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特表2023-548017ピラジン化合物の皮下及び筋肉内投与
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ピラジン化合物の皮下及び筋肉内投与
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/00 20060101AFI20231108BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231108BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231108BHJP
   C07D 241/26 20060101ALN20231108BHJP
   A61P 13/12 20060101ALN20231108BHJP
   A61K 31/4965 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
A61K49/00
A61K9/08
A61K47/02
C07D241/26
A61P13/12
A61K31/4965
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522794
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 US2021058849
(87)【国際公開番号】W WO2022103885
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】63/111,962
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517175301
【氏名又は名称】メディビーコン,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース、トーマス・イー
(72)【発明者】
【氏名】ハンリー、スティーブン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ドーショウ、リチャード・ビー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC17
4C076CC50
4C076DD23Z
4C076DD26Z
4C076FF11
4C076FF61
4C085HH11
4C085JJ02
4C085KA27
4C085KB56
4C085LL11
4C086BC48
4C086GA13
4C086GA14
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA17
4C086MA66
4C086ZA81
(57)【要約】
本開示は、決定又は評価を必要とする患者において腎糸球体濾過速度を決定するための方法又は腎機能を評価するための方法に関する。方法は、式Iのピラジン化合物を患者に皮下又は筋肉内投与することであって、投与が、同一の量の化合物の静脈内投与によってもたらされる血漿中濃度に実質的に類似する化合物の血漿中濃度をもたらす、投与することと、患者の腎臓が患者の全身循環からピラジンを排除する速度をモニターすることと、を含む。ピラジン化合物は、1つ以上のセンサーを使用して検出され得る電磁放射線に曝露されるときに蛍光する。蛍光が患者において減少する速度は、患者における腎糸球体濾過速度を計算するために使用され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の糸球体濾過速度(GFR)を決定するための方法であって、
前記患者に、約3mg~約250mgの下記の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を、約60mg/ml~約300mg/mlの溶液として皮下又は筋肉内投与するステップであって、この投与により、同一の量の前記化合物の静脈内投与によってもたらされる血漿中濃度に実質的に類似する前記化合物の血漿中濃度をもたらす、該ステップと、
前記患者における式Iの前記化合物の濃度を測定するステップと、
前記患者における前記GFRを、測定された前記化合物の濃度を使用して決定するステップと、を含む、方法。
【化1】
式中、
及びXの各々が、独立して、-CO(AA)、-CN、-CO、-CONR、-COR、-NO、-SOR35、-SO、-SOOR、及び-POから選択され、
及びYの各々が、独立して、-OR10、-SR11、-NR1213、-N(R14)COR15、-CONH(PS)、-P(R16、-P(OR17、及び
【化2】
から選択され、
が、単結合、-CR1819-、-O-、-NR20-、-NCOR21-、-S-、-SO-、及び-SO-であり、各R~R21が、独立して、水素、ヒドロキシル及びカルボン酸で任意に置換されたC-C10アルキル、C-Cポリヒドロキシル化アルキル、C-C10アリール、C-C10ヘテロアリール、C(O)で任意に置換されたC-Cヘテロシクロアルキル、C-C10ヘテロアリールで任意に置換された-(CHCOH、(CHCONR3031、-(CHNHSO 、-(CHNHSOH、-(CHOH、-(CHOPO 、-(CHOPO、-(CHOPO、-(CHOR22、-(CHOSO 、-(CHOSOH、-(CHPO 、-(CHPO、-(CHPO、-(CHSO 、-(CHSOH、-(CHCO(CHCHO)23、-(CH(CHCHO)24、-(CHCOH)COH、-CH(CHNHCHNR2526、-CH(CHOH)COH、-CH(CHOH)27、-CH[(CHNHCHOH、-CH[(CHNHCOH、及び-(CHNR2829から選択され、各R22~R31が、独立して、水素、C-C10アルキル、及びC-C-ジカルボン酸から選択され、R35が、ヒドロキシル及びカルボン酸で任意に置換されたC-C10アルキル、C-Cポリヒドロキシル化アルキル、C-C10アリール、C-C10ヘテロアリール、C(O)で任意に置換されたC-Cヘテロシクロアルキル、C-C10ヘテロアリールで任意に置換された-(CHCOH、-(CHCONR3031、-(CHNHSO 、-(CHNHSOH、-(CHOH、-(CHOPO 、-(CHOPO、-(CHOPO、-(CHOR22、-(CHOSO 、-(CHOSOH、-(CHPO 、-(CHPO、-(CHPO、-(CHSO 、-(CHSOH、-(CHCO(CHCHO)23、-(CH(CHCHO)24、-(CHCOH)COH、-CH(CHNHCHNR2526、-CH(CHOH)COH、-CH(CHOH)27、-CH[(CHNHCHOH、-CH[(CHNHCOH、及び-(CHNR2829から選択され、
AAが、ペプチド又はアミド結合によって一緒に結合した、天然及び非天然アミノ酸からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸を含むペプチド鎖であり、AAの各例は、互いの例と同じであるか又は異なり得、
PSが、グリコシド結合によって結合した1つ以上の単糖単位を含む硫酸化又は非硫酸化多糖鎖であり、
「a」が、1~10の数であり、「c」が、1~100の数であり、「m」及び「n」の各々が、独立して、1~3の数である。
【請求項2】
前記患者における式Iの前記化合物の濃度が、測定時間窓にわたって測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
約10mg~約150mgの式Iの前記化合物が、前記患者に皮下又は筋肉内投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式Iの前記化合物が、約60mg/ml~約150mg/mlの溶液として、前記患者に皮下又は筋肉内投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶液が、抗菌剤、酸化防止剤、緩衝剤、オスモル濃度調整剤、pH調整剤、防腐剤、溶媒、安定化剤、界面活性剤、張度調整剤、粘度調整剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤のうちの1つが、リン酸緩衝生理食塩水である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が、以前の測定で決定されるように90未満のGFRを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶液が、予め充填されたシリンジ中に包装される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記溶液が、オートインジェクターによって前記患者に皮下又は筋肉内投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
センサーが、経皮蛍光を検出するために前記患者の少なくとも1つの体の部位に取り付けられる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
測定された前記化合物の濃度を使用して前記患者におけるGFRを決定する前記ステップが、前記センサーによって検出された前記経皮蛍光を定量化し、モバイルコンピューティングデバイス上に表示することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
及びXの両方が、-CO(AA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
AAの各例が、単一のD-α-アミノ酸である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
式Iの前記化合物が、以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【化3】
【請求項15】
前記薬学的に許容される塩が、カチオン又はアニオン塩である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記薬学的に許容される塩が、ナトリウム塩、コリン塩、及びメグルミン塩からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
GFR評価のためのキットであって、
約60mg/ml~約300mg/mlの溶液としての、約3mg~約250mgの下記の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩と、
患者の体内に前記溶液を皮下又は筋肉内投与するように構成されたインジェクターデバイスと、
前記患者の体に取り付け、経皮蛍光を検出するように構成されたセンサーと、
前記センサーと無線で通信可能に結合し、前記センサーからデータを受信し、前記データに基づいて前記患者のGFRを計算するようにプログラムされたモバイルコンピューティングデバイスと、
前記患者のGFRを評価するために前記キットの構成要素を使用する方法を記載する説明書と、を含む、キット。
【化4】
式中、
及びXの各々が、独立して、-CO、-CONR、-CO(AA)、又は-CONH(PS)であり、
及びYの各々が、独立して、-NR及び
【化5】
からなる群から選択され、
が、単結合、-CR-、-O-、-NR-、-NCOR-、-S-、-SO-、又は-SO-であり、
~Rの各々が、独立して、H、-CH(CHOH)H、-CH(CHOH)CH、-CH(CHOH)COH、-(CHCOH)COH、-(CHCHO)H、-(CHCHO)CH、-(CHSOH、-(CHSO 、-(CHSOH、-(CHSO 、-(CHNHSOH、-(CHNHSO 、-(CHNHSOH、-(CHNHSO 、-(CHPO、-(CHPO 、-(CHPO2-、-(CHPO 3-、-(CHPO、-(CHPO、及び-(CHPO 2-からなる群から選択され、
AAが、ペプチド又はアミド結合によって一緒に結合した、天然及び非天然アミノ酸からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸を含むペプチド鎖であり、AAの各例は、互いの例と同じであるか又は異なり得、
PSが、グリコシド結合によって結合した1つ以上の単糖単位を含む硫酸化又は非硫酸化多糖鎖であり、
「a」が、1~10の数であり、「c」が、1~100の数であり、「m」及び「n」の各々が、独立して、1~3の数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年11月10日に米国特許商標庁に出願された米国仮特許出願第63/111,962号の利益を主張し、その内容全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の分野は、一般に、ピラジン化合物を含む薬学的組成物、及び皮下又は筋肉内投与後にそこから蛍光を経皮的に検出する方法、並びに評価を必要とする患者の腎機能を評価するための当該薬学的組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
