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特表2023-547986回折アーチファクトを低減するための多層の偏光格子を有する光学素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】回折アーチファクトを低減するための多層の偏光格子を有する光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/32 20060101AFI20231108BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20231108BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20231108BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALN20231108BHJP
   G02F 1/1347 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
G02B5/32
G02B27/02 Z
G02B5/18
G02F1/1335
G02F1/1347
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516563
(86)(22)【出願日】2021-09-12
(85)【翻訳文提出日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 US2021049984
(87)【国際公開番号】W WO2022093410
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】17/083,370
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515046968
【氏名又は名称】メタ プラットフォームズ テクノロジーズ, リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】META PLATFORMS TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】マケルダウニー、スコット チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】アミルソライマニ、ババク
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ジュンレン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、メンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ユン-ハン
(72)【発明者】
【氏名】ルー、ルー
【テーマコード(参考)】
2H189
2H199
2H249
2H291
【Fターム(参考)】
2H189AA33
2H189LA05
2H199CA13
2H199CA24
2H199CA25
2H199CA27
2H199CA29
2H199CA30
2H199CA32
2H199CA43
2H199CA49
2H199CA50
2H199CA62
2H199CA66
2H199CA68
2H199CA75
2H199CA83
2H199CA86
2H199CA92
2H199CA96
2H249AA02
2H249AA06
2H249AA12
2H249AA43
2H249AA60
2H249AA62
2H249AA64
2H249AA65
2H249CA01
2H249CA05
2H249CA09
2H249CA15
2H249CA22
2H291FA48X
2H291FA71X
2H291FB05
2H291FD07
2H291GA08
2H291GA18
2H291LA03
2H291LA21
2H291MA02
2H291PA84
2H291PA85
(57)【要約】
光学素子は、傾斜ブラッグ格子面(475)と、水平線に沿った第1の面内ピッチおよび第1の垂直ピッチで空間的に変化する、第1の光学異方性分子のダイレクタの配向とを有する第1の複屈折媒体格子層(455)を含む。光学素子はまた、傾斜ブラッグ格子面(465)と、第2の面内ピッチおよび第2の垂直ピッチで空間的に変化する、第2の光学異方性分子のダイレクタの配向とを有する第2の複屈折媒体層(460)を含む。第2の複屈折媒体層は、第1の複屈折媒体層と光学的に結合されているとともに、第1の複屈折媒体層により回折された光の色分散効果を低減させるように構成されている。第1の面内ピッチは第2の面内ピッチと実質的に同じであり、第2の垂直ピッチは第1の垂直ピッチより小さく、このことは、第2の格子のねじれ角が第1の格子のねじれ角よりも大きいことを意味する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子であって、
第1の面内ピッチおよび第1の垂直ピッチで空間的に変化する、第1の光学異方性分子のダイレクタの配向を有する第1の複屈折媒体層と、
第2の面内ピッチおよび第2の垂直ピッチで空間的に変化する、第2の光学異方性分子のダイレクタの配向を有する第2の複屈折媒体層であって、前記第1の複屈折媒体層と光学的に結合されているとともに、前記第1の複屈折媒体層による光の回折を低減させるように構成されている、前記第2の複屈折媒体層と、を備え、
前記第1の面内ピッチが前記第2の面内ピッチと実質的に同じであり、前記第2の垂直ピッチが前記第1の垂直ピッチよりも小さい、光学素子。
【請求項2】
前記第2の垂直ピッチと前記第1の垂直ピッチの比が0.2~0.8の範囲内にある、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記第2の垂直ピッチと前記第1の垂直ピッチの比が約0.5である、請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第2の複屈折媒体層の厚さと前記第1の複屈折媒体層の厚さとの比が、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%よりも小さい、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記第1の複屈折媒体層または前記第2の複屈折媒体層の少なくとも一方が、面内方向にも面外方向にも空間的に変化する配向で構成された光軸を有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記第1の複屈折媒体層または前記第2の複屈折媒体層の少なくとも一方が、重合液晶(「LC」)、ポリマー安定化LC、フォトポリマー、または能動LCのうちの少なくとも1つを含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記第1の複屈折媒体層または前記第2の複屈折媒体層の少なくとも一方が、ネマチックLC、ツイストベンドLC、キラルネマチックLC、またはスメクチックLCのうちの少なくとも1つを含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項8】
第3の面内ピッチおよび第3の垂直ピッチで空間的に変化する、第3の光学異方性分子のダイレクタの配向を有する第3の複屈折媒体層をさらに備え、
前記第3の面内ピッチが前記第1の面内ピッチと実質的に同じであり、前記第3の垂直ピッチが前記第1の垂直ピッチよりも小さく、
前記第3の垂直ピッチが前記第2の垂直ピッチと実質的に同じであるか、または異なる、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項9】
第3の面内ピッチおよび第3の垂直ピッチで空間的に変化する、第3の光学異方性分子のダイレクタの配向を有する第3の複屈折媒体層と、
第4の面内ピッチおよび第4の垂直ピッチで空間的に変化する、第4の複屈折媒体層中の第4の光学異方性分子のダイレクタの配向を有する前記第4の複屈折媒体層とをさらに備え、
前記第4の面内ピッチが前記第3の面内ピッチと実質的に同じであり、前記第4の垂直ピッチが前記第3の垂直ピッチよりも小さい、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項10】
前記第3の面内ピッチが前記第1の面内ピッチと実質的に同じであるか、または異なり、前記第3の垂直ピッチが前記第1の垂直ピッチと実質的に同じであるか、または異なる、請求項9に記載の光学素子。
【請求項11】
前記第1の複屈折媒体層が、現実世界環境からの可視多色光を第1の光として回折させるように構成されており、
前記第2の複屈折媒体層が、前記第1の複屈折媒体層から出力された前記第1の光を第2の光として回折させるように構成されており、
前記第1の複屈折媒体層と前記第2の複屈折媒体層を組み合わせたものの回折効率が、前記第1の複屈折媒体層の回折効率よりも小さい、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項12】
前記第1の複屈折媒体層および前記第2の複屈折媒体層に結合された光ガイドをさらに備え、
前記第2の複屈折媒体層が前記第1の複屈折媒体層と前記光ガイドの間に配置されているか、または前記第1の複屈折媒体層が前記第2の複屈折媒体層と前記光ガイドの間に配置されている、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項13】
前記光ガイドが、ディスプレイ画像を表す画像光と、現実世界環境から来て前記第1の複屈折媒体層および前記第2の複屈折媒体層を通過する可視多色光とを、前記光学素子のアイボックスに向かって伝搬する結合光として結合するように構成されている、請求項12に記載の光学素子。
【請求項14】
デバイスであって、
第1の面内ピッチおよび第1の垂直ピッチを有しているとともに、光を回折させるように構成されている第1の偏光選択性素子と、
前記第1の偏光選択性素子に光学的に結合された第2の偏光選択性素子であって、第2の面内ピッチおよび第2の垂直ピッチを有しているとともに、前記第1の偏光選択性素子による光の回折を低減させるように構成されている、前記第2の偏光選択性素子と、を備え、
前記第1の面内ピッチが前記第2の面内ピッチと実質的に同じであり、前記第2の垂直ピッチが前記第1の垂直ピッチよりも小さい、デバイス。
【請求項15】
前記第2の垂直ピッチと前記第1の垂直ピッチの比が0.2~0.8の範囲内にある、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記第2の垂直ピッチと前記第1の垂直ピッチの比が約0.5である、請求項14または15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第2の偏光選択性素子の厚さと前記第1の偏光選択性素子の厚さの比が、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%よりも小さい、請求項14乃至16のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記第1の偏光選択性素子または前記第2の偏光選択性素子の少なくとも一方が、サブ波長構造、液晶材料、または光屈折ホログラフィック材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項14乃至17のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記第1の偏光選択性素子または前記第2の偏光選択性素子の少なくとも一方が、面内方向にも面外方向にも空間的に変化する配向で構成された光軸を有する複屈折材料を含む、請求項14乃至18のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項20】
第3の面内ピッチおよび第3の垂直ピッチを有する第3の偏光選択性素子をさらに備え、前記第3の面内ピッチが前記第1の面内ピッチと実質的に同じであり、前記第3の垂直ピッチが前記第1の垂直ピッチよりも小さい、請求項14乃至19のいずれか1項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に光学デバイスに関し、より詳細には、回折アーチファクトを低減させるための複数の層を有する光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光選択性素子は、光学デバイスおよび光学システムの用途、たとえばビームステアリングデバイス、導波路、およびディスプレイにおいて、ますます関心を得てきた。偏光選択性素子は、光学的に等方性または異方性の材料をベースとして作製することができ、適切なサブ波長構造、液晶、光屈折ホログラフィック材料、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。偏光体積ホログラム(「PVH(Polarization volume hologram)」)は、偏光選択性素子の一種である。PVHの光軸は、偏光感受性ホログラフィック応答を可能にするための、面内方向にも面外方向にも空間的に変化する配向を有している。PVHまたはPVH素子には、小型化、偏光選択性、高い回折効率、大きい回折効率などの特徴がある。したがって、PVHは、様々な技術分野の様々な用途で実施することができる。PVH素子は、様々な方法を用いて、たとえばホログラフィック干渉またはホログラフィ、レーザ直接書刻、および他の様々な形のリソグラフィを用いて、作製することができる。
【発明の概要】
【0003】
本開示の第1の態様によれば、光学素子が提供され、この光学素子は、第1の面内ピッチおよび第1の垂直ピッチで空間的に変化する、第1の光学異方性分子のダイレクタ(directors)の配向を有する第1の複屈折媒体層と、第2の面内ピッチおよび第2の垂直ピッチで空間的に変化する、第2の光学異方性分子のダイレクタの配向を有する第2の複屈折媒体層であって、第1の複屈折媒体層と光学的に結合されているとともに、第1の複屈折媒体層による光の回折を低減させるように構成されている、第2の複屈折媒体層とを含み、第1の面内ピッチは第2の面内ピッチと実質的に同じであり、第2の垂直ピッチは第1の垂直ピッチよりも小さい。
【0004】
いくつかの実施形態では、第2の垂直ピッチと第1の垂直ピッチの比は0.2~0.8の範囲内にあり得る。
いくつかの実施形態では、第2の垂直ピッチと第1の垂直ピッチの比は約0.5であり得る。
【0005】
いくつかの実施形態では、第2の複屈折媒体層の厚さと第1の複屈折媒体層の厚さとの比は、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、第1の複屈折膜または第2の複屈折膜の少なくとも一方は、面内方向にも面外方向にも空間的に変化する配向で構成された光軸を有し得る。
いくつかの実施形態では、第1の複屈折膜または第2の複屈折膜の少なくとも一方は、重合液晶(「LC」)、ポリマー安定化LC、フォトポリマー、または能動LCのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1の複屈折媒体層または第2の複屈折媒体層の少なくとも一方は、面内方向にも面外方向にも空間的に変化する配向で構成された光軸を有し得る。
いくつかの実施形態では、第1の複屈折媒体層または第2の複屈折媒体層の少なくとも一方は、重合液晶(「LC」)、ポリマー安定化LC、フォトポリマー、または能動LCのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1の複屈折媒体層または第2の複屈折媒体層の少なくとも一方は、ネマチックLC、ツイストベンド(twist-bend)LC、キラルネマチック(chiral nematic)LC、またはスメクチック(smectic)LCのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、光学素子は、第3の面内ピッチおよび第3の垂直ピッチで空間的に変化する、第3の光学異方性分子のダイレクタの配向を有する第3の複屈折媒体層をさらに含むことができ、第3の面内ピッチは第1の面内ピッチと実質的に同じでよく、第3の垂直ピッチは第1の垂直ピッチよりも小さくてよく、第3の垂直ピッチは第2の垂直ピッチと実質的に同じであっても異なっていてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、光学素子は、第3の面内ピッチおよび第3の垂直ピッチで空間的に変化する、第3の光学異方性分子のダイレクタの配向を有する第3の複屈折媒体層と、第4の面内ピッチおよび第4の垂直ピッチで空間的に変化する、第4の複屈折媒体層中の第4の光学異方性分子のダイレクタの配向を有する第4の複屈折媒体層とをさらに含むことができ、第4の面内ピッチは第3の面内ピッチと実質的に同じであり、第4の垂直ピッチは第3の垂直ピッチより小さくてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、第3の面内ピッチは第1の面内ピッチと実質的に同じであっても異なっていてもよく、第3の垂直ピッチは第1の垂直ピッチと実質的に同じであっても異なっていてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1の複屈折媒体層は、現実世界環境からの可視多色光を第1の光として回折させるように構成することができ、第2の複屈折媒体層は、第1の複屈折媒体層から出力された第1の光を第2の光として回折させるように構成することができ、第1の複屈折媒体層と第2の複屈折媒体層を組み合わせたものの回折効率は、第1の複屈折媒体層の回折効率より小さくてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、光学素子は、第1の複屈折媒体層および第2の複屈折媒体層に結合された光ガイドをさらに含むことができ、第2の複屈折媒体層は第1の複屈折媒体層と光ガイドの間に配置されていてよい、または第1の複屈折媒体層は第2の複屈折媒体層と光ガイドの間に配置されていてよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、光ガイドは、ディスプレイ画像を表す画像光と、現実世界環境から来て第1の複屈折媒体層および第2の複屈折媒体層を通過する可視多色光とを、光学素子のアイボックスに向かって伝搬する結合光として結合するように構成することができる。
【0015】
本開示の第2の態様によれば、デバイスが提供され、このデバイスは、第1の面内ピッチおよび第1の垂直ピッチを有しているとともに、光を回折させるように構成されている第1の偏光選択性素子と、第1の偏光選択性素子に光学的に結合された第2の偏光選択性素子であって、第2の面内ピッチおよび第2の垂直ピッチを有しているとともに、第1の偏光選択性素子による光の回折を低減させるように構成されている、第2の偏光選択性素子とを含み、第1の面内ピッチは第2の面内ピッチと実質的に同じであり、第2の垂直ピッチは第1の垂直ピッチよりも小さい。
【0016】
いくつかの実施形態では、第2の垂直ピッチと第1の垂直ピッチの比は0.2~0.8の範囲内にあり得る。
いくつかの実施形態では、第2の垂直ピッチと第1の垂直ピッチの比は約0.5であり得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、第2の偏光選択性素子の厚さと第1の偏光選択性素子の厚さの比は、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1の偏光選択性素子または第2の偏光選択性素子の少なくとも一方は、サブ波長構造、液晶材料、または光屈折ホログラフィック材料のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1の偏光選択性素子または第2の偏光選択性素子の少なくとも一方は、面内方向にも面外方向にも空間的に変化する配向で構成された光軸を有する複屈折材料を含み得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、デバイスは、第3の面内ピッチおよび第3の垂直ピッチを有する第3の偏光選択性素子をさらに含むことができ、第3の面内ピッチは第1の面内ピッチと実質的に同じであり、第3の垂直ピッチは第1の垂直ピッチより小さくてもよい。
【0021】
本開示の1つまたは複数の態様または実施形態への組み込みに適しているとして本明細書に記載されているいずれの特徴も、本開示のありとあらゆる態様および実施形態にわたって一般化可能なものであることを理解されたい。本開示の他の態様は、本開示の明細書、特許請求の範囲、および図面に照らして、当業者には理解することができる。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、例示的および説明的なものにすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0022】
本開示の他の態様は、本開示の明細書、特許請求の範囲、および図面に照らして、当業者には理解することができる。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、例示的および説明的なものにすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0023】
以下の図面は、開示された様々な実施形態による例示を目的として提供されており、本開示の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】本開示の1つまたは複数の実施形態による、偏光体積ホログラム(「PVH」)の概略3次元(「3D」)図。
図1B】本開示の1つまたは複数の実施形態による、PVHに含まれる光学異方性分子の概略的な3D配向パターンの一部分を示す図。
図1C】本開示の1つまたは複数の実施形態による、PVHに含まれる光学異方性分子の概略的な3D配向パターンの一部分を示す図。
図1D】本開示の1つまたは複数の実施形態による、PVHに含まれる光学異方性分子の概略的な3D配向パターンの一部分を示す図。
図1E】本開示の1つまたは複数の実施形態による、図1B図1Dに示されたPVHに含まれる光学異方性分子の概略的な面内配向パターンの一部分を示す図。
図1F】本開示の1つまたは複数の実施形態による、図1B図1Dに示されたPVHに含まれる光学異方性分子の概略的な面内配向パターンの一部分を示す図。
図1G】本開示の1つまたは複数の実施形態による、図1B図1Dに示されたPVHに含まれる光学異方性分子の概略的な面内配向パターンの一部分を示す図。
図2A-2B】図2Aは、本開示の1つまたは複数の実施形態による、透過型PVHの回折次数を示す図、図2Bは、本開示の1つまたは複数の実施形態による、反射型PVHの回折次数を示す図。
図3A】本開示の1つまたは複数の実施形態による、レインボー効果を抑制するための光学デバイスの概略図。
図3B】本開示の1つまたは複数の実施形態による、レインボー効果を抑制するための光学デバイスの概略図。
図3C】本開示の1つまたは複数の実施形態による、レインボー効果を抑制するための光学デバイスの概略図。
図4A】従来の単層PVHの概略図。
図4B図4Aに示された従来の単層PVHについての視野角と回折効率の関係を示すシミュレーション結果の図。
図4C】本開示の1つまたは複数の実施形態による、多層PVHの概略図。
図4D】本開示の1つまたは複数の実施形態による、図4Cに示された多層PVHについての視野角と回折効率の関係を示すシミュレーション結果の図。
図4E図4Aに示された単層PVHおよび図4Bに示された多層PVHについての、視野角と回折効率の関係を示すシミュレーション結果の図。
図5A】本開示の1つまたは複数の実施形態による、レインボー効果を抑制するための光学デバイスの概略図。
図5B】本開示の1つまたは複数の実施形態による、レインボー効果を抑制するための光学デバイスの概略図。
図5C】本開示の1つまたは複数の実施形態による、レインボー効果を抑制するための光学デバイスの概略図。
