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特表2023-547896磁性フェライト担持材料を有する触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】磁性フェライト担持材料を有する触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/745 20060101AFI20231107BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231107BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20231107BHJP
   B01J 23/78 20060101ALI20231107BHJP
   B01J 23/75 20060101ALI20231107BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20231107BHJP
   B01J 23/80 20060101ALI20231107BHJP
   B01J 23/889 20060101ALI20231107BHJP
   B01J 23/83 20060101ALI20231107BHJP
   B01J 23/656 20060101ALI20231107BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20231107BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20231107BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231107BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20231107BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
B01J23/745 A
B01J37/08 ZAB
B01J35/10 301F
B01J23/78 A
B01J23/75 A
B01J23/755 A
B01J23/80 A
B01J23/889 A
B01J23/83 A
B01J23/656 A
B01J23/89 A
B01J35/04 301L
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/94 228
F01N3/20 K
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525058
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-04-25
(86)【国際出願番号】 US2021071982
(87)【国際公開番号】W WO2022094531
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/105,466
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】コードル,マシュー ティー
(72)【発明者】
【氏名】ロト,スタンリー エー.
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA14
3G091AA17
3G091AA18
3G091AA19
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3G091AB03
3G091AB05
3G091AB06
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3G091GB07W
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4G169FC08
(57)【要約】
本開示は、磁性フェライト担持材料上に配置又は含浸された触媒活性白金族金属(PGM)成分を含む触媒組成物を提供し、磁性フェライト担持材料は、印加された交流電磁場に応答して誘導加熱することができる。そのような組成物を含む触媒物品、及びそのような触媒物品を含み、電流を受け、それに応答して交流電磁場を生成するための触媒物品に関連付けられた導体を更に含む成分が更に提供され、導体は、生成された交流電磁場が触媒組成物の少なくとも一部に印加される、触媒部位で触媒組成物を直接誘導加熱するように位置決めされる。また、そのような構成要素及び/又は物品を含む排気ガス処理システム、並びにそのような構成要素及びシステムを利用して排出物を処理する方法も提供される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒組成物であって、
触媒活性白金族金属(PGM)成分と、
磁性フェライト担持材料であって、前記磁性フェライト担持材料が、印加された交流磁場に応答して誘導加熱することができ、前記活性白金族金属が、前記磁性フェライト担持材料上に配置又は含浸される、触媒組成物。
【請求項2】
前記磁性フェライト担持材料が、
鉄と、
亜鉛、コバルト、ニッケル、イットリウム、マンガン、銅、バリウム、ストロンチウム、スカンジウム、及びランタンから選択される1つ以上の元素と、を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記磁性フェライト担持材料が、
鉄と、
亜鉛、コバルト、ニッケル、及びイットリウムから選択される1つ以上の元素と、を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記磁性フェライト担持材料が、鉄、ニッケル、及び亜鉛を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記磁性フェライト担持材料のニッケル/亜鉛モル比が、約1/99~約99/1である、請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記ニッケル/亜鉛モル比が、約25/75~約75/25である、請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記ニッケル/亜鉛モル比が、約50/50である、請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記磁性フェライト担持材料が、分子式Ni0.5Zn0.5Feを有する、請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項9】
前記磁性フェライト担持材料が、鉄、コバルト、及び亜鉛を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項10】
前記磁性フェライト担持材料のコバルト/亜鉛モル比が、約1/99~約99/1である、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項11】
前記コバルト/亜鉛モル比が、約25/75~約75/25である、請求項10に記載の触媒組成物。
【請求項12】
前記コバルト/亜鉛モル比が、約50/50である、請求項10に記載の触媒組成物。
【請求項13】
前記磁性フェライト担持材料が、分子式Co0.5Zn0.5Feを有する、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項14】
前記磁性フェライト担持材料が、鉄及びイットリウムを含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項15】
前記磁性フェライト担持材料が、分子式YFe12を有する、請求項14に記載の触媒組成物。
【請求項16】
前記磁性フェライト担持材料が、約400℃~約1200℃の温度で約1時間以上か焼される、請求項1~15のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項17】
前記磁性フェライト担持材料が、約600℃~約900℃の温度で約1時間以上か焼される、請求項1~15のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項18】
前記磁性フェライト担持材料が、約40nm~約1μmの平均粒径を有する粒子の形態にある、請求項1~15のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項19】
前記磁性フェライト担持材料が、ナノ粒子の形態である、請求項1~15のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項20】
前記触媒組成物の温度が、交流磁場への曝露によって上昇する、請求項1~15のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項21】
触媒活性PGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、又はそれらの組み合わせである、請求項1~15のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項22】
前記磁性フェライト担持材料が、約100m/g未満のブルナウアー・エメット・テラー(BET)表面積を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項23】
前記磁性フェライト担持材料の保磁力が、約1kA/m~約20kA/mである、請求項1~15のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項24】
ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒煤フィルタ(CSF)触媒、リーンNOxトラップ(LNT)触媒、アンモニア酸化(AMOx)触媒、又は三元触媒(TWC)として構成される、請求項1~15のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項25】
内燃機関からの排気ガス排出物を処理するための触媒物品であって、
請求項1~15のいずれか一項に記載の前記触媒組成物が堆積された、フロースルー基材又はウォールフローフィルタの形態にある基材を含む、触媒物品。
【請求項26】
ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒煤フィルタ(CSF)、リーンNOxトラップ(LNT)、選択的触媒還元(SCR)触媒、アンモニア酸化(AMOx)触媒、又は三元触媒(TWC)としての使用に適合した、請求項25に記載の触媒物品。
【請求項27】
ディーゼル酸化触媒(DOC)物品として構成される、請求項26に記載の触媒物品。
【請求項28】
排出物制御システムであって、
請求項25に記載の触媒物品と、
電流を受け、それに応答して交流磁場を生成するための導体であって、前記導体が、生成された交流磁場が触媒組成物の少なくとも一部分に印加されるように位置決めされた、導体と、を含む、排出物制御システム。
【請求項29】
前記導体が、前記触媒物品の少なくとも一部を取り囲む導線のコイルの形態にある、請求項28に記載の排出物制御システム。
【請求項30】
交流電流を供給するために前記導体に電気的に接続された電源を更に含む、請求項28に記載の排出物制御システム。
【請求項31】
前記触媒物品に入るガスの温度を測定するように位置決めされた温度センサと、
前記温度センサと通信するコントローラであって、前記触媒物品の加熱が望まれる場合に前記コントローラが電流で前記導体に通電するように、前記導体に供給される前記電流を制御するように適合されたコントローラと、を更に含む、請求項28に記載の排出物制御システム。
【請求項32】
内燃機関からの排気ガス排出物を処理する方法であって、前記排気ガス排出物を、請求項28に記載の排出物制御システムに通すことを含む、方法。
【請求項33】
前記内燃エンジンが、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、電動ハイブリッド、又は天然ガスエンジンである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
触媒組成物を有する触媒床を含む固定床反応器設計のための触媒であって、前記触媒組成物が、
触媒材料と、
少なくとも1つの磁性成分であって、前記磁性成分が、少なくとも1つの磁性フェライト担持材料を含む、磁性成分と、を含む、触媒。
【請求項35】
固定床触媒システムであって、
請求項34に記載の触媒と、
電流を受け、それに応答して交流磁場を生成するための導体であって、前記導体が、生成された交流磁場が触媒組成物の少なくとも一部分に印加されるように位置決めされた、導体と、を含む、固定床触媒システム。
【請求項36】
触媒材料を製造するための方法であって、
磁性フェライト担持材料を約600℃以上の温度で約1時間以上加熱することと、
前記加熱された磁性フェライト担持材料を触媒材料と組み合わせることと、を含む、方法。
【請求項37】
触媒材料を製造するための方法であって、
約100m/g未満の磁性フェライト担持材料のブルナウアー・エメット・テラー(BET)表面積を減少させるのに十分な時間及び温度で前記磁性フェライト担持材料を加熱することと、
前記加熱されたフェライト担持材料を触媒材料と組み合わせることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願の特許請求の範囲は、2020年10月26日出願の米国仮出願第63/105,466号に対する優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、排気ガス処理触媒組成物、及びそのような組成物を含む物品及びシステムの分野に関する。
【0003】
例えば、ディーゼルエンジンなどのリーンバーンエンジンの作動は、燃料リーン条件下での高い空燃比でのその作動によって、ユーザーに優れた燃料経済性を提供する。しかしながら、ディーゼルエンジンはまた、微粒子状物質(PM)、未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を含有する排気ガス排出物も放出し、NOは、一酸化窒素及び二酸化窒素などを含む窒素酸化物の種々の化学種を表す。同様に、ガソリンエンジンは、HC、CO、及びNOを含む排気ガス排出物を排出する。したがって、内燃機関の排気ガス流は、そのような汚染物質に対処するために処理を必要とする。世界的な排出基準がこれまで以上に厳しくなるにつれて、これらの目的に用いられる触媒システムを改善する必要性が継続的に存在する。
【0004】
リーンバーン(例えば、ディーゼル)エンジンの排気は、一般に、様々な排気ガス成分の酸化及び還元のために構成された一連の触媒で処理される。白金族金属(PGM)を含有する触媒は、ディーゼルエンジンの排気を処理して、二酸化炭素及び水へのこれらの汚染物質の酸化を触媒することによって、炭化水素及び一酸化炭素を変換する際に有用である。加えて、白金を含有する酸化触媒は、NOへのNOの酸化を促進する。ヘビーデューティディーゼルシステムの場合、そのような触媒は、一般に、ディーゼル酸化触媒(DOC)システム、触媒煤フィルタ(CSF)システム、又は複合DOC-CSFシステム内に含有される。これらの触媒系は、ディーゼル発電システムからの排気流路に置かれ、結果として生じる排気を大気に排出する前に処理する。通常、DOC又はCSF触媒は、アルミナなどの金属酸化物担持体に含浸されたパラジウム及び/又はプラチナなどの1つ以上のPGM、並びに、任意選択的に、セラミック又は金属基板上に堆積された促進剤及び/又は安定剤を含み、通常、両方の炭化水素及び一酸化炭素の酸化を提供する。
【0005】
次いで、DOCによって形成されたNOを含むNO成分を、通常、選択的触媒還元(SCR)触媒の存在下で、好適な還元剤でNO成分を還元することによって、排気流から除去しなければならない。SCRは、適切な量の酸素の存在下での還元剤による窒素酸化物の触媒還元に適合される。還元剤は、例えば、炭化水素、水素、及び/又はアンモニアであり得る。SCR触媒は、通常、銅又は鉄などのプロモーター金属でイオン交換されたモレキュラーシーブ(例えば、ゼオライト)を含む。大気中の酸素の存在下でアンモニアを使用するSCRプロセスは、次式に従った窒素と水蒸気の主たる形成をもたらす。
4NO+4NH+O→4N+6HO(標準SCR反応)
2NO+4NH→3N+6HO(低速SCR反応)
NO+NO+NH→2N+3HO(高速SCR反応)
一般に、ディーゼル排気システムは、そのようなSCR触媒を少なくとも1つ含む。
【0006】
