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▶ ユーシービー バイオファルマ エスピーアールエルの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】CD45を多量体化する結合分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231107BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231107BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231107BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231107BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231107BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231107BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231107BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231107BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231107BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231107BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20231107BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231107BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12P21/08
C12N15/63 Z
C12Q1/04
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 105
A61P37/02
A61P25/00
A61P17/00
A61P43/00 121
A61K35/12
A61P37/06
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521770
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2021078516
(87)【国際公開番号】W WO2022079199
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】2016386.1
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2100737.2
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラペッキ、スティーブン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】アダムス、ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ハンフリーズ、デイビット ポール
(72)【発明者】
【氏名】フィニー、ヘレン マーガレット
(72)【発明者】
【氏名】ビッセル、ローズマリー フランセス
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B064
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
2G045DA36
4B063QA01
4B063QA14
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QQ96
4B063QR48
4B063QS38
4B063QX01
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC06
4B064CC12
4B064CC24
4B064DA01
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB36
4C085BB44
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA02
4C087NA05
4C087ZA02
4C087ZA89
4C087ZB07
4C087ZB08
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA45
(57)【要約】
本発明は、CD45を多量化して、著しいサイトカイン放出も誘導せずにCD45を発現する細胞の細胞死を誘導することができる結合分子(単数又は複数)を提供するものである。例えば、本発明は、CD45に対する抗体を提供し、ここで、抗体は、CD45の異なるエピトープにそれぞれ特異的な少なくとも2つの異なるパラトープを含む。抗体は、細胞の表面上のCD45を架橋するために使用されてもよい。抗体は、例えば、細胞移植の前に細胞を枯渇させることを含む様々な治療方法で使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの異なるパラトープを含み、それぞれがCD45の異なるエピトープに特異的である抗体。
【請求項2】
抗体が、抗体の2つの異なるパラトープの各々がCD45の異なるエピトープに特異的であるバイパラトープ抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
CD45がヒトCD45である、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
抗体が、CD45を発現する細胞の細胞死を誘導することができ、好ましくは、抗体がサイトカインの放出を誘導しない、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
抗体がFc領域を欠くか、又は1つ以上のFcエフェクター機能を除去するためにサイレンシングされ、及び/又は血清薬物動態を変更するために修飾されたFc領域を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
BYbe抗体、TrYbe抗体、ジアボディ(diabody)、デュオボディ(duobody)、IgG(例えば、ノブ・イン・ホール修飾、電荷‐電荷修飾及び/又はプロテインAと結合する1つの重鎖の能力を変えるための修飾など、ホモダイマーよりもヘテロダイマーの形成及び/又は精製ヘテロダイマーを促進するための修飾を有するIgG、又はFALA及びノブ・イン・ホール修飾を有するIgG4(P)抗体)から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
抗体が、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体をコードする核酸分子(単数又は複数)。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体をコードする、又は請求項8に記載の核酸分子(単数又は複数)を含む、ベクター(単数又は複数)。
【請求項10】
(a)請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体、請求項8に記載の核酸分子(単数又は複数)、又は請求項9に記載のベクター(単数又は複数);及び
(b)薬学的に許容される担体又は希釈剤
を含む、医薬組成物。
【請求項11】
治療の方法に使用するための、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
対象において疾患関連、CD45発現細胞を殺傷する方法に使用するための、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
血液癌、例えば白血病、リンパ腫又は多発性骨髄腫を治療する方法に使用するための、請求項11又は12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
自己免疫疾患、例えば多発性硬化症又は強皮症を治療する方法に使用するための、請求項11又は12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか一項に記載の方法において使用するための医薬組成物であって、該方法が、細胞枯渇後に、対象に細胞を移植することをさらに含む、上記医薬組成物。
【請求項16】
対象において疾患を引き起こすCD45発現細胞を枯渇させる方法であって、請求項10に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、上記方法。
【請求項17】
血液癌、例えば白血病、リンパ腫又は多発性骨髄腫を治療するための、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
自己免疫疾患、例えば多発性硬化症又は強皮症を治療するための請求項16に記載の方法。
【請求項19】
細胞が枯渇した後に、対象に細胞を移植することをさらに含む、請求項16、17、及び18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
対象における疾患関連CD45発現細胞を殺傷するための医薬の製造における、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体、請求項8に記載の核酸分子(単数又は複数)、又は請求項9に記載のベクター(単数又は複数)の使用。
【請求項21】
医薬が血液癌、例えば白血病、リンパ腫又は多発性骨髄腫を治療するためのものである、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
医薬が自己免疫疾患、例えば多発性硬化症又は強皮症を治療するためのものである、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
医薬が、細胞殺傷後に細胞を対象に移植することをさらに含む方法において使用するためのものである、請求項20~22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
CD45を発現している細胞の細胞死を誘導するために、CD45を多量体化することができ、かつ有意なサイトカイン放出を誘導しない結合分子(単数又は複数)。
【請求項25】
結合分子(単数又は複数)が、CD45と特異的に結合する抗体、又はCD45と特異的に結合する少なくとも2つの異なる抗体の混合物である、請求項24に記載の結合分子(単数又は複数)。
【請求項26】
抗体又は混合物の抗体が、以下のように修飾されているFc領域を有する、請求項25に記載の結合分子(単数又は複数):
(a)エフェクター最適化Fc領域であるようにする;
(b)ホモダイマーよりもヘテロダイマーの形成を増加させる(ノブ・イン・ホール修飾を有するなど);
(c)ホモダイマーよりヘテロダイマーの形成を促進する荷電残基を有する;
(d)変化した血清薬物動態を有する、及び/又は
(e)プロテインA結合を変化させる。
【請求項27】
抗体又は抗体の混合物中の抗体が、サイレンシングされたFc領域を有する、請求項25又は26に記載の結合分子(単数又は複数)。
【請求項28】
抗体又は抗体の混合物の抗体がFc領域を欠いている、請求項25に記載の結合分子(単数又は複数)。
【請求項29】
抗体又は混合物の抗体が、BYbe抗体、TrYbe抗体、ジアボディ(diabody)、デュオボディ(duobody)、IgG、又はノブ・イン・ホール修飾IgGから選択され、特に抗体(単数又は複数)がIgG4(P)FALAノブ・イン・ホール形式である、請求項25に記載の結合分子(単数又は複数)。
【請求項30】
請求項24~29のいずれか一項に記載の結合分子(単数又は複数)であって、
(a)結合分子は、CD45に対して異なる特異性を有する少なくとも2つの抗原結合部位を含む抗体であり;又は
(b)結合分子が抗体の混合物であり、ここで、混合物中の抗体は、集合的に、CD45に対して異なる特異性を有する少なくとも2つの異なる抗原結合部位を含む、
上記結合分子(単数又は複数)。
【請求項31】
抗体の混合物である請求項30に記載の結合分子(単数又は複数)であって、各抗体はCD45に対して単一の特異性を有するが、混合物はCD45に対して異なる特異性を有する少なくとも2つの異なる抗体を含む、上記結合分子(単数又は複数)。
【請求項32】
抗体(単数又は複数)がキメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体である、請求項24~31のいずれか一項に記載の結合分子(単数又は複数)。
【請求項33】
抗体又は混合物の抗体が、血清アルブミンに特異的な抗原結合部位を含む、請求項24~32のいずれか一項に記載の結合分子(単数又は複数)。
【請求項34】
請求項24~33のいずれか一項に記載の結合分子(単数又は複数)をコードする核酸分子(単数又は複数)。
【請求項35】
請求項24~33のいずれか一項に記載の結合分子(単数又は複数)をコードする、又は請求項34に記載の核酸分子(単数又は複数)を含むベクター(単数又は複数)、例えば、ベクターがLNP-mRNAである。
【請求項36】
以下を含む、医薬組成物:
(a)請求項24~33のいずれか一項に記載の結合分子(単数又は複数)、請求項34に記載の核酸分子(単数又は複数)、又は請求項35に記載のベクター(単数又は複数);及び
(b)薬学的に許容される担体又は希釈剤。
【請求項37】
治療の方法に使用するための、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
対象において疾患関連CD45発現細胞を殺傷させる方法に使用するための、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
血液癌、例えば白血病、リンパ腫又は多発性骨髄腫を治療する方法に使用するための、請求項37又は38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
自己免疫疾患、例えば多発性硬化症又は強皮症を治療する方法に使用するための、請求項37又は38に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記方法が、細胞殺傷後に細胞を対象に移植することをさらに含む、請求項37又は38のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項42】
対象における疾患関連CD45発現細胞を殺傷する方法であって、請求項36に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、上記方法。
【請求項43】
血液癌、例えば白血病、リンパ腫又は多発性骨髄腫を治療するための、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
自己免疫疾患、例えば多発性硬化症又は強皮症を治療するための請求項42に記載の方法。
【請求項45】
細胞を殺傷した後、対象に細胞を移植することをさらに含む、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
対象における疾患関連CD45発現細胞を殺傷するための医薬の製造における、請求項24~33のいずれか一項による結合分子(単数又は複数)、請求項34に記載の核酸分子(単数又は複数)、又は請求項35に記載のベクター(単数又は複数)の使用。
【請求項47】
医薬が血液癌、例えば白血病、リンパ腫又は多発性骨髄腫を治療するためのものである、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
医薬が、自己免疫疾患、例えば多発性硬化症又は強皮症を治療するためのものである、請求項46に記載の使用。
【請求項49】
医薬が、細胞殺傷後に対象に細胞を移植することをさらに含む方法において使用するためのものである、請求項46~48のいずれか一項に記載の使用。
【請求項50】
CD45を多量体化して細胞死を誘導することができる結合分子(単数又は複数)をスクリーニングする方法であって、以下を含む方法:
(a)CD45と結合することができる結合分子(単数又は複数)を、CD45を発現する標的細胞と接触させること;及び
(b)標的細胞が細胞死を起こすかどうかを決定すること。
【請求項51】
請求項50に記載の方法であって、
(c)サイトカインが試験サンプル中に放出されるかどうかを決定すること、例えば、CCL2、GM-CSF、IL-1RA、IL-6、IL-8、IL-10、IL-11、及びM-CSFの1つ以上のレベルを測定する、
ことをさらに含む、上記方法。
【請求項52】
請求項50又は51に記載の方法であって、ここで
(i)結合分子(単数又は複数)は、CD45を多量体化することができるものとして既に同定されている;又は
(ii)該方法が、例えば、CD45を多量化する能力について、2つ以上の異なる結合分子の順列をスクリーニングすることにより、CD45を多量体化する能力について、CD45に特異的な結合分子を最初にスクリーニングすることを含む、上記方法。
【請求項53】
細胞、組織、又は器官の集団においてCD45を発現する標的細胞を枯渇又は殺傷する生体外(ex vivo)方法であって、前記細胞組織又は器官を請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又は請求項24~33のいずれか一項に記載の結合分子と接触させることを含む、上記方法。
【請求項54】
対象における移植片対宿主病(GVHD)を治療又は予防する方法において使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又は請求項24~33のいずれか一項に記載の結合分子であって、前記方法が
(a)細胞、組織、又は器官の集団を請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又は請求項24~33のいずれか一項に記載の結合分子と生体外(ex vivo)で接触させて、CD45を発現する標的細胞を殺傷すること;及び
(b)処理された細胞、組織、又は器官の集団を前記対象に移植すること
を含む、上記抗体又は結合分子。
【請求項55】
移植片対宿主病(GVHD)を治療又は予防する方法であって
(a)細胞、組織、又は器官の集団を、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又は請求項24~33のいずれか一項に記載の結合分子と接触させて、CD45を発現する標的細胞を生体外(ex vivo)で殺傷すること;及び
(b)処理された細胞、組織、又は臓器の集団を、そのような移植を必要とする対象に移植すること。
【請求項56】
(a)細胞、組織、又は器官の集団を、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又は請求項24~33のいずれか一項に記載の結合分子と接触させて、CD45を発現する標的細胞を生体外(ex vivo)で殺傷すること;及び
(b)処理された細胞、組織、又は臓器の集団を、そのような移植を必要とする対象に移植すること
を含む方法における、移植片対宿主病(GVHD)を治療又は予防するための医薬の製造における使用のための、請求項1~7のいずれか一項による抗体又は請求項24~33のいずれか一項による結合分子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD45に特異的な結合分子、特に抗体に関するものである。この結合分子は、例えば、標的細胞を殺傷するために、特に細胞の移植の前に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
CD45は、最初の、そして原型となる受容体型タンパク質チロシンホスファターゼであり、有核造血細胞に発現し、細胞応答の調節に中心的な役割を担っている。CD45は、PTPRC、T200、Ly5、白血球共通抗原(LCA)、B220としても知られている。CD45は、T細胞及びB細胞において最も豊富な細胞表面タンパク質である。B及びT細胞の発生と活性化に必須である。CD45変異細胞株、CD45欠損マウス、CD45欠損ヒトの研究により、CD45がT及びB細胞の抗原受容体シグナル伝達とリンパ球の発生に不可欠な役割を果たすことが最初に示された。現在では、CD45はインテグリン及びサイトカイン受容体から発せられるシグナルも調節することが知られている。抗原受容体のシグナル伝達における正の役割とは対照的に、CD45は、例えばマクロファージにおけるインテグリン媒介シグナルの負のレギュレーターとして働く。CD45はまた、造血及びインターフェロン依存性の抗ウイルス応答を制御する役割を果たすかもしれない。CD45はまた、細胞の生存に役割を果たすことができる。
【0003】
CD45は、約400から550アミノ酸の高度で多様なグリコシル化された細胞外ドメインと、それに続く単一の膜貫通ドメイン、そして2つのタンデムに繰り返されるホスファターゼドメインを含む705アミノ酸の長い細胞内ドメインを含む。CD45の発現制御と複数の代替スプライシングアイソフォーム(CD45遺伝子からエクソン4,5及び6を交互にスプライシングし、A、B及びCと呼ぶ)の発現は、ホスファターゼ活性とシグナル伝達の差を決定的に制御している。CD45は、外部刺激に対する感受性の相対的な閾値を制御することにより、細胞応答に影響を与える。この機能の乱れは、自己免疫、免疫不全、悪性腫瘍の原因となる可能性がある。
【0004】
CD45の全てのアイソフォームはチロシンホスファターゼ活性を示し、それはホスファターゼドメインD1とD2の2つのタンデムリピートを含む分子の細胞質ドメインによって媒介され、それぞれが高度に保存されたHC(X)Rモチーフを含んでいる。CD45のチロシンホスファターゼ活性はすべてD1ドメインから生じると考えられており、D2ドメインは制御に関与していると考えられる。CD45チロシンホスファターゼの主要な標的の一つはSrcファミリーキナーゼであり、これは細胞シグナル伝達におけるCD45の役割を反映している。CD45のホスファターゼ活性が作用する場所によって、そのようなSrcファミリーキナーゼの活性を活性化又は低下させる可能性がある。
CD45の重要性を考えると、CD45を標的とし、調節することができる薬剤が常に必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、特に、標的細胞上のCD45を多量体化して細胞死を誘導することができる一方、著しいサイトカイン放出を誘導しない結合分子を提供するものである。この理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の結合分子は、既知の結合分子よりもCD45分子を架橋する能力が高く、したがって標的細胞の細胞死を誘導する能力が向上していると考えられる。したがって、本発明の結合分子は、特に対象における細胞移植の前に、標的細胞を殺傷するために使用することができる。いくつかの実施形態において、結合分子が提供される。他の実施形態では、少なくとも2つの異なる結合分子の混合物が提供される。
【0006】
本明細書で詳細に議論するように、本発明の結合分子は、様々な形式で提供される。一つの特に好ましい実施形態において、本発明の結合分子は、抗体である。さらなる特に好ましい実施形態では、本発明の少なくとも2つの異なる結合分子の混合物は、少なくとも2つの異なる抗体の混合物である。本発明の様々な実施形態において採用され得る抗体の形式は、本明細書において詳細に論じられる。一つの好ましい実施形態では、抗体はIgG抗体である。一実施形態では、IgG抗体は、IgG1、IgG2、又はIgG4抗体である。特に好ましい実施形態では、抗体は、IgG4抗体である。
【0007】
好ましいIgG形式の例には、以下が含まれる。変化したヒンジを有するIgG(例えば、変化した長さ及び/又はジスルフィド結合);変化した糖鎖を有するIgG;変化したFcRn結合を有するIgG(例えば、血清半減期を減らすために、そのように結合が変化した);ホモダイマー形成よりもヘテロダイマー形成を優先する重鎖修飾(例えば、ノブ・イン・ホール(knobs‐in‐holes)及び/又は電荷修飾)を有するIgG;精製剤への結合を変える重鎖修飾を有するIgG(特に、ホモダイマーよりもヘテロダイマーの精製を好む方法として、一方の重鎖がプロテインAへの結合を変える修飾を有し、他方は有さない);エフェクター機能を変えたIgG(例えば、FcGR結合及び/又はC1q結合を変えた);及び/又はエフェクター機能が低下/欠如したIgG。一つの特に好ましい実施形態において、このような形式は、IgG抗体について採用される。別の特に好ましい実施形態では、本発明で採用される抗体は、ノブ・イン・ホール修飾を有するIgG4抗体である。さらに好ましい実施形態では、抗体は、ノブ・イン・ホール修飾及びFALA修飾を有するIgG4抗体である。一つの特に好ましい実施形態において、このようなIgG形式は、抗体がCD45に対して2つの異なる特異性を有する場合に採用されるであろう。
【0008】
本発明は、しかしIgG形式の抗体に限定されるものではなく、任意の適切な結合分子、特に本明細書に記載されたものが採用されてもよい。例えば、非IgG抗体が採用されてもよい。TrYbe及びBYbe形式の抗体、特に本明細書に記載されるものが採用されてもよい。また、本明細書にも記載されているように、非抗体結合分子が採用されてもよい。
【0009】
従って、本発明は、以下を提供する。
・ 少なくとも2つの異なるパラトープを含み、それぞれがCD45の異なるエピトープに特異的である、抗体。
・ 本発明の抗体をコードする核酸分子(単数又は複数)。
・ 本発明の抗体をコードする、又は本発明の核酸分子(単数又は複数)を含むベクター(単数又は複数)。
・ a)本発明の抗体、本発明の核酸分子(単数又は複数)、又は本発明のベクター(単数又は複数);及び(b)薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む、医薬組成物。
・ CD45を多量体化し、著しいサイトカイン放出も誘導せずにCD45を発現する細胞の細胞死を誘導することができる結合分子(単数又は複数)。
・ 本発明の結合分子(単数又は複数)をコードする核酸分子(単数又は複数)。
・ 本発明の結合分子(単数又は複数)をコードする、又は本発明の核酸分子(単数又は複数)を含むベクター(単数又は複数)。
【0010】
・ a)本発明の結合分子(単数又は複数)、本発明の核酸分子(単数又は複数)、又は本発明のベクター(単数又は複数);及び(b)薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む、薬学的組成物。
・ 治療の方法において使用するための本発明の医薬組成物。
・ 対象において疾患関連CD45発現細胞を殺傷する方法における使用のための本発明の医薬組成物。
・ 対象において疾患関連CD45発現細胞を殺傷する方法であって、本発明の医薬組成物を対象に投与することを含む、上記方法。
・ 対象中の疾患関連CD45発現細胞を殺傷するための医薬の製造における、本発明の結合分子(単数又は複数)、本発明の核酸分子(単数又は複数)、又は本発明のベクター(単数又は複数)の使用。
・ CD45を多量体化して細胞死を誘導することができる結合分子(単数又は複数)のスクリーニング方法であって、(a)CD45と結合することができる結合分子(単数又は複数)をCD45を発現する標的細胞と接触させること、及び(b)標的細胞が細胞死を起こしたかどうかを決定することを含む、上記方法。
【0011】
・ 細胞、組織、又は器官の集団においてCD45を発現する標的細胞を枯渇又は殺傷する生体外(ex vivo)方法であって、前記細胞組織又は器官を本発明の結合分子又は本発明の抗体と接触させることを含む、上記方法。
・ 対象における移植片対宿主病(GVHD)を治療又は予防する方法において使用するための本発明の結合分子又は本発明の抗体であって、前記方法が、(a)細胞、組織、又は器官の集団を本発明の結合分子又は本発明の抗体と生体外で接触させてCD45を発現している標的細胞を殺傷し、(b)細胞、組織、又は器官の治療済み集団を前記対象へ移植することを含む、上記本発明の結合分子又は本発明の抗体。
・ 移植片対宿主病(GVHD)を治療又は予防する方法であって、(a)細胞、組織、又は臓器の集団を本発明の結合分子又は本発明の抗体と接触させて、CD45を発現する標的細胞を生体外で殺傷すること;及び(b)治療した細胞、組織、又は臓器の治療済み集団をそのような移植を必要としている対象へ移植することを含む、上記方法。
・ 移植片対宿主病(GVHD)を治療又は予防するための医薬の製造における本発明の結合分子又は本発明の抗体の使用であって、(a)細胞、組織、又は器官の集団を本発明の結合分子又は本発明の抗体と接触させて、CD45を発現している標的細胞を生体外で殺傷すること;及び(b)細胞、組織、又は器官の治療済み集団をそのような移植を必要とする対象に移植すること、を含む方法における、上記使用。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】CD45又は無関係な抗原に特異性を持つFab‐XとFab‐Yの組み合わせでインキュベートした後の、(A)リンパ球の細胞数、(B)アポトーシスを起こしたリンパ球の割合を示す棒グラフである。アポトーシスは、アネキシンVの結合によって測定される。
図2】CD45又は無関係な抗原に対する特異性を有するFab‐X及びFab‐Yの組み合わせによるCD4+T細胞への効果の滴定を示すグラフ。値は、未処理細胞に対するT細胞数の減少%である。
図3】(A)CD45、6294‐X/4133‐Yに特異性を持つFab‐XとFab‐Yの組み合わせ、又は(B)CD45、4133‐6294 BYbeに特異性を持つBYbe(Fab‐scFv)によるPBMC中のサブセット細胞への効果の滴定を示すグラフである。値は、未処理の細胞に対するサブセット細胞数の減少%である。
【0013】
図4】ドナーHTA#051119‐01からの全血中の(A)リンパ球細胞及び(B)CD4細胞、並びにドナーHTA#051119‐02からの全血中の(C)リンパ球細胞及び(D)CD4細胞に対する効果の滴定を示すグラフである。CD45に特異的なFab‐XとFab‐Yの組み合わせ(6294‐X/4133‐Y)、抗CD45 BYbe(4133‐6294 BYbe)又は無関係な特異性を持つBYbe(NegCtrl BYbe)のいずれかによって行われた。値は、未処理細胞に対する細胞数の減少%である。
図5】抗CD45 BYbe(4133‐6294 BYbe)、無関係な特異性を有するBYbe(NegCtrl BYbe)、カンパス(Campath)又はPBSによる全血中の(A)CCL2、(B)GM‐CSF、(C)IL‐RA、(D)IL‐6、(E)IL‐8、(F)IL‐10、(G)IL‐11又は(H)M‐CSFの誘導レベルを示した棒グラフである。
図6】CD45に特異的なFab‐XとFab‐Yの組み合わせ(6294‐X/4133‐Y)、抗CD45 BYbe(4133‐6294 BYbe)、無関係な特異性を有するBYbe(NegCtrl BYbe)、キャンパス又はPBSによる全血中のT細胞レベルへの影響を示す棒グラフである。
【0014】
図7】CD45に特異的なFab‐XとFab‐Yの組み合わせ(6294‐X/4133‐Y)、抗CD45 BYbe(4133‐6294 BYbe)、無関係な特異性を有するBYbe(NegCtrl BYbe)、キャンパス又はPBSによる全血中の(A)IFNγ、(B)IL‐6、(C)TNFαの誘導レベルを示すグラフである。
図8】IncuCyte(登録商標)S3システムで撮影した、(A)M1マクロファージ、(B)M2マクロファージの画像。
図9】抗CD45 BYbe(4133‐6294 BYbe)、無関係な特異性を有するBYbe(NegCtrl BYbe)、カンプトテシン、スタウロスポリン又はPBSによる(A)M1マクロファージ及び(B)M2マクロファージの生存率への影響を示す棒グラフである。値は生発光単位(Raw Luminescent Units)(RLU)である。
【0015】
図10】抗CD45 BYbe(4133‐6294 BYbe)、無関係な特異性を有するBYbe(NegCtrl BYbe)、カンプトテシン、又はPBSによる(A)M1マクロファージ及び(B)M2マクロファージのカスパーゼ3/7の誘導のレベルを示すグラフ。
図11】(A)CD45 ECD(B)4133‐6294 BYbe及び(C)CD45 ECDと4133‐6294 BYbeの混合物の質量測光シグナルを示すグラフ。数値は質量(kDa)に対する検出数である。CD45 ECDの模式図はPDBコード5FMVから作成した。4133‐6294 BYbeの模式図は、FabとscFvの社内(インハウス)の結晶構造を連結して作成したモデルである。4133‐6294 BYbe‐CD45 ECD複合体及び高次の多量体型の模式図はモデルである。モデルは説明のためのものであり、エピトープの特定の位置を示すことを意図していない。
図12】抗体4133と6294のV領域、抗体4133と6294のヒト化グラフト、4133‐6294 BYbe重鎖及び軽鎖、及びCD45細胞外ドメイン1‐4の配列。CD45 ECDの予測されるN‐結合型グリコシル化部位に下線を引いてある。また、4133と6294のキメラ軽及び重IgG4P FALA鎖の配列も示している。
【0016】
図13】抗CD45 6294‐X/4133‐Y((A)&(C))又は抗CD45 4133‐6294 BYbe((B)&(D))によるPBMC中のリンパ球細胞及びCD34細胞への効果の滴定を示すグラフ。値は、(A)&(B)では未処理細胞に対する細胞数の減少%で、(C)&(D)では実際の細胞数で示した。
図14】CD45 ECDと4133‐6294 BYbeのモル比 1:1 混合物(黒実線)の、分析用超遠心機で測定した沈降速度を示すグラフである。CD45 ECD(点)と4133‐6294 BYbe(ダッシュ)の沈降速度をグラフに重ねたものである。値は、沈降係数(10-13秒)に対する連続分布(フリンジ/S)である。CD45 ECDの模式図はPDBコード5FMVから作成した。4133‐6294 BYbeの模式図は、FabとscFvの社内の結晶構造を連結して作成したモデルである。4133‐6294 BYbe‐CD45 ECD複合体及び高次の多量体型の模式図はモデルである。モデルは説明のためのものであり、エピトープの特定の位置を示すことを意図していない。
図15】抗CD45 4133‐6294_IgG4P FALA KiH、抗CD45 4133‐6294 BYbe又は抗CD45 4133_IgG4P FALAのいずれかのPBMC中のリンパ球細胞への効果の滴定を示すグラフ。値は、未処理細胞に対する細胞数の減少%として示されている。
【0017】
図16】抗CD45 4133_IgG4P FALA、抗CD45 4133‐6294 BYbe、又は抗CD45 4133_IgG4P FALAと抗CD45 6294‐X/6294‐Yの組み合わせのPBMC中のリンパ球細胞への効果の滴定を示すグラフ。値は、未処理細胞に対する細胞数の減少%で示した。
図17】PBMC中のリンパ球細胞に対する抗CD45 4133‐6294 BYbe、抗CD45 4133‐6294‐645 TrYbe又は抗CD45 4133‐6294 IgG4 FALA KiHのいずれかの効果を滴定したものを示すグラフである。値は細胞数の減少%で示した。
図18】細胞株(A)Jurkat(B)CCRF‐SB(C)MC116(D)Raji and Ramos(E)SU‐DHL‐4、SU‐DHL‐5、SU‐DHL‐8、NU‐DUL‐1及びOCI‐Ly3(F)THP‐1(G)Dakikiに対する、抗CD45 BYbe(4133‐6294 BYbe)による効果の滴定を示すグラフである。値は細胞数の減少%である。
【0018】
図19】細胞株(A)Jurkat(B)CCRF‐SB(C)MC116(D)Raji(E)Ramos(F)SU‐DHL‐4(G)SU‐DHL‐5(H)SU‐DHL‐8(I)NU‐DUL‐1(J)OCI‐Ly3(K)THP‐1(L)DakikiのNegCtrl BYbe(無関係な特異性を有するBYbe、希釈系列の最高濃度500nMのみを示す)、スタウロスポリン、カンプトテシン、リツキシマブ、キャンパス又は抗胸腺細胞グロブリン(ATG)のいずれかによる細胞数の減少%を示す棒グラフである。4133‐6294 BYbeによるトップの細胞減少%もマークされている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、とりわけ、サイトカイン放出を有意に誘導することなく標的細胞の細胞死を誘導するためにCD45を多量化することができる結合分子を提供するものである。特に好ましい実施形態では、結合分子は抗体である。結合分子及びその用途の詳細は、以下に提供される。
【0020】
CD45分子
本発明の結合分子は、CD45に特異的である。上記で説明したように、CD45は、タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)ファミリーのメンバーである。PTPは、細胞の成長、分化、有糸分裂周期、及び発癌性転換を含む様々な細胞プロセスを制御するシグナル伝達分子であることが知られている。CD45は、細胞外ドメイン、1つの膜貫通セグメント、2つのタンデム細胞質内触媒ドメインを含むため、受容体型PTPに属する。CD45RA、CD45RB、CD45RC、CD45RAB、CD45RAC、CD45RBC、CD45RO、CD45R(ABC)といった様々なCD45のアイソフォームが存在する。CD45のスプライスバリアントアイソフォームA、B、Cは、多くの白血球サブセットで異なって発現している。CD45の異なるアイソフォームが存在するにもかかわらず、これらのアイソフォームには共通の配列があり、1つの結合分子、特に1つの抗体によってすべてのアイソフォームが標的化されることを意味している。
【0021】
CD45の細胞内(COOH末端)領域には2つのPTP触媒ドメインがあり、細胞外領域はエクソン4、5、6(それぞれA、B、Cと呼ぶ)の選択的スプライシングとグリコシル化のレベルの違いにより非常に多様である。検出されるCD45アイソフォームは、細胞型、成熟度、活性化状態に特異的である。一般に、タンパク質のロングフォーム(A、B又はC)はナイーブ又は未活性化B細胞に発現し、CD45(RO)の成熟又は切断形態が活性化又は成熟/記憶‐B細胞上に発現する。
【0022】
CD45のヒト配列は、UniProtエントリー番号P08575で入手可能であり、シグナルペプチドを欠いた、配列番号41又は配列番号41のアミノ酸24~1304で本明細書に提供される。ヒトCD45の細胞外ドメイン1~4のアミノ酸配列は、配列番号113に提供される。CD45のマウスバージョンは、UniProtエントリーP06800に提供されている。本発明は、任意の種に由来するCD45の全ての形態に関連する。一つの実施形態では、CD45は哺乳類CD45である。特に好ましい一実施形態では、CD45は、タンパク質のヒト形態、及びその天然バリアント及びアイソフォームを指す。一つの好ましい実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、所定の種によって発現されるCD45の全てのアイソフォームに結合することができる。例えば、結合分子、特に抗体は、CD45の全てのヒトアイソフォームと結合することができる。結合分子の混合物が、特に抗体の混合物が採用される一実施形態では、集合的に、それらは、ある種のCD45のアイソフォームの全て、特にCD45の全てのヒトアイソフォームに結合することができるかもしれない。代替の実施形態において、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、CD45の特定のアイソフォームに対して特異的である。別の実施形態では、本発明の結合分子は、齧歯類CD45を結合することができ、例えば、齧歯類及びヒトCD45の双方を結合することができる。
【0023】
好ましい一実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、対象によって発現されたCD45のアイソフォームの全てに結合することができる。別の好ましい実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、対象によって発現されるCD45のアイソフォームの全てに特異的に結合することができるが、他のタンパク質には結合できない。別の好ましい実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、対象によって発現されるCD45のアイソフォームの全てに共通するCD45の細胞外領域を認識する。一つの好ましい実施形態において、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、配列が配列番号113として提供されるCD45の細胞外ドメイン内の異なるエピトープにそれぞれ特異的に結合する少なくとも2つの異なる特異性を含む。代替の実施形態では、本発明の結合分子(単数又は複数)、特に抗体(単数又は複数)は、CD45の細胞内領域と結合する。
【0024】
結合分子
本発明は、結合分子、特にCD45に特異的な結合分子を提供する。特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、抗体である。代替的に、本発明の結合分子は抗体ではない。抗体について本明細書に記載されていることは、特に断らない限り、本発明の結合分子一般にも適用することができ、その逆もまた然りである。一実施形態では、抗体ではない本発明の結合分子は、免疫グロブリンドメイン以外のタンパク質スキャフォールド又は骨格に基づく構造を有する分子の結合ドメインに使用される生体適合性フレームワーク構造を含んでいてもよい。本発明の代替結合分子の例には、フィブロネクチン、アンキリン、リポカリン、ネオカルジノステイン、チトクロームb、CP1亜鉛フィンガー、PST1、コイルドコイル、LACI‐D1、Zドメイン及びテンドラミサト(tendramisat)ドメインに基づくもの(例えば、Nygren and Uhlen,1997,Current Opinion in Structural Biology,7,463-469(構造生物学における現在の意見)参照)などが含まれる。本明細書で使用される「結合分子」という用語は、アドネクチン(Adnectins)、アフィボディ(Affibodies)、ダーピン(Darpins)、フィロマー(Phylomers)、アビマー(Avimers)、アプタマー(Aptamers)、アンチカリン(Anticalins)、テトラネクチン(Tetranectins)、マイクロボディ(Microbodies)、アフィリン(Affilins)及びクニッツドメイン(Kunitz domains)などの生体スキャフォールドに基づく結合分子も含んでいる。
【0025】
CD45と結合することができる小分子は、本発明の結合分子として使用することもできる。一実施形態では、採用され得る小分子は、例えば、ペプチド、環化ペプチド、及び大環状化合物を含む。例えば、ペプチド‐mRNAライブラリーは、所望のペプチドを同定するために使用されてもよい。一実施形態では、そのような分子のライブラリーをcDNA‐ペプチドに変換し、次にCD45と結合するのに必要な能力を有するペプチドを同定するためにスクリーニングし、次に所望の特性を有する選択したcDNAペプチドをPCRに供してcDNAの配列、ひいてはペプチドを同定する。一実施形態では、Ra PharmaのExtreme Diversity(商標)プラットフォームが、このようなスクリーニングに採用され得る。別の実施形態では、スキャフォールドで修飾されたペプチドのライブラリーは、CD45と結合する能力についてスクリーニングされてもよく、例えば、そのようなライブラリースクリーニングのためにBicycle Therapeuticsのアプローチを用いることができる。
【0026】
本発明の結合分子は、CD45に対して少なくとも1つの特異性を有するであろう。結合分子の「特異性」は、結合分子が結合する標的を示し、典型的には、本発明の文脈では、結合分子が標的のどこに結合するかも示す。したがって、例えば、ある結合分子の2つの特異性は、両方ともCD45に対して特異的であるが、CD45自体の異なる部分に結合し、したがってCD45に対して異なる特異性を表すことができる。典型的には、結合分子の特定の部分(単数又は複数)がCD45と結合し、例えば、結合分子の結合部位がCD45と結合することになる。抗体の場合、抗原結合部位がCD45を結合し、特異性を付与することになる。一実施形態では、CD45と結合する抗体の部分は、CD45に特異的な抗体のパラトープと称される。CD45の結合部分は、例えば、抗体のエピトープと呼ばれることがある。
【0027】
一実施形態では、本発明の結合分子はトランス結合を示し、すなわち、それは同時に複数のCD45の分子と結合する。このようなトランス結合は、典型的にはCD45の架橋をもたらし、それゆえ、本発明の特に好ましい実施形態を表す。一つの実施形態において、本発明の結合分子は、その結合部位でCD45の1つの分子だけを結合するように、CD45のシス結合を示すことができる。このような実施形態では、CD45の異なる分子に結合した結合分子を架橋するために、さらなる結合剤が使用されてもよい。
【0028】
本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、それゆえ、CD45の異なる部分、特に異なるエピトープをそれぞれ結合する少なくとも2つの異なる特異性を含んでいてもよいという意味で、多特異的であってもよい。本発明の文脈における多特異性又は二重特異性結合分子は、したがって、必ずしも異なる分子への結合を必要としない:それは、同じ標的分子上、特にCD45上の異なる部位に結合する異なる結合部位を含む本発明の結合分子、特に本発明の抗体を包含している。以下でさらに議論するように、本発明の結合分子は、CD45に対してだけでなく、CD45以外の標的に対しても更なる特異性を含んでいてもよい。一つのさらなる実施形態では、さらなる特異性は、血清アルブミンに対するものである。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明の結合分子は、CD45に対する2つの異なる特異性を含んでいてもよい。好ましい一実施形態では、2つの異なる特異性は、重なり合わないCD45の部分を結合する。結合分子が抗体である1つの実施形態では、特異性がCD45の非同一エピトープを結合することであってもよい。一実施形態では、エピトープは重なってもよいが、非同一であってもよい。別の実施形態では、それらは全く重なっていないかもしれない。一実施形態では、2つの異なる特異性は、CD45への結合について互いに競合しないものとして、又は互いに交差ブロックしないものとして、又は有意にそうしないものとして定義されてもよい。以下でさらに議論するように、CD45に対する特異性が異なるかどうかを決定する1つの好ましい方法は、交差ブロックアッセイ又は競合アッセイを行うことである。結合分子は、好ましくは、互いに競合又は交差ブロッキングをしない。それらは典型的には、両方とも同時にCD45を結合することができるが、非同一のエピトープで結合することができるはずである。
【0030】
結合分子、特に抗体が有する結合部位の数は、その価数と呼ばれることがあり、各価数は結合部位を表し、抗体の場合は抗体の1つの抗原結合部位を表す。各価数は、同じ又は異なる特異性を表すことができ、例えば、二重特異性IgG抗体は、2の価数及び2つの異なる特異性を有する。一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、CD45に対して少なくとも2つの異なる特異性を有していてもよい。それは、例えば、CD45に対して2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の異なる特異性を有していてもよい。一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、CD45に対する2つ又は3つの異なる特異性、特にCD45に対する異なる特異性を付与する少なくとも2つの異なる抗原結合部位を含んでいてもよい。一実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、CD45に対する3つの異なる特異性を含む。特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、CD45に対する2つの異なる特異性を含む。一実施形態では、抗体は、少なくとも2つの異なるパラトープを含んでよく、ここで各パラトープは、CD45の異なるエピトープに対して特異的である。一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、2の価数を有し、CD45に対する2つの異なる特異性を有する。別の実施形態では、それは3の価数を有し、それらの価数のうちの2つは、CD45に対する異なる特異性に対応する。一実施形態では、他の価数は、血清アルブミンに対する特異性である。
【0031】
別の実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、分子の各結合部位がCD45に対して特異的である、3価の価数を有していてもよい。一つの好ましい実施形態では、3つの結合部位は全て、CD45に対して異なる特異性を有することになる。したがって、1つの好ましい実施形態では、結合分子、特に本発明の抗体は、CD45に対して3つの異なる特異性を有していてもよい。そのような分子は、したがって、例えば、CD45に対する3つの異なるパラトープを有していてもよい。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、結合分子、特に抗体は、多価であり、好ましくはCD45に対して多特異的である。したがって、CD45に対して多特異的である結合分子も提供される。特に、それらは提供され、CD45に対してマルチパラトピック(multi-paratopic)である。例えば、1つの実施形態において、結合分子、特に抗体は、CD45に対して3つ、4つ、又はそれ以上の異なる特異性を有し、特にそのような数のパラトープを有していてもよい。好ましい一実施形態では、それは、CD45に対して2、3、又は4つの異なる特異性を有する。特に、それは、CD45に対してそのような数の異なるパラトープを有していてもよい。一つの特に好ましい実施形態において、それは、CD45に対する3つの異なる特異性を有し、好ましくは、それは、CD45に対する3つの異なるパラトープを有する。別の好ましい実施形態では、CD45に対してそのような数の特異性/パラトープを有するだけでなく、本発明の結合分子、特に抗体は、別の結合部位によって付与されたCD45ではない抗原に対する少なくとも1つの他の特異性も有する。例えば、結合分子はまた、CD45を結合するものとは別の結合部位を通してアルブミンに結合することができるかもしれない。
【0032】
一つの特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子(単数又は複数)、特に本発明の抗体は、CD45と結合し、CD45の多量体化をもたらすことができる。一つの実施形態において、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、CD45の細胞外部分に結合して、CD45の多量体化をもたらす。代替の実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、CD45の細胞内部分に結合し得る。好ましい実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、CD45の細胞内部分に結合して、CD45の多量体化をもたらすことができる。
【0033】
本発明の結合分子(単数又は複数)は、CD45を多量化するために使用され得る。特に、それらは、標的細胞の表面上のCD45を多量化するために採用され得る。CD45多量体は、特に、本発明の結合分子(単数又は複数)を介して連結された2つ以上のCD45分子の高次構造である。例えば、1つの実施形態において、CD45の多量体は、少なくとも2つのCD45分子を含み得る。特に好ましい実施形態では、CD45の多量体は、少なくとも3つのCD45分子を含む。一実施形態では、CD45の多量体は、本発明の結合分子によって一緒に結合された少なくとも3、4、5、6、7、又はそれ以上のCD45分子を含んでもよい。本明細書で議論するように、質量測定のような技術は、本発明の結合分子と複合体化したCD45の多量体を同定するために、したがってCD45の多量体を生成する本発明の結合分子(複数可)の能力を測定するために使用され得る。一実施形態において、本発明の結合分子(単数又は複数)は、CD45を架橋するために使用される。好ましい実施形態において、本発明の結合分子(単数又は複数)は、標的細胞の表面上のCD45分子を架橋するために使用される。さらなる実施形態では、それらは、CD45の内部部分に結合し、そのようにCD45を架橋し、好ましくはCD45の多量体を生成する。
【0034】
結合分子の混合物
別の実施形態では、単一の結合分子ではなく、少なくとも2つの異なる結合分子の混合物が提供され得る。例えば、一実施形態では、少なくとも2つの異なる結合分子の混合物が提供され、混合物中の個々の結合分子はCD45に対して1つの特異性のみを有するが、集合的に結合分子の混合物はCD45に対して少なくとも2つの異なる特異性を有している。したがって、結合分子の混合物の使用は、CD45の架橋を促進するさらなる方法である。結合分子の混合物、特に抗体の混合物であって、混合物の個々の結合分子がCD45に対して少なくとも2つの異なる特異性を有する混合物もまた提供される。別の実施形態では、集合的にCD45に対して1つの特異性のみを有する結合分子の混合物が採用され得る。本発明の結合分子(単数及び複数)の両方は、他の治療剤とともに混合物として提供されてもよい。
結合分子への言及がなされる本明細書のあらゆる場所で、結合分子の混合物が、特に明記されない限り、代替的に採用され得る。例えば、本明細書において個々の抗体が言及されている箇所では、特に断らない限り、少なくとも2つの異なる抗体の混合物を代替的に採用することができる。その逆もまた然りである。
【0035】
生体分子のスクリーニング
結合分子そのものと同様に、本発明は、本発明の結合分子を同定するための方法、及びかかる結合分子の有効性を決定するための方法も提供する。本明細書には、様々な機能的アッセイが開示されており、それらは、例えば、採用することができる。
例えば、本発明は、CD45を多量体化して細胞死を誘導することができる結合分子(単数又は複数)をスクリーニングする方法を提供し、この方法は、(a)CD45と結合することができる結合分子(単数又は複数)を、CD45を発現する標的細胞と接触させ;及び(b)標的細胞が細胞死を起こすかどうかを決定することを含んでいる。一実施形態では、本方法は、(c)試験サンプルにおいてサイトカインが放出されるかどうかを決定すること、例えば、CCL2、GM‐CSF、IL‐1RA、IL‐6、IL‐8、IL‐10、IL‐11、及びM‐CSFの1つ又は複数のレベルが測定される場合、をさらに含む。一実施形態では、結合分子(単数又は複数)は、CD45を多量化することができるものとして既に同定されている。別の実施形態では、本方法は、例えば、CD45を多量体化する能力について2つ以上の異なる結合分子の順列をスクリーニングすることにより、CD45を多量体化する能力についてCD45に特異的な結合分子を最初にスクリーニングすることを含む。
【0036】
一実施形態では、本発明は、少なくとも2つの異なる特異性を含む生体分子を同定する方法を提供する。例えば、本方法は、CD45に対する特異性の一対の順列のライブラリーをスクリーニングすることを含んでいてもよい。一実施形態では、一対の順列は、例えば質量測光によって、CD45を多量化する能力についてスクリーニングされる。別の実施形態では、それらは、CD45を発現する標的細胞の殺傷をもたらすそれらの能力についてスクリーニングされる。別の実施形態では、それらは、サイトカイン放出を誘発しない一方で、そのような標的細胞を殺傷する能力についてスクリーニングされる。様々な機能的アッセイ及びスクリーニング形式が本明細書に記載されており、それらのいずれもが使用され得る。一実施形態では、Fab‐X/Fab‐Y形式は、一対の組合せをスクリーニングするために使用される。一実施形態では、一対の順列が評価される場合、スクリーニングはまた、ただ1つのそのような特異性を有する等価分子と比較することを含んでいてもよい。
【0037】
別の実施形態では、少なくとも2つの結合分子の望ましい混合物を同定するために、CD45に特異的な異なる個々の結合分子の混合物の様々な順列が、所望の特性についてスクリーニングされ得る。一実施形態では、スクリーニングはまた、混合物の活性を個々の結合分子の活性と比較する。したがって、本発明は、CD45を多量化することができるが、有意なレベルまでサイトカインを誘導しない本発明の結合分子の混合物を同定する方法であって、CD45に特異的な個々の結合分子のパネルの様々な順列を含む混合物をスクリーニングし、所望の特性の最高レベルのものを与える混合物を同定することを含む、方法を提供する。例えば、アッセイは、最高レベルの多量体化を与える混合物を同定してもよいし、あるいは、CD45を発現する標的細胞の最高レベルの細胞殺傷を与える混合物を同定してもよい。この方法は、サイトカインを放出することなく最高レベルの細胞殺傷を与える混合物を同定することを含み得る。
【0038】
抗体
特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子(単数又は複数)は、CD45に対する抗体(単数又は複数)である。したがって、結合分子(単数又は複数)が言及される本明細書に概説される実施形態のいずれにおいても、好ましくは、抗体(単数又は複数)が採用される。用語「抗体」は、本明細書で議論される重鎖及び/又は軽鎖の様々な形式を含むものを含む、本明細書で開示される様々な抗体形式を含む。したがって、例えば、用語「抗体」は、本明細書で議論されるFab‐X/Fab‐Y、BYbe、TrYbe、及びオンサイト多量体化IgG抗体形式を特に含む。用語「抗体」はまた、抗体フラグメントを含み、好ましくは本明細書で言及されるものである。本明細書で論じるように、1つの特に好ましい抗体のアイソタイプは、IgG4である。
【0039】
特に好ましい実施形態では、抗体の配列は、ホモダイマー形成よりもヘテロダイマー形成に有利なように、抗体が2種類の異なる重鎖を含み、それゆえ2種類の異なる特異性を有するようにする。あるいは、ホモダイマー抗体よりもヘテロダイマー抗体の精製を可能にするような修飾を有していてもよい。このような形式は、特に、所望の抗体が2つの異なる特異性を有するものであり、それゆえ、抗体が2つの異なる重鎖を有し、各特異性に対して1つであることが望まれる場合に使用され得る。
【0040】
