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特表2023-547912冷媒缶を用いて電気機械の熱管理を行うためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】冷媒缶を用いて電気機械の熱管理を行うためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525579
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 US2021056917
(87)【国際公開番号】W WO2022094003
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/106,096
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520456860
【氏名又は名称】タウ モーターズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ペニントン ウォルター ウェズリー サード
(72)【発明者】
【氏名】スウィント イーサン バジェット
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴンソン グレゴリー ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン マイケル パーカー
(72)【発明者】
【氏名】レーヴ マシュー ジョーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ルビン マシュー ジェイ.
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB01
5H609BB19
5H609PP06
5H609PP09
5H609QQ05
5H609RR27
5H609RR37
5H609SS20
5H609SS21
5H609SS23
(57)【要約】
熱管理システムを備えた電気機械は、ステータコアを備えたステータと、ロータコアを備え、ステータに対して可動であるロータと、を備えている。ステータ又はロータのうち少なくとも1つに1つ又は複数の巻線が設けられている。ステータ及びロータのうち前記少なくとも1つに配置された巻線のうち1つ又は複数を1つ又は複数の冷媒缶が当該冷媒缶の内部コンパートメントに封入する。冷媒缶の内部コンパートメントは、1つ又は複数の巻線を通る冷媒流路を画定する。冷媒缶は、当該冷媒缶の内部コンパートメントと流体連通する冷媒流入口及び冷媒流出口を有する。1つ又は複数の冷媒缶の内部コンパートメントは、ステータコア及びロータコアから流体的に隔絶されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱管理システムを備えた電気機械であって、
ステータコアを備えたステータと、
ロータコアを備え、前記ステータに対して可動であるロータと、
を備えており、
前記電気機械の前記ステータ又は前記ロータのうち少なくとも1つに1つ又は複数の巻線が設けられており、
前記ステータ又は前記ロータのうち前記少なくとも1つの前記1つ又は複数の巻線を1つ又は複数の冷媒缶が当該冷媒缶の内部コンパートメントに封入し、
前記内部コンパートメントは、前記1つ又は複数の巻線を通る冷媒流路を画定し、
前記冷媒缶は、前記内部コンパートメントと流体連通する冷媒流入口及び冷媒流出口を有し、
前記1つ又は複数の冷媒缶の前記内部コンパートメントは、前記ステータコア及び前記ロータコアから流体的に隔絶されている
ことを特徴とする電気機械。
【請求項2】
1つ又は複数の冷媒缶の前記内部コンパートメントは、1つ又は複数の他の冷媒缶の前記内部コンパートメントから流体的に隔絶されている、
請求項1記載の電気機械。
【請求項3】
前記1つ又は複数の巻線は集中巻線を有する、
請求項1記載の電気機械。
【請求項4】
前記冷媒缶は、前記内部コンパートメントを貫通する内壁を有し、
前記内壁は、前記冷媒缶を貫通する開口を画定し、
前記集中巻線は前記内部コンパートメント内において前記内壁に巻かれている、
請求項3記載の電気機械。
【請求項5】
前記冷媒缶の前記開口は、前記ステータコアに設けられた複数の歯のうち1つ又は複数の歯に受けられるように構成されている、
請求項4記載の電気機械。
【請求項6】
前記冷媒缶の前記開口は、前記ロータコアの1つ又は複数の極によって受けられるように構成されている、
請求項4記載の電気機械。
【請求項7】
前記巻線は前記ステータに配された分布巻線であり、
前記ステータは、2つ以上の前記冷媒缶を画定する冷媒缶フレームを備えており、前記2つ以上の冷媒缶の流入口及び流出口は互いに流体連通しており、
前記ステータコアは複数の歯を備えており、
前記ステータコアは、前記2つ以上の冷媒缶間に前記ステータコアの歯が配されるように前記冷媒缶フレームに配置されており、
前記分布巻線は、前記流入口及び前記流出口が互いに流体連通する前記2つ以上の冷媒缶内に配置されている、
請求項1記載の電気機械。
【請求項8】
前記冷媒缶フレームは、前記ステータの第1の軸方向端部に配置された第1のエンドキャップと、前記第1のエンドキャップとは反対側の第2のエンドキャップと、を備えており、
前記第1のエンドキャップは流入口を有する内部コンパートメントを有し、前記第2のエンドキャップは流出口を有する内部コンパートメントを有し、
流入口が互いに流体連通する前記2つ以上の冷媒缶の流入口は、前記第1のエンドキャップの内部コンパートメントと流体連通し、
流出口が互いに流体連通する前記2つ以上の冷媒缶の流出口は、前記第2のエンドキャップの内部コンパートメントと流体連通する、
請求項7記載の電気機械。
【請求項9】
前記1つ又は複数の集中巻線はトロイダル型である、
請求項5記載の電気機械。
【請求項10】
前記ステータコアは複数のステータセグメントから構成されており、
前記ステータコアの前記複数の歯のうち1つ又は複数の歯は前記ステータセグメントに設けられており、
前記冷媒缶の前記開口は、前記ステータセグメントの前記1つ又は複数の歯によって受けられる、
請求項9記載の電気機械。
【請求項11】
前記ロータは、冷媒流入口及び冷媒流出口を有する軸部を備えており、
前記軸部の前記冷媒流入口は前記冷媒缶の前記冷媒流入口と流体連通しており、前記軸部の前記冷媒流出口は前記冷媒缶の前記冷媒流出口と流体連通しており、
前記ロータが回転している間、前記軸部の前記冷媒流入口に流入した冷媒が前記冷媒缶を通って前記軸部の前記冷媒流出口に流れる、
請求項6記載の電気機械。
【請求項12】
前記軸部は、当該軸部の長手方向軸を通る内部コンパートメントを有し、
前記ロータが回転している間、前記軸部の前記冷媒流入口に流入した冷媒の体積のうち第1の一部分は前記冷媒缶を通って前記軸部の前記冷媒流出口に流れ、前記軸部の前記冷媒流入口に流入した冷媒の体積のうち第2の一部分は前記軸部の前記内部コンパートメントを通って前記軸部の前記冷媒流出口に流れる、
請求項11記載の電気機械。
【請求項13】
前記電気機械の1つ又は複数の電気的構成要素が前記軸部の前記内部コンパートメント内に配置されている、
請求項12記載の電気機械。
【請求項14】
1つ又は複数の冷媒缶が複数の流出口を有し、
前記複数の流出口のうち少なくとも1つは、前記電気機械における前記ステータ及び前記ロータを設けた動作ボリュームに向けられている、
請求項1記載の電気機械。
【請求項15】
前記電気機械の電気的構成要素が、前記冷媒缶内の前記1つ又は複数の巻線を設けた前記内部コンパートメント内に配置されている、
請求項1記載の電気機械。
【請求項16】
熱管理システムを備えた電気機械であって、
ステータコアを備えたステータと、
ロータコアを備え、前記ステータに対して可動であるロータと、
冷媒ポンプと、
前記冷媒ポンプと電気的に接続され、前記冷媒ポンプを制御するように構成された制御部と、
を備えており、
前記電気機械の前記ステータ又は前記ロータのうち少なくとも1つに1つ又は複数の巻線が設けられており、
前記ステータ又は前記ロータのうち前記少なくとも1つに配置された前記巻線のうち1つ又は複数を1つ又は複数の冷媒缶が当該冷媒缶の内部コンパートメントに封入し、
前記内部コンパートメントは、前記1つ又は複数の巻線を通る冷媒流路を画定し、
前記冷媒缶は、前記内部コンパートメントと流体連通する冷媒流入口及び冷媒流出口を有し、
前記冷媒ポンプは前記1つ又は複数の冷媒缶の1つ又は複数の冷媒流入口と流体連通している
ことを特徴とする電気機械。
【請求項17】
1つ又は複数の冷媒缶における前記1つ又は複数の巻線を設けた前記内部コンパートメント内にセンサが配置されており、
前記センサは、前記制御部が当該センサの出力を受け取るように当該制御部に電気的に接続されている、
請求項16記載の電気機械。
【請求項18】
前記制御部はプロセッサと、記憶部と、メモリと、を備えており、
前記プロセッサは、前記センサから受け取り前記記憶部に格納した入力と、前記メモリに格納された所定の閾値と、を処理するように構成されており、
前記制御部は、前記冷媒ポンプの出力を調整するように構成されている、
請求項17記載の電気機械。
【請求項19】
前記センサは、前記ステータ及び前記ロータのうち少なくとも1つに配置された前記1つ又は複数の巻線を封入しした前記1つ又は複数の冷媒缶を流れる冷媒の温度を検出するように構成されており、
前記制御部の前記メモリに格納された前記所定の閾値は、定常連続動作条件下で前記ステータ及び前記ロータのうち少なくとも1つに配置された前記1つ又は複数の巻線を封入した前記1つ又は複数の冷媒缶を流れる前記冷媒の温度が、前記ステータ及び前記ロータのうち少なくとも1つに配置された前記ステータコア又は前記ロータコアの温度より少なくとも5℃低くなるように設定されている、
請求項18記載の電気機械。
【請求項20】
前記ステータコアは複数の積層薄板から構成されており、
前記制御部の前記メモリに格納された前記所定の閾値は、定常連続動作条件下で前記ステータに配置された前記1つ又は複数の巻線を封入した前記1つ又は複数の冷媒缶を流れる前記冷媒の温度が、前記ステータに配置された前記ステータコアの前記積層薄板の平均温度より少なくとも5℃低くなるように設定されている、
請求項19記載の電気機械。
【請求項21】
前記ロータコアは複数の積層薄板から構成されており、
前記制御部の前記メモリに格納された前記所定の閾値は、定常連続動作条件下で前記ロータに配置された前記1つ又は複数の巻線を封入した前記1つ又は複数の冷媒缶を流れる前記冷媒の温度が、前記ロータに配置された前記ロータコアの前記積層薄板の平均温度より少なくとも5℃低くなるように設定されている、
請求項19記載の電気機械。
【請求項22】
熱管理システムを備えた電気機械の熱管理を行うための方法であって、
1つ又は複数の冷媒缶の内部コンパートメントに冷媒を流すことを含み、ただし、前記冷媒缶は当該冷媒缶の前記内部コンパートメントに前記電気機械の1つ又は複数の巻線を封入しており、前記冷媒缶の前記内部コンパートメントは前記電気機械の他の構成要素から流体的に隔絶されている
ことを特徴とする方法。
【請求項23】
前記1つ又は複数の冷媒缶に封入された前記1つ又は複数の巻線の温度を検出することと、
検出した前記温度が閾値を超えるか否かを判定することと、
検出した前記温度が前記閾値を超えると判定したことに応じて、前記1つ又は複数の冷媒缶の前記内部コンパートメントに追加の冷媒を流すことと、
をさらに含む、請求項22記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は米国仮出願第63/106,096号(発明の名称:「Motors Including Coolant Cans(冷媒缶を備えたモータ)」、出願日:2020年10月27日)に係る優先権を主張するものであり、同出願の記載内容は全て、参照により本願の記載内容に含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
電気機械の電気的構成要素の中には、電気機械の動作時に温度を上昇するものがある。電気機械の中には、動作の際に電気機械の一部の電気的構成要素については温度上昇が望ましくないが、同じ電気機械の一部の電気的構成要素については、動作の際に温度を上昇させることが望ましいものがある。従来の電気機械熱管理システムでは、電気機械の構成要素又は電気機械全体を冷却するため、一般に冷媒液が用いられる。電気機械の中には動的な動作を行うものがあるため、上述のようなシステムでは、電気機械の特定の構成要素を直接冷却することが難しい場合がある。
【0003】
例えば、電気モータや発電機等の電気機械の中には、「ステータ」と称されることが多い固定部品と、「ロータ」と称されることが多い回転部品と、を備えたものがある。電気モータでは、電流が電磁界に変換されて、この電磁界がステータとロータとの間に機械的な力又はトルクを生じさせ、これを利用して動作を行うことができる。発電機も電気モータと同様の原理で動作するものであるが、機械的な力が電流に変換される。主に回転力又はトルクについて説明するが、本願に記載されている原理はリニアモータにも適用可能である。例えばリニアモータの中には、ロータが固定部品として用いられると共に、ステータが直進部品として用いられるものがある。
【0004】
特に電気モータでは、電気機械の連続動作中、当該モータのステータ及び/又はロータの表面又は内部に配置された電線の巻線又は導電性要素の温度が上昇する。電気モータにおいて巻線又は導電性要素の熱管理が特に重要である理由は、巻線又は導電性要素の温度が上昇すると、それにつれて電気モータの出力性能が低下するからである。よって、動作の際には、電気機械のステータ及び/又はロータの表面及び/又は内部に配置された巻線又は導電性要素を冷却するため、モータ内に冷媒液を流すことが多い。残念ながら、上記の電気機械の従来の熱管理システムや方法は非効率であったり、電気機械の他の構成要素について性能のさらなる損失となる場合があった。よって、電気機械やモータアセンブリの性能改善のためには、電気機械の改善された熱管理システム及び方法が必要である。
【発明の概要】
【0005】
本願開示は、冷媒缶を用いて電気機械の熱管理を行うためのシステム及び方法を提供するものである。
【0006】
本願開示の一部の側面では、熱管理システムを備えた電気機械は、ステータコアを備えたステータと、ロータコアを備え、前記ステータに対して可動であるロータと、を備えている。前記電気機械の前記ステータ又は前記ロータのうち少なくとも1つに、1つ又は複数の巻線が設けられている。前記ステータ又は前記ロータのうち前記少なくとも1つの前記1つ又は複数の巻線を1つ又は複数の冷媒缶が当該冷媒缶の内部コンパートメントに封入(encapsulate)し、前記内部コンパートメントは、前記1つ又は複数の巻線を通る冷媒流路を画定する。前記冷媒缶は、前記内部コンパートメントと流体連通する冷媒流入口及び冷媒流出口を有し、前記冷媒缶の前記内部コンパートメントは、前記ステータコア及び前記ロータコアから流体的に隔絶されている。
【0007】
本願開示の他の一側面では、熱管理システムを備えた電気機械は、ステータコアを備えたステータと、ロータコアを備え、前記ステータに対して可動であるロータと、冷媒ポンプと、前記冷媒ポンプと電気的に接続され、前記冷媒ポンプを制御するように構成された制御部と、を備えている。前記電気機械の前記ステータ又は前記ロータのうち少なくとも1つに、1つ又は複数の巻線が設けられている。前記ステータ又は前記ロータのうち前記少なくとも1つの表面又は内部に配置された前記巻線のうち1つ又は複数を1つ又は複数の冷媒缶が当該冷媒缶の内部コンパートメントに封入し、前記内部コンパートメントは、前記1つ又は複数の巻線を通る冷媒流路を画定する。前記冷媒缶は、前記内部コンパートメントと流体連通する冷媒流入口及び冷媒流出口を有し、前記冷媒ポンプは前記1つ又は複数の冷媒缶の1つ又は複数の冷媒流入口と流体連通している。
【0008】
本願開示のさらに他の一側面では、熱管理システムを備えた電気機械の熱管理を行うための方法は、1つ又は複数の冷媒缶の内部コンパートメントに冷媒を流すことを含み、前記冷媒缶は、当該冷媒缶の前記内部コンパートメントに前記電気機械の1つ又は複数の巻線を封入している。前記冷媒缶の前記内部コンパートメントは前記電気機械の他の構成要素から流体的に隔絶されている。
【0009】
本願開示の上記及び他の側面及び利点は、以下の説明から明らかである。以下の説明では、当該説明の一部を構成する添付図面を参照するが、図面では、本願開示の好適な構成が例示されている。しかし、かかる構成は必ずしも本願開示の全範囲を代表するとは限らないので、本願開示の範囲の解釈にあたっては特許請求の範囲が参酌される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電気モータを備えた一例の電気的駆動システムのブロック図である。
図2】本願開示の電気モータの一例のステータの正面等角図である。
図3図2のステータの背面等角図である。
図4図2のステータの正面図である。
図5図2のステータの背面図である。
図6図2のステータの側面図である。
図7図2のステータの一例の巻線の斜視図である。
図8図2のステータの一例の冷媒缶の斜視図であり、冷媒缶の内部には図7の巻線が配置されていると共に、当該冷媒缶の蓋部が分解された状態となっている。
図9図8の冷媒缶の組立状態と、図2のステータの一例のステータ歯と、を示す斜視図である。
図10】ステータ歯に嵌められた状態の図9の冷媒缶の斜視図であり、ギャップピースが挿入されている。
図11図10の線11-11に沿った断面図である。
図12図2の線12-12に沿った部分断面図である。
図13】本願開示の電気モータの他の一例のステータの正面等角図である。
