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特表2023-547844タバコの臭いが低減された喫煙物品およびその製造方法
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  • 特表-タバコの臭いが低減された喫煙物品およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】タバコの臭いが低減された喫煙物品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/12 20060101AFI20231107BHJP
   A24D 1/04 20060101ALI20231107BHJP
   A24D 1/02 20060101ALI20231107BHJP
   A24D 3/04 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
A24B15/12
A24D1/04
A24D1/02
A24D3/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524382
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 KR2022005744
(87)【国際公開番号】W WO2022244999
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0064663
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519217032
【氏名又は名称】ケーティー アンド ジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ジャエ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ナム、サン ジン
(72)【発明者】
【氏名】フワン、ジョーン サブ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ハン ヒュン
【テーマコード(参考)】
4B043
4B045
【Fターム(参考)】
4B043BA15
4B043BA51
4B043BB11
4B043BB17
4B043BB21
4B043BC02
4B043BC03
4B045AB01
4B045AB11
4B045AB14
4B045AB16
4B045BA02
4B045BA08
4B045BB03
4B045BB07
(57)【要約】
タバコの臭いが低減された喫煙物品およびその製造方法が提供される。本開示の幾つかの実施形態による喫煙物品は、タバコ物質を含む喫煙物質部と、フィルター部と、を含み、タバコ物質は、ニコチン含有量が0.5重量%以下である葉タバコを加工して生成された物質を含んでもよい。この場合、タバコの煙においてタバコの臭いの主な原因となるニコチン成分と窒素化合物が減少することによって、喫煙中に発生する煙のタバコの臭いを大きく低減することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タバコ物質を含む喫煙物質部と、
フィルター部と、を含み、
前記タバコ物質は、ニコチン含有量が0.5重量%以下である葉タバコを加工して生成された第1物質を含む、喫煙物品。
【請求項2】
前記タバコ物質は、10重量%から40重量%の前記第1物質を含む、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項3】
前記葉タバコのニコチン含有量は、0.1重量%以下である、請求項1または2に記載の喫煙物品。
【請求項4】
前記タバコ物質は、ニコチン含有量が1.0重量%以上である他の葉タバコを加工して生成された第2物質をさらに含む、請求項1または2に記載の喫煙物品。
【請求項5】
前記第1物質と前記第2物質の重量比は、1:1から1:9である、請求項4に記載の喫煙物品。
【請求項6】
前記重量比は、1:1.5から1:4である、請求項5に記載の喫煙物品。
【請求項7】
前記葉タバコのニコチン含有量は、0.2重量%以下であり、
前記他の葉タバコのニコチン含有量は、1.5重量%以上である、請求項4に記載の喫煙物品。
【請求項8】
前記フィルター部を包んでいるフィルターラッパーをさらに含み、
前記フィルターラッパーの少なくとも一部の領域には、シート形成剤および香料を含む加香シートが適用され、
前記加香シートの外面には、臭い低減物質が塗布される、請求項1または2に記載の喫煙物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タバコの臭いが低減された喫煙物品およびその製造方法に関する。より詳しくは、低ニコチン葉タバコを適用することによって、喫煙中に発生する煙のタバコの臭いを低減させることができる喫煙物品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
喫煙中に発生するタバコの煙は、フィルター部位を把持する喫煙者の手に付いて、喫煙者だけでなく、周辺の人に至るまで臭いによる不快感を与えることができる。これより、喫煙者は、普通喫煙をした後、手に付いたタバコの臭いを除去するために手を洗う。
【0003】
しかし、喫煙後に常に手を洗うことが可能なわけではなく、喫煙時ごとに手を洗わなければならないことは、喫煙者に相当な煩わしさを与えることができる。
【0004】
したがって、喫煙をしても、タバコの臭いが手に付いてしまうことを最小化できるシガレットの開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の幾つかの実施形態を通じて解決しようとする技術的課題は、タバコの臭いが低減された喫煙物品およびその製造方法を提供することにある。
【0006】
本開示の技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及されていない他の技術的課題は、下記の記載から本開示の技術分野における通常の技術者が明確に理解できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を解決するための、本開示の幾つかの実施形態による喫煙物品は、タバコ物質を含む喫煙物質部およびフィルター部を含み、前記タバコ物質は、ニコチン含有量が0.5重量%以下である葉タバコを加工して生成された第1物質を含んでもよい。
【0008】
幾つかの実施形態において、前記タバコ物質は、10重量%~40重量%の前記第1物質を含んでもよい。
