(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】非常に高い車両速度のためのチューブ輸送システム及びチューブ輸送システムを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
B61B 13/10 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
B61B13/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549133
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 EP2021079655
(87)【国際公開番号】W WO2022090212
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523155467
【氏名又は名称】ルドルフ,アレクサンダー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ,アラン-ダニエル
(57)【要約】
チューブ輸送システムを動作させる方法であって、チューブ輸送システムは、(a)チューブアセンブリ(前記チューブアセンブリは、(a-1)外側チューブ(1)と、(a-2)隣接するチューブ間に環状空間(3)が形成されるように外側チューブ内に収容及び保持された1つ又は複数の内側チューブ(2)と、(a-3)外側チューブを保持するための支持構造体(4)とを含み、前記チューブアセンブリは、車両(6)を受け入れ、チューブアセンブリの第1の端部(7)から反対側の第2の端部(8)まで延びる経路に沿って車両(6)を案内するための内部空間(5)を画定する内壁面を有し、前記チューブアセンブリは、内部空間(5)から気体粒子を放出するための1つ又は複数の圧力バルブ又はノズル(9)を有する)と、(b)車両(10)の外壁面とチューブアセンブリの内壁(12)との間に環状隙間(11)を画定する外壁面を有する車両(10)とを含み、前記方法は、(i)車両前方のチューブアセンブリの内部空間(5)から気体粒子を放出しながら、環状隙間(11)での気体粒子流のチョーキング限界を超える速度で車両を第1の端部(7)に向かう経路に沿って移動させるステップと、それに続いて、(ii)移動方向を逆転させ、車両前方のチューブアセンブリの内部空間から気体粒子を放出しながら、環状隙間(11)での気体粒子(29)の流れのチョーキング限界を超える速度で第2の端部(8)に向かう経路に沿って車両を移動させるステップと、を含む方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ輸送システムを動作させる方法であり、前記チューブ輸送システムは、
(a)チューブアセンブリであって、
(a-1)外側チューブ(1)、
(a-2)隣接するチューブ間に環状空間(3)が形成されるように外側チューブ内に収容及び保持された1つ又は複数の内側チューブ(2)、および
(a-3)外側チューブを保持するための支持構造体(4)、
を備え、
車両(6)を受け入れ、前記チューブアセンブリの第1の端部(7)から反対側の第2の端部(8)まで延びる経路に沿って車両(6)を案内するための内部空間(5)を画定する内壁面を有し、
前記内部空間(5)から気体粒子を放出するための1つ又は複数の圧力バルブ又はノズル(9)を有する、チューブアセンブリと、
(b)車両の外壁面(10)と前記チューブアセンブリの内壁(12)との間に環状隙間(11)を画定する前記外壁面(10)を有する車両と、
を含み、
前記方法は、
(i)前記車両前方の前記チューブアセンブリの前記内部空間(5)から気体粒子を放出しながら、環状隙間(11)での気体粒子流のチョーキング限界を超える速度で前記車両を前記第1の端部(7)に向かう経路に沿って移動させるステップと、それに続いて、
(ii)移動方向を逆転させ、前記車両前方の前記チューブアセンブリの前記内部空間から気体粒子を放出しながら、前記環状隙間(11)での気体粒子流(29)のチョーキング限界を超える速度で前記車両を前記第2の端部(8)に向かう経路に沿って移動させるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記ステップ(i)及び(ii)は、チューブアセンブリ内に存在する気体粒子の平均自由行程(13)が前記環状隙間(11)の幅(14)よりも長くなる、すなわち、クヌーセン数(31)が1を超えるまで、好ましくは内側チューブ内の圧力が10
-4Pa以下になるまで繰り返され、その後、前記チューブアセンブリ内で好ましくは少なくとも80m/sの最高速度、より好ましくは少なくとも300m/sの最高速度、さらにより好ましくは少なくとも1000m/sの最高速度で前記1つ又は複数の車両(6)を推進及び案内する、請求項1に記載のチューブ輸送システムを動作させる方法。
【請求項3】
前記チューブ輸送システムは、前記チューブアセンブリの環状空間(3)内に真空レベルを生み出す及び維持するための1つ又は複数の真空ポンプ(15)をさらに含む、及び/又は
前記車両は、側方開口部(16)を介して前記チューブアセンブリの前記環状隙間から気体粒子をスイープするように適合される、
請求項1又は請求項2に記載のチューブ輸送システムを動作させる方法。
【請求項4】
前記1つ又は複数の環状空間(3)は、バルブ又はノズル(9)及びポンプ(15)などの制御手段を通じて前記内部空間(5)と流体流動連通しており、隣接する環状空間と前記内部空間との間に制御された圧力降下を生み出すべく前記制御手段を通じて環状空間間の流体の流れを抑制又は維持することができ、これにより、環状空間での圧力は、周囲圧力と前記内部空間での圧力レベルとの間となる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のチューブ輸送システムを動作させる方法。
【請求項5】
前記1つ又は複数の内側チューブ(2)及び/又は前記外側チューブ(1)は、ガラス繊維強化プラスチック(GRP)、ガラス繊維強化コンクリート(GFRC)、炭素繊維、アルミニウム、チタン、マグネシウム、又はこれらの材料の任意の組み合わせで作製される、及び/又は
前記1つ又は複数の環状空間(3)は、前記環状空間(3)に沿った流体の流れを可能にしながら、前記環状空間に部分的に充填される充填材(25)を収容する、
前記1つ又は複数の環状空間(3)は、セパレータ(32)によって長手方向に分割され、流体圧力的に分離され密閉された空間を形成する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のチューブ輸送システムを動作させる方法。
【請求項6】
前記車両は、
(b-1)1つ又は複数の乗客コンパートメント(18)及び1つ又は複数のサービスコンパートメント(19)を包囲し、前記乗客コンパートメントにアクセスするための解放可能なシール可能なポート(20)を有する、円筒形ハウジング(17)と、
(b-2)乗客を乗せる及び降ろすための、前記乗客コンパートメントから取り外される(21)ように適合された1つ又は複数の座席と、
を備え、座席(22)は、乗客を乗せたときに前記乗客コンパートメントの前記円筒形ハウジングに固定されるように適合される、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のチューブ輸送システムを動作させる方法。
【請求項7】
前記車両は、
(b-3)前記ハウジングの前記サービスコンパートメントのタンク(23)に格納するべく車両に沿って気体粒子を抽出するための前記環状空間内の1つ又は複数のオリフィス(16)をさらに備える、及び/又は
