(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ニコチンシートおよびこれを含むエアロゾル発生物品
(51)【国際特許分類】
A24B 15/16 20200101AFI20231108BHJP
A24B 3/14 20060101ALI20231108BHJP
A24D 1/20 20200101ALI20231108BHJP
A24D 1/02 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A24B15/16
A24B3/14
A24D1/20
A24D1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521413
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 KR2022005749
(87)【国際公開番号】W WO2022240001
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2021-0061096
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519217032
【氏名又は名称】ケーティー アンド ジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、キュン ビン
(72)【発明者】
【氏名】キム、イク ジョーン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ゲオン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウン、エウン ミ
(72)【発明者】
【氏名】フワン、ミン ヒー
【テーマコード(参考)】
4B043
4B045
【Fターム(参考)】
4B043BA40
4B043BB11
4B043BB13
4B043BB28
4B043BC04
4B043BC14
4B043BC18
4B043BC20
4B043BC22
4B045AA21
4B045AA43
4B045AB08
4B045AB11
(57)【要約】
ニコチンシートおよびこれを含むエアロゾル発生物品が提供される。本開示の幾つかの実施例によるニコチンシートは、ニコチン成分を含むニコチン物質およびシートを形成するセルロース系物質を含んでもよい。このようなニコチンシートは、加熱されることで、内部に固定されたニコチン物質を徐々に放出することによって、エアロゾル発生物品の喫味持続性を大きく向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチン成分を含むニコチン物質と、
シートを形成するセルロース系物質と、を含む、ニコチンシート。
【請求項2】
前記ニコチン物質は、有機酸により形成されたニコチン塩を含む、請求項1に記載のニコチンシート。
【請求項3】
前記有機酸は、安息香酸、ピルビン酸、乳酸、酢酸およびクエン酸の中から選ばれた少なくとも一つの酸を含む、請求項2に記載のニコチンシート。
【請求項4】
前記ニコチン成分の含有量は、前記ニコチンシート100重量部に対して2重量部以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載のニコチンシート。
【請求項5】
前記セルロース系物質は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)および寒天の中から選ばれた少なくとも一つの物質を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のニコチンシート。
【請求項6】
エアロゾル形成剤をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のニコチンシート。
【請求項7】
前記エアロゾル形成剤の含有量は、前記ニコチンシート100重量部に対して5から20重量部である、請求項6に記載のニコチンシート。
【請求項8】
フィルター部と、
エアロゾル形成基材部と、
前記フィルター部および前記エアロゾル形成基材部の少なくとも一部を包んでいるラッパーと、を含み、
前記エアロゾル形成基材部または前記ラッパーにニコチンシートが適用され、
前記ニコチンシートは、セルロース系物質およびニコチン物質を含む、エアロゾル発生物品。
【請求項9】
前記ニコチンシートは、しわになったり、折り曲がったりするものである、請求項8に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項10】
前記ニコチンシートには、複数個のホールが形成されている、請求項8または9に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項11】
前記ニコチンシートは、裁刻された形態で前記エアロゾル形成基材部に含まれる、請求項8または9に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項12】
前記ニコチンシートは、ローリングされた形態で前記エアロゾル形成基材部に含まれる、請求項8または9に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項13】
前記ニコチンシートは、前記ラッパーの内側に配置される、請求項8または9に記載のエアロゾル発生物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ニコチンシートおよびこれを含むエアロゾル発生物品に関する。より詳細には、エアロゾル発生物品の喫味持続性を増進させることができるニコチンシート、これを含むエアロゾル発生物品およびこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、伝統シガレットの短所を克服する代替物品に関する需要が増加している。例えば、専用デバイスにより電気的に加熱することによりエアロゾルを発生させる加熱型シガレットに関する需要が増加しており、これによって、加熱型シガレットに関する研究が集中的に行われている。
【0003】
最近、イシューとなっている加熱型シガレットの問題点は、喫味持続性である。多くの加熱型シガレットが初期パフ時には優れた喫味を示すが、パフが持続するほど喫味が急激に落ちる傾向を示すためである。これによって、中後半パフ時の喫味を補充することができる方案が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の幾つかの実施形態を通じて解決しようとする技術的課題は、喫味持続性を増進させることができるニコチンシートおよびその製造方法を提供することにある。
【0005】
本開示の幾つかの実施形態を通じて解決しようとする他の技術的課題は、喫味持続性が増進されたエアロゾル発生物品およびその製造方法を提供することにある。
【0006】
本開示の技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及されていない他の技術的課題は、下記の記載から本開示の技術分野における通常の技術者が明確に理解できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を解決するための、本開示の幾つかの実施形態によるニコチンシートは、ニコチン成分を含むニコチン物質およびシートを形成するセルロース系物質を含んでもよい。
【0008】
幾つかの実施形態において、前記ニコチン物質は、有機酸により形成されたニコチン塩を含んでもよい。
【0009】
幾つかの実施形態において、前記有機酸は、安息香酸、ピルビン酸、乳酸、酢酸およびクエン酸の中から選ばれた少なくとも一つの酸を含んでもよい。
【0010】
