(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】ケイ素-アルミニウム分子篩触媒、ならびにその調製および利用
(51)【国際特許分類】
B01J 29/40 20060101AFI20231107BHJP
C01B 39/40 20060101ALI20231107BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20231107BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20231107BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20231107BHJP
B01J 37/06 20060101ALI20231107BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20231107BHJP
C07C 2/66 20060101ALI20231107BHJP
C07C 15/073 20060101ALI20231107BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231107BHJP
【FI】
B01J29/40 Z
C01B39/40
B01J37/10
B01J37/04 102
B01J37/08
B01J37/06
B01J37/00 D
C07C2/66
C07C15/073
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525051
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 CN2021125964
(87)【国際公開番号】W WO2022089338
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】202011158111.7
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509128052
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RESEARCH INSTITUTE OF PETROCHEMICAL TECHNOLOGY SINOPEC
【住所又は居所原語表記】NO.1658 PUDONG BEI ROAD,PUDONG NEW AREA,SHANGHAI 201208,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】楊為民
(72)【発明者】
【氏名】王達鋭
(72)【発明者】
【氏名】孫洪敏
(72)【発明者】
【氏名】劉威
(72)【発明者】
【氏名】宦明耀
(72)【発明者】
【氏名】薛明偉
(72)【発明者】
【氏名】何俊琳
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA62
4G073BA63
4G073BA75
4G073BA76
4G073BB48
4G073CZ13
4G073FB02
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4G073FC25
4G073FC27
4G073FD01
4G073FD20
4G073FD21
4G073FD23
4G073GA03
4G073GB02
4G073GB08
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4G169AA02
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4G169BA02C
4G169BA07A
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4G169BA22C
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4G169BE46C
4G169CB25
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4G169EA02X
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4G169ZF09A
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4H006AA02
4H006AC21
4H006BA71
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006DA12
4H006DA25
4H039CA12
4H039CF10
(57)【要約】
ケイ素-アルミニウム分子篩触媒、ならびにその調製および利用が開示される。前記触媒のNH3-TPDスペクトルの脱着曲線は、3つのピークP1、P2、およびP3を示し、前記3つのピークP1、P2、およびP3のピーク位置は、それぞれ、180~220℃、250~290℃、および370~410℃の範囲の脱着温度に対応する。前記触媒は、芳香族炭化水素とオレフィンとの気相アルキル化反応において使用して、アルキル芳香族炭化水素を調製する場合、高い活性、選択性、および安定性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミノシリケート分子篩触媒であって、そのNH
3-TPDパターンにおいて、3つのピークP1、P2、およびP3を有する脱着曲線を示し、前記3つのピークP1、P2、およびP3の頂点に対応する脱着温度は、それぞれ、180~220℃、250~290℃、および370~410℃の範囲内、好ましくは、190~210℃、260~280℃、および380~400℃の範囲内である、触媒。
【請求項2】
前記3つのピークP1、P2、およびP3のピーク高さH1、H2、およびH3は、H1>H2>H3の関係を満たし、好ましくは、前記ピーク高さH1、H2、およびH3は、以下の関係を満たす、請求項1に記載の触媒:
H2/H1=(0.5~0.8):1;
H3/H2=(0.8~0.9):1;および
H3/H1=(0.4~0.7):1。
【請求項3】
前記触媒の、弱酸の含有量S1、中強酸の含有量S2、および強酸の含有量S3は、以下の関係を満たす、請求項1または2に記載の触媒:
S2/S1=(0.38~0.52):1、好ましくは、S2/S1=(0.4~0.5):1;
S2/S3=(0.32~0.58):1、好ましくは、S2/S3=(0.35~0.55):1;および
S3/S1=(0.8~1.2):1、好ましくは、S3/S1=(0.9~1.1):1、
ここで、前記弱酸の含有量S1と、前記中強酸の含有量S2と、前記強酸の含有量S3との間の比は、前記触媒のNH
3-TPDパターンにおける、100~240℃、240~300℃、および300~500℃の温度範囲内の脱着曲線の積分面積間の比に基づいて計算される。
【請求項4】
前記触媒の酸の総含有量に対する弱酸の含有量S1の割合は40~50%であり、前記酸の総含有量に対する中強酸の含有量S2の割合は15~25%であり、前記酸の総含有量に対する強酸の含有量S3の割合は35~45%であり、前記酸の総含有量に対する、前記弱酸の含有量S1、前記中強酸の含有量S2、および前記強酸の含有量S3の割合は、前記触媒のNH
3-TPDパターンにおける100~500℃の温度範囲の脱着曲線の総積分面積と比較した、前記触媒のNH
3-TPDパターンにおける、100~240℃、240~300℃、および300~500℃の温度範囲内の脱着曲線の総積分面積の割合から計算される、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒は、バインダレスのアルミノシリケート分子篩触媒であり、好ましくは、前記アルミノシリケート分子篩は、10または12員環の細孔構造を有する酸性分子篩であり、より好ましくは、ZSM-5分子篩である、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
前記触媒は、以下の特徴のうちの1つ以上を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒:
前記触媒の酸の総含有量に対する超酸の含有量の割合は、5%未満、好ましくは3%未満である、ここで、前記酸の総含有量に対する前記超酸の含有量の割合は、前記触媒のNH
3-TPDパターンにおける100~500℃の温度範囲における脱着曲線の総積分面積に対する、前記触媒のNH