ライトデューティ及びミィディアムデューティの用途では、システムは、NOを貯蔵及び低減するのに役立つ、並びに、排気流から一酸化炭素及び未燃焼炭化水素を除去するのに役立つリーンNOトラップ(LNT)を含有し得る。LNTは、一般に、担体に含浸された1つ以上のPGM成分と、NOxトラップ成分(例えば、セリア及び/又はアルカリ土類金属酸化物)とを含む。LNT触媒は、リーン条件下でNOxを吸着し、リッチ条件下で貯蔵されたNOxを窒素に還元することができる。
【0007】
アンモニア酸化触媒(AMOx)は、酸化によって排気流から過剰なアンモニアを除去するために、SCRの下流で頻繁に使用される。AMOx触媒は、一般に、アルミナ又はチタニアなどの担持材料に担持された、アンモニアを変換するのに好適な1つ以上の金属を含有する。例示的なAMOx触媒は、担持された白金族金属(例えば、アルミナに含浸された白金)とともに銅ゼオライトを含む。
【0008】
電子燃料噴射システム及び吸気システムを有する従来のガソリンエンジンは、絶えず変化する混合気を提供し、リーン排気とリッチ排気の間を迅速かつ継続的に循環する。化学量論空燃比又はそれに近い条件で作動するガソリンエンジンで電力供給される車両からの排気ガスは、通常、排気中の窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、及び炭化水素(HC)汚染物質を効果的に除去する三元触媒(TWC)で処理される。通常、TWC触媒は、パラジウム及び/又はロジウムと、任意選択的に、白金などの1つ以上の白金族金属と、酸素貯蔵成分とを含む。
【0009】
自動車の排気ガス流の処理で遭遇する主な問題は、いわゆる「コールドスタート」期間であり、これは、排気ガス流及び排気ガス処理システムが低温(すなわち、150℃未満)であるときの処理プロセスの始動時における期間である。これらの低温では、排気ガス処理システムは、一般に、HC、NO、及び/又はCO排出物を効果的に処理するのに十分な触媒活性を示さない。これは、特に、好適な作動温度に達するまでに数分かかり得るSCR触媒などの、下流の触媒成分、特に高熱質量フィルタ後に配置される触媒成分に当てはまる。
【0010】
低温始動期間中の触媒活性の低下を克服するために、始動条件中の触媒物品の電気加熱の使用が提案されてきた。例えば、米国特許公開第2011/0072805号(Horner et al.)、US2014/0033688(Yoshioka)、US2015/0087497(Chiffey et al.)、及び米国特許第8,292,987号(Grapes et al.)及び同第8,479,496号(Gonze et al.)を参照されたい。典型的なアプローチでは、熱は、電気ヒーター、例えば、触媒基板の外側に巻き付けた電線又は発熱体としての金属基材そのものによって生成される。このようなシステムの商業化を成功させるには、比較的高いエネルギー消費、及び最初に触媒基材を加熱する必要があるために比較的低い加熱効率など、いくつかの課題が存在する。更に、当該技術分野におけるほとんどの電気加熱設計では金属基板を使用しており、多くのシステムで触媒担体として使用されるより広く採用されているセラミック基板とは互換性がない。したがって、ガソリン又はディーゼルエンジンからのガス状汚染物質のテールパイプエミッション、特に、エンジンのコールドスタート中に発生するブレークスルーエミッションを低減するための触媒組成物及びシステムを開発する必要性が当該技術分野において継続して存在する。
【0011】
本開示は、一般に、触媒活性金属と、印加された交流電磁場に応答して誘導加熱することができる磁性セラミック担持材料とを含む触媒組成物を提供する。開示される主題は、活性部位で触媒材料を直接加熱するために使用され得、触媒組成物の触媒活性を急速に増加させる。触媒組成物の誘導加熱は、コールドスタート期間中など、触媒温度がHC、NO、及び/又はCO排出物を効果的に処理するために必要な温度よりも低い場合に、触媒活性を高めるのに特に有用である。
【0012】
したがって、一態様では、触媒活性白金族金属(PGM)成分と、磁性フェライト担持材料とを含む触媒組成物が提供され、磁性フェライト担持材料は、印加された交流磁場に応答して誘導加熱することができ、活性白金族金属は、磁性フェライト担持材料上に配置又は含浸される。
【0013】
いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、鉄と、亜鉛、コバルト、ニッケル、イットリウム、マンガン、銅、バリウム、ストロンチウム、スカンジウム、及びランタンから選択される(例えば、それらからなる群から選択される)1つ以上の元素と、を含む。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、鉄と、亜鉛、コバルト、ニッケル、及びイットリウムから選択される(例えば、からなる群から選択される)1つ以上の元素と、を含む。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、鉄、ニッケル、及び亜鉛を含む。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料のニッケル/亜鉛モル比は、約1/99~約99/1である。いくつかの実施形態では、ニッケル/亜鉛モル比は、約25/75~約75/25である。いくつかの実施形態では、ニッケル/亜鉛モル比は、約50/50である。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、分子式Ni0.5Zn0.5Feを有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、鉄、コバルト、及び亜鉛を含む。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料のコバルト/亜鉛モル比は、約1/99~約99/1である。いくつかの実施形態では、コバルト/亜鉛モル比は、約25/75~約75/25である。いくつかの実施形態では、コバルト/亜鉛モル比は、約50/50である。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、分子式Co0.5Zn0.5Feを有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、鉄及びイットリウムを含む。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、分子式YFe12を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、約400℃~約1200℃の温度で約1時間以上か焼される。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、約600℃~約900℃の温度で約1時間以上か焼される。
【0017】
いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、約40nm~約1μmの平均粒径を有する粒子の形態にある。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、ナノ粒子の形態である。
【0018】
いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、約100m/g未満のブルナウアー・エメット・テラー(BET)表面積を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、約1~約20kA/mの磁性フェライト担持材料の保磁力を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、触媒組成物の温度は、交流磁場への曝露によって上昇する。
【0021】
いくつかの実施形態では、PGM成分は、白金、パラジウム、ロジウム、又はそれらの組み合わせを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、触媒組成物は、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒化煤フィルタ(CSF)触媒、リーンNOxトラップ(LNT)触媒、アンモニア酸化(AMOx)触媒、又は三元触媒(TWC)として構成される。
【0023】
別の態様では、内燃機関からの排気ガス排出物の処理のための触媒物品が提供され、触媒物品は、上に堆積された本明細書に開示される触媒組成物を有する、フロースルー基材又はウォールフローフィルタの形態にある基材を含む。いくつかの実施形態では、触媒物品は、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒煤フィルタ(CSF)、リーンNOxトラップ(LNT)、選択的触媒還元(SCR)触媒、アンモニア酸化(AMOx)触媒、又は三元触媒(TWC)としての使用のために適合される。いくつかの実施形態では、触媒物品は、ディーゼル酸化触媒(DOC)物品として構成される。
【0024】
更に別の態様では、本明細書に開示される触媒物品を含む排出物制御システム、並びに、電流を受け、かつそれに応答して交流磁場を生成するための導体であって、生成された交流磁場が触媒組成物の少なくとも一部分に印加されるように位置決めされた、導体が提供される。
【0025】
いくつかの実施形態では、導体は、触媒物品の少なくとも一部分を取り囲む導線のコイルの形態にある。
【0026】
いくつかの実施形態では、排出物制御システムは、導体に交流電流を供給するために導体に電気的に接続された電源を更に備える。
【0027】
いくつかの実施形態では、排出物制御システムは、触媒物品に入るガスの温度を測定するように位置決めされた温度センサと、温度センサと通信するコントローラであって、触媒物品の加熱が望まれる場合にコントローラが電流で導体に通電するように、導体に供給される電流の制御のために適合される、コントローラとを更に含む。
【0028】
更なる態様では、本明細書に開示される排出物制御システムに排気ガス排出物を通すことを含む、内燃機関からの排気ガス排出物を処理する方法が提供される。いくつかの実施形態では、内燃エンジンは、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、電動ハイブリッド、又は天然ガスエンジンである。
【0029】
なお更なる態様では、触媒組成物を有する触媒床を含む固定床反応器設計のための触媒が提供され、触媒組成物は、触媒材料と、少なくとも1つの磁性成分とを含み、磁性成分は、少なくとも1つの磁性フェライト担持材料を含む。
【0030】
別の態様では、本明細書に開示される触媒と、電流を受け、かつそれに応答して交流磁場を生成するための導体であって、生成された交流磁場が触媒組成物の少なくとも一部分に印加されるように位置決めされた、導体とを含む固定床触媒システムが提供される。
【0031】
更に別の態様では、触媒材料を製造するための方法が提供され、この方法は、磁性フェライト担持材料を約600℃以上の温度で約1時間以上加熱することと、加熱された磁性フェライト担持材料を触媒材料と組み合わせることとを含む。
【0032】
更に別の態様では、触媒材料を製造するための方法が提供され、この方法は、磁性フェライト担持材料のブルナウアー・エメット・テラー(BET)表面積を約100m/g未満に減少させるのに十分な時間及び温度で磁性フェライト担持材料を加熱することと、加熱されたフェライト担持材料を触媒材料と組み合わせることとを含む。
【0033】
本開示のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下に簡潔に説明される添付の図面とともに以下の詳細な説明を閲読することで明らかになるだろう。本開示の他の態様及び利点は、以下で明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本開示の実施形態の理解を提供するために、添付図面が参照され、添付図面では、参照符号は、開示される主題の例示的な実施形態の構成要素を示す。図面は、例示的にすぎず、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載される開示は、添付の図において、限定としてではなく、例として図示される。図の簡潔化及び明確化のために、図に示される特徴は、必ずしも縮尺に合わせて描かれているわけではない。例えば、一部の特徴の寸法は、分かりやすくするために他の特徴に対して誇張されている場合がある。更に、適切であると考えられる場合、参照符号を複数の図の間で繰り返し用いて、対応する又は類似の要素を示す。
【0035】
図1A】本開示による酸化触媒組成物を含み得るハニカム型基材の斜視図である。
図1B図1Aに対して拡大され、かつ基材の端部面に対して平行な平面に沿って見た部分断面図であり、基材がフロースルー基材である実施形態における、図1Aに示された複数のガス流路の拡大図を示す。
図2】代表的なウォールフローフィルタの断面図である。
図3】特定の実施形態による可能なコーティング構成の非限定的な図である。
図4】本開示の触媒物品が利用される排出物処理システム50の実施形態の概略図であり、関連する導電体、コントローラ、電源、及び温度センサを示す。
図5】本開示の2つ以上の触媒物品が利用される排出物処理システム51の実施形態の概略図であり、関連する導電体、コントローラ、電源、及び温度センサを示す。
図6】本開示の触媒物品が利用される排出物処理システムの実施形態の概略図であり、エンジン流出物の移動方向を示す。
図7】充填されたサンプル、誘導コイル、及び冷却空気ジェットの配置、並びに分析及び制御熱電対プローブの位置を示す実験セットアップの写真である。
図8】交流磁場への曝露下で測定された、調製したままの状態及び600℃、750℃、及び900℃での処理後の、本開示の実施形態による、異なる金属酸化物材料、参照材料及び磁性フェライト担持材料の両方についての熱出力供給を示すチャートである。
図9A】交流磁場への曝露下で測定された、調製されたままの状態及び750℃でのか焼後の、異なるニッケル/亜鉛モル比を有する本開示のフェライト金属酸化物の実施形態についてのシステムへの熱出力供給を示すチャートである。
図9B】交流磁場への曝露下で測定された、調製されたままの状態及び750℃でのか焼後の、異なるコバルト/亜鉛モル比を有する本開示のフェライト金属酸化物の実施形態についてのシステムへの熱出力供給を示すチャートである。
図10】天然状態及びPtでの含浸後、並びに750℃でのエージング前後の、本開示の実施形態(か焼Ni0.5Zn0.5Fe)のシステムについての熱出力供給を示すチャートである。
図11】本開示の実施形態(Ni0.5Zn0.5Fe、NiFe、及びZnFeに担持されたPt)のNHについての転化活性を、触媒床温度の関数として示すチャートである。
【0036】
本開示は、一般に、触媒活性金属と、印加された交流電磁場に応答して誘導加熱することができる磁性セラミック担持材料とを含む触媒組成物を提供する。そのような触媒組成物及びそれらを含む物品は、コールドスタート期間又は低負荷下での長時間のエンジン作動(例えば、アイドリング又は長時間の低速駆動)中に生じる低触媒温度などの低触媒温度に関連する触媒効率の低減を克服するのに特に有用である。
【0037】
したがって、一態様では、磁性フェライト担持材料上に配置又は含浸された触媒活性白金族金属(PGM)成分を含む触媒組成物を提供し、磁性フェライト担持材料は、印加された交流電磁場に応答して誘導加熱することができる。
【0038】
本開示は、ここで、例示的な実施形態を参照して、以下により完全に記載される。それらの例示的な実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、本開示の範囲を当業者に完全に伝えるように記載されている。実際、本開示は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載されている実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすであろうように提供されている。本明細書に記載されている組成物、方法、及び用途に対する好適な修正及び適合が、任意の実施形態又はそれらの態様の範囲から逸脱することなく行われ得ることは、関連技術の当業者には容易に明らかであろう。
【0039】
提供される組成物及び方法は、例示的なものであり、請求される実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。したがって、本開示は、開示される特定の実施形態に限定されるものではないこと、並びに修正及び他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。本明細書で提供されるありとあらゆる実施例又は例示的文言(例えば、「など」)の使用は、材料及び方法をより良好に説明することのみを意図したものであり、別途請求されない限り、範囲に限定を課さない。本明細書におけるいかなる文言も、特許請求されていない要素を、開示される材料及び方法の実践に必須であるものとして示すものと解釈されるべきではない。
【0040】
