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特表2023-547883顆粒球マクロファージコロニー刺激因子変異体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】顆粒球マクロファージコロニー刺激因子変異体
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/535 20060101AFI20231107BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231107BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231107BHJP
   C12N 15/27 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20231107BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
C07K14/535
C12N1/15 ZNA
C12N5/10
C12N15/27
A61K38/19
A61P31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525008
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 US2021056413
(87)【国際公開番号】W WO2022093671
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/105,425
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/177,481
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522412493
【氏名又は名称】パートナー セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェルダウス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヨスト,ジェフリー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA80X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C084AA01
4C084AA02
4C084CA53
4C084DA19
4C084NA14
4C084ZB331
4C084ZB332
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA12
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA25
(57)【要約】
本発明は、サルグラモスチムの配列におけるアミノ酸置換により、製造が簡略化された生成物が得られるという発見に基づいている。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)タンパク質を含む組成物であって、前記組換えタンパク質は、配列番号1または配列番号2と少なくとも約97%の同一性を有し、N37位、E38位及び/またはT39位またはそれに対応する位置に置換または欠失を有するアミノ酸配列を含む、前記組成物。
【請求項2】
前記N37位またはそれに対応する位置のアミノ酸が、極性及び中性電荷の親水性アミノ酸である、請求項1に記載の組換えタンパク質。
【請求項3】
前記極性及び中性電荷の親水性アミノ酸が、グルタミン(Q)、セリン(S)、トレオニン(T)、プロリン(P)、及びシステイン(C)から選択される、請求項2に記載の組換えタンパク質。
【請求項4】
前記極性及び中性電荷の親水性アミノ酸がグルタミン(Q)である、請求項3に記載の組換えタンパク質。
【請求項5】
前記E38位またはそれに対応する位置のアミノ酸が、疎水性脂肪族アミノ酸であり、かつ/またはプロリンではない、請求項1に記載の組換えタンパク質。
【請求項6】
前記疎水性脂肪族アミノ酸が、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、及びバリン(V)から選択される、請求項5に記載の組換えタンパク質。
【請求項7】
前記T39またはそれに対応する位置のアミノ酸が、疎水性脂肪族アミノ酸である、請求項1に記載の組換えタンパク質。
【請求項8】
前記疎水性脂肪族アミノ酸が、アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、及びバリン(V)から選択される、請求項7に記載の組換えタンパク質。
【請求項9】
前記疎水性脂肪族アミノ酸がアラニン(A)である、請求項8に記載の組換えタンパク質。
【請求項10】
前記組成物が、前記顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体(GM-CSF-R-αまたはCSF2R)に結合及び/またはこれを活性化する、請求項1~9のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項11】
前記GM-CSF-R-αが細胞の表面に発現される、請求項10に記載の組換えタンパク質。
【請求項12】
前記細胞が造血前駆細胞である、請求項11に記載の組換えタンパク質。
【請求項13】
前記造血前駆細胞が免疫細胞である、請求項12に記載の組換えタンパク質。
【請求項14】
前記造血前駆細胞が放射線照射されている、請求項12に記載の組換えタンパク質。
【請求項15】
前記組換えヒトGM-CSFが可溶性である、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項16】
前記組換えヒトGM-CSFがサルグラモスチムと機能的に類似している、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項17】
前記組換えヒトGM-CSFが複数の分子形態を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項18】
前記分子形態が、非グリコシル化形態、O-グリコシル化形態、N-グリコシル化形態、及びN+Oグリコシル化形態から選択される、請求項17に記載の組換えタンパク質。
【請求項19】
前記組換えヒトGM-CSFが高マンノシル化形態を実質的に含まない、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項20】
前記組換えヒトGM-CSFが、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって定量化された場合に3つのピークとして分離される、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項21】
前記組換えヒトGM-CSFが、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって定量化された場合に、約20分未満の保持時間で実質的なピークを提供しない、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項22】
前記組換えヒトGM-CSFが、有機溶媒を使用せずに精製された場合に高マンノシル化形態を実質的に含まない、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項23】
前記組換えヒトGM-CSFが、任意選択で逆相C4 HPLCカラムを使用せずに精製された場合に、高マンノシル化形態を実質的に含まない、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項24】
先行請求項のいずれか1項に記載の組換えヒトGM-CSFをコードする核酸分子。
【請求項25】
前記核酸分子がコドン最適化配列を有する、請求項24に記載の核酸。
【請求項26】
請求項23または24に記載の核酸分子を発現する非ヒト宿主細胞。
【請求項27】
前記宿主細胞が酵母細胞である、請求項26に記載の宿主細胞。
【請求項28】
前記酵母細胞が非メチロトローフ酵母細胞である、請求項27に記載の宿主細胞。
【請求項29】
前記宿主細胞がSaccharomyces cerevisiae細胞である、請求項28に記載の宿主細胞。
【請求項30】
先行請求項のいずれか1項に記載の組換えヒトGM-CSF、及び薬学的に許容される賦形剤または担体を含む、薬学的組成物。
【請求項31】
がん治療を受けている、もしくは受けたことがある、または骨髄移植を受けている、もしくは受けたことがある、及び/または骨髄抑制量の放射線に急性被ばくした患者または対象を治療する方法であって、治療有効量の請求項30に記載の薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項32】
前記患者が、造血前駆細胞のクローン増殖、生存、分化、及び活性化状態を調節することによって治療される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記患者が、巨核球系及び赤血球系前駆細胞の増殖を促進することにより骨髄単球細胞系譜を調節することによって治療される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記患者が、好中球、マクロファージ、及び/または樹状細胞の生存、増殖、及び活性化を刺激することにより造血前駆細胞を調節することによって治療される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記患者が、好中球、マクロファージ、及び/または樹状細胞の生存、増殖、及び活性化を刺激することにより造血前駆細胞を調節することによって骨髄移植後に治療される、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
治療有効量の請求項30に記載の薬学的組成物を患者に投与すること、または
治療有効量の請求項30に記載の薬学的組成物と細胞を接触させ、治療有効量の前記細胞を投与することを含む治療方法であって、
前記治療が、
導入化学療法後の好中球の回復を促進し、及び/または感染症の発生率を低減する;
白血球除去及び移植による採取のために造血前駆細胞を末梢血に動員する;
自家または同種の骨髄または末梢血前駆細胞を移植した後の骨髄再構築を促進する;
自家または同種の骨髄移植後の好中球回復遅延または生着不全を治療する;及び/または
急性放射線症候群の造血症候群(H-ARS)を治療する、前記方法。
【請求項37】
請求項1~22のいずれか1項に記載の組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)タンパク質を含む有効量の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、コロナウイルスによる感染症を治療するための方法。
【請求項38】
前記コロナウイルスが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、SARS-CoV、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、HCoV-HKU1、及びHCoV-OC43から任意に選択されるベータコロナウイルスである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記コロナウイルスが、HCoV-NL63及びHCoV-229Eから任意に選択されるアルファコロナウイルスである、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記コロナウイルスがSARS-CoV-2である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記患者がCOVID-19に罹患している、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記患者が、発熱、咳嚇、息切れ、下痢、上気道症状、下気道症状、肺炎、及び急性呼吸器症候群のうちの1つ以上に苦しんでいる、請求項37~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記患者が低酸素症である、請求項37~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記患者が呼吸窮迫に苦しんでいる、請求項37~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記患者における急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発症を予防または緩和する、請求項37~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記患者の酸素化を改善する、請求項37~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記患者における呼吸窮迫からサイトカイン不均衡への移行を予防または緩和する、請求項37~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
サイトカインストームを逆転または予防する、請求項37~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
肺または全身のサイトカインストームを逆転または予防する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記サイトカインストームが、全身性炎症反応症候群、サイトカイン放出症候群、マクロファージ活性化症候群、及び血球貪食性リンパ組織球症のうちの1つ以上から選択される、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
1つ以上の炎症性サイトカインの過剰産生を逆転または予防する、請求項48または49に記載の方法。
【請求項52】
前記炎症性サイトカインが、IL-6、IL-1、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)、IL-2ra、IL-10、IL-18、TNFα、インターフェロン-γ、CXCL10、及びCCL7のうちの1つ以上である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記方法が、治療前と比べて前記患者のウイルス量を減少させる、請求項37~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
それを必要とする対象においてウイルス感染症を治療または予防するための方法であって、前記方法が、
前記ウイルス感染症から回復したドナー対象から血漿を提供することであって、
前記血漿が、前記感染症を引き起こす前記ウイルスに対して指向されるIgG、IgM、及び/またはIgA抗体を含み、
前記ドナー対象が、前記抗体の産生を刺激するために請求項1~22のいずれか1項に記載の組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)タンパク質で処置されている、前記提供することと、
前記血漿をそれを必要とする前記対象に投与することと、を含む、前記方法。