図6】本開示の1つまたは複数の実施形態による、光ガイドディスプレイシステムの概略図。
図7】本開示の1つまたは複数の実施形態による、物体追跡システムの概略図。
図8A】本開示の1つまたは複数の実施形態による、ニアアイディスプレイ(「NED」)の概略図。
図8B】本開示の1つまたは複数の実施形態による、図8Aに示されたNEDの半分の概略断面図。
図9】本開示の1つまたは複数の実施形態による一方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示と一致する実施形態について添付の図面を参照して説明するが、これらは説明を目的とする例にすぎず、本開示の範囲を限定するものではない。可能な限り、同じ参照番号は、同一または同様の構成要素を指し示すために図面全体を通して使用され、その詳細な説明は省かれることがある。
【0026】
さらに、本開示において、開示された各実施形態、および開示された各実施形態の特徴は組み合わされてもよい。記載された実施形態は、本開示の実施形態の一部ではあるが、全部ではない。開示された実施形態に基づいて、当業者であれば、本開示と一致する他の実施形態を導き出すことができる。たとえば、開示された実施形態に基づいて、修正、適応、置換、追加、または他の変形を加えることができる。開示された実施形態のそのような変形は、本開示の範囲内に依然としてある。したがって、本開示は、開示された実施形態に限定されない。そうではなく、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0027】
本明細書で使用される、用語「結合する」、「結合された」、「結合」などは、光結合、機械結合、電気結合、電磁結合、またはこれらの任意の組み合わせを包含し得る。2つの光学素子間の「光結合」とは、2つの光学素子が光学的直列に配置され、一方の光学素子から出力された光ビームが他方の光学素子で直接または間接的に受光されることが可能である構成のことを指す。光学的直列とは、1つの光学素子から出力された光ビームが他の光学素子のうちの1つまたは複数によって透過、反射、回折、変換、修正、またはそれとは別の処理もしくは操作ができるように、複数の光学素子を光ビーム経路内に光学的に位置付けることを指す。いくつかの実施形態では、複数の光学素子を配置する順序は、複数の光学素子の全体出力に影響を及ぼすことも及ぼさないこともある。結合が、直接結合であることも間接結合(たとえば、中間要素を介する結合)であることもある。
【0028】
「AまたはBの少なくとも一方」という表現は、Aだけ、Bだけ、またはAおよびBなどの、AとBのすべての組み合わせを包含し得る。同様に、表現「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」は、Aだけ、Bだけ、Cだけ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、またはAおよびBおよびCなどの、AとBとCのすべての組み合わせを包含し得る。表現「Aおよび/またはB」は、表現「AまたはBの少なくとも一方」と同様に解釈することができる。たとえば、表現「Aおよび/またはB」は、Aだけ、Bだけ、またはAおよびBなどの、AとBのすべての組み合わせを包含し得る。同様に、表現「A、B、および/またはC」は、表現「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」と同様の意味を有する。たとえば、表現「A、B、および/またはC」は、Aだけ、Bだけ、Cだけ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、またはAおよびBおよびCなどの、AとBとCのすべての組み合わせを包含し得る。
【0029】
第1の要素が、第2の要素に、または少なくとも部分的に、「取り付けられる」、「提供される」、「形成される」、「貼り付けられる」、「装着される」、「固定される」、「接続される」、「接合される」、「記録される」または「配置される」、と記述される場合、第1の要素は、堆積、コーティング、エッチング、結合、接着、ねじ止め、圧入、スナップフィット、クランプなどの任意の適切な機械的または非機械的方法を用いて、第2の要素に、または少なくとも部分的に、「取り付けられる」、「提供される」、「形成される」、「貼り付けられる」、「装着される」、「固定される」、「接続される」、「接合される」、「記録される」または「配置される」ことが可能である。さらに、第1の要素は、第2の要素と直接接触していてもよいし、第1の要素と第2の要素との間に中間要素があってもよい。第1の要素は、第2の要素の左、右、前、後、上、または下などの任意の適切な側に配置することができる。
【0030】
第1の要素が第2の要素の「上に」配置(disposed)または配置(arranged)されているとして図示または説明される場合、用語「上」は、単に、第1の要素と第2の要素との間の例示的な相対的配向を示すために用いられている。その説明は、図に示された基準座標系に基づくことができ、または図に示された現在の視像もしくは例示的な構成に基づくことができる。たとえば、図に示された視像が説明される場合、第1の要素は、第2の要素の「上に」配置されていると説明されることがある。この用語「上」は、第1の要素が垂直重力方向において第2の要素の上にあるという意味を必ずしも含まないことがあると理解されたい。たとえば、第1の要素と第2の要素のアセンブリが180度回転した場合には、第1の要素は第2の要素の「下」にあり得る(すなわち、第2の要素は第1の要素の「上」にあり得る)。したがって、第1の要素が第2の要素の「上に」あることを図が示している場合、その構成は単なる例示であることを理解されたい。第1の要素は、第2の要素に対して任意の適切な配向で配置または配置されてよい(たとえば、第2の要素の上または上方、第2の要素の下または下方、第2の要素に対して左側、第2の要素に対して右側、第2の要素の後、第2の要素の前など)。
【0031】
第1の要素が第2の要素の「上に」配置されていると記述されている場合、第1の要素は、第2の要素の上に直接配置されていることも間接的に配置されていることもある。第1の要素が第2の要素の上に直接配置されているとは、第1の要素と第2の要素の間に追加の要素が配置されていないことを示す。第1の要素が第2の要素の上に間接的に配置されているとは、第1の要素と第2の要素の間に1つまたは複数の追加の要素が配置されていることを示す。
【0032】
本明細書で使用される用語「プロセッサ」は、中央処理装置(「CPU」)、グラフィックス処理装置(「GPU」)、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、プログラマブルロジックデバイス(「PLD」)、またはこれらの任意の組み合わせなどの、任意の適切なプロセッサを包含し得る。上に列挙されていない他のプロセッサもまた使用されることがある。プロセッサは、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、またはこれらの任意の組み合わせとして実施することができる。
【0033】
用語「コントローラ」は、デバイス、回路、光学素子などを制御するための制御信号を生成するように構成された、任意の適切な電気回路、ソフトウェア、またはプロセッサを包含し得る。「コントローラ」は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、またはこれらの任意の組み合わせとして実施することができる。たとえば、コントローラは、プロセッサを含むことがあり、またはプロセッサの一部として含まれることがある。
【0034】
用語「非一時的なコンピュータ可読媒体」は、データ、信号、または情報を記憶、転送、通信、同報通信、または伝送するための任意の適切な媒体を包含し得る。たとえば、非一時的なコンピュータ可読媒体は、メモリ、ハードディスク、磁気ディスク、光ディスク、テープなどを含み得る。メモリは、読み取り専用メモリ(「ROM」)、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、フラッシュメモリなどを含み得る。
【0035】
用語「通信可能に結合されている」または「通信可能に接続されている」は、関連アイテムが、有線または無線の通信接続、チャネルまたはネットワークなどの電気的および/または電磁的な結合もしくは接続を介して、結合または接続されていることを示す。
【0036】
本開示で言及された波長範囲、スペクトル、または帯域は、例示を目的としている。開示された光学デバイス、システム、要素、アセンブリ、および方法は可視波長範囲、ならびに、紫外線(「UV」)波長範囲、赤外線(「IR」)波長範囲、またはこれらの組み合わせなどの、他の波長範囲に適用することができる。
【0037】
用語「膜」および「層」は、支持基板上または基板間に配置できる、剛性もしくは可撓性、自己支持型もしくは自立型の膜、コーティングまたは層を含み得る。表現「面内方向」、「面内配向」、「面内回転」、「面内アライメントパターン」、および「面内ピッチ」はそれぞれ、膜または層の平面(たとえば、膜もしくは層の表面平面、または膜もしくは層の表面平面と平行な平面)内の、方向、配向、回転、アライメントパターンおよびピッチを指す。用語「面外方向」は、膜または層の平面に対して非平行である方向(たとえば、膜または層の表面平面に対して垂直、たとえば、その表面平面に平行な平面に対して垂直)を示す。たとえば、「面内」方向が表面平面内のある方向を指す場合、「面外」方向は、表面平面に対して垂直の厚さ方向、または表面平面と平行ではない方向を指し得る。
【0038】
「直交偏光」に使用される用語「直交」、または「直交して偏光された」に使用される用語「直交して」は、2つの偏光を表す2つのベクトルの内積が実質的にゼロであることを意味する。たとえば、直交偏光を持つ2つの光、すなわち直交して偏光された2つの光は、直交する2つの方向(たとえば、デカルト座標系におけるx軸方向およびy軸方向)の偏光を持つ2つの直線偏光された光、または正反対の回り方向(たとえば、左円偏光光および右円偏光光)を持つ2つの円偏光された光であり得る。
【0039】
ニアアイディスプレイ(「NED」)は、ビデオ再生、ゲーム、およびスポーツなどの様々な用途で広範に実施されてきた。NEDは、仮想現実(「VR」)、拡張現実(「AR」)、または複合現実(「MR」)を実現するのに使用されてきた。ARおよび/またはMR用途のNEDは、現実世界画像またはシースル画像と重なる仮想画像を表示することができる。回折構造を持つ瞳孔拡大型光ガイドディスプレイシステムまたはアセンブリは、NEDのための有望な設計であり、サングラス/眼鏡フォームファクタ、適度に大きい視野(「FOV(field of view)」)、高い透過率、および大きいアイボックスを提供し得る。加えて、VR、ARおよび/またはMR用途のNEDは、ユーザの眼および/またはユーザの眼を取り囲む領域を監視する視線追跡機能を提供することができる。眼および/または取り囲む領域を監視することにより、NEDは、ユーザの注視方向を決定することができ、ディスプレイの品質、性能、およびユーザ体験を改善するために、また輻輳調節矛盾に対処するために使用することができる。さらに、眼および/または取り囲む領域を監視することにより、NEDは、ユーザの心理状態および/または心理状態の変化、ならびにユーザの身体的特徴を推定することができる。
【0040】
光ガイドディスプレイ、視線追跡結合器などのARまたはMR用途のNEDに含まれる回折構造が、現実世界環境から来る可視多色光を回折させて、特にNEDを装着したユーザが明るい光源を特定の角度から見るときに、シースル視像に多色グレアを生じさせることがある。このようなシースルアーチファクトは「レインボー効果」と呼ばれ、シースル視像の画質を低下させることがある。レインボー効果は、回折構造によって生じる光分散に起因し得る。たとえば、格子は、入射多色光(たとえば、現実世界環境からの白色光)を構成波長成分に空間的に分離することがある。すなわち、多色光は、格子によって分散されることがある。入射光スペクトルの各波長は、異なる方向に回折されて、白色光照明の下で虹の色を生じることがある。回折次数が低いほど、多色光の構成波長成分の空間分離の点で分散が弱く(または認知しにくく)、それゆえにレインボー効果が弱くなり得るのに対して、回折次数が高いほど、分散が強く(または認知しやすく)、それゆえにレインボー効果が強くなり得る。加えて、回折次数が低いほど光強度が高くなり得るのに対して、回折次数が高いほど光強度が低くなり得る。レインボー効果を低減させるのに、従来の減光要素が使用されて、異なる入射角でディスプレイウィンドウに入射する現実世界環境からの光を減光し、それによって、全体的な分散の光強度を減光していた。すなわち、すべての回折次数の光強度が低減され得る。しかし、望ましいシースル画像の明るさもまた、それに応じて低減され得る。
【0041】
本開示は、所定の回折次数、たとえば1次の回折次数(+1次の回折次数および/または-1次の回折次数)よりも高い回折次数などの、可視光(たとえば、現実世界環境からの可視多色光)の望ましくない回折次数を抑制することによってレインボー効果を低減させるように構成されたデバイスを提供する。したがって、望ましくない回折次数を眼で知覚できなくすること、または知覚できにくくすることができる。このデバイスは、NEDで実施され、光ガイドディスプレイ、視線追跡結合器などとして機能し、またはそれに含まれて、シースル視像におけるレインボー効果を低減させ、シースル視像の画質を改善することができる。デバイスは、第1の複屈折媒体層と、第1の複屈折媒体層に光学的に結合された第2の複屈折媒体層とを含み得る。第1の複屈折媒体層中の第1の光学異方性分子のダイレクタの配向は、第1の面内ピッチおよび第1の垂直ピッチで空間的に変化し得る。第2の複屈折媒体層中の第2の光学異方性分子のダイレクタの配向は、第2の面内ピッチおよび第2の垂直ピッチで空間的に変化し得る。第1の面内ピッチは、第2の面内ピッチと実質的に同じになるように構成することができる。用語「実質的に同じ」は、特定の実施態様に基づいて定義することができる。たとえば、2つの数値の差が[-20%、+20%]、[-10%、+10%]、[-5%、+5%]などの所定の範囲内にある場合、これら2つの数値は「実質的に同じ」とみなすことができる。第2の垂直ピッチは、第1の垂直ピッチよりも小さくなるように構成されてもよい。たとえば、第2の垂直ピッチは、第1の垂直ピッチの約20%~80%とすることができる。すなわち、第2の垂直ピッチと第1の垂直ピッチの比は、0.2~0.8の範囲内とすることができる。いくつかの実施形態では、この比は、約0.2~0.75、0.2~0.7、0.2~0.65、0.2~0.6、0.2~0.55、0.2~0.5、0.2~0.45、0.2~0.4、0.2~0.35、0.2~0.3、または0.2~0.25の範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、比は、約0.25~0.3、0.25~0.35、0.25~0.4、0.25~0.45、0.25~0.5、0.25~0.55、0.25~0.6、0.25~0.65、0.25~0.7、または0.25~0.8の範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、比は、約0.3~0.35、0.3~0.4、0.3~0.45、0.3~0.5、0.3~0.55、0.3~0.6、0.3~0.65、0.3~0.7、0.3~0.75、または0.3~0.8の範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、比は、約0.35~0.4、0.35~0.45、0.35~0.5、0.35~0.55、0.35~0.6、0.35~0.65、0.35~0.7、0.35~0.75、または0.35~0.8の範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、比は、約0.4~0.45、0.4~0.5、0.4~0.55、0.4~0.6、0.4~0.65、0.4~0.7、0.4~0.75、または0.4~0.8の範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、比は、約0.45~0.5、0.45~0.55、0.45~0.6、0.45~0.65、0.45~0.7、0.45~0.75、または0.45~0.8の範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、比は、約0.5~0.55、0.5~0.6、0.5~0.65、0.5~0.7、0.5~0.75、または0.5~0.8の範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、比は、約0.55~0.6、0.55~0.65、0.55~0.7、0.55~0.75、または0.55~0.8の範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、比は、約0.6~0.65、0.6~0.7、0.6~0.75、または0.6~0.8の範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、比は、約0.65~0.7、0.65~0.75、または0.65~0.8の範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、比は、約0.7~0.75、または0.7~0.8の範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、比は、約0.75~0.8の範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、比は、約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、または0.8であってもよい。いくつかの実施形態では、比は、約0.25、0.35、0.45、0.55、0.65、または0.75であってもよい。たとえば、1つの実施形態では、比は約0.5とすることができる。すなわち、第2の垂直ピッチは、第1の垂直ピッチの約半分とすることができる。いくつかの実施形態では、第2の垂直ピッチは、第1の垂直ピッチの半分よりもわずかに小さくなるか、またはわずかに大きくなるように構成することができる。いくつかの実施形態では、第2の複屈折媒体層の厚さが、第1の複屈折媒体層の厚さよりかなり薄くてもよい。第2の複屈折媒体層の厚さと第1の複屈折媒体層の厚さの比は、所定の百分率、たとえば5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。
【0042】
第2の複屈折媒体層は、第1の複屈折媒体層で生じる回折を低減させるように構成することができる。1つの複屈折媒体層(たとえば、第1の複屈折媒体層もしくは第2の複屈折媒体層)、または複屈折媒体層のスタック(たとえば、第1の複屈折媒体層および第2の複屈折媒体層のスタック)の透過回折は、多層干渉の作用と同様の作用であってもよい。現実世界環境からの可視多色光(たとえば、白色光)に対して、第1の複屈折媒体層および第2の複屈折媒体層の面内ピッチと垂直ピッチを設計することによって、第1の複屈折媒体層と第2の複屈折媒体層を組み合わせたものによる回折は、層干渉の結果として、第1の複屈折媒体層だけによる回折と比較して低減され得る。たとえば、現実世界環境からの可視多色光(たとえば、白色光)では、第1の複屈折媒体層と第2の複屈折媒体層を組み合わせたものの回折効率は、第1の複屈折媒体層だけの回折効率と比較して低減され得る。いくつかの実施形態では、第1の複屈折媒体層は、第1の光としての現実世界環境からの可視多色光(たとえば、白色光)を少なくとも部分的に回折させるように構成することができる。第1の光は、現実世界環境からの可視多色光(たとえば、白色光)の前方回折部分を少なくとも含み得る。いくつかの実施形態では、第1の光はまた、現実世界環境からの可視多色光(たとえば、白色光)の直接透過部分を含むこともある。第1の光は、第1の数の知覚可能な回折次数を含み得る。第2の複屈折媒体層は、第1の複屈折媒体層から第1の光を受光して、この第1の光が第2の光として少なくとも部分的に回折するように構成することができる。第2の光は、第1の光の前方回折部分を少なくとも含み得る。いくつかの実施形態では、第2の光はまた、第1の光の直接透過部分も含み得る。第2の光は、第2の数の知覚可能な回折次数を含み得る。いくつかの実施形態では、第2の複屈折媒体層は、所定の回折次数、たとえば1次の回折次数(+1次の回折次数および/または-1次の回折次数)よりも高い回折次数などの、第1の複屈折媒体層によって生じる望ましくない回折次数を抑制するように構成することができる。たとえば、知覚可能な回折次数の第2の数は、知覚可能な回折次数の第1の数よりも少なくすることができる。すなわち、第1の複屈折媒体層によって生じるレインボー効果は、第2の複屈折媒体層によって低減され得る。言い換えると、第1の複屈折媒体層と第2の複屈折媒体層を組み合わせたものによって生じるレインボー効果は、第1の複屈折媒体層だけによって生じるレインボー効果よりも弱く(すなわち認知しにくく)なり得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、第1の複屈折膜または第2の複屈折膜の少なくとも一方(たとえば、それぞれ)は、面内方向にも面外方向にも空間的に変化する配向で構成された光軸を有する複屈折媒体を含み得る。用語「光軸」は、結晶中の方向を指すことがある。光軸方向に伝搬する光は、複屈折(または二重屈折)しないことがある。光軸は、単一の線ではなく1つの方向であることがあり、その方向に平行な光は複屈折しないことがある。いくつかの実施形態では、複屈折媒体は、重合液晶(「LC」)、ポリマー安定化LC、またはフォトポリマーのうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態では、複屈折媒体は、ネマチックLC、ツイストベンドLC、キラルネマチックLC、またはスメクチックLCのうちの少なくとも1つを含み得る。複屈折膜に含まれる複屈折媒体の光軸はまた、複屈折膜の光軸と呼ばれることもある。いくつかの実施形態では、複屈折媒体の光軸は、偏光選択性ホログラフィック応答を得るために、面内方向と面外方向の両方で空間的に変化する配向で構成され得る。いくつかの実施形態では、そのような空間的に変化する配向で構成された光軸を含む複屈折膜または複屈折媒体は、偏光体積ホログラム(「PVH」)またはPVH素子を形成することができる。レインボー効果を低減させるように構成されている開示されたデバイスはまた、多層PVHまたは多層PVH素子と呼ばれることもある。
【0044】
いくつかの実施形態では、デバイスは、第2の複屈折媒体層に光学的に結合された第3の複屈折媒体層をさらに含み得る。第3の複屈折媒体層は、第2の複屈折媒体層から出力された第2の光を受光して、この第2の光を第3の光として少なくとも部分的に回折させることができる。第3の光は、第2の光の前方回折部分を少なくとも含み得る。いくつかの実施形態では、第3の光はまた、第2の光の直接透過部分も含むこともある。第3の複屈折媒体層は、第1および第2の複屈折媒体層による回折を低減させるように構成することができる。たとえば、現実世界環境からの可視多色光(たとえば、白色光)では、第1から第3の複屈折媒体層を組み合わせたものの回折効率は、第1と第2の複屈折媒体層だけを組み合わせたものの回折効率と比較して低減され得る。いくつかの実施形態では、第3の複屈折媒体層は、第2の複屈折媒体層から出力された第2の光の望ましくない回折次数を抑制するように構成することができる。
【0045】
