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特表2023-547870物体に導電性トラックをプリントするための方法および関連する電子的機能付与の方法
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  • 特表-物体に導電性トラックをプリントするための方法および関連する電子的機能付与の方法 図1
  • 特表-物体に導電性トラックをプリントするための方法および関連する電子的機能付与の方法 図2
  • 特表-物体に導電性トラックをプリントするための方法および関連する電子的機能付与の方法 図3
  • 特表-物体に導電性トラックをプリントするための方法および関連する電子的機能付与の方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】物体に導電性トラックをプリントするための方法および関連する電子的機能付与の方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/10 20060101AFI20231107BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20231107BHJP
   B41J 3/407 20060101ALI20231107BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
H05K3/10 D
B25J13/08 A
B41J3/407
H05K13/04 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524799
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2021078676
(87)【国際公開番号】W WO2022084197
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】2010861
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509265302
【氏名又は名称】アンスティテュ・ポリテクニック・ドゥ・グルノーブル
(71)【出願人】
【識別番号】323002277
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ グルノーブル アルプ
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・マリン
(72)【発明者】
【氏名】ジョイア・フリア
(72)【発明者】
【氏名】ディディエ・ショシー
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ・ベネヴェンティ
【テーマコード(参考)】
3C707
5E343
5E353
【Fターム(参考)】
3C707AS13
3C707KS03
3C707KS04
3C707KV11
3C707LS15
3C707LT06
5E343AA01
5E343BB72
5E343DD12
5E343DD15
5E343FF05
5E343GG20
5E353JJ07
5E353MM02
5E353MM08
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのアームロボットと、少なくとも1つの導電性インクプリントヘッドとを使用して、物体の表面に少なくとも1つの導電性トラックをプリントするための方法100であって、物体がロボットの作業エリア内に配置され、方法が、物体に対する動きを制御するロボットのアームに取り付けられたスキャナを使って物体の3Dスキャンをとる110ステップと、物体の表面のスキャン部位のデジタルモデルを構築する120ステップと、以前に構築されたデジタルモデル上に導電性トラック10をデジタル的に描画する130ステップと、導電性トラックの描画に応じてプリントヘッド3の経路を生成する140ステップと、以前に生成された経路に沿って物体に対する動きを制御するロボットのアームに取り付けられたプリントヘッドを使って導電性トラックをプリントする150ステップとを含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体(1)の表面に少なくとも1つの導電性トラック(10)をプリントするための方法(100)であって、複数の自由度を有する少なくとも1つのロボットアーム(2)と、導電性インクのための少なくとも1つのプリントヘッド(3)とを使用し、前記物体(1)の少なくとも一部位が前記少なくとも1つのロボット(2)の作業スペース内に配置され、方法(100)が、
