(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】活性が著しく向上したBIT組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 43/80 20060101AFI20231108BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20231108BHJP
A01N 33/08 20060101ALI20231108BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20231108BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20231108BHJP
【FI】
A01N43/80 102
A01P3/00
A01N33/08
C09D201/00
C09D7/65
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524318
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 US2021058571
(87)【国際公開番号】W WO2022103729
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519047222
【氏名又は名称】トロイ テクノロジー,ザ セカンド,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブス,ジェイク・ザカリー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,メイファ
【テーマコード(参考)】
4H011
4J038
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011BA02
4H011BB04
4H011BB10
4J038DF012
(57)【要約】
イソチアゾリノン、例えば1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンと、ポリエーテルトリアミンとを、相乗的組合せで含む、保存剤組成物。ポリエーテルトリアミンは、イソチアゾリノンの抗菌活性を増強し、ポリエーテルトリアミンの非存在下のイソチアゾリノンによるものよりも相乗的に低い濃度で、所望の抗菌活性を達成する。また、塗料、コーティングおよび金属加工流体を含む工業材料の湿潤状態保存を提供するための、保存剤組成物を使用する方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のイソチアゾリン-3-オンと、(b)少なくとも1種の式I:
【化1】
[式中、R
1はHまたはC
1~C
9アルキルであり、R
2、R
3およびR
4は独立して、HまたはCH
3であり、x、yおよびzは独立して、1~10である]
の化合物とを含み、(a)と(b)とが、1:200~2:3の重量比(a):(b)で存在する、保存剤組成物。
【請求項2】
(a)と(b)とが、1:50~1:2の重量比(a):(b)で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)と(b)とが、1:25~25:75の重量比(a):(b)で存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
イソチアゾリン-3-オンが、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、N-(n-ブチル)-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の保存剤組成物を含む保存剤濃縮物であって、前記濃縮物の重量に対して1~45w/w%の(a)を含む、保存剤濃縮物。
【請求項6】
殺真菌剤、殺菌剤および殺藻剤からなる群から選択される1種または複数の共殺生物剤をさらに含み、前記濃縮物の重量に対して1~50w/w%の前記共殺生物剤を含む、請求項5に記載の保存剤濃縮物。
【請求項7】
保存剤を含む工業材料であって、前記保存剤が、(a)少なくとも1種のイソチアゾリン-3-オンと、(b)少なくとも1種の式I:
【化2】
[式中、R
1はHまたはC
1~C
9アルキルであり、R
2、R
3およびR
4は独立して、HまたはCH
3であり、x、yおよびzは独立して、1~10である]
の化合物との組合せを含み、(a)と(b)とが、1:200~2:3の重量比(a):(b)で存在し、(a)が前記工業材料中に、約500ppmであるか又はそれ未満の総量で存在する、前記工業材料。