上述したように、結合分子の特異性は、結合分子が結合する標的を示し、また標的のどこに結合するのかを示すことがある。したがって、抗体の場合、それは、抗体の抗原結合部位が結合する標的を示し、標的のどこに結合するかを示す。抗体の場合、抗体の抗原結合部位は、その抗体の特異性をもたらすと言える。2つの抗体がともにCD45に結合するが、その結合部位が同一ではない場合、CD45に対する特異性が異なると言える。例えば、位置は重なっていても非同一であったり、全く重なっていなかったりする。抗体の「パラトープ」とは、抗体の抗原結合部位のうち、抗原を認識して結合する部分をいう。特に、パラトープは、抗原のエピトープを認識し結合する抗体の部分である。好ましい一実施形態では、2つの異なる特異性又はパラトープが言及される場合、それらは、それぞれがCD45の異なる部分と結合するという意味で異なるであろう。特に、各々がCD45の異なるエピトープと結合することになる。一実施形態において、CD45の異なる特異性又はパラトープが言及される場合、それはCD45の異なる、特に非同一のエピトープが結合することを意味する場合がある。したがって、1つの好ましい実施形態では、結合したCD45のエピトープは非同一である。一実施形態では、異なる特異性がCD45のための異なるパラトープに対応することを表す。
【0041】
一実施形態では、本発明の抗体の特異性、特にパラトープは、それぞれ、CD45の異なるエピトープに結合する。「異なるエピトープ」に結合することは、2つのエピトープが同一でないことを意味する。好ましい一実施形態では、認識された2つの異なるエピトープは、全く重ならない。例えば、好ましい実施形態では、認識されるエピトープは、CD45の直鎖アミノ酸配列において少なくとも1つのアミノ酸によって分離されている。別の好ましい実施形態では、認識された2つのエピトープは、CD45の直鎖配列において少なくとも5、10、15、20、50、100又はそれ以上のアミノ酸によって分離されている。別の実施形態では、2つの異なるエピトープは、例えば、CD45の直鎖配列において5個以下のアミノ酸によって、少量重なってもよい。別の実施形態では、エピトープは、4個以下のアミノ酸、例えば3個以下のアミノ酸、好ましくは2個以下のアミノ酸によって重なってもよい。別の好ましい実施形態では、エピトープは、CD45の直鎖配列において、1つのみのアミノ酸によって重なるか、又は全く重ならないであろう。一実施形態では、エピトープが非直鎖状である場合、例えばそれらがコンフォメーションエピトープである場合、エピトープとして結合したCD45の部分に何らかの重複があるが、結合したCD45の二つの部分は同一ではないだろう。ある実施形態では、コンフォメーションエピトープは全く重ならないだろう。
【0042】
一実施形態では、結合分子、特に抗体に対する2つの特異性が異なるかどうかを決定することが望まれる場合、2つの特異性のそれぞれについて、想定される特異性の一方だけを有する結合分子が生成され、好ましくは、結合分子は同じ価数を有するが、存在する特異性においてのみ異なる場合に、結合分子は生成される。結合アッセイにおいて、それら2つの結合分子が競合又は交差ブロックする能力が決定される。特に、そのようなアッセイは、両方の結合分子がCD45と結合することができるが、CD45に対する互いの結合を有意に減少させないかどうかを決定することになる。したがって、例えば、交差ブロック又は競合アッセイは、好ましい実施形態において、各結合分子のCD45への結合を個別に比較することができるが、両方の結合分子がCD45と一緒に混合された場合にも比較することができる。一実施形態では、所望の抗体は、他方の結合を減少させない。
【0043】
例えば、抗体の場合、同じ価数の抗体は、その抗体の(各々の)結合部位が特異性のうちの1つだけを付与するように生成される。このような各特異性の抗体が、互いに競合又は交差ブロックする能力が決定される。しかし、抗体は両方とも依然としてCD45と結合するはずである。好ましい実施形態では、各特異性の一価抗体、例えばscFv又はFabが生成され、次に各特異性の抗体の交差ブロック又は競合する能力が測定されるであろう。別の方法では、各特異性のための二価の抗体が生成され、それぞれが他方を競合又は交差ブロックする能力が決定される。好ましい一実施形態では、比較に使用される抗体は、特異性を付与する領域の違いを除けば同一であり、例えば、異なる可変領域のみを有し、特にパラトープの点でのみ異なるだけである。例えば、2つの抗体は、パラトープのための異なる可変領域においてのみ異なっていてもよい。一実施形態では、そのような比較が行われる場合、交差ブロックは見られない。別の実施形態では、有意な交差ブロックは見られない。例えば、一方の抗体による他方の抗体による交差ブロックの量は、25%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満であってよい。別の好ましい実施形態では、交差ブロックの程度は、5%未満であってもよい。別の実施形態では、交差ブロックの程度は1%未満となる。別の好ましい実施形態では、0%の交差ブロックが見られるであろう。これらのパーセンテージは、例えばELISAにおいて、第1の抗体が第2の抗体のCD45への結合を減少させる程度を指す。
【0044】
一実施形態では、本発明の抗体におけるCD45に対する結合ドメインの親和性は、約50nM、20nM、10nM、1nM、500pM、250pM、200pM、100pM又はそれ以上など、約100nM又はそれ以上である。一実施形態では、結合親和性は、50pM又はそれ以上である。一実施形態では、抗体の少なくとも1つのパラトープは、CD45に対してそのような親和性を有する。別の実施形態では、抗体は、それぞれがCD45に対して異なる特異性を有する2つのパラトープを有し、ここで、パラトープのすべてが、個々にCD45に対してそのような親和性を有する。一実施形態では、それは、CD45に対する抗体の全体的なアビディティ(親和性)である。一実施形態では、CD45に対するパラトープの親和性は、1μΜ未満、750nM未満、500nM未満、250nM未満、200nM未満、150nM未満、100nM未満、75nM未満、50nM未満、10nM未満、1nM未満、0.1nM未満、10pM未満、1pM未満、又は0.1pM未満であってよい。いくつかの実施形態では、Kdは、約0.1pM~約1μΜである。一実施形態では、本発明の抗体は、全体として、CD45に対してそのレベルの親和性を有する。一実施形態では、本発明の結合分子は、CD45に対してそのような親和性を示すことになる。別の実施形態では、特異性が言及されるところでは、そのような値を示すであろう。さらなる実施形態において、本発明の結合分子、又は結合分子の特異性は、そのような値を示すであろう。
【0045】
本発明の抗体が2つ以上の特異性を有する場合、一実施形態では、抗体は特定の特異性を有するように選択される。例えば、異なる特異性は、それぞれの結合部位がほぼ同様の親和性を有するように選択されてもよい。例えば、個々の特異性の結合親和力は、互いの100倍以内、好ましくは50倍以内、特に10倍以内となるように選択されてもよい。別の実施形態では、本発明の抗体の異なる特異性は、それらが異なる親和性を有するように選択されてもよい。例えば、一実施形態では、それらは互いに少なくとも10倍異なっていてもよい。別の実施形態では、それらは互いに少なくとも50倍異なっていてもよい。さらなる実施形態では、親和性は、互いに少なくとも100倍異なっていてもよい。別の実施形態では、親和性は、少なくとも1000倍異なっていてもよい。例えば、そのようなレベルの差は、KD値で見ることができる。
【0046】
好ましい実施形態では、本発明の抗体は少なくとも2つの特異性、特にCD45の異なるエピトープに各々結合する少なくとも2つの異なるパラトープを有するので、それを可能にする任意の適切な抗体形式であってよい。好ましくは、どちらの抗体も他方の結合を著しくブロックする一方で、両者は依然として同時にCD45と結合することができるはずである。本発明の抗体がCD45に特異的な少なくとも2つの異なるパラトープを含む実施形態では、典型的には、バイパラトープ抗体(biparatopic antibody)の各パラトープはCD45と特異的に結合することができ、2つのパラトープはそれぞれCD45の異なるエピトープと特異的に結合することができるであろう。したがって、異なる特異性が存在しても、両者の同時結合は可能である。
【0047】
一実施形態では、抗原結合部位及び/又は抗体の各抗原結合部位に2つの可変領域がある場合、2つの可変領域は、CD45に対する特異性を提供するために協働することがあり、例えば、それらはコグネイトペアであるか、ドメインが特定の抗原に特異的であるように十分な親和性を提供するように成熟させる。典型的には、それらは重鎖及び軽鎖可変領域ペア(VH/VLペア)である。一実施形態では、本発明の抗体の2つの異なる抗原結合部位はそれぞれ、「共通」軽鎖とも呼ばれる同じ軽鎖を含むことになる。例えば、一実施形態では、本発明の抗体は、IgG抗体形式であり、そのような共通の軽鎖を含む。一実施形態では、このようなアプローチは、ヘテロダイマー形成に有利な重鎖のノブ・アンド・ホール修飾と組み合わされてもよい。
【0048】
本発明の抗体は、全長の重鎖及び軽鎖を有する完全な抗体、又はそのフラグメント、例えば、Fab、修飾Fab、Fab’、修飾Fab’、F(ab’)、Fv、単一ドメイン抗体(例えば、VH又はVL又はVHHなど)、scFv、2価、3価又は4価抗体、Bis‐scFv、diabody(ジアボディ)、triabody(トリアボディ)、tetrabody(テトラボディ)又は上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントである(例えば、Holliger and Hudson,2005,Nature Biotech.23(9):1126‐1136;Adair and Lawson,2005,Drug Design Reviews‐Online 2(3),209‐217を参照されたい)。結合分子、特に抗体がある数の結合部位を有するが、言及されたフラグメント又は抗体形式のタイプがその数未満の結合部位を有する本発明の実施形態では、それはまだ全体の結合分子の一部を形成することができる。抗体フラグメントの作成及び製造方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Verma et al.,1998、Journal of Immunological Methods、216、165‐181を参照されたい)。本発明で使用するための他の抗体フラグメントには、国際特許出願WO2005/003169、WO2005/003170及びWO2005/003171に記載されたFab及びFab’フラグメントが含まれる。多価抗体は、複数の特異性、例えば二重特異性を含んでもよいし、一重特異性であってもよい(例えば、WO92/22853、WO05/113605、WO2009/040562及びWO2010/035012を参照されたい)。
【0049】
本発明の抗体は、本明細書で議論されるいずれの形式であってもよい。一つの特に好ましい実施形態では、本発明の抗体は、BYbe、TrYbe、又はIgG抗体形式である。そのような抗体形式は、抗体が治療的に採用される本発明の様々な実施形態において特に好ましい。
可能な抗体形式の例は、例えば、レビュー「The coming of Age of Engineered Multivalent Antibodies(人工多価抗体の時代の到来),Nunez‐Prado et al Drug Discovery Today Vol 20 Number 5 Mar 2015,page 588‐594,D.Holmes,Nature Rev Drug Disc Nov 2011:10;798,Chan and Carter,Nature Reviews Immunology vol.10,May 2010,301(参照することにより本明細書に取り込まれる)に開示されているように、当業者に既知である。一実施形態では、本発明の抗体は、以下の形式のいずれかを含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなることができる。
【0050】
・ タンデムsdAb、タンデムsdAb‐sdAb(3つのsdAb);
・(scFv)(タンデムscFvとも呼ばれる)、scFv‐dsFv、dsscFv‐dsFv(dsFv)
・ diabody(ジアボディ)、dsdiabody、didsdiabody;
・ scdiabody、dsscdiabody、didsscdiabody;
・ ダート抗体、すなわち、VHとVHのC末端がジスルフィド結合で結合したVLリンカーVHリンカーとVHリンカーVL
・ BiTE(登録商標)、dsBiTE、didsBiTE;
・ Di‐diabody(Nunez‐Pradoら、特にその中の図1の分子番号25を参照)、dsdi‐diabody、didsdi‐diabody;
・ triabody、dstriabody、didstriabody、tridstriabody;
・ tetrabody、dstetrabody、didstetrabody、tridstetrabody、tetradstetrabody;
・ tandab(Nunez‐Pradoら、特にその中の図1の分子番号22を参照);dstandab、didstandab、tridstandab、tetradstandab;
・ ByBe又はTrYbe形式の抗体
・ [sc(Fv)、(Nunez‐Pradoら、特にその中の図1の分子番号22を参照)、ds[sc(Fv)、dids[sc(Fv)、trid[sc(Fv)、tetrads[sc(Fv)
・ Pentabody(ペンタボディ)(Nunez‐Pradoら、特にその中の図1の分子番号27を参照);
【0051】
・ Fab‐scFv(bibodyともいう)、Fab’scFv、FabdsscFv(又はBYbe)、Fab’dsscFv;
・ tribody、dstribody、didstribody(FabdidsscFv又はTrYbe又はFab‐(dsscFv)とも呼ばれる)、Fab’didsscFv;
・ Fabdab、FabFv、Fab’dab、Fab’Fv;
・ Fab単一リンカーFv(WO2014/096390に開示されているように、本明細書ではFabdsFvとも呼ばれる)、Fab’単一リンカーFv(本明細書ではFab’dsFvとも呼ばれる);
・ FabscFv単一リンカーFv、Fab’scFv単一リンカーFv;
・ FabdsscFv単一リンカーFv、Fab’dsscFv単一リンカーFv;
・ FvFabFv、FvFab’Fv、dsFvFabFv、dsFvFab’Fv、FvFabdsFv、FvFab’dsFv、dsFvFabdsFv、dsFvFab’dsFv;
・ FabFvFv、Fab’FvFv、FabdsFvFv、Fab’dsFvFv、FabFvdsFv、Fab’FvdsFv、FabdsFvdsFv、Fab’dsFvdsFv;
・ diFab、diFab’、化学的に結合されたdiFab’を含む;
・(FabscFv)、(Fab)scFvdsFv、(Fab)dsscFvdsFv、(FabdscFv)
・(Fab’scFv),(Fab’)scFvdsFv,(Fab’)dsscFvdsFv,(Fab’dscFv)
【0052】
・ VHC(Nunez‐Pradoら、特にその中の図1の分子番号6を参照);
・ minibody(ミニボディ)、dsminibody、didsminibody;
・ miniantibody(ミニ抗体)(ZIP)[Nunez‐Pradoら、特にその中の図1の分子番号7を参照]、dsminiantibody(ZIP)及びdidsminiantibody(ZIP);
・ tribi-minibody[Nunez‐Pradoら、特にその中の図1の分子番号15を参照]dstribi‐minibody、didstribi‐minibody、tridstribi‐minibody;
・ diabody‐CH、dsdiabody‐CH、didsdiabody‐CH、scdiabody‐CH、dsscdiabody‐CH、didsscdiabody‐CH
・ タンデムscFv‐CH、タンデムdsscFv‐CH、タンデムdidsscFv‐CH、タンデムtridsscFv‐CH、タンデムtetradsscFv‐CH
・ scorpion molecule(Trubion)すなわちUS8,409,577に記載されている結合ドメイン、リンカー‐CHCH結合ドメイン;
・ SMIP(Trubion)すなわち、(scFv‐CHCH
・ (dsFvCHCH、タンデムscFv‐Fc、タンデムdsscFvscFv‐Fc、タンデムdsscFv‐Fc;
・ scFv‐Fc‐scFv、dsscFv‐Fc‐scFv、scFv‐Fc‐dsscFv;
【0053】
・ diabody‐Fc、dsdiabody‐Fc、didsdiabody‐Fc、triabody‐Fc、dstriabody‐Fc、didstriabody‐Fc、tridstriabody‐Fc、tetrabody‐FC、dstetrabody‐Fc、didstetrabody‐FC、tridstetrabody‐Fc、tetradstetrabody‐Fc、dstetrabody‐Fc、didstetrabody‐Fc、tridstetrabody‐Fc、tetradstetrabody‐Fc、scdiabody‐Fc、dsscdiabody、didsscdiabody;
・ 二又は三機能性抗体、例えば、異なる重鎖可変領域と共通の軽鎖を有するもの、例えば、Merus二重特異性抗体形式(Biclonics(登録商標))であって、固定配列の共通軽鎖及び異なる重鎖(異なるCDRを含む)及び異なる重鎖の二量体化を促進するために設計されたCHドメインを有するもの;。
・ Duobody(デュオボディ)(すなわち、抗体の一方の全長鎖が抗体の他方の全長鎖に対して異なる特異性を有するもの);
・ Fabアーム交換が二重特異性形式を作るために採用された完全長抗体;
・ 二又は三機能性抗体、ここで全長抗体は共通の重鎖と異なる軽鎖を有し、カッパ/ラムダ体又はκ/λ体とも呼ばれる、例えば、参照により本書に組み込まれるWO2012/023053を参照。
【0054】
・ 重鎖又は軽鎖のC末端から1、2、3又は4個のIg‐scFv、重鎖又は軽鎖のN末端から1、2、3又は4個のscFv‐Ig、重鎖又は軽鎖のC末端から1、2、3又は4個の単一リンカーIg‐Fv、Ig‐dsscFv(1、2、3又は4個のジスルフィド結合があるもの)、
・ 重鎖又は軽鎖のN末端から1、2、3又は4個のIg‐dsscFv(1、2、3又は4個のジスルフィド結合を有する);
・ Ig単一リンカーFv(PCT/EP2015/064450を参照);
・ Ig‐dab、dab‐Ig、scFv‐Ig、V‐Ig、Ig‐V;
・ scFabFvFc、scFabdsFvFc(単一リンカー版scFavFv)、(FabFvFc)、(FabdsFvFc)、scFab’FvFc、scFab’dsFvFc、(Fab’FvFc)、(Fab’dsFvFc);及び
・ DVDIg、これらは以下でより詳細に説明される。
【0055】
一実施形態では、抗体形式は、当技術分野で既知のもの及び本明細書に記載のものを含み、例えば、抗体分子形式は、以下のものを含む又はからなる群から選択されるものの1つであるか、又はそれを含む:diabody、BYbe、scdiabody、triabody、tribody、tetrabodies、TrYbe、タンデムscFv、FabFv、Fab’Fv、FabdsFv、Fab‐scFv、Fab‐dsscFv、Fab‐(dsscFv)、diFab、diFab’、タンデムscFv‐Fc、scFv‐Fc‐scFv、scdiabody‐Fc、scdiabody‐CH、Ig‐scFv、scFv‐Ig、V‐Ig、Ig‐V、Duobody及びDVDIg、これらは以下でより詳細に議論される。本発明で採用するためのさらに好ましい抗体形式は、二重特異性抗体である。
【0056】
一つの好ましい実施形態では、本発明の抗体分子は、Fcドメインを含んでいない、すなわち、CH2及びCH3ドメインを含んでいない。例えば、分子は、タンデムscFv、scFv‐dsFv、dsscFv‐dsFv didsFv、diabody、dsdiabody、didsdiabody、scdiabody((scFv)2とも呼ばれる)、dsscdiabody、triabody、dstriabody、didstriabody、tridstriabody、tetrabodies、dstetrabody、didstetrabody、tridstetrabody、tetradstetrabody、tribody、dstribody、didstribody、Fabdab、FabFv、Fab’dab、Fab’Fv、Fab単一リンカーFv(WO2014/096390に開示)、Fab’単一リンカーFv、FabdsFv、Fab’dsFv、Fab‐scFv(bibodyともいう)、Fab’scFv、FabdsscFv、Fab’dsscFv、FabdidsscFv、Fab’didsscFv、FabscFv単一リンカーFv、Fab’scFv単一リンカーFv、FabdsscFvs単一リンカーFv、Fab’dsscFv単一リンカーFv、FvFabFv、FvFab’Fv、dsFvFabFv、dsFvFab’Fv、FvFabdsFv、FvFab’dsFv、dsFvFabdsFv、dsFvFab’dsFv、FabFvFv、Fab’FvFv、FabdsFvFv、Fab’dsFvFv、FabFvdsFv、Fab’FvdsFv、FabdsFvdsFv、Fab’dsFvdsFv、disFab、化学的に結合したdiFab’を含むdiFab’、(FabscFv)、(Fab)scFvdsFv、(Fab)dsscFvdsFv、(FabdscFv)、minibody、dsminibody、didsminibody、diabody‐CH、dsdiabody‐CH、didsdiabody‐CH、scdiabody‐CH、dsscdiabody‐CH、didsscdiabody‐CH、タンデムscFv‐CH、タンデムdsscFv‐CH、タンデムdidsscFv‐CH、タンデムtridsscFv‐CH、及びタンデムtetradsscFv‐CH、を含む群から選択することができる。一実施形態では、本発明の抗体は、diabody(ジアボディ)であるか、又はdiabodyを含む。別の実施形態では、それは、デュオボディ(duobody)であるか、又はデュオボディを含む。
【0057】
以下では、本発明の抗体として、又は抗体全体の一部として、本発明での使用に適した抗体形式についてさらに説明する。
本明細書で用いられる「単一ドメイン抗体」(本明細書ではdab及びsdAbとも呼ばれる)は、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体フラグメントを指す。単一ドメイン抗体の例としては、V又はV又はVHが挙げられる。
本明細書で採用されるタンデム‐sdAbは、リンカー、例えばペプチドリンカーによって連結された2つのドメイン抗体を指し、特にドメイン抗体が異なる抗原に対する特異性を有する場合を指す。
本明細書で採用されるタンデム‐sdAb‐sdAbは、2つのリンカー、例えばペプチドリンカーによって直列に接続された3つのドメイン抗体を指し、特にドメイン抗体が異なる抗原に対して特異性を有する場合を指す。
本明細書で採用されるdsFvは、可変内ジスルフィド結合を有するFvを指す。dsFvは、より大きな分子の成分であってもよく、例えば、可変ドメインの1つが、例えばアミノ酸リンカーを介して別の抗体フラグメント/成分に連結されてもよい。
【0058】
本明細書で採用される(dsFv)は、例えばペプチドリンカー又はジスルフィド結合(例えば2つのVのC末端の間)を介して第2のdsFv中のドメインに連結された1つのドメインを有するdsFvを指し、その形式は後述の(scFv)に類似するが、各ペアの可変領域は可変領域内ジスルフィド結合を含む。
本明細書で採用される成分は、本発明の抗体のビルディングブロック又は部分を指し、特に成分がscFv、Fab等の抗体フラグメントである場合、特に本明細書に記載のように、いくつかの実施形態において、本発明の抗体全体の一部として使用され得る。
本明細書で使用される単鎖Fv又は「scFv」と略記されるものは、(例えばペプチドリンカーによって)連結されて単一のポリペプチド鎖を形成するV及びV抗体ドメインを含む抗体フラグメントを意味する。重鎖及び軽鎖の定常領域は、この形式では省略される。
【0059】
本明細書で採用されるdsscFvは、可変領域内ジスルフィド結合を有するscFvを指す。
本明細書で採用されるタンデムscFv(本明細書ではdiscFv又は(scFv))ともいう)は、単一のFv間リンカーが存在するように単一リンカーを介して結合した2つのscFvを指す。
本明細書で採用されるタンデムdsscFv(本明細書ではscFvdsscFv又はdsscFvscFvともいう)は、単一のFv間リンカーが存在するように単一リンカーを介して連結した2つのscFvであって、そのうちの1つが可変領域内ジスルフィド結合を有するものを指す。
本明細書で採用されるタンデムdidsscFv(本明細書ではdidsscFvともいう)は、単一のFv間リンカーが存在するように単一リンカーを介して連結された2つのscFvであって、各scFvが不変領域ジスルフィド結合を含んでいるものをいう。
本明細書で採用されるscFv‐dsFvは、例えばペプチドリンカーによって、ジスルフィド結合を介して連結された2つの可変ドメインを含むFvドメインに連結され、dsFvを形成するscFvをいう。この形式では、scFvのVH又はVLは、dsFvのVH又はVLに連結されてもよい。
【0060】
本明細書で採用されるdsscFv‐dsFvは、2つの可変ドメインがジスルフィド結合を介して結合してdsFvを形成してなるたFvドメインに、dsscFvが例えばペプチドリンカーで結合しているものである。この形式では、dsscFvのVH又はVLは、dsFvのVH又はVLに連結されていてもよい。
本明細書で採用されるDiabody(ジアボディ)とは、2つのFv対V/V及びさらなるV/V対であって、第1のFvのVが第2のFvのVに連結し、第1のFvのVが第2のFvのVに連結するような2つのFv間リンカーを有しているものをいう。
本明細書で採用されるdsDiabodyは、可変領域内ジスルフィド結合を含むdiabodyを指す。
本明細書で採用されるdidsDiabodyは、2つの可変領域内ジスルフィド結合、すなわち、可変領域の各対の間に1つのdsを含むdiabodyを意味する。
本明細書で採用されるSc‐diabodyとは、分子が3つのリンカーを含み、例えばVHリンカーVLリンカーVHリンカーVLのような2つの正常なscFvを形成するように、Fv内リンカーを含むdiabodyをいう。
【0061】
本明細書で採用されるdssc‐diabodyとは、可変領域内ジスルフィド結合を持つsc‐diabodyのことである。
本明細書で採用されるdidssc‐diabodyは、各対の可変領域間に可変領域内ジスルフィド結合を有するsc‐diabodyを意味する。
本明細書で採用されるDartとは、VLリンカーVHリンカー及びVHリンカーVLであって、VH及びVHのC末端がジスルフィド結合によって結合しているものをいう。Paul A.Moore et al Blood,2011;117(17):4542-4551。
本明細書で採用されるBite(登録商標)は、以下の形式の2対の可変ドメインを含む分子を指す;ペア1からのドメイン(例えばVH)が、ペア2からのドメイン(例えばVH又はVL)にリンカーを介して接続され、前記第2のドメインがペア1からのさらなるドメイン(例えばVL)にリンカーで接続され、今度はペア2からの残りのドメイン(すなわちVL又はVH)に接続されたもの。
Di-diabodyは、Nunez‐Pradoら、特にその中の図1の分子番号25を参照されたい。
本明細書で採用されるDsdi‐diabodyは、可変領域内ジスルフィド結合を有するdi‐diabodyである。
本明細書で採用されるDidsdi‐diabodyは、各対の可変領域間に可変領域内ジスルフィド結合を有するdi‐diabodyである。
【0062】
本明細書で採用されるTriabody(トリアボディ)とは、3つのFvと3つのFv間リンカーを含むdiabodyと同様の形式を指す。
本明細書で採用されるdstriabodyは、可変ドメイン対の1つの間に可変領域内ジスルフィド結合を含むtriabodyを意味する。
本明細書で採用されるdidstriabodyは、2つの可変領域内ジスルフィド結合、すなわち2つの可変ドメイン対のそれぞれの間に1つのdsを含むtriabodyを意味する。
本明細書で採用されるtridstriabodyは、3つの可変領域内ジスルフィド結合、すなわち、可変領域の各対の間に1つのdsを含むtriabodyを指す。
本明細書で採用されるtetrabodyは、4つのFvと4つのFv間リンカーを含むdiabodyと同様の形式を指す。
本明細書で採用されるdstetrabodyは、可変領域対のうちの1つの間に可変領域内ジスルフィド結合を含むtetrabodyを指す。
本明細書で採用されるdidstetrabodyは、2つの可変領域内ジスルフィド結合、すなわち、2つの可変ドメイン対のそれぞれの間に1つのdsを含むtetrabodyを意味する。
本明細書で採用されるTridstetrabodyは、3つの可変領域内ジスルフィド結合を含むtetrabodyを指し、すなわち、3対の可変領域のそれぞれの間に1つのdsを含む。
【0063】
本明細書で採用されるTetradstetrabodyは、4つの可変領域内ジスルフィド結合、すなわち各可変ドメイン間に1つのdsを含むtetrabodyを指す。
本明細書で採用されるTribody(Fab(scFv)とも呼ばれる)とは、軽鎖のC末端に第1のscFvが付加され、重鎖のC末端に第2のscFvが付加されたFabフラグメントのことを指す。
本明細書で採用されるdstribodyは、2つの位置のうちの1つにdsscFvを含むtribodyを意味する。
本明細書で採用されるdidstribody又はTrYbeは、2つのdsscFvを含むtribodyを指す。
本明細書で採用されるdsFabは、可変領域内ジスルフィド結合を有するFabを指す。
本明細書で採用されるdsFab’は、可変領域内ジスルフィド結合を有するFab’を指す。
scFabは、一本鎖のFabフラグメントである。
scFab’は、一本鎖のFab’フラグメントである。
dsscFabは一本鎖のdsFabである。
dsscFab’は、一本鎖のdsFab’である。
本明細書で採用されるFabdabは、その重鎖又は軽鎖に、任意にリンカーを介してドメイン抗体が付加されたFabフラグメントを指す。
本明細書で採用されるFab’dabは、その重鎖又は軽鎖に、任意にリンカーを介してドメイン抗体が付加されたFab’フラグメントを指す。
【0064】
本明細書で採用されるFabFvは、以下の重鎖のCH1及び軽鎖のCLそれぞれのC末端に付加された追加の可変領域を有するFabフラグメントを指す(例えば、WO2009/040562を参照のこと)。その形式は、例えばWO2011/061492を参照して、そのPEG化バージョンとして提供されてもよい。
本明細書で採用されるFab’Fvは、Fab部分がFab’で置換されているFabFvと同様である。その形式は、そのPEG化バージョンとして提供されてもよい。
本明細書で採用されるFabdsFvは、Fv内ジスルフィド結合が、付加されたC末端可変領域を安定化するFabFvを指し、例えばWO2010/035012を参照されたい。その形式は、PEG化されたバージョンとして提供されてもよい。
本明細書で採用されるFab単一リンカーFv及びFab’単一リンカーは、例えばペプチドリンカーによって可変ドメインに連結されたFab又はFab’フラグメントを指し、前記可変ドメインは可変ドメイン内ジスルフィド結合を介して第2の可変ドメインに連結され、それによってdsFvを形成し、例えばWO2014/096390を参照されたい。
本明細書で採用されるFab‐scFv(bibodyとも呼ばれる)は、軽鎖又は重鎖のC‐末端に、任意にリンカーを介してscFvが付加されたFab分子である。
本明細書で採用されるFab’‐scFvは、軽鎖又は重鎖のC末端に、任意にリンカーを介してscFvが付加されたFab’分子である。
【0065】
本明細書で採用されるFabdsscFv又はBYbeは、一本鎖Fvの可変領域間にジスルフィド結合を有するFabscFvである。
本明細書で採用されるFab’dsscFvは、一本鎖Fvの可変領域間にジスルフィド結合を有するFab’scFvである。
本明細書で採用されるFabscFv‐dabは、一方の鎖のC末端にscFvを、他方の鎖のC末端にドメイン抗体を付加したFabである。
本明細書で採用されるFab’scFv‐dabは、一方の鎖のC末端にscFvを、他方の鎖のC末端にドメイン抗体を付加したFab’を指す。
本明細書で採用されるFabdscFv‐dabは、一方の鎖のC末端にdsscFvを、他方の鎖のC末端にドメイン抗体を付加したFabを指す。
本明細書で採用されるFab’dsscFv‐dabは、dsscFvを一方の鎖のC末端に、ドメイン抗体を他方の鎖のC末端に付加したFab’を指す。
本明細書で採用されるFabscFv単一リンカーFvとは、FvのドメインがFabの重鎖又は軽鎖に連結され、scFvが他のFab鎖に連結され、Fvのドメインが可変領域内ジスルフィドによって連結されているFab単一リンカーFvを指す。
【0066】
本明細書で採用されるFabdsscFv単一リンカーFvは、scFvが可変領域内ジスルフィド結合を含むFabscFv単一リンカーFvを指す。
本明細書で採用されるFab’scFv単一リンカーFvは、FvのドメインがFabの重鎖又は軽鎖に連結され、scFvが他のFab鎖に連結され、Fvのドメインが可変領域内ジスルフィドによって連結されているFab’単一リンカーFvを指す。
本明細書で採用されるFab’dsscFv単一リンカーFvとは、scFvが可変領域内ジスルフィド結合を含んでいるFab’scFv単一リンカーFvのことを指す。
本明細書で採用されるFvFabFvは、Fabの重鎖及び軽鎖のN末端に第1のFvのドメインが付加され、重鎖及び軽鎖のC末端に第2のFvのドメインが付加されたFabを指す。
本明細書で採用されるFvFab’Fvは、Fab’の重鎖及び軽鎖のN末端に第1のFvのドメインが付加され、重鎖及び軽鎖のC末端に第2のFvのドメインが付加されたFab’を指す。
本明細書で採用されるdsFvFabFvは、Fabの重鎖及び軽鎖のN末端に付加された第1のFvのドメイン(第1のFvは可変領域内ジスルフィド結合を含む)及び重鎖及び軽鎖のC末端に付加された第2のFvのドメインを有するFabを指す。
【0067】
本明細書で採用されるFvFabdsFvは、Fabの重鎖及び軽鎖のN末端に第1のFvのドメインが付加され、重鎖及び軽鎖のC末端に第2のFvのドメインが付加され、第2のFvが可変領域内ジスルフィド結合を含むFabを指す。
本明細書で採用されるdsFvFab’Fvは、Fab’の重鎖及び軽鎖のN末端に付加された第1のFvのドメイン(第1のFvが可変領域内ジスルフィド結合を含む)、及び重鎖及び軽鎖のC末端に付加された第2のFvのドメインを有するFab’を指す。
本明細書で採用されるFvFab’dsFvは、Fab’の重鎖及び軽鎖のN末端に付加された第1のFvのドメインと重鎖及び軽鎖のC末端に付加された第2のFvのドメインを有し、第2のFvが可変領域内ジスルフィド結合を含んでいるFab’を指す。
本明細書で採用されるdsFvFabdsFvは、Fabの重鎖及び軽鎖のN末端に付加された第1のFvのドメイン(第1のFvは可変領域内ジスルフィド結合を含む)及び重鎖及び軽鎖のC末端に付加された第2のFvのドメイン(第2のFvは可変領域内ジスルフィド結合も含む)を有するFabを指す。
【0068】
本明細書で採用されるdsFvFab’dsFvは、Fab’の重鎖及び軽鎖のN末端に付加された第1のFvのドメイン(第1のFvが可変領域内ジスルフィド結合を含む)、及び重鎖及び軽鎖のC末端に付加された第2のFvのドメイン(第2のFvが可変領域内ジスルフィド結合も含む)を有するFab’を意味する。
本明細書で採用されるFabFvFvは、重鎖及び軽鎖のC末端に直列に付加された2対のFvを有するFabフラグメントを指し、例えばWO2011/086091を参照されたい。
本明細書で採用されるFab’FvFvは、重鎖及び軽鎖のC末端に直列に付加された2対のFvを有するFab’フラグメントを指し、例えばWO2011/086091を参照されたい。
本明細書で採用されるFabdsFvFvは、重鎖及び軽鎖のC末端に直列に付加された2対のFvを有するFabフラグメントを指し(例えばWO2011/086091を参照されたい)、C末端に直接付着した第1のFv対が可変領域内のジスルフィド結合を含む。
本明細書で採用されるFab’dsFvFvは、重鎖及び軽鎖のC末端に直列に付加された2対のFvを有するFab’フラグメントを指し(例えばWO2011/086091を参照されたい)、ここで、C末端に直接付着した第1のFvペアは、可変領域内のジスルフィド結合を含む。
【0069】
本明細書で採用されるFabFvdsFvは、重鎖及び軽鎖のC末端に直列に付加された2対のFvを有するFabフラグメントを指し、分子の「C」末端の第2のFv対は、可変領域内のジスルフィド結合を含む。
本明細書で採用されるFab’FvdsFvは、重鎖及び軽鎖のC末端に2対のFvが直列に付加されたFab’フラグメントを指し、分子の「C」末端における第2のFv対は、可変領域内ジスルフィド結合を含む。
本明細書で採用されるFabdsFvdsFvは、重鎖及び軽鎖のC末端に直列に付加された2対のFvを有するFabフラグメントを指し、第1及び第2のFv対は可変領域内のジスルフィド結合を含む。
本明細書で採用されるFab’dsFvdsFvは、重鎖及び軽鎖のC末端に直列に付加された2対のFvを有するFab’フラグメントを指し、ここで、第1及び第2のFvは可変領域内のジスルフィド結合を含む。
本明細書で採用されるDiFabは、それらの重鎖のC末端を介して連結された2つのFab分子を意味する。
本明細書で採用されるDiFab’は、そのヒンジ領域において1つ以上のジスルフィド結合を介して連結された2つのFab’分子を意味する。
DiFab及びDiFab’分子には、その化学的共役形態が含まれる。
【0070】
本明細書で採用される(FabscFv)は、2つのscFvが付加されたdiFab分子を指し、例えば、重鎖又は軽鎖、例えば、重鎖のC‐末端に付加されている。
本明細書で採用される(Fab’scFv)は、2つのscFvがそれに付加されたdiFab’分子を指し、例えば、重鎖又は軽鎖、例えば、重鎖のC‐末端に付加されている。
本明細書で採用される(Fab)scFvdsFvは、scFv及びdsFvが付加されたdiFab(例えば重鎖C‐末端のそれぞれから1つずつ付加されたもの)を指す。
本明細書で採用される(Fab’)scFvdsFvは、scFvとdsFvが付加されたdiFab’(例えば、重鎖C末端のそれぞれから1つずつ付加されたもの)を指す。
本明細書で採用される(Fab)dsscFvdsFvは、dsscFv及びdsFvが付加されたdiFab(例えば、重鎖C‐末端から)を指す。
本明細書で採用される(Fab’)dsscFvdsFvは、dsscFvとdsFvが付加されたdiFab’(例えば重鎖C‐末端から)を指す。
【0071】
本明細書で採用されるMinibody(ミニボディ)は、(VL/VH‐CHを指す。
本明細書で採用されるdsminibodyは、1つのVL/VHが可変領域内ジスルフィド結合を含む、(VL/VH‐CHを指す。
本明細書で採用されるdidsminibodyは、(dsFv‐CHを指す。
本明細書で採用されるscFv‐Fcは、分子が2つの結合ドメインを有するように、一定領域フラグメント‐(CH2CH3)のCH2ドメインのN末端に、例えば、ヒンジを介して付加されるscFvを指す。
本明細書で採用されるdsscFv‐Fcは、分子が2つの結合ドメインを有するように、CH2ドメインのN末端に付加されたdsscFvと、例えばヒンジを介して、定常領域フラグメント‐(CH2CH3)2の第2のCH2ドメインのN末端に付加されたscFvを指す。
本明細書で採用されるdidsscFv‐Fcは、分子が2つの結合ドメインを有するように、例えばヒンジを介して定常領域フラグメント‐(CH2CH3)2のCH2ドメインのN末端に付加されたscFvを指す。
本明細書で採用されるタンデムscFv‐Fcは、2つのタンデムscFvを指し、ここで各々は、分子が4つの結合ドメインを有するように、例えばヒンジを介して、一定領域フラグメント‐(CHCH)のCHドメインのN‐末端に直列に付加される。
【0072】
本明細書で採用されるScdiabody‐Fcは、2つのscdiabodyであり、各々が、例えばヒンジを介して、定常領域フラグメント‐CHCHのCHドメインのN末端に付加されている。
本明細書で採用されるScFv‐Fc‐scFvは、4つのscFvを指し、ここで、それぞれの1つは、‐CHCHフラグメントの重鎖及び軽鎖の両方のN末端及びC末端に付加されている。
本明細書で採用されるscdiabody‐CHは、それぞれが、例えばヒンジを介してCHドメインに連結された2つのscdiabody分子を指す。
「カッパ/ラムダ体」又は「κ/λ体」は、2つの重鎖と2つの軽鎖を有する通常のIgGの形式であり、2つの軽鎖は互いに異なり、一方はラムダ軽鎖(VL‐CL)、他方はカッパ軽鎖(VK‐CK)である。重鎖は、WO2012/023053に記載されているように、CDRにおいても同一である。
本明細書で採用されるIgG‐scFvは、重鎖の各々又は軽鎖の各々のC末端にscFvを有する全長抗体である。
本明細書で採用されるscFv‐IgGは、重鎖の各々又は軽鎖の各々のN‐末端にscFvを有する全長抗体である。
【0073】
本明細書で採用されるV‐IgGは、重鎖の各々又は軽鎖の各々のN末端に可変ドメインを有する全長抗体である。
本明細書で採用されるIgG‐Vは、重鎖の各々又は軽鎖の各々のC末端に可変ドメインを有する全長抗体である。
DVD‐Ig(デュアルVドメインIgGとしても知られる)は、各重鎖及び各軽鎖のN末端に1つずつ、さらに4つの可変ドメインを有する完全長抗体である。
本明細書で採用されるduobody(デュオボディ)又は「Fab‐アーム交換」は、2つの異なるモノクローナル抗体の定常ドメイン(通常CH3)において、一致し相補的に設計されたアミノ酸変化が、混合時にヘテロダイマーの形成につながる二重特異性IgG形式抗体である。第一抗体からの重:軽鎖ペアは、残基エンジニアリングの結果として、第二抗体の重:軽鎖ペアと結合することが好ましい。例えば、WO2008/119353、WO2011/131746及びWO2013/060867を参照されたい。
【0074】
本発明の抗体は、抗体フラグメントであってもよく、したがって、本明細書における抗体への言及は、抗体フラグメントも含む。一実施形態では、本発明の抗体は、CD45に対する少なくとも2つの異なるパラトープを含む、本明細書に開示された抗体フラグメントのいずれかであってもよい。別の実施形態では、本発明の抗体は、CD45に対する単一の抗原結合部位のみを含むが、本発明の結合分子の一部、又は本明細書で論じるような抗体の混合物の1つとして採用される、本明細書で論じる抗体フラグメントを含むものであってもよい。別の実施形態では、一価の抗体フラグメントは、本発明において、好ましくは本明細書に規定されるような抗体混合物において採用され得る。本明細書で採用される「結合フラグメント」とは、標的ペプチド又は抗原に特異的であるとフラグメントを特徴付けるのに十分な親和性で標的ペプチド又は抗原に結合することができるフラグメントを指す。
【0075】
本明細書で使用する「Fabフラグメント」という用語は、軽鎖のV(可変軽)ドメイン及び定常ドメイン(C)、並びに重鎖のV(可変重)ドメイン及び第1定常ドメイン(CH)を含む軽鎖フラグメントを含む抗体フラグメントを意味する。用語「Fv」は、2つの可変ドメイン、例えば、コグネイトペア又は親和性成熟可変ドメイン、すなわちV及びVペアのような共働可変ドメインを指す。一実施形態では、そのようなフラグメントは、本発明の抗体分子として使用される。本明細書で採用される共働可変ドメインは、Fv(V/Vペア)を当該抗原に対して特異的にするために、互いに補完し合う及び/又は両方が抗原結合に貢献する可変ドメインである。
【0076】
本発明の抗体は、特に本明細書で議論されるFab‐X/Fab‐Y、ByBe、TrYbe、及びIgG形式を含む、本明細書で議論される抗体形式のいずれかを含んでいてもよい。BYbe、TrYbe、及びIgG形式の抗体は、治療において特に有用である。本発明の抗体は、重鎖及び/又は軽鎖可変領域と、任意にリンカー又は抗体の異なる部分を一緒に接合する他の実体とを含む形式を含んでいてもよい。このような抗体は、分子とも呼ばれることがある。一つの特に好ましい実施形態では、本発明の抗体は、IgG形式である。別の特に好ましい実施形態では、本発明の抗体は、BYbe形式である。別の特に好ましい実施形態では、本発明の抗体は、TrYbe形式である。
【0077】
また、本発明の抗体は、IgA、IgE、IgD、又はIgMクラスの抗体であってもよい。
本明細書で採用される標的分子、特にCD45に対する特異性(又は特異的)の程度とは、相互作用におけるパートナー又はその関連部分が、非パートナーと比較して、互いを認識するだけ、又は互いに有意に高い親和性を有することをいう。例えばバックグラウンドレベルの結合又は別の無関係なタンパク質(例えば、鶏卵白リゾチームなど)に対してよりも、例えば少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、少なくとも10,000倍、少なくとも100,000倍又は少なくとも1,000,000倍高い親和性である。一実施形態では、そのような特異性の程度は、CD45に対するものである。別の実施形態では、そのような特異性は、CD45に対してだけでなく、CD45の他のエピトープと比較して、抗体の抗原結合部位、特にパラトープによって結合されるCD45の特定のエピトープに対してでもある。
【0078】
本明細書で採用される「結合部位」とは、標的抗原を結合することができる結合領域、典型的にはポリペプチドを指し、例えば、その部位を抗原に対して特異的であると特徴付けるのに十分な親和性を有している。好ましい実施形態では、結合部位は、CD45を結合する。一実施形態では、結合部位は、少なくとも1つの可変ドメイン又はその誘導体、例えば可変ドメイン又はその誘導体のペア、例えば可変ドメイン又はその誘導体のコグネイトペアを含む。典型的には、これはVH/VLペアである。
任意の適切な抗原結合部位が、本発明の抗体において使用され得る。一実施形態では、結合部位、特にパラトープは、少なくとも1つの可変ドメイン又はその誘導体、例えば可変ドメイン又はその誘導体のペア、例えば可変ドメイン又はその誘導体のコグネイトペアを含む。典型的には、これはVH/VLペアである。
【0079】
可変領域(本明細書では可変ドメインとも呼ばれる)は、一般に、3つのCDR及び適当なフレームワークを含む。一実施形態では、抗原結合部位は、2つの可変領域、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、これらの要素は共に、CD45に対する抗体又は結合フラグメントの結合相互作用の特異性、特に結合部位がCD45上のどこに結合するかという点での特異性に寄与する。一実施形態では、本発明の抗体分子の抗原結合部位に採用される可変ドメインは、コグネイトペアである。本明細書で採用される「コグネイトペア」は、予め形成されたカップルとして宿主から単離された可変ドメイン(又はそのヒト化バージョン等のその誘導体)の重鎖及び軽鎖のペアを指す。この定義には、宿主からの元のペアが保持されない、ライブラリーから単離された可変ドメインは含まれない。コグネイトペアは、宿主においてしばしば親和性成熟され、したがって、ファージライブラリーなどのライブラリーから選択された可変ドメイン対の組み合わせよりも、それらが特異的である抗原に対して高い親和性を有する場合があるので有利であると考えられる。別の実施形態では、本発明の抗体の結合部位における重鎖及び軽鎖は、コグネイトペアでなくてもよい。一実施形態では、例えば共通の軽鎖が使用される場合、軽鎖は重鎖可変領域の少なくとも1つと同族(コグネイト)ではないが、それでも機能的な抗原結合部位を形成することが可能である。
【0080】
誘導体、修飾(改変)体、及びヒト化
本明細書で採用される「誘導体」とは、例えば、望ましくない特性を除去するなどして特性を最適化するために、天然に存在する配列中の1、2、3、4又は5個のアミノ酸が置換又は欠失され、しかし特徴付ける特性は保持されることを意味する。修飾の例としては、グリコシル化部位、GPIアンカー、又は溶媒にさらされたリジンを除去するものがある。これらの修飾は、関連するアミノ酸残基を保存的なアミノ酸置換で置き換えることによって達成することができる。
【0081】
CDRにおける他の修飾は、例えば、1つ以上のシステインを例えばセリン残基で置換することを含むことができる。Asnは脱アミノ化の基質となりうるが、この傾向はAsn及び/又は隣接するアミノ酸を保存的置換などの代替アミノ酸で置換することにより低減することが可能である。CDRのアミノ酸Aspは異性化される可能性がある。後者は、Asp及び/又は隣接するアミノ酸を代替アミノ酸、例えば保存的置換で置き換えることによって最小化することができる。
【0082】
一実施形態では、例えば本発明の抗体分子における抗原結合部位における可変領域(単数又は複数)は、ヒト化されている。可変領域のヒト化されたものは、本明細書の文脈では、その誘導体でもある。ヒト化は、非ヒトフレームワークをヒトフレームワークに置換すること、及び任意に1つ又は複数の残基を「ドナー残基」に逆変異することを含み得る。本明細書で採用されるドナー残基とは、宿主から単離された元の可変領域に見出される残基を指し、特にヒトフレームワーク中の所定のアミノ酸をドナーフレームワーク中の対応する位置のアミノ酸に置き換えることである。一実施形態では、本明細書に開示される任意の非ヒト可変領域はまた、ヒト化形態で本発明の抗体分子に存在することができる。一実施形態では、本明細書に開示されているようなCDRは、ヒト可変領域フレームワーク中に存在する。別の実施形態では、フレームワークドナー残基もまた、CDRと同様に移植されてもよい。別の実施形態では、本発明の抗体は、完全ヒト可変領域を含んでいる。別の実施形態では、本発明の抗体は、完全にヒトである。
【0083】
抗体定常領域及びFc領域の機能
好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、Fcドメインを含んでいない。 一つの実施形態では、本発明の抗体は、本明細書に以下に記載されるように修飾されたFcドメインを含む。別の好ましい実施形態では、本発明の抗体は、Fcドメインを含むが、Fcドメインの配列は、1つ又は複数のFcエフェクター機能を除去するために修飾されている。別の実施形態では、本発明の抗体のFc領域は、本明細書で議論されるもののいずれかなど、抗体の特定の特性を最適化するために修飾されている。
【0084】
一実施形態では、本発明の抗体は、「サイレンス化された」(silenced)Fc領域を含む。例えば、一実施形態では、本発明の抗体は、正常なFc領域に関連するエフェクター機能(単数又は複数)を表示しない。
本明細書で採用されるFcドメインは、文脈が明確にそうでないことを示さない限り、一般に‐(CHCHを指す。
一実施形態では、本発明の抗体は、‐CHCHフラグメントを含んでいない。
【0085】
一実施形態では、本発明の抗体は、CHドメインを含んでいない。
一実施形態において、本発明の抗体は、CHドメインを含んでいない。
一実施形態では、本発明の抗体は、Fcレセプターと結合しない。
一実施形態では、本発明の抗体は、補体と結合しない。好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、第1補体因子であるC1q又はC1と結合しない。一実施形態では、本発明の抗体は、例えば、Fc領域を欠いているため、それらの因子と結合しない。別の実施形態では、本発明の抗体は、定常領域においてその能力を妨げる修飾を有するため、それらの因子に結合しない。代替の実施形態では、本発明の抗体は、FcγRと結合しないが、補体と結合する。例えば、一実施形態では、本発明の抗体は、FcγRと結合しないが、C1q及び/又はC1と結合する。
【0086】
一実施形態では、本発明の抗体は、通常のFc領域が放出を誘発するであろう1つ以上のサイトカインの放出を誘発しないという意味において、活性Fc領域を含んでいない。例えば、本発明の抗体のFc領域は、Fcレセプターに結合したときにサイトカインの放出を誘発しないか、又は有意にはそうしないかもしれない。
一実施形態において、一般に本発明の結合分子は、結合分子の血清半減期を変更する修飾を含んでいてもよい。したがって、別の実施形態では、本発明の抗体は、抗体の半減期を変化させるFc領域修飾(複数可)を有する。そのような修飾は、Fc機能を変化させるものと同様に存在してもよい。好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、抗体の血清半減期を変化させる修飾(複数可)を有する。特に好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、そのような修飾を欠く抗体と比較して、抗体の血清半減期を減少させる修飾(複数可)を有する。別の好ましい実施形態では、本発明の抗体は、そのような修飾を欠く抗体と比較して、Fc領域のサイレンシング及び抗体の血清半減期の減少の両方を集合的に行う修飾(複数可)を含む。
【0087】
本発明の抗体分子の抗体定常領域ドメインは、存在する場合、抗体分子の提案された機能、特に必要とされ得るエフェクター機能を考慮して選択することができる。好ましい実施形態において、抗体は、Fcを欠くもの、又はFc領域の1つ以上のエフェクター機能を欠くもの、好ましくはそれらの全てを欠くものである。本発明の他の実施形態では、抗体のFc領域のエフェクター機能(複数可)は、依然として存在してもよい。一実施形態では、本発明の抗体は、ヒト定常領域、例えばIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMドメインを含んでいてもよい。特に、抗体分子が抗体エフェクター機能が必要とされる治療用途に意図される場合、特にIgG1及びIgG3アイソタイプのヒトIgG定常領域ドメインが使用され得る。あるいは、抗体分子が治療目的を意図し、抗体エフェクター機能が必要とされない場合には、IgG2及びIgG4アイソタイプが使用され得る。特に好ましいIgGアイソタイプは、IgG2及びIgG4である。抗体がエフェクター機能を持たないように、好ましい実施形態において定常領域が修飾されていてもよい。したがって、これらの定常領域ドメインの配列バリアントもまた使用され得ることが理解されよう。例えば、Angal et al.,1993,Molecular Immunology,1993,30:105‐108に記載されているように、241位のセリンがプロリンに変更されているIgG4分子が使用されてもよい。したがって、抗体がIgG4抗体である実施形態では、抗体は、変異S241Pを含んでもよい。別の実施形態では、本発明の抗体は、Fc領域を欠いていてもよい。
【0088】
本発明の抗体は、一実施形態において、サイレンス化されたFc領域を有していてもよい。本明細書で使用される用語「サイレント」、「サイレンス化された」、又は「サイレンシング」は、本明細書に記載の修飾Fc領域を有する抗体であって、非修飾Fc領域を含む同一の抗体のFcgRへの結合と比較してFcγ受容体(FcgR)への結合が減少した抗体を指す(例えば、以下の通り:例えばBLIによって測定される、FcgRへの結合の、非修飾Fc領域を含む同一の抗体のFcgRへの結合に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の減少)。いくつかの実施形態では、Fcサイレンス化抗体は、FcgRへの検出可能な結合を有さない。修飾されたFc領域を有する抗体のFcgRへの結合は、当該技術分野において既知の様々な技術を用いて測定することができる。例えば、限定されるものではないが、平衡法(例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA);KinExA、Rathanaswami et al.Analytical Biochemistry、Vol.373:52‐60,2008;又はラジオイムノアッセイ(RIA))、又は表面プラズモン共鳴測定法又は他の機構の動力学ベースの測定法(例えば。BIACORE(商標)解析又はOctet(商標)解析(forteBIO))、及び間接結合アッセイ、競合結合アッセイ蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ゲル電気泳動及びクロマトグラフィー(例えば、ゲルろ過)などの他の方法である。別の実施形態では、本発明の抗体は、FcgRへの結合を低減又は除去するが、依然として補体の活性化を可能にするように修飾されていてもよい。別の実施形態では、本発明の抗体は、サイトカイン放出を活性化しないが、依然として補体を活性化することができるように、修飾されたFc領域を有していてもよい。
【0089】
一実施形態では、抗体重鎖は、CHドメインを含み、抗体軽鎖は、κ又はλのいずれかのCLドメインを含む。一実施形態では、抗体重鎖は、CHドメイン、CHドメイン、及びCHドメインを含み、抗体軽鎖は、κ又はλのいずれかのCLドメインを含む。
4つのヒトIgGアイソタイプは、活性化Fcγ受容体(FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIc、FcγRIIIa)、抑制FcγRIIb受容体、補体の第1成分(C1q)に異なるアフィニティーで結合し、非常に異なったエフェクター機能をもたらす(Bruhns P.et al.2009.Specificity and affinity of human Fcgamma receptors and their polymorphic variants for human IgG subclasses.(ヒトFcγ受容体及びその多型バリアントのヒトIgGサブクラスに対する特異性及び親和性。)Blood.113(16):3716‐25)、Jeffrey B.Stavenhagen,et al.Cancer Research 2007 Sep 15;67(18):8882‐90も参照されたい。一実施形態では、本発明の抗体は、Fcレセプターに結合しない。本発明の別の実施形態では、抗体は、1種類以上のFcレセプターに結合する。
【0090】