ロボットアーム(2)に取り付けられたスキャナ(4)を使って前記物体(1)の前記表面の少なくとも一部位の3Dスキャンをとる(110)ステップであって、前記ロボットアーム(2)が、前記物体(1)に対するその動きを可能にする、ステップと、
前記とられた3Dスキャン(110)から、前記物体(1)の前記表面のスキャン部位のデジタルモデルをCADソフトウェアを使って構築する(120)ステップと、
以前に構築された前記デジタルモデル(120)上に導電性トラック(10)をCADソフトウェアを使ってデジタル的に描画する(130)ステップと、
前記導電性トラック(10)の前記描画(130)をもとにCADソフトウェアを使って前記プリントヘッド(3)の軌道を生成する(140)ステップと、
ロボットアーム(2)に取り付けられた前記プリントヘッド(3)を用いて前記少なくとも1つの導電性トラック(10)をプリントする(150)ステップであって、前記ロボットアーム(2)が、以前に生成された前記軌道(140)に沿って前記物体(1)に対するその動きを可能にする、ステップと
を含む、方法(100)。
【請求項2】
前記物体(1)の前記3Dスキャンをとる(110)ステップの後、前記デジタルモデルを構築する(120)ステップの前に、前記少なくとも1つのロボット(2)の基準マークに対する前記物体(1)の位置を特定する(125)ことからなるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記導電性トラック(10)の前記描画(130)が、前記構築されたデジタルモデル(120)上で直接行われるか、または前記構築されたデジタルモデル(120)の上に前記導電性トラック(10)の二次元デジタルモデルを投影して生成される、請求項1または2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのロボット(2)が少なくとも1つの6軸関節ロボットアームを備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記スキャナ(4)がレーザ三角測量センサを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記レーザ三角測量センサが、レーザスポットセンサおよびレーザラインセンサのうち少なくとも1つを備える、請求項5に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記プリントステップ(3)が接触式または非接触式定量システム(30)の使用をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
複数の導電性トラック(10)がプリント(150)され、それらが全体として少なくとも1つのプリント回路(11)を形成する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項9】
必要な場合には以前に生成された前記軌道(140)に沿って、前記ロボット(2)のアームに取り付けられたスプレイバルブ(5)を使って、少なくとも1つの導電性トラック(10)を処理する(155)ステップであって、前記ロボット(2)の前記アームが、前記物体(1)に対するその移動を可能にする、ステップを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記3Dスキャンをとる(110)ステップの前に、前記プリントヘッド(3)および場合によっては付随する定量システム(30)、前記スキャナ(4)、スプレイバルブ(5)、ならびに一体化された視覚装置(60)を有するピックアンドプレース装置(6)のうち少なくとも1つのデジタルモデルの生成(105)を含む初期化ステップを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記プリントヘッド(3)および場合によっては付随する定量システム(30)、前記スキャナ(4)、スプレイバルブ(5)、ならびに一体化された視覚装置(60)を有するピックアンドプレース装置(6)のうち少なくとも2つが同じロボットアーム(2)に取り付けられた、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項12】
前記プリントヘッド(3)および場合によっては付随する定量システム(30)、前記スキャナ(4)、スプレイバルブ(5)、ならびに一体化された視覚装置(60)を有するピックアンドプレース装置(6)のうち少なくとも2つが異なるロボットアーム(2)に取り付けられた、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項13】
