(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】オブジェクトの表面から樹脂およびセラミックを除去するための組成物、ならびにそのような組成物を使用する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/35 20170101AFI20231107BHJP
B29C 64/379 20170101ALI20231107BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231107BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20231107BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20231107BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20231107BHJP
【FI】
B29C64/35
B29C64/379
B33Y10/00
B33Y80/00
B33Y40/20
B29C64/314
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525513
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 US2021056847
(87)【国際公開番号】W WO2022093956
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519127340
【氏名又は名称】ポストプロセス テクノロジーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノーブル,マシュー,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ハッチンソン,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AB16
4F213AB17
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL24
4F213WL29
4F213WL55
4F213WL87
4F213WW38
(57)【要約】
【課題】付加製造技術によって作製された3D印刷オブジェクトの表面などから、不要な材料を除去するための組成物または仕上げ溶液を提供する。
【解決手段】仕上げ溶液は、仕上げ溶液中に物体を浸漬し、超音波周波数で浸漬されたオブジェクトを撹拌することによって、未硬化樹脂およびセラミック充填材を除去するように構成されている。その際に、任意の後続の機械的行為(ブラッシング、サンディング、またはビーズブラストなど)によって、オブジェクトから残存する未硬化樹脂および/またはセラミック充填材を除去するということを行わない。一例では仕上げ溶液が、第1のグリコールエーテルと、第2のグリコールエーテルと、および/または高引火点炭化水素とを含む。仕上げ溶液は、少なくとも93.3℃の引火点を有する。代替例では、仕上げ溶液はまた、第3のグリコールエーテルと、高引火点アルコールと、および/またはグリコールエーテルの酢酸塩とを含んでもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的に硬化した三次印刷オブジェクトから不要な材料を除去するように構成された仕上げ溶液であって、
グリコールエーテルと、
苛性化合物および水を有する苛性溶液と、
少なくとも1種のジオールまたはトリオール化合物とを備え、
前記仕上げ溶液が、前記3D印刷オブジェクトの表面から未硬化樹脂およびセラミックフィラーを除去するように構成されている、仕上げ溶液。
【請求項2】
さらに1種以上の乳化剤を備える、請求項1に記載の仕上げ溶液。
【請求項3】
前記苛性化合物が水酸化ナトリウムである、請求項2に記載の仕上げ溶液。
【請求項4】
前記仕上げ溶液は、
1-50重量%のグリコールエーテルと、
1-30重量%の苛性化合物と、
30-70重量%の水と、
0.1-30重量%のジオールと、
0.1-20重量%の1種以上の乳化剤とを含む、請求項2に記載の仕上げ溶液。
【請求項5】
前記苛性化合物が水酸化ナトリウムである、請求項4に記載の仕上げ溶液。
【請求項6】
前記グリコールエーテルがブチルカルビトール(2-(2-ブトキシエトキシ)エタノールである、請求項1に記載の仕上げ溶液。
【請求項7】
前記ジオールまたはトリオール化合物がプロピレングリコールを含む、請求項1に記載の仕上げ溶液。
【請求項8】
前記ジオールまたはトリオール化合物が、2-メチル-2,4-ペンタンジオールを含む、請求項1に記載の仕上げ溶液。
【請求項9】
前記仕上げ溶液は、前記3D印刷オブジェクトの表面から残りのセラミック充填材を除去するように構成された追加の後続の機械的行為を伴うことなく、前記3D印刷オブジェクトの表面からセラミック充填材の少なくとも50重量%を除去するように構成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の仕上げ溶液。
【請求項10】
前記追加の後続の機械的行為が、前記3D印刷オブジェクトのサンディング、ブラッシング、またはビードブラストのうちの1つまたは複数である、請求項9に記載の仕上げ溶液。
【請求項11】
前記仕上げ溶液は、前記3D印刷オブジェクトの表面から残りのセラミック充填材を除去するように構成された追加の後続の機械的行為を伴うことなく、前記3D印刷オブジェクトの表面からセラミック充填材の少なくとも90重量%を除去するように構成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の仕上げ溶液。
【請求項12】
前記追加の後続の機械的行為が、前記3D印刷オブジェクトのサンディング、ブラッシング、またはビードブラストのうちの1つまたは複数である、請求項11に記載の仕上げ溶液。
【請求項13】
前記仕上げ溶液は、前記3D印刷オブジェクトの表面から残りのセラミック充填材を除去するように構成された追加の後続の機械的行為を伴うことなく、前記3D印刷オブジェクトの表面からセラミック充填材の少なくとも99重量%を除去するように構成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の仕上げ溶液。
【請求項14】
前記追加の後続の機械的行為が、前記3D印刷オブジェクトのサンディング、ブラッシング、またはビードブラストのうちの1つまたは複数である、請求項13に記載の仕上げ溶液。
【請求項15】
部分硬化3D印刷オブジェクトの表面から未硬化樹脂及びセラミック充填材を除去する方法であって、
グリコールエーテルと、を有する仕上げ溶液、苛性化合物および水を含む苛性溶液と、少なくとも1つのジオールまたはトリオール化合物とを有する仕上げ溶液を提供する工程、
3D印刷オブジェクトの少なくとも一部を前記仕上げ溶液に浸漬する工程、
超音波周波数で前記仕上げ溶液中の3D印刷オブジェクトの部分を撹拌する工程、および
前記仕上げ溶液から3D印刷オブジェクトを取り出す工程を備える、方法。
【請求項16】
前記仕上げ溶液から3D印刷オブジェクトを取り出した後に、3D印刷オブジェクトをすすぎ及び/又は乾燥させる工程をさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記仕上げ溶液は、前記浸漬及び撹拌の間、20~55℃の範囲の温度に維持される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記仕上げ溶液は、前記浸漬及び撹拌の間、20~30℃の範囲の温度に維持される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記3D印刷オブジェクトの部分が、前記仕上げ溶液中に5~60分間浸漬される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記苛性化合物が水酸化ナトリウムであり、前記グリコールエーテルがブチルカルビトール(2-2-ブトキシエトキシ)エタノールであり、前記ジオールがプロピレングリコールである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記仕上げ溶液が、1種以上の乳化剤をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記仕上げ溶液が、