図14図13のステータの正面図である。
図15図13のステータの側面図である。
図16図13のステータのステータコアの冷媒缶フレームの斜視図である。
図17図13のステータのステータコアの積層薄板の等角図である。
図18図13のステータコアの等角図である。
図19図18の細部19-19の細部図であり、ステータコアのギャップにギャップピースが挿入されている。
図20図19の一例のギャップピースの等角図である。
図21】エンドキャップピースを取り外した状態の図13のステータの等角図である。
図22図14の線22-22に沿った断面図である。
図23図15の線23-23に沿った断面図である。
図24】本願開示の電気モータの他の一例のステータの正面等角図である。
図25図24のステータの正面図である。
図26図24のステータの背面図である。
図27図24のステータの側面図である。
図28図24のステータの一例の冷媒缶の斜視図である。
図29図28の冷媒缶の分解図である。
図30】ステータ歯に配置された状態の図28の冷媒缶の斜視図である。
図31図31の冷媒缶の正面斜視図である。
図32図31の線32-32の断面図である。
図33】本願開示の電気モータの他の一例のステータの正面等角図である。
図34図33のステータの正面図である。
図35図33のステータの背面図である。
図36図33のステータの側面図である。
図37図33のステータの一例の冷媒缶の背面斜視図である。
図38図37の冷媒缶の分解図である。
図39】ステータ歯に配置された状態の図37の冷媒缶の斜視図である。
図40図39の冷媒缶の正面斜視図である。
図41図40の線41-41の断面図である。
図42】本願開示の電気モータの一例のロータの正面等角図である。
図43図42のロータの側面図である。
図44図42のロータの正面図である。
図45図42のロータの背面図である。
図46図42のロータの分解図である。
図47図42のロータの冷媒缶の分解図である。
図48図42のロータの冷媒缶及びロータ極の分解図である。
図49図42のロータの軸部の分解図である。
図50図42のロータのエンドキャップの分解図である。
図51図42の線51-51に沿った断面図である。
図52図42の線52-52に沿った断面図である。
図53図42の線53-53に沿った断面図である。
図54図42の線51-51に沿った断面図を、本願開示のロータの他の一例の軸部と共に示す図である。
図55】本願開示の電気モータの電気的構成要素を備えた一例の巻線の斜視図である。
図56】本願開示の冷媒缶の一例の内表面の細部図である。
図57】電気機械用の一例の温度制御モジュールの概略図である。
図58】電気機械の冷媒マニホルドを含む一例の冷媒流れシステムの各種構成要素の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記で詳述したように、電気機械の中には、当該電気機械の性能を維持して寿命を長くするため、冷却及び熱管理システムを含めた熱管理システムを動作中に必要とし得るものがある。本願開示は、例えばロータとステータとを電磁結合したものを備えた電気モータ等の電気機械の熱管理システムに関するものである。電気モータでは、ステータ及びロータのうち一方又は両方が電線の巻線又は導電性要素を備え、この巻線又は導電性要素は、当該巻線に電流が流れることによって電磁結合を行うことができるものである。この電流は巻線に熱散逸を引き起こし、これは電気モータの性能や寿命に悪影響を及ぼし得る。例えば、電気モータの導体若しくはこれに関連する構成要素が高温によって機械的に損傷することがあり、又は、巻線の温度上昇と共に導体の電気的抵抗が増大して巻線の性能を低下することがある。
【0012】
電気機械の巻線、例えば電気モータの巻線の温度を許容可能な低い温度に維持するため、液体冷媒を使用することができる。電気モータの従来の冷却には、例えば強制空冷、噴霧冷却及び液浸冷却が含まれる。強制空冷は、モータアセンブリ内に空気を押し流してモータの巻線又は導電性要素を冷却するものである。噴霧冷却システムは、特定のモータ構成要素に冷媒のジェットを当てる構成とすることができる。液浸冷却システムは、動作中にモータアセンブリ全部を液体の収容ボリューム中に浸漬するものである。上記の従来の冷却システムのうち巻線の冷却において最も有効なのは液浸冷却であるが、上記のどちらの冷却システムも、電気モータの動作ボリュームにおける冷媒量がかなり多くなってしまい、少なくとも2つの不所望の効果のうち一方又は両 方を引き起こしてしまう。
【0013】
第1の不所望の効果は、モータの可動部品が冷媒と接触したときの風損(windage)又は抗力損(drag loss)が増大することであり、この増大は特にモータのエアギャップ(すなわち、ステータとロータとの間のギャップ)内に冷媒が存在する場合に生じ、これは液浸冷却に共通する結果である。噴霧冷却はこの悪影響を軽減し得るが、液浸冷却と比較して冷却有効性が低下してしまう。その上、噴霧冷却は典型的には、モータアセンブリの動作ボリューム内においてステータ本体とロータ本体とが近接していることと、動作に由来する現象との両方に起因して、他のモータ構成要素との相互作用が著しく多い。強制空冷も風損又は抗力損の問題があり、特に、先進の冷却能力又は高出力密度の電気機械設計を達成するために必要な空気流が多い場合に当該問題が存在する。
【0014】
第2に、上記にて述べたように従来の電気モータ設計では、巻線の温度を、当該巻線が設けられたステータコア又はロータコアより低温に維持するのが有利である。モータの動作ボリューム内にかなり多量の冷媒が存在する液浸冷却は、巻線とステータコアとロータコアとに無差別に冷却を適用するので、巻線が冷却されるときにはステータコア及びロータコアも同様に冷却される。噴霧冷却も同様に、噴霧された冷媒が巻線から流れて、モータのステータコア及びロータコアを含めた動作ボリューム内に分散すると、ステータコア及びロータコアも意図せずに冷却される結果となり得る。
【0015】
その上、巻線導体の抵抗は動作温度に比例するので、非限定的な一例として銅等の多くの導電性要素が可能な限り低温に調整されたときに最も高効率となるのに対し、モータにて使用される他 の材料、非限定的な一例として鋼積層薄板等は、より高い動作温度とするのが有利となることがあり、例えば、かかる条件下では当該他の材料の損失を最小限に抑えることができ る。よって、電気機械に含まれる物の中には、直接冷却が常に有利であり又は望ましいとは限らないものもあり、直接冷却が特定の電気機械における要求と両立しないことがある。例えば磁石、半導体、又はそもそもステータ若しくはロータ等の他 の構成要素は、互いに異なる熱的能力や動作条件を必要とすることがあり、これも電気機械の熱管理の必要性をさらに増大させることとなる。
【0016】
さらに、多くの伝統的な電気モータやモータアセンブリは、電気機械の導電性要素から電気機械コア、磁気的要素若しくはハウジングを介して熱を除去する機能を有するパッシブ型又はアクティブ型のヒートジャケットを使用する。具体的には、電気機械及び電気機械アセンブリの熱流は、導体の温度がコアの温度より高い熱勾配を生じる磁気的構成要素を通る設計となっている。これは、上記の通りコア及び/又は電気機械そのものの性能にとって好ましくない場合がある。
【0017】
上記の欠点の認識下で、巻線あるいは導電性要素を備えた電気機械の性能を向上する取り組みにおいて、本願開示は、電気機械の内部構成要素を含めた動作ボリュームから切り離して巻線又は導電性要素に冷却を提供する熱管理システムのシステム及び方法を提供するものである。例えば、本願開示で記載されている電気機械は、巻線又は導電性要素を封入した冷媒缶を備えており、冷媒が冷媒缶内を流れてステータ又はロータ又はその両方の巻線あるいは導電性要素のみと接触するように構成されている。動作の際には、上述の冷媒缶は液浸冷却の効率面での利点を提供すると共に、巻線あるいは導電性要素にのみ冷却を行うという利点を効果的に奏する。冷媒缶は、電気機械の他の内部構成要素、例えば巻線あるいは導電性要素が取り付けられ又はこれと電気的にやりとりする電気モータのステータコア又はロータコア等から、冷媒を流体的に隔絶して、ステータコア又はロータコアでは、封入された巻線あるいは導電性要素より比較的高い温度を維持でき るようにする。本願開示によって、モータ動作中にステータコア及び/又はロータコアの温度を、これに配された巻線あるいは導電性要素より高温に維持することができる場合があり、このことは、従来のモータ内部プロセスと一線を画す突破口となる。
【0018】
上記の通り、電気モータでは、巻線あるいは導電性要素における冷媒をステータコア又はロータコアから流体的に隔絶することにより、モータ性能を向上することができる。典型的には温度上昇と共に(例えば抵抗増大等により)効率が低減するモータ巻線とは異なり、ステータコアやロータコアは温度上昇と共に効率向上を示すことが多く、その理由は、ステータコア及びロータコアに誘導される渦電流が温度上昇と共に減少するからである。誘導された渦電流は、巻線から伝わるいかなる熱にも依存せずに、ステータコア及びロータコアを加熱するように作用する。本願開示の熱管理システムに冷媒缶を設けることにより、ステータコア又はロータコアにおいて比較的高温を維持することができ 、これにより巻線効率とハウジング/コア効率とを同時に向上することができる。本願でいう電気機械の「性能」とは、電気機械の出力密度、熱的余裕(thermal headroom)及び/又は効率をいう。
【0019】
以降説明するように、本願開示は、電気機械の巻線あるいは導電性要素に直接冷却を行うように構成された冷媒缶を用いた電気機械の熱管理システムのためのシステム及び方法を提供するものである。非限定的な一例では、電気モータは、当該モータのステータの表面又は内部に配置された巻線あるいは導電性要素を封入する冷媒缶を備えている。これに代えて、又はこれと共に、電気モータ又は電気モータアセンブリは、当該モータのロータの表面又は内部に配置された巻線あるいは導電性要素を封入する冷媒缶を備えている。これに代えて、又はこれと共に、電気モータ又は電気モータアセンブリは、当該モータのステータ及びロータの両方の表面又は内部に配置された巻線あるいは導電性要素を封入する冷媒缶を備えている。追加的又は代替的に、電気モータ又は電気モータアセンブリは、ステータ又はロータの一方又は両方と電気的にやりとりする巻線又は導電性要素を封入する冷媒缶を備えている。また、冷媒缶を用いた熱管理システムを備えている電気モータ又は電気モータアセンブリの中の冷媒流及び温度をモニタリング及び/又は調整するためのシステム及び方法も提供する。
【0020】
以下の記載は、ステータ及び/又はロータを備えた電気機械に本願開示を当てはめて説明するが、本願開示はかかる電気機械に限定することを意図したものではない。一部の実施態様では、巻線又は導電性要素を備えた他の電気機械、例えば電気的トランスや電気的インバータ等に、冷媒缶を備えた熱管理システム及び方法を適用することができる。種々の実施態様において、熱管理システム及び方法は、発電機、複数の電気的(又は電磁的)システムを結合したもの、ある入力から所望の出力へのエネルギー流と機械的又は電気的圧力を変化させる機械的及び/又は電気的パワー変換装置に適用することができる。
【0021】
一部の実施態様では、下記にて説明する冷媒缶を備えた熱管理システム及び方法を使用して、電気機械の巻線又は導電性要素以外の電気的構成要素又は電気的環境に冷媒又は熱制御を提供することができる。例えば一部の実施態様では、本願開示の1つ又は複数の冷媒缶の中に電気機械のトランスを封入することができる。一部の実施態様では、本願開示の1つ又は複数の冷媒缶の中に電気機械又は電気的システムのインバータを封入することができる。
【0022】
本願開示では全体を通じて、巻線との用語と導体/導電性要素との用語は交換可能に用いることができる。導電性要素には、バー、プリント配線板(PCB)、半導体、リッツ線、マルチターンコイル、鋳造された若しくは固体の導体、カーボンナノチューブ、その他電気回路において電気を流すことができる全ての要素が含まれる。
【0023】
図1は、電気モータ102と、電気モータ102に結合されたモータ制御部104と、を備えた電気的駆動システム100を概略的に示す図である。モータ制御部104は、負荷106を駆動するように電気モータ102を動作させる構成となっている。負荷106は、例えば歯車セット等の追加の歯車列、車両の車輪、ポンプ、コンプレッサ、又は他のモータとすることができ、他のモータの場合、複数のモータを連結して並列動作させることができる。
【0024】
電気モータ102は、モータハウジング110に対して回転可能な出力軸部108を有する。モータハウジング110は、モータ構成要素の回転その他の運動に関するデータムと見なされる。使用中、出力軸部108は負荷106に結合することができ、また電気モータ102は、モータ制御部104からの適切な電力及び信号によって電気的に作動されたときに、負荷106に回転力を与えることができる。一部の実施態様では、出力軸部108は電気モータ102を貫通して当該出力軸部108の両端が露出する。すなわち、モータ102の両端で回転力を出力することができる。モータハウジング110は出力軸部108の回転軸を基準として対称とすることができるが、モータハウジング110は任意の外形とすることができ、一般に、モータ102の動作中にハウジング110の回転を阻止するために当該モータハウジング110を他の構造に固定するための手段を備えることができる。
【0025】
電気モータ102は、ステータ等のアクティブ磁気的要素112と、ロータ等のパッシブ磁気的要素114を備えることができる。一部の実施態様では、例えばロータが、インバータ又は制御可能な電源によって駆動される導体又は導電性要素を備えている場合、ロータをアクティブ部品とすることができる。ステータ又はロータ又はその両方は、その対向する構成要素に対する位置に電磁界を生成して両構成要素間に機械的力を生じさせるように制御される電気回路を備えることができる。ここで詳述するにあたり、以下で詳述する実施態様では、アクティブ磁気的要素112の代表例としてステータを使用すると共に、パッシブ磁気的要素114の代表例としてロータを用いる。他の実施態様では、アクティブ磁気的要素112及びパッシブ磁気的要素114を他の電気機械又はモータの他の構成要素とすることができる。
【0026】
電気モータ102は、少なくとも2つの磁気的要素112を備えたものとして説明することも可能であり、一般には固定要素あるいはステータと、例えば回転要素あるいはロータ等の自在に可動な要素と、を備える。ステータ又はロータ又はその両方は、その対向する構成要素に対する位置に電磁界を生成して両構成要素間に機械的力を生じさせるように制御される電気回路を備えている。ここで詳述するにあたり本実施態様では、固定磁気的要素112の代表例としてステータを使用すると共に、可動磁気的要素114の代表例としてロータを用いる。他の実施態様では、固定磁気的要素112及び可動磁気的要素114を他の電気機械又はモータの他の構成要素とすることができる。ロータ114は、ステータ112と電磁的に相互作用するように構成されており、例えばインナーロータ・ラジアルギャップモータ等ではロータ114をステータ112の中に配置することができ、又は、例えばアキシャルギャップモータ若しくはリニアモータ等ではロータ114をステータ112に対して平行に配置することができ、又は、アウターロータ・ラジアルギャップモータ等ではロータ114をステータ112の外部に配置することができ、又はこれらの配置の何らかの組み合わせとすることができる。ステータ112における電気の働きが、ロータ114の動きを駆動する。ロータのいかなる回転も出力軸部108に伝達されて出力軸部108を回転させるように、ロータ114は出力軸部108に回転結合されている。動作中にロータ114がステータ112まわり又はステータ112に対して平行に動くように、ステータ112は電気モータ102において固定されている。
【0027】
電線又は導電性要素のループを電流が通ることによって、当該電線又は導電性要素の巻回領域又は包囲領域を通る起磁力(MMF)及びモータ極が生じる。典型的な電気モータでは、かかるループは所望の電流負荷に耐えるために十分な径を有し、これは一部の実施態様では、駆動周波数の表皮深さがループを完全に貫通するために十分な細さとしなければならない。一部の実施態様では、磁極の磁界強度を増大させるために巻き数を多くし、又はワイヤの重なり合うループを多くする。このトポロジは、巻線界磁極と称され得る。複数のループを重ね合わせた上記のセットは、コイルと称される。
【0028】
本願開示では、1つの電気機械の中、例えば電気モータのステータ又はロータ等において、電気機械の他のコイル又は導電性要素と共に働くように構成された電線又は導電性要素のコイルを「巻線」という。実際には、巻線は種々の形態をとることができる。例えば一部の事例では、ワイヤコイルを一緒に直列に巻くことにより、コイルの各一巻きが同じ磁気軸を有する。このように直列に巻かれた複数のコイル又は別々のロータ歯若しくはステータ歯に巻かれた複数のコイルは「集中巻線」と称され得る。一部の事例では、コイルはロータ又はステータの複数の歯に重なってこれらを包囲することができる。このように重なり合った複数のコイルは、電機子又は「分布巻線」と称され得る。1つの磁極がこの分布巻線の磁気中心となり、これにより当該磁極は、巻線を通る駆動電流に応じて上述の分布巻線の中の個々のコイルに対して相対的に動くことができる。一部の事例では、ロータ又はステータのうちいずれか一方の歯スロットからヨーク又は継鉄にコイルを巻くことができる。かかるコイルは「トロイダル巻線」と称され得る。
【0029】