幾つかの実施形態において、前記ニコチン成分の含有量は、前記ニコチンシート100重量部に対して2重量部以上であってもよい。
【0011】
幾つかの実施形態において、前記セルロース系物質は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)および寒天の中から選ばれた少なくとも一つの物質を含んでもよい。
【0012】
幾つかの実施形態において、前記ニコチンシートは、エアロゾル形成剤をさらに含んでもよい。
【0013】
幾つかの実施形態において、前記エアロゾル形成剤の含有量は、前記ニコチンシート100重量部に対して5~20重量部であってもよい。
【0014】
前記技術的課題を解決するための、本開示の幾つかの実施形態によるエアロゾル発生物品は、フィルター部と、エアロゾル形成基材部と、前記フィルター部および前記エアロゾル形成基材部の少なくとも一部を包んでいるラッパーと、を含んでもよい。この際、前記エアロゾル形成基材部または前記ラッパーにニコチンシートが適用され、前記ニコチンシートは、セルロース系物質およびニコチン物質を含んでもよい。
【0015】
幾つかの実施形態において、前記ニコチンシートは、しわになったり折り曲がったりするものであってもよい。
【0016】
幾つかの実施形態において、前記ニコチンシートには、複数個のホール(hole)が形成されていてもよい。
【0017】
幾つかの実施形態において、前記ニコチンシートは、裁刻された形態で前記エアロゾル形成基材部に含まれてもよい。
【0018】
幾つかの実施形態において、前記ニコチンシートは、ローリング(rolling)された形態で前記エアロゾル形成基材部に含まれてもよい。
【0019】
幾つかの実施形態において、前記ニコチンシートは、前記ラッパーの内側に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
上述した本開示の幾つかの実施形態によれば、ニコチン成分(e.g.ニコチン、ニコチン塩)を含有しているシートを提供することができる。提供されたニコチンシートは、加熱されることで、内部に固定されたニコチン成分を徐々に放出することによって、エアロゾル発生物品の喫味持続性を増進させることができる。
【0021】
また、ニコチン物質(e.g.ニコチン、ニコチン塩)、セルロース系のシート形成剤およびエアロゾル形成剤を配合してニコチンシートを製造できるが、このように製造されたニコチンシートは、ニコチン保持量、保持性および移行量に優れている。具体的に、セルロース系物質がニコチン物質を良好に被覆し、固定することによって、優れたニコチン保持量と保持性を保障することができ、エアロゾル形成剤により形成されたエアロゾルがニコチン物質の移行を促進することによって、優れたニコチン移行量を保障することができる。
【0022】
また、ニコチンシートがエアロゾル発生物品に多様な形態に適用されることによって、喫味持続性が増進されたエアロゾル発生物品を容易に製造することができる。
【0023】
本開示の技術的思想による効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及されていない他の効果は、下記の記載から通常の技術者が明確に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の幾つかの実施形態によるエアロゾル発生物品を概略的に示す例示図である。
【
図2】本開示の幾つかの実施形態によるニコチンシートの適用方式を説明するための例示図である。
【
図3】本開示の幾つかの実施形態によるニコチンシートの適用方式を説明するための例示図である。
【
図4】本開示の幾つかの実施形態によるニコチンシートの適用方式を説明するための例示図である。
【
図5】本開示の幾つかの実施形態によるニコチンシートの加工形態を説明するための例示図である。
【
図6】本開示の幾つかの実施形態によるニコチンシートの加工形態を説明するための例示図である。
【
図7】本開示の他の幾つかの実施形態によるエアロゾル発生物品を示す例示図である。
【
図8】本開示のさらに他の幾つかの実施形態によるエアロゾル発生物品を示す例示図である。
【
図9】本開示の幾つかの実施形態によるエアロゾル発生物品が適用できる多様な類型のエアロゾル発生装置を例示する図である。
【
図10】本開示の幾つかの実施形態によるエアロゾル発生物品が適用できる多様な類型のエアロゾル発生装置を例示する図である。
【
図11】本開示の幾つかの実施形態によるエアロゾル発生物品が適用できる多様な類型のエアロゾル発生装置を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照して本開示の好ましい実施形態を詳細に説明する。本開示のメリットおよび特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述している実施形態を参照すれば明確になるだろう。しかしながら、本開示の技術的思想は、以下の実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形状に具現でき、単に以下の実施形態は、本開示の技術的思想が完全になるようにし、本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者に本開示の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本開示の技術的思想は、請求項の範疇によって定義されるのみである。
【0026】
各図面の構成要素に参照符号を付加するに際して、同じ構成要素に対しては、たとえ他の図面上に表示されても、できるだけ同じ符号を有するようにしていることに留意しなければならない。また、本開示を説明するに際して、関連した公知構成または機能に関する具体的な説明が本開示の要旨を不明にすることができると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0027】
別途の定義がない限り、本明細書において使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解され得る意味で使用され得る。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、明白に特に定義されていない限り、理想的にまたは過度に解析されない。 本明細書において使用される用語は、実施形態を説明するためのものであり、本開示を制限しようとするものではない。本明細書において、単数型は、文章において特に言及しない限り、複数型も含む。
【0028】
また、本開示の構成要素を説明するに際して、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用できる。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語により当該構成要素の本質や手順または順序などが限定されない。任意の構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」または「接続」されると記載された場合、その構成要素は、当該他の構成要素に直接的に連結されるか、または接続され得るが、各構成要素の間にさらに他の構成要素が「連結」、「結合」または「接続」され得ると理解しなければならない。
【0029】
本開示において使用される「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は、言及された構成要素、段階、動作および/または素子は、一つ以上の他の構成要素、段階、動作および/または素子の存在または追加を排除しない。
【0030】
本開示の多様な実施形態に対する説明に先立って、以下の実施形態において使用される幾つかの用語について明確にする。