【0009】
幾つかの実施形態において、前記葉タバコのニコチン含有量は、0.1重量%以下であってもよい。
【0010】
幾つかの実施形態において、前記タバコ物質は、ニコチン含有量が1.0重量%以上である他の葉タバコを加工して生成された第2物質をさらに含んでもよい。
【0011】
幾つかの実施形態において、前記第1物質と前記第2物質の重量比は、1:1~1:9であってもよい。
【0012】
幾つかの実施形態において、前記葉タバコのニコチン含有量は、0.2重量%以下であり、前記他の葉タバコのニコチン含有量は、1.5重量%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
上述した本開示の幾つかの実施形態によれば、ニコチン含有量が少ない葉タバコを用いて喫煙物品に投入されるタバコ物質を製造できる。このようなタバコ物質は、タバコの煙においてタバコの臭いの主な原因となるニコチン成分と窒素化合物を減少させることによって、煙中のタバコの臭いを低減させることができる。また、これによって、喫煙者の身体に付くタバコの臭いを大きく低減することができ、タバコの臭いに起因して周辺の人に不快感を与える問題も大きく緩和することができる。
【0014】
また、ニコチン含有量が少ない葉タバコと一般葉タバコを適切な割合で配合して、タバコ物質を製造できる。例えば、ニコチン含有量が少ない葉タバコと一般葉タバコが約1:1.5~1:4の割合で配合できる。この場合、タバコの臭いが低減されると同時に、喫煙者が認知する喫味強度の低下を最小化することができる。
【0015】
本開示の技術的思想による効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及されていない他の効果は、下記の記載から通常の技術者が明確に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の幾つかの実施形態による喫煙物品を概略的に示す例示図である。
図2】本開示の他の幾つかの実施形態による喫煙物品を説明するための例示図である。
図3】本開示のさらに他の幾つかの実施形態による喫煙物品を説明するための例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して本開示の好ましい実施形態を詳細に説明する。本開示のメリットおよび特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述している実施形態を参照すれば明確になるだろう。しかしながら、本開示の技術的思想は、以下の実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形状に具現でき、単に以下の実施形態は、本開示の技術的思想が完全になるようにし、本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者に本開示の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本開示の技術的思想は、請求項の範疇によって定義されるのみである。
【0018】
各図面の構成要素に参照符号を付加するに際して、同じ構成要素に対しては、たとえ異なる図面上に表示されても、できるだけ同じ符号を有するようにしていることに留意しなければならない。また、本開示を説明するに際して、関連した公知構成または機能に関する具体的な説明が本開示の要旨を不明にすることができると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0019】
別途の定義がない限り、本明細書において使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解され得る意味で使用され得る。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、明白に特に定義されていない限り、理想的にまたは過度に解析されない。 本明細書において使用される用語は、実施形態を説明するためのものであり、本開示を制限しようとするものではない。本明細書において、単数型は、文章において特に言及しない限り、複数型も含む。
【0020】
また、本開示の構成要素を説明するに際して、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用できる。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語により当該構成要素の本質や手順または順序などが限定されない。任意の構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」または「接続」されると記載された場合、その構成要素は、当該他の構成要素に直接的に連結されるか、または接続され得るが、各構成要素の間にさらに他の構成要素が「連結」、「結合」または「接続」され得ると理解しなければならない。
【0021】
本開示において使用される「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は、言及された構成要素、段階、動作および/または素子は、一つ以上の他の構成要素、段階、動作および/または素子の存在または追加を排除しない。
【0022】
まず、本開示の多様な実施形態において使用される幾つかの用語について明確にする。
【0023】
以下の実施形態において、「喫煙物品」(smoking article)とは、タバコ、タバコ派生物、膨化処理タバコ(expanded tobacco)、再生タバコ(reconstituted tobacco)またはタバコ代用物に基づくかに関係なく、喫煙可能な任意の製品または喫煙体験を提供できる任意の製品を意味し得る。例えば、喫煙物品は、シガレット、葉巻(cigar)および小さい葉巻(cigarillo)などのような喫煙可能製品を含んでもよい。他の例として、喫煙物品は、燃焼型喫煙物品と加熱型喫煙物品を含んでもよい。
【0024】
以下の実施形態において、「喫煙物質」(smoking material)とは、煙(smoke)および/またはエアロゾル(aerosol)を発生させたり喫煙に用いられたりする物質を意味し得る。例えば、喫煙物質は、タバコ物質を含んでもよい。タバコ物質は、例えばタバコ葉切片、タバコ幹またはこれらから加工された物質などを含んでもよい。より具体的な例として、タバコ物質は、粉砕されたタバコの葉、粉砕された再生タバコ、膨化刻み、膨化主脈および板状葉などを含んでもよい。しかし、これに限定されるものではない。
【0025】