3-TPDパターンにおける500℃超の温度範囲における脱着曲線の積分面積の割合から計算される;
亜鉛、マグネシウム、カルシウム、鉄、コバルト、ニッケル、リン、ランタン、銅、ジルコニウム、クロム、マンガン、銀、ルテニウム、パラジウム、白金、チタン、スズ、ストロンチウム、バリウム、バナジウム、リチウムなどの追加の改質した金属成分または非金属成分が前記触媒上に担持されていない;
前記触媒は、異なるサイズの2タイプの結晶粒を含み、前記結晶粒のサイズは、それぞれ、10~300nmおよび400~1600nmであり;好ましくは、10~300nmのサイズを有する結晶粒のタイプの数は、結晶粒の総数の5~60%を占め、400~1600nmのサイズを有する結晶粒のタイプの数は、結晶粒の総数の40~95%を占める;
前記触媒は、単離されたアルミニウムの含有量が、97.5~100%、好ましくは99~100%である;
前記触媒は、機械的強度が、100~170N/cm、好ましくは110~160N/cmである;ならびに
前記触媒は、SiO
2/Al
2O
3モル比率が、30~400である。
【請求項7】
以下の工程を含む、アルミノシリケート分子篩触媒の製造方法:
1)テンプレートと、ケイ素源と、第1のアルミニウム源と、水とを、加熱しながら混合して、第1の混合物を得る工程;
2)前記第1の混合物と、ケイ素粉末と、第2のアルミニウム源とを混合して、第2の混合物を得る工程;
3)前記第2の混合物を成形して、第3の混合物を得る工程;
4)前記第3の混合物と、アルカリ源と、レギュレータとを接触させて、第4の混合物を得る工程、ここで、前記レギュレータは、ポリヒドロキシ高分子化合物であり、好ましくは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、アラビアガム、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される;および
5)前記第4の混合物を処理して、前記アルミノシリケート分子篩触媒を得る工程、ここで、前記処理は、焼成工程を含む。
【請求項8】
前記工程1)は、以下の特徴のうちの1つ以上を有する、請求項7に記載の方法:
前記テンプレートは、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムブロミド、またはそれらの組み合わせから選択され、前記ケイ素源は、シリカゾル、ホワイトカーボンブラック、テトラエチルシリケート、ケイ素粉末、またはそれらの組み合わせから選択され、前記第1のアルミニウム源は、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、擬ベーマイト、またはそれらの組み合わせから選択される;
前記テンプレートと、前記ケイ素源と、前記第1のアルミニウム源と、水との間のモル比は、テンプレート:ケイ素源=(0.05~1.0):1、ケイ素源:第1のアルミニウム源=(30~400):1、水:ケイ素源=(3~12):1を満たす、ここで、前記ケイ素源は、SiO
2として計算され、前記第1のアルミニウム源は、Al
2O
3として計算される;および
工程1)において加熱しながら混合する工程は、前記テンプレートと、前記ケイ素源と、前記第1のアルミニウム源と、水とを、密閉容器中で、90~150℃の温度で4~20時間撹拌しながら混合する工程を含む。
【請求項9】
前記工程2)は、以下の特徴のうちの1つ以上を有する、請求項7または8に記載の方法:
前記ケイ素粉末は、異なるサイズを有する2タイプのシリカ粒子を含み、前記シリカ粒子のサイズは、それぞれ、0.1~2μmおよび4~12μmであり、前記2タイプのシリカ粒子の質量比は、(0.5~2.0):1である;
前記第2のアルミニウム源は、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、またはそれらの組み合わせから選択される;ならびに
前記第1の混合物と、前記ケイ素粉末と、前記第2のアルミニウム源との間の比は、以下を満たす:前記第1の混合物と前記ケイ素粉末との重量比は(0.2~0.8):1であり、前記ケイ素粉末と前記第2のアルミニウム源とのモル比は(30~400):1である;ここで、前記ケイ素粉末は、SiO
2として計算され、前記第2のアルミニウム源は、Al
2O
3として計算される。
【請求項10】
前記工程4)は、以下の特徴のうちの1つ以上を有する、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法:
前記アルカリ源は、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、アンモニア水、エチルアミン、エチレンジアミン、n-ブチルアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシルアミン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、ホモピペラジン、ジシクロヘキシルアミン、またはそれらの組み合わせから選択される;
前記第3の混合物と、前記アルカリ源と、前記レギュレータとの質量比は、アルカリ源:第3の混合物=(0.1~0.4):1;レギュレータ:第3の混合物=(0.01~0.05):1;を満たす;および
工程4)の接触させる工程は、前記アルカリ源と前記レギュレータとを、30~60℃で3~10時間撹拌しながら混合し、次いで、前記第3の混合物を添加し、密閉空間中で、30~60℃で5~10時間静置する工程を含む。
【請求項11】
工程5)の処理は、前記第4の混合物を、密閉空間中で、130~190℃で12~72時間静置または撹拌する工程と、その後の、洗浄工程、乾燥工程、焼成工程、および酸洗浄工程とを含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
オレフィンによる芳香族炭化水素の気相アルキル化方法であって、アルキル化反応のために、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒または請求項7~11のいずれか一項に記載の方法によって得られた触媒の存在下で、前記芳香族炭化水素と前記オレフィンとを接触させて、アルキル芳香族炭化水素を得る工程を含む、方法。
【請求項13】
前記芳香族炭化水素は、ベンゼン、アルキルベンゼン、またはそれらの組み合わせから選択され、好ましくは、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、n-ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、またはそれらの組み合わせから選択され;前記オレフィンは、C2~C6オレフィンから選択され、好ましくは、エチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブチレン、またはそれらの組み合わせから選択され;
好ましくは、前記アルキル化の条件は、260~400℃の反応温度、0.1~3.0MPaの反応圧力、0.1~10.0時間
-1のオレフィンの質量空間速度、および2~20の前記オレフィンに対する前記芳香族炭化水素のモル比率を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本願は、2020年10月26日に出願された「エチレンによるベンゼンのアルキル化のための触媒、その調製、およびそれらの利用」と題された中国特許出願第202011158111.7号の優先権を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本願は、芳香族アルキル化触媒の分野に関し、特に、オレフィンによる芳香族のアルキル化に有用なアルミノシリケート分子篩触媒、その調製、およびそれらの利用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
エチルベンゼンは、重要な基本的な有機原料であり、幅広い用途を有するスチレンを製造するために主に使用されている。例えば、スチレンは、ポリスチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ABS、SBSなどを製造するための重要なモノマーであり、製薬工業、コーティング工業、および繊維工業にも利用される。
【0004】
