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特表2023-547846ハロゲンフリー難燃性ポリマー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】ハロゲンフリー難燃性ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20231107BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20231107BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
C08L23/04
C08K3/22
H01B7/295
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524408
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 US2021056459
(87)【国際公開番号】W WO2022093693
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】102020000025531
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】イェルチ、クリシャン
(72)【発明者】
【氏名】チャウダリー、バーラト アイ.
(72)【発明者】
【氏名】クマール、バウェシュ
(72)【発明者】
【氏名】ブルミストロフ、スヴャトスラフ
(72)【発明者】
【氏名】ロペス ピケール、ダビド
(72)【発明者】
【氏名】カルデッリ、カミッロ
【テーマコード(参考)】
4J002
5G315
【Fターム(参考)】
4J002BB03W
4J002BB05X
4J002BB15X
4J002BB21X
4J002DA016
4J002DA026
4J002DA056
4J002DE076
4J002DE126
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE236
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DK006
4J002FD136
4J002GQ01
5G315CA03
5G315CB02
5G315CB06
5G315CD04
5G315CD14
(57)【要約】
ポリマー組成物は、結晶化度試験に従って測定したときに25重量%以上の110℃での結晶化度を有する第1のエチレン系ポリマーと、結晶化度試験に従って測定したときに40重量%以下の23℃での結晶化度を有する第2のエチレン系ポリマーと、40重量%以上のハロゲンフリー難燃性充填剤と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
結晶化度試験に従って測定したときに25重量%以上の110℃での結晶化度を有する第1のエチレン系ポリマーと、
結晶化度試験に従って測定したときに40重量%以下の23℃での結晶化度を有する第2のエチレン系ポリマーと、
40重量%以上のハロゲンフリー難燃性充填剤と、を含む、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ハロゲンフリー難燃性充填剤が、水酸化マグネシウムである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて、40重量%~65重量%の水酸化マグネシウムを含む、請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて、5重量%~40重量%の前記第2のエチレン系ポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて、5重量%~40重量%の前記第1のエチレン系ポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記第1のエチレン系ポリマーが、0.925g/cc~0.950g/ccの密度を有する、請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記第1のエチレン系ポリマーが、ASTM D792に従って測定したときに0.910g/cc~0.935g/ccの範囲の密度を有する低密度成分を含む、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記第1のエチレン系ポリマーが、ASTM D792に従って測定したときに0.945g/cc~0.965g/ccの範囲の密度を有する高密度成分を含む、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記第1のエチレン系ポリマーが、ASTM D3895に従って測定したときに20分以上の200℃での酸化誘導時間を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
被覆導体であって、
導体と、
前記導体の周りに少なくとも部分的に配設された、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物と、を含む、被覆導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ポリマー組成物、より具体的には、金属水和物及び金属炭酸塩などの鉱物充填剤を含むポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
ポリオレフィン系ハロゲンフリー難燃性(halogen-free flame retardant、「HFFR」)ケーブルジャケット組成物は、絶縁/外被材料の難燃性が重要である様々な用途に有用である。難燃性は、可燃性ポリマー材料の濃度を希釈して、熱に曝露されるとポリマーの分解温度未満で分解する鉱物充填剤の添加によって達成されることが多い。金属水和物の分解は、水を放出し、それによって火源から熱を除去し、金属炭酸塩の分解は、ガス/蒸気相希釈剤として作用する二酸化炭素を生成する。従来のHFFRケーブルジャケット組成物は、屋内、建物内、列車内、車内、又は人々が存在し得る場所で使用される。多くの例において、ポリオレフィン(又は、オレフィンポリマー)は、エチレン系ポリマーである。
【0003】
ポリオレフィンワイヤ及びケーブル配合物中の鉱物充填剤の使用は、いくつかの欠点を被り、その大部分は、難燃仕様を満たすために必要な比較的高レベルの充填剤に起因する。ポリオレフィン中に40重量パーセント(重量%)以上の充填剤を装填することは、珍しいことではない。この充填剤の装填は、HFFRケーブルジャケット組成物の特性に影響を及ぼし、密度が高く、可撓性が限られ、かつ破断点引張伸びなどの機械的特性が低下した化合物がもたらされる。