物体(1)に電子的機能を付与する(200)方法であって、プリント回路(11)を形成する複数の導電性トラック(10)を前記物体(1)上にプリントするために、請求項1から12のいずれか一項に記載の物体(1)の前記表面に少なくとも1つの導電性トラック(10)をプリント(100)する方法を含み、前記ロボット(2)のアームに取り付けられた、一体化された視覚装置(60)を有するピックアンドプレース装置(6)を用いて前記プリント回路(11)の所定の場所に電子部品(12)を定置(160)するステップをさらに含む、方法。
【請求項14】
少なくとも1つのプロセッサによって実行されたとき、請求項1から12のいずれか一項に記載の物体(1)の前記表面に少なくとも1つの導電性トラック(10)をプリントする(100)方法のステップを少なくとも実行する命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項15】
少なくとも1つのプロセッサによって実行されたとき、請求項13による物体(1)に電子的機能を付与する方法(200)のステップを少なくとも実行する命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の表面に導電性トラックをプリントするためのシステムおよび方法の分野に関する。本発明は、物体の電子的機能付与に対し、その幾何学形状にかかわらず特に有利に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
三次元(3D)物体の表面に導電性トラックをプリントするための方法はすでに幾つか存在している。
【0003】
とりわけ、特許文献1は、
・ 導電性トラックがプリントされる物体を把持し、動かすための複数の自由度を有するロボットと、
・ 導電性インクを物体の表面に放出するためのインクジェットプリントヘッドと
を使用し、
ロボットは、プリント中、物体の位置を調整するように構成されて、物体がプリントヘッドに対して所定の空間経路に沿って動き、プリントヘッドが常に当該瞬間にプリントされる物体のターゲット面に対してほぼ垂直となるようにすることを提案している。
【0004】
特許文献1によるシステムの1つの欠点は、それが生産ラインでの使用に適していない、または少なくとも適しているとは言い難いところにある。実際、少なくとも機能を付与される物体を入れ替えるためには生産ラインを止める必要がある。さらに、導電性トラックの位置決め精度を確保するためにはロボットによって物体がどのように摘み上げられたかを正確に知る必要があるが、それには若干の困難があり、どちらかというと、期待される産業化レベルに見合うものではない。さらに、特許文献1によるシステムは、ロボットのハンドリング能力に対応したサイズ、形状、そしてとりわけ重量の物体に限られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/097932号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、物体の表面に導電性トラックをプリントするための方法であって、上述の欠点の少なくとも1つを克服することを可能にする方法を提案することが本発明の目的の1つである。本発明の別の目的は、物体に電子的機能を付与するための方法であって、物体の試作品の設計から製造(プリプロダクションランをも含む)までの時間を短縮することを可能にする方法を提案することにある。
【0007】
本発明の他の目的、特徴および利点はこの先の説明および添付の図面によって明らかとなろう。他の利点を盛り込むことができることも理解される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的の達成のため、本発明の第1の態様によれば、物体の表面に少なくとも1つの導電性トラックをプリントするための方法が提供される。この方法は、複数の自由度を有する少なくとも1つのロボットアームと、導電性インクのための少なくとも1つのプリントヘッドとを使用する。物体の少なくとも一部位は当該少なくとも1つのロボットの作業スペース内に配置される。
【0009】
このプリント方法は、
・ ロボットアームに取り付けられたスキャナを使って物体の表面の少なくとも一部位の3Dスキャンをとるステップであって、ロボットアームが、物体に対するその動きを可能にする、ステップと、
・ とられた3Dスキャンから、物体の表面のスキャン部位のデジタルモデルをCADソフトウェアを使って構築するステップと、
・ 以前に構築されたデジタルモデル上に導電性トラックをCADソフトウェアを使ってデジタル的に描画するステップと、
・ 導電性トラックの描画をもとにCADソフトウェアを使ってプリントヘッドの軌道を生成するステップと、
・ ロボットアームに取り付けられたプリントヘッドを用いて当該少なくとも1つの導電性トラックをプリントするステップであって、ロボットアームが、以前に生成された軌道に沿って物体に対するその動きを可能にする、ステップと
を含む。
【0010】
そのため、本発明の第1の態様による方法は、3Dスキャン動作および導電性インクのプリント動作を、