【請求項8】
(a)が組成物中に、約5ppm~約50ppmの総量で存在する、請求項7に記載の工業材料。
【請求項9】
(a)が組成物中に、約5ppm~約30ppmの総量で存在する、請求項8に記載の工業材料。
【請求項10】
(a)が組成物中に、約10ppm~約25ppmの総量で存在する、請求項9に記載の工業材料。
【請求項11】
(a)が組成物中に、約50ppm未満の総量で存在する、請求項7に記載の工業材料。
【請求項12】
(a)が組成物中に、約25ppm未満の総量で存在する、請求項11に記載の工業材料。
【請求項13】
アクリレート類、置換(メタ)アクリレート類、スチレン/ブタジエン、エチレン/酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル、スチレン/ブタジエン/N-メチロールアクリルアミド、ニトリルおよびこれらの混合物またはコポリマーからなる群から選択されるポリマーのエマルションを含む、請求項7に記載の工業材料。
【請求項14】
イソチアゾリン-3-オンが、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、N-(n-ブチル)-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項7に記載の工業材料。
【請求項15】
殺真菌剤、殺菌剤および殺藻剤からなる群から選択される1種または複数の共殺生物剤をさらに含み、前記共殺生物剤が前記組成物中に、前記組成物の総重量に対して約0.001~約1.0w/w%の量で存在する、請求項7に記載の工業材料。
【請求項16】
塗料、着色剤、コーティング、プラスター、接着剤、シーラント、コーキング材、鉱物スラリー、顔料、顔料スラリー、コンクリート、ポリマーエマルション、ポリマー分散体、インク、サイズ(sizes)、農業用農薬調合物、家庭用コーティング製品、パーソナルケア製品、冷却潤滑剤、伝熱液、金属加工流体、油濃縮物、ワニス、シーリング組成物、皮革用助剤、紙コーティング剤および化粧品からなる群から選択される、請求項7に記載の工業材料。
【請求項17】
x、yおよびzが独立して、1~5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
x、yおよびzが独立して、1、2または3である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
x+y+z=5または6である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
(a)と(b)とが、5:95~33:67の重量比(a):(b)で存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項21】
(a)と(b)とが、1:40~1:2の重量比(a):(b)で存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項22】
(a)と(b)とが、1:30~1:2の重量比(a):(b)で存在する、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
(a)と(b)とが、1:20~1:2の重量比(a):(b)で存在する、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
(a)と(b)とが、1:20~1:3の重量比(a):(b)で存在する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
湿潤状態における工業材料を保存する方法であって、請求項1に記載の保存剤組成物の有効量を前記工業材料に加えるステップを含む、方法。
【請求項26】
前記工業材料が、塗料、コーティング、プラスター、接着剤、シーラント、コーキング材、鉱物スラリー、顔料、顔料スラリー、コンクリート、ポリマーエマルション、ポリマー分散体、インク、サイズ、農業用農薬調合物、家庭用クリーニング製品、パーソナルケア製品、冷却潤滑剤、伝熱液、金属加工流体、油濃縮物、ワニス、シーリング組成物、皮革用助剤、紙コーティング剤、化粧品およびこのような工業材料のための保存剤からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記工業材料における微生物の増殖を阻止または防止するステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記微生物が、細菌、菌類、酵母、藻類、スライムおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
