られるコーティング層は、「使用された外観」、すなわち、カーボンブラック顔料を含む顔料ペーストを使用した場合に達成されるよりも明るい黒色を有し、したがって、コーティングされた基材の外観を調整することができる。コーティング組成物中の再生カーボンブラック顔料の適切な総量は、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、0.1~10質量%、好ましくは0.3~8質量%、より好ましくは0.5~6質量%、非常に好ましくは1~4質量%の量を含む。
【0097】
コーヒー挽粉顔料は、好ましくは、乾燥したコーヒー挽粉顔料である。乾燥コーヒー挽粉顔料の使用は、コーティング組成物、特に水性コーティング組成物の向上した安定性、及び/又は得られるコーティング層のカビ発生時間に関して有益である。乾燥コーヒー挽粉顔料は、コーヒー粉を40~180℃、好ましくは60~120℃、非常に好ましくは120℃の温度で、1~3時間の時間乾燥させ、乾燥したコーヒー粉を粉砕することによって得ることができる。より高い乾燥温度は、先に述べた改善されたカビの発生時間に関して有益であることが見出されている。乾燥コーヒー挽粉顔料は、好ましくは、50~450μm、好ましくは100~400μm、より好ましくは120~350μm、非常に好ましくは150~300μmのD50の粒径に粉砕される。平均粒径は、DIN EN ISO 1524:2020-11に従って決定され得る。
【0098】
コーティング組成物中のコーヒー挽粉、好ましくは乾燥コーヒー挽粉の適切な総量は、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、コーティング組成物中に0.1~25質量%、好ましくは1~20質量%、より好ましくは5~15質量%、非常に好ましくは8~12質量%含まれる。
【0099】
茶顔料は、好ましくは、乾燥及び粉砕された緑茶、紅茶又はルイボスティー顔料から選択される。茶葉の乾燥は、好ましくは、乾燥コーヒー挽粉顔料を得ることに関連して前述したように実施される。乾燥茶葉は、好ましくは、50~450μm、好ましくは100~400μm、より好ましくは120~350μm、非常に好ましくは150~300μmのD50の粒径に粉砕される。平均粒径は、DIN EN ISO 1524:2020-11に従って決定され得る。
【0100】
コーティング組成物中の茶顔料、好ましくは乾燥及び粉砕された緑茶、紅茶又はルイボスティー顔料の適切な総量は、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合において0.1~25質量%、好ましくは1~20質量%、より好ましくは5~15質量%、非常に好ましくは8~12質量%含まれる。
【0101】
特に好ましい実施形態によれば、コーティング(再生カーボンブラック顔料又はコーヒー挽粉顔料又は茶顔料の他に)は、コーティング組成物の総質量に基づいて、0質量%のさらなる顔料及び/又はフィラー及び/又は染料を含む。したがって、特に好ましいコーティング組成物は、再生カーボンブラック顔料又はコーヒー挽粉顔料又は茶顔料、好ましくは乾燥コーヒー挽粉顔料又は乾燥茶顔料を単独顔料としてのみ含み、すなわち、着色が完全に持続可能な顔料に基づいていることを確実にするために、コーティング組成物中にさらなる顔料及び/又はフィラー及び/又は染料は存在しない。
【0102】
溶媒:
本発明の組成物は、溶媒ベースの組成物、又は水性組成物であってよい。溶媒ベースの組成物の場合、主成分として有機溶媒が含まれる。有機溶媒は、本発明の組成物の揮発性成分を構成し、乾燥又はフラッシング時にそれぞれ完全又は部分的に蒸発する。水性組成物の主成分は水である。
【0103】
好ましくは、本発明によれば、少なくとも1つの溶媒は、有機溶媒、水、及びそれらの混合物から選択され、組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、40~90質量%、より好ましくは45~85質量%、及び非常に好ましくは50~80質量%、特に60~70質量%の総量で存在する。
【0104】
本発明の文脈で好ましい有機溶媒は、非プロトン性である。特に好ましくは、それらは極性非プロトン性有機溶媒である。特に好ましくは、有機溶媒は、組成物の残りの成分に対して化学的に不活性である。
【0105】
本発明の文脈において好ましい有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン又はジイソブチルケトンなどのケトン;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、エチレングリコールジアセテート、ブチロラクトン、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、酢酸2-メトキシプロピル(MPA)、及びエトキシプロピオン酸エチルなどのエステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、及びN-エチルピロリドンなどのアミド;メチラール、ブチラール、1,3-ジオキソラン、グリセロールホルマール;及び、非極性のためやや好ましくないが、ベンゼン、トルエン、n-ヘキサン、シクロヘキサン及び溶媒ナフサなどの炭化水素などである。特に好ましい溶媒は、エステルの部類に属し、その中でも酢酸n-ブチル及び酢酸1-メトキシプロピルが非常に特に好ましい。
【0106】
架橋剤:
本発明のコーティング組成物は、少なくとも1つの架橋剤を含むことができる。これは、バインダーが、架橋剤中に存在する相補的基と反応することができるヒドロキシ基などの官能基を含む化学硬化性バインダーである場合に好ましくあり得る。
【0107】
適切な架橋剤は、アミノ樹脂、非ブロックポリイソシアネート(unblocked polyisocyanates)、少なくとも部分的にブロックされたポリイソシアネート、ポリカルボジイミド、紫外線、熱、光開始剤、及びこれらの混合物、特に非ブロックポリイソシアネートとポリカルボジイミドを含む。
【0108】
適切な非ブロックポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2-イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン2,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、1,4-又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-又は1,3-又は1,2-ジイソシアナトシクロヘキサン、及び2,4-又は2,6-ジイソシアナト-1-メチルシクロヘキサン、それらの二量体及び三量体、ならびにこれらのポリイソシアネートの混合物も含む。
【0109】
好ましいポリイソシアネートは、前述のジイソシアネートの既知の二量体及び/又は三量体、すなわち、特に、前述のジイソシアネートのそれ自体公知のウレトジオン、イミノオキサジアジンジオン及びイソシアヌレート、ならびにこれらの二量体及び/又は三量体の混合物である。このようなポリウレタンは、例えばDesmodur(登録商標)N3800(イミノオキサジアジンジオン)又はN3900(イソシアヌレート)の商品名で市販されている。少なくとも1つのイミノオキサジアジンジオン環を含むポリイソシアネート、又は少なくとも1つのイソシアヌレート環を含むポリイソシアネート、又はそのようなポリイソシアネートの混合物の使用は、バインダーが先に述べたポリ(メタ)アクリレートとポリエステルポリオールの混合物を含んでいる場合に、特に好ましい。この場合、得られる硬化コーティング層の硬度は、イミノオキサジアジンジオン構造を含有するポリイソシアネートを使用すると、イソシアヌレート構造を含有するポリイソシアネートを使用して調製される硬化コーティング層と比較して高い硬度を有する硬化コーティング層が得られるため、架橋剤によって調整することができる。
【0110】
ポリイソシアネートは、好ましくは2.4超~5、好ましくは2.6~4、より好ましくは2.8~3.6のNCO基官能性を有するか、又は9~16%、より好ましくは10~14%のNCO含量を有する。
【0111】
ポリイソシアネートは、親水的に修飾されてよく、すなわち、それらは、一般的なポリイソシアネートに存在する基及び分子単位と比較して、より親水性の高い基を含む。そのような親水性基には、ポリエーテル基及びポリエステル基が含まれる。したがって、好ましい親水性修飾ポリイソシアネートは、ポリエーテル修飾及び/又はポリエステル修飾ポリイソシアネートである。ポリエーテル修飾ポリイソシアネートが特に好ましい。このようなポリエーテル修飾及び/又はポリエステル修飾ポリイソシアネートの使用は、バインダーが前述の水性分散液(1)及び(2)を含む場合に、組み合わせて使用することが特に好ましい。
【0112】
親水性修飾を導入するために、例えば、当業者に既知であり、また市販されているアルコキシポリ(オキシアルキレン)アルコールを使用することが可能である。その場合、ポリイソシアネート中のイソシアネート基とポリマー性モノアルコールとの比例的反応が行われ、その結果として、ポリエーテル修飾、すなわち、例えば、ポリ(オキシアルキレン)基がウレタン架橋の形成によりポリイソシアネートに共有結合し、親水性修飾ポリイソシアネートが形成される。ポリエステル修飾ポリイソシアネートに関しても同様の注釈が適用される。好ましいのは、脂肪族直鎖ポリエステル基、特に好ましくはポリラクトン基、より好ましくはポリカプロラクトン基である。ポリカプロラクトン及び、例えばモノアルコールとε-カプロラクトンの反応によるそれらの調製は知られている。それらもまた、一般的な方法により、それらが含有する少なくとも1つのヒドロキシル基とイソシアネート基との反応を介して、ポリイソシアネートに導入されることができる。
【0113】
ポリエステル及び/又はポリエーテル基で修飾されたイソシアネート基の画分は、幅広く変動し得、及び、例えば1~60モル%、好ましくは2~55モル%、特に好ましくは5~50モル%の範囲にあり得る。述べられたモル画分は、修飾前のポリイソシアネートの遊離イソシアネート基に基づいている。前述の親水性修飾ポリイソシアネートは市販されている。
【0114】
特に好ましく使用されるポリカルボジイミドは、ポリイソシアネートとポリカルボジイミドとの反応、及びその後のヒドロキシル基及び/又はアミン基を含有する親水性化合物による鎖延長及び/又は停止によって得ることができる。適切な分散液は、例えば、公開明細書EP1644428A2及びEP1981922A2に記載されている。
【0115】
コーティング組成物は、好ましくは、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、1質量%~40質量%固形分、好ましくは2~30質量%固形分、より具体的には6~12質量%又は15~25質量%固形分の総量で少なくとも1つの架橋剤を含む。
【0116】
添加剤:
少なくとも1つのバインダー及び再生カーボンブラック顔料又はコーヒー挽粉顔料の他に、本発明のコーティング組成物は、少なくとも1つの添加剤をさらに含むことができる。このような添加剤は、コーティング組成物中の顔料の均一な分散を確保するとともに、基材上に塗布されたコーティング組成物の良好なレベリングを確保し、塗布中の組成物の発泡を回避することによって、得られるコーティング層の視覚特性及び機械特性を高めるために使用され得る。
【0117】
適切な添加剤は、分散剤、レベリング剤、pH調整剤、消泡剤、殺生物剤、UV吸収剤、架橋触媒、エトキシル化脂肪アルコール、脂肪酸、ポリエーテル修飾ポリアルキルシロキサン、ヒドロキシ官能性ポリアルキルシロキサン及びこれらの混合物が含まれる。
【0118】
