(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】手術用ステープラー用の作動シャフト保持機構
(51)【国際特許分類】
A61B 17/072 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
A61B17/072
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525551
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 US2021057278
(87)【国際公開番号】W WO2022094227
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】フォン シュタイン ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】マッギンリー キンボール ビー
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドショー ロバート
(72)【発明者】
【氏名】バイルン アラン
(72)【発明者】
【氏名】ハルヴォルセン クリスチャン エー
(72)【発明者】
【氏名】ナッシュ ジョナサン アール
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160CC09
4C160CC23
4C160NN09
4C160NN10
4C160NN11
(57)【要約】
手術用ステープラー用の電動ハンドルは、電気モータを含む駆動システムを有することができる。電動ハンドルは、手動戻し機構を含むことができる。電動ハンドルは、手動戻し機構の作動時に駆動伝達系構成要素の意図しない移動を防止する保持機構をさらに含むことができる。例えば、保持機構は、ハンドル組立体の遠位端部に向かう作動シャフトの意図しない移動を防止するためにハンドル組立体の作動シャフトに対して方向依存の摩擦力を付与することができる。保持機構は、作動シャフトに対して横向きに向き決めされて作動シャフトの一方の方向の移動を制限し、シャフトの反対方向の移動を許容する複数のリブを有するフェザーボード状の構造を含むことができる。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術用ステープラー用のハンドル組立体であって、
ハンドル本体であって、固定ハンドルと、前記ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを備えるハンドル本体と、
前記ハンドル本体の中に配置された電気モータと、
前記ハンドル本体の中で長手軸に沿って摺動可能であり、前記ハンドル本体の中で前記長手軸の周りに回転可能であり、上部に形成されたラックを備える作動シャフトと、
機械的戻し機構と、
前記機械的戻し機構の作動時に前記作動シャフトの長手方向かつ遠位方向の前進を制限するように構成された保持機構と、
を備えるハンドル組立体。
【請求項2】
前記保持機構は、前記長手軸に対して横向きに延びる複数のフィンを備え、前記複数のフィンは、前記機械的戻し機構の作動時に前記作動シャフトに摩擦係合する、請求項1に記載のハンドル組立体。
【請求項3】
前記保持機構は、前記機械的戻し機構の作動時に前記作動シャフトとの摩擦係合状態に付勢されるプランジャを備える、請求項1に記載のハンドル組立体。
【請求項4】
前記作動シャフトは、前記プランジャを受け入れて前記作動シャフトを予め設定された位置に維持するようにサイズ決定及び構成された溝を備える、請求項3に記載のハンドル組立体。
【請求項5】
前記保持機構は、前記機械的戻し機構の作動時に前記作動シャフトの前記ラックと係合可能な板ばね部材を備える、請求項1に記載のハンドル組立体。
【請求項6】
前記保持機構は、前記作動シャフトの前記ラックの周りに配置された保持部材を備え、前記保持部材は、前記ラックと係合可能なフラップを備える、請求項1に記載のハンドル組立体。
【請求項7】
前記保持機構は、前記機械的戻し機構を前記作動シャフトとの接触状態に維持するように構成された板ばねを備える、請求項1に記載のハンドル組立体。
【請求項8】
前記保持機構は、前記機械的戻し機構の作動時に前記作動シャフトの前記ラックと係合可能な可撓性爪部材を備える、請求項1に記載のハンドル組立体。
【請求項9】
前記保持機構は、前記機械的戻し機構の作動時に前記作動シャフトに係合するように構成された係止レバーを備える、請求項1に記載のハンドル組立体。
【請求項10】
前記作動シャフトは、前記ラックが前記電気モータと係合される電動動作の向きから、前記ラックが前記機械的戻し機構と係合される戻しの向きへと前記長手軸に対して平行な回転軸の周りに回転可能であり、前記回転軸は、前記戻しの向きにおいて、前記保持機構が前記動シャフトと前記ハンドル本体との摩擦係合によって形成されるように、前記長手軸からオフセット配置される、請求項1に記載のハンドル組立体。
【請求項11】
前記ハンドル本体は、内部に圧潰部材を備え、前記圧潰部材は、前記機械的戻し機構の作動時に前記作動シャフトと係合するように位置決めされる、請求項1に記載のハンドル組立体。
【請求項12】
前記保持機構は、前記機械的戻し機構の作動時に前記ラックと係合可能な作動楔を備える、請求項1に記載のハンドル組立体。
【請求項13】
手術用ステープラー用のハンドル組立体であって、
ハンドル本体であって、固定ハンドルと、前記ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを備えるハンドル本体と、
前記ハンドル本体の中に配置された電気モータと、
前記ハンドル本体の中で長手軸に沿って摺動可能であり、前記ハンドル本体の中で前記長手軸の周りに回転可能であり、上部に形成されたラックを備える作動シャフトと、
機械的戻し機構と、
前記機械的戻し機構の作動時に前記作動シャフトと係合可能な複数のフィンであって、前記長手軸に対して横向きに延びて前記作動シャフトの近位方向の移動を許容し、前記作動シャフトの遠位方向の移動を制限する複数のフィンと、
を備えるハンドル組立体。
【請求項14】
前記複数のフィンの各フィンは、前記長手軸に対しておよそ30度からおよそ75度までの範囲内にある角度で延びる、請求項13に記載のハンドル組立体。
【請求項15】
前記複数のフィンの各フィンは、前記長手軸に対しておよそ60度の角度で延びる、請求項14に記載のハンドル組立体。
【請求項16】
前記複数のフィンは、2つのフィンを備える、請求項13に記載のハンドル組立体。
【請求項17】
前記2つのフィンの間に延びる間隙をさらに備える、請求項16に記載のハンドル組立体。
【請求項18】
前記複数のフィンは、前記ハンドル本体から半径方向内向きに延びる、請求項13に記載のハンドル組立体。
【請求項19】
前記作動シャフトは、前記ラックが前記電気モータと動作可能に係合されて前記作動シャフトを長手方向に摺動させる第1の位置から、前記ラックが前記電気モータから解放されて前記手動戻し機構と係合されると共に前記複数のフィンと係合される第2の位置まで回転可能である、請求項13に記載のハンドル組立体。
【請求項20】
手術用ステープラー用のハンドル組立体であって、
ハンドル本体であって、固定ハンドルと、前記ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを備えるハンドル本体と、
前記ハンドル本体の中に配置された電気モータと、
前記ハンドル本体の中で長手軸に沿って摺動可能であり、前記ハンドル本体の中で前記長手軸の周りに回転可能であり、上部に形成されたラックを備える作動シャフトと、
シャフト回転機構とシャフト後退機構とを備える機械的戻し機構と、
前記シャフト後退機構の作動時に前記作動シャフトの長手方向かつ遠位方向の前進を防止するように構成された保持機構と、
を備え、
前記作動シャフトは、前記ラックが前記電気モータと動作可能に係合されて前記作動シャフトを長手方向に摺動させる第1の位置から、前記ラックが前記電気モータから解放されて前記手動戻し機構と係合されると共に前記保持機構と係合される第2の位置まで回転可能である、ハンドル組立体。
【請求項21】
前記保持機構は、前記ハンドル本体から半径方向内向きに延びて、前記作動シャフトが前記第1の位置にある場合に前記ラックとの整列から外れるように位置決めされるフェザーボード要素を備える、請求項20に記載のハンドル組立体。
【請求項22】
前記保持機構は、前記作動シャフトが前記第1の位置にある状況で該作動シャフトとの整列から外れるように位置決めされる係止レバーを備える、請求項20に記載のハンドル組立体。