(a)が前記材料中に、約5ppm~約50ppmの総量で存在する、請求項7に記載の工業材料。
【請求項30】
BITが前記材料中に、約5ppm~約30ppmの総量で存在する、請求項29に記載の工業材料。
【請求項31】
前記BITが前記材料中に、約10ppm~約25ppmの総量で存在する、請求項30に記載の工業材料。
【請求項32】
前記BITが前記材料中に、約50ppm未満の総量で存在する、請求項7に記載の工業材料。
【請求項33】
前記BITが前記材料中に、約25ppm未満の総量で存在する、請求項32に記載の工業材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、内容の全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2020年11月10日に出願された、活性が著しく向上したBIT組成物と題する米国仮特許出願第63/111,937号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(「BIT」とも称される)は、多様な用途において有効な殺菌剤であることが公知である。BITは現在、高pHにおいて安定であり、長期保存剤として有効である、わずかに残る幅広く有効なホルムアルデヒド不含保存剤の1つである。
【0003】
BITは、広範囲の用途において有用であることが証明されているが、顕著な弱点も有する。具体的には、BITは、特に、産業上の劣化に一般的ないくつかのPseudomonas種に対して、アンバランスな効果領域を有するゆっくりと作用する保存剤である。この理由のため、効果的な保存には、しばしば、BITを追加の殺生成分と、許容されるレベルの保存までブレンドすることが必要となるが、高いレベルは、規制による制限および要求される表示によって制限される。欧州では、50ppm超のBITによって保護される製品は、GHS危険性報告「EUH208」を発動させ、500ppm超のBITによって保護される製品は、「皮膚感作性;アレルギー性皮膚反応のおそれ」として分類およびH317表示が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの表示は調合物に望ましいものではないこと、およびBITが500ppm未満で常には有効ではなく、とりわけ、50ppm未満では典型的に有効ではないことを考慮すると、相乗的かつ幅広く有効なBIT系製品が望ましい。
【0005】
本発明者らは、ポリエーテルトリアミンのBITとの相乗効果は、他のアミンとBITとの組合せとは著しく異なることを発見した。ポリエーテルトリアミンとBITとのこの特異的な相乗効果は、塗料および着色剤の産業上の保護に関して、特に有用であり、湿潤状態保存のために現在使用される標準的なBIT製品よりも著しく低いBIT濃度で同等の保護を塗料および着色剤に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、(a)1,2ベンゾイソチアゾリン-3-オンと、(b)少なくとも1種の式I:
【0007】
【0008】
[式中、R1はHまたはC1~C9アルキルであり、R2、R3およびR4は独立して、HまたはCH3であり、x、yおよびzは独立して、1~10である]
の化合物とを含み、(a)と(b)とが、1:200~2:3の重量比(a):(b)で存在する、保存剤組成物に関する。1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンは「BIT」としても知られ、ここでは「BIT」と称される。
【0009】
別の態様では、本発明は、(a)1,2ベンゾイソチアゾリン-3-オンと、(b)少なくとも1種の式Iの化合物とを含む保存剤組成物を含む、保存剤濃縮物であって、濃縮物が、濃縮物の重量に対して1~45w/w%の(a)を含む、保存剤濃縮物に関する。
【0010】
別の態様では、本発明は、保存剤を含む工業材料であって、保存剤が、(a)1,2ベンゾイソチアゾリン-3-オンと、(b)少なくとも1種の式Iの化合物との組合せを含み、(a)と(b)とが、1:200~2:3の重量比(a):(b)で存在し、(a)が工業材料中に、約500ppmであるか又はそれ未満の総量で存在する、工業材料に関する。
【0011】
さらなる態様では、本発明は、湿潤状態における工業材料を保存する方法であって、(a)1,2ベンゾイソチアゾリン-3-オンと(b)式I:
【0012】
【0013】
[式中、R1はHまたはC1~C9アルキルであり、R2、R3およびR4は独立して、HまたはCH3であり、x、yおよびzは独立して、1~10である]