エチルベンゼンは、主にベンゼンとエチレンとのアルキル化反応によって生成され、実用的な触媒反応プロセスにおいて、エチレンによるベンゼンの気相アルキル化は、共存する直列および並列の副反応を有する複雑な反応系であり、エチルベンゼンに加えて、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、トルエン、キシレン、プロピルベンゼン、メチルエチルベンゼン、ブチルベンゼンなどの副生成物が生成され得る。これらの副生成物の中で、キシレンは、エチルベンゼンの沸点に近い沸点を有し、分別蒸留によって効果的に除去することが困難であるため、アルキル化生成物中のキシレンの含有量の制御は特に重要である。さらに、工業的製造におけるエチルベンゼンの収率を改善するために、ポリエチルベンゼン(例えば、ジエチルベンゼンおよびトリエチルベンゼン)材料をアルキル化生成物から分離し、次いで、トランスアルキル化反応によってエチルベンゼンに変換する。したがって、アルキル化生成物中のポリエチルベンゼンの含有量の減少は、その後のトランスアルキル化反応の装填の減少に繋がり得、企業の省エネルギーおよび効率向上に重要な意義を有する。
【0005】
工業的に使用されるベンゼンおよびエチレンアルキル化触媒は、形状および機械的強度に関して一定の要件を有し、したがって、分子篩触媒を成形するプロセスにおいて大量のバインダを添加する必要がある。大量のバインダの添加は、触媒の機械的強度を増加させるが、触媒の活性中心の希釈、分子篩の細孔チャネルの閉塞、およびより多くの副反応を引き起こし、それによって、生成物純度の低下をもたらすことなどのいくつかの悪影響ももたらす。バインダの悪影響に対処するために、バインダレスの触媒の製造方法が先行技術に開示されている。
【0006】
CN107512729Bは、以下の工程:a)合成されたZSM-5分子篩を提供する工程;b)合成されたZSM-5分子篩と、バインダ、細孔形成剤、および酸水溶液とを混合し、成形し、乾燥させて、ZSM-5分子篩前駆体を得る工程;ここで、バインダは、シリカゾルまたはアルミナから選択される少なくとも1つであり;シリカゾルは、第1のケイ素源を提供し、アルミナは、第1のアルミニウム源を提供する;c)ZSM-5分子篩前駆体と、第2のケイ素源と、第2のアルミニウム源と、アルカリ源と、有機テンプレートと、水との混合物を結晶化させ、得られた固体生成物を分離し、乾燥させて、バインダレスのZSM-5分子篩を得る工程を含む、バインダレスのZSM-5分子篩の製造方法を開示している。
【0007】
従来技術において現在報告されているバインダレスの分子篩触媒の製造方法では、典型的には一定量の分子篩粉末が成形工程において添加され、このことは、このような分子篩粉末が予め調製される必要があることを意味し、操作工程および製造費用が疑いの余地なく増加する。
【0008】
〔発明の開示〕
本願の目的は、オレフィンによる芳香族のアルキル化に有用なアルミノシリケート分子篩触媒、その調製、およびそれらの利用を提供することである。オレフィンによる芳香族の気相アルキル化によってアルキル芳香族を製造するために使用される場合、触媒は、高い活性、選択性、および安定性を有し、副生成物の含有量を著しく低減することができる。
【0009】
上記目的を達成するために、一態様において、本願は、アルミノシリケート分子篩触媒であって、そのNH3-TPDパターンにおいて、3つのピークP1、P2、およびP3を有する脱着曲線を示し、前記3つのピークP1、P2、およびP3の頂点に対応する脱着温度は、それぞれ、180~220℃、250~290℃、および370~410℃の範囲である、触媒を提供する。
【0010】
好ましくは、前記3つのピークP1、P2、およびP3のピーク高さH1、H2、およびH3は、H1>H2>H3の関係を満たす。
【0011】
より好ましくは、前記3つのピークP1、P2、およびP3の前記ピーク高さH1、H2、およびH3は、以下の関係を満たす:
H2/H1=(0.5~0.8):1;
H3/H2=(0.8~0.9):1;および
H3/H1=(0.4~0.7):1。
【0012】
別の態様において、本願は、以下の工程を含む、アルミノシリケート分子篩触媒の製造方法を提供する:
1)テンプレートと、ケイ素源と、第1のアルミニウム源と、水とを、加熱しながら混合して、第1の混合物を得る工程;
2)前記第1の混合物と、ケイ素粉末と、第2のアルミニウム源とを混合して、第2の混合物を得る工程;
3)前記第2の混合物を成形して、第3の混合物を得る工程;
4)前記第3の混合物と、アルカリ源と、レギュレータとを接触させて、第4の混合物を得る工程、ここで、前記レギュレータは、ポリヒドロキシ高分子化合物である;および
5)前記第4の混合物を処理して、前記アルミノシリケート分子篩触媒を得る工程、ここで、前記処理は、焼成を含む。
【0013】
好ましくは、工程2)において使用される前記ケイ素粉末は、異なるサイズを有する2タイプのシリカ粒子を含み、前記2タイプのシリカ粒子のサイズは、それぞれ、0.1~2μmおよび4~12μmの範囲であり、前記2タイプのシリカ粒子の質量比は、(0.5~2.0):1である。
【0014】
さらに別の態様において、本願は、オレフィンによる芳香族炭化水素の気相アルキル化方法であって、本願の触媒または本願の方法によって得られた触媒の存在下で、前記芳香族炭化水素および前記オレフィンをアルキル化反応に供して、アルキル芳香族炭化水素を得る工程を含む、方法を提供する。
【0015】
本願のアルミノシリケート分子篩触媒は、以下の利点を提供する:
1.本願の発明者らは、研究を通して、アルミノシリケート分子篩触媒、特にバインダレスのZSM-5分子篩触媒の酸性度分布が、オレフィンによる芳香族の気相アルキル化反応を触媒するための触媒の触媒性能、特に副生成物の収量に著しい影響を及ぼすことを見出した。本願の発明者らはまた、研究を通して、アルミノシリケート分子篩触媒のNH3-TPD脱着曲線が3つのピークを示した場合、とりわけ3つのピークの高さが低温から高温へ特定の比例関係を示した場合、オレフィンによる芳香族の気相アルキル化を触媒する性能を向上させるのに有利であり、特に生成物中のキシレンおよびポリエチルベンゼンなどの副生成物の含有量を低減させるのに有利であることを見出した。さらに、触媒の粒サイズが二峰性分布を有する場合、反応分子の拡散および反応に相乗効果およびリレー効果があるため、触媒の拡散性能がその反応性能と一致し、触媒の活性および選択性を改善しながら、生成物中の副生成物の含有量を明らかに減少させることができる。
【0016】
2.本願の触媒の製造方法では、製造工程において予め調製された分子篩粉末を添加する必要がなく、代わりにポリヒドロキシ高分子化合物レギュレータを使用し、好ましくは2つの異なる粒子サイズを有するケイ素粉末を使用するため、得られる触媒は、特定の酸性度分布および結晶粒分布を有する。本願の方法によって得られる触媒は、オレフィンによる芳香族の気相アルキル化によってアルキル芳香族炭化水素を製造するのに特に適しており、高い活性、選択性、および安定性を有する。
【0017】
3.エチレンによるベンゼンの気相アルキル化に触媒を使用する場合、アルキル化生成物中のキシレンの含有量を500ppm以下に低減することができ、ジエチルベンゼンおよびトリエチルベンゼンの質量含有量を8%以下に低減することができる。
【0018】
本願の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明において詳細に説明される。
【0019】
〔図面の簡単な説明〕
本明細書の一部を形成する図面は、本願の理解を助けるために提供され、限定的であるとみなされるべきではない。本願は、以下の詳細な説明と組み合わせて図面を参照して解釈することができる。図面において:
図1は、本願の実施例1で得られたアルミノシリケート分子篩触媒のXRDパターンを示し;
図2は、本願の実施例1で得られたアルミノシリケート分子篩触媒のSEM画像を示し;
図3は、本願の実施例1で得られたアルミノシリケート分子篩触媒のNH
3-TPDパターンを示し;
図4は、本願の実施例2で得られたアルミノシリケート分子篩触媒のXRDパターンを示し;
図5は、本願の実施例3で得られたアルミノシリケート分子篩触媒のXRDパターンを示し;
図6は、比較例1で得られたアルミノシリケート分子篩触媒のSEM画像を示し;
図7は、比較例1で得られたアルミノシリケート分子篩触媒のNH
3-TPDパターンを示す。
【0020】
〔発明の詳細な説明〕
本願は、図面およびその特定の実施形態を参照して、以下でさらに詳細に説明される。本願の特定の実施形態は、説明の目的のためにのみ提供され、いかなる方法でも限定することを意図するものではないことに留意されたい。
【0021】
