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特表2023-548006調節可能な流体切学的特性を有する波力エネルギー吸収体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】調節可能な流体切学的特性を有する波力エネルギー吸収体
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/16 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
F03B13/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521180
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 GB2021052853
(87)【国際公開番号】W WO2022096878
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】2017475.1
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514114529
【氏名又は名称】マリン パワー システムズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】グラハム フォスター
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA02
3H074AA15
3H074BB21
3H074CC50
(57)【要約】
波力エネルギー(WEC)変換システムで用いられる浮体式波力エネルギー取り込み装置が供される。当該装置は吸収体を備える。前記吸収体は、該吸収体の流体力学的特性に関連付けられる物理特性を有する。前記吸収体の前記物理特性、つまりは前記吸収体の前記流体力学的特性は、調節されるように構成される。本発明は、大きな波力による損傷の影響を受けにくいWEC変換システムで用いられる改良されたエネルギー取り込み部を提供することを目的とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波力エネルギー(WEC)変換システムで用いられる波力エネルギー取り込み装置であって、
吸収体を備え、
当該吸収体は、該吸収体の流体力学的特性に関連する物理特性を有し、
当該吸収体の前記物理特性、つまりは当該吸収体の流体力学的特性は調節されるように構成される、
装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記流体力学的特性は、当該吸収体の上下揺れ、前後揺れ、縦揺れ、左右揺れ、及び横揺れ、又はこれらの成分に係る応答振幅演算子、並びに、当該吸収体の抵抗係数及び該抵抗係数の成分からなる群から選ばれる1つ以上である、装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置であって、前記物理特性は、サイズ、体積、形状、形状、幾何学形状、多孔性、透過性、表面積、質量、重さ、浮力から選ばれる1つ以上である、装置。
【請求項4】
請求項1又は2又は3に記載の装置であって、前記の調節された物理特性は、当該吸収体の少なくとも1つの主要寸法である、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、
当該吸収体は、波の方向と垂直な方位をとる主軸を含み、
前記少なくとも1つの寸法は、前記主軸に沿った当該吸収体の長さである、
装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の装置であって、
当該吸収体は、内部に1つ以上の開口部を有する外板で形成され、
前記開口部の1つ以上は、該開口部を塞ぐように構成される対応する閉塞部を備える、
装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置であって、前記閉塞部が、前記閉塞部が対応する開口部を実質的に閉塞する第1位置と、前記閉塞部が実質的に前記対応する開口部を閉塞しない第2位置との間で動かすように構成される、装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の装置であって、
当該吸収体は1つ以上の膨張部を備え、
前記1つ以上の膨張部を膨張及び/又は収縮するように構成され、
前記1つ以上の膨張部の膨張及び/又は収縮は、当該吸収体の様々な物理特性を変化させる、
装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置であって、前記膨張部は当該吸収体の主軸に沿って延びる、装置。
【請求項10】
請求項7に従属するときの請求項8又は9に記載の装置であって、
前記1つ以上の閉塞部は前記1つ以上の膨張部を含み、
前記第1位置では、前記1つ以上の膨張部は、前記対応する開口部を閉塞するように膨張し、
前記第2位置では、前記1つ以上の膨張部は、前記対応する開口部を閉塞しないように収縮する、
装置。
【請求項11】
本発明の第2態様によると、波力エネルギーを有用なエネルギーへ変換するように構成される波力エネルギー変換(WEC)システムであって、
プラットフォームと、
該プラットフォーム上に設けられて請求項1~10のいずれか一項に記載の波力エネルギー取り込み装置を含む駆動集合体、
を備えるシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムであって、
当該波力エネルギー取り込み装置は、前記プラットフォームの上側表面に対してある高さで設けられ、
前記駆動集合体は、使用時高さと収縮高さとの間で前記高さを調節するように構成され、
前記使用時高さは前記収縮高さよりも高い、
システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムであって、前記駆動集合体による前記高さの調節は、当該波力エネルギー取り込み装置の当該吸収体の前記物理特性の調節、前記駆動集合体の作動ストロークのうちの1つ以上とは独立である、システム。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のシステムであって、
前記駆動集合体の前記プラットフォームと当該波力エネルギー取り込み装置が水域中に沈み、当該波力エネルギー取り込み装置は前記使用時高さに位置する使用時設定を有する、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムであって、前記使用時高さでは、当該吸収体の前記物理特性は、当該吸収体への流体力を最大にするように前記調節によって調節される、システム。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか一項に記載の装置であって、当該システムは対嵐設定を有し、
前記対嵐設定では、前記駆動集合体の前記プラットフォームと当該波力エネルギー取り込み装置は水域中に沈んでいて、当該吸収体の前記物理特性は、当該吸収体への流体力を最小にするように前記調節によって調節される、
システム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムであって、前記調節は、当該波力エネルギー取り込み装置が前記収縮高さに位置する又は接近するときに自動的に起こるように構成される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調節可能な流体力学的特性を有する波力エネルギー吸収体を有する波力エネルギー取り込み(WEC)システムに関する。
【背景技術】
【0002】
世界は再生可能エネルギーへ移行している。この移行には、地球に必要とされるエネルギーを供給するためのすべての形態再生可能エネルギーを利用することが必要となる。一の可能性のある再生可能エネルギー源は波力である-これは世界の大洋と海で利用可能な豊富で安定したエネルギー源である。このため、波力取り込みの費用対効果を改善する手段が必要とされる。
【0003】
しかし現在の波を利用する装置には、波力を連続的に取り込む-特に海面状態が変動している間-能力の点で限界がある。波力エネルギー利用装置の適切な特性とは、係る装置が適切な海面状態となる特定の条件の範囲内で波力エネルギーを取り込むのに最適化されていることを意味する。そのように費用対効果の条件が狭いということは、その条件の範囲外-たとえば嵐の海面状態-では、波力エネルギー装置は、縮小された動作状態にされなければ損傷及び故障しやすくなってしまうことを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009002864号公報
【特許文献2】欧州特許第2776707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、波力エネルギーの取り込みを最大化しながら嵐に関連する損傷を受けにくくする波力エネルギー取り込み装置を供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、波力エネルギーを取り込むために水域中に設けられる波力エネルギー吸収体に関する。当該吸収体は、波の運動の結果として当該吸収体に作用する流体力を増加又は減少させるため、当該吸収体の物理特性を変化させるように構成される。本発明に関して、当該吸収体は、前記波の動きに応じて運動し、前記WECシステムの動力変換部へエネルギーを入力する前記WECシステムの一部と理解される。
【0007】
具体的には本発明は、波力エネルギー吸収体に関し、当該吸収体は、波浪状態が小さい間に当該吸収体に作用する流体力を増加させるために当該吸収体の物理特性を変化させるように構成される。そのように変化させる間、当該吸収体は好適には、より広範囲の波浪状態の間でも機能を保つように構成される。
【0008】
典型的な波力エネルギー取り込み吸収体は、最適な波力エネルギーの取り込みが実現される最適海面状態にするように設計され得る。前記最適海面状態とは異なる如何なる海面状態も、そのような波力エネルギー取り込み吸収体の機能を減少させ、さらには当該波力エネルギー取り込み吸収体に取り付けられた駆動集合体システムに障害又は過剰な摩耗をも引き起こす恐れがある。この目的のため、より大きな海面状態の間、波力エネルギー取り込み吸収体は、機能しないように引っ込められるか、あるいは前記駆動集合体システムが保護される機能しない位置に引っ込められ得る。そのような位置はたとえば、より深い位置であるか、あるいは当該吸収体の主要面が波の方向と平行にされることで、流体力が減少するような方位であってよい。穏やかな海では、当該吸収体が機能しない又は機能しない位置にある間では、当該波力エネルギー取り込み吸収体は、利用可能な波力エネルギーを利用できない。
【0009】
本発明は波力エネルギー吸収体を供し、当該吸収体は、該吸収体の流体力学特性に関連する当該吸収体の物理特性を動的に調節するように構成される。従ってそのような調節は、当該吸収体の流体力学的性質を増加又は減少させる。そのような調節は、波が小さい間にエネルギーの取り込みを最大にする一方で、大きな波の間には、当該吸収体に取り付けられた駆動集合体システムへの損傷の危険性を生じさせることなく、依然としてエネルギーが取り込まれ得るように当該吸収体への負荷を減少させるためにされ得る。
【0010】
従って本発明の態様によると、波力エネルギー(WEC)変換システムで用いられる波力エネルギー取り込み装置が供される。当該装置は吸収体を備える。当該吸収体は、該吸収体の流体力学的特性に関連する物理特性を有する。当該吸収体の前記物理特性、つまりは当該吸収体の流体力学的特性は調節されるように構成される。