図1の例の電気モータ102では、ステータ112は複数のステータ極を有すると共に、ロータ114は複数のロータ極を有し、ステータに対して電気的巻線が設けられている。ロータ114はステータ112と合わさって、当該ステータとロータとの間に公称エアギャップを画定し、例えば一部の実施態様では、この公称エアギャップはロータ歯とステータ歯との間に画定される。ロータ114はステータ112に対して可動となっており、例えば、回転軸まわりに回転可能、又は1つ若しくは複数の規定された方向に直線移動可能である。
【0030】
図2~6は、本願開示の一実施態様例のステータ200の非限定的な一例を示す図である。ステータ200は、概ね円筒形のステータコア202と、ステータコア202の周囲に周方向に配置された複数の冷媒缶204と、を備えている。ステータコア202は、内径208を有すると共に開口210を画定する内周面206を有する。開口210は、電気モータのロータ(不図示)と内周面206との間にエアギャップが存在するようにロータを受け入れるように構成されている。ステータコア202は、開口210を通って延在する長手方向軸212を有する。
【0031】
ステータコア202から径方向に複数のステータ歯214が延在し、その向きはステータコア202の周方向に向けられている。ステータコア202の外径220は、上記の複数のステータ歯214の外端部218によって定義される。複数の各ステータ歯214は、複数の冷媒缶204の開口を受け入れる構成となっている(図11及び図12参照)。本実施態様では、ステータ歯214は1つおきに冷媒缶204を受けるように周方向に離隔している(図12参照)。
【0032】
一部の実施態様では、ステータコア202は(ステータ歯214も含めて)、鉄等の透磁性材料から成る。一部の実施態様では、ステータコア202は、外表面にステータ歯が形成された1つ又は複数の円筒部から成る。一部の実施態様では、ステータコア202は複数のステータ板又は積層薄板から成り、これにより、ステータコア202の透磁性材料内の渦電流が減少する。例えば一部の実施形態では、ステータ積層薄板は、ステータコア202におけるその外表面となる部分に含まれる。
【0033】
一部の実施態様では、ステータコア202は透磁性材料に加えて他の要素を含む。例えば一部の実施態様では、ステータコア202は接着剤及び/又は電気絶縁材料(例えばワニス及び/又は金属酸化物)を含む。一部の実施態様では、ステータコアの一部がエポキシその他絶縁材料を含み、又はこれに封入されている。
【0034】
図7~12は、冷媒缶204をより詳細に示す図である。冷媒缶204は本体230を有し、この本体230は冷媒缶204の内部コンパートメント232を画定する。本体230の後壁234に1つ又は複数の流入口236が設けられており、この流入口236は、冷媒缶204の本体230の内部コンパートメント232と流体連通する。本体230の前壁238に1つ又は複数の流出口240が設けられており(図2及び図4に示されている)、この流出口240は、冷媒缶204の本体230の内部コンパートメント232と流体連通する。内部コンパートメント232内には本体230の内壁242が配置されており、この内壁242は、本体230の下壁246と上壁248とを貫通する開口244を有する。
【0035】
図8を参照すると、内部コンパートメント232内に集中巻線250が配置されており、これは本体230の内壁242に巻かれている(図11参照)。本実施態様では、本体230の上壁248は蓋部252から構成され、この蓋部252を取り外したときに本体230の内部コンパートメント232に接近できるように、当該蓋部252は本体230から取外し可能となっている。一部の実施態様では、本体230の下壁246が取外し可能とされる。冷媒缶204の本体230内に巻線250が配置された後、1つ又は複数の種々の手法によって蓋部252を本体230に接合することができ、かかる手法には超音波溶接、接着剤、及び嵌合クリップが含まれる。冷媒缶204の各部分を接合する上記の手法は、本願に記載されている他の例の冷媒缶の各部分を接合するために使用することも可能である。一部の実施態様では、蓋部252と本体230との間にガスケット等のシーリング部材を配置して冷媒缶204の蓋部252と本体230との間に流体シールを提供することができる。
【0036】
図8~10を参照すると、冷媒缶204の本体230は、巻線250を当該本体230の内部コンパートメント232に封入するように構成されている。本実施態様では、巻線250が内部コンパートメント232内にフィットして本体230の円筒形の内壁242まわりにフィットするように、巻線250は、下方向にテーパ状である概ね方形の形状に巻かれている(図7及び図9参照)。一部の実施態様では、巻線250は円筒状に巻かれている。一部の実施態様では、巻線250は冷媒缶204の本体230の2つ以上の開口244にフィットするように巻かれている。
【0037】
一部の実施態様では、巻線250は電線以外の要素を備えている。例えば種々の実施態様において、巻線250は当該巻線250の電線の複数の束をまとめて保持する接着剤又はバインダ構造を備え、及び/又は、巻線250の個々の電線間のスペースを埋めるポッティング材、例えば熱可塑性樹脂等を備えている。
【0038】
電気機械の中には、当該電気機械において不所望の電気伝導を阻止するため、又は、システムの性能、安全性若しくは寿命に好ましくない電流の伝導を阻止するため、電気的な絶縁を必要とするものがある。例えば、電気モータでは、導電性要素と磁気的要素との間を絶縁する必要がある(図1参照)。この絶縁体は従来の構成のモータにおいて、電気的絶縁以外の他の機能を提供せず、特定の実施態様では、導電性要素の冷却に必要な熱流を阻害又は制限することがある。本願開示全体において説明するように、本願開示では冷媒がシステムの電気的絶縁と熱管理とを提供することができる。例えば、冷媒はシステム構成要素において熱の流れを送ったり制御したりするための流体的隔絶の他に、さらに電気的絶縁も提供する。
【0039】
従って一部の実施態様では、巻線250は、冷媒缶204の内部コンパートメント232内の当該巻線の電線又は又は導電性要素を包囲する1つ又は複数の絶縁層を備えており、これにより、冷媒缶232内に流れる冷媒によって巻線250が冷却されている間、巻線250がステータ200の他の構成要素、電気機械の他の構成要素、及び/又は当該電気機械外部の機械若しくは機械構成要素から電気的に絶縁される。絶縁材料には、冷媒缶構造の一部又は全部を含む紙、プラスチック、ワニス、ゴム、又はポッティング材が含まれ得る(図11及び図12参照)。
【0040】
図11は、図10の線11-11に沿った冷媒缶204の一部の断面図である。図11から分かるように、冷媒缶204はステータコア202のステータ歯214に配置され、ステータ巻線250が冷媒缶204の本体230の内壁242を介してステータ歯214を包囲する。図中の実施態様では、各冷媒缶204がそれぞれ1つの巻線250を封入し、1つのステータ歯214を包囲する。他の実施態様では、各冷媒缶204がそれぞれ2つ以上の巻線250を封入し、2つ以上のステータ歯214を包囲することができる。
【0041】
本体230は、冷媒缶204の内部コンパートメント232内を通る流体流路を画定し、これにより、1つ又は複数の流入口236から冷媒が本体230の内部コンパートメント232に流入すると、当該冷媒はステータ巻線250のギャップを通って(図12参照)、本体230の1つ又は複数の流出口240から内部コンパートメント232の外部に流出する。本実施態様では、冷媒缶204はステータコア202から流体的に隔絶されているので、冷媒缶204の本体230内を通る冷媒の流れは巻線250に接触するが、ステータコア202のステータ歯214や外表面216には接触しない。
【0042】
冷媒缶204に封入された巻線250の冷却効率は、冷媒缶204の内部コンパートメント232の容積と、内部コンパートメント内に配置された巻線250の体積と、に依存し得る。巻線250の体積が大きいほど、内部コンパートメント232内を流れることができる冷媒の体積が少なくなる。一部の実施態様では、冷媒缶の内部コンパートメントの容積と当該内部コンパートメント内に配置される1つ又は複数の巻線の体積との比は100:95~100:75である。一部の実施態様では、冷媒缶の内部コンパートメントの容積と当該内部コンパートメント内に配置される1つ又は複数の巻線の体積との比は10:9~10:7である。一部の実施態様では、冷媒缶の内部コンパートメントの容積と当該内部コンパートメント内に配置される1つ又は複数の巻線の体積との比は5:4~2:1である。一部の実施態様では、冷媒缶の内部コンパートメントの容積と巻線の体積との比は5:3~10:3である。
【0043】
一部の実施態様では、導電性要素の冷却の有効性は、冷媒缶内に確立される流体的厚さによって記述することができる。伝統的な考え方は、動作中に必要な熱を適切に沈め及び/又は排除するためには、導体に対する流体の相対的な量を多くすべきというものであったが、流体厚さを薄くすることにより、あるいは導体体積に対する流体体積を小さくすることにより、性能を向上することができる。一部の実施態様では、冷媒缶204の内部コンパートメント232内の流体的厚さは約0.2mm~0.7mmの範囲である。一部の実施態様では、冷媒缶204の内部コンパートメント232内の流体的厚さは約0.5mm~1.5mmの範囲である。一部の実施態様では、冷媒缶204の内部コンパートメント232内の流体的厚さは約1mm~3mmの範囲である。興味深いことに、ピークコイル温度を最小にするためのクリアランスは、ジュール発熱損失を最小にするために必要なクリアランスと同じではない場合があり、これは、可能な限り小さいクリアランスによる恩恵を受けることができる場合がある。一部の用途では、ピーク温度を低減することが有利となり得る(例えば高出力密度の用途等)。他の用途では、ジュール発熱損失を低減することが有利となり得る(例えば高効率の用途等)。
【0044】
一部の実施態様では、冷媒缶204の内部コンパートメント232は電気モータの他の構成要素から完全には封止されない。例えば一部の実施態様では、2つ以上の冷媒缶204の一部が互いに流体連通して、当該2つ以上の冷媒缶204の内部コンパートメント232間において部分的なシールを形成する。一部の実施態様では、冷媒缶204は1つ又は複数の流入口236及び流出口240の他にさらに、当該冷媒缶の本体230に形成された開口を有することもでき、これにより、冷媒缶204から冷媒が流出して電気モータの他の構成要素に接触することができる。例えば、冷媒缶204の本体230の下壁246に1つ又は複数の孔を形成し、冷媒が内部コンパートメント232を通って流れるときにある程度の体積の冷媒が当該1つ又は複数の孔から漏出して電気モータのステータコア202又はロータと接触できるようにすることができる。
【0045】
例えば一部の実施態様では、内部コンパートメント232に流入する冷媒の総体積の5%未満が、冷媒缶204の1つ又は複数の流出口240以外の経路を通って当該冷媒缶204から漏出することができる。一部の実施態様では、内部コンパートメント232に流入する冷媒の総体積の3%未満が、冷媒缶204の1つ又は複数の流出口240以外の経路を通って当該冷媒缶204から漏出することができる。一部の実施態様では、内部コンパートメント232に流入する冷媒の総体積の1%未満が、冷媒缶204の1つ又は複数の流出口240以外の経路を通って当該冷媒缶204から漏出することができる。
【0046】
本願開示において、上記の通り少量の冷媒が冷媒缶から流出する際に冷媒缶が促すように構成されている一部の実施態様では、冷媒缶は依然として、本願開示にて定義されているようにステータコア又はロータから「流体的に隔絶」されている。
【0047】
再度図2~6を参照すると、本実施態様では上記の複数の冷媒缶204の向きは、ステータコア202の各ステータ歯214の周方向となっている。本実施態様では、ステータ歯214のうち複数の第1のステータ歯260が冷媒缶204を受け、これにより当該複数の第1のステータ歯260は、冷媒缶204に封入された集中巻線250によって包囲される。このようにして、複数の各第1のステータ歯260はそれぞれ、ステータ巻線250を通る電流によって生じた各磁極に対応することとなる。ステータ歯214のうち複数の各第2のステータ歯262が、それぞれ2つの冷媒缶204間に配置されている。この構成によって、ステータ歯214間(すなわちステータ歯214間の「スロット」)の冷媒缶204の本体230を含む材料の量が削減されて、ステータ歯214間の巻線占積率が最大になる。種々の実施態様では、スロットのうち冷媒缶材料が充填される割合が約25%未満であり、スロットのうち冷媒缶材料が充填される割合が約15%未満であり、又は、スロットのうち冷媒缶材料が充填される割合が約5%未満である。
【0048】
高性能を維持するためにスロットにおける巻線に利用可能な領域の全部を使用しようとする伝統的な設計とは異なり、冷媒缶によってスロット導体占積率を低減しつつ、高性能動作を提供し又は性能を改善することができる。これにより、典型的には低い性能と結びつく電気機械における導体の電流密度を増加させつつ、本願全体において記載されているように性能向上を提供することができる。例えば高トルク密度用途等の他の用途では、冷媒缶により、伝統的な電気機械の必要なスロット領域と比較して磁気的コア材料を増加することができ、これによって、同じ起磁力の場合、電気機械の飽和を低くすることができると共に、電磁的性能の向上のために電気機械の飽和レベルを高くすることができる。
【0049】
よって、一部の実施態様ではステータコア202は、各ステータ歯214がそれぞれ冷媒缶204を受け、これにより、各ステータ歯214がそれぞれ、冷媒缶204に封入された1つ又は複数の巻線250によって包囲されるように構成される。かかる実施態様では、周方向に隣り合って配置された2つ以上の冷媒缶204が、当該冷媒缶204の本体230間に同じ壁を共有することができる。一部の実施態様では、1つのステータ歯214が複数の巻線250によって包囲される。一部の実施態様では、1つの冷媒缶204が複数のステータ歯214に跨って設けられ、当該複数のステータ歯214に受容される。
【0050】
再度図10を参照すると、本実施態様では、複数の冷媒缶204のうち1つがステータ歯214に配置されると、当該ステータ歯214の頂部270が本体230の開口244内を通って冷媒缶204の本体230の上壁248の上方に延在する。
【0051】
図12は、ステータコア202の周に沿って配置された複数の冷媒缶204の、図2の線12-12に沿った断面図である。図12を見ると分かるように、複数の第1のステータ歯260のうち1つに冷媒缶204が嵌められると、冷媒缶204は両側において複数の第2のステータ歯262の1つとそれぞれ接触し、ステータ歯214の頂部270間にギャップが形成される。ステータ歯214の2つの頂部270間にギャップピース272を挿入することにより、ステータ200の実質的に連続した外表面を形成することができる。一部の実施態様では、ギャップピース272はステータコア202と同一の材料から成る。一部の実施態様では、ギャップピース272はステータコア202とは異なる材料から成る。一部の実施態様では、複数の第1のステータ歯260の径方向高さと複数の第2のステータ歯262の径方向高さとは等しくなく、よってギャップピース272は不要である。
【0052】
上述したように、一部の電気機械では、ロータ又はステータのいずれか一方の複数の歯と重なり合ってこれらを包囲するコイルを有する巻線、すなわち分布巻線を設けることが有利となり得る。本願開示の一部のステータ又はロータは、分布巻線を備える。かかる実施態様では、各巻線がステータ又はロータの周の大半又は全部にわたって分布し、複数の歯の間に絡められているので、分布巻線が設けられたステータ又はロータ内に分布巻線に対応する冷媒流路を画定する冷媒缶は、集中巻線について記載した冷媒缶とは異なる構造を有することができる。
【0053】
さらに、一部の電気機械では、ロータ又はステータの一方の歯スロットにおいて当該一方の継鉄のまわりに巻かれたコイルを有する巻線、すなわちトロイダル巻線を設けることができる。本願開示の一部のステータ又はロータはトロイダル巻線を備える(図24~41参照)。かかる実施態様では、各巻線がモータの複数の軸方向構成要素にわたり継鉄のまわりに分布しているので、トロイダル巻線が設けられたステータ又はロータ内に当該トロイダル巻線に対応する冷媒流路を画定する冷媒缶は、集中巻線について記載した冷媒缶とは異なる構造を有することができる。これは、集中巻線若しくは分布巻線のいずれか一方又はこれらの組み合わせと同様の構成を有することができる。
【0054】
図13~23は、本願開示の分布巻線用の冷媒缶を備えた熱管理システムを有する一例のステータを示す。本実施態様の分布巻線用に構成された冷媒缶は、図2~12を参照して説明した集中巻線用に構成された冷媒缶と共通の構成を有するが、本実施態様では、巻線はステータの各冷媒缶を介して相互接続されているので、ステータの冷媒缶を互いに流体的に隔絶するようには構成されていない。
【0055】
図13~15を参照すると、一例のステータ300はステータコア302と第1のエンドキャップ304と第2のエンドキャップ306とを備えており、第1のエンドキャップ304はステータコア302の第1の軸方向端部308に配置され、第2のエンドキャップ306はステータコア302の第2の軸方向端部310に配置されている。図2~12を参照して説明した一例の実施態様のステータ200と同様に、ステータ300は開口312を有し、この開口312はステータコア302の長手方向軸314に沿って両軸方向端部308,310を貫通するように延在し、電気モータのロータ(不図示)を受けるように構成されている。本実施態様ではステータコア302は、ステータコア302に配置された複数の冷媒缶要素350(図22及び図23参照)に入れられたステータ分布巻線(不図示)を受けるように構成されている。
