IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シフト ロボティクス、インク.の特許一覧

特表2023-547901並進回転統合型ヒンジ機構およびギア・ブッシング一体型アセンブリを備えた電動靴装置の車輪構成
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】並進回転統合型ヒンジ機構およびギア・ブッシング一体型アセンブリを備えた電動靴装置の車輪構成
(51)【国際特許分類】
   A63C 17/12 20060101AFI20231107BHJP
   A43B 3/44 20220101ALI20231107BHJP
   A43B 3/48 20220101ALI20231107BHJP
   A63C 17/22 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
A63C17/12
A43B3/44
A43B3/48
A63C17/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525107
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 US2021056014
(87)【国際公開番号】W WO2022087241
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】63/094,738
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523146498
【氏名又は名称】シフト ロボティクス、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シュンチエ
(72)【発明者】
【氏名】プレタ、アブラム
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050BA01
4F050DA29
(57)【要約】
【要約】
【解決手段】
電動靴が開示される。前記靴は複数の回転自在な車輪を有する靴底を含むものであり、前記複数の回転自在な車輪は靴底の下に重なり合うように配置されている。前記車輪の回転軸間の距離は前記車輪の直径以下であり、それにより、垂直方向の障害物が正負両方の変位方向において克服され、地面安定性が増す。靴底はつま先部分と靴底部分とを含むものであり、当該つま先部分と当該靴底部分は回転と並進を兼ねた構成のヒンジを介して互いに連結され、少なくとも1つの後方車輪が二足歩行サイクル全体を通じて地面に接地されたまま、少なくとも1つの前方車輪または少なくとも1つの中間車輪が独立して地面に接地されるようになっており、それにより、使用者の自然な動きの範囲で快適さがもたらされる。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動靴であって、
靴底部分とつま先部分とを有する靴底と、
前記靴底の下に配置された複数の回転自在な車輪と、
前記靴底の下に配置されたモータであって、前記複数の回転自在な車輪のうちの少なくとも1つと駆動接続されている、前記モータと、
前記靴底の下に配置されたギアボックスハウジングと
を有する電動靴。
【請求項2】
請求項1に記載の電動靴において、前記複数の回転自在な車輪は前記靴底の下に重なり合うように配置されている、電動靴。
【請求項3】
請求項1に記載の電動靴において、少なくとも1対の隣接し合う回転自在な車輪の回転軸間の距離は、当該隣接し合う回転自在な車輪の少なくとも1つの直径以下である、電動靴。
【請求項4】
請求項1に記載の電動靴において、前記靴底部分と前記つま先部分は1若しくはそれ以上のヒンジによって連結されている、電動靴。
【請求項5】
請求項4に記載の電動靴において、前記回転自在な複数の車輪は、前方車輪と、後方車輪と、中間車輪とを有するものであり、前記前方車輪は前記つま先部分の下に配置されている、電動靴。
【請求項6】
請求項5に記載の電動靴において、前記1若しくはそれ以上のヒンジは前記靴底部分と前記つま先部分との間の回転並進運動を可能にするように構成されているものであり、少なくとも1つの前方車輪または少なくとも1つの中間車輪は、二足歩行サイクル全体を通じて少なくとも1つの後方車輪の地面への接地を維持しつつ、独立して地面に接地するものである、電動靴。
【請求項7】
請求項4に記載の電動靴において、前記1若しくはそれ以上のヒンジは2つのヒンジを有するものである、電動靴。
【請求項8】
請求項1に記載の電動靴において、前記靴底部分は踵部分を有するものであり、前記踵部分は衝撃吸収材を有するものである、電動靴。
【請求項9】
請求項8に記載の電動靴において、前記衝撃吸収材は、発泡体、エラストマ、またはバネのうちの少なくとも1つを有するものである、電動靴。
【請求項10】