1-50重量%のグリコールエーテル、
1-30重量%の苛性化合物、
30-70重量%の水、
0.1-30重量%のジオール、および
0.1-20重量%の1種以上の乳化剤を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記仕上げ溶液は、前記3D印刷オブジェクトの前記表面から残りのセラミック充填材を除去する追加の後続の機械的行為を伴うことなく、前記仕上げ溶液に浸漬された前記3D印刷オブジェクトの部分から少なくとも50重量%のセラミック充填材を除去するように構成される、請求項15~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記追加の後続の機械的行為は、前記3D印刷オブジェクトのサンディング、ブラッシング、またはビードブラストのうちの1つまたは複数である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記仕上げ溶液は、前記3D印刷オブジェクトの表面から残りのセラミック充填材を除去する追加の後続の機械的行為を伴うことなく、前記仕上げ溶液に浸漬された前記3D印刷オブジェクトの部分から少なくとも90重量%のセラミック充填材を除去するように構成される、請求項15~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記追加の後続の機械的行為は、前記3D印刷オブジェクトのサンディング、ブラッシング、またはビードブラストのうちの1つまたは複数である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記仕上げ溶液は、前記3D印刷オブジェクトの表面から残りのセラミック充填材を除去する追加の後続の機械的行為を伴うことなく、前記仕上げ溶液に浸漬された前記3D印刷オブジェクトの部分から少なくとも99重量%のセラミック充填材を除去するように構成される、請求項15~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記追加の後続の機械的行為は、前記3D印刷オブジェクトのサンディング、ブラッシング、またはビードブラストのうちの1つまたは複数である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
以下の工程を経て形成された最終3D印刷オブジェクトであって、前記工程は、
部分的に硬化した3D印刷オブジェクトの表面上に未硬化樹脂およびセラミック充填材を有する部分的に硬化した3D印刷オブジェクトを提供することと、
グリコールエーテルと、苛性化合物および水を含む苛性溶液と、少なくとも1つのジオールまたはトリオール化合物とを有する仕上げ溶液を提供することと、
仕上げ溶液中に部分的に硬化した3D印刷オブジェクトの少なくとも一部を浸漬し、超音波周波数で仕上げ溶液中の3D印刷オブジェクトの部分を撹拌し、未硬化樹脂およびセラミック充填材を部分的に硬化した3D印刷物の表面から除去することと、
仕上げ溶液から3D印刷オブジェクトを取り出して、最終3D印刷オブジェクトを提供することとを備える、最終3D印刷オブジェクト。
【請求項30】
前記工程は、さらに、仕上げ溶液から最終3D印刷オブジェクトを取り出した後に、最終3D印刷オブジェクトをすすぐ、及びまたは乾燥することを含む、請求項29に記載の最終3D印刷オブジェクト。
【請求項31】
前記仕上げ溶液が、前記浸漬および前記撹拌の間、20~55℃の範囲の温度に維持される、請求項29に記載の最終3D印刷オブジェクト。
【請求項32】
前記仕上げ溶液が、前記浸漬および前記撹拌の間、20~30℃の範囲の温度に維持される、請求項29に記載の最終3D印刷オブジェクト。
【請求項33】
前記部分的に硬化した3D印刷オブジェクトの部分が、前記仕上げ溶液中に5~60分間浸漬される、請求項29に記載の最終3D印刷オブジェクト。
【請求項34】
前記苛性化合物が水酸化ナトリウムであり、前記グリコールエーテルがブチルカルビトール(2-2-ブトキシエトキシ)エタノールであり、前記ジオールがプロピレングリコールである、請求項29に記載の最終3D印刷オブジェクト。
【請求項35】
前記仕上げ溶液が、1つ以上の乳化剤をさらに含む、請求項29に記載の最終3D印刷オブジェクト。
【請求項36】
前記仕上げ溶液が、
1-50重量%のグリコールエーテルと、
1-30重量%の苛性化合物と、
30-70重量%の水と、
0.1-30重量%のジオールと、
0.1-20重量%の1種以上の乳化剤とを含む、請求項35に記載の最終3D印刷オブジェクト。
【請求項37】
前記仕上げ溶液は、部分的に硬化した3D印刷オブジェクトの表面から残留セラミック充填材を除去する追加の後続の機械的行為を伴うことなく、仕上げ溶液中に浸漬した部分的に硬化した3D印刷オブジェクトの部分から少なくとも50重量%のセラミック充填材を除去するように構成される、請求項29~36のいずれか1項に記載の最終3D印刷オブジェクト。
【請求項38】
前記追加の後続の機械的行為が、部分的に硬化した3D印刷オブジェクトのサンディング、ブラッシング、またはビードブラストのうちの1つまたは複数である、請求項37に記載の最終3D印刷オブジェクト。
【請求項39】
前記仕上げ溶液は、部分的に硬化した3D印刷オブジェクトの表面から残留セラミック充填材を除去する追加の後続の機械的行為を伴うことなく、仕上げ溶液中に浸漬した部分的に硬化した3D印刷オブジェクトの部分から少なくとも90重量%のセラミック充填材を除去するように構成される、請求項29~36のいずれか1項に記載の最終3D印刷オブジェクト。
【請求項40】
前記追加の後続の機械的行為が、前記部分的に硬化した3D印刷オブジェクトのサンディング、ブラッシング、またはビードブラストのうちの1つまたは複数である、請求項39に記載の最終3D印刷オブジェクト。
【請求項41】
前記仕上げ溶液は、部分的に硬化した3D印刷オブジェクトの表面から残留セラミック充填材を除去する追加の後続の機械的行為を伴うことなく、仕上げ溶液中に浸漬した部分的に硬化した3D印刷オブジェクトの部分から少なくとも99重量%のセラミック充填材を除去するように構成される、請求項29~36のいずれか1項に記載の最終3D印刷オブジェクト。
【請求項42】
前記追加の後続の機械的行為が、前記部分的に硬化した3D印刷オブジェクトのサンディング、ブラッシング、またはビードブラストのうちの1つまたは複数である、請求項41に記載の最終3D印刷オブジェクト。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は2020年10月30日に出願された米国仮特許出願第63/107,881号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
以下の開示は、オブジェクト(物体)の表面から不要な材料を除去するための組成物に関する。特に、本開示は三次元(3D)印刷などの付加製造技術によって作製されたオブジェクトの表面から、樹脂およびセラミック組成物などの不要な材料を除去するための組成物に関する。本開示はまた、オブジェクトから、樹脂およびセラミック組成物などの不要な材料を除去する際に、そのような組成物または溶液を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
3Dプリンティング(例えば、選択的レーザ焼結(SLS)、ステレオリソグラフィ(SLA)、溶融堆積モデリング(FDM)、材料噴射(MJ)、電子ビーム(eビーム)など)などの付加製造プロセスは、多くの用途に著しい利点を提供する。付加製造プロセスは、従来の製造技術を使用して製造することが困難である複雑な形状を有する部品の製造を可能にする。また、付加製造プロセスは、少量の部品の効率的な製造を可能にする。しかしながら、いくつかの付加製造プロセスは、樹脂およびセラミックなどの不要な材料の除去を必要とする部品を製造する。不要な材料は、付加製造工程の印刷部分の間に生成され、部品が印刷されるときに部品の一部を支持するために必要とされ得る。プロセスの印刷部分が完了した後、部品をその意図された目的のために使用することができる前に、不要な材料を除去しなければならない。