急性腎不全(ARF)は、一般的な医科外科病院に入院している患者における一般的な病気である。ARFを発症する患者の約半数は、直接ARF又は基礎疾患に関連する合併症のいずれかで死亡し、生存者は、罹患率の著しい増加及び入院期間の延長に直面している。腎不全はしばしば無症候性であり、典型的には血液中の腎機能マーカーを注意深く追跡する必要があるため、早期診断は、一般的に重要であると考えられている。様々な臨床的、生理学的、及び病理学的状態によってもたらされる急性腎不全のリスクを最小限に抑えるために、患者の腎機能の動的モニタリングが望ましい。そのような動的モニタリングは、これらの患者の大部分が、死亡につながる可能性のある多臓器不全(MOF)のリスクに直面する傾向があるため、重篤又は重傷患者の場合には特に重要である傾向がある。MOFは、肺、肝臓、及び腎臓の連続的な不全であり、急性肺損傷(ALI)、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、代謝亢進、低血圧、持続性炎症性病巣、及び敗血症症候群のうちの1つ以上によって誘発される。MOFにつながる低血圧及びショックの一般的な組織学的特徴には、一般に、組織壊死、血管鬱血、間質性及び細胞性浮腫、出血及び微小血栓が含まれる。これらの変化は、一般に、頻度の降順で肺、肝臓、腎臓、腸管、副腎、脳、及び膵臓に影響を及ぼす。外傷の初期段階から臨床MOFへの移行は、一般に、特定の程度の肝不全及び腎不全、並びに約30%から約50%への死亡リスクの変化に対応する。
【0004】
従来、患者の腎機能は、患者の尿出力及び血漿クレアチニンレベルの粗い測定値を使用して決定されてきた。これらの値は、年齢、水和の状態、腎灌流、筋肉量、食事摂取量、並びに多くの他の臨床及び人体測定変数によって影響を受けるため、しばしば誤解を招く。加えて、サンプリングから数時間後に得られた単一値は、血圧、心拍出量、水和状態、及び他の具体的な臨床事象(例えば、出血、菌血症、人工呼吸器設定など)のような他の生理学的事象と相関させることは困難であり得る。
【0005】
慢性腎臓疾患(CKD)は、経時的に腎臓機能を徐々に喪失することを特徴とする医学的状態である。これは、腎臓を損傷し、個体の血液から老廃物を適切に除去する能力を低下させる状態を含む。CKDからの合併症は、心臓病のリスクの増加に加えて、高血圧、貧血(低血球数)、骨粗鬆症、栄養不良、及び神経損傷を含む。国立腎臓財団によると、CKDの全症例の約3分の2は、糖尿病又は高血圧によって引き起こされる。腎臓病の家族歴に加えて、他のリスク因子は、年齢、民族、高血圧、及び糖尿病を含む。腎糸球体濾過速度(GFR)は、腎機能のレベルを決定し、患者のCKDのステージを評価する最良の検査である。
【0006】
GFRは、CKDの状態を決定する腎臓機能のレベルを決定する重要な検査である。GFRが低いほど、CKDはより重篤になる。GFRは、他の因子と組み合わせて血中クレアチニンレベルを測定する血液検査に基づいて推定することができる。より正確な、したがってより有用な方法は、物質の患者への注射、続いて一定の時間にわたる尿出力の注意深いモニタリングを必要とする。これらはしばしば、それ自体が腎障害を引き起こし得る造影剤(CA)である。放射性同位体又はヨウ素化芳香族環は、GFR決定に使用されるCAの2つの一般的なカテゴリーである。
【0007】
ピラジン誘導体は、US8,155,000、US8,481,734、US8,628,751、US8,664,392、US8,697,033、US8,722,685、US8,628,751、US8,778,309、US9,005,581、US9,216,963、US9,283,288、US9,376,399、US10,525,149、US10,617,687、USRE47413、及びUSRE47255に開示されるものを含む、腎臓モニタリングにおける使用のために当該技術分野で既知である。ピラジン誘導体は、典型的には、経皮蛍光による腎糸球体濾過速度の正確な決定のために静脈内(IV)投与される。しかしながら、他の投与経路を利用することができることは有益であろう。
【発明の概要】
【0008】
一態様では、本開示は、決定を必要とする患者における糸球体濾過速度(GFR)を決定するための方法を包含する。方法は、当該患者に、約3mg~約300mgの式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を、60~300mg/mLの溶液として皮下又は筋肉内投与することであって、投与が、同一の量の化合物の静脈内投与によってもたらされる血漿中濃度に実質的に類似する化合物の血漿中濃度をもたらす、投与することと、測定時間窓にわたって当該患者における式Iの化合物の濃度を測定することと、測定された濃度の化合物を使用して当該患者におけるGFRを決定することと、を含み、式Iは、以下であり、
【0009】
【化1】
【0010】
式中、X及びXの各々は、独立して、-CO(AA)、-CN、-CO、-CONR、-COR、-NO、-SOR35、-SO、-SOOR、及び-POから選択され、Y及びYの各々は、独立して、-OR10、-SR11、-NR1213、-N(R14)COR15、-CONH(PS)、-P(R16、-P(OR17、及び
【0011】
【化2】
【0012】
から選択され、
は、単結合、-CR1819-、-O-、-NR20-、-NCOR21-、-S-、-SO-、及び-SO-であり、各R~R21は、独立して、水素、ヒドロキシル及びカルボン酸で任意に置換されたC-C10アルキル、C-Cポリヒドロキシル化アルキル、C-C10アリール、C-C10ヘテロアリール、C(O)で任意に置換されたC-Cヘテロシクロアルキル、C-C10ヘテロアリールで任意に置換された-(CHCOH、(CHCONR3031、-(CHNHSO 、-(CHNHSOH、-(CHOH、-(CHOPO 、-(CHOPO、-(CHOPO、-(CHOR22、-(CHOSO 、-(CHOSOH、-(CHPO 、-(CHPO、-(CHPO、-(CHSO 、-(CHSOH、-(CHCO(CHCHO)23、-(CH(CHCHO)24、-(CHCOH)COH、-CH(CHNHCHNR2526、-CH(CHOH)COH、-CH(CHOH)27、-CH[(CHNHCHOH、-CH[(CHNHCOH、及び-(CHNR2829から選択され、各R22~R31は、独立して、水素、C-C10アルキル、及びC-C-ジカルボン酸から選択され、R35は、ヒドロキシル及びカルボン酸で任意に置換されたC-C10アルキル、C-Cポリヒドロキシル化アルキル、C-C10アリール、C-C10ヘテロアリール、C(O)で任意に置換されたC-Cヘテロシクロアルキル、C-C10ヘテロアリールで任意に置換された-(CHCOH、-(CHCONR3031、-(CHNHSO 、-(CHNHSOH、-(CHOH、-(CHOPO 、-(CHOPO、-(CHOPO、-(CHOR22、-(CHOSO 、-(CHOSOH、-(CHPO 、-(CHPO、-(CHPO、-(CHSO 、-(CHSOH、-(CHCO(CHCHO)23、-(CH(CHCHO)24、-(CHCOH)COH、-CH(CHNHCHNR2526、-CH(CHOH)COH、-CH(CHOH)27、-CH[(CHNHCHOH、-CH[(CHNHCOH、及び-(CHNR2829から選択され、(AA)は、ペプチド結合アミド結合によって一緒に結合した1つ以上の天然又は非天然アミノ酸を含むポリペプチド鎖であり、(AA)の各例は、他の例と同じであるか又は異なり得、(PS)は、グリコシド結合によって結合した1つ以上の単糖単位を含む硫化又は非硫化多糖鎖であり、各「a」、「b」、及び「d」は、独立して、0~10から選択され、「c」は、1~100から選択され、「m」及び「n」の各々は、独立して、1~3の整数である。
【0013】
別の態様では、本開示は、患者における臓器機能を評価する方法を包含する。方法は、当該患者に、約3mg~約300mgの蛍光化合物を60~300mg/mLの溶液として皮下又は筋肉内投与することであって、投与が、同一の量の蛍光化合物の静脈内投与によってもたらされる血漿中濃度に実質的に類似する蛍光化合物の血漿中濃度をもたらす、投与することと、当該蛍光化合物を電磁放射線に曝露し、それによってスペクトルエネルギーを当該蛍光化合物から発出させることと、当該蛍光化合物から発出したスペクトルエネルギーを検出することと、検出されたスペクトルエネルギーに基づいて患者の臓器機能を評価することと、を含み、蛍光化合物は、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩であり、式Iは、以上のように記載される。
【0014】
別の態様では、本開示は、患者における腎臓機能を評価する方法を包含する。方法は、当該患者に、約3mg~約300mgの蛍光化合物を60~300mg/mLの溶液として皮下又は筋肉内投与することであって、投与が、同一の量の蛍光化合物の静脈内投与によってもたらされる血漿中濃度に実質的に類似する蛍光化合物の血漿中濃度をもたらす、投与することと、当該蛍光化合物を電磁放射線に曝露し、それによってスペクトルエネルギーを当該蛍光化合物から発出させることと、当該蛍光化合物から発出したスペクトルエネルギーを検出することと、検出されたスペクトルエネルギーに基づいて患者の腎臓機能を評価することと、を含み、蛍光化合物は、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩であり、式Iは、以上のように記載される。
【0015】
本発明の他の態様及び反復は、以下により徹底的に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】MB-102血漿濃度(ng/ml)対IV投与(三角)及び皮下投与(四角、丸、及びダイヤ)後の時間を示すグラフである。
図2】MB-102の血漿濃度(破線、右y軸、ng/ml)及び経皮蛍光(実線、左y軸)対IV注射後の時間(x軸、時間)を示すグラフである。
図3】MB-102血漿濃度(破線、右y軸、ng/ml)及び経皮蛍光(実線、左y軸)対動物への多針皮下注射後の時間(x軸、時間)を示すグラフである。
図4】MB-102血漿濃度(破線、右y軸、ng/ml)及び経皮蛍光(実線、左y軸)対動物への多針皮下注射後の時間(x軸、時間)対象を示すグラフである。
図5】MB-102血漿濃度(破線、右y軸、ng/ml)及び経皮蛍光(実線、左y軸)対動物への単針皮下注射後の時間(x軸、時間)を示すグラフである。
図6】MB-102血漿濃度(破線、右y軸、ng/ml)対動物への単針筋肉内注射後の時間(x軸、時間)を示すグラフである。
図7】MB-102血漿濃度(破線、右y軸、ng/ml)及び経皮蛍光(実線、左y軸)対動物への単針筋肉内注射後の時間(x軸、時間)を示すグラフである。
図8】MB-102血漿濃度(緑x、右y軸、ng/ml)及び経皮蛍光(実線、左y軸)対動物(1539)への単針皮下注射後の時間(x軸、時間)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示又はその実施形態の要素を導入するとき、「a」、「an」、「the」、及び「said」という冠詞は、要素のうちの1つ以上が存在することを意味することを意図している。「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、包括的であることが意図され、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0018】
本明細書で使用される「約」という用語は、例えば、典型的な測定技法及び装置を通して、これらに限定されないが、質量、体積、時間、距離、及び量を含む、任意の定量可能な変数に関して生じ得る数値量の変動を指す。更に、現実世界で使用される固体及び液体取り扱い手順を考えると、組成物を作製するか又は方法などを実施するために使用される成分の製造、供給源、又は純度の違いによる可能性が高い特定の不注意なエラー及び変動が存在する。「約」という用語はまた、最大±5%であり得るが、±4%、3%、2%、1%などでもあり得るこれらの変形を包含する。「約」という用語によって修飾されるか否かにかかわらず、特許請求の範囲は、量に対する等価物を含む。
【0019】
本明細書における「ピラジン」、「ピラジン誘導体」、「ピラジン分子」、「ピラジン化合物」、又は「ピラジン類似体」への全ての言及は、式Iの全ての化合物に適用される。加えて、「ピラジン」、「ピラジン誘導体」、「ピラジン分子」、「ピラジン化合物」、又は「ピラジン類似体」への各言及は、特に明記されない限り、その薬学的に許容される全ての塩を含む。塩形態は、荷電又は非荷電であり得、適切なカチオンを形成するためにプロトン化されるか、又は適切なアニオンを形成するために脱プロトン化され得る。本明細書に開示される全ての態様及び実施形態は、式Iの化合物に適用可能であり、具体的な例は、単に例示的であり、本開示の範囲に非限定的である。