【請求項23】
前記保持機構は、前記ハンドル本体から半径方向内向きに延びる圧潰要素を備え、前記圧潰要素は、前記作動シャフトが前記第1の位置にある場合に前記作動シャフトとの整列から外れるように位置決めされ、前記作動シャフトが前記第2の位置にある場合に前記作動シャフトと摩擦係合可能である、請求項20に記載のハンドル組立体。
【請求項24】
前記圧潰要素は、前記長手軸に対して横向きに延びる複数の圧縮性リブを備える、請求項23に記載のハンドル組立体。
【請求項25】
前記圧潰要素は、圧縮性ドームセクションを備える、請求項23に記載のハンドル組立体。
【請求項26】
前記圧潰要素は、前記長手軸に対して平行に延びる長手方向リブを備える、請求項23に記載のハンドル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2020年10月29日出願の米国仮特許出願番号第63/107,112号「Actuation Shaft Retention Mechanism for Surgical Stapler(手術用ステープラー用の作動シャフト保持機構)」に対する優先権及びその利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本出願は、一般的に手術用閉塞器具に関し、より具体的には手術用ステープラーに関する。
【背景技術】
【0003】
手術用ステープラーは、組織に近づいてそれを挟持し、挟持組織をステープラー針で縫合するために用いられる。従って、手術用ステープラーは、組織を挟持し、組織を通してステープラー針を打ち込む機構を有する。その結果、この機構は、例えば、多様なトリガー及びハンドルを、挟持組織の適正なステープラー針縫合を施すための複雑な機構と併せて生み出してきた。これらの複雑な機構を用いることで、手術用ステープラーは、高い製造負担、並びにデバイスの故障及びユーザの混乱の潜在的な発生源を有する場合がある。従って、複雑な機構を用いない信頼性の高い挟持組織のステープラー針縫合が望ましい。
【0004】
ジョー組立体に挟持させてそこからステープラー針を発射するための電動モータを有する手術用ステープラーは、組織を通してステープラー針を適用するためのユーザの労力を低減させて手術中に複数のステープラー針列を配置する時の作業負荷を低減させることによってステープラー針縫合を容易にすることができる。ユーザが特定の事例においてステープラーを初期構成に手動で戻すことを可能にする手動戻し機構を電動ステープラーが有することが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
特定の実施形態では、手術用ステープラー用のハンドル組立体が提供される。ハンドル組立体は、ハンドル本体と、電気モータと、作動シャフトと、機械的戻し機構と、保持機構とを備える。ハンドル本体は、固定ハンドルと、それに枢動可能に結合されたトリガーとを備える。電気モータは、ハンドル本体の中に配置される。作動シャフトは、ハンドル本体の中で長手軸に沿って摺動可能であると共にハンドル本体の中で長手軸の周りに回転可能である。作動シャフトは、その上に形成されたラックを備える。保持機構は、機械的戻し機構の作動時に作動シャフトの長手方向かつ遠位方向の前進を制限するように構成されている。
【0006】
特定の実施形態では、手術用ステープラー用のハンドル組立体が提供される。ハンドル組立体は、ハンドル本体と、電気モータと、作動シャフトと、機械的戻し機構と、作動シャフトと係合可能な複数のフィンとを備える。ハンドル本体は、固定ハンドルと、それに枢動可能に結合されたトリガーとを備える。電気モータは、ハンドル本体の中に配置される。作動シャフトは、ハンドル本体の中で長手軸に沿って摺動可能であると共にハンドル本体の中で長手軸の周りに回転可能である。作動シャフトは、その上に形成されたラックを備える。複数のフィンは、機械的戻し機構の作動時に作動シャフトと係合可能である。複数のフィンは、長手軸に対して横向きに延びて作動シャフトの近位方向の移動を許容し、作動シャフトの遠位方向の移動を制限する。
【0007】
特定の実施形態では、手術用ステープラー用のハンドル組立体が提供される。ハンドル組立体は、ハンドル本体と、電気モータと、作動シャフトと、機械的戻し機構と、保持機構とを備える。ハンドル本体は、固定ハンドルと、それに枢動可能に結合されたトリガーとを備える。電気モータは、ハンドル本体の中に配置される。作動シャフトは、ハンドル本体の中で長手軸に沿って摺動可能であると共にハンドル本体の中で長手軸の周りに回転可能である。作動シャフトは、その上に形成されたラックを備える。機械的戻し機構は、シャフト回転機構とシャフト後退機構とを備える。保持機構は、シャフト後退機構の作動時に作動シャフトの長手方向かつ遠位方向の前進を防止するように構成されている。作動シャフトは、ラックが電気モータと動作可能に係合されて作動シャフトを長手方向に摺動させる第1の位置から、ラックが電気モータから解放されて手動戻し機構と係合されると共に保持機構と係合される第2の位置まで回転可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】電動ハンドルの一実施形態を有する手術用ステープラー針縫合システムの一実施形態の斜視図である。
【
図2】
図1の手術用ステープラー針縫合システムの電動ハンドルの側面図である。
【
図3】駆動システムを示すために構成要素を取り外した
図2の電動ハンドルの部分破断斜視図である。
【
図4】優先戻し機構が解放構成にある
図2の電動ハンドルの斜視図である。
【
図5】戻し構成への移動のために優先戻し機構がロック解除された
図2の電動ハンドルの斜視図である。
【
図6】戻し構成への移動のために優先戻し機構がロック解除された
図2の電動ハンドルの斜視部分破断図である。
【
図7】優先戻し機構が解放構成にある
図2の電動ハンドルの部分破断側面図である。
【
図8】戻し構成への移動のために優先戻し機構がロック解除された
図2の電動ハンドルの部分破断側面図である。
【
図9】優先戻し機構が戻し構成にある
図2の電動ハンドルの斜視図である。
【
図10】優先戻し機構が戻し構成にある
図2の電動ハンドルの斜視部分破断図である。
【
図11】優先戻し機構が戻し構成にあり、手動戻しサイクルが開始された
図2の電動ハンドルの斜視部分破断図である。
【
図12A】
図2の電動ハンドルの優先戻し機構の戻し爪の斜視図である。
【
図12B】
図2の電動ハンドルの優先戻し機構の側面図である。
【
図12C】
図2の電動ハンドルの優先戻し機構の側面図である。
【
図13】作動シャフトが作動機構から取り外された
図2の電動ハンドルの部分破断斜視図である。
【
図14】作動シャフト保持機構の一実施形態を有する
図2の電動ハンドルの部分破断斜視図である。
【
図18】優先戻し機構が解放構成にある
図14の作動シャフト及び保持機構の断面端面図である。
【
図19】優先戻し機構が戻し構成にある
図14の作動シャフト及び保持機構の断面端面図である。
【
図20】保持機構の別の実施形態を有する電動ハンドル組立体の破断側面図である。
【
図21】作動シャフトの一実施形態上に配置された保持機構の別の実施形態の斜視図である。
【
図23】作動シャフトの一実施形態上に配置された保持機構の別の実施形態の斜視図である。
【
図24】電動ハンドルの作動機構の一実施形態の保持機構の破断斜視図である。
【
図25】解放構成にある優先戻し機構の一実施形態の側面図である。
【
図26】戻し構成にある
図25の優先戻し機構の側面図である。
【
図27】
図25の優先戻し機構上に位置決めされた保持機構の別の実施形態の詳細斜視図である。
【
図28】保持機構の別の実施形態を有する優先戻し機構の実施形態の破断斜視図である。
【
図30】作動シャフトが電動ハンドルの電動動作に適するように向きが定められた保持機構の別の実施形態を有する電動ハンドルの作動機構の実施形態の破断側面図である。
【
図31】作動シャフトが手動戻し機構による動作に適するように向きが定められた
図30の作動機構の破断側面図である。
【
図32】保持機構が作動シャフトの長手方向移動を維持する
図30の作動機構の破断側面図である。
【
図33】優先戻し機構が解放構成にある電動ハンドルの作動機構の一実施形態の断面端面図である。
【
図34】優先戻し機構が戻し構成にある電動ハンドルの作動機構の一実施形態の断面端面図である。
【
図35】戻し構成にある
図32の優先戻し機構の詳細図である。
【
図36】解放構成にある電動ハンドルの作動機構の一実施形態の断面端面図である。