IgGとFcγRsあるいはC1qとの結合は、ヒンジ領域とCHドメインに位置する残基によって決まる。CHドメインの2つの領域はFcγRs及びC1qの結合に重要であり、IgG2及びIgG4においてユニークな配列を持っている。233‐236位のIgG2残基及び327、330及び331位のIgG4残基のヒトIgG1への置換は、ADCC及びCDCを大幅に減少させることが示されている(Armour KL.et al.、1999,Recombinant human IgG molecules lacking Fcgamma receptor I binding and monocyte triggering activities.(Fcガンマ受容体I結合及び単球トリガー活性を欠く組換えヒトIgG分子。)Eur J Immunol.29(8):2613‐24及びShields RL.et al.,2001.High resolution mapping of the binding site on human IgG1 for Fcgamma RI, Fcgamma RII, Fcgamma RIII, and FcRn and design of IgG1 variants with improved binding to the Fcgamma R(FcガンマRI、FcガンマRII、FcガンマRIII、及びFcRnに対するヒトIgG1上の結合部位の高解像度マッピング及びFcガンマRへの結合を改善したIgG1バリアントのデザイン)J Biol Chem.276(9):6591‐604)。さらに、Idusogieらは、K322を含む異なる位置でのアラニン置換が補体の活性化を著しく減少させることを示した(Idusogie EE.et al.、2000.Mapping of the C1q binding site on rituxan、a chimeric antibody with a human IgG1 Fc.(ヒトIgG1 Fcを有するキメラ抗体であるリツキサン上のC1q結合部位のマッピング)J Immunol.164(8):4178‐84)。同様に、マウスIgG2AのCHドメインの変異は、FcγRI、及びC1qへの結合を減少させることが示された(Steurer W.et al,1995.Ex vivo coating of islet cell allografts with murine CTLA4/Fc promotes graft tolerance.(マウスCTLA4/Fcによる膵島細胞同種移植片のex vivoコーティングは、移植片寛容を促進する。)J Immunol.155(3):1165‐74)。
【0091】
一実施形態では、採用されるFc領域は変異されており、特に本明細書に記載される変異がされている。一実施形態では、変異は、結合及び/又はエフェクター機能を除去することである。一つの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、Fcレセプターと結合しないように変異されている。別の好ましい実施形態では、本発明の抗体は、Fc領域を含まないので、そのためにFcエフェクター活性を示さない。一実施形態では、Fc変異は、Fc領域のFc受容体への結合を除去又は増強する変異、エフェクター機能を増加又は除去する変異、抗体の半減期を増加又は減少させる変異及びこれらの組み合わせを含む群から選択される。好ましい実施形態では、修飾は、Fc受容体への結合を除去又は減少させる。別の好ましい実施形態では、修飾は、Fcエフェクター機能を除去又は低減させる。別の好ましい実施形態では、修飾は、血清半減期を減少させる。別の好ましい実施形態では、抗体の定常領域は、Fc受容体結合、及びFcエフェクター機能を低減又は除去するとともに、血清半減期を短縮する修飾(単数又は複数)を含む。一実施形態では、修飾の影響に言及する場合、それは、等価な抗体であるが修飾を欠いているものとの比較によって実証され得る。
【0092】
本発明の別の実施形態では、抗体は、プロテインAと結合する能力を修飾する、特にプロテインA結合を除去する重鎖修飾を有していてもよい。本明細書で議論するように、このようなアプローチは、二重特異性抗体の精製を促進するために好ましく使用され得る。しかしながら、他の実施形態では、本発明の任意の抗体は、それがFc領域を有する場合、プロテインA結合を変更するために修飾されてもよい。例えば、両方の重鎖が修飾を含んでいてもよい。あるいは、両方の重鎖が修飾を欠いていてもよい。しかし、好ましい実施形態では、一方が修飾を有し、他方が有しない。
【0093】
pH7.4ではなくpH6.0でFcRnに選択的に結合するいくつかの抗体は、様々な動物モデルにおいてより高い半減期を示す。CHドメインとCHドメインの間の界面に位置するいくつかの変異、例えば、T250Q/M428L(Hinton PR.et al.2004.Engineered human IgG antibodies with longer serum half-lives in primates.(霊長類におけるより長い血清半減期を有する工学的ヒトIgG抗体。)J Biol Chem.279(8):6213‐6)及びM252Y/S254T/T256E+H433K/N434F(Vaccaro C.et al.,2005.Engineering the Fc region of immunoglobulin G to modulate in vivo antibody levels.(免疫グロブリンGのFc領域を工学的に修飾してin vivo抗体レベルを調節すること。)Nat Biotechnol.23(10):1283‐8)は、FcRnへの結合親和性及びIgG1のインビボでの半減期を増加させることが示されている。したがって、M252/S254/T256+H44/N434に血清半減期を変化させる修飾が存在してもよく、特にM252Y/S254T/T256E+H433K/N434Fが存在する可能性がある。ただし、FcRn結合の増加と半減期の増加には必ずしも直接的な関係があるわけではない(Datta‐Mannan A.et al.Humanized IgG1 Variants with Differential Binding Properties to the Neonatal Fc Receptor:Relationship to Pharmacokinetics in Mice and Primates.(新生児Fcレセプターへの結合特性が異なるヒト化IgG1バリアント:マウス及び霊長類における薬物動態との関係) Drug Metab.Dispos.35:86‐94)。一実施形態では、半減期を増加させることが望まれる。別の実施形態では、実際には、抗体の血清半減期を減少させることが望まれる場合があるので、血清半減期を減少させる修飾が存在する場合がある。
【0094】
IgG4サブクラスはFcレセプター(FcγRIIIa)結合の減少を示し、他のIgGサブクラスの抗体は一般に強い結合を示す。これらの他のIgGサブタイプにおける減少したレセプター結合は、Pro238、Aps265、Asp270、Asn270(Fc炭水化物の損失)、Pro329、Leu234、Leu235、Gly236、Gly237、Ile253、Ser254、Lys288、Thr307、Gln311、Asn434及びHis435を含む群から選択される1又は複数のアミノ酸の変更、例えば置換によって生じ得る。一実施形態では、本発明による分子は、IgGサブクラス、例えばIgG1、IgG2又はIgG3のFcを有し、Fcは、以下の1つ、2つ又はすべての位置S228、L234及び/又はD265において変異している。一実施形態では、Fc領域における変異は、S228P、L234A、L235A、L235A、L235E及びそれらの組み合わせから独立して選択される。
【0095】
一実施形態では、本発明の抗体は、抗体がサイトカイン放出をもたらすかどうかに影響する修飾を含んでいてもよい。特に、L234F及びK274Qの修飾は、抗体がサイトカイン放出をもたらす能力を低下させることが示されている。したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体は、サイトカイン放出を変化させるL234及び/又はK274における修飾、特にL234F及びK274Qの修飾を含んでいてもよい。さらに、L234残基は血小板活性化に影響を及ぼす可能性があり、その残基は追加的又は代替的に修飾されてもよい。本発明の一実施形態では、例えば、血小板結合を変化させるL234修飾、特にL234F修飾が導入されてもよい。P331はまた、C1q結合において役割を果たすことが示されているので、1つの実施形態では、補体活性化を保持するためにP331は修飾されなくてもよい。別の実施形態では、補体活性化を減少又は除去するために修飾されてもよい;例えば、重鎖はP331S修飾を含んでいてもよい。別の実施形態では、補体結合を減少又は除去するP329修飾が存在し、特にP329A修飾が存在する。別の実施形態では、抗体は、位置P329、P331、K332及び/又はD265における1つ又は複数の修飾を含んでいてもよい。好ましい一実施形態では、抗体は、補体結合に影響を与え、特にC1q結合を減少させるために、P329A、P331S、K332A、及びD265Aでの修飾を含んでいてもよい。
【0096】
Fc領域のエフェクター機能を減少させるか、又は増加させるかのいずれかが所望され得る。好ましい一実施形態では、そのようなエフェクター機能を減少させることが所望される。別のものでは、それを最適化することが望まれる。細胞表面分子、特に免疫細胞上の分子を標的とする抗体では、エフェクター機能を奪うことが典型的に要求される。他の例では、特に細胞を枯渇させることが目的である場合、Fcエフェクター機能が除去されているか、又は可能な限り低いレベルまで低減されていることが望まれる場合がある。例えば、特に好ましい実施形態では、本発明の抗体は、CD45を発現する標的細胞において細胞死(好ましくはアポトーシス)を誘導することができるが、Fcエフェクター機能を示さない。したがって、1つの好ましい実施形態において、本発明の抗体は、活性Fc領域を欠く。例えば、抗体は物理的にFc領域を有していなくてもよいし、抗体はFc領域を不活性化する修飾を含んでいてもよい。後者は、例えば、Fcサイレンシングと称され得る。一実施形態では、Fcサイレンシングは、本発明の抗体が、修飾されていないFc領域を有する抗体であれば通常放出を誘発するであろう1つ又は複数のサイトカインの放出をもたらす能力が低い、又はもたらさないことを意味し得る。好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、細胞死(好ましくはアポトーシス)を刺激することができるが、Fc機能を示さない。Fc機能のさらなる例には、マスト細胞の脱顆粒の刺激が含まれ、再びその機能は、本発明の抗体において低減又は欠如され得る。Fc機能の低減の程度は、例えば、少なくとも65%であってもよく、例えば、少なくとも75%であってもよい。一実施形態では、減少は、少なくとも80%である。別の実施形態では、減少は、少なくとも90%である。減少は、例えば、少なくとも95%であってよい。好ましい一実施形態では、減少は、少なくとも99%である。別の実施形態では、減少は100%であってよく、このような例では、Fc機能が完全に除去されることを意味する。
【0097】
ヒトIgG1のCHドメインに多数の変異が作られ、ADCCとCDCへの影響がin vitroでテストされている(Idusogie EE.et al.、2001.Engineered antibodies with increased activity to recruit complement.(補体をリクルートする活性を高めた工学的抗体。)J Immunol.166(4):2571‐5)。注目すべきは、333位におけるアラニン置換が、ADCC及びCDCの両方を増加させることが報告されていることである。したがって、一実施形態では、333位における修飾が存在してもよく、特に補体をリクルートする能力を変化させるものが存在してもよい。Lazarらは、FcγRIIIaに対する親和性が高く、FcγRIIbに対する親和性が低い三重変異体(S239D/I332E/A330L)が、ADCCの向上をもたらすことを記載した(Lazar GA.et al.,2006)。したがって、S239/I332/A330における修飾が存在し、特にFc受容体に対する親和性を変化させるもの、特にS239D/I332E/A330Lが存在する可能性がある。Engineered antibody Fc variants with enhanced effector function.(エフェクター機能を強化した人工抗体Fcバリアント。)PNAS 103(11):4005‐4010)。同じ変異を使用して、ADCCが増加した抗体を生成した(Ryan MC.et al.2007 Antibody targeting of B‐cell maturation antigen on malignant plasma cells.(悪性形質細胞上のB細胞成熟抗原の抗体ターゲティング)Mol.Cancer Ther.、6:3009‐3018)。Richardsらは、マクロファージによる標的細胞の強化された貪食を媒介するFcγRIIIa親和性及びFcγRIIa/FcγRIIb比を改善したわずかに異なる三重変異体(S239D/I332E/G236A)を研究した(Richards JO et al(2008)Optimization of antibody binding to Fcgamma RIIa enhances macrophage phagocytosis of tumor cells.(FcγRIIaへの抗体結合の最適化により腫瘍細胞のマクロファージの貪食を増強する。)Mol Cancer Ther.7(8):2517‐27)。一実施形態では、S239D/I332E/G236A修飾は、したがって、存在し得る。
【0098】
IgG4抗体はエフェクター機能を持たないため、受容体ブロックに適したIgGサブクラスである。IgG4分子は、Fab‐アーム交換と呼ばれる動的なプロセスで半分子交換することができる。この現象は、治療用抗体と内因性IgG4との間で起こり得る。一つの好ましい実施形態において、本発明の抗体は、S228での修飾、特にS228Pを有する。S228P変異は、この組換えプロセスを防ぐことが示されており、より予測不可能な治療用IgG4抗体の設計を可能にする(Labrijn AF.et al.,2009.Therapeutic IgG4 antibodies engage in Fab-arm exchange with endogenous human IgG4 in vivo.(治療用IgG4抗体はin vivoで内因性ヒトIgG4とFab‐アーム交換を行う。)Nat Biotechnol.27(8):767‐71)。この技術は、二重特異性抗体分子を作成するために採用され得る。本明細書に記載される修飾は、好ましい実施形態において、IgG4の文脈で採用され得る。
【0099】
WO2008/145142は、本発明で採用され得る修飾、特にIgG4アイソタイプ抗体に対する修飾の例を開示している。
一実施形態では、本発明の抗体の重鎖は、409位のArg残基、405位のPhe残基及び/又は370位のLys残基の置換を有するヒトIgG4定常領域を含むことができる。例えば、1つの好ましい実施形態において、抗体の重鎖は、409位における修飾、特にその位置におけるLys、Ala、Thr、Met、又はLeu残基の導入から選択される1つを含む。一実施形態では、修飾は、409位におけるLys、Thr、Met、又はLeu残基の導入である。別の実施形態では、修飾は、409位におけるLys、Met、又はLeu残基の導入であってよい。一実施形態では、抗体は、ヒンジ領域においてCys‐Pro‐Pro‐Cysを含んでいない。一実施形態では、抗体は、インビボでFabアーム交換を誘導する能力の低下を示す。一実施形態では、抗体のヒンジ領域は、CXPC又はCPXC配列(Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である)を含む。一実施形態では、本発明の抗体は、特定の抗体クラス、抗体アイソタイプ、又は抗体アロタイプが特定の特性を示す能力を採用することができる。このような天然の多様性は、特定の特性を付与するために使用されてもよい。例えば、IgG1はR409を有するのに対し、IgG4は重鎖の409位にK409を有するが、これは抗体の能力に自然に影響すると考えられる。様々な天然に存在する配列変異の総説は、Jefferis et al(2009)mAbs、1(4):332‐338に記載されており、これは、特にそこで議論された配列変異に関連して、その全体が参照により組み込まれる。
【0100】
また、当業者であれば、抗体は様々な翻訳後修飾を受ける可能性があることも理解されよう。これらの修飾の種類及び程度は、しばしば、抗体を発現させるために使用される宿主細胞株及び培養条件に依存する。このような修飾には、グリコシル化、メチオニン酸化、ジケトピペラジン形成、アスパラギン酸異性化及びアスパラギン脱アミド化のバリエーションが含まれる場合がある。頻繁な修飾は、カルボキシペプチダーゼの作用によるカルボキシ末端塩基性残基(リジン又はアルギニンなど)の損失である(Harris、RJ.Journal of Chromatography 705:129‐134、1995に記載されているように)。従って、抗体重鎖のC末端リジンは存在しない場合がある。
【0101】
一実施形態では、本発明の抗体は、例えば、低下したFc機能、特にほぼFc‐ヌル表現型をもたらすために、アグリコシルIgGであってもよい。一実施形態では、本発明の抗体は、N297での修飾、特にN297Aを有する。一実施形態では、本発明の抗体は、F243及び/又はF244における修飾、特に、抗体がアグリコシルIgGであることを意味するものを有する。一実施形態では、本発明の抗体は、F243A及び/又はF244A重鎖修飾を含んでいてもよい。別の実施形態では、F241、F243、V262及びV264の1つ以上が修飾されてもよく、特にグリコシル化に影響を与えるアミノ酸に修飾されてもよい。一実施形態では、本発明の抗体は、F241A、F243A、V262E及びV264Eに修飾を有していてもよい。そのような修飾は、Yu et al(2013)135(26):9723‐9732に記載されており、特にそこで議論された修飾に関連して、その全体が参照により組み込まれ、そのような修飾は、例えば、Fc受容体結合を調節する方法を提供する。抗体のグリコシル化に影響を与える修飾が存在してもよい。さらに、本発明の抗体は、糖鎖工学のさらなるアプローチとして、グリコシル化に影響を与える細胞型において産生されてもよい。一実施形態では、本発明の抗体のフコシル化、シアリル化、ガラクトシル化、及び/又はマンノシル化は、配列修飾によって、及び/又は抗体を産生するために用いられる細胞の種類を介して、変更されてもよい。
一実施形態では、本発明の抗体は、297位及び/又は299位に修飾を有する。例えば、一実施形態では、本発明の抗体は、その重鎖におけるN297A修飾、好ましくはN297Q又は299位のSer若しくはThrの他の残基への変異を含む。一実施形態では、それはそれらの修飾の両方を有する。
【0102】
一実施形態では、本発明の抗体は、不要な種よりも本発明の抗体の形成に有利な修飾を有していてもよい。例えば、一実施形態では、本発明の抗体の生成は、2つの異なる抗原部位、特に2つの異なるパラトープが、異なるユニット上にあり、関連付けられることを含む場合がある。したがって、パラトープの一方のみを含むホモダイマーを優先して、両方のパラトープを含むヘテロダイマーを形成することが望ましい場合がある。ヘテロダイマー形成に有利なアプローチの例は、2つの同じ重鎖が会合するよりもむしろ、2つの異なる重鎖に有利な重鎖修飾を採用することである。一実施形態では、結合パートナーの1つ(又は少なくとも1つ)はホモダイマーを形成することができない、例えば結合パートナーのアミノ酸配列は、ホモダイマーの形成を除去又は最小化するように変異している。このような修飾の例としては、いわゆる「ノブ‐イントゥ‐ホール」(“knobs-into-holes”)修飾が挙げられる。可能なノブ‐イントゥ‐ホール修飾は、例えば、Merchant et al(1998)Nature Biotechnology 16(7)677‐681及びCarter et al(2001)J Immunol Methods,248(1‐2).7‐15に記載されており、これらは両方とも、特にそこで議論されたノブ‐イントゥ‐ホール修飾に関連して、参照により組み込まれる。電荷修飾は、ホモダイマーよりもヘテロダイマーの形成を有利にするために代替的又は追加的に採用されてもよく、例えば、そのような修飾は重鎖に存在してもよい。別の実施形態では、電荷修飾は、特定の軽鎖と特定の重鎖とのペアをもたらすために使用される。
【0103】
一実施形態では、ヘテロダイマー形成を有利にするためのそのようなアプローチは、共通の軽鎖アプローチと組み合わせて使用される。別の実施形態では、ホモダイマーよりもヘテロダイマーの形成を有利にするのではなく、例えばクロマトグラフィーによって、ヘテロダイマーをホモダイマーからより容易に分離できることを意味する修飾が存在することがある。ここでも、そのようなアプローチは、いくつかの実施形態において、一般的な軽鎖のアプローチで採用され得る。別の実施形態では、CD45に対する特定のパラトープを有する抗体の部分は、抗体の異なるパラトープを含む抗体の部分とのみ会合することが可能である。
【0104】
一実施形態では、結合パートナーの両方がホモダイマーを形成することができず、例えば、結合パートナーの1つはペプチドであり、他の結合パートナーは前記ペプチドに特異的なVHHである。一実施形態では、本発明の分子に採用されるscFvは、ホモダイマーを形成することができない。
本明細書で採用されるホモダイマーを形成することができないとは、ホモダイマーを形成する傾向が低い又はゼロであることを意味する。本明細書で採用される低いとは、5%以下、例えば、4、3、2、1、0.5%以下の凝集体を意味する。
【0105】
別の実施形態では、本発明の抗体は、修飾されたヒンジ領域及び/又はCH1領域を有していてもよい。あるいは、採用されるアイソタイプは、特定のヒンジ領域を有するものとして選択されてもよい。White et al(2015)Cancer Cell 27(1)に記載されているように。138‐148、IgG2 CH1及びヒンジ領域は、特に重鎖と軽鎖の間のジスルフィド橋に関連して、特定の特性を付与する。ヒンジ領域の柔軟性を有利にする修飾、又は柔軟性を低下させる修飾の使用も、例えば、本発明の抗体において採用され得る。ヒンジ領域の柔軟性を変化させるアプローチは、Liu et al(2019)Nature Communications 10:4206に開示されている。White et al(2015)及びLiu et al(2019)は、特に、議論された修飾に関連して、その全体が参照により組み込まれる。一実施形態では、本発明の抗体の重鎖は、IgG2 CH1及び/又はヒンジ領域を有し、別の実施形態では、両方の重鎖がそうである。一実施形態では、採用される抗体は、h2抗体である。特に好ましい実施形態では、採用される抗体は、ヒンジ又はCH1修飾を有するIgG2又はIgG4抗体、特に修飾ヒンジ領域を有するもの、例えばジスルフィド結合形成を変更するように操作されたものであってもよい。別の実施形態では、IgG2又はIgG4アイソタイプ抗体が採用され、それらのアイソタイプのヒンジ領域は、IgG3アイソタイプ抗体よりも柔軟性を示さないからである。一実施形態では、IgG4アイソタイプ抗体は、CD32架橋をもたらすことができる可能性がある形態で採用される。
別の実施形態では、抗体は、CD45分子の架橋をもたらすために立体的に最良の能力を示す。
【0106】
二重特異性抗体
一つの好ましい実施形態において、結合分子、特に本発明の抗体は、二重特異性である。したがって、好ましい実施形態では、二重特異性抗体が本発明で採用され、特に好ましい実施形態では、CD45に対する2つの異なる特異性を有する二重特異性抗体が採用される。特異性の異なる重鎖と軽鎖を一緒に発現させた場合に、単特異性抗体よりも二重特異性抗体の形成、又は精製を有利に行うための様々な二特異性抗体形式が利用でき、これらは本発明において採用することが可能である。
【0107】
例えば、片方又は両方の特異性において、ホモダイマー形成よりもヘテロダイマー形成に有利な形状又は電荷修飾が重鎖に存在してもよい。このような修飾の例としては、異なる特異性のための2つの異なる重鎖が相互作用しやすく、したがってヘテロダイマーの形成に有利であることを意味するノブ・イン・ホール重鎖の修飾が挙げられる。鎖交換ドメイン(Strand‐exchange engineered domains)(SEEDbody)のアプローチもヘテロダイマーの形成を促進するために使用され得る。
【0108】
重鎖の修飾は、一方の重鎖が他方の重鎖と比較して結合剤に対して異なる親和性を有するように採用することもできる。例えば、2つの異なる重鎖は、プロテインAに対して異なる親和性を有していてもよい。ある実施形態では、一方の重鎖は、プロテインA結合を除去する修飾を有するか、又はプロテインAと結合しないアイソタイプであり、他方の重鎖は依然としてプロテインAと結合する。このようなアプローチは、形成されるヘテロダイマーの割合を変えない一方で、プロテインA親和性に基づくホモダイマー抗体のいずれかからヘテロダイマー抗体を精製することを可能にしている。本発明の抗体は、プロテインA結合に影響を与える重鎖の一方の95位及び96位に修飾を有していてもよい。採用され得るそのような修飾の例には、一方の重鎖についてH95R修飾を採用すること、又はIMGTエクソン番号付けシステムにおいてH95R及びY96F修飾を共に採用することが含まれる。それらの修飾は、EU番号付けシステムにおけるH435R修飾及びH435R及びY436F修飾である。一実施形態では、本発明の抗体は、D16、L18、N44、K52、V57及びV82における修飾も有し得る。一実施形態では、そのような修飾は、IMGT番号付けシステムにおけるD16E、L18M、N44S、K52N、V57M及びV82I修飾の1つ以上と同様に、重鎖に存在する。一実施形態では、このような修飾は、IgGがIgG1、IgG2又はIgG4である場合に採用される。特に好ましい実施形態では、それらは、両方の重鎖がIgG4アイソタイプである2つの重鎖のうちの1つについて採用される。プロテインA結合に影響を与えるそのような修飾のアプローチは、例えば、US2010/0331527A1に記載されており、これは、特に、プロテインA結合に関連するその開示する修飾に関連して、その全体が参照により組み込まれる。
【0109】
さらなる実施形態において、採用される重鎖のアイソタイプは、プロテインAを結合する能力に基づいて選択され得る。例えば、ヒトでは、野生型のIgG1、IgG2、及びIgG4はすべてプロテインAと結合するが、野生型のヒトIgG3はプロテインAと結合しない。特に好ましい実施形態では、両方の重鎖がIgG4であるが、一方はプロテインA結合を減少又は除去するための修飾(複数可)を有している。つまり、抗体のヘテロダイマー形態は、プロテインA親和性に基づいて、より容易に不要なホモダイマー形態から分離することができるであろう。
【0110】
一実施形態では、ヘテロダイマー形成を促進する修飾は、ヘテロダイマーの精製を可能にする修飾と組み合わされてもよい。一実施形態では、修飾は、位置F405及びK409であってよい。例えば、ヘテロダイマー形成を有利にするために2つの重鎖に導入され得る修飾のペアの1つの例は、F405L及びK409Rである。それらの修飾は、それ自体で採用されてもよいし、ヘテロダイマーの優先的な精製を可能にする重鎖の修飾と組み合わせて採用されてもよい。一実施形態では、一方の重鎖は405位、409位、435位、及び436位で修飾を有し、他方の重鎖は409位で修飾を有する。一実施形態では、一方の重鎖はF405L修飾を有し、他方はK409R、H435R、及びY436F修飾を有する。別の実施形態では、一方の重鎖がF405L、H435R及びY436F修飾を有し、他方の重鎖がK409R修飾を有する。そのようなアプローチの例は、Steinhardt et al(2020)Pharmaceutics,12,3に記載されており、特に記載された二重特異性抗体形式及び重鎖修飾に関連して、その全体が参照により組み込まれる。別の実施形態では、軽鎖に関係するアプローチが採用されてもよく、特に、上述した重鎖のためのアプローチに加えて、軽鎖のためのアプローチが採用されてもよい。例えば、1つの軽鎖について、ペアリングすることが望まれる軽鎖及び重鎖の部分を互いに入れ替えて、その軽鎖重ペアの形成を有利にし、一方、他の特異性の重鎖及び軽鎖は修飾されないようにすることができる。一実施形態では、したがって、Roche Cross‐Mabのアプローチが適用される。別の実施形態では、共通の軽鎖が採用され、同じ軽鎖が両方の特異性に対して採用される。様々な二重特異性抗体形式は、Spiess et al(2015)Molecular Immunology 67:95‐106に概説されており、特にその文献の図1に示されるものなど、本発明において採用され得る。Spiess et al(2015)は、特にその文献の図1に示される抗体形式の種類を含め、参照により組み込まれる。
【0111】
抗体の生成及びスクリーニング
一実施形態では、本発明の抗体又はその抗体/フラグメント成分は、標的抗原又は抗原、特にCD45に対する改善された親和性を提供するように処理される。そのようなバリアントは、CDRの変異(Yanget al.,J.Mol.Biol.,254、392‐403、1995)、鎖シャフリング(Marks et al,Bio/Technology,10,779‐783,1992)、大腸菌の変異体株の使用(Low et al J.Mol.Biol,250,359‐368,1996)、DNAシャフリング(Patten et al Curr.Opin.Biotechnol.,8、724‐733,1997)、ファージディスプレイ(Thompson et al.、J.Mol.Biol.,256、77‐88、1996)及び性的PCR(Crameri et al Nature,391,288‐291,1998)などの多くの親和性成熟プロトコルにより得ることができる。Vaughan et al((前掲))は、これらの親和性成熟の方法について論じている。本発明で使用するための結合ドメインは、当技術分野で知られている任意の適切な方法によって生成することができ、例えばCDRは、市販の抗体を含む非ヒト抗体から採取してヒトフレームワークにグラフト化することができ、あるいは代わりにキメラ抗体を非ヒト可変領域及びヒト定常領域等を使用して調製することができる。
【0112】
CD45抗体の例は当技術分野で知られており、そのような抗体からのパラトープは、CD45に対して複数の特異性を有する本発明の抗体において採用されてもよく、又は本明細書に記載の方法を使用して適合性についてスクリーニングされ、その後、必要に応じて修飾され、本明細書に記載の方法を使用して、例えばヒト化されてもよい。治療用抗CD45抗体は、当技術分野で記載されており、例えばUS2011/0076270に開示されている抗CD45抗体が挙げられる。CD45抗体の例としては、ラットモノクローナルYTH54、YTH25.4、Miltenyiクローン5B1及びクローン30F11からのマウスモノクローナル、ラットモノクローナルYAML568、BD Bioscienceからのマウスモノクローナルクローン2D1カタログ番号347460、Novusからのマウスモノクローナル抗体5D3A3カタログ番号NBP2‐37293、マウスモノクローナルHI30カタログ番号NBP1‐79127、マウスモノクローナル4A8A4C7A2カタログ番号NBP1‐47428、マウスモノクローナル2B11カタログ番号NBP2‐32934、ラットモノクローナルYTH24.5カタログ番号NB100‐63828、ウサギモノクローナルY321カタログ番号NB110‐55701、マウスモノクローナルPD7/26/16カタログ番号NB120‐875、Santa CruzからのクローンB8由来マウスモノクローナルカタログ番号sc‐28369、クローンF10‐89‐4由来のマウスモノクローナルカタログ番号sc‐52490、クローンH‐230由来のウサギモノクローナルカタログ番号sc‐25590、クローンN‐19由来のヤギモノクローナルカタログ番号sc‐1123、クローンOX1由来のマウスモノクローナルカタログ番号sc‐53045、ラットモノクローナル(T29/33)カタログ番号sc‐18901、ラットモノクローナル(YAML 501.4)カタログ番号:No.sc65344、ラットモノクローナル(YTH80.103)カタログ番号sc‐59071、マウスモノクローナル(351C5)カタログ番号sc‐53201、マウスモノクローナル(35‐Z6)カタログ番号sc‐1178、マウスモノクローナル(158‐4D3)カタログ番号sc‐52386、CD45ROに対するマウスモノクローナル(UCH‐L1)カタログ番号sc‐1183、CD45ROに対するマウスモノクローナル(2Q1392)カタログ番号sc‐70712が挙げられる。CD45抗体は、参照により本明細書に組み込まれるWO2005/026210、WO02/072832及びWO2003/048327にも開示されている。このような市販の抗体は、治療用抗体の発見において有用なツールであり得る。一つの特に好ましい実施形態では、本発明の抗体は、ヒト抗体であるか、又はヒト化されたものである。したがって、市販の抗体は、1つの実施形態においてヒト化されていてもよい。本出願はしかし、特定の好ましい抗体の例、及びさらなる抗体を同定するための方法を定めている。
【0113】
当業者は、当技術分野で知られている任意の適切な方法を用いて、本発明の抗体で使用するための抗体を生成することができる。例えば宿主を免疫するために使用するための、又はファージディスプレイのようなパニングにおいて使用するための、抗体を生成する際に使用するための抗原ポリペプチドは、発現系を含む遺伝子工学的宿主細胞から当技術分野で周知のプロセスによって調製してもよいし、天然の生物源から回収してもよい。本願において、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を含む。これらは、特に指定しない限り、互換的に使用される。抗原ポリペプチドは、ある実施態様では、例えばアフィニティタグ等に融合された融合タンパク質等のより大きなタンパク質の一部であってもよい。一実施形態では、宿主は、例えばその表面にCD45を発現している、CD45でトランスフェクトされた細胞で免疫されてもよい。
【0114】
抗原ポリペプチドに対して生成された抗体は、動物の免疫化が必要な場合、動物、好ましくは非ヒト動物にポリペプチドを投与することにより、よく知られた日常的なプロトコル(例えばHandbook of Experimental Immunology,D.M.Weir(ed.),Vol 4,Blackwell Scientific Publishers,Oxford,England,1986を参照)を用いて得ることができる。ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ、ラクダ又はブタのような多くの温血動物を免疫化することができる。しかし、一般に、マウス、ウサギ、ブタ、ラットが最も適している。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法(Kohler & Milstein、1975、Nature、256:495‐497)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor et al 1983,Immunology Today,4:72)、及びEBVハイブリドーマ法(Cole et al Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,pp77‐96,Alan R Liss,Inc,1985)など当業者に知られている任意の方法により準備することができる。
【0115】
また、抗体は、例えば、Babcook、J.et al 1996、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(15):7843‐7848l;WO92/02551;WO2004/051268及びWO2004/106377に記載の方法によって特定の抗体の産生のために選択された単一リンパ球から生成した免疫グロブリン可変領域cDNAをクローニングし発現させることにより、単一リンパ球抗体法を使用して生成することもできる。本発明で使用するための抗体は、当技術分野で公知の様々なファージディスプレイ法を使用して生成することもでき、Brinkmanら(J.Immunol.Methods、1995、182:41‐50)、Amesら(J.Immunol.Methods、1995、184:177‐186)、Kettleboroughら(Eur.J.Immunol.1994,24:952‐958)、Persicら(Gene,1997 187 9‐18)、Burton et al.(Advances in Immunology,1994,57:191‐280)及びWO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;及びUS5,698,426;5,223,409;5,403,484;5,580,717;5,427,908;5,750,753;5,821,047;5,571,698;5,427,908;5,516,637;5,780,225;5,658,727;5,733,743;5,969,108、及びWO20011/30305によって開示されるものを含む。好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、CD45に特異的な少なくとも2つの異なるパラトープを有し、CD45の1つのパラトープを認識する抗体を最初に作製し、次に、例えば、それらの抗体の2つを使用して、CD45の少なくとも2つの異なるパラトープに結合できる本発明の抗体を生成することがありえる。例えば、CD45に対する複数の抗体を、本明細書で議論される方法を用いて作成し、次いで、結合親和性などの望ましい特性についてスクリーニングすることであってよい。その後、最良の候補を使用して、本発明の抗体を生成してもよい。
【0116】
一例として、本発明の抗体は完全ヒトであり、特に1つ以上の可変領域が完全ヒトである。完全ヒト分子とは、重鎖及び軽鎖の両方の可変領域及び定常領域(存在する場合)が全てヒト由来であるか、又はヒト由来の配列と実質的に同一であるものをいい、必ずしも同じ抗体からのものである必要はない。完全ヒト抗体の例としては、例えば、上記のファージディスプレイ法によって産生された抗体、及びマウス免疫グロブリン可変領域及び任意に定常領域遺伝子がそれらのヒト対応物によって置換されたマウスによって産生された抗体、例えば、EP0546073、US5,545,806、US5,569,825、US5,625,126、US5,633,425、US5,661,016、US5,770,429、EP0438474及びEP0463151に一般用語で記載されているような抗体などが挙げられる。モノパラトープ抗体は、まず、CD45に対して少なくとも2つの異なるパラトープを含む本発明の抗体を生成するために、引き起こされ、次に使用されてもよい。
【0117】
一例において、本発明による抗体の抗原結合部位、特に可変領域は、ヒト化されている。本明細書で採用されるヒト化(CDRグラフト化抗体を含む)とは、非ヒト種由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)とヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する分子を意味する(例えば、US5,585,089;WO91/09967を参照)。CDR全体ではなく、CDRの特異性決定残基を移植することだけが必要な場合があることが理解されよう(例えば、Kashmiri et al,2005,Methods,36,25~34を参照)。しかし、好ましい実施形態では、CDR全体(単数又は複数)が移植される。ヒト化抗体は、任意で、CDRが由来する非ヒト種に由来する1つ以上のフレームワーク残基をさらに含んでもよい。本明細書で使用する場合、「ヒト化抗体分子」という用語は、重鎖及び/又は軽鎖が、アクセプター抗体(例えば、ヒト抗体)の重鎖及び/又は軽鎖可変領域フレームワークにグラフトされたドナー抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体)からの1又は複数のCDR(必要に応じて、1又は複数の修飾CDRを含む)を含む抗体分子を意味する。レビューについては、Vaughan et al,Nature Biotechnology,16,535‐539,1998を参照されたい。一実施形態では、CDR全体が移されるのではなく、本明細書に記載のCDRのいずれか1つからの特異性決定残基の1つ又は複数のみがヒト抗体フレームワークに移植される(例えば、Kashmiri et al,2005,Methods,36,25‐34を参照のこと)。一実施形態では、本明細書で上述したCDRのうちの1つ以上からの特異性決定残基のみが、ヒト抗体フレームワークに移植される。別の実施形態では、本明細書に記載されたCDRの各々からの特異性決定残基のみが、ヒト抗体フレームワークに移植される。
【0118】
CDR又は特異性決定残基がグラフト化される場合、CDRが由来するドナー抗体のクラス/タイプを考慮して、マウス、霊長類及びヒトフレームワーク領域を含む任意の適切なアクセプター可変領域フレームワーク配列が使用され得る。好適には、本発明によるヒト化抗体は、本明細書に提供されるCDRの1つ以上と同様に、ヒトアクセプターフレームワーク領域を含む可変ドメインを有する。本発明で使用できるヒトフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY及びPOMである(Kabat et al (前掲))。例えば、KOL及びNEWMは重鎖に用いることができ、REIは軽鎖に用いることができ、EU、LAY及びPOMは重鎖及び軽鎖の両方に用いることができる。あるいは、ヒト生殖細胞系列の配列も使用できる。これらは、http://www2.mrc‐lmb.cam.ac.uk/vbase/list2.phpで利用可能である。
【0119】
本発明のヒト化抗体分子において、アクセプター重鎖及び軽鎖は、必ずしも同一の抗体に由来する必要はなく、所望により、異なる鎖に由来するフレームワーク領域を有する複合鎖を含むものであってもよい。フレームワーク領域は、アクセプター抗体のものと全く同じ配列である必要はない。例えば、珍しい残基は、そのアクセプター鎖のクラス又はタイプに対してより頻繁に出現する残基に変更することができる。あるいは、アクセプターフレームワーク領域の選択された残基は、ドナー抗体の同じ位置に見られる残基に対応するように変更してもよい(Reichmann et al 1998,Nature,332,323‐324を参照のこと)。このような変更は、ドナー抗体の親和性を回復するために必要な最小限度にとどめるべきである。変更する必要がある可能性のあるアクセプターフレームワーク領域の残基を選択するためのプロトコルは、WO91/09967に記載されている。フレームワークの誘導体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のアミノ酸が、例えばドナー残基で代替アミノ酸に置換されていてもよい。ドナー残基は、ドナー抗体、すなわちCDRが元々由来する抗体からの残基であり、特にドナー配列からの対応する位置の残基が採用される。ドナー残基は、ヒト受容体フレームワークに由来する適当な残基(アクセプター残基)で置換されてもよい。
【0120】
抗体可変ドメイン中の残基は、Kabatらによって考案されたシステムに従って従来の方式で番号付けされている。このシステムは、Kabat et al.,1987,Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Department of Health and Human Services,NIH、USA(以下「Kabatら(前掲)」)に記載されている。この番号付けシステムは、特に示されない限り、本明細書で使用される。Kabat残基の呼称は、アミノ酸残基の直鎖状番号付けと必ずしも直接対応しない。実際の直鎖アミノ酸配列は、基本可変ドメイン構造のフレームワーク又は相補性決定領域(CDR)のいずれであっても、構造的成分の短縮、又は挿入に対応する厳密なKabat番号付けよりも少ない又は追加のアミノ酸を含む場合がある。残基の正しいKabat番号付けは、抗体の配列中の相同性のある残基と「標準」Kabat番号の配列とのアラインメントによって、所定の抗体について決定することができる。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムによれば、残基31‐35(CDR‐H1)、残基50‐65(CDR‐H2)及び残基95‐102(CDR‐H3)に位置している。しかし、Chothia(Chothia、C.and Lesk,A.M.J.Mol.Biol.,196、901‐917(1987))によれば、CDR‐H1に相当するループは、残基26から残基32まで延びている。したがって、本明細書で採用される「CDR‐H1」は、他に示されない限り、Kabat番号付けシステムとChothiaのトポロジカルループ定義の組み合わせによって記述されるように、残基26から35を指すことが意図される。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムに従って、残基24~34(CDR‐L1)、残基50~56(CDR‐L2)及び残基89~97(CDR‐L3)に配置される。
【0121】
一実施形態では、本発明は、本明細書に開示される抗体配列、特に本明細書に開示されるヒト化された配列に及ぶ。
一例では、結合ドメインはヒト化されている。
一例では、本明細書で提供される1つ又は複数のCDRは、システイン残基又はアスパラギン酸(D)異性化部位又はアスパラギン(N)脱アミド化部位などの望ましくない残基又は部位を除去するように修飾されてもよい。一例では、アスパラギン残基(N)及び/又は隣接する残基を任意の他の適切なアミノ酸に変異させることによって、アスパラギン脱アミド化部位を1つ又は複数のCDRから除去することができる。一例では、NG又はNSのようなアスパラギン脱アミド化部位は、例えばNA又はNTに変異させてもよい。
【0122】
一例として、アスパラギン酸残基(D)及び/又は隣接する残基を任意の他の適切なアミノ酸に変異させることにより、アスパラギン酸異性化部位を1つ又は複数のCDRから除去することができる。一例として、DG又はDSのようなアスパラギン酸異性化部位は、例えばEG、DA又はDTに変異させてもよい。
例えば、CDRのいずれか1つにおける1つ以上のシステイン残基は、セリンなどの他のアミノ酸で置換されてもよい。
一例では、NLSのようなN‐グリコシル化部位は、アスパラギン残基(N)を、例えばSLS又はQLSのような任意の他の適切なアミノ酸に変異させることによって除去されてもよい。一例では、NLSのようなN‐グリコシル化部位は、セリン残基(S)を、スレオニン(T)は別として、任意の他の残基に変異させることによって除去することができる。
当業者は、CDRのバリアント又はヒト化配列を、本明細書に記載されるような任意の適切なアッセイで試験し、活性が維持されることを確認することが可能である。
【0123】
抗原への特異的結合は、例えばELISAやBIAcoreなどの表面プラズモン共鳴法などの任意の適切なアッセイを用いて試験することができ、そこで抗原(CD45)への結合が測定されうる。そのようなアッセイは、単離された天然若しくは組換えCD45又は適切な融合タンパク質/ポリペプチドを使用してもよい。一例では、結合は、例えば、BIAcoreなどの表面プラズモン共鳴によって、組換えCD45(配列番号41又は配列番号41のアミノ酸23~1304)を使用して測定される。あるいは、タンパク質は、HEK細胞などの細胞上に発現させ、フローサイトメトリーに基づく親和性決定を採用して親和性を測定してもよい。一実施形態では、1つの抗原結合部位、特にパラトープの特性をそれ自体で決定することが望まれる場合、そのパラトープのみを有する抗体が生成される。例えば、2つの異なる特異性を有する本発明の抗体と同じ形式の抗体が生成されるが、CD45に対する特異性のうちの1つだけが存在する。一実施形態では、例えば、各パラトープの親和性を決定できるように、又はパラトープが互いに対して交差ブロッキングを示すかどうかを決定するために、少なくとも2つのパラトープを有する本発明の抗体からCD45に対する各パラトープに対する抗体を生成してもよい。一実施形態では、CD45の細胞外領域と結合する能力が、例えば配列番号113のタンパク質を用いて測定される。一実施形態では、ScFvのような一価の抗体が、比較を行うために生成される。
【0124】
本発明による抗体分子のパラトープの結合を交差ブロックするパラトープを含む抗体は、例えば、本発明の抗体において、CD45との結合に同様に有用であり、したがって、同様に有用な抗体である可能性がある。したがって、そのような交差ブロッキング又は競合アッセイを採用することは、本発明の抗体を同定及び生成する有用な方法となり得る。一実施形態では、本発明の抗体からの個々のパラトープは、両方の抗原結合部位がそのパラトープを含む二価の抗体を生成するために使用され、その二価の抗体は次に交差ブロッキングアッセイで使用され得る。
【0125】
別の実施形態では、本明細書に開示された抗体の1つのパラトープの少なくとも1つを交差ブロックすることができる抗体が、本発明の抗体分子の生成に採用され得る。一実施形態では、本発明の抗体は、本明細書に規定されるパラトープの1つ、又はそれと交差ブロック若しくは競合することができる1つを含んでいてもよい。したがって、本発明はまた、抗原CD45に特異的な結合ドメインを含む抗体分子を提供し、ここで、CD45のための結合ドメインは、本明細書で上述した抗体分子のいずれか1つのCD45に特異的なパラトープの少なくとも1つのCD45への結合を交差ブロックし、及び/又はそれらのパラトープのいずれか1つによってCD45との結合から交差ブロックされる。全体として、典型的にはしかし、CD45に対して異なるパラトープを有する本発明の抗体におけるCD45に対して特異的な異なるパラトープは、CD45への結合について互いに交差ブロックしないか、又は競合しないか、又は著しくそうはしない。例えば、30%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは10%未満の交差ブロックが見られるであろう。一実施形態では、5%未満、特に1%未満の交差ブロックが見られるであろう。一実施形態では、交差ブロックパラトープは、例えば、交差ブロックする既存のパラトープを置き換えるために、本発明の抗体において採用されるべきCD45に特異的なさらなるパラトープを特定するための方法として望まれる。別の実施形態では、交差ブロッキング抗体は、本明細書に上述した抗体のCD45に特異的なパラトープによって結合されるエピトープと境界を接し、及び/又は重なり合うエピトープに結合する。別の実施形態では、交差ブロック中和抗体は、本明細書において上に記載される抗体のCD45に対するパラトープによって結合されるエピトープと境界を接し、及び/又は重なりあうエピトープに結合する。本発明の抗体のCD45に対する少なくとも2つの異なるパラトープは、CD45の異なるエピトープに結合し、したがって互いの結合を交差ブロックしないことを確認するために、交差ブロックアッセイも採用され得る。一実施形態では、CD45に対するパラトープのうちの1つだけを各々含む2つの抗体を作製し、それぞれが他方を交差ブロックする能力を測定することができる。CD45に対する抗体及び/又は特異性は、典型的には、他と交差ブロックしたり競合したりすべきではないが、それらは両方とも同時にCD45と依然として結合できるはずである。
【0126】
交差ブロッキング抗体は、当該技術分野における任意の適切な方法、例えば、交差ブロッキング抗体の抗原(CD45)への結合が本発明の抗体の結合を阻止する、又はその逆の、競合ELISA又はBIAcoreアッセイを使用することによって同定することが可能である。このような交差ブロッキングアッセイは、単離された天然若しくは組換えCD45、又は適切な融合タンパク質/ポリペプチドを使用することができる。一例では、結合及び交差ブロックは、組換えCD45(配列番号41)を用いて測定され、例えば、それらの抗体のいずれかによる交差ブロックは、80%以上、例えば85%以上、例えば90%以上、特に95%以上によるものである。一実施形態では、交差ブロックアッセイは、本発明の抗体からCD45に特異的なパラトープのうちの1つだけを有する抗体を用いて実施されてもよい。
【0127】
同一性と類似性の程度は容易に計算できる(Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing.Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Inc,Academic Press,1987,Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991,NCBIから入手できるBLAST(商標)ソフトウェア(Altschul,S.F.et al,1990,J.Mol.Biol.215:403‐410;Gish,W.& States,D.J.1993,Nature Genet.3:266‐272.Madden,T.L.et al.,1996,Meth.Enzymol.266:131‐141;Altschul,S.F.et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389‐3402;Zhang,J.& Madden,T.L.1997,Genome Res.7:649‐656,)。
【0128】
本発明はまた、本明細書に開示された新規ポリペプチド配列、及びそれに対して少なくとも80%類似又は同一、例えば85%以上、そのような90%以上、特に95%、96%、97%、98%又は99%以上の類似性又は同一性を有する配列にも及ぶものである。一実施形態では、配列は、本明細書で提供される特定の配列の少なくとも1つに対して少なくとも99%の配列同一性を有し得る。「同一性」は、本明細書で使用される場合、整列した配列の任意の特定の位置において、アミノ酸残基が配列間で同一であることを示す。本明細書で使用する「類似性」は、整列した配列中の任意の特定の位置において、アミノ酸残基が配列間で類似のタイプであることを示す。例えば、ロイシンは、イソロイシン又はバリンに置換されていてもよい。しばしば互いに置換され得る他のアミノ酸には、以下が含まれるが、これらに限定されるものではない:
‐ フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸);
‐ リジン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸);
‐ アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸);
‐ アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸);及び
‐ システインとメチオニン(硫黄を含む側鎖を持つアミノ酸)。
【0129】
同一性と類似性の程度は容易に計算できる(Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing.Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Inc,Academic Press,1987,Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991,NCBIから入手できるBLAST(商標)ソフトウェア(Altschul,S.F.et al,1990,J.Mol.Biol.215:403‐410;Gish,W.& States,D.J.1993,Nature Genet.3:266‐272.Madden,T.L.et al.,1996,Meth.Enzymol.266:131‐141;Altschul,S.F.et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389‐3402;Zhang,J.& Madden,T.L.1997,Genome Res.7:649‐656,)。
【0130】
本発明のこの態様は、ヒト化バージョン及び修飾バージョンを含むこれらの抗CD45抗体のバリアントにも及ぶことが理解され、本明細書に記載されるように、1つ以上の異性化、脱アミド化、グリコシル化部位又はシステイン残基を取り除くためにCDRにおいてアミノ酸が変異されたものが含まれる。一実施形態では、CD45に対するパラトープの一方又は両方は、既に知られている抗体由来であってもよいが、バイパラトピック抗体形式で採用されたことはない。
【0131】
FALA及びノブ・イン・ホール修飾を有する好ましい抗体
本発明の1つの特に好ましい実施形態では、採用される抗体は、FALA修飾を有する重鎖を含んでいる。特に、FALA修飾は、Fcレセプター結合を変化させる。さらなる好ましい実施形態では、抗体は、抗体のヒンジ領域における修飾、特に228位、好ましくは228Pにおける修飾を含む。一実施形態では、抗体は、228位、234位、及び235位での修飾を含む重鎖を有する。特に好ましい実施形態では、本発明の抗体の重鎖は、S228P、F234A、及びL235A FALA修飾を含むであろう。本発明の特に好ましい実施形態において、提供される抗体は、IgG4(P)アイソタイプ抗体であり、そのような修飾を含むであろう。
【0132】
別の特に好ましい実施形態では、本発明の抗体は、いわゆる「ノブ・イン・ホール」修飾を含むであろう。一実施形態では、抗体の一方の重鎖はT355で、他方はT366、368、407で修飾を含み、特に、2つの同一の重鎖がペアになるのではなく、それらが優先的にペアになることを意味する2つの異なる重鎖における相補的な形状を作る。特に、一方の特異性のための重鎖はT355W「ノブ」修飾を有し、他方はT366S、L368A、Y407V「ホール」修飾を有することができる。特に好ましい実施形態では、本発明の抗体は、IgG4アイソタイプ抗体であり、そのような修飾を有する。
【0133】
本発明の別の特に好ましい実施形態では、FALA、ヒンジ、及び「ノブ・イン・ホール」修飾が組み合わされる。好ましい実施形態では、それらは、IgG4アイソタイプ抗体の文脈で組み合わされる。一実施形態では、抗体の1つの重鎖は、228位、234位、235位、及び355位に修飾を有する。別の実施形態では、1つの重鎖は、228、234、235、366、368、及び407位で修飾を含む。例えば、一実施形態では、一方の重鎖はS228P、F234A、L235A、T355W修飾(そのためFALAと「ノブ」修飾の両方)を有し、好ましくは他方はS228P、F234A、L235A、T366S、L368A、Y407V修飾(そのためFALAと「ホール」修飾の両方)を有している。
【0134】
特に好ましい実施形態では、本発明の抗体は、FALA IgG4(P)抗体である。さらなる特に好ましい実施形態では、FALAノブ・イン・ホールIgG4(P)抗体である。
別の実施形態では、上記の形式は、本明細書で議論される他の形式/修飾と組み合わされてもよい。例えば、それらはまた、95位及び96位におけるプロテインA結合を除去するために本明細書で議論される修飾を含んでもよい。さらなる実施形態において、それらは、共通の軽鎖を含んでもよく、また、同様にプロテインA結合修飾を含んでもよい。
【0135】
BYbe及びTrYbeを含むさらに好ましい抗体形式
一態様において、以下を含む、又は以下からなる抗体分子が提供される:
a)式(VII)のポリペプチド鎖:
【化1】