【0004】
望ましくない材料自体は、複雑な幾何学的形状を有することがあり、また、複数の位置でオブジェクト(物体)を支持することがあるので、広範囲に及ぶことがある。加えて、付加製造は物体を個別の層に印刷するので、物体の表面仕上げは、層の縁部が互いに正確に整列しないことがあり、したがって、粗い、隆起した外面を作り出すので、粗い場合がある。この外面は、視覚的に目立たないかもしれないし、または試験または使用前に除去する必要がある応力集中または不規則性を有しているかもしれない。
【0005】
付加製造部品のための幾つかの仕上げ溶液は、樹脂組成物中に存在するセラミック成分ではなく、特定の未硬化材料又は樹脂を除去することができる。他の仕上げ溶液(イソプロパノールなど)は引火点が低く(例えば、100°Fまたは38°C未満)、および/または作業に際して予防措置を要する場合がある。したがって、そのような制限を克服し、樹脂組成物中に存在する樹脂成分およびセラミック成分の両方を除去することができる化学的仕上げ溶液が長年にわたって必要とされており、その仕上げ溶液はより高い引火点を有し、および/またはより少ない作業警戒または処置行為を有する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、付加製造技術によって作製されたオブジェクトの表面などから、不要な材料(例えば、未硬化樹脂およびセラミック充填材)を除去するための組成物または仕上げ溶液を提供する。一実施形態では、仕上げ溶液が少なくとも1種のグリコールエーテル、苛性溶液、および少なくとも1種のジオールまたはトリオールを含む。特定の例では、仕上げ溶液はまた、1つ以上の乳化剤を含んでもよい。特定の例において、仕上げ溶液は、少なくとも200°F(93.3°C)の引火点を有する。仕上げ溶液は、残りの未硬化樹脂および/またはセラミック充填材を物体から除去するための任意の後続の機械的作用(ブラッシング、サンディング、またはビードブラストなど)に物体をさらすことなく、未硬化樹脂およびセラミック充填材を3D印刷物体の表面から除去するように構成され得る。
【0007】
別の実施形態では、本開示が部分的に硬化した三次元(3D)印刷オブジェクトから未硬化樹脂およびセラミック充填材を除去する方法を提供する。この方法は、グリコールエーテルと、苛性化合物および水を含む苛性溶液と、少なくとも1種のジオールまたはトリオール化合物とを有する仕上げ溶液を提供することを含む。本方法は、3D印刷オブジェクトの少なくとも一部を仕上げ溶液に浸漬することをさらに含む。方法は、超音波周波数で、仕上げ溶液中の3D印刷オブジェクトの少なくとも一部を撹拌することをさらに含む。本方法は、3D印刷オブジェクトを仕上げ溶液から取り出すことをさらに含む。そのような方法では、未硬化樹脂およびセラミック充填材が、3D印刷オブジェクトの表面から除去される。その際に、オブジェクトから残存する未硬化樹脂および/またはセラミック充填材を除去するための引き続いての機械的処理(ブラッシング、サンディング、またはビードブラストなど)を施すことがない。
【0008】
別の実施形態では、本開示は、以下のプロセスを経て製造される最終3D印刷オブジェクトを提供する。プロセスは、部分的に硬化した3D印刷オブジェクトの表面に未硬化樹脂およびセラミック充填剤を有する部分硬化3D印刷オブジェクトを提供することと、グリコールエーテル、苛性化合物および水を含む苛性溶液、ならびに少なくとも1つのジオールまたはトリオール化合物を有する仕上げ溶液を提供することと、仕上げ溶液中に部分硬化3Dオブジェクトの少なくとも一部分を浸漬し、超音波周波数で仕上げ溶液中の3D印刷オブジェクトの部分を撹拌することによって、未硬化樹脂およびセラミック充填剤を部分硬化3D印刷オブジェクトの表面から除去することと、仕上げ溶液から3D印刷オブジェクトを取り出して最終3D印刷オブジェクトを提供することとを含む。
【0009】
この概要は、以下の詳細な説明で記述するものを簡略化した形で概念の抜粋を紹介するために設けたものである。発明を実施するための形成においてさらに説明される概念の選択を簡略化された形で紹介するために提供される。この概要は、特許請求される対象の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される対象の範囲を決定する際の補助として使用されることを意図するものでもない。
【0010】
例示的な実施形態は、以下の図面を参照して本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】仕上げ溶液を使用する例示的な方法の流れを示す図である。
【
図2A】3D印刷オブジェクトを仕上げ溶液で仕上げるために使用されるように構成された機械の実施例を示す図である。
【
図2B】
図2Aに示される機械の断面図であり、
図2Aの断面指示線2B-2Bに沿って切断した図である。
【
図3】Accura Bluestone樹脂組成物で作製された3D印刷オブジェクト(ルーク)の例を示し、仕上げ溶液が如何にして3D印刷オブジェクトから不要な材料を除去するのかを示す図であり、
図3Aは仕上げ溶液の付与前の3D印刷オブジェクトの例を示し、
図3B~3Dは様々な仕上げ溶液における浸漬後のオブジェクトの例を示す。
【
図4】Accura HPC樹脂組成物で作製された3D印刷オブジェクト(ルーク)の例を示し、種々の仕上げ溶液が如何にして3D印刷オブジェクトから不要な材料を除去するのかを示す図であり、
図4Aは仕上げ溶液の付与前の3D印刷オブジェクトの例を示し、
図4B~4Dは様々な仕上げ溶液における浸漬後のオブジェクトの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示された組成物および方法は様々な形態の実施形態の代表であるが、特定の実施形態が図面に示され(および以下に記載される)、本開示は例示であることが意図され、特許請求の範囲を本明細書に記載および図示された特定の実施形態に限定することは意図されないことを理解されたい。
【0013】
上記のように、付加製造されたポリマー、樹脂、プラスチック材料、および部品から材料を除去するために、イソプロパノール(IPA)などのある種の市販の仕上げ溶液を用いて作業する場合に取り組むべき考慮事項がある。例えば、いくつかの従来の商業的仕上げ溶液は、引火点が低く、安全上の予防措置を必要とする。加えて、または代替的に、特定の従来の商業的仕上げ溶液は高い蒸気圧を有し、高価であり、固定量の不要な材料を除去するために大量の材料を必要とし、そのような材料を除去することにおいて遅く、樹脂組成物のセラミック成分(例えば、二酸化ケイ素もしくはシリカ)、またはそれらの組合せを除去するために余分な処理行為を必要とするであろう。このように、このような制限を克服するケミカル仕上げ溶液が長い間必要とされてきた。
【0014】
改善された組成物または仕上げ溶液、ならびにそれらの製造および使用方法が、本明細書に開示される。
【0015】
本開示は特定の実施形態に関して説明されるが、本明細書に記載される利益および特徴のすべてを提供しない実施形態を含む、他の実施形態も、本開示の範囲内である。本開示の範囲から逸脱することなく、様々な構造的、論理的、およびプロセスステップの変化を行うことができる。
【0016】
樹脂とセラミック充填剤の両方を含む様々な3D印刷ステレオリソグラフィ(SLA)樹脂組成物がある。二酸化ケイ素(SiO2またはシリカ)などのセラミックフィラー(充填材)は、剛性の改善または増加、耐熱性および/または耐摩耗性の改善、ならびに耐薬品性の改善のために、樹脂中に提供され得る。いくつかの実施形態では、シリカが、樹脂組成物内の溶融シリカ、コロイダルシリカ、またはナノシリカ充填材成分である。
【0017】