【0056】
次に図16~18を参照すると、ステータコア302は冷媒缶フレーム324と、当該冷媒缶フレーム324に配置されたステータコア326と、により構成されている。冷媒缶フレーム324は開口を有し、この開口はステータ300の開口312を形成する。冷媒缶フレーム324は、ステータコア302の第1の軸方向端部308に配置された第1のエンドキャップ330と、第2の軸方向端部310に配置された第2のエンドキャップ332と、を備えている。ステータコア302の外径は、冷媒缶フレーム324の第1のエンドキャップ330及び第2のエンドキャップ332の外径336(図14参照)によって定義される。エンドキャップ330,332の内径338(図14参照)は、ステータ300の開口312によって定義される。第1のエンドキャップ330及び第2のエンドキャップ332は内壁342と、当該内壁342から軸方向外側に延在する外側リム344及び内側リム346とを備えている。外側リム344は外径336を有し、内側リム346は内径336を有する。外側リム344は、エンドキャップ330,332に形成され内壁342に向かって延在する外側凹部付き縁部348(図19参照)を有する。内側リム346は、エンドキャップ330,332に形成された内側凹部付き縁部352(図19参照)を有し、この内側凹部付き縁部352は、外側リム344の外側凹部付き縁部348が内壁342に向かって延在する距離と同等の距離で内壁342に向かって延在する。
【0057】
エンドキャップ330,332の内側リム346と外側リム344との間に複数の冷媒缶要素350が周方向に配置され、冷媒缶フレーム324のエンドキャップ330,332の内壁342を軸方向に貫通する。冷媒缶要素350は径方向内側にステータ300の長手方向軸314を向いており、冷媒缶要素350の外壁354は径方向においてエンドキャップ330,332の外径336内に配置される。冷媒缶要素350は第1の側壁356と、当該第1の側壁356とは反対側の第2の側壁358と、を備えている。各冷媒缶要素350における外壁354とは反対側のステータ300の長手方向軸314側に、エアギャップ開口360(図19参照)が配されている。エアギャップ開口360はエンドキャップ330,332の内側リム346を軸方向に貫通し、冷媒缶要素350の壁354,356,358によって画定される。冷媒缶要素350の壁354,356,358とエンドキャップ330,332の内壁342とが複数のステータ歯開口368を画定し、冷媒缶要素350の各側壁356,358の隣に1つのステータ歯開口368が配されるように構成される。
【0058】
図17を参照すると、ステータコア326がより詳細に示されている。ステータコア326は、ステータ300の長手方向軸314を通って軸方向に延在する開口370を有する。本実施態様では、ステータコア326は長手方向軸314を通る内径372及び外径374を有し、内径372は冷媒缶フレーム324の内径336と同じであり、外径374は冷媒缶フレーム324の外径338と同じである。ステータコア326は、当該ステータコア326の内径372まわりに周方向に配置された複数のステータ歯376を備えており、これらのステータ歯376はステータコア326の軸方向端部を貫通するように軸方向に延在する。一部の実施態様では、ステータコアの内径372及び外径374の一方又は両方が、冷媒缶フレーム324の内径336及び外径338と異なる。
【0059】
一部の実施態様では、ステータコア326は鉄等の透磁性材料から成る。一部の実施態様では、ステータコア326はステータ積層薄板を備えており、これにより、ステータコア326の透磁性材料内の渦電流が減少する。一部の実施態様では、ステータコア326は透磁性材料の他に他の要素を含む。例えば一部の実施態様では、ステータコア326は接着剤及び/又は電気絶縁材料(例えばワニス及び/又は金属酸化物)を含む。一部の実施態様では、ステータコア326の一部がエポキシその他絶縁材料を含み、又はこれに封入されている。
【0060】
図18を参照すると、ステータコア326が冷媒缶フレーム324の周囲においてエンドキャップ330、332の間に配置されている。複数のステータ歯376は、冷媒缶フレーム324の各ステータ歯開口368に入れられている。図18に示すように、ステータコア326が冷媒缶フレーム324に被せられると、ステータ歯376はステータ300の開口312の実質的に連続した内表面を形成する。本実施態様では、ステータ歯376は、各歯376の一部が冷媒缶要素350(図23参照)の各壁354,356,358に接触するように構成される。
【0061】
一部の実施形態では、冷媒缶フレーム324は単一片で構成される。かかる実施態様では、冷媒缶フレーム324をステータコア326内にオーバーモールド成形することができる。一部の実施形態では冷媒缶フレーム324は、ステータコア326内で接合した2つ以上のピースから成る。かかる実施態様では、これら2つ以上のピース又は冷媒缶フレーム324は1つ又は複数の種々の手法によって接合することができ、かかる手法には超音波溶接、接着剤、及び嵌合クリップが含まれる。冷媒缶フレーム324のピースを接合する上記の手法は、本願に記載されている冷媒缶フレームの他の構成要素を接合するために用いることも可能である。
【0062】
次に図19及び図20を参照すると、ステータコア302の内部構造が示されている。図19は、組み立てられた状態の冷媒缶フレーム324及びステータコア326の細部図である。分布巻線(不図示)は複数の冷媒缶要素350間に延在するので、分布巻線は冷媒缶要素350のエアギャップ開口360を介して各冷媒缶要素350に挿入され、エンドキャップ330,332の内壁342の隣に配置される。図19に示されているように、分布巻線(不図示)が挿入された後、冷媒缶要素350の各エアギャップ開口360にエアギャップキャップ380が挿入される。エアギャップキャップ380は、冷媒缶要素350の外壁354とは反対側の壁を提供するように構成されており、エンドキャップ330,332の内側リム346の内側凹部付き縁部352と整列するように形成された凹部付き縁部382を有する。よって、エアギャップキャップ380がエアギャップ開口360に挿入されると、冷媒缶要素350の壁354,356,358とエアギャップキャップ380とが冷媒缶要素350の内部コンパートメント384を画定する。冷媒缶要素350の内部コンパートメント384は、エンドキャップ330,332の内壁342によって画定された流入口386及び流出口388を有する(図21及び図22参照)。
【0063】
図20を参照すると、エンドキャップ330,332の内側リム346及び外側リム344に2つのエンドキャップピース304,306が挿入される。図中の実施態様では、エンドキャップピース304,306の内表面がエンドキャップ330,332の外側リム344の外側凹部付き縁部348と内側リム346の内側凹部付き縁部352(エアギャップ開口360に挿入された各エアギャップキャップ380の凹部付き縁部382も含む)の両方に接触し、エンドキャップピース304,306の外表面が当該エンドキャップ330,332の外側リム344及び内側リム346と同一平面に揃っている。一部の実施態様では、本願開示全体において記載されているように、エンドキャップピース304,306は冷媒缶フレーム324に接合されており、この接合は例えば溶接、接着剤、クリップその他公知の接合手段によって行われる。一部の実施態様では、各エンドキャップピース304,306と冷媒缶フレーム324との間にガスケット等のシーリング部材が配置され、エンドキャップピース304,306と冷媒缶フレーム324との間にシールを提供する。
【0064】
エンドキャップピース304,306は、当該エンドキャップピースの周囲に周方向に配置された複数の開口390を有する。一部の実施態様では、エンドキャップピース304,306の開口390は同数である。一部の実施形態では、第1のエンドキャップピース304の開口390は第2のエンドキャップピース306の開口390より多く、又はその逆である。一部の実施形態では、エンドキャップピース304,306のうち一方は開口390を有しない。
【0065】
次に図21及び図22を参照すると、第1のエンドキャップピース304が第1のエンドキャップ330に受けられると、当該第1のエンドキャップ330の内側リム346及び外側リム344と内壁342とによって当該第1のエンドキャップ330の内部コンパートメント392が画定される。第2のエンドキャップピース306が第2のエンドキャップ332に受けられたときも同様に、当該第2のエンドキャップ332の内側リム346及び外側リム344と内壁342とによって当該第2のエンドキャップ332の内部コンパートメント394が画定される。エンドキャップピース304,306の開口390は、エンドキャップ330,332の内部コンパートメント392,394とそれぞれ流体連通している。エンドキャップ330,332の内部コンパートメント392,394は各冷媒缶要素350の流入口386及び流出口388において当該冷媒缶要素350の各内部コンパートメント384と流体連通している。このようにして、各冷媒缶要素350の内部コンパートメント384は他の各冷媒缶要素350と流体連通する。
【0066】
一部の実施態様では、一部の冷媒缶要素350は、一部の他の冷媒缶要素350と流体連通しないことが可能である。一部の実施態様では、一部の冷媒缶要素350は第1のエンドキャップ330の内部コンパートメント392のみと流体連通し、一部の冷媒缶要素350は第2のエンドキャップ332の内部コンパートメント394のみと流体連通する。
【0067】
図21は、図14の線22-22に沿った冷媒缶要素350の断面図である。第1のエンドキャップピース330の1つ又は複数の開口390を介して冷媒が第1のエンドキャップ330の内部コンパートメント392に流入すると、冷媒は各冷媒缶要素350の流入口386内に流入し、内部コンパートメント384と分布巻線(不図示)の一部とを通って当該各冷媒缶要素350の流出口388に向かって流れる。冷媒は冷媒缶要素350の流出口388から冷媒缶要素350の外部に流出し、第2のエンドキャップ332の内部コンパートメント394に流入する。その後、冷媒は第2のエンドキャップピース306の1つ又は複数の開口390から第2のエンドキャップ332の内部コンパートメント394の外部に流出する。
【0068】
本実施態様では、ステータコア326は冷媒缶フレーム324の冷媒缶要素350の内部コンパートメント384を通る冷媒流から流体的に隔絶される。よって、ステータコア326はモータ動作中の温度を、従来の強制空冷、噴霧、又は浸漬冷却手法より高く維持することができる。一部の実施態様では冷媒缶フレーム324は、1つ若しくは複数の冷媒缶要素350の内部コンパートメント384及び/又はエンドキャップ330,332の内部コンパートメント392,394に配された追加の流出口を介して、ステータコア326に冷媒を供給するように構成されている。
【0069】
一部の実施態様では、上記の集中巻線、分布巻線又はトロイダル巻線用の冷媒缶を備えた熱管理システムを、電気機械のステータ又はロータのいずれか一方又は両方に適用することができる。一部の実施態様では、電気機械のステータが分布巻線を有すると共に、電気機械のロータが集中巻線を有することができ、又はその逆も可能である。一部の実施態様では、電気機械はステータ又はロータ以外の構成要素に集中巻線又は分布巻線を備えることができる。一部の実施態様では、電気モータ以外の電気機械が集中巻線又は分布巻線を備えることができる。
【0070】
電気機械の中には、図2~12を参照して説明した集中巻線とは異なる形態の集中巻線を要する種類のものがあり得る。例えば電気機械の中には、実質的にトロイダル状の構成要素の複数の径方向断面に電線を巻いたもの、すなわちトロイダル集中巻線を設けたものがある。本願開示の一部の実施態様では、電気モータ等の電気機械は、実質的にトロイダル状のステータコア及び/又はロータコアに配置されたトロイダル集中巻線を備えることができる。かかる実施態様では、各集中巻線がそれぞれステータコア及び/又はロータコアの径方向断面にわたって分布しているので、トロイダル集中巻線を封入する冷媒缶は、図2~12を参照して説明した集中巻線を封入するように構成された冷媒缶とは異なった構造を有することができる。
【0071】
図24~32は、複数のトロイダル集中巻線を有する一例のステータを示す。本実施態様例のトロイダル集中巻線用に構成された冷媒缶は、図2~12を参照して説明した集中巻線用に構成された冷媒缶と共通の構成を有するが、本実施態様におけるトロイダル集中巻線の形状は図2~12の集中巻線250の形状と異なるので、本実施態様例の冷媒缶の形状は図2~12の実施態様例の冷媒缶204の形状と異なる。
【0072】
図24~27を参照すると、ステータ400はステータコア402と複数の冷媒缶404とを備えている。ステータコア402は、ステータ400の長手方向軸408を通る開口406を有する。冷媒缶404は、ステータ400の長手方向軸408まわりにステータコア402上に周方向に配置される。本実施態様では冷媒缶404は、ステータ400の長手方向軸408を基準とした径方向の角度412でステータコア402の断面の周りに巻き付けられたトロイダル集中巻線410(図28及び29参照)を封入するように構成される。一部の実施態様では、上記の径方向の角度412は45度未満である。一部の実施態様では、上記の径方向の角度412は1~10度の範囲である。一部の実施態様では、上記の径方向の角度412は5~15度の範囲である。一部の実施態様では、上記の径方向の角度412は20~35度の範囲である。一部の実施態様では、上記の径方向の角度412は30~45度の範囲である。
【0073】
次に、図28及び29を参照すると、冷媒缶404及びトロイダル集中巻線410がより詳細に示されている。図29は、第1のピース420と第2のピース422とを有する冷媒缶404の分解図である。図2~12に記載された実施態様例の冷媒缶204の本体230及び蓋部252と同様、冷媒缶404の第1及び第2のピース420,422を接合すると、冷媒缶404は当該冷媒缶404の内部コンパートメント424を画定する。一部の実施態様では、本願開示全体において記載されているように、冷媒缶404の第1のピース420及び第2のピース422は例えば溶接、接着剤、クリップその他公知の接合手段によって接合されている。一部の実施態様では、冷媒缶404の第1のピース420と第2のピース422との間にガスケット等のシーリング部材が配置され、冷媒缶404の第1のピース420と第2のピース422との間にシールを提供する。
【0074】
冷媒缶404の内部コンパートメント424は、トロイダル巻線410をステータコア402及び電気モータの他の構成要素から流体的に隔絶するようにトロイダル巻線410を封入する構成となっている。組み立てられた冷媒缶404は、第1のピース420と第2のピース422とを貫通する開口430を有すると共に、冷媒缶404の内部コンパートメント424内を通って延在する内壁432を備えている。冷媒缶404の開口430は、ステータコア402のステータセグメント436(図30~32参照)を受けるように構成されている。冷媒缶404の後壁442に冷媒流入口440が配されており、冷媒缶404の内部コンパートメント424と流体連通している。冷媒缶404の前壁446(図31参照)に冷媒流出口444が設けられており、冷媒缶404の内部コンパートメント424と流体連通している。
【0075】
説明のため、図29ではトロイダル巻線410は中実のピースとして図示されており、このトロイダル巻線410から1つ又は複数の導体450が出ている。冷媒缶404の内部コンパートメント424は、トロイダル巻線410を冷媒缶404の内壁432に巻き付けるようにトロイダル巻線410を受ける構成となっている。本実施態様では、冷媒缶404の流入口440は当該冷媒缶404の内部コンパートメント424内に流体を通す他にさらに、冷媒缶404から出ているトロイダル巻線410の導体450を受けるように構成されている。
【0076】
一部の実施態様では、各巻線410の導体450は電気機械の熱管理システムの1つ若しくは複数の他の構成要素又は電気機械の他の部品の構成要素と電気的に接続されている。例えば一部の実施態様では、各巻線410の導体450は他の巻線410の導体450と電気的に接続されており、この他の巻線410は別個の冷媒缶に封入されたものとすることができる。一部の実施態様では、各巻線410の導体450はバスバーと電気的に接続されている。一部の実施態様では、各巻線410の導体450はアクティブ電気回路と電気的に接続されている。
【0077】
液体冷媒が流入口440を介して冷媒缶404の内部コンパートメント424に流入したときに冷媒がトロイダル巻線410を通り、冷媒缶404の流出口444から内部コンパートメント424の外部に流出するように、冷媒缶404の内部コンパートメント424は流体流路を画定する。本実施態様では、冷媒缶404はステータコア402から流体的に隔絶されているので、冷媒缶404の内部コンパートメント424内を通る冷媒の流れは巻線410に接触するが、ステータコア402の部分には接触しない。
【0078】
次に図30~32を参照すると、ステータコア402に配置された冷媒缶404の細部が示されている。本実施態様では、ステータコア402は複数のステータセグメント454により構成されており、各ステータセグメント454が複数の冷媒缶404のうちそれぞれ1つに対応する。本実施態様ではステータセグメント454は、当該ステータセグメント454の上部分460が下部分462に対して垂直に延在する「T字型」となっている。上部分460は第1側歯464と、当該第1側歯464とは反対側の第2側歯466と、を有する。上部分460は外表面468と、第1側歯464の第1の内側側面470と、第2側歯466の第2の内側側面472と、を有する。下部分462は、第1の側面474と第2の側面476と内表面478とを有する。各ステータセグメント454は、内表面434をステータセグメント454の上面468と第1の内表面470と第1の側面474とに接触させるように、それぞれ1つの冷媒缶404の開口430を受ける構成となっている。
