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特表2023-547909手術器具のための材料組合せ及び加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】手術器具のための材料組合せ及び加工方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/072 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
A61B17/072
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525555
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 US2021057231
(87)【国際公開番号】W WO2022094199
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/107,321
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】クラスツ アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ダーナル ダーシー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイス エリック ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ホプキンス ティモシー エム
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160CC02
4C160CC07
4C160CC09
4C160CC23
4C160CC40
(57)【要約】
摺動面の面調製は、単回使用再装填カートリッジを用いて複数回使用される再使用可能な機構を含む手術ステープラーのような手術器具に関する摩耗性能を高めることができる。金属同士の摺動係合での摩滅摩耗の可能性を低減するために、面硬化、面仕上げ、及び面コーティングの組合せを手術器具の金属構成要素に適用することができる。面硬化技術は、下にある金属基板の強度を損なうことなく溶接のような更に別の製造作動を可能にすることができる。ステンレス鋼金属基板を用いて、面硬化又は表面硬化技術は耐食性を低減する可能性があるので、面酸化を抑制するために並びに金属同士の接触に対する障壁を提供するために面コーティングを付加することができる。骨ろうコーティング層のような更に別の潤滑性コーティング層は、耐摩滅性を強化することができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術器具であって、
第1のジョー、及び
前記第1のジョーにピボット可能に結合された第2のジョー、
を備えるエンドエフェクタと、
前記第2のジョーを前記第1のジョーに対してピボット可能に移動して前記エンドエフェクタを作動させるために該エンドエフェクタに対して長手方向に摺動可能な発射部材と、
を備え、
前記第1のジョー、前記第2のジョー、及び前記発射部材のうちの少なくとも1つが、金属基板と、該金属基板上に配置されたドライフィルム面コーティングと、該ドライフィルム面上に配置された骨ろう層とを備える、
ことを特徴とする手術器具。
【請求項2】
前記金属基板は、コア及び表面硬化層を備えることを特徴とする請求項1に記載の手術器具。
【請求項3】
前記表面硬化層は、約45HRCから約70HRCの範囲内の硬度まで硬化されることを特徴とする請求項2に記載の手術器具。
【請求項4】
前記表面硬化層は、拡散工程によって形成されることを特徴とする請求項2に記載の手術器具。
【請求項5】
前記金属基板は、等級17-4のステンレス鋼材を備えることを特徴とする請求項1に記載の手術器具。
【請求項6】
前記基板は、H900条件まで熱処理されることを特徴とする請求項5に記載の手術器具。
【請求項7】
前記金属基板は、等級420のステンレス鋼材を備えることを特徴とする請求項1に記載の手術器具。
【請求項8】
前記第1のジョー、前記第2のジョー、及び前記発射部材の各々が、コアと少なくとも55HRCまで硬化された表面硬化層とを備える金属基板を備えることを特徴とする請求項1に記載の手術器具。
【請求項9】
前記金属基板は、約25μinと75μinの間の面仕上げ粗度を有することを特徴とする請求項1に記載の手術器具。
【請求項10】
前記金属基板は、タンブリング加工された面仕上げを備えることを特徴とする請求項9に記載の手術器具。
【請求項11】
手術ステープラーであって、
近位端から遠位端まで延びる細長シャフトと、
前記細長シャフトの前記遠位端でのジョーアセンブリであって、
複数のステープルが配置された再装填カートリッジを受け入れるように構成されたカートリッジ支持体、
前記カートリッジ支持体とアンビルが開放及び閉鎖構成の間でピボット可能に移動可能である該アンビル、及び
ステープルを発射するために前記閉鎖構成で前記カートリッジ支持体と前記アンビルとに係合して長手方向に摺動可能な発射部材、
を備える前記ジョーアセンブリと、
を備え、
前記アンビル、前記カートリッジ支持体、及び前記発射部材のうちの少なくとも1つが、表面硬化金属基板と、該金属基板上に配置されたドライフィルム面コーティングと、該ドライフィルム面上に配置された骨ろう層とを備える、
ことを特徴とする手術ステープラー。
【請求項12】
前記金属基板は、少なくとも約55HRCまで表面硬化されることを特徴とする請求項11に記載の手術ステープラー。
【請求項13】
前記金属基板は、拡散工程を用いて表面硬化されることを特徴とする請求項11に記載の手術ステープラー。
【請求項14】
前記アンビル、前記カートリッジ支持体、及び前記発射部材の各々が、表面硬化金属基板と、該金属基板上に配置されたドライフィルム面コーティングと、該ドライフィルム面上に配置された骨ろう層とを備えることを特徴とする請求項11に記載の手術ステープラー。
【請求項15】
手術エンドエフェクタを製造する方法であって、
金属基板を各々が備える第1のジョー部材、第2のジョー部材、及び発射部材を与える段階と、
前記第1のジョー部材、前記第2のジョー部材、及び前記発射部材のうちの少なくとも1つの前記金属基板を第1の予め決められた硬度まで硬化する段階と、
前記第1のジョー部材、前記第2のジョー部材、及び前記発射部材のうちの前記硬化された少なくとも1つにドライフィルムコーティングを付加する段階と、
前記第1のジョー部材、前記第2のジョー部材、及び前記発射部材のうちの少なくとも1つに骨ろう組成物を付加する段階と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項16】