【請求項55】
それを必要とする対象においてウイルス感染症を治療または予防するための方法であって、前記方法が、
請求項1~22のいずれか1項に記載の組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)タンパク質を、前記ウイルス感染症から回復したドナー対象に投与することと、
前記ドナー対象から前記感染症を引き起こす前記ウイルスに対して指向されるIgG、IgM、及び/またはIgA抗体を含む血漿を単離することと、
前記血漿をそれを必要とする前記対象に投与することと、を含む、前記方法。
【請求項56】
前記ウイルスに対する受動免疫を、それを必要とする前記対象に提供する、請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
前記IgG、IgM、及び/またはIgA抗体がウイルス抗原に特異的に結合する、請求項54~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記IgG、IgM、及び/またはIgA抗体が前記ウイルスを中和する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記IgG、IgM、及び/またはIgA抗体が、前記ウイルスによる細胞の感染を予防または減少させる、請求項57または58に記載の方法。
【請求項60】
前記ウイルス感染症が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV-1)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、HCoV-HKU1、及びHCoV-OC43感染症から任意に選択されるベータコロナウイルス感染症から選択される、請求項54~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記ウイルス感染症が、HCoV-NL63及びHCoV-229E感染症から任意に選択されるアルファコロナウイルス感染症から選択される、請求項54~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記ベータコロナウイルス感染症が重症急性呼吸器症候群(SARS)である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記ベータコロナウイルス感染症がコロナウイルス感染症2019(COVID-19)であるか、またはそれに関連している、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記ウイルス感染症が、A型、B型、C型、及びD型インフルエンザウイルス感染症から任意に選択されるインフルエンザ感染症である、請求項54~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記インフルエンザ感染症がパンデミック2009インフルエンザA(H1N1)または鳥インフルエンザA(H5N1)である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記ドナー対象が、回復前に前記ウイルス感染症に陽性であると検査されている、請求項54~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記ドナー対象が、ドナー提供前にウイルス感染症の症状が消失している、請求項54~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記ドナー対象が、血清学的検査を用いて前記ウイルスに対して指向される抗体に陽性であると検査されている、請求項54~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記ドナー対象が測定可能な中和抗体力価を示す、請求項54~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記中和抗体力価が少なくとも約1:160である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記血漿が前記ドナー対象からの血液試料から単離される、請求項54~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記血漿がプラズマフェレシスによって単離される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記血漿が、前記感染症を引き起こす前記ウイルスに対して指向される前記IgG、IgM、及び/またはIgA抗体の治療有効量を含む、請求項54~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む組成物を産生する組換え体を作製する方法であって、
(a)配列番号2と少なくとも約97%の同一性を有し、N37位、G38位、及び/またはT39位またはそれに対応する位置に置換または欠失を有するアミノ酸配列を含む、組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)をコードする核酸をトランスフェクトされた細胞、またはその抽出物を得ることと、
(b)1つ以上のHPLCカラムを使用して、前記トランスフェクトされた細胞から前記GM-CSFを精製することであって、前記精製が有機溶媒の非存在下である、前記精製することと、
(c)前記精製されたGM-CSFを収集することであって、前記精製されたGM-CSFが高マンノシル化GM-CSF形態を実質的に含まない、前記収集することと、を含む、前記方法。
【請求項75】
前記細胞が酵母細胞である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記酵母細胞がSaccharomyces cerevisiaeである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
前記哺乳動物細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記組換えタンパク質の産生中、CHO細胞などの哺乳動物細胞の前記トランスフェクションが、非哺乳動物細胞を使用する産生方法と比較して、前記組換えタンパク質の発現レベルを増加させる、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記組換えヒトGM-CSFが、サルグラモスチムと比較して増強された機能を示す、請求項74に記載の組換えタンパク質。
【請求項81】
前記組換えヒトGM-CSFが、サグラモスチムと比較して増強された機能を示す、CHO細胞などの哺乳動物細胞のトランスフェクションによって産生された請求項1に記載の組換えタンパク質。
【請求項82】
配列番号1または配列番号2と少なくとも約97%の同一性を有し、N37Q置換またはそれに対応する位置を有するアミノ酸配列を含む、組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)タンパク質を含む組成物であって、
前記GM-CSFが、実質的な高グリコシル化種を含まず、有機溶媒による精製を必要とせずに単離可能である、前記組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月26日出願の米国特許仮出願第63/105,425号及び2021年4月21日出願の同第63/177,481号の利益及びそれらに対する優先権を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、変異体顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)に関する組成物及び方法に関する。
【0003】
配列表
本出願は、EFS-Webを介してASCII形式で提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2021年10月20日に作成されたこのASCIIコピーは、「PNR-003PC_ST25.txt」という名前で、サイズが4,096バイトである。
【背景技術】
【0004】
コロニー刺激因子、CSFとは、広く散らばって集積した骨髄細胞による細胞産生を制御及び調整する4つの糖タンパク質のファミリーを指す。これらには、顆粒球-マクロファージCSF(GM-CSF)、顆粒球コロニーCSF(G-CSF)、マクロファージコロニーCSF(M-CSF)、及び多能性コロニー刺激因子(IL-3)が含まれる。これらのリンフォカインは、骨髄に見られる前駆細胞を誘導して、特定の種類の成熟血液細胞に分化させることができる。前駆細胞から生じる特定の種類の成熟血液細胞は、存在するCSFの種類に依存する。Metcalf D.Cancer Immunol Res.2013,1(6):351-356を参照のこと。
【0005】
GM-CSFは、造血細胞の産生、移動、増殖、分化、及び機能を調節する血液学的成長因子である。炎症刺激に応答して、GM-CSFは、Tリンパ球、マクロファージ、線維芽細胞、及び内皮細胞を含む様々な細胞タイプによって放出される。次いで、GM-CSFは、好中球、好酸球、及びマクロファージの産生及び生存を活性化し、増強する。ネイティブGM-CSFは通常、造血前駆細胞のin vitro増殖、分化、及び生存を調節する作用部位の近くで産生されるが、循環血中にはピコモル濃度(10-10から10-12M)でしか存在しない。Alexander WS.Int Rev Immunol.1998,16:651-682;Gasson JC.Blood.1991,77:1131-1145;Shannon MF et al.Crit Rev Immunol.1997,17:301-323、Barreda DR et al.Dev Comp Immunol.2004,28:509-554、及びMetcalf D.Immunol Cell Biology.1987,65:35-43を参照のこと。
【0006】
ヒトGM-CSF(hGM-CSF)は、17個のアミノ酸のシグナルペプチドを有する144個のアミノ酸残基の前駆体タンパク質として合成される。この前駆体タンパク質をプロセシングすることにより、14.4kDaの推定分子量を有する127個のアミノ酸の成熟タンパク質が得られる。このタンパク質は2つのジスルフィド結合を有し、グリコシル化及びシアリル化により15~30kDaの広いバンドとして移動する。N-結合型グリカンはAsn27及びAsn37に位置し、O-結合型グリコシル化の複数の可能性のある部位としてSer5、Ser7、Ser9、及びSer10が存在するが、これらの部位のグリカン構造の程度は明確には決定されていない。GM-CSFのグリコシル化パターンは、その活性、受容体結合、免疫原性、及び半減期に影響を与えることが確認されている。Lee F.et al.Proc Natl Acad Sci USA Biochem.1985.82:360-4364;Miyatake S.et al.EMBO J.1985.4:2561-2568.Cebon J et al.J Biol.Chem.1991.265,4483-4491;Zhang Q et al.Proc.Natl.Acad.Sci.2014,2885-2890を参照のこと。
【0007】
化学療法と組み合わせた、好中球減少症、血液疾患、及び白血病などの悪性腫瘍の治療向けに、組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(rhu GM-CSF)が、FDAによって承認されている。臨床において、化学療法後の好中球減少症及び再生不良性貧血の治療に使用されるGM-CSFは、骨髄移植に伴う感染症のリスクを大幅に軽減する。また、骨髄性白血病の治療及びワクチンアジュバントとしての有用性も十分に確立されている。Dorr RT.Clin Therapeutics.1993.15(1):19-29;Armitage JO.Blood 1998,92:4491-4508;Kovacic JC et al.J Mol Cell Cardiol.2007,42:19-33;Jacobs PP et al.Microbial Cell Factories 2010,9:93を参照のこと。
【0008】
異種タンパク質産生プラットフォームには、細菌、酵母、植物、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞を含む5つのクラスが存在するが、現在市販されているバイオ医薬品の50%超が哺乳動物細胞株で生産されている。これは、残りの4つのクラスが、ヒト様オリゴ糖で糖タンパク質を修飾できないことに部分的に起因する。これは、タンパク質結合グリカンが、循環半減期、組織分布、生物学的活性、及び免疫原性に影響を与えるため重要である。
【0009】
GM-CSF発現系は、GM-CSFの薬物動態特性、生物学的活性、及び臨床毒性に影響を与える。臨床では、GM-CSFは、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO-GM、レグラモスチム)、Escherichia coli(E.coli-GM、モルグラモスチム)、または酵母(酵母-GM、サルグラモスチム)で産生されている。Dorr RT.Clin Therapeutics.1993.15(1):19-29;Walsh G.Nat Biotechnol.2006,24:769-776;Jacobs PP et al.Nat Protoc.2009,4:58-70;Jacobs PP et al.Microbial Cell Factories 2010,9:93;Walsh G.Nat Biotechnol.2018,36(12):1136-1145を参照のこと。GM-CSFの製造中には、4つの主要なGM-CSFアイソフォーム/種:「高グリコシル化」種(約50kDa)、N-及びN-+O-グリコシル化種(約20kDa)、O-グリコシル化種(約16kDa)、及び非グリコシル化種(約15kDa)が存在する。グリコシル化GM-CSFは、酵母(サルグラモスチム)またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(レグラモスチム)を用いた組換え技術によってのみ得られ、グリコフォームの複雑な混合物が生成されるが、E.coliを用いたものはない。グリカンの不均一性は、CHO細胞の翻訳後グリコシル化において特異性が欠如していることを反映している。Zhang Q et al.PNAS.111(8):2885-2890を参照のこと。
【0010】
サルグラモスチムの発現ベクターは、粗面小胞体での転写と成熟GM-CSFの細胞による分泌を指示するリーダー配列を含む。N-グリコシル化は、アスパラギン(Asn)またはアルギニン(Arg)側鎖の窒素にグリカンが付加される際に起こり、一方、O-グリコシル化は、セリン(Ser)またはトレオニン(Thr)またはチロシン(Tyr)アミノ酸の水酸基酸素側鎖にグリカンが付加される際に起こる。アスパラギン残基は、N-グリコシル化のために、通常、Asn-Xxx-Ser/Thr/Cys(Xxxはプロリン以外の任意のアミノ酸であり得る)のコンセンサス配列を必要とする。サルグラモスチムのrhu GM-CSFタンパク質配列には、Asn-Leu-Ser(NLS)及びAsn-Glu-Thr(NET)という2つのコンセンサス配列が含まれており、そこでタンパク質がグリコシル化される可能性がある。サルグラモスチムの製造中、発酵槽に存在するいくつかのGM-CSF種においてAsn27とAsn37の両方のN-グリコシル化部位がグリコシル化される。Thr39(またはSer39またはCys39)残基は、Asn27またはAsn37でのグリコシル化を可能にする重要なアンカーである。アスパラギン残基37にN-オリゴ糖が結合した種は、これらのグリコフォームが最大数百のマンノース残基を含むことから「高グリコシル化」種(30~100kDa)と呼ばれる。高マンノシル化はN37でのみ発生する。先行報告で、グリコシル化に影響を与える可能性のある変異誘発について調査されている(例えば、Gene 55:287-293(1987)及びHehring Inst.Mitt.83:1-7(1988))が、これらの研究はタンパク質の収量に焦点を当てており、活性を評価したり、または精製プロセスの合理化を試みてはいなかった(例えば、Hehring Inst.Mitt.83:1-7(1988)の表2を参照のこと)。