のポリエーテルトリアミンとを含み、(a)と(b)とが、1:200~2:3の重量比(a):(b)で存在する保存剤の有効量を、工業材料に加えるステップを含む、方法に関する。
【0014】
これらのおよび他の態様は、以下の発明の詳細な説明を読むことで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】BITとポリエーテルトリアミンとのブレンドについての、P.aeruginosaに対する最小発育阻止濃度(MIC)および算出された相乗指数(SI)のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
目下驚くべきことに、ポリエーテルトリアミンと組合せて1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンを含有する保存剤組成物は、ポリエーテルトリアミンを含有しないBIT含有組成物と比較して、相乗的な抗菌効果を呈することが、本発明に従って見出された。
【0017】
本発明による保存剤組成物は、(a)1,2ベンゾイソチアゾリン-3-オンと、(b)少なくとも1種の式I:
【0018】
【0019】
[式中、R1はHまたはC1~C9アルキルであり、R2、R3およびR4は独立して、HまたはCH3であり、x、yおよびzは独立して、1~10である]
の化合物とを含み、(a)と(b)とは、1:200~2:3の重量比(a):(b)で存在する。本発明の好ましい態様では、x、yおよびzは独立して、1~5である。本発明の別の好ましい態様では、x、yおよびzは独立して、1、2または3である。本発明のさらに好ましい態様では、x、yおよびzは独立して、1、2または3であり、x+y+z≧5または6である。好ましい式Iのポリエーテルトリアミンは、Huntsman製のJeffamine(登録商標)T403ポリエーテルアミンである。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、(a)と(b)とは、1:160、もしくは1:150、もしくは1:125、もしくは1:100、もしくは1:75、もしくは1:50から1:2の重量比(a):(b)、または1:25~1:3の重量比(a):(b)で存在しうる。本発明の他の実施形態では、(a)と(b)とは、5:95~33:67、または1:40~1:2、1:30~1:2、1:20~1:2、または1:20~1:3の重量比(a):(b)で存在しうる。本発明による保存剤組成物はまた、(a)と(b)とを、上記の比の任意の組合せによって規定される重量比(a):(b)で含んでもよい。
【0021】
本発明による保存剤組成物は、保存剤濃縮物として好適に調合されうるが、濃縮物は、濃縮物の重量に対して1~45w/w%の(a)を含む。濃縮物はまた、1~40w/w%、3~40w/w%、5~40w/w%、5~35w/w%、5~30w/w%、10~25w/w%、15~25w/w%、または20~25w/w%の(a)を含有するように調合されうる。本発明の範囲内の濃縮物は、前述の範囲の上限または下限として与えられる値の任意の組合せによって規定される任意の範囲内、例えば、1~15w/w%、3~10w/w%、20~45w/w%等で、(a)を含有するように調合されうる。
【0022】
保存剤組成物は、1種または複数の共殺生物剤、例えば、1種または複数の殺真菌剤、殺菌剤または殺藻剤をさらに含んでもよく、濃縮物は、濃縮物の重量に対して1~50w/w%の共殺生物剤を含む。好適な共殺生物剤としては、プロピコナゾール、IPBC、ピリチオンナトリウム、ピリチオン亜鉛、OIT、およびある特定の最終用途について存在しうる、真菌への効果の隙間を埋めるための関連化合物等の殺真菌剤が挙げられる。
【0023】
保存剤組成物は、1種または複数の添加剤を含有してもよい。好適な添加剤としては、水、界面活性剤、乳化剤、酸性化剤、分散剤、安定剤、緩衝剤、pH調整剤、有機溶媒、染料、香料および顔料が挙げられる。典型的な調合は、最低限、(a)と(b)とに加えて、水および/または有機溶媒を含有することになる。
【0024】
保存剤組成物は、ポリエーテルトリアミン中に溶解したBITを含む、溶液の形態を取りうる。BITは一般に、高pH、例えば10以上のpHで可溶性であり、ポリエーテルトリアミン(例えばポリエーテルトリアミンT403、pH約11.5)に容易に溶解する。他の実施形態では、保存剤組成物は、共殺生物剤を含む、部分的に溶解性または不溶性の成分を組み込むために必要な場合、懸濁液、エマルションまたは分散体として調合されてもよい。保存剤組成物のpHは、BITおよび/またはさらなる共殺生物剤を含む1種または複数の成分の、溶液、エマルション、分散体または懸濁液への所望の組み込みに応じて、酸性から塩基性まで変動させてもよい。