本明細書に開示されている様々な実施形態、態様、及び選択肢の全ては、全ての変更で組み合わされ得る。本明細書に記載されている組成物、配合物、方法、及びプロセスの範囲には、本明細書の実施形態、態様、選択肢、例、及び選好の全ての実際の又は潜在的な組み合わせが含まれる。本明細書全体を通しての「一実施形態」、「ある特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所における「1つ以上の実施形態では」、「ある特定の実施形態では」、「一実施形態では」、又は「実施形態では」などの語句の出現は、必ずしも本開示の同じ実施形態を指しているわけではない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせられてもよい。本開示は、上記の実施形態のうちの2つ、3つ、4つ、又はそれを超える任意の組み合わせ、並びに本開示に記載される任意の2つ、3つ、4つ、又はそれを超える特徴又は要素の組み合わせを、そのような特徴又は要素が本明細書の具体的な実施形態の説明で明示的に組み合わされているか否かにかかわらず、含む。本開示では、文脈が明らかに他のことを示さない限り、開示されている主題の任意の分離可能な特徴又は要素が、その様々な態様及び実施形態のいずれかにおいて、組み合わせ可能であるように意図されていると考えられるべきである。
【0041】
本明細書に記載されている全ての方法は、本明細書で別途指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行することができる。本明細書で引用された全ての特許及び刊行物は、組み込まれた他の具体的な記述が具体的に提供されない限り、記載されるように、それらの具体的な教示について参照によって本明細書に組み込まれる。
【0042】
定義
本開示で使用される用語に関して、以下の定義が提供される。
【0043】
本明細書における冠詞「a」及び「an」は、文法的目的語の1つ又は2つ以上(例えば、少なくとも1つ)を指す。
【0044】
本明細書で引用される任意の範囲は、包括的である。
【0045】
全体を通して使用される「約」という用語は、小さな変動を表現し、説明するために使用される。例えば、「約」は、数値が、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、又は±0.05%変わり得ることを意味し得る。全ての数値は、明示的に示されているかどうかに関係なく、「約」という用語で修飾される。「約」という用語によって修飾された数値には、特定の識別された値が含まれる。例えば、「約5.0」は、5.0を含む。
【0046】
本明細書での値の範囲の列挙は、本明細書で別途指示がない限り、範囲内に含まれる各個別の値を個別に参照する簡略法として機能することのみを意図し、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているのと同様に本明細書に組み込まれる。
【0047】
「削減」という用語は、任意の手段によって引き起こされる量の減少を意味する。
【0048】
「AMOx」とは、1つ以上の金属(典型的にはPtであるが、これに限定されることはない)とアンモニアを窒素に変換するのに好適なSCR触媒とを含有する触媒である、選択的アンモニア酸化触媒を指す。
【0049】
「関連付けられる」という用語は、例えば、「を備えている」、「に接続されている」、又は「と連通している」、例えば、「電気的に接続されている」、又は「と流体連通している」、若しくは機能を実施する方法で別様に接続されていることを意味する。「関連付けられる」という用語は、直接関連付けられること、又は、例えば、1つ以上の他の物品又は要素を通して直接的に又は間接的に関連付けられることを意味し得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、「BET表面積」は、N吸着によって表面積を決定するためのBrunauer、Emmett、Tellerの方法に関連するその通常の意味を有する。細孔径及び細孔容積は、BETタイプのN吸着又は脱着実験を使用して決定することもできる。
【0051】
「触媒」という用語は、化学反応を促進する材料を指す。
【0052】
「触媒物品(catalytic article)」又は「触媒物品(catalyst article)」という用語は、所望の反応を促進するために使用される構成要素を指す。本触媒物品は、少なくとも1つの触媒コーティングがその上部に配置された「基材」を含む。
【0053】
「CSF」は、ウォールフローモノリスである触媒化煤フィルタを指す。ウォールフローフィルタは、交互に位置した入口チャネルと出口チャネルとからなり、入口チャネルは出口端部に差し込まれており、出口チャネルは入口端部に差し込まれている。入口チャネルに入る、煤を運搬する排気ガス流は、出口チャネルから出る前に、フィルタ壁に通過させられる。煤の濾過及び再生に加えて、CSFは、下流のSCR触媒を加速させるために、又はより低い温度における煤粒子の酸化を促進するために、CO及びHCをCO及びHOに酸化させるための、又はNOをNOに酸化させるための酸化触媒を運搬し得る。CSFは、LNT触媒の後ろに位置する場合、HS酸化機能を有し、LNT脱硫プロセスの間にHS排出を抑制することができる。SCR触媒組成物は、SCRoFと呼ばれるウォールフローフィルタ上に直接コーティングすることもできる。
【0054】
「DOC」とは、ディーゼルエンジンの排気ガス中の炭化水素及び一酸化炭素を変換するディーゼル酸化触媒を指す。典型的には、DOCは、1つ以上の白金族金属、例えば、パラジウム及び/又は白金;担体材料、例えば、アルミナ;HC貯蔵のためのゼオライト;並びに任意選択的に促進剤及び/又は安定剤を含む。
【0055】
一般に、「効果的」という用語は、重量又はモルによって定義される触媒活性又は貯蔵/放出活性に関して、例えば、約35%~100%効果的、例えば、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%効果的を意味する。
【0056】
「排気流」又は「排気ガス流」という用語は、固体又は液体粒子状物質を含有し得る、流動ガスの任意の組み合わせを指す。流れは、ガス成分を含み、例えば、液滴、固体粒子などのある特定の非ガス性成分を含んでもよいリーン燃焼エンジンの排気である。燃焼機関の排気ガス流は、典型的には、燃焼生成物(CO及びHO)、不完全燃焼生成物(一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC))、窒素酸化物(NO)、可燃性及び/又は炭素質微粒子状物質(煤)、並びに未反応の酸素及び窒素を更に含む。
【0057】
本明細書で使用される場合、「含浸された」又は「含浸」は、担体材料の多孔質構造の中への触媒材料の浸透を指す。
【0058】
「流体連通」という用語は、同じ排気ライン上に位置決めされた物品を指すために使用され、すなわち、共通の排気流が、相互に流体連通している物品を通過する。流体連通している物品は、排気ライン内で相互に隣接し得る。代替的に、流体連通している物品は、「ウォッシュコートモノリス」とも称される、1つ以上の物品によって分離され得る。
【0059】
「LNT」とは、白金族金属、セリア、及びリーン条件中にNOを吸着するのに好適なアルカリ土類金属トラップ材料(例えば、BaO又はMgO)を含有する触媒であるリーンNOトラップを指す。リッチ条件下で、NOが放出され、窒素に還元される。
【0060】
「NO」という用語は、NO、NO、又はNOなどの窒素酸化物化合物を指す。
【0061】
コーティング層に関連する「上」及び「上方」という用語は、同義語として使用され得る。「上に直接」という用語は、直接接触していることを意味する。開示される物品は、ある特定の実施形態では、第2のコーティング層「上」に1つのコーティング層を含むと示され、そのような文言は、コーティング層間の直接接触が要求されない、介在層を伴う実施形態を包含することが意図されている(すなわち、「上」は「上に直接」とは同等ではない)。
【0062】
本明細書で使用される場合、「選択触媒還元」(SCR)という用語は、窒素性還元剤を使用して、窒素酸化物を二窒素(N)に還元する触媒プロセスを指す。
【0063】
「SCRoF」とは、ウォールフローフィルタ上に直接コーティングされたSCR触媒組成物を指す。
【0064】
「実質的に含まない」とは、「ほとんど若しくは全くない」又は「意図的に添加されていない」ことを意味し、微量及び/又は偶発的な量しか有しないことも意味する。例えば、特定の実施形態では、「実質的に含まない」とは、示される組成全体の重量に基づいて、2重量%(重量%)未満、1.5重量%未満、1.0重量%未満、0.5重量%未満、0.25重量%、又は0.01重量%未満を意味する。
【0065】
本明細書で使用される場合、「基材」という用語は、触媒組成物、すなわち触媒コーティングが、典型的にはウォッシュコートの形態でその上に配置されているモノリシック材料を指す。1つ以上の実施形態では、基材は、フロースルーモノリス及びモノリシックウォールフローフィルタである。「モノリシック基材」への言及は、入口から出口まで均質かつ連続的である単一構造を意味する。
【0066】
「担持された」という用語は、「の上に分散された」、「の中に組み込まれた」、「の中に含浸された」、「の上に」、「の中に」、「の上に堆積された」、又は別の方法で関連していることを意味する。
【0067】
本明細書で使用される場合、「上流」及び「下流」という用語は、エンジンからテールパイプに向かうエンジン排気ガス流の流れに応じた相対的方向を指し、エンジンが上流位置にあり、テールパイプ並びにフィルタ及び触媒などの任意の汚染削減物品がエンジンの下流にある。基材の入口端部は、「上流」端部又は「前」端部と同義である。出口端部は、「下流」端部又は「後」端部と同義である。上流ゾーンは、下流ゾーンの上流にある。上流ゾーンは、エンジン又はマニホールドのより近くにあり得、下流ゾーンは、エンジン又はマニホールドから更に離れ得る。
【0068】
「ウォッシュコート」は、「基材」、例えば、ハニカムフロースルーモノリス基材又は処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に多孔性であるフィルタ基材に適用される材料(例えば、触媒)の薄くて付着性のあるコーティングの当技術分野におけるその通常の意味を有する。本明細書において使用され、Heck,Ronald,and Farrauto,Robert,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley-Interscience,2002,pp.18-19に記載されているように、ウォッシュコート層は、モノリシック基材又は下側のウォッシュコート層の表面に配置された材料の、組成的に区別される層を含む。ウォッシュコートは、液体中に特定の固形物含有量(例えば10重量%~50重量%)の触媒を含有するスラリーを調製し、それから、これを基材にコーティングし、乾燥させてウォッシュコート層を提供することによって形成される。基材は、1つ以上のウォッシュコート層を含有し得、各ウォッシュコート層は、何らかの態様が異なることができ(例えば、粒径又は結晶子相のような、ウォッシュコートの物理的特性が異なり得る)、かつ/又は化学触媒機能が異なり得る。
【0069】
別途指示されない限り、全ての部分及び割合は、重量による。別途指示されない場合、「重量パーセント(重量%)」、又は「重量でのパーセント」は、いかなる揮発性物質も含まない組成物全体に基づく、すなわち、乾燥固体含有量に基づく。
【0070】
非限定的な例示的実施形態
限定なしで、本開示のいくつかの実施形態は以下を含む。
【0071】
1.触媒組成物であって、
触媒活性白金族金属(PGM)成分と、
磁性フェライト担持材料であって、印加された交番磁場に応答して誘導加熱することができる、磁性フェライト担持材料であって、活性白金族金属が磁性フェライト担持材料上に配置又は含浸されている、磁性フェライト担持材料と、を含む、触媒組成物。
【0072】
2.磁性フェライト担持材料が、鉄と、亜鉛、コバルト、ニッケル、イットリウム、マンガン、銅、バリウム、ストロンチウム、スカンジウム、及びランタンからなる群から選択される1つ以上の元素と、を含む、実施形態1に記載の触媒組成物。
【0073】
3.磁性フェライト担持材料が、鉄と、亜鉛、コバルト、ニッケル、及びイットリウムからなる群から選択される1つ以上の元素と、を含む、実施形態1に記載の触媒組成物。
【0074】
4.磁性フェライト担持材料が、鉄、ニッケル、及び亜鉛を含む、実施形態1に記載の触媒組成物。
【0075】
5.磁性フェライト担持材料のニッケル/亜鉛モル比が、約1/99~約99/1である、実施形態4に記載の触媒組成物。
【0076】
6.ニッケル/亜鉛モル比が、約25/75~約75/25である、実施形態5に記載の触媒組成物。
【0077】
7.ニッケル/亜鉛モル比が、約50/50である、実施形態5に記載の触媒組成物。
【0078】
8.磁性フェライト担持材料が、分子式Ni0.5Zn0.5Feを有する、実施形態4に記載の触媒組成物。
【0079】
9.磁性フェライト担持材料が、鉄、コバルト、及び亜鉛を含む、実施形態1に記載の触媒組成物。
【0080】
10.磁性フェライト担持材料のコバルト/亜鉛モル比が、約1/99~約99/1である、実施形態9に記載の触媒組成物。
【0081】
11.コバルト/亜鉛モル比が、約25/75~約75/25である、実施形態10に記載の触媒組成物。
【0082】
12.コバルト/亜鉛のモル比が、約50/50である、実施形態10に記載の触媒組成物。
【0083】
13.磁性フェライト担持材料が、分子式Co0.5Zn0.5Feを有する、実施形態9に記載の触媒組成物。
【0084】
14.磁性フェライト担持材料が、鉄及びイットリウムを含む、実施形態1に記載の触媒組成物。
【0085】
15.磁性フェライト担持材料が、分子式YFe12を有する、実施形態14に記載の触媒組成物。
【0086】
16.磁性フェライト担持材料が、約400℃~約1200℃の温度で約1時間以上か焼される、実施形態1~15のいずれか1つに記載の触媒組成物。
【0087】
17.磁性フェライト担持材料が、約600℃~約900℃の温度で約1時間以上か焼される、実施形態1~16のいずれか1つに記載の触媒組成物。
【0088】
18.磁性フェライト担持材料が、約40nm~約1μmの平均粒径を有する粒子の形態にある、実施形態1~17のいずれか1つに記載の触媒組成物。
【0089】
19.磁性フェライト担持材料が、ナノ粒子の形態である、実施形態1~17のいずれか1つに記載の触媒組成物。
【0090】
20.触媒組成物の温度が、交流磁場への曝露によって増加する、実施形態1~19のいずれか1つに記載の触媒組成物。
【0091】
21.PGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、又はそれらの組み合わせである、実施形態1~20のいずれか1つに記載の触媒組成物。
【0092】
22.磁性フェライト担持材料が、約100m/g未満のブルナウアー・エメット・テラー(BET)表面積を有する、実施形態1~21のいずれか1つに記載の触媒組成物。
【0093】
23.磁性フェライト担持材料の保磁力が、約1~約20kA/mである、実施形態1~22のいずれか1つに記載の触媒組成物。
【0094】
24.ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒煤フィルタ(CSF)触媒、リーンNOxトラップ(LNT)触媒、アンモニア酸化(AMOx)触媒、又は三元触媒(TWC)として構成される、実施形態1~23のいずれか1つに記載の触媒組成物。
【0095】
25.内燃機関からの排気ガス排出物の処理のための触媒物品であって、
実施形態1~24のいずれか1つに記載のその上に堆積された触媒組成物を有する、フロースルー基材又はウォールフローフィルタの形態にある基材を含む、触媒物品。
【0096】
26.ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒煤フィルタ(CSF)、リーンNOxトラップ(LNT)、選択的触媒還元(SCR)触媒、アンモニア酸化(AMOx)触媒、又は三元触媒(TWC)としての使用に適合した、実施形態25に記載の触媒物品。
【0097】
27.ディーゼル酸化触媒(DOC)物品として構成された、実施形態26に記載の触媒物品。
【0098】
28.排出物制御システムであって、
実施形態25~27のいずれか1つに記載の触媒物品と、
電流を受け、それに応答して交流磁場を生成するための導体であって、導体が、生成された交流磁場が触媒組成物の少なくとも一部分に印加されるように位置決めされた、導体と、を含む排出制御システム。
【0099】
29.導体が、触媒物品の少なくとも一部分を取り囲む導線のコイルの形態にある、実施形態28に記載の排出物制御システム。
【0100】
30.交流電流を供給するために導体に電気的に接続された電源を更に含む、実施形態28又は29に記載の排出物制御システム。
【0101】
31.