【
図37】戻し構成にある電動ハンドルの作動機構の一実施形態の断面端面図である。
【
図38】
図35の作動機構用の保持機構の一実施形態の詳細斜視図である。
【
図39】
図35の作動機構用の保持機構の別の実施形態の詳細斜視図である。
【
図40】
図35の作動機構用の保持機構の別の実施形態の詳細斜視図である。
【
図41】優先戻し機構が解放構成にある電動ハンドルの作動機構用の保持機構の別の実施形態の詳細側面図である。
【
図42】優先戻し機構が戻し構成にある
図40の保持機構の詳細側面図である。
【
図43】保持機構が作動シャフトに係合した
図40の保持機構の詳細側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から2を参照すると、手術用ステープラー針縫合システムの一実施形態が例示される。例示される手術用ステープラー10の実施形態は、細長シャフト20と、ジョー組立体30と、ハンドル組立体40とを備える。
図1は、電動ステープラー針発射部と手動ジョー組立体関節部とを有する電動ハンドルの実施形態を有する、開放構成にあるジョー組立体30を有する手術用ステープラー10を示す。
図2は、細長シャフトが取り外された手術用ステープラーシステム10の電動ハンドル40を示す。
図2の電動ハンドル40は、電動ステープラー針発射部と手動ジョー組立体関節部作とを有する。例示される実施形態では、シャフト20及びジョー組立体30は、シャフト20によって定義される長手軸の周りにハンドル40上の回転ノブの回転によって自由に回転することができる。他の実施形態では、ステープラー針縫合システムは、長手軸の周りのジョー組立体の回転を所定の範囲内で許容するように構成すること又はジョー組立体を回転可能に固定することができる。
【0010】
図1の参照を続けると、例示される手術用ステープラー10の実施形態は、腹腔鏡外科的処置での使用に適するようにサイズ決定及び構成することができる。例えば、細長シャフト20及びジョー組立体30は、アクセスポート又は套管針カニューレを通して手術野の中に導入するようにサイズ決定及び構成することができる。いくつかの実施形態では、細長シャフト20及びジョー組立体30は、例えば8mm未満等の比較的小さい作業チャネル径を有する套管針カニューレを通して挿入されるようにサイズ決定及び構成することができる。他の実施形態では、細長シャフト20及びジョー組立体30は、例えば、10mm、11mm、12mm、又は15mm等のより長い作業チャネル径を有する套管針カニューレを通して挿入されるようにサイズ決定及び構成することができる。他の実施形態では、本明細書で説明する手術用ステープラーの特定の態様は、直視下外科的処置における使用に適する手術用ステープラー針縫合デバイスの中に組み込むことができることが企図される。
【0011】
図1の参照を続けると、例示されるように、細長シャフト20は、略管状部材を備える。細長シャフト20は、近位端部から遠位端部まで延びる。細長シャフト20は、近位端部22と遠位端部24との間で延びる手術用ステープラー10の中心長手軸Lを定義する。
【0012】
図1の参照を続けると、例示される実施形態では、ジョー組立体30は、細長シャフト20の遠位端部で細長シャフト20に結合される。ジョー組立体30は、第1のジョー32と、それに枢動可能に結合された第2のジョー34とを備える。例示される実施形態では、第1のジョー32は、中心長手軸Lに沿って遠位方向に延び、ハンドル40内にある関節動作機構に応じて細長シャフト20に関して関節動作可能であるように細長シャフト20の遠位端部24に固定される。初期構成では、第1のジョー32は、その中で再装填部50の中に配置された複数のステープラー針36を含む。他の実施形態では、再装填部50は、全体のシャフト組立体20と、ステープラー針が装填されたジョー組立体30とが単一の再装填組立体を形成するようにジョー組立体30と統合することができる。いくつかの実施形態では、ステープラー針は、最初に第2のジョー34内に位置決めすることができる。
【0013】
図1の参照を続けると、例示される実施形態では、ジョー組立体30は、細長シャフトの中で長手方向に摺動可能な駆動部材又はビームによって開放構成(
図1)から閉鎖構成へ、さらにステープラー針縫合構成へと作動させることができる。初期位置では、ビームは、細長シャフト20の遠位端部24に位置決めすることができる。ビームが初期位置にある状況において、ジョー組立体30が開放構成になるように、第2のジョー34は第1のジョー32から離れるように枢動する。作動ビームは、長手軸Lに沿う遠位方向の作動部材又は作動ビームの平行移動時に第2のジョー34に係合する。初期位置からの遠位方向の作動ビームの第1の距離の平行移動は、ジョー組立体を開放構成から閉鎖構成へと作動させることができる。ジョー組立体30が閉鎖構成にある状況において、ジョー組立体30を開放構成に戻すために、作動ビームを第1の距離だけ近位方向に戻すことができる。作動ビームの遠位端部は、第1のジョー32からステープラー針を留置するように構成されたステープラー針スライダを前進させることができ、第1の距離を通り過ぎる遠位方向の作動ビームの平行移動が第1のジョー32内の再装填部50から複数のステープラー針36を留置するようなっている。
【0014】
図1の参照を続けると、例示される実施形態では、ハンドル組立体は、細長シャフト20の近位端部で細長シャフト20に結合されるように構成される。例示されるように、ハンドル組立体40は、固定ハンドル42と、それに枢動可能に結合された可動ハンドル44又はトリガーとを定めるハウジングを有するピストルグリップ構成を有する。他の実施形態では、本明細書で説明する態様を含む手術用ステープラーデバイスは、例えばはさみグリップ構成又は直列構成等の他の構成を有するハンドル組立体を有することができることが企図される。下記でより詳細に説明するように、ハンドル組立体40は、可動ハンドル44の移動に応じて作動シャフトを選択的に前進させるように構成された電動作動機構を収容する。
【0015】
例示される実施形態では、手術用ステープラー10は、使い捨て可能カートリッジ再装填部50内に位置決めされた複数のステープラー針36を含むことができ、一方でジョー組立体30は、1回の処置で複数のステープラー針カートリッジ再装填部50と共に再使用されるように構成されている。いくつかの実施形態では、細長シャフト20及びジョー組立体30は、ハンドル組立体40に取り外し可能に結合可能な使い捨て可能再装填シャフトを形成する。従って、例示される実施形態では、ハンドル組立体40は、その遠位端部に結合器46を含む。結合器46は、手術用ステープラー10の細長シャフト20に係合するように構成される。結合器46は、ハンドル組立体42を細長シャフト20に取り外し可能に結合することができる外側コネクタと、ハンドル組立体42の作動シャフトを細長シャフト20の駆動部材に取り外し可能に結合することができる第1の内側コネクタと、ハンドル組立体42の関節結合器を細長シャフト20の関節リンクに取り外し可能に結合することができる第2の内側コネクタとを有するバヨネット接続部を有することができる。これら3つの取り外し可能結合は、細長シャフト20がハンドル組立体42に結合された時に同時に発生する。従って、手術用ステープラー10は、外科的処置中にハンドル組立体40を複数の再装填シャフト20と併せて再使用することができるように構成することができる。他の実施形態では、ハンドル組立体及び細長シャフトのいくつかの部分を再使用可能とすることができ、一方でジョー組立体内の細長シャフトは、使い捨て可能カートリッジを形成することが企図される。特定の他の実施形態では、ハンドル組立体及び細長シャフトを再使用可能とすることができるが、ジョー組立体は使い捨て可能カートリッジを形成する。他の実施形態では、複数のステープラー針を収容するジョーインサートが使い捨て可能カートリッジを形成することができるが、手術用ステープラーの残りの部分は再使用可能である。
【0016】
図2を参照すると、手術用ステープラー針縫合システムのための電動ハンドルの一実施形態が例示されている。電動ハンドルは、特定の処置のためのシャフト構成、ジョー組立体構成、及びステープラー針構成を選択することができるように、様々なシャフト再装填部及びカートリッジと共に使用することができる。例示されるハンドル実施形態は、ジョーの電動(モータ駆動)の挟持及び閉鎖と、ステープラー針列の発射とを可能にする。ジョー組立体の関節部は、操作者が回転させる関節動作ノブによって手動で制御することができる。モータは、様々な使用過程の間にハンドルの機能を統制する組み込み制御システムによって制御される。