SLAでは、セラミックフィラー(例えば、シリカ)を有する樹脂組成物は印刷プロセス中にレーザで部分的に硬化される。不要な材料(例えば、残留未硬化樹脂およびセラミック充填材)は、本開示の実施形態に従って配合された仕上げ溶液を使用して除去され得る。不要な材料を除去した後、UVオーブンを使用して、後硬化工程を実施することができる。言い換えれば、硬化されなかった不要な材料は、オブジェクトが最終硬化のために紫外線(「UV」)硬化チャンバ内に配置される前に、実施形態の仕上げ溶液によって溶解され得る。
【0018】
3D印刷SLA樹脂組成物から樹脂およびセラミックの両方を除去するための特定の市販の溶液は、低い引火点(例えば、100°Fまたは38°C未満)、高いコストという欠点を有し、および/または後続の処理行為なしに3D印刷部品の表面からセラミック充填材の部分(例えば、大部分)を除去することができない。言い換えれば、市販の溶液は、3D印刷部品の表面上に白色粉末二酸化ケイ素コーティングを残すであろう。セラミック充填材の部分(例えば、白色粉末コーティング)の除去が不足しているため、3D印刷部品の表面から残りのセラミック粉末コーティングを除去するために、このような市販の溶液は、仕上げ溶液の使用または仕上げ溶液中への浸漬に続いて、例えば、サンドペーパー、ラスプ、またはファイルを用いた激しい/労働負荷の高いスクラビングおよび/またはドライ/ウェット機械的ビーズブラスティングなどの追加の(例えば、機械的)処理行為を必要とする。
【0019】
本明細書に開示されるように、付加製造されたポリマー、樹脂、プラスチック材料、または部品から、例えば、サンディング、ブラッシング、またはビードブラスティングなどの追加の(例えば、機械的)処理行為なしに、不要な材料(例えば、樹脂およびセラミックの両方)を除去するための1つ以上の仕上げ組成物または溶液および使用方法が提供される。
【0020】
[定義]
本明細書で使用するとき、用語「オブジェクト」は、所望の最終形態になっていない3D印刷オブジェクトを指すであろう。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「仕上げ」とは、付加的に製造されたオブジェクト(例えば、3D印刷オブジェクト)から不要な材料を除去して、仕上げ部品又は半仕上げ部品を製造することを指すであろう。仕上げは、制約されないが、未硬化材料の除去、不要な樹脂の除去、不要な金属粉末の除去、不要な印刷材料の除去、および/または不要な支持材料の除去を含む1つまたは複数のプロセスを含むであろう。3D印刷業界では、仕上げは「洗浄(クリーニング)」と呼ばれることもある
本明細書で使用するとき、用語「不要な材料」は、未硬化材料又は不要な樹脂及び/又はセラミック充填材を含むことができる。不要な材料は製造されるオブジェクトと同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。仕上げ中に除去され得る樹脂およびセラミックフィラーの両方を有する材料の例としては、限定されないが、Accura HPC,Accura Bluestone,SOMOS PerForm Reflective, SOMOS Perform HW, Prodways Rigid 10500などが挙げられる。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「撹拌された」は、外力による運動をもたらすことを指すことができる。仕上げ溶液に関して、撹拌の非限定的な例としては、ポンプを介して仕上げ溶液を移動させること、撹拌すること、超音波周波数で縦波を使用すること、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0023】
[組成物または仕上げ溶液]
本明細書に開示されるように、不要または未硬化材料(例えば、樹脂組成物の未硬化樹脂およびセラミック成分)の後処理除去のための改善された組成物または仕上げ溶液は、(1)少なくとも1つのグリコールエーテル、(2)苛性化合物および水を有する苛性溶液、および(3)少なくとも1つのジオールまたはトリオールを含み得る。さらに、いくつかの実施形態では、組成物または仕上げ溶液はまた、少なくとも1つの乳化剤を含んでもよい。各成分の化合物の種類の様々な例および各成分の重量%の例を以下に示す。以下に定義されるように、重量パーセントの例は、少なくとも1つのグリコールエーテル、苛性溶液の苛性化合物、苛性溶液の水、少なくとも1つのジオールまたはトリオール、および少なくとも1つの乳化剤(存在する場合)の合計重量パーセントが100%になるように定義される(すなわち、これらの成分の合計重量パーセントは、仕上げ溶液内に存在し得る任意の添加剤または不純物を無視するものである)。
【0024】
[グリコールエーテル類]
グリコールエーテルの実施例は、以下のグリコールエーテルおよびグリコールエーテルのアセテートに限定されるものではないが、例えば、2-ブトキシエタノール(EB)、ジプロピルグリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(別名2-(ヘキシルオキシ)エタノール)(別名2-ヘキソキシエタノール)(HEX)、メチルカルビトール(2-(2-メトキシエトキシ)エタノール)(MC)、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル(DPnP)、エチルカルビトール(2-(2-エトキシエトキシ)エタノール)(EC)、ブチルカルビトール(2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール)(BC)、プロピルカルビトール(2-(2-プロポキシエトキシ)エタノール)(PC)、ジプロピレングリコールブチルエーテル(DPnB)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(別名1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、 2-(2-エトキシ)酢酸エチル(ECA)、2-(2-ブトキシエトキシ)酢酸エチル(BCA)、ジブチルカルビトール(ジエチレングリコールジブチルエーテル)(DC)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(TM)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(TPM)、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル(TPnB)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(TEGM)、DPG(ジプロピレングリコール)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TTGD)、および/またはトリエチレングリコールモノブチルエーテル(別名、ブトオキシトリグリコール(BUTOXYTRIGLYCOL))を含む。
【0025】
特定の例において、仕上げ溶液中に存在するグリコールエーテルの量は、1~50重量%、10~50重量%、20~40重量%、10~20重量%、または20~30重量%の範囲であり得る。
【0026】
[苛性溶液]
特定の例において、苛性溶液は、苛性化合物および水を含み得る。いくつかの実施例では、苛性化合物は水酸化ナトリウムである。他の例では、苛性化合物が水酸化カリウムまたは酸化カルシウムである。仕上げ溶液中の苛性溶液は、3D印刷オブジェクトの表面からセラミック充填材(例えば、シリカ)を除去するのに有利である。例えば、水酸化ナトリウムを含む苛性溶液は、オブジェクトの表面からシリカと反応し、シリカを溶解するのを促進することができる。
【0027】
苛性溶液のモル濃度は、0.1~10M、0.5~5M、0.5~1M、1~3M、3~5M、または5~10Mの範囲であってもよい。
【0028】
仕上げ溶液中に存在する水の量は、30~80重量%、30~70重量%、40~70重量%、50~70重量%、50~60重量%、または60~70重量%の範囲であり得る。
【0029】
仕上げ溶液中に存在する苛性物の量は、0.1~30重量%、0.5~30重量%、0.5~20重量%、1~30重量%、1~20重量%、1~10重量%、10~20重量%、1~5重量%、または5~10重量%の範囲であってもよい。
【0030】