【0011】
本発明の好適実施形態では、当該装置は、駆動集合体を備えるか、あるいは取付部によってWECシステムの駆動集合体に取り付けられる。好適実施形態では、当該装置は、当該吸収体の前記物理特性、つまりは当該吸収体の前記流体力学的特性の前記調節を実行するように構成された調節機構をさらに備える。従って本願における前記物理特性の「調節」とは、当該装置の調節機構によって-一部の実施形態では-実行可能であると解される。本発明の文脈において、「つまりは」という用語は、前記物理特性の前記調節の直接的な結果としてその後前記流体力学的特性が調節されると解される。「物理特性」という用語は、「1つ以上の」前記物理特性について言及するのに用いられると解される。前記物理特性の各々は対応する流体力学的特性に関連付けられる。2つ以上の前記物理特性は、共通して対応する流体力学的特性に関連付けられ得る。
【0012】
「流体力学的特性」という用語は、当該吸収体の流体力学上の指標又は決定因子として作用する任意の特性として当業者には理解される。WEC設計における関心ある典型的な流体力学的特性はたとえば(以下に限定されないが)、たとえば上下揺れ、前後揺れ、縦揺れ、左右揺れ、及び横揺れ、又はこれらの任意の成分における応答振幅演算子(RAO)、付加質量、抵抗(たとえば抵抗係数のようなもの)、放射力、回折力を含む。他の適切な流体力学的特性も考えられる。
【0013】
「物理特性」という用語は、前記流体力学的特性との関連を有する当該吸収体の任意の物理特性と当業者によって理解される。好適実施形態では、前記物理特性は、サイズ、体積、形状、幾何学形状、多孔性、透過性、表面積、質量、重さ、浮力から選ばれるものである。他の適切な物理特性も考えられる。「多孔性」と「透過性」は、流体が妨害されずに進行可能な当該吸収体を貫く経路の通りやすさを表すことを意図していると理解される。従って多孔性又は透過性の増大は、水の流れに抵抗する、あるいは水の流れを塞ぐ当該装置の全体的な能力が減少することで、当該吸収体の流体力学的応答を変更させることを意味し得る。従って多孔性又は透過性の調節は、当該吸収体を貫く前記通路(複数可)を塞ぐこと又は通すことを含み得る。前記通路は、任意の形態をとってよいし、当該吸収体ないの開口部から得られてよい。
【0014】
一部の実施形態では、前記調節(これは調節機構によってよい)は、当該吸収体の少なくとも1つの寸法を調節するように構成される。好適には当該吸収体は、任意で波の方向と垂直な方位をとり得る主軸を含む。前記少なくとも1つの寸法は、前記主軸に沿った当該吸収体の長さである。好適実施形態では、前記調節は、当該吸収体の前記長さを増大又は減少させるように構成され得る。たとえば当該吸収体は、前記調節によって1つ以上の方向において拡張されるように構成される拡張部を有し得る。一部の例では、当該吸収体は、中央部と周辺部を有し得る。前記周辺部は、前記中央部の少なくとも一部の内部に収容されるか、前記中央部の少なくとも一部の近くに設けられるように構成される。係る実施形態では、前記周辺部は、(たとえば調節機構による)前記調節によって、前記中央部から延びるように移動するように構成され得る。それにより前記調節は好適には、前記周辺部によって当該吸収体の長さを延ばすことで、つまりは前記波と相互作用する表面積及び/又は体積を大きくするように構成される。前記の大きくなった表面積及び/又は体積はつまりは、当該吸収体によって発生する前記流体力を大きくすることによって、当該波力エネルギー取り込み装置がより多くの波力エネルギーを取り込むことを可能にする。
【0015】
一部の実施形態では、当該吸収体は、内部に1つ以上の開口部を有する外殻又は外板を有し得る。前記開口部の1つ以上は、該開口部を塞ぐように構成される対応閉塞部を備え得る。前記開口部の2つ以上は、共通の閉塞部を共有し得る。一部の実施形態では、前記調節は、前記閉塞部が対応する開口部を実質的に閉塞する第1位置と、前記閉塞部が実質的に前記対応する開口部を閉塞しない第2位置との間で前記閉塞部を動かすように構成される。好適実施形態では当該装置の一の側部から対向する側部までの流路を供する。それにより前記開口部が前記第2位置にある前記閉塞部によって妨害されていないときに、流体は一の開口部から対向する開口部まで通過できる。そのため前記閉塞部が前記第2位置にあるとき、好適には当該吸収体の多孔性及び/又は透過性は大きくなる。その結果当該吸収体の流体力学的相互作用は減少し、当該装置によって取り込まれる波力エネルギーは減少する。逆に前記第1位置では、好適には当該吸収体の前記多孔性は減少し、その結果当該吸収体の前記波との流体力学的相互作用は増大し、当該装置によってより多くのエネルギーを取り込むことが可能となる。
【0016】
一部の実施形態では、当該吸収体は1つ以上の膨張部を備え得る。当該吸収体では、前記調節は、前記膨張部を膨張及び収縮するように構成される。前記1つ以上の膨張部は、当該吸収体内部に収容されるか、あるいは当該吸収体の表面上に設けられ得る。そのため前記膨張部は、当該吸収体の様々な物理特性を増大させることで、当該吸収体に作用する波力が影響を受けるように増大させることができる。一部の実施形態では、前記膨張部は、膨張したときに、当該吸収体のサイズ、体積、又は表面積を増大させることで波力が作用し得る表面積を大きくするのに用いられ得る。前記膨張部は、一部の実施形態では、当該吸収体の形状を調節し得る。それにより一旦前記膨張部が膨張すると異なる(たとえば大きい又は小さい)流体力学的形状が実現され、それにより当該吸収体に作用する前記波力に影響を及ぼし得る。一部の実施形態では、前記膨張部は、膨張するときに、当該吸収体内の開口部を閉塞することで、当該吸収体の多孔性を減少させ、かつ波力が作用し得る前記表面を増大させるのに用いられ得る。
【0017】