(b-4)前記乗客コンパートメントの内面(24)は、色及び輝度の変化、又は前記乗客に立体感を与えるホログラム技術を使用可能なバーチャルリアリティの表示を可能にする、薄い発光層を備える、及び/又は
(b-5)サウンドシステムを装備している、及び/又は
(b-6)快適さ及び走行体験を向上させるための前記乗客座席の移動(21)、及び/又は
(b-7)前記車両は、緊急時に前記ハウジングを内側から開け、前記乗客コンパートメント(18)を前記ハウジングから解放するための設備を装備している、及び/又は
(b-8)前記車両は、格納された気体粒子を排気することによって生み出されるガスクッションを使用する制動システムを装備している、及び/又は
(b-9)前記車両は、推進及び案内のための電気設備(27)を装備している、及び/又は
(b-10)前記車両は、すべり接触又は無線によって外部から内部へ電気エネルギーを伝達する及び電気エネルギーを蓄えるための電気設備(28)を装備している、
ことをさらに含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のチューブ輸送システムを動作させる方法。
【請求項8】
前記内側チューブに設置される電磁気案内及び推進システムの部分(26)は、前記内側チューブにさらなる安定性を提供する、及び/又は
前記車両に設置される電磁気案内及び推進システムの部分(27)は、前記車体にさらなる安定性を提供する、及び/又は
前記内側チューブに設置される電磁気案内及び推進システムの部分(26)は、前記車両を前記チューブの中心に保つために前記チューブに沿って対称に設置される、及び/又は
前記車両に設置される電磁気案内及び推進システムの部分(26)は、前記車両を前記チューブの中心に保つために前記車両に沿って対称に設置される、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のチューブ輸送システムを動作させる方法。
【請求項9】
前記車両は、各旅客車両(6)の前方又は後方に所定の距離(30)をおいて保安車両(29)が運行されるように2台又は3台で運行され、
前記方法は、
(a)異常な運行状態を検出及び報告するためのセンサ及び通信機器を前記保安車両(29)に搭載すること、及び/又は
(b)緊急事態の場合に前記車両のいずれかの速度を落とすのを助けるために前記保安車両が気体粒子を運ぶこと、及び/又は
(c)前記保安車両は、前記旅客車両を残りのチューブシステムから分離するための圧力ロックを搭載していること、及び/又は
(d)乗客の荷物を運ぶための前記保安車両、
を含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のチューブ輸送システムを動作させる方法。
【請求項10】
前記方法は、
(i)複数の車両(6、29)は、前記車体の外面(17)と前記内側チューブの内面(12)との間の前記環状隙間(11)においてチョーキングが達成されるように運行される、及び/又は
(ii)前記環状空間(11)から気体粒子を抽出するため及びそれらを車体(23)の内部に格納するために使用することができる車両上の手段(16、32)、及び/又は
(iii)車両の前方区域から圧縮空気を抽出することができる、前記チューブに取り付けられた手段(9、15)、
を含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のチューブ輸送システムを動作させる方法。
【請求項11】
前記方法は、
(i)前記外側チューブの外側でエネルギーを生み出す太陽放射の感知面、及び/又は
(ii)前記生成された太陽エネルギーを収集及び貯蔵するための手段、及び/又は
(iii)前記チューブの周囲の空気のCO
2含有量を減らすための手段、
を含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のチューブ輸送システムを動作させる方法。
【請求項12】
前記車両は、特に、前記サービスコンパートメント(19)に格納され排気された気体粒子で前記車両の周囲に流れを生み出すことによって前記車両を減速させるための機械的、電磁気的、又は空気力学的手段を使用する制動システム(32)を備える、及び/又は前記車両は、推進、案内、及び制動のための電気設備(27)を備える、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のチューブ輸送システムを動作させる方法。
【請求項13】
チューブ輸送システムであり、
(a)チューブアセンブリであって、
(a-1)外側チューブ、
(a-2)隣接するチューブ間に環状空間が形成されるように前記外側チューブ内に収容及び保持された1つ又は複数の内側チューブ、および
(a-3)前記外側チューブを保持するための支持構造体、
を含み、
車両を受け入れ、前記チューブアセンブリの第1の端部から反対側の第2の端部まで延びる経路に沿って車両を案内するための内部空間を画定する内壁面を有し、
前記内部空間から気体粒子を除去するための1つ又は複数の圧力バルブ又はノズルを有する、チューブアセンブリと、
(b)前記車両の外壁面と前記チューブアセンブリの内壁との間に環状隙間を画定する外壁面を有する車両と、
を含むチューブ輸送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に高い車両速度のためのチューブ輸送システム及びこのようなシステムを高真空下で動作させる方法に関する。さらに、本発明は、特定のチューブアセンブリを含むチューブ輸送システムに関する。チューブアセンブリは、地上で独立型のシステムとして動作するのに適しており、適応により、地下又はトンネル内部、並びに、水中又は水上でも動作する。
【背景技術】
【0002】
減圧又は空気圧システムの下での高速チューブ輸送システムが約200年にわたって使用され、議論されてきた。1799年に、George Medhurstは、加圧空気を使用してスチールパイプの中で商品を移動させることを提案した。19世紀後半に、ロンドン、ダブリン、ニューヨーク、及びパリでいくつかの空気圧鉄道システムが運行された。20世紀初頭に、ロケット科学者のRobert Goddardが、密閉されたトンネル内の磁気浮上列車を設計した。1989年から1998年にかけての包括的な研究でSwissmetroがこのようなシステムを実現するための非常に真剣な試みを行った。政治的及び財政的な優先事項により、このプロジェクトは延期された。2012年に、Elon Muskが、Hyperloop(登録商標)のアイデアを記載したホワイトペーパーを発行し、減圧での高速チューブ輸送システムのアイデアを復活させた。Hyperloop(登録商標)は、オープンソースの研究プロジェクトとして構想され、減圧での磁気列車の最高のコンセプトに取り組むべく科学者及び企業のグループを誘致した。知られている限り、これらのシステムの車両はすべて、減圧下の密閉されたチューブシステム内で抗力が低減された状態で運行される。その目的は、乗客を短い移動時間で高速で移動させることである。
【0003】
最新のHyperloop(登録商標)の概念では、車両の最高速度は、所謂「カントロウィッツ限界」によって物理的又は経済的に制限されると考えられている。これは、車両とトンネルとの間の環状隙間での流れが音速に達する場合の、したがって「チョークする」と呼ばれる、空気力学的現象を指す。実現可能な車両速度を増加させるために、このようなシステムは、圧力レベルが100Pa程度に低い、すなわち密度が大気圧下の1/1000である減圧で運行される。米国特許第10,286,927号及び米国特許第10,286,928号に記載されているように、車両を保持するチューブ内で、ヘリウム及び水素はそれぞれ約1000m/s及び1300m/sの音速を有するため、低圧の使用と、ヘリウム、水素、又はこれらの混合ガスの使用を組み合わせることが提案されている。