【0004】
非晶質又は低結晶化度オレフィンポリマーのブレンドは、しばしば、そのような高い充填剤装填量の組み込みを可能にするために使用されるべきである。室温(すなわち、23℃)での低い結晶化度は、ポリマー中の結晶領域が充填剤を受け入れることができないため、充填剤装填量を増加させるのに有利であるとみなされている。したがって、オレフィンポリマーは、結晶性画分が低下する(及び非晶質画分が増加する)につれて、より大きな充填剤装填レベルを可能にする。高い充填剤装填量に対応し、それによって高い値の破断点引張伸びがもたらされるが、高い非晶質画分を有するオレフィンポリマーは、典型的には、機械的変形に対するより低い耐性をもたらし、IEC60811-508によって管理される「ホットプレッシャー」又は「ホットナイフ」圧入試験などのHFFRケーブルジャケットのための従来の試験に不合格となる。本質的に、結晶性に起因するオレフィンポリマーの硬度(弾性率)と、ポリマーが達成し得る最大充填剤装填量との間にはトレードオフが存在する。機械的変形に対する低い耐性を克服するために、オレフィンポリマーの架橋を実施して、ケーブルジャケットの機械的特性を向上させることができるが、これは概して、破断点引張伸びに悪影響を及ぼす。
【0005】
上記を考慮すると、40重量%以上のHFFR含有量と、IEC60811-508に従って測定したときに50%未満のホットナイフ圧入及びASTM D638に従って測定したときに23℃で100%以上の破断点引張伸びを示す、25重量%以上の110℃での結晶化度を有するエチレン系ポリマーと、を有するポリマー組成物を発見することは驚くべきことであろう。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、40重量%以上のHFFR含有量と、IEC60811-508に従って測定したときに50%未満のホットナイフ圧入及びASTM D638に従って測定したときに23℃で100%以上の破断点引張伸びを示す、25重量%以上の110℃での結晶化度を有するエチレン系ポリマーと、を有するポリマー組成物を提供する。
【0007】
本発明は、110℃で25重量%以上の結晶化度を保持するポリマーを利用することによって、ポリマー組成物が効果的に硬化して、ホットナイフ試験に合格する一方で、ポリマー組成物の最大充填剤含有量を不必要に低下させずに、23℃で十分に高い破断点引張伸びを保持することを発見した結果である。ポリマーの結晶化度は、概して、温度の上昇とともに低下するが、単位温度当たりの結晶化度の低下速度は、異なるポリマーについて異なる。従来使用されているポリマーでは、ポリマーが、結晶化度の損失に起因して高温でより柔らかくなるだけでなく、充填剤受容能力(23℃で十分に高い破断点引張伸びを保持しながら、全充填剤装填量に影響を及ぼす)も、23℃での高い結晶化度によって悪影響を受ける。本質的に、充填剤受容能力(したがって全充填剤装填量)は、結果的にホットナイフ試験に合格する助けとならない結晶化度に起因して低下する。この関係は、先行技術では概して室温での結晶化度に焦点を当てていたため認識されなかった。対照的に、110℃で25重量%以上の結晶化度を保持する本発明のポリマーの使用は、ポリマー組成物をホットナイフ試験に合格するのに十分に硬くするだけでなく、23℃で十分に高い破断点引張伸びを保持しながら、40重量%以上のHFFR含有量を組み込むこともできる。驚くべきことに、110℃で25重量%以上の結晶化度がホットナイフ試験に合格するのに十分であることが発見された。
【0008】
本発明は、被覆導体において特に有用である。
【0009】
本開示の第1の特徴によれば、ポリマー組成物は、結晶化度試験に従って測定したときに25重量%以上の110℃での結晶化度を有する第1のエチレン系ポリマーと、結晶化度試験に従って測定したときに40重量%以下の23℃での結晶化度を有する第2のエチレン系ポリマーと、40重量%以上のハロゲンフリー難燃性充填剤と、を含む。
【0010】
本開示の第2の特徴によれば、ハロゲンフリー難燃性充填剤は、水酸化マグネシウムである。
【0011】
本開示の第3の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、40重量%~65重量%の水酸化マグネシウムを含む。
【0012】
本開示の第4の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、5重量%~40重量%の第2のエチレン系ポリマーを含む。
【0013】
本開示の第5の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、5重量%~40重量%の第1のエチレン系ポリマーを含む。
【0014】
本開示の第6の特徴によれば、第1のエチレン系ポリマーは、0.925g/cc~0.950g/ccの密度を有する。
【0015】
本開示の第7の特徴によれば、第1のエチレン系ポリマーは、ASTM D792に従って測定したときに0.910g/cc~0.935g/ccの範囲の密度を有する低密度成分を含む。
【0016】
本開示の第8第1の特徴によれば、第1のエチレン系ポリマーは、ASTM D792に従って測定したときに0.945g/cc~0.965g/ccの範囲の密度を有する高密度成分を含む。
【0017】
本開示の第9の特徴によれば、第1のエチレン系ポリマーは、ASTM D3895に従って測定したときに20分以上の200℃での酸化誘導時間を有する。
【0018】
本開示の第10の特徴によれば、被覆導体は、導体と、導体の周囲に少なくとも部分的に配設されたポリマー組成物と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のうちのいずれか1つをそれ自体で用いることができるか、又は列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、及び/又はCを含有するものとして説明されている場合、組成物はAを単独で、Bを単独で、Cを単独で、A及びBを組み合わせて、A及びCを組み合わせて、B及びCを組み合わせて、又はA、B、及びCを組み合わせて、含有することができる。
【0020】
別途記載のない限り、全ての範囲は、終点を含む。
【0021】
試験方法は、試験方法番号でハイフン付きの2桁の数字で日付が示されていない限り、この文書の優先日における最新の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。試験方法組織は、以下の略語のうちの1つによって参照され、ASTMは、ASTMインターナショナル(ASTM International)(旧称、米国材料試験協会、American Society for Testing and Materials)を指し、IECは、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、重量パーセント(「重量%」)という用語は、別途明記しない限り、成分がポリマー組成物の総重量に占める重量のパーセンテージを示す。