触媒物品に入るガスの温度を測定するように位置決めされた温度センサと、
温度センサと通信するコントローラであって、触媒物品の加熱が望まれる場合にコントローラが電流で導体に通電するように、導体に供給される電流の制御のために適合されたコントローラと、を更に含む、実施形態28~30のいずれか1つに記載の排出物制御システム。
【0102】
32.内燃機関からの排気ガス排出物を処理する方法であって、排気ガス排出物を実施形態28~31のいずれか1つに記載の排出物制御システムに通過させることを含む、方法。
【0103】
33.内燃エンジンが、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、電動ハイブリッド、又は天然ガスエンジンである、実施形態32に記載の方法。
【0104】
34.触媒組成物を有する触媒床を含む固定床反応器設計のための触媒であって、触媒組成物が、
触媒材料と、
少なくとも1つの磁性成分であって、磁性成分が、少なくとも1つの磁性フェライト担持材料と、を含む、磁性成分と、を含む、触媒。
【0105】
35.固定床触媒システムであって、
実施形態34に記載の触媒と、
電流を受け、それに応答して交流磁場を生成するための導体であって、導体が、生成された交流磁場が触媒組成物の少なくとも一部分に印加されるように位置決めされた、導体と、を含む、固定床触媒システム。
【0106】
36.触媒材料を製造するための方法であって、
磁性フェライト担持材料を、約600℃以上の温度で約1時間以上加熱することと、
加熱された磁性フェライト担持材料を触媒材料と組み合わせることと、を含む、方法。
【0107】
37.触媒材料の製造するための方法であって、
磁性フェライト担持材料のブルナウアー・エメット・テラー(BET)表面積を約100m/g未満に減少させるのに十分な時間及び温度で、磁性フェライト担持材料を加熱することと、
加熱されたフェライト担持材料を触媒材料と組み合わせることと、を含む、方法。
【0108】
I.触媒組成物
一態様では、磁性フェライト担持材料上に配置又は含浸された触媒活性白金族金属(PGM)成分を含む触媒組成物が提供され、磁性フェライト担持材料は、印加された交流電磁場に応答して誘導加熱することができる。触媒組成物の成分の各々は、本明細書において以下で更に記載される。
【0109】
磁性フェライト担持材料
本明細書で使用される場合、「磁性フェライト担持材料」は、通常、イオン結合又は共有結合された磁性金属の無機酸化物である。そのような材料は、結晶性又は非晶質であり得、かつ多孔性である傾向があり得る。一般に、磁性金属酸化物は、エンジンからの排出物を処理するために使用される触媒システムに関連することが多い作動温度で非常に安定している傾向があり、可能性のある触媒担体として適している。いくつかの実施形態では、磁性セラミック材料は、フェライトである。フェライトは、バリウム、マンガン、ニッケル、及び亜鉛を含むが、それらに限定されない、少ない割合の1つ以上の追加の金属元素と混合された多い割合の酸化鉄(III)(Fe)を混合かつ焼成することによって作製されたセラミック材料である。フェライトは、絶縁体であることを意味する非導電性であり、かつ、容易に磁化される又は磁石に引き寄せられることを意味するフェリ磁性体である。フェライトは、消磁されることに対する耐性(磁気保磁力)に基づいて、ファミリー(「ソフト」、「セミハード」、又は「ハード」に分類される)に分類され得る。ソフトフェライトは、材料の磁化の方向が容易に反転し得ることを意味する、低い保磁力を有する。ソフトフェライトは、変圧器又は電磁コアで使用され、一般に、酸化鉄とともに、ニッケル、亜鉛、及び/又はマンガン化合物を含んでいる。このような材料は、多くのエネルギーを散逸(ヒステリシス損失)することなく、磁場の導体として機能するが、この材料の高い抵抗性によって渦電流が防止される。一般に、ソフトフェライトは、磁場への曝露時には強い加熱を示さない。対照的に、ハードフェライトは、高い保磁力を有し、そのために消磁しにくく、それを永久磁石として有用にしているが、一般に、ヒステリシス加熱用途には好適ではない。セミハードフェライトは、軟磁性と硬磁性の中間にある特性を有し、誘導加熱に関して望ましい特性を有し、例えば、熱的及び電気的に絶縁される。いくつかの実施形態では、磁性セラミック材料は、半硬質フェライトである。いくつかの実施形態では、磁性セラミック担持材料の保磁力は、約1~約20kA/mである。
【0110】
多くのフェライトには、式ABと混合された酸化物スピネル構造が採用され、式中、A及びBは、通常、鉄(Fe)を含む様々な金属カチオンを表す。スピネルフェライトには、通常、立方最密充填(FCC)酸化物(O2-)からなる結晶モチーフが採用され、「A」陽イオンは四面体孔の8分の1を占め、「B」陽イオンは八面体孔の半分を占め、すなわち、A2+ 3+ 2-である。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、式ABの混合酸化物スピネルフェライトであり、Aは1つ以上の遷移金属を含み、Bは鉄である。
【0111】
本明細書で使用される場合、「遷移金属」という用語は、周期表のdブロック内の任意の元素を指し、これは、周期表の第3族~第12族を含む。遷移金属としては、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、銀、カドミウム、ランタン、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、銀、金、及び水銀が挙げられる。本明細書に開示される混合酸化物スピネルフェライトとして使用するのに特に好適な遷移金属としては、鉄、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、マンガン、コバルト、モリブデン、タングステン、チタン、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上が挙げられる。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、鉄と、亜鉛、コバルト、ニッケル、イットリウム、マンガン、銅、バリウム、ストロンチウム、スカンジウム、及びランタンから選択される(例えば、それらからなる群から選択される)1つ以上の元素と、を含む。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、鉄と、亜鉛、コバルト、ニッケル、及びイットリウムから選択される(例えば、それらからなる群から選択される)1つ以上の元素と、を含む。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、鉄、ニッケル、及び亜鉛を含む。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、鉄、コバルト、及び亜鉛を含む。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、鉄及びイットリウムを含む。
【0112】
磁性フェライト担持材料中の元素のモル比は、変えられてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ニッケル対亜鉛のモル比は、約1/99~約99/1、又は約25/75~約75/25であってもよい。いくつかの実施形態では、ニッケル対亜鉛のモル比は、約1/1である。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、分子式Ni0.5Zn0.5Feを含むか又は有する。いくつかの実施形態では、コバルト対亜鉛のモル比は、約1/99~約99/1、又は約25/75~約75/25であってもよい。いくつかの実施形態では、コバルト対亜鉛のモル比は、約1/1である。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、分子式Co0.5Zn0.5Feを含むか又は有する。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、分子式YFe12を含むか又は有する。
【0113】
磁性フェライト担持材料の形態(例えば、形状及びサイズ)は変えることができ、ある特定の実施形態では、磁性フェライト担持材料は粒子状形態にある。いくつかの実施形態では、粒子のサイズは、触媒組成物の挙動に直接影響を与える可能性がある。いくつかの実施形態では、粒子は、少なくとも約40nm以上(例えば、約40nm~約1000nm、約50nm~約500nm、又は約100nm~約300nm)の平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、ナノ粒子の形態にある。
【0114】
本明細書に開示される磁性フェライト担持材料は、一般に、磁性フェライト担持材料を高温である期間加熱することによって活性化される。温度及び時間は、所望の活性及び磁性フェライト担持材料の元素組成に基づいて変えられてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、約400℃~約1200℃、又は約600℃~約900℃の温度で、約1分~約24時間、又は約30分~約12時間、又は約1時間~約6時間加熱される。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料は、約600℃を超える温度で少なくとも1時間加熱される。粒子の表面積は、変わることがある。例えば、いくつかの実施形態では、粒子は、約100m/g未満のブルナウアー・エメット・テラー(BET)表面積を有する。いくつかの実施形態では、磁性フェライト担持材料粒子は、粒子が約100m/g未満のBET表面積を有するまで、上述のように加熱される。
【0115】
本明細書に開示される磁性フェライト担持材料は、印加された交流電磁場に応答して誘導加熱することができる。「誘導加熱することができる」とは、磁性フェライト担持材料が電流の印加時に「加熱可能」(例えば、誘導加熱可能)であると特徴付けることができるように、電流の印加に対して応答することを意味する。好適な磁性フェライト担持材料を交流電磁界に曝露すると、磁気ヒステリシス損失につながり、担持材料及び関連する組成物における熱として散逸される。触媒組成物に関連する磁性材料の誘導加熱の使用は、触媒組成物に熱を方向付ける効率的な手段である。磁気ヒステリシス損失を使用して磁性フェライト触媒担体を直接加熱することにより、熱を、触媒組成物の活性部位(すなわち、磁性フェライト担持材料上又は内に担持されたPGM)に特異的に効率的に送達することができる。この熱は、最初にフェライト担持材料内で発生するために、そのようなシステムは、組成物を含む触媒物品全体、又は排気ガス流全体を加熱する必要なく、触媒組成物の触媒活性部分を直接加熱して、低温(例えば、コールドスタート)条件下でそうでなければ遭遇する低い触媒活性を克服する方法を提供する。
【0116】
PGM成分
本明細書に開示される触媒組成物は、磁性セラミック担持材料上に配置又は磁性セラミック担持材料内に含浸された触媒活性白金族金属(PGM)成分を含む。「PGM成分」という用語は、白金族金属(PGM(例えば、Ru、Rh、Os、Ir、Pd、Pt、及び/又はAu)を含む任意の成分を指す。「PGM成分」についての言及は、任意の原子価状態のPGMの存在を考慮に入れている。例えば、PGMは、原子価がゼロの金属形態であってもよく、又はPGMは、酸化物形態であってもよい。「白金(Pt)成分」、「ロジウム(Rh)成分」、「パラジウム(Pd)成分」、「イリジウム(Ir)成分」、「ルテニウム(Ru)成分」などの用語は、触媒のか焼又は使用時に分解するか、あるいは触媒活性形態、通常は金属又は金属酸化物に変換される、それぞれの白金族金属化合物、錯体などを指す。いくつかの実施形態では、PGM成分は、パラジウム、白金、ロジウム、レニウム、ルテニウム、イリジウム、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、PGM成分は、パラジウム、白金、ロジウム、又はそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、PGMは、パラジウム、白金、ロジウム、又はそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、PGMは、パラジウム、白金、又はそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、PGMは、白金である。
【0117】
磁性フェライト担持材料に関連する(例えば、それ上に配置又はそれ中に含浸される)PGMの量は、変えられてもよい。いくつかの実施形態では、PGMは、磁性フェライト担持材料の約0.01重量%~約20重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、PGMは、磁性フェライト担持材料の約0.01重量%、約0.02重量%、約0.03重量%、約0.04重量%、約0.05重量%、約0.06重量%、約0.07重量%、約0.08重量%、約0.09重量%、約0.1重量%、約0.5重量%、約1.0重量%、約2.0重量%、約5.0重量%、約10.0重量%、又は約20重量%で存在し得る。