【0004】
さらに、高速チューブ輸送システムでのレールと車輪との間の摩擦の問題は、多くの場合、例えば米国特許第1020942号に記載されているように磁気浮上によって対処される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような長い歴史、独特の技術的手法、及び多大な努力があるにもかかわらず、このような高速チューブ輸送システムが実現されたという話はない。大きな障害は空気力学であると思われる。これまでのところ、車両速度は「カントロウィッツ限界」(この用語はチョーキングの最初の発生を指すために用いられる)を超えることはできず、圧力レベルを100Pa未満に下げることは経済的に実行不可能であるというのが一般的な理解である。
【0006】
本発明の中心となる方法は、これらの制限を克服するのに適しており、必要とされる。密閉されたトンネルシステム内で車両が空気力学的抵抗なしに移動するように、すなわちクヌーセン数が1を超えるまで、圧力レベルをさらに低減させることが提案される。
【0007】
高真空に減圧して維持することが困難であることには同意するが、ある程度減圧されたチューブ内での高速輸送には空気力学的問題が伴う。これらの問題は、議論されている100Pa程の低い圧力レベルであっても、そのようなシステムの実現の妨げとなっているようである。遠距離場の空気力学を低減する試みとして、Rudolf(thesis 1806,EPFL,Switzerland,1998)は、空気を車両の周りに流して圧力波を生み出すのではなく、タービンを使用して空気を車両に押し通すことを提案した。このアイデアは、2012年からのElon Muskのホワイトペーパーと2016年からの米国特許第9,511,959号で繰返し述べられている。
【0008】
この分野での他の発明と比べると、これは、巡航条件下での空気力学に逆らうという課題を、高真空を効率よく生み出して維持するという課題に置き換えている。その見返りとして、この方法には以下の利点がある:巡航中の空気力学的影響がない、チューブシステムへの負荷が低減し、上手く予測可能である、トンネル直径がより小さい、システムの安定性が向上する、システム全体の対称配置、真空ポンプ及びシールの数が減少する、空気力学的な速度制限がない、推進力がより小さい、移動時間の減少、及び車両がより小さい。さらに、非常口及びステーションでの漏れがなく、真空引き又は交換にかかる時間を短縮することが可能である。
【0009】
Hyperloopは、高速真空管輸送システムの最近の提案であり、米国特許第5,950,543号及び米国特許第9,511,959号に一般的な用語で開示されているように、およそ100Paの圧力で運行することが提案されている。チューブを真空引きし、チューブ内の真空を100Pa未満のレベルに維持することは、特にチューブ経路の長さが数百キロメートルである場合、実行不可能であることが明らかにわかっている。チューブの最初の真空引きには、チューブ内で必要な圧力レベルを達成するのに必要な数の真空ポンプ、シール、制御装置、及びエネルギーに起因して、多額の投資が必要となる場合がある。
【0010】
圧力を必要なレベルに維持するには、漏れによってシステムに入った空気をすべて排気しなければならない。漏れは、すべての真空チューブ輸送システムにおける主要な懸念事項であり、現在採用されている方法では、フルサイズのHyperloop試験設備で目標圧力レベル100Paを達成できるかどうかはこれまでのところ示されていない。原理的には、チューブを真空引きするために市販の真空ポンプを使用することができる。必要な真空ポンプの数と必要なエネルギーは、真空引きされるチューブの体積、達成される真空度、漏れ、及びそのチューブの体積を最初に真空引きするのにかかる時間に依存する。
【0011】
真空ポンプ、非常口、継ぎ目、又はステーションでのドアの各シールによって漏れが発生し、これはチューブの直径とともに増加する。現在のHyperloopのすべての概念での基本的課題は、チューブの内部を周囲条件から分離するのに必要なシールの数である。
【0012】
US10,538,254B2は、高速真空輸送システム用のチューブを車両のみで真空引きすることによって上記の問題に対処している。車両を使用して粒子をスイープすれば、高価な真空ポンプと圧力シールの数が減る。US10,538,254B2には、チューブの内面とチューブを真空引きするために使用される真空チューブ車両の外面との間の隙間の寸法に関してより寛容な手段も含まれている。したがって、US10,538,254B2は、真空輸送チューブシステム及び真空輸送チューブを専用車両で真空引きするための方法を開示している。この車両は、第1の端部外面を有する第1の端部を有する。第1の端部外面と真空輸送チューブの内面との間に環状隙間が形成される。この車両は、第2の端部外径を有する第2の端部と、構造的枠組みを備えたピストンの形態の本体とを有する。この車両は、車両の第1の端部にある第1の入口部から第2の出口部まで延びるオリフィスを有する。空気流が、環状隙間とオリフィスを通って車両の前部から後部へ流れる。この車両は、チューブの内部で所望の圧力が得られ、所望の真空レベルが生じるまで、車両後方のゾーンの空気を膨張させ、チューブから圧縮された空気を抽出することによって、各連続する経路で圧力を下げる。
【0013】
US10,538,254B2の方法は、チューブの内部空間から気体粒子をスイープする専用の車輪案内型車両を必要とする。さらに、車両の前後の空間に圧力差を生み出すために、気体粒子が前端オリフィスから車両を通って後端オリフィスへ流れるだけでなく、車両とトンネルの内壁との間の環状隙間を通って流れる必要もある。車両を囲むパネルは、トンネル直径の不均一に適応するべく動的に設計することができる。これらのパネルは、空気が車両の外壁のパネル間を流れることを可能にする。この車両は、現在のHyperloopプロジェクトで必要な真空レベル、すなわちおよそ100Paを生み出すことを目標としているが、この方法がどのようにして高真空を生み出すことができるのかは開示されていない。この方法では車両の前部から後部への流れが必要となるため、システム内に常に大量の気体粒子が残留する。したがって、この方法は、Kn>1のガス環境に到達すること又は使用されるガス混合物の音速を超える車両速度に到達することには適していない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、高真空を効率よく生成及び維持し、チューブシステム内で車両を非常に高い速度で運行するための特定の方法を開示する。
【0015】
第1の態様によれば、本発明は、チューブ輸送システムを動作させる方法であり、チューブ輸送システムは、
(a)チューブアセンブリであって、
(a-1)外側チューブ、
(a-2)隣接するチューブ間に環状空間が形成されるように外側チューブ内に収容及び保持された1つ又は複数の内側チューブ、および
(a-3)外側チューブを保持するための支持構造体、
を含み、
車両を受け入れ、前記チューブアセンブリの第1の端部から反対側の第2の端部まで延びる経路に沿って車両を案内するための内部空間を画定する内壁面を有し、
内部空間から気体粒子を放出するための1つ又は複数の圧力バルブ又はノズルを有する、チューブアセンブリと、
(b)車両の外壁面とチューブアセンブリの内壁との間に環状隙間を画定する外壁面を有する車両と、
を含み、
前記方法は、