再生カーボンブラック又はコーヒー挽粉、特に再生カーボンブラックを分散させるためにコーティング組成物中の添加剤として使用され得る分散剤は、例えば、コーティング組成物中の顔料を分散させるために使用される一般的な分散剤である。このような分散剤の例には、(i)ポリカルボキシレートエーテル、(ii)ポリ(メタ)アクリレート、(iii)ポリビニル、(iv)コポリマー、特にポリカルボキシレートエーテル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニル、及びそれらの任意の混合物を含むブロックコポリマー、又は(v)前述のポリマー及びコポリマーの混合物が含まれる。特に好ましくは、ポリメタクリレートとポリビニルを含むアニオン性コポリマーが分散剤として使用される。このような分散剤は、「DISPERBYK-190」(BYK-Chemie GmbH社製)、「TEGO Dispers 755W」(Evonik Industries社製)、「TEGO Dispers 765W」(Evonik Industries社製)、「DISPERBYK-2015」(BYK-Chemie社製)、「Floren GW-1500」(共栄社化学株式会社社製)、Dispex(登録商標)Ultra PX 4290(BASF SE)として市販され、類似物が使用され得る。DISPERBYK-190及びTEGO Dispers 755Wは、それぞれ分岐(櫛型)構造を有するポリマーであり、スチレン-マレイン酸の共重合体鎖を有し、該共重合体鎖に直接結合した官能基としてカルボキシル基を有し、該共重合体鎖から分岐した親水性ポリオキシアルキレン鎖を有する。TEGO Dispers 765Wは、分岐(櫛型)構造を有するポリマーであり、ポリマー鎖に直接結合した官能基としてカルボキシル基を有し、顔料親和性官能基を有する高分子ポリマーである。DISPERBYK-2015は、分岐(櫛型)構造を有するポリマーであり、制御重合により得られるアクリル共重合体であり、ポリマー鎖に直接結合した官能基としてカルボキシル基を有している。Floren GW-1500は、分岐型(櫛型)構造を有するポリマーであり、ポリマー鎖に直接結合した官能基としてカルボキシル基を有している。特に好ましい分散剤は、Dispex(登録商標)Ultra PX 4290及びTEGO Dispers 755Wである。
【0119】
少なくとも1つの分散剤の適切な総量は、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、0.1~10質量%、好ましくは0.5~6質量%、非常に好ましくは1~3質量%を含む。
【0120】
基材上に塗布されたコーティング組成物の良好なレベリングを保証するために、レベリング剤がコーティング組成物に使用されることができる。基材上の良好なレベリングは、基材の形状に関係なく、基材上のコーティングの均一な光学的外観を達成するために必要である。適切なレベリング剤の例には、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤又はそれらの混合物が挙げられる。特に好ましいレベリング剤は、非イオン性アセチレンジオール化合物、例えば式(I)の非イオン性アセチレンジオール化合物である。
【0121】
【化2】
【0122】
式(I)において、R、R、R、及びRはそれぞれ独立して、1つ以上のヘテロ原子を含有することができる1~20個の炭素原子を有する炭化水素基を表す。置換基R、R、R、及びRは、互いに同じであってよく、又は異なっていてもよい。
【0123】
式(I)におけるR、R、R、及びRはそれぞれ、直鎖状又は分枝状の鎖構造を有していてよい。これらのうち、R及びRは、好ましくは、それぞれ2~10個の炭素原子を有するアルキル基のいずれかであり、より好ましくは、4個の炭素原子を有するもの、すなわち、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、及びイソブチル基のいずれかである。置換基R及びRは、好ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基のいずれかであり、より好ましくは1つ又は2つの炭素原子を有するもの、すなわちメチル基及びエチル基のいずれかである。
【0124】
式(I)で表されるアセチレンジオール化合物の具体例としては、7,10-ジメチル-8-ヘキサデシン-7,10-ジオール、4,7-ジメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール及び3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオールが挙げられる。
【0125】
式(I)で表されるアセチレンジオール化合物は、市販品であってもよく、例えば、Air Products and Chemicals Incによって供給されているSurfynol 104シリーズ製品(Surfynol 104E、Surfynol 104H、Surfynol 104A、Surfynol 104BC、Surfynol 104DPM、Surfynol 104PA及びSurfynol 104PG-50で例示される)が挙げられる。
【0126】
少なくとも1つのレベリング剤の適切な総量は、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、0質量%又は0.02~3質量%含まれる。
【0127】
少なくとも1つのpH調整剤は、コーティング組成物のpH又はコーティング組成物を調製するための本発明の方法に関連して後述する顔料ペーストのpHを調整するために使用され得る。適切なpH調整剤の例には、無機及び有機塩基、特に有機窒素含有塩基からの有機塩基が挙げられる。特に好ましくは、N,N-ジメチルエタノールアミンがpH調整剤として使用される。
【0128】
消泡剤は、製造中及び塗布中の発泡を避けるために、本発明のコーティング組成物に使用されることができ、後者は得られるコーティング層の光学的品質に関して好ましくない。適切な消泡剤は、例えば、コーティング組成物において一般的に使用されるすべての発泡剤である。具体例としては、ポリシロキサン、疎水性固体、ポリエーテル修飾シロキサン、ポリエーテルシロキサンコポリマー及びそれらの混合物が挙げられる。適切な市販の消泡剤には、例えば、BYK 022(ポリグリコール中のポリシロキサン及び疎水性固体、BYK Chemie社製)、BYK 342(ポリエーテル修飾シロキサン BYK Chemie社製)及びTEGO(登録商標) Foamex 810(ポリエーテルシロキサンコポリマー及びヒュームドシリカ Evonik Industry社製)が挙げられる。
【0129】
少なくとも1つの消泡剤の適切な総量は、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、0.02~1.5質量%含む。
【0130】
本明細書で使用される「殺生物剤」という用語は、化学的又は生物学的手段によるか否かを問わず、細菌、真菌、ウイルスなどの病原体の影響を抑制することができる物質(化学物質であるか微生物であるかを問わず)を示し、これは、残留活性を改善すると理解される防腐剤を含む。殺生物剤は、特にコーヒー挽粉が顔料として使用される場合に、水性コーティング組成物のカビを防止するために使用されることができる。適切な抗菌剤としては、イソチアゾロン及びイソチアゾリノン、例えばメチルイソチアゾロン、ベンズイソチアゾロン、クロロメチルイソチアゾロン、メチルイソチアゾリノン及びこれらの混合物が挙げられる。特に好ましい抗菌剤は、2-メチル-2H-イソチアゾール-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾール-3(2H)-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン及びこれらの混合物である。このような殺生物剤は、「Acitcide MSB 5050」(THOR Gmbh社製)及び「Kathon(商標)LX-150 Biocide」(Dow社製)として市販されている。
【0131】
少なくとも1つの殺生物剤の適切な総量は、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、0.05~0.3質量%含む。
【0132】
茶顔料が存在する場合、UV照射による色の劣化を避けるために、コーティング組成物中にUV吸収剤を使用することが好ましい。適切なUV吸収剤には、「Tinuvin」の商品名で市販されているものが挙げられる。これらのUV吸収剤は、好ましくは、コーティング組成物の総質量に基づいて、0.1~3質量%の総量で使用される。
【0133】
適切な架橋触媒、エトキシル化脂肪アルコール、脂肪酸、ポリエーテル修飾ポリアルキルシロキサン、ヒドロキシ官能性ポリアルキルシロキサン及びそれらの量は、例えば、公開特許出願WO2020/104213A1に記載されている。
本発明のコーティング組成物の例示的な実施形態:
第1の好ましい実施形態では、本発明のコーティング組成物は、60~70質量%の水性分散液(1)、20~30質量%の水性分散液(2)、1~6質量%又は0.25~1.5質量%の再生カーボンブラック顔料、任意に3~8質量%のポリエーテル修飾ポリイソシアネート、0.5~3質量%の分散剤、0.01~0.1質量%の消泡剤及び水を含み又はこれからからなり、質量%はコーティング組成物の総質量に基づいている。
【0134】
第2の好ましい実施形態では、本発明のコーティング組成物は、5~10質量%のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレート、10~20質量%のポリエステル、1~6質量%又は0.25~1.5質量%の再生カーボンブラック顔料、20~30質量%の任意に少なくとも1つのイソシアヌレート環を含むポリイソシアネート、0.5~3質量%の分散剤、0.01~0.1質量%の消泡剤、2~5質量%のエトキシル化脂肪アルコール及び脂肪酸の混合物、0.3~1質量%のヒドロキシ官能性ポリアルキルシロキサン、0.3~1質量%のレベリング剤及び有機溶媒を含み又はこれからからなり、質量%はコーティング組成物の総質量に基づいている。
【0135】
第3の好ましい実施形態では、本発明のコーティング組成物は、20~30質量%の質量比1:8~1:10の軟質及び硬質ポリウレタンの混合物、1~6質量%又は0.25~1.5質量%の再生カーボンブラック顔料、任意に1~4質量%の少なくとも1つのイソシアヌレート環を含むポリイソシアネート、0.5~3質量%の分散剤、0.01~0.1質量%の消泡剤及び水を含み又はこれからからなり、質量%はコーティング組成物の総質量に基づいている。
【0136】
第4の好ましい実施形態では、本発明のコーティング組成物は、60~70質量%の水性分散液(1)、20~30質量%の水性分散液(2)、0.25~2質量%の再生カーボンブラック顔料、任意に3~8質量%のポリエーテル修飾ポリイソシアネート、0.5~3質量%のレベリング剤及び水を含み又はこれからからなり、質量%はコーティング組成物の総質量に基づいている。
【0137】
第5の好ましい実施形態では、本発明のコーティング組成物は、5~10質量%のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレート、10~20質量%のポリエステルポリオール、0.25~2質量%の再生カーボンブラック顔料、0.5~3質量%のレベリング剤、任意に20~30質量%の少なくとも1つのイソシアヌレート環を含むポリイソシアネート、2~5質量%のエトキシル化脂肪アルコールと脂肪酸の混合物、0.3~1質量%のヒドロキシ官能性ポリアルキルシロキサン及び有機溶媒を含み又はこれからからなり、質量%はコーティング組成物の総質量に基づいている。
【0138】
第6の好ましい実施形態では、本発明のコーティング組成物は、20~30質量%の質量比1:8~1:10の軟質及び硬質ポリウレタンの混合物、0.25~2質量%の再生カーボンブラック顔料、任意に1~4質量%の少なくとも1つのイソシアヌレート環を含むポリイソシアネート、0.5~3質量%のレベリング剤及び水を含み又はこれからからなり、質量%はコーティング組成物の総質量に基づいている。
【0139】