【0023】
本明細書において、メルトインデックス(I)値は、2.16キログラム(Kilogram、Kg)の質量を用いて摂氏190度(℃)でASTM法D1238に従って決定された値を指し、10分当たりに溶出されるグラム数(「g/10分」)の単位で提供される。
【0024】
本明細書における密度値は、23℃でASTM D792に従って決定された値を指し、1立方センチメートル当たりのグラム数(「g/cc」)の単位で提供される。
【0025】
本明細書で使用される場合、Chemical Abstract Services登録番号(「CAS#」)は、本文書の優先日の時点でChemical Abstract Serviceによって化学化合物に最後に割り当てられた固有の数字識別子を指す。
【0026】
ポリマー組成物
本開示は、ポリマー組成物に関する。ポリマー組成物は、第1のエチレン系ポリマーと、第2のエチレン系ポリマーと、ハロゲンフリー難燃性充填剤と、を含む。
【0027】
エチレン系ポリマー
上記のように、ポリマー組成物は、第1のエチレン系ポリマーと、第2のエチレン系ポリマーと、を含む。本明細書で使用される場合、「エチレン系ポリマー」は、モノマーの50重量%超がエチレンであるが、他のコモノマーも用いられ得るポリマーである。「ポリマー」は、一緒に結合された同じ又は異なるタイプの複数のモノマーを含む高分子化合物を意味し、ホモポリマー及びインターポリマーを含む。「インターポリマー」は、一緒に結合された少なくとも2つの異なるモノマー型を含むポリマーを意味する。インターポリマーには、コポリマー(通常、2つの異なるモノマー型から調製されるポリマーを指すために用いられる)、及び3つ以上の異なるモノマー型から調製されるポリマー(例えば、ターポリマー(3つの異なるモノマー型)及びクォーターポリマー(4つの異なるモノマー型))が含まれる。エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマーであり得る。本明細書で使用するとき、「ホモポリマー」は、単一のモノマータイプに由来する繰り返し単位を含むポリマーを意味するが、触媒、開始剤、溶媒、及び連鎖移動剤などの、ホモポリマーを調製する際に使用される他の成分の、残渣量を除外しない。
【0028】
エチレン系ポリマーは、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、NMR)又はフーリエ変換赤外(Fourier-Transform Infrared、FTIR)分光法を使用して測定したときに、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、又は91重量%以上、又は92重量%以上、又は93重量%以上、又は94重量%以上、又は95重量%以上、又は96重量%以上、又は97重量%以上、又は97.5重量%以上、又は98重量%以上、又は99重量%以上、一方で同時に100重量%以下、99.5重量%以下、又は99重量%以下、又は98重量%以下、又は97重量%以下、又は96重量%以下、又は95重量%以下、又は94重量%以下、又は93重量%以下、又は92重量%以下、又は91重量%以下、又は90重量%以下、又は85重量%以下、又は80重量%以下、又は70重量%以下、又は60重量%以下のエチレンを含み得る。好適なエチレン系ポリマーの非限定的な例としては、エチレン/アルファ-オレフィン(α-オレフィン)コポリマー、エチレン/C~Cアルファ-オレフィンコポリマー、エチレン/C~Cアルファ-オレフィンコポリマー、並びにエチレンと以下のコモノマー:アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルエステル、一酸化炭素、無水マレイン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、マレイン酸のモノエステル、マレイン酸のジエステル、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルキルシラン、及びそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上とのコポリマーが挙げられる。好適なエチレン系ポリマーとしては、これらのコモノマーがエチレン系ポリマーにグラフトされているものも挙げられる。エチレン系ポリマーの他の単位としては、C、又はC、又はC、又はC、又はC10、又はC12、又はC16、又はC18、又はC20α-オレフィン、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、及び1-オクテンが挙げられ得る。
【0029】
エチレン系ポリマーは、単峰性又は多峰性の分子量分布を有することができ、単独で、又は1つ以上の他の型のエチレン系ポリマーとの組み合わせ(例えば、モノマー組成及び含有量、触媒調製法、分子量、分子量分布、密度などによって互いに異なる2つ以上のエチレン系ポリマーのブレンド)で使用され得る。エチレン系ポリマーのブレンドが使用される場合、ポリマーは、任意の反応器内プロセス又は反応器後プロセスによってブレンドされ得る。
【0030】
ポリマー組成物は、第1のエチレン系ポリマーと、第2のエチレン系ポリマーと、を含む。ポリマー組成物中で使用される第1及び第2のエチレン系ポリマーは、密度、メルトフローインデックス、化学成分、分子量分布、異なる温度での結晶化度、及び酸化誘導時間が互いに異なり得る。
【0031】
第1のエチレン系ポリマー
第1のエチレン系ポリマーは、0.925g/cc~0.950g/ccの密度を有し得る。例えば、第1のエチレン系ポリマーの密度は、0.925g/cc以上、又は0.930g/cc以上、又は0.935g/cc以上、又は0.940g/cc以上、又は0.945g/cc以上、一方で同時に0.950g/cc以下、又は0.945g/cc以下、又は0.940g/cc以下、又は0.935g/cc以下、又は0.930g/cc以下であり得る。
【0032】
第1のエチレン系ポリマーは、0.1g/10分~5g/10分のメルトインデックスを有し得る。例えば、第1のエチレン系ポリマーのメルトインデックスは、0.1g/10分以上、又は0.5g/10分以上、又は1.0g/10分以上、又は1.5g/10分以上、又は2.0g/10分以上、又は2.5g/10分以上、又は3.0g/10分以上、又は3.5g/10分以上、又は4.0g/10分以上、又は4.5g/10分以上、一方で同時に5.0g/10分以下、又は4.5g/10分以下、又は4.0g/10分以下、又は3.5g/10分以下、又は3.0g/10分以下、又は2.5g/10分以下、又は2.0g/10分以下、又は1.5g/10分以下、又は1.0g/10分以下、又は0.5g/10分以下であり得る。メルトインデックスは、ASTM D1238に従って、190℃及び2.16kgで測定される。