b)式(VIII)のポリペプチド鎖:

【化2】


ここで
は、重鎖可変ドメインを表す;
CHは、重鎖定常領域のドメイン、例えばそのドメイン1を表す;
Wは、結合又はリンカー、例えばアミノ酸リンカーを表し、ただし、p又はqが0の場合、それらも0となる;
Zは、結合又はリンカー、例えばアミノ酸リンカーを表す;
は、dab、scFv、dsscFv又はdsFvを表す;
は、可変ドメイン、例えば、軽鎖可変ドメインを表す;
は、定常領域からのドメイン、例えば、Ckappaのような軽鎖定常領域ドメインを表す;
は、dab、scFv、dsscFv又はdsFvを表す;
pは0又は1である;
qは0又は1である;そして
pが1のときqは0又は1であり、qが1のときpは0又は1である、すなわち、p及びqは両方とも0を表さない;
ここで、抗体の抗原結合部位の少なくとも2つは、CD45に対して異なるパラトープであり、それぞれがCD45に対して異なるエピトープを認識する。
【0136】
一例では、CD45に特異的な結合ドメインは、V1、V2又はVH/VLのうちの少なくとも2つから選択される。
一実施形態では、qは0であり、pは1である。
一実施形態では、qは1であり、pは1である。
一実施形態では、V1はdabであり、V2はdabであり、これらは一緒に、コグネイトVH/VLペアなどの可変領域の共働ペアの単一の結合ドメインを形成し、これらは任意にジスルフィド結合によって連結されている。
【0137】
一実施形態では、V及びVは、CD45に特異的である。
一実施形態では、Vは、CD45に特異的である。
一実施形態では、Vは、CD45に特異的である。
一実施形態では、V及びVは一緒になって(例えば、結合ドメインとして)、CD45に特異的であり、V及びVはCD45に特異的である。
一実施形態では、Vは、CD45に特異的である。
一実施形態では、Vは、CD45に特異的である。
一実施形態では、V及びVは一緒になって(例えば、1つの結合ドメインとして)、CD45に特異的であり、V及びVは、CD45に特異的である。
一実施形態では、VはCD45に特異的であり、VはCD45に特異的であり、V及びVはCD45に特異的である。
【0138】
上記コンストラクトにおけるV、V、V及びVは、それぞれ結合ドメインを表し、本明細書に提供される配列のいずれかを組み込んでいてもよい。
W及びZは、任意の適切なリンカーを表してもよく、例えば、W及びZは、独立してSGGGGSGGGGS(配列番号67)又はSGGGGTGGGGS(配列番号114)であってもよい。
一実施形態では、V及び/又はVがdab、dsFv又はdsscFvである場合、V及び/又はVの可変ドメインV及びV間のジスルフィド結合は、位置V44とV100の間で形成される。
【0139】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の抗体は、BYbe抗体形式である。BYbe形式の抗体は、例えばWO2013/068571、Dave et al,(2016)Mabs,8(7):1319‐1335に記載されているように、1つのscFv又はdsscFvにのみ連結したFabを含む。したがって、例えば、上に与えられた式における1つの好ましい実施形態では、(V1)p及び(V2)qのうちの1つはScFv又はdsscFvとなり、他は何もないため、BYbe形式の抗体はFabと1つのscFv又はdsscFvのみを含むことになる。(V1)p及び(V2)qのいずれかがゼロの場合、対応するW又はZもゼロとなり、他方は結合又はリンカーとなる。好ましくは、BYbe形式抗体は、Fab及びdsscFvを含む。このようなBYbe形式抗体において、2つの抗原結合部位は、好ましくは、CD45に対して両方特異的であることができ、この2つは、CD45の異なるエピトープに対する2つの異なるパラトープに対応する。
【0140】
本発明のさらに特に好ましい実施形態では、抗体はTrYbe形式である。TrYbe形式は、2つのscFv又はdsscFvに連結されたFabを含み、各scFv又はdsscFvは、同じ又は異なる標的(例えば、1つのscFv又はdsscFvは治療標的に結合し、1つのscFv又はdsscFvは例えばアルブミンに結合して半減期を増加する)に結合している。そのような抗体フラグメントは、国際特許出願公開番号WO2015/197772に記載されており、その全体は、特に抗体フラグメントの構造及び議論に関して、参照により本明細書に組み入れられる。上に与えられた式に関して、TrYbe抗体については、p及びqは共に1であり、V1及びV2は、ScFv及びdsscFvから独立して選択されるであろう。好ましい実施形態において、V1及びV2は、両方ともScFvによってなる。別の実施形態では、V1及びV2は、両方ともdsscFvであろう。別の実施形態では、V1及びV2のうちの1つはScFvであり、他の1つはdsscFvであろう。TrYbeの抗原結合部位の少なくとも2つは、CD45に特異的であり、抗体は、CD45の異なるエピトープにそれぞれ特異的な2つの異なるパラトープを含むであろう。特に好ましい一実施形態では、第3の抗原結合部位はアルブミンに特異的であり、特にV1及びV2のうちの1つはアルブミンに特異的であろう。例えば、VH/VLはCD45に(例えばCD45の第1のエピトープに)特異的であってもよく、V1及びV2の一方はCD45に(例えばCD45の第2のエピトープに)特異的であってもよく、V1及びV2の他方はアルブミンに特異的であってもよい。
【0141】
好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、アルブミンに特異的な少なくとも1つのパラトープを含むであろう。一実施形態では、抗体は、CD45の異なるエピトープに特異的な2つのパラトープ、及びアルブミンに特異的な第3のパラトープも含むTRYbe形式抗体であろう。アルブミンを結合するために使用され得るアルブミン結合抗体配列の例には、WO2017/191062に開示されたものが含まれ、特にアルブミン結合配列に関する限り、その全体が参照により組み込まれる。したがって、本発明の抗体は、WO2017191062のアルブミン特異的抗体のうちの1つからのパラトープを含んでいてもよい。
【0142】
代替の実施形態では、上述したような抗体は、少なくとも2つの異なるものではなく、CD45に対して1つのみの特異性を有する。例えば、抗体の抗原結合部位の1つは、CD45に対して特異的であってもよい。別の実施形態では、抗原結合部位のうちの2つはCD45に対して特異的であるが、同じ特異性を有する。さらなる実施形態では、上記で定めた抗体の3つの抗原結合部位は全て、CD45に対して同じ特異性を有する。別の実施形態では、抗原結合部位のうちの2つはCD45に対して同じ特異性を有し、3つ目は血清アルブミンに対して特異的である。好ましい実施形態において、このような抗体は、本発明の抗体の混合物において使用される。
【0143】
ジスルフィド結合
本発明の抗体中の1つ以上の可変領域のペアがVHとVLの間のジスルフィド結合を含む場合、これは以下に列挙する残基の2つの間など、任意の適切な位置であってもよい(文脈が他に示す場合を除いて、以下のリストではKabat番号付けが採用されている)。Kabat番号付けに言及する場合、関連する文献は、Kabat et al.,1987、Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Department of Health and Human Services,NIH,USAである。
【0144】
一実施形態では、V1及び/又はV2が、上述の式におけるdsFv又はdsscFvである場合、VI及び/又はV2の可変ドメインVH及びVL間のジスルフィド結合は、以下に示す残基のうちの2つの間にある(文脈が他に示す場合を除いて、以下のリストにおいてKabat番号付けが採用されている)。Kabat番号付けに言及する場合、関連する文献は、Kabat et al.,1987,Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services,NIH,USAである。
【0145】
一実施形態では、ジスルフィド結合は、以下を含む群から選択される位置にある:
・ V37+V95C、例えばProtein Science 6、781‐788 Zhu et al(1997)を参照されたい;
・ V44+V100、例えば;Biochemistry 33 5451‐5459 Reiter et al(1994);又はJournal of Biological Chemistry Vol.269 No.28 pp.18327‐18331 Reiter et al(1994);又はProtein Engineering,vol.10 no.12 pp.1453‐1459 Rajagopal et al(1997)を参照されたい;
・ V44+V105、例えば、J Biochem.118、825‐831 Luo et al(1995)を参照されたい;
・ V45+V87、例えばProtein Science 6,781‐788 Zhu et al(1997)を参照されたい;
・ V55+V101、例えばFEBS Letters 377 135‐139 Young et al(1995)を参照されたい;
・ V100+V50、例えばBiochemistry 29 1362‐1367 Glockshuber et al(1990)を参照されたい;
・ V100b+V49;
・ V98+V46、例えばProtein Science 6,781‐788 Zhu et al(1997)を参照されたい;
・ V101+V46;
・ V105+V43、例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.90 pp.7538‐7542 Brinkmann et al(1993);又はProteins 19,35‐47 Jung et al(1994)、及び
・ V106+V57、例えば、FEBS Letters 377 135‐139 Young et al(1995)を参照されたい;
及び、分子内に位置する可変領域ペアにおけるそれに対応する位置。
【0146】
一実施形態では、ジスルフィド結合は、位置V44とV100との間に形成される。
上記のアミノ酸ペアは、ジスルフィド結合が形成され得るようなシステインによる置換に資する位置にある。システインは、既知の技術によって、これらの所望の位置に設計することができる。したがって、1つの実施形態において、本開示による設計されたシステインは、所定のアミノ酸位置における天然に存在する残基がシステイン残基で置換されているところを意味する。
【0147】
設計されたシステインの導入は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて行うことができる。これらの方法には、PCR伸長オーバーラップ変異生成、部位特異的突然変異誘発又はカセット式変異誘発(一般に、Sambrook et al,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press,Cold Spring Harbour,NY,1989;Ausbelら,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing & Wiley‐Interscience,NY,1993参照)などがあるが、これらに制限されない。部位特異的変異誘発キットは市販されており、例えばQuikChange(登録商標)Site‐Directed Mutagenesis kit(Stratagen,La Jolla,CA)がある。カセット式変異誘発は、Wells et ah,1985,Gene,34:315‐323 に基づいて行うことができる。あるいは、変異体は、オーバーラップするオリゴヌクレオチドのアニーリング、ライゲーション及びPCR増幅及びクローニングによる全遺伝子合成によって作製することができる。
【0148】
WO2015/197772は、BYbe及びTrYbe形式の抗体に関連して、ジスルフィドブリッジの好ましい位置を詳細に記載している。WO2015/197772は、特にジスルフィドブリッジの位置に関連して、その全体が参照により組み込まれる。
本明細書で論じるように、抗体のヒンジ領域における残基の能力を変更することは、CD45への結合に影響を与える1つの潜在的な方法であり、本発明において採用され得る。
【0149】
リンカー
ある文脈におけるリンカーに関する本明細書の教示は、リンカーが採用される異なる文脈におけるリンカー、例えば本発明の任意の結合分子、特に抗体、特にそれぞれが異なる抗原結合部位を有する実体を連結することを含むものに、同様に適用することができる。一実施形態では、リンカーは、本発明の結合分子、特に抗体の構成部分を一緒に結合するために採用され得る。例えば、一実施形態では、結合分子、特に抗体の構成部分を、ヘテロダイマーテザーの一部分に結合するためにリンカーが使用されてもよく、例えばFab又はScFvがリンカーを介してヘテロダイマーテザーの2つのユニットのうちの1つに結合されてもよい。
一実施形態では、本発明の分子に採用されるリンカーは、例えば配列番号149~214に示される配列から選択される、長さ50残基以下のアミノ酸リンカーである。
【0150】
【表1】
【0151】
【表2-1】

【表2-2】

【0152】
(S)は、配列番号160から164において任意である。

リジッドリンカーの例には、ペプチド配列GAPAPAAPAPA(配列番号92)、PPPP(配列番号93)及びPPPが含まれる。
他のリンカーを表3に示す。
【0153】
【表3】
【0154】
テザー形式の結合分子及び抗体
一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、ヘテロダイマーテザーによって一緒にされた2つの部分を含むことができる。例えば、本発明の抗体は、各々がCD45に対する異なるパラトープを有する異なる抗体フラグメントを含み、さらにそれが抗体の他の半分と一緒に全体の抗体分子を形成することを可能にするテザー領域を有する2つの部分を含んでもよい。一実施形態では、本発明の抗体は、Fab‐X/Fab‐Y抗体形式(Fab‐Kd‐Fab形式とも称される)である。Fab‐X/Fab‐Y抗体形式は、CD45に対する異なるパラトープの順列を迅速にスクリーニングすることができるため、スクリーニングに特に有用である。
【0155】
したがって、1つの実施形態において、本発明による抗体分子は、式A‐X:Y‐Bを有するCD45の異なるエピトープに特異的な少なくとも2つの異なるパラトープを含む抗体であり、
A‐Xは、第1の融合タンパク質である;
Y‐Bは、第二の融合タンパク質である;
X:Yはヘテロダイマーテザーである;
:は、XとYとの間の結合相互作用である;
Aは、Fab又はFab’フラグメントから選択される抗体の第1のタンパク質成分である;
Bは、Fab又はFab’から選択される抗体の第2のタンパク質成分である;
Xは、抗原又は抗体若しくはその結合フラグメントから独立に選択される結合ペアの第1の結合パートナーであり;そして
Yは、抗原、抗体又はその結合フラグメントから独立して選択される結合ペアの第2の結合パートナーである;
ただし、Xが抗原であるとき、YはXで表される抗原に特異的な抗体又はその結合フラグメントであり、Yが抗原であるとき、XはYで表される抗原に特異的な抗体又はその結合フラグメントである。
【0156】
CD45抗体及び配列の例示
CD45に特異的な任意の適切なパラトープを、本発明において採用することができる。そのような抗体の例示は、本明細書に記載されている。
一実施形態では、本発明の抗体は、以下のCDRのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい:
【表4】

【0157】
例えば、一実施形態では、抗体は、配列番号1~14から少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのCDRを含んでいてもよい。一実施形態では、配列番号1~14に示されるものの中から少なくとも1つのCDR1、CDR2、及び/又はCDR3配列を含んでいてもよい。別の実施形態では、本発明の抗体は、配列番号1~8に記載のものからのCDRH1、CDRH2、及び/又はCDRH3配列を含む重鎖可変領域を含んでもよい。別の実施形態では、本発明の抗体は、配列番号9~14に記載のものからのCDRL1、CDRL2、及び/又はCDRL3配列を含む軽鎖可変領域を含んでもよい。一実施形態では、抗体は、配列番号1~14の6つのCDRを含んでよく、ここで、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3は、配列番号1~14の対応するCDR配列から選択され、特定のCDRは4133特異性の元のCDR、又は配列番号1~14に記載のバリアント配列の1つであってよい。一実施形態では、抗体は、配列番号1、3、5、9、13、及び14のCDRを含むパラトープを含んでもよい。一実施形態では、本発明の抗体は、そのようなCDR配列を含むCD45に対する少なくとも1つのパラトープを含む。一実施形態では、本発明は、本明細書に記載のCD45抗体を、任意の適切な抗体形式で提供する。したがって、一実施形態では、本発明は、CDRを含む本明細書に記載の結合ドメインの1つ以上を含む抗CD45抗体又はそのフラグメントを提供するが、本明細書に記載の抗体形式のいずれかであってよい。
【0158】
一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号17から22の可変領域のいずれかを含んでいてもよい。一実施形態では、抗体の1つのパラトープは、配列番号17又は18から選択される軽鎖可変領域を含む。別の実施形態では、抗体の1つのパラトープは、配列番号19から22から選択される重鎖可変領域を含む。一実施形態では、本明細書に記載の重鎖可変領域が、本明細書に記載の軽鎖可変領域と組み合わせて採用される。好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号17又は18から選択される軽鎖可変領域と配列番号19~22から選択される重鎖可変領域とを含むCD45に特異的なパラトープを含む。
【0159】
一実施形態では、上記は、CD45に対する少なくとも2つの特異性を有する本発明の抗体、又は抗体の混合物において使用される。一実施形態では、採用される抗体は、上記の配列のうちの1つを含んでいない。
一実施形態において、本発明の抗体は、以下のCDRのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい:
【表5】