以下の実施形態において、「上流」(upstream)または「上流方向」は、喫煙者の口部から遠ざかる方向を意味し、「下流」(downstream)または「下流方向」は、喫煙者の口部から近づく方向を意味し得る。上流および下流という用語は、喫煙物品を構成する要素の相対的位置を説明するために用いられ得る。例えば、図1に例示された喫煙物品100において、フィルター部120は、喫煙物質部110の下流または下流方向に位置し、喫煙物質部110は、フィルター部120の上流または上流方向に位置する。
【0026】
以下の実施形態において、「長さ方向」(longitudinal direction)は、喫煙物品の長さ方向軸に相当する方向を意味し得る。
【0027】
以下の実施形態において、「パフ」(puff)は、喫煙者の吸入(inhalation)を意味し、吸入とは、喫煙者の口や鼻を通じて喫煙者の口腔内、鼻腔内または肺に引き寄せる状況を意味し得る。
【0028】
以下の実施形態において、「シート」(sheet)は、その厚さより実質的に大きい幅および長さを有する薄層要素を意味し得る。当該技術分野において、シートという用語は、ウェブ(web)、フィルム(film)などの用語と混用して使用することもできる。
【0029】
以下の実施形態において、「加香シート」(flavor sheet or flavoring sheet)は、シート形態で製造された香料含有材料を意味し得る。
【0030】
以下では、本開示の多様な実施形態について詳細に説明する。
【0031】
本開示の幾つかの実施形態によれば、ニコチン含有量が少ない葉タバコ(以下、「低ニコチン葉タバコ」という)を用いて喫煙物品に投入されるタバコ物質(e.g.葉タバコ刻み、板状葉刻み、板状葉、膨化刻みなど)を製造できる。ニコチン成分は、喫煙物品の末端、穿孔などを通じて出る煙(e.g.副流煙、主流煙)においてタバコの臭いを誘発させる主な成分であるから、低ニコチン葉タバコが用いられると、タバコの臭いが顕著に減少することができる。それだけでなく、低ニコチン葉タバコが用いられると、タバコの臭いの主な原因となる窒素化合物(e.g.ピリジンなど)の煙中含有量も減少することができる(実験例1参照)。
【0032】
低ニコチン葉タバコは、一般葉タバコ(e.g.一般品種の葉タバコ)よりニコチン含有量(e.g.葉中ニコチン含有量)が少ない葉タバコを意味し得る。例えば、低ニコチン葉タバコは、ニコチン含有量が約1.0重量%、0.5重量%、0.3重量%、0.2重量%または0.1重量%以下である葉タバコを意味し得る。低ニコチン葉タバコは、品種交配、ニコチン低減処理などのように多様な方式を通じて得られ、いかなる方式で得られても関係ない。一般葉タバコは、ニコチン含有量が約1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%、3.0重量%または4.0重量%以上である葉タバコを意味し得る。
【0033】
下記の表1は、品種交配を通じて育成された低ニコチン葉タバコと一般葉タバコのニコチン含有量を比較している。表1に例示されたように、同一着葉位置で低ニコチン葉タバコのニコチン含有量は、一般葉タバコに比べて約60%~90%以上少ないことを確認することができる。
【0034】
【表1】
【0035】
以下では、説明の便宜上、「葉タバコ」という用語を原料状態の葉タバコだけでなく、葉タバコを加工(e.g.加工、膨化、再構成、乾燥など)して生成されたタバコ物質(e.g.葉タバコ刻み、板状葉、膨化刻みなど)を含む概念として使用する。したがって、「低ニコチン葉タバコ」は、低ニコチン葉タバコを加工して生成されたタバコ物質を含み、「一般葉タバコ」は、一般葉タバコを加工して生成されたタバコ物質を含む概念と理解することができる。
【0036】
一方、低ニコチン葉タバコが多く投入されるほどタバコの臭い低減効果が増大するが、ニコチンの移行量が減少するにつれて喫味強度が弱くなる問題が発生し得る。したがって、一般葉タバコと低ニコチン葉タバコを適切な割合で配合して、タバコ物質(すなわち、タバコブレンド)を製造することが好ましい。
【0037】
幾つかの実施形態において、タバコ物質が約50重量%以下の低ニコチン葉タバコを含んでもよく、好ましくは、約10重量%~50重量%、10重量%~40重量%、20重量%~40重量%または20重量%~30重量%の低ニコチン葉タバコを含んでもよい。そして、タバコ物質の残りの比重は、一般葉タバコと副原料などによって満たされる。このような数値範囲内で、タバコの臭いの低減効果と適切な強度の喫味が同時に保障されることが確認された。これと関連した実験結果については、下記の実験例2を参照する。
【0038】
幾つかの実施形態において、低ニコチン葉タバコと一般葉タバコの重量比(すなわち、配合割合)は、約1:1~1:9であってもよく、好ましくは、約1:1~1:8、1:1~1:7、1:1.5~1:5、1:1.5~1:5、1:1.5~1:4、1:1.5~1:3または1:1.5~1:2であってもよい。このような数値範囲内で、タバコの臭いの低減効果と適切な強度の喫味が同時に保障されることが確認された。これと関連した実験結果については、下記の実験例2を参照する。
【0039】
また、幾つかの実施形態において、ニコチン含有量が0.2重量%以下である低ニコチン葉タバコとニコチン含有量が1.5重量%以上である一般葉タバコが配合されて、タバコ物質を製造できる。しかし、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。
【0040】
本開示の多様な実施形態によれば、上述したタバコ物質(すなわち、低ニコチン葉タバコが投入されたタバコ物質)を用いて喫煙物品を製造できる。製造された喫煙物品は、適切な強度の喫味と低減されたタバコの臭いを保障できるが、以下では、このような喫煙物品について添付の図面によって詳細に説明する。
【0041】
図1は、本開示の幾つかの実施形態によるタバコの臭いが低減された喫煙物品100を概略的に示す例示図である。
【0042】
図1に示されたように、喫煙物品100は、フィルター部120、喫煙物質部110およびラッパー130を含んでもよい。ただし、図1には、本開示の実施形態と関連する構成要素のみが示されている。したがって、本開示の属する技術分野における通常の技術者なら、図1に示された構成要素以外に他の汎用的な構成要素をさらに含んでもよいことが分かる。また、図1は、本開示の多様な実施形態による喫煙物品の一部の例示を示しているだけであるから、喫煙物品の詳細構造は、図1に示されたことと変わることもできることはもちろんである。以下、喫煙物品100の各構成要素について説明する。
【0043】