第3の複屈折媒体層中の第3の光学異方性分子のダイレクタの配向は、第3の面内ピッチおよび第3の垂直ピッチで空間的に変化し得る。いくつかの実施形態では、第1の面内ピッチは、第3の面内ピッチと実質的に同じになるように構成することができる。いくつかの実施形態では、第3の垂直ピッチは、第1の垂直ピッチよりも小さくなるように構成されてもよい。第3の垂直ピッチと第1の垂直ピッチの比は、第2の垂直ピッチと第1の垂直ピッチの比に関連して上記で説明された範囲または数値(たとえば、0.2~0.8)と同様に、適切な範囲内または適切な数値にすることができる。1つの実施形態では、第3の垂直ピッチは、第1の垂直ピッチの約半分であってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、第3の垂直ピッチは、第2の垂直ピッチと実質的に同じにすることができる。いくつかの実施形態では、第3の垂直ピッチは、第2の垂直ピッチより小さくてもよい。第3の垂直ピッチと第2の垂直ピッチの比は、第2の垂直ピッチと第1の垂直ピッチの比に関連して上記で説明された範囲または数値と同様に、適切な範囲内または適切な数値にすることができる。たとえば、1つの実施形態では、第3の垂直ピッチは、第2の垂直ピッチの約半分であってもよい。いくつかの実施形態では、第3の面内ピッチは、第2の面内ピッチおよび第1の面内ピッチと実質的に同じであってもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、第3の複屈折媒体層の厚さは、第1の複屈折媒体層の厚さよりもかなり薄くなるように構成することができる。第3の複屈折媒体層の厚さと第1の複屈折媒体層の厚さの比は、所定の百分率、たとえば5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。いくつかの実施形態では、第3の複屈折媒体層の厚さは、第2の複屈折媒体層の厚さと実質的に同じであってもよい。いくつかの実施形態では、第3の複屈折媒体層の厚さは、第2の複屈折媒体層の厚さよりもかなり薄くすることができる。たとえば、第3の複屈折媒体層の厚さは、第2の複屈折媒体層の厚さの約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%であってもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、デバイスは、第3の複屈折媒体層に光学的に結合された第4の複屈折媒体層をさらに含み得る。第4の複屈折媒体層は、第3の複屈折媒体層から出力された第3の光を受光して、この第3の光が第4の光として少なくとも部分的に回折することができる。第4の光は、第3の光の前方回折部分を少なくとも含み得る。いくつかの実施形態では、第4の光はまた、第3の光の直接透過部分を含むこともある。第4の複屈折媒体層は、第1から第3の複屈折媒体層による回折を低減させるように構成することができる。たとえば、現実世界環境からの可視多色光(たとえば、白色光)では、第1から第4の複屈折媒体層を組み合わせたものの回折効率は、第1から第3の複屈折媒体層だけを組み合わせたものの回折効率と比較して低減され得る。いくつかの実施形態では、第4の複屈折媒体層は、第3の複屈折媒体層から出力された光の望ましくない回折次数を抑制するように構成することができる。第4の複屈折媒体層中の第4の光学異方性分子のダイレクタの配向は、第4の面内ピッチおよび第4の垂直ピッチで空間的に変化し得る。いくつかの実施形態では、第3の面内ピッチは、第4の面内ピッチと実質的に同じになるように構成することができる。いくつかの実施形態では、第4の面内ピッチは、第1の面内ピッチと実質的に同じであってもよい。いくつかの実施形態では、第4の面内ピッチと第3の面内ピッチと第2の面内ピッチと第1の面内ピッチとは、実質的に同じであってよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、第4の垂直ピッチは、第3の垂直ピッチよりも小さくなるように構成することができる。第4の垂直ピッチと第3の垂直ピッチの比は、第2の垂直ピッチと第1の垂直ピッチの比に関連して上記で説明された範囲または数値(たとえば、0.2~0.8)と同様に、適切な範囲内または適切な数値にすることができる。いくつかの実施形態では、第4の垂直ピッチと第1の垂直ピッチの比は、第2の垂直ピッチと第1の垂直ピッチの比に関連して上記で説明された範囲または数値(たとえば、0.2~0.8)と同様に、適切な範囲内または適切な数値にすることができる。いくつかの実施形態では、第4の垂直ピッチは、第3の垂直ピッチの約半分であってもよい。いくつかの実施形態では、第4の垂直ピッチは、第1の垂直ピッチの約半分であってもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、第4の複屈折媒体層の厚さは、第3の複屈折媒体層の厚さよりもかなり薄くなるように構成することができる。第4の複屈折媒体層の厚さと第3の複屈折媒体層の厚さの比は、所定の百分率、たとえば5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。いくつかの実施形態では、第4の面内ピッチは、第3の面内ピッチと実質的に同じになるように、または異なるように構成することができ、第4の垂直ピッチは、第3の垂直ピッチまたは第1の垂直ピッチと実質的に同じになるように、または異なるように構成することができる。第3の複屈折媒体層および第4の複屈折媒体層のそれぞれは、PVHまたはPVH素子であってもよい。いくつかの実施形態では、第4の垂直ピッチは第2の垂直ピッチと同じであってもよく、第1の垂直ピッチは第3の垂直ピッチと同じであってもよい。いくつかの実施形態では、第2の垂直ピッチは第1の垂直ピッチの約20%~80%とすることができ、第3の垂直ピッチは第2の垂直ピッチの約20%~80%とすることができ、第4の垂直ピッチは第3の垂直ピッチの約20%~80%とすることができる。いくつかの実施形態では、第2の垂直ピッチは第1の垂直ピッチの約50%であってもよく、第3の垂直ピッチは第2の垂直ピッチの約50%であってもよく、第4の垂直ピッチは第3の垂直ピッチの約50%であってもよい。いくつかの実施形態では、第2と第3と第4の垂直ピッチは、実質的に同じにすることができる。いくつかの実施形態では、この同じ垂直ピッチは、第1の垂直ピッチの約50%であってもよい。
【0051】
以下の説明では、例示を目的として、PVHを含む偏光選択性格子が、たとえばシースル画像におけるレインボー効果を低減させる例として用いられることがある。PVHは、偏光選択性素子の一種である。いくつかの実施形態では、他の適切な偏光選択性素子もまた、PVHを含む偏光選択性格子に関して本明細書に記載の同一または同様の設計原理に従って、たとえばシースル画像におけるレインボー効果を低減させるように使用および構成することができる。たとえば、デバイスは、第1の偏光選択性素子と、第1の偏光選択性素子に光学的に結合された第2の偏光選択性素子とを含み得る。第1の偏光選択性素子または第2の偏光選択性素子の少なくとも一方(たとえば、それぞれ)は、サブ波長構造、液晶、または光屈折ホログラフィック材料のうちの少なくとも1つを含む、偏光選択性格子またはホログラフィック素子を含み得る。たとえば、第1の偏光選択性素子のサブ波長構造または光学異方性分子は、第1の面内ピッチおよび第1の垂直ピッチで空間的に変化する配向で構成され得る。第2の偏光選択性素子のサブ波長構造または光学異方性分子は、第2の面内ピッチおよび第2の垂直ピッチで空間的に変化する配向で構成され得る。第1の面内ピッチは、第2の面内ピッチと実質的に同じであってもよい。第2の垂直ピッチは、第1の垂直ピッチより小さくてもよい。いくつかの実施形態では、第2の垂直ピッチと第1の垂直ピッチの比は、上述のように、適切な範囲内または適切な数値にすることができる。たとえば、1つの実施形態では、第2の垂直ピッチは、第1の複屈折膜の第1の垂直ピッチの約半分であってもよい。いくつかの実施形態では、第2の偏光選択性素子の厚さは、第1の偏光選択性素子の厚さよりかなり薄くてもよい。第2の偏光選択性素子の厚さと第1の偏光選択性素子の厚さの比は、所定の百分率、たとえば5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。
【0052】
図1Aは、本開示の実施形態による、PVHなどの偏光選択性光学素子100の概略3次元(「3D」)図を示す。説明の目的のために、PVHは、複屈折光学素子の例として使用されており、複屈折光学素子100はPVH100と呼ばれることがある。図1Aに示されるように、入射光ビーム102は、-z軸に沿ってPVH100に入射し得る。PVH100は、層(または膜、プレート)の形の複屈折媒体を含み得る。この層はまた、複屈折膜とも呼ばれる。複屈折膜は、PVH100の光学的機能を実現するために、3次元(「3D」)配向パターンで構成された光学異方性分子を含み得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、PVH100は、局所的に制御できる固有の配向秩序を有する光学異方性分子を含む複屈折材料をベースとして、作製することができる。複屈折材料は、キラリティを示し得る。いくつかの実施形態において、複屈折材料のキラリティは、ホスト複屈折材料にドープされたキラルドーパントによって導入されることがあり、たとえば、アキラルネマチック液晶(「LC」)にドープされたキラルドーパントによって導入されるか、またはアキラルRMにドープされたキラル反応性メソゲン(「RM」)によって導入されることがある。いくつかの実施形態では、複屈折材料のキラリティは、固有分子キラリティなどの複屈折材料の特性であり得る。たとえば、複屈折材料はキラル液晶分子を含み得るか、または複屈折材料は、1つまたは複数のキラル官能基を有する分子を含み得る。いくつかの実施形態では、キラリティを有する複屈折材料は、ツイストベンドネマチックLC(またはツイストベンドネマチック相のLC)を含むことができ、その中で液晶(「LC」)ダイレクタが、正反対の回り方向を有する二重縮退領域とともに円錐らせんを形成する、周期的なねじれ変形および曲げ変形を呈示し得る。ツイストベンドネマチックLCのLCダイレクタは、らせん軸に対して傾斜させることができる。したがって、ツイストベンドネマチック相は、LCダイレクタがらせん軸に対して直交している従来のネマチック相の一般化された状態と考えることができる。いくつかの実施形態では、PVH100は、非晶質ポリマー、液晶(「LC」)ポリマーなどの感光性ポリマーをベースとして作製することができ、これらの感光性ポリマーは、偏光照射されると、誘起(たとえば、光誘起)光学異方性、および誘起(たとえば、光誘起)局所光軸配向を生じ得る。偏光照射されたとき、感光性ポリマー中の光化学反応の効率は、光誘起配向をもたらす励起光ビームの偏光に依存し得る。正反対の回り方向を有する2つのコヒーレント円偏光光ビームによって形成された偏光干渉を受けると、3D偏光フィールドが感光性ポリマーの体積に記録され得る。本明細書に記載のPVHまたはPVH素子はまた、ホログラフィック干渉、レーザ直接書刻、および他の様々な形のリソグラフィなどの、他の様々な方法によって作製することもできる。したがって、本明細書に記載の「ホログラム」は、ホログラフィック干渉、または「ホログラフィ」による作成に限定されない。
【0054】
図1B図1Dは、本開示の様々な実施形態による、PVH100の複屈折膜に含まれる光学異方性分子の3D配向パターンの一部分を概略的に示す。図1E図1Gは、本開示の様々な実施形態による、図1B図1Dに示された複屈折膜の第1の面または第2の面の少なくとも一方に近接して置かれた(表面のものを含む)光学異方性分子の周期的な面内配向パターンの一部分を概略的に示している。説明の目的のために、LC分子は、複屈折膜の光学異方性分子の例として使用されている。図1B図1Gの各LC分子は、長手方向(または長さ方向)および横方向(または幅方向)を有するように描かれている。LC分子の長手方向は、LC分子のダイレクタまたはLCダイレクタと呼ばれる。
【0055】
図1Bは、PVH100の複屈折膜115に含まれるLC分子112の3D配向パターンの一部を概略的に示す。図1Bに示されるように、複屈折膜115は、第1の面115-1と、第1の面115-1と向かい合う第2の面115-2とを有し得る。複屈折膜115は、例示を目的として平坦に示されているが、複屈折膜115は、非平坦な形状(たとえば、湾曲した形状)を有していてもよい。複屈折膜115の体積内に、LC分子112は、複数のらせん軸118およびらせんピッチPを有する複数のらせん構造117の形で配置され得る。らせん軸118に沿って同じらせん構造117に含まれるLC分子112のダイレクタは、らせん軸118のまわりで空間的に所定の回転方向(たとえば、時計回り方向または反時計回り方向)に連続して回転することができる。それに応じて、らせん構造117は、1つの回り方向、たとえば右回り方向または左回り方向を示し得る。らせんピッチPは、らせん軸118に沿った、LCダイレクタ(またはLC分子の方位角)がその距離にわたって360°回転する距離として定義される。LC分子112の方位角は、LCダイレクタと、複屈折膜115の表面と平行な平面内の方向(たとえば、+x軸方向)との間の角度として定義される。
【0056】
図1Bに示される実施形態では、らせん構造117の各らせん軸118は、互いに平行であり得る。らせん軸118は、複屈折膜115の第1の面115-1および/または第2の面115-2に対して実質的に垂直である方向を有し得る。言い換えると、らせん構造117のらせん軸118は、複屈折膜115の厚さ方向(たとえば、z軸方向)に沿った方向を有し得る。いくつかの実施形態では、LC分子112は、かなり小さいプレチルト角(ゼロ度のプレチルト角を含む)を有するようにアライメントすることができ、LC分子112のLCダイレクタは、らせん軸118と実質的に直交しているとみなすことができる。複屈折膜115(または複屈折膜115を含むPVH100)は垂直ピッチPを有し得る。このPは、複屈折膜115の厚さ方向に沿った、LCダイレクタがその距離にわたって180°回転する距離として定義される。図1Bに示された垂直ピッチPは、らせんピッチPの半分であってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、複屈折膜115の表面(たとえば、第1の面115-1または第2の面115-2の少なくとも一方)に、またはそれに近接して置かれたLC分子112は、表面に沿って(または表面と平行な面内で)所定の方向(たとえば、x軸方向)に連続回転するLCダイレクタで構成され得る。LCダイレクタの連続的回転により、均一な(たとえば、同一の)面内ピッチPinの周期的回転パターンを形成することができる。所定の方向は、複屈折膜115の表面(または表面と平行な面内)に沿った任意の適切な方向とすることができる。例示の目的で、図1Bは、所定の方向がx軸方向であることを示している。この所定の方向は面内方向と呼ばれることがあり、面内方向に沿ったピッチPinは、面内ピッチまたは水平ピッチと呼ばれることがある。均一な(または同一の)面内ピッチPinを有するパターンは、周期的LCダイレクタ面内配向パターンと呼ばれることがある。
【0058】
図1Eは、本開示の実施形態による、複屈折膜115の表面(たとえば、第1の面115-1または第2の面115-2の少なくとも一方)に、またはそれに近接して置かれたLC分子112のダイレクタ(図1Eに矢印188で示す)の周期的面内配向パターンの一部分を概略的に示す。面内ピッチPinは、面内方向(たとえば、x軸方向)に沿った、LCダイレクタがその距離にわたって180°回転する距離として定義される。言い換えると、複屈折膜115の表面にかなり近い領域(表面のところを含む)において、複屈折膜115の局所光軸配向は、均一な(または同一の)面内ピッチPinを有するパターンで面内方向(たとえばx軸方向)に周期的に変化し得る。加えて、複屈折膜115の表面(たとえば、第1の面115-1または第2の面115-2の少なくとも一方)で、LC分子112のダイレクタは、所定の回転方向に、たとえば時計回り方向または反時計回り方向に、回転することができる。それに応じて、複屈折膜115の表面のLC分子112のダイレクタが回転すると、1つの回り方向、たとえば右回り方向または左回り方向が示され得る。いくつかの実施形態では、複屈折膜115の周期的なLCダイレクタ面内配向パターンまたは周期的な局所光軸配向パターンは、ホログラフィ技法などの様々な技法を使用して記録媒体またはアライメント表面をパターニングすることによって得ることができる。図1Eに示される実施形態では、複屈折膜115の表面(たとえば、第1の面115-1または第2の面115-2の少なくとも一方)で、LC分子112のダイレクタは時計回り方向に回転することができる。それに応じて、複屈折膜115の表面のLC分子112のダイレクタの回転は、左回り方向を示し得る。
【0059】
図1Fは、本開示の別の実施形態による、複屈折膜115の表面(たとえば、第1の面115-1または第2の面115-2の少なくとも一方)に、またはそれに近接して置かれたLC分子112のダイレクタ(図1Fに矢印188で示す)の周期的面内配向パターンの一部分を概略的に示す。図1Fに示される実施形態では、複屈折膜115の表面(たとえば、第1の面115-1または第2の面115-2の少なくとも一方)で、LC分子112のダイレクタは反時計回り方向に回転することができる。それに応じて、複屈折膜115の表面のLC分子112のダイレクタの回転は、右回り方向を示し得る。図1Eに示される複屈折膜115の表面に、またはそれに近接して置かれたLC分子112のダイレクタと、図1Fに示される複屈折膜115の表面に、またはそれに近接して置かれたLC分子112のダイレクタとは、鏡対称の配向パターンであり得る。
【0060】
図1Gは、本開示の別の実施形態による、複屈折膜115の表面(たとえば、第1の面115-1または第2の面115-2の少なくとも一方)に、またはそれに近接して置かれたLC分子112のダイレクタ(図1Gに矢印188で示す)の周期的な面内配向パターンの一部分を概略的に示す。図1Gには、いくつかのダイレクタだけが矢印188で示されていることに留意されたい。図を簡単にするために、矢印は、ダイレクタすべてには示されていない。図1Gに示される実施形態では、複屈折膜115の表面(たとえば、第1の面115-1または第2の面115-2の少なくとも一方)で、LC分子112のダイレクタが時計回り方向に回転できる領域(領域Dと呼ばれる)と、LC分子112のダイレクタが反時計回り方向に回転できる領域(領域Dと呼ばれる)とが、x軸方向とy軸方向の両方に交互に配置され得る。領域Dおよび領域Dは、点線の四角形で概略的に囲まれている。いくつかの実施形態では、領域Dと領域Dは、実質的に同じサイズを有し得る。各領域の幅は、面内ピッチPinの値と実質的に等しくすることができる。図示されていないが、いくつかの実施形態では、領域Dと領域Dは、複屈折膜115の表面(たとえば、第1の面115-1または第2の面115-2の少なくとも一方)に沿って、少なくとも1つの方向に交互に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、各領域の幅は、面内ピッチPinの値の整数倍とすることができる。いくつかの実施形態では、領域DLと領域DRは、異なるサイズを有してもよい。
【0061】
図1Bに戻って参照すると、複屈折媒体層115の体積内に、LC分子112は、複数のらせん軸118と、この螺旋軸に沿ったらせんピッチPとを有する複数のらせん構造117の形で配置され得る。単一のらせん構造117に沿って配置されたLC分子112の方位角は、らせん軸118のまわりに所定の回転方向に、たとえば時計回り方向または反時計回り方向に、連続して変化し得る。言い換えると、単一のらせん構造117に沿って配置されたLC分子112のLCダイレクタは、らせん軸118のまわりを所定の回転方向に連続回転して、方位角が連続して変化し得る。それに応じて、らせん構造117は、1つの回り方向、たとえば右回り方向または左回り方向を示し得る。らせんピッチPは、らせん軸118に沿った、LCダイレクタがその距離にわたってらせん軸118のまわりを360°回転するか、またはLC分子の方位角が360°変化する距離として定義され得る。
【0062】
図1Bに示す実施形態では、らせん軸118は、複屈折媒体層115の第1の面115-1および/または第2の面115-2に対して実質的に垂直であり得る。言い換えると、らせん構造117のらせん軸118は、複屈折媒体層115の厚さ方向(たとえば、z軸方向)にあり得る。すなわち、LC分子112は、かなり小さい傾斜角(ゼロ度の傾斜角を含む)を有していることがあり、LC分子112のLCダイレクタは、らせん軸118と実質的に直交していることがある。複屈折媒体層115(または複屈折媒体層115を含むPVH100)は垂直ピッチPを有し得る。このPは、複屈折媒体層115の厚さ方向に沿った、LC分子112のLCダイレクタがその距離にわたってらせん軸118のまわりを180°回転する(またはLCダイレクタの方位角が180°変化する)距離として定義され得る。
【0063】
図1Bに示されるように、第1の同一配向(たとえば、同一の傾斜角および方位角)を有する複数のらせん構造117のLC分子112は、複屈折媒体層115の体積内に周期的に分布する、第1の系列の傾斜した平行屈折率面114を形成することができる。ラベル標示されていないが、第1の同一配向とは異なる第2の同一配向(たとえば、同一の傾斜角および方位角)を有するLC分子112は、複屈折媒体層115の体積内に周期的に分布する、第2の系列の傾斜した平行屈折率面を形成することができる。別の系列の傾斜した平行屈折率面が、異なる配向を有するLC分子112によって形成され得る。同じ系列の、平行で周期的に分布する傾斜屈折率面114では、LC分子112は同一配向を有することができ、屈折率は同じであり得る。別の系列の傾斜屈折率面は、異なる屈折率に対応し得る。傾斜屈折率面の数(または複屈折膜の厚さ)が十分な値まで増加すると、ブラッグ回折が体積格子の原理に従って確立され得る。したがって、傾斜した周期的に分布する屈折率面114はまた、ブラッグ面114と呼ばれることもある。このようにして、複屈折媒体層115内には異なる系列のブラッグ面が存在する。
【0064】
同じ系列の隣り合うブラッグ面114間の距離(または周期)は、ブラッグ周期Pと呼ばれることがある。複屈折媒体層115の体積(またはPVH100の体積)内に形成された別々の系列のブラッグ面は、複屈折媒体層115の体積内に周期的に分布する、変化する屈折率プロファイルを生じさせ得る。複屈折媒体層115(またはPVH100)は、ブラッグ条件を満たす入力光をブラッグ回折で回折させることができる。複屈折媒体層115を含むPVH100の傾斜角αはα=90°-βと定義することができ、ここでβ=arctan(P/P)である。すなわち、傾斜角は、垂直ピッチおよび水平面内ピッチの関数であり得る。具体的には、傾斜角は、垂直ピッチと水平面内ピッチの比の関数であり得る。いくつかの実施形態では、傾斜角が0°<α<45°である、図1Bに示された複屈折媒体層115を含むPVH100は、透過型PVHとして機能することができる。
【0065】
図1Cは、本開示の別の実施形態による、複屈折媒体層135に含まれるLC分子132の3D配向パターンの一部分を示す。図1Bおよび図1E図1Gに示された複屈折媒体層115の表面(第1の面115-1または第2の面115-2の少なくとも一方)に、またはそれに近接して置かれたLC分子112と同様に、複屈折媒体層135の表面(第1の面135-1または第2の面135-2の少なくとも一方)に、またはそれに近接して置かれたLC分子132は、その表面に、またはその表面と平行な面に、所定の面内方向(たとえば、x軸方向)に沿って所定の回転方向(たとえば、時計回りまたは反時計回り)に連続的および周期的に回転するLCダイレクタで構成され得る。すなわち、LCダイレクタの配向は、表面に沿って、またはその表面と平行な面に沿って、所定の面内方向(たとえば、x軸方向)に連続的および周期的に変化し得る。連続的回転は、面内ピッチPの面内回転パターンを有し得る。いくつかの実施形態では、面内ピッチPは、均一(または同一)であり得る。LC分子は、図1Bに示されたブラッグ面114と同様の複数のブラッグ面134を形成し得る。図1E図1Gは、複屈折媒体層135の表面(たとえば、135-1または135-2)に、またはそれに近接して置かれたLC分子132のLCダイレクタの周期的面内回転パターンを示す。
【0066】