【0017】
図2の参照を続けると、電動ハンドル40は、固定ハンドル42と、そこに枢動可能に結合された可動ハンドル44又はトリガーとを有するピストルグリップ構成を備える。電源130又はバッテリは、固定ハンドルの下面上に位置決めすることができる。電動ハンドル40は、ユーザがステープラー針縫合シーケンスを選択的に制御することを可能にする発射ボタン又は発射/取消ボタン150等のユーザ制御器をさらに備えることができる。電動ハンドル40は、電動システムの故障、制御システムの故障、電源の故障、「ジョーのロック」、又は他の機械的固着の場合にユーザがステープラー針縫合システムを開放構成に手動で戻すことを可能にする冗長的な手動優先戻しシステム170をさらに備えることができる。電動ハンドルは、回転可能な関節動作ノブ190を含む手動関節動作機構をさらに備えることができる。例示される実施形態では、関節動作ノブ190は、電動ハンドルの近位端部に位置決めされて、ステープラー針縫合システムの長手軸に略対応する軸の周りに回転可能である。いくつかの実施形態では、電動ハンドルは、所望のステータス標識をユーザに対して表示するための環状光リング等の照明ユーザディスプレイをさらに含むことができる。
【0018】
電動ハンドル組立体及びそれに関連する作動機構の様々な実施形態は、2017年4月12日出願の米国特許出願番号第15/486,227号「Reload Shaft Assembly for Surgical Stapler(手術用ステープラー用の再装填シャフト組立体)」、及び2017年4月12日出願の米国特許出願番号第15/486,008号「Surgical Stapler Having a Powered Handle(電動ハンドルを有する手術用ステープラー)」に開示されており、これらの開示内容全体は引用によって本明細書に組み込まれている。
【0019】
電動駆動システム
図3を参照すると、電動ハンドルの部分破断図が示されている。例示される破断図では、電動ハンドルの駆動システムを明瞭に示すために、電動ハンドルの幾つかの構成要素は取り外している。例示される実施形態では、駆動システムは、固定ハンドル42の中に位置決めされたモータ112と、モータ112の出力シャフト上に位置決めされたモータギヤ114と、モータギヤ114との従動係合状態にある補助ギヤ116とを備える。いくつかの実施形態では、モータ112は、ブラシ付きDCギヤモータである。有利には、補助ギヤ116を通じて動力を伝達することによって、モータ112を固定ハンドル内で横方向に中心合わせし、ハンドルバランス及びユーザ人間工学性を向上させることを可能にすることができる。さらに、いくつかの実施形態では、モータギヤ114及び補助ギヤ116は、ラック122に所望の動作トルクを与えるように構成することができる。いくつかの実施形態では、モータ112は、所望の動作トルクを与えるために、モータ112と補助ギヤ116に結合されたモータギヤ114との間に動作可能に結合された多ギヤ動力伝達部を含むことができる。モータ112は、制御システムを介して電源130に電気的に接続することができる。ハンドルの中にある制御システムは、駆動システムと連動して作動シャフト120の位置を、従ってジョー組立体の作動を測定する。
【0020】
駆動システムは、ハンドルの中にあるマイクロコントローラを含む制御システムに情報を供給するハードウェアに取り付けられる。この組み込みシステムは、モータの速度及びトルクを制御することができる。また、この組み込みシステムは、ユーザ入力(トリガーの移動及び発射/取消ボタンの押下)と、駆動システムの位置とに基づいてデバイスの機能を制御することもできる。さらに、制御システムは、モータからのフィードバックを測定してステープラー針を発射し続けるのに負荷が高過ぎるか否か、又は再装填カートリッジロックアウトが作動されたか否かを決定することもできる。また、制御システムは、バッテリ寿命を測定することもでき、デバイスの発射回数を制限することができる。駆動システムは、主に電動動作に適するように構成されるが、特定の実施形態では、本明細書でさらに詳しく説明するように、電動動作を無効にするための手動戻し機構を設けることが望ましい場合がある。
【0021】
図3の参照を続けると、例示される実施形態では、駆動システムは、その端点の間で支持板121によって支持された分岐補助ギヤ116を備える。有利には、補助ギヤ116に関するこの支持構成は、高負荷条件下で補助ギヤ116から分離するモータギヤ114の傾向を大幅に低減させることができる堅固な機構をもたらす。他の実施形態では、駆動システムは、分岐しない補助ギヤを備えることができる。
【0022】
手動優先戻しシステム
図4から12Cを参照すると、電動ハンドル用の手動戻し機構の一実施形態が例示されている。手動戻し機構は、電源の故障、他の電動構成要素の故障、或いは機械的な故障又は固着の場合の冗長的な戻し機構を有利の提供することができる。
【0023】
図4から11を参照すると、手動戻し機構は、ジョー組立体の開放構成に対応するハンドル内で最も近位の位置まで、作動シャフト120を戻すために順次動作される3つの別個の、独立して動作可能な部分組立体を含む。例示されるように、手動戻し機構170は、戻しロック機構と、シャフト回転機構と、シャフト後退機構とを備える。
図4は、戻しロック機構がロック構成にある電動動作モードの電動ハンドルを示す。動作時、ステープラーを開放構成に手動で戻すのが望ましい場合、最初に手動戻し機構をロック解除するために戻しロック機構が作動される。
【0024】
図5及び6に例示されるように、戻しロック機構を作動させるために、最初に戻しロック171が、ハンドル組立体のハウジングに対して近位方向に摺動する。戻しロック171のこの移動は、シャフト回転機構とシャフト後退機構とをロック解除する。例示される実施形態では、戻しロック171は、シャフト回転機構の移動を阻止する位置から引き離され、使用に向けてシャフト回転機構が露出する。同時に、戻しロック171は、シャフト後退機構の上にあるロック突出部173又はロックタブから解放され、シャフト後退機構は、ハンドル組立体から離れるように枢動することが可能になる。シャフト後退機構のレバーは、ハンドル組立体から離れるように付勢され、戻しロックが近位方向に摺動された時にレバーをハンドル組立体から離れるように枢動させることができる。
【0025】
図7及び8を参照すると、戻し機構をロック解除するために戻しロックが近位方向に摺動されると、戻しロック171は、ハンドル組立体の制御ユニットに電気的に接続してハンドル組立体への動力供給を遮断することができる。従って、戻しロック機構が動作されると、ユーザが繰り返し使用するために手動戻し機構及び駆動システムを手動で位置変更しようと試みる場合であっても、ハンドルは、さらなる使用から無効にすることができる。例示される実施形態では、ハンドル組立体が電動動作に適するように構成される場合(
図7)、戻しロックは、制御ユニットを有する回路基板144から電気的に解放される。特定の実施形態では、戻し機構をロック解除するために戻しロックが近位方向に摺動される場合、戻しロックは、打ち抜きばね構成要素175を近位方向に移動させ、ばね構成要素175は、回路基板144上にある回路に電気的に係合してハンドル組立体への動力供給を遮断する。ばね構成要素175は、近位方向移動のみに適するように構成され、戻しロックがその初期位置へと遠位方向に戻された場合であっても遠位方向に戻らない。従って、戻しロック171を摺動させることによって戻し機構をロック解除することによって、ハンドル組立体の電動機能は継続的に利用不能になる。
【0026】
図9及び10を参照すると、手動戻し機構170のシャフト回転機構を動作させるために、ユーザは、この時点では戻しロックの移動によって阻止解除された、ハンドルの外面上まで延びる回転レバー172を回転させる。回転レバー172は、作動シャフトに回転可能に結合されたシャフト回転カラーに結合される。例示される実施形態では、作動シャフト120は、シャフト回転カラー176の中を通って延び、その中を通って摺動可能である。従って、シャフト回転カラー176を回転させると、作動シャフト120が、その長手軸の周りにおよそ90度回転する。この回転は、作動シャフトのラック122を、駆動システムの補助ギヤ116との解放状態に位置決めする。作動シャフト120は作動アダプタ(
図3)に回転可能に結合されるので、作動シャフト120のこの回転は、作動アダプタに影響を及ぼすことなく達成することができる。特定の実施形態では、作動シャフト120は、ラック122に隣接して延びる凹型外面124を備え、ラック122が補助ギヤ116から解放されるように作動シャフト120が回転される場合に、凹型外面124は、補助ギヤ116から相隔たるようになっている。