【0033】
多峰性の具体例では、第1のエチレン系ポリマーは、高分子量(「低密度」)成分及び低分子量(「高密度」)成分を含む。
【0034】
エチレン系ポリマーの低密度成分は、0.910g/cc~0.935g/ccの密度を有し得る。例えば、第1のエチレン系ポリマーの低密度成分の密度は、0.910g/cc以上、又は0.915g/cc以上、又は0.920g/cc以上、又は0.925g/cc以上、又は0.930g/cc以上、一方で同時に0.935g/cc以下、又は0.930g/cc以下、又は0.925g/cc以下、又は0.920g/cc以下、又は0.915g/cc以下であり得る。
【0035】
第1のエチレン系ポリマーの低密度成分は、0.1g/10分~1.0g/10分のメルトインデックスを有し得る。例えば、低密度成分のメルトインデックスは、0.01g/10分以上、又は0.1g/10分以上、又は0.2g/10分以上、又は0.3g/10分以上、又は0.4g/10分以上、又は0.5g/10分以上、又は0.6g/10分以上、又は0.7g/10分以上、又は0.8g/10分以上、又は0.9g/10分以上、一方で同時に1.0g/10分以下、又は0.9g/10分以下、又は0.8g/10分以下、又は0.7g/10分以下、又は0.6g/10分以下、又は0.5g/10分以下、又は0.4g/10分以下、又は0.3g/10分以下、又は0.2g/10分以下、又は0.1g/10分以下であり得る。メルトインデックスは、ASTM D1238に従って、190℃及び2.16kgで測定される。
【0036】
第1のエチレン系ポリマーの高密度成分は、0.945g/cc~0.965g/ccの密度を有し得る。例えば、第1のエチレン系ポリマーの高密度成分の密度は、0.945g/cc以上、又は0.950g/cc以上、又は0.955g/cc以上、又は0.960g/cc以上、一方で同時に0.965g/cc以下、又は0.960g/cc以下、又は0.955g/cc以下、又は0.950g/cc以下であり得る。
【0037】
第1のエチレン系ポリマーの高密度成分は、2.0g/10分~200g/10分のメルトインデックスを有し得る。例えば、高密度成分のメルトインデックスは、2.0g/10分以上、又は10g/10分以上、又は20g/10分以上、又は50g/10分以上、又は100g/10分以上、又は150g/10分以上、一方で同時に200g/10分以下、又は150g/10分以下、又は100g/10分以下、又は50g/10分以下、又は20g/10分以下、又は10g/10分以下、又は5g/10分以下であり得る。メルトインデックスは、ASTM D1238に従って、190℃及び2.16kgで測定される。
【0038】
第1のエチレン系ポリマーは、結晶化度試験に従って測定したときに25重量%以上の110℃での結晶化度を有する。結晶化度試験は、以下の実施例の項において詳細に定義される。第1のエチレン系ポリマーは、結晶化度試験に従って測定したときに25重量%以上、又は30重量%以上、又は35重量%以上、又は40重量%以上、又は45重量%以上、又は50重量%以上、又は55重量%以上、又は60重量%以上、又は65重量%以上、一方で同時に70重量%以下、又は65重量%以下、又は60重量%以下、又は55重量%以下、又は50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下の110℃での結晶化度を有し得る。第1のエチレン系ポリマーは、結晶化度試験に従って測定したときに40重量%~70重量%の23℃での結晶化度を有し得る。例えば、第1のエチレン系ポリマーは、結晶化度試験に従って測定したときに40重量%以上、又は45重量%以上、又は50重量%以上、又は55重量%以上、又は60重量%以上、又は65重量%以上、一方で同時に70重量%以下、又は65重量%以下、又は60重量%以下、又は55重量%以下、又は50重量%以下、又は45重量%以下の23℃での結晶化度を有し得る。
【0039】
第1のエチレン系ポリマーは、ASTM D3895に従って測定したときに20分以上の200℃での酸化誘導時間(Oxidative Induction Time、「OIT」)を有する。例えば、第1のエチレン系ポリマーは、ASTM D3895に従って測定したときに20分以上、又は30分以上、又は40分以上、又は50分以上、又は60分以上、又は70分以上、又は80分以上、又は90分以上、又は100分以上、又は110分以上、又は120分以上、又は130分以上、又は140分以上、又は150分以上、一方で同時に160分以下、又は150分以下、又は140分以下、又は130分以下、又は120分以下、又は110分以下、又は100分以下、又は90分以下、又は80分以下、又は70分以下、又は60分以下の200℃での酸化誘導時間を有し得る。200℃での増加したOITは、熱曝露後のポリマー組成物の弾性率の劣化に有益に抵抗し、それによってホットナイフ試験におけるより良好な性能を可能にすると考えられる。
【0040】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、5重量%以上、又は10重量%以上、又は15重量%以上、又は20重量%以上、又は25重量%以上、又は30重量%以上、又は35重量%以上、一方で同時に40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下、又は20重量%以下、又は15重量%以下、又は10重量%以下の第1のエチレン系ポリマーを含み得る。
【0041】
第2のエチレン系ポリマー
第2のエチレン系ポリマーは、ASTM D792に従って測定したときに0.860g/cc以上、又は0.865g/cc以上、又は0.870g/cc以上、又は0.880g/cc以上、又は0.885g/cc以上、又は0.890g/cc以上、又は0.900g/cc以上、又は0.910g/cc以上、又は0.920g/cc以上、一方で同時に1.000g/cc以下、又は0.990g/cc以下、又は0.980g/cc以下、又は0.970g/cc以下、又は0.960g/cc以下、又は0.950g/cc以下、又は0.940g/cc以下、又は0.930g/cc以下、又は0.920g/cc以下、又は0.910g/cc以下、又は0.900g/cc以下、又は0.890g/cc以下、又は0.880g/cc以下、又は0.870g/cc以下の密度を有し得る。
【0042】