[ジオール/トリオール]
本明細書に開示されるように、ジオールまたはトリオールは、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物を指してもよい。特定の例において、ジオールは、脂肪族ジオールまたはグリコールである。グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
ジオール/トリオールは、3D印刷オブジェクトの表面からのセラミック充填材(例えば、シリカ)の除去を支援するのに有利である。特に、ジオール/トリオールは、苛性溶液と組み合わせて提供される場合、セラミック充填材(例えば、シリカ)の除去(例えば、溶解)を促進するのに有利であり得る。さらに、苛性溶液を用いたジオール/トリオール成分の添加は、3D印刷オブジェクトから樹脂およびセラミック充填材を除去する間、仕上げ溶液浴を低い操作温度にすることにおいて有利である。すなわち、特定の例では、仕上げ溶液のための動作温度が20~55℃、20~40℃、20~30℃、または周囲温度条件(例えば、20~25℃)の範囲であり得る。
【0032】
さらに、特定の実施例では、ジオールまたはトリオールが、仕上げ溶液の成分(すなわち、有機成分および水)を溶液中で一緒に混合した状態に保つ乳化剤として機能する点において有利であり得る。
【0033】
特定の例において、溶液中に存在するジオール/トリオールの量は、1~50重量%、10~50重量%、20~40重量%、10~20重量%、または20~30重量%の範囲であり得る。
【0034】
[乳化剤]
特定の例では、1種以上の乳化剤(またはジオール/トリオールが乳化剤として機能する程度までの少なくとも1種の追加の乳化剤)が、仕上げ溶液中に存在してもよい。少なくとも1種の乳化剤は、仕上げ溶液の成分(すなわち、有機成分および水)を溶液中で一緒に混合したままにする点において有利である。したがって、グリコールエーテル、苛性物、水、およびジオール/トリオールを一緒に混合された状態に保つことができる任意の乳化剤を提供することができる。
【0035】
いくつかの実施例では、少なくとも1つの乳化剤が、OGNTS(VitechInternational Inc.によって提供されるマイクロエマルジョン濃縮専用ブレンド)、キシレンスルホン酸ナトリウム、メチルエステル、ポリソルベート80、グリセロール、Ampholak yjh-40 (Nouryon Surface Chemistryによる塩を含まないオクチルイミノジプロピオネート濃縮専用乳化ブレンド)、またはそれらの組合せであってもよいが、これらに限定されない。
【0036】
他の例では、乳化剤は両性乳化剤であってもよい。両性乳化剤の非限定的な例としては、RhodiaによるMackam 2CSFおよびAkzo NobelによるAmpholak yjh-40が挙げられる。
【0037】
他の例では、乳化剤はアニオン性乳化剤であってもよい。アニオン性乳化剤の非限定的な例としては、カルボキシレート(例えば、安息香酸ナトリウム)、スルホネート、およびアルキルフェノールが挙げられる。
【0038】
特定の例では、少なくとも1つの乳化剤が、乳化剤成分を安定化させるための添加剤成分を含むことができる。添加剤/安定剤成分は、トリエタノールアミン、ステアリン酸、またはステアリン酸ナトリウムなどの組成物を含むことができる。
【0039】
特定の例において、溶液中に存在する1つ以上の乳化剤の量は、0~20重量%、0~5重量%、0.1~20重量%、0.1~5重量%、0.1~3重量%、0.1~2重量%、または0.1~1重量%の範囲であり得る。
【0040】
[組成物/仕上げ溶液の特性]
特定の例では、仕上げ溶液が、IPAと比較して、不要な材料(例えば、樹脂)のより速い除去時間を提供する。その結果、同じ時間量で市販の仕上げ溶液と比較したとき、本明細書に記載の仕上げ溶液によって、一定の時間内でより多量の樹脂または不要な材料が除去され得る(例えば、体積%または重量%で測定される)。あるいは、より短い時間量で不要な材料の一定量(体積%または重量%)を除去するものとして、より速い除去時間が記載されてもよい。
【0041】
特定の実施例では、本明細書に記載の仕上げ溶液は,サンディング、ブラッシング、またはビードブラスティングなどの追加の後処理(例えば、機械的)行為を非常に少なくするか、または全く行わずに、3D印刷材料の表面から樹脂組成物の不要な未硬化樹脂(例えば、体積%または重量%で測定される)を除去することができる。例えば、仕上げ溶液は、さらなるサンディング、ブラッシング、またはビードブラストをすることなく、3D印刷材料の表面から不要な未硬化樹脂の少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも99重量%を除去するように構成され得る。
【0042】
さらに、仕上げ溶液は、サンディング、ブラッシング、またはビードブラストなどの追加の後処理(例えば、機械的)行為を非常に少なくするか、または全く行わない状態で、3D印刷材料の表面から樹脂組成物の不要なセラミック充填材成分(例えば、体積%または重量%で測定される)を除去するのにも有利である。例えば、仕上げ溶液は、さらなるサンディング、ブラッシング、またはビードブラストを行うことなく、3D印刷材料の表面からセラミックの少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも99重量%を、除去するように構成されてもよい。このような仕上げ溶液は、セラミック充填材を有する樹脂組成物の印刷および硬化後に後続の処理をほとんど伴わない、より迅速な、より安価なプロセスで、3D印刷材料の表面から不要な未硬化樹脂およびセラミック充填材(例えば、シリカ)の両方を除去するのに有利である。
【0043】
特定の例において、本明細書に記載の仕上げ溶液は、少なくとも200°F(93.3℃)、少なくとも210°F(98.9℃)、または少なくとも220°F(104.4℃)の引火点を有する。これは、イソプロパノールアルコール(IPA)などの市販の組成物と比較して、不要な材料を除去するために仕上げ溶液を使用するときに、装置または安全プロトコルの量を減らすことを可能にする点で有利であり得る。加えて、そのような引火点をもって、仕上げ溶液は、本明細書に記載されるような噴霧アプリケーションにおいて使用されるように構成されてもよい。
【0044】
特定の例では、仕上げ溶液が、IPAなどの特定の市販の仕上げ溶液と比較して、改善された寿命を有する。すなわち、本明細書に記載される一定体積の仕上げ溶液は、飽和する前に、より多量の樹脂または不要な材料を除去し得る(IPAなどの市販の仕上げ溶液の同様の一定体積と比較して)。例えば、本明細書に記載の仕上げ溶液は、IPAなどの市販の仕上げ溶液と比較して、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または少なくとも10倍の樹脂または不要な材料を溶解し得る。
【0045】
特定の実施例では、仕上げ溶液が、IPAなどの市販の溶液と比較して、改善された臭気(またはその欠如)を有する。
【0046】
特定の例では、仕上げ溶液は非細胞毒性である。
【0047】
特定の実施例では、仕上げ溶液が、IPAなどの市販の溶液と比較した場合、使用するためのコストがより低い。
【0048】
[使用方法]
本明細書に開示される仕上げ溶液の特定の使用方法では、未完成のオブジェクト(例えば、3D印刷オブジェクト)は、オブジェクトの表面から不要な材料(例えば、樹脂およびセラミック充填材の両方)を除去するためのプロセスに移され、それによって最終部品を提供する。
【0049】
1つのそのような方法では、オブジェクトが液体仕上げ溶液で満たされた(例えば、少なくとも部分的に充填された)タンク内に配置される。オブジェクトは、仕上げ溶液中に浸漬されてもよい。
【0050】
