(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】哺乳類の精子の受精能獲得を向上させるための代謝活性化剤
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20231108BHJP
A61K 31/69 20060101ALI20231108BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20231108BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20231108BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20231108BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231108BHJP
C12N 5/076 20100101ALN20231108BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/69
A61K31/5377
A61K45/06
A61P15/08
A61P43/00 123
C12N5/076
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524599
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 IB2021059686
(87)【国際公開番号】W WO2022084889
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513303795
【氏名又は名称】ウニベルシダージ ド ポルト
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDADE DO PORTO
(74)【代理人】
【識別番号】110002561
【氏名又は名称】弁理士法人勝沼国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴヴェイア アルベス,マルコ アウレリオ
(72)【発明者】
【氏名】フォンテス オリヴェイラ,カルロス ペドロ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ヒダルゴ,ダビデ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA93X
4B065BB04
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4B065CA44
4C084AA17
4C084AA18
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZC611
4C084ZC612
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC73
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4C086GA07
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4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZC61
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、哺乳類の精子の受精能獲得プロセス、すなわちこれらの細胞の具体的なプロセスを促進及び/又は向上させるのに使用されるSIRT1活性化剤に関する。本発明はまた、SIRT1活性化剤を含む化合物およびキットに関する。本発明はさらに、精子の受精能獲得プロセスを促進し、哺乳類の受精を促進するため、既存の精子媒体への添加剤として又は新たな成分として、市販のSIRT1活性化剤、すなわちYK-3-237の使用を開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の精子の受精能獲得プロセスを促進及び/又は向上させるのに使用されるSIRT1活性化剤。
【請求項2】
SIRT1の濃度が5~30μMである請求項1に記載されたSIRT1活性化剤。
【請求項3】
前記SIRT1活性化剤の濃度が10μMである請求項1又は2に記載されたSIRT1活性化剤。
【請求項4】
前記SIRT1活性化剤が、B-[2-メトキシ-5-[(1E)-3-オクソ-3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-1-プロペン-1-イル]フェニル]ボロン酸、又は YK-3-237である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載されたSIRT1活性化剤。
【請求項5】
生殖補助技術に使用される請求項1から請求項4のいずれか一項に記載されたSIRT1活性化剤。
【請求項6】
前記生殖補助技術が、低品質卵母細胞で実施される請求項5に記載されたSIRT1活性化剤。
【請求項7】
生殖補助技術が、子宮腔内精子注入法、体外受精又は細胞質内精子注入法である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載されたSIRT1活性化剤。
【請求項8】
精子の勾配選択に使用される請求項1から請求項7のいずれか一項に記載されたSIRT1活性化剤。
【請求項9】
特発性不妊症又は精子の受精能獲得の障害に関連した男性不妊症に使用される請求項1から請求項8のいずれか一項に記載されたSIRT1活性化剤。
【請求項10】
さらなる精子プロモータ及び/又はエンハンサーと組み合わせられる請求項1から請求項9のいずれか一項に記載されたSIRT1活性化剤。
【請求項11】
市販の精子媒体、好ましくは精子洗浄媒体、冷凍保存媒体、解凍媒体又はこれらの組み合わせと組み合わせられる請求項1から請求項10のいずれか一項に記載されたSIRT1活性化剤。
【請求項12】
前記媒体が、予め洗浄され希釈された精子を含む請求項11に記載されたSIRT1活性化剤。
【請求項13】
HCO
3およびステロール除去成分、特にウシ血清アルブミンを含有した受精能獲得媒体において培養した後、ヒトの精子について最大チロシンリン酸化レベルを誘発する請求項1から請求項12のいずれか一項に記載されたSIRT1活性化剤。
【請求項14】
ヒトに使用される請求項1から請求項13のいずれか一項に記載されたSIRT1活性化剤。
【請求項15】