当該吸収体が1つ以上の閉塞部を備える実施形態では、前記1つ以上の閉塞部は前記1つ以上の膨張部を含み得る。前記第1位置では、前記1つ以上の膨張部は、前記対応する開口部を閉塞するように前記調節によって膨張される。前記第2位置では、前記1つ以上の膨張部は、前記対応する開口部を閉塞しないように前記調節によって収縮される。係る実施形態では、前記1つ以上の膨張部は、当該吸収体内部に収容される。
【0018】
前記膨張部は、一部の実施形態では、好適には当該吸収体から前記膨張部の主軸に沿って延びる。前記膨張部が当該吸収体に隣接する任意の適切な位置に設けられ得る他の実施形態も考えられる。
【0019】
好適実施形態では、当該装置の調節機構は、WECシステム(たとえば浮体式洋上再生可能エネルギーシステム)からの動力を受けることで前記物理特性の調節を行うように構成され得る。好適には前記動力の少なくとも一部は、当該システムによって変換される波力エネルギーを起源とする。前記の変換された波力エネルギーは、当該波力エネルギー取り込み装置によって取り込まれる。従って当該波力エネルギー取り込み装置は、当該WECシステム内のエネルギー変換システムへのエネルギーに寄与し得る。前記エネルギーは、当該装置の前記調節機構に動力を与えるのに用いられ得る。
【0020】
本発明の第2態様によると、波力エネルギーを有用なエネルギーへ変換するように構成される波力エネルギー変換(WEC)システムが供される。当該システムは、プラットフォームと、該プラットフォーム上に設けられて第1態様による波力エネルギー取り込み装置を含む駆動集合体を備える。
【0021】
好適実施形態では、当該システムは、前記駆動集合体を支持する浮体式プラットフォームを有する浮体式洋上再生可能エネルギーシステムである。
【0022】
当該波力エネルギー取り込み装置は、前記プラットフォームの上側表面に対してある高さで設けられ得る。一部の実施形態では、前記駆動集合体は、使用時高さと収縮高さとの間で前記高さを調節するように構成され得る。前記使用時高さは前記収縮高さよりも高い(つまり前記使用時高さは前記水域の表面に近く、前記収縮高さは前記水中でより深い位置にある)。係る実施形態の一部では、前記使用時高さは、当該波力エネルギー取り込み装置が波力エネルギーを取り込み得る高さである一方、前記収縮高さでは、当該波力エネルギー取り込み装置波力エネルギーを取り込み得ない。係る収縮高さは、一部の実施形態では、移送及び保守設定の間、又は、耐嵐設定の間に用いられ得る。
【0023】
好適実施形態では、前記駆動集合体による前記高さの調節は、前記駆動集合体の作動ストロークとは独立であり得る。従って係る実施形態では、前記駆動集合体は、前記高さの調節が行われている間にも波力エネルギーを取り込んで有用なエネルギーへ変換するように機能し続け得る。そのため前記高さの調節は前記駆動集合体が機能する能力を低下させない。
【0024】
好適実施形態では、当該システムは使用時設定を有する。前記使用時設定では、前記駆動集合体の前記プラットフォームと当該波力エネルギー取り込み装置が水域中に沈み、当該波力エネルギー取り込み装置が前記使用時高さに位置する。前記使用時設定では、当該波力エネルギー取り込み装置の当該吸収体は、前記波と相互作用することで当該吸収体は前記水域中を移動して、それにより前記駆動集合体を駆動させるように構成され得る。当該吸収体は好適には、使用時での運動経路の軌跡を追跡する。好適実施形態では、前記使用時高さでは、当該吸収体の前記物理特性は、当該吸収体への流体力を最大にするように前記調節によって調節される。
【0025】
海面状態が変動している間、当該吸収体の前記物理特性が、前記の変動している海面状態に従って前記調節によって動的に調節され得る実施形態が考えられる。たとえば第1期間中での海面状態が小さな海面状態である場合、前記物理特性は、最大波力が当該吸収体に作用することで前記小さな海面状態の間に利用可能な波力エネルギーの取り込みを最大にするように当該吸収体の流体力学的応答を最適化するために前記調節によって調節され得る。前記海面状態が第2期間中により大きな海面状態に変化する場合、前記調節は、前記使用時高さにて当該吸収体に作用し得る波力エネルギーの量を減少させることが可能となるように当該吸収体の前記物理特性を調節し得る。前記の減少した波力エネルギーの量は、波力エネルギーを取り込むときに当該装置を動作させるのに十分だが、安全な波力閾値-超えると、損傷又は過剰な摩耗が当該装置又は当該装置に取り付けられたエネルギー変換システムに加わってしまう恐れがある-を超えない波力を含む。
【0026】
一部の好適実施形態では、当該システムは耐嵐設定を有する。前記耐嵐設定では、前記駆動集合体の前記プラットフォームと当該波力エネルギー取り込み装置は水域中に沈んでいて、当該吸収体の前記物理特性は、当該吸収体への流体力を最小にするように前記調節によって調節される。
【0027】
一部の好適実施形態では、当該吸収体の前記物理特性の調節は、当該波力エネルギー取り込み装置が前記収縮高さに位置するか接近するときに起こるように構成される。前記プラットフォーム又は当該吸収体を受けるように構成されて前記プラットフォーム上で支持される収縮機構若しくは架台は好適には、前記物理特性を調節するため、当該吸収体が前記収縮高さに接近するか、あるいは前記収縮高さにあるときに作動するように構成される調節機構を備える。前記調節は好適には、前記波力エネルギーに対する当該吸収体の応答を弱める。
【0028】
一部の実施形態では、当該システムは、前記駆動集合体によって変換させるエネルギーを受け取り、かつ、蓄積するように構成されるエネルギー蓄積装置を備える。前記調節機構は、前記の蓄積されたエネルギーを受けて、利用することで前記調節を実行するように構成される。従って前記調節機構は、当該装置によって取り込まれた蓄積済エネルギーによって動かされ、他の外部電源を必要としない。
【0029】