フィルター部120は、喫煙物質部110で発生した煙および/またはエアロゾルに対するろ過機能を行うことができる。このために、フィルター部120は、フィルター(ろ過)物質を含んでもよい。フィルター物質の例としては、セルロースアセテート繊維、紙などが挙げられるが、本開示の範囲がこれに限定されるものではなく、当該技術分野において広く知られたフィルター物質が制限なしにフィルター部120に適用可能である。フィルター部120は、フィルター物質(プラグ)を包んでいるラッパー130をさらに含むものであってもよい。
【0044】
フィルター部120は、喫煙物質部110の下流に位置し、喫煙物質部110の下流末端と連結されてもよい。例えば、フィルター部120と喫煙物質部110は、円柱(ロッド)の形状を有し、長さ軸方向に整列され、ティッピングラッパー(tipping wrapper)により連結されてもよい。ティッピングラッパーは、フィルター部120の少なくとも一部と喫煙物質部110の少なくとも一部を共にラッピングして、フィルター部120と喫煙物質部110を連結することができる。フィルター部120が喫煙物品100の下流末端を形成する場合、フィルター部120は、喫煙者の口部と接触するマウスピースとして機能することもできる。
【0045】
フィルター部120は、ロッドの形態で製造されるので、場合によって「フィルターロッド120」とも称され、円柱型、内部に中空を含むチューブ型、リセス型などのように多様な形態で製造されてもよい。また、フィルター部120は、単一フィルターセグメント構造または多重フィルターセグメント構造で製造されてもよく、キャビティ(cavity)を含むこともできる。フィルター部120の詳細構造は、多様に変形可能である。
【0046】
次に、喫煙物質部110は、燃焼または加熱されるにつれて煙および/またはエアロゾルを発生させることができる喫煙物質を含んでもよい。喫煙物質部110は、喫煙物質を包んでいるラッパー130をさらに含むものであってもよい。
【0047】
喫煙物質部110は、フィルター部120の上流に位置し、フィルター部120の上流末端と連結されてもよい。喫煙物質部110で発生した煙および/またはエアロゾルは、パフによってフィルター部120を経て喫煙者の口部に伝達されることができる。
【0048】
また、喫煙物質部110は、ロッドの形態で製造されるので、場合によって「喫煙物質ロッド110」とも称される。
【0049】
喫煙物質は、タバコ物質を含んでもよい。タバコ物質は、例えばタバコ葉、タバコ幹またはこれらから加工された物質などを含んでもよい。しかし、これに限定されるものではない。また、タバコ物質は、タバコ刻み(e.g.葉タバコ刻み、板状葉刻みなど)、タバコ粒子(particle)、タバコシート(sheet)、タバコビーズ(beads)、タバコ顆粒(granule)またはタバコ抽出物の形態を有していてもよいが、これに限定されるものではない。
【0050】
また、タバコ物質は、低ニコチン葉タバコを投入して製造されたものであってもよい。例えば、上述したように、タバコ物質は、低ニコチン葉タバコを適切な比重で投入して製造されたものであってもよい。この場合、喫煙中に発生する煙(e.g.副流煙、主流煙)においてタバコの臭いの主な原因となるニコチン成分とピリジン(pyridine)、ピコリン(picoline)などの窒素化合物が減少することができ、その結果、喫煙者の身体(e.g.手、口など)にタバコの臭いが付く問題を大きく軽減することができる。また、タバコの臭いに起因して周辺の人に不快感を与える問題も大きく軽減することができる。または、タバコ物質は、低ニコチン葉タバコと一般葉タバコを適切な割合で配合して製造されたタバコブレンド(tobacco blend)であってもよい。この場合、喫煙中に発生する煙のタバコの臭いが低減されると同時に、適切な喫味強度も保障することができる。
【0051】
幾つかの実施形態において、喫煙物質は、湿潤剤(保湿剤)、香味剤および/または有機酸(organic acid)のような添加物質をさらに含んでもよい。例えば、湿潤剤は、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびオレイルアルコールのうち少なくとも一つを含んでもよい。湿潤剤は、タバコ物質内の水分を適正レベルに維持して固有の味をやわらかくし、霧化量を豊富にすることができる。また、香味剤は、例えば甘草、ショ糖、果糖シロップ、イソ甘味剤(isosweet)、ココア、ラベンダー、シナモン、カルダモム、セロリ、コロハ、カスカリラ、ビャクダン、ベルガモット、ゼラニウム、蜂蜜エッセンス、バラオイル、バニラ、レモンオイル、オレンジオイル、ミントオイル、ケイヒ、キャラウェイ、コニャック、ジャスミン、カモミール、メントール、ケイヒ、イランイラン、サルビア、スペアミント、ショウガ、コエンドロ、クローブ抽出物(またはクローブ物質)またはコーヒーなどを含んでもよい。
【0052】
次に、ラッパー130は、喫煙物質部110および/またはフィルター部120の少なくとも一部を包んでいるものを意味し得る。ラッパー130は、喫煙物質部110またはフィルター部120の個別ラッパーを指すものであってもよく、ティッピングラッパーなどのように喫煙物質部110とフィルター部120の少なくとも一部を共に包んでいるラッパーを指すものであってもよく、喫煙物品100に用いられたすべてのラッパーを総称するものであってもよい。ラッパー130は、多孔性または非多孔性のラッピングペーパー(wrapping paper)からなってもよいが、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。例えば、ラッパー130は、金属ホイル(foil)またはラッピングペーパーと金属ホイルの重ね合わせ形態からなってもよい。
【0053】
以上では、図1を参照して本開示の幾つかの実施形態による喫煙物品100について説明した。以下では、図2を参照して本開示の他の幾つかの実施形態による喫煙物品200について説明する。ただし、本開示の明瞭さのために、上記の実施形態と重複する内容に関する説明は省略する。
【0054】
図2に示されたように、本実施形態は、加香シート240を用いて喫煙者の手にタバコの臭いが付くことをさらに防止できる喫煙物品200に関する。
【0055】
図示のように、喫煙物品200は、フィルター部220、喫煙物質部210およびラッパー230を含んでもよい。フィルター部220および喫煙物質部210は、それぞれ上記で説明したフィルター部120と喫煙物質部110に対応するので、これら構成要素に関する説明は省略する。
【0056】
フィルター部220を包んでいるラッパー230には、加香シート240が配置されてもよい。例えば、把持部位に対応するラッパー230の外面に加香シート240が配置されてもよい。この場合、加香シート240で発現する香りによって手にタバコの臭いが付くことを防止することができる。ただし、加香シート240の具体的な配置方式は多様である。