ヒト以外の哺乳類、具体的にはウマ科の動物、より具体的にはウマに使用される請求項1から請求項14のいずれか一項に記載されたSIRT1活性化剤。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載されたSIRT1活性化剤を含む医薬品化合物。
【請求項17】
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載されたSIRT1活性化剤を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学の分野、特に、生殖補助医療(ART)すなわち体外受精および人工授精において使用される化合物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの不妊症は、世界保健機関(WHO)によって、世界中に広がる健康上の問題として認識されてきた。その結果、生殖補助クリニックにおける生殖に関するカウンセリングが、活発になっている。実際、不妊は、子供を求める6組のカップルのうち1組が不妊症に悩まされており(シャーリップ (Sharlip) 他, 2002)、不妊のケースにおいて、男性側の原因は50%にまで及んでいる(アガーワル (Agarwal)他, 2015)。射精後、精子には受胎能力がない。卵母細胞の受精を可能にするためには、精子に「受精能獲得」と称する処理を行う必要がある。歴史的に見ると、タンパク質チロシンリン酸化が、精子の受精能獲得の状況の「特徴」として使用されてきた(ヴィスコンティ (Visconti)他, 1995a)。
【0003】
精子の受精能獲得の態様について、男性ごとに特別なケースが表れる。たとえば、平均的な母集団と比較して受精能獲得が非常に早い男性もいるし遅い男性もいる(オスターマイアー (Ostermeier)他, 2018)。受精能獲得プロセスに至る男性の能力に時間的な差はあるが(ホシ (Hoshi)他, 1990)、その時間的な差(受精能獲得が早い、平均的、又は遅い)は、個人の中で一貫している(オスターマイアー (Ostermeier), 2018)。
【0004】
ヒトの不妊症は、世界中に広がる健康上の問題であり、子供を求める6組のカップルのうち1組が妊娠に至る問題に直面している。それ故、生殖補助医療(ART)への関心が近年飛躍的に増大しており、今後も増加し続けることが予想される。さらに、精子パラメータが通常の射精で低受精率になることがあるので、射精の受胎能力を判別する現在の手順は、精子の受精能獲得を階層化するには十分でない。受胎能力を得るためには、精子の受精能獲得が前提条件である。受精能獲得がなければ、受精は行われない。興味深いことに、受精能獲得の状況を得るため、種々の男性の射精には変動があるが、個人の中では一貫している。
【0005】
生殖に関するカウンセリングを求めるカップルが絶え間なく増え、不妊の事例のうち50%が男性側の原因と関連している国際的な背景においては、生殖補助医療(ART)の成果を向上させるため、精子の機能を増大させる新しい媒体および方法を開発する必要性がある。ARTは基本的に、生殖の成果を増加させる目的で設計された試験管内で卵母細胞、精子および胚を収集し、取り扱うことからなる。最も用いられているARTの手法には、i)受精の機会を増加させるため、ディッシュ(試験管内)で精子と卵母細胞を共培養する体外受精(IVF)、ii)個人の精子細胞を卵母細胞に導入する体外受精の技術である細胞質内精子注入法(ICSI)、iii)妊娠の機会を増加させるため、女性の子宮内に卵管に近接して精子を置く最も簡単なARTの手法である子宮腔内精子注入法(IUI)、iiii)配偶子と胚を無期限の間-180℃で保存する技術である冷凍保存、がある。
実際には、現在のARTのプロトコルは、2人の研究者によって1951年に提案された研究から発展している。これら2人の研究者は、体外受精(IVF)の発展の基礎を別々に解決した(オースティン (Austin), 1951;チャン (Chang), 1951)。興味深いことに、これら2人の研究者は、卵管内に置かれた精子が卵母細胞を受精させることができなかったことに気づいた。受胎能力を獲得するためには、精子は、女性生殖管内に一定期間、滞留しなければならない。後に、精子が女性生殖管に沿って通過する際の生理学的な変化は、精子の受精能獲得と名付けられた(オースティン (Austin), 1952)。
【0006】
試験管内の条件で精子の受精能獲得を誘発するには、カルシウム、重炭酸塩およびコレステロール受容体を必要とすることが科学界によって示された。他の種類の細胞のような精子は、異なる細胞内経路によって、その機能を調節する。それ故、精子細胞膜の流動性を増大させるには、精子媒体のコレステロール受容体を必要とすることが分かってきた。他方、可溶性アデニリルシクラーゼ(Adyc10)の活性化によって細胞内cAMPを増大させるには、カルシウム(Ca2+)および重炭酸塩(HCO3
-)を必要とする。その後、高レベルのcAMPはPKAタンパク質を活性化させ、これにより、精子の受精能獲得の状況の「特徴」として歴史的に使用されてきたチロシン残基のリン酸化反応で終了する下流の事象のカスケード反応を引き起こす(ヴィスコンティ(Visconti)他, 1995a;ヴィスコンティ(Visconti)他, 1995b;メイホニー (Mahony)およびグワスメイ(Gwathmey), 1999;ターディフ (Tardif)他, 2001;ブラヴォ (Bravo)他,2005)。
【0007】
異なる種は、受精能獲得事象を活性化させ又は持続させるのに、異なる基質を必要とする。たとえば、マウスとヒトの精子の受精能獲得媒体には、グルコースが含まれているが、このエネルギー基質は、ウシの受精能獲得媒体では、精子の受精能獲得が阻止されるので、避けられる(パリッシュ (Parrish)他, 1989;ウィリアムス (Williams)およびフォード (Ford), 2001;トラヴィス(Travis)他, 2004)。チロシン残基の最大レベルのリン酸化反応を得るのに要する運動量が、種の間で相違することも分かっている(マウスが1時間、ヒトが6~18時間、イノシシが4時間)。
【0008】