【0031】
以下の実施形態において、「エアロゾル形成基材」は、エアロゾル(aerosol)を形成できる物質を意味し得る。エアロゾルは、揮発性化合物を含んでもよい。エアロゾル形成基材は、固体または液状でありうる。
【0032】
例えば、固体のエアロゾル形成基材は、板状葉タバコ、刻み、再構成タバコなどタバコ原料を基礎にする固体物質を含んでもよいし、液状のエアロゾル形成基材は、ニコチン、タバコ抽出物および/または多様な香味剤を基礎にする液状組成物を含んでもよい。しかしながら、本開示の範囲が前記列挙された例示に限定されるものではない。
【0033】
以下の実施形態において、「エアロゾル発生装置」は、ユーザの口を通じてユーザの肺に直接的に吸入可能なエアロゾルを発生させるためにエアロゾル形成基材を用いてエアロゾルを発生させる装置を意味し得る。エアロゾル発生装置の幾つかの例示については、
図9~
図11を参照する。
【0034】
以下の実施形態において、「エアロゾル発生物品」は、エアロゾルを発生させることができる物品を意味し得る。エアロゾル発生物品は、エアロゾル形成基材を含んでもよい。エアロゾル発生物品の代表的な例としては、シガレットが挙げられるが、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。
【0035】
以下の実施形態において、「パフ(puff)」は、ユーザの吸入(inhalation)を意味し、吸入とは、ユーザの口や鼻を通じてユーザの口腔内、鼻腔内または肺に引き寄せる状況を意味し得る。
【0036】
以下の実施形態において、「長さ方向(longitudinal direction)」は、エアロゾル発生物品の長さ方向軸に相当する方向を意味し得る。
【0037】
以下の実施形態において、「シート(sheet)」は、その厚さより実質的に大きい幅および長さを有する薄層要素を意味し得る。当該技術分野において、シートという用語は、ウェブ(web)、フィルム(film)などの用語と混用されて使用されることもできる。
【0038】
以下の実施形態において、「ニコチンシート」は、ニコチン物質を含有しているシート形態の材料を意味し得る。ここで、ニコチン物質は、ニコチン成分を含む物質であり、例えば、ニコチン、ニコチン塩またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0039】
以下では、本開示の多様な実施形態について説明する。
【0040】
本開示の多様な実施形態によれば、エアロゾル発生物品の喫味持続性を増進させることができるニコチンシートを提供することができる。提供されたニコチンシートは、加熱されることで、内部に固定されたニコチン成分を徐々に放出することによって、エアロゾル発生物品の喫味持続性を増進させることができる。例えば、ニコチンシートは、中後半パフ時の喫味を補充することによって、ユーザに持続的な喫味感を提供することができる。
【0041】
ニコチンシートは、シート形成剤およびニコチン物質を含んでもよい。以下、ニコチンシートの各構成物質について説明する。
【0042】
シート形成剤は、ニコチン物質を被覆し、シートを形成する物質を意味し得る。シート形成剤は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、寒天などのセルロース系物質を含んでもよい。しかし、これに限定されるものではない。セルロース系物質は、物理性に優れたシートを形成できるだけでなく、ニコチン物質を良好に被覆し、固定できるので、シートのニコチン保持量および保持性を向上させることができる。
【0043】
幾つかの実施形態において、シート形成剤は、改質されたセルロース物質であってもよい。ここで、「改質されたセルロース」は、分子構造内で特定の官能基が置換されたセルロースを意味し得る。改質されたセルロースの例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、HPMCは、ヒドロキシプロピル基およびメチル基(またはメトキシ基)が置換された割合および分子量によって約4~40000の範囲内の等級(grade)を有していてもよい。等級によって、改質されたセルロースの粘度が決定される。より具体的に、HPMCの物理化学的特性は、メトキシ基の割合、ヒドロキシプロピル基の割合および分子量と関係があるが、米国薬典(USP)によれば、HPMCの種類は、メトキシ基およびヒドロキシプロピル基の割合によってHPMC1828、HPMC2208、HPMC2906およびHPMC2910などに分類される。ここで、前方の二つの数字は、メトキシ基の割合であり、後方の二つの数字は、ヒドロキシプロピル基の割合を意味し得る。本発明者らの持続的な実験結果、改質されたセルロース物質により形成されたニコチンシートは、シート物理性およびニコチン保持量に優れていることが確認された。
【0044】
幾つかの実施形態において、シート形成剤は、ハイドロコロイド物質であってもよい。ハイドロコロイド物質の例としては、ゼラチン、寒天、ジェランガム、ペクチン、グアガム、キサンタンガム、グルコマンナン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン類などが挙げられるが、これに限定されるものではない。ハイドロコロイド物質は、溶媒(e.g.蒸留水、エタノール(酒精))と接触時に自体的に粘性を帯びるので、別の接着剤がなくても、エアロゾル発生物品のラッパーなどに付着できるが、そのため、ニコチンシートの配置工程を簡素化でき、接着剤による安全性問題から自由になりえる。
【0045】
次に、ニコチン物質は、上記で記述したように、ニコチン成分を含有している物質であり、ニコチン、ニコチン塩またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0046】
ニコチン塩は、塩の状態で存在するニコチン物質であり、例えば、ニコチンが有機酸と配合されることによって形成(生成)される。ニコチン塩は、ニコチンより体内吸収が相対的に少ないので、ニコチンよりやわらかい打撃感を与えることができる。有機酸の例としては、安息香酸(benzoic acid)、ピルビン酸(pyruvic acid)、乳酸(lactic acid)、酢酸(acetic acid)、クエン酸(citric acid)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、ニコチン塩は、ニコチンと有機酸が約1:1割合(e.g.モル比)で配合されることによって形成されるが、これに限定されるものではない。
【0047】
一方、幾つかの実施形態において、ニコチンシートがエアロゾル形成剤をさらに含んでもよい。エアロゾル形成剤は、ニコチンシートが加熱されることで、エアロゾルを形成することによって、ニコチンシートに含有されたニコチン成分の移行(放出)を促進することができる。例えば、エアロゾルが形成されて、シート内部に固定されたニコチン成分の放出を促進するにつれて、ニコチン成分の移行量が増大することができる。それだけでなく、エアロゾル形成剤は、一種の可塑剤として作用してニコチンシートに適切な柔軟性を付与することができ、これによって、ニコチンシートの全般的な物理性が向上することができる。エアロゾル形成剤の例としては、グリセリン、プロピレングリコールなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。当該技術分野において、エアロゾル形成剤は、保湿剤、湿潤剤などの用語と混用されて使用できる。
【0048】