本願の文脈において記載される、数値範囲の終点を含む任意の特定の数値は、その正確な値に限定されないが、当該正確な値に近い全ての値、例えば当該正確な値の±5%以内の全ての値をさらに包含すると解釈されるべきである。さらに、本明細書に記載される任意の数値範囲に関して、範囲の終点間、各終点と範囲内の任意の特定の値との間、または範囲内の任意の2つの特定の値との間で、任意の組み合わせを行って、1つ以上の新しい数値範囲を提供することができ、当該新しい数値範囲はまた、本願において具体的に記載されているとみなされるべきである。
【0022】
特に明記しない限り、本明細書で使用される用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有し、用語が本明細書で定義され、それらの定義が当技術分野における通常の理解と異なる場合、本明細書で提供される定義が優先されるものとする。
【0023】
本願において、用語「ポリヒドロキシ高分子化合物」は、その分子内に複数のヒドロキシル基を有する高分子化合物を指し、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、またはアラビアガムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本願において、用語「酸性分子篩」は、当技術分野で一般に理解されている意味を有し、B酸および/またはL酸の部位を有する分子篩を指す。
【0025】
本願において、特に明記しない限り、与えられる圧力はゲージ圧である。
【0026】
本願の文脈において、明示的に述べられた内容に加えて、任意の内容または言及されていない内容は、いかなる変更もなしに、当技術分野で知られているものと同じであると見なされる。さらに、本明細書に記載される実施形態のいずれも、本明細書に記載される1つ以上の実施形態と自由に組み合わせることができ、このようにして得られる技術的解決策または概念は、本願の元の開示または元の説明の一部とみなされ、そのような組み合わせが明らかに不合理であることが当業者に明らかでない限り、本明細書に開示または予期されていない新規事項であるとみなされるべきではない。
【0027】
教科書および学術論文を含むがこれらに限定されない、本明細書に引用される特許および非特許文献の全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
上述のように、第1の態様において、本願は、アルミノシリケート分子篩触媒であって、そのNH3-TPDパターンにおいて、3つのピークP1、P2、およびP3を有する脱着曲線を示し、前記3つのピークP1、P2、およびP3の頂点に対応する脱着温度は、それぞれ、180~220℃、250~290℃、および370~410℃の範囲、好ましくは、190~210℃、260~280℃、および380~400℃の範囲である、触媒を提供する。
【0029】
好ましい実施形態において、前記3つのピークP1、P2、およびP3のピーク高さH1、H2、およびH3は、H1>H2>H3の関係を満たし、より好ましくは、前記ピーク高さH1、H2、およびH3は、以下の関係を満たす:
H2/H1=(0.5~0.8):1;
H3/H2=(0.8~0.9):1;および
H3/H1=(0.4~0.7):1。
【0030】
本願によれば、NH3-TPDパターンにおける脱着温度は、それぞれ、100~240℃、240~300℃、および300~500℃の3つの範囲に分けられ、3つの温度範囲内の脱着曲線の積分面積は、それぞれ、触媒の、弱酸の含有量S1、中強酸の含有量S2、および強酸の含有量S3に対応する。好ましくは、触媒の、弱酸の含有量S1、中強酸の含有量S2、および強酸の含有量S3は、以下の関係を満たす:
S2/S1=(0.38~0.52):1、より好ましくは、S2/S1=(0.4~0.5):1;
S2/S3=(0.32~0.58):1、より好ましくは、S2/S3=(0.35~0.55):1;および
S3/S1=(0.8~1.2):1、より好ましくは、S3/S1=(0.9~1.1):1。
【0031】
触媒の好ましい実施形態において、触媒の酸の総含有量に対する弱酸の含有量S1の割合(すなわち、弱酸の含有量と、中強酸の含有量と、強酸の含有量との合計)は40~50%であり、酸の総含有量に対する中強酸の含有量S2の割合は15~25%であり、酸の総含有量に対する強酸の含有量S3の割合は35~45%であり、酸の総含有量に対する、弱酸の含有量S1、中強酸の含有量S2、および強酸の含有量S3の割合は、100~500℃の温度範囲における全積分面積に対する、100~240℃、240~300℃および300~500℃の温度範囲内の触媒のNH3-TPD脱着曲線の積分面積の割合からそれぞれ計算される。
【0032】
好ましい実施形態において、触媒の酸の総含有量に対する超強酸の含有量の割合は、5%未満、好ましくは3%未満である、ここで、酸の総含有量に対する超強酸の含有量の割合は、触媒のNH3-TPDパターンにおける100~500℃の温度範囲内の脱着曲線の総積分面積に対する、触媒のNH3-TPDパターンにおける500℃超の温度範囲における脱着曲線の積分面積の割合から計算される。
【0033】
好ましい実施形態において、アルミノシリケート分子篩触媒は、バインダレスのアルミノシリケート分子篩触媒であり、より好ましくは、アルミノシリケート分子篩は、10または12員環の細孔構造を有する酸性分子篩であり、特に好ましくは、アルミノシリケート分子篩はZSM-5分子篩である。
【0034】
好ましい実施形態において、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、鉄、コバルト、ニッケル、リン、ランタン、銅、ジルコニウム、クロム、マンガン、銀、ルテニウム、パラジウム、白金、チタン、スズ、ストロンチウム、バリウム、バナジウム、リチウムなどの追加の改質した金属成分または非金属成分がアルミノシリケート分子篩触媒上に担持されていない。
【0035】
好ましい実施形態において、アルミノシリケート分子篩触媒は、それぞれ、10~300nmおよび400~1600nmの範囲の2つの異なるサイズの結晶粒を有する。より好ましくは、10~300nmの範囲の結晶粒の数は、結晶粒の総数の5~60%、好ましくは30~60%を占め、400~1600nmの範囲の結晶粒の数は、結晶粒の総数の40~95%、好ましくは40~70%を占める。
【0036】
好ましい実施形態において、触媒中の単離されたアルミニウムの含有量は、97.5~100%、好ましくは99~100%である。本願によれば、以下の通りに単離されたアルミニウムの含有量を測定することができる:
単離されたアルミニウムの含有量=(1-2×Cコバルト/Cアルミニウム)×100%
式中、Co-Na型触媒はイオン交換によって調製され、CコバルトおよびCアルミニウムは、それぞれ、ICP試験によって測定される触媒中のCoの含有量およびAlの含有量を指す。
【0037】
好ましい実施形態において、アルミノシリケート分子篩触媒の機械的強度は、100~170N/cm、より好ましくは110~160N/cmである。
【0038】
好ましい実施形態において、アルミノシリケート分子篩触媒は、SiO2/Al2O3モル比率が、30~400である。
【0039】
第2の態様において、本願は、以下の工程を含む、アルミノ珪酸分子篩触媒の製造方法を提供する:
(1)テンプレート、ケイ素源、第1のアルミニウム源、および水を加熱しながら混合して、第1の混合物を得る工程;
(2)前記第1の混合物、ケイ素粉末、および第2のアルミニウム源を混合して、第2の混合物を得る工程;
(3)前記第2の混合物を成形して、第3の混合物を得る工程;
(4)前記第3の混合物と、アルカリ源と、レギュレータとを接触させて、第4の混合物を得る工程、ここで、レギュレータは、ポリヒドロキシ高分子化合物である;
(5)前記第4の混合物を処理して、アルミノシリケート分子篩触媒を得る工程、ここで、処理は、焼成を含む。
【0040】
好ましい実施形態において、工程1)で使用されるテンプレートは、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、およびテトラエチルアンモニウムブロミドからなる群から選択される1つ以上であり;ケイ素源は、シリカゾル、ホワイトカーボンブラック、テトラエチルシリケート、およびケイ素粉末からなる群から選択される1つ以上であり;第1のアルミニウム源は、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、イソプロポキシアルミニウム、および擬ベーマイトからなる群から選択される1つ以上である。
【0041】