一度の射精には、異なる時点で受精能獲得を達成する異なる部分母集団の精子が含まれる。この革新的な方法により、精子は、異なる受精部位での受精のタイミング能力を最大化することができる(フレイザー(Frazer), 1999)。それにもかかわらず、男性には、精子の受精能獲得の特別なケースがある。射精された精子には極めて早く受精能を獲得するものもあり、平均よりも遅く受精能を獲得するものもある(オスターマイアー(Ostermeier)他, 2018)。受精能獲得プロセスに至る男性能力に時間的な差がある(ホシ他, 1990)が、その時間(受精能獲得が早い、平均的、又は遅い)は、個人の中で一貫している(オスターマイアー(Ostermeier), 2018)。この最後の研究により、早いグループ又は遅いグループのいずれにおいても男性の精子の受精能獲得プロセスの調節不全に関連した問題が明らかになった(オスターマイアー(Ostermeier)他, 2018)。種々のARTの手法が標準化され固定化されているので、特に受胎能力の問題を解決するためARTを実施するときに、両方のグループには欠点が現れる(オスターマイアー(Ostermeier)他, 2018)。標準化されたタイミングのプロトコルでは、受精能獲得の同期事象に関連した男性の射精の多様性が十分には考慮されていない。プロトコルの標準化は、生殖の問題を回避するためARTを求める受胎能力の不調を抱える患者にとって、細部にわたって満足すべき結果が得られるものではない。
【0009】
さらに、精子パラメータが通常の男性でも低受精率であったり不妊であったりすることさえあるので、現在の古典的な精子分析プロトコルでは、射精の受精能を予測することができないという事実がある。したがって、受精の成功を予測するため、射精分析についての新しい標準化プロトコルを確立しなければならない(ワン(Wang)およびスウェルドフ(Swerdloff), 2014)。主要な問題として提案されてきたのは、古典的な精液検査によって決定される精子の質と関連しておらず、男性の不妊が、受精能獲得プロセスを経る精子の無能力によるものかもしれないということである。このような傾向に沿って、トラヴィス(Travis)の研究室は、ヒトの精子に関するモノシアロテトラヘキソシルガングリオシド(GM1)の局在パターンによって、受精能を獲得するヒトの射精能力の階層化について研究を行ってきた(カルドナ(Cardona)他, 2017;ムーディ(Moody)他, 2017;オスターマイアー (Ostermeier)他, 2018)。受精能獲得プロセスの際に誘発される原形質膜のステロール除去が、ガングリオシドGM1の濃縮に関連しているとの報告がなされている(コーエン(Cohen)他, 2017)。かくして、射精のGM1パターンによって、妊娠する確率が実証された(シンフェルド(Schinfeld)他, 2017)。
【0010】
要約すると、精子が適当なタイミングで卵母細胞を受精させる機会を増大させるため、異なる刺激およびシグナル伝達経路が、高度に統合されている。精子が受精を可能にする一連のステップのタイミングが損なわれると、受胎能力の問題が発生する。幸いなことに、ここ数年は、ARTの有効性が向上しており、臨床医は、ARTサイクルによって移送された胚の数を減らして、多胎妊娠による悪影響を回避している。成果が増大しているが、依然として多くの改良の余地がある。たとえば、ヨーロッパでは、体外受精(IVF)の平均的な成功率は28.5%であり、細胞質内精子注入法(ICSI)が26.2%、子宮腔内精子注入法(IUI)が7.8%である(デゲイター (DeGeyter)他, 2020)。
【0011】
したがって、本発明の場合のように、受精すなわち受胎能力の重要なプロセスの制御を可能にする進展に対する必要性がある。
【0012】
それでも、不妊の問題に対処するため、臨床医が最も用いる方法には、冷凍保存、IVF、ICSIおよびIUIがある。したがって、IVFおよびIUIに弊害があるので、現在の趨勢では、臨床医が選択するARTの中でICSIが卓越している(デゲイター (DeGeyter)他, 2020)。それでも、IUIは、遥かに簡易的であり、より経済的であり、女性への負担が少ない方法である。射精後、何十億もの精子が女性生殖管に入り、峡部では1,000~10,000もの精子が存在し、4時間~12時間後、10~100の精子のみが(受精が行われる)膨大部に到達する。しかしながら、受胎能力の治療を受けている人のように、生殖能力が低下し又は不妊症である男性では、これらの数は減少しているかもしれない。かくして、ARTの最も簡略化されたプロトコルの1つは、子宮内に入る精子の数を増加させて卵母細胞に遭遇する機会を高めるIUIである。ART関連のコストにかかわらず、IUIは、IVFやICSIよりも3倍~6倍安価であると予測される(ベイビグミラ (Babigumira)他, 2018)。しかし、IUIには、経済面での利点以上に、特に男性の相手のパートナーに対する利点がある。かくして、IVFやICSIサイクルを受ける女性は、過酷なホルモン療法、そして卵母細胞を取り出し、取り出した卵母細胞を使用して試験管内で胚を作り出す侵襲的で外科的な療法を受けることになる。最終的には、あらゆる苦痛およびプロセス全体に関連した感情的なコストとともに、胚が女性に戻される。
【0013】
上述のように、今日の不妊治療の最良のものは、IVFおよびICSI手法である。それにもかかわらず、最も経済的で簡単で女性への負担が少ないIUIのようなプロトコルと比較すると、IVFおよびICSIの普及は、正当なものであるとはとても言えない(ホンブルグ (Homburg)他, 2003)。不妊治療に使用される主要な技術としてIVFおよびICSIが選択されるのは、議論の余地がある高い成功率によるものであると推測される。手法の有効性に対する改良が軽微である(卵母細胞を受精させるのに必要とされる試みがあまりなされていない)という理由のためで、たとえばIUIのような、より簡単で安価な他のプロトコルを犠牲にして、ICSIの非見識な使用が結局のところ続いている。
【0014】
生殖に関するカウンセリングを受けているカップルが異種受精(女性のパートナーではないドナーの精子を用いて行う人工授精を意味する)を行うことを決断すると、受胎能力の53%の改善の報告がなされたことが知られてきた。これは、不妊を克服するためARTのうちIUIを選択して使用するとき、精子の質が改善されると、受胎の機会が増大することを強調している。ARTに関連した成果が改善されると、ARTを求めているカップルには非常に役立つけれども、自身の遺伝物質が使用されるというメリットのため、精子のドナーの使用を控えるであろう。換言すると、健康なドナーから(主に精子バンクから)精子を得られるという確立したシステムがあるが、ART治療を受けているカップルが、自身の遺伝物質を使用する他の機会がないときにのみ、そのシステムを使用することは周知である。それ故、自身の遺伝物質を使用して妊娠する機会を増やすのは、非常に歓迎すべきことである。
【0015】