図1Cに示された実施形態では、らせん構造137のらせん軸138は、複屈折媒体層135の第1の面135-1および/または第2の面135-2に対して(または複屈折媒体層135の厚さ方向に対して)傾けることができる。たとえば、らせん構造137のらせん軸138は、複屈折媒体層135の第1の面135-1および/または第2の面135-2に対して鋭角または鈍角を有し得る。いくつかの実施形態では、LC分子132のLCダイレクタは、らせん軸138に対して実質的に直交し得る(すなわち、傾斜角は実質的にゼロ度であり得る)。いくつかの実施形態では、LC分子132のLCダイレクタは、らせん軸138に対して鋭角に傾けることができる。複屈折媒体層135(または複屈折媒体層135を含むPVH100)は、垂直周期性(またはピッチ)Pを有し得る。複屈折媒体層135を含むPVH100の傾斜角αはα=90°-βと定義することができ、ここでβ=arctan(P/P)である。いくつかの実施形態では、傾斜角が45°<α<90°である、図1Cに示された複屈折媒体層135を含むPVH100は、反射型PVHとして機能することができる。
【0067】
図1Dは、本開示の別の実施形態による、複屈折媒体層155に含まれるLC分子152の概略3D配向パターンの一部分を示す。図1Dに示されるように、複屈折媒体層155は、第1の面155-1と、第1の面155-1と向かい合う第2の面155-2とを含み得る。図1Bおよび図1E図1Gに示された複屈折媒体層115の表面に、またはそれに近接して置かれたLC分子112と同様に、複屈折媒体層155の表面(第1の面155-1または第2の面155-2の少なくとも一方)に、またはそれに近接して置かれたLC分子152は、その表面に、またはその表面と平行な面に、所定の面内方向(たとえば、x軸方向)に沿って所定の回転方向(たとえば、時計回り)に連続的に回転するLCダイレクタで構成され得る。この連続回転は、面内ピッチPin(この例ではP)を有する周期的面内回転パターンを示し得る。いくつかの実施形態では、面内ピッチPinは、均一(たとえば、同一)であってもよく、または所定の面内方向(たとえば、x軸方向)に変化してもよい。図1E図1Gはまた、複屈折媒体層155の表面(たとえば、155-1または155-2)に、またはそれに近接して置かれたLC分子152のLCダイレクタの配向の周期的面内回転パターンも示す。
【0068】
図1Dに戻って参照すると、複屈折媒体層155の体積内で、LC分子152は、図1Bに示された構成と同様に、複数の系列の傾斜した周期的屈折率面(またはブラッグ面)154の形で配置され得る。複屈折媒体層155(または、複屈折媒体層155を含むPVH100)はまた、複屈折媒体層155の厚さ方向に垂直周期性(またはピッチ)Pを有していてもよい。複屈折媒体層155を含むPVH100の傾斜角αはα=90°-βと定義することができ、ここでβ=arctan(P/P)である。いくつかの実施形態では、傾斜角が0°<α<45°である、図1Dに示された複屈折媒体層155を含むPVH100は、透過型PVHとして機能することができる。
【0069】
図1E図1Gに示された、複屈折媒体層の表面に、またはそれに近接して置かれたLC分子のダイレクタの周期的面内回転パターン(または複屈折媒体層の表面の複屈折媒体層の周期的局所光軸配向)は、単に例示を目的としており、本開示の範囲を限定するものではない。図示されていないが、複屈折媒体層の表面に、またはそれに近接して置かれたLC分子のダイレクタ(または複屈折媒体層の表面の複屈折媒体層の局所光軸配向)は、少なくとも1つの面内方向に、たとえば半径方向に、ピッチが変化する面内配向パターンを有するように構成することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、PVH100は、所定の回り方向を有する円偏光光(または楕円偏光光)を主に(または実質的に)回折させるように、また、所定の回り方向とは反対の回り方向を有する円偏光光(または楕円偏光光)を主に(または実質的に)透過させるように(たとえば、無視できる回折を伴って)、構成することができる。PVH100は、所定の回り方向を有する円偏光光(または楕円偏光光)を、所定の回り方向の反対の回り方向を有する円偏光光(または楕円偏光光)よりもはるかに小さい光透過率で透過させ得ることを理解されたい。PVH100は、所定の回り方向の反対の回り方向を有する円偏光光(または楕円偏光光)を、所定の回り方向を有する円偏光光(または楕円偏光光)よりもはるかに小さい回折効率で回折させ得る。非偏光光または直線偏光光は、反対の回り方向を有する2つの円偏光成分(たとえば、第1の成分および第2の成分)に分解され得る。すなわち、第1の成分はPVH100によって主に回折され、第2の成分はPVH100によって主に透過され得る(たとえば、無視できる回折を伴って)。PVH100は、所定の回り方向を有する円偏光光(または楕円偏光光)を主に前方または後方に回折させるように構成することができる。PVH100が、所定の回り方向を有する円偏光光(または楕円偏光光)を主に前方に回折させるように構成されている場合、PVH100は、透過型PVH100と呼ばれることがある。PVH100が、所定の回り方向を有する円偏光光(または楕円偏光光)を主に後方に回折させるように構成されている場合、PVH100は反射型PVH100と呼ばれることがある。
【0071】
図2Aは、本開示の実施形態による、透過型PVH200の回折次数を示す。透過型PVH200は、所定の回り方向(たとえば、LCダイレクタ面のLCダイレクタの回転の回り方向と同じ、またはPVH200のらせん構造の回り方向と同じ回り方向)を有する円偏光光ビーム(または楕円偏光光ビーム)を回折光ビーム(たとえば、1次回折光ビーム)へと、主に前方に回折させるように構成することができる。透過型PVH200は、所定の回り方向とは反対の回り方向(たとえば、LCダイレクタ面のLCダイレクタの回転の回り方向とは反対の、またはPVH200のらせん構造の回り方向とは反対の回り方向)を有する円偏光光ビームを透過光ビーム(0次)へと、主に透過させることができる(たとえば、無視できる回折を伴って)。いくつかの実施形態では、PVH200から出力される回折光ビームは、透過型PVH200によって反転された回り方向を有する円偏光光ビームであり得る。いくつかの実施形態では、透過光ビームは、透過型PVH200によって実質的に維持された回り方向を有する円偏光光ビームであり得る。すなわち、透過型PVH200は、回折に加えて光ビームに偏光変換も行うことができる。説明の目的のために、図2Aは、PVH200が右回り透過型PVHであることを示しており、このPVHは、RHCP光ビーム230をLHCP光ビーム240として主に前方に回折させるように、また、LHCP光ビーム235をLHCP光ビーム245として0次へと主に透過させるように(たとえば、無視できる回折を伴って)、構成されている。いくつかの実施形態では、回折光ビームは、楕円偏光光ビームまたは直線偏光光ビームであり得る。いくつかの実施形態では、透過光ビームは、楕円偏光光ビームまたは直線偏光光ビームであり得る。
【0072】
図2Bは、本開示の実施形態による、反射型PVH250の回折次数を示す。反射型PVH250は、所定の回り方向(たとえば、PVH250のらせん構造の回り方向と同じ回り方向)を有する円偏光光ビーム(または楕円偏光光ビーム)を回折光ビーム(たとえば、1次回折光ビーム)へと、主に後方に回折させるように、また、所定の回り方向とは反対の回り方向(たとえば、PVHのらせん構造の回り方向と反対の回り方向)を有する円偏光光ビームを透過光ビーム(0次)へと、主に透過させるように(たとえば、無視できる回折を伴って)、構成することができる。いくつかの実施形態では、回折光ビームは、反射型PVH250によって実質的に維持される回り方向を有する円偏光光ビームであり得る。いくつかの実施形態では、透過光ビームは、反射型PVH250によって実質的に維持される回り方向を有する円偏光光ビームであり得る。説明の目的のために、図2Bは、反射型PVH250が右回り反射型PVHであることを示しており、このPVHは、RHCP光ビーム230をRHCP光ビーム260として主に後方に回折させるように、また、LHCP光ビーム235をLHCP光ビーム265として0次へと主に透過させるように(たとえば、無視できる回折を伴って)、構成されている。いくつかの実施形態では、反射型PVH250は、回折光ビームおよび/または透過光ビームの偏光を変化させることができる。いくつかの実施形態では、回折光ビームは、楕円偏光光ビームまたは直線偏光光ビームであり得る。いくつかの実施形態では、透過光ビームは、楕円偏光光ビームまたは直線偏光光ビームであり得る。
【0073】
図3Aは、本開示の実施形態による、レインボー効果を抑制する(または回折アーチファクトを抑制する)ための光学デバイス(または光学素子)300の概略図を示す。光学デバイス300は、複数の複屈折媒体層を含み得る。たとえば、いくつかの実施形態では、光学デバイス300は、多層PVHであってもよい。図3Aに示されるように、光学デバイス300は、一緒に積層された複数のPVH、たとえば第1のPVH305および第2のPVH310を含み得る。いくつかの実施形態では、第1のPVH305および第2のPVH310の少なくとも一方(たとえば、それぞれ)は、複屈折膜(または複屈折媒体層)を含み得る。いくつかの実施形態では、複屈折膜は、重合(または架橋)液晶(「LC」)、ポリマー安定化LC、フォトポリマー(たとえば、非晶質ポリマー、液晶(「LC」)ポリマーなど)、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。LCは、ネマチックLC、ツイストベンドLC、キラルネマチックLC、スメクチックLC、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。複屈折膜の光学異方性分子は、垂直ピッチP(たとえば、厚さ方向のピッチ)および面内ピッチPin(たとえば、x-y平面内の方向のピッチ)を有する適切な3D配向パターン(図1B図1Cまたは図1Dに示されるものなど)で配置され得る。第1のPVH305および第2のPVH310の体積内のブラッグ面は、それぞれのPVH内の斜線によって概略的に示されている。
【0074】
図3Aに示された実施形態では、第1のPVH305は、厚さが比較的厚くなるように構成することができ(一次PVH層305と呼ばれることがある)、第2のPVH310は、厚さが比較的薄くなるように構成することができる(二次PVH層310と呼ばれることがある)。二次PVH層310の厚さは、一次PVH層305の厚さよりかなり薄くてもよい。たとえば、二次PVH層310の厚さは、一次PVH層305の厚さの所定の百分率より小さくてもよい。二次PVH層310の厚さと一次PVH層305の厚さの比は、所定の百分率、たとえば5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。いくつかの実施形態では、一次PVH層305と二次PVH層310の各面内ピッチPinは、実質的に同じになるように構成することができ、二次PVH層310の垂直ピッチ(または第2の垂直ピッチ)Pは、一次PVH層305の垂直ピッチ(または第1の垂直ピッチ)Pよりも小さくなるように構成することができる。第2の垂直ピッチと第1の垂直ピッチの比は、適切な範囲内または適切な数値、たとえば、上記で説明された、0.2~0.8の範囲内の任意の部分範囲または任意の数値であってよい。1つの実施形態では、第2の垂直ピッチは、第1の垂直ピッチの約半分であってもよい。PVHの傾斜角αはα=90°-βと定義され、ここでβ=arctan(P/Pin)である。一次PVH層305の傾斜角αは、二次PVH層310の傾斜角αよりも小さくなるように構成することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、一次PVH層305と二次PVH層310の両方が、同じタイプのPVH、たとえば反射型PVHまたは透過型PVHを含み得る。いくつかの実施形態では、一次PVH層305と二次PVH層310は、別々のタイプのPVHを含み得る。たとえば、一次PVH層305および二次PVH層310の一方が反射型PVHを含み、他方が透過型PVHを含み得る。いくつかの実施形態では、一次PVH層305と二次PVH層310は、同じ偏光選択性を有するように構成することができる。たとえば、一次PVH層305と二次PVH層310は、第1の回り方向を有する偏光光を回折させ、第1の回り方向と反対である第2の回り方向を有する偏光を、無視できる回折を伴って透過させるように構成することができる。
【0076】
光302(たとえば、現実世界環境からの可視多色光)が一次PVH層305に入射する場合、一次PVH層305は、光302の少なくとも一部を異なる回折次数に回折させるように構成することができる。たとえば、現実世界環境からの可視多色光302が、反対の回り方向を有する2つの円偏光成分に分解できる非偏光光(または直線偏光光)である場合、一次PVH層305は、第1の回り方向を有する一方の円偏光成分を異なる回折次数へ実質的に回折させるように、また、第2の回り方向を有する他方の円偏光成分を実質的に透過させるように構成することができる。現実世界環境からの可視多色光302が第1の回り方向を有する円偏光光である場合、一次PVH層305は、第1の回り方向を有する円偏光光を異なる回折次数へ実質的に回折させるように構成することができる。回折角は波長依存性であるので、一次PVH層305は可視多色光302を、レインボー効果を伴って回折させて、一次PVH層305を通して見た現実世界画像に多色グレアを生じさせ得る。二次PVH層310は、一次PVH層305によって生じるレインボー効果が低減され得るように、一次PVH層305によって生じる可視多色光302の望ましくない回折次数を抑制するように構成することができる。たとえば、回折次数が低いほど、レインボー効果が弱く(または認知しにくく)、回折次数が高いほど、レインボー効果が強い(または認知しやすい)。二次PVH層310は、一次PVH層305によって生じる可視多色光302の高い回折次数、たとえば所定の回折次数よりも高い回折次数、を抑制するように構成することができる。
【0077】
たとえば、一次PVH層305は、現実世界環境からの可視多色光302が第1の光として少なくとも部分的に回折するように構成することができる。この第1の光は、第1の数の知覚可能な回折次数を含み得る。二次PVH層310は、第1の光を一次PVH層305から受光して、この第1の光が第2の光として少なくとも部分的に回折するように構成することができる。第2の光は、第2の数の知覚可能な回折次数を含み得る。二次PVH層310は、所定の回折次数、たとえば1次の回折次数(+1次の回折次数および/または-1次の回折次数)よりも高い回折次数などの、一次PVH層305によって生じる望ましくない回折次数を抑制するように構成することができる。たとえば、知覚可能な回折次数の第2の数は、知覚可能な回折次数の第1の数よりも小さくすることができる。すなわち、一次PVH層305によって生じるレインボー効果は、二次PVH層310によって低減され得る。言い換えると、一次PVH層305と二次PVH層310を組み合わせたものによって生じるレインボー効果は、一次PVH層305だけで生じるレインボー効果よりも弱く(すなわち認知しにくく)なり得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、一次PVH層305および二次PVH層310のそれぞれは、それぞれの複屈折およびそれぞれのキラリティを有する複屈折媒体を含み得る。PVHの垂直ピッチPは、複屈折媒体のキラリティによって決定することができる。いくつかの実施形態では、複屈折媒体のキラリティは、誘起キラリティであってよい。たとえば、複屈折媒体は、ホスト複屈折材料と、そのホスト複屈折材料に所定の濃度でドープされたキラルドーパントとを含み得る。キラリティは、ホスト複屈折材料にドープされるキラルドーパント、たとえば、ネマチックLCにドープされるキラルドーパント、またはアキラルRMにドープされるキラル反応性メソゲン(「RM(reactive mesogen)」)によって導入することができる。RMはまた、重合性メソゲン化合物もしくは液晶化合物、または重合性LCと呼ばれることもある。簡単にするために、以下の説明では、用語「液晶」または「LC(liquid crystal)」は、メソゲン材料とLC材料の両方を包含し得る。複屈折媒体のキラリティが、ホスト複屈折材料にドープされるキラルドーパントによって導入される場合、PVHの垂直ピッチPは、キラルドーパントのねじり力(「HTP(helical twist power)」)と、ホスト複屈折材料にドープされるキラルドーパントの濃度とによって決定され得る。いくつかの実施形態では、複屈折媒体のキラリティは、固有キラリティであり得る。たとえば、複屈折媒体は、固有分子キラリティを有する複屈折材料を含んでもよく、キラルドーパントは含まれなくてもよい。いくつかの実施形態では、複屈折材料は、キラル液晶分子、または1つもしくは複数のキラル官能基を有する分子を含み得る。PVHの垂直ピッチPは、複屈折材料の固有分子キラリティによって決定され得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、一次PVH層305は、第1の複屈折および第1のキラリティを有する第1の複屈折媒体を含むことができ、二次PVH層310は、第2の複屈折および第2のキラリティを有する第2の複屈折媒体を含むことができる。第1のキラリティは、第2のキラリティと異なるように構成することができ、その結果、一次PVH層305と二次PVH層310の垂直ピッチが異なることになる。いくつかの実施形態では、一次PVH層305の第1のキラリティは、二次PVH層310の第2のキラリティよりも小さくなるように構成することができ、それにより、二次PVH層310の垂直ピッチP(または第2の垂直ピッチ)は、一次PVH層305の垂直ピッチP(または第1の垂直ピッチ)よりも小さくなる。第2の垂直ピッチと第1の垂直ピッチの比は、適切な範囲内または適切な数値、たとえば、上記で説明された、0.2~0.8の範囲内の任意の部分範囲または任意の数値であってよい。1つの実施形態では、第2の垂直ピッチは、第1の垂直ピッチの約半分であってもよい。一次PVH層305の第1の複屈折は、二次PVH層310の第2の複屈折と異なっていても、実質的に同じであってもよい。
【0080】
第1のPVH層305および第2のPVH層310は、例示の目的で平坦な形状を有するものとして示されているが、第1のPVH層305および/または第2のPVH層310は、湾曲した形状を有していてもよい。例示の目的で、図3Aは、第1のPVH層305および第2のPVH層310のそれぞれが均一な厚さを有していることを示す。図示されていないが、いくつかの実施形態では、第1のPVH層305および/または第2のPVH層310は、変化する厚さ、たとえば、x軸方向またはy軸方向の少なくとも一方などに沿って、x-y平面内で変化する厚さを有していてもよい。第1のPVH層305および第2のPVH層310のそれぞれが、変化する厚さを有している場合、これらのPVH層の対応する局所点において、第1のPVH層305は比較的厚い局所厚さを有するように構成することができ、第2のPVH層310は比較的薄い局所厚さを有するように構成することができる。たとえば、対応する局所点において、二次PVH層310の厚さは、一次PVH層305の厚さよりもかなり薄くてもよい。二次PVH層310の厚さと一次PVH層305の厚さの比は、所定の百分率、たとえば5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。
【0081】
例示の目的で、図3Aは、光学デバイス300が、一緒に積層された2つのPVH305およびPVH310を含むことを示す。いくつかの実施形態では、光学デバイス300は、一緒に積層された2つより多い(たとえば、3つ、4つ、または5つなどの)PVHを含み得る。いくつかの実施形態では、光学デバイス300の複数のPVHは、少なくとも1つの一次PVH層、および少なくとも1つの二次PVHを含み得る。少なくとも1つの一次PVH層は現実世界環境からの可視多色光がレインボー効果を伴って回折するように構成することができ、少なくとも1つの二次PVH層は、少なくとも1つの一次PVH層によって生じるレインボー効果が低減され得るように、少なくとも1つの一次PVH層によって生じる可視光の望ましくない回折次数を抑制するように構成することができる。
【0082】
図3Bは、本開示の別の実施形態による、レインボー効果を抑制するための光学デバイス(または光学素子)330の概略図を示す。光学デバイス330は、多層PVHとすることができる。図3Bに示される光学デバイス330は、図3Aに示された光学デバイス300に含まれる要素と同一または同様の要素を含み得る。同一または同様の要素についての詳細な説明は、図3Aに関連して提示された上記の説明を参照されたい。図3Bに示されるように、光学デバイス330は、一緒に積層された複数のPVHを含み得る。この複数のPVHは、一次PVH層および複数の二次PVH層を含み得る。説明の目的のために、図3Bは、光学デバイス330が一次PVH層335と、2つの二次PVH層340aおよび340b(たとえば、第1の二次PVH層340aおよび第2の二次PVH層340b)とを含み得ることを示す。いくつかの実施形態では、光学デバイス330は、2つより多い二次PVH層を含み得る。一次PVH層335、ならびに二次PVH層340aおよび340bは、適切な順序で配置することができる。説明の目的のために、二次PVH層340aおよび340bは一緒に積層されてよく、一次PVH層335は、二次PVH層340aおよび340bのスタックに配置されてよい。たとえば、二次PVH層340aは、二次PVH層340bと一次PVH層335の間に配置され得る。図示されていないが、いくつかの実施形態では、一次PVH層335および2つの二次PVH層340a、340bは、他の適切な順序で配置されてもよい。たとえば、一次PVH層335は、2つの二次PVH層340aと340bの間に配置されてもよい。例示の目的で1つの一次PVH層335が示されているが、いくつかの実施形態では、光学デバイス330は複数の一次PVH層を含み得る。
【0083】
図3Bに示された一次PVH層335は、厚さが比較的厚くなるように構成することができ、二次PVH層340aおよび340bのそれぞれは、厚さが比較的薄くなるように構成することができる。二次PVH層340aまたは340bの厚さは、一次PVH層335の厚さよりかなり薄くてもよい。二次PVH層340aまたは340bの厚さと一次PVH層335の厚さの比は、所定の百分率、たとえば5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。いくつかの実施形態では、一次PVH層335と二次PVH層340aおよび340bの各面内ピッチPinは、実質的に同じになるように構成することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、二次PVH層340aと二次PVH層340bの各垂直ピッチP(第2の垂直ピッチおよび第3の垂直ピッチ)は、実質的に同じであってもよい。いくつかの実施形態では、二次PVH層340aおよび二次PVH層340bの垂直ピッチPは、一次PVH層335の垂直ピッチより小さくてもよい。二次PVH層340a(または340b)の垂直ピッチと一次PVH層335の垂直ピッチとの比は、適切な範囲内または適切な数値、たとえば、上述の、0.2~0.8の範囲内の任意の部分範囲または任意の数値であってよい。1つの実施形態では、二次PVH層340aまたは340bの垂直ピッチPは、一次PVH層335の垂直ピッチPの約半分になるように構成することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、二次PVH層340aの垂直ピッチと二次PVH層340bの垂直ピッチとは異なっていてもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、二次PVH層340bの垂直ピッチ(第3の垂直ピッチ)は、二次PVH層340aの垂直ピッチ(第2の垂直ピッチ)より小さくても(たとえば、約半分でも)よい。二次PVH層340bの垂直ピッチと二次PVH層340aの垂直ピッチとの比は、上記で説明されたように、0.2~0.8の範囲内の任意の適切な部分範囲または数値であってよい。1つの実施形態では、二次PVH層340bの垂直ピッチと二次PVH層340aの垂直ピッチとの比は、0.5であってもよい。すなわち、二次PVH層340bの垂直ピッチは、二次PVH層340aの垂直ピッチの約半分であってよい。