【0160】
例えば、一実施形態では、抗体は、配列番号23から31までの少なくとも1、2、3、4、5、又は6個のCDRを含んでいてもよい。一実施形態では、配列番号23~31に示されるものの中から少なくとも1つのCDR1、CDR2、及び/又はCDR3配列を含んでいてもよい。別の実施形態では、本発明の抗体は、配列番号23~28に記載のものからのCDRH1、CDRH2、及び/又はCDRH3配列を含む重鎖可変領域を含んでいてもよい。別の実施形態では、本発明の抗体は、配列番号29から31に記載のものからのCDRL1、CDRL2、及び/又はCDRL3配列を含む軽鎖可変領域を含んでもよい。一実施形態では、抗体は、配列番号23から31の6つのCDRを含んでよく、ここで、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3は、配列番号23から31の対応するCDR配列から選択され、特定のCDRは6294特異性のオリジナルCDR又は配列番号23から31に記載のバリアント配列のうちの1つであってよい。一実施形態では、このようなCDR配列を含むCD45に対する1つのパラトープを含む本発明の抗体を提供する。一実施形態において、本発明の抗体のパラトープは、配列番号23~25及び29~31のCDR配列を含む。一実施形態では、本発明は、本明細書に記載のCD45抗体を、任意の適切な抗体形式で提供する。したがって、一実施形態では、本発明は、CDRを含む本明細書に記載の結合ドメインの1つ以上を含む抗CD45抗体又はそのフラグメントを提供し、本明細書に記載の抗体形式のいずれかであってよい。
【0161】
一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号32から37の可変領域のいずれかを含んでいてもよい。一実施形態では、抗体の1つのパラトープは、配列番号36及び37から選択される軽鎖可変領域を含んでいる。別の実施形態では、抗体の1つのパラトープは、配列番号34又は35から選択される重鎖可変領域を含む。一実施形態では、本明細書に記載の重鎖可変領域が、本明細書に記載の軽鎖可変領域と組み合わせて採用される。好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号36及び37から選択される軽鎖可変領域と、配列番号34及び35から選択される重鎖可変領域とを含むCD45に特異的なパラトープを含む。
【0162】
本発明の1つの実施形態において、本発明の抗体の1つのパラトープは、上述の配列番号1~22の配列、又はそれに由来する配列を含み、抗体の他のパラトープは、上述の配列番号23~37の配列、又はそれに由来する配列を含む。例えば、一実施形態では、CD45に特異的な本発明の抗体の1つのパラトープは、上述の配列番号1~14からの1、2、3、4、5、又は6個のCDRを含み、抗体の他のパラトープは、上述の配列番号23~31からの1、2、3、4、5、又は6個のCDRを含む。別の実施形態では、本発明の抗体の1つのパラトープは、上述のように配列番号17から21の可変領域配列、又はそれに由来する配列を含み、CD45に特異的な他のパラトープは、上述のように配列番号34から37の可変領域配列、又はそれに由来する配列を含む。
【0163】
一つの特に好ましい実施形態では、CD45に特異的な本発明の抗体の少なくとも1つのパラトープは、本明細書で論じる4133 CD45特異性からの1、2、3、4、5又は6個のCDRを含む。別の特に好ましい実施形態では、抗体の少なくとも1つのパラトープは、配列番号17及び18から選択される4133特異性のための軽鎖可変領域を含む。別の特に好ましい実施形態では、CD45に特異的な抗体の少なくとも1つのパラトープは、4133特異性のための重鎖可変領域を含む。配列番号19から21までから選択される。別の特に好ましい実施形態では、CD45に特異的な抗体の少なくとも1つのパラトープは、このような軽鎖及び重鎖可変領域配列を含む。一実施形態では、本明細書に規定される特定のCDR又は可変領域配列の1つではなく、本発明の抗体は、本明細書に規定される特定の配列と少なくとも95%同一又は類似(96、97、98、99%同一又は類似など)の配列を有するCDR又は可変領域を含む。例えば、1つ以上のアミノ酸配列の変化、特に保存的配列の変化を有していてもよい。一実施形態では、本発明の抗体は、実施例、特に例13に規定されるフレームワーク修飾のうちの1つを含んでいてもよい。
【0164】
一実施形態では、本発明の抗体のパラトープに採用される重鎖可変領域ヒトフレームワークは、IGHV3‐21、IGHV4‐4、及び1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又はそれ以上のアミノ酸がシステイン以外のアミノ酸で置換され、例えばドナー抗体中の対応位置、例えばここに規定する特定のドナーVH配列からの残基で置換されている上記の任意の1つのバリアントを含む群から選択される。別の実施形態では、フレームワークは、IGHV3‐48、IGHV1‐19、又は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又はそれ以上のアミノ酸がシステイン以外のアミノ酸で置換され、例えば、ドナー抗体中の対応する位置の残基、例えば本明細書に記載の特定のドナーVH配列からの残基で置換されてなる上記のいずれか1つのバリアントを含む群から選択される。一実施形態では、ヒトフレームワークは、JH4又はJH1 J領域のような適切なJ領域配列をさらに含む。
【0165】
一実施形態では、本開示の抗体分子に採用されるヒトVHフレームワークは、24、37、44、48、49、67、69、71、73、76及び78からなる群から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11位などの少なくとも1つの位置において置換されたアミノ酸を有しており、例えばヒトフレームワークの元のアミノ酸がシステイン以外の別のアミノ酸に置換されており、特にドナー抗体のフレームワークの対応する位置における残基で置換している。
【0166】
VHフレームワークがIGHV3型である場合の一実施形態では、48、49、69、71、73、76及び78から選択される少なくとも5つの位置(通常は5つ又は6つの位置)、例えば48、71、73、76及び78(特にIGHV3‐7に好適)、又は48、69、71、73、76及び78(特にIGHV3‐7に好適)、又は48、49、71、73、76及び78(特にIGHV3‐21に好適)において置換がなされてもよい。VHフレームワークがタイプIGHV4である場合の1つの実施形態では、置換は1つ以上(1、2、3、4、5、6又は7)において、例えば24、37、48、49、67、69、71、73、76及び78から選択される5つの位置で、例えば、24、71、73、76及び78の位置のすべてにおいて、任意にさらに48及び67(これはIGHV4‐4に特に適している)において、又は24、37、49、67、69、71、73、76及び78(これはIGHV4‐31に特に適している)の位置すべてにおいて行われてもよい。
【0167】
一実施形態では、本発明の抗体は、CDRが由来する元のフレームワークからのアミノ酸2、3、及び/又は70も移植された軽鎖可変領域を含んでいてもよい。例えば、4133軽鎖可変領域の場合、オリジナル抗体からのグルタミン(Q2)、バリン(V3)及び/又はグルタミン(Q70)も、特にレシピエントフレームワークがIGKV1D‐13である場合、採用されるヒト化軽鎖可変領域に移植されてもよい。ある実施形態では、CDRL1は、潜在的なN‐グリコシル化部位を除去するために変異されてもよい。一実施形態では、4133重鎖可変領域の場合、ある実施形態では、48、49、71、73、76及び/又は78位の残基が、1又は複数のCDRと同様に新しいフレームワークに移植され得る。例えば、イソロイシン(I48)、グリシン(G49)、リジン(K71)、セリン(S73)、スレオニン(T76)及び/又はバリン(V78)も、それぞれ、特にアクセプターフレームワークがIGHV3‐21の場合、移植されてもよい。ある場合には、CDRH1及びCDRH2は、システイン残基を除去するように変異されてもよい(それぞれCDRH1バリアント及びCDRH2バリアント)。CDRH3はまた、潜在的なアスパラギン酸異性化部位を修飾するために変異されてもよい(CDRH3バリアント1~3)。別の実施形態では、4133重鎖可変領域からのCDRが使用される場合、4133VH遺伝子からの以下のフレームワーク残基(ドナー残基)の1つ以上が、特にアクセプターフレームワークがIGHV4‐4配列である場合、24、71、73、76及び78位に保持されてもよい。例えば、アラニン(A24)、リジン(K71)、セリン(S73)、スレオニン(T76)及びバリン(V78)もそれぞれ、CDRと同様に移される可能性がある。場合によっては、CDRH1及びCDRH2を変異させてシステイン残基を除去してもよい(それぞれ、CDRH1バリアント及びCDRH2バリアント)。CDRH3はまた、潜在的なアスパラギン酸異性化部位を修飾するために変異されてもよい(CDRH3バリアント1~3)。本願の例13は、6294特異性がCDRの源として使用される場合に保持されてもよいフレームワーク残基も示し、これらの残基の保持は、いくつかの実施形態において、1つ以上のCDRが6294特異性からである場合に採用されてもよい。
【0168】
一つの好ましい実施形態において、ヒトフレームワークは、JH1又はJH4 J領域などの適切なヒトJ領域をさらに含む。一つの好ましい実施形態において、JH1 J領域が採用される。
Kabat番号付けは、文脈が他に示さない限り、本明細書で採用される。
一実施形態では、本開示のヒト化抗体分子に採用される軽鎖可変領域ヒトフレームワークは、IGKV1‐5、IGKV1‐12、IGKV1D‐13、及び1、2、3、4又は5つのアミノ酸(2つのアミノ酸など)がシステイン以外のアミノ酸で置換された、例えば元のドナー抗体における対応位置のドナー残基、例えば配列番号60、69、78又は88に規定されているドナーVL配列からの残基で置換された上記のいずれか1つのバリアントを含む群から選択される。典型的には、ヒトフレームワークは、JK4 J領域のような適切なヒトJ領域配列をさらに含んでいる。
一実施形態では、軽鎖及び/又は重鎖フレームワークの変化(単数又は複数)は、本明細書に記載された配列に示される。
【0169】
一実施形態では、本開示の抗体分子に採用されるヒトVLフレームワークは、2、3、及び70を含む群から選択される少なくとも1つの位置で置換されたアミノ酸を有し、例えば、ヒトフレームワークの元のアミノ酸がシステイン以外の別のアミノ酸について置換されており、特にドナー抗体のフレームワークの対応する位置の残基について置き換えられている。一実施形態では、IGKV1D‐13ヒトフレームワークが採用される場合、2、3及び70から独立して選択される位置で1、2又は3つの置換が行われてもよい。一実施形態では、VLフレームワークの置換後の位置2はグルタミンである。一実施形態では、VLフレームワークの置換後の位置3はバリンである。一実施形態では、VLフレームワークの置換後の位置70は、グルタミンである。
本明細書に記載された置換の1つ又は複数を組み合わせて、本発明の抗体分子で使用するためのヒト化VL領域を生成してもよいことが理解されよう。
【0170】
一つの独立した態様において、提供されるヒト化VL可変ドメインは、配列番号17及び18から独立して選択される配列、並びに同じもののうちの任意の1つと少なくとも95%同一又は類似のヒト化配列(同じものの任意の1つと96、97、98又は99%同一又は類似のものなど)を含む。代替の実施形態では、ヒト化VL可変ドメインは、配列番号36、37から独立して選択される配列、及び同じもののいずれか1つと少なくとも95%同一又は類似のヒト化配列(同じもののいずれか1つと96、97、98又は99%同一又は類似など)を含む。
【0171】
1つの独立した局面において、配列番号19から22から独立して選択される配列、及び同じもののいずれか1つと少なくとも95%同一又は類似のヒト化配列(96、97、98又は99%同一又は類似のものなど)を含むヒト化VH可変ドメイン、並びに配列番号17、18から独立して選択される配列、及び同じもののいずれか1つと少なくとも95%同一又は類似のヒト化配列(96、97、98又は99%同一又は類似のものなど)を含むヒト化VL可変ドメインが、提供されている。1つの代替的な局面において、配列番号34、35から独立して選択される配列、及び同じもののいずれか1つと少なくとも95%同一又は類似のヒト化配列(96、97、98、又は99%同一又は類似のものなど)を含むヒト化VH可変ドメイン、並びに配列番号36、37から独立して選択される配列、及び同じもののいずれか1つと少なくとも95%同一又は類似のヒト化配列(96、97、98、又は99%同一又は類似などのもの)を含むヒト化VL可変ドメインが提供されている。
【0172】
一つの独立した側面において、配列番号19から22から独立して選択される配列を含むヒト化VH可変ドメイン、及び配列番号17及び18から独立して選択される配列を含むヒト化VL可変ドメインが提供される。1つの代替的な態様では、配列番号34及び35から独立して選択される配列と、配列番号36及び37から独立して選択されるヒト化VL可変配列とを含むヒト化VH可変ドメイン、又は重鎖CDR3が配列番号26、27及び28から選択されるバリアントが提供されている。例えば、1つの好ましい実施形態では、提供される抗体は、配列番号23のHCDR1配列、配列番号24のHCDR2配列、及び配列番号26、27、及び28の1つから選択されるバリアントHCDR3配列を含む。好ましい実施形態では、提供される抗体は、配列番号29のLCDR1配列、配列番号30のLCDR2配列、及び配列番号31のLCDR3配列を含む。別の実施形態では、抗体は、かかる重鎖及び軽鎖CDR配列を両方含むので、配列番号23のHCDR1、配列番号24のHCDR2配列、及び配列番号26、27、及び28の1つから選択されるバリアントHCDR3配列を含む重鎖可変領域、並びに配列番号29のLCDR1、配列番号30のLCDR2、及び配列番号31のLCDR3を含む軽鎖を含む。本発明はまた、バイパラトピック抗体に限定されない一般的にかかる6つのCDRのセットを含む抗体を含むものである。
【0173】
また、本明細書に明示的に開示された抗体又は結合フラグメントのパラトープと同じエピトープに結合するパラトープを含む抗体又は結合フラグメントも提供される。
好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号115の配列又はこれと少なくとも95%同一又は類似する配列(96、97、98又は99%同一又は類似など)を有する軽鎖を含む。別の実施形態では、本発明の抗体は、配列番号118の配列を有する軽鎖、又はそれと少なくとも95%同一若しくは類似の配列(96、97、98又は99%同一若しくは類似の配列など)を含む。別の好ましい実施形態では、本発明の抗体、特に2つの異なる特異性を有する抗体は、そのような軽鎖の両方を含むであろう。
【0174】
別の好ましい実施形態では、本発明の抗体は、配列番号116の配列又はこれと少なくとも95%同一又は類似の配列(同じものの任意の1つと96、97、98又は99%同一又は類似の配列)を有する重鎖を含み、好ましくはS228P、F234A、L235A修飾を保持している。別の実施形態では、本発明の抗体は、配列番号117の配列又は同じもののいずれか1つと少なくとも95%同一又は類似している配列(同じもののいずれか1つと96、97、98又は99%同一又は類似など)を有する重鎖を含み、好ましくはS228P、F234A、L235A及びT355W修飾を保持している)であろう。
【0175】
別の好ましい実施形態では、本発明の抗体は、配列番号119の配列、又はそれと少なくとも95%同一又は類似の配列(96、97、98又は99%同一又は類似など)を有する重鎖を含み、好ましくはS228P、F234A、L235A、T366S、L368A及びY407V修飾を保持しているであろう。
一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号115~119の上記の重鎖及び軽鎖のうちの2つ、又はそれと少なくとも95%の同一性又は類似性(少なくとも96、97、98又は99%の同一性又は類似性など)を有する配列を含み、FALA及び/又はノブ・イン・ホールに関する記載の修飾を保持しているであろう。一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号115及び118の軽鎖と、配列番号117及び119の重鎖を有するであろう。別の実施形態では、それは、FALA及びノブ・イン・ホールの修飾を保持しながら、上記のいずれか1つ又はすべてと少なくとも95%の同一性又は類似性を有するであろう(たとえば、上記のいずれか1つと96、97、98又は99%同一又は類似のもの)。
【0176】
また、本発明は、抗体が必ずしもCD45に対してバイパラトピックである必要はなく、6294抗体のCDR、可変領域、軽鎖及び/又は重鎖配列、又は6294配列のバリアントを含む抗体を提供するものである。例えば、本発明は、抗体の特異性の1つが、6294抗体又はそのバリアントの配列を含む抗体を提供する。別の実施形態では、6294抗体のそのような配列を含む単一特異性抗体が提供される。例えば、そのような抗体は、配列番号23から31の6つのCDRを含んでよく、ここで、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3が配列番号23から31の対応するCDR配列から選択され、特定のCDRが6294特異性の元のCDR又は配列番号23から31に記載のバリアントの1つの配列でありえる。一つの代替的側面において、配列番号34及び35から独立して選択される配列を含むヒト化VH可変ドメインと、配列番号36及び37から独立して選択されるヒト化VL可変配列とを含む抗体が提供される。本発明はまた、6294抗体、並びにそのヒト化バージョン、及び他のバリアントを提供する。ベクター、核酸、医薬組成物など、本明細書に記載された抗体に対する様々な関連態様も、そのような抗体に採用され得る。
【0177】
アルブミン抗体及び配列の例示
本発明で用いられるアルブミンに特異的な抗体は、以下のCDR配列を有することができる。
【表6】