世界的な生殖に関する健康問題により、不妊を克服する異なる手法が発展してきた。ヒトの最初の人工授精(IUI)に言及すると、新時代の生殖補助医療は、1940年代にスタートした。30年後、最初の体外受精(IVF)の新生児が1978年に誕生した。その後、細胞質内精子注入法(ICSI)と名付けられた手法が開発された。精子の運動性又は精子の受精能獲得がないときでさえ、精子が卵母細胞に導入されるICSIによって克服することができる。最初のICSIの新生児は、1992年に誕生した。これらの3つの手法は、生殖補助クリニックにおいて今日最も使用されており、簡単なものからより複雑なものへ、1-IUI、2-IVF、3-ICSIと分類することができる。いずれの手法を選択するかは、生殖カウンセリングを受けるカップルの特性に基づく。それにもかかわらず、現在、臨床医は、少ない試みで期待した結果を得ることができるので、男性の不妊を取り扱う最初のツールとして、ISCIを選択する。しかしながら、ICSIは、非常に高価であり(IUIと比べて6倍になることがある)、過酷なホルモン療法およびそれに関連した医療介入のため、女性にとって負担が少なくない。
【0016】
サーチュイン(SIRT1-7)は、タンパク質の翻訳後修飾を引き起こすNAD+依存性の脱アセチル化酵素のファミリーである。YK-3-237は、活性化剤又はサーチュイン‐1として市販されている(トクリス(Tocris)社およびケイマン・ケミカル(Cayman)社)。サーチュインは、進化的に保存され、7つの部分を含むクラスIIIのヒストン脱アセチル化酵素(HDACs)に属する。サーチュイン媒介脱アセチル化反応は、リシンの脱アセチル化を、NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)加水分解放出NAM(ニコチンアミド)、アセチル‐ADP(アデノシン二リン酸)リボースと共役させ、標的タンパク質の脱アセチル化をもたらす(レイト(Rato)他, 2016)。
【0017】
サーチュインは、エイジングおよび長寿と関連づけられ(ヴァッハハラジャニ (Vachharajani)他, 2016)、同種のアポトーシスおよび細胞の生存を処理し(アルセンダー (Alcendor)他, 2004)、脂肪酸の酸化を処理し(プルッショサム (Purushotham)他, 2009)、DNAの修復、転写、および神経保護を処理し(ドンメツ (Donmez)およびウテイロ (Outeiro), 2013)、ミトコンドリア生合成を処理する(ブレンメール(Brenmoehl)およびヒューリッヒ(Hoeflich), 2013)ことに結び付けられてきた。
【0018】
サーチュインは、配偶子および胚の役割と機能を果たす(レイト (Rato)他, 2016;テイトン (Tatone)他, 2018;メローニ (Meroni)他, 2019)。
【0019】
活性化剤YK-3-237は、SIRT1用の特別な活性化剤である。活性化剤は、腎臓の線維芽細胞を助長し、腎臓の線維形成を悪化させる(ポニュセイミー (Ponnusamy)他, 2015)けれども、このところ、乳がん細胞の増殖を抑えるのに使用されてきた(イ (Yi)他, 2013)。
【0020】
YK-3-237を用いて受精能獲得された精子によって生成された胚に関する安全性すなわち催奇形性の影響は、依然として無視されており、予測することができない。
【0021】
他の種類の細胞においてYK-3-237の使用が記載された文献(イ (Yi)他, 2013);ポニュセイミー (Ponnusamy)他, 2015)があるが、YK-3-237には、乳がん細胞に関して抗増殖性の効果がある。他方、腎臓の線維芽細胞が助長され、腎臓の繊維形成が悪化する(ポニュセイミー (Ponnusamy)他, 2015)ので、YK-3-237には、悪影響が関連づけられてきた。
【0022】
最近の文献(パトリシア・ブラガ (Patricia Braga), 2019)によると、セルトリ細胞における活性化剤YK-3-237に関する研究が開示されており、マウスの精子における活性化剤YK-3-237の役割が開示されている。意外にも、本発明は、精子の特別なプロセスである哺乳類の受精能獲得におけるSIRT1活性化剤の役割を初めて開示する。
【0023】
Sirt-1の活性化の影響は、検討中のプロセスにとって特別である。たとえば、レスベラトロールによるSirt-1の活性化は、卵巣における酸化ストレスに抗する保護と関連しており(オチアイ (Ochiai)およびクロダ (Kuroda), 2020)、試験管内での胚の生成にとって有益であると示唆されている(アダムコヴァ (Adamkova)他, 2017)。
【0024】
男性の配偶子の取り扱いを伴うARTの手法は、受精能獲得状態、すなわちこれらの細胞にとって受精に必要である特別なプロセスを達成する精子の割合を増加させるので、この活性化剤の使用が期待されている。
【0025】
獣医用の用途に関して、十年にも及ぶ熱心な研究にもかかわらず、たとえば、ウマでは体外受精(IVF)が不首尾となる用途がある(ヒンリッヒ (Hinrich), 2013)。種牡馬の精子が試験管内の媒体では適切に受精能獲得をしないので、ウマ科のIVFは失敗している。
【0026】
精子の受胎能力を改善しようとする技術の大半は、精子の運動性及び/又は運動亢進性の改善に焦点を当ててきた。たとえば、運動亢進性の増加を受精率の改善に関連づけた方法(国際公開第2017/173391A1号(WO2017/173391 A1)、 米国特許出願第10,470,798B1号(US 10,470,798B1))又は代謝エンハンサー(mTOR活性化剤)を用いて精子速度を改善する方法(国際公開第2019/025961号(WO2019025961))の他、幾つかの方法が特許化されている。
【0027】
男性の射精が受精能獲得状態および受胎能力に至る関連する時間率を取得するのに要する時間を評価するため、受胎過程における受精能獲得プロセスの重要性がトラヴィス(Travis)の研究室によって強調されてきた(米国特許第7160676号(Patent n: US 7160676))が、精子の受精能獲得状態に関して、ほとんど研究がなされてこなかった。さらに、ブロンソン (Bronson)およびハンティントン (Huntington)は、フィブロネクチン抗体の結合レベルに基づき精子の不妊をスクリーニングする方法を開示した(米国特許第5256539号)。それにもかかわらず、他の開示(PCT第US03/16669号(PCT/US03/16669))では、精子の受精能獲得を妨げるCRISPポリペプチド、チロシンリン酸化反応、先体反応および受精プロセスを使用した。同じ方向性では、(PCT第BF20004/004912号(PCT/BF20004/004912))において、精子を非受精能獲得状態又は非活性化状態でそれぞれ保存するため、(フィブロネクチンおよびアンジオテンシンIIのような)特別なタンパク質の使用が提案された。
【0028】
米国特許第5834225号(Patent application no.US5834225)には、過酸化水素又は他の活性酸素源を用いて(クロルテトラサイクリン蛍光試験で観察して)精子の受精能獲得を増大させる方法が開示されている。
【0029】