また、幾つかの実施形態において、ニコチンシートがLM-ペクチン(low methoxyl pectin)をさらに含んでもよい。LM-ペクチンは、エステル化が比較的に少なく行われた低エステルペクチンまたは低メトキシルペクチンであり、具体的に、分子構造の内部にカルボキシ基(carboxyl group)が約50%未満で含有されたペクチンを意味し得る。LM-ペクチンは、カラギナンとは異なって、放冷時にゲル化しない特性を有するので、スラリー状シート組成物の粘度を低減することができる(e.g.約600cp~800cp程度)。また、これによって、シート製造工程の作業性が向上することができる。
【0049】
LM-ペクチンは、分子構造の内部にカルボキシ基を約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、または約10%未満で含有していてもよい。LM-ペクチンの分子構造の内部にカルボキシ基含有量が少なくなるほど、LM-ペクチンを含むスラリーの粘度が低くなる。
【0050】
また、幾つかの実施形態において、ニコチンシートは、バルキング剤(bulking agent)をさらに含んでもよい。バルキング剤は、蒸留水以外の構成成分の合計質量(すなわち、乾物質量)を増加させて、製造されるニコチンシートの体積を増加させることができ、ニコチンシートの元来の機能に影響を及ぼさない物質であってもよい。具体的に、バルキング剤は、ニコチンシートの体積を増加させ、かつ、スラリー(すなわち、シート組成物)の粘度を実質的に上昇させないと同時に、ニコチンシートのニコチン保持性に悪影響を及ぼさない特性を有していてもよい。
【0051】
好ましくは、バルキング剤は、デンプン類、変性デンプン、またはデンプン加水分解物であってもよい。しかし、これに限定されるものではない。
【0052】
ここで、変性デンプンは、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルリン酸二デンブン、ヒドロキシプロピルデンプン、リン酸二デンブン、リン酸一デンブン、リン酸化リン酸二デンブンなどを示す。
【0053】
また、デンプン加水分解物とは、デンプンを加水分解する工程を含むプロセスによって得られる物質を示す。デンプン加水分解物は、例えば、デンプンを直接加水分解して得られる物質(すなわち、デキストリン)、またはデンプンを加熱処理した後に加水分解して得られる物質(すなわち、難消化性デキストリン)を含んでもよい。バルキング剤は、例えば、デキストリン(dextrin)であってもよく、さらに具体的にシクロデキストリン(cyclodextrin)であってもよい。
【0054】
デンプン加水分解物は、一般的に、約2~約40の範囲に含まれるDE値を有するデンプン加水分解物、好ましくは、約2~約20の範囲に含まれるDE値を有するデンプン加水分解物であってもよい。約2~約20の範囲に含まれるDE値を有するデンプン加水分解物として、例えば、パインデックス#100(松谷化学工業(株))、パインファイバー(松谷化学工業(株))、TK-16(松谷化学工業(株))が用いられ得る。
【0055】
ここで、「DE」は、dextrose equivalentの略語であり、DE値は、デンプンの加水分解の程度、すなわちデンプンの糖化率を示す。本開示においてDE値は、ウィルシュテッター・シューデル(Willstatter-Schudel)法によって測定された値であってもよい。加水分解されたデンプン(デンプン加水分解物)の特性、例えば、デンプン加水分解物の分子量やデンプン加水分解物を構成する糖分子の配列などの特性は、デンプン加水分解物の分子ごとに一定でなく、任意の分布またはバリエーション(variation)を持って存在している。デンプン加水分解物の特性の分布やバリエーション、またはカットされる区間の差異などによって、デンプン加水分解物は、その分子ごとに異なる物性特徴(例えば、DE値)が発現することができる。このように、デンプン加水分解物は、異なる物性特徴を示す分子の集合であるが、ウィルシュテッター・シューデル(Willstatter-Schudel)法での測定結果(すなわちDE値)は、デンプンの加水分解の程度を示す代表値として扱われている。
【0056】
好ましくは、デンプン加水分解物は、約2~約5のDE値を有するデキストリン、約10~約15のDE値を有する難消化性デキストリンおよびこれらの混合物からなる群から選択できる。約2~約5のDE値を有するデキストリンとして、例えば、パインデックス#100(松谷化学工業(株))が用いられ得る。約10~約15のDE値を有する難消化性デキストリンとして、例えば、パインファイバー(松谷化学工業(株))が用いられ得る。
【0057】
一方、上述したニコチンシートの詳細組成は多様に設計可能であり、これは、実施形態によって変わることができる。
【0058】
幾つかの実施形態において、ニコチン物質(e.g.ニコチン、ニコチン塩)の含有量は、ニコチンシート100重量部を基準として、約0.01~49.99重量部であってもよく、好ましくは、約0.5、1、2または3重量部以上であってもよい。このような数値範囲内で、エアロゾル発生物品の喫味持続性が有意的に向上することが確認された。
【0059】
また、幾つかの実施形態において、エアロゾル形成剤の含有量は、ニコチンシート100重量部を基準(e.g.乾燥したニコチンシートを基準)として、約3~25重量部であってもよく、好ましくは、約3~22重量部、約5~20重量部、約8~20重量部、約10~20重量部、約6~18重量部、約6~15重量部または約10~18重量部であってもよい。このような数値範囲内で、ニコチン成分の移行量が有意的に増大し、シートの物理性が向上することが確認された。
【0060】
また、幾つかの実施形態において、ニコチンシートは、全体100重量部を基準として、約2~約15重量部の水分、約25~約90重量部の改質されたセルロースおよび約0.1~約30重量部のニコチン物質を含んでもよい。
【0061】
また、幾つかの実施形態において、ニコチンシートは、全体100重量部を基準として、約2~約15重量部の水分、約1~約60重量部のハイドロコロイド物質、約1~約60重量部のLM-ペクチンおよび約0.1~約30重量部のニコチン物質を含んでもよい。
【0062】
上述したニコチンシートは、例えば、溶媒(e.g.蒸留水、エタノール(酒精)など)、シート形成剤およびニコチン物質を含む液状(e.g.スラリー状態)のシート組成物を所定の基材上に塗布(キャスティング)し、乾燥させることによって製造することができる。しかし、これに限定されるものではなく、具体的な製造方式は変わることができる。
【0063】
本開示の多様な実施形態によれば、喫味持続性が増進されたエアロゾル発生物品を提供することができる。具体的に、上述したニコチンシートが多様な形態で適用されることによって、エアロゾル発生物品の喫味持続性が向上できるが、以下では、このようなエアロゾル発生物品(e.g.100)について添付の図面によって詳細に説明する。
【0064】
図1は、本開示の幾つかの実施形態によるエアロゾル発生物品100を概略的に示す例示図である。
【0065】
図1に示されたように、エアロゾル発生物品100は、エアロゾル形成基材部110、フィルター部120およびラッパー130を含んでもよい。ただし、
図1には、本開示の実施形態と関連する構成要素のみが示されている。したがって、本開示の属する技術分野における通常の技術者なら、
図1に示された構成要素以外に他の汎用的な構成要素をさらに含んでもよいことが分かる。また、
図1は、本開示の多様な実施形態によるエアロゾル発生物品の一部の例示を概略的に示しているだけであり、エアロゾル発生物品の詳細構造は、
図1に示されたものと異なっていてもよい。以下、エアロゾル発生物品100の各構成要素について説明する。
【0066】
エアロゾル形成基材部110は、エアロゾルに対する形成機能を行うことができる。具体的に、エアロゾル形成基材部110は、エアロゾル形成基材を含んでもよく、エアロゾル形成基材を通じてエアロゾルを形成することができる。例えば、エアロゾル形成基材部110は、エアロゾル発生装置(e.g.