(i)車両前方のチューブアセンブリの内部空間から気体粒子を放出しながら、環状隙間での気体粒子流のチョーキング限界を超える速度で車両を第1の端部に向かう経路に沿って移動させるステップと、それに続いて、
(ii)移動方向を逆転させ、車両前方のチューブアセンブリの内部空間から気体粒子を除去しながら、環状隙間での気体粒子流のチョーキング限界を超える速度で車両を第2の端部に向かう経路に沿って移動させるステップと、
を含む方法を提供する。
【0016】
第2の態様によれば、本発明は、チューブ輸送システムであり、
(a)チューブアセンブリであって、
(a-1)外側チューブ、
(a-2)隣接するチューブ間に環状空間が形成されるように外側チューブ内に収容及び保持された1つ又は複数の内側チューブ、および
(a-3)外側チューブを保持するための支持構造体、
を含み、
車両を受け入れ、前記チューブアセンブリの第1の端部から反対側の第2の端部まで延びる経路に沿って車両を案内するための内部空間を画定する内壁面を有し、
内部空間から気体粒子を除去するための1つ又は複数の圧力バルブ又はノズルを有する、チューブアセンブリと、
(b)車両の外壁面とチューブアセンブリの内壁との間に環状隙間を画定する外壁面を有する車両と、
を含むチューブ輸送システムを提供する。
【0017】
本発明の方法は、チューブ輸送システムにおいて高速車両を受け入れる及び案内するチューブ内に高真空(0.1Pa未満の圧力)を効率よく提供するのに適している。本明細書で開示されるチューブ輸送システムは、同様のシステムでこれまで議論されてきた速度をはるかに上回る速度で、乗客又は商品の効率的且つ安全な輸送を提供する。
【0018】
前述の目的を達成するために、
・車両とそれを取り囲むチューブとの間の環状隙間でのチョーキング効果、及び
・圧力レベルが半径方向に減少するいくつかの入れ子にされた空気力学的に対応するチューブ、
の使用が提案され、これらは本発明で開示される中心的態様である。
【0019】
車両とそれを取り囲むチューブの内面との間の環状隙間でのチョーキング効果を利用することにより、車両の周囲の流れが制限され、したがって、車両の前部と対応するチューブ端との間の空間により多くの流体粒子が集まり、そこでそれらを高密度で効率よく放出又は抽出することができる。車両が両方向に数回通過すると、内側チューブ内は低圧に達する。この運行条件では、車両を通過するすべての流体粒子を、側方開口部を介して抽出し、車両内に格納する又は車両の前方に排気することができ、そこで流体粒子は圧縮され、内側チューブから放出又は抽出することができる。
【0020】
この方法は、摩擦なしの車両の運行に必要な圧力レベルに到達する及び維持するのに必要且つ十分である。これは、気体粒子の平均自由行程が車両とそれを取り囲むチューブの内面との間の環状隙間の幅よりも長いとき、すなわち、クヌーセン数が1を超える(Kn>1)とき又は圧力が0.1Paから10-7Paの間であるときに当てはまる。
【0021】
本発明は、車両と内側チューブの内面との間の環状隙間でのチョーキング効果を利用することによってチューブ輸送システム内で高真空が達成され得るという認識に基づいている。高真空が達成されると、クヌーセン数は1を超え、車両は摩擦なしで移動する。さらに、本発明は、内側チューブから外側への圧力の段階的増加を可能にするべく、入れ子にされたチューブのシステムを使用することを提案する。多層チューブシステムとチョーキング効果の利用の両方が、ここに開示されるチューブ輸送システム及びその使用方法の中心的態様である。
【0022】
チョーク流れは、車両の周囲の流れを制限するシールとして作用する。結果として、車両前方のガスが圧縮され、車両後方のガスが膨張する。
【0023】
内側チューブ内の圧力が依然として高い限り、チョーキングは、車両が第1の方向に比較的低速で移動する状態で発生する。この段階では、正圧側から隣接する環状空間へ空気が放出又は抽出されなければならない。反対の第2の方向にステップを繰り返し、再度ステップを繰り返すことにより、非常に低い圧力レベルが得られ、本発明の車両を使用した非常に高速での効率的且つ安全な輸送が可能となる。
【0024】
車両が高真空下で非常に高い速度で巡航するとき、チョーキング効果により、内側チューブ内に存在する少数の気体粒子が車両に隣接する場所に濃縮される。さらに、チョークは、速度と密度に関して決定される流れ条件をもたらす。この段階では、チョーク領域から気体粒子を車両へ抽出し、車両に格納することによって、チョーキング効果を効率的に利用することができる。
【0025】
外側チューブと内側チューブの間に少なくとも環状空間を有するチューブアセンブリに基づいて低い圧力レベルが可能にされ、維持され、環状空間内に減圧を確立及び維持することができ、環状空間は、チューブアセンブリの内部空間から放出された気体粒子を受け入れるべく内部空間と流体流動連通する。
【0026】
本発明のチューブ輸送システムは、真空下で動作する閉じたシステム内に、好ましくは案内及び推進のために磁気力を使用する高速車両を含む。本発明のチューブ輸送システムは、非常に低い圧力レベルで、すなわち、空気粒子の平均自由行程が車両の特徴的な寸法、特に環状隙間の幅のオーダーである環境内で動作する。したがって、多くとも0.1Pa、好ましくは高度約200kmでの圧力に対応する約0.0001Paの圧力レベルでクヌーセン数は1を超え、これにより、空気力学的抗力が排除され、快適なレベルまでの実質的な高速化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の方法で使用するための本発明のチューブ輸送システム100を概略的に示す図である。
【
図2a】本発明のチューブ輸送システム内で第1の端部7から第2の端部8へ移動する車両6を概略的に示す図である。
【
図2b】本発明のチューブ輸送システム内で第2の端部8から第1の端部7へ移動する車両6を概略的に示す図である。
【
図3】車両6を案内及び推進するために使用される電気技術設備を有する本発明のチューブ輸送システムのチューブアセンブリ101の断面を概略的に示す図である。
【
図4】外側チューブ1と内側チューブ2を有する本発明のチューブアセンブリ101を概略的に示す図である。
【
図5】ペイロード22を車両6に載せる/車両6から降ろす方法を概略的に表す図である。
【
図6】旅客車両6の前方及び後方で保安車両29を運行する方法の一実施形態を示す図である。
【
図7】幅14の環状隙間11でのチョーク流れの状態を示す図である。
【
図8】ガスタンク23に格納された気体粒子を車両の前方に排気し、環状隙間にチョーク流れを生み出すことによる緊急制動方法を表す図である。
【
図9】空間内を自由に移動する気体粒子を示し、気体粒子は別の粒子と衝突する前に特定の距離(自由行程)を移動する。
【
図10】本発明に関連する3つの異なる流れ状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
一般に、クヌーセン数は、分子平均自由行程長と代表的な物理長スケールとの比として定義される無次元数である。本発明の目的上、クヌーセン数は、環状隙間での気体粒子の分子平均自由行程長と環状隙間の最大幅との比として定義される。
【0029】
平均自由行程Lは、次式によって決定される:
L=μ/ρ(πKBT/2m)-1/2
ここで、μは動粘度であり、ρは密度であり、KBはボルツマン定数であり、Tは熱力学温度であり、mは気体粒子の分子質量である。本発明の目的上、平均自由行程を10cmの精度で決定することで十分である。
【0030】
本発明に関連して、チューブの外側の周囲圧力は、海面付近の大気圧、すなわち約100kPaである。高真空は、一般に、0.1Pa~10-7Paの圧力レベルを指す。