【0011】
上流の製造プロセスでは、部分的に精製された発酵ブロス中に、4つの主要なGM-CSF種、「高グリコシル化」種(約50kDa)、N-及びN-+O-グリコシル化種(約20kDa、ピーク2)、O-グリコシル化種(約16kDa、ピーク3)、及び非グリコシル化種(約15kDa、ピーク4)が存在する。「高グリコシル化」GM-CSF種は非生成物とみなされ、下流プロセスで除去され、これにより3つの主要なグリコフォーム(ピーク2~4)を含む生成物、バルク原薬(BDS)が得られる。T-0075逆相グリコフォームアッセイにおいて、BDS及びDP中に少量の酸化GM-CSF(4%以下)が検出され、これは「ピーク1」と表示される。Walter P,et al.JCB.1981.91(2 Pt1):545-50;Cantrell MA,et al.PNAS.1985.82:6250-6254を参照のこと。粗面小胞体で合成されたほとんどのタンパク質はグリコシル化を受けるが、これは酵素による部位特異的なプロセスである。Medzihradszky KF.Methods Mol Biol.2008.446:293-316.Varki A et al.Essentials of Glycobiology.Chapter 56.3rd editionを参照のこと。
【0012】
現在製剤に存在する3つの主要なrhu GM-CSFグリコフォームに加えて、生成物の6%未満を占める「高グリコシル化」形態が存在する。しかし、この「高グリコシル化」形態は、現在のサルグラモスチム(LEUKINE)製剤には存在しない。単離された「高グリコシル化」種は、2つのN-アセチルグルコサミン残基と、発酵ブロスに存在することが知られている範囲の下限にある平均43個のマンノース残基を含むと推定された。アスパラギン残基37にN-オリゴ糖が結合した種は、これらのグリコフォームが最大数百のマンノース残基を含むことから「高グリコシル化」種(30~100kDa)と呼ばれる。Strenler KE,et al.1994を参照のこと。この「高グリコシル化」種は、下流の精製プロセスで完全に除去され、サルグラモスチムの製造に使用される最終的なサルグラモスチムのバルク原薬(BDS)では一切検出されない。
【0013】
サルグラモスチムの最終生成物は、N-グリコシル化及びO-グリコシル化グリコフォームと、非グリコシル化グリコフォームから構成される。このように、サルグラモスチムは、そのグリコフォームプロファイルに不均一性を有しており、その不均一性は、その承認歴全体を通して非常に一貫している。サルグラモスチムの3つの主要なグリコフォームは、SDS-PAGEゲルで分離することができる。これら3つのグリコフォームの過去の平均相対量は、それぞれ28.68%±0.86%、22.58%±0.73%、及び48.74%±0.8%とかなり一貫している。サルグラモスチムのGM-CSFタンパク質のほぼ半分は非グリコシル化されており、3分の1弱は完全にN-グリコシル化されている。N-グリコシル化種の全てではないにしても、そのほとんどはO-グリコシル化もされている。高度に分岐したN-結合型オリゴ糖構造は、受容体結合部位ならびにH6アルファヘリックス及びC末端ランダムコイルの一部を妨げずに、H1及びH5アルファヘリックスを含む分子のかなりの部分を覆っている。
【0014】
組換えGM-CSFの炭水化物成分は細胞源に基づいて異なるが、グリコシル化は、受容体結合、またはin vitro及びin vivoの生物学的活性に必要ではない。酵母rhu GM-CSF及び非グリコシル化E.coli由来rhu GM-CSFは、受容体親和性及び細胞増殖比活性の両方によって測定された同等の比活性を有する。Urdal and Park,1988;Metcalf D.Cancer 1990:65:2185-2195を参照のこと。
【0015】
ヒトの内因性タンパク質は、その機能に応じて大きく異なり得る様々な速度でin vivoで分解される。例えば、ヘモグロビンは赤血球の一生にわたって持続し、ヒストンは数年の半減期を有するが、オルニチン脱炭酸酵素(半減期11分)のような他のタンパク質は非常に速い分解速度を有する。Thomas E Creighton(1993).“Chapter 10-Degradation”.Proteins:Structures and Molecular Properties(2nd ed.).W H Freeman and Company.pp.463-473.ISBN 0-7167-2317-4を参照のこと。真核生物では、細胞内空間の短命なタンパク質のほとんどは、ユビキチン-プロテアソーム経路(UPP)によって分解される。Kybuczkova L,et al.J Cell Mol Med.2014.18:947-961を参照のこと。UPPは、細胞周期の進行、アポトーシス、及びDNA修復を制御するものを含む、タンパク質のプロセシング及び分解における細胞の恒常性において中心的な役割を果たす。Heinemeyer W,et al.J Biol Chem.1997.272:25200-25209を参照のこと。リソソームはまた、細胞質内及び細胞外から不要なタンパク質を除去する。細胞外からの物質はエンドサイトーシスによって取り込まれ、細胞内からの物質はオートファジーによって消化される。Settembre C,et al.Nature Reviews Molecular Cell Biology.2013.14(5):283-96を参照のこと。GM-CSFの半減期は50~85分に及び得ることが示されている。Cebon et al.Blood.1988.72:1340-1347;Stagg et al 2004を参照のこと。天然及び組換えGM-CSFのin vivoの生物学的活性は、そのバイオアベイラビリティに大きく依存する。Dorr RT.Clinical Therapeutics/vol.15,NO.1,1993を参照のこと。
【0016】
ヒトにおける治療用タンパク質(生物学的製剤またはバイオロジクス)のバイオアベイラビリティは、薬物の投与経路によっても影響を受ける可能性がある。Dorr RT,Clinical Therapeutics/vol.15,NO.1,1993を参照のこと。静脈内(IV)投与直後は、ほぼ全ての治療用タンパク質が利用可能であるが、その後、血漿中に存在するプロテアーゼによって時間の経過とともに分解され得る。場合によっては、皮下(SC)投与は、高い血漿濃度をより長く維持することにより、消失半減期の短いタンパク質への曝露を延長し、IV投与と比較してより良好な忍容性を示すことができる。したがって、SC投与後の生物学的製剤の吸収は、不完全なバイオアベイラビリティの可能性を含む、細胞外マトリックス(ECM)でのその動態に影響され得る。Hale G,et al.Blood.2004.104(4):948-955を参照のこと。
【0017】
サルグラモスチムに存在する様々なアイソフォームの体循環への輸送は、分子サイズが異なるため、様々な経路が好ましい可能性がある。サルグラモスチムの2つの非グリコシル化rhu GM-CSF Leu23種(SDS PAGEゲルで約14kDa、全長分子及び切断型Alades-A種のアミノ酸配列から決定された分子量=14,430.47及び14266.31)は、明らかに毛細血管への拡散を優先するはずであり、したがって血流中のこれらのタンパク質分子のバイオアベイラビリティは非常に急速であるはずである。1~8個のマンノース糖残基を含む約8個のO-グリコシル化グリコフォーム(SDS PAGEゲルで約16kDa、質量分析で測定された分子量は14,500~16,000)は、リンパ管と毛細血管の両方を通じて体循環に送達される可能性がある。しかしながら、2つのn-アセチルグルコサミン残基と6~27個のマンノース残基を含むN-及びN-+O-グリコシル化グリコフォーム(SDS PAGEゲルで約21kDa、質量分析で測定された分子量は16,200~19,000)は、その分子サイズを考えると、リンパ経路による拡散及び吸収が強く優先されると考えられる。
【0018】
GM-CSF発現系は薬物動態パラメータに影響を与える可能性があり、グリコシル化の程度はGM-CSFの半減期、分布、及び排泄に影響を及ぼす可能性がある。GM-CSFのグリコシル化の程度とその分布、クリアランス、及び活性との関係は、ラットモデルを用いて報告されている。in vitroで測定されたGM-CSFの比活性は、最も大きく最も完全にグリコシル化された形態のタンパク質では、より小さくグリコシル化度のより低い分子と比較して著しく低下していることが判明している。単回静脈内ボーラス注射後のラットの血流中のGM-CSFの有効半減期は、N-結合型炭水化物の付加により著しく延長されることが示されている。ラットにおけるGM-CSFのクリアランスは二相性の速度論に従い、炭水化物の修飾によって延長されるのは第1相またはc~相である。Donohue RE,et al.Cold Spring Harbor Labs.1986.51:685-692及びDorr RT Clinical Therapeutics.1993.15(1):19-29を参照のこと。
【0019】
「高グリコシル化」rhu GM-CSF種の生物学的活性は統計的に有意に低いことが示されているが、19.5、16.8、15.5kDa種の比活性(SA)は非常に類似している。他の3つのグリコフォーム、N-及びN-+O-グリコシル化種(21kDa、ピーク2)、O-グリコシル化種(16kDa、ピーク3)、ならびに非グリコシル化種(14kDa、ピーク4)のSAは、親BDSであるサルグラモスチムについて得られた値から99%の信頼レベルで統計的に異ならないことが示されている。
【0020】
単純な精製方法を適用でき、「高グリコシル化」種をほとんど含まないGM-CSF分子が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0021】
したがって、本発明は、GM-CSFの変異体形態、とりわけ、野生型またはサルグラモスチムと比較して固有のグリコフォームプロファイルを提供するGM-CSFの変異形態に関するものである。
【0022】
諸態様において、配列番号1または配列番号2と少なくとも約97%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、N37位、E38位、及び/またはT39位またはそれに対応する位置に置換または欠失を有する、例えば、N37位またはそれに対応する位置のアミノ酸が、極性及び中性電荷の親水性アミノ酸(例えば、グルタミン(Q)、セリン(S)、トレオニン(T)、プロリン(P)、及びシステイン(C))に置換されていてもよく;E38位またはそれに対応する位置のアミノ酸が疎水性脂肪族アミノ酸(例えば、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、及びバリン(V)であり、かつ/またはプロリンではない)に置換されていてもよく;及び/または、T39位またはそれに対応する位置のアミノ酸が、アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、及びバリン(V)に置換されていてもよい、組換えヒトGM-CSFタンパク質が提供される。
【0023】
諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSFは、サルグラモスチムと機能的に類似している。諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSFは、複数の分子形態、例えば、非グリコシル化形態、O-グリコシル化形態、N-グリコシル化形態、及び/またはN+Oグリコシル化形態を含む。諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSFは、高グリコシル化形態、例えば高マンノシル化形態を実質的に含まない。諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSFは、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって定量化された場合に、3つのピークとして分離される。諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSFは、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって定量化された場合に、約20分未満の保持時間で実質的なピークを提供しない。諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSFは、有機溶媒(例えば限定されないが、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸(TFA)、ピリジン、酢酸、及び/またはN-プロパノール)、及び/または高グリコシル化ピークの精製及び/または除去の目的で使用される逆相C4 HPLCカラムを使用せずに精製された際に、高グリコシル化形態、例えば高マンノシル化形態を実質的に含まない。
【0024】
諸実施形態において、哺乳動物細胞で産生された組換えヒトGM-CSFは、酵母細胞で産生された組換えヒトGM-CSFと比較して機能的に増強されている。
【0025】
諸実施形態において、哺乳動物細胞で産生された組換えヒトGM-CSFの産生力価は、酵母細胞での産生と比較して増加する。
【0026】
諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSFをコードする核酸分子(例えば、コドン最適化配列)も提供される。諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSFをコードする核酸分子を発現する非ヒト宿主細胞(例えば、酵母細胞、例えば非メチロトローフ酵母細胞、例えばSaccharomyces cerevisiae)も提供される。また、諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSF及び薬学的に許容される賦形剤または担体を含む薬学的組成物も提供される。
【0027】
諸態様において、がん治療を受けている、もしくは受けたことがある、または骨髄移植を受けている、もしくは受けたことがある、及び/または骨髄抑制量の放射線に急性被ばくした患者または対象を治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載の薬学的組成物を患者に投与することを含む、方法が提供される。
【0028】