第7の好ましい実施形態では、本発明のコーティング組成物は、60~70質量%の水性分散液(1)、20~30質量%の水性分散液(2)、5~15質量%のコーヒー挽粉顔料又は茶顔料、任意に3~8質量%のポリエーテル修飾ポリイソシアネート、0.05~0.3質量%の殺生物剤及び水を含み又はこれからからなり、質量%はコーティング組成物の総質量に基づいている。
【0140】
第8の好ましい実施形態では、本発明のコーティング組成物は、5~10質量%のヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレート、10~20質量%のポリエステルポリオール、5~15質量%のコーヒー挽粉顔料又は茶顔料、0.05~0.2質量%の殺生物剤、任意に20~30質量%の少なくとも1つのイソシアヌレート環を含むポリイソシアネート、2~5質量%のエトキシル化脂肪アルコールと脂肪酸の混合物、0.3~1質量%のヒドロキシ官能性ポリアルキルシロキサン、0.5~1.5質量%のレベリング剤及び有機溶媒を含み又はこれからからなり、質量%はコーティング組成物の総質量に基づいている。
【0141】
第9の好ましい実施形態では、本発明のコーティング組成物は、20~30質量%の質量比1:8~1:10の軟質及び硬質ポリウレタンの混合物、5~15質量%のコーヒー挽粉顔料又は茶顔料、任意に1~4質量%の少なくとも1つのイソシアヌレート環を含むポリイソシアネート、0.05~0.2質量%の殺生物剤及び水を含み又はこれからからなり、質量%はコーティング組成物の総質量に基づいている。
【0142】
前述の実施形態のいずれにおいても、水性分散液(1)、水性分散液(2)、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレート及びポリエステルポリオールは、適切なバインダーに関して以前記載された分散体及び樹脂を指し、及び/又は分散剤は顔料親和性を有する基を含むコポリマーであり、及び/又はレベリング剤はポリエーテル修飾シロキサンであり、及び/又は消泡剤はポリシロキサン及び疎水性固形分の混合物であり、及び/又は殺生物剤は2-メチル-2H-イソチアゾール-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾール-3(2H)-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンである。さらに、前述の第1~第4の実施形態のいずれにおいても、再生カーボンブラック顔料は、15~25μm又は15~150μmのD50粒径を有する。コーヒー挽粉顔料又は茶顔料は、好ましくは、乾燥コーヒー挽粉又は乾燥茶であり、特に150~300μmのD50粒径を有する乾燥コーヒー挽粉又は乾燥茶である。再生カーボンブラック、乾燥コーヒー挽粉及び乾燥茶の平均粒径は、前述したように決定されることができる。特に好ましくは、乾燥コーヒー挽粉又は乾燥茶の顔料は、コーヒー挽粉又は茶を120℃の温度で1~3時間乾燥することによって得られる。
【0143】
本発明のコーティング組成物の例示的な実施形態は、柔軟なフォーム材料、革、硬質プラスチック基材などの多種多様な基材上に、高い光学的品質、特に十分な隠蔽力及び均一な外観を有し、ならびに基材への接着性、柔軟性、耐候性、耐摩耗性などの良好な機械的特性を有する高品質のコーティングをもたらす。本発明のコーティング組成物によって達成されるコーティング層の光学的品質は、一般に使用される顔料、例えばバージンカーボンブラック顔料又は一般に使用される茶色顔料によって達成される光学的品質に匹敵する。再生カーボンブラックが顔料として使用されている場合、本コーティング組成物から得られるコーティング層の視覚印象は、例えば、異なる粒径を有する再生カーボンブラック粉末、再生カーボンブラック顔料を含む顔料ペースト、又は異なる量の再生カーボンブラック顔料を使用することによって、調整されることができる。さらに、少なくとも100μmの粒径を有する再生カーボンブラック顔料を含有するコーティング層は、摩擦などの機械的影響を受けると、その視覚的外観が変化し、すなわち濃くなる。
【0144】
本発明のコーティング組成物の特性:
本コーティング組成物の固形分は、個々の場合の要件に従って変化し得る。固形分は、主に塗布、より具体的にはスプレー塗布に要求される粘度によってガイドされるため、当業者によって、その一般的な技術知識に基づいて、任意にいくつかの探索的テストからの支援を受けて、調整されることができる。コーティング組成物は、20~60質量%、好ましくは25~45質量%の固形分を有することができる。固形分(不揮発分)とは、130℃、60分などの特定の条件下で蒸発させた後に残る全劉物の質量分率を指す。本明細書において、固形分は、DIN EN ISO 3251:2019-09に従って決定される。
【0145】
コーティング組成物は、好ましくは、DIN EN ISO 3219:1994-10に従って決定され、100~1,000mPas、より好ましくは200~600mPasの粘度を有する。
【0146】
本発明の組成物中に存在する特定のバインダー及び架橋剤に応じて、本発明の組成物は、一成分系として構成されるか、又は2つ(二成分系)もしくはそれ以上(多成分系)を混合することによって得られ得る。熱化学的に硬化可能な一成分系では、架橋されるべき成分、言い換えればバインダーと架橋剤は、互いに共に存在する、つまり一成分で存在する。このための条件は、架橋される成分は、少なくとも比例的な熱化学的硬化が早まるのを防止するように、100℃を超える比較的高い温度でしか互いに効果的に反応しないことである。このような組み合わせは、ヒドロキシ官能性ポリエステル及び/又はポリウレタンと、架橋剤としてメラミン樹脂及び/又はブロックポリイソシアネートによって例示され得る。
【0147】
熱化学的に硬化可能な二成分系又は多成分系では、架橋される成分、言い換えればバインダーと架橋剤は、少なくとも2つの成分で互いに別々に存在し、これらは塗布の直前まで組み合わされない。この形態は、架橋される成分が、周囲温度又はわずかに高い温度、例えば40~90℃においてさえも、互いに効率的に反応する場合に選択される。このような組み合わせは、ヒドロキシ官能性ポリエステル及び/又はポリウレタン及び/又はポリ(メタ)アクリレートと、架橋剤としての遊離ポリイソシアネートによって例示され得る。
【0148】
本発明の組成物が二成分以上の混合により得られる場合、バインダー含有成分は、架橋剤含有成分と混合される。
【0149】
コーティング組成物の製造方法:
本発明の第2の主題は、コーティング組成物を製造するための方法であり、前記方法は、
(i) 再生カーボンブラック又はコーヒー挽粉又は茶から選択される少なくとも1つの顔料を提供すること、又は再生カーボンブラック顔料を含む顔料ペーストを提供することと、
(ii) ステップ(i)で提供された顔料又は顔料ペーストを、少なくとも1つのバインダー、及び少なくとも1つの溶媒、ならびに任意に少なくとも1つの架橋剤及び/又は少なくとも1つの添加剤に添加することと、
を含む。
【0150】
再生カーボンブラック顔料を使用してコーティング組成物を調製する場合、前記コーティング組成物から得られるコーティング層は、「使用された外観」を有する、すなわち、それらは、再生カーボンブラック顔料を含む顔料ペーストを使用する場合に得られる色よりも明るい黒色を有する。再生カーボンブラック顔料を含む顔料ペーストを使用する場合は、バージンカーボンブラック顔料を含有する顔料ペーストを使用する場合と比較して、比較的な(comparative)視覚的印象が得られる。このことは、再生カーボンブラック顔料の適切な形態を使用することにより、該コーティング組成物から得られるコーティング層の外観を調整することを可能にする。さらに、製造されたコーティング層の色は、それぞれの顔料の量によって調整することができ、すなわち、より少ない量の顔料の使用は、より多い量の顔料の使用よりも明るい色をもたらす。
【0151】
ステップ(i):
ステップ(i)では、再生カーボンブラック顔料、又はコーヒー挽粉顔料、又は茶顔料、又は再生カーボンブラック顔料を含む顔料ペーストが提供される。
【0152】
再生カーボンブラック顔料は、カーボンブラック含有廃棄物、特に自動車タイヤを炭化すること、熱分解された廃棄物を粉砕すること、任意に粉砕した廃棄物をペレット化すること、ペレット又は粉砕した廃棄物を乾燥すること、により提供されることができる。
【0153】
コーヒー挽粉顔料は、好ましくは、
- コーヒー挽粉を、40~180℃、好ましくは60~120℃、非常に好ましくは120℃の温度で、1~3時間の間、乾燥させることと、
- 乾燥したコーヒー挽粉を、50~450μm、好ましくは100~400μm、より好ましくは120~350μm、非常に好ましくは150~300μmのD50粒径となるように粉砕することと、
によって提供される。
【0154】
乾燥し粉砕したコーヒー挽粉の平均粒径は、前述したように決定されることができる。
【0155】
60℃で1~3時間乾燥させたコーヒー挽粉を使用する場合と比較してより高いカビ安定性を得ることができるため、コーヒー挽粉を120℃で1~3時間乾燥させるのが好ましい。
【0156】
乾燥したコーヒー挽粉の粉砕は、当該技術分野で一般的に使用されている粉砕方法、例えば工業用コーヒーミルを使用することによって行うことができる。
【0157】
茶顔料は、好ましくは、
- 茶葉を、40~180℃、好ましくは60~120℃、非常に好ましくは120℃の温度で、1~3時間の間、乾燥させることと、
- 乾燥した茶葉を、50~450μm、好ましくは100~400μm、より好ましくは120~350μm、非常に好ましくは150~300μmのD50粒径となるように粉砕することと、
によって提供される。
【0158】
乾燥し粉砕した茶葉の平均粒径は、前述したように決定されることができる。
【0159】
60℃で1~3時間乾燥させた茶葉を使用する場合と比較してより高いカビ安定性を得ることができるため、茶葉を120℃で1~3時間乾燥させるのが好ましい。
【0160】
再生カーボンブラック顔料を含む顔料ペーストは、
- 再生カーボンブラック粉末を、水、分散剤、消泡剤、レベリング剤、及び任意にpH調整剤と混合することと、
- 得られた混合物を粉砕することと、
- 粉砕された混合物を濾過することと、
によって提供され得る。
【0161】
混合物の粉砕は、当該技術分野で一般的に使用される粉砕方法、例えば、撹拌機ミルを使用することによって行うことができる。粉砕された混合物の濾過は、粉砕ビーズを除去し、均一な顔料ペーストを確保するために、120メッシュサイズを有するフィルタなどのフィルタを使用することによって行うことができる。
【0162】
顔料ペーストとバインダーマトリックスとの非相溶性を回避するために、顔料ペーストのpHが6.5~9、好ましくは7.5~8の範囲になるような量で、pH調整剤を使用することが有益であり得る。これにより、バインダーマトリックスとの非相溶性が回避され、顔料ペーストのバインダーマトリックスへの均一な取り込みが保証される。
ステップ(ii):
本発明の方法のステップ(ii)では、ステップ(i)で提供された顔料又は顔料ペーストは、少なくとも1つのバインダー、少なくとも1つの溶媒、及び任意に少なくとも1つの架橋剤及び/又は少なくとも1つの添加剤を含むバインダーマトリックスに添加される。非ブロックポリイソシアネートが架橋剤として使用される場合、架橋剤は、塗布前の望ましくない架橋を避けるために、コーティング組成物を基材に塗布する直前にのみ添加される。ブロックポリイソシアネートが使用される場合、架橋剤は、バインダーマトリックスに添加されることができる。得られた混合物は、撹拌によって、又は一般的に使用される分散方法の使用によって均一化されることができる。
【0163】
本発明のコーティング組成物、特に本発明のコーティング組成物の成分について述べたことは、コーティング組成物の調製方法のさらに好ましい実施形態に関して必要な変更を加えて適用される。
【0164】
基材にコーティング層を形成する方法
本発明の方法の文脈において、コーティング(B)は、基材(S)上に製造される。
【0165】