第2のエチレン系ポリマーは、1g/10分以上、又は2g/10分以上、3g/10分以上、4g/10分以上、5g/10分以上、6g/10分以上、7g/10分以上、8g/10分以上、9g/10分以上、10g/10分以上、又は11g/10分以上、又は12g/10分以上、13g/10分以上、14g/10分以上、15g/10分以上、16g/10分以上、17g/10分以上、18g/10分以上、19g/10分以上、一方で同時に20g/10分以下、又は19g/10分以下、又は18g/10分以下、又は17g/10分以下、又は16g/10分以下、又は15g/10分以下、又は14g/10分以下、又は13g/10分以下、又は12g/10分以下、又は11g/10分以下、又は10g/10分以下、又は9g/10分以下、又は8g/10分以下、又は7g/10分以下、又は6g/10分以下、又は5g/10分以下、又は4g/10分以下、又は3g/10分以下、又は2g/10分以下のメルトインデックスを有し得る。メルトインデックスは、ASTM D1238に従って、190℃及び2.16kgで測定される。
【0043】
第2のエチレン系ポリマーは、結晶化度試験に従って測定したときに40重量%以下の23℃での結晶化度を有する。例えば、第2のエチレン系ポリマーは、結晶化度試験に従って測定したときに40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下、又は20重量%以下、又は15重量%以下、又は10重量%以下、又は5重量%以下、又は0重量%、一方で同時に1重量%以上、又は5重量%以上、又は10重量%以上、又は15重量%以上、又は20重量%以上、又は25重量%以上、又は30重量%以上、又は35重量%以上の23℃での結晶化度を有し得る。
【0044】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、5重量%以上、又は10重量%以上、又は15重量%以上、又は20重量%以上、又は25重量%以上、又は30重量%以上、又は35重量%以上、一方で同時に40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下、又は20重量%以下、又は15重量%以下、又は10重量%以下の第2のエチレン系ポリマーを含み得る。
【0045】
いくつかの例では、ポリマー組成物は、エチレンと、アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルエステル、一酸化炭素、無水マレイン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、マレイン酸のモノエステル、マレイン酸のジエステル、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルキルシラン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるコモノマー(共重合又はグラフト化)のうちの1つ以上とのコポリマーである第2のエチレン系ポリマーを含み得る。ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0重量%以上、又は1重量%以上、又は2重量%以上、又は3重量%以上、又は4重量%以上、又は5重量%以上、又は6重量%以上、又は7重量%以上、又は8重量%以上、又は9重量%以上、又は10重量%以上、又は15重量%以上、又は20重量%以上、又は25重量%以上、一方で同時に30重量%以下、又は25重量%以下、又は20重量%以下、又は15重量%以下、又は10重量%以下、又は9重量%以下、又は8重量%以下、又は7重量%以下、又は6重量%以下、又は5重量%以下、又は4重量%以下、又は3重量%以下、又は2重量%以下、又は1重量%以下の濃度で第2のエチレン系ポリマーのそのような例を含み得る。
【0046】
いくつかの例では、ポリマー組成物は、マレイン化された第2のエチレン系ポリマーを含み得る。本明細書で使用される場合、「マレイン化」という用語は、無水マレイン酸モノマーを組み込むために変性されたエチレン系ポリマーを示している。マレイン化エチレン系ポリマーは、無水マレイン酸モノマーをエチレン及び他のモノマー(存在する場合)と共重合して、ポリマー骨格に組み込まれた無水マレイン酸を有するインターポリマーを調製することによって形成され得る。追加的に、又は代替的に、無水マレイン酸は、エチレン系ポリマーにグラフト重合され得る。第2のエチレン系ポリマーのマレイン化された例は、ポリマー組成物のエチレン系ポリマーとHFFRとの間の相溶化剤として機能するのに有用であり得る。
【0047】
マレイン化された第2のエチレン系ポリマーは、マレイン化された第2のエチレン系ポリマーの総重量に基づいて、0.25重量%以上、又は0.50重量%以上、又は0.75重量%以上、又は1.00重量%以上、又は1.25重量%以上、又は1.50重量%以上、又は1.75重量%以上、又は2.00重量%以上、又は2.25重量%以上、又は2.50重量%以上、又は2.75重量%以上、一方で同時に3.00重量%以下、又は2.75重量%以下、又は2.50重量%以下、又は2.25重量%以下、又は2.00重量%以下、又は1.75重量%以下、又は1.50重量%以下、又は1.25重量%以下、又は1.00重量%以下、又は0.75重量%以下、又は0.5重量%以下の無水マレイン酸含有量を有し得る。無水マレイン酸濃度は、滴定分析によって決定される。滴定分析は、乾燥樹脂を利用することによって実施し、0.02N KOHで滴定して無水マレイン酸の量を決定する。乾燥ポリマーは、0.3~0.5グラムのマレイン化ポリマーを約150mLの還流キシレンに溶解することにより滴定される。完全に溶解した後、脱イオン水(4滴)を溶液に添加し、溶液を1時間還流する。次いで、1%チモールブルー(数滴)を溶液に添加し、紫色の形成で示されるように、溶液をエタノール中0.02N KOHで滴定する。次いで、溶液を0.05N HClのイソプロパノール溶液で黄色の終点まで逆滴定する。
【0048】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0重量%以上、又は1重量%以上、又は2重量%以上、又は3重量%以上、又は4重量%以上、又は5重量%以上、又は6重量%以上、又は7重量%以上、又は8重量%以上、又は9重量%以上、一方で同時に10重量%以下、又は9重量%以下、又は8重量%以下、又は7重量%以下、又は6重量%以下、又は5重量%以下、又は4重量%以下、又は3重量%以下、又は2重量%以下、又は1重量%以下のマレイン化された第2のエチレン系ポリマーを含み得る。
【0049】
ハロゲンフリー難燃性充填剤