これらの事実は、本発明によって解決される課題を改善することを概説している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明は、精子の受精能獲得、すなわち女性生殖管を通って生体内で卵母細胞を探し求める細胞特異的プロセスを向上させるため、精子にYK-3-237を使用することを開示する。ヒトの精子媒体に添加剤としてYK-3-237を使用すると、精子の受精能獲得プロセスの特徴として歴史的に使用され、受精に至る機会をより高めるかもしれないチロシンリン酸化のレベルが増大する。
【0031】
本発明は、高レベルのチロシン残基のリン酸化反応を表示するものとして定められる精子の受精能獲得状態を誘発し同期させるため、市販されているYK-3-237を使用することを開示する。
【0032】
本発明は、受精能獲得が達成できないこと並びに受精能獲得状態が遅れることの解決を意図している。
【0033】
ある実施形態では、精子の受精能獲得状態を得ることができないという課題を抱えた低受精率の男性に、正規のARTによって受胎能力を得る第2の機会が与えられるが、特別なステップ(たとえば、IUIが行われる前に又はIVF手法に先立つ受精能獲得期間における培養期間とともに、ここで開示された薬剤による精子の共培養)が追加される。
【0034】
別の実施形態では、受精能獲得が遅れた精子は、準最適状態(老化した卵母細胞)において、より少ない機会で卵母細胞に遭遇し、受精および発生プロセスに進む。かくして、YK-3-237 すなわちB-[2-メトキシ-5-[(1E)-3-オクソ-3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-1-プロペン-1-イル]フェニル]ボロン酸を用いて受精を可能にし、卵母細胞の待機時間を軽減して最良の時間条件で両方の配偶子の相互作用を増大させるために、精子が必要とする細胞内シグナル伝達を促進させる精子の共培養が行われる。
【0035】
簡単に言うと、受精能獲得状態を達成する精子の能力(早い、平均的又は遅い)に関わりなく、卵母細胞を受精させる精子の能力を同期させ向上させ、世界中の不妊治療クリニックで現在使用されている広範な生殖補助治療に適用される活性化剤が提供される。
【0036】
特定の実施形態では、この解決策は、受精能力のある男性が精子提供者となるときに適用される。たとえば、受精の時間枠が少ない場合に低質の卵母細胞を使用するARTサイクルについて適用される。
【0037】
ある実施形態では、本発明は、精子の受精能獲得プロセスを向上させる製品を開示する。これは、男性側の原因で子供の妊娠に問題を抱えているカップル、具体的には男性が突発性不妊であるカップルのケース、より具体的には精子の受精能獲得障害に関連した男性が不妊であるカップルのケースに提示される。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、受精能獲得事象をより早期に同期させ、チロシンリン酸化レベルを3倍までに増大させるため、YK-3-237の使用を開示する(
図1(a)、
図2(a)および
図3(a)参照)。
【0039】
別の実施形態では、本発明は、添加剤として、又は受精に至る機会を増大させる精子の受精能獲得プロセスを促進させる既存の精子媒体への新たな成分として、市販の活性化剤YK-3-237の使用を開示する。
【0040】
ある実施形態では、本発明は、哺乳類に向けられている。ここで提供される結果には、経済的な利益のある種および絶滅寸前の動物やエキゾチックな動物を含む、精子の受精能獲得状態を示すことができないことに関連した受胎能力の問題を提示する広範な種が含まれる。かくして、たとえば動物の育種の選択は、所望の表現型をもつ子孫を作り出すことに焦点が合わせられている。しかしながら、この選択の圧力は、手法に関連したコストの増加とともに、受胎能力を得るために人工授精のような幾つかのARTの試みを実行せざるを得ないという影響を受けることを意味する生殖パラメータに焦点が合わせられていない。たとえば、畜産業は、精子の受精能獲得プロセスの向上による有益な効果を活用するのに適している。ウマ科のIVFは、主として不完全な受精能獲得媒体により精子の活性化が不完全であるため、失敗している (リーマン (Leemans)他, 2016)。
【0041】
ある実施形態では、本発明は、子宮腔内精子注入法、IVF等の実行された人工受精に使用された広範な精子媒体に対して、要約すると任意の種における精子の収集、保存および/又は処理を含むARTプロトコルに対して、市販のYK-3-237の使用を開示する。
【0042】
本発明は、i)男性側が精子の受精能獲得プロセスと関連した問題を抱えたカップルに子供を妊娠する機会を増大させ、ii)他の手法よりも安価でユーザへの負担が少ない(加えて、経済的に最も低迷した社会階層に対してARTカウンセリングの値ごろ感を増大させる)ARTの手法であるIUI手法の使用をYK-3-237と組み合わせて促進させることによって、社会福祉の発展に貢献する。
【0043】
本発明は、現行の製品とは異なる。何故ならば、現行の製品が、受精プロセスにおける精子の受精能獲得の極めて重要な役割を考慮せずに、精子の運動性の改善に主に焦点を当てているからである。受精能獲得が達成されなければ、最良の運動パラメータを示す精子は、卵母細胞を受精させることができないことに言及しなければならない。それ故、活性化剤 YK-3-237は、精子の受精能獲得の障害に関連した不妊を克服する。したがって、YK-3-237は、精子の受精能獲得に関連した不妊の課題と取り組んでおり、細胞質内精子注入 (ICSI)を検討する前に、より生理学的で安価な方法(IUIおよびIVF)を選択するかもしれないカップルに選択肢を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0044】
第1の実施形態では、本発明は、哺乳類の精子の受精能獲得プロセスを促進及び/又は向上させるのに使用されるSIRT1活性化剤を開示する。
【0045】
第2の実施形態では、SIRT1の濃度は5~30μMである。
【0046】
別の実施形態では、SIRT1活性化剤の濃度は10μMである。
【0047】
別の実施形態では、SIRT1活性化剤は、B-[2-メトキシ-5-[(1E)-3-オクソ-3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-1-プロペン-1-イル]フェニル]ボロン酸、すなわち YK-3-237である。
【0048】
別の実施形態では、SIRT1活性化剤は、生殖補助技術に使用される。
【0049】
別の実施形態では、SIRT1活性化剤は、低品質卵母細胞で実施される生殖補助技術に使用される。
【0050】
別の実施形態では、SIRT1活性化剤は、生殖補助技術、すなわち子宮腔内精子注入法、体外受精又は細胞質内精子注入法に使用される。