諸態様において、ウイルス感染症、例えば限定されないがコロナウイルス、例えば限定されないが重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による感染症を治療する方法であって、有効量の本明細書に記載の薬学的組成物を投与することを含む、ウイルス感染症を治療する方法、またはそれを必要とする対象においてウイルス感染症を治療もしくは予防するための方法であって、該方法が、ウイルス感染症、例えば限定されないがコロナウイルス、例えば限定されないがSARS-CoV-2による感染症から回復したドナー対象から血漿を提供することであって、該血漿が、感染症を引き起こすウイルスに対して指向されるIgG、IgM、及び/またはIgA抗体を含み、該ドナー対象が、抗体の産生を刺激するために本明細書に記載の組換えヒトGM-CSFタンパク質で処置されている、提供することと、該血漿をそれを必要とする対象に投与することとによる、ウイルス感染症を治療もしくは予防するための方法が提供される。
【0029】
諸態様において、組換えヒトGM-CSFを含む組成物を産生する組換え体を作製する方法であって、(a)配列番号2と少なくとも約97%の同一性を有し、N37位、G38位、及び/またはT39位またはそれに対応する位置に置換または欠失を有するアミノ酸配列を含む組換えヒトGM-CSFをコードする核酸をトランスフェクトされた酵素細胞、またはその抽出物を得ることと;(b)1つ以上のHPLCカラムを使用して、トランスフェクトされた酵母細胞からGM-CSFを精製することであって、該精製が、有機溶媒(例えば、限定されないがアセトニトリル、トリフルオロ酢酸(TFA)、ピリジン、酢酸、及び/またはN-プロパノール)、及び/または高グリコシル化ピークの精製及び/または除去の目的で使用される逆相C4 HPLCカラムの非存在下である、精製することと;(c)精製されたGM-CSFを収集することであって、該精製されたGM-CSFが高グリコシル化、例えば高マンノシル化GM-CSF形態を実質的に含まない、収集することと、を含む、組換え体を作製する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】HPLCによって定量化されたSaccharomycesで発現したGM-CSFを示す。アスタリスクは、高マンノシル化GM-CSFピークを識別する。
図2】タンパク質の同一性を確認するために使用されたウエスタンブロットを示す。
図3】rhu GM-CSFグリコフォームの構成比を決定するために使用された逆相HPLCアッセイを示す。
図4】酵母で増殖させたBDS LEUKINE(参照標準)対CHOで発現したrhu GM-CSFのクロマトグラムの比較を示す。BDS LEUKINEは、配列内にT39AまたはN37Qアミノ酸置換のいずれも含まない、配列番号1の野生型GM-CSFを指す。
図5】酵母で増殖させたBDS LEUKINE(参照標準)対CHOで発現したrhu GM-CSFのサイズ排除クロマトグラムの比較を示す。
図6】酵母で増殖させたrhu GM-CSF対CHO細胞で増殖させたrhu GM-CSFの発酵力価を示す。
図7】変異T39A及びN37Qを有するrhu GM-CSF、ならびにLEUKINE(すなわち、T39AまたはN37Qを含まないGMーCSF)の生物学的活性を測定する機能的TF-1バイオアッセイの比較を示す。
図8】CHO細胞で増殖させた変異N37Qを有するrhu GM-CSFを、異なる条件を使用して保存したBDS LEUKINEの3つの異なるバッチ(Leukine BDS新規物質、2~8℃で12ヶ月保存したLeukine BDS、-70℃で48ヶ月保存したLeukine)と比較して、その生物学的活性を測定するTF-1アッセイデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、サルグラモスチムの配列中、例えば、サルグラモスチムの37位、38位、及び/または39位、または等価物において単一のアミノ酸が変化することにより、有機溶媒(例えば限定されないが、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸(TFA)、ピリジン、酢酸、及び/またはNープロパノール)、及び/またはサルグラモスチムで観察される高グリコシル化ピークの精製及び/または除去の目的で使用される逆相C4 HPLCカラムによる精製を必要としない機能的GM-CSFが生成されるという発見に部分的に基づく。
【0032】
GM-CSFの組成物
一態様において、操作されたGM-CSFタンパク質が提供される。
【0033】
諸実施形態において、本発明の実施に使用される操作されたGM-CSFは、任意の薬学的に安全かつ有効なGM-CSF、またはGM-CSFの生物学的活性ならびに本発明の置換及び/または欠失を有するその任意の誘導体を含む。
【0034】
一実施形態において、本発明の方法の実施に使用される操作されたGM-CSFは、サルグラモスチム(LEUKINE)などの組換えヒトGM-CSF(rhu GM-CSF)に由来する。サルグラモスチムは生合成された酵母由来の組換えヒトGM-CSFであり、23位にプロリンの代わりにロイシンを有するという点で内因性ヒトGM-CSFとは異なる単一の127アミノ酸糖タンパク質を有する。他の天然及び合成GM-CSF、ならびに天然ヒトGM-CSFの生物学的活性を有するそれらの誘導体は、本発明の実施において同等に有用であり得る。
【0035】
諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSF分子はグリコシル化されている。諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSF分子は、GM-CSFのグリコシル化に影響を与える1つ以上の置換及び/または欠失を含む。
【0036】
理論に拘束されることは望まないが、生合成GM-CSFのグリコシル化の程度は、半減期、分布、及び排泄に影響を与えると考えられる。(Lieschke and Burgess,N.Engl.J.Med.327:28-35,1992;Dorr,R.T.,Clin.Ther.15:19-29,1993;Horgaard et al.,Eur.J.Hematol.50:32-36,1993)。
【0037】
一態様において、配列番号1または配列番号2と、少なくとも約90%、または少なくとも約91%、または少なくとも約92%、または少なくとも約93%、または少なくとも約94%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性、または100%の同一性を有し、N37位、E38位、及び/またはT39位またはそれに対応する位置に置換または欠失を有するアミノ酸配列を含む、組換えヒトGM-CSFタンパク質が提供される。
【0038】
諸実施形態において、組換えヒトGM-CSFのN37位またはそれに対応する位置のアミノ酸は、極性及び中性電荷の親水性アミノ酸である。諸実施形態において、極性及び中性電荷の親水性アミノ酸は、グルタミン(Q)、セリン(S)、トレオニン(T)、プロリン(P)、及びシステイン(C)から選択される。諸実施形態において、極性及び中性電荷の親水性アミノ酸はグルタミン(Q)である。
【0039】
諸実施形態において、組換えヒトGM-CSFのE38位またはそれに対応する位置のアミノ酸は、疎水性脂肪族アミノ酸であり、かつ/またはプロリンではない。諸実施形態において、疎水性脂肪族アミノ酸は、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、及びバリン(V)から選択される。
【0040】
諸実施形態において、組換えヒトGM-CSFのT39位またはそれに対応する位置のアミノ酸は、疎水性脂肪族アミノ酸である。諸実施形態において、疎水性脂肪族アミノ酸は、アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、及びバリン(V)から選択される。諸実施形態において、疎水性脂肪族アミノ酸はアラニン(A)である。諸実施形態において、組換えヒトGM-CSFのT39位またはそれに対応する位置のアミノ酸は荷電していない。諸実施形態において、組換えヒトGM-CSFのT39位またはそれに対応する位置のアミノ酸は、Gluグルタミン酸(E)ではない。
【0041】
諸実施形態において、配列番号1または配列番号2と、少なくとも約90%、または少なくとも約91%、または少なくとも約92%、または少なくとも約93%、または少なくとも約94%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性、または100%の同一性を有し、N37欠失、N37Q、N37S、N37T、N37P、N37C、E38欠失、E38A、E38L、E38I、E38M、E38V、T39欠失、T39A、T39G、T39L、T39I、T39M、及びT39Vのうちの1つ以上または対応する変異を有するアミノ酸配列を含む、組換えヒトGM-CSFタンパク質が提供される。
【0042】
諸実施形態において、組換えヒトGM-CSFは、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列、またはそれに対して約90%、もしくは約93%、もしくは約95%、もしくは約97%、もしくは約98%の同一性の、本発明の置換及び/または欠失を有するバリアントを有する。
【0043】
諸実施形態において、GM-CSFは、本発明の置換及び/または欠失を有するモルグラモスチム、サルグラモスチム、及びレグラモスチムのうちの1つである。
【0044】
理論に拘束されることは望まないが、hGM-CSFのコアは、角度をなしてパッキングされた4つのヘリックスからなる。rhGM-CSFの結晶構造及び変異原性分析(Rozwarski D A et al.,Proteins 26:304-13,1996)により、タンパク質コアの無極性側鎖に加えて、10個の埋もれた水素結合残基が、他の側鎖原子に水素結合する残基よりも良好に保存された主鎖原子に分子内水素結合すること;非対称ユニット内の2つの分子の同等位置に24の溶媒和部位が見られ、このうち最も強力なものが二次構造要素間の裂け目に位置していることが判明した。疎水性側鎖の2つの表面クラスターは、予想される受容体結合領域の近くに位置する。ヘリックスA/ヘリックスC表面の残基の変異誘発により、特定のGlu、Gly、及びGln残基の重要性が確認された。したがって、これらの残基は、本発明で使用するhGM-CSFの機能的置換バリアントでは置換されず、これらのヘリックスは、本発明で使用するhGM-CSFの機能的フラグメントまたは欠失バリアントにおいて保持される。
【0045】
さらに、諸実施形態において、当業者は、バリアントの同一性を知らせるための構造情報について、UniProtKBエントリーP04141を参照することができる。
【0046】
hGM-CSFのN末端ヘリックスは、その受容体への高親和性結合を支配する(Shanafelt A B et al.,EMBO J 10:4105-12,1991)。GM-CSFの生物学的効果の伝達には、少なくとも2つの細胞表面受容体成分との相互作用が必要である(そのうちの1つはサイトカインIL-5と共有される)。上記の研究は、一連のヒト-マウスハイブリッドGM-CSFサイトカイン上に固有の受容体結合ドメインを配置することにより、GM-CSF内の受容体結合決定基を同定した。GM-CSFとそれらの高親和性受容体複合体の共有サブユニットとの相互作用は、ペプチド鎖の非常に小さな部分によって支配されていた。N末端αヘリックスに存在するいくつかの重要な残基は、相互作用に特異性を付与するのに十分であった。
【0047】
したがって、諸実施形態において、この情報は、アミノ酸配列における許容可能な変動に関して、当業者に知らせることができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、アミノ酸変異はアミノ酸置換であり、保存的置換及び/または非保存的置換を含み得る。
【0049】
「保存的置換」は、例えば、関与するアミノ酸残基の極性、電荷、サイズ、溶解度、疎水性、親水性、及び/または両親媒性の性質における類似性に基づいて行われ得る。20個の天然アミノ酸は、以下の6つの標準的なアミノ酸グループに分類することができる:(1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;及び(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0050】
本明細書で使用される場合、「保存的置換」とは、上記の6つの標準的なアミノ酸グループの同じグループ内に列挙される別のアミノ酸によるアミノ酸の交換として定義される。例えば、GluによるAspの交換は、そのように修飾されたポリペプチド内に1つの負電荷を保持する。さらに、αヘリックスを破壊する能力に基づいて、グリシンとプロリンが互いに置換されることもある。
【0051】
本明細書で使用される場合、「非保存的置換」とは、上記の6つの標準的なアミノ酸グループ(1)~(6)の異なるグループに列挙される別のアミノ酸によるアミノ酸の交換として定義される。
【0052】
様々な実施形態において、置換はまた、非古典的アミノ酸も含み得る(例えば、セレノシステイン、ピロリシン、N-ホルミルメチオニンβ-アラニン、GABA及びδ-アミノレブリン酸、4-アミノ安息香酸(PABA)、一般的なアミノ酸のD-異性体、2,4-ジアミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコスメ(sarcosme)、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロアミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えば、βメチルアミノ酸、C α-メチルアミノ酸、N α-メチルアミノ酸、及び一般的なアミノ酸類似体)。
【0053】
アミノ酸配列の修飾は、当技術分野における任意の周知の技術、例えば、部位特異的変異誘発またはPCRベースの変異誘発を使用して、達成することができる。このような技術は、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Plainview,N.Y.,1989及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York,N.Y.,1989に記載されている。
【0054】
グリコフォーム
諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSF分子は、複数の分子形態を含む。諸実施形態において、分子形態は、非グリコシル化形態、O-グリコシル化形態、N-グリコシル化形態、及びN+Oグリコシル化形態から選択される。
【0055】
諸実施形態において、組換えヒトGM-CSFは、高グリコシル化形態、例えば高マンノシル化形態を実質的に含まない。諸実施形態において、組換えヒトGM-CSFは、精製後に約10%もしくは約10%未満の高マンノシル化形態、または精製後に約5%もしくは約5%未満の高マンノシル化形態、または精製後に約3%もしくは約3%未満の高マンノシル化形態、または精製後に約2%もしくは約2%未満の高マンノシル化形態、または精製後に約1%もしくは約1%未満の高マンノシル化形態を有する。
【0056】