【0020】
「筋肉内投与」という用語は、組成物の筋肉への投与を指す。「皮下投与」という用語は、皮膚(すなわち、真皮)と筋肉との間の組織層への組成物の投与を指す。「皮内投与」という用語は、組成物の真皮への投与を指す。したがって、筋肉内投与、皮下投与、及び皮内投与は、体の異なる部位を標的とする、異なる投与経路である。
【0021】
「MB-102」という用語は、化合物3,6-ジアミノ-2,5-ビス{N-[(1R)-1-カルボキシ-2-ヒドロキシエチル]カルバモイル}ピラジン又は(2R,2'R)-2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンイジル))ビス(3-ヒドロキシプロパン酸)を指す。
【0022】
「MB-404」という用語は、化合物N2,N5-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-3,6-ビス[(S)-2,3-ジヒドロキシプロピルアミノ]ピラジン-2,5-ジカルボキサミドを指す。
【0023】
I.式Iの化合物
一態様では、本明細書において、式Iのピラジン化合物、又はその薬学的に許容される塩が開示され、
【0024】
【化3】
【0025】
式中、X及びXの各々は、独立して、-CO(AA)、-CN、-CO、-CONR、-COR、-NO、-SOR35、-SO、-SOOR、及び-POから選択され、
及びYの各々は、独立して、-OR10、-SR11、-NR1213、-N(R14)COR15、-CONH(PS)、-P(R16、-P(OR17、及び
【0026】
【化4】
【0027】
から選択され、
は、単結合、-CR1819-、-O-、-NR20-、-NCOR21-、-S-、-SO-、及び-SO-であり、
各R~R21は、独立して、水素、ヒドロキシル及びカルボン酸で任意に置換されたC-C10アルキル、C-Cポリヒドロキシル化アルキル、C-C10アリール、C-C10ヘテロアリール、C(O)で任意に置換されたC-Cヘテロシクロアルキル、C-C10ヘテロアリールで任意に置換された-(CHCOH、-(CHCONR3031、-(CHNHSO 、-(CHNHSOH、-(CHOH、-(CHOPO 、-(CHOPO、-(CHOPO、-(CHOR22、-(CHOSO 、-(CHOSOH、-(CHPO 、-(CHPO、-(CHPO、-(CHSO 、-(CHSOH、-(CHCO(CHCHO)23、-(CH(CHCHO)24、-(CHCOH)COH、-CH(CHNHCHNR2526、-CH(CHOH)COH、-CH(CHOH)27、-CH[(CHNHCHOH、-CH[(CHNHCOH、及び-(CHNR2829から選択され、
各R22~R31は、独立して、水素、C-C10アルキル、及びC-Cジカルボン酸から選択され、
35は、ヒドロキシル及びカルボン酸で任意に置換されたC-C10アルキル、C-Cポリヒドロキシル化アルキル、C-C10アリール、C-C10ヘテロアリール、C(O)で任意に置換されたC-Cヘテロシクロアルキル、C-C10ヘテロアリールで任意に置換された-(CHCOH、-(CHCONR3031、-(CHNHSO 、-(CHNHSOH、-(CHOH、-(CHOPO 、-(CHOPO、-(CHOPO、-(CHOR22、-(CHOSO 、-(CHOSOH、-(CHPO 、-(CHPO、-(CHPO、-(CHSO 、-(CHSOH、-(CHCO(CHCHO)23、-(CH(CHCHO)24、-(CHCOH)COH、-CH(CHNHCHNR2526、-CH(CHOH)COH、-CH(CHOH)27、-CH[(CHNHCHOH、-CH[(CHNHCOH、及び-(CHNR2829から選択され、(AA)は、ペプチド結合アミド結合によって一緒に結合した1つ以上の天然又は非天然アミノ酸を含むポリペプチド鎖であり、(AA)の各例は、他の例と同じであるか又は異なり得、(PS)は、グリコシド結合によって結合した1つ以上の単糖単位を含む硫化又は非硫化多糖鎖であり、各「a」、「b」、及び「d」は、独立して、0~10から選択され、「c」は、1~100から選択され、「m」及び「n」の各々は、独立して、1~3の整数である。
【0028】
いくつかの態様では、本明細書において、式Iのピラジン化合物、又はその薬学的に許容される塩が開示され、式中、X及びXの各々は、独立して、-CO、-CONR、-CO(AA)、又は-CONH(PS)であり、Y及びYの各々は、独立して、-NRからなる群から選択され、Zは、単一結合、-CR-、-O-、-NR-、-NCOR-、-S-、-SO-、又は-SO-であり、R~Rの各々は、独立して、H、-CH(CHOH)H、-CH(CHOH)CH、-CH(CHOH)COH、-(CHCOH)COH、-(CHCHO)H、-(CHCHO)CH、-(CHSOH、-(CHSO 、-(CHSOH、-(CHSO 、-(CHNHSOH、-(CHNHSO 、-(CHNHSOH、-(CHNHSO 、-(CHPO、-(CHPO 、-(CHPO2-、-(CHPO 3-、-(CHPO、-(CHPO、及び-(CHPO 2-からなる群から選択され、AAは、ペプチド又はアミド結合によって一緒に結合した、天然又は非天然アミノ酸からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸を含むペプチド鎖であり、AAの各例は、他の例と同じであるか又は異なり得、PSは、グリコシド結合によって結合した1つ以上の単糖単位を含む硫化又は非硫化多糖鎖であり、各「a」は、0~10からの数であり、「c」は、1~100からの数であり、「m」及び「n」の各々は、独立して、1~3からの数である。別の態様では、「a」は、1~10の数である。また更に別の態様では、「a」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10である。
【0029】
いくつかの態様では、X及びXのうちの少なくとも1つは、-CO(PS)又は-CO(AA)である。更に別の態様では、X及びXの両方は、-CO(AA)である。
【0030】
(AA)は、ペプチド又はアミド結合によって一緒に結合した1つ以上の天然又は非天然アミノ酸を含むペプチド鎖である。ペプチド鎖(AA)は、単一のアミノ酸、ホモポリペプチド鎖、又はヘテロポリペプチド鎖であり得、任意の適切な長さであり得る。いくつかの実施形態では、天然又は非天然アミノ酸は、α-アミノ酸である。更に別の態様では、α-アミノ酸は、D-α-アミノ酸又はL-α-アミノ酸である。2つ以上のアミノ酸を含むポリペプチド鎖では、各アミノ酸は、側鎖の構造及び立体化学を含むが、これらに限定されない、全ての態様において他のものとは独立して選択される。例えば、いくつかの実施形態では、ペプチド鎖は、1~100個のアミノ酸、1~90個のアミノ酸、1~80個のアミノ酸、1~70個のアミノ酸、1~60個のアミノ酸、1~50個のアミノ酸、1~40個のアミノ酸、1~30個のアミノ酸、1~20個のアミノ酸、又は更には1~10個のアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、ペプチド鎖は、1~100個のα-アミノ酸、1~90個のα-アミノ酸、1~80個のα-アミノ酸、1~70個のα-アミノ酸、1~60個のα-アミノ酸、1~50個のα-アミノ酸、1~40個のα-アミノ酸、1~30個のα-アミノ酸、1~20個のα-アミノ酸、又は更には1~10個のα-アミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、D-アラニン、D-アルギニン、D-アスパラギン、D-アスパラギン酸、D-システイン、D-グルタミン酸、D-グルタミン、グリシン、D-ヒスチジン、D-ホモセリン、D-イソロイシン、D-ロイシン、D-リジン、D-メチオニン、D-フェニルアラニン、D-プロリン、D-セリン、D-スレオニン、D-トリプトファン、D-チロシン、及びD-バリンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ペプチド鎖(AA)のα-アミノ酸は、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、ホモセリン、リジン、及びセリンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ペプチド鎖(AA)のα-アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、ホモセリン、及びセリンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ペプチド鎖(AA)は、単一のアミノ(例えば、D-アスパラギン酸又はD-セリン)を指す。
【0031】
いくつかの実施形態では、(AA)は、21個の必須アミノ酸からなる群から選択される単一のアミノ酸である。他の態様では、AAは、D-アルギニン、D-アスパラギン、D-アスパラギン酸、D-グルタミン酸、D-グルタミン、D-ヒスチジン、D-ホモセリン、D-リジン、及びD-セリンからなる群から選択される。好ましくは、AAは、D-アスパラギン酸、グリシン、D-セリン、又はD-チロシンである。最も好ましくは、AAは、D-セリンである。
【0032】
いくつかの実施形態では、(AA)は、β-アミノ酸である。β-アミノ酸の例としては、これらに限定されないが、β-フェニルアラニン、β-アラニン、3-アミノ-3-(3-ブロモフェニル)プロピオン酸、3-アミノブタン酸、シス-2-アミノ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸、トランス-2-アミノ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸、3-アミノイソ酪酸、3-アミノ-2-フェニルプロピオン酸、3-アミノ-4-(4-ビフェニルイル)酪酸、シス-3-アミノ-シクロヘキサンカルボン酸、トランス-3-アミノ-シクロヘキサンカルボン酸、3-アミノ-シクロペンテンカルボン酸、3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニル酪酸、2-(アミノメチル)フェニル酢酸、3-アミノ-2-メチルプロピオン酸、3-アミノ-4-(2-ナフチル)酪酸、3-アミノ-5-フェニルペンタン酸、3-アミノ-2-フェニルプロピオン酸、4-ブロモ-β-Phe-OH、4-クロロ-β-ホモphe-OH、4-クロロ-β-Phe-OH、2-シアノ-β-ホモphe-OH、2-シアノ-β-ホモphe-OH、4-シアノ-β-ホモphe-OH、3-シアノ-β-Phe-OH、4-シアノ-β-Phe-OH、3,4-ジメトキシ-β-Phe-OH、γ,γ-ジフェニβ-ホモala-OH、4-フルオロ-β-Phe-OH、β-Gln-OH、β-ホモala-OH、β-ホモarg-OH、β-ホモgln-OH、β-ホモglu-OH、β-ホモhyp-OH、β-ホモleu-OH、β-ホモlys-OH、β-ホモmet-OH、β2-ホモフェニルアラニン、β-ホモphe-OH、β3-ホモpro-OH、β-ホモser-OH、β-ホモthr-OH、β-ホモtrp-OH、β-ホモtrp-OMe、β-ホモtyr-OH、β-Leu-OH、β-Leu-OH、β-Lys(Z)-OH、3-メトキシ-β-Phe-OH、3-メトキシ-β-Phe-OH、4-メトキシ-β-Phe-OH、4-メチ-β-ホモphe-OH、2-メチル-β-Phe-OH、3-メチル-β-Phe-OH、4-メチル-β-Phe-OH、β-Phe-OH、4-(4-ピリジル)-β-ホモala-OH、2-(トリフルオロメチル)-β-ホモphe-OH、3-(トリフルオロメチル)-β-ホモphe-OH、4-(トリフルオロメチル)-β-ホモphe-OH、2-(トリフルオロメチル)-β-Phe-OH、3-(トリフルオロメチル)-β-Phe-OH、4-(トリフルオロメチル)-β-Phe-OH、β-Tyr-OH、3-(ベンジルアミノ)プロピオン酸エチル、β-Ala-OH、3-(アミノ)-5-ヘキセン酸、3-(アミノ)-2-メチルプロピオン酸、3-(アミノ)-2-メチルプロピオン酸、3-(アミノ)-4-(2-ナフチル)酪酸、3,4-ジフルオロ-β-ホモphe-OH、γ,γ-ジフェニル-β-ホモala-OH、4-フルオロ-β-ホモphe-OH、β-Gln-OH、β-ホモala-OH、β-ホモarg-OH、β-ホモgln-OH、β-ホモglu-OH、β-ホモhyp-OH、β-ホモile-OH、β-ホモleu-OH、β-ホモlys-OH、β-ホモmet-OH、β-ホモphe-OH、β3-ホモプロリン、β-ホモthr-OH、β-ホモtrp-OH、β-ホモtyr-OH、β-Leu-OH、2-メチル-β-ホモphe-OH、3-メチル-β-ホモphe-OH、β-Phe-OH、4-(3-ピリジル)-β-ホモala-OH、3-(トリフルオロメチル)-β-ホモphe-OH、β-グルタミン酸、β-ホモアラニン、β-ホモグルタミン酸、β-ホモグルタミン、β-ホモヒドロキシプロリン、β-ホモイソロイシン、β-ホモロイシン、β-ホモメチオニン、β-ホモフェニルアラニン、β-ホモプロリン、β-ホモセリン、β-ホモトレオニン、β-ホモトリプトファン、β-ホモチロシン、β-ロイシン、β-フェニルアラニン、ピロリジン-3-カルボン酸、及びβ-Dab-OHが挙げられる。