【0079】
さらに、各ステータセグメント454は、周方向において当該各ステータセグメント454の隣に配置された2つの他のステータセグメント454と嵌合して、組立後のステータセグメント454がステータコア402を構成するようになっている。本実施態様では、ステータセグメント454は嵌合溝480と嵌合凹部482とを有する。ステータ400は、1つのステータセグメント454の嵌合溝480を他のステータセグメント454の嵌合凹部482に嵌めることにより組み立てられる。それぞれ冷媒缶404が設けられた状態の2つのステータセグメント454を嵌合させると、一方のステータセグメント454に配された冷媒缶404が他方のステータセグメント454の第2の内側側面472と底部の第2の側面476とに接触する。ステータセグメント454の外表面468は、複数の各ステータセグメント454を互いに組み付けたときに第1の径490(図26参照)のステータコア402の実質的に連続した外表面を形成するように構成されている。ステータセグメント454の下面478も同様に、複数の各ステータセグメント454を互いに組み付けたときに第2の径492のステータコア402の実質的に連続した内表面を形成するように構成されている。
【0080】
一部の実施態様では、ステータコア402の第1の径490と第2の径492との比は10:9~3:2の範囲である。一部の実施態様では、ステータコア402の第1の径490と第2の径492との比は7:5~9:5の範囲である。一部の実施態様では、ステータコア402の第1の径490と第2の径492との比は13:10~2:1の範囲である。一部の実施態様では、ステータコア402の第1の径490と第2の径492との比は19:10~5:2の範囲である。
【0081】
一部の実施態様では、ステータコア402を構成するステータセグメント454は、本願開示全体において説明したステータコアの材料及び積層薄板、例えば図13~23のステータコア326の材料及び積層薄板等を有する。
【0082】
図33~41は他の一例のステータを示しており、このステータは、図24~32で説明した一例のトロイダル集中巻線410とは異なる一例の複数のトロイダル集中巻線を備えている。本実施態様例のトロイダル集中巻線用に構成された冷媒缶は、図2~12を参照して説明した集中巻線250用に構成された冷媒缶204と、図24~32を参照して説明したトロイダル集中巻線410用に構成された冷媒缶404と、の両方と共通する構成を有するが、本実施態様におけるトロイダル集中巻線の形状は、図2~12の巻線250の形状と、図24~32を参照して説明した巻線410の形状と異なる。よって、本実施態様例の冷媒缶の形状は、図2~12を参照して説明した冷媒缶204の形状と、図24~32を参照して説明した冷媒缶404の形状と異なる。さらに、本実施態様例におけるステータセグメントの形状は、図24~32を参照して説明したステータセグメント454の形状と異なる。
【0083】
図33~36を参照すると、ステータ500はステータコア502と複数の冷媒缶504とを備えている。ステータコア502は、ステータ500の長手方向軸508を通る開口506を有する。冷媒缶504は、ステータ500の長手方向軸508まわりにステータコア502上に周方向に配置される。本実施態様では冷媒缶504は、ステータコア502の断面に巻き付けられたトロイダル集中巻線510(図38参照)であって、図24~32を参照して説明したトロイダル巻線410のように長手方向軸408に対する径方向の角度412ではなくステータ500の長手方向軸508と径方向に整列したトロイダル集中巻線510を封入するように構成されている。
【0084】
次に、図37及び38を参照すると、冷媒缶504及びトロイダル集中巻線510がより詳細に示されている。図38は、第1のピース520と第2のピース522とを有する冷媒缶504の分解図である。図24~32を参照して説明した実施態様例の冷媒缶404と同様、冷媒缶504の第1及び第2のピース520,522を接合すると、冷媒缶504は当該冷媒缶504の内部コンパートメント524を画定する。一部の実施態様では、本願開示全体において記載されているように、冷媒缶504の第1のピース520及び第2のピース522は例えば溶接、接着剤、クリップその他公知の接合手段によって接合されている。一部の実施態様では、冷媒缶504の第1のピース520と第2のピース522との間にガスケット等のシーリング部材が配置され、冷媒缶504の第1のピース520と第2のピース522との間にシールを提供する。
【0085】
冷媒缶504の内部コンパートメント524は、トロイダル巻線510をステータコア502及び電気モータの他の構成要素から流体的に隔絶するようにトロイダル巻線510を封入する構成となっている。組み立てられた冷媒缶504は、第1のピース520と第2のピース522とを貫通する開口530を有すると共に、冷媒缶504の内部コンパートメント524内を通って延在する内壁532を備えている。冷媒缶504の開口530は、ステータコア502のステータセグメント536(図39~41参照)を受けるように構成されている。冷媒缶404の後壁542に冷媒流入口540が配されており、冷媒缶504の内部コンパートメント524と流体連通している。冷媒缶504の前壁546(図40参照)に冷媒流出口544が配されており、冷媒缶504の内部コンパートメント524と流体連通している。
【0086】
説明のため、図38ではトロイダル巻線510は中実のピースとして図示されており、このトロイダル巻線510から1つ又は複数の導体550が出ている。冷媒缶504の内部コンパートメント524は、トロイダル巻線510を冷媒缶504の内壁532に巻き付けるようにトロイダル巻線510を受ける構成となっている。本実施態様では、冷媒缶504の流入口540は当該冷媒缶504の内部コンパートメント524内に流体を通す他にさらに、冷媒缶504から出ているトロイダル巻線510の導体550を受けるように構成されている。
【0087】
一部の実施態様では、各巻線510の導体550は電気機械の熱管理システムの1つ若しくは複数の他の構成要素及び/又は電気機械の他の部品の構成要素と電気的に接続されている。例えば一部の実施態様では、各巻線510の導体550は他の巻線510の導体550と電気的に接続されており、この他の巻線510は別個の冷媒缶に封入されたものとすることができる。一部の実施態様では、各巻線510の導体550はアクティブ電気回路と電気的に接続されている。幾つかの実施では、各巻線510の導体550は、活性成分電気回路と電気的に接続される。
【0088】
液体冷媒が流入口540を介して冷媒缶504の内部コンパートメント524に導入されたときに冷媒がトロイダル巻線510を通り、冷媒缶504の流出口544から内部コンパートメント524の外部に流出するように、冷媒缶504の内部コンパートメント524は流体流路を画定する。本実施態様では、冷媒缶504はステータコア502から流体的に隔絶されているので、冷媒缶504の内部コンパートメント524内を通る冷媒の流れは巻線510に接触するが、ステータコア502又はステータセグメント536には接触しない。
【0089】
次に図39~41を参照すると、ステータコア502の一部に配置された冷媒缶504の細部が示されている。図24~32を参照して説明した実施態様例と同様、ステータコア502は複数のステータセグメント536により構成されており、各ステータセグメント536が複数の冷媒缶504のうちそれぞれ1つに対応する。図24~32を参照して説明した実施態様例のステータセグメント436は「T字型」であるのに対し、本実施態様例におけるステータセグメント536の形状は「L字型」である。ステータセグメント536は、上部分560と下部分562とを有する。下部分562は、第1の側面564と第2の側面566と内表面568とを有する。上部分560は、下部分562から垂直に延在する歯570と、上面572と、下面574と、を有する。歯570は、冷媒缶504の開口530を受けて、冷媒缶504の内壁532を上面572と下面574と第1の側面564とに接触するさせるように構成されている。
【0090】
さらに、各ステータセグメント554は、周方向において当該各ステータセグメント554の隣に配置された2つの他のステータセグメント554と嵌合して、組立後のステータセグメント554がステータコア502を構成するようになっている。本実施態様では、ステータセグメント554は第1の嵌合面580と、当該第1の嵌合面580と嵌合する第2の嵌合面582と、を有する。ステータ500は、1つのステータセグメント554の第1の嵌合面580を他のステータセグメント554の第2の嵌合面582に嵌めることにより組み立てられる。図24図32の冷媒缶404及びステータセグメント454と異なり、それぞれが冷媒缶504を有する2つのステータセグメント554が嵌合されると、一方のセグメント554上に配置された冷媒缶504は、他方の嵌合セグメント554のステータセグメント554と接触しない。ステータセグメント554の外表面572は、複数の各ステータセグメント554を互いに組み付けたときに第1の径590(図35参照)のステータコア502の実質的に連続した外表面を形成するように構成されている。ステータセグメント554の下面568も同様に、複数の各ステータセグメント554を互いに組み付けたときに第2の径592のステータコア502の実質的に連続した内表面を形成するように構成されている。
【0091】
一部の実施態様では、ステータコア502の第1の径590と第2の径592との比は10:9~3:2の範囲である。一部の実施態様では、ステータコア502の第1の径590と第2の径592との比は7:5~9:5の範囲である。一部の実施態様では、ステータコア502の第1の径590と第2の径592との比は13:10~2:1の範囲である。一部の実施態様では、ステータコア502の第1の径590と第2の径592との比は19:10~5:2の範囲である。
【0092】
本願開示では、上記のトロイダル集中巻線用の冷媒缶を備えた熱管理システムを、電気機械のステータ又はロータのいずれか一方又は両方に適用することができる。一部の実施態様では、電気機械のステータがトロイダル集中巻線を有すると共に、電気機械のロータが集中巻線又は分布巻線を有することができ、又はその逆も可能である。一部の実施態様では、電気機械はステータ又はロータ以外の構成要素にトロイダル集中巻線を備えることができる。
【0093】
本願開示全体を通じて記載されているように、冷媒缶を備えた電気モータ用の熱管理システムを電気モータのロータに設けることが有利となり得る。本願開示全体を通じて説明するように、ロータの巻線に誘導された電流が熱散逸を生じさせる。ロータコアに渦電流が誘導されると性能損失となるので、渦電流発生を低減するためには、ロータコアの温度を比較的高く維持しつつロータ巻線を冷却することが望ましい場合がある。例えば、電気モータの動作中、ロータコアの1つ又は複数の部分の温度を、ロータの1つ又は複数の巻線の温度より高くすることができる。よって、本願開示の一部の実施態様では、電気モータのステータに冷媒缶を配する代わりに、又はステータに冷媒缶を配した上でさらに、1つ又は複数の冷媒缶に封入された巻線を電気モータのロータに設けることができる。
【0094】
図42~53は、ロータの巻線を封入した1つ又は複数の冷媒缶を備えたロータの一例を示している。本例のロータ600は、図2~12を参照して説明したステータ200の開口210等のステータ(不図示)の開口に入れられて当該開口内で回転する構成となっている。ロータ600は、当該ロータ600の長手方向軸602まわりに回転したときにバランスがとれるように、当該長手方向軸602を基準として対称的である。本願開示の範囲に含まれるロータ及びロータ缶トポロジー(冷媒流の経路も含む)は種々存在する。
【0095】
次に、図46を参照すると、ロータ600の分解図が示されている。図中の実施態様例では、ロータ600はロータコア604(図52参照)と、第1の端部608及び第2の端部610を有する軸部606と、ロータコア614まわりに周方向に配置された複数の冷媒缶612と、を備えている。ロータコア614は、軸部606の外径620と、複数の冷媒缶612と、複数のロータ極650とを受けるように構成されている。一部の実施態様では、ロータコア614は鉄等の透磁性材料から成る。一部の実施態様では、ロータコア614はロータ積層薄板を備えており、これにより、ロータコア614の透磁性材料内の渦電流が減少する。一部の実施態様では、ロータコア616は透磁性材料の他に他の要素を含む。例えば一部の実施態様では、ロータコア614は接着剤及び/又は電気絶縁材料(例えばワニス及び/又は金属酸化物)を含む。一部の実施形態では、ロータコア614の一部がエポキシその他絶縁材料を含み、又はこれに封入されている。
【0096】
第1のエンドキャップ622は、軸部606の第1の端部608によって受けられ、第2のエンドキャップ624は、軸部606の第2の端部610によって受けられる。冷媒缶612の両側にプレート626が配置されており、このプレート626は、ロータ600が回転する際に冷媒缶612を支持するように構成されている。冷媒缶612はロータ600の1つ又は複数の巻線630を封入するように構成されている(図47及び図48)。本実施態様ではロータ600に4つの冷媒缶612が設けられており、これらの冷媒缶612はロータコア614の周囲に正方形のパターンで配置されている。一部の実施態様では、ロータ600に設けられる冷媒缶612の個数は3を超えない。一部の実施態様では、ロータ600に設けられる冷媒缶の個数は4を超える。
【0097】
次に図47及び図48を参照すると、冷媒缶612は下部ピース634と上部ピース636とを有する。冷媒缶612の下部ピース634と上部ピース636とが接合されると、両ピース634,636は冷媒缶612の内部コンパートメント640を画定する。内部コンパートメント640は巻線630を封入するように形成される。上記のピース634,636は1つ又は複数の種々の手法によって接合することができ、かかる手法には超音波溶接、接着剤、及び嵌合クリップが含まれる。冷媒缶612の各ピース634,636を接合する上記の手法は、本願に記載されている冷媒缶612の他の部分を接合するために使用することも可能である。一部の実施態様では、ピース634,636間にガスケット等のシーリング部材を配置して冷媒缶612のピース634,636間に流体シールを提供することができる。
【0098】
冷媒缶612は、当該冷媒缶612の上壁644と下壁646とを貫通する開口642を有する。開口642は冷媒缶612の内壁648を画定し、ロータ極650の下部分652を入れるように形成されている。
【0099】
冷媒缶612は流入口656と流出口658を有し、これらはそれぞれ、冷媒缶612の内部コンパートメント640と流体連通する。冷媒が流入口656を介して内部コンパートメント640に流入したときに冷媒が巻線630を通り、冷媒缶612の流出口658から内部コンパートメント640の外部に流出するように、内部コンパートメント640は液体流れ経路660を画定する。
【0100】
図53は、組み立てられたロータ600の、図42の線53-53に沿った断面図である。冷媒缶612の各ロータ極650は、軸部606付近でロータコア604に結合する。一部の実施態様では、ロータ極650は鉄等の透磁性材料から成る。一部の実施態様では、ロータ極650はロータコア614と同一の材料から成る。一部の実施態様では、ロータ極650はロータ積層薄板を備えており、これにより、ロータ極650又はロータコア614の透磁性材料内の渦電流が減少する。
【0101】
第1のエンドキャップ622は、当該エンドキャップ622の孔668を介して軸部606の第1の端部608に受けられる。第1のエンドキャップ622の孔668と軸部606との間に第1のカラー670が配置されている。第1のエンドキャップ622は、複数の入口孔674を有する内部コンパートメント672を有し、これらの入口孔674は孔668のまわりに周方向に配置され、第1のエンドキャップ622の内部コンパートメント672と流体連通する。本実施態様では、孔668からある程度の径方向距離に複数の出口孔676が配置されており、これらの出口孔676は、第1のエンドキャップ622の内部コンパートメント672と流体連通する。第1のエンドキャップ622の出口孔676は、冷媒缶612の流入口656と結合するように構成される。他の実施態様では、第1のエンドキャップ622の出口孔676の数は、ロータ600の冷媒缶612の数より多い。一部の実施態様では、第1のエンドキャップ622の出口孔676の数は、ロータ600の冷媒缶612の数より少ない。
【0102】
第2のエンドキャップ624も同様に、当該エンドキャップ624の孔678を介して軸部606の第2の端部610に受けられる。第2のエンドキャップ624の孔678と軸部606との間に第2のカラー680が配置されている。第2のエンドキャップ624は、複数の出口孔684を有する内部コンパートメント682を有し、これらの出口孔684は孔678のまわりに周方向に配置され、第2のエンドキャップ624の内部コンパートメント682と流体連通する。本実施態様では、孔678からある程度の径方向距離に複数の入口孔686が配置されており、これらの入口孔686は、第2のエンドキャップ624の内部コンパートメント682と流体連通する。第2のエンドキャップ624の入口孔686は、冷媒缶612の流出口658と結合するように構成される。他の実施態様では、第2のエンドキャップ624の入口孔686の数は、ロータ600の冷媒缶612の数より多い。一部の実施態様では、第2のエンドキャップ624の入口孔686の数は、ロータ600の冷媒缶612の数より少ない。