【0031】
本発明の真空チューブ輸送システムは、高真空下で、好ましくは10-1~10-4Paの圧力下で動作する。1つ又は複数の車両の前方の空気を圧縮し、そこから空気を数サイクルで放出又は抽出するプロセスは、運行条件のための準備である。正常動作中の入れ子にされたチューブによって形成される環状空間での圧力レベルは、周囲圧力と内部空間の高真空との間である。運行条件に達する前に、内側チューブからの気体粒子を内側チューブから隣接する環状空間に押し出して、内側チューブ及び環状空間内に一時的に周囲圧力を超える圧力レベルを生み出すことができる。
【0032】
本発明のチューブ輸送システムを動作させる方法は、空気を効率よく十分に圧縮し、システムから残留気体粒子をスイープするために、チョーキング効果を利用することを想定している。これは、チューブ輸送システムを動作させる以下のステージで使用される:
1)車両を受け入れるチューブの圧力レベルが依然として運行条件を上回っており、チューブが真空引きされているとき、
2)車両を受け入れるチューブが既に真空引きされており、車両が運行条件、すなわち高真空下で非常に高い速度で巡航している間に、漏れがあって気体粒子を継続的に除去する必要があるとき。
【0033】
チューブ輸送システムは、1つ又は複数の車両を受け入れるためのチューブアセンブリを含む。チューブアセンブリは、好ましくは多くとも2.0m、より好ましくは多くとも1.5mとなるように選択され得る内側チューブ直径を有する。チューブアセンブリは、異なる圧力の2つ以上の層で構成される。二重層の外壁では、内側チューブと外側チューブの間に環状空間が形成されるように、第1の内側チューブが別の僅かにより大きい外側チューブ内に収容される。チューブの壁の厚さは、チューブに使用される材料に依存し、普通は、1cm~10cm、より好ましくは2~5cmの範囲で独立して選択される。環状空間の幅は、1cm~20cmの範囲、より好ましくは5cm~10cmの範囲であり得る。さらに、内側チューブによって輸送のための内部空間が形成される。
【0034】
運行条件について、輸送に使用される内部空間での圧力レベルは、好ましくは0.1Pa~10-4Paに低下される。内側チューブを取り囲む環状空間は、10Pa~100Paの圧力レベルを維持し、ちなみにこれはHyperloop(登録商標)の現在の運行圧力レベルに対応する。他の環状空間が存在する場合、それらの圧力は第1の環状空間と周囲条件との間になる。
【0035】
チューブの材料は、漏れが非常に少なく、圧力差及び車両の横加速度による力に耐え、外的影響に対して満足のいくレベルの保護を提供する材料である限り、特に限定されない。材料の例は、アルミニウム、炭素繊維強化プラスチック(GFP)、ガラス繊維強化コンクリート(GFC)、マグネシウム、チタン、又は前述の材料の組み合わせである。
【0036】
各環状空間に沿った流れを過度に妨げることなく、環状空間に、ハニカム又はリブレット構造、又は任意のバルク材料を充填することができ、例えば剛性を高めるために隣接するチューブ間に砂又は小球を充填することができる。環状空間には、内側チューブ内の高真空の維持を改善する、真空引きプロセスをサポートする、及び車両の空気力学的特性を改善するのに適した混合ガスを充填することもできる。
【0037】
完全なチューブアセンブリは、外側チューブを介して、高架ガイドウェイ、トンネル、又は水面下又は水上のサスペンションの支持体に接続される。内側チューブには、車両の案内及び推進に必要な電気機械設備と、異常な運行状態を早期に確実に検出するためのセンサが含まれる。チューブの壁と外部又は内部の設備との間の接続部は、必要な力を伝達しなければならず、漏れを回避するように設計される。
【0038】
本発明の方法は、推進される1つ又は複数の車両で気体粒子をスイープすることによって、チューブ内に存在する任意の気体粒子の平均自由行程が環状隙間よりも長くなるように制御しながら、チューブ内で好ましくは少なくとも80m/sの最高速度で1つ又は複数の車両を推進及び案内することを含む。より好ましくは、最高速度は少なくとも300m/sであり、さらにより好ましくは、最高速度は少なくとも1000m/sである。
【0039】
チューブ輸送システムを動作させる方法
本発明は、チューブ輸送システムを動作させる方法に関する。この方法は、特定の距離にわたる乗客又は商品の輸送に用いられ得る。好ましくは、距離は、少なくとも5kmであり、より好ましくは少なくとも50kmである。適切なチューブアセンブリが提供され得る限り、最大距離は特に限定されない。したがって、距離は、最大100km、好ましくは最大1000km、又はそれ以上であり得る。
【0040】
チューブ輸送システムは、チューブアセンブリと、1つ又は複数の車両を含む。チューブアセンブリは、車両を受け入れ、経路に沿って車両を案内するために使用される。
【0041】
チューブアセンブリは外側チューブを含む。外側チューブは、内部が真空状態のときに大気圧に耐える必要がある。
【0042】
チューブアセンブリは、隣接するチューブ間に環状空間が形成されるように外側チューブ内に収容及び保持された1つ又は複数の内側チューブを含む。本発明によれば、チューブの直径は、約1.5mまで小さくすることができ、二重層の外壁からなる(又は1つのチューブが別の僅かにより大きいチューブの中に入っている)ことが好ましいであろう。直径と二重層の壁との両方が、旅客車両のための非常に堅牢且つ安全な環境に寄与する。
【0043】
外側リングは、好ましくは約100~1000Paの圧力レベルを維持し、内側チューブ内の圧力は、0.0001Pa=10-4Paまで低下させることが好ましいであろう。チューブの材料は、前述の圧力差に耐えなければならず、車両の横加速度及び縦加速度による力も加わる。
【0044】
1つ又は複数の環状空間は、バルブ、オリフィス、又はノズル及びポンプなどの制御手段を通じて内部空間と流体流動連通しており、隣接する環状空間と内部空間との間に制御された圧力降下を生み出すべく制御手段を通じて環状空間間の流体の流れを抑制又は維持することができ、これにより、環状空間での圧力は、周囲圧力と内部空間での圧力レベルとの間となる。
【0045】
好ましくは、1つ又は複数の内側チューブ及び/又は外側チューブは、アルミニウム、ガラス繊維強化プラスチック(GRP)、ガラス繊維強化コンクリート(GFRC)、炭素繊維、チタン、マグネシウム、又はこれらの材料の任意の組み合わせで作製される。
【0046】
好ましくは、1つ又は複数の環状隙間は、経路に沿った流体流動連通を可能にしながら、環状隙間に部分的に充填される充填材を収容する。
【0047】
チューブアセンブリは、外側チューブを保持するための支持構造体を含む。外側チューブは、高架ガイドウェイ又はトンネルの支持体に接続される。内側チューブには、車両を案内及び推進するのに必要な機械設備が含まれる。チューブの壁と外部又は内部の設備との間の接続部は、必要な力を伝達しなければならず、漏れを回避するように設計される。
【0048】
チューブアセンブリは、車両を受け入れ、チューブアセンブリの第1の端部から反対側の第2の端部まで延びる経路に沿って車両を案内するための内部空間を画定する内壁面を有する。
【0049】
チューブアセンブリは、内部空間から気体粒子を放出するための1つ又は複数の圧力バルブ又はノズルを有する。
【0050】
好ましくは、内側チューブに設置される電磁気案内及び推進システムの部分は、内側チューブにさらなる安定性を提供する。これは、好ましくは平坦な導電体を人工樹脂内にグラウトし、次いでそれらを内側チューブの内面上に全周にわたって取り付けることで達成され得る。
【0051】