本発明の1つ以上の態様および実施形態に組み込むのに適しているとして本明細書に記載された特徴は、本開示の任意のおよびすべての態様および実施形態にわたって一般化可能であることが意図されていることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
ここで添付図面を単なる例示として参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1A】使用時高さに位置する本発明の第1態様による典型的な波力エネルギー取り込み装置を備える第2態様による典型的なWECシステムの斜視図を示している。
図1B図1Aの典型的実施形態の斜視図を示している。当該波力エネルギー取り込み装置は収縮高さに位置する。
図1C図1Aに図示されている波力エネルギー取り込み装置の平面図を示している。
図1D図1Bに図示されている波力エネルギー取り込み装置の切断平面図を示している。
図2A】使用時高さに位置する本発明の第1態様による典型的な波力エネルギー取り込み装置を備える第2態様による他の典型的なWECシステムの斜視図を示している。
図2B図2Aの典型的実施形態の斜視図を示している。当該波力エネルギー取り込み装置は収縮高さに位置する。
図2C図2Aに図示されている波力エネルギー取り込み装置の切断平面図を示している。
図2D図2Bに図示されている波力エネルギー取り込み装置の切断平面図を示している。
図3A】使用時高さに位置する本発明の第1態様による典型的な波力エネルギー取り込み装置を備える第2態様による他の典型的なWECシステムの斜視図を示している。
図3B図3Aの典型的実施形態の斜視図を示している。当該波力エネルギー取り込み装置は収縮高さに位置する。
図3C図3Aに図示されている波力エネルギー取り込み装置の側面図を示している。
図3D図3Bに図示されている波力エネルギー取り込み装置の側面図を示している。
図4A】使用時高さに位置する本発明の第1態様による典型的な波力エネルギー取り込み装置を備える第2態様による他の典型的なWECシステムの斜視図を示している。
図4B図4Aの実施形態の側視図を示している。
図4C図4Aの実施形態の側視図を示している。当該波力エネルギー取り込み装置は収縮高さに位置する。
図5A図4Aに示された実施形態と同様の他の実施形態の側面図を示している。調節機構は波力エネルギー取り込み装置が収縮高さに接近する際に作動するように構成される。
図5B図5Aの実施形態の側視図を示している。当該波力エネルギー取り込み装置は収縮高さに位置する。
図6A】使用時高さに位置する本発明の第1態様による典型的な波力エネルギー取り込み装置を備える第2態様による他の典型的なWECシステムの側面図を示している。
図6B図6Aの実施形態の側視図を示している。当該波力エネルギー取り込み装置は収縮高さに位置する。
図7A】使用時高さに位置する本発明の第1態様による典型的な波力エネルギー取り込み装置を備える第2態様による他の典型的なWECシステムの側面図を示している。
図7B図7Aの実施形態の側面図を示している。当該波力エネルギー取り込み装置は収縮高さに位置する。
図8A】使用時高さに位置する本発明の第1態様による典型的な波力エネルギー取り込み装置を備える第2態様による他の典型的なWECシステムの斜視図を示している。
図8B】第1位置で閉塞部材を備える図8Aに示された波力エネルギー取り込み装置の切断平面図を示している。
図8C】第2位置で閉塞部材を備える図8Bの実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
現在説明されているすべての実施形態は、第2態様によるWECシステムの一部として、第1態様による波力エネルギー取り込み装置を備える。実施形態はそれぞれ、ここで簡単に要約される実質的に同じ一般的な構造を有する。システムは、その上面に駆動集合体を支持するプラットフォームを含む。
【0032】
プラットフォームは、開示された発明の一部を構成するものではなく、駆動集合体の実質的に固定された位置が必要であることを説明するためのものである。この種の波力エネルギー変換装置が効果的であるためには、波力エネルギー吸収体がプラットフォームに対して移動することで生じる両者の間での差動が、動力を発生させるように駆動集合体によって利用される必要がある。プラットフォームは、海底に固定された構造物であるか、または係留線(特許文献1,2に開示されているものなど)を介して海底に固定された浮体構造物であり得る。
【0033】
好適実施形態で説明した駆動集合体は、単なる例示的なものであり、本発明の第2態様の機能を実際に実現することができる一の可能な方法を示している。駆動集合体は、プラットフォームの上側表面の中央に設けられた下側ヒンジで一端が結合された、対向する細長い剛性レバーアームの第1下側対を備える。第1下側対の各レバーアームの他端は、第2上側対のレバーアームの対応する剛性レバーアームの一端に回転可能に固定される。第2上部対のレバーアームは、上側ヒンジで結合されている。駆動集合体は、上側ヒンジに取り付けられた第1態様による波力エネルギー吸収体をさらに含む。第1下側対のレバーアームの各レバーアームは、エネルギー変換器に固定されており、例示の目的で、油圧ラムと油圧ばねの形態をとるが、物理的なばね部材に結合された線形または回転電気発電機などの任意の適切なエネルギー変換装置を備えてよい。
【0034】
特許文献1に記載されているような、本発明の第1および第2態様の機能を可能にする他の駆動集合体のレイアウトが可能である。
【0035】
使用時には、図示の実施形態に記載のプラットフォーム及び波力エネルギー吸収体は、水域中に沈められ、係留およびアンカーシステム(図示せず)を使用する。使用時の設定では、吸収体は、地下の軌道波力が前記吸収体に衝突する結果として、実質的に軌道に従って移動するように構成される。波力エネルギー取り込み装置が移動すると、それに伴うレバーアームの移動が、対応するエネルギー変換装置を駆動させる。しかし本発明は、図示のように完全に水没するWEC装置、あるいは係留およびアンカーシステムを必要とするものに限定されない。本発明は、特許文献2のように、水域表面に浮いている吸収体を有するWEC装置にも同様に適用可能である。