【0051】
別の実施形態では、SIRT1活性化剤は、精子の勾配選択に使用される。
【0052】
別の実施形態では、SIRT1活性化剤は、特発性不妊症又は精子の受精能獲得の障害に関連した男性不妊症に使用される。
【0053】
別の実施形態では、SIRT1活性化剤は、さらなる精子プロモータ及び/又はエンハンサーと組み合わせられる。
【0054】
別の実施形態では、SIRT1活性化剤は、市販の精子媒体、好ましくは精子洗浄媒体、冷凍保存媒体、解凍媒体又はこれらの組み合わせと組み合わせられる。
【0055】
別の実施形態では、SIRT1活性化剤は、予め洗浄され希釈された精子を含む媒体と結合される。
【0056】
別の実施形態では、SIRT1活性化剤は、HCO3およびステロール除去成分、特にウシ血清アルブミンを含有した受精能獲得媒体において培養した後、ヒトの精子について最大チロシンリン酸化レベルを誘発する。
【0057】
別の実施形態では、SIRT1活性化剤は、ヒトに使用される。
【0058】
別の実施形態では、SIRT1活性化剤は、ヒト以外の哺乳類、具体的にはウマ科の動物、より具体的にはウマに使用される。
【0059】
別の実施形態では、本発明は、SIRT1活性化剤、特にYK-3-237活性化剤を含む医薬品化合物を包含する。
【0060】
最後の実施形態では、SIRT1活性化剤は、SIRT1活性化剤、特にYK-3-237活性化剤を含むキットを備える。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】
図1は、ヒトの精子におけるタンパク質ホスホチロシンのレベルに関するYK-3-237の影響を示している。異なる濃度のYK-3-237の存在下又は不存在下において、6時間、37℃の(25mMのHCO
3
-および26mg/mLのBSAを補充した)受精能獲得条件でヒトの精子を培養した。
図1(a)の左図は、受精能獲得条件において異なる濃度のYK-3-237で培養されたヒトの精子の抗ホスホチロシン基質を使用した典型的なウエスタンブロットである。
図1(a)の右図では、イメージJを使用してウエスタンブロットを分析した(n=7)。ブロット間の比較のため、参考としてCAP(0μM)レーン(100%)を使用して、各レーンのピクセルを修正し標準化した。
図1(b)は、異なる濃度のYK-3-237で培養され、エオシンニグロス染色によって測定されたヒトの精子の生存可能性である(n=4)。
図1(c)は、エオシンニグロス染色で染色されたヒトの精子の例である。白色は生きている精子の例であり、ピンクは死んだ精子を示している。バーは、平均±SEMを表している。一元配置分散分析(ANOVA)によってデータを統計的に分析した。テューキー事後検定(*p<0.05および***p<0.0005は、相違対受精能獲得条件(0μM)を表す)によって濃度間の相違を分析した。
【
図2】
図2は、ヒトの精子におけるHCO
3
-およびBSAの役割を示している。ヒトの精子の受精能獲得をサポートし又はサポートしない異なる条件で6時間、37℃でヒトの精子を培養した。
図2(a)は、YK-3-237を用いて又は用いずに6時間、37℃の間、異なる条件で(25 mMのHCO
3
-および26mg/mLのBSAの存在下又は不存在下で)培養したヒトの精子の抗ホスホチロシン基質を使用したウエスタンブロットである(n=3)。
図2(b) では、イメージJを使用してウエスタンブロットを分析した(n=3)。ブロット間の比較のため、参考としてCAP(YK-3-237,0μM)レーン(100%)を使用して、各レーンのピクセルを修正し標準化した。バーは、平均±SEMを表している。一元配置分散分析(ANOVA)によってデータを統計的に分析した。テューキー事後検定を使用して、YK-3-237(10μM)がある場合とない場合との相違を分析した(**p <0.005および****p <0.0001は、相違対YK-3-237(10μM)の条件を表す)。異なる上付き文字a、bは、処理p <0.05間の相違を示したものである。
【
図3】
図3は、YK-3-237(10μM)の存在下又は不存在下で培養されたヒトの精子のチロシンリン酸化レベルの時間曲線である。
図3(a)は、YK-3-237(10μM)の存在下又は不存在下で、(25mMのHCO
3
-および26mg/mLのBSAを補充した)受精能獲得条件で異なる時点において培養されたヒトの精子の抗ホスホチロシン基質を使用した典型的なウエスタンブロットである(n=3)。ブロット間の比較のため、参考としてCAP(YK-3-237,0μM)レーン(100%)を使用して、各レーンのピクセルを修正し標準化した。バーは、平均±SEMを表している。一元配置分散分析(ANOVA)によってデータを統計的に分析した。テューキー事後検定(**p <0.005および***p<0.0005は、異なる時点における相違対YK-3-237(10μM)の条件を表す)を使用して、YK-3-237(10μM)がある場合とない場合との相違を分析した。異なる上付き文字a、b、cは、YK-3-237(10μM)による処理間の相違を時間に沿って示したものである。異なる上付き文字z、yは、制御条件(0μM)間の相違を時間に沿って示したものである。
【
図4】
図4は、ヒトの精子の生存可能性および脂質過酸化反応のレベル(4-HNE)に関するYK-3-237(10μM)の影響を示している。YK-3-237(10μM)の存在下又は不存在下で、精子の受精能獲得をサポートする条件(25mMのHCO
3
-および26mg/mLのBSA)で6時間、37℃でヒトの精子を培養した。
図4(a)は、YK-3-237(10μM)の存在下又は不存在下で、6時間、37℃で培養された精子のエオシンニグロスによって、精子の生存可能性を測定した結果である(n=11)。
図4(b)では、イメージJを使用してウエスタンブロットを分析した(n=4)。
図4(b)の左図は、脂質過酸化反応のレベルの測定に用いられた抗4ヒドロキシノネナール(4-HNE)抗体を使用した典型的なウエスタンブロットである(n=4)。イメージJを使用してウエスタンブロットを分析した(n=4)。
図4(b)の右図では、ブロット間の比較のため、参考としてCAP(YK-3-237,0μM)レーンを使用して、各レーンのピクセルを修正し標準化した。バーは、平均±SEMを表している。2つの連なり対になったテューキー事後検定(*p<0.05は、相違対YK-3-237(10μM)を表す)を使用して、条件間の相違を分析した。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明は、代謝活性化剤の使用によって精子の受精能獲得プロセスを向上させる。SIRT1活性化剤には、最初の射精状態とは無関係に、精子の受精能獲得プロセスを同期させる能力がある。