【0025】
一実施形態では、BITを苛性(caustic)またはグリコール中に予備分散させ、次いで、BITが水溶性アンモニウム塩を形成するまで、pHを苛性によって上昇させる。別の実施形態では、BITをポリエチレングリコール中に予備分散させ、ポリエーテルトリアミンの添加によってpHを上昇させる。加熱によって、BIT粉末(85%)をポリエーテルトリアミンT403に、より低い濃度で溶解させることができる。さらなる実施形態では、BITとポリエーテルアミンとを、水または水酸化カリウムの溶液に溶解させる。これらの実施形態のすべてでは、得られる生成物は溶液である。
【0026】
BITをポリエーテルトリアミンに溶解させるために必要な高pHでは劣化する別のpH感受性成分、例えば共殺生物剤、例えば殺真菌剤を組み込むために、保存剤組成物のpHを低下させることができる。このような調合では、適当な界面活性剤および/またはレオロジー調整剤によって、ポリエーテルトリアミンを懸濁または溶解させることができる。
【0027】
本発明の保存剤組成物は、工業材料に好適に組み込まれ、湿潤状態保存を行う。このような保存を必要とする工業材料としては、塗料、着色剤、コーティング、プラスター、接着剤、シーラント、コーキング材、鉱物スラリー、顔料、顔料スラリー、コンクリート、ポリマーエマルション、ポリマー分散体、インク、サイズ(sizes)、農業用農薬(agricultural pesticide)調合物、家庭用コーティング製品、パーソナルケア製品、冷却潤滑剤、伝熱液、金属加工流体、油濃縮物、ワニス、シーリング組成物、皮革用助剤、紙コーティング剤および化粧品が挙げられる。
【0028】
そのため、本発明による工業材料は、保存剤を含み、保存剤は、(a)少なくとも1種のイソチアゾリン-3-オンと、(b)少なくとも1種の式I:
【0029】
【0030】
[式中、R1、R2、R3、R4、x、yおよびzは以前に定義された通りである]
の化合物との組合せを含み、(a)と(b)とは、1:50~40:60の重量比(a):(b)で存在し、(a)は工業材料中に、約500ppmであるか又はそれ未満の総量で存在する。
【0031】
本発明の他の態様では、(a)は工業材料中に、400ppmであるか又はそれ未満、300ppmであるか又はそれ未満、200ppmであるか又はそれ未満、または100ppmであるか又はそれ未満の総量で存在する。本発明のさらなる態様では、(a)は工業材料中に、少なくとも5ppm、10ppm、15ppm、20ppmまたは25ppmの総量で存在する。本発明のなおも他の態様では、(a)は工業材料中に、約5ppm~約50ppm、約5ppm~約40ppm、約5ppm~約30ppm、約10ppm~約25ppm、約50ppmであるか又はそれ未満、または約25ppmであるか又はそれ未満の総量で存在しうる。さらに、(a)が工業材料中に、前述の範囲の上限または下限として与えられる値の任意の組合せによって規定される任意の範囲内、例えば、約5ppm~約500ppm、約100ppm~約500ppm、約40ppm~約50ppm、約5ppm~約10ppm等で存在することは、本発明の範囲内である。
【0032】
本発明の保存剤組成物が好適に組み込まれる工業材料は、好ましくは機能性流体である。機能性流体は、好適には、水性ベース媒体に加えて本発明の保存剤を含む。保存剤は、水で希釈すると、機能性流体中で抗菌効果を提供する、濃縮物の形態で提供されうる。
【0033】
本発明の保存剤組成物は、機能性流体、例えば、ポリマーエマルションまたは他のコーティング組成物において、湿潤状態保存を行うために、好適に使用される。ポリマーエマルションにおいて有用なポリマーとしては、アクリル系および置換(メタ)アクリレート類、スチレン/ブタジエン、エチレン酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル、スチレン/ブタジエン/N-メチロールアクリルアミド、ニトリルおよび上述のもののコポリマーが挙げられる。典型的な機能性流体としては、コーティング組成物、例えば、塗料、接着剤、シーラント、コーキング材、鉱物および顔料スラリー、印刷用インク、農業用農薬調合物、家庭用製品、パーソナルケア、金属加工流体ならびに他の水性ベース系が挙げられる。
【0034】
工業材料は、殺真菌剤、殺菌剤および殺藻剤からなる群から選択される1種または複数の共殺生物剤をさらに含んでもよく、共殺生物剤は工業材料中に、工業材料の総重量に対して約0.001~約1.0w/w%の量で存在する。
【0035】