図9の1000)により加熱されることで、エアロゾルを形成することができる。形成されたエアロゾルは、パフによりフィルター部120を経てユーザの口部に伝達されることができる。
【0067】
図示のように、エアロゾル形成基材部110は、フィルター部120の上流に位置し、フィルター部120の上流末端と当接することができる。エアロゾル形成基材部110は、エアロゾル形成基材を包んでいるラッパー130をさらに含むものであってもよい。
【0068】
エアロゾル形成基材部110は、ロッド(rod)の形態で製造されるので、場合によって「エアロゾル形成ロッド110」または「タバコロッド110」とも称される。または場合によって「媒質部110」とも称される。
【0069】
次に、フィルター部120は、エアロゾルに対するろ過機能を行うことができる。このために、フィルター部120は、フィルター(ろ過)物質を含んでもよい。フィルター物質の例としては、セルロースアセテート繊維、紙などが挙げられるが、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。
【0070】
図示のように、フィルター部120は、エアロゾル形成基材部110の下流に位置し、エアロゾル形成基材部110の下流末端と当接することができる。また、フィルター部120は、エアロゾル発生物品100の下流末端部位に位置し、ユーザの口部と接触するマウスピースとして機能することもできる。フィルター部120は、フィルター物質(プラグ)を包んでいるラッパー130をさらに含むものであってもよい。
【0071】
フィルター部120も、ロッドの形態で製造されるので、場合によって「フィルターロッド120」とも称され、円柱型、内部に中空を含むチューブ型(e.g.チューブ形態のセルロースアセテートフィルター)、リセス型などのように多様な形態で製造することができる。または、フィルター部120は、マウスピースとして機能するので、「マウスピース部120」とも称される。
【0072】
次に、ラッパー130は、エアロゾル形成基材部110および/またはフィルター部120の少なくとも一部を包んでいることを意味し得る。ラッパー130は、エアロゾル形成基材部110またはフィルター部120の個別ラッパーを指すものであってもよく、ティッピングラッパー(tipping wrapper)などのようにエアロゾル形成基材部110とフィルター部120の少なくとも一部を共に包んでいるラッパーを指すものであってもよく、エアロゾル発生物品100に用いられたすべてのラッパーを総称するものであってもよい。
【0073】
ラッパー130は、多孔性または非多孔性のラッピングペーパーからなってもよいが、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。例えば、ラッパー130は、金属ホイル(foil)またはラッピングペーパーと金属ホイルの重ね合わせ形態からなってもよい。
【0074】
本開示の多様な実施形態によれば、図示のように、ニコチンシート10がエアロゾル形成基材部110および/またはラッパー130に配置(適用)される。ただし、ニコチンシート10の具体的な適用方式と加工形態は変わることができる。
【0075】
幾つかの実施形態において、
図2に示されたように、ニコチンシート10が裁刻物111の形態でエアロゾル形成基材部110に適用可能である。例えば、ニコチンシート10の裁刻物111が刻み形態のタバコ物質111(e.g.葉タバコ刻み、板状葉刻み)と配合されて、エアロゾル形成基材部110に投入されることができる。
【0076】
他の幾つかの実施形態において、
図3に示されたように、ニコチンシート10がタバコシート20と共にエアロゾル形成基材部110に投入されることができる。ここで、タバコシート20は、シート形態で製造されたタバコ物質であり、例えば、板状葉のような再構成タバコであってもよいが、これに限定されるものではない。本例示において、ニコチンシート10は、タバコシート20と適切に混ざって(e.g.ニコチンシート10をタバコシート20に積層する、共にぐるぐる巻くなど)エアロゾル形成基材部110に投入されることができる。
【0077】
さらに他の幾つかの実施形態において、
図4に示されたように、ニコチンシート10がローリング(rolling)またはフォールディング(folding)された形態でエアロゾル形成基材部110に適用可能である。例えば、ニコチンシート10は、不規則的なパターンでローリングまたはフォールディングされた形態(10-1参照)、うず巻き形態(10-2参照)、同心円形態(10-3参照)または複数回フォールディングされた形態(10-4参照;e.g.長さ方向に気流パスが確保されるようにフォールディングされた形態)でエアロゾル形成基材部110に適用可能である。この際、ニコチンシート10は、タバコ物質と共にエアロゾル形成基材部110に投入されることもでき、エアロゾル形成基材部110内で独立したセグメント(すなわち、ニコチンシート10だけが含まれた専用セグメント)を形成することもできる。または、エアロゾル形成基材部110の外部に形成された別途のセグメント(e.g.冷却セグメント)に投入されることもできる。ニコチンシート10が例示された形態に適用されると、長さ方向に気流パスが確保されて、円滑な気流フローと適切な吸引抵抗を保障することができる。また、ニコチンシート10と高温の気流との接触面積が増大して、ニコチン移行量も増大することができる。
【0078】
さらに他の幾つかの実施形態において、ニコチンシート10は、ラッパー130に適用(e.g.付着)される。例えば、ニコチンシート10がラッパー130の内側に配置されてもよい。ラッパー130が金属ホイルを含む場合には、ニコチンシート10が金属ホイルの内側に配置されてもよい。または、ニコチンシート10がラッパー130の少なくとも一部を構成することもできる。例えば、ニコチンシート10自体がラッパー130として機能したり(用いられたり)、ニコチンシート10とラッピングペーパーが一体化した形態で製造されたラッピング材料がラッパー130として用いられ得る。
【0079】
一方、上記の実施形態において、ニコチンシート10は、所定の工程を通じて加工されたものであってもよい。ただし、その具体的な加工形態は多様である。
【0080】
例えば、