【0033】
(PS)は、グリコシド結合によって結合した1つ以上の単糖単位を含む硫化又は非硫化多糖鎖である。多糖鎖(PS)は、任意の適切な長さであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、多糖鎖は、1~100個の単糖単位、1~90個の単糖単位、1~80個の単糖単位、1~70個の単糖単位、1~60個の単糖単位、1~50個の単糖単位、1~40個の単糖単位、1~30個の単糖単位、1~20個の単糖単位、又は更には1~10個の単糖単位を含み得る。いくつかの実施形態では、多糖鎖(PS)は、ペントース又はヘキソース単糖単位のいずれかからなるホモ多糖鎖である。他の実施形態では、多糖鎖(PS)は、一方又は両方のペントース及びヘキソース単糖単位からなるヘテロ多糖鎖である。いくつかの実施形態では、多糖鎖(PS)の単糖単位は、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、及びリボースからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、多糖鎖(PS)は、単一の単糖単位(例えば、グルコース又はフルクトースのいずれか)を指す。更に別の態様では、多糖鎖は、糖上のヒドロキシ基のうちの1つ以上がアミン基によって置換されているアミノ糖である。カルボニル基への結合は、アミン又はヒドロキシ基のいずれかを通して行うことができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、式Iのピラジン化合物について、Y又はYのいずれかの少なくとも1つは、以下であり、
【0035】
【化5】
【0036】
は、単結合、-CR1819-、-O-、-NR20-、-NCOR21-、-S-、-SO-、及び-SO-であり、
各R~R21は、独立して、水素、ヒドロキシル及びカルボン酸で任意に置換されたC-C10アルキル、C-Cポリヒドロキシル化アルキル、C-C10アリール、C-C10ヘテロアリール、C(O)で任意に置換されたC-Cヘテロシクロアルキル、C-C10ヘテロアリールで任意に置換された-(CHCOH、-(CHCONR3031、-(CHNHSO 、-(CHNHSOH、-(CHOH、-(CHOPO 、-(CHOPO、-(CHOPO、-(CHOR22、-(CHOSO 、-(CHOSOH、-(CHPO 、-(CHPO、-(CHPO、-(CHSO 、-(CHSOH、-(CHCO(CHCHO)23、-(CH(CHCHO)24、-(CHCOH)COH、-CH(CHNHCHNR2526、-CH(CHOH)COH、-CH(CHOH)27、-CH[(CHNHCHOH、-CH[(CHNHCOH、及び-(CHNR2829から選択され、
各R22~R31は、独立して、水素、C-C10アルキル、及びC-C-ジカルボン酸から選択され、R35は、ヒドロキシル及びカルボン酸で任意に置換されたC-C10アルキル、C-Cポリヒドロキシル化アルキル、C-C10アリール、C-C10ヘテロアリール、C(O)で任意に置換されたC-Cヘテロシクロアルキル、C-C10ヘテロアリールで任意に置換された-(CHCOH、-(CHCONR3031、-(CHNHSO 、-(CHNHSOH、-(CHOH、-(CHOPO 、-(CHOPO、-(CHOPO、-(CHOR22、-(CHOSO 、-(CHOSOH、-(CHPO 、-(CHPO、-(CHPO、-(CHSO 、-(CHSOH、-(CHCO(CHCHO)23、-(CH(CHCHO)24、-(CHCOH)COH、-CH(CHNHCHNR2526、-CH(CHOH)COH、-CH(CHOH)27、-CH[(CHNHCHOH、-CH[(CHNHCOH、及び-(CHNR2829から選択され、(AA)は、ペプチド結合アミド結合によって一緒に結合した1つ以上の天然又は非天然アミノ酸を含むポリペプチド鎖であり、(AA)の各例は、他の例と同じであるか又は異なり得、(PS)は、グリコシド結合によって結合した1つ以上の単糖単位を含む硫化又は非硫化多糖鎖であり、a、c、m、及びnは、本明細書において他の箇所に記載されるとおりである。
【0037】
更に別の態様では、Y及びYのうちの少なくとも1つは、-NR1213であり、R12~R13は、上に記載されるとおりである。更に別の態様では、Y及びYの両方は、-NR1213であり、R12~R13は、上に記載されるとおりである。あるいは、R12及びR13は、ともに独立して、H、-CH(CHOH)CH、-(CHSOH、-(CHNHSOH、及び-(CHPOからなる群から選択される。更に別の態様では、R12及びR13の両方は、水素である。
【0038】
更に別の態様では、式Iのピラジン化合物は、表Aの化合物である。例となる実施形態では、式Iのピラジン化合物は、MB-102又はMB-404である。表Aの化合物を合成するための方法は、米国公開第2019/0125901A1号、米国特許第8,115,000号、及び米国特許第10,525,149号に詳細に記載されており、これらの開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0039】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0040】
薬学的に許容される塩は、当該技術分野において既知である。本明細書における任意の態様では、ピラジンは、薬学的に許容される塩の形態であり得る。限定ではなく例として、薬学的に許容される塩としては、Berge,et al.in J.Pharm.Sci.,66(1),1(1977)よって記載されるものを含み、これは参照によってその全体がその教示のために組み込まれる。塩は、カチオン性又はアニオン性であり得る。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩の対イオンは、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩、重酒石酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル臭化物、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムシン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トリエチオジド、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アミノサリチル酸塩、無水メチレンクエン酸塩、アレコリン、アスパラギン酸塩、重硫酸塩、ブチル臭化物、カンファー酸塩、二グルコン酸塩、二臭化水素酸、二コハク酸塩、グリセロリン酸塩、ジェミサルフェート、ジュドロフルオライド、ジュドロイオダイド、メチレンビス(サリチル酸塩)、ナパジシル酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルエチルバルビツール酸塩、ピクリン酸塩、プロピオン酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカイン、ベネタミン、クレミゾール、ジエチルアミン、ピペラジン、トロメタミン、アルミニウム、ナトリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム亜鉛、バリウム、及びビスマスからなる群から選択される。塩を形成することができるピラジン化合物中の任意の官能基は、任意に、当該技術分野で既知の方法を使用して1つを形成し得る。限定ではなく例として、アミン塩酸塩は、ピラジンへの塩酸の添加によって形成され得る。リン酸塩は、ピラジンへのリン酸緩衝液の添加によって形成され得る。スルホン酸、カルボン酸、又はホスホン酸などの、存在する任意の酸官能性は、好適な塩基及び形成された塩で脱プロトン化され得る。あるいは、アミン基は、アミン塩を形成するために適切な酸でプロトン化され得る。塩形態は、単一荷電、二重荷電、又は更に三重荷電され得、複数の対イオンが存在する場合、各対イオンは、他の各々と同じであるか又は異なり得る。
【0041】
II.組成物
【0042】
本明細書において、式Iのピラジン化合物又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む、皮下又は筋肉内投与のための組成物も開示される。
【0043】
式Iの好適なピラジン化合物及びその薬学的に許容される塩は、セクションIに詳細に記載される。いくつかの実施形態では、式Iのピラジン化合物又はその薬学的に許容される塩は、表Aの化合物である。具体的な例では、化合物は、MB-102又はMB-404である。本開示の組成物中の式Iのピラジン化合物又はその薬学的に許容される塩の量は、約60mg/mL~約300mg/mLであり得る。例えば、式Iのピラジン化合物又はその薬学的に許容される塩の量は、約60mg/mL、約70mg/mL、約80mg/mL、約90mg/mL、約100mg/mL、約110mg/mL、約120mg/mL、約130mg/mL、約140mg/mL、約150mg/mL、約160mg/mL、約170mg/mL、約180mg/mL、約190mg/mL、約200mg/mL、約210mg/mL、約220mg/mL、約330mg/mL、約440mg/mL、約250mg/mL、約260mg/mL、約270mg/mL、約280mg/mL、約290mg/mL、又は約300mg/mLであり得る。いくつかの実施形態では、量は、約60mg/mL~約150mg/mL、約60mg/mL~約120mg/mL、又は約60mg/mL~約100mg/mLであり得る。いくつかの実施形態では、量は、約60mg/mL~約90mg/mL、又は約60mg/mL~約80mg/mLであり得る。
【0044】
好適な薬学的に許容される賦形剤は、溶媒、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、張度修飾剤、オスモル調整剤、防腐剤、抗菌剤、安定化剤、粘度調整剤、界面活性剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0045】
薬学的に許容される溶媒は、水性又は非水性溶液、懸濁液、エマルジョン、又はそれらの適切な組み合わせであり得る。非水性溶媒の非限定的な例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体の例は、生理食塩水及び緩衝媒体を含む、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョン、又は懸濁液である。限定ではなく例として、薬学的に許容される緩衝液としては、約4~約9のpH、好ましくは約pH5~約pH8、最も好ましくは約pH6~約pH8、非常に最も好ましくは約pH7.0~約pH7.5を有する酢酸塩、安息香酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、リン酸二水素、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリシン酸塩、リン酸水素、乳酸塩、リン酸塩、酒石酸塩、トリス・HCl、又はそれらの組み合わせが挙げられる。更に別の態様では、pHは、6.7~7.7である。他の緩衝液は、当該技術分野で既知であるように、調製されたピラジン化合物の具体的な塩形態又は具体的な医療用途に基づいて選択され得る。具体的な例、緩衝液は、生理学的pH(約7.2)のリン酸緩衝生理食塩水である。張度修飾剤の例は、グリセロール、ソルビトール、スクロース、又は好ましくは、塩化ナトリウム及び/若しくはマンニトールである。粘度調整剤の例としては、ベントナイト、ケイ酸カルシウムマグネシウムなどが挙げられる。希釈剤の例としては、エタノール、メタノール、水などが挙げられる。抗菌剤の例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、エチルパラベン、メチルパラベンなどが挙げられる。オスモル調整剤の例としては、アミノエタノール、塩化カルシウム、コリン、デキストロース、ジエタノールアミン、乳酸リンゲル液、メグルミン、塩化カリウム、リンゲル液、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、トリス、又はこれらの組み合わせが挙げられる。これらの例は、例示のみのためのものであり、網羅的又は限定的であることを意図するものではない。
【0046】