【0027】
例示される実施形態は、ユーザによって回転される回転レバー172を有するシャフト回転機構を含むが、他の実施形態では、シャフト回転機構は、戻しロックの近位方向移動の際に自己展開するように構成することができる。例えば、自己展開シャフト回転機構は、ねじれ付勢部を有するシャフト回転カラーを含むことができる。特定の実施形態では、シャフト回転カラーは、ねじればねによってハンドル組立体に結合される。戻しロックが近位方向に摺動されると、シャフト回転のねじれ付勢部は、作動ラックを補助ギヤから解放させてシャフト後退機構と係合させるように、作動ラックを回転させる傾向がある。
【0028】
図10及び11を参照すると、シャフト回転機構が動作すると、シャフト後退機構は、作動シャフトを近位方向にハンドルの中に戻すように動作することができる。戻しロックを近位方向にハンドル組立体の中に摺動させることによって、電動ハンドル上の戻しレバー180がロック解除される。戻しレバー180は、戻し爪182に枢動継手184で枢動可能に結合される。作動シャフト120のラック122は、回転されて駆動システムとの係合が解除されると、シャフト後退機構との係合状態に回転される。戻し爪182を作動シャフト120上のラック122と係合させてラチェット型動作で作動シャフト120をハンドルの中に近位方向に後退させるために、戻しレバー180は1回又は連続回の戻しサイクル(
図10、
図11)を通して回転させることができる。
【0029】
図12Aから12Cを参照すると、戻し爪182は、作動シャフトの後退を容易にするように構成することができる。例示される実施形態では、戻し爪182は、戻しサイクルの一部の間にモータマウントのガイド部材127と相互作用するように位置決めされた突起部又は第2の爪歯183を備える。電動動作中に、第2の爪歯183はガイド部材127に接触し、戻し爪182は、作動シャフト120のラック122に係合することが制限される(
図12B)。望ましくは、第2の爪歯183は、戻しサイクルの一部の間に戻し爪182とラック122との係合を制限するように位置決めすることができ、さもなければユーザは、比較的低い機械的倍率しか得ないことになる。例示されるように、第2の爪歯183は、戻しレバー180が作動シャフト120の長手軸に対して予め設定された所望の機械的倍率を与える角度に位置決めされる(
図12C)まで、戻し爪182がラック122に係合するのを阻止する。
【0030】
図13を参照すると、手術用ステープラー用のハンドル組立体40の部分破断斜視図が例示されている。電動動作では、ハンドル組立体の作動シャフト120は、エンドエフェクタのジョーに挟持させて1回又は2回以上の発射サイクルにわたってステープラー針を発射するために、駆動システムに動作可能に結合したままである。特定の事例では、作動シャフトを駆動システムから解放して近位位置に戻すために手動戻し機構を作動させる必要がある場合、手動戻し機構の動作及びハンドル組立体40からの細長シャフトの取り外しに続いて、作動シャフト120は、駆動システム及び手動戻し機構の両方から解放状態になることができる。これらの状況では、作動シャフトは、遠位方向にハンドル組立体の外に部分的又は全体的に移動することができる。例えば、特定の事例では、遠位端部が下向きに向いた状態でハンドル組立体40が配向される場合、作動シャフト120の重量により、作動シャフト120自体はハンドル組立体に対して遠位方向に移動することができる。
図13は、作動シャフトがハンドル組立体から遠位方向に完全に抜け出した状態のハンドル組立体を示す。手動戻し機構の作動及び細長シャフトの切り離しの後に初めて発生するかかる状態は、患者に対してリスクを課すことはないと考えられるが、手動戻し機構の作動後にハンドル組立体の完全性を維持するのが望ましい。しかしながら、特定の実施形態では、ハンドル組立体40が、手動戻し機構の動作の後に作動シャフト120の遠位方向移動を防止する又はその可能性を低減させる保持機構をさらに備えるのが望ましい。
【0031】
作動シャフト保持機構
図14から19を参照すると、手動戻し機構用の保持機構210の一実施形態の特定の態様が例示されている。例示される実施形態では、保持機構210は、手動戻し機構によって係合された場合の作動シャフトの近位方向移動を許容し、作動シャフトの遠位方向の移動を制限するように位置決めされたフェザーボード状(featherboard-like)の複数のフィン212又はリブを備える。
【0032】
図14から15を参照すると、特定の実施形態では、複数のフィン212は、ハンドル組立体40のハウジング内で作動シャフト120に隣接するように配置することができる。例示されるように、いくつかの実施形態では、複数のフィン212を備えるフェザーボード幾何学構成体は、ハンドル組立体40の中で作動シャフト120に対する支持ハウジング214と一体形成することができる。例えば、特定の実施形態では、支持ハウジング214は、射出モールド成形プロセスによって形成することができ、複数のフィン212は、支持ハウジング214と一緒に射出モールド成形することができる。
【0033】
図14から15の参照を続けると、例示される実施形態では、フェザーボード幾何学構成体は、作動シャフト120の長手軸を横断して所定の角度で配列された複数のフィン212又はリブを備える。複数のフィン212のこの横断配列は、望ましくは、作動シャフト120に方向依存の摩擦力を与えることができる。複数のフィン212は、作動シャフト120との接触状態にある状況において、作動シャフトがハンドル組立体に対して近位方向に移動される場合に作動シャフト212に第1の摩擦力を与え、作動シャフトがハンドル組立体に対して遠位方向に移動される時に第1の摩擦力よりも大きい第2の摩擦力を与える。従って、望ましくは、複数のフィン212の横断角構成は、作動シャフトを近位方向にハンドル組立体の中に戻すために手動戻し機構に加えられる力入力に対して加えられる摩擦力に比較的小さな影響しか与えない。しかし、作動シャフトは、第2の摩擦力によってハンドル組立体の中で遠位方向に移動することが制限される。
【0034】
図16を参照すると、ハンドル組立体用の支持ハウジング214の一実施形態内に配置された作動シャフト120の一実施形態が例示されている。
図16の実施形態では、作動シャフトと支持ハウジングとの相互作用の特定の態様の明視化を向上させるために、作動シャフト120及び支持ハウジング214しか例示しておらず、ハンドル組立体の他の構成要素は隠されている。例示される実施形態では、作動シャフト120は、手動戻し機構を有するハンドル組立体に対する近位方向への戻しのために、戻し方位に回転される。また、作動シャフト120は、手動戻し機構の完全な作動に対応する完全に近位方向に後退した位置で示されている。例示されるように、支持ハウジング214は、その表面内に形成されて作動シャフト120に接触するように位置決めされた複数のリブ又はフィン212を含むフェザーボード幾何学構成体を有する保持機構を備える。例示されるように、複数のリブは、作動シャフト120の又は長手軸を横断して所定の角度で延び、作動シャフト120に対して接触力F
cを加える。従って、複数のリブは、作動シャフトに対して方向依存の摩擦力を与える。作動シャフトが支持ハウジングに対して近位方向Pに移動される場合、例えば、手動戻し機構が作動された場合、保持機構は、作動シャフトに対して第1の摩擦力を与える。作動シャフトが支持ハウジングに対して遠位方向Dに移動される場合、保持機構は、作動シャフトに対して第1の摩擦力よりも大きい第2の摩擦力を与える。
【0035】
図17を参照すると、ハンドル組立体用のフェザーボード幾何学構成体の実施形態の詳細図が例示されている。例示されるように、フェザーボード幾何学構成体は、複数のフィン212又はリブを備える。複数のリブの隣接するリブは、間隙216によって分離される。各間隙は、複数のリブのうちの1つの先端部に隣接して開放端部218を備え、複数のリブのうちの1つの基部に隣接して閉鎖端部220を備える。いくつかの実施形態では、間隙は、一対の隣接リブを完全に分離する。一実施形態では、間隙は、一対の隣接リブを分離し、これらのリブは、別の部分の上に連結することができる。例えば、リブは、支持ハウジングからある高さだけ延びることができる。
【0036】