・ 柔軟かつモジュール式に、かつ/または、
・ 使用およびプログラミングに関してシンプルに、かつ/または、
・ シンプルなソフトウェアおよびユーザーインターフェースで、かつ/または、
・ 設計から試作品の製造もしくはプリプロダクションランまでの時間を今よりも短縮して、かつ/または、
・ 産業環境に対応した形で、かつ/または、
・ 既存の自動化された生産ラインに組込み可能な形で
行うことができる。
【0011】
任意選択で、上で紹介したプリント方法は、単独でまたは組み合わせて実施できる以下の特徴の少なくとも1つをさらに有することができる。
【0012】
1つの例によれば、物体は三次元物体である。
【0013】
別の例によれば、方法は、物体の3Dスキャンをとるステップの後、当該デジタルモデルを構築するステップの前に、当該少なくとも1つのロボットの基準マーク(TCP - ツール中心点(Tool Center Point))に対する物体の位置を特定するステップをさらに含む。
【0014】
別の例によれば、導電性トラックの描画は、構築されたデジタルモデル上で直接行われるか、または構築されたデジタルモデルの上に導電性トラックの二次元(2D)デジタルモデルを投影して生成される。
【0015】
別の例によれば、当該少なくとも1つのロボットは少なくとも1つの6軸関節ロボットアームを備える。
【0016】
別の例によれば、スキャナはレーザ三角測量センサを備える。レーザ三角測量センサは、レーザスポットセンサおよびレーザラインセンサのうち少なくとも1つを備えることができる。
【0017】
別の例によれば、プリントステップは、接触式(ニードル経由空圧押出しまたはニードル経由体積押出し)または非接触式(圧電液滴インクジェット)定量システムの使用も含む。
【0018】
別の例によれば、複数の導電性トラックがプリントされ、それらが全体として少なくとも1つのプリント回路を形成する。
【0019】
別の例によれば、方法は、必要な場合には以前に生成された軌道に沿って、ロボットアームに取り付けられたスプレイバルブを使って、少なくとも1つの導電性トラックを処理するステップであって、ロボットアームが物体に対するその移動を可能にする、ステップも含む。
【0020】
別の例によれば、方法は、3Dスキャンをとるステップの前に、スキャナ、プリントヘッドおよび場合によっては付随する定量システム、一体化された視覚装置を有するピックアンドプレース装置、ならびにスプレイバルブのうち少なくとも1つのデジタルモデルの生成を含む初期化ステップをさらに含む。
【0021】
別の例によれば、スキャナ、プリントヘッドおよび場合によっては付随する定量システム、一体化された視覚装置を有するピックアンドプレース装置、ならびにスプレイバルブのうち少なくとも2つが同じロボットアームに取り付けられる。
【0022】
別法では、または上述の例に加え、スキャナ、プリントヘッドおよび場合によっては付随する定量システム、一体化された視覚装置を有するピックアンドプレース装置、ならびにスプレイバルブのうち少なくとも2つが異なるロボットアームに取り付けられる。この例では、第1のロボットの作業スペースから別のロボットの作業スペースに物体を運ぶように構成されたコンベヤを設けることができる。別法では、または追加として、少なくとも2つのロボットが同じ生産ラインの異なる、および場合によっては連続するポストに配置される。
【0023】
本発明の別の態様は、少なくとも1つのプロセッサによって実施されたとき、少なくとも上で紹介したプリント方法のステップを実行する命令を含む、コンピュータプログラム製品に関する。
【0024】
本発明の別の態様は、物体に電子的機能を付与する方法であって、
・ プリント回路を形成する複数の導電性トラックを物体上にプリントするために、上で紹介したように物体の表面に少なくとも1つの導電性トラックをプリントする方法を含み、
・ ロボットアームに取り付けられた、一体化された視覚装置を有するピックアンドプレース装置を用いてプリント回路基板上の所定の場所に電子部品を定置するステップをさらに含む、方法に関する。
【0025】
そのため、本発明の第1の態様による方法は、物体に電子的機能を付与するために、
・ 柔軟かつモジュール式に、かつ/または、
・ 使用およびプログラミングに関してシンプルに、かつ/または、
・ シンプルなソフトウェアおよびユーザーインターフェースで、かつ/または、
・ 設計から試作品の製造もしくはプリプロダクションランまでにかかっている時間が短縮されるように、かつ/または
・ 産業環境に対応した形で、かつ/または、
・ 既存の自動生産ラインに組込み可能な形で
電子部品を定置することを可能にする。
【0026】
本発明の別の態様は、少なくとも1つのプロセッサによって実施されたとき、少なくとも上で紹介した電子的機能付与の方法のステップを実行する命令を含む、コンピュータプログラム製品に関する。