【0063】
さらに、SIRT1活性化剤は、精子の受精能獲得事象(チロシンリン酸化)を促進させる。代謝活性化剤と組み合わせた受精能獲得の6時間後、チロシンリン酸化のレベルは、対照群と比べると、3倍になり、これは、より多くの精子が卵母細胞を受精させる体勢にあることを示している。
【0064】
ある実施形態では、本発明は、生殖補助技術(ART)を一層使用して精子の受精獲得を向上させるため、SIRT1活性化剤を使用する。ARTは、生殖の成果を増大させるように設計された試験管内の条件で卵母細胞、精子および胚を収集し取り扱うことからなる。
【0065】
別の実施形態では、活性化剤は、IVF/ICSIを犠牲にして実行されるIUIの件数を増大させるため、標準化されたIUIプロトコルと組み合わせて使用される。これらの2つの手法は、より高価で複雑であり、女性にとって負担を強いるものである。
【0066】
特定の実施形態では、特別なSIRT1活性化剤、すなわちYK-3-237が、受精能獲得する精子の数を最大にして受精に至る機会を増大させるため、IVFのような他のARTにおいて使用される。
【0067】
本発明は、獣医用の用途にも用いられる。ここで示される結果は、経済的な利益のある種および絶滅寸前の動物や外来種の動物を含む、特別な利益のある種について、精子の受精能獲得状態を示すことができないことに関連した受胎能力の問題をもつ広範な種に適用されることを示す。たとえば、畜産業は、精子の受精能獲得プロセスの向上による有益な効果を活用するのに適している。ウマ科のIVFは、主として不完全な受精能獲得媒体により精子の活性化が不完全であるため、失敗している(リーマン (Leemans)他, 2016)。
【0068】
ある実施形態では、活性化剤は、精子を試験管内の条件で入手および処理を行うARTにおいて使用される。
【0069】
本発明は、精子の受精能獲得プロセスを向上させるため、活性化剤の使用を提供する。活性化剤は、初期の射精状態とは無関係に、精子の受精能獲得プロセスを同期させる。かくして、代謝エンハンサーでもある本発明の活性化剤を用いて、受精能獲得事象を促進させ、卵母細胞を受精させる体勢にある精子の数を増大させることができる。本発明は、精子の受精能獲得事象に関連した問題により妊娠が不可能である男性の精子に適用される。
【0070】
ある実施形態では、活性化剤は、標準化された子宮腔内精子注入法(IUI)プロトコルと組み合わせて使用され、IVFおよびICSIを犠牲にして実行されるIUIの件数を増大させる。IVFおよびICSIの手法は、より高価で複雑であり、女性に負担を強いるものである。
【0071】
本発明は、獣医用にも用いられる。たとえば、畜産業は、精子の受精能獲得プロセスを向上させる有益な効果を活用するのに適している。ウマ科の動物では、不完全な受精能獲得媒体に関連して精子の活性化が不完全であるため、体外受精のプロトコルを首尾よく利用できない。したがって、本発明で開示された活性化剤の使用は、特定の業種に有益な効果を提供する。
【0072】
HCO
3
- およびステロール除去を含有する画定された受精能獲得媒体において6時間の共培養の後、ヒトの精子を最大チロシンリン酸化に誘発するため、代謝エンハンサーの補充に基づいた発明が提供される。両方の成分は、現在利用可能な全ての市販の体外受精媒体の間で普遍的なものである。かくして、受精能獲得条件(重炭酸塩およびBSA)における6時間の培養の後、チロシンリン酸化レベルを向上させたYK-3-237の最良の濃度は、10μMであった(
図1(a))。さらに、試験した濃度のいずれも、精子の生存可能性に有害な影響を及ぼすものではなかった(
図1(b))。その後、本発明者は、YK-3-237の存在下でチロシンリン酸化の増加が重要であることを測定するため、受精能獲得媒体の成分(重炭酸塩又はBSA)の一方について試験することを決断した(
図2)。重炭酸塩の存在下でのYK-3-237の共培養ではチロシンリン酸化レベルが増加したが、重炭酸塩およびBSAを含む完全な受精能獲媒体においてYK-3-237の共培養が行われたときにのみ、この増加は一層改善される(
図2)。興味深いことに、受精能獲得条件においてYK-3-237による精子の共培養のちょうど1時間後に、6時間後の対照群と同じチロシンリン酸化レベルが得られた(
図3)。これは、受精能獲得状態を誘発するのに、より早い方法が発見されたことを示している。さらに、6時間の培養後YK-3-237を用いると、より多くの精子が受精体勢にあることを示す6時間の対照群と比較して、チロシンリン酸化レベルが3倍になった(
図3)。これは、本発明により多くの精子がより早く受精体勢に置かれることが確認されたことを意味する。本発明者は、10μMのYK-3-237の最良/選択濃度における精子の生存可能性を確かめ、6時間後でさえ、精子の生存可能性に悪影響を及ぼさず、酸化ストレス(脂質過酸化反応(4-HNE))に関連したマーカーに対して変化を誘発させないことを発見した(
図4)。
【0073】
YK-3-237は、受精能獲得のシグナル伝達経路を促進させ、タンパク質チロシンリン酸化レベルを増大させるものと考えられる。現在、精子の受精能獲得状態すなわち受精能獲得プロセスを経る能力を評価する重要な技術は、ウエスタンブロッティングによるタンパク質チロシンリン酸化レベルの測定である。ウエスタンブロッティングが分子生物学において使用される標準的な手法であるが、不妊治療クリニックで行われる日常的な検査ではない。さらに、非常に早く(平均3日)結果が得られることによって特徴づけられるものではなく、少なくとも6時間までの受精能獲得条件での培養、タンパク質の抽出および濃度の測定に加えて、ウエスタンブロッティング手法に含まれるタイミングが必要とされる。活性化剤YK-3-237を使用すると、受精能獲得させる射精能力を評価する必要性がない。
【0074】
それ故、本発明は、この待機時間を促進させ、この発見により、不妊治療クリニックへの第2の精子提供および転院という不快な展開を回避することができることが分かる。
【0075】
特定の実施形態では、本発明は、タンパク質チロシンリン酸化レベルの増加のみならず、この事象の促進も開示する。1時間内の共培養で、制御した受精能獲得状態において6時間の培養の後に到達したのと同じレベルが得られた。さらに、YK-3-237による6時間の精子の共培養の後、チロシンのレベルは、対照群と比較して3倍となる。その結果、本発明は、受精を達成する最適状態において精子の数を増大させ、卵母細胞を受精させる機会を増大させた。たとえばmTOR 活性化剤 (MHY-1485)を使用する方法のような、精子の運動性を改善する他の手法と組み合わせた(関連した受精能獲得事象を向上させる)YK-3-237の使用を無視することはできない。
【0076】