【0057】
一例として、ラッパー230の外面に加香シート240が付着されてもよい。例えば、重ね合わせ工程を通じて加香シート240がラッパー230の外面に付着されてもよい。または、加香シート240の組成物をラッパー230に塗布し、乾燥させるコーティング工程を通じて加香シート240がラッパー230の外面に配置されることもできる。この際、シート組成物のコーティング厚さは、約100μm以下であってもよく、好ましくは、約90μm、80μm、70μm、60μmまたは50μm以下であってもよい。このような数値範囲内でラッパー230が過度に厚くなることが防止され、適切な柔軟性を確保することができる。
【0058】
他の例として、加香シート240がラッパー230として機能することもできる。すなわち、ラッパー230の少なくとも一部が加香シート240からなってもよい。
【0059】
幾つかの実施形態において、ラッパー230または加香シート240の外面に臭い低減物質が塗布されることもできる。この場合、喫煙者の手にタバコの臭いが付くことをさらに防止することができる。臭い低減物質の例としては、カテキンを主成分とする緑茶抽出物、クエン酸(citric acid)、グリセロール(glycerol)、タンニン酸(tannic acid)またはB-シクロデキストリン(B-cyclodextrin)またはこれらの混合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0060】
以下では、理解の便宜を提供するために加香シート240について付加説明する。
【0061】
実施形態による加香シート240は、液状(e.g.スラリー状態)のシート組成物を製造する段階および製造されたシート組成物をシート形態に成形し、乾燥する段階を通じて製造されてもよい。ここで、液状は、液体状態だけでなく、液体と固体が混ざり合った状態(e.g.スラリー状態)を含むものであってもよい。例えば、加香シート240は、シート組成物を所定の基材上に伸張(キャスト)、乾燥させることによって製造されてもよい。しかし、これに限定されるものではなく、加香シート240は、他の方式で製造されてもよい。
【0062】
シート組成物の詳細組成は、多様に設計可能である。
【0063】
幾つかの実施形態において、シート組成物は、蒸留水(water)、エタノールなどの溶媒と、ハイドロコロイド物質および香料を含んでもよい。このようなシート組成物から製造された加香シート240は、香り保持性に優れている。また、ハイドロコロイド物質によって加香シート240が、別途の接着剤がなくてもラッパー(e.g.230)に付着されることができ(すなわち、加香シート240に水、酒精などの液体を噴射すると、粘着性が生じるので、接着剤がなくてもラッパー230に付着が可能である)、加香シート240の配置工程を簡素化することができ、接着剤による安全性問題から自由になりえる。
【0064】
蒸留水、エタノールなどの溶媒は、スラリー状シート組成物の粘度を調節するための要素であってもよい。
【0065】
ハイドロコロイド物質は、香料を被覆して固定する物質であり、シートを形成するシート形成剤であってもよい。ハイドロコロイド物質の例としては、ゼラチン、寒天、ゼランガム、ペクチン、グアガム、キサンタンガム、グルコマンナン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン類などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0066】
香料の例としては、メントール、天然植物性香料(e.g.シナモン、セージ、ハーブ、カモミール、枯れ草、甘茶、クローブ、ラベンダー、カルダモン、丁香、ナツメグ、ベルガモット、ゼラニウム、蜂蜜エッセンス、ローズ油、レモン、オレンジ、ケイヒ、キャラウェイ、ジャスミン、ショウガ、コリアンダー、バニラエキス、スペアミント、ペパーミント、カッシア、コーヒー、セロリ、カスカリラ、サンダルウッド、ココア、イランイラン、フェンネル、アニス、リコリス、セントジョンズブレッド、スモモエキス、桃エキスなど)、糖類(e.g.グルコース、フルクトース、異性化糖、キャラメルなど)、ココア類(パウダー、エキスなど)、エステル類(e.g.酢酸イソアミル、 酢酸リナリル、プロピオン酸イソアミル、 酪酸リナリルなど)、ケトン類(e.g.メントン、イオノン、ダマセノン、エチルマルトールなど)、アルコール類(e.g.ゲラニオール、リナロール、アネトール、オイゲノールなど)、アルデヒド類(e.g.バニリン、ベンズアルデヒド、アニスアルデヒドなど)、ラクトン類(e.g.γ-ウンデカラクトン、γ-ノナラクトンなど)、動物性香料(e.g.ムスク、アンバーグリス、シベット、カストリウムなど)、炭化水素類(e.g.リモネン、ピネンなど)が挙げられる。香料は、固体として使用されてもよく、適切な溶媒、例えばプロピレングリコール、エチルアルコール、ベンジルアルコール、トリエチルシトレートに溶解または分散して使用されてもよい。また、乳化剤の添加によって溶媒中に分散状態が形成されやすい香料、例えば疎水性香料や油溶性香料などが用いられ得る。これらの香料は、単独で用いられてもよく、混合物として用いられてもよい。ただし、本開示の範囲が前述した例示によって限定されるものではない。
【0067】
幾つかの実施形態において、シート組成物は、多様なハイドロコロイド物質のうち改質されたセルロースを含んでもよい。ここで、「改質されたセルロース」は、分子構造内で特定の官能基が置換されたセルロースを意味し得る。改質されたセルロースの例としては、HPMC、MC、CMC、ECが挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、HPMCは、ヒドロキシプロピル基およびメチル基(またはメトキシ基)が置換された割合および分子量によって約4~40000の範囲内の等級(grade)を有していてもよい。等級によって、改質されたセルロースの粘度が決定されることができる。より具体的に、HPMCの物理化学的特性は、メトキシ基の割合、ヒドロキシプロピル基の割合および分子量と関係があるが、米国薬典(USP)によれば、HPMCの種類は、メトキシ基およびヒドロキシプロピル基の割合によってHPMC1828、HPMC2208、HPMC2906およびHPMC2910などに分類されることができる。ここで、前方の二つの数字は、メトキシ基の割合であり、後方の二つの数字は、ヒドロキシプロピル基の割合を意味し得る。本発明者らの持続的な実験結果、改質されたセルロースを含むシート組成物から製造された加香シート240は、シート物理性および香り保持性に優れていること確認された。