前記第1のジョー部材、前記第2のジョー部材、及び前記発射部材を与える段階は、該第1のジョー部材、該第2のジョー部材、及び該発射部材のうちの少なくとも1つを鍛造金属から形成する段階を備えることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のジョー部材、前記第2のジョー部材、及び前記発射部材を与える段階は、該第1のジョー部材、該第2のジョー部材、及び該発射部材のうちの少なくとも1つを金属射出成形する段階を備えることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のジョー部材、前記第2のジョー部材、及び前記発射部材のうちの少なくとも1つの前記金属基板を硬化する段階は、拡散工程を用いて該金属基板を表面硬化する段階を備えることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のジョー部材、前記第2のジョー部材、及び前記発射部材のうちの少なくとも1つの前記金属基板を硬化する段階は、ショットピーニング工程を用いて該金属基板を硬化する段階を備えることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の予め決められた硬度は、少なくとも約55HRCであることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のジョー部材、前記第2のジョー部材、及び前記発射部材のうちの少なくとも1つの前記金属基板を硬化する段階は、該第1のジョー部材、該第2のジョー部材、及び該発射部材の全ての該金属基板を前記第1の予め決められた硬度まで硬化する段階を備えることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のジョー部材、前記第2のジョー部材、及び前記発射部材のうちの別の1つの前記金属基板を前記第1の予め決められた硬度とは異なる第2の予め決められた硬度まで硬化する段階を更に備えることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記発射部材は、前記第1の予め決められた硬度まで硬化され、前記第1のジョー部材及び前記第2のジョー部材は、前記第2の予め決められた硬度まで硬化され、
前記第2の予め決められた硬度は、前記第1の予め決められた硬度よりも約10HRC未満だけ高い、
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ドライフィルムを付加する前に前記第1のジョー部材、前記第2のジョー部材、及び前記発射部材のうちの前記少なくとも1つの前記金属基板をタンブリング加工する段階を更に備えることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この出願は、その全体が引用によって本明細書に組み込まれている2020年10月29日出願の「手術器具のための材料組合せ及び加工方法(Material Combinations and Processing Methods for a Surgical Instrument)」という名称の米国仮特許出願第63/107,321号に対する優先権及びその利益を主張するものである。
【0002】
本出願は、一般的に手術器具に関連し、より具体的には、手術ステープル留めデバイスのような手術器具のエンドエフェクタ内の摺動構成要素のための材料組合せ及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0003】
手術ステープラーは、組織を接近させる又はクランプするのに及びクランプされた組織を互いにステープル留めするのに使用される。従って、手術ステープラーは、組織が適正に位置決めされて捕捉されることを保証するための及び組織を通してステープルを駆動するための機構を有する。その結果、これは、クランプされた組織の適正なステープル留めを提供するように複雑な機構と共に例えば複数のトリガ及びハンドルを生成してきた。これらの複雑な機構により、手術ステープラーは、製造上の負担の増大、並びにデバイス故障及びユーザに対する混乱の潜在的な原因を有する可能性がある。すなわち、複雑な機構のないクランプされた組織の確実なステープル留めが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第9,668,732号明細書
【特許文献2】米国特許出願第15/485,620号明細書
【特許文献3】米国特許出願第15/486,227号明細書
【特許文献4】米国特許出願第15/486,008号明細書
【特許文献5】米国特許出願第16/287,748号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
手術ステープラーは、更に、複数のカートリッジを単一手術手順でステープラーと共に使用することができるように交換可能再装填カートリッジを含む可能性がある。手術ステープラークランピング及び発射機構は、摺動接触している金属構成要素を含む可能性がある。摺動接触している構成要素に対する更に別の改善は、複数の発射サイクルにわたる摩耗劣化に対抗するのに望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある一定の実施形態では、手術ステープル留め器具を本明細書に提供する。手術ステープル留め器具は、エンドエフェクタと発射部材を備える。エンドエフェクタは、第1のジョー(jaw)と、第1のジョーにピボット可能に結合された第2のジョーとを備える。発射部材は、第2のジョーを第1のジョーに対してピボット可能に移動してエンドエフェクタを作動させるためにエンドエフェクタに対して長手方向に摺動可能である。第1のジョー、第2のジョー、及び発射部材のうちの少なくとも1つは、金属基板と、金属基板上に配置されたドライフィルム面コーティングと、ドライフィルム面上に配置された骨ろう(bone wax)層とを備える。
【0007】
ある一定の実施形態では、手術ステープラーを本明細書に提供する。手術ステープラーは、細長シャフトとジョーアセンブリを備える。細長シャフトは、近位端から遠位端まで延びる。ジョーアセンブリは、細長シャフトの遠位端に位置決めされる。ジョーアセンブリは、カートリッジ支持体、アンビル、及び発射部材を備える。カートリッジ支持体は、複数のステープルが配置された再装填カートリッジを受け入れるように構成される。カートリッジ支持体とアンビルは、開放構成と閉鎖構成の間でピボット可能に移動可能である。発射部材は、ステープルを発射するために閉鎖構成でカートリッジ支持体及びアンビルと係合して長手方向に摺動可能である。アンビル、カートリッジ支持体、及び発射部材のうちの少なくとも1つは、表面硬化金属基板と、金属基板上に配置されたドライフィルム面コーティングと、ドライフィルム面上に配置された骨ろう層とを備える。
【0008】
ある一定の実施形態では、手術エンドエフェクタを製造する方法を本明細書に提供する。本方法は、金属基板を各々が有する第1のジョー部材、第2のジョー部材、及び発射部材を与える段階を備える。本方法は、更に、第1のジョー部材、第2のジョー部材、及び発射部材のうちの少なくとも1つの金属基板を第1の予め決められた硬度まで硬化する段階を備える。本方法は、更に、第1のジョー部材、第2のジョー部材、及び発射部材のうちの硬化された少なくとも1つにドライフィルムコーティングを付加する段階を備える。本方法は、更に、第1のジョー部材、第2のジョー部材、及び発射部材のうちの少なくとも1つに骨ろう組成物を付加する段階を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】手術ステープル留めデバイスの実施形態の斜視図である。
図2図1の手術ステープリングデバイスと共に使用するためのシャフトアセンブリ及びジョーアセンブリの実施形態の斜視図である。