そのような抗体は、配列番号126のVL配列及び配列番号127のVH配列を含んでもよい。そのような抗体は、代替的に、それぞれ配列番号128及び配列番号129のジスルフィド結合したVL及びVH配列を含んでもよい。2つのCD45パラトープ及びアルブミンパラトープを含むTrYbeの場合、重鎖は配列番号130の配列を含むことができ、軽鎖は配列番号131の配列を含むことができる。
【0178】
エフェクター分子
本発明の結合分子、特に抗体は、エフェクター分子に結合(コンジュゲート)していてもよい。したがって、所望により、本発明で使用するための結合分子、特に抗体は、1つ又は複数のエフェクター分子に結合(コンジュゲート)してもよい。エフェクター分子は、単一のエフェクター分子、又は本発明の結合分子、特に抗体に結合できる単一の部位を形成するように連結された2つ以上のそのような分子を含んでもよいことが理解されよう。エフェクター分子に結合した本発明による結合分子、特に抗体を得ることが望まれる場合、これは、結合分子、特に抗体が直接又はカップリング剤を介してエフェクター分子に結合する、標準的な化学又は組み換えDNA手順により調製することができる。このようなエフェクター分子を抗体に結合させる技術は、当技術分野でよく知られている(Hellstrom et al.,Controlled Drug Delivery,2nd Ed.,Robinson et al,Eds.,1987,pp.623‐53;Thorpe et al.,1982,Immunol.Rev.,62:119‐58、及びDubowchik et al,1999,Pharmacology and Therapeutics,83,67‐123参照)。特定の化学的手順には、例えば、WO93/06231、WO92/22583、WO89/00195、WO89/01476及びWO03/031581に記載のものが含まれる。あるいは、エフェクター分子がタンパク質又はポリペプチドである場合、結合は、例えばWO86/01533及びEP0392745に記載されているような組換えDNA手順を用いて達成され得る。一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、エフェクター分子を含んでいてもよい。本明細書で使用するエフェクター分子という用語には、例えば、抗腫瘍剤、薬剤、毒素、生物学的に活性なタンパク質、例えば酵素、抗体又は抗体フラグメント、合成又は天然由来のポリマー、核酸及びそのフラグメント、例えばDNA、RNA及びそのフラグメント、放射性核種、特に放射性ヨウ化物、ラジオアイソトープ、キレート金属、ナノ粒子及びレポーター基、例えばNMR若しくはESR分光法により検出しうる蛍光化合物(単数又は複数)が含まれる。
【0179】
エフェクター分子の例には、細胞に有害な(例えば、殺傷する)任意の薬剤を含む細胞毒素又は細胞毒性薬剤が含まれ得る。例としては、コンブレスタチン、ドラスタチン、エポチロン、スタウロスポリン、メイタンシノイド、スポンジスタチン、リゾキシン、ハリコンドリン、ロリジン、ヘミアスタリン、タキソール、シトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エミチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミスラマイシン、アクチノマイシンD、1‐デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、プロマイシン及びそのアナログ又は同族体などである。エフェクター分子にはまた、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6‐メルカプトプリン、6‐チオグアニン、シタラビン、5‐フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシス‐ジクロロジアミンプラチナム(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧ダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアマイシン又はデュオカルマイシン)、及び抗微生物剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)などがあるが、それだけにとどまらない。
【0180】
他のエフェクター分子としては、111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリフォルニウム252、イリジウム192及びタングステン188/レニウム188などのキレート化放射性核種;又はアルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド及びスラミンなどの薬剤(これらに限られない)などが含まれる。他のエフェクター分子には、タンパク質、ペプチド及び酵素が含まれる。関心のある酵素には、タンパク質分解酵素、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼが含まれるが、これらに限定されるものではない。関心のあるタンパク質、ポリペプチド及びペプチドには、免疫グロブリン、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、又はジフテリア毒素などの毒素、インスリン、腫瘍壊死因子、α‐インターフェロン、β‐インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子又は組織プラスミノーゲン活性化因子などのタンパク質、血栓剤又は抗血管形成薬、例えば、アンジオスタチン又はエンドスタチン、又は、リンホカイン、インターロイキン‐1(IL‐1)、インターロイキン‐2(IL‐2)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM‐CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G‐CSF)、神経成長因子(NGF)又は他の成長因子などの生物反応修飾物質及び免疫グロブリンを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0181】
他のエフェクター分子には、例えば診断に有用な検出可能な物質が含まれることがある。検出可能な物質の例としては、種々の酵素、補綴基、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性核種、ポジトロン放出金属(ポジトロン放出断層撮影における使用のため)、及び非放射性常磁性金属イオンが含まれる。診断薬として使用するために抗体にコンジュゲートすることができる金属イオンについては、一般に米国特許第4,741,900号を参照されたい。適切な酵素には、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが含まれ;適切な補綴基にはストレプトアビジン、アビジン及びビオチンが含まれ;適切な蛍光性物質にはウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドとフィコエリスリンが含まれ;適切な発光物質にはルミノールが含まれ;適切な生物発光物質にはルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びイクオリンが含まれ;及び適切な放射性核種には125I、131I、111In、及び99Tcが含まれる。
【0182】
別の実施形態では、エフェクター分子は、結合分子、特に抗体の半減期をin vivoで増加又は減少させ、及び/又は免疫原性を低減し、及び/又は上皮障壁を越えて免疫系への送達を強化することができる。このタイプの適切なエフェクター分子の例には、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合タンパク質、又はWO05/117984に記載されているものなどのアルブミン結合化合物が含まれる。エフェクター分子がポリマーである場合、それは一般に、合成ポリマー又は天然由来のポリマー、例えば任意に置換された直鎖又は分枝鎖ポリアルキレン、ポリアルケニレン又はポリオキシアルキレンポリマー又は分枝又は非分枝多糖類、例えばホモ又はヘテロ多糖類であってよい。上記合成ポリマー上に存在し得る具体的な任意の置換基としては、1つ以上のヒドロキシ基、メチル基又はメトキシ基が挙げられる。合成ポリマーの具体例としては、任意に置換された直鎖又は分枝鎖ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)ポリ(ビニルアルコール)又はその誘導体、特にメトキシポリ(エチレングリコール)又はその誘導体等の任意に置換されたポリ(エチレングリコール)が挙げられる。
【0183】
本発明の結合分子、特に抗体は、血清半減期を調節又は変化させる分子と結合(コンジュゲート)していてもよい。本発明の結合分子、特に抗体は、例えば、血清半減期を調節するために、アルブミンに結合してもよい。一実施形態において、本発明の結合分子、特に抗体はまた、アルブミンに特異的なパラトープを含むであろう。別の実施形態において、本発明の結合分子、特に抗体は、アルブミン結合ペプチドであるペプチドリンカーを含むことができる。アルブミン結合ペプチドの例は、WO2015/197772及びWO2007/106120に含まれ、その全体は参照により組み込まれる。
【0184】
別の実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、エフェクター分子に結合(コンジュゲート)していない。一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、毒素に結合(コンジュゲート)していない。別の実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、放射性同位元素と結合(コンジュゲート)していない。別の実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、画像化のための薬剤と結合(コンジュゲート)していない。
好ましい一実施形態では、細胞死(好ましくはアポトーシス)をもたらすのは、CD45を結合する本発明の結合分子、特に抗体の能力であり、結合(コンジュゲート)したエフェクター分子の能力ではない。好ましい一実施形態では、細胞死(好ましくはアポトーシス)をもたらすのは、CD45を架橋する能力である。
【0185】
細胞死及び殺傷
特に好ましい一実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、標的細胞において細胞死を誘導することができる。標的細胞を殺傷するために誘導され得る細胞死のタイプには、内在性アポトーシス、外在性アポトーシス、ミトコンドリア透過性転移(MPT)駆動型ネクローシス、ネクロプトシス、フェロプトシス、ピロプトシス、パルタナス、エントティック細胞死、NETotic細胞死、リソソーム依存性細胞死、自食作用依存性細胞死、免疫原性細胞死、細胞老化及び分裂カタストロフィが含まれる。特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体が、アポトーシスを誘導するために使用される。一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、標的細胞を殺傷するために使用される。
【0186】
一実施形態では、標的細胞は、CD45を、特に細胞の表面上に発現する細胞である。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、少なくともT細胞における細胞死(好ましくはアポトーシス)を誘導し得る。別の好ましい実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、少なくともB細胞において細胞死(好ましくはアポトーシス)を誘導し得る。別の好ましい実施形態において、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、B細胞及びT細胞における細胞死(好ましくはアポトーシス)を誘導することができる。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、造血幹細胞において細胞死(好ましくはアポトーシス)を誘導することができる。一実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、全ての免疫細胞、例えば、顆粒球、マクロファージ及び単球において細胞死を誘導することはない。一実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、顆粒球、マクロファージ及び単球とは別のすべての免疫細胞において細胞死を誘導する。一実施形態では、造血幹細胞における細胞死を誘導する効果は、すべての造血細胞を置換することができるという効果である。一実施形態において、本発明の結合分子は、細胞死を誘導することによって、上記の標的細胞を殺傷するために使用される。
【0187】
別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、細胞死(好ましくはアポトーシス)を誘導するが、有意なサイトカイン放出はもたらされない。別の好ましい実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、細胞死(好ましくはアポトーシス)を誘導するが、例えば、抗体がFc領域を欠いているか、又はサイレンシング修飾されたFc領域を有するため、Fcエフェクター機能を示さない。
【0188】
サイトカイン
ある特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、有意なサイトカイン放出をもたらさない。特に好ましい実施形態において、本発明の結合分子、特に抗体は、標的細胞において細胞死を誘導することができるが、有意なサイトカイン放出をもたらさない。サイトカイン放出の減少又は不在は、対象(被験者)が望まないサイトカイン駆動性炎症に罹患しないことを意味し得る。例えば、本発明の治療法は、炎症を誘発することなく、特に、いくつかの治療に関連するいわゆる「サイトカインストーム」なしに、対象における標的細胞を殺傷することができる。
【0189】
一実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、インターフェロンγ、IL‐6、TNF‐α、IL‐1β、MCP1及びIL‐8の1つ又はそれ以上の放出を有意に誘導することはない。一つの好ましい実施形態において、本発明の結合分子、特に抗体は、それらのサイトカインのいずれかの有意な放出をもたらさない。別の実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、CCL2、IL‐1RA、IL‐6、及びIL‐8のうちの1つ又は複数の放出を有意に誘導することはない。別の好ましい実施形態では、それは、それらのサイトカインのいずれかの放出を有意に誘導することはない。一実施形態では、そのようなレベルは、インターフェロンγ、IL‐6、TNF‐α、IL‐1β、MCP1及びIL‐8のうちの1つ以上についての場合であろう。別の実施形態では、そのようなレベルは、CCL2、IL‐1RA、IL‐6、及びIL‐8のうちの1つ以上についての場合であろう。別の実施形態では、そのようなレベルは、CCL2、IL‐1RA、IL‐6、IL‐8、IL‐10、及びIL‐11のうちの少なくとも1つについて見られることになる。別の実施形態では、そのようなレベルは、CCL2、IL‐1RA、IL‐6、IL‐8のうちの少なくとも1つについて見られることになる。
【0190】
サイトカイン放出は、任意の適切なアッセイを用いて測定することができる。例えば、本発明の結合分子、特に抗体がサイトカイン放出をもたらす能力は、細胞を結合分子と共にインビトロで培養し、サイトカイン放出を測定することによって決定され得る。一実施形態では、全血を抗体とインキュベートし、次にサイトカインレベル、例えば上記のサイトカインのいずれかを測定する。別の実施形態では、全血試料から単離した白血球を本発明の結合分子とインキュベートし、サイトカイン(複数可)のレベルを測定することができる。あるいは、サイトカインのレベルが、本発明の結合分子を投与された対象からのサンプルにおいて測定されることであってもよく、特にサイトカインのレベル(複数可)が対象からの血清サンプルにおいて測定されることであってもよい。
【0191】
ある実施形態では、サイトカイン放出を「有意に誘導しない」とは、本発明の結合分子が、例えばPBS単独でのインビトロ処理のネガティブコントロールと比較して、ネガティブコントロールで見られるよりも5倍超、4倍、3倍、又は2倍のサイトカイン放出を誘導しないことを意味する。ある実施形態では、サイトカイン放出のレベルは、ポジティブコントロール、例えばカンパス(Campath)によるインビトロ処理と比較されるであろう。ある実施形態では、本発明の結合分子は、カンパス(Campath)による処理で見られるものと比較して、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下を誘発することになる。一実施形態では、本発明の結合分子で見られるサイトカイン放出のレベルは、カンパス(Campath)で見られるレベルの10分の1を下回るであろう。一実施形態では、カンパス(Campath)とのインキュベーション後のサイトカイン放出のレベルは、本発明の結合分子とのインキュベーション後に見られるものの少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍又はそれ以上であろう。一実施形態では、全血を24時間インキュベートした後、カンパス(Campath)で見られるレベルは、本発明の結合分子と比較したそれらのレベルであろう。
【0192】
別の実施形態では、有意に誘導されないことを定義するための比較基準は、別の結合分子であろう。例えば、本発明の結合分子がサイトカイン放出を減少させるように設計された修飾を含んでいる場合、比較基準は、そのような修飾を持たない同等の結合分子であろう。別の実施形態では、結合分子が抗体であり、サイトカイン放出を減少させることを意図したFc領域修飾を有するか、Fc領域を有しない場合、行われる比較は、そのような修飾を有しない、又はFc領域を有する同等の抗体となる。
【0193】
別の実施形態では、サイトカインを有意に放出しないための比較は、インビボで実施されるであろう。例えば、本発明の結合分子が対象に投与される場合、それは、上記で議論された比較物質と比較して、上記で議論されたサイトカイン放出のレベルのいずれかを示すことになる。別の実施形態では、サイトカイン放出を有意に誘導しないことは、本発明の抗体の投与前と比較したサイトカイン(単数又は複数)のレベルの観点からであり得る。例えば、サイトカインのレベルが、本発明の結合分子の投与後に10倍以下、5倍以下、又はそれ以下にしか上昇しないことであってもよい。測定は、例えば、抗体の投与直前又は投与と同時に行ってもよく、また、例えば、投与後1日、1週間、又は2週間以上経過してから行ってもよい。一実施形態では、測定は、投与の1日後~1週間後に行われる。別の実施形態では、本発明の結合分子は、処置された対象が望ましくないサイトカイン放出に関連する副作用を経験しない、例えば対象が発熱、低血圧、又は不規則若しくは急速な心拍を経験しないという意味で、サイトカイン放出を著しく誘導することはない。
【0194】
機能的アッセイ
一実施形態では、機能的アッセイは、本発明の結合分子(単数又は複数)が、例えば本明細書で言及されるもののいずれかのような特定の特性を有するかどうかを決定するために採用され得る。したがって、機能的アッセイは、本発明の結合分子、特に抗体を評価する際に使用されてもよい。本明細書で使用される「機能的アッセイ」は、本発明の結合分子(単数又は複数)の1つ以上の所望の特性又は活性を決定するために使用することができるアッセイである。適切な機能的アッセイは、結合アッセイ、細胞死(好ましくはアポトーシス)アッセイ、抗体依存性細胞傷害(ADCC)アッセイ、補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイ、細胞成長又は増殖の阻害(細胞静止効果)アッセイ、細胞傷害(細胞毒性)アッセイ、細胞シグナルアッセイ、サイトカイン生成アッセイ、抗体生成及びアイソタイプスイッチング、並びに細胞分化アッセイであってもよい。一つの実施形態において、アッセイは、本発明の抗体を採用することを介して、例えば、特定の細胞タイプについて、細胞枯渇の程度を測定し得る。一つの好ましい実施形態において、アッセイは、CD45を発現する標的細胞において細胞死(好ましくはアポトーシス)を誘導する本発明の抗体の能力を測定し得る。さらなる好ましい実施形態において、機能的アッセイは、サイトカイン放出を誘導する本発明の結合分子、特に抗体の能力を測定し得る。一つの好ましい実施形態において、機能的アッセイは、本発明の結合分子、特に抗体が、細胞を殺傷するために使用され得るが、サイトカインを有意に誘導しないかどうかを決定するために使用されてもよい。
【0195】
機能的アッセイは、結果の信頼性を高めるために、必要に応じて何回も繰り返すことができる。統計的に有意な結果を同定し、したがって生物学的機能を有する結合分子、特に抗体を同定するために、当業者に知られている様々な統計的検定を採用することができる。一実施形態では、複数の結合分子が並行して、又は本質的に同時に試験される。本明細書で採用される同時とは、試料/分子/複合体が同じ分析、例えば同じ「実行」において分析される場合を指す。ある実施形態では、同時とは、信号出力が本質的に同時に装置によって分析される同時分析を指す。この信号は、得られた結果を解釈するためにデコンボリューションを必要とする場合がある。有利なことに、複数のバイパラトピックタンパク質複合体を試験することにより、多数の抗体をより効率的にスクリーニングし、新規で興味深い関係を同定することができる。明らかに、興味深いCD45の標的抗原に対する異なる可変領域は、生物学的機能における微妙なニュアンスへのアクセスを与えることができる。
【0196】
一実施形態では、本発明の結合分子がCD45に対して2つ以上の特異性を含む場合、機能的アッセイは、その結合分子の特性を、例えば、同じ価数を有するが本発明の結合分子の特異性のうちの1つだけを有する結合分子と比較するために使用され得る。一実施形態では、そのようなアッセイは、CD45に対する少なくとも2つの異なる特異性を有する本発明の結合分子が、比較基準の結合分子よりも優れていることを示すために使用され得る。したがって、1つの好ましい実施形態において、CD45に対する少なくとも2つの異なる特異性を含む本発明の結合分子、特に本発明によるそのような抗体の効力は、本発明の結合分子からのCD45に対する特異性のうちの1つだけを含む個々の「比較基準」結合分子、特に「比較基準」抗体に比較され得る。例えば、アッセイがCD45の架橋、又は架橋の効果を研究するために行われる場合、同じ価数を有するが、ただ1つの特異性を有する結合分子、特に抗体が、比較基準として採用され得る。一実施形態では、結合分子が本発明の抗体である場合、抗体の抗原結合部位の全てに本発明の抗体からのパラトープの同じ1つを含む抗体と比較されてもよい。一実施形態では、本発明の抗体は、本発明の抗体と同じ価数及び形式のものであるが、本発明の抗体からのパラトープの同じ1つが抗原結合部位の全てに存在するものと比較されてもよい。一実施形態では、CD45の異なるエピトープに特異的な2つの異なるパラトープを含む二価抗体は、それらのパラトープの1つだけを含む2つの可能な二価抗体のそれぞれと比較され得る。一実施形態では、そのような比較は、CD45に特異的な本発明の抗体の異なる特異性ごと、特に異なるパラトープごとについて、1つの比較基準抗体で行われる。一実施形態では、本発明の抗体は、1つのそのような比較基準抗体に対してより良い結果を示すであろう。別の実施形態では、CD45に特異的な抗体の各特異性、特にパラトープについて、比較基準抗体の全てよりも良好な結果を示すであろう。
【0197】
本発明の結合分子がCD45に対する少なくとも2つの異なる特異性を含む別の実施形態では、単特異性結合分子、特に単特異性抗体が最初に評価され、選択された候補が次にCD45に対する少なくとも2つの異なる特異性を有する本発明の抗体の生成に使用される。一実施形態では、複数の結合分子、特に抗体が、上記で定義されたようなマルチプレックスを使用して試験され、1つ又は複数の機能的アッセイに供される。
本発明の少なくとも2つの結合分子、特に本発明の抗体の混合物は、機能的アッセイを使用して、本発明の混合物を構成する個々の結合分子と比較され得る。好ましい実施形態では、混合物は、個々の結合分子、特に個々の抗体のいずれかに対して優れた結果を与える。
本明細書で使用する「生物学的機能」という用語は、試験される生物学的実体にとって自然な活動又はその目的、例えば細胞、タンパク質又は同様のものの自然な活動を指す。理想的には、機能の存在は、生きている哺乳類細胞を利用するアッセイを含むin vitro機能的アッセイを使用して試験することができる。本明細書で採用される天然の機能には、癌に関連する機能などの異常な機能が含まれる。
【0198】
一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、比較基準の結合分子、特に上述したような比較基準の抗体よりも大きな程度でCD45を架橋することができるであろう。例えば抗体:CD45 ECDのCD45多量体を形成する本発明の結合分子、特に抗体の能力は、両者を等量のように混合したときに試験することができる。多量体は、少なくとも2つの結合分子:CD45 ECD単位を有する構造であってよい。好適な手法の1つは質量測光であり、結合分子、特に抗体を、配列番号113のようなCD45 ECDと等しい濃度で混合し、試験試料に対して質量測光を実施する。抗体とCD45 ECDのみによる対照を行うこともできる。本発明の結合分子、特に抗体は、比較基準の結合分子、特に比較基準の抗体よりも多くの多量体を生じさせる可能性がある。本発明の結合分子、特に抗体は、比較基準よりも多くの量の2、3、4、又はそれ以上の結合分子:CD45 ECD単位を有する多量体を生じさせてもよい。それは、CD45に特異的な特異性(特にパラトープ)のそれぞれについて可能な比較基準のすべてについてそうしてもよい。このような比較のためのさらに好適な技術は、分析的超遠心分離法(AUC)である。ここでも、実行される比較はまた、混合物中の個々のタイプの結合分子とそれ自体で比較される結合分子の混合物の間であってもよい。
【0199】
別の実施形態では、比較は、細胞死を誘導する本発明の結合分子、特に抗体の能力という観点であってもよい。特に、好ましい実施形態では、結合分子(単数又は複数)、特に抗体(単数又は複数)の、アポトーシスを誘導する能力が研究されてもよい。例えば、本発明の結合分子、特に抗体は、CD45を発現する標的細胞がアポトーシスを受けることを、比較基準、例えば比較基準抗体よりも多く誘導してもよい。それはT細胞を用いて測定した場合、より多くのアポトーシスを誘導する可能性がある。例えば、PBMCから単離されたT細胞を使用してもよい。本発明の任意の結合分子、特に抗体は、CD4+T細胞においてより高いレベルのアポトーシスを誘導し得る。それは、CD8+T細胞においてそうし得る。それは、CD4+メモリーT細胞においてそうし得る。それはCD4+ナイーブT細胞においてそうし得る。別の実施形態では、全血中の総細胞数は、本発明の結合分子、特に抗体とのインキュベーション後に測定され、比較基準について見られる結果と比較され得る。一つの実施形態において、総細胞数は、本発明の結合分子、特に抗体について測定され、対照の結合分子、特に抗体と比較されてもよい。本発明の特に好ましい実施形態では、アポトーシスを測定するためにアネキシンVが使用されてもよい。したがって、例えば、本発明の結合分子、特に抗体は、比較基準と比較して、より大きな割合のAnnexinV染色細胞をもたらすであろう。
【0200】
一実施形態では、マウス腫瘍モデル、自己免疫疾患のモデル、ウイルス感染又は細菌感染した齧歯類又は霊長類モデルなどを含む動物モデルなどのインビボアッセイが、本発明の結合分子を試験するために採用されてもよい。別の実施形態では、特定の細胞型の枯渇の程度は、例えばインビボで測定されてもよい。一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、障害の動物モデルにおいて、そして好ましい実施形態では癌の動物モデルにおいて、比較基準よりも大きな枯渇のレベルをもたらすであろう。
【0201】
一実施形態では、本発明による結合分子、特に抗体分子は、新規又は相乗的な機能を有する。本明細書で使用される「相乗的な機能」という用語は、比較基準(複数可)を代わりに採用した場合に観察されない、又は観察されるよりも高い生物学的活性を意味する。したがって、「相乗的」は、新規な生物学的機能を含む。一実施形態では、CD45に対する少なくとも2つの特異性を含む本発明の結合分子、特に抗体は、上述した比較基準などのCD45に対するいずれかの特異性を個別に含む結合分子、特に抗体よりも有効であるという点で相乗的である。好ましい一実施形態では、このような相乗効果は、CD45の架橋に関連して示される。一実施形態では、結合分子の混合物は、混合物を構成する個々の結合分子のいずれかを単独で用いた場合と比較して、相乗効果を示す。
【0202】
一実施形態において、本明細書で採用される新規な生物学的機能とは、2つ以上の相乗効果を有する実体[タンパク質A及びタンパク質B]が一緒にされるまで明らかでない又は存在しない機能、又は以前に確認されなかった機能をいう。本明細書で採用される「より高い」とは、ゼロからの増加を含む活性の増加、すなわち、比較基準が関連する機能的アッセイにおいて活性を有しない結合分子(単数又は複数)における何らかの活性の増加をいい、本明細書では新規活性又は新規生物学的機能とも呼ばれる。本明細書で採用される「より高い」には、個々のパラトープと比較して、関連する機能的アッセイにおいて抗体における相加的な機能よりも大きいことを含み、例えば、関連する活性において10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300%又はそれ以上の増加も含まれる。
【0203】
一つの実施形態では、新規の相乗機能は、より高い阻害活性である。
本発明の特に好ましい一実施形態では、相乗効果は、CD45を発現する標的細胞型の細胞枯渇に関連している。一つの実施形態では、相乗効果は、細胞殺傷に関連している。
本発明で使用するための適切な結合ドメインはまた、機能的アッセイにおいて1つ以上の結合ドメインペアを試験することによって同定することができる。例えば、抗原CD45に特異的な少なくとも結合部位を含む結合分子、例えば抗体を、1つ以上の機能的アッセイで試験することができる。
【0204】
一実施形態では、CD45発現癌細胞株を殺傷する結合分子の能力がアッセイされ得る。細胞殺傷に関するこのようなアッセイに採用され得る癌細胞株の例には、白血病及びリンパ腫細胞株が含まれる。一実施形態では、ATCC(www.atcc.org/)によって分類される、様々な白血病及びリンパ腫細胞株を表す以下の細胞株のいずれかを、癌細胞の殺傷をもたらす能力を調べるために使用することができる:Jurkat‐急性T細胞白血病、CCRF‐SB‐B細胞急性リンパ芽球性白血病、MC116‐B細胞未分化リンパ腫、Raji、Ramos‐Burkittリンパ腫(B細胞非ホジキンリンパ腫のまれな型)、SU‐DHL‐4、SU‐DHL‐5、SU‐DHL‐8、NU‐DUL‐1、OCI‐Ly3‐びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、THP‐1‐急性単球性白血病、及びDakiki‐B細胞鼻咽腔がん腫。本願の実施例において採用された、このような細胞株の殺傷をもたらす結合分子の能力を評価する方法は、細胞を殺傷する所定の結合分子の能力を研究するために使用され得る。一実施形態では、本発明のバリアント結合分子は、本明細書に規定される特定の結合分子の1つと同じかそれ以上の、かかるアッセイにおける癌細胞を殺傷する能力を有することになる。一実施形態において、それらは、そのようなアッセイにおいて上記の癌細胞株の1つを殺傷するために、本明細書に定められた特異的結合分子の1つの活性の少なくとも50%、75%、80%、90%、100%又はそれ以上を有することになるだろう。一実施形態では、本発明の結合分子は、そのようなアッセイにおいて、少なくとも25%、40%、50%、60%又は75%の癌細胞を殺傷するであろう。別の実施形態では、本発明の結合分子は、そのようなアッセイにおいて癌細胞を100%殺傷することになる。
【0205】
病理学的状態、医療用途、及び細胞の枯渇
本発明は、ヒト又は動物の身体の治療方法において使用するための、本発明の結合分子、特に抗体を提供する。本発明の結合分子、特に抗体は、CD45を標的とすることが治療上有益となり得るあらゆる状況、特にそのような細胞を殺傷することが治療上有益となり得る状況で採用することができる。本発明の結合分子、特に抗体はまた、CD45の診断又は検出に使用されてもよい。本発明は、さらに、そのような使用のための本発明の医薬組成物を提供する。本発明はまた、このような使用のための本発明の核酸分子(複数可)及びベクター(複数可)を提供する。
【0206】
したがって、本発明の結合分子は、治療的に採用され得る。一つの実施形態において、本発明の結合分子(単数又は複数)が投与されるのではなく、本発明の核酸分子(複数可)又はベクター(複数可)が、標的細胞内部での結合分子(単数又は複数)の発現をもたらすために投与されてもよい。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、投与される好ましい治療薬である。結合分子、特に抗体が以下に好ましい治療薬として規定されているが、本発明の医薬組成物、核酸分子、及びベクターもまた、規定された実施形態のいずれかに採用され得る。好ましい実施形態では、しかし、結合分子(複数可)又はそれらを含む医薬組成物は、好ましい治療薬である。特に好ましい実施形態では、抗体(単数)、抗体(複数)又はそれらを含む薬学的組成物が治療薬である。
【0207】
一つの特に好ましい実施形態において、本発明は、CD45を発現する標的細胞を枯渇させるために採用され得る。特に好ましい実施形態では、本発明は、CD45を発現する疾患原因細胞型を枯渇させるために使用される。特に、本発明は、細胞表面でCD45を発現する標的細胞を枯渇させるために用いられてもよい。特に好ましい実施形態では、核酸分子又はベクターによって採用又はコードされる結合分子は、CD45に対して少なくとも2つの異なる特異性を有するものである。特定の理論に拘束されるわけではないが、CD45に対して少なくとも2つの異なる特異性、特にCD45の異なるエピトープに対して少なくとも2つの異なるパラトープを有することによって、本発明の結合分子、特に抗体は、標的細胞の表面上のCD45の架橋をよりよくもたらすことができ、それによって細胞死(好ましくはアポトーシス)をより有効にもたらすことができる、と考えられている。しかし、上述したように、このような効果は、結合分子の混合物を使用することによってももたらされ得る。
【0208】
本発明の抗体(単数又は複数)が採用される1つの好ましい実施形態では、本発明の抗体(単数又は複数)を介した標的細胞における細胞死(好ましくはアポトーシス)の誘導は、本発明の抗体(単数又は複数)が、抗体が通常示すであろう1つ又は複数のFc領域エフェクター機能を示すことが不要であることを意味する場合がある。一つの特に好ましい実施形態において、本発明の抗体(単数又は複数)は、したがって、標的細胞において細胞死(好ましくはアポトーシス)を誘導することができるが、活性Fc領域を有さない。特に好ましい実施形態では、抗体(単数又は複数)は、細胞死を誘導するが、有意なサイトカイン放出を誘導しない。
【0209】
特に好ましい実施形態では、本発明による細胞の枯渇の後に、対象への細胞又は組織の移植が行われる。さらなる特に好ましい実施形態では、移植された細胞又は組織は、本発明を用いて枯渇させたものと置き換わる。したがって、本明細書で議論される治療には、障害の実際の機構を標的とするのではなく、障害に関与する細胞タイプ、又はその殺傷、特に置換が単に治療上の利益を有することができるものを、全体的又は部分的に置き換えることが含まれる。一実施形態では、したがって、本発明は、本発明を採用することを含む、細胞を枯渇させる方法を提供する。別の実施形態では、本発明の方法は、細胞を枯渇させることと、その後に細胞又は組織を移植することの両方を含んでいてもよい。細胞の枯渇は、多くの治療的文脈で、標的細胞を殺傷するために効果的に使用され得る。
【0210】
好ましい実施例において、本発明の結合分子、特に抗体は、免疫細胞を殺傷するために使用される。本明細書で使用される場合、「免疫細胞」という用語は、造血起源であり、免疫応答において役割を果たす細胞を含むことを意図しているが、これに限定されるものではない。一実施形態では、本発明は、対象におけるT細胞を枯渇させるために採用される。一実施形態では、本発明は、対象においてB細胞を枯渇させるために採用される。別の実施形態では、本発明は、両方を枯渇させるために採用される。別の実施形態では、本発明は、T細胞を枯渇させるが、マクロファージを枯渇させないようにするために採用される。別の実施形態では、本発明は、B細胞を枯渇させるが、マクロファージは枯渇させないために採用される。別の実施形態では、本発明は、B細胞及びT細胞を枯渇させるために使用されるが、マクロファージの枯渇をもたらさない。一実施形態において、本発明は、造血幹細胞(haematopoietic stem cells)(HSC)を枯渇させるために使用される。別の実施形態では、本発明は、造血幹細胞(haemopoietic stem cells)を枯渇させるために採用される。一つの好ましい実施形態において、HSCは、対象の免疫系を再増殖させるためのHSCの移植の前に、対象において本発明を介してHSCを枯渇させる。別の実施形態では、本発明は、特定の細胞型を枯渇させるが、造血幹細胞は枯渇させない。別の実施形態では、本発明は、上記の細胞タイプを殺傷するために使用される。したがって、細胞枯渇のために本明細書で言及された実施形態のいずれにおいても、本発明は、記載された細胞を殺傷するために採用され得る。
【0211】
一実施形態では、本発明を介して治療される対象は、自己免疫疾患、血液疾患、代謝障害、癌、又は免疫不全(重症複合免疫不全又はSCIDなど)を有するものである。最初に細胞を枯渇させ、次に細胞を置き換えることによって状態を治療する能力は、本発明の結合分子、特に抗体が、癌を治療する際に特に有用であることを意味する。特に好ましい実施形態では、したがって、治療される障害は、癌である。一実施形態では、本発明は、したがって、癌細胞、例えば、免疫系細胞に由来する癌細胞を枯渇させるために採用される。一つの好ましい実施形態において、本発明は、CD45を発現する癌細胞を枯渇させるために採用される本発明を投与することを含む癌を治療する方法を提供する。本方法は、対象に細胞を移植することをさらに含んでもよい。一実施形態では、移植された細胞は、枯渇した細胞を置き換える。一つの実施形態では、移植された細胞は、造血幹細胞である。
【0212】
一つの特に好ましい実施形態において、治療される障害は血液癌である。一つの好ましい実施形態では、癌は、骨髄が関与するものであり、特に造血系の細胞が関与するものである。
一つの好ましい実施形態において、癌は白血病であってよい。一つの実施形態において、白血病は、小児白血病であってよい。別の実施形態では、白血病は、成人白血病であってもよい。白血病は、急性白血病であってもよい。白血病は、慢性白血病であってもよい。本発明を採用することを介して治療され得る白血病の非限定的な例としては、リンパ球性白血病(急性リンパ芽球性白血病又は慢性リンパ球性白血病など)及び骨髄性白血病(急性骨髄性白血病又は慢性骨髄性白血病など)などがある。白血病は、例えば、B細胞急性リンパ球性白血病、B細胞急性リンパ芽球性白血病、又はB細胞前リンパ球性白血病などのB細胞性白血病であってもよい。一実施形態において、本発明は、成人急性リンパ芽球性白血病、小児急性リンパ芽球性白血病、難治性小児急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ球性白血病、前リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、又は急性骨髄性白血病の治療に使用されてもよい。
【0213】
本発明の一実施形態では、治療される血液癌は、リンパ腫であってもよい。治療することができるリンパ腫の非限定的な例としては、B細胞リンパ腫、再発又は難治性B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞リンパ腫、再発又は難治性びまん性大細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、原発縦隔B細胞リンパ腫、再発性縦隔、難治性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、再発性又は難治性非ホジキンリンパ腫、難治性進行性非ホジキンリンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、及び難治性非ホジキンリンパ腫がある。
一実施形態では、治療される血球癌は、骨髄腫である。治療され得る骨髄腫の非限定的な例としては、再発性形質細胞骨髄腫、難治性形質細胞骨髄腫、多発性骨髄腫、再発性又は難治性多発性骨髄腫、及び骨多発性骨髄腫が挙げられる。
【0214】
一実施形態において、癌は、急性T細胞白血病、B細胞急性リンパ芽球性白血病、急性単球性白血病、及びB細胞鼻咽腔がん腫から選択される1つであってよい。別の実施形態では、癌は、急性T細胞白血病、B細胞急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、急性単球性白血病、及びB細胞鼻咽腔がん腫から選択される1つであってよい。別の実施形態では、癌は、急性T細胞白血病、B細胞急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、急性単球性白血病、B細胞鼻咽腔がん腫、B細胞未分化リンパ腫、及びBurkittリンパ腫から選択される1つであってもよい。別の実施形態では、癌は、急性T細胞白血病、B細胞急性リンパ芽球性白血病、急性単球性白血病、B細胞鼻咽腔がん腫、B細胞未分化リンパ腫、及びBurkittリンパ腫から選択される1つであってもよい。好ましい一実施形態では、このような癌が治療される場合、採用される本発明の結合分子は、BYbe抗体である。
【0215】
別の実施形態では、治療される対象は、自己免疫障害を有する。一つの特に好ましい実施形態では、自己免疫疾患は、多発性硬化症である。別の特に好ましい実施形態では、本疾患は強皮症である。自己免疫疾患のさらなる例には、強皮症、潰瘍性大腸炎、クローン病、1型糖尿病、又は本明細書に記載の別の自己免疫病態が含まれる。いくつかの実施形態では、対象は、代謝性貯蔵障害を有するか、又はそうでなくても影響を受けている。対象は、グリコーゲン貯蔵症、ムコ多糖症、ゴーシェ病、ハーラー病、スフィンゴ脂質症、メタクロマチック大脳白質萎縮症、又は本明細書に開示される治療及び療法から利益を得ることができる任意の他の疾患若しくは障害からなる群から選択される代謝障害を患っているか、そうでなくても影響を受けており、それは限定ではないが、重症複合免疫不全、Wiscott‐Aldrich症候群、高免疫グロブリンM(IgM)症候群、チェディアック‐ヒガシ病、遺伝性リンパ組織球増多症、大理石骨症、骨形成不全症、沈着症、サラセミアメジャー、鎌状赤血球病、全身性硬化症。全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、若年性関節リウマチ、及び「Bone Marrow Transplantation for Non-Malignant Disease」,ASH Education Book,1.319‐338(2000)(その開示は、造血幹細胞移植療法の投与によって治療され得る病態に関連するものとして、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている疾患又は障害を含む。
【0216】
一実施形態では、治療される状態は、異常なCD45発現を含むことが知られているものである。特に好ましい一実施形態では、治療は、対象における障害において役割を果たすCD45を発現する細胞型を枯渇させる。そのような疾患の例には、アルツハイマー病、多発性硬化症、及び狼瘡が含まれる。CD45の発現の変化を含むことが知られている他の状態には、重症複合免疫不全症(SCID)などの免疫不全症が含まれる。
一実施形態では、本発明は、細胞移植に先立って細胞を枯渇させるために使用され、したがって、本発明の方法は、いくつかの実施形態において、本発明の治療薬、特に結合分子、特に抗体、を用いる枯渇ステップに続いて、例えば枯渇した細胞の置換を助けるために対象に細胞を移植するステップを含むことができる。一実施形態では、このような移植は、同種異系細胞であってもよい。別の実施形態では、そのような移植は、自家移植細胞のものであってもよい。一実施形態では、移植された細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞であってよい。いくつかの実施形態では、対象は、キメラ抗原受容体T細胞(CART)療法を必要としている。例えば、そのような療法は、本発明の方法の一部を形成してもよい。
【0217】
別の好ましい実施形態では、本発明は、対象における細胞集団の生着を促進する方法を提供し、この方法は、細胞集団の生着に先立って細胞を枯渇させるために本発明の結合分子、特に抗体を採用することをさらに含む。したがって、本発明は、本発明の結合分子、特に抗体を投与することを介して対象においてCD45を発現する細胞を枯渇させ、その後、目的の細胞を移植することを含む、移植細胞の生着を促進する方法を提供するものである。一実施形態において、本発明は、幹細胞、特に造血幹細胞の生着促進のための方法を提供する。一実施形態では、造血幹細胞を、造血系統の1つ以上の細胞型に欠陥のある又は欠損した対象に投与し、欠陥のある又は欠損した細胞集団をin vivoで再形成する、又は部分的に再形成させる。一実施形態では、本発明は、幹細胞欠損を治療するために使用され、例えば、移植細胞が幹細胞欠損に対処する場合、本発明は、標的細胞を枯渇させ、移植細胞と置き換えるために使用される。一実施形態では、再導入された細胞は、遺伝子的に修飾されている。一実施形態では、対象からの細胞が除去され、遺伝子修飾された後、本発明が標的細胞、例えば対象にまだ存在するそのタイプの未修飾の細胞を殺傷するために使用された後、対象に戻される。好ましい一実施形態では、遺伝子改変された移植細胞は造血幹細胞である。
【0218】
好ましい一実施形態では、枯渇細胞と移植細胞は、同じ細胞種であるか、又は同じ細胞種を含む。好ましい一実施形態では、枯渇させた細胞は、造血細胞、特に造血幹細胞である。一つの実施形態において、本発明は、骨髄移植の前に細胞を枯渇させるために採用される。別の実施形態では、本発明は、細胞を枯渇させるために、照射の代わりに採用される。別の実施形態では、本発明は、細胞を枯渇させるために、照射に加えて採用される。
別の実施形態では、本発明は、移植された細胞の拒絶反応の可能性を低減するのを助ける方法を提供し、この方法は、細胞の移植の前に細胞を枯渇させるために本発明の治療薬を投与することを含む。別の実施形態では、本発明は、免疫細胞の移入の前にCD45を発現する標的細胞を枯渇させることにより、対象における移植された免疫細胞の受け入れを促進するために採用され得る。標的細胞は、本明細書で議論されるもののうちのいずれかであってよい。一実施形態では、対象に移植又は移入される細胞は、幹細胞である。
【0219】
CD45を発現する細胞を除去するために本明細書で議論される方法のいずれかが、細胞枯渇又は殺傷に採用され得る。しかし、本発明の1つの特に好ましい実施形態では、本発明は、CD45を発現する細胞の細胞死(好ましくはアポトーシス)、ひいてはそのような細胞の枯渇をもたらすために使用されてもよい。特に、本発明は、CD45の架橋とそれ故の細胞死(好ましくはアポトーシス)をもたらすことができ、好ましくは、CD45の架橋をもたらす本発明の能力の向上は、より多くの細胞死(好ましくはアポトーシス)をもたらすこともできる。
一実施形態において、細胞移植の一部として、対象は、細胞を移植する方法として骨髄を与えられてもよい。別の実施形態では、対象は、細胞を移植する方法として、臍帯血、又は臍帯血から分離された細胞を与えられてもよい。別の実施形態では、移植された細胞は、例えば幹細胞がin vitroで分化され、その後移植された分化した幹細胞に由来するものであってもよい。
【0220】
本発明が細胞を枯渇させるか又は殺傷するために使用される一実施形態では、さらなる細胞枯渇剤又は殺傷剤がまた同様に使用されてもよい。好ましい実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、対象に投与される唯一の細胞枯渇剤である。一実施形態では、標的細胞の枯渇レベルは、例えば標的細胞の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は99%程度であり、有効であるのに十分なレベルである。例えば、一実施形態では、標的細胞の少なくとも50%が枯渇する。別の実施形態では、標的細胞の少なくとも75%が枯渇している。別の実施形態では、標的細胞の少なくとも約90%が枯渇している。別の実施形態では、標的細胞の少なくとも約95%が枯渇している。
【0221】
上述したように、特に好ましい実施形態において、本発明は、CD45発現細胞の細胞死、特にアポトーシスをもたらすために使用されてもよい。CD45誘導細胞死(好ましくはアポトーシス)は、例えば、細胞収縮、膜の緩み、ホスファチジルセリン(PS)の細胞膜外葉への露出常駐、ミトコンドリア膜貫通電位の低下、及び活性酸素種の生成のうちの1つ以上によって同定され得る。それらの測定又は同定は、一実施形態では、CD45発現細胞の細胞死(好ましくはアポトーシス)を同定するために使用され得る。一実施形態において、本発明により細胞死(好ましくはアポトーシス)を起こすように刺激された細胞は、ホスファチジルセリン(PS)露出(アネキシンV染色を可能にする)、膜ブレブ形成、膜完全性の保持、核凝縮、及び細胞死(好ましくはアポトーシス)の発生に必要でないRNA/タンパク質合成の1以上、好ましくは全てを示すことができる。細胞の完全性が典型的に保持され、PSが細胞の外表面に存在するので、例えばAnnexinVによる染色は、細胞死、特に細胞のアポトーシスを識別するために使用され得る。したがって、好ましい実施形態では、アポトーシス細胞を同定するためにアネキシンV染色が使用される。しかしながら、細胞生存率、ひいては細胞死を評価するために、任意の適切な方法を使用することができる。
【0222】
別の実施形態では、本発明は、移植片対宿主病(GVHD)に関して使用され得る。一実施形態では、GVHDは急性である。別の実施形態では、GVHDは慢性的である。本発明は、例えば、GVHDの発症を回避するため、又はGVHDが重症度を低下させるように改善するために使用されてもよい。例えば、本発明は、対象への移植の前に、移植される細胞、組織、又は器官における標的細胞を枯渇させ、及び/又は殺傷するために使用されてもよい。したがって、1つの実施形態において、本発明は、細胞を枯渇させるために、結合分子、特に抗体で細胞集団、組織、又は器官を処理するex vivo方法を提供する。
【0223】
別の実施形態では、本発明は、最初にそのようなex vivo治療を行い、その後、移植を行うことを含む治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、GVHDの可能性を低減する方法として、移植物を攻撃できる宿主細胞が少なくなるように、移植前に対象内の細胞を枯渇又は殺傷するために使用される。それゆえ、本発明はまた、細胞、組織、又は臓器の集団を移植する前に、細胞、組織、又は臓器の集団中の細胞を枯渇させるために本発明の結合分子、特に抗体を投与することを含む、GVHDを治療又は予防するための方法を提供する。本方法は、さらに、移植そのものを含んでいてもよい。枯渇させた細胞及び移植された細胞、組織、又は臓器は、本明細書に記載されたもののいずれであってもよい。一つの好ましい実施形態では、移植される細胞は、造血幹細胞である。一つの好ましい実施形態では、枯渇した細胞はT細胞である。別の好ましい実施形態では、GVHDを治療又は予防する本発明の能力は、心臓移植、肺移植、腎臓移植、又は肝臓移植において採用される。
【0224】
別の実施形態では、本発明は、レシピエントを治療するのではなく、その移植の前に細胞、組織、又は器官の集団中の細胞を枯渇させる及び/又は殺傷する方法を提供する。それゆえ、本発明はまた、移植前に細胞、組織、又は器官の集団を処理し、その後移植を行うことを含む、移植前の細胞、組織、又は器官の集団から標的細胞を除去する方法を提供する。
【0225】
一実施形態では、本発明は、特に従来の治療法が容易にアクセスできないか、又はその固有のメカニズムの一部として誇張された炎症を導くであろう、器官又は組織内の免疫細胞を枯渇させるために使用され得る。一実施形態では、本発明は、例えば脳、脊髄、眼、又は精巣などの閉鎖器官内の細胞を枯渇させるために使用される。一実施形態では、本発明は、免疫特権臓器におけるCD45細胞を枯渇させるために採用され得る。Fc媒介機能を採用することなくCD45+細胞を枯渇させる本発明の結合分子の能力は、望ましくない副作用及び損傷を回避するのに役立つ可能性がある。一つの実施形態において、本発明は、免疫的に、かつ抗体エフェクター機構を必要とせずに細胞を枯渇させるために使用され得る。それは、例えば、閉鎖器官が、浸潤する白血球によって破壊され得る繊細でしばしば非分裂の組織細胞を含み得るので、望ましくない損傷を最小化するか、又は少なくとも低減するという利点を有し得る。本発明が、例えば脳、脊髄、眼球又は精巣などの器官に直接適用される場合、組織にさらなる損傷又は炎症を誘導することなく、又はさらなる損傷を低減して、CD45陽性細胞の除去をもたらすことができる。一実施形態では、閉鎖器官における標的細胞は、リンパ球、B細胞、及びT細胞から選択される。一実施形態では、閉鎖器官内の標的細胞は、CD4+T細胞であるか、又はCD4+T細胞を含む。別の実施形態では、標的細胞は、CD8+T細胞であるか、又はCD8+T細胞を含む。
【0226】
さらなる好ましい実施形態において、本発明を介して治療される状態は、以下のうちの1つから選択され得る:
・ ウイルス性脳炎;
・ 緑内障、特に網膜へのT細胞浸潤を特徴とする緑内障;
・ パーキンソン病;
・ ALS;
・ CNSの病変を有する腫瘍随伴症候群;
・ 視神経脊髄炎;
・ 自己免疫性脳炎
・ 自己免疫性ぶどう膜炎;及び
・ 慢性/自己免疫性精巣炎又は不妊症につながる精巣の他の病気
さらなる好ましい実施形態において、本発明が適用される状態は、CD8+T細胞の浸潤によって特徴付けられるものである。
【0227】
医薬組成物
一態様では、以下のものを含む医薬組成物:(a)本発明の結合分子(単数又は複数)、核酸分子(単数又は複数)、又はベクター(単数又は複数);及び(b)薬学的に許容される担体又は希釈剤。一つの好ましい実施形態において、医薬組成物は、本発明の結合分子(単数又は複数)を含む。一態様では、本発明の1つ又は複数の抗体を含む医薬組成物が提供される。特に好ましい実施形態では、それは本発明の抗体(単数又は複数)を含む。薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は希釈剤を含む、様々な異なる成分を組成物に含めることができる。組成物は、任意に、本発明の分子(複数可)の特性を変化させることができるさらなる分子を含み、それによって、例えば、分子(複数可)の機能を低減、安定化、遅延、調節及び/又は活性化させることができる。組成物は、固体、又は液体の形態であってよく、特に、粉末、錠剤、溶液、又はエアロゾルの形態であってよい。
【0228】
本発明はまた、本発明の分子を、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体の1つ以上と組み合わせて含む、医薬又は診断組成物を提供する。従って、提供されるのは、病的状態又は障害の治療における使用、及び治療のための医薬の製造のための、本発明の結合分子、特に抗体の使用である。本発明の治療剤が、第2の治療剤も与えられている対象に投与される一実施形態では、2つは、例えば、同時に、順次、又は別々に与えられてもよい。一実施形態では、2つは同じ薬学的組成物中で投与される。別の実施形態では、2つは、別々の薬学的組成物で与えられる。一実施形態では、本発明は、対象が第2の治療薬でも治療されている方法において使用するための、本発明の結合分子、特に抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、対象が本発明の結合分子、特に抗体で治療されている方法において使用するための第2の治療薬を提供する。本発明の核酸分子(複数可)及びベクター(複数可)はまた、このような組み合わせで投与され得る。
【0229】
本発明の組成物は、通常、無菌の、医薬組成物として供給されるであろう。本発明の医薬組成物は、さらに、薬学的に許容されるアジュバントを含んでいてもよい。別の実施形態では、そのようなアジュバントは、本発明の組成物中に存在しない。本発明はまた、本発明の結合分子、特に抗体を、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体の1つ以上と共に添加及び混合することを含む、医薬又は診断組成物の調製のためのプロセスを提供する。
【0230】
本明細書で使用する「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、本発明の組成物の所望の特性を高めるための薬学的に許容される製剤担体、溶液又は添加物を意味する。賦形剤は当該技術分野において周知であり、バッファー(例えば、クエン酸バッファー、リン酸バッファー、酢酸バッファー及び重炭酸バッファー)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば、血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリウム、リポソーム、マンニット、ソルビトール及びグリセロールなどが含まれる。溶液又は懸濁液は、リポソーム又は生分解性ミクロスフェアにカプセル化することができる。製剤は、一般に、無菌製造プロセスを採用した実質的に無菌の形態で提供されるであろう。
これには、製剤に使用される緩衝化溶媒溶液のろ過による製造及び滅菌、無菌緩衝化溶媒溶液中の抗体の無菌的懸濁、並びに当業者に周知の方法による無菌容器への製剤の分注が含まれ得る。
【0231】
薬学的に許容される担体は、それ自体が、組成物を受け取る個体に有害な抗体の産生を誘導すべきではなく、毒性であってはならない。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、不活性ウイルス粒子などの大型で代謝の遅い高分子であり得る。
薬学的に許容される塩を使用することができ、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩、又は酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩を挙げることができる。治療用組成物における薬学的に許容される担体は、さらに、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体を含んでもよい。このような担体は、医薬組成物を、患者による摂取のために、錠剤、丸薬、ドラジェ、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー及び懸濁液として製剤化することを可能にする。
【0232】
薬学的に許容される担体の徹底的な議論は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company、N.J.1991)で入手可能である。
本明細書で使用する「治療上有効量」という用語は、標的とする疾患又は状態を治療、改善又は予防するために、又は検出可能な治療効果又は予防効果を示すために必要な治療剤の量を指す。任意の結合分子、特に抗体について、治療有効量は、細胞培養アッセイ又は動物モデル、通常はげっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ又は霊長類のいずれかで最初に推定することができる。動物モデルは、適切な濃度範囲及び投与経路を決定するために使用することもできる。このような情報は、次に、ヒトへの投与に有用な用量及び投与経路を決定するために使用することができる。
【0233】
ヒト対象の正確な治療有効量は、疾患状態の重症度、対象の一般的健康状態、対象の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間と頻度、薬物の組み合わせ、反応の過敏性及び治療に対する耐性/反応に依存する。この量は、日常的な実験によって決定することができ、臨床医の判断の範囲内である。一般に、治療上有効量は、0.01mg/kg~50mg/kg、例えば、1日当たり0.1mg/kg~20mg/kgとなるであろう。あるいは、1日当たり1~500mg、例えば用量は、1日当たり10~100、200、300又は400mgとすることができる。医薬組成物は、本発明の活性剤の所定量を含む単位用量形態で都合よく提示され得る。一実施形態では、所定の用量における量は、特定の機能をもたらすのに少なくとも十分な量である。
【0234】
組成物は、患者に個別に投与してもよいし、他の薬剤、薬物又はホルモンと組み合わせて(例えば、同時に、順次又は別々に)投与してもよい。本発明が投与される用量は、治療されるべき状態の性質、存在する炎症の程度、及び結合分子、特に抗体が予防的に使用されるか、又は既存の状態を治療するために使用されるかどうかに依存する。
【0235】
投与頻度は、結合分子、特に抗体の半減期とその効果の持続時間に依存する場合がある。半減期が短い場合(例えば2~10時間)、1日に1回以上の投与が必要な場合がある。あるいは、半減期が長い場合(例えば2~15日)、1日に1回、1週間に1回、あるいは1~2ヶ月に1回の投与で済むかもしれない。いくつかの実施形態では、本発明の治療薬がその所望の効果を発揮した後、速やかに系から除去されることが望ましい場合があり、したがって、本発明の結合分子、特に抗体は、故意に半減期が短くなるように選択される場合がある。例えば、標的細胞を枯渇させ、対象に細胞を移植することを目的とする本発明の実施形態では、採用される本発明の結合分子、特に抗体が移植細胞も標的とする場合、採用される結合分子、特に抗体が移植細胞も標的としないように半減期が短いことが望ましい場合がある。これは、例えば、細胞の枯渇と新しい細胞の移植との間のギャップを少なくすることができることを意味する場合がある。
【0236】
本発明では、最終製剤のpHは、本発明の結合分子(特に抗体)の等電点の値とは類似していない。というのも、製剤のpHが7でも、8~9又はそれ以上のpIが適切である可能性があるからである。理論に束縛されることを望むものではないが、これにより、例えば結合分子(特に抗体)が溶液中に留まるなど、最終的に安定性が改善された最終製剤が得られると考えられる。
【0237】
本発明の結合分子、特に抗体、及び医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、心室内(脳室内)、経皮的、経皮性(例えば、WO98/20734参照)、皮下、腹腔内、鼻内、腸内、局所、舌下、膣内又は直腸経路を含む任意の数の経路によって投与されてよいが、これだけに限定されるものではない。ハイポスプレーもまた、本発明の医薬組成物を投与するために使用され得る。組成物の直接送達は、一般に、注射、皮下、腹腔内、静脈内又は筋肉内、又は組織の間質空間への送達によって達成されるであろう。組成物はまた、関心のある特定の組織に投与することができる。投与処置は、単回投与スケジュール又は複数回投与スケジュールであってもよい。製品が注射又は点滴用である場合、それは油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又は乳剤の形態をとることができ、それは懸濁剤、保存剤、安定化剤及び/又は分散剤などの処方剤を含有することができる。あるいは、結合分子、特に抗体は、適切な無菌液体で使用する前に再構成するために、乾燥形態であってもよい。組成物が胃腸管を使用する経路で投与される場合、組成物は、抗体を分解から保護し、胃腸管から吸収された後に二重特異性タンパク質複合体を放出する薬剤を含む必要があるであろう。
【0238】
本発明によるネブライザブル製剤は、例えば、ホイル封筒に包装された単回投与単位(例えば、密封プラスチック容器又はバイアル)として提供され得る。各バイアルは、溶媒/溶液バッファーの体積、例えば、2ml中に単位用量を含む。
本発明はまた、本発明の結合分子、特に抗体を、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と一緒に添加及び混合することを含む、医薬又は診断組成物の調製のためのプロセスを提供する。
結合分子、特に抗体、核酸分子、又はベクターは、医薬又は診断組成物中の唯一の有効成分であってもよいし、抗体成分又はステロイド若しくは他の薬剤分子のような非抗体成分を含む他の有効成分を伴ってもよい。
【0239】
医薬組成物は、好適には、本発明の結合分子、特に抗体の治療上有効な量を含んでいる。本明細書で使用する「治療上有効量」という用語は、対象とする疾患又は状態を治療、改善又は予防するために、又は検出可能な治療効果又は予防効果を示すために必要な治療剤の量を指す。「治療上有効量」は、所望のレベルの細胞枯渇をもたらすために必要な量であってよい。任意の結合分子、特に抗体について、治療有効量は、細胞培養アッセイ又は動物モデル、通常はげっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ又は霊長類のいずれかで最初に推定することができる。動物モデルは、適切な濃度範囲及び投与経路を決定するために使用することもできる。このような情報は、次に、ヒトへの投与に有用な用量及び投与経路を決定するために使用することができる。
【0240】
医薬組成物は、1回あたりの所定量の本発明の活性剤を含む単位用量形態で都合よく提示され得る。本発明の医薬組成物は、対象への投与のための手段を提供する容器で提供されてもよい。本発明の医薬組成物は、プレフィルドシリンジで提供されてもよい。したがって、本発明は、このような装填されたシリンジを提供する。また、本発明の医薬組成物を装填した自動注射器も提供する。
組成物は、患者に個別に投与されてもよいし、他の薬剤、薬物又はホルモンと組み合わせて(例えば、同時に、順次又は別々に)投与されてもよい。
本明細書で採用される薬剤とは、投与されたときに生理的な影響を及ぼす実体を指す。本明細書で使用される薬物とは、治療用量において適切な生理学的影響を有する化学的実体を意味する。
【0241】
本発明の分子(単数又は複数)を投与する用量は、治療すべき状態の性質、存在する炎症の程度、及び本発明を予防的に使用するか、既存の状態を治療するかによって決まる。投与頻度は、結合分子、特に抗体の半減期、及びその効果の持続時間に依存する。結合分子、特に抗体の半減期が短い場合(例えば2~10時間)、1日に1回又は複数回の投与が必要な場合がある。あるいは、結合分子、特に抗体が、長い半減期(例えば2~15日)及び/又は長持ちする薬力学(PD)プロファイルを有する場合、1日に1回、1週間に1回、あるいは1~2ヶ月に1回だけ投与することが必要であり得る。一実施形態では、用量は隔週で、すなわち月に2回送達される。
【0242】
一実施形態では、単回投与が行われる。一実施形態では、本発明の方法は、標的細胞集団が枯渇するまで投与し、その後、全ての投与を停止することを含む。本方法は、抗体が対象のシステムからクリアになるための時間を与えるために、対象に細胞移植を行う前に、対象に投与からの休息を与えることを含んでいてもよい。一実施形態では、投与は、さらなる投与の前に抗薬物(この場合、抗抗体)応答が弱まるように間隔を空けて行われる。
【0243】
本明細書で使用される半減期は、循環中、例えば血清/血漿中の分子の持続時間を指すことを意図するものである。本明細書で使用される薬力学は、本発明による分子の生物学的作用のプロファイル、特に持続時間を意味する。
薬学的に許容される担体は、それ自体が、組成物を受け取る個体に有害な抗体の産生を誘導すべきではなく、毒性であってはならない。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、不活性ウイルス粒子などの大型で代謝が遅い高分子であってもよい。
【0244】
薬学的に許容される塩を使用することができ、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩、又は酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩を挙げることができる。治療用組成物における薬学的に許容される担体は、さらに、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体を含んでもよい。さらに、湿潤剤又は乳化剤又はpH緩衝物質などの補助物質が、そのような組成物中に存在してもよい。このような担体は、医薬組成物を、患者による摂取のために、錠剤、丸薬、ドラジェ、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー及び懸濁液として製剤化することを可能にする。
【0245】
投与に適した形態としては、非経口投与、例えば注射又は点滴、例えばボーラス注射又は持続点滴による投与に適した形態が挙げられる。製品が注射又は点滴用である場合、それは油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又は乳剤の形態をとることができ、それは懸濁剤、保存剤、安定化剤及び/又は分散剤などの形成剤を含むことができる。あるいは、抗体分子は乾燥形態であってもよく、使用前に適切な無菌液体で再構成する。
一旦製剤化されると、本発明の組成物は、対象に直接投与することができる。処置される対象は、動物であり得る。しかしながら、1つ以上の実施形態において、組成物は、ヒト対象への投与に適合される。
【0246】
好適には、本発明による製剤において、最終製剤のpHは、抗体又はフラグメントの等電点の値に類似していない。例えば、タンパク質のpIが8~9又はそれ以上の範囲である場合、製剤pHは7が適切である可能性がある。理論に束縛されることを望まないが、これは最終的に、例えば結合分子(特に抗体)が溶液中に留まるなど、改善された安定性を有する最終製剤を提供することができると考えられる。一例では、4.0から7.0の範囲のpHにおける医薬製剤は、以下を含む:1~200mg/mLの本発明による結合分子、特に抗体、1~100mMのバッファー、0.001~1%の界面活性剤、a)10~500mMの安定剤、b)10~500mMの安定剤及び5~500mMの張力剤、又はc)5~500mMの張力剤である。
【0247】
本発明の医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、心室内(脳室内)、経皮的、経皮性(例えば、WO98/20734参照)、皮下、腹腔内、鼻内、腸内、局所、舌下、膣内又は直腸経路を含む任意の数の経路によって投与することができるが、これらに限定されるものではない。ハイポスプレーはまた、本発明の医薬組成物を投与するために使用されてもよい。典型的には、治療用組成物は、液体溶液又は懸濁液として、注射剤として調製され得る。注射の前に液体ビヒクルへの溶液又は懸濁液に適した固体形態もまた調製され得る。
【0248】
組成物の直接送達は、一般に、注射、皮下、腹腔内、静脈内又は筋肉内、又は組織の間質空間への送達によって達成されるであろう。また、組成物は、病巣に投与することもできる。投与治療は、単回投与スケジュール又は複数回投与スケジュールであってもよい。組成物中の有効成分は、抗体分子であろうことが理解されよう。そのため、消化管内で分解されやすい可能性がある。したがって、組成物が胃腸管を使用する経路で投与される場合、組成物は、抗体を分解から保護するが、抗体が胃腸管から吸収されると抗体を放出する薬剤を含んでもよい。本発明の組成物は、一実施形態において、例えば本明細書で言及されるいずれかの閉鎖器官に注入されてもよい。
【0249】
薬学的に許容される担体の徹底的な議論は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company、N.J.1991)で入手可能である。
一実施形態では、製剤は、吸入を含む局所的な投与のための製剤として提供される。好適な吸入可能な製剤には、吸入可能な粉末、推進剤ガスを含む計量エアロゾル、又は推進剤ガスを含まない吸入可能な溶液が含まれる。活性物質を含有する本発明による吸入可能な粉末は、上記の活性物質のみからなるか、又は生理学的に許容される賦形剤との上記の活性物質の混合物からなることができる。これらの吸入可能な粉末は、単糖類(例えばグルコース又はアラビノース)、二糖類(例えばラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴ及び多糖類(例えばデキストラン)、ポリアルコール(例えばソルビトール、マンニット、キシリトール)、塩(例えば塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)又はこれらと互いの混合物とを含んでもよい。単糖類又は二糖類が好適に使用され、ラクトース又はグルコースの使用は、特にそれらの水和物の形態であるが、これに限定されない。
【0250】
肺に沈着させるための粒子は、10ミクロン未満、例えば1~9ミクロン、例えば1~5μmの粒子径が必要である。活性成分(抗体又はフラグメントなど)の粒子径が最も重要である。
吸入可能なエアロゾルを調製するために使用することができる推進剤ガスは、当技術分野において既知である。適切な推進剤ガスは、n‐プロパン、n‐ブタン又はイソブタンなどの炭化水素、及びメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン又はシクロブタンの塩素化及び/又はフッ素化誘導体などのハロ炭化水素の中から選択される。上記の推進剤ガスは、単独で使用してもよいし、それらの混合物で使用してもよい。
【0251】
特に好適な推進剤ガスは、TG11、TG12、TG134a及びTG227の中から選択されるハロゲン化アルカン誘導体である。上記のハロゲン化炭化水素のうち、TG134a(1,1,1,2‐テトラフルオロエタン)及びTG227(1,1,1,2,3,3,3‐ヘプタフルオロプロパン)及びこれらの混合物が特に好適である。
推進剤ガス含有吸入可能エアロゾルは、他の成分、例えば、共溶剤、安定剤、表面活性剤(界面活性剤)、酸化防止剤、潤滑剤、及びpHを調整するための手段を含有することもできる。これらの成分はすべて当該技術分野において既知である。
本発明による推進剤ガス含有吸入可能エアロゾルは、活性物質を最大5重量%含有することができる。本発明によるエアロゾルは、例えば、0.002~5重量%、0.01~3重量%、0.015~2重量%、0.1~2重量%、0.5~2重量%又は0.5~1重量%の活性物質を含有する。
【0252】
代替的に肺への局所投与はまた、例えば、ネブライザー、例えば、コンプレッサーに接続されたネブライザー(例えば、Pari Respiratory Equipment、Inc.、Richmond、Va.によって製造されたPari Master(R)コンプレッサーに接続されたPari LC‐Jet Plus(R)ネブライザー)等のデバイスを採用した液体溶液又は懸濁製剤の投与によってもあり得る。
本発明の結合分子、特に抗体は、溶媒中に分散して、例えば、溶液又は懸濁液の形態で送達することができる。それは、適切な生理学的溶液、例えば生理食塩水又は他の薬学的に許容される溶媒又はバッファー溶液中に懸濁させることができる。懸濁液は、例えば、凍結乾燥された結合分子、特に凍結乾燥された抗体を採用することができる。
【0253】
治療用懸濁液又は溶液製剤は、1つ又は複数の賦形剤も含むことができる。賦形剤は当技術分野でよく知られており、バッファー(例えば、クエン酸バッファー、リン酸バッファー、酢酸バッファー及び重炭酸バッファー)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば、血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリウム、リポソーム、マンニット、ソルビトール及びグリセロールなどが含まれる。溶液又は懸濁液は、リポソーム又は生分解性ミクロスフェアにカプセル化することができる。製剤は、一般に、無菌製造プロセスを採用した実質的に無菌の形態で提供されるであろう。これには、製剤に使用される緩衝化溶媒/溶液のろ過による製造及び滅菌、無菌緩衝化溶媒溶液中の抗体の無菌的懸濁、並びに当業者に周知の方法による無菌容器への製剤の分注が含まれ得る。
【0254】
本発明によるネブライザブル製剤は、例えば、ホイル封筒に包装された単回投与単位(例えば、密封プラスチック容器又はバイアル)として提供され得る。各バイアルは、溶媒/溶液バッファーの体積、例えば、2mL中に単位用量を含む。
本発明は、ネブライゼーションによる送達に適している場合がある。
本発明はまた、本発明の結合分子、特に抗体を含む組成物を装填したシリンジを提供する。一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体の単位用量が装填されたプレフィルドシリンジが提供される。別の実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体を装填した自動注射器が提供される。さらなる実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体を装填したIVバッグが提供される。また、凍結乾燥形態でバイアル又は類似の容器に入った凍結乾燥形態の本発明の結合分子、特に抗体が提供される。
【0255】
また、本発明の結合分子、特に抗体は、遺伝子治療を用いて投与することも想定される。これを達成するために、結合分子が抗体である場合、適切なDNA成分の制御下で抗体分子の重鎖及び軽鎖をコードするDNA配列が患者に導入され、抗体鎖がDNA配列から発現され、in situで組み合わされるようにする。
【0256】
一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、関心対象の抗原(単数又は複数)の活性を機能的に変化させるために、特にCD45を調節するために使用されてもよい。例えば、本発明は、直接的又は間接的に、前記抗原(単数又は複数)の活性を中和、アンタゴナイズ(拮抗)又はアゴナイズしてもよい。
本発明はまた、本発明の結合分子、特に抗体を含む、キットにも及ぶ。一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体のいずれかを含むキットが、任意に投与のための説明書とともに提供される。
さらに別の実施形態では、キットは、1つ又は複数の機能的アッセイを実施するための1つ又は複数の試薬をさらに含む。
一実施形態では、本発明の抗体を含む本発明の分子は、実験室試薬として使用するために提供される。
【0257】
さらなる側面
さらなる態様において、本明細書に記載されるような本発明の抗体分子をコードするヌクレオチド配列、例えばDNA配列が提供される。一実施形態では、本明細書に記載されるような本発明の結合分子、特に抗体をコードするヌクレオチド配列、例えばDNA配列が提供される。一実施形態では、ヌクレオチド配列は、2つ以上のポリヌクレオチド上に集合的に存在するが、集合的に一緒になって、本発明の結合分子、特に抗体をコードすることが可能である。
【0258】
本明細書における発明は、上記で定義したようなヌクレオチド配列を含むベクターにも及ぶ。本明細書で使用する「ベクター」という用語は、それが連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの一例は「プラスミド」であり、これは円形の二本鎖DNAループであり、そこに追加のDNAセグメントがライゲーションされることがある。別のタイプのベクターは、ウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされることがある。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自律的な複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーマル哺乳類ベクター)は、宿主細胞のゲノムに統合され、そこで宿主ゲノムとともにその後複製され得る。本明細書では、プラスミドがベクターの最も一般的な使用形態であるため、「プラスミド」及び「ベクター」という用語を互換的に使用することができる。ベクターが構築され得る一般的な方法、トランスフェクション方法及び培養方法は、当業者によく知られている。この点に関して、“Current Protocols in Molecular Biology”,1999,F.M.Ausubel(ed),Wiley Interscience,New York及びCold Spring Harbor Publishingが作成したManiatis Manualに言及される。
【0259】
また、本明細書において、ベクターとは、例えば、ベクターを含む粒子、例えば、LNP(Lipid Nanoparticle、脂質ナノ粒子)粒子、特にLNP‐mRNA粒子を含む。また、本発明のベクターを導入するために使用されるウイルス粒子も含まれる。
本明細書で使用する「選択マーカー」という用語は、その発現により、マーカー遺伝子を含むベクターで形質転換又はトランスフェクトされた細胞を識別することができるタンパク質を意味する。広範な選択マーカーが当技術分野で知られている。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を付与する。また、選択マーカーは、例えば蛍光マーカーのような視覚的に識別可能なマーカーであってもよい。蛍光マーカーの例としては、ローダミン、FITC、TRITC、Alexa Fluors及びそれらの各種コンジュゲートなどが挙げられる。
【0260】
一実施形態において、本発明は、本発明の結合分子、特に抗体をコードするベクターを提供する。別の実施形態において、本発明は、本発明の結合分子、特に抗体を集合的にコードするベクターを提供する。
また、本発明の抗体をコードする1つ又は複数のDNA配列を含む1つ又は複数のクローニング又は発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。本発明の抗体分子をコードするDNA配列の発現には、任意の適切な宿主細胞/ベクター系を使用することができる。細菌、例えば大腸菌及び他の微生物系を用いてもよいし、真核生物、例えば哺乳類の宿主細胞発現系を用いてもよい。好適な哺乳類宿主細胞としては、CHO細胞、ミエローマ細胞、ハイブリドーマ細胞などが挙げられる。本発明の核酸分子又はベクターを含む宿主細胞も提供される。
【0261】
本発明はまた、本発明のベクターを含む宿主細胞を、本発明の分子をコードするDNAからのタンパク質の発現を導くのに適した条件下で培養し、分子を単離することを含む、本発明による分子又はその成分の製造方法を提供する。
ヘテロダイマーテザーを含む抗体を製造する方法は、抗体の2つの部分を混合し、ヘテロダイマーテザーの結合パートナーを会合させることをさらに含んでもよい。この方法は、例えば、所望のヘテロダイマーとは別の任意の種を除去するための精製をさらに含んでもよい。
【0262】
本発明の結合分子、特に抗体は、診断/検出キットに使用することができる。一実施形態では、本発明の抗体は固体表面上に固定される。固体表面は、例えば、チップ、又はELISAプレートであってよい。
本発明の結合分子、特に抗体は、例えば、結合した抗体‐抗原複合体の検出を容易にする蛍光マーカーとコンジュゲートされていてもよい。これらは、免疫蛍光顕微鏡検査に使用することができる。あるいは、結合分子、特に抗体は、ウェスタンブロット又はELISAに使用することもできる。
【0263】
一実施形態では、本発明による結合分子、特に抗体、又はその成分を精製するためのプロセスが提供される。一実施形態では、不純物がカラム上に保持され、抗体が非結合画分に維持されるように、非結合モードで陰イオン交換クロマトグラフィーを行うステップを含む、本発明による結合分子、特に抗体、又はその成分を精製するためのプロセスが提供される。このステップは、例えば、約6~8のpHで実施されてもよい。プロセスは、例えば約4~5のpHで実施される陽イオン交換クロマトグラフィーを採用する最初の捕捉ステップをさらに含んでもよい。プロセスは、製品及びプロセスに関連する不純物が製品ストリームから適切に分離されることを確実にするために、追加のクロマトグラフィーステップをさらに含んでもよい。精製プロセスは、濃縮及び透析濾過ステップなどの1つ又は複数の限外濾過ステップを含んでもよい。
【0264】
上述で使用される「精製形態」は、91、92、93、94、95、96、97、98、99%w/w又はそれ以上の純度など、少なくとも90%の純度を指すことを意図している。
本明細書の文脈では、「含む」(「comprising」)は「含む」(「including」)として解釈される。特定の要素を含む本発明の態様は、関連する要素「からなる」又は「から本質的になる」という代替の実施形態にも及ぶことが意図される。
肯定的に言及された実施形態は、本明細書において、免責事項の根拠として採用され得る。
本明細書において、単数形が言及される場合、別途記載又は明白でない限り、複数形も包含される。特に、単数形の「a」、「an」、「the」などは、文脈から明らかにそうでないと判断されない限り、複数の参照語を含む。
本明細書で言及されるすべての参考文献は、参照により具体的に組み込まれる。
【0265】
本明細書における小見出しは、本明細書の構成を補助するために採用されており、本明細書における技術用語の意味を構築するために使用することを意図していない。
本発明の配列は、本明細書において以下に提供される。
本明細書の文脈では、「含む(comprising)」は「含む(including)」と解釈される。
特定の要素を含む本発明の態様は、関連する要素「からなる」又は「から本質的になる」という代替的な実施形態にも及ぶことが意図される。
肯定的に言及された実施形態は、本明細書において、免責事項の根拠として採用され得る。
本明細書で言及されるすべての参考文献は、参照により具体的に組み込まれる。
【0266】
参考文献
1.Ribosome display efficiently selects and evolves high-affinity antibodies in vitro from immune libraries. (リボソームディスプレイは、免疫ライブラリーからin vitroで高親和性抗体を効率的に選択し、進化させる。)Hanes J,Jermutus L,Weber-Bornhauser S,Bosshard HR,Pluckthun A.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95,14130-14135
2.Directed in Vitro Evolution and Crystallographic Analysis of a Peptide-binding Single Chain Antibody Fragment (scFv) with Low Picomolar Affinity. (低ピコモル親和性ペプチド結合性単鎖抗体フラグメント(scFv)の体外進化と結晶学的解析。)Zhand C,Spinelli S,Luginbuhl B,Amstutz P,Cambillau C,Pluckthun A.(2004)J.Biol.Chem.279,18870-18877
3.Antigen recognition by conformational selection.(立体配座選択による抗原認識。)Berger C,Weber-Bornhauser S,Eggenberger Y,Hanes J,Pluckthun A,Bosshard H.R.(1999)F.E.B.S.Letters 450,149-153
【実施例
【0267】
実施例で使用される用語Fab‐X/‐Fab‐Y(又はFab‐KD‐Fab)は、式A‐X:Y‐Bを有するタンパク質複合体形式を説明し、ここで
A‐Xは、第1の融合タンパク質である;
Y‐Bは、第2の融合タンパク質である;
X:Yはヘテロダイマーテザーである;
Aは、CD45のような抗原に特異的なFabフラグメントを含む;
BはCD45のような抗原に特異的なFabフラグメントを含む;
Xは、scFv(例えば、GCN4ペプチドを結合するscFv)などの結合ペアの第1の結合パートナーである;
Yは、ペプチド(例えばGCNペプチド)のような結合ペアの第2の結合パートナーである;
:は、XとYの間の相互作用(結合相互作用など)である;
‐は結合又はリンカーである;
実施例で使用される多くの抗体分子は、このような形式である。その他はBYbe形式である;実施例で使用されるBYbe抗体は、以下の形式である:
a)ポリペプチド鎖:VCH‐ScFv;
b)ポリペプチド鎖:V
ここで
CH及びVは互いに対になってFabを形成する;
CH1とScFvは結合又はリンカー「‐」によって結合されている。
【0268】
例1‐機能性アッセイ用Fab‐X(Fab‐52SR4scFv)及びFab‐Y(Fab‐GCN4ペプチド)の作製
方法
クローニング方法
抗体可変領域DNAは、PCR又は遺伝子合成によって生成され、フランキング制限酵素部位を含んでいた。これらの部位は、可変重鎖にはHindIIIとXhoI、可変軽鎖にはHindIIIとBsiWIであった。これにより、重鎖可変領域は2つの重鎖ベクター(Fab‐Yを持つpNAFHとFab‐X ds[ジスルフィド安定化]を持つpNAFH)に、相補的な制限部位を持っているので、ライゲーションが可能になる。これは、可変領域の上流(又は5’)に、ネズミの定常領域とペプチドY(GCN4)又はscFv X(52SR4)をライゲーションし、全読み取り枠を作成する。軽鎖は、再び同じ相補的制限部位を使用する標準的な社内のネズミ定常κベクター(pMmCK又はpMmCK S171C)にクローニングされた。pMmCK S171Cベクターは、可変領域がウサギから単離された場合に使用される。クローニングイベントは、オープンリーディングフレーム全体にフランクするプライマーを用いたシークエンスによって確認された。
【0269】
CHOSの培養
懸濁CHOS細胞は、2mM(100X)glutamaxを添加したCDCHO培地(Invitrogen)に予め適応させた。細胞は、シェーカーインキュベーター(Kuner AG、Birsfelden、Switzerland)上で140rpmで撹拌した対数増殖期に維持し、8%COを補充して37℃で培養を行った。
【0270】
エレクトロポレーションによるトランスフェクション
トランスフェクションの前に、CEDEX cell counter(Innovatis AG.Bielefeld、Germany)を用いて細胞数と生存率を測定し、必要量の細胞(2x10細胞/ml)を遠心コニカルチューブに移して1400rpmで10分間スピンさせた。ペレット化した細胞を滅菌アールズバランス塩溶液に再懸濁し、1400rpmでさらに10分間スピンさせた。上清を吸引し、ペレットを所望の細胞密度に再懸濁した。
2x10細胞/mlに対してベクターDNAを400μgの最終濃度で混合し、800μlをキュベット(Biorad)に注ぎ、社内のエレクトロポレーションシステムを使用して電気穿孔した。トランスフェクトされた細胞は、2mMのglutamxで富化したProCHOS培地と抗生物質抗有糸分裂薬(100X)溶液(500分の1)を含む3L三角フラスコに直接移され、37℃、5%CO、140rpmで振盪するKuhnerシェーカーインキュベーターで培養された。トランスフェクション後24時間目に2g/LのASF(味の素)を添加し、温度を32℃まで下げて13日間培養した。4日目に3mM Sodium buryrate(n‐BUTRIC ACIDナトリウム塩、Sigma B‐5887)を添加し培養した。14日目に培養物をチューブに移し、4000rpmで30分間遠心分離した後、上清を細胞から分離した。保持した上清をさらに0.22μm SARTO BRAN P Millipore、続いて0.22μm Gamma Goldフィルターで濾過した。最終的な発現量は、Protein G‐HPLCによって決定した。
【0271】
大規模(1.0L)精製
Fab‐X及びFab‐Yは、AKTA XpressシステムとHisTrap Excelプレパックドニッケルカラム(GEヘルスケア)を用いてアフィニティーキャプチャーにより精製した。培養上清を0.22μmの滅菌ろ過し、カラムにロードする前に、必要に応じて弱酸又は塩基でpHを中性に調整した。15~25mM イミダゾールを含む二次洗浄工程で、ニッケル樹脂から弱く結合した宿主細胞タンパク質や非特異的なHis結合体を除去した。溶出は、10mMリン酸ナトリウム、pH7.4+1M NaCl+250mMイミダゾールで行い、2mlのフラクションを回収した。溶出の1カラム量は、溶出ピークを引き締めるために10分間システムを一時停止し、その結果、総溶出量を減少させた。最もクリーンなフラクションをプールし、PBS(Sigma)、pH7.4にバッファー交換した後、0.22μmフィルターでろ過した。最終プールは、A280 Scan、SE‐HPLC(G3000メソッド)、SDS‐PAGE(還元及び非還元)により、Endosafe nexgen‐PTSシステム(Charles River)を用いてエンドトキシンについてアッセイした。
【0272】
例2‐Fab及びBYbesの製造
方法
抗CD45抗体4133及び6294のFabフラグメントを生成するために、それぞれの軽鎖及び重鎖のV領域をコードする遺伝子を、自動合成アプローチ(ATUM)により設計及び構築した。ウサギ抗体4133のV領域遺伝子は、ウサギCκ1領域と重鎖γCH1領域をそれぞれコードするDNAを含む発現ベクターにクローン化された。マウス抗体6294のV領域遺伝子は、それぞれマウスCκ領域及び重鎖γ1 CH1領域をコードするDNAを含む発現ベクターにクローニングした。
同様に、4133‐6294とNegCtrl BYbesの全長の重鎖(Fab HC‐G4Sリンカー‐scFv)を自動合成法(ATUM)により設計・構築した。両重鎖は、社内の哺乳類発現ベクターにクローニングされた。4133‐6294 BYbe重鎖は、上記の4133軽鎖と対になっていた。NegCtrl BYbeの軽鎖V領域遺伝子は、自動合成アプローチ(ATUM)により設計・構築し、次にマウスCκ領域をコードするDNAを含む発現ベクターにクローニングした。NegCtrl BYbeは、Fab及びscFvの両ポジションにおいて、抗原に無関係な特異性(antigen-irrelevant specificity)を有する。
【0273】
関連する重鎖と軽鎖のコンストラクトを対にして、製造者の指示に従ってGibco ExpiFectamine CHO Transfection Kit(カタログ番号A29133、ThermoFisher Scientific)を用いてCHO‐SXE細胞へトランスフェクトした。この細胞を37℃、5%CO、140rpmで振盪するインキュベーターで7日間培養した。培養後、培養液をチューブに移し、4000rpmで30分間遠心分離した後、上清を細胞から分離した。保持した上清を0.22μm SARTO BRAN P Millipore、続いて0.22μm Gamma Goldフィルターでろ過した。
【0274】
上清からの全タンパク質を、製造者の指示に従って、AKTA Pure 精製システム(GE Healthcare Life Sciences)上で2本の5ml HiTrap Protein G HPカラム(カタログ番号GE29‐0405‐01、SigmaAldrich)を直列に用いて精製した。溶出したタンパク質の画分を合わせ、Ultracel‐10メンブレン 10kDa(カタログ番号UFC9010、SigmaAldrich)を備えたAmicon Ultra‐15遠心フィルターユニットで<5mlに濃縮した。
清浄な画分を得るために、次に、タンパク質をAKTA Pure精製システム上のHiLoad Superdex 200pg 16/60 HPLCサイズ排除カラムに通過させた。タンパク質濃度は、Thermo Scientific NanoDrop 2000(カタログ番号ND‐2000)を使用して決定した。さらに、フラクションを4‐20%トリスグリシンゲルで分析し、Endosafe nexgen‐MCS system(Charles River)を用いてエンドトキシンをテストした。
【0275】
例3‐CD45細胞外ドメインの作製
方法
CD45の細胞外ドメインのドメイン1‐4(UniProtKB‐P08575、残基位置225‐573)をコードする遺伝子を設計し、自動合成アプローチ(ATUM)により構築した。精製を助けるために、TEV切断部位と10‐Hisタグを発現タンパク質のC末端に組み込んだ。この遺伝子を社内の哺乳類発現ベクターにクローニングし、次いでGibco ExpiFectamine 293 Transfection Kit(カタログ番号A14525、ThermoFisher Scientific)を用いて、製造者の指示に従いHEK293細胞にトランスフェクトした。この細胞を37℃、5%COのインキュベーターで140rpmの振盪を行いながら7日間培養した。培養後、培養物をチューブに移し、4000rpmで30分間遠心分離した後、上清を細胞から分離した。残った上清を0.22μm SARTO BRAN P Millipore、続いて0.22μm Gamma Goldフィルターでろ過した。
【0276】
上清からのHisタグ付きタンパク質は、AKTA Pure精製システム(GE Healthcare Life Sciences)で1ml HisTrap Excelカラム(カタログ番号GE17‐3712‐05、SigmaAldrich)2本を直列に用いて製造者の指示に従い精製した。溶出したタンパク質の画分を合わせ、Ultracel‐3メンブレン 3kDa(カタログ番号UFC900308、SigmaAldrich)を備えたAmicon Ultra‐15 遠心フィルターユニットで<5mlに濃縮した。清浄な画分を得るために、次に、タンパク質をAKTA Pure精製システム上のHiLoad Superdex 75pg 16/60 HPLCサイズ排除カラムに通過させた。タンパク質濃度は、Thermo Scientific NanoDrop 2000(カタログ番号ND‐2000)を用いて決定した。さらに、分画を4‐20%トリス‐グリシンゲルで分析した。
【0277】
例4‐抗CD45 Fab‐KD‐Fabによるアポトーシスの誘導(アネキシンV結合による判定)
方法
血液白血球血小板アフェレーシスコーン(NHSBT Oxford)由来のヒトPBMCを、凍結アリコートとしてバンクに保管した。アッセイを行う前に、1ml中に5×10個の細胞を各々含む凍結細胞のドナーコーンあたり2バイアルを、37℃の水浴中で解凍し、次に50mlの完全培地(RPMI 1640+2mM GlutaMAX+1%Pen/Strep、すべてInvitrogenから以前に供給、+10%ウシ胎仔血清(FBS)、Sigma Aldrich)中に追加した。細胞をスピンし(500g、5分、RT)、30mlの完全培地に再懸濁させて洗浄し、再度スピンした。細胞を20mlの完全培地に再懸濁し、ChemoMetec NucleoCounter NC‐3000で計数して濃度と生存率を決定し、次いで1.25x10細胞/mlに希釈した。次に、80μl中の1ウェルあたり10個の細胞を、Corning Costar 96ウェル、細胞培養処理、U字底マイクロプレート(カタログ番号07‐200‐95)の各ウェルに加え、37℃、5%COインキュベーターで2時間静止させた。このアッセイには、3人のドナー、UCB‐Cone 652、658、及び686からのPBMCが使用された。
【0278】
Fab‐KD‐Fab試薬は、XとYとラベルされた2つの別々の半分を予混合することにより、非共有結合のFab‐Fabコンビネーションを形成できる。Greiner96ウェル非結合マイクロプレートにおいて、Fab‐XとFab‐YのコンビネーションNegCtrl‐X/4133‐Y、6294‐X/NegCtrl‐Y、6294‐X/4133‐Y、及び6294‐X/6294‐Yを完全培地に加え、500nMのFab‐KD‐Fab濃度となるようにした。マイクロプレートは37℃、5%COで1時間インキュベートした。NegCtrl‐X及びNegCtrl‐Yは、無関係な抗原に特異的なネガティブコントロールである。
次に、各Fab‐KD‐Fab調製物20μlを細胞に添加し(最終Fab‐KD‐Fab濃度100nM)、37℃、5%COで24時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを500gで5分間RTでスピンさせ、BioTek ELx405マイクロプレート洗浄機(20μl Uボトムアスピレート設定)を用いて培地を吸引し、20ulの残留培地に細胞を残留させた。
【0279】
Multicyt apoptosis kit(Intellicyt カタログ番号90054)を製造者の指示に従い使用した。完全培地で2倍の作業濃度の染色カクテルを調製した。20μlの抗体染色カクテルを細胞に添加し、プレートを37℃、5%COで1時間インキュベートした。Intellicyt iQue Screener PLUSを使用して生細胞を分析した。生細胞数はメトリクスとして抽出され、Graphpad Prism version 8.1(Graphpad)を用いてグラフ化された。
【0280】
結果
代表的なドナー(UCB Cone‐686)のデータを図1(A)&1(B)に示す。(A)NegCtrl‐X/4133‐Y、6294‐X/NegCtrl‐Y、6294‐X/6294‐Yで処理した細胞又は未処理の細胞と比較して、6294‐X/4133‐Y処理細胞ではリンパ球の細胞数の著しい減少が観察された。(B)6294‐X/4133‐Yウェルの生存細胞のうち、38%はアネキシンVの結合を示した。これは、アポトーシスを起こしている細胞を示している。さらに、アネキシンVの結合レベルは、他の処理及び未処理のウェルにおける結合レベルのおよそ3倍であった。
【0281】
例5‐精製T細胞のアポトーシス
方法
血液白血球血小板アフェレーシスコーン(NHSBT Oxford)由来のヒトPBMCは、冷凍アリコートとしてバンクされた。アッセイを実施する前に、1ml中に5×10個の細胞を各々含む凍結細胞のドナーコーンあたり2バイアルを、37℃の水浴中で解凍し、次いで50mlのRPMI培地(RPMI 1640+2mMグルタミン+1%ペニシリン/ストレプトマイシン、Invitrogenから供給、5%熱不活化ヒトAB血清、カタログ番号、H3667‐20ML、Sigma Aldrich)に添加した。細胞をスピンし(500g、5分、RT)、30mlの完全培地に再懸濁させて洗浄し、再度スピンした。細胞を20mlのRPMI培地に再懸濁し、ChemoMetec NucleoCounter NC‐3000で計数して濃度と生存率を決定し、次いで1.25x10細胞/mlに希釈した。次に、80μl中の1ウェルあたり10個の細胞を、Corning Costar 96ウェル、細胞培養処理、U字底マイクロプレート(カタログ番号07‐200‐95)の各ウェルに加え、37℃、5%COインキュベーターで2時間休ませた。
【0282】
T細胞は、製造者の指示に従ってCD4+T cell Isolation Kitを使用して精製した(カタログ番号130‐096‐533、Miltenyi Biotec)。簡単に言うと、PBMCを冷MACSバッファー(PBS pH7.2、0.5%ウシ血清アルブミン及び2mM EDTA、Sigma Aldrich)で洗浄し、40μlのMACSバッファーに10細胞で再懸濁させた。その後、10μlのCD4+T細胞ビオチン‐抗体カクテルを加え(10細胞あたり)、混合し、そして5分間、4℃でインキュベートした)。その後、さらに30μlのMACSバッファーを加え(10細胞あたり)、その後20μlのCD4+T細胞マイクロビーズカクテルを加えた(10細胞あたり)。細胞は混合され、その後4℃で10分間インキュベートされた。CD4+T細胞を他の細胞から分離するために、それらは磁気選択カラム(LSカラム)上に置かれ、3mlのMACSバッファーで3回洗浄された。精製されたCD4+T細胞は、カラム溶出液から回収された。次に、細胞をRPMI培地(上記の通り)で洗浄し、回収率及び生存率(97%の細胞生存率として測定)を評価するために数えた。次に、100μl中のウェル当たり10個の細胞を、コーニングCostar 96ウェル、細胞培養処理、U字底マイクロプレート(カタログ番号07‐200‐95)の各ウェルに添加した。
【0283】
Greiner96ウェル非結合マイクロプレートにおいて、Fab‐XとFab‐Yの組み合わせ6294‐X/4133‐Y、4133‐Y/6294‐Y、6294‐X/6294‐Y及びNegCtrl‐X/4133‐Yを、200nMのFab‐KD‐Fab濃度となるように完全培地に添加した。マイクロプレートは37℃、5%COで1時間インキュベートされた。インキュベーションの後、Fab‐KD‐Fab試薬をRPMI培地で5分の1に連続希釈し、8ポイントの用量曲線を形成するために7回生成した。2つのY試薬が一緒に加えられると(ここでは4133‐Yと6294‐Yの組み合わせを使用)、これらは混合物を形成し、連結分子ではないことに注意されたい。
【0284】
次に、各Fab‐KD‐Fab又はBYbe希釈液100μl(最終ウェル濃度100‐0.00128nM)をCD4+細胞のプレートに加え、37℃、5%COで24時間インキュベートした。インキュベーションの後、プレートを500gで5分間、RTでスピンさせた。その後、バッファーを吸引し(BioTek ELx405マイクロプレート洗浄機を使用、15μl U底吸引設定)プレートを密封し、1800rpmで30秒間再スピンさせた。プレートに氷冷したFACSバッファー(PBS+1%BSA+0.1%NaN+2mM EDTA)を加え、再度スピンさせた。バッファーを除去し、プレートを再スピンさせ、20μlの1:1000 near IR dye(Invitrogen)を各ウェルに添加した。20分後、細胞を200μlのFACSバッファーで洗浄し、15μlのFACSバッファーに再懸濁した後、Intellicyt iQue Screener PLUSで分析した。生細胞数はメトリクスとして抽出され、Graphpad Prism version 8.1(Graphpad)を用いてグラフ化された。非対称(5パラメータ)カーブフィッティングにより、最大細胞減少%及びEC50値を算出した。
【0285】
結果
精製CD4+T細胞数の減少%は、図2に示されている。組み合わせ6294‐X/4133‐Yは、97%の最高レベルの減少を示し、0.32nMのEC50値を与える最も強力なものであった。他のすべての組み合わせは、細胞減少のための50%最大レベルに到達せず、EC50の測定値を生成するのに十分な効力はなかった。
【0286】
例6‐Fab‐X/Fab‐Y及びBYbeとしてフォーマットされた抗CD45抗体によって誘導されたPBMCのアポトーシス
方法
血液白血球血小板アフェレーシスコーン(NHSBT Oxford)から得られたヒトPBMCを、凍結アリコートとしてバンクに入れた。アッセイを行う前に、1ml中に5×10個の細胞を各々含む凍結細胞バイアル2個を、37℃の水浴中で解凍し、次いで50mlの完全培地(RPMI 1640+2mM GlutaMAX+1%Pen/Strep、すべて前出Invitrogenにより提供、+10%ウシ胎仔血清(FBS)、Sigma Aldrich)に添加した。細胞をスピンし(500g、5分、RT)、30mlの完全培地に再懸濁させて洗浄し、再度スピンした。細胞を10mlの完全培地に再懸濁し、次いでChemoMetec NucleoCounter NC‐3000を使用して計数した。次に、100μl中のウェル当たり10個の細胞を、Corning Costar 96ウェル、細胞培養処理、U字底マイクロプレート(カタログ番号07‐200‐95)の各ウェルに添加した。このプレートを37℃、5%COインキュベーターで2時間静止させた。このアッセイには、2人のドナー、UCB‐Cone 801と802からのPBMCが使用された。
【0287】
Greiner 96ウェル非結合マイクロプレートで、Fab‐XとFab‐Yの組み合わせ 6294‐X/4133‐Yを完全培地に加え、Fab‐KD‐Fab濃度が1500nMとなるようにした。同様に、完全培地中の4133‐6294BYbeの1500nMストックを調製した。マイクロプレートを37℃、5%COで1時間インキュベートした。インキュベーション後、Fab‐KD‐Fab及びBYbe試薬を完全培地で5分の1に連続希釈し、10ポイントの用量曲線を形成するために9回製造した。
【0288】
各Fab‐KD‐Fab又はBYbe希釈液20μl(最終ウェル濃度250‐0.000128nM)を細胞に加え、37℃、5%COで24時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを500g、5分、RTでスピンし、BioTek ELx405マイクロプレート洗浄機でバッファーを吸引し、細胞をFACSバッファー(PBS+1%ウシ血清アルブミン(BSA)+0.1%NaN+2mM EDTA、Sigma Aldrich)に再懸濁し洗浄し、次いで再スピンしてバッファーを吸引し細胞を20μl残留培地に残留させた。20μlの細胞特異的マーカー抗体カクテル溶液をウェルに添加し、4℃で1時間インキュベートした。抗体カクテルの詳細は下記表4の通りである。
【0289】
細胞はIntellicyt iQue Screener PLUSを使用してライブで分析された。生細胞数はメトリクスとして抽出され、Graphpad Prism version 8.1(Graphpad)を用いてグラフ化された。非対称(5パラメータ)カーブフィッティングにより、最大細胞減少%及びEC50値を算出した。
【0290】
【表7】