ポリマー組成物のハロゲンフリー難燃剤は、炎の生成を阻害、抑制、又は遅延させ得る。ポリマー組成物に使用するのに好適なハロゲンフリー難燃剤の例としては、金属水和物、金属炭酸塩、赤リン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、カーボンナノチューブ、タルク、粘土、有機改質粘土、炭酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、三酸化アンチモン、珪灰石、マイカ、オクタモリブデン酸アンモニウム、フリット、中空ガラス微小球、膨張性化合物、膨張グラファイト、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態では、ハロゲンフリー難燃剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。ハロゲンフリー難燃剤は、8~24個の炭素原子、若しくは12~18個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和カルボン酸、又はその酸の金属塩で任意選択的に表面処理(被覆)され得る。例示的な表面処理は、米国特許第4,255,303号、米国特許第5,034,442号、米国特許第7,514,489号、米国特許出願公開第2008/0251273号、及び国際公開第2013/116283号に記載されている。代替的に、酸又は塩は、表面処理手順を使用するのではなく、単に同様の量で組成物に添加され得る。シラン、チタネート、ホスフェート、及びジルコネートを含む当該技術分野で既知の他の表面処理も使用されてもよい。
【0050】
本開示による組成物での使用に好適なハロゲンフリー難燃剤の市販の例としては、Nabaltec AGから入手可能なAPYRAL(商標)40CD水酸化アルミニウム、Magnifin Magnesiaprodukte GmbH&Co KGから入手可能なMAGNIFIN(商標)H5水酸化マグネシウム、Reverteから入手可能なMicrocarb 95Tウルトラミクロ化及び処理済み炭酸カルシウム、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の重量に基づいて、40重量%以上、又は42重量%以上、又は44重量%以上、又は46重量%以上、又は48%以上、又は50重量%以上、又は52重量%以上、又は54重量%以上、又は56重量%以上、又は58%以上、又は60重量%以上、又は62重量%以上、又は64重量%以上、又は66重量%以上、又は68%以上、又は70重量%以上、又は72重量%以上、又は74重量%以上、又は76重量%以上、又は78%以上、一方で同時に80重量%以下、又は78重量%以下、又は76重量%以下、又は74重量%以下、又は72重量%以下、又は70重量%以下、又は68重量%以下、又は66重量%以下、又は64重量%以下、又は62重量%以下、又は60重量%以下、又は58重量%以下、又は56重量%以下、又は54重量%以下、又は52重量%以下、又は50重量%以下、又は48重量%以下、又は46重量%以下、又は44重量%以下、又は42重量%以下の濃度でHFFR充填剤を含み得る。
【0052】
添加剤
ポリマー組成物は、酸化防止剤、架橋助剤、硬化促進剤及びスコーチ抑制剤、加工助剤、カップリング剤、紫外線安定剤(UV吸収剤を含む)、帯電防止剤、追加の成核剤、スリップ剤、潤滑剤、粘度調整剤、粘着付与剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、エクステンダオイル、酸捕捉剤、難燃剤、抗滴下剤(例えば、エチレン酢酸ビニル)、並びに金属不活性化剤の形態で追加の添加剤を含み得る。ポリマー組成物は、0.01重量%~20重量%の追加の添加剤のうちの1つ以上を含み得る。
【0053】
UV光安定剤は、ヒンダードアミン光安定剤(hindered amine light stabilizer、「HALS」)及びUV光吸収剤(UV light absorber、「UVA」)添加剤を含み得る。代表的なUVA添加剤には、Ciba,Inc.から市販されているTINUVIN 326(商標)光安定剤及びTINUVIN 328(商標)光安定剤などのベンゾトリアゾール型が含まれる。HAL’s添加剤及びUVA添加剤のブレンドも有効である。
【0054】
酸化防止剤は、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ-シンナメート)]メタンなどのヒンダードフェノール;ビス[(ベータ-(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)メチルカルボキシエチル)]-スルフィド、4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、及びチオジエチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)-ヒドロシンナメート;トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト及びジ-tert-ブチルフェニル-ホスホナイトなどのホスファイト及びホスホナイト;ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、及びジステアリルチオジプロピオネートなどのチオ化合物;様々なシロキサン;重合2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、n,n’-ビス(1,4-ジメチルペンチル-p-フェニレンジアミン)、アルキル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(アルファ、アルファ-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニル-p-フェニレンジアミン、混合ジ-アリール-p-フェニレンジアミン、及び他のヒンダードアミン劣化防止剤又は安定剤を含み得る。
【0055】
加工助剤は、ステアリン酸亜鉛又はステアリン酸カルシウムなどのカルボン酸の金属塩;ステアリン酸、オレイン酸、又はエルカ酸などの脂肪酸;ステアラミド、オレアミド、エルカミド、又はN,N’-エチレンビス-ステアラミドなどの脂肪アミド;ポリエチレンワックス;酸化ポリエチレンワックス;エチレンオキシドのポリマー;エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー;植物ワックス;石油ワックス;非イオン性界面活性剤;シリコーン流体及びポリシロキサンを含み得る。
【0056】
配合及び被覆導体の形成
ポリマー組成物の成分は、溶融ブレンドのためにバッチ又は連続ミキサーに添加されて、溶融ブレンドされた組成物を形成し得る。成分は、他の成分とブレンドするために、任意の順序で、又は最初に1つ以上のマスターバッチを調製して添加することができる。溶融ブレンドは、最高溶融ポリマーの融点を超える温度で行われ得る。次に、溶融ブレンドされた組成物を、押出機若しくは射出成形機に送達するか、又はダイを通過させて所望の物品に成形するか、あるいは材料の保管又は調製のためにペレット、テープ、ストリップ、若しくはフィルム、又は他の形態に変換して次の成形又は加工工程に供給する。任意選択的に、ペレット又は何らかの類似の構成に成形される場合、ペレットなどを粘着防止剤で被覆して、保管中の取り扱いを容易にすることができる。