図3図1の手術ステープリングデバイスと共に使用するためのジョーアセンブリ及び再装填カートリッジの実施形態の斜視図である。
図4図3のジョーアセンブリの近位端の断面斜視図である。
図5図3のジョーアセンブリの断面斜視図である。
図6】ジョーアセンブリの例示的実施形態に関する例証的な力対進行プロットを示すグラフである。
図7】ジョーアセンブリの別の例示的実施形態に関する例証的な力対進行プロットを示すグラフである。
図8】ジョーアセンブリの別の例示的実施形態に関する例証的な力対進行プロットを示すグラフである。
図9A】手術ステープラーの構成要素の例示的実施形態に対する金属基板の断面の概略図である。
図9B】手術ステープラーの構成要素の別の例示的実施形態に対する金属基板の断面の概略図である。
図10】手術ステープラーの構成要素の面を調製する例示的方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1~2を参照すると、手術ステープル留めデバイスの実施形態を例示している。手術ステープラー10の図示の実施形態は、細長シャフト20、ジョーアセンブリ30、及びハンドルアセンブリ40を備える。本明細書に説明する細長シャフト20及びジョーアセンブリ30の様々な態様は、例示するような機械式ハンドルアセンブリ40又は例えば電気モータを含む電動式ハンドルアセンブリ40のいずれかと交換可能に使用することができる。更に、本明細書に説明する細長シャフト20及びジョーアセンブリ30の態様は、ロボット手術システムによって作動されるように構成されたシャフトアセンブリと共に使用することができるように考えられている。図1は、ジョーアセンブリ30が開放構成にある状態での手術ステープラー10を示している。図2は、ジョーアセンブリ30が開放構成にある状態での手術ステープラー10の細長シャフト20とジョーアセンブリ30とを備える取り外し可能再装填シャフトアセンブリを示している。
【0011】
引き続き図1及び2を参照すると、手術ステープラー10の図示の実施形態は、腹腔鏡手術手技に使用するようなサイズを有し、かつそのように構成することができる。例えば、細長シャフト20及びジョーアセンブリ30は、アクセスポート又はトロカールカニューレを通して術野に導入されるようなサイズを有し、かつそのように構成することができる。一部の実施形態では、細長シャフト20及びジョーアセンブリ30は、例えば8mm未満のような比較的小さい作動チャネル直径を有するトロカールカニューレを通して挿入されるようなサイズを有し、かつそのように構成することができる。他の実施形態では、細長シャフト20及びジョーアセンブリ30は、例えば10mm、11mm、12mm、又は15mmのようなより大きい作動チャネル直径を有するトロカールカニューレを通して挿入されるようなサイズを有し、かつそのように構成することができる。他の実施形態では、本明細書に説明する手術ステープラーのある一定の態様は、開腹手術手順に使用するための手術ステープル留めデバイスに組み込むことができるように考えられている。
【0012】
引き続き図1及び2を参照すると、図示の実施形態では、ジョーアセンブリ30は、細長シャフト20の遠位端24で細長シャフト20に結合される。ジョーアセンブリ30は、第2のジョー32にピボット可能に結合された第1のジョー34を備える。図1~2に示す実施形態では、ジョーアセンブリは、ジョーアセンブリを中心長手軸線Lに対して関節接合位置に選択的に位置決めすることができるように細長シャフトに関節接合可能に結合される。図1のハンドルアセンブリは、関節接合範囲を通して細長シャフトアセンブリのジョーアセンブリの連続選択可能関節接合を提供するように構成された関節接合ノブ190及び関節接合機構を含む。初期構成では、第2のジョー32は、そこに位置決めされた再装填カートリッジ50内に位置決めされた複数のステープルを含む。すなわち、第2のジョー32は、再装填支持体を定める。
【0013】
図1及び2を引き続き参照すると、図示の実施形態では、ジョーアセンブリ30は、細長シャフト内で長手方向に摺動可能である作動部材又はビームにより、開放構成(図1)から閉鎖構成まで、更にステープル留め構成まで作動させることができる。初期位置では、ビームは、細長シャフト20の遠位端24に位置決めすることができる。ビームが初期位置にある状態で、第1のジョー34は、ジョーアセンブリ30が開放構成にあるように第2のジョー32から離れるようにピボット回転される。作動ビームは、長手軸線Lに沿って遠位の作動部材又はビームの平行移動時に第1のジョー34と係合する。初期位置から遠位の第1の距離の作動ビームの平行移動は、ジョーアセンブリを開放構成から閉鎖構成まで作動することができる。ジョーアセンブリ30が閉鎖構成にある状態で、作動ビームは、ジョーアセンブリ30を開放構成に戻すために第1の距離を近位に戻すことができる。作動ビームの遠位端は、第1の距離を過ぎる遠位の作動ビームの更に別の平行移動が第2のジョー32から複数のステープル36を展開するように、第2のジョー32からステープルを展開するように構成されたステープルスライダーを前進させることができる。
【0014】
図1~3を参照すると、図示の実施形態では、ハンドルアセンブリは、細長シャフト20の近位端22で細長シャフト20に結合される。図示のように、ハンドルアセンブリ40は、固定ハンドル42を定めるハウジングと、固定ハンドル42にピボット可能に結合された可動ハンドル44又はトリガとを有するピストルグリップ構成を有する。他の実施形態では、本明細書に説明する態様を含む手術ステープラーデバイスは、例えば、はさみ-グリップ構成又はインライン構成のような他の構成を有するハンドルアセンブリを有することができるように考えられている。ハンドルアセンブリ40は、可動ハンドル44の移動に応答して作動シャフトを選択的に前進させて細長シャフト内の作動ビームを開-閉ストロークで第1の距離を作動し、ステープルを発射する発射ストロークで第1の距離を超えて第2の距離でジョーアセンブリを初期開放位置から閉じ、作動ビームを第2の距離及び第1の距離だけ戻して初期位置にするように構成された作動機構を収容する。ある一定の実施形態では、ハンドルアセンブリ上の摺動セレクタ72により、ユーザは、ハンドルアセンブリがジョーアセンブリを開-閉ストロークで作動させるように作動させる又は発射ストロークで作動させるように作動するかを選択することができる。ハンドルアセンブリ及び関連の作動機構の様々な実施形態は、「長手方向に回転可能なシャフトを有する作動機構を有する手術ステープラーハンドルアセンブリ(Surgical Stapler Handle Assembly Having Actuation Mechanism With Longitudinal Rotatable Shaft)」という名称の米国特許第9,668,732号明細書、及び「作動機構を有する手術ステープラー(Surgical Stapler Having Articulation Mechanism)」という名称の2017年4月12日出願の米国特許出願第15/485,620号明細書に開示されており、これら両方は、引用によってその全体が本明細書に組み込まれている。
【0015】