いくつかの実施形態では、皮下又は筋肉内投与のための組成物は、式Iのピラジン化合物又はその薬学的に許容される塩、及びリン酸緩衝生理食塩水を含み得る。いくつかの実施形態では、皮下又は筋肉内投与のための組成物は、式Iのピラジン化合物又はその薬学的に許容される塩、塩化ナトリウム、リン酸二水素塩(例えば、リン酸二水素ナトリウム一水和物)、及び注射用水を含み得る。上記の実施形態の各々では、pHは、好ましくは約pH6.7~約pH7.7、又は約pH7.0~約pH7.5、又は約pH7.2~約pH7.4である。
【0047】
本開示の組成物は、皮下又は筋肉内投与による患者への投与に好適な張度、pH、及びオスモル濃度を有する。組成物の張度、pH、及びオスモル濃度は、それぞれ、当該技術分野で既知であるか、又は本明細書に詳述される方法によって、張度調整剤、緩衝液、若しくは他のpH調整剤、又はオスモル濃度調整剤を使用して調整され得る。張度調整剤、緩衝液、他のpH調整剤、及びオスモル濃度調整剤の非限定的な例は、上記に提供される。
【0048】
本開示の組成物は、典型的には、分解及び他の有害化学反応に対して安定であり、薬学的に許容される貯蔵寿命を有する。本明細書で使用される「安定した」とは、患者への投与に好適な状態又は条件(例えば、可視粒子状物を含まず、ラベル表記±15%以内のピラジン誘導体の量を含有する、など)のままであることを意味する。本開示による製剤は、約4℃~約25℃で少なくとも12ヶ月間維持されるときに安定であることが見出され、一般に、約4℃で12~24ヶ月間安定である。
【0049】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、無菌組成物であり得る。本明細書で使用される「無菌」組成物は、無菌の状態に到達し、その後微生物学的汚染に曝露されていない組成物を意味し、例えば、無菌組成物を保持する容器は損なわれていない。無菌組成物は、一般に、米国食品医薬品局の現行のGood Manufacturing Practice(「cGMP」)規制に従って医薬品製造業者によって調製される。いくつかの実施形態では、組成物は、封止された容器に包装され、製剤の微生物学的負荷を低減又は排除するために最終滅菌に供される。容器は、医療環境における使用に好適な任意の容器であり得、例としては、これらに限定されないが、バイアル、アンプル、バッグ、ボトル、及びシリンジが挙げられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、組成物は、皮下又は筋肉内投与のための無菌の、すぐに使用できる製剤の形態をとることができる。これは、注射前に濃縮された製剤を注入希釈剤に希釈することの不便さを回避し、無菌取扱い中の微生物学的汚染のリスク及び任意の潜在的な計算又は希釈誤差を低減する。あるいは、製剤は、患者への投与の前に希釈される濃縮された液体製剤又は固体製剤であり得る。
【0051】
例示的な実施形態では、本開示は、約60mg/mL~約300mg/mLの式Iのピラジン化合物又はその薬学的に許容される塩、約0.01~約2Mの緩衝剤、約0mg/mL~約500mg/mLのオスモル調整剤、及び約0mg/mL~約500mg/mLの張度調整剤を含む、皮下又は筋肉内注射のための水性、無菌薬学的組成物を提供する。好適な緩衝剤、オスモル調整剤、及び張度調整剤は、上に記載される。水性、無菌薬学的組成物はまた、任意に、上記のものから選択される1つ以上の追加の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。水性、無菌薬学的組成物のpHは、患者への投与に好適である。いくつかの実施形態では、pHは、4~9、好ましくは5~8、最も好ましくは6~8である。特定の例では、pHは、約pH6.7~約pH7.7である。別の具体的な例では、pHは、約pH7.0~約pH7.5である。更に別の具体的な例では、pHは、約pH7.2~約pH7.4である。いくつかの例では、式Iのピラジン化合物又はその薬学的に許容される塩の量は、約60mg/mL~約150mg/mL、約60mg/mL~約120mg/mL、又は約60mg/mL~約100mg/mLであり得る。いくつかの例では、式Iのピラジン化合物又はその薬学的に許容される塩の量は、約60mg/mL~約90mg/mL、又は約60mg/mL~約80mg/mLであり得る。特定の例では、式Iのピラジン化合物は、MB-102又はMB-404である。
【0052】
本明細書において開示される水性、無菌薬学的組成物は、それを必要とする患者への皮下又は筋肉内投与に好適である。例えば、組成物は、ボーラス注射又はいくつかのより小さな注射の形態で投与され得る。本明細書に開示されるすぐに使用できる製剤は、好ましくは、ボーラス注射によって投与される。様々な実施形態では、すぐに使用できる製剤は、オートインジェクターベースの投与を使用して投与され得る。他の実施形態では、製剤は、以下に更に記載される患者によって自己投与され得る。典型的には、すぐに使用できる製剤の体積は、約0.5mL~約10mLである。
【0053】
III.使用の方法
【0054】
本開示はまた、測定を必要とする患者において臓器機能を測定するための方法を提供する。方法は、当該患者に、約3mg~約250mgのセクションIのピラジン化合物を60~300mg/mLの溶液として、又はより好ましくは60~150mg/mLの溶液として皮下又は筋肉内投与することであって、投与が、同一の量のピラジン化合物が静脈内投与されるときにもたらされる血漿中濃度に実質的に類似する、患者における、ピラジン化合物の血漿中濃度をもたらす、投与することと、当該患者におけるピラジン化合物の濃度を測定し、測定から臓器機能を決定することと、を含む。測定から臓器機能を決定することは、ピラジン化合物の患者の測定の、同じ条件下で同じピラジン化合物が投与された健常対照から得られた測定との比較を含み得る。あるいは、又は加えて、測定から臓器機能を決定することは、ピラジン化合物の患者の測定の、同じ条件下で患者から得られたより早い測定(例えば、数日、数週間、数ヶ月、又は数年早い、任意に治療前の時点で)との比較を含み得る。好ましい実施形態では、ピラジン化合物を含む溶液は、セクションIIの組成物、より好ましくは、その中に開示される水性無菌薬学的組成物である。様々な実施形態では、臓器は、腎臓、眼、又は腸であり得る。いくつかの実施形態では、臓器は、腎臓であり、方法は、腎機能の測定を提供する。いくつかの実施形態では、臓器は、腸であり、方法は、胃腸透過性の測定を提供する。いくつかの実施形態では、臓器は、眼であり、方法は、眼血管造影の測定を提供する。
【0055】
具体的な実施形態では、本開示は、測定を必要とする患者における腎糸球体濾過速度(GFR)を測定するための方法を提供する。方法は、当該患者に、約3mg~約250mgのセクションIのピラジン化合物を60~300mg/mLの溶液として、又はより好ましくは60~150mg/mLの溶液として皮下又は筋肉内投与することであって、投与が、同一の量のピラジン化合物が静脈内投与されるときにもたらされる血漿中濃度に実質的に類似する、患者における、ピラジン化合物の血漿中濃度をもたらす、投与することと、当該患者におけるピラジン化合物の濃度を測定し、測定からGFRを決定することと、を含む。好ましい実施形態では、ピラジン化合物を含む溶液は、セクションIIの組成物、より好ましくは、その中に開示される水性無菌薬学的組成物である。
【0056】
投与されるピラジン化合物の総量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、投与されるピラジン化合物の総量は、約10mg~約150mg、約50mg~約250mg、又は約60mg~約160mgであり得る。いくつかの実施形態では、投与されるピラジン化合物の総量は、約100mg~約300mg、約100mg~約200mg、約100mg~約150mg、約110mg~約160mg、約120mg~約170mg、又は約130mg~約180mgであり得る。いくつかの実施形態では、投与されるピラジン化合物の総量は、約3mg~約100mg、約3mg~約75mg、約3mg~約50mg、又は約3mg~約30mgであり得る。いくつかの実施形態では、投与されるピラジン化合物の総量は、約3mg~約20mg、約3mg~約15mg、又は約3mg~約10mgであり得る。ピラジン化合物の好適な量は、当該技術分野で既知の方法によって決定され得る。いくつかの実施形態では、ピラジン化合物の好適な量は、患者の体重に基づいて決定され得る。例えば、好適な量は、約0.5mg/kg~約5.0mg/kg、約0.5mg/kg~約1.5mg/kg、又は約1.0mg/kg~約1.5mg/kgであり得る。
【0057】
ピラジン化合物は、典型的には、60~300mg/mLの溶液として投与される。より高濃度のピラジン化合物を有する溶液は、投与され得るが、より粘性になる。より高い粘度は、筋肉内又は皮下投与に典型的に必要とされるよりも太い針を使用することによって対処され得る。
【0058】
皮下又は筋肉内投与されるかにかかわらず、ピラジン化合物の総量は、単回ボーラス注射又はいくつかのより小さな注射を介して送達され得る。ピラジン化合物が筋肉内投与される実施形態では、投与部位は、三角筋又は臀筋を含み得るが、これらに限定されない。ピラジン化合物が皮下投与される実施形態では、投与部位は、腕の上部外側領域、大腿の前側及び外側、臀部の上部外側領域、並びに腹部を含み得るが、これらに限定されない。
【0059】
ピラジン化合物を皮下又は筋肉内投与するために注射器デバイスが使用され得る。注射器デバイスは、患者が病院又は臨床環境の外でピラジン化合物を自己投与することができるように構成される。例えば、患者は、自宅にいる間にピラジン化合物を投与することができる。いくつかの態様では、注射器デバイスには、デバイスに既に装填されたピラジン化合物で予め装填されている。いくつかの態様では、ピラジン化合物は、用量カートリッジ又は他の容器中にあり、患者には、用量カートリッジ又は容器を注射器デバイスに装填する方法に関する説明書が提供される。いくつかの態様では、注射器デバイスは、患者がピラジン化合物を皮下又は筋肉内に自己投与することができるように設計される。
【0060】
これらに限定されないが、Becton-DickinsonからのInject-Ease(登録商標)、BD Physioject(登録商標)、BD Intevia(登録商標)、及びBD Liberatas(登録商標)、Antares PharmaからのVIBEX(登録商標)、Bigshot(登録商標)、及びQuickshot(登録商標)を含む、様々なオートインジェクターが当該技術分野で既知であり、セクションIIに開示されるプレフィルドシリンジとともに使用され得る。一態様では、患者は、プレフィルドシリンジをオートインジェクターに配置し、先端を患者の皮膚に対して配置し、次いでオートインジェクターのボタンを押して、針を自動的に皮膚に通して送達する。一態様では、患者は、化合物が注射される速度を、秒から数分まで制御することができる。別の態様では、プレフィルドシリンジは、オートインジェクターに予め取り付けられて患者に提供される。
【0061】
更に別の態様では、患者は、オートインジェクターをいかなる目に見える損傷についても検査し、損傷若しくは破損しているように見える場合、又はキャップが欠損しているか、若しくは固定されていない場合は使用しないように指示される。次いで、患者は、有効期限を確認し、期限切れの場合は使用しないように指示される。次に、患者は、オートインジェクターにおけるのぞき窓を通して組成物を検査して、それが明るい黄色であり、粒子を含まないことを確認する。患者は、液体が濁っている場合又は粒子が存在する場合は使用しないように指示される。次いで、患者は、手を洗い、アルコールスワブで注射部位を拭き、部位を自然乾燥させることによって注射部位を準備するように指示される。患者は、オートインジェクターからキャップを取り外し、オートインジェクターを投与部位に配置し、オートインジェクターを注射部位に対して90°の角度で配置することによって、注射を打つ。別の態様では、患者は、オートインジェクターを注射部位に対して45°の角度で配置する。患者は、反対側の手で投与部位を支持しながら押し下げる。用量が完全に送達されると、患者は、注射部位からオートインジェクターを取り外す。組成物の全用量は、約10分以下、例えば、約30秒~約10分で送達される。いくつかの例では、全用量は、約2分以下で送達することができる。
【0062】
(例えば、患者の血液、流体、及び/又は組織中の)患者における投与されたピラジン化合物の濃度は、当該技術分野で既知である様々な方法によって測定され得る。非限定的な例として、患者におけるピラジン化合物の濃度は、患者における経皮蛍光を定量化することによって測定され得る。経皮蛍光の測定は、様々な生理学的空間、例えば、血液、流体、組織などにおけるピラジン化合物の濃度を定量化するために使用することができる。別の非限定的な例では、ピラジン化合物は、患者からの血液のアリコートを採取し、HPLC又は当該技術分野で知られている他の方法によってピラジンの濃度を測定することによって測定され得る。例えば、ピラジン化合物は、定量化することができる検出可能な標識(例えば、放射性同位体など)を含み得る。更に別の非限定的な例では、ピラジン化合物の濃度は、腎臓が患者の体から化合物を排除する速度を決定するために、一定の期間にわたって患者の尿を収集し、尿中のピラジン化合物の濃度を測定することによって測定され得る。