諸実施形態において、組換えヒトGM-CSFは、同じ方法で発現及び精製された場合に、野生型ヒトGM-CSF及び/またはサルグラモスチムよりも高マンノシル化形態が少ない。諸実施形態において、組換えヒトGM-CSFは、同じ方法で発現及び精製された場合に、野生型ヒトGM-CSF及び/またはサルグラモスチムよりも約100%、または約90%、または約80%、または約70%、または約60%、または約50%、または約40%、または約30%、または約20%、または約10%、高マンノシル化形態が少ない。諸実施形態において、高マンノシル化形態の量は、当技術分野で知られているように検出することができ、例えば限定されないが、クロマトグラフィー法(例えば、サイズ分離(例えば、分子量及び/またはカラムにおける保持時間を介して、及び/または蛍光標識(例えば、2-アミノ安息香酸(2-AA)、2-アミノベンズアミド(2-AB)、及び2-アミノピリジン(2-AP)を用いて、アニオン交換クロマトグラフィーなど)、質量分析、SDS-PAGE/染色(例えば、過ヨウ素酸シッフ(PAS)反応に基づくゲル染色法)、糖結合タンパク質(レクチンなど)の使用などの親和性ベースの方法、酵素ベースの方法、抗体ベースの方法、放出アッセイ(グリカンの酵素的切断もしくは化学的除去、または化学的誘導体化など)、キャピラリー電気泳動、ならびにイースタンブロットなどが挙げられる。
【0057】
諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSFは、サルグラモスチムに使用されるものよりも複雑でない精製に適している。
【0058】
諸実施形態において、本発明の変異体GM-CSFタンパク質は、例えばHPLCによって、3つのグリコフォームとして分離され、高グリコシル化形態を欠く。図1と対比すると、図1ではHPLCで分離されたGM-CSFの4つのピークが示されており、アスタリスクは、高マンノシル化GM-CSFピークを識別している。
【0059】
諸実施形態において、本発明のGM-CSFタンパク質は、1つ以上の有機溶媒(例えば限定されないが、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸(TFA)、ピリジン、酢酸、及び/またはN-プロパノール)、及び/または高グリコシル化ピークの精製及び/または除去の目的で使用される逆相C4 HPLCカラムを必要としなくても、高グリコシル化種を含まずに精製することができる。諸実施形態において、本発明のGM-CSFタンパク質は、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸(TFA)、ピリジン、酢酸及び/またはN-プロパノールを使用しなくても、高グリコシル化種を含まずに精製することができる。諸実施形態において、本発明のGM-CSFタンパク質は、高グリコシル化ピークの精製及び/または除去の目的で使用される逆相C4 HPLCカラムなしで精製することができる。
【0060】
諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSFは、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって定量化された場合に、3つのピークとして分離される。諸実施形態において、該組換えヒトGM-CSFは、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって定量化された場合に、約20分未満の保持時間で実質的なピークを提供しない。
【0061】
諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSFは、2以上の種(例えば、グリコフォーム)を含む。諸実施形態において、分子量が約20kDaを超える種は存在しない。
【0062】
諸実施形態において、組換えヒトGM-CSFは、有機溶媒(例えば限定されないが、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸(TFA)、ピリジン、酢酸、及び/またはN-プロパノール)(例えば限定されないが、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸(TFA)、ピリジン、酢酸、及び/またはN-プロパノール)、及び/または高グリコシル化ピークの精製及び/または除去の目的で使用される逆相C4 HPLCカラムを使用せずに精製された際に、高マンノシル化形態を実質的に含まない。
【0063】
諸実施形態において、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞で産生された組換えヒトGM-CSFは、グリコシル化アイソフォーム及び非グリコシル化アイソフォームの両方を有する不均一なグリコフォームを有する単量体である。
【0064】
組換えGM-CSFの機能特性
諸実施形態において、本発明の置換及び/または欠失を有する本発明の組換えヒトGM-CSF分子は、野生型ヒトGM-CSF及び/またはサルグラモスチムと機能的に類似している(例えば、1つ以上の機能パラメータが、アッセイされた機能パラメータの約50%以下、もしくは約40%以下、もしくは約30%以下、もしくは約20%以下、もしくは約10%以下、もしくは約5%以下、または約5倍以下、もしくは約4倍以下、もしくは約3倍以下、もしくは約2倍以下で異なる)。諸実施形態において、GM-CSFの機能パラメータは、当技術分野で知られているアッセイ、例えば限定されないが、TF-1細胞株、初代骨髄細胞などの細胞を使用する増殖アッセイ、生化学アッセイ、例えば、ILITE(EAGLE)GM-CSF(GM-CSFプロモータの制御下にあるルシフェラーゼ)など、細胞生存アッセイ、例えば、骨髄細胞生存アッセイ、細胞分化アッセイ、及び共培養実験などによって検出することができる。
【0065】
諸実施形態において、本発明の置換及び/または欠失を有する本発明の組換えヒトGM-CSF分子は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体(GM-CSF-R-αまたはCSF2R)に結合及び/またはこれを活性化する。諸実施形態において、本発明の置換及び/または欠失を有する本発明の組換えヒトGM-CSF分子は、野生型ヒトGM-CSF及び/またはサルグラモスチムと同等の親和性、有効性、及び/または生物学的活性で顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体(GM-CSF-R-αまたはCSF2R)に結合及び/またはこれを活性化する(例えば、1つ以上の機能パラメータが、約50%以下、もしくは約40%以下、もしくは約30%以下、もしくは約20%以下、もしくは約10%以下、もしくは約5%以下、または約5倍以下、もしくは約4倍以下、もしくは約3倍以下、もしくは約2倍以下で異なる)。GM-CSFの結合及び活性化に関するアッセイは、当技術分野で知られている。そのようなアッセイの非限定的な例としては、例えば、放射性リガンドアッセイまたは非放射性リガンドアッセイ(例えば、免疫沈降(IP)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット、蛍光偏光法(FP)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、表面プラズモン共鳴(SPR)、及びラジオイムノアッセイ(RIA))が挙げられる。また、結合動態は、Biacore分析など、当技術分野で知られている標準的なアッセイによって評価することができる。全細胞リガンド結合アッセイ、及び可溶性GM-CSF受容体α(sGMRa)を用いる無細胞アッセイ系を使用してもよい。使用できるいくつかの他の種類のアッセイとしては、放射性ヨウ素化GM-CSFを用いた受容体結合アッセイまたは飽和結合アッセイまたは競合結合アッセイと、細胞増殖アッセイが挙げられる。
【0066】
諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSF分子は、1つ以上の細胞ベースの活性バイオアッセイを使用して、例えばGM-CSF依存性ヒト細胞株増殖アッセイを使用して、例えば、TF-1、M-07e、HU-3、M-MOK、MB-02、GM/SO、F-36P、GF-D8、ELF-153、AML-193、MUTZ-3、OCI-AML5、OCI-AML6、OCI-AML1、SKNO-1、UCSD-AML1、及びUT-7を使用して、アッセイすることができる。
【0067】
諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSF分子の効力を、GM-CSFに応答して増殖するヒト赤白血病細胞株であるTF-1細胞を用いたバイオアッセイを使用して測定する。このアッセイの詳細は当技術分野で知られている。例えば、参照標準、対照、及び試験試料をアッセイ培地で3連で連続希釈し、3つの別々の96ウェルプレートに添加する。次いで、懸濁液中のTF-1細胞を添加し、混合物を37℃で69.5~72時間インキュベートする。蛍光色素(例えば、ALAMARBLUE)を添加した後、プレートを37℃で6.6~8時間インキュベートする。そして、TF-1細胞の増殖を、蛍光マイクロプレートリーダーで測定する。
【0068】
諸実施形態において、本発明の組換えヒトGM-CSF分子は、変異を欠く組換えヒトGM-CSFとほぼ同じ比活性を有する(例えば、TF-1細胞を用いたバイオアッセイを使用してアッセイされる)。
【0069】
諸実施形態において、哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)で産生された組換えヒトGM-CSFは、酵母細胞で産生された組換えヒトGM-CSFと比較して機能的に増強されている。
【0070】
諸実施形態において、結合及び/または活性化が起こるGM-CSF-R-αは、細胞の表面に発現する。諸実施形態において、細胞は造血前駆細胞である。諸実施形態において、造血前駆細胞は免疫細胞である。実施形態において、造血前駆細胞は放射線照射されている。
【0071】
諸実施形態において、本発明の置換及び/または欠失を有する本発明の組換えヒトGM-CSF分子の免疫原性は、野生型ヒトGM-CSF及び/またはサルグラモスチムと同等である(例えば、1つ以上の機能パラメータが、約50%以下、もしくは約40%以下、もしくは約30%以下、もしくは約20%以下、もしくは約10%以下、もしくは約5%以下、または約5倍以下、もしくは約4倍以下、もしくは約3倍以下、もしくは約2倍以下で異なる)。諸実施形態において、免疫原性は、当技術分野で知られている方法を使用してアッセイされる。非限定的な例としては、例えば、スクリーニングアッセイ、例えば、直接または間接または架橋ELISA、電気化学発光、ビーズベースの化学発光アッセイ、放射性免疫沈降アッセイ、表面プラズマ共鳴、及びバイオレイヤー干渉法、ならびに細胞ベースのルシフェラーゼレポーター遺伝子中和抗体アッセイによってアッセイされる1以上の抗GM-CSF結合抗体の検出が挙げられる。
【0072】
諸実施形態において、細胞組換えヒトGM-CSFは可溶性である。
【0073】
核酸及び宿主細胞
諸実施形態において、本明細書に記載の組換えヒトGM-CSFをコードする核酸分子が提供される。諸実施形態において、核酸分子はコドン最適化配列を有する。
【0074】
諸実施形態において、本明細書に記載の核酸分子を発現する非ヒト宿主細胞が提供される。
【0075】
諸実施形態において、宿主細胞は、酵母、哺乳動物、細菌、昆虫、藻類、または植物細胞である。
【0076】
諸実施形態において、酵母細胞は非メチロトローフ酵母細胞である。諸実施形態において、宿主細胞はSaccharomyces cerevisiae細胞である。
【0077】
諸実施形態において、本明細書に記載の核酸分子を発現するCHO細胞が提供される。
【0078】
薬学的組成物及び製剤
諸実施形態において、本明細書に記載の組換えヒトGM-CSFと、薬学的に許容される賦形剤または担体とを含む、薬学的組成物が提供される。
【0079】
本明細書に記載の任意の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体または媒体を含む組成物の成分として対象に投与することができる。このような組成物は、適切な投与のための形態を提供するために、任意選択で、適切な量の薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい。
【0080】
様々な実施形態において、薬学的賦形剤は、水、及び例えばピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油などといった石油、動物、植物、もしくは合成起源の油を含む油などの液体であり得る。薬学的賦形剤は、例えば、生理食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプン糊、タルク、ケラチン、コロイダルシリカ、尿素などであり得る。加えて、補助剤、安定化剤、増粘剤、滑沢剤、及び着色剤を使用してもよい。一実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、対象に投与されるときに無菌である。水は、本明細書に記載の任意の薬剤が静脈内投与される場合に有用な賦形剤である。生理食塩水ならびにデキストロース及びグリセロールの水溶液もまた、特に注射液のための液体賦形剤として用いられ得る。適切な薬学的賦形剤としてはまた、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなども挙げられる。本明細書に記載のいずれの薬剤もまた、必要に応じて、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含んでもよい。適切な薬学的賦形剤の他の例は、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences 1447-1676(Alfonso R.Gennaro eds.,19th ed.1995)に記載されている。
【0081】
本発明は、記載された薬学的組成物(及び/または追加の治療薬)を様々な製剤で含む。本明細書に記載のいずれの本発明の薬学的組成物(及び/または追加の治療薬)も、液剤、懸濁剤、乳剤、点滴、錠剤、丸剤、ペレット、カプセル剤、液体含有カプセル剤、ゼラチンカプセル剤、粉末剤、徐放性製剤、坐剤、乳剤、エアロゾル、噴霧剤、懸濁剤、凍結乾燥粉末剤、凍結懸濁剤、乾燥粉末剤、または使用に適した他の形態をとり得る。一実施形態において、組成物はカプセル剤の形態である。別の実施形態において、組成物は錠剤の形態である。さらに別の実施形態において、薬学的組成物は、ソフトゲルカプセル剤の形態で製剤化される。さらなる実施形態において、薬学的組成物は、ゼラチンカプセル剤の形態で製剤化される。さらに別の実施形態において、薬学的組成物は、液剤として製剤化される。
【0082】
必要に応じて、本発明の薬学的組成物(及び/または追加の治療薬)はまた、可溶化剤を含んでもよい。また、薬剤は、当技術分野で知られている好適な媒体または送達デバイスを用いて送達され得る。本明細書に概説される併用療法は、単一の送達媒体または送達デバイスで共送達され得る。
【0083】
本発明の薬学的組成物(及び/または追加の治療薬)を含む製剤は、好都合に単位剤形で提供されてもよく、薬学の分野において周知である任意の方法によって調製してもよい。このような方法は一般に、治療薬を1つ以上の副成分を構成する担体と会合させるステップを含む。典型的には、製剤は、治療薬を液体担体、細かく分割した固体担体、またはその両方と均一かつ密接に会合させることによって調製され、次に必要に応じて、生成物を所望の製剤の剤形に成形する(例えば、湿式または乾式造粒、粉末ブレンドなど、その後、当技術分野で公知である従来の方法を使用して錠剤化する)。
【0084】