基材(S)として、当業者に知られているすべての剛性の又は柔軟な基材を使用することが可能であり、例として、(i)金属、(ii)PVC、PU、PC、PA、TPUなどの硬質プラスチック、(iii)木材、(iv)紙及びカード、(v)繊維、(vi)天然及び合成革製品、(vi)TPU、TPA、PA製のフィラメント、及び、(vii)フォーム、から構成されるものがある。本発明の文脈では、柔軟な基材、より具体的には柔軟なフォーム基材が好ましい。
【0166】
適切なフォーム基材(S)には、当業者にこの文脈で知られているあらゆる種類のフォーム基材が含まれる。したがって、原則的に、熱硬化性物質、熱可塑性物質、エラストマー、又は熱弾性物質から製造されるフォーム、言い換えれば、ポリマーの示された分類からのプラスチックから対応する発泡プロセスによって得られるフォームを使用することが可能である。それらの化学的ベースの観点から、可能なフォームには、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルアミド、又はポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルなどのポリオレフィン、及び示されたポリマーのコポリマーが挙げられるが、これらに限られない。フォーム基材は、当然ながら、特定されたポリマー及びコポリマーの様々なものを含むこともできる。
【0167】
好ましいフォーム基材は、柔軟なフォーム基材であり、特に好ましくは柔軟な熱可塑性ポリウレタンフォーム基材である。後者は、熱可塑性ポリウレタンをそのポリマープラスチックマトリックスとして含むフォーム基材である。このような基材の基本的な品質は、圧縮性と弾性変形性であることである。
【0168】
フォームの製造では、熱可塑性ポリウレタンは、対応するフォームプロセスによって発泡される(つまり、フォームに変換される)。
【0169】
発泡プロセスは既知であり、そのため、簡単にだけ説明する。それぞれの場合における基本的な原理は、プラスチック中又は対応するプラスチック溶融物中の溶液中にあり、対応するポリマープラスチックの製造における架橋反応において形成される発泡剤及び/又はガスが放出され、その結果、これまでの比較的密度の高いポリマープラスチックの発泡が引き起こされることである。例えば、発泡剤として低沸点炭化水素が使用されている場合、それは高温で気化し、発泡に至る。二酸化炭素又は同様に窒素などのガスは、発泡剤として高圧でポリマー溶融物に導入され、及び/又は溶解されることもできる。後の圧力低下の結果として、溶融物は発泡剤ガスの脱出中に発泡する。
【0170】
発泡は、例えば、押出又は射出成形の過程で、例えば、対応するプラスチック基材を成形中に、直接行うことができる。加圧され発泡剤を添加されたプラスチック溶融物は、例えば押出機から出るときに、そのときに生じる圧力低下によって発泡することができる。
【0171】
まず発泡剤を含む熱可塑性物質のペレットを製造し、次にこれらのペレットを型内で続けて発泡し、ペレットが体積を増やし、互いに溶解し、最終的に溶解して膨張したフォームビーズ(熱可塑性ビーズフォームとも呼ばれる)からなる成形体を形成することも可能である。膨張性ペレットは、例えば、押し出し、続いて押出機から出たポリマーストランドをペレット化することにより形成され得る。ペレット化は、例えば、膨張が起こらないような圧力及び温度条件下で動作する適切な切断装置によって達成される。その後の膨張とペレットの溶解は、一般に約100℃の温度の蒸気の助けによって行われる。
【0172】
熱可塑性ビーズ発泡体を製造する際に、すでに予備発泡させたプラスチックペレットから始めることも可能である。これらは、予備発泡されていないペレットと比較して、個々のペレット又はポリマービーズが、対応して低下した密度を有する実質的に増大したビーズサイズを既に示しているペレットである。制御された予備発泡を有するビーズの製造は、例えばWO2013/153190A1に記載されているように、適切なプロセス制御によって実現されることができる。したがって、押出機から出るときに、押し出されたポリマーストランドは、液体の流れとともにペレット化チャンバに通されてよく、該液体は特定の圧力下にあり、特定の温度を有している。操作パラメータの適応により、特定の膨張した又は予備膨張した熱可塑性ペレットを得ることが可能であり、これは、その後の溶解、及び任意のさらなる膨張、特に蒸気によるさらなる膨張によって熱可塑性ビーズフォーム基材に変換されることができる。
【0173】
熱可塑性ビーズフォームと、そのようなビーズフォームを製造することができる対応する熱熱可塑性、膨張可能な(expandable)及び/又は膨張した(expanded)ペレットは、例えばWO2007/082838A1、WO2013/153190A1、又はその他WO2008/125250A1に記載されている。また、そこには、熱可塑性ポリウレタンの製造のための操作パラメータ及び出発材料、ならびにペレット及びビーズフォームの製造のための操作パラメータも記載されている。
【0174】
熱可塑性ビーズフォーム、特に熱可塑性ポリウレタンビーズフォームは、非常に経済的な方法で、特に工業規模で製造でき、またその特性プロファイルの点でも特に有利である。したがって、熱可塑性ビーズフォームは、熱可塑性物質、より具体的にはポリウレタンから製造され得、フォームは、優れた柔軟性又は弾性及び機械的安定性を示す。一般に、これらは圧縮可能であり、容易に弾性変形可能である。したがって、これらのフォームは特に、履物産業などの分野における用途のためのフォーム基材として特に適している。よって、特に好ましい基材は、ポリマープラスチックマトリックスとして熱可塑性ポリウレタンを含む圧縮可能で弾性変形可能なビーズフォーム基材である。
【0175】
基材、好ましくは柔軟なフォーム基材は、本質的に、任意の所望の形状を有してよく、すなわち、それらは、例えば、単純なシート状の基材、又はより複雑な形状、例えば特にミッドソールなどの履物のソールであってよい。
【0176】
本発明の方法では、カラーコーティング(BC)が製造される。
【0177】
ポストコーティングプロセス:
本発明の方法の第1の代替案では、カラーコーティング(BC)が、本発明のコーティング組成物(C1)又は本発明の方法によって製造されたコーティング組成物(C1)を基材(S)に直接塗布することと、任意に塗布したコーティング組成物(C1)を乾燥させてコーティング膜を形成することと、塗布したコーティング組成物(C1)又は形成したコーティング膜を硬化させることとによって製造される。この方法は、基材(S)の製造後に基材(S)のコーティングを行うため、ポストコーティングプロセスとも呼ばれる。
【0178】
本発明の方法の第1の代替案で使用される好ましい水性コーティング組成物は、少なくとも1つのポリウレタン樹脂画分を含有する異なる水性分散液の混合物を含む。
【0179】
例えば接着プライマーなどのコーティング材料を使用するなどの、基材の前処理が行われていないにもかかわらず、本発明の方法の一部として、優れた接着が達成される。コーティング組成物(C1)を塗布する前にそのようなコーティング材料を塗布することを控えることは、方法の大規模な簡略化をもたらす。
【0180】
コーティング組成物(C1)は、液体コーティング組成物の塗布について当業者に既知の方法により、例えば浸漬、ナイフコーティング、噴霧、ローラー塗布等により塗布され得る。噴霧塗布方法、例えば高温噴霧塗布、例えば高温空気(高温噴霧)等と任意で併せた、圧縮空気噴霧(空気圧による塗布)、エアレス噴霧、高速回転、静電噴霧塗布(ESTA)の使用が好ましい。非常に特に好ましくは、水性コーティング組成物は、空気圧噴霧塗布、又は静電噴霧塗布により塗布される。そのような塗布は、単回塗布あるいは複数回塗布の形態で行ってよく、例として二重塗布が挙げられる。
【0181】
塗布は、手動で、半自動噴霧装置を介して、又は自動噴霧装置を介して行うことができる。このような噴霧装置は、当該技術分野において一般的に知られており、例えば、SATA GmbH&Co.KG又はOERTER GmbH&Co.KGによって販売されている。
【0182】
塗布されたコーティング組成物(C1)は、好ましくは15~60℃、より好ましくは20~30℃の温度で、1~30分、好ましくは3~20分の時間乾燥させて、コーティング膜を形成させる。
【0183】
乾燥されたコーティング膜、又は(乾燥を行わない場合には)塗布されたコーティング組成物(C1)は、次いで硬化されて、カラーコーティング(BC)、すなわち硬化されたカラーコーティング膜を生成する。硬化は、好ましくは40~120℃、より好ましくは60~100℃の温度で、例えば10~60分、好ましくは15~35分の時間の間行われる。このようにして、好ましい基材、特にフォーム基材の分解又は変形が回避される。
【0184】
本発明の方法の特に好ましい実施形態によれば、カラーコーティング(BC)以外のさらなるコーティングは基材上に生成されず、すなわち基材はカラーコーティング(BC)のみを含む。
【0185】
インモールドコーティングプロセス:
本発明の方法の第2の代替案によれば、カラーコーティング(BC)は、
- 本発明のコーティング組成物(C1)又は本発明の方法によって製造されたコーティング組成物(C1)を、型の少なくとも1つの内面に塗布すること、及び任意に塗布したコーティング組成物(C1)を乾燥させることと、
- 基材(S)を形成する組成物を型に塗布することと、
- コーティング組成物(C1)を同時に硬化させながら、基材(S)を形成することと、
- コーティングされた基材を型から取り出すことと、
によって製造される。
【0186】
型の内面とは、基材(S)を形成する組成物と接触する面を指す。
【0187】
特に好ましくは、この代替案で使用される本発明のコーティング組成物は、コーティングされた基材を型から取り除くことを容易に、すなわちコーティングされた基材(S)の損傷を防止するために、エトキシル化脂肪酸と脂肪アルコールの混合物、ならびにドロキシ官能性ポリアルキルシロキサンを含む。本発明プロセスのこの代替案は、基材の製造中にコーティングされた基材を製造することを可能にし、したがって、さらなるポストコーティングステップが不要にする。
【0188】
コーティング組成物(C1)は、先に述べたように型表面に塗布することができ、基材を形成する組成物を型内に塗布する前に、好ましくは2分未満、より好ましくは1分未満、非常に好ましくは30秒未満乾燥させる。この場合、成形型が20~100℃、より好ましくは30~90℃、非常に好ましくは40~80℃、より具体的には50~70℃の温度を有していることが有利である。
【0189】
基材(S)を形成するのに適した組成物は、反応性組成物、すなわち化学的に硬化可能な組成物、例えば、反応性フォーム組成物、又は非架橋性組成物など、例えば先に述べた膨張した又は膨張性ポリウレタン粒子が挙げられる。これらの組成物は、閉じた型に射出してよく、又は開いた型に塗布してもよい。後者の場合、基材(S)を形成する前に型を閉じ、同時にコーティング組成物(C1)を硬化させる。基材を形成する組成物を塗布する前に、さらなる組成物又は材料を型に挿入することができる。これにより、少なくとも2つの異なる材料から調製される基材を製造することができる。
【0190】
基材(S)の形成及びコーティング組成物(C1)の硬化は、好ましくは、45~75℃、より好ましくは50~70℃の範囲の成形型温度で、1~30分、典型的には5~20分行われる。
【0191】
コーティングされた基材は、一般的に知られているベースコート及びクリアコート組成物を使用してポストコートされることができる。しかし、型からコーティングされた基材を取り出した後に得られたコーティングされた基材上には、さらなるコーティング層を塗布しないことが好ましい。
【0192】
転写コーティングプロセス:
本発明の方法の第3の代替案によれば、カラーコーティング(BC)は、
- 本発明のコーティング組成物(C1)又は本発明の方法によって製造されたコーティング組成物(C1)を構造化マトリックス又は型に塗布し、塗布したコーティング組成物(C1)を硬化させることと、
- 硬化したコーティング組成物(C1)上に結合層を形成することと、