好ましくは、車両に設置される電磁気案内及び推進システムの部分は、車体にさらなる安定性を提供する。チューブを補剛するのと同様に、電磁気案内及び推進システムは、人工樹脂内にグラウトし、車体の全周にわたって取り付けることができる。
【0052】
好ましくは、内側チューブに設置される電磁気案内及び推進システムの部分は、車両をチューブの中心に保つためにチューブに沿って対称に設置される。このチューブに対する対称配置により、強力な推進及び案内及び剛性のために、利用可能な周囲を十分に利用することができる。
【0053】
好ましくは、車両に設置される電磁気案内及び推進システムの部分は、車両をチューブの中心に保つために車両に沿って対称に設置される。この車体に対する対称配置により、強力な推進及び案内及び剛性のために、利用可能な周囲を十分に利用することができる。
【0054】
チューブ輸送システムは、車両の外壁面とチューブアセンブリの内壁との間に環状隙間を画定する外壁面を有する車両をさらに含む。
【0055】
好ましくは、車両は、ペイロード(乗客又は商品)のための1つ又は複数のコンパートメント及び1つ又は複数のサービスコンパートメントを包囲し、乗客コンパートメントにアクセスするための解放可能なシール可能なポートを有する、円筒形ハウジングを備える。
【0056】
さらに、旅客車両は、乗客を乗せる及び降ろすための乗客コンパートメントから取り外されるように適合された1つ又は複数の座席を備え、座席は、乗客を乗せたときに乗客コンパートメントの円筒形ハウジングに固定されるように適合される。
【0057】
好ましくは、車両は、ハウジングのサービスコンパートメントのタンクに格納するべく車両に沿って気体粒子を抽出するための環状空間への1つ又は複数のオリフィスをさらに備える。
【0058】
好ましくは、車両のハウジングの内面は、色及び輝度の変化、又は乗客に立体感を与えるホログラム技術を使用可能なバーチャルリアリティの表示を可能にする、薄い発光層を備える。
【0059】
好ましくは、車両は、音を発生させる及び言葉での情報又は音楽を乗客に伝えるために平坦面を使用するシステムをさらに備える。
【0060】
好ましくは、乗客座席は、快適さ及び走行体験を向上させるべく移動させることができる。これは、横加速度のバランスをとる及び表示されたバーチャルリアリティに適応するための乗客座席の移動を指す。
【0061】
好ましくは、車両は、緊急時にハウジングを内側から開け、乗客コンパートメントをハウジングから解放するための設備を装備している。
【0062】
好ましくは、車両は、格納された気体粒子を排気することによって生み出されるガスクッションを使用する制動システムを装備している。
【0063】
好ましくは、車両は、推進及び案内のための電気設備を装備している。
【0064】
好ましくは、車両は、すべり接触又は無線によって外部から内部へ電気エネルギーを伝達する及び電気エネルギーを蓄えるための電気設備を装備している。
【0065】
車両は、妥当なエネルギー要件で最高速度に達するためには軽いことが不可欠であるため、軽いことが好ましい。非常に低い圧力レベルと、走行空気力学の排除は、軽い車両の前提条件である。
【0066】
車両は空気力学的形状を必要とせず、搭載される必要な技術機器に適応した円筒形の形状を有することが好ましいであろう。車両は、ペイロード、すなわち乗客又は商品のために上部で分割されてもよく、これにより、下部は推進に必要な電磁気設備のために使用され得る。端部には、真空ポンプ、緊急ブレーキ及び緊急脱出のためのツールなどのさらなる技術機器が含まれ得る。車両の外壁に沿って、案内のためのさらなる設備が追加され得る。
【0067】
空間のほとんどはペイロードのために使用することができるが、車両に追加する必要があるいくつかの特徴があり、そのために車両の前端又は後端に或る程度の空間が想定され得る。
【0068】
乗客は、緊急脱出する場合を除いて、一旦着席すると立ち上がって車両内を移動することは想定されない。したがって、搭乗手順には以下のステップが含まれる:
1.乗客を着席させる
2.座席を円筒形車体内へ移動させる
3.車両を閉鎖する
4.車両を内蔵したトンネルセクションをチューブアセンブリ内へ移動させる。
【0069】
好ましくは、チューブ輸送システムは、チューブアセンブリの環状空間内に真空レベルを生み出す及び維持するための1つ又は複数の真空ポンプをさらに含む。
【0070】
本発明の方法は、車両前方のチューブアセンブリの内部空間から気体粒子を除去しながら、環状隙間での気体粒子流のチョーキング限界を超える速度で車両を第1の端部に向かう経路に沿って移動させるステップ(i)を含む。
【0071】
その後、本発明の方法は、移動方向を逆転させ、車両前方のチューブアセンブリの内部空間から気体粒子を除去しながら、環状隙間での気体粒子流のチョーキング限界を超える速度で車両を第2の端部に向かう経路に沿って移動させるステップ(ii)を含む。
【0072】
好ましくは、ステップ(i)及び(ii)は、チューブアセンブリ内に存在する気体粒子の平均自由行程が環状隙間の幅よりも長くなるまで繰り返される。
【0073】
チューブアセンブリ内に存在する気体粒子の平均自由行程が環状隙間の幅よりも長いとき、1つ又は複数の車両は、チューブアセンブリ内で少なくとも80m/s、好ましくは少なくとも300m/s、さらにより好ましくは少なくとも1000m/sの最高速度で推進及び案内され得る。好ましくは、車両は、好ましくは側方開口部を介して、チューブアセンブリの環状隙間から気体粒子をスイープするように適合される。
【0074】
本発明の好ましい方法によれば、車両は、各旅客車両の前方及び/又は後方に所定の距離をおいて保安車両が運行されるように2台又は3台で運行される。したがって、この方法は、好ましくは、異常な運行状態を検出及び報告するためのセンサ及び通信機器を保安車両に搭載することを含む。さらに、この方法は、緊急事態の場合に車両のいずれかの速度を落とすのを助けるために保安車両が気体粒子を運ぶことをさらに含む。さらに、この方法は、保安車両は、好ましくは、旅客車両を残りのチューブシステムから分離するための圧力ロックを搭載していることをさらに含む。最後に、この方法は、好ましくは乗客の荷物を運ぶための保安車両を含む。
【0075】
好ましくは、1つ又は複数の車両は、車体の外面と内側チューブの内面との間の環状隙間においてチョーキングが達成されるように運行される。
【0076】
好ましくは、環状空間から流体粒子を抽出するため及びそれらを車体の内部に格納するために使用することができる手段が車両に設けられる。
【0077】
好ましくは、車両の前方区域から圧縮空気を抽出することができる手段がチューブに取り付けられる。
【0078】
好ましくは、外側チューブには、外側チューブの外側でエネルギーを生み出す太陽放射の感知面が設けられる。さらに、好ましくは、生成された太陽エネルギーを収集及び貯蔵するための手段が設けられる。最後に、好ましくは、チューブの周囲の空気のCO2含有量を減らすための手段が設けられる。
【0079】
好ましくは、車両は、特に、サービスコンパートメントに格納され排気された気体粒子で車両の周囲に流れを生み出すことによって車両を減速させるための機械的、電磁気的、又は空気力学的手段を使用する制動システムを備える、及び/又は車両は、推進、案内、及び制動のための電気設備を備える。
【0080】
チューブ輸送システム
本発明によれば、チューブ輸送システムはチューブアセンブリを含む。チューブアセンブリは、外側チューブ、隣接するチューブ間に環状空間が形成されるように外側チューブ内に収容及び保持された1つ又は複数の内側チューブ、及び外側チューブを保持するための支持構造体を含む。
【0081】