【0118】
本明細書に開示される触媒組成物は、異なる機能を有する異なる触媒物品で使用するために構成され得る。例えば、触媒材料は、ディーゼル酸化触媒組成物(DOC)、触媒化煤フィルタ(CSF)触媒組成物、リーンNOxトラップ(LNT)触媒組成物、アンモニア酸化(AMOx)触媒組成物、又は三元触媒(TWC)触媒組成物であり得る。そのような触媒組成物では、PGMについての典型的な担持材料(例えば、耐火性金属酸化物担持材料)は、本明細書に記載される磁性フェライト担持材料と置き換えられ得る。本明細書に開示される触媒組成物は、PGM成分及び磁性フェライト担持材料に加えて、個々の触媒に適切な更なる成分を含んでもよい。
【0119】
ディーゼル酸化触媒(DOC)又は触媒煤フィルタ(CSF)
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される触媒組成物は、DOC又はCSFとして構成される。DOC又はCSFは、典型的には、1つの又はPGM成分を含み、任意選択的に、セリア又はセリア/ジルコニアなどの酸素貯蔵成分(OSC)を更に含み、典型的には、炭化水素及び一酸化炭素の両方の酸化を提供する。
【0120】
リーンNOxトラップ(LNT)
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される触媒組成物は、LNTとして構成される。LNT触媒は、リーン条件下ではNOxを吸着し、リッチ条件下では貯蔵されたNOxを窒素に還元することができる。LNT触媒は、一般に、1つ以上のPGM成分及びNOx捕捉成分(例えば、セリア及び/又はアルカリ土類金属酸化物)を含有する。NOx成分を捕捉して変換するために、ディーゼルエンジンの排気を処理するのに使用するための様々なそのようなLNT組成物が知られており、PGM成分は触媒によるNO酸化及び還元の役割を果たす。
【0121】
アンモニア酸化(AMOx)触媒
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される触媒組成物は、AMOx触媒として構成される。本明細書で使用される場合、「アンモニア破壊触媒」又は「アンモニア酸化触媒(AMOx)」という用語は、NHの酸化を促進する触媒を指す。一般に、SCR触媒の下流にAMOx触媒を設けて、SCRを含む排気ガス処理システムからスリップしたアンモニアをいずれも除去することができる。例示的なAMOx触媒は、担持された白金族金属とともに銅ゼオライトを含む。典型的には、PGMは、白金、パラジウム、ロジウム、又はそれらの組み合わせである。
【0122】
三元触媒(TWC)
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される触媒組成物は、TWCとして構成される。本明細書で使用される場合、TWCは、HC、CO、及び/又はNOの変換のための当該技術分野で知られている任意の触媒組成物を指す。TWCは、典型的には、例えば、パラジウム及び/又はロジウム、並びに、任意選択的に、白金、並びに酸素貯蔵成分などのPGM成分を含有する。
【0123】
II.触媒物品
別の態様では、全長を画定する入口端部及び出口端部を有する基材と、基材の少なくとも一部分上に配置された1つ以上のウォッシュコートを含む触媒コーティングとを含む触媒物品であって、該1つ以上のウォッシュコートのうちの少なくとも1つが、本明細書に開示される触媒組成物を含む、触媒物品が提供される。
【0124】
基材
1つ以上の実施形態では、本明細書に開示される触媒組成物(例えば、本明細書に記載される磁性フェライト担持材料を含むDOC、LNT、AMOx、又はTWC触媒組成物を含むが、これらに限定されない酸化触媒組成物)は、基材上に配置されて、触媒物品を形成する。基材を含む触媒物品は、一般に、排気ガス処理システムの一部として用いられる(例えば、触媒物品としては、本明細書に開示される磁性フェライト担持材料が挙げられるが、これに限定されない)。有用な基材は、三次元であり、円柱と同様の長さ、直径、及び体積を有する。形状は、必ずしも円柱に一致する必要はない。長さは、入口端部及び出口端部によって画定される軸方向長さである。
【0125】
1つ以上の実施形態によると、開示される触媒のための基材は、自動車触媒を調製するために典型的に使用される任意の材料から構成されてもよく、典型的には、金属又はセラミックハニカム構造を含む。基材は、典型的には、ウォッシュコート組成物が適用及び接着される複数の壁面を提供し、それによって触媒の基材として機能する。
【0126】
セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えば、コーディエライト、コーディエライト-α-アルミナ、チタン酸アルミニウム、チタン酸ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、α-アルミナ、アルミノシリケートなどから作製され得る。
【0127】
基材はまた、1つ以上の金属又は金属合金を含む、金属であり得る。金属基材は、チャネル壁に開口部又は「パンチアウト」を有するような任意の金属基材を含み得る。金属性基材は、ペレット、圧縮金属性繊維、波形シート、又はモノリシック形態などの様々な形状で用いられ得る。金属基材の具体例としては、耐熱卑金属合金、特に、鉄が実質的又は主要な成分であるものが挙げられる。そのような合金は、ニッケル、クロム、及びアルミニウムのうちの1つ以上を含有し得、これらの金属の合計は、有利には、各場合に基材の重量に基づいて、少なくとも約15重量%(重量パーセント)の合金、例えば、約10重量%~約25重量%のクロム、約1重量%~約8重量%のアルミニウム、及び0重量%~約20重量%のニッケルを含んでもよい。金属基材の例としては、直線的なチャネルを有するもの、ガス流を妨害し、チャネル間のガス流の連通を開くために軸方向チャネルに沿って突出したブレードを有するもの、並びにブレード及びモノリス全体にわたる半径方向のガス輸送を可能にする、チャネル間のガス輸送を向上させるための穴も有するものが挙げられる。
【0128】
通路がそれを通した流体流に対して開放するように、基材の入口又は出口面からそれを通して延在する、微細な平行ガス流路を有するタイプのモノリシック基材(「フロースルー基材」)などの本明細書に開示される触媒物品のための任意の好適な基材が、採用され得る。別の好適な基材は、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細な実質的に平行なガス流路を有するタイプのものであり、典型的には、各通路が、基材本体の一方の端部において遮断されており、交互に位置する通路が、反対側の端面において遮断されている(「ウォールフローフィルタ」)。フロースルー及びウォールフロー基材はまた、例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる国際出願公開第2016/070090号に教示されている。
【0129】
いくつかの実施形態では、触媒基材は、ウォールフローフィルタ又はフロースルー基材の形態のハニカム基材を含む。いくつかの実施形態では、基材は、ウォールフローフィルタである。いくつかの実施形態では、基材は、フロースルー基材である。フロースルー基材及びウォールフローフィルタが、本明細書で以下に更に議論される。
【0130】
フロースルー基材
いくつかの実施形態では、基材は、フロースルー基材(例えば、フロースルーハニカムモノリシック基材を含むモノリシック基材)である。フロースルー基材は、通路が流体流に対して開いているように、基材の入口端部から出口端部まで延在している微細で平行なガス流路を有する。流体の入口から流体の出口までの本質的に直線の経路である通路は、壁によって画定されており、壁の上又は壁の中において、触媒コーティングは、通路を通って流れるガスが触媒材料と接触するように、配置されている。フロースルー基材の流路は、薄い壁のチャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波、六角形、楕円形、円形などのあらゆる好適な断面形状及びサイズであり得る。フロースルー基材は、上記のようにセラミック又は金属であり得る。
【0131】
フロースルー基材は、例えば、約50in~約1200inの体積、平方インチ当たり約60セル(cpsi)~約500cpsi又は最大で約900cpsi、例えば、約200cpsi~約400cpsiのセル密度(入口開口部)、及び約50ミクロン~約200ミクロン又は約400ミクロンの壁厚を有してもよい。図1A及び1Bは、本明細書に記載される触媒組成物でコーティングされたフロースルー基材の形態にある例示的な基材2を例示する。図1Aを参照すると、例示的な基材2は、円筒形状及び円筒外表面4、上流端部面6、及び端部面6と同一である対応する下流端部面8を有する。基材2は、内部に形成された複数の微細で平行なガス流路10を有する。図1Bに見られるように、流路10は、壁12によって形成され、上流端部面6から下流端部面8まで担体2を通って延在し、通路10は、流体、例えば、ガス流が担体2を、そのガス流路10を介して長手方向に流れることを許容するように閉塞されていない。図1Bでより容易に見られるように、壁12は、ガス流路10が実質的に規則的な多角形形状を有するように寸法決めされ、構成されている。示されるように、触媒組成物は、必要に応じて、複数の別個の層として適用され得る。図示される実施形態では、触媒組成物は、担体部材の壁12に接着された別個のボトム層14、及びボトム層14上にコーティングされた第2の別個のトップ層16の両方で構成される。本開示は、1つ以上(例えば、2、3、又は4つ以上)の触媒組成物層を備えるように実施することができ、図1Bに例示されている2層の実施形態に限定されない。
【0132】
ウォールフローフィルタ基材
いくつかの実施形態では、基材はウォールフローフィルタであり、これは一般に、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細で実質的に平行なガス流路を有する。典型的には、各通路は、基材本体の一端で遮断され、1つおきに通路は、反対の端部面で遮断される。そのようなモノリシックウォールフローフィルタ基材は、断面の平方インチ当たり最大約900以上の流路(又は「セル」)を含んでもよいが、はるかに少ない数が用いられてもよい。例えば、基材は、平方インチ当たり約7~600、より一般には約100~400のセル(「cpsi」)を有し得る。セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形である断面を有することができる。ウォールフローフィルタ基材は、上記に説明されるようにセラミック又は金属であり得る。
【0133】
モノリシックウォールフローフィルタ基材セクションの断面図を図2に図示してあり、交互になっている閉塞流路と開放流路(セル)が示されている。遮断又は閉塞端部100は、開放流路101と交互になっていて、各対向端部はそれぞれ開放及び遮断されている。フィルタは、入口端部102及び出口端部103を有する。多孔質セル壁104を横切る矢印は、開放セル端部に進入し、多孔質セル壁104を通って拡散し、開放出口セル端部から退出する、排気ガス流を表す。閉塞端部100は、ガス流を妨げ、セル壁を通して拡散を促進する。各セル壁は、入口側104a及び出口側104bを有する。通路は、セル壁によって包囲されている。
【0134】
ウォールフローフィルタ物品基材は、例えば、約50cm、約100in、約200in、約300in、約400in、約500in、約600in、約700in、約800in、約900in又は約1000in~約1500in、約2000in、約2500in、約3000in、約3500in、約4000in、約4500in又は約5000inの体積を有し得る。ウォールフローフィルタ基材は、典型的には、約50ミクロン~約2000ミクロン、例えば、約50ミクロン~約450ミクロン、又は約150ミクロン~約400ミクロンの壁厚を有する。
【0135】
ウォールフローフィルタの壁は、多孔質であり、一般に、機能性コーティングを配置する前に、少なくとも約40%又は少なくとも約50%の壁多孔度を有し、平均細孔径は少なくとも約10ミクロンである。例えば、いくつかの実施形態におけるウォールフローフィルタ物品基材は、≧40%、≧50%、≧60%、≧65%、又は≧70%の多孔度を有する。例えば、壁流フィルタ物品基材は、触媒コーティングの配置前に、約50%、約60%、約65%、又は約70%~約75%までの壁の多孔度、及び約10ミクロン、約20ミクロン、又は約30ミクロン~約40ミクロンの平均細孔径を有するであろう。「壁多孔度」及び「基材多孔度」という用語は、同じ意味であり、置き換え可能である。多孔度は、空隙容量(又は細孔容積)を基材材料の総体積で割った比率である。細孔径及び細孔径分布は、典型的には、Hgポロシメトリー測定によって決定される。