【0057】
使用される調合設備の例としては、BANBURY(商標)又はBOLLING(商標)内部ミキサーなどの内部バッチミキサーが挙げられる。代替的に、FARRELL(商標)連続ミキサー、WERNER(商標)及びPFLEIDERER(商標)二軸スクリューミキサー、又はBUSS(商標)混錬連続押出機などの、連続単軸又は二軸スクリューミキサーが使用され得る。利用するミキサーの種類、及びミキサーの動作条件は、粘度、体積抵抗率、及び押出表面平滑性などの組成物の特性に影響を及ぼす。
【0058】
被覆導体は、このポリマー組成物から形成され得る。被覆導体は、導体及び被覆を含む。被覆は、ポリマー組成物を含む。本ポリマー組成物は、導体の周囲に少なくとも部分的に配設されて、被覆導体を製造する。導体は、導電性金属又は光透過性構造体を含むことができる。
【0059】
被覆導体を製造するためのプロセスは、ポリマー組成物を混合し、押出機中で少なくともポリマー成分の溶融温度まで加熱してポリマー溶融ブレンドを形成し、次いで、ポリマー溶融ブレンドを導体上に被覆することを含む。「上に」という用語は、ポリマー溶融ブレンドと導体との間の直接接触又は間接接触を含む。ポリマー溶融ブレンドは、押出可能な状態にある。
【0060】
ポリマー組成物は、導体の上及び/又は周囲に配設されて、被覆を形成する。被覆は、絶縁層などの1つ以上の内層であり得る。被覆は、導体を全体的に若しくは部分的に覆うか、又はそうでなければ取り囲むか、若しくは包み得る。被覆は、導体を取り囲む唯一の構成要素であり得る。代替的に、被覆は、導体を包む多層ジャケット又はシースのうちの1層であってもよい。被覆は、導体と直接接触し得る。被覆は、導体を取り囲む絶縁層に直接接触し得る。
【実施例
【0061】
材料
以下の材料を、以下の実施例で用いる。
【0062】
2EP(A)は、オクテンコモノマーを有し、0.885g/ccの密度、1.0g/10分のメルトインデックス、23℃で23重量%の結晶化度を示すエチレン系ポリマーであり、The Dow Chemical Company、Midland,MIから市販されている。
【0063】
2EP(B)は、ブテンコモノマーを有し、0.865g/ccの密度、及び5.0g/10分のメルトインデックス、23℃で9重量%の結晶化度を示すエチレン系ポリマーであり、The Dow Chemical Company、Midland,MIから市販されている。
【0064】
LLDPEは、0.92g/ccの密度、1.0g/10分のメルトインデックス、52重量%の全結晶化度、23℃で50重量%の結晶化度、110℃で20重量%の結晶化度、200℃で25分のOITを有する直鎖状低密度ポリエチレンであり、The Dow Chemical Company、Midland,MIから市販されている。
【0065】
1EP(A)は、0.931g/ccの密度、0.70g/10分のメルトインデックス、57重量%の全結晶化度、23℃で56重量%の結晶化度、110℃で35重量%の結晶化度、200℃で123分のOITを有するエチレン系ポリマーであり、The Dow Chemical Company、Midland,MIから市販されている。
【0066】
1EP(B)は、0.941g/ccの密度、0.55g/10分のメルトインデックス、66重量%の全結晶化度、23℃で65重量%の結晶化度、110℃で50重量%の結晶化度、200℃で146分のOITを有するエチレン系ポリマーであり、The Dow Chemical Company、Midland,MIから市販されている。
【0067】
1EP(C)は、0.940g/ccの密度、1.0g/10分のメルトインデックス、64重量%の全結晶化度、23℃で63重量%の結晶化度、110℃で48重量%の結晶化度、200℃で25分のOITを有するエチレン系ポリマーであり、The Dow Chemical Company、Midland,MIから市販されている。
【0068】
MAH-2EP(A)は、0.93g/ccの密度、1.75g/10分のメルトインデックス、及び0.9重量%の無水マレイン酸含有量を有する無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーであり、The Dow Chemical Company、Midland,MIから市販されている。
【0069】
MAH-2EP(B)は、0.88g/ccの密度、3.7g/10分のメルトインデックス、及び0.9重量%の無水マレイン酸含有量を有する無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーであり、The Dow Chemical Company、Midland,MIから市販されている。
【0070】
HFFR1は、水酸化マグネシウムであり、その例は、Huber(Martinswerk GMBH)、Bergheim,Germanyから商品名MAGNIFIN(商標)H-5MVで市販されている。
【0071】
HFFR2は、Europiren、Rotterdam,NetherlandsからEcopiren 3.5LCとして市販されている、1.5%脂肪酸で被覆された水酸化マグネシウム(ブルーサイト)である。
【0072】
VA-2EP(A)は、28重量%の酢酸ビニル含有量、0.95g/ccの密度、6.0g/10分のメルトインデックス、21重量%の全結晶化度を有するエチレン酢酸ビニルコポリマーであり、The Dow Chemical Company、Midland,MIから市販されている。
【0073】
VA-2EP(B)は、28重量%の酢酸ビニル含有量、0.951g/ccの密度、400g/10分のメルトインデックス、21重量%の全結晶化度を有するエチレン酢酸ビニルコポリマーであり、The Dow Chemical Company、Midland,MIから市販されている。
【0074】
安定剤MBは、Silma s.r.l.、ItalyからSILMASTAB(商標)AX1440として市販されているワンパック熱プロセス金属不活性化エージング安定剤である。
【0075】
抗加水分解MBは、Silma s.r.l.、ItalyからSILMASTAB(商標)AX2244として市販されているオレフィンポリマー化合物の安定化に使用されるマスターバッチである。
【0076】
SiMB1は、低密度ポリエチレン中に分散された50重量%の超高分子量シロキサンポリマーを含有するマスターバッチペレット化配合物であり、DuPont、Wilmington,DelawareからシリコーンMB 50-002として入手可能である。
【0077】