引き続き図1~3を参照すると、一部の実施形態では、手術ステープラー10は、使い捨て再装填カートリッジ50内に位置決めされた複数のステープルを含むことができ、一方でハンドルアセンブリ40及び細長シャフト20は、複数のステープル再装填カートリッジで再利用されるように構成される。ある一定の実施形態では、各再装填カートリッジ50を再装填カバー150に結合してジョーアセンブリへの取り付け前に再装填カートリッジの組織接触面及びステープルポケットを遮蔽することができ、再装填カバー150は、手術ステープラーが手術部位に導入される前に除去されることになっている。各々が単回使用再装填カートリッジ50を含む複数のクランピング及びステープル発射サイクルに対してステープラーを確実に作動させることができるように、ハンドルアセンブリ40及び細長シャフト20は、摩耗に関連付けられた性能の低下に抵抗することが望ましいとすることができる。手術ステープラーは、再装填カートリッジがジョーアセンブリに存在しない場合、又は部分的又は完全に発射された再装填カートリッジがジョーアセンブリに存在する場合に、ハンドルアセンブリの機能を制限してユーザに警告し、患者の安全性を高めることができる1又は2以上の把持及び発射ロックアウト機構を含むことができる。ある一定の実施形態では、再装填カートリッジ50内で平行移動可能なそり又はスライダーのようなステープル展開部材は、手術ステープラー10内に未発射の再装填カートリッジがある状態に対応する、ステープル展開部材がジョーアセンブリの近位位置にある場合に1又は2以上のロックアウト機構に打ち勝つことができる。
【0016】
図1を参照すると、ハンドルアセンブリ40は、その遠位端にカプラー46を備える。カプラー46は、手術ステープラー10の細長シャフト20と係合するようになっている。カプラー46は、ハンドルアセンブリ40を細長シャフト20に取り外し可能に結合することができる外側コネクタとハンドルアセンブリ42の作動シャフトを細長シャフト20の作動部材に取り外し可能に結合することができる内側コネクタとを有するバヨネット接続を有することができる。すなわち、手術ステープラー10は、手術手順中にハンドルアセンブリ40が複数の使い捨てシャフト及び/又は再装填カートリッジと共に再使用することができるように構成することができる。他の実施形態では、ハンドルアセンブリと細長シャフトの何らかの部分は、再使用可能とすることができ、一方で細長シャフトの残余とジョーアセンブリとが使い捨てカートリッジを定めるように考えられている。ある一定の他の実施形態では、ハンドルアセンブリと細長シャフトは、再使用可能とすることができ、一方でジョーアセンブリは、使い捨てカートリッジを定める。更に他の実施形態では、複数のステープルを収容するジョーインサートが、使い捨てカートリッジを定めることができ、一方で手術ステープラーの残余は、再使用可能である。
【0017】
上述のように、本明細書に説明するシャフトアセンブリ、ジョーアセンブリ、及び再装填カートリッジは、電動式ステープラーハンドルアセンブリ又はロボット手術システムのアクチュエータと併せて使用することができる。電動式ハンドルアセンブリ及び関連の作動機構の様々な実施形態は、「手術ステープラーのための再装填シャフトアセンブリ(Reload Shaft Assembly for Surgical Stapler)」という名称の2017年4月12日出願の米国特許出願第15/486,227号明細書、「電動式ハンドルを有する手術ステープラー(Surgical Stapler Having a Powered Handle)」という名称の2017年4月12日出願の米国特許出願第15/486,008号明細書、及び「電動式ハンドルを有する手術ステープラー(Surgical Stapler Having a Powered Handle)」という名称の2019年2月27日に出願の米国特許出願第16/287,748号明細書に開示されており、これらは、全てその全体が引用によって本明細書に組み込まれている。
【0018】
図3を参照すると、再装填カートリッジ50を第2のジョー32から取り外した状態での細長シャフト20のジョーアセンブリの斜視図を示している。図示のように、再装填カートリッジ50は、第2のジョー32によって定められる再装填支持体に取り外し可能に位置決め可能である。図示の実施形態では、再装填カートリッジ50は、その中に配置された複数のステープルを含み、各ステープルは、再装填カートリッジの本体を貫通して形成された自らのステープルポケット内に位置決めされる。再装填カートリッジ50の上面は、ある一定の実施形態では、実質的に平面状とすることができる組織接触面を定める。再装填カートリッジは、更に、その中に形成されたブレードチャネルを備える。図示のように、ブレードチャネルは、ステープルポケットの列間を長手方向に延びるので、ブレードチャネルを通過する切断ブレードの平行移動により、ステープルが発射される時にジョーに位置決めされた組織内に展開されたステープルの列間の組織が横に切開される。第2のジョー32によって定められた再装填支持体は、再装填カートリッジ50を取り外し可能に受け入れるようなサイズを有し、かつそのように構成されたチャネルを備える。例えば、ある一定の実施形態では、再装填支持体のチャネルは、再装填カートリッジ50上の対応する突出ボスを受け入れるようなサイズを有し、かつそのように構成された少なくとも1つの凹部132を含むことができる。
【0019】
図4を参照すると、ジョーアセンブリの実施形態を例示している。ジョーアセンブリの断面は、閉鎖/組織クランピング及び発射作動での手術ステープラーの作動のある一定の態様に対して視認性を容易にするために、細長シャフトの遠位端24のすぐ遠位にあるジョーアセンブリの近位端でジョーアセンブリの長手軸線に対してほぼ垂直にされている。図示の実施形態では、手術ステープラーは、ジョーアセンブリを開放構成から閉鎖構成まで作動させ、続いて再装填カートリッジからの複数のステープルを発射するためにジョーアセンブリの第1のジョー34及び第2のジョー32の中で長手方向に平行移動可能な発射部材120を含む作動機構を備える。
【0020】
引き続き図4を参照すると、ある一定の実施形態では、発射部材120は、垂直ブレード部材122によって上側フランジ126が下側フランジ124に接続されたI字形ビームプロファイルを含むことができる。上側フランジ126は、第1のジョー34のチャネル内で平行移動可能であり、下側フランジ124は、第2のジョー32のチャネル内で平行移動可能である。ブレード部材122は、再装填カートリッジのブレードチャネル内で平行移動可能である。
【0021】
図5を参照すると、手術ステープラーのジョーアセンブリに関する実施形態のある一定の態様を示している。ジョーアセンブリの断面を長手方向に取って示し、手術ステープラーの作動機構の作動を更に説明している。図示のように、細長シャフトは、その中で長手方向に摺動可能な作動部材128を備える。作動部材128は、発射部材120が結合される遠位端まで延びる。再装填カートリッジ50は、発射部材120の長手方向遠位移動によって前進して再装填カートリッジから複数のステープルを発射するために内部を平行移動するスライダー52又は楔そりを備える。
【0022】
引き続き図5を参照すると、ジョーアセンブリは、第1のジョー34に形成された上側チャネル136を含むことができる。ジョーアセンブリは、第2のジョー32に形成された下側チャネル134を更に含むことができる。図示の実施形態では、発射部材120が長手方向に前進してジョーアセンブリを閉じ、再装填カートリッジ50からステープルを発射する時に、上側フランジ126は、第1のジョー34の上側チャネル136内で摺動し、下側フランジ124は、第2のジョー32の下側チャネル134内で摺動する。図示の実施形態では、上側チャネル136の近位端はランプを含み、そのためにそのランプにわたる発射部材120の作動は、第1のジョー34をピボット回転させて閉鎖構成にする。上側チャネル136は、ジョーが閉鎖構成にある状態で下側チャネル134とほぼ平行になるように延びるランプよりも遠位のチャネルを更に備える。