オブジェクトが仕上げ溶液中にある間(例えば、仕上げ溶液中に浸漬されている間)、オブジェクトは、オブジェクトから不要な樹脂を除去するために、超音波撹拌、摩耗、および/または加熱などの機械的エネルギーにさらされ得る。機械的エネルギー撹拌は、液体仕上げ溶液を(例えば、ポンプを介して)超音波周波数で移動させることによって起こり得る。このようなプロセスでは、オブジェクトが超音波を使用して浸漬され、撹拌されて、オブジェクトの表面から、樹脂およびセラミック充填剤(例えば、白色粉末二酸化ケイ素)を含む不要な材料を溶解し、それによって、オブジェクトの最終形態または最終に近い形態を作り出す。超音波撹拌は、浸漬したオブジェクトの表面にエネルギーの打撃を与え、オブジェクトの表面から不要な材料(例えば、セラミック材料)を持ち上げる。
【0051】
熱源からの熱を使用して、仕上げ溶液を所望の温度に維持することができる。これらの条件下で、不要な材料は、熱的に、化学的に、機械的に、またはこれらの方法のうちの2つ以上の組合せを介して除去され得る。
【0052】
図1は、仕上げ溶液を使用する例示的な方法の流れ図を示す。そのような方法のステップは、3D印刷オブジェクト、構築プレート、または構築トレイから不要な材料を除去するのに十分であり得る。
図1に示す方法は、動作1において、オブジェクト又はその一部に仕上げ溶液を付与すること(例えば、オブジェクトを浸漬することによって)を含むことができる。仕上げ溶液の付与は、仕上げを必要とするオブジェクトの全部または一部を仕上げ溶液に浸漬することによって達成することができる。本明細書で使用される場合、「浸漬された」という用語は、仕上げを必要とするオブジェクトまたはその一部を覆うのに十分な深さまでオブジェクトを浸漬する状況を指す。仕上げ溶液は、保持容器/コンテナ(容器)/タンク内に蓄えられる。保持容器/容器/タンクが作製され得る材料の非限定的な例としては、ステンレス鋼、ガラス、高密度ポリエチレン、テフロン(登録商標)、カルレッツ(登録商標)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられる。
【0053】
図1において、工程2において、仕上げ溶液は、少なくとも付与の一部の間、浸漬し、および/または撹拌され得る。撹拌および/または振動は限定されないが、超音波処理(例えば、超音波縦波を仕上げ溶液に送る超音波トランスデューサを介して)、ポンプ(例えば、流体の動きをもたらすためにポンプを使用する)、撹拌、またはそれらの組合せなどの方法によって誘発され得る。特定の具体例において、撹拌は超音波周波数で行われる。
【0054】
超音波処理は0.1Wの値および1750 W未満の範囲のすべてを含む1750Wまでの電力で実行されてもよく、電力は時間的に変化してもよく、0.1kHzの値および範囲のすべてを含む20~100kHzの周波数で実行されてもよい。好ましい例では、周波数は40kHzである。仕上げ溶液を超音波処理することは、仕上げ溶液が別個の相に分離しないように、および/またはオブジェクトに力が加えられるように、または仕上げ溶液を移動させるように、仕上げ溶液を撹拌することができる。オブジェクトに力を加えることは、不要な材料を取り除く及び/又は溶解するのに役立つ。そのような仕上げ溶液は、オブジェクトが浸漬される前に、および/またはオブジェクトが浸漬されている間に、1秒の値を含むすべての範囲を含めて、1~60分間撹拌され得る。
【0055】
超音波は、選択された第1の撹拌周波数で提供されてもよい。第1の周波数によって撹拌されると、反射超音波の振幅がセンサによって検出され得、反射波の振幅が測定され得る。測定された振幅に基づいて、第2の超音波周波数が、例えばデータベースを使用して選択され得る。次いで、選択された第2の超音波周波数を有する超音波が、オブジェクトに向けられ得る。このようにして、第2の超音波周波数は、最適に撹拌されるように選択され得る。
【0056】
このプロセスは、検出された振幅が不要な材料の共振周波数に達したことを示す(例えば、センサフィードバックを介して示す)まで繰り返すことができる。不要な材料が除去されると、残りの材料の共振周波数が変化する可能性があり、したがって、超音波撹拌周波数を選択するプロセスは、時々繰り返される必要がある可能性がある。所望のランタイムに達したとき、オブジェクトは、タンクから取り出され、追加のランタイムが必要であるかどうかを決定するために検査され得る。オブジェクトが「粘着性」であるか、または粗すぎる場合、追加のランタイムが必要とされ得る。
【0057】
図2Aおよび2Bを参照すると、ポンプによる撹拌は、オブジェクトを収容するタンク(28)内に仕上げ溶液を圧送することを含むことができる。例えば、仕上げ溶液は、0.1ガロン/分および範囲の全てを含む1~20ガロン/分の速度でタンク(28)にポンプで送り込まれてもよい。仕上げ溶液をタンク(28)内に圧送することによって、等量の仕上げ溶液をタンク(28)の外に流出させ、堰(20)を介して投入タンク(18)内に流入させ、次いでフィルタを介してドレンに流出させ、ポンプの入口に戻すことができる。仕上げ溶液がタンク(28)内に圧送されると、タンクに入った溶液は、既にタンク内にあった仕上げ溶液と混合する。仕上げ溶液は、オブジェクトが浸漬される前に、および/またはオブジェクトが浸漬されている間に、1秒の値およびその間の全ての範囲を含めて、1~60分間撹拌されてもよい。オブジェクトが浸漬される前の撹拌は、仕上げ溶液の混合を助ける。オブジェクトが浸漬された後の撹拌は、不要な材料を除去するのに役立つ。加えて、流体移動を引き起こす任意の他の方法が、そのような撹拌(例えば、超音波発生器(70)によって誘導されるものなど)を誘導するのに好適であり得る。
【0058】
仕上げ溶液の攪拌は、羽根車、機械的攪拌機、撹拌棒などを用いて行うことができる。仕上げ溶液は、オブジェクトが浸漬される前に、および/またはオブジェクトが浸漬されている間に、1秒の値およびその間の全ての範囲を含めて1~60分間撹拌されてもよい。
【0059】
オブジェクトは、仕上げ溶液中に浸漬され、浸漬の少なくとも一部の間に撹拌されてもよい。オブジェクトは、不要な樹脂を除去するのに十分な時間、浸漬され得る。このような浸漬の間、仕上げ溶液は、浸漬の全時間の間、またはオブジェクトが浸漬される時間の部分の間、撹拌され得る。時間の長さは、1秒の値およびすべての範囲を含む1~60分であってもよい。オブジェクトから不要な材料を除去するのに必要な時間は、オブジェクトの幾何学的形状に依存する。例えば、より複雑な形状は、追加の浸漬時間を必要とし得る。オブジェクトは、1~30分の間の時間(その間の全ての1秒値および範囲を含む)の間、オブジェクトを浸漬することによって十分に仕上げられ得る。また、仕上げ溶液は、浸漬の全期間にわたって、またはオブジェクトが浸漬される時間の一部の間、撹拌されてもよい。
【0060】
撹拌、ポンプ、および/または他の方法によって誘発される仕上げ溶液の撹拌は、仕上げ溶液と仕上げられるべきオブジェクトとの間に摩擦を生じさせ、それによって、不要な材料の除去を促進することができる。不要な材料の除去は、タンク内に配置された超音波トランスデューサによって強化されてもよく、その結果、仕上げ溶液が振動し、次いで、仕上げ溶液がオブジェクトに付与される。一例では、超音波トランスデューサがタンクの側面に配置され、タンク内の仕上げ溶液の回転流に対して接線方向に配向されてもよい。超音波トランスデューサのそのような配置は、仕上げ溶液、したがって、浸漬されたオブジェクトの効率的な撹拌を達成する。超音波トランスデューサによって引き起こされる超音波処理は、不要な材料の表面にキャビテーションを引き起こすことによって不要な材料の除去を高めることができ、キャビテーションによって引き起こされる機械的撹拌は、不要な材料を除去する。そのようなキャビテーションは、キャビテーションが不要な材料の除去を高めるので、有用であり得る。
【0061】
仕上げ溶液は、不要な樹脂の可溶化速度を増加させるために、所定の温度まで加熱されるか、またはその温度に維持されてもよい。例えば、仕上げ溶液は、オブジェクトが浸漬される前及び/又はオブジェクトが浸漬されている間、55℃までの温度(全ての0.1℃の値及び周囲温度(すなわち、20~25℃)と55℃の範囲の全てを含む)に保たれてもよい。例えば、55℃以上の高温では、適切な取扱い上の注意を払うことができる。
【0062】