- 結合層上に基材を塗布することと、
- 形成されたコーティングされた基材をマトリックス又は型から取り出すことと、
によって製造される。
【0193】
コーティング組成物(C1)は、先に説明したように、マトリックス又は型に塗布することができる。構造マトリックス又は型を調製するための適切な方法は、当該技術分野において一般的に知られており、例えば、公開特許出願US2010/0330333A1に記載されている。第3の代替案で使用される好ましいコーティング組成物(C1)は、軟質ポリウレタンと硬質ポリウレタンの混合物を含む。
【0194】
塗布されたコーティング組成物(C1)の硬化は、60~90℃で1~10分、好ましくは1~5分行われることができる。
【0195】
結合層は、好ましくは硬化した有機接着剤又は硬化した有機接着剤の連続層の、中断された、すなわち不連続層を含む。不連続層は、点、ストライプ、格子、長方形、正方形、ハニカム構造などの形態を有することができる。
【0196】
一例では、結合層は、例えばポリ酢酸ビニル、ポリアクリレート、又は特にポリウレタンに基づく、好ましくは0℃未満のガラス転移温度を有するポリウレタンに基づく、硬化した有機接着剤の層を含んでよい。有機接着剤は、例えば熱的に、化学線によって、又はエージングによって硬化され得る。別の例では、結合層は、接着ガーゼを含む。
【0197】
基材は、織物もしくは不織布などの布地であってよく、又は押出ポリマー膜もしくは硬化ポリマー膜などの高分子材料であってもよい。
【0198】
本発明のコーティング組成物について、特に本発明のコーティング組成物の成分について、及びコーティング組成物を調製する本発明の方法について述べたことは、基材(S)上にコーティング(B)を製造する方法のさらに好ましい実施形態に関しても必要な変更を加えて適用される。
【0199】
本発明のコーティング:
本発明の方法の後の結果物は、本発明のコーティング(B)である。好ましくは、コーティング(B)は、カラーコーティング(BC)のみからなる。
【0200】
製造されたコーティングは、高い光学的品質、特に下地基材を隠すのに十分な隠蔽力及び均一な色、ならびに良好な機械的特性、例えば下地基材に対する高い接着性、高い柔軟性、良好な耐候性、高い耐摩耗性などを有する。高い光学的品質と良好な機械的安定性は、基材及びコーティング組成物のキャリア(すなわち水又は有機溶媒)に関係なく達成され、したがって、多種多様な異なる基材を使用することを可能にし、同様にコーティング基材を製造するプロセスの特定のニーズに合わせてコーティング組成物を調整することを可能にする。さらに、製造されるコーティングは、光学的特性に関して調整することができるため、持続可能な顔料、特に再生カーボンブラック顔料を適切な形態、すなわち粉末又は顔料ペーストとして使用することにより、顧客が望む外観を実現することができる。最後に、再生カーボンブラック顔料を粉体として使用する場合、製造されるコーティングは、摩耗などの機械的影響によってその外観が変化するため、機械的影響を利用して所望の光学効果を作り出すことができる。
【0201】
本発明のコーティング組成物について、コーティング組成物を調製するための本発明の方法について、及び基材上にコーティングを製造するための本発明の方法について述べたことは、本発明のコーティングのさらに好ましい実施形態に関しても必要な変更を加えて適用される。
【0202】
本発明の基材:
本発明の最後の主題は、本発明のコーティングを有する基材である。
【0203】
本発明のコーティング組成物について、コーティング組成物を調製するための本発明の方法について、基材上にコーティングを製造するための本発明の方法について、及び本発明のコーティングについて述べたことは、本発明の基材のさらに好ましい実施形態に関しても必要な変更を加えて適用される。
【0204】
本発明は、特に以下の実施形態により説明される。
【0205】
1.コーティング組成物であって、
a) 少なくとも1つのバインダーと、
b) 再生カーボンブラック又はコーヒー挽粉又は茶から選択される少なくとも1つの顔料と、
c) 少なくとも1つの溶媒と、
d) 任意に少なくとも1つの架橋剤と、
e) 任意に少なくとも1つの添加剤と、
を含むコーティング組成物。
【0206】
2. 少なくとも1つのバインダーは、(i)ポリ(メタ)アクリレート、より具体的にはヒドロキシ官能性及び/又はカルボキシレート官能性及び/又はアミン官能性のポリ(メタ)アクリレート、(ii)ポリウレタン、より具体的にはヒドロキシ官能性及び/又はカルボキシレート官能性及び/又はアミン官能性のポリウレタン、(iii)ポリエステル、より具体的にはポリエステルポリオール、(iv)ポリエーテル、より具体的にはポリエーテルポリオール、(v)述べられたポリマーにおけるコポリマー、(vi)これらの混合物、からなる群から、好ましくは、ポリウレタンと、ポリウレタン樹脂を含有するポリウレタン樹脂画分を含有する分散液、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリオール及びこれらの混合物からなる群から、選択される、実施形態1に記載のコーティング組成物。
【0207】
3. ショア硬度が60未満の軟質ポリウレタン(PU1)と、ショア硬度が60~100の硬質ポリウレタン(PU2)とを含み、ショア硬度はDIN 53505:2000-08に従って、3秒後に決定される、実施形態1又は2に記載のコーティング組成物。
【0208】
4. 軟質ポリウレタンPU1と硬質ポリウレタンPU2の質量比が1:1~1:20、好ましくは1:5~1:15、非常に好ましくは1:8~1:12である、実施形態3に記載のコーティング組成物。
【0209】
5. 組成物が、少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートと、少なくとも1つのポリエステルポリオール、特に分枝ポリエステルポリオールとを含む、実施形態1又は2に記載のコーティング組成物。
【0210】
6. ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートとポリエステルポリオールの質量比が、2:1~1:2、好ましくは1.5:1~1:1.5、非常に好ましくは1:1.2~1:1.4である、実施形態5に記載のコーティング組成物。
【0211】
7. 組成物は、水と少なくとも1つのポリウレタン樹脂からなるポリウレタン樹脂画分とを含み、ポリウレタン樹脂画分は、少なくとも50質量%のゲル画分を有し、20℃未満の温度でガラス転移を有し、100℃未満の温度で融解転移を有する、少なくとも1つの水性分散液(1)、及び水と少なくとも1つのポリウレタン樹脂からなるポリウレタン樹脂画分とを含む水性分散液(2)であって、水性分散液(2)のポリウレタン樹脂画分は少なくとも50%のゲル画分を有し、20~500ナノメートルの平均粒径(体積平均)を有する分散粒子の形態で存在する少なくとも1つの水性分散液(2)を含む、実施形態1又は2に記載のコーティング組成物。
【0212】
8. 少なくとも1つの水性分散液(1)のポリウレタン樹脂画分が、-100℃~-20℃未満の範囲の温度でそのガラス転移を有し、-20℃~90℃未満の範囲の温度でその溶融転移を有し、1μmを超える粒径を有する粒子を含む、実施形態7に記載のコーティング組成物。
【0213】
9. 水性分散液(1)中の樹脂分と水性分散液(2)中の第2のポリウレタン樹脂画分との質量比が、5:1~1:5、好ましくは3:1~1:3、非常に好ましくは2:1~1.5:1である、実施形態7又は8に記載のコーティング組成物。
【0214】
10. 少なくとも1つのバインダーは、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、5~50質量%の固形分、好ましくは10~40質量%の固形分、非常に好ましくは20~35質量%の固形分の総量で存在する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0215】
11. 再生カーボンブラック顔料は、DIN EN ISO 21363:2022-03に従って決定される1~150μm、好ましくは5~35μm、より好ましくは10~30μm、非常に好ましくは15~25μmのD50の粒径を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0216】
12. 再生カーボンブラック顔料は、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、0.1~10質量%、好ましくは0.3~8質量%、より好ましくは0.5~6質量%、非常に好ましくは1~4質量%の総量で存在する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0217】
13. 茶顔料は、乾燥させ、任意に粉砕した緑茶、紅茶、又はルイボスティーから選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0218】
14. コーヒー挽粉顔料は、乾燥コーヒー挽粉顔料であり、又は茶顔料は乾燥茶顔料である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0219】
15. 乾燥コーヒー挽粉顔料又は乾燥茶顔料は、コーヒー挽粉又は茶、特に緑茶、紅茶又はルイボスティーを、40~180℃、好ましくは60~120℃、非常に好ましくは120℃の温度で、1~3時間の間、乾燥し、乾燥されたコーヒー挽粉又は乾燥された茶を粉砕することによって得られる、実施形態14に記載のコーティング組成物。
【0220】
16. 乾燥されたコーヒー挽粉又は乾燥された茶は、DIN EN ISO 1524:2020-11に従って決定される、50~450μm、好ましくは100~400μm、より好ましくは120~350μm、非常に好ましくは150~300μmのD50粒径を有する、実施形態14又は15に記載のコーティング組成物。
【0221】
17. コーヒー挽粉顔料又は茶顔料、好ましくは乾燥されたコーヒー挽粉顔料又は茶顔料は、それぞれ、コーティング組成物の総量に基づいて、それぞれの場合に、0.1~25質量%、好ましくは1~20質量%、より好ましくは5~15質量%、非常に好ましくは8~12質量%の総質量で存在する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0222】
18. コーティング組成物(再生カーボンブラック顔料又はコーヒー挽粉顔料又は茶顔料の他)は、コーティング組成物の総質量に基づいて、0質量%のさらなる顔料及び/又はフィラー及び/又は染料を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0223】
19. 架橋剤は、アミノ樹脂、非ブロックポリイソシアネート、少なくとも部分的にブロックされたポリイソシアネート、ポリカルボジイミド、紫外線、熱、光開始剤、及びこれらの混合物、特に非ブロックポリイソシアネートとポリカルボジイミドから選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0224】
20. 非ブロックポリイソシアネートが、(i)少なくとも1つのイミノオキサジアジンジオン環を含有するポリイソシアネート又は少なくとも1つのイソシアヌレート環を含有するポリイソシアネート又はそのようなポリイソシアネートの混合物、(ii)ポリエーテル修飾ポリイソシアネート、及び(iii)それらの混合物から選択される、実施形態19に記載のコーティング組成物。
【0225】
21. 架橋剤が、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、1質量%~40質量%の固形分、好ましくは2~30質量%の固形分、より具体的には6~12質量%又は15~25質量%の固形分の総質量で存在する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0226】