【0023】
ジョーアセンブリは、複数の単回使用再装填カートリッジ50と共に再使用することができると考えられているので、発射部材120の摺動面と下側チャネル134及び上側チャネル136とは、複数の使用サイクルにわたって性能低下を最小にするように構成されることが望ましい。組織がジョー間にクランプされた状態で、上側フランジ126の下面は、上側チャネル136の上面に対して摺動し、下側フランジ124の上面は、下側チャネル134の下面に対して摺動する。すなわち、ある一定の実施形態では、少なくともこれらの摺動面は、それらの摩擦係合の影響を低減するように構成することができる。他の実施形態では、第1のジョー34、第2のジョー32、及び発射部材120の全てをそれらの摩擦係合の影響を低減するように構成することが望ましい場合がある。
【0024】
ある一定の実施形態では、ジョーアセンブリは、性能を著しく低減することなく少なくとも10個の再装填カートリッジと共に再使用されるように構成されることが望ましい。ある一定の実施形態では、ジョーアセンブリは、性能を著しく低減することなく少なくとも12個の再装填カートリッジと共に再使用されるように構成されることが好ましい場合がある。更に、ジョーアセンブリは、第1及び第2のジョー34、32がそれらの間にクランプされた組織に対して少なくとも80ポンドの圧縮力という作動荷重を加えながら望ましい数の再装填カートリッジで作動可能であるように構成されることが望ましいと考えられる。他の実施形態では、ジョーアセンブリは、少なくとも100ポンドの圧縮力という作動荷重を伴って望ましい数の再装填カートリッジで作動可能であるように構成されることが望ましい。更に他の実施形態では、ジョーアセンブリは、少なくとも120ポンドの圧縮力という作動荷重を伴って望ましい数の再装填カートリッジで作動可能であるように構成されることが望ましい。ある一定の実施形態では、ジョーアセンブリは、閉鎖構成で第1のジョー34が第2のジョー32と平行である状態から1度までの角度偏差でジョーが偏位した状態で、望ましい作動荷重で望ましい数の再装填カートリッジに対して作動可能であるように構成される。ある一定の実施形態では、ジョーアセンブリは、閉鎖構成で第1のジョー34が第2のジョー32と平行である状態から2度までの角度偏差でジョーが偏位した状態で望ましい作動荷重で望ましい数の再装填カートリッジに対して作動可能であるように構成される。使用中に、ジョー間にクランプされた組織の厚み又は密度に応じたジョーの撓みに起因して、ステープル留め作動中にジョー間の不整合が発生する可能性がある。
【0025】
一般的に、発射部材の下側及び上側フランジ124、126とそれぞれの下側及び上側チャネル134、136のような2つの面が荷重の下で接触し、それらが互いに対して摺動する時に、摩擦力がその動きに対抗する。摩擦力は荷重に比例するが、最終的には接触面積に依存しない。顕微鏡レベルでは、面の各々は真に平坦ではなく、面の不規則性又は凹凸を有する。これらの不規則性により、接触荷重が分散される局在的な接触点が生成される。その場合に、真の接触面積は、見かけの公称面積のごく一部に過ぎない。摩擦係数が徐々に増加する可能性がある複数のタイプの摩耗が存在する。凹凸が初めて接触すると、弾力的に変形する。しかし、小さい荷重でも、小領域に集中した場合に塑性変形を引き起こすほどの大きい接触応力を生じる可能性がある。次に、接触点が平らになり、接合部が形成される。摩耗は、一般的に、固形物からの材料の物理的な除去を伴う。それは、研磨、付着、及び疲労という3つの部類に分けることができる。研磨摩耗は、より緩やかな摩耗過程である。これは、2つの面が互いに擦れ合い、硬い面が軟らかい面を削り取る場合に発生する。これは、粗い外観を特徴とすることが多く、微粒子の生成を伴う場合がある。多くの場合に、この段階で何らかの加工硬化(冷間加工)が生じる可能性がある。付着摩耗は、特に金属同士が接触する摩耗面の場合に、摩滅に至る可能性があるより攻撃的な摩耗の形態である。非常に局所的な温度では、対向する凹凸のピークが変形して互いに移動する場合がある。デブリを取り除かないと、このタイプの摩耗が更に激化して高い摩擦力による摩滅に至る。
【0026】
図6~8を参照すると、2つの面間での摺動係合のある一定の態様を示している。1ペアの例示的構成要素間での摺動係合サイクルの例示的組合せに関して力対距離プロットを示している。図6は、数回の摺動係合サイクルにわたって例示的構成要素に関する力対距離プロットを示し、研磨摩耗及び摩滅を説明している。図7は、数回の摺動係合サイクルにわたって例示的構成要素に関する力対距離プロットを示し、研磨摩耗に続く摩滅の複数のサイクルを説明している。図8は、数回の摺動係合サイクルにわたって例示的構成要素の力対距離プロットを示し、緩やかな研磨摩耗を示している。
【0027】
図6を参照すると、例示的摺動構成要素間の数回の摺動係合サイクルに関して例示的な力対距離プロットを示している。このプロットは、第1の方向210での研磨摩耗と第2の方向212での研磨摩耗とを伴う少なくとも1回の摺動係合サイクルから第1の方向214での摩滅摩耗及び第2の方向216での摩滅摩耗への進行を説明している。構成要素が研磨摩耗を伴って第1及び第2の方向に動く時に、構成要素間の摩擦力は比較的小さく、移動距離に沿って比較的一定である。x軸上方のプロット線は、第1の方向(210,214)への移動を示すのに対して、x軸下方のプロット線は、第1の方向とは反対の第2の方向(212,216)への移動を示している。x軸からのプロット線の高さ(又は深さ)は、構成要素を摺動させるのに必要な摩擦力を表している。第1及び第2の方向214、216で摩滅摩耗が現われると、摩擦力は非常に不規則になり、研磨摩耗状態で現われる摩擦力よりもかなり大きくなる。摩滅は、動摩擦係数を1より大きい倍率で増大するので、デバイスの機能に非常に有害であり、その結果としてデバイスを作動させるのに必要な力が大幅に増大する。場合により、摩滅は、デバイスを作動させるのに必要な投入力が1ペアの摺動面で予期される力の2倍超に増加する原因になる可能性がある。すなわち、数回の摺動係合後に摩滅摩耗を受ける摺動構成要素を有する手術ステープラーの実施形態は、作動機構を作動させるのに必要な力が過大なものになり、シャフトアセンブリ及びハンドルアセンブリ内の構成要素に応力を印加してハンドルアセンブリの作動を困難にするので、複数の再装填カートリッジでの使用には望ましくないと考えられる。
【0028】
図7を参照すると、例示的摺動構成要素間の数回の摺動係合サイクルに関して例示的な力対距離プロットを示している。このプロットは、第1の方向220での研磨摩耗と第2の方向222での研磨摩耗とを伴う少なくとも数回の摺動係合サイクルから第2の方向224での摩滅摩耗への進行を説明している。構成要素が研磨摩耗を伴って第1及び第2の方向に動く時に、プロット線は、摩滅が発生するまで摩擦力が次第に増加する複数の摩耗サイクルを示すが、構成要素間の摩擦力は比較的小さく、移動距離に沿って比較的一定である。ある一定の実施形態では、摩滅摩耗を受ける前に、少なくとも所望数の再装填カートリッジの使用を可能にするのに十分な回数の摩耗サイクルにわたって構成要素が研磨摩耗状態に留まることを条件としてそのような摩耗特性を提示する構成要素を手術ステープラーに使用することができる。