【0086】
一次PVH層335は、現実世界環境からの可視多色光302がレインボー効果を伴って回折するように構成することができ、二次PVH層340aおよび340bは、一次PVH層335によって生じるレインボー効果が低減され得るように、一次PVH層335によって生じる可視多色光302の望ましくない回折次数を抑制するように構成することができる。
【0087】
たとえば、一次PVH層335は、現実世界環境からの可視多色光302が第1の光として少なくとも部分的に回折するように構成することができる。この第1の光は、第1の数の知覚可能な回折次数を含み得る。二次PVH層340aは、第1の光を一次PVH層335から受光して、この第1の光が第2の光として少なくとも部分的に回折するように構成することができる。第2の光は、第2の数の知覚可能な回折次数を含み得る。二次PVH層340bは、二次PVH層340aから第2の光を受光して、第2の光が第3の光として少なくとも部分的に回折するように構成することができる。第3の光は、第3の数の知覚可能な回折次数を含み得る。二次PVH層340aおよび340bは、所定の回折次数、たとえば1次の回折次数(+1次の回折次数および/または-1次の回折次数)よりも高い回折次数などの、一次PVH層335によって生じる望ましくない回折次数を抑制するように構成することができる。たとえば、知覚可能な回折次数の第2の数は、知覚可能な回折次数の第1の数よりも小さくすることができる。知覚可能な回折次数の第3の数は、知覚可能な回折次数の第2の数よりも小さくすることができる。すなわち、一次PVH層335によって生じるレインボー効果は、二次PVH層340aおよび340bによって低減され得る。言い換えると、一次PVH層335と二次PVH層340aおよび340bとを組み合わせたものによって生じるレインボー効果は、一次PVH層335だけで生じるレインボー効果よりも弱く(すなわち認知しにくく)なり得る。
【0088】
図3Cは、本開示の別の実施形態による、レインボー効果を抑制するための光学デバイス(または光学素子)350の概略図を示す。光学デバイス350は、多層PVHとすることができる。図3Cに示された光学デバイス350は、図3Aに示された光学デバイス300、および/または図3Bに示された光学デバイス330に含まれる要素と同一または同様の要素を含み得る。同一または同様の要素についての詳細な説明は、図3Aおよび図3Bに関連して提示された上記の説明を参照されたい。図3Cに示されるように、光学デバイス350は、一緒に積層された複数のPVHを含み得る。この複数のPVHは、複数の一次PVH層および複数の二次PVH層を含み得る。いくつかの実施形態では、それぞれの一次PVH層は、現実世界環境からの可視多色光302がレインボー効果を伴って回折するように構成することができ、1つまたは複数の二次PVH層は、それぞれの一次PVH層によって生じるレインボー効果が低減され得るように、それぞれの一次PVH層と対にして、それぞれの一次PVH層による望ましくない回折次数を抑制することができる。
【0089】
説明の目的のために、図3Cは、光学デバイス350が、2つの一次PVH層355aおよび355b(たとえば、第1の一次PVH層335aおよび第2の一次PVH層335b)と、2つの二次PVH層360aおよび360b(たとえば、第1の二次PVH層360aおよび第2の二次PVH層360b)とを含み得ることを示す。いくつかの実施形態では、光学デバイス350は、2つより多い一次PVH層、および/または2つより多い二次PVH層を含み得る。一次PVH層355aおよび355b、ならびに二次PVH層360aおよび360bは、適切な順序で配置することができる。説明の目的のために、図3Cは、一次PVH層と二次PVH層とが交互に配置され得ることを示す。たとえば、二次PVH層360aは、一次PVH層355aと一次PVH層355bの間に配置されてよく、一次PVH層355bは、二次PVH層360aと二次PVH層360bの間に配置されてよい。図示されていないが、いくつかの実施形態では、一次PVH層355aおよび355bならびに二次PVH層360aおよび360bは、他の適切な順序で配置されてもよい。たとえば、すべての一次PVH層が一緒に積層されてもよく、すべての二次PVH層が一緒に積層されてもよく、また、一次PVH層のスタックが二次PVH層のスタックと積層されてもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、一次PVH層355aは、厚さが比較的厚くなるように構成することができ、二次PVH層360aは、厚さが比較的薄くなるように構成することができる。二次PVH層360aの厚さは、一次PVH層355aの厚さよりかなり薄くてもよい。二次PVH層360aの厚さと一次PVH層355aの厚さの比は、所定の百分率、たとえば5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。いくつかの実施形態では、一次PVH層355aと二次PVH層360aの各面内ピッチPinは、実質的に同じになるように構成することができる。いくつかの実施形態では、二次PVH層360aの垂直ピッチPは、一次PVH層355aの垂直ピッチPよりも小さく(たとえば、約半分に)なるように構成することができる。二次PVH層360aの垂直ピッチと一次PVH層355aの垂直ピッチとの比は、上記で説明されたように、任意の適切な部分範囲にあってよく、または0.2~0.8の範囲内の任意の適切な数値であってよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、一次PVH層355bは、厚さが比較的厚くなるように構成することができ、二次PVH層360bは、厚さが比較的薄くなるように構成することができる。二次PVH層360bの厚さは、一次PVH層355bの厚さよりかなり薄くてもよい。二次PVH層360bの厚さと一次PVH層355bの厚さの比は、所定の百分率、たとえば5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。いくつかの実施形態では、一次PVH層355bと二次PVH層360bの各面内ピッチPinは、実質的に同じになるように構成することができる。いくつかの実施形態では、二次PVH層360bの垂直ピッチPは、一次PVH層355bの垂直ピッチPよりも小さく(たとえば、約半分に)なるように構成することができる。二次PVH層360bの垂直ピッチと一次PVH層355bの垂直ピッチとの比は、上記で説明されたように、任意の適切な部分範囲にあってよく、または0.2~0.8の範囲内の任意の適切な数値であってよい。
【0092】
一次PVH層355aおよび二次PVH層360aの各面内ピッチPinは、一次PVH層355bおよび二次PVH層360bの各面内ピッチPinと実質的に同じであっても異なっていてもよい。一次PVH層355aの垂直ピッチPは、一次PVH層355bの垂直ピッチPと実質的に同じであっても異なっていてもよい。二次PVH層360aの垂直ピッチPは、二次PVH層360bの垂直ピッチPと実質的に同じであっても異なっていてもよい。一次PVH層355aの厚さは、一次PVH層355bと実質的に同じであっても異なっていてもよい。二次PVH層360aの厚さは、二次PVH層360bと実質的に同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、一次PVH層355a、355bの少なくとも一方または二次PVH層360a、360bの少なくとも一方の厚さは、x軸方向またはy軸方向の少なくとも一方などに沿って、x-y平面内で変化し得る。
【0093】
図3Cに示される実施形態では、現実世界環境からの可視多色光302が一次PVH層355aに入射する場合、一次PVH層355aは、可視多色光302がレインボー効果を伴って回折するように構成することができる。二次PVH層360a、一次PVH層355b、および二次PVH層360bは、一次PVH層355aによって生じるレインボー効果が低減され得るように、一次PVH層355aによって生じる可視多色光302の望ましくない回折次数を抑制するように構成することができる。たとえば、一次PVH層355aは、現実世界環境からの可視多色光302が第1の光として少なくとも部分的に回折するように構成することができる。この第1の光は、第1の数の知覚可能な回折次数を含み得る。二次PVH層340aは、第1の光を一次PVH層335aから受光して、この第1の光が第2の光として少なくとも部分的に回折するように構成することができる。第2の光は、第2の数の知覚可能な回折次数を含み得る。一次PVH層355bは、二次PVH層360aから第2の光を受光して、第2の光が第3の光として少なくとも部分的に回折するように構成することができる。第3の光は、第3の数の知覚可能な回折次数を含み得る。二次PVH層360bは、一次PVH層355bから第3の光を受光して、この第3の光が第4の光として少なくとも部分的に回折するように構成することができる。第4の光は、第4の数の知覚可能な回折次数を含み得る。二次PVH層360aおよび360bは、所定の回折次数、たとえば1次の回折次数(+1次の回折次数および/または-1次の回折次数)よりも高い回折次数などの、一次PVH層355aおよび355bによって生じる望ましくない回折次数を抑制するように構成することができる。たとえば、知覚可能な回折次数の第2の数は、知覚可能な回折次数の第1の数よりも小さくすることができる。知覚可能な回折次数の第3の数は、知覚可能な回折次数の第2の数よりも小さくすることができる。知覚可能な回折次数の第4の数は、知覚可能な回折次数の第3の数よりも小さくすることができる。すなわち、一次PVH層355aおよび355bによって生じるレインボー効果は、二次PVH層360aおよび360bによって低減され得る。言い換えると、一次PVH層355aおよび355bと二次PVH層360aおよび360bとを組み合わせたものは、一次PVH層355aだけよりも、または一次PVH層355aと355bを組み合わせたものよりも、生じ得るレインボー効果が弱い(または認知しにくい)。
【0094】
いくつかの実施形態では、4つのPVH層を有する図3Cに示された光学デバイス350に関して、PVH層355aは、一次PVH層(第1の垂直ピッチを有する第1のPVH層)であってよく、他のPVH層360a、355b、および360bは、一次PVH層による回折を低減させるように、たとえば、一次PVH層から出力される望ましくない回折次数の光を抑制するように、構成された二次PVH層(第2、第3、および第4の垂直ピッチをそれぞれ有する、第2、第3、および第4のPVH層)であってよい。PVH層360a、355b、および360bの各垂直ピッチは、実質的に同じであってよい。たとえば、PVH層306a、355b、および360bの同一の垂直ピッチは、一次PVH層355aの垂直ピッチの約20%~80%であってよい。いくつかの実施形態では、PVH層306a、355b、および360bの同一の垂直ピッチは、一次PVH層355aの垂直ピッチの約半分であってもよい。いくつかの実施形態では、第2のPVH層360aの第2の垂直ピッチは、一次PVH層355aの第1の垂直ピッチの約半分であってもよく、第3のPVH層355bの第3の垂直ピッチは、第2のPVH層360aの第2の垂直ピッチの約半分であってもよく、第4のPVH層360bの第4の垂直ピッチは第3の垂直ピッチの約半分であってもよい。
【0095】
図4Aは、従来の単層PVH400の概略図を示し、図4Bは、図4Aに示された従来の単層PVH400の視野角と回折効率の関係を示すシミュレーション結果を示す。図4Cは、本開示の実施形態による多層PVH450の概略図を示し、図4Dは、本開示の実施形態による図4Cに示された多層PVH450の視野角と回折効率の関係を示すシミュレーション結果を示す。
【0096】
図4Aに示されるように、従来の単層PVH400は、厚さt=4.7μm、垂直ピッチPv=282nm、および面内ピッチPin=937nmである単一のPVH層405を含む。図4Cに示されるように、本開示の実施形態による多層PVH450は、厚さt1=4.7μm、垂直ピッチPv=282nm、および面内ピッチPin=937nmである第1のPVH層455と、厚さt2=0.06μm、垂直ピッチPv=145nm、および面内ピッチPin=937nmである第2のPVH層460とを含む。すなわち、第1のPVH層455と第2のPVH層460の面内ピッチPinとは同じにすることができ、第2のPVH層460の垂直ピッチPvは、第1のPVH層455の垂直ピッチPvの約半分(よりわずかに小さい)にすることができる。多層PVH450の第1のPVH層455の厚さ、垂直ピッチ、および面内ピッチはそれぞれ、従来の単層PVH400の単層PVH層405の厚さ、垂直ピッチ、および面内ピッチと類似している。説明の目的のために、単層PVH400および多層PVH450は透過型PVHである。図4Aは、従来の単層PVH400が複数の平行ブラッグ面415を含むことを示す。図4Cは、第1のPVH層455が複数の平行ブラッグ面475を含み、第2のPVH層460が、ブラッグ面475と平行でなくてもよい複数の平行ブラッグ面465を含むことを示している。
【0097】
図4Bおよび図4Dは、図4Aに示された従来の単層PVH400、および図4Cに示された本開示の多層PVH450それぞれの、視野角の関数としてプロットされた平均透過回折効率を示す。図4Bおよび図4Dには、従来の単層PVH400または本開示の多層PVH450の平均透過回折効率を表すためのグレースケールバー411または412(濃いグレーから薄いグレーまで)が、白色光(所定の可視波長範囲を有する)の入射角の所定の範囲にわたって示されている。グレースケールバー411または412では、濃いグレーが低い平均透過回折効率を表し、薄いグレーが高い平均透過回折効率を表している。効率は、グレースケールバー411または412の濃いグレーから、グレースケールバー411または412の薄いグレーに向けて高くなっている。高い平均透過回折効率(薄いグレーに対応する)は、強いレインボー効果を示し得る。図4Bおよび図4Dに示された円形グラフの中心は、0度視野(「FOV」)を表し、中心から始まる4つの同心円421、422、423および424は、15°FOV、30°FOV、45°FOV、および60°FOVを表す。円形グラフの中心から始まる放射方向は、視野角方向を表している。例示の目的で、7つの視野角方向(たとえば、0°、51.4°、103°、154°、206°、257°、および309°)が図4Bおよび図4Dに印付けされている。
【0098】
図4Bで、円形グラフは、異なる入射角での平均透過効率の分布を示す。このグラフは、垂直方向に分布する、交互の薄いグレーの細片(「L」でラベル標示されている)と、濃いグレーの細片(「D」でラベル標示されている)とを示す。図4Bを参照すると、従来の単層PVH400の平均透過回折効率は、円424(たとえば、60°FOV)内のほとんどの領域で約0.7%と約0.2%の間で変化している。図4Dを参照すると、多層PVH450の平均透過回折効率は、円424(たとえば、60°FOV)内のほとんどの領域で実質的に均一であり、約0.2%と約0.15%の間で変化している。図4Dに示されるように、円形グラフ(または円424)全体は、薄いグレーで覆われている破線領域425を除いて、濃いグレーで実質的に覆われている。これは、多層PVH450の平均透過回折効率が、図4Bに示される従来の単層PVH400よりもはるかに均一であることを示す。図4B図4Dを比較すると、円424(たとえば、60°FOV)内のほとんどの領域において、多層PVH450の平均透過回折効率の変化(たとえば、約0.05%)は、従来の単層PVH400の平均透過回折効率の変化(たとえば、5%)と比較して大幅に低減されている。加えて、円424(たとえば、60°FOV)内のほとんどの領域において、多層PVH450の最高平均透過回折効率(たとえば、0.2%)は、単層PVH400の最高平均透過回折効率(たとえば、0.7%)と比較して、大幅に低減されている。図4Dは、多層PVH450においてレインボー効果が大幅に低減され得ることを示している。
【0099】
図4Eは、図4Aに示された従来の単層PVH400と、図4Cに示された本開示の多層PVH450とについての視野角と回折効率の関係を示すシミュレーション結果を表す。図4Eに示されるように、横軸は視野角(または視野角方向)を表し、縦軸は入射角の所定の範囲、および入射光の所定の可視波長範囲にわたって平均透過回折効率を表している。曲線480および485はそれぞれ、図4Aに示された従来の単層PVH400、および図4Cに示された本開示の多層PVH450の平均透過回折効率を示す。視野角方向が0°から約280°まで変化するので、本開示の多層PVH450の平均透過回折効率は、従来の単層PVH400の平均透過回折効率よりもはるかに低い。たとえば、本開示の多層PVH450の平均透過回折効率は、従来の単層PVH400の平均透過回折効率の約半分である。したがって、本開示の多層PVH450によって生じるレインボー効果は、実質的に同じ波長範囲および同じ入射角範囲の白色入射光に対して、従来の単層PVH400の約半分に低減され得る。
【0100】
図5Aは、本開示の別の実施形態による、レインボー効果を抑制するための複数の層を含む光学デバイス(または光学素子)500の概略図を示す。光学デバイス500は多層PVHであってよい。光学デバイス500は受動光学デバイスであってよい。図5Aに示された光学デバイス500は、図3Aに示された光学デバイス300、図3Bに示された光学デバイス330、および/または図3Cに示された光学デバイス350に含まれるものと同一または同様の要素を含み得る。同一または同様の要素についての詳細な説明は、図3A図3Cに関連して提示された上記の説明を参照されたい。図5Aに示されるように、光学デバイス500は、基板512と、基板512上に配置されたアライメント構造514と、アライメント構造514上に配置されたPVHのスタックとを含み得る。
【0101】
PVHのスタックは、図3A図3B図3Cに示されたもの、またはこれらの組み合わせなどの、開示された任意のPVHのスタックであってよい。PVHのスタックは、少なくとも1つの一次PVH層、および少なくとも1つの二次PVH層を含み得る。例示の目的で、図5Aは、PVHのスタックが、第1のPVH(または一次PVH層)505および第2のPVH(または二次PVH層)510を含むことを示し、これらはそれぞれ、図3Aに示された一次PVH層305および二次PVH層310と同一または同様であってもよい。たとえば、図5Aに示されるように、一次PVH層505は、厚さが比較的厚くなるように構成することができ、二次PVH層510は、厚さが比較的薄くなるように構成することができる。二次PVH層510の厚さは、一次PVH層505の厚さよりかなり薄くてもよい。二次PVH層510の厚さと一次PVH層505の厚さの比は、所定の百分率、たとえば5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、一次PVH層505と二次PVH層510の面内ピッチPinは実質的に同じになるように構成することができ、二次PVH層510の垂直ピッチPは、一次PVH層505の垂直ピッチPの約半分になるように構成することができる。PVHの傾斜角αはα=90°-βと定義され、ここでβ=arctan(P/Pin)である。一次PVH層505の傾斜角αは、二次PVH層510の傾斜角αよりも小さくなるように構成することができる。一次PVH層505は、現実世界環境からの可視多色光502を回折させることができる。一次PVH層505による回折にはレインボー効果があり、それによって、ユーザが一次PVH層505を通して見る現実世界画像に多色グレアが生じることがある。二次PVH層510は、一次PVH層505によって生じるレインボー効果が低減または抑制され得るように、一次PVH層505の回折によって生成される可視光502の望ましくない回折次数を抑制するように構成することができる。たとえば、二次PVH層510は、一次PVH層505の回折によって生成される可視光502の高い回折次数、たとえば、所定の回折次数よりも高い回折次数を抑制するように構成することができる。いくつかの実施形態では、一次PVH層505および二次PVH層510のそれぞれは、重合(または架橋)LC、ポリマー安定化LC、またはこれらの組み合わせを含む、複屈折膜を含み得る。LCは、ネマチックLC、ツイストベンドLC、キラルネマチックLC、スメクチックLC、またはこれらの組み合わせを含み得る。複屈折膜の光学異方性分子は、図1Bまたは図1Cに示されるような適切な3D配向パターンで配置され得る。一次PVH層505および二次PVH層510は、例示の目的で平坦な形状を有するものとして示されているが、一次PVH層505および/または二次PVH層510は、湾曲した形状を有していてもよい。
【0103】
基板512は、基板512(たとえば、その上または間)に配置された様々な層、膜、および/または構造を支持および/または保護するように構成することができる。いくつかの実施形態では、基板512は、少なくとも可視スペクトル(たとえば、約580nmから約700nmまでの範囲の波長)において光学的に透明である(たとえば、少なくとも約60%以上の光透過率を有する)ことが可能である。いくつかの実施形態では、基板512はまた、赤外線(「IR」)スペクトル(たとえば、約700nmから約1mmまでの範囲の波長)の少なくとも一部において透明であり得る。いくつかの実施形態では、基板512は、上記の波長範囲の光ビームに対して実質的に透明であるガラス、プラスチック、サファイア、ポリマー、半導体、またはこれらの組み合わせなどの適切な材料を含み得る。基板512は、剛性、半剛性、可撓性、または半可撓性であってよい。いくつかの実施形態では、基板512は、平坦な、凸面の、凹面の、非球面の、または自由な形状の、1つまたは複数の表面を有することができる。いくつかの実施形態では、基板512は、別の光学素子もしくはデバイスの一部、または別の光電気素子もしくはデバイスの一部であってもよい。たとえば、基板512は、固体光学レンズもしくは固体光学レンズの一部、光ガイド(もしくは導波路)、または機能デバイス(たとえば、表示画面)の一部であってもよい。いくつかの実施形態では、基板512は、従来のレンズ、たとえばガラスレンズであってもよい。図5Aには1つの基板512が示されているが、いくつかの実施形態では、光学デバイス500は、一次PVH層505および二次PVH層510を挟んでいる2つの基板512を含み得る。いくつかの実施形態では、各基板512にアライメント構造514が配置されていてもよい。
【0104】
アライメント構造514は、任意の適切なアライメント構造であってよい。たとえば、アライメント構造514は、ポリイミド層、光アライメント材料(「PAM(photo-alignment material)」)層、複数のナノ構造もしくはマイクロ構造、アライメントネットワーク、またはこれらの組み合わせを含み得る。たとえば、いくつかの実施形態では、アライメント構造514は、PAM層を含み得る。いくつかの実施形態では、アライメント構造514は、異方性ナノインプリントを有するポリマー層を含み得る。いくつかの実施形態では、アライメント構造514は、異方性ナノインプリントを有するポリマー層を含み得る。いくつかの実施形態では、アライメント構造514は、追加のアライメント材料(たとえば、ポリイミド)を用いて、または用いずに配置された複数のマイクロ構造またはナノ構造を含み得る。いくつかの実施形態では、アライメント構造514は、磁場または電場の存在下で表面アライメントを提供するように構成された強誘電性材料または強磁性材料を含み得る。
【0105】