【0103】
ロータ600が組み立てられると、第1のエンドキャップ622の内部コンパートメント672は冷媒缶612の流入口656を介して各冷媒缶612の内部コンパートメント640と流体連通し、第2のエンドキャップは冷媒缶612の流出口658を介して各冷媒缶612の内部コンパートメント640と流体連通する。このようにして、第1及び第2のエンドキャップ622,624の各内部コンパートメント672,682が互いに流体連通する(図52参照)。本実施態様では、冷媒缶612の流入口656の径方向高さは当該冷媒缶612の流出口658より小さい(図44及び図45参照)。従って、第1のエンドキャップ622の出口孔676が径方向外側に延在する距離は、第2のエンドキャップ624の入口孔686が径方向外側に延在する距離より小さい(図44及び図45参照)。かかる構成により、冷媒缶における冷却効率を向上させることができる。というのも、より高温であることにより流体密度が低い冷媒は、より低温の冷媒から冷媒缶の流出口に向かって径方向外側に流れるからである。一部の実施態様では、ロータ600の長手方向軸602を基準とする冷媒缶612の流入口656の径方向高さと流出口658の径方向高さとは等しい。
【0104】
図51は、組み立てられたロータ600の、図42の線51-51に沿った断面図である。図51に示されているように、軸部606は当該軸部606の第1の軸方向端部608に配された第1のカウンタボア688を有すると共に、当該軸部606の長手方向軸602に沿って軸方向に延在する。軸部606の第2の軸方向端部610に第2のカウンタボア690が配されており、この第2のカウンタボア690は軸部606の長手方向軸602に沿って軸方向に延在する。本実施態様では、第1のカウンタボア688及び第2のカウンタボア690は、軸方向に互いに入り込まない距離に延在する。
【0105】
軸部606上に複数の出口孔692が第1の端部608付近において周方向に配置され、第1のカウンタボア688内へ延在する。これら複数の入口孔692は、第1のエンドキャップ622の入口孔674と整列して、ロータ600が組み立てられたときに第1のカウンタボア688を第1のエンドキャップ622の内部コンパートメント672と流体連通させるように形成されている。また、軸部606上には複数の出口孔694が第2の端部610付近において周方向に配置され、第2のカウンタボア690内へ延在する。これら複数の出口孔694は、第2のエンドキャップ624の出口孔684と整列して、ロータ600が組み立てられたときに第2のカウンタボア690を第2のエンドキャップ624の内部コンパートメント682と流体連通させるように形成されている。よって本実施態様では、ロータ600が組み立てられたときに第1のカウンタボア688がエンドキャップ622,624の内部コンパートメント672,682と冷媒缶612の内部コンパートメント640を介して第2のカウンタボア690と流体連通する。
【0106】
再度図51を参照すると、動作時にはロータ600が長手方向軸602まわりに回転して冷媒が第1のカウンタボア688内に流入し、この第1のカウンタボア688はロータ600の主流入口として働く。冷媒は第1のカウンタボア688内において径方向外側に軸部606の出口孔692を通り、第1のエンドキャップ622の入口孔674を介して第1のエンドキャップ622の内部コンパートメント672内に流入する。冷媒は、(動作中のロータ600の回転の結果として)第1のエンドキャップ622の内部コンパートメント672内において径方向外側に流れ、第1のエンドキャップ622の出口孔676に向かって流れる。冷媒は、第1のエンドキャップ622の出口孔676と冷媒缶612の流入口656とを介して各冷媒缶612の内部コンパートメント640内に流入する。冷媒は、冷媒缶612の各内部コンパートメント640を通り、冷媒缶612に封入された内部コンパートメント640内の各巻線630を通って流れる。冷媒は、冷媒缶の流出口658から冷媒缶612の外部に流出し、第2のエンドキャップ624の入口孔686から第2のエンドキャップ624の内部コンパートメント682に流入する。その後、冷媒は第2のエンドキャップ624の出口孔678と軸部606の入口孔694とを介して第2のカウンタボア690に流入する。本実施態様例では、第2のカウンタボア690はロータ600の主流出口として働き、冷媒は第2のカウンタボア690から流出する。
【0107】
一部の実施態様では、ロータ600の主流出口がモータの動作ボリュームと流体連通するように当該ロータ600は構成されている。一部の実施態様では、冷媒缶612は流出口658の他にさらに、当該流出口658を通る流れ以外の冷媒缶612からの冷媒の流出を促す追加の流出口を有する。例えば、冷媒缶612はモータのステータ(不図示)その他構成要素に冷媒の噴霧冷却を提供するように構成されている。
【0108】
図42~53は、ロータ巻線を封入した冷媒缶を備えるロータの一例を示す図であるが、本願開示の範囲に含まれる他の実施態様は種々存在する。例えば、冷媒缶の数及び冷媒缶に封入される巻線の数は変わり得る。ロータ巻線は、トロイダル集中巻線又は分布巻線を含むことができる。冷媒のための流れ経路は別のものとすることができる(例えば、軸部を経由しない経路を介してロータ缶を冷媒が出入りすることができる)。構成要素間の流体結合及び封止の具体的なメカニズムや構造は、図42~53を参照して説明するメカニズムや構造とは別のもので実現することができる。一部の実施態様では、本願にてステータの冷媒缶に関して記載した1つ又は複数の構成をロータの冷媒缶に適用することができる。
【0109】
一部の実施態様では、巻線以外の電気的構成要素に冷却を提供する熱管理システムを設けることが有利となり得る。例えば図54に、電気モータのロータ600用の熱管理システムの一実施態様例を示しており、これは図42~53を参照して説明したものであるが、ロータ600の他の電気的構成要素に更なる冷却を提供するものである。図54の実施態様例のロータの機能動作は、図42~53で説明した実施態様例のロータ600と実質的に同じである。また、図54のロータコア、ロータ極、冷媒缶及びエンドキャップも、図42~53で説明した実施態様のロータコア614、ロータ極650、冷媒缶612及びエンドキャップ622,624と同じ構造及び機能を有する。よって、図54では上記のような同じ構造や機能の構成要素について同様の符号を使用する。しかし、本実施態様例における軸部は、図42~53に記載の実施態様例の軸部606と異なる。
【0110】
図54に示されている実施態様例では、軸部706は貫通孔712を有し、この貫通孔712はロータ600の長手方向軸602に沿って延在し、軸部706の第1の軸方向端部708と第2の軸方向端部710を貫通する。本実施態様の軸部706が図42~53の軸部606と相違する点は、軸部606の第1及び第2のカウンタボア688,690に代えて軸部706の貫通孔715を用いることである。軸部706の第1の端部708において貫通孔715により主流入口720が画定される。軸部706の第2の端部710において貫通孔715によりロータ600の主流出口722が画定される。主流入口720と主流出口722とは貫通孔712を介して互いに直接流体連通している。
【0111】
引き続き図54を参照すると、回転する軸部706の第1の端部708において一定体積の液体冷媒が主流入口720に流入すると、当該一定体積の液体冷媒の第1の一部分が第1の流れ経路730に沿って流れ、それと同時に当該一定体積の液体冷媒の第2の一部分が第2の流れ経路732に沿って流れる。第1の流れ経路730は、軸部706における第1の端部708付近の複数の出口孔792において第2の流れ経路732から分岐している。第1の流れ経路730は、軸部706の上記の出口孔792から、図42~53の実施態様例で説明した流れ経路と同一である(図51参照)。第2の流れ経路732は、軸部706の第1の軸方向端部708における主流入口720に流入して貫通孔712に沿って当該軸部706における第2の端部710の主流出口722に向かう流れとして定義される。軸部706の複数の入口孔794において第1の流れ経路730と第2の流れ経路732とは第2の端部710に向かって互いに合流し、上記一定体積の液体冷媒の一部又は全部が軸部706の主流出口722から貫通孔712の外部に流出する。
【0112】
本実施態様では、軸部706の貫通孔712内に電気的構成要素750が当該軸部706の上記の複数の入口孔794と出口孔792との間に、すなわち第2の流れ経路732上に配置されている。よって、上記の一定体積の冷媒の第2の一部分は電気的構成要素750に向かって流れて当該電気的構成要素750付近を流れ、当該電気的構成要素750に冷却を提供すると共に、当該一定体積の冷媒の第1の一部分がロータ600の冷媒缶612内の巻線630に冷却を提供する。本実施態様が有利となり得る理由は、上記の一定体積の冷媒の第2の一部分は巻線630の高温にさらされることがなく、巻線630は当該一定体積の冷媒の第1の一部分によって冷却されるからである。
【0113】
一部の実施態様では、上記の一定体積の冷媒の第1の一部分の体積と第2の一部分の体積とは等しい。一部の実施態様では、上記の一定体積の冷媒の第1の一部分は当該一定体積の冷媒の第2の一部分より多く、又はその逆である。一部の実施態様では、軸部706の貫通孔712は複数の径が異なる断面を有する。例えば、軸部706の貫通孔712における主流入口720付近の箇所及び主流出口722付近の箇所の径は、軸部706の貫通孔712の当該箇所間に位置する中央箇所より大きく、又はその逆である。
【0114】
一部の実施態様では、ロータ600は、当該ロータ600内を通る3つ以上の並列の冷媒流れ経路を有することができる。さらに、ロータ600内のいずれかの冷媒流れ経路内に電気的構成要素を配置することができる。例えば図51を参照すると、軸部の第1のカウンタボア688内、又は軸部606の第2のカウンタボア690内、又はその両方に、電気的構成要素を配置することができる。他の実施態様では、ロータ、ステータ、モータ及び/又はモータアセンブリの両端間に2つ以上の冷媒流れ経路を並列又は直列に設けることができ、各冷媒流れ経路の流れ及び/又は温度は調整することができる。
【0115】
本願開示は、ロータがステータによって包囲される実施態様例を提示しているが、一部の実施態様ではアウタロータ及びインナーステータが、本願開示全体にわたって記載されている冷媒缶を備える。
【0116】
本願開示全体において記載されているステータ及びロータの実施態様は例示であり、本願開示の範囲内の他の実施態様では、冷媒缶を用いた電気モータの熱管理システムの複数の側面はそれぞれ異なることができる。例えば、各冷媒缶に封入される巻線数、各冷媒缶の流入口数及び/又は流出口数、ステータ若しくはロータそれぞれに設けられる歯数、並びに、各冷媒缶によって包囲される歯数は、本願開示全体で示されている事例と異なることができる。冷媒缶、巻線、ステータコア、及びロータコアの形状は、本願開示全体にわたって記載されている形状と異なることができる。
【0117】
種々の実施態様において、冷媒缶は例えばプラスチック、又は、冷媒による腐食に対して耐性を有すると共にモータ内部の昇温に耐える能力を有する他の材料から成る。一部の実施態様では、冷媒缶は断熱及び/又は電気絶縁材料から成る。一部の実施態様では、冷媒缶は例えばオーバーモールド成形又はインサート成形により作製される。一部の実施態様では、冷媒缶は金属及び/又は複合材料から成る。冷媒缶の本体の1つ又は複数の壁の厚さは、種々の実施態様において0.15mm以下とすることができる。他の実施態様では、冷媒缶の本体の壁の厚さは約0.15mm~0.25mmの範囲とすることができる。他の実施態様では、冷媒缶の本体の壁の厚さは約0.25mm~0.5mmの範囲とすることができる。他の実施態様では、冷媒缶の本体の壁の厚さは約0.5mm~1.0mmの範囲とすることができる。
【0118】
上記の冷媒缶及びその構成要素並びに/又はステータ及び/又はロータの構成要素は、付加製造技術、例えば付加製造によって作製することができる。こうするためには、液槽光重合法、マテリアルジェット法、バインダジェット法、粉末床溶融結合法、材料押出法、指向性エネルギー堆積法及び/又はシート積層法等の、多数の付加製造技術を実施して冷媒缶を形成することができる。一部の実施形態では、冷媒缶又はその構成要素は、ステータ及び/又はロータに直接、付加製造により作製することができる。一部の実施形態では、冷媒缶の底部分に配された巻線表面に当該冷媒缶の一部を付加製造により作製することができる。
【0119】
一部の実施態様では、ステータ、ロータ、モータ及び/又はモータアセンブリに配された1つ又は複数の巻線に、種々の電気的構成要素を電気的に結合又は接続することができる。図55は、巻線810に電気的に結合又は接続されたディスクリート回路部品800を示す図である。一部の実施態様では、ディスクリート回路部品800は1つ又は複数の部分構成要素を備えている。例えば、ディスクリート回路部品800は、封止された集積回路又は封止された能動若しくは受動回路部品を含むことができる。一部の実施態様では、2つ以上の別個の巻線810が、これらの各巻線810に設けられたディスクリート回路部品800によって互いに結合されている。
【0120】
一部の実施態様では、ディスクリート回路部品800は、ステータ及び/又はロータに配された1つ又は複数の巻線に電気的に結合又は接続された受動回路部品を備えている。一部の実施態様では、受動回路部品は特定の非限定的な例ではダイオード又はコンデンサを含む。一部の実施態様では、能動回路部品は1つ又は複数のトランジスタを含む。一部の実施態様では、ディスクリート回路部品800は、ステータ及び/又はロータに配された1つ又は複数の巻線に電気的に結合又は接続された集積回路を備えている。一部の実施態様では、集積回路は能動又は受動周波数フィルタを備えている。
【0121】
一部の実施態様では、ディスクリート回路部品800はロータの少なくとも1つの巻線に短絡した整流器を含む。整流器は、ステータの巻線によって生じた磁界に対するロータの巻線の応答に非対称性を導入することによってロータの巻線における電流リプルを低減するため、又は、ロータ若しくはステータ若しくは両方における電気機械の電流若しくは電圧を制御するために供することができる。一部の実施態様では、上記の整流器を電気機械内の補助回路として設けることができる。一部の実施態様では整流器は、pn接合ダイオード、ガスダイオード、ツェナーダイオード、又はショットキーダイオード等のダイオードを備えることができる。一部の実施態様では、整流器にショットキーダイオードを設ける場合、このショットキーダイオードはシリコンカーバイドダイオードとすることができる。一部の実施態様では整流器は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)又は金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)等の能動回路を備えている。一部の実施態様では整流器は、商用電力網又は外部発電機等の交流(AC)電源から交流電力を受け取って直流(DC)電力を電気機械の他の構成要素及び/又は電気機械外部の他の機械若しくはシステムに出力するAC/DC整流器を含む。例えば、電気機械は1つ又は複数の巻線を介して交流電力を生成する発電機とすることができ、この発電機はAC/DC整流器を含む1つ又は複数のディスクリート回路部品を備え、AC/DC整流器は、外部の電気機械、例えば電気モータのロータ等に直流電力を出力する。
【0122】
一部の実施態様では、ディスクリート回路部品800は、ステータ及び/又はロータの1つ又は複数の巻線に電気的に結合又は接続された電気的スイッチを備えている。この電気的スイッチは、1つ又は複数の巻線810への電流及び/又は当該巻線810からの電流を制御する構成とすることができる。一部の実施態様では、電気的スイッチは、電源に電気的に接続されているバスバ―を備えている。一部の実施態様では、1つ又は複数の冷媒缶に上記の電気的スイッチとバスバーとが封入されており、この冷媒缶は、当該冷媒缶に結合された1つ又は複数の巻線を備えている。
【0123】
一部の実施態様ではディスクリート回路部品800は、1つ又は複数の巻線に結合された1つ又は複数のスイッチ又は半導体デバイスであって導電網に配置されたスイッチ又は半導体デバイスを備えている。かかる実施態様では、マイクロインバータ網内の複数のマイクロインバータを備えることができる導電網に配置された上記の複数のスイッチ又は半導体デバイスは、例えば電気モータ等の電気機械の一部として設けられ、当該電気モータへの電流又は電圧の供給を調整可能な当該電気モータの電子的モータコントローラと電気的に接続されている。
【0124】
ディスクリート回路部品800と巻線810自体とに電流が流れることができ、これにより、モータ動作中にディスクリート回路部品800が加熱し得る。よって一部の実施態様では、冷媒が巻線と1つ又は複数のディスクリート回路部品800とに接触するように、1つ又は複数の巻線810が結合された1つ又は複数の冷媒缶にディスクリート回路部品800を封入することができる。本実施態様では、巻線810と同時にディスクリート回路部品800を冷却することができる。一部の実施態様では、一部のディスクリート回路部品800及び部分構成要素は、1つ又は複数の巻線が結合された1つ又は複数の冷媒缶に封入されると共に、一部のディスクリート回路部品800及び部分構成要素は、1つ又は複数の巻線が結合された冷媒缶に封入されない。
【0125】