【0029】
図8を参照すると、例示的摺動構成要素間の数回の摺動係合サイクルに関して例示的な力対距離プロットを示している。このプロットは、構成要素が摩滅摩耗を受けることなく、第1の方向230での研磨摩耗と第2の方向232での研磨摩耗とを伴う複数の摺動係合サイクルにわたって繰り返される作動を説明している。構成要素が研磨摩耗を伴って第1及び第2の方向に動く時に、構成要素間の摩擦力は比較的小さく、移動距離に沿って比較的一定であり、サイクル間で最小の増加を伴う。複数の再装填カートリッジでの反復使用に対する摩滅の可能性を低減する摩耗特性を有するように、手術ステープラーのためのジョーアセンブリを含むことが望ましい。
【0030】
ある一定の実施形態では、ジョーアセンブリ及び発射部材のような摺動接触で係合する手術ステープラーの構成要素の材料選択は、ある一定の優先度に基づいて選択することができる。例えば、最初の考慮事項として選択される材料、並びに面調製コーティング及びその加工は、患者に触れる手術デバイスでの使用に関する生体適合性の規格を満足するものに限定される。更に、選択される材料は溶接操作で接合することができることが望ましく、それにより、例えば、下側アンビル面の上に溶接されて第1のジョー部材がその間にチャネルを形成するカバー又はキャップを有するツーピース式の第1のジョー34を使いやすくすることなどにより、ジョー設計の様々な態様の構成での柔軟性が与えられる。更に、選択される材料は、ステープルの発射作動を繰り返すのに十分な強度及び靭性特性を有することが望ましい。更に、選択される材料は、酸化及び腐食に耐えることが望ましい場合がある。最後に、選択される材料は、例えば、金属射出成形工程を含む製造効率を容易にするための様々な工程で製造可能であることが望ましい。
【0031】
望ましい特性を達成するために、様々な等級のステンレス鋼を選択することができる。例えば、ある一定の実施形態では、等級17-4のステンレス鋼を選択して摺動構成要素に使用することができる。他の実施形態では、等級420のステンレス鋼を選択して摺動構成要素に使用することができる。等級420は、等級17-4のような析出硬化性ステンレス鋼とは対照的に、マルテンサイト系ステンレス鋼である。等級420のステンレス鋼は、等級17-4のステンレス鋼と比較して相対的に炭素含有量が高い。すなわち、望ましくは、等級420のステンレス鋼は、低炭素鋼と比較して相対的に硬化性が高い。しかし、マルテンサイト系ステンレス鋼は、析出硬化性ステンレス鋼よりも溶接性が低い傾向があり、これは、脆いマルテンサイトが溶接部の急速な冷却から形成される傾向があり、応力誘発割れをもたらす可能性があるからである。更に、等級420のステンレス鋼の比較的高い炭素含有量は、比較的低い耐食性にも至る可能性がある。等級17-4及び420の各々は、金属射出成形工程での使用に適している。
【0032】
材料の選択に関して更に他の実施形態では、等級13-8又は等級455/465のステンレス鋼を選択して使用することができる。しかし、これらの等級のステンレス鋼は特殊材料になる傾向があり、すなわち、潜在的なコスト、入手可能性、及び製造可能性の懸念という観点からこれらの等級のステンレス鋼はあまり望ましくない場合があることに注意されたい。
【0033】
材料選択の考慮事項は、手術ステープラーのジョーアセンブリ及び発射部材に使用するために金属のステンレス鋼材が望ましいことを示しているので、金属同士の摺動係合から生じる場合がある摩滅の可能性を低減するために、これらの構成要素を調製してその特性を処理することに対して更に考察を行う必要がある。一般的に、面硬度が比較的高い材料は、摩滅摩耗に対してより耐性がある可能性がある。手術ステープラーの摺動構成要素での使用を考えているステンレス鋼基板のような金属基板で比較的高い面硬度を達成するための様々な技術が存在する。例えば、様々な実施形態では、拡散/熱化学技術、面メッキ技術、面コーティング技術、及び印加エネルギ技術のうちの少なくとも1つを使用して摩滅を低減した摺動接触に使用する金属基板の面を調製することができる。
【0034】
拡散又は熱化学工程では、金属基板の表層は、典型的には比較的高温で、炭素、窒素、又はホウ素のような硬化種を添加することによって硬化する。これらの工程は、コアの靭性及び延性を維持しながら比較的硬いケース又は表層を生成することが目標であるという点で「表面硬化」と呼ぶことができる。しかし、典型的な表面硬化技術は、ステンレス鋼材、特に析出硬化性ステンレス鋼に対して典型的な表面硬化技術がステンレス鋼材の耐食性を低減するという点で望ましくない結果をもたらした。更に、析出硬化性ステンレス鋼材の場合に、比較的高温を伴う表面硬化方法は、材料の意図しない焼き鈍しをもたらす可能性がある。更に、金属射出成形工程を使用して金属基板が形成された場合に、基板は比較的高い多孔率を有する可能性がある。すなわち、硬化層の深さを制御するための表面硬化技術に対する更に別の修正がない限り、表面硬化層の深さは、金属射出成形工程によって形成されない同様に硬化させた材料の金属基板の深さとは異なる可能性がある。
【0035】
しかし、望ましくない有意な影響をほとんど又は全く与えずに特定の表面硬化技術をステンレス鋼材に使用することができる。例えば、Bodycote plc社が提供するS3P(特殊ステンレス鋼工程(Specialty Stainless Steel Processes))及びKOLSTERISINGの商標で商業的に公知の比較的低温の拡散表面硬化技術がある。この拡散技術は、耐食性の低下を最小にし、金属基板の基本的強度及び延性への影響を最小にしながら等級17-4のステンレス鋼のような比較的低炭素のステンレス鋼を表面硬化することができる。
【0036】
硬化層を生成する別の技術は、加工硬化を通して外層にある金属基板の粒組織を修正する面改質によるものである。例えば、ショットピーニング(高速ショットを基板に衝突させる)又はイオン注入(高速粒子を金属基板に衝突させる)工程を使用して硬化された表層を形成することができる。有利なことに、これらの工程は面化学に影響を与えず、すなわち、耐食性を低減しない。しかし、ショット内に異物が存在している場合(例えば、ショット媒体が再使用される場合)、異物が金属基板に埋め込まれる可能性があり、局所的な位置に耐食性の低下をもたらす恐れがある。更に、これらの面改質工程は、衝撃を受けた面だけが加工硬化するために製造上の課題を提起する場合があり、一貫した結果を容易にし、基板歪みの可能性を低減するために治具、ショットサイズ、強度、及びカバレージの厳密な制御が必要である。
【0037】
ある一定の実施形態では、面メッキ、すなわち、基板上に金属化合物の薄層を導入する段階を使用して手術ステープラーの摺動構成要素に望ましい面硬度特性を生成することができる。面硬度を与えるために面メッキに使用することができる材料のタイプの例は、クロム、無電解ニッケル、ダイヤモンド様コーティング、及びセラミックを備える。有利なことに、選択された材料に応じて、面メッキは、一貫した面特性を伴って構成要素レベルで実施することができる浸漬工程になる可能性がある。しかし、面メッキは、メッキ化合物が溶接母材に存在することになって構成要素の強度に影響を与えるので構成要素の溶接性に影響を及ぼす可能性がある。更に、硬度の高い面メッキも比較的脆い場合があり、点接触で大きい荷重が掛かると不要に亀裂が入って微粒子化する傾向がある。手術ステープラーの構成要素では、特定の例では、特にジョーの不整合がある場合又は大きい組織部分がジョー間にクランプされた時に、発射部材のフランジの係合は、実質的に点接触でそれぞれのチャネルに係合する可能性がある。