請求項1に記載の電動靴において、前記複数の回転自在な車輪は、1若しくはそれ以上の局所変形ゾーンを有する少なくとも1つのエアレスタイヤを有するものである、電動靴。
【請求項11】
請求項1に記載の電動靴において、前記ギアボックスハウジングはギア駆動系システムを有するものであり、前記ギア駆動系システムは少なくとも1つの駆動ギアに一体化されたブッシングを有するものである、電動靴。
【請求項12】
請求項1に記載の電動靴において、さらに、パワーモジュールを有するものであり、前記パワーモジュールはバッテリと回路構成要素とを有するものである、電動靴。
【請求項13】
請求項12に記載の電動靴において、前記回路構成要素は、制御回路と、1若しくはそれ以上のセンサと、無線通信アダプタとを有するものである、電動靴。
【請求項14】
請求項1に記載の電動靴において、さらに、前記靴底の上に配置され、使用者の足を前記靴底に固定するように構成されたストラップ機構を有するものである、電動靴。
【請求項15】
請求項14に記載の電動靴において、前記ストラップ機構は磁気バックルを有するものである、電動靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月21日に出願された「並進回転統合型ヒンジ機構およびギア・ブッシング一体型アセンブリを備えた電動靴装置の車輪構成」と題する米国仮出願第63/094,738号の優先権および利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、複数車輪の構造、局所的な変形ゾーンを備えた車輪設計、並進回転統合型ヒンジ装置、踵クッション機構、ギア・ブッシング一体型アセンブリ、および、移送ツールの分野を含むがこれに限られない様々な用途に適した一体形パワーモジュールを備えた電動靴装置に関する。
【背景技術】
【0003】
都市部の人口増加や、公共交通機関などの共通の通勤手段で病気が伝播する懸念の増加により、通勤する一般の人々にとって最後の1キロメートル問題、つまり比較的長くて時間がかかる最後の歩行行程が依然として問題となっている。上記最後の1キロメートル問題を改善するために、電動ローラースケートなどの電動式移送装置を含め、種々の解決法が市場に存在している。
【0004】
電動ローラースケートについての現在の市場の解決法は靴底またはプラットフォームが曲がらないという問題があり、それため、使用者は、踵が地面に触れてから前足部分で地面を踏み蹴るまでの通常の歩行姿勢および歩行サイクルを維持することができない。異常な姿勢および歩行サイクルは、不快感をもたらし、また余分な身体活動を引き起こす。これらの問題は、通勤者が、穴、格子、水たまりなどの障害物を避けながら歩道に出入りしなければならない都市部の道路および歩道の複雑さの増加により、さらに悪化する。この複雑さにより、使用者が電動ローラースケートで通常どおりに歩くことができなくなり、したがって、現在の技術の実用性が大幅に低下する。使用者の靴底の下にある現在の車輪構成は、障害物を乗り越える際に課題があり、突然の減速や予期せぬ停止といった危険な展開が引き起こされる。駆動に必要な前記電子機器および移送装置の大半は、重量や幅の増加のために、適用性や人間工学的効用を低下させる。そのため、スケート靴が互いに衝突したり、障害物に衝突したりする可能性がある。さらに、最近のマルチボディ電動ローラースケートの登場により、ヒンジ点が、使用者の足に望ましくない圧迫をもたらし、また、地面に対する足の一定角度での不安定性の原因となり、それにより地面に接触する車輪の数が急激に減少する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
この概要は、発明の概要により発明の性質および内容を簡潔に示すことを要求する37C.F.R.§1.73に準拠して提供されるものである。これは、本開示の範囲若しくは意味を解釈または限定するものではないということへの理解に伴って提示される。
【0006】
電動靴が提供される。前記電動靴は、靴底部分とつま先部分とを有する靴底と、前記靴底の下に配置された複数の回転自在な車輪と、前記靴底の下に配置されたモータと、前記靴底の下に配置されたギアボックスハウジングとを有する。前記モータは前記回転自在な車輪の少なくとも1つと駆動接続されている。
【0007】
特定の実施形態において、前記複数の車輪は前記靴底の下に重なり合うように配置されている。
【0008】
特定の実施形態において、前記複数の回転自在な車輪の回転軸間の距離は、前記複数の回転自在な車輪の直径以下である。
【0009】
特定の実施形態において、前記靴底部分と前記つま先部分は1若しくはそれ以上のヒンジによって連結されている。
【0010】
特定の実施形態において、前記複数の回転自在な車輪は、前方車輪、後方車輪、および中間車輪としてグループ化されるものであり、前記前方車輪はつま先部分の下に配置されている。
【0011】