仕上げ溶液は、仕上げ操作が終了した後に、回収することができる。仕上げ溶液を回収するためのステップは、仕上げ溶液を、オブジェクトから仕上げ溶液を含むタンクに滴下して戻すことを可能にすることを含んでもよい。オブジェクトは、水または他の適切な溶媒ですすがれてもよい。そのようなすすぎは、オブジェクト上に残っている仕上げ溶液を除去するために必要であろう。仕上げ溶液を付与すると、オブジェクトは、粗く、粘着性となっているであろう。粘着性は、表面上に残存する未硬化樹脂に関連する。粗さおよび/または粘着性についてのそのような決定は、個人/操作者の好みによって決定され得る。このような決定は、パーソナル/操作者の手触り(タッチ)によって行うことができる。操作者が、オブジェクトがあまりにも粗いか、またはあまりにも粘着性であると判断した場合、本明細書に記載されるような方法を、所望の粗さおよび/または粘着性が達成されるまで繰り返すことができる。オブジェクトが所望の(またはその欠如した)粘着性および粗さを有する場合、操作者は、オブジェクトをもはや追加の仕上げを必要としないと判定することができる。
【0063】
再び
図1を参照すると、動作3において、オブジェクトは、仕上げ溶液から取り出され得る。加えて、任意の動作4において、オブジェクトは、すすぎ又は乾燥されてもよい。
【0064】
特定の代替方法では、オブジェクト(またはオブジェクトの一部)に仕上げ溶液を噴霧し、次いで、仕上げ溶液をオブジェクトから除去することができる。
【0065】
図2Aは、3D印刷オブジェクトを仕上げるために、本明細書に記載された仕上げ溶液を用いて本明細書に記載された特定の方法に使用されるように構成された機械の実施例を示す。
図2Bは、断面線「2B」によって識別される、
図2Aに示される機械の断面図である。
【0066】
図2Aおよび2Bは、部分仕上げ機100、制御パネル12、カバードア10、フロントパネル8、仕上げ溶液(本明細書に記載されるよう)を保持するように構成されたタンク28、堰20、コンピュータ13、入力タンク18、液面センサ19、壁36、超音波発生器70、タンクマニホールド14、および超音波トランスデューサ22を示す。
【0067】
部品仕上げ機100は(a)3D印刷オブジェクトを仕上げるために使用される機械(例えば、機械(100)のタンク(28)に仕上げ溶液を加える工程と、(b)タンク(28)内に配置されたヒータを使用して、仕上げ溶液を所望の温度に加熱する工程と、(c)ポンプを使用して、タンク内の仕上げ溶液を移動させる工程と、(d)タンクに対して配置された超音波トランスデューサ(22)を使用して、タンク内に超音波縦波および/またはキャビテーションを提供して、仕上げ溶液を撹拌する工程と、(e)オブジェクトを、所望の時間、仕上げ溶液と接触させて、オブジェクトから不要な材料を除去する工程とによって、3D印刷オブジェクトを仕上げる方法に使用することができる。
【0068】
仕上げ溶液中への浸漬は、不要な樹脂の溶解を促進することによって、不要な材料を実質的に弱めるであろう。流体の流れおよび超音波撹拌は、弱くなった不要な材料を緩めるための機械的な力を提供する一方で、不要な材料(例えば、未硬化の材料および/または樹脂)の溶解も容易にする。
【0069】
特定の例では、仕上げ溶液を使用する方法が、ポストプロセステクノロジーズ社(PostProcess Technologies,Inc.)によって製造された機械を使用することによって、達成され得る。適切な機械の実施例には、DEMI(
図1はDEMIの簡略図を示す)、CENTI、およびFORTIが含まれる。付加製造されたオブジェクトから不要な材料を除去するために仕上げ溶液を使用することができる機械の実施形態は、2016年6月1日に出願された米国特許出願公開第2017/0348910号に開示されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
ポンプおよび超音波装置からのさらなる撹拌は、不要な材料を除去するのに必要な時間の量を低減することができる。このような機械を使用することは、次のことを含むことができる。すなわち、(a)蓋(または
図2Aおよび
図2Bに示すカバードア(10)のようなタンク(28)を覆う他の適切な機構)を持ち上げて、仕上げ溶液をタンク(28)に直接注入することにより、機械(100)の頂部から仕上げ液を追加すること、(b)仕上げ溶液が分離しないように、仕上げ溶液を十分に混合すること(例えば、ポンプおよび/または超音波撹拌)、(c)仕上げ溶液を所望の温度に加熱するために、タンク内に配置された液中加熱器を介して仕上げ溶液を加熱すること、(d)仕上げ溶液をタンクを通して移動させ、溶液および/またはオブジェクトを超音波周波数で攪拌するために、ポンプおよび超音波装置を用いて仕上げ溶液を攪拌すること、である。上述のように、超音波撹拌は、オブジェクトの表面から不要なセラミック材料を持ち上げるのを助けるために、浸漬したオブジェクトの表面にエネルギーのブラストを提供するので有利である。
【0071】
機械は、ポンプおよびリザーバを有する自動充填機構を使用して、仕上げ溶液で充填され得る。液面センサ(19)は、タンク(28)または入力タンク(18)内に配置されてもよい。そのセンサからの信号が、液面レベルが低すぎることを示すとき、ポンプは、流体をリザーバからタンク(28)に移動させることができる。溶液は、リザーバに添加される前に予め混合されてもよい。加えて、仕上げ溶液は、成分の分離を防止するために、仕上げ溶液がタンク(28)に添加された後に混合される必要があろう。
【0072】
不要な材料を除去する方法は例えば、
図2Aに示される機械などの機械のタンク内に3D印刷オブジェクトを配置することを含むことができる。所望の実行時間(ランタイム)を決定および/または選択することができ、ポンプによって仕上げ溶液がタンクを循環するようにポンプを始動させることができる。本方法は、(a)仕上げ溶液中にオブジェクトを配置すること、(b)タンク(28)を通して仕上げ溶液を循環させて、オブジェクトを仕上げ溶液中で回転させること、および(c)撹拌および/またはキャビテーションを提供するように仕上げ溶液中のオブジェクトに超音波エネルギー波を向けることを含むことができる。
【0073】
別の実施例では、仕上げ溶液が、オブジェクト上に仕上げ溶液を噴霧することによってオブジェクトに付与されてもよい。噴霧は。オブジェクトに噴霧することができる機械を使用することによって、または噴霧ボトル(例えば、噴霧ノズルを有するボトル)を使用することによって達成され得る。付加製造されたオブジェクトから不要な材料を除去するために仕上げ溶液を使用することができる機械の実施形態は、2017年12月17日に出願された米国特許出願公開第2019/0202126号に開示されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
別の例では、オブジェクトの仕上げは、仕上げ溶液(および仕上げ中のオブジェクト)を保持するために、ミキサー(例えば、撹拌プレートおよび磁気撹拌棒、または機械的攪拌機)およびタンク(例えば、フラスコまたはビーカー)を使用して、ベンチトップ上で行われ得る。オブジェクトは、仕上げ溶液を保持するタンク内に配置されてもよい。オブジェクトがその仕上げ溶液中にある間、ミキサーは仕上げ溶液に力を加え、その結果、仕上げ溶液はタンク内で移動し、またオブジェクトに力を加え、それによって不要な材料がオブジェクトから緩められる。
【0075】
[実施例]
種々の仕上げ溶液の実施例がここに記載される。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
図3A~3Dは、Accura Bluestone樹脂組成物で作製された3D印刷オブジェクト(ルーク)の例を示し、3D印刷オブジェクトから不要な材料を除去する際に様々な仕上げ溶液がどのように機能し得るかを示す。具体的には、
図3Aが任意の仕上げ溶液の付与前の3D印刷オブジェクトの例を示す。
【0085】
図3Bは、腐食性(苛性)またはジオール/トリオール組成物を含まない仕上げ溶液中に浸漬した後の3D印刷オブジェクトの例を示す。印刷オブジェクトを、仕上げ溶液を含むビーカー内で45分間、70~80℃の温度で撹拌した。
図3Bに見られるように、不要な樹脂が除去されている間、かなりの量の望ましくない白色粉末シリカが、ルークの表面上に残る。
【0086】