様々な実施形態において、本明細書に記載の任意の薬学的組成物(及び/または追加の治療薬)は、慣用的な手順に従って、本明細書に記載の投与様式に適合した組成物として製剤化される。
【0085】
投与経路としては、例えば、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、舌下、鼻腔内、脳内、膣内、経皮、直腸、吸入、または局所的が挙げられる。投与は、局所性であっても全身性であってもよい。いくつかの実施形態において、投与は、経口によって行われる。別の実施形態において、投与は、非経口注射によるものである。投与様式は、施術者の裁量に委ねられ、ある程度患部に応じて異なる。ほとんどの場合、投与により、本明細書に記載の任意の薬剤が血流に放出される。
【0086】
特定の実施形態において、GM-CSF(及び/または追加の治療薬)は、静脈内経路を介して投与される。
【0087】
一実施形態において、本明細書に記載の薬学的組成物(及び/または追加の治療薬)は、慣用的な手順に従って、経口投与に適合した組成物として製剤化される。経口送達のための組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ剤、水性または油性懸濁剤、顆粒剤、粉末剤、乳剤、カプセル剤、シロップ剤、またはエリキシル剤の形態であり得る。経口投与される組成物は、1つ以上の薬剤、例えば、フルクトース、アスパルテーム、またはサッカリンなどの甘味剤;ペパーミント、ウィンターグリーン油、もしくはサクランボなどの香味剤;着色剤;及び保存剤を含み、薬学的に口当たりのよい調製物を提供することができる。さらに、錠剤または丸剤の形態では、組成物は、胃腸管における崩壊及び吸収を遅らせるために被覆されてもよく、それにより長期間にわたって持続作用を提供する。浸透圧活性駆動の本明細書に記載の任意の薬学的組成物(及び/または追加の治療薬)を包囲する選択的透過性膜もまた、経口投与される組成物に好適であり得る。これらの後者のプラットフォームにおいて、カプセル剤を包囲する環境からの流体は、駆動化合物によって吸水され、その化合物が膨張して開口部から薬剤または薬剤組成物を置換する。これらの送達プラットフォームは、即時放出製剤のスパイク状プロファイルとは対照的に、本質的にゼロ次送達プロファイルを提供することができる。モノステアリン酸グリセロールまたはステアリン酸グリセロールなどの時間遅延材料もまた有用であり得る。経口組成物は、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、及び炭酸マグネシウムなどの標準的な賦形剤を含むことができる。一実施形態において、賦形剤は医薬品グレードのものである。懸濁液は、活性化合物に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、及びソルビタンエステル、微晶質セルロース、メタ水酸化アルミニウム(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天、トラガカント、ならびにそれらの混合物を含有してもよい。
【0088】
非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、及び関節内への注射及び点滴)に好適な剤形としては、例えば、液剤、懸濁剤、分散液、乳剤などが挙げられる。それらはまた、使用直前に無菌注射用媒体に溶解または懸濁することができる、無菌の固体組成物(例えば、凍結乾燥組成物)の形態で製造され得る。これらは、例えば、当技術分野で知られている懸濁剤または分散剤を含んでもよい。非経口投与に好適な製剤成分としては、滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、またはその他の合成溶媒など;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなど;キレート剤、例えばEDTAなど;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩など;及び浸透圧調整剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロースなどを挙げることができる。
【0089】
静脈内投与では、好適な担体としては、生理学的生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,NJ)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。担体は、製造及び保管の条件下で安定でなければならず、微生物から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、及びそれらの好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。
【0090】
本明細書に記載の任意の本発明の薬学的組成物(及び/または追加の治療薬)も、制御放出もしくは持続放出手段によって、または当業者に周知である送達デバイスによって投与され得る。その例には、これらに限定されないが、米国特許第3,845,770号、同第3,916,899号、同第3,536,809号、同第3,598,123号、同第4,008,719号、同第5,674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号、及び同第5,733,556号に記載されているものが含まれ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。このような剤形は、様々な割合で所望の放出プロファイルを提供するために、例えば、ヒドロプロピルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、浸透圧システム、多層コーティング、微小粒子、リポソーム、ミクロスフェア、またはこれらの組み合わせを使用して、1つ以上の活性成分の制御放出または持続放出を提供するために有用であり得る。本明細書に記載のものを含む当業者に既知の好適な制御放出製剤または持続放出製剤は、本明細書に記載の薬剤の活性成分とともに使用するために容易に選択することができる。本発明は、このため、制御放出または持続放出するように適合された錠剤、カプセル剤、ゲルキャップ、及びカプレットなどであるが、これらに限定されない経口投与に適した単一の単位剤形を提供する。
【0091】
活性成分の制御放出または持続放出は、pHの変化、温度の変化、適切な波長の光による刺激、酵素の濃度もしくは利用能、水の濃度もしくは利用能、または他の生理学的条件もしくは化合物を含むがこれらに限定されない種々の条件によって刺激され得る。
【0092】
別の実施形態において、制御放出系は、治療される標的領域の近くに配置され得、したがって全身用量のほんの一部しか必要としない(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release,前述,vol.2,pp.115-138(1984))を参照のこと)。Langer,1990,Science 249:1527-1533)による総説で論じられている他の制御放出系を使用してもよい。
【0093】
薬学的製剤は滅菌であることが好ましい。滅菌は、例えば、滅菌濾過膜を通じた濾過によって、達成することができる。組成物が凍結乾燥される場合、フィルター滅菌を、凍結乾燥及び再構成の前または後に行うことができる。
【0094】
薬学的に許容される塩及び賦形剤
本明細書に記載される組成物は、十分に塩基性の官能基を保有することができ、それは、無機酸もしくは有機酸、またはカルボキシル基と反応することができ、無機塩基または有機塩基と反応して、薬学的に許容される塩を形成することができる。当技術分野で周知のように、薬学的に許容される酸付加塩は、薬学的に許容される酸から形成される。このような塩としては、例えば、Journal of Pharmaceutical Science,66,2-19(1977)及びThe Handbook of Pharmaceutical Salts;Properties,Selection,and Use.P.H.Stahl and C.G.Wermuth(eds.),Verlag,Zurich(Switzerland)2002に列挙される薬学的に許容される塩が含まれ、これらの文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0095】
薬学的に許容される塩には、非限定的な例として、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、パモ酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、安息香酸メチル、o-アセトキシ安息香酸塩、ナフタレン-2-安息香酸塩、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、α-ヒドロキシ酪酸塩、ブチン-1,4-ジカルボン酸塩、ヘキシン-1,4-ジカルボン酸塩、カプリン酸塩、カプリル酸塩、ケイ皮酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、リンゴ酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩、フタル酸塩、テラフタル酸塩、プロピオール酸塩、プロピオン酸塩、プロピオン酸フェニル、セバシン酸塩、スベリン酸塩、p-ブロモベンゼンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エチルスルホン酸塩、2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、ナフタレン-1,5-スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、及び酒石酸塩が挙げられる。
【0096】
「薬学的に許容される塩」という用語は、カルボン酸官能基などの酸性官能基及び塩基を有する本発明の組成物の塩も指す。好適な塩基としては、ナトリウム、カリウム、及びリチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウム及び亜鉛などの他の金属の水酸化物;アンモニア、及び非置換またはヒドロキシ置換モノ-、ジ-、またはトリ-アルキルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの有機アミン;トリブチルアミン;ピリジン;N-メチル、N-エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ-、ビス-、またはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミンなどのモノ-、ビス-、またはトリス-(2-OH-低級アルキルアミン)、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミンまたはトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミンなどのN,N-ジ-低級アルキル-N-(ヒドロキシル-低級アルキル)-アミン;N-メチル-D-グルカミン;及びアルギニン、リジンなどのアミノ酸、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、薬学的に許容される塩の形態である。
【0098】
使用方法
一態様において、がん治療を受けている、もしくは受けたことがある、または骨髄移植を受けている、もしくは受けたことがある、及び/または骨髄抑制量の放射線に急性被ばくした患者または対象を治療する方法であって、治療有効量の本発明の組換えヒトGM-CSFタンパク質またはその薬学的組成物を患者に投与することを含む、方法が提供される。諸実施形態において、患者は、造血前駆細胞のクローン増殖、生存、分化、及び活性化状態を調節することによって治療される。諸実施形態において、患者は、巨核球系及び赤血球系前駆細胞の増殖を促進することにより骨髄単球細胞系譜を調節することによって治療される。諸実施形態において、患者は、好中球、マクロファージ、及び/または樹状細胞の生存、増殖、及び活性化を刺激することにより造血前駆細胞を調節することによって治療される。諸実施形態において、患者は、好中球、マクロファージ、及び/または樹状細胞の生存、増殖、及び活性化を刺激することにより造血前駆細胞を調節することによって骨髄移植後に治療される。
【0099】
一態様において、治療有効量の本発明の組換えヒトGM-CSFタンパク質またはその薬学的組成物を患者に投与すること、または有効量の本明細書に記載の薬学的組成物と細胞を接触させ、治療有効量の細胞を投与することを含む治療方法であって、治療が、導入化学療法後の好中球の回復を促進し、及び/または感染症の発生率を低減する;白血球除去及び移植による採取のために造血前駆細胞を末梢血に動員する;自家または同種の骨髄または末梢血前駆細胞を移植した後の骨髄再構築を促進する;自家または同種の骨髄移植後の好中球回復遅延または生着不全を治療する;及び/または急性放射線症候群の造血症候群(H-ARS)を治療する、治療方法が提供される。
【0100】
一態様において、本発明の組換えヒトGM-CSFタンパク質を含む有効量の組成物またはそれを含む薬学的組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、ウイルスによる感染症を治療するための方法が提供される。
【0101】
諸実施形態において、ウイルス感染症は、A型、B型、C型、及びD型インフルエンザウイルス感染症から任意に選択されるインフルエンザ感染症である。
【0102】
諸実施形態において、ウイルス感染症は、コロナウイルス感染症である。諸実施形態において、コロナウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、SARS-CoV、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、HCoV-HKU1、及びHCoV-OC43から任意に選択されるベータコロナウイルスである。諸実施形態において、コロナウイルスは、HCoV-NL63及びHCoV-229Eから任意に選択されるアルファコロナウイルスである。
【0103】
コロナウイルスは、ベータコロナウイルス及びアルファコロナウイルスの呼吸器病原体を含むCoronaviridae科に属し、比較的最近、人間に侵入することが知られるようになった。Coronaviridae科には、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、SARS-CoV、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、HCoV-HKU1、及びHCoV-OC43などのベータコロナウイルスが含まれる。アルファコロナウイルスには、例えばHCoV-NL63及びHCoV-229Eが含まれる。
【0104】
コロナウイルスは、宿主細胞へのウイルス侵入を促進する、哺乳動物宿主の膜貫通受容体であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)のウイルス認識を担う「スパイク」表面糖タンパク質を介して細胞に侵入する。Zhou et al.,A pneumonia outbreak associated with a new coronavirus of probable bat origin.Nature 2020。
【0105】