チューブアセンブリは、車両を受け入れ、チューブアセンブリの第1の端部から反対側の第2の端部まで延びる経路に沿って車両を案内するための内部空間を画定する内壁面を有する。チューブアセンブリは、内部空間から気体粒子を除去するための1つ又は複数の圧力バルブ又はノズルを有する。
【0082】
チューブアセンブリは、車両の外壁面とチューブアセンブリの内壁との間に環状隙間を画定する外壁面を有する車両をさらに含む。
【0083】
本発明のチューブアセンブリは多層チューブである。大気と車両の循環に使用される内側チューブとの間に複数の圧力レベルを生み出すために、1つのチューブが他のチューブ内に入れ子にされたもの、又はいくつかの壁層を備えるチューブが使用される。デフォルトの方策として、2つのみのチューブとそのチューブ構成での圧力レベルが使用されるが、3つ以上の壁層を備えた方策が存在し得る。多層管状システムは、周囲から内側チューブまでの圧力レベルを段階的に低下させるために使用され得る。圧力の低下は、チューブの対応するチャンバ間のノズル、オリフィス、又はバルブから液体又は流体を抽出又は追加すること或いは液体又は流体を循環させることによって達成され得る。
【0084】
2つのチューブ間に又は外側チューブとの間に内側チューブを保護する及び多層チューブ構造を強化するのに適した材料、例えば砂が充填されたサンドイッチ/ハニカム/リブレット構造が企図される。外部からの放火攻撃(例えば、弾丸、小型爆発物)からシステムを保護し、構造全体の剛性を向上させるために、チューブの外側リングに砂、任意の他のバルク材料、リブレット材料、サンドイッチ又はハニカム材料が充填され得る。この充填物は、チューブに沿った流体交換を抑制しない様態で分散される、すなわち、リブレットは半径方向の開口部を有し、砂はチューブに沿った流体の流れを可能にするのに十分な粗さである。
【0085】
内側チューブの真空引きと車両の空気力学的挙動を改善するために、チューブには、ヘリウムと水素又は任意の他の気体の混合ガスが充填され得る。
【0086】
複数のチューブシステムにヘリウム、水素、及び任意の他の気体の混合ガスが充填されている場合、真空の生成又は維持がより良好になり、漏れが低減し、車両の残りの空気力学的挙動が改善されることが期待される。この場合、空気はこれらの気体と交換される可能性がある。チューブ内の減圧は、短い距離で非常に高い速度に達するように空気力学的な力を受けずにあらゆるタイプの物体を加速させるために用いられ得る。
【0087】
チューブは、ガラス繊維強化プラスチック(GRP)、ガラス、金属、コンクリート、又は炭素、又はこれらの材料のいずれかの混合物で作製され得る。チューブは、現場で又は現場外で製造され得る。特に、これらのチューブを現場で製造するために使用される材料を運ぶ及び加工するマシンを備えたいくつかの層を有するシームレス又は融合チューブを製造するのに適したリグが使用され得る。
【0088】
チューブアセンブリは、チューブに沿ってどこででも緊急脱出用の窓を開けることを可能にし得る。チューブに沿ってどこにでも非常口を設ける用意のために必要なチューブ上の設備が企図される。さらに、回転ステーションを作製するためにチューブセクションを分離することを可能にするチューブも考えられる。
【0089】
本発明はまた、ステーションで想定されるチューブセクションを交換する用意のために、チューブセクションをチューブの残りの部分から気密に分離する用意のために必要なチューブ上の設備も考慮している。発生する力に耐え、漏れがほとんどないように真空を維持するのに適した、チューブの支持体及びこれらの支持体とチューブとの間の接合部が設けられ得る。チューブには、車両の運行のために使用され得るエネルギーを発生させるために、チューブの一体部分として又は取り付けられたソーラーパネルが装備され得る。
【0090】
車両は、ドア及び通路を介した乗客の乗降、及び交換の際に用いられるトンネルセクションへの車両の移動を可能にする、古典的なコンセプトの大直径の軽量車両であり得る。
【0091】
軽量車両は、好ましくは、座席への乗客の乗降、着席した乗客の車両への移動、車両の端部での気密閉鎖、及び交換の際に用いられるトンネルセクションへの車両の移動を可能にするモジュール構造及び小直径を備え得る。
【0092】
車両は、空気のスイープ/抽出及び圧縮のための機械設備/ポンプ/タービンを備え得る。ステーションに溜まった空気を交換するための機械設備も設けられ得る。ブレーキとして使用されるエアクッションを生み出すためのポンプ又はタービンも企図される。ブレーキとして使用される渦電流を発生させるための機械的又は電気機械的設備も開示される。非常口を作製するために使用されるツール及び設備が企図される。レーザ又は任意の他の物理的に可能な方法を介したエネルギー伝送のための受信装置が開示される。ブレーキについて、任意の所与の瞬間に車両を減速させる目的で車両の周りに空気流を生み出すのに適した車両の搭載設備、機械式ブレーキ又は電磁気ブレーキ(渦電流)が使用され得る。
【0093】
従来の推進システムが、トランスラピッドで使用されるリニア誘導モータから選択され得る。しかしながら、超電導磁石、レールガン技術、レーザエネルギー伝送、光子又はイオンベースの推進、及び車両への必要なエネルギー伝送も企図される。
【0094】
トランスラピッドのように引力を有する能動磁石で構成される従来の浮上システムが使用され得る。しかしながら、浮上及び案内システムは超電導磁石に基づいていてもよい。適切な超伝導体材料は、バルクのイットリウムバリウム酸化銅(YBCO)結晶又は蒸着YBCOフィルムから選択され得る。US10000892B2で開示されているような推進システムが本発明の目的に適応し得る。
【0095】
好ましい実施形態によれば、案内システムは、車両を常にチューブの中心に保つためにチューブに沿って120°の角度で設置され得る。これにより、横方向の動きに対して或る程度の余裕ももたらされる。
【0096】
好ましい実施形態によれば、ステーションは、ステーションの完全なトンネルセグメントの積み降ろしのための機構を備えた回転バレルステーションであり得る。漏れがない又はほとんどない状態でのチューブの残りの部分からのステーショントンネルセグメントの分離が好ましい。
【0097】
好ましい実施形態によれば、本発明は、チューブに沿ってどこにでも非常口を作製することを可能にし、チューブに沿ったどこかであり得る任意の場所に非常口を作製するために、車両に搭載されたツールとチューブの内部にある設備が使用されることによって特徴付けられ、ツールは、カーバイドなどを使用したカッター又は火工品を含み得る。
【0098】
さらに好ましい実施形態によれば、本発明は、乗客をチューブ内の狭い空間から外へ脱出させるための避難手順/シーケンスを可能にする。
【0099】
必要な真空レベルを生成及び維持するための真空技術は、必要な圧力レベルへの到達及び維持、又は車両での流体粒子の抽出及び圧縮、ステーションでの排出、車両での残りの流体粒子の圧縮及び収集のためのチョーキング効果の利用に適したあらゆるタイプのポンプの使用を含み得る。
【0100】
好ましい実施形態によれば、本発明は、振動センサ、アラインメントセンサ、圧力センサ、温度センサ、及び/又はカメラを使用して綿密に監視することにより、各トリップ前及びトリップ中にシステムの完全性を保証することを可能にする。
【0101】
安全性の観点から、以下が好ましい:
各旅客車両に保安車両が先行する。保安車両は、乗客の荷物又は任意の他の商品又は資材を運ぶために使用される。後続する旅客車両のための緊急停止システムがある。
【0102】
本発明は、通常、長距離輸送システムとして使用され得る。
【0103】
ここで、図面を参照して本発明をさらに説明する。