特定の実施形態において、前記1若しくはそれ以上のヒンジは、前記靴底部分と前記つま先部分との間の回転並進運動を可能にするように構成されているものであり、前記前方車輪は、二足歩行サイクル全体を通じて少なくとも1つの後方車輪を維持しつつ、独立して前記靴底部分と地面との間で形成される特定角度で地面に接地されるものである。
【0012】
特定の実施形態において、前記1若しくはそれ以上のヒンジは2つのヒンジを有するものである。
【0013】
特定の実施形態において、前記靴底部分は踵部分を有するものであり、前記踵部分は衝撃吸収材料を有するものである。
【0014】
特定の実施形態において、前記衝撃吸収材料は、発泡体、エラストマ、またはバネのうちの少なくとも1つを有するものである。
【0015】
特定の実施形態において、前記複数の回転自在な車輪は、局所的な変形ゾーンを有するエアレスタイヤを有するものである。
【0016】
特定の実施形態において、前記ギアボックスハウジングは、ギア駆動系システムを有するものであり、前記ギア駆動系システムは少なくとも1つの駆動ギアに一体化されたブッシングを有するものである。
【0017】
特定の実施形態において、前記電動靴は、さらに、パワーモジュールを有するものであり、前記パワーモジュールはバッテリと回路構成要素とを有するものである。
【0018】
特定の実施形態において、前記回路構成要素は、制御回路と、1若しくはそれ以上のセンサと、無線通信アダプタとを有するものである。
【0019】
特定の実施形態において、前記電動靴は、さらに、前記靴底の上に配置され、使用者の足を前記靴底に固定するように構成されたストラップ機構を有するものである。
【0020】
特定の実施形態において、前記ストラップ機構は磁気バックルを有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本出願の態様および実施形態は以下の図に示されている。
図1A図1Aは、一実施形態における電動靴の下面の斜視図であり、靴底と、当該靴底のつま先部分と、別個の構成である靴底とつま先部分の両方の下面に取り付けられた電動車輪構成群を示す。
図1B図1Bは、一実施形態における、靴のつま先部分がヒンジを用いて回転並進された状態の電動靴の斜視図であり、靴底にあるスロットとつま先部分にあるスロットの両方を示す。
図2A図2Aは、一実施形態における電動靴の靴底の4分の3図であり、上からの位置で踵クッション構造が示されている。
図2B図2Bは、一実施形態における、踵クッション構造の断面図であり、踵クッション構造と踵クッション緩衝材がそれぞれ靴底との関係において示されている。
図3A図3Aは、一実施形態における、ハブおよび局所変形ゾーンを有する車輪要素の4分の3図である。
図3B図3Bは、一実施形態における、ハブおよび局所変形ゾーンを有する車輪要素の平面図である。
図3C図3Cは、一実施形態における、ハブおよび局所変形ゾーンを有する車輪要素の断面図であり、当該構造のハブ部分とともに車輪要素の軸長に沿った変形ゾーンの深さを示す。
図4図4は、一実施形態における電動靴装置の底面図である。
図5A図5Aは、一実施形態における、ブッシング・ギア一体型構成要素の4分の3図であり、固定シャフトとの関係で示す。
図5B図5Bは、一実施形態における、ブッシング・ギア一体型構成要素の断面図である。
図5C図5Cは、一実施形態における、ギアボックスアセンブリに組み立てられているときの一体化されたブッシング・ギアの断面図である。
図6図6は、一実施形態における電動靴の構成要素の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、記載された特定のシステム、装置、および方法に限定されるものではなく、それらは変更することができる。本説明で使用される用語は、特定の例または実施形態を説明することのみを目的としており、本開示の範囲を限定することが意図されるものではない。
【0023】
以下の用語は、本出願の目的上、以下に定めるそれぞれの意味を有するものとする。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本開示のいかなる内容も、本開示に記載された実施形態が先行発明のおかげでそのような開示に先行する権利を有しないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0024】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の参照を含む。したがって、例えば、「セル」への言及は、当業者に公知の1若しくはそれ以上のセルおよびその同等物などへの言及である。