22. 少なくとも1つの添加剤が、分散剤、レベリング剤、pH調整剤、消泡剤、殺生物剤、UV吸収剤、架橋触媒、エトキシル化脂肪アルコール、脂肪酸、ポリエーテル修飾ポリアルキルシロキサン、ヒドロキシ官能性ポリアルキルシロキサン及びこれらの混合物の群から選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0227】
23. 少なくとも1つの分散剤が、(i)ポリカルボキシレートエーテル、(ii)ポリ(メタ)アクリレート、(iii)ポリビニル、(iv)コポリマー、特にポリカルボキシレートエーテル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニル、及びそれらの任意の混合物を含むブロックコポリマー、又は(v)前述のポリマー及びコポリマーの混合物から、特にポリメタクリレート及びポリビニルを含むアニオンコポリマーから選択される、実施形態22に記載のコーティング組成物。
【0228】
24. 少なくとも1つの分散剤が、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、0.1~10質量%、好ましくは0.5~6質量%、非常に好ましくは1~3質量%の総量で存在する、実施形態22又は23に記載のコーティング組成物。
【0229】
25. 少なくとも1つのレベリング剤が、非イオン性、カチオン性又はアニオン性の界面活性剤から、特に、非イオン性のセチレンジオール化合物から選択される、実施形態22~24のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0230】
26. 少なくとも1つのレベリング剤が、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、0質量%又は0.02~3質量%の総量で存在する、実施形態22~25のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0231】
27. 少なくとも1つのpH調整剤が、無機及び有機塩基から、特に有機窒素含有塩基から、非常に好ましくはN,N-ジメチルエタノールアミンから選択される、実施形態22~26のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0232】
28. 少なくとも1つの消泡剤が、ポリシロキサン、疎水性固体、ポリエーテル修飾シロキサン、ポリエーテルシロキサンコポリマー及びそれらの混合物から選択される、実施形態22から27のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0233】
29. 少なくとも1つの消泡剤が、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、0.02~1.5質量%の総量で存在する、実施形態22から28のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0234】
30. 少なくとも1つの殺生物剤が、メチルイソチアゾロン、ベンズイソチアゾロン、クロロメチルイソチアゾロン、メチルイソチアゾリノン及びこれらの混合物、特に、2-メチル-2H-イソチアゾール-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾール-3(2H)-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン及びこれらの混合物から選択される、実施形態22から29のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0235】
31. 少なくとも1つの殺生物剤が、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、0.05~0.3質量%の総量で存在する、実施形態22から30のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0236】
32. コーティング組成物は、DIN EN ISO 3219:1994-10に従って決定される、100~1,000mPas、好ましくは200~600mPasの粘度を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0237】
33. コーティング組成物を製造するための方法であって、前記方法は、
(i) 再生カーボンブラック又はコーヒー挽粉又は茶から選択される少なくとも1つの顔料を提供すること、又は再生カーボンブラック顔料を含む顔料ペーストを提供することと、
(ii) ステップ(i)で提供された顔料又は顔料ペーストを、少なくとも1つのバインダー、及び少なくとも1つの溶媒、ならびに任意に少なくとも1つの架橋剤及び/又は少なくとも1つの添加剤に添加することと、
を含む、方法。
【0238】
34. 再生カーボンブラック顔料は、カーボンブラック含有廃棄物、特に自動車タイヤを炭化し、熱分解された廃棄物を粉砕し、任意に粉砕した廃棄物をペレット化し、ペレット又は粉砕した廃棄物を乾燥することにより提供される、実施形態32に記載の方法。
【0239】
35. コーヒー挽粉顔料は、
- コーヒー挽粉を、40~180℃、好ましくは60~120℃、非常に好ましくは120℃の温度で、1~3時間の間、乾燥させることと、
- 乾燥したコーヒー挽粉を、DIN EN ISO 1524:2020-11に従って決定される、50~450μm、好ましくは100~400μm、より好ましくは120~350μm、非常に好ましくは150~300μmのD50粒径に粉砕することと、
によって提供される、実施形態32又は33に記載の方法。
【0240】
36. 茶顔料は、
- 茶葉を、40~180℃、好ましくは60~120℃、非常に好ましくは120℃の温度で、1~3時間の間、乾燥させることと、
- 乾燥した茶葉を、DIN EN ISO 1524:2020-11に従って決定される、50~450μm、好ましくは100~400μm、より好ましくは120~350μm、非常に好ましくは150~300μmのD50粒径に粉砕することと、
によって提供される、実施形態32から34のいずれか1つに記載の方法。
【0241】
37. 再生カーボンブラック顔料を含む顔料ペーストは、
- 再生カーボンブラック粉末を、水、分散剤、消泡剤、レベリング剤、及び任意にpH調整剤と混合することと、
- 得られた混合物を粉砕することと、
- 粉砕された混合物を濾過することと、
によって提供される、実施形態32から35のいずれか1つに記載の方法。
【0242】
38. pHが6.5~9、好ましくは7.5~8に調整される、実施形態36に記載の方法。
【0243】
39. 基材(S)上にコーティング(B)を製造する方法であって、実施形態1から31のいずれか1つに記載のコーティング組成物(C1)又は実施形態32から37のいずれか1つに記載の方法によって製造されたコーティング組成物(C1)を基材(S)に直接塗布し、任意に塗布したコーティング組成物(C1)を乾燥させてコーティング膜を形成し、塗布したコーティング組成物(C1)又は形成したコーティング膜を硬化させることによって基材(S)上に直接カラーコーティング(BC)を製造するステップを含む方法。
【0244】
40. 塗布されたコーティング組成物(C1)は、15~60℃、好ましくは20~30℃の温度で、1~30分、好ましくは3~20分の時間乾燥させる、実施形態38に記載の方法。
【0245】
41. コーティング組成物(C1)は、40~120℃、好ましくは60~100℃の温度で、10~60分、好ましくは15~35分の時間硬化される、実施形態29又は32に記載の方法である。
【0246】
42. 基材(S)上にコーティング(B)を製造する方法であって、
- 実施形態1から31のいずれか1つに記載のコーティング組成物(C1)又は実施形態32から37のいずれか1つに記載の方法に従って調製されたコーティング組成物(C1)を型の少なくとも1つの内面に塗布し、任意に塗布したコーティング組成物(C1)を乾燥させることによって基材(S)上に直接カラーコーティング(BC)を製造するステップと、
- 基材(S)を形成する組成物を型に塗布することと、
- コーティング組成物(C1)を同時に硬化させながら、基材(S)を形成することと、
- コーティングされた基材を型から取り出すことと、
を含む方法。
【0247】
43. 塗布されたコーティング組成物(C1)を、20~100℃、より好ましくは30~90℃、非常に好ましくは40~80℃、より具体的には50~70℃の温度で、2分未満、より好ましくは1分未満、非常に好ましくは30秒未満の時間乾燥させる、実施形態41に記載の方法。
【0248】
44. コーティング組成物(C1)を、45~75℃、より好ましくは50~70℃の温度で、1~30分、典型的には5~20分の時間、硬化させる、実施形態41又は42に記載の方法。
【0249】
45. 基材(S)上にコーティング(B)を製造する方法であって、前記方法は、
- 実施形態1から31のいずれか1つに記載のコーティング組成物(C1)又は実施形態32から37のいずれか1つに記載の方法に従って調製されたコーティング組成物(C1)を構造化マトリックス又は型に塗布し、塗布したコーティング組成物(C1)を硬化させることによって基材(S)に直接カラーコーティング(BC)を製造するステップと、
- 硬化したコーティング組成物(C1)上に結合層を形成することと、
- 結合層上に基材を塗布することと、
- 形成されたコーティング基材をマトリックス又は型から取り出すことと、
を含む、方法。
【0250】
46. 塗布されたコーティング組成物(C1)が、60~90℃の温度で1~10分間、好ましくは1~5分間硬化される、実施形態44に記載の方法。
【0251】
47. カラーコーティング以外のさらなるコーティングが製造されない、実施形態38から45のいずれか1つに記載の方法。
【0252】
48. 基材(S)が、(i)金属、(ii)PVC、PU、PC、PA、TPUなどの硬質プラスチック、(iii)木材、(iv)紙及びカード、(v)繊維、(vi)天然及び合成革製品、(vi)TPU、TPA、PA製のフィラメント及び、(vii)フォーム、特に柔軟な基材、より好ましくは柔軟なフォーム基材、さらに好ましくは熱可塑性ポリウレタンビーズフォーム基材を含む、実施形態38から46のいずれか1つに記載の方法。
【0253】
49.実施形態29~33のいずれかに記載の方法によって製造されたコーティング。
【0254】
50.実施形態34に記載のコーティングを有する基材。
【実施例
【0255】
本発明を以下に実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。さらに、実施例における「部」、「%」及び「比率」とは、別段の記載がない限り、それぞれ「質量部」、「質量%」及び「質量比」を表す。
【0256】
1.測定方法:
1.1 ゲル画分:
ゲル画分、特に対応する水性分散液のポリウレタン樹脂画分は、本発明の文脈で質量的に決定される。ここでは、まず、水性分散液のサンプル(初期質量1.0g)から、凍結乾燥によってポリマーを単離した。固化温度(温度をさらに下げてもサンプルの電気抵抗がそれ以上変化しない温度)を決定した後、完全に凍結したサンプルは、通常5mbar~0.05mbarの乾燥真空圧の範囲で、固化温度より10℃低い乾燥温度で、本乾燥を行った。ポリマー下の加熱面の温度を25℃まで段階的に上昇させることにより、ポリマーの急速な凍結乾燥が達成され;典型的には12時間の乾燥時間後、単離されたポリマー(凍結乾燥により決定された固形分)の量は一定で、長時間の凍結乾燥においてもはや何の変化も受けなかった。その後、ポリマー下の表面の温度を30℃で、周囲圧力を最大に下げて(典型的には0.05~0.03mbar)乾燥すると、ポリマーの最適な乾燥が得られる。
【0257】