本発明はさらに、湿潤状態における工業材料を保存する方法であって、工業材料に有効量の保存剤を加えるステップを含み、保存剤が、(a)少なくとも1種のイソチアゾリン-3-オンと、(b)少なくとも1種の式I:
【0036】
【0037】
[式中、R1、R2、R3、R4、x、yおよびzは以前に定義された通りである]
の化合物との組合せを含み、(a)と(b)とが、1:50~40:60の重量比(a):(b)で存在する、方法に関する。
【0038】
本発明による方法の一態様では、保存剤組成物は、(a)が工業材料中に、約500ppmであるか又はそれ未満の総量で存在するように、工業材料に加えられる。本発明の他の態様では、保存剤組成物は、(a)は工業材料中に、400ppmであるか又はそれ未満、300ppmであるか又はそれ未満、200ppmであるか又はそれ未満、または100ppmであるか又はそれ未満の総量で存在するように、工業材料に加えられる。本発明のなおも他の態様では、(a)は工業材料中に、約5ppm~約50ppm、約5ppm~約40ppm、約5ppm~約30ppm、約10ppm~約25ppm、約50ppmであるか又はそれ未満、または約25ppmであるか又はそれ未満の総量で存在しうる。さらに、保存剤組成物が、(a)が工業材料中に、前述の範囲の上限または下限として与えられる値の任意の組合せによって規定される任意の範囲内、例えば、約5ppm~約500ppm、約100ppm~約500ppm、約40ppm~約50ppm、約5ppm~約10ppm等で存在するように、工業材料に加えられることは、本発明の範囲内である。
【0039】
本発明による工業材料を保存する方法は、工業材料における微生物の増殖を阻止または防止するステップを含んでもよい。増殖が阻止または防止される微生物としては、細菌、菌類、酵母、藻類、スライムおよびこれらの混合物または組合せが挙げられる。
【0040】
本発明はさらに、以下に与える実施例において、さらに説明される。ここで与えられるすべての百分率は、別段の明記がない限り、組成物の総重量を基準とする重量パーセントである。この出願において言及されるすべての特許は、参照によって全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0041】
実験方法
最小発育阻止濃度試験
MICは、次の具体的な試験パラメータを使用して、微量液体希釈によって決定した。
フォーマット 96ウェルプレート
強度 約1.0×105CFU/mL
標準化 OD600
インキュベーション温度 35℃
インキュベーション時間 2日
試験の終点 増殖なし(濁度による)
試験媒体 ミューラーヒントンブロス(MHB)
OD600によって必要となる有機体の希釈を、1.0のOD600が8×108CFU/mLに等しいことに基づいて算出した。殺生物剤の希釈は、各アッセイについて2倍刻みで実行した。
【0042】
相乗指数の算出
相乗指数(SI)スコアは、下の質量作用の式に従って算出した。
S.I.=[MIC[A]ブレンド中/MIC[A]単独]+[MIC[B]ブレンド中/MIC[B]単独]
成分の組合せは、EUCASTガイドライン1によって規定される通り、相乗的(S.I.≦0.5)、付加的(S.I>0.5~1)、中立的(S.I>1~<2)または拮抗的(S.I≧2)であると判定した。
1European Society of Clinical Microbiology and Infectious Dieases(ESCMID)のEuropean Committee for Antimicrobial Susceptibility Testing(EUCAST)。EUCAST Definitive Document E.Def 1.2、2000年5月:Terminology relating to methods for the determination of susceptibility of bacteria to antimicrobial agents。Clin.Microbiol.Infect.Off.Publ.Eur.Soc.Clin.Microbiol.Infect.Dis.6、503~508(2000)。
【0043】
細菌チャレンジ試験(産業強度)