好ましい実施形態において、工程1)におけるテンプレート、ケイ素源、第1のアルミニウム源、および水の間のモル比は、それぞれ以下の通りである:テンプレート:ケイ素源=(0.05~1.0):1、ケイ素源:第1のアルミニウム源=(30~400):1、水:ケイ素源=(3~12):1、ここで、ケイ素源は、SiO2で計算され、第1のアルミニウム源は、Al2O3で計算される。
【0042】
好ましい実施形態において、工程1)において、テンプレートと、ケイ素源と、第1のアルミニウム源と、水とを、加熱しながら混合して、第1の混合物を得る工程は、テンプレートと、ケイ素源と、第1のアルミニウム源と、水とを、密閉容器中で、90~150℃の温度で4~20時間撹拌しながら混合することによって行われる。
【0043】
好ましい実施形態において、工程2)で使用されるケイ素粉末は、異なるサイズを有する2タイプのシリカ粒子を含み、2タイプのシリカ粒子のサイズは、それぞれ、0.1~2μmおよび4~12μmの範囲であり、2タイプのシリカ粒子の質量比は、(0.5~2.0):1であり、第2のアルミニウム源は、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、擬ベーマイト、および水酸化アルミニウムからなる群から選択される1つ以上である。
【0044】
好ましい実施形態において、工程2)で使用される第1の混合物と、ケイ素粉末と、第2のアルミニウム源との間の比は、それぞれ以下の通りである:第1の混合物とケイ素粉末との重量比は、(0.2~0.8):1であり;ケイ素粉末と第2のアルミニウム源とのモル比は、(30~400):1である、ここで、ケイ素粉末は、SiO2で計算され、第2のアルミニウム源は、Al2O3で計算される。
【0045】
本願において、工程3)における成形の方法に特に制限はなく、触媒の成形は、当技術分野において一般的に使用される方法、例えば、押出成形によって行ってもよい。
【0046】
本願によれば、工程3)において、第3の混合物は、必要性を考慮して様々な形状に形成することができ、例えば、第3の混合物は、帯状に形成することができ、その断片は、円形状、歯車形状、三葉形状、四葉のクローバー形状、またはハニカム形状であり得る。好ましい実施形態において、第3の混合物は、直径が1.0~6.0mmであり、長さが3~10mmである。
【0047】
好ましい実施形態において、工程4)で使用されるアルカリ源は、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、アンモニア水、エチルアミン、エチレンジアミン、n-ブチルアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシルアミン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、ホモピペラジン、およびジシクロヘキシルアミンからなる群から選択される1つ以上である。
【0048】
好ましい実施形態において、工程4)で使用されるレギュレータは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、およびアラビアガムからなる群から選択される1つ以上である。
【0049】
好ましい実施形態において、工程4)における、第3の混合物と、アルカリ源と、レギュレータとの質量比は、以下の通りである:アルカリ源:第3の混合物=(0.1~0.4):1、レギュレータ:第3の混合物=(0.01~0.05):1。
【0050】
好ましい実施形態において、工程4)において、第3の混合物と、アルカリ源と、レギュレータとを接触させて、第4の混合物を得る工程は、アルカリ源とレギュレータとを、30~60℃で3~10時間撹拌しながら混合し、次いで、そこに第3の混合物を添加し、密閉空間中で、30~60℃で5~10時間静置することによって行われる。
【0051】
好ましい実施形態において、工程5)において、第4の混合物を処理して、アルミノシリケート分子篩触媒を得る工程は、第4の混合物を、密閉空間中で、130~190℃で12~72時間静置または撹拌し、任意に、その後、洗浄、乾燥、焼成、および酸洗浄することによって行われる。本願によれば、洗浄(例えば、溶液がpH7~8になるまで脱イオン水で洗浄)、乾燥、および焼成は、従来の方法で行うことができ、例えば、乾燥条件は、80~150℃の乾燥温度、5~12時間の乾燥時間を含み得;焼成条件は、500~600℃の焼成温度、4~10時間の焼成時間を含み得;酸洗浄の条件は、30~90℃の酸洗浄温度、2~10時間の酸洗浄時間、塩酸、硫酸、シュウ酸、または硝酸のうちの少なくとも1つの酸、および0.5%~5%の酸溶液の質量濃度を含み得る。
【0052】
好ましい実施形態において、本願の方法によって得られるアルミノシリケート分子篩触媒の特性は、第1の態様で上述した通りであり、その詳細な説明は、簡潔にするため本明細書では省略する。
【0053】
第3の態様において、本願は、オレフィンによる芳香族炭化水素の気相アルキル化方法であって、本願の触媒または本願の方法によって得られた触媒の存在下で、芳香族炭化水素およびオレフィンをアルキル化反応に供して、アルキル芳香族炭化水素を得る工程を含む、方法を提供する。
【0054】
好ましい実施形態において、芳香族炭化水素は、ベンゼン、アルキルベンゼン、またはそれらの組み合わせから選択され、好ましくは、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、n-ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、またはそれらの組み合わせから選択され;オレフィンは、C2~C6オレフィン、好ましくは、エチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブチレン、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0055】
好ましい実施形態において、アルキル化の条件は、260℃~400℃の反応温度、0.1~3.0MPaの反応圧力、0.1~10.0時間-1のオレフィンの質量空間速度、および2~20のオレフィンに対する芳香族炭化水素のモル比率を含む。
【0056】
第4の態様において、本願は、オレフィンによる芳香族炭化水素の気相アルキル化を触媒するための、本願に係る触媒または本願の方法によって得られる触媒の使用を提供する。
【0057】
〔実施例〕
以下に実施例を参照して本願をさらに詳細に説明するが、本願はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
以下の実施例および比較例において、リガク製のUltima IV X線粉末回折装置を用いて、35kVの電圧、30mAの電流、および1°・分-1の走査速度で、触媒のXRDパターンを測定した。
【0059】
以下の実施例および比較例において、触媒の酸性度分布を、NH3-TPD試験によって測定し、以下の通り、Tianjin Golden Eagle Technology Co., Ltd製の200906PX18 Temperature Programmed Desorption Apparatusを用いて、NH3-TPDスペクトルを得た:錠剤化および篩分け後に得られた試料(20~40メッシュ)0.05~0.20gを石英試料チューブに入れ、それをまず、活性化のためにヘリウム雰囲気中で1時間加熱しながら活性化させ、1時間安定化させ、次いで、40℃未満まで冷却し、次いで、再度100℃まで加熱し、飽和するまで100℃でアンモニア吸収に供し、最終的に、1時間ヘリウムでブローし、次いで、10℃/分の速度で600℃まで加熱することによって温度プログラムされた脱着に供し、作動曲線を記録した。
【0060】
以下の実施例および比較例において、触媒の機械的強度を、スマート粒子強度試験機を用いて測定し、焼成された触媒の機械的強度を、Dalian Penghui Technology Development Co., Ltd製のDLIII Smart Particle Strength Testerを用いて、測定すべき触媒を試験機上に水平に置き、触媒が破壊されたときに触媒が受ける最大圧力を測定し、測定した20個の触媒粒子の破砕強度の平均値を計算することによって、測定した。
【0061】
以下の実施例および比較例において、SEM画像を、日立社製の日立S-4800冷電界放出高分解能走査型電子顕微鏡を用いて得た。粒のサイズ分布を、対応するSEM画像における少なくとも300個の粒についての統計データに基づいて、粒の総数に対する、特定の粒のサイズの範囲における粒の数の割合を計算することによって得た。
【0062】