図5に示されたように、ニコチンシート10は、エアロゾル発生物品100の長さ方向(すなわち、MD方向)にしわになったり折り曲がったりするように加工されたものであってもよい。例えば、ニコチンシート10は、クリンピング(crimping、捲縮)工程、プリーティング(pleating、シワ)工程、フォールディング(folding,折曲)およびギャザリング(gathering、集結)工程のうち少なくとも一つによりしわになったり、折り曲がったりしていてもよい。具体的に、クリンピング工程は、クリンピング機器のローラー圧力と速度の差異を通じてシート表面にシワ(creep)が付与される工程であり、湿式工程と乾式工程に分けられる。湿式工程は、原紙を水に濡らした後、やわらかくして、クリンピングを行った後、再乾燥過程を経る工程を意味し得る。乾式工程は、互いに温度が異なる2個のドライヤーによる乾燥工程を意味し得る。当該技術分野の従事者なら、プリーティング工程、フォールディング工程およびギャザリング工程についてすでに熟知しているところ、これに関するさらなる説明は省略する。本例示によれば、例示された工程のうち少なくとも一つを通じてニコチンシート10に長さ方向に多数のチャネルが形成され、形成されたチャネルを通じて円滑な気流フローと適切な吸引抵抗を保障することができる。それだけでなく、ニコチンシート10と高温の気流との接触面積が増大して、ニコチン移行量も増大することができる。
【0081】
他の例として、
図6に示されたように、ニコチンシート10は、複数個のホール101(hole)が形成されるように加工されたものであってもよい。例えば、パンチング(punching)工程を通じてニコチンシート10に複数個のホール101が形成される。この際、ホール101の直径は、約0.05mm~5mmであってもよく、好ましくは、約0.1mm~3mmまたは約0.2mm~2.5mm、約0.3mm~2.1mmまたは約0.4mm~1.8mmであってもよい。このような数値範囲内で、円滑な気流フローと適切な吸引抵抗を保障することができる。それだけでなく、ニコチンシート10と高温の気流との接触面積が増大して、ニコチン移行量も増大することができる。
【0082】
以上では、
図1~
図6を参照して本開示の幾つかの実施形態によるエアロゾル発生物品100について説明した。上述したことによれば、ニコチンシート10がエアロゾル発生物品100に多様な形態に適用されることによって、喫味持続性が増進されたエアロゾル発生物品100を容易に製造することができる。
【0083】
以下では、
図7および
図8を参照して本開示の他の実施形態によるエアロゾル発生物品200、300について説明する。ただし、本開示の明瞭さのために、上記で説明されたエアロゾル発生物品100と重複する内容に関する説明は省略する。
【0084】
図7は、本開示の他の幾つかの実施形態によるエアロゾル発生物品200を示す例示図である。
【0085】
図7に示されたように、エアロゾル発生物品200は、エアロゾル形成基材部210、フィルター部220およびラッパー230を含んでもよく、フィルター部220は、複数のセグメント221、222を含んでもよい。
【0086】
エアロゾル形成基材部210は、上記で説明したエアロゾル形成基材部110に対応する。したがって、これに関する説明は省略する。
【0087】
次に、フィルター部220は、第1セグメント221と第2セグメント222で構成されることができる。もちろん、フィルター部220は、第3セグメント(不図示)をさらに含んでもよい。
【0088】
第1セグメント221は、エアロゾル形成基材部210で発生したエアロゾルに対する冷却機能を行うことができる。したがって、場合によって第1セグメント221は、「冷却セグメント221」または「冷却部221」とも称される。
【0089】
第1セグメント221は、多様な形態で製造することができる。一例として、第1セグメント221は、紙材質で形成され、中空(またはキャビティ)を含む円筒形態の紙管であってもよい。他の例として、第1セグメント221は、高分子物質または生分解性高分子物質で製作されたものであってもよい。例えば、第1セグメント221は、ポリ乳酸(PLA)繊維で製作されてもよいが、これに限定されない。さらに他の例として、第1セグメント221は、複数個の孔が穿設されたセルロースアセテートフィルターで製作されてもよい。さらに他の例として、第1セグメント221は、中空を含むチューブフィルターであってもよい。例えば、第1セグメント221は、中空を含むセルロースアセテートフィルターであってもよい。しかし、これに限定されるものではなく、冷却機能を行うことができると、第1セグメント221は、例示されたものと異なる形態で製造することもできる。
【0090】
幾つかの実施形態において、第1セグメント221にニコチンシート10を適用することもできる。例えば、ニコチンシート10が
図4に例示された形態で第1セグメント221の内部(e.g.中空またはキャビティ内部)に配置されてもよい。または、ニコチンシート10が第1セグメント221の内壁(e.g.中空の内壁)に付着することもできる。いかなる場合でも、長さ方向への円滑な気流フローを保障することができ、ニコチンシート10が高温のエアロゾルから熱気を吸収することによって、第1セグメント221の冷却性能も向上することができる。もちろん、ニコチンシート10が高温のエアロゾルと接触時にニコチン成分も徐々に放出されるので、エアロゾル発生物品200の喫味持続性も十分に保障することができる。
【0091】
参考として、セルロース系物質は、高温の気流と接触時に相変化し、多量の熱気を吸収する性質を有するので、セルロース系物質により形成されたニコチンシート10が適用されると、第1セグメント221の冷却性能がさらに向上することができる。
【0092】
次に、第2セグメント222は、第1セグメント221を通過したエアロゾルに対するろ過機能を行うことができる。したがって、場合によって第2セグメント222は、「フィルターセグメント222」または「フィルター部222」とも称される。または、第2セグメント222は、マウスピース部位に位置するところ、「マウスピースセグメント222」または「マウスピース部222」とも称される。
【0093】
幾つかの実施形態において、第2セグメント222は、少なくとも一つのカプセル240を含んでもよい。ここで、カプセル240は、香味を発生させる機能を行うこともでき、エアロゾルを発生させる機能を行うこともできる。例えば、カプセル240は、香料を含む液体を被膜で包んだ構造であってもよい。また、カプセル240は、球形または円筒形の形状を有していてもよいが、これに限定されるものではない。
【0094】
次に、ラッパー230は、上記で説明したラッパー130に対応する。したがって、これに関する説明は省略する。
【0095】
一方、
図7に示されてはいないが、エアロゾル発生物品200は、末端に配置されたプラグ(不図示)をさらに含んでもよい。例えば、プラグは、エアロゾル発生物品200の上流末端に配置されて、エアロゾル発生物品200の全長を適切に調節する機能を行うことができる。また、エアロゾル発生物品200がエアロゾル発生装置(e.g.