ある実施形態では、子宮腔内精子注入法が実行される前に精子を洗浄し希釈した媒体に、YK-3-237が添加される。
【0077】
別の実施形態では、卵母細胞との共培養の前に、精子の受精能獲得媒体にYK-3-237が添加される。たいていは精子バンクから健康なドナーの精子が提供されるシステムが確立しているが、ART治療を受けているカップルが、自身の遺伝物質を使用する他の機会がないときにのみ、そのシステムを使用することは周知である。それ故、自身の遺伝物質を使用して妊娠する機会を増やすのは、本発明者が開示するように、非常に歓迎すべきことである。
【0078】
別の実施形態では、YK-3-237は、単独で又は他の精子エンハンサーと組み合わせて使用される。たとえば、YK-3-237は、精子の運動性を改善し、卵母細胞を受精させる精子の能力をさらに増大させる他の方法と組み合わせて使用される。
【0079】
精子の培養については、ビッガース (Biggers JD, 1971)によって言及されたビッガース・ホイッテン・ホイッティンガム (Biggers-Whitten-Whittingham (BWW))媒体を若干修正したものを使用した。BBW洗浄(BWW-W)は、94.5 mMのNaCl、4.8 mMのKCl、1.7 mMのCaCl2 x2H2O、1.17 mMのKH2PO4、1.22 mMのMgSO4x7H2O、 20 mMのHEPESで行った。非受精能獲得媒体 (NC)には、BBW洗浄の全成分、5.56 mMのグルコースおよび10 mg/mLのゲンタマイシンが含まれる。受精能獲得媒体 (CAP)には、NCの全成分、25mMのHCO3
-および26 mgのウシ血清アルブミン (BSA) が含まれる。全ての媒体の最終的なPHは、7.2~7.4であった。
【0080】
精子の準備のため、2~4日の性的禁欲の後にマスターベーションによって精液サンプルをステリカップに収集した。サンプルを37℃で最大2時間液化したままにし、後述する処理の前に液化を完全なものにした。精液のパラメータ(全液量、精子の濃度、運動性および形態)がWHOによって確立された正常な基準(2010)に合致する精子のみを処理した。精液を300g、室温で20分、不連続勾配遠心分離(精子洗浄勾配設定(45%および90%))に送った。低勾配層(運動性の良好な精子の精製集団)を再生し、エネルギー基質を含まない修正BWW-W媒体によって洗浄した(500g、室温で5分)。次いで、1mLの非受精能獲得媒体(NC)でペレットを再懸濁し、光学顕微鏡(倍率100倍)によってノイバウアー血球計算盤を使用して精子の濃度を測定した。各射精で得られた精子の数が少ないので、異なる評価を行うため異なる射精をプールした。最後に、実験計画に応じて、1mLの受精能獲得媒体(26 mg/mLのBSAおよび25 mMの重炭酸塩を含有するCAP媒体)又は非受精能獲得媒体で、活性化剤の存在下又は活性化剤の不存在下において37℃で6時間、最終濃度20×106/mLに精子を希釈した。YK-3-237を培養時間0において参照濃度で添加し、精子の培養時間に沿って維持した。
【0081】
精子の生存可能性の測定については、WHOの指針(2010)に従った。エオシンニグロス染色技術によって、精子の生存可能性を評価した。簡単に言うと、一定分量の精液を等量のエオシンニグロス懸濁液と混合した。この懸濁液を使用して、スライドガラス上に標本を作った。明視野顕微鏡によってランダム場において計200個の精子を数えた。膜の完全性の喪失により細胞がエロシンを摂取するので、死んだ精子はピンクに染色され、生きている細胞は白色に見える。細胞の視覚化を良好にするため、ニグロスは、背景を暗紫色に染色する。
【0082】
ウエスタンブロット分析のため、遠心分離によって5000gのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて室温で3分間、精子を2度洗浄した。ペレットを2倍濃度のレムリ(Laemmli)サンプルバッファーで再懸濁し、4℃で一晩中培養した。次いで、サンプルを再び遠心分離し(10000g、15分、4℃)、バイオ・ラッドDCタンパク質測定器を使用して、タンパク質の濃度を測定した。2‐メルカプトエタノール(2.5%)の存在下でサンプルを95℃で沸騰させ、PVDF膜に転写される前に、25μgの各サンプルを定電圧(100V)で10%の硫酸ドデシル‐ポリアクリルアミドゲル電気泳動に曝した(バイオ・ラッド・セミドライシステム、8分のプロトコルミックス)。抗ホスホチロシンモノクローナル抗体による4℃での一晩中の培養(3%のミルクを含有するトリス‐緩衝生理食塩水‐トゥイーン20溶液(TBST)において、モノクローナル抗体;クローン4G10,ミリポア; 希釈1: 3000, v/v)によって、精子のタンパク質のリン酸化反応の状態を分析した。抗4-ヒドロキシノネナール(4HNE)抗体による4℃での一晩中の培養(3%のBSAを含有するトリス‐緩衝生理食塩水‐トゥイーン20溶液(TBST)において、ポリクローナル抗体; ミリポア; 希釈1: 3000, v/v )によって、精子の脂質過酸化反応のレベルを評価した。抗ホスホチロシンで培養された膜を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)‐標識二次抗マウス抗体(3%のミルクを含有するTBSTにおいて、希釈1:5000, v/v) によって、室温で60分培養した。抗4HNE抗体で培養した膜を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)‐標識二次抗ヤギ抗体(3%のBSAを含有するTBSTにおいて、希釈1:5000, v/v) によって、室温で60分培養した。最後に、膜をTBSTにおいて5分間、3回洗浄し、クラリティ(ClarityTM)のウエスタンECL基板によって5分間培養した。バイオ・ラッドFX-Pro-plus(バイオ・ラッド, ヘメル・ヘムステッド,英国)によって膜の蛍光を読み取った。イメージラボvs 5.2(バイオ・ラッド)を使用して、イメージ分析を行った。定量化に使用されるウエスタンブロットの関心領域(ROIs)は、それぞれのウエスタンブロットの右側に垂直バーによって表示される。示されるイメージは、3つの異なるドナーのプールを使用した3度繰り返された実験(n=3)を代表する。
【0083】
当業者には明らかであるように、本発明は、ここに記載された実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において多くの変更が可能である。
もちろん、上記の好ましい実施形態は、異なる形態で組み合わせ可能であり、そのような組み合わせの全てについて繰り返すことをここでは差し控える。
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【国際調査報告】