以下の実施例および比較例において、ICP試験前に試料50mgをフッ化水素酸溶液50gに完全に溶解させた、Kontron製のモデルS-35 ICP-AES分析器を用いて、ICP試験により、触媒のSiO2/Al2O3モル比率を決定した。
【0063】
以下の実施例および比較例において、触媒の単離されたアルミニウムの含有量を以下の通り測定した:まず、合成された触媒をイオン交換に供して、Na型触媒を得て、触媒を0.5mol/Lの濃度の塩化ナトリウム溶液と固液質量比1:100で混合し、室温で4時間撹拌し、次いで、溶液を流し出して、得られた固体を脱イオン水で洗浄し、洗浄後に得られた液体を硝酸銀溶液で検出し、洗浄後に得られた液体中に白色沈殿物が生じなくなったら洗浄を終了して、それによってNa型触媒を得て;次いで、Na型触媒をCo2+イオン交換に供し、Na型触媒を0.05mol/Lの濃度を有する硝酸コバルト溶液と固液質量比1:200で混合し、室温で10時間撹拌し、次いで、溶液を流し出して、得られた固体を脱イオン水で洗浄し、洗浄後に得られた液体をアンモニア水溶液で検出し、洗浄後に得られた液体中に青色沈殿物が生じなくなってから洗浄を終了し、それによって、Co型触媒を得た。乾燥後、ICP試験によりCo型触媒のCoの含有量およびAlの含有量を測定し、単離されたアルミニウムの含有量を、以下の式に従って計算した:
単離されたアルミニウムの含有量=(1-2×Cコバルト/Cアルミニウム)×100%、
式中、CコバルトおよびCアルミニウムは、それぞれCo型触媒の、Coの含有量およびAlの含有量を指す。
【0064】
以下の実施例および比較例において、別段の指定がない限り、使用される試薬および出発物質は、試薬純粋グレードの市販の製品である。
【0065】
[実施例1]
40重量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液27.7gと、ホワイトカーボンブラック60gと、硫酸アルミニウム18水和物13.32gと、水54gとを均一に混合し、密閉容器中で、90℃で20時間撹拌して、混合物A1を得た。混合物A1 12gと、それぞれ、0.3~1.2μmおよび5~9μmの範囲のサイズを有し、20gおよび40gの量で存在する2タイプのシリカ粒子を含むケイ素粉末60gと、硫酸アルミニウム18水和物13.32gとを混合して、混合物B1を得た。混合物B1を押出成形により成形して、混合物C1(直径1.8mm、長さ5mmの円筒形状)を得た。エチルアミン5gとヒドロキシエチルセルロース0.5gとを、50℃で5時間撹拌しながら混合し、次いで、混合物C1 50gを添加し、密閉空間中で、30℃で10時間静置させて、混合物D1を得た。混合物D1を、密閉空間中で、130℃で72時間静置させ、次いで、脱イオン水でpH値8が得られるまで洗浄し、80℃で12時間乾燥させ、500℃で10時間焼成し、質量濃度が3%のシュウ酸で、60℃で5時間酸洗浄に供して、アルミノシリケート分子篩触媒E1を得た。
【0066】
アルミノシリケート触媒E1のXRDパターンを
図1に示し、これはMFIトポロジー構造の典型的な回折ピークを有し、触媒がZSM-5分子篩触媒であることを示す。アルミノシリケート分子篩触媒E1のSEM画像を
図2に示し、これから、触媒は異なるサイズの2タイプの結晶粒を含み、2タイプの結晶粒のサイズが、それぞれ、50~200nmおよび400~1000nmであり、2タイプの結晶粒の数の割合が、それぞれ、35%および65%であることが分かる。アルミノシリケート分子篩触媒E1のNH
3-TPDパターンを
図3に示し、これは低温から高温への脱着温度に応じて、それぞれ、P1、P2、およびP3と表される3つのピークを示し、3つのピークの頂点に対応する脱着温度は、それぞれ、196℃、265℃、および385℃であり、3つのピークの高さ、すなわち、H1とH2とH3との間の比は、以下の通りである:H2/H1=0.66、H3/H2=0.82;H3/H1=0.54;それぞれ、100~240℃、240~300℃、および300~500℃の3つの温度範囲内の脱着曲線の積分面積に基づいて計算された、触媒の、弱酸の含有量S1と、中強酸の含有量S2と、強酸の含有量S3との間の比は、以下の通りである:S2/S1=0.46、S2/S3=0.49、S3/S1=0.94、対応して、酸の総含有量に対する、弱酸の含有量S1、中強酸の含有量S2、および強酸の含有量S3の割合は、それぞれ、42%、19%、および39%である。
【0067】
測定によれば、アルミノシリケート分子篩触媒E1は、機械的強度が155N/cm、SiO2/Al2O3モル比率が50.8、単離されたアルミニウムの含有量が99.0%である。
【0068】
[実施例2]
40重量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液253gと、テトラプロピルアンモニウムブロミド133gと、テトラエチルシリケート208.3gと、硫酸アルミニウム18水和物2.22gと、水60gとを均一に混合し、密閉容器中で、150℃で4時間撹拌して、混合物A2を得た。混合物A2 48gと、それぞれ、1.2~2μmおよび9~12μmの範囲のサイズを有し、30gおよび30gの量で存在する2タイプのシリカ粒子を含むケイ素粉末60gと、硫酸アルミニウム18水和物1.665gとを混合して、混合物B2を得た。混合物B2を押出成形により成形して、混合物C2(直径2.2mm、長さ5mmの円筒形状)を得た。シクロヘキシルアミン20gと、カゼイン0.5gと、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2gとの混合物を50℃で5時間撹拌し、次いで、混合物C2 50gを添加し、密閉空間中で、60℃で5時間静置させて、混合物D2を得た。混合物D2を、密閉空間中で、190℃で12時間静置させ、次いで、脱イオン水でpH値7が得られるまで洗浄し、150℃で5時間乾燥させ、600℃で4時間焼成し、質量濃度が0.5%のシュウ酸で、30℃で10時間酸洗浄に供して、アルミノシリケート分子篩触媒E2を得た。
【0069】
アルミノシリケート触媒E2のXRDパターンを
図4に示し、これはMFIトポロジー構造の典型的な回折ピークを有し、触媒がZSM-5分子篩触媒であることを示す。アルミノシリケート分子篩触媒E2のSEM画像は、触媒が異なるサイズの2タイプの結晶粒を含み、2タイプの結晶粒のサイズが、統計分析によれば、それぞれ、250~300nmおよび1000~1600nmであり、2タイプの結晶粒の数の割合が、それぞれ、40%および60%であることを示す。アルミノシリケート分子篩触媒E2のNH
3-TPDパターンは、低温から高温への脱着に応じて、それぞれ、P1、P2、およびP3と表される3つのピークを示し、3つのピークの頂点に対応する脱着温度は、それぞれ、191℃、260℃、および381℃であり、3つのピークの高さ、すなわち、H1とH2とH3との間の比は、以下の通りである:H2/H1=0.51、H3/H2=0.80、H3/H1=0.41;それぞれ、100~240℃、240~300℃、および300~500℃の3つの温度範囲内の脱着曲線の積分面積に基づいて計算された、触媒の、弱酸の含有量S1と、中強酸の含有量S2と、および強酸の含有量S3との間の比は、以下の通りである:S2/S1=0.48、S2/S3=0.52、およびS3/S1=0.92、対応して、酸の総含有量に対する、弱酸の含有量S1、中強酸の含有量S2、および強酸の含有量S3の割合は、それぞれ、42%、20%、および38%である。
【0070】
測定によれば、アルミノシリケート分子篩触媒E2は、機械的強度が112N/cm、SiO2/Al2O3モル比率が398、単離されたアルミニウムの含有量が99.6%である。
【0071】
[実施例3]
40重量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液126gと、テトラプロピルアンモニウムブロミド66gと、テトラエチルシリケート208.3gと、硫酸アルミニウム18水和物6.66gと、水50gとを均一に混合し、密閉容器中で、120℃で12時間撹拌して、混合物A3を得た。混合物A3 24gと、それぞれ、0.1~0.3μmおよび4~7μmの範囲のサイズを有し、40gおよび20gの量で存在する2タイプのシリカ粒子を含むケイ素粉末60gと、硫酸アルミニウム18水和物6.66gとを混合して、混合物B3を得た。混合物B3を押出成形により成形して、混合物C3(直径1.2mm、長さ5mmの円筒形状)を得た。n-ブチルアミン10gとアラビアガム1.5gとを、50℃で5時間撹拌しながら混合し、次いで、そこに混合物C3 50gを添加し、密閉空間中で、40℃で7時間静置させて、混合物D3を得た。混合物D3を、密閉空間中で、170℃で36時間静置させ、次いで、脱イオン水でpH値7.5が得られるまで洗浄し、100℃で8時間乾燥させ、550℃で6時間焼成し、質量濃度が3%の塩酸で、60℃で6時間酸洗浄に供して、アルミノシリケート分子篩触媒E3を得た。