【0036】
波力エネルギー取り込み装置が波力エネルギーをどの程度取り込めるのかは、一般に、装置の吸収体に作用する波力の利用可能性に比例する。利用可能な波力が相対的に小さい低い風浪階数の間では、波に対する装置の流体力学的応答を最大化することが有利である。これにより最小限の利用可能な波力エネルギーを取り込み及び変換するため、前記波力エネルギーは効率的かつ効果的に利用され得る。それに関連する波力エネルギーをことができる。逆に大きな海面状態の間では、利用できる波力エネルギーが大きすぎるので、吸収体から伝達される大きな力によって駆動集合体が損傷する可能性がある。そのため、装置の流体力学的応答を低減することで、吸収体によって取り込まれて機械の他の部分に伝達される波のエネルギーが少なくなるようにすることが有利である。
【0037】
波に対する流体力学的応答を低減する一の方法は、水域の表面近くで作用する大きな波の運動から離れるように、波力エネルギー吸収体をより深い深さ(およびプラットフォームに対して減少した高さ)までさらに沈めることを含む。しかし、場合によっては、装置のそのような再配置では、前記装置に作用する波の力の十分な減少が達成し得ないことが考えられる。したがって、本発明の方法によって装置の流体力学的応答をさらに低減することが有益であり得る。本発明はまた、システムに対する損傷の潜在的なリスクを最小限に抑えながら波力エネルギーの取り込みを最大化するために、流体力学的応答の動的減少または増加が達成され得るように、波力エネルギー装置の使用時の深さでも使用され得る。
【0038】
図1Aから図1Dを参照すると、本発明の第1実施形態100が示されており、実施形態100は実質的に先に説明したように機能する。実施形態100は、その上面に取り付けられた駆動集合体104を支持する浮体式プラットフォーム102を含む第2態様による波力エネルギー変換(WEC)システム100を構成する。駆動集合体は、先に説明したように、第1の下部対の剛性レバーアーム106と第2の上部対の剛性レバーアーム108とからなる。駆動集合体104は、下側の一対のレバーアーム106とプラットフォーム102の両方に取り付けられたエネルギー変換装置110を含む。第2の一対のレバーアーム108に結合された、波力エネルギー変換装置100は、円筒形の波力エネルギー吸収体112をさらに備えている。図示の実施形態100では、吸収体112は、一対の円筒形の周辺部116を収容するように配置された中央部114を有する円筒形の吸収体部分を備える。吸収体112は、調整機構(不図示)をさらに備える。図1Aに示すような使用時の設定では、調整機構は、吸収体の周辺部116を、中央部114の対向する端部から外側に突出するように動かし、それによって吸収体112の長さを延ばすように構成される。図示された使用時の設定において、吸収体112の延長された長さは、流体力学的応答、したがって吸収体112に作用する波力を最大化し、エネルギーの取り込みが最大化されるようにする。図1Bを参照すると、波力エネルギー吸収体112が駆動集合体104のレバーアーム106、108によって収縮高さまで引き込まれる耐嵐設定が示されている。調整機構は、吸収体112の周辺部116を中央部114に引き込み、吸収体112の長さが減少するようにする。図示された収縮設定では、吸収体112の減少した長さは、安全のために、波との流体力学的相互作用、したがって吸収体112に作用する力を最小限にする。図1Aおよび図1Bについて説明した吸収体112のそれぞれの設定は、図1Cおよび図1Dにそれぞれ明確にするために描かれている。
【0039】
図2Aから図2Dに示された実施形態200は、図1Aから図1Dについて説明した実施形態と実質的に同じように機能する。図2Aから図2Dの波力エネルギー吸収装置202は、円筒形の中央部204と、対向する膨張可能な周辺部206とを備える。装置202は、図2Aおよび図2Cに示されている膨張可能な周辺部206に水を送り込むように配置された水ポンプ(図示の例示的実施形態では電気水ポンプである)の形態をとる調整機構(図示せず)をさらに備える。ポンプは、膨張部206が収縮するように、膨張部206から水を送り出すようにさらに配置される。図示された例示的な実施形態では、部分206は、図2Bおよび図2Dに示されるように、より小さく収縮した状態に戻ることを可能にするエラストマー特性を有する。代替実施形態は、膨張部206が、膨張状態と収縮状態との間で任意の他の適切な交互作用、往復作用または付勢作用を行うように配置されてもよく、例えば、より小さい収縮した状態を可能にするために折り畳むかまたは皺にするように構成されることが理解されるであろう。図示の実施形態200では、吸収体202の中央部204は、周辺部206が膨張していても収縮していても、波力エネルギー変換装置200が使用中設定で機能するのに十分な浮力を達成する。しかしながら、実施形態は、膨張部206が、使用中に吸収体の追加の浮力を達成するために空気を使用して膨張され得ることを理解されよう。膨張したときの吸収体部分の減少した浮力、または水を用いた膨張は、本明細書で説明する耐嵐設定においてより大きな安全性を達成することができる。
【0040】