【0027】
本発明の目的、対象、ならびに特徴および利点については、以下の説明において、以下に添付する図面に図示される、後の実施形態を参照しながらさらに詳しく記載する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の態様による物体の表面へ導電性トラックをプリントするための方法の実施形態および本発明の別の態様による物体の電子的機能付与の方法の実施形態のフローチャートである。
図2】本発明による方法の1つの実施形態によって使用されるロボットアーム2の図である。
図3】様々なツールと図2に示されたロボットアームに固定されるそれらの支持体の分解図である。
図4】本発明による方法を実装することによって機能性を付与された物体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面は例として示されたものであり、本発明を限定するものではない。図面は、本発明についての理解を容易にすることを意図したグラフィック表現であり、必ずしも実際の適用時の縮尺に沿ったものではない。
【0030】
「ピックアンドプレース」装置とは、摘み上げて定置するための装置として定義される。
【0031】
「プリント回路」とは、ここでは物体によって形成される支持体の上に配置された導電性トラック一式であって、電子回路を作り出すために一連の電子部品が互いに電気的に接続され得るようにしたものとして定義される。
【0032】
図1を参照すると、本発明の第1の態様の実施形態は、複数の自由度をもつロボットアーム2と導電性インクのための少なくとも1つのプリントヘッド3とを用いて物体1の表面への導電性トラック10のプリント100を可能にする。ロボット2は、より詳細には、6軸関節ロボットであることができる。その種のロボットは、有利には制御されるものであり、産業利用において一般的である。
【0033】
文献WO 2016/097932に記載されているプリント方法とは異なり、ここでは、ロボット2の作業スペースに配置されるのは物体1であり、プリントに必要なツールは、物体1に対するツールの移動を可能にするロボット2によって保持される。
【0034】
そのため、図1から図4に示すように、方法100は、
・ ロボットアーム2に取り付けられたスキャナ4を使って物体1の表面の少なくとも一部位の3Dスキャンをとる110ステップであって、ロボットアーム2が、物体1に対するその動きを可能にする、ステップと、
・ とられた3Dスキャン110から物体1の表面のスキャン部位のデジタルモデルをCADソフトウェアを使って構築する120ステップと、
・ 以前に構築されたデジタルモデル120上にCADソフトウェアを使って導電性トラック10をデジタル的に描画する130ステップと、
・ 導電性トラック10の描画130をもとにCADソフトウェアを使ってプリントヘッド3の軌道を生成する140ステップと、
・ ロボットアーム2に取り付けられたプリントヘッド3を用いて当該少なくとも1つの導電性トラック10をプリントする150ステップであって、ロボットアーム2が、以前に生成された軌道140に沿って物体1に対するその動きを可能にする、ステップと
を含む。
【0035】
特に3Dスキャンのためには、物体、より詳細にはスキャン110される物体の表面は、不透明であるか、または不透明化されていることが好ましいことが留意されるべきである。物体はいわゆる複合材料の物体であれば有利であることができることも留意されるべきである。
【0036】
さらに図1を参照しながら、あわせて図4も参照すると、本発明の第2の態様の一実施形態は、ロボットアーム2に取り付けられた、一体化された視覚装置60を有する「ピックアンドプレース」装置6を使用することによって、複数の導電性トラック10によって形成されたプリント回路11の所定の場所に電子部品12を定置160して物体1に電子的機能を付与するステップを通して、第1の態様によるプリント方法100を継続することを可能にする。
【0037】
そのため、物体1はプリント方法100の間、および必要な場合には機能付与の方法200の間、同じ位置に留まる。ロボットのアーム2に取り付けられて物体1に対して移動させられるのはプリント100のために、および必要な場合には機能付与200のために必要とされるツールである。
【0038】
そのため、物体1はどのような重量のものであってもよい。実際、物体1は、ロボット2の作業スペースを画定するプラットホーム上などに留まり、プラットホームはいかなる重量の物体でも受けるように適合され得る。物体1もまたどのような形状のものであってもよい。スキャナは3Dスキャンを行うように構成されるため、物体が実際には2D形状に限定されることはなく、物体1のスキャン部位は湾曲面をもつことができる。また、3Dスキャンは物体1の一部位にのみかかわることができる。3Dスキャンに関係する物体1の部位がロボットの作業スペースに入るとすぐに、物体1はどのような寸法も有し得る。しかるに、文献WO 2016/097932に記載されているプリントシステムでは、物体はロボットによって動かすために軽量であることが必須とされ(6軸ロボットアームが一般に動かすことができる物体の重量は3kgまでであり得る)、形状はロボットが把持することができるものであり、寸法はロボットの作業スペースの寸法によって制限される。