【0072】
アルミノシリケート触媒E3のXRDパターンを
図5に示し、これはMFIトポロジー構造の典型的な回折ピークを有し、触媒がZSM-5分子篩であることを示す。アルミノシリケート分子篩触媒E3のSEM画像は、触媒が異なるサイズの2タイプの結晶粒を含み、2タイプの結晶粒のサイズが、統計分析によれば、それぞれ、10~100nmおよび400~700nmであり、2タイプの結晶粒の数の割合が、それぞれ、56%および44%であることを示す。アルミノシリケート分子篩触媒E3のNH
3-TPDパターンは、低温から高温への脱着に応じて、それぞれ、P1、P2、およびP3と表される3つのピークを示し、3つのピークの頂点に対応する脱着温度は、それぞれ、208℃、277℃、および399℃であり、3つのピークの高さ、すなわち、H1とH2とH3との間の比は、以下の通りである:H2/H1=0.79、H3/H2=0.89、H3/H1=0.70;それぞれ、100~240℃、240~300℃、および300~500℃の3つの温度範囲内の脱着曲線の積分面積に基づいて計算された、触媒の、弱酸の含有量S1と、中強酸の含有量S2と、強酸の含有量S3との間の比は、それぞれ、以下の通りである:S2/S1=0.41、S2/S3=0.38、S3/S1=1.07、対応して、酸の総含有量に対する、弱酸の含有量S1、中強酸の含有量S2、および強酸の含有量S3の割合は、それぞれ、40%、17%、および43%である。
【0073】
測定によれば、アルミノシリケート分子篩触媒E3は、機械的強度が145N/cmであり、SiO2/Al2O3のモル比率が125であり、単離されたアルミニウムの含有量が99.2%である。
【0074】
[比較例1]
0.1~0.3μmの範囲のサイズを有する1タイプのシリカ粒子のみを含むケイ素粉末を使用したこと、および工程4)においてレギュレータを添加しなかったことを除いて、実施例3に記載の通り、触媒を調製した。触媒を以下の通り調製した:40重量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液126gと、テトラプロピルアンモニウムブロミド66gと、テトラエチルシリケート208.3gと、硫酸アルミニウム18水和物6.66gと、水50gとを均一に混合し、密閉容器中で、120℃で12時間撹拌して、混合物A4を得た。混合物A4 24gと、0.1~0.3μmの範囲のサイズを有する1タイプのシリカ粒子のみを含むケイ素粉末60gと、硫酸アルミニウム18水和物6.66gとを混合して、混合物B4を得た。混合物B4を押出成形により成形して、混合物C4(直径1.2mm、長さ5mmの円筒形状)を得た。n-ブチルアミン10gを50℃で5時間撹拌し、次いで、そこに混合物C4 50gを添加し、混合物を、密閉空間中で、40℃で7時間静置させて、混合物D4を得た。混合物D4を、密閉空間中で、170℃で36時間静置させ、次いで、脱イオン水でpH値7.5が得られるまで洗浄し、100℃で8時間乾燥させ、550℃で6時間焼成し、質量濃度が3%の塩酸で、60℃で6時間酸洗浄に供して、アルミノシリケート分子篩触媒F1を得た。
【0075】
アルミノシリケート分子篩触媒F1のSEM画像を
図6に示し、これから、統計分析によれば、触媒は180~250nmの範囲のサイズを有する1タイプの結晶粒のみを含むことが分かる。アルミノシリケート分子篩触媒F1のNH
3-TPDパターンを
図7に示し、これは、低温から高温への脱着温度に応じて、それぞれ、P1およびP2と表される2つのピークを示し、2つのピークの頂点に対応する脱着温度は、それぞれ194℃および396℃であり、2つのピーク、すなわち、H1とH2との高さの比は、以下の通りである:H2/H1=0.96、それぞれ、100~240℃、240~300℃、および300~500℃の3つの温度範囲内の脱着曲線の積分面積に基づいて計算された、触媒の、弱酸の含有量S1と、中強酸の含有量S2と、強酸の含有量S3との間の比は、以下の通りである:S2/S1=0.28、S2/S3=0.17、S3/S1=1.63、対応して、酸の総含有量に対する、弱酸の含有量S1、中強酸の含有量S2、および強酸の含有量S3の割合は、それぞれ、34%、10%、および56%である。
【0076】
測定によれば、アルミノシリケート分子篩触媒F1は、機械的強度が155N/cm、SiO2/Al2O3モル比率が128、単離されたアルミニウムの含有量が95.8%である。
【0077】
[比較例2]
レギュレータヒドロキシエチルセルロースの添加の順序を変更したことを除いて、実施例1に記載の通り、触媒を調製した。触媒を以下の通り調製した:40重量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液27.7gと、ホワイトカーボンブラック60gと、硫酸アルミニウム18水和物13.32gと、水54gと、ヒドロキシエチルセルロース0.5gとを均一に混合し、密閉容器内で、90℃で20時間撹拌して、混合物A5を得た。混合物A5 12gと、それぞれ、0.3~1.2μmおよび5~9μmの範囲のサイズを有し、20gおよび40gの量で存在する2タイプのシリカ粒子を含むケイ素粉末60gと、硫酸アルミニウム18水和物13.32gとを混合して、混合物B5を得た。混合物B5を押出成形により成形して、混合物C5(直径1.8mm、長さ5mmの円筒形状)を得た。エチルアミン5gを50℃で5時間撹拌し、次いで、そこに混合物C5 50gを添加し、密閉空間中で、30℃で10時間静置させて、混合物D5を得た。混合物D5を、密閉空間中で、130℃で72時間静置させ、次いで、脱イオン水でpH値8が得られるまで洗浄し、80℃で12時間乾燥させ、500℃で10時間焼成し、質量濃度が3%のシュウ酸で、60℃で5時間酸洗浄に供して、アルミノシリケート分子篩触媒F2を得た。
【0078】
アルミノシリケート分子篩触媒F2のSEM画像は、触媒が異なるサイズの2タイプの結晶粒を含み、2タイプの結晶粒のサイズは、統計分析によれば、それぞれ、200~420nmおよび1500~2000nmであることを示す。アルミノシリケート分子篩触媒F2のNH3-TPDパターンは、低温から高温への脱着温度に応じて、それぞれ、P1およびP2と表される2つのピークを示し、2つのピークの頂点に対応する脱着温度は、それぞれ、197℃および399℃であり、2つのピーク、すなわち、H1とH2との高さの比は、以下の通りである:H2/H1=0.76;それぞれ、100~240℃、240~300℃、および300~500℃の3つの温度範囲内の脱着曲線の積分面積に基づいて計算された、触媒の、弱酸の含有量S1、中強酸の含有量S2、および強酸の含有量S3の間の比は、以下の通りである:S2/S1=0.26、S2/S3=0.16、S3/S1=1.60、酸の総含有量に対する、弱酸の含有量S1、中強酸の含有量S2、および強酸の含有量S3の割合は、それぞれ、35%、9%、および56%である。
【0079】
測定によれば、アルミノシリケート分子篩触媒F2は、機械的強度が135N/cm、SiO2/Al2O3モル比率が52.4、単離されたアルミニウムの含有量が96.6%である。
【0080】
[比較例3]
0.1~0.3μmの範囲のサイズを有する1タイプのシリカ粒子のみを含むケイ素粉末を使用したことを除いて、実施例3に記載の通り、触媒を調製した。触媒を以下の通り調製した:40重量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液126gと、テトラプロピルアンモニウムブロミド66gと、テトラエチルシリケート208.3gと、硫酸アルミニウム18水和物6.66gと、水50gとを均一に混合し、密閉容器中で、120℃で12時間撹拌して、混合物A6を得た。混合物A6 24gと、サイズが0.1~0.3μmの範囲のサイズを有する1タイプのシリカ粒子のみを含むケイ素粉末60gと、硫酸アルミニウム18水和物6.66gとを混合して、混合物B6を得た。混合物B6を押出成形により成形して、混合物C6(直径1.2mm、長さ5mmの円筒形状)を得た。n-ブチルアミン10gと、アラビアガム1.5gとを、50℃で5時間撹拌し、次いで、混合物C6 50gを添加し、密閉空間中で、40℃で7時間静置させて、混合物D6を得た。混合物D6を、密閉空間中で、170℃で36時間静置させ、次いで、脱イオン水でpH値7.5が得られるまで洗浄し、100℃で8時間乾燥させ、550℃で6時間焼成し、質量濃度が3%の塩酸で、60℃で6時間酸洗浄し、アルミノシリケート分子篩触媒F3を得た。