SARS-CoV-2により引き起こされる新型コロナウイルス感染症2019(COVID-19)は、コウモリ起源であると考えられている新しいウイルスである。COVID-19は重度の呼吸窮迫を引き起こし、このRNAウイルス株は、公衆衛生に対する大きな脅威であり、世界的な緊急事態と宣言された最近の爆発的感染の原因となっている。SARS-CoV-2の全ゲノムの系統解析により、このウイルスはSARS様コロナウイルス群(Betacoronavirus属、Sarbecovirus亜属)に最も近縁である(ヌクレオチド類似性89.1%)ことが判明した。Wu et al.,A new coronavirus associated with human respiratory disease in China.Nature,Feb 3,2020。
【0106】
SARS-CoV-2は、細胞表面受容体への結合を媒介する表面糖タンパク質であるSタンパク質としても知られる「スパイク」タンパク質、内在性膜タンパク質、エンベロープタンパク質、及びヌクレオカプシドタンパク質をコードするエンベロープ型一本鎖RNAウイルスである。S1サブユニット及びS2サブユニットを含むSタンパク質は、ウイルス膜を宿主細胞膜と融合するように構造的再編成を受ける融合前コンフォメーションで存在する三量体クラスI融合タンパク質である。例えば、Li,F.Structure,Function,and Evolution of Coronavirus Spike Proteins.Annu.Rev.Virol.3:237-261(2016)を参照のこと。本文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。融合前コンフォメーションでのSARS-CoV-2スパイクタンパク質の構造は、これまでに発見されている。Daniel et al.,Cryo-EM structure of the SARS-CoV-2 spike in the prefusion conformation.Science,19 Feb 2020を参照のこと。本文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0107】
SARS-CoV-2の全ゲノム(GenBank受託番号:MN908947)の系統解析により、このウイルスはSARS様コロナウイルス群(Betacoronavirus属、Sarbecovirus亜属)に最も近縁である(ヌクレオチド類似性89.1%)ことが判明した。Wu et al.,A new coronavirus associated with human respiratory disease in China.Nature,Feb 3,2020(本文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0108】
SARS-CoV-2は、スパイク表面糖タンパク質、膜糖タンパク質M、エンベロープタンパク質E、及びヌクレオカプシドリン酸化タンパク質Nを有する。SARS-CoV-2コロナウイルスの全ゲノム(29903個のヌクレオチド、一本鎖RNA)は、GenBank参照配列:MN908947としてNCBIデータベースに記載されている。コロナウイルスタンパク質は、以下からなる群から選択され得る:コロナウイルススパイクタンパク質(GenBank参照配列:QHD43416)、コロナウイルス膜糖タンパク質M(GenBank参照配列:QHD43419)、コロナウイルスエンベロープタンパク質E(GenBank参照配列:QHD43418)、及びコロナウイルスヌクレオカプシドリン酸化タンパク質E(GenBank参照配列:QHD43423)。
【0109】
諸実施形態において、本方法は、患者における急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発症を予防または緩和する。
【0110】
諸実施形態において、コロナウイルスはSARS-CoV-2である。諸実施形態において、患者はCOVID-19に罹患している。諸実施形態において、患者は、発熱、咳嚇、息切れ、下痢、上気道症状、下気道症状、肺炎、及び急性呼吸器症候群のうちの1つ以上に苦しんでいる。
【0111】
諸実施形態において、患者は低酸素症である。諸実施形態において、患者は呼吸窮迫に苦しんでいる。諸実施形態において、本方法は、患者の酸素化を改善する。諸実施形態において、本方法は、患者の呼吸窮迫からサイトカイン不均衡への移行を予防または緩和する。諸実施形態において、本方法は、サイトカインストームを逆転または予防する。諸実施形態において、本方法は、肺または全身のサイトカインストームを逆転または予防する。諸実施形態において、サイトカインストームは、全身性炎症反応症候群、サイトカイン放出症候群、マクロファージ活性化症候群、及び血球貪食性リンパ組織球症のうちの1つ以上から選択される。諸実施形態において、本方法は、1つ以上の炎症性サイトカインの過剰産生を逆転または予防する。諸実施形態において、炎症性サイトカインは、IL-6、IL-1、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)、IL-2ra、IL-10、IL-18、TNFα、インターフェロン-γ、CXCL10、及びCCL7のうちの1つ以上である。
【0112】
諸実施形態において、本方法は、治療前と比べて患者のウイルス量を減少させる。
【0113】
一態様において、それを必要とする対象においてウイルス感染症を治療または予防するための方法であって、該方法が、ウイルス感染症から回復したドナー対象から血漿を提供することであって、該血漿が、感染症を引き起こすウイルスに対して指向されるIgG、IgM、及び/またはIgA抗体を含み、該ドナー対象が、抗体の産生を刺激するために本明細書に記載の組換えヒトGM-CSFタンパク質で処置されている、提供することと、該血漿をそれを必要とする対象に投与することと、を含む方法が提供される。一態様において、それを必要とする対象においてウイルス感染症を治療または予防するための方法であって、ウイルス感染症から回復したドナー対象に本明細書に記載の組換えヒトGM-CSFタンパク質を投与することと、該ドナー対象から感染症を引き起こすウイルスに対して指向されるIgG、IgM、及び/またはIgA抗体を含む血漿を単離することと、該血漿をそれを必要とする対象に投与することと、を含む方法が提供される。
【0114】
諸実施形態において、そのような方法は、ウイルスに対する受動免疫を、それを必要とする対象に提供する。
【0115】
諸実施形態において、IgG、IgM、及び/またはIgA抗体はウイルス抗原に特異的に結合する。諸実施形態において、IgG、IgM、及び/またはIgA抗体はウイルスを中和する。諸実施形態において、IgG、IgM、及び/またはIgA抗体は、ウイルスによる細胞の感染を防止または軽減する。
【0116】
諸実施形態において、ウイルス感染症は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV-1)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、HCoV-HKU1、及びHCoV-OC43感染症から任意に選択されるベータコロナウイルス感染症から選択される。諸実施形態において、ウイルス感染症は、HCoV-NL63及びHCoV-229E感染症から任意に選択されるアルファコロナウイルス感染症から選択される。
【0117】
諸実施形態において、ベータコロナウイルス感染症は重症急性呼吸器症候群(SARS)である。
【0118】
諸実施形態において、ベータコロナウイルス感染症は、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)であるか、またはそれに関連している。
【0119】
諸実施形態において、ウイルス感染症は、A型、B型、C型、及びD型インフルエンザウイルス感染症から任意に選択されるインフルエンザ感染症である。諸実施形態において、インフルエンザ感染症は、パンデミック2009インフルエンザA(H1N1)または鳥インフルエンザA(H5N1)である。
【0120】
諸実施形態において、ドナー対象は、回復前にウイルス感染症に陽性であると検査されている。諸実施形態において、ドナー対象は、ドナー提供前にウイルス感染症の症状が消失している。諸実施形態において、ドナー対象は、血清学的検査を用いてウイルスに対して指向される抗体に陽性であると検査されている。諸実施形態において、ドナー対象は、測定可能な中和抗体力価を示す。諸実施形態において、中和抗体力価は少なくとも約1:160である。諸実施形態において、血漿は、ドナー対象からの血液試料から単離される。諸実施形態において、血漿は、プラズマフェレシスによって単離される。諸実施形態において、血漿は、感染症を引き起こすウイルスに対して指向されるIgG、IgM、及び/またはIgA抗体の治療有効量を含む。
【0121】
併用療法及び追加の治療薬
様々な実施形態において、本発明の薬学的組成物は、追加の薬剤(複数可)と組み合わせて併用投与される。併用投与は、同時または逐次的であり得る。
【0122】
一実施形態において、本発明の追加の治療薬及びGM-CSFは、対象に同時に投与される。本明細書で使用される「同時に」という用語は、追加の治療薬及びGM-CSFが、約60分以下、例えば、約30分以下、約20分以下、約10分以下、約5分以下、または約1分以下の時間間隔で投与されることを意味する。追加の治療薬及びGM-CSFの投与は、単一の製剤(例えば、追加の治療薬とGM-CSF組成物とを含む製剤)または別個の製剤(例えば、追加の治療薬を含む第1の製剤とGM-CSF組成物を含む第2の製剤)の同時投与によるものであり得る。
【0123】
併用投与は、追加の治療薬及びGM-CSFの薬理学的活性が時間的に重なり、それにより併用治療効果がもたらされるようなタイミングである場合、治療薬を同時に投与することを必要としない。例えば、追加の治療薬及び標的化部分(targeting moiety)、GM-CSF組成物を逐次的に投与することができる。本明細書で使用される「逐次的に」という用語は、追加の治療薬及びGM-CSFが、約60分を超える時間間隔で投与されることを意味する。例えば、追加の治療薬とGM-CSFとの逐次的投与の間の時間は、約60分超、約2時間超、約5時間超、約10時間超、約1日超、約2日超、約3日超、約1週間超、約2週間超、または約1ヶ月超の間隔であり得る。最適な投与時間は、投与される追加の治療薬及びGM-CSFの代謝速度、排泄速度、及び/または薬力学的活性の速度に依存する。追加の治療薬またはGM-CSF組成物のいずれかが最初に投与され得る。
【0124】
併用投与はまた、治療薬を同じ投与経路によって対象に投与することを必要としない。むしろ、各治療薬は、例えば、非経口的または非経口的以外の、任意の好適な経路によって投与することができる。
【0125】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のGM-CSFは、別の治療薬と併用投与されると相乗的に作用する。そのような実施形態において、標的化部分、GM-CSF組成物、及び追加の治療薬は、薬剤が単剤療法に関連して使用されるときに用いられる用量よりも低い用量で投与され得る。
【0126】
いくつかの実施形態において、追加の治療薬は抗ウイルス薬である。
【0127】
いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、抗ウイルス薬、例えばレムデシビル、ファビピラビル、オセルタミビル、バロキサビル、ガリデシビル、アンプレナビル、チプラナビル、サキナビル、ネルフィナビル、インジナビル、ダルナビル、アタザナビル、エメチン、ロピナビル及び/またはリトナビル、アルビドール及びロピナビル/リトナビル、及び/またはリバビリン、ダルナビル及びコビシスタット、及び/またはIFN-β-1b、β-D-N4-ヒドロキシシチジン(NHC)、例えばEIDD-1931またはEIDD-2801またはEIDD-2801など;免疫調節剤、例えばグルココルチコイド、IFN-a 2a、IFN-a 2b、IFN-b、ペグ化IFN-g、バリシチニブ、シロリムス、クラザキズマブ、カナキヌマブ、XPro1595、トシリズマブ、サリルマブ、シルツキシマブ、アダリムマブ、エクリズマブ、イベルメクチン、アナキンラ、プレジコビックス、シーヤンピン(xiyanping)、フィンゴリモド、メチルプレドニゾロン、レロンリマブ、サリドマイド、MK-2206、ニコラサミド、ニタゾキサミド(nitazoxamide)、クロロキン、またはヒドロキシクロロキン;抗生物質、例えばカリマイシン、ブリラシジン、アジスロマイシン、バリノマイシン、血管拡張阻害剤/拮抗剤、例えばrhACE2/GSK2586881/APN01、ロサルタン、エプロサルタン、テルミサルタン、バルサルタンなど;セリンプロテアーゼ阻害剤、例えばカモスタットメシル酸塩、ナファモスタットなど、他の薬物、例えばブロムヘキシン、アプロチニン、クロルプロマジン、ゾタチフィン、メトトレキサート、レナリドミド、抗VEGF-A、及び静脈内免疫グロブリン(IVIG)などを含む薬剤から選択される。例えば、諸実施形態において、任意のこれらの追加の治療薬が、SARS-CoV-2感染症の状況で使用される。
【0128】
いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、ファビピラビル、ラニナミビルオクタノエート、ペラミビル、ザナミビル、オセルタミビルリン酸塩、バロキサビルマルボキシル、ウミフェノビル、ウルミン アマンタジン塩酸塩、リマンタジン塩酸塩、アダプロミン、LASAG/BAY81-87981、セレコキシブ、エタネルセプト、メトホルミン、ゲムシタビン、ダピビリン、トラメチニブ、リシノプリル、ナプロキセン、ナリジクス酸、ドルゾラミド、ルキソリチニブ、ミドドリン、ジルチアゼム;スタチン類、例えば、アトルバスタチン、ニタゾキサニド;PPARアンタゴニスト、例えばゲムフィブロジルから選択される。例えば、諸実施形態において、任意のこれらの追加の治療薬が、インフルエンザ感染症の状況で使用される。
【0129】
作製方法
諸態様において、組換えヒトGM-CSFを含む組成物を産生する組換え体を作製する方法であって、(a)配列番号1または配列番号2と少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性を有し、N37位、G38位、及び/またはT39位または本明細書に記載のそれに対応する位置に置換または欠失を有するアミノ酸配列を含む組換えヒトGM-CSFをコードする核酸をトランスフェクトされた細胞、またはその抽出物を得ることと;(b)1つ以上のHPLCカラムを使用して、トランスフェクトされた酵母細胞からGM-CSFを精製することであって、該精製が、有機溶媒(例えば、限定されないがアセトニトリル、トリフルオロ酢酸(TFA)、ピリジン、酢酸、及び/またはN-プロパノール)の非存在下である、精製することと;(c)精製されたGM-CSFを収集することであって、該精製されたGM-CSFが高グリコシル化、例えば高マンノシル化GM-CSF形態を実質的に含まない、収集することと、を含む、方法が提供される。
【0130】
諸実施形態において、細胞は、原核宿主細胞または真核宿主細胞、例えば、酵母、哺乳動物、細菌、昆虫、藻類、または植物細胞である。
【0131】
好適な原核宿主細胞としては、細菌細胞(例えば、E coli、Bacillus subtilis、Mycobacterium種、M.tuberculosis、または他の適切な細菌細胞)及び古細菌細胞(例えば、Methanococcus jannaschii及びMethanococcus maripaludis)が挙げられる。