二次PVH層510は、第1の面510-1と、第1の面510-1と向かい合う第2の面510-2とを有し得る。いくつかの実施形態では、第1の面510-1は、二次PVH層510とアライメント構造514との間の界面であってもよく、また、第2の面510-2は、一次PVH層505と二次PVH層510との間の界面であってもよい。一次PVH層505は、二次PVH層510の第2の面510-2に配置されてよい。いくつかの実施形態では、アライメント構造514は、二次PVH層510の光学異方性分子に対して表面アライメント(たとえば、平面アライメント)を提供し、二次PVH層510の光学異方性分子を空間的に変化するアライメントパターンで、たとえば周期的アライメントパターンで、少なくとも部分的にアライメントするように構成することができる。たとえば、二次PVH層510とアライメント構造514との間の界面(たとえば、二次PVH層510の第1の面510-1)に近接して置かれた光学異方性分子(界面のものを含む)は、光学異方性分子のダイレクタが所定の方向に連続的および周期的に回転できるように、アライメント構造514によってアライメントされてよい。二次PVH層510とアライメント構造514との間の界面に、またはそれに近接して置かれた光学異方性分子の上に配置されている、二次PVH層510の体積内の光学異方性分子のダイレクタは、らせん軸の方向に沿ってらせん状にねじれ得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、二次PVH層510は、一次PVH層505の光学異方性分子に対して表面アライメント(たとえば、平面アライメント)を提供するように構成することができる。たとえば、二次PVH層510は、一次PVH層505の光学異方性分子を空間的に変化するアライメントパターンで、たとえば周期的アライメントパターンで、少なくとも部分的にアライメントすることができる。たとえば、一次PVH層505と二次PVH層510との間の界面(たとえば、二次PVH層510の第2の面510-2)に近接して置かれた光学異方性分子(界面にあるものを含む)は、一次PVH層505の光学異方性分子のダイレクタが所定の方向に連続的および周期的に回転できるように、二次PVH層510によってアライメントされることができる。一次PVH層505と二次PVH層510との間の界面に、またはそれに近接して置かれた光学異方性分子の上に配置されている、一次PVH層505の体積内の光学異方性分子のダイレクタは、らせん軸の方向に沿ってらせん状にねじれ得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、アライメント構造514は、空間的に変化する第1のアライメントパターン(たとえば、均一な第1の面内ピッチを有する第1の周期的アライメントパターン)を提供するように構成された第1のアライメント構造であってよい。光学デバイス500は、一次PVH層505と二次PVH層510の間に配置された第2のアライメント構造を含み得る。第2のアライメント構造は、空間的に変化する第2のアライメントパターン(たとえば、均一な第2の面内ピッチを有する第2の周期的アライメントパターン)を一次PVH層505に提供するように構成することができる。いくつかの実施形態では、第1のアライメント構造514によって提供される、空間的に変化する第1のアライメントパターンは、第2のアライメント構造によって提供される、空間的に変化する第2のアライメントパターンと実質的に同じであってよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、基板512および/またはアライメント構造514は、光学デバイス500を作製、保管、または輸送するために使用されてよい。いくつかの実施形態では、基板512および/またはアライメント構造514は、光学デバイス500の他の部分が作製された後に、または別の場所もしくはデバイスへ輸送された後に、光学デバイス500のその他の部分から取り外し可能または除去可能であり得る。たとえば、基板512は、アライメント構造514と、基板512上に設けられたPVHのスタック(たとえば、一次PVH層505および二次PVH層510を含む)とを支持するために、作製、輸送、および/または保管の際に使用することができ、また、光学デバイス500の作製が完了したときに、または光学デバイス500が別の光学デバイスまたは光学システムに実装されるときに、アライメント構造514およびPVH(たとえば、一次PVH層505および二次PVH層510)から分離または除去することができる。アライメント構造514は、アライメント構造514上に設けられたPVHのスタック(たとえば、一次PVH層505および二次PVH層510を含む)を支持するために、作製、輸送、および/または保管の際に使用することができ、また、光学デバイス500の作製が完了したときに、または光学デバイス500が別の光学デバイスまたは光学システムに実装されるときに、PVHのスタック(たとえば、一次PVH層505および二次PVH層510)から分離または除去することができる。
【0109】
図5Bは、本開示の別の実施形態による、レインボー効果を抑制するための複数の層を含む光学デバイス(または光学素子)530の概略図を示す。光学デバイス530は、多層PVHであってよい。光学デバイス530は、受動光学デバイスであってよい。図5Bに示された光学デバイス530は、図3Aに示された光学デバイス300、図3Bに示された光学デバイス330、図3Cに示された光学デバイス350、および/または図5Aに示された光学デバイス500に含まれるものと同一または同様の要素を含み得る。同一または同様の要素についての詳細な説明は、図3A図3Cおよび図5Aに関連して提示された上記の説明を参照されたい。図5Bに示されるように、光学デバイス530は、基板542と、基板542上に配置されたPVHのスタックとを含み得る。アライメント構造が、光学デバイス530では省かれてもよい。
【0110】
PVHのスタックは、図3A図3B、または図3Cに示されたものなどの、開示された任意のPVHのスタックであってよい。PVHのスタックは、少なくとも1つの一次PVH層、および少なくとも1つの二次PVH層を含み得る。例示の目的で、図5Bは、PVHのスタックが、第1のPVH(または一次PVH層)535および第2のPVH(または二次PVH層)540を含むことを示し、これらは、図3Aに示された一次PVH層305および二次PVH層310と同一または同様であってもよい。たとえば、図5Bに示されるように、一次PVH層535は、厚さが比較的厚くなるように構成することができ、二次PVH層540は、厚さが比較的薄くなるように構成することができる。二次PVH層540の厚さは、一次PVH層535の厚さよりかなり薄くてもよい。二次PVH層540の厚さと一次PVH層535の厚さの比は、所定の百分率、たとえば約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、一次PVH層535と二次PVH層540の面内ピッチPinは実質的に同じになるように構成することができ、二次PVH層540の垂直ピッチPは、一次PVH層535の垂直ピッチPの約半分になるように構成することができる。PVHの傾斜角αはα=90°-βと定義され、ここでβ=arctan(P/Pin)である。一次PVH層535の傾斜角αは、二次PVH層540の傾斜角αよりも小さくなるように構成することができる。一次PVH層535は、現実世界環境からの可視多色光502を回折させ得る。一次PVH層535による回折にはレインボー効果があり、それによって、ユーザが一次PVH層535を通して見る現実世界画像に多色グレアが生じることがある。二次PVH層540は、一次PVH層535によって生じるレインボー効果が低減され得るように、一次PVH層535の回折によって生じる可視光502の望ましくない回折次数を抑制するように構成することができる。たとえば、二次PVH層540は、一次PVH層535の回折によって生じる可視光502の高い回折次数、たとえば、所定の回折次数よりも高い回折次数を抑制するように構成することができる。いくつかの実施形態では、一次PVH層535および二次PVH層540のそれぞれは、フォトポリマー(たとえば、非晶質ポリマー、液晶(「LC」)ポリマーなど)を含む複屈折膜を含み得る。複屈折膜の光学異方性分子は、図1Dに示されるような適切な3D配向パターンで配置され得る。一次PVH層535および二次PVH層540は、例示の目的で平坦な形状を有するものとして示されているが、一次PVH層535および/または二次PVH層540は、湾曲した形状を有していてもよい。
【0112】
例示の目的で、図5Bは、二次PVH層540が一次PVH層535と基板542の間に配置され得ることを示す。基板542は、図5Aに示される基板512と類似していてよい。いくつかの実施形態では、基板542は、光学デバイス530を作製、保管、または輸送するために使用されてよい。いくつかの実施形態では、基板542は、光学デバイス530の他の部分が作製された後、または別の場所もしくはデバイスへ輸送された後に、光学デバイス530のその他の部分から取り外し可能または除去可能であり得る。たとえば、基板542は、基板542上に設けられたPVHのスタック(たとえば、一次PVH層535および二次PVH層540を含む)を支持するために、作製、輸送、および/または保管の際に使用することができ、また、光学デバイス530の作製が完了したときに、または光学デバイス530が別の光学デバイスまたは光学システムに実装されるときに、PVH(たとえば、一次PVH層535および二次PVH層540)から分離または除去することができる。
【0113】
図5Cは、本開示の別の実施形態による、レインボー効果を抑制するための複数の層を含む光学デバイス(または光学素子)550の概略図を示す。光学デバイス550は、多層PVHであってよい。光学デバイス550は、能動光学デバイスであってよい。図5Cに示された光学デバイス550は、図3Aに示された光学デバイス300、図3Bに示された光学デバイス330、図3Cに示された光学デバイス350、図5Aに示された光学デバイス500、および/または図5Bに示された光学デバイス530に含まれるものと同一または同様の要素を含み得る。同一または同様の要素についての詳細な説明は、図3A図3C、ならびに図5Aおよび図5Bに関連して提示された上記の説明を参照されたい。
【0114】
図5Cに示されるように、光学デバイス550は、一緒に積層された複数のLCセル、たとえば第1のLCセル551aおよび第2のLCセル551bを含み得る。いくつかの実施形態では、各LCセル551aまたは551bは、2つの基板と、2つの基板の間に配置されたPVH層とを含み得る。2つの基板の少なくとも一方は、1つまたは複数の導電性電極層、およびアライメント構造を備え得る。たとえば、図5Cに示されるように、第1のLCセル551aは、2つの基板562aおよび562bと、2つの基板562aと562bの間に配置された第1のPVH(または一次PVH層)555とを含み得る。基板562aには、導電性電極層566aおよびアライメント構造564aが配置されていてもよい。基板562bは、一次PVH層555と向かい合う第1の面と、第1の面の反対側の第2の面とを有し得る。基板562bの第1の面には、導電性電極層566bおよびアライメント構造564bが配置されていてもよい。導電性電極層566aまたは566bは、基板562aまたは562bと少なくとも同じスペクトル帯域において透過性および/または反射性であり得る。導電性電極層566aまたは566bは、平坦な連続電極層であってもパターン化された電極層であってもよい。導電性電極層566aおよび566bは、一次PVH層555に駆動電圧を印加するために電源568aと電気的に結合されてよい。いくつかの実施形態では、導電性電極層566aおよび566bは、同じ基板562aまたは562bに配置されてもよい。
【0115】
アライメント構造564aまたは564bは、図5Aに示されたアライメント構造514と同様または同一であってよい。基板562aおよび562bに配置されたアライメント構造564aおよび564bは、平行面アライメントまたは反平行面アライメントを提供するように構成することができる。いくつかの実施形態では、アライメント構造564aおよび564bは、ハイブリッド表面アライメント(surface alignment)を提供するように構成することができる。たとえば、アライメント構造564aおよび564bの一方は、平面アライメント(planar alignment)(またはプレチルト角が小さいアライメント)を提供するように構成することができ、その他方は、ホメオトロピックアライメント(homeotropic alignment)を提供するように構成することができる。いくつかの実施形態では、アライメント構造564aおよび564bの一方が省かれてもよい。
【0116】
第2のLCセル551bは、第1のLCセル551aに含まれるものと同一または同様の要素を含み得る。たとえば、第2のLCセル551bは、2つの基板562bおよび562cと、これら2つの基板562bと562cの間に配置された第2のPVH(または二次PVH層)560とを含み得る。基板562cには、導電性電極層566dおよびアライメント構造564dが配置されていてよい。基板562bの第2の面には、導電性電極層566cおよびアライメント構造564cが配置されていてよい。導電性電極層566cまたは566dは、第1のLCセル551aの導電性電極層566aまたは566bと類似していてよい。導電性電極層566cおよび566dは、二次PVH層560に駆動電圧を印加するために電源568bと電気的に結合されてよい。一次PVH層555および二次PVH層560は、例示の目的で平坦な形状を有するものとして示されているが、一次PVH層555および/または二次PVH層560は、湾曲した形状を有していてもよい。
【0117】
いくつかの実施形態では、一次PVH層555および二次PVH層560のそれぞれは、能動LCを含む複屈折膜(または媒体層)を含むことができ、LC分子が外部場によって、たとえば外部場によって再配向可能であり得る。電圧オフ状態において(または、一次PVH層555もしくは二次PVH層560に印加される駆動電圧が、第1の所定の電圧、たとえばLC分子を再配向させる閾値電圧よりも低いときに)、複屈折膜のLC分子は、図1Bまたは図1Cに示されるような適切な3D配向パターンで配置され得る。一次PVH層555は、厚さが比較的厚くなるように構成することができ、二次PVH層560は、厚さが比較的薄くなるように構成することができる。二次PVH層560の厚さは、一次PVH層555の厚さよりも著しく薄くてもよい。二次PVH層560の厚さと一次PVH層555の厚さの比は、所定の百分率、たとえば約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、一次PVH層555と二次PVH層560の初期面内ピッチPinは、実質的に同じになるように構成することができる。二次PVH層560の初期垂直ピッチPは、一次PVH層555の初期垂直ピッチPの約半分になるように構成することができる。PVHの傾斜角αはα=90°-βと定義され、ここでβ=arctan(P/Pin)である。一次PVH層555の初期傾斜角αは、二次PVH層560の初期傾斜角αよりも小さくなるように構成することができる。電圧オフ状態において、一次PVH層555は、現実世界環境からの可視多色光502を回折させ得る。回折にはレインボー効果があり、それによって、ユーザが一次PVH層555を通して見る現実世界画像に多色グレアが生じることがある。二次PVH層560は、一次PVH層555の回折によって生じるレインボー効果が低減され得るように、一次PVH層555の回折によって生じる可視光502の望ましくない回折次数を抑制するように構成することができる。たとえば、二次PVH層560は、一次PVH層555の回折によって生じる可視光502の高い回折次数、たとえば、所定の回折次数よりも高い回折次数を抑制するように構成することができる。
【0119】
電圧オン状態において、第1の所定の電圧よりも高い駆動電圧が一次PVH層555または二次PVH層560に供給されると、一次PVH層555または二次PVH層560の面内ピッチPinおよび/または垂直ピッチPは、駆動電圧によって変化し得る。いくつかの実施形態では、電源568aによって一次PVH層555に供給される駆動電圧と、電源568bによって二次PVH層560に供給される駆動電圧とは、たとえばコントローラ(図5Cには示されていない)によって個別に制御可能とすることができ、それにより、電圧オン状態において、一次PVH層555と二次PVH層560の各面内ピッチPinが実質的に同一になるように構成されること、および/または二次PVH層560の垂直ピッチPが一次PVH層555の垂直ピッチPの約半分になるように構成されることが可能になる。いくつかの実施形態では、電源568bによって二次PVH層560に供給される駆動電圧は、電源568aによって一次PVH層555に供給される駆動電圧に応じてコントローラによって調整されてよい。たとえば、電源568aによって提供される駆動電圧が一次PVH層555に供給される場合、一次PVH層555の面内ピッチPinおよび/または垂直ピッチPは、駆動電圧によって変化し得る。電源568bによって二次PVH層560に供給される駆動電圧は、コントローラによって、二次PVH層560の面内ピッチPinが一次PVH層555の面内ピッチPinと実質的に同じになるように調整されてよく、かつ/または二次PVH層560の垂直ピッチPが一次PVH層555の垂直ピッチPの約半分になるように調整されてよい。こうして、電圧オン状態において、一次PVH層555が現実世界環境からの可視多色光502を回折させ、それがレインボー効果を生じさせるとき、二次PVH層560は、一次PVH層555の回折によって生じるレインボー効果が低減され得るように、一次PVH層555の回折によって生じる可視光502の望ましくない回折次数を抑制するように構成することができる。たとえば、一次PVH層555は、現実世界環境からの可視多色光502を、第1の数の回折次数を含む第1の光として回折させるように構成することができる。いくつかの実施形態では、二次PVH層560は、一次PVH層555から受光された第1の光を、第2の数の回折次数を含む第2の光として回折させるように構成することができる。いくつかの実施形態では、回折次数の第1の数は、回折次数の第2の数よりも大きい。
【0120】
2つのPVH層555および560(それぞれが複屈折媒体層)が例示の目的で図5Cに示されているが、多層PVH550は、第3のPVH層、第4のPVH層などの追加のPVH層を含み得る。追加のPVH層は、一次PVH層または二次PVH層を含み得る。第3のPVH層は、第3の面内ピッチおよび第3の垂直ピッチで空間的に変化する、第3の光学異方性分子のダイレクタの配向を有する第3の複屈折媒体層を含み得る。第4のPVH層は、第4の面内ピッチおよび第4の垂直ピッチで空間的に変化する、第4の光学異方性分子のダイレクタの配向を有する第4の複屈折媒体層を含み得る。第3の面内ピッチは、第4の面内ピッチと実質的に同じであってよく、第4の垂直ピッチは、第3の垂直ピッチの約半分であってよい。第4の複屈折媒体層の厚さと第3の複屈折媒体層の厚さとの比は、所定の百分率より小さくてもよい。第3の面内ピッチは、第1の面内ピッチと実質的に同じであっても異なっていてもよく、第3の垂直ピッチは、第1の垂直ピッチと実質的に同じであっても異なっていてもよい。
【0121】
本明細書に開示された多層PVHには、いくつかの技術分野において様々な用途がある。拡張現実(「AR」)、仮想現実(「VR」)、および複合現実(「MR」)」の分野、またはこれらのいくつかの組み合わせでの、いくつかの例示的な用途について以下で説明する。ニアアイディスプレイ(「NED」)は、航空、工学、科学研究、医療デバイス、コンピュータゲーム、ビデオ、スポーツ、トレーニング、シミュレーションなどの、多種多様な用途で広く使用されている。NEDは、VRデバイス、ARデバイス、および/またはMRデバイスとして機能することができる。ARデバイスおよび/またはMRデバイスとして機能する場合、NEDは、ユーザから見て少なくとも部分的に透明であり、それによってユーザは、周囲の現実世界環境を見ることが可能になる。このようなNEDは、光学シースルNEDとも呼ばれる。VRデバイスとして機能しているときには、NEDによって提供されるVR画像にユーザが充分に浸るように、NEDは不透明になっている。NEDは、光学シースルデバイスとしての機能とVRデバイスとしての機能との間で切り替え可能とすることができる。
【0122】
回折カップリング構造を含む瞳複製(または瞳拡大)光ガイドディスプレイシステムはNEDとして実現されており、このNEDは、眼鏡フォームファクタ、適度に大きい視野(「FOV」)、高い透過率、および大きいアイボックスを提供できる可能性がある。瞳複製光ガイドディスプレイシステムは、画像光を生成するように構成されたディスプレイ要素(たとえば、電子ディスプレイ)と、光ガイドディスプレイシステムによって設けられたアイボックスまで画像光を案内するように構成された光ガイド(または導波路)とを含み得る。回折格子は、インカップリング回折素子およびアウトカップリング回折素子として光ガイドと結合されてよい。光ガイドはまた、表示要素によって生成された仮想画像が現実世界画像またはシースル画像と重ね合わされ得るように、画像光と現実世界環境からの光とを結合するARおよび/またはMR結合器として機能することもできる。瞳複製光ガイドディスプレイシステムでは、インカップリング回折素子およびアウトカップリング回折素子と結合された光ガイドは、光ガイドの内部を伝搬する光の光伝搬方向に沿って出口瞳を拡大することができる。
【0123】
図6は、本開示の実施形態による、光ガイド(または導波路)ディスプレイシステム600の概略図を示す。光ガイドディスプレイシステム600は、瞳複製(または瞳拡大)を実現することができる。光ガイドディスプレイシステム600は、VR用途、AR用途、および/またはMR用途のNEDで実施されてよい。光ガイドディスプレイシステム600は、開示された1つまたは複数の多層PVHを含み得る。図6に示されるように、光ガイドディスプレイシステム600は、光源アセンブリ605、光ガイド610、およびコントローラ615を含み得る。コントローラ615は、本明細書に記載の様々な制御、調整、または他の機能もしくは処理を実施するように構成することができる。光源アセンブリ605は、光源620、および光調節システム625を含み得る。いくつかの実施形態では、光源620は、コヒーレント光または部分的コヒーレント光を生成するように構成された光源であってよい。光源620は、たとえばレーザダイオード、垂直共振器面発光レーザ、発光ダイオード、またはこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、光源620は、液晶ディスプレイ(「LCD」)パネル、液晶オンシリコン(「LCoS」)ディスプレイパネル、有機発光ダイオード(「OLED」)ディスプレイパネル、マイクロ発光ダイオード(「マイクロLED」)ディスプレイパネル、デジタル光処理(「DLP」)ディスプレイパネル、レーザ走査ディスプレイパネル、またはこれらの組み合わせなどのディスプレイパネルであってよい。いくつかの実施形態では、光源620は、OLEDディスプレイパネルまたはマイクロLEDディスプレイパネルなどの、自己発光パネルであってよい。いくつかの実施形態では、光源620は、LCDパネル、LCoSディスプレイパネル、またはDLPディスプレイパネルなどの、外部光源によって照明されるディスプレイパネルであってよい。外部光源の例としては、レーザ、LED、OLED、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。光調節システム625は、光源620からの光を調節するように構成された1つまたは複数の光学構成要素を含み得る。たとえば、コントローラ615は、光源620からの光を調節するように光調節システム625を制御することができ、この調節には、たとえば光の透過、減衰、拡大、コリメーティング、および/または配向調整が含まれ得る。
【0124】