図9の1000)に挿入される場合、プラグは、エアロゾル形成基材部210がエアロゾル発生装置(e.g.
図9の1000)内部の適切な位置に配置されるように調節する機能を行うこともできる。
【0096】
図8は、本開示のさらに他の幾つかの実施形態によるエアロゾル発生物品300を概略的に示す例示図である。
【0097】
図8に示されたように、エアロゾル発生物品300は、エアロゾル形成基材部310およびフィルター部320を含んでもよく、エアロゾル形成基材部310およびフィルター部320それぞれは、複数のセグメント311、312、321、322を含んでもよい。
【0098】
図示のように、エアロゾル形成基材部310は、第1セグメント311と第2セグメント312で構成されることができる。もちろん、エアロゾル形成基材部310は、第3セグメント(不図示)をさらに含んでもよい。
【0099】
第1セグメント311は、保湿剤(エアロゾル形成剤)を含んでもよい。例えば、第1セグメント311は、保湿剤が含浸された捲縮紙を含んでもよい。保湿剤は、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびオレイルアルコールのうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0100】
次に、第2セグメント312は、タバコ物質のようなニコチン発生基材を含んでもよい。ニコチン発生基材は、例えば、タバコ刻み、タバコ粒子、タバコシート、タバコビーズ、タバコ顆粒を含んでもよい。他の例として、ニコチン発生基材は、タバコ抽出物またはニコチン液状が含浸された捲縮紙を含むこともできる。ニコチン発生基材が加熱される場合、ニコチン発生基材からニコチンが発生してフィルター部320にニコチンが移行することができる。
【0101】
次に、フィルター部320も、複数のセグメント321、322を含んでもよい。例えば、フィルター部320は、冷却機能を行う第3セグメント321とろ過機能を行う第4セグメント322を含んでもよい。前述した
図7のフィルター部220に関する内容がフィルター部320に同一に適用できるので、さらなる説明は省略する。
【0102】
次に、ラッパー330は、上記で説明したラッパー130に対応する。したがって、これに関する説明は省略する。
【0103】
以上では、
図7および
図8を参照して本開示の他の実施形態によるエアロゾル発生物品(200、300)について説明した。以下では、
図9~
図11を参照して上述したエアロゾル発生物品(100~300)が適用できる多様な類型のエアロゾル発生装置1000について説明する。
【0104】
図9~
図11は、エアロゾル発生装置1000を示す例示的なブロック図である。具体的に、
図9は、シガレット型エアロゾル発生装置1000を例示しており、
図10および
図11は、液状とシガレットを共に用いるハイブリッド型エアロゾル発生装置1000を例示している。以下、各エアロゾル発生装置1000について説明する。
【0105】
図9に示されたように、エアロゾル発生装置1000は、ヒーター1300、バッテリー1100および制御部1200を含んでもよい。ただし、これは、ただ本開示の目的を達成するための好ましい実施形態であり、必要に応じて一部の構成要素が追加されたり省略されたりすることはもちろんである。また、
図9に示されたエアロゾル発生装置1000のそれぞれの構成要素は、機能的に区分される機能要素を示すものであり、複数の構成要素が実際物理的環境では互いに統合される形態で具現されたり、単一の構成要素が複数の細部機能要素に分離される形態で具現されたりすることもできる。以下、エアロゾル発生装置1000の各構成要素について説明する。
【0106】
ヒーター1300は、内部に挿入されたシガレット2000を加熱するように配置されてもよい。シガレット2000は、固体エアロゾル形成基材を含み、加熱されることで、エアロゾルを発生させることができる。発生したエアロゾルは、ユーザの口部を通じて吸入されることができる。ヒーター1300の動作、加熱温度などは、制御部1200により制御することができる。
【0107】
次に、バッテリー1100は、エアロゾル発生装置1000が動作するのに用いられる電力を供給することができる。例えば、バッテリー1100は、ヒーター1300がシガレット2000に含まれたエアロゾル形成基材を加熱することができるように電力を供給できて、制御部1200が動作するのに必要な電力を供給することができる。
【0108】
また、バッテリー1100は、エアロゾル発生装置1000に設置されたディスプレイ(不図示)、センサー(不図示)、モーター(不図示)などの電気的構成要素が動作するのに必要な電力を供給することができる。
【0109】
次に、制御部1200は、エアロゾル発生装置1000の動作を全般的に制御することができる。例えば、制御部1200は、ヒーター1300およびバッテリー1100の動作を制御することができ、エアロゾル発生装置1000に含まれた他の構成要素の動作も制御することができる。制御部1200は、バッテリー1100が供給する電力、ヒーター1300の加熱温度などを制御することができる。また、制御部1200は、エアロゾル発生装置1000の構成それぞれの状態を確認して、エアロゾル発生装置1000が動作可能な状態であるか否かを判断することもできる。
【0110】
制御部1200は、少なくとも一つのプロセッサ(processor)により具現されてもよい。前記プロセッサは、多数の論理ゲートのアレイで具現されることもでき、汎用的なマイクロ・プロセッサとこのマイクロ・プロセッサで実行できるプログラムが保存されたメモリーの組み合わせで具現されることもできる。また、本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者なら、制御部1200が他の形態のハードウェアで具現されることもできることを自明に理解することができる。
【0111】
以下では、
図10および
図11を参照してハイブリッド型エアロゾル発生装置1000について簡略に説明する。
【0112】
図10は、気化器1400とシガレット2000が並列に配置されたエアロゾル発生装置1000を例示しており、
図11は、気化器1400とシガレット2000が直列に配置されたエアロゾル発生装置1000を例示している。しかし、エアロゾル発生装置1000の内部構造は、