図17の参照を続けると、特定の実施形態では、各リブが、作動シャフトの長手軸を横断して所定の角度θで軸に沿って延びるように、開放端部は、対応する閉鎖端部から作動シャフトの長手軸に関して長手方向に変位する。特定の実施形態では、リブは、作動シャフトの長手軸に対しておよそ30度と75度との間の角度で延びることができる。より望ましくは、リブは、およそ45度と70度との間の角度で延びることができる。好ましくは、リブは、およそ55度と65度との間の角度で延びることができる。他の実施形態では、リブは、作動シャフトの長手軸に対して30度よりも小さい又は75度よりも大きい角度で延びることができる。例示される実施形態では、フェザーボード幾何学構成体は、互いに対して平行な2つの間隙216を備える。他の実施形態では、各間隙は、作動シャフトの長手軸に対して異なる角度で延びることができることが企図される。
【0037】
図17の参照を続けると、例示される実施形態では、フェザーボード幾何学構成体は、その間にリブを画定する2つの間隙216を備える。他の実施形態では、保持機構で用いるためのフェザーボード幾何学構成体は、その間にリブを画定する3以上の間隙を備えることができる。さらに、例示される実施形態では、フェザーボード幾何学構成体がハンドル組立体の支持ハウジング構成要素の中にモールド成形されるが、他の実施形態では、フェザーボード構成要素を別個に形成して支持ハウジングに接合又は締結することができることが企図される。
【0038】
図18から19を参照すると、ハンドル組立体用の支持ハウジング214の一実施形態に配置された作動シャフト120の一実施形態が例示されている。
図18及び19は、支持ハウジング214内にある作動シャフト120の破断端面図を示し、作動シャフト120が電動作動に適するように向きが定められた状態(
図18)と、作動シャフト120が手動戻し機構の作動に適するように向きが定められた状態(
図19)とを比較するものである。保持機構は、ハンドル組立体の電動動作を妨げないが、手動戻し機構が作動する場合に作動シャフトの遠位方向への移動を妨げるように構成されることが望ましい。特定の実施形態では、フェザーボード幾何学構成体は、ハンドル組立体の中で、作動シャフトがハンドル組立体の電動動作に適するように向きが定められると作動シャフト120から離間した場所に位置し、作動シャフトが手動戻し機構の動作に適する向きに回転された場合に作動シャフトと係合することができる。
【0039】
図18を参照すると、特定の実施形態では、作動シャフトがハンドル組立体の電動動作に適するように向きが定められと、保持機構のリブは、支持ハウジング214の中で作動シャフト120の凹型外面124と整列する場所に位置決めされる。従って、保持機構は、作動シャフトがハンドル組立体の電動動作に適するように向きが定められると作動シャフト120との係合から外れ、駆動システムに対応して作動シャフトの近位方向及び遠位方向の移動を可能にする。
【0040】
図19を参照すると、作動シャフト120が手動戻し機構による作動シャフトの後退に適するように向きが定められると、保持機構のリブは、支持ハウジング214の中で作動シャフト120の外面の一部分に係合する場所に位置決めされる。従って、作動シャフト120が手動戻し機構による作動に適するように向きが定められると、保持機構は、作動シャフト120に対して摩擦力を与える。
【0041】
図20を参照すると、手動戻し機構用の保持機構の一実施形態の特定の態様が例示されている。保持機構は、手動戻し機構が作動する場合にハンドル組立体の作動シャフトに係合するように付勢されるプランジャ230を備える。特定の実施形態では、プランジャ230は、その先端部を作動シャフト120に向けて付勢するように位置決めされたばね232によって付勢される。特定の実施形態では、プランジャ230は、ハンドル組立体内で、作動シャフトが電動動作に適するように向きが定められるとプランジャ230が作動シャフト120の外面から離間するような場所に配置することができる。例えば、プランジャ230は、作動シャフトが電動動作に適するように向きが定められると作動シャフト120の外面内にある凹部内に位置決めすることができる。特定の実施形態では、プランジャ230は、電動動作に適するように向きが定められた作動シャフト120の外面に、作動シャフトに望ましくない摩擦力を与えることなく係合することができるようなアール付き先端部又はボール先端部236を有することができる。特定の実施形態では、プランジャ230のボール先端部236は、作動シャフトの外面に直接係合することができる。特定の実施形態では、作動シャフト120は、手動戻し機構の作動に適するように向きが定められるとプランジャ230に係合するように位置決めされた溝又は窪み238を備えることができ、作動シャフト120は近位方向に後退する。例えば、特定の実施形態では、窪み238は、作動シャフト120のラック122と直径方向に略対称位置に配置することができる。従って、ボール先端プランジャ又はアール付き先端プランジャを含む保持機構の実施形態では、プランジャ230は、作動シャフト120をハンドル組立体の中に保持するための確実な戻り止め係合状態で作動シャフト120の窪み238に係合することができる。
【0042】
図21から22を参照すると、手動戻し機構用の保持機構の一実施形態の特定の態様が例示されている。例示される保持機構の実施形態は、作動シャフトに摩擦力を加えるように配置及び構成されたカンチレバー部材を含む。特定の実施形態では、保持機構は、ハンドル組立体に取り付けることができるばね本体240を備えることができる。ばね本体240は、板ばね状の様式で延在するカンチレバー部材242を有する金属材料又はプラスチック材料を含むことができる。カンチレバー部材は、ばね本体240に結合された固定端部244と、固定端部244の反対側にある接触端部246とを有することができる。接触端部246は、作動シャフト120に接触力を加えるように構成される。カンチレバー部材242は、作動シャフト120が近位方向に後退した場合に第1の摩擦力を加え、作動シャフト120が遠位方向に移動する場合に第1の摩擦力よりも大きい第2の摩擦力を加えるように構成される。例えば、いくつかの実施形態では、固定端部244は、作動シャフトが近位方向に移動する場合よりも作動シャフトが遠位方向に移動する場合の方が高い傾向を有する方向依存の摩擦力を与えるように接触端部246の遠位に位置決めすることができる。カンチレバー部材が加える摩擦力は、作動シャフトのラックを保持するのに十分であるが、駆動システムに比較的小さな許容負荷のみを付与することができる。
【0043】
図21を参照すると、いくつかの実施形態では、ばね本体240は、作動シャフト120の一部分を部分的又は全体的に囲むように位置決めすることができる。ばね本体240は、固定端部244から半径方向内向きに接触端部246まで延びて作動シャフト120に摺動係合し、作動シャフト120に対する摩擦力を発生させるカンチレバー部材242を有することができる。例示される実施形態では、ばね本体240は、手動戻し機構の回転レバー172に当接するように位置決めされる。他の実施形態では、ばね本体240は、ハンドル組立体の中の他の場所に位置決めすることができる。
【0044】
図22を参照すると、いくつかの実施形態では、ばね本体240は、金属材料又はプラスチック材料のシートで形成することができる。材料シートは、それと一緒に形成されてハンドル組立体の作動シャフトに摺動係合するように板ばね状の様式で付勢される1つ又は複数のカンチレバー部材を有することができる。特定の実施形態では、カンチレバー部材は、ラチェット様に作動シャフト120のラックに係合して作動シャフト120に係合するように位置決めすることができ、作動シャフト120が近位方向に移動する場合にはばね本体が小さい摩擦力しか発生しないが、作動シャフトが遠位方向に移動する場合、カンチレバー部材は、作動シャフト120上のラックに係合するようになっている。
【0045】
図23から24を参照すると、手動戻し機構用の保持機構の一実施形態の特定の態様が例示されている。例示される実施形態では、保持機構は、保持ディスク(keeper disc)250を備える。保持ディスク250は、作動シャフト120のラック122との係合状態に留まってラックの意図しない長手方向移動を防止する材料のフラップ252又はストリップを備えることができる。特定の実施形態では、保持ディスク250は、作動シャフトが通って延びる開口254が貫通する材料シートを備える。フラップ252又はストリップ材は、開口254に隣接して延びて作動シャフト120のラック122に係合することができる。保持ディスク250は、フラップ252又はストリップ材を曲げる力が比較的小さく、電動動作時に、さらに手動戻し機構の作動時にラックの作動を可能にするように可撓性材料で形成することができる。特定の実施形態では、保持ディスク250は、作動シャフト120を囲むこと又は包むことができる。特定の実施形態では、保持ディスク250は、ハンドル組立体の内部構成要素に取り付けることができる。例えば、特定の実施形態では、保持ディスク250は、作動シャフト120の支持ハウジングに取り付けることができる。他の実施形態では、保持ディスクは、手動戻し機構の回転レバー172に取り付けることができる。