【0068】
また、幾つかの実施形態において、シート組成物は、LM-ペクチン(low methoxyl pectin)をさらに含んでもよい。LM-ペクチンは、エステル化が比較的に少なく行われた低エステルペクチンまたは低メトキシルペクチンであり、具体的に分子構造の内部にカルボキシ基(carboxyl group)が約50%未満で含有されたペクチンを意味し得る。LM-ペクチンは、カラギナンと異なって、放冷時にゲル化しない特性を有するので、スラリー状シート組成物の粘度を低減することができる(e.g.約600cp~800cp程度)。また、乳化剤がなくても、スラリー状シート組成物の製造が可能で、乳化剤による安全性の問題から自由になりえる。
【0069】
LM-ペクチンは、分子構造の内部にカルボキシ基を約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、または約10%未満で含有していてもよい。LM-ペクチンの分子構造の内部にカルボキシ基含有量が少なくなるほど、LM-ペクチンを含むスラリーの粘度が低くなる。
【0070】
また、幾つかの実施形態において、シート組成物は、バルキング剤(bulking agent)をさらに含んでもよい。バルキング剤は、蒸留水以外の構成成分の合計質量(すなわち、乾物質量)を増加させて、製造される加香シート240の体積を増加させることができ、加香シート240の元来の機能に影響を及ぼさない物質であってもよい。具体的に、バルキング剤は、加香シート240の体積を増加させ、かつ、スラリーの粘度を実質的に上昇させないと同時に、加香シート240の香料保持機能に悪影響を及ぼさない特性を有していてもよい。好ましくは、バルキング剤は、デンプン類、変性デンプン、またはデンプン加水分解物(e.g.デキストリン、シクロデキストリン)であってもよい。しかし、これに限定されるものではない。
【0071】
また、幾つかの実施形態において、シート組成物は、可塑剤をさらに含んでもよい。可塑剤は、加香シート240に適切な柔軟性を付与することによってシートの物理性を向上させることができる。可塑剤は、例えばグリセリンおよびプロピレングリコールのうち少なくとも一つを含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0072】
また、幾つかの実施形態において、シート組成物は、乳化剤をさらに含んでもよい。乳化剤は、脂溶性が強い香料と水溶性のハイドロコロイド物質がよく混ざり合うようにして、加香シート240の香り保持量を増大させることができる。乳化剤の例としては、レシチンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0073】
一方、上述したシート組成物から製造された加香シート240は、多様な組成比を有していてもよい。
【0074】
幾つかの実施形態において、加香シート240は、全体100重量部を基準として、水分約2~約15重量部、改質されたセルロース約25~約90重量部および香料約0.1~約60重量部を含んでもよい。
【0075】
また、幾つかの実施形態において、加香シート240は、全体100重量部を基準として、水分約2~約15重量部、ハイドロコロイド物質約1~約60重量部、LM-ペクチン約1~約60重量部および香料約0.1~約60重量部を含んでもよい。
【0076】
幾つかの実施形態において、可塑剤は、加香シート240全体100重量部を基準として、約0.1~約15重量部で含んでもよい。このような数値範囲内で適切な柔軟性を有するシートを形成することができる。例えば、可塑剤が非常に少なく添加される場合には、シートの柔軟性が落ちて、工程中に加香シートが容易に破損する恐れがあり、可塑剤が非常に多く添加される場合には、シートがよく形成されないことがある。
【0077】
以上では、図2を参照して本開示の他の幾つかの実施形態による喫煙物品200について説明した。以下では、図3を参照して本開示のさらに他の幾つかの実施形態による喫煙物品300について説明する。
【0078】
図3に示されたように、本実施形態は、フィルター部320のラッパー330の外面にフィンガーケアゾーン341~343が形成された喫煙物品300に関する。
【0079】
図示のように、喫煙物品300は、フィルター部320、喫煙物質部310およびラッパー330を含んでもよい。フィルター部320および喫煙物質部310は、それぞれ上記で説明したフィルター部220と喫煙物質部210に対応するので、これら構成要素に関する説明は省略する。
【0080】
フィルター部320のラッパー330の外面には、フィンガーケアゾーン341~343を形成することができる。例えば、ラッパー330の把持領域340にフィンガーケアゾーン341~343を形成することができる。以下では、説明の便宜上、フィンガーケアゾーン341~343を「ケアゾーン341~343」と略称する。また、参照番号「341」を複数個のケアゾーン341~343を代表する番号として使用する。
【0081】
ケアゾーン341は、例えばインクと機能性物質を含有するマイクロカプセルを塗布することによって形成することができる。ここで、インクは、ケアゾーン341の位置、ケア機能の種類などのような特性情報を喫煙者に視覚的に伝達する役割を行うことができ、マイクロカプセルが喫煙者にフィンガーケア機能を提供することができる。例えば、喫煙者の指がケアゾーン341と摩擦するとき、マイクロカプセルが破砕されることで、機能性物質が排出されることができ、排出された機能性物質が自然に喫煙者の指に触れることになって、フィンガーケア効果を発揮することができる。したがって、機能性物質の種類によってケアゾーン341の具体的なケア機能を決定することができる。
【0082】
機能性物質の例としては、抗菌物質、脱臭(消臭)物質、芳香物質、消毒物質、臭い低減物質などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0083】
また、抗菌物質は、例えばグレープフルーツ抽出物、ライムオイル(lime oil)、ユーカリプタスオイル(eucalyptus oil)、松葉オイル(pine needle oil)、ユーカリプトール(eucalyptol)、リモネン(limonene)、プロポリスなどを含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0084】