【0063】
例示的な実施形態では、患者における投与されたピラジン化合物の濃度は、経皮蛍光を定量化することによって測定される。これは、医療デバイスを患者の皮膚と接触させることであって、当該医療デバイスが、ピラジン化合物において蛍光反応を引き起こすように構成される、接触させることと、当該反応を検出することと、を含み得る。医療デバイスは、任意の好適な位置で患者の皮膚に接触し得る。好適であることが知られている具体的な位置は、胸骨、下胸骨、大胸筋、後頭三角、額、顎、上股関節、及び下股関節である。患者の他の位置は、利便性、医療デバイス設計、及び/又は医学的必要性によって決定されるように使用され得る。いくつかの態様では、この方法は、本明細書において他の箇所で開示される医療デバイス及びシステムを使用する。
【0064】
患者における投与されたピラジン化合物の濃度は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国公開第2019/0125902号によってより完全に記載されるように、単一の時点で又は測定時間窓にわたって測定され得る。
【0065】
更に別の態様では、本明細書において、測定を必要とする患者における腎糸球体濾過速度(GFR)を測定するための方法が開示される。方法は、当該患者に、約3mg~約300mgのセクションIのピラジン化合物を60~300mg/mLの溶液として、又はより好ましくは60~150mg/mLの溶液として皮下又は筋肉内投与することであって、投与が、同一の量のピラジン化合物が静脈内投与されるときにもたらされる血漿中濃度に実質的に類似する、患者における、ピラジン化合物の血漿中濃度をもたらす、投与することと、測定時間窓にわたって当該患者における経皮蛍光を測定することと、当該患者におけるGFRを決定することと、を含む。いくつかの態様では、患者のGFRは、本明細書において他の箇所で開示されるシステムを用いて決定される。好ましい実施形態では、ピラジン化合物を含む溶液は、セクションIIの組成物、より好ましくは、その中に開示される水性無菌薬学的組成物である。
【0066】
患者におけるピラジン化合物の濃度が経皮蛍光を定量化することによって測定される上記方法の一態様では、ディスプレイは、ユーザーに1つ以上の特定の体の部位でセンサーを取り付けるよう促すために使用される。1つのそのような実施形態では、タッチスクリーンインターフェースが使用され、ユーザーは、測定セットアッププロセスにおいて次のステップに進むために、センサーが取り付けられた体の部位の位置の表示に触れるように指示される。これは、GFR決定に適切ではないか又は最適ではない体の部位上のセンサーの配置をやめさせる利点を有する。
【0067】
別の態様では、次のステップは、光源出力レベル及び検出器ゲインレベルを設定することである。1つのそのような態様では、検出器ゲインレベル及び光源レベルは両方とも、初期は低い状態に設定され、次いで、光源レベルは、標的シグナルレベルが達成されるまで順次増加させる。一実施形態では、光源は、蛍光GFR剤の励起源であり、ソース駆動電流は、標的蛍光シグナルが達成されるか、又は所定の最大電流に到達されるまで増加させる。所望の蛍光シグナルレベルに達することなく最大ソース電流が達成される場合では、検出器ゲインは、標的蛍光シグナルが達成されるか、又は最大検出器ゲイン設定に到達されるまで順次増加させる。
【0068】
他の態様では、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国公開第2020/0237282号によってより完全に記載されるように、経皮蛍光を定量化するためのモバイルコンピューティングデバイス、システム、及び方法が使用される。
【0069】
いくつかの態様では、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国公開第2019/0125902号により完全に記載されるように、皮膚の拡散反射率の測定が、皮膚及びGFR剤の蛍光の測定に加えて行われる。そのような態様では、拡散反射率シグナルは、最適ソース出力及び検出器ゲインレベルを決定するために使用され得る。また更なる態様では、拡散反射率測定は、蛍光GFR剤の励起及び放出の波長帯域内で行われる。そのような態様では、LED源レベル及び検出器ゲインの設定は、蛍光シグナルレベルの代わりに拡散反射率を使用して設定をガイドすることによって行われ得る。1つのそのような態様では、標的レベル又は拡散反射率シグナルは、検出器又は増幅器飽和効果が観察されるシグナルレベルの15%~35%である。これは、患者の動き又は他の生理学的変動に関連し得るシグナル変動のためのヘッドルームを提供する。光源出力及び/又は検出ゲインを最適化するための記載された手順は、それらが、異なる患者にわたる、又は同じ患者上の異なる体の部位にわたる生理学的変動を補償する手段を提供するという利点を有する。一態様では、補償される主要因子は、皮膚のメラニン含有量である。補償を必要とし得る他の生理学的因子は、血液含有量、水分含有量、及びセンサーによって光学的に調査される組織体積内の散乱を含む。別の態様では、所望のシグナル目標が達成されない場合、ユーザーは、測定を進めることが防止される。このようにして、不正確な結果の報告が防止される。
【0070】
所望のシグナルレベルが成功裏に達成されると、別の態様では、ベースラインシグナルが記録される。1つのそのような態様では、経時的に勾配をシグナルに適合させることによってなど、ベースラインの安定性が評価され、ベースラインは、経時的な勾配が所定の閾値を下回らない限り、有効として許容されない。いくつかの態様では、ディスプレイは、ユーザーに、安定したベースラインが達成されるまでトレーサー剤(すなわち、ピラジン化合物)の投与を進めないように指示する。このようにして、測定は、センサーが適切に配置されていないか又は取り付けられていない場合、防止される。加えて、ユーザーは、前の注射からのトレーサー剤(すなわち、ピラジン化合物)が所望の程度までまだ体外に排出されていない場合、測定を進めることを防止され得る。
【0071】
安定したベースラインが取得されると、上記方法の別の態様では、トレーサー剤(すなわち、ピラジン化合物)が患者に注射される。トレーサー剤投与は、1つ以上のセンサーによって測定されるように、患者の経皮蛍光の急速な増加として自動的に検出される。変化、絶対シグナル変化、又は相対シグナル変化の割合についての所定の閾値は、この目的のために用いられ得る。自動薬剤検出は、タッチスクリーンモニターなどのディスプレイデバイス上でユーザーに報告され得る。別の態様では、トレーサー剤が検出されると、更なる閾値は、GFR測定を開始するのに十分なトレーサー剤が存在するかを決定するために使用される。1つのそのような態様では、蛍光(Fmeas)及び拡散反射率(DR)の測定は、組み合わされた結果に対する生理学的変動の影響(本明細書では内在蛍光又はIFと称される)を低減するように組み合わされ、例えば、測定に対する皮膚色の影響が補償されるようにする。次いで、トレーサー剤の充足度は、IFを所定の閾値と比較することによって評価される。いくつかの態様では、IFは、以下の形態の式を使用することによって決定され、
【0072】
【数1】
【0073】
式中、DR用語の下付き文字は、トレーサー剤励起(ex)及び放出(em)波長帯域内で、フィルター処理された検出器及びフィルター処理されていない検出器の両方で収集された測定を指し、DR用語の上付き文字は、ヒト患者、動物、インビトロ試験、シミュレーション、又はそれらの任意の組み合わせで以前に収集されたデータの分析を通して決定され得る較正係数である。このようにして、正確なGFR評価には不十分なトレーサー剤が投与されている場合、測定を施す医療従事者に、追加のトレーサー剤を投与するか、又は測定を中止する機会が提供され得る。
【0074】
トレーサー剤(すなわち、ピラジン化合物)が投与されると、別の態様では、細胞外空間へのトレーサー剤の平衡化がモニターされる。一態様では、測定時間窓は、平衡化が十分に完了していると決定されるまで開始されない。指数関数への適合は、平衡化の進行を評価するために使用され得る。例えば、経時的な蛍光強度の変化は、単一の指数関数に適合され得、適合された時間定数が安定した場合のみ、平衡化が完了したとみなされる。1つのそのような態様では、第1のGFR決定が利用可能になるときの実行中の推定がユーザーに提供される。別の態様では、ユーザーは、十分な平衡化が達成されるまで、かつそれが達成されない限り、測定段階を進めることが防止される。1つのそのような態様では、平衡時間は、所定の閾値と比較され、平衡時間が閾値を超える場合、ユーザーは、GFR決定を進めることが防止される。このようにして、センサーが循環系との交換が不十分な部位に配置される場合、GFRの評価は防止される。
【0075】
いくつかの態様では、報告時間間隔、測定時間窓、及び/又は単回注射報告期間は、実施される具体的な医学的評価に基づいており、それに応じて変動し得る。例えば、慢性腎不全を有する患者について、単回GFR決定は、十分であり得る。しかしながら、急性腎臓不全を有するか又はそのリスクを有する患者について、リアルタイム評価又はGFR傾向は、大きな潜在的利益をもたらす。いくつかの態様では、当該報告時間間隔は、約15分である。他の態様では、当該報告時間間隔は、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約5時間、約8時間、約10時間、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、約96時間、又は約168時間である。いくつかの態様では、報告時間間隔は、15分~168時間である。いくつかの態様では、単回注射報告期間は、ピラジン化合物のクリアランス半減期に基づく。当該クリアランス半減期は、当該患者において以前に決定されるか、当該患者の医学的状態に基づいて推定されるか、又は本明細書に記載される方法を使用して経皮的に決定されるかのいずれかであり得る。いくつかの態様では、当該単回注射報告期間は、1クリアランス半減期、2クリアランス半減期、3クリアランス半減期、4クリアランス半減期、5クリアランス半減期、6クリアランス半減期、8クリアランス半減期、又は10クリアランス半減期である。最大単回注射報告期間は、ピラジンが当該患者の血流中でもはや検出可能ではないようなものである。本明細書で使用される「検出不可能」は、ピラジンの濃度が、決定を行うために使用される方法によってもはや検出可能ではないことを意味する。いくつかの例では、器具の検出レベルがこれを極めて長い期間(例えば、1週間超)にするとき、「検出不可能」とは、濃度レベルが0.39%を下回ったこと(すなわち、8クリアランス半減期)を意味する。更に別の態様では、報告時間間隔は、約1~168時間であり、その間は全て1時間の増分である。
【0076】
同様に、測定時間窓は、患者の具体的な医学的ニーズに応じて変動し得、それに応じて変動し得る。いくつかの態様では、それは約15分である。他の態様では、当該測定時間窓は、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約5時間、約8時間、約10時間、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、約96時間、又は約168時間である。いくつかの態様では、測定時間窓は、15分~168時間である。各単回注射報告期間中に1つ又は複数の測定時間窓が存在し得る。いくつかの態様では、単回注射報告期間は、各測定時間窓が同じである複数の測定時間窓に分割される。更に別の態様では、単回注射報告期間は、複数の測定時間窓に分割され、各測定時間窓は、他とは独立して選択され、他の測定時間窓と同じであるか又は異なり得る。
【0077】
本明細書に開示される方法及びシステムは、皮膚メラニン含有量を自動的に調整する利点を有し、その結果、GFR決定は、広範囲の皮膚タイプ及び色素沈着のレベルにわたって正確である。フィッツパトリックスケールは、ヒトの皮膚の色の数値的分類スキームである。ヒト皮膚色素沈着への皮膚科学的研究のための有用なツールとして広く認識されている。スコアは、タイプI(最小限の色素沈着を有する非常に白い皮膚)からタイプVI(深く色素沈着した濃褐色)までに及ぶ。本明細書に開示されるシステム及び方法は、フィッツパトリックスケール上の皮膚色素沈着の6つのカテゴリー全てでの使用に好適である。具体的には、本明細書に開示されるシステム及び方法は、タイプI、タイプII、タイプIII、タイプIV、タイプV、及びタイプVIの皮膚色素沈着での使用に好適である。