本願開示の範囲内に含まれる冷媒缶の1つ又は複数の流入口の実施態様は種々存在する。本願開示全体を通じて説明した流体流入口の他、一部の実施態様の1つ又は複数の冷媒缶流入口はワイヤその他の導体のポート、例えば巻線を通電するためのワイヤ又はセンサ信号を伝送するためのワイヤ等のポートとしても機能する。例えば図13を参照すると、エンドキャップピース304の4つの流入開口390のうち3つが、三相モータの各ステータ相のワイヤを支持し、エンドキャップピース304の4つ目の流入開口390が冷媒流入口として供されることができる。一部の実施態様では、1つ又は複数の冷媒缶流入口は、ワイヤのポート及び流体流入口の両方を兼ねて機能する構成とすることができる(図33~41)。
【0126】
一部の実施態様では、冷媒缶は内部突起(例えば内部壁、バンプ及び/又は隆起等)を有することができる。図56は、一例の冷媒缶850の内表面852に設けることができる複数例の種々の突起854を示す。一部の実施態様では突起854は、冷媒缶850に封入された1つ又は複数の巻線に圧力を加え、当該圧力により巻線を定位置に保持してモータの機械的安定性を向上するように構成されている。一部の実施態様では突起854は、冷媒が冷媒缶850内を流れて1つ又は複数の巻線と接触する距離(ひいては時間)を長くするように形成されたラビリンス形状856を有する。
【0127】
引き続き図56を参照すると、突起854は種々の形状や寸法を有することができる。一部の実施態様では突起854は、冷媒流の乱流を増大させるバンプ(例えばバンプのアレイ等)を含み、これにより冷却有効性を向上することができる。一部の実施態様では、突起854のバンプは冷媒流に対して有意な抵抗とならないように形成される。一部の実施態様では、冷媒缶内を流れる冷媒の乱流を増大するため、バンプを含む突起854は丸形ではなく正方形である。一部の実施態様では突起854は、冷媒缶の冷媒流に対して平行に配置された複数のフィンを含み、これにより、冷媒缶850の内表面852のうち流れる冷媒と接触する表面積を拡大しつつ、冷媒流による引きずりを最小限にする。一部の実施態様では、突起854が冷媒缶850の内表面852から延在する距離は約0.25mm~約5mmである。一部の実施態様では、突起854がバンプを含む構成に代えて、又は当該構成と共に、冷媒缶850の内表面852は凹部又はディンプル、例えば、閉じ込められた巻線の周囲において内表面852へと延在するディンプルを有することができ、これにより、冷媒缶850の内部コンパートメント内の冷媒流の乱流を引き起こすことができる。
【0128】
一部の実施態様では、冷媒缶は、電気モータのステータとロータとの間のエアギャップ側の表面が滑らかであり、この滑らかな表面は、具体的な冷媒缶がステータに配されるか又はロータに配されるかに応じて、冷媒缶の内表面又は外表面である。例えば図2~12に示されているように、冷媒缶204におけるエアギャップ側の底壁246が、ステータ歯214の対応する面と同一平面上に揃うように形成することができる(図12参照)。冷媒缶204とステータ歯214とを組み立てると、冷媒缶204の底壁246とステータ歯の底面との組み合わせにより形成されたステータ200の内表面が滑らかとなることができ、これによりエアギャップにおける風損が低減する実施態様もある。
【0129】
一部の電気機械では、当該電気機械の一部の構成要素に対して選択的に冷却を提供しつつ、当該電気機械の他の構成要素からはかかる冷却を分離する、電気機械の熱管理システムのためのシステム及び方法を設けることが望まれる場合がある。例えば従来の電気モータ設計では、モータ巻線について有効な熱勾配を形成するため、ステータコア及び/又はロータコア(これには何らかの巻線を配することができる)の温度が巻線の温度より低く抑えられる。しかし、上記の通りモータコアの温度が低下するにつれて電気モータの出力性能が低下する場合があり、この関係は、巻線の温度とモータ性能との関係と逆である。従来の電気モータ設計において上記のような逆の関係が存在する理由は、ステータコア及び/又はロータコアが、当該コアに配された巻線から熱を取り出すことによりヒートシンクのような機能を果たすからである。よって、伝統的なモータ設計では典型的には、モータ動作中に巻線の温度が低温に維持されることによりモータ性能を向上する。これは、巻線からステータコア及び/若しくはロータコアへ直接熱が移動し、並びに/又は、巻線からステータコア及び/若しくはロータコアを介して液体ジャケットへ熱が移動する結果として達成されることが多い。よって、伝統的な熱管理方法は上記の通りコアと巻線の両方を冷却することを目的としている。しかし、モータ性能の向上や維持は、ステータコア及び/又はロータコアに熱を維持できる限りにおいて達成できる。というのも、コアの性能は温度が上昇すると向上し、その勾配は巻線より小さくする必要がないからである。従来の電気モータ設計の不所望の現象の一つは、モータ全体の性能を向上できるのは、ステータコア及び/又はロータコアに配された巻線の冷却に関係ない温度に当該ステータコア及び/又はロータコアが維持される場合であることである。
【0130】
本願開示の冷媒缶を有する熱管理システムを備えた電気機械、例えば電気モータ等は、ステータコア及び/又はロータコアに配された巻線の冷却を当該ステータコア及び/又はロータコアが促すことを要しないので、当該ステータコア及び/又はロータコアをより高温で動作させることができる。一部の実施態様では冷媒缶は、ステータのステータコアと比較して当該ステータの1つ若しくは複数の巻線の差別化した熱管理を促進し、及び/又は、ロータのロータコアと比較して当該ロータの1つ若しくは複数の巻線の差別化した熱管理を促進するように構成することができる。例えば、巻線並びにステータコア及び/又はロータコアの両方が同じ温度で比較的低温となり得る電気モータの動作の当初開始時には、モータの性能又は効率を向上するため、ステータコア及び/又はロータコアの温度を上昇させつつ当該ステータコア及び/又はロータコアに配された巻線を冷却することが望ましい場合がある。
【0131】
上記の非限定的な一例について説明を続けると、冷媒缶は、巻線から熱を除去してステータコア及び/又はロータコアへ熱を移動させる冷媒流路を有するように構成することができる。かかる実施態様では、定常連続動作条件下において、巻線温度は平均して同一動作条件の平均コア温度に等しく、ここでステータコア及び/又はロータコア温度は直接サーモプローブによって測定され、巻線温度は電気抵抗により測定されるものであり、又は代替的に、冷媒缶の両端間における熱勾配として得られる。一部の実施態様では、巻線の温度は平均して、当該巻線が配されたステータコア及び/又はロータコアの平均温度より5℃低い。一部の実施態様では、巻線の温度は平均して、当該巻線が配されたステータコア及び/又はロータコアの平均温度より7.5℃低い。一部の実施態様では、巻線の温度は平均して、当該巻線が配されたステータコア及び/又はロータコアの平均温度より10℃低い。一部の実施態様では、巻線の温度は平均して、当該巻線が配されたステータコア及び/又はロータコアの平均温度より15℃低い。一部の実施態様では、巻線の温度は平均して、当該巻線が配されたステータコア及び/又はロータコアの平均温度より20℃以上低い。
【0132】
一部の電気的設計や動作では、電気機械の他の構成要素又はシステム全体から1つ又は複数の巻線を電気的に分離することが有利となり得る。例えば一部の実施態様では、冷媒缶は1つ又は複数の巻線とステータコア及び/又はロータコアとの電気的分離を促進するように構成することができる。一部の実施態様では、冷媒缶は電気機械の絶縁体構造の一部となることができ、この絶縁体構造は、電気機械の他の構成要素又は電気機械外部の電気的構成要素から当該電気機械の1つ又は複数の巻線を電気的に分離するように構成されている。
【0133】
一部の実施態様では、本願開示にて記載されている電気機械、例えば冷媒缶を備えた電気モータ等の熱管理のためのシステムは、電気機械の冷媒流及び温度をモニタリング及び/又は調整する温度制御モジュールを備えることができる。
【0134】
図57は、ステータ904及びロータ906を備えた電気モータ902の温度制御モジュール900の一実施態様例の概略図である。一部の実施態様では温度制御モジュール900は、モータ902の一次的な電気的及び運動学的な動作を調整するモータ制御部908に電気的に結合されている。一部の実施態様では、温度制御モジュール900の一部又は全部がモータ制御部908に組み込まれる。
【0135】
温度制御モジュール900は、それぞれ結合部910,912を介してステータ904及び/又はロータ906に結合することができる。結合部910,912は、温度制御モジュール900とステータ904及び/又はロータ906それぞれとの間の各流体結合部及び/又は電気的結合部とすることができる。ステータ904及びロータ906は、本願開示に記載されているいずれかのステータ及びロータとすることができ、又は、本願開示に記載されていない他の任意のステータ及びロータとすることができる。
【0136】
温度制御モジュール900は各種サブモジュール920を備えることができ、各サブモジュール920は他のサブモジュール920のいずれか又は全部と通信結合することができる。
【0137】
一部の実施態様では温度制御モジュール900は、ステータ904又はロータ906における温度を測定する1つ又は複数の温度センサ922を備える。例えば、一部の実施態様では温度センサ922は、ステータ904及び/又はロータ906に配された1つ又は複数の冷媒缶における温度を測定し、これにより、冷媒缶に封入された巻線についての温度データが得られる。一部の実施態様では、温度センサ922はステータコア(例えばステータ歯若しくはステータ積層薄板等)及び/又はロータコア(例えばロータ歯若しくはロータ積層薄板等)の温度を測定する。一部の実施態様では、温度センサ922は冷媒と直接流体的なやりとりを行う(例えば、温度センサ922が冷媒缶内部に配置されている、又は冷媒缶への流入路若しくは冷媒缶からの流出路に配置されている)。一部の実施態様では、温度センサ922は熱電対、抵抗温度センサ、サーミスタ及び光学温度センサのうち1つ又は複数を含む。
【0138】
一部の実施態様では、1つ又は複数の巻線が取り付けられたロータ又はステータの将来の加熱負荷を推測するために、当該巻線の電気抵抗を測定することができる。この抵抗は例えばモータ制御部908によって測定することができ、モータ制御部908は温度制御モジュール900の制御部930へ信号を送信して、測定された温度に応じて冷媒の増減を制御部930にさせることができる。巻線抵抗は冷却需要の主要な指標となり得るので(例えば、巻線における散逸電力が増加すると、この増加は、冷媒温度が測定可能な程度に変化する前に巻線抵抗の上昇となって現れる)、上記のアプローチは、冷媒流を変える必要があることを測定温度が示すまで待つアプローチより効果的及び/又は効率的な冷却を提供することができる。
【0139】
一部の実施態様では温度制御モジュール900は1つ又は複数の流量センサ924を備えており、この流量センサ924は例えば冷媒缶内並びに/又は冷媒缶から及び/若しくは冷媒缶への流れ経路上(例えば、内部を冷媒が流れるロータ軸部等)に配される。一部の実施態様では、流量センサ924は冷媒流量を測定する。一部の実施態様では、流量センサ924は冷媒の体積を測定する(例えば、冷媒缶が冷媒で満タンになっているか否かを判定するため)。
【0140】
一部の実施態様では温度制御モジュール900は1つ又は複数の圧力センサ926を備えており、この圧力センサ926は例えば1つ若しくは複数の冷媒缶内又は1つ若しくは複数の冷媒缶から及び/若しくは冷媒缶への流れ経路上に配される。圧力センサ926は、温度制御モジュール900による解析のために冷媒流の流体圧力を測定するように構成することができる。
【0141】
一部の実施態様では、温度制御モジュール900並びにステータ904及び/又はロータ906は、1つ又は複数の冷媒缶外部の圧力と比較して(例えば、ステータ904とロータ906との間のエアギャップに存在する圧力等と比較して)当該1つ又は複数の冷媒缶内部の冷媒の圧力を正圧に維持するように構成されている。1つ又は複数の冷媒缶内部が正圧であることにより、当該1つ又は複数の冷媒缶内部が等圧又は負圧である場合と比較して冷媒の逆流を低減することができ、また、当該1つ又は複数の冷媒缶内における冷媒の流れを一定にすることができる。さらに、1つ又は複数の冷媒缶内部の冷媒圧力が正圧であることにより、モータが動作する際に冷媒缶内部における不連続な冷媒流が減少して当該1つ又は複数の冷媒缶内部の冷媒液位を満タン又は実質的に満タンに維持することができ、これによりモータの機械的安定性が向上する。
【0142】
一部の実施態様では、温度制御モジュール900の冷媒調整構成には、1つ若しくは複数のポンプ950及び/又は1つ若しくは複数のフローレギュレータ952を備えることができる。冷媒ポンプ950は、(例えば管及び/又はパイプによって)1つ又は複数の冷媒缶の1つ又は複数の流入口に流体的に結合されている。一部の実施態様では、冷媒ポンプ950は1つ又は複数の冷媒缶の1つ又は複数の流出口に流体的に結合されることにより、冷媒流のループを確立する。一部の実施態様では、フローレギュレータ952は例えばバルブを備えることができ、このバルブは、当該バルブ内における冷媒流を変化させ、及び/又は開始若しくは停止することができる。一部の実施態様では、冷媒ポンプ950は調整可能であり、例えば、冷媒の流出圧力を増減し、及び/又は冷媒流量を増減するように調整可能である。一部の実施態様では、ステータ904及びロータ906のために別個のポンプが使用される。一部の実施態様では、冷媒ポンプ950及び/又はフローレギュレータ952は温度制御モジュール900の制御部930によって構成可能である。制御部930は、1つ又は複数のプロセッサ932と、1つ又は複数の記憶装置934と、1つ又は複数のメモリデバイス936と、を備えることができる。一部の実施態様では、記憶装置934及び/又はメモリデバイス936は、制御部930による積極的制御を実現する機械可読の非一時的な命令を格納する。
【0143】
フローレギュレータ952は、1つ又は複数の冷媒ポンプ950の流量を制御するためのソフトウェアで実装することができる。特定の実施態様では、フローレギュレータ952の制御を、例えば動作のデューティ比又は予測されるデューティ比等の動作条件に応じて制御することができる。かかる制御は、ルックアップテーブル、多入力多出力(MIMO)コントローラ、モデル予測制御(MPC)等のプラントモデル等により実現することができる。
【0144】
一部の実施態様では、制御部930は1つ又は複数の温度センサ922から温度データのストリームを受信し、これに応じて、冷媒流を調整するための信号を冷媒ポンプ950及び/又はフローレギュレータ952に送信する。ここでいうデータの「ストリーム」とは少なくとも、制御部によって解釈可能なアナログ及び/又はデジタルの電気的なものであって、対応する測定値及び/又は設定構成を示すものをいう。
【0145】
例えば、ステータ904の1つ又は複数の巻線の温度が閾値を上回ることを特定の温度センサ922が示した場合、制御部930は、ステータ904に配された1つ若しくは複数の冷媒缶及び/又はステータ904と流体的に連通するバルブに制御信号を送信して、ステータ904への冷媒流を増加させることができる(例えば、制御信号はバルブをさらに開弁する配置に切り替えることができる)。
【0146】
一部の実施態様では、制御部930は1つ又は複数の流量センサ924から冷媒流データのストリームを受信し、これに応じて、冷媒流を調整するための信号を冷媒ポンプ950及び/又はフローレギュレータ952に送信する。例えば、ロータ906に配された1つ又は複数の冷媒缶内の冷媒流が閾値を上回ることを特定の流量センサ924が示した場合、制御部930はバルブに制御信号を送信して、ロータ906の1つ又は複数の冷媒缶への冷媒流を減少させることができる。
【0147】
一部の実施態様では、制御部930は1つ又は複数の圧力センサ926から冷媒圧力データのストリームを受信し、これに応じて、冷媒圧力を調節するための信号を冷媒ポンプ950及び/又はフローレギュレータ952に送信する。例えば、ステータ904の1つ又は複数の冷媒缶内の冷媒流路が、モータ902の他のボリューム内の圧力に対して正圧でなくなったことを特定の圧力センサ926が示した場合、制御部930はバルブに制御信号を送信して、ステータ904の1つ又は複数の冷媒缶への冷媒流を増加させることができる。
【0148】
一部の実施態様では、制御部930は他のデータに応答して制御信号の送受信も行う。例えば一部の実施態様では、制御部930はモータ制御部908から、モータ条件の変化(例えば、モータ902の速度上昇の発生直前)を示す信号を受信し、これに応答して、モータ902の予測される動作条件に冷媒流条件を整合させる相応の制御信号を送信する。この予防的なアプローチは、例えば冷媒流を増加させる必要があることを測定温度が示すまで待つアプローチより効果的及び/又は効率的な冷却を提供することができる。
【0149】
一部の実施態様では、モータ制御部908はステータ904及び/若しくはロータ906の1つ若しくは複数の巻線の電気抵抗を示すストリームを制御部930へ送信し、又は、ステータ904及び/若しくはロータ906の1つ若しくは複数の巻線の電気抵抗が例えば閾値を上回ることを示す信号を制御部930へ送信する。これに応じて制御部930は、冷媒流を調整するための信号を冷媒ポンプ950及び/又はフローレギュレータ952に送信する。
【0150】