図3Cは、苛性溶液を有する仕上げ溶液に浸漬した後の3D印刷オブジェクトの例を示す。この実施例では、仕上げ溶液が0.7リットルのブチルカルビトール(2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール)、1.3Lの水、365gの水酸化ナトリウム(~7.0Mの苛性溶液)、および50gのOGNTS乳化剤を含む。仕上げ溶液中でオブジェクトを45~50℃で約1時間超音波攪拌後、不要な樹脂および大部分の白色粉末シリカが除去された。
【0087】
図3Dは、苛性溶液およびジオールを有する仕上げ溶液中に浸漬した後の3D印刷オブジェクトの例を示す。この実施例では、仕上げ溶液が75mlのプロピレングリコールも含まれることを除いて、
図3Cの実施例と同じ溶液である。すなわち、仕上げ溶液は、0.7リットルのブチルカルビトール(2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール)、1.3Lの水、365gの水酸化ナトリウム(~7.0M苛性溶液)、50gのOGNTS乳化剤、および75mlのプロピレングリコールを含む。超音波撹拌後、仕上げ溶液中で40~45℃で約45分間超音波撹拌すると、不要な樹脂および大部分の白色粉末シリカが除去された。
【0088】
図3Cの例と比較して、
図3Dのルークの外観は、不要な樹脂および白色粉末シリカのより大きな除去を示す。さらに、仕上げ溶液浴のより低い操作温度およびより短い時間の撹拌/超音波浴が採用され、改良された仕上げ部品(最終部品)を得た。その際に、仕上げ溶液中への浸漬に続いて、3D印刷部品の表面から残留セラミック粉末コーティングを除去するためにサンドペーパー、ラスプ、またはファイルを用いた激しい/労働負荷の高いスクラビングおよび/または乾式/湿式機械的ビーズブラストなどの機械的処理行為なしに、そのような改善された仕上げ製品を達成した。
【0089】
図4A~4Eは、Accura HPC樹脂組成物で作製された3D印刷オブジェクト(ルーク)の例を示し、3D印刷オブジェクトから不要な材料を除去する際に様々な仕上げ溶液がどのように機能し得るかを示す。具体的には、
図4Aが任意の仕上げ溶液の適用前の3D印刷オブジェクトの例を示す。
【0090】
図4Bは、溶液中に腐食性(苛性)またはジオール/トリオール組成物を含まない仕上げ溶液中に浸漬した後の3D印刷オブジェクトの例を示す。26~27℃で5分間、仕上げ溶液中で超音波および撹拌した後、オブジェクトをブラッシングし、水で洗浄した。
図4B内に見られるように、不要な樹脂が除去されているが、ルークの表面上にかなりの量の不要な白色粉末シリカが残っている。
【0091】
図4Cは、苛性溶液を有する仕上げ溶液に浸漬した後の3D印刷オブジェクトの例を示す。この実施例では、仕上げ溶液は、0.7リットルのブチルカルビトール(2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール)、1.3Lの水、275gの水酸化ナトリウム(~5.0Mの苛性溶液)、および20gのOGNTS乳化剤を含む。52~55℃で約3分間超音波撹拌後、不要な樹脂および大部分の白色粉末シリカが除去された。この実施例は、52~55℃の高温で、大部分のシリカ粉末が短時間でうまく除去され、その後のサンディング、ブラッシング、またはビードブラストのような機械的作用を伴わないことを確認した。
【0092】
図4Dは、苛性溶液およびジオールを有する仕上げ溶液中に浸漬した後の3D印刷オブジェクトの例を示す。この実施例では、仕上げ溶液は、19.2リットルのブチルカルビトール(2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール)、38.4Lの水、3919gの水酸化ナトリウム(~2.5M苛性溶液)、200gのOGNTS乳化剤、および6.4Lのプロピレングリコールを含む。25~27℃で約30分間の超音波撹拌後、不要な樹脂およびほとんどすべての白色粉末シリカが除去された。
【0093】
図4Eは、仕上げ溶液中で追加の15分間の超音波および撹拌(合計45分間)を受けた4Dのオブジェクトと同じオブジェクトを示す。この実施例では、周囲温度に近い条件での溶液中の追加の時間がオブジェクトの表面から残留シリカを除去した。
【0094】
図4Bおよび4Cの実施例と比較して、
図4Dおよび4Eのルークの外観は、不要な樹脂および白色粉末シリカのより大きな除去を示す。加えて、仕上げ溶液浴のより低い操作温度(
図4Cと比較して)を用いて、仕上げ溶液の使用または浸漬後に3D印刷部分の表面から残留セラミック粉末コーティングを除去するためにサンドペーパー、ラスプ、またはファイルを用いた激しい/労働負荷の高いなスクラビングおよび/または乾式/湿式機械的ビーズブラストなどのその後の機械的処理をすることなく、そのような改善された仕上げ製品を達成した。そのため、このような改善された結果を達成するために、より長い浸漬が採用されたが、結果はあまり激しくない操作条件(例えば、
図4Cに示される例の52~55℃に対して25~27℃)で達成可能であった。言い換えれば、苛性溶液およびジオール/トリオールの両方を有する仕上げ溶液の使用は、セラミック充填剤を有する3D印刷オブジェクトの表面から、不要な樹脂およびシリカ粉末の大部分(全てではないが)を除去することに成功し得る。ここで、操作条件は周囲条件に近い状態であり、プロセスは、サンディング(研磨)、ブラッシング、またはビーズブラスティングなどの厳密な後処理機械的行為なしに完了する。
【0095】
本開示の1つまたは複数の実施形態は、本明細書では単に便宜上、かつ本出願の範囲を任意の特定の発明または発明概念に自発的に限定することを意図することなく、「発明」という用語によって、個々におよび/またはまとめて言及され得る。さらに、本明細書では特定の実施形態を例示し説明してきたが、同じまたは同様の目的を達成するように設計された任意の後続の構成を、示された特定の実施形態に置き換えることができることを理解されたい。本開示は、様々な実施形態の任意のおよびすべての後続の適応または変形を網羅することが意図される。上記の実施形態、および本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態の組合せは、説明を検討すると当業者には明らかである。
【0096】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は文脈が明らかに別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。
【0097】
本明細書で使用される「例えば(for example)」、「例えば(for instanc」、「のような(such as)]、または「含む(including)」は、より一般的な主題をより明確にする例を紹介することを意味する。特に明記しない限り、そのような例は、本開示に例示される実施形態を理解するための補助としてのみ提供され、いかなる形でも限定することを意味するものではない。これらの語句は、開示された実施形態に対する任意の種類の選好を示すものではない。
【0098】
本開示の要約は、37 C.F.R§1.72(b)に準拠するために提供され、特許請求の範囲の範囲または意味を解釈または限定するために使用されないという理解の下に提出される。さらに、前述の詳細な説明では、本開示を簡素化する目的で、様々な特徴を一緒にグループ化するか、または単一の実施形態で説明することができる。本開示は、請求される実施形態が各請求項に明示的に列挙されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の主題は、開示された実施形態のいずれかの特徴の全てよりも少ないものを対象とすることができる。したがって、以下の特許請求の範囲は詳細な説明に組み込まれ、各請求項は別々に請求される主題を定義するものとして独立している。
【0099】
前述の詳細な説明は限定的ではなく例示的であると見なされることが意図され、すべての同等を含む以下の特許請求の範囲は本開示の範囲を定義することが意図されることが理解される。特許請求の範囲はその旨記載されない限り、記載された順序または要素に限定されると解釈されるべきではない。したがって、以下の特許請求の範囲およびその同等の範囲および趣旨に含まれるすべての実施形態が、本開示として特許請求される。
【国際調査報告】