【0025】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、それが使用される数値のプラスまたはマイナス10%を意味する。したがって、約50mmとは45mm~55mmの範囲を意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「からなる(consists of)」または「からなる(consisting of)」という用語は、装置または方法が、請求される特定の実施形態または請求項に具体的に記載された要素、工程、または成分のみを含むことを意味する。
【0027】
「有する(comprising)」という用語が移行句として使用される実施形態または請求項では、そのような実施形態は、「有する」という用語を「からなる」または「本質的に~からなる」という用語に置き換えることにより構想することもできる。
【0028】
当業者には理解されるように、書面による説明を提供するというようなあらゆる目的のために、本明細書に開示される全ての範囲は、その範囲の上限と下限との間に介在する各値およびその指定された範囲のその他の指定された値または中間値を包含するものと意図される。本明細書に開示される全ての範囲は、あらゆる可能な部分的範囲およびその部分的範囲の組み合わせも包含する。列挙される任意の範囲は、同範囲が少なくとも1/2、1/3、1/4、1/5、1/10などに分割されることを十分に説明し、可能であるものとして容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で説明する各範囲は、下1/3、中1/3、上1/3などに容易に分解することができる。また、当業者には理解されるように、「~まで」、「少なくとも」などの用語は全て、記載された数を含み、また、上述したような部分的範囲にその後分割することができる範囲をいう。最後に、当業者には理解されるように、範囲には個々の各要素が含まれる。したがって、例えば、1~3個の構成要素を有する群とは、構成要素1個以上且つ構成要素3個以下の値の範囲とともに、1、2、または3個の構成要素を有する群をいう。同様に、1~5個の構成要素を有する群とは、構成要素1個以上且つ構成要素5個以下などの値の範囲とともに、1、2、3、4、または5個の構成要素を有する群をいう。
【0029】
さらに、特定の数字が明示的に記載されている場合でも、当業者には、そのような記載は少なくともその記載された数字を意味すると解釈されるべきであると認識されよう(例えば、他の修飾語を伴わない「2つの記載」という最小限の記載は、少なくとも2つの記載、または2若しくはそれ以上の記載」を意味する)。さらに、「A、B、およびCなどの少なくとも1つ」と類似の在来表現法が用いられている場合、一般的に、そのような構成は当業者がその在来表現法を理解する意味で意図される(例えば、「A、B、およびCの少なくとも1つを有するシステム」は、これらに限定されるものではないが、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBをともに、AおよびCをともに、BおよびCをともに、および/またはA、B、およびCをともに有するシステムなどを含む)。「A、B、またはCの少なくとも1つなど」と類似の在来表現法が用いられている場合、一般的に、そのような構成は、当業者が前記在来表現法を理解する意味で意図される(例えば、「A、B、またはCの少なくとも1つを有するシステム」は、これらに限られないが、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBをともに、AおよびCをともに、BおよびCをともに、および/またはA、B、およびCをともに有するシステムなどを含む)。さらに、本説明、例示的な実施形態、または図面のいずれにおいても、2つ以上の代替用語を示す事実上任意の離接語および/または語句は、その用語のうちの1つ、いずれかの用語、または両方の用語を含む可能性を企図すると理解されるべきであることが、当業者には理解されよう。例えば、「AまたはB」という語句は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むと理解されよう。
【0030】
さらに、当業者であれば、本開示の特徴がマーカッシュグループで記述されている場合、当業者には、それにより、当該開示はまた、任意の個々の要素、またはマーカッシュグループ要素のサブグループの観点でも記述されていると認識されよう。
【0031】
本開示は、並進回転自在なヒンジの使用により長期にわたる快適さを可能にしつつ車輪の配置により障害物を乗り越えることができる電動靴についてその必要な構成要素を提供する。さらに、前記電動靴は、ブッシング・ギア一体型アセンブリにより、ギアボックスアセンブリの幅を小さくできることを特徴とする。
【0032】