【0078】
また本明細書において、評価を必要とする患者における臓器機能を評価する方法が開示される。方法は、当該患者に、約3mg~約300mgのセクションIのピラジン化合物を60~300mg/mLの溶液として、又はより好ましくは60~150mg/mLの溶液として皮下又は筋肉内投与することであって、投与が、同一の量のピラジン化合物が静脈内投与されるときにもたらされる血漿中濃度に実質的に類似する、患者における、ピラジン化合物の血漿中濃度をもたらす、投与することと、当該患者を電磁放射線に曝露し、それによってスペクトルエネルギーをピラジン化合物から発出させることと、ピラジン化合物から発出されたスペクトルエネルギーを検出することと、検出されたスペクトルエネルギーに基づいて患者の臓器機能を評価することと、を含む。様々な実施形態では、臓器は、腎臓、眼、又は腸であり得る。いくつかの実施形態では、臓器は、腎臓であり、方法は、腎機能の測定を提供する。いくつかの実施形態では、臓器は、腸であり、方法は、胃腸透過性の測定を提供する。いくつかの実施形態では、臓器は、眼であり、方法は、眼血管造影の測定を提供する。
【0079】
いくつかの態様では、ピラジン化合物は、患者によって代謝されず、代わりに、代謝されることなく(例えば、酸化、グルクロニド化、又は他のコンジュゲーションなし)腎排泄によって完全に排除される。いくつかの態様では、少なくとも95%のピラジン化合物は、腎排泄の前に患者によって代謝されない。いくつかの態様では、少なくとも96%のピラジン化合物Iは、腎排泄の前に患者によって代謝されない。いくつかの態様では、少なくとも97%のピラジン化合物は、腎排泄の前に患者によって代謝されない。いくつかの態様では、少なくとも98%のピラジン化合物は、腎排泄の前に患者によって代謝されない。いくつかの態様では、少なくとも99%のピラジン化合物は、腎排泄の前に患者によって代謝されない。いくつかの実施形態では、当該ピラジン化合物は、所定の期間未満で当該患者によって完全に排除される。いくつかの態様では、患者における腎機能を評価することはまた、患者におけるGFRを決定することを含み得る。
【0080】
上記の方法では、ピラジン化合物は、その腎臓に少なくとも1つの医学的問題を有することが疑われるか又は知られている患者に投与され得、本明細書に開示される方法は、当該患者に存在する腎臓機能障害又は不全のレベルを決定するために使用され得る。いくつかの態様では、当該患者は、110未満、90未満、60未満、30未満、又は15未満の推定GFR(eGFR)又は以前に決定されたGFRを有する。患者のeGFRは、標準的な医学的技法を使用して決定され、そのような方法は、当該技術分野で既知である。あるいは、ピラジン化合物は、腎臓に医学的問題を有していないか又は有することが疑われていない患者に投与され得る。GFRモニタリングは、患者の一般的若しくは日常的な健康評価の一部として、又は予防的評価として行われ得る。
【0081】
当該技術分野で既知であるように、患者がその血流から老廃物を排除する速度(すなわち、クリアランス半減期)は、その腎臓系の健康及び適切な機能に依存する。この文脈で使用される「完全に排除された」とは、血流中のそのピラジンのレベルが0.39%を下回ったこと(すなわち、8半減期)を意味する。クリアランス半減期は、患者のGFRに依存し、病気、年齢、又は他の生理学的因子によって腎臓系の機能が低下するにつれて大幅に減速する。CKDに関連する既知のリスク因子を有さず、正常GFR及び/又は正常eGFRを有する患者では、単回注射報告期間は、24時間である。いくつかの態様では、110未満のGFR又はeGFRを有する患者についての単回注射報告期間は、24時間である。90未満のGFR又はeGFRを有する患者について、単回注射報告期間は、24時間である。60未満のGFR又はeGFRを有する患者について、単回注射報告期間は、48時間である。30未満のGFR又はeGFRを有する患者について、単回注射報告期間は、48時間である。いくつかの態様では、110未満のGFR又はeGFRを有する患者についての単回注射報告期間は、8クリアランス半減期に等しい。90未満のGFR又はeGFRを有する患者について、単回注射報告期間は、8クリアランス半減期に等しい。60未満のGFR又はeGFRを有する患者について、単回注射報告期間は、8クリアランス半減期に等しい。30未満のGFR又はeGFRを有する患者について、単回注射報告期間は、8クリアランス半減期に等しい。
【0082】
患者の尿中のタンパク質濃度の増加は、ある種の腎臓機能障害又は不全を示し得るため、本明細書に開示される方法は、その尿検査がタンパク質レベルの増加を示す患者に好適である。いくつかの態様では、患者は、標準的な医学的検査(例えば、ディップスティック検査)によって決定されるように尿中のタンパク質のレベルの増加を有する。限定ではなく例として、患者の尿検査は、アルブミンの増加、クレアチニンの増加、血中尿素窒素の増加(すなわち、BUN検査)、又はそれらの任意の組み合わせを示し得る。
【0083】
更に上記方法を参照して、ピラジン化合物は、これらに限定されないが、可視光、紫外線、及び/又は赤外線などの電磁放射線に曝露される。電磁放射線へのピラジンのこの曝露は、任意の適切な時間で発生し得るが、好ましくは、ピラジン化合物が患者の体内に位置している間に発生する。電磁放射へのピラジンのこの曝露のために、ピラジンは、適切な検出装置によって検出され得るスペクトルエネルギー(例えば、可視光、紫外線、及び/又は赤外線)を発出する。ピラジン化合物から発出されるスペクトルエネルギーは、吸収される波長範囲よりも大きな波長範囲を示す傾向がある。限定ではなく例として、ピラジン化合物の一実施形態が約440nmの光を吸収する場合、ピラジン化合物は、約560nmの光を放出し得る。
【0084】
ピラジン(又はより具体的には、そこから発出するスペクトルエネルギー)の検出は、光学蛍光、吸光、又は光散乱技法を通して達成され得る。いくつかの態様では、スペクトルエネルギーは、蛍光である。いくつかの実施形態では、発出されたスペクトルエネルギーの検出は、発出されたスペクトルエネルギーの集合及び収集されたスペクトルエネルギーを示す電気シグナルの生成として特徴付けられ得る。患者の体に存在するピラジン化合物からのスペクトルエネルギーを検出するために利用されるメカニズムは、選択された波長(又は波長範囲)のみを検出するように設計され得、かつ/又は1つ以上の適切なスペクトルフィルターを含み得る。それらの開示が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第9,632,094号、米国特許第10,548,521号、米国特許第10,194,854号、米国公開第2020/0223805号、及び米国出願第63/029,927号に開示される様々なカテーテル、内視鏡、イヤークリップ、ハンドバンド、ヘッドバンド、表面コイル、フィンガープローブ、及び他の医療デバイスは、ピラジン化合物を電磁放射線に曝露するために、かつ/又はそこから発出するスペクトルエネルギーを検出するために利用され得る。ピラジンを電磁放射線に曝露し、そこから発出されるスペクトルエネルギーを検出するデバイスは、同じであるか又は異なり得る。すなわち、1つ又は2つのデバイスが使用され得る。スペクトルエネルギーの検出は、1回以上で断続的に達成され得るか、又は実質的に連続的であり得る。
【0085】
患者の腎機能、又はGFRは、検出されたスペクトルエネルギーに基づいて決定される。これは、検出されたスペクトルエネルギーを示すデータを使用し、患者の体からのピラジン化合物のクリアランスを示す強度/時間プロファイルを生成することによって達成される。このプロファイルは、生理学的又は病理学的状態と相関し得る。例えば、患者のクリアランスプロファイル及び/又はクリアランスレートは、患者の腎機能を評価し、患者の生理学的状態を診断するために、既知のクリアランスプロファイル及び/又はレートと比較され得る。体液中のピラジン化合物の存在を分析する場合では、濃度/時間曲線は、腎機能を評価するために生成及び分析(好ましくはリアルタイムで)され得る。あるいは、患者のクリアランスプロファイルは、当該患者の腎臓機能が経時的に変化したかを決定するために、同じ患者からの1つ以上の以前に測定されたクリアランスプロファイルと比較することができる。いくつかの態様では、腎機能評価は、本明細書において他の箇所で開示されるシステムを使用して行われる。
【0086】
生理学的機能は、以下によって評価することができる:(1)正常及び障害細胞若しくは臓器が血流からピラジン化合物を排除する方法の違いを比較すること、(2)患者の臓器若しくは組織におけるピラジンの排除若しくは蓄積の速度を測定すること、並びに/又は(3)ピラジンと関連付けられた臓器若しくは組織の断層撮影画像を得ること。例えば、血液プールクリアランスは、耳たぶ若しくは指におけるものなどの表面毛細血管から非侵襲的に測定され得るか、又は血管内カテーテルなどの適切な器具を使用して侵襲的に測定することができる。経皮蛍光はまた、当該患者の体上で非侵襲的にモニターすることができる。患者の表皮上の多くの位置は、経皮蛍光を非侵襲的にモニターするために好適であり得る。患者上の部位は、好ましくは、組織平衡への血管系が比較的迅速に発生する部位である。患者上の好適な部位の例としては、限定されないが、胸骨、下胸骨、大胸筋、後頭三角、額、顎、上股関節、及び下股関節が挙げられる。目的の細胞内でのピラジン化合物の蓄積は、同様の方法で評価することができる。
【0087】
いくつかの態様では、ピラジン化合物は、患者に投与され、当該患者は、少なくともステージ1CKDと以前に診断されている。他の態様では、当該患者は、ステージ2CKD、ステージ3CKD、ステージ4CKD、又はステージ5CKDと以前に診断されている。更に別の態様では、患者は、まだCKDと診断されていないが、CKDに関連する1つ以上のリスク因子を有する。更に別の態様では、患者は、CKDの既知のリスク因子を有さない。
【0088】
ピラジン化合物の投与は、実施されている医学的検査及び患者の医学的ニーズに基づいて、任意の好適な方法によって行われる。好適な方法は、本明細書において他の箇所で開示される。
【0089】
IV.システム
【0090】
本明細書において、GFRを決定するか、又は評価を必要とする患者における腎機能を評価するためのシステムも開示される。システムは、コンピューティングデバイス、当該コンピューティングデバイスに通信可能に結合したディスプレイデバイス、当該コンピューティングデバイスに動作可能に結合し、外部電源からのシステムの電気的分離を維持する電源、当該コンピューティングデバイスに動作可能に結合した1つ以上のセンサーヘッド(上記のセクションIIIに開示される)、及び電磁放射線に曝露されたときに光を放出するように構成された少なくとも1つのトレーサー剤を含む。コンピューティングデバイスは、センサーヘッドを操作及び制御し、当該センサーヘッドから送信された1つ以上の光測定値を記録し、当該光測定値に基づいて当該患者のGFRを計算するように構成される。
【0091】
いくつかの態様では、1つ以上のセンサーヘッドは、電磁放射線の少なくとも1つの供給源を含み、当該患者の皮膚に電磁放射線を生成及び送達し、当該トレーサー剤によって放出された電磁放射線を検出及び測定し、当該トレーサー剤によって放出された電磁放射線の当該測定値を当該コンピューティングデバイスに送信する。2つ以上のセンサーヘッドを有するシステムでは、各センサーヘッドは、同じであるか又は異なり得、そこから放出された電磁放射線は、同じであるか又は異なり得る。いくつかの態様では、センサーヘッドは、当該患者の皮膚に取り付けるように構成される。限定ではなく例として、2つのセンサーヘッドを有するシステムでは、1つのセンサーヘッドは、1つの波長の電磁放射線を放出及びモニターし得るが、第2のセンサーヘッドは、異なる波長を放出及びモニターし得る。これは、データを比較して、GFR決定の精度、及び評価を施す医療従事者に利用可能な情報を増加させることを可能にする。更に別の非限定的な例では、2つのセンサーヘッドを有するシステムにおいて、2つのセンサーヘッドは、局所平衡化動力学を終末相動力学から分離するために使用される。これは、医療従事者が、いつ平衡化が完了したかを決定し、センサーの局所的な動きによるアーチファクトを低減することを可能にする。
【0092】
他の態様では、セクションIIIに開示されるように、経皮蛍光を定量化するためのモバイルコンピューティングデバイス、システム、及び方法が使用される。
【0093】
トレーサー剤は、セクションIのピラジン化合物であり、皮下又は筋肉内投与を介して当該患者に投与されるように構成される。いくつかの態様では、トレーサーは、当該患者の腎臓における糸球体濾過のみによって排除され、電磁放射線に曝露されるときに当該センサーヘッドによって検出可能な光を放出するように構成される。好ましくは、トレーサー剤は、表Aの化合物である。最も好ましくは、トレーサー剤は、(2R,2'R)-2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(3-ヒドロキシプロパン酸)(MB-102又は3,6-ジアミノ-N,N-ビス(D-セリン)-ピラジン-2,5-ジカルボキサミドとも称される)である。いくつかの態様では、トレーサー剤は、セクションIIに記載されるように、それを必要とする患者への投与に好適な製剤中にある。