図3Aから図3Dに示す実施形態300は、図1Aから図1Dについて説明した実施形態と実質的に同じように機能する。図3Aから図3Dの波力エネルギー吸収体302は、円筒形の中央部304と、そこから延びる一対の対向する棒306とを備え、各棒306は複数の膨張部材308を接した状態で支持している。装置302は、図3A及び図3Cに示すように、水を膨張部材308に送り込むように配置された水ポンプ(図示の例では電気水ポンプである)の形態をとる調整機構(図示せず)を更に備える。ポンプはさらに、膨張部材308が収縮するように、膨張部材308から水を送り出すように配置される。膨張部材308のエラストマー特性は、収縮したときに、図3Bおよび図3Dに示されるように、より小さい収縮した状態に戻ることをもたらす。図2Aから図2Dの実施形態200と同様に、あるいはポンプは、空気を含む任意の流体を送入出してもよい。本明細書に記載されるような任意の他の適切な膨張機構が想定されるであろう。
【0041】
図4Aから図4Cを参照すると、さらなる実施形態400が示される。実施形態400は、図1Aから図3Dについて説明した実施形態と実質的に同じ方法で波力エネルギーを取り込んで変換するが、吸収体402の流体力学的特性に関連する吸収体402の様々な物理特性を利用する。実施形態400は、第1の外側部分404と、外側部分404内に部分的に入れ子にされた第2の内側部分406とを有する実質的に円筒形の波力エネルギー取り込み装置402を備える。内側部分406および外側部分404のそれぞれは、内側部分406および外側部分404のそれぞれの円周について等しく分布する矩形の開口408を含んでいる。図示された実施形態400において、波力エネルギー取り込み装置402は、外側部分404に対して内側部分406を回転させるように配置された電気モータの形態をとる調整機構(図示せず)をさらに備えている。モータは、図4Bに示すような第1の閉位置と、図4Cに示すような第2の開位置との間で内側部分406を回転させるように配置される。
【0042】
図4Bの第1位置では、内側部分406の矩形開口408は外側部分404の矩形開口408と位置を合わせないため、外側部分404の開口408は内側部分406の壁により閉塞される。波力エネルギー取り込み部材402の固体吸収体402は、したがって、吸収体402を通る流体経路が提供されないように提供される。このように、図4Bの第1の閉位置において吸収体402に作用する波力は最大化される。
【0043】
図4Cの第2の開放位置では、内側部分406の矩形開口408は外側部分404の矩形開口408と直接位置を合わせるので、外側部分404の開口408は遮られず、ほぼ対向する開口408同士の間に波力エネルギー吸収体402を通る流体経路が提供されるようにする。したがって、図4Cの開位置では、波力エネルギー吸収体402に作用する波力は最小化される。図4Bは、波力エネルギー吸収体402が閉位置にあり、使用時の高さに配置されていることを示しているが、波力エネルギー取り込み装置402は、より高い波力がエネルギーの取り込みに利用できる場合、使用中の高さで開位置に配置することができる。完全閉位置および完全開位置のみが示されているが、図示された実施形態400は、調整機構による調整を通じて、その間の任意の中間位置を想定することができる。図示の実施形態400では、調整機構は、静止したままの外側部分404に対して内側部分406を回転させるように配置されているが、調整機構が内側部分406および外側部分404の一方または両方を回転させ得る実施形態が理解されるであろう。図示された実施形態400では、図4Bの閉設定の実質的に完全な円周は、波力エネルギー吸収体としてうまく機能するために完全に耐水性である必要はなく、単に水が吸収体402を通って自由に流れるのを防ぐことができればよい。図4Cの周辺部の不完全な開状態は、水が吸収体402を自由に通過可能な程度十分に不完全である必要がある。吸収体402の最小透明度は、例えば、約50%であってよく、これは、水がそれを自由に通過するのに十分であることが示されている。調整機構のために電気モータが記載されているが、回転運動を実現するために、例えば、回転モータ(電気または油圧のいずれか)またはクランクに作用するリニアアクチュエータなど、任意の適切な機械的アクチュエータを使用することができる。
【0044】
図5Aおよび図5Bに示す実施形態500は、図4Aから図4Cについて説明した実施形態と実質的に同じであり、外側部分504および該外側部分504に対して回転可能な内側部分506を備える。外側部分504と内側部分506のそれぞれが等配矩形の開口508を有する波力エネルギー吸収体502を有する。しかしながら、図示された実施形態500では、調整機構は、内側部分506の壁領域から外側に延びる突出ピン510と、スタンド514上でプラットフォームの表面上で支持された径方向トラック512とを含むピンおよびトラックシステムの形態をとる。トラック512は、波力エネルギー吸収体502が図5Aに示す使用中高さから移動して図5Bに示す収縮高さに接近するとピン510に係合するようにプラットフォーム上に配置される。トラック512は、ピン510に係合する大きさであり、その後、波力エネルギー吸収体502が収縮高さまで下げられると、トラック512に追従する。吸収体502が下げられると、ピン510は、吸収体502の移動方向に対して垂直な方向によって部分的に規定される軌道に従って移動する。ピン510が移動することで内側部分508が回転する。その結果吸収体502は開設定を取る。開設定では、内側部分506の開口508が外側部分504の開口と位置を合わせ、ほぼ対向する開口508同士の間で吸収体502を通る流体経路が規定される。したがって、例えば耐嵐設定であってもよい図5Bに示す収縮位置では、吸収体502は、吸収体502に作用する波力を最小化するために開位置にある。図示された実施形態500では、吸収体502は、ばねの形態をとる付勢部材(図示せず)をさらに備え、ばねは、ピン510がトラック512と係合していないときに、内側部分506を図5Aに示す閉設定に向けて付勢している。実施形態は、任意の適切な調整機構が提供されるところで理解されるであろう。図示された実施形態500の静的なピンおよびトラック調整機構は、機構を作動させるために電力が必要ないことを保証し、これは、電力使用を最適化するのに有益であり得る。同じ効果を達成する他の調整機構、例えば、吸収体が収縮したときに外筒または内筒を回転させるために、収縮高さに近づくとプラットフォームに対して押す外筒上のレバーが考えられるであろう。