上述した使いやすさの問題に関して、本開示は、靴底の少なくとも2つの部分の間で並進運動を提供しつつオフセット中心点を中心に回転するヒンジ設計を提供する。いくつかの実施形態において、前記ヒンジ構成により、電動靴について、限定されるものではないが母指球およびつま先領域で屈曲を伴う非固定の幾何学的形状が与えられる。いくつかの実施形態において、前記ヒンジ構成は、地面と、靴底の下に取り付けられた複数の車輪のうちの少なくとも1つとの間の接触を確実にする。いくつかの実施形態において、ヒンジの回転中心点と少なくとも1つの車輪の中心点との間の距離は、地面と当該少なくとも1つの車輪との間の接触を確実にするように構成されている。いくつかの実施形態において、車輪の直径とヒンジが並進する半径との間の関係は、ヒンジの回転中心点と前記少なくとも1つの車輪の中心点との間の距離に基づく。この関係により、地面安定性および接地が確実になる。地面安定性および接地により、使用者は従来の姿勢および歩行で歩くことができ、その結果、移動のために電動靴の長時間にわたる快適な使用や迅速な習得が可能となる。
【0033】
特定の実施形態において、モータが靴底の下側に連結され、複数の回転自在な車輪を駆動する。いくつかの実施形態において、モータに連結された伝動装置が、移動を可能にするよう当該モータのためにトルク倍増器を提供する。いくつかの実施形態において、伝動装置は、中間車輪群または後方車輪群などの1つの車輪群のみを駆動する。他の実施形態では、伝動装置は、中間車輪群と後方車輪群の両方を同時に駆動する。両実施形態は、身体的労力を減らすとともに歩行速度を高めることができる。
【0034】
特定の実施形態において、靴底の一部は、歩行サイクルの踵着地期中における衝撃を緩和する機構を有する。いくつかの実施形態において、緩衝器は、別個の変形可能なプレートを有してもよい。いくつかの実施形態において、緩衝器は電動靴底に連結された材料を有してもよく、電動靴底は、緩衝材により制限された動きで軸を中心に作動する。いくつかの実施形態において、緩衝材は、これらに限定されないが、発泡体、バネ、および/または摩擦機構を含んでもよい。
【0035】
特定の実施形態において、電動靴の車輪は一体形のエアレス設計を有してもよい。このような車輪の設計は、歩行サイクルの衝撃から伝達されるエネルギーの量をさらに低減するように構成することができる。また、このような車輪の設計は、使用中の振動を低減するように構成することもできる。いくつかの実施形態において、エアレスタイヤは、タイヤとギアボックスアセンブリとの間の動きおよびトルク伝達を可能にするハブ部分を含んでもよい。いくつかの実施形態において、エアレスタイヤは、静止摩擦および制動を提供するため、比較的低いデュロメータエラストマーを有する。いくつかの実施形態において、エアレスタイヤは弾性領域に局所変形ゾーンを有し、ハブ、駆動系への、および使用者への振動や衝撃エネルギーを減衰させる。一体形の構成を利用すると、製造が簡素化され、また、使用者のメンテナンスが軽減され長期的な信頼性がもたらされる。いくつかの実施形態において、局所変形ゾーンは振動を低減することができ、それにより安定性が向上し且つ使用者のつま先、足首、膝、股関節への衝撃が軽減されて、長期にわたる快適さ、使いやすさ、および使用者の健康状態が改善される。
【0036】
特定の実施形態において、靴底の下に取り付けられた複数の回転自在な車輪の構成により、過剰な減速や停止を伴うことなく平坦な地形または荒れた地形を横断することが可能になる。いくつかの実施形態において、複数の回転自在な車輪の構成により、電動靴の速度が平坦な地形であっても荒れた地形であっても比較的一定に維持され得る。いくつかの実施形態において、複数の回転自在な車輪の構成は、靴の長手方向に(すなわち、踵からつま先へ)隣接し合う車輪の回転中心間の距離によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、2つの隣接し合う車輪の回転中心点間の距離は、当該隣接し合う各車輪の直径以下である。
【0037】
いくつかの実施形態において、複数の車輪は1若しくはそれ以上の群として構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、車輪群内の諸車輪は長さ方向に重なっていてもよい。いくつかの実施形態において、異なる車輪群の諸車輪は、各車輪群の車輪の直径よりも大きい距離離間されていてもよい。例示的な車輪群は、例えば、限定でされるものではないが、靴底のつま先、踵、および中間の下に存在していてよい。
【0038】
特定の実施形態において、靴底の下に取り付けられた複数の回転自在な車輪の構成は、電動靴の中心線および車輪の中心線に対する車輪の横方向の構成によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、外側の踵車軸のトラック幅は内側の踵車軸より小さくてもよい。このような構成により、足首関節を過度に回転させることなく、歩行サイクル中の踵着地イベントでの快適性が向上される。トラック幅が大きくなるにつれ、歩行サイクルにおける荷重応答期または足が平らになった期間での安定性がより向上する。更なる実施形態において、類似の車輪構成が中間車輪群に見い出されてもよく、この場合、外側の中間車軸のトラック幅が内側の中間車軸のトラック幅よりも大きくてよい。このような構成において、中間車輪群は電動靴の任意の車輪群の中で最大のトラック幅を有し得る。このような構成により、踵の立ち上がりから最終立脚段階までの安定した移行が可能になる。