続いて、単離されたポリマーを強制空気オーブン内で130℃で1分間焼結し、その後、過剰のテトラヒドロフラン(テトラヒドロフラン対固体画分の比=300:1)中で25℃にて24時間抽出した。その後、単離されたポリマーの不溶性画分(ゲル画分)を適切なフリット上で分離し、強制空気オーブン中で50℃で4時間乾燥し、その後、再計量した。
【0258】
さらに、焼結温度130℃で、1分~20分の間の焼結時間で変化させ、マイクロゲル粒子のために見出されたゲル画分は焼結時間とは無関係であることがさらに確認された。したがって、ポリマー固体の単離に続く架橋反応がゲル画分をさらに増加させることは否定できる。
【0259】
水性の、使用される市販のポリマー分散液の中には、さらにケイ酸塩などの無機成分をさらに含み、これらの無機成分の画分はもちろん、ゲル画分の決定においても捕捉され、すべての分散液を焼却し(800℃)、残った灰分を検出したゲル画分から差し引いた。
【0260】
1.2 ガラス転移と融解転移:
ガラス転移は、ガラス転移温度に基づいて決定される。本発明の文脈におけるガラス転移温度は、DIN 51005「熱分析(TA)-用語」及びDIN 53765「熱分析-示差走査熱量測定(DSC)」に基づく方法で実験的に決定される。バインダーのサンプルを、ドクターブレードを用いて、ガラス板上に100μmの湿潤膜厚で塗布し、40℃で1時間最初に乾燥させ、その後110℃で1時間乾燥させた。測定のために、このように乾燥させた膜の一部をガラス板から取り外し、測定スリーブに挿入する。次に、このスリーブは、DSC装置に挿入される。開始温度まで冷却した後、1回目と2回目の測定を10K/分の加熱速度で、50ml/分の不活性ガスフラッシング(N)を行い、測定実行の間に再び開始温度まで冷却する。
【0261】
ガラス転移は、DSC図で、転移前後でベースラインに対して、量に関してはるかに大きな勾配を有する測定曲線の部分として見られることができる。量に関してより大きな勾配は、温度を上げるために相転移の領域で必要とされるより高い量のエネルギーに起因することが知られている。この種の測定曲線部分は、当然ながら、量に関して大きな傾斜を持つ領域に変曲点を持つ。本発明の目的のために、ガラス転移のガラス転移温度は、2回目の測定実行におけるこの変曲点の温度であるとみなされる。
【0262】
ポリウレタン樹脂画分がガラス転移する温度は、本発明の文脈では以下のように定義される:ガラス転移に割り当てられる曲線部分の変曲点における温度(ガラス転移温度)である。ガラス転移に割り当てられる多数の曲線部分が存在する可能性がある。その場合、当該システムは、多数のガラス転移とガラス転移温度を有する。そのような場合、ポリウレタン樹脂画分がそのガラス転移を有する温度は、最も高い温度範囲における曲線部分の変曲点の温度である。そのような事象では、実際、対応するポリウレタン樹脂画分にもはやガラス状構造が全く存在しないのは、最後のガラス転移の後のみである。したがって、「そのガラス転移」という表現は、「その完全なガラス転移」又は「最高温度でのガラス転移」という表現と同一視することができる。
【0263】
溶融遷移も同様に、上記のように測定されたDSC図から決定される。融解遷移は、DSC図のベースラインから乖離した領域とみなされる。この領域では、温度上昇をもたらすために、結晶子の相転移により、より多くのエネルギーが系に供給される必要がある。これらの領域は、知られているように、幅の異なるピークとして見られる。
【0264】
ポリウレタン樹脂画分が融解転移する温度は、本発明の文脈では次のように定義される:融解転移に割り当て可能なピークの極値点での温度である。融解遷移が割り当て可能な多数のピークが存在する場合、当該極値点は、最も高い温度範囲にあるピークである。このような場合、実際、系は多数の融解遷移を有している。したがって、最後の融解遷移の後にのみ、対応するポリウレタン樹脂画分に存在する結晶構造はもはや存在しない。したがって、「その融解遷移」という表現は、「その完全な融解遷移」又は「最高温度での融解遷移」という表現と同一視することができる。
【0265】
2.決定方法:
2.1 移行テスト
移行テストは、DIN EN ISO 15701:2015-07に従って実施される。このテスト方法では、それぞれのコーティング層でコーティングされたサンプルの側を、公式規格に記載されている標準化されたPVC材料に、定義された圧力下で50℃±2℃で16時間接触させる。設定された2時間の冷却期間の後、接触材料のブリードをグレースケール(グレード1~5、グレード1=高移行、グレード5=移行なし)との比較により評価する。これは、コーティング層と接触していたPVC材料の部分と、コーティング層と接触していない同じPVC材料の部分との間のコントラスト値の比較によって達成される。
【0266】
2.2 急速エージングテスト
急速エージングテストは、DIN EN ISO 2440:2020-03(方法A)に従い、人工エージングによる視覚特性の変化を測定するために実施される。急速エージングテスト終了後、サンプルを23℃、相対湿度50%で24時間調整し、グレースケール(グレード1~5、グレード1=大きな色変化、グレード5=色変化なし)を使用して色変化について未処理サンプル(すなわち加水分解テストをされてないサンプル)と視覚的に比較した。
【0267】
2.3 疲労曲げテスト
コーティングされた基材を、コーティングされた側を外側にして中央で(60°曲げ)、最低50,000サイクルを曲げた。その後、コーティングされた基材をクラックについて視覚的に検査した。すべての発生したクラックが1mm未満の場合であれば、コーティング基材は「合格」と評価され、そうでない場合は「不合格」と評価された。
【0268】
2.4 耐光性
耐光性は、コーティングされた基材のコーティング層を部分的に覆い、コーティングされていない石英フィルタを有するAtlas SUNTEST XLS+で6時間屋外条件にさらすことにより決定された。その後、グレースケール(1~5、グレード1=大きなコントラスト、グレード5=コントラストなし)を使用して、コーティング基材のコーティング部分と非コーティング部分のコントラストを比較する。
【0269】
2.5 摩擦堅牢度
摩擦堅牢度は、サンドペーパー280を25回(往復)、1kgの規定圧力でコーティングされた基材をこすることによってテストされた。その後、コーティング基材を視覚的欠陥について検査した。コーティング層に視覚的欠陥が存在しない場合、コーティング基材は「合格」と評価され、そうでない場合、コーティング基材は「不合格」として評価された。
【0270】
2.6 隠蔽力
隠蔽力は、コーティングされた基材を検査することによって視覚的に決定された。基材の下地色が見えない場合、コーティング基材は「合格」と評価され、そうでない場合、コーティング基材は「不合格」として評価された。
【0271】
2.7 コーティング層の色の均一性
コーティング層の色の均一性は、コーティング基材の検査によって視覚的に決定された。コーティング層の色が均一である場合(すなわち、コーティング層に視覚的な色の違いや欠陥がない場合)、コーティングされた基材は「合格」と評価され、そうでない場合、コーティング基材は「不合格」として評価された。
【0272】
3.コーティング組成物
3.1 再生カーボンブラックを含む顔料ペーストの調製
表1に示す成分を混合し、撹拌機ミルを使用して4~6時間粉砕することにより、カーボンブラックを含む顔料ペーストP1、P2のそれぞれを調製した。その後、得られた粉砕混合物を120メッシュのフィルタを用いて濾過した。
【0273】
【表1】
【0274】
1)50粒径=15~25μm、DIN EN ISO 21363:2022-03により決定(オランダ、Black Bear社提供)
2) Dispex(登録商標)UltraPX 4290(BASF SE)
3) TEGO(登録商標)Dispers 755 W (Evonik Industries AG)
4) BYK 022 (BYK Chemie GmbH)
5) TEGO(登録商標)Foamex 810(Evonik Industries AG)
6) SURFYNOL(登録商標)104 BC(Evonik Industries AG)
7) N,N-ジメチルエタノールアミン
【0275】
3.2 ベース成分の調製
以下のベース成分BC1-1~BC1-3は、水性ポリウレタンディスパージョンをレベリング剤及び必要に応じて殺生物剤と混合することによって得られるバインダーマトリックス中に、顔料ペーストP1又は再生カーボンブラック顔料又はコーヒー挽粉顔料を分散させることによって製造した。
【0276】
【表2】
【0277】
1) 市販分散液(1)は、ゲル画分が61.3%のポリウレタン樹脂画分を含む。ポリウレタン樹脂画分は、温度-47℃でガラス転移を示し、温度50℃で融解転移を示す。ポリウレタン樹脂画分は、1~100μmの粒径を有する粒子を含む。分散液の固形分は、無機成分(ケイ酸塩)の1.8%を含む26.5%である(焼却、800℃により決定)。
2) 第1市販分散液(2)は、91%のゲル画分を有するポリウレタン樹脂画分を含む。平均粒径(体積平均)は、244ナノメートルである。ポリウレタン樹脂画分のガラス転移は-48℃である。100℃未満での溶融転移は観察されない。分散液の固形分は39.0%である。
3) 第2市販分散液(2)は、95%のゲル画分を有するポリウレタン樹脂画分を含む。平均粒径(体積平均)は56ナノメートルである。ポリウレタン樹脂画分のガラス転移は、-60℃である。100℃未満での溶融転移は観察されない。分散液の固形分は37.0%である。
4)50粒径=15~25μm、DIN EN ISO 21363:2022-03によって決定(オランダ、Black Bear社提供)
5) コーヒー挽粉を120℃で2時間乾燥させ、DIN EN ISO 1524;2020-11に従って決定されるD50粒径が150~300μmに乾燥したコーヒー挽粉を粉砕することによって調製される。
6) BYK 346(BYK Chemie GmbHより提供)
7) Acitcide MSB 5050(THOR GmbHより提供)
8) Kathon(商標)LX-150殺生物剤(Dowにより提供)
【0278】
3.3 硬化剤成分
市販のAstacin(登録商標)Haerter CI(ポリエーテル-修飾HDI-イソシアヌレート、NCO含有量=11%、固形分=70%(BASF SEより提供))を硬化剤成分として使用した。
【0279】
3.3 本発明の水性コーティング組成物AC1-1~AC1-3の調製
それぞれの本発明の水性コーティング組成物AC1-1~AC1-3は、以下に記載するように、基材に塗布する直前に、それぞれのベース成分BC1-1~BC1-3と硬化剤成分とを、100(ベース成分):8(硬化剤成分)の重量比で均一に混合することによって、それぞれの水性の本発明のコーティング組成物を得られた。
【0280】
4.コーティング基材の製造
4.1 基材
厚さ1cmのポリウレタンビーズフォームシートは、対応するポリウレタンペレットを対応する型内で蒸気により膨張及び融着させることにより、調製された。
【0281】
4.2 基材のコーティング
それぞれの水性コーティング組成物AC-1~AC-3を、それぞれ、3.1で調製された基材に1コートシステム(空気圧手動コーティング)で直接塗布し、23℃で4~5分間乾燥した。乾燥したコーティング組成物を80℃の強制空気オーブンで20分間硬化させる。膜厚(硬化)は、各場合において20~25μmであった。
【0282】
以下のコーティング基材を製造した(表3):
【0283】
【表3】
【0284】
5.結果
5.1 移行テスト
基材S1~S3上のカラーコーティング層に存在する物質の移行傾向を、上記1.1に記載されたように決定する。その結果を表4に示す。
【0285】
【表4】
【0286】
持続可能な顔料(すなわち、再生カーボンブラック又は乾燥コーヒー挽粉)を含有する水性コーティング組成物AC1-1~AC1-3から、膨張及び溶解TPUビーズ基材上に直接製造された各コーティング層は、それぞれのコーティング層に接触している基材への移行を全く示さないか、又はわずかに示すだけであり、したがって人間の皮膚と接触する履物などの着色された衣類に関する移行テストに関する要件を満たしている。