幾つかの実施形態において、ケアゾーン341は、インクとマイクロカプセルを含む組成物をオフセット印刷方式で塗布することによって形成することができる。オフセット印刷方式は、水と油の反発力を用いる間接印刷方式であり、グラビア(Gravure)印刷などの他の印刷方式よりマイクロカプセル壊れ(破砕)現象を最小化することができる。例えば、オフセット印刷方式は、喫煙物品ケース内で喫煙物品300間の摩擦によってマイクロカプセルが壊れる現象を最小化することができる。
【0085】
また、幾つかの実施形態において、マイクロカプセルは、機能性物質の他にインクの色または色濃度を変化させることができる物質をさらに含有していてもよい。例えば、マイクロカプセルは、インクを希釈させることによって色濃度を変化させることができる希釈物質をさらに含有していてもよい。この場合、マイクロカプセルが破砕されるにつれて徐々にインクの色または色濃度が変化するので、視覚的変化を通じてケアゾーン341部位のマイクロカプセルの残余量が直観的に喫煙者に伝達されることができる。すなわち、ケアゾーン341の残余使用期間が喫煙者に視覚的に伝達される効果を達成することができる。
【0086】
一方、ケアゾーン341の位置、形状、形態、色、サイズ、個数、配置形態などは、多様に設計可能である。
【0087】
幾つかの実施形態において、図示のように、複数個のケアゾーン341~343が所定の間隔によって離隔配置され、各ケアゾーン341~343は、バンド形態で形成することができる。この場合、摩擦を通じてマイクロカプセルがよく破砕されることができ、喫煙物品300の審美性も向上することができる。
【0088】
また、幾つかの実施形態において、複数のケアゾーン341~343は、互いに異なる色のインクと互いに異なる機能性物質を含有するマイクロカプセルを塗布することによって形成されることができる。例えば、第1ケアゾーン341には、抗菌マイクロカプセル(すなわち、抗菌物質を含有するマイクロカプセル)が塗布され、第2ケアゾーン342には、脱臭マイクロカプセルが塗布され、第3ケアゾーン343には、方向マイクロカプセルが塗布されてもよい。そして、各ケアゾーン341~343には、互いに異なる色のインクが塗布されてもよい。この場合、色を通じてケアゾーン341の機能を知らせる効果を達成することができ、互いに異なる機能性物質を通じて総合的なフィンガーケア効果も提供することができる。
【0089】
また、幾つかの実施形態において、マイクロカプセルの破砕強度を通じてケアゾーン341のケア強度(または機能性物質の排出量)が調節されることもできる。具体的に、第1ケアゾーン341には、破砕強度の小さいマイクロカプセルが塗布され、第2ケアゾーン342には、破砕強度の大きいマイクロカプセルが塗布されてもよい。この場合、第1ケアゾーン341では、喫煙者の摩擦動作によって多量の機能性物質が排出されることによって、高強度(または高刺激)のケア機能を提供することができ、第2ケアゾーン342では、少量の機能性物質が排出されることによって低強度(または低刺激)のケア機能を提供することができる。本実施形態において、第1ケアゾーン341と第2ケアゾーン342には、異なる色または色濃度のインクが塗布されることもできる。そして、インクの色または色濃度は、ケア強度に基づいて決定されることもできる。
【0090】
参考として、マイクロカプセルの破砕強度は、マイクロカプセルの膜材によって調節することができる。膜材は、例えば生分解性高分子物質(e.g.セルロース系物質)、メラミン系物質を含んでもよいが、これに限定されるものではない。実験結果によれば、セルロース系物質が膜材に用いられたマイクロカプセルは、メラミン系物質が膜材に用いられたマイクロカプセルより低い破砕強度と優れた生分解性を有することが確認された。
【0091】
以上では、図3を参照して本開示のさらに他の幾つかの実施形態による喫煙物品300について説明した。
【0092】
以上では、説明した実施形態に内包された技術的思想は、多様な形態で組み合わせられる。例えば、本開示の幾つかの実施形態において、喫煙物品(e.g.200)のラッパー(e.g.230)に加香シート240が適用され、加香シート240の外面にケアゾーン341が形成されることもできる。
【0093】
以下では、実施例および比較例を通じて低ニコチン葉タバコが投入されたタバコ物質または喫煙物品(e.g.100)の構成および効果についてより明確にする。ただし、以下の実施例は、本開示の一部の例示に過ぎないので、以下の実施例によって本開示の範囲が限定されるものではない。
【0094】
[実施例1]
低ニコチン葉タバコ約10重量%と一般葉タバコ約90重量%を配合して、タバコ物質を製造した。また、製造されたタバコ物質を投入して、図1に例示された喫煙物品100と同じ構造を有するシガレットを製作した。シガレットのフィルターとしては、セルロースアセテートフィルターが用いられた。タバコ物質の製造に用いられた低ニコチン葉タバコと一般葉タバコの品種および葉中成分含有量は、下記の表2に記載されている。
【0095】
【表2】
【0096】
[実施例2]
低ニコチン葉タバコ約20重量%と一般葉タバコ約80重量%を配合して、タバコ物質を製造した点を除いて、実施例1と同じシガレットを製造した。
【0097】
[実施例3]
低ニコチン葉タバコ約30重量%と一般葉タバコ約70重量%を配合して、タバコ物質を製造した点を除いて、実施例1と同じシガレットを製造した。
【0098】
[実施例4]
低ニコチン葉タバコ約40重量%と一般葉タバコ約60重量%を配合して、タバコ物質を製造した点を除いて、実施例1と同じシガレットを製造した。
【0099】
[実施例5]
低ニコチン葉タバコ約50重量%と一般葉タバコ約50重量%を配合して、タバコ物質を製造した点を除いて、実施例1と同じシガレットを製造した。
【0100】
[比較例1]
一般葉タバコだけを用いてタバコ物質を製造した点を除いて、実施例1と同じシガレットを製造した。
【0101】
下記の表3は、実施例1~5と比較例1によるシガレットの葉タバコ配合割合を整理したものである。
【0102】
【表3】
【0103】
[実験例1:煙成分の分析]
実施例1~5と、比較例1によるシガレットの煙成分を分析する実験を進めた。具体的に、製造後2週が経過したシガレットの喫煙中に発生する煙(e.g.主流煙)の成分を分析し、温度が略20℃であり、湿度が略62.5%である喫煙室で自動喫煙装置を用いてHC(Health Canada)喫煙条件によって実験が進行された。成分分析のための煙の捕集は、試料別3回ずつ、回別8パフを基準として反復実施され、3回の捕集結果に対する平均値が下記の表4および表5に記載されている。表4には、タールとニコチン成分に対する分析結果が記載されており、表5には、窒素化合物に対する分析結果が記載されている。表5で、「total」は、全体窒素化合物の煙中含有量を意味し得る。
【0104】
【表4】