【0081】
アルミノシリケート触媒F3のSEM画像は、触媒が、統計分析によれば、170~245nmの範囲のサイズを有する1タイプの結晶粒のみを含むことを示す。アルミノシリケート分子篩触媒F3のNH3-TPDパターンは、低温から高温への脱着温度に応じて、それぞれ、P1およびP2と表される2つのピークを示し、2つのピークの頂点に対応する脱着温度は、それぞれ、189℃および366℃であり、2つのピーク、すなわち、H1とH2との高さの比は、以下の通りである:H2/H1=0.76;それぞれ、100~240℃、240~300℃、および300~500℃の3つの温度範囲内の脱着曲線の積分面積に基づいて計算される、触媒の、弱酸の含有量S1と、中強酸の含有量S2と、強酸の含有量S3との比は、以下の通りである:S2/S1=0.43、S2/S3=0.35、S3/S1=1.23、対応して、酸の総含有量に対する、弱酸の含有量S1、中強酸の含有量S2、および強酸の含有量S3の割合は、それぞれ、38%、16%、および46%である。
【0082】
測定によれば、アルミノシリケート分子篩触媒F3は、機械的強度が142N/cm、SiO2/Al2O3モル比率が126、単離されたアルミニウムの含有量が97.3%である。
【0083】
[比較例4]
触媒は、以下の通り、CN107512729Aの方法に従って調製した:
合成されたZSM-5分子篩の調製:アルカリ性シリカゾルと、硫酸アルミニウム18水和物と、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)と、水とを原料として使用し、原料をSiO2/Al2O3=180、TPAOH/SiO2=0.22、H2O/SiO2=18のモル比で均一に混合し、ステンレススチール反応ケトルに装填し、撹拌下で、150℃で3日間結晶化させた。結晶化の完了後、得られたものを濾過し、洗浄し、乾燥させて、合成されたZSM-5分子篩を得た。
【0084】
ZSM-5分子篩前駆体の調製:合成されたZSM-5分子篩41.866gと、アルカリ性シリカゾル37.5g(SiO2の含有量が40.0重量%である)と、メチルセルロース0.5616gと、5重量%の硝酸水溶液とを均一に混合し、四葉のクローバー形状の、径が1.2mm、長さが5mmの断片に押出して、70重量%のZSM-5分子篩を含む分子篩前駆体を得た。
【0085】
目的の触媒の調製:アルミン酸ナトリウム(43.0重量%のAl2O3、35.0重量%のNa2Oを含む)1.97g、水247g、n-ブチルアミン(99.0重量%のn-ブチルアミン)8.865gを均一に混合し、次いで、上記で得られた分子篩前駆体の全てと混合し、得られた混合物を150℃で28時間結晶化した。結晶化の完了後、得られたものを濾過し、洗浄し、乾燥させ、空気中で、550℃で5時間焼成し、10重量%の硫酸アンモニウム溶液で3回アンモニア交換し、空気中で、550℃で5時間焼成し、バインダレスのZSM-5分子篩触媒F4を得た。
【0086】
触媒F4のSEM画像は、触媒が、統計分析によれば、300~450nmの範囲のサイズを有する1タイプの結晶粒のみを含むことを示す。触媒F4のNH3-TPDパターンは、低温から高温への脱着温度に応じて、それぞれ、P1およびP2と表される2つのピークを示し、2つのピークの頂点に対応する脱着温度は、それぞれ、193℃および390℃であり、2つのピーク、すなわち、H1とH2との高さの比は、以下の通りである:H2/H1=1.21;それぞれ、100~240℃、240~300℃、および300~500℃の3つの温度範囲内の脱着曲線の積分面積に基づいて計算された、触媒の弱酸の含有量S1と、中強酸の含有量S2と、強酸の含有量S3との間の比は、以下の通りである:S2/S1=0.37、S2/S3=0.18、S3/S1=2.03であり、対応して、酸の総含有量に対する、弱酸の含有量S1、中強酸の含有量S2、および強酸の含有量S3の割合は、それぞれ、29%、11%、および60%である。
【0087】
測定によれば、触媒F4は、機械的強度が78N/cm、SiO2/Al2O3モル比率が145、単離されたアルミニウムの含有量が93.7%である。
【0088】
【0089】
表1から分かるように、本発明の触媒の粒サイズは二峰性であり、そのNH3-TPD脱離曲線は、3つの異なるピークを示す。比較例で得られた触媒と比較して、本願の触媒は、著しく異なる酸性度分布を示し、特に中強酸の含有量の割合は著しく向上し、一方、強酸の含有量の割合は低減し、一方、弱酸の含有量の割合は向上している。
【0090】
[試験例1]
実施例1~3で得られたアルミノシリケート分子篩触媒E1~E3および比較例1~4で得られた触媒F1~F4を、それぞれ、エチレンによるベンゼンの気相アルキル化反応に適用し、380℃の反応温度、1.5MPaの反応圧力、2.2時間-1のエチレン質量空間速度、および5.5のエチレンに対するベンゼンのモル比率を含む条件で、10時間反応を行い、アルキル化生成物中の、キシレンの含有量、ジエチルベンゼンおよびトリエチルベンゼンの含有量を検出し、エチレン転化率およびエチル選択性を計算した。反応結果を以下の表2に示す:
エチレン転化率=(エチレンの総投入量-反応器排液中のエチレンの量)/エチレンの総投入量×100%
エチル選択性=(生成されたエチルベンゼンのモル+ジエチルベンゼンのモル×2+トリエチルベンゼンのモル×3)/消費されたエチレンのモル×100%
【0091】
【0092】
[試験例2]
実施例1~3で得られたアルミノシリケート分子篩触媒E1~E3および比較例1~4で得られた触媒F1~F4の、エチレンによるベンゼンの気相アルキル化反応におけるシングルパス寿命を、超高エチレン空間速度を含む反応条件下でそれぞれ試験し、詳細な条件は、400℃の反応温度、2.0MPaの圧力、6時間-1のエチレン質量空間速度、および2のエチレンに対するベンゼンのモル比率を含んでいた。シングルパス寿命は、反応の開始からエチレン転化率が初期転化率の60%に低下したときの時間までの時間の期間を指す。反応結果を以下の表3に示す。
【0093】
【0094】
表2のデータに示されるように、比較例で得られた触媒と比較して、本願の触媒は、オレフィンによる芳香族のアルキル化反応においてより高い活性および選択性を示し、副生成物の含有量を著しく減少させ、オレフィンの転化率および生成物の選択性を改善することができる。特に、エチレンによるベンゼンのアルキル化によりエチルベンゼンを生成するための反応では、得られるアルキル化生成物中の鍵となる不純物のキシレンの質量含有量を500ppm未満のレベルに低減することができ、ジエチルベンゼンおよびトリエチルベンゼンの質量含有量を8%未満のレベルに低減することができる。
【0095】
表3のデータに示されるように、比較例で得られた触媒と比較して、本願の触媒は、超高エチレン空間速度を含む反応条件下での、エチレンによるベンゼンの気相アルキル化におけるより高い安定性、および著しく増加したシングルパス寿命を示す。
【0096】
本願は、好ましい実施形態を参照して上記で詳細に説明されているが、これらの実施形態に限定されることは意図されていない。本願の発明概念に従い、様々な変更を行ってもよく、これらの変更は本願の範囲内であるべきである。
【0097】
なお、上記実施形態で説明した様々な技術的特徴を矛盾なく任意の適切な態様で組み合わせてもよく、不必要な繰り返しを避けるために、本願では様々な可能な組み合わせを記載しないが、そのような組み合わせも本願の範囲内に含まれるべきであることが留意されるべきである。
【0098】
さらに、本願の様々な実施形態は、組み合わせが本願の趣旨から逸脱しない限り任意に組み合わせることができ、そのような組み合わせられた実施形態は、本願の開示としてみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【
図1】
図1は、本願の実施例1で得られたアルミノシリケート分子篩触媒のXRDパターンを示す。
【
図2】
図2は、本願の実施例1で得られたアルミノシリケート分子篩触媒のSEM画像を示す。
【
図3】
図3は、本願の実施例1で得られたアルミノシリケート分子篩触媒のNH
3-TPDパターンを示す。
【
図4】
図4は、本願の実施例2で得られたアルミノシリケート分子篩触媒のXRDパターンを示す。
【
図5】
図5は、本願の実施例3で得られたアルミノシリケート分子篩触媒のXRDパターンを示す。
【
図6】
図6は、比較例1で得られたアルミノシリケート分子篩触媒のSEM画像を示す。
【
図7】
図7は、比較例1で得られたアルミノシリケート分子篩触媒のNH
3-TPDパターンを示す。
【国際調査報告】