【0287】
5.2 急速エージングテスト
コーティングされた基材S1~S3のエージングによる色の変化を、上記1.2に記載されたように決定する。その結果を表5に示す。
【0288】
【表5】
【0289】
持続可能な顔料(すなわち、再生カーボンブラック又は乾燥コーヒー挽粉)を含有する水性コーティング組成物AC1-1~AC1-3から、膨張及び溶解TPUビーズ基材上に直接製造された各コーティング層は、エージングによる著しい色変化を示さないため、優れた耐候性を有するコーティング層を製造することができる。
【0290】
5.3 疲労曲げテスト
コーティング基材S1~S3の疲労曲げを、上記1.3に記載されたように決定する。その結果を表6に示す。
【0291】
【表6】
【0292】
持続可能な顔料(すなわち、再生カーボンブラック又は乾燥コーヒー挽粉)を含有する水性コーティング組成物AC1-1~AC1-3から、膨張及び溶解TPUビーズ基材上に製造された各コーティング層は、コーティング基材S1~S3の曲げ時に著しいクラックの形成を防止するのに十分な柔軟性を示し、したがって水性コーティング組成物AC-1~AC-3は、靴産業のミッドソールとして使用される柔軟なフォーム材料などの、寿命中に多数曲げられる柔軟な基材のコーティングに特に適したものとなる。
【0293】
5.4 耐光性
コーティング基材S1~S3の太陽光に対する耐光性を、上記1.4に記載されたように決定する。その結果を表7に示す。
【0294】
【表7】
【0295】
持続可能な顔料(すなわち、再生カーボンブラック又は乾燥コーヒー挽粉)を含有する水性コーティング組成物AC1-1~AC1-3から、膨張及び溶解TPUビーズ基材上に製造された各コーティング層は、十分な耐光性、すなわちコーティング基材に日光を照射しても著しい色変化を示さないことを示す。したがって、本発明の水性コーティング組成物は、高い耐候性安定性を有するカラーコーティング層をもたらし、したがって、外で着用される衣類など、日光に当たる基材に適している。
【0296】
5.5 摩擦堅牢度
コーティング基材S1~S3の摩擦堅牢度を、上記1.5に記載されたように決定する。その結果を表8に示す。
【0297】
【表8】
【0298】
持続可能な顔料(すなわち、再生カーボンブラック又は乾燥コーヒー挽粉)を含有する水性コーティング組成物AC1-1~AC1-3から、膨張及び溶解TPUビーズ基材上に製造された各コーティング層は、十分な摩擦堅牢性、すなわち、サンドペーパーでコーティング層をこすっても損傷しないことを示す。サンドペーパーでこすると、基材S1及びS2のコーティング層(再生カーボンブラックを含むコーティング層)の色が濃くなったが、コーティング基材S3の場合には色の変化は観察されなかった。したがって、本発明の水性コーティング組成物は、高い耐摩耗性を有するカラーコーティング層をもたらし、したがって、履物のような使用中に摩耗を受ける基材に特に適している。さらに、再生カーボンブラック顔料を含むコーティング層への機械的影響による色の変化が観察されたことから、定義された機械的影響を用いてコーティング層の色を調整することができる。
【0299】
5.6 隠蔽力
基材S1~S3上に存在するコーティング層の隠蔽力を、上記1.6に記載されたように決定する。その結果を表7に示す。
【0300】
【表9】
【0301】
持続可能な顔料(すなわち、再生カーボンブラック又は乾燥コーヒー挽粉)を含有する水性コーティング組成物AC1-1~AC1-3から、膨張及び溶解TPUビーズ基材上に製造された各コーティング層は、高い隠蔽力を示す。コーティング基材S1(顔料ペーストとして再生カーボンブラックを含有する)は、コーティング基材S2(再生カーボンブラック顔料を含有する)よりも濃い色を有することが観察された。コーティング基材S1の色は、バージンカーボンブラック顔料を含む顔料ペーストを使用した場合に達成される色に匹敵する。このように、顔料又は顔料ペーストとして再生カーボンブラックを使用することにより、得られるコーティング層の色を調整することができ、水性コーティング組成物を顧客のニーズに容易に適合させることができる。
【0302】
5.7 コーティング層の色の均一性
基材S1~S3上に存在するコーティング層の色の均一性を、上記1.7に記載されたように決定する。その結果を表10に示す。
【0303】
【表10】
【0304】
持続可能な顔料(すなわち、再生カーボンブラック又は乾燥コーヒー挽粉)を含有する水性コーティング組成物AC1-1~AC1-3から、膨張及び溶解TPUビーズ基材上に製造された各コーティング層は、高い色均一性を示し、すなわち、色差だけでなく視覚的陥も観察されなかった。したがって、本発明のコーティング組成物は、再生カーボンブラック又は乾燥コーヒー挽粉の形態の持続可能な顔料を使用する場合に、高い光学品質を有するコーティング層を製造することを可能にする。
【0305】
6.結果の考察
実施例は、コーティング組成物が、優れた視覚特性、すなわち十分な隠蔽力及び良好な色の均一性、ならびに優れた機械的特性、すなわち高い耐候性、耐摩耗性、柔軟性及び接着性を有するカラーコーティング層をもたらすことを示している。さらに、持続可能な顔料の使用は、色材又はや他の物質の望ましくない移行をもたらさない。持続可能な再生カーボンブラック顔料又はコーヒー挽粉顔料を含有する本発明のコーティング材料は、したがって、基材、特に履物産業で使用される柔軟なフォーム基材を、環境に優しい方法で着色することを可能にする。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 少なくとも1つのバインダーと、
b) 再生カーボンブラック又はコーヒー挽粉又は茶から選択される少なくとも1つの顔料と、
c) 少なくとも1つの溶媒と、
d) 任意に少なくとも1つの架橋剤と、
e) 任意に少なくとも1つの添加剤と、
を含み、前記再生カーボンブラック顔料の、DIN EN ISO 21363:2022-03に従い測定したD 50 の粒径が、10~150μmであり、かつ
DIN EN ISO 3219:1994-10に従って測定されたコーティング組成物の粘度が、100~1,000mPa sであることを特徴とするコーティング組成物
【請求項2】
前記少なくとも1つのバインダーは、(i)ポリ(メタ)アクリレート、より具体的にはヒドロキシ官能性及び/又はカルボキシレート官能性及び/又はアミン官能性のポリ(メタ)アクリレート、(ii)ポリウレタン、より具体的にはヒドロキシ官能性及び/又はカルボキシレート官能性及び/又はアミン官能性のポリウレタン、(iii)ポリエステル、より具体的にはポリエステルポリオール、(iv)ポリエーテル、より具体的にはポリエーテルポリオール、(v)ポリマーにおけるコポリマー、(vi)これらの混合物、からなる群から、好ましくは、ポリウレタンと、ポリウレタン樹脂を含有するポリウレタン樹脂画分を含有する分散液、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリオール及びこれらの混合物からなる群から、選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのバインダーは、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、5~50質量%の固形分、好ましくは10~40質量%の固形分、非常に好ましくは20~35質量%の固形分の総量で存在する、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記再生カーボンブラック顔料は、10~30μm、非常に好ましくは15~25μmのD50の粒径を有する、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記再生カーボンブラック顔料は、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、0.1~10質量%、好ましくは0.3~8質量%、より好ましくは0.5~6質量%、非常に好ましくは1~4質量%の総量で存在する、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記コーヒー挽粉顔料は、乾燥されたコーヒー挽粉顔料であり、又は、茶顔料は乾燥された茶顔料である、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記乾燥されたコーヒー挽粉顔料又は前記乾燥された茶顔料が、コーヒー挽粉又は茶、特に緑茶、紅茶又はルイボスティーを、40~180℃、好ましくは60~120℃、非常に好ましくは120℃の温度で、1~3時間の間、乾燥し、前記乾燥されたコーヒー挽粉又は前記乾燥された茶を粉砕することによって得られる、請求項6に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記乾燥されたコーヒー挽粉又は前記乾燥された茶は、50~450μm、好ましくは100~400μm、より好ましくは120~350μm、非常に好ましくは150~300μmのD50粒径を有する、請求項6に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記コーヒー挽粉顔料又は茶顔料、好ましくは前記乾燥されたコーヒー挽粉顔料又は茶顔料が、それぞれ、コーティング組成物の総量に基づいて、それぞれの場合に、0.1~25質量%、好ましくは1~20質量%、より好ましくは5~15質量%、非常に好ましくは8~12質量%の総質量で存在する、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
コーティング組成物は、-再生カーボンブラック顔料又はコーヒー挽粉顔料又は茶顔料の他には-、コーティング組成物の総質量に基づいて、0質量%のさらなる顔料及び/又はフィラー及び/又は染料を含む、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
コーティング組成物を製造するための方法であって、前記方法は、
(i) 再生カーボンブラック又はコーヒー挽粉から選択される少なくとも1つの顔料を提供すること、又は再生カーボンブラック顔料を含む顔料ペーストを提供することと、
(ii) ステップ(i)で提供された顔料又は顔料ペーストを、少なくとも1つのバインダー、及び少なくとも1つの溶媒、ならびに任意に少なくとも1つの架橋剤及び/又は少なくとも1つの添加剤に添加することと、
を含
前記再生カーボンブラック顔料の、DIN EN ISO 21363:2022-03に従い測定したD 50 の粒径が、10~150μmであり、
DIN EN ISO 3219:1994-10に従って測定されたコーティング組成物の粘度が、100~1,000mPa sであることを特徴とする方法。
【請求項12】
基材(S)上にコーティング(B)を製造する方法であって、請求項1又は2に記載のコーティング組成物(C1)を基材(S)に直接塗布し、任意に塗布されたコーティング組成物(C1)を乾燥させてコーティング膜を形成し、塗布されたコーティング組成物(C1)又は形成されたコーティング膜を硬化させることによって基材(S)上に直接カラーコーティング(BC)を製造するステップを含む方法。
【請求項13】
基材(S)上にコーティング(B)を製造する方法であって、
- 請求項1又は2のいずれか一項に記載のコーティング組成物(C1)を型の少なくとも1つの内面に塗布し、任意に塗布されたコーティング組成物(C1)を乾燥させることによって基材(S)上に直接カラーコーティング(BC)を製造するステップと、
- 基材(S)を形成する組成物を前記型に塗布することと、
- 前記コーティング組成物(C1)を同時に硬化させながら、基材(S)を形成することと、
- コーティングされた前記基材を前記型から取り出すことと、
を含む方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法によって製造されたコーティング。
【請求項15】
請求項14に記載のコーティングを有する基材。
【国際調査報告】