【0094】
患者におけるGFRを決定するか又は腎機能を評価するためのシステムは、それを必要とする患者に対して本明細書に開示される方法を実施するように構成され得る。システムにおけるコンピューティングデバイスは、それとともに示される全ての能力を有する任意の標準的なコンピュータであり得、具体的には、パーマネントメモリ、複雑な数学的計算が可能なプロセッサ、コンピュータと対話するためのキーボード及び/又はマウス、並びにコンピューティングデバイスと通信可能に結合したディスプレイを含むが、これらに限定されない。そのようなものとして、コンピューティングデバイスのパーマネントメモリは、患者におけるGFRを決定するか又は腎機能を評価するためのシステムの機能を実施するために必要な任意の情報、プログラム、及びデータを格納し得る。そのような情報、プログラム、及びデータは、1つ以上のセンサーヘッドによって収集された経皮蛍光値を既知の値と比較するために使用され得る標準及び/又は対照であり得る。いくつかの態様では、コンピューティングデバイスは、後日に得られた結果が比較され得るように、患者における以前の評価又はGFR決定からの結果を保存し得る。これは、医療従事者が患者の腎臓の健康状態を経時的にモニターすることを可能にする。いくつかの態様では、コンピューティングデバイスは、ラップトップコンピュータである。いくつかの態様では、ディスプレイデバイスは、タッチスクリーンを含む。
【0095】
加えて、コンピューティングデバイスは、所定の期間にわたる腎減衰の時間定数を計算するように構成される。一態様では、患者における経皮蛍光データは、所定の期間にわたって収集され、時間(x軸)対蛍光(y軸)のグラフが調製される。減衰速度は、湾曲又は線形であり得、減衰速度の時間定数が計算される。一態様では、減衰速度は、半対数(y)プロットについて線形である。時間定数は、既知の値と比較され、それによって患者におけるGFRが決定される。いくつかの態様では、減衰速度は、標準的な一次動力学に対応する。更に別の態様では、減衰速度は、マルチコンパートメント薬物動態モデルを示し得る。米国公開第2019/0125901A1号の図3A~3Dは、標準的な薬物動態ソフトウェアが腎減衰の時間定数を決定することができる2コンパートメント薬物動態を示す。GFR決定は、線形回帰、外れ値除外、相関係数(R)の計算、及び較正の標準誤差を使用して行われ、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国公開第2019/0125901A1号によってより完全に記載される。
【0096】
V.キット
【0097】
本明細書において、GFR評価のためのキットも開示される。キットは、セクションIIに記載されるように、約60mg/ml~約300mg/mlの溶液としての、約3mg~約250mgのセクションIのピラジン化合物と、患者の体内に溶液を皮下又は筋肉内投与するように構成されたインジェクターデバイスと、患者の体に取り付け、経皮蛍光を検出するように構成されたセンサーと、センサーと無線で通信可能に結合し、センサーからデータを受信し、データに基づいて患者のGFRを計算するようにプログラムされたモバイルコンピューティングデバイスと、患者のGFRを評価するためにキットの構成要素を使用する方法を記載する説明書と、を含み得る。好適なインジェクターデバイス及びモバイルコンピューティングデバイスは、セクションIIIに記載されている。
【実施例
【0098】
以下の例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の例に開示される技法は、本発明の実施において良好に機能するために本発明者らによって発見された技法を表すことを当業者には理解されたい。しかしながら、当業者は、本開示を考慮して、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示される具体的な実施形態において変更が行われ、依然として同様又は類似の結果が得られ得ることを理解すべきである。したがって、添付の図面に記載又は図示される全ての事項は、限定的な意味ではなく、例示的なものとして解釈されるべきである。
【0099】
実施例1-MB-102製剤:ナトリウム塩
【0100】
MB-102(0.300g、0.81mmol)をバイアル(4.0mL)に入れた。水(0.8mL、D.I.)を添加し、混合物を短時間超音波処理した。混合物に、6.25Nの水性NaOH(2当量、1.62mmol、0.24mL、少しずつ、0.020mLx12で加えて溶液を得た)を、撹拌及び短期間の超音波処理で加えた。4℃で一晩沈殿物形成なしで深紅色の溶液を得た。最終濃度は、水1mL当たり300mgの(2R,2'R)-2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(3-ヒドロキシプロパン酸)、MB-102(w/v)であった。
【0101】
実施例2-MB-102製剤:ナトリウム塩
【0102】
MB-102(0.640g、1.72mmol)をバイアル(20mLシンチレーション)に入れ、6.0mL PBS-1xを添加した。pHは、6.25NのNaOHの添加によって7.2に調整した。この時点で、全ての二酸性MB-102は溶解していた。総体積は、1.0mL溶液当たり64mgの最終濃度のために、PBS-1xの添加によって10.0mLに調整した。
【0103】
実施例3-MB-102製剤:ナトリウム塩
【0104】
最終体積が5.0mLであり、1.0mL溶液当たり128mgの最終濃度をもたらすことを除いて、実施例2の手順に従った。
【0105】
実施例4-MB-102製剤:コリン塩
【0106】
MB-102(0.30g、0.81mmol)を、テフロン(登録商標)で覆われた磁気スピンベーンを備えた5mLのvバイアルに量り入れた。水中の水酸化コリン(Aldrich、46wt%の0.43g、1.62mmol)を、溶液が得られるまで撹拌しながら少しずつ添加した。溶液の総重量は、0.73g又は64.2wt%のMB-102ジコリン塩(MW:578.6)であった。溶液を沈殿なしで4℃で7日間保存した。
【0107】
実施例5-MB-102製剤:メグルミン塩
【0108】
MB-102のジメグルミン塩を、実施例4で用いたものと同様の手順を使用したが、水酸化コリンを適切な量のメグルミンで置き換えて調製した。
【0109】
実施例6-一般動物調製及びMB-102定量化
【0110】
体重約25kgの若齢ヨークシャーブタは麻酔を受け、体温を安定させ、IVポートを外科的に配置した。股関節と膝関節との間の線に沿った約半分の領域を注射部位として選択し、皮膚を洗浄し、選択された領域を少なくとも2回剃毛することによって任意の露出した毛髪を除去することによって調製した。同様に、2つのQuantum Leap蛍光センサー(米国特許第10,548,521号に開示)が配置される部位(胸部)を、洗浄及び剃毛によって調製した。皮膚が乾燥した後、センサーを市販の皮膚接着剤で取り付け、バックグラウンド皮膚自家蛍光測定を記録した。バックグラウンド蛍光収集の約20分後、対象動物に、静脈内(動物48019)、又は皮下(動物52771、53701 09802、若しくは1539)、又は筋肉内(09801)のいずれかで、PBS-1x製剤化MB-102を3.2mg/kgで投与した。適切な体積の注射が約1分間行われた。胸部の蛍光皮膚シグナルは、典型的には、注射後数分以内に観察され、平衡に到達するまで経時的に増加した。この時点で、腎臓によるMB-102の糸球体排除は、経時的に蛍光シグナルの減少をもたらした。血液試料(1.5mL)を、MB-102の導入の直前(0分)及び手順全体を通して15分間隔で採取した。血液を、BDバキュテナーKEDTAチューブに収集し、回転させて血漿にし、分析されるまで-80℃で保存した。その後、処理された血漿試料を解凍し、PBS-1xで希釈し、HPLC又はUPLCによって分析し、MB-102の濃度を標準的な分析技法を使用して決定した。いくつかの実験についてのMB-102(ng/mL)の血漿中濃度対時間の結果は、表1に表される。各動物の更なる詳細は、以下の例で提供される。
【0111】
MB-102用量
【0112】
48019 IV:11.8mg/mLで8.2mL
52771 SubQ:60mg/mLで1.2mL
53701 SubQ:60mg/mLで1.2mL
09802 SubQ:60mg/mLで1.3mL
09801 IM 60mg/mLで1.4mL
【0113】
【表2】
【0114】
実施例7-MB-102のIV投与(ブタ)
【0115】
対象ブタ、48019、対照動物を実施例6のように調製し、11.8mg/mLのPBS-1x中のMB-102を8.2mL使用してIV投与した(約2分間にわたってボーラス)。MB-102血漿中濃度(ng/mL)対IV注射後の時間の結果を表1に示し、図1にプロットする。MB-102の対応する経皮蛍光対IV注射後の時間プロットを図2に示す。
【0116】
実施例8-MB-102の多針皮下投与(ブタ)
【0117】
無菌中胚葉針パックを入手した。針アレイは、中心針の周りに円形、対称パターン(直径30mm)で4つが配置され、流通チャネル及び第2のルアーハブを介して一次ソースシリンジ(総送達可能体積3mL)に取り付けられた、5つの4mm×30ゲージ(直径0.30mm)ルアーハブ針を特徴とした。MB-102APIを、1×PBS中の60mg/mLのナトリウム塩として製剤化し、5mLの血清キャップバイアルに入れた。投与の直前に、一次シリンジを、3.2mg/kgを達成するために必要な量の製剤化MB-102よりわずかに過剰に充填し、対象動物及び蛍光モニターが実験を開始し、注射を開始する準備が整うまで針キャップを交換した。対象ブタ52771に、PBS-1x中に製剤化されたMB-102(3.2mg/kg)を1.2mL投与した。数分以内に、MB-102からの経皮蛍光シグナルは、実施例6で参照されるセンサーによって検出可能であった。対象動物蛍光を実験の経過全体(8時間)の間に得て、血液試料を15分毎に収集し、処理し、-80℃で保存した。IV MB-102血漿中濃度対時間及び皮下MB-102(ともに3.2mg/kg用量)血漿中濃度対時間の比較を図1に示す。コンパニオン皮下MB-102経皮蛍光対時間プロットを図3に示す。
【0118】
実施例9-MB-102の多針皮下投与(ブタ)
【0119】
実験動物ヨークシャーブタ、53701を、実施例8に記載されるようにMB-102の皮下(subQ)投与に供した。蛍光シグナルは、数分後に最初に観察された。血漿サンプリングを実施例8に記載されるように行い、結果(表1)を図1にプロットする。対応するコンパニオン経皮蛍光対時間結果を図4に示す。
【0120】
実施例10-MB-102の単一針皮下(subQ)投与(ブタ)
【0121】
実験動物ヨークシャーブタ、09802は、実施例8と実質的に同じプロトコルを使用してMB-102の皮下(subQ)投与に供したが、単一4mm×30g針を備えた2mLのシリンジで置き換えた。蛍光シグナルは、数分後に最初に観察された。血漿サンプリングを実施例8に記載されるように行い、結果(表1)を図1にプロットする。対応するコンパニオン経皮蛍光対時間結果を図5に示す。
【0122】
実施例11-MB-102の単一針筋肉内(IM)投与(ブタ)
【0123】
実験動物ヨークシャーブタ、09801は、実施例8と実質的に同じ手順を使用してMB-102の筋肉内(IM)投与に供したが、単一13mm×27g針を備えた2mLのシリンジで置き換えた。蛍光シグナルは、数分後に最初に観察された。血液サンプリング及び処理を実施例8に記載されるように行い、結果(表1)を図6にプロットする。蛍光対時間結果を図7に示す。
【0124】
上記を考慮すると、本開示のいくつかの利点が達成され、他の有利な結果が達成されることがわかる。本開示の範囲から逸脱することなく、上記のプロセス及び複合物に様々な変更を加えることができるため、上記の説明に含まれ、添付の図面に示される全ての事項は、例示的であり、限定的な意味ではないと解釈されることが意図される。
【0125】
実施例12-MB-102の単一針皮下(subQ)投与(ブタ)
【0126】
実験動物ヨークシャーブタ、1539を、実施例10と同じプロトコルで単一針を使用して、MB-102の皮下(subQ)投与に供した。蛍光シグナルは、数分後に最初に観察された。血漿サンプリングを実施例8に記載されるように実施し、PK結果対時間及びコンパニオン経皮蛍光対時間結果を図8に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】