【0039】
さらに、産業化の観点から、本発明による方法100および200は、文献WO 2016/097932に記載されているプリントシステムとは異なり、機能を付与される物体が入れ替えられるたびに生産ラインを止める必要がないという利点を有する。本発明によれば、2つまたは3つのロボット2が、物体1に対して同時に、または順次作用するように提供されることすらできる。例えば、少なくとも2つのロボット2が、同じ生産ラインの異なる、および場合によっては連続するポストに配置される。さらに、プリント100のために、および必要な場合には機能付与200のために必要なツールの1つまたは複数をそれぞれが有する複数のロボット2の使用を、第1のロボットの作業スペースからそれに続くロボットの作業スペースまで生産ラインに沿って物体を運搬するように構成されたコンベヤの使用とあわせて可能にすることができる。
【0040】
本発明では、文献WO 2016/097932に記載されているプリントシステムに固有の問題であって、ロボットによる物体の把持のされ方を決める際の問題を回避することも可能になる。実際、物体1は、本発明による方法100および200の間、固定された位置に留まることができ、物体1の初期位置決めが本発明の実施に十分な正確度でわかっていることを確認すれば十分であり得る。必要な場合には、ロボット2の基準マーク(TCP - ツール中心点)に対する物体1の位置、とりわけ3Dスキャン110の後、かつ当該デジタルモデルを構築する120ステップの前におけるその位置を特定する125ことからなるステップを設けて、方法のステップがCADソフトウェアによって正確に実施されることを確認することができる。実際、ロボット2の較正および物体1に対するロボット2の自動位置決めは、たとえロボット2の作業スペースにおける物体1の位置決めが既定されていなくとも、この位置特定ステップ125によって可能となる。
【0041】
本発明の第1の態様によるプリント方法のさらなる利点は、構築されたデジタルモデル120の上で直接行うのであれ、または構築されたデジタルモデル120の上に導電性トラック10の2Dデジタルモデルを投影することによって行うのであれ、導電性トラック10の描画130の作成に対応可能であるという点にある。
【0042】
さらに、3Dスキャンをとる110ステップの前に、潜在的には一度だけ、プリントヘッド3および可能な付随する定量システム30、スキャナ4、スプレイバルブ5、ならびに一体化された視覚装置60を有するピックアンドプレース装置6のうち少なくとも1つのデジタルモデルの生成105を含む初期化ステップを行うことは容易である。そのため、使用時の任意の瞬間における各々のツールの物体1に対する距離をデジタル式に高い精度で測定することができ、潜在的には、同じツールが与えられたロボット2の使用期間を通して行うことができる。これは、例えばレーザセンサのような距離センサおよび/またはカメラのような視覚装置などを伴う、他の形で可能にし得る可能性があることは留意されるべきである。
【0043】
ここからは、プリント方法100により使用されるロボットセルの具体的な実施形態、および必要な場合には機能付与の方法200について、非限定的な例として説明する。
【0044】
ロボットアーム2は、より具体的には、Staubli社製のTX 2-60レンジの6軸ロボットアームとそのCS9コントローラを含むことができる。CS9コントローラはSP2手動コントロールユニットと組み合わせることもできる。
【0045】
プリントヘッド3は、より具体的には、VERMES社からMDV 3200Aの参照番号で提供されているもののような微量定量バルブおよび容積式精密定量ポンプを含むことができる。
【0046】
プリントヘッド3と組み合わされる定量システム30は、より具体的には、preeflow(登録商標)eco-PEN300のブランド名で販売されているもののような容積式精密定量ポンプを備えることができる。
【0047】
スキャナ4は、より具体的には、Micro-Epsilon社から提供されているレーザセンサの1つ、とりわけoptoNCDT 1420の参照番号で販売されているものを含むことができる。
【0048】
スプレイバルブ5は、より具体的には、FISNAR(登録商標)社からSV1000SSの参照番号で販売されているもののようなステンレス鋼製スプレイバルブを含むことができる。これは、i)広い面積に導電性インクを、またはii)電子回路保護のためにワニスを塗着する場合にプリントヘッド3および8とともに使用することができる。