【0046】
図25から27を参照すると、手動戻し機構用の保持機構の一実施形態の特定の態様が例示されている。
図25は、戻しレバー182がハンドル組立体に隣接する、第1の位置にある手動戻し機構及び作動シャフト120を示す。
図26は、戻しレバー182がハンドル組立体から離間した第2の位置にある、手動戻し機構及び作動シャフト120を示す。
図10から11を参照して説明したように、ユーザは、手動戻し機構の戻しレバー180を第1の位置と第2の位置との間で往復させて戻し爪182とラック122との相互作用によって作動シャフト120を近位方向に後退させることができる。手動戻し機構が第2の位置にある場合、戻し爪182は、作動シャフト120のラック122と係合状態に維持される。戻し爪182が作動シャフト120のラック122と係合すると、作動シャフト120の意図しない長手方向の前進を防止することができる。従って、特定の実施形態では、保持機構は、作動ラックを近位位置に戻すための手動戻し機構の動作に続いて、手動戻し機構の爪を作動シャフトのラックとの係合状態に維持するように配置及び構成することができる。
【0047】
図27を参照すると、手動戻し機構用の保持機構の一実施形態の特定の態様が例示されている。例示される実施形態では、保持機構は、板ばね組立体260を備える。板ばね組立体260は、ブラケット262と、そこから延びるばねアーム264とを備えることができる。ブラケット262は、戻しレバー180の枢動継手186で手動戻し機構に結合することができ、ばねアーム264は、戻しレバー180の下面に接触し、手動戻し機構の作動時に、ハンドル組立体から離れるようにレバーを付勢するようになっている。従って、戻しレバー180は、作動シャフト120の意図しない移動を防止するために、手動戻し機構の戻し爪182を作動シャフト120のラック122との接触状態に維持するように付勢される。他の実施形態では、戻し爪182を作動シャフト120のラック122と係合するように付勢するために、他のばね構成を用いることができる。
【0048】
図28から29を参照すると、手動戻し機構用の保持機構の一実施形態の特定の態様が例示されている。保持機構は、作動シャフト120が手動戻し機構による作動に適するように向きが定められると作動シャフト120のラック122と係合可能なラック爪270を備えることができる。例示される実施形態では、ラック爪270は、作動シャフト120に隣接するように位置決め可能なブラケット272と、そこから延びる爪274とを備える。例示されるように、ブラケット272は、ハンドル組立体の駆動システムの補助ギヤ116上に取り付けることができる開口271を備える。従って、例示される実施形態では、ラック爪270は、作動シャフトが電動動作に適するように向きが定められると作動シャフト120のラック122との係合から外れ、ラック爪は、作動シャフトが手動戻し機構の動作に適するように向きが定められると作動シャフトのラックに係合する。他の実施形態では、ブラケットは、ハンドル組立体の中にある他の構成要素上又はいずれか他の場所に配置されるように構成することができる。
【0049】
図28から9の参照を続けると、ラック爪270の爪274は、作動シャフト120が手動戻し機構の動作に適するように向きが定められると作動シャフト120のラック122に係合するように位置決めすることができる。手動戻し機構の動作に適する向きへの作動シャフト120の回転時に、望ましくは、爪274は、ハンドル組立体に対する作動シャフト120の近位方向の後退を可能にし、作動シャフト120の遠位方向の前進を制限するように構成することができる。特定の実施形態では、爪274は、ブラケット272から延びる可撓性カンチレバーアーム276の端部に配置された爪歯275を備えることができる。爪歯275は、ハンドル組立体に対する作動シャフトの近位方向の移動を許容し、作動シャフトの遠位方向の移動を制限するように角度付けすることができる。保持機構の爪274の爪歯275は、手動戻し機構の戻し爪182がラック122と係合されているか否かに関係なくラック122と係合されたままとすることができる。
【0050】
図30から32を参照すると、手動戻し機構用の保持機構の一実施形態の特定の態様が例示されている。特定の実施形態では、保持機構は、手動戻し機構による作動シャフトの後退の後に作動シャフトの長手遠位方向の移動を制限するために作動シャフト120の一部分に係合するように配置及び構成された係止組立体(catch assembly)280を備えることができる。
図30は、作動シャフト120がハンドル組立体の電動動作に適する向きにある作動シャフト120及び係止組立体280の詳細側面図を示す。作動シャフト120が、電動動作に適するように向きが定められると、係止組立体280は、作動シャフト120と接触しない。例えば、例示される実施形態では、係止組立体280は、作動シャフト120がハンドル組立体の電動動作に適するように向きが定められると、ハンドル組立体内で作動シャフト120の凹部と整列するように位置決めすることができる。
図31から32は、作動シャフト120が手動戻し機構による後退に適する向きにあり、さらに部分的に後退した位置にある場合(
図31)及び完全に後退した位置にある場合(
図32)の作動シャフト120及び係止組立体280の詳細側面図を示す。
【0051】
図30から32の参照を続けると、係止組立体280は、そこから延びる係止レバー284を有する取り付けプレート又はブラケット282を備えることができる。ブラケット282は、ハンドル組立体の支持ハウジング又はその中に位置決めされた他の構成要素に取り付けることができる。他の実施形態では、係止組立体280は、ハンドル組立体の支持ハウジングに直接、取り付けられた又はそれと一体形成された係止レバー284を備えることができる。例えば、様々な実施形態において、係止組立体280は、ハンドル組立体の上部支持体、又はハンドル組立体の上部又は底部ハウジング部に取り付けること又はそれらと一体形成することができる。様々な実施形態において、係止組立体280は、金属材料又はプラスチック材料を含むことができる。
【0052】
図31から32を参照すると、作動シャフト120は、その中に形成された凹部又は係止歯290を備えることができる。例示される実施形態では、作動シャフトは、単一の近位縁部又は係止歯290を有する凹部を備える。他の実施形態では、作動シャフトは、その様々な長手方向位置で係止レバーが係合されるように位置決めされた2以上の係止歯を備えることができることが企図される。
【0053】
図31から32の参照を続けると、作動シャフト120の後退時に、作動シャフト120が手動戻し機構の動作に適するように向きが定められると、係止レバー284は、作動シャフト120の外面に接触して摺動係合する。例示されるように、凹部及び係止歯290は、作動シャフトが手動戻し機構の動作に適するように向きが定められると、係止レバー284が係止歯290に係合するように作動シャフト120上に位置決めされる。係止レバー284が係止歯290と係合すると、ハンドル組立体に対する作動シャフト120の遠位方向の移動時に、係止レバー284は、凹部の係止歯290に係合して作動シャフト120のさらなる遠位方向の移動を制限する。係止レバー284は、作動シャフト120に向かって付勢される可撓性材料で形成することができ、作動シャフト120の凹部に係合すると、係止レバー284は、凹部の凹面に向かって付勢されるようになっている。
【0054】
図33から35を参照すると、手動戻し機構用の保持機構の一実施形態の特定の態様が例示されている。例示される実施形態では、保持機構は、手動戻し機構と統合することができ、作動シャフトが手動戻し機構による動作に適するように向きが定められると、摩擦力は、その長手方向移動に抗するように作動シャフトに加えられるようになっている。この摩擦力は、手動戻し機構の動作の後に作動シャフトの遠位方向の移動を制限する。例示される保持機構の実施形態は、作動シャフト120が電動動作に適するように向きが定められた場合に(
図33)にさらなる負荷を加えることなく、作動シャフト120が手動戻し機構によって戻されるように向きが定められた場合に(