産業強度の播種を示す場合、細菌チャレンジ試験の有機体は、Alcaligenes faecalis(ATCC #25094)、Enterobacter aerogenes(ATCC #13048)、Escherichia coli(ATCC #11229)、Pseudomonas aeruginosa(ATCC #10145)、Staphylococcus aureus(ATCC #6538)、Microbacterium paraoxydans(Troyが単離)、Burkholderia cenocepacia(Troyが単離)、Citrobacter werkmanii(Troyが単離)およびAcinetobacter sp.(Troyが単離)であった。すべての細菌は、トリプティックソイブロス(TSB)において増殖させた分離一夜培養物からブレンドし、OD600測定によって同等のCFUで混合し、次いで、OD600=7(約109CFU/mL)に希釈して、最終的な細菌コンソーシアムを作製した。各混合物は、各播種の直前に調製した。播種は、50gの指示される試験試料に0.1mLを加えることによって実行し、1回の播種当たり約107CFU/gを与えた。少量の試験試料をPCAに適用することによる各チャレンジの後、指示される間隔において生存率読み取りを実行した。次いで、プレートを32℃において3~5日インキュベートした後、半定量的スケールによって評価した。このスケールは、ストリークラインに沿ってコロニー密度を視覚的に評価することによって、およそのCFU/gを見積もるものである。読み取り値を、2連の「0」~「4」の半定量読み取り値の平均として記録する。試料は、毎回の生存率読み取りの前、および毎回の播種の後に混合した。
【0044】
【0045】
試験殺生物剤組成物
Ref-「1721-88」
化学名 百分率 CAS#
Jeffamine T403 50% -
Mergal BIT(84.5%) 11.83% 2634-33-5
ポリグリコールP1000(Dow) 38.17% 25322-69-4
市販製品組成物
【0046】
【0047】
非保存マトリックス
塗料および着色剤の非保存試験マトリックスは、以下のTroyプロジェクトから入手した。
【0048】
【0049】
実施例1
Mergal BIT20X(20%BIT)、個々のアミン、およびアミンとMergal BIT20Xとの混合物についてのMIC値を、96ウェル微量液体希釈法を使用して、試験有機体Pseudomonas aeruginosa(ATCC 10145)に対して決定した。製品レベルのMIC値を表1に報告する。2種の試験したポリエーテルトリアミン(MW703、T403)を除くすべてのアミンは、Mergal BIT20Xによって付加的挙動を示し、ポリエーテルトリアミンは、BIT20Xによって非常に相乗的な挙動を示した。
【0050】
【0051】
実施例2
ポリエーテルトリアミンJeffamine(登録商標)T403とMergal(登録商標)BIT20Xとの組合せは、種々の細菌性有機体に対して幅広く相乗的である。Jeffamine T403、Mergal BIT20Xおよび1:1混合物のMIC値を、指示される試験有機体に対して測定し、結果を表2に提示する。T403とBIT20Xとのブレンド(「1対1混合物」、重量%で等しい割合の各製品を含有する)は、すべての試験有機体に対して相乗的であった。
【0052】
【0053】
実施例3
1:50~50:1のJeffamine T403とMergal BIT20Xとの混合物の相乗効果を、P.aeruginosaに対して試験した。Jeffamine T403を、指示される比でMergal BIT20Xと混合する前に、20w/w%に希釈した。結果を
図1にプロットする。Jeffamine T403とMergal BIT20Xとは、過剰のT403を含む比では相乗的である。
図1において、x軸はブレンド中の画分BITレベルを示し(1=100%BIT、0=100%T403、0.5=50%BIT、50%T403等)、左y軸はPseudomonas aeruginosa(ATCC 10145)に対するMICであり、右y軸は算出された相乗指数(SI)である。点線は、EUCASTガイドラインによって規定される相乗指数カットオフを示す(SI<0.5)。MICの生データを表3に提示し、MIC値を活性物質濃度において報告する。
【0054】
【0055】
実施例4
1種の内装塗料および2種の着色剤において、標準10%BITおよび増強BIT製品「1721-88」の抗菌性能を比較した。2週間わたって産業種菌を試料に播種した。2回目の播種後、7日間増殖がなかった試料は、増殖から良好に保護されたものとみなす。「1721-88」は、純粋なBITを著しく上回り、著しくより低い濃度でBITを機能させることができた。結果を表4に提示する。「合格レベル」は、産業上重要な細菌の混合物による2回目の約107細菌チャレンジ後に、調合物を7日間細菌増殖なしとするために要求される、最小試験製品レベルとして定義される。チャレンジの生データは、表5で入手可能である。
【0056】
【0057】
【0058】
【国際調査報告】