図10および
図11に例示されたものに限定されるものではなく、設計方式によって構成要素の配置は変更可能である。
【0113】
図10および
図11で、気化器1400は、液状のエアロゾル形成基材を貯蔵する液状貯蔵槽と、エアロゾル形成基材を吸収するウィク(wick)と、吸収されたエアロゾル形成基材を気化させてエアロゾルを発生させる気化要素と、を含んでもよい。気化要素は、加熱要素、振動要素などのように多様な形態で具現されてもよい。また、幾つかの実施形態において、気化器1400は、ウィクを含まない構造に設計されることもできる。
【0114】
気化器1400で発生したエアロゾルは、シガレット2000を通過してユーザの口部を通じて吸入されることができる。また、気化器1400の気化要素も、制御部1200により制御することができる。
【0115】
以上では、
図9~
図11を参照して本開示の幾つかの実施形態によるエアロゾル発生物品(100~300)が適用できる例示的なエアロゾル発生装置1000について説明した。
【0116】
以下では、実施例および実験例を通じて上述したニコチンシート10の構成および効果についてより明確にする。ただし、以下の実施例は、ニコチンシート10の一部の例示に過ぎないので、本開示の範囲が以下の実施例によって限定されるものではない。
【0117】
[実施例1~11]
下記の表1および表2に記載されたような重量比を有するニコチンシートを製造し、製造されたニコチンシートをエアロゾル形成基材部に投入して、加熱型シガレットを製造した。
【0118】
【表1】
(Grade A、B、C:2%溶液で粘度15、5、50)
【0119】
【表2】
(Grade A、B、C:2%溶液で粘度15、5、50)
【0120】
[実験例1:製造難易度および官能評価]
実施例1~11によるニコチンシートとシガレットに対して、調液製造難易度と、喫味持続性、異臭味、喫味強度、喉越しの柔らかさおよび喫煙後の充足感などの官能特性を総合的に評価する実験を行った。官能特性の評価は、5年以上の喫煙経験を持っているパネルを対象に行われ、上中下の等級に基づいて評価を行い、評価結果は、下記の表3および表4に記載されている。
【0121】
【0122】
【0123】
表3および表4を参照すると、MC基盤のシート組成物は、一般的に調液製造難易度が低いと評価された(実施例2、6、7、9参照)。具体的に、MCベースのシート組成物は、粘度が適切であり、ゲル化する特性が少なくて、調液製造が容易であるのに対し、HPMCベースのシート組成物は、粘度が高いか、常温でゲル化する性質を有していて、調液製造が難しいと評価された。また、寒天の場合、水に溶かすために、約80℃~90℃度程度で水を加熱しなければならない煩わしさがあることが確認された。
【0124】
また、実施例1、3、8または9によるニコチンシート(またはシガレット)が、他の実施例に比べて喫煙中の異臭味が強く発生することが示された。言い換えれば、HPMCまたはCMCを用いたニコチンシートが、MCなどを用いたニコチンシートより異臭味が強いと評価された。
【0125】
[実施例12~21]
下記の表5および表6に記載されたような重量比を有するニコチンシートを製造し、製造されたニコチンシートをエアロゾル形成基材部に投入して、加熱型シガレットを製造した。
【0126】
【0127】
【0128】
[実験例2:エアロゾル形成剤の含有量によるシート物性および官能評価]
実施例12~20によるニコチンシートとシガレットに対して、エアロゾル形成剤(e.g.PG、GLY)の含有量によるシート物性と、エアロゾル発生量、異臭味、喫味強度、喫煙後の充足感などの官能特性を総合的に評価する実験を行った。官能特性の評価は、実験例1と同じ方式で行われ、評価結果は、下記の表7および表8に記載されている。
【0129】
【0130】
【0131】
表7および表8を参照すると、実施例14、16~18によるニコチンシートの物性が概して優れていることが示され、その中では、実施例16~18によるニコチンシートの物性がさらに優れていることが示された。具体的に、エアロゾル形成剤の含有量が過度に少なくなると(e.g.実施例12、13など)、シートが裂け散る現象が現れ、エアロゾル形成剤の含有量が過度に多くなると(e.g.実施例19、20)、シートが粘つくか、たるんでいる現象が現れることが確認された。
【0132】
参考として、実施例16~18によるニコチンシートのエアロゾル形成剤含有量は、乾燥した(製造された)シート100重量部を基準として約8~20重量部程度であるが、これは、調液製造時に添加された酒精と水は、乾燥するにつれてほとんど揮発したり蒸発したりするためである(e.g.一般的に酒精は乾燥時に揮発し、水は、シート100重量部を基準として約6~10重量部程度残る)。
【0133】
また、エアロゾル形成剤の含有量が増加するほどエアロゾルの発生量が増加することが示された。そして、GLYの割合がPGより高ければ、エアロゾルの発生量がさらに多いが、シートの物性は相対的に落ちることが確認された。例えば、実施例17(または実施例15)は、実施例18(または実施例14)より(実施例17は実施例18と、実施例15は実施例14とエアロゾル形成剤含有量が同一であるが、GLYの割合がさらに高い)エアロゾル発生量が多いことが示され、実施例15によるニコチンシートの物性は、実施例14より落ちることが示された。
【0134】
以上では、実施例および実験例を通じて上述したニコチンシート10の構成および効果に対してより詳細に説明した。
【0135】
以上、添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明したが、本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者は、その技術的思想や必須の特徴を変更することなく、本開示が他の具体的な形態で実施可能であることが理解できる。したがって、以上で記述した実施形態は、すべての面において例示的なものであり、限定的なものでないことを理解しなければならない。本開示の保護範囲は、下記の請求範囲により解されるべきであり、それと同等な範囲内にあるすべての技術思想は、本開示により定義される技術的思想の権利範囲に含まれるものと解されるべきである。
【国際調査報告】