【0136】
コーティング組成物及び構成
本開示の触媒物品を生成するために、本明細書に記載される基材を本明細書に開示される触媒組成物と接触させて、コーティングを提供する(すなわち、触媒組成物の粒子を含むスラリーを基材上に配置する)。コーティングは、「触媒コーティング組成物」又は「触媒コーティング」である。「触媒組成物」及び「触媒コーティング組成物」は、同義語である。
【0137】
本明細書に開示される触媒組成物は、バインダー、例えば、好適な前駆体、例えば、酢酸ジルコニル又は任意の他の好適なジルコニウム前駆体、例えば、硝酸ジルコニルから誘導されたZrOバインダーを使用して調製され得る。酢酸ジルコニルバインダーは、例えば、触媒が、約5%以上の少なくとも約600℃、例えば、約800℃以上の水蒸気環境の高温にさらされたとき、熱劣化の後、均質かつ無傷なままであるコーティングを提供する。他の潜在的に好適な結合剤としては、アルミナ及びシリカが挙げられるが、これらに限定されない。アルミナバインダーには、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウムが含まれる。アルミニウム塩、及びアルミナのコロイド形態が使用されてもよい。シリカ結合剤は、シリケート及びコロイダルシリカを含む、SiOの様々な形態を含む。したがって、触媒組成物に加えて、コーティングスラリーは、任意選択的に、アルミナ、シリカ、酢酸ジルコニウム、コロイド状ジルコニア、若しくは水酸化ジルコニウムの形態のバインダー、会合性増粘剤、及び/又は界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性、若しくは両性界面活性剤を含む)を含んでもよい。他の例示的な結合剤には、ベーマイト、ガンマ-アルミナ、又はデルタ/シータアルミナ、並びにシリカゾルが挙げられる。存在する場合、結合剤は、典型的には、ウォッシュコートの総充填量の約1~5重量%の量で使用される。
【0138】
本触媒コーティングは、1つ以上のコーティング層を含み得、その少なくとも1つの層は、本触媒組成物を含む。本触媒コーティングは、単層又は複数のコーティング層を含み得る。触媒コーティングは、基材の少なくとも一部上に配置され、かつこれに付着している、1つ以上の薄い付着性コーティング層を含み得る。コーティング全体は、個々の「コーティング層」を含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、本触媒物品は、1つ以上の触媒層の使用、及び1つ以上の触媒層の組み合わせを含み得る。触媒材料は、基材壁の入口側のみ、出口側のみ、入口側及び出口側の両方に存在し得るか、又は壁自体が全て若しくは部分的に触媒材料で構成され得る。触媒コーティングは、基材壁表面上及び/又は基材壁の細孔内、すなわち、基材壁の「中」及び/又は「上」にあってもよい。したがって、「基材上に配置された触媒コーティング」という語句は、あらゆる表面上、例えば、壁表面上及び/又は細孔表面上を意味する。
【0140】
本明細書に開示される触媒組成物を含有する1つ以上のウォッシュコートの形態にある、本触媒組成物が、典型的には、適用され得る。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中の触媒の特定の固形分(例えば、約10重量%~約60重量%)を含有するスラリーを調製することによって形成され、次いで、それを、当該技術分野で知られている任意のウォッシュコート技法を使用して基材に適用し、乾燥及びか焼してコーティング層を提供する。複数のコーティングが適用される場合、各ウォッシュコートが適用された後に、及び/又は所望の数の複数のウォッシュコートが適用された後に、基材は乾燥及び/又は焼成される。1つ以上の実施形態では、触媒材料は、ウォッシュコートとして基材に適用される。
【0141】
上記の触媒組成物は、一般に、ハニカムタイプ基材などの触媒基材をコーティングする目的のために、独立して水と混合されて、スラリーを形成する。触媒粒子に加えて、スラリーは、任意選択的に、上述したバインダー(例えば、アルミナ、シリカ)、水溶性若しくは水分散性安定剤、促進剤、会合性増粘剤、及び/又は界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性、若しくは両性界面活性剤)を含有し得る。スラリーの典型的なpH範囲は、約3~約6である。酸性又は塩基性の種をスラリーに添加して、それによってpHを調整してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、スラリーのpHは、水酸化アンモニウム又は硝酸水溶液の添加によって調整される。
【0142】
スラリーを粉砕して粒径を減少させ、粒子の混合を促進することができる。粉砕は、ボールミル、連続ミル、又は他の同様の装置で達成することができ、スラリーの固形物含量は、例えば、約20~60重量%、より具体的には、約20~40重量%であり得る。一実施形態では、粉砕後のスラリーは、約10ミクロン~約40ミクロン、例えば、約10ミクロン~約30ミクロン、例えば、約10ミクロン~約15ミクロンのD90粒径を特徴とする。D90は、専用の粒径分析装置を使用して決定される。
【0143】
次いで、スラリーは、当該技術分野において既知の任意のウォッシュコート技術を使用して、触媒基材上にコーティングされる。一実施形態では、触媒基材は、スラリーに1回以上浸漬されるか、又は別様にスラリーでコーティングされる。その後、コーティングされた基材を、高温(例えば、100~150℃)である時間(例えば、10分~3時間)乾燥させる。いくつかの実施形態では、乾燥は、約100~約150℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、乾燥は、ガス雰囲気中で実施される。いくつかの実施形態では、ガス雰囲気は、酸素を含む。いくつかの実施形態では、乾燥は、10分~約4時間、例えば、約20分~約3時間、例えば、約50分~約2.5時間の範囲内のある持続時間実施される。
【0144】
次いで、コーティングされた基材を、例えば400~600℃で、典型的には、約10分~約3時間加熱することによってか焼する。いくつかの実施形態では、か焼は、約300℃~900℃、約400℃~約650℃、又は約450℃~約600℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、か焼は、ガス雰囲気中で実施される。いくつかの実施形態では、ガス雰囲気は、酸素を含む。いくつかの実施形態では、か焼は、10分~約8時間、約20分~約3時間、又は約30分~約2.5時間の範囲の期間にわたって実施される。乾燥及び焼成の後に、最終的なウォッシュコートコーティング層は、溶媒を実質的に含まないと考えることができる。
【0145】
焼成後、上記のウォッシュコート技法によって得られた触媒充填量は、基材のコーティングされた重量とコーティングされていない重量との差を計算することによって決定することができる。当業者に明らかであるように、触媒充填量は、スラリーのレオロジーを変えることによって修正することができる。加えて、ウォッシュコート層(コーティング層)を生成するためのコーティング/乾燥/か焼プロセスは、コーティングを所望の充填量レベル又は厚さに構築するために、必要に応じて繰り返されることができ、1つより多いウォッシュコートが適用され得ることを意味する。
【0146】
コーティングの構成
いくつかの実施形態では、本触媒物品は、1つ以上の触媒層の使用、及び1つ以上の触媒層の組み合わせを含み得る。ウォッシュコートは、異なるコーティング層が基材と直接接触し得るように適用され得る。代替的に、1つ以上の「アンダーコート」が存在していてもよく、それによって、触媒コーティング層又はコーティング層の少なくとも一部は、基材と直接接触しない(むしろ、アンダーコートと接触する)。コーティング層の少なくとも一部がガス流又は雰囲気に直接さらされないように(むしろ、オーバーコートと接触するように)、1つ以上の「オーバーコート」が存在してもよい。
【0147】
あるいは、本触媒組成物は、ボトムコーティング層の上を覆うトップコーティング層中に存在し得る。触媒組成物は、トップ層及びボトム層中に存在し得る。いずれか1つの層は、基材の軸方向長さ全体に延在し得、例えば、ボトム層は、基材の軸方向長さ全体に延在し得、トップ層はまた、ボトム層の上方で基材の軸方向長さ全体に延在し得る。トップ層及びボトム層は各々、入口端部又は出口端部のいずれかから延在し得る。
【0148】
例えば、ボトム及びトップコーティング層は両方とも、同じ基材端部から延在し得、トップ層は、部分的又は完全にボトム層にオーバーレイし、ボトム層は、基材の部分長又は全長に延在し、トップ層は、基材の部分長又は全長に延在する。代替的に、トップ層が、ボトム層の一部をオーバーレイしていてもよい。例えば、ボトム層は、基材の全長に延在し得、トップ層は、入口端部又は出口端部のいずれかから、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%に延在し得る。
【0149】
代替的に、ボトム層は、入口端部又は出口端部のいずれかからの基材の長さの約10%、約15%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、又は約95%延在し得、トップ層は、入口端部又は出口端部のいずれかからの基材の長さの約10%、約15%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、又は約95%延在し得、トップ層の少なくとも一部分は、ボトム層をオーバーレイしている。この「オーバーレイ」ゾーンは、例えば、基材の長さの約5%~約80%、例えば、基材の長さの約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、又は約70%延在し得る。
【0150】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される基材上に配置された、本明細書に開示される酸化触媒組成物は、触媒基材の長さの少なくとも一部分上に配置された第1のウォッシュコートを含む。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコート(同じであるか、又は異なる触媒若しくは触媒成分を含む)は、第1のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、触媒基材上に直接配置されており、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約50%~約100%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約20%~約40%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、入口端部から出口端部まで延在している。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約20%~約40%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、入口端部から出口端部まで延在している。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約50%~約100%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、全長の100%をカバーする触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、全長の100%をカバーする第1のウォッシュコート上に配置されている。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、全長の100%をカバーする触媒基材上に直接配置されており、第1のウォッシュコートは、全長の100%をカバーする第2のウォッシュコート上に配置されている。
【0151】
触媒コーティングは、有利には、「ゾーン化」させることができ、ゾーン化された触媒層を含む、すなわち、触媒コーティングは、基材の軸方向の長さにわたって様々な組成物を含有する。この構成はまた、「横方向にゾーン化された」と表され得る。例えば、層は、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%に延在して、入口端部から出口端部に向かって延在し得る。別の層が、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%に延在して、出口端部から入口端部に向かって延在し得る。異なるコーティング層は、互いに隣接し、互いに重なっていなくてもよい。あるいは、異なる層が、互いの一部にオーバーレイして、第3の「中間」ゾーンを提供してもよい。中間ゾーンは、例えば、基材の長さの約5%~約80%、例えば、基材の長さの約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、又は約70%に延在し得る。