【0039】
特定の実施形態において、電動靴は、さらに、統合パワーモジュールを有してもよく、当該パワーモジュールは電動靴の靴底の下に取り付けられていてもよい。いくつかの実施形態において、統合パワーモジュールは、ギアボックスアセンブリおよび靴の他の構成要素から分離された独立した構成要素を有していてもよい。独立した統合パワーモジュールにより、効率的な製造方法および組立方法が可能になり、回路基板、センサ、およびバッテリを正確に位置決めして固定するのに必要な部品の数が削減される。いくつかの実施形態において、統合パワーモジュールは、電子部品を破片や湿気から保護することによって電動靴の機能を向上させるように構成されている。いくつかの実施形態において、統合パワーモジュールは、バッテリ区画への侵入の可能性を低減するために安全性重視の構成を提供する。いくつかの実施形態において、統合パワーモジュールは靴底へのバッテリ膨張変形を低減する構成を提供する。
【0040】
特定の実施形態において、電動靴は、さらに、ブッシングおよびギアが一体化された機構を有する。このような実施形態では、摩擦低減ブッシング材料が1若しくはそれ以上のギアに組み込まれる。いくつかの実施形態において、このブッシング・ギア一体型機構により、ギアボックスアセンブリの横幅の観点でコンパクトなアセンブリが提供される。いくつかの実施形態において、ブッシング・ギア一体型機構により、可動部品の数を減らすことができ、したがってシステムの信頼性が向上する。
【0041】
本明細書に開示される電動靴は、従来技術に比べて複数の方法で機能を改善する。例えば、並進と回転を組み合わせたヒンジ設計により、使用者の歩行姿勢に不適切な変更を強いる以前の設計と比較して、使用者の足にかかる圧力が軽減され、より型通りの歩行姿勢が可能になる。さらに、並進運動により、歩行サイクル全体を通じて中間車輪の少なくとも1つが確実に地面に接地され、それにより継続的な力の伝達および安定性が提供される。さらに、エアレス車輪の局所的な変形と相まって踵クッション機構により、使用者に伝わる衝撃および振動の量が軽減され、長期にわたる快適さや使用者の関節の健康状態の改善がもたらされる。さらに、重なり合う車輪構成により、靴底の下に収まるほどコンパクトな態様で車輪を配置しつつも、大きな回転半径を模擬することができる。大きな回転半径が模擬されることにより、電動靴は静止摩擦またはスピードを失うことなく、亀裂や破片などの障害物を乗り越えることができる。更なる他の利点は、ずらした配列となっている車軸トラック幅により、使用者の足首関節を過度に回転させることなく、踵からつま先へ自然な移行が可能になることである。また、ブッシング・ギア一体型機構により、従来の装置と比較してギアボックスの幅をより狭くすることができ、駆動系の効率が向上する。さらに、パワーモジュールにより、より優れた製造方法および組立方法ならびにバッテリ保護が可能になり、製品の品質および安全性が向上する。
【0042】
ここで図1Aを参照すると、一実施形態における並進ヒンジを備えた電動靴が示されており、並進ヒンジが靴底1とつま先部分5を水平状態で配置するように構成されていることが示されている。電動靴の並進ヒンジ6、7は靴底1の第1の部分を独立のつま先部分5に連結する。前記靴底1およびつま先部分5の下には、前方車輪群2、後方車輪群3、および中間車輪群4が配置されている。また、靴底1の下にはモータ20とギアボックスハウジング22も配置されている。いくつかの実施形態において、靴底ヒンジ構成要素の幾何学的形状は、外側中間車軸の回転軸と、当該外側中間軸が靴底1の下に取り付けられる距離に関係する。この幾何学的形状により、中間車輪4の少なくとも1つと前方車輪2が歩行サイクルの踵上昇期全体を通じて確実に地面に接地する。
【0043】
図1Bを参照すると、靴底1が地平面から回転した形態の電動靴が示されている。靴底1の回転は使用者の歩行サイクルに依存し得る。並進ヒンジ構成要素、またはナックル6は、靴底部分1に対してつま先部分5を回転可能および/または並進可能にする。並進運動および荷重は並進ヒンジリーフ7によってつま先の構成要素に伝達される。いくつかの実施形態において、単一の並進ヒンジ6、7が靴底1とつま先部分5との間に運動をもたらす。他の実施形態では、複数の並進ヒンジ6、7が設けられてもよい。例えば、2つの並進ヒンジ7を用いて靴底部分1をつま先部分5に取り付けてもよい。このような実施形態において、並進ヒンジ6、7はギアボックスハウジング21の第1の部分の各側に取り付けることができる。
【0044】
図2Aを参照すると、一実施形態における、電動靴の靴底部分1が示されている。いくつかの実施形態において、靴底部分1は、歩行サイクルの踵着地イベント中に衝撃を吸収する踵部分8を有する。