【0038】
ある一定の実施形態では、手術ステープラーの摺動構成要素の金属基板は、望ましい作動特性を提供するように施された面コーティングを有することができる。しかし、一般的に、面コーティングは、面メッキほど良好に金属基板に付着しない。更に、面メッキと同様に、面コーティングは、使用中に荷重が掛かると微粒子化する場合がある。すなわち、生体適合性の面コーティング材料を使用することが好ましい。更に、面コーティングは、材料基板を溶接する前に付加される場合に、溶接母材の一部を形成し、溶接された構成要素の強度を低減する可能性がある。従って、溶接位置のマスキング又は溶接作動後のコーティング加工を選択して基板の溶接性に対する面コーティングの影響を最小にすることができる。
【0039】
金属基板に様々な面コーティングを施して摺動性能を改善することができる。例えば、ある一定の実施形態では、Chemours Company社のKRYTOXという商標、又はDow Corning Corporation社のMOLYKOTEという商標で市販されているような潤滑剤を摺動面に付加することができる。他の実施形態では、ドライフィルムのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コーティングを摺動面に施してそれらの間の潤滑性を高めることができる。例えば、Donwell Company,Inc.社からDry Film RAコーティングとして市販されているコーティングを手術器具の摺動構成要素に付加することができる。PTFEドライフィルム材料は、患者に触れる用途での使用に適する可能性があり、噴霧工程により又は浸漬工程を通して構成要素レベルで戦略的に適用することができる。
【0040】
ある一定の実施形態では、面コーティングとして骨ろうを施して摺動面間の潤滑剤として機能させることによって摺動性能を改善することができる。様々な骨ろう組成物が市販されており、典型的には主として蜜ろうを備える。骨ろうは、医療手順中に骨面からの出血を低減するために従来から適用されているので患者と触れる用途での使用に適している。望ましいことに、骨ろうは粘着性があり、施された面に良好に保持される。更に、骨ろうは、一般的に、摺動面間の点接触係合の場合でも最小の微粒子化を受けるに過ぎない。しかし、骨ろうは、融解転移温度が比較的低い可能性がある(特定の骨ろう組成物では約120°Fとすることができる)。すなわち、施された骨ろうが溶けて溜まる可能性を低減するために、予想される滅菌及び運送の温度範囲を評価しなければならない。更に、骨ろうは、典型的にターゲット面に手動で付加されるので、ジョーアセンブリチャネルのような凹面への均一な付加は、特殊な付加ツール及び手順が必要になる場合がある。
【0041】
図9Aを参照すると、手術ステープル留めデバイスの摺動面として使用する金属基板面に関する概略断面図を示している。上述のように、材料の選択に関する様々な考慮事項の観点から、ステンレス鋼材は、手術ステープラーのジョーアセンブリの発射部材及びジョー部材のような手術ステープル留めデバイスの摺動構成要素に使用するのに好適である。しかし、金属同士の摺動係合では、これらの材料は不要に摩滅摩耗を受ける可能性がある。従って、摩滅に耐えるように摺動面を調製することが望ましい。図示の実施形態では、構成要素は、第1の強度及び第1の硬度を有する金属基板240を備える。金属基板240の表層242を第1の硬度よりも大きい第2の硬度まで硬化する。例えば、ある一定の実施形態では、表面硬化を使用して、第2の硬度で深さDを有する表層242を製造する。一部の実施形態では、表面硬化法では拡散法が使用される。ある一定の実施形態では、低温拡散表面硬化法が使用される。
【0042】
引き続き図9Aを参照すると、ある一定の実施形態では、第1の面コーティング層244が、金属基板240及びその硬化された表層242の上に積層することができる。例えば、一部の実施形態では、金属同士の接触を抑制するように第1の面コーティングを選択することが望ましい場合がある。更に、特定の表面硬化方法はステンレス鋼材の耐食性を低減する傾向があるので、ある一定の実施形態では、第1の面コーティング層は酸化防止材を定めることができることが望ましい場合がある。
【0043】
引き続き図9Aを参照すると、ある一定の実施形態では、手術ステープラーの構成要素は、第1の面コーティング層244の上に積層する第2の面コーティング層246を更に含むことができる。第2の面コーティング層246は、複数の摺動係合サイクルにわたって摩耗を低減するように選択することができる。例えば、ある一定の実施形態では、骨ろう組成物を摺動面全体に配置して複数の再装填サイクルに対して摺動潤滑特性を提供することができる。有利なことに、骨ろう組成物は、偶発的な不整合のために点接触が増大した場合でも、手術ステープラーの構成要素の摺動接触での滑りを改善することができる。
【0044】
引き続き図9Aを参照すると、手術ステープラーの摺動構成要素に対する面調製の別の態様は、面仕上げである。摺動面の場合に、摺動構成要素の面仕上げが比較的滑らかであるか(例えば、粗度が25μin未満である)又は比較的大きい粗度を有するか(例えば、粗度が75μinを超える)のいずれかであることは望ましくない可能性がある。非常に滑らかな摺動面は、理論上の接触面積が比較的大きく、面の凹凸が少ない。すなわち、これらの滑らかな面は、摺動係合時の摩滅又は冷間圧接を容易にする傾向がある可能性がある。対照的に、比較的粗度の大きい面は、凹凸が互いに結合するので、比較的大きい摩擦力と微粒子化とをもたらす可能性がある。相対的に中等度の粗度(例えば、約25μin~75μin)を有する摺動面は、望ましいことに、比較的粗度の小さい面及び比較的粗度の大きい面と比べて摩滅の発生が少なく、中等度の摩擦力を有することができる。中等度の粗度はまた、被覆された面が摺動係合している場合に、望ましいことに面コーティングを保持することができる。ある一定の実施形態では、約25μin~75μinの面粗度を有する適度に粗い面をタンブリング工程によって調製することができる。
【0045】
図9Bを参照すると、手術ステープル留めデバイスの摺動面として使用する金属基板の他の実施形態の面に関する概略断面図を示している。図9Aを参照して上記に示す金属基板の実施形態と同様に、金属基板の図示の実施形態は、金属基板240のコア、第1のコーティング層244、及び第2のコーティング層246を備える。ある一定の実施形態では、第1のコーティング層244はドライフィルムを含むことができ、第2のコーティング層は骨ろう層を含むことができる。しかし、図9Aの金属基板の実施形態とは異なり、図9Bに示すように、金属基板240は表面硬化面を含まない。
【0046】