【0049】
ピックアンドプレース装置6は、より具体的には、KEYENCE社から供給されるCV-X400産業用視覚装置および付随する周辺機器を含むことができる。
【0050】
ピックアンドプレース装置6に組み込まれる視覚装置60は、より具体的には、カメラおよびLED環状照明を備えることができる。摘み上げおよび定置の機能は、より具体的には、ロボットアームコントローラ2によって制御されるソレノイド弁を介して真空ポンプに接続された電子部品のピックアップ毛細管によって果たすことができる。
【0051】
塗着する導電性インクが入った加圧カートリッジと、ロボットアーム2のコントローラによって駆動される空圧ニードル弁とを備えるニードルメータリングバルブ8がさらに提供され得る。このバルブは、より具体的には、VIEWEG(登録商標)社によって販売されるものの1つであることができる。
【0052】
プリントヘッド3およびその定量システム30、スキャナ4、スプレイバルブ5ならびに定量バルブ8の各々はロボットアーム2のコントローラと、必要な場合には、適切なコントローラおよび/またはコンバータを介して、機能的に接続され、連係されたものであることができることが留意されるべきである。
【0053】
さらに、これら各要素は、RT Ehernetスレーブバス、EtherCATマスターバス、Ethernet TCP/IPポート、RS232シリアルポートおよびその他のモジュラー接続(デジタルI/O、アナログI/O)など、様々な方法で互いに接続される。
【0054】
図3を参照すると、選択される実施形態によって使用される様々なツールは、とりわけ図示されている実施形態において、使用されるツール3、4、5、6および8は同じロボット2に固定され、例えばボードの形の支持体7を介して取付け可能であることも留意されるべきである。
【0055】
こうした具体的な構成は、可能な他の構成も同様に、以下のような利点をもつことが留意されるべきである。
・ セルコストが150千ユーロ以下、
・ 設置時間が30~60分、
・ 学習が容易、すなわち、研修時間は半日程度。
【0056】
これはセルとあわせて配置することができる。セルは、例えばロボット2の作業スペースの全体または一部を画定する。要素2、3、4、5、6、7および8の大半はセル内に配置することができる。
【0057】
そうしたロボットセルは研究施設や一般に小規模企業のニーズを満たすものであり、すなわちロボット工学に特に技能を有するわけでない人々が操作すること、および試作品の生産を可能な限り短いセットアップ時間で行うことに適している。また、セルの設計、設置および保守は低コストで行われる。
【0058】
プロセス全体を自動化し、ロボット2のプログラムを作成および転送して、セルをロボット工学の技能をもたない人々が使うことのできるものにするため、Grasshopper(登録商標)として知られている、Rhinoceros 3Dアプリケーション上で動作するビジュアルプログラミング言語および環境によって連係するように開発された専用インターフェースが提案される。
【0059】
また、ボード7および潜在的にはそこに取り付けられる各種ツール3、4、5、6および8の総重量が有利には3kgに満たないということも留意されるべきである。
【0060】
さらに、セルの扉に設置された自動停止装置によってユーザーの安全が保障され得る。それにより、ロボット2が自動モードで動作しているときは、扉を開けるとロボット2は直ちに停止される。ロボット2の電源復帰には特定のボタンによって発生した障害が正されなければならない。また、赤い警報ボタンが押されて緊急停止した場合にもロボット2は直ちに停止する。
【0061】
本発明は上に説明した実施形態だけに限られるものではなく、特許請求の範囲に包含されるすべての実施形態に及ぶ。
【符号の説明】
【0062】
1 物体
2 ロボット、ロボットアーム、ロボットアームコントローラ、要素
3 プリントヘッド、ツール、要素
4 スキャナ、ツール、要素
5 スプレイバルブ、ツール、要素
6 ピックアンドプレース装置、ツール、要素
7 支持体、要素
8 プリントヘッド、ニードルメータリングバルブ、定量バルブ、ツール、要素
10 導電性トラック
11 プリント回路
12 電子部品
30 定量システム
60 視覚装置
100 プリント、方法、プリント方法
105 デジタルモデルの生成
110 3Dスキャンをとる、とられた3Dスキャン、スキャン、3Dスキャン
120 デジタルモデルを構築する、構築されたデジタルモデル
125 位置を特定する、位置特定ステップ
130 導電性トラックを描画する、導電性トラックの描画
140 軌道を生成する、軌道
150 導電性トラックをプリントする
200 機能付与の方法、機能付与
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】