SiMB2は、ポリジメチルシロキサンに基づくスリップ剤、外部潤滑剤、及び剥離剤として作用するマスターバッチであり、Silma s.r.l.、ItalyからSILMAPROCESS(商標)AL1142Aとして市販されている。
【0078】
試験方法
結晶化度試験:示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、DSC)機器DSC Q1000(TA Instruments)を使用して、23℃又は110℃におけるエチレン系ポリマーの溶融ピーク、及びパーセント(%)又は重量パーセント(重量%)結晶化度を決定する。(A)ベースライン較正DSC機器。ソフトウェア較正ウィザードを使用する。アルミニウムDSCパン中に試料を全く含まずにセルを-80℃~280℃に加熱することによってベースラインを得る。次いで、較正ウィザードの指示に従ってサファイア標準を使用する。標準試料を180℃に加熱し、10℃/分の冷却速度で120℃まで冷却し、次いで120℃で1分間、標準試料を等温的に保持し、その後標準試料を10℃/分の加熱速度で120℃から180℃に加熱することによって、1~2ミリグラム(mg)の新鮮なインジウム試料を分析する。インジウム標準試料が、1グラム当たり融解熱=28.71±0.50ジュール(J/g)、及び溶融開始=156.6°±0.5℃を有することを決定し、(B)ベースライン較正したDSC機器を使用して、試験試料に対してDSC測定を実行する。半結晶性エチレン系ポリマーの試験試料を160℃の温度で薄いフィルムにプレスする。アルミニウムDSCパン内に5~8mgの試験試料フィルムを秤量する。パンに蓋を圧着してパンを密封し、密閉雰囲気を確保する。蓋で密封されたパンをDSCセル内に配置し、30℃でセルを平衡させ、約100℃/分の速度で190℃まで加熱し、試料を190℃に3分間維持し、試料を10℃/分の速度で-60℃まで冷却して、冷却曲線融解熱(H)を得、-60℃で3分間等温的に保持する。次いで、試料を再度10℃/分の速度で190℃に加熱して、第2の加熱曲線融解熱(ΔH)を得る。第2の加熱曲線を使用して、-20℃(0.90g/cc以上の密度のエチレンホモポリマー、エチレンと加水分解性シランモノマーとのコポリマー、及びエチレンアルファオレフィンコポリマーの場合)、又は-40℃(0.90g/cc未満の密度のエチレンと不飽和エステルとのコポリマー、及びエチレンアルファオレフィンコポリマーの場合)から溶融終了までを積分することによって、「全」融解熱(J/g)を計算する。第2の加熱曲線を使用して、23℃で垂直に降下することによって、23℃(室温)から溶融終了までの「室温」融解熱(J/g)を計算する。第2の加熱曲線を使用して、110℃で垂直に降下することによって、110℃から溶融終了までの「110℃」融解熱(J/g)を計算する。「全結晶化度」(「全」融解熱から計算される)、並びに「室温での結晶化度」(23℃融解熱から計算される)、及び「110℃での結晶化度」(110℃融解熱から計算される)を測定及び報告する。結晶化度は、試験試料の第2の加熱曲線融解熱(ΔH)及び100%結晶性ポリエチレンの融解熱に対するその正規化から、ポリマーのパーセント(%)又は重量パーセント(重量%)結晶化度として、測定及び報告され、%結晶化度又は重量%結晶化度=(ΔH*100%)/292J/gであり、式中、ΔHは、上記で定義されたとおりであり、*は、数学的乗算を示し、/は、数学的除算を示し、292J/gは、100%結晶性ポリエチレンの融解熱(ΔH)の文献値である。
【0079】
ホットナイフ試験は、IEC 60811-508に従って試験され、循環空気中110℃で6時間エージングした後に50%以下の最大圧入値を達成することによって合格する。
【0080】
国際標準化機構527型5aのドッグボーンを使用して、Instron Calibration Lab製の5565引張試験機で、ASTM D638に従って、試料の破断点引張伸びを実施した。
【0081】
試料の調製
比較例1及び2、並びに本発明の実施例1~4のポリマー構成成分及びマスターバッチ構成成分を以下のように調製した。各実施例の約500グラムを、第1にポリマー構成成分を160℃で添加し、第2に添加剤を添加して、ブレンドを形成することによって、ツインロールミルで生成した。3分間の溶融及び均質化の後、HFFRをブレンドに添加した。充填剤を完全に組み込んだ後、溶融化合物をロール上に10分間放置し、厚さ1mmのシートとして取り出し、周囲条件下で冷却した。機械的特性試験のための試験片をシートから直接切断した。
【0082】
本発明の実施例5~10を、25mm、42L/D共回転二軸スクリュー押出機で、300mmフラットスリットダイを通して押出することによって混合した。次いで、押出物を3本のロールカレンダーに供給して、厚さ1mmのシート試料を成形した。次いで、機械的試験のための試料をシートから切断した。
【0083】
結果
表1は、比較例(comparative example、「CE」)1及びCE2、並びに本発明の実施例(inventive example、「IE」)1~IE10の組成物を提供する。表1は、各実施例についての破断点引張伸び(tensile elongation、「TE」)及びホットナイフ機械的性能データを提供する。
【0084】
【表1】
【0085】
表1で見ることができるように、CE1及びCE2は、第1のエチレン系ポリマー(すなわち、25重量%以上の110℃での結晶化度を有する)を含まず、したがって、ホットナイフ性能要件を満たすことができない。2EP(A)又はLLDPEの結晶化度は、HFFRの組み込みを可能にし、TE要件を満たすのに十分に低いが、110℃での結晶化度は、ホットナイフ試験に合格するには低すぎる。IE1~IE10は全て、第1のエチレン系ポリマー(すなわち、25重量%以上の110℃での結晶化度を有するエチレン系ポリマー)を組み込むことによって、TE及びホットナイフ要件を満たすことができる。IE1~IE10は、35重量%以上の110℃での結晶化度を有するエチレン系ポリマーの使用が、TE及びホットナイフ要件に合格するのを可能にすることを実証する。110℃で25重量%という低い結晶化度を有するエチレン系ポリマーの組み込みが、ポリマー組成物がTE及びホットナイフ要件に合格することを可能にするであろうと考えられる。IE1~IE10はまた、広い範囲(すなわち、8重量%~約30重量%)の第1のエチレン系ポリマーがポリマー組成物中で使用され、依然としてTE及びホットナイフの機械的特性を達成し得ることを実証する。5重量%~40重量%の第1のエチレン系ポリマーを使用することが、ポリマー組成物がTE及びホットナイフの機械的特性を達成することを可能にするであろうと考えられる。1EP(A)、1EP(B)、及び1EP(C)についての200℃での増加した又は十分なOITは、熱曝露後の試料の弾性率の劣化に有益に抵抗し、それによってホットナイフ試験におけるより良好な性能を可能にするとも考えられる。
【国際調査報告】