【0152】
本開示のゾーンは、コーティング層の関係によって定義される。異なるコーティング層に関しては、いくつかの可能なゾーニング構成がある。例えば、上流ゾーン及び下流ゾーンが存在し得る、上流ゾーン、中間ゾーン、及び下流ゾーンが存在し得る、4つの異なるゾーンが存在し得るなどである。2つの層が隣接し、重複しない場合、上流ゾーン及び下流ゾーンが存在する。2つの層がある特定の程度重なっている場合、上流、下流、及び中間のゾーンが存在する。例えば、コーティング層が基材の全長に延在し、異なるコーティング層が出口端部からある長さに延在し、第1のコーティング層の一部にオーバーレイする場合、上流及び下流ゾーンが存在する。
【0153】
例えば、触媒物品は、第1のウォッシュコート層を含む上流ゾーンと、異なる触媒材料又は成分を含む第2のウォッシュコート層を含む下流ゾーンとを含み得る。あるいは、上流ゾーンは第2のウォッシュコート層を含み得、下流ゾーンは第1のウォッシュコート層を含み得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に配置され、第2のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約50%~約90%の長さまで、触媒基材上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に配置され、第2のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約50%~約90%の長さまで、触媒基材上に配置されている。
【0155】
図3A、3B、及び3Cは、2つのコーティング層を有するいくつかの可能なコーティング層構成を示す。コーティング層201(トップコート)及び202(ボトムコート)が配置されている基材壁200が示されている。これは、簡略化された図であり、多孔質ウォールフロー基材の場合、細孔及び細孔壁に付着したコーティングは示されておらず、閉塞端部は、示されていない。図3Aでは、コーティング層201及び202は各々、基材の全長に延在し、トップ層201は、ボトム層202にオーバーレイしている。図3Aの基材は、ゾーン化されたコーティング構成を含まない。図3Bは、出口から基材の長さの約50%延在して、下流ゾーン204を形成するコーティング層202と、入口から基材の長さの約50%延在して、上流ゾーン203を提供するコーティング層201とを有する、ゾーン化された構成を例示している。図3Cでは、ボトムコーティング層202は、出口から基材の長さの約50%に延在し、トップコーティング層201は、入口から長さの50%を超えて延在し、層202の一部をオーバーレイし、上流ゾーン203、中間オーバーレイゾーン205、及び下流ゾーン204を提供する。図3A、3B、及び3Cは、ウォールフロー基材又はフロースルー基材上にコーティングされた、本明細書に開示される触媒組成物を例示するのに有用であり得る。いくつかの実施形態では、基材はハニカム基材である。いくつかの実施形態では、ハニカム基材は、フロースルー基材又はウォールフローフィルタである。
【0156】
いくつかの実施形態では、基材上に配置された本明細書に開示される触媒組成物を含む触媒物品は、ディーゼル酸化触媒(DOC)物品、触媒化煤フィルタ(CSF)、リーンNOxトラップ(LNT)物品、アンモニア酸化(AMOx)触媒物品、又は三元触媒(TWC)物品としての使用のために適合される。いくつかの実施形態では、触媒物品は、ディーゼル酸化触媒(DOC)物品として構成される。
【0157】
III.触媒構成要素
別の態様では、本明細書に開示される触媒物品を含み、更に、誘導加熱構成要素を含む触媒構成要素が提供される。一般に、そのような誘導加熱構成要素は、電流を受け、それに応答して交流電磁界を生成するための触媒物品に関連付けられた導体を含む。導体は、生成された交流電磁場が触媒組成物の少なくとも一部分に印加されるように位置決めされる。更なる誘導加熱構成要素には、電源、コントローラ、温度センサなどが含まれる。そのような誘導加熱構成要素を含む触媒構成要素は、図4~6を参照することによってより容易に記載され得る。
【0158】
図4は、本開示の触媒物品60が機能化されて、本明細書に開示される触媒組成物の誘導加熱を可能にするシステム50の単純化された非限定的な実施形態を示す。図4を参照すると、触媒構成要素50は、触媒物品60を構成するフェライト磁性担持材料の誘導加熱に適合された交流磁場64を提供するために、触媒物品60を取り囲む電気コイル62を含む。電気コイル62は、典型的には、約5~50kWの範囲にある出力電力及び約100~10000kHzの周波数を有する、コイルに交流電流を供給することができる電源66に電気的に接続される。
【0159】
構成要素50は、更に、物品60に入るエンジン流出ガス52の温度を測定するように位置決めされた任意の温度センサ72と、物品60を出るエンジン流出ガス52’の温度を測定するように位置決めされた任意の温度センサ74とを含む。電源66と温度センサ72及び74との両方が、電源66を制御し、センサから温度信号を受信するように構成されたコントローラ76及び78に作動可能に接続される。理解されるように、コントローラ76及び78は、誘導加熱が望まれるときはいつでもコントローラが電源に命令を提供して電気コイル62に通電することを可能にするように適合されたハードウェア及び関連するソフトウェアを含み得る。コントローラは、エンジン(例えば、エンジン点火後の設定時間の間、セラミック磁性担持材料を誘導加熱するように適合された制御システム)の点火に基づく特定の期間に、又は特定の事前設定された時間間隔で、様々な因子に基づいて、例えば、温度センサ72及び/又は74に関連する特定の温度設定ポイントに基づいて、誘導加熱のための期間を選択し得る。有利なことに、コントローラ76及び78は、触媒組成物が有効である(例えば、炭化水素、一酸化炭素、及びNOxを酸化する)温度よりも温度センサ72が低い場合に、触媒物品60を誘導加熱することができる。
【0160】
図示された実施形態は、コイル構成を限定することを意図していないことに留意されたい。例えば、いくつかの実施形態では、コイルは、単一のコイルを含まず、むしろ、2つ以上の個々のコイルを含む。いくつかのそのような構成では、基材は、1つのコイルで前(上流)端部上を囲み、別のコイルで後(下流)端部を囲み、任意選択的に、それらの間にギャップを有することができる。図示されたコイル62はまた、磁場がガス流と平行であるように、軸方向に触媒物品を包み込むことにも留意されたい。しかしながら、開示されるシステムは、これに限定されない。ある特定の実施形態では、コイル62(又は上記で参照される複数のコイル)は、それによって生成される磁場がガス流に対して横方向になるように、触媒物品上に横方向に配置され得る。代替の実施形態では、コイル62は、他の場所に配置され得、例えば、排気管缶54又はシステムの他の触媒構成要素をまた取り囲み得る。
【0161】
図5は、システム50と同様のシステムであるが、2つ以上の誘導加熱可能な触媒物品2及び2’(それらの各々が本明細書に開示される磁性フェライト担持材料を含有し、それらの各々は、それらの同じか又は異なり得、及びそれらはそれらの同じ又は異なる量を含み得る)を用いる、システム51の非限定的な実施形態を例示する。電気コイル66及び66’は、触媒組成物内の磁性フェライト担持材料の誘導加熱に適した交流磁場68及び68’を提供するために、触媒物品2及び2’を取り囲む。システムは、任意の温度センサ72、72’、74、及び74’を含み、これらは、関連する電源70及び70’を制御し、対応するセンサから温度信号を受けるように構成されたコントローラ76、76’、78及び78’にそれぞれ作動可能に接続される。いくつかの実施形態では、74及び72’の代わりに単一の温度コントローラがあってもよく、そのような実施形態では、温度センサが電源70及び70’の両方に取り付けられ、それらを制御するように構成され得ることに留意されたい。
【0162】
いくつかの実施形態では、触媒物品は、DOC組成物として構成された本明細書に開示される触媒組成物を含むDOC物品である。
【0163】
いくつかの実施形態では、触媒物品は、CSF組成物として構成された本明細書に開示される触媒組成物を含むCSF物品である。
【0164】
いくつかの実施形態では、触媒物品は、LNT組成物として構成された本明細書に開示される触媒組成物を含むLNT触媒物品である。
【0165】
いくつかの実施形態では、触媒物品は、AMOx触媒組成物として本明細書に開示される物品としての触媒組成物を含むAMOx触媒物品である。
【0166】
いくつかの実施形態では、触媒物品は、TWC組成物として構成された本明細書に開示される触媒組成物を含むTWC触媒物品である。
【0167】
IV.排気ガス処理システム
更なる態様では、排気ガス流を生成するリーンバーンエンジンの下流に、かつそれと流体連通して位置する、本明細書に開示される少なくとも1つの触媒物品を含む排気ガス処理システムが提供される。エンジンは、例えば、化学量論的燃焼に必要とされる空気よりも多くの空気を用いる燃焼条件、すなわち希薄条件で動作する、ディーゼルエンジンであり得る。他の実施形態では、エンジンは、固定源(例えば、発電機又はポンプ場)に関連したエンジンであり得る。いくつかの実施形態では、排出物処理システムは、1つ以上の追加の触媒構成要素を更に含む。排出処理システム内に存在する様々な触媒成分の相対的配置は、変動し得る。
【0168】
本排気ガス処理システム及び方法では、排気ガス流は、上流端部に入って下流端部を出ることによって、物品又は処理システムに受け取られる。基材又は物品の入口端部は、「上流」端部又は「前」端部と同義である。出口端部は、「下流」端部又は「後」端部と同義である。処理システムは、一般に、内燃エンジンの下流にあり、かつ内燃エンジンと流体連通している。
【0169】
本明細書で開示されるシステムは、ディーゼル酸化触媒(DOC)、煤フィルタ(触媒化されていても、又は触媒化されていなくてもよい)、選択的触媒還元(SCR)触媒、尿素注入構成要素、アンモニア酸化触媒(AMOx)、低温NO吸収剤(LT-NA)、リーンNOトラップ(LNT)、及びそれらの組み合わせを含み得る。例えば、本排気ガス処理システムは、上流から下流に向かって、DOC組成物を含有する構成要素、CSF組成物を含有する構成要素、尿素インジェクター、SCR触媒組成物を含有する構成要素、AMOx触媒組成物を含有する構成要素、及びリーンNO トラップ(LNT)組成物を含有する構成要素を含み得る。
【0170】
排気ガス処理システム内に存在する様々な触媒構成要素の相対的配置は、変更され得る。本排気ガス処理システム及び方法では、排気ガス流は、上流端部に入って下流端部を出ることによって、物品又は処理システムに受け取られる。基材又は物品の入口端部は、「上流」端部又は「前」端部と同義である。出口端部は、「下流」端部又は「後」端部と同義である。処理システムは、一般に、内燃エンジンの下流にあり、かつ内燃エンジンと流体連通している。
【0171】
1つの例示的な排気ガス処理システムが、排気ガス処理システム20の概略図を図示する図6に例示されている。示されるように、排出物処理システムは、リーンバーンガソリンエンジンなどのエンジン22の下流にある直列の複数の触媒構成要素を含み得る。触媒構成要素のうちの少なくとも1つは、本明細書に記載される触媒構成要素であろう。図6は、直列に5つの触媒構成要素24、26、28、30、32を例示するが、触媒構成要素の総数は、変えられ得、5つの構成要素は、単なる一例である。当業者であれば、各物品の相対位置を、本明細書に図示されているものとは異なる順序で配置することが望ましい場合があることを認識するであろう。そのような代替的な順序付けが、本開示によって企図される。
【0172】
限定されないが、表1は、1つ以上の実施形態の様々な排気ガス処理システム構成を提示する。各触媒は、エンジンが、構成要素Aの上流にあり、それが構成要素Bの上流にあり、それが構成要素Cの上流にあり、それが構成要素Dの上流にあり、それが構成要素Eの上流にある(存在する場合)ように排気導管を介して次の触媒に接続されることに留意されたい。表中の構成要素A~Eに対する参照は、図6の同じ記号で相互参照され得る。
【0173】
当業者によって認識されるように、表1に列挙された構成では、構成要素A、B、C、D、又はEのうちの任意の1つ以上は、ウォールフローフィルタなどの微粒子フィルタ上に、又はフロースルーハニカム基材上に配置することができる。1つ以上の実施形態では、エンジン排気システムは、エンジンの近くの位置(直結位置、CC)に取り付けられた1つ以上の触媒構成要素を、車体の下の位置(床下位置、UF)に取り付けられた追加の触媒構成要素とともに含む。1つ以上の実施形態では、排気ガス処理システムは、尿素噴射構成要素を更に備え得る。