図34)上記の摩擦力のみを加えるように構成されている。特定の実施形態では、保持機構は、作動シャフトが電動動作に適するように向きが定められる場合に手動戻し機構の回転軸を作動シャフトの長手軸からオフセット配置することによって、手動戻し機構内に組み込むことができる。
【0055】
図33を参照すると、作動シャフト120が電動動作に適するように向きが定められると、作動シャフト120は、支持ハウジング又は駆動系筐体300の中心軸Cと整列する。従って、この向きでは、作動シャフト120は、保持機構によって摩擦力が印加されることなく電動駆動システムによって長手方向に駆動することができる。
【0056】
図34を参照すると、作動シャフト120が手動戻し機構の動作に適する向きまで回転すると、回転レバー180の回転軸Rと支持ハウジング又は駆動系筐体300の中心軸との間のオフセットが、
図35に示されるように作動シャフトを支持ハウジング又は駆動系筐体の表面に押し付ける。従って、作動シャフトが手動戻し機構の動作に適するように向きが定められると、作動シャフトは、支持ハウジング又は駆動系筐体の表面に摺動係合する。この摺動係合は、手動戻し機構の動作時及びその後に作動シャフトの意図しない遠位方向移動を防止することができる。例示される実施形態は、作動シャフトが手動戻し機構の動作に適するように向きが定められる場合に作動シャフトと支持ハウジングとの間の係合領域304に摩擦力を発生させるために、手動戻し機構の動作時に、作動シャフトの回転軸との間にオフセット302を有する保持機構を含む。他の実施形態では、手動戻し機構の動作に適する向きにある作動シャフトに摩擦力を加えるように配置することができる保持機構は、駆動系筐体の中にあるカム面及び回転レバーの使用によって達成できることが企図される。
【0057】
図36から40を参照すると、手動戻し機構用の保持機構の複数の実施形態の特定の態様が例示されている。これらの実施形態は、
図33から35を参照して説明したオフセット配置の回転軸を有する保持機構の実施形態と同様に、手動戻し機構の作動時に作動シャフトの長手軸に対して直交する垂直力を発生させるように構成される。
図36から40に例示されるように、機械的干渉が用いられ、作動シャフト120が手動戻し機構の動作に適するように回転する場合に作動シャフトが自重で抜け落ちることができないように、ラック構成要素が圧潰特徴部310に係合するようなっている。望ましくは、圧潰特徴部310は、ハンドル組立体の中で電動動作中に作動シャフト120から離間されるように位置決めされる。従って、
図36に例示されるように、いくつかの実施形態では、圧潰特徴部は、作動シャフト120が電動動作に適するように向きが定められると作動シャフト120の凹部124と整列するように位置決めされる。作動シャフト120が手動戻し機構による動作に適するように回転されると、作動シャフト120は圧潰特徴部310に摺動係合する(
図37)。
【0058】
図38から40を参照すると、様々な実施形態において、ハンドル組立体の中に位置決めされる圧潰特徴部310は、幾つかの構成をとることができる。例えば、
図38に例示されるように、特定の実施形態では、圧潰特徴部310は、作動シャフトの長手軸に対して横向きに延びる1又は2以上のリブ312を備えることができる。1又は2以上のリブ312は、作動シャフトの支持ハウジング214内に位置決めすることができる。
図39に示されるように、いくつかの実施形態では、圧潰特徴部310は、圧縮可能半球突出部314を備えることができる。他の実施形態では、
図40に例示されるように、圧潰特徴部310は、支持ハウジング214の中で長手方向に延びる1又は2以上のリブ316を備えることができる。特定の実施形態では、圧潰特徴部は、ゴム材料を含むことが企図される。
図38から40は、ハンドル組立体の中で支持ハウジング214の一部から延びる様々な突出部及びリブを示すが、他の実施形態では、同様の特徴部は、ハンドル組立体の中の他の嵌合構成要素の中に実装すること又は別個の構成要素として実装することができることが企図される。
【0059】
図41から43を参照すると、手動戻し機構用の保持機構の一実施形態の特定の態様が例示されている。例示される実施形態では、保持機構は、傾斜した又は楔形のロック凹部322とロック部材324とを有する一方向楔形ロック組立体320を備える。ロック凹部322は、支持ハウジング内又は作動シャフトに隣接する別のハンドル組立体構成要素内に形成することができる。
図41に例示されるように、作動シャフト120が電動動作に適するように向きが定められると、ロック部材324は、ロック凹部322の中でラック122からオフセット配置された作動シャフト120の滑らかな外面に隣接するように位置決めされる。例示される実施形態では、ロック部材324は、電動動作中に作動シャフト120の表面に沿って滑らかに転動するようなボールベアリングを備えることができる。他の実施形態では、ロック部材324は、作動シャフト120の外面に沿って滑らかに移動することができるピン或いは別の摺動部材又は転動部材を備えることができる。
図42から43を参照すると、作動シャフト120が手動戻し機構の動作に適する向きまで回転すると、ロック部材324は、作動シャフト120のラック122内に位置決めされる。ロック凹部322は、テーパー付けされた、傾斜した、又は楔形の側壁326を備える、側壁326は、ハンドル組立体に対する作動シャフト120の遠位方向の前進時に、ロック部材324がラック122と側壁326とに係合して作動シャフトのさらなる遠位方向の移動を阻止するように位置決めされる。ロック凹部322は、楔形側壁に対向する第2の側壁328をさらに備え、第2の側壁328の深さはDである。特定の実施形態では、ロック凹部322は、第2の側壁328の深さDが、作動シャフト120がハンドル組立体に対して近位方向に移動する場合にロック部材324が作動シャフト120のラック122に沿って移動することを可能にするようにサイズ決定される。
【0060】
特定の実施形態では、作動シャフトに対する摩擦力又は抵抗を高めるために、本明細書で説明するハンドル組立体の作動シャフトには、制動グリースを付与することができる。いくつかの実施形態では、制動グリースは、
図14から42で説明した保持機構のうちの1つに加えて付与することができる。他の実施形態では、制動グリースは、手動戻し機構の動作中に作動シャフトに対する抵抗を与えて手動戻し機構の動作中に作動シャフトの意図しない移動の可能性を低減させるための追加の保持機構を有していないハンドル組立体の1又は2以上の構成要素に付与することができる。制動グリースの粘度及び配置は、作動シャフトの望ましい動作に適するように選択することができる。例えば、作動シャフトの摺動面に大量に付加される比較的重質の制動グリースは、比較的長い時間にわたって作動シャフトをハンドル組立体の中に保持することができるが、作動シャフトに対する抵抗に起因して手動戻し機構の動作においてユーザにより大きな労力を要求する可能性もある。対照的に、ターゲットを定めた付加を伴う比較的軽質の制動グリースは、手動戻し機構の動作中に作動シャフトに対して比較的小さい抵抗をもたらすことができるが、比較的短い期間でしかハンドル組立体の中での作動シャフトの意図しない移動を防止することができない。特定の実施形態では、制動グリースの粘度は、作動シャフトが手動戻し機構の動作に適するように向きが定められる場合に作動シャフトがハンドル組立体の中にいつまでも保持されることになるように選択することができる。
【0061】
特定の実施形態では、保持機構は、作動シャフトの意図しない移動を防止するために作動シャフトに摩擦力を加えることができるゴムグロメット又はゴムリングを備えることができる。いくつかの実施形態では、作動シャフトに摩擦力を加えるためのゴムリング、ゴムパッド、又はゴム面を、
図14から42で説明した保持機構のうちの1つに含めることができる。
【0062】
本出願は、特定の好ましい実施形態及び例を開示するが、当業者は、本発明が、具体的に開示した実施形態を越えて本発明の他の代替的実施形態及び/又は使用、並びにその改変物及び均等物に及ぶことを理解できる。さらに、本発明の様々な特徴は、単体で用いること、又は上記で明示的に説明したもの以外のこれらの発明の他の特徴との組み合わせで用いることができる。従って、本明細書で開示する発明の範囲は、上記で説明した特定の開示実施形態によって限定すべきではなく、以下の特許請求の適正な読解によってのみ決定すべきことが意図される。
【符号の説明】
【0063】
120 作動シャフト
122 ラック
124 陥入外面
212 フィン
214 支持ハウジング
D 遠位
Fc 接触力
P 近位
【国際調査報告】