【0045】
図2Bを参照すると、靴底部分1の断面図が示されている。いくつかの実施形態において、踵部分8は、さらに、踵クッション緩衝機構9を有し、当該踵クッション緩衝機構9は、これらに限られないが、発泡体、エラストマ、バネ、および/または他の緩衝装置から構築することができる。いくつかの実施形態において、踵部分8は、単体として靴底1と一体化されていてもよい。代替的な実施形態では、踵部分8は、独立した構成要素であって靴底1に固定されているものでもよい。特定の実施形態において、踵部分8は、後方車輪3およびギアボックスハウジングの第2の部分22の上に配置されている。
【0046】
特定の実施形態において、ストラップ機構24が靴底部分1の上に配置されてもよい。このような実施形態において、ストラップ機構24は、1若しくはそれ以上のストラップまたはバックルを受けるように構成されていてよく、それにより、使用者が電動靴を自分の足に取り付けることができる。いくつかの実施形態において、ストラップ機構24は磁気バックルであってもよい。
【0047】
図3A図3B、および図3Cを参照すると、一実施形態におけるエアレスタイヤの3つの図が示されている。エアレスタイヤ23は、ハブ11と、少なくとも1つの局所変形ゾーン10を有する。いくつかの実施形態において、ハブ11は、エアレスタイヤとハブが単一の構成要素になるように、製造プロセスにおいてエアレスタイヤ23の一部として形成されてもよい。各局所変形ゾーン10の深さは図3Cに示すようにエアレスタイヤ23の幅を超えなくてもよい。局所変形ゾーン10の深さがエアレスタイヤ23の幅より小さいことにより、デュロメータが高い車輪構成の使用でも、デュロメータのより低い車輪構成における変形およびエネルギー吸収を模倣することが可能になる。複数の局所変形ゾーン10を用いて、ギアボックスへの振動伝達を低減し、またドライブシャフトまたは車軸へと伝わる障害物および踵衝撃イベントからの衝撃エネルギーを低減し得る。故に、使用中、使用者は電動靴からの振動および衝撃を小さく感じ得るものであり、これにより、より長く使用でき、また安定性が向上し得る。
【0048】
図4を参照すると、一実施形態における電動靴の底面図が示されている。いくつかの実施形態において、複数の回転自在な車輪が電動靴装置の靴底1およびつま先部分5の下側に取り付けられており、それらは、前方車輪2,後方車輪3、および中間車輪4として分類される。特定の実施形態において、後方車輪3は、(図4に示すように)軸方向および(図1Aに示すように)長手方向の両方で重なり合うようにして靴底1の下に配置されてもよい。特定の実施形態において、中間車輪4は、(図4に示すように)軸方向および(図1Aに示すように)長手方向の両方で重なり合うようにして靴底1の下に配置されてもよい。長手方向の重なりは、(後方車輪3または中間車輪4のような)一対の車輪の回転軸間の距離の関数であってもよく、それは少なくとも1つの車輪の直径以下であってよい。例えば、回転軸間の間隔は、隣接する最も小さい車輪の直径以下であってもよい。複数の回転自在な車輪は車軸に取り付けられ、それら複数の車軸の少なくとも一部は、ギアボックスハウジング21、22に収容されたギアボックスアセンブリに連結され、またはギアボックスアセンブリを貫通する。
【0049】
特定の実施形態において、トラック幅に関連する車輪の横方向の構成は、後方車輪3においてオフセットされた車軸長を有し、この場合、電動動靴の両側において内側の後方車軸車輪17が外側の後方車軸車輪16の外側に離間して配置される。いくつかの実施形態において、内側の後方車軸車輪17が回転する車軸の車軸長は、外側の後方車軸車輪16が回転する車軸の車軸長以上である。いくつかの実施形態において、内側の後方車軸車輪17が回転する車軸の車軸長は外側の後方車軸車輪16の幅の2倍である。このような実施形態において、同様のオフセット空間が中間車輪4に存在して、それにより電動靴の両側において外側の中間車軸車輪19が内側の中間車軸車輪18の外側で回転するようになっていてもよく、外側の中間車軸車輪19が回転する車軸の車軸長は、内側の中間車軸車輪18が回転する車軸の車軸長より長くてもよい。いくつかの実施形態において、内側の後方車軸車輪19が回転する車軸の車軸長は、内側の中間車輪18の幅の2倍である。
【0050】
図5Aを参照すると、一実施形態における、ブッシングが一体化されたギア14が示されている。特定の実施形態において、ギアは当該ギア14の一部として形成されたブッシング13を有し、ブッシングとギアが単一の構成要素となっている。いくつかの実施形態において、ブッシング13およびギア14はシャフトまたは車軸15によって決定される軸を中心に回転する。いくつかの実施形態において、車軸15の軸長はギアの幅の3倍未満である。図5Bを参照すると、ブッシングが一体化されたギア14の断面図が示されている。