冷媒流の制御方法は、閾値を利用する上記の例に限定されない。種々の実施態様において、冷媒流制御方法は、連続的な入力データ(例えば電気抵抗又は温度データ等)に基づく連続的な冷媒流応答を含むことができる。一部の実施態様では冷媒流制御は、モータ動作パラメータに基づいて予想される所要冷媒流量を予測するために機械学習を用いることを含むことができ、その機械学習アルゴリズムは、温度制御モジュール900の制御部930の1つ若しくは複数のプロセッサ932又はモータ制御部908によって実行される。
【0151】
一部の実施態様では、温度制御モジュール900は通信モジュール928を備えており、この通信モジュール928は例えば、上記のセンサ、モータ制御部908その他デバイス若しくは信号源のいずれかから信号を受信し、及び/又はこれへ信号を送信するように構成されている。一部の実施態様では、通信モジュール928は例えば近距離通信モジュール、Bluetooth(登録商標)モジュール、携帯電話通信モジュール、及び/又はWiFi(登録商標)通信モジュール等の無線通信デバイスを含む。一部の実施態様では、通信モジュール928は、当該通信モジュール928の通信結合先の構成要素に対するハードワイヤード接続部を含む。
【0152】
一部の実施態様では、温度制御モジュール900の制御部930は、少なくとも部分的に機械的である。例えば一部の実施態様では、制御部930は冷媒流の調整の少なくとも一部を、機械可読命令のコンピュータ処理に代えて又は当該コンピュータ処理と共に、温度、圧力及び/又は流量の読値に対する機械的な応答によって実現する。
【0153】
一部の実施態様では、本願開示にて記載されている電気機械、例えば冷媒缶を備えた電気モータ等は、電気機械における冷媒流を調整する1つ又は複数の冷媒マニホルドを備えることができる。
【0154】
図58は、冷媒ポンプ972から冷媒の流れを受け取る封入された冷媒マニホルド970の一実施態様例の概略図である。冷媒マニホルド970は、(例えばパイプ又は管等によって)1つ又は複数の冷媒缶974の1つ又は複数の流入口に流体的に連結される。1つ又は複数の冷媒缶974の1つ又は複数の流出口から冷媒がサンプ976に送られる。冷媒ポンプ972は、サンプ976から冷媒を引き出して冷媒の流れループを完成するように構成されている。
【0155】
一部の実施形態では、冷媒ポンプ972は、温度制御モジュール900の制御部930によって設定可能な上記の1つ又は複数の冷媒ポンプ950とすることができる(図57参照)。一部の実施形態では、冷媒マニホルド970は、温度制御モジュール900の制御部930によって設定可能な上記の1つ又は複数のフローレギュレータ952とすることができる(図57参照)。
【0156】
一部の実施態様では、ステータ及び/又はロータに配置された冷媒缶の流出口は、電気モータの他の構成要素に直接冷却を提供する構成とすることができる。例えば一部の実施態様では、冷媒缶は、冷媒がステータ及び/又はロータの冷媒缶内を流れた後に(例えば電気モータの動作ボリューム内に直接排出する流出口等によって)電気モータの動作ボリュームに流入するように構成されている。一部の実施態様では、冷媒缶の流出口の位置決めは、ステータ及び/又はロータの冷媒缶から流出した冷媒が動作ボリュームにおける当該冷媒により生じる風損が比較的低い箇所に流入するように行われ、かかる一部分は例えば、モータの重力方向の底部に配置されると共に動作ボリュームと流体連通するサンプポート等である(図58参照)。サンプ内の冷媒がエアギャップの重力方向に最下の位置に達しないように、サンプ内の流体液位が調整される。かかる実施態様では、サンプは1つ又は複数の流体ポンプと流体連通することができる(図58参照)。
【0157】
さらに、一部の実施態様では冷媒缶の流出口は、当該冷媒缶からモータの特定の構成要素に冷媒を送るように構成されており、この特定の構成要素は例えば、モータ動作中に温度上昇し、冷却が望ましい場合がある他の構成要素である。例えば一部の実施態様では、冷媒缶流出口からモータのベアリングに接触するように冷媒が送られて、ベアリングを冷却する。
【0158】
一部の実施態様では、ロータに配置された冷媒缶の流出口は、ステータ巻線に噴霧冷却を提供する構成とすることができる。一部の実施態様では、ステータに配置された冷媒缶の流出口は、ロータ巻線に噴霧冷却を提供する構成とすることができる。例えば図42~53を参照すると、冷媒缶612の上壁644における流入口及び流出口656,658付近に周部流出口を設け、冷媒缶612が回転したときに当該周部流出口から一定体積の冷媒が冷媒缶612外部に流出し、ロータ600を包囲するステータ(不図示)に接触することができる。この実施態様はステータ巻線に噴霧冷却を提供することができ、ステータ巻線はステータの冷媒缶に閉じ込めなくてもよい。逆に一部の実施態様では、特に図2~12を参照すると、ステータ200の冷媒缶204の底壁246に軸方向の向きの追加の流出口を設け、この軸方向の向きの追加の流出口から一定体積の冷媒が冷媒缶204の外部に流出してモータのエアギャップに入り、これによりロータに噴霧冷却を提供することができる。
【0159】
本願開示全体を通じて記載されている種々の実施態様は、電気機械内における冷媒の流れについてのものだが、本願開示の範囲内の他の実施態様では、冷媒の種々の態様が異なり得る。一部の実施態様では、液体冷媒は冷媒と潤滑剤との混合物を含み、この混合物は、1つ又は複数の冷媒缶に封入された1つ又は複数の巻線に十分な冷却を提供すると共に、当該冷媒缶外部の電気機械の他の構成要素に冷却と潤滑とを提供するものである。一部の実施態様では、冷媒は、1つ又は複数の冷媒缶に封入された1つ又は複数の巻線に気体冷却を提供するガスである。一部の実施態様では、1つ又は複数の冷媒缶は2つ以上の内部コンパートメントを備えており、これら2つ以上の内部コンパートメントは互いに流体的に隔絶され、それぞれ流入口及び流出口を有し、1つの内部コンパートメントが1つ又は複数の巻線を封入すると共に、冷媒を受けるように構成された流入口を有し、1つ又は複数の他の内部コンパートメントの流入口が、上記1つの内部コンパートメント内を通って1つ又は複数の流出口に向かう潤滑剤の流れを受けるように構成されており、この流出口の向きは、電気機械の他の構成要素に向けることができる。一部の実施態様では、電気機械の熱管理システムは2つ以上の別個の流体ポンプを備えることができ、そのうち少なくとも1つは冷媒をポンピングするように構成されており、1つは潤滑剤をポンピングするように構成されている。かかる実施態様では、熱管理システムは、上記2つ以上の流体ポンプと流体連通する流体マニホルドを1つ備えることができ、これにより、当該マニホルドにポンピングされた冷媒及び潤滑剤が1つ又は複数の冷媒缶へ流れながら、当該マニホルド内で混合されるように構成することができる。
【0160】
上記の検討の中には、特に、巻線冷媒缶を備えた種々の電気機械等のシステムを軸として説明したものもあるが、当業者であれば、ここで開示されているシステムの対応する使用方法(又は動作方法)と、ここで開示されているシステムの設置方法とについての内在的な開示内容を認識することができる。よって、本願開示の非限定的な例の幾つかは、巻線冷媒缶を備えた電気機械の使用、製造及び設置の方法を含み得る。
【0161】
上記の検討の中には、特に、冷媒缶を有する熱管理システムを備えた種々の電気機械等の熱管理システムを軸として説明したものもあるが、当業者であれば、ここで開示されているシステムの対応する使用方法(又は動作方法)と、ここで開示されているシステムの設置方法とについての内在的な開示内容を認識することができる。よって、本願開示の非限定的な例の幾つかは、冷媒缶を有する熱管理システムを備えた電気機械の使用、製造及び設置の方法を含み得る。
【0162】
例えば一部の実施態様は、熱管理システムを有する電気機械の熱管理のための方法であって、電気機械の1つ又は複数の巻線が電気機械の他の構成要素より低温となるように、電気機械の当該他の構成要素から流体的に隔絶された1つ又は複数の冷媒缶の内部コンパートメントに上記の1つ又は複数の巻線又は電気機械の導電性要素を封入した当該1つ又は複数の冷媒缶の内部コンパートメント内に冷媒を流すことにより、電気機械の熱管理を行うための方法を含むことができる。一実施態様例では、図57及び図58を参照すると、温度制御モジュール900は冷媒ポンプ950(又は図58の冷媒ポンプ972)及び/又はフローレギュレータ952に冷媒を1つ又は複数の冷媒缶974内に流すようにポンピングさせ、当該1つ又は複数の冷媒缶974に封入された1つ又は複数の巻線がステータ904及び/又はロータ906の他の構成要素より低温となるようにする。一部の実施態様では、冷媒ポンプ972は冷媒を冷媒マニホルド970と、冷媒マニホルド970に流体連通する1つ又は複数の冷媒缶974と、にポンピングする。
【0163】
一部の実施態様では、上記方法はさらに、1つ又は複数の冷媒缶に封入された1つ又は複数の巻線の温度を検出することと、検出した温度が閾値を上回るか否かを判定することと、を含むことができる。その後、検出した温度が上記の所定の閾値を上回ると判定した場合、1つ又は複数の冷媒缶の内部コンパートメント内に追加の冷媒を流す。一実施態様例では、図57及び図58を参照すると、温度制御モジュール900の制御部930が1つ又は複数の温度センサ922から入力を受信、格納及び処理して、ポンプ950(又は図58の冷媒ポンプ972)及び/又はフローレギュレータ952に追加の冷媒を、温度が所定の閾値を超えると判定された1つ又は複数の冷媒缶974内に流すようにポンピングさせる。上記の方法は、1つ又は複数の巻線の検出された電気抵抗と、電気抵抗の所定の閾値とにも適用可能であることが明らかであると解すべきである。
【0164】
一部の実施態様では、上記方法はさらに、1つ又は複数の冷媒缶及び電気機械の動作ボリューム内の圧力を検出することを含むことができる。1つ又は複数の冷媒缶内の検出された圧力が、電気機械の動作ボリューム内の検出された圧力を下回るか否かを判定する。その後、電気機械の動作ボリュームの検出された圧力と比較して正の圧力を、ポンプによって1つ又は複数の冷媒缶内に印加する。一実施態様例では、図57及び図58を参照すると、温度制御モジュール900の制御部930が1つ又は複数の圧力センサ926から入力を受信、記憶及び処理して、ポンプ950(又は図58の冷媒ポンプ972)及び/又はフローレギュレータ952に追加の冷媒を1つ又は複数の冷媒缶974内に流すようにポンピングさせる、すなわち、電気モータ902のステータ904とロータ906との間のエアギャップ等の動作ボリュームの検出された圧力より圧力が低いと判定された流れ圧力を上昇させる。
【0165】
以上、本発明を非限定的な事例で説明及び例示したが、本願開示の内容はあくまで例示であり、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく本発明の実施の詳細について数多くの変更を行うことが可能であり、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。本願で開示した非限定的な例の各構成は、種々の態様で組み合わせ、再配置することができる。
【0166】
さらに、本明細書に提供される開示の非限定的な実例は、以下の説明に記載されるか、又は以下の図面に図示される構成の細部及び構成要素の配置に、用途に限定されない。本発明は、他の非限定的な例が可能であり、また、種々の態様で実施又は具現化することが可能である。また、本明細書で使用される文言及び用語用法は説明のためのものであり、本発明を限定するものとみなすべきではないと解すべきである。本願において「含む」、「備える」又は「有する」及びその変形は、その後に続く事項と、その均等物と、その他の事項と、を含むことを意味する。別段の指定又は限定が無い限り、「取り付け」、「接続」、「支持」及び「結合」との用語並びにこれらの変形は、広義の意味で使用され、直接的及び間接的な取り付け、接続、支持、及び結合の両方を包含する。さらに、「接続」及び「結合」は、物理的又は機械的な接続又は結合に限定されない。
【0167】
また、本明細書で使用される文言及び用語用法は説明のためのものであり、本発明を限定するものとみなすべきものではない。本願において「右」、「左」、「前」、「後」、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「頂部」、又は「底部」及びその変形は説明のためのものであり、本発明を限定するものとみなされるべきではない。別段の指定又は限定が無い限り、「取り付け」、「接続」、「支持」及び「結合」との用語並びにこれらの変形は、広義の意味で使用され、直接的及び間接的な取り付け、接続、支持、及び結合の両方を包含する。さらに、「接続」及び「結合」は、物理的又は機械的な接続又は結合に限定されない。
【0168】
別段の指定又は限定が無い限り、「A,B及びCのうち少なくとも1つ」、「A,B及びCのうち1つ又は複数」等といった文言は、A若しくはB若しくはC、又はA,B及び/若しくはCの任意の組み合わせを意味し、A,B及び/又はCの複数又は単数との組み合わせを含む。
【0169】
一部の非限定的な例では、方法のコンピュータによる実施を含めた本願開示の各側面は、本願にて詳述した各側面を実施するようにプロセッサ装置、コンピュータ(例えばメモリに動作可能に結合されたプロセッサ装置等)、又は電子的に動作する制御部を制御するソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア又はこれらの任意の組み合わせを製造するための標準的なプログラミング又はエンジニアリング技術を用いて、システム、方法、装置、又は製造物として実施することができる。よって、例えば本発明の非限定的な例は、非一時的なコンピュータ可読媒体に有形に具現化された命令のセットとして実施して、プロセッサ装置がコンピュータ可読媒体からの命令の読み込みに基づき命令を実行できるようにする。本発明の一部の非限定的な例は、オートメーション装置、以下の検討と一致する種々のコンピュータハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア等を含めた特殊用途コンピュータ又は汎用コンピュータ等の装置を含むこと(又は使用すること)ができる。
【0170】
本願でいう「製造物」との用語は、任意のコンピュータ可読デバイス、キャリア(例えば非一時的な信号等)、又は媒体(例えば非一時的な媒体等)からアクセス可能なコンピュータプログラムを含む。例えば、コンピュータ可読媒体は、磁気記憶装置(例えばハードディスク、フロッピーディスク、磁気テープ等)、光ディスク(例えばコンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)等)、スマートカード、及びフラッシュメモリデバイス(例えばカード、スティック等)を含むことができるが、これらに限定されない。さらに、電子メールの送受信又はインターネット若しくはローカルエリアネットワーク(LAN)等のネットワークへのアクセスにおいて使用されるコンピュータ可読電子データ等のコンピュータ可読電子データを搬送するために、搬送波を用いることができることも明らかである。当業者であれば、特許請求の範囲に記載の発明の範囲又は思想から逸脱することなく、上記の構成について多くの改良を行えることを認識することができる。
【0171】
図面その他の記載では、本発明の方法の特定の作業、又は当該方法を実行するシステムの特定の作業を概略的に示していることがある。別段の指定又は限定が無い限り、特定の空間的順序で記載された特定の作業の図中の記載内容は必ずしも、これら作業を当該特定の空間的順序に相当する特定の順番で実施する必要が無い場合がある。よって、図中その他の箇所に示されている特定の作業は、本発明の特定の非限定的な例に応じて適宜、明示的に図示又は記載されたものとは異なる順序で実施することができる。また、一部の非限定的な例では、特定の作業を、専用の並列処理装置又は上位システムの一部として相互運用する別個の計算機による実行を含めて、並行して実行することができる。
【0172】
本願においてコンピュータ実行の文脈で使用される場合、別段の指定又は限定が無い限り、用語「構成要素」、「システム」、「モジュール」等の用語は、ハードウェア、ソフトウェア、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせ、又は実行中ソフトウェアを含めたコンピュータ関連システムの一部又は全部を含む。例えば構成要素は、プロセッサ装置、プロセッサ装置によって実行中の(又は実行可能な)処理、物体、実行ファイル、実行のスレッド、コンピュータプログラム、又はコンピュータとすることができる。例えば、コンピュータ上で実行されるアプリケーション及びそのコンピュータの両方を構成要素とすることができる。1つ又は複数の構成要素(又はシステム、モジュール等)は処理若しくは実行のスレッドの中に常駐することができ、又は1つのコンピュータにローカルで保持することができ、又は2つ以上のコンピュータ若しくは他のプロセッサ装置に分散することができ、又は他の構成要素(若しくはシステム、モジュール等)に含めることができる。
【0173】
本願でいう「制御部」及び「プロセッサ」及び「コンピュータ」との用語は、コンピュータプログラムを実行できる任意の装置、又は、上記の機能を実行する論理ゲートを備えた任意の装置を含む。例えば、プロセッサ、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブルロジックコントローラ等を含むことができる。他の一例として、上記の用語は1つ又は複数のプロセッサ及びメモリ及び/又は1つ又は複数のプログラミング可能なハードウェア要素、例えばプロセッサ、CPU、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、又はソフトウェア命令を実行できる他の装置等を含み得る。
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【国際調査報告】