光源アセンブリ605は、画像光630を生成し、その画像光630を、光ガイド610の第1の部分に配置されたインカップリング要素635へ出力することができる。光ガイド610は、画像光630を拡大し、光ガイドディスプレイシステム600のアイボックス665内に位置する眼660まで導くことができる。出口瞳662は、アイボックス165内の、眼660が位置している場所であってよい。光ガイド610は、光ガイド610の第1の部分に置かれたインカップリング要素635で画像光630を受光することができる。画像光630は、光ガイド610の内部を(たとえば、内部全反射(「TIR」)によって)、光ガイド610の第2の部分に置かれたアウトカップリング要素645に向かって伝搬し得る。第1の部分と第2の部分とは、光ガイド610の別々の部分に置かれてよい。アウトカップリング要素645は、画像光630を、眼660に向けて光ガイド610の中から外へつなぐように構成することができる。いくつかの実施形態では、インカップリング要素635は、画像光630を光ガイド610の内部のTIR経路に結合することができる。画像光630は、光ガイド610の内部をTIRによってTIR経路に沿って伝搬し得る。
【0125】
光ガイド610は、現実世界環境と向き合う第1の面すなわち側面610-1と、眼660と向き合う、反対側の第2の面すなわち側面610-2とを含み得る。いくつかの実施形態では、図6に示されるように、インカップリング要素635は、光ガイド610の第2の面610-2に配置されてよい。いくつかの実施形態では、インカップリング要素635は、光ガイド610の一部として第2の面610-2に一体的に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、インカップリング要素635は別個に形成されてもよく、また、光ガイド610の第2の面610-2に配置されても(たとえば、貼り付けられても)よい。いくつかの実施形態では、インカップリング要素635は、光ガイド610の第1の面610-1に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、インカップリング要素635は、光ガイド610の一部として第1の面610-1に一体的に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、インカップリング要素635は別個に形成されてもよく、また、光ガイド610の第1の面610-1に配置されても(たとえば、貼り付けられても)よい。いくつかの実施形態では、インカップリング要素635は、1つまたは複数の回折格子、1つまたは複数のカスケード反射器、1つまたは複数のプリズム面要素、および/またはホログラフィック反射器のアレイ、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、インカップリング要素635は、表面レリーフ格子、体積ホログラム、偏光選択性格子、偏光体積ホログラム、メタ表面格子、別のタイプの回折素子、またはこれらの任意の組み合わせなどの、1つまたは複数の回折格子を含み得る。回折格子の周期は、光ガイド610内の画像光630の内部全反射(「TIR」)を可能にするように構成することができる。その結果、画像光630は、光ガイド610内部をTIRによって伝搬し得る。いくつかの実施形態では、インカップリング要素635は、本明細書に開示されたPVHを含み得る。
【0126】
アウトカップリング要素645は、光ガイド610の第1の面610-1または第2の面610-2に配置されてよい。たとえば、図6に示されるように、アウトカップリング要素645は、光ガイド610の第1の面610-1に配置されてよい。いくつかの実施形態では、アウトカップリング要素645は、光ガイド610の一部として、たとえば第1の面610-1に一体的に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、アウトカップリング要素645は別個に形成されてもよく、また、光ガイド610の第1の面610-1に配置されても(たとえば、貼り付けられても)よい。いくつかの実施形態では、アウトカップリング要素645は、光ガイド610の第2の面610-2に配置されてもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、アウトカップリング要素645は、光ガイド610の一部として第2の面610-2に一体的に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、アウトカップリング要素645は別個に形成されてもよく、また、光ガイド610の第2の面610-2に配置されても(たとえば、貼り付けられても)よい。いくつかの実施形態では、アウトカップリング要素645は、1つまたは複数の回折格子、1つまたは複数のカスケード反射器、1つまたは複数のプリズム面要素、および/またはホログラフィック反射器のアレイ、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、アウトカップリング要素645は、表面レリーフ格子、体積ホログラム、偏光選択性格子、偏光体積ホログラム(「PVH」)、メタ表面格子、別のタイプの回折素子、またはこれらの任意の組み合わせなどの、1つまたは複数の回折格子を含み得る。回折格子の周期は、入射画像光630が光ガイド610を出るように、すなわち、画像光630の方向が変わってTIRがもはや起こらないように構成することができる。言い換えると、アウトカップリング要素645の回折格子は、光ガイド610の内部をTIRによって伝搬してきた画像光630を、回折によって光ガイド610の中から外へつなぐことができる。いくつかの実施形態では、アウトカップリング要素645はまた、アウトカップリング格子645と呼ばれることもある。
【0127】
いくつかの実施形態では、アウトカップリング要素645は、図3Aに示された多層PVH300、図5Bに示された多層PVH330、図3Cに示された多層PVH350、図5Aに示された多層PVH500、図5Bに示された多層PVH530、または図5Cに示された多層PVH550などの、本明細書に開示された多層PVHを含み得る。いくつかの実施形態では、光ガイド610は、本明細書に開示された多層PVHの基板として機能し得る。例示の目的で、図6は、アウトカップリング要素645が、一緒に積層された一次PVH層655および二次PVH層656を含む、開示された多層PVHを含み得ることを示す。図6に示された実施形態では、アウトカップリング要素645は、光ガイド610の第1の面610-1に配置され、二次PVH層656は、一次PVH層655と光ガイド610の間に配置されている。図示されていないが、いくつかの実施形態では、一次PVH層655が二次PVH層656と光ガイド610の間に配置されてもよい。たとえば、アウトカップリング要素645が光ガイド610の第2の面610-2に配置される場合には、一次PVH層655が二次PVH層656と光ガイド610の間に配置されてもよい。インカップリング要素635およびアウトカップリング要素645と結合された光ガイド610が、ARまたはMR結合器として機能する場合、光ガイド610は、光源アセンブリ605によって生成された仮想画像が現実世界画像またはシースル画像と重ね合わされ得るように、仮想画像を表す画像光630と現実世界環境からの可視多色光602とを一緒にすることができる。本明細書に開示された多層PVHを含むアウトカップリング要素645は、シースル視像の画質が著しく改善され得るように、レインボー効果が低減された可視多色光602を回折させるように構成することができる。
【0128】
上記で説明されたように、従来の光ガイドディスプレイシステムは、現実世界環境から来る可視多色光を回折構造の故に回折させるので、特にNEDを装着したユーザが明るい光源を特定の角度から見るときに、シースル視像にレインボー効果が生じることがある。このようなシースルアーチファクトは、シースル視像の画質を低下させ得る。本開示では、本明細書にアウトカップリング要素645として開示された多層PVHを使用することによって、可視多色光702の回折によってシースル視像に生じるレインボー効果を、シースル視像の画質が著しく改善され得るように大幅に低減させることができる。
【0129】
光ガイド610は、画像光630の内部全反射を助長するように構成された1つまたは複数の材料を含み得る。光ガイド610は、たとえばプラスチック、ガラス、および/またはポリマーを含み得る。光ガイド610は、フォームファクタが比較的小さくてもよい。たとえば、光ガイド610は、x次元に沿った幅が約50mm、y次元に沿った長さが30mm、z次元に沿った厚さが0.5~1mmであってよい。コントローラ615は、光源アセンブリ605と通信可能に結合されてよく、また、光源アセンブリ605の動作を制御することができる。いくつかの実施形態では、光ガイド610は、視野(「FOV」)が増加または拡大している眼660に向けて拡大画像光630を出力することができる。たとえば、拡大画像光630は、対角FOVが(xおよびyで)60度以上で150度以下の眼660に供給されてよい。光ガイド610は、幅が8mm以上で50mm以下、および/または高さが6mm以上で60mm以下のアイボックスが得られるように構成することができる。光ガイドディスプレイアセンブリ600では、物理的ディスプレイおよび電子装置がNEDのフロントボディ側に移動することができ、また、実質的にまったく妨げられない現実世界環境の視像を得ることができ、このことがARユーザ体験を向上させる。
【0130】
いくつかの実施形態では、光ガイド610は、光源アセンブリ605の瞳を方向変更する、折り返す、および/または拡大するように構成された追加の要素を含み得る。たとえば、図6に示されるように、光ガイド610は、受光入力画像光630がアウトカップリング要素645を介して光ガイド610の中から外へつながるように、受光入力画像光630をアウトカップリング要素645に向けて方向を変えるように構成された方向変更要素640を含み得る。いくつかの実施形態では、方向変更要素640は、アウトカップリング要素645の位置の反対側の光ガイド610の位置に配置されてよい。いくつかの実施形態では、方向変更要素640は、光ガイド610の第2の面610-2に配置されてもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、方向変更要素640は、光ガイド610の一部として第2の面610-2に一体的に形成されてよい。いくつかの実施形態では、方向変更要素640は別個に形成されてもよく、また、光ガイド610の第2の面610-2に配置されても(たとえば、貼り付けられても)よい。いくつかの実施形態では、方向変更要素640は、光ガイド610の第1の面610-1に配置されてよい。たとえば、いくつかの実施形態では、方向変更要素640は、光ガイド610の一部として第1の面610-1に一体的に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、方向変更要素640は別個に形成されてもよく、また、光ガイド610の第1の面610-1に配置されても(たとえば、貼り付けられても)よい。
【0131】
いくつかの実施形態では、方向変更要素640とアウトカップリング要素645は、同様の構造を有し得る。いくつかの実施形態では、方向変更要素640は、1つまたは複数の回折格子、1つまたは複数のカスケード反射器、1つまたは複数のプリズム面要素、および/またはホログラフィック反射器のアレイ、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、方向変更要素640は、表面レリーフ格子、体積ホログラム、偏光選択性格子、偏光体積ホログラム、メタ表面格子、別のタイプの回折素子、またはこれらの任意の組み合わせなどの、1つまたは複数の回折格子を含み得る。方向変更要素640はまた、折り返し格子640または方向変更格子640と呼ばれることもある。いくつかの実施形態では、方向変更要素640は、図3Aに示された多層PVH300、図5Bに示された多層PVH330、図3Cに示された多層PVH350、図5Aに示された多層PVH500、図5Bに示された多層PVH530、または図5Cに示された多層PVH550などの、本明細書に開示された多層PVHを含み得る。いくつかの実施形態では、光ガイド610は、本明細書に開示された多層PVHの基板として機能し得る。インカップリング要素635およびアウトカップリング要素645と結合された光ガイド610が、ARまたはMR結合器として機能する場合、光ガイド610は、光源アセンブリ605によって生成された仮想画像が現実世界画像またはシースル画像と重ね合わされ得るように、仮想画像を表す画像光630と現実世界環境からの光602とを一緒にすることができる。本明細書に開示された多層PVHを含む方向変更要素640は、重ね合わせ画像の画質が著しく改善され得るように、アウトカップリング要素645から受光された、レインボー効果が低減された可視多色光602を回折させるように構成することができる。いくつかの実施形態では、たとえば、光源アセンブリ605によって生成された光の瞳を方向変更する、折り返す、および/または拡大する複数の機能が組み合わされて単一の要素に、たとえばアウトカップリング要素にされてもよい。
【0132】
いくつかの実施形態では、光ガイドディスプレイシステム600は、積層構成(図6には示されていない)で配置された複数の光ガイド610を含み得る。複数の光ガイド610のうちの少なくとも1つ(たとえば、それぞれ)は、1つまたは複数の回折素子(たとえば、インカップリング要素、アウトカップリング要素、および/または方向付け要素)と結合されても、これを含んでいてもよく、この回折素子は、画像光630を眼660に向けて導くように構成することができる。いくつかの実施形態では、積層構成で配置された複数の光ガイド610は、拡大多色画像光(たとえば、フルカラー画像光)を出力するように構成することができる。いくつかの実施形態では、光ガイドディスプレイシステム600は、1つまたは複数の光源アセンブリ605および/または1つまたは複数の光ガイド610を含み得る。いくつかの実施形態では、光源アセンブリ605のうちの少なくとも1つ(たとえば、それぞれ)は、原色(たとえば、赤、緑、または青)および所定のFOV(またはFOVの所定の一部分)に対応する特定の波長帯の単色画像光を発するように構成することができる。いくつかの実施形態では、光ガイドディスプレイシステム600は、たとえば、赤、緑、および青の光それぞれを任意の適切な順序でインカップリングし、続いてアウトカップリングすることによって構成要素の色の画像(たとえば、原色画像)を送出するように構成された、3つの異なる光ガイド610を含み得る。いくつかの実施形態では、光ガイドディスプレイアセンブリ600は、たとえば、赤と緑の光の組み合わせ、および緑と青の光の組み合わせそれぞれを任意の適切な順序でインカップリングし、続いてアウトカップリングすることによって構成要素の色の画像(たとえば、原色画像)を送出するように構成された、2つの異なる光ガイドを含み得る。いくつかの実施形態では、光源アセンブリ605の少なくとも1つ(たとえば、それぞれ)は、多色画像光(たとえば、フルカラー画像光)を発するように構成することができる。図6に示された眼660と光源アセンブリ605の相対的な位置は例示が目的であり、いくつかの実施形態では、眼660および光源アセンブリ605は、光ガイド610の同じ側に配置されてもよい。
【0133】
図7は、本開示の実施形態による、物体追跡システム700の概略図を示す。いくつかの実施形態では、物体追跡システム700は、NEDで実施されてよい。物体追跡システム700は、ユーザの眼などの、追跡されるターゲットまたは物体から発せられるか、または反射される光を利用することによって画像を生成することができる。説明の目的で、以下の説明では、視線追跡システムが物体追跡システムの例として用いられる。眼は、追跡される物体の例として用いられる。視線追跡システム(または方法)は、物体追跡システム(または方法)の例として本明細書で説明される。物体追跡システム700は、ユーザの眼以外のターゲットまたは物体を追跡するために使用されてもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態では、視線追跡システム700は、ユーザの片眼または両眼715を照明するための光を発するように構成された光源705を含み得る。光源705は、ユーザの視線の外(たとえば、眼715の下)に置かれてよい。図7は、例示の目的で片眼715を示している。眼715を追跡するための構成要素は、図7では省かれているユーザの他方の眼を追跡するために複製され得ることを理解されたい。
【0134】
いくつかの実施形態では、光源705から発せられる光は、狭いスペクトルまたは比較的広いスペクトルを含むことができ、1つまたは複数の光の波長は、赤外線(「IR」)スペクトル内にあってよく、すなわち、光源705のスペクトルは、IRスペクトルの少なくとも一部分の中にある、少なくとも一部分と重なり合う、または少なくとも一部分を包含することがある。いくつかの実施形態では、光源705は、近赤外(「NIR」)帯域またはスペクトル(約750nm~1250nm)の光、または電磁スペクトルの他のどれか一部分の光を発することができる。NIRスペクトル光は、人間の眼には見えず、したがって、動作中に、NEDを装着しているユーザの気を散らさないので、いくつかの用途では望ましいことがある。IR光は、眼715の瞳領域、ユーザの眼715全体、ユーザの眼715の上、下、左側もしくは右側などの近くの領域によって、または、まぶたおよび/もしくは眼715のまわりの顔の皮膚を含めて眼715と眼715の近くの領域とを含む領域で反射され得る。
【0135】
視線追跡システム700は、眼715で反射されたIR光を光センサ710に向けて導くように構成された回折光学素子720を含み得る。光センサ710は、回折光学素子720と向かい合って配置されてよい。光センサ710は、回折光学素子720によって導かれたIR光を受光し、受光光に基づいた眼715の画像などの信号または情報を視線追跡のために生成するように構成することができる。光センサ710は、IRスペクトルの少なくとも一部分を含むスペクトル内の波長を有する光を感知可能であってよい。いくつかの実施形態では、光センサ710は、IR光に対しては感知可能であり得るが可視多色光に対しては感知可能でないことがある。いくつかの実施形態では、光センサ710には、電荷結合素子(「CCD」)カメラ、相補型金属酸化物半導体(「CMOS」)センサ、N型金属酸化物半導体(「NMOS」)センサ、ピクセル化偏光カメラ、または他の任意の適切なカメラのうちの1つまたは複数などのカメラが含まれ得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、光センサ710は、IR光を処理して眼715の画像を生成するように、かつ/または眼715の画像を解析して、ユーザにどの情報を提示すべきかを決定するか、または情報の提示のレイアウトを決定するなどのための、視線追跡(たとえば、視線追跡情報)および他の動作に使用できる情報を取得するように構成された、プロセッサを含み得る。いくつかの実施形態では、光センサ710はまた、生成された画像などのデータを記憶するように構成された、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体(たとえば、コンピュータ可読メモリ)も含み得る。いくつかの実施形態では、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、本明細書に開示されたいずれの方法の様々な工程も実行するためのプロセッサによって実行可能であり得る、コードまたは命令を記憶することができる。いくつかの実施形態では、プロセッサ、および非一時的なコンピュータ可読媒体は、光センサ710とは別に設けられてもよい。たとえば、視線追跡システム700は、光センサ710と通信可能に接続されている、かつ、光センサ710からデータを受信するように構成されている、コントローラを含み得る。コントローラは、プロセッサ、および非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含み得る。コントローラは、光センサ710から受信したデータ(たとえば、眼715の画像)を解析して、視線追跡または他の目的のための情報を得るように構成することができる。いくつかの実施形態では、視線追跡システム700は、視線追跡情報を決定するための眼に関連するセンサデータを取得するための、モーションセンサなどの他のセンサを含み得る。視線追跡情報は、光センサ710、および/または視線追跡システム700に含まれ得る他のセンサによって取得されたデータに基づいて、決定されてよい。
【0137】
いくつかの実施形態では、回折光学素子720は、本明細書に開示された多層PVH750を含むことができ、この多層PVHは、図3Aに示された多層PVH300、図5Bに示された多層PVH330、図3Cに示された多層PVH350、図5Aに示された多層PVH500、図5Bに示された多層PVH530、または図5Cに示された多層PVH550のうちの実施形態であってよい。多層PVH750は、眼715で反射されたIR光701(以下の説明では反射光と呼ばれる)を光センサ710に向けて回折させるように構成することができる。たとえば、反射IR光701は、多層PVH750に0度(すなわち、多層PVH750の表面に対して垂直)、30度、45度、60度、70度などの様々な入射角で入射した後、ブラッグ条件が満たされるときに多層PVH750によって回折IR光703として回折され得る。光センサ710は、回折IR光703を受光するように置かれ(たとえば、所定の角度に向けられ)ており、回折IR光703に基づいて眼715の画像を生成することができる。多層PVH750はまた、ユーザの眼715が、現実世界画像またはシースル画像に重ね合わされたディスプレイシステム生成仮想物体を認知できるように、現実世界環境から眼715に向けて可視多色光702を透過させるように構成することもできる。いくつかの実施形態では、多層PVH750を含む回折光学素子720はまた、視線追跡結合器とも呼ばれ、眼715で反射されたIR光701を光センサ710に向けて回折させ、コンピュータ生成画像を現実世界環境の直視像に重ね合わせることができる。上記で説明されたように、従来の視線追跡結合器は、現実世界環境から来る可視多色光を回折構造の故に回折させるので、特にNEDを装着したユーザが明るい光源を特定の角度から見るときに、シースル視像にレインボー効果が生じることがある。このようなシースルアーチファクトは、シースル視像の画質を低下させ得る。本開示では、本明細書に開示された多層PVH750を含む視線追跡結合器(たとえば、回折光学素子720)は、可視多色光702を回折させるときのレインボー効果をシースル視像の画質が著しく改善され得るように低減させるべく構成することができる。
【0138】
図6および図7は、現実世界環境からの可視多色光を回折させるときのレインボー効果を抑制するための、本明細書に開示された多層PVHを使用する2つの光学システムを示す。これら2つの光学システムは例示を目的としており、本開示の範囲を限定しない。たとえばシースル画像におけるレインボー効果を低減させるための例示的な構造および機構は、本開示によって限定されない他の任意の光学システムに適用可能であり得る。
【0139】
図8Aは、本開示の実施形態による光学システム800の概略図を示す。例示の目的で、ニアアイディスプレイ(「NED」)が光学システム800の例として使用されており、1つまたは複数の開示された多層PVHを、NED800がAR用途および/またはMR用途に使用されるときのシースル視像のレインボー効果が低減され得るように実施することができる。説明の便宜上、光学システム800はNED800と呼ばれることもある。いくつかの実施形態では、NED800はヘッドマウントディスプレイ(「HMD」)と呼ばれることがある。NED800は、1つまたは複数の画像、ビデオ、音声、またはこれらの組み合わせなどのメディアコンテンツをユーザに提示することができる。いくつかの実施形態では、音声は、外部デバイス(たとえば、スピーカおよび/またはヘッドフォン)を介してユーザに提示され得る。NED800は、VRデバイス、ARデバイス、MRデバイス、またはこれらの組み合わせとして動作し得る。いくつかの実施形態では、NED800がARおよび/またはMRデバイスとして動作するとき、NED800の一部分が少なくとも部分的に透明であり、NED800の内部構成要素が少なくとも部分的に見えてよい。
【0140】