【0104】
図1は、本発明の方法で使用するためのチューブ輸送システム100を示す。チューブ輸送システム100は、チューブアセンブリ101と車両6を含む。
【0105】
チューブアセンブリ101は、外側チューブ1と、外側チューブ1との間に環状空間3を形成するように外側チューブ内に収容及び保持された内側チューブ2を含む。チューブアセンブリ101は、外側チューブ1を保持するための支持構造体4をさらに含む。チューブアセンブリ101は、車両6を受け入れ、チューブアセンブリの第1の端部7から反対側の第2の端部8まで延びる経路に沿って車両6を案内するための内部空間5を画定する内壁面12を有する。チューブアセンブリは、内部空間5及び環状空間3から気体粒子を放出するための1つ又は複数の圧力バルブ又はノズル9を有する。環状空間3から気体粒子を抽出するためにチューブアセンブリ101に真空ポンプ15が接続される。環状空間3は、内側チューブの外面から外側チューブ1の内面まで延びるセパレータ32によって長手方向にコンパートメントに分割される。
【0106】
車両6は、外壁面10を有する円筒形ハウジング17の形態で表される。車両6には、ペイロード(乗客又は商品)を受け入れるように設計されたコンパートメント18と、サービスコンパートメント23が含まれる。車両の外壁面10とチューブアセンブリの内壁面12との間に環状隙間11が形成される。側方オリフィス16を介して環状隙間11から気体粒子を抽出するべく、車両の内部に真空ポンプ15が配置され、気体粒子を、サービスコンパートメント19に配置されたタンク23に格納することができる。
【0107】
図2a)は、第1の端部7から第2の端部8へ移動する車両6を示す。圧縮された気体粒子が、第2の端部8にあるバルブ9を介して外部に及び環状空間3に放出される。
【0108】
図2b)は、第2の端部8から第1の端部7へ移動する車両6を示す。圧縮された気体粒子が、第1の端部7にあるバルブ9を介して外部に及び環状空間3に放出される。
【0109】
図3は、車両6を案内及び推進するために使用される電気技術設備を有するアセンブリ101の断面を示す。車両に設置される電磁気案内及び推進システムの部分27、及び電気エネルギーを無線で伝達するための電気設備の部分28が、車両の外面10に取り付けられたさらなるリングとして表される。内側チューブに設置される電磁気案内及び推進システムの部分26が、チューブアセンブリの内壁12に取り付けられたリングとして表される。要素26及び27/28によって形成されるリングは、環状隙間11を囲んでいる。
【0110】
図4は、外側チューブ1と内側チューブ2を有するチューブアセンブリ101を示す。チューブ1とチューブ2との間の環状空間に充填材25が入れられる。充填材25は、チューブアセンブリ101にさらなる安定性を提供するように選択されるが、チューブアセンブリの第1の端部7から第2の端部8への環状空間内の流体の流れを可能にする。
図4では、充填材25は、内側チューブの外面及び外側チューブの内面に接続された多孔チューブからなる。
【0111】
図5は、ペイロード22を車両6に載せる/車両6から降ろす方法を表す。
図5a)は、蓋20が開いており、ペイロード22が車両6の円筒形ハウジング17の外部にある状況を示す。ステップ1で、ペイロード(ここでは乗客)が車両の外部から車両6の乗客コンパートメント18に移動され、その結果が
図5b)に表される。
図5c)は、ステップ2が完了した後の車両を表す。ステップ2で、車両が完全に密閉されるように、蓋20が車両の一端上に移動される。車両から乗客を降ろすには、前述のステップを逆の順序で行う、すなわち、最初に車両から蓋が取り外され、次いで、ペイロードが取り外される。
【0112】
図6は、旅客車両6の前方及び後方で保安車両29を運行する方法を表す。先行する保安車両29と旅客車両6との間の距離30は、異常な状態を検出した場合に保安車両29fに衝突することなく旅客車両を減速させることが常に可能であるように選択される。後続の保安車両29tは、安全な距離をおいて追従する。保安車両は、内部空間5を長手方向にセクションに分割するためのセンサ及びツールを搭載している。
【0113】
図7は、幅14の環状隙間11でのチョーク流れの状態を表す。車両6が気体粒子とともに内側チューブ5内で移動すると、車両6の前方で気体粒子が圧縮され、車両6の後方で膨張が生じる。このようにして車両の前方と後方との間に生じた圧力差により、環状隙間11において車両の前端から車両の後端への流れが生じる。圧力レベル、環状隙間の幅14、及び内側チューブ5の直径に応じて、車両が特定の速度を超えるときに、環状隙間での走行方向に逆らう流れが音速に達する。この現象をチョーキングと呼ぶ。流れがチョークするとき、質量流量は増加することができなくなり、したがって、より多くの気体粒子が前方に押される。本発明は、チョーキング効果を利用して気体粒子を車両の前方にスイープし、そこでそれらをバルブ又はノズル9を介して放出することができる。
【0114】
図8は、ガスタンク23に格納された気体粒子を車両の前方に排気することによる緊急制動方法を表す。車両6の前方で気体粒子が急激に増加すると、環状隙間11において車両の周囲に走行方向とは反対方向の流れが生じる。速度が高く、十分な気体粒子を放出できるとき、環状隙間での流れがチョークし、車両の前方の圧力がさらに上昇する。この方法により車両が減速する。
【0115】
図9は、空間内を自由に移動する気体粒子を表し、気体粒子は別の粒子と衝突する前に特定の距離を移動する。この距離は、特定の体積内のすべての気体粒子について特定の時間にわたって平均され、いわゆる平均自由行程を定義する。
【0116】
図10は、本発明に関連する3つの異なる流れ状態を示す。
図10a)は、古典流体力学で説明される粘性流を示し、ここで、流体は連続体とみなされ、Navier-Stokes方程式が粘性流に適用される。
図10b)は、遷移状態、いわゆるクヌーセン流を表し、一部の気体粒子は連続体のように振る舞い、他の気体粒子は顕著な相互作用を受けない。
図10c)では、すべての気体粒子は空間内を自由に移動する。このいわゆる分子流では、気体粒子は摩擦を受けない。この流れを通常の巡航走行に求めたのが本発明である。
【符号の説明】
【0117】
1: 外側チューブ
2: 内側チューブ
3: 隣接するチューブ(例えば外側チューブと内側チューブ)間の環状空間
4: 外側チューブを保持するための支持構造体
5: 内部空間
6: 車両
7: チューブアセンブリの第1の端部
8: チューブアセンブリの第2の端部
9: バルブ
10: 車両の外壁面
11: 環状隙間
12: チューブアセンブリの内壁
13: 気体粒子の平均自由行程
14: 環状隙間の幅
15: 真空ポンプ
16: 環状隙間内の1つ又は複数のオリフィス
17: 車両の円筒形ハウジング
18: ペイロードを受け入れるように設計されたコンパートメント
19: 1つ又は複数のサービスコンパートメント
20: 乗客コンパートメントにアクセスするための解放可能なシール可能なポート
21: 乗客座席の移動
22: 取り外し可能な支持構造体に固定されたペイロード、すなわち、乗客座席又は商品
23: ガスタンク
24: 乗客コンパートメントの内面
25: 充填材
26: 内側チューブに設置される電磁気案内及び推進システムの部分
27: 車両に設置される電磁気案内及び推進システムの部分
28: すべり接触又は無線によって電気エネルギーを伝達するための電気設備
29: 環状隙間での気体粒子流
29’: 保安車両
30: 乗客車両と保安車両との間の所定の距離
31: クヌーセン数Knの可視化
32: 環状空間のコンパートメント化
【国際調査報告】