以上の説明を考慮して所望回数の発射サイクルにわたって摩耗することなく、発射部材、第1のジョー、及び第2のジョーで望ましい摺動性能を達成するための材料選択及び面調製の様々な実施形態がある。一実施形態では、ジョーアセンブリの発射部材及びジョーは、等級17-4のステンレス鋼材を含むことができる。17-4ステンレス鋼材は、H900条件(約45ロックウェルC硬さに対応)まで熱処理することができる。材料の表層は、約70ロックウェルC硬さに表面硬化することができる。例えば、一部の実施形態では、Bodycote pic社から市販されているS3P法のような拡散法は、約25~40ミクロンの硬化層深さで約65~70ロックウェルC硬さの硬化表層を提供することができる。ジョーアセンブリの発射部材及びジョーは、中等度の面粗度にタンブリング加工することができる。例えば、構成要素は、約25μin~75μinの面粗度を有することができる。一実施形態では、構成要素は、約50μinの面粗度を有する。PTFEドライフィルムの第1のコーティング層を付加することができる。この第1のコーティング層は、硬化された面での腐食を防止し、金属同士の接触を抑制することができる。構成要素は、骨ろう組成物の第2のコーティング層を更に含むことができる。有利なことに、材料と工程のこの組合せにより、複数の単回使用再装填カートリッジで反復使用される場合に摩滅に耐えるジョーアセンブリ及び発射部材が得られる。
【0047】
手術ステープラーの発射部材、第1のジョー、及び第2のジョーに関する他の実施形態は、約55ロックウェルC硬さに熱処理された等級420のステンレス鋼材を備える。構成要素は、中等度の面粗度にタンブリング加工することができる。構成要素は、PTFEドライフィルムの第1のコーティング層と骨ろう組成物の第2のコーティング層とを含むことができる。
【0048】
発射部材、第1のジョー、及び第2のジョーのうちの少なくとも1つを含む手術ステープラー構成要素の他の実施形態は、等級17-4ステンレス鋼材を備える。材料は約45ロックウェルC硬さに熱処理される。例えば、上述のように、ある一定の実施形態では、材料をH900条件まで熱処理することができる。それ以上の表面硬化は施されない。構成要素は、タンブリング工程で達成することができる適度に粗い面仕上げを有することができる。構成要素は、PTFEドライフィルムの第1のコーティング層と骨ろう組成物の第2のコーティング層とを含むことができる。ある一定の実施形態では、発射部材、第1のジョー、及び第2のジョー構成要素のうちの1又は2以上は、金属射出成形工程を使用して等級17-4のステンレス鋼材から形成することができる。特定の金属射出成形工程は、対応する機械加工構成要素と比較して比較的高い多孔率を有する金属基板をもたらすことができる。そのような多孔性金属射出成形構成要素の表面硬化技術は、比較的深さは大きいが、相応に比較的脆性の高い硬化表層を生成する可能性があり、これは表面硬化構成要素のバルク特性に影響を与える場合がある。すなわち、比較的多孔性の金属基板を生成することができる金属射出成形工程で構成要素が形成される場合に、更に別の表面硬化工程のない手術ステープラー構成要素の実施形態が望ましい可能性がある。
【0049】
上述の実施形態では、構成要素は、ジョー及び発射部材の面硬度が比較的高くて(少なくとも約45ロックウェルC硬さから約70ロックウェルC硬さまで)実質的に同一になるように調製される。他の実施形態では、発射部材はジョー部材よりも僅かに低い面硬度を有することができるように考えられている。例えば、発射部材は、ジョーの面硬度よりも約10まで低いロックウェルC硬さの面硬度を有することができる。
【0050】
更に、上述の実施形態では、表面硬化は拡散又は熱処理によって提供されるが、他の実施形態では、構成要素の金属基板の表層を加工硬化させるためにショットピーニング又は別の加工硬化技術を適用することができるように考えられている。次に、この加工硬化された表層は、1又は2以上のコーティング層で被覆することができる。
【0051】
図10を参照すると、手術ステープラーの摺動構成要素として使用する金属基板を調製する方法を示している。ある一定の実施形態では、本方法は、金属基板を与える段階260を含むことができる。上述のように、ある一定の実施形態では、金属基板は、等級17-4のステンレス鋼又は等級420のステンレス鋼のようなステンレス鋼材を含むことができる。ある一定の実施形態では、金属基板を与える段階は、金属基板構成要素を金属射出成形する段階を含むことができる。
【0052】
引き続き図10を参照すると、本方法は、金属基板を望ましい硬さまで硬化する段階262を更に備える。ある一定の実施形態では、金属基板を硬化する段階は、金属基板を熱処理する段階を含むことができる。例えば、ある一定の実施形態では、金属基板を硬化する段階は、約45HRCの硬さに対応するH900条件まで金属基板を熱処理する段階を備える。様々な実施形態では、金属基板を硬化する段階は、拡散工程で金属基板を表面硬化する段階を含むことができる。他の実施形態では、金属基板を硬化する段階は、ショットピーニングなどによる金属基板の表層を加工硬化させる段階を含むことができる。図9Bに概略的に示すようなある一定の実施形態では、金属基板を更に別の表面硬化なしで熱処理によって約45HRCの硬さまで硬化する。図9Aに概略的に示すような他の実施形態では、金属基板を熱処理工程で硬化させ、続いて拡散工程などで表面硬化して比較的高い面硬度を達成する。一部の実施形態では、表層は、約45HRC~75HRCまで硬化することができる。表層は、少なくとも約55HRCまで硬化することが望ましい場合がある。ある一定の実施形態では、表層は、約70HRCまで硬化される。ある一定の実施形態では、手術ステープラーのための発射部材構成要素を形成する金属基板を第1の硬度に面硬化させ、第1のジョー及び第2のジョーを形成する金属基板は、第1の硬度とは異なる第2の硬度まで表面硬化される。ある一定の実施形態では、第2の硬度は、第1の硬度よりも約10HRC高い範囲内である。
【0053】
引き続き図10を参照すると、ある一定の実施形態では、本方法は、中程度の粗度の面仕上げを与える段階264を更に備える。ある一定の実施形態では、中程度の粗度の面仕上げを与える段階は、構成要素をタンブリング加工する段階を含むことができる。ある一定の実施形態では、中程度の粗度の面仕上げは、約25μin~75μinの面粗度を含むことができる。一部の実施形態では、面粗度は約50μinである。
【0054】
引き続き図10を参照すると、ある一定の実施形態では、本方法は、少なくとも1つの面コーティングを付加する段階266を更に備える。ある一定の実施形態では、少なくとも1つの面コーティングを付加する段階は、第1の面コーティングを付加する段階と第2の面コーティングを付加する段階とを備える。ある一定の実施形態では、少なくとも1つの面コーティングを付加する段階は、PTFEドライフィルムを付加する段階と骨ろう組成物を付加する段階とを備える。
【0055】
この出願は、ある一定の好ましい実施形態及び実施例を開示するが、本発明は、具体的に開示した実施形態を超えて他の代替実施形態及び/又は本発明の使用及びその明らかな修正及び同等形態にまで及ぶことは当業者には理解されるであろう。更に、これらの発明の様々な特徴は、単独で又は明示的に上述した以外のこれらの発明に関する他の特徴と組み合わせて使用することができる。すなわち、本明細書に開示する本発明の範囲は、上述の特定の開示した実施形態によって限定すべきではなく、以下に続く特許請求の範囲を公正に読み取ることによってのみ決定しなければならないことを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
【国際調査報告】