【0174】
表1に示したDOC構成要素は、DOCとして従来から使用されている任意の触媒を含む(例えば、PGM及び耐火金属酸化物担持材料を含む)ことができる。あるいは、DOC構成要素は、本明細書に開示されるDOC組成物、物品、又は構成要素を含んでもよい。
【0175】
表1に示したLNT構成要素は、NOトラップとして従来から使用されている任意の触媒を含んでもよい。あるいは、LNT触媒は、本明細書に開示されるLNT触媒組成物、物品、又は構成要素を含んでもよい。
【0176】
表1に記載されるLT-NA構成要素は、低温(<250℃)でNO(例えば、NO又はNO)を吸着し、高温(>250℃)でそれをガス流に放出することができる、任意の触媒であってもよい。放出されたNOは、一般に、本明細書に開示されるように、下流のSCR又はSCRoF触媒上でN及びHOに変換される。典型的には、LT-NA触媒は、Pd促進ゼオライト又はPd促進耐火性金属酸化物を含む。
【0177】
表1におけるSCRへの言及は、SCR触媒構成要素を指す。SCRoF(又はフィルタ上のSCR)への言及は、SCR触媒組成物を含み得る、粒子又は煤フィルタ(例えば、ウォールフローフィルタ)を指す。SCR又はSCRoF構成要素は、当該技術分野で知られている任意の従来のSCR触媒を含んでもよい。
【0178】
表1に記載されるAMOx構成要素は、当該技術分野で知られている任意の従来のAMOx触媒を含んでもよい。1つ以上の実施形態では、AMOx構成要素は、PGMを有するボトムコートと、SCR機能を有するトップコートとを含んでもよい。あるいは、AMOx構成要素は、本明細書に開示されるAMOx触媒組成物、物品、又は構成要素を含んでもよい。
【0179】
【表1】
【0180】
上述のように、DOC、CSF、AMOx触媒、及びLNTのうちの任意の1つ以上は、本明細書に開示される触媒組成物を含むことができ、任意の残りの触媒組成物は、従来の性質のものである(すなわち、本明細書に開示される磁性フェライト担持材料を含まない)。いくつかの実施形態では、DOC、CSF、AMOx触媒、及びLNTのうちの1つだけが本明細書に開示される触媒組成物を含み、残りの触媒組成物は従来の性質のものである。
【0181】
いくつかの実施形態では、DOC構成要素は、本明細書に開示されるDOC構成要素であり、DOC組成物として構成された本明細書に開示される触媒組成物が少なくとも一部分上に配置された基材を含むDOC物品を含み、誘導加熱構成要素を更に含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、CSF構成要素は、本明細書に開示されるCSF構成要素であり、CSF組成物として構成された本明細書に開示される触媒組成物が少なくとも一部分上に配置された基材を含むCSF物品を含み、誘導加熱構成要素を更に含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、AMOx触媒構成要素は、本明細書に開示されるAMOx触媒構成要素であり、AMOx触媒組成物として構成された本明細書に開示される触媒組成物をその少なくとも一部分上に配置した基材を含むAMOx触媒物品を含み、誘導加熱構成要素を更に含む。
【0184】
いくつかの実施形態では、LNT構成要素は、本明細書に開示されるLNT構成要素であり、LNT組成物として構成された本明細書に開示される触媒組成物が少なくとも一部分上に配置された基材を含むLNT物品を含み、誘導加熱構成要素を更に含む。
【0185】
V.エンジンの排気を処理する方法
本開示の別の態様は、内燃機関の排気ガス流を処理する方法であって、本明細書に記載される触媒構成要素又は排気ガス処理システムと内燃機関からの排気ガス流を接触させることと、導体に電流を通すことによって断続的に通電して、交流電磁場を発生させ、それによって触媒材料を所望の温度に誘導加熱することとを含む、方法に関する。
【0186】
所望の温度範囲は、触媒の種類及び機能に応じて変えられるが、典型的には、約100℃~約450℃、例えば、約150℃~約350℃の範囲にある。具体的な例示的な実施例に関して、DOCは、典型的には、少なくとも約150℃に加熱されて、有用なCO酸化を促進する必要があり、LNTは、典型的には、有用なNOx貯蔵のために少なくとも約150℃と、有効な再生/NOx低減のために少なくとも約250℃とに加熱される必要がある。
【0187】
本触媒組成物、物品、システム、及び方法は、内燃機関、例えば、ガソリン、電動ハイブリッド、ライトデューティディーゼル及びヘビーデューティディーゼルエンジンの排気ガス流の処理に好適である。触媒組成物、物品、構成要素はまた、静止工業プロセスからの排出物の処理、屋内空気からの侵害性若しくは有毒物質の除去、又は化学反応プロセスにおける触媒作用にも好適である。
【実施例
【0188】
本開示の態様は、以下の実施例によってより完全に例示され、これらは、開示される主題のある特定の態様を例示するために記載され、態様を限定するものとして解釈されるべきではない。いくつかの例示的な実施形態を記載する前に、本開示は、以下の記載に記載される構成又はプロセスステップの詳細に限定されず、また他の実施形態が可能であり、様々な方法で実行又は実施されることができることを理解されたい。別段の定めがない限り、全ての部分及びパーセンテージは重量によるものであり、全ての重量パーセントは乾燥ベースで表され、すなわち、別途指示がない限り、含水量は除外される。
【0189】
実施例1:材料の組成及び熱スクリーニング
表2に、一連の金属酸化物材料を示す。これらは全て、十分に文書化された磁気特性を有するフェライト及び関連する欠陥スピネル構造の一般的なクラスに分類される。酸化アルミニウムは、常磁性的、強磁性的、反強磁性的、及びフェリ磁性的特性を欠く不活性制御材料としてリストに含まれている。
【0190】
【表2】
【0191】
各粉末のサンプルは、空気中600℃、750℃、又は900℃でか焼された。サンプラーバイアルに充填したサンプル粉末を含み、柔軟なセラミックテープで包み、内径25mmのIDガラス管に挿入したスクリーニング装置を使用して、そのままの粉末とか焼粉末を磁気誘導加熱効率について評価した。ガラス管は、誘導コイルに取り付けられた。AC電源は、誘導コイルに50~60kHzの交流を供給した。1本の温度プローブワイヤを粉体ベッドに挿入し、2本目の温度プローブワイヤをセラミックテープ絶縁体に挿入した。図7は、誘導加熱の測定のために使用される装置の写真を示す。交流電流がコイルに供給されている間、2つのプローブから読み取った温度を、時間の関数として記録した。冷却空気の噴射により、誘導コイル自体の抵抗加熱が最小限に抑えられた。W/gの単位でサンプルに供給される加熱電力Pの平均量は、温度対時間プロファイルの初期勾配DT/Dtから、次の関係を使用して計算され、
P=C×DT/Dt
式中、Cは材料の熱容量である。図8は、Fe、NiFe、Co0.5Zn0.5Fe、Mn0.5Zn0.5Fe、CuFe、及びMnFeが、新鮮な状態でP>1.0W/gを示す唯一の材料であることを示す。
【0192】
600℃でのか焼後、NiFe、Co0.5Zn0.5Fe、Ni0.5Zn0.5Fe、及びMnFeのみが、P>1.0W/gを示す。Fe、CuFe、及びMn0.5Zn0.5Feの誘導加熱能力は、600℃でのか焼に耐えられなかった。重要なことに、Ni0.5Zn0.5Fe及びCo0.5Zn0.5Feによる電力供給は、600℃でのか焼後にかなり増加し、これらの材料がか焼による誘導のために活性化されることを示している。750℃でのか焼後、P>1.0W/gを有する材料は、Co0.5Zn0.5Fe、Ni0.5Zn0.5Fe、及びYFe12のみである。Co0.5Zn0.5Fe及びNi0.5Zn0.5Feについての電力供給 P は、900℃でのか焼後になおも保持されており、これらは、この高温処理後にP>1.0を有する唯一の材料である。
【0193】
実施例2:誘導加熱特性に対する組成の影響
一般的な材料組成NiZn1-xFeを考慮すると、xの値は、x=1(例えば、NiFe)とx=0(例えば、ZnFe)との間の範囲になる。図9Aは、NiFe、ZnFe 、及び混合フェライトNi0.5Zn0.5Fe(x=0.5)に関する熱出力損失データを示す。か焼なしでは、システムに影響を与える電力損失を示す唯一の材料はNiFe(x=1)のみである。750℃でのか焼後のデータは、非常に異なる傾向を示しており、混合ニッケル亜鉛フェライト材料は、ニッケルのみのフェライト、NiFe、又は亜鉛のみのフェライト(ZnFe)よりもかなり高い熱電力供給を与える。これらのデータは、交流磁場に曝露されたときに最高の電力供給率をもたらす組成NiZn1-xFeにxの値があること、及びxについての最適値が0より大きく、かつ1未満であることを示している。
【0194】
同様に、混合コバルト亜鉛フェライト組成物は、一般式CoZn1-xFeを有すると考えることができ、式中、xは、x=1(CoFe)とx=0(ZnFe)との間にあり得る。図9Bは、CoFe、ZnFe、及び混合フェライトCo0.5Zn0.5Fe(x=0.5)に関する熱出力データを示す。新鮮な状態とエージングした状態では、このシリーズの端部メンバー(x=1及びx=0)は、交流磁場に対してほとんど熱応答を示さない。対照的に、コバルト-亜鉛混合フェライト材料Co0.5Zn0.5Fe(x=0.5)は、交流磁場に対して著しく高い熱応答を示す。これらのデータは、交流磁場の印加下で最大の熱応答をもたらす組成CoZn1-xFeにおけるxについての値が存在すること、及びxについてのこの最適値が0より大きく、かつ1未満であることを示す。
【0195】
実施例3:Ni0.5Zn0.5Feに担持されたPtの調製
粉末のNi0.5Zn0.5Feは、箱型炉内の静的空気中750℃で5時間か焼された。この材料は、本明細書では粉末1Aと呼ばれる。粉末1A(15g)は、2.0重量%Ptのレベルで白金で含浸された。得られた湿潤粉末を、120℃で3時間乾燥させた後、500℃で1時間か焼した。この材料は、本明細書ではサンプル2Aと呼ばれる。サンプル1A及び2Aの一部分を静止空気中750℃で5時間更にエージングして、それぞれサンプル1B及びサンプル2Bを得た。
【0196】
サンプル1A、1B、2A、及び2Bは、実施例1に記載される交流磁場に対するそれらの熱応答について評価された。図10は、各粉末サンプルについての熱出力損失を示している。この結果から、2つの重要な結論を導き出すことができる。第1の結論は、Ptを追加しても、交流磁場に応答する材料の能力を熱を放出することによって妨げなかったことである。Pt含浸材料(2A及び2B)は、Ptを含まない粉末(1A及び1B)が示すのと同じ高さかそれ以上の高さの熱出力損失を示した。導き出すことができる第2の結論は、活性化か焼前ステップ後の粉末のその後のエージングが、交流磁場に対する熱応答の劣化を何らもたらさなかったということである。サンプル1Bは1Aとほぼ同等であり、サンプル2Bは2Aとほぼ同等であった。
【0197】
実施例4:触媒性NH酸化のための磁性酸化物上に担持されたPtの評価
約20gのNi0.5Zn0.5FeにPtを0.6重量%Ptのレベルまで含浸させた。粉末は、30重量%の固体を有する懸濁液を作製するのに好適な量の脱イオン水中に懸濁された。懸濁液のpHを4.5に調整した後、得られた懸濁液を10分間湿式粉砕した。スラリーを乾燥し、得られた粉末を空気中590℃で2時間か焼した。得られたペレットを破砕し、250~500mmの画分にふるいかけした。粉末の一部分は、10%のHO/空気中、650℃で50時間エージングし、ヘビーデューティディーゼル用途のための排出技術のスクリーニングに用いられる典型的な加速エージングが示された。この同じ調製手順を、Ptの担体としてNiFe及びZnFeを使用して、繰り返した。
【0198】
エージングした触媒(33mg)を、コランダムで1.0cmのタップ容積まで希釈した。触媒を円筒形反応器内に充填し、200ppmのNH、6.5vol%のHO蒸気、7.0vol%のCO、10vol%のOからなるフィードに曝露し、全ガス流量=70L/時間とした。温度を180℃~400℃の目標点で平衡化し、各温度点での定常状態のNH転化率を記録した。図11は、収集されたデータから構築されたNHライトオフプロファイルを示す。Ni0.5Zn0.5Feに担持された0.6%のPt及びNiFeは、ほぼ同等の312℃のT50値を示し、ZnFeに担持された0.6%のPtは、T50=350℃を与えた。これらのデータは、ニッケル含有フェライト材料上に担持されたPtがNH酸化についてより活性であることを示唆している。しかし、より広義には、これらのデータは、磁性フェライト化合物上に担持されたPtが、排出触媒の機能に関連する触媒活性を示すことができることを示している。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
【国際調査報告】