【0051】
図5Cを参照すると、ブッシングが一体化されたギア14が、例えば2つの部分21,22を有するギアボックスハウジング内にあることが示されている。車軸15の運動はギアボックスハウジング21、22の少なくとも1つの側により拘束されている。
【0052】
図6を参照すると、一実施形態における電動靴の内部構成要素が示されている。特定の実施形態において、電動靴はパワーモジュール12を有し、当該パワーモジュール12は、回路構成要素24と、バッテリ25と、当該回路構成要素とバッテリ間における1若しくはそれ以上の接続部とを有する。パワーモジュールはギアボックスハウジング21、22の内側に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態において、パワーモジュール12は、バッテリ25の動きを制限し、また外部要素の侵入を防ぐ。いくつかの実施形態において、回路構成要素24はパワーモジュール内に取り付けられてもよい。このような実施形態において、パワーモジュール12は、電動靴の使用中、回路構成要素24の位置および構造を固定的に保持してもよい。パワーモジュール12の外面は、さらに、回路構成要素24、バッテリ25、および/または接続部に破片や湿気が到達するのを防ぐことができる。いくつかの実施形態において、電動装置の信頼性を向上させるために、パワーモジュール12内でさらにワイヤの配線および動きが制限されてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態において、回路構成要素24は、制御回路と、1若しくはそれ以上のセンサと、および1若しくはそれ以上の無線通信アダプタとを有してもよい。いくつかの実施形態において、1若しくはそれ以上のセンサのうちの少なくとも1つは慣性測定ユニットであってもよい。
【0054】
本開示は、その例示的な実施形態の説明によって例示され、それらの実施形態はある程度詳細に説明されているが、出願人は、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に制限したり、いかなる形でも限定することを意図するものではない。更なる利点および変更が当業者には容易に明らかになるであろう。したがって、本開示は、その広範な態様において、図示および説明される特定の詳細、代表的な装置および方法、および/または例示的な実施例のいずれにも限定されない。したがって、出願人の一般的な発明概念の趣旨または範囲から逸脱することなく、そのような詳細から逸脱することができる。
【0055】
上記の詳細な説明では、本明細書の一部を構成する添付の図面が参照されている。図面において、類似の記号は、文脈上別段の指示がない限り、通常、類似の構成要素を特定する。本開示で説明される例示的な実施形態は限定を意図するものではない。本明細書に提示される主題の趣旨または範囲から逸脱することなく、他の実施形態を用いることができ、また、他の変更を行うことができる。本明細書に一般的に記載され、図に示される本開示の様々な特徴は、多種多様な異なる構成で配置、置換、結合、分離、および設計することができ、それらの全てが本明細書において明示的に企図されることが容易に理解されよう。
【0056】
本開示は、本出願に記載された特定の実施形態に関して限定されるべきではなく、これらは様々な特徴の例示として意図される。むしろ、本出願は、本教示のあらゆる変形、使用、または適応を包含し、その一般的原理を用いることが意図される。さらに、本出願は、これらの教示が関係する技術分野における既知または慣例の範囲内にあるような、本開示からの逸脱を包含することが意図される。当業者には明らかなように、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、説明した特定の実施形態に対して多くの修正および変形を行うことができる。本明細書に列挙したものに加えて、本開示の範囲内の機能的に同等の方法および装置が前述の説明から当業者には明らかであろう。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物系に限定されるものではなく、当然、変化し得るものであることを理解されたい。また、本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定することを意図していないことを理解されたい。
【0057】
上記に開示した様々な特徴および機能ならびにその他の特徴および機能、あるいは代替的な特徴および機能は、多くの他の異なるシステムまたは用途に組み合わされてよい。本明細書の現在予見又は予測されていない様々な代替、変更、変形、または改良は、その後当業者が行うことができ、また、それらの各々は開示された実施形態に含まれることが意図される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図6
【国際調査報告】