【0132】
いくつかの実施形態において、本開示の宿主細胞は真核宿主細胞である。好適な真核宿主細胞としては、真菌細胞、藻類細胞、昆虫細胞、動物細胞(例えば、哺乳動物細胞、鳥類細胞、及び魚類細胞)、及び植物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
好適な真菌宿主細胞としては、Ascomycota、Basidiomycota、Deuteromycota、Zygomycota、Fungi imperfectiが挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
好適な酵母宿主細胞としては、Candida、Hansenula、Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Kluyveromyces、及びYarrowiaが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、酵母細胞は、Hansenula polymorpha、Saccharomyces cerevisiae、Saccaromyces carlsbergensis、Saccharomyces diastaticus、Saccharomyces norbensis、Saccharomyces kluyveri、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Candida albicans、またはYarrowia lipolyticaである。
【0135】
適切な糸状菌宿主細胞としては、例えば、Eumycotina及びOomycotaの任意の糸状形態が挙げられる。実施形態において、糸状菌宿主細胞は、Achlya、Acremonium、Aspergillus、Aureobasidium、Bjerkandera、Ceriporiopsis、Cephalosporium、Chrysosporium、Cochliobolus、Corynascus、Cryphonectria、Cryptococcus、Coprinus、Coriolus、Diplodia、Endothis、Fusarium、Gibberella、Gliocladium、Humicola、Hypocrea、Myceliophthora(例えば、Myceliophthora thermophila)、Mucor、Neurospora、Penicillium、Podospora、Phlebia、Piromyces、Pyricularia、Rhizomucor、Rhizopus、Schizophyllum、Scytalidium、Sporotrichum、Talaromyces、Thermoascus、Thielavia、Tramates、Tolypocladium、Trichoderma、Verticillium、Volvariellaの種、またはそれらのテレオモルフ、またはアナモルフ、及びシノニム、または分類学的同等物の細胞であり得る。一実施形態において、糸状菌は、A.nidulans、A.oryzae、A.sojae、及びA.niger群のAspergilliからなる群から選択される。一実施形態において、糸状菌はAspergillus nigerである。
【0136】
諸実施形態において、細胞は酵母細胞であり、例えば限定されないが、Saccharomyces cerevisiaeである。
【0137】
諸実施形態において、細胞は哺乳動物細胞、例えば限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0138】
諸実施形態において、哺乳動物細胞における組換えタンパク質の産生は、非哺乳動物細胞を使用する産生と比較して、組換えタンパク質の発現レベルを増加させる。
【0139】
諸実施形態において、本方法は、注射、例えば皮下注射または静脈内注射用に精製されたGM-CSFを製剤化することをさらに含む。
【0140】
配列
配列番号1は野生型GM-CSFである。欠失の本発明の置換部位は、下線と太字で示されている。
【0141】
【化1】
【0142】
配列番号2はサルグラモスチムである。欠失の本発明の置換部位は、下線と太字で示されている。
【0143】
【化2】
【0144】
定義
以下の定義は、本明細書に開示の発明に関連して使用される。別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0145】
コロナウイルス感染症の治療に有効な薬剤に関連して使用される場合の「有効量」は、コロナウイルス感染症の治療または緩和に有効な量である。
【0146】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、または「the」は、1つ、または2つ以上を意味し得る。さらに、言及された数値表示に関連して使用される場合の「約」という用語は、その言及された数値表示に、その言及された数値表示の最大10%を加算または減算することを意味する。例えば、「約50」という言葉は、45から55の範囲を包含する。
【0147】
本明細書で言及される場合、全ての組成パーセンテージは、別段の指定がない限り、組成物の総重量によるものである。本明細書で使用される場合、「含む(include)」という単語及びその変形は、リスト内の項目の記載が、本技術の材料、組成物、デバイス、及び方法でも有用であり得る他の類似の項目を除外するものではないように、非限定的であることを意図する。同様に、「~ことができる」及び「~し得る」いう用語及びそれらの変形は、実施形態が特定の要素または特徴を含むことができるまたは含み得るという記載が、それらの要素または特徴を含まない本技術の他の実施形態を除外しないように非限定的であることが意図される。
【0148】
含む(including)、含有する、または有するなどの用語の同義語としての非制限用語「含む(comprising)」は、本明細書では本発明を説明及び特許請求するために使用されるが、本発明またはその実施形態は、代わりに、「からなる」または「から本質的になる」などの代替用語を用いて説明される場合がある。
【0149】
本発明は、以下の非限定的な実施例によりさらに説明される。
【実施例
【0150】
実施例1:GM-CSF変異体のクローニング及び精製
本発明の変異の有無にかかわらず、タンパク質GM-CSF生成物の発酵及びプロセシングは、高グリコシル化ピークを除去するために使用される有機溶媒(例えば限定されないが、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸(TFA)、ピリジン、酢酸、及び/またはN-プロパノール)、及び/または高グリコシル化ピークの精製及び/または除去の目的で使用される逆相C4 HPLCカラムの非存在下で実施した。
【0151】
重要なことには、有機溶媒及び逆相C4 HPLCは、例えば3つのグリコフォームから大きな高グリコシル化形態ピークを除去するために、本発明の変異を欠くGM-CSFの生成に使用される(図1参照)。このような有機溶媒は本明細書に記載の変異体には使用されないため、これらの有機溶媒を除去することが意図された逆相C4 HPLCを使用する必要性もない。
【0152】
実施例2:GM-CSF変異体の生化学的アッセイ
rhu GM-CSFの生化学的同一性を、クマシー染色ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動及びウエスタンブロット分析によって確認した(図2)。精製したrhu GM-CSFタンパク質試料をトリス-グリシンSDS試料緩衝液で希釈した。希釈したrhu GM-CSF試料と参照標準を、ヒートブロック内で100℃で5分間加熱して変性させた。参照標準及びrhu GM-CSF試料を、分子量マーカーとともにプレキャスト20% SDS-PAGEゲルにロードした。ロードされたゲルを定電圧で電気泳動してタンパク質を分離し、続いてクマシーG-250染色液中でインキュベートしてタンパク質を可視化した。rhu GM-CSFは、SDS-PAGEで3つのバンドとして移動した。上清をSDS-PAGEにかけ(4ug/レーン)、分子量ラダー及び参照標準と比較した。
【0153】
ウエスタンブロット分析を実施して、タンパク質の同一性を確認した(図2)。精製したrhu GM-CSFタンパク質試料及び参照標準を、前述のようにSDS-PAGE用に調製した。参照標準及びrhu GM-CSF試料を、染色済み分子量マーカーとともにプレキャスト20% SDS-PAGEゲルにロードした。ロードされたゲルを定電圧で電気泳動してタンパク質を分離し、続いてタンパク質をゲルからニトロセルロース膜に転写した。次いで、ニトロセルロース膜をマウス抗ヒトGM-CSFモノクローナル抗体でブロットし、続いて免疫検出のためにアルカリホスファターゼに結合したヤギ抗マウスIgGでブロットした。アルカリホスファターゼ発色現像液を使用して、バンドを可視化した。全ての上清は、ブロットの結果、GM-CSFに陽性であった(参照標準と比較してGM-CSF領域において陽性バンドが存在)(図2)。
【0154】
逆相HPLCを使用して、rhu GM-CSFグリコフォームの構成比を決定した(図3)。有機溶媒も逆相C4 HPLCカラムも使用しなかった。単一点変異体T39A(39位のトレオニンのアラニン置換)及びN37Q(37位のアスパラギンのグルタミン置換)を逆相HPLCアッセイで試験し、力価及びグリコフォームを決定した。このアッセイは、参照標準で作成された検量線を使用して力価(mg/ml)を算出した。この手順により、rhu GM-CSFグリコシル化バリアントが3つの主要なグリコフォームグループに分割された。試験試料rhu GM-CSF濃度の結果は、GM-CSF参照標準から準備された6レベルの外部標準検量線から補間した。対象の4つのピークを統合し、定量化した。それぞれの構成を以下に示す:
ピーク1=GM-CSF関連不純物(酸化)
ピーク2=N-及び(N+O)結合型グリコフォーム
ピーク3=O-結合型グリコフォーム
ピーク4=非グリコシル化GM-CSF
このアッセイにより残留プロセス成分と高グリコシル化物質を生成物ピークから分離し、グリコフォームプロファイル(ピーク2~4)を得た。生成物ピークは、高グリコシル化物質を加味しないように正規化されて報告された。T39Aでは約6%の高グリコシル化があり、N37Qでは約6.6%であった。2つの試料は、変異のないGM-CSFよりも高グリコシル化割合が低い(約40%、図1を参照)。高グリコシル化物質は、典型的には、有機溶媒(例えば限定されないが、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸(TFA)、ピリジン、酢酸、及び/またはN-プロパノール)及び精製目的で使用される逆相C4 HPLCカラムを用いたクロマトグラフィーによって除去される。本発明の変異体は、特に、プロセス工程を排除できる可能性があり、それにより時間、資源を節約し、精製プロセスにおいて危険性のある溶媒の使用を減らせる可能性があるため、興味深いものとなっている。
【0155】
BDS LEUKINEのGM-CSFグリコフォームをCHOで発現した変異体GM-CSFと比較して決定するために、逆相HPLCも使用した(図4)。モル質量分布を決定するために、サイズ排除クロマトグラフィー分析も使用した(図5)。単一点変異体N37Q(37位のアスパラギンのグルタミン置換)及びBDS LEUKINEを逆相HPLCアッセイ及びSEC分析で試験して、力価(図6)及びグリコフォーム(図4及び図5)を決定した。BDS LEUKINEは、酵母細胞であるSaccromycesを使用して産生され、変異体GM-CSFは哺乳動物CHO細胞を使用して産生された。このアッセイは、参照標準で作成された検量線を使用して力価(mg/ml)を算出した。この手順により、rhu GM-CSFグリコシル化バリアントが3つの主要なグリコフォームグループに分割された。試験試料rhu GM-CSF濃度の結果は、GM-CSF参照標準から準備された6レベルの外部標準検量線から補間した。BDS LEUKINEと同様に、CHOで発現した変異体GM-CSFは単量体であり(図5)、両方の試料が複数のグリコフォームを示した(図4)。CHO細胞での産生は、酵母での産生と比較して組換えタンパク質の力価を増加させた(図6)。BDS LEUKINEは、配列内にT39AまたはN37Qアミノ酸置換のいずれも含まない、配列番号1の野生型GM-CSFを指す。
【0156】
実施例3:GM-CSF変異体の機能アッセイ
rhu GM-CSFの効力を、GM-CSFに応答して増殖するヒト赤白血病細胞株であるTF-1細胞を用いたバイオアッセイを使用して測定した(図7)。参照標準(rhu GM-CSF)、対照、及び試験試料を、アッセイ培地で3連で連続希釈し、3つの別々の96ウェルプレートに添加した。次いで、懸濁液中のTF-1細胞を添加し、混合物を37℃で69.5~72時間インキュベートした。蛍光色素(ALAMARBLUE,THERMO)を添加した後、プレートを37℃で6.6~8時間インキュベートした。そして、TF-1細胞の増殖を、蛍光マイクロプレートリーダーで測定した。単一点T39A及びN37Q、ならびにT39AまたはN37Q変異のないGM-CSF(LEUKINE)をTF-1バイオアッセイで試験した。ミリグラムあたりの国際単位(IU/mg)での比活性(SA)は、参照標準(サルグラモスチム-rhuGM-CSF)を使用して標準曲線から算出した。両方の変異体は、LEUKINEと同様の活性を示し、SAは、LEUKINEの8.14×10IU/mgと比較して、9.13×10(T39A)及び7.48×10(N37Q)であると算出された。
【表1】
【0157】
驚くべきことに、これらのアミノ酸置換は劇的であるにもかかわらず(例えば、理論に束縛されることを望まないが、T39Aでは側鎖長を大幅に減少させ、N37Qでは側鎖長を増加させる)、生物学的活性に影響を与えずに製造をより容易にする。
【0158】
さらに、変異体rhu GM-CSFの効力を、GM-CSFに応答して増殖するヒト赤白血病細胞株であるTF-1細胞を用いたバイオアッセイを使用して測定した。CHO細胞で増殖させたN37位に単一アミノ酸を有する変異体rhu GM-CSFは、異なる条件を使用して保存した、酵母細胞Saccromycesで増殖させたBDS LEUKINEの3つの異なるバッチ(Leukine BDS新規物質、2~8℃で12ヶ月保存したLeukine BDS、-70℃で48ヶ月保存したLeukine)と比較して、組換えタンパク質の活性を著しく増強した(図8)。BDS LEUKINEは、配列内にT39AまたはN37Qアミノ酸置換のいずれも含まない、配列番号1の野生型GM-CSFを指す。
【0159】
等価物
当業者は、ほんの日常的な実験を使用して、本明細書に詳細に記載される特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲の範囲内に包含されることが意図される。
【0160】
参照による組み込み
本明細書で参照される全ての特許及び刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0161】
本明細書で使用される場合、全ての見出しは単に構成上の理由によるものであり、いかなる様式においても本開示を限定することを意図するものではない。いかなる個々のセクションの内容も、全てのセクションに等しく適用可能であり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023547883000001.app
【国際調査報告】