【0105】
【表5】
【0106】
前記表4を参照すると、実施例によるシガレットの煙中ニコチン含有量が、比較例1に比べて概して少ないことを確認することができる。また、低ニコチン葉タバコの配合割合が増加するほど煙中ニコチン含有量が明確に減少することを確認することができる。ニコチン成分は、タバコの臭いの主な原因となる成分であるから、これを通じて、実施例によるシガレットが、比較例1に比べてタバコの臭いを少なく誘発することが分かる。また、低ニコチン葉タバコの配合割合を増加させることによって、タバコの臭いをさらに低減させることができることが分かる。
【0107】
前記表5を参照すると、実施例によるシガレットの煙中窒素化合物の含有量が、比較例1に比べて概して少ないことを確認することができる。例えば、ピリジン、3-ピコリン、3-ビニルピリジンなどの煙中窒素化合物の含有量が概して少ないことを確認することができる。また、低ニコチン葉タバコの配合割合が増加するほど、煙中窒素化合物の含有量が概して減少することを確認することができる。ピリジンのような窒素化合物も、タバコの臭いの主な原因となる成分であるから、これを通じて、実施例によるシガレットが比較例1に比べてタバコの臭いを少なく誘発することが分かる。また、低ニコチン葉タバコの配合割合を増加させることによって、タバコの臭いをさらに低減させることができることが分かる。
【0108】
実験例2:喫味強度に対する官能評価
実施例1、2および4と、比較例1によるシガレットに対して、喫味強度を官能的に評価する実験を進めた。具体的に、訓練された24人のパネルを対象に製造後2週が経過したシガレットの喫味強度を評価する実験を進めた。
【0109】
官能評価は、総合的差異識別検査(degree of difference test)に基づいて行った。具体的に、比較例および実施例によるシガレットの喫味強度差異を下記のように7個の等級によって評価した後、2/3カットオフ(cut-off)技法を適用して評価結果を解釈した(すなわち、1~2等級は、差異がないものと解釈し、3~7等級は、差異があると解釈する)。
1:差異がない
2:差異が非常に少ない
3:差異が若干ある
4:差異が中間程度
5:差異が若干大きい
6:差異が大きい
7:差異が非常に大きい
【0110】
また、ニコチン含有量の差異が少ないシガレットに対しては、喫味強度の差異があると(大きいと)評価し、ニコチン含有量の差異が大きいシガレットに対しては、喫味強度の差異がないと(少ないと)評価した場合は、官能評価の誤差と見ることができるので、評価結果で無効処理した(表6で、「1->0」に訂正した部分を参照)。
【0111】
また、官能評価結果を用いてパネルが喫味強度の差異を認知する低ニコチン葉タバコの配合量(すなわち、閾値値)をASTM E679-79による最適推定閾値算出法(Best Estimation Threshold;「BET」)によって算出した。
【0112】
官能評価結果と閾値の含有量値は、下記の表6および表7に記載されている。下記の表6および表7で、「1 vs.1」は、「比較例1 vs.実施例1」を意味し得る。また、下記のBET関連数式で、「a」は、喫味強度の差異を認知しない(または認知しないと予想される)低ニコチン葉タバコの最大配合割合を意味し、「b」は、喫味強度の差異を認知する(または認知すると予想される)低ニコチン葉タバコの最小配合割合を意味し得る。
【0113】
例えば、P1の場合、低ニコチン葉タバコの配合割合が約40%である場合にも、差異を認知しなかったので、aの値は、「0.4」に設定された。そして、低ニコチン葉タバコの配合割合が約60%以上なら、差異を認知すると予想されて、bの値は、「0.6」に設定された。
【0114】
また、P3の場合、低ニコチン葉タバコの配合割合が約20%である場合には、差異を認知しなかったので、aの値は、「0.2」に設定され、低ニコチン葉タバコの配合割合が約40%である場合には、差異を認知したので、bの値は、「0.4」に設定された。
【0115】
また、P5の場合、低ニコチン葉タバコの配合割合が約10%である場合にも、差異を認知したので、bの値は、「0.1」に設定された。そして、低ニコチン葉タバコの配合割合が約5%である場合には、差異を認知しないと予想されて、aの値は、「0.05」に設定された。
【0116】
参考として、BET計算過程中にログを取ったことは、計算結果値の偏差を減らすためのものであり、予想閾値は、ログによって減少した値をさらに復元して算出されたものと理解することができる。当該技術分野の当業者なら、BETに対して十分に熟知しているところ、計算過程に関する詳しい説明は省略し、BETに関する詳しい内容は、ASTM E679-79を参照する。
【0117】
【表6】
【0118】
【表7】
【0119】
前記表6および表7を参照すると、実施例1(または実施例2)と比較例1によるシガレットの喫味強度の差異は殆どないことが分かり、実施例4と比較例1によるシガレットの間には、喫味強度の差異がある程度存在することが分かる。これは、低ニコチン葉タバコが略40重量%以上で配合されると、喫煙者が喫味強度の低下を認知することを意味し得る。したがって、適切な喫味強度を保障するためには、低ニコチン葉タバコが略40重量%以下で配合されることが好ましいことが分かる。
【0120】
また、最適推定閾値の算出法によれば、低ニコチン葉タバコの配合割合の閾値が約33.1重量%であることが算出された。これは、低ニコチン葉タバコが約33.1重量%以下で配合された場合には、多くの喫煙者が喫味強度の低下を認知しないことを意味し得る。したがって、タバコの臭いの低減を極大化し、喫味強度の低下を最小化するためには、低ニコチン葉タバコが略30重量%内外に配合されることが好ましいことが分かる。
以上では、比較例および実施例を通じて低ニコチン葉タバコが投入されたタバコ物質または喫煙物品(e.g.100)の構成および効果について説明した。
【0121】
以上、添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明したが、本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者は、その技術的思想や必須の特徴を変更することなく、本開示が他の具体的な形態で実施可能であることが理解できる。したがって、以上で記述した実施形態は、すべての面において例示的なものであり、限定的なものでないことを理解しなければならない。本開示の保護範囲は、下記の特許請求の範囲により解されるべきであり、それと同等な範囲内にあるすべての技術思想は、本開示により定義される技術的思想の権利範囲に含まれるものと解されるべきである。
図1
図2
図3
【国際調査報告】