【0045】
図6Aおよび図6Bを参照すると、実質的に前述したように機能するさらなる実施形態600が示されている。図示された実施形態600において、波力エネルギー吸収体602は、その上に配置された複数の開口606を有する外皮604を有する円筒形吸収体を備える。吸収体は、吸収体の内面に位置する複数のヒンジ付きフラップ608をさらに備え、ヒンジ付きフラップ608はそれぞれ、吸収体のそれぞれの開口606を閉塞するためにそれぞれのヒンジを中心に回転するように配置される。吸収体602は、図6Aに示すようにフラップ608が開口606を閉塞する第1の閉位置と図6Bに示すようにフラップ608が開口606を閉塞しない第2の開位置との間でフラップ608をヒンジを中心として回転させるように配置された電気モータの形態をとる調整機構(図示せず)をさらに備える。フラップが、回転モータまたはリニアアクチュエータおよびクランクなどのアクチュエータ(図示せず)を用いて個別に作動され得る実施形態が理解されるであろう。あるいは、すべてのフラップを、すべてのフラップを同時に開閉する単一のアクチュエータリング(図示せず)に接続することができる。もちろん、フラップは、対応する流体力学的特性が同じように段階的に調整されるような多孔性及び/又は透明性の段階的な調整を達成するために、部分的に開閉されることもある。
【0046】
図7Aおよび図7Bの実施形態700は、図6Aおよび図6Bについて説明した実施形態と実質的に同じであるが、フラップが布などの可撓性材料を備え、それぞれがそれぞれのロータの周りに巻かれる。実施形態700は、ロータのそれぞれを回転させるように配置された電気モータを含む調整機構(図示せず)をさらに備える。ロータのそれぞれが回転することで、ロータのそれぞれ取り付けられた布製フラップは、吸収体の開口を露出させるようにロータに巻かれ、または開口を閉塞するように広げられ得る。図7Aに示す閉じた位置では、フラップは吸収体の開口部を塞ぐように最大に広げられ、吸収体の多孔性および/または透過度が低下し、吸収体に作用する波力が最大になるようにされる。図7Bに示される開位置では、フラップは、開口部が妨げられないようにローターに対して最大に巻かれ、吸収体に作用する波の力が最小になるように吸収体を通る流体経路を提供する。
【0047】
ここで図8A図8Cを参照すると、さらなる実施形態800が示されており、実施形態800は、本明細書に記載された他の実施形態と実質的に等しい方法で波力エネルギーを取り込み変換するように配置されている。実施形態800は、その中に配置された複数の開口804を有する中空シェルを有する円筒形吸収体を含む波力エネルギー吸収体802を備える。吸収体は、シェル内に収容され、調整機構(図示せず)によってシェル内で膨張または収縮するように配置された一対の対向する膨張部材806をさらに備える。図示の実施形態800における調整機構は、膨張部材806を水で膨張または収縮させるように配置された水ポンプである。ポンプは、図8Bに示すように、膨張部材806が、膨張部材806のエラストマー皮が膨張して吸収体の開口804を閉塞するように水で膨張する閉位置を達成するように配置されている。ポンプは、膨張部材が収縮する図8Cに示すような開位置を達成するようにさらに配置され、ここで、膨張部材806のエラストマー材料は収縮状態に戻り、吸収体の開口を閉塞しない。実施形態は、ポンプが、本明細書に記載されるように、水または空気のいずれかをポンピングすることができ、他の実施形態は、任意の他の適切な調整機構を有することが理解されるであろう。吸収体は、任意の適切な形状であり、任意の適切な数および形状の穴から構成される実施形態が理解されよう。穴は、膨張式ブラダーの形態をとることができる膨張式部材が支持されなくなるほどの大きさでない限り、どのような大きさでもよい。実施形態は、任意の適切な数の膨張可能な部材を備えることが理解され、単一の膨張可能な部材のみを備えてもよい。
【0048】
本発明の範囲内のさらなる実施形態は、上記で説明されていないものを想定され得る。例えば浮体式プラットフォームは、説明の目的のみのために、説明された実施形態のすべてにおいて固定ブロックとして図示されているが、プラットフォームが、エネルギー吸収体に対して水域内で相対的に静止するように配置された任意の適切な構造である実施形態は、理解されるであろう。例えば、プラットフォームは、海底に係留される浮力のある水中プラットフォーム、海底に直接固定される、または固定されない任意の浮力/非浮力の構造体を備え得る。
【0049】
すべての説明された実施形態におけるエネルギー変換装置は、例示の目的のみのために、別個のばねユニットと組み合わせた簡略化された油圧シリンダであることが示される。実施形態は、例えば、リニア電気発電機、回転電気または油圧発電機、またはラックとピニオンなどの回転運動を直線運動に変換する機構と組み合わせることができるあらゆる種類の回転発電機など、任意の適切な形態のエネルギー変換装置を使用することができることが理解されるであろう。
【0050】
説明した調整機構は、油圧シリンダを駆動するモータの形態をとっている。任意の適切な機械的機構を含む任意の適切な調整機構は、任意の油圧機構またはラックおよびピニオンギアなどのように、理解されるであろう。
【0051】
説明した実施形態の吸収体は、同じ一般的な円筒形状をとるが、任意の形状の吸収体、またはその任意の部分を使用することができる実施形態が理解されよう。
【0052】
本発明は、図示された特定の例または構造に限定されるものではなく、添付の請求項の範囲に属する任意の実施形態であると理解されるであろう。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
【国際調査報告】