図8Aに示されるように、NED800は、ユーザの頭部に装着されるように構成されたフレーム805と、フレーム805に取り付けられた左眼ディスプレイシステム810Lおよび右眼ディスプレイシステム810Rと、視線追跡システム(図8Aには示されていない)とを含み得る。いくつかの実施形態では、図8Aに示されている特定のデバイスが省かれることがある。いくつかの実施形態では、図8Aに示されていない追加のデバイスまたは構成要素もまた、NED800に含まれ得る。フレーム805は、右ディスプレイシステム810Rおよび左ディスプレイシステム810Lをユーザの体部(たとえば、頭部)に(たとえば、ユーザの眼に隣接して)取り付けるように構成された、適切なタイプの取り付け構造を含み得る。フレーム805は、ユーザに媒体を表示するように構成されていてよい1つまたは複数の光学素子に結合することができる。いくつかの実施形態では、フレーム805は眼鏡のフレームであってもよい。
【0141】
右ディスプレイシステム810Rおよび左ディスプレイシステム810Lは、ユーザがNED800によって提示されたコンテンツを見ること、および/または現実世界物体の画像を見ることを可能にするように構成することができる(たとえば、右ディスプレイシステム810Rおよび左ディスプレイシステム810Lのそれぞれが、シースル光学素子を含み得る)。いくつかの実施形態では、右ディスプレイシステム810Rおよび左ディスプレイシステム810Lは、光(たとえば、仮想画像に対応する画像光)を生成するように、かつ画像光をユーザの眼まで導くように構成された、任意の適切なディスプレイアセンブリ(図示せず)を含み得る。いくつかの実施形態では、NED800は投影システムを含み得る。例示の目的で、図8Aは、投影システムが、フレーム805に結合されたプロジェクタ835を含み得ることを示している。たとえば、左眼ディスプレイシステム810Lおよび右眼ディスプレイシステム810Rのそれぞれは、コンピュータ生成された仮想画像をユーザのFOV内の左ディスプレイウィンドウ815Lおよび右ディスプレイウィンドウ815Rに投影するように構成された画像ディスプレイ構成要素を含み得る。
【0142】
図8Bは、本開示の実施形態による、図8Aに示されたNED800の半分の断面図である。例示の目的で、図8Bは、左ディスプレイシステム810Lに関連した断面図を示す。図8Bに示されるように、左ディスプレイシステム810Lは、ユーザの眼860用の光ガイドディスプレイアセンブリ812を含み得る。光ガイドディスプレイアセンブリ812は、図6に示された光ガイドディスプレイシステム600の実施形態であってもよい。すなわち、光ガイドディスプレイアセンブリ812は、シースル視像におけるレインボー効果を低減させるために、たとえば、アウトカップリング要素(または、含まれる場合には方向変更要素)として機能するか、またはそれに含まれる、本明細書に開示された1つまたは複数の多層PVHを含み得る。出口瞳862は、ユーザがNED800を装着するときに眼860がアイボックス865内に位置する場所であってもよい。例示の目的で、図8Bは、単一の眼860および単一の光ガイドディスプレイアセンブリ812に関連した断面図を示す。いくつかの実施形態では、図8Bに示された光ガイドディスプレイアセンブリ812とは別個であるが類似している別の光ガイドディスプレイアセンブリが、ユーザの他方の眼の出口瞳に置かれたアイボックスに画像光を供給し得る。いくつかの実施形態では、光ガイドディスプレイアセンブリ812は、NED800の構成要素であってよい。いくつかの実施形態では、光ガイドディスプレイアセンブリ812は、画像光を特定の場所まで導く何らか他のNEDまたはシステムの構成要素であってもよい。図8Bに示されるように、光ガイドディスプレイアセンブリ812は、ユーザの一方の眼860に提供されてもよい。この一方の眼の光ガイドディスプレイアセンブリ812は、もう一方の眼の光ガイドディスプレイアセンブリ812から分離されていてよく、または部分的に分離されていてよい。いくつかの実施形態では、単一の光ガイドディスプレイアセンブリ812が、ユーザの両方の眼860用として含まれ得る。
【0143】
いくつかの実施形態では、NED800は、光ガイドディスプレイアセンブリ812と眼860の間に配置された1つまたは複数の光学素子を含み得る。この光学素子は、たとえば、光ガイドディスプレイアセンブリ812から出力される画像光の収差を補正するようにも、光ガイドディスプレイアセンブリ812から出力される画像光を拡大するようにも、光ガイドディスプレイアセンブリ812から出力される画像光の別のタイプの光学調整を実施するようにも、構成することができる。1つまたは複数の光学素子の例としては、絞り、フレネルレンズ、凸レンズ、凹レンズ、フィルタ、画像光に影響を及ぼす他の任意の適切な光学素子、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。いくつかの実施形態では、光ガイドディスプレイアセンブリ812は、光ガイドディスプレイのスタックを含み得る(たとえば、各光ガイドディスプレイは、光ガイド、光源アセンブリ、インカップリング要素、アウトカップリング要素、および、含まれていれば方向変更要素を含み得る)。いくつかの実施形態では、積層光ガイドディスプレイは、それぞれの単色光源が別々の色の光を発するように構成されている光ガイドディスプレイを積層することによって形成された、多色ディスプレイ(たとえば、赤緑青(「RGB」)ディスプレイ)を含み得る。たとえば、積層光ガイドディスプレイは、画像光を複数の平面に投影するように構成された多色ディスプレイ(たとえば、マルチフォーカスカラーディスプレイ)を含み得る。いくつかの実施形態では、積層光ガイドディスプレイは、画像光を複数の平面に投影するように構成された単色ディスプレイ(たとえば、マルチフォーカス単色ディスプレイ)を含み得る。いくつかの実施形態では、NED800は適応型調光要素を含むことができ、これは、現実世界物体で反射された光の透過率を動的に調整することができ、それによって、NED800をVRデバイスとARデバイスの間で、またはVRデバイスとMRデバイスの間で切り替える。いくつかの実施形態では、AR/MRデバイスとVRデバイスの間での切り替えとともに、適応型調光要素は、ARおよび/またはMRデバイスにおいて、現実世界物体で反射される光と仮想画像光との明るさの差を緩和するために使用され得る。
【0144】
NED800に含まれる視線追跡システムは、追跡されている眼860から発せられる光または反射される光を利用することによって視線追跡情報を提供するように構成された光学システムであってよい。視線追跡システムは、図7に示された視線追跡システム700と類似していてよい。たとえば、視線追跡システムは、ユーザの片眼または両眼860を照明するための光を発するように構成された光源841と、光センサ842と、眼860で反射された光を回折によって光センサ842に向けて案内するように構成された視線追跡結合器843とを含み得る。光センサ842は、視線追跡結合器843が回折された光を受光するように視線追跡結合器843と相対的に配置されてよい。光センサ842は、受光光に基づいた信号または画像を視線追跡のために生成するように構成することができる。たとえば、眼860の画像は、視線追跡結合器から受光された光に基づいて生成され得る。視線追跡結合器843は、本明細書に開示された、レインボー効果が低減された多層PVHを含み得る。
【0145】
図9は、本開示の実施形態による方法900を示すフローチャートである。方法900は、シースル視像におけるレインボー効果(または回折アーチファクト)を低減させるために実施されてよい。方法900は、現実世界環境から受光された可視多色光の高い回折次数を抑制することによってレインボー効果を低減させるために実施されてよい。方法900は、第1の複屈折媒体層が第1の光を受光する工程を含み得る(工程910)。いくつかの実施形態では、第1の光は、現実世界環境からの可視多色光であってよい。いくつかの実施形態では、第1の複屈折媒体層は第1のPVHであってもよい。第1の複屈折媒体層中の第1の光学異方性分子のダイレクタの配向は、第1の面内ピッチおよび第1の垂直ピッチで空間的に変化し得る。方法900はまた、第1の複屈折媒体層が第1の光を、第1の数の回折次数を含む第2の光として少なくとも部分的に回折させる工程も含み得る(工程920)。いくつかの実施形態では、第2の光は、第1の光の前方回折部分を含む可視多色光であってよい。いくつかの実施形態では、第2の光は、第1の光の前方回折部分と第1の光の直接透過部分とを含む可視多色光であってもよい。方法900はまた、第2の複屈折媒体層が第2の光を受光する工程も含み得る(工程930)。いくつかの実施形態では、第2の複屈折媒体層は第2のPVHであってよい。第2の複屈折媒体層中の第2の光学異方性分子のダイレクタの配向は、第2の面内ピッチおよび第2の垂直ピッチで空間的に変化し得る。
【0146】
第1の複屈折媒体層は、厚さが比較的厚くなるように構成することができ、第2の複屈折媒体層は、厚さが比較的薄くなるように構成することができる。第2の複屈折媒体層の厚さは、第1の複屈折媒体層の厚さよりかなり薄くてもよい。第2の複屈折媒体層の厚さと第1の複屈折媒体層の厚さの比は、所定の百分率、たとえば約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。第1の面内ピッチは、第2の面内ピッチと実質的に同じになるように構成することができ、第2の垂直ピッチは、第1の垂直ピッチの約半分になるように構成することができる。方法900はまた、第2の複屈折媒体層が第2の光を、第2の数の回折次数を含む第3の光として少なくとも部分的に回折させる工程も含み得る(工程940)。いくつかの実施形態では、第3の光は、第2の光の前方回折部分を含む可視多色光であってよい。いくつかの実施形態では、第3の光は、第2の光の前方回折部分と第2の光の直接透過部分とを含む可視多色光であってもよい。いくつかの実施形態では、第3の光に含まれる回折次数の第2の数は、第2の光に含まれる回折次数の第1の数よりも小さくすることができる。すなわち、第3の光は、第2の光よりも小さい数の回折次数を含み得る。言い換えると、第3の光は、含み得る回折次数が第2の光よりも少ない。いくつかの実施形態では、第1と第2の複屈折媒体層を組み合わせたものの回折効率は、第1の複屈折媒体層だけの回折効率よりも小さくなり得る。第3の光は、光学デバイスまたは光学システムのアイボックスに向かって伝搬し得る。いくつかの実施形態では、方法900はまた、光結合器によって、仮想画像を表す画像光と第3の光を、光学デバイスまたは光学システムのアイボックスに向かって伝搬する結合光として結合する工程も含み得る。いくつかの実施形態では、方法900はまた、第1の複屈折媒体層および第2の複屈折媒体層が物体で反射された赤外光を光センサに向けて回折させる工程も含み得る。
【0147】
いくつかの実施形態では、方法900はまた、第3の複屈折媒体層が第3の光を受光する工程も含み得る。いくつかの実施形態では、第3の複屈折媒体層は第3のPVHであってよい。第3の複屈折媒体層中の第3の光学異方性分子のダイレクタの配向は、第3の面内ピッチおよび第3の垂直ピッチで空間的に変化し得る。いくつかの実施形態では、第1の複屈折媒体は、厚さが比較的厚くなるように構成することができ、第3の複屈折媒体層は、厚さが比較的薄くなるように構成することができる。いくつかの実施形態では、第3の複屈折媒体層の厚さは、第1の複屈折媒体層の厚さよりかなり薄くてもよい。第3の複屈折媒体層の厚さと第1の複屈折媒体層の厚さの比は、所定の百分率、たとえば約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。いくつかの実施形態では、第1の面内ピッチは、第3の面内ピッチと実質的に同じになるように構成することができる。いくつかの実施形態では、第3の垂直ピッチは、第1の垂直ピッチの約半分になるように構成することができる。第3の垂直ピッチは、第2の垂直ピッチと実質的に同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、方法900はまた、第3の複屈折媒体層が第3の光を、第3の数の回折次数を含む第4の光として少なくとも部分的に回折させる工程も含み得る。いくつかの実施形態では、第4の光は、第3の光の前方回折部分を含む可視多色光であってよい。いくつかの実施形態では、第4の光は、第3の光の前方回折部分と第3の光の直接透過部分とを含む可視多色光であってもよい。第4の光に含まれる回折次数の第3の数は、第3の光に含まれる回折次数の第2の数よりも小さくすることができる。すなわち、第4の光は、第3の光よりも小さい数の回折次数を含み得る。言い換えると、第4の光は、含み得る回折次数が第3の光よりも少ない。いくつかの実施形態では、第1から第3の複屈折媒体層を組み合わせたものの回折効率は、第1と第2の複屈折媒体層だけを組み合わせたものの回折効率よりも小さくなり得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、方法900はまた、第4の複屈折媒体層が第4の光を受光する工程も含み得る。いくつかの実施形態では、第4の複屈折媒体層は第4のPVHであってよい。第4の複屈折媒体層中の第4の光学異方性分子のダイレクタの配向は、第4の面内ピッチおよび第4の垂直ピッチで空間的に変化し得る。いくつかの実施形態では、第3の複屈折媒体は、厚さが比較的厚くなるように構成することができ、第4の複屈折媒体層は、厚さが比較的薄くなるように構成することができる。いくつかの実施形態では、第4の複屈折媒体層の厚さは、第3の複屈折媒体層の厚さよりかなり薄くてもよい。第4の複屈折媒体層の厚さと第3の複屈折媒体層の厚さの比は、所定の百分率、たとえば約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。いくつかの実施形態では、第4の面内ピッチは、第3の面内ピッチと実質的に同じになるように構成することができる。いくつかの実施形態では、第4の垂直ピッチは、第3の垂直ピッチの約半分になるように構成することができる。第3の垂直ピッチは、第1の垂直ピッチと実質的に同じであっても異なっていてもよい。第3の面内ピッチは、第1の面内ピッチと実質的に同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、方法900はまた、第4の複屈折媒体層が第4の光を、第4の数の回折次数を含む第5の光として少なくとも部分的に回折させる工程も含み得る。いくつかの実施形態では、第5の光は、第4の光の前方回折部分を含む可視多色光であってよい。いくつかの実施形態では、第5の光は、第3の光の前方回折部分と第4の光の直接透過部分とを含む可視多色光であってもよい。第5の光に含まれる回折次数の第4の数は、第4の光に含まれる回折次数の第3の数よりも小さくすることができる。すなわち、第5の光は、第4の光よりも小さい数の回折次数を含み得る。言い換えると、第5の光は、含み得る回折次数が第4の光よりも少ない。いくつかの実施形態では、第1から第4の複屈折媒体層を組み合わせたものの回折効率は、第1から第3の複屈折媒体層だけを組み合わせたものの回折効率よりも小さくなり得る。
【0149】
たとえばシースル画像におけるレインボー効果を低減させるための方法900は、本開示によって限定されていない任意の偏光選択性素子に適用可能であり得る。たとえば、方法900は、第1の光を第1の偏光選択性素子で受光する工程を含み得る。第1の偏光選択性素子中の光学異方性分子またはサブ波長構造の配向は、第1の面内ピッチおよび第1の垂直ピッチで空間的に変化し得る。方法900はまた、第1の偏光選択性素子で第1の光を、第1の数の回折次数を含む第2の光として少なくとも部分的に回折させる工程も含み得る。方法900はまた、第2の光を第2の偏光選択性素子で受光する工程も含み得る。第2の偏光選択性素子中の光学異方性分子またはサブ波長構造の配向は、第2の面内ピッチおよび第2の垂直ピッチで空間的に変化し得る。第2の偏光選択性素子の厚さは、第1の偏光選択性素子の厚さよりかなり薄くてもよい。第2の偏光選択性素子の厚さと第1の偏光選択性素子の厚さの比は、所定の百分率、たとえば約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%より小さくてもよい。第1の面内ピッチは、第2の面内ピッチと実質的に同じになるように構成することができ、第2の垂直ピッチは、第1の垂直ピッチの約半分になるように構成することができる。方法900はまた、第2の偏光選択性素子で第2の光を、第2の数の回折次数を含む第3の光として少なくとも部分的に回折させる工程も含み得る。いくつかの実施形態では、第3の光に含まれる回折次数の第2の数は、第2の光に含まれる回折次数の第1の数よりも小さくすることができる。いくつかの実施形態では、第1と第2の偏光選択性素子を組み合わせたものの回折効率は、第1の偏光選択性素子だけの回折効率よりも小さくなり得る。
【0150】
第3の光は、光学デバイスまたは光学システムのアイボックスに向かって伝搬し得る。いくつかの実施形態では、方法900はまた、光結合器によって、仮想画像を表す画像光と第3の光を、光学デバイスまたは光学システムのアイボックスに向かって伝搬する結合光として結合する工程も含み得る。いくつかの実施形態では、方法900はまた、第1の偏光選択性素子および第2の偏光選択性素子が物体で反射された赤外光を光センサに向けて回折させる工程も含み得る。
【0151】
本開示の実施形態についての前述の説明は例示の目的で提示されている。説明は網羅的なものではなく、あるいは、開示されたそのままの形に本開示を限定するものでもない。当業者には、上記の開示に照らして多くの修正形態および変形形態が可能であることが理解されよう。
【0152】
本明細書のいくつかの部分では、本開示の実施形態を、情報に対する動作のアルゴリズムおよび記号表現に関して説明していることがある。これらの動作は、機能的、計算的、または論理的に説明されているが、コンピュータプログラムまたは同等の電気回路、マイクロコードなどによって実現され得る。さらに、これらの動作の装置をモジュールと呼ぶことが場合により便利であることが、一般性を失うことなく判明している。説明された動作およびその関連するモジュールは、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはこれらの任意の組み合わせとして具現化することができる。
【0153】
本明細書に記載の工程、動作、または処理のいずれも、1つまたは複数のハードウェアモジュールおよび/またはソフトウェアモジュールだけで、または他のデバイスとの組み合わせで行い、または実施することができる。1つの実施形態では、ソフトウェアモジュールが、コンピュータプログラムコードを含有するコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品によって実施され、このコンピュータプログラムコードは、記載された工程、動作、または処理のいずれか、または全部を行うために、コンピュータプロセッサによって実行することができる。いくつかの実施形態では、ハードウェアモジュールは、デバイス、システム、光学素子、コントローラ、電気回路、論理ゲートなどのハードウェア構成要素を含み得る。
【0154】
本開示の実施形態はまた、本明細書の動作を行うための装置とも関連がある。この装置は、特定の目的のために特別に構築することができ、かつ/または、コンピュータに記憶されたコンピュータプログラムによって選択的に起動もしくは再構成される汎用計算デバイスを含むことができる。このようなコンピュータプログラムは、非一時的な有形のコンピュータ可読記憶媒体、または電子的命令を記憶するのに適している任意のタイプの媒体に記憶することができ、これらの媒体はコンピュータシステムバスに結合することができる。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、プログラムコードを記憶することができる任意の媒体、たとえば、磁気ディスク、光ディスク、読み取り専用メモリ(「ROM」)またはランダムアクセスメモリ(「RAM」)、電気的プログラム可能読み取り専用メモリ(「EPROM」)、電気的消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ(「EEPROM」)、レジスタ、ハードディスク、固体ディスクドライブ、スマートメディアカード(「SMC」)、セキュリティデジタルカード(「SD」)、フラッシュカードなど、であってよい。さらに、本明細書に記載のいずれの計算システムも、単一のプロセッサを含むことができ、あるいは計算能力の増大のために多数のプロセッサを使うアーキテクチャとすることができる。プロセッサは、中央処理装置(「CPU」)、グラフィックス処理装置(「GPU」)、またはデータを処理するように構成されている、および/もしくはデータに基づいて計算を実施する任意の処理デバイスであってよい。プロセッサは、ソフトウェア構成要素とハードウェア構成要素の両方を含み得る。たとえば、プロセッサは、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、プログラマブルロジックデバイス(「PLD」)、またはこれらの組み合わせなどの、ハードウェア構成要素を含み得る。PLDは、複合プログラマブルロジックデバイス(「CPLD」)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)などであってよい。
【0155】
本開示の実施形態はまた、本明細書に記載の計算処理によって製造される製品にも関連があり得る。このような製品は、計算処理から得られた情報を含むことができ、この情報は、非一時的な有形のコンピュータ可読記憶媒体に記憶され、また、本明細書に記載のコンピュータプログラム製品または他のデータ組み合わせの任意の実施形態を含み得る。
【0156】
さらに、図面に示された実施形態が単一の要素を示す場合、その実施形態、または図に示されていないが本開示の範囲内にある別の実施形態は、複数のそのような要素を含み得ると理解されたい。同様に、図面に示された実施形態が複数のそのような要素を示す場合、その実施形態、または図に示されていないが本開示の範囲内にある別の実施形態は、そのような要素を1つだけ含み得ると理解されたい。図面に示された要素の数は、説明のためだけのものであり、実施形態の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、特に断らない限り、図面に示された実施形態は相互に排他的ではなく、これらは任意の適切な方法で組み合わせることができる。たとえば、1つの図/実施形態に示されているが別の図/実施形態には示されていない要素がそれでもなお、他の図/実施形態に含まれていてもよい。1つまたは複数の光学層、膜、プレート、または要素を含む、本明細書に開示された任意の光学デバイスにおいて、図に示された層、膜、プレート、または要素の数は、説明のためだけのものである。図に示されていないが本開示の範囲内に依然としてある他の実施形態において、同一または異なる図/実施形態で示されている同一または異なる層、膜、プレート、または要素は、様々に組み合わされて、または繰り返されてスタックを形成することができる。
【0157】
例示的な実施態様を示すために、様々な実施形態が説明されている。開示された実施形態に基づいて、当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な他の変更、修正、再配置、および置換を行うことができる。したがって、本開示は、上記の実施形態を参照して詳細に説明されているが、上述の実施形態に限定されない。本開示は、本開示の範囲から逸脱することなく、他の等価な形で具現化され得る。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲で定義される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
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図2B
図3A
図3B
図3C
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図9
【国際調査報告】