【0291】
結果
代表的なドナー(UCB Cone‐802)に対する(A)6294‐X/4133‐Y及び(B)4133‐6294 BYbeによるPBMC細胞サブセット数の減少%を図3、及び以下の表5及び6に示す。6294‐X/4133‐Y及び4133‐6294 BYbeはともに、T細胞で0.19‐0.52nM、B細胞で0.65‐1.50nMという非常に強力なEC50を示し、T細胞(>95%)とB細胞(87%)でほぼ最大の減少を示した。
【0292】
【表8】

【0293】
【表9】

【0294】
例7‐全血中のリンパ球のアポトーシス
方法
UCB Pharma Slough、UKにて、倫理的に承認されたサンプル収集プロトコルに従い、2人のドナー(HTA#051119‐01&#051119‐02)からヒト全血(リチウムヘパリンチューブ)を採取した。
Greiner96ウェル非結合マイクロプレートにおいて、Fab‐X及びFab‐Yの組み合わせ6294‐X/4133‐Y及びNegCtrl‐X/4133‐YをPBSに加え、Fab‐KD‐Fab濃度2750nMとした。同様に、PBS中の4133‐6294BYbeの2750nMストックを調製した。マイクロプレートを37℃、5%COで1時間インキュベートした。インキュベーションの後、Fab‐KD‐Fab及びBYbe試薬をPBSで5分の1に9回連続希釈し、10ポイントの用量曲線を形成した。
各Fab‐KD‐Fab又はBYbe希釈液5μlをNunc(商標)96‐Well Polypropylene DeepWell(商標)プレート(ThermoFisher)に添加した。次に、50μlの血液を各ウェルに加え、プレートを穏やかに混合し、ガス交換が可能なプレートシールで密封した。その後、これらの細胞を37℃、5%COで5時間インキュベートした。このアッセイを短時間で実行することにより、抗凝固剤を添加する必要性を回避することができる。
【0295】
インキュベーション後、950μlのBD Phosflow BD Lyse/Fix(カタログ番号BD558049、FisherScientific)を各ウェルに加え、プレートを37℃、5%COで10分間インキュベートした。その後、プレートを500gで8分間、4℃でスピンした。バッファーを吸引し、1mlのFACSバッファー(PBS+1%ウシ血清アルブミン(BSA)+0.1%NaN+2mM EDTA、Sigma Aldrich)を加え、Integra Viaflo 96チャネルピペットを用いて細胞を洗浄した。プレートを500gで8分間、4℃でスピンさせた。前回と同様に、バッファーを吸引し、1mlのFACSバッファーを加えて細胞を洗浄した。その後、250gで10分間、4℃でゆっくりとスピンさせた。再び、バッファーを吸引し、1mlのFACSバッファーを加えて細胞を洗浄した。プレートを500gで8分間、4℃で再スピンさせた。バッファーを吸引し、細胞特異的抗体染色用に細胞を最小限の残留量にした。20μlの細胞特異的抗体カクテル(以下の表7に示す)をウェルに加え、プレートを4℃で1時間インキュベートした。
【0296】
抗体カクテルとのインキュベーションの後、細胞を上記のように2回洗浄し、バッファーを吸引して20μlの残留バッファー中に細胞を残した。その後、20μlのFACSバッファーをサンプルに加え、細胞を希釈した。Intellicyt iQue Screener PLUSを使用して、細胞をライブで分析した。生細胞数はメトリクスとして抽出され、Graphpad Prism version 8.1(Graphpad)を用いてグラフ化された。非対称(5パラメータ)カーブフィッティングにより、最大細胞減少%及びEC50値を算出した。
【0297】
【表10】
【0298】
結果
6294‐X/4133‐Y及び4133‐6294 BYbe による、(A)総リンパ球及び(B)CD4細胞(ドナー#051119‐01)と(C)総リンパ球及び(D)CD4細胞(ドナー#051119‐02)との、全血中の減少%を図4及び以下の表8に示す。データは、両ドナーにわたって広く類似している。ネガティブコントロールであるNegCtrl‐X/4133‐Yは、どちらのドナーについても、総リンパ球数又はCD4+細胞数の減少を示さなかった。ドナー#051119‐02において、NegCtrl‐X/4133‐Yの最高濃度での細胞減少のスパイクは、単一のデータポイントであり、真の活性を反映していないと考えられる。一方、わずか5時間で、6294‐X/4133‐Yと4133‐6294 BYbeの両方は、34‐44%で総リンパ球の、48‐54%でCD4+細胞の最大減少を示した。総リンパ球に対するEC50値は0.37‐5.99nMで、CD4+細胞に対しては0.05‐0.33nMで、これらの試薬の効力とin vivoでの活性の可能性を証明した。
【0299】
【表11】

【0300】
例8‐Luminexビーズアッセイによる24時間後の全血中のサイトカイン放出量
方法
UCB Pharma Slough、UKの2名のドナー(HTA#300120‐1&#300120‐2)から、倫理的に認められたサンプル収集プロトコールに従って、ヒト全血(リチウムヘパリンチューブ)を採取した。
Greiner 96ウェル非結合マイクロプレートに、4133‐6294 BYbeと、Fab及びscFv 位置の両方に抗原と無関係な特異性を持つネガティブコントロールBYbe(NegCtrl BYbe)を5000nMでPBS中に調製した。次に、BYbe試薬をPBSで5分の1に順次希釈し、3回生成を繰り返して4点の用量曲線を形成した。BYbe希釈液12.5μlをCorning Costar 96ウェル、細胞培養処理、U字底マイクロプレート(カタログ番号07‐200‐95)に移し、全血237.5μlを各ウェルに追加した。BYbesの最終的なウェル濃度は、250nm、50nM、10nm、2nMであった。カンパス(Campath)(臨床グレード、30mg/mlストックからPBSで1mg/mlに希釈、ロット番号F1002H29)を、最終濃度10μg/mlでポジティブコントロールとして使用した。プレートをガス透過性粘着シールで密封し、プレートの蓋を取り替えた。その後、プレートを37℃、5%加湿COで24時間、乱れのない場所でインキュベートした。
【0301】
次に、R&D Systems Luminex 13‐plex ヒトサイトカインアッセイを使用してサイトカイン放出を評価した(サイトカインのカスタム選択:IL‐1 RA、IL‐4、IL‐5、IL‐6、IL‐10、IL‐11、IL‐13、CCL2、IL‐8、CXCL1、CX3CL1、GM‐CSF及びM‐CSF)。24時間培養後、プレートを1000gで10分間スピンさせ、50μlの血漿を50μlのアッセイ希釈バッファー(LuminexキットのRD6‐52)の入った別のプレートに移した。サンプルはマルチチャンネルピペットを用いて十分に再懸濁し、50μlをLuminexアッセイプレートに移した。Luminexアッセイ標準試料を1/2に7回希釈し、標準曲線を作成し、プレートに添加した。50μlの微粒子混合物を次に各ウェルに添加し、プレートを室温(RT)で2時間インキュベートし、800rpmで混合した。各ウェルに150μlの洗浄バッファーを加え、プレートを3回洗浄し、次いでBioTek ELx405マイクロプレート洗浄機マグネットに磁気ビーズを結合させ、上清を吸引した。50μlのビオチン‐抗体カクテルを各ウェルに加え、プレートを振盪しながらRTで1時間インキュベートした。その後、プレートを前と同様に洗浄し、最後に50μlのストレプトアビジン‐PEを各ウェルに添加した。最終の洗浄ステップの前に、プレートを室温で30分間振とうしながらインキュベートし、50μlの洗浄バッファーを各ウェルに添加した。Luminexアッセイプレートは、iQUEplusフローサイトメーター(Sartorius)を使用して実行した。標準曲線を作成し(提供されたアッセイコントロールを使用)、Forecytソフトウェア(Sartorius)を使用して外挿されたサイトカイン値を生成した。データはGraphpad Prism version 8.1(Graphpad)に転送され、データの可視化が行われた。
【0302】
結果
試験試薬で24時間インキュベート後の全血中の各サイトカインのレベルは、両ドナーともほぼ同じであった。図5には、両ドナーを代表するデータとして、#300120‐1のデータを示した。個々のサイトカインのレベルは、以下のように示される(A)CCL2、(B)GM‐CSF、(C)IL‐1 RA、(D)IL‐6、(E)IL‐8、(F)IL‐10、(G)IL‐11、(H)M‐CSF。サイトカインIL‐4、IL‐5、IL‐13、CXCL1、CX3CL1はいずれのウェルでも検出されなかった(データは示さず)。カンパス(Campath)は、サイトカイン(A)CCL2、(C)IL‐1 RA、(E)IL‐8を標準曲線を超えるレベルまで誘導したので、このアッセイにおける最大シグナルでプロットした。カンパス(Campath)はまた、PBS処理したウェルのレベルを超える顕著なレベルのIL‐6(D)を誘導した。重要なことは、4133‐6294 BYbeによる炎症性サイトカインの誘導は、PBS及びNegCtrl BYbe処理したウェルにおけるレベルと一致し、ほとんど又は全く観察されなかったことである。
【0303】
例9‐MSDアッセイにより測定した24時間後の全血中のサイトカイン放出量+T細胞数
方法
UCB Pharma Slough、UKにて、倫理的に承認されたサンプル収集プロトコルに従い、1人のドナー(HTA#031219‐06)からヒト全血(リチウムヘパリンチューブ)を採取した。
Greiner96ウェル非結合マイクロプレートにおいて、Fab‐XとFab‐Yの組み合わせ6294‐X/4133‐YをPBSに加え、Fab‐KD‐Fab濃度2000nMとした。同様に、4133‐6294 BYbeとNegCtrl BYbeのストックを2000nMでPBSに調製した。マイクロプレートを37℃、5%COで1時間インキュベートした。インキュベーションの後、Fab‐KD‐Fab及びBYbe試薬をPBSで5分の1に連続希釈し、8ポイントの用量曲線を形成するために7回生成した。
12.5μlのFab‐KD‐Fab又はBYbe希釈液をCorning Costar 96ウェル、細胞培養処理、U字底マイクロプレート(カタログ番号07‐200‐95)に移し、各ウェルに237.5μlの全血を追加した。Fab‐KD‐Fab又はBYbesの最終的なウェル濃度は、100‐0.00128nMであった。カンパス(Campath)(臨床グレード、PBS中で30mg/mlストックから1mg/mlに希釈、ロット番号F1002H29)を、10μg/mlの最終濃度でポジティブコントロールとして使用した。プレートをガス透過性粘着シールで密封し、プレートの蓋を取り替えた。その後、プレートを37℃、5%加湿COで24時間、乱れのない場所でインキュベートした。
【0304】
24時間のインキュベーションの後、プレートを1000gで10分間スピンさせ、50μlの血漿を別のプレートに移し、サイトカイン放出アッセイまで-80℃で保存した。細胞枯渇のレベルを決定するために、残りの細胞をPBSに再懸濁し、未処理(PBS)、カンパス(Campath)及びFab‐KD‐Fab又はBYbe 100nMウェルから50μlを、96ディープウェルプレートに移した。950μlのBD Phosflow BD Lyse/Fix(カタログ番号BD558049、FisherScientific)を各ウェルに加え、プレートを37℃、5%COで10分間インキュベートした。その後、プレートを500gで8分間、4℃でスピンした。バッファーを吸引し、1mlのFACSバッファー(PBS+1%ウシ血清アルブミン(BSA)+0.1%NaN+2mM EDTA、Sigma Aldrich)を加え、Integra Viaflo 96チャネルピペットを用いて細胞を洗浄した。プレートを500gで8分間、4℃でスピンさせた。前回と同様に、バッファーを吸引し、1mlのFACSバッファーで細胞を洗浄した。その後、250gで10分間、4℃でゆっくりとスピンさせた。再び、バッファーを吸引し、1mlのFACSバッファーで細胞を洗浄した。プレートを500gで8分間、4℃で再スピンさせた。バッファーを吸引し、細胞特異的抗体染色用に細胞を最小限の残留量にした。20μlの細胞特異的抗体カクテル(以下の表9に示す)をウェルに加え、プレートを4℃で1時間インキュベートした。
【0305】
抗体カクテルとのインキュベーションの後、細胞を上記のように2回洗浄し、バッファーを吸引して20μlの残留バッファー中に細胞を残した。その後、20μlのFACSバッファーをサンプルに加え、細胞を希釈した。Intellicyt iQue Screener PLUSを使用して、細胞をライブで分析した。生細胞数はメトリクスとして抽出され、Graphpad Prism version 8.1(Graphpad)を用いてグラフ化された。非対称(5パラメータ)カーブフィッティングが適用された。
【0306】
【表12】

【0307】
サイトカインの測定は、V‐PLEX Human Proinflammatory Panel I(4‐Plex)(IFN‐γ、IL‐1β、IL‐6、TNF‐α、カタログ番号K15052D、Meso Scale Discovery)を用いて、製造者の指示に従って実施した。要するに、血漿サンプルをRTで解凍し、希釈液2で4分の1に希釈した。50μlのサンプル又は標準曲線キャリブレーターをProinflammatory Panel Iプレートに添加し、RTでプレートシェーカー上で2時間インキュベートした。BioTek ELx405マイクロプレートウォッシャーでプレートをPBS(0.05%Tween‐20添加)で洗浄し、30μlの検出抗体を各ウェルに添加した。プレートをさらに2時間、RTのプレート振とう機でインキュベートした。プレートを前と同様に洗浄し、150μlのリードバッファー(dHOで2分の1に希釈)を各ウェルに添加した。その後、プレートをSECTOR Imager 6000(Meso Scale Discovery)で分析した。
【0308】
結果
試験試薬で24時間インキュベートした後の全血中のT細胞数を図6に示す。カンパス(Campath)は、PBS及びNegCtrl BYbeで処理したウェルと比較して、T細胞数が約8倍減少していた。4133‐6294 BYbe及び6294‐X/4133‐Yも、それぞれ5倍及び3.6倍と、T細胞数の顕著な減少を示した。検出された炎症性サイトカインのレベルを図7(A)IFN‐γ、(B)IL‐6、(C)TNF‐αに示す。IL‐1βのレベルは、顕著なレベルを登録したカンパス(Campath)を除くすべての試薬について検出レベル以下であった(データは示されていない)。有意なことに、4133‐6294 BYbe及び6294‐X/4133‐Yによる炎症性サイトカインの誘導は、PBS‐及びNegCtrl BYbe処理したウェルにおけるレベルと一致し、ほとんど又は全く観察されなかった。
【0309】
例10‐抗CD45 BYbeによるマクロファージのアポトーシス抵抗性
PBMCからの単球の単離
血液白血球血小板アフェレーシスコーン(NHSBT Oxford)由来のヒトPBMCを、凍結アリコートとしてバンクに入れた。アッセイを行う前に、1ml中に5×10個の細胞を含む凍結細胞2バイアルを37℃の水浴中で解凍し、次いで50mlの完全培地(RPMI 1640+2mM GlutaMAX+1%Pen/Strep、すべて先にInvitrogenにより供給、+10%ウシ胎仔血清(FBS)、Sigma Aldrich)に添加した。細胞をスピンし(500g、5分、RT)、30mlの完全培地に再懸濁させて洗浄し、再度スピンした。細胞を20mlのMACSバッファー(PBS、pH7.2、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)、及び2mM EDTA、Sigma Aldrich)に再懸濁し、ChemoMetec NucleoCounter NC‐3000でカウントして濃度と生存率を決定した。このアッセイでは、1人のドナー(UCB‐Cones 802)からのPBMCを使用した。
単球の単離は、Pan Monocyte Isolation Kit(Miltenyi Biotec、カタログ番号130‐096‐537)とLSカラム(Miltenyi Biotec、カタログ番号130‐042‐401)を用いて製造者の指示に従い実施した。単離後の単球純度を確認するため、100μlの細胞を取り出し、氷上で保存した。単離した細胞をBV421マウス抗ヒトCD14(BD Biosciences、カタログ番号563743)で染色し、FACSを用いて単球の純度を確認した。
【0310】
細胞を500g、5分、RTでスピンし、BioTek ELx405マイクロプレートウォッシャーでバッファーを吸引し、細胞をFACSバッファー(PBS+1%ウシ血清アルブミン(BSA)+0.1%NaN+2mM EDTA、Sigma Aldrich)に再懸濁し洗浄後、再スピンしてバッファーを吸引し細胞を20μl残液で残留させた。20μlのビオチン‐抗体カクテルをウェルに加え、プレートを4℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを前と同様にスピンし、細胞をFACSバッファで1回洗浄し、前と同様に再度スピンした後、過剰なバッファを吸引し、細胞を50μlの残留バッファに残した。
Intellicyt iQue Screener PLUSを使用して生細胞を分析した。生細胞数はメトリクスとして抽出され、Graphpad Prism version 8.1(Graphpad)を用いてグラフ化された。
【0311】
単球からのマクロファージの誘導
M‐CSF(Sigma Aldrich、カタログ番号SRP3110)及び GM‐CSF(R&D Systems、カタログ番号215‐GM/CF)を100μg/mlで調製した。細胞は、M1培地(完全培地+50ng/ml GM‐CSF)又はM2培地(完全培地+50ng/ml M‐CSF)中に2.5×10細胞/mlの濃度で調製した。200μlの細胞を2枚のCorning 96ウェルBlackポリスチレンマイクロプレート(Sigma Aldrich)にプレーティングし、37℃、5%COでインキュベートした。
【0312】
37℃、5%COで3日間培養後、プレートをスピンさせ(500g、5分、RT)、バッファーを吸引し、細胞をPBSで1回洗浄し、次に200μlのM1培地又はM2培地に再懸濁させた。さらに4日間培養した後(37℃、5%CO)、プレートを前と同様にスピンさせ、バッファーを吸引し、細胞をPBSで1回洗浄し、次いで150μlのM1培地(50ng/ml IFNγ添加、Sigma Aldrich、カタログ番号SRP3058)又はM2培地(20ng/ml IL‐4添加、Gibco カタログ番号PHC0044)に再懸濁させた。細胞を、5%COを含む37℃のインキュベーターで一晩インキュベートした。
【0313】
BYbeによるマクロファージの処理
単離後8日目に、Greiner 96ウェル非結合マイクロプレートで、4133‐6294‐BYbe又はNegCtrl BYbeを4000nMの濃度でM1メディア又はM2メディアに添加した。その後、BYbe タンパク質を5分の1の割合で連続的に3回希釈し、4つの作業濃度を作製した。各BYbe希釈液10μlを、96ウェルBlackポリスチレンマイクロプレートのウェル内の150ulの細胞に加えた。ウェル内の最終濃度は、250nM、50nM、10nM、及び2nMであった。アポトーシスのポジティブコントロールとして、カンプトテシン(Camptothecin)(カタログ番号C9911‐100MG、Sigma Aldrich)及びスタウロスポリン(Staurosporine)(カタログ番号S6942‐200UL、Sigma Aldrich)を添加した。いずれもM1又はM2培地で希釈し、最終濃度が5μMになるようにウェルに添加した。
【0314】
マイクロプレート1枚を5%CO、37℃インキュベーターでさらに24時間インキュベートした後、CellTiter‐Glo(登録商標)で細胞生存率を評価した。CellTiter‐Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega、カタログ番号G9681)は、製造者の説明書に従って実施した。150μlのCellTiter‐Glo(登録商標)をウェルに添加し、シェーカーで2分間穏やかに混合した。その後、各ウェルの溶液100μlをCorning(商標)96‐Well Solid White Polystyreneプレート(ThermoFisher)に移した後、RTで10分間インキュベートした。その後、BMG Labtech PHERAstar FSXマイクロプレートリーダーでCellTiter‐Gloプログラムを使用してプレートを読み取った。
【0315】
もう一方のマイクロプレートには、8日目に希釈したIncuCyte(登録商標)Caspase‐3/7 Green Apoptosis Assay Reagent(カタログ番号4440)とIncuCyte(登録商標)Cytotox Red Reagent(カタログ番号4632)を10μl加えた(それぞれ最終濃度5μMと2.5μM)。次いでこれをIncuCyte(登録商標)S3 Live‐Cell Analysis Systemに入れ、10倍の対物レンズを用い、1時間ごとに6日間画像化した。カスパーゼ色素は緑色レーザー(350ms)で測定し、サイトトックス色素は赤色レーザー(650ms)で測定した。緑色色素のシグナルは、Incucyte(登録商標)Zoom2016Bを用いて解析した。赤色のサイトトックス色素のシグナル(cytotox dye signal)は貧弱であったため、このチャンネルでの解析は行わなかった。
【0316】
結果
単球由来マクロファージM1及びM2マクロファージは、(図8)において表現型が異なって見えた。(A)M1マクロファージは丸みを帯びていたのに対し、(B)M2マクロファージはより細長くなっていた。また、M2マクロファージはM1マクロファージよりも高いコンフルエンスを示し、これはM‐CSF処理で予想されたことである。細胞生存率は、PBMCのアッセイ期間と同じように24時間後に評価した(図3A及び3B)。カンプトテシン及びスタウロスポリンの両方が、未処理細胞と比較して、M1(図9(A))及びM2(図9(B))マクロファージの生存率を低下させた。スタウロスポリンの効果は顕著であり、生細胞はほとんど又は全く検出されなかった。一方、4133‐6294BYbe処理細胞は、NegCtrl BYbe及び未処理ウェルと同様の生存率を示した。
6日間の経過で、有意なレベルのCaspase‐3/7、は、カンプトテシン(Camptothecin)処理マクロファージでのみ検出され得た(図10(A)&(10B))。スタウロスポリン処理マクロファージにおけるシグナルは非常に低く、したがって両方のプロットから除外された。4133‐6294 BYbe処理したM1及びM2マクロファージにおけるCaspase‐3/7のレベルは、NegCtrl BYbe処理及び未処理マクロファージと一致していた。このことは、マクロファージが4133‐6294 BYbe誘導アポトーシスに対して大きな抵抗性を持っていることを示していた。およそ16時間後、M2マクロファージは、すべての処理でCaspase‐3/7レベルの小さなピークを示した。これは、高い細胞密度によって引き起こされるストレスによるものと考えられた。
【0317】
例11‐質量測光
方法
データはRefeynOneMP質量光度計(Refeyn Ltd、Oxford、UK)でAcquireMP(Refeyn Ltd、v2.2.1)ソフトウェアを用いて取得し、画像はDiscoverMP(v2.3.dev12)ソフトウェアで処理及び解析した。
測定は、2x2ウェルにカットしたシリコンガスケット(CultureWell(商標)Reusable Gaskets、Grace biolabs)を取り付けた清潔なガラスカバースリップ(High Precision coverslips、No.1.5、24×50mm、Marienfeld)を使用して行った。タンパク質ストックは、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、ThermoFisher)で直接希釈した。タンパク質複合体の典型的な作業濃度は、タンパク質複合体の解離特性に依存するが、1‐100nMであった。
【0318】
装置のレンズはイソプロピルアルコール(IPA)で洗浄し、乾燥させた後、顕微鏡カバースリップとサンプルを光ステージに配置する前に、オリンパス低自動蛍光液浸オイル(NC0297589、ThermoFisher)を1滴レンズに配置した。焦点を見つけるために、15μlの新鮮なDPBSをシリコンウェルにピペッティングし、焦点位置を特定し、測定全体のために全内部反射に基づくオートフォーカスシステムで所定の位置に固定された。各測定において、5μlの希釈タンパク質をウェルに導入し、十分に混合した後(オートフォーカス安定化前)、90秒間の動画を記録した。各サンプルは1回ずつ測定し、測定ごとに新しいウェルとバッファーを使用した。CD45 ECDと4133‐6294 BYbeの混合物はプレインキュベーションされていないため、2つのタンパク質がウェルに加えられると複合化が起こった。
【0319】
結果
(A)CD45 ECD、(B)4133‐6294 BYbe、又は(C)CD45 ECDと4133‐6294 BYbeの混合物の質量測光シグナルを図11に示す。CD45 ECDでは、均一な調製物であることを示す単一のピークが観察された(A)。CD45 ECDの予測質量は41.3kDaであるが、ピークは62kDaの質量を表していた。N‐結合型グリコシル化部位が10箇所あることから、この差はグリコシル化に起因すると思われる(図12参照)。4133‐6294 BYbe(B)では76kDaの質量に相当する単一のピークが観測された。これは、予測される質量73.5kDaと一致すると考えられた。
CD45 ECDと4133‐6294 BYbeの混合物では、複数のピークが観察された(C)。75kDaのピークは、結合していないBYbeに相当すると思われる。さらに136、274、415、555kDaにピークが観察された。CD45 ECDと4133‐6294 BYbeの複合体の質量は、それぞれ62kDaと76kDaという観察された質量から、138kDaと予測される。したがって、136kDaのピークはCD45 ECD‐4133‐6294 BYbeの複合体に相当する可能性が高い。さらに、274、415及び555kDaのピークは、それぞれCD45‐BYbe複合体の2コピー、3コピー及び4コピーを含む多量体に帰せられる可能性が高い(表10)。
【0320】
【表13】

【0321】
例12‐表面プラズモン共鳴で測定した4133及び6294Fabの親和性
方法
表面プラズモン共鳴(SPR)実験は、CM5センサーチップ(GE Healthcare Bio‐Sciences AB、Uppsala、Sweden)とHBS‐EPランニングバッファ(10mM HEPES、150mM NaCl、EDTA 2mM及び0.005%(v/v)P20、pH7.4)を用いてBiacore 3000システムで25℃にて実施された。ポリクローナルヤギ F(ab)フラグメント抗ウサギF(ab),(Jackson Labs製品コード#111‐006‐047)とポリクローナルヤギF(ab)フラグメント抗マウスF(ab),(Jackson Labs 製品コード#115‐006‐072)によりそれぞれ4133ウサギFab及び6294マウスFabを捕捉した。捕捉抗体の共有結合による固定化は、標準的なアミンカップリング化学によって、1000‐3000応答単位(RU)のレベルで達成された。
CD45 D1‐D4は、50nMから0.05nMまで、捕捉精製抗体上で滴定された。各アッセイサイクルは、まず抗体Fabフラグメントを10μl/minの流速で1分間注入して捕捉し、その後CD45 D1‐D4を30μl/minの流速で3分間注入して会合相を形成した。続く解離相は少なくとも3分間モニターされた。各サイクルの後、捕捉表面を10μl/分の流速で、40mM HClを1分間注入し、その後5mM NaOHを30秒間注入して再生させた。ブランクフローセルはリファレンスの減算に使用され、バッファーブランク注入は装置のノイズとドリフトを減算するために含まれた。動態パラメーターはBIAevaluationソフトウェア(バージョン4.1.1)を用いて決定された。
【0322】
結果
4133と6294Fabの親和性はそれぞれ61nMと85pMであることが実証された。結合定数(Ka)、解離定数(Kd)、親和性定数(KD)を以下の表11に示す。
【0323】
【表14】

【0324】
例13‐ヒト化
方法
ウサギ抗体4133及びマウス抗体6294のヒト化バージョンを、ドナー抗体V領域からのCDRをヒト生殖細胞抗体V領域フレームワークにグラフトすることにより設計した。抗体の活性を回復させる可能性を高めるために、ドナーV領域からの多くのフレームワーク残基もヒト化配列に保持された。これらの残基は、Adairら(1991)(ヒト化抗体、WO91/09967)により概説されたプロトコルを用いて選択された。ドナーからアクセプター配列にグラフトされたCDRは、Chothia/Kabatの複合定義が使用されるCDRH1を除いて、Kabat(Kabatら、1987)によって定義された通りである(Adair et al,1991 Humanised antibodies.WO91/09967を参照されたい)。さらに、ウサギ抗体のVH遺伝子は、選択されたヒトVHアクセプター遺伝子よりも一般的に短い。ヒトのアクセプター配列と並べた場合、ウサギ抗体のVH領域のフレームワーク1は、典型的にN末端残基を欠いており、これはヒト化抗体では保持されている。ウサギ抗体のVH領域のフレームワーク3は、ベータシート鎖DとEの間のループに1つ又は2つの残基(75、又は75と76)を欠くのが典型的である。

ヒト化配列及びCDRバリアントは、図12に示され、以下に説明される。
【0325】
CD45 抗体 4133
ヒトV領域IGKV1D‐13+JK4 J領域(IMGT、http://www.imgt.org/)を抗体4133軽鎖CDRのアクセプターとして選択した。CDRに加えて、4133 VK遺伝子からの以下のフレームワーク残基(ドナー残基)の1つ以上が、2、3、及び70位(Kabat番号付け):それぞれ、グルタミン(Q2)、バリン(V3)、及びグルタミン(Q70)に保持されていてもよい。場合によっては、CDRL1は潜在的なN‐グリコシル化部位を除去するために変異していてもよい(CDRL1バリアント1‐2)。
【0326】
ヒトV領域IGHV3‐21+JH1 J領域(IMGT、http://www.imgt.org/)は、抗体4133の重鎖CDRのアクセプターとして選択された。CDRに加えて、4133VH遺伝子からの以下のフレームワーク残基(ドナー残基)の1つ以上が、48、49、71、73、76及び78位(Kabat番号付け):それぞれ、イソロイシン(I48)、グリシン(G49)、リジン(K71)、セリン(S73)、スレオニン(T76)及びバリン(V78)に保持されていてもよい。場合によっては、CDRH1及びCDRH2は、システイン残基を除去するように変異されていてもよい(それぞれ、CDRH1バリアント及びCDRH2バリアント)。CDRH3はまた、潜在的なアスパラギン酸異性化部位を修飾するために変異している場合がある(CDRH3バリアント1‐3)。
ヒトV領域IGHV4‐4+JH1 J領域(IMGT、http://www.imgt.org/)が、抗体4133の重鎖CDRの代替アクセプターとして選択された。CDRに加えて、4133VH遺伝子からの以下のフレームワーク残基(ドナー残基)の1つ以上が、24、71、73、76、及び78位(Kabat番号付け):それぞれ、アラニン(A24)、リジン(K71)、セリン(S73)、スレオニン(T76)、及びバリン(V78)に保持されていてもよい。ヒトフレームワークの1位のグルタミン残基をグルタミン酸(E1)に置換することで、均質な産物の発現と精製を可能にした。場合によっては、CDRH1及びCDRH2を変異させてシステイン残基を除去してもよい(それぞれ、CDRH1バリアント及びCDRH2バリアント)。CDRH3はまた、潜在的なアスパラギン酸異性化部位を修飾するために変異している場合がある(CDRH3バリアント1‐3)。
【0327】
CD45抗体6294
ヒトV領域IGKV1D‐33+JK4 J領域(IMGT、http://www.imgt.org/)が、抗体6294軽鎖CDRのアクセプターとして選択された。CDRに加えて、6294VK遺伝子からの以下のフレームワーク残基(ドナー残基)の1つ以上が49、63、67、85及び87位(Kabat番号付け):それぞれ、フェニルアラニン(F49)、スレオニン(T63)、チロシン(Y67)、バリン(V85)、及びフェニルアラニン(F87)に保持されていてもよい。
【0328】
ヒトV領域IGKV4‐1+JK4 J領域(IMGT、http://www.imgt.org/)を抗体6294軽鎖CDRのアクセプターとして選択した。CDRに加えて、6294VK遺伝子からの以下のフレームワーク残基(ドナー残基)の1つ以上が49、63、67、87位(Kabat番号付け):それぞれ、フェニルアラニン(F49)、スレオニン(T63)、及びフェニルアラニン(F87)に保持されていてもよい。
ヒトV領域IGHV1‐69+JH4 J領域(IMGT、http://www.imgt.org/)を、抗体6294の重鎖CDRの代替アクセプターとして選択した。CDRに加えて、6294VH遺伝子からの以下のフレームワーク残基(ドナー残基)の1つ以上が、1、48及び73位(Kabat番号付け):それぞれ、グルタミン酸(E1)、イソロイシン(I48)及びリジン(K73)に保持されていてもよい。場合によっては、CDRH3は潜在的なアスパラギン酸異性化部位を修飾するために変異していることがある(CDRH3バリアント1‐3)。
ヒトV領域IGHV3‐48+JH4J領域(IMGT、http://www.imgt.org/)が、抗体6294の重鎖CDRのアクセプターとして選択された。CDRに加えて、6294VH遺伝子からの以下のフレームワーク残基(ドナー残基)の1つ以上が、48、49、71、73及び76位(Kabat番号付け):それぞれ、イソロイシン(I48)、グリシン(G49)、アラニン(A71)、リジン(K73)、及びセリン(S76)に保持されていてもよい。場合によっては、CDRH3は潜在的なアスパラギン酸異性化部位を修飾するために変異していることがある(CDRH3バリアント1‐3)。
【0329】
例14 抗CD45抗体により誘導された末梢血造血幹細胞のアポトーシス
方法
ヒト全血(K2EDTAチューブ)を、1人の18歳のドナーから受け取った(#PR20T386505、Cambridge Bioscience、UKから)。全血からPBMCを予め充填したLeucoSepチューブ(Greiner)を用いて単離した。全血をLeucoSepフィルターに重ね、チューブをスピンさせた(800g、15分、低速加速・減速、RT)。バフィーコートを抽出し、細胞を滅菌PBSで2回洗浄した。PBMCを50mlの完全培地(RPMI 1640+2mM GlutaMAX+1%Pen/Strep、すべてInvitrogenから以前に供給、+10%ウシ胎仔血清(FBS)、Sigma Aldrich)に再懸濁させた。細胞はChemoMetec NucleoCounter NC‐3000を使用してカウントした。次に、80μlのウェル当たり1x10個の細胞を、Corning Costar 96ウェル、細胞培養処理、U字底マイクロプレート(カタログ番号07‐200‐95)の各ウェルに添加した。
Greiner 96ウェル非結合マイクロプレートにおいて、Fab‐X及びFab‐Yの組み合わせ6294‐X/4133‐Yを、1000nMのFab‐KD‐Fab濃度を与えるために完全培地に添加した。同様に、4133‐6294 BYbe及びNegCtrl BYbeの1000nMストックを完全培地中に調製した。マイクロプレートは37℃、5%COで1時間インキュベートした。インキュベーションの後、Fab‐KD‐Fab及びBYbe試薬を完全培地で半対数希釈系列で連続的に7回希釈し、8点用量曲線を作成した。
【0330】
各Fab‐KD‐Fab又はBYbe希釈液20μl(最終ウェル濃度200~0.00632nM)を細胞に加え、37℃、5%COで24時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを500g、5分、RTでスピンし、BioTek ELx405マイクロプレート洗浄機でバッファーを吸引し、細胞をFACSバッファー(PBS+1%ウシ血清アルブミン(BSA)+0.1%NaN+2mM EDTA、Sigma Aldrich)に再懸濁し洗浄し、次いで再スピンしてバッファーを吸引し細胞を20μl残留培地に残留させた。20μlの細胞特異的マーカー抗体カクテル溶液をウェルに添加し、4℃で30分間インキュベートした。抗体カクテルの詳細は以下の表12に記載されている。洗浄と吸引のステップを繰り返し、細胞を20μlの残量に残した。次に、1000分の1希釈のLIVE/DEAD(商標)Fixable Near‐IR Dead Cell Stain(Invitrogen)で細胞を染色し、4℃で10分間インキュベートした。洗浄と吸引のステップを繰り返し、20μlの残量に細胞を残した。100μlのBD Cytofix Fixation Buffer(BD Bioscience)を加え、4℃で15分間、細胞を固定した。洗浄と吸引のステップを繰り返し、FACS取得のための最終体積をウェルあたり200μlに調整した。
Bio‐Rad ZE5 Cell Analyzerを使用して、細胞を分析した。細胞数はメトリクスとして抽出され、Graphpad Prism version 8.1(Graphpad)を用いてグラフ化された。造血幹細胞は、リンパ球系列陰性、CD45陽性、CD34陽性集団として定義された。
【0331】
【表15】

【0332】
結果
6294‐X/4133‐Y及び4133‐6294 BYbeによるPBMC中のCD34+幹細胞への影響を図13に示す。両試薬とも、幹細胞はそれぞれ54%、53%と有意に減少した((A)&(B))。PBMCにおける以前の実験と同様に、総リンパ球ではそれぞれ99%及び98%の減少が観察された((C)&(D))。CD34+幹細胞の開始時の数は、全リンパ球が約30万個であるのに対して、およそ250個であったことに注意しなければならない。循環幹細胞は非常に低いレベルで存在することが知られているので、これは予想されたことであった。
【0333】
例15‐沈降速度
方法
CD45 ECDと4133‐6294 BYbeをモル比で1:1に混合し、室温で1時間インキュベートした。モル比は、4133‐6294 BYbeの予測質量73.5kDaと、質量測光で求めたCD45 ECDの質量62kDaを用いて決定した。
CD45 ECD‐4133‐6294 BYbe混合物、CD45 ECDのみ、又は 4133‐6294 BYbeのみを、光路長12mmの2チャンネルチャコールエポン・センターピースと石英ガラス窓を備えたセルにロードした。対応するバッファーは、各セルのリファレンスチャンネルにロードされた(装置はデュアルビーム分光器のように機能する)。それらのロードされたセルを次にAN‐60Ti分析用ローターに入れ、Beckman‐coulter Optima分析用超遠心機に装填し、20℃にした。その後、ローターを3,000rpmにし、サンプルを280nmでスキャンして、細胞の装填が適切であることと、レーザーの遅延設定により、レーザーが適切に調整されていることを確認した。その後、ローターを50,000rpmの最終回転速度まで回転させた。スキャンは20秒ごとに8時間記録された。ラジアルスキャンは5.75cmから7.25cmの範囲であった。
【0334】
データは、N.I.HのPeter Shuckが開発し、彼の解析プログラムSEDFITバージョン14.6eに実装されているc(s)メソッドを用いて解析された。この手法では、多くの生データを直接スキャンして(今回は各サンプルに36,000のデータポイント)、沈降係数の分布を導き出すとともに、分解能を高めるためにデータへの拡散の影響をモデル化している。この方法は、すべての種が同じ流体力学的形状(球体に対する摩擦係数f/f0によって定義される形状)を持っているという仮定に基づいて、沈降係数の各値に拡散係数を割り当てることによって機能する。f/f0の値は、各サンプルのデータの全体的な適合度が最も高くなるように変化させた。最大エントロピー正則化確率0.95を使用し、時間不変のノイズを除去した。解析は、標準溶媒モデルを用いて行った。
【0335】
結果
CD45 ECDモノマー、4133‐6294 BYbeモノマー、CD45 ECDと4133‐6294 BYbeのモル比1:1混合物の分析用超遠心機で測定した沈降速度を図14に示す。CD45 ECDの沈降係数の値は3.547で、58kDaの質量を与えた。これは、CD45 ECDの予測質量41.3kDaより大きいが、例11の質量測光で観測された質量(62kDa)とほぼ一致する。4133‐6294 BYbeの沈降係数の値は4.395で、72kDaの質量を示した。これは、予測される質量73.5kDaと一致する。
CD45 ECDと4133‐6294 BYbeの混合物には複数のピークが観察され、CD45 ECD‐BYbeの多量体複合体の存在が示唆された。この複合体を特定するために、CD45 ECD(PDB code 5FMV)と4133‐6294 BYbeの結晶構造からモデルを作成し(FabとscFvの個々の自社結晶構造からモデリング)、これらを粗粒で複合化させた。これらの構造から抽出された流体力学パラメーターから計算されたS値は、我々の観測データと許容誤差(±0.5秒)で対応することがわかった。このことから、複合体の化学量論は自信を持って割り出すことができると結論した(表13)。
【0336】
【表16】

【0337】
トレースの曲線下面積を計算すると(表14)、この混合物は主に2xCD45‐BYbeが37.7%、3xCD45‐BYbeが35.7%で構成されていることが示された。
【0338】
【表17】

【0339】
例16‐IgG4P FALA及びIgG4P FALA KiHの製造
方法
抗CD45抗体4133 IgG4P FALA及び4133‐6294 IgG4P FALAノブ・イン・ホールを生成するために、抗体4133及び6294のそれぞれの軽鎖及び重鎖V領域をコードする遺伝子を自動合成法(ATUM)により設計及び構築した。抗体4133及び6294の軽V領域遺伝子を、ヒトCκ領域をコードするDNAを含む発現ベクターにクローニングした。抗体4133の重V‐領域遺伝子を、IgG4P FALA(ヒトIgG4配列+S228P、F234A、L235A)又はIgG4P FALAノブ(ヒトIgG4配列+S228P、F234A、L235A、T355W)定常領域をコードするDNAを含む発現ベクターにクローニングした。抗体6294の重V‐領域遺伝子を、IgG4P FALAホール(ヒトIgG4配列+S228P、F234A、L235A、T366S、L368A、Y407V)定常領域をコードするDNAを含む発現ベクターにクローニングした。
4133軽鎖コンストラクトは4133 IgG4P FALA及び4133 IgG4P FALAノブ重鎖コンストラクトとペアにした。6294軽鎖コンストラクトは6294 IgG4P FALAホールコンストラクトとペアにした。このDNAは、Gibco ExpiFectamine CHO Transfection Kit(カタログ番号A29133、ThermoFisher Scientific)を用いて、製造者の指示に従ってCHO‐SXE細胞にトランスフェクションした。この細胞を32℃、5%CO、140rpmで振盪するインキュベーターで11日間培養した。培養後、培養液をチューブに移し、4000rpmで2時間遠心分離した後、細胞から上清を分離した。保持した上清を0.22μm SARTO BRAN P Millipore、続いて0.22μm Gamma Goldフィルターでろ過した。
【0340】
抗体4133 IgG4P FALA、4133 IgG4P FALAノブ及び6294 IgG4P FALAホールは、AKTA Pure purification system(GE Healthcare Life Sciences)上の5ml MabSelect Sureカラム(GE Healthcare)を用いて、製造者の指示に従って上清から精製された。溶出したタンパク質の画分を合わせ、Ultracel‐50メンブレン50kDa(SigmaAldrich)を備えたAmicon Ultra‐15 遠心フィルターユニットで5ml未満に濃縮した。清浄な画分を得るために、タンパク質は次にAKTA Pure精製システム上のHiLoad Superdex 200pg 26/60 HPLCサイズ排除カラムに通された。タンパク質濃度は、Thermo Scientific NanoDrop 2000(カタログ番号ND‐2000)を使用して決定した。
4133‐6294 IgG4P FALAノブ・イン・ホールを生成するために、精製した4133 IgG4P FALAノブ及び6294 IgG4P FALAホールタンパク質を1:1のモル比で組み合わせ、Cysteamine(SigmaAldrich)を最終濃度5mMとなるように加え、その後混合物を室温で一晩インキュベートした。次に、この混合物を、AKTA Pure精製システム上のHiLoad Superdex 200pg 26/60 HPLCサイズ排除カラムに通した。タンパク質濃度は、Thermo Scientific NanoDrop 2000(カタログ番号ND‐2000)を使用して決定した。さらに、分画はWaters ACQUITY UPLC SEC System上のACQUITY BEH200カラムを用い、4‐20%Tris‐グリシンゲル上のSDS‐PAGEによって分析された。エンドトキシンは、Endosafe nexgen‐MCSシステム(Charles River)を用いて検査された。
【0341】
例17‐BYbe、IgG4P FALA、及びIgG4P FALA KiHとしてフォーマットされた抗CD45抗体によって誘導されたPBMCのアポトーシス
方法
血液白血球血小板アフェレーシスコーン(NHSBT Oxford)から得られたヒトPBMCは、凍結アリコートとしてバンクされた。アッセイを行う前に、1ml中に5×10個の細胞を含む凍結細胞バイアル2本を37℃の水浴で解凍し、次いで50mlの完全培地(RPMI 1640+2mM GlutaMAX+1%Pen/Strep、全てInvitrogenより提供、+10%ウシ胎仔血清(FBS)、Sigma Aldrich)に添加した。細胞をスピンし(500g、5分、RT)、30mlの完全培地に再懸濁させて洗浄し、再度スピンした。細胞を10mlの完全培地に再懸濁し、次いでChemoMetec NucleoCounter NC‐3000を使用して計数した。次に、80μlのウェル当たり10個の細胞を、Corning Costar 96ウェル、細胞培養処理、U字底マイクロプレート(カタログ番号07‐200‐95)の各ウェルに添加した。このプレートを37℃、5%COインキュベーターで2時間静止させた。このアッセイには、2人のドナー、UCB‐Cone 811及び831からのPBMCを使用した。
4133‐6294 BYbe、4133‐6294 IgG4P FALA KiH、4133 IgG4P FALAの2500nMのストックを完全培地中で調製した。Greiner96ウェル非結合型マイクロプレートで、試薬を完全培地で5分の1に連続希釈し、8ポイントの用量曲線を形成するために7回希釈した。
【0342】
各希釈液20μl(最終濃度500‐0.0064nM)を細胞に加え、37℃、5%COで24時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを500g、5分、RTでスピンし、BioTek ELx405 マイクロプレートウォッシャーでバッファーを吸引し、細胞をFACSバッファー(PBS+1%ウシ血清アルブミン(BSA)+0.1%NaN+2mM EDTA、Sigma Aldrich)に再懸濁し洗浄後、再スピンしてバッファーを吸引し細胞を20μl残液として残置した。20μlのLIVE/DEAD(商標)Fixable Near‐IR Dead Cell Stain(Invitrogen、1:1000 希釈)をウェルに添加し、4℃で1時間インキュベートした。
Intellicyt iQue Screener PLUSを使用して、細胞をライブで分析した。生細胞数はメトリクスとして抽出され、Graphpad Prism version 8.1(Graphpad)を用いてグラフ化された。非対称(5パラメータ)カーブフィッティングを適用し、EC50値を導出した。
【0343】
結果
代表的なドナー(UCB Cone‐811)に対する4133‐6294 BYbe、4133‐6294 IgG4P FALA KiH及び4133 IgG4P FALAによるリンパ球の減少%を図15に示す。4133‐6294 BYbe及び4133‐6294 IgG4P FALA KiHはそれぞれEC50が0.10nM及び0.17nMと、いずれも非常に強力な活性を示した。一方、4133 IgG4P FALAのEC50は44nMであった。
【0344】
例18‐抗CD45抗体の組み合わせにより誘導されたPBMCのアポトーシス
方法
血液白血球血小板アフェレーシスコーン(NHSBT Oxford)由来のヒトPBMCを、凍結アリコートとしてバンクに保管した。アッセイを行う前に、各々1ml中に5×10個の細胞を含む凍結細胞バイアル2本を37℃の水浴で解凍し、次いで50mlの完全培地(RPMI 1640+2mM GlutaMAX+1%Pen/Strep、すべて先にInvitrogenから提供された、及び10%ウシ胎仔血清(FBS)、Sigma Aldrich)に添加した。細胞をスピンし(500g、5分、RT)、30mlの完全培地に再懸濁させて洗浄し,再度スピンした。細胞を10mlの完全培地に再懸濁し、次いでChemoMetec NucleoCounter NC‐3000を使用して計数した。次に、80μlのウェル当たり10個の細胞を、Corning Costar 96ウェル、細胞培養処理、U字底マイクロプレート(カタログ番号07‐200‐95)の各ウェルに添加した。このプレートを37℃、5%COインキュベーターで2時間静止させた。2人のドナー、UCB‐Cone 811と831からのPBMCをこのアッセイに使用した。
Greiner96ウェル非結合マイクロプレートにおいて、Fab‐XとFab‐Yの組み合わせ6294‐X/6294‐Yを完全培地に加え、Fab‐KD‐Fab濃度1250nMとした。完全培地中の4133 IgG4P FALAの1250nMのストックを調製し、6294‐X/6294‐Yと等モル比で混合し、最終抗体濃度2500nMとした。4133‐6294 BYbe及び4133 IgG4P FALAの2500nMのストックも完全培地中で調製した。Greiner96ウェル非結合マイクロプレートで、試薬を完全培地で5分の1に連続希釈し、8ポイントの用量曲線を形成するために7回希釈した。
【0345】
各希釈液20μl(最終濃度500‐0.0064nM)を細胞に加え、37℃、5%COで24時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを500g、5分、RTでスピンし、BioTek ELx405 マイクロプレートウォッシャーでバッファーを吸引し、細胞をFACSバッファー(PBS+1%ウシ血清アルブミン(BSA)+0.1%NaN+2mM EDTA、Sigma Aldrich)に再懸濁し洗浄後、再スピンしてバッファーを吸引し細胞を20μl残液として残置した。20μlのLIVE/DEAD(商標)Fixable Near‐IR Dead Cell Stain(固定式近赤外死細胞染色剤)(Invitrogen、1:1000希釈)をウェルに添加し、4℃で10分間インキュベートした。
Intellicyt iQue Screener PLUSを使用して、細胞をライブで分析した。生細胞数はメトリクスとして抽出され、Graphpad Prism version 8.1(Graphpad)を用いてグラフ化された。非対称(5パラメータ)カーブフィッティングを適用し、EC50値を導出した。
【0346】
結果
代表的なドナー(UCB Cone‐811)に対する4133‐6294 BYbe、4133 IgG4P FALA及び4133 IgG4P FALAの組み合わせによるリンパ球の減少%を図16に示す。4133‐6294 BYbeは0.10nMという非常に強力なEC50を示した。一方、4133 IgG4 FALAのEC50は44nMであった。4133 IgG4P FALAと6294‐X/6294‐Yの組み合わせの効力は、46nMで4133 IgG4P FALA単独の効力と同様であった。
【0347】
例19 TrYbeの製造
方法
4133‐6294‐645 TrYbeを生成するために、重鎖の全長(4133 Fab HC‐G4Sリンカー‐6294 scFv)及び軽鎖の全長(4133 Fab LC‐G4Sリンカー‐645 scFv)を自動合成アプローチ(ATUM)によって設計及び構築した。両鎖は社内の哺乳類発現ベクターにクローニングされた。645は、ヒト及びマウス血清アルブミンに同様の親和性で結合する(WO2011/036460、WO2010/035012、WO2013/068571)。それは、TrYbeの血清半減期を延長させる。
重鎖及び軽鎖の構築物をペアにして、Gibco ExpiFectamine CHO Transfection Kit(カタログ番号A29133、ThermoFisher Scientific)を用いて、製造者の指示に従って、CHO‐SXE細胞にトランスフェクトした。この細胞を37℃、5%CO、140rpmで振盪するインキュベーターで7日間培養した。培養後、培養液をチューブに移し、4000rpmで30分間遠心分離した後、上清を細胞から分離した。保持した上清を0.22μm SARTO BRAN P Millipore、続いて0.22μm Gamma Goldフィルターでろ過した。
【0348】
4133‐6294‐645 TrYbeタンパク質は、AKTA Pure精製システム(GE Healthcare Life Sciences)を用いて、天然タンパク質Gキャプチャステップ、次いで調製サイズ排除ポリッシングステップで精製した。清澄化した上清を50ml Gammabind Plus Sepharoseカラム(Resin Cytiva、社内で充填したカラム)にロードし、25分の接触時間を与え、2.5xカラム体積のPBS、pH7.4で洗浄した。UV測定値>25mAUの洗浄画分を分画により回収した。結合した物質を0.1Mグリシン pH2.7 ステップ溶出で溶出し、分画し、2M Tris/HCl pH8.5で中和した。洗浄物質と溶出物質の両方を280nmの吸光度によって定量した。
サイズ排除クロマトグラフィー(SE‐UPLC)を用いて、洗浄試料と溶出物の両方の純度状態を決定した。タンパク質(~3μg)をBEH200、200Å、1.7μm、4.6mmIDx300mmカラム(Waters ACQUITY)にロードし、0.2Mリン酸 pH7のアイソクラティックグラジェントで0.35mL/分で展開した。連続検出は280nmの吸光度及びマルチチャンネル蛍光(FLR)検出器(Waters)により行った。
【0349】
TrYbeモノマーを含む洗浄画分と溶出画分を合わせ、Amicon Ultra‐15濃縮器(30kDa分子量カット膜)及びスイングアウトローターで4000gでの遠心分離を用いて濃縮した。濃縮したサンプルをPBS、pH7.4で平衡化したHiLoad 16/600 Superdex 200pgカラム(Cytiva)に適用し、PBS、pH7.4のアイソクラティックグラジェントで1ml/分で展開した。画分を回収し、BEH200、200Å、1.7μm、4.6mmIDx300mmカラム(Aquity)でサイズ排除クロマトグラフィーにより分析し、0.2Mリン酸 pH7のアイソクラティックグラジェントで0.35mL/分で展開し、280nmの吸光度、マルチチャンネル蛍光(FLR)検出器(Waters)で検出した。選択したモノマー画分をプールし、0.22μmの滅菌ろ過を行い、最終サンプルはVarian Cary 50 UV Spectrometer(Agilent Technologies)のA280スキャニングで濃度測定した。エンドトキシンレベルは、Limulus Amebocyte Lysate(LAL)テストカートリッジを使用したCharles RiverのEndoSafe(登録商標)Portable Test System によって評価され、1.0EU/mg未満であった。
【0350】
最終的なTrYbeのモノマー状態は、BEH200、200Å、1.7μm、4.6mmIDx300mmカラム(Aquity)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーにより測定し、0.2Mリン酸 pH7のアイソクラティックグラジェントにより0.35mL/分で展開し、280nmでの吸光度とマルチチャンネル蛍光(FLR)検出器(Waters)により検出した。最終的なTrYbe抗体は>99%の単量体であることが確認された。
ドデシル硫酸ナトリウム‐ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS‐PAGE)による分析のために、4xNovex NuPAGE LDSサンプルバッファー(Life Technologies)及び10X NuPAGEサンプル還元剤(Life Technologies)又は100mM N‐エチルマレイミド(Sigma‐Aldrich)を~3μg精製タンパク質に加えてサンプルを作成し、3分間98℃に加熱した。サンプルを15ウェルNovex 4‐20%Tris‐グリシン 1.0mm SDS‐ポリアクリルアミドゲル(Life Technologies)にロードし、Tris‐グリシンSDSランニングバッファー(Life Technologies)を用いて 225V、40分の一定電圧で分離した。標準品としてNovex Mark12 wide‐range protein standard(Life Technologies)を使用した。ゲルはCoomassie Quick Stain(Generon)で染色し、蒸留水で脱染した。
【0351】
例20‐TrYbe、BYbe及びIgG4P FALA KiHとしてフォーマットされた抗CD45抗体によって誘導されたPBMCのアポトーシス
方法
血液白血球血小板アフェレーシスコーン(NHSBT Oxford)から得られたヒトPBMCを、凍結アリコートとしてバンクに保管した。アッセイを行う前に、各々1ml中に5×10個の細胞を含む凍結細胞のバイアル2本を37℃の水浴で解凍し、次いで50mlの完全培地(RPMI 1640+2mM GlutaMAX+1%Pen/Strep、全てInvitrogenより提供、+10%ウシ胎仔血清(FBS)、Sigma Aldrich)に添加した。細胞をスピンし(500g、5分、RT)、30mlの完全培地に再懸濁させて洗浄し,再度スピンした。細胞を10mlの完全培地に再懸濁し、次いでChemoMetec NucleoCounter NC‐3000を使用して計数した。次に、100μl中のウェル当たり10個の細胞を、コーニングCostar 96ウェル、細胞培養処理、U字底マイクロプレート(カタログ番号07‐200‐95)の各ウェルに添加した。このプレートを37℃、5%COインキュベーター内で2時間静止させた。このアッセイには、2人のドナー、UCB‐Cone802と812からのPBMCを使用した。
【0352】
4133‐6294‐645 TrYbe、4133‐6294 BYbe及び4133‐6294 IgG4P FALA KiHの2500nMのストックが完全培地で調製された。次いで、Greiner 96ウェル非結合マイクロプレートで、試薬を完全培地で3.5分の1の希釈系列で11回連続希釈し、12点の用量曲線を作成した。20μlの各試薬希釈液(最終ウェル濃度500‐0.000518nM)を細胞に加え、37℃、5%COで24時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを500g、5分、RTでスピンし、BioTek ELx405マイクロプレート洗浄機でバッファーを吸引し、細胞をFACSバッファー(PBS+1%ウシ血清アルブミン(BSA)+0.1%NaN+2mM EDTA、Sigma Aldrich)に再懸濁して洗浄し、次いで再スピンしてバッファーを吸引し細胞を20μl残存培地に残留させた。20μlのLIVE/DEAD(商標)Fixable Near‐IR Dead Cell Stain(Invitrogen、1:1000希釈)をウェルに添加し、4℃で10分間インキュベートした。Bio‐Rad ZE5 Cell Analyzerを用いて細胞を分析した。細胞数はメトリクスとして抽出され、Graphpad Prism version 8.1(Graphpad)を用いてグラフ化された。非対称(5パラメータ)カーブフィッティングを適用し、EC50値を導き出した。
【0353】
結果
代表的なドナー(UCB Cone‐802)に対する4133‐6294‐645 TrYbe、4133‐6294 BYbe、及び4133‐6294 IgG4P FALA KiHによるリンパ球の減少%を図17に示す。4133‐6294 TrYbe、4133‐6294 BYbe及び4133 ‐6294 IgG4P FALA KiHは、EC50値がそれぞれ0.35nM、0.15nM及び0.09nMと同様に強力な活性を持っていた。
【0354】
例21‐抗CD45 4133‐6294 BYbeにより誘導された細胞株のアポトーシス
方法
ATCC(www.atcc.org/)で分類された、様々な白血病及びリンパ腫を代表する以下の細胞株を使用した。Jurkat‐急性T細胞白血病、CCRF‐SB‐B細胞急性リンパ芽球性白血病、MC116‐B細胞未分化リンパ腫、Raji、Ramos‐Burkittリンパ腫(B細胞非ホジキンリンパ腫のまれな型)、SU‐DHL‐4、SU‐DHL‐5、SU‐DHL‐8、NU‐DUL‐1、OCI‐Ly3‐びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、THP‐1‐急性単球性白血病、及びDakiki‐B細胞鼻咽腔がン腫。
アッセイを行う前に、上記の細胞株の各1バイアルを37℃の水浴中で解凍し、次いで20mlの完全培地(RPMI1640+2mM GlutaMAX+1%Pen/Strep、全てInvitrogenから以前に供給、+10%ウシ胎仔血清(FBS)、Sigma Aldrich)に添加した。細胞をスピンし(500g、5分、RT)、20mlの完全培地に再懸濁させて洗浄し、再度スピンした。細胞を10mlの完全培地に再懸濁し、次いでChemoMetec NucleoCounter NC‐3000を使用して計数した。各細胞株の6x10個の細胞をスピンし(500g、5分、RT)、4.8mlの完全培地に再懸濁させた。次に、80μl中の1x10個の細胞を、Corning Costar 96ウェル、細胞培養処理、U字底マイクロプレート(カタログ番号07‐200‐95)の各ウェルに添加した。このプレートを37℃、5%COインキュベーターで2時間静置した。
【0355】
4133‐6294 BYbe及びNegCtrl BYbeの2500nMの完全培地中のストックを調製した。Greiner96ウェル非結合マイクロプレートで、両試薬を完全培地で5分の1に連続希釈し、8ポイントの用量曲線を形成するために7回希釈した。各希釈液20μl(最終ウェル濃度500‐0.0064nM)を細胞に添加した。各濃度は、3連で作製した。アポトーシスのポジティブコントロールとして、カンプトテシン(Camptothecin)(カタログ番号C9911‐100MG、Sigma Aldrich)及びスタウロスポリン(Staurosporine)(カタログ番号S6942‐200UL、Sigma Aldrich)を添加した。両者とも完全培地で希釈し、最終濃度5μMとなるようにウェルに添加した。追加のポジティブコントロールには、抗胸腺細胞グロブリン(ATG、FDAにより条件付けレジメンでの使用に適応)、リツキシマブ(抗CD20、FDAにより非ホジキンリンパ腫及び慢性リンパ性白血病に適応)及びカンパス(Campath)(抗CD52、FDAによりB細胞慢性リンパ性白血病に適応)などがあった。抗胸腺細胞グロブリン、リツキシマブ及びカンパス(Campath)は、それぞれ最終濃度が200μg/ml、500nM及び200μg/mlとなるようにウェルに添加した。コントロールの各濃度は、2回だけ複製したJurkatを除いて、3回複製で製造された。プレートは、37℃、5%COで21時間インキュベートした。
【0356】
インキュベーション後、プレートを500g、5分、RTでスピンし、BioTek ELx405 マイクロプレートウォッシャーでバッファーを吸引し、細胞をFACSバッファー(PBS+1%ウシ血清アルブミン(BSA)+0.1%NaN+2mM EDTA、Sigma Aldrich)に再懸濁して洗浄し、次いで再スピンしてバッファーを吸引して細胞を20μl残液で残留させた。20μlのLIVE/DEAD(商標)Fixable Near‐IR Dead Cell Stain(Invitrogen、1:1000希釈)をウェルに添加し、4℃で10分間インキュベートした。Bio‐Rad ZE5 セルアナライザーを用いて細胞を分析した。細胞数はメトリクスとして抽出され、Graphpad Prism version 8.1(Graphpad)を用いてグラフ化された。Constraint Type HillSlopeを「Constant equal to 1」(1に等しい定数)に設定した非対称(5パラメータ)カーブフィッティングを適用し、最適なフィットを得て、細胞の最大減少量とEC50値を導出した。
【0357】
結果
4133‐6294 BYbeにより誘導された、Jurkat(99.27%)、CCRF‐SB(83.40%)、OCI‐Ly3(39.84%)、THP‐1(60.72%)及びDakiki(76.37%)細胞の最大減少率は、Rituximabによるそれぞれ6.52%、59.87%、19.05%、23.12%及び58.55%、カンパス(Campath)によるそれぞれ5.64%、24.86%、6.72%、15.40%及び8.83%よりも、有意に大きかった(表15、図18図19)。4133‐6294 BYbeにより誘導された、MC116(99.45%)、Raji(74.02%)、及びRamos(96.11%)細胞の最大減少率は、カンパス(Campath)によるそれぞれ70.24%、36.00%、39.40%より有意に大きく、Rituximabによるそれぞれ98.13%、87.89%、91.05%と同様であった。SU‐DHL‐8の4133‐6294 BYbeにより誘導された最大減少率(16.77%)は,Rituximabによる15.25%,カンパス(Campath)による7.97%と同程度であった。4133‐6294 BYbeは、SU‐DHL‐4(91.88%)とSU‐DHL‐5(91.01%)という有意な減少を誘導したが、NegCtrl BYbeでもそれぞれ32.09%と25.63%の減少を誘導した。NU‐DHL‐1の4133‐6294 BYbeにより誘導された最大減少率(44.87%)は,リツキシマブの87.04%、カンパス(Campath)の67.49%よりも低かった.
【0358】
表15.4133‐6294 BYbeの細胞減少%及びEC50(nM)値の上下のレベル、並びにNegCtrl BYbe、リツキシマブ及びキャンパスの細胞減少%の平均値。各細胞株に関連する疾患も示している:T細胞急性リンパ芽球性白血病(T‐ALL)、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、Burkittリンパ腫(BL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、及び急性単球性白血病(AMoL)である。
*最低濃度における細胞減少%の平均値は33.85%であるが、曲線の形状がシグモイド型ではないため、計算上の底値は-65.46%となっている。
【0359】
【表18】

【配列表フリーテキスト】
【0360】
配列番号1 <223> CDRH1
配列番号2 <223> CDRH1バリアント
配列番号3 <223> CDRH2
配列番号4 <223> CDRH2バリアント
配列番号5 <223> CDRH3
配列番号6 <223> CDRH3バリアント1
配列番号7 <223> CDRH3バリアント2
配列番号8 <223> CDRH3バリアント3
配列番号9 <223> CDRL1
配列番号10 <223> CDRL1バリアント1
配列番号11 <223> CDRL1バリアント2
配列番号12 <223> CDRL1バリアント3
配列番号13 <223> CDRL2
配列番号14 <223> CDRL3
配列番号15 <223> ウサギ抗体4133 VL領域
配列番号16 <223> ウサギ抗体4133 VH領域
配列番号17 <223> 4133 gL7 V領域‐IGKV1D‐13フレームワーク
配列番号18 <223> 4133 gL1 V領域‐IGKV1D‐13フレームワーク
配列番号19 <223> 4133 gH1 V領域‐IGHV3‐21フレームワーク
配列番号20 <223> 4133 gH4 V領域‐IGHV3‐21フレームワーク
配列番号21 <223> 4133 gH1 V領域‐IGHV4‐4フレームワーク
配列番号22 <223> 4133 gH3 V領域‐IGHV4‐4フレームワーク
配列番号23 <223> CDRH1
配列番号24 <223> CDRH2
配列番号25 <223> CDRH3
配列番号26 <223> CDRH3バリアント1
配列番号27 <223> CDRH3バリアント2
配列番号28 <223> CDRH3バリアント3
配列番号29 <223> CDRL1
配列番号30 <223> CDRL2
配列番号31 <223> CDRL3
配列番号32 <223> マウス抗体6294 VL領域
配列番号33 <223> マウス抗体6294 VH領域
配列番号34 <223> 6294 gH2 V領域‐IGHV3‐48フレームワーク
配列番号35 <223> 6294 gH4 V領域‐IGHV1‐69フレームワーク
配列番号36 <223> 6294 gL2 V領域‐IGKV1D‐33フレームワーク
配列番号37 <223> 6294 gL3 V領域‐IGKV4‐1フレームワーク
配列番号38 <223> 4133‐6294 BYbe重鎖
配列番号39 <223> 4133‐6294 BYbe軽鎖
配列番号40 <223> CD45ドメイン1‐4、TEV切断部位及び10‐ヒスチジンタグ付き
配列番号41 <223> ヒトCD45
配列番号42 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号43 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号44 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号45 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号46 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号47 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号48 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号49 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号50 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号51 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号52 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号53 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号54 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号55 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号56 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号57 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号58 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号59 <223> フレキシブルリンカー配列
<223> Xaaは任意の天然アミノ酸であり得る
配列番号60 <223> フレキシブルリンカー配列
<223> Xaaは任意の天然アミノ酸であり得る
<223> Xaaは任意の天然アミノ酸であり得る
配列番号61 <223> フレキシブルリンカー配列
<223> Xaaは任意の天然アミノ酸であり得る
<223> Xaaは任意の天然アミノ酸であり得る
<223> Xaaは任意の天然アミノ酸であり得る
配列番号62 <223> フレキシブルリンカー配列
<223> Xaaは任意の天然アミノ酸であり得る
<223> Xaaは任意の天然アミノ酸であり得る
<223> Xaaは任意の天然アミノ酸であり得る
<223> Xaaは任意の天然アミノ酸であり得る
配列番号63 <223> フレキシブルリンカー配列
<223> Xaaは任意の天然アミノ酸であり得る
配列番号64 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号65 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号66 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号67 <223> リンカー
配列番号68 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号69 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号70 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号71 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号72 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号73 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号74 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号75 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号76 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号77 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号78 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号79 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号80 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号81 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号82 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号83 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号84 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号85 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号86 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号87 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号88 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号89 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号90 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号91 <223> フレキシブルリンカー配列
配列番号92 <223> リジッドリンカー
配列番号93 <223> リジッドリンカー
配列番号94 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号95 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号96 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号97 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号98 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号99 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号100 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号101 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号102 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号103 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号104 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号105 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号106 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号107 <223> ヒンジリンカー配列
配列番号108 <223> リンカー
配列番号109 <223> リンカー
配列番号110 <223> GCN4配列
配列番号111 <223> GCN4配列
配列番号112 <223> 52SR4配列
配列番号113 <223> 52SR4配列
配列番号114 <223> リンカー
配列番号115 <223> 4133軽鎖
配列番号116 <223> 4133 IgG4P FALA
配列番号117 <223> 4133 IgG4P FALAノブ
配列番号118 <223> 6294軽鎖
配列番号119 <223> 6294 IgG4P FALAホール
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図12-4】
図12-5】
図13-1】
図13-2】
図14
図15
図16
図17
図18-1】
図18-2】
図18-3】
図18-4】
図19-1】
図19-2】
図19-3】
図19-4】
図19-5】
図19-6】
図19-7】
【配列表】
2023547795000001.app
【国際調査報告】